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竜退治は飽きやしない

#アックス&ウィザーズ #妖精フリム

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#アックス&ウィザーズ
#妖精フリム


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●アックスアンドウィザーズ
 とある地方、人里離れた地にある〈ブルーノー大森林〉。
 広大な土地の奥深くには、未開の部族や魔獣、あるいは遺跡が残るとされる場所だ。
 見渡す限りの緑に、ふと大地を揺らす恐ろしい咆哮が響き渡った。
「ぴぃい! ま、また聞こえたでするぅ~」
「怖いでするぅ~」
「食べられちゃうでするぅ~」
 と、妙な語尾つきで怯えているのはフェアリーの一団である。
「落ち着くでする! ここまでくればアイツも襲ってこないはずでする!」
 リーダーと思しき少女フェアリーが檄を飛ばした。
「で、でもぉ……おうちなくなっちゃったでする……」
 気弱そうなフェアリーがおずおず言うと、少女フェアリーはきっと見返した。
「だから、新しい村を作るのでするよ。そこに住めばいいのでする!」
 フェアリーたちは顔を見合わせた。住処を棄てるばかりか、森の外で暮らす?
 ありえない。それにもしかしたら『アイツ』が来るかもしれないじゃないか。
 口々に泣き言や不満を喚き立てるフェアリーたちに、少女フェアリーは大きな声で叫んだ。
「いいから、やると言ったらやるのでする! 命令でする!
 ……もうあそこでは、暮らせないのでするから……」
 フェアリーたちは哀しげに大森林を見やった。
 妖精たちを脅かすように、再び恐ろしい咆哮が轟いた。

●グリモアベース
「てなことがちょっと前にあったらしいのよ」
 グリモア猟兵、白鐘・耀曰く。今回の目的は大森林に発生したドラゴンだという。
 その名も、霧中の暴君『グラドラゴ』。本来は主に渓谷地帯などを住処とする魔竜だ。
「こいつは大森林を根城にしてるみたいでね。運悪くそこにフェアリーの住処があった。
 その子たちは長く住んでいた場所を追われて、森の外で村を作っている最中みたい」
 それで終わるなら話に挙がらない。つまり彼らも事件に関わってくる。
「グラドラゴがね、わざわざ眷属を差し向けてくるってわけよ。この村に」
 単に逃した獲物を狙ってなのか、なにか別の意図があるのか。
 いずれにせよ、このままではフェアリーたちが今度こそ全滅してしまう。
 これを防ぎ、彼らから情報を得た上でグラドラゴの住処を目指す。
 それが今回の任務だ。当然、大森林の突破も冒険の過程に含まれる。

「まずはこのフェアリーたちの仮設共同体の近くに皆を転送するわ。
 すぐにグラドラゴの眷属……分身のほうが近いかしら。敵が来るから、これを倒して」
 グラドラゴは霧によって自身の分身を生み出すユーベルコードを持つ。
 村を襲うのはその劣化版というべきものらしく、個々の戦闘力は極めて低い。
 ユーベルコードなしでも十分に打倒できる。ただしそれは猟兵を基準にした上での話。
「フェアリーの協力が得られれば、森林地帯の探索もかなり楽になるはずだわ。
 臆病な子たちみたいだから、戦うのはいいけどあまり怖がらせたりしないでね」
 現地はフェアリーサイズの仮設共同体である。
 敵が弱いからといって大規模な破壊を起こすのは、あまり得策ではない。

「そこから先は得られる情報次第ね……探索も一日以上はかかるでしょう。
 森のなかでちょっとした野営ってのもファンタジックでいいんじゃない?」
 などと冗談めかしてみせるが、冒険は冒険である。気を引き締めてかかるべきだろう。
 ともあれ耀は火打ち石を取り出すと、カッカッと小気味よく鳴らした。
「妖精たちを助けて森のなかで竜退治! いかにもって感じでワクワクするでしょ?
 あんたたちの力を見せつけてやりなさい。頼りにしてるわよ!」
 そして転移が始まった。


唐揚げ
 野営シーンが書きたくて出しました、天ぷらです。
 OPいかがでした? エッ読んでない?
 ではまとめいってみましょう。

●目的
 フェアリーたちの仮設共同体の防衛(冒険)
 ブルーノー大森林の突破(冒険)
 敵オブリビオンの撃破(戦闘)

●敵戦力
 霧中の暴君『グラドラゴ』(1体。つよつよ)

●備考
 1章で戦う『グラドラゴの眷属(分身)』に実データはありません。
 ユーベルコードを使わずとも十分に撃破できます(もちろん指定があってもOKです)
 ただし、フェアリーたちをどの程度意識するかでその後の展開がやや変わります。
(難易度が激変するということはありません。RPやキャラ性の補強にどうぞ)
 2章では合間に野営をします。焚き火を囲んで語り合いとかいいと思いませんか!?
 そういうプレイングをいただければノリノリで書きます。なくても全然OKです。

 とまあ色々シチュに尾鰭がついていますが基本はシンプルな冒険と戦闘です。
 そろそろ前置きはこのあたりにして。
 皆さん、焚き火を囲みつつよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『フェアリーの村を守れ!』

POW   :    身体を張って襲撃者からフェアリーたちを守るんだ!

SPD   :    罠や射撃で襲撃者を足止めしてフェアリーたちへ近付かせないぞ!

WIZ   :    魔法や未知のエネルギーを襲撃者にぶっ放してフェアリーたちに触れさせないぞ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ブルーノー大森林南東部・フェアリーの仮設共同体
「ぴぃい! 来たでする、アイツが来たでする~!」
「食べられちゃうでする~、もうおしまいでするぅ~!」
「怖いでするぅ、うあーん! うあーん!」
 例にもよって妙な語尾のフェアリーたちが泣き叫ぶ。
 遥か彼方、森から飛び来たるのは、霧めいて靄がかった龍の群れども。
 姿形はグラドラゴのそれだが、所詮はユーベルコードの産物。
 猟兵にかかれば雑魚である――だがフェアリーたちにとっては別だ。
「長しゃま~、どうすればいいでするかぁ~!」
 ぴいぴいと泣いて逃げ惑うだけのか弱きフェアリーたち。
 長、と呼ばれた少女フェアリーは、険しい顔で迫る霧の眷属たちを睨む。
「……ど、どうすればいいかなんて、わたしだってわかんないもんっ!」
 年相応の嗚咽。フェアリーたちに真の絶望が訪れた瞬間である。

 共同体といっても、大きさはあくまでフェアリーサイズ。
 小高い丘のたもとにひっそりと作られた集落はあまりにも心もとない。
 助けが必要だ、うまいこと配慮しつつ霧の龍どもを撃退せよ!
フェルト・フィルファーデン
龍の対応は他の仲間に任せて、私は妖精たちと集落を守ることに注力しましょうか。
UCで兵士達を呼び出し、5人一班を作って集落を包囲するように散開。
龍の位置を確認するため周囲の索敵を主に行いなさい。
はぐれた妖精がいれば保護して連れて来て。
龍は保護対象に危害を加えるようなら交戦を許可するわ。絶対に守り抜いて。お願いね?

妖精達には私が【鼓舞】して元気付けるわ!
「まだよ、まだ諦めるには早すぎるわ!あなた達には戦う力は無くても、ここまで生き延びて来た知恵と、速やかな状況判断が出来る決断力があるのでしょう?たとえ小さな体でも、その心には生きたいと願う大きな意思があるはず!だからお願い、希望を捨てないで……!」


メンカル・プルモーサ
【須藤・莉亜】と参加
到着後に、フェアリーの村を守るように【愚者の黄金】で金の柵と鳴子を作成…須藤の鋼糸と合わせて簡易的なトラップで時間稼ぎ……
襲撃までに【不思議な追跡者】で猫を呼び出して須藤の狼と一緒に芸をさせてフェアリーたちを和ませる……
襲撃来た後は須藤と手分けで別方向の迎撃へ……ん、任せて…
……トラップに引っかかった眷属を始末しつつ…これ、グラドラゴのUCで作られたものの亜種なら……と【崩壊せし邪悪なる符号】を使い、UCを解除して霧散させてみる…
成功したらそのまま眷属を霧散させていって、だめなら【尽きる事なき暴食の大火】で蒸発させていく……
…はぐれたフェアリーとかいたら保護もするね……


須藤・莉亜
【メンカル・プルモーサ】と参加
戦う前に、メンカルの作った柵に鋼糸で簡易的なトラップを作っといて時間稼ぎに。

僕は眷属の狼くんを召喚。フェアリーたちの前で、メンカルの召喚した猫と狼くんにお座り、お手、伏せ、一周回ってからお手の芸をやってもらい場を和ませてみよう。
それから、メンカルとは別の方へ迎撃に向かう。
「んじゃ、そっちはよろしくー。」

狼くんは主に影からの奇襲攻撃、僕は悪魔の見えざる手で殴りに行く。

「うーん、見た目に配慮して殺すのは気を使うなぁ…」
狼くん、もうちょい芸出来ない?フェアリーたちにご褒美貰えるかもよ?


月宮・ユイ
妖精達の防衛任務ね…一人も欠けることの無い様にしっかり守りましょ
しかし、追撃してくるなんてドラゴンの方にも何か理由があるのかしら

【人形劇団】で大きな盾持つ騎士人形を召喚。
”アート、パフォーマンス”
5体に纏めて大きく、されど
まるで物語に出て来る騎士様のように華美で煌びやかな姿で召喚
集落を背に攻撃、或いは余波から守らせる
『さぁ騎士たちよ、護りなさい』
姿と登場時の防衛の宣伝でフェアリーたちの恐怖が和らげば良いのだけど…
口下手で目立つのは得意ではないけれど
駆け付けた皆の”優しさ”も伝わる様になけなしの”コミュ力”を駆使するわ

兵装:ライフル
弾に”呪詛のせマヒ・気絶攻撃”

アレンジ・アドリブ・絡み協力歓迎



●ブルーノー大森林南東部:仮設共同体近傍
 奇妙な光景であった。
 人工物がほとんど存在しない自然の中に、精巧な作りの柵がずらりと並んでいる。
 それ自体は大したことでもないだろう――問題は、その柵が金で出来ていることだ。
「……世に漂う魔素よ、変われ、転じよ」
 一見、大人しげな風貌の少女が口訣を謳う。翻す外套は雪のようにきらきら煌めいた。
「汝は財貨、汝は宝物。魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金――」
 そして銀月の杖を振るえば、新たな金の柵が生まれて地面に突き刺さる。
 メンカル・プルモーサが有する数多の融合魔術、そのひとつの顕現だ。
「あいつら空を飛んでるみたいだけど、足止めになるかな」
 などとこぼしつつ、深い隈が刻まれた男が気だるげに腕を振った。
 よほどの達人でもなければ、彼が何をしたかは見えないだろう――糸である。
 散糸。超極細、かつきわめて鋭利な鋼糸を、柵に巻きつけたのだ。
「鳴子もあるから、大丈夫だと思うけど……」
 須藤・莉亜の言葉に、メンカルは眠たげに応えた。元々時間稼ぎのための罠だ。
「黒騎士相手に策を講じるよりは……ずっと楽」
「違いない。僕としては歯応えのある敵のほうが嬉しいんだけどね」
 不健康そうな見た目ながら、出てくる言葉は割と物騒だ。
「……いまは我慢。フェアリーたちのところへ行かなきゃ」
「ん。狼くんたちでうまく和んでくれるといいんだけど」
 親子ほどにも背丈の違う二人はぼやきながらその場を去った。

●同時刻:フェアリーの仮設共同体
「長しゃまが怒ったでするぅ~」
「うあーん! うあーん!」
 癇癪を起こした"長しゃま"の剣幕に圧され、フェアリーたちは泣き喚く。
 それが若き"長しゃま"をさらに苛立たせる。よくない状態だ。
「待って! あなた達、落ち着いてわたしの話を聞いて頂戴っ?」
 そこにやってきたのは、同じフェアリーの少女。
 見慣れぬ同族の出現にきょとんとする妖精たち。
 一方その少女――フェルト・フィルファーデンは、切々と語った。
「まだ諦めるには早すぎるわ。あなた達は戦えなくても、今日まで生き延びてこれたんでしょう?
 その知恵と判断力と決断力があれば、きっと大丈夫。だからお願い、希望を捨てないで……っ」
 声音には悲痛な響きがある。さもありなん、彼女は亡国の姫なのだから。
 生きたいという意志があれば、たとえ小さな体でも抗うことは出来ると彼女は語る。
「ふぇ……? ど、どこのどなたでする……?」
 やや当惑しながらも、フェルトの言葉に耳を傾ける妖精たち。
「心配は無用だ。……じゃなくて、大丈夫、よ。私たちはあなたたちの味方なの」
 ぎこちない口調ながらも、横合いから月宮・ユイがフォローした。
「私たちはお前たち……じゃなくて、あなたたちを守りに来たのよ。彼らと一緒に」
 さっと手を振るユイ。すると同時に、勇ましい騎馬の嘶きが響く。
 現れたのは五体の騎士たち。実際のところ、これらは人形なのだが。
「わあ、すごいでする! おとぎ話で見たことあるでする~!」
「かっこいいでするっ、騎士様でする~!」
 わいわいと盛り上がる妖精たち。ユイはフェルトのほうを見、にこりと微笑んだ。
「……ふふ、ありがとうユイ様? わたし、すこし焦っていてしまったわ。
 それにしても素敵ね。わたしの騎士たちと同じくらいに!」
 緊張した様子のフェルトも、安堵した笑顔でお姫様らしく言ってみせた。

●同時刻:ブルーノー大森林深部
「……んン?」
 深い闇に包まれた静謐のなか、巨きなる魔獣が身動ぎする。
「ふウむ、なにか妙な気配がしよるのォ……さては、誰某かが吾(わし)の邪魔を企んでおるか」
 しわがれた声に、ぐるるる、と恐ろしい唸りが交じる。
 不愉快げに細まる瞳は爬虫類のもの。いかにも、これこそは……。
「少しばかり眷属どもを増やしておくか、あア面倒くさい……」
 巨体のシルエットを包む霧が、ゆるりと風もないのに揺らめいた――。

●フェアリーの仮設共同体にて
「……あ」
「……あら」
 やや遅れて共同体にやってきたメンカルと、ユイは同時に声を漏らした。
 そんな二人を交互に見やり、猫背気味の莉亜が首をかしげる。
「何、知り合い?」
 二人は同時にこくんと頷く。デストロイ・ウォーマシン破壊作戦の縁だ。
「ふうん、そっか。仕事も先に済ませてもらってたみたいだね」
 莉亜は、ユイが召喚した騎士たちに湧くフェアリーたちを見て言った。
 が、すべての妖精たちが猟兵たちに気を許したわけではない。
 龍の来襲に怯えていたり、見ず知らずの人間を警戒する臆病な者もいる。
 そうしたフェアリーたちは、フェルトが根気強く説得しているようだが……。
「……出し物なら、まだある。小さき者よ、舞え、踊れ……」
 本来は追跡用の狩人を呼ばう呪文だが、応用が出来てこその魔女というもの。
 ぽん、とファンシーな煙のなかから、しなやかな体つきの猫が現れた。
「まあー数が多いほうが盛り上がるだろうしね。君の出番だよ、狼くん」
 莉亜の影から、ずるりと漆黒の毛並みを持つ狼が湧き出、猫に並んだ。
 すると二匹は交互に前肢を上げたり、伏せたり立ったりと芸を始めたのだ。
「すごいすごいっ、この子たちお利口さんでする~!」
「かわいいでするっ、怖くない狼なんてはじめて見たでする!」
 フェアリーたちはこぞってその舞いに盛り上がり、ユイの騎士たちも芸に参加する。
 ほとんどの妖精たちはもはやショーに夢中だ。フェルトがため息をついて肩を竦めた。
「もう、臆病なんだか呑気なんだか。同じフェアリーとして呆れてしまうわ。
 でもありがとうお二人とも。ここにわたしの騎士もいればよかったのだけれど」
「いいよいいよ、村の周辺を見張ってたのはその騎士くんたちでしょ?
 おかげでこっちも仕事が楽になったよ。ほら、僕らこの通りのナリだし」
 かたや不健康そうな痩せぎすの長身男性。
 かたや眠たげで何を考えているのかわからない少女。
 同じフェアリーであるフェルトと、どっちが警戒されそうかは一目瞭然である。
「……別に、機嫌が悪いわけじゃないんだけど」
「あの子たちは怯えているだけなの。だからどうか気になさらないで?」
 無表情なメンカルに対し、すっかりいつもの瀟洒を取り戻したフェルトが微笑んだ。

 四人はそれぞれに簡潔な自己紹介を終え、今後の方針について語り合う。
「……鳴子があるから、敵が近づいてくればわかるはず」
「例のドラゴンね。わざわざ追撃してくるだなんて、何か理由があるのかしら」
「大元を倒さないと元の木阿弥でしょうね。それと、もう一つ懸念があって……」
 フェルトはちらりと背後を見やる。ショーに盛り上がる妖精たちのその先。
 そこには"長しゃま"と呼ばれていた少女が、いまだ強張った表情で佇んでいた。
「あの子がこの共同体のリーダーみたいなの。けれどずっとあの通り」
 状況への警戒心だけではないのだろう。一筋縄ではいかない気配がある。
「……説得はまた後で、別の猟兵に任せるしかなさそうだわ」
 ユイは空を仰ぎ、やや警戒した目つきで言った。同時にメンカルの眉がぴくりと動く。
 鳴子の反応があったのだ。遠く離れていてもその音は魔力的に彼女に伝わる。
「もう一仕事するとしましょう。この様子なら存分にやれそうだし、ね」
 四人は頷き合い、一旦その場を後にしてもと来た道を駆け戻った。
 彼女たちが見上げ、見据える先。空と森の奥から来たる霧の軍勢!

●ブルーノー大森林南東部:金の防衛網周辺
『殺せ、殺せ! 妖精どもを皆殺しにしろ!』
『我らの臥所を侵す者どもを殺せ!』
『森の末裔どもを皆殺しにしろ!』
 霧で構成された眷属たちは口々に悪辣なる嗤笑を交わし合う。
 森の末裔とは一体? それを問うたところで答えはなかろう。ならば!

「いやぁ、気を使う必要がなさそうでありがたいなあ」
 莉亜は呑気に言いながら、おもむろに片腕を空へと差し出し、ぐっと握り込んだ。
 するとどうだ。遥か彼方の霧影が、ぐしゃりと見えないなにかに握りつぶされたのだ!
 悪魔の見えざる手。不可視にして強力なる、文字通りの魔手によるものだ。
「こっちは独りでいけそうだ。メンカル、そっちよろしくー」
 と、別の方角を見やり、気の抜けた声で戦友に呼びかける。
 戦闘中によそ見とは大したものだ! とばかりに、空から新たな眷属が飛来!
「邪魔くさいなぁ」
 莉亜は拳を振りすらしなかった。代わりに、彼の眼前に巨大な禍々しい魔法陣が出現。
 それは大扉めいてガコンと開き、内側から瘴気とともに巨大な右拳が突き出した!
「大した相手でもないのに開門して悪いね。ま、僕に從ってもらうのは変わらないけど」
 男はあくまでも脱力。内なる大悪魔の不満げな唸りにすら、表情は崩れない。

 一方、そんな莉亜が声を届けた方角。メンカルは無表情のまま頷いた。
「ん。任せて……こいつら、やっぱりユーベルコードの産物」
 電脳魔術士でもあるメンカルは、霧の眷属の組成を一瞬にして分析せしめた。
「汝は雲散、汝は霧消――魔女が望むは、乱れ散じて潰えし理」
 ならば火も氷も必要ない。ただ唱え、杖を差し向けるだけでよし。
 鋼糸に絡め取られた眷属たちは、苦悶しながら解けて消えていく!
「他愛ない。……でも、嫌な予感がする……」
 一体一体の戦闘力は、事前情報通りさしたるものではないようだ。
 逆に言えば、本体にとって眷属の生成はたいした負担にならないのだろう。
「……あんまり、森を燃やしたくはないのだけれど……」
 共同体からはぐれたフェアリーのことも気にかかる。彼女は手っ取り早い手段を選んだ。
 すなわち、超高熱による焼却。その周囲に揺らめく白き炎が顕現する。
「……貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火……」
 空を征かんとする眷属たちに、恐るべき魔女の業火が襲いかかった。

 二人が眷属たちを撃破する、第一防衛線からいくらか後方。
 共同体を背にしたユイが、大仰なライフルを空へ向けて構える。
 BLAM、BLAM、BLAM! トリガを引く指先は機械的ですらある。相手はオブリビオン、しかも眷属だ。
「やっぱり、こういうことのほうが向いてるわね」
 それはどこか嘆息混じりの、寂しげな声音にも聞こえた。
 金の瞳が、スコープ越しに敵の姿を捉える。BLAM。銃声が高らかに響くたび眷属は霧散する。
 メンカルと莉亜の攻撃は見事なものだ。一流と言っていい。
 にも関わらず眷属は以前無数に現れ、ユイの手にかかる。不穏な気配がある。
「もっと人数が要りそうね、これは……でも」
 BLAM。高高度を飛び、監視網を逃れようとしたあさましき眷属を撃墜。
「……お前たちの好きにはさせない。誰一人、欠けさせたりはしないわ」
 少女の姿をしたヤドリガミの決意は、弾丸よりも硬く熱い。

 鋭い銃声、そして大気を焼き焦がす炎と、豪腕が敵を切り裂く音。
 それらの残響はフェアリーたちの共同体にも、木霊のように届いている。
「さああなた達、いつまでも浮かれていてはダメよ。ここはあなた達の村でしょう?」
 ショーの最中、フェルトは辛抱強くフェアリーたちに呼びかけた。
「わたし達も手を貸すわ。でもこの共同体は、あなた達自身の力で守り抜かなければダメなの。
 そのためには決して諦めずに、希望を持ち続けることが大事なのよ」
 状況を楽観視しかけていたフェアリーたちも、その言葉に表情を固くする。
 守られていてばかりではいけないという言葉は、フェルトだからこそ言えることだろう。
「だから皆で力を合わせましょう。今までやってきたのだから、出来るでしょう?」
 大元のグラドラゴを始末するには、どうしてもこの共同体を離れねばならない。
 最終的には、やはりフェアリーたちの勇気と決意がなければいけないのだ。
 ……しかし"長ちゃま"は、依然として妖精たちの輪から離れ、ひとり俯いている。
(どうにかしてあの子の心を開かせなければいけないわね、でもどうすれば……)
 事は、思った以上に手がかかるようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●ブルーノー大森林深部
 巨獣が身動ぎした。
「やはりのォ……どこの莫迦かは知らぬが、吾の愉しみを邪魔しおるとはなア」
 だがその嗤笑に苛立ちはない。あるのはさらなる愉悦への期待である。
 それは、いまだ彼らを見ていない。聽いてもいない。触れてもいない。
 眷属たちが戻らぬことから、なんとなく邪魔者の気配を察しただけだ。
 けれども理解る――オブリビオンは本能的にそれを知るのだから。
「猟兵、か。カ、カ、カ……さて、どこまで凌げるかのォ?」
 龍とは傲慢なものである。そして強大にして無慈悲。
 再び闇の中で霧が揺らめいた。生まれた眷属の数は――。
カチュア・バグースノウ
ふぅん
野営いいわね!(話を聞いてない

フェアリーにも気をつけて戦うのか…難しいけど守ってあげなきゃね

POW
とりあえずフェアリーたちは一箇所にまとまってあたしの後ろへ!
ていうか、守りが堅い人の後ろへ!邪魔にならないようにね!

血花応報で血を前方に血を散らして、自分で起こした火が広がらないように注意
広がりそうならすぐ消す
襲撃者の攻撃には、武器受けでガード
なるべく動かず、敵を一体ずつ撃破しましょ
ああーうずうずする!動きたい!

アドリブ、共闘歓迎


ドロシー・ドロイストラ
SPD

目的があって場所を乗っ取るならともかく
逃げた相手を全滅させにいくとはお下品なドラゴンめ
一丁ドロシーが成敗してやるとしよう

飛んでくるというなら撃ち落すまでだ
視認したならユーベルコード「探し出す雷矢」を使う
ドロシーのシャウトから発生した雷が眷属を突き刺すというわけだ

そんでもって叫んでばかりも疲れるから
合間合間に「ズン」を投げ槍に変形させて投げつける
敵に刺さって手元に戻ってきたらまた投げる
シャウトと槍投げの繰り返しだ、飛ぶなら落とし続けるぞ

射撃を抜けて敵がこっちにまで来るようなら【オーラ防御】の翼を広げて
妖精に被害がいかないように【かばう】
「ドロシーのほうは気にするな、飯食って寝てれば治る」


柊・明日真
フェアリーってのも面白い奴らだな。
ちょいと動きにくいが、さくっと守ってやるとするか!

【POW】身体を張って防衛
【見切り】で集落を気にしつつ防御重視で立ち回る。その辺をぶっ壊さないように大振りの攻撃は控えておくか。
ユーベルコードは【ライオットシュート】での迎撃のみ。
周りに被害が出そうなら割り込んで【武器受け】

自分の傷より集落の安全を優先だ。死ななけりゃ安いもんだしな。


城石・恵助
こんなに怯えてしまって…可哀想に
僕らが来たからにはもう大丈夫さ。元気を出して
逆に食ってやるくらいの気持ちでいこう。ドラゴンステーキっておいしいらしいよ。じゅるり

僕は難しいことは苦手だから、この身を盾にして妖精達を守ろう
〈オーラ防御・盾受け〉
あまり大きな技は周りに被害が出そうだ
寄ってくる敵は『出刃包丁』で解体したり【喰らいつく】ことで排除していくよ
〈怪力・料理・大食い〉

どの世界でもやはり、オブリビオンは奪い、脅かすことしかしない
おまけにこの霧の分身共は味がしない。食感もない。腹に貯まらない。…許せないな
グラドラゴ、必ずお前をニンニクと一緒に表面カリカリ肉汁ジュワッと分厚く焼き上げてやりまする…!



●昼:フェアリーの仮設共同体
 眷属の襲撃が途絶えてから数時間。中天に太陽が上がった頃。
「……お腹すいたでする」
 あるフェアリーがぽつりと呟いた。まさに昼飯時だ。
 おまけに彼らは共同体の設立作業で忙しく、食糧の在庫に乏しい。
「ご飯食べたいでする……」
「でも長しゃまはあんまり食べるなって言ってたでする~」
 次の襲撃が来るという不安。空腹による不満。その時である。
「あっ!」
 ひとりのフェアリーが声を上げた。
「ま、また! また来たでする~!!」
 速い。しかも空を覆うその数は……おお、先の襲撃の倍以上!
「あ、あわわわ! 今度こそもうおしまいでする~!」
 依然猟兵たちは防衛網を敷いている。だがこの数は……!
「う、うううう……!」
 再び妖精たちが慌てふためく。"長しゃま"は耳を塞いでうずくまった。

●同時刻:大森林上空
『見つけたぞ、見つけたぞ。末裔どもの住処を見つけたぞ』
『殺せ、喰らえ、壊せ。あれは我らの獲物なり』
『末裔どもを皆殺せ。邪魔するものも皆殺せ!』
 悪辣なる龍の眷属たちは、ぎゃあぎゃあと渡り鳥めいて騒いだ。
 そして丘のたもとめがけ、一気に急降下を始める!
 迎え撃つ業火、銃声、そして悪魔の腕。だがそれを掻い潜る数少なからず。
 いよいよその牙と爪が、共同体にかかろうとした、その時――!

 大地を揺るがすほどの雄叫びが、奴らを劈いた。

●仮設共同体:第二防衛線
『Ronaaz - Yah - Qo――!!!』
 それはこの世ならぬ異界の響きである。放つのは幼気な少女。
 だが驚くなかれ、褐色の肌を持つ幼子は、その実永生なる龍の娘。
「下品なドヴァ……龍どもめ。ドロシーの力を思い知ったか」
 ふんす、とどこか得意げにドロシー・ドロイストラは胸を張る。
 蛮人じみた身なり似つかわしからぬ威風を纏っていた。
 彼女が叫ぶたび、轟く大音声は稲妻のように輝き空を穿つのだ。
 二度、三度と雄叫びを上げ、不届きなるトカゲどもを撃ち落とすドロシー。
「他愛もない奴らだ。ロク……空を舞った程度で、王にでもなったつもりか!」

 だが眷属どもは、力ある言葉を恐れずドロシーめがけ急降下する。
 彼女が投げ槍を構えた瞬間、強靭な長槍が横合いから敵を串刺しにした!
「"もどき"風情が小賢しいのよ、ドラグナー嘗めないでほしいわね!」
 だっ、と白い髪をたなびかせ、槍を擲ったエルフの女が颯爽と出現。
 突き刺さった槍を力任せに薙ぎ、霧の眷属を滅殺。パワフルな攻撃だ!
「助けはいらなかったかしら? 横取りしたわけじゃないのよ」
 快活な女戦士はおどけてみせる。ドロシーもにやりと笑った。
「いいや、見事だファーリル……エルフの戦士よ。名をなんという?」
「カチュア・バグースノウよ。その響き、龍言語に似てるような違うような……」
「さもあらん。ドロシーの言葉はカチュアのよりもクルゼィク(古代)だからな」
 はたしてそれは嘘か真か、真実は本人が知るばかりなり。
 一方のカチュアは興味深げに目を輝かせる。が、すぐに目線は空へ。
「また新手かあ、めんどくさいわね。さっさと片付けちゃいましょう」
「うむ。だが我らだけでは手に負えぬやもしれぬ」
 その言葉に、カチュアはにやりと笑って振り向いた。
「大丈夫よ。あっちには心強い守り手がいるから」

●仮設共同体:外縁部
 猟兵による防衛網を潜り――あるいはさらに上空を飛び――抜けた眷属ども。
 それらはフェアリーたちの村を眼下に睨めつけ、ぎしりと牙を剥き出しにした。
 さあ、いざや饗宴のとき! ほとんど垂直に急降下して獲物を貪ろうと――。
「うぉりゃあああッ!!」
 した矢先、先頭にいた霧龍は、真下からの強烈なムーンサルトを浴び消滅!
 二手三手と続こうとした眷属どもはいきなりの奇襲に驚愕、足並みが乱れる。
「図体ばっかでけえくせに臆病な奴らだ! 消えちまえッ!」
 霧散しかかった龍の体を『蹴り』、赤髪の戦士が空中を舞う。
 近くの龍を、さらにそいつを仕留めたあとは別の龍を飛び石めいてストンプ破壊!
「へっ、どうだ! ちょいと動きにくいが、これなら被害も出ねえだろ!」
 柊・明日真は勝ち誇ったように笑う。彼の刻印魔術ではいささか派手に過ぎるのだ。
 地上で不用意にその力を解き放てば、フェアリーたちの集落にも被害が及ぶだろう!
「オイ、そっち行ったぞ! 悪いが頼むぜ!」
 地上へ鋭く声をかける明日真。それに応じ、ゆらりと立ち上がる人影あり。
 急降下する眷属は哂った。なにせそれはたかが独りの少年だったからだ。
 ――そして後悔した。マフラーを下ろした彼の口元は、おお……!
「いただきまーす」
 ばくん。
 大きく裂けた口は、身の丈が三倍以上はあろうかという龍の首を文字通り丸呑みに。
 もごもごと咀嚼する城石・恵助だが、表情はどんどん渋くなっていく。
「うーん、やっぱりか。さすがに霧の塊じゃ、味も食感もあるわけないよね」
「呑気言ってる場合かよ、俺だって腹減ってるっつーの!」
 かたや10代、かたや20代前半である。ともに健康優良男児とあっては無理からぬもの。
「フェアリーたちもお腹を空かせて怯えていたもんなあ、可哀想に。
 なにより空腹っていうのがよくないよ、そんなこと言ってたらもっとお腹すいてきた」
 軽口を叩きながらも、しぶとく襲いかかってくる敵を出刃包丁で切り裂く。
 裂かれた霧体は消失。恵助はお腹をさすりため息をついた。
「くそっ、俺まで本格的に腹減ってきた! お前らのせいだぞ!!」
 明日真は龍どもに八つ当たり。お腹が減ってイライラしているようだ。
 迫る敵を読んで字のごとく一蹴する。されど敵影はなおも続く……!

●同時刻:ブルーノー大森林深部
 がつ、ごり……むしゃり、ばつん。
 小さな丘ほどはあろうかという巨大な獣を、龍が喰らう。
「ふウむ……しぶとい。これでもまだ足りぬか」
 牙を、顎を鮮血で染め、それを舐め取りながら魔龍は思案した。
 送り出した眷属が一匹も戻らぬというのは異常である。
「やれやれ、もう一腹ごしらえせねばのォ……」
 骨ごと臓物を咀嚼しながら、楽しげに喉を鳴らした。

●ややあと:フェアリーの仮設共同体
 明日真と恵助の戦いは続いていた。なにせ敵の数が減らないのだ。
「あの二人ッ、ちゃんと仕事してんだろうな!?」
 カチュアとドロシーのことである。彼らは男女で手分けして陣を敷いた。
「あの妙な声が聞こえないからなあ、やられたってことはないだろうけど」
「飯の時間とか言ってサボってたら俺何しちまうかわかんねえ」
「それは僕もだから大丈夫」
 絶え間ない運動がさらに空腹を募らせる。男子たちには酷な仕事だ。
 しかし事実、この距離まで轟くはずのシャウトは一向に聞こえない。
 ぶちぶちと愚痴りつつ、明日真と恵助は弾かれたように空を見、呻いた。
「増えやがっただと……!?」
 然り。先のさらに倍近い数の眷属が低空飛行し、こちらへ急速接近しているのだ。
 そもそも敵は大森林のどこにいる? なぜこうも立て続けに増援をよこせる?
「ユーベルコードの産物だからねえ、物理法則に支配されないってわけか」
 恵助の苛立ちは深まる。やはりオブリビオンは殺さねばならない。
「絶対に表面カリカリ肉汁ジュワッと分厚く焼き上げてやるからな……!」
「なんでこの状況で飯テロすんだよ!?」
「にんにくと一緒に特製ソースで味付けもしちゃうでする……!!」
「追い打ちすんなよ!! 怒るぞ!!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎ合う男子二名。その後ろでフェアリーたちは震えている。
「こ、今度こそおしまいでする~」
「逃げなきゃ食べられちゃうでする~!」
 恐怖のあまり、パニックになったフェアリーは四方八方に飛び出そうとした!
 当然敵がそれを見逃すはずはない。明日真と恵助は舌打ちして前に出た!
「クソっ、こりゃ少しは覚悟しねえとダメだな」
「空腹が悪いんだよ空腹が、まあ怪我ならどんどこいだけどね」

 被弾を覚悟に立ち回る二人。そこへ、大音声が轟いた!
『Fel - Gron ――!!』
 鋭いシャウトを浴びた龍の翼が爆裂し、さらに霊的な鎖がその体を戒める。
 暴れ狂う龍を力強く引き、反撃も厭わず槍を振るうのはドロシーである!
「ケンドォヴ……戦士たちよ、遅くなった」
 己の体に牙を食い込ませた隙に、龍の首を抉りながら少女は言った。
「お、おう。けど大丈夫なのかそれ」
「ドロシーのことは気にするな。飯食って寝てれば治る」
 あっけらかんとした物言いである。
「そのご飯がないんだけどね。ていうか、どうしてこんな遅くなったの?」
「問題ない、スレーンを持ってきた」
 スレーンとは一体? 答えはすぐにもたらされた。
 空を埋め尽くさんばかりの霧の眷属たちを、紅蓮の炎が焼き尽くしたのだ。
「おまたせ! さあフェアリーたち、あたし達の後ろに下がっててね!」
「「「ご、ごめんなさいでする~!」」」
 パニックを起こしかけた妖精たちも、カチュアの言葉に従い逃げ戻る。
 彼女の片腕には地獄の炎。もう一方の肩には巨大な獣を担いでいるではないか!
「せっかく前衛に出たからね、ちょっくら一狩りしてきたのよ」
 明日真と恵助は何やってんだと言いかけたが、腹の虫が鳴ると口を閉じた。
 背に腹は変えられまい。暴れたがっていたであろうカチュアの気持ちもわかる。
「野営も楽しみだけど、まずはこの状況をなんとかしないとね!
 こいつらを蹴散らしたら食事にしましょう。調理は……任せるわね!」
 カチュアはあっけらかんと言った。見た目は可憐なのだが……。
「ドロシーは丸焼きで問題ない」
 なんならウルトラレアでも構わんとばかりに頷くドロシー。
「ワイルドすぎんだろそれ……くそっ、考えたらもっと腹減ってきた」
 明日真の限界はそろそろ頂点に達しそうだ。
「ここは僕に任せてほしい。フェアリーたちにも振る舞ってあげよう」
 キリッと紳士的な表情で恵助が言った。出刃包丁がギラリと煌めく。
 かくて四人は空を見上げる。霧の眷属、何するものぞ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

天道・あや
理由はよく分からないけど世界は広いんだから村ぐらい作らせてあげたらいいのにフェアリーなんだし!ま、文句はこれぐらいにして…とりあえずフェアリー達を助けて話聞かなきゃ!

転送されると同時にレガリアシューズでフル稼働させて龍の群れにどっかーーんと【突いの乗った重い一撃セカンド!どっかーーん!】で攻撃!その後は【グラップル】で龍を倒していくよ!


グルクトゥラ・ウォータンク
【WIZ】
ホーリーオーダァァアア!(叫びながらヒーロー着地)

ちびっこいのを襲う龍どよ!分身増やしてタップダンスる愚か者共よ!わしの怒りは大分有頂天極まっておるのでおとなしく散れぃ!

UC全力発動!偉大なる古代の戦士がすべてを破壊し満足する!霧だろうがなんだろうが焼き尽くし滅ぼすぞい!
わし自身もガトリングぶっぱで【範囲攻撃】【援護射撃】敵を轢き潰すぞい!【ガジェットボールズバタリオン】も発動、木々に隠れて奇襲し【先制攻撃】、【二回攻撃】で噛みちぎれ!

わしとおぬしらはなんの縁も所縁もないがな、それでも助ける理由はある!そいつは正義というやつじゃ!わしの中の正義が、おぬしらを助けよと喚いておる!


エドゥアルト・ルーデル
Kawaiiフェアリー達を守護らねばならぬ…!
という訳でフェアリー達の安全を全力で意識しつつ、時に小粋な会話を交えつつ全力で防衛でござる!
戦い方を知らないフェアリー達に防衛戦のやり方など【戦闘知識】の解説しつつ迎撃ですぞ!カッコいい拙者を見て黄色い声を上げてくだされーデュフフフフ!

まずは【地形の利用】【罠使い】等などで村の周りにバリケードを配置、敵の侵入経路を固定させますぞ
次にバリケード越しから敵集団が遠くの時はライフルを【スナイパー】で使用し長距離狙撃、近くに来たらフルオートに切り替えて【なぎ払い】と距離に応じた戦い方を披露してサクサク片付けるでござるよ

アドリブと絡み歓迎



●午後:フェアリーの仮設共同体近くの草むら
「デュフフフフ……」
 もぞり。もぞりもぞり。なにやら迷彩色のプリティーなヒップが揺れている。
 しかもなにか不気味な笑い声? らしき声も聞こえる。新種のオブリビオンだろうか。
「Kawaiiなフェアリーたちを陰ながら守護(まも)る拙者、まさに紳士でござる。
 そんな拙者にフェアリー達はメロメロ、モテまくり勝ちまくりというわけでござるなあ~!」
 驚くべきことに猟兵だった。彼の名はエドゥアルト・ルーデル。
 草むらでいかがわしいことをやっているようにしか見えないが、実際はバリケード作りである。
「ふーむ材料はこんなところでござるかな? さてちょちょいのちょいっとな」
 不気味な見た目と動きにそぐわぬ、慣れた手付きと効率で陣地を形成していく。
 あっという間に共同体の周囲はバリケードで囲まれ、出入り口のみが侵入経路となった。
「これで完璧でござるな! おっと、噂をしていればフェアリーちゃん達でござる!」
 ちょうど村の出入り口に顔を出したエドゥアルト、それを見て震えるフェアリーたち。
 然り、震えている。嬉しくて? まあそんなわけはない。
「な、なんか怖い人間がいるのでする……」
「僕たちを捕まえに来たんでする……!」
 それに対してエドゥアルトはどうしたか? 満面の笑みを浮かべ、中腰にかがみ込んだ。
「怖くないですぞぉ~? 拙者は通りすがりのイケメンでござる、デュフ、フフフフ!」
「「ぴぃいい!! 怖いでする~!!」」
 190cm近い髭面のおっさんが歯を剥き出しにした笑顔で近づけば誰だって怯える。
「怖くないでござる怖くない……痛いのは最初だけでござるよぉ~」
 小粋な会話(本人視点)でにじり寄るエドゥアルト。コワイ!

「ホォーリィイイイイイオーーーダァアアアアア!!」
「グワーッ!?」
 そこへズシン! とかっこよく片膝立ち着地をする髭面のドワーフ!
 すさまじい大音声と両眼を光らせるほどの気迫がエドゥアルトを吹き飛ばした!
「おのれちびっこどもを襲うドラゴンめ、分身どころか人の姿にまで化けるとは!
 わしの怒りは有頂天を飛び越し黄金の鉄の塊状態、ここで散華させてくれるわぁ!!」
 グルクトゥラ・ウォータンクの背丈は110cm程度なれど、溢れる気迫は巨人の如し。
 いかつい義肢を構え、フェアリーを脅かす悪漢をギラリと睨みつけた!
 そして驚いた。エドゥアルトの顔に見覚えがあるからだ。同じ旅団だから。
「ば、バカな! お前さんはエドゥアルト! 一体何が……ハッ、そういうことか!」
 何かを勝手に理解したらしいグルクトゥラはぎりぎりと拳を握りしめる。
「わしらの仲間を手にかけ、その姿に化けたというわけじゃな! おのれドラゴン!!」
 勘違いという線を考慮するつもりはないらしい。だって彼は大雑把な性格だから……!
 そしてくるりとフェアリーたちに向き直り、ニッと笑う。妖精たちは震え上がった。
「わ・し・は・み・か・た・だ」
「「ぴぃいい~~~!!」」
 そしてフェアリーたちはぴゅーんと逃げ出した。
「……何故じゃ!?」
「その強面以外に何があるんでござるか!!」
 お前が言うな。

 ややあって。
「ぬうん、それは失礼な勘違いをしてしまったのう」
「気にすることはないでござるよグルクトゥラ殿、そもそも拙者らの仕事は」
 言いつつエドゥアルトは彼方を見た。眷属どもが来たる空と森を。
「あれを始末すること、だろ?」
 グルクトゥラもまたニヤリと笑い、改造ガトリングガン『バレットドネーター』を担ぐ。
「違いない! さあ戦と炎で鍛え上げた戦士の魂たちよ、此処に現れ吠え猛よ!!」
 轟音に近い口訣に応じ、偉大なる古代のドワーフ戦士たちが招来される。
 悪者顔の野郎が二人、向こうに置くは霧の龍。かくて戦いが始まった!

●同時刻:仮設共同体上空
 龍たちは空と大地と両方からフェアリーを狙う。襲撃はもはやこれで何度目だろうか。
 眷属どもは邪悪な嗤笑を浮かべ――ふと、虚空に湧いた輝きに注意を惹かれた。
 直後!
「いっくよぉー!! これがあたしの想いっ、受け取ってね!!」
 光の中から現れた少女が、弾丸の如き勢いで真正面からパンチを叩きつけた!
『ガァアアッ!?』
 あまりにも突然のことに、眷属は回避すら出来ずに殴打消失。
 後続の三体がその場でホバリングし、何が起きたのかを判断しようとする。
「どっ、かーんっ!!」
 その隙を逃さず、少女は続けざまの拳を二度三度と叩きつけ霧体を粉砕破壊。
 少女……天道・あやはのっけからフルスロットルだった。
 脚部のレガリアスシューズから圧縮空気を噴射し、舞うように空を駆ける!
「不意打ちしちゃってごめんね! でもフェアリー達を怖がらせてるんだからおあいこでしょ!」
 ゆえにあやに手加減はない。実際、敵の行動に関して腑に落ちない点はいくつもある。
 そんな細かいことを気にしながら戦うのは、彼女の性分ではないのだ!
「ほらほら、こっちだよー!」
 苛立った霧龍が襲いかかれば、それを弄ぶように空中を蹴立てる。
 そして頭上、時には真下からの勢いに乗った拳で粉砕してやるというわけだ。
「話に聞いてただけあって、大したことないなあ。けど数が多いや!
 ま、みーんなあたしがやっつけちゃうけどね……っととと?」
 などと言った矢先、地上からの支援砲撃が敵を薙ぎ払う。
 ガトリングガン、そしてライフル。見下ろせば、そこには強面の野郎が二人。
「うわ、なにあのおじさんたち!? あ、でも助けてくれたってことは猟兵なのかな?」
 おまけにさらに森のほうを見やれば、半透明のドワーフ戦士たちが荒れ狂っている。
 地上から現れた眷属は、鋼の斧や大地を揺るがす強烈な雄叫びの前に次々霧散していく!
「む、むさ苦しいな~……まあいっか、あたしはあたしの仕事をしないとね!」
 あっさりと思考を切り替え、スカイステッパーの力も併用し空中戦を散開。
 時折やってくる支援射撃は、常に的確なタイミングで彼女を助けた。
 ちらっと地上を見やる。髭面の男がニコニコ笑顔で手を振っていた。
「顔はちょっと……いやだいぶ濃いけど、いい人じゃん! ありがとねー!」
 これでも元アイドル志望である。あやはにこっと微笑み手を振り返した。
 隣のドワーフらしきヒゲオヤジもぶんぶん手を振っている。思わず苦笑が漏れた。
「あははは……おかしいな、あたしフェアリー達を助けに来たはずなんだけど」
 何事もタイミングというものがある。村の中で戦闘になるよりは遥かにマシだ。
「言っとくけどここは通さないかんね、かかってこーい!」
 拳を、ときには脚をその堅き決意とともに叩き込み、恐るべき霧の眷属どもを打ち倒す!
『おのれ小娘、邪魔立てするなァ!』
「そっちこそ大人げないことしてんじゃないよっ、このぉ!」
 牙を剥いて襲いかかってきた眷属の横っ面に強烈なソバット。
 ユーベルコードと武装の力で敵を蹴り跳ぶさまは、まさに歌姫のごとき華麗さだったという。

 ところで、地上で射撃戦を繰り広げるグルクトゥラとエドゥアルトはというと。
「見えた? グルクトゥラ殿、いま見えたでござる?」
「いやわしそういうお下品なの考えとらんから。わしは純粋なファンじゃから」
「はい嘘~~~グルクトゥラ殿めっちゃ鼻の下伸ばしてるの拙者確認済み~論破~!!」
「は??? わしは硬派なドワーフだからそういう浮ついたことはせんのじゃが!?」
 ものすごくどうでもいい言い争いをしていた。
『ウォオオオ末裔もろとも死ねェエエエ!!』
「やかましいわこのトカゲもどきが! 行けぃボールズ!!」
「クソうるせえドラゴンもどきは銃で撃つとサクサクになるぜ!」
『グワーッ!?』
 きちんと戦っていたので問題はないのだろう。たぶん。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鎧坂・灯理
汚染されていない空気が五臓六腑に染み渡るな……。
UC【有能な家事手伝い】を発動。戦闘以外は万能な執事とともに、持ち物のワイヤーロープなどを駆使してトラップを仕掛ける。
出来れば仮設村から見えないくらいの位置に作りたいな。もしくは簡易の柵を作ったりして、フェアリーの視界に惨い光景が入らないようにしたい。過激な罠も多数仕掛けるつもりなのでね。
UCは物理法則に囚われない。地雷や落とし穴やトラバサミの十や百、ぱぱっと作って仕掛けられるだろう。
私はバイクで駆け回りながら、隙を見せた眷属を撃ち殺していこう。


シーザー・ゴールドマン
【POW】
「ファンタジー世界でドラゴン退治。楽しそうだね」

仮設共同体を襲う眷属は共同体に損害が行かない様に注意しつつオーラセイバーを振るって倒します。
その後で
「私の事はそう、グラドラゴを倒しに来た冒険者だと思って欲しい。
 首尾よく倒せれば君達も元居た村に帰れるだろう。
 君達の知っている情報を教えてくれないかな?」
と情報収集します。
ある程度信頼関係を築ければ
『ラガシュの静謐』の「近未来風都市」でこの件が片付くまで避難していても良いと提案。
自由に出入りできるので森の案内も期待してのことです。
「まあ、文化文明が違うので驚くかもしれないが、安全と平和は保証するよ」


ニコル・ピアース
ああ、フェアリーさんたち小さくてかわいいですねえ。
それじゃとりあえず、お菓子でも渡しておきましょう。
はいはい、今からアイツを倒しちゃうんで、
このお菓子でも食べながらゆっくりと見学しててくださいね。

というわけでさっさと倒しちゃいましょう。
いざ特攻です。
近付かれる前にこっちから近付いて倒せばいいのですよ。
共同体からなるべく遠くで倒せば問題ないのです。
群れの中に飛び込んでグラウンドクラッシャーで殴る。
とりあえず一匹ずつ全部殴り倒せば終了です。
共同体の方向に行かせないようにしないといけないですね。
一撃で倒せなくても移動を妨害するためになるべく全部殴り付けて。


虹結・廿
了解、任務を遂行します。
襲ってくる撃破目標を「アサルトウェポン」で牽制、動きが止まれば「ヴァリアブル・ウェポン」を起動、武器に内蔵された高威力の榴弾を射出し目標を破壊します。

防衛終了後は、防衛対象の妖精達とコンタクト。支援を要求します。
(…えっと、怖がらせないようにするには…、武器を仕舞って…話す、とか?
…どうしよう…。わからない。)
手早く簡潔に、要点を伝えます。
内容は、
貴女がたを支援に来た事、一次防衛が完了した事、原因である竜の討伐を行う事、その為に森の中の探索の支援が欲しい事。

対話困難と判断すれば周囲の同行者に救援を求めます。
(…だめだったら、他の人、いっぱい居るし、任せれば良いかな。)



●仮設共同体・長の家
「うっ、うっ」
 少女はこじんまりとした家に閉じこもり、泣いていた。
 恐怖からか? ……否である。それは実際、子供の癇癪に近い。
「私、頑張ったもん。わるくないもん」
 誰もやらなかった。自分が適任だった。だから仕方なかった。
「……わるくないもん」
 "長しゃま"は膝を丸めたまま呟く。胸中にあるのは様々な感情。
 恐怖。
 焦り。
 苛立ち。
 後悔。
 そして――。

●現地時刻午後3時前後:ブルーノー大森林南東部
「すぅー……はぁ」
 ファンタジー世界に不似合いな現代日本風装いの女が一人。
 やや湿った空気を肺いっぱいに吸い込み、時間を置いて吐き出した。
「これがアックスアンドウィザーズ、か。当たり前だが、自然が美しいな。
 汚染されていない空気がこうまで五臓六腑に染み渡るものだとは……」
 鎧坂・灯理。UDCアースにて探偵社を営むサイキッカーである。
 どうやらA&Wで、猟兵としての仕事に取り掛かるのは初めてと見えた。
「日本はもとより、宇宙に自然などあるはずもなし。ふむ」
 ひとりごちて顎に手を添える。多少なりとも使命感が芽生えてきたか。
「ともあれ、始めるとしようか」
 パチン、と指を鳴らせば、さながらフィクションのように執事が音もなく現れる。
 ただしその頭は異形である。それを除けば身なりから仕草から何までが一流だ。
「さっそくだが仕事だ。これを」
 探偵たるもの様々な道具を取り揃え、それを活用してこそ。
 細く強靭なワイヤーロープに始まり、柵として用いるための木杭、あるいはトラバサミ……。
 異形頭の執事はベテランの職人さながらに、これらを用いて罠を仕掛けていく。
「ふむ、だいたいこんなところか」
 わずか10分と少々、目に見える範囲での罠の敷設は完了した。
 執事は慇懃に一礼し、霞に溶けるように姿を消す。
 村からだいぶ離れているため、フェアリーたちがこれを見咎めることはないだろう。
「おそらくそろそろ……うん、やなりな」
 女は空を見上げた。眷属どもが飛び来る森の空を。

●少し前:フェアリーの仮設共同体
「…………」
「「「じいい……」」」
「……えっ、と」
 虹結・廿は困惑していた。フェアリーたちに囲まれているからだ。
 しかも彼ら彼女らは、自分たちほどではないにせよ幼い少女を凝視している。
 廿はサイボーグであり、傭兵である。戦場に立つために在るかのような子だ。
 ゆえにこういう状況は弱い。そりゃあもうひっくり返りたくなるほど苦手だ。
(どうしよう……武装解除して、ええと、話す……?
 警戒させないようにするにはどうすれば……というか他の猟兵は……)
 おろおろと視線があちこちをさまよう。
 すでに先着の猟兵たちがこの村を防衛していたはずだ。彼らはどこだ。
 それを聞くべき相手らは目の前にいる。つまり……詰んだ!
(速く敵がくればいいのに……)
 などとまで思う始末である。フェアリーたちはじいっと彼女を見ている。

 と、そこへ。
「ああ、フェアリーさんたち小さくて可愛いですねえ。
 と思ったら、ふふ。小さな子はもう一人いらっしゃいましたね」
 と、やけに露出度の高い赤髪の女がやってきた。頭部には雄々しい角。
「「「ひえっ!」」」
 と、驚きすくんだフェアリーたちに、女……ニコル・ピアースは微笑みかける。
「……あの。申し訳ありませんが、対話役をお願いしても?」
 廿はおずおずとニコルに問いかける。彼女が猟兵なのはある意味一目瞭然だ。
「ああ、お互いに黙ってると思ったらそういうことだったんですね。
 ええいいですよ。といっても私も喋るのが得意なわけではないけれど」
 言いながら、ニコルは持ってきたお菓子などをばいくらか差し出す。
 フェアリーたちは怪訝な顔からぱあっと表情を明るくさせた。
「ちょうどおやつの時間ですものね、はいどうぞ。……あなたも食べます?」
「いいです」
「ほんとに?」
「いいです」
 廿の反応はやけにスピーディだったという。

 とりあえずフェアリーたちの警戒心をほぐすことはできたようだ。
 が、ニコル本人が言っていた通り、彼女は話術に長けたわけではない。
「ふむ、ドラゴン退治と勇んで来てみれば、さっそくお困りのようだ」
 そこに助け舟を出したのが、仕立ての良いスーツを着た偉丈夫である。
 2メートル近い背丈に妖精たちは一瞬驚くも、彼の人のいい笑みにすぐほだされた。
「ああ失礼、私はシーザー・ゴールドマンと言うものだ。よろしく」
 と、ニコルらに挨拶するさまも紳士的で、堂に入っている。
 彼はその落ち着き払った様子で、お菓子を堪能する妖精たちに向き直った。
「私たちは、君達を脅かす悪いドラゴンを倒しに来た冒険者だと思ってくれ。
 すでに私たちの仲間が、君たちの前に姿を見せているはずだ。そうだね?」
「はいでする! 皆を守ってくれたでする~」
「怖い人もいたけど、どれもいい人たちでする~」
 と、先着した猟兵たちの働きは好意的に受け止められていたようだ。
 彼らは眷属以外の脅威に備えた偵察などのため、此処を離れている。
「結構。とはいえ私達はあの森のことについて疎くてね。
 君たちが元いた場所に帰るためにも、なにか知っていることを教えてほしいのだよ」
 が、ここに来てやや雲行きが変わる。
 フェアリーたちは情報を求められると、互いに顔を見合わせたのだ。
「……なにか不都合でも?」
「んとぅ……長しゃまがダメっていうかもでする」
「長しゃま、アイツらが来てからずっとお家からでてこないでする~」

 シーザーは思案した。そこへ、廿がこっそりと声をかける。
(探索の支援を申し入れることは難しいでしょうか?)
(ふむ。どうも彼らは長とやらに判断を一任しているようだからね)
 よく言えば牧歌的、悪く言えば主体性がないということだ。
 そんな彼らを率い、住処をあとにし、この共同体を構築した。
 長と呼ばれる妖精が感じていた重圧は相当のものであるはず。
(そこに我々がやってきた。結果を見れば共同体は救われたが……)
 呑気な妖精たちを率い、おそらくはひとりきりで努力し続けた少女。
 それが横合いから現れた連中に守られたとあってはどう感じるだろうか?
「なるほど……その長という子が出てこないというのも納得ですね」
「根は深そうだ。が、その前に一仕事必要のようだね」
 三人の視線は空――眷属たちが飛び来るそこに向いた。
「了解、任務を遂行します。……うん、やっぱりこちらのほうが楽です」
 廿は、誰にも聞こえないようにぽつりと呟いた。
「私はもう少し彼らと話をしてみよう。緊急の避難先もあるのでね」
 とシーザーは言った。彼は灯理の存在を如何にしてか知っている。
「近づかれる前にこっちから近づいて倒せばいいんです。つまり特攻ですね」
「えっ。特攻……?」
 それは違うんじゃないかと思いつつも、ニコルに続く廿であった。

●ブルーノー大森林南東部
 ――グォオオオンッ!!
「そら、本日のおすすめだ。喰らうがいい、蜥蜴め」
 BLAM! 響き渡るバイクのエンジン音、そして銃声。
 それらは、ばさばさと羽ばたく霧の眷属の翼、そして咆哮よりもなお鋭い。
 いかにも仕手は灯理である。世界が変わろうが、否、こういう場所だからこそ仕事は"やりやすい"。
 愛用の改造バイクに跨り、車だビルだの邪魔な障害物なき自然を縦横無尽に走り回る。
 その気になれば飛行も可能な上、得物は銃である。現在の形は拳銃を保っている。
 えげつない罠の数々に絡め取られ、地上を征かんとした眷属どもは雲散霧消!
「歯応えのない連中だ。しかし数が多いな」
 リロードした灯理の呟きに応じるかのように、村の方角から猛進する気配あり。
 BRATATATATATAT!! まず飛んできたのはマシンガンの弾雨!
 致命的な弾丸の嵐に、灯理を飛び越えんとしていた眷属たちの足並みが乱れる。
「まとめて一網打尽にしてあげるわっ!!」
 そこへ飛びかかるのがニコル。
 地形すら破壊せしめる強烈な一撃が、言葉通りに眷属の群れを粉砕せしめた。
「敵、依然多数。榴弾による範囲攻撃を行います」
「おっと」
 廿が構えた銃器から嫌な気配を察した灯理は、グオン! と即座にフルアクセル。
 彼女を追いかけ迂闊に飛び込んできた群れめがけ――グレネードランチャーが放たれる!
 KA-BOOOOM!! 森に延焼しかねないほどの甚大な破壊力。分身に為す術なし!
「さあさあ、まだまだ行きますよっ!」
 炎に紛れて掻い潜らんとした不埒者には、ニコルの斧撃が叩き込まれる。
 ここならば共同体への被害を気にする必要もない。戦闘は圧倒的な速度で完了した。
「任務完了、残存する敵影の殲滅に成功しました」
「……ひとまずはこれで落ち着いたか。ありがとう、感謝する」
 灯理はつとめて当たり障りなく礼を言った。普段の彼女の口調は少々キツめだ。
「罠を仕掛けておいてくれたんですね、おかげで私たちもだいぶ楽でした」
 応えつつ、ニコルが状況を説明する。探偵は顎に手をやり、思案した。
「……なるほど。その男性が、うまく話をまとめてくれていればいいのだが」
「一筋縄ではいきませんね。また囲まれるのはちょっと……困ります」
 廿のつぶやきもむべなるかな。女たちは仮設共同体へと引き返す。

●同時刻:仮設共同体
 シーザーが根気強く説得と交渉を続け、得た情報はいくつかある。

 フェアリー達は『森の末裔』と呼ばれる氏族であること。
 彼らはずっと昔から大森林で暮らし、外の世界との交流は皆無だったこと。
 森には魔獣や人間の部族といった脅威があるものの、概ね平和であったこと。
 大森林の歴史は非常に古く、言い伝えなども数多く遺されていること。
 しかし氏族の大部分は、平和で閉鎖的な生活に慣れきってしまったこと。
 ……などである。
(オブリビオンに繋がりそうな学術的知識は、やはり長とやらに聞く他ないか)
 だがこれまでの防衛と、今回の情報収集の成果は大きい。
 少なくとも氏族の大部分は猟兵たちに心を開いている。あともう一押しだろう。
(逆に言えば、あちらもさらに手勢を送り込んでくるのだろうね)
 実に執拗な攻勢である。相当腹に据えかねるものがあるのか、あるいは。
 シーザーは思索を打ち切った。"長しゃま"の家の扉は、堅く閉ざされている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●夕刻前:ブルーノー大森林深部
「……カ、カ、カ」
 巨龍は霧を纏い、愉快げに笑っていた。
 またしても眷属たちは破られたか。猟兵だ、間違いない。
 オブリビオンであるからにはそれがわかる。天敵達の存在が。
「いじましき末裔どもを嬲るのもよいがァ……カカ。これは面白い」
 龍は傲慢である。ゆえに己が追い詰められるなどとは露程も思っていない。
 だがそろそろ、手勢を送り込む遊びにも飽きつつあった。
「どオれ、少しばかり"溜め込んで"みるかのォ……」
 霧がまた新たな分身を形作る。ゆらり、ゆらりと。
零井戸・寂
……1日以上かかるレベルの探索。
及び臆病なフェアリー達の防衛。
敵はUCを使わなくても打倒できる程度……
成る程、じゃあまだ『僕』の領分だ。
さぁ、エージェントらしい仕事をしよう。

WIZで行こう。
"Cat Hand NAVIgation".
手を借りるよNAVI。
巨大化して僕とフェアリー達の盾となってくれ。
その間僕は敵の情報を【情報収集】。
情報が集まり次第"Firewall NAVIgation".
……UC無くても良いって言われてたけど、オーバーキルだったかな?
まぁ僕は臆病だし。

ん、僕かい?君達の味方さ。
猫も怖くないよ、手に乗る位小さくもなるし。ね?
同じ臆病な者同士、仲良くできればと思う。
【コミュ力】


鳴宮・匡
◆アドリブ/連携歓迎


集落から少し離れた高所に位置を取る
なるべく視界の通る場所を選びたいな
撃退の方法は、遠距離からの狙撃
基本は、視界内に入った奴から順に撃っていく
出来るだけ集落から遠い位置で仕留めるようにするよ
但し、集落のほど近くまで迫ってる奴は最優先
ま、そっちは近くで守ってる奴がいそうだけど
もし誰も対処できないようなら、だな

辺りにいるフェアリーには一応避難勧告しとくかな
巻き込まないようにはするけど、出来るだけ離れて隠れておいたほうがいいぜ
万が一があっても困るだろ

――ああ、悪名高い“凪の海”が随分丸くなったもんだ
一体、何にあてられたもんだか

……ま、いいさ
たまには慈善事業も悪くない、ってね



●夕刻:仮設共同体近傍・第二防衛線
 先発の猟兵たちが情報を集めたあとも、散発的な襲撃は続いた。
「探索どころか村の防衛の時点で一日かかりそうだ、こりゃあ」
 眼鏡をかけた小柄な少年――零井戸・寂はため息混じりに言った。
 朝から始まった村の防衛は、いまや日が沈む頃まで続いている。
「まあ、敵が弱いのは救いかな……っと」
 ちらりと目をやれば、噂の眷属が数体……いや、10と少しか。
「手を借りるよ、NAVI。僕の盾になってくれ」
 ペンサイズのロッドを宙に放ると、古めかしいドットじみた猫の姿に変わる。
 寂にとっての頼れる相棒であり、大きくも小さくもなれる優れた電子妖精だ。
 NAVIはぐんぐんと非物理的な速度で巨大化、文字通りの盾となる。
「ユーベルコードなしでも倒せるって聞いてたけど……」
 こそこそと巨大猫の影に隠れつつ、端末を操作。眷属どもの組成を分析する。
 構成物質は? 肉体の強度、破壊力、攻撃方法は?
 飛行可能高度、速度、取りうる戦術は? ……彼の情報収集はやや過剰ですらある。
「うん、やっぱりこれで十分そうだ」
 本人なりの納得が出来た時点でユーベルコードを発動。
 スマートフォンサイズの銃を向け、トリガを引けばあとは一発。
 得られた情報をもとに速成された電子防壁が、ネットめいて霧の体を絡め取る。
「……破られたりしない、よね」
 電子のネットで覆われ、眷属どもは一匹また一匹と霧散。
 なおもしぶとい個体はネットを破ろうと暴れているが、当然叶わぬ願いだ。
 が、妙に粘る。この個体だけ、分け与えられた魔力が"濃い"らしい。
 念には念を入れてさらなる攻撃をすべきか、と寂が思案した瞬間――。

 BLAM!

「あれ」
 どこからか飛来した弾丸が、悪あがきを続けていた龍の頭部を貫通。
 以て眷属は絶命し、靄めいた体は溶けるように崩れ去った。
「…………」
 寂は弾丸が飛来した方角を見やる。彼の知る限り、この距離の狙撃が出来るのは一人しかいない。

●少しあと:仮設共同体近傍・丘の上
「……で? いつまで見てるんだ」
 銃を構えていた青年は、出し抜けに呟いた。
 岩、というよりも石に近いその影で、びくりと身をすくめた気配がする。
「ああ、別に怒ってるわけじゃないぜ。ただ見られるのは……」
 思案の間。鳴宮・匡は困ったように頬をかく。
「……まあ、慣れてないんでね」
 言葉を選んだのだろう。傭兵として"仕事"を観察されるのは実際いい気分はしない。
 まったく自分らしくない配慮だなと、匡は自嘲するように肩をすくめた。
「とはいえ、万が一があっても困るだろ。……俺もだけど、そっちもさ」
 応えることも、かといって姿を現すこともない気配に語りかける。
「だから避難するなら、さっさと村に戻るなりなんなりしたほうがいい。
 ……でなきゃ、そこらへんのどっか別の離れた物陰に隠れてるか、だな」
 彼は鋭敏な五感を持つ。ゆえに物陰の気配の反応もつぶさにわかっている。
 おそらくはフェアリーの少女。ここにいるのは匡が目当てというわけではない。
(居心地が悪くて抜け出してきた、ってとこかね。……どうでもいいけどな)
 言葉に出さないのは、彼なりの配慮と言えるだろう。
 然り、岩陰に潜んでいたのは『森の末裔』たちの長とされる少女である。
 匡はなんとなくそれを察している。が、口には出さない。
 直接情報を引き出すにはうってつけの機会である。……だがそうはしない。
「どうでもいいから……いや」
 いつものフレーズを口にしかけ、半ばぽつりと唇が動いた。
 ――気持ちがわかるから、か?
「まさか」
 彼は瞼を閉じて頭を振る。もはやその言葉は自問自答である。
「"凪の海"が仕事の合間に独り言か、まったく。丸くなったもんだ。
 ……そろそろ戻ったほうがいいぜ。俺も一応仕事中、だからな」
 静寂――と言っても彼の聴覚は、恐る恐るその場を離れる羽音を感知しているが。
 人目を盗んで人助け、挙げ句思い悩む少女にアドバイスめいた真似。
 ついには慮って独り言ときた。まったく実に、らしくない。

 ……そんな彼の後ろ姿を、遠くから見ている人影がもうひとつ。
 最初から居たわけではない。あの狙撃のあと、きっとここだろうと踏んできてみた。
 するとやはり彼がいた。凪の海。関係は……友人? はたまたご近所さん?
 改めて言い表そうとすると実に難しい。互いの距離も近いような遠いような。
(ああいうタイプじゃ、なかったと思うんだけどな)
 寂は心の中でひとりごちた。口に出すような度胸はない。
 彼の知る鳴宮・匡は、兵士だ。どこまでも平穏で、けれど冷徹な兵士。
 顔見知りへの挨拶と、標的への死刑宣告が同じ態度、同じ声音で口から出るような。

 ――貴方は。戦場に立つ時、兵士の心はどうあるべきだと思いますか?

 寂の脳裏に、ある日自らが口にした問いかけが思い浮かぶ。
 それに対する、やはり変わらぬ声音の、当たり前のような簡潔な言葉も。

 ――凪いであるべきだ。だから、俺も何も思わないよ。

(……ああいうタイプじゃあ)
「なあフルイド」
 思索は唐突な声で打ち切られた。少年はびくりと身をすくませる。
 気付いてないはずがないのだ、彼の能力ならば。寂はおずおず様子を伺った。
「俺、いまからお前のことを驚かせてやるぜ」
 背中を向けたまま、凪の海は謎めいて呟いた。
 寂は彼の意図を察しかね、恐る恐るにその背中を見ていた。
 ふと振り向いて、いつも通りのかすかな笑みで男は言った。
「たまには、慈善事業も悪くないと思うんだよ」
 気弱な少年はきょとんと目を見開き――。

「猫ちゃんかわいいでする~」
「にゃんにゃんかわいいでする!」
「あの人間さんはどこへ行っちゃったんでする~?」
『なーん』
 ドット模様の子猫とじゃれあうフェアリーたちは、ふと丘の上に目をやった。
 なにかが聞こえた気がする。風の音か、はたまた誰かの驚く声か。
 答えはおそらく、二人のみが知っている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●日没:ブルーノー大森林深部
 日が暮れ、ただでさえ闇の濃い深部は完全な暗黒に包まれていた。
 そんな暗闇の中に、炯々と光るは龍の双眸。
「さアて……連中が気を抜いておればそれで終わり、そうでなくても愉しかろうて」
 しわがれた声に応じるように、無数の眷属たちがばさばさと羽ばたく。
「カ、カ……たかが末裔共にはちィと大盤振る舞いが過ぎるかのォ……?
 ま、よかろうて。どォこまでやれるか……見せてもらおう、天敵どもよ」
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘アレンジ大歓迎です!

フェアリー達が全滅の危機か。
弱者虐めを見ているようで忍びないな。加勢しよう!

森が火事にならぬよう、炎の力は槍に抑えこむ。灼熱の鉄棒のようになった炎霆(槍)を構えて迎撃。
大きく振り回して隙を見せたら一気に貫く。さあ、かかってこい!

妖精達は、ドラゴニアンである私の姿に不安を抱くだろうか…「私は敵ではない。その証拠に、貴方達の盾となり、剣となろう」と背に妖精達を庇う形で戦おう。
相手がドラゴンでも…いや、ドラゴンだからこそできる一切の容赦はしない。守護者として、守るべき相手は私が決める!


メルエ・メルルルシア
ありゃあちょっと同族達には荷が重いな
よし、オレ達が何とかしてやる

んー、オレは元の住処が嫌で飛び出したからなあ、あいつらとは正反対だと思うけど……でもま、大切な場所を守りたいってのは同じだよ、ジョン。
お姉さんなのはお前らがいるからだ

竜は竜でも、メルルルシアの水竜様は妖精の友達。水竜様は敵の対応を頼む。オレは妖精達とその住処を守るつもりだ

あいつらが頑張って作った住処、うっかり踏み潰されたりは可哀想だろ? すまねえが、ある程度距離を取って戦ってくれ

【妖精達と仲良くなれたら嬉しいです。弓から水の竜を召喚して攻撃。同じ寮のジョン(f00430)と一緒に行動】
アドリブ、アレンジ、他キャラとの協力大歓迎


ジョン・ブラウン
同じ寮のメルエ・メルルルシア(f00640)と行動

「うーん、何ていうか妖精のイメージと違……いや、妖精って言ったらあっちのほうがスタンダードなのか」
「メルエが基準だとお姉さんっぽい振る舞いが普通だと思っちゃうね」
「メルエも故郷だとあんな感じだったの?」

「ああ、故郷……大切な場所が無くなるのは辛いからね」
「建物も大事だけど、妖精さん達が怪我しちゃ仕方ない」
「お前ら頼んだよ」
『出番かむー』『妖精さんかわいいむー』『さぁ早く乗るむー』
リュックサックからぽこぽこ這い出てきた無数の動いて喋るぬいぐるみ達が
妖精さん達一人ひとりを頭に乗せて敵からぴょんぴょん逃げ回る

「ほんとあいつら何で増えるし動くんだろ…」


玄崎・供露
……霧の竜種、か。――はん。気に食わねェ。ただ餌を取る動きにゃ見えねェのがな。味を占めたのかなんなのか。それがなにかは解らんが。見捨てるにゃあまりにも寝覚めが悪い。霧の一粒すら触れさせんと思えよ――

【WIS】
霧の、なんて名の付いてる以上どの程度の攻撃が通じるか分からんので、取り敢えず刻印で起こした魔力を混ぜた血を指を切り出血させたのを弾丸にして飛ばす。頭に穴が空いた程度で死ねば楽だよなァ。同じ事を繰り返せば良いから。これなら音もなくトれるし妖精もビビんねーだろたぶん

全く。ユーベルコード無しでも対応できるなんざ「霧」の眷属の名が泣くぜ……攻撃の無効化すらろくにできねェのか

※アドリブ連携など大歓迎



●宵口の決斗:起
 時刻は日没を過ぎ、ついに夜へと差しかかりつつあった。
 猟兵たちによって大森林の偵察などが行われたものの、成果は芳しくない。
 やはり本格的な捜索には土地勘のある者の助けが必要なようだ。
「夜なのに明るいでする~」
「冒険者さんたちがいるから怖くないでする~」
 あちこちに篝火やほんのり輝く不思議な綿毛が浮かび、共同体を照らす。
「……うーん、なんていうかイメージとだいぶ違うっていうか」
 この状況で呑気に踊ったり戯れている森の末裔たちを見、ジョン・ブラウンは呟いた。
 彼の目線は、同行者であるメルエ・メルルルシアにちらりと注がれる。
「いや、むしろ妖精っていったらあっちのがスタンダードなのかな?」
 そんな言葉に、メルエは小首をかしげて思案してみせた。
「んー……オレは変化がないのがイヤで住処を出たからなあ。
 たしかに、あいつらとは正反対だと思うぜ? けど……」
 仮設共同体を見渡し、一言。
「大切な場所を守りたい、取り戻したいって気持ちはオレもあいつらも同じだよ」
「なるほどね。けど呑気だよねあの子たち。メルエと違って」
「そりゃそうさ、オレがお姉さんなのはお前らがいるからだもんな」
 けらけらと笑いながらおどけてみせる。ジョンは納得した様子で頷いた。
 外で色々と苦い経験をしたメルエだからこそ、呑気な妖精たちには思うところあるようだ。
 一方でジョンはというと、"大切な場所を守りたい"という言葉に思うところあるようで。
「大切な場所……故郷、か。うん、それがなくなるのは、確かに辛いよね」
「そういうこった。なぁに、オレ達が力を合わせれば百人力さ、そうだろ?」
 30cmに満たない背丈なりに、胸を張ってふんすと鼻息荒く言ってみせる。
 すると物珍しげに彼らを見ていたフェアリー達も歓声を上げた。
「なら元のおうちにも帰れるでする? やったでする~!」
「長しゃまもきっと機嫌を直してくれるでする~」
 彼らのいう"長しゃま"……つまりその役目を半ば仕方なく請け負っていた少女フェアリーは、バツが悪そうな表情で猟兵たちを遠巻きに見つめている。
「うーん、なるほど。あれが噂の。メルエ、お姉さんらしいとこ見せてよ」
 などとジョンがおだててみせれば、メルエは任せろと胸を叩き。
「なあ長っての、そろそろオレ達と話ぐらいしてもいいんじゃないか?
 他の奴らがこの村を守ってるところだって、ちゃんと見てきたんだろ?」
 と、語りかけてみせる。一方の"長しゃま"はびくりと身をすくめた。
「…………うん」
「だったら仲良くしてほしいな。皆悪いやつじゃないんだぜ?
 いきなりのことで驚いてるとは思うけどよ、力を貸してくれよ」
 これまでの猟兵たちの戦いぶり……そして妖精たちと村を守ろうという意志は、実際彼らにきちんと伝わっている。あとは向こうが一歩を踏み出すだけなのだ。
 "長しゃま"はもじもじしつつも、逡巡した様子でぽつりと言う。
「……でも、アイツには誰も勝てないでする……」
 アイツ、とは元凶であるグラドラゴのことだろう。襲撃がトラウマとなっているようだ。
 メルエとジョンは、さてどうしたものかと顔を見合わせた。

「ま、たしかにそのグラなんとかっつーやつが妙なのは確かだな」
 そこで会話に加わったのは、玄崎・供露である。
「ドラゴンからすりゃ、フェアリーの村なんぞ文字通り歯牙にもかけねェはずだ。
 味を占めたのかなんなのか知らんが、餌を取る動きにゃ見えやしねェ」
 乱暴な口調ではあるものの、彼の根底には困り果てたフェアリーたちへの義憤がある。
「つまり、相応の理由が向こうにあるってこった。手強いのも道理だろうよ」
「じゃあ、やっぱり……」
 しゅんと俯く"長しゃま"に、供露はやりづれェとため息をついて頭をかいた。
 いっそ演技の一つでもしていればまた話は違ったのだろうが、状況が状況だ。
「別にそういうわけじゃねェよ。"だから力を貸してくれ"って俺らは言ってんだ」
 そうだろ? とジョンやメルエに視線をやる。彼らもこくりと頷いた。
「一度は逃げ出した相手に、また挑むってのァ気が進まねえかもしれねェがよ。
 ここまではなんとかなってんだ、それでも信用できねえってんなら……」
 その時である。森の彼方から響く無数の大音声!
 呑気していたフェアリーたちも、びくりと怯えてそちらを見やった。
 ……夜闇の昏い空に、ばさりばさりとはためく無数の翼音。
 とてつもない数だ。どうやらあちらも大攻勢を仕掛けてきたらしい。
 供露は、ちょうどいいとばかりに鋭く空を睨みつけた。
「もう一度、俺達の力を見せてやるよ。それで判断しろ」
 その点に関して、誰にも異論はない。
 あれほどの眷属を生み出すのは、敵にとっても並々ならぬ労力を要するはず。
 つまりここが第一の山場だ。かくて夜闇の最終防衛戦が幕を開けた!

●フェアリーの仮設共同体上空~外縁部
 眷属どもは勝利を確信していた。
 さもありなん、我らの数はこれまでの襲撃の比にならぬ。
 我らのあるじが本気を出せばこの程度造作もなし。あとは敵を叩き潰すのみ。
 猟兵! 我らとあるじの敵。おこがましき闖入者。
 森の末裔もろとも叩き潰せ。喰らえ!
 迎撃の弾雨や魔法を浴びながらも、それらを物量で無理矢理にくぐり抜ける。
『グァハハハハ、殺せ殺せ! 皆殺せェ!』
 血気にはやる霧の龍が、すさまじい速度で共同体に急降下をかけた!

「獲物を前に騒ぎ立てるなど、龍の眷属とは思えぬ下品さだ」
 落ち着き払った、怜悧な声に続き、ごう! と大気を切り裂く音。
 眷属がその正体を知った時には、既に遅し。彼奴の頭部は一撃で貫かれている!
『ガ、ァアアアア……!?』
「死に際まで喧しい。霧ならば霧らしく、夜露と消えるがいい!」
 一閃。冷えた夜闇をじゅう、とすさまじい熱が焦がした。
 それをなしたのは、燃えるように赤い髪と瞳、そして翼を持つ青年である。
 彼の名はユーリ・ヴォルフ。自らの炎より鍛え上げた魔槍『炎霆』の担い手だ!
「「「ひえっ!」」」
 助けられて安堵しかけたフェアリー達だが、彼の姿を見て悲鳴を漏らした。
 ユーリは無理もない、と嘆息した。なにせドラゴンに脅かされている者達なのだから。
「恐れるな、私は敵ではない……と、言葉にしても証明にはなるまい」
 彼は頷き、さらに飛び来る眷属どもを睨めつけた。赤い瞳が燃え上がる。
 その輝きはドラゴンの如き闘気となり、霧龍どもめがけ飛来、以て空中で爆ぜた!
 さらには、己を飛び越えんとする不届き者へオーラの鎖を擲ち、引きつけて串刺しに。
 無双の働きぶりである。リーチの長い槍ならばこそ、不足を取ることはない。
「ゆえに証拠として、貴方達の盾となり矛となろう。守護者の誇りにかけて!」
 朗々たる名乗りに、フェアリーたちは一転目をキラキラさせている。ちょろい。
「「「すごいでする! かっこいいでする~!」」」
「そ、そう言われると悪い気はしないな。うむ」
 こっちもちょろかった。

「おっ、加勢か! ありがたいねぇ、手を貸してもらうぜ!」
 最前線で奮戦するユーリのもとに、まずメルエが駆けつけた。
「しかもドラゴニアンか、こりゃいいや。メルルルシアにも竜の友がいるんだぜ!」
 水蛇のしっぽと呼ばれる小弓を構え、水の魔力を矢の形に変えて射掛ける。
 放たれたそれは蛇めいてしなりながら眷属へと食らいつけば……おお、見よ!
 霧の龍を飲み込む巨大な水龍が顕現したではないか!
「「「ひええ、またドラゴンでする~!」」」
「心配すんなって、水竜様はオレ達妖精の友達なんだ。さあ、任せたぜ水竜様!」
 水そのもので構成された竜は頷き、荒れ狂う大河のように敵を飲み込む。
「これはすさまじい、ぜひ逸話などを聞かせてもらいたいものだ」
 ユーリは別の意味で目を輝かせていた。彼は知識欲が豊富なのだ。
「いいぜ、そのためにもまずはこいつらを凌がないとな!」
「ああ、かの竜が水のモノなら、私の力は荒れ狂う炎。
 相反する魔力を一つとなし、ともに不埒なドラゴンを退けるとしよう!」
 翼をはためかせユーリは空を舞う。そして炎霆が大気を切り裂く!
「眷属どもよ、ドラゴンであろうが――いや、"だからこそ"私は容赦はしないぞ」
『ほざけ、もどき風情がッ!』
 傲慢に吠え、襲い来る眷属を一撃で撃滅。ユーリは敵を睨めつけた。
「何を守るか、なんのために戦うかは私自身が決めるのだ。さあ、来るがいい!」
「おうおう、威勢がいいねぇ! こっちも頑張らねえとな。
 間違ってもあいつらの住処を壊したりしねえでくれよ、水竜様!」
 メルエの言葉に応じ、水竜の化身は敵を押しやり空で野原で荒れ狂うのだ!

 一方、共同体中心部!
『無駄だ、無駄だ! 我らは無数、我らは龍の眷属なり!』
『さあ喰らうぞ、殺すぞ! 皆殺しだ!』
 猟兵たちによる迎撃を乗り越え、真上を鳥葬めいて飛び交う眷属ども。
 フェアリーたちは頭上の死に怯え、慌てふためく。と、そこでジョンがリュックを叩いた。
「建物も大事だけど、妖精さん達が怪我したら元も子もない。
 こういう時はパニックを抑えるのが大事だ。お前ら、頼んだよ!」
 そしてリュックを開く。すると中から現れたのは……!
『出番かむー』
『妖精さんかわいいむー』
『さぁ早く乗るむー』
 白くてヒレの生えたまんじゅうのような人形……人形? であった。
 ぽよんぽよんとスライムめいた弾力で跳ねるさまは実にかわいらし……かわいいか……?
 見ているとなんとなく取引宣言をしなくてはならないという気分になってくる。何故だ。
「……だむぐるみじゃねーか!!」
 供露は知っていたらしい。同じ旅団だもんね。
「いやそれにしたって数多くねえか? そもそもなんで動いてんだこいつら」
「うーん、それが理由全然わかんなくてさ」
「わかんねえもんを使役してんのかよお前は……」
 あっけらかんとしたジョンに呆れ果てた様子の供露。
『敵の姿は逃さないむー』
『バグ探しもお手の物だむー』
『でもフィックスは勘弁なむー』
「「「かわいいでする~!」」」
 パニックを起こしかけた森の末裔たちは、あっというまにだむぐるみの群れに夢中に。
 意外にすばしこいだむぐるみの頭に乗っかり、ぴょんぴょん飛び跳ねて敵の攻撃をかいくぐるというわけだ。
「はっ。ま、そもそもあいつらをここまで近づけなきゃいいわけだろ?」
 気を取り直した供露は、おもむろに黒いカッターナイフを取り出した。
 そして親指の腹をその刃で切り裂く。ちくりとした痛みに片目を閉じる。
「僕はあいつらが変なことしないか一応見張ってるからさ、頼むよ」
「言われるまでもねェよ。さて、とりあえず牽制といってみるか!」
 にやりと笑い、供露は空めがけ腕を振った。指から溢れた血が飛沫となって舞う。
 するとそれは空中で弾丸めいた速度を得、大気を劈き眷属どもを襲う!
『な、なんだこれはッ!?』
『血の魔術か! おのれェ!!』
「わかったところですっとろいんだよ、死になァ!」
 供露の体に埋め込まれた刻印、正確にはそれによる魔力入りの血の弾丸だ。
 霧の眷属どもにとっては天敵もいいところ。頭を、あるいは胴体を穿たれ次々に霧散していく。
「あーあ、ユーベルコードでもねえのにこのざまかよ。"霧"の眷属とは思えねえな」
 ダンピールである彼にとっては、龍よりもその因子こそが重みを持つ。
「所詮は有象無象だ。いくらでも来い、てめえらの残滓の一粒すら触れさせやしねェよ」
 マスクの下、凶暴な笑みを浮かべる供露。だが敵は未だ無数である――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

今回の依頼を請けたはいいけど
誰かの手を借りたくて
強引に彼を連れ出してきちゃったけど大丈夫だったかな?
今更「帰る」なんて言われないようにしなきゃ……!

よろしく、ヨハン
一緒に戦う日を楽しみにしてたの
強そうな君を存分に頼らせてもらうよ
なんて、持ち上げてみたらやる気出してくれないかな?
頼りたいのはもちろん事実だけどね

もう大丈夫!
あんな奴すぐ片付けちゃうんだから
ね、ヨハン?

この子達にとって集落は唯一無二の場所
被害を出さないように気を付けよう
それも私達の大切な仕事だよ

ここでは三叉槍は振るわないでおこう
複数隠し持っている暗器のダガーを
眷属の目や足に投げつけて
遠距離から足止めに徹するね


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

彼女の後ろを数歩離れて歩きながら、嘆息一つ。
「はい」か「わかった」の二択の提示。強引な誘い文句にはいっそ頭が下がる思いだ。
断われない自分もどうかしている……が、
引き受けたからには最後まで付き合いますよ。

……強そうなんて評価が口から出るのに驚きます。
持ち上げたって詮無いですよ。
とはいえ、やる気を出させようとしているのはわかる。
気乗りしない態度でいて気を遣わせるのも不本意だ。
せめて隣に並ぶよう歩いて。

はいはい、そうですね
すぐに片付けましょう。

あくまで彼女が望むから。
人助けは自分の趣味ではありませんから。

指輪に宿した蠢く闇を解き放ち
支援に徹しよう
背を預けられるのも悪くない




「はぁ」
 ヨハン・グレインは嘆息した。この状況、まったく彼らしからぬ話だ。
 そもそもの発端は、彼女――オルハ・オランシュからの申し出である。
 妖精たちの防衛、龍退治。ありきたりなヤマだ。だが自分には無関係の話。
 人助けなど自分の趣味ではない、彼はあくまで知識を尊び研究を貪する。
「……その俺に、どうしたってあんな誘いをかけたのやら」
 NO、もしくはいいえという選択肢すらない調子であった。見上げたものだ。
「えっ? ごめんヨハン、なにか言った?」
「いいえ、何も」
 ここまで来た以上、それ自体について論ずるつもりはなかった。
 思えば自分は、他人からの誘いというものを断りづらい性質らしい。
 いつかの折、別の世界で釣りの伴なぞに誘われた際もそうだったか。
 自分は隣で読書をしているだけだったが、あれは存外満足そうな顔をしていた。
(……陰気臭い、などと言われないだけまだマシか)
 アックスアンドウィザーズの空は、夜であってもどこか清清しい。
 曇天と枯野にこそ居心地の良さを感じる彼としては、妙に座りが悪かった。

 そんなヨハンの様子をちらちら伺うオルハ、実は気が気ではない。
(さすがに強引すぎたかなあ、いまさら『帰る』だなんて言われたらどうしよう)
 誘っておいてどの口が、という話ではある。
 しかし彼はそのほうが重い腰を上げてくれるだろう、という確信があった。
 ……なにより。
「あのさ、ヨハン。改めてこういうのは何だけど」
 いきなりの言葉に、訝しげな様子の少年を見返し、少女は笑った。
「君と一緒に戦う日が楽しみだったんだ。君、強そうだから」
 あからさまな持ち上げである。
 そもそも顔に『これでやる気を出してくれるかな』と書いてあった。
 彼女は、あまり表情に意図を隠すのが得意な手合ではない。
「あっ、でも頼りにしたいのは事実だよ? でなきゃ声なんて……あ」
 おまけに自分からさらっと真意をこぼしてしまうほどである。
 やってしまったか、大丈夫かな、とおずおず少年の瞳を見つめる。
 ……伺うような上目遣いに少年が嘆息しつつ歩調を合わせれば、今度こそ少女は微笑んだ。
 いつかの日、"鍵"を拾ってあげた曇天の時のように。

●宵口の決斗:承
 さておき、此度は鉄火場である。敵は無数の攻勢をかけていた。
 彼らが参着したのは、まさにその第一の山場という折だったのだ。
「「「ぴぃい~! アイツらまだまだ来るでする~!」」」
 あちらこちらからフェアリー達の悲鳴が聞こえる。
 すでに猟兵たちによる迎撃は行われている様子。昏い空には血、あるいは炎、はたまた水の元素が舞い、来たる敵どもを退けている。
「話以上の攻勢ですね。どうしたものか……」
 さっそくどう立ち回るべきか思案するヨハンに対し、オルハはというと。
 あたりを逃げ惑っていたフェアリー達の前にしゃがみこみ、優しい声で語りかけていた。
「安心して、もう大丈夫だから! あんな奴ら、私たちがすぐに片付けてあげる」
 そしてその優しげな微笑みのままくるりと振り返る。
「ね、ヨハン?」
「…………」
 フェアリーたちの視線がヨハンに注がれた。じーっと。
「……ええ、はい。はい、そうですね」
 嘆息。もはや何度目だろうか、と彼は自分で自分に呆れた。
「すぐに片付けましょう。あなたが望むならお付き合いしますよ」
 そう。こんな人助けなど、彼の趣味ではない。少なくとも彼はそう自認している。
 妖精どもなど歯牙にもかけない。オルハがそう願うから――。
「うん、頑張ろう! この子達の唯一の場所を守ってあげる。
 それが、私達猟兵の大切な仕事だから。ね?」
「…………そう、ですね」
 少年は、眉間を揉んでまた溜息をついた。

『おのれらが! 邪魔だァ!』
 とはいえ、敵はそんなやりとりをいつまでも許してくはくれない。
 目ざとく彼らを見つけた眷属の一体が、大地に降りるなり大きな顎を開く!
「「「ぴぃい~~!!」」」
 ヨハンは怯える妖精たちの悲鳴に眉根を顰めた。
 その瞬間には、オルハは既に行動を終えていた。擲たれたいくつもの光条!
 否、それは光などではない。篝火を受け煌めくダガーである。
 本来の彼女が得手とする『ウェイカトリアイナ』は、あえて封印している。
 妖精達への配慮であろう。この状況では、それが功を奏した。
『ガァアアアッ!?』
 眷属は暗器を、その発動を見抜くことも出来ずにまともに喰らう。
 目、脚、そして翼。的確な投擲は一瞬にして動きを奪っていた。
「――さすがですね」
 これは持ち上げなどではない、純粋な感嘆の言葉である。
 そしてそのときには、ヨハンもすでに術式を……いや、封印を解いていた。
 指先に嵌められた黒光石が昏く瞬いたかと思えば、暗黒がじとりと滲み出る。
 比喩ではなく、これが指輪に秘められた『蠢く闇』なのだ。
 墨汁めいて夜闇よりもなお黒きそれは、アメーバのようにのたうち眷属を飲み込む。
「おお、すごい……とどめ、ありがとうヨハン!」
「……どういたしまして」
 闇は黒蛇めいて鎌首をもたげ、次の獲物を求めて彷徨う。
「それじゃあ私たちも戦おう。……ほんとに頼りにしてるからね?」
 ダガーを構えつつ念押しするオルハに、ヨハンは肩をすくめてみせた。
「疑ってなんていませんよ、気を遣わないでください。それよりほら」
 空からさらに降り立つ眷属、数は5。オルハの注意が敵へ戻った。
 ……ヨハンはそれを少しだけありがたく思った。
『誰かに背中を預けられるのも、悪くない』
 などという自分らしからぬ思いを、悟られるのは少々……気恥ずかしかったからだ。

 かくて、戦いはなおも続く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティティモルモ・モルル
フェアリーを襲うドラゴン……。
改めて考えれば、なんともファンタジーな話です。
世界が変わると常識も変わる、しみじみ感じるでごぜーますなー。
(うにょんうにょん伸び縮みしつつ)

分身には、モル必殺のーオフトゥンで引っぱたく攻撃ーでごぜーますー。
なんか変な波動っぽいのも漏れてるですが、おかげでいい感じに吹っ飛びますし良しとしましょー。
(技能:衝撃波・封印を解く)

……む。
そちらさん方、怪我とかねーでごぜーますか?
いたいのいたいのとんでけー。的なアレで回復ー。元気出してーくだせー。
(フェアリーに怪我があってもなくても【シンフォニックキュア】。のんびりテンポの歌で、落ち着いてもらえるようにと。技能:歌唱)


色採・トリノ
まぁ。おうちを、奪われてしまったの
かわいそうね
泣かないで? 泣いちゃ、だめよ
リノたちが、何とかしてあげるから

獣奏器の演奏で、動物さんたちに周囲の見張りをおねがい
どの方向が手薄か
どの方向にどのくらい敵がいるか
調べてもらって、他の猟兵さんたちにおしらせするわ
すこしは戦う手助けになるかしら

リノは妖精さんたちの村の近くを守りながら、後方から、UCで他の人たちを支援するの

ねぇ、ねぇ、妖精さん
ここは見晴らしがいいから、天が広く見えるけれど、か弱いあなたたちが住むのには、身を隠せなくてきっと心許ないでしょう
リノたちは、あなたたちに森を取り返してあげたいの
一体なにがあったのか、おはなししてくれる?



●宵口の決斗・転
 夜闇に紛れた眷属の大攻勢。これに脅かされたのは何も妖精たちだけではない。
「わああ、森から動物たちが沢山やってきたでする~!」
「こっちに逃げてきたでする~!」
 そう、森の住民である動物、あるいは気性のおとなしい魔獣たちだ。
 山火事に追われるように森を飛び出す動物たち、進路の先には当然共同体がある!
 あわや大事故か? 眷属どものように吹き飛ばすわけにもいかない!

 そこで、どこからか心地よい音色が響いてきた。
 共同体の間近まで迫った動物たちは、その音を聴くと途端に沈静化する。
「す、すごいでする、動物たちがおとなしくなったでする~」
「きれいな音楽でする~」
「まぁ……あなたたちもおうちを、奪われてしまったのね。かわいそう」
 獣楽器を携え、動物たちに語りかけるのは色採・トリノ。
 ビーストマスターである彼女にかかれば、狂乱した獣たちもご覧のとおりだ。
「大丈夫、泣かないで? リノたちが、なんとかしてあげるから」
 優しい声音で語りかけ撫でてやれば、獣たちはあっというまに猟兵たちの味方となった。

 そしてさらに、獣楽器の旋律に乗ってのんびりとした歌声が響く。
「いた~いの~、いた~いの~、とんでけー……で、ごぜ~ます~」
 などと緊張感のない歌声を披露するのはティティモルモ・モルルである。
「そちらさ~んがた~、怪我とかは~ねーでごぜ~ま~すか~……?」
「大丈夫でする! 人間さんたちのおかげでする~!」
「きれーな歌でする~、踊りたくなってくるでする~」
 シンフォニック・キュアの効果は絶大だ。もうフェアリーたちが慌てることもないだろう。
 歌と楽の相乗効果もあり、弱りかけていた獣たちも体力を取り戻したようだ。
「なによりで~ごぜ~ます~……そろそろ歌うのいいでごぜーますね」
 なぜかミュージカル調になっていたという。

 ともあれ互いに音によってフェアリーと動物たちを手なづけたふたり。
 村の周囲からは、猟兵たちによる戦闘音がなおも響いてくる。
「あちこちで、戦いが続いているみたいね。
 動物さんたち、手助けをお願いしても、いいかしら?」
 動物たちはトリノのお願いを聞き、四方八方へと散っていった。
 おそらくこれで、防衛線もより強固に村を守ることが出来るだろう。
「フェアリーを襲うドラゴンにー、音楽で動物を手懐けて対抗でごぜーますか。
 改めて考えてみると、実にファンタジーでごぜーますなー」
 世界が変われば常識も変わる。当たり前だが忘れてはならない事実だ。
「……うにょんうにょんしてるあなたが言うと、なんだか不思議ね?」
 ブラックタールだもの、伸びたり縮んだりぐらいは朝飯前だ。実に常識外である。
「それもそうでごぜーます。兎にも角にも……さっさとやっつけちめーましょー」
「ええ、ええ、そうね。妖精さんたちも、早く元の暮らしに、戻りたいものね?」
 とトリノが水を向けると、フェアリー達……そして長の少女がこくりと頷く。
「ここは見晴らしがよくて、天が広く見えるけど……。
 か弱いあなたたちが住むには、身を隠せなくてきっと心許ないでしょう」
「うん……元のおうちに帰りたいでする! どうすればいいでするか……?」
 閉ざしていた心を開き、少女は言う。トリノはにこりと微笑んだ。
「一体なにがあったのか、リノたちにおはなししてほしいの。
 悪いドラゴンがどこにいるか、捜すためにきっと役立つだろうから」
 長の少女は、ならばと口を開き経緯を説明しようとする。そこへ空から響く咆哮。
 眷属どもはなおもやってくる。あちらも総攻撃を仕掛けているということだ。
「それを聴くために……あと、ゆっくり寝るためにも、さっさとお掃除でごぜーますね」
 どちらかというと、後者が本命っぽい感じの顔でティティモルモは言った。
 そこはかとなく名状しがたい気配を感じるオフトゥン(媒介道具)を振り回す。
「ええ、ええ。リノも、お手伝いをするわ」
 再び獣楽器を奏でるトリノ。その体がほのかに輝き、ティティモルモに力を与える。
「おおー……ありがてーでごぜーます。けど眩しくて眠れねーでごぜーます」
「まだ寝るには早いでしょう? うるさい子たちがいるもの、ね」
「そういえばそうでごぜーました……はふ」
 のんびりあくびをしつつ、空を見上げる二人。回遊する多数の眷属ども。
 あちこちを動物たちが走り回り、猟兵とともに眷属を攻撃したり、あるいはどこが手薄か、敵がどの方向から現れているかを鳴き声で知らせる。
 目まぐるしい戦況のなか、動物たちをうまく操るトリノの手腕は流石と言えるだろう。
「さあ、さあ。それじゃあ、悪者退治に、リノたちも加わりましょう?」
「がってんでごぜーます……すべては安眠のためにー」
 かくして、森の末裔達を守る戦いに新たな猟兵が加わった。
 各個撃破の粋を出なかった猟兵たちの戦いは、これによって高い連携を得る。
 数によって圧壊せんとしていた眷属どもは、瞬く間に殲滅されていったのだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユハナ・ハルヴァリ
ルト(f00036)と

では、いきましょう、ル……
あれ。珍しいですね?
どちらにせよ僕は前に、出ますが。

然程つよくないのであれば。数を撃つことに、しましょう
長杖を解いて貴石の花弁に。
射程はあまり広くないので突っ込んでいきます
倒される前に、倒してしまえば、いいのでしょう
標的は敵にだけ
他のものも、ひとも、傷つけたりしません
ひらひらと六花のように躱して跳んで
掻い潜ってきたのは、短刀でさくり。
舞う白炎を借りて投げつけるなどする

フェアリーたちがルトのしっぽに埋もれるのを横目に
あれならきっと、大丈夫でしょう
口の割に、優しいですから
片付いたなら、ルトの傍へ寄って
よくがんばりました。
頭をもしゃもしゃ撫でましょう


イェルクロルト・レイン
ユハナ(f00855)と

こんなちっちぇヤツをイジメるたァ心の狭いヤツだな
なんか目的でもあるか知らんが
これが守るもので、あれがころすもので
それだけ分かってりゃいい

流石に周り壊したら後が面倒そうだな
手出しされる前に、は正しいけれど
いつものように暴れては、きっと壊ししまうから
ユハナ、がんばれ
前は任せていつでも消せる炎で遊ぼう

珍しいとは自覚あれど後を考えればしようもない
慣れぬフォローに気を使い
はあとひとつ溜息零して頭を掻く
後ろはやっぱ、めんどくさい

フェアリーの惑う声には呆れて
怖いなら隠れておけと尻尾でもふり
炎を繰るだけなら動かずとも出来るから
隠れ蓑にするといい
ん、……あんたも
撫でられながら尻尾はぱたり



●宵口の決斗・結
 夜空に星が散った――否、それは輝く貴石で出来た、花びらだ。
 だが星のように綺麗だった。故にそのユーベルコードは星花弁と呼ばれる。
 舞い散る花弁は、その周辺を飛んでいた眷属どもを根こそぎ攻撃し霧散させる。
「……あれ」
 きらきらと舞い降りてきた花弁たちを長杖へと再収束させ、少年はふと呟いた。
「珍しいですね、ルト? 貴方が前に出ないなんて」
 ユハナ・ハルヴァリが小首を傾げると、ぴこっと尖り耳が跳ねる。
「流石に周り壊したら、あとが面倒だろ」
 一方、ぶっきらぼうに答えるイェルクロルト・レインの耳は垂れ下がったまま。
 常日頃から気怠げな彼だが、今日は殊更に浮かぬ顔をしていた。
「「「じい~……」」」
 見られている。フェアリー達にめっちゃ見られている。
 なぜ? 言うまでもない、視線はふわふわした尾につられ、左へ右へ彷徨うのだから。
「いいんですか?」
「何が」
 イェルクロルトはそっけなく答えた。尻尾がまた揺れる。
「いえ、いいのならいいんですけど」
 ユハナの物言いは極めて端的。どのみち彼は前衛を好むタイプだ。
「ん」
 イェルクロルトが顎で指し示した。ずしん、ずしん、ずしん。
 降り来たった眷属の数は三体。震え上がるフェアリー達は、自然彼の元へ。
「では、後ろはおまかせしますね」
 交わす言葉はそれで十分。ユハナは自ら眷属の元へと飛びかかる。
 龍どもは吠え猛り、まず尻尾を打ち振るった。時間差での三段攻撃。
 ひとつ。真上から降ってきた尾を、軽やかに跳んで躱す。
 ふたつ。着地を狙った地面すれすれの薙ぎ払い。尾を蹴ることで回避。
 みっつ。ここだ。空振りした尾を飛び渡り、眷属の逆鱗に銀鉤を突き立てた。
 苦悶の雄叫びを上げ、まず1体がじわりと霧に解けて消える。
『『ガァアアアアッ!!』』
 残る二体の眷属が怒り狂った。大きく顎を開き、爪と牙でユハナを切り裂こうとする。
「――煩いな、黙れよ」
 それを許さぬのがイェルクロルトである。彼の周囲にぽつぽつ生まれる白い輝き。
 炎である。それは大地に刻まれし畏れを孕んだ、この世ならざる灯火だ。
 イェルクロルトの意思に従い、白炎は二体の眷属に殺到し、これを炎上せしめた。
「……遊びみたいなもんだな」
 ひとりごちる。敵は数こそ多けれど、一体一体の戦力は実に脆弱だ。
 弱いくせに、さらに弱い小さきものどもを脅かす。無様なものだ、と彼は思う。
「ユハナ、貸してやる。さっさと終わらせろ」
 たゆたう炎がいくつか、少年のもとへとゆらゆら飛んでいった。
 半分が短刀の刃を熱して灯り、もう半分は長杖を包むように燃え上がる。
 迷宮の奥、禁忌の術士と相対した際に用いた戦法だ。
「あの時は、僕から言い出したんでしたっけ」
 などと独りごちつつ、ユハナは跳んだ。
 今まさに地面に降り来たらんとした眷属を、まず一体切り裂く。
 腕の勢いを殺さぬまま、続く二体目へとダガーを投擲、これも霧散。
「――見つめると、眩暈がするかも、ね?」
 それは誰に向けた呟きか。二体目が靄めいて消えた時には、杖は失せていた。
 生まれるのは再びの輝き。けれど今度は、白き畏れを纏い燃え上がる星の花弁。
 花火めいて、妖精たちの郷を白星の華が照らした。
 それが、戦いの決着を告げる輝きにもなった。

「……はあ」
 同じ頃、イェルクロルトは溜息をついていた。
 あとはユハナがやってくれる、となると彼の仕事は?
 怯えながらも興味深げに彼の尾を見やる、小さきものどもの世話である。
「めんどくさいな、やっぱり」
 嘆息に機嫌を損ねたかと、フェアリーたちはおずおず見上げた。

 数秒の沈黙。

「……怒ってねえよ、別に。そんなに怖いなら、ほら」
 ゆらり、魅力的な尾が揺れた。フェアリーたちはとっくに飛びついていた。
「あったかいでする~!」
「ふわふわもふもふでする~!」
「気持ちいいでする~……すぴー」
 イェルクロルトは呆れているような、面倒くさそうな顔で佇むのみ。
 そして頭上で白星の華が咲いた。束の間夜空を照らす畏れの灯火。
 消えゆく輝きと入れ替わりに戻ってきたユハナは、きょとんと彼と彼らの様子を見た。
「……なんだよ」
 イェルクロルトは気怠げな声で言った。
「いいえ。やっぱり、後ろを任せて正解だったな、と」
 貌は変わらず、けれど声音には僅かな笑みの気配。人狼はまた嘆息した。
 ――あんな感じですけど、その割には優しいですからね。
 などという二の句は口にしない、そういう利口さがユハナにはある。

「…………なんだよ」
 そんな中でふと、イェルクロルトは振り向き同じ言葉を呟いた。
 見ればそこには、長の少女が彼らを見つめて浮いている。びくりと竦む少女。
「あ、あの」
「お礼を言いたいんじゃないですか?」
 ユハナが口を挟む。イェルクロルトは頭をかいた。
「別に、戦ったのは俺らだけじゃねえし」
「……ならあとは、混ざりたい、とか?」
 ちらり。少年はもふもふの尾と堪能中の小さきものたちを見る。
 イェルクロルトは心底、とてもとても面倒そうに溜息をついたのち、
「……好きにしろ」
 とだけ。長の少女はぱあっと笑顔になり、あっというまにもふもふに埋もれた。
「珍しいお仕事、よくがんばりました。えらいえらい」
 おもむろに、少年はうんと背伸びして一回り高い頭を撫でる。
「ん」
 イェルクロルトがそれに文句を言うこともなく、あんたもな、とだけ答えた。

 もはや眷属の気配はない。ようやく、村に静寂と一時の安息が訪れたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『密林旅行』

POW   :    木々をなぎ払い道を開きながら豪快に徐々に進む

SPD   :    木々に飛び移りながら素早く進む

WIZ   :    地形や痕跡を調査、おおよその場所を絞り込んで進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●これまでのあらすじ
 ブルーノー大森林という場所にグラドラゴが現れた!
 そいつのせいでフェアリーたちが森を追われ、近くに村を作った!
 でもグラドラゴは眷属をけしかけてそれを破壊しようとしているぞ!
(ここまでOP)

 猟兵たちの活躍で、執拗な襲撃は無事に退けられた!(村の被害ゼロ)
 フェアリーたち、および長の少女も猟兵を信頼してくれた!
 敵は消耗しているので、探索(2章)の間に村が襲われることもない!
(ここまで1章)
●長は語る
「あの……助けてくれて、ありがとうでする」
 防衛戦が終わり、一夜明けての朝。少女はおずおずと礼を言った。
 "長しゃま"と呼ばれた少女……名はフリム……が語るところによれば。

「アイツ……えっと、ドラゴンは、急にわたし達のところに来たのでする。
 わたし達『森の末裔』は、ずっと誰とも関わらず平和に暮らしていたのに……。
 アイツも多分、森の外から来たのでする。それで、こんな目に」
 グラドラゴは、この森に由来する過去から蘇ったわけではないらしい。
 森の末裔たちへの攻撃は執拗であり、愉快犯という言葉だけでは片付けられなさそうだ。
「わ、わたし達は森で暮らしていただけでする! なのに、こんな……」
 しょんぼりと意気消沈しながらも、フリムは語る。
「でもっ、森の中の案内なら少しくらいは出来るかもしれないでする!
 アイツの寝床まではわからないけど、少しぐらいはなにか力になりたくて」
 大森林内部の探索は、彼女の手を借りて進むことになるだろう。
 ただでさえ鬱蒼とした森は、グラドラゴの影響によって密林じみた変化を遂げている。
 グリモア猟兵の話の通り、探索には一日以上の時間がかかる見込みだ。

 先の大攻勢は、グラドラゴにとっても相当の労力を必要としたはず。
 猟兵たちが村を離れている間、森の末裔たちが襲われる心配はない。
 悪しき龍の寝床を探し出し、これを叩く。やるべきことはそれだけだ。
「……ついていっても、いいでするか?」
 少女の顔には、恩人たちと言葉を交わしたいという願いも垣間見えた。
●第2章での行動について
 マスターコメントにも書きましたが、2章の探索は最低でも1日以上の作中時間が経過します。
(採用人数によっては複数日経過したという描写をする可能性がありますが、それによって成功度が変化することはありません)
 野営。いいですよね。野営を書きたい。

 そんなわけで、探索に関するプレイングは割と薄めで問題ありません。
『あの人とこんな話をしてみたい』
『キャンプするならこんな作業をするよ』
『飯テロを皆にかましたい』
 などなどあれば、半ば日常フラグみたいな気分で盛り込んでみてください。
 おそらくノリノリで書きます。なくても多少盛ります。
(必須ではないので、あくまでプロフェッショナルらしく探索に紙幅を割いていただいてもきちんと判定させていただきます!)

 なお前項にあるとおり、2章の探索には『森の末裔』たちの長・フリムが同行します。
 年齢は10代のフェアリーの少女です。話してみたいことがあれば、ぜひどうぞ。
●業務連絡
 私事により、3/1~3あたりの執筆が難しい状況にあります。
 現時点でお預かり中のお客様には個別にお手紙を差し上げていますが
 3/1 8:29迄のご提出ぶんについては一度お返しする形になります。
 ご参加を希望される方、および再提出をお願いしたお客様につきましては
 大変お手数ですが、3/1 8:30以降のご提出をお願いいたします。
●探索開始
 ブルーノー大森林は広い。全容を解き明かすには膨大な時間がかかるだろう。
 そのため猟兵達は、いくつかのチームに分かれて探索することにした。
 日没前後に合流ポイントへ帰還、野営をしながら結果報告する、という具合だ。
 無論、場合によっては合流せずにその場で野営を行うこともできる。
 指揮系統に依存しない遊撃的な機動力、それこそが猟兵の武器なのだ。

 はたして彼らは、グラドラゴのねぐらを発見することが出来るのだろうか……?
天道・あや
う~~ん……グラ、グラ、グラド……ドラゴンって元々此処にいたんじゃなかったんだ、って事は………事は……頭のいい人に任せよう!とりあえずあたしはささっとドラゴンの居場所をいっちばーんに見つけよう!

SPD
【スカイステッパー】で木々に飛び移りながらささっと進むよ、フェアリーは肩辺りに掴まっていって貰おうかな?道中はフェアリー達の好きな事とか聞きながら探索!

野営の時は【Anata ni okuru uta!】で召喚した歌詞を歌おうかな!野にピッタリな明るい歌、出てきて!


ビードット・ワイワイ
連携アレンジOK
我は巨躯を誇りど素早き行動可能なり
UCにて蒸気浮上装置を作り一時的な浮力を得ながら
一気に進もう。共に行動するものがいるならば
我に掴まれば疲労も最小限に済むのではなかろうか

野営をするならば寝ずの番を担当しよう

我は機械がゆえに睡眠は不要なり
故に我の目が届く範囲に来る汝は破滅を望みし者也か
あな静かなり。話したければ話すがよい
我は機械であれど対話は可能。一時の語らいをしよう

トラップとしてUCで予め重火器を設置
【属性攻撃】で氷を付与し足元を凍結


グルクトゥラ・ウォータンク
【アドリブ絡み歓迎】
フィールドマップ埋めって男の子の味じゃよね…。分かる?分かる…。

そんなわけで【探査電脳妖精多重召喚】、いつの間にかえらい数召喚できるようになってたこいつで森をしらみ潰しに調査じゃ。悪竜探しが主目的じゃが、ついでにフェアリー達の新しい集落の場所探しもして、長に話しかけようかの。グラ某を倒したならこの森に戻れるようになるじゃろ?そのときに、このちっこい長っこが仲間達によさげな場所を案内してやれば長っこの発言力と好感度ぐんとアップ。支持率V字回復でフェアリーの未来はWowWowじゃ。
それに、過去の暗い話をするより明るい未来の話をする方がやる気も出るってもんじゃよ。


エドゥアルト・ルーデル
なるほど行軍(ピクニック)でござるね

空から森を見てみよう、という訳で森に【サーチドローン】を放てッ!
仮にドラゴンに見つかって壊されても気にしない!地上からも視覚と聴覚を共有した【知らない人】を先行させますぞ

日が暮れたら…ここをキャンプ地とする!!
森のど真ん中だ、今ここは!森のど真ん中で拙者らは、今からこの場所でテントを張るって言ってるんだ!!
上空から見つからぬよう草を使ってテントに【迷彩】を施しますぞ

フリムチャンともOHANASIしたい所でござるね
(所業を聞いて)グラドラゴ…なんと傲慢なのだろう…神にでもなったつもりでござるか!グラドラゴを…潰す!拙者に任せろ!(下心)

アドリブ・絡み歓迎


ティティモルモ・モルル
んんー……。(一生懸命目を凝らし探索)
……フリムさん、ちょっとお聞きしてーのですが。
この森には、お布団代わりになるものってあるですか?
探していてもなかなか見当たらねーんです……。
あ、はい、敵の痕跡ももちろん。それはもう、はい。

いや、質の良い睡眠って大事なんでごぜーますよ。
肉体や精神に疲労を残して、強敵と対峙したら笑えねーですからね。
モルは自前のがあるのでいいですが、できたら皆さん分も用意してーので……。
(言いつつ、探索に疲れてちょっとだけオフトゥンにくるまる)

はふぅ……。
フリムさんも一休みどうでごぜーますかー……良い働きには良い休憩が必要ですよー……。
(もにゅっと体を縮めてスペースを作り)



●探索:1日目
 早朝。大森林の入り口にて。
「なるほど行軍(ピクニック)でござるね」
 腕組みしたまま上半身を妙な角度に傾けたエドゥアルト・ルーデルが言った。
 一応ガチの戦場傭兵ではあるのだが、いかんせん喋りが胡散臭い。
「フィールドマップ埋めって男の子の味じゃよね」
 その隣では、グルクトゥラ・ウォータンクが妙に感慨深げに頷く。
 彼も彼で百戦錬磨のドワーフなのだが、かなり童心に帰っているようだ。
 そんなヒゲモジャ二人は、
「わかるでござるよ、地図埋めいいでござるよね」
「いい……」
 などと、わかりみを共有しているおかげで、たまの休みにサバゲーをしに来たオタク感が拭えない。

 一方、そんな二人に先の防衛戦で熱烈なアピールを受けていた天道・あやは、
「う~~ん……グラ、グラド……なんだっけ」
 肝心の敵の名前を忘れていた。まあいいや、と切り替えつつ疑問を口にする。
「ドラゴンってもともとここにいたんじゃなかったんだね。
 ってことはつまり……つまり~……」
 腕組みして考え込む。どうやら頭脳労働は苦手なタイプらしい。
「考えすぎると眠れなくなるでごぜーますよ、ふぁ~……あふ」
 ティティモルモ・モルルはあくびをしながらそう言った。もう寝ることを考えていた。
 寝ぼけ眼をこすり、ぱちくりと瞬きをすると、ふと何かを思いついた様子。
 彼女が振り向いて見やったのは、落ち込んだ表情の妖精・フリムである。
「フリムさん、ちょっとお聞きしてーのですが……。
 この森に、お布団の代わりになるものってあるですか?」
 シリアスな表情である。敵の痕跡? もちろん探していますとも。
「えっ、お、お布団でする? えっと、えっと」
 フリムは困った。なにせフェアリーは小さきものどもである。
 彼女達が寝る時に使うものと言えば、大きな葉っぱかふわふわした綿毛などだ。
 ティティモルモのお眼鏡には適うと思えない。そもそも、あの子はもう寝そうだ!
 と、そんなところで助け舟を出したのは巨大なウォーマシンだった。
「見たり見たり見たり、眠りの壁の彼方に誘われし幼子を見たり。
 我は巨躯なれば、黒き幼子よ。我に掴まり寝台の代わりとするがよい」
 ビードット・ワイワイはカメラアイをぐりんぐりんと動かしつつ言った。
 見かけと言動によらず、だいぶフレンドリーである。
 ティティモルモはこれ幸いとばかりにうにょうにょと彼の背中に乗り込む。
「おおー……これは実にベストでごぜーますねー」
「善き哉。蒸気浮上装置作成、起動。多少揺れるゆえ落ちぬよう注意せよ」
 ガジェットショータイムによって最適な道具が生成され、巨体を宙に浮かせる。
「わっ、すごい! って寝てちゃダメじゃない!?」
 などとツッコミを入れたせいで、あやの考え事は頭から吹っ飛んだ。

 そんな猟兵達の技術力と呑気さに、フリムは面食らった表情を浮かべている。
 とはいえ彼女と彼女の同胞達にとっては、共同体の存亡の危機だ。
 かといって助けてもらった手前、あれこれ注文をつけるのも妙な話。
「やっぱりわたし、役立たずな気がしてきたでする……」
「あわわわ、ごめんねフリム! みんなやる気がないわけじゃないんだよ、ね?」
 慌ててあやがフォローを入れた。
 自由人である彼女が振り回されるあたり、このチームかなり奔放である。
「然り然り、我は機械ゆえ汝らに見通せぬことも数多く見通せよう。
 この幼子もまた同様なり。その真意、我が語るに及ばず」
「本当でする……?」
 すぅすぅ寝てるティティモルモに、フリムが訝しむのも無理はあるまい。
 だが神子たる彼女には、むしろ眠っていたほうがわかることもあるのだ。
「真なり。そしてあれを見よ、あれこそ我と同じ機械の目なり」
 ビードットのマニピュレータが、ヒゲモジャ二人を指し示す。
 するとまず、エドゥアルトが一基のサーチドローンを起動させ空に放った。
 それを見たグルクトゥラは、にやりと笑い自らのユーベルコードを使用する。
「空から探索か、なら数を揃えといたほうがよさそうじゃな!」
 すると出るわ出るわ、数にして500機近い半透明の電脳妖精!
 もはや蜂めいたそれらは、顕現するとともに四方八方へ散っていくではないか。
「貴様ーッ、俺のドローンを愚弄する気かぁっ!」
「ユーベルコードは奇跡の力なんじゃ、悔しいだろうが仕方ないんじゃ」
 なんか張り合っていた。ならばとエドゥアルトもユーベルコードを使用した!
 眩い光が放たれ、そこに召喚されたのは……!
『…………』
 なぜか首にギブスを巻いた妙なおっさんである。
「ど、どなたでする?」
「誰じゃこのおっさん」
「おじさん何者!?」
「汝、何者にありや」
「不審人物でごぜーます、むにゃむにゃ……」
 困惑する一同。エドゥアルトに視線が集まる。すると彼は、
「誰だ貴様っ、あっちへ行け!!」
 と、知らない人を追い払……もとい、探索へ送り出した。
 おとなしく無言で奥へ進む知らない人を見送り、ふうと額の汗を拭う。
「いやあ、今日は絶好のピクニック日和でござるなあ!」
「「「「「「…………」」」」」」
 先の思いやられる滑り出しに、誰もが頭を抱えた。

●野営
 しかし意外にも、探索はかなり順調に進んだ。
 空と地上の二面から、かつ複数の手段で探索に乗り出したことが功を奏したようだ。
 それだけではない。密林地帯では、地形をどう踏破するかが重要になる。
 その点で、あやの身軽さとビードットのホバー移動は大正解だったのだ。
 以前の森に詳しいフリムを同行させたあやの判断は、特にその好例と言えよう。
 また、ドローンなどの指揮・操作に集中するヒゲモジャ二人(とティティエルモ)を、ビードットが運搬することで全員が体力を温存できた。
 結果として、彼らは消耗することなく野営に入れたのである。

 そして日暮れ。
「ここをキャンプ地とするッ!!」
 どどん。エドゥアルトの堂々たる大音声が響いた。
「た、ただの、ただの密林ではないでするか!」
 驚くフリム。
「そうじゃ! わしらは今からこの場所でテントを張るって言ってるんじゃ!!」
 なぜか偉そうなグルクトゥラ。ヒゲモジャ二人はなぜかハイタッチする。
 そしてテキパキと設営を始めた。ある意味洗練されたコンビネーションだ。

「いやー、動いた動いたぁ。でもおかげで、フェアリーのこと詳しくなれたよ!」
 森の末裔達は何が好きなのか? これまでどのように暮らしてきたのか?
 他愛もない世間話だが、あやにとってはいい気晴らしになったようだ。
 すっかり打ち解けているあたり、それはフリムにとっても同じだろう。
「野営。なれば我が寝ずの番を担う也。幼子よ、起きるがよい。汝の出番なり」
 ビードットがカチカチとマニピュレータを鳴らすと、背中に乗っていたティティエルモがむくりと起き上がった。
「ん~……よく寝たでごぜーます、眠いので早く寝てーです」
「ものすごいさらっと矛盾するよね!? もう、あたし達はちゃんと働いてたのにっ」
 などと不満げなあやだが、そこでビードットがこう言った。
「否。"幼子がよく眠っていた"ことこそ、我と汝らにとっては重要なり。
 幼子よ、我は問いたり。汝、眠りの壁の彼方にていかなる夢を見たりしか」
「モルはなんの夢も見てねーでごぜーますよ、はふぅ……」
 そこであやは、ふと悟った。頭脳労働が苦手な分、彼女は直感に優れるのだ。
 ティティモルモは眠りに関する何かの能力を持ち、しかもビードットはそれを識っている。だから彼は、彼女を大人しく寝かせたのだと。

 あやは全てを理解したわけではない。しかしそれは幸運でもある。
 ビードットに搭載された『仮想破滅招来補助具』がなんであるのか。
 ティティモルモが眠ることで交信できる存在が、いかなるモノなのか。
 世界には……否、世界の裏には、知らないほうがいいこともあるのだ。
「森の闇より破滅は訪れず、ゆえに眠りの壁もまた彼方にありや。
 歌姫よ、汝らは破滅を免れり。龍の眼とて、眠りの壁を超えることは能わず」
 根源的破滅招来者の瞑想的な言葉は、それ自体が一つの謎めいていた。

 夜。一同は焚き火を囲み、簡素な食事を摂った。
 テントには十分な迷彩が施されており、野生の獣でも発見は困難だろう。
 加えて暗闇で見えにくいものの、周辺は凍結し重火器が設置されている。
 これはエドゥアルトとビードットによる、万が一の襲撃に備えた対策だ。

 そうした安心感からか、やがてフリムはぽつぽつとこれまでの経緯を語った。
 閉鎖的ながら、何事もなく平和だったこれまでの生活。
 ある日それを突然に打ち砕いた、グラドラゴの暴虐。
 有名無実化していた長という立場が、いきなり彼女にのしかかったこと。
 明るくなっていたフリムの表情も、話しているうちに段々と沈んでしまった。
「グラドラゴ……なんと傲慢なのだろう、神にでもなったつもりでござるか!!」
 迫真の表情のエドゥアルトが、握り拳を作りながら唸った。
「拙者にお任せくだされ、フリムちゃ……殿! グラドラゴを……潰す!!」
 キリッ! (本人的に)爽やかな笑みを浮かべると、無駄に白い歯が輝く。
「モルですら見抜けるレベルの下心とは、ある意味ですげーでごぜーます」
「拙者いま結構いいセリフ言ったはずでござるよね!?!?」
 ティティモルモの茶々に泡を食うエドゥアルト。割と図星のようだ。
「そんなに気に入られたいなら、もっと美味しい食糧とか用意しといてよ!」
 あやの言葉もむべなるかな。やむを得ず調理担当となったのは彼女である。
 エドゥアルトが持参したレーションは不味い。
 グルクトゥラは大食いな上、ドワーフらしく味付けが大雑把。
 ビードットに至っては、非実在系食物という意味不明なものをお出ししてきたのだ。
「あたし、飯盒炊爨とか家庭科実習じゃ食べる係だったんだけどなぁ」
「でもわたしは、アヤと一緒にお料理できて楽しかったでする!」
「あはははっ、そう? なら嬉しいな! ありがとね、フリムっ」
 探索中に色々と話したかいあって、二人はすっかり仲良くなっていた。
 ちなみに材料の大半は、意外にもティティモルモが調達してきた。
 本人曰く、
「アロマ作りの経験が役立ったでごぜーます、疲れたですけど」
 とのことである。

「ところで~……フリムさん、お布団のことなのでごぜーますが」
「もちろん忘れてないでするっ、きちんと集めておいたでするよ?」
 先に示した通り、森の末裔達は自生の葉や綿毛を寝具として使用する。
 設営中、フリムはティティモルモから念押しされそれらを集めていたのだ。
「然り然り。運搬は我が行いたり。幼子よ、必要あらばさらに調達するがいかに?」
 ビードットの背中には、こんもりとそれらの材料が積み上げられていた。
「ん~、たぶん十分かと……。テントもあるでごぜーますしね」
「拙者の用意周到っぷりとか褒めていいのでござるよ? ござるよ?」
 チラッチラッとアピールするエドゥアルトは全員にスルーされた。
「わたし達とあなた達では、身体の大きさも形も、何もかも全然違うでする。
 一体、どうしてこんなに材料を集めさせたのでする~?」
 フリムは興味深げに問うた。彼女なりの歩み寄りというところか。
 初めて深く関わる外の世界の人々や文化に対する興味もあるのだろう。
「睡眠の質は大事なんでごぜーますよ。肉体や精神に疲労を残すと、後が大変でごぜーます」
 眠たげに眼をこすりつつ、ティティモルモは実用的な理論を展開する。
 自前のオフトゥン(媒介道具)やマクラァン(魔導書)はあれど、あくまで個人用だ。
「だからできたら、皆さんにも快適な睡眠を摂ってほしかったのでごぜーます。
 フリムさん、モルのお願いを聞いてくれて嬉しいでごぜーますよー」
「じゃ、じゃあ、そのふわふわぬくぬくでわたしも寝ていいでする……?」
「もちろんでごぜーますよー、いい働きにはいい休憩を、でごぜーますからね」
 フリムは、ぱあっと笑顔を浮かべた。少女同士の微笑ましい交流だ。
「ふふ、なんだかああいうの見てると、お姉さんになった気分しちゃうねっ」
 それを見て、まんざらでもなさそうに微笑むあや。
「わかる……フリモル尊い……わしああいうの好き……」
「趣味は否定しないから、せめてそのキモいニヤけ顔やめてくれないかな」
「あっいまわしの心死んだ。いまわしの心死んだよ???」
 へこたれないグルクトゥラを一転して冷たい目で見る女子学生であったという。

「いやまあ、あれじゃ。長っこよ、ひとつ話があってな」
 咳払いをして気を取り直しつつ、グルクトゥラは言った。
 きょとんとした顔のフリムに、彼は手製の地図をちらりと見せた。
「まだ途中じゃが、電脳妖精達に新しい集落の候補地も探させておる。
 グラ某を倒したら、この地図はお前さんにやろう。役に立つはずじゃ」
「そんなことまで出来るのでするか!? で、でもどうして」
 見ず知らずのよそ者が、そうまでしてくれるのか。彼女には理解できない。
 困惑した少女に、しかしドワーフはニカッと笑みを見せた。
「なあに、これで長としての発言力と好感度もぐんとアップ。
 支持率V字回復でフェアリーの未来も明るいというわけじゃ」
 過去を振り返り、暗い顔をするよりは――という、彼なりの思いやりである。
「したりしたり。過去を想起するは我の役目、汝は未来を見据えるがさだめなり」
 驚くべきことに、ビードットがそれに同調した。
「安寧を妨げられし者よ、汝の破滅はいまに非ず。ゆえに我らは希望を齎そう。
 されど未来を掴むは汝ら自身なれば、それを忘れし時、汝らは破滅せん」
 相変わらず謎めいた物言いだが、フェアリー達の未来を慮っているのは事実。
 フリムは一同を見やり、
「……ありがとうでするっ! わたし、頑張るでするっ」
 いまできる精一杯の笑顔で、ぺこりと頭を下げた。
 夜は長い。眠る前に、もう少し語らいを続けるのもいいだろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

付き合うのなら最後まで。
とは決めていましたので、今更帰りはしませんが
野営か……。とても眠れる気がしない。
長い夜になりそうだな

その前に先ずは痕跡調査を
竜種であれば体躯は巨であるはず
木や土に残された痕を探しましょうか

ある程度で区切りをつけて、野営の準備を
火を絶やさぬように火種を集め
どうせ俺は眠れないと思うので、
木の幹にでも寄りかかって体だけでも休めておきましょうか

……空が綺麗だな
星がよく見える

――俺はね、話せるようなものを持ち合わせていないんですよ
だからあなたが話してください。なんでもいいですよ

(語る彼女の声音は、嫌いじゃない。
だから、今日という日も悪くないと思える)


オルハ・オランシュ
ヨハン/f05367と

(最後まで付き合ってくれそう、かな?
出会ってまだ日が浅いけど、
ヨハンのことが少しわかった気がする)

まずは痕跡調査だね
手分けした方が早いかな
見付けた痕跡については情報を共有しよう

火のそばで暖をとっても、リラックスには程遠いや
ふかふかのベッドが恋しい

本当だ!
星空をゆっくり眺めるなんて、いつ以来だろう

ねぇ。何か、ヨハンの話を聞かせてくれないかな
えっ!?私?
なら、君と出会った日のことを話すよ
あの日請けていた仕事は猟兵のじゃなくて、本業の方だったの
私が働いているジャム屋は何でも屋でもあって……

って、長話になっちゃいそう
つまらなくないかな?
眠くなったら寝て大丈夫だからね



●探索:1日目
「……というわけなんだけど、やっぱり妙だよね?」
「いえ、思った通りですね」
「でしょ? 私もそう……あれ?」
 オルハ・オランシュは、回答が予想外であったことに遅れて気付いた。
 きょとんと目を丸くして、ヨハン・グレインの無愛想な思案顔を見つめる。
 しばらくすると、ヨハンもオルハの視線に気付きそちらを見返した。
「なんですか」
「えっ! いやあ、思ってた答えと違ったからさ」
 痕跡調査を提案したのはヨハンのほうである。
 その痕跡がまったく見つからなかった、と報告したのに"予想通り"と言われたのだから、オルハが面食らったのも無理はない。

 が、そんな彼女に対し、ヨハンは表情を変えぬままこう答えた。
「竜種は巨躯が多い。こんな森の中を移動すれば、必ず痕跡が残ります。
 そもそも森林地帯なら、他にもいろんな動物が住んでいるはずですからね」
「でも、何も見つからなかったよ? もしかして見落としてるのかなあ」
 顎に人差し指を当て、思案するオルハ。それに対しヨハンは、
「それはないでしょう」
 と間髪入れずに答え、しかし自説の展開にはやや逡巡を見せた。
「……つまり可能性はふたつ。"敵は痕跡を残さず移動できる"、あるいは――」
 そこで、オルハが『あっ』と声を漏らした。
「そもそもこっちは竜の通り道じゃない、だよね!?」
 今度はヨハンがきょとんとする番である。その眼差しに、少女は微笑み返す。
「……そうです」
 咳払いをしたあと、少年はこくりと頷いた。

「ただ、それとは別にもうひとつわかったことがあります。
 この森の動物達は竜の存在を疎んでいる、ということです」
 ヨハンにとっては、むしろこの事実こそが重要である。
 竜の威を借るような獣がいれば、確実にこちらの邪魔をしてくるだろう。
 その手間が省けたのは大きな収穫だ。あとはさっさと竜を仕留めればいい。
 付き合うと決めた以上は最後まで、その点は不変である。
 とはいえ野営だ。彼はそんなアウトドアなタイプではない。
 悪竜を屠り森の平和を取り戻す、などという善行も、実際のところこそばゆい。
 早く終わるに越したことはないのだ。
「……なんですか」
 無愛想な言葉を再び投げかけられた少女は、微笑んだまま答える。
「ううん、やっぱりヨハンってすごいなあ、って」
 彼女は少しだけ嘘をついた。いや、彼を高く評価しているのは事実だ。
 だが、彼がいつ帰ると言い出すかという懸念への安堵がある。そして、
(ヨハンのこと、少しだけわかった気がする)
 思い込みかもしれない。傲慢かもしれない。
 けれど何よりも、彼女はそれを嬉しく思った。

●野営
 痕跡がない、というのも立派な成果であり、重要な事実だ。
 ゆえに二人は早めに合流地点へ帰還し、情報を共有した。
 念のための再探索を終えた頃には、もうすっかり日が暮れていた。

 そして、夜。
「火種はこれで十分でしょう」
 ヨハンはよく乾いた枝の山を一瞥し、手近な木の幹に寄りかかった。
「どうせ俺は眠れないでしょうから、火の番は任せてください」
「そっか。まあ、そうだよね。ありがと、ヨハン」
 そこへ冷たい風が吹き抜けた。オルハがくしゅんっ、とくしゃみを一つ。
「うう~、さむさむ……ふかふかのベッドが恋しいや」
 器用で得な性分とはいえ、彼女とて本格的な野営に慣れているわけではない。
 ぴんと立ったままの耳と縮こまった背中の羽が、緊張を示していた。
 ヨハンはそれを見やり、しかし途方に暮れた。
 場を和ませるようなジョークなど思いつかないし、言うタイプではない。
 たっぷり思案したのち、ふと空を見上げ……そこで、自然と口が開いた。
「綺麗だ」
 暖を取っていたオルハは、ぽかんとした顔で彼のほうを見る。
 彼はその視線に気付いていない様子で、
「星が、よく見える」
 と続けた。
 少女の視線もつられて上へ。そしてぱっと表情が晴れ、翠眼がきらきら輝いた。

 少しでも明るいところを、と開けた場所を選んだおかげだろう。
 木々に邪魔されることなく、満天の星空を見上げることができた。
「本当だ! すごいなあ……」
 折しもこの日は澄みきった晴天で、無粋な雲もなりを潜めていた。
 暗藍の空に無数の星々が瞬くさまは、確かに綺麗で――少しだけ、物寂しい。
「星空をこんなふうにゆっくり眺めるなんて、いつ以来だろう」
 この景色を目の当たりに出来ただけで、昨日今日の苦労が報われる気がした。
 彼はどうなのだろう。そう思い、少年の方を見た。彼も少女を見ていた。
「……何か?」
 ヨハンの瞳は、この空から星々だけを抜き去ったかのように昏い。
 しばらく薪の爆ぜる音だけが響く。やがて少女は出し抜けに言った。
「ねぇ。何か、ヨハンの話を聞かせてくれないかな」
 少年は眉根を顰めかけ、やめた。自省ゆえだが、少女の言葉に思うところもある。
 いくらなんでもざっくばらんすぎるだろう、とか。
 ……父兄の眩さに目を灼かれ、星屑のような矜持に縋る己の話を聞いて、何が面白いのだ、だとか。
 まあ、そんなことを言っても仕方がない。
「――俺はね」
 なので彼は、やり返すことにした。
「……こんな時に話せるようなものを、持ち合わせていないんです。
 だからあなたが話してください。"なんでもいい"ですよ」
 言うまでもなく、"何か"という大雑把な指定に対する意趣返しだ。
 オルハはというと、カウンターを食らうとは思わず目を白黒させていた。
「えっ、私!? えっと、ええっと……あっ、じゃああの日の話とか!」
「あの日っていつのことですか」
「君と出会った時のことだよ。えっとね、あの日は本業の仕事を請けてて。
 あっ、実はね。私が働いてるジャム屋はなんでも屋でもあって……」
 などと、とりとめも脈絡も崩れがちに話をまくしたてる。
 傍目から見ても、思いついた言葉をすぐさま口にしているのだとわかった。
 ヨハンの性格からすれば、もっとわかりやすく、などと言いそうなものだ。

 けれども彼は、オルハの話を遮ることはなかった。
 むしろ時折相槌を打ち、うまく言葉を継げるように手助けしたくらいだ。
 どれほどの時間が経っただろう。オルハはふと我に返った。
「あ。……ごめん、私ったらすっかり長話しちゃった。
 つまらなくない、かな? 眠くなったら寝ても大丈夫だよ?」
 伺うような視線に、少年は藍色の瞳を一瞬だけ向け、焚火の方へ戻す。
「いいえ。どうぞ続けてください、むしろあなたこそ無理はしないように」
「そう? ならいいんだけどっ。ええっと、じゃあ次は……」
 ……少年は焚火を見つめ、耳だけを彼女の声に傾けた。
 そうしないと、また思わず考えがぽろっと口を突いて出そうだったからだ。
(あなたの声は嫌いじゃない。だから――)
 こうして此処にいるのも、悪くないかもしれない……などと。
 素直に口にするには、少年は若くそして捻ていた。

 薪が爆ぜ、夜が深まる。
 少年の思った通り、それは長く長く続いたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
「密林探索も悪くはないね」
寝床への道の策定はフリム君の意見を聴いた上で自身の[世界知識][第六感]とすり合わせて提案する。
邪魔な障害物は『サイコキネシス』で切り拓きながら進む。
野営の際は宿営地の設営をテキパキとこなす。
(普段は魔法で何とかするが情緒を大切にしている。といか不便を楽しんでいる)

『森の末裔』とは結局、何の末裔なのだろうね?
誰とも関わらず、というのは関わらない様に森に入ったとも考えられる。
竜と因縁があるとすればその頃かも知れないね。


メンカル・プルモーサ
…森が変わってるな…力の強いドラゴンみたい…
…探索は【不思議な追跡者】で猫を出して探索範囲を広げよう…
後はお約束のマッピング…フリムの案内と総合して目的地を割り出してみよう…

…野営ではキャンプ道具を圧縮格納術式に色々しまってるからそれを取り出して手伝うね…忘れたものある人は言ってね…
…黄金製でいいなら金属製品は【愚者の黄金】で作るよ…

フリムとは色々話したいな…昔話というか、フェアリー達の間で伝わってる伝承の類とか気になるし…
…アルダワの昔話とかと交換で何か聞けないかな…他の人の活動世界の話とかも聞いてみたい…
(アドリブや他との絡みは歓迎です)


鎧坂・灯理
第六感や情報収集(足跡、折れた木々の向きなど他)をしつつ、念動力で木々を避けたり風の流れを調節して気温を調節したり足元を固めたりして進みやすくする。
キャンプの際には執事を呼びだし周囲の手伝いに回す。私は持ち物で鳴子を作ったり、他のUCでカメラを仕掛けたり上空から見回ったりして警戒を。
食事の時くらいは顔を出すが、あいにく気の利くたちではないので落ち込んだ女性を慰めるのは他の方々に任せる。
そうだな、何かきれいな花でもあれば持ち帰って渡してみるかな。


月宮・ユイ
長い襲撃も終わり、次は探索ですね
[デバイス、道具袋]に探索・野営用の道具、食料等を事前に用意済
長・フラムさんの協力も得られるようですし、元の集落や今回の襲撃での痕跡を調べていけば敵の位置まで”追跡”できるかしら
一人で背負いすぎていて心配ではありますが、協力してくれるその思い無駄にはできませんね

”料理、世界知識、毒使い、動物と話す”
折角なので知識と併せ、妖精さんにも聞き探索と共に森で食べられる物を収集。好物や追い出され食べられなかった物もあるかもしれませんから
料理や給仕、本体が連星型(複数で一つ)の為交代で休ませつつ活動出来るので見張りはお任せを(実は出自故に奉仕好き)

アレンジ・アドリブ絡み歓迎


須藤・莉亜
周囲の探索は召喚した眷属の蝙蝠たちにお任せ。彼らから【動物と話す】で【情報収集】し、目的地を目指そう。

野営ではお酒担当になります。悪魔の見えざる手にお酒の入ったクーラーボックスを持たせて移動。野営地に着いた瞬間に酒盛りの準備を始めよう。飲める人がいないなら、僕一人で飲んじゃおうかな。ツマミに他の人の料理を頂けたら有り難いんだけどねぇ。
「ビールにスコッチ、日本酒も持ってきたよ。飲むぞー。」
まあ、戦いに支障がないように程々に飲もう。とりあえず、1本目の日本酒を…。

一応、野営地の周囲に蝙蝠を配置して見張り番にしとこう。


フェルト・フィルファーデン
・探索
UCで呼び出した兵士達に先行させて危険な物がないか確認しながら進むわね。

・野営
夜の森は危険が多いの。どう猛な生き物、突然の天変地異、最悪他のオブリビオンが来る可能性だって……
なので、わたしは夜の間、ランタンを手に1人で野営地周辺を監視しておくわ。
……きっと、何も起こらないでしょう。ええ、ただのわたしの考えすぎ。仮に何かあっても、これだけの猟兵がいればなんの問題もない。
でも、何かしていないと落ち着かないのよ。気が立っているのかしら?焦っているのかしら?……いえ、今はどうでもいい事よね。
フリム様は、もう寝ているわよね?……帰ったら、みんなで力を合わせて、元気に暮らしてね。お願い、だからね。



●探索:2日目
 グリモア猟兵の見立て通り、探索は数日を要することが確定した。
 痕跡が殆ど見つからないうえに、内部の密林化が著しいのだ。
「わたし達も大森林の全てを知っているわけではないのでする。
 でも、いくらなんでもこれはおかしいでする~……」
 予想以上の事態を己の目で見たことで、フリムにも使命感が芽生えたようだ。
「ふむ、となるとフリム君の意見を聞いてルートを策定する、というのは難しいか」
 シーザー・ゴールドマンは、どこか楽しげな声音でそう言った。
 彼からすれば、この森林……いや、密林探索も人生の楽しみのひとつである。
「あれだけの眷属を生み出せたんだもの……かなり力の強いドラゴンね……」
 メンカル・プルモーサが魔杖シルバームーンを振るうと、ひらりと猫が現れる。
 獲物を逃さぬ鋭き眼の持ち主ならば、まだ見ぬ痕跡を見つけ出せるだろうか。
「やれるだけやるしかないねー。幸い方角は狭まってきてるみたいだし」
 どこか気だるげな様子の須藤・莉亜の周囲には、無数の蝙蝠の群れ。
 総数にして100体以上、万が一の戦闘にも対応可能な吸血コウモリ達だ。
「ふむ、物量は十分なようだな。私は進行ルートの確保に専念しよう」
 鎧坂・灯理が手を伸ばすと、腐り落ちた大木がぐおん! と浮かび上がった。
 シーザーが興味深げに一瞥する。サイキッカーとしての力量を認めたのだろう。
「眷属はどれも霧で出来ていたから、痕跡を殆ど残していないのね……。
 なら、元の集落を目指してみましょう。大丈夫ですよね、フリムさん?」
「はいでする! ちょっとまだ怖いでするけど……」
 と本人が頷けば、月宮・ユイはにこりと微笑み感謝を述べた。
 なお、野営の準備も万端である。なにげにそういうところは凝るタイプらしい。

 しかしフリムには、襲撃された元集落に向かうよりも気がかりなことがあるらしい。
「あ、あのぅ……大丈夫でする、か?」
 彼女がおずおず声をかけたのは、フェルト・フィルファーデンである。
 同じフェアリーの少女なら、普通は他の者より打ち解けるところだが……。
「……えっ? ああ、ごめんなさいフリム様? どうかしたのかしら?」
 ユーベルコードで召喚した"兵士達"の背中から、フリムへと視線を移す。
 心ここにあらずといった様子で、声をかけられたことにも気付かなかったようだ。
「ううん、ただ、えっと……な、なんでもないのでするっ」
 フリムは何かを言いかけ、しかしぴゅーっとフェルトの前から逃げ出した。
 誰かの影に隠れ……ようとしたのだが、面子を見比べて途方に暮れる。
 なにせ猟兵、誰も彼も個性的だ。特に灯理などは露骨に壁を作っている。
 莉亜はどうだ。優しそうな雰囲気はあるものの吸血蝙蝠がすこぶる怖い。
 シーザーは? とてもフレンドリーで紳士的なのだが何か妙な気配がする。
 メンカル……あっ、無表情のようでめちゃめちゃ瞳を輝かせている。逆に怖い。
 消去法で、ユイの後ろに隠れるフリムであった。
「……いま、何かものすごくショックな間があった気がする……」
「さすが長だねぇ、メンカルの危険性を察知したなんて。いや冗談冗談」
 魔女のじとりとした目線に、けらけらと手を振って詫びる莉亜。
「お嬢さんに怖がられてしまうとは、残念だ。君はそんなことなさそうだがね」
 これみよがしに灯理に水を向けるシーザー。
「わかっていてそう言うあたり、貴様はかなりいい性格のようだな」
 ここだけ雰囲気がだいぶ剣呑だ。しかし仕事はちゃんとしていたりする。
 サイキックエナジーを活用して障害物を除外し、直感と知識、観察をもとにルートを策定する。互いの能力はきちんと評価しているということか。
 そんな一同をよそに、ユイはほんの少し心配そうに瞼を伏せていた。
「……フリムさんも、フェルトさんの様子が気になるのね」
 ユイからすれば、フェルトは戦友だ。宇宙で肩を並べたことは記憶に新しい。
 だからこそ、彼女がここへ来てから妙な様子であることは気になっていた。
「どうしたのっ? さあ、わたしの兵士達が皆様を護ってくれるわ。
 安心して先を急ぎましょう、早くオブリビオンを倒さないとといけないもの!」
 いつも通りの瀟洒な笑みでそう謳うさまは、妙にか弱く見えた。

 若干の不安材料を残しつつも、探索そのものは順調に進んだ。
 彼らの役割分担は見事なものであり、これまでの情報や現地民であるフリムの意見を組み込んだ綿密な調査に見落としはなかった。
 にも関わらず、寝床はおろか痕跡すら発見出来なかったのである。
 まるで霧に包まれているかのように、一向に晴れぬドラゴンの謎。
 しかしその秘密の一端に、彼らは手をかけつつあった。
 結果として、探索は日没ギリギリまで続くこととなる――。

●野営
 ……グラドラゴの塒を見つけるには、さらなる探索範囲の拡大が必須。
 一同の意見はここで一致し、そして次なる問題を浮上させた。
 すなわち、範囲拡大に伴う中継地点の設置作業である。
 幸いなことに、資材に関してはユイとメンカルの用意したぶんでクリア出来た。
 だがキャンプの規模が大きくなれば、それだけ多くの人手を必要とする。
「では私が設営を行おう。その分、他の作業は任せてもいいかね?」
 などとシーザーが名乗り出たものだから、一同は驚きを隠せなかった。
「こういった泥臭い作業とは無縁そうに見えるのだが?」
 日中の意趣返しとばかりに灯理が皮肉を言ってみせれば、
「私とて情緒は大切にするさ。不便だが悪くない、君も人生を楽しみたまえ」
 と、涼やかな笑みを浮かべて切り返す。またしてもここだけ剣呑な気配である。
 実際、その気になれば魔法でどうとでも出来てしまうのがこの男だ。
 灯理もそれを見抜いているのだろう。どうも二人は反りが合わないらしい。
「あ、じゃあ僕ちょっと荷物取ってくるねー」
 ひらひら手を振って足早にその場から消える莉亜。どこに何を置いてきたというのか。
「……逃げた」
 メンカルは嘆息してそれを見送りつつ、袖口からあれこれと資材道具を取り出す。
 魔女である彼女が構築した、圧縮格納術式『アバドン』の御業である。
「なら、私達も食糧を探しに行きましょう。ね、フリムさん」
 おろおろしていたフリムを見かねて、さらっと巻き込むユイ。
「えっ、わ、わたしでする? あの、えっと、あうぅう……」
 困惑した様子のフリムだが、有無を言わせぬ笑顔に気圧され大人しくついていくことに。
 彼女がちらちらと見やるのは、実はシーザー達ではなくフェルトの方だった。
「ええ、急がなくていいからあまり遠くへ行かないでね、二人とも?」
 と笑顔で見送るが、すぐにまた心ここにあらずといった面持ちで空を見上げる。
 サイキッカーとダンピールの剣呑さなど、心配している気配すらない。
「……やれやれ」
 そんなフェルトを一瞥し、灯理は心底疲れた様子で嘆息し、眉間を揉みほぐした。
「私が大人気なかったな。それに、ここにいると別の面倒事を背負い込みそうだ」
「そこまで毛嫌いすることはなかろうに。君はその手のことが得意そうに見えるよ」
 二人が指しているのは、言わずもがな妖精少女ふたりのことである。
 フリムはかなり態度が軟化しているものの、まだ立ち直ったとは言いがたい。
 それに加え、防衛戦では末裔達を鼓舞していたはずのフェルトの不調。
「あいにく、私はそういう気の利く性質ではないんだ」
 灯理の声音には、呆れと気疲れ、そして幾許かの自嘲の響きが込められていた。
 彼女がぱちんと指を鳴らすと、その隣に異形の頭を持つ執事が出現し一礼する。
「代わりの手伝いを置いていこう。私は私で、周辺の警戒でもさせてもらう」
 男装の麗人は足早にその場を去っていく。
 メンカルとシーザーは顔を見合わせ、肩をすくめた。
「……彼女も言っていたけれど。シーザー、わかっていてやってるでしょう?」
「言っただろう? 私はただ、私なりに人生を楽しんでいるだけだよ」
「楽しさを追求するってところは、私も同意するけどね……」
 いまいち食えない男の言葉に、魔女は溜息混じりに作業を手伝い始めた。

 それからしばらく時間が過ぎたあと。

 共同作業のかいあって、中継地点の雛形はすっかり出来上がっている。
 本格的な設営は朝を待つことになるが、3日目の探索開始には間に合うだろう。
 まず最初にユイとフリムが戻り、さっそく調理に取りかかった。
「おー、なんかすごくいい匂いする。いや普通に食事的な意味でね」
 莉亜が戻ってきたのは、それが一段落ついた時のことである。
「ん……それ、何」
 メンカルの視線は、莉亜の背後に注がれている。
 そう、彼の背後に浮かぶ……透明な両腕に抱えられたクーラーボックスに!
「何って、お酒」
「は?」
「だから、お酒だよー。ビールでしょ、スコッチにー、日本酒も持ってきたよ」
 ひょいひょいと、出るわ出るわ多種多様、和洋中を取り揃えた酒の数々。
 どれもそこそこの銘柄なうえ、キンキンに冷えきっているのがわかる。
 クーラーボックスの中に氷は見当たらない。となると可能性は一つ。
「……探索中に、小川か何かで冷やしてたのね」
「うん。いやだって、野営って言ったら、ねえ?」
 メンカルは溜息をついた。なんだかこの探索中はやけに多い気がする。
「ほう、これはいいね。私も一口頂いてよろしいかな」
「お、シーザーはいける人? いいねー、飲もう飲もう」
 一人飲みも乙なものだが、こういうのはやはり誰かと盃を交わしてこそ。
 莉亜はのんびりとリラックスした様子で、さっそく酒盛りの準備を始める。
「待って。それならいま、おつまみを用意するわ」
 サッ、と調理道具を手に、なぜか両目を輝かせて割り込んでくるユイ。
 なんだったらお酌だってしますと顔に書いてあった。ヤドリガミのサガなのだろうか?
「ちょうどいい材料を、フリムさんが教えてくれたの。
 主菜はそろそろ出来上がるところなのだけれど……灯理さんは?」
「あー、なんかものすんごい量のトラップ準備してたよ。まだ忙しいって。
 監視カメラまで仕掛けてたし、ありゃプロだねぇ。虫も通れなさそうだよ」
 それをスルーして酒を取りに行き、戻ってきたのだから莉亜の胆力は大したものだ。
「ふむ、そういえばフェルト君も見当たらないようだが……」
 シーザーが言うと、ユイは意外なにもにこりと微笑んだ。
「そっちは大丈夫。二人ですぐに戻ってくると思うわ」
 二人。その言葉の意味を察し、メンカルのダウナーな眼がわずかに輝いた。
「昔話……ううん、フェアリー達の伝承とか、色々聞けるかな……」
「私もそのあたりは気になるね。森の末裔、というぐらいだからね。
 もしかすると、その話からドラゴンに繋がる手がかりが得られるかもしれない」
「二人とも真面目だなぁ。いやまぁ、メンカルのは元々だけどねー」
 しゅぽん、と一本目の酒を開けながら莉亜曰く。意識が酒に行っている。
 シーザーもシーザーで、紙コップを手にしていると妙なおかしみがある。
「まずは日本酒ね、それならあれをこうして……」
 ユイはユイでおつまみメニューの策定を始めている。大丈夫だろうかこれ。

●一方その頃
「……はぁ」
 ランタンを手に、フェルトは夜の闇の中をふわふわと飛んでいた。
 人形達も従えずに夜の森をうろつくというのは、彼女らしからぬことである。
「生憎だが、今さっき罠を仕掛け終えた。監視の見回りは必要ないだろう」
「! 誰っ?」
 出し抜けな声に、フェルトは警戒した表情で振り向く。
 ランタンの灯火に照らし出されたのは、降参ポーズで佇む男装の麗人である。
「……灯理様? ご、ごめんなさい」
「失礼。気付かないふりをするのも、探偵としてどうかと思ったものでな」
 彼女はフェルトの言葉を遮ると、おもむろに歩み寄った。
 そこで何か逡巡するような間を見せたのち……ふと、一輪の花を差し出した。
「……これは?」
「気障だ、などと言わないでくれ。彼にも言ったが、私は気が利く性質じゃないんだ」
 困ったような苦笑いを浮かべ、肩をすくめる。フェルトは訝しげな顔のまま。
「傷心した女性を慰める……なんて役目はね、探偵の仕事じゃあない。
 彼らに任せるつもりでいたが、まあ、なんだ……綺麗だろう?」
 そこでフェルトはようやく理解した。彼女の、そして彼らの配慮と気配りを。
「……その、わたし」
 少女が何か言いかけたところを、今度は手をさっと突き出し再び制する。
「待った。悪いが私のお節介はここまでだ。なにせそれは"あなただけの物ではない"」
 謎めいた言い回しをしつつ、ぎこちない様子で微笑んで小首を傾げた。
「……彼女に渡してあげるといい。餅は餅屋、というやつだな」
 これまた要領を得ぬことを言うと、フェルトがきょとんとしている間に踵を返し、さっさと野営地へと戻ってしまった。おそらく酒盛りに加わるつもりだろう。

 それからすぐあと。ぽつんと暗闇に取り残された少女のもとへ、
「あ、あのうっ!」
 と、今度はフリムが現れた。フェルトはといえば、困惑を隠しきれない。
 ……彼女に、いや彼女達に自分の境遇を重ね、勝手に共感していたのは自分のほうだ。
 これといった危険も感じられないのに、こうして夜の森をあてどもなく見回ろうとしていたのもそのため。じっとしているのが出来なかったのだ。
 気が立っているのか、焦っているのか、自分でも自分の情動が読みきれない。
 ゆえにフェルトからすれば、フリムの方が申し訳無さそうな顔をしている理由がさっぱり思い当たらないのである。
「その……みんなを守ってもらった時のこと、わたし、まだお礼言ってなくて。
 励ましてもらえたのに、何も応えないままここまで来てしまったのでする……」
 そんな彼女を前にして、末裔達の長はぽつぽつと語り始めた。
「だから一度、正面から向かい合って、どうしても言いたかったのでする!
 皆を、わたしを励ましてくれて、ありがとうでする。あと、ごめんなさいっ」
「――……」
 "感謝だなんて、それどころか謝罪だなんてとんでもないわ"。
 "むしろ迷惑だったでしょう? 気にしなくていいのよ、フリム様"。
 そんな言葉が浮かんで、しかしフェルトは何も言えなかった。
「えっと、ユイさんがお手伝いしてくれて、わたし頑張ってご飯作ったのでする。
 同じフェアリーなら、きっと気に入ってもらえるのでする。だから、そのぅ……」
「……ふふっ」
 もじもじする少女の姿に、フェルトは思わず吹き出した。
 沈黙の中、彼女の心を通りすぎたのはどんな感情、どんな言葉だったのか。
 プラチナブロンドの髪をかきあげ、明るく笑う姿からはもはや読み取れない。
「ええ、ええ! お食事のお誘いね、喜んで! ご飯は皆で食べてこそ、ですものね」
 こくりと頷き、そしてさきほど手渡されたものの存在を思い出した。

 ――ああ、灯理様が言っていたのは、こういうことだったのね。

 内心で独りごち、その思いのままに花を差し出した。
「これをどうぞ、フリム様。そして一緒にご飯を食べて、明日に備えましょう。
 みんなで森に帰って、またみんなで平和で元気に暮らすために。……ね?」
 それは励ますようで、どこか祈りめいた言葉だった。
 フリムもまたそれを受け取り、こくこくと涙ぐみながら頷く。
「ん……うんっ、みんなで力を合わせて頑張るでするっ、絶対に……っ」

 かつて国を喪った少女は、その絶望を決意をけして表に出すことはない。
 フェルトだけではない。猟兵全員が何かを背負い、何かを想っている。
 それぞれに個性があり、それぞれに理由と動機があり、それぞれに過去がある。
 フリムがそうであるように、六人もまたそうなのだ。

 だが。

「……慣れないことはするものではないな、やはり」
「んー、なんか言った? お酒追加行っちゃう?」
「おつまみもありますよ、ふふ」
「それより、他の世界での活躍を……もっと話してほしい」
「焦らずとも時間はたっぷりあるとも。ん、ちょうど二人も戻ってきたようだ」
 程度の差こそあれど、焚き火を囲む七人は同じ表情を浮かべていた。
 この一時と思いを共有する、笑顔という表情を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

零井戸・寂
*匡(f01612)と

……はぁ、まさかここで鉢合わせるとは思ってなかったよ。
サバイバルは匡の方が得意な気がするし、頼らせて貰うよ。

でも意外だったな。
僕が突然モンスターになっても「どうでもいい」とか言うタイプと思ってたのに。
フェアリーの手助けなんてどんな心境の変化?
殺されるのは勘弁だなぁ……

……いや、何でって僕に聞くなよ僕が聞きたいよ。

"凪いだ海"も風が吹いて揺らぐ時があるのかな……?

戦場でも揺らぐなんて事ないよね?
そんな事ないとは思ってるけど。

……そう、なら安心だ。
僕は探索終わったらいなくなるから、後は頑張ってね。

……そういえば。
さっきの、あの一言。

どういう意図だったんだい?

(アドリブ歓迎)


鳴宮・匡
◆アドリブ歓迎
◆フルイド(f02382)と

周囲は一応影の追跡者に警戒させておく
五感情報の処理には慣れてる、暫くは疲れないだろ

野営の準備をしつつ、フルイドのほうを窺う
探索の疲れは……なさそうかな
メシは? なけりゃなんか狩ってくるけど

……ん? 
同じ猟兵だ、仕事で行き会うことだってあるさ

どんな喩えだ……さすがにそれは驚くと思うぜ
まあ、もしそれを殺せって言われたら殺すけどさ
心境の変化ってほど大袈裟じゃないけど……なんでだと思う?

……ああ
俺にもよく「わからない」んだ

ま、別に問題ないけどさ
敵は殺す、生きて帰る
戦場で考える事なんてそれだけだ

ん? ああ、さっきの。
あれは――


人前では寝ません(眠れません)




「これで俺達の担当区域は終わり、だな」
 夕暮れ。振り分けられたエリアの探索を終え、鳴宮・匡が言った。
「痕跡も残さないドラゴンか。実際どうやって移動してるんだろうね?」
 呟いた零井戸・寂の肩の上で、ドット模様の猫が呑気に毛繕いをしている。
 電子精霊『NAVI』も、匡と"影の追跡者"のおかげでのんびりし放題のようだ。
「さあな、どうでもいいさ。痕跡を探すのが俺達の仕事なんだから」
 いつもの表情でそう答え、匡はてきぱきと野営の準備に入る。
 追跡者を通じて流れ込んできた情報量は相当のものであるはず。
 だが探索開始から今に至るまで、彼が疲弊を見せた様子はまったくない。
「……うーん」
「どうした? メシが欲しいならなんか狩ってくるけど」
 振り向いた青年の顔を見て、寂はいや、と答えつつ肩をすくめた。
「やっぱり"いつも通り"だなあって。こないだはだいぶ意外に思ったんだけど」
 言葉の意図を掴みきれず、今度は匡のほうが首を傾げる。
「どういう意味だよ。猟兵同士なら、仕事で出くわすことだってあるだろ」
「まあね」

 だが寂の言う"意外"とは、それ以前のことにかかっている。
「フェアリーの手助けなんて仕事に関わってるのが不思議、って話だよ。
 それこそ、僕がいきなりモンスターになっても"どうでもいい"とか言いそうなのに」
「どんな喩えだ……さすがにそれは驚くと想うぜ」
 眉根を顰め、頬をかく匡。
 知人にそんなことを言われれば当然だ……と思いきや、
「まあ、もしそれを殺せって言われたら殺すけどさ」
 などと、あっさり言う。声音やそこに込められた感情に変化はない。
 彼の表情は嫌悪や悲嘆でなく『妙なたとえだな』という訝しみゆえである。
 それが鳴宮・匡という男だ。彼を知る人にとって、彼自身にとって。
「殺されるのは、勘弁だなぁ」
 だからこそ、寂も苦笑いで済ませた。所詮は他愛もない過程の話である。
「でもさ、実際どんな心境の変化? ほら、彼らに誘われたわけでもないみたいだし」
 彼ら。先の戦争において、匡と多くの戦場をともにした仲間のことだ。
 金色の瞳を持つ、鋼の体に燃えるような心を持った剣士だとか。
 はたまた、皮肉な笑みに捻くれた心を持つ暗闇のランナーだとか。
 以前なら"君の友達"とでも表現したのだろうが、それは意図して避けた。
 なにせ、彼がその言葉に首をひねったのを目の当たりにしているからだ。
「そんな大げさなもんじゃないんだけどな」
 話している間に、テントが組み上がっていた。
 続けて焚き火の準備を始める。火種は探索の途中で収拾済みだ。
「……じゃあ、なんで?」
 寂はその作業を見守りながら問いかけた。電子猫がちろちろと指先を舐める。
 しばらくの静寂。頼りきりなせいもあってか、彼にとっては落ち着かぬ時間だ。
 十秒もしなかっただろうか、ふと匡は彼のほうを見、言った。
「なんでだと思う?」
 "は?"と、弱が思わず間の抜けた声を出したのも無理はあるまい。
「いや、なんでって僕に聞くなよ。質問してるのこっちじゃないか」
 はぐらかされた? はたまた、からかわれたのだろうか。
 内向的で意志薄弱なものの、少年は口先と指先は達者なタイプである。
 実際興味があったのはたしかだ。むっとした顔になるのも無理はないだろう。
 皮肉の一つでも言ってやろうか、などと思った矢先に、
「だからさ。――俺にもよく"わからない"んだよ」
 表情を変えぬまま、けれど声音だけはほんの少しだけ変化させ、匡が言った。
 ただ、そこに籠もった色は、まるで澄んだ海のように透明で言語化し難い。
 困惑とも取れるし、寂しさとも……はたまた、自嘲とも言えるだろうか。
 たしかなのは、匡は嘘を言っていないということだ。
「……"凪いだ海"も、風が吹いて揺らぐ時があるのかな?」
 毒気を抜かれた様子で、寂は呟いた。電子猫がごろごろとすり寄る。

 苛まれ虐げられた過去を持つ彼にとって、"強さ"とはある種のトロフィーだ。
 強ければ戦える。強ければ悩みもなく前を向いて進むことが出来る。
 強ければ胸を張れる。強ければ――……とまあ、そういうふうに。
 それが事実かはさておき、寂がステレオタイプな"強さ"に惹かれるのは事実。
 戦士であり兵士である匡はその典型例で、だから憧憬を抱いたこともある。
 いまは少し、以前とは違うけれど。
「ま、別に問題はないけどさ」
 そんな彼の沈黙を、戦闘への不安と受け取ったのか、匡はそう続けた。
「敵は殺す、生きて帰る。戦場で考えることなんてそれだけだ」
「そっか。それなら安心だよ――まあ、僕はそこに居ないだろうけど」
 出しかけた問いを引っ込めて、彼もまたいつも通りの自嘲的な表情で苦笑する。
 これほどの探索を逃れるドラゴンだ。自分が助けになることなどないだろう。
 寂自身は己をそう評価している。ゆえに、付き合うのもここまで。

 ……しばらくして焚き火が灯り、ぱちぱちと火の粉が散る。
 話しているうち日暮れを過ぎ、空は昏い藍色に染まりつつあった。
「ん」
 ふと空を見上げ、寂は呟いた。
「昨日も今日も晴れてるのに、今日は星が見えないなあ」
 言葉の通り、雲ひとつない空には星の輝きがほとんど見えなかった。
 別段珍しくないことだ。たしか月の光だとか、靄のせいでそうなるのだったか。
 ……一瞬何かが引っかかったが、寂は気にせず流して、彼の方を見た。
「そういえば、あのときの一言。あれ、どういう意味だったの?」
 そんなことよりよほど気になることがあったから。
 火の番をしていた匡は、一瞬思い出すような間を挟んでから、
「ん? ああ、あれは」
 ――浮かんだものを沈める。
「……ほら、こないだ話しただろ。心構えと"芯"の話だよ」
 戦いに臨むにあたり、何をよすがとするか。
 友愛や義憤といった"気持ち"を礎に、分不相応な戦いにも挑むか。
 はたまた、そういったものを切り捨て、0と1のデジタルな思考で判断するか。
 今日とは違う星空の下、二人が交わした言葉の記憶。それを引き出す。
「ああ。つまり、"このぐらいで驚くようじゃ、まだまだだぜ"みたいな?」
「そんな偉そうなこと言うわけじゃないけどな」
「たしかに。それこそ"らしくない"か」
 少年はくすくすと笑い、青年もつられるように苦笑した。
 それから二人は星の見えない空の下、あれこれと雑談をして時間を過ごす。
 やがて夜がさらに深まり、虫さえも寝静まる深夜となり――。

 ぱちぱち、と火の粉が散り、薪の燃える音が響く。
 暗闇のなかにオレンジ色の灯火が揺れる中、匡は一人で居た。
 彼は眠らない。……眠れない。それが同じ猟兵であれ、考え動く人ならば。
 だから、寝ずの番を買って出た。夜風に乗って、少年の寝息が聞こえる。
「……らしくない、か」
 だからだろうか。沈めたはずのものがもう一度、ぷかりと浮かんだ。
「らしくないな。ああ、本当に。おかげで、落ち着かない」
 ――そりゃ、フルイドが知らないからだよ。
 あのとき、去り際に口を衝いて独りごちた言葉が脳裏に蘇る。

 欠片でも……形が違っても、"彼が知るのとは違う自分"を垣間見せた時、彼がどう思うのか。
 それを試してみた――などとは、きっとこれからも口にすることはあるまい。
 とぷり、と。凪の海の底、"またひとつらしくないもの"が沈殿していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・明日真
次はどう出てくるかね…。
一応、警戒はしておかないとな。

ボス格がその辺ほっつき歩いてるとも思えないし、居るとしたら奥まった、最も険しい道の先ってだいたい相場が決まってるもんだ。
木々の多い方向へ道を切り拓いて進むとするか。

…それはそれとしてだ。
そろそろ腹も減ってきたし飯にしようぜ。
食える時にたらふく食っとかないとな。
テント諸々設営はちゃっちゃと済ませて、飯の準備といこうか。
…料理できるのかって?
レシピ通りにやれば普通に食えるだろ。
慣れてない奴が余計なことするから不味くなるんだ。
レシピを信じろ!

そういやフェアリーって何食ってるんだろうな?草ばっか食ってるイメージがあるが、ちょっと聞いてみるか。


アルジャンテ・レラ
災難でしたね。
ひとまずの脅威は払えましたし、今のうちに情報を得るべきでしょう。
誰よりも森を知り尽くした貴女のお力が必要です。
是非同道を頼みたく。
執念、というものを感じましたが……
過去の文献にもドラゴンに纏わる記載はなかったのですよね?

フリムさんと森を見回り、平時と何ら変わらぬ場、何者かが通った形跡が残された場を把握します。
跡を辿れば寝床の方角はわかると思いますから。
そして近辺を探索。
疲れを知らない体です。ご心配には及びませんよ。

レシピを持参していないので何も作れません。
手を借りたい方がいるのならばせめてお手伝いします。
私に睡眠という機能は備わっていませんが、
他の方に倣い目は閉じておきましょう。


城石・恵助
ただでさえ未開の森が更に密林状態に…
これは…珍味の予感がする!!

というわけで第一回ブルーノ―グルメツアーだよ
探索がてらフリムに食べ物がありそうな場所を案内して貰おう
食糧の備蓄も心許ないみたいだし、補給も兼ねて
何があるか楽しみだね

とりあえずめぼしい物は口に入れながら歩くよ
多少痺れたりするかもだけど、それもスパイスさ
腹も膨れる、味見も毒見もできる。一石三鳥だね
竜肉に合いそうなのとかないかなぁモグモグ
〈毒・激痛耐性〉〈気合〉

香りの強いものは香草焼きの類とか
色々ぶちこんで煮込んでみるのもいいかなぁ
キャンプっていったらカレーだよねやっぱ
無論、現地の味も楽しむべきだね
フリム達は普段どう調理してるんでする?



●探索?:3日目
「しかし、災難でしたね」
「はいでする……でも、もう元気出たでするよっ!」
「おらァ!(ざんっ! ずずーん……)」
「よし、これで次なる珍味への道が開けたよ やったね!」

「……元気ですか、それはなによりです。貴女のお力が必要ですから」
「わたしに出来ることならなんだってお手伝い、でするっ!」
「おっ、見ろよ。この木、なんか面白い色のキノコ生えてるぜ」
「うーんこれはどうみても毒の気配。そこが気に入ったッ!(ぶちり)」

「…………ありがとうございます。ではさっそくですが。
 ドラゴンには執念があるようですが、過去に何か因縁があったとかは」
「ううん、わたしは聞いたことないでする……」
「おらァ!!(ごかっ! ばっしゃーん!)」
「刻印魔術ヤバすぎる。ガチンコ漁なんか目じゃないよこれ」

「………………すみません、ちょっと待っててください」
 アルジャンテ・レラはフリムに一言断ると、大きく大きく深呼吸した。
 そして振り返る。ぷかぷか浮かぶ魚を喜び勇んで捕獲する男子二人を。
「あの」
「うおおお、なんだこの魚! 牙生えてんぞ!?」
「ピラニアってダシが出てスープが美味しいらしいよ。生で食べよう」
「あのですね」
「こっちの魚、なんかものすげえヒワイな形してんな」
「ていうかこれどうみても……よし、これは生でいこう」
「わかりました二人揃って頭部を射抜けばいいんですね」
 ギリギリギリギリ。全力で大型弓の弦を引き絞るアルジャンテ。
 目がマジである。男子二人は慌ててホールドアップした。

 え? いったい誰と誰なのかって?
 斧で大木叩き斬ったりガチンコ漁してたのが柊・明日真で。
 毒キノコとか肉食魚とか山盛り抱えてるのが城石・恵助である。
「いきなりなんだよ、猟兵同士で闘ろうってのか!?」
「今までの振る舞いでその台詞が出るとか脳味噌筋肉ですか貴方」
 明日真は愕然とした。アルジャンテはまた深呼吸した。
「あなたもです、恵助さん。私達がなんのためにここに来たのか……」
「(ぱくっ)あーこれダメだ舌が痺れあばばばばばばば」
 言われる当人はものっそいナチュラルに毒キノコを食べていた。
 口がヤバいぐらい大きいとかそういうの通り越して、あまりにもチャレンジブルすぎる姿勢にもはや言葉を失うアルジャンテ。
「そ、それは!」
「ああフリムさん、すみません。すぐに落ち着くと思いますから」
「食べると痺れて痙攣したのち全身の穴という穴からアレげな体液とかドバドバ出して死んじゃうキノコ略して『スイートマッシュルーム』でする!!」
「なんでそんなの生えてるんですかしかも名前が杜撰すぎる」
 一息で澱みなくツッコミ終えて、思わずうなだれるアルジャンテ。
「おかしい、私達は探索に来ていたはずで……」
「……ていうか、それアイツ死なねえか?」
 明日真の言うことももっともである。二人は慌てて恵助に駆け寄った。
「うーん、スイート!」
 本人けろっとしてた。さすがの食いしん坊ぶりである。
 アルジャンテのガチめな説教はしばらく続いたという。

●野営
 そんなこんなで夜。アルジャンテは大きく、大きく溜息をついた。
「疲れを知らない体、のはずなんですが。妙に徒労感があります」
 手のかかる単純男子二人を引率……もとい同行させた探索である。
 これまでの二日間同様、やはりドラゴンの痕跡は見つからなかった。
「やはり、地上とは別の移動手段を取っているという仮説が正しいようですね。
 森の末裔にも、襲われる覚えはないとのことですし……」
 人形は熟考する。だとすれば奴はどこへ、どうやって潜んでいる?
 ふと空を見上げた。晴れ渡った空には、しかし星が視えず……。
「……星が、見えない?」
 怪訝な顔で考え込む。たしか本で読んだ覚えがある。
 晴れの日に星が見えないのは、高く舞い上がった霧のような靄によるもの。
 霧。それはグラドラゴの纏うものでもある。だとすれば……。
「たしか、奴は普通なら渓谷に潜むとか。となると――」

「へえー、フェアリーでも肉喰うのか! すげえな!」
「食べるときは牛一頭ぐらい皆で食べちゃうでする~」
「ドラゴンステーキ楽しみだよねぇ。あ、そろそろカレー出来るよ」
 すっかり打ち解けている三人の声を聞いて、うなだれた。
「……もう少し真面目に今後のことを考えないんですか」
 と、変わらぬ表情のまま皮肉っぽく問いかけると。
「そりゃあまあ、そうだけどよ。食えるときに食っとかないとだろ。
 肩肘張ってうんうん唸ったって、腹減るだけだぜ?」
 と、ざっくばらんに明日真が答える。
 彼とてひとかどの猟兵である。力の入れどころと抜きどころを知っているのだ。
「お前、ここに来てから難しい顔してばっかだろ。リラックスしろよ」
 などと、逆に慮られる始末。アルジャンテは半ば呆然とした。

「もともと僕はドラゴンステーキ目当てでここに来たしね。
 それにほら、痕跡は見つからなかったけど食糧はたっぷり手に入れたよ」
 恵助ががさり、と見せた山いっぱいのキノコやらなんやら。
 よく見れば、魚は長期保存が効くように調理が施されている。
「これ、フリム達が持っていく用なんだ。備蓄も心許ないって話だからね」
 彼もまた彼なりに、フェアリーとこの森のことを心配していたらしい。
 ……ドラゴンステーキ云々は聞かなかったことにしておいたほうがいいだろう。

 ともあれそんな二人の言葉に、アルジャンテは顔をそむける。
 彼は多くの知識を持つ。欲求の赴くまま、無数の書籍を読みふけってきたがゆえに。
 だが猟兵となってから、戦場に立って彼は多くの新たなことを知った。
 今回もまた、そうだというのか。少しばかり、胸のあたりが疼いた。
「……私にはまだ、知らないことがたくさんあるんですね」
 ひとりごちた呟きの意味を、余人が知ることはない。
「まあよくわかんねーけど、飯時なんだ。明るく行こうぜ明るく!」
 しかし色んな意味で単純な明日真は、ばしばしと背中を叩く。
「痛いです。というか、恵助さんは調理してますがあなたは?」
「レシピ通りにやりゃ普通に食えるだろ。レシピを信じろ!」
「ないです。レシピ」

 間。

「やっぱ慣れてるやつに頼るのが一番だよな!」
「出来ないんですね……」
 もう何度目かの溜息をついた。
「まあ、なんです。……私も手伝いますよ、恵助さん」
「ん、ありがとう。じゃあこれよろしく」
 ひょい。恵助が差し出したのは、毒々しい色のキノコ。
 ちょっとかじられたのか、傘が微妙に欠けている。
「これ毒入りじゃないですか」
「うん。フリム達はこれ、普段どう調理してるんでする?」
「食べてるわけないじゃないですか」
「ちょびっとだけかじってしびしびを楽しむでする~」
「食べてるんですか……?」
 やっぱりこれ、知るとか知らないとかそういう話ではない気がする。
 ひび割れた感情の炉を持つ少年は、心からそう思ったという。

 ……心。
 機械で造られた自分が、そんな語彙を用いるのは妙な話だけれど。
(なんでしょうか、これは)
 あれやこれやと言い合いながら、作業を手伝いつつ、彼は思う。
(……あの人達と語らっている時と同じような……)
 金の瞳に藍色の髪をした少女の姿を思い浮かべ、ひとりごちた。
「……楽しい、というやつなんでしょうかね」
 そんな彼の声が聞こえてか聞こえずか、スプーンを銜えつつ肩をすくめる明日真。
「色々考えてるヤツってのは、大変だなぁ」
 直上系マジックナイトに、悩みというものはあまりない。
 メシを平らげたらまた明日。そして敵を見つけたら……ぶちのめす!
「うっし、そのためにもおかわりだな、おかわり!」
「よーし、じゃあ次はこの適当に煮詰めた香草スープの毒味よろしく」
「明らかに致死的な色してんじゃねーか、これ!!」
 夜空に、騒がしい声が響き渡ったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

虹結・廿
任務を続行します。
分隊編成を使って森の中を探索します。

特殊な技能類は無いですが、人数がいますので、森をくまなく探索します。

野営は、結構です。
私の身体は機械ですし、疲れませんので。
(人と話すの、疲れるし。探索してる方が、楽)
(ああでも、誘われたら断るのは悪い……かな?)

……夜になれば義体を1体野営地に駐屯(イケニエ)させて夜番でもしますです。
(これで大丈夫だよね?)
(早く戦いにならないかな。戦ってる時が一番好きなのに…。)
(敵を撃って、任務を達成して、褒められる。うん、これが一番分かりやすいよね。)

食用の果実を発見。
(あ、これ、持って行ったら、褒めてくれるかな?)
……野営地に持ち帰りましょう。


ジョン・ブラウン
引き続きメルエ・メルルルシア(f00640)と共に行動

■探索
引き続きだしっぱのだむぐるみの群れをぞろぞろ引き連れて
フリムに案内されながら探索するよ
こら木の枝とか石とか拾わない、僕のリュックに詰めるなって!

■キャンプ
夜は皆でキャンプだ!
ボーイスカウトでならした僕に任せ……水道がないね?
……メルエー!僕の分のコロッケパン有るー!?
あっ、お前らそれ僕のオレンジジュース!こらリュックに持ち逃げするな!

せっかくだしトランプでもしながら話がしたいね
大丈夫、寮で使ってるフェアリーでも持てるサイズの持ってきたよ
そうだね……あれは僕が宇宙戦艦で黒い騎士と戦った時の……
そうして僕は伝説の鹿料理を……

アドリブ等歓迎


ロク・ザイオン
(ととさまの森とは違う匂いがするけれど。
森だ。雄大なる森だ)
……森は得意。
(大森林を前に、森番はイキイキしている)

(【地形利用】し痕跡を追いながら【追跡】する。
歩き慣れない者の為に藪を開いたり、
寝床の為に「烙禍」で邪魔なものを脆く平らに出来る。
最近の森番は狩った肉に塩振って食うだけではない。なんとカレーも作れる森番だ。
夜の番も、【野生の勘】【暗視】でこなそう。
森番、大変イキイキしている)

森番は森をゆくひとを守る。
おれの、仕事。
それと。……たくさんで狩りをするのは。
楽しい。
(小さく愛らしいものたちのため。
森番は張り切っている)

……おれの声が嫌じゃないなら。
誰かと共にいるのも、構わない。


メルエ・メルルルシア
村の方は一安心、だな
あとは敵の親玉を見つける……っと。
導き手はよろしくな、フリム

【キャンプ】
オレは妖精のパン屋さん。妖精用の小さいパンも、人間さん用の大きいパンも大得意

この状況じゃあ疲れも溜まるだろうし、フリムにも食わせてやろう。ジョンの好きなやつもちゃんと持ってきてるからな

村の妖精達もいないんだし、今は長らしく振る舞う必要もないさ。
周囲の警戒はオレたちに任せてお腹いっぱい食べておけよ

【探索】
せっかく羽があるんだ、少し上の方から周囲を警戒しつつ、皆のサポートをするぜ。敵に見つからないように注意!

【引き続き同じ寮のジョン(f00430)と一緒に行動】
アドリブ、アレンジ、他キャラとの協力大歓迎


ヴィクティム・ウィンターミュート
へぇ、野営か。いいねぇ、アナログなもんは結構嫌いじゃないんだ。とはいえ、テントの設営だの、飯作るのだろは専門外だし…どれ、テクノロジーの使い手らしく、未来のハイテクって奴を教えながら、駄弁ろうかね。

ま、それでも油断はしない。周囲にはユーベルコードの偵察ドローンをばら撒いておいて、危険がないか常にチェックしとこう。んで、数体残して皆に見せてやろうかね。ハイテクの塊、Arsene手製のドローンだぜ?そりゃもう、誰も見たことのない技術が詰め込まれてるさ

面白いだろ?こいつが空を飛んで、こいつが見たものを記録して、自分でも確認できるんだ。生物じゃないから疲れもしない。
ハイテクってすげー、そう思わないか?



●探索:4日目
 ざん、ざん、ざざん。
 見渡す限りの藪が、気持ちいいぐらいの速度で薙ぎ払われていく。
 ひょこっ。と、一瞬だけ赤い三つ編みが顔を覗かせた。
 ざん、ざん、ざざん。
 そこから一気に手前側へ、藪の波が掃けていき……。
「あっという間になくなっちゃったでする! すごいでする~!」
 ぱちぱち、と興奮した様子で拍手するフリム。
 そんな彼女の前に戻ってきたのは……赤い三つ編みの少年。
 いや、実際は少女だ。ロク・ザイオン。
「やっぱ、自然の……特に森のことになるとピカイチだよなあロクは」
 ヴィクティム・ウィンターミュートもまた、感心した様子で同意する。
 彼の脳裏には、以前彼女と共闘したこの世界での戦いが蘇っていた。
 小さな冒険に出かけた少年少女を"陰ながら"護るという、彼に似合いの戦いだったことをよく覚えている。
「おかげでだいぶ助かって……ああ、もう! だからやめろって!」
 いい感じに頷いていたジョン・ブラウンは慌ててリュックを引っ張った。
 彼の足元では、白い奇妙な生物――だむぐるみの群れが飛んだり跳ねたりしている。
 そこらへんのガラクタを押し込もうとしてくるのを止めるので精一杯だ。
「おいジョン、何遊んでんだ? オレ達はきちんと仕事してんのに!」
 ぱたぱた、と空から降りてくるなり、メルエ・メルルルシアが彼を叱りつけた。
 なお藪刈りを終えたロクを労るのに忙しいので、当人の言い分はスルー。
 小さな体ながら、慣れ親しんだ相手にはお姉さんぶるのが彼女のサガである。

「う~ん、でも……」
 藪が払われまったいらになった地面を見渡し、フリムは溜息をついた。
「見つからないでするねぇ、大きな穴」
 彼女達は何を探しているのか? 竜の痕跡ではないのか?
 ……これまでの調査の結果、ドラゴンの痕跡はほぼ無いことが確定した。
 だが手がかりはある。そもそも、あれほどの眷属を生み出せる敵がどう移動するというのか。空を飛ぶのだとすれば、間違いなくわかるのに。
「空でも地上でもないなら地下、ってのは……まさに灯台下暗し、だよね」
 ジョンが言えば、全員が頷く。
 そう、猟兵達はこう結論づけた。――龍は、大森林の地下にいる。

 どこからともなく現れた眷属達の謎。
 存在しない痕跡の在処。
 そして、日毎見えなくなりつつある星々。

 そうした手がかりが、大森林の地下に広がる巨大空間の存在を暗喩しているのだ。
「ドラゴンが通るようなサイズの穴なんてそうそう隠せるもんじゃねえさ。
 こっちにゃ無敵の森番もついてるし、すぐ見つかるさ。なっ、ロク!」
 メルエから水を向けられれば、当の少女はこくんと素直に頷いた。
「……森は、得意」
 ざりざり。彼女なりに抑えめの、しかしやはりひび割れた声。
 ヴィクティムやメルエには慣れたものである。彼らは知己であるゆえに。
 ……だが。
「ぴゃああっ!?」
 フリムは違った。
「――」
 ロクは目を見開く。一同の視線が、彼女達二人を交互に見やる。
 フリムもまた驚いた様子で、どうやらそれがロクの声らしいと悟ると。
「あ、の」
 何かを言いかけ――それより先に、ロクはすたすたと先へ行ってしまった。

 ……残された四人の間に、気まずい沈黙が流れた。
「あちゃあ……」
 メルエは額を抑え、頭を振る。想定できた事態ではある。
 とはいえ無理もない。彼らにとってロクは戦友であり、仲間なのだから。
「ワオ。あれだね、オリガとキャスリンが修羅場った時みたいな……」
 などといつもの軽口で場を和ませようとするが、ジョンも黙り込んだ。
 それというのもフリムが、ただ声に驚いたとは思えないくらい青ざめていたからだ。
「……あー、まあ、あれだ。とりあえず探索を続けないとな」
 ヴィクティムの調子も、どこかうまく回らない。さもありなん。
(クソっ、こういうの慣れてねえんだよ俺は!
 なんかねえのか、うまく話題を変えられるもんは!)
 内心で舌打ちしながら、周囲を見渡す。そして見つけた。
「あ」
「あ? ……あー」
 見つけてしまった。顔見知りの、いや仕事仲間の少女の姿を。
 一方の少女は、ものすごーく気まずそうな顔をして目をそらした。
 よく見ると周囲には、同じような装備をした義体が4体並んでいる。
「……その、ごめんなさい。妙な音がしたのでつい……撤退、します」
 半べそをかきながら、虹結・廿はとぼとぼと踵を返す。
 メルエとジョンがヴィクティムを見る。冷たい目で。
「ヴィム、まさかキミがテオダーと同じ趣味だなんて思わなかったよ」
 悪友は悲しそうな声音で言い、頭を振った。
「誰だよ!! っつーか……ああああああああ!! メンッドくせえなあああああ!!」
 森に、カウボーイの叫びがこだましたという。

●野営――の、ちょっと前
 それからは実にぎこちない時間が流れた。
 落ち込んだ様子のフリムと、あまりいきいきしなくなったロク。
 黙りこくった二人に、これまた居心地悪そうな廿が加わったのである。
 仕方なくヴィクティムがフォローに回り、ジョンはそれをからかって楽しんだ。
 メルエがそれとなくフリム達にアクションしてみるが、結局溝は埋まらず……。

 夕暮れ。
 野営の準備をさすがの手際でてきぱきと終え、ロクはさっさとその場を離れた。
 そして一人、雄大な森の風景を見つめていたのだが、そこに、
「…………あ、の」
 おずおずと声がかかり、少女の耳がぴくん、と立った。
 伺うように振り返る。そこにはやはり、フリムの姿。
「えと……その。お昼のこと、お話したいのでする」
 ロクは目線と仕草で、了解を示した。口は決して開かないまま。
 フリムはその姿を見て瞼を伏せつつ、受け入れられれば隣へと。
「わたし、ロクのことすごいと思うでする。森のこと、色々知ってて……。
 それに仕事だって、わたしよりずーっとずーっと手際がいいでする!」
 慌てたような困惑したような調子は、少女がおべっかを使っていないことの証左。
 だがロクは耳を伏せたまま、口を開かぬまま頭を振る。

 ――謝ることはない、この声はみにくいものだから。

 彼女は心中でそう呟いた。口には出さない。
 むしろ今までが、驚くべきほどに優しすぎたのだ。これが当然なのだ。
 敬愛したもの達に忌まれ、恐れられた声は、なんら変わっていない。
 ただ周りの人々が優しくしてくれただけ、なのだと。だから彼女は腰を……、
「あ、アイツのっ!」
 ……小さくて愛らしいものが、驚くほどの大きな声で言った。
「アイツの、声を……思い出して、しまったのでする。
 あっ、ロクの声が似てるとか、そんなことじゃないのでする! ただ――」
 フリムもまた、猟兵達とのふれあいで気が緩んでいたのだろう。
 喝火の声はドラゴンのそれとは似ても似つかない。それは間違いない。
 だが森に長く住むフリムにとっては、獣達がそうあるように驚くべき聲だった。
 海の底の砂が浮かび上がるように、記憶が連鎖して引き出されたのである。
「だから、ロクは悪くなくて……わ、わたしが、わたしが……っ」
 フリムは涙をこぼしながら言う。
「ごめんなさい、ごめん、なさい……っ」
 ロクは途方に暮れ……やがてぽつりと言った。
「森番は」
「……ふぇ?」
「……森をゆくひとを、護る」
 低く、高く。できるだけ恐れさせないよう、ひそやかに。
 ざりざり、さりさりと声が響く。フリムはもはや恐れない。
「それが、おれの、仕事。……だから」
 役に立ちたいと思っていた。役に立てると思っていた。
 そんな気負いと開放感があらばこそ、こんな形にこじれたのだろう。
「……おれの声が、嫌なら」
 フリムはぶんぶんと首を横に振った。ロクは驚いて、少しだけ微笑んで。
「……嫌じゃ、ない?」
 今度はこくこくと。可愛らしいな、と少女は思わず緩んでしまう。
「なら――」
「い、一緒にご飯とか、食べたいでする!」
 続けようとした言葉は少女のほうから。
 赤い毛並みの森番は一瞬驚いてから、微笑んで頷いた。

●一方その頃
「よしっ! あれなら大丈夫そうだな……ふ~、よかったぜ」
「あのさメルエ、別に声ひそめる必要なくない?」
 二人の様子を盗み聞きしていたメルエと、それにツッコミを入れるジョン。
 一同は焚き火を囲み、あるものを覗き込んでいた。――ドローンの映像である。
 いかにも、ロクとフリムのやりとりは、ヴィクティムのドローンによってさりげなーく撮影されている。多分ロクもじきに気づくだろう。
「これよぉ、やっぱ怒られるの俺じゃねえのか?」
 などといいつつ、ヴィクティムもまんざらでもなさそうである。
「うん、まあヴィムは普段の行いってやつがさ、ちょっとね」
「どういう意味だそれ! お前だって大概だろうが!!」
 悪友同士の言い争いに、メルエはやれやれと頭を振る。
「ま、一件落着みたいでよかったぜ。……どうした?」
 そんな彼女が見やったのは、所帯なさげな様子の廿であった。
 彼女からすれば、ヴィクティム以外は先程見知ったばかりの相手である。
 無理もない――かと思えば、どうもそれが理由ではないらしい。
「その……私は、こういう雰囲気が慣れていない、というか」
 野営だって本当はご遠慮したかった。人と話すのは疲れるし。
 見知った相手から誘われて……というか、引きずり込まれてここにいる。
「やはり周囲の警戒に……」
「ああああ、だから! お前は!! もっと自信を持て!!!」
 ジョンと取っ組み合いをしていたヴィクティムががーっと叫ぶ。
 じわっと泣きそうになる廿。はあああああ、と重い溜息をするカウボーイ。
「いいか? こいつらはな、お前のことも慮ってんだよ」
「……私を、ですか? えっと、でも」
「だから! そういうとこだよ!! お節介焼いてんだよ!!」
 俺は違うぞ、と三回ぐらい言った。こそばゆいらしい。

 困惑した廿が視線を向けると、ジョンとメルエは顔を見合わせて笑う。
「まあ、さっき会ったばっかりだけどさ。仲間じゃねえか、オレ達」
「と、このとおりメルエはフレンドリーなんだよね。僕はその付き合い。
 ヴィムがあんなに困ってうだうだしてるの見てるの、面白……いだだだ!」
 いいタイミングでだむぐるみが彼に群がって髪を引っ張るなどする。
 廿はどう答えるべきなのかを必死で考えた。どうすれば失礼じゃないのか。
 そしてヴィクティムとのやりとりを思い出し……ぽつりと言う。
「…………ありがとう、ございます」
「よっし、そうじゃないとな! おっ、あいつらも戻ってきたみたいだぜ!」
 メルエが言えば、なるほどたしかにロクとフリムがこちらへやってくる。
 なお、案の定ドローンはロクが捕獲していた。目が据わっている。
「オイオイオイ、死ぬわ俺」
「ヴィム、カラダニキヲツケテネ」
「もとはと言えばお前が提案したんだろうが!? あっ待てロク、待て待て話を聞」
 ぎゃー、とか、ぐあー、とか、そういう声が響いた。
 泣きはらした目のフリムは、きょとんとしてから。
 だむぐるみに囲まれたジョンは、はじめから。
 満足げな様子のメルエは、うんうんと頷いてから。
 ……廿は、彼らの様子を盗み見てから、くすりと。

 一同は、ようやくそれぞれに笑うのだった。

●そして
「さあて、それじゃあ改めてキャンプだ! ボーイスカウトでならした僕に任せ……」
「水道なんざねえぞ。言っとくがトイレもねえからな、完全アナログだぜ」
「狩りに、行こう。たくさんですると、楽しい」
「あ、それなら探索中に見つけた果実があります」
「わあ、これ珍しいやつでする! ニジュウはすごいでする~」
「こんな時間から狩りしてどうすんだよ、パン出来たぞー!」

「メルエー、僕のぶんのコロッケパンあるー!?」
「俺、肉の多いやつで! 飲み物はこいつの飲むからいいや(がさごそ)」
「……カレー、作れる(ふんす)」
「いまから煮込み、ですか? あっ、うわっ。ヴィクティムさんが、うわあ」
「ほっとけほっとけ。ロク、肉さばくの手伝ってくれー」
「わたしも手伝うでする! お料理楽しいでする~」

「おいバカリュック持ってくな! せっかくトランプ持ってきたのに!」
「ていうかこいつらなんとかしろよ! うおおなんで俺に群がるんだよ!?」
「うわ、ヴィクティムさんの全身が、うわ……(ドン引き)」
「メルエ、カレーを作ろう。おれ、カレー作れる」
「そう言うと思ってな、実は準備しといたんだよ。なっ、フリム!」
「はいでする! ロクのカレー、楽しみでする~!」

「……とそこで僕は黒騎士を相手に、こう言ってやったわけさ……」
「ジョン、それ誇張しすぎ。オレでも嘘って解るぜ。信じるヤツいるかよ」
「(ものすごく真剣な表情で、ジョンの話に耳を傾けている)」
「ここにいたよ。まあいいか、んでな、こいつはここがこうなってて……」
「おお~、これがキカイ! かっこいいしきれいでする~!」
「ヴィクティムの機械は、すごい。おれも助けてもらった」

 わいわいと楽しげな声は、夜更けまで続いたとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イェルクロルト・レイン
ユハナ(f00855)と

生きてるんなら食いもん獲ったりするだろ
でかいなら尚更、痕跡が残るもの
聞き慣れない音と風に乗るにおい
探るならそのふたつで

野営、なあ
元より根無し草故に抵抗はない
準備を進めるユハナを横目に、既にうとうと夢心地
放っておけばそのまま眠るぐらいには無頓着

眠気眼のまま手伝いを
枯れ枝……なま……
分類も面倒になって白い炎で無言の訴え
全部纏めて燃やせばいいだろ?
おれも、あんまり食べないから
果実でもあればそれでいい

くしゃみを聞きつけじとりと見やり
風邪ひかれると面倒だから
もふりと尻尾を乗っけて
礼を言われてもそっぽを向いたまま
花、ね。いいけど
春はあたたかいから好きだ
溜息と共に火に枝を投げ
おやすみ


ユハナ・ハルヴァリ
ルト(f00036)と

探すなら足音、食事跡
密林で羽撃くなら、それなりの広さが、必要です
あとは霧の名残を、魔力を追っていけるなら。
そんな感じで、探ってみましょう

野営。拠点に、天幕があるなら張って…
無ければウロや何かを、探します
手伝って、ルト
まずは火ですね
燃やすのは、枯れ枝ですよ
生は燃えません
森ですから、食糧には、困りませんね
僕はあんまり、食べませんが。皆はおなか、すくでしょう

夜は、冷えますから
ちゃんと火の傍に行って、ルト
…くしゅん。
もふりと被さるしっぽに瞬き
ありがとう。
昨日のこと、今日のこと、明日のこと
今度は花でも見に行きましょうか、なんて話
喋っていたら瞼が閉じて
いつのまにか肩に凭れてすやすやり



●探索:4日目
 食事、そして魔力痕。
 このふたつに加え、『霧』に焦点を絞った捜索は功を奏した。
「……これはまた、随分と」
 ユハナ・ハルヴァリが言葉を失ったのも無理はないだろう。
 探索の末に彼らが見つけ出したのは、霧によって巧妙に偽装された大穴である。
 それもただの穴ではない。
 ドラゴンがまるまる一頭、悠々とくぐれるほどに巨大なもの。
 加えて穴の縁や壁面の具合から見て、これは"加工された通路"である可能性が高い。
 他所から現れたグラドラゴに、そんな大掛かりな作業は不可能だ。
 ということは――。
「……元々ここにあった、ってこと、だな」
 イェルクロルト・レインの推測がすべてである。
 この大森林の地下に、おそらくは古代の帝国、はたまた邪悪な魔術師か何かが築き上げた空間が広がっている。
「ドラゴンは、この地下空間が目的で此処へ来たんでしょうか」
 穴の縁にしゃがみ込み、ユハナはつぶやいて沈思黙考した。
「ルト、どう思います? あなたは何か――」
 と振り向いた彼の無表情が少しだけ揺れた。きょとん、とした小さな驚きに。
「んー……」
 同行者であるイェルクロルトが、うとうとと船を漕いでいたからである。
 見ればすでに日は西の空へ沈みつつある。にしたってだいぶ早い眠気だが。
「……なんか、言った?」
 などと気怠げな声に、ユハナはいいえ、と苦笑の色を浮かべた声で答えた。
 探索の成果は得た。引き返し、休息を取るとしよう。
 きっと明日は、忙しくなるだろうから。

●野営
 そんなわけで、中継地点として用意されたキャンプ地にて。
 天幕や焚き火のための窪地など必要最低限の資材は存在しているが、火種や食糧といった消耗品は各自で調達、もしくは持参することとなっている。
 てきぱきと準備を進めるユハナに対し、イェルクロルトはもうだいぶおねむだ。
 なんだったら、何も敷かずに地面で丸まって寝そうな勢いである。
 ユハナは時折手を引いたり、軽く肩を叩いて呼びかけるのだが、
「ルト、ルートー? まだ火の準備が済んでません。手伝ってください」
「んー……? 火ぃ……枝?」
 おたおたと木立の方へ歩いていき、べきりと手近な枝をへし折り戻ってくる。
「ん」
「枯れ枝じゃないと燃えないですよ。あとは食糧も見繕わないと」
「…………」
 こっくりこっくり。ふわふわした尻尾が揺れる。
 すると彼の指先に、ぼっ、と白い炎が点く。美しく、どこか澱んだ穢れの灯。
「全部纏めて、燃やせばいい」
「……まあ、それでもいいですけど」
「飯も、あんまり食べないし。果物でもあればそれでいい」
「僕もそこまで食べるわけじゃないですけど……」
 イェルクロルトは、重たい瞼をなんとか開き、ユハナの顔を見つめた。
 いつも通りの無表情。けれども声音には、すこし寂しそうな気配があって。
 ひょっとすると彼なりに、この状況を楽しもうとしていたのだろうか。
「……ふん」
 ぐしぐしと頭を掻く。屋根があればそれで十分、というレベルの根無し草からしてみれば、あまり変わったシチュエーションでもないものだが。
「わかった。じゃあ、探しに行こう」
 などと根負けしたようにイェルクロルトが言えば、
「! ええ、行きましょう」
 ぴこりと尖った耳を揺らし、少年は瞳の奥にきらきら星のような輝きを見せた。
 ――なんだかんだ、狼の尻尾も左へ右へ揺れていたのは、触れずにおくとしよう。

 夜。
 ぱちぱちと火種が爆ぜて、火の粉が夜闇に散る。
 燃える炎は、イェルクロルトが生み出した白の灯火である。
「星、見えないですね」
「そうだな」
 ……ぱちぱち。
「ルト、もう少し火の傍に来ないと」
「雨が降ってなきゃ、風邪の心配なんてない」
「でも……」
 などと小言を言おうとしたユハナのほうが、くしゅんっ、とくしゃみをひとつ。
「……はぁ」
 じとりとした視線で見やりつつ、のたのたと体を寄せる。
 くるりと巻かれていた尻尾が鎌首をもたげ、鼻をさする少年にかぶせられた。
「わぷ」
 青い瞳がぱちくり瞬き、ついと隣に来た青年を見上げた。
 皮肉げな眼差しはどこへやら、イェルクロルトはそっぽを向いている。
「言ってるお前が風邪引いたら、意味ないだろ。面倒だし」
 などというぶっきらぼうな物言いに、あるかなしかの笑みを口元に浮かべ、
「――ありがとう」
 ユハナの言葉に、答える声はない。
 ただ、伏せていた耳が一瞬持ち上がり、またぺたんと髪の毛に隠れた。

 夜が更けていく。
 晴れ渡っていても星空が見えないせいか、白い炎のほかには闇ばかり。
「……この森に来て、もう何日か経ちましたね」
「最初に来た時は、ちっこいのの相手が面倒だった」
「けっこう、懐かれてたのに?」
「……だからだよ」
 イェルクロルトのもふもふは末裔たちに大層な人気だったという。

「森、思ったよりずっと広かった」
 エルフのユハナが言うとどこか奇妙だが、それは彼の出自と経験に起因する。
「こんな時間かかるなんてな」
「でも手がかりが得られて、よかったです」
「ラクに仕留められりゃいいんだけど」
 ドラゴンとの戦いは死闘となるだろう。彼らがそこにいるかはともかく。

「……今日は冷えますけど、段々暖かくなってきて」
「そろそろ、春だしな」
「春、好きですか?」
「嫌いじゃない。――いや、好きかな。暖かいから」
 隣に積み上げた長い枝を拾い、ぺきりと手折る。
「龍を倒して春になったら、この森も色んな花が咲くんでしょうか」
「多分な」
「サクラとか。春の花、見てみたいです」
「……ここには咲かないんじゃないか。もっと別のとこだろ」
「じゃあ、今度はそれを見に行きましょう。花を見に」
 ぺきり。枝を手折りながら、イェルクロルトは考える。
 四季折々の花を眺めて風雅を愛でる、だなんて上品な性質ではない。
 だがまあ、彼がそう言うなら。付き合ってやるのも、やぶさかではないか。
「花、ね。ま、いいけど」
 ぺきり。……ぺきり、ぱちぱち。
「それなら、なおさらさっさと――ユハナ?」
 ぴんと立てた耳に、聞こえてくるのはすぅすぅという安らかな寝息。
 言うまでもなく、尾にくるまれた毛並みの中からである。
「…………はぁ」
 すっかり寝入った少年を起こさぬように、静かに嘆息すると。
 ぺきり。手折った枝を炎の中に投げ入れて。
「――おやすみ」
 聞こえぬくらいの小さな、優しい声でそう告げた。
 すやすや、すぅすぅ。寝息を立てる少年の耳が、ぴくりと跳ねたのはなぜだろう。
 眠りの中で夢でも見ているのか、はたまた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドロシー・ドロイストラ
POW

こういうのはどんどん真っ直ぐ進んだらいいのだ
下手な回り道は迷子の素だ
木々を掻き分け川を越え……む、あの木の実は美味そうだな
一刻も早くドラゴンの根城へ…む、鹿がいるじゃないか、ドロシーのズンを食らえ

まあそんなこんなで調達したスレーン…肉やら持って野営に合流するとしよう
料理のほうは上手なやつに任せるとしてだ
ドロシーは薪でも集めてくるとしよう
どうせさっきの襲撃で倒木の一つや二つできてるだろう
そいつをトゥズでパッコンパッコン割れば薪の出来上がりというわけだ
薪を一つとって…「ヨル!」と炎のブレスを軽く吹けば種火になる
さあ肉を焼いてくれ、ドロシーはハラペコである


チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ、他猟兵との絡み歓迎!

ユーリのお手伝いしに来たよ!
フリム、もう大丈夫だからねっ。悪いドラゴンは、私達がやっつけてあげる!

【SPD】
さすが密林、気をつけて歩かないとだね。ありがとう、ユーリ!(差し出された手を取り)
【野生の勘】【聞き耳】を使って危険がないか確かめつつ、時折【ジャンプ】で木に登り、進行方向が間違ってないか確かめるよ。

野営の時は、わくわく、そわそわ!
これを焼くと美味しいんだよ〜♪(木の枝にマシュマロを刺した物を用意)
ユーリも、フリムもやってみる?
適度に焼けたらぱくり!んー!もっちりあまぁい!
お腹がいっぱいになったら、明日に備えてゆっくり休もう!


ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと行動
アドリブ共闘大歓迎です

凄い密林だな…素直に案内を頼むとしよう
チコル、転ばないよう気を付けるんだぞ?(手を差し伸べ)

野営となれば焚火だろう。火を起こすのは任せてくれ!
野営地が決まれば、開けた場所に乾燥した木々を集め
【属性攻撃】(炎)で静かに火を灯す
暖がわりにも調理にも役立つだろう。火が必要であれば呼んでくれ!

マシュマロを焼くのか?面白そうだな
チコルと一緒にやってみよう
…なんだこれは。表面カリカリで中がフワフワ!美味いな!
他力仕事も手伝おう。料理は…済まない、上手くないんだ
チコルや女性陣は休ませて
徹夜の見張りは任せてくれ!と気合いを入れる
こういう所で役に立たねばな!


ニコル・ピアース
さあ、探索に出発です。
ていうか眷属が襲ってきた方向に進めば辿り着けるはず。
たぶんいつかは。

というわけで邪魔な木を排除しつつまっすぐ直進です。
どうせなら最短距離の方がいいですよね。

そして途中で見かけた動物を容赦なく狩っていくのです。
うん、もちろん目的はありますよ。
それはお肉です。
野営と言ったらお肉なのです。
丸焼きにして食べるのが当然なのです。
大きい獲物から小さい獲物まで、こんがり焼いて食べるのです。
さすがに食べ切れないので他の人にも分けますよ当然。
ええと、あ、フリムさんいましたね。
お肉食べましょう。
フェアリーはお肉食べないとか無いですよね?

アドリブ、他の参加者との絡み歓迎です。


色採・トリノ
まぁ。すごい森ね?
リノはあまり、キャンプや野営はしたことがないの
上手にできるかしら?
でも…ええ、ええ、がんばりましょうね

枯れ木や木材を集めるのは、何をするにも役立つわよ、ね?
じゃあ……あ、フリムちゃんたちを驚かせないよう、先に多重人格について説明をしてから、人格の交代を
キャンプが得意な子、得意な子
リノを助けてちょうだいな

人手は多い方がいいと思うから、UCでもう一人別の子も呼んでおきましょう
ふたりとも、ケンカはしちゃだめよ
みんなと仲良く、いいこでお手伝いして、ね?
でないとリノ、かなしい、わ?

(絡み・アドリブ大歓迎。
人格の名前(色)と性格もおまかせします。
他人格はどう動かして頂いても大丈夫です)



●探索:最終日
 5日に渡る探索も、グラドラゴのねぐらが地下であることが確定したことで最後の日を迎えた。
 防衛戦における眷属の神出鬼没ぶりから見て、地下空間への入り口は複数あるはず。
 猟兵達の見立てのもと、より効率のいい突入経路を見つけ出すことになったのだ。

 そんなこんなで日中の密林地帯。
 木立の合間から覗くのは、ぴこぴこと元気よく揺れ動く兎の耳である。
「うん、問題なさそうっ。ズバッとやっちゃってー!」
 高い高い樹の頂点に飛び乗ったチコル・フワッフルが、眼下に呼びかける。
 するとその先には、行く手を塞ぐ巨木がひとつ。たもとには女が一人。
 すなわち、バトルアックスを意気揚々と担いだニコル・ピアースだ。
「では行きますよ――せいっ!!」
 長大な戦斧を両手持ちで振りかぶり、全身の膂力を込めて……叩きつける!
 ビキビキビキ! と巨木の幹に亀裂が奔り、向こう側から威力が爆ぜた。
 有り余るエネルギーは巨木もろとも、その先に林立する木々をもなぎ倒してしまう。
「おお。ニコルよ、見事なファス……腕力だ。素晴らしい」
 後ろから見物していたドロシー・ドロイストラは、素直にそれを称賛した。
 が、べきべきと倒れる木々の隙間、逃げ惑う影を見出すと目つきが鋭くなる。
「そこか。ドロシーのズンを喰らうがいい!」
 手甲を投げ槍に変形させ、小さいながら全身をバネのように用いて擲つ。
 ビュンッ!! とすさまじい勢いで空を切ったそれは、倒壊から逃れようとした雄々しい鹿を一撃で貫いた。
 魔法の力で投げ槍が戻り手甲に戻ると、その場にどさりと屍体が転がる。
「まぁ、すごいわ。これが本物の狩り、というものなのね?」
 右目を閉じた少女、色採・トリノがぱちぱちと拍手をする。
 この密林地帯にあってもその格好には汚れ一つなく清潔さを感じさせた。
 どうやら彼女は野外の活動にあまり長じていないと見え、基本的には後方支援の立場にある。

「よーし、これで前途よーよー探索再開、だねっ! ……っと、ととぉ?」
 しかしここで、倒れる木々の数が予想よりも多かったのか、地面がぐらりと揺れる。
 ギリギリのバランスで高所に立っていたチコルはふらりとよろめき……樹から落下した!
 わああ、と悲鳴のような驚いたような声がこだまする。だがその時!
「危ないっ!!」
 ごう、と炎の燃える音とともに、赤い髪をなびかせユーリ・ヴォルフが飛び出した。
 彼は空中で颯爽とチコルを受け止め、抱き上げたままばさりと羽ばたき緩やかに着地する。
「ふう、間に合ってなによりだ。チコル、怪我はないか?」
 きらり。端正な顔立ちで微笑んでみせれば、当然のように歯が煌く。
 並の女性なら、シチュエーションも相まってくらりと来そうなところだ。
「うん、ありがとユーリっ! えへへ、油断しちゃった」
「気をつけるんだぞ、チコル。何かあってからでは大変だ」
 そこでこの通り、にぱっと笑みを浮かべ素直な感謝を述べるのがチコルである。
 ユーリも微笑み頷く。実に完璧な紳士ぶりと言えよう。
 耳栓をしているのをいいことに、さりげなく告白などする男のわけがない。
 そんな微妙にヘタレた男のわけがない。大事なので二度言った。

「……なんだか、あそこだけ微妙に雰囲気違いません?」
 二人の世界に突入しているユーリ達を見て、ニコルが肩をすくめた。
「ふふ、いいんじゃないかしら? 仲良きことは美しきかな、でしょう?」
 言葉の意図を解っているのかどうか、微妙な感じでトリノが微笑む。
「そんなことよりドロシーの獲物を見よ。いいスレーン(肉)が手に入ったぞ」
 身の丈より大きな鹿の屍体を抱え、うきうきした様子のドロシー。
 なるほど、たしかに狩った獲物は上質なようだ。角も立派である。
「容赦がないですね。まあ実はかくいう私も、この通り」
「おお、小さいがいい獲物だ! ニコルはよきアー……狩人でもあるのだな!」
 すでに野営中の食事のことまで考えている肉食系女子二人、意気投合である。
「あら、お肉を焼くのね? なら火種は多めに確保しておかないとかしら。
 ねえフリムちゃん? 実はリノ、不思議な力があって――」
 と、トリノはそばにいた妖精に語りかける。多重人格者というものについて。
「そ、そんなこともできるのでする? みんなすごいのでする!」
 一同の腕力や脚力に感嘆していたフリムも、これにはひときわ目を輝かせたという。
 かくして、日中の探索は大いに順調に進み――彼らは、地下空間へ進むための新たな入り口を発見したのだった。

●野営
 かくして一同は日没よりやや早めに中継地点へ戻った。
 今日の野営の準備、および今後、末裔達が必要とするであろう資材の調達のためだ。
「ニコルよ、どちらが多く薪を用意できるかドロシーと勝負だ!」
「ほほう、それは望むところ。木なら嫌というほど伐り倒しましたからね」
 パワフル女子二名は勇み足で引き返し、伐採した木々を腕力で輸送。
 さらにそれをすさまじい速度で割断、山のような勢いで薪や木材を用意していく。
「すっごーい、あっというまに木が一本なくなっちゃった!」
「これなら新しい村もすぐに建てられるでする~!」
 チコルとフリムは驚きながらもはしゃぎ、にこにこと喜び合う。
 もともと森で暮らしていたためか、その天真爛漫さゆえか。
 彼女達もまた、あっという間に意気投合して仲良しになったようだ。

「さて、となれば荷運びは私の仕事だな……む、トリノ、どうした?」
 木材の山を運ぼうとしていたユーリは、とことこやってきた少女を訝しむ。
 するとトリノはにこりと微笑み、己の内側へと呼びかけるのだ。
「キャンプが得意な子、得意な子。リノを助けてちょうだいな?」
 目をつむり、さながら呪文めいて呟いて再び左目を開くと……。
 白いはずの瞳は、青々とした森の緑に変わっている。
 さらに『オルタナティブ・ダブル』により、隣にもうひとつの人影が出現。
 トリノと同じ外見でありながら、そちらの左目は薄い茶色に染まっていた。
『エメラ、ブラン。ふたりとも、仲良くいい子でお手伝いして、ね?
 でないと……リノ、かなしい、わ?』
 という声はどこから聞こえてきたものか。別人格二人は顔を見合わせ肩をすくめる。
「ん……わかった、任せて」
 と翠色の瞳――おそらくはエメラが頷く。
「もちろん頑張っちゃいますよぉ! 何からやります? なんでも言ってください!」
 と、薄茶色の瞳――おそらくはブランが飛び跳ねる。
 ユーリはそんな二人を見ると、なるほど、と頷いて、
「ではさっそく手伝ってもらおうか。みんなにも紹介しなければいけないしな!」
 と爽やかに笑い、新たな仲間二人を快く迎え入れたのであった。

 そして日が沈み、段々と昏くなり始めた頃。
『Yol――!』
 ドロシーが独自の龍言語を叫べば、それは逆巻く炎となって薪を燃やした。
 ごおう! と盛大な火柱が上がり、一同は歓声を上げる。
「火属性が得意な方が二人もいてくれると、火の手が気楽でありがたいですね」
 などと言いながら、捌いた肉を山ほど持ってくるニコル。
「肉を焼くには火力が重要だ。ユーリよ、こちらにも手を貸してくれるか?」
「も、もうだいぶ十分なように見えるのだが……まあ、いいだろう!」
 夜営用の松明や篝火を灯して回っていたユーリも、その炎の力を振るう。
「なになに、お肉? お肉食べられるの? やったー!」
 ぴょんぴょんと兎らしく跳ね回り、喜びを表現するチコル。
 キマイラのサガか、冒険といえど野営が楽しくて仕方ないようだ。

「実はね~、私も美味しいの持ってきたんだ! じゃーんっ!」
 取り出してみせたのは、キマイラフューチャー印のスイーツセット。
 中には、しろくてふわふわしたお菓子がたっぷりと入っている。
「あら、マシュマロですか。たしかにキャンプにはぴったりですね。
 となると木の枝が必要ですから、いくつか見繕ってきましょうか」
 と、ニコルが踵を返そうとすると。
「……大丈夫、用意しておいた」
 と、エメラが人数分のそれを差し出した。
 どうやらエメラが炊事その他の仕事を、ブランが力仕事を担当しているようだ。
 遠くのほうから、『まだまだ運びまくりますよー!』などと元気な声が聞こえてくる。
「むむ……肉もいいが、そのフワフワした菓子も美味そうだな……」
 ドロシーも興味津々で、チコル達の作業を見守っている。
「これをこうして枝に刺して、こーやって焼くと~」
 白いマシュマロが焦げつき、食欲をそそる甘い匂いを漂わせた。
「美味しそうでする~……」
「焼き立ては熱いですよ? お肉のほうもどんどん焼いていきましょうか」
 こちらもこちらで、狩りの獲物をニコルがどんどん火にかけていく。
 丸焼きである。あまりにもダイナミック、素材の味を大事にしすぎではなかろうか。
「味付けも、ちゃんとしないと……」
 見かねたエメラが、てきぱきと味付けし、焼けた部位から肉を切り分けていく。
 これだけの量には当然相応の火種が必要となるのだが、
「追加の薪、お待ちでーす! ってなんですかぁこの匂い、食欲がっ!!」
 次々に木材を運び、火力を維持するのがブランの担当だ。
 まあ漂う肉とマシュマロの匂いに、よだれをだらだらたらしているのだが。
「悩ましい、悩ましいぞ。ドロシーはどちらを選べばいいのだ……!?」
 こちらもこちらで、シリアスな表情でよだれを垂らしていた。
「どっちも食べちゃえばいーんだよ♪ 甘いのもお肉も、女の子は別腹だからねっ!」
 などと調子のいいことを言いつつ、チコルがマシュマロをぱくり。
 その隣で、フェアリーサイズに切り分けられたものをフリムもぱくり。
「ん~! もっちりあまくて美味し~♪」
「ひゅごいでひゅる、ふわふわふぇあまあま……はふあふ」
 初めて味わうお菓子の味に、フリムも目をキラキラさせて喜んでいた。
 チコルの勧めならば、とユーリもそれに則り、ぱくりと食べて目を見開く。
「外は焦げてカリカリ、中はフワフワ……うむ、美味いな!
 これなら、夜の見張りも飽きずに過ごせそうだ。夜警は任せてくれ!」
 守護者を自認するだけあって、徹夜で見張りに立つつもりのようだ。
 料理が出来ないぶん、力仕事などで仲間の役に立つ。見上げた心意気である。
「ぐぬぬぬ、やはりマシュマロを、いや肉のほうが腹に貯まるし、ぬぬぬう……!」
「ドロシーさんは素直ですねえ。悩まなくてもお肉はたっぷりありますよ?」
 ニコルが肉を焼き、エメラが切り分ける。完璧な分担作業である。
 なお、フリムはこちらにも大いに喜んだ。フェアリーだって肉は食べるのだ。

「いっぱい食べてゆっくり休んで、ドラゴン退治に備えなきゃねっ♪」
 ボリュームたっぷりの甘味と肉を堪能しながら、チコルが云う。
 そう、決戦は明日。こうして肩を並べ、備えることができるのも今日までだ。
「うむ。だからこそ、この時間を大切にしなければならないな」
 ユーリは頷き、よく焼けた肉をかじった。
「手を焼かせてくれましたからね、二度と暴れられないよう息の根を止めてやりましょう」
 などと、猛々しい台詞を吐くニコル。両手には斧の代わりに串刺しのお肉だが。
「ドロシーに任せておけば……はぐはぐ……問題ないぞ……もぐもぐ」
 こちらのドラゴン娘は、片手にマシュマロ片手に丸焼き肉で交互に食べながらである。
 なおその隣ではブランも肉にかぶりついており、二人の間に座ったエメラが甲斐甲斐しく世話をする。彼女らはそういう人格らしい。
「わたしは、たいした力を持っていないでするけど……」
 ちょびちょびとマシュマロを食べつつ、フリムは俯いて。
 しかし顔を上げて笑い、一同を見やる。
「でも、だからこそみんなのことを応援、でする! 長として、森の末裔としてっ!」
 少女の微笑みに、猟兵達は力強く頷くのだった。
 焚き火が夜闇を照らす。来るべき死闘の前、楽しい時間はあっという間に過ぎていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玄崎・供露
【WIZ】
取り敢えず向かってきた方向は解るはずだよな。奴等、霧の眷属に最短を選ばずわざわざ回り道をする知恵も理由もあるように思えんし。ってことでドローンに任せる。痕跡については霧の身体じゃ残ってるか解んないしそこは賭けだがな。っつーか残ってたら霧の眷属失格だぜ

野営……んじゃ、俺ァ夜の番でもやるか。夜目も利くし、ドローン飛ばしても良い。同じ夜の番が居りゃそいつらと話すかな

※アドリブ等大歓迎。自由に動かしていただけると幸いです


カチュア・バグースノウ
見張りの交代のわずかな休憩の睡眠時間を満喫

寝ているときにハッとして、起きる
何かが動く気配がした気がする
テントの隙間から伺う
動く影がするけど、殺気はないわね
野生動物かしら

……目が冴えたわね
一応武器を持ちつつ、見張りをしている人の元へ
焚き火に当たりつつちょっと雑談できればいいわね

いつも持ってるチョコミントタブレット、食べる?
チョコミント嫌いじゃなければいいけど

「そろそろ交代時間よ。ちょっと早いけど後は任せて」

気を引き締めて、眠気がこないようにタブレットをがりがり噛みつつ

「静かでいいわね」

アドリブ、絡み歓迎



●野営:最終日
 5日間に渡る探索は、ついに龍のねぐらを地下に見出した。
 猟兵達は、決戦に備えて最後の時間を思い思いに過ごしている。
 そして、そんな日の夜。多くの者が、体を休めている深夜のこと――。

「――っ」
 中継地点に用意された、いくつものテントの中の一つ。
 静かに眠っていたカチュア・バグースノウは突然に目を開け、跳ね起きる。
 そして淀みない動作で武器を手にとり、警戒した面持ちで外の様子を伺った。
 ……闇の中、身動ぎするものはいない……と、思われたが。
「動物? ……違うわね、なにかしらあれ」
 目を凝らす。彼女が暗闇の中に見出したのは――。

 一方、テントからやや離れた焚き火のそば。
 木でこしらえた即席の椅子に腰掛け、玄崎・供露が何かをいじくっている。
「ふん、さすがにこんなとこに仕掛けてきやしねーか。ま、取越苦労だったな」
 彼が操作していたのはドローンのデバイスである。
 周囲に浮かんでいた立体映像を閉じ、肩をすくめて軽く吐息を漏らす。
 ダンピールである彼ならば、夜目が効く。妙に寝付けないのもあった。
 そのために自家製のサーチドローンを飛ばし、周辺の警戒を行っていたのだ。

 ぼんやりと火を眺めていた供露、ふと片眉を釣り上げる。
 遅れて、ざす、ざす、と足音が近づいてきた。
「これ、ひょっとしてあなたの?」
「あん? ……ああ、そうだけど」
 現れたのはカチュア、その手には小型のドローンがひとつ。
 まぎれもなく、供露が放ったもののうちの一体である。
 故障を起こしたのか、カメラ機能は停止していた。
「テントの近くで何か気配がすると思ったら、これが落ちてたのよ」
「ああ、なるほど。悪い、なんとなく飛ばしてたんだけどな」
 供露はそれを受け取り、カバンにしまいこんだ。
「気にしてないから大丈夫よ、警戒はしておくに越したこと無いしね。
 ……でも目が冴えちゃったわね。よければ隣、いいかしら?」
「おう」
 断る理由もない。カチュアも別の木に腰掛け、焚き火を眺める。
 空は晴れ渡っていながらも、星々の瞬きはひとつとして見えない。
 どうやらこれは、地下空間から漏れ出したグラドラゴの霧のせいであるようだ。
 奴は防衛戦における、大量の眷属の発生による消耗を回復しつつある。
 時期的に考えても、明日が限度。戦いは避けられない。
「……眠くない? チョコミントタブレットあるけど、食べる?」
 嫌いじゃなければいいけど、とカチュア。
 供露は彼女のほうをしばらく横目にじっと見つめ続けていたが。
「ん。いや、味は濃いほうが好みなんでな。ちょうどいい」
 そう言って手を差し出した。マスクの隙間からひょいと放り込む。
 カチュアもまた、タブレットを口に含み、がりがりと噛み砕く。
 時折薪が爆ぜる音以外、彼女らに届く音はない。静かな夜であった。

「……しっかし。他愛もねえ霧の眷属をあんなに送り込んで、何企んでやがるんだかな」
 ふと、供露が呟いた。
 グラドラゴのねぐらはわかった。
 だが依然として、フェアリーの集落を襲っていた理由については五里霧中のままだ。
 地下空間にその理由があるのはたしかだろう。
 しかし、森の眷属達はそれを守っていたわけでもない……。
「龍どもの考えることなんてろくなもんじゃないわよ。
 おおかた、フェアリーをいじめるのが大好きのクソ野郎とかじゃないの?」
 可憐な見た目に似合わぬ、野卑な言葉遣いである。供露は再び視線を向けた。
「言い方。……や、でも実際それぐらいしか思いつかねーな。
 さもなきゃあれか、フェアリーどもは気づいてない何かがある、とかか?」
「……どうかしらね。仕留める時に聞いてみたら、案外話してくれるかも」
「そりゃいいや。命乞いなら大歓迎だ。一蹴して絶望させてやれるからよ」
 二人はくつくつと笑う。ここまできて、オブリビオンを見逃す理由など、ない。
 悪辣なやり口に、その邪悪さに。ともに思うところもあるのだろう。
「昏いところに潜んで、霧の力で他人をおびやかす。くそったれだぜ。
 間抜けどもの手口ってのは、どこの世界でも変わんねーなあ」
 そうひとりごちた供露の声音に、カチュアはなんらかの裏を感じた。
 夜の闇に、彼の赤い瞳は普段よりも色濃く映る。ダンピール。吸血鬼の子。
「……そうね」
 ゆえに彼女は、ただそう答えた。猟兵は誰も彼も事情を背負うものだ。
 彼女自身は豪放磊落でそうした面倒事を、自らのものなら笑い飛ばすタチだが。
 それぞれが抱えるものに不用意に触れるほど、愚かでもない。
「何を考えてるにせよ、竜退治はドラグナーの使命、ってね」
 担いでいた槍が、小さな白龍――ロディに変身する。それを指であやしてやりながら呟く。
「竜騎士ってんだから、やっぱこの手の連中は慣れてんだろ?」
 そんなカチュアを見、供露は問いかけた。
「蜥蜴なんざどいつもこいつも同じだろうに。イヤんなったりしねえのかよ?」
 カチュアはその言葉にふむ、と考え込み、にやりと笑う。
 戦闘狂であり、一介の戦士たるエルフの、獰猛な笑顔だ。
「そうね、どいつもこいつも同じ。同じように強いから」
 そして続けた、
「――竜退治なんて、飽きやしないわよ」
「そらなんとも頼もしいこって」
「でしょ? ついでだから、見張りも交代するわ」
 カチュアがそう言えば、供露はおとなしく厚意に甘えることにした。
 立ち上がり、その場を去ろうとして……立ち止まり、振り返る。
「ああ、そうだ」
「ん?」
「――おやすみ。明日はよろしくな」
 ひらひらと手を振り、寝床へと。カチュアもまた、おやすみなさい、と返した。
 これから龍との死闘に赴く、猟兵同士の一時の語らい。
 それを知るには、ともに言葉を交わした二人のみである……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『霧中の暴君『グラドラゴ』』

POW   :    死の竜霧
自身に【触れるだけで出血毒と麻痺毒に犯される霧】をまとい、高速移動と【毒霧と身体が裂けるような咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ミストリフレクト
【相手の姿をしている霧製】の霊を召喚する。これは【霧の中で強化され、真似た相手の武器】や【同じユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    霧中に潜むもの
戦闘用の、自身と同じ強さの【霧で作られた自身と同じ姿の無数の竜】と【霧に隠れた本体を守る巨竜】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●悪龍のねぐらにて
 ブルーノー大森林、地下。
 猟兵達の探索により発見された侵入経路は、明らかな人の手による加工がなされていた。
 つまりここは天然の地下空洞などではない、おそらくは古代に築かれたもの。
 だが壁や天井は相当の年代を閲しており、その正体を計ることは出来ない。

 ――なによりも。
『カ、カ、カ……来よったァ、来よったわ』
 通路を進んだ先、ドーム状の地下空間に鎮座していた巨大な影が嗤う。
 靄めいて立ち込めるのは、いかにも彼奴が操る霧そのものである。
 グラドラゴ。暴君と仇名される悪龍そのもの。
『末裔どもを守り抜き、ついに吾(わし)を殺しに来たか、天敵どもよォ……。
 結構、結構……そォでなくば、面白くなし。吾も此処で微睡むのには飽いたでな』
 見上げるほどに巨大な龍は、傲然たる面持ちでそう言った。
『吾が、怯え竦んで斯様な窖(あなぐら)にひそんでいたとでも……思うたか?
 カ、カ、カ。異よ、異なり……此処こそ、おのれらを喰らい殺すに似合いの場なれば』

 ――帝竜と共に沈みし、忌々しき勇者どもの遺跡ならば。

 悪竜はたしかにそう告げた。
 ではここは、まさか……群竜大陸に繋がる手がかりそのものなのか!?
『もっともォ……おのれらがそれを知ることは、ないだろうがなァ』
 霧が深まる。その奥に顕れる無数の敵影!
『誰にも知られず、看取られず。ただ無為に朽ちて死ぬがいい、我が天敵どもッ!!』
 龍が吼える。地下空間に響き渡る悪しき雄叫び!

 大空洞は広く、巨きい。奴は飛び回ることもできるだろう。
 だがこうして追い詰めた今、もはや猟兵達に背中を向けて逃げることなど不可能。
 さあ、いよいよ竜退治の時間がやってきた!
●つまりどういうこと?
 第二章の結果、グラドラゴの塒『大森林地下の巨大空間』を発見しました。
 ここは『古代に築かれたと思しき人工の空間』であり、
 グラドラゴの台詞によれば『群龍大陸に渡った伝説の勇者達の遺跡』だといいます。
 その真偽はさておき、現状グラドラゴは猟兵との戦闘を余儀なくされています。
 戦場は『ドーム型の地下大空洞』です。かなり大きいのでグラドラゴも飛行できます。
 が、戦闘からの逃亡は行なえません。つまり頑張って仕留めちゃいましょう!

(なおこの地下遺跡の探索については、本章終了後に続編として申請予定です。
 もちろん討伐に成功すれば、の話ですが。プレイングお待ちしております!)
鎧坂・灯理
【WIZ】
見た感じ、霧に入ったら私では勝てそうにないな。
ならばUCを使い、分身とバイクを三体出して、体や機体に爆発物を大量に巻く。
霧の中に分身を突入させ、本体を探しつつ、毒で死ぬ前に自爆させる。
霧で作られた竜なら心音も温度もないだろう。サーモ探知機などを使えば本体を見つけることも不可能ではないはずだ。機動力には自信があるからな。
三人+三機分の爆発だ、霧だって晴れるだろう。
そうすれば他の猟兵たちにとっては有利になるはず。もちろん私にとってもな。


シーザー・ゴールドマン
【POW】
帝竜の名前が出てくるとはね。
ドラゴン退治に興じに来たのだが、遺跡探索の方も楽しめそうだ。
自分の死後も楽しみを残してくれるとは、なかなか出来た竜だね、君は。
戦術
『シドンの栄華』を発動。
身に纏うオド(オーラ防御×毒耐性)を『維持の魔力』で強化。
霧に関しては『衝撃波』『属性攻撃:風』『全力魔法』で暴風を巻き起こして散らせます。
咆哮に関しては結局は振動、タイミングを『見切り』、オーラ防御を振動させる事によって相殺。
後は「地に墜ちたまえ」と『破壊の魔力』を込めた漆黒の槍の魔法(『属性攻撃:闇』『全力魔法』『串刺し』『投擲』)で翼を貫きます。
地に墜ちた後はオーラセイバーを振るって戦います。


月宮・ユイ
元凶たる竜のお出ましね
悪意ある竜…宇宙で見せられた夢のせいか気分が悪い
しかも扱うのが霧…あぁお前こそ、ここでその悪意ごと無為に滅べ
っとまずいわね、心は熱く頭は冷静に
ここは奴の塒で狩場、戦いの心得忘れないように…

[ケイオス]を槍に
”破魔、属性攻撃、衝撃波、高速詠唱”【界】
霧を力とするならUCで、霧払い味方を癒し強化する領域を形成していく
払えない箇所は奴の力が強い事の目印にも使えるかしら
”全力魔法、範囲攻撃、生命力吸収”
【捕食形態】:左腕を握る[星剣]核ごと狼風に強化変化
攻撃範囲の霧も喰らい摂り込む
逆に喰ってやる、グラドラゴ

勇者ね…妖精達には彼女達も忘れた縁があるのかしら

アレンジ・アドリブ協力歓迎


フェルト・フィルファーデン
ふふっ、わたしもまだまだね。あんな姿を見せてしまうなんて。でも、もう大丈夫!最後は龍を打ち倒して、幕引きとしましょうか!

ねぇ、グラドラゴ?アナタは今まで何体の眷属を送り込んだか覚えているかしら?……何人の妖精達が何度恐怖に怯えて、苦しんだか知ってるのかって聞いてるのよ。
ええ、知らないなら教えてあげる!さあ、恐怖の呪いを帯びし剣よ。舞い踊り降り注いで、その悪しき龍を切り刻みなさい!
これはアナタが与えた恐怖。アナタが森から追い出して、何度も眷属を寄越して与えた恐怖の結晶。そのほんの一握り。
霧の幻如きでこの剣は止まりはしない。……姿形だけの偽物に用は無いわ。
……もう二度と、あの子達の前に現れないで。




 龍とは、傲岸不遜な怪物である。
 強大にして凶悪、焔を吐き翼で空を舞い強靭な鱗は勇者の剣すら跳ね除ける。
 多くの世界の、多くの神話においてその恐ろしさが伝えられているのは、事実として龍というモノがそれだけの脅威を有しているからなのだ。
 ゆえに多くの龍は、自らを最強と信じてはばからない。
 此処に潜んでいたグラドラゴもまた同様。奴の言葉はすべて心からのものだ。
 己は最強であり、決して隠れ潜んでいるわけではない。
 その気になればいつでも天敵を、いやさこの森に住まう者どもを全て縊り殺せる。
 心の底からそう信じきり、またそれだけの力がある。龍とはそういうものだ。
 ――しかしそれゆえに、龍には致命的な弱点というものがある。

「あの霧、踏み込んだらそれで終わりだな。私では勝てそうにない」
 巨影を前に、鎧坂・灯理は至極落ち着き払った様子で呟いた。
 探偵として猟兵として、怜悧な思考が弾き出した当然の結論だ。
 奴が霧を自由に操る限り、おそらく勝ち目はない。
「だからこそ楽しみがいがあるというものだよ、違うかね?」
 一方のシーザー・ゴールドマンは、あくまで余裕の表情を崩さない。
 むしろ彼はすでに、この遺跡はなんなのかといった"その後"に考えを巡らせている。
 目の前にそびえ立つドラゴンなど、有象無象の一つでしかないと言いたげだ。

「悪意ある龍、しかも霧を扱う、ね……」
 そんな彼の後ろ、普段なら冷静でいることの多い月宮・ユイは浮かぬ顔をしていた。
 彼女の脳裏に去来するのは、先の銀河帝国攻略戦における戦いの一幕――。
 正しくは、それによって想起された過去の記憶である。双眸が剣呑な色を帯びる。
「無為に朽ちろ、ですって? ……お前こそ、ここでその悪意ごと無為に滅べ」
「戦意高揚はいいことだが、あまり冷静さを欠くのはお勧めできんよ」
 というシーザーの軽口も、いまのユイには届かぬ様子。
 紳士は肩をすくめ、なにやら戦術を練る灯理へと目を向けた。
 沈思黙考していた灯理は、その視線に眼を向けふん、と鼻を鳴らす。
「いちいち私に振るな。そういうのは、適役が居るさ」
 はたしてそれは誰のことか――問うまでもなく、明るい声が響く。
「ふふっ、大丈夫よユイ様! だってここには、わたし達がいるんですもの!」
 フェルト・フィルファーデンはいつも通りのおしゃまな声でそう言った。
 これから死闘に飛び込もうというのにそぐわぬ……もっと言えば、野営中に見せた心ここにあらずといった様子とも一転した、いつも通りの明るい声。
 殺気立っていたユイも、これには毒気を抜かれたようだ。
 フェルトは、ちらりと灯理を見やる。すると探偵はついと視線を前へ戻した。
(わたしもまだまだね。あんな姿を見せてしまうなんて)
 フリムや仲間達に見せてしまった醜態――どんな時でも笑顔を忘れまいとする彼女にとっては、間違いなくそうである――を思い起こし、心の中で笑う。
 だがおかげで迷いは晴れた。そう、霧のように彼女を包んでいた不安はもう無い。
「最後は龍を打ち倒して幕引きとしましょう? お伽噺のように!」
 幼いお姫様の言葉は、いつだって戦士の背中を強く押すのだ。

 対するグラドラゴは、そんな猟兵達をあくまで見下し嗤笑する。
『カ、カ、カ――無駄よ、無駄。いかな謀を企もうが、所詮は悪足掻きなり。
 吾の霧に呑まれ、絶望とともに滅びるがいい、カァカカカカ……!』
 牙の隙間から、爪から、はたまた鱗から……滲み出るように霧が溢れる。
 濃霧の奥、凝り固まった魔力は奴自身の姿を眷属として生み出すのだ。
「心は熱く、頭は冷静に……」
 フェルトの言葉で落ち着きを取り戻したユイは、小さく呟く。
 そして立ち並ぶ仲間達を一瞥し、言った。
「露払いは私が引き受けるわ。追撃をお願い!」
「いいだろう。では私が第二波を勤めようか」
 応じた灯理とユイの視線が交錯し、まずユイが最初に駆け出す。
「私は後から美味しいところを頂こう。君はどうするかね、姫君よ」
 シーザーが問いかければ、フェルトはくすりと微笑んで応える。
「とっておきの策があるのっ。どうかわたしの道を切り開いて頂戴?」
 赤公爵は慇懃に一礼してみせ、そして色ある風となってユイを追った。
 霧がじわじわとボーダーラインを圧倒し、猟兵達を飲み込まんとする。
 フェルトは霧の中に潜む影をキッと見据え、人形達を周囲に展開した!

 霧の境界線を越え、先の防衛戦と同じ姿の眷属共が次々に姿を現す。
 あくまで森の末裔を抹殺するために放たれた大群とは、質が段違いである。
 一体一体がグラドラゴに比肩しうるそれらを、しかしユイは顕れるはしから切り裂き、あるいはなぎ払い、貫いて次々に霧散させていく!
『ほォ、眷属相手の手管は識り尽くしていると言いたげだなァ?』
 霧の奥から、それを面白がる悪竜の声が響いた。
「ああそうとも、お前の霧はすでに見切っている!」
 右の金眼がぎらりと輝いた。彼女の両腕、そして槍の柄に魔力線が輝く。
「各種正常、目標捕捉! 術式陣――干渉改変『界』、展開ッ!!」
 五体目の眷属の頭部を串刺しにし、さらにそれを足場に跳躍。
 己を飲み込まんと来たる霧めがけ、龍槍『ケイオス』を擲った!
 濃霧の中心地点に矛先が突き刺さると、そこに巨大な紋章が浮かび上がった。
 さらに紋章を核としてドーム状の力場が膨れ上がり、霧を内側から侵蝕する!
『ぬうっ!? これはァ……吾の霧を喰らうというのかァ!』
 束の間霧が晴れ、姿を隠していたグラドラゴ本体が顕になる。
 好機! ユイは即座に左腕を、星剣『ステラ』もろとも狼めいた捕食形態へ融合変化。
「お前も喰ってやる、グラドラゴっ!!」
 紋章核によって生み出された領域が、ユイに力を与える。
 いける! 彼女は躊躇なく、生み出された突撃ラインへと飛び込んだ。
 だがその時、驚愕していたはずのグラドラゴがにやりと悪辣に笑い――。

「龍ともあろうものが騙し討ちかね? 情けない」
 涼し気な声とともに吹き荒れた暴風が、その笑みをかき消した。
「シーザーさん!?」
 突然の竜巻に煽られ、体勢を崩しかけたユイも声をあげた。
 さもありなん、彼女からしてみればせっかくのチャンスをふいにされたも同然だ。
 だが彼女とグラドラゴの間に、風を纏って現れたシーザーは肩をすくめる。
「あのまま喰われてしまってよかったのなら、申し訳ないことをしたね」
「あ――」
 そこでユイも気付いた。風に散らされる霧の残滓、その形に。
 まるで己の捕食形態をコピーしたかのような鏡像が苦しみながら消えていくのを。
「あいつ……私を誘い込むつもりで……!?」
「蜥蜴の割には悪知恵が働くようだ。注意したまえ」
 一部とはいえ霧を侵蝕支配したことで、ユイも戦意が逸ってしまったのだろう。
 シーザーの言葉に、もう一度深呼吸する。敵はこちらの想定以上に狡猾な手合いだ。
「……ありがとう、露払いを言い出したのは私のほうだったわね」
「いいとも。しかしさて、どうしたものか」
 シーザーは目を細めた。見やる先、再び濃霧を生み出し姿を隠そうとするグラドラゴの姿。
『賢しらな小僧め……カカカ、だが無駄、やはり無駄よォ……』
 ユイの力で支配領域を減じられたとはいえ、グラドラゴの霧はほぼ無限である。
 ならば再び身を隠し、機を伺えばいい。
 雑魚どもと同じ土俵に立つ必要などないのだ。
 無数の眷属が再び無から生じる。だがここで、"二手目"が番狂わせを引き起こした。

「露払いご苦労、準備は完了した」
 女の声。そしてパチン、というフィンガースナップが軽やかに響く。
 それに次いで大空洞を震わせたのは……バイクのエンジン音!?
「やはり私には"こういう"のが似合いだな。なにより――」
 つい、と男装の麗人が指を差し向けた。立ち込める濃霧の向こうへ。
 合図に従い、一斉にアクセルを踏んだのもまた、同じ姿をした分身達である。
 その数、実に三体。跨るのは凶悪なフォルムの改造バイク!
「他人を使うより、ずっと気が楽だよ」
 ゴウォオオオンッ!! と、三つの獣が吠え猛った。
 全身に危険極まりない爆発物を巻き付けた"疑似餌"が、毒霧めがけ疾走する!
『何ィ……ッ!?』
 さしものグラドラゴも、今度ばかりは心の底から驚愕した。
 むべなるかな。奴が今纏うのは致死の猛毒を孕んだ霧である。
 飛び込むのは愚策、いわば自殺行為。他ならぬ灯理自身が推理した通りなのだ。
「だから"私"を使うことにした。文明の利器を甘く見るなよ」
 愛用のメガネを熱源探知モードに切り替え、分身達のマシンと同期させる。
 眷属は所詮、霧の集合体である。ならばそこに熱も心の臓腑もありはしない。
 視界が覆われていようが無関係だ。その奥に隠れた本体を見つければよし。
「捉えた、そこだな。――備えろよ、道が開けるぞ!」
 直後……KRAAAAAAASHッ!!
 盛大な爆音が立て続けに三度響いた! 分身達による本体への特攻である!
 自分と同じ姿をした分身を捨て石扱いすることに、灯理は何の躊躇も持たない。
 彼女はそういう女であり、だからこそこの無茶苦茶な戦法を可能としたのだ。
 爆風の奥から、グラドラゴの驚愕と苦悶の絶叫。溢れ返った眷属も四散する。

『お……おのれェッ!!』
 爆煙の中から、ばさり!と力強く羽ばたくドラゴンが現れた。
「――見つけたわよ」
 そして奴は見た。まず迫りくるユイの凝視、そして捕食形態の牙を。
 片側の翼に狼めいた牙が喰らいつき、奴の空中機動を封じる。
 だがグラドラゴも伊達に龍ではない。片翼でも飛行は維持できるようだ。
「そこで、私だ」
 いかにも、シーザーである。その手には凝縮された闇のごとき魔力の槍。
 グラドラゴはこれを見下ろし、恐るべき咆哮で吹き飛ばさんとする、が!
『ガァアアアアアッ!!』
 毒霧とともにシーザーを襲った咆哮は、まるで彼にダメージを与えていない。
 彼を覆う赤黒い魔力が波打ち、大気をたわませたに留まったのだ。
「所詮、音は振動だ。こうすれば造作もない。――では、地に墜ちたまえ」
 そして悠々と、破壊の魔力を込めた槍を擲ち……片翼を、貫いた!
『ぐ、おぉおおおっ!?』
 グラドラゴは空中で姿勢を制御しきれず、もんどり打って落下。
 ユイがその巨体を蹴って退避した直後、地面に激突。
 大空洞が大きく揺れ、轟音と衝撃が霧を吹き飛ばした!

 ……龍とは、傲岸不遜な怪物である。
 ゆえに奴は怒り狂っていた。たかが人間、たかが猟兵にこうまでいいようにされるとは。
 許すまじ。だが龍たる己が、小物どもに本気になるなど――。
「……ねぇ、グラドラゴ?」
 ぎろりと悪竜は睨め返した。己を見下ろす小さき者を。
「アナタはいままで、何体の眷属を送り込んだか覚えているかしら?」
『……何がァ、言いたい……』
 ぐるるる、と龍は唸る。並の戦士ならば、それだけで震えあがることだろう。
 だがそれを受け、フェルトは悠然たる笑みを崩しはしない。
「アナタのせいで、何人の妖精達が、何度恐怖に怯えたのか。
 どれだけ苦しんだか、知っているのか。……そう聞いているのよ」
 どんな時でも彼女は微笑みを忘れない。だから此度も笑顔で居た。
 それでも、彼女の裡に渦巻くオブリビオンへの嫌悪、龍への憎悪は隠しきれるわけもなく。
『知ったことか。末裔どもがどうしたというのだァ、下らん質問よォ……!』
 底冷えするような微笑を前に、グラドラゴは嘲笑した。
 龍とは傲岸不遜な怪物である。ゆえに奴は恐怖などしない。
 ……それが少女の怒りを逆撫ですることになるとも知らずに。
「そう。ええ、ええ。そうでしょうね。"そうであってくれて嬉しい"わ。
 知らないなら教えてあげる。アナタが犯した罪、アナタが与えた恐怖を!」
 幼姫は高らかに謳い、両手を広げた。眼下で騎士達が剣を掲げる。
 その背後に浮かぶモノを見て、はじめてグラドラゴは瞠目した。
『――なんだ、それは』
 フェルトが手繰る人形など、それに比べれば物の数ではない。
 大空洞を覆い尽くしかねぬほどの、無数の禍々しき呪剣が浮かんでいるのだから!
「言ったでしょう? これはアナタが与えた恐怖そのもの。
 アナタが森から追い出して、何度も眷属をよこして与えた恐怖の結晶――の、ほんの一握り」
 ぎらりと呪剣の群れが鋒を向ける。さながら号令を待つ兵隊のように。
 ……フェルト・フィルファーデンはどんな時でも笑顔を忘れない。
 だからいつものように微笑んで、瀟洒に命じた。
「アナタが与えた恐怖、全てお返しするわね?」
『う、うおおおおおお……ッ!?』
 龍は霧を生み出し、これを模倣しようとした。遅い。あまりにも遅すぎる。
 その霧を、鏡像をも切り裂き、呪剣は雨のように降り注ぐ……降り注ぐ!

 龍とは、傲岸不遜な怪物である。
 だが唯一つだけ致命的な弱点がある――それは、力量の自負から来る油断。
 グラドラゴは油断し、それゆえにこの攻勢をまともに受けた。
 それがもたらしたダメージは大きい。だが何よりも奴を圧倒せしめたもの。

 恐怖である。
 呪剣によって、いや、猟兵達のコンビネーションによって与えられた恐怖。
 グラドラゴは苦悶し、やがてそれは絶叫から怒りの咆哮に変わった。
『おおおのれがァアあああああ!!』
 かくて龍は恐怖を識り、恐怖させられたことに怒り狂った。
 その怒気を浴びながら、しかしフェルトは目を細め、言い放つ。
「もう二度と、あの子達を怯えさせたりはしない。――ここが、アナタの幕切れよ」
 そして、戦いは第二幕へと続いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天道・あや
お似合いだか帝竜だか知らないけど…妖精達を…フリムを…友達を傷つけるならあたしは許さない!過去は何時までも未来への道を邪魔する事は出来ない!それを今教えてあげる!!

真の姿(20代前半ぐらいの姿)を解放!そして【Anata ni okuru uta!】で龍退治の唄を【サンダー!ミュージック!】で歌を全力で歌ってグラドラゴの【毒霧と身体が裂けるような咆哮】を掻き消してみせる!


グルクトゥラ・ウォータンク
【アドリブ絡み歓迎】
なに、群竜大陸じゃと!?……えー、群竜大陸と言えば、かつて勇者の一行に滅ぼされたという「帝竜ヴァルギリオス」と、千の竜が住まうという忌まわしき大陸ではないかー。(A&W観光パンフをチラ見)
ならば、どうあっても貴様を倒してこの遺跡を調査せねばならんな!

UC発動、予め【メカニック】で【武器改造】したウォーバイク召喚!更に愛銃を搭載!【援護射撃】【範囲攻撃】で高速機動しながら弾丸をばらまくぞい!砲台の制御は電脳妖精とボールズに任せる!
どうやらわしのパチモンを召喚するようじゃが、わしとデッドヒート繰り広げるにゃ足りんのう。スペックが同じなら、勝負の差は【覚悟】と、クソ度胸じゃああ!


エドゥアルト・ルーデル
つまりよぉ…貴様をぶちのめして素材を剥いだ後スカベンジすればいいんでござるね?
モンスターハンティングの時間だオラァ!!

ありったけの【爆撃機部隊】を召喚し、本体を守る【無数の竜】と【本体を守る巨龍】に対しぶつかる勢いで急降下爆撃を仕掛け爆風による【衝撃波】、【吹き飛ばし】効果で身動き取れなくさせてやりますぞ!
数には数で対抗、むしろ本体が動けなくなる分有利でござるね!

UCで本丸への射線が通ったら狙撃銃を【スナイパー】にて目、鼻腔など狙撃、もし狙えるなら色々ガリガリと鳴りそうなとっておきのランチャーをぶち込んでやりますぞ

アドリブ・絡み歓迎




 霧が立ち込め、そこから無数の眷属どもが現れ吠え猛る。
 グラドラゴの姿は奥へと消え、倍近い大きさの巨竜が天井を仰ぎ咆哮をあげた。
「休んでいる暇はないぞ出撃だ! 邪竜どもを抹殺だ!!」
 エドゥアルト・ルーデルが号令を出せば背後からミニチュアめいた爆撃機部隊が出撃。
 眷属による妨害を物ともせず、ほぼ垂直の急降下爆撃をお見舞いしていく!
『チィイ、ちょこざいなァ……』
 濃霧の向こう、姿を隠さんとしていたグラドラゴが苛立たしげに呻いた。
 なぜなら爆風は衝撃波となって霧を吹き飛ばし、眷属の新たな生成を妨害しているからだ!
「こそこそ霧に隠れやがってよぉ、引きずり出して素材を引っ剥がしてやるでござるよ!」
 気分は怪物ハンターである。剥いだ鱗で鎧とか作ったりするんだろう。
 しかし怒り狂ったグラドラゴはドラゴンの狡猾さを遺憾無く発揮し、注意深く自らの姿を覆い隠す。

「チッ、こうも霧が濃いとスナイプも一苦労でござるなあ……ってあの、ウォータンク氏?」
 爆撃機部隊のサイレン音と爆音が響き渡る中、グルクトゥラ・ウォータンクはというと。
「えーと何々、かつて伝説の勇者一行に滅び去れた帝竜ヴァルギリオスと、千の龍が住まうという忌まわしき大地、それが群龍大陸じゃというのか!」
「めっちゃカンペ読んでるよね!? ていうかなにそれ、観光パンフ!?」
 割とボケキャラな天道・あやですらツッコミをせざるを得ない有り様である。
 そんなわけで『よくわかるアックスアンドウィザーズ』と書かれたパンフレットをしまいつつ、グルクトゥラはようやく戦闘モードに入った。
「ようしエドゥアルトよ、あの霧を払えばいいんじゃな? ならばわしに任せておけぃ!」
 愛用の『ガジェットボールズ』を放り投げると、それは空中で巨大な戦闘バイクに変形!
 『とぉう!』とヒーローっぽい掛け声で飛び乗ったグルクトゥラ、大型蒸気機関銃『バレットドネーター』をバイクにマウントする!
「機動力ならこいつが一番じゃ、ちょいと派手に暴れてやるぞい!」
 ドルンドルルン……ウォオオオンガルルルルッ!!
 モンスターバイクのエンジン音が響き渡り、蒸気と黒煙を吹き出して疾走する。
 すさまじい勢いでばらまかれる弾丸は、顕現したばかりの無数の龍を次々に撃ち抜き霧散させていくのだ!
「さすがはウォータンク氏! 拙者も敗けてられませぬぞー!」
 エドゥアルトの号令のもと新たな爆撃機部隊が召喚、第二波攻勢を開始する。
 爆音とエンジン音、銃声とプロペラ音が入り混じったさまはまさに戦争交響曲だ!

『やかましい虫けらどもめがァ……!』
 グラドラゴは、霧の中で忌々しげに吐き捨てた。
 まだ本体に攻撃は届いていない。だが霧を広げ、戦場を圧倒しようという己の企みは圧倒的物量と機動力によって封殺されつつある。
 業腹だ。傲岸不遜にして強大なるドラゴン、竜種たる己が人間のいいように封じ込められるなどと!
 ぐるるるる……という唸り声に応じ、霧の中からグルクトゥラと瓜二つの姿をした鏡像が召喚され、まったく同じユーベルコードによって反撃を開始する。
 これでひとまず、あのドワーフは大人しくなるだろう。問題はあの空を飛ぶガラクタどもだ。
『ガラクタ相手に人形遊びなど下らぬゥ……バラバラに吹き飛ばしてくれるわァ……!』
 グラドラゴは霧の中で巨体をもたげ、大きく大きく息を吸い始めた。
「! あいつ、咆哮でこっちを吹き飛ばすつもり!?」
 風の流れを読み、これに最初に気付いたあやは、怒りに拳を握りしめる。
 森の末裔達への非道、
 大森林を我が物顔で異形化させる傍若無人、
 そしてこの鉄火場における悪足掻き。
「妖精達を、フリムを……あたし達の友達と仲間を傷つけるヤツは、絶対許さない!」
 感情のままに叫べば、束の間彼女の姿が光り輝き……真の姿を開放した!
 15歳というあどけない少女から、20代を思わせる少しだ大人びた風貌への転身。
 握りしめたサウンドウェポンやヘッドマイクも、いよいよもっと立派なアイドルらしく彼女を際立たせている!
「うひょー! 美少女アイドルの生変身キター!!」
 などとエドゥアルトは浮かれているが、あやは真剣な表情で見返す。
「あいつの攻撃は、私がなんとかする。そのぶん任せていいよね!?」
 すると傭兵は、にやりと笑ってサムズアップしてみせた。
「可愛いお嬢さんの頼みとあっちゃあ、俺もシリアスになるしかねえなぁ!」
 あやは頷き、サウンドウェポンを構えた。そして――!

『ぬう、これは……!?』
 はじめに異変を察知したのはグラドラゴである。
 爆音と銃声、そして鬨の声が響き渡る戦場に、突如として聞こえてきた旋律。
 竜種たる彼奴からしてみれば、意味不明で低俗なふざけた音楽だ。
 それはあやが奏でるメロディ。サウンドソルジャーが生み出す、心を揺さぶる魂のリズム!
「ぬわっははは、こりゃいい! 俄然やる気が湧いてくるわぁ!」
 己の鏡像とデッドヒートを繰り広げていたグルクトゥラは、呵々大笑してアクセルをひねった。
 最大戦速! 並走状態から突き放して猛烈なターンを決め、正面から向かいあったのだ!
 スピードはさらに加速していく。霧の銃弾が彼自身とマシンを襲う!
「どうしたどうしたぁ! そんな程度じゃわしはビビらんぞぉ!!」
 肌を、装甲を切り裂かれながらも、豪放磊落なドワーフは高々と笑う。
 そしてあやの音楽が最高潮に達した瞬間、彼は立ち上がりガジェットアームを構えたのだ!
「パチモンなんぞに遅れはとらんわ、わしのクソ度胸みさらせぃ!!」
 回避行動を取ろうとした鏡像とウォーバイクが交錯――紙一重で正面衝突を回避したその刹那、豪腕によるラリアットが写し身を吹き飛ばした!
 派手にスピンした鏡像は横転して爆発四散、その爆風が霧を払う……!

 霧が晴れ、グラドラゴの巨影が顕になる。
 倍近く膨れ上がった巨体が、今まさに死の咆哮を放とうとしていた。
 それを前にしてあやは歌う。旋律に、歌声に想いを載せて。
「繋いだ絆、紡いだ想い♪ それがあれば、ドラゴンなんて怖くない♪」
 楽しげに心のままに、あらん限りの想いをシャウトに込める!
「行く手を阻む霧だって、吹き飛ばしてみせる――っ!!」
『カァアア……アアアアッ!?』
 見よ! 大気すら歪めるほどの咆哮は、しかしあやの解き放ったメロディと激突し、轟雷のような音を響かせて雲散霧消した!
 いまやグラドラゴを守る霧は一欠片ほどもありはしない。そして!
「――Feuer!!」
 ドウッ! 明らかに核的ななんかを含有したランチャーが火を吹いた!
 ロケット弾頭は煙を上げて猛進、グラドラゴの巨体に……命中!!

 KA-BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOMッ!!

『な、何故だァ、何故ェ……ッ!?』
 グラドラゴが混乱したのも無理はないだろう。
 いかにふざけていようと、グルクトゥラもエドゥアルトも一端の猟兵。
 いやさ、戦場に生きる者としてはどちらもプロなのである。
「勝負の差っちゅうのはのう、覚悟があるかないかなんじゃ!」
「Kawaiiフェアリーを泣かせた時点で、グラドラゴ殿はおしまいってわけでござるなあ」
 そして、強き心を持つ少女の、ひたむきな想いは誰にも敗けない。
「さあ、まだまだいっくよー! アタシ達の想いが籠もった旋律(こうげき)、受け止められる!?」
 人は、それを凱歌と呼ぶ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アルジャンテ・レラ
ドラゴンとは想像以上に饒舌な生物なんですね。
貴重な情報をありがとうございます。
……伝説の勇者が遺した痕跡が、どこかに?
もちろん、此処へ来た目的は忘れてなどいませんよ。
朽ちるなど御免です。

(……?
 こんな時だというのに、
 野営での一時が、あの方々の笑い声が過るなど。
 ……朽ちれば、その記憶を手放すことになってしまうのか)

単なる霊に過ぎないと思いましたが、やり辛いですね。
まるで己と戦っているようだ。
ですが、その技は自分こそ知り尽くしています。
10秒要するうちに麻痺毒を打ちこみますよ。
援護射撃で共闘者に力添え、
共闘者とグラドラゴが刃を交えている最中に、
10秒、時間をいただきます。
狙うは目元。


柊・明日真
【アドリブ歓迎】
せいぜい吠えてろクソトカゲ。
その辛気臭い霧ごと灼き斬ってやるよ。

好き勝手飛ばれるのも面倒だ、まずは翼を潰して、奴を地面に引きずり下ろすか。
周囲の地形や壁を蹴って接近、なるべく翼を狙って攻撃だ。
翼が無理そうなら斬れるところから斬っていくぞ。

【死の竜霧】は【属性攻撃、焦熱の刻印】で斬り払う。蒸発させりゃ無効化も狙えそうだ。
食らっちまうようなら【激痛耐性、毒耐性】で持ち堪える。
身を隠せそうな物陰があればそこで凌ぐことも考えておくか。


城石・恵助
あれが本物のグラドラゴ…
分身にも増して凶悪な見目をしているね
特にムチッとしたモモとかムネ肉の辺りとか。尻尾もいい。じゅるり

敵の毒霧は厄介だけれど、今の僕ならきっと耐えられる
〈オーラ防御と気合〉で凌ぎつつ突っ込もう
ここ数日しこたま毒キノコを食い漁ったからね
僕の<毒耐性>はイイ感じに高まっているはずさ
あのしびしびがだんだんクセになってきたまであるよモシャッモシャッ

真に喰われるのは誰なのか
【ミートハンマー】でお肉を柔らかくしつつ叩き込んでやろう
妖精達に働いた非道の数々
あと霧の分身を食べた時のガッカリ感
ドラゴンステーキとなって詫びるがいい
ぼんじりは焼き鳥(竜)、手羽先は唐揚げにするでする
<怪力・料理>




 グラドラゴは混乱していた。その事実が余計に奴を怒りに駆り立てた。
 さもありなん。この世界に生じてより彼奴は無敵である無双の存在だったのだ。
 自分以外の全ては取るに足らない有象無象であり、怯えさせ戯れに殺してきた。
 だがなぜだ。なぜいま、自分はこうして対応策を考える羽目になっている?
 なぜ攻撃のことごとくを無効化され、あまつさえ幾度となく姿を隠すような愚を取らされている?
 ……問うまでもない。その答えは目の前にある。
 そうだ、やつらだ。猟兵。忌まわしき我が天敵ども。
 猟兵がなんなのか、オブリビオンとはなんなのか?
 彼奴は知らない。知るつもりもない、どうでもいい。
 なぜ猟兵を天敵と考えるのか、そんなことを気にするつもりも余裕もない。
 ヤツらは天敵であり、いまもって最強無敵のドラゴンであるはずの己を苦しめ混乱させている。
 ゆえにグラドラゴは、もはや幾度目かも解らぬ怒りの雄叫びを上げた。

 激怒したドラゴンの雄叫びは、大気はおろか空間すら震わせるほどの威風を放っていた。
 達人ですら震え上がりかねぬそれを真っ向から受けて、しかし怯まぬ男達がいる。
「ケッ、やかましい。せいぜい吠えてろクソトカゲ。
 どんだけ隠れ潜もうが、その辛気臭い霧ごと灼き斬ってやるよ」
 柊・明日真は、野卑な言葉とともに吐き捨てた。
 彼は単純な男である。だからこそ、彼奴の威容に欠片ほどの畏れすら抱いていない。
 あるのは純粋な敵愾心。オブリビオンを討つという確固たる意思のみだ。
「何度か垣間見えたけど、あれが本物のグラドラゴか……凶悪な見た目だね」
 その隣で、城石・恵助は至極シリアスな顔をして頷いた。
 なお、両手には出刃包丁とガスバーナーが握りしめられている。
「特にむちっとした腿とか胸肉のあたりとか。尻尾もいい……(じゅるり)」
「真面目なこと言ったと思ったら結局それですか……」
 そんな彼の様子に、アルジャンテ・レラは呆れた顔をしてみせる。
 野営の折からこっち、この食いしん坊と単細胞には振り回されっぱなしだ。
 ……ふと、そんな破茶滅茶な記憶が脳裏に再び蘇り、彼は首を傾げた。
「あん? どうした、ビビってんのか?」
「そんなわけないでしょう。なんでもありませんよ」
 明日真の軽口をクールな表情と声音で受け流し、アルジャンテは言う。
「奴の言う通り、朽ちるつもりなどこれっぽっちもありませんからね。
 どのみちお二人は接近戦を挑むのでしょう? 余裕があれば援護します」
「当たり前だ! 近づかねえとぶった斬れねえからな!」
「当然だよね、近づかないと解体できないし」
 同じことを言っているようで、恵助と明日真の台詞にはだいぶ隔たりがあった。
 もはやツッコミは入らない。……霧が、三人を包み込んでいたからだ!

「――さあ、行ってください!」
 アルジャンテは弓を構え、鋭く叫んだ。明日真と恵助はもはや振り返らない。
 霧の中から現れたのは、ただ一人居残ったアルジャンテ自身の鏡像である。
 ちり、と眉間に鋭い痛みが走った。それが殺気だと気付いた瞬間には、彼は横っ飛びに身を投げ出していた。
「……くっ」
 直後、アルジャンテの居た場所を鋭い鏃――正しくはその形に凝縮された霧――が劈く。
 反応が一瞬遅れていれば、どうなっていたことか。
「ただの霊体と思っていましたが、なるほどこれは――!」
 シュピン! 再び放たれた矢に、間一髪でまったく同じ位置・角度の矢を放つ。
 空中で矢と矢はかちあい、圧し曲がり左右に散った。
 次の矢を射掛け、構えたのもまた同時!
「まるで己自身と戦っているようですね……!」
 なんたる強敵か。いや、だからこそできることはあるはず。
 己のことは己が識り尽くしている。活路を見出だせ!

 一方、グラドラゴに白兵戦を挑んだ二人は苦戦していた。
 グラドラゴは眷属による圧倒戦術を諦め、空を舞うことでアドバンテージを確保。
 断続的に咆哮を眼下に放ち、猟兵を牽制して距離を保っていたからだ。
 近付こうにも、奴自身が己の体を色濃く覆う毒の霧がそれを叶えさせてくれない。
「どうしたもんかなありゃあ、なんか手はあるか?」
 幾度目かのエンゲージに失敗した明日真は、舌打ちしながら恵助に問いかける。
「うん、だいたい察しはついた。あの毒霧、今の僕なら耐えられる。
 だからまず僕が飛び込んで、キミが攻撃する隙を作ろうじゃないか」
「ほんとか? ありゃかなり厄介だぜ」
 明日真の言葉に、恵助はいい笑顔で胸を叩く。
「大丈夫大丈夫、此処数日しこたま毒キノコを食い漁ったからね!」
「そういう問題かよ!?」
「あのしびしびがだんだんクセになってきたまであるよぉ(もしゃもしゃ)」
「まだ持ってたのかよっていうか今喰うのかよ!?」
 だいぶキマった感じの顔をした恵助、明日真の不安は高まる。
 しかしもはやそれ以外に策はない。二人は時間差で敵めがけ跳んだ!
『愚か者が、空の覇者たるは吾だとォ……苦しみながら知るがいい!!』
 勝ち誇った言葉とともに、グラドラゴが咆哮を放つ!
 二人はかろうじてこれを両端に飛び退ることで回避。さらに壁を蹴立てて跳躍!
 まず恵助が間合いに飛び込んだ。グラドラゴはぎろりと睨みつけ、濃密な毒の霧を触手めいて恵助の全身へと振りまく。
 常人ならば即座に泡を吹いてショック死しかねぬ激烈な猛毒。
 それを浴びて恵助は――わ、笑っている! ヤバい感じに!
「真に喰われるのは誰なのか教えてやるでするぅううう!!」
『なんだこいつはグワーッ!?』
 地形すら破壊するミートハンマー(拳)がグラドラゴの腹を打った。
 ホバリングしていた巨体が揺らぎ……そこに、明日真が飛びかかる!
「その一切を灼き斬るッ!!」
『がぁああああっ!?』
 ざうっ!! と、毒霧を焦がし切り払う剛剣一閃!
 緋焔の太刀筋は翼の根本、そして奴の強靭な鱗に激烈な一文字の傷跡を残す。
 激痛と屈辱に苛まれながら、グラドラゴの巨体が落下していく――。

 攻防はわずか9秒。その間、アルジャンテはひたすら鏡像の攻撃を避け続けていた。
 放たれた矢はどれほどか、少なからぬ鏃は彼の皮膚を裂いている。
 それでもアルジャンテは表情を崩さず、ただ対手のみを――いや。
「ここですね」
 射手は矢をつがえた。鏡像もまた同じように弓弦を引く。
 敵は己を見ている。だがアルジャンテが見ているのは鏡像だけではない。
 薄靄めいて透けた霧の体の向こう、攻撃を受け地面へ落下するグラドラゴを……鏡像越しに、見据えている!
「残念ですが、あなたの技は知り尽くしているんですよ」
 10秒。彼にとってはその時間さえ稼げればよかった。
 矢を放つ。鏡像もまた矢を――放ち、しかしそれはアルジャンテの矢に真っ二つに割かれ、霧消。
 霧の鏡像の眉間を貫き、嚆矢は一直線にグラドラゴを目指し、飛翔する――!

『が、ガァアアアアアアッ!?』
 苦悶の絶叫が、響いた。
「とっておきの麻痺毒です。自分でも、毒がどのぐらい苦しいか味わってみるといい」
 銀の射手は怜悧な声で言った。
 遠くで手を振り無事を知らせる、はちゃめちゃな共闘者達に肩をすくめながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

連日ろくに眠れなかったけど、
ヨハンなら頭も冴えてるでしょ?
君が一緒だからなんとかなるよ!
私も頑張るね
足を引っ張るような真似はしないって約束する

前線で三叉槍を振るう
怪我だって覚悟の上
ここは抜けさせない――ヨハンの技を、邪魔しないで

なるほどね、無数の竜と巨竜を消すにはドラゴン本体か
頼んでもいい?
その間の足止めは任せて!
相手の姿を借りるなんて反則でしょ
でも偽物だってわかってるし見誤らないよ
【早業】の【2回攻撃】でさっさと片を点けちゃおう

自分への攻撃は【見切り】
ヨハンへの攻撃は【武器受け】で凌ぎたいな

ねぇ、こいつを倒したら遺跡の探索もしようよ
次の目的があれば俄然頑張れるでしょ?


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

……まったく、眠れていない
冴えてるように見えますか……?
死にそうなんですけど……
頭痛がする。吐き気もする
……はい、なんとかなるといいですね
俺も精々死なないように頑張りますよ

役割は決まっている
巨竜への攻撃が彼女を助ける事になるのなら、
そこに力を注ぐのみ

本体への攻撃が叶えばいいと言うなら、
蠢く混沌で闇を這わせ、戦場すべてを視てやろう
飛翔して影から逃れる場合は無理やりでも影を作り出す
伸ばした闇で小刀を放ち、少しでも影を作れればそこから
隠れてないで出てこいよ


遺跡の探索、ね。
次の目的なんて、未来ばかり見るんだな。

(ああ、やめてくれよ。眩しいな。
 ――少し、胸が痛むんだ)



●時間は少々巻き戻る
 いよいよグラドラゴのねぐらへ突入しようという、まさにその時のこと。
「ふぁ~あ……」
 緊迫募る猟兵達の一団の只中、呑気に欠伸などするオルハ・オランシュ。
 だがはっと我に返ると、ぴしゃりと頬を叩いて気を取り直した。
「いけないいけない、寝不足だからって気を抜いちゃいけないね」
 ぶんぶんと頭を振り、隣を歩くヨハン・グレインのほうを見た。
「ヨハンはすごいね、ほとんど寝てないのにいつも通りの顔してるもん。
 それだけ頭が冴え渡ってるなら、このあとの戦いもなんとかなりそうだね!」
 いまさらだが、オルハはだいぶ天然の気がある。
 少年はたしかにいつも通りの無愛想な面だが、どうみてもそれは寝不足のせいだ。
(冴えてるように見えるんですか、この顔が……)
 寝ぼけ眼を藪睨みで誤魔化しながら、心中で呟く。声には出さない。しんどいので。
 頭痛も吐き気もするし割と倒れそうなのだが……少女の顔を見ると、口にだすのははばかられてしまう気がしたのだ。
「ごめんねヨハン、一緒に頑張ろう! 足を引っ張ったりしないって、約束するよ」
 しかもオルハは、そんな言葉を真面目くさった顔で言うのだ。
 こうなるともう、ヨハンには何も言えなくなる。
「…………はい、なんとかなると……いいですね」
 だいぶ言葉を選んだ間を置きつつ、そう答えた。
「せいぜい死なないように、がんばりますよ」
 皮肉げな言葉。彼にとっては自嘲のそれである。
 この奥に待つ敵は強大であると、落ちこぼれなりの皮膚感覚が告げていた。

●そして現在
 実際に戦闘が始まってしまえば、眠いだ吐き気だなどと言う暇は一瞬で失せた。
 怒龍は暴れ狂い、少しでも油断すれば霧が猟兵全てを飲み込もうと這い寄ってくる。
 これを凌ぎ、その奥から顕れる眷属と巨竜、そして鏡像を消し去る。
 足を止めれば空から毒の霧と咆哮が――まさに決戦そのものだ。
「やぁああっ!!」
 最前線に立つ猟兵達とともに、オルハは果敢にウェイカトリアイナを振るう。
 これまでの攻撃により、グラドラゴは二度空から地面へと引きずり降ろされた。
 ヤツは再び霧を纏い、これまで以上に眷属を増やして防御の体勢に入ったのだ。
 いまや前衛の仕事は眷属を押し止めることに集中していた。
 一瞬でも彼らが手を休め、あるいは退けば、押し上げた前線がそのまま下がることになる。
「っく、ぅっ!」
 眷属は一体一体がグラドラゴと同じ力を持つ強大な存在である。
 防衛戦で相手をした、朧なそれらとはわけが違う。
 槍を振るって一体また一体を霧散させるたび、爪が、牙が彼女を傷つけた。
 だが。
「このぐらい、覚悟の上だよっ! ここは絶対に通さないんだからっ!!」
 彼女は退かない。背中に頼るべき少年の存在を感じていたから。

 一方、後衛列の中でヨハンは沈思黙考する。
 闇雲な攻撃は消耗に繋がる、彼の術式はそうした飽和攻撃に向いていない。
 必要なのは趨勢を変えうる一手――敵の逆鱗を突く、不意打ちの一撃だ。
(そうでなければ、俺はこんなところで肩を並べることなんて出来やしない)
 微かな矜持を掲げる黒衣の魔術師は、心の底からそう思っていた。
 口に出せばきっと、彼女はそれを過小評価だと憤るのだろう。
 ……脳裏に、戦闘が始まる直前のオルハの言葉が蘇る。

(ここって、一体どんな目的で作られた遺跡なんだろうね? 気にならない?)
 無事に戦いが終わったら、遺跡の探索をしてみようなどと彼女は言っていたか。
 事実としてその必要がありそうだと、直後に敵の口から明かされたわけだが……。
(次の目的があれば、目の前の障害だって俄然頑張って乗り越えられるでしょっ?)
 きらきらと輝く翠眼。彼にはそれが、少し眩しすぎた。

 ――いけないな、こんな時に考えることじゃない。
 ちくりと胸に生まれた疼痛を振り払い、彼は結論を出した。
「オルハさん、どうにかしてあれの注意を惹きつけてください。
 これ以上はジリ貧です、本体を直接叩いて眷属を霧消させます」
 無茶な願いだとはわかっている。だが自分もさんざっぱら頼られているのだ。
 少しぐらい頼っても、きっとバチは当たらないだろう。黒闇を生み出しながら、そう思った。

「なるほどね、本体を叩く……わかった、任せてっ!」
 一方の少女は、そんな揺らぎすらなく即答した。
『吾を探り出さんとするか……小癪!』
 グラドラゴの凝視が、霧の向こうからオルハを捉える。
 直後オルハの前に、己自身とヨハン二人の鏡像が現れたではないか!
「相手の姿を借りるなんて、反則もいいとこだね。敗けないよっ!」
 風を纏い、少女は飛び出した。鏡像もまた同じように踊りかかった。
 少女の鏡像の背後、ヨハンのそれが霧の刃を生み出し彼女へと降り注がせる。
「偽物だってわかってれば、そんなの怖くないんだからっ!!」
 ヨハン本体へ届きかねぬ範囲攻撃をぐるりと武器で弾く。その隙に、鏡像の三又槍が彼女の脇腹を浅く裂いた。
「ぐ……このぉっ!!」
 矛と矛が打ち合う。傍目から見ても劣勢は一目瞭然だ。
 だが乱戦模様にあっては、猟兵からの支援は期待できない!

(どこだ)
 ヨハンの眼が昏く深く輝き、影という影を通して戦場を睥睨した。
 二転三転する乱戦の情報量が彼の脳に過負荷をかけ、焦燥がそれを後押しする。
 眦から血が溢れる。それでもなお、彼は影を見つめることをやめはしない。
(俺には、それしか出来ないから)
 脳を灼かれ、心をざわつかされながらも、彼はただ闇を見つめ続けた。
 そして捉えた。霧の奥、鎮座する巨体を!
「――沈め」
 口訣は端的に。影から狩猟動物めいて飛び出た混沌が、偽足を伸ばし龍を切り裂く。
『ぐおぉっ!? 莫迦な、霧を越えて吾を捉えただとォ……!?』
「遅い……!」
 二撃、三撃。術式に過集中するヨハンの頬を、鏡像の霧刃が裂く。だが逃さぬ!
 オルハをついに鏡像の矛が貫こうとしていたその瞬間、グラドラゴの集中が途切れ……眷属と鏡像が、かき消えた!
「やった!」
 オルハが快哉をあげる。ヨハンは応じかけ、再び視線を影の世界へ沈めた。
 こちらを見て微笑む少女の相貌を見たら、今度こそ眩しさに目が灼けてしまう気がしたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
……フリムは。
まだ、お前の声に。怯えているから。
(森をゆくひとを護る森番が故)
(それ以上に、勇気を出して歩み寄ってくれた、小さき友の安寧の為)
(張り切っている)

(【地形利用】【ダッシュ】【ジャンプ】で駆け回り躱しながら「烙禍」を叩きつける。
飛ぶ竜には届かないかも知れないが。壁、床を脆く出来れば自分は戦い易いし、大きく重い竜は動きにくくなるだろうか)

…霧には重さがない。本物はお前。

(【野生の勘】は見逃すまい。
獲物はこの中で一体だけだ。
【忍び足】で巨竜を掻い潜り本物に飛びつくことが出来れば、一本に束ねた「轟赫」を絡めて灯火とする。
目の良いものは多い。見失わなければきっと、誰かが射抜いてくれる)


鳴宮・匡
◆アドリブ歓迎
◆ジャック(f02381)と

面倒な相手だな
とはいえ、別に構いやしないさ
生きて動いているなら、殺せる相手だ

ところでジャック、お前弱点どこ?
いや、あっちのやつ殺すのに必要じゃん
俺? ……さあ、頭じゃないか?

霧で多少視界は制限されるが
別に眼だけで何もかもを把握しているわけじゃない
聴覚を含めたその他の感覚も駆使して相手の動きを見極め
霧に巻かれているうちは回避を優先
強化された相手とまともに戦うなんて馬鹿げてるからな
ジャックの起爆を待つよ

爆風で複製体が消えるならいいが
そうでなければ霧が晴れた瞬間を狙って狙撃
邪魔な複製体を散らしてから本体にかかる

――ああ、よく視えるな
悪いけど、逃がさないぜ


ジャガーノート・ジャック
TAG:鳴宮・匡(f01612)/アドリブ歓迎

(ザザッ)
標的:霧龍グラドラゴ。
――此より任務を開始する。

(ザザッ)
SPDを選択、
戦闘区に突入。
――いつかぶりだな。
共闘するにはいい機会だろう、匡。

霧ならば弱点が同じとも限るまい。
が、狙いたいなら左胸でも狙うといい。
そちらの弱点は?(熱線を撃ちつつ)
頭か、I copy.

露払いが必要ならば――
『Craft: Bomb』作動、爆弾を生成。
威力は極小で構わない。が、爆風は最大限大きくなる様調整を施す。
(武器改造+メカニック)

空間内に重大な影響のない範囲で爆弾を起爆。霧を爆風で散らせる。
(援護射撃+範囲攻撃+なぎ払い)

本体は任せる、匡。
オーヴァ。
(ザザッ)




「……戦闘、始まったね。なら"僕"の領分は終わりだ」
 にゃーう、なーん。
「……"接続、承認"――!」
 少年は、己の心臓を串刺しにした。

●閃光
 霧の守りが晴れた時、誰よりも早く戦場を駆ける影があった。
 疾走する閃光の名を、ロク・ザイオンと云う。
『来るか猟兵、吾に敵うと思うてかァ……!!』
 グラドラゴは唸りを上げる。大気が軋みをあげるような声であった。
「フリムは」
 応じる声もまた異質だった。龍のそれとは似ても似つかぬ、だが異質だ。
「まだ、お前の声に。怯えている」
 ロクは獣じみた前傾姿勢で走る。しゅうしゅうと周囲に立ち込める霧は無視。
 グラドラゴが苦し紛れに放った咆哮を避け、飛び、敵を見据える。
 彼女の脳裏によぎる、己の声で想起したものに怯える小さき者の姿。
 それを乗り越えて、『嫌いじゃない』と言ってくれた友の涙。
 守らねばならぬ。それが己の仕事、森番たる己の責務なのだから!
「お前は病だ。病は、灼く……ッ!!」
 がりがりがり、ぎりぎりぎりと烙印刀が地面を、壁をこすって焦げつき焔を生む。
 やがて霧がその後ろ姿を覆い隠し、少女と龍は濃霧の中へと消えた。

●戦場
「……面倒だな」
 そのさまを目視していた鳴宮・匡は、嫌悪を隠しもせず舌打ちした。
 狙いをつけ本体を穿とうとしたまさにその瞬間、奴はロクもろとも再び霧を纏ったのだ。
 そしていま、霧は立ち込め晴れていない。眷属は現れ始めている。
 ロクはどうなった? うまくやったのか――いや、だとしたらこうはなっていない。
 ではどうする。如何にして彼女を……いや、違うか。
「あれを殺せば晴れるんだろう、ならそれだけ考えるさ」
 生きて動いている相手ならば、殺せる。いや、殺す。
 それが戦場傭兵としての在り方である。この場において、少女への一念はあえて切り捨てた。
 なにせいま彼は、立ち込める霧の中から――その時、銃声!
「甘いな」
 BLAM! わずかに身を傾(かし)ぎ、匡は振り返らぬまま背後を撃ち抜いた。
 霧の中から、彼と似た姿をした鏡像がぐらりと現れ、斃れて霧散した。
 左様、彼はいま再び立ち込めた霧の中、次々に生まれ続ける己の鏡像そのものと相対している。
 だが所詮は偽物だ。一撃ごとに回避し、撃ち抜く。問題はその数、そして頻度。
(段々狙いが正確になってきてるな――強化されてるのか)
 五感を研ぎ澄ませた匡にとって、たとえ霧の中とて己の鏡像を見出すことは容易いことである。
 しかし数は力だ。これが二度三度であるうちはいいが、五度十度と続けば対応策を考えねばなるまい。
 とはいえ、彼に飽和攻撃は不得手――その時、霧の中にざりざりと砂嵐が立ち込めた。

《――標的、霧龍グラドラゴ。これより任務を開始する》
 砂嵐めいたノイズの中、現れたのは鋼の豹と形容すべき巨躯だった。
 ジャガーノート・ジャック。冷徹にして怜悧なる鉄の兵士。
 いかなるときでも揺らがず、判断を誤ることのない理想的な兵器。
 その姿を認めた霧が、鋼の鏡像を生み出そうとし――神業的な熱線銃の早撃ちで霧散した。
《――戦闘区域全体に濃霧を確認。各種レーダーにジャミングあり》
 本体を電子的な方法で捜索することは不可能。敵は相当用心深く己の姿を隠していると見えた。
 しかし奇妙なことが一つある。それを黙考しながらも、ジャガーノートは傭兵を見やった。
《――いつかぶりだな、匡》
 銀河帝国攻略戦以来の共同戦線、肩を並べるのはさらに遡るか。
 鋼の豹のカメラアイと、蒼なき焦茶色の瞳が束の間交錯した。
「ジャックか。お前なら霧(これ)、吹き飛ばせるだろ?」
 傭兵の言葉は友人同士の挨拶のように気兼ねなく、兵士そのものの冷静さ。
 問われたジャガーノートは、キュインとカメラアイを収束させた。それが答えだ。
「なら頼む。俺は本体を殺す」
《――i copy.》
 傭兵と兵士ならば、それ以上の言葉は必要ない。
 二人は、霧の中から顕れる無数の鏡像を相手に、どこまでもデジタルでシステマチックな共闘を開始した。

●少女
 ロクは己を人だという。だがこのときばかりは、獣になったつもりで動いていた。
 いや、事実獣じみた動作である。四足で跳び、跳ね、躱し、攻める。
『賢しらなけだもの風情が、龍に仇なすかッ!!』
「お前は病だ。病は燃えて落ちろ』
 ぐるるる。ざりざりざり。
 がるるる。がりがりがり。
 龍と獣の武闘は続く。霧の中、それを見るものはいない。

●戦場
「ところでジャック、お前弱点ってどこ?」
 BLAM。銃声の合間に投げかけられた問いかけに、兵士は沈黙した。
「いや、お前の鏡像を殺すのに必要だろ。参考にしたいんだ」
 BLAM。言いながら彼は己の鏡像を再び撃ち抜く。これで十五体目。
 出現の速度、そして狙いが正確になりつつある。そろそろ潮時か。
 ジャガーノートはやはり間を置いた上で答えた。
《――狙いたいならば、左胸でも狙うといい》
「そっか。まあ、普通は心臓だよな」
 BLAM。
 ZAP!
 BLAM。
 ZAP!
 熱線と弾丸が交互に飛び交い、お互いの鏡像を射殺する。
 そこに躊躇はない。彼らは兵士であり兵器だから。
 そこに感慨はない。彼らは兵士であり兵器だから。
《――では、そちらの弱点は?》
「俺? ……さあ、頭じゃないか?」
《――I copy.》
 ZAP! 十七体目の匡の映し身は、頭部を熱線に貫かれて消滅した。

《――ところで本機には一つ疑問がある》
「ん? なんだ」
《――なぜグラドラゴは、霧の眷属を生じさせていない? 敵にはそういったユーベルコードもあるはずだ》
 匡は片眉を釣り上げる。防衛戦に参加していないジャガーノートがそれを知っているというのは、やや奇妙な話だが……"それだけ"だ。彼はそれを"どうでもいい"と切り捨てる。
 切り捨てた。だから問い返さず、答えた。
「さっき、ロクがあいつに斬りかかるのが見えた」
 ――ジャガーノートの熱線が、コンマゼロゼロ秒遅れた。
《――なるほど。では、ロクが奴を釘付けにしているということか》
「多分な」
 露払いとはそういうことか。二人はそれ以上言葉を要さず、薙ぎ払うようにして射撃。生じたばかりの鏡像と次のそれを一気に消し去る。
 間隙。おそらくは5秒もないだろう。
《――電脳体一部解除、拡散――グレネード生成完了、投擲》
 砂嵐の中から、こぼれ落ちるようにして複製された破滅の卵達。
 それらはランチャーから発射されるように霧の中を劈いていく。
 なにか合図があったわけではない。だが匡は意識を鏡像から、霧の向こうへと集中させた。
 間隙、残り3秒。
《――3》
 2秒。
《――2》
「1――」
《――起爆》

 ……KRA-TOOOOOOOOOOOOOOOM!!

 爆風が霧を吹き払った。間隙が終わり、二人の背後にそれぞれの鏡像が顕れる。
 それら二体は、ともにオリジナルの後頭部に照準をマウントした。だが二人は振り返らない。避けもしない。意識を向けすらしていない。
 なぜならば、為すべきことが他にあり――それを為せば片付くと知っているからだ。
「――ああ、よく視えるな」
 瞳に、一瞬だけ蒼が揺らめいた。

●舞踏
 獣と龍は舞い続けていた。だがそれも終局にやってきていた。
 獣の動きが徐々に精彩を欠き、龍の攻撃を避け損ないつつあるからだ。
『カ、カ、カ! 独断で踏み込んできたうえに、孤立して死ぬか! 似合いのざまよなァ!』
 グラドラゴはロクを嘲笑う。ロクは焔の領域を生み出しながら無言。
 彼女は疲れ果てたのか? ……一見すればそう視える。龍もまたそう思っている。
 だが否だ。ロクははじめから、一人で狩りをしているつもりなど無い。
 こうして奴の懐に飛び込んだときから、全ては布石として打たれていた。
 そして彼女はわかっていた。言葉をかわさずとも、彼らが現れ戦っているのを感じていたゆえに。

 ……KRA-TOOOOOOOOOOOOOOOM!!

『ぬうっ!?』
 霧が晴れた一瞬、グラドラゴは困惑した。獣は紅き閃光となった。
 晴れた先、龍の瞳と匡のそれがかち合う。そして弾丸が放たれた。
 強固な鱗を貫き、死神の鎌じみた弾丸がグラドラゴに重傷を与える。
 龍は呻き、絶叫し、怒りと屈辱にもんどり打ち……そして、見た。
「おれは」
 獣は罅割れた声で言った。
「はじめからお前しか見ていない」
 霧には重さがない。霧には熱がない。霧は囀りはしない。
 ゆえに彼女は惑わなかった。ただ敵を、獲物を見据えて戦い続けていた。
 そして狩りの仲間達の好機を待った。今、それが来た。
 ――目の良いものは多い。ここにいればきっと、誰かが射抜いてくれる。
 彼女はそう信じていた。彼らが応えた。匡。ジャガーノート。
「燃え――落ちろ」
 烙印の刃が弾丸を後押しした。円弧を描いた業炎が、龍の逆鱗を……切り裂いた!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ようやくお出ましか、ウィズワーム。オーケーオーケー、嫌いじゃないぜその態度。物語の悪役はそうでなくちゃな?んじゃ、始めるか。主役どもの華々しい英雄譚をな。

ユーベルコードによる戦術指揮で、味方をサポートする。それと同時に、
『霧中に潜むもの』対策も行う。まず、【メカニック】で作った小型のビーコンを、仲間に託す。攻撃のついでに、グラドラゴにくっつけてもらえば順瓶万端。
もしも奴が隠れても、ビーコンから発せられるシグナルを端末で見ることで、位置を見ることができる。それをもとに的確に指揮してやれば…霧の視界不良でも、主役どもを活躍させることができる。
それに、本体を攻撃すれば、召喚した竜も消えちまうしな?


ジョン・ブラウン
モグラじゃないんだからさぁ、もうちょっとかっこいい場所に潜めなかったの?

助かったよ、メルエは優しいからああ言ったけど
もしお前がおとなしく暮らすって言った時どうやってメルエを説得しようか悩んでたんだ

『悪い竜と戦う水竜様。その時、大森林に宿っていた竜が立ち上がりました』
『なんと悪い竜はこの森の竜を良い心と悪い心に分けて封じ込めていたのです』
『しかし水竜様のおかげでその封印は洗い流されました』
『こうして悪い竜と悪い心の竜は、水竜様と良い心の竜に倒されましたとさ……』

アドリブだけど、悪くないんじゃない?

【引き続き同じ寮のメルエと行動。物語の途中を引き継いで語り出し、合体技を放ちたいです】

アドリブ等歓迎


メルエ・メルルルシア
森の地下がすげえことになってるなあ……まあやることは変わらねえ

この地の妖精達と一緒に大人しく暮らすってならよし、そうじゃないのなら悪いがオレは友達のために戦う

メルルルシアの水竜様と力比べといこうか
『残虐非道な竜の前に、妖精の涙でできた心優しき水の竜が現れました』
など、物語を読むような詠唱で召喚

ジョン、お前も手を……竜を貸せ。毒の霧を水で押し流してあいつを仕留める

【引き続き同じ寮のジョン(f00430)と一緒に行動。弓から水でできた竜を呼び出して攻撃。ジョンと一緒に合体技みたいな感じに出来ると嬉いです】
アドリブ、アレンジ、他キャラとの協力大歓迎


虹結・廿
了解、任務を遂行します。

【分隊編成】を起動、展開し、霧の偽猟兵たちを抑えます。
【ヴァリアブル・ウェポン】を使用。広範囲に榴弾の弾幕をばら撒き、発生直後に霧散させる事を意識します。

偽物、偽者、似せモノ。
しかし、真似ただけ。
同一ではない。ならば倒せます。

腕が吹き飛ぶ、足が千切れる、お腹に穴が開く。
義体から伝わってくる熱を持った感覚は廿の意識を冷たく尖らせてくれます。
(痛い、怖い。けれど、楽しい)
見知った姿、知り合った姿、見かけた姿。それらすべてをなぎ払う。

(もうすぐ終わっちゃう…。また、あれこれ悩む時間が来ちゃう。嫌だな。)
(それでもちゃんとやるよ。だから)
全部終わったら、褒めて欲しいな。




『ぐぅううう、おぉおおおおおおおオオオオオオオッ!!!!!』
 絶叫であった。
 これまでのおびただしい傷跡に、逆鱗を穿たれ急所を撃ち抜かれた激痛。
 グラドラゴは満身創痍であり、それ以上の屈辱と怒りが奴を吠えさせた。
 龍はいま確かに、追い詰められていたのだ。


「ハッ! さすがはあいつらだ、やるじゃねえか」
 状況を観測していたヴィクティム・ウィンターミュートは皮肉げに快哉をあげた。
 無論、彼は凄腕の電脳魔術士であり、ストリートのランナーだ。
 奴を包む霧が消えた瞬間、すでに小型ビーコンを射出、本体に接触させていた。
「さあて、これでもう隠れ潜むこたあ出来ねえぜウィズワーム。
 物語の悪役らしい大言壮語を吐いたんだ、あとは主役に散らされてご退場といこうや」
 そうだろ、と彼が目線を向けた先。そこには一人の少年と一体の妖精の姿。
「それにしたって舞台がちょっと冴えないけどね。モグラじゃないんだから。
 ドラゴンなんだから、もっとこう空を舞っていたほうがかっこよかっただろうに」
 ヴィクティムのそれに負けず劣らず、ジョン・ブラウンも軽口を叩く。
 彼はついと、隣に浮かび上がる妖精――メルエ・メルルルシアに目線を向けた。
「森がめちゃくちゃになるよりはずっといいさ。此処にも曰くがあるみたいだけどな。
 あそこまで大口叩いたんなら遠慮はいらない。オレは友達のために闘うぜ」
 勇ましい言葉に、ジョンは内心でほっと胸をなでおろす。
 彼女の性格からして、もしもグラドラゴが改心を装ったら騙されかねないからだ。
(ま、あの手のタイプにそんな知恵が回るとも思えないけどね)
 口には出さないが、ジョンもまたシビアな考えで戦場を俯瞰していた。
「さあて、それじゃあ一発決めてやるか! ヴィクティムも力を貸してくれよな!」
 己を脇役と標榜するカウボーイはニヒルに笑い――少女を見て、溜息をついて肩を落とした。
「オイオイ、これからやろうってタイミングで何シケた面してんだ?」
「えっと……」
 困惑したのは虹結・廿である。彼女なりにはシリアスな顔をしていたのだが。
 なにせ鉄火場だ。戦い、敵を殺すことこそ彼女の存在理由、あれこれ言わずともさっさと任務を遂行する腹づもりで居た。
 が、ヴィクティムはそれがお気に召さなかったらしい。
「いいか、こいつは英雄譚なんだぜ? 後ろ暗いウェットワークとは違うのさ。
 華々しい英雄たちが悪いドラゴンを華麗に退治する! 燃えるだろ?」
「……そういうのは、よくわかりません」
 廿は目に見えてしょんぼりしていた。せっかく無心で任務ができるはずだったのに。
 ヴィクティムはオイオイ、と大げさなポーズを取り……ふとひらめいた。
「オーライ、じゃあお前も主役を引き立たせてやりゃいいじゃねえか、チューマ」
「……支援任務に就け、ということですか?」
「それだよ、それでいい。てなわけでメインどころは任せたぜ、二人とも!」
 メルエは『任せとけ!』と握り拳を作り、ジョンはニヤリと笑って応えた。
 ……よくわからないが、話はまとまったらしい。廿は気を取り直す。
「了解。では、友軍の射線を確保し、攻撃を援護します」
「アイ・アイ・サー。さあ、気を取り直してショータイムだ!」
 龍が再び咆哮する。猟兵達は同時に動き出した!

●脇役達のトッカータ
 霧が立ち込める。それは術者たるグラドラゴの苦悶に応じた無意識の防御反応。
 それらは壁めいて立ちふさがり、やがてそこから猟兵の鏡像が生まれた。
 ヴィクティム。ジャック。メルエ。そして廿。合計で四体だ。
「任務遂行の為、仮想義体を要請、メンタルリンク――完了」
 彼女の背後に人型の格子模様が四つ生まれ、それは廿と同じ姿の義体として現実化した。
 合わせて五体。それらは同じように瞬きし、同じように銃を構える。
「動作支障なし。作戦行動を続行します」
 鏡像もまた同じように模倣した。これで敵は合計で八体に。
「ハッハァ! こりゃあいい、まさに"ここは俺に任せて~"ってやつだな!」
 ヴィクティムの周囲に無数の立体映像が現れる。その情報は廿および同型義体のメンタルリンクと同期し、かつシームレスな指示が可能となっている!
「榴弾構え、発射(ファイア)!」
「ヴァリアブル・ウェポン起動、弾幕展開」
 廿にとってはそれが心地よかった。彼女は文句一つ言わずそれを受け入れた。
 不気味なまでの連携である。併せて五体の義体小隊は即座に榴弾を形成、展開射出!
 弾道計算はヴィクティムが行う。敵の回避行動、分散も彼の目にはとっくに読めている!
「β、γは右翼10時を斉射! δ、εは左翼の敵を抑えろ、回り込んで突撃してくるぞ!」
「了解。α、敵白兵戦に突入します」
 β以下義体四体は両翼に散り、敵鏡像の回避行動を制圧にかかる。
 α=廿は12.7mm多目的汎用銃火器"ミンチメーカー"を中間弾薬に切り替え、斉射しながら己の鏡像めがけまっすぐに突撃した!
 当然のように、映し身もまた銃口を彼女に向けトリガを引く。
 半インチの死神が唸りを上げ、幼い少女の姿をした戦鬼の体を貫く。
 腕が吹き飛び、足がちぎれ、脇腹を貫通し風穴を開いた。
 ……廿は、本来なら切るべき痛覚抑制機能をあえてオンにしている。
 義体によって再現された痛覚は、灼けるような熱となって神経を走った。
(痛い)
 片目が爆ぜ飛ぶ。
(怖い)
 耳が削れる。
(――でも、愉しい)
 少女は薄く微笑んですらいた。いまや彼女は、それ自体が一つの弾丸だった。
 ヴィクティムの指示が、言葉ではなく思考の速度で彼女に伝わる。
 彼女はそれを汲み、より最適な戦略を自己の判断で選択。
 四体の義体の視界その他の感覚がリンクされた。それぞれの照準は、見知った人々の姿をした鏡像を捉えていた。
 彼女/彼女達はそれをよく、ようく見て――そして、トリガを引いた。

 BRATATATATATATATATAT!!

「β、8時方向に注意しろ! ε、ショットガン準備! 敵は突撃してくるぞ!
 ……ジョン、メルエ! 5秒後に花道が開けるぜ、行ってきな!」
 言いながら、カウボーイは己の鏡像と電脳の世界で超速の論理戦闘を繰り広げていた。
 現実の視点、リンクした義体達の視点、そして電脳世界の視点を彼は同時に重ね見る。
 いまや三界は彼の支配下にあり、全ては盤上の駒だった。
 荒れ狂う悪竜が、猟兵達を振り払い霧に隠れようとしているのも視える。
 ジョンとメルエがどう進むべきかの道行きも。
「させねえよウィズアーム、"ドラゴンに手を出すな"ってのは――影の世界のタームだぜ」
 ここには英雄達がいる。悪を討ち、正義の光で物語を照らすべき主役達が。
 ゆえに彼はドラゴンを恐れない。そして現実は、彼の思うがままに推移した。

●龍と龍のメヌエット
 弾雨吹き荒れる鉄火場を抜け、これみよがしに生まれた霧の空白を二人は走る。
 走って、走り抜け――その先には、待ち構えていたようにグラドラゴがいた。
 全身におびただしい傷を受け、滂沱の血を流す、怒り狂った悪竜が。
「ワオ、まるでゲームの大ボスみたいだね。セーブポイントとかないのかな?」
 ジョンはあくまでも彼らしくおどけてみせる。龍の睥睨もものともせず。
「ははっ! ならそうだな――グラドラゴ! お前がドラゴンだっていうなら」
 メルエは矢を構え、決然とした面持ちで言った。
「メルルルシアの水竜様と、力比べでもしてみるかッ!?」
 そんな乙女の言葉を、悪竜はせせら笑う。
『ほざけ。一山いくらの地虫(ワーム)なぞ、吾に敵うはずはなし!』
「だってよ、ジョン」
「そうだね、メルエ。だったら聞かせれあげればいい、キミの知ってる物語を」
 メルエは弓を構えたまま、謳った。メルルルシアに伝わる物語を。
「――"森の泉を飲み尽くした大蛇は、さらに巨大に膨れ上がり、体の全ては水となってしまいました。"」
 けれども哀しむことはありません。なぜならば、蛇は水の竜となったからです。
「"誰かが涙を流す時、水の竜はその雫から生まれ出でて人々を救いました"」
 そしてとある森には、とてもとても悪くて恐ろしい竜がいました。
 残虐非道な竜は、何の罪もない妖精達を脅かし、住処から追いやったのです。
「"妖精達が涙を流した時――心優しき水の竜が現れました"」
 彼女の構えた矢に魔力が集まり、収束する。メルエはそれを放とうと――。
「……"悪い竜と闘う水竜様。けれども竜はとても強く、水竜様だけでは歯が立ちません"」
 謳いながらジョンが、弓弦を引くメルエの手に手を重ねた。
 するとどうだ。水の矢に緑色の揺らめくエネルギーが混ざりあったではないか。
 二人の背後、渦巻く魔力はそれぞれ異なるヴィジョンとなって顕現した。
「"なんと、悪い竜は己の良き心を分かち、森の奥深くに封じ込めていたのです"」
 かたや雄々しき水蛇めいた竜。
 かたやグラドラゴに酷似した、されど勇ましき理性を双眸に称えた竜。
『なんだ、それは……!? 吾は知らぬぞ、そのようなものをッ!!』
 グラドラゴの言葉も聞かず、少年は謳う。
「"水竜様の力で、悪い竜による封印は洗い流されました。
  森の末裔達の危機に応じ、善き竜が蘇りともに戦ってくれたのです"」
 在り得ざる二つの竜が吼える。ここに在るはずの竜は、驚き吠え返した。
「"全てを洗い流し、悪しきを滅ぼす水龍の力と"」
 メルエが弓弦を引く。
「"優しく雄々しく、どんなものも抱きとめる偉大な善き龍の力が合わさり――"」
 ジョンが魔力を込める。
 渦巻く奔流は、矢となって放たれた――それを追い、ヴィジョンが空を駆ける!
『嘗めるなァッ!! たかが虚構の存在ごときがァアアアッ!!』
 龍とは傲岸不遜な怪物である。ゆえにその挑戦を真っ向から受けた。
 真っ向から受け、激突し――グラドラゴは、その巨体を幻影に貫かれたのだ!

『――莫迦な』
「"……こうして悪しき竜は、水竜様と善き竜によって倒されましたと、さ"」
 そう締めくくり、ジョンは肩をすくめる。
「アドリブだけど、悪くないんじゃない?」
「ああ、そうだなっ!」
 二人ははにかんだ。その頭上で、グラドラゴの断末魔が大空洞を揺らした――!!

「ああ、もうすぐ終わっちゃう」
 その震えを五体で感じながら、倒れ伏した廿は呻いた。
 これで戦いが終わる。また、よくわからないことに悩まされる時間が来る、と。
 ――全部終わったら、褒めてほしいな。
 そのつぶやきは誰に向けたものか。そこで意識が落ちていく。
「……やれやれ。そういうのは主役の仕事なんだぜ、チューマ」
 もはや己では立てぬ少女の義体を、呆れた顔の脇役が抱え上げたという。

 だが、物語はこれでは終わらない。
 めでたしめでたしで終わらせるには、悪竜はあまりにも悪辣すぎたのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



『――オ、ノレ』
 全身を幾重もの傷に穿たれ、竜だったものがたしかにそう呟いた。
 そして見よ! 拡散していた霧が――奴の傷から、体の内側に取り込まれていく!
『オノレ。オノレ、オノレ――オノレ、猟兵! オォオオオノレェエエエ!!』
 奴は消滅寸前の自らの肉体を、霧によって塞ごうとしているのか!?
 もはや知性らしきものも失い、竜だったモノが……グラドラゴの成れの果てが、三度吼える。
 悪龍いまだ滅びず。その軛を断ち切るためには、今一度の刃を振り下ろさねばならない!
メンカル・プルモーサ
【須藤・莉亜】と一緒に参加。箒に乗って戦う…
…デカいドラゴンであってる……まず姿を捉えないと…眷属はまともに相手してたらきりが無い…
【夜飛び唄うは虎鶫】でガジェットを召喚。【消え去りし空色のマリー】で召喚物ごと透明化しつつ…ガジェットのソナーやレーダー、須藤からの情報を元にグラドラゴを探す。位置を捉えたら【不思議な追跡者】でマーク…竜の位置を通信等で皆に伝える…
自身は透明化のまま【尽きること無き暴食の大火】での奇襲でグラドラゴを直接狙う…傷が付けば眷属は消えるし…そのまま燃やすことで継続的にダメージを与えていく…
●死の竜霧の毒を検知したら医療製薬術式【ノーデンス】で解毒薬を作り、毒を和らげる…


須藤・莉亜
【メンカル・プルモーサ】と。
「おお、デカいドラゴンで…あってるよね?見辛くてしょうがないや。」
飲んだことないし、血の味が気になるなぁ。

眷属の蝙蝠たちを召喚、敵さんの本体を探してもらおう。蝙蝠なら視界が悪くても関係ないしねぇ。
彼らから【動物と話す】で情報を得て本体の位置を常に把握する。
蝙蝠たちが探している間は、空喰らいでいろんな敵さんの前に転移して、ちょっかいけけつつ逃げ回ろうかな。

本体の位置がわかったら、敵さんの側に地獄招来【第九圏・悪魔大王】で門を召喚、そこから悪魔大王さんにぶん殴ってもらおう。

動きを止めることが出来たら、一気に近づいて【吸血】出来るか試してみよう。



●悪龍いまだ滅びず
 猟兵達の猛攻を受け、グラドラゴは消滅寸前まで追いやられた。
 だが奴は自らの傷……体内に霧を取り込み、内側から塞ぐことでこれを防いだのだ。
 代償として奴は理性はおろか知性すら失い、暴れ狂う純然たる暴竜に成り果てた。
『オオオオォオオオオオオッ!!』
 凶暴であるがゆえに、これまでと比にならぬ圧の咆哮が大空洞を揺らす。
 そして内側から血煙めいた霧が吹き上がり、大地に降りた奴の巨体を覆い隠した!
「おお、デカいドラゴンが死にかけて……また隠れた」
 須藤・莉亜は、いっそ呑気とすら言えるリラックスした様子で言った。
 追い詰められた獣は、時として格上のそれにすら勝るという。
 いまのグラドラゴはまさにそうだ。竜としての傲慢さすら捨てた、オブリビオンとしてもっとも純然たる――過去の化身そのもの。
「霧が濃くて見づらくてしょうがないや。メンカル、どうする?」
 視線を向けられたメンカル・プルモーサは、応える代わりに呪文を唱えた。
「"我が従僕よ、集え、出でよ。
 汝は軍勢、汝は猟団。魔女が望むは到来告げる七つ笛――"」
 呪文に応じ、現れたのは100体以上のガジェット達。
 それらはいずれも通信と索敵機能を有した優秀な目であり足だ。
「まずは姿を捉えないと……あの様子じゃ、守りに入ったら……押し切られる」
 メンカルの分析は実際正しい。いまのグラドラゴはいわば捨て身である。
 死に際の、だからこそ狂乱は恐ろしい。背水の陣、というやつだ。
 彼女は飛行式箒『リントブルム』に腰掛け、ふわりと浮かび上がった。
「おっけー、じゃあ空と地上から索敵、だね。――おいで、ご飯の時間だよ」
 莉亜が片手を掲げれば、闇が凝(こご)り無数のコウモリへと分裂する。
 そこへ、波濤のように霧の眷属どもが襲来してきた。危ない!
「――"連なりし現し身よ、染みろ、溶けろ。
 汝は透徹、汝は澄明。魔女が望むは世より離れし彼の姿……"」
 だがどうだ。次なる呪文を唱えた瞬間、彼女達はパッと姿を消してしまった!
 これこそ、トリニティ・ウィッチが誇る複合魔術呪文、名を『消え去りし空色のマリー』。
 自分達はおろか、召喚した被造物すら透明化させる極めて便利な能力だ。
 再び乱戦が混迷を窮める中、二人とその従僕達は姿なき竜を探し空と地を舞う……!

 霧の眷属、すなわち無数の竜はその数を圧倒的に増していた。
 ここの耐久力は防衛戦と同じ、ともすればそれ以下というほどに脆い。
 だが凶暴性、そして攻撃力に関しては折り紙付きだ。猟兵とて油断すれば危うい!
「瞬き禁止、だよ?」
 だが見よ。虚空に靄めいた闇が生まれたかと思えば、そこから莉亜が現れた。
 死角を取った彼は白皙の大鎌を振るい、霧龍の首を薙ぎ落とす。
「うーん、やっぱり霧の体だと血の味はしないなあ」
 ダンピールは気だるげにいい、鎌を担いだ。
 背後! 新たに霧から現れた眷属が爪を振り上げ――ぞん!! と消失した。
 いや、正しくは透明な悪魔の両腕に首を刈られ、一撃で死んだのだ。
 "悪魔の見えざる手"。莉亜の持つ恐るべき武装の力である。
 そんな彼にコウモリが集い、キイキイと甲高く鳴いた。
「うん? あ、そう。さすがコウモリくんだねえ、やるう」
 驚くべきことに、彼は己が召喚した吸血蝙蝠達と意思疎通が可能である。
 この暗所にあって、超音波で物を見るコウモリたちに霧など無用の長物。
 ゆえに、龍の姿はあっという間に発見することが出来た。

『グウッ、フウ、グゥウフルルルルル……ッッ』
 もはや色そのものというべき濃密な霧の中で、龍だったモノは呻いていた。
 苦痛。恐怖。屈辱。憤怒。混乱。いずれも龍には似つかわしくないものばかりだ。
 腹立たしい。煩わしい。恐ろしい。忌まわしい。
 猟兵、猟兵、猟兵、猟兵! なんとしてでも彼奴らを滅ぼし――。
("――貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ")
『――……?』
 その時、グラドラゴは確かに聞いた。どこからか響く切なる口訣を。
("汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔――")
 ……直後! その巨体を、燃え盛る白の焔が包み込んだ!
『グオォオオオオッ!?』
「それは如何なる存在をも燃料に燃え上がる焔。一度ついたら消すことは出来ない」
 滲み出るように、虚空から透明化を解除したメンカルが現れ、敵を見下ろす。
 だがそれだけではない。晴れゆく霧の奥から、鎌を担いだ優男がざす、ざすとゆったりとした足取りで近づいてくる。
「地獄招来・開門。んでもって第九圏直結――さあ、いまだけは僕らに従ってもらうよ」
 彼の頭上に、グラドラゴよりもなお巨大な地獄の門が現れた。
 魔法陣めいたそれが"がちゃり"と開き、柱のように巨大な右拳が――龍を、打ち据える!!

 ――ゴォオンッ!!

『ガァアアア……ッ、猟兵、猟兵ァアアアア……!!』
「こりゃ完全に怒り狂ってるねえ。血を吸うってわけにはいかなさそうだ」
 テンションはそのままに、きゅう、と鎌を振るい莉亜は言った。
 メンカルもまた箒から降り立ち、魔杖を構える。
「……だったら、さっさと焼き尽くす。今度こそ滅ぼすために」
「賛成、賛成。手早く片付けるとしよっか」
 焔に苛まれながらも、悪竜は蹲り唸る。猟兵の牙は、獲物を逃しはしない!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ、他猟兵との絡み歓迎!

野営、とっても楽しかったね!ゆっくりできたよ〜……って、ユーリ寝てないの!?
だ、大丈夫かな。あとで膝枕でもしてあげようかな?
うん、準備OK!それじゃあ、行こう

ユーリや味方の攻撃に合わせて【ダッシュ】で走り出しつつ、服を脱ぎ捨てて身軽になる!
狙うはグラドラゴへの一撃!
ミストリフレクトは【ジャンプ】で飛び越え【空中戦】【見切り】【野生の勘】を駆使して回避!
避けながらダガーで【投擲】【範囲攻撃】でのカウンターも試みるよ。
当たらなければ痛くない、怖くないっ!

グラドラゴが飛んでたら【ジャンプ】で接近、【シーブズ・ギャンビット】をお見舞いするよ!


ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと行動
アドリブ共闘大歓迎!

楽しい野営だったな
徹夜の見張りであったが寧ろランナーズハイだ
勇者の遺跡にも興味津々だ
探索する為にも、まずは眼前の敵を倒す
チコルも準備はできているか?さあ、行くとしようか!

まずは【メギドフレイム】で牽制だ
接近されぬ様仲間を守り、無数の竜を出されたら対抗する
ミストリフレクトで範囲系の技を使われたら皆に散開を呼びかけ
炎霆を呼び出し竜に接近し盾となり、オーラ防御と毒耐性で耐え続ける
一人で抑え続けるのは難しいだろう
地に居るならば竜の足を。飛ぶならば羽を槍で串刺しにし、1秒でも時間を稼ぐ
グラドラゴは強者だ。だからこそ
俺達は団結して力を束ねてー貴方を倒す!


ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
傲慢な考えを持ちし暴竜よ、篭りし時は終了せり
守りし防壁十分か?看取りし者は用意せり?
用意せりは墓穴か?ならば埋没させてしんぜよう
汝の破滅はここにあり

UCにて呼び出すは過去の記録
UDCアースにて行われし新型爆弾の実験
それは数多の退役戦艦を葬りけり
範囲指定、縮小再現。これにて遺跡の被害を抑えよう
飛行しようと爆風からは逃れられず。飛行阻害も可能にせり

汝の甲殻の【鎧砕き】【なぎ払い】霧を【吹き飛ばし】けり
熱と爆風に耐えられけり?
これぞ叡智の炎なり。これぞ極まりし傲慢なり

UCとは別に【誘導弾】を【一斉発射】し
【援護射撃】兼【範囲攻撃】を行いけり


色採・トリノ
まぁ、広い場所
こんなところがあるなんて、びっくり
調べてみたいけれど、まずは、お手伝いしましょう、ね?

後方からUCを使うわ
攻撃のお手伝いをできたら良かったのだけど、今回も後ろから支援
リノが手当てしている間、グラドラゴちゃんは身動きが取れないみたいだから、他の人が攻撃する隙になってくれればいいのだけれど
自分が危なくなったときには、戦いの得意な子を呼ぶわ
危ないところに呼んでごめんね
どうか、どうか、みんなと一緒に戦って

もし無事にグラドラゴちゃんを倒せたら、改めてみんなの傷を治しましょう
それから、フリムちゃんたちに、もう大丈夫って伝えなきゃ
必要なら再建の手伝いも
後はもう、少しぐらい疲れても平気だもの、ね


ドロシー・ドロイストラ
ほほーう良い所に住んでいるな
それだけに余計にわからん、なんで妖精なんぞいじめている
…まあいい戦いの前にぐだぐだ話してもな

「さあ行くぞグラドラゴ、戦いを恐れぬならばドロイストラの名を呼ぶがいい」
まあドロシーの地元の流儀だが、どうせなら合わせてくれよ

霧に覆われているというのならドロシーはそいつをグラドラゴごとディン…凍らせてくれる
「砕かれる氷像」を使用、こいつで霧を削り取ってやろう
生憎ドロシーの身体はドラゴンほど大きくない、一撃では難しいだろう
だからラース…命の限りブレスを叩きこんでやる
飛ぶならズンを翼に投げつけて落とすぞ
少々の攻撃はラース・ヴィーングのオーラ防御で防ぐのだ、ガンガンいくぞ



●霧の彼方
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり」
 滅びの瀬戸際で己の体を無理矢理に取り繕い、なおも骸の海に還ることを拒むグラドラゴ。
 その浅ましきさまを見やり、ビードット・ワイワイがグリグリとカメラアイを動かした。
「傲慢な考えを持ちし暴竜よ、篭りし時は終了せり。
 守りし防壁十分か? 看取りし者、己が埋まる墓穴は用意せり?」
 意味不明な、しかしたしかな嘲りの意図を感じる言葉である。
『木偶ゴトキガァ、吾ヲ嗤ウカァアアアア!!』
「然り然り然り。ならば埋没させてしんぜよう。汝の破滅はここにあり」
 龍の怒りもなんのその、根源的破滅招来者は淡々と破滅を謳う。

「ほう、存外いいところに住んでいると思っていたが……」
 ドロシー・ドロイストラは顔をしかめた。その醜態に? 然り。
 だがそれは敵に対する嫌悪ではない。同じ龍種としての憐憫がある。
「森の末裔達をいじめるような浅ましさ、いま納得できたぞ。
 グラドラゴよ、お前はあれらを羨み、妬んでいたのだな」
 温厚にして自由、森の奥深くで平和に暮らす者達。
 それは、傲岸不遜にして唯一無二"でなけれなばらない"龍からすれば、得難い平穏でもあるということか。
『ホザケッ!!』
 竜は吠え返した。だが雌龍はそれを上回る咆哮(シャウト)で応じる。
「よかろう、ならば問答は無用。戦いを恐れぬならばドロイストラの名を呼ぶがいい!」
 グラドラゴは怒りの雄叫びの中でその名を呼ばわった。
 雌竜は鮫のような笑みを浮かべた。

「まぁ、まぁ。そんなボロボロになっても、まだ闘うのね?」
 一見すると、敵であるグラドラゴを気遣うような言葉。
 しかし色採・トリノに、敵を見逃すようなつもりはない。
 どちらかといえばそれは憐憫であり、どこか他人事めいた言葉だった。
『グゥルルルルル……ッ!!』
 龍であったモノは唸る。まさに追い詰められた獣そのものの顔で。
「可哀想に……リノとみんなが、グラドラゴちゃんと楽にしてあげるわ」
 右目を閉じたまま、白い瞳が悲しげにふせられた。
 生まれながらの聖者、無垢の白に染まりし乙女。
 白とは、何者にも染まらぬ残酷な色でもある。
「だからどうか、どうか――みんな、無事でね?」

「あれほどの有り様になってなお、現世にしがみつくか……」
 これまで猟兵達とともに前線を踏み支え続けていたユーリ・ヴォルフは、息を切らせながら言った。
 徹夜の見張りからそのまま死闘に飛び込んだせいもあって、彼は心身ともにボロボロだ。
 だがそれでも倒れるわけにはいかない。守護者としての責務があるのだから。
「ユーリ、大丈夫? 膝枕とかしてあげよっか?」
 などと気遣うチコル・フワッフルの台詞は、やや緊張感に欠ける。
 しかしそんな天真爛漫な彼女だからこそ、生真面目なユーリを大きく手助けしていることは間違いないだろう。
 ユーリもまた、己を強いて頼もしげな笑みを浮かべた。
「大丈夫だ、ランナーズハイというやつだな! あとひと踏ん張りだとも。
 この遺跡のなんたるかを調べるためにも……そして、フェアリー達のためにも」
「うん、またフリムと一緒に楽しく遊びたいもんっ! それじゃあ、もうひと頑張り! 行こうっ!」
 二人もまた、肩を並べて敵と対峙する。
 一歩も退くつもりはない!

●交錯
『ナラバ諸共ニ、死ネッ!!』
 悪竜は吠えた。霧が渦を巻いて奴を包み込み始める!
「そうはさせるか! 我が裡に眠りし竜の焔よ!」
 最初に機先を制したのはユーリである。
 彼自身の体の内側に燃え上がる焔が、無数の焔剣となって周囲に顕現。
 これを敵めがけ擲ち、さらに己の手の中に炎霆と名付けた灼熱の魔槍を招来!
『ヌウッ、小癪ナ……!!』
「同じ龍として、貴方の狼藉はこれ以上見逃せない!」
 勇ましく疾駆し、龍の振るう爪を、牙を炎霆で受け流す。
 誇り高きドラゴニアンならばこそ、これ以上の醜態を続けさせるわけにはいかないという、武士めいた情けもあるのだろう。
「いかんな、ユーリよ! 毒の霧がお前を包み込もうとしているぞ!」
 それに気付いたドロシーは、大きく大きく息を吸った。
「だが案ずるな――ドロシーがまるごとディン(凍結)にしてやる!」
 そして力ある言葉をシャウトするのだ!
『 Krah - Kren - Nus !! 』
 するとどうだ。今まさにユーリを触手めいて絡め取らんとしていた霧が!
 ぱきぱきと凍りつき、グラドラゴの鱗すら霜を這って凍結していくではないか!
『コ、コレハ……ッ!?』
「よーっし、合わせるよドロシーっ!」
 好機。チコルが一目散にダッシュし、おもむろに服を脱ぎ捨てた!
 ……服を!? 脱ぎ捨てた!? ためらいもなく!
『カァアアアッ!!』
 グラドラゴの咆哮が彼女を襲う。だがチコルは兎めいた脅威の跳躍でこれを回避!
「甘いよっ! 当たらなければ痛くないし、怖くないもんっ!」
 まさに野生の直感である。いまや彼女は完璧な隙を得た。
 まず目くらましに『夏陽のダガー』を投擲、グラドラゴの視界を遮る。
 そして弓なりに着地する先は、奴の脳天!
「フリムを、妖精達を怖がらせたぶんっ! 喰らえーっ!!」
 シーブズ・ギャンビット! 極限の素早さを得た刃が、奴の凍りついた鱗を切り裂く!
 それと合わせるように、ドロシーの唐竹割りもまた鱗を砕いた!
『グ、ォオオオオオ……ッ!!』
 奴は苦悶した。チコルはさらなる連撃を加えようとした。
 だがその時、とっさにユーリが彼女の体を抱え、すばやく後ろに飛び退る!
「ぬうっ、これは……!」
 ドロシーもまた呻いた。奴の傷口からしゅうしゅうと溢れる血煙……いや、血の霧!
「なんてこと、グラドラゴちゃんは残り少ない生命力すらユーベルコードに割いているのね……!」
 背後で支援に徹していたトリノは、その凄絶な有り様に言葉を失う。
 立ち込める霧はオーロラめいてわだかまり、両者を隔てる。
 そして霧の向こうから現れる、猟兵達の鏡像……!
「ユ、ユーリ、ありがとうっ」
「いいさ。それよりもこれはまずいな。ここで退かれたら押し込みきれないぞ……!」
 ユーリの懸念はもっともだ。ここが好機であり、隙を与えれば物量はグラドラゴに圧倒的に有利がある。
 最悪、奴は傷を癒やすために姿を隠すおそれすら……ここで逃すわけにはいかないのだ!

 極めて刹那の状況判断が要される局面で、巨体が身動ぎした。
「来たり来たり来たり、我がユーベルコードが放たれるべき時、来たれり。
 戦士達よ、下がるべし。これより生まれるは破滅の焔、全てを滅ぼす光なれば」
 ビードットの謎めいた物言いには、しかしそれと解る危険があった。
 彼らは互いに頷き合い、敢えてこの場で交代を選ぶ。
 反対にトリノが前線に立ち、生まれながらの光をバリアめいて展開した。
 本来の用法ではないが、全力を出したこのユーベルコードならば、仮に何らかのバックファイアを受けたとしても味方を治療できるはずだ。
『カ、カ、カ、カカカカ! 吾ハ滅ビヌ、決シテナァ……!!』
 ばさり、ばさりとグラドラゴがはばたき、霧の向こうに姿を隠そうとする。
 それを遮るように現れる無数の鏡像。身構えた敵の数は五つ。
「ロードルーイン。星の記録を読み解きし人の傲慢。その再来を望む。
 これより呼び出す過去の記録、これはUDCアースにて行われし愚行の記録なり」
 ビードットの眼前に生まれた小さなミニチュアを見、トリノは息を飲んだ。
「そ、それって……爆弾!?」
「然り。されど否なり。これなるは数多の戦艦を葬り、死の雨を降らせた原初の焔。
 範囲指定、縮小再現。龍よ、これなる滅びを汝は免れ得るか?」
 そして、ボシュウ! と音を立て、小型ロケット弾は霧の中へと投げ込まれた。
 本能的な危険を感じ、残る四名はさらに背後へと退避する。……直後!

 KA-BOOOOOOOOOOOOOMッッ!!

『ア、ガ、ガガアアギギギギギッ!?』
 恐ろしき焔が生まれた。それはけして大きくはなく……いや、むしろ小型である。
 だがそれでも、局所的に生まれた焔の強大さは、猟兵達を戦慄させるに足るもの。
「あれが……ヒトの生み出した光、なのか」
「UDCアースにはあんなものがあったの……?」
「なんとメイ……愚かなことだ」
 異世界の住人たるチコル、ユーリ、ドロシーはたまらず顔をしかめた。
「ユーベルコードは、こんなこともできるのね……」
 トリノの呟きは、己らが持つ超常の力へのおそれゆえか。
「あれこそは叡智の炎、これぞ極まりし傲慢なり。かくて彼らは滅んだのだ」
 ビードットは瞑想的に云う。炎は霧も鏡像も、何もかもを吹き飛ばした。
 そして光が晴れる。敵は全身を焼け焦げさせながらも、いまだ健在!

「あれを耐えるのか……こうなったら、私がグラドラゴを抑え続けよう!」
 勇気を奮い立たせ、ユーリは言った。守護者として、龍の眷属として。
 敵は強大。だからこそ、仲間達と力を束ね、悪竜を討たねばならぬ!
「私も一緒だよ、ユーリ! それにみんなも、ねっ?」
 チコルが仲間達を振り返り問いかける。まずドロシーが頷いた。
「無論だ。ラース……命の限り、我がブレスを浴びせ続けてやろう」
 その隣で、ビードットがぐるぐるとカメラアイを蠢かせる。
「見たり見たり見たり。破滅を退けし戦士たちの姿を見たり。
 我が目指すは破滅のための幸福なり。我もまた力を貸せり」
「もちろんリノも一緒よ? さあ、あと一息。グラドラゴちゃんを倒しましょう!」
 全身からぶすぶすと煙を上げる悪竜が、うなりながら身をもたげ、吼える。
 守護者は鬨の声をあげた。雌龍は雄々しきシャウトを吠え返した。
 獣の娘は地を駆け、数多の同胞を宿す少女は妖精達の安寧を願い己の光をくべる。
 そして破滅を謳うものはそれを見届ける。戦いは――終局へと加速していく!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玄崎・供露
けっ、吼えるじゃねぇかよ。その言葉ァそのままそっくり返してやんよクソ蜥蜴ェ!

てめえのやり口は割れてんだ、ユーベルコード発動、……防御特化型のこいつはあらゆる障壁を産み出すもの。物理的な
シールドの他に水の壁であったり炎の壁であったり……あるいは風の壁であったり、な。……吹き飛ばせ。スクルド!

密閉空間だからそんなに長くは剥いでおけねぇが、こちとら10秒間だけ本体の姿を視認できりゃいいんでな――『空間の指』でやつの翼をもいでやる

※アドリブ、連携など大歓迎


ティティモルモ・モルル
勇者ー……遺跡ー……。
……なんかこう、すげーあれでごぜーますよね?
大丈夫、分かってるですよ、ほんと。

ともあれ、まずは目先の問題です。
なんかあちらはいっぱい呼んでるですし、こっちも数で対抗したほうがいいでしょーか。
……いまいち何やったかわかんなくなるですけど、仕方ねーですね。
(「数には数で」それだけは忘れないよう心に刻みつつ、うねうねした『グリモアァン』を一口齧る。技能:覚悟・封印を解く)

……ぅ、ぅ。
(強制的に意識を深層へ。底から引き摺り出すように、【闇を恐れよ、命を謳え】。無数の竜と巨竜へ向け、人型のモノを向かわせる。本体狙いのモノだけは、闇中を潜行させて。技能:全力魔法・高速詠唱・2回攻撃)


カチュア・バグースノウ
【真の姿】体の線に這うように纏った黒い鎧。炎のような鎧。目元も覆われている
口数がちょっと少なくなってる
〜本日はマスクをして〜
(ドラッグストアで売ってるような普通の白いマスク)

「マスク?毒霧避けよ
効果ないのは知ってるけど気持ちが違うの」
ダサい?うるさいわね

霧で分身したら、敵の動きをよく見る
動いていないやつを攻撃するわ
一度攻撃したのがわかるように、右から薙いで敵の←足に攻撃する
(本体ならガッツポーズ)

武器は時々変えて、敵がコピーできないように注意しながら戦う

体から出てくる毒霧は諦めるしかないわね
ヒットアンドウェイで戦うしかない

アックスソードブレイクで戦うわよ!

アドリブ、共闘歓迎


ニコル・ピアース
古代遺跡ですか。
何としても勝利しないといけないですね。

うん、なかなか面倒ですねこの状況。
飛ばれると攻撃できないし、
変な攻撃されても対処が面倒なのです。

というわけで、目指すのはカウンター。
相手が接近してきたところを攻撃して、
近距離で殴り合いです。

あとは、他の人へ攻撃してるときとか、
近距離で殴れる位置にいる時に全力で攻撃です。

具体的にはグラウンドクラッシャーをとにかく当たり易そうな場所に叩き込むだけ。
相手の攻撃は避けて回避しつつ相手が倒れるまで攻撃を。

アドリブ、他の参加者との絡み歓迎です。




「さて、いい加減相手も追い詰められてきているようですが……」
 バトルアックスを担ぎ、ニコル・ピアースは戦況を俯瞰する。
 すさまじいしぶとさで足掻き続けたグラドラゴの命運も、いよいよ尽きつつあった。
 霧の中に隠れ潜もうとも、これまで猟兵達が見出した発券方法が奴を逃さない。
 そのたびに本体は抉れ、削れ、霧によって覆った傷が再び開きつつある。
「めんどーでごぜーますねー……ケリをつけるには、こう、あれでごぜーますね」
「……接近戦ってことか? ほんとにわかってるか?」
 寝ぼけ眼でろくろを回すような手付きをするティティモルモ・モルル。
 それを見て、玄崎・供露は微妙に不安そうな顔になった。
 ティティモルモはわかってるでごぜーます、とこくこく頷いている。
 ……それも割と、船を漕いでいるようにしか見えないのだが。
 しかし安心してほしい、彼女と共闘した猟兵はだいたい同じような感想を抱く。
「こうなってくると、どうにかして本体の体力を削り切るしか無いわね」
 カチュア・バグースノウの声色はシリアスなものだ。おそらく真剣な表情をしているのだろう。
 ……なぜ"おそらく"なのか、と? それは当然、彼女の顔が覆い隠されているからだ。
 今やその姿はぴったりと体にフィットした禍々しい黒い鎧に包まれている。
 その意匠はさながら、燃え上がる黒い炎といった風情である。目元もまた同様。
 これが彼女の真の姿であるようだ。しかし……。

「……あの」
「何よ」
 おずおずと問いかけたニコルの言葉に、カチュアはやや不服げに応える。
「なんでマスクしてるんです? それ市販のやつですよね?」
 左様、カチュアはなぜか口元を風邪用の医療マスクで覆っていた。
 甲冑が禍々しいぶん、色合いもあってだいぶ浮いている。
「……毒霧避けよ」
「そんなんじゃ防ぎようがねーと思うのでごぜーます」
「わかってるわよ、気分よ、気分!」
 ティティモルモのツッコミももっともだった。
 相手は花粉だとかちょっとしたウィルスとはわけが違うのだ。
 まあ、形から入ることで実際に効果をもたらしてしまうのも、猟兵やオブリビオンが操るユーベルコードのすごいところなのだが。
「いや……俺ぁ悪くないと思うぜ」
 ここで意外な助け舟を出したのは、供露である。
 なにせ彼も普段からマスクで口元を覆い隠している、いわばマスカー(マスクを使う人、ほどの意味)だ。
 もっとも彼の場合ダンピールとしての力ありきだし、真の姿ではそれを解き放つのだが……ほんの少し、仲間を見つけたような面持ちなのは気のせいだろうか?
「あら、そう? ふふふ、そうでしょう?」
 ダサい、などとディスられるかと構えていたカチュアは、少し上機嫌になった。
「……まあテンションが上がったみたいですし、よしとしましょうか」
「ん、仲良きことは……あれでごぜーます、あれ」
 ニコルとティティモルモも、なんだか妙な連帯を発揮していた。

●決着への岐路
「まあそれはさておき……どうする?」
 供露は一同の顔を一瞥し、問うた。闘う以上、最低限の作戦が必要だ。
「どうにかして本体に白兵戦を挑めればいいんですけどね」
 ニコルの言葉に、カチュアは頷きつつ兜の下で眉を顰めた。
 そう簡単にいくのなら、こうして作戦会議などしていない。
 グラドラゴは全ての能力を眷属の生成と霧の充満に注いでいる。
 猟兵の援護によって本体が傷ついたとしても、即座に霧を再展開しているのだ。
「あの逃げの一手を考え直させる、デカい一撃が必要なわけだ」
 供露の言葉に、ティティモルモが言った。
「なら、モルがなんとかするでごぜーますよー」
 一同の視線が彼女に集まる。
「こっちも数で対抗したほうが良さそうでごぜーますしね。
 ……いまいち何やったかわかんなくなるですけど、仕方ねーです」
 やや浮かない面持ちで彼女が取り出したのは、グリモア? らしきなにかである。
 ただしもそもそうねうねしている。だいぶ名状しがたい。
 一同がそれがなんなのかを問うより先に、彼女はそれを一口かじった。
「……ぅ、ぅ」
 眠たげなティティモルモの瞳から、光が失われていく。
 すると彼女の影から、うぞうぞとなにか人型のおぞましいモノが大量に現れた……!
『んぐぅふと・すろっど・ぐはぁ・なふるぅふぁ……』
 呪文のような祝詞のような異界の響きに応じ、闇どもは影から影へと進む。
 迫りくる無数の龍、そして巨竜とかち合い、それらは奇怪な舞いめいた戦いを始めた!
「……行くわよ」
 カチュアが短く言い、そして疾駆した。ニコルと供露も頷き合い、敵地へ。
 ティティモルモは夢見るようにその場に佇む。あれは、一体なんなのだ……?

 ……最前線!
『ナンダ、アノ……オゾマシイ"モノ"ハ!?』
 グラドラゴは、迫り来る闇の軍勢に困惑した。
 だがすぐに警戒をする。まっすぐにこちらめがけ進む三人の猟兵を目視したからだ!
『エエイ……小虫ドモガァ!」
 苛立たしげに、龍であったモノが吼える。
「その言葉ァ、そっくりそのまま返してやるよクソ蜥蜴ッ!!」
 供露が叫び、疾走しながらユーベルコードを起動する。
 彼の周囲に格子模様のドローンが三体出現し、現実化。
 それは運命の三女神の名を冠した、供露オリジナルの従者達である!
「てめえのやり口はいい加減割れてんだ、逃しゃしねえぞ――スクルド!」
 ドローンが声に応じ、カチュアとニコルを追い越してグラドラゴへ迫る。
 霧の中、龍は大きく息を吸い――毒霧もろともすさまじい咆哮を放った!
「来る……!?」
「……ッ!」
 ニコルとカチュアはその威力を想像し、戦慄した。直撃すれば重傷は免れまい。
 だが退けば敵に時間を与えてしまう。供露の判断を信じ、まっすぐに走る。
 一方、供露はマスクの下でニヤリと笑っていた。
「こいつはなァ、防御特化型にこしらえた特製のドローンなんだぜ。
 水に炎、風に物理――どんな障壁だろうが即座に生成できるのさ!」
 ごう! と風が吹き荒れ、極大圧縮によって可視化された障壁となる。
 大気を揺るがす毒霧と咆哮にぶつかり……風の障壁は、それを防ぎきった!
『何ッ!?』
 咆哮と相殺された障壁は風船めいて爆ぜ割れ、嵐のような風が周囲に荒れる。
 結果としてグラドラゴを包む霧が晴れ、カチュアとニコルの突撃経路を拓く!
 供露の目元が笑った。そしてカウントダウンを開始する。1秒、2秒――!

「……いちいち見極めなくていいのは楽ね」
 普段よりやや押し殺したような声音でカチュアが云う。
 立ちはだかる壁は、ティティモルモも供露によって払われた。
 毒霧も彼女達を責めさいなむことはない。ならば……黒き斧に全膂力を込める。
『カァアアアッ!!』
 迎え撃つグラドラゴが爪と翼を打ち振るう。
 追い詰められたドラゴンが見せる乱舞。カチュアはそれをよく知っている。
 何故ならば彼女は竜騎士、龍言語を用いてドラゴンを討つ槍の名手なれば。
 右から爪が来る。これを伏せて躱す。
 左側から地面ごとえぐるようなすさまじい爪撃。跳んで躱す。
 そのまま腕に乗り――己を吹き飛ばそうとする翼のはばたきを、一瞬だけ踏みとどまって堪える。
 威風が過ぎた。腕から肩、肩から胴体へ蹴立て、背中を取る!
「さあ行くわよ、よい……しょっ!!」

 ――ズンッ!!

 地形すら破壊しうる斧の一撃が、グラドラゴの体の芯を捉えた。
 鱗が、骨が砕け、奴は口から血煙めいた霧を吐き出す。
 本来ならここで跳躍し、即座に翼による打ち払いを避けるのが常道。
 だが彼女はぐっと柄を握りしめ、踏みとどまる。なぜならば!

「いいですね、面倒じゃなくてなによりですよ!」
 カチュアのややあと、彼女の体を死角にして続く者が居た。
 赤い髪をなびかせ、扇情的に見える鎧と打って変わった恐ろしい戦斧を担ぎ。
「やっぱりこういうのは、殴り合いに限りますからねえっ!!」
 苦悶していたグラドラゴが、近距離で咆哮を放ちニコルの全身を切り裂く。
 退かぬ。可能な限り体を低くして、少しでも音波による被弾を防いだ。
 ほとんど這うような姿勢から、両足のバネを生かして跳躍!
「さあ、これでもまだ足掻いていられますかッ!?」
 ゴォンッ!! と、全膂力と全身の体重を載せた打ち下ろしが頭蓋を叩き割る!
 グラドラゴの目から、幾重もの傷から血が溢れ、奴は今度こそ動脈血を吐き出した。
 再び立ち込め始めた毒霧が彼女達を苛む。だが与えた被弾からすればこの程度は、軽い!

 そして。
「――10秒。いまだ、"なぞれ"」
 供露が、空間を人差し指で"なぞった"。
 その軌跡は遠く離れた、グラドラゴの翼を切り裂くようなもの。
 そして彼の操る魔術が、空間すらも断裂させ――奴の片翼を叩き斬る!
 龍はもはや、威厳も何もあったものではなく叫び転がった。
 苦痛に、恐怖に、屈辱に、ただただ無様に。
「そうだ、お前みたいな奴はそういうほうが"似合い"だぜ」
 黒いマスクの電脳魔術士は、ぞっとしたような笑みで愉悦を漏らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イェルクロルト・レイン
ユハナ(f00855)と

おれらを喰らおうってのか?
……ばかいうな、おれたちは狩る方で、あんたは狩られる方なんだよ
適宜四肢を獣化させ、地を駆け爪で捉える
白き炎を纏わせたならば、呑みこんでいけ

霧ってのは、ようは水なんだろ
邪魔なもんは消し飛ばしてやる
燃やせ、燃やせ、全てを喰らえ
かくれんぼはお終いだ

ユハナ、
呼びかけと共に視線をやって
往くぞ、なんて言葉足らずに腕を掴む
飛ぶ敵を相手にどうするか?
――簡単だ、飛べばいい
返事は聞かず、ユハナを空へと送り出す
こちらを気にする余裕があるなら十分
後は、あんたの仕事だ

チェックメイト、って言うんだろ?
喧嘩売る相手間違ったな
塵に還れ、さよならだ
喉元に食らいついてお別れを


ユハナ・ハルヴァリ
ルト(f00036)と

帝竜。
そうですか。では、君には退いて、もらわないと。
調べ物をするには、君は少し、大きいですから。

大きいし、飛べる
でも小回りは、効かないでしょう
周りを走り、跳びながら隙を見ます
そうですね。霧は、水ですから
凍らせて落とします
氷の属性魔法を盾に使い、手足を凍て付かせて

掴まれた腕に驚きもしない
──抑制、反転。
投げられると同時に姿を変じて跳躍
両の手に氷の矢を幾重にも生んで
ついでにルトの方へも氷の盾を飛ばしましょう
毒だとか、何だとか。死ぬ前に倒せば済むことです
狙い穿つは翼。それさえ折ればもう飛べません
地に墜ちたならそれが君の最後
抜いた月の短剣に氷纏わせ大剣を成し
失墜は一筋、君の首へと




 何故だ。何故、何故吾はこうまで追い詰められている。
 痛みと屈辱と恐怖のなか、グラドラゴは高速で思考を巡らせた。
 ありえない話だ。空の帝王、地上の君臨者たる己が斯様に思索を巡らすなど。
 怯え竦み、必死で生き延びようとするのは吾ではない、獲物の仕事だ。
 吾はそれをあざ笑い、ねじ伏せ、喰らう。
 それが道理であるべきはず。決して覆されぬさだめであるはず。
 なのにいま、他ならぬ己がその憂き目を遭わされている。何故だ!

 いくら考えようと、わかるはずはない。
 彼奴はオブリビオンであり、傲慢たる龍なのだから。

●龍退治は飽きやしない
 グラドラゴが必死の思いで生み出した霧を、真白い炎が飲み込む。
 名もなき灯火である。それを燃やす者の名は、イェルクロルト・レイン。
「いい加減理解したか? どちらが狩る方で、どちらが狩られる側なのか」
 気だるげながら殺気立った眼差しが、陽炎越しに龍を睨めつける。
 己らを喰らおうなど、笑止。なぜなら我らの名は猟兵なり。
 敵を猟り、滅ぼす兵士。それこそが猟兵であり、オブリビオンの天敵。
「あんたのその霧も、何もかも。邪魔なもんは消し飛ばしてやる」
 獣化した四肢で地を駆け、壁を蹴り、炎を撒き散らしながら彼は言った。
「かくれんぼはお終いだ。――あんたのふざけた生もな」
 白い炎が全てを燃やしていく。獣は獲物めがけ一心に駆けていく。

「君がここまで持ちこたえたことは、すごいと思います」
 対岸。星のように煌く、けれど冬めいて冷たい瞳の少年が言った。
 ユハナ・ハルヴァリ。戦場を跳び、走り、隙を探っていたエルフの術士。
 彼を遮らんと、決死の覚悟で生み出された眷属どもが迫る。
 だがユハナが傷つけられることはない。牙も、爪もなにもかも触れられない。
 それらはまるで帳をくぐったように凍りつき、砕けて割れてしまうからだ。
「でも、君には退いて、もらわないと……いけませんから」
 敵愾心はない。そのかわり、憐憫すらもなく、冬の化身は言った。
 あとには凍りついた彫像の列が並び、砕けて割れる。
「――終わりです。君は少し、やりすぎた」
 相貌に変化はない。それは星なき夜の暗澹を思わせた。

「ユハナ、」
 駆け出した二人がバツ字に交錯する直前、イェルクロルトは言った。
 呼ばれた少年が冷たい瞳を向ける。彼はそれを見返――さない。
 "往くぞ"などと。いちいち声をかけて、息を合わせる必要もない。
 ただその細く華奢な腕を、たくましき人狼の手がむんずと掴んだ。
 龍は空の覇者、地上の帝王。その翼はあらゆる獲物を睥睨する武器であり道具だ。
 彼奴が力いっぱいに空を舞えば、銃も槍も届きはしない。
 ではどうする? 神に祈って天罰でも待つか?
 ――否、飛べばいい。ただし彼らに翼はない。
 星空へと手を伸ばそうと、けっしてそれを掴み取れない者達。
 ならばとイェルクロルトは、ユハナ……思い切り、投げ飛ばした!

 では少年はそれにどう反応したか?
 どうもしていない。驚愕はおろか、頼もしげな笑みも何もなく。
 ただぶんと宙を舞えば、めったに動かぬ口元が口訣を唱える。
「――抑制、反転」
 声は命じる。両手に課せられた、手枷のような荊棘の刻印に。
 それは冷たく静かに脈打ち、あろうことかざわざわと蠢き、彼の体を覆っていく!
 声はなおも命じる。――我を食い千切れと。
 荊棘は淡々とそれに応じ、聖痕はやがて全身を覆った。
 するとどうだ、ユハナの姿はいまや、幼気な少年のものではない。
 ぞくりとするような鮮烈な蒼を秘めた、一回りは巨きく見えようかという青年のものへと。
 青年は宙(そら)を蹴立て、さらに速度を増す。
『貴、様――!!』
 龍は怯えた。ゆえに毒霧を纏い、大きく咆哮を放とうとした。
 吸い込んだ吐息は恐ろしく冷たく、それゆえ奴の思考は僅かに乱れた。
 生き物を腐らせ膿ませるような毒霧は、氷の盾に遮られ僅かに届かぬ。
 巨体を支えるちぎれかけた翼。それを――杭めいた氷の矢が、貫く。

『何故ダ』
 龍は呻いた。誰にともなく問いかけた。
「さあな」
 獣は応えた。そして言った。
「こういうの、チェックメイトって云うんだろ?」
 轟音を立てて、瀕死の龍が地へと堕ちる。
 その眼の前に狼がいた。ぐる、と喉の奥から唸りを漏らし。
「喧嘩を売る相手、間違ったな。あんたはもう、塵に還れ」
 さよならだ、と獣は言い。大きく大きく口を開けた。
 龍は空を仰ぐ。否、大空洞の中では空は見えぬ。
 ただ空中より降り来る、氷のように冷たい死が見えるのみ。
 月の短剣に冷気を纏い、斬首の刃と化した青年の姿をした死が。
「――堕ちた大地が、君の最期の塒です」
 そう呟いたような気がする。
 そして氷の刃が、牙が。龍の逆鱗もろとも首を断ち割り……悪龍に最期をもたらした。

 霧が晴れていく。もはや後には何も遺らない。
 様々な世界の様々な神話に、強大にして傲岸たる龍はその名を遺している。
 だがそうしたお伽噺は、いつも同じ形で幕切れする。
 すなわち――悪い龍は、英雄によって討たれたと。
 ゆえに英雄は剣を執る。そして龍に抗い、これを屠る。
 英雄が、龍退治に飽きるようなことなど……きっと世界が終わってもありえないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月12日


挿絵イラスト