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花咲く日の守り人

#獣人戦線 #ヨーロッパ戦線 #ゾルダートグラード



 獣人戦線、山間部の花畑にて。
 美し花々の咲き誇るその地には、多くの人々が集まっていた。
 彼らの中央には花婿衣装のオオカミと、花嫁衣装のスズメの姿があった。
「結婚おめでとう!」
「みんなでお祝い出来て良かったわ!」
 人々も笑顔で二人を祝福したり、美しい花や美味しい食事を楽しんでいる。
 今日は特別な結婚式の日。戦乱の世界だろうと、ささやかな幸せを享受出来る日だ。

 けれどその幸せもずっとは続かない。
 人々が幸せだからこそ、それを踏み躙ろうとする者が現れるからだ。
 彼らは凶悪な兵器を片手に、粛々と山を登り続ける。
 花を、人々を、幸せを、全てを壊し尽くしてしまうために。


「集合お疲れ様です。新しく発見された世界『獣人戦線』にて、早速予知がありました。今日はその案内です」
 猟兵達の姿を確認し、口を開くのはサイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)だ。サイモンは猟兵達に頭を下げつつ、話を続けていく。
「今回の目的地は山間部の小さな村です。そこで結婚式が行われるんですが、その隙を狙うようにゾルダートグラードが攻めてくるようで。皆さんには結婚式の警備と敵の迎撃、その双方をお願いできればと思います」
 ゾルダートグラードというのはオブリビオンが率いる超大国の一つ。彼らは常に侵略のチャンスを窺っており、今回もその一環なのだろう。
 彼らの侵攻を放っておけば、多くの人々が傷つきオブリビオンと化してしまう。予知することが出来た以上、それは防がなくてはならないだろう。

「目的地についたら、まずは結婚式に参加して下さい。式は村のそばにある大きな花畑で開かれるそうで……すごく綺麗な景色みたいですね」
 サイモンは話しつつ、結婚式の様子を映し出す。
 式場には色とりどりの花が咲き誇り、その上にいくつかのテーブルが置かれている。テーブルには糧食から作られたご馳走が並べられ、どんな種族でも楽しめるように準備がしてあった。
 式を挙げるのはオオカミの男性とスズメの女性で、綺麗な衣服を纏った二人は幸せそうに微笑んでいる。
 彼らの周囲には村中の人が集まってきているようで大賑わいだ。この様子なら猟兵達が飛び入りで参加しても問題はないだろう。
「幸いなことに敵襲までは時間がありますから、式や花畑を楽しむのもいいかと。敵は山の麓の方から来ると分かってますから、警備も難しくないと思いますので」
 せっかくの新世界だ。
 糧食から作られた食事を楽しんでみたり、獣人達と交流したり、或いはのんびりと花を慈しんだり――何か思い出を作ってみるのも良いかもしれない。
 そうして時間を過ごしていれば、いずれ敵襲の時もやってくるだろう。

「式もある程度進んだ頃に、山の麓からオブリビオン達が攻めてきます。彼らは様々な兵器を躊躇なく使ってくるでしょう。人々や花畑を守るためにも迅速に対処して下さい。攻めてきた兵士を倒していけば、指揮官も現れるはずです。それを撃破することが今回の最終目的になりますね」
 指揮官さえ倒してしまえば侵略軍は総崩れとなるはずだ。
 そうなれば結婚式も花畑も、多くの人々も守れるだろう。
「初めての場所ですし、謎も多い世界ですが……まずはやれることをやっていきましょう。そろそろ転移の準備をしますね」
 サイモンは話を纏めつつ、改めてグリモアを起動する。
 そうして開かれたゲートの向こうでは――はじまりの世界が皆を待ち受けているはずだ。
「それでは気をつけて。よろしくお願いしますね」


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 新世界、謎がいっぱいで楽しみです。

●一章『戦禍の地にも花は咲く』
 小さな村で行われる結婚式に参加しつつ、敵襲を警戒しましょう。
 式は大きな花畑で開かれます。村の人達は猟兵に対しフレンドリーなため、飛び入り参加も歓迎されるでしょう。
 果実や穀物から作られた「糧食レーション」のご馳走を食べたり、花を愛でたりすることも出来ます。
 敵襲に備えて行動するも良し、式を楽しんで祝うも良しです。

●二章『ガスマスク兵』
 山の麓からやってくる侵略軍を迎撃しましょう。
 科学兵器を操る兵士達を倒していけば、必ず指揮官も現れるはずです。

●三章『???』
 指揮官戦です。
 最後まで戦い抜き、人々の幸せや自然を守りましょう。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
 締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 日常 『戦禍の地にも花は咲く』

POW   :    花の香りに包まれ、昼寝を楽しむ

SPD   :    花を摘み、花束や花冠を作る

WIZ   :    平和な光景を絵や写真に残す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


 転移した猟兵達を出迎えるのは、鮮やかに咲く花々と人々の歓声。ちょうど結婚式の最中のようだ。
 花嫁と花婿を囲む人々も猟兵に気が付くと、笑顔で手を招いてくる。
「あら、こんにちは。猟兵のお客さんなんて縁起がいいね!」
「皆さんも一緒にどうぞ!」
 案内されるのは綺麗な花が集まっている地点だったり、美味しい糧食が振る舞われるテーブルだったり。
 結婚式も牧歌的な雰囲気のようで、人々ものんびり過ごしているようだ。

 敵の襲来まではまだ時間もある。
 その時に備えつつ、今は穏やかな時間を過ごしていこう。
ゼロ・クロニクル
ふむ、ここはなかなか美しい村だな。しかもこんな天気の良い日に結婚式を迎えるとは、門出には実に相応しいではないか。だからこそ、邪悪な侵略者に邪魔をさせるわけにはいかぬな。

猟兵を名乗れば、拙者も式に参加できるのか?では、今のうちに出来るだけ楽しんでおこう。…うむ、どの料理も美味い。奥方は美しく、婿殿は凛々しいな。
食事を済ませたら、少し花畑を散歩してくる。ついでに村の地形も確認して、どう戦うかあらかじめ作戦を練っておくか。…山の向こうから邪な気配を感じる。もうすぐ来るな…なに、心配は無用。久々に美味い飯を食わせてもらった、礼をさせてもらおう。




 見上げれば抜けるような青空に雄大な山々、視線を下に下ろせば美しい花畑に笑い合う人々。
 長閑な光景を前にして、ゼロ・クロニクル(賢い動物のストームブレイド・f24669)の表情も和らいだものへと変わる。
 獣人達の暮らす村は美しく、結婚式も快晴の中行われる。まさに心地の良い門出で、なんと目出度いことだろうか。
 しかしこの幸せもずっとは続かない。自分達は猟兵で、この式を脅かす存在を感知している。
 目の前に穏やかな幸福があるからこそ、それを壊す邪悪な侵略者は許せない。
 人々を守るためにも、まずは彼らのことを、そしてこの世界のことを知っておかなくては。
 ゼロは柔らかな笑みを浮かべつつ、村民の方へ足を運ぶ。彼を出迎えるのは、皆の楽しそうな笑顔だ。

 猟兵だと名乗れば、式の参列者達はゼロを快く迎え入れた。
「おお、心遣いに感謝する。奥方は美しく、婿殿は凛々しいな」
「猟兵さんにそういってもらえるなら嬉しいです。式の方も是非楽しんで下さいね」
 はにかむ新郎新婦に挨拶を済ませたのなら、今度は料理の並ぶテーブルの方へ。
 並べられた料理はパンにソーセージ、それからチーズとドイツやスイス系の料理が多そうだ。
 見た目はゼロもよく知るそれと変わりない。しかし実際は、この世界独自の技術で作られているのだとか。
糧食レーションとやらは果実や穀物で作られているそうだが……)
 試しにソーセージを一口食べてみれば――味も食感も、溢れ出る肉汁も。本物と殆ど変わらない。
 他の料理も同様だ。原材料のことを知らずに食べれば、どれもゼロの知っているものと同じなのだ。
 このような技術は故郷でも使えるかもしれない、なんてことも思いつつゼロは次々に食事を進めていく。
 そうして一通り満足すれば、今度は仕事の時間だ。

 ゼロが向かったのは、式の会場から麓へ向かうルート。
 美しい花々を楽しみつつも、周囲の地形を確認するのは忘れない。
 敵は科学兵器を使うとのことだから、遠距離からの攻撃に備えておくのがいいだろうか。
 ゼロの背丈ならば、花畑の中に身を隠すことも出来るだろう。奇襲ができそうなポイントも確認しておこうか。
 そんなことを考えつつ、ゼロの感覚は的確に邪悪な気配を感じ取っている。
 けれど心配はいらない。久々に美味しい食事を取ることが出来たし、快く歓迎もしてもらった。
(……人々もこの自然も守ってみせよう)
 村の人々の恩には必ず報いる。そう心に決めたのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

アメリア・バーナード
※アドリブ連携OK
ご結婚おめでとう。
すごく綺麗な花畑ね。
お祝いの席に相応しい場所だし、
この村に住むのなら羨ましいわ。

糧食も気になるけど……。
ひとまず式に顔を出して、途中でこっそりと抜けるわね。
花畑を離れたら、敵がやって来る方角で、警戒を行うわ。
主に塹壕を掘って過ごす事になるかしら。
「危ないから鉄条網には触れないで頂戴」
「草の香りに包まれて穴掘りって新鮮ね……」

もし人が居たら、花畑について話そうかしら。
私、故郷を緑一杯にしたいのだけど、砂漠だし。
乾燥が悪いのかしら。それとも土が違うのかしらね。
人が居なければ黙々とシャベルを動かす事になるわね。
何メートル掘れるかわからないけど、出来る事はやるわ。




「ようこそ猟兵さん、辺鄙なところですがゆっくりしていって下さい」
「こちらこそ歓迎に感謝するわ。ご結婚おめでとう」
 朗らかに新郎新婦に挨拶するのはアメリア・バーナード(量産型キャバリア乗り・f14050)だ。
 笑顔を浮かべる人々に、咲き誇る花々。広がる光景はとても好ましいもので。
「すごく綺麗な花畑ね。お祝いの席に相応しい場所だし、村も素敵だし。こんな場所に住むのなら羨ましいわ」
 アメリアの本心からの言葉に、人々も笑顔を浮かべる。
 戦乱の世界、砂と荒野の国で生まれたアメリアにとっては、目の前の景色は夢のよう。
 だからこそ、この場所を守れるように頑張らなくては。

 適度に糧食も頂いて、挨拶も済ませれば仕事の時間だ。
 アメリアはこっそりと式を抜け出すと山の麓へと進んでいく。
 麓までの道程は森のようになっていて、濃い緑の香りが鼻を擽った。
 それを堪能しつつ、アメリアが取り出したのは愛用の軍用シャベルだ。
「っと……」
 ざくざくと土を掘り返しつつ、作り出すのはキャバリアにすら対抗出来る塹壕線だ。
 身を隠せるようなトーチカに、警戒のための電気鉄条網や地雷。それらを懸命に設置しつつも、感じるのは広大な自然の気配。
(草の香りに包まれて穴掘りって新鮮ね……)
 馴染んだ土の香りもいつもとは違っていて、なんだか不思議な感じだ。
 豊かな自然を堪能しつつ作業を勧めていれば、聞こえてきたのは小さな足音。けれど敵襲にはまだ早い、ということは――。
「そこ、気をつけて。危ないから。それに鉄条網には触れないで頂戴」
 警告を発しつつ振り返れば、そこにいたのは子供達だ。
 子供達は警告に驚き硬直しているようだ。アメリアは苦笑いを浮かべつつ、彼らの元へ歩み寄る。
「これ以上進まなければ大丈夫よ。そうね、ちょうど休憩したかったところなの。少しお話しない?」

 適当な木を背もたれにしつつ、アメリアは子供達と言葉を重ねる。
 最初は結婚式のこと。次は村と花畑のこと。それから――。
「私、故郷を緑一杯にしたいのだけど、砂漠だし。乾燥が悪いのかしら。それとも土が違うのかしらね」
「砂漠でもお花は咲くって聞いたことあるよ。サボテンとか」
「サボテンもいいわね。でもやっぱり、この村みたいな花畑も作ってみたいの」
 緩く微笑みつつ、アメリアは山を見上げる。
 この世界もまた戦乱の中にあるが、それでも花は咲き人々は笑っている。その姿は憧れるし、目指すべき形の一つだと思うから。
「この村のことも参考にさせてもらいたいわ。そのためにも、しっかり守れるようにしないとね」
「お姉ちゃん、かっこいい! 絶対お花、咲かせられるよ。村も守ってくれてありがとう!」
「こちらこそ。夢を叶えられるように頑張らないとね」
 向けられる言葉は純朴で、だからこそ真っすぐで。
 それをしっかり受け止めつつ、アメリアは再び立ち上がる。
 再び土を掘って、塹壕線を作り上げるため――出来ることを、全力でやるために。

成功 🔵​🔵​🔴​

シモーヌ・イルネージュ
ここが新しい世界か。
戦争してるって話だったけど、ここは花もあって、きれいなところだね。
結婚おめでとう!

まだ敵がやってくるまで時間があるようだし、お祝いの最中だし。
ここはせっかくだからご飯をもらおうか。

こっちじゃ肉食がダメってことだから、もしこの糧食っていうのが口に合わなかったら、楽しみ無くなるしね。けっこー切実なんだ。

野菜だけじゃダメなんだ。腹減るし、肉無いと力出ないよ。




 新しい世界に赴く時は、いつもドキドキするもので。
 今回の舞台は戦乱の世界と聞いていたが、目の前に広がるのは花々の咲く美しい景色。
 その光景を楽しげに眺めつつ、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)もまた祝いの席へと足を運ぶ。
 こういう時に真っ先にすることと言えば――シモーヌは新郎新婦の元まで進むと、弾むような笑みを浮かべる。
「結婚おめでとう! こんな綺麗なところで式を挙げられるなんて、本当に良いことだね」
「ありがとうございます。猟兵さんに祝って頂けるなら僕たちも本当に嬉しいです」
 幸せそうに笑う新郎新婦にシモーヌも更に表情を和らげさせる。
 戦乱の中だろうと美しい景色があり、幸せな人々がいる。それはきっと、どの世界でもかけがえのないことだから。

 特別な幸せを感じ取ったのなら、今度はもっと日常的な幸せに目を向けよう。
 シモーヌは村民達とも挨拶を交わしつつ、食事の並べられたテーブルへと向かっていく。
 並べられているのはパンにチーズ、野菜類は勿論――ソーセージのような肉類も。ドイツやスイスの料理がベースのようだ。
 見た目や香りはシモーヌのよく知っているものと変わらない。けれどこの料理達はこの世界独自の技法で作られた糧食レーションなのだという。
(この世界じゃ肉食は駄目らしいからな。もしこの糧食っていうのが口に合わなかったら困るなぁ)
 シモーヌにとって食事は何よりの楽しみの一つ。初めて訪れる世界なら、その世界独自の食事だって楽しみたい。
 けれど――肉が存在しない、というのは大問題だ。
 野菜や果物だって好きだし、それらの栄養価も大切なのは分かっている。けれどそれだけでは駄目なのだ、イマイチ気合が入らなくなってしまう。
 だから、どうかこの糧食が美味しくありますように。
 シモーヌは恐る恐る皿へと盛ったソーセージへとフォークを伸ばし、その身に先端を突き刺す。返ってくる弾力は、やっぱりよく知るソーセージのものだ。
 今度は顔の方へと近づけて、香りを嗅いでみる。ハーブの香りと共に伝わるのは、香ばしい肉のそれ。
 ここまでは問題ない。いよいよ問題の味を確認しよう。シモーヌは勇気を出して、ソーセージを一口齧る。
 口の中に広がる肉汁も、しっかりとした弾力も、香ばしい味わいも。これは――。
「――美味い!」
 思わず瞳を輝かせ、シモーヌは更にソーセージを口へと運ぶ。
 そのままパンやチーズも食べてみるが、どれもシモーヌのよく知るものと変わりない。どれも美味しくて、食べれば食べるほど元気が出る!
 糧食がこんなに美味しいならば、きっとこの世界でもうまくやっていけるだろう。
 それに――美味しい食事を頂けたのなら、その恩義を返さなくては。食事を堪能しつつ、シモーヌはぐっと気合を入れるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

バロメリアン・マルゴール
目標:人的被害0で勝つ事
行動:村人を集め、守り易くする
アドリブ歓迎

外から来た猟兵か
共に戦うのは初めてだが予知の存在だけでも凄まじいな
普段のオレなら逃がすので手一杯だが…コレならワンチャン花畑まで守れるか?

よ、ムッシュー
こんな素敵なマダムを捕まえるなんてやるじゃないか
オレは流しの歌い手でね。糧食の礼も兼ねて一曲祝ってもいいかい?

オウオウ、そんなトコで遊んでたらオレの持ってきたレアな糧食がそろそろなくなっちまうぜ?

歌等で人が集まるよう仕向け、オレの歌を聴きにこない不埒な…もとい花畑の外にいた人にも歌った後で声をかけるぜ
合間に他の猟兵と挨拶しとくのもいいな

後は麓と花畑を結ぶ線上で待つ
ステージの開幕だ




 式の参列者の中に、見慣れない種族の者がチラホラと。彼らが異世界からやって来た猟兵なのだろう。
 彼らを横目でちらりと確認しつつ、バロメリアン・マルゴール(戦場の光・f39933)もまた人々の輪に加わる。
 猟兵達がここへ来たのは『予知』の力なのだという。
 彼らと共に戦えば、これから来る侵略軍から人々を逃がすだけでなく、花畑まで守れるのでは――そんな期待が胸の中を過っていく。
 そんな明るい未来なら大歓迎だ。そしてその未来を目指すためにも、自分も全力で頑張らなくては。
 心の中でぐっと気合を入れつつも、バロメリアンは優雅な所作で人々と挨拶を交わしていく。
 式を取り仕切っている大人達には珍しい糧食なんかも差し出して、祝いの品も忘れずに。
 そのまま足を運ぶのは、はにかむ新郎新婦の元だ。

「よ、ムッシュー。こんな素敵なマダムを捕まえるなんてやるじゃないか」
 軽く新郎の肩を叩き、バロメリアンは明るく笑みを浮かべて。その言葉に新郎も新婦も照れくさそうに笑みを返した。
「オレは流しの歌い手でね。糧食の礼も兼ねて一曲祝ってもいいかい?」
「勿論です! 僕たちも聴きたいですし、皆も喜びます!」
「ありがとう。それじゃあ気合を入れて歌わせてもらうぜ。おーい、こっちだこっち!」
 バロメリアンが大きく手を振れば、人々の視線もそちらへ集まる。
 その視線を導くのは、先程提供した糧食の並べられたテーブルだ。
「オウオウ、そんなトコで遊んでたらオレの持ってきたレアな糧食がそろそろなくなっちまうぜ? 皆で歌って食べて、楽しく祝おうじゃないか!」
 朗々とした声掛けと共に始めるのは、魂を籠めた歌唱。
 バロメリアンの紡ぐ祝いの歌は花畑の中を駆け抜けて、式の参列者達を引き寄せていく。

 数曲歌い上げれば、あっという間にバロメリアンのステージは大盛りあがり。
 それでもマイペースに過ごしている人がいれば、彼らのことも気にかけつつ。
「今は休憩中かい? あとでもう少し歌うつもりだから、聞いてくれれば嬉しいぜ」
 そう笑顔で声をかければ、人々もこくりと頷いて。
 合間合間に異世界から来た猟兵達とも言葉を交わしつつ、楽しい時は過ぎていく。
 その最中でも――山の麓の方にはしっかりと意識を向けて。バロメリアンは楽しい空気を壊さないように、けれど最大限の注意を払っていた。
(いざという時逃げられそうなルートも……大丈夫そうだな)
 村から麓の間は森になっているようだ。そこを利用すれば人々を隠れさせたり、戦いを有利に運ぶことも出来るだろう。
 楽しい祝いの場を作りつつ、人々をしっかりと護りたい。バロメリアンの強い想いと行動は、きっと良い結果を齎すはずだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リダン・ムグルエギ
ハレの日には特別な御衣装をどうぞ!
貸衣装屋GOATiaよ

今は(この世界では)修行中の身だから御代は結構
後で周りの村に喧伝してもらえると幸いよ


今回は新世界の観察&生配信しに来たの
良いわね、結婚式って
動画映えするしその世界の独特な衣装が勉強になるし
花嫁さんの衣装、本当にステキね
ここの縫い方はどんな職人さんが?

事前に準備しておいた多数のスーツやドレス、子供服等(服飾師の布で防御力UPした代物)を周りのゲストや猟兵に貸し出すわ
コレは戦いの準備でもあるんだけど……
着て満足してもらうコトの方が重要ね
その場で要望聞いてミシンでアレンジして顧客満足度100%目指そっと

後は撮影しつつご飯もお祝いも堪能しちゃうわ




 からからとキャリーケースを引きながら、笑顔で式へと参加するのはリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)だ。
 まず挨拶するのは式を取り仕切ってる人達に、村長らしきお偉いさん。彼らの元まで歩み寄るとリダンはさっと名刺を取り出す。
「ハレの日には特別な御衣装をどうぞ! 貸衣装屋GOATiaよ。今日は結婚式だと聞いてお祝いさせてもらいに来たわ!」
 挨拶が終われば次は商談。「(この世界では)修行中の身」だからという名目で御代は頂かない代わりに、皆の衣装を仕立てさせて欲しい――それがリダンの申し出だ。
「後で周りの村に喧伝してもらえると幸いよ。あと配信……ええっと、記録も取らせて貰うわね」
 リダンが純粋に商売とお祝いに来ていることは、人々も理解してくれた。申し出もすぐに受け入れてもらえる。
 そうと決まれば早速仕事の時間だ。リダンは万魔電をフル活用しつつ、住民との交流を始めていく。

 キマイラフューチャーにしっかり動画が配信されていることを確認すれば、あとはひたすら映える動画を撮るだけだ。
「良いわね、結婚式って。皆もとびきりの衣装を着てくるだろうし、動画にも映えるでしょうし」
 道行く人々の衣装もチェックしつつ、リダンが向かうは新郎新婦の元。
 今回結婚する夫婦はどちらも階梯2のようで、纏う衣装は尻尾や羽根にも合わせた形で工夫されている。
「花嫁さんの衣装、本当にステキね。ここの縫い方はどんな職人さんが?」
「山の向こうの職人さんが作ってくれたんです。ドイツでずっと修行してたそうで、そちらの技法が使われているんだとか」
「なるほど、ヨーロッパ系の文化が色々混ざっているのかも……?」
 獣人戦線の衣服の作りはキマイラフューチャーのものに似ているが、それよりも伝統的な技法が濃い目。
 じっと観察しているだけでも色々と勉強になりそうだ。それと同時に湧き上がるのは、止めどない創作意欲。
 リダンは新郎新婦の元を離れ、愛用のミシンを取り出す。
「……よし!」
 気合を入れて広げるのは――事前に用意してきた衣装達だ。

 リダンは衣装のデザインを周囲の人々に合わせつつ、次々に提供していく。
「裾直しとかは勿論、デザインでも気になる点があれば教えてね。すぐに直すから」
 GOATia製の衣服は人々を護る鎧にもなるし、人々を喜ばす華やぎにもなる。
 住民達はリダンから借りた衣服を纏い、更に結婚式を盛り上げているようだ。
「お姉さん、素敵な衣装ありがとう!」
「気に入ってくれたのならアタシも嬉しいわ」
 手を振る人々に笑顔を向けつつ、リダンはどんどん作業に勤しんでいく。
 合間に頂く糧食も美味しくて、更に元気が出るというもの。時間いっぱい頑張れそうだ。

 初めての訪問でも顧客満足度100%を叩き出す素敵な貸衣装屋さん。その噂は、きっと瞬く間に広がっていくことだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

瀬河・苺子
【心情】
ここは長らく戦争が続いた世界なんですね
状況に違いはありますが、わたしの生まれた世界もゴーストとの長い戦いの続く世界です
他人事には思えませんし、平和を守らなくてはいけませんね

【行動】
そう言えば、以前にも猟兵がいたから、この世界の人は猟兵に詳しいんですね
ということで、安心して糧食をいただきましょう

お祝いらしく希少なものもあるでしょうから、大事にいただきますね


こういう景色を見ていると、わたしもそろそろ、と思いますね
しかし、この体を直さないことには、難しいですし、あの人も奥手だからいつになるのやら

※運命の糸症候群で高校生に戻っているが、実年齢は20代半ば
※結婚を前提にした付き合いの恋人もいる




 目の前に広がる光景は長閑だが、所々に見える建物の破損や人々の怪我は、この世界の過酷さを物語っているようで。
 周囲の様子を眺めつつ、瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)が思うは故郷の世界。
 銀の雨降る苺子の故郷も、ずっとゴーストとの戦いの渦中にある。戦いが続くこと、その辛さや過酷さはよく知っていた。
 同時に、今日の日のようなかけがえのない幸せの大切さも知っている。だからこそ、その平穏を守らなくては。
 それにこの世界にも『猟兵』と呼ばれた先輩達がいるのだ。
 彼らの歴史に倣うこともまた、今後の戦いを進める上で大切になるだろう。
 まずはしっかりとお祝いをし、そして罪なき人々を護る。やるべきことを再確認し、苺子は人々の元へ歩み寄った。

「結婚おめでとうございます。わたしも是非祝いの席に加えて頂ければと」
「勿論大歓迎です。ゆっくりしていって下さいね」
 新郎新婦や村民達に出迎えられつつ、苺子が巡るは花畑。
 その上にはなるべく花を傷付けないようテーブルが置かれ、様々な食事が並べられている。
 パンにチーズ、ソーセージと料理は苺子の知っているものに変わりない。
 香りは勿論、一口食べれば味や食感も。本物そっくりではあるが、この糧食は独自の技術で作られているのだから。
(はじまりの猟兵達もこれを食べてきたのでしょうか……)
 ついつい先輩達に想いを馳せるのは、苺子もまた歴戦の戦士だからだろうか。
 濃いめの味付けがされたチーズはパンと相性がよく、少し辛めのソーセージなんかも一緒に味わうとまた楽しい。
 テーブルには酒類も並べられていたが、苺子は運命の糸症候群の罹患者だ。
 身体の年齢に合わせお酒は辞退しつつ、代わりに頂くのは甘い果実のジュース。
 こうやって美味しい食事を堪能していると、気持ちも緩やかになっていって。
 つい視線を向けるのは、はにかむ新郎新婦の方だ。

(……わたしもそろそろ、とは思うのですけど)
 苺子の脳裏に浮かぶのは、故郷の恋人のことだ。
 運命の糸症候群や新たな戦いがなければ、今頃はきっと――けれどその夢を叶えるためにも、まずは身体を治さなくては。
(あの人も奥手だからいつになるのやら……)
 思わずため息が漏れそうになるけど、それはぐっと飲み込んで。
 あの幸せそうな新郎新婦の幸せも護るし、自分の夢だっていつか掴んでみせる。
 改めてそう決心しつつ、苺子は穏やかな時間を過ごしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シプラ・ムトナント
わたし、ヒツジのシプラと申します。
よそ者ではありますが……わたしからも、ご結婚おめでとうございます。

お二人が末永く幸せでいられるよう、わたしからもお祝いをさせて下さい。

色とりどりのお花や沢山のご馳走、笑い声に包まれて。皆の祝福を一身に受けて。
ふふ、わたしまで嬉しくなってきちゃいます。結婚って、良いものですね……。

お祝いの言葉を伝えた後は、そのまま村周辺の警邏に移ります。あくまでわたしの仕事はこちら、ですから。

敵は確実に来るんです、警邏をしながら闘争心を高めておきましょう。

わたしはまだ未熟者ですが……それでも、この幸せを守るためなら命をかけられる。
その為に、救急カバンと銃を手に取ったのですから。




 新郎新婦は村の人々に囲まれ、穏やかに雑談しているようだ。
 シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は彼らの元へ歩み寄ると、丁寧に頭を下げる。
「わたし、ヒツジのシプラと申します。よそ者ではありますが……わたしからも、ご結婚おめでとうございます」
「ようこそ猟兵さん。お祝いして頂けるならどなたでも歓迎です」
 新郎新婦も人々も笑顔を浮かべ、共に頭を下げて。暖かな空気はシプラにとっても心地よいものだ。
「お二人が末永く幸せでいられるよう、わたしからもお祝いをさせて下さい」
「ありがとうございます。式の方もゆっくり過ごしていって下さい」
「はい、それではお言葉に甘えて」
 挨拶を済ませたのなら、シプラは式場をゆっくりと歩いていく。
 花畑に咲く花は色とりどりで、太陽の輝きを受けてきらきらと輝いているようで。
 並べられたご馳走からは美味しそうな香りが漂い、それを摘む人々も楽しそうだ。
 この世界の過酷さはシプラもよく知っている。同時に、このようなかけがえのない幸せの大切さも、よく知っている。
(ふふ、わたしまで嬉しくなってきちゃいます)
 結婚とはいいものだ。周りが祝福出来るのなら、尚更。
 けれどその幸せを踏み躙る者が現れることも、シプラは把握していた。
 だからこっそりと式を抜けて、向かうは山の麓。敵が出現する地点は森になっているようだ。

 戦場となる森も花畑ほどではないが、美しい自然に囲まれている。
 ここを蹂躙しようとする者がいるとは。人々が幸せを噛みしめる瞬間を狙うというのも、また悪質で。
(……決して見過ごせはしませんね)
 シプラは穏やかな面持ちの内で、どんどん闘争心を高めていく。
 ぐっと鞄の紐を握りしめて、警邏の最中に中身を確認。医療品の類はきちんと揃っていた。
 銃も取り出して、その調子を確かめる。大丈夫、いつ敵が来ても戦えそうだ。
 花畑の方からは人々の談笑する声が聞こえる。その穏やかな声が聞こえるからこそ、それを守らんと闘争心も高まっていくということだ。
 シプラは猟兵としても兵士としてもまだ新米。それでも恐れることなく戦いに向かえるのは、積み重ねてきたものがあるから。
 父と母、祖父母から受け継いた技術と想い。そうして手に取った救急カバンと銃。自分を支えてくれるものは、確かにある。
(わたしはまだ未熟者ですが……それでも、この幸せを守るためなら命をかけられる)
 決意を新たに、シプラは森の中を進んでいく。
 そうしていけば――感じ取れたのは、山を上がろうとする危険な気配だ。
 戦いの時まではあと少し。シプラはゆっくりと呼吸をし、その時に備えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ガスマスク兵』

POW   :    アシッドシャワー
【背中のタンクに接続されたノズル】から【強酸性液体】を放ち、レベルm半径内の敵全員を攻撃する。発動前の【薬品チャージ】時間に応じて威力アップ。
SPD   :    ポリューションバレット
自身の【ライフル弾】を【重汚染薬】化して攻撃し、ダメージと【肉体変異】の状態異常を与える。
WIZ   :    オブリビオンガス
【骸の海ガス】を噴出し、吸引した全員を【オブリビオン化】化し、レベル秒間操る。使用者が製作した【ガスマスク】を装備した者は無効。
👑11
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 山の麓から村までの間に広がる、深い森の中。
 そこに突如響くのは、多くの足音だ。
 その正体は科学兵器とガスマスクで武装した兵士の軍団――ゾルダートグラードによる侵略兵だ。

 兵士達はまっすぐに森を抜け、花畑を目指すだろう。
 侵攻の最中には化学兵器を用いて、山の自然も破壊していくはずだ。
 彼らが進めば進むほど美しい自然は失われ、人々の幸福は打ち砕かれていく。
 その暴虐を防ぐために、戦いを始めなければ。
バロメリアン・マルゴール
目標:攻撃の完全遮断
サブ目標:歌とパフォーマンスで村人達の不安を取り除く
行動:歌から生み出した光の盾で花畑及び村人達を守る

今日のオレは前座でね
ゲリラライブが終わるまではメインの役者新郎新婦には近づかないでもらうぜ
聞いていきな、ユーベルコード!

今回は気持ちよく歌えそうだ
m'aider協力してくれって声に応えてくれる仲間が居るからな

オレ自身もその一人
村の人の希望の声ある限り、この前線は突破させねぇ
怯える必要はねぇぜ!

腐食の影響を治癒力の強化で相殺し
液体の直撃はアーティストソウルで受けの防衛重視の立ち回り
チャージに集中する敵が居ればシャウトと共にアーティストフォースを飛ばし妨害を試みるぜ




 敵兵達は少しずつ山を登り、村の方を目指しているようだ。
 そんな彼らの前に不意に光が降り注ぐ。おかしい、ここは深い森のはずなのに。
 そう思った兵士達が目を凝らせば――そこに立っていたのは光を纏うバロメリアン・マルゴールだ。
「今日のオレは前座でね。ゲリラライブが終わるまではメインの役者新郎新婦には近づかないでもらうぜ」
 ライブの始まりを告げるようにマイクを構えれば、敵が構えるのは無骨なノズル。
 ただでさえ危険な兵士達なのに、扱うのは全てを穢す科学兵器とは。そんな無粋なものに、ささやかな幸せを壊させてなるものか。
 それに今日は一人きりではない。後方には頼もしい仲間も控えているのだ。だから――。
「聞いていきな、ユーベルコード! 今日のオレはノリに乗ってるぜ、m'aider協力してくれって声に応えてくれる仲間が居るからな」
 敵が危険な兵器を構えても、決して恐れたりはしない。
 バロメリアンはいつものように呼吸を整え、重く低く、けれど響く声で歌を紡いでいく。

 バロメリアンの奏でるユーベルコードが進めば進むほど、戦場に広がる光はより強いものへと変化しだしていた。
 兵士達が強酸性液体を散布し森が穢されても、すぐにその場は光によって修復されて。
 バロメリアンの歌は生物の治癒力を増加させ、傷ついたものを全て癒やしていくだろう。
 液体そのものも眩い光が阻んでいく。バロメリアンに宿るアーティストソウルは月光の如く、闇や悪を切り払うのだ。
 しかし敵も闇雲に攻撃している訳ではない。光が厄介だと気付いた敵達は、液体をより濃縮して散布しようと企んでいる様子。
 だからバロメリアンはチャージ中の敵に肉薄すると、思い切り息を吸い込んで。
「――m'aider!」
 曲のテンポや雰囲気を壊さないように気をつけつつも、ぶつけるのは渾身のシャウトだ。
 その音圧もまた強烈な光に変わり、一気に敵を弾き飛ばす。
 バロメリアンは終始立ち位置を変えつつも、決して息切れせずに歌を歌い続ける。
 なぜなら自分は協力を要請するだけでなく、要請される側でもあるのだから。
(村の人の希望の声ある限り、この前線は突破させねぇ。誰も怯える必要はねぇぜ!)
 山の上方、村の方にも意識を向けつつバロメリアンのライブは続く。
 幸せを築く人々には祝福の歌を、幸せを壊す者には強烈な一時を。
 戦場の光が紡ぐ歌は、文字通り戦場に光を降り注ぎる続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゼロ・クロニクル
……来たな。アレがゾルダートグラードの尖兵か。
ガスマスクを被っているということは、化学兵器部隊だな。
無粋な輩は、すべてこの忍犬が斬り捨ててくれよう。

まずは《地形の利用》で花畑に潜み、息を殺し待ち伏せする。
折角の花を散らすわけにはいかぬ、速やかに仕留めてくれるわ。
【立体忍者活劇】を発動、《暗殺》《忍び足》で襲い掛かるぞ。
夜叉で足元を斬りつけ、転倒したところで喉を咬む。

《化術》で人型に変じては手裏剣と闇狩を《投擲》し、
柔術を駆使した《グラップル》で地面に引き倒して
暗器を急所に打ち込む。暗器は事前に、特定の色と種類の花の
近くに隠しておくぞ。
相手が射撃体勢に入ったら術を解き、犬の姿に戻って弾を躱す。




 森を少しずつ進むのは、ガスマスクを装着した獣の兵士達。
 ゼロ・クロニクルは草花の影に隠れつつ、敵の姿をしっかりと確認する。
(……来たな。アレがゾルダートグラードの尖兵か)
 あのような化学兵器使いは故郷でも見たことがある。そのような輩が部隊として襲撃に来るのはこの世界らしいとも思うけれど。
(無粋な輩は、すべてこの忍犬が斬り捨ててくれよう)
 村の人々も、この村と山の自然も、決して蹂躙させてなるものか。
 ゼロは静かに呼吸を整え、敵が迫りくる時を待ち受けていた。

 兵士達も周囲の警戒はしているが、どちらかというと進軍の方に集中している。
 だから彼らは不用意に茂みに近づき、そのまま進み続けようとするが――。
「――甘いッ!」
 そんな彼らが最期に見たのは、此方を睨むゼロの顔だった。
 ゼロは目にも留まらぬ速さで茂みの中から飛び出すと、一気に兵士達の足を切り払う。
 バランスを崩した相手にはすかさず飛びつき、そのまま喉元を食い千切って。
 一体倒せばまた一体。速風のように駆け回りつつ、ゼロは次々に兵士達を倒していく。

 しかし敵も数は多いのだ。仲間が襲撃されたと分かれば、すぐに編成を組み直しライフルによる狙撃を開始する。
 ゼロは身を低くし弾丸の雨の中を駆け抜け、狙撃中の敵との距離を詰めた。
 そのまま一気に飛び上がると同時に化術を発動。青年の姿となったゼロは敵兵の顔面に手裏剣を投げ込み、その動きを怯ませる。
「まだまだッ!」
 怯んだ相手はそのままひっ捕らえて、近くの草花の元へと投げ込んでやる。
 そうすれば仕込んだ暗器が彼らの背を貫き、そのまま命を奪っていくだろう。
 どの花の位置にどの暗記を隠したかはきちんと覚えている。あとは敵を誘導しつつ、ひたすら数を減らしていくだけだ。
 敵の表情はガスマスクで窺えないが、それでも溢れる気配からは動揺が伝わってきている。
 だからゼロは元の姿に戻りつつ、大きく吠え猛り敵を睨む。
「どの世界でも侵略者というのは同じだな。此方の戦力を甘く見て、罠に嵌って倒れていく。卑劣な輩には似合いの結末だ!」
 ゾルダートグラードは大きな組織を築き上げ、計画に基づいた侵略を行っている。
 それは統率された行動のように思えるが――根本の部分では故郷で暴れるレイダー達と何一つ変わらない。
 そんな輩は決して逃さない。自分の後方に幸せな人々がいるならなおさらだ。
「さあ、まだまだ行くぞ!」
 ゼロは再び忍者刀を咥え、縦横無尽に敵を斬り伏せていく。
 美しい自然も、勇ましき忍者にとっては何よりも頼れる武器となるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シプラ・ムトナント
……来ましたか。
森を抜けて進むつもりならば、待ち伏せが有効ですね。
足音が聞こえる方向に慎重に進み、敵影を探します。
発見出来たらそのまま近くの木に身を隠し、呼吸を整えて……ギリギリの距離で、飛び出す。

虚を突いて間合いに入ってさえしまえば……わたしの方が、速い。
散弾銃のレミーを使って『近接射撃』を行います。散弾の【零距離射撃】、当たれば無事では済みませんよ。

装弾数は二発、これで敵を倒し切るのは不可能。
反撃は受ける前提で参りますが……わたしとて軍人、【激痛耐性】で多少の怪我ならまだ動ける。

動ける内に距離を取り、「軍用注射器」に充填した「軍用回復薬」を自己投与。これが衛生兵にして戦闘猟兵の戦闘です。




 生い茂る草木の影に身を潜めつつ、シプラ・ムトナントは意識を集中し続けていた。
 少し先から聞こえてきたのは戦闘音。どうやら敵軍は森の中に入ってきており、猟兵との戦いも始まっている様子。
 ならば自分も敵影を探さなければ。シプラは気配を潜めつつ、慎重に森の中を進んでいく。
 暫くすれば――目に留まったのは数体のガスマスク兵達。彼らは警戒しつつ村の方へ向かっているようだ。
(まだ少し距離がありますね。もう少し待ちましょうか)
 敵の侵攻ルート上には木々が生い茂る地点もある。こっそりとそちらの方へ移動しつつ、シプラは散弾銃の『レミー』を手に取った。
 両親から貰ったこの宝物で、確実に人々を守ってみせる。
 敵との距離が近付く緊張感の裏側で、シプラは着実に戦意を漲らせていた。

 ガスマスク兵達も警戒はしているが、彼らが気にかけているのは村人の方だ。
 森の中に潜んでいるとしても、せいぜい作業に出てきた民間人くらいだろう。そんな予想をしているが、ゆるりと動く狐尾からは見て取れた。
 相手が油断しているからといって、こちらも油断してはならない。シプラはゆっくりと深呼吸をし、タイミングを窺う。
 敵が目的地点まで辿り着くまで、3、2――。
「歯を食いしばりなさい。これ以上は進ませません」
 シプラは素早い身のこなしで敵の懐へと入り込み、その胴体へとレミーを突きつけた。
 そのまま引き金を引けば、至近距離から撃ち込まれた散弾が敵を内部から破壊していく。
 倒れ伏す敵を横目で見つつ、シプラは更に別の敵兵の元へと突っ込んでいく
 再び引き金を引けば、大きな音と共にその敵兵も破壊され、どさりと地に倒れ伏して。
 初撃は成功だ。けれどレミーはソードオフされている、装填数は二発と多くない。
 リロードのために木の陰に身を隠そうとしたシプラだが、その足元に冷たく、けれど熱い感触が伝わってきた。
「――ッ!」 
 ぐっと歯を食いしばり、どうにか身体を隠して。足元を確認すれば、見えたのは溶けたブーツに爛れた足。強酸性の液体を散布されたのだろう。
 けれど被弾するのも覚悟の上だ。シプラは迷うことなく注射器を取り出すと、太ももにその針を突き刺した。
 注射器の中身は軍用回復薬。錬金術によって作られたこの薬なら、この程度のダメージは回復出来る。
 そのまま手早く手当をし、銃に弾を籠め直して。シプラは再び森の中に隠れつつ、次の攻撃のチャンスを窺う。
 例え傷つこうとも迷うことなく治療をし、恐れることなく再び前に進んでいく。
 衛生兵にして戦闘猟兵であるシプラらしい戦いは、すぐに敵の数を減らしていくだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

シモーヌ・イルネージュ
おいしいご飯を食べたし、結婚式もつつがなく進んでるし、山はきれいだし。
いいところだね、ここ。

これはますますここを守らなきゃいけないね。

さて、今度の相手は、毒ガスか。
これはまた自然に優しくない相手が来たな。
背中のタンクからガスが漏れないように片付けるようにしよう。

黒槍『新月極光』で戦おう。
UC【山紫水明】を発動。
【水の魔力】と【風の魔力】を鎧に付与して、ガスを洗い流せるように対策。
攻撃は【ダッシュ】で敵に近づいて、【怪力】で槍を【なぎ払い】することで倒していこう。




 しっかりと糧食を堪能する最中、シモーヌ・イルネージュが見つめるのは結婚式を進める人々。
 式はつつがなく進行し、花は楽しげに揺れていて。壮大な山々の景色も美しく、やっぱり今日は素敵な結婚式日和だ。
(いいところだね、ここ)
 傭兵として様々なところを巡ってきたからこそ、強くそう思う。
 同時に湧き上がってくるのは使命感。ここは本当に素敵な場所で、だからこそ――自分達で守り抜かなくては。
 シモーヌは愛槍『新月極光』を握りしめ、戦場となる森へと向かう。
 少し先から見えるのはガスマスクを装着した兵士達だ。
「こんな自然の綺麗な場所で毒ガスか。これはまた自然に優しくない相手が来たな」
 それもゾルダートグラードの狙いなのだろうか。相手が卑劣な分、戦いにも身が入るというものだ。
 気をつけるべきは敵の攻撃そのものに、彼らが背負ったボンベ。
 戦いに勝つのは勿論、自然だって破壊させない。そんな決意と共に、シモーヌは前へと駆け出した。

「母なる大地よ。我に力を授け給え」
 前進の最中、シモーヌは周囲の自然へと声をかける。この豊かな実りを護るため、アタシに力を貸してくれ。
 その想いに応えるように湧き出る魔力はシモーヌを護る盾となり、敵を貫く矛となる。
 ガスマスク兵達はシモーヌの歩みを止めるように強酸性液体を放つが――清浄な風と水の流れがそれを阻み、毒素をあっという間に飲み込んでいく。
「そんな物騒なもの使うな、よッ!」
 そのまま勢いよく敵へと肉薄し、新月極光を全力で振りかぶる。
 流星のような勢いで放たれた刺突は繊細なコントロールにより、敵兵の胴体だけを貫く。そうして槍を引き抜けば、敵兵は骸の海へと消え去った。
 けれど安心は出来ない。周囲に視線を向ければ、より濃縮した強酸性液体を作り出そうとタンクを弄る敵もいたからだ。
「だから危ないって言ってるだろ。卑怯な道具は使わせない!」
 シモーヌは風の魔力を利用して、一気に空へと飛び上がる。
 そのまま魔力で作った水流で敵の動きを阻み、再び肉薄。槍による一撃をお見舞いし、毒を振り撒かせることなく敵を倒して。
 シモーヌは清らかな水の流れのように、軽やかな風のように戦場を舞い踊り、次々に敵を撃破していく。
 こんなに身体が軽やかに動くのは、この土地が自分を支えてくれているからだろうか。
「……やっぱりいいところだね、ここは! 守り甲斐もあるってもんだ!」
 弾むような笑みを浮かべたシモーヌは、さらなる快進撃を繰り広げていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

瀬河・苺子
【心情】
本当にどこの世界でも戦争は絶えないものですね
わたしの所だって戦いは続きますし、わたし個人も自身の運命の糸症候群治すので手一杯ではあります
ですが、それだけに他人事とは思えない
届く手があるのなら伸ばしたいところです

「それでは参りましょう。イグニッション!」

【戦闘】
毒ガス、わたし達の世界でも戦争の在り方を変えてしまった兵器の一つですね
それをUCとして使うオブリビオンが兵士とは、なんとも恐れ入った話です

「こっちも少々乱暴な方法でお相手します」

「忍び足」を用いて敵が複数いる場所へ移動
気付かれたらライフルによる攻撃を「第六感」「心眼」で回避
範囲内に味方がいないことを確認の上、UCを発動して「爆破」




 自然あふれる森の中、漂うのはピリピリとした空気。
 戦場らしいそれを肌で感じつつ、瀬河・苺子は木の陰に身を潜めていた。
(本当にどこの世界でも戦争は絶えないものですね)
 少しだけ胸の内が痛い。戦いが続いているのは自分の故郷も、自分自身も同じだから。
 今は罹患した病を治すので手一杯だが、それでもやるべきことから目を逸らすつもりは一切なかった。
 この世界の現状も他人事とは思えないから。届く手があるのなら伸ばしたい。
 だから苺子は、今日もイグニッションホンを構えて戦場へと向かうのだ。
「それでは参りましょう。起動イグニッション!」
 銀誓館学園女子制服を纏い、ユーベルコードの準備も行って。苺子は静かに森の中を進みだした。

 敵は複数人で班を組み、少しずつ村を目指しているようだ。
 兵士達は獣人の姿をしているが、装備の類は苺子もよく知っているものだ。
 一番目立つのは無機質な印象のガスマスクに、背中のタンクとノズル。
 あのタンクの中には強酸性液体が籠められており、それを用いて惨たらしい行動を起こそうとしているのだろう。
 あのような毒ガスや化学兵器は、戦争の在り方を変えてしまうようなもの。それはこの世界でも、故郷にとっても同じこと。
(それを用いるオブリビオンが兵士とは、なんとも恐れ入った話です)
 歴史の汚点というべきか、襲い来る過去らしいと言うべきか。
 一つ断言出来るのは、相手が手段を選ばないような輩であるということ。
「……こっちも少々乱暴な方法でお相手します」
 苺子は表情を引き締めると、草木の影を利用しつつ敵との距離を詰めていく。
 相手の装備は毒ガスだけではない。手にしたライフルによる狙撃にも気をつけなければならないだろう。
 射程範囲は向こうの方が上回っているはずだ。だからこそ慎重に、けれど迅速に。
 できる限り距離を詰めたのなら、苺子は一気に敵の元へと駆け寄る。
「あなた達が危険な兵器を使うのなら、こちらも相応の手段を使います!」
 苺子は事前に調合しておいた粉を投げつけて、そのまま転がるように後退していく。
 その最中にマッチを投げ込んで、身を屈めて。敵は慌ててライフルを構えるが、その引き金は引かれることがなかった。
 なぜなら――巻き起こった粉塵爆発が敵兵たちを吹き飛ばしてしまったからだ。
 残った火の手は素早くバス停で払い除け、森には悪影響が出ないように。周囲の敵を倒したのを確認し、苺子は付着した土埃を叩き落とした。
「まずはこれだけ、ですね。まだまだ行きましょう」
 きっと森にはまだ敵が潜んでいるはず。
 苺子は油断することなく戦いを続け、更に敵を倒していくだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

リダン・ムグルエギ
それじゃサイズ合わせに入りまーす
うーん、そのマスク、大きすぎるんじゃない?

今回は詠唱、もとい実況からね!
「放たれる酸性の液体を…XXさん防いだ!
村へ攻撃は通さない、そんな気概を感じるわね。
ここまではきっと敵も来ないわ!

万魔殿片手に実況しつつ村人を励まし
後はトークのノリそのままに、前線まで行ってコードぶっ放し

放つのは触れた人を子供にしちゃう時蜘蛛の糸
体が縮んでもマスクをつけていられるかしら?

操りガスの対策も万全よ
だってアタシ…弱いからね!(どや顔
後、子供化したら敵LVも下がってるハズ
村人から離れて前線に行けば自分以外への被害はほぼ無いと予想するわ
自分以外には

と、撮れ高のためだから(震え声の強がり




 侵略軍の大部分は森にて抑えられたが、それでも花畑の側まで到達する者がいるようだ。
 ガスマスク兵を前にすれば、数人の村人が武器を構えて隊列を組み上げる。彼らも自衛の手段は持っているようだ。
 ならば彼らと共に戦おう。リダン・ムグルエギは万魔殿を構えつつ、村民達へと声をかける。
「その仕立てた衣装には魔法が仕込んであるわ。守りは心配しないで。そしてアタシも一緒に戦うわ!」
 リダンの声に励まされたのか、人々のやる気は更に上昇していく。
 実際リダンのトークには暗示が籠められているのだけど。それが本領を発揮するのはこれからだ。

 村民達は勇ましく前に出て、侵略軍を押し留めようと戦い始める。
 ガスマスク兵も負けじと科学兵器を持ち出すが――。
「放たれる酸性の液体を……そっちのウマさん防いだ! 村へ攻撃は通さない、そんな気概を感じるわね。ここまではきっと敵も来ないわ!」
 リダンが明るく実況すれば、その通りに戦況が動いていく。
 味方には鼓舞するような暗示を、敵には戸惑うような催眠を。
 仕立てた衣装に籠めた術、声色、周囲の環境もすべて利用して、リダンは望むような状況を作り上げるのだ。
 そしてそれをより強固にするためには、自分自身も動かなくては。
「それじゃあ今度は、サイズ合わせに入りまーす」
 視聴者向けに笑顔を浮かべつつ、リダンは前線へと突っ込んでいく。
 なるべく味方とは距離を取り、手元では糸を手繰りつつ。
 配信では「リダンさんが前出るなんて珍しいね?」なんてコメントがついているけど――そう思うのは自分も同じ。
 正直笑顔だって強がりだ。でも、撮れ高になると思えば頑張れる。震える足を前へと進め、リダンは敵兵達と向き合った。

 ガスマスク兵は容赦なくガスを射出し、リダンの身体を毒素にて冒していく。
(くっ……結構キツい、わね。でも一瞬あれば……)
 徐々に侵される意識の中で、リダンはどうにか時蜘蛛の糸を手繰る。
 強がりの笑顔を浮かべ、びしっと敵たちを指さして。
「そのマスク、大きすぎるんじゃない?」
 その言葉にハッとした敵兵は、自分達の姿を見遣り目を丸くする。
 いつのまにか身体が縮み――子供に変身しているのだから。
 その影響でガスマスクは外れ、彼ら自身も毒ガスの中に沈んでいく。あとは強化された村人たちに任せればいいだろう。
「それじゃあみんな……村の人達の勇姿と、アタシ作の衣装……ばっちり、見ていってね……!」
 万魔殿にどうにか顔を向けるリダンの後ろでは、村人達が懸命に戦う姿が映し出されている。
 戦況も配信動画も、全ては思うままにデザインされて。出来上がるのは、誰もがハッピーになる結果だろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

アメリア・バーナード
※アドリブ連携OK
集団で薬品を撒き散らすだなんて、環境破壊も良い所ね。
被害が拡大する前に片付けましょう。

相手が見えたら、自分が堀っておいた塹壕に飛び込むわ。
塹壕の中で逃げ回りながら、大砲や地雷、鉄条網でダメージを与えるわね。
遭遇したらスコップで応戦よ。

そうね……近くのトーチカを目指そうかしら。
中に入ったと見せかけて、こっそりと塹壕を上がったり、屋上によじ登ったりするわ。
相手がトーチカを制圧するために近寄ったら、UC発動。
塹壕や建物の落差を使って、まずは1体、確実に仕留めるわよ!

「吸い込んだら一巻の終わりね……ゴーグルで目を守っとかないと」
「トーチカで薬品を防げると思うほど馬鹿じゃないわよ!」




 戦場から漂う刺激臭を感じ取り、アメリア・バーナードの表情は険しいものへと変わる。
 こんなに美しい自然の中なのに、集団で薬品を撒き散らすとは。環境破壊も良いところだ。
 既に森は傷付けられているかもしれない。それでもこれ以上の被害は防げるだろう。
 アメリアはゴーグルをしっかり身につけて、愛用のシャベルを握りしめる。
 彼女の視線の先には、此方に気付いた敵兵達の姿があった。

 敵は武器を構え、少しずつアメリアを追い込もうとしてきたようだ。
 そこでアメリアは自作の塹壕の中へ飛び込み、あえて敵を自分の方へと誘導していく。
 相手が使うのは毒ガス系の科学兵器。狭い場所に逃げ込む相手なら格好の標的だと判断するだろう。
 予想通り。兵士達も塹壕の中へと入り、すぐさま毒ガスを放とうしてきたが――。
「残念だったわね」
 アメリアは設置していた大砲の元に辿り着き、敵に先んじての攻撃を仕掛ける。
 放たれた砲弾は迫る薬液を押し返し、敵兵ごと一気に薙ぎ払っていく。
(少し漏れただけの薬液でもかなりの臭い……吸い込んだら一巻の終わりね)
 この場は無事に切り抜けても、敵の戦力は決して侮らない。
 ゴーグルがしっかり装着出来ているか確認しつつ、周囲を確認。聞こえてきたのは複数の足音で、きっと敵の増援だ。
 アメリアはそのまま走り出し、自身が設置したトーチカを目指すことにした。

 続いて現れた敵達も、先程と同じくガスマスクと化学兵器で武装しているようだ。
 アメリアは走るスピードを落としつつ、トーチカに入る姿を見せつける。
 そうすれば敵達はノズルを構え、じりじりとトーチカ入口まで迫ってくるだろう。
 兵士達は中もきちんと確認せずに、アシッドシャワーを散布しようと動き出す。
 そんな彼らの頭上に降り注ぐは、鋭い声と衝撃だ。
「袋の鼠になったかと思ったかしら。トーチカで薬品を防げると思うほど馬鹿じゃないわよ!」
 アメリアはトーチカに入るふりをしながら、こっそりと上部に身を潜めていた。
 敵が分かりやすい兵器を使うのだから、此方も馬鹿正直になる必要はない。
 ただ獲物を追い込んだと油断した敵を――頭上からぶん殴ってやればいいだけなのだから!
 アメリアは一番前にいた敵を踏み飛ばすと同時に、後方に控えていた相手にもシャベルの一撃を叩き込む。
 そのまま流れるように立ち回り、残りの相手も一気に叩いて。最後に残るのはアメリアただ一人だ。
 彼女の入念な準備と積み重ねてきた知識は、卑怯な兵士たちを一網打尽にするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『サロメサージェント』

POW   :    サージェントグレネード
【軍服】から【手榴弾】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD   :    ツインガン
レベル分の1秒で【2丁拳銃】を発射できる。
WIZ   :    デス・レイ
自身の【拳銃】から、戦場の仲間が受けた【負傷】に比例した威力と攻撃範囲の【殺人レーザー】を放つ。
👑11
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 猟兵達がガスマスク兵を次々倒したことで、敵軍も異変を察知したようだ。
 戦場である森の中に一際強い気配が現れ、皆の意識もそちらへと向けられる。
 そこに立っていたのは――軍服を野生的に纏った女だ。
「……先に進軍した者はやられたか、情けない。私だけで残りの作戦は遂行しよう」
 女は戦場に転がったガスマスクを蹴飛ばしつつ、村の方角を見上げる。
 彼女の様子や言葉から、猟兵も悟るだろう。この女こそ、侵略軍の指揮官だと。

 指揮官『サロメサージェント』を倒さなければ、結婚式は救えない。
 完全に事件を解決するためにも、この強敵を倒さなければ。
シモーヌ・イルネージュ
いよいよ指揮官のおでましか。
部下が不甲斐ないと大変だな。
わざわざ最前線まで出てくるとは、いよいよ尻に火が着いたか。

その立派な指揮官ぶりに敬意を評して、今ここでその責任を取らせてやるよ。

さて、敵は2丁拳銃持ち。相手の方が間合いが大きいから面倒だな。
ここは新UCの出番だね。

黒槍『新月極光』で戦う。
UC【月華満天】を発動。
これで、こっちの間合い外からの攻撃はかすり傷。
その攻撃を槍で【武器受け】しつつ、ジェネレータ『ベクター』からの【電撃】をまとわせて、ビリッと感電してもらおう。




 現れた女軍人から漂う気迫は本物だ。彼女の姿をしっかり見据えつつ、シモーヌ・イルネージュは小さく笑う。
 強い相手と戦えるのは大歓迎。そいつを倒せば事件が終わるという意味でも有り難い。
「部下が不甲斐ないと大変だな。わざわざ最前線まで出てくるとは、いよいよ尻に火が着いたか」
「ああ、本当に。情けない部下達だった、だから残りは私が終わらせる」
 指揮官ことサロメサージェントは手にした二丁の拳銃を構え、シモーヌを睨む。
 彼女は部下達を見下して入るものの、作戦に対する士気は高い様子。鋭い視線からは明確な殺意が伝わってくる。
 シモーヌも負けじと黒槍を構え、改めて敵に笑顔を向ける。モチベーションが高いのはこちらもだ。
「その立派な指揮官ぶりに敬意を評して、今ここでその責任を取らせてやるよ」
「減らず口を……まずは貴様から消してやろう」
 言葉を交わすのはこれで終わり。後は双方、倒れるまで戦うだけだ。

(相手の武器は拳銃、間合いはあっちの方が大きい。だから……ここは新技の出番だな)
 シモーヌは敵が動くより早く、槍を握る手に力を籠める。
 結婚式からはそれなりに時間も経過しているだろう。空を見上げれば、微かに橙色に染まる空の中――小さく輝く月が見えた。
「月よ。我を守り、聖なる加護を与え給え」
 シモーヌが祈るような言葉を唱えれば、月の輝きが彼女の身体を包み込む。
 月光はシモーヌの纏うアリアージュに宿ると、戦場を柔らかく照らし出した。
 その様子に危機感を感じたのだろうか。サロメは拳銃を下げると同時に、懐から何かを放り投げる。
(あれは……いや、大丈夫だ!)
 敵が投擲したものの正体を一瞬で判断し、シモーヌは槍を構えて足に力を籠める。
 直後伝わったのは、凄まじい熱と衝撃。サロメが投げつけた手榴弾が炸裂したのだ。
 まともに喰らえば危険な攻撃だろう。けれど今は、月の加護が自分を守ってくれている。
 爆炎が少しずつ収まるタイミングを見極めて、勇気を出して前に踏み込めば、見えたのは驚くサロメの顔だ。
「チッ、厄介な……!」
 サロメはすかさず銃を抜き、素早い攻撃を仕掛けるが――それも鎧が弾いてくれる。
 月の戦士には遠くからの攻撃は通用しないのだ。
「残念だったな。前線へ出てきたのは立派だが、そんな武器じゃアタシは止められないよ」
 銃弾の雨もくぐり抜け、シモーヌは腕を前に構える。
 同時に迸るベクターの電撃が敵の足を止めれば、準備は万端。
「みんなの幸せは壊させないからな!」
 月の戦士が怒りを籠めて槍を振るえば、その刺突は侵略者の胴を刺し貫くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リダン・ムグルエギ
【GOATia】の仲間も戦場にいたのね
バロりん助かるわ…これで動けるー

準備は実は完了済
貸衣装達には催眠用の模様が織り込んであるし
後は葉巻に火をつけ催眠毒を散布して待ち構えれば…
こちらを見た時点で、相手の五感は手の内って寸法よ

視覚を操り狙いを逸らし
聴覚を操りバロりんの位置や狙いを誤解させ
もう一押し

「ふふっ、ガスのお味はいかが?
「さっきの人が裏切って此方についてくれたおかげね

ガスマスク兵を「仲間」と思う気持ちを揺らし、威力減衰を狙うの
無論、この催眠毒はアタシのものだけど…
シープちゃんとの偶蹄目催眠術コラボな精神攻撃で隙を作ろうと試みるわ
今よ、シープちゃん!

勝利祝いに服はそのまま皆にプレゼントするわ


シプラ・ムトナント
【GOATia】
ここからは、リダンさんとバロメリアンさんとの共同戦線です。お二人と一緒なら、きっと守り切れる。

バロメリアンさんの歌が力を下さり、リダンさんの技が敵を翻弄する。
ならばわたしは、この目を……『催眠の羊眼』を使います。
意志の強い者は抵抗しますが、視覚や精神を揺さぶっている今なら通りやすくなるはず。

催眠出来るのは命あるものだけではありません……視界には、手に持つ銃も収まっている。
友好的になってくれるのなら、動作不良や更なる威力の減衰を期待します。

隙が出来たら距離を詰め、散弾銃レミーで【零距離射撃】を。
装弾数は二発です、二連射と参ります。この距離ならば軽傷では済みませんよ……!


バロメリアン・マルゴール
【GOATia】
目標:殺人ビームを仲間に一度も当てない

村人も戦ってたようだし、ここは一度村の方へ戻るか
曲目は変わらねぇが癒やしの力も込めて歌って彼らを回復
…って、マダム・リダン?!大丈夫かい

オレの歌は敵のおびき寄せも兼ねてるんだ
毒煙の範囲外の村側で敵を待って、本格的なライブの再開だ
オレの光の魔術は障害物を無視できる
相手の体内や銃内部の火薬や未装填の弾薬といった致命的な部位を狙って無力化を試みるぜ

レーザーは光
なら光の魔術で相殺…は無理でも逸らせるだろう
村人らや仲間を狙う攻撃があれば光を顕現させたりこの身で庇うぜ
服に咲いた花が染まるのは男の勲章さ

特にマダム・シプラは至近距離まで近寄るし気をかけよう




 雑兵との戦いは無事に終わった。そこでバロメリアン・マルゴールは山の傾斜を駆け上がり、村の方を目指すことにしていた。
 花畑は概ね無事だ。村人達も戦いの痕跡が見える者はいるが、命に別状はなさそうだ。
「お疲れ様、皆が無事で良かったよ。オレの歌が少しでも役立てばいいんだが」
 バロメリアンは猟兵としての力を籠めた『ユーベルコード』を紡ぎ、人々の傷を癒やしていく。
 その最中、彼らの服を観察してみれば――何処かで見たことのあるロゴが見える。
 もしかして、と思った矢先のこと。聞こえてきたのは聞き覚えのある声だ。
「バロりんも来てたのね……無事でよかったわ」
「お疲れ様です、バロメリアンさん。良ければわたし達もご一緒させて下さい」
 声の方へと振り返れば、リダン・ムグルエギとシプラ・ムトナントが肩を支え合い立っていた。
 彼女達の身体にも幾つか傷が刻まれており、戦いは大変だったようだ。バロメリアンはすぐに二人の元へと駆け寄ると、歌の癒やしを施していく。
「マダム・リダン! マダム・シプラ! 二人とも大丈夫かい!?」
「シープちゃんも手当してくれたし、バロりんの歌も聞けばバッチリよ。これで動けるー」
「わたしもリダンさんも深手は負っていません。バロメリアンさんも大丈夫ですか?」
「ああ、オレは大丈夫。最後の敵にも備えないといけないしね」
 猟兵達は力を合わせて傷を癒やしつつ、次の作戦を話し合う。
 大丈夫、自分達も村人もまだまだ元気だ。大切なものは何一つ壊されていない。
 だからここは最後まで、力を合わせて守り抜かなくては。

 それから少し時間は経って。
 傷を負った指揮官ことサロメエージェントは戦いから逃れ、村を目指して進んでいた。
 聞こえてくるのは伸びやかな歌声。どうせ事情を知らない村人が呑気に過ごしているのだろう。
 ならばまずはそいつを人質にするか。いいや見せしめに殺してしまおうか。
 そう考えたサロメは木々の影から身を乗り出し、歌声の方を確認するが――。
「またしてもライブの客だな! ようこそ、聞いていってくれ!」
 凄まじい光と声量がサロメの視覚と聴覚を突き刺す。ようやく視力が回復すれば、見えたのは歌を奏でるバロメリアンだ。
 彼の後方では村人達が武器を構えて立っている。その様子にサロメも事態を悟ったようだ。
「チッ、村の奴らも気付いていたか……!」
「そうねー、でもあなたの敵ってアタシ達だけだと思う?」
 リダンも葉巻を燻らしつつ、サロメの前に姿を晒す。視覚と聴覚だけでなく、嗅覚まで刺激されたサロメは更に顔色を険しくさせた。
「……どういうことだ?」
「葉巻の匂いには気付いているわよね、でも……他にも匂いがしない? ほら、あなたの知ってる匂い」
「まさか……」
 慌てて周囲を見るサロメの顔には、明らかな焦りが滲み出す。
 何故なら葉巻の匂いに紛れて――毒ガスの刺激臭も感じ取ったから。
「ふふっ、ガスのお味はいかが? さっきの人が裏切って此方についてくれたおかげね」
「あの……愚か者共がッ!!」
 サロメは怒りの形相を浮かべつつ、リダンへ銃口を突きつける。そんなリダンを庇うよう、躍り出るのはシプラだ。
 彼女の瞳は大きく見開かれ、赤い妖光が灯っていた。
(バロメリアンさんの歌が力をくれて、リダンさんの技も敵を翻弄してくれています。今なら……!)
 シプラの瞳は眠りの羊眼。視線で射抜いたものを操る不思議な魔眼だ。
 彼女の視線はサロメと、彼女が構える銃へと向けられている。
 敵本体を従わせることは無理でも、彼女の銃ならば――。
「どけッ、殺してやる!!」
 サロメは叫びながら引き金を引くが、構えた銃が弾を発射することはなかった。
 事前にバロメリアンが発した光により弾薬は破壊されており、更にシプラの魔眼によって無力化された銃は機能の殆どを失っていたのだ。
 銃が使えないことを悟ったサロメは、別の拳銃を取り出し構える。
 彼女の殺意は薄れていないが、同時に困惑や怒りも止めどなく溢れている様子。その理由を悟ることは、決してないだろうけど。

 戦いはサロメが到来するより前から始まっていた。
 危険を承知で村人たちに着いてきてもらっていたのは、彼らの纏う衣装にリダン特製の催眠用模様が織り込まれていたからだ。
 バロメリアンの光も合わされば、敵の視界はコントロールしやすい。更に彼の力なら、こっそり相手の装備を破壊することだって可能だ。
 リダン本人も特別な葉巻の煙を周囲に撒いて、嗅覚から相手を困惑させる準備を行っていた。事前に血清を飲んでおく必要があるこの葉巻も、予め使うと決めておけば準備しやすい。
 葉巻の香りに毒ガスに似た匂いも混ぜておけば、雑兵達の裏切りすらも演出出来る。
 極めつけはシプラの羊眼。これを使えば相手の武器を無力化しやすいし、相手の思考も鈍らせやすい。
 皆で力を合わせれば、危険な相手だって惑わすことが出来るのだ。そうなれば――あとは勝利を目指すだけ!

「さー、まだまだ行くわよ。せっかくの毒ガスもあるしね!」
 リダンは更に葉巻の煙を巻きつつ、わざとらしく声を発する。
 嗅覚と聴覚を強烈に揺さぶられれば、サロメにかけられた暗示は更に強まっていくだろう。彼女の額には青筋すら浮かんでいる。
「黙れ、その煩い口から閉じてやろうか!」
 サロメは拳銃を構えると、そこから眩い光を放つ。見た目こそ旧式の拳銃だが、中に籠められているのは銃弾ではなく特殊な装置のようだ。
 銃口はリダンと彼女の後方に控える人々へ向けられている。
 放たれるのはきっと危険な攻撃だ、それに光ならば――自分の出番!
 そう確信したバロメリアンは皆の前に立ち、強烈なシャウトを放つ。
 確かな声は浄化光の音符に変わり盾となる。サロメの放った光線を光によって捻じ曲げるが、それでも全てを逸らすことは出来なかったようだ。
 流れ弾はバロメリアンの腕や足を掠めていき、そこから赤い血が迸った。
「バロりん!」
「バロメリアンさん!」
「オレのことは気にしないでくれ。服に咲いた花が染まるのは男の勲章さ。それより……マダム達、ここからだろう!」
 心配する仲間に笑顔を向け、バロメリアンは更に高らかに歌を紡ぐ。
 大丈夫、致命傷でないのなら傷はいくらでも治せる。また立ち上がれる。今すべきは――破壊者を止めることだ。
 リダンとシプラは顔を見合わせ、更に暗示と羊眼の力を高めていく。
 サロメも負けじとレーザーを放つが、その狙いはどんどんブレているようだ。彼女も自覚出来ていないくらい、暗示が深く作用している。
 決めるなら今がチャンスだ。シプラはレミーを握りしめ、一気に敵の元へと駆ける。
 そんな彼女を撃ち抜かんとサロメも銃を構えるが――。
「今よ、シープちゃん!」
「ほら、こっちだ!」
 リダンの煙とバロメリアンの光がその銃撃を阻み、サロメの動きを止めた。
 その瞬間、シプラはサロメの懐へと飛び込み、彼女の剥き出しの胴に銃口を押し付けた。
「この距離ならば軽傷では済みませんよ……! 覚悟して下さい!」
 零距離からの、散弾銃による銃撃が二回。それをまともに食らったサロメは大きく吹き飛び、近くの木へと叩き付けられた。
 負った傷はかなりのものだろう。敵の力は大きく削がれたはずだ。

 猟兵達は力を合わせ、それぞれが出来る行動で敵を翻弄し、ダメージを叩き込んだ。
 彼らの成果に応えるのは村の人々の安堵の笑み。
 その笑顔に、猟兵達も笑みを返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゼロ・クロニクル
むぅ、奴が敵軍の指揮官か。さすがに隙を感じさせんな。それにこのヒリつく殺気、手下どもとは一味も二味も違う。

奴に一撃を見舞う方法は…まず《地形を利用》、風向きを読んで、相手の風上に立とう。
「ゾルダートグラードの指揮官は貴様か。大事な婚礼を邪魔させるわけにはいかん、失せろ」
声を掛けつつ敵ににじり寄る。拳銃の射程に入った途端に早撃ちが来るだろう。《野生の勘》でタイミングを見計らい、《ダッシュ》しながら【忍法・千変万化】を発動!
《化術》で黒い砂塵へと身を変え飛翔、銃弾を飛び越えつつ、追い風に乗って一気に距離を詰める!懐に飛び込んだら術を解き、素早く夜叉を抜いて《急所突き》《早業》による《暗殺》よ!




 傷を負ったサロメエージェントは再び森まで戻り、簡単な手当を始めたようだ。
 その最中でも警戒は怠らず殺気を放つ様を確認し、ゼロ・クロニクルは近くの木陰に身を潜める。
(むぅ、奴が敵軍の指揮官か。さすがに隙を感じさせんな)
 びりびりと伝わる殺気からは、サロメの実力が感じられる。先程のガスマスク兵とは一味も二味も違うだろう。
 ならば叩き込むべきは、着実な一撃だ。それに戦場のことは自分達の方が把握しているはず。
 そこでゼロが選んだのは――山の力を借りることだった。

「ゾルダートグラードの指揮官は貴様か」
「チッ、猟兵か……!」
 ゼロは村の方角からサロメの元へと向かい、わざと自分の存在を示す。
 サロメはすぐさま手当を中断し、銃を引き抜いたようだ。
「大事な婚礼を邪魔させるわけにはいかん、失せろ」
「失せるのは貴様の方だ」
 鋭く言葉を交わしつつも、双方の動きはゆっくりだ。
 じりじりと距離を詰めるゼロに、相手の動きに合わせてゆっくりと銃口を動かすサロメ。どちらも相手を睨みつけ、動き出すタイミングを見計らい――先に動いたのはサロメだ。
 ゼロが射程範囲に入った瞬間、サロメは引き金を素早く引く。放たれた弾丸は的確にゼロの方へと向かうが、それが彼の身体を貫くことはなかった。
「わが変化の極意をお見せしよう。忍法・千変万化!」
 ほぼ直感で地面を蹴飛ばし高く跳び上がり、的確に攻撃を回避して。
 同時に忍法を発動すれば、ゼロの身体は黒い砂塵へと変身した。
 彼の後方からは強い山風が吹いている。その自然の力に乗って、目指すは銃を撃ち続ける敵の元。
 サロメは急いで攻撃を続けるが、砂塵と化したゼロを撃ち抜くことは不可能だ。
 不利を悟った敵は身を翻し、森の中へと逃げようとするが――。
「逃さん!」
 十分に距離は詰められた。ゼロは元の忍犬の姿に戻り、勢いよく敵を追いかける。
 後方からは更に強い追い風が吹いて、ゼロの身体を突き動かしてくれる。それはまるで、この大自然が力を貸してくれているようで。
 ならばその期待に応えよう。ゼロは夜叉を咥えて引き抜き、足に力を籠める。
 そのまま高く跳躍し、飛び込むは逃げるサロメの背中。
「貴様が行った悪行、その身で償え!」
 ゼロはサロメの元へ飛び込むと同時に、素早い一閃を放つ。
 その一撃によって飛び散る鮮血もまた風に乗り、一気に掻き消されて。
 倒れる敵将の姿を見遣りつつ、ゼロは刃についた血を振り払う。
 そんな彼を称えるように吹く風は、力強くも優しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬河・苺子
【心情】
これ程の被害を出しても引かないとは……
任務に忠実とほめるべきか、狂った軍隊と思うべきなのか

どうあれ、これで止まらないのなら、こっちもとことんまでやるだけです

【戦闘】
「一応聞いておきますが、何故毒ガスのような無差別攻撃を?」
そこまでする戦略的価値があるとは思えませんし
答え如何によっては、本格的に相容れない敵として対応します

「地形の利用」「忍び足」で移動しつつ、こちらの場所を気取られないようにしつつ「威嚇射撃」
隙を見てUCで「爆破」攻撃
「心眼」でグレネードの着弾地点を「見切り」、直撃を避ける
こう見えて、わたしだって戦争経験は長いつもりです

戦争は明日も続くんですね、わたしの世界も、この世界も




 猟兵達が戦いを繰り広げた山の中には、激戦の痕跡が残っていた。
 その合間にはガスマスク兵の装備が散らばり、彼らの存在感は消え去っている。
 侵略軍は殆ど壊滅しているのだ。どう考えても、敵の状況は不利。
 それでもサロメエージェントはゾルダートグラードの兵士として、戦いを止めるつもりはないようだ。
(任務に忠実と褒めるべきか、狂った軍隊と思うべきなのか……)
 軍隊のような組織を組み、狂気的なまでの意志で戦い抜こうとする。そんな相手を、瀬河・苺子は何度も見てきた。
 そしてそんな相手を止める手段も、限られていることを知っている。
 相手が止まらないのなら、こちらもとことん応戦するまで。
 エンドブレイク改を構えつつ、苺子はサロメの元を目指した。

 サロメは傷を癒やすためか、木陰に身を潜めているようだ。
 そんな彼女の元に苺子は敢えて歩み寄り、しっかりと銃口を向ける。
「あなたが指揮官ですね。一つ、聞きたいことがあるのですが」
「は、銃を向けながら? 脅迫には乗らないぞ」
「こちらもそのつもりはありません。ただ一つ、質問したいだけです。何故毒ガスのような無差別攻撃を?」
 敵が狙っているのはごく普通の村だった。
 そんな彼らを潰すのに、わざわざ化学兵器を持ち出したのは何故なのか。そこに意味があったのか。苺子はただそれが知りたかった。
 サロメは返事代わりに嘲笑を零し、姿を晒す。
「ただすぐに使える隊があいつらだっただけだ。どうせ殺すなら、手段なんてどうでもいいだろう」
「……分かりました。ありがとうございます」
 返ってきた言葉で理解する。ああ、この人達と相容れることは不可能だ、と。
 ならば後は戦うのみ。サロメが懐に手を突っ込んだのを確認し、苺子は木の陰へ向かって駆け出した。

 身を隠すと同時に伝わるのは熱と衝撃。どうやらサロメはグレネードを投げつけてきたようだ。
 攻撃を察知し行動できたのは、苺子が歴戦の戦士だから。大丈夫、まだまだ勘は冴えている。
(グレネードを投げるにしても銃を構えるにしても隙が生まれたはず。今なら……!)
 苺子は一気に前へと飛び出し、爆炎の中から敵影を探し出す。
 そちらにしっかり武器を構えて、呼吸を整えて。
「この炎の弾丸、決してあなたを逃しはしません」
 冷静に放たれたバレットインフェルノは一気に敵の身を焦がし、彼女の身体に大きなダメージを与えただろう。
 その手応えを感じつつも、苺子が気にかけるは周囲の景色。
 炎は激しく燃え続けている。この世界を焦がす戦火も、きっと同じように、まだ。
「……戦争は明日も続くんですね、わたしの世界も、この世界も」
 これからも続く戦いを思い、苺子は拳を強く握りしめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アメリア・バーナード
※アドリブ連携OK
来たわね、指揮官。
村の結婚式を守るためにも、ここで食い止めてあげる。

塹壕から出たら、ビッグモールに搭乗して戦うわ。
下手に近寄るより、中距離からガトリングを撃った方が、弾数と装甲で圧倒できそうね。
「拳銃弾で重装甲を貫通できるかしら?」

敵のUCを誘うような動きを織り交ぜて、
手榴弾が炸裂した瞬間に、こちらもUCを使って、爆発炎上に紛れつつ地中に退避するわね。

そのまま地中を掘り進んで、気づかれないように敵の真下に出るわ。
そうしたら、後は地上に飛び出すだけ。
至近距離からキャバリアのドリルを叩き込んであげる!




 外から聞こえる戦闘音は、より大きく激しいものに変わっていた。
 アメリア・バーナードは素早く塹壕から身を出すと、愛機『ビッグモール』に乗り込む。
 戦場は森の中、木々が多少邪魔にはなるが支障はない。出来るだけ自然も傷付けないように勝てればいいのだけれど。
 漂う気配を感じ取れば、敵将の位置もすぐに把握出来た。ビッグモールは木々の間をすり抜けつつ、真っ直ぐにそちらの方を目指していく。
 敵将サロメエージェントもキャバリアの駆動音に気付くと、すぐに銃を構えたようだ。
「キャバリア乗りまでいたか、面倒だな」
「兵器を使って乗り込もうとしたのはそっちも同じよ。村の結婚式を守るためにも、ここで食い止めてあげる」
 両者が交わす言葉は少ない。代わりに交わすのは――凄まじい銃弾の雨だ。

 ビッグモールはマイニングエンジンを起動させ、森の地形を利用しつつ立ち回る。
 ガトリングキャノンで適宜敵を牽制し、的確な距離を保ち続けて。
 武装の相性から接近戦に持ち込むことも考えたが、相手も手練だ。着実な一撃を叩き込むには、知恵を巡らせなければならない。
 サロメの方も負けじと二丁拳銃を構え、絶え間のない射撃でビッグモールを追い続ける。
 生半可な射撃ならばキャバリアの装甲は弾けるが、相手の攻撃はなかなか手堅い。装甲の隙間を狙って放たれる銃撃は厄介だ。
 けれどそれを悟らせてはいけない。アメリアはわざとスピーカーをオンにして、サロメへ言葉を投げつける。
「拳銃弾で重装甲を貫通できるかしら?」
「そうだな。ならば……こういうのはどうだ?」
 サロメは懐に手を突っ込むと、何かを取り出し投げつける。
 その正体を悟ったアメリアはすぐにビッグモールの両腕装備を展開させた。
「マイニングドリル展開、一気に掘るわよ!」
 次の瞬間、炸裂するのは爆炎と土煙。サロメが投げつけた手榴弾が炸裂したのだ。

 サロメは爆炎の方を見据えつつ、再び銃を握りしめる。
 爆炎が収まる頃に追撃を叩き込んでやろうと思っているのだが、どうにもおかしい。
 キャバリアの姿が見えないのだ。しかし逃げる隙もなかったはず。空を見上げても何もいない。だったらどこに――。
 もしかして。サロメが下方を見た瞬間に、ビッグモール答えは地中から飛び出した。
「……抉り抜いてあげるっ!!」
 アメリアの叫びと共にビッグモールが飛び出せば、両腕のドリルがサロメの身体を突き上げる。
 様々なものを見下し侮った軍人は、文字通りに足元を掬われて骸の海へと落ちていくのだった。
 その様子を確認し、アメリアはすぐに周囲の火の手をかき消していく。
 最後に残るのは猟兵達と偉大な自然、そして幸せな人々だった。


 こうして侵略軍は倒された。結婚式も仕切り直すことになったが、それでも最後まで執り行われることとなる。
 人々は猟兵達に感謝し、今日のことを忘れることなく過ごしていくだろう。
 鮮やかな花畑も、豊かな森も、広大な山の景色も無事だ。

 ささやかな幸せは、勇敢な守り人達によって救われたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年03月23日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#獣人戦線
🔒
#ヨーロッパ戦線
🔒
#ゾルダートグラード


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト