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桜の下で恋バナを

#UDCアース #カクリヨファンタズム


 閉鎖的な村の中、十代半ばほどの女性が1人、座敷牢に入れられていた。
 彼女は、なにもない場所へ向けて話しかけたり、無邪気に笑ったり、と。村人たちには理解しがたい奇行により、両親にすら見捨てられて幼少の頃から隔離されていたのだ。
「今日も、恋のお話聞かせてくれる?」
『ええ。その為に、毎日会いに来ているのですから』
 彼女だけにしか見えない妖怪が、優しく微笑み、直後に表情を曇らせた。
『ごめんなさい、私が貴女と出会わなければ、こんなことには……』
「あーちゃん、そんなにずっと何度も謝らなくていいよ? わたしは、あーちゃんと出会えて嬉しかったの。それに、あーちゃんのお陰でこっそり外に出られるし……だから、そんな風に悲しそうな顔しないでいいんだよ」
 妖怪は、彼女を連れ出して村の外まで逃がすことも出来た。苦渋の決断だが、村人を全員殺害することも出来た。
 しかし彼女が、親に飛び火するのを恐れて拒んでいた為、妖怪は毎日彼女のもとへ通い、話をすることしか出来ない。
「……はあー、ハラハラドキドキした。続きはまた明日、聞かせてね?」
『ええ、また明日。お花見しながら、話しましょう』
 約束を交わしたが、それが叶う事は無かった。
『お花見しながら恋の話を……たくさん……』
 呟く妖怪は、長すぎる時間の中、当時の村の風習や座敷牢が消えた後でも、彼女を捜し続けていた。

「UDC怪物を喰らうことでUDCアースにとどまっている妖怪の存在を、予知で確認しました。遠い日に亡くなった女性との約束を守る為、妖怪は今も女性を捜し続けているようです」
 柴山・アキトがほんの少し眉を寄せる。
「長年UDC怪物を喰らい続けていた為、この妖怪は理性を失い、半ばオブリビオンと化しています。このまま放っておけば約束も忘れ、大勢の死者を出してしまいます」
 妖怪が居るのは、村の付近にある森の中。
 もしも妖怪が、完全にオブリビオンと化してしまえば、観光客や村人が犠牲となるだろう。

 長年UDCアースにとどまり続けたということは、極めて強力な妖怪となる。
 戦って倒せば、元の妖怪に戻すことが出来、救える可能性が有る。

「約束の内容……恋の話、ですか。そういった話を語ることで、興味を惹かせたり、理性を呼び起こさせられます」

 ただ単純に戦うだけでは、勝利するのは困難だが、約束を利用すれば、勝機が見えるということだ。

「妖怪を救えるのは、皆さんだけです。どうか、よろしくお願いします」
 言い終え、深々と頭を下げた。


芦原クロ
 閲覧ありがとうございます。
 世界観や設定などに問題が無い範囲であれば、自由に動いて頂いて大丈夫です。
 されたら嫌なことなどは、明記してくだされば、しませんのでご安心ください。

 第1章は【集団戦】です。
 妖怪が放つ『UDC怪物を誘う妖気』に惹かれたUDC怪物が集まって来ます。これ以上、妖怪に喰わせない為に、まずはこれらを撃破してください。

 第2章は【ボス戦】です。
 妖怪は半ばオブリビオンと化していますが、倒せば元の妖怪に戻すことができます。
 OP通り、ただの戦闘では、撃破が困難になる確率が高いです。
 戦わない説得オンリーのプレイングでも、大丈夫です。

 第3章は【日常】です。
 理性を取り戻した妖怪がカクリヨに渡るための、『宴』に参加する事になります。
 『宴』は酒盛りのようなものばかりとは限らず、会話をしたり散歩をしたり、花見をしたりと、とにかく楽しければ大丈夫です。
 早咲き桜が見え、屋台が並ぶお祭りが開催されています。
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第1章 集団戦 『悪霊』

POW   :    共食い
戦闘中に食べた【他の個体】の量と質に応じて【自身の傷を癒し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    ミーム拡散
自身が【一般人に認識されたこと】を感じると、レベル×1体の【新たな悪霊】が召喚される。新たな悪霊は一般人に認識されたことを与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    不滅
自身が戦闘で瀕死になると【相手の記憶を元に生成された新たな悪霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
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エミリヤ・ユイク
※アドリブ歓迎

悪霊ねぇ、本来なら浄化とかするんでしょうけど、今の私にはそれは持ち合わせてないので、別の戦法を使いましょうか。
武器は夜華と冥魁で十分な気もしますが、ここはあえてユーベルコードの剣神一閃も使いましょう。
L細胞発動、見切りを使い敵のコウゲキを避けつつ夜華を使い焼却を付与した剣神一閃で時空間を斬る速度の一刀のもと斬り伏せ燃やし殺す。速度は威力、まず斬り伏せることができるでしょう。
しかし、それでも動くような個体がいるなら夜華を持ってない方…左手の白手袋を外して冥魁の対消滅するオーラを拳に纏わせて怪力で威力を高めた対消滅のパンチを喰らわせ確実に消滅させます。
私は冥府の狼、敵は冥界行きです。




 妖怪が放つ、UDC怪物を誘う妖気に惹かれて、UDC怪物がぞろぞろと群れをなしていた。
 異様な光景を前にしても、エミリヤ・ユイクは長い黒髪を風になびかせながら、冷静で。
(「悪霊ねぇ、本来なら浄化とかするんでしょうけど」)
 思考を巡らせながら、エミリヤは群れの中へ飛び込んで。
(「今の私にはそれは持ち合わせてないので、別の戦法を使いましょうか」)
 紅い刀身の刀、夜華を構えつつL細胞も発動し、身体能力を一気に高め。
 代償として激痛が全身に走るが、エミリヤは構わず、続いてUCを展開。
「受けて斬り裂け……剣神一閃」
 一瞬とも呼べるスピードでUDC怪物を切断し、焼却を付与したその一太刀は敵を燃やして消滅させる。
 軽々と身をひるがえしたエミリヤは、共食いしそうな距離が近いUDC怪物を見極め、斬り伏せてゆく。
 囲まれそうになれば跳躍して一旦距離を保ち、戦況を把握してから左手の白い手袋を外し。
「私は冥府の狼、敵は冥界行きです」
 薄紫の超硬度なオーラを持つ冥魁で、敵を叩き潰す。
 不意に、羽ばたく音が耳に入る。
 敵を警戒しつつ視線を送った先には、翼を広げて宙に浮いている妖怪の姿が。
 UDC怪物の群れは増える一方だが、エミリヤは諦めない。
 怪力を付与した冥魁の威力は高まり、片手で剣戟を振るい、もう片手で超硬度のオーラで拳を叩き込む、エミリヤ。
 妖怪にこれ以上、敵を食らわせないようにする為、エミリヤは奮闘を続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
ここは僕の居た(シルバーレインの)世界とは違うが…よく似ているねえ
“遠い昔に亡くした人間の知り合いを忘れられない妖怪”か
他人事には思えないねえ…

悪霊、と十把一絡げに呼ばれるあなたたちもその妖怪に惹かれた、とか
妖怪はあなた方を喰って狂気と妖力を高めるらしい
人間側に付いた僕としては阻止しないとね

【第六感と気配感知】で敵攻撃を躱し
三砂で【受け流し、追撃】として【重量攻撃でなぎ払い】数対纏め攻撃

敵がUC共食いで強化しても【落ち着き、早業】接近し指突、UCの絶命拳を撃ち込む

あなた方の事は憎くも無いが…もう今更同情も要らないだろう
成仏するのか“骸の海”とやらに還るのかは解らないけど
この世からは去ると良い



 新たに加わる、影が一つ。
 酒井森・興和は興味を抱いた様子で、周辺を見回す。
「ここは僕の居た世界とは違うが……よく似ているねえ」
 敵の群れを前にしても緊張感せず、柔和な表情でマイペースに呟く、興和。
 興和は第六感と気配感知の技能を用いて、襲い掛かる敵の攻撃を次々と躱す。
「悪霊、と十把一絡げに呼ばれるあなたたちは、あの妖怪に惹かれた、とか」
 虚ろな瞳で様子見をしている妖怪へ、興和は視線だけを投げて。
「“遠い昔に亡くした人間の知り合いを忘れられない妖怪”か。他人事には思えないねえ……」
 今まで無反応だった妖怪が、興和の呟きを耳にしてピクリと反応した。
『亡くなった……違う、どこかに隠されて……でも、ヒトの寿命は……違う、違う』
 何度も首を横に振る痛ましい姿から、妖怪は彼女の死を受け入れていないことが伝わる。
「捜してたのは、“生存を信じていたから”だったんだねえ……」
 穏やかな声を出しているが、敵と戦いながらだ。
 ツルハシ状の愛用武器、三砂を手慣れた様子で扱い、重量攻撃と共に敵の群れを薙ぎ払う。
 敵の攻撃を躱しそこねても、三砂で受け流し、共食いしそうな敵を優先的に倒しに掛かる。
「妖怪はあなた方を喰って狂気と妖力を高めるらしい。人間側に付いた僕としては阻止しないとね」
 少数では、共食いしそうな敵すべてを一度で一掃は出来ず、共食いして戦闘力が上昇した敵が増え始める。
「あなた方の事は憎くも無いが……もう今更同情も要らないだろう。成仏するのか“骸の海”とやらに還るのかは解らないけど」
 興和は落ち着きの効果で冷静さを保ち、早業で敵に急接近してから指先で敵に触れる。
「この世からは去ると良い」
 UCの白虎絶命拳を食らった敵は、内部から破壊されるダメージを受け、消滅した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神坂・露
レーちゃん(f14377)
あたしもレーちゃんに出会えて嬉しかったし幸せだもの。
だからあたしもレーちゃんが消えちゃったら必死に捜すわ。
「黙ってどこか行ったら、捜すんだからね? レーちゃん!」
ぴしっ…ってレーちゃん本人に指さして宣言しちゃうわ!
えぇえー。なんで呆れ顔であたしの顔見てるのぉー。酷いっ!
酷いからレーちゃんをぎゅうぅ…って抱きしめちゃうわ。もう!

妖怪さんに会う前に寄ってくる怪物さんを何とかしないとね。
じゃあじゃあ破魔を込めた全力魔法の【蒼光『月雫』】を使う。
…怪物さんも誘われただけみたいだけどごめんなさい。
「一気に行くわね…ごめんなさいっ!」
周りに建物とか他の猟兵さんがいないか確認してから放つわね。
あまり当時の建物を壊したくないわ。妖怪さんの思い出一杯だもの。

「一通り片づけたかしら…あ♪ 妖怪さん見つけたわ~」
歩いてる妖怪さん見つけたらぎゅぅーって抱き着いちゃおうかしら。
不用意じゃないわ。ちゃんと狂気と呪詛耐性とオーラ防御してるし♪
「ねえねえ、妖怪さんの捜してる人ってどんな人?」


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
「…ん? …ああ。…そうか…?」
妖怪の行動と怪物の数を確認していたら急に妙な宣言をされた。
何時ものことだから今は妖怪と怪物の方へ意識を集中させよう。
…文句を言って抱き着いてきてうっとおしいことこの上ない。

怪物は破魔を付与した全力魔法の【砕霊呪】で撃破する。
露と連携すれば比較的スムーズに片づけられるだろう。
他の猟兵もいることだしこれならば苦も無く一掃できる。
さて。問題は強力な力を持つ妖怪の方だ…ッ!?露?
先程まで連携し怪物を撃破していた露が妖怪に抱き着いて。
何時もながら迂闊すぎる。君まで喰われてしまうだろうが。
唱えていた呪を放棄して物理で引き離そうと接近する。

…ッ!
引きはがす前に狂気と呪詛の耐性と破魔付与のオーラ防御を纏う。
…我ながら動揺していてそのまま離そうとしてしまった…。
もし離れなければ強制的に【砕霊呪】を露もろとも行使。
露にダメージを与えてしまうからかなり弱めに調整。
もしも妖怪が露に悪影響を与えるつもりがない場合は行使しない。
…しないが露には後で罰を与える。




 猟兵の影が、戦場に増えた。
 隙を見てUDC怪物を喰らおうとしていた妖怪は、慌てて飛び退き、猟兵達やUDC怪物達から距離を置いて隠れた。
 神坂・露は、こくこくと首を上下に振って頷く。
(「あたしもレーちゃんに出会えて嬉しかったし幸せだもの。だからあたしもレーちゃんが消えちゃったら必死に捜すわ」)
 くるりと振り返り、露はシビラ・レーヴェンスに人差し指を向けて。
「黙ってどこか行ったら、捜すんだからね? レーちゃん!」
 ビシッと指で示し、堂々とした宣言をする、露。
「……ん? ……ああ。……そうか……?」
 残りのUDC怪物達の数や、妖怪の言動を確認していたシビラは、何時ものことだから、と相手にせず適当に言葉を返す。
「えぇー。なんで呆れ顔であたしの顔見てるのぉー。酷いっ! 酷いからレーちゃんをぎゅうぅ……って抱きしめちゃうわ。もう!」
 言うが早いか、妖怪と怪物達に意識を集中しているシビラを、露は強く抱きしめる。
(「……文句を言って抱き着いてきてうっとおしいことこの上ない」)
 思案するも、言葉にはしないあたり、シビラにとって露は特別な存在なのだろう。
 妖怪もそう捉えたのか、隠れながらも興味津々に、二人を見つめていた。
「じゃあじゃあ妖怪さんと話す前に、寄ってくる怪物さんを何とかしないとね」
 今は戦闘が優先であることをシビラに指摘され、露はシビラを解放する。
(「……怪物さんも誘われただけみたいだけどごめんなさい」)
 露はUDC怪物達に心の中で詫び、他の猟兵や建物などが巻き込まれないように、周囲を確認してから。
「一気に行くわね……ごめんなさいっ!」
 破魔を付与した魔法を全力で放つ、露。
 露と連携し、同じく破魔を込め、全力魔法でUCを展開する、シビラ。
 シビラは、邪心のみを攻撃する青白い光の柱を繰り出し、露と息の合った動きで次々と敵を撃破してゆく。
(「あまり当時の建物を壊したくないわ。妖怪さんの思い出一杯だもの」)
 優しい気持ちを抱く露は、注意しながら戦って。
(「他の猟兵もいることだし、これならば苦も無く一掃できる」)
 シビラは確信し、攻撃の手を緩めない。
 敵も戦闘力を強化する為、共食いし合い、力を増したUDC怪物達が押し寄せるように猟兵達に襲い掛かる。
 数では負けているものの、戦力は猟兵達が圧倒的に上だ。
 戦い慣れている猟兵達は敵の包囲網をかいくぐったり、攻守のバランスも上手い。
 やがて、大量に居た敵は猟兵達の活躍により、全滅した。
「一通り片づけたかしら……♪ 妖怪さん見つけたわ~」
 隠れていた妖怪を発見し、無防備に駆け寄る、露。
「ねえねえ、妖怪さんの捜してる人ってどんな人?」
『どうして……どう、して、私か、ら、餌を……奪ったの、ですか?』
 露は妖怪に躊躇なく抱き着くが、妖怪は理性を失いかけていた。
「さて。問題は強力な力を持つ妖怪の方だ。……ッ!? 露?」
 いつもならクールで大人びているシビラだが、露に視線を向けた瞬間、呪の詠唱を放棄するほど、彼女の行動に焦った。
(「……ッ! ……我ながら動揺していてそのまま離そうとしてしまった……」)
 狂気と呪詛の耐性、破魔付与のオーラ防御を纏いつつ、慌てて妖怪から露を引きはがす。
 もし離れなければ、UCで強引にでも引き離すつもりだった、シビラ。
 その際は、露にダメージを与えないよう、かなり弱めに調整する気でいた。
 それはシビラにとって、露の存在がどれだけ強いかが、うかがえる。
 幸い、妖怪はまだ露に悪影響を与えるにおよばず、シビラはUCを使わずに露を引っ張って妖怪から離れた。
「何時もながら迂闊すぎる。君まで喰われてしまうだろうが」
「不用意じゃないわ。ちゃんと狂気と呪詛耐性とオーラ防御してるし♪」
 シビラの優しさゆえの叱りだと分かっている露は、嬉しそうにそう告げた。
「……露には後で罰を与える」
 ぽつりと、シビラが呆れた眼差しと共に、冷ややかに言い切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『絆の試練』アナスタシア』

POW   :    疑心の罪
【滔々と語られる愛の説法】を披露した指定の全対象に【己に向けられている愛情に対する、疑いの】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    煌々たる失翼
【慈愛と歓喜の感情】を籠めた【飛ばした羽根の乱舞】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【持つ、大切な者との様々な関わりの記憶】のみを攻撃する。
WIZ   :    真偽不明の愛
自身が【愛する者同士の深く強い絆】を感じると、レベル×1体の【両者の、極めて精巧なニセモノ】が召喚される。両者の、極めて精巧なニセモノは愛する者同士の深く強い絆を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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『私は、餌が無い、と、彼女を、捜せ、ない……いいえ、彼女はとっくの昔に……違う、違うわ……』
 片手で頭をおさえ、理性と狂気の狭間で苦痛の表情を浮かべる、妖怪。
 潜伏して、猟兵達が居なくなってから、またUDC怪物達を集めて喰らおうとするつもりで。
 今は飛んで逃げる為に、妖怪は翼を広げようとした――。
酒井森・興和
WIZ

…現実を受諾出来なくて悲嘆の末に狂うのはつらいな

さて
名は知らないが白いお嬢さん?
餌もなしに動き回れば疲労と暗澹ばかりだ
なら闇雲に動くより落ち着いて…彼女の事を詳しく思い出さないか

あなたは彼女の話友達だったのかい
何の話しを?
…恋?それは年頃の娘らしい話題だ
昔話でよければ僕も少し語ろうか

十になる前の蜘蛛の妖の子が
雪積む山道で一人の娘に惹かれた
いわゆる一目惚れだけど
蜘蛛の子は恋なんて解らない
気の強い娘に弟扱いされ可愛がられたが同時に散々振り回された
でも嫌えなくてねえ…
七百年以上経つのに
今でも惹かれるのだよ

遠い思い出の人を忘れられないあなたについ親近感を覚えてね
狂いきる前にあなたを助けたいんだ




「名は知らないが白いお嬢さん? 餌もなしに動き回れば疲労と暗澹ばかりだ。なら……」
 妖怪が飛ぼうとする前に、酒井森・興和が穏やかな声で語りかけ、興味を惹きつけるかのように一度言葉を区切って。
 柔らかい表情と共に、どことなく落ち着く雰囲気を漂わせている興和へ、妖怪は視線を向けた。
 妖怪は、警戒心は抱いているものの、狂気に堕ちていない時は、無差別に攻撃を仕掛けて来ないタイプのようだ。
「闇雲に動くより落ち着いて……彼女の事を詳しく思い出さないか」
『彼女……そう、そうだわ。あなたの言う通りね、彼女との想い出がおぼろげなの。これでは見つけようにも見つけられないわ』
 納得した妖怪は翼を休め、地に立つ。
(「……現実を受諾出来なくて悲嘆の末に狂うのはつらいな」)
 遠い昔に失った友人を、今になってもずっと捜している妖怪に対し、興和は妖怪が混乱しないよう、言葉には出さず胸中で想いを並べて。
「あなたは彼女の話友達だったのかい。何の話しを?」
 興和の柔らかく穏やかな態度に、妖怪は警戒心をゆるめて微笑んだ。
『ええ、大切な友人よ。彼女は恋の話が大好きだったから、私も飛び回って恋の話を集めて、彼女に聞かせて……彼女、とても嬉しそうに聞いてくれるから、話している私まで楽しい気持ちになったわ』
 妖怪はそう告げた後、興味津々な様子で興和に視線を注いだ。
『恋の話、あなたにも有るのなら聞かせてくれないかしら?』
「……恋? それは年頃の娘らしい話題だ。昔話でよければ僕も少し語ろうか」
 興和が期待に応えてくれると、妖怪は瞳を輝かせながら耳を澄ませる。
「十になる前の蜘蛛の妖の子が、雪積む山道で一人の娘に惹かれた。いわゆる一目惚れだけど、蜘蛛の子は恋なんて解らない」
『そうね、恋心を自覚するのって、簡単なようで難しいものね。それで、どうなったの? 続きが気になるわ』
 妖怪が合間に言葉を挟んでも、興和は自分のペースを崩さず、続きを話し出す。
「気の強い娘に弟扱いされ可愛がられたが、同時に散々振り回された。でも嫌えなくてねえ……七百年以上経つのに今でも惹かれるのだよ」
『長い年月、一途に惹かれ続ける……切ないけど、良いお話。聞かせてくれて、ありがとう』
 丁寧に、頭を下げて礼を言う、妖怪。
 妖怪の気を惹ける話題になったことに、興和は一息つき。
「遠い想い出の人を忘れられないあなたについ親近感を覚えてね」
『遠い、想い出? 遠い……』
 1つのワードに引っ掛かりを感じ、妖怪は見開いた目に狂気を宿し。
『遠くなんて、無い……だって約束したもの。また明日って……明日?』
 妖怪の理性が崩れそうなのを察知し、興和は加減をしつつUCを発動させる。
「……狂いきる前に、あなたを助けたいんだ」
 切実な願いを言葉にし、興和はUCで麻痺とダメージを与える事で、妖怪の理性をとどまらせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
大事な約束がこの妖怪を縛る呪いになってしまっている。
すぐに断ち切ってしまいたいが私にはその術は無いに等しい。
私は手段が思いつかない。…やはりここは露に頼るしかないな。
念の為に狂気と呪詛の耐性と破魔付与のオーラ防御を纏う。
先程と同じことをされたら困る。即座に対応するよう構えておく。

基本は露の隣にいて彼女と妖怪の様子を見守る。
露のことだから上手くすると思うが襲ってきた場合だけ魔術を行使。
全力魔法を付与した【熄術呪】を高速詠唱で使用する。
今回はこの術を長い時間使わなくともいいだろう。

二人のやりとりを見ていて…ふと。妖怪とある人物が重なった。
その重なった人物は人間だったが今回と同じく変化しかけていたな。
辛く悲しい想いで心を砕かれるのは人も妖怪も同じ…な気がしたよ。
だから私が実際に解決した仕事のことを語ってみようと考えた。
恋愛話とは全くかけ離れた話ではあるが…。

ん?『あたしは聞いてない?』…まあ一人で解決した仕事だしな。
後ろで露が何から色々と言っているが面倒そうだから無視する。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
妖怪さんが言う餌って多分怪物さん達のことよね?
うーん。それがこの世界に留まるためみたいだけど…。
「食べ続けたら、妖怪さんじゃいられなくなっちゃうからよ」
さっき妖怪さんが言った質問に答えてみたわ。…反応は…。
あ。やっぱり女の子の為に…って苦しそうに答えるわね。
「でもねあのね。妖怪さんじゃなくなったら…折角見つけても…」
え?あたしが居場所知ってるかって…?知らないわ…どうしよう。
うーん。そうね…あ!思いついたわ。
「一緒に捜すのを手伝うわ♪ その子ってどんな感じだったの?」
過去の幸せなことを思い出して少しでも狂気を薄められれば…。
思い出すことで逆に濃い狂気に飲まれちゃうかもしれないけど。
それだけ好きな人が居なくなっちゃうって辛くて悲しいのよね。

「えー! そんな話は初耳よ? レーちゃん、あたし初めて!」
急に話し出したと思ったらあたしが知らないお仕事の話で。
このお仕事と同じ内容なんだけど…あたしは聞いてないわ…。
お話の内容からすると…ガッコウって場所みたいだけど…むぅ。




 狂気、混乱、そんな負の感情に隙あらば呑まれそうな妖怪は、苦し気に胸元をおさえている。
『約束した……お花見しながら、彼女の好きな恋の話をするって』
 見上げた満開の桜の木は、美しくも儚げで。
(「大事な約束がこの妖怪を縛る呪いになってしまっている。すぐに断ち切ってしまいたいが私にはその術は無いに等しい」)
 シビラ・レーヴェンスは念の為、狂気と呪詛の耐性、そして破魔付与のオーラ防御を纏う。
 妖怪に対してもフレンドリーな神坂・露が、先ほどと同じ行動をするかも知れない、と危惧し。
(「私は手段が思いつかない。……やはりここは露に頼るしかないな」)
 即座に対応できるようにと準備万端の、シビラ。
(「妖怪さんが言う餌って多分怪物さん達のことよね? うーん。それがこの世界に留まるためみたいだけど……」)
 先刻の質問に答える為、露は口を開く。
「食べ続けたら、妖怪さんじゃいられなくなっちゃうからよ」
『それでも、私は彼女を捜す為に……』
 反応をうかがっていた露の予想通り、妖怪は苦しそうに答え。
「でもねあのね。妖怪さんじゃなくなったら……折角見つけても……」
 説得の言葉選びとしては最適で、露の言葉を聞いた妖怪が、はっと息を呑んだ。
『彼女が、私だと分からない……? それは、嫌よ。絶対に嫌』
 妖怪にとっては、なによりも大切な友人。
 その子に、自分だと分かって貰えないのはどうしても避けたくて、妖怪の理性が強まる。
『重要な事に気づかせてくれたあなたなら……彼女の居場所を知っているのではないかしら?』
「え? あたしが居場所知ってるかって……? 知らないわ……どうしよう。うーん。そうね……あ! 思いついたわ」
 素直に答える露に、しょんぼりと肩を落とす妖怪。
 この妖怪の為になにか出来ることが無いかと、懸命に考える露。
(「露のことだから上手くすると思うが……襲ってきた場合は魔術を行使しよう」)
 露の隣から離れず、露と妖怪の様子を見守りながら、冷静に思案しているシビラ。
「一緒に捜すのを手伝うわ♪ その子ってどんな感じだったの?」
 明るい口調で問う露から、優しさが伝わって来る。
 過去の幸せな時間を妖怪が思い出すことで、少しでも狂気を薄められれば良い、と露は考えていて。
 一つ懸念が有るとすれば……。
(「思い出すことで逆に濃い狂気に飲まれちゃうかもしれないけど。それだけ好きな人が居なくなっちゃうって辛くて悲しいのよね」)
 その場合は、シビラに任せるつもりで。
 妖怪は露を見つめた後、シビラにも視線を向けた。
『あなたのように、優しくて温かい子で……それに、あなた達のやり取りは仲良く見えて、懐かしい』
 シビラと仲良しに見えたのが嬉しく、露は満面の笑みを浮かべている。
 そんな妖怪と露を冷静に見守っていたシビラが、不意に、妖怪とある人物が重なって見えた。
「恋愛話とは全くかけ離れた話ではあるが……重なった人物は人間だったが今回と同じく変化しかけていたな。辛く悲しい想いで心を砕かれるのは人も妖怪も同じ……な気がしたよ」
 実際に解決した仕事のことを打ち明ける、シビラ。
 すると、妖怪のほうへ向けていた顔を、露はシビラに向けなおす。
「えー! そんな話は初耳よ? レーちゃん、あたし初めて!」
 シビラが急に話し出したと思ったら、自分の知らない仕事の話だった為、露は驚きの声を上げる。
 仕事の内容を話すシビラに、露はショックを受けた様子で。
「このお仕事と同じ内容なんだけど……あたしは聞いてないわ……」
「ん? あたしは聞いてない? ……まあ一人で解決した仕事だしな」
 クールにきっぱりと返す、シビラ。
「お話の内容からすると……ガッコウって場所みたいだけど……むぅ」
 出来ればシビラの事は全て把握したいのか、露は複雑な表情を浮かべ。
 対し、シビラは、まだ色々と言っている露を面倒くさそうに、無視していた。
『ふふ……あ、急に笑ったりして、ごめんなさい。なんだか微笑ましくて、懐かしくて、仲睦まじく見えたから。恋の話だけじゃなくて、いいの。あなた達のやり取りを見ていると、彼女と過ごした日々が思い出せて幸せなの』
 妖怪は心の底から思ったことを素直に言葉にしてから、シビラを見る。
『あなたも、優しいのね。……色々、思い出せて来たわ』
 そう言って微笑む妖怪は、どことなく愁いをおびており、友人の死を受け入れ始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

琳谷・花咲音(サポート)
自身とよく似た姿の影(背格好は同じ、性別とロングヘアが違う)悪魔【影(エイ)】を召喚するガジェッティア。

柔らかな口調と行動で男女どちらともとれないジェンダーレスな雰囲気。
女の子になりたい訳じゃない、男女の垣根はなく自分は自分。
友人(感情を結んでいる人)以外には『僕』。
友人には『私』。

戦闘時にはガジェットを臨機応変に変化させて戦う。
火力はないので手数で押す…又は牽制などサポートの立ち位置にいる事が多い。

【影】は本人と鏡合わせのような行動をとる事が多い。

生贄として、魔法媒体として様々な因子を詰め込まれた存在。
その影響で召喚したものを身に宿して戦う降霊術も得意とするが、その戦い方は好きではない。


春夏秋冬・ちよ(サポート)
風景画が趣味のお節介な旅老猫

優しいお婆ちゃん猫で猟兵としての経験は浅いですが、アルダワの学生としてとても長い間戦い続けた歴戦の戦士です

口調はステシをベースに優しいお婆ちゃんをイメージ

動物と会話して道や情報等を得ます

UCは竜を疑似再現、その力を借りる物
何の竜の力かは状況、やりたい事によって指定を
(例:火竜・刃竜・筋肉竜等々 真面目からネタまで可)

戦闘は素早い身のこなしで回避重視、杖か閉じた傘(又はUC)による鋭い攻撃
所謂蝶のように舞い、蜂のように刺す
得意技はUCで騎乗か飛行してのランスチャージ

一人称追加・おばあちゃん

禁止事項
真の姿の解放(覚醒)
UC『凶夢の魔竜騎士』二種の併用
公序良俗に反する行動




『あの子は、もう……』
 言いかけた直後、妖怪が苦し気に頭をおさえた。
 最後のあがきとばかりに、半オブリビオンの狂気が急激に高まる。
『あの子を殺した、あいつら全員、村ごと消し炭にしたかった』
 それは微かにでも抱いていた、本心だろう。
 長い時を一人で過ごす内に、心の隅で溜まり続け、とうとう溢れ出た、憎悪。
『違う……私が悪い。私が、あの子の気持ちを無視して、無理矢理にでも連れ去っていたら、あの子は生きていられた……ハズなの』
 その結果、彼女の笑顔が無くなったとしても、友人の生を望んでしまう、エゴ。
 無意識に抑えつけていた憎悪と後悔が、妖怪の心を暗く包む。
「長い間、気持ちを抑えていたのね。実行しなかったのは、あなたがお友達を大切に想っていたからでしょう?」
 優しく問いかける、春夏秋冬・ちよ。
 すると妖怪は狂気に満ちた瞳を、ちよに向け、襲い掛かって来た。
「あら、大変。理性が無くなっているのかしら? ごめんなさいね、少しだけ痛くするわね」
 のんびり和やかな雰囲気を崩さず、ちよは攻撃を躱し、紅色の和傘をまるでランスの如く妖怪に突き刺した。
「約束が呪いみたいになっちゃったんだね。ちよさんの言う通り、大切に想ってて……でも、それでキミが苦しんでたら友人は悲しむんじゃないのかな?」
 ガジェットを使って加勢する、琳谷・花咲音。
 真向勝負ではほぼ勝ち目の無いほど強力な妖怪に、当然、攻撃はあまり通じていない。
 だが、掛けられる言葉により、妖怪の理性は段々と呼び覚まされて。
「私みたいなおばあちゃんでも役に立てるかしら? 話したい事が有れば、おばあちゃんはいつでも聞くわよ」
「キミと友人の絆は、すてきなモノだよね。ボクはすてきなモノがあふれてるってしあわせだと思ってるんだよ。キミの友人も、しあわせだったんじゃないかな?」
 応戦の手は止めずに、言葉を掛け続ける、ちよと花咲音。
 ようやく理性を完全に取り戻し、半オブリビオン化が消えるが、妖怪の表情は曇っていた。
『私には、こんなに醜い感情が有ったの。妖怪側に問題が有れば、妖怪と人間の友情なんて素敵でも綺麗でも無い……だって私は、彼女さえ生きてくれるのなら、他の人間がどうなっても良いと思っていたのだから』
 自分の醜さを吐露し、おぞましさに身を震わせる、妖怪。
 ちよが、妖怪の肩を優しく撫でた。
 そういう感情は妖怪だけでなく、どんな生き物も少なからず持っている。
 人間も、例外では無い。現に、妖怪の大切な友人を殺めた村人達が、そうだろう。
「ボクは自分が楽しいなっておもえる生活をしたいって思ってるんだ。キミは? 明るい生活? それとも復讐や後悔の日々?」
 花咲音の問いに、妖怪の表情が、はっとなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『花の宴を楽しみましょう』

POW   :    屋台でいっぱい食べる

SPD   :    のんびりお祭り見物する。

WIZ   :    お花見を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


 約束は果たせずとも、恋の話で誰かを喜ばせることは出来る。
 猟兵達のお陰で気づく事が出来た妖怪は、大切な友人の笑顔が鮮明に思い出せ、微笑む。
 そして、カクリヨファンタズムに渡る事を決意し、その旨を伝える。
『カクリヨに渡る為には、宴に参加して貰う必要が有るの。一般人には私が見えないから、あなた達に頼んでもいいかしら? 私を救ってくれた、あなた達が、いいの。桜を見たり、お花見をしたり、お話をしたり……宴は、そういったものでいいのよ。引き受けて、くれるかしら?』
 満開の桜の下で微笑む、妖怪。
『あ、恋のお話が聞けるなら、もっと嬉しいわ』
 そう付け加え、カクリヨに渡る為の“宴”の参加を、妖怪は猟兵達に頼んだ。
百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生

正義感が強く困っている人は見過ごせない

とりあえずなにか食べられるならよほどのゲテモノでない限り喜んで食べる
やっぱり病院のご飯よりお外で食べるもののほうがおいしいよ…

イベントなどでわちゃわちゃする場合も乗って動く
ボクこういうのはじめて!すっごく楽しみだな!
(ずっと病院にいたのでお祭りとかイベントごとはあまり遊べなかった)

あとはやることに対してわーきゃー喜んだり

アドリブ絡み歓迎


神坂・露
レーちゃん(f14377)
「うん、宴しよー♪ 妖怪さん♪」
わあい♪やっと怒られずに妖怪さんを抱きしめられるわぁ~。
きゅぅうって妖怪さんが苦しくないように抱き着いちゃう。

お花見しながらレーちゃんのことをお話するわね。
凄くぶっきらぼうで無表情なんだけど…実は優しい親友のことを。
無表情だから初めは冷たい感じにみえるけど…違うのよねぇ~。
冷たくあしらう言葉をいうけど絶対に行動には出さなくってね。
必ず約束とかすることを認めてくれてね。…優しくて好きなの~♪
ほんの少しでも妖怪さんも感じたんじゃないかしら。その優しさ。
でね。最近は髪とか頬弄っても何も言わなくなってね……♪
「あ! 妖怪さんのお友達さんって、どんな子だったの?」
聞いてもいいかしらって断りいれてから聞くわね。

「渡ったらね。カクリヨでまた逢いましょーね。楽しみだわ♪」
妖怪さんの両手をあたしの両手できゅって包むわ。わぁーい。
寿命とかで逢えなくなる心配してそーだったから笑顔で断言するわ。
あたしは石の付喪神だから…って。納得してくれるかしら♪


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
宴の単語に陽気にはしゃぐ露が急にこちらを凝視してきた。
…。おおよその意味は理解できるが…何故私がしなげれば?
…。露を無視していたら妖怪も同じ仕草で露の仲間に加わり。
「…わかった。ダージリンしか所持していない。それでいいな?」
やれやれ。大祓骸魂との一戦の時と似ているな。

和の妖怪の舌を喜ばせるかわからないが普段通り淹れて振舞う。
茶請けは無い。私は万能ではない。桜の木々を見て我慢しろ。露。
「どうぞ。…ん。妖怪では失礼だな。名を聞いていいだろうか?」
妖怪の名を聞いた後で改めて「どうぞ」と手渡そう。
…早速彼女(妖怪)を『ちゃん』付で呼ぶな。露。全く君は…。

露の私語りが始まってからは桜を眺めながら自分の淹れた茶を堪能する。
ん…。今日の出来も中々だな。気疲れが引いていくようだ♪
彼女(妖怪)は露の話が珍しいのか面白そうに楽しそうに聞いている。

「…友人は妖怪になっているかも、な…」
確か。人から妖怪になった物語が幾つかあったはず。
もしかするとカクリヨの世界で逢えるかもと思った。それだけだ。


酒井森・興和
WIZ
友達のこと思い出せたかい?
それは何よりだ
あなたの拠り所だもの
もちろんだお嬢さん
あなたを送り出す宴に参加しよう
そのカクリヨ世界は想いの力が強いと聞く
今度こそずっと一緒に居られるよ

……ここの花は桜だけど
僕にとっての思い出の花はツツジだねえ
あの人はすでに亡く、むしろ生まれ変わっているだろう
もうずいぶん昔の事だからね
でも僕はあの人を忘れない
声も、少しパサついた黒い髪も、直ぐに怒る顔も、痩せた白い手も
ツツジが好きと笑った顔もねえ

今も好きだけど会いたくはないなあ(苦笑
我が儘で物言いも強引で、未だに喧嘩で負けそうだし

白いお嬢さん
あなたがた妖怪は長い生をお持ちだ
向こうではどうぞ穏やかに過ごしておくれよ




「もちろんだお嬢さん。あなたを送り出す宴に参加しよう」
 酒井森・興和は優しげな笑顔と穏やかな声で、妖怪に話しかける。
「うん、宴しよー♪ 妖怪さん♪」
 笑顔で快諾し、妖怪が苦しくない程度に抱き着く、神坂・露。
 花の香りが漂う、満開の桜の下で『宴』が始まった。
(「わあい♪ やっと怒られずに妖怪さんを抱きしめられるわぁ~」)
 抱擁によって露の嬉しさを感じとった妖怪は、微笑みを向け、露の頭を優しく撫でた。
(「宴の単語に陽気にはしゃいでいるな……」)
 妖怪の危険性が皆無となった今、露の行動を制限する心配が無くなり、シビラ・レーヴェンスは一息つく。
「とりあえずなにか食べられるもの持ってきたよ! 妖怪さんは食べられるのかな?」
 たこ焼きなどの軽食系を人数分持ちよって、百地・モユルは妖怪に尋ねる。
『食べられるから、大丈夫よ。ありがとう。……あなたは、誰かに恋をしていたりは、しないのかしら?』
「えっ、ボク!? ファンタジー小説を読んだりはするけど、うーん……ボクの恋は秘密だぜ!」
 ほんの少し顔を赤くして言い切る、モユル。
 恋の話は他の人に任せよう、と。モユルは興和に目線を向けた。
 モユルの視線の先を辿った妖怪は、興和と目が合う。
「優しいオトナって感じがするから、あの人に訊いたほうがいいと思うな。ボクは色々食べながら聞いてるね。ん、これおいしい。やっぱりお外で食べるもののほうがおいしいね……」
 カスタードクリームが入ったたい焼きを幸せそうに食べ、モユルは美味しさに心底喜んでいる。
「友達のこと思い出せたかい?」
 妖怪の視線を受けとめた興和が、和やかな表情と共に問う。
『ええ、あなた達のお陰で思い出せたわ。ありがとう』
「それは何よりだ。あなたの拠り所だもの」
 妖怪の気持ちを分かっているかのような興和の言葉に、妖怪は自分の胸元に手をあて、目を閉じて頷く。
 友人と過ごした幸せな日々を想起してから、妖怪は目を開け。
『あなたの恋のお話、もっと詳しく聞きたいわ。良ければ、聞かせてくれるかしら?』
 期待の眼差しを向ける妖怪に対し、興和はマイペースな態度を崩さず、桜を見上げた。
 美しく淡い紅色の花びらが咲き誇り、時折吹く風に揺られて、花吹雪が舞う。
「……ここの花は桜だけど、僕にとっての思い出の花はツツジだねえ」
『ツツジは、知っているわ。綺麗な花で、色によって変わるけれど、恋の花言葉が多いのよね』
 恋の話が聞ける期待からか、妖怪の瞳がきらきらと輝いている。
「あの人はすでに亡く、むしろ生まれ変わっているだろう」
『生まれ変わり……』
 妖怪が、興味深げに呟いた。
「もうずいぶん昔の事だからね。でも僕はあの人を忘れない。声も、少しパサついた黒い髪も、直ぐに怒る顔も、痩せた白い手も。ツツジが好きと笑った顔もねえ」
『昔の事を忘れないって一途で素敵ね。もし生まれ変わっていたなら、捜して会って、告白はしないの?』
 妖怪の問いに、興和は珍しく苦々しい笑みを浮かべる。
「今も好きだけど会いたくはないなあ。我が儘で物言いも強引で、未だに喧嘩で負けそうだし」
『もしものお話だけれど、逆にお相手のほうが貴方を見つけて恋に落ちてしまったら、どうなっちゃうの? ……言ってて、すごく気になってきたわ』
 ドキドキと、ハラハラを同時に感じながら、考え込む妖怪。
「妖怪さん、あたしはレーちゃんのことをお話してもいいかしら?」
 親友のことをいっぱい話したいというように、今度は露が口を開いた。
『ええ、もちろん良いわ。仲の良さは伝わっていたけれど、あなた達の言葉で、もっとちゃんと聞きたいと思っていたから』
 優しい微笑みを見せ、妖怪は露の言葉を待つ。
「凄くぶっきらぼうで無表情だから初めは冷たい感じにみえるけど……違うのよねぇ~」
 シビラをチラっと見てから、話し始める露。
「冷たくあしらう言葉をいうけど絶対に行動には出さなくってね。必ず約束とかすることを認めてくれてね……でね。最近は髪とか頬弄っても何も言わなくなってね……♪」
 露は心底嬉しそうに、シビラの良さや変化を語りまくる。
「優しくて好きなの~♪ ほんの少しでも妖怪さんも感じたんじゃないかしら。その優しさ」
 嬉々として話す露と、黙っているシビラを見て、妖怪は頷いた。
『あの子が、あなたを大切に想っていることは伝わっていたわ。あなたを心配したり、あなたが危ない目に遭わないように行動していたし……言葉でのやり取りも、微笑ましいものだったから』
 第三者の自分でも分かるから、当人同士には確固とした絆が有るのだろうと、妖怪は思ったことをそのまま言葉にする。
 すると、露はまだ有るというように、シビラに視線を投げた。
(「急にこちらを凝視してきたな……。おおよその意味は理解できるが……何故私がしなければ?」)
 無視を決め込むシビラに、露は視線を送り続ける。
 妖怪にも協力をあおぎ、シビラは露と妖怪の両方に見つめ続けられて。
「……わかった。ダージリンしか所持していない。それでいいな? ……茶請けは無い。私は万能ではない。桜の木々を見て我慢しろ。露」
 リクエストに応えたシビラは淡々と言い、露は「ね? 優しいでしょー♪」とシビラの優しさを妖怪に伝えている。
(「やれやれ。大祓骸魂との一戦の時と似ているな。和の妖怪の舌を喜ばせるかわからないが普段通り淹れて振舞おう」)
 そう思案しつつ、シビラは慣れた手つきで紅茶を淹れた。
「どうぞ。……ん。妖怪では失礼だな。名を聞いていいだろうか?」
 シビラが名を聞いてくれたことは、妖怪にとってとても嬉しいことで、妖怪は笑顔で名を告げる。
 アナスタシア、と名乗った妖怪に、シビラは改めて「どうぞ」と手渡すと、妖怪は一瞬沈黙を挟んだ。
『名前を聞かれて、呼んでもらって……普通のことなんだろうけど、こんなにも嬉しくて有り難い気持ちになれるものだったのね。ありがとう』
 シビラに礼を言い、初めての紅茶も無警戒で飲むあたり、妖怪はシビラたちを完全に信頼している様子で。
『とっても美味しい。お店を開いているのかしら? あら、違うの? 私なら毎日通って飲みたいぐらい、美味しいわ』
 シビラが淹れた紅茶がよほど気に入ったのか、妖怪はシビラに淹れ方を尋ねたり、感想を長々と語り続ける。
「あ! 聞いてもいいかしら? アナスタシアちゃんのお友達さんって、どんな子だったの?」
 妖怪が語り終えたタイミングで、きちんと断りを入れる、露。
「……早速彼女を“ちゃん”付で呼ぶな。露。全く君は……」
 シビラからは呆れたような声が発せられるが、露を疎ましがっている気配は微塵も無く、そういったやり取りを妖怪は微笑みながら見守っている。
「ん……。今日の出来も中々だな。気疲れが引いていくようだ」
 やり取りを終えたシビラは、幻想的な桜を眺めつつ紅茶を堪能し、時折、露と妖怪の様子を確認していた。
『あの子は、そうね……あなたみたいに笑顔が素敵で、明るい子。彼女みたいに、温かい優しさも持っていたわ』
 彼女、と言ってシビラを視線だけで指す。
 それから暫く、妖怪は露との会話を楽しみ、味わっていた紅茶を飲み終えた頃には、体が次第に透明になり始めた。
 宴が成功し、カクリヨファンタズムに渡る時が来たのだ。
「そのカクリヨ世界は想いの力が強いと聞く。今度こそずっと一緒に居られるよ。白いお嬢さん、あなたがた妖怪は長い生をお持ちだ。向こうではどうぞ穏やかに過ごしておくれよ」
 興和が温和な口調で、別れの言葉を伝える。
「渡ったらね。カクリヨでまた逢いましょーね。楽しみだわ♪」
『また……会えるかしら?』
 人間の寿命を気にしている妖怪の両手を、自分の両手で包むようにして、露は笑顔を見せた。
「寿命とかで逢えなくなる心配してそーだったから、断言するわ。あたしは石の付喪神だからまた逢えるわ。……納得してくれるかしら♪」
 露がヤドリガミだったことに驚き、次いでほっとした様子で妖怪は微笑んだ。
『それならまた会えるわね。彼女も一緒だと、もっと嬉しいわ。美味しい紅茶を、ありがとう』
 後半はシビラに向け、深々と頭を下げる。
「……友人は妖怪になっているかも、な……」
 妖怪の姿が完全に消える前に、シビラがぽつりと呟いた。
「確か。人から妖怪になった物語が幾つかあったはず。もしかするとカクリヨの世界で逢えるかもと思った。それだけだ」
『希望をくれて、ありがとう』
 シビラは普段通りのぶっきらぼうで淡々とした口調だったが、露からシビラの優しさを聞いていた為、妖怪は幸せいっぱいの笑顔を向けた。
『皆さん、本当にありがとう』
 最後まで諦めずに、救ってくれた感謝を込めて。
 美しい花吹雪が舞う中、妖怪の姿は消え、無事にカクリヨに渡ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年04月19日


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#UDCアース
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#カクリヨファンタズム


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠御形・菘です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト