●帝都ラボラトリィ
雑然とした室内に、男女が集まっていた。
一同の共通点は白衣をまとっている、という事。
「ひとまず形になったな」
太陽を象った紋章を手にした眼鏡の女性が、微笑んだ。その目の下には立派なクマがあり、血色も悪い。睡眠および栄養不足の現れだ。
ただしそれは、この場にいる白衣全員に共通していたので、わざわざ指摘する者はいなかった。
「いかなる強大な攻撃であっても、かわされれば意味がない。我らの研究成果はそうした懸念を過去のものとするのだ」
「さて、誰に実践を押し付け……もとい、頼むべきか?」
白衣の者達に解決をもたらしたのは、眼鏡の女性の笑みだった。
「いるじゃないか、超弩級戦力というやつが」
●案内ケットシィ
ある日のグリモアベース。
タビタビ・マタタビ(猫勇者一歩手前・f10770)は、猟兵達に新たな依頼の説明を始めた。
「今回はね、サクラミラージュの『
帝都鍛冶司』さんが依頼主だよ」
帝都鍛冶司とは、帝都桜學府内に設けられた技術部門に属する、技術者の事である。
一人ひとりが最高クラスの腕前を持ったプロフェッショナル。刀はもちろん、光線銃や動力甲冑、果てはラバウルの鉄道までもが帝都鍛冶司の作品だという。
「影朧やテロリストに対抗するために毎日開発を続けてるんだけど、最近、新しい武器が出来たらしくて、そのお試しを猟兵にお願いしたいそうなんだよ」
その名も、『
遍照・零式』。
タビタビが借りてきた実物は、太陽を模したデザインの、ベルトのバックルだった。
これは『カリスマオーラ』をベースに開発されたもので、ステルス・幻術・忍術などで姿や気配を消したものに対し、有効なものだという。
「ひとたび起動してオーラをまとえば、相手の姿をあらわにしてダメージを与えちゃうらしいんだ! こんなふうに!」
タビタビは、『遍照』をベルトに装着すると、太陽のエンブレムをタップした。
発光とともに、神々しいオーラがタビタビを覆い、周囲を照らし出す。その姿はヒーローのよう。
「使い方はこんな感じだよ。姿を隠したり幻術を使う敵って厄介だよね? そういう敵にすごく有効なはず!」
起動を停止しながら、タビタビが言う。
「ちなみに、企画のはじめの時の呼び方は『忍者殺し』っだったらしいよ」
それはそれとして。
実用化には、実践が必要不可欠。そこで、猟兵に実際に運用してもらい性能を試してほしい、という事なのだ。
ただし、試作段階のため、問題はいくつかある。
まず、使用時に輝きを発するのだが、カリスマオーラをベースにしていることもあり、人目を惹きやすいという事。一般人も集まってくるかもしれない。
また、敵の注目も集めてしまうため、非常に目立ち、標的になりやすい。
他にも、使用していれば改善点や不具合などが見つかるだろう。それを洗い出し、知らせてほしいというのも、鍛冶司の依頼の一部だった。
「ちょうど帝都では、最近、夜の裏路地で人が襲われる事件が発生していてね? その犯人の影朧が、忍者だっていうんだ」
闇に紛れて襲来し、通り魔の如く人々を狙う……それも無差別に。これを放置することはできない。
怪奇事件の解決と、新型武装の試験。これぞ一石二鳥、というわけだ。
「事件を解決したら、鍛冶司さんの研究所に戻って、『遍照』を使ってみての感想とか改善点を報告してほしいんだ。鍋料理を準備して待っててくれるらしいから、頑張って!」
鍋料理……!
タビタビが、自分の説明に、思わず目を輝かせた。
七尾マサムネ
新武器の試験、心躍りますね……!
テスターを務めて、試験中の武器を使わせてもらいましょう!
●新型武装
『遍照・零式』。
太陽モチーフのベルトのバックルです。サクラミラージュの武器『カリスマオーラ』がベースです。
輝きで敵にダメージを与えるのに加え、姿や気配を消したり、幻術を使ったりするような敵に特効を発揮します。
ただし、「敵の標的になりやすい」「人目を集めてしまう」という欠点が既に判明しています。
●一章
夜の時間帯、帝都のひと気のない道に向かい、 『影忍『螺旋』』をおびき出し、戦います。
借り受けた『遍照・零式』を使い、かつ、その欠点を補うような戦闘方法を駆使した場合、プレイングボーナスが発生します。
●二章
引き続き試験武器の試用を兼ねて、影忍『螺旋』を束ねるボスと戦います。
プレイングボーナスは一章と同様です。
●三章
研究所に向かい、鍛冶司さん達に試験武器の使用感、改善点などを報告します。
鍋パーティを兼ねています。食材は、フラグメントにあるものでも、そうでないものでも構いません。
それでは、みなさんのご参加、お待ちしております!
第1章 集団戦
『影忍『螺旋』』
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POW : 忍法・螺旋刀撃
【手刀・足刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 忍法・螺旋投撃
レベル×5本の【闇】属性の【棒手裏剣】を放つ。
WIZ : 忍法・螺旋衝撃
【武器や印を結んだ手】を向けた対象に、【螺旋状の衝撃波】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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帝都の夜。
繁華街はまだ灯りに照らされているものの、一つ道を隔てれば、あっという間に闇の世界。すなわち、影朧のテリトリィにほかならぬ。
闇に溶け込み、獲物を待ち受けるのは、忍なるもの。
しかし、その姿は、程なくつまびらかにされるであろう。帝都鍛冶司の技術によって。
イリスフィーナ・シェフィールド
わたくしのノーブル・ウィルに似た装備と感じますね、うまく使えますかしら。
おびき出すべく近道で裏路地に入ったけど不安げで急ぎ足な女性を装います。
怪しい気配を感じたら遍照・零式を発動。
反撃が飛んでくると思うのでプロテクション・ウォールで対応しますわ。
耐えたらアルティメットモードからのクラッシュ・ファングで一気に距離を詰めて連続撃破を狙いますわね。
無関係な人が来てしまった場合はタウント・フラッシュで私に注意を引きましょう。
こんな感じですわね、上手くいくと良いのですけど。
戦闘系初めてです。
選択した以外のユーベルコードも入れてますが駄目ならカットで。
読んでキ○グストーンフラッシュかと思ったのが参加理由w
きっと、楽しい時間を過ごした人々のものだろう。
繁華街の喧噪を遠くに聞きながら、イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は、闇へと向かっていた。
裏路地とは言え、太陽輝く昼間ならば、ごく普通の道。だが今は、暗闇の領域。影朧が潜むにはうってつけの時間帯。
「わたくしのノーブル・ウィルに似た装備と感じますね、うまく使えますかしら」
呟くイリスフィーナ。その腰には、預かった『
遍照・零式』。
起動法自体は、シンプル。加えて、イリスフィーナ自身の思いの力を輝きとして発する、高貴なる意志の光と、扱い方が似ているのは幸いだった。
とはいえ、今のイリスフィーナは、影朧忍者の哀れな被害者を演じねばならない。
『家路を急ぐため近道をしようと裏路地に入ったけど不安げで急ぎ足な女性』を装い、足早に細道を行く。
(「いますわね」)
イリスフィーナが、おぼろげながら、怪しげな気配を捉えた。
もう敵はこちらを狙っている……イリスフィーナは、『遍照・零式』を発動させた。
迸る光輝。それは、小型の太陽、あるいは、王の如き威厳を以て放たれた。
「グワーッ」
「グワーッ」
奇声の輪唱が響く。
闇に覆われた壁から、渦巻きにも似た面が浮かび上がる。
続いて、『遍照』の輝きによってつまびらかになったのは、黒装束。
道にうずくまった人影の正体こそ、影忍『螺旋』達だ。忍術を破られたショックからか、肉体ばかりか精神にもダメージを負ったように、硬直している。
「効果てきめんですわね。うまく使えば他にもいろいろ応用できそうな予感がしますわ」
だが、影忍達はすぐに立ちあがると、イリスフィーナを包囲にかかった。
「んー? なんかあっちが騒がしいぞ」
近づいてくる声と気配。一般人のもの。これが『遍照』のデメリットか。
影忍達の殺意が、無辜の人々に向かってしまわぬよう。イリスフィーナは、『遍照』の輝きを再び敵に浴びせ、自身へと注意を向ける。
「シャッ」
思惑通り、『螺旋』は一斉にこちらへ手刀、あるいは足刀を繰り出した。
しかし、イリスフィーナも当然、反撃は織り込み済み。
「空間湾曲、プロテクション・ウォールですわっ」
突き出した左手、綺麗にそろえられた五指が、空間を湾曲させる。
生まれる波紋。反発力のフィールドが、飛び掛かってきた『螺旋』達の技を、その体ごと跳ね返した。
どさどさり。
受け身を取ることもかなわず、『螺旋』達が、無様に地面に転がった。
成功
🔵🔵🔴
陽向・理玖
おー!これが『遍照・零式』
すげぇ!新武装かっけぇ!
しかし…俺の場合ドライバーと位置が被るな…
ま、今日はドライバーなしでいっか
そんじゃ早速
エンブレムをタップ
…俺めっちゃ光ってる
っと見つけた
残像纏い
んんこうしたら目潰しになるかな…?
ダッシュで間合い詰めグラップルと同時にUC起動
拳で殴る
ま
これだけ光ってれば動きも見え見え
手裏剣も滅茶苦茶見えてるな
見切り避けて懐に飛び込みカウンター
足払いからの連続コンボ
体勢崩させ急所を殴る
オンオフって即座に出来るんかな?
限界突破しスピード上げてダッシュで間合いに飛び込み後オフ
いきなり見えなくなったら対応しにくいだろ
フェイントで背後から回し蹴り
まぁひとまずこんなもんか?
夜の街。
市井の人々に混じって、目を輝かせる陽向・理玖(夏疾風・f22773)の姿があった。
歓喜をもたしたのは、太陽の紋章。
「おー! これが『
遍照・零式』。すげぇ! 新武装かっけぇ!」
思わずハイテンション。だが、それもすぐに収まる。
「しかし……俺の場合ドライバーと位置が被るな……ま、今日はドライバーなしでいっか」
切り替えの早さは美徳だろう。
理玖はすぐに気を取り直すと、件の路地裏へと急いだ。
不自然なほどの静寂。
単に生き物の気配がないのともまた違う。遮断、あるいは世界から隔絶されたような感覚が、理玖を包んでいた。
「そんじゃ早速」
エンブレムをタップ。
『遍照・零式』が、光輝を放ち、理玖を包み込む。
「……俺めっちゃ光ってる」
理玖自身が光源……小さな太陽と化したような状態。それに加え、全身に気合がみなぎってくるよう。
「っと見つけた」
闇が剥がされ、人影が現れる。忍者以外のなにものでもないその姿。影忍『螺旋』だ。
そこらの光に忍術が破られるはずがない……『螺旋』にとって想定外だったのだろう。
怯む敵へと、理玖は、残像を纏い一気に間合いを詰めた。
「んん、こうしたら目潰しになるかな……?」
瞬く間に眼前に迫った『螺旋』へと、ユーベルコードをこめた拳打を繰り出す。
今の理玖は発光体。破幻の光に目を焼かれた『螺旋』は、とっさに防御姿勢を取るので精いっぱいだった。
殴り倒された『螺旋』が、建物の外壁に叩きつけられる。
すると、理玖の周囲を、複数の気配が続々と取り囲む。
「こんなに隠れてたのか」
『螺旋』が反撃に出た。
棒手裏剣の群れが、理玖に投擲される。
刃がまとうは闇。普段ならば、暗闇に紛れて視認しづらいのも性能のうちなのであろうが、
「ま、これだけ光ってれば動きも見え見え」
『遍照』は、棒手裏剣の形、軌道、全てを明確にする。
「滅茶苦茶見えてるな」
理玖は、手裏剣の雨を巧みにかわし、投擲主の懐へ。
足払いを起点として、連続コンボが始まる。
相手の体勢を崩し、がら空きになった急所へと、渾身の一打。相手を吹き飛ばすと、そのまま別の標的をロックオン。
その速力は、なおも上昇。『螺旋』も理玖に対応しようとして……。
「!?」
突如、光輝が消えた。理玖が『遍照』をオフにしたのだ。
急な暗転に、『螺旋』が理玖を見失う。次の瞬間、受けた衝撃の正体は、背後からの回し蹴り。
「まぁひとまずこんなもんか?」
理玖が、ふう、と一息ついた。
足元でのびている影忍達を見下ろしながら。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
光るベルト〜光るベルト〜♪
これ、UDCアースのテレビで見たことある!
ヒーローが付けてる喋るベルトだろ?
アレ凄いよな!あんな力が使えるなら、俺もヒーローみたいに強くなれるかな?
とりあえず、ベルトをつけて、敵を誘き寄せればいいんだよな?
チィ、おいで!手伝いを頼む!
一般人が来ちゃったら、オーラ防御を一般人全体へかけるんだ。
月灯かりの欠片使っていいから、遠慮なくかけていいぞ?
よし、それじゃ太陽のマークをタッチ!
おおお!光る!凄い!(尻尾ぶんぶん)
忍者が出てきたら、やっつけようか。
UC【精霊の瞬き】で出てきた敵を狙っていこう。雷の精霊様、お願いします!
敵の手裏剣は、カウンター、高速詠唱で対処しよう。
「光るベルト〜光るベルト〜♪」
他の猟兵がそうであったように。
木常野・都月(
妖狐の精霊術士・f21384)もまた、グリモア猟兵から預かった、『
遍照・零式』を手に、うきうきとしていた。
「これ、UDCアースのテレビで見たことある! ヒーローが付けてる喋るベルトだろ?」
メカニズムに多少の違いこそあるものの、歴代のテレビヒーロー達は、ベルトの力を借りて変身するのだ。
「アレ凄いよな! あんな力が使えるなら、俺もヒーローみたいに強くなれるかな?」
なれるなれる!
グリモア猟兵と一緒になって盛り上がった都月は、しっかり依頼を確認する。
「とりあえず、ベルトをつけて、敵を誘き寄せればいいんだよな? チィ、おいで!」
裏路地に入ったところで都月に呼ばれ、月の精霊の子が愛らしくぴょこんと姿を現した。
「手伝いを頼む! 一般人が来ちゃったら、オーラを広げて守るんだ。月灯かりの欠片使っていいから、遠慮なくかけていいぞ?」
都月のお許しが出たチィは、尻尾を振って喜びを表した。ちょうど、『遍照』を手にした都月とそっくりに。
すぅっと深呼吸。
満を持して、都月は、太陽のマークをタッチする。
カッ!
夜を昼に変えるほどの輝きが、周囲を照らし、都月の全身を包んだ。
「おおお! 光る! 凄い!」
ぶんぶんぶん! 都月の尻尾は、喜びで、風を起こす勢い。
「グワーッ!?」
「? 変な声? 今のチィ?」
ちがうちがう。
首を振ったチィの代わりに、姿を現したのは、黒装束のナニモノかであった。
奇妙な面で、容貌を隠したものたち。
「忍者出た! やっつけよう!」
突如、隠形の術を破られた『螺旋』達は、都月におくれを取ることになった。
本当なら、一方的にその命を頂戴する算段であったろうに。都月と『遍照』によって、その目論見は消し飛ばされたわけだ。
「雷の精霊様、お願いします!」
都月の頼みとあれば。
幾筋もの光が『螺旋』達を射抜く。『遍照』のオーラ力を加えて、普段より光は強くなっているようだ。
都月の背後で、ぽう、と輝きが灯るのがわかった。チィが、一般人達を守るため奮闘している証だとすぐにわかった。
精霊の矢によって、次々倒れていく『螺旋』達。しかし、味方の体を盾に、忍者達は反撃に移った。
「シャッ」
短い気合の声とともに、闇が投じられた。棒手裏剣だ。
空間に螺旋を刻むように飛来するそれらを、光が撃ち落とす。
都月が、再びの雷矢で、カウンターをきめたのだった。
成功
🔵🔵🔴
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
ふーむ、隠れた敵を暴けるけど目立つ装備ねえ。
まあ、とりあえず試してみようか。
使うととにかく目立つんなら、囮として使えないか試してみようか。
【混獣生成】で適当に人型の合成獣を作って『遍照』を付けさせたら、
裏路地を歩かせて少し経ったら『遍照』を起動させてみようか。
あたしの方はこっそりカメレオンスキンで迷彩しながら合成獣の後を付いて行って、
『遍照』が起動したら姿が見えた忍者に奇襲で殴りかかって、
その後は獣型の合成獣を作って忍者と戦わせようか。
寄ってきた一般人はコウモリっぽい合成獣でも顔に向けて飛ばして追い払おうかな。
今回は使うと同時に動いたからいいけど、これ隠れてる味方も見つかっちゃうのかな?
夜の繁華街を、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)が歩く。
その手には、『
遍照・零式』。
「ふーむ、隠れた敵を暴けるけど目立つ装備ねえ。まあ、とりあえず試してみようか」
弱点はある。ならば、それを逆手にとった使用法が存在するはず。
ペトニアロトゥシカは、思いついた。
使うととにかく目立つのなら、囮として使えないか、と。
人型の合成獣が、裏路地を行く。単独で。
実際は、その少し離れたところから、ペトニアロトゥシカがついていく。しかし、その姿は見えない。カメレオンスキンを用いて、自身に迷彩を施してあるからだ。
合成獣の正体は、ペトニアロトゥシカのユーベルコードとイマジネイションに従い、作り上げられたもの。その腰部には、ペトニアロトゥシカが託した、『遍照』。
道を奥に進むにつれ、人気が消えていく。代わりに深くなるのは、闇だ。
(「そろそろ頃合いかな」)
ペトニアロトゥシカの意志を受け、合成獣が、『遍照』を起動させた。
光が迸るさまが、音として響くほどの眩さが、裏路地の微細な凹凸までをも、つまびらかにする。
「グワーッ」
壁が奇声を発したかと思うと、暗闇が『剥がれ落ちた』。
闇に紛れていた影忍『螺旋』が、光に焼かれ、その身をあらわにしたのだ。
姿隠しの術を破られたばかりか、その感覚・身体を焼かれた『螺旋』へと、ペトニアロトゥシカが奇襲を仕掛けた。殴打する。
本来であれば、立場は逆だったはず。しかし今や、哀れな被害者は『螺旋』の方だ。
二度に渡り後手に回った『螺旋』達が怯むのが、手に取るようにわかった。
そして、新たに『螺旋』達をおののかせる事態がまた一つ。ペトニアロトゥシカによって、獣型の合成獣が現れたのだ。
姿が見える相手ならば、その膂力は問題なく発揮される。
予想外の連続に、『螺旋』達が、次々と宙を舞い、壁、あるいは地面に叩きつけられる。
「……何かこっちの方が騒がしいぞ」
ペトニアロトゥシカの聴覚が、ろれつの若干回っていない声を捉えた。
一般人の酔漢が、『遍照』の光量、そして意識を引き付けるオーラに気づいて、近づいてきたらしい。
もっとも、それも織り込み済み。ペトニアロトゥシカが飛ばした、コウモリめいた合成獣に、人々は驚き逃げ出していった。
「今回は使うと同時に動いたからいいけど、これ隠れてる味方がいたら、一緒に見つかっちゃうのかな?」
本来ならば忌むべき欠陥であるが、帝都鍛冶司らにとっては、むしろ喜ばしい報告となるであろう。
成功
🔵🔵🔴
ゼロ・クロニクル
荒野の世界を抜け出して、ふらりと来てみれば。
悪の忍者と戦うのならば、力を貸すぞ。
幻朧戦線とやらの動きも気になるしな。
これは…腰に装着するベルトなのか。
では、《化術》で人間の姿になろう(真の姿BU参照)。
戦場に出たら、嗅覚を駆使し《野生の勘》で敵の
おおよその位置を推測して、同時に『遍照』を発動。
まずは射程距離と範囲を調べてみよう。
そこか!【忍法・黒雷霆】で敵をサーチし、
雷の《属性攻撃》で稲妻を落として、敵グループをまとめて攻撃。
稲妻が落ちた場所へ急ぎ、闇狩と忍者手裏剣を《投擲》してトドメを刺す。
撤退時はアサシンクロークの《迷彩》《闇に紛れる》機能を使うぞ。
忍者の戦いは、隠密が基本なのだ。
荒野の世界を抜け出して。
ゼロ・クロニクル(賢い動物のストームブレイド・f24669)がふらり訪れた桜の幻想世界。
表向き、ゼロの目に映る街並みは、夜であっても平穏。
しかしその裏では、闇に潜む、影朧の忍どもが跋扈しているという。
悪の忍者と戦うのならば、力を貸すことにためらいはない。
「幻朧戦線とやらの動きも気になるしな」
対抗するためのカギは、ゼロのもとにある。グリモア猟兵を通じて預かった、
帝都鍛冶司の新武装。
「これは……腰に装着するベルトなのか」
では早速。ゼロは化身した。すっくと二本の足で立つ、人間の姿に。
凛々しき忍びの装い。そこに『
遍照・零式』はいささか目立つようであったが、同時に妙に似合ってもいた。
準備は整った。件の裏路地へと向かう。
ゼロもまた、忍びの道に生きるもの。気配を殺す事はもちろん、相手の気配を探る術も会得している。
人気はない。しかし、ゼロの忍感覚は、暗闇の中に人外の潜伏を捉えていた。
研ぎ澄ませた嗅覚が、暗闇の中、敵の居場所を朧げにではあるが、伝えてくれる。
人ならぬ存在とはいえ、相手も忍びを名乗るもの。さすがの隠形術ではある。しかし今のゼロには、これがある。
『遍照』、起動。
カッ!
小型の太陽が燃え盛り、雷の如く激しい輝きが、周囲を白に染めた。
「グワーッ!」
「ナンデ!?」
悲鳴とともに、人影が弾かれたように、突然現れた。
否、もとより隠れていたものが、『遍照』によって見事暴きだされたのだ。
その黒装束こそ、影朧の忍者・『螺旋』。
「そこか!」
実際の発動により、『遍照』の射程と範囲を把握したゼロは、即座に忍術を披露した。
【忍法・黒雷霆】!
標的を追走する雷が、迅速に敵群へと到達、焼き払う。
ゼロが放った稲妻は、敵を討つのみならず、その位置を確定した。何より、黒い稲妻を受けた『螺旋』達は、その身の自由を奪われている。逃れられぬ。
ゼロは落雷箇所へと狙いを定めると、闇狩と忍者手裏剣を相次いで投擲。『螺旋』へと引導を渡した。
「ヤーッ!」
奇声は気合の証。
反撃とばかり、棒手裏剣が飛来する。『遍照』の光を切り裂くように、闇をまとって。
だが、『螺旋』の殺意は、虚空を薙いだだけに終わる。
肝心の標的であるゼロは、一拍前にアサシンクロークにて闇へと溶け込んでいたからだ。
忍者の戦いは、隠密が基本。それが、ゼロの忍びの心得であった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『荒魂の復讐鬼』
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POW : 力無き者よ
【紅く染まった忍者刀による斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 恨め怒れ、思い出せ
【手で印を結んだ後、広げた巻物】から【対象が恨みや怒りを抱く人・物・事象等の幻】を放ち、【それを恨む切掛けとなった場面を見せること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : お前の最も憎むものは
質問と共に【足元の影に憎悪の感情を増幅させる手裏剣】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
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影忍『螺旋』、最後の一体が、闇風となって消えた。
だか依然として、怪奇なる闇は晴れぬ。
つまり、『螺旋』は、闇の根源ではない。本当の元凶なるものは……。
「忌々シイ、光ダ……!」
裏路地を覆っていた黒き闇が、見えざる手によって、はぎ取られていく。
闇は一か所に収束し、人の形を取る。『螺旋』達を率い、人命を闇底に引きずり込んでいた張本人。怨嗟の化身。
『荒魂の復讐鬼』。
「怒レ、憎メ……全テ、闇ニ沈ンデシマエ」
押さえきれぬ怒りと無念が、復讐鬼の身より溢れ続けている。
それに呼応するように、『遍照』がうずいている。闇を祓えと。
その動作には、いささか不具合が生じているようにもみえる。
だが、望むところだ。『遍照』の欠点・リスクをピックアップし、真なる対・影朧武器として完成させるのだ。
そして、眼前の影朧に引導を。
復讐鬼の姿が、闇に溶ける。
「……影忍ノヨウニハ、行カヌ」
一言を残して消える復讐鬼。猟兵とて、もはや『遍照』の初心者ではない。
その輝きを以て、人身を構成するに至った復讐の念を、浄化するのだ。
イリスフィーナ・シェフィールド
怒りと憎しみに囚われたものの末路ですか……
その闇、私の力と遍照でもって晴らさせていただきますわっ
大雑把に狙ったのでは影人と同じようには捉えられないでしょう
ニンジャには一度見た技は効かないと言いますし同じ技では厳しいでしょう
なので集中して待ち構え攻撃の気配を感じたらシルバリオン・アーマーを展開
相手の攻撃を無効化しつつ攻撃元へカウンター気味に遍照を使用いたします
相手が姿を表し怯んだならすかさずノーブル・ウィルのパワーを全開ですわ
意志の光を足に集中させて全力の飛び蹴りを叩き込むといたしましょうっ
(いわゆるひとつのラ○ダーキック)
……わたくしは貴方のようにはなりません、なったりしませんわ
イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は、一層深度を増した闇を凝視していた。
敵の数は、先ほどより少ない。ただ一体。
しかし、受ける圧は、影忍を束にしたものに匹敵、あるいは上回るものだ。
それだけ、復讐鬼に内在する負の念の密度が高い、という事なのだろう。
「これが怒りと憎しみに囚われたものの末路ですか……その闇、私の力と遍照でもって晴らさせていただきますわっ」
だが、大雑把に狙ったのでは、先ほどの敵群と同じようには捉えられない。
イリスフィーナがそう考える根拠は、復讐鬼の戦種にあった。そう、忍者。
(「ニンジャには一度見た技は効かないと言いますし、全く同じ技では厳しいでしょう」)
闇中にて凶刃を研ぐ復讐鬼に、備えるイリスフィーナ。
精神を集中し、敵が動くのを待つ。我慢比べだ。
果たして、先に仕掛けたのは、復讐鬼だった。
浮かび上がる、紅の刀身、二振り。同時、無差別に命を刈り取る斬撃が襲来する。
散華の運命は、しかし、銀の閃きによって打破される。
「シルバリオン・アーマーですわっ!」
イリスフィーナが銀色の輝きに包まれる。漆黒の宇宙に瞬く、星の如く。
復讐鬼が想定していたのは、反対の色……すなわち『遍照』のものだっただろう。
今、イリスフィーナが発動した白銀のオーラは、殺意の刃を全て無効化する。紅の斬撃は光に呑まれ、粒子に変換されるように散った。恨みも怒りも、等しく。
全ての斬撃をしのいだ時こそ、『遍照』の出番。
銀光を継いだ激しい閃光が、周囲を照らし出す。闇を統べる復讐鬼も、その輝きから逃しはしない!
「……!」
復讐鬼の全身が、イリスフィーナの前に晒される。
「光の源は一つだけではありませんわっ」
『遍照』の光に、もう一つの光が重なった。
ノーブル・ウィル、パワー全開。
跳び上がるイリスフィーナ。迸る意志の光、その全てを一か所……すなわち、足へと集中。
繰り出すのは、全力の飛び蹴り。必殺の一撃だ。
「ッッッ!」
華麗なキックが、復讐鬼に直撃。その漆黒の体が勢いよく吹き飛び、地面を転がった。
光と闇は紙一重。だがしかし。
「……わたくしは貴方のようにはなりません、なったりしませんわ」
すたっ、と着地を決めながら、イリスフィーナは復讐鬼を振り返った。
決意に満ちたまなざしで。
大成功
🔵🔵🔵
ゼロ・クロニクル
引き続き、《化術》による人間態で参加。
漆黒の闇が人の形をなしてゆくぞ。
む、あの印は…いかん!
術に落ちた瞬間、故郷の忍びの里が滅んだ夜を幻視する。
只一体のサイボーグによって兄弟が皆殺しにされ、自身も深手を負って…
あの忌まわしい夜が、再現されようとしているのか?
否、惑わされるな!
体内に埋め込まれた拙者の偽神細胞が、危機を告げる。
敵の刃が迫る寸前、殺気を《気配感知》。
紅蓮オロチによる火遁の術で、一度闇の中へ潜む。
そして死角からの手裏剣投擲、そして
夜叉による《急所突き》で《暗殺》だ!
復讐の炎に身を焦がす悪鬼の姿。
まるで鏡写しの己自身のようだ…。
今回は切り抜けられたが、幻覚攻撃への対応力は
今後の課題か。
負の念が結実した人型と、獣が化身した人型。
出自は違えども、忍の技を用いる二者。しかしその忍の道は、決して交わることがない。
ゼロ・クロニクル(賢い動物のストームブレイド・f24669)は、闇に溶けた『荒魂の復讐鬼』が、再び輪郭を形成していくのを凝視した。
「漆黒の闇が人の形をなしてゆくぞ。む、あの印は……」
復讐鬼が明確な像を結んだ時には、既に術は完成していた。
はらり、広げられた巻物、そこに記された光景は……!
「……いかん!」
ゼロの夜が、巻き戻る。
「ここは……!」
ゼロの眼前には、故郷の忍びの里。
時間帯は、同じ夜。しかし、この夜は特別だ。里が滅んだ時なのだから。
「そうだ、只一体のサイボーグによって兄弟が皆殺しにされ、自身も深手を負って……」
あの忌まわしい夜が、再現されようとしているのか?
過去という名の波に、ゼロの胸が激しくかき乱される。
だが!
「……否、惑わされるな!」
どくん。
脈動が、ゼロに抗う力を湧き立たせる。
直後、危機を告げたのは、体内に埋め込まれた偽神細胞。
殺気が、紙一重の距離を通り過ぎていく。敵の刃は、あと一歩のところで虚空を薙いだ。
己が細胞、そして『遍照』の光に呼び覚まされるようにして、ゼロの時間が再動する。
「火遁!」
炎を吐く『紅蓮オロチ』。押し寄せる紅蓮が敵を怯ませる間に、ゼロはバックステップ。闇中へと潜伏。
「……!」
復讐鬼の挙動が止まる。狙う者から狙われる者。立場が逆転した形だ。
気配の読み合い。忍者同士による無音の戦いが、しばし繰り広げられる。
ひゅん!
決着への口火を切ったのは、手裏剣だった。
復讐鬼の死角から、ゼロの手裏剣が襲う。かかっ、と地面に突き立ったそれは、復讐鬼の挙動を誘導する。
敵の背後に、ゼロが迫る。
復讐鬼が、とっさに双刃にて防御の構えを取るも、一歩遅い。
闇の内より閃いた『夜叉』が、復讐鬼の急所を見事突いた。
「ウ、ウウ……!」
直刀に貫かれながらも、復讐鬼の気迫は衰えぬ。
復讐の炎に身を焦がす、悪鬼の姿。それはまるで鏡写しの己自身のようだと、ゼロは思う。
「今回は切り抜けられたが、幻覚攻撃への対応力は今後の課題か」
無意識に『遍照』に触れながら、ゼロがひとりごちた。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
ベルト、もっと頑張れないのか?
試作って言ってたからなぁ。
俺が力を貸したらベルトは頑張れるかな。
さっきのベルトの光、太陽の精霊様の光に似てたような気がする。
俺がベルトの代わりに頑張ってみようか。
チィはさっきと同じように、一般人が来たらオーラ防御を頼む。
UC【精霊疾走】で敵をどーんってしよう。
太陽の精霊様は、チィ経由で呼び出そう。
月の光は太陽の光を写したもの。
太陽の精霊様を集めて、ベルトの光と合わせるんだ。
いくぞ!
あまてらすぅーファイヤー!
敵の攻撃は、高速詠唱、カウンターで対処したい。
土の精霊様、電磁場を発生させて、電磁障壁を!
刀は金属のはず。
磁石みたいに刀を吸い寄せて、可能なら奪うんだ!
木常野・都月(
妖狐の精霊術士・f21384)は、何かを訴えるように弱々しい光をこぼす『遍照』を、心配そうに見つめた。
「ベルト、もっと頑張れないのか? うーん、試作って言ってたからなぁ」
まだ長時間稼働できないのか、それとも、内部の回路が不調になってしまったのか。
ともかく、今の『遍照』は、想定された機能を発揮できない状態に陥ってしまったようだ。
「そうだ、俺が力を貸したらベルトは頑張れるかな」
先ほどベルトが放った光は、太陽の精霊様の光に似ていたような気がする。
こうしている間にも、『荒魂の復讐鬼』は、闇の中から都月を狙っている。
俺がベルトの代わりに頑張ってみようか。都月は、決心した。
「チィはさっきと同じように、一般人が来たらオーラ防御を頼む。その前に、一つ力を貸してほしい」
そして、都月は、巨大な黒狐の姿へと変じた。その体に、次々と輝きが宿っていく。チィを通じて呼び出した、太陽の精霊が集まってきたのだ。
月の光は、太陽の光を写したもの。太陽の精霊様を集めて、ベルトの光と合わせることが出来れば……。
「いくぞ! あまてらすぅー……ファイヤー!」
カッ!
陽光をまとった都月が、闇へと飛び掛かった。
太陽の精霊の、そして都月とチィの力が、眠りかけていた『遍照』の潜在能力を引き出したのか。
カカッ! 『遍照』が、再び眩い光を解き放った。
その激しさは、明らかに先ほどを上回る。闇そのものと化していた復讐鬼の姿が照らし出され、怨念に満ちた肉体を浄化していく。
「……!」
焼ける痛みに悶える復讐鬼へと、都月の体当たりが直撃した。
闇の忍者の体は、容易く吹き飛ばされ、衝撃波をまき散らしながら、路地の奥へと叩きつけられた。
「やった、ありがとうベルト!」
都月が感謝を告げると、『遍照』は「どういたしまして」というように、明滅した。
「光、輝キ……我ハ其レヲ憎ム」
無理矢理に身を起こした復讐鬼が、ばねのように、一気に都月へと飛び掛かってきた。
「土の精霊様、電磁場を発生させて!」
都月に応えて、電磁障壁が張り巡らされた。
恨みと怒りに包まれた紅刀も、その本質は金属。
電磁力に捕らわれた二振りの刃は、復讐鬼の手から逃げ出した。
そのままひゅんひゅんと円を描き、都月のもとへと奪取されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
まぁ消えられてても一目瞭然なんだけど
エンブレムぽちっと
現れた瞬間に衝撃波牽制に飛ばしつつ
残像纏いダッシュで間合い詰め
フェイントでまたタップし消して
そのまま暗殺用い死角に回り込み再点灯
拳で殴る
さっきもしたんだけど
コレ点けたり消したりしてると
俺も眩しいってーか
自分は心構えあるからまぁいいけど
あと奇襲用だよな
オンオフは何回も使えねぇってーか
でも
…いい名前だよな
帝都を隅から隅まで遍く照らしてやろうっていう
願いが込められてるってーか
気概が伝わるってーか
こっちも全力で手伝ってやろうって思える
こう明るいと
そんな真っ紅な斬撃見え見えだぜ
薄く虹色のオーラ防御貼りつつ見切り
同時にUC
一気に間合い詰め斬撃も共に攻撃
猟兵達に追い込まれた『荒魂の復讐鬼』は、、陽向・理玖(夏疾風・f22773)に応ずるべく、再び闇へと溶け込んだ。
「まぁ消えられてても一目瞭然なんだけど。……エンブレムぽちっと」
『遍照』の閃きが、裏路地の闇を払う。照らし出される構造物、その中には、復讐鬼も当然含まれていた。
「……忌々シイ」
憎しみとともに姿をつまびらかにした敵影へと、理玖が衝撃波を見舞う。
復讐鬼が、紅の双刃でそれを弾いた時には、理玖はもう眼前。
「!」
理玖へ反射的に振るった紅刃は、しかし、空を切る。あれほど眩かった『遍照』の消灯が、理玖の姿を闇に沈めたのだ。
闇ではなく、光に紛れた出現と消失。理玖が、『遍照』を使いこなしつつある証拠だ。
「……何処ダ」
復讐鬼が気配を探る刹那に、理玖はその死角に回り込んでいた。
『遍照』、再点灯。暗闇に逃れる事を許さぬ光輝とともに、理玖の拳が、復讐鬼を殴打した。
「さっきもしたんだけど、コレ点けたり消したりしてると俺も眩しいってーか」
相手が地面を転がるのを見送りながら、理玖が目を細める。
「自分は心構えあるからまぁいいけど。あと奇襲用だよな。オンオフは何回も使えねぇってーか」
相手も無策ではない。連続使用は、やがて見切られてしまうだろう。
欠点もある。だが。
「……いい名前だよな」
帝都を隅から隅まで遍く照らしてやろう。
「そんな願いが込められてるってーか、気概が伝わるってーか」
だからこそ、理玖自身も、全力で手伝ってやろうという気持ちが湧いてくる。
煌々と周囲を照らす『遍照』。その全てを包む輝きは、復讐鬼を単に消し去ろうというのではなく、光の側へと引き戻そうと手を伸ばすかのよう。
それでも、復讐鬼の復讐心は走り続ける。
「ウ、オオオオォォッ!」
咆哮。
負の念に満ちた斬撃の連続が、復讐鬼から撒き散らされる。だが、視界は、夜と無縁に良好だ。
「そんな真っ紅な斬撃見え見えだぜ」
虹色のオーラを薄く張り巡らせ、敵へと踏み込む理玖。
残像を友として、復讐鬼へと接近。後退する相手を逃さぬその速力は、まさに疾風。
復讐鬼の間合いを飲み込むと同時。敵へと怒涛の一撃を放った。
「!!」
己が繰り出した斬撃ごと、吹き飛ばされる復讐鬼。
ぎこちなく立ち上がる漆黒の身体には、ノイズが走り始めていた。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
生憎と、恨みも憎しみもあまり縁が無いんでね。
なにせアンタとは違って力有る者に生まれついたおかげで、
そういう感情は大して持ち合わせがないんだよ。
さて、『遍照』が注目を集めるのなら、
こういう挑発は効果が上がりそうだけどどうかな?
上手くいけば【冷厳練達】を使って戦おうか。
全身が光るオーラで覆われるなら足元に影はできないし、
手裏剣の直撃だけ避けながら突っ込んで一発ぶん殴ろうか。
動きが止まったら『遍照』の光がなるべく多く当たるよう抱え込んで、
高くジャンプして落下の勢いのまま地面に叩きつけるよ。
向ける相手も定かじゃない怒りなんて持ってても仕方ないだろうに。
次は何に怒ってるのかはっきりさせてから来なよ。
「グ、ググ……」
不気味に揺れる赤光とともに、黒影が立ち上がる。
幾度も光に晒された『荒魂の復讐鬼』は、満身創痍。
それでもなお、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)へと憎悪を向けてくる。愚直なまでに。
しかし、ペトニアロトゥシカは、涼しい顔で憎しみの波を受け流していた。
「生憎と、恨みも憎しみもあまり縁が無いんでね」
怖気ることなく、ペトニアロトゥシカは、復讐鬼の視線を跳ね返す。
「なにせアンタとは違って力有る者に生まれついたおかげで、そういう感情は大して持ち合わせがないんだよ」
「……!」
ざわわっ。
復讐鬼の殺気が、一気に膨れ上がる。この影朧を形作っているマイナスの感情が、怒りに燃え上がったのだ。
しかしこれも、ペトニアロトゥシカの思惑通り。
『遍照』が注目を集める……その効果を織り込んだ挑発行為は、想定通りに効果を上げた。
「オ前ノ憎ムモノヲ答エロ!」
問いとともに、復讐鬼が手裏剣を投じた。
狙いは、ペトニアロトゥシカ本人ではなく、その身体が作り出す影。……の、はずだった。
だが、発動した『遍照』の輝きが、影を全て打ち消す。復讐鬼の問いは、ペトニアロトゥシカに届かない。
手裏剣をかわしながら、迷いも恐れもなく、敵へと踏み込むペトニアロトゥシカ。その冷静さが、力をもたらす。
標的を失った手裏剣は、刃としての威力さえ発揮できず、渇いた音とともに地面に跳ね返された。
光の中、飛び掛かるペトニアロトゥシカ。その拳撃が、復讐鬼にめり込んだ。
「グ……!」
体をくの字に折った復讐鬼の動きが、硬直する。3倍化した打撃力が、内部で荒れ狂った結果だ。
相手が止まった隙を逃さず、ペトニアロトゥシカが組み付いた。『遍照』の光を余さず浴びせかけるように抱え込み、そのまま高く跳躍する。
「離セ……!」
必死に身をよじる復讐鬼だが、束縛は強固だった。何より、零距離て浴びせられた『遍照』が、影朧の力を減退させている。
そして、反転。重力を味方につけたペトニアロトゥシカが、復讐鬼を地面へと叩きつけた。
「向ける相手も定かじゃない怒りなんて持ってても仕方ないだろうに。次は何に怒ってるのかはっきりさせてから来なよ」
ペトニアロトゥシカの忠告を、葬送の言葉として。
地上に小クレーターを作り出した復讐鬼の体は、影となって四散した。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『お鍋を食べよう』
|
POW : 牛鍋を食べよう
SPD : 桜鍋を食べよう
WIZ : ラッコ鍋を食べよう
|
「『
遍照・零式』の運用試験に手を貸してくれた事、感謝する」
帝都鍛冶司のラボラトリィを訪れた猟兵達を、鍛冶司達が迎えた。
その中で、特に一礼したのは、眼鏡をかけた女性……おそらく『遍照』の生みの親だろう……だった。
「忍者の影朧達を退治してくれたことも、重ねて感謝しなければならない。知人が……被害者なものでね」
浮かんだ悲しみを一瞬で拭い去ると、女性鍛冶司は、ぱん、と手を叩いた。
「さて、使い心地はどうだっただろうか? 問題点や引っかかった点があれば、教えてほしい。運用に関する新しいアイデアでも構わないよ? 我々は向上心の化身なのだ」
報告の方法は、書面でも口頭でもどちらでも良いと、鍛冶司は言う。
「もちろん、ただではないよ」
鍛冶司達が、猟兵達を一室に案内する。
研究所内ゆえ、決して広い部屋ではなかったけれど……美味しい匂いがした。
「鍋を御馳走しよう。日頃から夜食づくりで鍛えた料理の腕前だ。味は確かだよ」
「
出汁は特別な『鍛冶司出汁』だ」
「材料も用意している。牛鍋に桜鍋。他にも、食べたいものがあれば言ってくれ」
えへん、と胸を張る鍛冶司達。
そういうのならば、遠慮なくいただこう。
『遍照』の感想が、食券代わりだ。
ゼロ・クロニクル
『遍照』の実用試験はひとまず成功か。
帝都の闇に潜む悪を暴き出す効果は、まずまずのようだな。
使用法としては、ステルス機能を併用しての短期離脱戦法が有用かな。
もしくは出力を調整して小型化して、ベルト型だけでなく、腕時計や
カメラなんかに応用しても面白いかもしれんぞ。
そうすれば、使用者の得意な使い方を色々工夫できるであろう?
さて、感想はこんなところだ。
《化術》で書生風の男に変身して、食事に参加しよう。
この姿なら…やはり牛鍋を食べてみたくなるな。
うむ、ダシ醤油の焦げるいい匂いだ。
アポカリプスヘルではこんなご馳走、まず食べられぬからな。
よ~く味わうとしよう。
はふはふ……タビタビ殿もこちらで一緒に食わぬか?
鍋宴へと招かれたゼロ・クロニクル(賢い動物のストームブレイド・f24669)は、無事任務を完了できたことを鍛冶司達に告げていた。
「実用試験はひとまず成功か。帝都の闇に潜む悪を暴き出す効果は、まずまずのようだな」
使用した『遍照・零式』を鍛冶司に返還しながら、ゼロは報告を開始する。
「使用法としては、ステルス機能を併用しての短期離脱戦法が有用かな」
「ふむ」
昔ながらの手帳、あるいはタイプライタめいた記録装置にゼロの言葉を記しながら、鍛冶司達がうなずく。
「もしくは出力を調整して小型化して、ベルト型だけでなく、腕時計やカメラなんかに応用しても面白いかもしれんぞ」
「なるほど。威力や機能を優先するあまり、形状は二の次になっていたな」
「ああ。そうすれば、使用者の得意な使い方を色々工夫できるであろう?」
「距離問わず機能を発揮できるというわけか。ではさっそくデザインを……」
「さて、感想はこんなところだ」
今にも作業に取り掛かってしまいそうになった鍛冶司をやんわり止めつつ、ゼロは、書生風の男に変身した。
それを見た鍛冶司達は、「やはり変身能力も付ければよかった」とか「それだとコストが爆上がりしてしまう」とか悩まし気に呟いた。
「さて、何鍋がご所望かな」
割烹着姿になった女性鍛冶司……このラボのリーダーのようだ……が、ゼロの注文を待ち構えている。
「この姿なら……やはり牛鍋を食べてみたくなるな」
「お安い御用だ。夜食当番で鍛えた腕前、お見せしよう」
ほどなく、美味しい音と香りが、ゼロの聴覚と嗅覚をくすぐり始める。
「うむ、ダシ醤油の焦げるいい匂いだ」
料理とはいいものだ。単に栄養を摂取するだけではない。
調理の段階を経て徐々に食欲を高め、それが最大となったところで食する。なんと尊い行為であることか。
「さ、召し上がれ」
「かたじけない。アポカリプスヘルではこんなご馳走、まず食べられぬからな。よ~く味わうとしよう」
いただきます。
よそわれた牛鍋、箸を受け取り、ゼロは肉を口に運んだ。
「……美味い」
戦いで疲労した体、細胞の一つ一つに、様々な旨味が染み渡っていくようだ。
出来たてゆえ、熱い。その熱さが、いい。
「はふはふ……タビタビ殿もこちらで一緒に食わぬか?」
「え、いいのっ?」
ゼロに誘われ、羨まし気に眺めていたグリモア猟兵が、隣にちょこんと座った。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
ふむ、まあ被害者がどうこうってのはあたしが何か言うような事でもないし。
鍋を食べながら『遍照』の話をしようか。
とりあえず目的である姿を消した敵を見つける事に関しては十分機能してるね。
目立つっていう欠点は正面から戦っても勝てる超弩級戦力だとあまり問題ないけど、
そうでない人たちが使うなら複数人で同時に使って敵の注意を分散させるとかした方がよさそう。
ただ、隠れた味方も見つかるかもしれないから伏兵は使いにくいかもね。
あとは、人目を引くなら避難誘導とかにも使えそうかな。
敵が追いかけてきてもすぐに見つけられるから奇襲も受けにくくなるし。
……うん、本当にこの鍋美味しいね。
さて、あと他に報告は何があったかな……
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、鍛冶司の思いにはあえて触れず、ささやかな宴席に着いた。
被害者云々の件について、あれこれ触れるつもりはない。ただ、鍛冶司達が新装備開発にかける情熱、その動機の一端を垣間見たという事にとどめておく。
「出来立ては大変美味しいですよ」
若い青年鍛冶司が、ペトニアロトゥシカの分を椀によそってくれる。
「普段より奮発して、良いお肉です。猟兵さん達のために!」
「ごほんっ」
先輩格とおぼしき女性鍛冶司が、大げさに咳払いした。
鍛冶司が日頃いいものを食べていないように思われたらどうするのだ……そんな、言外の抗議が含まれているようだった。
「ん、美味しい」
舌鼓を打つペトニアロトゥシカ。実際肉質はよいものだし、鍛冶司ご自慢の割り下もいい味を出している。
「とりあえず」
話を聞きに集まった鍛冶司達に、語り始めるペトニアロトゥシカ。
「目的である姿を消した敵を見つける事に関しては十分機能してるね」
「ふむふむ」
「目立つ、っていう欠点は正面から戦っても勝てる超弩級戦力だとあまり問題ないけど、そうでない人たちが使うなら、作戦があった方がよさそう。複数人で同時に使って敵の注意を分散させるとか」
「確かに、猟兵以外の使用に関しては、運用方法をある程度マニュアル化することも必要か」
手帳、タイプライタァ。鍛冶司達が、各々の方法でペトニアロトゥシカの意見を書き留めていく。
「それと、隠れた味方も見つかるかもしれないから伏兵は使いにくいかもね」
それだけ『遍照』の効果がしっかり機能しているっていうことだけどね、ペトニアロトゥシカは、フォローも忘れない。
すると、鍛冶司とて人の子。褒められて伸びるタイプの者が多いらしい。難点の指摘と合わせて、自信につなげたようだ。
「あとは、人目を引くなら避難誘導とかにも使えそうかな。敵が追いかけてきてもすぐに見つけられるから奇襲も受けにくくなるし」
「それは盲点だ。完全に、相手へ攻撃を仕掛けることに重点を置いた装備だったからな……様々な可能性を提示してもらえて、ありがたいよ。というわけでお代わりを」
鍛冶司が一層ご機嫌で、ペトニアロトゥシカをもてなしにかかった。飲み物まで追加される。
「……うん、本当にこの鍋美味しいね」
一方の鍛冶司達も実証実験を行うことが出来て、winwinとは、こういう事を指すのだろう。
「さて、あと他に報告は何があったかな……」
「まだあるのならぜひ!」
ペトニアロトゥシカの発言を、目を輝かせて待つ鍛冶司達だった。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
チィ!みろ!
良い匂いがする。
「美味い」の匂い。
牛は分かるけど、この匂いは……馬か?
俺、まだ馬は食べた事ないんだよな。楽しみだ!
チィ、おすわりだ。
俺もおすわりだ。
いただきます!
んー!うまい!
チィ、落ち着け、取ってやるから。
肉だな!?肉だな!?
あ、でも葉っぱもちゃんと食べるんだぞ?
俺もほら、葉っぱ……ちゃんと食べるぞ……
俺は妖狐だからな?
ベルトの事か……
ベルトは強かった!弱い敵なら今のベルトでも大丈夫だ。
普通の人が寄ってくるのは、仕方ないとして。
強いボスクラスにはベルトだけじゃ勝てないかも……
日の精霊様をもっと集めて、アマテラスファイヤー出来る様になったら、きっと良くなる!
何よりカッコいいと思う。
ふんわり。
流れてきた湯気に、木常野・都月(
妖狐の精霊術士・f21384)とチィは、食欲をくすぐられていた。
「チィ! みろ! 良い匂いがする」
これは間違いなく、「美味い」の匂い。
都月とチィは、すんすんと鼻を鳴らして、美味いの正体を探る。
「牛は分かるけど、この匂いは……馬か? 俺、まだ馬は食べた事ないんだよな。楽しみだ!」
「期待してくれ。未知の味、心ゆくまで堪能してほしい」
鍛冶司達が、都月達のために、鍋をセッティングする。
慣れた手並みで、オリジナルレシピの出汁に、食材を投入、いい塩梅で煮ていく。
「さあ、食べごろだ」
「チィ、おすわりだ。俺もおすわりだ」
ぐつぐつ。鍋の前、2人は並んで席に着くと、用意された箸を手に取る。
「いただきます!」
ぱくり。
「んー! うまい!」
出来立てだ。熱い。
はふはふと、口の中を冷ましつつ、しかし旨味を逃さないように、頑張って味わう都月。
そんな都月の幸せそうな食べっぷりは、鍛冶司達を微笑ませた。
「別に料理の専門家ではないが……こうも皆に喜んでもらえると、料理人に転向するのもありかもしれん」
女性鍛冶司が真顔で言うと、周りの仲間達が笑い声をもらした。
一方、チィはそれどころではない。鍋に釘付けだ。今にも頭を突っ込みかねない。
「チィ、落ち着け、取ってやるから」
待て待てと、チィを抑える都月。
本当に鍋に突撃して、チィが美味しい匂いまみれになっては大変だ。
「肉だな!? 肉だな!? あ、でも葉っぱもちゃんと食べるんだぞ?」
じっ。チィが都月を見返す。
チィの言わんとする事がよくわかったので、都月は、ぐっ、と唇をかんだ。
「俺だってほら、葉っぱ……ちゃんと食べるぞ……俺は妖狐だからな?」
覚悟を決めて、野菜を口に入れてみせる都月。
それを見て、チィも観念したように、ぱくっ、と口をつける。
「そうだ。ベルトの事」
都月が、耳をぴんと立てた。
「ベルトは強かった! 弱い敵なら今のベルトでも大丈夫だ。普通の人が寄ってくるのは、仕方ないとして。けど、強いボスクラスにはベルトだけじゃ勝てないかも……」
「確かに……」
鍛冶司達も、その点は了解していたのだろう。だが、こう明確に告げられると、残念さを覚えるのは否めない。
「でも、日の精霊様をもっと集めて、アマテラスファイヤー出来る様になったら、きっと良くなる! 何よりカッコいいと思う」
「ふむ、かっこいい、か」
「そう! 大事だ!」
都月の力説に、鍛冶司達がうなずく横で。
チィは、マイペースに肉を食していたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
うわぁすっげぇ!
肉色々あるー
俺牛鍋がいいな
っていうか鍛冶司出汁ってどんな出汁?
特製っぽいのは分かるんだけど
牛鍋めっちゃ旨っ
米も進むわー
パクつきつつ
あっそうだ
『遍照』な!
すっげぇ良かった!
オンオフ使い分けると奇襲も出来るし
ただ…俺みたいな近接戦闘特化の奴には
使いやすかったしよかったけど
遠距離得意な人だとどうだろ?
敵がいるって分かって使うんならあんま関係ないんかな?
あとさーバックルだと
俺の場合普段の武器と干渉するから
他の形状も検討して貰えると嬉しいかも
ごそごそとドラゴンドライバー出し
首飾り…だと眩しいかもだけど
指輪とか腕輪とか他の装身具だとどうだろ?
そういや桜鍋って馬だっけ?
そっちも食ってもいい?
陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、瞳を『遍照』にしていた。
すなわち、陽光のように輝かせていた。
「うわぁすっげぇ! 肉色々あるー」
肉祭り。
試験運用、そして影朧退治の成功を祝して、鍛冶司達も奮発したらしい。
どの肉も美味しそうで、甲乙つけがたい。
「迷う……けど、俺牛鍋がいいな」
食材を追加し、ぐつぐつと煮立てる鍛冶司。今は鍋奉行だ。
「鍛冶司出汁ってどんな出汁? 特製っぽいのは分かるんだけど」
「……企業秘密だ」
すっ、と唇の前に人差し指を立てる鍛冶司。白衣でそう言われると説得力はある。
あるが、同時に、怪しくもあった。
理玖の懸念を、敏感に読み取ったのであろう。鍛冶司達が、主張する。
「違法なものや健康を害するものは入れてないから安心してくれ」
「違法とか……ま、鍛冶司達も食べてるもんなら大丈夫だろ」
ではいざ、実食の時。
「んっ、牛鍋めっちゃ旨っ」
これなら鍛冶司の自信満々ぶりにも納得がいく美味さだ。
「米も進むわー」
勢いよく、白飯をかきこむ理玖。肉が米の真価を発揮させているのか、それとも、米が肉のポテンシャルを引き出しているのか。
いずれにせよ、両者が口の中で、理玖の食欲を激しく掻き立てているのは事実だった。
「……ん?」
口の横に付いた米粒を取っていた理玖は、ふと気づく。鍛冶司達の視線に。
「あっそうだ、『遍照』な!」
理玖は、いったん箸を置き、
「すっげぇ良かった! オンオフ使い分けると奇襲も出来るし」
「なるほど。ならば切り替えに関してもよりスムーズにいくよう改良しよう」
「ただ……俺みたいな近接戦闘特化の奴には使いやすかったし良かったけど、遠距離得意な人だとどうだろ?」
確かに……と鍛冶司は、理玖の懸念を手帳などに書き留める。
「あーでも敵がいるって分かって使うんならあんま関係ないんかな?」
「いや、使用マニュアルに記載するべき事項かもしれない。貴重な意見だ」
続いて理玖は、ごそごそと、自らの使うドラゴンドライバーを出してみせた。
「あとさーバックルだと俺の場合普段の武器と干渉するから、他の形状も検討して貰えると嬉しいかも」
「そうした類の意見は、ほかの猟兵からも寄せられている。検討優先度は大だな……どんなものが良いだろうか?」
「たとえば、首飾り……だと眩しいかもだけど、指輪とか腕輪とか他の装身具だとどうだろ?」
「更なる小型化はちょうど進めていたところだ。検討してみよう」
「あ、そういや桜鍋って馬だっけ? そっちも食ってもいい?」
もちろん。
食欲を発揮する理玖の前に、新たな鍋が降臨したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
試用テストと対象の撃破ができてよかったですわ。
使用感としては隠蔽系の対象への効果は抜群でございました。
目立ってしまう対策としては指向性をもたせることでしょうか。
目盛りで照らす方向を絞るかわりにその分出力を上げるとか。
ある程度対象の位置を絞れてる状況とかなら毎回全方位を照らさずとも使用できるかと。
あと目隠し的に使った方もいるようですし近接武器に内蔵してはどうでしょう。
武器からエネルギーを放つようしてそれ自体に隠蔽解除を付与したり。
両手武器等を持って咄嗟にベルトが使えない方もいるかと。
お鍋は牛鍋をいただきます、んー、働いた後のお食事は最高ですわ。
リ○ルクラッシュもしたかったが素手キャラなので断念っ
帝都鍛冶司達と鍋に迎え入れられたイリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は、ささやかな宴席に着いた。
その表情は、役目を無事果たせた安堵と、誇りで彩られている。
「試用テストと対象の撃破ができてよかったですわ」
安堵しているのは、鍛冶司達も同じ。
「実践に勝る実験なし。改めて感謝する」
イリスフィーナは、少し居住まいをただすと、残りの務めを果たす。すなわち、『遍照』の実践報告だ。
なかなか使いこなせたと自負している。
もしも心残りがあるとすれば、『遍照』を利用した『とある必殺技』を繰り出せなかった事くらいであろうか。
リボ……もとい、手持ち武器でなく、素手を用いた戦闘スタイルであるがゆえに。
それはそれとして。
「使用感としては隠蔽系の対象への効果は抜群でございました。目立ってしまう対策としては指向性をもたせることでしょうか」
「現状では、使用者の周囲を無差別に照らしてしまうしな」
メモメモ。
鍛冶司達が、こぞってイリスフィーナの証言を記す。皆で記録に勤しむ様子は、なんだか微笑ましくもあった。
「対策としては、目盛りで照らす方向を絞るかわりにその分出力を上げるとか。ある程度対象の位置を絞れてる状況とかなら毎回全方位を照らさずとも使用できるかと」
「確かにその案ならば、エネルギーの消費も抑えられる。安定的かつ、長時間の運用にもつながるだろう」
あと、とイリスフィーナは、他の猟兵の戦闘記録を振り返る。
「目隠し的に使った方もいるようですし近接武器に内蔵してはどうでしょう」
「ふむふむ」
「武器からエネルギーを放つようにして、それ自体に隠蔽解除を付与したり。ベルト用だと、両手武器等を持って咄嗟に使えない方もいるかと」
「そうか。ユニットとして、武器に内蔵、あるいは後付けできるようにすれば、運用の幅も広がるに違いない」
貴重な意見ありがとう、と、礼を告げる鍛冶司達。
そしてイリスフィーナに問う。どの鍋がお好みかと。
「では、牛鍋をいただきますわ」
出汁……割り下は、牛用に微調整しているようだ。
そうして出来上がった鍛冶司特製牛鍋、そのご相伴に預かるイリスフィーナ。
「お肉もお出汁も美味しいですわね」
そこに加えて、任務の達成感が、最高の調味料。
「んー、働いた後のお食事は最高ですわ」
イリスフィーナも鍛冶司も、どちらも満足顔だった。
かくして、帝都鍛冶司の依頼は、無事果たされた。
今回の成果も、形となって猟兵の力となる日が来るかもしれない。来るべき騒乱に備えるために。
大成功
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