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灯る薔薇と雪の箱庭

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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●月夜に灯る
 冬の澄んだ空に、星々が輝く夜の空。
 欠けた月の蒼白い光が、暗い視界を柔く照らす。
 キミの目の前に広がるのは、薔薇の庭園。
 緑豊かな木々に守られるように囲まれた、美しい花園。

 けれどその花園の薔薇にはすべて『色』がなかった。
 美しく咲き誇る薔薇たちは無色透明な宝石の様に煌めき、月明かりを優しく映し出す。
 ――ひとつ、手に取ってみよう。
 そうしてキミが手折った薔薇を顔に近づけてみれば、ふわりと薫る花とは違う甘いお菓子のような香り。
 不思議と小首を傾げたのも束の間、手にした薔薇は光を灯すように色付き始める。
 花の中心からゆっくりと、柔く光が灯るように花びらを一枚ずつ染め上げて。
 無色透明だった薔薇はあっという間に深紅の赤い薔薇へとその色を変えた。
 赤い光が夜の闇にふわふわと灯るように、淡い輝きを放っている。

 ……そして、再度確認するように薔薇を顔に近づけれ見れば。
 やはりお菓子のような、砂糖のような、甘い香りがする?
『――ふふ、気に入ってくれた?』
 声に振り向けば、ふわりと輝く雪の結晶。いや、一人のフェアリーが声を掛けてきた。
『こっちにサプライズも用意してあるのよ、来て来て!』
 ひらりと冬を纏う水色の翅を震わせて、小さな少女が手招きする先。
 花園の奥へとキミは歩みを進める。

 ――気が付けば、空からは白い雪が舞い降りていた。

●薔薇と雪の箱庭
「……と云うわけで、今回はとあるフェアリーから猟兵宛に招待状が届いてね」
 集った面々にそう切り出した ノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)は穏やかな口調で説明を始める。

 フェアリーの名はネージュと言う。
 澄んだ青い瞳に、雪のように長く白い髪、透ける水色の翅を持つ冬の妖精のような少女だ。
 彼女自身がユーベルコード使いで、自ら作った自慢のフェアリーランドでぜひ猟兵達に遊んでもらいたいらしい。
 そのフェアリーランドの中は謂わば彼女の箱庭。
 彼女が得意とする雪の魔法や、それ以外にも様々な趣向を凝らしているのだとか。

「まず。フェアリーランドの中は常に夜で、その空気は冬の如く凍てついているらしい」
 寒さの苦手な者は確り防寒をしていくといいだろうとノヴァは言った。
 それと月の輝きが星の煌きを邪魔しない程度に柔く周囲を照らしてくれるので、視界に困る事は無さそうだ。
 そして訪れた者が最初に目に映すのは、月と星々の輝きが降り注ぐ美しい薔薇の庭園だ。
 丁寧に手入れされた低木には宝石のように煌めく薔薇の花々が咲き誇っている。
「……けれど、そのどれにも『色』は付いてなくて。無色透明なのだそうだ」
 ネージュ曰く、この薔薇は彼女が魔法で咲かせた特別な魔法の花。だから普通の薔薇とは色々と違う部分があるらしい。

 無色透明な薔薇は、或るきっかけでのみ、その身を染め上げる。
 それは摘み取られて誰かの手に渡った時、まるで命を灯したかのように淡く輝き色付くのだ。
 一度灯った輝きは暫く続く、少なくとも今宵一晩は光が失われることは無いだろう。
「もし、その輝きをずっと留めておきたいと思うならば……、ネージュがその手段も用意してくれているらしい。気に入った人は摘んだ薔薇を大切に持っていると良いだろうな」

 そしてこの薔薇のもう一つの特徴は、敏感な人は気付くかも知れない、甘い香り。
「普通の花の薫りとは違う。……例えるなら、砂糖菓子のような甘い香りみたいな」
 そんな魔法の薔薇は本物の砂糖のように甘く、なんと食べることも出来るのだとか。
 そのまま齧れば、繊細な飴細工を食べるかのような食感らしい。

 けれどネージュにはもっとオススメの楽しみ方が在るというのだ。
 それは、魔法の薔薇を浮かべて楽しむホットドリンク。
「要するに、薔薇の花を砂糖の代わりに浮かべて溶かす、と云う感じらしいな」
 ドリンクは紅茶、珈琲、ハーブティー、ココア、ミルク、などなど。
 一般的な温かい飲み物を取り揃えてある。
 魔法の薔薇はカップに浮かべるとホロホロと溶け、甘さだけを残し底に沈んでゆく。
 花に灯った光は最後の一片まで消えることなく淡く輝き、その様子を静かに眺める時間がネージュのお気に入りなのだとか。
「……俺もそのまま食べるよりは、此方の方が趣があって好きだけどね」
 ともあれ、楽しみ方は人それぞれだ。
 カップに浮かべる薔薇も、自分が摘んだものを使うのが惜しいのならば、ネージュが事前に摘んでくれていた色とりどりに灯る薔薇が用意されているらしいので、そちらを戴くのが良いだろう。

 そして皆が飲み物で温まった頃に、箱庭に雪が舞い始めるはずだ。
「雪はネージュが一番得意とする魔法らしくてね、冬の寒さと共に舞う雪の煌きも楽しんで欲しいって」

 特別な地域を除けば、もうすぐ雪解けの季節。
 そしてその先には、暖かな春が待っている。
「――この冬、最後に見る雪になるかもしれないな」
 そう零したノヴァは、面々を見つめて静かに微笑んだ。


朧月
 こんにちは、朧月です。
 A&Wにて薔薇と雪の箱庭、
 フェアリーランドへのご招待です。

 フェアリーランド内が常に夜なので、
 今回は現実世界の時間も夜時間に訪れることになります。
 リプレイは訪れた後の描写から始まるため出入りに関連したプレイングは非推奨です。

●1章:『残星の軌跡』(冒険)
 手に取ってはじめて色が灯る魔法の薔薇。
 どんな色に灯るかはプレイングにてご指定ください。
 複数本集めて花束にしてみたり、一本だけ選んでみたり。
 楽しみ方はご自由にどうぞ。

 【!】特殊な魔法の薔薇なので、摘むための道具や技術は不要です。
 棘も鋭くなく、素手で簡単に摘めます。そんな感じの解釈でOKです。

●2章:『雪降る日に』(日常)
 程無くして、箱庭に雪が舞い始めます。
 ちょうどその頃にはネージュがお茶会の用意をして待っているでしょう。
 温かな飲み物を手に庭園でほっこりした時間を過ごせます。

●溶ける薔薇のホットドリンク
 庭園で摘んだ魔法の薔薇を浮かべて楽しめるドリンクです。
 アルコール飲料の提供はありません。持ち込みも基本的に不可です。
 詳細は章開始時の断章にて追記いたします。

 ※何れもPOW/SPD/WIZは行動例ですので、自由な発想でどうぞ。
 ※2章のみ、案内人のノヴァも同行しております。
 お声掛け頂きプレイングに問題ない場合はご一緒させて頂きます。

●NPC『ネージュ』
 今回のフェアリーランドを作ったフェアリーです。
 口調や雰囲気はOPの通り。お持て成し準備に裏方で飛び回っております。
 皆さんに楽しんで貰うことで彼女も喜ぶので、お声掛けは基本的に不要です。

●進行・プレイング受付について
 マスターページ、シナリオタグでご案内します。
 お手数ですが都度ご確認いただきますようお願いします。

●共同プレイングについて
 同伴者はご自身含めて3名様まで、でお願いします。
 【相手のお名前(ID)】or【グループ名】をご明記ください。
 送信日は可能な限り揃えていただけると助かります。

●再送について
 ご参加人数によっては再送をお願いする場合があります。
 再送対応OKだよ、という方はプレイング冒頭に◎を記述してください。
 プレイングが戻ってきた際は同日24時までに再送をお願いいたします。

『プレイングボーナス(全章共通)……とにかく楽しむ!』

 以上です。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『残星の軌跡』

POW   :    周辺の散策を楽しむ

SPD   :    話に花を咲かせる

WIZ   :    光に祈りを捧ぐ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜鳥・藍
POW
防寒はしっかりしておきましょう。

色がないはずなのに空気もしくは雰囲気が賑やかというか華やかと申しますか……。フェアリーランドとはいえやっぱりこの薔薇たちは生きてるって事なのね。
少し歩いてみましょうか。
うっかり触れて色づいては申し訳ないから注意して。
冬の夜は寒いけれど星空が良く見えるから好きです。けれどこの庭園は地上にも空と変わらない輝きがあって、宙に浮かんでいるかのような錯覚を感じますね。甘い香りが無ければ現実味を感じられなかったかも。
一通り庭園を巡ったらわくわくしながら薔薇に手を伸ばしてみましょう。
そっと手折った薔薇は真夜中のような深い青色に。
小さな夜空が手の中に生まれたようだわ。



 深い青に、銀の星々が輝く夜空。
 思わず白い吐息が零れそうなほどに、凛と澄みきった空気が 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の頬を撫でた。

 この世界は創り出された箱庭、小さなフェアリーランドの筈だけれど、この身に感じる冬の空気はまるで本物のようで。
 花園に咲く、色なき魔法の薔薇たちも、月と星明かりの彩りを映し賑やかに華やいでる。

「……色がないはずなのに、不思議とこの薔薇たちは生き生きとしているのね」

 きっとこの魔法の薔薇も本物の花のように、花園の主が丹精込めて咲かせたものなのだろう。
 藍はふわりと、色なき薔薇の花園へ脚を踏み入れた。
 手に取れば色づいてしまうと聞いたから、うっかり花に触れてしまわないように気を付けながら。

 美しく咲き誇る薔薇たちは宝石の様に煌めいて、澄んだ冬の夜空の輝きを映し込む。
 ――そうか、だから。
 不思議と落ち着くのは、この庭園にも空と変わらない輝きが灯っているから。
 藍はまるで宙に浮かぶような錯覚を覚え、ふぅわりと漂う甘い香りだけが、薔薇の花の存在に気付かせてくれるようでもあった。

 一頻り庭園を巡り、藍はふと目に留まった煌きに近付いてみる。
 透明に輝く薔薇たちの中でも、その一輪がいっとう輝いて見えたから――。
 そしてこの魔法の薔薇がどんな色に灯るかは、手に取って見るまでわからない。
 藍は密かに心躍らせながら、手を伸ばした薔薇をひとつ、手折ってみる。

 すると藍の手のひらに包まれた薔薇は、真夜中のような深い青色に染まる。
 まるで小さな夜空が手の中に生まれたように、その青は藍が宿す藍晶石の輝きにも似て。

「……綺麗ね、とても」
 ぽつりと零された言の葉と共に。
 藍は大切そうに、星空灯る薔薇の花をそっと両手で包み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
夫の律(f38364)と参加

この世界のフェアリーランドはいつもワクワクするねえ。お招きに応じて律と来させて貰ったよ。律に可憐な薔薇を見させてあげたくてね。

ネージュ、お招きありがとう。月と星の輝きが見守る薔薇園・・・見ただけで凄いと分かるよ。この薔薇、摘み取っていいのかい。

手に取ると薔薇は赤になる。情熱の赤。まさにアタシをそのまま映している。なんかフローラルな香りがするが、そうか、これが魔法の薔薇なんだね。

律のはオレンジの薔薇か。オレンジは信頼とか絆とか表してるらしい。まるでアタシ達家族を表してるね。オレンジの色の影響か、柑橘系の香りがするような。

後のお楽しみに薔薇を大事にしまい込むよ。


真宮・律
妻の響(f00434)と参加

いまいちフェアリーランドには馴染みがないが、見ただけで夢のような世界だって分かるな。月と星の光が降り注ぐ薔薇の庭園・・・まさに楽園だ。

薔薇を摘み取っていいのか。なら一輪だけ摘み取るか。オレンジに色が変わった。鮮やかな色だな。信頼、絆か。まさに俺達家族を表してる色だ。

響は赤が似合う。赤の薔薇を持ってると輝いて見えるぞ。

この薔薇、取っておくと後で楽しい事があるんだな。散らさないように大事にしまっておこう。



「ふふ。この世界のフェアリーランドは、いつもワクワクするねえ」
 月と星の輝く夜空の下、広がる薔薇の庭園を前に愉しげに微笑む 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、くるりと振り返って共に訪れた夫を見上げた。
「律は、フェアリーランドに入るのは初めてだったっけ?」
「……ん、そうだな。確かにあまり馴染みはない場所かもしれない」
 けれど一目見れば夢のような世界だと感じると、
 真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)は頷き返しながら、改めて周囲の光景を珍しそうに見渡した。

 ――フェアリーランド、夢が詰まった箱庭の世界。
 月と星の光が降り注ぐ薔薇の庭園は、まさに楽園そのものといった処だろう。

「律に可憐な薔薇を見させてあげたくてね、気に入ってくれたなら良かった」
 響は嬉しそうに笑い返しながら、ふと視線が小さな輝きを捉える。
「おや、噂をすれば箱庭の主のフェアリーだね。ネージュ、お招きありがとう」
 ひらりと響が手を振って見せれば、雪のように輝く妖精ネージュは嬉しげに微笑み返しながら、ぱたぱたと忙しそうに翅を煌めかせて飛んで行った。

 響と律、ふたりは緩りと庭園を巡りながら。――そういえば、と。何方かともなく話を切り出して。
「この薔薇、摘み取ってもいいのだっけ」
 話によれば、摘み取った者によって無色透明な薔薇は鮮やかな色を付けるのだという。
「なら、一輪だけ摘み取るか」
 そうだね、と愉しそうに響は薔薇を一輪手に取って、律も傍らで妻の様子を見守りながら、自身も一輪手に取ってみる。すると……。

「――律、見て。アタシのは赤色に染まったよ」
 響が片手に収めた魔法の薔薇を見せれば、真っ赤な情熱の赤色が色付き輝いていた。
 赤く燃える、炎のような色合いは、まさに響自身を映しているようでもあって。
 そしてふわりと、薔薇の華やぐ香りも芳しい。
「響は赤が似合うな、赤い薔薇を持ってると輝いて見えるぞ」
 そうかな?と赤い薔薇を手に微笑む響の姿は、律には確かに輝いて見えた。
「……俺のは、オレンジ色に変わったみたいだな」
 不思議と本物のオレンジのような香りを纏う薔薇は、太陽のように鮮やかに輝いて。
 ――たしか、と。
 オレンジの薔薇は信頼や絆を表すらしいと響が思い出せば、まるで自分達の家族を映しているようだと、嬉しそうに互いの表情も綻ぶ。

「――後の楽しみ、もあるんだったな。この薔薇は大事に持っておこう」
 響も頷き返しながら、ふたりはもう一度手のひらに灯る鮮やかな薔薇の輝きを見つめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
【狐扇】

無色透明って不思議ですね
薔薇といえば色鮮やかで華やかですから尚更です

月明かりに照らされた薔薇は聞いていた通り透明で、きらきらと輝いてまるで硝子細工みたい
不思議、と眺めているとほんのり色づき始めたことに気がついて
ますます不思議、とすっかり目を奪われてしまう

若紫色と常磐色の二輪の薔薇に思わず笑みがこぼれる
私の大切な人、語さんとかたりさんの色
月明かりに照らされた透明な薔薇は綺麗だったけれど

この薔薇はもっと綺麗

ふわりと香る甘い香りに
そういえば飴細工のように甘いのでしたっけ、と思い出す
気になるけれどこれは持ち帰って宝物に

でも、やっぱり味が気になって
も、もう一本頂いてもいいでしょうか(そわそわ)?


落浜・語
【狐扇】
本当不思議だな。勿論ガラス細工のを見たことはあるけど、またなんというか違う感じがして綺麗だ。

何をしたわけでもないのに色が変わっていくのを眺めて。色んな色に変わっていくんだな…。綺麗だしなんだか面白い。

白い薔薇と、青い薔薇を見つけて思わず口元が緩む。
青い薔薇の花言葉、昔は『不可能』だったのが、今は『夢叶う』『奇跡』になったんだっけ。
この光景もある意味、奇跡みたいにも見えるな。

その2つ以外にも、別のを一つ積んでみて。
甘いって言われると、食べてみたくなるものだしな?



「……無色透明なお花って、不思議ですね」
 薔薇の花と云えば、鮮やかで華やかなものとばかりだと思っていたからと、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は透き通る魔法の薔薇を眺めつつ、そう言葉を零す。
 夜空から優しく射し込む月明かりに照らされて、透明な薔薇はきらきらと硝子細工のように輝いていた。
「――本当、不思議だな」
 本物のガラス細工は勿論見たことがあるけれど、その煌めきともまた違うと、落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)は狐珀の傍らで同じ様に無色透明に輝く魔法の薔薇を備に見つめた。
 硝子細工は凛とした冷たい美しさが感じられる、けれどこの薔薇は見た目は似ているが、緩く靡く風に揺れる様は、柔く瑞々しく咲く薔薇の花の息吹も感じられる事が出来て。

 そうして二人並び、それぞれが薔薇に手を伸ばしてみれば、ふわりとランプの明かりが灯るように透明な薔薇が色付き始める。
 その様子にすっかり目を奪われて居た狐珀の手元には、やがて若紫色と常磐色の二輪の薔薇が灯った。
「――わ、見てください」
 狐珀が嬉しげに小さな声を弾ませる。
 両手にそっと収めた二輪の薔薇は、傍らに居る大切なふたりを表した色のようで。
 月明かりに照らされた透明な薔薇も美しかったけれど、この色は特別輝いて見える気がした。
 思わず狐珀の頬が緩み、笑みがこぼれる。
「うん、俺の方も」
 狐珀の笑顔に柔く頷き返しながら、語も同じ様に色付いた自身の手のひらの薔薇を見せる。
 それは、白い薔薇と青い薔薇。
 その色を見て、語は思わず口元をそっと緩ませる。
(「……確か、青い薔薇の花言葉。昔は『不可能』だったのが、今は『夢叶う』『奇跡』になったんだっけ」)
 それは青色の色素を持たない薔薇が青く存在することは、自然界では起こり得なかったからだ。
 勿論、ここに咲く薔薇たちは魔法で咲いた花では在るけれど。
 この幻想的な光景もある意味、奇跡なのかもしれない、なんて思いながら。

 互いに色付き灯った魔法の薔薇を見せ合って、ふと気付くと芳しい甘い香り。
「そういえばこの薔薇……、食べると飴細工のように甘いのでしたっけ」
 狐珀は自分で摘んだ二色の薔薇を改めて見つめ直し、ふるふると首を横に振った。
 食べられると云われれば、その味も気になってしまうもので。けれど、この二色の薔薇は持ち帰って宝物にしたくもあった。

「やっぱりその。味も、気になるので…。も、もう一本頂いてもいいでしょうか?」
「――そうだな。甘いって言われると、何だか食べてみたくなるものだしな?」
 そわそわする狐珀の様子を見て、語も同じことを考えていたと、それぞれもう一本ずつ薔薇を摘んでみる。

 小振りに花咲かせた二本の薔薇は、さて。どんな色に染まったのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミラ・ホワイト

小さな雪の精に招かれて
冴ゆ澄む冬夜の箱庭へ

わたしだって冬の子ですもの
寒さにはめっぽう強いわ、なんて
白む吐息に微笑み交ぜたなら
燦きの薔薇園へ向く足取は軽やかに

色のない透明な花も宝石のようで
ずうと眺めていたいくらいだけれど
手に取ることで彩を得るのなら
わたしの元で灯る光は何色かしらと
好奇溢れる胸の高鳴りも相まって
触れずにはいられません

そつと優しく手折る一輪
息衝くように灯り、花弁を染めゆくのは
――柔らかな月の光を溶かしたような金色
決して眩くはない、淡くあえかで
けれど優しく安らぎに満ちていて
不思議とわたしの心も染まるよう
胸の裡にぬくもりを感じるの

甘やかな馨も満喫したら
ね、とっておきを教えてくださいな



 星燦めく夜色に、白い吐息が溶けてゆく。
 風冴ゆる冬の大気はあざやかに澄みきって、透き通る世界をより鮮明に映しだした。

 小さな雪の妖精に招かれて訪れた、冬夜の箱庭。
 箱庭の凍てつく空気は本物の冬そのもので、ミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)は思わず両の手を、ふぅと白い吐息で温めた。
 ――けれど、わたしだって冬の子ですもの。
 華やかなリボンに、咲く一輪のポインセチアがその証。
 ……だから寒さにはめっぽう強いわ、なんて。
 きゅっと温めた手を握り直して、心と足取りは軽やかに、魔法の薔薇たちが燦めく庭園へと。

 無色透明な薔薇たちは夜風に優しく揺れながら、庭園を訪れる客人達を静かに待っていた。
 澄んだ透明の薔薇は宝石のように光り輝いて、淡い月と星明かりを花園に降らせている。
 どれも同じ透明な色だと思っていたけれど、空の輝きを映す様は見る度に違う万華鏡のようでもあって。
 このまま、ずうと眺めていたい。でも、自分の手元で染まる鮮やかな薔薇も見てみたいもの。

 ――わたしの元で灯る光は、何色かしら?
 ミラは胸の高鳴りを感じつつ、目に留まった一輪をそっと手折ってみる。
 小さな手のひらに乗せた薔薇は、息衝くように光を灯し、花弁を一枚一枚、色鮮やかに染めていった。

 その色は、柔らかな月の光を溶かしたような金色。
 ふわりと灯る輝きは決して眩いものではないけれど、淡く、優しく、安らぎに満ちる色。
 不思議とミラの心にも同じ色が静かに灯った気がして。胸の裡に広がる優しいぬくもりを感じながら、大切そうに、そっと両の手で薔薇を包み込んだ。

 ――そういえば。
 ふわりと芳しい香りに気付き、思わずミラは小さな笑みを零す。
 まるで心を解すような、甘いあまいお砂糖の香り。
 飴細工のように艷やかに輝く花は、そのまま食べてしまえるお菓子のようでもあるけれど。
「とっておき、があるのでしたね」

 小さな雪の妖精、箱庭の主のもてなしを愉しみに――。
 もう暫し、月星燦めく庭園を満喫しようか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィ・ルージュブランシュ

ラナ(f06644)と
わあ、ふふ、水晶みたいな綺麗な薔薇!
ラヴィは寒いのはへいちゃらだけど、ラナは大丈夫かしら?

みんな背筋をぴんと伸ばして楽しそうに咲いているのね
色づく時を心待ちにしているみたいだわ
ラヴィもお花だもの
魔法で出来たお花とは直接お話は出来ないみたいだけど
気持ちはわかるつもりだわ!

手に取ったお花
ラヴィだったらやっぱり赤に染まるのかしら、と思ったら――
深いブラウンに変わっていったわ
甘い香りに、コクのある茶色
なんだかチョコレートみたい!

ねえねえ、ラナのお花はどんな?
わあ、とっても可愛いピンク!
そうね、ミルクも苺もどっちのチョコも好きよ
…ふふ、なんだかおなかが減ってきちゃったわね?


ラナ・スピラエア

ラヴィさん(f35723)と

すごい、氷で出来ているみたい
ふふ、もこもこで準備はばっちりです!

煌めく姿に見惚れながら
お花の気持ち、考えたこと無いかもです
ラヴィさんと一緒だと、新しい視点を教えて貰えて嬉しいです
折角だからお喋り出来たら良かったんですけど…
皆、色付く為に誰かの温もりを待っているんでしょうか

触れてみれば冷たくは無くて
そっと優しく包み込めば私らしい淡いピンク色

ラヴィさんのは…とても綺麗ですね
ふふ、漂う甘い香りも相まって本当のチョコレートみたい
…こうして並べてみると
ミルクチョコと苺チョコみたいに見えませんか?

食いしん坊だったかな、と思った時
ラヴィさんも同じ気持ちが嬉しくて
小さな声で笑った



 冬の澄んだ夜、月星の光を映す魔法の薔薇はあえかに煌めいて。
 ゆらゆらと愉しげに揺れながら、その身を鮮やかに染めてくれる誰かを待っている。

「――わあ、ふふ、水晶みたいに綺麗な薔薇!」
「本当ですね。すごい……、宝石のようでもあるし、氷で出来ているようにも見えます」

 キラキラと赤い薔薇色の瞳を輝かせ、ラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)は愉しげに声と身体を弾ませて、その隣で ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)も透明に輝く魔法の薔薇を興味深そうに覗き込んでいた。
 ――そんなふたりの傍を、凍てついた冬風が幽かに吹き抜ける。
 空は今にも雪が降ってきてそうな程に、この箱庭の景色は本物の冬そのものだ。

「……ラヴィは寒いのはへいちゃらだけど、ラナは大丈夫かしら?」
 友人の彼女を気遣うラヴィに、ラナは冷えた頬を薄ら紅く染めつつ、白い吐息を零す。
「ふふ、大丈夫ですよ。もこもこで準備はばっちりです!」
 白いもこもこファーコートに身を包み、両の手の拳を控えめにきゅっと握りつつ、明るく微笑むラナを見て。――それならよかった!とラヴィも無垢な笑顔を返した。

「それにしても、みんな背筋をぴんと伸ばして、楽しそうに咲いているのね」
 まるで色付く時を心待ちにしているみたい、と庭園に咲く薔薇たちに語りかけるようなラヴィの様子に、ラナは瞳を瞬かせて。
「ラヴィさん、お花の気持ちが分かるのです?」
「そうね、だってラヴィもお花だもの」
 魔法で出来たお花とは、直接お話は出来ないみたいだけど、と。
 ラヴィはこてりと小首を傾げながら、語るも聲は返らない魔法の薔薇をじっと見つめ直した。
「お花の気持ち……、考えたこと無いかもです」
 いつも鮮やかな色を魅せてくれる花々も、野に咲く植物たちも、等しく生きている事に変わりは無いけれど。心や気持ちが通じる世界は、ラナにとっては未知なる世界で。
「折角だから、私もお喋り出来たら良かったんですけど……」
 そうしてラナが透明に燦めく魔法の薔薇にそっと手を翳せば、応えるように花の輝きが増した気がした。
「――皆、色付く為に誰かの温もりを待っているんでしょうか?」
「ふふ、きっとそうね!ラヴィもそんな気がするのよ」

 そうしてラヴィが先に魔法の薔薇を一輪、手に取ってみる。
 自分ならば、やはり赤い薔薇に染まるのかしら?と、
 わくわくと色の変化を見守れば、灯る彩は深いブラウンに映り変わってゆく。
 深みのあるまろやかな色合いに砂糖菓子のような甘い香り、艶めく薔薇はまさにチョコレートのようで。
「なんだか本物のチョコレートみたい!」
 思い掛けない色だったけれど、美味しそうなチョコ色に思わず声色も弾み。

 ラナのお花はどんな?と隣を見れば、淡いピンク色の薔薇がラナの手のひらに灯っていた。
 そっと手の中に包まれた薔薇は彼女らしい、優しい色に輝いて。
「わあ、とっても可愛いピンク!ラナっぽい気がするわ」
「……そうですか?ラヴィさんのも、とても綺麗ですよ」
 互いに色が灯った薔薇を見せ合えば、ラナの苺色の瞳がぱちりと瞬いた。

「……こうして並べてみると、ミルクチョコと苺チョコみたいに見えませんか?」

 艶めく花弁に、甘い香りがそう錯覚させるのか。
 実際に食べれるとも聞いたけれど、少し食いしん坊だったかな?、とラナが思った時――、
「そうね、ミルクも苺もどっちのチョコも好きよ!」
 ラヴィの快活な声が返った。
 友人が自分と同じ気持ちだったのがちょっぴり嬉しくて、ほわりとラナの心に温もりが灯る。

「――なんだか、おなかが減ってきちゃったわね?」
 眉を下げて咲うラヴィに、ラナは頷きながら、くすりと小さく笑みを零した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
【心彩】

真冬の装いにて妖精の国へと
冬季のふくら雀のように
あなたは、暖かく着込んでいるかしら

重ね着をした甲斐があったわね
真冬の夜は、身を刺すような寒さだけれど
凍えずに過ごすことが出来そう

夜の景色を刷く妖精の世界
わたしたちが住まう夜には無い美しさを
月と星の耀きが注ぐ庭園へと往きましょう

なんて見事な景色なのかしら
光を抱擁する花々から目が離せない
わたしたちの手で染まる花の色は
如何なる彩りを魅せるのでしょう

摘み上げたのは薔薇一輪
そっと手にして、じわりと彩が滲む
紅へ、紫へ、橙へ
明けと暮れを繰り返す流転の彩
まるで、いのちが宿ったかのよう

ルーシーさんのお花は如何かしら
――まあ、ステキ。とても綺麗だわ
弾けるような黄と橙、底を満たす青
あなただけが持つ、ふたいろの色彩ね

何方の彩りも、なんと愛おしい
わたしと、あなたの歩みのかたちだわ

美しさを堪能したのならば
魔法の薔薇の飲み物をいただきましょうか

紅茶へとひと片を浮かせ
ほろほろと解けてゆく様を見送る

ひと口を含めば笑みが溢れる
――嗚呼、とても美味しい
身も心も温まるよう


ルーシー・ブルーベル
【心彩】

もこもこのコートに
もこもこマフラーをぐるり
真冬のスズメさんみたいになっちゃった
ルーシーは準備ばっちり!
なゆさんも暖かそうね

もこもこのお陰で寒さも平気
ここもずうっと夜なのね
ついあの館が在る世界を思い出すけれど
折角ネージュさんのお招きだもの
庭園をうんと楽しまなくっちゃ

わああ…!すごいわ
何てうつくしいの!
玻璃色の花々は月光を弾いて煌めいて
風で揺れる様子は溜息がでてしまうわね
わたし達の手で…ふふ、楽しみだわ!

なゆさんのバラ…キレイね
広大な空が移ろう、ほんの一瞬を留めたみたい
本当に生命が宿っているのかも?
わたし達のこれまでの彩を
歩みを吸い上げて、とか!

ルーシーはどの花にしよう
ふと目に留まった小さな一輪
これにする
外側から橙、黄色のグラデーション
中心、僅かに滲む底なしの青
見て、なゆさん
これがルーシーのお花!
ええ
お互い、唯一の彩ね

魔法のバラの飲物、
ルーシーも気になっていたの!
ハーブティーもステキね
ルーシーはあおい花茶にバラを浮かべましょう

共にカップを傾けて、ひと口
――おいしい
今日何度目かの溜息を



 ――真冬の夜。月と星が燦めく、妖精の箱庭へ。
 夜闇の世界に舞い降りれば、冴えた空気が肌を撫でる。
 その寒さに、頬を紅く染めてしまうけれど、暖かく着込んだ身体と心はぽかぽかと温かくて。

 もこもこのコートに、もこもこのマフラーをぐるり。
 ふわふわ羽毛に包まれた装いで、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は、ほわりと白い吐息を零す。
「真冬のスズメさんみたいになっちゃった、ルーシーは準備ばっちり! なゆさんも暖かそうね?」
「ふふ、そうね。重ね着をした甲斐があったわ」
 冬にふっくら丸くなる、ふくら雀のように愛らしいルーシーの様子に、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は柔く目を細めて微笑んだ。

 ふたりの視界に広がるのは、闇に淡く輝き浮かぶ夜の庭園。
 夜の景色を刷いた、妖精の世界。
 この箱庭は、常に月と星が輝く夜に包まれている。
「――ここも、ずうっと夜なのね」
 ルーシーは空に浮かぶ、欠けた月明かりをふと見上げた。

 ――明けぬ夜の世界。
 そう聴けば、ついあの館が在る常夜の世界が過ってしまうけれど。
 この小さな箱庭は、ひとりの妖精が創ってくれた、きっと夢と輝きに満ち溢れた世界なのだ。
 ルーシーは曇らせかけた表情にふるりと首を横に振り、小さく頷いて。
「……折角ネージュさんのお招きだもの、庭園をうんと楽しまなくっちゃ」
 ルーシーの零した言葉に、七結は察したように金環の宿る瞳をそっと細めた。
「わたしたちが住まう夜には、無い美しさね」
 ――さあ、月と星の耀きが注ぐ庭園へと往きましょうか。

 月明かりに照らされた庭園では、硝子細工の様に燦めく魔法の薔薇がふたりの到着を歓迎するように、風に靡き優しく揺らめいていた。
「わああ……!すごいわ、何てうつくしいの!」
「本当ね、なんて見事な景色なのかしら」
 月星の光を抱擁する花々の淡い色彩はまるで万華鏡のように、玻璃色に映りゆく夜空の彩を弾き、煌めいて。その輝きに思わず魅入ってしまう程に。
 けれどこの薔薇たちは、触れた者の色彩に、また染まるのだという。
 自分達が触れた薔薇は如何なる彩りを魅せるのだろうか。

「わたし達の手で、バラが別の色に染まるのね。ふふ、楽しみだわ!」
「そうね、どんな色に染まるかしら」

 そうして互いに、目に留まる一輪へそっと手を伸ばしてみる。

 七結がそっと掌に収めた薔薇は、じわりと彩を灯すように、少しずつ色付いてゆく。
 ――紅へ、紫へ、橙へ。
 その色彩は、明けと暮れを繰り返す流転のように。
 傍らで色付く様子を見ていたルーシーも、わぁと小さな声を零す。
「なゆさんのバラ……とてもキレイね」
 広大な空が移ろう、僅かな一瞬を留めたように。
「ええ……、まるで、いのちが宿ったかのよう」
「本当に生命が宿っているのかも……? わたし達のこれまでの彩を歩みを吸い上げて、とか!」
 ふたりは視線を合わせると、同時にふくふくと小さく咲って。

「ルーシーさんのお花は如何かしら……?――まあ、ステキ」
「うん、見て、なゆさん。これがルーシーのお花!」
 嬉しげに見せるルーシーの小さな手には、彼女の手に似合う小さな薔薇の花が一輪。
 その色彩は、花弁を橙から黄色へ染め上げて、花の中央には僅かに滲む底なしの青色が揺らめいていた。
 弾けるような黄と橙、そして底を満たす青。

 ――あなただけが持つ、ふたいろの色彩ね。
 ――ええ。なゆさんのも。お互い、唯一の彩ね。

 何方の彩りも、互いが宿り、示す、特別ないろ。
 それぞれの歩みのかたちを表した魔法の薔薇を手に、七結とルーシーは花咲くように微笑んだ。

 ふと夜空を見上げれば、先程よりもいっそう、澄んだ冬の空気を感じる。
 其れは今にも天から白い雪が舞い降りそうな錯覚を覚えるほどに。
 静かに灯る薔薇の花を掬う指先にも、じわりと冷たい空気が滲みるようで。

 ――何だか、温かい飲み物が飲みたくなってきたわね?

 白い吐息を零しながら、何方かがとも無く、そう呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『雪降る日に』

POW   :    雪に触れる

SPD   :    雪を楽しむ

WIZ   :    雪を眺める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 色無き薔薇の庭園に、幾つもの鮮やかな彩が灯る。
 ふたつと同じ色のない魔法の薔薇は、触れた者の手の中で静かに光り耀いて。

 そんな庭園の様子に、妖精のネージュも嬉しそうな笑顔を浮かべた。
 愉しげな客人達の様子も気になるけれど、自分は次のおもてなしの準備もしなければと、冬色の翅をぱたぱたと煌めかせて。

 * * *

『――猟兵のみなさん、庭園のひと時は楽しんでもらえているかしら?』

 ネージュは庭園の中央に在る、白いガゼボにの下に猟兵達を呼んだ。
 集った各々の手に灯る魔法の薔薇を見て、ネージュは嬉しげにうんうんと頷いて。

『薔薇の花も気に入ってくれたなら、なにより!
 ……あ、でもね。薔薇を持ち帰りたいって人が居たら、そのまま箱庭の外に持ち出さないでね。
 ――溶けて、消えちゃうから』

 ネージュの話によれば――。
 この魔法の薔薇は、熱と光にとても弱いのだという。
 だからこそ、この箱庭はこんなにも寒くて、太陽の昇らない常夜の世界なのだ。
 そう語りながら、ネージュはテーブルの上に白い小さな箱をひとつ、トンと置いた。
 箱の大きさはちょうど薔薇の花が一輪収まるサイズで、蓋を開けた内側は夜色に染まっている。
『この箱に入れて持ち出してあげれば、薔薇が溶けてしまう事はないから、安心してね』
 魔法の掛けられた小箱で耀く薔薇の灯りは、きっと、ずっと消えることは無いだろうと。

『それとね。そろそろ温まりたい人も居るんじゃないかなって、飲み物を用意してみたの』
 テーブルの上に用意された幾つかの白い魔法のポットと白いマグカップ。
 ネージュが、えいっとポットへ魔法を掛ければ、ふわりと浮いたポットからマグカップへと、温かい飲み物が均等に注がれてゆく。
『名前は……魔法のポットくん! って、そのまんまなんだけどね。ポットくんに頼めば、いろいろな飲み物を注いでくれるの。珍しいのは、難しいかもしれないけれど……!』
 これもネージュの魔法の一部なのだろう。彼女が知る、想像出来る飲み物に限られそうだ。
 紅茶、珈琲、ハーブティー、ココア、ミルク、……などなど。
 ネージュが指折り数えて例にあげつつ、それ以外でも気軽に頼んでね、とあどけない笑顔を見せた。

『――そうそう、ココからがわたしのとっておきの楽しみ方なんだけど、』
 ネージュは温かい紅茶を注いだマグカップを一度テーブルに置き、白く耀く魔法の薔薇を一輪、手に取った。
 小さな薔薇はちょうどマグカップにも収まる大きさで、そっと水面に浮かべれば、白い輝きはそのままに、ホロホロと溶けるように底に沈んでゆく。
『この薔薇はね、実は食べられるのよ。甘い香りに気付いていた人もいるかもしれないけれど、味もお砂糖のように甘いの』
 そしてさっき話したように、熱に弱いから温かい飲み物に浮かべるとこんな風に溶けてしまう。
 甘さは一輪を全て溶かしてしまっても、甘すぎないくらいで。
 逆に甘いのが苦手な人は、花弁を一片浮かべてみるだけでもきっと愉しいだろう。

『自分で摘んだ薔薇で試してみてもいいけれど、薔薇を持ち帰りたいと思っている人は、わたしが摘んでおいた分があるから大丈夫』
 ポットやカップと共に並べられたバスケットには、ふんわりと収められた色鮮やかな魔法の薔薇が灯っている。そちらから選んでみるもよし、敢えて薔薇は浮かべずに飲み物で温まるのもよし。
 楽しみ方は人それぞれだろう。自由に過ごして欲しいと、ネージュは改めて皆に伝えた。

『――さて、わたしは最後のひと仕事が待っているんだったわ』
 ネージュは冬色の翅を煌めかせ、冬の空へと舞い上がる。
『みんなはどうぞ、ゆっくりしていてね!』

 小さな妖精を追って空を見上げれば、凛と冷えた空気が、いっそう澄みきった気がして。
 ―――雪。
 誰からともなく、そんな小さな呟きが、白い吐息と共に零された。
 
 
 
 
夜鳥・藍
WIZ
薔薇をどうしようかしら。
持ち帰りたい気持ちはもちろんあるけど、箱の中に納めたままでいるよりはという気持ちもあるの。
そうね、飲み物にとかしてしまいましょうか。
そうなるとこの夜空を浮かべるのに適したのは何かしら?

魔法のポットくんさん(?)にお願いするのは青色が美しいバタフライピーのハーブティー。
鮮やかな色とは違いシンプルな味わいのハーブティーですが、星空を宿したこの薔薇を浮かべるにはこれしかない気がいたします。
夜空と言うには鮮やかな青色に浮かべる夜空はゆるりととけていって。夕焼けを跨がず色を変えた空のような。
その甘い香りとそれでもあっさりとした味。空や宙はこんな味わいなのかもと思えるような。



 真夜中のような深い青色に灯った薔薇を手に、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は思索に耽っていた。
 自らの光を灯した薔薇をこのまま持ち帰りたい気持ちは勿論あるけれど、箱の中に閉じ込めて置くのも、少し忍びない気がして。
(「――そうね、今回は、」)
 藍の視線は小箱から温かな湯気が上るポットへと移された。
 この夜空を浮かべるのに適した飲み物は、何が良いだろうか?

 ふわふわと浮かぶ白い魔法のポットは、客人のリクエストを待つように、楽しげに踊り宙を舞っていて。
「……ええと、魔法のポットくん、さん? バタフライピーのハーブティーはお願いできますか?」
 藍のリクエストを聞いて、お安い御用とポットは跳ねるように蓋を鳴らす。
 ふわりと引き寄せられた白いマグカップに、白い湯気を纏った鮮やかな青が注がれて。
 ――ありがとう、と礼を述べて藍がカップを手に取れば、魔法のポットも嬉しそうにくるりと回ってみせた。

 温かなマグカップが、じわりと藍の冷えた指先を温める。
 白いカップの中に揺らめくのは、鮮やかな青。
 星空を宿した魔法の薔薇を浮かべるなら、これしか無いと藍は思って。
 そうっと、薔薇の花をカップの水面へと落としてみた。

 ゆらゆら、ゆらり。
 夜空と言うには鮮やかな青色に、深い夜の薔薇は静かに溶けてゆく。
 夕焼けを跨がず色を変えた空のような、夜に瞬く星空が幽かに光灯るように。
 そうして耀く青をひと口含めば、思考を擽る甘い香りと、あっさりとしたハーブティーの味わいが絶妙で。
 空や宙に味があるのなら、甘くも爽やかでもない、こんな味わいなのかもと。

 ――カップを手に。藍は密かに、静かに花笑んで。
 ゆったりとした夜色時間を堪能していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィ・ルージュブランシュ

ラナ(f06644)と

ふふ、魔法って何度聞いてもわくわくする響きよね!
ラヴィは…どうしよう
薔薇の甘さを堪能できるように紅茶にしようかしら

雪みたいなカップの中にあったかい琥珀色
そこにほろほろ溶けてく不思議な薔薇…
色は全然違うけれど、なんだか雪みたい

寂しい…そうね
でもくるくる混ぜて飲むと
あたたかい甘さが口いっぱいに広がって
一気に幸せな気分になっちゃう!
寂しくないように、溶けた子を全部お腹にお迎えしなきゃ

あら!ラナこそいつも以上に可愛いわよ
雪ってきらきら輝いていて
人を素敵にみせてくれる魔法がかかっているのかもしれないわね

ラヴィもココアが飲みたくなってきちゃった!
甘いものはどれだけあっても好いものね


ラナ・スピラエア

ラヴィさん(f35723)と

これも魔法なんですね!
魔法が好きなのでつい興奮気味に
ラヴィさんは何にしますか?
お揃いも良いけど…今日はホットミルク

真っ白なカップで揺れる白が綺麗で
先程色付かせたピンクの花を浮かべる

ほろっと溶けるのは綺麗だけど
どこか寂しい気もしますね
匙でかき混ぜて
口にすれば優しい甘さが美味しい
確かに、幸せな気分です

雪降る中での白に満ちたお茶会は神秘的で
ラヴィさんのお姿が映えますね
お言葉に少し驚きながら
ラヴィさんの考えがとても素敵で
確かに世界も、人もキラキラして魅力的に見えます

今度はココアを頂きたいです
先程チョコみたいだと話したことがずっと残っていたから
ふふ、甘い物は幸せですから!



 ――ふわふわ、くるり。
 宙を舞う魔法のポットに、白いマグカップ。
 まるで意思を持って踊るような様子に、眺めるふたりの瞳もキラキラと耀いて。
「ふふ、魔法って何度聞いてもわくわくする響きよね!」
 ラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)が、ぱぁっと笑顔を咲かせれば、傍らに居る ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)も、こくこくと頷いて。
「……これも魔法なんですね!」
 好きな飲物を注いでくれる陽気な魔法のポット。
 いつものお茶会にあったら、楽しく便利かもしれない、なんて過りながら。

「ラヴィさんは何にしますか?」
「そうねぇ、ラヴィは……どうしよう」
 ん~、と悩む仕草を見せつつ。よし、とラヴィがポットにお願いしたのは温かな紅茶。
 砂糖のような薔薇の花も堪能できるようにと、甘さのない紅茶を選んで。
 ラナはラヴィと揃いの紅茶と迷いつつも、自分のカップにはホットミルクを注いでもらった。

 白いマグカップを手にしたふたりの手に、ほわりと温かさが灯る。

 雪のように白いカップに揺れる、琥珀色の紅茶。
 ラヴィはその水面に、先程咲かせた深いブラウン色の魔法の薔薇をそっと浮かべてみる。
 薔薇は温かな琥珀色に包まれて、ゆっくり、ほろほろと溶けていって。
「色は全然違うけれど、なんだか雪みたいね」
 隣で様子を見ていたラナも頷きながら小さく咲った。
 そして自分もと、眞白のカップで揺れる白い水面に、先程色付かせたピンクの薔薇を浮かべてみる。
 白に揺れるピンク色は、何だかいちごミルクのように可愛らしくて。
 思わずラナの笑顔が零れたのも束の間、魔法の薔薇はほろりと溶けて、少しずつ花の形を崩してゆく。

「――どこか、寂しい気もしますね」
 自分で色付かせた花が溶けて、沈んでゆく様子を見守りながら。
 くるりと匙でひと混ぜすれば、ピンクの薔薇はまるで消えてしまったように、白の水面だけがそこに残って。
「寂しい……、そうね」
 ラヴィの手にした紅茶も魔法の薔薇をすっかり溶かし、琥珀色の水面を揺らめかせていた。
 けれどくるくると混ぜて飲めば、溶けた花の甘さと温かさが口いっぱいに広がって。
 一気に幸せな気分になってしまうというもの。
「寂しくないように、溶けた子を全部お腹にお迎えしなきゃ」
「……そう、ですね。たしかに」
 ラナも白いホットミルクをそっと口にすれば、溶けた花の優しい甘さがふわりと広がって。
 ほんのり寂しい気持ちも薄らぎ、ほっこりと幸せな気持ちが灯ってゆく気がした。

 そうして、温まるふたりの頭上から、ふわりと白く小さな雪が舞い降りる。
 きっとネージュが降らせてくれたものだろう、夜色に白がキラキラと耀いて。
「白い雪に、ラヴィさんのお姿が映えますね」
 白に満ちた世界に佇む赤い薔薇の彼女の姿は、その対比でいっそう映える気がして。

「あら!ラナこそいつも以上に可愛いわよ?」
 そんなラヴィの言葉に、ラナはぱちりと苺色の瞳を瞬かせた。
「――雪って、きらきら輝いていて。人を素敵にみせてくれる魔法がかかっているのかもしれないわね」
 舞い降る雪の中で、踊るようにくるりと廻ってみせたラヴィは、雪を纏ってキラキラと輝き。
 ラナはそんな愛らしい彼女の姿に静かに微笑みつつ、
「ふふ、ありがとうございます。確かに世界も、人もキラキラして魅力的に見えますね」
 ラナの言葉に。――でしょう?と振り返るラヴィにも笑顔が花咲いた。

「――あら?」
 雪降るお茶会を愉しんでいたふたりの手元のカップは、気付けば空っぽになっていて。
「……今度はココアを頂きたいです。ラヴィさんもどうですか」
「そうね、ラヴィもココアが飲みたくなってきちゃった!」
 薔薇を溶かした紅茶もミルクも美味しかったけれど、実はチョコの話をしてからずっと気になって。
 ……なんてラナが零せば、ラヴィも笑顔でこくりと頷いた。

「甘いものはどれだけあっても好いものね」
「ふふ、甘い物は幸せですから!」

 ――おかわりのもう一杯は、お揃いの甘いココアで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
赫灼のグロリア(カクシャクノグロリア)

●プレイング
夫の律(f38364)と参加

ふーっ・・・冷えるねえ。ああ、ネージュの導きに応じてガゼボの下へ。おお、働き者のポットだねえ。紅茶を私と律の二人分、頼めるかい?

ああ、この薔薇食べれるのかい。溶かして飲めるのか。持ち寄った赤い薔薇を溶かして飲む。ああ、丁度いい甘さだ。

あ、バスケットの薔薇持ち帰っていいのかい?赤い薔薇とオレンジの薔薇、奏のようなピンクの薔薇、瞬のような白い薔薇。

薔薇を眺めながらネージュの降らせた雪を眺める。ああ、いい風景だ。律と寄り添って、この夢のような時間を満喫するよ。


真宮・律
妻の響(f00434)と参加

まあ、確かに冷えるな。早くガゼボに駆け込もう。ああ、もう準備万端だな。ふむ、自動的に飲み物を注ぐポットか。一家に一台欲しいかもな。

ふむ、このオレンジの薔薇を紅茶のに入れればいいのか?見事に溶けたな。とても不思議だか丁度いい甘さで飲みやすい。

あ、薔薇貰ってくのか。こんなに綺麗だしな。赤い薔薇は響、オレンジの薔薇は俺、ピンクの薔薇は奏、白い薔薇は瞬だな。持ち帰って家に飾ろう。

雪か。こうしてゆっくり雪を見るのは初めてかもな。折角だ、響と寄り添って心ゆくまで眺めよう。



 澄んだ冬夜の箱庭は、凛と冷たさを増して。
 まさにこれから雪が降りそうな、そんな凍てついた空気を響かせていた。

「ふーっ……、冷えるねえ」
「まあ、確かに冷えるな。早くガゼボに駆け込もう」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は白い息を零しながら、夫の真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)と共に、妖精ネージュが呼んでくれたガゼボの下へと駆け込んだ。
 白い屋根の下では、ほんの少し冬の空気も和らいで、出迎えてくれたのは温かな飲み物を提供してくれる楽しげな魔法のポットだ。
「おお、働き者のポットだねえ。紅茶を私と律の二人分、頼めるかい?」
 響の声に魔法のポットは、お安い御用!という風に得意げにくるりと廻って。
 どこからともなく現れた二つの白いマグカップに、湯気立ち上る温かな紅茶を丁寧に注いでゆく。
「……ふむ、自動的に飲み物を注ぐポットか。一家に一台欲しいかもな」
 律はふわふわと宙に浮きながら紅茶を注ぐポットの様子を興味深そうに眺めながら、真剣に小さく呟いた。

 そうして程無くすれば、ふたりの手には温かなマグカップが握られていた。
 冷えた指先に、じわりと飲み物の熱が広がる。
 白い吐息は変わらないけれど、琥珀色の紅茶をひと口飲めば、気持ちは少しだけ落ち着いて。

「――そういえば、この薔薇食べられるのだっけ」
 茶葉の香りが直接伝わる紅茶の味に思い出したように、響は庭園で摘んだ赤く灯る薔薇を取り出した。
「ふむ、この薔薇を紅茶に入れればいいのか?」
 律も同じように自身で摘んだオレンジの薔薇を取り出せば、響は頷きながら「一緒にやってみようか」と、律と共に温かな紅茶の水面へ、薔薇をそっと浮かばせてみる。
 すると、薔薇はほろほろと崩れるように紅茶の中に溶けてゆく。
 すっかり溶けて消えた薔薇を見送った後、もう一度紅茶を飲んで見れば、茶葉の香りと程よい甘みが口の中に広がって。
「ふふ、本当に甘い」
「ああ……、とても不思議な光景だったが。俺にも丁度いい甘さで飲みやすいな」

 ふたりはほっこりと幸せたティータイムを楽しみながら。
 響はふと目に留まった、バスケットの薔薇を眺めた。
「この薔薇、いくつか持ち帰ってもいいかい?」
 その問いに、魔法のポットは「いくらでもどうぞ!」とネージュを代弁して跳ねて見せる。
「薔薇、貰ってくのか?」
「……ん?ああ、土産話と一緒に、良いかなと思ってね」
 響は魔法のポットに軽く礼を述べると、バスケットの中に灯る色とりどりの薔薇を真剣な表情で選んでゆく。

 まずは紅茶に溶かしてしまった自分と夫の、赤とオレンジの薔薇。
 奏のようなピンクの薔薇に、瞬のような白い薔薇を手に取って。
「――と、コレが良いかな。沢山貰ってしまったけれど」
「ふふ、なるほど。家族みんなの薔薇を一つずつ、だな。持ち帰って家に飾ろうか」
 ふたりは家族の色を灯すそれぞれの薔薇を、大切に小箱へと収めていった。

「土産も土産話も沢山できた、楽しい箱庭のひと時だったな」
 気付けば空からはキラキラと雪が舞い降りて、薔薇の庭園をいっそう美しいものにしていた。
「そう、だな。こうしてゆっくり雪を見るのは初めてかもしれない」

 夫婦ふたりはそっと寄り添いながら、箱庭に降る温かな雪を、静かに眺めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
【狐扇】
この薔薇を外に持ち出しても溶かさず維持できる箱ですから、きっと貴重なものですよね…
二つも頂いていいのだろうかと思うけれど、どちらか一輪なんて選べなくて
何度もお礼を述べながら薔薇を箱の中へ
本当に綺麗ですよね、と夢中になっていたのを引き戻したのは雪
そういえば少し体が冷えてきたかも…?
魔法のポットさんに、飲み物頂きましょうか
私は、ええと、ホットミルクにします!

ホットミルクに用意された薔薇をとかして、一口
ちょうど良い甘さで美味しいですね、語さん!

ホットミルクの温もりもあるし、水や氷を操るから寒さは苦手ではないけれど…
すすっとさりげなく語さんに寄り添って
寒そうなふりをして甘えてみたり


落浜・語
【狐扇】
 なるほど、砂糖細工や氷細工のもっと繊細なものって感じなのかな。熱と光に弱いってことは。
そっと箱に収めて持ち帰る。

元々寒い場所だし、雪も降ってくればなおのこと、だな。
俺は……紅茶にしようかな。

薔薇が溶けていくのもなんだか綺麗で。
食べたときの感じたと結構甘くなりそうにも思ったけど、本当ちょうどいいな。なかなか面白い……。

寄り添って来た狐珀の肩をそっと抱き寄せて。引っ付いていたほうが温いからな。紅茶も温かいけれど、やっぱりこのほうが断然暖かいなって。



 そっと手の中に包まれた、若紫色と常磐色の二輪の薔薇を見つめながら、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は少し困ったように小首を傾げて。
「この魔法の小箱、きっと貴重なものですよね……?」
 熱と光に弱い魔法の薔薇を外に持ち出しても溶かさず維持できる、特別なもの。
 それを二つも頂いていいのだろうかと思うけれど、どちらか一輪を選ぶことも難しくて。

 そんな狐珀の様子に、雪の妖精の明るい声が降りかかる。
 この箱庭も、魔法の薔薇も、その小箱だって、今日のために用意した特別な品。
 寧ろ使ってあげた方が薔薇たちも喜ぶはず、だから『遠慮しないで大丈夫!』と片目をぱちりと瞑って見せれば、ネージュ自ら白い魔法の小箱を4つ、テーブルの上に用意してくれた。

「……わ、ありがとうございます!良かったですね、語さん」
「だな。熱と光に弱いってことは、砂糖細工や氷細工よりも、もっと繊細なものなんだろう」
 大事に箱に収めないとな、と。
 白い薔薇と青い薔薇手に、落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)もネージュに礼を述べつつ柔く微笑みを返す。

 白い小箱に収められた、4つの薔薇の花。
 それぞれが、互いの大切なものを表す色に灯って光り耀く光景は、吸い込まれるようにずっと眺めていたくもなってしまう。
 ほわりと温かな心地が二人の間に流れた頃、ふと気付けば空から舞い降りる白い燦き。

「――雪、ですね」
 狐珀はそっと空いた掌を宙に翳せば、ひらひらと白い雪が一粒落ちて来て、肌に触れればしゅわりと溶けて水に成ってゆく。
「……ああ、どうりで冷えると思った。雪も降ってくればなおのこと、だな」
「そうですね、体も少し冷えてきたかも……?」
 さすりと冷えた指先を合わせつつ、ふたりは温かい飲み物を貰う事にした。

 魔法のポットは楽しげにゆらゆらと『次のご注文はなんだい?』と云わんばかりに、今宵訪れた客人達のリクエストを待っていた。
 そんな意気揚々としたポットの様子に、二人は顔を見合わせて小さく微笑み合いながら。
「私は、ええと、ホットミルクにします!」
「じゃあ俺は……紅茶にしようかな」
 それぞれの希望を聞けば、魔法のポットは待ってましたと、くるりと廻って見せて。
 どこからともなくふわりと現れた二つの白いマグカップに、湯気立ち上る温かな飲み物を注いでゆく。

 注いでもらった温かなカップを包み込む手が、じわりと熱を灯して。
 眞白のホットミルク、琥珀色に耀く紅茶。
 そして箱庭の主おすすめの魔法の薔薇の楽しみ方も味わってみようと、バスケットに用意された薔薇を一輪、ミルクと紅茶の水面に其々そっと浮かべてみた。
 浮かんだ薔薇はほろほろと崩れるように溶けていって、その様子に思わず二人は魅入ってしまう。

 そして味の方はどうかとひと口飲めば、ふわりと優しい甘さが口に広がって。
「ふふ、ちょうど良い甘さで美味しいですね、語さん!」
「ああ。食べたときの感じだと結構甘くなりそうにも思ったけど……、本当ちょうどいいな」
 先程お試しにと、そのまま食べてみた魔法の薔薇は飴細工ように甘くて。
 このまま溶かせばもっと甘い味になるとも思ったが……。不思議と丁度良いのも、魔法による何かなのだろうかと、その面白さに悟はますます興味を惹かれつつ。
 そんな語の様子を傍らで見やり、狐珀は隣で小さく微笑んだ。

 温かなホットミルクのお陰で気持ちも緩んだのか。
 狐珀はそっと、さり気なく、悟に軽く身体を預けて。
「……まだちょっぴり寒いので、こうしててもいいですか……?」
 紅く染まった頬は寒さのせいか、それとも――。
 なんて、寒そうなふりをして甘えてみる狐珀に、語は柔く微笑んで。狐珀の肩をそっと抱き寄せた。
「ああ、もちろん。こうして引っ付いていたほうが、温いからな」
 もちろん、温かな飲み物でも暖まれるけれど、
 互いの距離が縮まれば、身体も心にも、ほわりと温かさが灯った気がして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【心彩】

ネージュさん、お招きありがとう!
とてもステキなお庭ね

摘んだお花、持ち帰る事もできるの!
ええ、そうね
お花は散るからうつくしいとも言うけれど
それも解るのだけれど
せっかくのわたしたちだけの色を留めたお花、だものね
魔法の箱に納めて持ち帰ることにするわ!
ふふ、いいね
ルーシーもお部屋に飾ろうっと

はーい、大賛成よ!なゆさん
温かいものが恋しくなっていた所なの
用意して頂いた青のバラを一つとって
カップに入れる前に、ふと湧いた好奇心のまま
花弁を一枚、ぱくりとつまみ食い
んん!優しい甘さでおいしいよ

お花の残りをお茶に浮かべて、溶かして
ふうふう息を吹きかけながら一口
うん、おいしい
お腹も心もぽかぽかしてくるね
なゆさんと視線が合ったらニッコリと

いっそう空気がしん、としてきたら
羽毛のようにふわふわとした、――雪!
ゆきだわ、なゆさん!
ようく見ると本当に雪の結晶って透明なお花みたい
今のルーシーたち、
大地も空も、お腹の中もお花で満ちてる
それってとてもステキね!

ふたりで過ごすこの時間、幸福を
ぎゅっと心に留めておきましょう


蘭・七結
【心彩】

――まあ、ネージュさん
ステキな光景に、とっておきの魔法
数多の人々の笑顔を咲かせているわ
貴重なひと時を、どうもありがとう

儚きこともまた、うつくしい
花の散り際を眺むことも好きだけれど……
せっかく手にしたお花だもの
魔法の箱で、ずうっと咲いていて欲しい
大切に、大事に持ち帰るわ
寝室に飾ろうかしらね

――さて、ルーシーさん
あたたかな飲み物をいただきましょうか
とりどりの花から類似する色彩の一輪を摘んで
そのひと片を食めば、柔い甘さが拡がってゆく
……ふふ、甘いわね
思わず頬が緩んでしまうわ

あたたかな紅茶を受け取って
そうっと、その水面へと浮かべましょう
花びらが解けてゆく様を見届けて
あなたと共に、お茶をいただくわ
あたたかくて美味しいわね
身も心も、じわりとあたたまるわ
顔を見合わせたなら、笑みが咲いてゆく

しらしらと降り注ぐ真白の片
花弁のような白雪を見上げて
花に満たされた時間を堪能しましょう
そうね、ルーシーさん
とりどりの花と触れ合うことが出来たわね

あなたとふたり、今だけのひと時を
おしまいまで、楽しみ続けましょう



 ――明けと暮れを繰り返す流転のように。
 ――弾けるような黄と橙、そして底を満たす青が揺らめいて。

 互いに唯一の彩を灯した耀く薔薇を手に、ふたりは冬夜の寒さが和らぐガゼボの下へと歩んだ。

「摘んだお花、持ち帰る事もできるのね!」
 ネージュの説明を聞き、思わず声が弾んだ ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は、用意された魔法の小箱をじっと見つめた。
 此処から持ち出せば、溶けて消えてしまうと云われる魔法の薔薇。
 でも特別な色に灯った薔薇をそのままの状態で、ずっと留めておくことも出来るのだ。

「――儚く散りゆく花もまた、うつくしいわ……けれど、」
 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)はルーシーの様子を見守りながら、ふわりと言葉を零す。
「ふふ、せっかく手にしたお花だもの。魔法の箱で、ずうっと咲いていて欲しいわね」
「……なゆさんもそう思う? せっかくの、わたしたちだけの色を留めたお花、だものね」
 ルーシーと七結は、ゆるりと微笑み合い。
 大切そうにそうっと、魔法の薔薇を小箱に収めていった。

 箱に収まった特別な一輪は柔らかな光を灯しながら、儚く燦き。
 大事に手元へ置いてくれる事に、喜び耀いているようにも見えて。
「ほんとうに綺麗だわ。寝室に飾ろうかしらね」
「ふふ、いいね。ルーシーもお部屋に飾ろうっと」
 箱を抱えながら、くるりと嬉しそうに笑うルーシーに、七結も優しく口元を緩ませた。
「――さて、ルーシーさん。そろそろ、あたたかな飲み物をいただきましょうか?」
「はーい、大賛成よ!なゆさん。ルーシーも、温かいものが恋しくなっていた所なの」

 そうして二人がテーブルに向かえば、白い魔法のポットがふわふわ、ゆらり。
 客人を見れば、嬉しそうに宙で一回転もしてみせて。
 ――まあ、と驚くように口元に手を添えた七結と、
 ――わあ、ときらきら青い瞳を輝かせたルーシーが見守る中、
 魔法のポットは白い2つのマグカップへと、湯気立ち上る琥珀色の紅茶を注いでゆく。

 さあ、どうぞ!と、手渡すようにルーシーと七結の前へ紅茶のマグカップがふわりと浮かんで。
 ふたりがそっと手にすれば、温かなぬくもりが指先にじわりと広がった。
 そして魔法のポットが揺蕩いながら次に示したのは、色とりどりの薔薇が咲き誇るバスケット。
「飲み物に入れる薔薇ね! ルーシーは、どれにしようかな」
 ほんの少し悩んだけれど、初めから決めていたようにルーシーはバスケットから青い薔薇を一輪、手に取った。
「ルーシーさんは青い薔薇にするのね。わたしは――、」
 七結も暫し迷いつつ、白い指先を伸ばしたのは、自身が咲かせた薔薇と類似する色彩の、夕暮れ色のような魔法の薔薇を一輪、摘み取って。

「……そういえば、この薔薇はそのままでも食べられるのよね。なゆさん、一緒に試してみない?」
「そうね。お花を食べる機会なんて、あまりないもの」
 決まりね!と、二人は選んだ魔法の薔薇の花弁を一片摘み、そっと口に運んでみる。
 ふくんでみれば、瞬く間にほどけるように溶けて、残るのはふわりとした柔い甘さ。
「んん!優しい甘さでおいしいよ」
「……ふふ、甘いわね。思わず頬が緩んでしまうわ」
 そして残った薔薇の花は、温かな琥珀色が揺らぐ紅茶の水面へと浮かばせて。
 少しずつ花びらが溶けてゆく様を見届けたなら、薔薇の甘さと共に、紅茶をコクリとひと口。
 あたたかく、優しい甘さにお腹も心もぽかぽかと満たされて。
 ほっと一息つき、思わず互いに顔を見合わせたなら、ふふ、と幸せな笑みも咲いてゆく。

 ゆったり静かに流れゆく時間を愉しんで、ふと気付けば凛といっそう冷えた空気。
 ――あら、と七結が宙に軽く手を翳してみれば、ふわりと舞い降りる眞白の片。
「わあ。ゆきだわ、なゆさん!」
 ふわふわと空から降りてくる、羽毛のような柔らかな雪。
 ルーシーも思わず手を伸ばしてみれば、手袋越しの掌にほわりと雪の一片が留まって。
 好奇心でじっと見つめてみれば、六角形の花のような結晶のかたちも確認することが出来た。
「……雪の結晶って、透明なお花みたいね」
 吐息でさえ溶けてしまうような、儚い雪の結晶は、庭園に咲く魔法の薔薇たちにも少し似ている気がして。

「今のルーシーたち、大地も空も、お腹の中もお花で満ちてる。それって、とてもステキね!」
 灯る魔法の薔薇の庭に、温かく優しくお腹を満たしてくれた薔薇、そして空から舞い降りる雪結晶。
 色とりどりの、かたちも全て違うけれど。
 儚く燦めく花のうつくしさは、どれも変わらなくて。
「そうね、ルーシーさん。今日はとりどりの花と触れ合うことが出来たわね」

 ふたりで過ごした、静かで温かなしあわせの時間。
 今この時の想い出を忘れないように、ぎゅっと心の引き出しに仕舞って、留めて。


 ――夜の庭園に、沢山の耀きが咲いた。
 光る魔法の薔薇に、人々の笑顔も綻んで。
 凛と冷えた冬の空気に、あたたかな幸せが灯る。

 箱庭の空に舞う眞白の雪の中で、燦めくように飛ぶ、小さな冬の妖精を見つけたならば。

「ネージュさん、今夜はお招きありがとう!」

 ルーシーが小さな手のひらを大きく振る傍らで、七結もゆるりと手を振って見せた。
 嬉しげに応えたネージュは、冬色の翅を煌めかせ、冬の空へと舞い上がる。
 舞う軌跡に耀く粉雪が降り注ぎ、冬空の燦きをいっそう鮮やかなものにして――。

 ――春の兆し、冬の箱庭で。
 去りゆく雪の景色を心に留めて。再び季節が廻りまわる、その時まで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月09日


挿絵イラスト