●猟兵さん、事件ですよ
「帝都桜學府の技術部門、『
帝都鍛冶司』から、依頼がありました……」
帝都鍛冶司、それは激化する影朧やテロル組織との戦いに向けて日々新たな武装の開発研究を行う技術部門。所属する人員は皆帝都でもトップクラスの腕前を持つ鍛冶師達。刀から光線銃、動力甲冑のような個人装備はおろか、ラバウルの鉄道のような大型設備さえも彼らの手がけた作品だという。
寧宮・澪(
澪標・f04690)の手にあるのは、そんな彼らが開発した新兵器。見た目は亡霊ラムプで、緩く振ると微かな鈴の音が鳴り、ふわりと香の香りが広がる。
「この新兵器の、試用に協力してほしい、というのがその内容……影朧を相手に実際に使ってみて、使用感や欠点に対する改善案を聞かせてほしい、ということです」
ゆらゆらと澪はラムプを振りながら、依頼の中身を話し出す。
新兵器の細かな内容は現地で聞かせてくれる。この新兵器の特性や、欠点もあるそうだ。実際に影朧との戦いで使用して、感想を聞かせてほしいというのが今回の話。
「よければ、お手伝いお願いします……感想は、桜學府縁のカフェでお茶やお菓子を楽しみながら、ということでした」
そう言うと澪はラムプをまた振って、サクラミラージュへと道を繋ぐ。
●幽玄ラムプ
帝都鍛冶司の部屋では、小柄な年配の女性と、細身の若い男性が猟兵達を出迎えた。
「ようこそおいでくださいました。あたしは、この『幽玄ラムプ』の開発責任者、
花野と言います」
「私は補佐の
咲岡と申します」
おっとり話す二人は猟兵を歓迎した後、早速『幽玄ラムプ』について話し始めた。
元になっているのは傷付きさまよう魂を惹き付ける光を燈す小型の洋燈、亡霊ラムプ。惹き付けるならば、そのまま癒やしを、慰めをもたらせないかと考えて開発を始めたのだという。
予め蓋の内側、香を置けるようにした場所に魂鎮めの効果が期待できる香りを置き、火が入れば熱せられて香りが立っていく。明かりも柔らかく、穏やかになるよう計算して、鎮魂や祓いの文様を刻んだ色ガラスを嵌め込んである。取っ手につけた鈴の音もその一助になるだろう。
特性は鎮魂や慰め、癒やしに特化していること。悪意や嘆き、狂気に満ちた影朧には特に有効だろう。欠点は香り、明かり、音、全て有限であること。煩くはならないようにしたものだから、効果範囲が狭いかもしれない。
「なんで実際の戦いで役立つか、専門家の意見が聞きたいんですよ」
ちりんと花野が幽玄ラムプを揺らして言う。実際の影朧に使用したことはもちろんなく、どれだけ有効かも確かめてほしいのだ。
「通常の戦闘……武道や銃撃だけでなく、舞や歌曲と合わせた時にどうなるかもテストいただけると幸いです」
咲岡はそういうことが得意であれば、と付け足して猟兵達にラムプと香を配っていく。
「うまく効果があれば、影朧の力を削ぐ一助になるはずです。派手でわかりやすいものでなくて申し訳ありませんが、ご協力お願いします」
「力のない人でも、少しでも身を守れるかもしれないねぇ」
帝都鍛冶司の祈りの篭った、手のひらに収まるほどの小さなラムプ。如何様な力を秘めているだろうか。
霧野
霧野です、よろしくお願いします。
●シナリオについて
帝都鍛冶司から新兵器の試用の依頼です。
『幽玄ラムプ』を用いて影朧と戦い、使用感や改善点を確かめ、カフェで報告しつつ交流してみてください。幽玄ラムプをうまく利用して戦うと、プレイングボーナスがあります。
・幽玄ラムプ:影朧の傷や狂気、苦痛を癒やし、慰め、鎮魂することに特化している。欠点は有効範囲の狭さ。想定では半径1m程度。
第1章 集団戦
『黒の落し子』
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POW : 悪食
戦闘中に食べた【悪意】の量と質に応じて【身体の影が濃くなり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 悪逆
【隠された悪意を増幅する視線】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
WIZ : 悪言
攻撃が命中した対象に【悪意を撒き散らす影の口】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【聴こえ続ける心を蝕む声】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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●悪意を喰らうもの
とぷりと黒い粘性の液体のような
存在が現れた。世界の悪意を喰らう、『黒の落し子』達だ。
彼らが望んで喰らうのか、望まずして喰らわされれいるのか今は定かではない。けれど生まれいでた黒の落とし子達は、今なお悪意を喰らって確実にその力を増している。
彼らに、彼らに集う悪意や悲嘆に新兵器、『幽玄ラムプ』は効果があるだろうか。
ちりんと鈴の音が鳴る。香の香りが広がっていく。
天道・あや
◎
幽玄ラムプ。……うーん、いいね、実にCOOLで素敵なネーミングと機能な一品! (ラムプを片手に持って見回しながら)
聞いた話じゃ効果範囲が狭いらしいけど、まー、回復アイテムとかって大体そんなもんだよね? 近くにいなきゃ相手の傷とかダメージとか分かんないし、癒すなら側にがいいだろうしっ!
さて、それじゃ、いっちょ試してみますか。
ラムプよし! 影朧よし! あたしよし! そんじゃ、行きまショータイム!
先ずは相手に近付かなきゃ話にならナッシング!
という訳で【覚悟】を決めて、近寄ってく
(攻撃?耐えるのみ!)
近寄れたらラムプを使用しながら相手の手を掴んで、歌と躍りを誘う【手をつなぐ】
さ、行こうぜ未来へ
●
文様の中、一つ星輝く幽玄ラムプを手の中で揺らし、天道・あや(
スタァーライト ・f12190)は黒の落とし子を見ていた。
(幽玄ラムプ。……うーん、いいね、実にCOOLで素敵なネーミングと機能な一品!)
あやが見回す先にいる彼らとはまだ距離がある。ラムプの範囲には入っていないのだろう、落とし子達の様子に変化はない。ならば、と覚悟を決めていたあやの足は一歩前へと進む。
(うん、聞いた話じゃ効果範囲が狭いらしいけど、まー、回復アイテムとかって大体そんなもんだよね?)
癒やすならば近づかなければわからない。どんな傷を、痛みを抱えているのかも。癒やすならば、側にいよう。その悲しみを超える手助けができるように。
ちりんと鈴が鳴る。香の香りがふわりと巡る。仄かな優しい灯りが、あやの道を照らす。
(さて、それじゃ、いっちょ試してみますか)
にこっと空に輝く一番星のような、輝く笑みを浮かべたあやの歩みはダンスに変わる。
「ラムプよし! 影朧よし! あたしよし! そんじゃ、行きまショータイム!」
りん、と高らかに鈴が揺れる。あやの手の中でラムプも踊り、辺りに一層香りが立ち込めた。くるりと足は軽く、口からは未来を夢見るきらきらな歌が流れ出す。
近づけば近づくほど、落とし子達があやの側へとやってくる。助けを求めるように、星に手を伸ばすように。不定形の体から、あやへと近づくように伸びてくる。
舞と歌とも相性はいいようだ。鎮めの歌劇に通じるものがあるのだろう。
りんと鈴の音が鳴る。不思議と大人しく体を伸ばすだけの落とし子に、あやは微笑み、手を伸ばした。
触れたそこから悪意が渡る。心蝕むような言葉達が幾つも重なり呪詛めいてくるけれど、香りがあやを支えてくれる。
「さ、行こうぜ未来へ。きっと綺麗な、星みたいな夢ががいっぱい見えるよ」
りん、りんと鈴の音が鳴る。歌と踊りに魅入られて、幽玄ラムプに癒やされた落とし子が、未来へと歩むためにこの世界から消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
◎、○
ふむ、桜の世はきな臭い動きが伺えますし
有事に備えて新たな戦い方の検討は必要ですね
力になれるなら、いくらでも検証に付き合いますとも
悪意や悲嘆に満ちた子らが相手なら
鎮魂の力は届きやすいかな
向かってくる彼らへ瓜江に持たせた幽玄ラムプを向け
ちり、音聞かせ香りを届かすように揺らし
惹きつけられたり落ち着いたようなら
破魔の祈りを紋様に込め威力強化を狙い
断つならば鎮めてから送りたい
効果範囲外に出ようとしたり
反撃で灯を狙ってきたら
綾繋で繋いで宙に浮かせ、見切り、避け
瓜江と共に薙ぎ払いでの牽制
手分けしての追い込み
今一度、灯りの効果を試し
巣食う痛みや蝕む声より
耳を澄ませてご覧
灯が、その重さを溶かしてくれるよう
●
(ふむ、桜の世はきな臭い動きが伺えますし。有事に備えて新たな戦い方の検討は必要ですね)
世を騒がせる幻朧戦線に黯党。彼らの仕掛ける謀は数多く、さらに新たな兵器が現れ、暗躍する暗がりからもいずれは出てくるかもしれない。
公孫樹の模様が刻まれた幽玄ラムプを瓜江に持たせ、冴島・類(公孫樹・f13398)は一つ頷いた。
(ええ、力になれるなら、いくらでも検証に付き合いますとも)
糸を軽く手繰れば濡れ羽色が軽やかに揺れる。影に沿う人形が明かりを手に躍り出る。その先には悪意を喰らうもの、黒の落とし子達。
瓜江の手の先に揺れる明かりに魅せられたか、彼らは手を伸ばすようにその身を伸ばして、類と瓜江へ向かってくる。落とし子達からは悪意に満ちた、悲しい声が広がってきた。
「悪意や悲嘆に満ちた子らが相手なら、鎮魂の力は届きやすいかな」
瓜江の手が類の意に従い持ち上がる。ちり、ちりんと鈴音を鳴らし、中に込められた香の香りが広がりゆく。
伸ばされた黒の動きが鈍くなる。音と香りが届いたのか、確かに1mほどの辺りから落し子達の動きは鈍っていた。
より聞こえるように鈴を揺らす。より届くようにラムプを揺らす。瓜江が腕を伸ばし揺らすたび、幽玄ラムプの公孫樹も揺れる。
紋様に刻まれた祈りに、願いに類も一層力を込める。悪意を祓うように、傷を癒やすように。
「巣食う痛みや蝕む声より、柔らかいものに耳を澄ませてご覧」
ちん、りんと鈴が鳴る。ふわりと香の香りが広がっていく。瓜江の動きに合わせて、落とし子達が静かになっていく。
(断つならば、鎮めてから送りたい)
この灯を灯すのは人だけでなく、影朧を癒やすためでもあるのだ。その祈りを伝えたくて類は言葉を紡いだ。
「大丈夫。暗い重みに嘆かずともいい。灯が、その重さを溶かしてくれる」
りん、と鈴が一際高く鳴る。香の香りが場に染み透る。
破魔の力を込めた類の声に、瓜江の差し伸べる灯りに、黒の落とし子達は未来を照らされて巡っていった。
大成功
🔵🔵🔵
ジゼル・サンドル
サクラミラージュの依頼なら歌姫探偵の出番だな!
矢絣の着物に赤い袴姿。歌姫探偵の制服だ。
カフェーのお菓子も楽しみ…いやまずは仕事だな。
対影朧用新兵器の試用か、鎮魂や癒やしに特化しているというのが好ましいな。わたしの歌は誰かを傷つけるためのものじゃないから…
浄化ならやっぱりこの歌だな。
なるべく影朧に近づき、指定UCに乗せて歌うは母の十八番だった『リュクスドゥリュヌ』
『♪月の光が優しく照らす夜 歌を口ずさむの 一人じゃないと 教えてくれる あなたを見守る光がそこにあること いつでも忘れないでいて』
歌に合わせてランプを揺らし、鈴の音をアクセントに。
影朧の悪意には母や親友、大切な人を思い浮かべて抵抗。
●
(このあとのカフェーのお菓子も楽しみ……いやまずは仕事だな)
矢絣に赤い袴姿、
半結びの少女が一人。サクラミラージュの依頼ならば、とやってきたのは歌姫探偵、ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)。
彼女はその手に幽玄ラムプを携えて、近づいた黒の落とし子達へと歌う。あと一歩、踏み出せば手が届くところ、悪意の声が聴こえようかというところ。ほど近い場所で歌を紡ぐ。
「♪月の光が優しく照らす夜 歌を口ずさむの」
優しく母が子に歌うよう、月の光が寄り添うよう。夜の優しさを歌う歌が響き渡る。
(対影朧用新兵器、幽玄ラムプ。鎮魂や癒やしに特化しているというのが好ましいな。わたしの歌は誰かを傷つけるためのものじゃないから……)
月を刻んだラムプを揺らし、ジゼルはすぐ近くの黒の落とし子へと歌う。曲は『リュクスドゥリュヌ』、彼女の母が一番得意とした歌。浄化を、鎮魂を願うならば、とジゼルが選んだ大切なその歌が、黒の落とし子達に集う悪意を祓っていた。
照らす灯りに惹き付けられて、黒の落とし子が体を伸ばす。
「一人じゃないと 教えてくれる」
りん、りんとジゼルの手でラムプが揺らされ、鈴が鳴る。歌の合間を繋ぐように。揺れる月夜を渡るように。体を伸ばした落とし子が動きを止めて、まるで聞き入るように静止したままになる。
「あなたを見守る光がそこにあること いつでも忘れないでいて」
柔らかな歌声と寄り添い、ふわりと漂う香りに黒の落とし子達の悪意の声が静かになっていく。
あなた達にも月の光が寄り添うように。ラムプに込められた帝都鍛冶司の思いも乗せながら、歌姫探偵は癒やしの歌を歌い上げる。
癒やし、励まし、導くための歌に幽玄ラムプはその力を十二分に引き出された。黒の落とし子達は悪意を祓われ、月光に示された未来へと巡っていく。
大成功
🔵🔵🔵
エリザベス・ファールバッハ
◎
【蜃気楼】
発明品の試験ね?
これでも魔女として色々作る身、興味深い依頼は大歓迎よ
絵梨華と2人で色々試してみましょう
絵梨華の最初の実験に続いて、私は[結界術]で影朧を閉じ込めて幽玄ラムプを使ってみるわ
ラムプのみで祓ってみる場合、ラムプを持ちつつ[ロゼ]の[レーザー射撃]で近距離で戦ってみた場合、後ラムプの有無での差も確認しないとね
数は多いけれど、結界術と[清歌小夜華]での[封印術]の[範囲攻撃]で私や絵梨華の実験を阻害しちゃう部分は一時的に封じておきましょう
最後は【輪になり響け、生命の鼓動】で[プシュケー]達のサポートを受けながらラムプに全力の[武器改造]
どれ程の効力を発揮するか試してみるわ〜
紅島・絵梨華
◎
【蜃気楼】
幽玄ラムプ
とても良い発明だと思います
透明人間としての能力を最大限活かして実験をお手伝いしましょう
まずは1人離れてラムプを使い、ラムプのみでの時に影朧にどれ程影響を与えるかを試しましょう
わたしなら【透華爛漫】で全身を透明化すれば近くで気付かれず観察できると思います
手袋は消えませんが、あまり[目立たない]筈です
より攻撃的になるであろう、影朧を黒蜘蛛で拘束した状態での効力も確認します
わたしが透明化した状態、姿を見せた状態とでそれぞれラムプを近くに配置しましょう
少しだけ窮屈な思いをさせてしまいますが、最後には転生へ導きますよ
最後は霊弓「白鷹」を使って残った影朧を[浄化]して終了です
●
エリザベス・ファールバッハ(旧き善き魔女・f32574)の手の中には、花弁を零す花の刻まれた幽玄ラムプ。紅島・絵梨華(
見えざる手・f38845)の手袋を嵌めた手には、揺らめく藤の刻まれた幽玄ラムプ。
揺らせばちりんと鈴が鳴り、香りを振るうそれにエリザベスはゆうるりと微笑んだ。
「新しい発明品の試験ね? 色々試してみましょう」
古き善き魔女としても色々作成するエリザベスであるからして、新たな機能を持つ品は大変興味深く大歓迎だ。
「ええ、とても良い発明だと思います」
絵梨華も己の身の特性を活かし、実験に協力しようと乗り気である。
まずは幽玄ラムプ単独での効果を確かめるべく、一人黒の落とし子達へと近づいた絵梨華がその身を透明にした。ことりと地面に置いたラムプのそば、残る手袋のみを浮かばせて近づいてくる黒の落とし子達を観察する。
2m程では何も変わらず、動きも変わらず。ただ灯りに惹き付けられているのか、どこからか集める悪意を喰らい、体を大きくしながらじりじり手を伸ばすように近づいてくる。1mを過ぎたあたりで、その膨張が止まった。動きもゆっくりになり、少し力を削がれたかのよう。
目立たぬように気配を潜め、落ち着いた心持ちで絵梨華はその様子を観察する。確かに帝都鍛冶司が想定した通りの効果はあるようだ。
(少しだけ窮屈な思いをさせてしまいますが、最後にはちゃんと導きます)
ゆっくり近づき続ける黒の落とし子へ、透明なまま絵梨華は黒蜘蛛を投げた。くるりと巻き付いた鋼の糸に、落とし子は不定形の体を波立たせ、その身をより膨らませるかのよう。ぎちぎち締め上げる糸から逃れようと形を変えながらも、悪意を喰らう速度は遅い。
絵梨華はそれを確認してから霊弓「白鷹」で浄化の矢を放つ。拘束されたままの個体は浄化の矢で貫かれ、音もなく消えていた。
その後、透明化を解除して、新たな落とし子を観察する絵梨華。先程よりも活発に絵梨華を目掛けてやってくるようだが、やはり幽玄ラムプの香りの範囲に入ればその速度は緩む。一定の効果は期待できそうだ。
ついでエリザベスが黒の落とし子を結界で閉じ込めて、幽玄ラムプを近づける。揺らして音を響かせ、香りを振りまいてやれば、黒の落とし子は徐々に動きを止めていく。時間はかかったが、最後には溶けるように消えていった。ただ、もっと荒ぶる影朧や、大量の悪意を祓うのは難しいかもしれない。時間稼ぎができればいい方だろう。
次にエリザベスはラムプを持ちながら大地の精霊ロゼから光線を放ち、近距離で落とし子を焼く。持たずに攻撃した時と比べれば、落とし子が纏う悪意がラムプにより祓われ、効果的に感じた。悪意や嘆き、狂気を己の力として使う相手ならば、癒やし、慰めてその力を削ぐことも可能だろう。
実験を阻害されないよう、対象以外を隔離しながらエリザベスはデータを集め続ける。
「プシュケー、お願いね」
実験の最後、エリザベスは幽玄ラムプに祝福を注ぐ。全力で幽玄ラムプの力を開放した途端、灯る光が明るさを増した。りん、りんと鈴が鳴り響き、香の香りが一層広がっていく。黒の落とし子達が2m先でも動きを止めて、その姿を光に溶かすように消えていった。
「かなりの効力ね〜……あら?」
ぴしりとエリザベスの持つ幽玄ラムプに
罅が入る。そのまま花が散るように、ラムプは砕けてしまった。
「耐久性は、普通に使うにはいいけれど……全力ではまだ問題があるみたい」
これは報告したほうがいいだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御園・桜花
◎○
「転生を導くのは其の方自身の願いや想いです。其処に至る想いすら希薄になった方は、だから転生に導くのはとても難しいのですけれど。五感は記憶を呼び覚ますと言いますもの。幽玄ラムプの効果が上手く噛み合えば、今迄骸の海にお還り願うしかなかった方々にも、転生の道が拓けるかもしれません」
「貴方にも転生の道が拓けますよう」
UC「侵食・幻朧桜」使用
概念侵食と共に至近距離まで吶喊
幽玄ラムプを揺らして鈴の音を響かせつつ破魔と浄化を込めた鎮魂歌を歌う
心を蝕む声はは各種耐性と鎮魂歌で耐える
「貴方が持ち続ける悪意は、自らも苛み続けます。其の痛みから解放され貴方自身が安らぎ楽になる為にも、どうか転生を望んで下さい」
●
桜の飾りが入った幽玄ラムプを手に、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)黒の落とし子達へと向いている。
傷つくことを厭わず、その効力が確実に伝わる場所まで近づいていた。
「転生を導くのは其の方自身の願いや想いです。其処に至る想いすら希薄になった方は、だから転生に導くのはとても難しいのですけれど」
悪意に飲み込まれ、悪意を喰らい、意志も薄くただ世界を壊すだけの存在。そんな悲しい影朧に、桜花は影朧桜の幻影を呼び出した。桜吹雪の中、すべてのオブリビオン転生可能になるという概念の侵食を行いながら桜花は願う。
「五感は記憶を呼び覚ますと言いますもの。幽玄ラムプの効果が上手く噛み合えば、今迄骸の海にお還り願うしかなかった方々にも、転生の道が拓けるかもしれません」
りんと鈴が鳴る。暖められた香が香りを立ち上らせる。桜の花びらの中で桜花は幽玄ラムプが届くよう、黒の落とし子達へと近寄った。
「貴方にも転生の道が拓けますよう」
ラムプを近づく揺らしながら歌うのは魂を鎮めるための歌。りん、りんと鈴の音鳴らし、香りを纏わせながら浄化を願い、魔を祓う。
灯りに惹き付けられて、手を伸ばすように不定形の体を歪ませ、近づく落とし子の悪意の声が心を蝕んでも、歌と耐性で耐えてみせよう、と。
囁く悪意の口の声に耐えながら、桜花は歌を歌う。どうか桜の導きがあなた達にも、と。
「貴方が持ち続ける悪意は、自らも苛み続けます。其の痛みから解放され貴方自身が安らぎ楽になる為にも、どうか転生を望んで下さい。この歌が、ラムプの灯りが届きますように」
りんと鈴の音が響き渡る。歌と重なり響き合い、黒の落とし子は力を失い消えていく。香りに清められ癒やされて、その身を小さくして穏やかに。
香の香りが切れるまで、黒の落とし子が消えるまで。桜花の歌が止むことはない。
大成功
🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
受け取った幽玄ラムプを黙々と見つめてるレーちゃん可愛いわ♪
レーちゃんのことだから構造に凄く興味があるのよねー。
「…レーちゃん。バラバラにしたら…駄目よ?」
なんだかそーゆー風にしそうな勢いがある…気がしたの。
だってだって。魔法的なモノのことになると凄いんだもの。
このラムプって影朧さん達を落ち着かせる効果があるみたいね。
まずはレーちゃんの説明通りに香と鈴音に光だけを試してみるわよ。
それから次に…うーん。あたしの精霊力を少しだけ籠めてみようかしら。
ラムプを両の掌で包むようにして【精霊達の調べ】を使ってみるわ。
色ガラスに刻まれてる鎮魂や祓いの文様と同調して効果が上がるかも?
もしかするとゆーこー範囲も広くなる…かもしれないわ。
でもでも幽玄ラムプが壊れないように注意しないといけないわね。
壊れたら困るからラムプの様子をみながら歌うわ。
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
…ふむ。鎮魂や祓いの文様を…ラムプの色ガラスに…か。
脆いガラス…それも小さいガラスに刻む技術は凄いな。
ラムプそれ自体にも文様の力を増幅するような細工が…?
「いくら何でもバラさないぞ? 露」
…まあ。細部まで見てみたいという…興味はあるが…
今回の私は露の護衛をしよう。『幽玄ラムプ』を使いながらだ。
露へと寄ってきた影朧の負の感情が多いと傷つくかもしれない。
念の為に呪詛と狂気耐性を私の身体に付与しておく。
私のところへ寄ってきたら…ん。まあ…ラムプを影朧へかざす。
香を立たせて暫くしてから『幽玄ラムプ』を両掌で軽く握ってみる。
火の熱がラムプ本体にどんな影響を与えるか知るためだ。
軽度の火傷とまではいかなくともそれなりの熱を持つのは危険だろう。
そういう考慮は十分にしているだろうが少し気になったから実行する。
それから使用済の香をその場で取り除けるか試してみよう。
素早くセットし直すことができれば長時間の戦闘でも使用可能だろう。
香に何かの不具合が生じて使用不可になっても問題ないはず。
●
神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)の手の中には、月の飾りが紋様の中に組み込まれた幽玄ラムプ。シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)の手の中にも、雪輪が刻まれたラムプ。
ちりんと鈴を鳴らしながら、シビラはまじまじラムプを見つめ、構造や造りを観察、分析していた。
(……ふむ。鎮魂や祓いの文様を……ラムプの色ガラスに……か)
脆く薄いだろうそこには、祈りが篭った紋が切子のように刻まれている。柔らかになるよう色が入り、繊細な灯りを透かすような作り。
(脆いガラス……それも小さいガラスに刻む技術は凄いな)
ラムプの枠や持ち手、蓋にも装飾のように補助する紋様が刻まれていた。こちらは鋳型であるかもしれない。もしかしたら、接着された部分や内部にも色々細工があるのかもしれない。
(黙々と見つめちゃって、可愛いわ♪ レーちゃんのことだから構造に凄く興味があるのよねー)
その姿をにこにこ堪能しながら見ていた露は、りんと手の中のラムプを揺らして音を聞く。澄んだ音を楽しみ、広がりに耳を傾けながらそっと一言。
「……レーちゃん。バラバラにしたら……駄目よ?」
なんというか、そんな勢いすら感じるのだ。何故なら、魔法とか神秘とかに対するシビラの姿勢は凄まじいものがあるから。
露の指摘にシビラの視線はかすかに揺れる。
「いくら何でもバラさないぞ? 露」
「そう?」
興味はある、あるがそれは後で頼んでみてもいいだろう。報告の時にでも聞いてみたらいい。
まずは、目の前の影朧から。
「このラムプって影朧さん達を落ち着かせる効果があるみたいね」
「ああ。まずは単体の効果からだ」
露とシビラは各々手にしたラムプに灯りを灯し、蓋の部分へ香を入れる。その間にも黒の落とし子達はゆっくり二人に、二人の手にしたラムプへと近づいてきた。
灯りに引き寄せられたか、不定形の体が伸びる。距離にして1mほどの場所でその動きがゆっくりになった。
露の護衛を自分に任じるシビラは、近寄ってきた影朧へとラムプを翳す。りんと鈴の音を鳴らし、香の香りを振りまいて。影朧が纏う悪意が徐々に振り払われ、より動きが鈍くなった。効果は一気に消し去る、というほどではない。悪意や悲哀は確かに祓い、癒せているだろう。力の強い影朧には単体では効果は薄いかもしれない。
香の香りが十分に広がったあたりで、シビラはラムプを両手で包んでみる。熱されたガラスは確かに温かいが、軽く触れた程度で火傷するほどではない。支える金属の枠も同様だ。耐熱の素材で組んであるのだろう。持ち手の部分は全く問題ない。
それから、シビラは蓋を開けた。使用済みの香をその場で取り出せるか試そうと思ったのだ。
細工された蓋の中、煙を立てる香がある。ラムプの火で炙られた部分が熱を持って香を熱していた。燃えさしを取り出して交換することも、追加で入れることも、熱された部分に直で触れないよう、ピンセットのような器具があれば簡単にできる。
「ふむ。これなら時間は稼げるか」
じっくり分析するシビラの横、露は両手で包んだラムプにそっと精霊の力を注いでゆく。
「
चलो, चलो गाते ह♪」
精霊達へと呼びかける露の歌声。ガラスに刻まれた鎮魂の紋様が、込められた祈りが、飾りの月が淡く光る。りん、と鈴音が鳴り渡り、戦場に香が広がっていく。近づく落とし子達の動きがさらにゆっくりになり、範囲も1.5mほどになった。
ただ、歌いながら力を注ぐ露にはわかる。これ以上はラムプが持たない、壊れてしまうだろう、と。
(もっと注いで、一気に強くすることもできそうだけど……そうすると崩れちゃうわね)
まだまだ耐久性には改善の余地がありそうだ。それでも歌との相性はいいようで、効果は確かに強まった。神楽や鎮魂歌、祈祷の舞と同じく、祈りや鎮めの紋様に、歌と舞との親和性があるのかもしれない。
そっと様子を見ながらゆっくり力を注ぐ。一定の量を注いで維持する分にはラムプも十分に耐久がある。全力で使い捨てて窮地を脱することもできなくはない、と言うこともできるのだ。
露の歌とラムプの光が、落とし子達を消していくまで。二人はラムプを支え、観察していたのだった。
大成功
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第2章 ボス戦
『春告の紅白』
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POW : おやおや、どうして私の所に集まってくるんだい?
全身を【紅と白のもちもちした式神が覆って防御状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 封じの式神
【紅色のもちもちした丸い式神】【白色のもちもちした丸い式神】【紅白の梅の花びら】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 惑わしの梅
戦場全体に、【過去の思い出の幻覚を見せる紅白梅】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
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●春告の紅白
消えた落とし子達の向こう側、彼らを引き寄せた強い力を持つ影朧の姿が見える。
それは忘れさられた神社、そこの神木の紅白梅、そしてかつての神職の姿を為した影朧。
柔らかな紅白の式神を手の中であやし、影朧は問いかける。
「今年も綺麗に梅が咲いたよ」
彼に敵意はない。ただ寂しいだけなのだ。
「さあ、花を見ていくといい」
彼に害意はない。ただ寂しくて寂しくて、人を惑わしてしまうだけなのだ。
神坂・露
レーちゃん(f14377)
「わぁ…。梅の花って色んな色があるのね~♪」
薄い桃色から濃い桃色…赤色に濃い赤色と色々ね。
白色が多いってことは…白って一般的なのかしら?
ねえねえってレーちゃんの裾を引っ張って聞いてみるわ。
大きく分けて三系統あってそれ以上はわからないみたい。
「…へぇー…三系統……」
お花をみてたら説明とかはどうでもよくなったわ。えへへ♪
「ねえねえ♪ この梅の花は…えっと、どの系統なのかしら?」
すっごく詳しそうな不思議な服の人(影朧さん)に聞いてみるわ。
説明を聞きながらこの人(影朧さん)って梅の精みたいに感じちゃって。
…そーいえばこの人って影朧さんだったわね。どーしよーかしら…。
レーちゃんの方を向くけどレーちゃんは黙ったままだし…うーん。
あ!ラムプ。持ってるラムプを影朧さんに渡したらどうかしら。
ラムプが影朧さんの力に耐えられなくって壊れちゃうかしら。
苦しむってことはないと思う。この影朧さんの心を癒せないかしら。
…もし。もし影朧さんが苦しむようなら【月華】で眠らせるわ。
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
ふむ。桜も素晴らしいが梅も中々良いものだな。
梅も今の住処に植えることを検討してみようか。
…未だに桜も植えてないのに梅もとは欲張りすぎか…?
露に袖を引かれて我に返る。そういえば仕事中だった。
「ん? 梅の白い花は一般的か? 確か、梅は…」
梅は三系統九性分類…だったかな。それ以外は知らない。
そして原種に近い野梅の系統に白が多かった気がする。
「…そうそう。観賞用と実の採取目的の二種に分けらていた」
「採取目的の梅は、梅干しや果汁飲料を製作するための梅だよ」
説明に満足したのか露は影朧の元へ。…ん。彼は影朧だったな。
私は露のすることを見守っていよう。私からは何もしない。
影朧に悪意などの負の意識は一切感じられないから安心だ。
私のは傷つけ奪う力だからこういうことは露が適任だろう。
転生できるのならば露のやり方の方が正しく導けるだろう。
そして。
無駄に終わるだろうが備えだけはしておこうと考えている。
全力魔法の高速詠唱で【氷凍蔦】を唱えられるようにだけする。
●
白から薄紅、薄紅から紅。紅白の梅の花が咲き誇る光景に、シビラと露は感嘆の声を上げる。
「ふむ。桜も素晴らしいが梅も中々良いものだな」
「わぁ……。梅の花って色んな色があるのね~♪ 薄い桃色から濃い桃色……赤色に濃い赤色と色々ね」
柔らかな丸い花びらにほのかに乗る種々の紅。柔らかな色合いで、見る人のいなかった神社を飾る梅の花。ほのかに香るのは、梅花の香。神職の姿をした影朧から香るそれも光景に似合っていた。
(梅も今の住処に植えることを検討してみようか。……未だに桜も植えてないのに梅もとは欲張りすぎか……?)
むぅと唸るシビラの頭上にも美しく咲く花々。満開の花の中、やや白みが多いように感じた露は隣のシビラの袖の裾を引いていた。
「ねぇねぇレーちゃん。梅の花は白が一般的なのかしら?」
「ん? 梅の白い花は一般的か? 確か、梅は……」
仕事を忘れて物思いにふけっていたシビラが我に返る。同時に問いかけにも意識を逸らしていた。
「梅は三系統九性分類……だったかな。それ以外は知らない」
「……へぇー……三系統
…………」
学術的な言葉に若干目を泳がせ、首を傾げる露を置き去りに、シビラは自身の記憶を探っていく。
「原種に近い野梅の系統に白が多かった気がする。……そうそう。観賞用と実の採取目的の二種に分けらていた」
「へぇ。見る用に食べる用なのね」
「ああ。採取目的の梅は、梅干しや果汁飲料を製作するための梅だよ」
「なるほどー」
露の興味はシビラの説明よりも花へと逸れていく。これほど見事に咲いた花を見ているうちに、細かな知識や疑問はどうでもいいような気分になっていたのだ。
泣き笑いの涙を拭い、今は梅を眺める人の姿を、露とシビラをにこにこしながら見つめる神職の姿の影朧へ、露は声をかける。
「ねえねえ♪ この梅の花は……えっと、どの系統なのかしら?」
「うん? ここの梅は、観賞用だね。香りの良いものと花の色の美しいものがかけ合わさった品種と、学者の人に聞いたことがあるよ」
穏やかに、梅の香りや花の色、形について話す神職。露はそんな影朧を見ているうちに、彼がまるで梅の精のようにも感じられた。寂しがりやの梅の精、過去に囚われて、人に忘れられた寂しさに縛られた、悲しい存在。
(人が好きで、梅が好き、穏やかな感じで……でも、そーいえばこの人って影朧さんだったわね。どーしよーかしら……)
攻撃して、力で散らして弱ったところを鎮めて、というのも間違っていないだろう。けれどなんとなくそれは違う気が露はしているのだ。
こてんと首を傾げてシビラの方を見ても、彼女は黙っているだけ。その視線には露に対する信頼が見えていた。
うーん、と唸りながら、露はふと手に持ったラムプの存在を思い出す。
(あ! ラムプ。このラムプを影朧さんに渡したらどうかしら)
鎮魂を、慰めを祈って作られた幽玄ラムプ。もしかしたら、この影朧の過去の傷も癒やす力があるかもしれない。
(ラムプが影朧さんの力に耐えられなくって壊れちゃうかしら。ただ、苦しむってことはないと思う。この影朧さんの心を癒せないかしら)
露はじっと影朧を見る。神職の姿の影朧は、視線に柔らかく眉を下げた。
「何かな? 話が難しかったかい?」
「ううん。あのね、これどうぞ」
きっと大丈夫だろう、と露は手にしたラムプを影朧へと渡す。もしも苦しむようなら、眠らせようと思いながら。
りんと鈴が鳴る。香が香りを広げていく。
「ああ、素敵な洋燈だね。あたたかくなるようだ」
ふわりと影朧の纏う寂しさが薄らいだようだった。露はにこにこと影朧を見上げ、笑っている。
「お日様みたいにあたたかいと、幸せな気持ちになるわよね♪」
「そうだねぇ」
ほろりと影朧から涙がこぼれ、泣き笑いに変わっていく。寂しさが胸を打つけれど、それはきっと。受け入れるべきだと感じているのだろう。露はどうか癒やされたらいいのに、と思いながら、そっと彼の側に佇んでいた。
春の日だまりのような雰囲気の光景を見守りながら、シビラは警戒を解いた。もしも影朧が危害を加えるようならば、すぐに凍りつかせられるように編み上げた魔力を解いていく。
シビラからは何もするつもりはなかったが、影朧から悪意や害意と言った負の力は感じなかったが、万が一を警戒していた。
(私のは傷つけ奪う力だからこういうことは露が適任だろう。転生できるのならば露のやり方の方が正しく導けるだろう)
実際にその考えは正しかったようだ。泣き笑いの顔に戻った影朧が、その寂しさを癒やされていくのを見ながら、シビラは少し視線を柔らかくして、露を見守っているのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天道・あや
◎
……それじゃ、お言葉に甘えて(ゆっくりと神社へと近寄っていく)(一目みて、何となく分かった。あの人…影朧には敵意はない。あるのは寂しさ、孤独を嫌う気持ちだ)
……成る程、それでさっきの子達が現れた訳か
(ーー多分だけど、彼等も寂しかったんだ。だから、その寂しさを埋めるために悪意を…誰かに……寄り添って欲しかった)
……綺麗ですね、梅。こんなに見事に咲いた梅を見るのは初めてかも。……きっと、こうしてずっと側で見守ってきた人が居たからでしょうね
(影朧へと向き直す)(……告げなければならない、告げにくい事を)
ねえ、神職さん。……そろそろ、時間だし、行こ? 途中まで、本当にギリギリまで付き合うからさ…ね?
●
涙を拭い、さあどうぞと誘う影朧。
「……それじゃ、お言葉に甘えて」
その言葉に従うように、あやはゆっくり梅に近づいていく。神職の姿をした影朧は嬉しげにあやの姿を見ているようだった。
花は満開、今を見頃と咲く梅。白と紅が咲き誇り、時折吹く春の風に花びらをひらりと舞い踊らせる。それがどこか涙のようにも見えるのは、気のせいだろうか。
あやは影朧の姿をひと目見て、なんとなく感じたことがある。
(あの人……影朧には敵意はない。あるのは寂しさ、孤独を嫌う気持ちだ)
寂しい、誰かに会いたい、そばにいてほしい。そんな気持ちが視線や表情から伝わってくるのだ。今も梅を眺めるその姿をにこにこ嬉しげに見ているその姿から。
「……ああ、成る程、それでさっきの子達が現れた訳か」
悪意を喰らう彼らを思い出す。何かを求めるように体を伸ばし、すがるように近づいてきた彼らを。
(——多分だけど、彼等も寂しかったんだ。だから、その寂しさを埋めるために、悪意を……悪意でも、いいから、誰かに…………寄り添って欲しかった)
先程はほろほろ泣いていた影朧。今はにこにこと人の顔に笑顔を浮かべる神職へ、あやは声をかける。
「……綺麗ですね、梅。こんなに見事に咲いた梅を見るのは初めてかも」
「そうだろう、毎年こんな風に見事に花を咲かせてくれるんだ」
「……きっと、こうしてずっと側で見守ってきた人が居たからでしょうね」
「そうだったらうれしいな。また多くの人に見てもらいたいなぁ」
寂しがりやの影朧はその日を思い浮かべたか、笑みを深める。その笑みにあやは少しだけ、胸の奥が重くなった気がした。
けれど、彼女は告げなくてはいけないのだ。告げにくい、その事実を。
あやは影朧に真っ直ぐに向き直る。
「ねえ、神職さん
。…………そろそろ、時間だし、行こ? 途中まで、本当にギリギリまで付き合うからさ……ね?」
一番星があなたの道を照らすように。迷わぬように、導くから。あやは静かに微笑んで、神職へと語りかける。
「……そうだねぇ」
まだ行きたくない、と駄々をこねるようにくっついてきた式神達をあやしながら、神職の姿の影朧は、泣き笑いを浮かべ、わかっているよとゆっくり頷いていた。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
◎、○
春は、芽吹のと花咲く季節
出会いや別れの時でもありますが
この地で忘れられてしまった寂しさから
人を惑わしてしまうなら…
迷う貴方をこの灯が導く力になれば
神木の梅を眺め
ええ、綺麗に咲いていますね
梅が綻ぶと、嗚呼春だなぁと実感します
この神社もかつては参拝する方が幾人もいらしたのでしょうが
影朧として留まり続けると、歪みが生じることも多い
そうなる前に、巡りの先に行きませんか
呼ぶ風でラムプ持つ瓜江を強化し
式神の攻撃は見切り避け
灯から立ち込める香りを、翼から送る風で影朧さんへ向ける
さあ、此方へ参りませんか
懐かしい思い出や
留まり続けたい気持ちはあるかもしれないけど
歪んでしまう前に
あなたが、未来へ進めるように
●
(春は、芽吹と花咲く季節。出会いや別れの時でもありますが、この地で忘れられてしまった寂しさから人を惑わしてしまうなら……迷う貴方をこの灯が導く力になれば)
若葉と女郎花の瞳を梅に向け、類は静かに眺めている。白と紅が様々に、ほのかに春の光を透かして喜ぶように、寿ぐように。梅の花は今を盛りと咲いている。
神職の姿をした影朧が、嬉しげに声をかけてきた。
「綺麗だろう」
「ええ、とても綺麗に咲いていますね。梅が綻ぶと、嗚呼春だなぁと実感します」
「そうだろう、そうだろう。ここの梅はね、この時期に綺麗に咲いて、皆を楽しませてくれるんだ」
「この神社も、参拝する方が幾人もいらしたのでしょうか」
「うん。最近はすっかり人を見なくなったけど……こうして梅が咲いたから、また来てくれるんじゃないかと」
そうしたら君達がやってきた、と影朧の声はうれしそうに弾む。その声に、類はそっと目を伏せた。瓜江の持つラムプが揺れ、りんと鈴が鳴る。
「本当は、わかっているのでしょう」
ラムプが揺れる。鈴の音が梅の間に透き通る音を揺らし、香の香りが満ちていく。
「影朧として留まり続けると、歪みが生じることも多い。そうなる前に、巡りの先に行きませんか」
そう言われれば、神職の姿は眉を下げた。紅白のもちっとした式神が、梅の花びらが舞い上がる。
「ああ、こら、やめなさい」
神職は、類の言葉の意味をわかっているようだった。けれどこの神社の記憶や、梅の木の思いを表す式神と花は、まだここに留まっていたいと言うように類へ瓜江へ向かってくる。頑是ない子供が、まだ帰りたくないと駄々をこねるように。
春の風が呼び寄せられる。瓜江がその風に乗るように土を蹴る。式神も梅の花びらもひらりと躱し、ラムプを柔らかく揺らす。
風が香りを影朧へと運ぶ。風が鈴音を影朧へと届ける。類の言葉とともに。
「さあ、此方へ参りませんか。懐かしい思い出や、留まり続けたい気持ちはあるかもしれないけど」
それでも留まってはいけないのだ。
「世界が、想いが歪んでしまう前に。あなたが、未来へ進めるように」
その背中を押す、優しい春風を思い浮かべ、類は言う。
式神が影朧の手の中に戻り、そっと花びらも鎮まっていた。
ほろりと泣き笑いの顔で涙をこぼしながら頷く影朧に、瓜江の手の中で、ラムプの鈴がりんと鳴った。
大成功
🔵🔵🔵
紅島・絵梨華
◎
【蜃気楼】
迷える魂を癒し鎮めて導くのは學徒兵として、猟兵としての本懐です。害意は無いようですが、寂しいとはいえ人を惑わせてしまうのはあまり良いとは言えません。
あの影朧や式神を傷つけてしまうのは避けたいので、まずは動けないよう影朧の服を【封針鐵貫】で縫い付けて少しの間動きを封じます。
同時に【清桜懐光】で過去の温かな思い出と共に癒しを届けます。
良き思い出もあったはずです。
良い兆しが見られたら近づいて幽玄ラムプを再び使ってみます。ヒビが入っているとは言え使えますし、効力は本物のようですからね。エリザベスさんの力によって再び癒しの光を届けましょう。
どうかあの影朧を安らかなる転生へとお導きください。
エリザベス・ファールバッハ
◎
【蜃気楼】
物悲しい影朧ね……
良いでしょう、私達で鎮めて、過去は過去へ、未来を歩む魂は明日へ送り出しましょう
まずは魂鎮めを阻む要因をどうにかしないとね
絵梨華や私を狙う式神達や花びらは、機先を制して本体近くに[結界術]で閉じ込めてしまうわ
この子達にも慰めを届けてあげないとね
貰って来ていた予備のラムプも側に置いておく
絵梨華が本体の動きを封じようとするのに合わせて、【清瓏響鳴】で全域を清浄化しつつ、私達2人の潜在能力を解き放つわ
鎮魂の光が届いたら、【お家芸その十八】で再び召喚できるようにしてあげる
「さぁ絵梨華、どんな未練も寂しさも残らない位に、彼らの心を安らぎと温もりでいっぱいにしてあげましょう」
●
そこに立ち、花を見ていくといい、と促す影朧に敵意はな無い。ただ寂しさを抱えているだけだ。
泣き笑いの涙を拭い、梅を見て回る姿に笑みを浮かべる影朧にエリザベスはそっと紫の瞳を伏せた。
「物悲しい影朧ね……」
梅の花がまるで涙のように静かに離れ、地に向かう。
悪意無く、忘れられた寂しさ故に。見られることなく花を散らす悲しさ故に。影朧はその過去を傷として、ここに現れたのかもしれない。
けれどこのままここにいては、彼らは歪むばかり。伏せられた紫は前を見て、決意の光を宿す。
「良いでしょう、私達で鎮めて、過去は過去へ、未来を歩む魂は明日へ送り出しましょう」
絵梨華も己の存在を示す、特別な手袋をもう一度しっかりはめ直しながら同意の頷きを返す。ここに彼女はいて、その役目を果たせるのだと改めて己に、世に示すように。迷える影朧を次へと導くために。
「迷える魂を癒し鎮めて導くのは學徒兵として、猟兵としての本懐です。害意は無いようですが、寂しいとはいえ人を惑わせてしまうのはあまり良いとは言えません」
癒やしを、鎮めを。成すべきを定めたなら、あとはそれを成すだけだ。
エリザベスが先じて、式神を、花びらを結界で囲う。これから行うことに反発しないように、無為に動かぬように、魂鎮めを阻む要因を除くために。
ひらりひらりともちもちした式神が、梅の花びらが、絵梨華に、エリザベスにと結界の中から向かおうとして、弾み、舞う。まだ帰りたくないと、もう少しここにいたいと、むずかる頑是ない子供のように、ばらばらと。
「……この子達にも慰めを届けてあげないとね」
エリザベスは予備のラムプを側に置く。その力が届くように祈りながら発するのは清瓏響鳴、浄化の声。驚く神職を、むずかる式神達を、この場を清める奇跡の声。それは絵梨華とエリザベスの力をも解き放つ。
「さぁ絵梨華、どんな未練も寂しさも残らない位に、彼らの心を安らぎと温もりでいっぱいにしてあげましょう」
「ええ」
その声を受けて絵梨華は呪符を広げた。少しでも癒やしを届けやすくするために。
「少し動かないでくださいね」
封針鐵貫、絵梨華が投げるのは雀蜂。無数の針が現れ出て、神職の姿の陽炎の服の裾を地面へと縫い止める。同時に使用するのは清桜懐光。過去と現在の間から、癒やしの光が現れる。
(過去の温かな思い出と癒しを……きっと良き思い出もあったはずです)
驚き、桜の精が生み出した光に包まれる神職の姿。彼に光が一つ二つと届けば、ほろほろと止まった涙が再び溢れてくる。
けれどその表情に険はない。悲痛の色もない。過去の良い思い出を、幸せな思いを、ただ懐かしみ、感極まった泣き笑いの顔をしているだけだ。
「ああ、そうだねぇ……昔のことだけれど、ここに人がいて、梅を喜んでくれていた……」
時代が進むにつれ、いつしか忘れられてしまったこの場所。姿を借りた神職もとうに亡く、梅の花を見に来る人も無く。寂れるままに、寂しさを積み重ねた梅の木が残るばかり。けれど、温かな記憶はあったのだと影朧はほろほろ、涙を流す。梅の花びらが涙のように、動きを静かに変えて降り積もる。
穏やかな、良き変化を見たエリザベスは、その視線で、身振りでそっと絵梨華を促した。絵梨華は一つ頷いて、ラムプを影朧へと差し出す。
りんと鈴の音が鳴る。香の香りが辺りを包む。弾んでいた式神も、梅の花びらも今は穏やかに。鎮魂の光は辺りを優しく照らしあげ。
(どうかあの影朧を安らかなる転生へとお導きください)
もう一度、幸せな記憶を重ねられるよう。絵梨華とエリザベスはそっと願うのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御園・桜花
「何だかあの式神達が餅花に見えてきました…いえ、幽玄ラムプの効果を確認する為に、削り取る必要があるんです、きっと、多分」
目を逸らす
UC「食欲の権化」
動けなくなった紅白に近付き真横に幽玄ラムプ置く
纏わり付いたもちもち式神を桜鋼扇で叩き剥がして食材化
紅白が動けるようになる迄式神削りと幽玄ラムプの効果を紅白に染み込ませる
式神達が居なくなったら幽玄ラムプ抱え直し転生しないか説得
「此処に居ては、動けぬ儘貴方の寂しさが募ります。人は皆、お寂しい貴方の気持ちを分かち合えず、傍らを過ぎ行くばかりです」
「貴方を見つめ、寄り添い、同じ気持ちと季節を分かち合って共に道行く方を得る為に。貴方も転生を望んでみませんか」
●
神職の姿の影朧に、遊ぶように弾み、楽しむようにくっつく紅白のもちもちした式神達。寂しいから寄り合うのか、ただ楽しいだけなのか。
「何だかあの式神達が餅花に見えてきました……」
その姿が、何だか妙に美味しそうな気がしてきた桜花。桜鋼扇を構えながら、彼女は視線を揺らがせた。
「いえ、幽玄ラムプの効果を確認する為に、削り取る必要があるんです、きっと、多分」
彼女は役目を果たすべきと己を奮い立たせる。それが食欲と絡んでいても、である。扇を構えたまま桜花は、式神を纏わりつかせた神職へと近づいた。
「おやおや、どうしたんだい……えっ」
「えいっ」
動けぬ神職から式神を引き剥がすように、桜花は桜鋼扇を振るう。傍らにあるのは幽玄ラムプ。その香の香りを辺りに漂わせながら、鋼の扇でびしばしと式神を叩き払い落としていく。その度もっちりした式神達は餅に変わっていく。癒やしを、慰めを込めた餅へと。
ひたすらに、懸命に。桜の刻印がついた鋼が舞い踊る。されるがままの影朧から式神達がすっかり払い落とされて、辺りに紅白餅が散らばるまで、桜花は扇を振るい続けた。
呆気にとられて固まったままの影朧に、桜花は幽玄ラムプをもう一度抱え上げ、向き直る。心から願うのは転生への一歩だ。
りんと鈴の音が桜花の手の中から鳴る。香の香りが一層広がっていく。
「此処に居ては、動けぬ儘貴方の寂しさが募ります。人は皆、お寂しい貴方の気持ちを分かち合えず、傍らを過ぎ行くばかりです」
辛い記憶に囚われたままここに留まるのではなく、穏やかな幸せをもう一度手にするために、先へと進まないかと桜花は語る。
「貴方を見つめ、寄り添い、同じ気持ちと季節を分かち合って共に道行く方を得る為に。貴方も転生を望んでみませんか」
寂しさは忘れることで癒えることもある。新たな幸せで癒えることもあるから。
神職姿の影朧の顔が、泣き笑いに変わる。桜花の言葉に頷きながら、ほろほろと涙を溢していた。
大成功
🔵🔵🔵
ジゼル・サンドル
ああ、たしかに綺麗な梅だ…と思った瞬間、見えたのは辛い過去。
お母さんもいない、友達もいない、寂しい夜…
でも今は違う、海色の人魚に見つけてもらえたから。
このラムプに邪を祓う効果があるなら、迷路を抜ける一助になるかもしれないな。
ラムプを揺らして鈴の音や香の香りを広げるようにして進む。
歌で自身を【鼓舞】し【第六感】も駆使し出口を目指す。
無事迷路を抜けられたなら歌で語りかけよう。
『♪はじめまして こんにちは わたしはジゼル 友達に、友達になろう』
指定UCに乗せて歌い、ラムプの鈴を楽しげに揺らして【手をつなぐ】。
貴方は寂しかったのだな、もう大丈夫だ。貴方を、貴方の梅を見てくれる人がこんなにいるのだから…
●ジゼル・サンドル(f34967) ※過去採用=第1章
見ていくといい、と声に誘われるままに、ジゼルは梅の花へと視線を寄せる。白と紅の花が見頃と咲き誇り、その視線を喜んでいるようだった。
(ああ、たしかに綺麗な梅だ……)
ひらりひらりと梅の花びらが舞う。まるで静かに降り積もる涙のように。
迷路へと囚われていたジゼルの心に寂しい記憶が蘇る。
暗い部屋にジゼルはひとりぼっち。優しい母もおらず、心支える友もおらず。ただ一人で、降り積もる寂しさを抱え込んでいた夜の記憶。押しつぶされそうな心に、日々に涙を流し、時折口ずさむ母の歌をなぞって耐えた辛い過去。
ジゼルはラムプを握る手を強くし、それから首を振った。
今の彼女はひとりぼっちのジゼルではない。海色の人魚に見つけてもらって、明るい場所へ足を踏み出したジゼルだ。
口ずさむのは己を奮い起こす歌。リズムにあわせてラムプを揺らし、鈴の音香りを広げてジゼルは迷路を進む。
(このラムプに邪を祓う効果があるなら、迷路を抜ける一助になるかもしれないな)
鈴の音に、香りにジゼルも癒やされる心地を味わいながら、出口へ向けて足を止めず、歩いていく。
壁になった梅の木に花が咲いているのを眺め、迷い道を辿り、ジゼルは出口に辿り着いた。
そこにいたのは、寂しがりやの影朧。寂しさで訪れたものを惑わしの梅の道に誘うもの。
ジゼルは彼へと歌いかける。
「♪はじめまして こんにちは わたしはジゼル 友達に、友達になろう」
りん、と鈴の音がジゼルの歌にあわせて弾む。ふわりと香りが揺れて広がる。楽しげに、朗らかに。明るい気持ちになるように。
いつか彼女が人魚に見つけてもらったように、今度はジゼルが寂しがりやに手を伸ばす。
「貴方は寂しかったのだな、もう大丈夫だ。貴方を、貴方の梅を見てくれる人がこんなにいるのだから……」
「そうだねぇ……いつしかだぁれも来なくなって、うん、寂しかったのだろうね」
泣き笑いの顔で影朧はジゼルの手を取った。次へと背中を押す、歌に誘われるままに。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『帝都のカフェーの優雅な日常』
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POW : ミルクやカステラでばっちり栄養補給!
SPD : 臨時のボーイやメイドとしてちゃっかり臨時収入!
WIZ : 最新の雑誌や噂話からきっちり情報収集!
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●おしまいは、カフェーでひとときを
梅の影朧は先へと巡っていった。幽玄ラムプの効果も確認でき、最後は報告を残すのみ。
花野と咲岡が戻ってきた猟兵を案内したのは、桜學府近くのカフェー「花筵」。穏やかな光差し込むのどけさの、ゆったりした場所である。小さくクラシックのラヂオも流れているようだった。
珈琲に紅茶、パルフェもあれば、ケーキもある。もちろん緑茶に和菓子も。サンドウィッチやナポリタンなど軽食もある。
花野と咲岡のおごりであるから、何を頼んでもいいという。
「堅苦しい報告でなくていいんですよ、あなた達の感想を聞かせてもらえたらそれが一番さね」
「お気軽にどうぞ」
一息ついてから、話すのもいいだろう。
ジゼル・サンドル
待ちに待ったおやつタイムだ(うきうき)
桜餅(道明寺)やうぐいす餅、三色だんごにいちご大福など春らしい餅菓子を注文。
先ほどの影朧の式神がもちもちしたお菓子みたいで、なんだかお餅が食べたくなってしまった。
…いっぱい頼んでしまったが大丈夫だろうか。
どれももちもちして美味しい…!
あれが人を惑わすユーベルコードでなかったら、お花見なんかもしてみたかったな。あの影朧も、かつては大勢の人と梅の花見を楽しんでいたんだろうか…
幽玄ラムプについては、歌と合わせても良い感じでとても気に入ったぞ。今後実用化されたら使わせてほしいくらいだ。
シャッターでもつけて光量や香りの強さを調整できるようにしても良いかもしれないな。
●
(先ほどの影朧の式神がもちもちしたお菓子みたいで、なんだかお餅が食べたくなってしまった)
桜の香りも味わう道明寺、きな粉まぶしたうぐいす餅、つやつやまあるい三色団子、ぽってり柔らかいちご大福。
春色纏うお菓子を頼んで、合わせたのは緑鮮やかな煎茶。暖かな湯気も味わいながら、ジゼルはうきうきとお菓子に手を伸ばす。
(待ちに待ったおやつタイムだ)
道明寺を囓れば一層強く桜の香り、あとから来る餡子の風味と甘み、それと塩気がよく合う。
鶯の形の餅を摘めば、青大豆のきな粉と求肥、こし餡がまたおいしい。桜の桃色、すあまの白に、よもぎの緑の団子はまた違った食感で。いちご大福は中のいちごの甘酸っぱさと餡と餅の甘さのバランスがまた良い。
たくさん頼んでしまって食べきれるか不安になったけれど、一仕事終えてお茶もあって、と案外食べ切れてしまいそうだ。
「どれももちもちして美味しい……!」
お茶で口の中をすっきりさせながら、一息ついたジゼルが思い返すのは先程の影朧のこと。
(あれが人を惑わすユーベルコードでなかったら、お花見なんかもしてみたかったな)
梅の花の下に敷物敷いて、今のように美味しいおやつとお茶を持って。春の空を梅の花を通してみて、そののどかさを楽しむような。
(あの影朧も、かつては大勢の人と梅の花見を楽しんでいたんだろうか……)
少しだけ、巡った影朧に思いを馳せ、ジゼルは煎茶を啜った。
「いい食べっぷりだ、味は気に入ったかい。良ければ贔屓にしておくれ」
花野がジゼルのいるテーブルにやってきて、話しかける。ジゼルは頷いたあと、帝都鍛冶司への報告をする。
「幽玄ラムプについては、歌と合わせても良い感じでとても気に入ったぞ。今後実用化されたら使わせてほしいくらいだ」
「そうかい。助けになったなら、何よりだよ」
嬉しそうに笑う花野に、ジゼルはもし良ければ、と改善案を述べる。
「シャッターでもつけて光量や香りの強さを調整できるようにしても良いかもしれないな。強いものが苦手なものもいるかもしれないし、静かに近づくのにも良さそうだ」
「そのくらいならすぐにできるかもしれないね。外付けにするか、仕込み型にするか……考えてみよう。ありがとうねぇ」
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
「願いは、其の方の歩んだ生涯、記憶から構成されます。転生を齎す願いを、其の方の記憶からどう呼び覚ますか。通常視覚情報、聴覚情報から手繰り寄せる其れを、嗅覚情報からも補完したのは、とても画期的だと思います。ただ私達は落ち着いて話し合う為に殴り合うことも多いので、手を塞がないもの、有効距離がもう少し広い物であれば嬉しいです」
「懐に携帯できる、身体に巻き付ける、背中に背負える等の形状で、有効射程半径5m、でしょうか」
報告後、真剣に品書確認
しっかり内容を読み込む
季節限定メニューがあれば其れを優先に飲み物・メイン・デザートを一応遠慮して各2品迄頼む
限定なければ
ミルクティ
ホットサンド
ケーキ
を軽く摘まむ
●
「影朧の願いは、其の方の歩んだ生涯、記憶から構成されます。転生を齎す願いを、其の方の記憶からどう呼び覚ますか。通常は視覚情報、聴覚情報から手繰り寄せる其れを、嗅覚情報からも補完したのは、とても画期的だと思います」
喫茶店で帝都鍛冶司の面々と向かい合った桜花は、影朧の願いに関する私見も踏まえ、幽玄ラムプの有効性に賞賛を示した。それから、改善案を述べる。
「ただ私達は落ち着いて話し合う為に殴り合うことも多いので、手を塞がないもの、有効距離がもう少し広い物であれば嬉しいです」
例えば、と桜花は指折り考えを口にする。
「懐に携帯できる、身体に巻き付ける、背中に背負える等の形状で、有効射程半径5m、でしょうか」
「ありがとうねぇ。腰や肩から下げられるようにはすぐできそうだ。手持ち部分に刻印した鎖を繋いだり、術式組み込んだ組紐もいいかもしれない」
「耐熱性を高められれば、身のそばでも安全ですね。効果範囲はこれから長くする工夫を、というところでしょう」
「懐にラムプは難しいさね。灯りも音も沈めてしまう。でもうちにこだわらず、別のラインに上げてみようか」
花野は頷き工夫や方針を口にし、咲岡は細かくメモを取る。
報告が終わってしまえば、あとは楽しみの時間。桜花はしっかり
品書を真剣な眼差しで読み込んだ。定番もいいが、やはり気を引くのは期間限定の品々。春にちなんだ菓子類や料理が記されている。
「すみません、この春デザート紅茶セットと、桃スイーツとミルクティをセットで、あと菜の花パスタとミモザホットサンドを」
おごりとはいえ遠慮の心はあるもので、桜花は何時もよりは控えめに各2品まで注文する。下宿の大家に何か土産を持ち帰るべきか、と持ち帰り可能な品を見て悩んでいれば、テーブルに注文した品が運ばれてきた。
春デザートはいちごのクレープに桜のケーキ、一口サイズのよもぎ白玉団子の餡子添え。桃の節句にちなんだ桃スイーツプレートには、桃のババロアに桃茶のミルクレープ、抹茶粉をまぶした上新粉のひとくち団子。
菜の花パスタは鮮やかな緑の菜の花としらすを和えたオイル系で、ミモザホットサンドは断面の卵の黄身がミモザの花のよう。
その味も味も十分、満足できるものだった。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
◎、◯
技術部の方と直に話せる機会はそうそうない
貴重な機会、楽しみに
花野さんと咲岡さんのおごり?
試作品を使わせてもらったのは此方にも利はあるから良い気も…
いや、無粋だな
珈琲を一杯いただけたら
気にされていた射程範囲は…
鈴の音も使える分然程欠点とは思わなかったかな?
灯りや香りが有限であることは
使用者に補充する物を合わせて持つよう
一度の持続時間の説明はしっかりしてなら
活用はできるかと
鎮めることに特化していて
撃破が必至の相手にはむかぬから
戦闘補助向きな点で言うと…
両手が空くよう
荷に吊るせるような形や小型にできたらより
などなど、所感を話しつつ
もし他の武器案などあれば聞きたいと
研究興味津々なので気軽にお話を
●
桜學府の技術部、帝都鍛冶司。彼らと直に話す機会は早々ないだろう。貴重な機会でもあるこの時間を類は楽しみにしていた。
だから、案内された喫茶店『花筵』でかけられた言葉になおさら戸惑ったのだ。
「花野さんと咲岡さんのおごり?」
「ああ。好きなものを頼んでおくれ」
にこにこまるで孫を見る祖母のような笑顔の花野に、類は少しだけ逡巡する。
(話を聞けるうえ、試作品を使わせてもらったのは此方にも利はあるから、奢られずとも良い気も……いや、無粋だな)
折角の心遣いでもあるのだ、ここはそれに乗っておくとしよう。やってきたパーラーメイドのご注文は、という問いかけに類は答える。
「では、珈琲を一杯いただけたら」
すぐに運ばれて来た珈琲は酸味も苦味も程よく、会話の友にもいいだろう。一口飲んで楽しんだ類は、早速幽玄ラムプについて話し始める。
「気にされていた射程範囲は……鈴の音も使える分然程欠点とは思わなかったかな?」
形無く、空気を伝わり広がるもの。壁などや遮る何かがあれば減衰するだろうが、他の武器であっても同じこと。
「灯りや香りが有限であること、使用者に補充する物を合わせて持つようにすること、一度の持続時間の説明……このあたりがしっかりしてあるなら活用はできるかと」
「そうさね、文書なり口頭なりで説明はしなくてはね。図解があってもいいものかもね」
有限ならばそれを説明しておけば、どう活用するかも見いだせる。珈琲を飲んで喉を軽く潤し、類は続ける。
「鎮めることに特化していて、撃破が必至の相手にはむかぬから、戦闘補助向きな点で言うと……やはり両手が空くよう、荷に吊るせるような形や小型にできたらよりいいのかな」
「持ち手に鎖や紐を通せるようにしたらいいのかもしれませんね。輪を通すのも」
「そうしたら好きな物で固定できるかと」
軽く所感を話し終え、類は笑みを浮かべて話を振る。
「もしよろしければ、他の武装の話も聞かせてもらえませんか。研究に興味があるので、話せる範囲で気軽に」
「そうさね、今はラムプが主だけれど。他の案としては桜コスメに
呪いの観点から力を込めれないか、モダン服に守りの呪いを、とか考えてるよ」
「他のラインでは影朧エンジンや光線銃等、より攻撃に向いたものを開発しているようですよ」
超弩級戦力なら知るだろうこと、彼らの研究で明かせることを花野と咲岡は良い聞き手へと話していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
露にくっかれながら給仕の者に私の分の紅茶セットを一つ頼む。
「報告だが…」
席に着き紅茶を飲み露に頬すりされながら報告しようと思う。
内容はまず実際に行ったことを。
「ラムプ本体は丈夫で耐熱な部分がとてもよかった。
対象を傷つける道具でないから耐久性は申し分ないと思う」
…。(紅茶を一口)
「他の者の報告にもあるだろうが…。
香や鈴の音に歌をのせると効力が高まるようだ。
破邪の魔術をのせても同じ効果が期待できるかもしれない」
と。破邪の術の件は今思いついたことだ。
試してみてもよかったかな…と少し後悔した。
次に気になったこと…まあ改善点を。
「香の交換だが…追加を入れる時に考えたのだがな。
ピンセットなどの器具で入れていると時間がかかる。
早急な交換を必要とすることも少なからずあるはずだ」
…。(紅茶を一口含んで飲む)
「香を入れる部分をケース型にするのはどうだろう?
使用済はボタンで排出し、新しいのを差し替える。
…銃の弾倉のようなものを想像してくれるといいかな」
…。
「露のことは気にしないでくれ…」
神坂・露
レーちゃん(f14377)
可愛い給仕さんに紅茶と桜ケーキってゆーのを頼むわ♪
紅茶はレーちゃんと違うやつをお願いするわね~。
報告は…うーん。レーちゃんがするだろーからなぁ…。
レーちゃんの報告を聞きながらケーキを食べているわ。
あとレーちゃんの頬にあたしの頬つけてすりすりしてるわ♪
あたしもラムプ使って歌を歌ったりしたけどね。
力籠めすぎるとダメなのは試供品だからでわかってるだろうし。
あ!そうだわ。聞きたいことが一つだけあったわ。
「これ、報告じゃなくって質問なんだけど~。
このラムプって影朧さんに渡しても問題なかったのかしら?
今回の梅の精みたいな影朧さんには問題なかったみたいだけど…」
ちょっと乱暴な使い方かなって思っちゃったの。
だってだって。壊れる可能性だってあった気がしたのよ。
問題ないなら同じことをまたしちゃうかもしれないわ。
でもちょっと気を付けてね…だったらしないわね。うん。
レーちゃんがお話してる時にレーちゃんの紅茶を一口貰うわ。
…あ♪この紅茶もとっても美味しいわ。美味しいわ♪素敵ね。
●
ゆったりした時間の流れる喫茶店。パーラーメイドの可愛らしくハイカラな衣装を目を輝かせ見つめる露と、冷静に眺めるシビラ。
シビラは紅茶セット、露はシビラと違う種類の紅茶と桜のケーキのセットを注文し、二人並んで席に付く。向かいには、話を聞こうと巡ってきた花野と咲岡の二人。
他愛もない挨拶を交わした後、運ばれてきた紅茶をシビラは口にする。白いカップの中の色も美しいお茶は、近づければ柔らかな茶葉の香りが鼻を擽って通り抜けて行った。口の中に仄かな茶の甘みと苦味がバランス良く広がっていく。
隣の露はシビラに報告を完全に任せるつもりで、桜のケーキを口にした。ふわりと桜の花の香りが広がり、クリームの甘みと挟まれた果物の甘酸っぱさ、スポンジの柔らかい風味が舌を楽しませてくれる。
「美味しいわ〜」
「……。まず、報告だが……」
時折露がレーちゃんこれ美味しいわ、という感じで顔を輝かせ、すりすり頬ずりするのを止めないままシビラは冷静に話し出す。
まずは、実際にラムプを使用して確認したことを。
「ラムプ本体は丈夫で耐熱な部分がとてもよかった。
対象を傷つける道具でないから、他の用途に使用しない、全力で力を注ぐなどしなければ、耐久性は申し分ないと思う」
「そうかい。通常運用は大丈夫そうで何よりだよ。全力での耐久性は、まだこれからの課題だねぇ」
シビラの隣では露が同意するようにうんうん頷いていた。実際に露は歌を歌ってラムプの効力を上げて見て、実感もしていたのだ。大きな力には耐えられないというの試供品だから、とわかっているだろうし、と。
花野が頷いたのを見ながら、シビラは紅茶を一口、合間に飲んで続ける。
「他の者の報告にもあるだろうが……。香や鈴の音に歌をのせると効力が高まるようだ。破邪の魔術をのせても同じ効果が期待できるかもしれない」
「やはり親和性はあるようですね。破邪ですか、それも相乗効果が期待できるならいいのですが」
それは確認していないが、今ふと考えついたことだった。咲岡がメモを取るのを見ながら、シビラは試しても良かったかもしれないと、少しだけ後悔する。ケーキを食べ終えた露も、一つ聞きたいことがあった、とシビラの言葉が途切れたのに合わせ、口を開いた。
「これ、報告じゃなくって質問なんだけど~。このラムプって影朧さんに渡しても問題なかったのかしら? 今回の梅の精みたいな影朧さんには問題なかったみたいだけど……」
もしかしたら少し乱暴な使い方だったかもしれない、と露は思ったのだ。壊れる可能性もあったかもしれないし、と露が窺っていると花野はふむ、と少し首を傾げた。
「場合によりけり、かねぇ。今回は問題なかったが、もしかしたら力の向きが反転して嘆きを強めたり、傷つける力に変わったかもしれない」
「総べて同一の結果になるとは言えませんね。より安定した方向に、反転しないようにすることも考慮に入れたほうがいいかもしれません」
「つまり?」
「露風に言うなら、ちょっと気を付けてね、ということだろう」
「わかったわ〜」
シビラの総括に、露は頷き親友に頬ずりをする。問題ないなら同じことをまたしてしまうかもしれないが、気をつけるほうがいいなら控えよう、と決めながら。
頬ずりされながらも、シビラは表情を変えずまた紅茶を一口飲んだ。気になったこと、改善点を述べる。
「香の交換だが……追加を入れる時に考えたのだがな。ピンセットなどの器具で入れていると時間がかかる。早急な交換を必要とすることも少なからずあるはずだ」
「ふむ、さてどうするかね……」
シビラが話している間、露はシビラの紅茶を飲んでいた。
「……あ♪ この紅茶もとっても美味しいわ。美味しいわ♪ こっちはそのまま、あたしのはケーキに合う感じ。素敵ね」
彼女の手から紅茶を取り返し、シビラはまた一口飲む。
「香を入れる部分をケース型にするのはどうだろう?使用済はボタンで排出し、新しいのを差し替える。……銃の弾倉のようなものを想像してくれるといいかな」
蓋を開けたままでもいい、射出できればその場に放置することも、あとで回収することもできるだろう。
「ふむ、バネや射出機構を組み込めるか……小型化したままでは難しいかね?」
「勢いはなくてもいい、その場で入れ替えられればいいからな」
「ならやりようはありそうですね」
細々と気がついたことや改良点を示すシビラ、その隣ではぎゅーっとくっついて、頬ずりしている露。
花野は仲良しだねぇ、とほのぼの孫を見るような目だが、メモを取り終えた咲岡は若干気になる様子。
「よろしいので?」
「……。露のことは気にしないでくれ……」
いつものことだから、とシビラの口からは少しだけため息が溢れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紅島・絵梨華
◎
【蜃気楼】
依頼は完了ですね。
幽玄ラムプ、中々に良い品でした。
奢って下さるようですし、お言葉に甘えてお店やお二人のおすすめを頂きましょう。
食事を楽しみつつ一通り試したこととその反応や結果を報告します。
透明化により近くで反応を観察したことは、特に私しかできないことですし(能力を見せつつ)詳細に。
範囲の狭さと強度不足は気になる所ですが、掌に収まる大きさで実現しているのは流石です。
現状の狭さも使い方次第では補えるかと。
これならば既存の装備に組み込み易いと思います。
影朧出現を受け現場に赴く、狙われ易い場所や施設で一定数保管
どちらの場合でも役立つ小回りの効く装備ですね。
彼等の今後の活躍を期待しています。
エリザベス・ファールバッハ
◎
【蜃気楼】
一通りの実験はできたし、影朧も祓えて良かったわ〜
カフェでは絵梨華と同じように、お勧めを聞いて注文しましょう
食事しながら実験の条件、内容、結果を伝えていくわ
ユーベルコードを使った強化を注ぐには些か強度が足りなかった、という点も
残骸を回収した容器も一緒に提出するわね
もう一つ、このサイズでここまで効力を発揮するなら、強度、出力、効果範囲の為に大型化するのも良いと思うわ〜
要所に設置すれば負担は確実に下がる……何かあった時、より有利な環境がある、逃げ込む場所の候補になるだけでも、一般人、學府所属者、猟兵それぞれに大きな意味があることだと思う
今回は楽しい依頼を持って来てくれてありがとう
●
春うららかなカフェーの中、絵梨華とエリザベスは一息ついた。戦いも超えてラムプの実験も行い、癒やしと浄化をもたらしたのだ。若干気を張っていたところもあっただろう。
「これで依頼は完了ですね」
「一通りの実験はできたし、影朧も祓えて良かったわ〜」
「幽玄ラムプ、中々に良い品でした」
浄化と癒やしに特化するという、幽玄ラムプ。使い心地を振り返り、二人は視線を交わし合う。
依頼も無事に終了し、あとは報告を残すのみ。カフェーで奢るという花野と咲岡の言葉に甘え、絵梨華とエリザベスは二人のおすすめを聞く。
「あたしはやっぱり甘味かねぇ。いちごのケーキや桜のプリン、今時期なら桃のババロア」
「食事ならば菜の花のパスタ、キャベツのピザ。ゆで卵をほろほろ崩して挟んだ、ミモザホットサンドも美味しいですよ」
お茶や珈琲ももちろん二人はそれぞれ勧め、絵梨華とエリザベスはそれに加えてメニューのおすすめページも確認し、好みの品を見つけて頼む。帝都のカフェーで楽しめる料理達の盛りつけと香り、もちろん味も楽しんで、それから始まる報告の話。
絵梨華の透明人間の特性を活かした近接距離での観察や、エリザベスの行ったラムプの有無の違いを確認する対照実験など、条件と内容、結果を詳細に。彼女達の話を花野は頷きながら聞き、咲岡は細かくメモを取っていた。
「ユーベルコードを用いた全力での強化には些か強度が足りていなかったわ。ある程度なら耐えそうだけれど、全力での使用を求める戦闘での使用を考えるなら、もう少し強度が強いほうがいいわね」
「ああ、やっぱりねぇ」
「範囲の狭さと強度不足は気になる所ですが、掌に収まる大きさで実現しているのは流石です。現状の狭さも使い方次第では補えるかと。これならば既存の装備に組み込み易いと思います」
「小型ゆえの利点、ですね」
回収したラムプの残骸を差し出し、二人は今後を見据えた利用方法を述べていく。持って使用する以外にも、使い様はあると思うのだ。
「影朧出現を受け現場に赴く際に持つのはもちろん、狙われ易い場所や施設で一定数保管しておく。どちらの場合でも役立つ小回りの効く装備ですね。小型故に場所も大きく取らないのは良い点です」
「逆にこのサイズでここまで効力を発揮するなら、強度、出力、効果範囲の為に大型化するのも良いと思うわ〜。要所に設置すれば負担は確実に下がる……何かあった時、より有利な環境がある、逃げ込む場所の候補になるだけでも、一般人、學府所属者、猟兵それぞれに大きな意味があることだと思う」
「数を揃えるのと、大型化か……強度を上げつつ、というのと並行する必要がありそうだ。文様も小型ゆえに細かく刻んでいる面もあるしね」
「施設や帝都の要所に配備、というのも行政との話し合いが必要になりそうですか、やる価値はあるでしょう。安定した生産供給が行えるようになるのと同時に上げていきましょう」
花野も咲岡も、絵梨華とエリザベスの言葉を受けて真剣に考えている。その姿に絵梨華とエリザベスはゆるやかに目を細めた。きっとこれからも、帝都鍛冶司の彼らは改善を、改良を続けてこの帝都を守護していくのだろう。
「今回は楽しい依頼を持って来てくれて、ありがとう」
「今後の活躍も期待しております」
二人の感謝と応援に、帝都鍛冶司も笑顔を一層華やかに。
「こちらこそ、協力いただきありがとうございました。おかげでラムプをより良くできそうだ」
「報告をより活かせるよう、我々も力を尽くします」
大成功
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天道・あや
◎
ーーとまあ、そんな感じでこの幽玄ラムプ。めっちゃ大活躍! 役に立ちましたぜ……!(グッと親指を立て報告して、ナポリタンを啜る)(これがUDCで言うところの昔懐かしの味ってやつなのかなー? ……若いから分かんないけど!)(何にせよ美味い!)
いやー、頑張って働いた甲斐があったね、うん。
(そうしてナポリタンを完食した後、食後の紅茶を飲みながら)
で、このラムプ、歌や踊りと組み合わせて使うとめっちゃいいですけど……やっぱ効果範囲がねえ。あたしは頑丈だから耐えられたけど、学生さんとかにはちょっとキツいかも?
だから、電灯や提灯みたいに街のあちこちに設置したらどうかなーって
そしたら、効果範囲も広まるし?
●
「——とまあ、そんな感じでこの幽玄ラムプ。めっちゃ大活躍! 役に立ちましたぜ……!」
「そうかい、役だって良かったよ」
己の活躍と影朧に届いたラムプの効力とを不足なく語り親指を立てて褒め称え、あやは目の前のナポリタンを啜る。
熱々の鉄板の上で、オレンジも鮮やかなナポリタンがじゅうじゅう香ばしい香りをさせている。ソーセージはジューシーで、緑のピーマンの苦味がまた甘みのあるケチャップとよく合う。透明な玉ねぎの甘みも加わって深く懐かしい味がすると言うもの。
(これがUDCで言うところの昔懐かしの味ってやつなのかなー?)
まだ年若いあやには、レトロな美味しさはよくわからない感覚である。何にせよ美味しいので問題ない。
「いやー、頑張って働いた甲斐があったね、うん」
しみじみ舌を楽しませてくれる料理を堪能し、きれいに完食してみせた。
ナポリタンの器が下げられた後、運ばれてきた食後の紅茶を飲みながら、にこにこ微笑ましげに見ていた花野と咲岡へ、あやは改善点を語り出す。
「で、このラムプ、歌や踊りと組み合わせて使うとめっちゃいいですけど……やっぱ効果範囲がねえ。あたしは頑丈だから耐えられたけど、学生さんとかにはちょっとキツいかも?」
「ふむ、相乗効果はいいけれど……やっぱり範囲は弱点だねぇ」
猟兵ならば、今回のあやのように耐えて浄化もできるだろう。けれど櫻學府の學徒兵、一般人には厳しいものがある。
「だから、電灯や提灯みたいに街のあちこちに設置したらどうかなーって。そしたら、効果範囲も広まるし?」
なら、数多く配置して効果を広げたら、というのがあやの考えだ。きらきらの紋様が刻まれた硝子が輝くラムプを効果範囲が繋がるように配置すればいいのでは、と。
「ふむ、設置か……範囲が広がるのはいいかもね。ちょっとお上とのやり取りは必要そうだ」
「町単位や、個人で希望者に試してもらってもいいでしょう。量産体制を整えながらの課題ですね」
もしも実現したら、きっときれいなラムプがあちらこちらに飾られるだろう。あやは少しだけそれを楽しみに、紅茶を飲み干すのだった。
大成功
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