第二次聖杯戦争⑰〜願い、咲く前に
●グリモアベースにて
金沢南総合運動公園にあるバラ園に、季節外れの薔薇が咲いたという。
「さっそく猟兵さんたちにお願いしたいことがあるんだよ! ここに咲く薔薇……正確には薔薇の形をした『エリクシルの力の断片』を全て滅ぼしてほしいんだよ!」
佐伯・キリカ(陽気に元気・f00963)は真剣な面持ちで、猟兵たちに語る。
いま公園内のバラ園では、決死の覚悟を固めた魔槌しなもんと雪降ここあの二人を覆い隠すほどに薔薇が咲き乱れているらしい。
二人はお互いを所持品ごと生き返らせるユーベルコードを持っている。そのうえ『聖杯剣揺籠の君』撃破までに二人を倒せなかった場合は行方をくらましてしまうのだというから厄介だ。
だが、バラ園ではしなもんとここあ以外にも厄介な問題が発生しているのだとキリカは言う。
「実は、一部の猟兵さんがバラ園の薔薇の中であるものを発見したんだよ。あるもの、っていうのは——鈍い輝きを持つ『万能宝石エリクシル』の萌芽なんだよ!」
この萌芽は、しなもんとここあから放たれる強い「願い」を感じた『エンドブレイカー!』世界からの侵略者「魔神エリクシル」が世界を越えて顕現しようとしている証拠だ。
この世界に、敵勢力のさらなる増加を許すわけにはいかない。
「ここあとしなもんとの決戦もある中で大変だけど、バラ園でのエリクシルの萌芽阻止……頼んだよ、猟兵さん!」
そう言って、キリカは猟兵たちを急ぎバラ園に送り出すのだった。
雨音瑛
金沢南総合運動公園にあるバラ園で、薔薇の形をした『エリクシルの力の断片』の破壊をお願いします。
●プレイングボーナス
薔薇の形をした「エリクシルの力の断片」をひとつ残らず滅ぼす。
第1章 冒険
『エリクシルの薔薇を刈れ』
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POW : 強烈なユーベルコードで万能宝石エリクシルを叩き潰す
SPD : 増殖以上の速度で薔薇園の薔薇を刈り取る
WIZ : 強い「願い」をぶつけ、エリクシルの反応を探る
👑11
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朱酉・逢真
心情)バラを全滅させりゃアいいのかい。シンプルでわかりやすくってイイやなァ。襲ってこないのンもありがてェ。ああ、だがフツウのバラもあるのか、そりゃ困るなァ。バラはいまを生きる"いのち"だ、俺が害しちゃいけねェ。
行動)《虫》どもよ、バラ園中に飛び散れ。俺の病毒を運べ。お前たちの"知覚"で見れば、バラとエリクシルの見分けはつくだろう。エリクシルだけにとまれ。俺の病毒は宝石も腐り溶かせる。さァ飛び回れ、いいかバラに触れるなよ。それすッと俺が罰受ける。
その男にとって、仕事を増やすオブリビオンは敵だ。
とはいえ今回増えているのはバラであるのだが、突き詰めればオブリビオンの仕業だ。そしていま猟兵に求められているのは、薔薇の形をした『エリクシルの力の断片』を全て滅ぼすことだ。
「今回はシンプルでわかりやすくってイイやなァ」
そのうえ何かに襲われることもないというのだから、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)にとってはありがたい。
芳醇なバラの香りが立ちこめる中、逢真は表情ひとつ変えずに数歩ほど歩いた。
どのバラも地を這うように、あるいは夏空の入道雲のように、四方八方に成長している。
「“いのち”が満ちてるねェ。さアて、フツウのバラは害さねェよう、エリクシルだけを探すとするかァ」
逢真の周囲で何かが形作られてゆく。それが瞬く間に《虫》の形状になったところで、逢真は眼前で人差し指を立てた。
「いいかお前たち、エリクシルだけにとまれ。フツウのバラには触れるなよ」
《虫》たちは、次の言葉を待つように滞空している。
捉えどころのない笑みを浮かべて、逢真は口を開く。
「それすッと俺が罰受ける。さァ飛び回れ、お前たちの"知覚"で見ろ」
何せバラはいまを生きる“いのち”。逢真が害してはいけないものだ。
その身に逢真の病毒を宿した《虫》が、バラ園じゅうに飛び散ってゆく。
バラをはじめとする植物に触れぬよう、逢真はその場でじっと待つ。
上下しながら拡散する《虫》のうち、数匹が降下を始めた。
バラの花弁に《虫》が触れる。とたんにバラは黒ずみ始め、どろりと形を崩す。
「お見事、その調子で頼むなァ」
逢真はひらりと片手を振り、《虫》たちの働きを見守る。
宝石をも腐り溶かせる逢真の病毒は、エリクシルの力の断片のみを確実に消滅させてゆくのだった。
大成功
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凶月・陸井
まさかエリクシルまで介入しようとしてるとはな
しなもんとここあの決戦に向けても
ここで顕現を許すわけにはいかない
「此処で全部切り払って、阻止する」
手っ取り早いのは断片だけでなく
バラ園の全部を吹き飛ばす勢いで攻撃する事なんだろうけど
この素晴らしいバラ園を壊すのは嫌だし、何より
「妻も相棒も、そんなことをしたと知ったら泣いちゃうからな」
だからこそ俺ができる手段で対応する
バラ園についたら極限まで集中
130m範囲内で視認可能なエリクシルの断片を確認して
【水遁「水獄檻」】を使用
気分は切り戻しの剪定だ
乱舞する水の苦無一本一本を制御し
確認した薔薇を全て苦無で穿って破壊する
「ちょっと気を使うが…これくらい」
公園の通路は、増殖する薔薇で埋もれつつあった。
あまりに非日常な光景に、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は漆黒の瞳を瞬かせる。
「これは……想像以上にすごいな」
ここまで薔薇が増殖してしまったのなら、バラ園の全てを吹き飛ばす勢いで攻撃するのが最も手っ取り早い手段だろう。
だが、この素晴らしいバラ園を壊すことには抵抗がある陸井だ。
何より、妻と相棒が「陸井がバラ園を壊した」と知ったら、泣いてしまうに違いない。
そして、バラ園のどこかでしなもんとここあも決戦に望んでいるこの状況で、エリクシルの介入を、顕現を許すわけにはいかない。
陸井は静かに、確かな意思をもって深く呼吸をした。
「此処で全部切り払って、阻止する」
自分ができる手段でエリクシルの断片の破壊を行うべく、陸井は意識を研ぎ澄ます。
風が葉や花を揺らす音が遠くなってゆく。陸井の視界には、無数の薔薇のみが映る。
極限まで集中し、半径130mの視認可能な薔薇、その中からエリクシルの力の断片と思しきものの位置を把握する。
陸井はひとつ、またひとつとエリクシルの力の断片を視認してゆく。
やがて範囲内にある対象の位置をおおよそ確認し終えると、ゆっくりと視線を上げた。
「閉じろ、水獄檻」
陸井が静かに告げ、膨大な数の水の苦無が放たれる。苦無のひとつひとつが先ほど認識した薔薇を穿つ。エリクシルの力の断片は、地面に落ちる前に砕けて消えてゆく。
気分はまるで切り戻しの剪定だ。
「ちょっと気を使うが……これくらい」
無害な薔薇はそのままに。
乱舞する水の苦無が、ひとつ、またひとつと凶兆の薔薇を穿っていった。
大成功
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大倉・新月
私も、満月ちゃんと別れたくないから
ここあちゃん、しなもんちゃんと戦った時は変だなって思ってた
だけど。幸せの形、やっと、見つけてくれたみたいで私も嬉しい…!
きっと、二人とも、塵になっても一緒だよ…
ずーっと一緒にいたいよね
世界結界で分かたれて寂しい思いをしていた間の悲しみと
同じ「願い」を込めて薔薇の反応を探る
満月ちゃんの大鎌と、UCで召喚する死霊たちに殖え続ける薔薇を刈り取ってもらいながら
万能宝石と思われる本命の薔薇を探り当てていくね
念入りに呪殺弾で破壊しよう
いびつな形で叶うとしたら…最悪だもの
でも、歪な叶い方ってどんなのかな?
片方は死んだまま、とか…? あれれ?
訪れた猟兵をも飲み込みそうな勢いで、弾けるように薔薇が咲いていく。
「この中に万能宝石があるんだね。満月ちゃん、行こう」
大倉・新月(トータルエクリプス・f35688)の言葉に、傍らの姉はこくりと頷いた。
大鎌を振るう満月の周囲に新月の召喚した死霊騎士と死霊蛇竜も加わり、増える薔薇を刈り取ってゆく。
「あとは……」
新月は胸の前で手を合わせて願う。世界結界で満月と分かたれ、寂しい思いをしていた間の悲しみと同じ「願い」を。
『エリクシルの力の断片』の反応を探るためだ。
満月と死霊たちによって刈り取られた薔薇の花弁が舞う中で、新月は二人の少女と戦った時のことを思い出した。
あの時は何かがおかしいと思っていた。けれど今は喜ばしく思える。それは、二人がやっと幸せの形を見つけてくれたからだろう。
「きっと、二人とも、塵になっても一緒だよ……」
ゆっくりと瞬きをして、新月は呟いた。
「ずーっと一緒にいたいよね。私も、満月ちゃんと別れたくないから……よくわかるよ」
ただ一緒にいたいという、とても強く純粋な願い。
もしエリクシルが関与するようなことがあれば、間違いなくいびつな形で叶ってしまう願い。
でも、いびつな叶い方というのは、どんなものだろう。
疑問に首を傾げた新月の脳裏に、一つの可能性が浮かんだ。
「たとえば、片方は死んだまま、とか……?」
あれれ、とさらに疑問に思うが早いか、新月の視界に光るものが映った。
満月と死霊たちが刈った先に咲く薔薇のいくつかに灯る、鈍い光だ。
新月は即座に意識を切り替える。
「見つけた、万能宝石」
直後、満月に刈り取られて宙に舞った光る薔薇目がけて、新月は呪殺弾を放った。
呪いの塊を受けた薔薇は光を失い、硝子のように砕けて消えていった。
大成功
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フェリチェ・リーリエ
【POW】
まったく、エリクシルはどこにでも現れるだべな!ニョキニョキニョキニョキ増殖しやがって!雨後のタケノコか!
このバラの中からエリクシルを…いちいち探して壊してくのは面倒だべな、じゃあ強い願いを…誰がぶつけるかーい!エリクシルに願った結果どういうことになるか、歴戦のエンドブレイカーたるおらはよく知ってるわ!
じゃあどうするかって?すべて爆破すればよろしい、解決だべな。
エリクシルの萌芽を見つけ次第、スーパーパンプキンボムを投げつけ周囲のバラごと爆破!エリクシルなんぞひとつ残らず駆逐してやるべ!
本物のバラはこんな冬には咲いてねえはずだし、万が一本物のバラが混じってたら…ごめんってことで!
バラ園の中で腕組みをした一人のヴァルキリーは、悩んでいた。
エリクシルを探して壊していかなければならないのだが、無数に咲き、しかも増殖するバラの中から、というのは面倒以外の何物でも無い。
「じゃあエリクシルに強い願いを……誰がぶつけるかーい!」
隣の空間にツッコミを入れる、フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうななさい・f39205)。エリクシルに願った結果がどういうことになってしまうのか、歴戦のエンドブレイカーたるフェリチェはよく知っている。
「ええい! エリクシルの萌芽なんか、すべて爆破すればよろしい!」
鼻息荒く、フェリチェは駆けだした。
「しっかし、ニョキニョキニョキニョキ増殖しやがって! 雨後のタケノコか!」
茂みをかきわけ、アーチを登り、フェリチェはエリクシルの萌芽を探してバラ園じゅうを駆け回る。
「どこだべ、エリクシル! 大人しく出てくるべ、おらが木っ端微塵に爆破してやるべ!」
バラの花弁や葉を頭につけ、ときどき棘が刺さって悲鳴を上げながらも、ついにフェリチェは鈍い輝きを放つバラを見つけた。
「見つけたべ! これで爆破だべ! ――破!」
勝ち誇った笑みを浮かべるフェリチェの前に、百を超えるカボチャが出現した。
カボチャは勝手に転がり、バラに触れる。すると直後、派手な爆発が起きた。リア充を、もといエリクシルを爆破するためのスーパーパンプキンボムだ。
「ひとつ残らず駆逐してやるんだべ! だいたいなあ、本物のバラはこんな冬には咲いてねえはずだべ! でも万が一本物のバラが混じってたら……」
爆発、爆発、爆発に次ぐ爆発。片っ端からスーパーパンプキンボムを投げつけて、爆破していくフェリチェは、一瞬無表情になり。
「ごめんってことで!」
爆発を背に、てへぺろした。
大成功
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センテリェオ・テソロ
エリクシルの横暴を許すわけにはいかないな
片っ端から狩り尽くす
青玉髄の刃を出して、手にも数本、構えておこうか
さぁ、剪定の時間だ
数が多いなら、それだけ手の届く数も多かろう
途切れるまで、祝着で攻撃し続けていこう
美しい薔薇の姿をしていようと、中身を知っているからな
切り落とすことにも、踏み潰すことにも、何の躊躇もない
願いというものは誰しもが抱くものだ
それを歪めておいて、叶えてやったと宣う奴らが、
ただひたすらに、気に入らない
ふたりで生き抜くと、覚悟を決めた彼女達に、俺が抱くのは敬意だ
勿論、彼女達を止めるべく戦う者らに抱くものも
わかるだろう。貴様らは、決戦の場には相応しくない
邪魔を、しないでもらおうか!
いまや暴力的なまでに膨れ上がった薔薇の花や葉、蔓がバラ園を満たしていた。
「少しばかり生長し過ぎたようだな。さぁ、剪定の時間だ」
一呼吸の後、センテリェオ・テソロ(水面石・f38974)は増殖する薔薇の中に踏み込んだ。
センテリェオの行く手を遮る薔薇は、彼女が手と足に備えた刃によって瞬時に裁ち落とされてゆく。
咲き続ける薔薇の密度は自然に高くなる。そうなれば手の届く範囲が増えるというものだ。
対象が範囲から離脱するまで上限なく攻撃できるセンテリェオのユーベルコードは、増殖の速度と同じかそれ以上で薔薇を切り落とし続けていた。
ひとかたまりの薔薇が途切れたところで別のエリアへとその身を躍らせ、斬撃を繰り出し続ける。
薄水色の宝石を研磨して仕上げられた刃は、咲き誇る薔薇を切り落とす。
迷いなく進む足は、落ちた薔薇を踏み潰す。
その行動のどちらにも、一切の躊躇は無い。
たとえ美しい薔薇の姿をしていようと、中身が――エリクシルがどういうものかを、センテリェオはよくわかっている。
「誰しもが抱く『願い』……それを歪めておいて『叶えてやった』などと……!」
そのようなことを宣う傲慢な奴らは、ただただ、ひたすらに気に入らない。
絶対に、エリクシルの横暴を許すわけにはいかない。
そして、センテリェオが敬意すら覚えた「彼女達」は、このバラ園で決戦に臨んでいる。
ふたりで生き抜くと覚悟を決めた彼女達。そして彼女達を止めるべく戦う猟兵達。彼ら彼女らが本気で臨む決戦の場に、エリクシルは相応しくない。
「邪魔を、しないでもらおうか!」
青い髪がなびく。赤い瞳が鈍い輝きを捉える。
青玉髄の刃を煌めきかせ、センテリェオは邪悪な薔薇を無数に砕いていった。
大成功
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アポリト・アペルピシア
ふん、折角の悲劇に無粋な横槍を入れるではないか
まあ良い…あちらは他の猟兵に譲るとしようか
我は邪魔者を悉く滅ぼし、更なる絶望を彩ってくれようぞ!
とまあ、大仰な前置きだったが…やる事は煩わしい雑草の処理
この『ほんの小さな火』で焼き払うのが手っ取り速かろう
ククク…増える傍から燃え落ちていく様は中々愉快ではないか!
燃え残ったエリクシルとやらの断片は
我が手で粉々に砕いてしまえ
我らにも、そして恐らくはあの哀れな乙女達にも、このような石ころなど不要なのだ
このバラ園のどこかでは、「一緒にいたい」と願う二人の少女と戦っている猟兵たちもいるのだろう。
「……まあ良い。あちらは譲るとしようか」
アポリト・アペルピシア(魔王アポリト・f31726)は、増殖する薔薇を見遣った。
この中に、悲劇に横やりを入れる『エリクシルの力の断片』があるのだという。そんな無粋の極みともいえる存在に対し、魔王がな成すべきことは決まっている。
「邪魔者は悉く滅ぼし、更なる絶望を彩ってくれようぞ!」
そう宣言したアポリトの頭上に、火の玉が出現した。
「クックックッ……汝らを焼き尽くすにはこの程度の火で充分よ……」
小さな火の玉はゆっくりと移動し、増殖する薔薇に触れた。
すると当初の大きさなど想像だにしないほどの炎となって燃え広がり、アポリトの眼前を赤一色に染め上げた。
「ククク……増える傍から燃え落ちていく様は中々愉快ではないか!」
煩わしい雑草を処理するならば、焼き払うのが手っ取り早い。
炎は薔薇が増える速度を上回り、庭園全体を燃やし尽くすほどの勢いで広がってゆく。
「クックックッ……フハハハハ……ハーッハッハッハ!」
炎を背景にした魔王には、高笑いがよく似合う。
数秒後、何かが爆ぜる音が聞こえてアポリトは片手を掲げた。
「うむ、このあたりで許してやるとしよう。我の慈悲に感謝するが良い」
アポリトが念じると、炎は一瞬で収束した。
そうして燃え残った薔薇を、巨大なガントレット『
我が手』でいくつかつまみ上げる。
「このような石ころ、我らには不要なのだ」
指先に力を込め、すりつぶすようにして砕く。
「恐らくは――哀れな乙女達にも、な」
指先に込めた力を緩めると、砂塵が零れ、消えていった。
大成功
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