第二次聖杯戦争⑯〜ふわふわこいぬ
それはぷるぷる小さく震える子犬だった。
『ハ、ヒャワン!』
『吼えた』
『とうてぇ』
『かわいい』
『とうてぇ以外になんて言ったら良いんだ』
『しっかしあの変な印邪魔くさいな』
『それな』
ぷるぷるぷる。
震えるミント(フェンリル喚べる)を崇拝する男女問わずごっつい騎士達は、あんまり近付くとミントたんが怖がるのでちょっと離れた距離で見守っていた。
ミントがぷるぷる震える度に、息をするように口々に“とうてぇ”やら“可愛いが過ぎる”と口走りながら。
実はミントがぷるぷるしているのは屈強な彼らの熱視線に怯えているからということを、彼等は気付かない。
●
「ねぇ見て!かわいいわんちゃんが来ましたわ!」
あのゴーストウルフ、フェンリル喚べますけど。という声をニコッと笑って壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)は聞き流した。
「うふふ、良いですねぇかわいいわんちゃん。ぷるぷるしてるけれど、でもとってもすごいことが“できるようにされて”しまいましたのよねぇ」
わあ、分かっていたんだ。
良かったとか声が聞こえたが気のせいである。
猟兵達を見た杜環子が、くすくすと笑って告げた。
「この“震えるミント”への対処をお願い致します」
そう言って取りだしたのは“震えるミント”と名の書かれた子狼の資料。
“幸運の子ですわ”と笑いながら、杜環子が震えるミントの写真の上に無限大のマークを描く。
「ハビタンント・フォーミュラによって双福されたこの子のカリスマ性、そしてこの
マークを“移植”されたことで、この子は彼の巨獣フェンリルの召喚を成せる者へとなってしまったのです」
先程の明るさは形を潜め、剣呑な色の見え隠れする瞳を弓形にして言葉が続けられる。
「本来であればこの子を討ち取れば終わります。ですが余りに壁が分厚く……しかし、この壁――ミントを愛するこの騎士達、頭の中まで空っぽではございませんの。ただ愛する推しの為に頑張りたい、そんないじらしい子達ですわ」
壁。即ちミントを愛し勝手に付き従う元ラダガストの配下だった騎士達。
男女問わず誰も彼もが屈強で、ミントに刃を向けようものなら大群で全力で殺しに来るのだという。
「ふふ、所謂推し活というやつかしら?素敵な愛ね、かわいいわ。で、この愛に乗ってやるのはいかが?ミントちゃんには無限大のマークは重すぎるやら、ミントちゃんの良さを聞いてやると良い――……とは、思いませんこと?」
そう囁くと口元を隠しすとくすくすわらいながら、“上手く意気投合や理解を促せれば、驚いたことに騎士達は無限大のマークを破壊しミントが逃げるのに合わせ撤退するのですわ”と杜環子は言った。
「相争わずして刃を納めさせることもまた、強き者の在り方ですよ」
“お茶の支度がいるかしら?”そう朗らかに微笑む杜環子が鏡を輝かせた。
皆川皐月
お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
もふもふのはなしをしよう。
●注意:こちら一章のみの『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオです。
●プレイングボーナス!:人狼騎士達に「何らかの」対処をする。
●第一章:『フェンリルを統べる者『震えるミント』』with屈強な騎士達(ミント最推し)
おしの はなし は ながくて すごいぞ !
ミントがいかに可愛いかの話しとか凄い好きな人達の集いです。
ちょっと圧が強いけど、どうかお手柔らかに。
●戦争シナリオの為、🔵達成数で〆切を予定しています。
オーバーロードすると推しの話しで盛り上げってきゃっきゃが長くなります。
●その他
複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】がオススメです。
【★今回のみ、団体は2名組まで★】の受付です!
IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすく助かります。
マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございますので、良ければご活用ください。
ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。
最後までご閲覧下さりありがとうございます。
どうか、ご武運を。
第1章 ボス戦
『フェンリルを統べる者『震えるミント』』
|
POW : なぜかフェンリルに慕われている
【魔狼フェンリル】を召喚する。騎乗すると【フェンリルの毛並みに隠れた】状態となり、【フェンリル頼みのパワー】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。
SPD : けなげっぽい目で見つめて噛み付く
【かみつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【顔】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : くぅ〜ん、きゃんきゃん!
自身が【ぷるぷる不安な気持ち】を感じると、レベル×1体の【魔狼フェンリル】が召喚される。魔狼フェンリルはぷるぷる不安な気持ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
夜刀神・鏡介
◎
オブリビオンはすべからく倒すべし。それが世界の為なのだが……
しかし、この戦いはまだ先が長い。ひとまず倒さずにやり過ごせるならそれもいいだろう
余力を残すのは大切だし、こいつらを倒すのは……色々な意味で骨が折れそうだ
刀は抜かず、あくまで穏便な雰囲気で人狼騎士達に接近
例えば「かわいい子犬ですね」辺りからはじめて反応を窺って対応していこう
正直話の内容はあんまり興味がないとはいえ、可愛らしい見た目なのは間違いないしな
適度に相打ちを入れつつ、さり気なく「その印は邪魔だな」とか「似合ってないと思う」「あるがままの姿が良いのでは」みたいな事を言っておこう
あ、お帰りになる?まあ、なんというか……お元気で?
●刃向けるは
オブリビオンをすべからく倒すこと。
それは猟兵の宿命に近いが永久に戦い続けるのは厳しいと、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は思う。
「……ひとまずやり過ごせるならそれもいいけど、」
『ヒャン!』
『ミント様とうとい』
『やば……かわ』
開けた場所でポツンと震えるミント――を、茂みから眺める騎士達……の、背を眺めながら鏡介は思う。
「(こいつらを斃すのは……色々な意味で骨が折れそうだ)」
帯刀していた刃を解き、人好きする微笑みを浮かべ騎士へと声を掛けた。
「――かわいい子犬ですね」
『! お前もそう思……誰だ貴様は』
声に笑顔で振りむいた騎士の一人が、鏡介を認めた瞬間、眼光鋭く睨み上げられ改めて鏡介は実感する。
目の前の男が優秀な騎士なのだと。背を走った寒気を押し留め、殺気立たず穏便に。
「遠目にも可愛らしいので気になって」
微笑み崩さず見詰め返して――暫し。
鏡介へ警戒していた騎士が微笑み鏡介を招くと、茂みの向こうのミントを指差し囁く。
『分かるか、あの愛らしさが!』
『同志と言わざるを得んな』
『ありがとう若者、我々は嬉しい』
屈強なおじさん3人、にっこり。
左右と背を囲まれながら見たミントは……ぷるぷる、きゅ~ん。震え鳴く姿は可愛いと言えば、まあ。
「……(あんまり興味は無いけれど見た目は)可愛いらしい」
“だろう?!”と盛り上がる騎士に鏡介は囁く。
「でもあの印、なんなのでしょう?」
『あれは変な女がミント様に突然』
『許し難しっ……!防げなかった……!』
「いや、あの似合っていないのを壊せばいいのではないですか?」
『『『それだ』』』
わぁすっごいかんたん。
恭しくミントに膝をついた騎士の剛剣三振りが深々と無限のマークを貫いた瞬間、亀裂が迸り粉々に砕け散った。
『くぅん』
身軽になり帰ろうと鳴いたミントを追って深々鏡介へ礼をして騎士が去ってゆく。
『さらばだ同志よ!』
それはそれは爽やかに。
「なんというか……お元気で?」
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
可愛いが過ぎるわかるうぅぅ
圧が強い?
問題ない
僕もミントちゃん大好きです
プルプルしてる様も庇護欲くすぐるし怯えて垂れた耳も眉も可愛過ぎるし柔らかそうなもふもふ尊いし
シュッとした足元のレッグウォーマーみたいな白毛とかお洒落な格好良さも垣間見えてただ可愛いだけじゃないというか、もういっそミント様と呼ばせて下さいというか
本当はもふもふは存分に愛でて抱きしめたいのだけどミントさんの場合もう存在そのものが尊過ぎてそれすら烏滸がましいというかもう怖がらせてごめんね眺めるだけで充分ですありがとうございますという気持ち
騎士さん達の推しポイントも是非聞かせてくださいな…!
え、僕も厚強い?
それはごめん、つい本能で
●圧?問題ないですが?
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が一瞬騎士の向こうのミントを見て相好を崩したが、真面目な顔をしなおした澪が老騎士へ手を差し出した。
「可愛いが過ぎるのわかる」
『わかるか』
瞬間、ガッシィ!と固い握手が二人の間で結ばれた。
推しの前に争いなど些末。一も二も無く澪と老騎士は茂みに飛び込み震えるミントを見た。
たかが子い――子狼と侮るなかれ、震えるミントブルーの毛並みはふわふわとこの冷たい風に揺れ愛らしく、潤む金色の瞳はどんな宝石よりも艶やかだ。
脚の間にしまわれた尾の控えめな淑やかさと困り眉のラブリーさなど天元通り越して世界がひっくり返りそうな至高さである。
――とは、老騎士は念仏のように言っている内容の一部抜粋。優しさというよりも同好の志としてか、端から澪が“わかる”と頷くおかげか非常に老騎士は気分良さそうなほくほく顔であった。
最初の出逢った瞬間のいかつい顔など嘘のよう。
老騎士が
念仏を唱えきったのを受け継ぐように、今度は澪の番。
「プルプル震えてる様も庇護欲をくすぐるし」
『わかる』
「怯えて垂れた耳も眉も可愛すぎるし」
『わしも思った』
「柔らかそうなもふもふも尊いし!」
『ほんとそうじゃな』
本日2回目のガッシィ!という固い握手。
「もういっそミント様って呼ばせてほしい」
『ええぞ』
「えっ」
『――わし“ら”も呼んどる』
老騎士が示した背に、頷く騎士の群れ。
「~~~っありがとう!ああもうほんと最っ高!本当はもふもふは存分に愛でて抱きしめたいのだけどミントさんの場合もう存在そのものが尊過ぎてそれすら烏滸がましいというかもう怖がらせてごめんね眺めるだけで充分ですありがとうございますという気持ちで――ハッ、ごめんちょ、ちょっと重――」
『……ええぞ』
「えっ」
『わしらも同じ気持ちじゃ』
ガッシィ!
本日三度目の固い握手と、ミントを驚かせない静音性に富んだ会話は別れ際まで楽しく続く。
大成功
🔵🔵🔵
フレティア・ハイマール
あらあら、可愛らしいわんこさん。
あの仔の魅力についてのお話をして来れば良いのね。
うん、頑張るわね。
というわけで人狼騎士の皆さんに接触。ミントちゃんについてのお話をお聞かせくださいな、とお願いするわ。
必要ならUCも併用しつつ。
皆のお話には決して否定的なリアクションは返さず、肯定や共感の言葉で相槌を打っていくわ。
誰であれ何であれ、好きなものや好きなことについてお話するのは楽しいことだし、わたしもそういうお話を聞くのは好きだもの。
彼らが語り尽くすまで、何時間でもお付き合いするつもりよ。
一通り聞き終えたら、無限大の渦の破壊を切り出してみるね。
可愛いあの仔に、あんな物騒なモノは…ちょっと、ね?
●お話し聞きましょ?
「あらあら」
情けない声や姿に、茂み越しに見る騎士の群れ――の、背後より少し離れた所にフレティア・ハイマール(アバター・オブ・マザーブレイン・f29910)は花の様な桃色の髪を冷たい風に遊ばせ立っていた。
「可愛らしいわんこさん。ふふ、あの仔の魅力についてお話しすればいいのね」
“うん、頑張るわ”と小さくガッツポーズをしていざ、
戦場へ!
『やっば……ミンティー可愛すぎ』
『馬鹿野郎。ミント様と呼べ』
噛み合ってない人狼騎士二人のへ近付いたフレティアが、こっそりと。
「ミントちゃんの素敵なお話し、わたしにも聞かせてくださいな」
『やっぱり思うー?かぁわいいよなぁミンティー』
『貴様、何者だ……!おい!ミント様と呼べ!!』
振り向いたのは若い騎士二人。明るい声の陽気な男と、真面目そうな男の凸凹コンビであった。
「ミンティーもミント様も、わたしはかわいいと思うわ」
『ほらミンティー可愛いっていう奴に悪い奴いないって』
『貴様っ!ふん!ミント様はなぁ!』
「えぇ、ミント様は?」
にこにこのフレティアが嫋やかに座し微笑む姿に騎士達は顔を見合わせたのち――……怒涛の如く話し出す。
『ミント様はそこいらの狼より遥かに華奢でお可愛らしい!』
「えぇ、えぇそうね」
『ミンティーってそこにいてぷるぷるしてるだけでマジ世界変るから!』
「うん、かわいい」
フレティアの否定無い優しい相槌は話したがりには非常に相性が良い。
交互に喋る騎士達の最中、さり気無くフレティアは囁く。
「ね、いいかしら?――あのマークは、かわいいあの仔を物騒にしてしまわない?」
その一言に騎士達は止まった。
『あー邪魔だわあれ』
『やはり――……』
瞬間、騎士達が貫いたマークが粉々に砕け散る。
ビビり振るえるミント。
見下ろし、笑顔の騎士二人。
『『かわいーなー!』』
「えぇ、そうね。やっぱりその方がすてきな仔よ」
聞き上手なフレティアと騎士の語りはまだ続く。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
可愛いもののお話しはいくらでも聞きますとも。
だってかわいいんですからしょうがないですよね。
そのままでも十二分にかわいいのですからマークは無粋と言うものですよね。
振るえる様子もかわいいですが、出来るなら全力で甘えてくれる方が嬉しくないです?
甘えてくれなくても頼って頼られてですと信頼関係があるようでうれしくなりますよね。
もふもふは良い物です。ちょうど良いですからお気に入りのブラッシングアイテムなどお話ししましょうか。
白銀は体が大きく翼がある分大変ですが、お日様の下できっちりブラッシングするといいにおいがするんですよ。
白銀もとってももふもふでご紹介したい所ですが……ミントさん怖がらないかしら?
●陽の下へ
その時、ぱぁ――と輝いた青い眸の意味を、この時まだ騎士達は知らなかった。
何者!と威嚇試験を向けたのは先程まで。
「――可愛いもののお話しはいくらでも聞きますとも」
瞳輝かせた藍がそう口にしてから、藍は2人の少女時人狼騎士と語り合っていた。
「あのふわふわの毛並み、素敵です」
『わかる』
『ミント様が震えるとお目めもけなみもうるぷるつやふわっていうか――』
「『あぁー……』」
「そう、怯える様子も可愛いですが――」
『『……で、ですが?』』
たっぷり、一拍。
「出来るなら全力で甘えてくれる方が――……嬉しくない、です?」
藍の意を決した思いは、大抵のことに怖がり震えてしまうミントには少々ハードルの高い提案。
だが実を言えば――……きっとおそらく、ミントを推す誰もが一度は夢に見たことのある光景。
眼を見開いた少女人狼騎士達が藍を見て、お互いを見て、ミントをじっと――……見た。
『『天才か!?』』
『ひゃうん!』
余りの大きな声にミントが驚いてぴょんと飛んだが些末なこと。
『え、え、やばいやばいやばい天才じゃん』
『ふええそんなのゆめだよぉ』
「えぇ。そして元々そのままでも十二分にかわいいのですから、あのマークは無粋と言うもの」
笑い合っていた騎士二人が藍の言葉に首を回してミントを見詰めじっと考えた後に言葉無く刃を取る。
『たーしかに――ッ!』
『一理ある――ッ!』
連面の気合染みた声、二つ。
躊躇いなき二振りの一刀が情け容赦なくマークを真っ二つに壊しきっていた。
ぞっとするほどの力――に、この場で最も怯えていたのはミント本体で。
『くぅ……』
ふて寝のように伏せるとプイっとそっぽを向いたから。
お詫びのブラッシングは丁寧に。ただ、藍の白銀の気配には怯えてしまったので今回はちょっとだけ藍の相棒はお留守番。
『『はぁー……超かわいい』』
「ふふ、お日様の下ブラッシングできっちり綺麗にふわっふわの良い匂いになりましょうね……!」
大成功
🔵🔵🔵
エリシャ・パルティエル
◎
可愛いものにきゅんとなる気持ち、わかるわ!
ミントって子も幸か不幸か
すごい力を手に入れちゃったのね
本人…本狼は望んでないのに
でも争わずに済むならそれに越したことはないわ
屈強な騎士たちの推し話聞かせてもらおうじゃないの!
あたしは猫ちゃん派だからね
わんちゃん(狼だけど)のきゅんきゅんポイントを教えてほしいわ!
騎士たちの言葉には相槌を打って
彼らの推しへの愛を全力で受け止めるわ
あたしも猫ちゃんだけでなくわんちゃんも好きなのよ?
でも義弟がわんこっぽく思えてから
わんちゃん見てると義弟の顔がちらついて
純粋に可愛がれないというか
義弟も可愛いんだけどね
わかるかしらこの複雑な気持ち
ね、あの邪魔な印破壊してみない?
●幼爪に
「(可愛いものにきゅんとなる気持ち、わかるわ!)」
可愛い――……それは老若男女問わず、心揺さぶる可能性を持つもの。
弱々しい狼こと震えるミントの姿を目にしたエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)が眦緩め微笑んだ――が少しだけ、胸が苦しい。
「本人……ううん、本狼は望んでいないのに」
遠目にも見える無限のマークの存在。
「(あれさえ、無ければ……)」
密やかにエリシャは意を決し騎士へと踏み出していた。
『尊い……すき、ミント様』
そう茂みで囁く少年騎士へそっと近づき、エリシャは何気なく会話を試みてみる。
「うんうん、たしかに猫ちゃん派のあたしからみても可愛いわ」
『?!』
少年騎士は驚いて目をぱちぱち。
そんな姿を優しく見つめるエリシャに少年騎士は驚いたものの小さく会釈をして。
「あたしは猫ちゃん派。でもだからこそわんちゃんのきゅんきゅんポイントを教えてほしいわ!」
“きゅんきゅんポイント”それは魅惑の響き。
エリシャの言葉を起因に少年騎士が口にしたのは毛並みや色、そしてミントの優しさと――……
『ミント様の月色の瞳が綺麗きっと月をお食べになったんだよ……!』
眩い瞳に“なるほど”と相槌打つエリシャの頭過った義弟のこと。
「なるほど……わたしは――ふふっ」
話と少年騎士せいで余計にちらつく義弟の顔。どこかわんこっぽい可愛い子。そんなせいか余計に素直に素直に犬を可愛がれなくなってしまうのがエリシャの性。
そう零せば少年騎士は笑っていたけれど。
「複雑な気持ち、分かるかしら?聞いて思ったけれど改めてあのマーク、邪魔よね」
『――やはり、思いますか?』
“ええ”と同意すれば少年騎士が逡巡のすえ刃を抜いた――と思えば、それは瞬刃。一足飛びにミントと距離詰めるとマークを叩き切ってみせた。
勿論、怖がりのミントが畏れぬよう細心の注意が払われた刃はミントを怖がらせること無く役目を果たし、静かにエリシャへ上品な一礼を残し去ってゆく。
大成功
🔵🔵🔵
重松・八雲
【もふ会】
おお…!!遠目にも分かるあの
存在感…!!
これはいかんな、放ってはおけん――一目見ただけで思わず駆け寄りよしよしもふもふなでなでと甘やかしたくなるあの
威容――!
たまらんのう!
うむ、わかっておる!
そう、とてもよくわかるぞ――騎士の方々よ
(伊織への同意――と思いきや
とてもすんなりと屈強な“とうてぇ”とーくに溶け込んで頷きまくり)
可愛い――実に可愛い、まことに可愛い、最高に可愛いと申すしかない
くぅ、あの潤んだおめめで見つめられてはどんな猛者とて一溜まりもあるまい!
まさに可愛いは正義!尊さの塊じゃなー!!
(以下えんどれすもふぷる最高万歳とーくが続く!)
呉羽・伊織
【もふ会】
(ウチのお供ズも勿論可愛いケド、コレは大変重要なオシゴト――浮気じゃないヨ、とか謎の脳内前置きしつつ)
成程――ありゃある意味最強だな、ウン
(あんな顔されたら)手も足も出ないとはこのコト…!
って落ち着け爺サン実行に出るなよ~!
いや待ってなに秒で意気投合してんの!?
屈強圧が増えたせいであのコもっと震えちゃってない…??
(なんかもう止まりそうにない皆々サマの勢いに圧倒されつつもミントの様子を窺ったら――あっ可愛すぎたすんごいうるうるぷるぷるしてr)(吹き飛ぶ語彙力)
いや〜、強面魔狼達もこの姿を前にしては平伏するしかないよネ、ウンウン
守りたい、この
ミント…(語彙力が行方不明)
●お主のミント様は、どこから?
「(――浮気じゃないヨ)」
そう心で相棒たちへ念ず呉羽・伊織(翳・f03578)の小さな不安も何のその。並び立つ重松・八雲(児爺・f14006)は、遠目にも分かるミントの震え、そしてその震えが陽光の下で産む毛並みの艶やかさに打ち震えていた。
「おお……!!遠目にも分かるあの
存在感…!!これはいかんな、放ってはおけん――!」
一目で庇護欲そそられるあれこそ、ミントのカリスマ性の一つ。
元々持ち合わせていたものをハビタント・フォーミュラによって増幅されていることもあり、八雲には余計に効果的にかかったか映ったか。心の裡でお供ズへ言い訳をしていた伊織も祈りを終え改めてミントを見詰め、その輝くどころか溢れてやまぬ
カリスマ性の力に舌を巻く。
「成程――ありゃある意味最強だな、ウン。あんな顔されたら手も足も出ないとはこのコト…!」
「一目見ただけで思わず駆け寄りよしよしもふもふなでなでと甘やかしたくなるあの
威容――!」
が、伊織の横で大笑い(ミントを驚かせない距離・声量で行われています)をした八雲に近づく二つの影。
ハッと伊織が突っ込むよりも早く、影が動く――!!
『はぁーミント様は尊いのぉ』
『そうじゃのぉ、ありゃあ孫より可愛ゆうて叶わん』
「そう、とてもよくわかるぞ――騎士の方々よ」
影――老騎士二人は瞬く間に八雲と意気投合したのだ。
「えっ………ちょ、ちょっと!」
ちなみに今にも走り出してミントへ降れんばかりの勢いだった八雲を注意しようと、“って落ち着け爺サン実行に出るなよ~!”と言いかけた伊織は慌てて言葉を引っ込めたほど。
いやいや早いって……!と伊織が幾ら思えども、八雲と老騎士二人はミントへの議論が徐々熱を帯びてゆく。
『主中々わかっておるのう。見よあのミント様の春のような毛並みのお色味、何と特別なことじゃろう!』
『ええのうミント様ええのう。はやりわしらの目に狂いはない!なにせあの満月よりも月らしい――いや、あれは黄金の花とも言うべき瞳かのう!』
例えを美しいと褒める八雲と老騎士の一人が“天才じゃあ!”やら“センスあるのう”と言葉が行き交う最中、八雲がふと言った。
「たまらん……――とは、思わぬか?」
『まさかお主……!』
『それは、もしや……!』
老騎士二人と、八雲の視線が交差して――一拍。
『『「たまらんのう
!!!」』』
わっはっはっはっは!と豪快な笑いは天高く。
「いやもうほんと、どこどうしたらあんなになれるの……ミントがビックリしちゃ――……う」
もうしばらく止まりはしないだろう、と伊織が八雲から目を逸らし、ミントを見た瞬間、稲妻が奔る(※イメージです)ミント――……いや、ミント様が輝いて見えるではではないか
……!!!!
かわいい。
すっごい、かわいい。ぷるぷる不安気な様子に反し酷く手入れをされたその毛並みも、何もかもが――!!
伊織の語彙力を削ぎ転がすには十分過ぎた。立っていただけでこの瞬殺ぢから。容赦も慈悲も無い。
「あ」
「あ、あ――かっわいすぎ。すぎるすぎたすぎたんだよっ!すんごいうるうるぷるぷるしてふわふわできらきらで――!!」
「『『お主も?』』」
そう重なる3つの声に振り向いた伊織が小さく頷いた時、心は一つになる――……。
しょうがないよね、だってミント――かわいいもん。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
山立・亨次
言葉で語るのは得意じゃねぇが
話を聞くことなら出来る
だが、まずは『語れる相手』だと認識されることが重要だ
だから敢えて言う
解る、ミントは可愛い
何が可愛いかって?
そりゃ全部だ
……しかし、それじゃ納得しねぇだろう
全部、なんて『適当に言ってるんじゃないのか』と思われても仕方がない
と言うか俺がそっちの立場でもその疑惑はちょっと浮かべる
だからそうだな、敢えて言うなら……
まずは毛並みだ、モフモフしていながら整っている、これは奇跡のバランスだな
あとは目もつぶらで綺麗だよな、控えめなミントブルーにも金色がよく映えるし
体型も細身だが決して貧弱ではなく、だが内気で震える姿も庇護欲が……っと
こんなモンでいいか?
自分で語るよりアンタらの話が聞きたい
俺よりミントのことを知ってるだろ
アンタらの話を聞いて、より理解を深めたい
(語ってくれたら心からの相槌を打ちながら話を聞くし
意見を求められれば澱みなく答える)
もうそんな時間か、残念だ
機会があればまた話聞かせてくれ
※基本無表情で寡黙
でありながら隠しもしない可愛いいきもの好き
●長話にはやはりお茶を
白い息を吐く。
本人に自覚もあるが基本的に山立・亨次(人間の猟理師・f37635)は言葉を使うことを得意としていない。
そんなことをする暇があるのなら、包丁を振って調理をし、その味で全てを伝えればいい――そういう生き方が齢17にして染み付いてしまっているからかもしれない。
「まぁでも――話を聞くくれぇなら」
そう踏みこんだ先で、茂みに隠れながら“尊い”と囁き合う騎士の一画へと声を掛ける。
「(話は、まず“語れる相手”でなきゃだめだ。そう、思われないと――)」
意を決す。
『ほんと、尊いお姿だ』
「――解かる。ミントは、可愛い」
ばっと振り返ったのは青年騎士。
突然後ろからミントへの想いを肯定されるとは思わなかったのだろう、どうしてと言いたげな顔できょとんと亨次を見上げてから、ハッと。
『なっ――貴様にミント様の愛らしさの何が分かる!言え!!』
刃を抜き打っての威嚇。
僅かに犬歯を見せたその威嚇など、正直亨次からすればちょっと強い風が吹いた程度の感覚だが相手は真面目にしなければ。
「(語れる相手に――ならねぇと)――全部、可愛い」
『…………』
暫しの、間。
亨次はいたって大真面目に答えたのだが、逆に素直も素直の素直過ぎて人狼騎士の青年は呆気にとられた顔をしたあとこちらも根が大真面目なのだろうが――……。
『当然だ
!!!!!!!!!』
「そうだ、全部だ」
『やはりな
!!!!!!!はっはっは
!!!!!見る目があるではないか
!!!!!』
さっきの静けさが飛んだ。
たぶんこちらがこの青年の素直な姿のようであった。ふわふわと白銀の尾を揺らし爽やかな笑顔を湛えた姿。
そして爆音ボイス。
「……いいのかお前。これで納得するのかよ」
『当たり前だ。俺はお前に嘘偽りを感じない、お前もミント様を可愛いと思うのならば俺はその言葉と心を否定しない』
その言葉にどこか安心した亨次は想像していた不安が当たらなかったことに内心安堵した。
本当にてっきり『適当なことを言うな!』と刃を交える可能性だってあったのだ。
ただただこの人狼騎士の青年が愚直で真面目にミントを崇拝すればこその信頼であると同時に、亨次は騎士のミントへの不穏な行為は全て切ると言わんばかりの空気に背筋に走った怖気を感じていた。
言外の言葉は、人獣問わず大抵が本音である。だからこそ、気を付けねばならない。下手を撃てば――恐らく、斬られる。
亨次は静かに息を吐く。
同時に素直に思ったまま、心を伝えようと思った。
恐らく真摯であればこのきしはそれを理解してくれる、と。
『で?ミント様がそれだけじゃないというのはお前も分かっているだろう?』
ニッと笑って続きを促す青年騎士に、息を抜いた亨次が頷く。
「そうだな……敢えて言うなら――」
けほんこほんと咳払い。
ん゛ん゛っと喉の調子も整え――いざ。
「まずは毛並みだ、モフモフしていながら整っている、これは奇跡のバランスだな。あとは目もつぶらで綺麗だよな、控えめなミントブルーにも金色がよく映えるし、体型も細身だが決して貧弱ではなく、だが内気で震える姿も庇護欲が……」
『わかる
!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
吹っ飛びそうな爆音の同意に茂みの向こうのミントが飛んだ。縦に。
そして明らかに『(はわ……はわ、はわわ……)』と言いたげな不安そうな不審そうな視線を亨次たちのいる茂みへと向けている様子であった。
「……あっぷるぷるしてる」
『なにぃ
!!!!!???』
おいやめろミントびっくりしちゃうだろ、と亨次はまたも突っ込み損ねる。
なにせ酷く素直な輝きを湛えた瞳でひどく楽し気にしているものだから、どうにも言いにくくて仕方が無いのだ。
「……それより、アンタは」
『む。俺か?』
亨次の言葉に青年騎士はきょとんとする。
そうして、うーんと唸った後――……先程の大きな声が嘘のように、青年騎士は膝を抱えるとそうっと囁きはじめた。
「おっ……お、れは、その、別に……」
「俺が語るより、俺はアンタの話しが聞きたい。俺よりミントのこと知ってるだろ?」
常と同じく淡々とした声音ながら優しく水を向けてやれば、照れた様子ではにかみながらその青年騎士はそうっとミントを語りだす。
「教えてやろう、ミント様の御足はお体に比例し小さいだろう?あの肉球がたまらなく可愛らしいのだ。何より肉球も柔らかく、我々の中でも器用な者が御爪も含めお手入れをさせていただいている。更に日々マッサージ、毛並みのケアも欠かせず、気持ちよくなるとミント様は寝息を立てる。その寝息がまた実に可愛らしい。常の不安さは無く我々を信頼し預けてくださるミント様の尊さと言ったら他にはなく、我々騎士団としても――……」
つらつら糸の如く紡がれる話は終わらない。
時に亨次が相槌を打てばにこにこ楽しそうな青年騎士。
だが、問題は一つだけ。
「……もうこんな時間か、残ね――」
『待て』
「どうした」
『……――俺の話は終わっていない』
ぎり、と掴まれた腕に走った痛み。そして見上げる鋭くも爛々とした瞳に、そろりと亨次は座り直す。
「(……やっぱり長いな)」
『――だからな、我々は~~……』
続く話の終わりは見えずとも、非常に平和な時間だけが流れてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
チェルシー・キャタモール
◎
フェンリルとの戦いは過酷だったわ……
いよいよ親玉ね!
ここは躊躇なくボコボコに、と思ったけど
これは攻撃出来ないわね……
まず『クロスシザーズ』を持っていくわ
そして騎士達の目の前で投げ捨てる
戦う意志がないことを示すわ
大丈夫、ミントは絶対に傷付けないと約束する
あなた達、ミントの味方なのでしょう?
可愛いわよねミント
毛並みももふもふだし
鳴き声も可愛いし
ちなみにこれは本心よ
フェンリルとの戦いは過酷だったとはいえ、悪気のない親玉まで恨むつもりはない
……私もきっと、昔はリリスだったもの
だからここはお互い様よ
相手が「同志」だと思ってくれたら話を聞くほうに徹しましょうか
ミントに対するポジティブなトークなら基本は同意しておくわ
時々話題も振りましょうか
貴方達の思う尊いポイントとかも教えてちょうだいな!
あ、私は足元がふわふわしてるのが可愛いと思うの
いいわよね、ふわふわ……
あと気になるのはあの無限マークかしら
ミントには少し似合わないと思うのよね……
みんなはどう思う?
ふわっと違和感を流しておきましょうか
●ふわふわ女子会
「フェンリルとの戦いは過酷だったわ……いよいよ親玉ね!」
この時、しゅっしゅとチェルシー・キャタモール(うつつ夢・f36420)拳の素振りをし、蛇ちゃんは“しゃー!”と威嚇ごりごりだった。
だが。
『きゅーん……』
「これは……!」
震えるミントブルーの毛並みと潤む大きな瞳の印象的な小柄な狼。
あれこそ
フェンリルを統べる者――!
それを囲む騎士二人はチェルシーの姿を見止めた瞬間に殺気立ち、警戒心を全面に出した瞳で刃を抜いた。
『貴様何者だ!』
『武器を捨ててください!さもなくば斬ります!』
震えるミントを護るように前へ出た屈強な女騎士二人が、チェルシーと蛇ちゃんに鋭い剣の切っ先を向け吼える。
溜息を、一つ。
チェルシーは持っていた子供くらいの高さのある
大きな裁ち鋏騎士達へ向け投げ捨てるように放った。
『っ!?』
『何を――!』
「あなた達、ミントの味方なのでしょう?――可愛いわよね、ミント」
ふうっと柔らかに微笑み浮かべたチェルシーの言葉に、騎士達は狼狽える。
剣を向けた自身達がおかしいのだろうか?と顔を見合わせてしまっていた。だがチェルシーはその姿にさえ微笑み、告げた。
「大丈夫。私はミントを絶対に傷つけないと約束する」
真っ直ぐ。
じっと騎士を見据え告げれば徐々に剣先は地面へ向き、最終的に騎士の意地なのだろう勢いよく地面へ突き立てると仁王立ちでチェルシーへと向き直った二人の騎士が声を張る。
『――相分った!そうだ、ミント様は――大っっっっ変お可愛らしい
!!!!!!!!』
『そうです!とってもぷるぷるふわふわラブリーです!』
声の圧でミントがまた縦に飛んだ。びっくりして。
だがミントがゆるゆると尾を振っているあたりミント自身好かれている自覚はあるのだろう。ただ、耳はぺしょりと沈んだままだけれど。
「――そうね、毛並みももふもふだし、鳴き声も可愛いし」
『よく分かっているな!!!!素晴しい洞察力だ
!!!!!』
『はい、ミント様はとってもラブリー、そして先輩お声が大きいです!ミント様びっくりしちゃいます!』
大柄な女騎士を“先輩”と呼んだ小柄な騎士――以降は“後輩”とする、がミントのことを絡めて声の大きさを指摘すれば、慌てた先輩が口を押えた。
『そっ!!!そんなもの早く言え……み、みんとさま……』
『――きゅぅん』
『ああ先輩ほらほら駄目ですよ敵から目を離してはー』
「ふふ、大丈夫よ。“何もしない”って約束したでしょ?それにさっき言ったのは本心よ」
それは良かったです!と笑う後輩騎士の目を――チェルシーは見ていた。小柄な彼女は決して剣を手放さず、じいっとチェルシーを見詰め続けているから……最も油断ならないのは後輩の方だろう。
『――貴女、ミント様はフェンリルを喚べるんですよ?怖くないんですか?』
「そうね、フェンリルとの戦いは過酷だったわ」
口にした瞬間、“ほらやっぱり”と言わんばかりの視線が突き刺さり、先輩騎士が剣を握った。
「……でも」
『『でも?』』
「悪気の無い親玉まで恨むつもりはないわ……だって、私もきっと――昔は、リリスだったもの」
リリス――……それは快楽の中で死した残留思念が、銀の雨の力を以ってゴースト化し、より快楽を求めるようになったもの。現行、猟兵としてリリスの長とされた揺り籠の君の下行われる戦であるが、チェルシーにリリスであった記憶は無い。だが自覚はある。
その意味を込め伝えれば、一瞬色めき立ったのは先輩だけ。
後輩は酷く凪いだ瞳でチェルシーの放った裁ち鋏とチェルシーを交互に見ると、にっこりと笑っていた。
『リリス――!』
『そうですか。先輩だめですよ、この方武器を捨てています。武器無き者を切ったとあればミント様の名に泥を塗ります』
ギリ、と歯を噛んだ先輩は後輩の言葉に刃を納めると、突如勢いよく両手で同時に自身を叩く。
パァン!!と響いた音にまたもやミントが驚いて縦に飛び、とうとう後輩の後ろへと身を隠した。
『私は!!ミント様に仕えし人狼騎士が一人!――ミント様の良さを貴様も知っているとみた!!』
『先輩声を抑えてくださいー』
『っ、ミ!!!――ント様の良さ、今度は私の話も聞くがいい……』
徐々に尻窄みになる声。ちらちらと後輩の後ろに隠れるミントをきにしながら先輩が言葉を紡ぐ様子に、とうとうチェルシーも、そして後輩も笑いだしたのは無理もない。
「いいわ、教えて頂戴!貴女達の思う、ミントの尊いポイントを!」
“朝、朝日に遠吠えする姿勢が美しい”と先輩がしみじみ言えば、後輩は“寝起きのミント様は目がしょぼしょぼで可愛いんですよ”と自慢する。
更に“何より肉球です!固そうに見えて案外デリケートなんですよ”とドヤ顔の後輩に負けじと先輩は“ミント様はよく全てを見ておられる!下らぬ口をきく輩もいるが、観察に徹していることを気づかぬ愚かさを露見させているだけだ!”と鼻息荒く自慢して。
その度に“そうね”“そうなの?”“凄いわ……!”と微笑み聞き役に徹するチェルシーの上手なこと。
女三人寄ればなんとやら。気付けば笑い合い、結局最後には頷き合って声は重なっていた。
『『「やっぱりふわふわしていて最高!」』』
「あ。ねぇ?私あの無限のマークが気になるのだけれど」
『ん?あぁ、あれか』
『あぁ、これですか……』
「そうよ!それミントには似合わないと思うのだけど……」
おずおず話を振ったチェルシーの言葉に騎士が顔を見合せたのも一瞬。
上段から振り下ろした先輩の刃。下段から掬い上げるように抜き打たれた刃。二つの剣閃が容易にマークを砕き斬る。
ごくりと、チェルシーは息を呑んでいた。
『これで邪魔は無くなったな』
『そうですね、綺麗なミント様です!』
「そ――う、ね」
これこそ人狼騎士。
やはり正面から戦わぬことこそ、最善であったのだと実感した瞬間である。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◎
ヴァシリッサ(f09894)と
彼女はミントが気に入ったようだ
相手は一応敵なのだが…はしゃぐ様子に少し苦笑
震えながら戦場に立つミントには多少同情
ああ、手出しをするつもりは無い
推し…?
人狼騎士達の勢いに困惑、話を振るのはヴァシリッサに頼りつつ聞いてみる
このゴーストウルフの何が彼らを惹きつけているのか気になるのも本心だ
人狼騎士の勢いに圧倒されつつ聞き役に徹する
どんなに大切か、熱意は伝わった…十分すぎる程な
…まぁ、それに
大切なものを守り、力を貸したいという想いは理解出来る(ヴァシリッサを少し見て)
その辺りには素直に同意して
推し話に花を咲かせるヴァシリッサを後押し
ミントがどれだけ大きな存在であるかは良く分かった
それなら尚更、この戦場に身を置く意味はない
ハビタント・フォーミュラに無理やり力を植え付けられた状況がミントにとって良い状態であるわけがないだろう
見ろ、あんなに震えて…騎士の視線に怯えているような気もするが、それはそれだ
…最推し
言われて、そうかと
内心大いに動揺しつつ、照れる気持ちを隠して返す
ヴァシリッサ・フロレスク
シキ(f09107)と♪
◎
もう気分はデート中に散歩中のわんこにばったり出くわしたノリで
Heeey?
Cute Pup…♪
はぁぁァ…❤かわい…
円らで儚げなオメメ…ふわふわな毛並み、お耳、尻尾…
あァ…食べちゃいたいくらい…♪
Hey,Guys?Stay,stay.逸ンなよ、喩えだッて♪分かるだろ、同志?
人狼騎士が過剰反応すれば冗句だと一笑しつつ
【コミュ力】も活かして人狼騎士たちと意気投合すれば、むつかしい(?)話はシキに任せて、アツく尊さを語り合う
あぁ、そうだねェ。"推し”を守るためならなンでもする、わかりみ深いわァ
シキをちらりと一瞥して
にしてもそのアタマの。ソイツはチョイと頂けないねェ?蛇足もイイとこだ
完成された
美だッてのに
折角の至高のPrettyさが台無し、そう思わないかい?
"
引き算の美学"サ
アタシらの手で、推しを更なる高みにアゲてこうじゃないか♪
…ま、アタシの最推しは
Darlin'だケドね♪
●二人で
微笑みミントを見やるヴァシリッサ・フロレスク(
浄火の血胤(自称)・f09894)を横目に、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はどこか常より緩んだ空気ながらもビター笑みを浮かべていた。
ミントを“尊い”やら“かわいい”と呟き続ける騎士三人がいるのだから、本来警戒しなければいけない状況だというのに――……シキが小さな溜息をつこうとも、まずシキと共に“デート”に訪れた様な気分のヴァシリッサはその喜びの方が勝っている。
更に可愛いミントまでいるとなれば、ご機嫌意外にどうなれば良いというのだろう?
ちなみに溜息をついたシキだが、笑顔のヴァシリッサへあるのは愛しさと“ヴァシリッサの方が余程可愛いのではないか”という気持ち。
シキ自らそれを此処で吐露することはないだろうが、ミントを気に入り微笑むヴァシリッサを愛らしいと思う心があることには変わりない。
近寄る二人に気付き、帯刀した刃に手を掛けた人狼騎士が振り向く。
『何奴だ!』
『――もしや猟兵?』
『ここにミント様が震えていらっしゃると知っての行いか』
警戒心を剥き出しにした人狼騎士が今にも刃抜き打ちそうな勢いで身構えるも、端から戦う気の無いヴァシリッサはどこ吹く風。
そっと護るように前へ出るシキの背からミントを覗きこむと小さく手を振った。
「Heeey?
Cute Pup…♪」
『ひゃうんっ……!』
「(可哀想に……怖いのか)」
シキは思う。小柄なミントに対し護衛といえども屈強な人狼騎士3名で固めることはないだろうに、と。3名共、控えめに言っても身体も顔もゴツいせいか余計にミントが小さく見える。
一方人狼騎士側と言えば、片やうっとり微笑む口紅鮮やかな女 ヴァシリッサ。片や同じく人狼ながらどこかミントを思いやる視線を向ける男 シキに騎士が戸惑ったのも一瞬。
見慣れぬ赤に怯えた(と騎士は思っているが本当は周りの騎士の大きな声に驚いた)ミントが震えた瞬間、勢いよく剣を抜いた騎士達の目が爛々と2人を見たのだから。
『言え!!何のために――』
「俺達はミント――……いや、お前達に手出しする気は無い」
向けられた剣先からヴァシリッサを庇い、視線逸らさず真っ直ぐ告げたシキという同族に、人狼騎士はやはり戸惑いを見せていた。
『ならば、何をしに……』
「はぁぁァ……♡かわい……」
甘さのある声に誰もが耳を揺らした。
声の主は、うっとりとミントを見詰め笑み浮かべるヴァシリッサだ。
恍惚としているように見えて、滲む無邪気な少女さは楽し気に騎士越しのミントを捉え、瞳を細めると囁くように言葉を紡ぐ。
「柔らかそうなお耳……円らで儚げなオメメ……ふわふわな毛並み、華奢で折れそうな脚、尻尾……」
一部不な言葉もあったものの、頭の先から尾の先まで撫でるような言葉にミントがどこか擽ったそうに体を揺らせば、褒められた毛並みが陽光に輝いた。
そんな姿に微笑んでいたヴァシリッサの――……ヴァシリッサの金色の瞳が、ゆっくりと弧を描く。
楽し気に――そう、言葉で表すならば“まるで得物を見つけた狼”のように。
「あァ……」
それまで照れくさそうだったミントが素早く尾をしまい、もっとぷるぷる震えだして。
綺麗に微笑んだヴァシリッサは“ミントの気持ちも騎士の察知も分かって察した”上でゆっくりと口を開いた。
「――食べちゃいたいくらい……♪」
ちなみにこの言葉が聞こえた時、シキが内心頭を抱えたのは秘密である。
『――なんだと貴様!』
『ミント様怖がってるだろう!』
『俺達のミント様だ――先に食うのは俺だ!』
『『は?』』
最後の発言をした真中に立っていた騎士は、左右から鋭い拳をくらい撃沈。
ヒュウ、と口笛噴いたヴァシリッサと“あの拳少し見えなかったな”と冷静なシキへ、二人の騎士があ深々と礼をした後口を開く。
『揶揄うのはやめて頂きたい』
『悪いね、バカがいたもんで』
「い……いや、」
言葉濁したシキが倒れた騎士を一瞥する。未だ鼻血を流したままだが、息はあるようだった。
「Hey,Guys?Stay,stay.逸ンなよ、喩えだッて♪分かるだろ、同志?」
『あぁ、分かっている』
『ミント様を菓子のようだという女騎士もいるからな』
ちなみにヴァシリッサ自身、可能性としては考えた がこの展開は予想外。
だが一切ノらぬ騎士を相手にするより余程都合が良かったと言い聞かせながら問いかけた。
「で?アンタ達はミントのどこが“推し”なワケ?」
『我々か?』
『そうだな――……俺は無心に虫を追いかけぴょんぴょん飛んでいるミント様が推しだ。あのポーズは普段ミント様が普段隠されている腹がチラリと見えていい』
『む。お前はそれか。渡しは追いかけっこを所望されたミント様が転んでしまった瞬間が愛らしいと思う』
「かァわいいねェ……♪」
マニアックであった。
その後もああだこうだと続き、爪切りを嫌がるのが可愛いやら、穴掘りに成功するとお喜びになる瞬間の表情が……、など既にシキは遠い目でヴァシリッサに任せていた。
が、
小さな合図を受けそうっと身を乗り出したシキが流れを変える。
「ミントがどれだけあんたらにとって大きな存在であるかは良く分かった。が、なら尚更、この戦場に身を置く意味はないな?」
シキの言葉に騎士二人が頷いた。
「
その無限のマークも“ミントにとって”良い状況じゃないだろう」
『……わかっている』
「そうそ、そのアタマの。ソイツはチョイと頂けないねェ?蛇足もイイとこだ。完成された
美だッてのに」
分かりやすくため息を吐いたヴァシリッサがピンと指を立て、ニィっとわらった。
「“
引き算の美学"サ。アタシらの手で、推しを更なる高みにアゲてこうじゃないか♪」
その指先が差したのは頭上。くうるり指先で丸を描きスパリと切るジェスチャーで話は十分。
『後押し、感謝する』
先程まで倒れていた騎士が鯉口を切る。
ただ一刀。しかし惚れ惚れする剣技の冴えはミントを驚かせるより早くマークを断った。
その剣技に瞳輝かせたシキに寄り掛かる、知った軽さ。
見下ろせば寄り掛かったヴァシリッサがシキの頬に手を添え自身と視線を合わせると先とは違う微笑みで。
「アタシの最推しは
Darlin'だケドね♪」
「…………――そうか」
触れれば伝わりそうな互いの鼓動は、内緒。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラップトップ・アイヴァー
うふふ、それはまた面白いことをやっていますわね…!
…本当に、面白いことを。
美希が言っていたわね、世界の救い方なんて幾らでもあると。
白黒つかぬのなら、殊更美希の優しさをなぞらせてもらうわ。
Trigger off.
此処では死体にならずに、抵抗や交戦の意思がないことを両手を挙げて示しますわ。
それで彼らの話を聞いてあげますの。圧など意に介さず、理解を示し意気投合をして解決を図りますの。
あなた方にも、推し続けたい存在がいること、私は肯定しますわ!
私も良いなって思いましたもの、ミントという子は可愛らしくて大人しい子で、ずっと応援し続けていたくなる…。
一個吼えるだけで、あのような愛嬌が生まれるなんて、すごいことですの!
…でも、正直に言ってみて。
あの犬ちゃんに世界を滅ぼす力など似合わない、そうは思いませんこと?
ほら、あの無限のマークがそう。いつまでも健気で可愛いミントを推し続ける為には、あれがすごく邪魔だと、そうは思いませんこと?
怖がらせることもしたくないのでしょう?
なら、ね。
あなた方のすべきことを。
●一つの世界の救い方
「それはまた面白いことをやっていますわね……!」
うふふ!と笑った
ラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)の視線の先、開けた場所にミント。少し離れた茂みにミントを熱く見つめるおじさんらしい騎士。
念仏のように“ミントたんミントたんミントたんミントたん”と聞こえる様子に、少し。いや結構シエルの気が遠くなったのは、きっと気のせい。
「えぇ……ふふ、本当に面白いことを」
本当のこと言うと、シエル的には今すぐめちゃくちゃ突っ込みたいところだった。
きっと美希でも突っ込んでいるのではないだろうか……と3回くらいシエルは考えたのだが、たぶん美希はあの震えるミントを目にした瞬間“お姉ちゃん見て!かわいいよ!”とそっちに気が行くはずだから――……。
「(つまりは私がその役目になりますのね……あぁでも、美希なら)」
これは救うこと――望まず力植え付けられた小さな弱き狼を。壊されそうなこの世界を。
「それなら、美希――貴女が言っていましたわね」
“お姉ちゃん、世界の救い方はいくらでもあるんだよ!”
“知ってる?”なんてお茶目に笑う、美希。
「――Trigger off.」
撃鉄は下ろさない。
上げて、いつものホルスターへ仕舞い込み、死体のお姫様はお休みなさい。
一歩、
ラップトップが――恐らく中年騎士の広過ぎる間合いに踏み込んだ瞬間勢いよく騎士が刃を抜き打った、の間では確認が叶ったが、バトロワプレイヤーたる
ラップトップさえ目で追いきれぬ瞬剣がひたりと首に添えられた。
『――何者だ』
恐らく、今、
ラップトップが両手を上げたまま踏み込まねば、腕も頸も飛ばされていたことだろう。
「あなた達のお話しを聞きに来た者ですわ」
『……ほう。それにしてはその歩み、経験のある者に感じられるが。足音を置き忘れか?』
癖だ。
バトロワにおいても足音は上位に行くほど自然に無くしゆくもの。猟兵になる以前からのシエルの癖に人狼騎士は既に気づき警戒していたのだ。
『まぁお耳のよろしいこと。でもごめなさいね?私、今日は“そういう意味”ではお休みですのよ』
戦う気は無いのだと案に言えば、強面の目を吊り上げた騎士はじいっと
ラップトップを見下ろし逡巡の末ゆっくりと刃を離す。
納刀しない――その警戒心に内心頷きながらシエルは騎士越しのミントへ視線をずらす。
「ねえ?あのミントという子――……怖がらせませんの?その剣は」
『――っ、ミっ!!』
騎士が勢いよく振り返れば、“きゅうん!”と弱々しい声と軽い足音が逃げてゆく。
『っ……!っ、ミ、っ、っっ!!ミント様ぁっぁぁああ!!』
「(あらまぁこれは少々面倒そうですかしら)」
藪蛇ならぬちょっと手の係りそうな騎士の雄たけびと男泣きが落ち着くのを待つも、中々泣き止まぬ騎士へ
ラップトップが肩を叩いた。
「たしかにあのミントとい子――」
『ミント“様”だ』
「ああ失礼。ミント様は可愛らしくて、」
『当然だ』
「大人しくて、」
『控えめで実に謙虚なお方だ』
「ずっと応援し続けたくなるような、」
『なるようなではない
!!!!!!!!なるしするのだ
!!!!!!!!!』
「(私の耳は無事かしら)」
突然の爆音ボイスで吹っ飛ばされそうになりながらなんとか頷いた
ラップトップにの肩を力強く掴むと、泣き泣き言うのだ。
『我々はっ!ミント様ほど愛らしい同族は見たことが無い!!!あれほど幼く小さいながら子の戦場に立ち、かの銀誓館相手に生き残り続けたあの堂々たる雄姿!!!!なんということだっっ!!!我晴れは護らねばならない
!!!!!!あの美しい毛並みを!!あのお優しい眼を!!!やさしきお心を
!!!!!他の者の下についていた我が身を裏切りと言わず受け入れてくださった寛大さを知っているか?知らないだろう、我は――……』
ラップトップは知っている。こういう話はめちゃくちゃ長い、と。
「(だが負けてはいられません……!私だって、)」
ここで
ラップトップが為すべきは、“震えるミント”をハビタント・フォーミュラが植え付けた力から解き放つこと。
ラップトップは既に自身の感じた並々ならぬ騎士の手腕に確信を持っていた。恐らく、この騎士はあのマークを壊せる腕がある――……。ならばとる手段はたった一つ。
「あのい――……ミント様には、“世界を滅ぼす力”は似合いませんわね」
『当たり前だ。ミント様の日向ぼっこ姿こそ至高』
「そうですの。なら、ほら……あの無限のマーク。そう、あの健気で繊細で可愛らしいミント様にはあまりにも重たく、邪魔だと思いませんこと?」
騎士が、一度は逃げたが日向に誘われ戻ってきたミントを見た。
その目が“無限のマーク”を見たのを横目に確認し、
ラップトップは追い打ちをする。
「ほら――……ミント様はそれだけで最高ですのに、他のお飾りの方が目立っていると思いますのよ」
『……――けしからん』
背筋の凍るような声だった。
それだけで、ただこの騎士が強いことが分かってしまう。
咄嗟に自身の得物に手を掛けかけた
ラップトップの手を、片手が止めた。
「(美希
……!)」
止めた腕が、動こうとする手をそうっと撫でる。
まるで“大丈夫だよ”と言うように。
『ミント様……頭上へ刃を揮う無礼、どうかお許しください』
低い声が落ちたのはほんの僅か。風が――……ただ走った風が、一瞬でミントの頭上にあったマークを斬り伏せた。
「(これほどとは)」
この刃は人類側へ降り押されぬ安心を、肌で感じたラップトップは痛感する。
「あなたの為すべきことがなせ、なによりですわ」
言い聞かせるような言葉が、冷えた空気に白い吐息と溶けてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
和井・時親
杜環子さんがお茶の支度してくれるらしいから
戻ったらありがたくいただこう
だって
聞きたくもない萌え語りを興味ありげに聞かなきゃいけないんだ…それって拷問だろ
ミントについては噂を耳にしたくらいだ
俺は直接会ったこともない
嘗ての戦場の話はしない
さすがに法度だろ?
キミたちはいちご牛乳って知ってる?
俺の推し
飲む?なんて勧め《未開封》のパックを投げる
結果はどうあれ俺はストローさして飲む
わかるよ
俺も推しについて語ってしまうし
つい今みたく布教してしまうから
キミたちの愛する子
可愛いね
弱々しくて庇護欲をそそられる
キミたちの話に興味があるんだ
聞かせてよ
彼らの熱い話に辟易しつつも表情は変えず
同意を求められれば同調し
もふもふ感なら知ったばかりのモーラットの感触を思い出しながら語ろう
あの邪魔な無限大マーク
壊してくれるなら助かるんだけど
キミたちのアイドルには似合わないでしょ
俺でよければ手を貸すよ
気持ちのいい手ではないかもしれないけれど
白燐蟲を騎士のひとりに纏わせ
キミの敵対者はあの「マーク」だ
大丈夫
不幸の先には幸福があるよ
●言の葉ひらり
“お茶の準備でも”なんて朗らかに送り出した同業の万華鏡を思い、和井・時親(紫の呪言士・f36319)はふと笑う。
詰めたい空気に吐き出した息は白い。
だからこそ帰ったらお茶を――……あの万華鏡はそう言ったのだろう。
「戻ったら杜環子さんのお茶をありがたくいただこう」
それに、と時親が視線滑らせた先には木に身を隠す長身の女騎士が延々と呪言のように“ミント様尊い”と言い続けているのだから。
あれを。そう、“あれ”を杜環子は相手にしろと言っているのだ。
「(聞きたくもないんだけどな……人の萌え語り。しかも興味あり気に……なんて)」
“それってどんな拷問?”とは今居ぬ万華鏡に問える筈も無い。聞いたところでどうせ“あらまぁ、面白くありませんでしたかしら?”なんてすっとボケられるだろうことは、時親も察していた。
「(でも――実際、俺はミントにあったことはないし、知ってるのは噂くらい……)」
当時の戦場の記憶はあるが、意図してミントに会いに行った記憶は無い。
戦いの最中、生きるも死ぬも守も何もかもに対し、幼い地震はただただ――必死だったから。
自身の手を見る。
「(あの時と変わらない、か)」
全ては銀の雨、運命の糸が絡みついているから。今は解けぬし見えぬそれごと手を握りしめ、顔を上げた紫の瞳が僅かに赤みを帯びたのは血潮のせい。ただただ今日の続きの明日を求め、時親は歩みを進め往く。
ただ一つ違うのは。
「(……あの毛並みってモーラットくらいかな?)」
記憶の中、よく管に詰まっていた“もきゅ!”と鳴くあいつを思い出し概ね勢いと同調と同意でいけるはず、なんて見目より大人で本来の年令らしいことを考えていたのだけれど。
「こんには」
『ひえぁ!だっ、だれですかあ?!』
身長よりも怯えた様子に時親がきょとんとすれば、ハッと時親を見た長身の女騎士が小さく“子供”と呟く。
『だ、だめですよ。貴方のような子がここへ来ては。こっ、ここはミント様のキャンプなんです、もしかしたら戦場になってしまうかもしれませんから……!』
こんな戦場に子供がいる訳が無いだろうに、と時親は思うも訂正はしない。面倒だし、変な勘繰りを受けて話が拗れても困るからだ。
こういう時は話を変えるに限る。
「キミはいち牛乳って知ってる?」
『イチゴギュウニュウ?』
今度は女騎士が時親の言葉にきょとんとする番だった。
「そう、俺の
推し」
まるで不思議な言葉のようにオウム返しをして瞳を瞬かせている女騎士へ、時親が未開封の小さなパックを投げ渡せば、女騎士は慌て付け取り少し動揺しているようだった。だが和親はあえて気にしない。
慣れた手つきでストローを取り出して差し込むと、ちゅうっと吸った。
口に広がる甘い感触と牛乳の爽やかさ、苺の甘味料の独特な感覚と……懐かしい、学生時代の記憶を少しだけ。
「甘いのは好き?美味しいよ、良かったら飲んでみて」
『……甘いの?じゃあ……』
“それどうやるの?”と尋ねる女騎士にやり方を説明すればすんなりとストローが刺さり一吸い。
「どう?」
『……!』
ぱあ!と顔を輝かせた素直な姿に笑いそうになるのを何とか我慢すれば、貴方の“
推し”は素敵ね、なんて大真面目に言われるものだから、時親が内心悶えかけたのは此処だけの秘密。
「ありがとう。でもね、俺もこうやって人に俺の“
推し”を勧めたいから分かるよ」
『えっ』
「――ミントのこと、キミがすっごく好きなの」
“ね?”と微笑めば“ひゃあ!”と顔を赤くした女騎士が体を縮こめ震えていた。
そんな姿を瞳細めて見つめながら、時親は柔らかい声で諭すように女騎士へと言葉を向ける。
「キミの愛する子、可愛いね。弱々しくて庇護欲をそそられる……俺の好きを聞いてくれたキミの話に興味があるんだ」
『わっ、わたしの!?』
頷く時親にあわああわ照れと動揺を綯交ぜにしていた女騎士だが、頬紅いままいちご牛乳のパックで顔を隠しつつ歩そ歩祖と話し始めた。
『わっわたしは、その……こうして大きいだけであまり騎士団でお役に立てずで……でも、その、ミっミント様はそのままでも良いって!小柄なミント様はいつでもお可愛らしくて、ふわふわな毛並みは美しく、恐ろしい戦場でも凛とした佇まいで立っておられ一兵卒から大変な出世をされるのも当然、寧ろ出世ではありません、元々気付かれなかった方々が悪いのです。偉い人は分かっていません、あのミント様の内なる輝きを。あの神々しいまでに澄んだお瞳を。そして何よりあの体に反比例して深く広き懐です!!心が狭く逃げ出した偉い人とは違います!もう全然!そりゃあもう!!なんたってミント様逃げませんもの!!!!ご存じですか!?ミント様はどんなに震えても逃げなかったのです!!お強い!!もうお心が何よりもお強い!!ああ好き!!大好きです!!一生お仕えします!!いえ死んでも蘇ってみせます!!私の剣技は全てミント様を震わせぬために使うんです!!それで――』
長くて分厚くてなんかすごいノンブレス。
「(これが、圧……)」
そういえば杜環子さん言ってたなぁー……なんて気が遠くなりつつ、時親はうんうんそうだねわかるーさっすがーうんうんと時親は頷き続けた。
もしかしたら前世赤べこだったかもなどと下らぬことを思うほど頷き倒して、やっと。
『……――という、非常に尊く素敵なお方なのです。だから私が離れる筈も無く、こうしてお見守りする次第です。』
「……、っか、うん、うん、なるほどね。もふもふふわふわはいいよね」
『はい!!!』
ラストの近距離爆音パンチにぐらっと北野にギリギリ耐えた時親は所謂アルカイックスマイルというやつだったかもしれない。たぶん。
「でも……いや、ならって言うべきなのかな。あの上のやつは?」
『上……?』
「キミの
アイドルの上にあるあれ」
“これだよ”といちご牛乳を摂取しながら時親の指先が空中に描いたのは無限のマーク。それを読み取った女騎士の目が細まる。
『あれは……』
「ね、あれはミントが望んだもの?」
『――いいえ。あれは突如現れた……そうです、あの女ぁぁぁあ!!ミント様に許可なく触れ!あまつさえあんなものを!!!』
おおっと話振り間違えたかな?と思うも気のせい、と時親が吸った牛乳パックは空になり、ベコりと凹む。
時間だよねと笑って、たった一言囁いてやるのは背中を押す
言葉。
「……ねぇ、アレを
失くすなら俺が手を貸してあげる。気持は良くないかもしれないけれど」
『ミント様の為ならわたしは何でも耐えます。気にしませんっ』
それはいい、と時親が女騎士へ貸してやるのは白燐奏甲。ぶわりと剣を持つ手に纏わりついた力と共に、連綿の一撃がマークを真っ二つに砕き斬る。
『ひゃぅううう』
『あ、あ、ミント様ごめんなさいー!!』
「……ふふ。大丈夫、この不幸の先にあるのはきっと幸福だよ」
落す
祝にはことほぎを。
大成功
🔵🔵🔵