第二次聖杯戦争②〜乱雑無章〜
「クハハハ、来た来た来やがった!」
「おうおう元気だねぇ、ラダガストの旦那は」
猟兵の到来を察知し、悦び勇んで飛んでいってしまった主君の後ろ姿を眺めながら赤鎧の武者は苦笑いを浮かべる。
その足元ではいつまでも
出番が来ないことに憤るゴーストウルフ達が唸り声を上げていた。
「安心しろ、敵だってどいつもこいつも正攻法で真正面から戦ってくるわけがない。確実に背後を取ろうとしてくるはずだ」
そう言って武者はラダガストが走っていった反対方向を見遣る。
「そいつらは流石に俺達の獲物にさせてもらう」
敵をお預けされているのは武者だって同じこと。敵の血を吸い続けたことで黒く変色した大太刀を構え、挟撃を謀る敵が来ることを確信しながら武者は舌なめずりを浮かべた。
「ラダガストを倒してもなお、竪町商店街には彼の配下のオブリビオンが多く控えております」
ラダガストについての説明を終えたルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は続けて竪町商店街の現状について説明を始めた。
「商店街の至る所には『ゴーストウルフ』が配置されており、入ってきた者に持ち前の鋭利な牙と爪で襲いかかってきます。もし隠密移動でやり過ごせたとしても獣遣いが一度笛を鳴らせばすぐに主の元へ駆けつけてくることでしょう」
そんな獣遣いのうちの1人が「黒剣」の異名を持つ武者、ムサシである。
「彼は身の丈以上の黒太刀と、武者鎧という名の『拘束具』を身につけております」
そう、彼にとって鎧は防備ではなく拘束具。彼の本領は鎧を脱ぎ捨て、軽装になった時にこそ発揮される。
ただ常に軽装でいると自分を抑えきれず、主君よろしく目につく物全てに襲いかかるようになってしまうために身につけているに過ぎないのだ。
「鎧を脱いだ状態を続けると、主君であるラダガストにも襲いかかってしまう……『狂戦士』と呼ばれても致し方ない難儀な性格の持ち主です。だからこそ好戦的になったラダガストに気に入られたのかもしれませんが」
彼の元に向かう間には別の猟兵達がラダガストを引きつけているため、横槍を入れられる心配は無用である。
「鎧を脱ぐ前にカタをつけるか、鎧を脱いだ全身全霊の状態をデフォルトとして対処するか、その判断は皆様にお任せいたします。大量のゴーストウルフの群れを一掃しつつ、彼の首を取ってください!」
平岡祐樹
置いてけぼりでも強い物は強い。お疲れ様です、平岡祐樹です。
このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。
今案件にはシナリオボーナス「ゴーストウルフの群れに対処する」がございます。
これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
また「WIZ」使用のプレイングを採用したら、以降はムサシはユーベルコードで強制的にもう一度着せない限りは「鎧を脱いだ状態」で戦闘を続けます。ご注意ください。
また「短慮近謀」に参加していても別時間の戦闘ということで処理しますので両シナリオに参加することも可能でございます。
第1章 ボス戦
『螺旋の怪・『黒剣』のムサシ』
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POW : ぶっ潰れるかぶった切られるか、選びな!
【黒太刀『無骨』】が命中した対象を切断する。
SPD : 弱者は不要だ、逝ね!
【雑魚散らし用のナマクラ(名刀)】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 久しぶりに本気を出せそうだ!
【身を拘束する武者鎧】を脱ぎ、【全身全霊状態】に変身する。武器「【黒太刀『無骨』(拘束開放状態)】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
👑11
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鐘射寺・大殺
戦の時間である。やはり戦場は血が滾るのう。【炎の魔王軍】を召喚、《悪のカリスマ》で軍団を統率しながら戦うぞ!今こそ、砕魂魔王軍の力を見せつけるのだ!
悪魔戦士団を展開させ、《切り込み》《集団戦術》でゴーストウルフへの対処に当たらせよう。吾輩は敵将を引き受ける!宮廷魔術師団、魔法で吾輩を援護せよ。エンチャント魔法で《武器に魔法を纏う》効果を得て、ムサシに斬りかかるぞ。剣を力任せに《ぶん回し》、《重量攻撃》を叩きつける。
グワハハハハ!この魔剣オメガのサビとなれい!奴の鎧を損傷させれば、鎧を脱いで本気モードになるか?そのときは神竜とオメガの二刀流を以て対処しよう。
ナマス斬りにしてくれるわ!!
「戦の時間である。やはり戦場は血が滾るのう」
砂がゴムと石の間で擦れる音が僅かに響く。狼の鋭敏な聴力はそれを聞き逃したりはせず、音のした方へ血走った目を向ける。
「貴様がムサシか。ラダガストまでの道、開けさせてもらおう」
その視線を一身に集めながら黒き刀身を石畳に置いた鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)が宣告する。その背後には大小種類様々な炎のモンスター達が戦いの時を待っていた。
「今こそ、砕魂魔王軍の力を見せつけるのだ! 行け!」
地響きを思わせる鬨の声を上げながらモンスター達が突撃する。対抗するようにゴーストウルフ達も動き出し、商店街で激しい衝突が繰り広げられ始める。
「吾輩は敵将を引き受ける! 宮廷魔術師団、魔法で吾輩を援護せよ」
配下のモンスター達が物理的にこじ開けた活路をゆっくりと歩く大殺の姿に、ムサシはゾクゾクと体を震わせながら笑みを浮かべた。
「ガキのくせに偉そうに……『ぶっ潰れるかぶった切られるか、選びな!』」
大殺とムサシ、ほぼ同時に走り出た2人は力任せにそれぞれの愛刀を振り回して激しく打ち合う。
「グワハハハハ! この魔剣オメガのサビとなれい!」
「オレの無骨を受けても壊れねぇとは、中々やるじゃあねぇか!」
打ち合いながら位置を変えている最中、大殺の視界に苦しそうに顔を歪ませる宮廷魔術師の姿が映る。どうやら何も対策を施してなければ父から譲られたこの剣は今ごろ木っ端微塵になっていたのかもしれない。
これは持久戦に持ち込むのは悪手だと判断した大殺は鍔迫り合うと一旦腕を引いてから、溜め込んだ力でムサシを押し飛ばした。
しかし距離をとったムサシは手が痺れたかのように片手を振る。だがそれが演技であることは表情からも明らかだった。
「貴様、いつになったら本気を出すのだ?」
「ははっ、それはこっちのセリフだ。いつになったらその吊るしたもう一本を抜きやがる?」
どうやら様子を見ていたのはお互いとも同じだったらしい。
「貴様が鎧を脱いだときは神竜とオメガの二刀流を以て対処してやろう」
「そうかい。残念だ……どうやらお前のもう一本は自分で抜いて確かめるしかねぇみてぇだな!」
「はっ、ナマス斬りにしてくれるわ!!」
挑発に挑発を重ねた2人の斬り合いは次の段階へ突入した。
大成功
🔵🔵🔵
天目・牟玄
……斬られるのなら、斬られてもいいものに、なれば、いい。
( ・UCを発動して全身を煤色の流体金属へと変異させ、ゴーストウルフの牙や爪での攻撃を無効化しながら、棘状にした流体金属を突き出して反撃を。
・相手のUCはあえて受け、前傾姿勢になったところに上体へ触手状にした流体金属を絡み付かせて引っ張ることで、逆側へ力を掛ける状況を構築。
・タイミングを見計らって引っ張るのを止め、勢い余るだろう瞬間を狙い、棘状にした流体金属を露出部目掛けて突き出す。)
身体を覆い隠し、地面に届きそうなほどに長い髪を垂らしながら天目・牟玄(刃・f39474)はまるで幽鬼のようにふらふらと商店街の敷地内に踏み入る。
炎のモンスター達との戦いを制したゴーストウルフ達は、激しい斬り合いを演じている主人の間に割って入るよりも楽そうな牟玄に狙いを定めた。
「……斬られるのなら、斬られてもいいものに、なれば、いい」
そう呟いた途端、手脚のみにかかっていた黒ずんだ部分の範囲がどんどん広がり、全身にまで至る。
そんな変化を気にすることなくゴーストウルフは飛びかかるが、その爪によって切り裂かれた牟玄の体は文字通り飛び散った。
固体ではなく液体に触れた感覚を覚えたゴーストウルフは困惑してその足を止めてしまう。次の瞬間、周囲に飛び散っていた煤色の流体金属から棘が生えて四方八方からゴーストウルフを串刺しにした。
痙攣しながらゴーストウルフが消滅していく中、後に残された流体金属はそれぞれくっつき直して牟玄の形を取り戻す。
「まだ、やる?」
こてんと首を横に倒した牟玄であるが、今の惨劇を見て自ら死地に飛び込もうとする愚か者はゴーストウルフの中にはいなかった。
邪魔する者がいなくなった牟玄は悠々と商店街を横断し、仕切り直すために大殺から一旦距離を取っていたムサシに向かって鞭のようにしならせた流体金属を叩きつけた。
「っ、男と男の勝負に……横槍を入れるな!」
空気を裂く音に目敏く反応したムサシは横薙ぎに大太刀を振るい、返す刀で牟玄の体を頭から真っ二つにする。
その一撃を振るうために前傾姿勢になった上体に向けて牟玄は触手状にした全身を絡み付かせて引っ張り、対抗するために逆側へ力を掛ける状況を作り上げる。
「ちっ、使い魔か分身の類か……どこだ、どこにいる!」
ただムサシはまさか目の前の金属生命体が猟兵本人だとは思わなかったらしく、あくまで陽動だと断じて周囲への警戒を解かずに甘んじて引きずられるのを受け入れてしまった。
タイミングを見計らって引っ張るのを止め、勢い余って後ろに体勢を崩す瞬間は狙えそうにない。
牟玄は防御の体勢を整え切れないほど近距離にまでムサシを引き摺り込み、棘状にした体を鎧に覆われていない部位目がけて放った。
牟玄に対しても警戒を怠っていなかったムサシは触手から突然伸びてきた棘に咄嗟に反応し、鎧に仕込んでいた短刀で体に纏わりついていた触手を切断して突破する。
しかしその全身にはしっかりと血が滲む切り傷が生じていた。
成功
🔵🔵🔴
黒墨・凱
※『』は喋る武器の言葉です
反撃怪人イカウンター、オブリビオンへの復讐のためここに参上!
『相手は戦闘狂というやつだな。猪と見るなよ』
了解だ、ウェイヴ。あの一撃は脅威だし、それを当てる技術も確かだ。
さてどうするかな……
『俺やお前のイカスミはあくまで牽制に使え。本命はお前の最も得意とする技しかない』
それしかないか。じゃあ、行くぞ!
イカスミ弾は粘り気多めの足止め系とし、それとウェイヴでの射撃でムサシへ攻撃。それへの対処で敵のクセを把握しつつ「カウンター」の態勢を整えていく。
敵のUCを誘い、イカゲソードによる面抜き胴気味のカウンターから間髪入れずにUC発動。触腕とイカスミ弾で押し切る。
必ず一矢報いるぜ!
「反撃怪人イカウンター、オブリビオンへの復讐のためここに参上!」
ビシッとポーズを決めた黒墨・凱(反撃怪人イカウンター・f32446)に牟玄を見逃さざるを得なかったゴーストウルフの視線が集中する。
イカモチーフでも何でもいいから、いい加減人も襲いたいというのがゴーストウルフ達の本心なのだろう。
『どの相手も戦闘狂というやつだな。猪と見るなよ』
「了解だ、ウェイヴ」
腰のホルスターから来た指示に応えながら凱は飛びかかるタイミングを図るゴーストウルフ達に集中する。そして後ろ脚に比重が傾いた瞬間にイカスミ弾を放つ。
前に跳ぶために力を入れていたゴーストウルフは横に逸れることが出来ずに甘んじて受け止めてしまう。脚に付着したイカスミは粘着質で、跳び立とうとしたゴーストウルフ達は地面から離れることが出来ずに仰向けの形で倒れ込んだ。
その傍を全速力で通り過ぎ、凱はすでに突入している猟兵達と交戦するムサシに意識を移した。
「あの一撃は脅威だし、それを当てる技術も確かだ。さてどうするかな……」
『俺やお前のイカスミはあくまで牽制に使え。本命はお前の最も得意とする技しかない』
「それしかないか。じゃあ、行くぞ!」
凱はホルスターから声の主———小型拳銃を取り出してイカスミ弾と共に魔力で形成された弾丸を連射する。
牟玄の拘束から逃れたばかりのムサシは魔力弾よりも一際大きいイカスミ弾だけは避けて短刀を振るうことで応戦してきた。そして刃こぼれした短刀を早々に投げ捨てて大太刀に切り替えながらこちらに走ってきた。
今の一連の動きでムサシのクセを把握した凱は射撃を止め、代わりにイカを模した大剣の柄に手をやってカウンターの態勢を整える。
ムサシも相手がカウンターを狙っていることは分かりつつも、力尽くで押し潰さんと大太刀を大上段に振るってきた。
凱は面抜き胴を狙ってイカゲソードを抜いたが、僅かに避け切れずマスクから肩口までのスーツ半分が抉り取られた。
だが本体から血は流れていない。顕になってしまった黒い瞳から熱い気持ちを失うことなくムサシを睨み返しながら凱は叫んだ。
「一矢は報いさせてもらう!」
胴にイカゲソードが入った瞬間に腕に内蔵された触腕による殴打と口に含んだイカスミ弾をお見舞いする。
顔面を真っ黒に染め上げられただけでなく強烈なストレートを食らったムサシは後ろによろめきながら反射的に拭った手首から墨が伸びるのを見て、赤い瞳に怒りの炎を灯らせた。
成功
🔵🔵🔴
クリム・フラム
「数頼みの敵には弾幕で対応できますが、凄腕には突破されるでしょうね」
ゴーストウルフには弾幕で牽制しつつレーザー射撃で対応。
時間を稼ぎながらもおびき寄せる戦術で戦います、追い込まれる前に大技を使う事を画策します。
並行してUC魔術型荷電粒子砲の発動準備。
ムサシに弾幕を突破されて直接斬りかかられたらユーベルコードの魔法陣の砲身で受けます、砲身を半分にされてもおかまいなく射撃準備続行です。
「こんなんじゃ命中率と反動がひっどい事になりますけど!撃てます!」
二の太刀が来る前に至近距離で射撃、決定打にならなくても距離さえ突き放せればそれでよしです。
華麗な花火の如き炎の魔法の弾幕に躊躇するゴーストウルフの眉間をレーザー射撃が撃ち抜く。
「数頼みの敵には弾幕で対応できますが、凄腕には突破されるでしょうね」
その中心でクリム・フラム(図書室のパイロマニア・f36977)は石畳に石を擦り付け、即席の魔法陣を作ろうとしていた。
あんな馬鹿力を持つ鎧武者に近づいてどうこうできるほどの実力をクリムは持ち合わせていない。だがゴーストウルフ相手にならどうにかなる。
それならば商店街より外に出られないように時間を稼ぎながら、あちらの方からこちらに有利な場所へおびき寄せる策を取ることにした。
遠くで何か派手なことが起きていて、そこでゴーストウルフが好き放題にやられていたら主人も放置し続けることは出来ないだろう。だがその仕掛けだけであの鎧武者が止まってくれるとは思わないし思えない。それ故の魔法陣であった。
そしてクリムの目論見通り、凱を突き飛ばして辺りを見回したムサシは青空の下四方八方に舞う弾幕に気づいた。
「あの花火……目障りだな。斬り合っている時にうっかり撃ち込まれたらたまったもんじゃねぇ」
そう呟いたムサシは戦闘に負けて倒れ伏したゴーストウルフを踏まないよう、大太刀を下に構えながら走り出す。
周囲の建物を燃やさない程度に加減された火の粉ではやはりその足取りは止まらず、ムサシはクリムの姿を視界に捉えた。
「ガキが火遊びなんざ、一生早えんだよ!」
その頭蓋を打ち砕かんと振り上げられた刀身を前にクリムは魔法陣に魔力を通し、荷電粒子ビームを放つ砲塔を顕現させる。
ムサシは突然間に割って入ってきたそれに驚くも、撃たれる前に壊せばいいと大太刀をそのまま振り下ろして粉砕してみせた。
「すまねぇな、お前の虎の子の砲台をお釈迦にしちまった!」
嘲笑いながら謝るムサシにクリムはちょっとだけ堪忍袋の尾が切れた。
「こんなんじゃ命中率と反動がひっどい事になりますけど! 撃てます!」
それを証明するかのごとく砲塔の底に光が集まりだし、一気に放たれる。
砲塔が半壊してあちこちに穴が開いてしまったことでその弾道は四方八方に散ったが、枝分かれした粒子を食らったゴーストウルフはバラバラになり、ムサシも二の太刀を叩きつけるのを止めて慌てて下がったが、クリムを討つために至近距離にまで近づいていたことが仇となって赤い鎧の一部が欠けた。
「ははっ、決定打にならなくても距離さえ突き放せればそれでよし、です」
荷電粒子砲を作動させるために魔力を枯渇させたクリムは覆い被さるように砲塔に倒れ込んだ。
成功
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キノ・コバルトリュフ
キノキノ、火力が足りないんだって?
だったら、焼き舞茸はいかが?
キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!
トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。
キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!
マツタケ!!おいしく焼けたかな?
「ははっ、壊れちまったならちょうどいい」
僅かに残った布にぶら下がった大袖を引きちぎり、ムサシはそのまま捨てるように鎧を脱いで鎖帷子と下履だけの軽装となる。
「威力も手数も最大火力の、俺の本気を見せてやる!」
「キノキノ、火力が足りないんだって?」
そんな時に、路地裏からキノ・コバルトリュフ(
キノコつむりの星霊術士・f39074)がひょっこり顔を出した。
「だったら、焼き舞茸はいかが?」
そう告げると同時に、キノの影に隠れていた黒猫・バルカンが飛び出し、炎の渦を描き出した。
「キノ! バルくんどんどん焼いていくよ!!」
同時にキノも扇を開いて、舞を踊り出す。
「戦いは使役霊に任せて自分は遊ぶつもりか、舐めやがって!」
理性のタガが外れ、簡単に怒髪天をついたムサシは目前に広がる炎の壁に躊躇することなく飛び込んだ。体が燃え盛ろうと苦にせず突っ切ろうとする主人の心意気に応えるべく、ゴーストウルフも呑気に踊っているキノの笠に噛みついた。
「ナメコ!? キノは食べても……おいしいけど食べちゃダメだからー!」
どれだけ笠を齧られてもキノコ「つむり」であるキノにダメージは入らないが、キノは動転しながら背負っていた杖を抜いてゴーストウルフを殴る。
笠から牙を離したゴーストウルフはその場に崩れ落ちると口から泡を吹いて痙攣し出した。
「キノォ……キノコさん大丈夫?」
共存関係にあるキノコを心配して、キノは牙が刺さった痕を撫でる。バルカンも突然の悲鳴に反応して飛び出し、心配そうに傷口を覗き込んだ。
「……アリタケ?」
奉納の舞が途切れた上にバルカンが抜けたことで制御不能に陥った炎の渦は臨界点を突破してただの火柱へ変貌していた。
「カエンタケ!? お、お水を、消火器をー!」
商店街の店舗に燃え移ることを恐れてキノを始めとする猟兵達は慌てふためくが、中にいたムサシも大変なことになっていた。
一気に勢いを増した炎によって装束は一瞬で焼け落ち、肉は焦げながらその内にある骨を露出させ、その骨も加えられた熱によって崩壊していく。
もし鎧を着ていたとしてもその結末に至るまでの時間に大差はなかっただろう。
不幸中の幸いと言えるのは、自身の悪癖によって理性を飛ばしたことで燃えていることを自覚せず苦しまずに逝けたことぐらいだろうか。
火柱がなんとか消火された後、ムサシの体は影も形も残さず燃やし尽くされ、邪魔だと脱ぎ捨てた鎧の残骸だけが石畳の上に残されていた。
成功
🔵🔵🔴