助っ人サンタ、出動せよ!
「・・・まずいな、非常にまずい」
病院へと搬送された仲間達を、心配そうに見送った一人のアスリートがそう呟いた。今日はクリスマスだ。この世界では、クリスマスにはアスリート達が子供達の元を訪れプレゼントを渡すというイベントが毎年開催されている。今年もその予定で準備を進めていたのだが・・・。プレゼントを一時保管している建物へと向かっていたアスリート達数人を乗せた車が、事故を起こしてしまい・・・。幸いにして負傷したアスリート達は、命に別状はないという事であったのだが・・・。一気に人手が足りなくなってしまったのだ。
プレゼントを配る地域を担当しているアスリート達が大幅に人員が不足。しかも当日に、だ。他地域を担当するアスリート達に応援を頼むにしても、当日ではそうそうスケジュールも合わず・・・。
負傷したアスリート達の代役を頼める存在がいればいいのだが・・・。そうそうそのような人材がいるとは・・・。
「ダメもとで色々募集を掛けてみるしかないだろうな・・・」
暗い表情ながらそれでも何とか状況を打開しようとアスリート達は行動を開始するのであった。
●
「皆様、クリスマスがやってきましたね。そんな中、申し訳ないのですが・・・」
集まってくれた猟兵達に申し訳なさそうに頭を下げる炎武・瑠美。猟兵達にも色々予定があるだろうが、そんな中急遽集まてもらった事情を説明する瑠美。
「アスリートアースでは、毎年クリスマスになるとアスリート達がサンタクロースに扮して子供達の元を訪れて、プレゼントを渡すというイベントがあるみたいなんです。今回、ちょっとトラブルが発生してしまったらしく・・・」
どうやら、当日になってサンタクロース役を務める予定だったアスリート達に、急遽欠員が出てしまったようなのだ。これではサンタの来訪を楽しみに待っている子供達が、非常に残念がる結果となってしまうだろう。
「皆様には現地でサンタクロースに扮してもらい、欠員が出てしまったアスリートの方々の代わりに子供達の元へ出向いていただきたく思います」
それぞれの持ち味を活かしてもらいながら子供達の元を訪れてくれれば、きっと子供達も楽しんでくれる事だろう。
「それでは、急遽のお願いになりますが・・・。よろしくお願いいたします」
瑠美はそういうと、猟兵達をアスリートアースの世界へと導くのであった。
黄昏空
MSの
黄昏空です。今回はクリスマス限定シナリオをお送りします。世界はアスリートアース。初執筆の世界になりますね。
アスリートアースのクリスマスは『サンタクロースに扮したアスリート達が、子供達の家にプレゼントを届けに行く』というイベントが毎年開催されているようです。今年も開催されるのですが・・・、そのとある地域でハプニングが発生。サンタとして行動予定であったアスリート達が怪我をしてしまい、当日行動が出来ないという事態になってしまったのです。負傷して動けないアスリートの方々の代わりに、皆さんには子供達の元を訪れていただきます。
フラグメントは参考程度に。皆さんの持ち味を活かしていただきながら、サンタクロースの来訪を待ちわびている子供達へプレゼントを届けてあげてください。
プレイングはOP公開と共に受付開始です。季節ものですので、今月中には完結させる目標で執筆を進めたいと思います。それでは、皆さんのご参加をお待ちしております!
第1章 日常
『アスリートサンタ、出動!』
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POW : 沢山の子供達の家を巡り、沢山のプレゼントを届ける
SPD : 顔見知りの子供をサプライズで尋ねる
WIZ : パフォーマンスを披露して楽しませる
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夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
それはまた大変ですねぇ。
お手伝い致しますぅ。
子供達相手ということで、服装は露出の少ないオーソドックスなサンタ服が良いでしょう。
プレゼントは実用と雰囲気作りを併せ、『FTS』に入れて[運搬]し、到着直前にサンタ袋に移すのが良さそうでしょうかぁ。
【皓翼襅】を発動、『女神の衣』としてサンタ服を纏い、子供達の元を回りますねぇ。
飛行能力に加えて、同速度での走行も可能ですから、体型的に難しい狭所以外大体の場所は回れる筈ですので、速度を活かして出来るだけ『遠くて回り辛い位置』を引受けましょう。
『持久力』も強化されておりますから、複数の欠員が出ている分を出来るだけ補える様にしますねぇ。
「おぉ、助っ人に来てくれたのか!ありがとう!」
転送された先にいたアスリート達のリーダーの男に事情を話すと、彼は笑顔で猟兵達の応援を受け入れた。
(リーダーの方は、見るからに疲労困憊のようですねぇ)
方々に助力の件を掛け合っていたのだろう。疲労の色を隠しきれないリーダーより夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は回る予定の家々の位置情報を教えてもらった。
「なるほどぉ、この数は回ろうと思うとなかなか大変かもしれませんねぇ」
「運悪い事に、怪我をしたアスリート達は若手のメンバーでね。結構張り切って数を回る予定になっていたんだ」
つまり主力メンバーがごっそりと欠員となってしまったわけだ。命に別条がないのは幸いではあるものの、タイミング的には非常に運が悪かった、としか言いようがない。
「そ、それはまた災難でしたねぇ。私の方でも出来る限りお手伝い致しますよぉ」
「それは助かるよ。まぁ、俺も含めて他のメンバーもいるから、皆で分担しつつなんとかこなそう」
「はぃ、私の方はそれなりの速度で飛翔しつつ回ろうと思っておりますので、遠い所を担当しようと思っていますねぇ。一番遠目の回りづらい区画はどのあたりでしょうかぁ?」
「ん~…そうだな。地図で言うと、この辺りか。結構固まっている区画なんだが」
リーダーが取り出した地図にぐるぐるとマーキングされた区画を、しっかりと脳裏に焼き付けるるこる。
「なるほどぉ、承知いたしましたぁ。プレゼントをお受け取りしてもよろしいでしょうかぁ?」
「あぁ、これとこれと…。っと結構多いが、大丈夫か?」
「そのあたりは問題ありませんよぉ?こちらの祭器に途中まで収めて移動すれば、運搬も全く支障がありませんしぃ」
「べ、便利なんだなぁ…」
リーダーより受け取ったプレゼントを、るこるは次々と亜空間へと収納していく。るこるの周囲に浮遊していた宝玉が作り出した亜空間は、まだまだ許容量には余裕があるようだった。そういったある意味裏技が使えないアスリート達には、羨ましい限りであろう。
「それでは、行ってまいりますねぇ」
UC【
豊乳女神の加護・皓翼襅】によりサンタ服を身に纏ったるこるは、空へと飛翔し子供達の元へと移動を開始した。
「…収納可能な祭器があって正解でしたねぇ」
目的地の区域には特に支障もなく到着出来たるこるであったが…。現地で少々想定外の事が発生した。
目的地に到着する少し前に一旦地上へと降り、祭器の亜空間からプレゼントを取り出したるこるは、せっせとサンタの袋へと移し替えた。そしていざ子供達の所へと回り始めたのであるが…。地図で見ていたよりも現地は少々入り組んでおり、一部では狭い所を移動せねばならなかったのだ。
るこるの体型的に、大きなサンタ袋を持ったまま通過するのは厳しそうな場所に関しては、サンタ袋ごと再度亜空間へと収納する事でなんとか切り抜ける事が出来た。
「ここで最後ですかねぇ」
「あれ~?いつものサンタさんじゃないんだ…」
顔を覗かせた男の子は、サンタ姿のるこるを見て目を丸くする。
「はいぃ、今年はサンタさんもお忙しいらしく、私がお手伝いをさせていただきましたぁ」
「そうなんだ!」
「メリークリスマス、ですぅ。これはプレゼントになりますよぉ」
「ありがとう、サンタのお姉ちゃん!」
笑顔でるこるからプレゼントを受け取った男の子は、元気よく家の中へと帰っていった。それを見届けると、るこるもその場を後にする。
「さて、ひとまず私の担当エリアは終わりましたが…他はどうなのでしょうかぁ」
状況次第では追加での運搬も視野に入れ、るこるは帰還する為再び空へと舞い上がるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鳶沢・成美
なるほど、サンタに扮して子供たちにプレゼントを配る
これは(銀誓館学園で)ボランティア同好会所属だった
(記憶がある様な気がする)身としては気になりますね
でも配るのはいいけど、アスリートサンタに貰うのと無名の僕に貰うのとでは……
そうだ〔うつろ船〕に乗って配りましょう
釜飯の容器に透明の半球カバーが付いたような様なUFOに乗ったサンタ
これはそこそこインパクトあるでしょう
ご両親に話を通しておいて、あえて玄関ではなく
2階の子供部屋の窓やマンションのベランダから声をかけ
プレゼントを渡していく
やあ、いい子にしてたかな? プレゼントだよ
ああこれ? トナカイには今年休暇をあげてね
鳶沢・成美(三角定規の除霊建築士・f03142)も、アスリート達のリーダーから回る場所についての情報を得て、いざ行動を開始しようとした…のだが。
「…どうしたんだ?何か問題があったのか?」
動きが止まった成美を見て、思わずリーダーが声を掛ける。
「いや、考えてみると…。アスリートサンタにプレゼントを貰うのと、無名の僕に貰うのとでは、子供達の喜び具合に大きく差が出るんじゃないかと」
『サンタに扮して子供達にプレゼントを配る』という目的をグリモア猟兵から聞いた際、なんとなく気になった成美。比較的最近、朧気ながら成美が思い出した記憶の中には、自分がボランティア同好会に所属していた頃のものも含まれていた。そういった経緯もあって、いざ引き受ける事にしたのだが…。
「ん~…そこは君の考えすぎじゃないかなぁ…とは思うが…」
そう成美をフォローしようとしたリーダーも、一理あるのかもしれない、とは思ったのだろう。最後の方はやや歯切れが悪かった。
とはいえ、背に腹は代えられない。欠員したメンバーの分を他の人が代わりに引き受ける時点で、それは仕方ない事ではあるのだ。
それは無論成美としても分かっているが、出来る範囲で何か子供達が喜んでくれるような事が出来ないだろうか、と頭をフル回転させる。自分の持ち物、UC…。手札を一つ一つ思い浮かべていると…、ふと閃くものがあった。
「そうだ!うつろ船なら…」
成美が何かを操作すると、突如飛翔体が空より飛来した。
「こ、これは…UFOってやつか?」
目を丸くするリーダーにこくりと頷く成美。
「僕の持ってるこのうつろ船なら、インパクトありますよね?」
プルトン人から成美が入手したこのUFO。見た目は釜飯の容器に透明の半球カバーが付いたような風貌だ。その中よりサンタ姿の成美が登場すれば…。アスリートサンタ並みのインパクトはあるんじゃないだろうか?
「あとは…流石に何も伝えてないままだと、現地で大騒ぎになる可能性もありますから…。子供達には内緒で、親御さんに話を通してもらう事って出来ますかね?」
「わかった、そっちの連絡の方は俺の方でしておこう。君が回ってくれる場所が決まれば、その区画の家々へ連絡を取る事にする。無論、子供には内緒で、な」
「助かります。じゃあ僕が回る所は…地図ではこの区域で…」
リーダーと打ち合わせをした後、成美はうつろ船へとプレゼントを搬入するのであった。
「…、ねぇ、お母さん。空がピカピカ光ってるよ?なんだろう、あれ?」
「ん~お星さまでも光ってるのかねぇ」
とあるマンションの一部屋。窓に張り付くようにして外を凝視する女の子に、気のない返事をする母親。
「そうなのかなぁ…。ね、ねぇお母さん!」
「…今度はどうしたの?」
「あ、あのピカピカ、どんどん近付いてくるの!」
突然の事態に、女の子の頭はパンク状態。母親の方は全く危機感を抱いていない状況なのだが、その事に女の子は気が付けていない。硬直している女の子の前に、ついに光が止まった。それはちょうど女の子のいる窓の傍、超近距離だ。そして、その光の中から誰かが出て来る。
「だ、誰?宇宙人…?」
「いや、僕はサンタだよ。いい子にしてたかな?プレゼントを持って来たよ」
「えっ!?サンタさん?!」
なんでサンタさんがUFOに乗ってるの?そんな驚きの表情で見上げてくる女の子。
「ああこれ?トナカイには今年休暇をあげてね」
びっくりしたかな?と聞くと、ブンブンと首を上下に振り肯定する女の子の姿を見て、満足気な表情を浮かべた成美サンタ。どうやら成美のアイディアは大成功だったようだ。
「ご苦労様です。ありがとうね」
あらかじめ事情を聴いていた母親から小声でお礼の言葉を受けた成美サンタは、再びうつろ船に乗り込む。
その後も、あちこちから子供達の興奮した声が次々と上がってきた辺り、子供達にとって今年は非常にインパクトあるクリスマスになったようだ。
大成功
🔵🔵🔵
フェリデル・ナイトホーク
サンタクロース!つまりはプレゼントをお届けするお仕事ですね!
でしたらわたしの得意分野です、お任せください!
というわけでサンタ衣装を身に纏い、子供達のもとへ向かいます!
あ、誰にどのプレゼントをあげるかって指定があったら、ちゃんと確認しておきますね。
お届け先間違いは大惨事ですから!
目的地まではスターライト・エアリアルを併用して空中を跳躍したり滑空したりして移動。
子供達の前にも、ここから跳び降りる形で登場しますよ!
「メリークリスマス! 良い子の皆さんへプレゼントをお届けに参上しました!」
去る時も星をジャンプ台や足場にして跳び上がっていきます。
夢を壊さないよう、最後までそれっぽくです!
世の中には『適材適所』という言葉がある。
「サンタクロース!つまりはプレゼントをお届けするお仕事ですね!」
瞳を輝かせ、『頑張るぞ~!』と気合を入れている少女の名は、フェリデル・ナイトホーク(想いの運び手・f37476)。
「助っ人の皆さんのおかげで、だいぶプレゼント配りも軌道に乗ってきてはいるが…。まだまだ人手が足りていないのが実情だ。頼めるか?」
アスリート達のリーダーの問いかけにも、笑顔で大きく頷くフェリデル。
「勿論です!こういうのはわたしの得意分野です、お任せください!」
そう、彼女はアルダワ世界の郵便配達人という肩書を持つ猟兵なのだ。まさにこの任務にうってつけの存在と言えるだろう。それに職業柄なのか、フェリデルは『想いを届ける』という事に対する自分なりの拘りを持っている。沢山の子供達がプレゼントの到着を楽しみに待っているという状況は、俄然やる気が湧いてくるシチュエーションでもあったのだ。
「それは頼もしい限りだな。では、残っている区画だが…」
「ふむふむ、なるほど…」
自分が担当する事になる区画を素早く頭に叩き込んだフェリデルは、直ぐに適切な配達ルートを模索し始める。
「あっ、誰にどのプレゼントをあげるかって指定がありますか? お届け先間違いは大惨事ですから!」
「あぁ、確かにこのエリアに一・二件ほどあるかな。ここと、ここだ」
「やっぱりありましたか!確認しておいて正解でしたね!じゃあ、その二件はプレゼントに目立たないような目印をつけておきましょう」
簡単に剥がせるシールを張り付け、配達間違いが発生しないよう対策を試みる。この辺りは、まさに配達人であるフェリデルだからこその着眼点だったのかもしれない。
「準備は万端。後は届けるだけですね!」
「そうなるな。この区画は安心して任せられそうだ。よろしく頼む」
「では、行ってきます!」
リーダーに見送られ、サンタ衣装を身に纏ったフェリデルが空へと跳躍する。フェリデルは素早く展開したティンクルスターを足場に、次々と跳躍・滑空し目的地へと移動を開始した。
「最初の配達先は、あちらの方角でしたね!早速行ってみましょう!」
「サンタさん、まだかなぁ…」
「いつもだと、そろそろ来てくれる時間だよね。楽しみだなぁ」
サンタの到着を今か今かと待っている兄妹の元へ、フェリデルが扮するサンタが空より到着する!
「メリークリスマス! 良い子の皆さんへプレゼントをお届けに参上しました!」
「すっげぇ!今年はサンタさん、空を跳んできた!」
「きらきら、凄く綺麗」
兄の方はフェリデルが空を跳んできた事に興奮し、妹の方はキラキラと光る星達の中を舞うように着地するフェリデルの姿にうっとりした。
「はい、お兄さんの方はこっちを。妹さんの方はこっちですね!」
「ありがとうサンタのお姉ちゃん!」
「大事にするね」
「良い子にしていたら、また来年もプレゼントが届きますよ!」
「うん!僕、来年もプレゼントが貰えるようにいい子にしてるね!」
「私も!」
二人の返事に満足気に頷いたフェリデルは、再び空を跳躍する。キラキラと星が瞬く幻想的な景色の中を、サンタ姿のフェリデルが駆ける。
「またね~お姉ちゃん!」
「ありがとう~」
空を見上げ手を振る兄妹達に手を振り返し、フェリデルは次の配達場所へと移動を開始する。
「二人共、凄く良い笑顔でしたね!配達人をやっていて一番嬉しい時は、やっぱりこういう瞬間です!」
『郵便配達』と一言で言ってもフェリデルが普段運ぶのは手紙だけではない。プレゼントのようなものを届ける事もあるし、何よりも…送り主から受け取り手への想いを届ける事こそが真の配達なのだ。
「さて、気合も入りましたし、次々行きましょう!」
丁寧かつ慎重に、そして迅速に…。フェリデルの踏み台となる輝く星達が行き先を指し示す中…。プレゼントを運搬するプロの配達人は、その後も沢山の子供達の笑顔と出会う事になるのであった。
大成功
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リチャード・ライナス
UCで筋力強化トナカイ作成
「これでガンガン走れるな(山積みの贈物眺め、不敵な笑み
橇を祭壇布に乗せ、僅かに【空中浮遊】しつつ高速で配達
【道案内】で配達の道筋も無駄なく、【暗視】で夜の配達も安心・安全
響きの良い鈴を鳴らして進行し、音でサンタが来た事を知らせる♪
でも橇が速すぎて、移動中の姿は残像のよう(神業?
サンタ姿の【変装】で「メリークリスマス!
子供が贈物を受け取る時、僅かに子供の手に触れてみる
こんな時、以前はその子の未来が視えたが、今は視えない
それが不安でもあり安心でもある自分に苦笑
子供達の笑顔を思い出しながら帰途に就く
「では俺は、何を信じる?
今はただ、子供達の輝ける未来を信じたい…それで充分だ
「ふむ、少々皆から出遅れてしまったか」
リチャード・ライナス(merchant・f29694)は、とある準備をする為に少々時間が掛かった為、配達が他のメンバーよりも遅れてしまった。まさか、全てのプレゼントの配達が終わってしまった、などという事は…。
「…なさそうだな。残りのプレゼントは俺に任せてくれ」
他の猟兵達が配達してくれたおかげで、全ての配達が完了は絶望的と考えられていた状況も打開出来た。後はアスリート達が少し普段よりも頑張れば、何とか…というくらいの量のようだ。
「この残り全てを、アンタが…か?それは助かるが…」
「問題ない、その為の準備をしっかりしてきた。こいつがいれば、な」
自身の後ろに待機している存在に目を向けるリチャード。彼に釣られるように、アスリート達の視線も自然とその存在に釘付けとなる。
「あれって…トナカイ、でいいんだよな?」
異様に筋肉が発達しているトナカイらしき存在がそこにいた。びっくりしているアスリート達の疑問に応えるリチャードは不敵な笑みを浮かべている。
「あぁ、トナカイで合っている。俺の自信作だ!」
トナカイは、リチャードがUCで作り出した創造物だった。長距離を疾走する理想的な筋肉の付き方を追求し、色々と試行錯誤を行っていたのだ。少し遅刻してしまったのはその影響である。
その分、リチャードも自信の
一品が出来上がったと思っている。リチャードは、普段荒事などは好まない性格の猟兵だ。今回はそういった荒事とは無縁、むしろ子供達を直接笑顔に出来るような任務であったため、少々気合を入れまくってみたのだ。
「じゃあ、このプレゼントを橇に載せて…。…、流石に多いな。…すまない、橇に載せるのだけ手伝ってもらえるか?」
一瞬硬直したリチャードに、思わずズッコケたアスリート達。まぁ、彼らとしても何もせず全ても任せてしまうのも心苦しい所があったのだろう。皆で橇への搬入作業を手伝い始める。皆の協力のおかげで、橇への搬入作業は数分で終わった。
「さて、行ってくるか。他の配達に出ているメンバーが戻ってきたら『全て配達は完了した』とでも伝えてくれ」
「わかった、後はよろしく頼む!」
橇の下には、予め浮遊する事が出来る祭壇布を敷いておいた。そうする事でリチャードの意思に連動し、橇が浮遊し地上の影響を受ける事無く移動する事が出来るのだ。
(地図も貰ったし、こちらは夜目も効く。運搬自体も問題ないだろう)
マッチョトナカイが引く橇は、出発したとアスリート達が思った時には既に姿が見えなくなっていた。シャンシャンシャン…と鈴の音も一瞬聞こえた程度のものであった。
「…。あれ、速すぎないか?あっという間に見えなくなったんだが…」
唖然とするアスリート達を置き去りに、リチャードのプレゼント配りが開始されたのだった。
「メリークリスマス!良い子にサンタからのプレゼントだ」
サンタ姿のリチャードは、子供達の元へと風の如く現れプレゼントを渡していく。橇の移動速度が速すぎたのだろう。突然子供達の家の前に現れた橇に、配達先の家族には度々仰天されたのだが。まぁ、それもサプライズとしてはありだろう。
「ありがとう、サンタのお兄ちゃん!」
笑顔でお礼を言われ、プレゼントを渡し終えたリチャードは手を振りその場を後にする。
(…やはり、何も視えなかったか)
プレゼントを子供達に渡す際、リチャードは子供達の手に触れたのだ。かつてのリチャードなら、そういう際には触れた相手の未来が垣間視えたものであるが…。今はその力も存在しない。自分が力を失った原因も未だ掴めていないのだ。そんな状況に、不安と安心と両方の気持ちを抱いた自分に思わず苦笑する。
先が視えない事は不安ではあるが、希望も見出す事が出来る。今はただ、今日出会った子供達の輝ける未来を信じよう…そう思うリチャードであった。
●エピローグ
こうしてアスリートアースのクリスマスは、猟兵達の尽力のおかげで無事に成功に終わった。全ての配達を猟兵達が行ってくれたおかげで、一部のアスリート達は怪我をした仲間達の見舞いに行く時間も確保出来たようだった。『怪我した自分達の代わりに配達をしてくれた方々には、いくら感謝してもしたりない』と言っていた、との事。
配達に出ていた全ての猟兵が元の場所へ戻った所で、帰還の為の転送陣が解放される。アスリート達に見送られる形で、サンタ姿の猟兵達は元の世界へと帰還するのであった。
【完】
大成功
🔵🔵🔵