雪と桜の幻想奇譚
●帝都に白い花二つ
きらきらと、夜の帝都に明かり舞う。
イルミネシヨンに木々も建物も彩られ、華やかなるや、賑わいも。
ひらひらと、冬の帝都に花が舞う。
美しい幻朧桜に白い雪、薄紅と真白が混じり合い、かくも幻想煽るる世界が広がるのでございます。
老いも若きも男女も関わらず。白い息吐き、眩くも優しい灯りたちに照らされた、夜に舞う冬の花を楽しむのでありました。
「華やかでありますなぁ」
「ああ。美しい光景だ」
「屋台で甘酒でも買って巡るか?」
休暇中の學徒兵。
「ふむ、こちらは異常ないようですね」
「非番なのによろしいので? 市原警部」
「付き合う君もお人好しだと思いますよ、佐藤君」
非番の官憲。
「いやぁいいぢゃないか。『雪花に舞う桜花、いずくも白く幽玄の……川に降り積もる絹衣……』」
「河原センセ、次の原稿で?」
「うむ、『雪桜幻想譚』なんてどうだろう」
文士とブンヤのコンビもいるようでございました。
●雪と桜の幻想奇譚
「サクラミラージュのクリスマス、いかがでしょうか……」
寧宮・澪が猟兵達へと声をかけていた。
曰く、クリスマスを迎えた帝都は、現在美しいイルミネーションであちらこちらが飾られている。満開の幻朧桜と煌くイルミネーション、そしてちらつく雪が同居する幻想的な光景は、サクラミラージュでしか見られないものだろう。
「なので、この機会に帝都観光はいかがでしょう、という次第です……」
澪が今回案内する先は、川が近くにある区域。イルミネーションで飾られた幻朧桜や建物を近くで見るもよし、貸ボートや目立たぬように飛んでみたりして川の方から楽しむもよし。近くに屋台も出ているし、食べ歩きもできる。遊歩道をそぞろ歩きするのもいいだろう。
ちょうど雪も降ってくる、美しく照らされた桜の花びらと雪の混じった世界が、イルミネーションに照らされる光景は幻想的だろう。川面に映るその様を見るのも一興かもしれない。
「帝都の人と、ご友人と、お一人でも……賑やかでも、しんみりでも。皆さんのお好きなように巡ってくださいな……」
澪はもし用があれば声をかけてほしい、と言いながら、澪は冬の帝都へと案内するのだった。
霧野
メリークリスマス! 霧野です、よろしくお願いします。
●シナリオについて
サクラミラージュでのクリスマスシナリオです。
イルミネーションでライトアップされた河原にて、雪と桜、イルミネーションをぜひ楽しんでください。
澪はお声がけあれば登場します。
●複数人で参加される方へ
どなたかとご一緒に参加される場合や、グループ参加を希望の場合は【グループ名】もしくは【お相手の呼び方(ID)】を最初にご記入いただけると、助かります。
●アドリブ・絡みの有無について
以下の記号を各章の文頭に入れていただければ他の猟兵と絡んだり、アドリブ多めに入れたりさせていただきます。なければできるだけ忠実に作成します。
良ければ文字数節約に使ってください。
◎:アドリブ歓迎。
○:他のグループや猟兵とも絡み歓迎。
♪:これがあるとシリアスよりはギャグっぽかったりコミカルな感じになるかもしれません。
語:冒頭の語り口調のような表現が挟まれます。
第1章 日常
『夜桜ライトアップ』
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POW : 屋台フードを制覇する。
SPD : ライトアップされた桜を見ながら宴会を楽しむ。
WIZ : のんびり歩きながら桜見物。
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●ひらひらと雪が舞い、ひらひらと花の散る
白い雪のかけら、薄紅の桜の花びら。
照らし出す灯り、川面に映える。
屋台の香り、人のざわめき。
如何ようにも楽しめるこの夜よ。
美しくイルミネイシヨンに飾られた建物に歩道を歩くもよし、騒ぐもよし。
川面に映る、夜を楽しむのもよし。
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・帝都よりメリークリスマス。
真宮・奏
義兄の瞬(f06558)と参加
クリスマスに、瞬兄さんと出かけると約束しました。とっても楽しみにしてました。お父さんとお母さんが意味ありげな笑みを浮かべて送り出してくれたのが気になりますけど。
紺のステンカラーのコートに身を包み、イルミネーションの中を2人で歩きます。
瞬兄さんに呼び止められて差し出されたのはブルーオパールの指輪。思いがけないプロポーズの言葉に満面の笑顔で承諾の代わりに瞬兄さんの胸に飛び込みます。
待ってました!!桜の木の下で告白してから!!はい、ずっと、永遠に一緒にいましょう!!生涯のパートナーとして!!
ああ、幻朧桜が舞っています。祝福してくれてるのでしょうか。
神城・瞬
義理の妹の奏(f03210)と参加
僕も成人を迎えた。今なら言える。決意を秘めて奏と約束通りクリスマスのイルミネーションの中を出かけます。黒のチェスターコートで。
不意に奏を呼び止めて奏にブルオパールの指輪の小箱を渡して思いを。長い間待たせてしまいましたね。今の僕なら奏の全てを引き受けられる。僕の生涯のパートナーとなってくれますか。永遠に手を携えて人生を歩んでいきましょう。
奏が僕の腕の中に飛び込んで来て承諾してくれたのを感じて、ああ、告白してくれたのも桜の木の下でしたね。舞う幻朧桜の花びらに縁を感じます。ああ、今とても幸せだ。
●
クリスマスに二人で出かけると約束していた真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)は、サクラミラージュのイルミネイシヨンの中を歩く。二人の父と母に見送られ、雪と桜の舞い散る世界へとやってきたのだ。
雪と桜がともに見られる珍しい光景に、彼らの心を表すかのようなテンポで白い息を弾ませる二人の足も軽くなる。顔をひんやりとさせる肌寒い空気の中、きらきら輝くイルミネイシヨンを楽しみながら、二人は景色を楽しみ歩いていた。
瞬と並んで歩きながら、奏は出かける前の父と母の笑みを思い返して僅かに首を傾げる。
(今日をとっても楽しみにしてました。ただ、お父さんとお母さんが意味ありげな笑みを浮かべて送り出してくれたのが気になりますけど)
けれど、今は気にしなくてもいいだろう。紺のステンカラーのコートに身を包んだ奏は、隣を歩く瞬をちらりと見上げ、ふわりと微笑んだ。
一方、黒のチェスターコートの瞬はとある決意を胸に秘め、歩いていた。見上げてきた奏に視線を返しながら、一つ静かに頷いてみせる。
(僕も成人を迎えた。今なら言える)
大事な言葉を義理の妹に告げようと、瞬は決意を決めたのだ。そのために用意した品もある。タイミングを見極めてそれを告げるべく、瞬は少し気を引き締めていた。
二人で河原の道をのんびりと、光の綺麗な方へと歩いていけば段々人も少なくなり、辺りは雪と桜の花びらが、帝都を飾ったイルミネイシヨンに照らされるばかり。会話も少なくなって、ふっと心地よい沈黙のまま歩いてしばらく経った頃、大きな幻朧桜の下で瞬が口を開く。
「奏」
呼びかけに奏が足を止め、瞬に顔を向ける。その目の前に瞬は小箱を差し出した。
「長い間待たせてしまいましたね。今の僕なら奏の全てを引き受けられる」
これが、かつての奏の告白への返事だ。
「僕の生涯のパートナーとなってくれますか。永遠に手を携えて人生を歩んでいきましょう」
そう言って瞬が開いた箱の中には、ブルーオパールの指輪。
奏は思いがけないプロポーズの言葉に目を瞬かせ、すぐに承諾の代わりに満面の笑みで瞬の胸に飛び込んでいく。
彼女はずっと返事を待っていたのだ。あの日、桜の下で告白してから、義理の兄が心を決めてくれるのを。
「はい、ずっと、永遠に一緒にいましょう!! 生涯のパートナーとして!!」
言葉よりも心を伝えてくるように、全身で喜びを表現して抱きついてきた奏を抱きしめ返し、瞬も微笑む。
二人の周りに幻朧桜の花びらが舞う。ひらりひらり、奏が告白した日と同じように。まるで二人を祝福するかのように。
雪と桜の花びらが舞う中で、恋人達は確かな幸せを感じているのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
メインは観光
川の方から見るのも良いけど…今日は自分の足で
それと、寧宮さんとちゃんとお話するのは初めてな気がするから
良かったらご一緒したいな
いつも色んな場所に案内してくれてありがとうの気持ちも込めて
今日は寧宮さんが食べたいものも飲みたいものも、僕に奢らせて
あ、寒くない?
僕の上着……サイズ合わないかな…(低身長男子)
なにか温かいもの(僕は辛味苦味が苦手で甘味好きです)を食べ歩きつつ
イルミネーションに彩られた散歩道をゆっくりと歩きたい
雪と桜って凄く風流だよね
サクラミラージュじゃないと中々見られない組み合わせだから
クリスマスにこの世界に来るの好きなんだ
誘ってくれてありがとうね
少しは恩返し出来たかな…?
●
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は雪降る河原を歩く。ひらりと雪が舞い、くるりと花びらが踊る。イルミネイシヨンに彩られた散歩道を歩きながら見上げる夜空は、白が混じり合うようで幻想的でもあった。
(川の方から見るのも良いけど……今日は自分の足で)
白い息を吐きながら、ゆっくりと道を行く。きらきら輝くライトに照らされて、少し離れた場所には屋台も出ていて。冬の一時を楽しむ帝都の人達の姿も見えた。
その中に髪の長い猟兵の姿も。
「あ、寧宮さん」
「はいー……? ああ、
澪さん」
寧宮はことりと首を傾げ、眠たげな顔で澪の方へと振り向いた。
「こんばんは。今日もありがとう」
「はい、こんばんは……楽しまれてますか?」
「うん。寧宮さん、ご一緒しても大丈夫?」
「ええ、どうぞ……」
「あ、よかったら何か飲んだり食べたりしたいものある? いつものお礼に僕が奢るよ」
寧宮は少し首を傾げ、表情を変えないままこくりと一つ頷いた。
「あっちにたい焼きと、お汁粉の屋台がありますので……そちらを奢っていただければ嬉しいです」
「任せて」
二人、連れたって雪の降る道を歩く。ひらひら、ふわふわと雪と花びらが、空から降ってくる。
片手にたい焼きを幾らか詰めた袋、もう片手にお汁粉のカップを持って二人はゆっくり歩いていく。
「寧宮さんとちゃんとお話するのは初めてな気がする」
「そですね、いつもお手伝いありがとうございます……」
「ううん。こっちこそいつも色んな場所に案内してくれてありがとう」
礼を言い合う二人に冷たい風が吹いてきた。雪と花びらの混じった冬の風が、澪の頬や耳を冷やしていく。
「あ、寒くない? 僕の上着…………サイズ合わないかな……」
澪はそっと上着を寧宮に差し出そうとして、小柄な自分と比較的背の高い彼女とを見比べて悩んでしまう。唸る彼に寧宮は大丈夫だと首を振ってみせた。
「たい焼きもお汁粉も温かいので、大丈夫です……ありがとうございます」
「そう? 寒かったら言ってね、羽織るくらいはできると思うから」
白い息が喋るたびに零れていく。手の中のたい焼きとお汁粉も、白い湯気を空へと上らせていた。
ふと澪がそれを追いかけて上を見れば、イルミネイシヨンに照らされた雪と桜が暗い夜空によく映えている。まるでその中を上っていく錯覚すら覚えるほどだ。
「雪と桜って凄く風流だよね。サクラミラージュじゃないと中々見られない組み合わせだから、クリスマスにこの世界に来るの好きなんだ」
澪はそう言って、寧宮に微笑んだ。
「誘ってくれてありがとうね」
寧宮は、澪の言葉に笑みを返す。
「どういたしまして……それと、ありがとうございます」
十分な恩返しをもらって、言葉までもらって。寧宮は十二分に満足していた。澪にも、きっと伝わっただろう。
大成功
🔵🔵🔵
立花・美里
屋台で買った甘酒を飲みながら雪と桜を楽しむ。
「猟兵になって初めて訪れた世界ですけどこんな綺麗な景色が見れて嬉しいです。」
桜を見ながら
「今はクリスマスですけどもうすぐ年末がやってきますね。」
●
立花・美里(竜神の戦巫女・f39196)は、湯気の立つ甘酒を手に、空から舞い降りる雪と桜の花びらを眺めていた。
暗い夜空に白が舞い、ふわりふわり揺れては下へと降りてくる。時折吹く風にひらりと舞い上がり、くるりと踊るように雪と桜が混じり合う。
それが帝都を飾るイルミネイシヨンに照らされると、一層美しさを増していく。夜の暗がりに白い雪と花がより映えて、色とりどりの光の中を漂っていた。
「綺麗ですね」
眺めるうちに少し体が冷えてきので、美里は暖かな湯気を立てる甘酒を口にする。柔らかな甘みと温もりが、体の内側から温めてくれるようだった。
白い息を湯気に溶かしながら、美里は小さく呟いた。
「猟兵になって初めて訪れた世界ですけど、こんな綺麗な景色が見れて嬉しいです」
初めての世界で見た、初めての景色。雪と桜を同時に楽しめる不思議な場所。美里はその幻想的な光景を見つめ続ける。
「今はクリスマスですけどもうすぐ年末がやってきますね」
年の瀬が慌ただしいのは、この世界でも同じだろうか。故郷はどうだっただろうか。
温かい甘酒を飲み、美しい桜を見ながら、少しだけ美里は未来と故郷へと思いを馳せる。
もうすぐ今年が終わり、来年がやってくる。その時、美里はどうしているだろう。
ひらひらと雪と桜が降り積もる世界で、静かに美里は空を見上げているのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夜久・灯火
【黒猫】◎
幻朧桜は一年中咲いてるのは知ってたけど、雪と一緒に見るのは初めてだね。
舞い散る桜の花びらと雪が幻想的だねー。
色んな屋台もやってるみたいだし、景色を楽しみながら散策しようか。
有栖ちゃん達も今日は楽しもうね♪
という訳で、有栖ちゃんたちと一緒に屋台や風景を見て回るよー。
後、防寒着にコートも着ていくよ。自前の毛皮があっても寒いからね。
雪も降ってるし、有栖ちゃんは寒くないかな?
屋台で温かい食べ物も売ってるだろうから、購入して3人で食べようか。
出来立ての今川焼きとか温まりそうだよねー。
温かいお茶もポットに入れて用意してあるから、よければどうぞ♪
結城・有栖
【黒猫】◎
桜と雪の組み合わせは初めて見ますが、とっても綺麗ですね。
「夜は灯りも組み合わさって、より幻想的に見えるヨネー。
後、屋台の食べ物も美味しそうダネ」
オオカミさんは花より団子って感じです?
ともあれ、灯火さんも今日はよろしくです。
UCでオオカミさんも呼んで、3人で散策します。
冷えるのでいつも着てるコートとマフラーも着用しますね。
…灯火さんはもふもふで暖かそうですね。
屋台の方は色々と美味しそうなものも多いですね。
灯火さんはなにか見つけましたか?
…今川焼きですか。出来立ては温かくて美味しそうですね。
「ねぇ、有栖。私も食べたいナー」
ええ、オオカミさんの分も用意しますので一緒に食べましょうね。
●
冬の空気に満ちた河原の道の傍らで、夜久・灯火(キマイラの電脳魔術士・f04331)と結城・有栖(狼の旅人・f34711)、そして有栖のオオカミさんがゆっくり歩く。
各々寒さに耐えられるよう、暖かな格好で冬のサクラミラージュへとやってきた。
自前の毛皮だけでは寒かろうと、灯火はコートと、温かいお茶を入れたポットを。有栖もいつも着てるコートに加えてマフラーをつけて。オオカミさんもお揃いの恰好だ。
「……灯火さんはもふもふで暖かそうですね」
「有栖ちゃんもマフラー暖かそう」
お互いの冬の姿に笑みを交わし、冴え冴えとした空気の中を三人で歩く。
「幻朧桜は一年中咲いてるのは知ってたけど、雪と一緒に見るのは初めてだね。舞い散る桜の花びらと雪が幻想的だねー」
「桜と雪の組み合わせは初めて見ますが、とっても綺麗ですね」
「きれいダネー」
三人の視線の先にも周りにも、花びらと雪がひらりひらりと舞い踊る。暗い夜空の中を浮かび上がるような白がイルミネイシヨンの色とりどりの光に照らされて、なお一層鮮やかに浮かび上がっていた。
「夜は灯りも組み合わさって、より幻想的に見えるヨネー。
後、屋台の食べ物も美味しそうダネ」
「オオカミさんは花より団子って感じです?」
ひらひらと舞うより花と雪に視線がいく灯火と有栖の視線に比べて、ほかほかと白い湯気を立てていい香りをさせている屋台の方にとオオカミさんの視線は向かうようで。
「色んな屋台もやってるみたいだし、景色を楽しみながら散策しようか。有栖ちゃん達も今日は楽しもうね♪」
「灯火さんも今日はよろしくです」
「よろしくネー」
景色を見るにも温かいものがあるといい、と思った三人は屋台から覗いていく。
「屋台の方は色々と美味しそうなものも多いですね」
甘酒やたこ焼き、味噌汁やたこ焼き。冷たい飲み物は少なめで、やはり温かい品が多い。
「灯火さんはなにか見つけましたか?」
「出来立ての今川焼きとか温まりそうだよねー」
「……今川焼きですか。出来立ては温かくて美味しそうですね」
「ねぇ、有栖。私も食べたいナー」
「ええ、オオカミさんの分も用意しますので一緒に食べましょうね」
熱々の鉄板で幾つも焼かれる今川焼き。中身も色々あるようで、甘い生地の焼ける香りを含んだほこほこ美味しい湯気を立てて三人を誘ってくる。
あれもこれも、と迷ってしまう気持ちに悩みながらも、食べ切れる量を購入し、渡された紙袋を抱えてみればやはり温かい。
出来たての温もりを抱えたまま、三人でまた散歩道を歩き出す。
「暖かいねー」
「はい、温かいですね」
「いい匂いでおいしそうダヨ」
紙袋からかすかに上がる白い湯気と、話す口から溢れる白い息。一緒になって空へと上り、白い雪と花と混じって消えていく。ときにはイルミネイシヨンに照らされて、ほのかに色を映して輝いていた。
しばらく話しながら歩いた先にあった大きな幻朧桜の下、ちょうどベンチがあったので、三人で並んで座って今川焼きを食べることにする。
「温かいお茶も用意してあるから、よければどうぞ♪」
「ありがとうございます」
「ありがトー」
灯火の入れてくれた温かいお茶を飲み、今川焼きにかぶりつく。まだまだ温かな中身が生地と一緒に美味しい味を口の中に広げてきて、三人の顔はふわりと緩む。
「美味しいね」
「はい、美味しいです」
「いくつでも食べられそうダヨ」
特別な風景の中、友人と温もりを分け合いながら食べる今川焼きは、これまで食べた中でも一番美味しかったかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎
約束……約束とも呼べないかもしれないけど、また会いたいという願い。
クリスマスのイルミネイシヨンに飾られた帝都に、縁を感じながら。
「優人さん、メリークリスマス、雪と桜……今日は一段と綺麗ですね……!」
心がふんわりとするのか、思わず溢れた笑み。
休暇中の三人のおじゃまじゃなければ良いのだけど……。
(もしよければと、キチンとお土産のお手製のクリスマスケーキ、桜の花弁を模ったチョコを散らしたホワイトブッシュドノエルは桜と雪の色合いに)
「優人さん、お時間ありますか?ぼくと聖夜祭のイルミネイシヨンを観に行きませんか?」
提案を受けてもらえたら、灯りの燈る帝都の街へ。
優人さんとこうして出掛ける聖夜の街の一時。
綺麗な雪と桜の花が祝福のようで、思わず……。
「……優人さん、手を繋いでも良いですか?こうしていたいんです、こうして体温を感じられるような距離感で……」
小さく、囁くように。
「ぼくは……宿縁があります……もし全てが……この世界への償いが終わった時、どうかこうして側にいさせてください……」
●
国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ
乙女・f23254)は白い雪と桜舞う帝都の道を歩く。
(約束……約束とも呼べないかもしれないけど、また会いたいという願い)
秋の約束が果たされそうな、そんな縁をクリスマスのイルミネイシヨンに飾られた帝都に感じながら歩いていけば、確かにそれは繋がっていた。
賑やかな光の向こう、見覚えの歩く姿。鈴鹿は寒さだけでなく、感情でも頬をほんのり染め上げる。そのまま心がふんわりとしたのか、花が咲き綻ぶように笑みが溢れていた。
「優人さん、メリークリスマス、雪と桜……今日は一段と綺麗ですね……!」
「鈴鹿殿、メリークリスマス。ああ、綺麗だ」
鈴鹿の探し人、優人も彼女の姿を見て微笑んだ。側で連れ立つ武蔵と信濃も軽く頭を下げている。邪魔じゃなければいいが、と思いながら鈴鹿は土産にと作ってきた品を差し出した。
「もしよければ、どうぞ。クリスマスケーキです」
差し出した箱に詰めてあるのはブッシュドノエル。桜の花弁を桜の花弁を模ったチョコを散らしたホワイトブッシュドノエルは桜と雪の色合いに染まっている。
「ありがとうございます!」
「ありがたく頂こう」
「ありがとう」
礼を述べる三人に丁寧に渡し、鈴鹿は優人の番の時に小さく囁いた。
「優人さん、お時間ありますか? ぼくと聖夜祭のイルミネイシヨンを観に行きませんか?」
「ああ。……信濃、武蔵。また後日」
「了解、気をつけて」
「寒いですので、冷えすぎぬように!」
優人は仲間に別れを告げて、鈴鹿と歩き出す。
クリスマスを祝うように飾られた帝都の中、雪と桜はひらりひらりと夜に舞う。ほうと吐いた白い息の中を白い雪と花びらがくぐり抜け、イルミネイシヨンに彩られながら飛んでいく。
ただ肩を並べて、話しながら歩くのもいいけれど、こんな祝福が降る夜ならば、と鈴鹿は思わず願いを口にしていた。
「……優人さん、手を繋いでも良いですか?」
「喜んで」
優人は手袋を外し、鈴鹿へと手を差し出した。少しだけ鈴鹿より温かい大きな手が、そっと細い手を包んでいく。
手を繋いだ分だけ近づいた距離に、少し近くなった互いの顔に、ふわりふわりと何かが鈴鹿の内に積もっていく。それは、とても幸せで愛おしいものだった。
「こうしていたいんです、こうして体温を感じられるような距離感で……」
「うん。温かいな」
互いの体温を分け合いながら手を繋いで、雪と桜を見上げる二人。鈴鹿は、きっとこの温もりがあるなら、と繋いだ手に少し力を込める。
それから、夜の空気に、雪と桜に溶けるような小さな声で、囁いた。
「ぼくは……宿縁があります……もし全てが……この世界への償いが終わった時、どうかこうして側にいさせてください……」
「……貴方の戦いが終わるときを、待っているよ。愛しい雛罌粟が私の側で、笑ってくれる日を」
お互い、繋いだ手に力が篭もる。今だけは、互いの温もりを感じながら綺麗な夜を見上げていていいのだ、と知りながら。
決意を込めて、鈴鹿は帝都の灯りを見つめていた。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
◎
くりすます、てのはあんまり縁も無いけど
帝都には今年も何度か来たからねェ
相棒のユキエは寒いのが苦手なので懐に抱いとこ
どーお?寒かない?
『だいじょうぶ、でもトーゴが息するとユキエが窮屈』
え?それはガマンして
寒いからオレも呼吸小さめだけど息は止められねーし
今夜は設えられた遊歩道を歩こ(癖で陰に沿うような忍び足。すれ違った人が「?」とたまに首を傾げる)
あ、ユキエほら見て
灯りが雪に反射して桜をぼんやり照らしてんの
それが映る川面も、散る桜と降る雪も
綺麗だねェ
屋台でミニカステラ少しと飴湯を買ってじんわり温まる
ユキエにもカステラを一つ
『今日はユキエを甘やかす日?』
あは、そーだな
可愛いユキエ
そゆことにしとこ?
●
「どーお? 寒かない?」
『だいじょうぶ、でもトーゴが息するとユキエが窮屈』
「え? ごめん、それはガマンして。寒いからオレも呼吸小さめだけど息は止められねーし」
鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は冬の夜の空気に白い息を吐きながら、寒さが苦手な相棒のユキエを懐に抱いていた。体温を分け合い、外套で寒さを防いでいるからユキエも十分に温かいが、狭い懐は多少窮屈なようで抗議が帰ってくる。
冷たい空気を一気に吸い込まないよう呼吸は小さめ、胸の上下も緩やかなトーゴではあるが、流石に呼吸は止められない。小さく白い息を吐きながら、トーゴはクリスマスの帝都を歩く。
(くりすます、てのはあんまり縁も無いけど。帝都には今年も何度か来たからねェ)
せっかくの冬の夜だ、普段と違う光景を見ていくのもいいかと思ったのだ。
今夜は設えられた遊歩道を、ゆったり歩くトーゴ。無意識の内に散歩道の端を歩き、時折ある陰に潜むように歩いてしまうから、すれ違った者には、ふっとトーゴが現れたり消えたりするように感じてしまい、「?」とたまに首を傾げていた。
「あ、ユキエほら見て」
トーゴの言葉にユキエがもぞりと懐から顔を出す。
イルミネイシヨンの灯りがふわりと舞う雪と桜の花びらを浮かび上がらせる。かすかに積もった雪にも灯りは反射して、花を咲かせる幻朧桜をぼんやりと照らし出されていた。川面に視線を移せば、暗い鏡のような水面に光景が揺れながら映し出され、幻想的な美しさが楽しめる。
「綺麗だねェ」
『そうね。でも少し寒いわ』
きゅっと懐に戻っていったユキエに笑って、トーゴは近くの屋台に向かう。白い湯気と香りの漂う中、熱々の飴湯と出来たてのカステラを購入した。
早速飴湯を飲んでみれば、甘さと温さがトーゴ体の内に広がるよう。まだまだ温かいカステラも一つ、ユキエへと分けてやると、硬いくちばしが突いていった。
『トーゴ。今日はユキエを甘やかす日?』
「あは、そーだな」
ちょいと指でユキエの頭を撫でてやり、トーゴはふわふわの羽を楽しみながら頷いた。
「可愛いユキエ。そゆことにしとこ?」
『そういうことにしといてあげる』
「ありがと」
大成功
🔵🔵🔵
花牟礼・桜深
◎○
へぇ、綺麗なものだよね。というようなことを言いながら、帝都の街並みに彩られたイルミネーションを眺めてのんびりと歩く。しかし、角袖外套だけだと寒くて首元も暖かくすれば良かったと悔やむも後の祭り。
降る雪が桜の花弁が舞うようで美しいとそっと手のひらを差し出すも、花弁と違って熱の熱さによってすぐに溶けてしまうのが儚くも美しいと感じる。
花と雪って相性が良い。この瞬間を目に焼き付けてから白い息を吐く。寒いな。どこかに入って温かいものでも飲もうか。甘くて温かいものがいいなぁとそう思って歩を進める。
●
角袖外套をしっかりと着込んだ花牟礼・桜深(桜の樹の下・f35453)が夜の空を見上げれば、ひらりひらりと雪と桜が舞っていた。街を照らすイルミネイシヨンの光を受けて、ほのかに色を移しながら浮かび上がる姿は美しい。
「へぇ、綺麗なものだよね」
イルミネイシヨンと合わせるサクラミラージュの冬ならではの光景を、街並み彩る光と共に愛でながら、桜深はゆっくり歩いていた。吐息も白く浮かび上がり、冷えた空気がひんやりと首筋を冷やしていく。
(首元も暖かくすれば良かった)
若干悔やむももはや後の祭り。それでもこの光景から目を離し難く、すぐに帰るのは惜しい気がして桜深はもう少し、と歩いていく。
静かな冬の夜の中、白い雪と桜の花びらが舞い踊る。ふわりふわりと音もなく降りゆくその様が、時折吹く風に揺れるままに漂うその様が、美しいと桜深は手のひらをそっと差し出した。
手のひらに確かに残るのは滑らかな桜の花びら。触れた途端、冷たい感触を残して桜深の手のひらの熱の熱さで溶けてしまうのは雪のひとひら。それが儚くも美しく、残る花びらとの対比も相まって互いを際立たせるようだった。
(花と雪って相性が良い)
じっとその瞬間を目に焼き付けた桜深は、ほう、と白い息を吐く。ふわりと漂うその中を、雪と花びらが過ぎていった。
「寒いな」
守られていない首筋が一層冷えたようだった。僅かに身をかがめ、冷たくなった手を擦り合わせながら、桜深はまた歩を進めだす。
(どこかに入って温かいものでも飲もうか。甘くて温かいものがいいなぁ)
道ながらにある屋台を覗けば、甘酒や飴湯、汁粉などもあるだろう。少し先にあるカフェーの中もまだ明るい、温かなホットチョコレイトや、甘くした珈琲も悪くないかもしれない。
寒い冬、儚い美の中で目を細め、桜深は体を温める物を求めて足を少し早くした。
大成功
🔵🔵🔵