●
南瓜や蝙蝠、黒猫に白猫、月にカラフルな目玉まで!
賑やかな提灯が数多下がる此処は
帝都の一画にあるチャイナタウン。
焼き栗を売る威勢の良い声に、真っ青なベリードリンクはハロウィン限定!
お化け南瓜の顔や蝙蝠チョコレヰトのエッグタルトに、黒猫マーラーカオは黒糖餡入りで、フルーツ目玉ゼリヰはつるり楽しむ気軽さを。
賑わいの中、きゃぁーははは!と人込みの隙間で反響する子供達の笑い声。
その中に、
早世した子らがいることをこの町の住民は知っている。
『ん?あっ、まーたやられたネ!』
『しかたないヨ。今夜は
派对!』
あっはっは!と笑い合う大人達は一つに減ったエッグタルトを賭け
ジャンチーを打ち始める。
今宵はお祭。
悪戯子供の夜祭さ。
●
「というわけだ」
何がさ。
突然見た目通り口数の少なるのやめてください御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)さん。やら、仕事しろーとか色々聴こえてくる突っ込みにむすっと眉間に皺寄せた藍夜は言った。
「だから、サクラミラージュのチャイナタウンを楽しみながら子供を追いかけて捕まえて満足させてやってくれないか」
最初の「祭り兼仕事だ。中華街で子供捕まえてくれ」より余程わかりやすく進歩してると誰かが褒めた。
曰く、入り組んだチャイナタウンをじっくり楽しむもよし、子供を捕まえること前提に素早く駆けまわるも良し。ただ一つ、注意があったけれど。
「怖い顔と端から捕まえるオーラを出すな。しまえ。そしてそっと優しくだ」
こういう感じ、と謎ジェスチャーはほぼ分からなかったがとりあえずとても優しく“つーかまーえた!”としてあげると良いのだという。
元々この時期はハロウィーン。
「この街では
早世した子らがお茶菓子を盗むのは当たり前の時期だそうだ。だが……そうだな、叱られた経験の無さからか、悪戯が年々過激になって来たらしい」
だからこそ少しだけ追いかけまわし、叱ってやること。
ただし優しく。楽しませることを忘れずに。
「よって、大人げないのでユーベルコードの使用は禁止とする。猟兵らしく自力で追うぞ」
元よりこの街に現れるのは
早世した子ら。
乱暴をしようものなら住民や、それこそ土地に歓迎されない可能性もある。
「まぁ……そうだな、アドバイスとしては楽しむ心を忘れるな、というくらいか。折角の祭りだし」
年一だ、楽しんで来い。
そういった藍夜が猟兵達を送り出す。
皆川皐月
お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
はろいん。ごーちゃいなたうん。
●第一章:『桜舞うチャイナタウン』
帝都の一画にあるチャイナタウンです。
美味しい物も楽しい物も数多あり、ハロウィンも相俟って賑やかさに拍車がかかっています。
『美味しい屋台』藍夜調べお勧め(※他にもあります)
🌰焼き栗(シンプルホクホク美味しい)。
🍹魔女の真っ青ベリードリンク(しゅわしゅわ炭酸)。
🥚エッグタルト(お化け南瓜の顔や蝙蝠チョコレヰト装飾)。
🐈黒猫マーラーカオ(黒糖餡入り)。
👁フルーツ目玉ゼリヰ(白目は杏仁豆腐カラフルな目部分にカットフルーツ入り)。
☕中国茶飲み比べミニボトル(花の描かれた陶器ボトル入り5本セット)。
内容は青茶(烏龍茶)、甘露茶(白茶)、茉莉花、砂金茶(黄茶)、緑牡丹茶(緑茶)です。
※冒頭の絵文字は文字省略にお役立てください。
●第二章:『桜彷徨う迷宮』
子供を追いかける内、桜に遊ばれてしまうかも。
幼く早世した悪戯っ子を同か優しく捕まえ叱ってあげて。
寂しい涙を拭う術はお任せ致します。
愛があっても拳は振らず、“いけないよ”と諭してくだされば満足するかもしれません。
●雰囲気
基本ほのぼの×楽しいです。
楽しいハロウィンの夜の一幕をお過ごしください。
●
複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】で大丈夫です。
IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすいです。
マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございます。
もしよろしければ、お役立てくださいませ。
ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。
お声掛けがございましたら、皆川NPC(藍夜☔等)も今回は第一章のみご一緒出来ます。
最後までご閲覧下さりありがとうございます。
第1章 日常
『桜舞うチャイナタウン』
|
POW : 美味しいものを食べ歩く
SPD : 色々な店を見て回る
WIZ : 中華街の雰囲気を満喫する
|
●
いいな
いいな
君の楽しい
君の美味しい
君の気に入り
君の好き
君の
君の、
君の“大切”
いいな、
いいな……!
うれしいがあるんでしょ?
たのしいがわかるんでしょ?
すごいね、すごいや、ふしぎだね!
ねえ、おねがい
『かーしーて!』
***
【南瓜祭の悪戯子供】
🎃寂しさが相俟って人の大切を欲しがるようになったシーツお化けの時折透ける子供達。
チャイナタウンを遊ぶ皆様にちょっかいを掛け、大切をお借りしてしまうかも?
桜迷路まで追えば喜び、今宵を去る際にかえすことでしょう。
彼らが借りるのは物だけ。
※大切が“人”の場合のみ、どうか手を引っ張って数歩歩くただ一瞬の“友達ごっこ”をお許しください。
あそぼ?
※プレイングに必ず【大切】をお書きください。
無い場合のみ、お返しいたします。
御園・桜花
大切なもの
今上帝
サクラミラージュ
転生
大切に思うものが概念ばかりで
1つも手の内にないなんて
そうと意識しなければ気が付かなければ
まだ不幸ではない
…多分
「目玉…キモカワですけど、此れをお土産にしたら怒られる気がします…1番気になりますけれど」
👁や🥚や🐈や🌰を見比べウンウン悩む
何れを業突…大家と店子仲間にお土産にしようか
変な物を買っていくと説教食らい
買っていかないと仕置きされるので真剣
「駄目です分かりません!こうなったら全部買って選んで貰います!」
全て買い込んでUC「古木の宿」にしまう
※そして「食いきれないだろアンポンタン」と無駄遣いを怒られる
「…?」
手を引かれたのに気付いてお菓子を差し出した
● 、
『君の大切、なぁに?』
「――?」
ハッと後ろから聞こえた声に御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は振り返る。
が、あったのは雑踏だけ。突然振り返った桜花に擦れ違う人々は不思議そうに窺うばかりで、幼い声の主は全く見当たらなかった。
「(気のせい
……?)」
きゃぁーはは!
お化けや吸血鬼に魔女。子供特有の甲高い声で笑いながら仮装をした子供達が雑踏を縫い駆ける。
「元気がいいですね……さ、お土産でも探しましょう!」
いらっしゃい!と威勢の良い客引きに珍しいハロウィーン限定の菓子に並ぶ人々。
可愛らしく美味しそうな物から、ちょっと珍しくもキモかわな物まで様々並ぶ店の賑わいの派手やかなこと!
酷く目立つ目玉杏仁の様子にやや慄きながらそうっと通りがかりに覗いた桜花は唸る。
「目玉……キモカワですけど、此れをお土産にしたら怒られる気がします……」
そう。
桜花の土産を待っているのは厳しい来た大家の遣り手婆さんその店子。
それこそハイカラを言い訳にしたところで、何でもハイカラって言やあ良いと思ってんのかい!と大きな雷が落ちること必須。
「でも……1番、気になりますけれどっ」
でも多分駄目。
くるりと踵を返し、建ち並ぶ菓子の店の群れにサッと目を通す。
威勢のいい焼き栗の屋台。虫せいろの湯気がひときわ目立つエッグタルトの店。同じく黒猫マーラーカオの店も立ち昇る湯気の華々しいこと。
「おぉ……!」
美味しそうですね、と楽し気に軽やかな足取りで人込みを縫っていた時だ。
『あそぼう!かーしーて!』
「
きゅっと小さなシーツお化けが桜花の小指を握って引き、くるくる人込みを踊るように遊ぶ。
『だいじなお約束、おいのり、いっぱい!ありがとー!』
きゃはは!と笑う声が空へと飛んだ。
「……あれが。――あ、いっけない!」
影朧にさらわれ一時忘れたお土産は悩んだ末に結局全てをお買い上げ。
持ち帰って桜花は知るだろう。一つ、エッグタルトが減っていたことに。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・奏
義兄の瞬(f06558)と参加
チャイナタウン!!いいですね。兄さん、ぜひ行きましょう。(ぐいぐい)ああ、屋台のいい匂いがする!!
エッグタルト、焼き栗、マーラーカオ!!ああ最高!!ハロウィンらしいトッピングもいいですね!!
あ、中国茶の飲み比べしましょう!!これは・・茉莉花のお茶ですか?ほのかに甘いですね。
屋台を兄さんと回っていたら元気な子供さん達に話しかけられます。
大切なものですか?家族ですね。隣にいる瞬兄さんも大切な人です。物じゃなく人ですが。
微笑ましく答えると・・・あれ、途端に兄さんの姿が見えなくなってしまいました!?私も子供さんに引っ張られてますね?あ〜れ〜!!
神城・瞬
義理の妹の奏(f03210)と参加
そうですね。チャイナタウンは余り行ったことなかったかも。いい機会ですし、奏と出かけましょう。折角のハロウィンですしね。
ええ、屋台からとても甘い匂いがします。焼き栗、フルーツ目玉ゼリヰ、ベリードリンク。ハロウィン独特のトッピングが目を引きますね。
飲み比べですか?これは、烏龍茶ですかね。
屋台を楽しみながら奏と歩いていると元気そうな子供さんに会います。ふむ、この子が件の。
大切な物ですか?物じゃなくて人ですが、家族ですね。傍にいる奏は大切です。とても。
答えた途端、たちまち奏の姿が見えなくなります。僕子供さんに引っ張られてますか?本当に元気ですね〜(微笑む)
●君こそ
雑踏の賑わいに真宮・奏(絢爛の星・f03210)が白い頬染めキラキラと瞳を輝かせていた。
日々忙しい猟兵の仮面を今日は休め、少女らしく。
「見て見て!兄さんチャイナタウンです、ぜひ行きましょう」
「うですね、折角のハロウィンですしね」
と神城・瞬(清光の月・f06558)が柔らかな微笑みを浮かべれば、並び立った奏は楽しさを微塵も隠さず微笑ながら、力強く瞬の手を引いた。
「ああ、屋台のいい匂いがする!!」
「ええ、屋台からとても甘い匂いがします」
カラフルな昇り旗も人通りも同じくらい賑やかな中、瞬と奏は大きなせいろからふうわり立つ湯気や大鎌からスモーク伴って取り出される怪し気な目玉のゼリィに笑い合う。
祭りのらしい空気はどうにも賑やかながら、“チャイナタウン”らしい少しの怪しさに好奇心ばかりが擽られてしまう。
さて一つ落ち付いたらどれにしよう?と悩みあった結果目についた昇り旗を挙げてみるのは?とどちらかともなく提案を。
先攻は瞬。
「焼き栗、フルーツ目玉ゼリヰ、ベリードリンク。ハロウィン独特のトッピングが目を引きますね」
むむっ、同じものに目を付けているかも――!
というのは分け合いましょうね、兄さん!なんて念をしをして後攻の奏。
「エッグタルト、焼き栗、マーラーカオ!!ああ最高!!ハロウィンらしいトッピングもいいですね!!」
“ハロウィンらしい”
その言葉が被った瞬間、瞬も、そして奏も互いを見つめ――わっとすぐ笑顔になれた。
二人だからこそ楽しくて、瞬だから、奏だから、かけがえのない存在だ。
どうしましょう、兄さん?はつらつとした笑顔向けていた旬の瞳がパっと驚きに開かれ、兄さんあれ!と手を引いたのは『中国茶飲み比べ あり〼』の昇り旗。
飲み比べ。
聞いたことのある名の茶から、分かりそうでピンと来ない茶まで色々。
丁度の共にかさついてきたころ合い、と奏が瞬を見た
「あ、中国茶の飲み比べしましょう!!」
「飲み比べですか?いいですよ」
やった!と笑う奏と俊が選んだのは桃色の蓮描かれた真白い陶器のボトルと白い蓮の描かれた青色のシンプルな陶器のボトル。
ふたを開け、どこかで嗜んだことのある香りにふっと奏は表情を緩め一口。
「これは……茉莉花のお茶、ですか?ほのかに甘いですね」
「これは、烏龍茶?」
ボトルの見目のみで選んだにしては下慣れた味が引けたと喜ぶ二人がの間を、きゃーははは!と子供の声が駆け抜けて。
『大切、かーしーて!』
子供の声。
ハッと瞬が奏を。
奏が旬を見た瞬間、二人は互いに別方向へ引っ張られてしまう。
「はは、おや本当に元気ですね〜」
「あれ、兄さん!?私も引っ張られてまるね?あ〜れ〜!!」
手を引く小さなその手が、きゅっと瞬と奏の指を握る。
熱の無い小さな手。
どこまで行くのだろう?そう思った瞬間、パッと二人の手は離された。
『ありがとう、またあそぼお!』
きゃはは!と笑う声が晴天の空へ駆けてゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夜鳥・藍
美味しそうな屋台がたくさんで目移りしますし、全部とはいけないのがまた少し悲しくて。
ですがこの中国茶飲み比べならのミニボトルなら追いかけっこの合間の休憩にいただけますし、陶器ですから持ち帰って飾っても良いですね。それにきっと中身ごとに花の絵も違うでしょうしそれも楽しみです。
【大切】なものはネックレス。通されているのは生まれた時に手に握りこんでいたという水晶と指輪。どちらもおそらく過去の私にとって大事だったもの。そして今世、過去だからと両親が捨てずに持たせてくれたもの。両方の意味で私には大切な物。今と過去を繋ぐ唯一の物。
ですからお貸ししますが必ず返してくださいね。
●君は、
賑わうチャイナタウンは、常のサクラミラージュとは異なる様相を見せていた。
「凄い……美味しそう、だけど……」
炒りたての栗だけではなく、菓子の類は勿論王道の肉まんや餡まんののぼり旗もちらほら。
持ち帰れるあろうか?日持ちはどれくらい?なんてそろりと夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は覗いてしまう。
だがしかし、マーラーカオやエッグタルト、目玉ゼリーなど明らかに生菓子に相当するものは恐らく賞味期限は本日のみ。
「やっぱり全部は無理……ですよね」
この後、桜の迷路がという話も聞いている。
ドリンクならば――と思い覗いたが、走れば蓋の開きそうな持ち帰りカップではそれも叶わない。
ポケットに入るサイズがいいのでは?なんて思いながら漫ろ歩く藍の瞳に、蓮の花描かれたのぼり旗が映って。
「お茶……?」
『今なら持ち歩きサイズ!セットでも一本からでも安くするよぉ!』
威勢の良い店主の声が雑踏に響いた時、なるほどボトルならば、と藍は店の暖簾を押し上げた。
「すみません――……」
桃色蓮花のジャスミン茶、白色蓮花の烏龍茶、水仙涼し気な甘露茶、大輪の菊咲く黄茶、合わせたのか淡黄緑の牡丹咲く緑茶。
五つの小瓶に、飲み終わったらスパイスや調味料入れにもお勧めだよ、と笑った店主を思った時。
きゃあ!ふふ、あはは!
『あーそーぼー!かーしーて!』
「!」
流れる秋風。
幼子の声にハッとした時。藍の目の前にはシーツを被ったお化けの子供。
その手には、藍が最も大切な“
水晶の指輪”。
「っ、――お貸ししますが……同か必ず、返してくださいね」
『うん!』
わあ、きれー!
きゃあすごーい!
酷く幼いやり取り。
秋に陽射しに透かして見ては、子供――否、子供達は楽し気に追いかけっこをするばかり。
きれー!
どうしてきらきらするの?
わかんない!
「(……そう、初めてなのね)」
宝石を見たことが無い命。
見ぬまま世を去った命。
一時貸し与えたそれを、笑う子らは去り際藍の手中へと返す。
『またあそぼー!』
大成功
🔵🔵🔵
藤・美雨
◎
深(f30169)と
【大切】は『メリノくん』
わぁ、チャイナタウン!
封神武侠界とは違った綺麗さだね
楽しみながらお仕事しよっか
という訳で食べるぞー!
みてみて!このマーラーカオ黒猫ちゃんだ!
えへへ、可愛い
一生見てられる……
でも食べる……頭から……
タルトははんぶんこしよ
蝙蝠チョコもはんぶんこね
水分補給には中国茶
私茉莉花!
ふふ、ボトルも可愛いよね
そうやって遊んでたら気配を感じる
さてさて何を盗まれるかなー?
……あ、メリノくんがいない!
ランくんもいない!
しょうがないよね、二匹とも可愛いもんね……
でも盗みは駄目だ
取り返しに行こう!
ごちそうさましたら、深の手を引いて駆け出して
まてまてー!鬼ごっこの始まりだー!
呉・深
◎
美雨(f29345)と
【大切】は『ランくん』
桜の世界にもこんな場所があるんだな
仕事はきちんとしなければ
……美雨は楽しむ気満々だな
焼き栗とエッグタルトを頼もうか
シンプルな焼き栗は無難に美味しい
……美雨、それ食わないのか?
食うのか……頭から……
タルトは確かに半分ずつでちょうどいい
チョコもしっかり分け合って
茶は……俺は青茶に
さっぱりとした味わいが心地いい
のんびりとしていれば不可思議な気配
……なるほど、ランくんとメリノくんが盗まれたか
子供が好きそうなものだしな
だがこういう時にどうするかは教えてやるべきだ
食事を終えて一段落すれば美雨に引っ張られて
待て、俺はお前ほど元気じゃないんだ
こう、加減をだな……!
●並んだ足で、
「わぁ、チャイナタウン!」
「桜の世界にもこんな場所があるんだな」
封神武侠界とは全然違―う!とくるくる躍る元気な藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)の小脇には強気な顔の羊ぬいぐるみ“メリノくん”を手に飛び跳ねれば、静かにしかし美雨と距離開けぬ絶妙な歩幅で歩む呉・深(星星之火・f30169)の小脇には黒い瞳の真摯な狼ぬいぐるみランくんがゆらゆら尻尾を揺らしている。
「さて、仕事だが――……」
「えへへ……よーっし!楽しみながらお仕事しよっか!」
「あっ、こら美雨」
“ねー?メリノくんっ!”と人込みを跳ね、跳ねの如く軽やかな挙動で壁蹴り上げた美雨はわあ!と歓声や拍手を纏い屋根の上。
花のような笑顔を振り撒いた後、手招く深の元へと出店の屋根伝いに駆け降りた。
「仕事はきちんとしなければといつも言っているだろう。まったく、楽しむ気があるのは良いが」
「みてみて!このマーラーカオ黒猫ちゃんだ!」
『おっお嬢ちゃん目の付け所が良いね!うちの猫達は美味いよう!』
「一個くーださい!」
『まいどあり!』
軽快である。
そして祭の空気と美雨と深を微笑ましく見る人々の視線に先に折れたのは深だった。
「……焼き栗とエッグタルトを頼もうか」
こっちだよー!と聞こえる店主の言葉を辿って深は焼き栗の温かな紙袋と湯気の立つエッグタルトは卵の甘やかな香りが心地よい。
温かな二つを手にした深が薄っすら口角を上げ、他人には分かり辛い程度の軽やかな足取りで黒猫マーラーカオをしげしげ眺めながら瞳を輝かせ続ける美雨の下へ。
「えへへ、可愛い。一生見てられる……」
「……美雨、それ食わないのか?」
うふふと楽し気に目を細める美雨をじっと見つめた深がぽつり。
食べなければきと蒸したての張りは遠からずなくなり、つやんとした若々しい猫ちゃんはしわくにゃのお祖父ちゃんかお祖母ちゃんねこへとなってしまうだろう。
勿論それは美雨も承知の上。
「うん。でも食べる……頭から……」
「く、食うのか……頭から……」
しかも頭から。
あちっ!と言いつつ美雨は半分こにした猫ちゃんを深へ差し出し花のように微笑んだ。
「えへへ……タルトとも半分こしよっ!あ、蝙蝠チョコも半分こね?」
ひどく何気なくて、ちょっとだけ――ちょっとだけ、深には遠“かった”日常のこと。つい深が手を拱いてしまう全てを、美雨はいとも簡単に近付けてしまう。
「タルトは確かに半分ずつでちょうどいい。ほら、片翼分だ」
パキンと割った蝙蝠のチョコレートは片翼ずつ。
マーラーカオの餡が熱くて買った茶のボトル。深は青茶を。美雨は茉莉花茶。
ボトル可愛い!と傾ける温さが今は丁度良く、ほふと立つ黒猫マーラーカオの湯気がほこほこ。秋風の寒さを吹き飛ばす。黒糖の濃厚ながら優しい甘さ、木々に練り込まれた黒ゴマの香ばしさも心地よい。
あ、チョコ溶けちゃう!とエッグタルトをチョコレートごと美雨が食んだ時だ。
きゃあ!うふふ!あはは!と凍喪の甲高い笑い声。
ぴくりと美雨の瞳が透き通り、新が周囲へ気を張り詰めさせた。
『あーそーぼー!かーしーてー!』
「あっ」
「む」
反射的に止めようとした二人の手をいとも簡単にすり抜け、きゃあきゃあ笑うシーツお化けの子供達はメリノくんとランくんを抱いて雑踏へと消えてゆく。
かわいい!
ふあふあ!
すてき!もこもこだよっ!
と初めて見るような――……否、初めて見た幼子達は喜び駆けてゆく。
「……なるほど、やられたな」
「しょうがないよね、二匹とも可愛いもんね……」
美雨がしゅんとしたのも一瞬。
口元を拭った深が立ち上がった時、にこりと笑った美雨が深の手を取り笑う。
「で・も!盗みは駄目だ。取り返しに行こう!」
「ああ、そう――……待て、俺はお前ほど元気じゃないっ、こう、加減をだな……!」
「まてまてー!鬼ごっこの始まりだー!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
梟別・玲頼
紅祢(f36019)と
仮装姿で
貴族みたいですげぇ似合ってると思うけどな紅祢の衣装
実は本物だぜ、とクルリ回すはラワンブキ…北海道に生えてるヤツ
中華街、現代のとはまた趣が違って見えるのはサクミラだから、か
どれもハロウィン仕様なんだな…凝ってて目移りする
つい黒猫に目が行くのは知人周りに猫が多いせいか
食欲そそるのはエッグタルトかなぁ
南瓜使ったお菓子があればそれも頂き
どこかで腰下ろして茉莉花茶で一息
陶器のそれ、これからの仕事で割らない様に気をつけねぇと
悪戯と言えば
藍夜に仕掛けて来れば良かったなぁ
見掛けたら決行しよ、フキでバサッと
今は気張らず楽しもうぜ
と言った矢先、大切な刀(エムシ)が無くて青ざめるオレ
◎
杜崎・紅祢
◎
玲頼君(f28577)と
ハロウィン仮装で
こんな格好はした事が無いのですが…玲頼君の仮装は可愛らしくて良いですね
そのフキは本物ですか?
チャイナタウンは賑やかで面白い
異国情緒漂う町の中を面白そうに眺め
気になるものは色々ありますが玲頼君は何が好きですか?
今見た中なら俺は茶とマーラーカオが
陶器のボトルはお土産にもなりそうなので
割らないように…そうですね、気を付けます
…さて、どんな悪戯を仕掛けて来るのか
おや、あの方は知り合いでしたか…こちらが仕掛けるのもアリでしたかね
玲頼君が剣がなくなったと言い出したら腰に下げた自身のを確認。剣がある事にはほっとしたものの、笛の袋が無く困ったように苦笑
やられましたね
●賑いの最中に
擦れ違った派手やかなダンサー衣装を横目に、梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)は隣を行く杜崎・紅祢(翠光纏いし癒し手・f36019)を見た。
街へ入る直前、ふと紅祢が“この格好はしたことが無くて……”などと自信無さげに眉を下げていたことを思い出す。
だが現実はどうだろう。
擦れ違う女性達は紅祢を振り返っては“綺麗”“カッコイイ”と囁き合っているではないか。でも友人として近くで見ているからこそ分かる。
黒く裾の乱れたマントは、まず紅祢が纏うからこそ不思議と豪華で退廃的な空気を放ち、内に纏う胸元のフリル華やかなブラウスの着こなし、シンプルながら着る人を選ぶベストと細身のパンツで分かる足の長さ。そして黒いマントの上、縫い付けられた装飾の輝きは星のように。鳴らすヒール高らかに、伸ばした背筋は美しく、言葉にはせぬ無意識な紅祢の堂々とした様子はモデルとしての職業柄もあるだろう。
「……玲頼君?」
「いや、貴族みたいでやっぱその恰好、すげぇ似合ってると思う」
一見して脈絡なく聞こえる玲頼の言葉に瞬きをしきょとんとした紅祢が、フッと表情を緩める眸を細め、仰いだのは玲頼の持つ大きな蕗の葉。
「ありがとう。玲頼君こそ、その仮装は可愛いらしくて良いですね。そのフキは本物ですか?」
不思議そうに尋ねる紅祢に玲頼がニッと笑うとく腰だけ得意顔。
「……実は本物だぜ、これ」
驚きに紅祢が目を見開くのも無理はない。何せ玲頼がくるくると回すそれこそ、身長180cm近い玲頼よりさらに背高の大きな葉なのだから。
いっそ作り物だと言われた方が余程納得のいくそれは玲頼の出身地に生えているそうで――。
「これはラワンブキ。北海道に生えてるヤツ」
ラワンブキ、と反芻する紅祢があまりに面白くて結局玲頼も笑い出せば互いに特に――いや、巨大蕗の葉を話題に笑い合ってしまう。
「この国のチャイナタウンは不思議ですね……玲頼君は何が好きですか?」
「な。現代の中華街ともまた毛色が違って見えるのってここだからか?でもハロウィン仕様なの面白いよな。あ……んー、エッグタルト」
通りがかり、幾つも見た目立つのぼり旗の中でも一際目を惹いた一つの名を挙げれば、良いですね、と機嫌のよい返事が。
玲頼が紅祢は?と問えば、考える素振りを見せた後。
「マーラーカオ、でしょうか。あとボトル入りのお茶も買いましょう」
「いいな。……でさ、南瓜使ったお菓子ないかな」
季節柄つい食べたくなるあの甘やかな黄色というか橙を想う玲頼にマーラーカオのおみせならあるかもしれませんよ?、と小さな可能性に紅祢が微笑み店へ到着した時だ。
ふわんと香る南瓜の香り。吊り下げられたカラフルなメニューに『茶とらの南瓜にゃんこ始めました』の文字が。
「茶とら」
にゃーんと過ったよく知る茶とらに急いで首を振った玲頼の視線の先で
黒猫が笑っていた。
目的の茶と菓子を手に入れ、なんとか人込みを縫い、カフェスペースへ着いた時だ。
喉の渇きに煽った茉莉花茶の爽やかさに紅祢と玲頼はやっと一息。
「人凄いな、そういえば今年の悪戯と言えば――」
朗らかに笑う玲頼が紅祢に声を掛けつつ手中の大きな葉を見て思ったのは、突然好奇心が天元突破するタイプの
黒くて背の高い同業同業のこと。
「(あいつこれ見たら絶対喜ぶし、普通に生えてるなんて言ったらどうなるんだろう)」
正直たぶん話した場合を想像だけで面白いから見掛けたら蕗の葉をけしかけよう、と思った時だ。
きゃーあはは!うふふ!と子供の声。
ハッとし、二人が反射的に触れた懐に――無い。
「困りました、やられてしまったようです」
「え。うそ――あ!俺も無い!」
紅祢は牡丹の彫り込まれた竹笛。
玲頼はアイヌ拵えの天空の一刀。
きゃあははは!
すごーい!きれー!
かっこいい!
なんて、明るい子らの声が遠くなる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
百鳥・円
【まる】
你好、おにーさん!
チャイナタウンですって、楽しんで行きましょ!
おにーさん好みのお酒に出会えると良いですねえ
黒猫マーラーカオに魔女の真っ青ベリードリンク!
あとはあとは〜……って、おにーさん
またやってるよってお顔はやめてくれますか?
おにーさんも一緒にいただきましょ!
ねね、わたしあの飲み比べボトルが気になります!
中国茶、良いですよねえ。好きなんです
一セットいただいて行きましょうかね
あ、そうだ。言い忘れるところでした
ハッピーハロウィン!おにーさん
トリックオアトリート!お菓子くださいな
それとも悪戯がご所望ですか?
あっは、珍しくノリが良いじゃあないですか
お菓子はきちんといただいておきますよう
まどかちゃんからはこちらをプレゼント!
甘くないビターテイストのチョコですよん
おや、お酒ですか?
もちろん喜んで!いっぱい飲みましょーか
休憩には先程のお茶を挟みましょうかね
んふふ、楽しみですん
ゼロ・クローフィ
【まる】
你好?あぁ、挨拶か
チャイナタウンなんてあまり良い場所とは言えないなぁ
まぁ、お前さんが楽しみにしてるみたいだし、いいんだが
酒はその日の気分にもよる
何やら普段とは違う屋台
売ってるのが微妙というか、見た目が味は良いだろうが
怪しげなのを愉しげに購入する
また甘ったるいのを買ってるなぁと眉間を寄せていると
あぁ?悪いな、顔は正直なんだ
はいはい、甘く無さそうなのならな
中国茶か日本茶とはちょい違う感じだな
茶は嫌いじゃない、まぁ俺が淹れてやろうか?
茶となら少し甘いのもの食えなくはないだろ
ハッピーハロウィン?なるほど今日は南瓜か
道理で賑やかな訳だ
その台詞は、お菓子くれなきゃ悪戯するぞ?だったか?
お前さんの悪戯は興味があるなぁ、何してくれるんだ?
ニヤニヤしながら挑発しつつ
こっそり彼女の近くに南瓜の形をしたパンプキンケーキを
お前さんと付き合ってると何となくわかるようになる
甘くないチョコね、ありがとうさん
さて悪戯ついでに今度は俺に付き合ってもらおうか?
今回の酒の付き合いは何処まで続くかな?とくくっと笑って
●君へ你好!
騒めく街。行き交う仮装の人々。
ひどく華々しいチャイナタウン
表通り。
「你好、おにーさん!」
「你好?……あぁ、挨拶か」
白いワンピースに艶やかな黒髪。
遊ぶ白いリボンと青い花は百鳥・円(華回帰・f10932)常の装いと異なる美しさで円を美しく彩っていた。
対するゼロ・クローフィ(黒狼ノ影・f03934)の装いは和。
黒髪の間から覗く額の角が二本。黒い着物から覗くの浅黒い肌にはそれこそ精緻とも言える紋様に等しい美しい刺青。連れ歩く大瓢箪は雑踏ゆえ留守番をさせ、手にした煙管を咥え、ふうっと上に煙を吐いた。
ひどく楽し気な円を横目に、見えた路地――の、奥。
明らかな澱みに瞳を細め、ゼロは街をわらった。どう着飾ろうと隠し得ぬものはどこにでもある。
「楽しんで行きましょ!おにーさん好みのお酒に出会えると良いですねえ」
「――そうだな」
そう。ゼロ目の前で楽し気に微笑む円が害されなければ用は無いし触れる意味もない。羽織を翻し、先行く円をゼロは追う。
「黒猫マーラーカオに魔女の真っ青ベリードリンク!」
ほかふわ猫ちゃんにブルーベリーを中心にブラックベリー、キウイベリー、ヤマモモ、カシスと甘酸っぱいそれには甘い真珠のようなホワイトカラントを添えて。
ふふん、と気分よくもう両手の埋まりそうな円をじっと見下ろすゼロが、きゅうっと眉を寄せ僅かに顔を顰めた。
「あとはあとは〜……って、おにーさんっ」
視線に気が付いた円が振り返るや、むうとつり上がり染まる眦と膨れる円の頬。
その姿を口にはしないが愛らしいという目で見るゼロがくつくつ喉を鳴らして笑えば、むむむ!と円の頬は膨らんだまま。
「いーや?そんなこと無いはずだ」
「いーえ!またやってるよってお顔はやめてくれますか?」
「あぁ?悪いな、顔は正直なんだ」
テンポの良いやり取りの最中、煙管をふかしながらゼロは静かに“商品”に警戒していた。
何せあの路地奥を放置しておく程度の街だ、根底まで安全かどうかなんて、よく見なければ分かるまい。
先程蒸し器から出て来たマーラーカオは蒸気もちゃんと安全だった。
「(普段とは違う祭だからこそ……いや、だからこそ、“普通”にするのか?)」
この祭りの賑やかな空気の中、どうしたって警戒する気持ちを治めることが叶わない。どうしても――少しだけ。
悪意なく裾引く円が尖った気持ちを軟くするから。
「もう、そーやって……!」
「はいはい、甘く無さそうなのならな」
そう円をあしらったゼロの目についたのは、いっそ潔いほど突き抜けた目玉のゼリー。
白い部分は杏仁というが、目立つ彩の部分は透明ゼラチンで純粋に果物のみを固めているという。
美容に良いよ!なんて宣伝する店主の女は子供と共に商いをしていた。
『さっぱりつるつるおいしーよー!』
ゼロの視線に気付き微笑んだ子供が、カップを手にぴょんぴょんジャンプ。
「わ、すごい面白そう……あれ、おにーさんも一緒にいただきましょ!」
絵面が凄い、と陽光に翳した透明なプラカップを満たす目玉に二人揃って吹き出して。
ボトルが可愛い!気になります!と円に腕を引かれやって来た中国茶専門の屋台。
「中国茶、良いですよねえ。好きなんです」
「中国茶か……日本茶とはちょい違う感じだな。まぁ飲みたけりゃ俺が淹れてやろうか?」
サンプルの茶葉を確かめながらゼロがちらりと円を見れば、向けられたのは期待に満ちた笑み。
「どれが良いんだ?」
「! じゃあまず1セット試して帰りに選びます!」
小さな約束結んで一つ。
ふと、一際強い秋風が通り抜け、本来ならば季節外れの桜と共に、二人の下へ飛来したのは南瓜の形に切り抜かれた飾り紙。
あ。と声に出した円がゼロを仰ぎ見て。
「言い忘れるところでした。ハッピーハロウィン!おにーさん!」
「ハッピーハロウィン?なるほど今日は南瓜か」
ああだから道理で、なんてあんまり上手にとぼけるから、ついつい円も楽しくなり、手を出し言うのはこのお祭の決まり文句。
「トリックオアトリート!お菓子くださいな」
「――お菓子くれなきゃ悪戯するぞ?だったか?お前さんの悪戯は興味があるなぁ、何してくれるんだ?」
んもう、こういう時はお菓子でしょ!とまた頬膨らました甘党が“悪戯がご所望ですか?”と得意顔をするものだから、周りよく見て間違い探しでもしてろとゼロは返す。
直に首を巡らせて、自身の横に増えた
オレンジリボンの小箱に気付いた円が猫の如くにやりとして、ポケットから差し出すのは黒猫印のビターチョコ。
「ではまどかちゃんからはこちらをプレゼント!甘くないビターテイストのチョコですよん」
「へぇ甘くないチョコね、ありがとうさん」
人々の雑踏は変らず賑やかな中、きゃあはははと、遠く子らの声がする。
「さて悪戯ついでに今度は俺に付き合ってもらおうか?」
「おや、お酒ですか?もちろん喜んで!いっぱい飲みましょーか」
交わす微笑みは徴発的に。
互いに分かっているからこそ楽しいのだから――……と、視線交わした時。
きゃぁー!うふふ!あはは!至近距離で、笑い声。
「――子供、きゃっ!」
「おい、なんっ」
ぎゅっと二人の手を握ったシーツお化けの幼い子供が一人ずつ。
顔も性別も何も分からぬその子はそれぞれ円を右へ。ゼロを左へと逆方向に引っ張り出した。
二人の指だけを握って、ぐいぐいと。どうしてか足が動いてしまう。不思議と共に歩んでしまう。
『あそぼう!』
『あーそぼ!』
笑って笑って、
早世の子には出来たことの無い“トモダチ”の手を引く真似っこを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラップトップ・アイヴァー
◎
我食有名帝都料理!
《大丈夫?
お姉ちゃん日本語OK?》
だって!
🍹美味しいんですもの!
《あなた料理食べるって言ってませんでしたっけ…?
でも、魔女という響きが良いのはみきも同意なの。
味も2人で共有出来るし》
そうそう!
今日はハロウィンですから魔女っ子気分ですわよ!
《…ひゅ〜どろどr》
ねえ美希!!
人をおちょくるのはやm
《ふふっ、サプライズなプレゼントはお姉ちゃん好きでしょ?
好きだよね? はい好きよ。やったね!》
この子怖い!!
ねえ誰か、私を助けてくださる!?
ああ、ありがとうございますわ、
そのネックレスを持っていただけたら、
…持って、いただけたら、
あ、ぇ、
うふ、そのスウィーティアはね。
俺が死んだ日に美希がくれた【大切】なものなの。
あたしと彼女が、あら、僕と、妹が仲良く1人で遊ぶ為の、あははっ!
《2人で、だよ。お姉ちゃん。
…スウィーティアが身体から離れたら、お姉ちゃんはこの様。
元々はみきのだけど。
ちょっと絵面が面白いから、数歩くらいは付き合ってあげる。
でも、後でちゃんと》
返して、ね?
《返して、ね♪》
●いっしょだよ
「我食有名帝都料理!」
これは所謂雰囲気中国語、ってわけ。なんて注釈が美希から入る程度のちょっと発音しにくい感じの言葉であった。
ラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)の
ラップトップがそう言った瞬間、脳裏の美希が白けた目で。
「ねえお姉ちゃん。大丈夫?日本語解かる?」
ラップトップを諫める様に、
ラップトップがつい顔を出し呆れた様子で突っ込みを入れれば、先程買った魔女の真っ青ベリードリンクに
ラップトップの瞳は輝くばかり。
「だって!これ美味しいんですもの!」
『ベリーたっぷり、美容に良い魔女のドリンクだよ!』
なんて言葉が聞こえて選んだ一杯はブルーベリーを中心にブラックベリー、キウイベリー、ヤマモモ、カシスと甘酸っぱいそれには甘い真珠のようなホワイトカラントを添えた炭酸割りジュース。
甘すぎず爽やかなうえ、炭酸がきついわけでは無いのでごくごく飲めてしまう一杯は祭りを楽しみに来た
ラップトップのテンションを上げるには十分。
だが美希の突っ込みは止まらない……!
「いやお姉ちゃんさ、殺気お料理食べるって言ってませんでしたっけ……?」
そう。ついさっき“我食”と宣言したばかり。
「まぁでも、“魔女”って名前の響き……美希も良いと思うの。それに、味も共有できるしね」
キウイベリーって不思議だね?なんて微笑む
ラップトップはちょっと大人な笑みを浮かべていた筈なのだが、
ラップトップになった途端、ぱあ!っと瞳を輝かせ頷いたシエルの瞳はいつになく明るくて、久々に美希は自然に笑えたような気がした。
「そうそう!今日はハロウィンですから魔女っ子気分ですわよ!」
そう喜ぶ
ラップトップに美希が“ひゅーどろどろ”なんてお化けの真似っ子。をすれば、もう美希ったら!なんて怒って。
まるで普通の少女のように遊んでいる最中、ふと聞こえたきゃーははは!と楽しげに笑う子供の声。
『かーしーて!』
きれー!きらら!
わーい!きゃあ!
と、
借りた“ネックレス”を見たことが無い
早世の子らに柔らかな気持ちがある反面、美希はどうしてもその子らよりも
大切なものを守りたい。
だから
ラップトップは一つ嘯いた。
「ふふっ、サプラーイズ!お姉ちゃん好きでしょ?好きだよね?はい好きよ。やったね!」
そう誤魔化して間を持って、返してもらえばいいと。
「や、やだ!この子怖い!ねえ誰か、私を助けてくださる?!」
人気のない路地。
一人で二人分笑って慌てふためいて、ころころ表情を変える少女。
ひどく異質であった。
でもそれが
ラップトップの日常だから。
「――ああ、でも。ありがとうございます。そのネックレスを持って――……もって、いただけ、 たら」
きらきら。
きらきら。
わたしのひかり。
わたしの
ひかり。
「あ――、ぅ、え?」
右は俺で。
左は僕で。
後ろに私。
前にわたし。
狂う
平衡感覚。ああだめよ、ゲームができなくなってしまう。
「美希?」
美希はどこ?
美希が、
あの子の手にある。 な んで?
ああ。そうか。
「うふ」
その価値を知らぬから。
「ふ、ふふ」
教えてあげる。わたしの大切。
「うふ、ふ。そのスウィーティアはね?
俺が死んだ日に美希がくれた、たーぁーいせつなものなの!
あたしと彼女が、あれ?
僕、が?ああ、そう、だ!
僕と
妹が仲良く
独りで遊ぶための!は あははははは!!!」
変わる空気が全てを語る。
だがすぐに狂ったように笑っていた姿は引っ込み、微笑む様少女は言いました。
「――だからさ、お姉ちゃんは突然バカ姉になっちゃうんだよ」
裡でぜーんぶ見ていた美希は、嗤いながら
ラップトップがシーツお化けに向けた銃口を
ラップトップが下げ微笑む。
大切な
姉は、もう
たった独りの人だから。
「
それが身体から離れたらお姉ちゃんはこの様。それね、元々は
私のなの。お散歩、ちょっとなら付き合っても良いよ?」
にこりと笑ったその瞳の奥。
どこか暗いそれにびくりとシーツお化けの足が震えた。
「だってね、こんな形も考えなかったわけじゃないの」
朗らかな声。
屈託のない笑み。
唯一隠しきれぬ揃いの瞳が
真実を語ってしまったから。
子はにげる。
にげる。
にげる。
だから
ラップトップは軽やかに追う。
“怖がらせるなよ”と念を押された気がするけれど、大丈夫。
UCはしてないよ。
「でも」
こつんこつんと詰める距離。
にこにこ笑いのお姫様は後ろ。
――でも。でも、お姫様はお化けを“正面”から覗き込み言いました。
「ちゃんと
返して、ね♪」
そう、ふたりのおんなのこが いいました。
大成功
🔵🔵🔵
楊・暁
☔を誘い
揃いのチャイナ服仮装
へぇ…こんな場所もあるんだな
大陸では戦場か兵舎ばっかりだったから
こういう場所は初めてだ
繋いだ手のぬくもりが尚嬉しくて
…ふふ。楽しい
傍ら見上げ笑顔
折角だし、屋台は全制覇してぇな…!
全部半分こすれば、軽くいけるだろ?藍夜
ふわっ…あっふい…(熱
可愛いな…食べるの勿体ねぇ…ん、甘
ふわっふわ…!藍夜、なぁこれ家でも作れるか?
目だ…ま…
うぅ…藍夜。目ぇ瞑ってるから、口ん中、入れて(口開け
――ん…さっぱりしてて甘くてこれも美味ぇ…!
飲み物も交換こ
藍夜、どれ飲む?
俺、そっちの飲みてぇ
気紛れにボトル覗き込み
藍夜、藍夜、すげぇぞなんか中に花咲いてる…!
「貸して」の声には反射的に藍夜を見上げ
…俺の、"大切"
手放すと考えただけで何故か胸が締めつけられ
貸し…たく、ねぇ…けど…
ぐっと我慢して指離し
藍夜の手を引く影朧の姿に知らずと唇を噛む
掌が空いたら即駆け寄り
手を強く繋ぎ直し、膨れっ面で藍夜睨み
…なに笑ってんだよ…!
笑ってるだろ!
うるせぇ甘やかされても誤魔化されねぇからな!
※アドリブお任せ
●その手を
紺地の長袍に身を包み、紺地に龍柄の裏地のジャケット纏い出迎えた藍夜と合流した楊・暁(うたかたの花・f36185)もまた蘇芳色の長袍に身を包み、ジャケットの裏地は猩々緋に四片の花柄。折角だからと揃いにした今日は祭の日。
「へぇ……こんな場所もあるんだな」
「あぁ、珍しいだろ?」
嬉しそうな藍夜に表情を和らげながら、暁はランタンを見上げぽつりと。
「
あっちじゃ兵舎ばっかりだったから、こういう場所は初めてだ」
繋いだ
手の温もりに力が籠る。
見上げれば柔らかな黒が“心音”とあんまり優しく呼ぶから、擽ったさに耳が震えてしまう。
世界で唯一人に教えた本当は、呼ばれると未だに擽ったい。
「片っ端から行くぞ、心音」
「いいぜ。折角だし、屋台は全制覇してぇ……!」
暁が笑えばつられて藍夜も笑う。離さないよう繋いだ手を握る。
「いや心音……全部って結構あるぞ?」
「全部半分こすれば、俺とお前で軽く行けるだろ?」
まるで当たり前のように暁が言えば、瞠目した藍夜がすぐ笑い出す。
「そりゃあいい。じゃあ量の多い栗は、余ったら持ち帰ってモンブランか……明日は栗ご飯でも炊くか?」
「栗ご飯……!」
繋いだ手の温もりも、最近よく笑うようになった事実も出掛けて初めて本当を音にしたことも、全てが“二人で初めて”の思い出の一片に。
一品目は黒猫マーラーカオ。
「可愛いな。食べるの勿体ねぇ……」
「割るか、ねこちゃん」
「ん、熱いから気をつけろよ、藍夜」
湯気立つ蒸したてそれは、葛藤の後熱いものに慣れた藍夜が綺麗に割ったそれにかぶり付く。
「ふわっ、あっふい……!」
「んっ、良いな蒸たて」
で不思議と癖になる食感に、黒糖餡は心地よい甘さ。頬張りながら暁はふと藍夜を見た。
「藍夜、なぁこれ家でも作れるか?」
「いいぞ、何味にする?」
“心音の好きな味にしよう”と言う藍夜の言葉に暁が花のように微笑み、手を引きこっそりと耳打ち。ぷはりと藍夜が噴き出した。
「いいな、それ。あ。あれ、あの目玉の――」
母子の売るプルつや目玉ゼリ―はカップの中で輝いていた。
「目だ、ま……」
「そうだ、白は杏仁、色部分は果物。中々面白―……心音?」
「いや、その……」
萎れた尻尾を抱きながら藍夜の袖を握り、耳は下がってイカ耳に。
藍夜が購入する間、暁は藍夜の背にしがみ付きジャケットの裡に隠れていた。あまりに目玉の出来がよく怖いのだ。
さあ実食となった時、ぎゅうっと目を瞑った暁が藍夜に向け口を開く。
「ら、藍夜。目ぇ瞑ってるから、口ん中、入れて」
「ん。ほら、苺味」
「――ん……ん?ん!さっぱりしてて甘くてこれも美味ぇ……!」
「だろ?果物に酸味があって杏仁が甘いんだ」
微笑む藍夜あんまり綺麗に笑うから、きゅっと酸っぱい苺が沁みた。続けて足向けた茶の屋台。様々な茶と瓶がある中、二人で選んだのは口広の花咲く品物。
「藍夜、どれ飲む?」
「緑牡丹にしようかな」
「ん。じゃあ俺、そっちの飲みてぇ」
乾杯、と瓶同士をぶつければ鈴のような音。
「――さっぱりしている、この緑茶」
「この茉莉花茶、香りがすげーいい!」
涼やかな飲み口のそれを交換しその違いに頷き合った時、ふと暁が瓶の裡に咲くそれに気が付き目を見張る。
「藍夜、藍夜、すげぇぞなんか中に花咲いてる……!」
「なるほど、妙に広口なのはそのせいか」
飲み終われば何かあるのだろうか?と想像するだけで面白いと言葉を交わし、再び漫ろ歩き。2人で居れば常に笑いが絶えず、得がたい日々の一片なのだと暁が想った――その時。
『かーしーて!』
振り返るも姿無く、次に見た藍夜は“どうした?”なんてきょとんとするばかり。
聞こえなかったのか?だがこの渦巻く不安は?迫る小さな足音。
「(貸し…たく、ねぇ…けど…)」
此処に
早世の子達がいるのは承知済み。
だから“貸せない”と、暁は言えなかった。
「心音?」
「(――俺の)」
“大切”な人。
握っていた手を離せば、驚いた藍夜が不思議そうに繋ぎ直そうとした。
だが手は取られ、暁と逆方向に連れていかれてしまう。
「え?……――お、わ!」
俺の大切の
特別がいとも簡単に取られた。胸の裡、マグマ様な感情の名を暁は未だ知らない。
「わ、子供?はは!」
「(何で笑ってんだよ)」
「可愛いな。遊びたいのか?」
「(――はぁ?!)」
お前と今日約束したのは俺だろ?
暫の後に離され手を振りお別れする藍夜に近付き、その手を勢いよく握れば、瞠目し反射的に手引っ込めようとする藍夜に顔を顰めてしまう。
白い手に指を絡め強く握る。
「んでっ、笑ってんだよ……!」
「可愛い子供の悪戯じゃないか。繋いでやればいいんだろ?」
「――!繋いでやった、のか?」
「ん?ああ。あ、見ろ心音。焼栗とタルトの店がある」
お前はいっつも!と睨み上げれば藍夜が朗らかに笑うから。
一瞬沸いた怒れぬ気持を引っ叩く。
「ああもう~~~っうるせぇ!俺は誤魔化されねぇからな!」
強く握り引いた手の間にカサつく感触、桜の花弁。
「(――ふぅん)」
摘まみ捨てて指を絡めて強く握り直す。
「(繋いだ?握られているだけでいいのに?)」
ああこの感情は何というべきか。
胸の裡のマグマが疼く。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『桜彷徨う迷宮』
|
POW : 舞い散る花びらに惑わされることなく走り抜ける。
SPD : 桜が作り出す見せかけの幻を見破ることで切り抜ける。
WIZ : 幻の仕組みを調べ、迷宮の罠を解除して進む。
|
●
花の雨
花の風
花の抱擁
花の誘惑
気が付けば返されたはずの
大切なものがない。
ぼんやりとした空白。
漠然とした焦燥感。
「返せ/返して」
独り、桜並木の前に立つ。
「ここは――」
ああなんてありきたりな言葉だろう。
ああなんで“大切”が手中に無いのだろう?
あんなに握っていたじゃない。
あんなに離さず居たじゃない。
いいえ。
いいえ。
『たしかにあの子達が“借り”ました』
無理矢理結んだ縁が攫われる。
ひどく一時的なものだと知りながら、どうしても。
「返せ/返して」
と、踏み出した一歩に桜の暴風が迷宮へと招き入れる。
きっとこの最期の追いかけっこが終われば子供達は還る時間。
叱ってくれる大人の居たこと無きいのちへ、お別れを教えてよ。
***
子供達は沢山満足したけれど、少しだけ沸いた悪戯心。
『こっち!』
『きゃー!』
『あーそーぼー!』
どうか怒らず。必ず“
最後”には、約束通り返してくれるから。
ぐちゃぐちゃな結び目攫いの縁。切るより解いてどうかどうか。
※UC/攻撃の描写の一切を行いません。
この追いかけっこでどうか正しく捕まえてあげてください。
※どうしても手放せないもの等の描写については、“追いかけっこを完遂しなければ”という焦燥感に置き換わります。
嫌がらせではなく、悪事ではなく、あくまでシーツお化けの子供達がしたいのは“いたずら”です。
『おねがい、あそぼうよ』
夜鳥・藍
非常に腹立たしい思いが沸き起こりますが落ち着きましょう。肌身離さず持っている、大アルカナだけのタロットカードを取り出して心が落ち着くようにしばらくシャッフルします。不意に零れ落ちた月のカードと共に白銀が現れれば落ち着きも取り戻せましょう。
大丈夫、きっと大丈夫。過去と今を繋ぐものはあれだけじゃない。
なぜかはわからないけどそう思えるから。
たとえ些細な悪戯でも、それでも人に悲しい思いをさせたなら叱らなければ。
子供だから、知らなかったから。それで放棄してしまったのならそれは子供たちにとってもよくはないでしょう。
好意の反対は無関心。叱るという感心も示さなければ。私の両親がそうしてくれたように。
●静かなる
「……まったく、もう」
声は震えていないだろうか。
正しく、在れるだろうか。
「まず――」
夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は静かに手許のタロットカードを
きる。
「(これは、“子供”のしたこと……“何も知らない子供”が)」
早世の子と聞いている。だからこそ、衝動のまま在るのだろう。
「……大丈夫。大丈夫、過去と今を繋ぐものはあれだけじゃない」
言い聞かせて前を見て――。
“あ”とぽつり。桜迷路の遥か先、キラキラした物――恐らく藍の“大切”を楽しそうに持つ子が一人。
『きゃー!』
「見つけた――!」
藍は言葉より先に駆けだしていた。
『おいかけっこ!』
「こらっ」
『やー!』
「もうっ」
構われることが嬉しいのか跳ね回る子供は無邪気。
『ね、ね!おねえちゃん!』
「……何かしら」
『たのしーねっ!おはなきれー!』
幻朧桜を“お花”と呼ぶ子供に、つい藍は首を傾げてしまう。
この帝都において、桜を“お花”なんて――だがふと、シーツの端から覗く不自然なほど小さな手にハッとする。
桜さえ知らない――それが“早世の子”。
「(好意の反対は無関心。それではきっと)」
無視をすることは、きっと簡単。
「(それは思考放棄――とっても、よくはないでしょう)」
この子達が求めるのは“叱ってくれるほどの、関心”。だから藍は大きく一歩を踏み出して。
「――掴まえた」
『わぁー!おねえちゃんのかち!』
「ねぇ、聞いて。この悪戯は――人に悲しい思いをさせてしまう」
『かなしいってなーに?』
「それは……ここが苦しくなってしまうこと」
『くるしい?ぼくが、しんだときみたいに?』
胸を押さえ首傾げた子供。
“死んだ時”の言葉に一瞬言葉詰めるも、藍は。
「でもこういう時は……“ごめんなさい”と言って返さなきゃ駄目よ?」
『ごめんなさい――これ、おねえちゃんの大切』
はい、と小さな掌には余るほどの耀きを返し、ひらり幼い桜が舞う。
“ごめんなさい、またあそんでくれる?”
大成功
🔵🔵🔵
真宮・奏
ああ、元気ですね〜。寂しかったんですかね?私も一人ぼっちは寂しいです〜。
それに影朧ですから、その姿はぼやけていて、手は透けてるんですが、追いかけっこは楽しいかも。私、小さい頃から家族と旅暮らしで、同じ年頃の子と遊ぶ機会なんてなかったものですから。
なので本気で追いかけっこを楽しみます。意外と子供の足って早いですね。ほら、捕まえた!!
ええ、私なら構わないのですが、いきなり他人の物取って逃げちゃうのはびっくりさせちゃいますから、程々にしてくださいね。
でも追いかけっこで満足しましたか?いたずらは程々にです。約束の指切りです!!
神城・瞬
あ、手を放してくれましたね。でも逃げていっちゃいました。むむ、勝ち逃げは許しませんよ!!透けてて見辛いですが、意地でも捕まえて見せます!!
でもこうして本気で追いかけっこは何年振りでしょうかね。生まれ故郷が滅ぼされて、今の母さんと奏に拾われてから無縁になりましたから。
ぜいぜい。僕凄く体力ある訳じゃないから元気のある子供達に追いつくには凄く苦労します。やっと捕まえた・・・
ええと、普通に追いかけっこは構わないですが、人の大切な物を取って逃走は頂けませんよ?凄くびっくりさせちゃいますし。
でも、寂しいんですよね。大切を知りたがるのもその気持ちからでしょうし。僕も楽しかったですよ(頭を撫で)
●君と奏でる
「ああ、元気ですね〜。寂しかったんですかね?」
まったくもう、と微笑む真宮・奏(絢爛の星・f03210)には余裕があった。
桜に隠された神城・瞬(清光の月・f06558)は恐らく無事だから――というよりも、こんなに……それこそ透けるほど幼く弱い子供に、瞬か傷つけられるはずもない。
『きゃー!』
「ううん、私も一人ぼっちは寂しいです〜」
待ちなさーい!と追いかければきゃあ!と笑う子供が跳ね回る。
「(桜が透けてる)」
『こっちー!』
「こらー!」
『えへへへへー!』
きゃいきゃい遊ぶ様は、まるでできなかったことを楽しむように。
その姿に奏はつい幼く同年代の子と遊ぶこと叶わなかった幼い頃を重ねてしまう。
「(あの時は仕方なかったって――“今”なら分かるけど)」
『はーやーくー!』
「……む!」
『わたしのがはやーい!』
「なら私も本気を出しますよ!」
きゃあ!なんて桜の舞う中を颯爽と駆け、花弁の中それこそ泳ぐようにはしゃぎ回って。
「(ああ、子供の足ってこんなに早いんですね)」
そうして、奏は父と母を想う。
だが今は目の前の小さな姿を――!
「ほら、捕まえた!」
『あーあー!捕まっちゃった!』
「次はこんなことしちゃだめですよ?」
『はぁい!』
ゆびきりげんまん、おやくそく!
一方、瞬も幼いシーツお化けに振り回されて桜の中。
「あ、やっと手を放してくれましたね」
『あーそーぼー!』
きゃあきゃあと楽し気にくるくる桜の中を走る幼く透けた影朧にハッと瞬が手を伸ばすも、“やー!”と言って逃げてしまう。
「むむ、勝ち逃げは許しませんよ!!」
『まーだー!』
「良いでしょう、意地でも捕まえて見せます!!」
やったー!と笑う子供を瞬は追う。
瞬は奏を心配してはいない。何故ならこの影朧に奏を害するほどの力はなく、何より奏なら無事だろうという不思議な確信が持てていたから。
「(でもこうして本気で追いかけっこは何年振りでしょうか)」
小さな背を追いながら、ふと思うのは今は無き故郷のこと。
「(今の母さんと奏に拾われてから無縁になりましたから……)」
『こーっちー!』
とんと。
本当にとんと無縁になってしまった。
胸を掻き毟るほどの想いは、“あった”。だがどうだ、奏や今の母が書き換えてくれた幸福の方が大きくなってしまったのだ。
『おそーいー!』
「い、意外と早いですね……」
猟兵だが瞬自身体力に自信はない方。
げほりごほりと噎せれば心配そうに寄ってきた影朧を――!
『へーき?』
「やっと捕まえた……!」
『わあ!』
「ええと、普通に追いかけっこは構わないですが……」
『うん!』
「……人の大切な物を取って逃走は、頂けませんよ?」
『だめ?』
ええ、いけません。と頷く瞬に、そっかあと落ち着かなくなる影朧。
「なぜなら凄くびっくりさせちゃいますし」
『はぁい』
「でも、僕も楽しかったですよ」
『ほんと!?』
いけないことを叱った後、ぐいぐいと手を引かれ。
『おねえちゃんあっち』
『おにいちゃんこっち』
「「あ」」
花舞う中、“大切”は出逢う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
呉・深
◎
美雨(f29345)と
思った以上に焦燥感に駆られる自分に驚く
ぬいぐるみを必死に取り返そうとするなんて思わなかったな
けれど大人げない行動は駄目だ
追いかけっこ、頑張ろうか
走って走って、けれど必死になりすぎないように
桜の中をただ走ろう
きっといつかは子供達にも追いつくはずだ
そうしたら、後は……
子供を相手にする時は屈みこんで威圧感のないように
確かにランくんもメリノくんも可愛いし、抱き締めたくなる気持ちはわかる
……わかるけど
盗みは駄目だ
ちゃんと許可をとるんだぞ、いいな?
分かってくれれば子供達の頭を撫でよう
時間が来るまでぬいぐるみも抱き締めているといい
その暖かさが、この子達の道標になればいいんだが
藤・美雨
◎
深(f30169)と
うー、心がそわそわする
メリノくん私の宝物だから
だから走ろう!
でもオブリビオン並みに追いかけちゃダメだね、あくまで優しく
深、いい感じに頑張ろ!
深を置いていかないよう、子供達を怖がらせないよう
走るスピードはほどほどに
桜がとても綺麗だけど惑わされないように
追いつけたら子供達をハグしちゃおう
へへ、びっくりした?
あのね、人から物を借りるときはちゃーんとお願いしないとダメだよ
顔を見て「かして」って言うんだ
私達なら「いいよ」って言うからさ
私がこの子達を抱き締めても、そんなに暖かくないだろう
でもメリノくん達はあったかいから
その温もりを覚えていてほしい
この子達が、いつか幸せになれますように
●それこそが、
「うー、心がそわそわする」
「(愕いたな。思った以上に――)」
落ち着かない様子であたりを見回す藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)と並び立ちながら、ひどく冷静――そうに見える呉・深(星星之火・f30169)も、内心は美雨と動揺に焦りを抱えていた。
奪われた……いや、それこそ“ありがとう”と返し返されたはずの
あれらが無いのは、様々チャイナタウンを深と美雨の二人で楽しみ、昼も過ぎるかという時……再び“かーしーて!”という幼い声が聞こえてから。
ハッと互いの手許を見た時にはもう――。
「しかし……この年になってぬいぐるみを必死に取り返そうとするなんて思わなかったな」
「しょうがないよっ!メリノくん私の、ランくんは深の宝物だから……!」
全く知らぬものが見れば、“たかが”と笑うかもしれない。
だが、深にとっても美雨にとってもあの二つは――ううん、あの二つこそ星のような輝きの一つ。
失われることなど、決して望む筈もない。
遠く。
『きゃー!』
『あはは!わーい!』
遠く。
『かわいいねー!』
「「見つけた――!」」
声が重なった瞬間踏み出した一歩は、美雨も深も同時。
幻朧桜が行く手阻むように吹雪く中を駆け抜ける中、とんっ!と軽やかに枝垂れる桜の枝を飛び越えた美雨が深を振り返る。
「ブリビオン並みに追いかけちゃダメだめ、だよね」
「大人げない行動は駄目だ。美雨、追いかけっこを頑張ろうか」
“はーい!負けないぞー!”と元気よく笑う美雨。
「(さて。必死になり過ぎず――)」
「待て待てー!」
「ふふ、うふふ!やーだー!」
『はは、あはは!やーだー!』
「(似たような口調……恐らく歩幅も同じ、か?)」
小さな手足。ほぼ同じ身長。
「ねえ深、あの子達って双子みたいだ」
「ならば――」
なぁに?と小首を傾げた美雨に深がひそひそ。
美雨が弓形にした瞳は猫のよう。
「おっけー、任せて!」
「俺が追いつける程度、だぞ」
「――もっちろん!」
「(“加減”を教えるのも大人の務めだろう)」
桜迷宮の回廊は思いの外、道が繋がっている。
気付いた深の指示通り、跳ね回る子供達を美雨が“意図的に”追い立ててゆく。
『わあ!おねーちゃんはやーい!』
『わあ!おにーちゃんにつかまっちゃうー!』
どこまでも無邪気。
まるで“初めて遊んでいる”ような。
「さて」
「よーいしょ!」
「「つかまえた!」」
『『あーあ、捕まっちゃった!』』
桜の雨降る中、美雨と深に抱えられた子供達はぎゅうっとメリノくんとランくんを抱えてじたばた。
「へへ、びっくりした?」
『したー!』
「うん、私もびっくりした。……あのね、人から物を借りるときはちゃーんとお願いしないとダメだよ」
『かーしーて?』
「もうっ!さっき顔を見て「かして」しなかったよ。ちゃんと顔見てって言うんだ」
“いいよ”って、私達なら言うからさ。
「そう、何事もちゃんと許可をとるんだぞ?」
『はぁーい……』
「……まあ、どっちも可愛いから抱きしめたくなる気持ちは分かるがな」
「……私は暖かくないけどメリノくん、温かいかい?」
『うん!でも――おねえちゃんもぽかぽかだよ!』
「……楽しかったか」
『うん!』
『『ねー?』』
瞬く。
きらきら、ふわふわ。
『『ありがとー!』』
溶けるように淡く消えた子供達。
深に撫でてと、美雨に抱っこと強請った子らは桜へと廻りゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜崎・紅祢
◎
玲頼君(f28577)と
…おや、これは見事な桜
内地の、という事は北海道ではその時期に桜は咲かないのですか?
子供たちの笑う声が響けば初めは話しつつゆっくりと、次第にスピードを上げてダッシュ
俺はあんまり体力勝負するようじゃないんですが
玲頼君と協力しながら少しずつ追い詰めます
あまり急がずに…遊びたいだけなら、付き合ってあげるのも良いでしょう
少しずつ距離を詰めて
最後は梟に変じ先回りした玲頼君と挟み撃ちで足を止めさせて
悪戯とはいえ、武器等には他人が手を触れれば危険なものもあります
刃物などは特に…無闇に触ってはいけませんよ
先生との呼び名に軽く苦笑い浮かべ
ね、と念を押して
笛が返ってくるのを待ちますか
梟別・玲頼
紅祢(f36019)と
桜か…内地の学校じゃ卒業式や入学式に咲いてんだよなセンセ?
ああ、聞こえる。悪ガキ達の声
オレも走るの久々…体力持つかな
紅祢と共に走りながら
遊ばれてんなぁ、オレ達
子供って小さいのに何であんな速いんだ
…走れねぇ理由解った
飛ぶ方多いわオレ
先に行く
紅祢はこのまま追い掛けてくれ
思い切り地面蹴って梟に変じ一気に加速
追い付いた…!
上からもふっと子供達にのしかかる羽毛フワフワ
デカいけど体重3kg程度
このままもふもふの刑で子供の気を引き紅祢を待つ
ほら、先生もそう言ってるし?
つーか刃物持ってくんじゃねぇよ、危険だろ
心配したんだ、怪我しないかって
(人間態戻り
返してくれたら交換だと風切り羽渡すか
◎
●翔ける
溢れるほど咲いた桜は、佇む杜崎・紅祢(翠光纏いし癒し手・f36019)と梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)を包み撫でていた。
噎せ返るほど咲き乱れる桜を見上げた玲頼が感嘆の息を吐く。
「桜か……“内地”の学校じゃ卒業式や入学式に咲いてんだよな、センセ?」
「……おや、これは見事な桜。そうですね、その時期にはやはり咲いています」
紅祢にとって桜は去り行く子供を送り出す花であり、訪れる子供たち迎え入れる花でもある。
出会いと別れの狭間の花――だが、“内地は”と言った玲頼の言葉に考えるように顎撫でた紅祢が“そうですね”と呟いた。
「内地の、という事は北海道ではその時期に桜は咲かないのですか?」
「少し遅いから入学“後”に見るって感じだな」
なるほど、と頷く紅祢に緩く返した玲頼がハッと振り返る。
「玲頼君」
「ああ、聞こえる。悪ガキ達の声」
遠かった子供の笑い声が迫って――……桜花の中から転がり出たのは二人のシーツお化け。
『きゃー!あはは!うふふ!』
『すごーい!かっこいーねー!』
ねー?と笑い合って、桜の絨毯を転げ回るその手に、二人の大切な探し物。
踏み出す合図は交わした視線だけ。
『きゃー!やーだー!』
『あはは!こっちこっちー!』
「俺はあんまり体力勝負するようじゃないんですがっ」
「オレも走るの久々っ、体力持つかな……!」
準備なく走り始める行為は猟兵であっても少々息が乱れてしまう。
更にこれは追いかけっこを始めて分かったことだが、時折吹く風が桜の花弁を巻き上げることで視界が奪われるうえ、半ば透けた影朧の子らを見失いかける。
「っと、危なっ!」
「ありがとう、玲頼君」
どういたしまして!と言ったのは吹いたか花弁に巻き込まれかけた紅祢ごと玲頼が翼に変化させた腕で払ったから。
きゃぁー!と吹く風に転げては声を上げて笑う子供達はひどく楽しげで、時折玲頼と紅祢を振り返る。
「……“追いかけっこ”、余程楽しいのですね」
「遊ばれてんなぁ、オレ達」
ああも楽し気に走られては、怒れるはずもない。
「というか子供って小さいのに何であんな速いんだな」
「ええ。遊びたいだけなら、付き合ってあげるのも良いでしょう」
スピードを上げるのは少しずつ――と、ふと自身の両手を見た玲頼がぽつり。
「オレさ」
「はい」
「……走れねぇ理由解った」
「――え?」
“飛んでねぇからだ”。
そう笑った玲頼が風へ踏み出し、梟へ変じて空へ。
「飛ぶ方多いわオレ。先に行く、紅祢はこのまま追い掛けてくれ」
季節外れなはずの桜を纏い引くように空駆ける友人の早いこと。
「おや……今日はよく晴れてますね」
“早いなぁ”と紅祢が笑った先で、上から子供達の前に回り込んだ玲頼が羽毛をふわつかせ驚かせば子供達はどうやら大喜びらしい。
「今でしょうか――はい、捕まえた」
『えー?つかまっちゃったー!』
小さな手足をばたつかせて喜ぶ姿に、めっとお小言を。
「まったく……悪戯とはいえ、他人が手を触れれば危険なものもありますよ?」
『きけん?』
『なぁに?』
きょとん、とした幼子に“危険”を指導する紅祢の近くの枝に舞い降りた玲頼がホホウ、と咳払い。
「ほら、先生もそう言ってるし?」
『せんせー!とり!』
『せんせー!とりおしゃべり!』
とり!と玲頼を笑う子供達にこらと人へ戻った玲頼が叱れば“先生”と呼ばれたくすぐったさと子供達と玲頼のやり取りにとうとう紅祢は笑い出す。
返された笛と刀に、さくらひらひら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラップトップ・アイヴァー
《ここまで桜が芽吹いてる。
こんな騒ぎじゃなかったら一緒にお花見しても良かったのに。
ねえ、お姉ちゃーん?
……ふふっ。
大丈夫だよ、いけないことはしないよ。
用意した選択肢は2つ。
1つ目は真の姿への変身。
追いかけっこで態々走る必要は無い。
その場から動かず、手招きで誘惑だけして、捕まえたってやつ。
みきが黒い髪に紫の瞳のお姫様に変身したところで、溢れ出すのは優しさだけだよ?
左手を腰にやって右手を左上に伸ばすのも、
握った手を自由にして下向きに弧を描いて真上、それから右ほっぺの横辺りに持ってくるのも、
指を鳴らすのも、
全部それだもん。
私たちの革命よ、
変身。
1つ目が禁止なら2つ目。
バカ姉を宥め抑えつつ追いかけるパターン。
こっちになったら走るしかないけど、出来る限り優しくするの。
さあどっちかな。
みき、誰にでも優しく在れるお姫様でいたいな?
どう宥めて優しく叱るかは、お任せ。
向こうも遊びたかったのだし、トリックにはトリートで、ね?》
●“君”と約束
「(ここまで桜が――……)」
風が桜を舞い上げ、まるで桃色の愛らしい嵐がラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)を包み込む。
「あーあー……こーんな騒ぎじゃなかったら一緒にお花見できたのにねー?」
ぶう、と無邪気に頬膨らませた
ラップトップが不満の色を見せ、裡に声を掛ける。
「ねえ、お姉ちゃーん?」
青空と桜のコントラスト美しい空を仰ぎながら
ラップトップが“
お姉ちゃん”に声を掛ければ瞳を閉じたラップトップが
ラップトップになると――。
「……ふふっ」
妙に目だけギラギラしているのは、気のせいではない。
きゃあー!あはは!と遠く聞こえる幼子の声。
ひどく楽し気に走りまわっては桜の絨毯を転がりながら、跳ねまわる。
「ふふ――……うふふっ!まぁ元気そうな
子供達だこと……!」
語尾がどろりと蕩けるような様子に取って代わった
ラップトップが姉を押しのける
「ああもう……
大丈夫、いけないことはしないよ」
ビャ!と驚いた子供たちが駆けだした。
いや、正しくは逃げたのだ。
「もぉー!お姉ちゃん!」
桜が吹雪く。
吹雪いて。吹雪いて。世界が――……。
「はーい!追いかけっこ――は、しないよ?」
美希はお姫様。
魔法の使えるキラキラな素敵でとってもラブリーなプリンセス!艶々の素敵な黒髪にお花みたいな紫色の瞳が超キュート!優しさ溢れる――……
大切な人を失って呼び戻した、奇跡のお姫様。
腰に手を添え右手でくるんと描くまぁるいお日様は笑顔でキラキラ!つやつやほっぺに手を添えればお花のよう!
「
私たちの革命よ、
変身」
ねぇ、笑って?
大丈夫。此処に居るのは
お姫様だけ。怖くないよ?するのは“だめだよ”と叱るだけ。
「(大事なの……
アレは――それだけは、)」
ただお姫様は取り戻したかった。
大切な人の
たからものを――今、この体が首からかけているはずの
たからもの。
気が付けばきゃあきゃあ響いていた子供たちの声が止み、じっと
ラップトップを見ていた。
『ねえ』
『ねえねえ』
「……なぁに?」
遠いはずの距離。
不思議とはっきり声が聞こえるのは桜迷宮の魔法なのか。
『『おねえちゃんは――』』
踏み出して一歩、天高く掲げた指を鳴らして示すのは“革命”の合図。
世界を変える。二人は
ラップトップ・アイヴァー……無敵の家族、大切な姉妹、
ゲームの流れを変える者。
『『おひめさまなの?』』
「うん、そうだよ」
きらきら。きらきら。そんな姿にシーツで隠された瞳を輝かせた子供が達は興味津々、ぱぁ!と嬉しそうにしたと思えば
光を手に走り出し笑うのだ。
『『遊ぼうよ!!』』
「あっ」
「――美希」
「はぁい、行こう」
毛先だけ太陽の色を纏う黒髪が棚引く。
ほんの僅かに橙色の片鱗残す瞳はまるで陽が沈み夜へと変わる薄暮のよう。
軽やかに桜の中を駆けながら、時に突如現れる桜の幹や枝を避けるその足は、決して止まらない。判断の早さはバトロワシューターならではのもの。軽やかさは躍る姫君のように華やかに。
「「捕まえた!」」
『『捕まっちゃったー!』』
「もう、駄目よ?人の物勝手に持っていったら駄目なの」
『かーしーてーってしたよ?』
『うん、したー!』
「いーいーよーって……美希もお姉ちゃんもしてないよ?」
『『あ』』
「まったくもう!」
ラップトップが腰に手を当て、頬を膨らませば、あわあわ慌てたシーツお化けの子供達。
したもん!との言い訳も“いいよ”してない、という美希の言葉に確かに!という様子でもっと慌てだす。
――揃って小さな手を取り合い、きゅうっと握る。
しゅんと下を向いた様子からして少しは反省したのだろう。二人で握った
光をおずおず差し出しながらも、なんと口にしたらいいのか分からぬ様子で落ち着かない。
「――あのね」
『『ひゃあ!』』
しゃがんで美希が視線を合わせれば、驚いて飛び上がったシーツお化け。
そっと返された大切を受け取った美希が首に掛けながら、眉を下げ諫めるように二人のシーツお化けを撫でながら、言葉を紡ぐ。
「美希だけじゃない――これはね、美希の“お姉ちゃん”にとっても大事な物なの」
『『お姉ちゃん?』』
「うん。幹の大事な家族。これがないとお姉ちゃんは悲しくなっちゃうの……だからね、誰かを悲しくしちゃういけないことを、しちゃったよね?」
『『うん』』
「そうしちゃったら――ごめんなさい、できる?」
諫めるように。諭すように。
早世の子に優しく言葉をかければ、顔を見合わせた二人が小さな手でラップトップの手を取ると、淡い力で握って“せーの”と声を揃え。
『『ごめんなさい!』』
良くできましたと笑ってあげよう。
今宵は祭だ、この子らは今宵だけの子らなのだから少し大目に見てあげて?
ほろほろ影無き朧が解けてゆく。
ひらひらふわふわ、先の先の春へ行く。
大成功
🔵🔵🔵
百鳥・円
【まる】
一面の薄紅色に攫われるかのようです
記憶を撫でて、掬い取られるような
胸に空いた余白は、一体何だったのでしょうか
『わたしは、桜の花が好きです』
『大切なあの人が、教えてくれた花だから』
まろび出た言葉は、誰のものでしょう
わたし? いいえ
少なくとも、
円にそんな記憶は無い
ならば、きっと――
花びらを纏った頭を振るって
軽く両頬を叩きます
思い出せ、思い出せ
今は考えて、行動しなきゃいけません
頭上から降り注ぐ視線に気付いたなら
見下ろす緑の隻眼へと視線を重ねましょう
――どうしたんですか、ゼロのおにーさん
ぼうっと霞んだ記憶の中から
あなたの名前を選び抜いて、そっと紡ぐ
何です?その表情は
なるほど、この状態の犯人は彼らなのですね
可愛い悪戯、とは言えそうにないですけど
怒鳴って叱るのとは、ちょっと違うかも
楽しく遊んでみせましょうか
……まあ、そうですね
お仕事は知っていても、やっぱり意外かも
んふふ。似合うじゃあないですか
お気遣い感謝しますよう
満足するまで遊ぶ、んでしょう?
なら、円ちゃんが遊んであげます!
ゼロ・クローフィ
【まる】
ここは桜か?
何が喪失感、何かを無くした様な
嗚呼、なるほど
また記憶が無い
元々過去の記憶が無い
それでも一つ一つ小さな欠片があったはず
俺にとってもそれは命よりも大切な
そして……チラリと隣の円を見る
出逢った日や出かけた事、途切れ途切れ
奪われた様だが感覚で彼女がどんな風かはわかってようだ
わぁー、お兄さん。私の事身体で覚えてるですかー
とか言いそうだから言わない
いや、お前さんはお前さんだなと
反応がいつもと違う?
どうやら向こうも何か奪われた様だ
子供?なるほど、犯人はコイツらか
遊べね、仕方ない
逃げる子供を片手で抱っこし捕まえる
あ?俺が子供遊ぶの不思議か?
教会で孤児も預かる事があるから慣れてだよ
似合う?ありがとうさん
円、体力は残しておけよ
コイツは一度や二度では満足しない、敵を倒すより厄介だからな
ん?お前さんも遊びたいのか?
いつも振り回されてるからなぁ
まぁ、お前さんが満足するまで付き合ってやるよと
円の頭をぽんぽんとして
はいはい、それは楽しみだな
●春色の海に堕つ先で
春の水面でゼロ・クローフィ(黒狼ノ影・f03934)は目を覚ます。
起き上がれば降り注いだらしい花弁がゼロから落ちた。
「――ここは桜か?」
何も。誰も。答える者は無いけれど秋風に漣立てる薄紅はたしかに
帝都では見慣れた幻朧桜だった。
胸で疼く、不思議な喪失感。
「……あ?嗚呼、なるほど」
やられた。
いくら幼く弱いと言えど、相手は“影朧”だった……と舌打ちたくなる衝動を、今だけ呑み込みゼロは周囲を見回す。
無い。■が。
「またか」
“また”記憶が――いや、記憶“も”無い。
深いため息をつき桜の海に再び転がれば甘く柔い感触。どうやら数多の桜が舞い積もったらしい。
腕で閉じた視界を覆い、思考の海を探る。
きらきら瞬く記憶の片鱗。小さな欠片は星のように瞬き、輝くそれはゼロにとって命よりも大切――……ふと、ゼロは何気なく“隣”――いや、桜の向こうに見えた“見覚えのある”黒髪を追い、覗き見た。
*
頬撫でた風は、たしかに秋でした。
「――綺麗」
攫われた先、櫻に咽ぶ中でハッと意識を取り戻した百鳥・円(華回帰・f10932)は瞼を押し上げ、一言。
春があった。
幻朧桜に塗れた先も危うい迷宮が。
「あ、れ……?わたし、は」
どうしてここにいるの?
いつから此処に居るの?
どうやって、“誰と”――……誰、と?
握りしめたままだった掌を見て、握って開いてまた握って胸に当て考える。
しかしむずむずとしたような、靄の掛かったようなはっきりと言えぬ不快なようなそうでもないような。
言葉にしにくい絶妙な感覚ばかりが先だって、明確な答えが得られない。だからこれでは駄目と頭を振って考え直している、最中。ひらり眼前を落ちゆく桜の花弁を見た時、はくりと口が開いたのはきっと、
わたしではない。
「わたしは、桜の花が好きです」
ぎょっとする。機械のような、どこか何かを擦り合わせたようなその言葉。
「大切なあの人が、推しえてくれた花だから」
すらすらと。これも一体“誰”の言葉なのか――妙に迷わず言えたのは、どうして?
どう考えようと唸ろうと
円の中に“その言葉”は無いはずなのだけれど。ただ、僅かな残滓か残り香は――……あったかも、しれないけれど。
ひらひらり、桜の雨賀降り積もる。
まるで花に攫われるように。誰かに――ああ、誰かと、
わたしは。
“あの瞬間”が思い出せ――……。
「あ」
緑。
この薄紅の中に一切無い、
緑色の光を円は思い出し――ふと、背を預けていた桜の“向こう”を見て――見慣れた黒と探した
眸が逢った。
「――どうしたんですか、ゼロのおにーさん」
花のような瞳が綻ぶ様に不思議と安堵したゼロ。
靄の掛かったような記憶から“名前”を引っ張り出した円。
「……おう」
変わらぬ風で、どこか探るような目になるのはお互い同じな様子。
出逢った日のこと。
出かけたあの日の笑顔。
言葉交わす最中に見た――あの、■。
明確に、思い出せないのに。
不思議と“お互い知っている”気がして仕方がない
まるで気に入りのピースだけ抜かれたようなパズルの気分で見つめ合って。
「何です?その表情は」
「いや、お前さんはお前さんだなと」
どうしてか、ゼロは自身のことより先に円の言いそうな言葉が過ってしまう。きっと、“いつも”の円なら“わぁー、お兄さん。私の事身体で覚えてるですかー”なんて猫のように笑うはずなのに、と。
でも言わない。にんまりするいつもの窓かではなく、きょとんと不思議そうな顔も悪くないから。
円の記憶も失う――いや、“奪われた”なら、取り返せばいい。
そう思うゼロの傍らで円もまたどこかいつもと違う“気がする”ゼロの何かを取り戻したいと思った。
きっと、“大切な何か”が足りない。
きゃぁー!ははは!待ってー!
すこし離れた所から、子供の声。桜の中追いかけっこをするシーツお化けの子供達がきゃあきゃあと笑い合っている。
「子供?なるほど、犯人はコイツらか」
「なるほど、この状態の犯人は彼らなのですね」
ゼロと円の声が重なる。
霞む記憶と穴あきの記憶が少し、晴れ埋まる感覚に笑った。
――小さな背。小さな手足。早世の子らは悪びれもせず甲高い声で追いかけっこをして、ふと二人の方へ振り替えると手中でクリスタルの様に瞬く
ピースを見せつけにっこり“笑った”。
『『あーそーぼー!』』
「可愛い悪戯、とは言えそうにないですけど……」
「遊べね、仕方ない」
ゼロは桜を払うと行くぞ、を走り出す。
待ってください、と追う円とはすぐに並んで――本来すぐに追いつけそうなところを、ゼロは絶妙な均衡で走る。
時折振り返っては嬉しそうなシーツお化けに、時々待て!と言いながら。
ゼロは分かっていたのだ、“子供達のほんとうにしたいこと”が。貸しても遊ぼうも、なにもかも通りで横目に見た子供の真似に過ぎなかった。
見様見真似だから、本当にどうしているのかが分からないから、最も他人の気を引く手段に出たのだろう。
捕まえるなら、まず一人。
「ほら、捕まえた」
『あー!やぁあー!』
「ほら返してやれ。ごめんなさいは?」
『んんー!や……うー。ごめんなさい』
“ほらどーぞってするんだぞ”と子供をいとも簡単に諫めて見せたゼロに円は小さく拍手を贈る。
返された光は円の胸に吸い込まれ溶け消えれば、ゼロは片腕で抱えた子供をそのままに、晴れた記憶で笑む円を見た。
「あ?俺が子供遊ぶの不思議か?」
「……まあ、そうですね。怒鳴って叱るのとは、ちょっと違うかもって思っていましたし、どうするのかなと思いました。でもお仕事は知っていても、やっぱり意外かも」
「教会で孤児も預かる事があるから慣れてんだよ」
「んふふ。似合うじゃあないですか」
「似合う?ありがとうさん。――円、体力は残しておけよ。他にも来ちまった」
わらわら、桜の中から覗く数人が酷く期待に満ち満ちた瞳でゼロと円を見ているのが分かる。
「お気遣い感謝しますよう。満足するまで遊ぶ、んでしょう?」
「……――いつも振り回されてるからなぁ。まぁ、お前さんが満足するまで付き合ってやるよ」
“誰に”と言わぬ含みに頬膨らましかけた円の頭をゼロの大きな手が撫でる。
クク、と喉を鳴らし笑う顔は円のよく知るゼロだった。
「いいでしょう!円ちゃんが遊んであげます!」
「はいはい、それは楽しみだな」
きゃぁー!と走り出す子供達。
待て待てー!と追う円と、その背を慣れた足どりで追ったゼロの手中から、一人の子が“ありがと”と残し桜に解けた。
きっと。
この追いかけっこが終わる頃、二人は数多の幻朧桜を浴びるだろう。
沢山の感謝と喜びにあふれた常春の片鱗を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
楊・暁
―藍夜?らんや?…藍夜!!
離さないと決めて強く握っていたぬくもりが
姿が、声がない
瞬時に湧く大きな焦燥感を同時に理性で押さえ込む
―ああ、そうか
まだ終わっちゃいねぇんだな?
楽しむ心を忘れるな
楽しんでこい
藍夜の声が脳裏過ぎり心を落ち着かせる
傍にいないときも
お前はいつだって俺の心の中にいてくれる
大丈夫
独りじゃねぇ
まだ遊び足りねぇってんなら…遊んでやるよ
集中して聞き耳と気配察知
影朧の足取りや気配を拾ったら速攻そっちへ駆け追跡
追ってる間もどうにも急いてしまう
焦りじゃねぇ…焦がれてんだ
藍夜―なぁ、俺
どうしようもなくお前に会いてぇ
今すぐ、その姿が、声が…ぬくもりが欲しくて堪らねぇんだ
…なんでだろうな
影朧を見つけたら手を掴み逃亡阻止
…捕まえた
お前の負けだ
怒りはねぇ
優しく宥める
…いいか?
誰だって一時的にでも大切なもん取られたら
ショックだし…淋しいもんだ
…淋しいってのは分かるよな?
だから…今度からはお前から何か贈れ
…そうすりゃ、仲間になれる
影朧は静かに見送り
藍夜を見つけたら
――おかえり、藍夜
俺の方から抱きつく
●帰ろう
ハッと目を開け、握る。
「ない」
無い。
「なんで」
どうして。
「っ――藍夜?」
呼ぶと、返ってこない返事に“居ない”を実感してしまう。それでもどこかから返って来るのではないかと、楊・暁(うたかたの花・f36185)は叫ぶ。
「らんや?……っ、藍夜!!」
いつも“どうした?”と朗らかなあの声が聞こえない。いくら耳を欹てようと呼吸の一つも拾えない。
「あの馬鹿……!」
こんなの八つ当たりだ。
隣にいろと、約束したじゃないかと攫われた側に言うのは――今回ばかりは人成らざる者が相手だからこそ、酷かもしれない。
分かっていても歯を噛んでしまう。分かっていても胸に巻きおこるこの
感情が拭えない。逢いたい。今すぐ。呼んでほしい。藍夜だけに教えた本当の名前を。
音にならない
“藍夜”という名を呑む。
きゃぁー!うふふ!あはは!
「――ああ、そうか」
耳掠めた笑い声に、どこか心奥底で煮え滾ようなどろりとした感覚を暁は押し込める。
「……まだ」
軽快な笑い声がどうしてか今、憎らしいけれど。
桜溢るる中、“心音と同じ色にしたんだ”と笑っていた
赤い紐の腰佩を振り回し遊ぶ子供がいた。
“これも中々面白いんだ”なんて笑って吸っていた
金と桜古木の煙管を持って遊び回る子供がいた。
「まだ――終わっちゃいねぇんだな?」
『あーそーぼー!』
遊んでやるよと、笑えただろうか。
“怒るなよ、叱ってやれ”――わかってる。
“楽しむ心を忘れるんじゃないぞ”――知ってるよ。
“それでついでに楽しんでこい”――いいぜ。楽しかったこと、たぁっぷりお前に聞かせてやる。
「だから大人しく待ってろよ――!待て!」
『わあー!』
『あはは!』
傍にいない時も、お前はいつだって俺の中に居るんだ――普段余り笑わぬ藍夜が酷く無防備に自身を見て笑む姿が暁の脳裏を過る。
「(大丈夫。俺は、大丈夫。もう独りじゃねぇ)」
と、落ち着いてみたのは良かったのだが、落ち付けば落ち着くで逆につい思い浮かべた藍夜のことを考えてしまう。思い浮かべ過る中、唯一心配なことと言えばしっかりして良そうに見えてあの迷子癖アリなうえ人並み以上の研究心と好奇心旺盛な藍夜が――。
(「桜の迷宮だと?!何だこれ興味深いな。迷宮ってことは範囲か?端ってあるのか!?終わりは?始まりは?よし、真っ直ぐ歩けばどっかにつくだろ!」)
「お前の真っ直ぐ絶対真っ直ぐじゃねぇし……!動かねぇで居てくれ!くそっだああもう!まだ遊び足りねぇってんなら遊んでやるよ!」
とっとと探して全て返してもらうからな!と叫ぶ暁に、子供達は鈴の様に笑って走り出す。
「(――この辺じゃねぇ)」
ピンと立てた狐耳を揺らしながら、暁は走る。
ちらりと見せるように走っては曲がり角で曲がってしまうシーツお化け達は、恐らく藍夜の持ち物が無ければ桜で見失っていただろう。
耳を欹て聞き耳を立てながら追う気配だけを察知し暁は追っていた。
「(たしかに
アレは目印にはなるが……怒りたくねぇし)」
周囲を幾ら見れども桜の花弁ばかり。
見慣れたはずの黒は見当たらず、一向に声さえ聞こえず気配さえ拾えない。
「……っくそ」
なんで。
どうして。
「(どこ行ったんだよ
……!)」
いっそ迷子の方が、余程楽に探せた気がする。
櫻に攫われるなんて冗談みたいな現実が、今の暁には腹立たしくて仕方がない。
「逢いてぇ――藍夜なぁ、俺」
焦ったって仕方がないだろう?なんて、言うな。
どうにかなる?なってねぇよ、俺がどうにかなりそうなんだよ。お前が急に居なくなるから……!
どろりと。
何かが溜まる感覚を覚え、足を止めず暁は胸元を握る。
折角の祭だからと笑った藍夜と揃いにした長袍。落さないよう腰に結んだジャケットも、藍夜と柄違いの揃い。
「ほんとどうしようもなくお前に会いてぇ」
寂しい。
「今すぐお前が、お前の声が、ぬくもりが欲しくて堪らねぇんだ……なんでだろうな」
寂しい。
逢いたい。抱きしめたい。抱きしめてほしい。
きっとこの寂しさを拭えるのも埋められるのも藍夜だけ。その感情をはっきり何と呼ぶべきか、今の暁には分からなかった。
それでもどうしても、“
藍夜に逢いたい”。
「(――ここ、確かさっき行き止まりで……使える!)」
『えーっとぉっ』
『こっち!』
「待てっ!」
滑り込み塞げば、狼狽えた子供達がひゃ!と声上げ行き止まりだった方へ駆け出した。
「そろそろお終いにしよう」
――探した気配と、聞きたかった声がするから。
“~~……で、……だったんだ。面白いだろう?”
“うん!”
“もっとお話ししてー!”
“はいはい、そうだな――”
耳慣れた静かな声が子供達に囲まれているのが分かる。
動かないでいてくれたのかという喜びの反面、子供に懐かれていることが癪だと言えば八つ当たりになるだろう。
暁の中で、黒い物が酷く静かに収まりゆくのが分かる。
「(逢える――!)」
ただ、それだけなのに。
『いきどまり!』
『どーしよー!』
スピードを上げ追い込めば、桜の壁に慌てておたおたする影朧達が振り返ろうとした、瞬間!
「捕まえた!」
掴んだ小さな手。
あーあーと項垂れる姿。でも。
「……いいか?」
『『なぁに?』』
声を揃えて首を傾げる姿は双子。ぶうぶう、と不満だらけな姿にむむっと暁も眉を寄せて。
「誰だって一時的にでも大切なもん取られたらショックだし……淋しいもんだ」
『『かしてっていったもん!』』
「俺良いっていってねぇぞ」
『『う゛う゛―!』』
「……お前らだって“淋しい”ってのは、分かるだろ?」
諫めるようにそう尋ねれば、ぎゅうっと子らはシーツを握って黙るばかり。
「だから……今度からはお前から何か贈れ」
何にもないよ!という子らへ、暁は櫻を掬いかける。
「あるよ……そうすりゃ、仲間になれる」
仲間!
わあっと笑った子達が空に解け、舞い散る桜は幻想的。
落ちた腰佩と煙管を拾い上げ、暁は探した
大切のもとへ。
「あぁ、心音」
笑っている。
「お、おいどうした?」
笑っている。
「何だ転んだか?」
「違げぇし……――おかえり、藍夜」
添えられた手袋の無い指先に涙を拭われたのが恥ずかしくて、存在を確かめたくて。暁は強く強く藍夜を抱きしめる。
「(温けぇ……)」
“しかたないな”と頭を撫でる手を甘受けしながら、暁は抱きしめた体に頬を擦り寄せた。
大成功
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