鏖殺の炎再び? 会ってはならぬ二人の曹氏!
●殲禍炎剣
「ふーうーんん……んぐっ……
九竜神火罩って覚えてる?」
集った猟兵たちにどら焼きと玄米茶を振る舞いつつ、また自身もモサモサとどら焼きを頬張りつつ、大宝寺・風蘭(狂拳猫・f19776)は事件の説明を始めた。
「封神武侠界での大戦のとき、哪吒が使おうとしてた攻撃衛星だよ。ウチらにぶっ壊されて消滅したモンかと思いきや、どーも破片が残ってたっぽいんだよね。んで、その破片を元手にする格好で、強力なオブリビオンが発生したんだ」
発生が確認できたオブリビオンは二体。
一人は曹洪。魏の君主・曹操の従弟で、かつて曹操が窮地にあった際に命を懸けて彼を助けたこともある。生粋の守銭奴であったことが原因で失脚した時期もあったものの、魏軍の重鎮として武勲を重ねた一線級の軍人である。
今一人は、曹植。曹操の息子で、優れた詩才の持ち主であったことで知られている。なまじ人望があったため、曹操の死後に兄と跡目を争うことになるが、敗れた。その後は兄やその息子に警戒され、不遇の生を送ったという。
両者とも、三国時代に広くその名を知らしめた、一廉の人物である。それゆえだろうか、生前の有様を歪められてオブリビオンと化した今も、並のオブリビオンとは一線を画する力を有する存在となっている。
「けど……実は一番の問題は、この二人がメッチャ強いってーのとは別にあるんだよね」
お茶を一口すすってから、風蘭は続ける。
「さっきも言った通り、連中は九竜神火罩の破片が元になってる。んで、二人が会って魔術的な儀式を完成させると、九竜神火罩が復活しちゃうんだ。破片なんて二つ合わせても元の衛星のごく一部にしかなんないはずなんだけど、儀式を通してオブリビオンの肉体っていうかエネルギーみたいなモンで、不足分を補っちゃう感じ」
新たな九竜神火罩が完成してしまえば、封神武侠界は再び破滅の危機を迎えてしまう。ゆえに、この儀式は必ず阻止しなければならない。
「理想は、そもそもこの二人を会わせないことなんだけど……多分、それは無理ゲー」
小豆の皮が歯に挟まったような顔で、風蘭は言う。
この二人のオブリビオン、九竜神火罩の影響でかなり強化されていることもそうだが、そうでなかったとしてもそもそもが韓信大将軍の配下となって力を得た、強力な個体だったという。
ゆえに、合流する前に片方を叩き潰そうと画策したとして、高確率で耐えられるか、突破される。
「んでも、要は儀式さえマトモにやらせなきゃ、こっちの勝ちなわけさ。つーわけで、連中が合流した後もガンガンぶん殴って、ゆっくり儀式なんてやる暇もないうちに撃破! って流れになると思う」
びしびしっ! と宙を拳で空打ちしつつ、風蘭は言った。
「あ、そうそう。韓信の配下にはそれぞれ神器っつって、ユーベルコードとはまた別の特殊能力を持ってるんだけど、こいつらは二人とも『傾世元禳』――ざっくり言うと、会うヤツ会うヤツ自分のこと好きになっちゃうような、わけわからん匂いをプンプンさせてる、ってやつだ。何かしら対策は必要だと思うから、そこんとこもよろしくねぃ」
●傾世元禳
赤茶けた土。灰色の石ころ。緑と呼びがたい、淡くくすんだ色の雑草。
そんな荒涼とした光景の中には不釣り合いな、驕奢な出で立ちをした青年がある。
「秋霜は身を……いや、涼風は……ううん……うまい詞が出てこないな」
ぶつぶつと独りごちる彼の元へ、つい、と一羽の灰鷹が飛んでくる。
野生の猛禽。人に馴れるはずもない。下手をすれば、飢餓感に任せて目玉でもついばみに来たのかもしれない、と疑うところだ――本来なら。
しかし、灰鷹はまるで甘えるかのように青年の周囲をぐるぐると飛んで回った。
「……おや、僕は世界の敵なんだけどね。これも、神器の力なのかな……?」
優しげに、また哀しげに微笑しつつ、青年はゆるゆると歩みを進める。
どこへ行くべきかは、わかっている。まるで招くかのように、同族が同じ香りを放っているから。
大神登良
オープニングをご覧いただきありがとうございます。
大神登良です。
このシナリオは二章構成となっています。
第一章は、曹洪との戦いです。第一章で「大成功」判定のみが発生した場合、この時点で曹洪を撃破できますが、その可能性は限りなくゼロに等しいと思ってください。「成功」や「失敗」を含みつつ第一章を攻略した場合、曹洪は大きなダメージを負いつつも第二章まで生存し、曹植と共闘して引き続き猟兵と戦います。
第二章は、曹植との戦いです。高確率で曹洪が第一章から参戦するので、強力なオブリビオンを二体同時に相手することになります。ただ、曹洪は第一章の時点でかなり弱っているはずなので、そこを突くように立ち回れば有利に戦えるでしょう。
曹洪と曹植は、両者とも韓信配下で、傾世元禳(自身の全身に「魅了の香気」を纏い、これを吸い込んだ対象に、無意識に友好的な行動を行わせる)の能力を持ちます。
また、両者とも目的は「融合の儀式を行って九竜神火罩を復活させる」ことなので、互いが欠けないようにかばい合いつつ連携してくることが予想されます。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『🌗『天下になくてもいいもの』曹洪』
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POW : 私なんて天下にいらないんですよ
自身の【金に換えられぬ程の価値があると認めたもの】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 公の後ろについていただけですよ……どんな死地でも
【金の事しか考えない卑小な俗物という仮面】を脱ぎ、【曹操に従い数多くの戦に従軍した歴戦の猛者】に変身する。武器「【金龍偃月刀(超高価格オーダーメイド品)】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ : こう見えて公よりお金持ちですので
自身の【吝嗇な性格を抑えこみはたいた大金】を代償に、【金で雇った様々な能力、出自を持つ配下たち】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【金にあかせて買いそろえた装備や兵器】で戦う。
👑11
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●天下可無洪
「なるほど、あっちの方の若殿ですか」
いかにも金を掛けていそうな壮麗な大刀の峰を、やはり高価であろう美々しい装束に包まれた肩にトントンと弾ませている。
印象でいえば、武人というよりは商人のようにも感じられる。見た目もあるが、それに加えて彼の体からにじみ出るような、いわゆる『金の匂い』というものゆえにである。曹洪は金策が巧みな将であったといわれるので、その性質が反映されたのかもしれない。
世の中、何だかんだいって金が嫌いという人間はまれだ。生前は財貨を重んじるあまり恨みやら顰蹙やらを買った曹洪だが、傾世元禳の力を得た今、その金の匂いは対峙者を魅了する奇怪な魔性を得ていた。
「……運命の皮肉というものでしょうか? 私も彼も、魏の曹氏に生まれながら同族に疎まれ、天下に居場所がなくなった者同士。それがこうして役割を得たと思ったら、天下を破壊する兵器の部品、とは」
軽い嘆息。ただ、その顔にへばりついたような薄ら笑いからは、己の運命を呪っているというような気配は感じられない。
「まあ、いいでしょう。怪異に身をやつし、韓信の手先となったからには、相応の働きはしてみせますとも」
独りごちつつ歩み曹洪の先には、未だその姿こそ見えないものの、曹植がいることだろう。
その二人が会ってしまう前に、まずは曹洪を叩く。それが、猟兵に与えられたミッションだった。
鳴上・冬季
「呼吸不要が手っ取り早い、ということですね」
嗤う
「鏖殺は仙の嗜みです。一撃死させていくにはこのくらい体格差があった方が良いでしょう?」
10m級に巨大化した黄巾力士に融けるよう融合
上空を飛び回りながら金磚から敵を自動追尾する火行の実体弾(徹甲炸裂焼夷弾)連射
配下の殲滅と曹洪の重傷化狙う
敵からの攻撃は仙術+功夫で縮地し避ける
ある程度配下を減らしたところで仙術+功夫で縮地し一気に曹洪に肉薄
前蹴り後ろ蹴り回し蹴りの連撃や掌底等の功夫の技を直接叩き込み曹洪殲滅狙う
功夫より金磚からの連射の方が効率が良ければ即切り替え
曹洪殲滅を執拗に狙う
「過ぎた謙遜は嫌味ですよ。貴方は私がここまでする必要がある強敵です」
皐・芽衣
SPD
魅了の神器か。恐ろしいのう。
しかし、わしも武人。
どれほど魅力を感じていようと
立場が違えば戦うのが定め。じゃろ?曹洪。
……さぁ!名残惜しいが
言葉で語る時間は終わりじゃ。
武人同士、敬愛を込め兵刃を交えようぞ!
わしとお主の間に、小細工は不要よの?
得物も偃月刀同士、武芸で真っ向勝負じゃ。
「神羊拳・器械套路」で我が偃月刀を
【ぶん回し】、【なぎ払い】、【串刺し】。
曹洪の攻撃は【見切り】、【武器受け】。
【体勢を崩】させたり【部位破壊】や
【吹き飛ばし】【武器落とし】させるなど、
持てる技術は駆使していこうか。
わしの技をその身に刻んで往くがよい。
そしてわしの思い出として遺れ、曹洪!
●殲滅戦
ふと、曹洪は天を仰いだ。
視界一杯に、抜けるような秋の青空が広がる。その光景の中に、ぽつんと一点の染みのようなものがあった。
鳥か何か――と、普通なら思うところだろうが。
「来ましたね」
曹洪は袖の下に手を入れ、自身の頭ほどもある巾着袋を取り出した。そして底をつまんで逆さにし、ブンブンと振り回す。
途端、袋の中にあった金属片めいた何かが数百個、周囲の地面にばらまかれる。
チャリチャリと、ある種甘美ともいえる音を鳴らすそれらは、四角い穴の空いた硬貨――五銖銭だった。
「出番ですよ」
同時、乾いていたはずの地面がドロリと泥のように蠢く。泥は幾本もの腕と化すや、それぞれが地面に落ちていた五銖銭を十数ほども引っつかむ。そして、そのまませり上がるようにして腕から肩、肩から胸、頭、腹……と体を形作る。
生み出されたのは、屈強といった男たち二、三十人ほど。めいめい槍や大斧などの武器を持っている他、攻城戦用の巨大な弩なぞを携える者らもある。
曹洪麾下の魏兵の亡霊――にしては、妙に軽装で柄の悪い者ばかり。
生前、曹洪は蓄えた財を用い、多くの食客を抱えたといわれている。私兵なり護衛なりのような扱いだったと思われるが、彼らは素行が悪かったために曹洪自身の評判も下がったともいわれる。
「さ、報酬の分は働いてください」
曹洪がそう言った頃には、空にある点のようだった染みはかなり大きくなっていた。
鉄色の人型。いや、人と呼ぶにはいささか武骨に過ぎるシルエット。
二十一世紀のアニメ知識のある者なら、変形合体するスーパーロボットといった言葉が頭に浮かぶだろう。十メートルを超える威容は、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)の黄巾力士だった。
黄巾力士のパーツのうち一際目立つのは、長大な筒――いわゆるキャノン砲。その砲口は地面にたむろする曹洪らに向けられている。
それを視認した曹洪は、薄く眉間にしわを寄せた。
「……見誤りましたか?」
曹洪がぼやいたのが早いか、砲が火を噴く。
撃ち出される砲弾は、貫通力と爆発力を両立させた火行の魔弾。なまじの盾など貫くし、回避できたとして地面に炸裂した刹那に爆風と爆炎をまき散らす。
そんな悪魔的な砲弾が、間を置かずに飛来する。刀槍の届かぬ距離からの攻撃に、男たちは為す術もない。右往左往する間に、絨毯爆撃じみた砲撃によって吹き飛ばされていく。
「弩を射よ!」
曹洪が怒鳴る。
刹那、男らは急激に統率を取り戻した。呼吸一つほどの間に数人がかりで弩を上空の黄巾力士に向け、長大な槍めいた矢を放った。
同時。
曹洪は、その射出『された』矢に無造作に手を伸ばし、つかんだ。
必然、曹洪の体は矢に引っ張られ、凄まじい勢いで黄巾力士目がけすっ飛んでいく。人間であれば腕が引きちぎれるところ――という以前に、そもそも飛んでいる弩の矢をつかむなどという真似が不可能だろうが。
迫る矢目がけ、黄巾力士が砲撃を放つ。速度を思えば当たりようがなさそうなものだが、そこは超常同士の戦い、砲弾は精密に矢を捉える。
矢が曹洪もろとも爆散する――かに見えたが、曹洪は宙にあって握った矢を引っ張るような動作をし、爆ぜる矢を置き去りにしてさらに加速する。
「――!?」
瞬き一つさえなく黄巾力士の顔面前に迫った曹洪が、手にした金龍偃月刀を一閃させる。
がいん! と下手くそが銅鑼を鳴らしたような異音が響き。
黄巾力士の肩口に迫っていた黄金色の軌跡が、不意に割り込んできた紅色の軌跡とかち合い、弾かれる。
「む」
「やらせん!」
瞠目する曹洪に怒鳴ったのは、振り抜いた格好で偃月刀を握りしめる皐・芽衣(金色一角のメイメイ・f35724)だった。空を行く黄巾力士の背中に乗っていたらしい。
「見事――ですが」
泳いだ体が流れるままに、曹洪はぐるんと身を捻る。そして胴回し回転蹴りめいた動きで、踵を黄巾力士の後頭部に叩きつける。
超常存在オブリビオンの蹴りは、体格からは考えられない重さと威力がある。黄巾力士はつんのめり、空から地へと落下する。
「っちぃ――!」
足場を失って芽衣の体勢も崩れる――ものの、芽衣は強引に黄巾力士の背を蹴って曹洪へと斬りかかった。
曹洪の姿勢にも余裕はないが、偃月刀の柄を寝かせて斬撃を受け止める。ただ、勢いは殺せずに隕石めいて下へと吹っ飛んだ。
どごん! と派手な音と共に、地面に蜘蛛の巣状の亀裂が刻まれる。
凡百のオブリビオンなら粉々になっている。が、曹洪は何事もなかったかのように立ち上がってみせた。
そして周囲に目を走らせ、嘆息する。私財を贄に召喚した兵は、すでに壊滅していた。
「結構、奮発したんですがね……こうもあっさり片付けられますか」
「鏖殺は仙の嗜みですから」
黄巾力士を通じて冬季が言うと、曹洪は軽く目を見開いた。
「てっきりどこかから遠隔操作しているものかと思っていましたが、合体しているのですか。道理で妙に動きが滑らかなわけです。私風情を討つためにしては、大袈裟な術ではありませんか?」
「過ぎた謙遜は嫌味ですよ。その必要があると思ったから、ここまでしているのです」
笑うように冬季は言った。
単純に曹洪の撃滅に必要な火力の確保に都合が良かったというのもあるが、それ以上に曹洪の傾世元禳の能力への対抗という意味が強い。黄巾力士と合体することによって呼吸が不要になり、香気への耐性が大幅に上がっている。
一方の芽衣は、曹洪へ抱いてしまう好意を『武人としての敬愛』にすり替えることで戦意を保たんとしていた。
「さぁ、名残惜しいが言葉で語る時間は終わりじゃ。武人ならば武芸で語ろうぞ! いざ、真っ向から兵刃を交わさん!」
「……私を武人と呼びますか」
曹洪は薄く笑みを浮かべた。
「いいでしょう……私とて、金や縁故のみで地位を築いたわけではありません。魏武の強、お見せします」
ごっ!
苛烈な烈風となった曹洪が奔る。
金龍偃月刀の刺突が芽衣に至る――前に、黄巾力士が巨躯に見合わぬ神速の踏み込みで割り込む。
鋼の足裏が曹洪を圧殺する――前に、加速した曹洪がその範囲からすり抜ける。
曹洪がすり抜けた先に芽衣が肉迫して横薙ぎの一閃を見舞う――前に、柄を旋回させて石突で鉅角の刃を弾き上げる。
曹洪の切り返しの袈裟斬りと、芽衣の切り返しの逆袈裟は、全く同時。甲高い轟音を伴った衝撃と火花がまき散らされ、拮抗が生じる。
刹那、黄巾力士の平手打ちが曹洪を押し潰す――前に、片手を大刀から離した曹洪が手刀でそれを迎撃する。
巨木が割れるような音が鳴り、重量でいえば圧倒しているはずの平手打ちが止まる。
「――っ!?」
「ぐぅ……ぬぁッ!」
叫声と同時に曹洪が身を捻り、黄巾力士との力を受け流して芽衣にぶつけるようにして両者を投げ飛ばす。
「うわぁっ!?」
纏めて地を転がされ、それでも二人は瞬時に身を起こして構え直す。
そんな猟兵らに油断なく大刀の切っ先を向けつつ、曹洪は荒く息を吐いた。
「……楽に勝てるなどとは思っていなかったが――」
戦いの狂熱は、まだまだ上がりそうな気配を見せていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グレナディン・サンライズ(サポート)
『ここはこの年寄りに任せてもらおうかね?』
『こう見えても、まだまだ衰えちゃいないよ』
年齢3桁の婆。
スペースシップワールド出身の元宇宙海賊。
主な武装はフォースセイバーとブラスター。
戦闘スタイルは基本的には前衛遊撃。敵を翻弄するような戦いを好む。
グルメではない酒好き。
年齢なりの経験を積んでいるので、冷静さと余裕をなくすことはない。
口調(あたし、あんた、だね、だよ、~かい?)
富良裳・アール(サポート)
「えっと、ぁぅぁぅ…こ、こんにちは…」
赤くなったり青くなったりよく顔色が変わり、基本もじもじしています。
かわいいものが好きで、甘いお菓子も好き。
お化けは怖いし、大きな声にもびっくりする。
一般的な感覚を持った、人見知り気味の、普通の女の子です(本人談)。
普通の女の子なので、戦闘になると
「きゃー!」「うわー!」「こないでくださいっ」
等、よく涙目で叫んでいます。
そして叫んでいる限りは的確に、それはもう的確に
武器、ユーベルコードを使用します。
戦える、普通の女の子だからです。
なので依頼は頑張ってこなそうとしますし、
非戦闘員は守ります。
でもやっぱり、平和な依頼がいちばん好き。
●戦場に立つ資質と資格
「ひゃぁあぁぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げながら富良裳・アール(普通の女の子・f36268)が疾走する。
曹洪はその真後ろを追尾しつつ、偃月刀を振り回している。九竜神火罩の破片によって強化された個体だけあって、その速さは凄まじい。
しかし、斬撃は当たらない。
速度凄まじきはアールも同様だった。見た目はいかにも、それなりの家庭のお嬢様。命がけの戦いなんぞに縁のない生物といった風情だが、彼女もまた一端の猟兵である。ばたばたとスカートの裾を蹴っ飛ばしながら駆けるアールに対し、曹洪は一向に距離を縮められずにいる。
「いやー! 来ないでー!」
「それはこちらの台詞です! あなたたちが捨て置いてくれると言うのなら、こちらだってわざわざ追いかけ回しません!」
曹洪、そして曹植の目的は、九竜神火罩の復活である。それには、互いに欠けることなく儀式を執行する必要がある。危険を冒して猟兵らと戦うメリットなどない。
というわけで、状況の外面には相反しているものの、実は涙目になりながら逃げまくっているアールの方こそが追跡者の立場だったりするのである。
「……ええい!」
焦れた唸り声を上げた曹洪は、懐から短刀の束を取り出す。いや、短刀と見えたのは、刀銭――古代中国で流通していた、刀を模した形状の貨幣だった。
それらを投擲する。守銭奴曹洪にとっては血肉を捨てるようなものだが、だからこそといおうか、猛獣の爪撃のごとき軌跡を描く神速の鋭弾には必殺の威力が宿る。
「ひぃぃぃ!!」
刀銭に体を刺し貫かれる寸前、アールは頭を抱えつつヘッドスライディングする。フワフワしたにんじん色の頭髪が数房ほど散らされるが、まあ肉は削られるずに済んだのだから上等であろう。
だが足は止まった。
一弾指でアールは曹洪に追いつかれ、姿勢的にも今度こそ回避しようのない唐竹割りが振るわれる。
だが。
「下がりな!」
空気を貫くようなグレナディン・サンライズ(永遠の挑戦者・f00626)の声と同時、真紅に輝く光の塊が曹洪の眼前に割り込む。
「――!?」
超反応で振りかぶった金龍偃月刀を切り返し、刀身の腹で塊を受ける。
途端、破裂したエネルギー塊が生み出した強烈な爆圧によって偃月刀が大きく軋んだ。刀身からはみ出た猛熱は曹洪を容赦なく炙り、奢侈な服を燃やす。
さらにグレナディンは、先込め銃めいたレトロなデザインのブラスター銃を連射した。的確に急所を狙ってくる光弾の嵐に対し、曹洪は大刀を扇風機めいて旋回させて盾と成し、ことごとくを弾き飛ばす。
「――ご老、冷や水を浴びて良いお体には見えませんが」
グレナディンを見据えつつ、曹洪は服の火をパンとはたいて消した。
「ふん、余計なお世話さ。これでもまたまだ衰えちゃいないよ」
実に三桁の年齢を重ねたグレナディン、その割にはかくしゃくとしたものだが、それでも一見してかなりの老婆とわかる外見はしている。曹洪自身も歴戦を誇る将ではあるが、グレナディンほどの生涯現役ぶりではなかったし、敵として戦った将の中にも覚えがなかった。
「つくづく、常識が通じない……」
「それはお互い様さ!」
再びグレナディンの銃撃。
曹洪は今度は横っ跳びに回避する。猟兵とオブリビオンの戦いともなれば、不意討ちでもない限り、拳銃程度の速度の光弾はかわされるのが当たり前だ。グレナディンも当然それは承知で、曹洪の回避した先に弾丸を『置いておく』ような老練な撃ち方をしているのだが、それでも曹洪を捕捉するのは困難だった。
と、曹洪がふと気付く。すっ転んでいたアールの姿が、いつの間にか消えている。
先の態度を思えば、逃げてしまったのかもしれない。まあ、見た目から気性から、どう考えても戦いに向いた人物ではなかったので、そうなるのが自然だろう。
気にせずグレナディンに集中――と思ったその時、真後ろから気配を感じる。
いや、気配という曖昧なものではなく、実際に肌を圧するほどの強い熱であったのかもしれない。
振り返った曹洪の視界に、炎の翼を広げた巨鳥の威容が飛び込んでくる。
ただ、それ以上に曹洪の目を引いたのは、炎の巨鳥の胴体部分にあるアールだ。先刻まで仕立ての良いワンピースを着ていたはずの彼女は、今はキャミソールにドロワーズ――要は、下着姿になっている。
「……は?」
想像の埒外の光景に、戦闘経験の豊富な曹洪が、戦闘の真っ最中だというのに、呆気にとられてしまう。
ただしアールとしては、別に曹洪の油断を誘うつもりでそんな格好をしているわけでもない。【フェニックスキャノン】――肌の八割を露出することで周囲の魔素を効率よく吸収し、威力が格段に上昇するという炎のユーベルコード。曹洪という強敵を叩くにあたり、その効能を利用したというだけだ。
「み、み、見ないでくださーい!」
「いや、だから――」
アールが顔を真っ赤にしながら放った炎鳥の吶喊が、困惑により反応の遅れた曹洪を捉えた。苛烈なる魔炎に呑み込まれた曹洪は、今度は服のみで済まずに皮膚を、肉を焼かれる。
こっ恥ずかしい思いをしたアールではあるが、そうするだけの甲斐はあったといえる成果だった。
成功
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月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
オラトリオのシンフォニア×聖者の女の子です。
普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
赤嶺・愛(サポート)
『世界が平和になりますように』
人間のパラディン×シーフの女の子です。
普段の口調は「平和を愛する(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、怒った時は「憤怒(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は明るく、人と話す事が好きで
平和的な解決を望む優しい性格の女の子ですが
戦う事でしか依頼を成功出来ない時は戦う事も厭わないです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●平和への誓い
「はぁっ!」
赤嶺・愛(愛を広める騎士・f08508)が携えたハート型の盾が、裏に備えられた【スチームエンジン】から桃色のジェット炎を噴出させる。
高速飛行する盾に引っ張られる形で、愛は曹洪目がけミサイルよろしく吶喊した。
「む……」
シールドバッシュに挽き潰される前に、曹洪は金龍偃月刀をコンパクトに振るって石突を叩きつける。
真正面からぶつかったなら、勢いに勝る愛が有利――と見えたが、流石にボス級のオブリビオン。爆裂する衝撃にわずかに圧されはしたものの、曹洪は愛の突撃を受け止めきった。
次の刹那、愛が盾の陰からバスタードソードを飛び出させるようにして振るうのと、曹洪が柄を握る手を軸に大刀の刃を返したのが、ほぼ同時。
刃と刃がかち合って、耳障りな金属音と火花とがまき散らされる。
「うっ――!」
片手の不利。それでなくても膂力は曹洪が圧倒している。バスタードソードは一瞬で大刀に弾かれ、旋回した石突による打突が見舞われる。
ただし、それと同時にジェット噴射によって急角度の軌道を描いた盾が曹洪の側頭を襲った。
ごごん! と連続した打撃音が鳴り、腹部を打たれた愛と頭を打たれた曹洪とが同時に吹き飛んだ。
「かはっ!」
「ぐっ!」
愛は赤茶けた地面をバウンドし、曹洪は土埃を上げつつ滑る。
いち早く体勢を立て直したのは曹洪の方。
「……やりますね。手を増やしますか」
袖をバサリと一振りすると、金の延べ棒が十数本ほども宙を舞う。
途端、それぞれの延べ棒の周囲の空間がぐにゃりと歪み、ひねり出されるようにして屈強な男たちが出現する。ゴロツキじみた格好をしたそれらは、そんな割には金の掛かっていそうな、豪奢な大刀やら長剣やらを装備している。
出現の直後、品のない笑みを浮かべながらそれぞれの得物を振りかざして愛に殺到する。曹洪と比すれば、その動きは雑魚そのものだ。しかし、それでも一人で捌くには数が多すぎる。
と、その集団を包み込むように、白い花弁がひらひらと雪よろしく降り注ぐ。
何が、と思う間があったこどうか。次の瞬間に花弁は竜巻に乗ったように急調な軌道を描く。柔な花弁と見えて、それらはわば致死毒を秘めた細刃の暴嵐である。戦意旺盛だった男たちは、取り揃えた剣林を振り回す前にズタズタの傷まみれになる。
「何!?」
亡霊、ないし幻影に近い男たちは悲鳴の一つも上げない。ただ、代わりとばかりに焦った声を上げたのは曹洪だ。
「てやぁあぁっ!」
曹洪の軍勢が足を止められているうちに愛は立ち上がり、バスタードソードを横薙ぎに奔らせた。もたつく男らにそれを防ぐ、ないし回避するなどという芸当ができるはずもない。呼吸一つか二つの間に、ことごとくが胴なり首なりを断ち斬られ、殲滅させられてしまう。
「――おのれ!」
曹洪が大刀を振りかぶり、愛を止めようとする――が、花弁の嵐の標的には曹洪も含まれている。愛をかばうように曹洪と愛との間に吹き込んで、ミキサーめいた旋風となって曹洪を襲う。
「ちっ――!」
曹洪は狙いを愛から旋風に変えざるを得なかった。大刀の刀身を団扇のように立てて振るい、猛烈な剣風を巻き起こす。
猛威と暴威が激突し、爆散した衝撃波の破片が曹洪の皮膚を縦横に斬り裂く。
歯がみする曹洪の視線が、【鈴蘭の嵐】を放った月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)に向く。
「人畜無害そうな顔をして、ずいぶんと過激な攻撃をなさいますねぇ……!」
おどろおどろしさのにじみ出る声色。
世界に敵対する超常存在ならではの、不可視ながら確かにある重圧に、常人ならば萎縮してしかるべきだろう。が、莉愛は揺るがずに睨み返した。
「私だって、猟兵です。戦う覚悟はできています。この世界を破壊しようとするあなたに、容赦なんてしません!」
「ふむ……気丈なことで」
曹洪が口の端を歪め、再び大刀を構え直す。
「しかし、私は私で矜持というものがあります。与えられた役目がある以上、それを遂行するのみ」
「……やらせません!
右手を掲げた莉愛が、再び曹洪目がけ鈴蘭の嵐を吹き付ける。さらに同時、愛が盾を構えて突撃する。
「く――!」
息の合った連係攻撃に、今度は曹洪は衝撃を殺せない。辛うじて横にした柄を盾に受け止めようとするものの叶わず、曹洪は大きく吹き飛ばされた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『🌗詩聖・曹植』
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POW : 白馬金羈を飾り連翩として西北に馳す
無敵の【白馬に乗った将軍】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : 我が思いは鬱として以て紆たり
質問と共に【すべてを縛る言葉の鎖】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ : 流転して恒の処無し、誰か吾が苦艱を知らんや!
対象への質問と共に、【自身の詩】から【自らの意思で転がる転蓬】を召喚する。満足な答えを得るまで、自らの意思で転がる転蓬は対象を【体当たり】で攻撃する。
👑11
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●才高八斗
「曹洪殿!」
猟兵たちと曹洪が火花を散らす戦場に、青年が駆けてくる。
悪趣味でない程度にきらきらしい装束。整った目鼻に白い肌。いかにも貴公子然としており、およそ戦場には似つかわしくない風に見える――外見だけは。
しかし、わかる者にはわかる。その身に纏う気配は、常人の枠を外れ、達人の枠も外れ、生き物という枠さえ外れて、理外の怪物へと至ってしまったそれのものであると。世界の破壊する存在たるオブリビオンのみが発し得るものであると。
激戦を経て傷まみれになった曹洪は、青年に目を向けつつ力のない微笑を浮かべた。
「やあ、若殿。これはどうも、お見苦しい姿をさらしてしまいまして」
「お気を病まれますな。相手が相手です」
青年は憂いを帯びた声色で言うや、曹洪に寄り添うようにしつつ猟兵らと向き合う。
「……猟兵よ。これよりは、この曹植も相手をしよう。命ある時分は武名を遺せなかったこの身だが、今は人ならざる
業を会得している。侮るなよ!」
コーデリア・リンネル(サポート)
アリス適合者の国民的スタア×アームドヒーローの女の子です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
内気な性格のため、三点リーダーや読点多めの口調になります。
ですが人と話すのが嫌いでは無いため、
様々な登場人物とのアドリブ会話も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
レスティ・ルーン(サポート)
僕はエルフのアーチャー
何か事情が無い限り『サポート専用』で活動して、冒険に基づいて技能が成長していく猟兵だよ
僕は色んな世界、色んな自然の営みに興味がある
人だってもちろん自然の営みの一部さ
だからどんな依頼でも、風が導けば僕は何処へでも行くんだ
所持品やUCは全て、出身であるアックス&ウィザーズのもの。それらの助けをどう生かして、色んな世界で何処まで行けるだろう。今から楽しみだ
・UCは自由に
・争いは避けるが必要なら積極的に行動
・PCやグリモア猟兵との連携◎
・牢屋や窮地から救出される役柄◎拷問描写×
・公序良俗に反する行動×
あとはおまかせだ。どうかよろしく
風となって、僕をあっと驚くような所に導いてほしい
●真実と呼べるような正答なぞ
「たとえば、父に、あるいは兄に――」
曹植が言葉を紡ぎ出すや、彼の手にある竹簡が金色の輝きを放ち出す。
「殺されそうになったとしましょう。我が身可愛さにそれらを弑逆したとして、それは間違っているでしょうか?」
途端、竹簡の上にあった文字が沸騰した油のように跳ね上がる。宙に浮いた墨色の文字は瞬時に互いにより合わさり、歪な鎖めいた細長い形状となってコーデリア・リンネル(月光の騎士・f22496)に伸びる。
「それは……そんなことは」
【姫君の覚醒(ヒメギミノカクセイ)】による輝くロッドを薙ぎ払い、コーデリアは墨色の鎖を破壊した。
「ない……と、思います」
「そうですか。では」
曹植は落ち着き払って、再び黒鎖を編み上げる。今度は五本。
「天に殺されそうになったとして、天を滅ぼそうとするのは悪でしょうか?」
「そっ……」
コーデリアは息を呑んだ。その一瞬の間に、黒鎖は五指を伸ばしてコーデリアを握り潰さんとする魔手がごとくに、彼女を包み込む。
刹那、レスティ・ルーン(エルフのアーチャー・f05798)のロングボウから放たれた鋭矢が飛び、黒鎖の一本を貫いた。
「っ!」
生まれた隙間を逃さず、コーデリアは黒鎖の包囲を抜け出した。
黒鎖は螺旋を描くように軌道を変えてなおもコーデリアを追いかけようとするものの、コーデリアが再び振るったロッドに打ち据えられ、あるいは間髪入れずに放たれたレスティの二の矢に射抜かれ、無力化する。
「ずいぶんと鬱屈しているしているみたいだね、君」
「……」
レスティの言葉に、曹植は眉間にかすかに険を刻む。
曹植は魏の君主である曹操の息子で、『詩聖』と謳われるほどの詩才で知られていた。
一方、当人としては文芸で名を成すよりも、武勲を上げたり政務に携わったりすることを希望していたといわれるが、生涯を通じてそれらに関する大きな権力は与えられなかった。
そういった方面の才能がまるでなかったから――と、いうわけでもない。
曹植はその才を曹操にも愛されていたため、何人かの重臣たちから後継者にと推された。兄がいるにも関わらずである。
結局は長幼の序を崩すことはなく、後継者は兄になったものの、彼にとって曹植は大きな脅威となった。曹植が人を惹きつける力を持つことが証明されたため、大権を与えれば政権を引っ繰り返されかねないと認識されたわけだ。
ゆえに、曹植は重用されなくなった。処断に至らなかっただけまだマシといえなくはないが、その生を終えるまで不遇は続いた。
いわば、なまじっかな力があったために、かえって力量に見合った人生を送れなかったということである。世界に憎悪を抱くには、まず充分な理由といえるだろう。
「でも、誰の人生だって、何もかもは思い通りに行かないものさ」
矢をつがえて曹植を狙いながら、レスティは言った。
「逆に聞きたいね。君が生きていたとき、もしも君の望みを邪魔する存在の全てをねじ伏せることができていたとしたなら、君は全く不満のない人生を送れていたかい?」
問いかけと同時、レスティの足元に落ちていた影がうねる。そして一指弾、漆黒のタコの足めいた触手と化した【賢者の影】が真っ直ぐに曹植に伸びる。
「――」
ひゅっ、と曹植が竹簡を一振りして影を叩く。軽い一撃に見えたが流石にボス級、触手は粉々に砕けた。
ただ、砕けた影の破片に紛れるように、触手と同時にレスティが放っていた矢が曹植の眼前に迫る。
「若殿!」
叫んだのは曹洪。金龍偃月刀の刀身を割り込ませ、矢を弾く。
「――っ!」
機を一にしてコーデリアも攻めかかる。雷光のごとき踏み込みからの、ロッドの正面打ち。
どごぉっ!
豪快な炸裂音が轟く――が、曹洪は長柄でロッドを受け止めている。通常のオブリビオンならガードごと圧殺してもおかしくない威力はあったはずなのだが、曹洪もまた並大抵ではない。
そして曹植は、そうなることがわかっていたとでも言うかのように慌ても騒ぎもせず、レスティを見据えたままであった。
「……それは、わかりませんね。事実として僕にそんな力はなかったし、僕の人生はそうではなかった。もしもの話など、無意味です」
それが、レスティの問いに対する曹植なりの答えということなのだろうが。
「タラレバに意味はないのは、その通りだろうね。そして誰であれ、完全な幸福を享受することはできない。世の中ってふざけてるな、と思うのは仕方ないけど」
再びレスティは矢を構える。
「だからって、世界を壊してやろうなんて考える奴に負けてやるわけにはいかないんだよ」
戦いはまだまだ続きそうであった。
成功
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鳴上・冬季
「なるほど、武には武を以てお相手しましょうか」
嗤う
通常の人間サイズにした黄巾力士に融合
金磚の敵を自動追尾する実体弾は火行(徹甲炸裂焼夷弾)のまま
飛行しながら曹洪と曹植に連射
当たった場所を引き裂いて貫通し燃焼させる
「韓信の配下が、まさか地を這う以外の攻撃を持たないとは思いませんでした。仙界を手に入れんと欲する者が、空も飛べないとは…侮られても仕方ないでしょう」
転蓬を燃やし尽くして嗤う
「最後くらいは貴方の武人らしいところを見せていただきましょうか」
曹植に接敵しガンフー
両手を揃えて金磚二丁と砲頭から零距離連射しながら身体を捻って攻撃を避けつつ下段蹴り
敵の体勢崩し半身で体捌きしつつ顎と胸に金磚当て連射
鳳凰院・ひりょ(サポート)
アドリブ・連携〇
同伴者がいる場合は同伴者を支援するよう行動
戦い方は遠近両用
接近戦→【破魔】を付与した破魔刀
遠距離→精霊の護符の【乱れ撃ち】
同伴者が苦手な方を受け持ちます
単独で戦う場合は相手の苦手とする方での戦い方を主軸に
護衛対象がいる場合は自分の身を挺して【かばう】
何より周りの誰かが傷付く事を嫌う為、仲間達に危害を加えるような行動はまず取らず
誰かを傷付けるくらいならば自分が傷付く方を選ぶ性格です
任務に関わる人達の笑顔を取り戻す為に全力を尽くします
敵の攻撃を掻い潜り護符を敵の周囲へ投擲、UCを発動させて一気に勝負に出ます
指定したUC以外で状況に合うものがあればそちらを使っていただいても構いません
●肉を切らせ骨も断たせて
「まさか、仙界を手に入れんと欲しておきながら地を這うしか能がないとは」
【合一・黄巾力士】によって鋼鉄の人型戦車と融合した鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、悠々と空を舞っていた。
「侮られて当然でしょう」
「――……」
地にある曹植に嘲笑を投げ付けながら、冬季は黄巾力士に備えられた大砲を向けた。
ぼぼっ!
と連続する発射音に従い、赤熱した砲弾の群れが影すら置き去りにする超速度で飛ぶ。
「若殿、私の後ろに!」
曹植の前に出た曹洪が、叫びつつ金龍偃月刀を振るう。神速の刃閃は砲弾の軌跡とかち合い、まばゆい火花を散らして弾いた。明後日の地面に落とされた砲弾はそこで炸裂し、炎をまき散らす。
放たれた砲弾は徹甲仕様。いくら曹洪の偃月刀が超常の強度を持つとはいえ、真っ向から受け止めれば砕かれかねない。
ゆえに、刃を合わせて弾道を逸らすというのが最適解になる。それでも逸らされた砲弾が曹洪、曹植の周囲を火の海に変えていくことまでは防ぎようがなく、このまま膠着が続けばいずれ両者が蒸し焼きになるのは間違いない。
「例えば――」
窮地としか思えない状況で、しかし、曹植の声色にも表情にも、焦燥の気配は微塵もない。
「雀は空を飛べる。しかし人間は空を飛べない。であれば、雀は人間より上等か?」
問いかけと同時、曹植の服の袖から、転蓬――風に手折られた枯れ草が寄り集まり、球を成したものがこぼれ落ちる。
「例えば、鮒は水中で息ができる。しかし人間はできない。であれば、鮒は人間より上等か?」
再び問えばまた新たな転蓬が生まれ、曹植の足元に転がる。
「例えば、鼠は巨木を削る歯を持つ。しかし人間にはない――」
「例えば、馬は――」
「例えば――」
なにがしかの術だろうか、曹植の詠唱が多重になる。それに従って転蓬も一気にいくつも生み出され、足元で収まらずにうずたかく積み上げられていく。
盛りに盛られた枯れ草は、やがてモミの巨木めいたシルエットを形成した。
「な、ん……?」
「さて」
曹植の意図が読めない冬季が戸惑う一方で、曹植は淡泊に言う。
「先ほど、地を這うしか、などと言っていましたか。理外の怪物が生み出したモノを常識の範囲で判断していませんか? 例えば『この草の塊は地を離れて天を転がることはあり得ない』などと――」
パチン、と曹植が指を鳴らす。
「甘いことを考えていませんか?」
途端、山積みの転蓬が一斉に飛んだ。風に吹かれてという様子ではなく、まさに自分の意思で天を転がるような、猛烈な勢いで回転しつつである。
見た目は柔弱な枯れ葉の塊に過ぎないが、曹植の呪力によって強化されたそれらは鋼鉄よりも硬く鋭いミキサーである。人体はいうに及ばず、堅牢を誇る黄巾力士といえど容易に削ってしまうだろう。
「まずい――! 呼びかけに応じよ疑似精霊、かの者に大いなる鉄槌を!」
怒鳴ったのは鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)だった。ばらまいた真紅の護符を輝かせ、天地を包む極大の火柱を生み出して転蓬の大群を包み込んだ。
超常の転蓬はなまじの炎では焦げ目さえつかぬだろうが、【疑似精霊・最大火力(エレメンタル・バースト)】もまた超常の炎。包まれた端から生木の割れるような音を立て、呼吸一つの間に炭と化す。
火柱は曹洪と曹植ももろともに呑み込み、それらを焼き尽くした――ように見えたが、しかしひりょは快哉を上げず、炎の周辺に鋭く視線を走らせた。手応えは、なかった。
果たして二人の姿は炎の範囲外にあった。いつの間にか、焼却を免れた転蓬の上に跳び乗っていたのである。
「な――」
殺戮ミキサーの上に乗っていながら平然としているのはどういう理屈かわからないが、とまれ両者の狙いはひとまず黄巾力士であるらしく、生き残りの転蓬を従えて突撃していく。
「くそ、やらせるか!」
ひりょは再び炎を放った。仕込み不充分ゆえに一発目より格段に細い、それでもレーザービームめいて鋭い火柱が奔る。
「む……」
「しつこい!」
宙で身を翻したのは曹洪。怒号と同時に振るわれた斬撃が火柱に炸裂し、薪のごとくにかち割って爆散せしめる。
その間に曹植は黄巾力士に肉迫する。
「――武を以てお相手しましょうか」
冬季は嗤った。カンフーの心得のある彼からすれば、武勇の人でもない曹植に近接されたところで、怯むものでもない。
転蓬に立つ曹植の足に、黄巾力士の鋼鉄の足が足払いを仕掛ける。よろめいた曹植に砲を押し当て、零距離射撃――と。
「侮るなと言ったはず」
冷たく響く声と同時、曹植は己に向けられた砲に、躊躇なく左腕を突っ込んだ。
「――!?」
刹那、砲身内で爆裂を起こした焼夷弾頭が猛熱と猛威をぶちまける。逆流した破壊力は黄巾力士、ひいてはそれと融合した冬季に甚大なダメージをもたらす――が、当然それを遙かに超えるものを曹植は被っている。左の肩から先は綺麗に吹っ飛び、胸部の大半もえぐり取られている。
もちろん、人であれば即死だろう。しかし、オブリビオン中でも特に強力な個体である曹植は、その様になってなお毅然としていた。
「……ここに至っては儀式はままならないかもしれないけれど」
炯々と両目を光らせつつ、曹植は告げてくる。
「せめて、一人でも多く道連れにしてくれよう」
成功
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皐・芽衣
WIZ
侮りなどせぬよ。曹洪には伝えたがの、
わしが、ここでお主達の武を認めよう。
さぁ、見せてもらおうか!
極力、偃月刀を間合いを保って立ち回ろうかの。
【ぶん回し】【なぎ払い】【串刺し】で攻め、
相手の攻撃は【見切り】、【武器受け】。
もし偃月刀の間合いより内に入ってくるなら
【功夫】での攻防に切り替える。
転蓬を呼び出す業は、宝貝「雷公羊毛」の雷撃で
纏めて焼くことで対応じゃ。
人ならざる業は、こちらも持っとるんじゃよ。
そちらも使うんじゃ、不公平ではあるまい?
感電させたら纏めて討ち取る好機。
偃月刀で追撃じゃ。
その詩も、二人の武芸も名も
わしが覚えておこう。
オブリビオンとは相容れぬ、それだけじゃ。
●業
連戦を経て、豪奢であったはずの曹洪と曹植の出で立ちは、もはや見る影もないほどに汚れ、ボロボロになっている。
そしてそれ目以上に、肉体の方の負っている痛手はひどい。有り体にいえば両者とも瀕死であり、あとは軽く撫でられただけでも決着が付いてしまいそうだった。
だが皐・芽衣(金色一角のメイメイ・f35724)は油断しなかった。手負いの獣の怖さが云々というのは抜きにしても、侮っていい相手でないのは理解していた。
「理外の化物となった者は死なねばならぬ、と天が定めたのだとしたら」
血染めとなった竹簡をだらりと掲げながら、曹植は芽衣に問いかけた。
「そもそも、どうして僕のような存在が形を成すことがある?」
と、竹簡に記された文字が寄り集まるようにして、一際大きな転蓬が生み出された。己の運命を呪う力、世界への失望と哀しみの深さが反映されたような、極めて禍々しいオーラを纏っている。
命をすり潰そうと猛回転するそれが、赤土を蹴立てて芽衣に迫ってくる。
それを正面から見据えつつ、芽衣は愛用の青龍偃月刀を中段に構えた。
「知らぬ。知らぬが、オブリビオンとは相容れぬ。それだけじゃ!」
芽衣が大喝するや、刀身の直下にある羊毛の飾りから幾重ものガラス板が割れるような音が響く。
同時、【宝貝「雷公羊毛」(パオペエ・ライコウール)】が百条、千条の白雷をほとばしらせる。
瞬きの間さえ与えず一帯を覆った雷の網は、凶猛なる転蓬を絡め取り、砕き、灼く。それでも、転蓬は炭化してなお芽衣を削り喰らわんと殺意の残り香めいた何か吹き付けてきたものの、芽衣に傷を付けるには至らない。
また、雷が捉えたのは転蓬だけではなく、曹洪と曹植の二人ともである。
「が、はっ……!」
「人ならざる業は、こちらも持っとるんじゃよ」
感電して動きの鈍った二人に、鉅角を振り上げた芽衣が駆ける。
「わ、かっ――させん!」
振り絞るように叫び、曹洪が偃月刀で刺突を放つ。鈍った体とは思えない速度だが、彼本来のそれからは程遠い遅さである。
芽衣は足を緩めることなく鉅角を旋回させて刺突を受け流し、刹那の切り返しで曹洪の胴を両断した。
それを目の当たりにした曹植は、微動だにしない――否、できない。
「……ようやく得られた戦場で、この様とは」
「いや、お主の武は認めよう」
告げると同時に振るった芽衣の全力の一閃が、曹植の首を落とす。
「お主ら二人の強さと名、わしは覚えておく」
かくして、二人の曹氏による九竜神火罩復活の危機は、世に傷を刻むより前に阻止されたのだった。
大成功
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