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<千鵠百貨店>さまよえる動線

#シルバーレイン #ゴーストタウン #千鵠百貨店


●人の流れ、時の流れ
「うーん、やっぱりこの配置は問題ッス。一階くらいならともかく全部の階でこんな移動させられたらお客さん怒って帰っちゃうッス」
 元は高級デパートと思しき廃墟の、今は動かなくなったエスカレーターを階段のように上りながらつぶやく女性。
 幼げな顔立ちに150センチ強の身長からして、近所の学生が肝試しにでも忍び込んだのだろうか。だがその肩に担いだ彼女の半身ほどもある巨大なハンマーは、子供が遊びで振りまわせるような代物では到底ない。
「大工事になるけど、やっぱ一度全部ぶち抜いてちゃんと通すしかないッスね。予算は偉い人に任せるッス。自分一万円以上のお金は分かんないッス」
 エスカレーターを上り切り、来た道を確認するように振り返る彼女。するとどうしたことだろう。たった今自分が通り過ぎたはずのその場所が、天井まで積み上がった荷箱やショーケースで塞がれていたのだ。
 その光景に、だが彼女は驚かない。その代わり、面倒くさそうに一度軽く溜息をついた。
「あー……この下6階ッスか。ここ塞いでるってことは多分あいつッスね。この前みたいな新しい奴なら同じことはしないッス。工事の邪魔になるし、さっさとぶっ飛ばして道開けて帰るッス」
 女性はまるですべてが分かっているかのように、ハンマーを握り直して『R』と書かれた札の下にある扉を開けた。

●流れるべきものは滞りなく
「皆様方、まずはアルカディア争奪戦お疲れ様でござる。この度は力になれず申し訳なく」
 シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)が集まった猟兵たちに深く頭を下げた。
「そのような身でお願いするのも心苦しくありますが、此度シルバーレインにてオブリビオン化したゴーストの事件が発生いたします。皆様にはその対処に向かっていただきたく」
 一つの世界で何が起ころうと、それで他の世界が気を回してくれるなどということはない。オブリビオンある限り、どの世界でも事件は常に起こり続けるのだ。
「向かう先は静岡県西部、『千鵠百貨店』というデパートの廃墟……ゴーストタウンにござる」
 ゴーストタウン、それはかつて銀誓館学園が幾度となく探索していた、『常識』の失われたゴーストの巣窟。それらはかつて一度鎮静化されたが、オブリビオン出現の影響かかつて銀誓館が把握していなかったものまで含めて再活性化しはじめたという。
「そこを人の手に取り戻すべく調査を続けている能力者がいるのですが、彼女がここを探索中に『ゴーストタウン現象』にまきこまれてしまいます」
 それは地縛霊化オブリビオンが起こす時空のゆがみや迷宮化のこと。ややこしい話だが、『ゴーストタウンでゴーストタウン現象が起きた』状態となってしまっているという。
「まずここに乗り込みますと『ゾンビホステス』というオブリビオンの集団がたむろしています。こ奴らを蹴散らしてまずは5階へ向かっていただきたい。敵は毒入りの爪で引っかいてくる他、化粧でのパワーアップや香水を武器にしてきます。生前はこのデパートの客だったのかもしれませぬな」
 『女の武器』を文字通りの武器にしてくるのは、これまた文字通りに『腐っても』ホステスということか。
「そうして5階に入ればゴーストタウン現象に突入でござる。このゴーストタウン現象は、『物凄く長い停止したエスカレーター』というものでござる。元々このデパートは階段がなく、エレベーターを使うか一階ごとに離れてついているエスカレーターを上るしかないという不自然な構造をしておりまして。それが引き伸ばされている形でござるな。皆様にはここを上り切り屋上へ向かっていただきたく存じます。ただ、途中にはかつてのゴーストのなれの果て……残留思念とも呼ぶべき動くマネキンや乗り物パンダなどが襲ってきます。こ奴らはゾンビホステスよりも弱いですが、とかく際限なく襲ってきますのでうまいことあしらって先を目指してください」
 当然電気など来ておらず、エスカレーターもただの階段でしかない。歩いて上ることはもちろん可能だが当然とんでもなく疲れるし、さらに元がゴーストタウンだからか余計な妨害もあるという。ここを力尽くで体力を振り絞り、あるいはどうにか頭をひねって楽をして上り切って突破して欲しいとのことだ。
「そうして階段を抜ければ屋上へ着きます。そこではゴーストタウン現象で退路を断たれていた能力者がボスと戦おうとしている所なのですが……ここのボスはやはりかつてここにいなかったゴースト『水を司る者『オフェリア』』という者でござる。どうやらこの者はかつてここにいたゴーストと同じ形で退路を封鎖できるらしく、それによって能力者は以前と同じゴーストがボスにいると思い込んで屋上へ乗り込んでしまったようですな。無論勝算あっての事なのですが、残念ながらこのオフェリアはかつてここにいたボスよりはるかに強くなっています」
 オブリビオン化したゴーストはかつてのそれより強力な者も多い。例え10年前一線級の戦士であったとしても、あるいはだからこそそれ故の余計な知識が邪魔をして、不覚を取ってしまうこともあり得るだろう。
「一方『地縛霊』と言う以上彼女はこの場を支配している理由があり、そこが彼女の行動を乱す弱点になるかもしれませぬ。差し当たって予知に見えた段階では彼女は『殺すことを究極の愛と信じる博愛主義者』なようです」
 あるいは道中でも何かヒントのようなものがあるかもしれないし、無事合流出来たら能力者にこの場所の過去について聞いてみるのもいい。敵の行動理由がより深くわかれば、共感や説得をして手を鈍らせる、逆に否定して激昂させるなどの使い道もあるだろう。
「過去で時間を止められてしまったこの百貨店に再び時を流すのに、無意味な躓きは無用にござる。どうか皆様、ここに全てが円滑に流れられるようお力添えを」
 そう言ってシャイニーはもう一度深く一礼し、猟兵をシルバーレインへと送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。今回はゴーストタウン現象が起きたゴーストタウンでの冒険です。

 第一章は『ゾンビホステス』との集団戦。朽ち行く体を化粧と香水で誤魔化しつつ、鋭い毒入りネイルで引っかいてきます。彼女たちは1階から4階の、ゴーストタウン現象が発生していないフロアにたむろしています。

 第二章は延々と続く止まったエスカレーターを上り切っていただきます。基本的にはただひたすら上るだけですが、途中でマネキンや乗り物のパンダさんなどが襲って妨害してきます。彼らはこの空間が消えれば一緒に消えるので、無理に殲滅する必要はありません。いつかは果てがあるのでペースを作ったり体力にあかせて上り続ける他、ここがあくまで『デパートの内部ではある』ことを利用し何か抜け道を探すのもありです。あるいはこの『物凄く面倒だけど出口はある』という矛盾した構造そのものにも次章含めたヒントがあるかもしれません。

 第三章では第3章『水を司る者『オフェリア』』とのボス戦。彼女はかなり強く、氷の魔術とナイフによる戦闘術を使用するほかある無法者の霊を一体従えています。彼女はとても優しい性格ですが、その優しさは相手を殺すという形で発現するサイコパスです。どうやら何かしらこの千鵠百貨店に居つく理由があるようなので、それを揺さぶりに使うことで手を鈍らせることができるかもしれません。また、この章でのみ先行していた能力者が協力してくれます。

 拙作『千鵠百貨店、新装開店準備中!?』のサブシナリオ第一弾もとい浄化計画二回目ですが、実際のサブシナリオ(http://t-walker.jp/sr/gate/top.cgi?did=d13_01)のように前作の参加が必要ということは全然ありませんので初見の方もお気軽に。もちろん知っている方はその知識を使ってもOKです。

 三章で共闘する能力者詳細。
 宮古島・うるみ(27、女)従属種ヴァンパイアのゾンビハンター×ゴーストチェイサー。
 銀誓館学園卒で、現在は鎌倉で百貨店勤務。外見はせいぜい高校生くらいの童顔低身長だが既婚者。以前(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=40691 読む必要はなし)から千鵠百貨店の跡地買取を目指し浄化活動に励んでいる。脳筋一点突破の撲殺主義者、かつ超のつく貧乏性。

 それでは、プレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『ゾンビホステス』

POW   :    化粧は女の武器
予め【化粧をしておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    マニキュアクロー
【毒マニキュアを塗った爪】による素早い一撃を放つ。また、【動くことで肉が落ちて醜い姿になる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    ゾンビパフューム
【香水の芳香】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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 静岡県西部、駅前一等地に不自然に放置されている巨大な廃墟。ゴーストタウン『千鵠百貨店』に猟兵が踏み込むと、そこには強烈なにおいが充満していた。
 強すぎるくらいの香水と化粧品、そしてそれを持ってなお隠しきれない腐臭。その発生源は、内部にひしめく派手な衣装の女たちからであった。
 豊かに盛り上げた髪に胸元を大きく開けた扇情的な服装、首に何重にも着けたネックレスはまさに夜の女、ホステスそのものといった格好。だがその肌は白を超えて青く濁り、長く伸ばした爪は無残にひび割れ、その豊かな肉付きは所々が腐り顔も半分は崩れ落ちている。
 彼女たちは『ゾンビホステス』。かつては夜の蝶として煌びやかなナイトシティを飛び回っていたが、今はその腐った体を崩れさせながら動かすだけの生きる屍だ。
 彼女たちがここに集まっているのは嘗て人に溢れていたこの場所に餌を探しに来たのか、あるいは腐り果てた体を隠せるものがここにあるという僅かな記憶に縋って来たのか。
 その濁った眼が侵入者を捕らえると、彼女たちは一斉に手を伸ばしてそちらへ殺到する。そこに込められた意思は『食わせろ』か『見るな』か。
 だが、どちらであれ彼女たちの望みをかなえてやることは出来ない。今の彼女たちは命の流れから外れたゴーストでありオブリビオン、そしてこの先に広がる『ゴーストタウン現象』へ向かうのを邪魔する障害物でしかないのだ。
 さあ猟兵よ、止まった時の中無為にもがき続ける腐った華を土に返し踏み越えよ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
おや、此方の建物ですかぁ。
また大変なことになっておりますねぇ。

『FAS』を使用し飛行、『FMS』のバリアと『FES』の『風結界』を展開しましょう。
時間的に『化粧での強化』は済んでいても、『攻撃方法』は変化が無く見切り易い以上、飛行による位置関係とバリア&結界の二重防御、更に『FGS』の重力波を重ね接近を封じれば、攻め手は封じられますぅ。
ゾンビ特有の臭いは『風結界』で。
そして【乳焔海】を発動、広域へ『乳白色の波動』を放ち炎による[範囲攻撃]、『FRS』『FSS』の[砲撃]も併せて焼き払いますねぇ。

戦闘後、新兵装『FPS』の『情報概念化複製』と探知で、現状を調べたいですが。



 千鵠百貨店。そこに訪れた者は多種にわたる。かつて生ある場所であった時には多くの人間が。その命が食い尽くされた後はゴーストが。そして蔓延ったそれらをを駆逐するために能力者が。
 主と呼べるものが何度となく入れ替わって来たこの場所は、大いなる戦いを経てやがて誰も顧みぬ本当の廃墟へと成り果てたはずであった。
 だが、10年の時は懐かしき、そして新しき主としてオブリビオン化したゴーストをこの場所へと呼び戻した。そして、それを狩るものもまた。
「おや、此方の建物ですかぁ。また大変なことになっておりますねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はゴースト住まう地となった千鵠百貨店を見上げ、そう呟いた。また、という言葉通り彼女は以前ここに来た経験がある。だが彼女は能力者ではない。かつてゴーストと戦い世界を守っていた彼らと同じように、オブリビオンを討ちあらゆる世界を守る者。新たなる時代の異能者であり千鵠百貨店の新たなる来訪者、猟兵であった。
 るこるが千鵠百貨店へと踏み入ると、強烈な匂いが彼女を出迎えた。
 化粧品と香水、そして腐臭。その発生源は、フロアを埋め尽くすように犇めいていた動く死体からであった。
「うあ、あ、あ……」
 潰れたような声を上げ、濁った眼を侵入者に向ける派手な格好の女たち。その顔は腐敗し鬱血した青肌の上に化粧品を塗りたくった異形の女たち。『ゾンビホステス』の群れを前に、るこるは何も動じることなく『FAS』を用い浮き上がった。
 それに向かい、一斉に手を伸ばし掴みかかろうとするゾンビホステスたち。だが元々高級デパートということもあり、室内であっても天井は高くその手が届くことはない。
 それであっても、ゾンビホステスたちは掴みかかるのをやめようとはしなかった。ほとんど知能と呼べるものも残っていない故、ただ目の前の獲物に真っすぐ向かって行くしかできないからだ。さらに腐敗している上に死んだことでリミッターの外れた体を全力で振りまわしていることもあり、自分自身の力に耐えられず腐った肉がボロボロと崩れ落ちていく。
 床に飛び散り、そこからさらに汚汁と腐臭を撒き散らすその肉。それはゾンビホステス自身にとってはただ自壊しているだけだが、そこから立ち上がる強すぎる腐臭は最早それだけで相手の意識を乱す攻撃とも言えるレベルのものだ。だがそれに対しても、るこるは『FES』で風の結界を張り臭いを押し返すことで自分には届かせない。
 さらにその前に『FMS』を置いてバリアを張れば、もうゾンビホステスでは突破できない完全防御の形の完成だ。だが、それでも構わずゾンビホステスたちは腕を振り回し全身を続けていた。
 自分と相手の状況も理解できず、打開策を考えることもできない腐った頭。だが、それでも彼女たちが覚えていることは一つだけあった。
 青い肌に塗りたくられた肌色のファンデーションと赤い口紅。暗い色の上に無理矢理つけられたそれは地肌の悲惨さをより際立たせるものにしかなっていなかったが、それでもそれによって生前の自分に少しでも戻れる……あるいは醜い今の自分を隠せると思い込んでいる故か、それに縋って振るわれる腕はバリアを多少なりとも揺らす程度には強化されていた。
 もちろん腐った腕を全力で叩きつけているのだから皮膚は裂け、骨は折れていずれは腕自体が千切れ飛ぼう。その壊れゆく体を、るこるは『FGS』で重力を起こして動かぬように抑えつける。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その裁きの理をここに」
 そしてそこに放たれる【豊乳女神の加護・乳焔海】の白き波動からの炎と、『FRS』『FSS』からの砲撃。それらは動けぬゾンビホステスたちを飲み込み、その腐った体を欠片も残さぬよう焼却していった。
 それは相手を拘束してからの殲滅というるこる得意の戦法という、ただそれだけのこと。だがそれはまるで自壊を防ぎ、その身を火葬するという相手へのせめてもの葬送のようにも見えるのは偶然だろうか。
 それに何かの意を示すことなく、るこるは新たな兵装である涙滴型の水晶『FPS』を用いて周囲の情報を探り出す。そこから見えてくるのは巨大なバイキング船とそこに乗る海賊の男。そしてその男に微笑みかける青い瞳の女は、準備段階で聞いていたオフェリアの容姿によく似ている。そして二人の乗る船は、海ではなく空をかけこの千鵠百貨店の屋上へ降りてくる。
 今見えたのはオフェリアがここのボスに収まるに至った直近の光景だろうか。さらに深い情報を探りつつ、るこるはさらに上の階へと移動するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
ゾンビになっちまって
更にオブリビオンとして
また蘇っちまうとは
踏んだり蹴ったりだ
可哀想に

海へ還してやろうぜ

戦闘
ギターを弾きながら進む
ホステス達への鎮魂曲だ

ソンビたちの動きに合わせるように
即興で旋律を生み出していく

弦が唸れば音の波紋が広がる
音の波は炎を孕む
だからその旋律が響き渡れば
ゾンビたちだけが紅蓮に包まれ
海へと還っていく

因みに毒や香りも同じく焼却浄化

もし近接の間合に入られても
ギターで殴りつけたり防御しながら弾いて
燃え上がらせて灰に帰す

こんな感じで
周囲や進行方向のゾンビたちを
海へ還しながら一階から四階まで進む

ゾンビ達がいなくなっても4階までは
演奏を続ける
鎮魂だからな
安らかに



 千鵠百貨店は6階建ての建物である。グリモア猟兵によればボスがいるのはその屋上で、その前にある5階と6階が特殊空間になっているという話であった。
 そしてその下にある階には全てオブリビオン化したゴーストが集まっているという。現に1階にいた者たちこそ最初に来た猟兵によって殲滅されたが、階段代わりのエスカレーターを一度上がればまた様々なものが混ざった強烈な匂いが来訪者を出迎えた。
「ゾンビになっちまって更にオブリビオンとしてまた蘇っちまうとは踏んだり蹴ったりだ、可哀想に。海へ還してやろうぜ」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)はその臭いの元であるゾンビホステスたちを、顔を逸らすことなく真っすぐ見据えてそう言った。
 ゴーストもオブリビオンも、死した者が迷い出たという点では同じ存在である。銀の雨の影響でゴーストとして彷徨うこととなり、さらにそこからオブリビオンとなって骸の海と現世を往復する存在となってしまった彼女たち。その前で、ウタはギターを構えて相手と向かい合う。
 それは奇しくも10年前、フリッカーの力を持つ能力者たちがここで取ったのと同じ構えだ。だがたとえその時から彷徨っていようと、腐り果てた脳がそれを覚えているはずもない。ゾンビホステスたちは体が崩れるのも構わずに、ただ目の前の相手へと腕を振り回し掴みかかった。
 ウタはそれを躱しながら、ギターをかき鳴らす。その音はゾンビホステスの動きに合わせるように強弱が付けられつつ、即興の旋律を紡ぎ出していく。
「纏めて還してやる。紅蓮に抱かれて眠れ」
 その音は【ブレイズブラスト】の炎となって、ゾンビホステスたちを包み込んだ。
「ああ、あああ……」
 腐った体を燃え上がらせ倒れていくゾンビホステスたち。これもまた10年前、幾度となくこの場所で繰り返された光景。
 だが、ウタはフリッカーやファイアフォックスではなく、サウンドソルジャーのブレイズキャリバー。そして音と炎が別個の力であったその時と違い、彼の歌うは希望の獄炎。
 弦が唸れば音の波紋が広がり、音の波は炎を孕む。一つの力として放たれた音と炎がゾンビホステスたちを飲み込んでは灰に返していく。
 それでも、一部のゾンビホステスは体を燃え上がらせたままウタに掴みかかった。ぼろぼろと焼け焦げた肌が崩れ落ちているが、あるいはそこに塗りたくられた化粧品が防具のようになって、彼女への致命傷を防いでいたのかもしれない。
 そのゾンビを、ウタはギターを振り回し殴りつけて体を破壊した。化粧の守りもなくしたその体は今度こそ砕け散り、灰になって炎の中に消える。
 ゾンビホステスが倒れて道が開けば、ウタはそこをエスカレーターへ向かい真っ直ぐ進んでいく。その間も演奏はやめない故に聞きつけた別のゾンビホステスがまた群がってくるが、ウタはそれでよかった。
「鎮魂だからな」
 彼女たちを安らがせるには戦って倒す他ない。あるいは滅すればそこで終わりだったゴーストと違い、オブリビオンとなってしまった今は例え倒してもまた骸の海から這い出てきてしまう可能性すらある。だが、それでもここで望まぬ体で彷徨い続けるよりはずっといいはずだから。
 周囲や進行方向のゾンビたちを海へ還しながら、一階から四階まで止まらず進む鎮魂の行進。
 そのさらに上にいるだろう女にとっては、彼女たちのこの姿さえ『愛』ゆえなのだろうか。その答えを知る者の元へ向かうべく、炎は下から上へと上りゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳥羽・白夜
懐かし…何回か探索したっけな。まー昔のことだし、割と最近まで戦いのこと忘れてたから内部の構造とかはうろ覚えだけど。

起 動!イグニッション で当時から使っている大鎌を装備し久しぶりの探索。エレベーターで一気に…は無理か、まずこいつらなんとかしねーと。
うっ… 俺化粧品とか香水の匂い苦手なんだよ…それに腐臭まで混じって気持ち悪っ!そりゃ昔からこの手の敵とは戦ってきたけどさ…
指定UC発動、【範囲攻撃】しつつ吸血で【生命力吸収】。
毒マニキュアは【毒耐性】で耐え、これまでの【戦闘知識】で動きを【見切り】回避。

うろ覚えの記憶を確かなものにするためにもなるべく各フロアを見回り確実に殲滅を目指す。



 千鵠百貨店は過去何人もの能力者が探検した場所である。そしてその中にはその後戦いから退いた者や、今猟兵である者も相当数いた。
「懐かし……何回か探索したっけな。まー昔のことだし、割と最近まで戦いのこと忘れてたから内部の構造とかはうろ覚えだけど」
 鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)もその一人である。彼は銀誓館卒業後能力を捨て一般人となり、それと同時に戦いの記憶さえ失っていた。だが、この世界に猟兵が現れゴーストがオブリビオン化すると同時にその記憶、そして力を取り戻し、戦いの名中生きることを余儀なくされたのであった。
 その記憶に従い、白夜はかつて何度となく口にした『あの言葉』を唱える。
起 動!イグニッション
 日常の仮面を取り払うその言葉と共に、当時から使っていた赤い大鎌が現れ白夜の手に収まった。その長年の相棒を手に、白夜は久しぶりの探索へと足を進めた。
 一階、二階とエスカレーター代わりの階段を上り、かつての朧げな記憶を補強していく。予知の中で先行者もそれらしきことをぼやいていたが、エスカレーターの一つ一つが離れていてやたらと動線が悪い。
「エレベーターで一気に……は無理か、まずこいつらなんとかしねーと」
 最終目的地は屋上だという話だから一気にそこまで行ってしまいたい所だが、ここのエレベーターは動力や故障がどうこうではなく動いたり動かなかったりが常に変わる。そして、歩いて上るにせよ結局は妨害が入るのがゴーストタウンの常だ。
「あああああ……」
 三階に上がった所で白夜を出迎えるのは、掠れた声と強烈な臭い。
「うっ… …俺化粧品とか香水の匂い苦手なんだよ……それに腐臭まで混じって気持ち悪っ! そりゃ昔からこの手の敵とは戦ってきたけどさ……」
 ゾンビホステスの群れが放つ強烈な化粧品と香水の匂い。基本的には芳香に類されるものであるそれだが、特に化粧に縁のない男性にはそれを苦手とする者も多い。そこに明確な悪臭である腐臭が混じれば互いの相乗効果で気分を悪くするのも仕方のない所だ。
 だがこれも自分で言う通り、動く腐乱死体はゾンビ系ゴースト……リビングデッドとしてはテンプレートとも言えるほどにありふれた存在。初めて発見されたゴーストタウンで、一番最初に出現したゴーストの一体がゾンビだったと言えばそれがどれほど馴染み深いものか分かるだろうか。
 だから、白夜に怖じる要素など何一つない。かつて幾度となくそうしたように、ゾンビホステスの群れに向けて吸血コウモリの群れを放った。
 コウモリの群れを差し向け一定範囲の敵から生命力を吸収する技、【ヴァンパイアストーム】。貴種ヴァンパイアの基本であり象徴とも言える力二つが合わさりユーベルコードとなった新たなる力だ。かつてのものを遥かに凌駕する威力と範囲を備えたその力は、また新たなる脅威として新生したゾンビホステスたちを飲み込みその生命力を吸い上げていく。
「ぐああ、ああああ……!!」
 心臓は止まり血の巡らぬ体であっても、動くための原動力になる力そのものさえ吸い上げられれば動きは止まり体は崩れていく。一方で痛みも感じない体を持って、崩れるのも構わずコウモリの群れを突っ切り白夜に襲い掛かるものも一定数いた。
 かつては磨かれていただろう長い爪が振るわれ、白夜の肌を掠めそこに傷をつけた。ぎざぎざにひび割れたその爪は細かな鋸刃のように肌を痛々しく裂くには有用になり、そこから滴る毒と化したマニキュアの成分が白夜の体を侵していく。
「こっちは我慢強くなってるけど、向こうは力が弱いのは変わらない、か……」
 体を蝕むその毒を、しかし白夜は冷静に観察し耐え切れぬものではないと判断した。毒素に対しての抵抗力をピンポイントに高めるのもかつては出来なかったこと。しかし今は猟兵の力でそれが能い、そして相手も新たな力はあれど本質は変わっていない。
 生前から決して頑健な体ではなかったであろう彼女たちの得意技は神秘の力。本来爪の速度や威力はそこまでではなく、肉を削いで速さを得ようとも見切り能わぬものではない。
 かつてのゾンビホステスとの戦闘を思い出しつつ、その記憶を持って動けば遮二無二掴みかかる敵を躱すなど造作もない事であった。
 そして再び放たれたコウモリが、残るゾンビホステスたちの生命をも吸い尽くす。そしてコウモリの群れが去った時、そこには腐肉の一片さえ残されてはいなかった。
「うろ覚えのままじゃまずいしな。少しゆっくり行こう」
 過去の記憶と経験、それは確かに力になるのは確かな事。かつてここに来た記憶を補完するように、白夜は各フロアを見回りながら進んでいく。行く必要のない部屋にも入り置かれているものを丹念に調べ、時にわざと大きな音も立てる。そうすることで敵は釣りだされ、確実な殲滅が出来ることもまたかつての記憶にあること。
 そうして過去の記憶をよみがえらせながら、白夜は上へと進んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

崎濱・悠里
アドリブと共闘歓迎です

ふむふむ、つまり大先輩の危機というところかな?
誰かが傷つけば愛しいリリィが悲しむ。張り切っていかないとね。

まずはゾンビが相手だね。腐りきり毒を宿した体。良いじゃないか。そういう分かり易いのはきらいじゃないよ。

では、毒には毒で対抗だね。こちらを攻撃しようと迫ってくる敵をアクロバットな軽業を使って回避しつつ距離を離してからダークハンドを発動し敵を切り裂きながら毒の状態異常を与えていくとしよう。

ダークハンドを乗り越えてきた敵には長剣による切断攻撃で対処するよ。

リリィには詠唱拳銃を使った援護射撃をしていてもらおう。
毒を受けてしまっては一大事だからね。悲しいけど少し離れていておくれ


鈴乃宮・影華
※アドリブ、連携OK
※E.N.M.Aの今日のボディは頭の上に乗せた『サルウェ』

E『ははー、こんな好立地が潰れるものなのねぇ……』

そういう時代だったんでしょうね、よくわかりませんが
まぁ、また後輩として先輩にご助力しに行きましょう

今回は5階が本番とわかってるので探索は省略、1階から4階までまっすぐゴーゴー
で、今回のお出迎えは――あぁ貴女達、かつても此処に出現しましたっけね
『大蘭華』から牽制がてらの弾幕張りつつ
背中に背負った『轟蘭華』に搭載した『ラドン』から指定UC起動
「昔は貴女達の手が届く所まで接近しないといけませんでしたが、今は違うんですよ」
いい時代になったものだ……!



 千鵠百貨店は遥か過去から能力者が探索していた場所である。だが、能力者なら誰もがここを知っているというわけではない。ゴーストタウンはここ以外にも多数あったし、修行の場自体がゴーストタウンだけということももちろんないからだ。
『ははー、こんな好立地が潰れるものなのねぇ……』
 そう声を上げるのはやはり銀誓館卒業生である鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)……ではなく、その頭の上に乗る8足の蜘蛛の如き小さな機械。
「そういう時代だったんでしょうね、よくわかりませんが」
 その機械、EP全環境対応型戦闘支援疑似人格『E.N.M.A』にそう答える影華自身はこの千鵠百貨店への来訪経験があった。それも10年前でなく、オブリビオンの跳梁が始まったごく最近の話だ。
「まぁ、また後輩として先輩にご助力しに行きましょう」
 その時に案内を務めた学園の上級生である能力者。彼女がこの屋上で危機に陥ることになるという話を聞き、影華は再びこの千鵠百貨店を訪れていたのだ。
「ふむふむ、つまり大先輩の危機というところかな?」
 その影華の言葉と予知で聞いた事前情報に、崎濱・悠里(愛に生きる剣士・f36241)は今回の目的を簡潔かつ的確に理解した。先輩、という言葉通り彼女もまた銀誓館の関係者だ。
 だが、彼女はこの千鵠百貨店への来訪経験はない。当然である。何しろ彼女は現在進行形で在学中の、まさに今の世代の能力者であり猟兵なのだ。
「誰かが傷つけば愛しいリリィが悲しむ。張り切っていかないとね」
 悠里はそう言って傍らに立つ目隠しした女性……使役ゴーストサキュバスであるリリィを撫でた。己の使役ゴーストを特別な存在とする者は往時からいたが、今はその時に合った様々な軛も解かれている。建前の正義感や義務感ではなく、愛する者の意に添うようにという心のままに戦いに臨めるのは新たな世代故の自由さか。
 新たなる力を得たかつてを知る者と、彼の時よりある力を持つ新しき時代の者、二人の能力者はエスカレーターを上りどんどん先へと進んでいく。
「今回は5階が本番とわかってるので探索は省略、1階から4階までまっすぐゴーゴー。で、今回のお出迎えは――あぁ貴女達、かつても此処に出現しましたっけね」
 四階に足を踏み入れた時に彼女らを出迎えた臭いとうめき声に、影華はかつての記憶を思い出しながらその発生源を見た。
「まずはゾンビが相手だね。腐りきり毒を宿した体。良いじゃないか。そういう分かり易いのはきらいじゃないよ」
 ゾンビホステスの群れ。能力者たちがここを探索していた時にも、障害の一つとして現れたリビングデッド。そのいかにもアンデッド然とした見た目と能力は、相手が如何なる者かを悠里にも容易に判別させた。
 その判断に従い、悠里はまずリリィに声をかける。
「毒を受けてしまっては一大事だからね。悲しいけど少し離れていておくれ」
 その言葉に従い、リリィは悠里から離れ二人、そして敵から距離を取った。まるでそれを逃がさないとでもいうかのように、ゾンビホステスたちは一斉に手を伸ばし足を進め始める。
 それを押し返すかの如く、影華は楽器ケースからライフル『大蘭華』を取り出し、それによる弾幕を張ってゾンビホステスを迎え撃った。前方から放たれる弾丸の嵐に、ゾンビホステスたちは考えなく真正面から突っ込んでいきその脆い肉を砕け散らせ倒れていく。
 だがその後ろから、仲間を盾に第一射を乗り切った者たちが爪を振るい襲い掛かって来た。恐怖とも無縁なその意識から放たれる鋭い爪の一撃が、悠里の肌を切り裂かんと迫る。
「おっと」
 その一撃を、軽く跳躍し躱す悠里。そのまま振り切った爪は直前まで悠里がいた場所を切り裂くが、その場の床が一部腐食したようになっているあたりそれなりに強い毒がそこに込められているようだ。
 床に叩きつけた勢いで片腕が千切れ飛んだが、それにより体重が軽くなった故かさらに早い動きでもう片方の腕の爪を振るうゾンビホステス。
「では、毒には毒で対抗だね」
 その爪が届く前に、真っ黒な腕が逆にゾンビホステスを引き裂いた。
「たかが影、と侮ってはいけないよ? 君を倒すには十分さ」
 次々と現れる黒き影の腕。かつては敵一体を切り裂く技だった【ダークハンド】も、新しき時代の能力者が振るえば戦場の敵全てを切り裂く猛毒の爪となる。そしてそれさえも乗り越えた幸運な個体さえ、魔剣士の一刀のもとに切り伏せられた。
「彼の力を以て世界に奏上する――あれは、此世に不要也」
 そして、新たなる力を使うのは新世代の特権だけではない。歴戦の能力者であった影華もまた、背に負った黒燐大具足『轟蘭華』からミサイルランチャー『ラドン』を伸ばし、そこから【黒燐弾・夕立】を放つ。そこから放たれるのはミサイルではない。近代兵器と見紛うほどに強力となり密集した、黒燐蟲の雨。
 爆発範囲などという生易しいものではない。こちらもまた、戦場の全てを己の餌場とできる黒き蟲の豪雨が腐った肉の群れを喰らい尽くしていった。
「昔は貴女達の手が届く所まで接近しないといけませんでしたが、今は違うんですよ」
 かつては黒燐弾を撃つにもある程度の接近が必要で、そこは敵から放たれる神秘の力の射程内でもあった。だが、今や敵を喰らうに相手の間合いまで入る必要もない。いい時代になったものだ……! しみじみと影華はそう思った。
 そして黒き蟲と腕の中、悠里は剣を携え敵を斬る。近づかずに戦えるとは言っても、そこに自らが入らぬ理由もない。自分と、仲間が放つ破壊の中自分も敵を斬れば、決して生き残りが後ろに抜けることはなくなる。
「ああ、ありがとう。愛しているよ」
 それは今自分の背を守るように後ろの敵を撃ち続ける、愛しいリリィに万に一つの危険もなくなるということだから。
 戦場全てを喰いつくす黒の果て、ついに千鵠百貨店下層にひしめいていたゾンビホステスは全て倒れた。
「僕が愛するのはリリィ一人だが……果たしてその新しいボスとやらは本当にこのゾンビ全てを等しく愛していたのかな?」
「さあ……本人に聞きに行きましょうか」
 二人の目の前には五階に続くエスカレーター。その果てしなく長く、しかし果てあるはずの道に向けて能力者である猟兵たちは足を進めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『……今何階まで上ったっけ?』

POW   :    正面突破! 敵にも階段にも正々堂々立ち向かう!

SPD   :    なるべく戦闘は避けて、階段もペース配分して上る。

WIZ   :    どこかにエレベーターとかあるんじゃないですかね。

👑7
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 停止したエスカレーターを上り、五階へとたどり着いた猟兵たち。そのまま何事もなくフロアを抜け、反対側にあるエスカレーターを同じように上り六階へと向かう。
 だが、上っても上っても、一向に六階へと着く気配はない。後ろを振り返れば、上ってきたはずの五階は最早遥か視界の彼方だ。
 これが話に聞くゴーストタウン現象、地縛霊化オブリビオンが起こす時空のゆがみや迷宮化だろう。
 ゴーストタウンに『常識』は通じない。だが常識の外の力なら猟兵側だって負けてはいない。
 予知によればこのエスカレーターはただひたすらに長いだけ。どれほど長いかは想像つかないが、上り続けていればいつかは果てがあるという話だ。
 さらにここは千鵠百貨店の中であることには変わりはない。エスカレーターに立っている限り両脇には壁しか見えないが、このエスカレーター自体は動かずとも機械仕掛けのものであることに変わりはないし、壁の向こう、天井の裏には千鵠百貨店としての建築構造が存在しているはずなのだ。もちろんそれもまたゴーストタウン現象によって改変されている可能性もあるが、それでも理不尽な有限の道の裏には理解能う無限の現実が広がっていることは間違いない。
 だが、それを探る間さえ与えぬとばかりにガタガタと無機質な音が上下から聞こえ始めてきた。
 エスカレーターを上から下り、下から上りくるのはデパートに付き物のマネキンや、屋上で子供が乗るようなパンダの乗り物。だがそれらは真っ直ぐ猟兵の方を向き、明らかに妨害の意思を持って掴みかかり、あるいは突進するような勢いで迫り来ている。
 その軍勢の顔ぶれに見覚えのある者もいるかもしれない。だが、往時と違いこいつらはこのゴーストタウン現象の単なる付属物。ここを突破さえすればともに消え失せる儚い存在でしかない。
 そしてこのゴーストタウン現象自体が今屋上に巣食っている新たなボス『水を司る者『オフェリア』』が作り出したもの。進むついでに相手の情報をここから探ってしまうのもいいだろう。
 手段は問わない。このゴーストタウン現象を突破し六階、そして屋上へ。猟兵よ、その足を進めるのだ。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
何とも不思議な現象ですねぇ。
とは言え、問題無くやりようは有りますので。

【燦華】を発動、全身を『光』に変換し一気に駆け抜けますねぇ。
長いとはいえ『果ての有る長さ』なら『光速移動』であれば然程間を空けずに突破出来ますし、『狭い隙間に入り込む能力』で間を抜け躱して行けば妨害も問題有りません。
また『祭礼の女神紋』で『祭器』全てを肉体の一部として扱えますから、僅かな隙間もない『壁』の様な何かが有った場合のみ『光化した刀』で貫き、穴をあけてしまえば良いですぅ。
移動中は『FPS』を発動し、すれ違いざまに『存在する情報』を概念化し取得、この先にいる相手の『情報』を確保しておきましょう。



 五階から上に向かった猟兵たちを待ち受けていたのは、どこまでも続く長いエスカレーターであった。元の建物の大きさや構造など一切無視したその場所こそ、オブリビオン化した地縛霊が引き起こす『ゴーストタウン現象』である。これはかつての特殊空間と違い、発生源がその場にいてそれを倒せば終わりというわけではない。空間ごとに定められた条件を把握し、それに合わせた攻略を行わなければならないものだ。時にはその中に配下のゴーストや襲ってくる障害なども設置されており、まさに即席の『ゴーストタウン』とすら呼べるものである。
「何とも不思議な現象ですねぇ」
 シルバーレイン出身ではない夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)のようなものにとっては、まさに理解しがたい不思議極まる現象と言えよう。
「とは言え、問題無くやりようは有りますので」
 しかし、突破するのにその原理や成り立ちを理解する必要などどこにもない。必要な情報は既に与えられているし、そのための手段も持っているのだ。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
 るこるは【豊乳女神の加護・燦華】を発動、その身を光に変え一直線に突破を図った。
 元々ここのゴーストタウン現象は『ひたすらに長いが果てはある止まったエスカレーター』というもの。それがどれほど長い距離なのかは分からないが、光速で突破できないようなものではないはずだ。
 その予想通り一瞬にしてエスカレーターを通り越していくるこる。だが、その突進の前にいくつもの影が立ちはだかっていた。
 決して広くないエスカレーターを埋め尽くすように降りてきたのは、デパートにはつきものであるマネキン人形の群れ。だがそれはぎこちなく手足を動かして動き回っており、来ている服は到底売り物にはならないようなボロボロのものばかりであった。
 まるでショッピングモールに溢れるゾンビのようにのろのろと手を伸ばしてくるその集団の間を、るこるは光になったまま器用に素早くすり抜けた。
 ユーベルコードの特性で光への変身と狭い隙間に潜り込む能力を両立した状態なら、高速で移動しながらも僅かな隙間さえあればそこを通り抜けていける。そしてこのマネキンたちは障害物ではあるが倒すべきオブリビオンではない。抜けることさえできれば、撃破にこだわる必要もないのだ。
 さらにそのまま上階を目指し進んでいくが、今度はまるで塔の如くぎっちりと、一切の隙間もないほどに詰まったマネキンの塊がエスカレーター上に鎮座していた。あるいはそれは動くマネキンを生み出す母体のようにすら見えるが、実の所ここに現れるマネキン型のゴーストはこちらの方が正しい姿だったりもする。
 光は直進するがそれそのものに物理的な破壊力は基本ないし、隙間そのものがなければ潜り込むこともできない。ならばどうするのか。
 るこるは光となった体の中から、刀だけを元に戻しそのマネキンの塊に突撃した。光速で一点に力を込めた刃は全てを穿つ槍となり、隙間なく詰まったマネキンに小さな穴をあける。その穴を通り、るこるはマネキンタワーの向こう側、さらに続くエスカレーターの向こうへと飛んでいった。
 そのままいずれ上へと着くまでの間、るこるは再度『FPS』を放ちこの場から情報をくみ取ろうとする。
 そこから見えたのは、先も見えた巨大なバイキング船と、その上で寄り添う海賊と女。女は海賊にしなだれかかると、その手に氷でできた鋭いナイフを出現させて男の胸に突き立てた。血を流し倒れていく男を見る女の目は、深い慈愛に満ちていた。
 彼女は殺すことを愛情表現とするサイコパスだという話は聞いている。そしてその愛を誰しもに振りまく『博愛主義者』だとも。その愛の証たる海賊の骸はすぐに消え、その後に同じ服を纏った白骨が現れる。それを見た女は、慈愛を上回る歓喜に目を輝かせていた。
 博愛と独占の両立という矛盾。その一つの表れがこの果てしなく長く、しかし果てある階段なのか。その果ての先にいるだろう答えを持つ者へ向けて、るこるは光速で上へと上りゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
なるほど
これがゴーストタウン現象か

けどこんなんで
俺たち猟兵を止められるなんて思うなよ

行動
迦楼羅を炎翼として顕現
低空飛行でエスカレータ上を進む

追い縋って来たり
立ち塞がる敵を
炎の翼の一振りで焼却しながら進む

このままゴールを目指してもいいけど
それじゃ芸がないよな

炎は影を産む

文字通り影人間の俺っぽい姿の追跡者を
天井や壁裏へ放って
デパートの内部構造を探索

デパートなら必ず
階段や荷物運搬用エレベータがあるはず

どっちかを見つけたら
壁を溶かし打ち破って
そちらを利用して上へ
(エレベータならシャフトを飛行

で、その間
影を更に先行させてボスを探る

確実に海へ還してやりたいもんな

何かヒントでもみつかりゃ
御の字ってヤツ



 ゴーストタウン現象。シルバーレインに猟兵が訪れた時から話としては周知されていた現象だが、やはり異世界から来た猟兵にとっては実際体験してみるまでは具体的な想像はつきがたいものであった。
「なるほど。これがゴーストタウン現象か」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)も初めて遭遇するその現象を物珍しげに見まわし、だがそれを恐れない。
「けどこんなんで俺たち猟兵を止められるなんて思うなよ」
 今までも様々な敵、様々な仕掛けを各世界で突破してきたのが猟兵だ。今更この程度何ほどのものかと、炎の鳥『迦楼羅』を翼として背負う。
 そのままウタは僅かに浮き上がり、エスカレーターの段すれすれを坂を上るように飛行し一気に飛び出した。
 その進みを止めようと前から多数のマネキンが迫り、後ろからは乗り物パンダが追いすがってくる。だがウタは一切動じることなく、炎の翼を大きくはばたかせさらなる推進力を得るとともにその翼の中に相手を包み込み、まるでその焚き付けにするかのごとく相手を焼き尽くした。事前に聞いていた通り、この襲撃者たちは先に戦ったゾンビホステスたちよりさらに弱く抵抗することもできずにそのまま燃え尽きていく。一方でこのゴーストタウン現象ある限り無限に湧き続けては来るいう話ではあるが、相手がこちらの進行を止めるに至らないならそれもさほど気にする必要もないだろう。
 どこまで続くか分からない長い道だが、進み続けていればいつかはゴールがあるという。あとはじゃを蹴散らしながらこのままただ進んでいけばいいだけなのだが、それだけでは面白みもないとウタは考える。
「このままゴールを目指してもいいけど、それじゃ芸がないよな」
 少しスピードを緩めると、炎翼を背負った体の下、ウタ自身が作る影が濃くエスカレーターに映った。その影は最初はウタの動きと同じように、そのうち少しずつずれてやがて全く違う動きを見せ始めると、そのまま独立して壁を伝い天井へと上っていった。
 五感を共有する【影の追跡者の召喚】により、普通では入れないような場所にそれを入らせ内部構造を探らせるウタ。壁の裏は空気や電気などの導線が張り巡らされ、エスカレーター側から見た無限に続くかの如き茫洋とした壁面とは真逆の印象をもつ空間となっていた。その中から、特に電気や動力関係が巡っていそうな線を追跡者は辿っていく。
「デパートなら必ず階段や荷物運搬用エレベータがあるはず」
 そう考え、内部からエスカレーター以外の移動手段を探すウタ。少なくとも、ここに来るまでの間にエレベーターの乗り場は何度も見ていた。四階まではゾンビホステスの鎮魂を目的に進んだためそれを使うことはしなかったが、ここをただ突破するならそちらを使った方が早いのは自明の理だ。
 果たして、エスカレーターからフロアを回り込むように移動したところで縦長のシャフトにたどり着いた。それを追跡者の方の感覚で確認してから、今度は自分自身の感覚で追跡者との直線の方向と距離を測る。
 上下にはどこまでも引き伸ばされたこの空間だが、横は意外とそれほどでもないのかその距離は常識的なデパートのフロア程度のものしかなかった。その方向に「地獄の炎」を放てば、壁は焼け崩れ縦長のシャフトが口を開けていた。
 エレベータそのものはこの場にはないようで上下に長い空間が広がっているそこに、ウタは炎の翼をはためかせ飛び込んでいく。そのまま上方向へ真っ直ぐ飛んでいけば、少なくとも斜め移動になるエスカレーターよりずっと早く最上階に辿り着くはずだ。
 やはりこちらも引き伸ばされているのか瞬く間に着くということはないが、妨害のマネキンたちはここには配置されていないらしく出てこない。ウタは追跡者を自らに先行させ、一足早く最上部へとたどり着くよう仕向けた。
「確実に海へ還してやりたいもんな」
 何かボスのヒントでも探れれば。そう思って追跡者の視界を見れば、そこに映るのは屋上に堂々と鎮座する巨大なバイキング船。ウタはもちろん知らぬことだが、かつてはこの屋上に目玉遊具として遊園地によくあるフライングパイレーツが設置されていた。それがゴースト化したものが嘗てのここのボスの一体であったのだが、今目の前にある船は遊具ではなく本物の船。
 その船の上に、一人の女がいた。何をしているのかはっきりとは見えないが、屈んだ状態で手元で何か作業を行っているようでもある。
 体を揺らし、同じ動作を何度も繰り返す女。その一動作ごとに、女の顔には喜びがあふれている。
 もっとよく確認しようと追跡者を近づけていくが、その瞬間ウタの全身に冷感が走った。本能的に危険を察し、急いで追跡者を消すウタ。
 きわめて発見されづらい影の追跡者すら見つける程に鋭敏な感覚を持っているのか、あるいは近づくだけでも危険なほどの力を常に振りまいているのか。
 どちらにせよ相手が侮りがたき力を持っていること、そして歓喜とともに没頭する何かをここで行っていることを確認し、ウタはそれを念頭に上を目指すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

崎濱・悠里
アドリブと共闘歓迎

五階があんなに遠くになっているとはね。ゴーストタウンというのは摩訶不思議だね。

正攻法で登っていくのは大変そうではあるが、他の案も浮かばないね……
とりあえず、向かってくる障害を排除しながら考えることにすが……ふむ?あれは人も乗れそうなパンダだね。

閃いた!アレに移動を手伝ってもらおうじゃないか!

では、愛しいリリィ、着替えてくれたまえ。(僕には見えないけど)可愛らしいゴースト娘に変身したらあのパンダに取り憑いておくれ。
あのパンダはすごい突進力があるみたいだからね。それを利用して一気に上を目指すとしよう。

実際に動くのはパンダ君だから愛しいリリィの疲労もそこまでにはならないだろうしね。



「五階があんなに遠くになっているとはね。ゴーストタウンというのは摩訶不思議だね」
 永遠に続くかと錯覚するほどの長いエスカレーターの中で、後ろを振り向いて崎濱・悠里(愛に生きる剣士・f36241)はそう呟く。銀誓館学園現役生である彼女は、自身の通う学園が嘗て探索していたその場所の異様さを改めて目の当たりにしていた。
 眼下に見える五階からの登り口は、遥か彼方にもう豆粒のようにしか見えない。翻って上を見れば上階であるはずの六階は微かにすら見えず、ただただ見えなくなるまで長いエスカレーターが続いているだけだ。この建物を外から見た限りではどの階も均等な高さしかなく、確かにここに来るまでは各階常識的な高さのエスカレーターを上ってきただけだったというのに。
 だが感心はすれど恐れることはない。いつか果てがあるということは聞かされているし、何より悠里自身が死と隣り合わせの青春真っ只中に身を置く存在。ただ長いだけの階段など恐れるに足りない。
「正攻法で登っていくのは大変そうではあるが、他の案も浮かばないね……」
 足りないが、それはそれとして面倒ではあるのも間違いない。怖くないからと言って無駄に疲れることをしたいほど彼女も酔狂ではないのだ。
 それでも案が浮かばない以上上り続けるしかない。だがそれさえも許さぬとばかりに、情報からガタガタと音を立てて何かが駆け下りてきた。
 それは何体も連なりぎこちない動きで降りてくる、マネキン人形の群れ。硬質な体は先に戦ったゾンビホステス以上に柔軟性に欠けていると見え、今にも足を踏み外し階段を転げ落ちてきそうな動きですらある。
 そのマネキンたちを、長剣を抜き放ちこともなげに切り捨てる悠里。その一閃は無造作に振るったように見えそれでいて鋭く、さらに崩れた残骸が自分や後方に控える使役サキュバス『リリィ』にぶつからないよう落ちる方向まで調整しているほどに精密であった。
 この相手も決して強くはないが、やはりただただ煩わしい。相手を切り捨てながら何かいい手はないかと考える悠里の目に、マネキンに紛れる四つ足の何かがとまった。
「……ふむ? あれは人も乗れそうなパンダだね」
 それはデパート屋上のプレイコーナーなどにおいてありそうな、100円入れると動き出すパンダの乗り物。障害としてはマネキンより格上扱いなのか、マネキンを突き飛ばしながら凄まじい勢いで階段を駆け下りてくる。
 そのパンダを見て、悠里の頭に一つの妙案が浮かんだ。
「閃いた! アレに移動を手伝ってもらおうじゃないか!」
 そのためには彼女の協力が不可欠と、後ろにいるリリィに声をかける。
「では、愛しいリリィ、着替えてくれたまえ」
 リリィはそれを受けて自分の服に手をかけるが、それと同時にその姿が薄くなり消えていく。悠里はその前で、パンダの突進が自分たちを跳ね飛ばさぬよう『闇のオーラ』を纏って相手を待ち受けるような構えを取った。
「可愛らしいゴースト娘に変身したらあのパンダに取り憑いておくれ」
 姿は見えないが、確かにリリィがそうしたことを確信しての次の指示。そうしているうちにパンダの突進が悠里に炸裂する……そう思われた瞬間、階段上で突然パンダが前足を踏ん張って急停止し、そのまま前足を軸に器用にくるんと半回転した。そうして悠里の前に向けられたパンダの尻には、遊具には見合わない生物的な蛇の尻尾が生えていた。
「このパンダはすごい突進力があるみたいだからね。それを利用して一気に上を目指すとしよう」
 悠里がリリィに指示したのは、【コスチュームプレイ・キュートゴースト】を使って彼女がパンダに取り付きその肉体を奪ってしまうことだった。このパンダもかつて千鵠百貨店に出現したゴーストが元になっているのだが、当時のパンダはこのゴーストタウン内でも屈指のパワーを持つ強敵だったという。例え劣化版とはいえ、その力はさっきマネキンをぶっ飛ばして迫ってきたのを見て確認済みだ。
 リリィの憑依したパンダにひらりとまたがる悠里。
「実際に動くのはパンダ君だから愛しいリリィの疲労もそこまでにはならないだろうしね」
 悠里にとって何より優先すべきはリリィの安全。それも見越してのパンダ憑依だ。悠里の意を汲み、パンダとなったリリィは猛然と階段を上り始める。その勢いは自分の足で登っていた時とは比べ物にならず、道中で群れるマネキンたちは最早いないのも同然と言わんばかりの勢いで弾き飛ばされていく。
「もちろん、リリィだけに働かせはしないよ」
 そして別のパンダが突っ込んでくれば、それは悠里が剣を振るって切り捨てる。
 阻むための邪魔者が進むための車と化した二人の道行き。二人を阻むものなど何もないと言わんばかりに、パンダとなったリリィは悠里をのせエスカレーターを頂上へ向けて一直線に駆けあがっていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴乃宮・影華
※アドリブ、連携OK
※E.N.M.Aは引き続き『サルウェ』

かつてこの世界には
あらゆる乗り物を操作できるようになるが、目的地到達まで延々と彷徨わねばならない――そういうメガリスがありました
で、それが生み出したゴーストが今回先輩が勘違いしたボスなんですが……

E『私達、まさに今彷徨ってるわよね?』

あぁそっか、今回の仕掛けはメガリスパワーが使われて……
まぁでもエンドレスじゃないし、休み休み登って行こう
「地上32階建て徒歩踏破、能力者なら1回はやったものね……」
懐かしい顔ぶれの軍勢が現れたら
右肩から先を全部使って指定UC起動
蟲達の空腹を誤魔化し、私の疲労を治療する、これぞ一石二鳥です


鳥羽・白夜
黒影剣発動、闇のオーラで姿を隠しすれ違うゴーストからは【生命力吸収】。これで戦闘はだいぶ避けられるはず。
マネキンとか乗り物パンダとか、あーたしかにこういう奴ら居たわ、懐かし…
けどエスカレーター長っ…!俺もう三十路だってのに…!いや中高生の頃なら行けたとも言わねーけど。
ソウルフードのトマトジュースを飲みながら適度に【小休止】、時には【ダッシュ】で距離を稼ぐなどペース配分を考えながら進む。
一気に進みたいとこだけど、あいにくと俺は飛べねーしな…エレベーターも電気来てないんじゃ使えねーし…

一応【第六感】やかつての記憶による【世界知識】、敵や周囲を観察しての【情報収集】でボスの情報も探ってみる。



 延々と続くエスカレーターを、空を飛ぶ、乗り物を調達するなど猟兵たちは様々な手段を持って突破していった。だがここはたとえ特別な手段を講じなくとも、歩き続けていればいつかは頂上にたどり着く果てある道でもある。もちろん並の人間ならばその前に力尽きるような道であるが、『常識』の埒外である猟兵、そして能力者にならそれはただ進めばいいだけの単純な道とも言えた。
「かつてこの世界にはあらゆる乗り物を操作できるようになるが、目的地到達まで延々と彷徨わねばならない――そういうメガリスがありました。で、それが生み出したゴーストが今回先輩が勘違いしたボスなんですが……」
 鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)はその長い道中での時間潰しとでも言うように、この地にも関係のあるかつて存在したメガリスの事を話していた。
 その聞き手は彼女の頭上に乗る小さな虫の様な機械、現地調達型支援端末『サルウェ』に搭載されたEP全環境対応型戦闘支援疑似人格『E.N.M.A』だ。
『私達、まさに今彷徨ってるわよね?』
 影華のかつての思い出話を聞いて、E.N.M.Aはまさに今ここにいる銀誓館卒業生たちがそのメガリスに飲み込まれているような状況に近しいと答えを弾きだした。
「あぁそっか、今回の仕掛けはメガリスパワーが使われて……」
 自分で言った通り、経験者が勘違いしたかつてのここのボスはメガリスを壊した副作用によって生まれた『メガリスゴースト』という種類のものだった。そして今自分たちが置かれている状況はまさに、『いつかは目的地にたどり着けるけどどれだけかかるか分からない道』。過去の記憶、そして現在の状況を照らし合わせることで、今回の事件の骨子が図らずも見えてきていた。
 その過去の記憶を、少し前で同様に思い出していた者がもう一人。
「マネキンとか乗り物パンダとか、あーたしかにこういう奴ら居たわ、懐かし……」
 鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は前から来るマネキンやパンダの群れと次々すれ違っていた。
 だが、それらは後ろに抜けていくことはない。闇のオーラに包まれた白夜とすれ違った瞬間、その力を吸い取られ即座に消滅していたのだ。元のゴースト、集団型オブリビオンより弱くなっている彼らの事、ユーベルコード製の生命力吸収に少し触れればそれだけで力は尽き、闇を抜けることなく消え失せることとなる。
「けどエスカレーター長っ……! 俺もう三十路だってのに……! いや中高生の頃なら行けたとも言わねーけど」
 一方で弱いということは吸える力もたかが知れている。長いエスカレーターを上り続ける疲労を打ち消すほどの力を吸うことは出来ず、その疲労は徐々にアラサーの体力を蝕み始めていた。
「地上32階建て徒歩踏破、能力者なら1回はやったものね……」
 中高生の頃なら、の呟きに影華が思い出すのはこことは別のゴーストタウン。そこは成り立ちからして色々特殊な場所であったが、平たく言えば高層ビルが丸ごとゴーストタウンになっている場所。もちろんエレベータは用意されていたのだが、それを使わず踏破する物好きが往時は相当数いたのだ。ちなみに件の先行者もその一人だが、本人曰く『もうやりたくないッス』とのこと。
 それはともかく、白夜の疲労が溜まりつつあるのを見て、影華が彼を追い抜くように前に出た。白夜はそれと交代するようにその場に留まりつつ、ソウルフードのトマトジュースを飲んで小休止を図る。
 その間に前から来る懐かしい顔ぶれの軍勢に向けて、影華は右手を向けた。
「彼の力を以て世界に告げる――皆、おやつの時間よ」
 その右手が一瞬で真っ黒に染まり、無数の蟲の頭部へと変じる。その蟲の群れに引っ張られるように影華の腕が前へと伸び、敵の軍勢へと文字通りに食らいついた。
 それは象さえも骨に帰る蟻か、黒く天を覆い滅びを齎す蝗の群れか。一つ一つは大きくない顎が、無数に密集して不規則に打ち鳴らされ捕らえた者を噛み砕き喰らう。
「蟲達の空腹を誤魔化し、私の疲労を治療する、これぞ一石二鳥です」
 おおよそ一般人の前では使えぬと自嘲しながらも、敵の撃滅と自身の回復を同時に行えるその手段はやはり効果的だ。
 その戦う姿を見て体を休めながらも、白夜は周囲の観察は怠らなかった。今自分を取り巻いている状況と、かつてここに来た時の記憶を合わせ何か分かることはないかと考える。
 迫りくる敵はマネキンとパンダ。いずれもかつてここにいたゴーストが元になっているが、彼らはその中の一握りでしかない。エレベーターガール、悪質なクレーマー、親を探す迷子、この場所ならではのゴーストは他にもいたはず。その中で何故彼らが選ばれたのか。
 一つ共通項があるとすれば、彼らはどちらも『生物ではない』ということか。等しく愛という名の殺戮を振りまくという今のボスにとって、殺せないものは価値がないからここに放り込んだということだろうか。
 ではあのゾンビホステスたちは? 彼女たちはなぜこのゴーストタウン現象を挟んだ、自らの所に来れない場所に押し込めていたのか。殺したくなったら自ら出向いてやるつもりだったのか? あるいはわざと来られないようにしていたか。『博愛主義者』のくせに。
 そしてこの場所。その気になれば出口そのものさえなくしてしまえるゴーストタウン現象、特殊空間に明確に出口を設け、しかしその道のりはひたすらに引き伸ばしてある。
「……捻くれてんなぁ」
 ゴーストとはそういうもの。知ってはいた、思い出しはしたが、その思考にそう漏らす白夜。
 何となく気疲れしたような気はするが、体は休まった。エスカレーターを軽く駆けあがり、白夜は再度影華と交代する。
「一気に進みたいとこだけど、あいにくと俺は飛べねーしな……エレベーターも電気来てないんじゃ使えねーし……」
「仕方ありません。あの頃は飛ぶということ自体我々の基本戦術にはありませんでした」
 猟兵になってできることは増えたが、昔のやり方を踏襲すれば得手不得手は出てくる。再びオーラで体を包み見えなくなっていく白夜の後ろで、影華は蟲たちから腕を戻す。
 そこからもそれぞれの手段で疲労を補いつつ白夜と影華は交代を繰り返し、一段ずつ上へ向けてその足を進め続けていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『水を司る者『オフェリア』』

POW   :    凍る程の愛を受け取って下さいませ
【ナイフ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【無数の水の槍】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ずっと、あなたも愛しています
【愛したシーフ】の霊を召喚する。これは【ダガー】や【水】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    私が皆様を抱擁して差し上げます
【全身】から、戦場全体に「敵味方を識別する【激しいダイアモンドダスト】」を放ち、ダメージと【溶けない氷】の状態異常を与える。
👑11
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 千鵠百貨店上層を支配するゴーストタウン現象を突破した猟兵たちは、まずはそれぞれがここに来るまで調べ、考えた情報を交換し合う。
 相手は海賊の男と共にバイキング船に乗ってこの屋上へやってきた。その船は恐らくかつてのここのボス同様メガリスの影響を受けている。今は船の上で何かに没頭している。事前に聞いていた『歪んだ博愛主義』という情報に疑問や矛盾が出るような仕掛けが多い。
 後は相手を直接見て確認しようと、猟兵たちは屋上への扉を開け外に出る。するとそこには、巨大なバイキング船とその前に立つ小柄な女性の姿があった。大きなハンマーを担いだ彼女が、先行していた能力者宮古島・うるみだろう。
「やっぱこいつッスね。バカスカ大砲撃ってくるからくっついてぶっ壊して……」
 ハンマーを構え駆けだそうとするうるみの前で、バイキング船は瞬く間に氷におおわれていく。そのまま爆発するように船諸共氷が砕け散ると、その場所には一人の女性の姿があった。
「ああ、あの階段を上り切ってまで、私に会いに来てくれたのですね。愛しい人」
 そう言って柔らかく笑いかける女。その傍らにいかにも海賊といった風の服を着た骸骨が現れると、女は愛おし気にそれに手を回す。
「そっちの骸骨はともかく……こっちはまた新しいゴーストッスか!? しかも相当ヤバい奴ッス!」
 その女に驚いた様子を見せるうるみ。既存のボスだと思っていた所に新しいゴーストの登場、しかもそれはかつてのボスを思わせる船を片手間程度に破壊してみせたのだ。
 相手の実力を測り間合いを取るうるみの前で、女は手を持ち上げる。そこにはいつのまにか、氷でできた鋭い刃のナイフが握られていた。
 そしてそのまま、女は骸骨の頭にナイフを突き立てた。そこから全身を凍らせ、骸骨は砕け散る。だがその氷も溶けぬうちに、同じ骸骨がまた彼女の傍らに現れた。
「一度愛した人は二度とアイせない……でもここなら何度でも何度でも、私の愛しい人をアイし続けることができる。こここそが、私の求めた場所! 愛の終着点!」
 ゴーストタウンのゴーストは簡単に根絶することなど出来はしない。そしてゴースト事件に巻き込まれ死んだ者は、そのゴーストの一部となり彷徨い続けることも昔よりあったこと。それを自分に都合よく解釈しているのか、女はもう一度骸骨にナイフを突き刺し、そしてまたすぐ傍らに蘇らせた。
「大丈夫、あなた方も皆、永遠に愛し続けて差し上げましょう。愛は誰しもに等しく注がれるべきなのです」
 そう嘯く彼女こそが、新たなここのボス『水を司る者『オフェリア』』。全てを殺すことで愛する狂気の博愛主義者だ。恐らく彼女が船の上で行っていたのも、繰り返しこの骸骨の男を殺し続けていたのだろう。だがその一方でゴーストタウン現象を起こし女のゾンビを下層に隔離し、一人の男を執拗に殺せるこの場所に執着するなどその愛には偏りや独占欲があるようにも見える。自分の主張を自分で否定するようなその矛盾に果たして彼女は気づいているのか。
 一方、うるみはあなた『方』という言葉に後ろを向く。その目が猟兵を見つけると、彼女はすぐさまそちらに駆け寄った。
「皆さん、もしかして運命予報とかそれっぽいのでここに来てくれたんスか? ……てことはほっといたら自分やられちゃってたってことッスか!? うわぁ、えらいことッス!」
 非猟兵としては異常なまでの察しの良さだが、能力者の間にも予知じみたものがあったのだろう。かつては助ける側だったのが逆の立場になったこともすんなり受け入れ、うるみは猟兵の側についた。
「愛するだかアイスだか分かんないこと言ってるけど、単なる不法占拠なんでぶっ飛ばしちゃいましょうッス!」
 猟兵と並びハンマーを構えるうるみ。その言葉に、オフェリアの目には僅かに怒りが宿ったようにも見える。恐らく彼女は自分の主張を頑なに掲げ、否定されたり矛盾を突かれることを極度に嫌がっているのだろう。
 ここまで得た情報と、このシルバーレイン、そして数多の世界で鍛え上げた力を持って。猟兵よ、愛に狂ってさまよう女を正しき場所へ送り届けてやれ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
『愛』は無法を正当化する免罪符になりません。
この様なことに巻込まれるとは、ゴースト側も迷惑でしょうねぇ。
解放して差し上げましょう。

【炳輦】を発動、私とうるみさんを『防護結界』で包み飛行、『FMS』のバリアと『FES』の『対水結界』を重ねますねぇ。
『ナイフからの連撃』は『高速飛行』と『転移』で初撃を回避、広さ等で躱しきれない場合も『戦場全体を覆う時空切断の嵐』による[カウンター]で『切断した空間の外』に逸らし、残りを『対水』の性質を持つ多重防御で防げば対処可能ですぅ。
後は『FRS』『FSS』の[砲撃]を主体に、『時空切断』と残る『F●S』各種の[追撃]を重ね叩きますねぇ。


崎濱・悠里
アドリブと共闘歓迎

どうやら大先輩は無事だね。良かった愛しいリリィが悲しまなくて済むよ。

そしてアレが主犯だね。……なにやら事情があるようだが、そうやって歪んだ愛を掲げるのであれば、愛に生きる者として倒すだけさ。

では愛しいリリィ、準備はいいかな?愚かな彼女に本当の愛というものを見せてあげようじゃないか。

UCを発動し、独り善がりな愛に狂ったゴーストを相手に深い愛情を通わせ文字通りに一心同体となった姿で戦うよ。

溶けない氷は恐ろしいが、こちらは不可能をも可能にするほどに熱く燃える炎のような愛で対抗しよう!

長剣に炎を纏わせた属性攻撃で敵のダイヤモンドダストを溶かしながら前進し、熱い炎の刃で敵を切りさくよ。


鳥羽・白夜
やっっと屋上着いた…!
あ、どうも(うるみに挨拶)えーと、たぶん学年的には俺の後輩、かな…会ったことはなかったと思うけど。

で、あいつがボスか…あのー、ひとつ言わせてもらうけど。
あのくっそ長いエスカレーター何?あれ登りきった奴だけアイしてやるとかいうわけ?平等とかいいながらめちゃくちゃ選別してんじゃん。
てかお前に会いに来たわけじゃねーし。殺されるのはゴメンだね。そういうの独りよがりって言うんだよ。
腹立ちついでに【挑発】、敵が攻撃する構えを見せたなら素早く黒影剣発動。姿を隠し初撃のナイフを【見切り】防ぐ。当たらなきゃどうってことないからな。
そのまま背後に回り【部位破壊】でゴーストを抱く腕を【切断】。



 ゴーストタウン現象を乗り越え辿り着いた千鵠百貨店屋上。そこにいたのはこの場に新たなボスとして居座ったゴーストと、それを駆除せんとする能力者。
「どうやら大先輩は無事だね。良かった愛しいリリィが悲しまなくて済むよ」
 その能力者の無事を確認し、崎濱・悠里(愛に生きる剣士・f36241)は言う。その能力者の救援も任務の一つであったし、何より心優しい彼女の使役サキュバス『リリィ』は見知らぬ他人であろうと傷つくのを好まない。彼女の無事と平穏を第一とする悠里にとっては、それだけでもここに駆け付ける意味は十分にあった。
「え、だ、大先輩!? あ、もしかして銀誓館の方ッスか?」
 いきなりの大先輩呼びに慌てる能力者、宮古島・うるみ。だがこの戦地で先輩後輩の呼び合いになることは彼女にとってもかつて慣れ親しんだ状況であり、その記憶を元に相手との関係を推察する。
 そして後輩が来るなら先輩も。
「やっっと屋上着いた……! あ、どうも。えーと、たぶん学年的には俺の後輩、かな……会ったことはなかったと思うけど」
 やや疲れた様子で屋上に上がってきたのは鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)。その言葉通り、彼もまた銀誓館学園卒業生の元能力者であり、一度捨てた力が再度呼び戻された猟兵である。
「そちらは先輩さんなんスね、初めまして、よろしくお願いしますッス!」
 白夜の言う通り互いに初対面だが、うるみもそれに構うことなく軽く挨拶する。猟兵もそうだが、能力者も依頼で共闘する相手が全員初対面というのも決して珍しいことではない。
 しかし一方で誘い合わせたわけでもないのに顔見知りが偶然揃うのもまたよくあること。さらに現れた猟兵の顔を見て、うるみはそちらにも挨拶する。
「あ、お久しぶりッス、また来てくれたんすね、ありがとうございますッス! やっぱり猟兵の人はでっかいッス!」
「え、ええ、今回もまぁそうですがぁ……」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は能力者でこそないが、猟兵としてかつてこの千鵠百貨店を訪れ、うるみにも手を貸したことがあった。最後の言葉に関してはやはり曖昧にしか答えられないものの、ある種変わってなさそうな彼女の様子を確認してるこるも笑顔を返しておいた。
「そしてアレが主犯だね。……なにやら事情があるようだが、そうやって歪んだ愛を掲げるのであれば、愛に生きる者として倒すだけさ」
 簡単な自己紹介を済ませたら後は敵に向き合う時間。悠里は新たなボスとしてこの千鵠百貨店屋上に居ついたゴースト、『水を司る者『オフェリア』』に向かいそう言った。
「愛に生きる……? いいえ、愛とは殺すことで完成するものです。そしてこの場では一度で完結してしまうその愛を、幾度でも繰り返すことさえできます。大丈夫、あなたたちにも本当の愛の形を教えて差し上げましょう」
 氷の刃を持ったナイフを手に、慈愛に満ちた笑みを浮かべ言うオフェリア。ゴーストタウンに無限に溢れるゴーストとなることを永遠の愛とためらいなく言うその姿は、悠里の言う通り正しく歪んだ愛に狂った姿といえるだろう。
 そしてまた質の悪いことに、彼女は『博愛主義者』。その傍迷惑な愛を誰彼構わず無差別に振りまく殺人鬼でもあるのだ。
「『愛』は無法を正当化する免罪符になりません。この様なことに巻込まれるとは、ゴースト側も迷惑でしょうねぇ。解放して差し上げましょう」
 その愛によって制圧された千鵠百貨店、そしてその手駒、門番のような状態に置かれたゾンビホステスやゴーストタウン現象内のパンダやマネキンたち。彼女らとていずれは駆逐、浄化しなければならない存在には変わりないが、だからと言って上位ゴーストの勝手に振り回される道理もまたないはずである。
「解放など……誰がそのようなことを望んでいるというのです? 私と私の愛する人たちはここで幸せだというのに」
 るこるの言葉に、笑顔のままではあるがどこか苛立ちを含んだような声になるオフェリア。その傍らでは、傍に侍っていた骸骨が凍り付き、砕けていく。これもまた彼女なりに『愛』を見せつけているつもりなのか。
「で、あいつがボスか……あのー、ひとつ言わせてもらうけど」
 その『愛情表現』に、白夜も呆れたように溜息をつきつつ言い出す。
「あのくっそ長いエスカレーター何? あれ登りきった奴だけアイしてやるとかいうわけ? 平等とかいいながらめちゃくちゃ選別してんじゃん」
 ここにくるまでの障害であったゴーストタウン現象。それを上り切った者を賞賛するような言葉をオフェリアは吐いたが、それはつまり力ある者しか越えられない場所だと彼女自身が理解しているということ。
「いいえ、あなたがたは自らあの階段を超え私に会いに……」
「てかお前に会いに来たわけじゃねーし。殺されるのはゴメンだね。そういうの独りよがりって言うんだよ」
 最早言い訳がましくしか聞こえないオフェリアの言葉を遮り、白夜は彼女を否定した。その言葉に、オフェリアはナイフを構え一気に白夜へ肉薄した。
 その高速の斬撃が、白夜の立っていた場所を切り払う。その刃は確かに何かの影を切り裂き、続けて槍のように固まった水が次々とそこに突き立てられた。
「語るに落ちる、ってやつかね」
 槍の突き立ったその場所の少し後ろからの白夜の声。切り裂かれたのは【黒影剣】の闇のオーラのみであり、自らの視認を困難とさせた白夜は瞬時にナイフの軌道から外れていた。
 白夜は何も相手への苛立ちから挑発を重ねていたわけではない。矛盾をはらみ、それを認めず、そして指摘されることを拒絶する彼女の精神性。ここまで集めた情報からそれを理解していた彼は、彼女から乱れた一撃を誘うべくそこを突き挑発していたのだ。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
 相手が完全に攻撃の姿勢を見せたことで、るこるも【豊乳女神の加護・炳輦】を発動、じぶんとうるみを防御結界で包み込んだ。そのままうるみを連れて飛行することでリーチの短いナイフの間合いから遠ざかっていくるこる。
 その結界自体に、オフェリアはナイフを叩きつけた。結界の表面をナイフが薙ぐと、そこに向けて何本もの水の槍が連続で叩きつけられる。その威力はまさに圧巻、並の防御壁一枚程度なら易々貫けそうなほどの勢いであった。
 だが、その威力も重ねて張ったバリアと対水属性用結界で減算され、防御を貫くには至らない。属性部分と物理部分をそれぞれ別の兵装に請け負わせることで、高威力高命中のユーベルコードさえ耐える防御が実現されていた。
「では愛しいリリィ、準備はいいかな? 愚かな彼女に本当の愛というものを見せてあげようじゃないか」
 否定され怒るオフェリアに、悠里は愛するリリィと共に向かい合う。
「愛しいリリィ、力を貸しておくれ。僕と君、二人が一つになれば敵なんていないさ」
 その瞬間、悠里とリリィの体が重なり合い、一つの体へと合体した。【愛しい君をこの身に宿して】敵へと向かうその姿は、まさに二人の愛の結晶でありオフェリアの愛を正面から否定するもの。
「二人ともに死ねるのならそれも愛でしょう……永遠に、氷の中で愛し愛されませ」
 オフェリアの体から周囲にむけて圧倒的な冷気が巻き起こる。それは空気中の水分さえ凍り付かせ、光の粒……ダイアモンドダストを周囲に発生させた。
「溶けない氷は恐ろしいが、こちらは不可能をも可能にするほどに熱く燃える炎のような愛で対抗しよう!」
 こんな絶対零度の世界の中、氷が自然に溶けることなどない。そのどこにも行けぬ静止の愛を、悠里とリリィは燃える愛で克服せんとする。
 もちろんただの気持ちの問題ではない。リリィの力で刀身に炎を纏わせ、己の行く道を灼熱で照らし敵への道筋を作り上げる。そしてそれこそが愛の導きと言わんばかりに悠里は一直線に敵へと進み、その燃える刃をオフェリアへと叩きつけた。
「くっ……!」
 それをとっさにナイフで受けるが、氷でできた刃は熱に溶かされていく。それに対しオフェリアはより激しく冷気を噴き出し刃を補強するが、もともと長剣とナイフでは武器としてのリーチが違い過ぎる。単純な武器相性の差で、オフェリアの守りは徐々に崩されて行った。
「では、こちらもぉ」
 そこに容赦なく、るこるが射撃能力を持つ兵装を差し向けた。それに対しても冷気を放射し砲を冷却、凍り付かせて無力化しようとするオフェリアだが、そこにるこるはユーベルコードのもう一つの効果である『時空切断の嵐』を重ねて冷気自体を戦場外へ弾きだしてしまった。
 そうして止めきれなくなった砲撃がオフェリアを襲い、その凍れる体に爆発を起こす。
 その影響でバランスが崩れれば、防御の拮抗は崩れ悠里の燃える刃が一気にその体を切り裂いた。
「身を焦がす愛、分かって貰えたかな?」
 殺すことを愛と断じるオフェリアに対し、自らの愛を誇るように言う悠里。それはまさに愛する者と共に『生きる』ための愛の結実か。
「分からない……分かる必要も、ありません……! 私は彼を、全てを愛して……!」
 よろけた体の杖を求めるように手を横に伸ばすオフェリア。それを支えるのは、ゴーストタウンのゴーストとしてまたも湧きだしてきた骸骨の男。攻撃の為に召喚されたわけではないそれは自ら攻めることはしないが、オフェリアは彼を杖にするかのように、あるいは自分の愛の形に縋るかのように伸ばした腕ごと骸骨を氷漬けにしてそれとつながる。
「そんな愛、俺ならゴメンだけどね」
 その骸骨が、彼女を拒絶するような言葉を吐いた。
 その声に振り返った瞬間、骸骨と繋がるオフェリアの腕が切断された。それを成したのは、闇のオーラで姿を消し続けていた白夜の剣。初撃を躱した彼は、味方の攻撃に紛れオフェリアの後ろに回り込んで機を窺っていたのだ。敵味方を識別できるダイアモンドダストも、相手自体を認識できなければ敵も味方もなく攻撃対象にはならない。
 声は骸骨からではなく、そこにいた白夜のもの。だがまるで骸骨自身が彼女を支えるのを拒絶したかのように、彼から切り離されたオフェリアはバランスを崩し一人倒れていった。
 そこに容赦なく注がれるのは、愛に燃える剣と慈悲なき砲の雨。
「あ、あ……」
 助けを求めるように骸骨に残った手を伸ばすオフェリア。だが、他ならぬ彼女自身の手によって氷漬けにされた彼はそれに応えることなど無く、自分を『愛した』女を冷たく見下ろすだけであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
微グロ
POW

苦痛を与えず快楽の中で楽園に導く
私の救済ですら苦肉の策なのに
無限に殺し続ける事が貴女の愛なの?

守護霊の憑依【ドーピング】でUC級の強化。
わざと刺されるも【第六感・見切り】で急所は外し
【カウンター・早業】で彼女の服を【解体】
【オーラ防御・激痛耐性・氷結耐性・継戦能力・気合い】で
水槍にも耐え【怪力・捕縛】の抱擁

なら私が受け止めてあげる。
だから貴女も私の愛を受け止めて

私もろとも【結界術・全力魔法】に閉じ込め
『永劫火生』の強化復活で何度でも殺されてあげながら
濃厚なキスや【化術】で生やした肉棒の【串刺し・乱れ撃ち】で
媚毒の【呪詛】体液を注いだり
お尻や胸を手で【慰め・生命力吸収・大食い】



 猟兵と新たなボスゴーストとの激戦始まった千鵠百貨店屋上。オフェリアは切り飛ばされた腕を拾い、切断部にあてがって氷で接合した。ただくっつけただけにも見えるそれは、水を司るというだけあり自身の体組織さえ細かく繋げてしまえるのかすぐに元通りに自在に動かせるようになる。
 そうしてオフェリアは再び動くようになった手を凍り付いた骸骨にあて、愛でるように、あるいは自分を落ち着かせるように撫でまわす。
「苦痛を与えず快楽の中で楽園に導く私の救済ですら苦肉の策なのに、無限に殺し続ける事が貴女の愛なの?」
 その姿に、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)はオフェリアの掲げる『愛』の在り方を問う。
「ええ、そうです。あなたにも、凍るほどの愛を差し上げましょう」
 次に現れた相手もまたすべき対象と、オフェリアは氷のナイフを構え素早くドゥルールへと襲いかかった。
 それに対し、ドゥルールは避けることなく自身の守護霊を体に宿し待ち受ける。そのナイフは真っ直ぐドゥルールの急所を狙うが、刺さる瞬間体をずらしそこへの直撃だけは回避された。
 そうしてリーチの短いナイフの距離に入ったオフェリアの服に手をかけ、ドゥルールはそれを引き裂く。色の薄いオフェリアの肌が露になるが、それと同時に何本もの水の槍がドゥルールの体に突き刺さった。
 高威力の水の槍が連続で全身に突き刺さり、その体を深く穿つ。動かず張れる防御や耐性、精神力まで総動員して耐えるが、その傷は余りにも深くどう見積もっても致命傷と言わざるを得ないほどの甚大さであった。
 一瞬でボロボロになった体を強引に動かし、ドゥルールはオフェリアに縋りつく。
「そう、それでいいのです。その抱擁が愛の証」
 刺した相手が死の間際に自分に縋りついてくることは彼女にとっては慣れたことなのだろう。オフェリアは自身にもたれかかるドゥルールを振り払いもせず、抱き返すようにその背にナイフを突き立てた。
「なら私が受け止めてあげる。だから貴女も私の愛を受け止めて」
 吐血の混じる声でそう言いながら、ドゥルールは最後の力を振り絞ってオフェリアを抱きしめ、さらに周囲に結界を張る。だがそれで力尽きたと言わんばかりに、ドゥルールの体は灰となり、オフェリアの腕の中で崩れ去った。
 それを優しい目で見下ろすオフェリア。だがその目の前で、今しがた崩れた灰が盛り上がり、再び人の形を取った。
「私は過去も未来も超越した、永遠の女神」
 それは瀕死を鍵とする【永劫火生】により強化再生を遂げたドゥルール。その姿に、オフェリアはナイフを持ち上げて答えた。
「ああ、まだ愛が足りなかったのですね。申し訳ございません。今度こそきちんとし抜いて差し上げましょう」
 そう言ってドゥルールを抱きすくめより力を入れて背中からナイフを突き立て、今度は中を抉るようにナイフを捻り、かき回す。より殺意の籠った一撃を受けながらも、ドゥルールは先から隠すことなく露にされているオフェリアの肌に指を這わせ、真横にある彼女の唇に口づけた。
 オフェリア自身はそれを拒絶しないが、その代わりというかのようにまたも水の槍がドゥルールに殺到し、その体を灰に変える。
 しかしてまたその灰からドゥルールは復活し、今度は返礼と言わんばかりに自身の『槍』でオフェリアを貫きその体に卑猥な形で手を這わせた。
 そこからもオフェリアは何度となくナイフと水の槍でドゥルールの体を突き刺し破壊し、ドゥルールも繰り返し復活しながら行為を続ける。
 まさに狂気に満ちた光景であるが、一方でそれは言った通り生命力吸収を性的快楽に紛れさせ苦痛を抑えるドゥルールと、執拗に、確実に相手を殺そうとするオフェリアの愛情表現のぶつかり合い。
 ドゥルールがオフェリアの胸や尻を弄べば、オフェリアはドゥルールの胸を突き刺し、腹を切り裂く。呪詛入りの体液を注がれれば返すように水の槍がドゥルールを灰に変え、ドゥルールはそこから強化を得て立ち上がる。
 その互いの愛のぶつけ合いは、吸われた生命力がかさみオフェリアがナイフを取り落とすまで、血と水にまみれ続くのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴乃宮・影華
※アドリブ、連携OK

やぁ先輩、お久しぶりです
お察し通り運命予報的なアレでやって参りましたよ
「でもここが最終マップなのは変わってないですよ。もうひと踏ん張りです」
下がってろとは申しません、タイミング見計らってブチかまして下さい

さてボスゴーストには
E.N.M.Aが運転する『エクウス・ベルクス』に『ウルカヌスⅡ』『R.I.P』を搭載

E『……ねぇ影華ちゃん、相手人間サイズなんだけど』

構わないから撃って
昔は徒歩踏破したら報酬が増えたのに、今回は意味のわからん寝言しか貰えそうにないんだもの
あと私や先輩達の盾になってほしいから上手く走らせといて

「そう、貴女が言っているのは寝言、戯言、妄言の類ですよ――愚かしい地縛霊殺人犯さん」
何度も繰り返せるのにアイすのは愛しい彼一人だけ、
彼が目移りするかもしれない女は遠くに追いやる、
それで皆愛してるとかまったく馬鹿馬鹿しい

……これでナイフが来るようなら指定UC起動
彼女の背後に転移し『赫左』で火炎ロケットパンチです


木霊・ウタ
心情
歪んだ愛にトチ狂ってるのは
骸の海から戻って歪んじまってるのかも

何度も殺される奴も(ゴーストだけど
そして殺し続けることでしか愛を表せない奴も
どっちも哀れだ

海へと還してやろう

戦闘
氷対炎ってのも燃えるぜ

体から噴出させた炎をバーニアとして
爆音を響かせ
地に赤の軌跡を描きながら
一気に間合を詰める

ナイフや氷の攻撃に対して
爆炎スラスターによる機動で回避したり
獄炎纏う焔摩天で受けたり
そこから迸る炎で蒸発させたり
溶かしてナイフの軌道を変えさせたりして防御

愛することは殺すこと
それを誰にも与える博愛主義者だって?
看板倒れだ

延々と続くエレベータで
愛の深さを測ろうとしたり
その骸骨を延々と殺し続けてるのは
誰かから深く愛されたい
誰か一人を深く愛したいって気持ちの表れだろ

そうでなきゃ何度でも蘇らせることができる
こんなとこにいやしない
外で次々と愛することが出来た筈なのに
そうしなかった
そんなアンタで助かったぜ
サンキュ

焔刃を一閃
溶かし砕く氷ごとオフェリアを両断
紅蓮に包み海へと還す

事後
鎮魂曲を奏でる
安らかに

お疲れさん>うるみ



 乱れた体を自ら水と氷で包み、それによって外面上は傷のない状況に戻るオフェリア。だが、荒く息をつくその様子は明らかに彼女のエネルギー、存在を保つ力が失われていることを示していた。
 それでも相手が嘗てのボスより強いと見えることと知らない能力を多用することを警戒し、能力者宮古島・うるみは迂闊に踏み込むことを躊躇っている。
 その彼女に、知った声が声をかけた。
「やぁ先輩、お久しぶりです。お察し通り運命予報的なアレでやって参りましたよ」
 鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は猟兵を見たうるみが察したものがほぼ正解だと告げる。
「でもここが最終マップなのは変わってないですよ。もうひと踏ん張りです」
 そして、ボスが変わってもここが決戦の場所なのは同じだということも。敵は確かに強いが、ここを退ければそれ以上はない。そう言う意味ではかつてと同じと、過去と今の両方を知る影華はうるみに教えた。
 その目の前で、オフェリアは自分を落ち着かせるように氷漬けの骸骨を撫で、そして砕いている。その姿を見て、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は思う。
「歪んだ愛にトチ狂ってるのは。骸の海から戻って歪んじまってるのかも」
 かつてのゴーストも生前の意思を失うものも多かったが、オブリビオンもまた全ての存在が世界の破壊を目的として書き換えられる。かつて清い志を持ったものでさえ暴走する妄念の塊と化したものを幾度となく見てきたウタは、オフェリアもまたそうではないかと想像した。
 一方で狂気や悪逆の果て、なるべくしてなるかのようにオブリビオンと化すものもまたいる。オフェリアの愛の形が生前からこうであったなら、あるいは彼女の今の姿も当然の帰結であったのかもしれない。
「何度も殺される奴も、そして殺し続けることでしか愛を表せない奴も、どっちも哀れだ。海へと還してやろう」
 それでも、誰しもが持つはずの愛の感情をこのような形でしか表せない宿業を持って生きていた者ならば、それは生まれた時から悲劇が決まっていたこと。だが哀れみの言葉もオフェリアにとっては自身を否定するものにしか映らず、その目には怒りが満ちていく。
「哀れなど……全てを愛することが私の喜びであり使命。愛を拒むあなた方の方が私から見ればずっと哀れです。あなた方にも愛の祝福を……!」
 言いながら、ナイフを構えるオフェリア。それを待ち構えるのは人ではなく、ガトリングガンとレーザーキャノンを搭載した巨大な装甲車。
『……ねぇ影華ちゃん、相手人間サイズなんだけど』
 その装甲車から聞こえる声の主は、小型機械から『エクウス・ベルクス』にボディを移したAI『E.N.M.A』。戦闘機械を統括する彼女をして若干引き気味のその口調に、しかし影華の表情は動かない。
「構わないから撃って。昔は徒歩踏破したら報酬が増えたのに、今回は意味のわからん寝言しか貰えそうにないんだもの。あと私や先輩達の盾になってほしいから上手く走らせといて」
 かつての時代、ゴーストタウンで長い長い階段を抜けた先には高品質の報酬が約束されていた。だが、今回はその先にあるのはゴーストの戯言だけだったと、影華はつまらなさそうに言う。それ以上はE.N.M.Aも何も言わず、二つの兵器を相手の足元を払うように、一直線での接近を拒む弾幕として撃ちかけた。
「申し訳ありません……あなたのおっしゃることがよく理解できないのですが」
 その弾幕をかわしながら、オフェリアは低く重い声で言う。
「そう、貴女が言っているのは寝言、戯言、妄言の類ですよ――愚かしい地縛霊殺人犯さん」
 重なる否定に、オフェリアは弾幕を飛び越えるよう一気に駆け出した。その歩みを、巻き上がる獄炎が阻む。
「氷対炎ってのも燃えるぜ」
 それは自らの宿す炎をバーニアのように噴射させ、爆音を響かせ地に赤の軌跡を描きながら直進したウタ。氷でできた短いナイフと獄炎纏う鉄塊剣のぶつかり合いは一見勝負にもならないように見えるが、続けて射出された水の槍がその炎を沈めにかかる。高命中のそれに対しては回避はせず、さらに焔を燃え上がらせることで蒸発を狙い威力を弱めるがそれでも体に突き立てるだけの鋭さは残り、ウタの体を傷つけていく。
 軽減してなお浅からぬダメージを与えてくるオフェリアの攻撃を身に受け、しかしウタはそれに屈さない。
「愛することは殺すこと。それを誰にも与える博愛主義者だって? 看板倒れだ」
 否定されることを嫌うオフェリアはその言葉に苛立ったか一度引き、再度ナイフを凍らせ直して一度なぎ払う。だが今度はそこに熱を集中させナイフの軌道を乱しつつ、爆炎をスラスターのように使って回避した。
「延々と続くエレベータで愛の深さを測ろうとしたりその骸骨を延々と殺し続けてるのは、誰かから深く愛されたい、誰か一人を深く愛したいって気持ちの表れだろ」
 全てを平等に愛すると言いつつ他者を試す、あるいは拒むような仕掛けを作り、そしてその果てにいる自分は一人の男を何度でも繰り返し殺し続けている。自分て言っていることとは大いに矛盾したその行動は今までも多くの猟兵が指摘してきたことだ。
 そしてそれに対して、彼女は言葉ではなく常にナイフで答えてきた。それは議論を拒み、説き伏せることを放棄する……言い返せないと自分で分かっていることの表れか。
「そうでなきゃ何度でも蘇らせることができるこんなとこにいやしない。外で次々と愛することが出来た筈なのに
そうしなかった。そんなアンタで助かったぜ、サンキュ」
 彼女が空飛ぶ船に乗って外を彷徨いこれだけの力を本当に無差別に振りまいたとしたら、その被害の規模はどれほどになっただろう。彼女が自分の言葉を自分で裏切っていたから、無用な被害が抑えられた。そのことに、ウタは純粋に礼を言う。
 それでも、猟兵からオブリビオンに手向けられるのはこれしかないと、焔刃を一閃しオフェリアの冷たい体を炎で包み込む。
「……私はこちらの方ほど優しくありません」
 燃えゆくオフェリアに、影華はやはり冷たい目を向ける。
「何度も繰り返せるのにアイすのは愛しい彼一人だけ、彼が目移りするかもしれない女は遠くに追いやる、それで皆愛してるとかまったく馬鹿馬鹿しい」
 階下にたむろしていた、腐り果てても生前の美しさは察せるゾンビホステスの群れ。4階まで分布していたということは普通の階段程度なら上れるはずの彼女たちを、決して越えられない階段でせき止め、一方で出口だけは一応付けておくという言い訳がましさ。
 最早取り繕いもしない。全ての力を振り絞ったか、炎の中でさえ形を保つほどの氷の刃を手に表し、二つの兵器の斉射さえ踏み越えて一直線に影華に迫る。
「彼の力を以て世界を開く――皆、私を連れて行って!」
 振るわれたその刃が影華を鋭く切り裂かんとしたその瞬間、彼女の姿が突然掻き消えた。
 短いナイフが空を切る。その切っ先の少し先にいたのは、巨大なハンマーを構えた小柄な女。
「そっち、行きますッス!」
 うるみがナイフのリーチの外からハンマーを力いっぱい振るい、オフェリアの体を反対方向へ打ち返した。その体が吹き飛んでいく先には、【蟲喰孔・瞬間転移】でそちらへ瞬間移動した影華だ。
「受け取ります」
 影華は黒燐創鋼鎧『赫左』を付けた左腕を引き、火炎放射とロケットパンチの二つの機能をフル稼働させて燃え盛るロケットパンチでオフェリアを受け止めた。
 吹き飛ばされる真逆の方向からのエネルギーをまともに受け止め、獄炎の上から紅炎を重ねられてオフェリアの全身が激しく燃え上がる。
「あ、あぁ……」
 オフェリアの体に氷が割れるようにひびが入り、水が乾くように蒸発し消えていく。その炎の中でオフェリアが最後の力で行うことは一人でも多く道連れを狙うことではなく、何度も愛した人をもう一度呼び出すこと。
 燃え盛る炎の中にも現れたその愛する者を抱きしめ、オフェリアは炎の中へと消えていった。二人で死出の旅へと立ったその姿に、ウタは鎮魂の歌を捧げる。
「あの手の輩に優しくするとつけあがりますよ」
「それでも言ってやりたいのさ」
 厭悪と憐憫、向けた感情は真逆だが、二人が見たオフェリアの姿は本質的には同じ。それを指摘することで彼女を骸の海に還せたのなら、そこに何を思うかは個人の自由だろう。
「お疲れ様でしたッス! 今度も助けてもらって、本当にありがとうございましたッス!」
 ゴーストタウン全体が一時的にでも沈静化していくのを感じボスの撃破を確認し、うるみも二人に声をかける。
「ああ、そっちもお疲れさん」
「はいッス。ところで二人とも、なんかすっごい強くなってないッスか? レベル的なやつじゃなくなんていうかメガリスぶっ壊した的な……」
「ああ、まああれほど大したものではありませんが」
 オーバーロード。実力以上の力を引き出すそれを何となく程度に察せるのも、能力者の経験故かと影華は察する。
「前もそうだったッスけど、やっぱ色々変わってんスね……もう自分の知ってることなんてあんま役に立たないッス」
 最早かつての知識や経験だけでやっていける世界ではなくなった。それを今回の事で深く刻み込まれたのだろう。だが、だからと言って目的を諦める彼女ではない。
「自分もまた修行とかした方がいいかもしんないッスね。とりあえずはエスカレーターを真っ直ぐぶち抜く工事が出来るくらいのパワーつけたいッス!」
 そう言うのは業者に任せれば……と言っても聞くまい。影華とウタは年上であるはずの彼女の言動に軽く顔を見合わせ苦笑する。

 オブリビオンとゴーストの因果関係。半年前にようやく滅されたこの世界の大敵の遺した言葉。直近で発見されたシルバーレインとまるで異なる、だが極めて近くも見える新たな世界。世界を取り巻く謎は増え、変わり続ける。だが誤魔化さず、偽らず進んでいけば、目的にはきっとたどり着けるはずだ。たとえどんなに彷徨おうとも。

 千鵠百貨店、CLEAR!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年11月05日


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#シルバーレイン
#ゴーストタウン
#千鵠百貨店


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ロイド・テスタメントです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト