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月見と浴衣と東方親分

#カクリヨファンタズム #猟書家の侵攻 #猟書家 #魔王『神野悪五郎』 #山本五郎左衛門


「猟兵さん達は今年も浴衣コンテストをしたにゃ?
 それなら、浴衣でお月見をして欲しいにゃ!」
 そんな声をかけてきたのは、カクリヨファンタズムの東方親分『山本五郎左衛門』。
 今年の正月には『幽世大吟醸』を始めとした様々な品をデリバリーで差し入れまでしてくれた、宴大好きな親分である。
 とはいえ、これは単なるお月見の誘いではないようで。
「山本親分に挑もうとしている猟書家の動きが見えたんだよ」
 苦笑しながら、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)が補足した。
 現れるのは猟書家であるオブリビオン、魔王『神野悪五郎』。
 蒐集した百物語の中から、物語の内容に応じた妖怪の幻影を召喚する能力を持つ神野悪五郎は、最恐の百物語から『幻影百鬼夜行』を生み出したのだという。
 その狙いは、山本五郎左衛門その人。
 1体1体が超強力な『カタストロフの幼生』である幻影達の軍団に一気に攻め込まれては、いかな東方親分といえども成すすべはない。
 けれども。
「幻影百鬼夜行は、幻影であるがゆえに存在が不安定でね。
 出現直後の今であれば『賑やかなお月見』によって戦わずとも消滅させられるそうだ」
 というわけで。
「お月見するにゃ!」
 山本親分が酒瓶片手ににっこにこで尻尾を振ってます。
 猟兵達が守ってくれるなら大丈夫という信頼、ていうか、ただただ宴会できるのが楽しいってだけに見えるのですが……まあ、それは気のせいでしょう。多分。
「山本親分がいれば、神野悪五郎も幻影百鬼夜行も現れる。
 言ってしまえば囮みたいなもんだから、守ってやっておくれ」
 早く早くと転送先で手招きしている山本親分に、夏梅は苦笑を深めながらも、大事なことだからと付け加えて。
 いつでもどうぞとばかりに示された、その先で。
「さっきも言ったけれど、折角だから浴衣で来るにゃ!
 儂は猟兵さん達の浴衣姿がまた見たいにゃ!」
 もう宴が始まっているかのようなテンションで、山本親分がはしゃいでいた。


佐和
 こんにちは。サワです。
 山本親分がただの宴好きになってる気がします。

 当シナリオには以下の特別なプレイングボーナスが設定されています。
 それに基づく行動をすると判定が有利になります。

 【プレイングボーナス】(全章共通)
 幻影百鬼夜行の威嚇や攻撃を気にしないようにしつつ、お月見を全力で楽しむ。

 というわけで、第1章が日常、第2章がボス戦という構成ですが、全章通してお月見してるだけで終わることもできます。
 戦闘プレイングなしでも丈夫です。ユーベルコードの指定だけとかでもOK。
 誰も戦う気がなくても、なんかそれっぽく決着すると思います。

 山本親分は、お声がけがあると嬉々としてやってきます。
 賑やかしに必要でしたら呼んであげてください。
 頼めば、多分、またいろいろと用意してくれるでしょう。正月のように。
 尚、特に関わらないで、のんびりお月見を楽しむのもありです。
 楽しみ方は人それぞれですから、賑やかでないお月見も大丈夫。

 それでは、浴衣でのお月見を、どうぞ。
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第1章 日常 『襲われてるけどお月見しよう』

POW   :    身体を張って攻撃を受け止めつつ、気にしていないふりをして月見を楽しむ

SPD   :    幻影を無視しつつ、賑やかな歌や踊りでお祭り気分を盛り上げる。

WIZ   :    幻影を掻い潜り、お月見にふさわしいお菓子やお酒を用意する。

👑5
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山立・亨次
コンテストにゃ参加しちゃいないが
甚平を着てきた(藍染、背中に龍と桜柄)
……これでいいのか?

で、だ
兎に角月見団子を量産する
食いきれなかったら俺が食うから安心しろ(男子高校生胃袋)
残すと罰が当たるからな

食う前にはいただきますと
食い終えたらご馳走様も忘れない

万が一山本親分とやらに何か害がありそうなら
それとなく背中や肩で受け止めつつ
……アンタも食うか?
量多いからそのまま持って行っていいぞ
(山本親分に月見団子の乗った三方を差し出し)

……しかし、ちゃんと準備してやる月見なんて滅茶苦茶久しぶりだな
中秋の名月も思いっきりスルーしたしな
偶には伝統に則るのも悪くねえか

(基本無表情で寡黙、考えを余り口に出さない)



 よくこねただんご粉を適当な量に分けたら、掌で転がすようにして丸い形に整える。お湯を沸騰させた大きな鍋に、少し潰しながら次々と放り込み、茹でること数分。浮き上がってきたら掬い上げて冷水へ。水気を切って並べ、表面を乾かせば。
 月見団子のできあがり。
 作業工程は単純で、出来上がったの定番のものではあるのだが。
「すごい量にゃぁ……」
 数えきれない程並んだそれに、さすがの山本五郎左衛門も目を丸くした。
「……アンタも食うか?」
 てきぱきと月見団子を量産していた山立・亨次(人間の猟理師・f37635)は、そんな呆れたような感心したような声に、無表情のまま顔を向け。
 三方に団子を積み上げていく。
 十五夜なら15個、十三夜なら13個と言われ。10月なら十三夜の方だろうとは思うけれども。やたら沢山あるので15個を形よく重ねて。
 出来上がるなり、山本親分へずいっと差し出し、渡した。
 そしてすぐに次の三方を手にして、また積み上げていくけれど。
 まだまだ減ったように感じない程の数の月見団子。
「食べきれるのかにゃ?」
 心配もごもっともなところだろう。
 だが、亨次は黙々と、月見団子を完成させていって。
(「食いきれなかったら俺が食う」)
 心配する必要はない、と男子高校生胃袋の容量を密かに誇る。
(「残すと罰が当たるからな」)
 猟理師として、早くて美味しい、その腕を揮いながら。
 食べ物を大事にする、人間として大切な心も抱き。
 単調な作業なはずなのにどこか楽しく見える工程を続けていった。
 それを、山本親分は飽きもせずじっと見つめていて。
 無防備なその背中に、じわり、と妖しい幻影が近づこうとしてくる。
 亨次はさり気なく作業の向きを変え、山本親分を誘導し、幻影から遠ざけた。
 そして、月見の準備に没頭していけば。
 いつの間にやら、幻影は形を保てなくなったかのように淡い影へと崩れていく。
(「……しかし、ちゃんと準備してやる月見なんて滅茶苦茶久しぶりだな」)
 安堵と共に、空を見上げ。
 中秋の名月も、知ってはいたが思いっきりスルーしたなと、ふと思った。
 カクリヨファンタズムに浮かぶ大きな大きな円い月が亨次を見下ろしていて。
(「偶には伝統に則るのも悪くねえか」)
 どこか懐かしい淡い輝きを魅せる月に、口元だけで微かに微笑む。
 気付けば、亨次の作業をじっと見ていた山本親分が、にまにまと上機嫌に笑っていた。
 いや、見ているのは団子を作る手元ではなく。
 亨次の姿そのもの、だったから。
 そういえば、浴衣コンテストと騒いでいると聞いて、甚平を着て来たのだと思い出し、亨次は自身の姿を改めて見やる。
 背中に龍が舞い桜が散る、藍染めの甚平。
 コンテスト用の浴衣ではない、というか、コンテストに参加すらしなかったため、華やかさには欠ける平凡なものだと亨次は思っていたのだけれど。
「……これでよかったのか?」
「充分すぎるにゃ」
 聞けば満足そうな頷きが返ってくるから。
 着てきてよかった、とそっと思う。
 そうこうするうちに、大量の三方に月見団子が積み上がって。
 山本親分にしたように分けていっても、かなりの量が亨次の周囲に残ったから。
 調理器具を簡単に片づけてから、亨次は団子の傍にどかっと座ると。
 改めて、また月を見上げて。
「いただきます」
 団子に手を伸ばす前にそっと呟いた声に、山本親分がまたにまにまと笑っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨倉・桜木
※UCは賑やかし。

仕立てたばかりの浴衣を纏い、喜んでお誘いに乗じるとしよう。つまりは外野を気にせず盛り上がれ、ということだろう?任せたまえ。歌え騒げと盛り立てるのは得意とするところさ。

それじゃあ早速、月見に春の彩りと一曲歌は如何かな?八重紅枝垂の花吹雪は月に添える程度に控えめに、紡ぐ歌は春の歓びから秋の実りと月を愛でるものに。

刺さる殺気も敵意も歌と三味線の音色で誤魔化してしまえばいいさ。【歌唱】【楽器演奏】

山本親分、即興で構わないから舞をひとさし、頂戴しても?なんなら合わせて歌ってくれるか、合いの手でも構わないさ。

歌えや歌え、呑めや騒げや、陽すら恥じらう見事な月を皆で愛でて楽しもうじゃないか。



 とんとんとんっと楽し気に、弾むような足取りで月見の誘いに乗じたのは、美しい桜色の長髪を靡かせた雨倉・桜木(花残華・f35324)。
 笑みを湛えた赤い瞳でぐるりと辺りを見回して。
 仕立てたばかりの浴衣を魅せるように、踊るような動きを見せる。
 首元や手首をきちっと止めたサクラミラージュを思わせる白いシャツの上に纏うのは、瑠璃色の浴衣。袂や裾、左肩の部分に、細い葉のような模様を刻んだだけのシンプルなデザインに、臙脂の帯と金の帯締めを重ねた、落ち着いたものだけれど。
 長く揺れるままの桜色の髪が。桜の精として頭部で枝垂れる八重紅の桜の花が。
 とても引き立つ浴衣ではあったから。
 桜木のために作られたと言っても過言ではないであろう浴衣に、また上機嫌に、くるりくるりと踊り歩く。
 そんな楽し気な道行きの最中。
 桜木は、グリモア猟兵からの説明と、目に見える光景とを照らし合わせると。
「つまりは外野を気にせず盛り上がれ、ということだろう?」
 難しい事は不要とばかりに、あっさりと結論を導き出し。
「任せたまえ。歌え騒げと盛り立てるのは得意とするところさ」
 適当な場所でその足を止め。
「それじゃあ早速、月見に春の彩りと一曲歌は如何かな?」
 手にしたのは、愛用の三味線。
 見つけた段差に寄りかかるように軽く腰掛け。右足をちょっと高くすると、亀甲柄に菊紋を入れた華やかな胴を、慣れた動きで安定させる。
 半ば立ったままのような気楽な姿勢で、早速、と弦を弾き始める白い撥。
 古く懐かしくも華やかな音色が、辺りに響き渡った。
 紡ぐ歌は、春の歓び。桜木の髪色や八重紅枝垂に似合う美しき旋律。
 まずは、人々を惹きつけ、賑やかに場を盛り上げて。
 忍び寄る幻影百鬼夜行からの、刺さるような殺意や敵意を、歌と三味線の音色で誤魔化し、かき消し、薄めていく。
 そのうちに、幻影そのものの姿が薄まり。姿形を保てなくなったかのように崩れていくのがちらりと見え。
 脅威を退けられていることを実感しながらも。
 桜木が見上げるのは、見事な月夜。
 そこに響く春の訪れを歓ぶ賛歌に、緋桜の花弁が舞い始めれば。
 八重紅枝垂の花吹雪が月に添える程度になるよう、控えめに調整して。
 歌も、秋の実りと月を愛でるものに変えていく。
 春から少し落ち着いた、でも充分に華やかで賑やかな、収穫の歓びを讃える旋律。
 歌えや歌え。
 呑めや騒げや。
 陽すら恥じらう見事な月を、引き立てる三味の音。
 いつしかその音色に、ゆらゆらと何本もの猫尻尾が揺れていて。
 ふっと微笑み振り向けば、月見団子の三方を手にした山本五郎左衛門の姿がある。
 どこかうずうずしているような山本親分に、桜木は笑みを深くして。
「即興で構わないから舞をひとさし、頂戴しても?
 なんなら合わせて歌ってくれるか、合いの手でも構わないさ」
「任せるにゃ!」
 誘えば、ぴょんっと飛び出し。陽気に身体を動かし始めた。
 美しいというよりは、とても楽しそうなその舞いに。
 桜木は、三味線の音色をちょっとだけ、山本親分に合わせるように変えて。
 空に浮かぶ大きな月を。
 微かに混じる桜の花を。
 そして、楽しむ山本親分の姿を。
 より引き立てるように、秋の音色を奏で続け。
 ふと、山本親分が置いていった三方に気が付くと。
 音を乱すことなく器用に団子を1つ摘まんで。
 ぱくっと定番のお月見を味わい、桜木はまた、笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】臙脂色の浴衣姿
なるほどねぇ、そんな梓にぴったりなものがあるよ
じゃじゃーんと取り出すのは暇潰しおもちゃセット

何がいいかな~ここは定番のトランプかな~
確かに二人だとちょっと味気なさそうだね
梓弱いからすぐに終わりそうだし(小声

よし、それじゃあ山本親分も呼んで3人でトランプバトルしよう
負けた人はお月見にぴったりなおつまみを作るってことで

ババ抜き、七並べ、神経衰弱、大富豪…見事に梓の全敗
ここまで来ると才能かな??
とにかく、約束通り梓がおつまみ作ってね
梓の作る料理はどれも絶品なんだよ
山本親分の持ってるお酒にもぴったりなおつまみを作ってくれるはず

梓の作ってくれた料理と共に、皆で大宴会しましたとさ


乱獅子・梓
【不死蝶】灰色の浴衣姿
山本親分が狙われているのが分かっているのに
気にせず月見しろ、ってのもなかなか難しいんだが…
何か気が紛れるものがあればいいんだが

月の下で浴衣姿でトランプバトル…なんだそのシュールな光景
仮にやるとしても、俺とお前だけじゃ盛り上がりに欠けるだろう
ん?何か言ったか??

なるほど、守護対象の山本親分が傍にいれば安心出来るか
おい!その条件、どう考えても俺を狙い撃ちしてるだろ!
絶対綾に一泡吹かせてやる…!

負けた……(お約束)
クッ、約束した覚えは無いが
綾からも山本親分からも期待の眼差しを向けられたら断るに断れない…!

仕方ないなとUC発動
様々な酒のつまみと、ついでにデザートに団子を作っていく



 大きな大きな月を見上げていると、どこからか三味の音が響いて来る。
 月見に良い風情だと思いながらも、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、サングラスの下で、むむむ、と眉を寄せて。
「山本親分が狙われているのが分かっているのに、気にせず月見しろ、ってのもなかなか難しいんだが……」
 腕を組むその姿は、灰色の浴衣を纏っていた。
 銀鼠色の薄い灰の地に、裾や袂、左肩で、細長い草を思わせる丸みを帯びた藍鼠色の線を重ねた、爽やかな秋の草原を思わせる浴衣。淡い印象を引き締める藍色の帯には、髪色に近い白銀の帯紐が結ばれている。
 東方親分こと山本五郎左衛門のリクエストとあれば応えぬわけにもいかないと、しっかり着て来た和装だけれど。
 肩に乗った仔竜、氷竜の零のように、普段と違う格好に喜び楽しむ気分になれず。
「なるほどねぇ」
 難しい顔をしている梓を、生真面目だなぁ、と思いながら。こちらは炎竜の焔を頭に乗せた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が、赤いサングラスの下で苦笑した。
 そんな綾ももちろん、臙脂色の浴衣姿。
 濃淡で雲のような模様を描いた中を、仄かに赤を映した生成り色のトンボが小さく飛んでいる、秋の夕焼け空のような光景を。髪色と同じ漆黒の帯で結び、鉛色の帯紐を長く垂らして遊ばせている。
 せっかく格好まで準備万端に月見をしに来たのだから、気兼ねなく楽しめばいいのにと思ってしまう綾だけれど。
 梓の眉間の皺は消えるどころか深くなっていくから。
「何か気が紛れるものがあればいいんだが……」
「そんな梓にぴったりなものがあるよ」
 漏れ出た言葉にそれならばと、綾が取り出したのは暇つぶしおもちゃセット。
 じゃじゃーん、と楽し気にいろいろ並べて目移りし。
「何がいいかな~。ここは定番のトランプかな~」
「月の下で浴衣姿でトランプバトル……? なんだそのシュールな光景」
 覗き込んで来る梓に、よしよし、と思いながらトランプを手に取る。
「仮にやるとしても、俺とお前だけじゃ盛り上がりに欠けるだろう」
「確かに、2人だとちょっと味気なさそうだね。
 ……梓弱いからすぐに終わりそうだし」
「ん? 何か言ったか?」
「何もー?」
 にこにこ誤魔化しながらも、呟きは本音だったから、綾はどうしようか考えて。
 目に留まったのは、踊るような足取りの山本五郎左衛門。
「よし、それじゃあ山本親分も呼んで3人でトランプバトルしよう」
「なるほど、守護対象の山本親分が傍にいれば安心出来るか」
 綾の提案に、その意図に気付かぬまでも、別の利を見出して梓は賛同し。
 ぶんぶん手を振る綾に気付いて、山本親分がやってくる。
「ふむふむ。トランプバトルとは面白そうにゃ」
「そうそう。それで、負けた人はお月見にぴったりなおつまみを作る、ってことで」
「おい! その条件、どう考えても俺を狙い撃ちしてるだろ!」
 説明されたルールに、料理上手な梓が即座に反応するけれども。
「えー。梓が勝てばいいんだよ。負けたらちゃんとおつまみ作るよ俺」
 普段料理なんて滅多にしない綾の、自分が負けるなんて欠片も思っていないような、にやにや顔が返って来るから。
「絶対綾に一泡吹かせてやる……!」
 大トランプ大会が、始まった。
 ババ抜きから始まり、七並べ、神経衰弱、大富豪、と数多の遊びが繰り広げられるけれども。早々にババを引いては誰にも渡せず、両端の数字ばかりを手元に引き寄せ、捲ったカードがことごとく次の手番へのヒントとなり、貧民から抜け出せなかった梓は。
「負けた……」
 お約束のように、全敗を喫していた。
「天晴すぎるにゃ……」
「ここまで来ると才能かな?」
 さすがの山本親分も驚く結果に、綾も、予想を裏切らなすぎる相棒に苦笑する。
 落ち込んでがっくり項垂れる梓を、仔竜達が慰めるように見上げていました。
 しかし勝負は勝負。
 そして、綾が望んだ通りの結末ではあったから。
「とにかく、約束通り梓がおつまみ作ってね」
 焔と零をひょいと抱え上げた綾は、満面の笑みを浮かべて見せた。
 しかし、打ちひしがれている梓に、山本親分は申し訳なさそうな顔を見せ。
「でも、いいのかにゃあ……」
「あのね、梓の作る料理はどれも絶品なんだよ。
 山本親分の持ってるお酒にもぴったりなおつまみを作ってくれるはず!」
「そ、それは楽しみにゃ!」
 だがあっさりと綾に懐柔され、梓に期待の眼差しを向けてくる。
「クッ、約束した覚えは無いが……」
 そんな純粋な瞳に、梓が勝てるはずもなく。
 隣で喜んでいる綾にも、悔しいと思いながらもどこか嬉しさがあるから。
 仕方ない、と発動するのはユーベルコード『ウォー・アイ・満漢全席!』。
 料理の腕を補うというよりは、早く大量に作って、待たせないようにという配慮。
 しぶしぶなわりには全力で期待に応える梓です。
 というわけで、あっという間に、酒のつまみに合うような様々な料理と、ついでにデザート、月見なら忘れちゃいけない月見団子を作り上げれば。
「やったー! 宴会だー!」
「これは幽世大吟醸がすすむにゃ」
「あっ、いいないいな。俺も飲みたい!」
「綾は駄目だ! 焔と零も、飲むんじゃありません!」
 わちゃわちゃと一気に宴席は賑わって。
 盛り上がっていく大宴会。
 それを遠巻きに見ていた幻影が、崩れるように姿を消していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、アヒルさんの視線が痛いです。
今年もアヒルさんの浴衣が無いのは何故かって、そんなことを言われても困りますよ。
今年は会場がUDCアースでしたから、戦場傭兵さんに合わせて迷彩柄にしたんですから。
そんなことよりもお月見を楽しみましょうね。
ほら、お月見団子もいっぱいありますから、アヒルさんも機嫌を直してください。
この場はお月見団子に免じて機嫌を直すけど、覚えてろよって、アヒルさん何か企んでますか?
何か嫌な予感しかしないんですけど、アヒルさんいったい何をするつもりなんですか?アヒルさんさーん。



 見上げた空には大きな大きな円い月。
 そこにどこからかふわりと紅桜の花弁が数枚、舞い込んでくる。
 聞こえてくるのは三味線と竪琴の音色。そして賑やかで楽し気な人々の声。
 傍らには、沢山作ったからともらった月見団子の三方が置いてあって。
 穏やかな月見の席が出来上がっていたけれども。
「ふええ、アヒルさんの視線が痛いです」
 ちょこんと座ったフリル・インレアン(大きな帽子の物語👒 🦆 はまだ終わらない・f19557)は、両手の上に座るアヒルちゃん型のガジェットの方を見れないでいた。
「今年もアヒルさんの浴衣が無いのは何故か、って……
 そんなことを言われても困りますよ」
 いつも通り、レースの前掛けをつけただけのガジェットとは違い。
 フリルの服装は、濃く深い緑色の浴衣。飴玉のような帯留めを紐に通した、無地の金色の帯と合わせれば、仄かに華やかながらも大人しい印象だけれども。
 遠目には無地に見えた浴衣地には、緑色の濃淡で迷彩模様が施されていて。
「戦場傭兵さんに合わせて迷彩柄にしたんです」
 今年の浴衣コンテスト会場に合わせたコンセプトを披露すれば。
 手の上からガジェットが飛び上がり、フリルの額を突いた。
「ふええ……」
 帯と同じ金色のリボンを添えた、浴衣と同じ迷彩な緑色のベレー帽が、ガジェットのぶつかった勢いで落ちかけるのを、慌てて押さえてから。
 痛む額をさすりさすり。
「そんなことよりもお月見を楽しみましょうね。
 ほら、お月見団子もいっぱいありますから、アヒルさんも機嫌を直してください」
 これ以上突かれないようにと、話題を変えるように、団子が積み上げられた三方の近くへとガジェットを差し出した。
 勧めながら、フリルもそっと団子を1つ手に取って。
 小さく齧るようにして食べれば、もちもちっとした食感と共に淡い甘さが広がって。
 赤い瞳にふっと笑みが浮かぶ。
 くるりと振り返ったガジェットは、そんなフリルを見上げて。
 強い声色で、があ、と鳴き。
「この場はお月見団子に免じて機嫌を直すけど、覚えてろよ……って、アヒルさん何か企んでますか?」
 びくっと身体を震わせたフリルは、恐る恐るガジェットを見やる。
 しかしガジェットは、それ以上何も言わずに背を向けて。団子まみれの黄色いくちばしを、食べる仕草でだけに開閉させ。
「何か嫌な予感しかしないんですけど……
 アヒルさん、いったい何をするつもりなんですか?」
 不安気なフリルの声に、もう振り向きすらしないまま。
 いつの間にか、団子の代わりに、三方の上に乗っていた。
「アヒルさーん!?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
親分さんは役得だね
必要な事ではあるし危険が無い訳じゃないから
憚る事は無いんだけどね

という訳で僕は紺色の浴衣で参加
折角だから日本酒持っていこうか
肴は何にしようかな

どう見ても飲む気満々ですの
緊張感が感じられませんの
ちなみに私はフリルのついた浴衣で参加しますの

UDCアースじゃ飲んでると目立つしね
一々免許証見せて年齢説明するのも面倒なんだよ
ここなら容姿で気にする人はいないし

真空パックの鰹のたたきを持ち込んで
その場で切って肴にしよう
親分さんにも声をかけてみようかな

お酒を飲み比べたりおつまみを交換したりしつつ
月を見たりお酒の感想を言ったりして楽しもう

はぁ、仕方ありませんの
私は皆様の浴衣姿を楽しむとしますの



「親分さんは役得だね」
 適当な場所に腰掛けた佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、円い月を見上げていた視線を自身の姿へと落とした。
 動きに合わせてさらりと流れる金髪は、紺色のゴムでさっとまとめたポニーテールにして。うっすらと縦縞が見える紺色の浴衣も、締める水色の帯もシンプルに。どちらかと言えば男性用に見える地味なデザイン。
 それでもいつもと違う服装は、それだけで気持ちが華やぐし。
 何度も来たこの世界を、新鮮な気持ちで楽しむことができるから。
 要望に応えてよかった、と思うけれども。
 大事に集ったはずなのに、遊びにきたような格好は、少し場違いな気は、する。
「必要な事ではあるし、危険が無い訳じゃないから、憚る事は無いんだけど」
 ふう、と複雑なため息をついた晶は、また月を見上げてから。
 用意してきた荷物に手を伸ばした。
「肴は何にしようかな」
「どう見ても飲む気満々ですの。緊張感が感じられませんの」
 なんだかんだと言いながらも楽しんでいる様子に、呆れたような声が飛ぶ。
 見上げれば、晶と融合している邪神の分霊が、晶と瓜二つの少女の姿で立っていて。
 見下ろす青い瞳には、非難するような色が見えた。
 けれども、その服装は晶と同じく浴衣姿。幾重にも布を重ね、フリルで縁取った裾は、ふんわり広がるスカートのようで。ゆったりした袖から伸びる手には手袋をつけ、帯にレースを重ね、襟や肩口にもフリルを添えた、どこか洋風な改造浴衣ではあるけれど。
 晶以上に華やかで、楽し気な姿だったから。
 晶は分霊の非難を聞き流し、上機嫌に尻尾を揺らしてこちらへ歩いてくる山本五郎左衛門へと声をかけた。
「親分さんも、一緒にどうかな?」
「むむっ。UDCアースの日本酒ですにゃ!?」
 言いながら掲げた酒瓶に、即座に反応して近づいてくる山本親分。
 どう見ても少女で未成年な容姿の晶なので、UDCアースであったならば、こんな誘いはありとあらゆる方面から怒られるものだろう。
 だが、晶はしっかり成人していて。すでに齢28を数える大人。
 免許証を見せて年齢証明すれば、怒られることもないのだけれど。
 それは一々面倒なので。
 こうして容姿を気にせず酒の話ができるのは、異世界様様といったところ。
 もちろん山本親分も、晶を大人としっかり見極めてくれていたから。
 余計な問答に時間を割かれることもなく。
 早々に、晶の差し出した酒瓶と交換するかのように、自身の酒も出してくれる。
「へえ、これが幽世大吟醸か」
「そうですにゃ。妥協を許さない米泥棒妖怪が、その厳しい審美眼で選び抜いて盗んだ米だけで造った、カクリヨファンタズムの銘酒ですにゃ!」
「……うん。流石に美味しいね。
 肴は……鰹のたたきなんてどうかな」
 増える酒を味わい、喜びながら、晶も持ち込んでいた真空パックを取り出して。その場で開封、手早く切って、さあどうぞと勧めれば。山本親分のほんのり赤く染まってきた頬がにんまりと綻んでいく。
 晶も鰹を摘まんで、またお酒を傾けて。
 わいわいと弾んでいく会話に。
「はぁ、仕方ありませんの」
 一歩引いて眺めていた分霊は、退屈そうに立ち上がる。
「私は皆様の浴衣姿を楽しむとしますの」
 そしてくるりと晶に背を向けた分霊は。
 ゆったりとした袂と、腰の大きなリボンを揺らしながら、月の下を歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
【翼狐】
※2021年の浴衣

お月見だ!
先輩、お姉さん、こんばんは!
月があるとウキウキしませんか?

先輩、浴衣カッコいい!
可愛いのも似合うけど、黒も似合いますね!
あと、兎がいる。可愛いです!
お姉さんは、明るい色がいっぱいで、やっぱり綺麗です!

チィはご飯の時間だな。
月光浴しておいで。
人にイタズラしたらダメだぞ。

俺、お菓子持ってきたんです。
ジャガルコとか、アーモンドゥチョコとか。
一緒に食べましょ!

飲み物はシュワシュワのやつを。
アルコール抜きに…
先輩も、お姉さんも、ありがとうございます!
俺も果実酒のやつ飲みます!

あ、山本親分!
久しぶりです!お邪魔してます!

親分、先輩とお姉さんのお菓子、美味いんですよ!


栗花落・澪
【翼狐】
※2022浴衣

お月見、僕も好きだよ
姉さんもね

え、そう?
えへへ…姉さんには秘密にしてほしいんだけど
僕の趣味って本来こういうのなんだよね…
あ、兎は別だけど(こそこそ

僕と姉さんからのお土産として
手作りパンプキンパイと南瓜の月見団子を持参
ちょっとした変化球もあっていいかなって
木常野さんのもいただくよ
もし足りなかったら親分さんに頼んでみようね

飲み物は…紅茶にしようかな
気使ってくれてありがとね、木常野さん
でも姉さんもいるし、飲みたかったら飲んでいいよ?

注文関係無く
山本親分さんにも声掛けたいな
初めましての挨拶しておきたくて
お誘いありがとうございます
賑やかなのもいるけど…慣れてるし
楽しみましょう


栗花落・深香
【翼狐】
※2021浴衣

そうねぇ
私も好きよぉ、お月様♪

最年長として、そして澪の義理の姉として
二人のやり取りは優しく見守り

お土産、といっても
私は材料を買い揃えた以外は澪の指示を聞きながら
簡単な手順を手伝っただけだけれど
たまには調理手順も任せてくれてもいいのに(無自覚な殺○料理人

折角だからお酒飲みたいわねぇ
カクテルか果実系のリキュールがあれば嬉しいのだけれど
月を見ながら飲むのは風流よぉ
都月君もどう?

山本親分さん
良かったら貴方も少し食べない?
パイもお団子も多めに用意したから
澪の手作りの味、覚えてもらえると嬉しいわぁ

親分さんの傍に居れば
百鬼夜行の子達もちょっかいかけにくくなるかもしれないしね



「お月見だ!」
 ふっさり豊かな黒い狐尾を揺らしながら、二筋格子の青い浴衣を翻して、木常野・都月(妖狐ヒト見習いの精霊術士・f21384)は跳ねるように駆け出した。
 髪色と同じ狐耳も、嬉しそうにぴこぴこ動き。
 大きな大きな円い月の下で、元気な笑顔が零れ落ちる。
 カクリヨファンタズムでの月見と聞いて、それだけでもテンションが上がるのだけれども。さらに都月は、進む先に、見知った2人の後ろ姿を見つけたから。
「先輩、お姉さん、こんばんは!
 月があるとウキウキしませんか?」
 声をかければ、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)と栗花落・深香(暴走おねーちゃん・f03474)が振り向き、挨拶を返してくれた。
「お月見、僕も好きだよ。姉さんもね」
「そうねぇ。私も好きよぉ、お月様♪」
 にこにこ笑顔の澪も、おっとり微笑む深香も。都月と同じく浴衣を纏っていて。
 深香は、淡いグラデーションを魅せる朱色の生地に、足元から、菖蒲が咲き、波紋が広がり、草が揺れ、袖や胸元に蝶が舞う、白い模様が美しいデザイン。
 それだけでなく。若草の帯の上に藤の兵児帯を重ね、後ろでリボンのようにふんわり大きく結い上げ。ゆるりとアップに纏め、ほつれ零れるのも美しい金髪に添えられた鮮やかな赤い花を、白い翼の先にも飾り。
 月明かりの下でも華やかな姿を魅せていたから。
「お姉さんの浴衣姿、明るい色がいっぱいで、やっぱり綺麗です!」
「ふふ。ありがとぉ。都月君も素敵よぉ」
 素直な賛辞に深香はまたおっとりと笑みを返し、頷きながら都月も褒め称える。
 それにありがとうと返した都月は、今度は深香と並ぶ澪へと黒瞳を向けて。
 大きな籠目模様がうっすら見える黒地の浴衣でキリッと決めた澪を見た。
「先輩はカッコいい!
 可愛いのも似合うけど、黒も似合いますね!」
「え、そう? えへへ……」
 褒められはにかむその顔は、女の子のように可愛らしいけれども。澪はれっきとした男の子だから。濃紺の帯でしっかりまとめた男性的な印象の浴衣は、異性装ではなく、ちょっと背伸びした大人の格好、となる。けれど。
「姉さんには秘密にしてほしいんだけど、僕の趣味って本来こういうのなんだよね……」
 女性に間違われやすい程に可愛い義弟を着飾りたくて仕方ない深香に聞こえないようにこっそりと、澪は都月に告げた。
 女装はそこまで嫌いじゃないし、着せ替え人形にしてくるあの勢いにはちょっと困る時もあるけれどそれで義姉を嫌う程でもない。むしろ、気にかけてくれるのは嬉しいと思う時もある澪だから。
 そんな、少しだけ素直になれない深香への思いも、都月は言葉の端に感じ取り。
 にっこり笑って頷けば。
「あ、兎は別だけど」
「本当だ、兎がいる。可愛いです!」
 そっと帯の間から引き出した扇子には、小さな兎の根付がついていたから。
 揺れる丸っこく可愛い白に、澪と都月は笑い合った。
 そんな2人の楽し気な様子を、深香は優しい眼差しで黙って見守り。
 話が落ち着いたところで、気付いたようにゆっくりと首を傾げて見せた。
「そういえば、お月見するのよねぇ?
 この辺りで落ち着いて座りましょうか」
「そうだ。俺、お菓子持ってきたんです。ジャガルコとか、アーモンドゥチョコとか。
 一緒に食べましょ!」
 示された適当な場所に座るや否や、都月は持ってきた荷物を広げて。
 様々なお菓子を次々と広げ、並べていく。
「これは、僕と姉さんからのお土産」
 そこに、澪も加わって。
 こちらが持参したのは、すぐに手作りと分かる、パンプキンパイと月見団子。
「月見団子には南瓜が入ってるんだ。ちょっとした変化球もあっていいかなって」
「2人からっていっても、私は材料を買い揃えたくらいよ。
 あとは澪の指示を聞きながら簡単な手順を手伝っただけ。
 ……たまには調理手順も任せてくれてもいいのに」
 しかし義弟の説明に、深香はちょっと不満そうに言葉を添える。
 無自覚なトンデモ料理人の台詞に、そんなことできるわけがないと、深香の見えないところで澪がぶんぶん首を左右に振るけれども。
「先輩も、お姉さんも、ありがとうございます!」
 都月は、それに気付いているのかいないのか、にっこりと純真な笑顔でお礼を告げた。
 その目の前をふわりと通るのは、小さな白い狐のような月の精霊チィ。
 名前の由来となった可愛らしい鳴き声で、ねだるように都月に擦り寄るから。
「チィはご飯の時間だな。
 月光浴しておいで。人にイタズラしたらダメだぞ」
 言って見送ると、空中をくるくると楽し気に踊りながら、チィは、大きな大きな円い月に向かうように離れていった。
 その様子を確認してから、都月は改めて、2人の姉弟に向き直り。
「じゃあまずは、何を飲みましょうか?」
「折角だからお酒飲みたいわねぇ。
 カクテルか果実系のリキュールがあれば嬉しいのだけれど」
 聞けば、深香は、その浴衣に合わせたような、明るい色がいっぱいの酒を望み。
「僕は紅茶にしようかな」
 3人の中で唯一の未成年である澪は、義姉の扱う華やかな色合いにちらりと視線を向けながらも、羨むことなくノンアルコールを選ぶ。
 その様子を都月は見比べてから。
「ええと、俺は……飲み物はシュワシュワのやつにします。アルコール抜きで……」
 澪に合わせようと選ぶけれども。
「気使ってくれてありがとね、木常野さん。
 でも姉さんもいるし、飲みたかったら飲んでいいよ?」
「月を見ながら飲むのは風流よぉ。都月君もどう?」
 気付いた澪が、遠慮なくと声をかけてくれて。深香も色鮮やかで可愛い瓶をそっと持ち上げ、誘ってくれたから。
 都月はまた少し考えてから、ぱっと表情を輝かせて。
「俺も果実酒のやつ飲みます!」
 はいっと手を差し出し、姉弟の笑顔に迎えられた。
 そうして準備したグラスを、乾杯、と遊ぶように合わせてから。
 始まる甘いお菓子の宴。
 美味しさに包まれ、話を弾ませ、楽しんでいると。
「あ、山本親分!」
 千鳥足で通りかかった姿を目ざとく見つけた都月が、嬉しそうに声を上げた。
「久しぶりです! お邪魔してます!」
「おお、朔太にゃ。元気そうだにゃ~」
 挨拶すれば、ほろ酔いな東方親分・山本五郎左衛門がにこにこ上機嫌にやってきて。
 顔見知りの妖狐の息災に、ふにゃふにゃと微笑む。
 ……都月は、アックス&ウィザーズに迷い込んでいた妖狐の子供。故郷がカクリヨファンタズムであることも、本当の家族がこの世界にいることも、自身の正体すら知らずに育ったけれども。大祓百鬼夜行で会った山本親分に導かれ、その全てを知り、両親とも再会できた……そんな縁を持つから。
 酔った勢いか、親戚の子供にするかのように、ぽんぽんっと黒髪の頭を撫でてくれる山本親分に、都月はくすぐったそうに笑った。
 そんな仲が良さげな2人を眺めていた姉弟も、話の合間を見て、折角だからとご挨拶。
「初めまして。お誘いありがとうございます」
「山本親分さん、良かったら貴方も少し食べない?
 パイもお団子も多めに用意したから」
 ついでに深香は、自慢のお菓子を指し示して、誘う。
「澪の手作りの味、覚えてもらえると嬉しいわぁ」
「親分、先輩とお姉さんのお菓子、美味いんですよ!」
 実際に舌鼓を打っていた都月も言葉を添えて。
 是非にと恩人の手を引けば。
「そこまで言われたら、いただかない選択肢はないですにゃ~」
 よいしょっ、と甘い宴に座ってくれる山本親分。
 どうぞどうぞとおっとり笑顔で迎え、早速パンプキンパイを切り分ける深香は。
 山本親分の向こうで、こちらの様子を伺うように蠢く妖怪の幻影を、視界の端に捉えていたけれども。
(「親分さんの傍に居れば、百鬼夜行の子達もちょっかいかけにくいでしょうしね」)
 宴へのお誘いが、山本親分を守ることにも繋がると思い。
 気にせず、楽し気な声だけをかける。
 澪も、幻影の存在に気付き、ちょっと困ったように苦笑を見せるが。
 そういえば大祓百鬼夜行でもこんなことが散々あったなぁ、なんて思い出しながら。
「賑やかなのもいるけど……慣れてるし。楽しみましょう」
 気楽に、山本親分へ月見団子を差し出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

駒鳥・了
【かんにき】
グラサンうさぎ抱えてる浴衣
今日は代わりにモラちゃん抱っこしよっかなー?
っと残念!フラれちゃったか

さてお月見準備だ!
コレは盃で飲みたい未成年用の子供甘酒!
モラちゃんにも注いでいーのかな?

大皿に着色お団子を月見団子として乗せてく!
団子の中身は当然変わり種(サトちゃん協力
チョコ、クリーム、チーズ、マシュマロ、ナッツ等
赤い袋から1コだけ積んだのはタバスコ
当たったら甘酒で相殺しといて!(けらけら
残りは後で使うカモなので袋ごと除けとく

流石はセンセ、大人だなあ
美容もいーケドオレちゃんまだ食い気かな!
肉厚ベーコンをナイフで切ってそのままとかワイルドでいーね!
親分さんは美味しいのを選んで食べてって!


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

やあ、もう始まっているね。山本親分、こんばんは。
杏の新しい浴衣、似合っているよ。提灯はたまこ柄かな。

む、それは幽世大吟醸…一度飲んでみたかったんだ。
おや、今日は杏がお酌をしてくれるのか。
なんだか親戚の集まりみたいだ…。
杏、シリンからもらった、この赤い盃に注いでもらえないかな。
これを月の光にかざせば…より色鮮やかに光って、綺麗だろう?
シリンが見せてくれた月呑みに、ほうとため息。
では、いただきます。

私も、ブルーアルカディアで買った魔獣ベーコンを持って来たんだ。
ナイフで切って、皆で食べよう。
デザートはアキの月見団子と、月餅かな。
ふむ、一個はタバスコ入りか。親分もおひとつどうです?


シリン・カービン
【かんにき】

浴衣:2021年
肴:A&W産燻製チーズ

艶やかな皆の浴衣姿を見渡すと
山本親分が浮かれる気持ちもわかります。
今日は楽しくなりそうですね。

幽世大吟醸、いいですね。
(ガーネットの盃に目を細め)
杏に波々と注がれた盃。
「杏、よいものを見せましょう」
アキ、ガーネット、山本親分も手招き。

両手を添えた盃一杯に映る月。
鏡のような水面にさざ波一つ立てぬ所作で口元に運ぶと
するり、と呑み込まれるかのように月が消える。

「月呑み、と言うそうです」
水面を乱さずに呑み干すことが出来れば
月の力や美しさを得られるのだとか。
本当でしょうか。(ふふ、と)

魔獣ベーコンや月見団子を楽しんでいると
……今、月に毛玉が跳んだような?


木元・杏
【かんにき】
花火柄の藍色浴衣
赤提灯の絵柄はたまこ(飼い鶏)
明かりでほんのり宴会照らす
すすきの傍にはさつまいもや人参、林檎等をお供えて
山本親分が来れば百鬼夜行ホイホイ
さ、お月見するにゃ

わたしも年頃の女の子
お淑やかに大人組をお酌でおもてなし
シリン、ガーネット、おひとつどうぞ
お猪口に波々と注げど零れないぎりぎりのラインを狙う

…ふう
(月明かりを纏う赤盃を眺め満足顔)

頑張ったので甘酒とお団子頂こう
中にあんこ入りで美味し
ロシアンお団子、やる(ふんす
とうっ!
迷いなくお団子選び、口へIN(お団子お任せ
甘いの食した後は肉(ベーコン)でお口直し
ふ…(至福

野うさぎが見てる
ふふ、こちらで一緒にお月見しよう
膝においで?


木元・あかり
【かんにき】
※もきゅっとしたモラ語(?)しか話せません

きゅっ…
(お月見女子会か…
ここは身を呈して幻影達の攻撃を受け止めて皆に女子会を楽しんでもらい、父の威厳を感じた杏におとーさんだいすきとか素敵とか言っ)(幻影に蹴られる

膝へのお誘いはノーサンキュー(もきゅ!)
だがお酒は欲しいので盃持ってお酌待ち
きゅ♪(美味しい顔

ほろ酔いで草場をふらふら
幻影が寄ればついーと体当たり

もきゅ?(野うさぎ発見
うむ、うさ人生(?)もなかなか良いものだろう
しみじみ納得顔でうさ達にお供えの人参を振る舞おう

宴会眺めれば若い頃のお月見を思い出し、何かちょいよい笑顔になりつつ何気に足元の赤袋から赤いお団子ひとつぱくり

ん?赤…



 大きな大きな円い月が淡くも明るく照らし出す夜の中に。
 華やかに浴衣姿が集っていた。
「月見だからお供え、持ってきた」
 すすきの傍にさつまいもや人参、林檎などを並べていくのは、木元・杏(アルカイックドヤ顔・f16565)。
 月が大きな夜空には無粋かと思われる鮮やかな花火を藍色の浴衣に咲かせて、金魚の尾を思わせるオレンジ色の帯を締め。傍らには赤提灯。宴会をほんのり照らす和の灯りが、描かれた飼い雌鶏のたまこを浮かび上がらせていた。
「オレちゃんは月見団子!」
 大皿を手ににやりと笑う駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)の浴衣は、白地に緑色の太めの縦縞というシンプルながらも、時折黄色の細縞を重ねたり子持ち縞にしたりと動きを添えた、元気なもの。その緑色も、そして帯のピンクやオレンジも、くっきりとした原色に近いビビッドなものだから、余計に了の活発さを示している。
 そもそも、次々と大皿に乗せていく月見団子も、白一色ではないどころか、様々な色に着色されたカラフルなもので。三方よりも白い大皿の方が映えるというのも凄い。
「アキ、すごい」
「色毎に中身が違うからね」
 興味津々覗き込む杏に、了は茶色のお団子を摘まみ上げ。期待の眼差しに応えるように小さな口に運んであげれば、杏の表情がふんわり綻んだ。
「チョコ」
「こっちはクリーム、これはチーズ。あとマシュマロとかナッツとか……」
 紹介していく団子の中身はどれも変わり種ばかりだけれど。
「美味しいが沢山」
 杏の金瞳はキラキラと輝いて。
「サトちゃんが協力してくれた!」
 多重人格者である了が、大人しく家庭的な人格の介入を口にすれば、さらに期待が増すというもの。まあ、その『サトちゃん』は、手伝わせておいて自分は月見に参加できないなんて、とジト目を向けていたのですが。
 そんな身の内でのやり取りはおくびにも出さず、了はカラフル団子を積み上げた。
「山本親分が浮かれる気持ちもわかります」
 その様子を眺めながら、シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は微笑んで。
 持ってきたアックス&ウィザーズ産の燻製チーズを大皿の横に置く。
 美味しそうなそれらもだけれども、皆の浴衣姿も艶やかで。シリン自身も、袖口や袂、裾にだけ赤い花が咲く、薄紫色の浴衣にその身を包んでいたから。
「今日は楽しくなりそうですね」
 ふふっと笑みを零せば。
「シリンもお団子、どうぞ」
「これこれ。センセが持ってきたのと同じチーズ入り」
 早速、杏と了が賑やかにシリンを巻き込んでいった。
「やあ、もう始まっているね」
 そこにちょっと遅れてやってきたのはガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)。もちろんしっかり浴衣姿。
 白地に、揺蕩う水と揺れる水草、鮮やかに泳ぐ赤い金魚を描いた、涼し気で楽し気な浴衣で。長くひらひらと舞う柔らかな帯が、裾に添えられたふんわりフリルが、ガーネット自身も金魚に仕立てたかのような、遊び心の多いデザインになっている。
 でもガーネットがこの浴衣に袖を通したのは今年が初めてではなく。了とシリンの浴衣姿も、いつもと違って新鮮ではあるけれども、見覚えのあるものだったから。
「杏の新しい浴衣、似合っているよ。提灯はたまこ柄かな」
「ん。たまこ」
 唯一、今年仕立てた杏に感想を告げると、提灯の雌鶏がずいっと差し出された。
 浴衣よりも提灯を気に入っていそうなその様子に、ガーネットは破顔して。
 そうそう、と思い出したように荷物を取り出し、話題を戻す。
「私も、ブルーアルカディアで買った魔獣ベーコンを持って来たんだ。
 ナイフで切って、皆で食べよう」
「ワイルドでいーね!」
「これも肴に良さそうです」
 どんっと出て来た肉の塊に、了もシリンも大歓迎。もちろん、常日頃から肉好きを公言している杏も、先ほど以上に金瞳を輝かせているから。
 では早速、とガーネットはナイフを握って見せた。
 ……そうして盛り上がっていく宴席を、遠目に眺めるモーラットが1匹。
「きゅっ……」
(「お月見女子会か……」)
 木元・あかり(トメ子さん・f35690)は、可愛らしい鳴き声とは裏腹に、どこかおっさんくさい思考を持ちながら、楽しそうな女性達を妙にしみじみと見つめて。でもすぐに、そのつぶらな瞳を、近づいてくる幻影百鬼夜行へと移す。
 おどろおどろしくはあるけれど、その形をしっかりとは保てないようで、こちらへ迫るその間にも崩れていくような不安定な姿。
 あかりは、女性達の宴席をかばうように、そのふわもふな毛玉姿を割り込ませると。
 星型の模様が描かれた額の下で、つぶらな瞳をキリリと引き締めて。
(「ここは身を呈して幻影達の攻撃を受け止めて皆に女子会を楽しんでもらい、父の威厳を感じた杏に『おとーさんだいすき』とか『素敵』とか言っ……」)
 げしっ。
「きゅ~」
 立ちはだかったと思った傍から、幻影に蹴られて転がった。
 その勢いのまま、ころんころんと行った先は、あかりが守ろうとした宴席で。
「あっ、モラちゃんだ。
 グラサンうさぎ置いてきたから、代わりにモラちゃん抱っこしよっかなー?」
 転がる毛玉に気付いた了が、ぬいぐるみの代替品にともふもふ姿へ手を伸ばす。
 だがしかし。
 あかりは、愛する奥さま以外にはモフらせない強い意思を持つモーラット。
「もきゅ!」
 膝へのお誘いはノーサンキュー、とばかりに強く鳴き、ぷいっと顔を反らしたから。
「っと残念! フラれちゃったか」
 了は、さほど残念そうでなく肩を竦め。その反応すら面白がるように笑うと。
「それじゃコレは? 盃で飲みたい未成年用の子供甘酒!」
 じゃじゃーん、とファンシーなラベルの瓶を掲げた。
 月見と言えば、お酒での宴会。と思ってはいるけれども。
 お酒は二十歳になってから。あと2ヶ月を恨めしく思いながらも、せめてと思って持ち込んだ飲める『酒』に、了はにっと笑って見せて。
 こちらはまだ年単位でその時を待っている杏が、早速寄ってきた。
 どうぞどうぞと面白がるようにお酌をすれば。
 あかりも、杯を持って待っていたので。
「モラちゃんにも注いでいーのかな?」
「もきゅ」
「……ま、いっか」
 何て言ってるのかさっぱり分からないけれど、同意されたと考えて。
 了はモーラットにも甘酒の瓶を傾けた。
「きゅ♪」
 早速くいっと飲み干したあかりが、美味しい顔で空をくるふわ舞っています。
 そんな子供達の様子を見ていたシリンは、ふっと微笑んで。
「こちらは日本酒といきたいですね」
 大人の意見を述べると。
 ガーネットに視線を流す……と思いきや、その後ろへと緑色の瞳を向けた。
「そうでしょう。山本親分」
「にゃはは。バレておりましたにゃ」
 こっそりと宴席を覗き込んでいた山本五郎左衛門は、気付かれたことをむしろ喜びながら、輪の中へ入ってくる。
「山本親分、こんばんは」
 少し驚きながらも、ガーネットは席を勧め。
「山本親分が来れば百鬼夜行ホイホイ。
 さ、お月見するにゃ」
 杏もにこにこと、山本親分の口調も真似て、歓迎の意を示す。
 迎えられた宴会に、よしょ、と山本親分は座ってから。
「それで、御所望なのはこれかにゃ?」
 取り出したのは日本酒の大瓶。
「幽世大吟醸、いいですね」
「一度飲んでみたかったんだ」
 シリンがその華やかなラベルを読めば、ガーネットも頷いて。
 では早速、と山本親分が蓋を開ければ。
「わたしも年頃の女の子。お淑やかにお酌でおもてなし」
 杏がそっと手を伸ばし、酒瓶を受け取る。
「おや、今日は杏がお酌をしてくれるのか」
 そそそ、と近寄ってくる杏に、ガーネットは嬉しそうに微笑むと。
「杏、シリンからもらった、この赤い盃に注いでもらえないかな」
「ん。任せて」
 差し出したガラス製のぐい飲みに、杏が丁寧に瓶を傾けた。
 波々と注げど零れない、ぎりぎりのラインを狙う真剣な杏の姿に、ガーネットは、頑張る子供な雰囲気を見て。
(「なんだか親戚の集まりみたいだ……」)
 そんなことを思いながらまた微笑むと。
 ガーネットの髪の色に合わせたような深い赤色のぐい飲みに、幽世大吟醸がたっぷりと注がれたから。
「これを月の光にかざせば……より色鮮やかに光って、綺麗だろう?」
 零さないようにそっと、掲げて見せると。
 ガラスのぐい飲みは、ブラッド・エーテルの名に相応しい色合いを見せ。
 その美しき色合いに、杏が満足そうに微笑むと、シリンも目を細めた。
 そんな中。
 ぽんぽん、と杏の肩が小さく叩かれて。
 振り向けば、空の杯を持ったあかりが、期待するように浮かんでいたから。
 杏は、わくわく待ち構えるその姿を、ジト目で見やり。
 ぷいっと視線を反らすと、シリンへと向かった。
「おひとつどうぞ」
「もきゅ~!?」
 あかりから抗議のような声が上がる。
 シリンはそんなやり取りを気にせず、杏の誘いに盃を差し出して。
 こちらにもなみなみと、零れるギリギリまで満たされる幽世大吟醸。
「杏、よいものを見せましょう」
 ふと思い立ったシリンは、杏に声をかけながら、ガーネットと山本親分、了にも手招きして皆を集めた。
 何が始まるのかと興味津々、近寄ってきた一同の前で。
 シリンは盃に美しい両の繊手を添えて。
 鏡のように静かな水面に、大きな大きな円い月を映す。
 そして、さざ波の1つも立てぬ楚々とした所作で、ゆるりと口元に運ぶと。
 するり、と。
 呑み込まれるかのように月が消えた。
 その美しさに、ほう、と誰かのため息が漏れる。
 そして。
「月呑み、と言うそうです」
 盃を空にして、手元の月を飲み干したシリンは、集まる視線に微笑んで見せて。
「水面を乱さずに呑み干すことが出来れば、月の力や美しさを得られるのだとか。
 本当でしょうか」
 ふふ、と面白そうに笑みを零すその姿は、確かに美しかった。
「流石はセンセ、大人だなあ」
 感心したように呟いた了も、緑瞳にどこか憧れるような色を混ぜたけれども。
「美容もいーケド、オレちゃんまだ食い気かな!」
「ん。頑張ったから、甘酒とお団子頂く」
 杏と共に、すぐに食べ物へと戻っていく。
 カラフルなお月見団子を、減った分袋から補充して。
 そうだ、と了は思い付くと。
「団子は1コだけ、当たりを積んどいたから。
 当たったら、甘酒で相殺しといて!」
「当たり、とは?」
「タバスコ入り!」
 確認するガーネットに、すぱっと答えてけらけら笑う了。
「あ、親分さんは美味しいのを選んで食べてって!」
「美味しいのといってもにゃぁ……」
 勧められた山本親分も、どれを選べばいいのやらとちょっと警戒気味だったが。
「ロシアンお団子、やる」
 ふんす、とやる気を見せたのは、杏だった。
「とうっ!」
 迷いない勢いで、いかにも怪しい青い団子を口の中へ放り込めば。
 広がるブルーベリーな甘味。
 満足そうに頷いて、杏はもぐもぐ食べ切ると。
「甘いの食した後は、お口直し」
 むしろこっちが本命とばかりに、魔獣ベーコンを切り分ける。
 ものすごくぶ厚く切ったそれにかぶりつけば。
 至福の一時が杏を包み込んでいった。
 その結末を見届けたガーネットは、こちらは黄色い団子を摘まみ上げ。チーズな中身にワインも欲しいかなと思いながら。
「親分もおひとつどうです?」
「……ここで挑まねば東方親分の名が泣くにゃ」
 声をかければ、山本親分が着物の袖をグイっと捲り上げてやる気を見せた。
 そうしてまたわいわいと盛り上がっていく宴から。
 あかりはほろ酔いでふらふら離れていく。
 余談ですが、結局、幽世大吟醸は自分で手酌しました。
 先ほど見かけた幻影を、ちょっと警戒してのうごきだったのだけれども。
 賑やかな月見の宴のおかげか、ほとんどの幻影が崩れ消えていて。残っている者も、とても朧げで今にも消え去りそうになっている。
 これなら大丈夫だろうと安心すれば。
「……もきゅ?」
 草場に見つけたのは、野うさぎ。
 後ろ足だけでひょいと立って、あかりを見つめる瞳に、何となく目を合わせる。
(「うむ。うさ人生(?)もなかなか良いものだろう」)
 何故かしみじみ納得顔で頷くあかり。
 そして、杏がお供えとして用意していた人参を差し出せば。
 野うさぎは警戒することなく駆け寄ってきた。
 振る舞った人参の好評具合に、あかりはまたしみじみと頷き。
「あ、野うさぎ」
 杏も気付いたようで、そっと手招きする。
「ふふ、こちらで一緒にお月見しよう」
 おいでと示された膝に、野うさぎは、人参を用意したのが杏だと知っているかのように嬉し気に、ぴょんぴょん向かって行く。
 その後に着いて行ったあかりも、野うさぎと一緒に杏の膝へ乗ろうとするけれども。
 それは無情にも、ぺいっと弾かれて。
 ころころと転がっていくモーラット。
 だがしかし。起き上がったあかりは。
 魔獣ベーコンを片手に野うさぎと戯れる杏と。
 月見団子とにらめっこしている山本親分を眺めてにやにやしている了。
 酒を飲み交わすガーネットとシリンを、順に見て。
(「若い頃のお月見を思い出すな……」)
 賑やかな宴席に、あかりはちょっといい笑顔を浮かべて、ふよふよ浮かぶ。
 一緒に思い出してしまった巨大うさぎは置いといて。
 月明かりの下で仲間と過ごした一時を懐かしみ、思いを馳せながら。
 そばにあった赤いお団子を、ぱくり。
 ……了の積み上げた月見団子は、中身と同じ色をしているものが多かった。
 茶色はチョコだったし、黄色はチーズ、青色はブルーベリー、といったように。
 そして了が『当たり』と称したものは、タバスコ。
 激辛なその植物は赤い実のものが多い、から……
「!!!」
 幽世大吟醸と共に、魔獣ベーコンと燻製チーズの組み合わせを楽しんでいたシリンは、ふと顔を上げ。
「……今、月に毛玉が跳んだような?」
 見上げた空には、大きな大きな円い月が変わらず輝き。
 地面には、空から落下して潰れた毛玉のように、モーラットが倒れ伏していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冬原・イロハ
エリシャ(f03249)さんと
水色の浴衣

こんばんは、親分さん!
持ちこんだススキを飾り
月光に、穂がキラキラしてます(にっこり)
ウフフ、エリシャさんのお仕立てはとってもお綺麗♪
あ、帯留め等にネコチャンがいますね!

私は串団子を買ってきました!
みたらし、餡子の組み合わせです
エリシャさんの大福、楽しみにしてました~
すごい、もちもちふわふわ
苺や葡萄のほんのり酸味に幸せ笑顔

ほっくりポテトとアンチョビのうまみ、凄く美味~~なのです
親分さんのお酒も進みそう♪

食べながら、お月様をゆっくり眺め
一曲いかがですか? と竪琴を穏やかに爪弾き
これ、A&Wのお月見曲なんですよって言って
皆さんの故郷のお月見のお話を聞きたいです


エリシャ・パルティエル
イロハ(f10327)と今年の浴衣で

山本親分、お月見しに来たわよー!
今日のお月さまは割れてない?
それにしても…イロハは浴衣姿も可愛いわ!(きゅん)

お月見にはお団子だけど
苺大福を作ってきたの
ぶどうが入ったのもあるわよ
あと親分もイロハもお魚好きかと思って
アンチョビポテトも
酔っぱらわない程度に親分にもお酒お付き合いするわよ
何がおすすめかしら?

秋のお月さまって綺麗よね…
ススキが金色に輝いてるのを眺めながら
こっちも金色ねってみたらし団子をいただくわ

まあ、イロハは楽器も弾けるの?
こういうのを風流っていうのよね
どの世界でもそれぞれのお月見
あたしの故郷でも砂漠に大きな満月が浮かぶと
とても神秘的に感じたものだわ



 様々な宴を渡り歩いて。程よくお酒も入り、上機嫌な山本五郎左衛門は。
「山本親分、お月見しに来たわよー!」
「こんばんは、親分さん!」
 今度は、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)と冬原・イロハ(戦場のお掃除ねこ・f10327)の挨拶に足を止めた。
「今日のお月さまは割れてない?」
「猟兵さん達のおかげで無事ですにゃ」
 大祓百鬼夜行での一幕を思い出して、くすくすと揶揄うように聞くエリシャに、こちらもにんまりと答えると。
 その傍で、イロハはせっせと持ち込んだススキを飾り付けていて。
「月光に、穂がキラキラしてます」
「ほんに綺麗にゃ~。風流ですにゃ」
 ケットシーと猫又は、一緒にゆらゆらと猫尻尾を動かす。
 その姿を眺めたエリシャは、両の頬を包むように手を添えて、嬉しそうに破顔すると。
「それにしても……イロハは浴衣姿も可愛いわ!」
 エリシャがきゅんきゅんしているのは、色鮮やかな水色の浴衣。
 白と黄色の大き目な水玉模様と一緒に、ピンクと紫の花を散らし。白い縞の入った朱色の帯には、オレンジ色の兵児帯を混ぜて、どこか金魚のよう。頭を飾るリボンも、はっきりとした黄色で。どこか洋風な色合いが、イロハの純白な毛並みを引き立てている。
 褒められたイロハは、浴衣がよく見えるように、ちょこんとポーズを取ってから。
「ウフフ。エリシャさんのお仕立ては、とってもお綺麗♪」
 今度はエリシャの浴衣姿を見つめ返す。
 こちらも花柄の浴衣だけれども、薄い紫の矢絣模様に重ねて咲くのは、落ち着いた赤と青の梅の花。金色の帯にも麻の葉模様を描いた、伝統的な和の浴衣。
 しっとりと落ち着いたデザインは、確かに、可愛いよりも綺麗だけれど。
「あ、ここにネコチャンがいますね!」
 帯留めがちょこんと、黒猫の顔になっているのにイロハは気付く。
 よく見れば、髪を整えるヘアピンにも1つだけ、黒猫の顔があったから。
 綺麗な中の可愛いに、そしてケットシーの自分と共通するモチーフに、嬉しそうににっこりとイロハは笑った。
 そして、山本親分が、笑い合う2人を満足そうに眺め、うんうんと頷く。
 その仕草に気付いたエリシャは、ちょっと気恥ずかしくなって。
「さて、お月見しましょう。
 お月見にはお団子だけど、苺大福を作ってきたの」
 話題を変えるように、持参したものを広げる。
「エリシャさんの大福、楽しみにしてました~」
 素直に乗って来てくれるイロハに、ぶどうが入ったのもあるわよ、なんて言いながら。
 まあるい大福を魅せるように置けば。
「私は串団子を買ってきました!」
 その隣に、イロハが並べたのは、みたらしと餡子の串団子。
 一気にこの場が、月より団子な情景になってきました。
「あと、親分もイロハもお魚好きかと思って……」
 さらにアンチョビポテトも出せば、猫又とケットシーの耳がそわそわ動くから。
 くすっと微笑み、さあ食べましょう、とエリシャは促した。
 まずはやっぱり、とイロハが手を伸ばしたのは苺大福。
「すごい、もちもちふわふわ」
 柔らかな食感と程よい甘さの餡子、そして苺のほんのり酸味に、幸せ笑顔が綻んで。
 みたらし団子を手にしたエリシャは、ふと、イロハが飾ったススキを眺める。
 月明かりで金色に輝く穂に、串を持った手を差し出せば。
「こっちも金色ね」
 似た輝きに、見目でも楽しみ、味わっていく。
 甘いものの合間には、違う旨味も欲しくなって。
 イロハはアンチョビポテトも口に運んだ。
「凄く美味~なのです」
 ほっくりポテトと共に広がるアンチョビのうまみは、やっぱり最高だったから。
 続くように手を伸ばしたエリシャも、ぱくりと食べて。
「親分さんのお酒も進みそう♪」
 つい、そっちに意識が傾く。
「お酒、イロハはまだ飲めないけれど、私はお付き合いするわよ」
 酔っぱらわない程度にね、と添えつつも、呑みたい気持ちを滲ませて。
「何がおすすめかしら?」
「ここはやっぱり幽世大吟醸ですにゃ!」
 山本親分に尋ねれば、予想通りに日本酒の大瓶がどっかりと取り出された。
 年齢が足りず呑めないイロハも、その陽気な雰囲気に、ぱちぱちと拍手を送ります。
 そうして、月見酒も傾けたエリシャは。
「秋のお月さまって綺麗よね……」
 しみじみと、大きな大きな円い月を見上げて。
 イロハも今度は葡萄大福を食べながら、ゆっくりと月を眺める。
 美味しい月見な時間が流れる中。
 イロハはふと思い立って、それを手にした。
「1曲いかがですか?」
 見せるようにしながら構えたのは竪琴。
 その弦を1つ、2つと爪弾いて、音を確かめるようにしつつアピールすると。
「まあ、イロハは楽器も弾けるの?」
 是非にと、エリシャも山本親分も言ってくれたから。
 イロハは静かに、竪琴を弾き出した。
「……こういうのを風流っていうのよね」
 金瞳をそっと閉じて、うっとりと聞き惚れるエリシャと。
 4本の猫尻尾をゆらゆらさせて、幽世大吟醸をちびちび舐める山本親分。
 楽しんでくれている2人に、イロハもにっこり笑みを浮かべて。
「これ、アックス&ウィザーズのお月見曲なんですよ」
 説明しながら、そうだ、と思い立つ。
「エリシャさんの故郷のお月見のお話も聞きたいです」
「あたしの?」
 文化が違えば月見も違うだろうけれど。猟兵は、文化どころか違う世界を知る存在。
 数多の世界の数多の月見に、イロハは好奇心を見せていた。
 話を振られて驚いたエリシャだが、でもすぐに、そんなイロハに気付いて。
 そうね、と微笑を浮かべて話し出す。
「あたしの故郷でも、砂漠に大きな満月が浮かぶと、とても神秘的に感じたものだわ」
 静かに広がる竪琴の音色に、楽しいお喋りも重なっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

狐裘・爛
《狐御縁》
お、お、思わず声をあげそうになっちゃった。みんな、タフね! ふふ、お酒は無理だけど、和やかな雰囲気は楽しみたいわね。

『四王神楽唄』に合った衣装に着替えて盛り上げちゃいましょ。これが《妖狐六段変化》よ。……みんな浴衣に着替えてるじゃないの! 仕方ない、七段目は頑張って自分で脱ぎ着するわ! うえーん、一人で着るのはちょっと大変かも。

落ち着いたら祈りを捧げましょう。天に祈りを、みんなの幸せを願って、ふふ、綺麗な月も祝福してくれそうね!


シホ・エーデルワイス
《狐御縁》

正面から戦うと苦戦するけど
お月見で退けられるなんて
この世界ならではね


浴衣は今年の浴衣コンテストで着た
皆とお揃いの物
(詳細な描写希望)

早速みんなで着て集まる機会があって良かったです♪


余興も兼ねて【華霞】の花弁を舞わせて幻影も楽しませながら撹乱
爛が浴衣への着替えに手間取っていると気づき
着替え中は花弁で見えそうで見えないぐらいに隠す

花舞う中でのお月見も中々乙なものですね

メイさん達から団子を受け取り
ルルと一緒に食べます


幻影へ
さあ
貴方達も一献如何?幽世大吟醸も幽世暗黒純米吟醸も中々良い喉越しですよ

燦の祈りには微笑んで手を繋いで同じ様に祈る


焔、テフラ
アルコールを含まない白酒があるけど一杯どう?


四王天・燦
《狐御縁》

実家の巫女服で登場
古来より月見は収穫を感謝し祝うもの
新米を詰めた米俵やカクリヨ暗黒純米吟醸(※特に意味はないが暗黒)を捧げてお祈りするぜ
皆と仲良く元気にやっていけますよーに
ちらりとシホを見て、幸せな家庭を築けますよーに!

テフラは何を願ったのかな?(狐耳ぴこぴこ)

そして早着替えで今年作った統一浴衣に着替えます
爛の動画配信に期待してっぞとプレッシャーかけるぜ

御供えのお酒を愉しく飲む
神様と一緒に飲んでいるのさ
おうよ、妖怪たちも飲みな
そしてこちらが新米で作った月見団子ですと団子も登場だ
フォックスファイアで炙って香ばしさをつけて進ぜよう

風情を楽しむべく線香花火に興じるよ
ロケット花火は自重します


ルルチェリア・グレイブキーパー
≪狐御縁≫

みんなとお揃いの浴衣で参加するわ

有難う焔さん、私も月見団子頂くわ……あっ!
お供の幽霊の子達が私の団子を持ってシホのもとへ
シホに日頃のお礼がしたかったのかしら
折角だし、シホも一緒に食べましょう?

襲って来た幻影にもお団子を食べさせるのよ
そんな事より一緒にお月見なのよ~♪

焔さんの唄に合わせて
ピョンピョン踊るテフラさんが楽しそうだわ!

巫女さんの姿の燦につられて私もお祈り
美味しいお米を沢山実らせてくれて有難うなのよ

わっ、早着替えなのよ!
燦も凄いけど爛さんの連続早着替えも凄いのよ
……あら、アクシデントかしら?
良ければ着付けを手伝うのよー!


テフラ・カルデラ
《狐御縁》

お月見♪お月見♪(きつねダンスならぬうさぎダンス)
今年のみんなとお揃いの浴衣を着ていますっ!

お祈りは…みなさんともっと仲良くなりますように…
…と、当の本人はいませんが…恋人さんともっと親密に…(小声
ひゃわわわ!?燦…聞いていたのですかぁぁ…!?(顔真っ赤

わたしはお酒が飲めないので…代わりにとてもおいしそうなお団子を食べますよ~、焔さんもありがとうございます♪
お団子♪お団子♪
シホからアルコールを含まない白酒というものを勧められました…どんな味がするのでしょうか…?


四王天・焔
《狐御縁》
わーい、皆で月見だ。楽しみだね。
折角だし浴衣を着ていくね。
(今年の、狐御縁メンバーの合わせ浴衣)

焔はお酒は飲めないけど、皆がお酒を飲んで楽しんでいる所を
月見団子を食べつつ楽しんでおくね。
ルルさんにテフラさんも、お団子どうぞ、とっても美味しいよ。
あ、シホ姉!白酒どうもありがとうね、とっても優しい甘さが素敵だね♪

後は幻影百鬼夜行も気にせず、『四王神楽唄』を披露するね。
この唄で、皆が楽しんで貰えたら……そして幻影も消滅してくれれば幸い。
爛の姿変化も一緒に楽しもうね、色んな姿に変化してて凄いなー!

焔も線香花火を楽しむよ。
「こういう儚げな感じの火って、とっても好きだよ」



 古来より、月見とは収穫を感謝し祝うものである。
 ゆえに四王天・燦(月夜の翼ルナ・ウォーカー・f04448)は、実家の巫女服姿で大きな大きな円い月の下に立ち。厳かに祈りを捧げていた。
 目の前にあるのは捧げもの。
 新米が詰まった米俵と、奉納の文字が描かれた酒樽。中身は幽世暗黒純米吟醸。
 不穏な『暗黒』の2文字に特に意味はない。
 意味がないからこそ気にせずに。
 燦は、月に捧げ。
 静かに祈る。
(「皆と仲良く元気にやっていけますよーに」)
 共にカクリヨファンタズムに来た仲間を思い。
(「……幸せな家庭を築けますよーに!」)
 その中にいる大切な恋人を、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)だけをちらりと見て、追加で祈れば。
 その思いを感じ取ったのか、シホは穏やかに微笑んで。
 そっと燦の手を取り、繋ぎ。
(「燦と幸せな家庭を築けますように」)
 祈りを、重ねた。
「私もお祈りしておくのよ」
 つられるように、ルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)も月を見上げて。そこから茶色の瞳を伏せて、心の中で告げる。
(「美味しいお米を沢山実らせてくれて有難うなのよ」)
 祈り、というより、お礼といった感じですが。
 心からの温かな想いを、ルルチェリアは月に届けた。
 その隣で、テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)も熱心に祈りを捧げていたから。
「テフラは何を願ったのかな?」
 燦は、シホと手を繋いだまま、狐耳をぴこぴこさせて尋ねる。
 テフラは兎耳をゆるりと揺らして振り返ると。
「お祈りは……みなさんともっと仲良くなりますように……」
 無難な方を答えてから。
「……と、当の本人はいませんが……恋人さんともっと親密に……なれたらと……」
 本命を小声でぽそりと呟けば。
 燦がにやにやとからかうような笑みを浮かべていて。
「へー。親密にねー」
「ひゃわわわ!? 燦……聞いていたのですかぁぁ……!?」
 テフラは、一気に真っ赤になった顔を両手に埋めた。
「わーい、皆で月見だ。楽しみだね」
 そこに無邪気に乱入したのは、四王天・焔(妖の薔薇・f04438)。
 大好きな薔薇の描かれた扇子を手に、見せびらかすように広げながら、皆に純真な笑顔を振りまくけれど。
 その向こうには、蠢く幻影百鬼夜行が見えて。
「……っ!」
 気付いた狐裘・爛(榾火・f33271)が、思わず上げそうになった声を飲み込む。
 グリモア猟兵によれば、幻影は未だ不安定な状態だから。例えば悲鳴を上げるなど、その存在を確定させるようなことをしなければいいと聞いていたのを思い出したのだ。
 気にせず、お月見を楽しむのが一番、と言われてはいたけれど。
 気付いてしまえば気になるもので。
 どうしよう、と思って皆を見れば。
「そんな事より一緒にお月見なのよ~♪」
 幻影に押し付けるようにして月見団子を食らわせつつ、ルルチェリアがぐいっと爛を引っ張って。幻影との距離を取りつつ、爛を宴へと招き入れる。
「正面から戦うと苦戦するけど、お月見で退けられるなんて……この世界ならではね」
 しれっと告げたシホも、幻影の存在を認識しているようだったけれども。ことさら注意を向けずに、燦から、積み上げられた団子を受け取っていて。
「こちらが新米で作った月見団子です」
 その団子を示してにっこり笑う燦に至っては、幻影の方を見もしない。
 テフラはまだ真っ赤で幻影どころではなさそうだし。
 焔は月を見上げて楽しそうにしているから。
「み、みんな、タフね!」
 爛は赤い瞳を瞬かせた。
 そんな爛の様子を眺めたシホは、それでは、と動き。
「咲き誇って。私のエーデルワイス」
 余興も兼ねて舞い上がるのは、白く美しい花弁。
 これなら爛だけでなく、幻影も楽しませることができるのではないかと思いながら。
 一応、皆が襲われないよう、幻影を撹乱していく。
「花舞う中でのお月見も、中々乙なものですね」
 月見にも花見にも、雪見にも見えそうな美しい景色に、シホは微笑み。
「それじゃあ焔は『四王神楽唄』を披露するよ」
 続いて、はいっと焔が立ち上がった。
「焔の希望の歌、最後まで聴いてね」
 響き渡るのは、心も肉体も癒す清浄なる歌声。
 怒りや憎しみを鎮め、希望と慈しみの感情を与えるユーベルコードでもあるけれど。
 焔は、何よりも、皆が楽しんでくれるように。
 そして幻影も楽しんで消滅してくれるようにと願いながら。
 その旋律を広げていく。
「お月見♪ お月見♪」
 その歌声に感化されてか、テフラが、音に合わせてきつねダンスならぬうさぎダンスを披露し始めて。
「楽しそうだわ!」
 ピョンピョン踊る姿に、ルルチェリアもにこにこ笑う。
 そんな皆を見ているうちに、爛も楽しくなってきたから。
「妖狐六段変化で盛り上げちゃいましょ」
 こちらもユーベルコードを発動させる。
「らんらんファンタジー、武装メイドになぁーれ☆」
 変身能力であっという間にメイドさん姿になる爛。戦闘力増加の効果もあるけれど、もちろんそれは今回関係なく。求めるのはその姿の変化だけ。
 ゆえに、戦うことなく、すぐに爛はまた変身し。
 戦うお嬢様に。魔法少女に。天使少女に。小悪魔娘に。
 そして動画配信者にと、次々とその姿を変えて。
「わっ、早着替えなのよ!」
「色んな姿に変化してて凄いなー」
 ルルチェリアが、焔が、感心しながら楽しむ横で。
「動画配信に期待してっぞ」
 何故か燦はプレッシャーをかけていた。
 その光景に微笑みながら、シホは花弁の舞いを唄に合わせて少し調整して。
 より楽しめるように、と心を配る。
 細やかな配慮に気付いた燦は、恋人へと振り返り。
 その浴衣姿を見て、はたと思い至った。
 シホが纏っているのは、白地に薄い藤色で紗綾形の紋様を刻んだ浴衣。濃い藤色の帯には良く見ると角七宝の紋が描かれ、黄色の帯紐には、オラトリオとして花に咲くのと同じエーデルワイスを象った帯留めが飾られている。木下駄の鼻緒も藤色で、銀色の長い髪やブルーサファイアの瞳にも合う、色味を統一した清楚なデザインだ。
 しかし、その浴衣にはもう1つ、柄が加えられている。
 丸っこくデフォルメされ、筆で描かれたような線でいくつも書き込まれているのは、ちょこんと座った狐と横を向いた鼠、飛ぶ兎と帯留めによく似た薄雪草。4種類の、伝統的な和柄にはない模様が、紗綾形の上に散りばめられている。
 そしてそれは、テフラやルルチェリア、焔の纏う浴衣も同じで。
 テフラは藤色の地に蘇芳の帯、ルルチェリアは桃色の地に蜜柑の帯、焔は空色の地に瑠璃の帯、と色合いは異なるけれども、皆同じデザインになっていた。
 そう。これは皆でお揃いで新調した浴衣。
 ならば折角だし、と燦は、巫女服から浴衣へと早着替え。
 若葉色の地に群青の帯を締め、青い帯紐にエーデルワイスの帯留めと、結い上げた髪にもエーデルワイスの花を飾った姿でにかっと笑う。
 ちなみに、帯留めはそれぞれの個性が出ていて。兎のキマイラなテフラは兎で、鼠なルルチェリアは鼠、薔薇が好きな焔は紫の薔薇になっているのだけれど。
 燦のそれは、シホと揃えたものだから。
 自分の象徴たる花に瞳を細めたシホは、嬉しそうに燦へ微笑みかけた。
「早速みんなで着て集まる機会があって良かったです♪」
 だがしかし。
 皆、というにはまだ1人足りない。
「……みんな浴衣に着替えてるじゃないの!」
 それに気付いた爛が、六段変化を終えて、自分1人だけ浴衣姿でないことに気付き。
「仕方ない、七段目は頑張って自分で脱ぎ着するわ!」
 ユーベルコードの効果は終わっているしと覚悟を決めて、挑んでいくけれども。
「うえーん、1人で着るのはちょっと大変かも」
「……あら、アクシデントかしら? 良ければ着付けを手伝うのよー!」
 困惑する爛に、ルルチェリアが助けの手を差し伸べた。
 シホも、燦と顔を見合わせてから。そっと花弁を操作して。着替えの様子が周囲に見えそうで見えないぐらいに隠してあげる。
 そうしてようやく爛も、躑躅色の地に桜色の帯を締め、狐の帯留めを飾った浴衣姿に着替えられて。
 6つの浴衣がずらりと並んだ。
 互いの姿を改めて眺めながら、わいわいと盛り上がっていき。
「月見団子を食べよう。
 フォックスファイアで炙って香ばしさをつけて進ぜよう」
 燦がかけた声に、皆の興味は浴衣からお供え物へと移行する。
「ルルさんにテフラさんも、お団子どうぞ。とっても美味しいよ」
「お団子♪ お団子♪ 焔さんもありがとうございます♪」
 勧める焔に、テフラがうさぎダンスの延長のような動きで受け取って。
「有難う焔さん、私も月見団子頂くわ……あっ!」
 ルルチェリアもそれに倣おうとしたけれど。
 受け取る直前に、お供の幽霊の子達がルルチェリアに渡されるはずだった月見団子を持ってシホのもとへと飛んで行く。
 そして、幽霊の1人はシホの頭にそっと乗り、もう1人はふわふわとマイペースにシホの周囲を漂って。残る1人が月見団子を差し出すから。
「ありがとうございます、メイさん」
「シホに日頃のお礼がしたかったのかしら?」
 その様子を見たルルチェリアが、首を傾げながらも少し納得の色を見せる。
「折角だし、シホも一緒に食べましょう?」
 改めて焔から月見団子を受け取っていたルルチェリアは、シホの傍に座って。
 幽霊の子達と一緒にシホを囲むと、月見団子を食べ始めた。
 爛にも焼き立て団子を渡した燦は、他のお供えに目を移し。
「アタシ達はこっちもいこうか?」
 言ってシホに示したのは、幽世暗黒純米吟醸。
「神様と一緒に飲んでいるのさ」
 言いながら、成人組2人でそっと飲み交わせば。
 その様子を焔が眺めて。
「焔はお酒は無理だけど、お酒を飲んで楽しんでいる所を見て、月見団子で楽しむね」
 にこにこと、和やかな雰囲気を楽しもうとしていたから。
 ふふっ、と微笑んだシホが差し出したのは。
「白酒があるけど一杯どう?」
 酒と名がつきながらもアルコールを含まない飲料。
「飲みたいわね」
「どんな味がするのでしょうか……?」
「私も初めてなのよ」
「シホ姉、どうもありがとう!」
 20歳未満な4人がそれぞれに興味津々受け取って。
 ドキドキ、恐る恐る、ぐいっと一気に、と個性を見せながら口にすれば。
「とっても優しい甘さが素敵だね♪」
 にっこり笑った焔の感想に、頷きや言葉が重なっていった。
「あとは、花火だな」
 そして燦が取り出したのは、線香花火。
 ちゃんと月見の風情を楽しむためのチョイスで、ロケット花火は自重しました。
 ほらほら、と皆を誘いながら配っていって。
 早速、火をつけていけば、パチパチと小さな火花が美しい花を次々に咲かせていく。
「こういう儚げな感じの火って、とっても好きだよ」
 紫の瞳を細めて眺める焔の傍で、テフラとルルチェリアもパチパチと。さすがに幽霊の子達も大人しく、どんどん形を変えていく花を眺めているようです。
 燦もシホと並んで火をつけて。揃いの花を楽しめば。
 ぽと、と落ちた火玉に、爛はふと、視線を空へと向けて。
 最初の、巫女の祈りの際に捧げられなかった願いを、天に祈る。
(「みんなの幸せを願って……」)
 一度伏せた赤い瞳をまた上げると、空に浮かぶ大きな大きな円い月は、綺麗に輝いて、爛達を穏やかに優しく照らし出していたから。
「ふふ、綺麗な月も祝福してくれそうね!」
 爛は嬉しそうに笑ってから、月に背を向け、皆へと振り返った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『魔王『神野悪五郎』』

POW   :    仮初め百鬼夜行
自身の【蒐集した百物語の写本】を代償に、【その物語に応じた妖怪の幻影】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【主に呪詛や瘴気を繰り出すこと】で戦う。
SPD   :    百杯干し花見酒
【膨大な妖力を注ぎ込むこと】によって、自身の装備する【杯から桜吹雪のような弾幕を生み出し、それ】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ   :    百童肝試し
【蒐集した百物語の中の一話】を披露した指定の全対象に【生命力を蝕む恐怖の】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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「浴衣姿をたくさん見れて、歌って踊って遊んで食べて呑んで……最高にゃぁ~」
 幾つもの宴席に誘われた東方親分・山本五郎左衛門は、ほんのり朱に染まったほろ酔い顔でにこにこと、賑やかな月見会場を歩いていた。
 その猫足は少し頼りなくふらふらとした千鳥足で。4本の猫尻尾も、バランスを取る役目を半ば放棄するかのように、あっちへこっちへ好き勝手に揺れている。
「それじゃあそろそろ、お開きかにゃあ」
 楽しかった一時を思い返しながら、残っていた幽世大吟醸をくいっとあおって。
 場を閉めようとした山本親分だったけれども。
「待ちなんし、五郎左衛門!」
 そこに慌てて駆け込んで、待ったをかけたのは魔王『神野悪五郎』。
 カクリヨファンタズムに侵略する猟書家の1人で、自称ライバルの山本親分を狙うべく幻影百鬼夜行を生み出した張本人。なのだが。
 上機嫌な山本親分は、そんなこと忘れているようで。
「おお~。神野悪五郎ではにゃいか。お前さんも呑むかにゃ?」
「……わちきの百鬼夜行を消滅させた程度で、降伏せよと? 見縊りおって!」
 呑気な誘いを別の意味に取ったらしい神野悪五郎は、ぐぬぬ、と表現できそうな、悔しそうな怒り顔で山本親分を睨み付ける。
 そして、大きな赤い杯と、百物語の写本とを手に構えて。
「こうなれば、わちきが自ずから手を下してつかわす。
 覚悟しなんし、山本五郎左衛門!」
 びしっと決めて、優雅に宣言して見せる神野悪五郎だけれども。
「おっ、猟兵さん、幽世大吟醸のおかわりかにゃ?
 あずき洗いが丹念に洗った極上小豆のぜんざいもおススメですにゃよ」
「聞けー!」
 完全に月見の宴に夢中な山本親分に、かろうじて取り繕っていた花魁風の化けの皮を見事にはぎ落されながら。
 なんやかんやで宴の続きだか戦いだかが、始まった。
 
佐伯・晶
あちらは親分さんの知り合いなのかな
怪談っぽいけど余興?

だいぶ飲んでいい気分になってるから
あんまり怖いとか感じないね

あらまあ、とても怖いお話ですの

あれは全く怖いと思ってないね
正直邪神の分霊の方が怪談より怖いし

本体(わたし)が神野様をお招きしたいとの事ですの

酔っ払いよりヤバいのに絡まれてる気もするけど
神野が時間が停まったように動かなくなっても
見なかった事にして宴会を続けよう

神野様のお体に何事もないよう
分霊(わたし)が見守っておきますの
眼福ですの

幽世大吟醸も美味しいけど
少し寒くなってきたから
キャンプ道具で燗して飲もうか
良いひやおろしが手に入ったんだよ

ついでにみりん干しも炙っておこう
親分さんもどうかな



「あちらは親分さんの知り合いなのかな?」
 いい感じに酒杯を傾けていた佐伯・晶(f19507)は、現れた魔王『神野悪五郎』に、そんな呑気な感想を抱いていた。
 だいぶ飲んでいい気分になっているから、百鬼夜行とか百物語とか言われても、あまり怖さを感じないのもあるが。
 親し気に神野悪五郎へ接する山本親分の様子が一番の要因、かもしれない。
 ……まあ、その山本親分も、晶以上の酔っ払いなのですが。
 神野悪五郎に警戒心の欠片も見せないどころか、あっさり背を向けて、他の猟兵へくるりと振り返り。
「あずき洗いが丹念に洗った極上小豆のぜんざいもおススメですにゃよ」
「聞けー!」
 その油断しきった様子に怒った神野悪五郎は。
 ならば、とばかりに百物語を披露し始めた。
 それは神野悪五郎が蒐集した怪談話で。生命力を蝕む程の恐怖の感情を与えるユーベルコード『百童肝試し』……だったのだが。
「怪談っぽいけど余興?」
 お酒の力か、ほろ酔いな晶にさほど恐怖は生まれず。
「あらまあ、とても怖いお話ですの」
 邪神の分霊も、言葉とは裏腹に、呑気な笑顔を浮かべていた。
(「あれは全く怖いと思ってないね」)
 自分もそうだから何とも言わないけれど、晶は心の中でだけ思いながらまた酒を飲み。
(「正直、邪神の分霊の方が怪談より怖いし」)
 その感想を証明するかのように。
 分霊が動き出した。
本体わたしが神野様をお招きしたいとの事ですの」
 スカートのようにふわりと広がっていた改造浴衣の端をちょんと摘まんでお辞儀しながら、晶と融合した邪神、その分霊はにっこりと笑みを浮かべ。
「どうぞ永遠にゆっくりしていって下さいまし」
 発動する『邪神の歓待』。
 神野悪五郎の精神は、邪神の神域に招かれ、囚われ。
「神野様のお体に何事もないよう、分霊わたしが見守っておきますの」
 そして 時間が止まったかのように動かなくなった神野悪五郎の身体は、邪神の分霊に寄り添われ、囚われ。
「眼福ですの」
 その和装の乱れを直したり、長い髪に指を絡ませたりと、神野悪五郎にちょっかいを出しながら分霊は嬉しそうに笑う。
(「酔っ払いよりヤバいのに絡まれてる気がする」)
 あーあ、と思いながら、その光景を眺めた晶はしかし。
(「見なかった事にして宴会を続けよう」)
 ふいっと現実逃避して、杯を傾けるけれども、すでにそれは干されていたから。
 それじゃあと次を注ごうと、幽世大吟醸の酒瓶を持ち上げて。
 ふと、晶は思い至った。
「少し寒くなってきたから、燗して飲もうか」
 そうしてキャンプ道具を適当に広げて、準備を整えたら。
 手にした酒瓶は幽世大吟醸ではなく、自身で持ち込んだ日本酒。
「幽世大吟醸も美味しいけど、良いひやおろしが手に入ったんだよ」
 それは、秋の到来を告げる旬の日本酒。春に搾ったお酒に一度だけ火入れを行い、夏の間に熟成させて、秋に出荷される酒。冷やのままならスッキリと、お燗にすればコクを楽しめ、秋が旬の食材に合うと言われるから。
「ついでにみりん干しも炙っておこう」
 日本酒と共に用意していた肴も準備して。
 さあそろそろかなという頃に、美味しい酒の気配を察したかのように、ふらりと近寄って来る山本五郎左衛門。
「親分さんもどうかな」
「おっ。ぬる燗ですにゃ。いいですにゃあ~」
 晶は、すぐ隣に座った山本親分と一緒に、豊かな香りと丸みのある深い味わいを感じ。
 秋という季節をより鮮やかに楽しんでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山立・亨次
善哉があるのか?
じゃあ、それもいただこう
酒は飲めねえから甘酒とかあるか?

いただきます(手を合わせ)

しかし酒か
料理用に使ったことはあるが、どう足掻いても俺はまだ未成年だからな
美味いのか?
いや、美味いかそうじゃないかは人によるとは解ってるんだが

(山本親分へと)
成人してからも、また機会があったら来てもいいか
折角だからあんたと酌み交わす日が来ればいい
その時は肴も作って持ってくる

……あんまり人と積極的に交流持とうとすることないんだがな
月の魔力ってヤツか?
ま、偶になら悪くないかもな
(再度月を仰ぎ見て)

……ご馳走様でした
(最後に手を合わせ)

(※相変わらず基本無表情で寡黙)
(※因みに怪談怖くないタイプの人間)



 山立・亨次(f37635)の周囲にあれほど沢山あった月見団子はなくなっていた。
 山本親分を始め、通りかかった猟兵達に次々とお裾分けをしていったから、というのもあるが。高身長でがっしりとした体格と、まだまだ若い食べ盛りな年齢通りの食欲が遺憾なく発揮されたからでもある。
 空になった三方を前に、亨次は手を合わせ、食後の礼をしようとして。
「おっ、猟兵さん、幽世大吟醸のおかわりかにゃ?」
 そこにほろ酔いな山本親分が、千鳥足でやってきて、声をかけた。
 顔を上げた亨次は、おかわりと言われても、そもそも一滴も酒をもらっちゃいない、と思いながらも、酔っ払った山本親分が誰と呑んだのか覚えてないのかもしれないとも思い至り。ならば余計な指摘は不要かと、必要なことだけを短く答える。
「酒は飲めねえ。甘酒とかあるか?」
「甘酒もありますにゃ~。
 あと、あずき洗いが丹念に洗った極上小豆のぜんざいもおススメですにゃよ」
「善哉があるのか? じゃあ、それもいただこう」
「聞けー!」
 やり取りの向こうで、魔王『神野悪五郎』が何だか必死に叫んでいたけれども、亨次も山本親分も気にせずに、ほっこりぜんざいと甘酒を前に並べる。
「いただきます」
 改めて手を合わせて唱和してから。
 優しい甘さの温かいぜんざいをそれぞれ口に運んだ。
(「うん。美味い」)
 静かにその美味しさに感動しながら、亨次は食べ進め。
「うにゃ~。甘酒もいいですにゃが、やっぱり幽世大吟醸がいいですにゃ~」
 結局、酒に戻って行く山本親分を見やる。
(「酒、か……」)
 料理用に使ったことはあるけれども、どう足掻いてもまだ20歳に満たない亨次は、山本親分のように呑むことはまだできないから。
「……美味いのか?」
 興味がぽろりと口から零れる。
 いや、美味しいかそうでないかは人によるとは分かっている。酒と一口に言っても、辛口とか甘口とかあることも知っているし、製法や原材料にもいろいろある。その中で好みが分かれるのは当然だと思うし、聞いたこともある。
 だからどちらかというと、味を聞いたというよりも。
 酒を嗜むことが楽しいことなのか。
 そちらに亨次の興味はあって。
 そして、その心境を山本親分は感じ取ったのか。
 にんまり笑いながら、酒を満たした杯を掲げるだけで、美味いとも何とも言葉での答えは返ってこなかった。
「成人してからも、また機会があったら来てもいいか」
 そんな山本親分に、淡々と亨次は告げる。
 呑めるようになったらまた誘ってくれないかと。
「折角だからあんたと酌み交わす日が来ればいい。
 その時は肴も作って持ってくる」
 口にして。そんな自分に、驚いた。
(「……あんまり人と積極的に交流持とうとすることないんだがな」)
 こんな武骨な朴念仁に好んで関わろうとする者は少ないだろうと思うし。
 人との距離感とでもいうのか、そういったものを計るのが苦手だという自覚もある。
 だからこそ、亨次は、自分から約束を切り出していることに、表情に出さずに驚いて。
(「月の魔力ってヤツか?」)
 月明かりの下で、嬉しそうに笑う山本五郎左衛門を、見た。
「それは楽しみですにゃ~。
 待ってますにゃ、山立さん」
 ゆらゆら楽し気に揺れる猫又の尻尾。
 掲げられた幽世大吟醸の酒瓶。
 そして、見上げた空に輝く、大きく大きく丸い月。
(「ま、偶になら悪くないかもな」)
 亨次の口元に、あるかなきかの笑みが浮かび。
 穏やかな時の中で、ぜんざいの器が空になって。
「……ご馳走様でした」
 最後に手を合わせた亨次が告げた言葉は、今回の宴の終わりであり。
 次の約束の始まり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ?あの人が山本の親分さんのお友達の方ですか?
ライバルって、なんだかんだ言いながら仲がいいですよね。
でしたら、お友達ですよね。
ふえ?百物語ですか?
ふええ、とても怖いお話でしたね。
次は私の番ですね。
没収の魔法でその百物語をお借りしますね。
えっと、それじゃあこれにしましょう。
えっと、話終えたら蝋燭の火を消すんでしたよね。
次は山本の親分さんの番ですよ。
お願いしますね。
ふえ?アヒルさんどうかしましたか?
ふえ?生命力が失われる百物語を続けるなんて正気の沙汰じゃないって、そうなんですか?
さすが2番目に狂気耐性が高いアリスって、そんなに高い訳じゃないですか。



 月見の宴会に突如現れたオブリビオン、魔王『神野悪五郎』。
 その狙いは、東方親分『山本五郎左衛門』を倒すこと、のはずなのだが。
「ふえ? あの人が山本の親分さんのお友達の方ですか?」
 2人の様子を見たフリル・インレアン(f19557)は、そんな緊迫感の欠片もない、のほほんとした感想を抱いていた。
「ライバルって、なんだかんだ言いながら仲がいいですよね。
 でしたら、お友達ですよね」
 にこにこ笑顔で穏やかに導き出された結論へ、フリルの手の中のアヒルちゃん型ガジェットも、何か言いたそうな雰囲気を醸し出しつつも無言のまま微動だにしなかった。
 そのうちに、近くの猟兵へ話しかけた山本親分はぜんざいを食べ始め。何だかご立腹な神野悪五郎は、手にした写本を捲り、そこに書かれた物語を語り出す。
「ふえ? 百物語ですか?」
 それを聞いたフリルは、気弱な赤瞳をさらに怯えさせて、大きな帽子の広いつばをぎゅっと引き寄せるようにしながら、一話、聞いてから。
「ふええ、とても怖いお話でしたね」
 話の区切りにほっとして、帽子から手を離すと。
「次は私の番ですね」
 頑張ります、と気弱ながらに気合いを入れて。
 発動させていたのは『お仕事に不要な物を取り上げる没収の魔法』。
 先ほど受けた百物語によるユーベルコード『百童肝試し』の効果を無効化しつつ、さらにそのユーベルコードで使われた『蒐集した百物語の中の一話』を借用したフリルは。
「えっと、それじゃあこれにしましょう」
 怪談話を1つ、語り終えると。
「それで、話終えたら蝋燭の火を消すんでしたよね」
 百物語に必要な小道具を探すけれども。
「ふええ。そもそも蝋燭が用意されていませんでした」
 あわあわするフリルに、ガジェットの呆れたような鳴き声が響いた。
 しばし、どうしようと辺りをおろおろ探していたフリルだったけれども。
 なければないで仕方ない、とそのうち諦めて。
 気を取り直したように顔を上げると、何故か動かなくなっている神野悪五郎の様子に気付かぬまま、とある宴会へと振り返った。
「次は山本の親分さんの番ですよ」
 そうして、百物語の続きをと、山本親分を招こうとするフリルだったけれども。
 それを止めるように鳴くガジェット。
「ふえ? アヒルさんどうかしましたか?」
 きょとんとしているフリルに、ガジェットは呆れたようにもう一度鳴き。
「生命力が失われる百物語を続けるなんて正気の沙汰じゃない、って……
 そうなんですか?」
 神野悪五郎のユーベルコードによる影響を指摘するけれども。
 その効果を防いでいた自覚のないフリルには、全く理解できなくて。
 ただただ、日本の夜の風物詩の1つを体験していた、ぐらいにしか思っていないその様子に、ガジェットは視線を反らしてまた鳴いた。
「さすが2番目に狂気耐性が高いアリス、ってそんなに高い訳じゃないですか」
 ……確かにフリルの持つ技能の中では『狂気耐性』は2番目に数値が高かったですが、その値は1桁でしたよアヒルさん。
 があ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
傍から見ている分には何だか微笑ましいよねぇ

でも酔っ払いの山本親分に攻撃を仕掛けるのは感心しないな
ここは二人で正々堂々とゲームで勝負するのはどう?
と言って取り出すのは、暇潰しおもちゃセットの中の一つ
ブロックタワーのブロックを一本ずつ抜いては最上段に乗せていき
タワーを崩した方が負けというテーブルゲーム

3回戦ほどやって、神野悪五郎の勝利数が多ければ
山本親分を煮るなり焼くなり好きにするといいよ
大丈夫大丈夫、俺には秘策があるから(梓に耳打ち)

勝負が始まったらこっそりUC発動
他人からは発見され難い蝶をタワーの近くに忍ばせ
神野悪五郎の番が来たら…蝶をタワーに突撃させて崩す
つまり思いっきりイカサマ


乱獅子・梓
【不死蝶】
山本親分が狙われていると聞いて最初は身構えたわけだが
あの様子だと、なんかこう、大丈夫そうだな

お、おい!何勝手なルール作ってんだ!
何かあったらどう責任取るんだお前!
秘策ぅ?(耳打ちされ) …いや、それ秘策というか…
まぁ、運に任せて山本親分が負けるよりはいいか…

俺は神野悪五郎の気が変わらないように
さっき作ったつまみやら団子やらを差し出して懐柔しよう
あと万が一綾の蝶の存在に気付かれないように
敵の意識を反らすという狙いも

ほら、どんどん食え
自分で言うのも何だが料理の腕前には自信がある
おかわりはいくらでもあるぞ
え、お前達もまだ食い足りない?
ったく、世話が焼けるな!(追加で作っていく



「山本親分が狙われていると聞いて最初は身構えたわけだが……」
 トランプを片付け、浴衣の上につけていたエプロンを外し。自身が作り上げた月見の宴会料理を前に座り直した乱獅子・梓(f25851)は。
「あの様子だと、なんかこう、大丈夫そうだな」
「傍から見ている分には何だか微笑ましいよねぇ」
 どこか安堵したように息を吐き。赤いサングラスの下でにこにこ楽しそうな灰神楽・綾(f02235)と共に、山本五郎左衛門と魔王『神野悪五郎』のやりとりを眺めた。
 そのうちに、山本親分は、ほんのり赤ら顔の千鳥足で神野悪五郎に背を向け、猟兵達の間をまた歩き回り始めて。一緒にぜんざいを食べたり、ぬる燗を飲んだりと、月見の宴会を改めて楽しんでいく。
 そんな様子に神野悪五郎はぷんすか怒って百物語を披露するけれども、猟兵達がそれをさり気なく止めて。山本親分の楽しい時間を守っていた。
 ふむ、と状況を観察した梓は。
 まだまだ神野悪五郎が、山本親分への挑戦を諦めていないのに気付いて。
「酔っ払いの山本親分に攻撃を仕掛けるのは感心しないな」
 さてどうしたものかと、月見団子を摘まみながら考え込む。
 そんな梓の思案を他所に。
 ひょいと動き出したのは、綾。
「ここは2人で正々堂々とゲームで勝負するのはどう?」
 動きを止められていた神野悪五郎が、また山本親分へ挑みかかろうとするその前にしれっと割り込んで、暇潰しおもちゃセットの中から1つを手にして笑いかける。
 それはブロックを単純に積み上げて作るタワー。
 積み上げる遊びではなく、積み上げたブロックを順番に1本ずつ抜いては最上段に乗せていき、タワーを崩してしまった人が負け、というテーブルゲームだ。
「3回戦ほどやって、神野悪五郎の勝利数が多ければ、山本親分を煮るなり焼くなり好きにするといいよ」
「お、おい! 何勝手なルール作ってんだ!
 何かあったらどう責任取るんだお前!」
 あっさりと山本親分を差し出すような綾に、慌てて梓が止めようとするけれども。
「大丈夫大丈夫、俺には秘策があるから」
「秘策ぅ?」
 こそこそと、神野悪五郎に聞こえぬように耳打ちされる、1つの作戦。 
「……いや、それ秘策というか……
 まぁ、運に任せて山本親分が負けるよりはいいか……」
「でしょー?」
 とりあえず梓は納得させられ。
 自信満々、満足気な笑みを見せた綾は、改めて神野悪五郎を伺い。
「五郎左衛門と戦えると? ならばそうすべい」
「それじゃ山本親分を呼んで来るよー」
 誘いに乗ってきた神野悪五郎にまた笑いかけると、くるりと踵を返した。
「待つ間に料理でもどうだ。
 自分で言うのも何だが料理の腕前には自信がある」
 そしてその間に気が変わらないようにと、梓は腰を下ろした神野悪五郎の方へ、先ほど作った料理を差し出す。
 酒のつまみを中心に、月見団子などお月見らしいものもあり。また、少しずついろいろと楽しめる上に、ゲームをしながらでも食べやすい、手軽な形状のものが多いから。
 躊躇いながらも神野悪五郎の手がぽつぽつと伸びていった。
 その内に。
「連れて来たよー」
「ゲームで遊ぶですかにゃ~」
 ふにゃふにゃとさらに出来上がっている山本親分がやってきて。
 手早く綾が場をセッティングすれば。
「ゲームスタート!」
 楽し気な声で、ブロックのゲームが始まる。
 真剣な面持ちの神野悪五郎と、ふらふら手つきの怪しい山本親分。
 勝敗の行方はやる前から分かりそうなものだったけれども。
「あっ、梓。まだ料理残ってるよね?」
「そりゃ、あれだけ作ったからな。
 ほら、どんどん食え。おかわりはいくらでもあるぞ」
「わーい。山本親分もまた食べる?」
「いただきますにゃ~」
「くっ。余裕か、五郎左衛門!」
「神野悪五郎も食べるといいよ。
 ほら、梓の作る料理はどれも絶品なんだから」
「確かに、いこう美味でありんした……」
「美味しいですにゃ~」
「遠慮せずに食え」
「そうそう。足りなかったらまた梓が作ってくれるし」
「お前、これだけあってまだ食い足りないのか!?」
 ゲームの脇で、料理を前にわいわいと宴会も盛り上がっていって。
 神野悪五郎の気が逸れたところで、こっそり綾はユーベルコードを発動させる。
 生み出すのは複数の紅い蝶。
 他人からは発見されにくい、本来は追跡や諜報に使う能力だけれども。
 それをそっとブロックタワーの近くに忍ばせて。
 神野悪五郎の手番で、タワーに突撃させた。
「ひゃあ!?」
「あーあ、残念でした。まずは山本親分が1勝だね」
 思いっきりイカサマを仕掛けておきながら、しれっと綾は言い放ち。
 ぐぬぬ、と悔し気な神野悪五郎の前にまたブロックタワーを積み上げ直す。
(「確かにこれなら山本親分が負けることはないな」)
 その様子をしっかり見ながら、始まる2回戦目を前に、複雑な思いを抱える梓。
 何となく、ゲームで綾に勝てない自分を、神野悪五郎に重ね見て……
「ねーねー、梓。これ、なくなっちゃった。おかわりー」
「こっちもまた食べたいですにゃ~」
 しんみりする間もなく、強請られる追加料理。
 気付けば、邪魔にならないようにと隅で料理を食べていた仔竜の焔と零も、空になった皿を前に、円らな瞳で梓を見上げていたから。
「……ったく、世話が焼けるな!」
 梓はまたエプロンを手に立ち上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冬原・イロハ
エリシャ(f03249)さんと

エリシャさんが屋台(すごい!♪)を作ってくれるので、私は「おそとでゴハン色々セット♪」を用意
屋台屋さんゴッコをするのです!

蒸し済みとうもろこしをグリルしながらタレをちょいちょいとぬって
とうもろこしをくるりとして
賑やかな声にチラッと覗いて
勝負する親分さんたちの様子ににっこり
射的やヨーヨー、私も後で遊ぼうっと

たくさん遊…勝負したらお腹が空きますよね?
はいっ焼きとうもろこしをどうぞ!
と三人にお渡しします
もちろん私もいただきます

食べ終わったらUCを
今度はジャンプ勝負しましょうと呼び掛けて
とてもよく飛ぶスターが入ったロシアンルーレット仕様
悪五郎さんを飛ばしちゃいます


エリシャ・パルティエル
イロハ(f10327)と

あらあらお月見を楽しんでない無粋な人はだあれ?
神野悪五郎
あなたも一緒に楽しむのよ
さ、親分も!

UCでお祭りらしい屋台セットを作るわ
イロハには飲食店用の屋台
こっちは射的
こっちはヨーヨー釣りね
親分をライバル視してるんでしょ?
ひと勝負どう?
他の皆もどうぞ

屋台を切り盛りしながら
親分と神野悪五郎の勝負を見守ったり
盛り上げたりするわ

イロハの焼きとうもろこし美味しい!
前にかき氷も作ってくれたわよね
いつでもお店出せそうね

今度はジャンプ勝負ね
もちろん受けて立つわよね?
わ、これでジャンプできるのね
どれだけ飛ぶかは運次第ね
って、あらあら、飛んで行っちゃったわ…
あのままお星さまになったかしらね?



 これまでのあらすじ。
 テーブルゲームで山本親分に挑んだ魔王『神野悪五郎』は惨敗しました。
「おのれ五郎左衛門。かくなるうえは……っ!」
 美味しかったつまみの焼き鳥串を手にしたまま、怒りに任せて立ち上がった神野悪五郎は、反対側の手に大きな杯を掲げると膨大な妖力を注ぎ込み、桜吹雪の弾幕を生み出そうとしたけれども。
「あらあら、お月見を楽しんでない無粋な人はだあれ?」
 その両肩を抑えるように手を添えて、にーっこりと笑いかけたのはエリシャ・パルティエル(f03249)。
 驚いて振り向く神野悪五郎は、悪戯っぽい笑みを目の当たりにして。
 言葉を紡ぐ前に、その着物の裾が、つんつんと引かれる。
「エリシャさんが屋台を作ってくれたのです!
 屋台屋さんゴッコをするのです!」
 見下ろした先にいたのは冬原・イロハ(f10327)。
 浴衣姿の小柄なケットシーは、まるで屋台宣伝のマスコットのようで。
 その可愛らしさに見惚れた一瞬に。
 エリシャは神野悪五郎の身体の向きをくるりと変え、その背を押して進み始めた。
 向かう先にあるのはもちろん、イロハが勧めるお祭り風の屋台。
「神野悪五郎、あなたも一緒に楽しむのよ。
 さ、親分も! よかったら他の皆もどうぞ」
 ぐいぐいっと押し歩きながら、神野悪五郎と共に居た者達にも声をかけて。
 エリシャは、自身のユーベルコード『聖ヨシュアの具現』で創り上げた屋台セットを披露した。
 実物を模した偽物なので、店員や食べ物は再現できていないけれども。その分はエリシャとイロハが切り盛りすればいいと割り切って。
「こっちは射的、こっちはヨーヨー釣りね。
 親分をライバル視してるんでしょ? ひと勝負どう?」
 早速、エリシャが、自身の担当する屋台を宣伝すれば。
「楽しそうですにゃ~」
 酔っ払い特有のノリの良さでオモチャの銃を手にする山本親分に、ぐぬぬ、と複雑な表情を見せていた神野悪五郎も続いて。
「……今度こそ、負けませんえ」
 ぽんぽんとコルクの弾が飛び交った。
 すごい、おしい、と合いの手を入れてエリシャは勝負を盛り上げ。
 終われば次の屋台へと案内して。
 勝負の行方を見守りつつ、どんどんと吹っ掛けていく。
「こっちは焼きとうもろこし屋さんです」
 その間に、食べ物屋台担当のイロハは、野外料理の道具&食材が詰まった『おそとでゴハン色々セット♪』を取り出して。蒸して下処理をしたとうもろこしをグリルしながら、ちょいちょいとタレを塗り込んでいく。
 くるり、くるりと回すとうもろこしに、タレの色と、少し焦げた香ばしい色が、じわじわとついていけば。満足な出来栄えに、にっこり笑顔。
 合間にちらっと視線を向けると、山本親分達の楽しい勝負の様子が見えるから。
「私も後で遊ぼうっと」
 わくわくと、この後にも思いを馳せて。
 まずは、と出来上がったとうもろこしを持って屋台を出た。
「たくさん遊……勝負したらお腹が空きますよね?
 はいっ、焼き立てです。どうぞ!」
「おお~。これは食欲をそそりますにゃ~」
「ありがとう、イロハ。
 ほら、神野悪五郎。あなたの分もちゃんとあるわよ」
 そして振舞われた焼きとうもろこしを4人で並んで食べて。
「美味しいわ、イロハ!
 前にかき氷も作ってくれたわよね。いつでもお店出せそうね」
「それはかき氷も他の料理も食べてみたいものですにゃ~」
「えへへ……ありがとうございます」
 言葉で、そしてどんどん減っていく様子で、その味を褒め称えながら。
 空いた射的屋台で、わいわい遊び始めた男性2人組と仔竜とを眺めて。
 ふと、見上げた夜空には、変わらず輝く大きな大きな円い月。
(「楽しいですね」)
 イロハは、ふへへ、と表情を綻ばせると。
(「楽しいままで終わらないといけませんね」)
 大きく愛らしい藍色の瞳をキリリと引き締めて。
「今度はジャンプ勝負しましょう」
 とうもろこしを食べ終わるタイミングを見計らって、神野悪五郎へ声をかけた。
 そして皆が注目する前で、召喚するのはティンクルスター。
 幾つも幾つも呼び出された極めて柔らかいそれの1つを、エリシャがそっと触ってみれば、とっても弾力のあるクッションだったから。
「わ、これでジャンプできるのね」
 そのまま、ジャンプ台としての適性を、ほらほら、と示して見せる。
「面白そうですにゃ」
 猫耳をぴこんと立てた山本親分は、きらきらと目を輝かせて。興味津々、すぐに近くのティンクルスターへ飛び乗り。ぽーんぽーんと連続ジャンプを披露した。
 だがしかし。神野悪五郎は、得体の知れないものに警戒してか、微妙な顔で遠巻きにしていたから。
 エリシャは、触れていたティンクルスターにそっと顔を寄せ、そのまま神野悪五郎を意味ありげに見上げ、何かを含むように笑いかけると。
「親分との勝負、もちろん受けて立つわよね?」
「……相手をしてつかわす」
 挑発にあっさりと乗った神野悪五郎は、半ばムキになって、勢いよく、手近にあったティンクルスターへ飛び込み……
「あっ、言い忘れてました。
 今回の『スターライト・エアリアル』は、とてもよく飛ぶスターが入ったロシアンルーレット仕様になっています!」
「ひゃああ!?」
 説明するイロハの視界から、神野悪五郎の姿が消えた。
「あらあら、飛んで行っちゃったわ……」
 エリシャはおっとりと、とてもよく飛ばされていく姿を目で追い。
 そのまま、空を仰ぐ。
 月は変わらず大きく丸く輝いていて。
 夜空も静かに広がったまま。
 見上げた先から、神野悪五郎が戻って来る気配がないのを確認すると。
「あのままお星さまになったかしらね?」
 くすり、と微笑んだエリシャは、触っていたティンクルスターに心地よく顔を埋めた。
 もふん。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨倉・桜木
うん、この2人のやりとりちょっと面白いな。見ていたいけども万が一もある。ちょっとお嬢さんの気を逸らそうか。

やぁやぁ、其処のお嬢さん。落ち着いて。決闘は互いのやる気が大事、相手にされないならまずは気をひこうじゃないか。ね?

でだ、郷に入っては郷に従え。舞をひとさし、舞っておみせよ。親分も舞ったよ、やらないとは言わないだろう?

月や親分より楽しく美しく舞えれば気をひけるかもしれないよ?舞台は任せて、花は添えよう。【楽器演奏】【歌唱】【指定UC】

……なーんてね、まぁ、この花吹雪、燃えるんだけどね?(あっかんべ)



 まるで、大きな大きな円い月から落ちて来たかのように。
 とてもすごいジャンプから無様に着地した魔王『神野悪五郎』は。
 しばししてから、がばっと起き上がると、傷だらけの顔に怒りを露わにした。
「おのれ、五郎左衛門!」
「やぁやぁ、其処のお嬢さん。落ち着いて」
 だがそこに、どこかのんびりと声をかけたのは雨倉・桜木(f35324)。
 ちょっとした段差に寄りかかるように軽く腰掛け、三味線を手にした桜の精は、乱れた髪もそのままに振り向く神野悪五郎のどこか愛嬌のある姿にくすりと微笑み。
(「ちょっと面白いな」)
 遠目に、でもしっかりと眺めていたこれまでの一部始終を、親し気な山本親分と一方的に挑戦し続ける神野悪五郎という凸凹な2人のやりとりを、思い出す。
(「このまま見ていたいけども万が一もある。ちょっとお嬢さんの気を逸らそうか」)
 桜木は陽気な笑みを浮かべたまま、三味線の撥をゆるりと神野悪五郎へ向け、誘った。
「決闘は互いのやる気が大事。
 相手にされないならまずは気をひこうじゃないか。ね?」
 その提案を支持するかのように、三味線がべべん、とひとりでに鳴く。
 驚いたように目を見開き、こちらを凝視する神野悪五郎に、桜木は瑠璃色の袖を翻すように腕を広げ、そこに描かれた細い葉模様を揺らした。
「で、だ。豪に入っては豪に従え。舞をひとさし、舞っておみせよ。
 親分も舞ったよ。やらないとは言わないだろう?」
 舞いを表すような優雅な動きで腕を振り、長く緩やかな桜色の髪を遊ばせて。
 敵視する山本親分も引き合いに出せば。
 むむ、と考え込む神野悪五郎の気持ちも揺らぎ。
「月や親分より楽しく美しく舞えれば気をひけるかもしれないよ?
 舞台は任せて、花は添えよう」
 さらにその背を押すように、桜木は言葉を重ね。
 そして、ユーベルコードを発動させる。
「荒べ、風は花とも遊び踊りて」
 桜木の頭部を飾る八重紅枝垂桜を思わせる美しき花弁が、戯れるように舞い上がり。
 神野悪五郎に約束した通り、華やかな花の舞台を作り上げた。
 そして手にした三味線も、今度は撥で弦を弾いて、本来の音を奏で。
 さらに桜木は歌も歌い、自身の声も合わせていく。
 その旋律に惹かれるように、神野悪五郎は動き出し。
 おっとりしたオラトリオの女性と、踊り始めた。
 さらに、小さな妖狐がわらわらと現れ、その周囲で盛り上げると。
 歌声が重なり、フルートの音も三味線に寄り添ってくれる。
 歌えや歌え。
 踊れや踊れ。
 人も花も月も皆、ただただ楽しめ。
 大きな大きな円い月に照らし出されたステージで。
 気付けば山本親分も、小さくない妖狐と踊っていて。
 賑やかで楽しい宴となったところで。
 三味線がまた、べべん、と曲とは関係なくひとりでに鳴き。
 それにくすりと微笑んだ桜木が、ぺろりと小さく舌を出した。
「まぁ、この花吹雪、燃えるんだけどね?」
 途端、特に神野悪五郎の近くで舞っていた桜の花弁が、その本来の効果『花風の戯れ』を現わして。満開の緋桜のように、真っ赤に燃え上がる。
 次々と神野悪五郎に降り注ぎ、燃え盛る花弁の桜翔舞。
 それまでのものとは明らかに違う必死な踊りで火に抗う神野悪五郎だけれども。
 桜は次々と神野悪五郎に向かい、燃え尽きることなく、包み込んでいくから。
 火の向こうから、計ったな、と言いたげにこちらを睨んで来る瞳に。
 桜木は三味線を奏で続けながら、あっかんべ、と応えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【翼狐】

万一百物語披露されたところで
多分こっちに怖がるメンツはいないけどね…
僕と木常野さんはむしろ実物を見慣れてるし
姉さんは……この性格だし

悪五郎さん?を巻き込みに行った姉さんをやれやれと見送り
木常野さーん、酔いは大丈夫?
折角だし、一緒に余興でもどう?
あ、悪五郎さーん
姉さんに勝つのは家族でも無理だから
諦めて一緒に巻き込まれてよ
さりげなく【指定UC】で抵抗の意思すらも奪いつつ
姉さんの歌にコーラスの【歌唱】を重ねたり
明るい曲調のフルートの【楽器演奏】で盛り上げ役をやるよ

たまには敵味方関係無く遊んでみるのもいいんじゃない?
きっといい刺激になるよ
お互い、ね

ふふ、可愛いバックダンサーもありがとう


栗花落・深香
【翼狐】

あらあらぁ、可愛いお客様ねぇ
でも、宴の席で争いは無粋よぉ?

満面笑顔で【指定UC】
あら、私の妹になってくれるの?嬉しいわぁ!
貴方ならどんな服も似合いそうだし、折角ならおめかしもしてあげたかったのだけれど、今日はお着替えは持っていないの、ごめんなさい
でもその着物もよく似合っているし、この場には一番ぴったりね
ゴローちゃん、私と一緒に踊りましょう!

百物語の一話も読ませる時間も与えないほどの勢いで話しかけながら彼女の手を取って
いっそ巻き込んじゃうわね
あとは澪のフルートに合わせて【歌唱】を

可愛くて大切な弟に、可愛いお友達の都月君も居て
新しい妹も出来て
最高のお月見ねぇ♪
山本親分さん
貴方も一緒にどう?


木常野・都月
【翼狐】

キュ…少し酔っ払ったかなぁ?
ん、先輩、俺は大丈夫です…よきょう?
(尻尾ゆらゆら)

なんか、お姉さんも、先輩も、ゴロー?さんも、楽しそう…

これは…俺も混ざらないと〜?

チィ、ちょっと戻って来てくれ〜
月の精霊様だから、ちょこっと月の光を集めたりできるか?

お姉さんと、先輩、ごろ〜さんを月明かりのライトアップするんだ。
チィに任せた〜

後は賑やかに楽しもう。
UC【小さな俺分身】で、小さい俺達を沢山呼ぼう。

いいか俺たち、全員聞け〜!
皆で宴でお姉さんと先輩のバックダンスするんだ〜
うたげ、だ〜!

山本親分〜親分も踊りませんか?

ん?ひゃくものがたり?よく分からない…それより踊りましょ?
まだまだ踊れますよね?



 ぴこん、ぴこぴこんと不規則に狐耳が動き。
 ふさふさな狐尻尾が、一時も止まることなくゆらゆらと揺れ続ける。
「キュ……少し酔っ払ったかなぁ?」
 ほんのり赤く染まった顔で、黒い瞳をとろんとさせた木常野・都月(f21384)を、栗花落・澪(f03165)は少し心配そうに覗き込んだ。
「木常野さん、大丈夫?」
「ん、先輩、俺は大丈夫です……」
 両手で果実酒を握りしめながら、返ってきた返事はやはりふにゃふにゃしていて。
 でもその表情はにこにこと楽しそうなものだったから。
 澪は、気遣いつつも、くすりと微笑む。
 楽しい月見の宴の時間。
 いつの間にか、幻影百鬼夜行は消えていたけれども。
 代わりにというように現れたのは、オブリビオンである魔王『神野悪五郎』。
 山本親分に絡もうとして猟兵達にあしらわれているその姿を、遠目に澪は追いかけて。
(「百物語を披露されたところで、多分こっちに怖がるメンツはいないけどね……」)
 垣間見たユーベルコードに、思う。
 怪談話どころか、澪はむしろ実物を見慣れているし。都月も同様。
 そして、澪の従姉妹にして姉である栗花落・深香(f03474)に至っては。
「あらあらぁ、可愛いお客様ねぇ」
 星型クッションで夜空に舞い、近くに落ちてきた神野悪五郎へと、恐れも怖がりもせずにむしろ率先して近づいていく始末。
「でも、宴の席で争いは無粋よぉ?」
 尚も山本親分に挑もうとする神野悪五郎に、三味線の音色の中で近づいて。
 発動させるはユーベルコード『全世界妹化計画』。
「あら、私の妹になってくれるの? 嬉しいわぁ!」
 いきなり深香に抱き着かれ、困惑する神野悪五郎だったけれども。
 すぐに、可愛くなりたいという願望が沸き上がってきて。
 唐突すぎて不自然なその気持ちの変化に気付く間もなく。
「貴方ならどんな服も似合いそうだし、折角ならおめかしもしてあげたいのだけれど、今日はお着替えは持っていないの、ごめんなさい」
 身体を離した深香は、そのまま神野悪五郎をじーっと見てから残念そうに苦笑し。
「でも、その着物もよく似合っているし、この場には一番ぴったりね」
 すぐに神野悪五郎の着物を褒め、ちょっと乱れていたそれに少しずつ手を伸ばす。
 何しろいろいろなゲームをやった後なので。
 崩れかけていた帯の形を作り直し、ぽんぽんと汚れをはたいて、大きくはだけた胸元や短くたくし上げられた裾をセクシーさはそのままに元の際どい位置で整えてあげる。あとは、乱れた髪を梳いて、顔の汚れをおしぼりで拭いてあげて。
 ようやく深香は満足の笑みを見せた。
 それを眺めていた澪は。
(「やれやれ……」)
 いつもは自身がやられている妹可愛がりな様子に、肩を竦めて苦笑して。
(「姉さんも……この性格だから、百物語なんて気にしないよね……」)
 神野悪五郎相手でも変わらぬ深香に、感心するやら呆れるやら。
 でも、山本親分を狙う神野悪五郎を足止めするには、深香の行動は効果的で。例え自身の欲望のままに動いているのだとしても、この場に合ったものではあるから。
 澪は、援護するべく動きだす。
「木常野さーん。折角だし、一緒に余興でもどう?」
「……よきょう?」
 まずは、まだふわふわしている都月に声をかけ、神野悪五郎に気付かれないようにこちらの対応人数を増やせば。
「ゴローちゃん、私と一緒に踊りましょう!」
 深香は流れている三味線の音に合わせて、神野悪五郎を巻き込んだ。
 近づき抱き着き話しかけ、百物語の一話すら読ませる時間も与えずに、怒涛の勢いで押し切ろうとする深香に手を引かれ。
「あ、悪五郎さーん。
 姉さんに勝つのは家族でも無理だから、諦めて一緒に巻き込まれてよ」
 実感のこもった、どこか諦めの入った意見が澪から飛んで。
 さらに澪は、その言葉にユーベルコードのおねだりを乗せていたから。
 深香の妹として可愛がられたい。可愛い澪のおねだりに従ってあげたい。
 神野悪五郎の心は、姉妹の誘惑に絡め取られ、誘導されていく。
 そして、紅桜の花弁がひらひらと舞えば。
「ようす。五郎左衛門より美しく舞って見せましょう」
 満面の笑みを浮かべる深香と共に、その誘いの手を取って、踊り出した。
 澪は、三味線に歌を乗せて、コーラスを重ねてみたけれど。
 それより、と思いついてフルートを取り出すと、さらに明るく盛り上がるように、軽やかで華やかな音を添えていく。
 楽しい曲。楽しい踊り。
「なんか、お姉さんも、先輩も、ゴロー?さんも、楽しそう……」
 ふわふわとそれを眺めていた都月も。
「これは……俺も混ざらないと~?
 よ~し。出てこい俺達~!」
 召喚したのは、百を超える小さな妖狐。
 それも、都月によく似た、いや都月の分身であるような者達で。
「いいか俺たち、全員聞け~!
 皆で宴でお姉さんと先輩ののバックダンスするんだ~」
 どこかふわふわした指示だったけれども、正しく都月の意図を受け取った分身達は、すぐに深香と神野悪五郎の周囲に散らばり、踊り出した。
 また、澪の近くにも数人寄ってきて。こちらはフルートを吹く仕草を真似して踊る。
「ふふ、可愛いバックダンサー。ありがとう」
 くすくすと楽し気に微笑んで、澪はさらに美しい音色を響かせた。
「あとは……チィ、ちょっと戻って来てくれ~」
 さらに都月が呼び寄せたのは、月の精霊の子『チィ』。
「お姉さんと、先輩、ごろ~さんを月明かりのライトアップするんだ」
 頼みにチィと鳴いて応えた小さな白狐のような可愛い精霊は、大きな大きな円い月からの淡い光をそっと集めて、柔らかなスポットライトを作り出す。
 三味線とフルートの音色が重なり、灯りの中にふわりと紅桜の花弁が舞い、小さな妖狐が賑やかに囲む、舞の舞台が出来上がれば。
「うたげ、だ~!」
 尻尾をゆらゆらふわふわ揺らして、都月自身も踊り出した。
 どんどん盛り上がっていくステージに、深香も楽しくステップを踏んで。
 その最中、通りかかった千鳥足に気付く。
「山本親分さん、貴方も一緒にどう?」
「山本親分~。親分も踊りませんか?」
「おっ。楽しそうですにゃ」
 深香の声に、そして直接誘いに行った都月に手を引かれて、山本親分も参加すれば。
「おのれ五郎左衛門……」
 神野悪五郎が本来の目的を思い出しかけるけれども。
「ん? ゴロ~さんどうかしました~?
 よく分からない……それより踊りましょ? まだまだ踊れますよね?」
 山本親分とくるくる踊りながら、都月がにこーっと笑いかけ。
「たまには敵味方関係無く遊んでみるのもいいんじゃない?
 きっといい刺激になるよ。
 お互い、ね」
 尤もらしいことを言って説き伏せる、と見せかけてまたおねだりという名の誘惑で、改めて誘いをかける澪の願いの効果を受けて。
 さらに、考える間もなく深香に手を引かれ、美しい歌声と共に、考える間もなくまた踊りへ引き戻されていく。
 歌えや歌え。
 踊れや踊れ。
 人も花も月も皆、ただただ楽しめ。
 そんな月見の宴を華やかに紡いで。
「可愛くて大切な弟に、可愛いお友達の都月君も居て、新しい妹も出来て……
 最高のお月見ねぇ♪」
 ふふっと微笑んだ深香が、繋いでいた手を離し、くるくる踊りながら神野悪五郎から離れると。バックダンサー達も深香の動きについていき。
 1人残された神野悪五郎に降り注いだ桜の花弁が、緋色に燃えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
《狐御縁》

猟書家が襲って来ているのに
ここまで緊迫感の無い状況なのも
この世界ならではでしょうね


燦が用意した打ち上げ花火の点火を手伝いつつ
悪五郎さんの百物語にはコミュ力で面白い設定をツッコミで割込み
笑い話にする


皆からの突然のお誕生祝いに
最初は驚きつつも満面の笑顔で喜びます

皆ありがとう♪


焔のモンブランケーキ
マロンクリームが濃厚でかつ繊細な感じで
スポンジ生地がふわふわで美味しいです♪


燦からは…これは凄くフリル増しましなパジャマね

爛のリクエストで早着替えしてみます

ど、どうかな?

う~ん
私は燦の婚約者という立場ですから
今まで通りシホで良いと思うよ


テフラからのフィギュアは
とても可愛いですし
翼の部分も動くのですね
凄いです♪


パティシエルルの新作ね
うん
小豆が優しい甘さで美味しいです♪


うれしく幸せな思い出を胸にお酒の入った勢いも含めて
私も【星奏】で花火の様な弾幕結界を披露
皆のデフォルメイラスト花火を打ち上げます

お誕生日祝いをありがとう
こちらこそこれからもよろしくね♪


もう酔っちゃったの?
酔った燦は膝枕で介抱します


四王天・燦
《狐御縁》

悪五郎なる野郎に打上花火を見舞う予定(良い子も悪い子も真似しないでください)だったが美女じゃねーか
性別詐欺はテフラの専売なのに…
狐として騙されたことへのショックと、女の子に乱暴できねー性分から猟書家退治はやめます

それよりシホの誕生日パーティしようぜー♪(切り替えが早い)

夜空に♡やルルお憑きの幽霊の形で炸裂する花火をぶっ放す
月見の風情も大事なので2~3発だけに留めるぜ

シホ、お誕生日おめでとー♪
フリルたっぷりの可愛いパジャマをプレゼントするよ
題してアリスパジャマです
あは、似合ってる♪

モンブランは女子会って感じでいいね
この栗は四王稲荷神社の庭で焔が子供の頃から育てたやつでしょー

爛、アタシをお姉様と呼んでも良いんだぜ
むしろ呼ばれてみたい…

酔ってきたら悪五郎に飲めよと暗黒芋焼酎(甲)をどんどん注いで潰しちゃうよ
稲荷巫女酔っ払いのお説教で対抗心だけでは親分に愛は届かないとかグダグダ言い始めます
言い訳はさせない

シホも飲もうよー…と酩酊してもたれて眠るのでした
あは、あたたかいー…ZZZ


狐裘・爛
《狐御縁》
古くから飲料もさまざまな工程を加えた立派な料理だとうんぬんかんぬん……《炎幻より捧ぐ》! 早業で飲み物準備、ほら、お茶にお酒にいっぱいあるわよ。花火に、お話もたくさん、綺麗な花を咲かせましょ!
悪五郎さんも、ほら、ぐぐいっと。

シホの誕生日ね。やだ、月日が経つのは早いわ。……シホも呼び方変えなきゃかしら、ね! お姉様♪ んー、しっくりこないわ。とりあえずケーキ食べましょ。燦のプレゼント、センスあるわね。はやく着こなした姿見たいな!
改めてお誕生日おめでとう。改めてこれからよろしくね!


四王天・焔
《狐御縁》
悪五郎さんも月見を一緒に楽しもうよ
焔も争い事は苦手だし月見へのお誘いを掛けてみるね
「月見団子も飲み物も沢山あるし、一緒に騒いで月見を満喫しようね!」
燦姉が花火を打ち上げる様だし、焔も点火を手伝うよ!

それと、シホ姉の誕生日も近いので折角なので誕生日会も兼ねてみるね
秋の味覚という事で、モンブランを作ってみたよ
「シホ姉、お誕生日おめでとうね。良かったら食べてみてね」
皆の分や、悪五郎さんの分のモンブランも作っておいたから、皆で食べようね

爛がシホの事をお姉様って言うと、やっぱり家族って感じがするね
テフラさんも、女子会に馴染んで来ていると思うよ
ルルさんの妖怪達も一緒にお祭り参加しようね♪


テフラ・カルデラ
《狐御縁》

名前と外見が一致していないのですよ!?名前からして絶対男性かと思ったのに…
いつの間にか性別詐欺が専売になっています!?
えっと…ともあれ…戦いではなく宴を楽しむ流れになりましたね…

わぁぁ…どの花火も綺麗なのですよ~♪
そして、シホの誕生日パーティの流れに!お誕生日おめでとうございます!
わたしからはシホを模したデフォルメフィギュアをプレゼントなのですっ!
焔さんのモンブランとっても甘いのですよ~♪
(女子会…もしかしてわたしも入って…いる?)


ルルチェリア・グレイブキーパー
≪狐御縁≫

シホや燦が打ち上げた花火を
UC【百友夜行】で妖怪達を呼び出して皆で見るのよ!
わいわい騒いで神野悪五郎を巻き込むのよー!

さぁさぁ、皆いらっしゃい♪
お化けねずみや腹ペコ坊主、輪入道、木綿キョンシーも
皆いっしょにお祭りよー♪
焔さんも一緒なのよ♪

わぁ、みてみて!シホと燦の花火がとっても綺麗なのよ!
あの花火タクローに似てるわ!
(お供の幽霊達が飛び回って喜んでいる!)

そうそう私からもシホへプレゼントが有るのよ
あずき洗いから頂いた小豆でクリームぜんざいを作ったわ!
フフン、お菓子作りも上達してるのよ。
あまあまでとっても美味しいのよ~
誕生日おめでとうなのよ!



 空を見上げると、大きな大きな円い月が淡く輝いていた。
 祈りを重ねた月が、その願いが叶うのを見守ってくれているかのように。
 そして辺りを見渡せば、幾つもの宴会の席がそれぞれに盛り上がっていて。
 何だか屋台が出ていたり、三味線やフルートの音が聞こえてきたり。
 楽しい月見の一時が穏やかに流れていたから。
「猟書家が襲って来ているのに、ここまで緊迫感の無い状況なのも、この世界ならではでしょうね」
 純米吟醸が入っていた猪口をそっと置いて、シホ・エーデルワイス(f03442)は柔らかく微笑んだ。
 一応、猟書家であるオブリビオン、魔王『神野悪五郎』の動向くらいは把握しておいた方がいいかもしれないと、こちらもどこかのんびりと思い、ブルーサファイアの視線を彷徨わせれば。
 なんか踊りながら火達磨になって、倒れるように崩れ落ちた神野悪五郎を、見つけた。
 どうしたのだろうかと、やはりのんびりと見ていると、何とか火は消せたようで。
 煤で汚れたまま、ようやっと身を起こした神野悪五郎に。
「わーい。悪五郎さんも月見を一緒に楽しもうよ」
 無邪気に四王天・焔(f04438)が駆け寄り、誘いの声をかけた。
 ダメージを負っているのも、髪や着物が焼け焦げているのも、全然気にしていない様子で、焔は、有無を言わさず神野悪五郎をこちらへと連れてきて。
「皆、悪五郎さんだよ」
「!?」
 紹介した瞬間、四王天・燦(f04448)とテフラ・カルデラ(f03212)が、驚愕の表情で凍り付いた。
 それは、敵であるオブリビオンがしれっと宴会に連れて来られた、その事実に驚き、恐れ戦いた……わけではなく。
「野郎に打ち上げ花火を見舞おうと思ってたら、美女じゃねーか!」
「名前と外見が一致していないのですよ!? 絶対男性だと思ってたのに……」
 先に名前だけ聞いていた魔王『神野悪五郎』の人物像が、想像と違いすぎたことに対してのものでした。確かにね、悪五郎って男性名っぽいですからね。
「狐なのに騙された……
 それにアタシは、女の子に乱暴できねー性分なんだ……」
 あと、打ち上げ花火は例え野郎相手であっても人に向けちゃあいけませんよ。良い子も悪い子も真似しないでください。
「性別詐欺はテフラの専売なのに……」
「いつの間にかわたしの専売になっています!?」
 膝をついてまでがっくり落ち込む燦の言葉に、男の娘なテフラがまた違うショックを受けていたようですが。
 落胆していたも仕方がないと、燦は気持ちを切り替えて。
「折角用意したし、普通に打ち上げ花火をぶっ放すぜ!」
 しゅんとしていた狐耳もぴんっと立てて、本来の使い方で、花火の準備をし始める。
 手伝いましょう、とシホが作業に加われば、焔も手伝うよ、と人手が増えていき。
「えっと……
 ともあれ……戦いではなく宴を楽しむ流れになりましたね……」
 戸惑いながらも、テフラの表情もほんわり楽し気なものになっていけば。
「花火? 盛り上げていくのね」
 ルルチェリア・グレイブキーパー(f09202)が紡ぐのは、百鬼夜行ならぬ百友夜行。
「さぁさぁ、皆いらっしゃい♪
 お化けねずみや腹ペコ坊主、輪入道、木綿キョンシーも。皆いっしょにお祭りよー♪」
 怖いというより可愛らしい仲良しの妖怪達を呼び出すと、一気に賑やかになって。
 わいわい騒ぐその中に、さあさあと神野悪五郎も誘い、巻き込んでいく。
 戸惑いながらも、木綿キョンシーに背を押され、踏み出した足元でちょろちょろするお化けねずみを踏まないように、あわあわしていた神野悪五郎の肩がぽんっと叩かれ。
「古くから飲料もさまざまな工程を加えた立派な料理だとうんぬんかんぬん……」
 振り向いた先で、何やらぶつぶつ言っていたのは狐裘・爛(f33271)。
 呪文のような口上と共に、ちゃちゃっと早業を見せ。
 ユーベルコード『炎幻より捧ぐ』で作り上げる、数多の飲み物。
「ほら、お茶にお酒にいっぱいあるわよ」
 これで観覧席の準備はバッチリ、とばかりに笑いかけ、勧めていくうちに。
 どーん、と夜空に花火が打ち上がった。
「わぁ、みてみて! とっても綺麗なのよ!」
 早速お茶を手に、空を見上げるルルチェリア。
 指差した夜空に鮮やかに浮かび上がったのは、定番の丸ではなくハート形で。
 きらきらと崩れ消えていくと、続いて、今度は幽霊な形で打ち上がった。
「あの花火、タクローに似てるわ!」
 周囲を飛び回るお供の幽霊の子達とも、そっくりだと喜びはしゃぐ。
「わぁぁ……どの花火も綺麗なのですよ~♪」
 テフラもにこにこと夜空を仰ぎ。
 つられるように神野悪五郎も上へと顔を上げかけるけれど。
「悪五郎さんも、ほら、ぐぐいっと」
 すぐに爛に引っぱられ、目の前に差し出されるのは酒の杯。
「花火に、お話もたくさん、綺麗な花を咲かせましょ!」
 夜空に負けじと地上でも楽しい花を咲かせようとして。
 打ち上げ手から戻ってきた焔も、飛び込むように合流した。
「月見団子も飲み物も沢山あるし、一緒に騒いで月見を満喫しようね!」
 向けられた無邪気な笑顔に、出かけていた文句をぐっと飲み込む神野悪五郎。
「もう花火は終わりですか?」
「月見の風情も大事だからな」
 シホと燦も、花火を切り上げやってきた。と思うと。
「それよりシホの誕生日パーティしようぜー♪」
 すぐさま、次のイベントを切り出す燦。
 その切り替えの早さに、そして思わぬ祝いに、シホが驚いて目を瞬かせると。
「シホ、お誕生日おめでとー♪」
 目の前に、燦がずいっとプレゼントを差し出した。
 大きなリボンが飾られた一抱え程の袋を、反射的にもふっと受け取れば。
「シホ姉、お誕生日おめでとうね」
「お誕生日おめでとうございます!」
「誕生日おめでとうなのよ!」
「お誕生日おめでとう。改めてこれからよろしくね!」
 可愛いラッピングの向こうから、焔の、テフラの、ルルチェリアの、爛の、温かな声が届いて。
 こちらを見つめる数多の笑顔に、シホにも満面の笑みが浮かんでいく。
「皆ありがとう♪」
 喜びをお礼で返すと、また皆の笑顔が輝いた。
 そして雰囲気に促され、シホは受け取った袋を開けてみる。
 中から出て来たのは、フリルたっぷりの可愛いパジャマ。
「題してアリスパジャマです」
「これは……すごくフリル増し増しね」
 えっへん、と胸を張る燦と。
 ただ寝るためだけではないデザインに、パジャマを広げて再び目を瞬かせるシホ。
「燦、センスあるわね。はやく着こなした姿見たいな!」
 でも、だからこそ、爛のリクエストに応える気になって。
 シホは見事な早着替えをみせた。
「ど、どうかな?」
 それでもやはり、パジャマ、という外出用ではない服に、少し躊躇うシホだけれど。
「あは、似合ってる♪」
 見立て以上の姿を見れたと、燦がとても嬉しそうだったから。
 つられるように、シホの表情も和らいでいく。
「わたしからもプレゼントなのですっ!」
 続けとばかりにテフラが差し出したのは、シホを模したデフォルメフィギュア。
 小さい中にシホの特徴をよく捉えた、エーデルワイスの花咲くオラトリオを、シホはそっと大事に受け取ると。
「とても可愛いです。
 ああ、翼の部分も動くのですね。凄いです♪」
 その細かなギミックにも気付き、ほら、と皆に見せていく。
「焔は、秋の味覚という事で、モンブランを作ってみたよ。良かったら食べてみてね」
 そして焔は、誕生日には必須のケーキを用意して。
 勧められるままにシホはまず一口。
 濃厚かつ繊細なマロンクリームがほっくりした甘さを広げ、ふわふわのスポンジ生地の食感がその優しさを引き立てていた。
「美味しいです♪」
 ふんわり綻ぶシホの笑顔に、羨むような視線が集まっていったけれど。
「皆の分も作っておいたから、皆で食べようね」
 すぐに焔が追加したモンブランに、笑顔がわっと広がった。
 ちなみに、神野悪五郎の分もちゃんとありました。よかったね。
「この栗は四王稲荷神社の庭で焔が子供の頃から育てたやつでしょー」
 舌鼓を打ちながら、燦が確認すれば焔の頷きが返ってきて。
「そうなんですか~」
 感心したテフラは、大切にモンブランを切り分け、ぱくり。
「焔さんのモンブラン、とっても甘いのですよ~♪」
 美味しそうに頬を抑え、表情を綻ばせるテフラを見た燦は。
「女子会って感じでいいね」
 うんうん、と頷きながら、こちらもぱくり。
 さらりと聞き流しかけたテフラだったけれども。
(「女子会……もしかしてわたしも入って、いる?」)
 黒一点のはずなのに、とちょっと複雑な心境を抱く。
「テフラさんも、女子会に馴染んで来ていると思うよ」
 その戸惑いが分かったかのように、焔がにこにことモンブランを食べた。
 ルルチェリアもモンブランを口にしてから。
「そうそう、私からも有るのよ。
 あずき洗いから頂いた小豆でクリームぜんざいを作ったわ!」
 追加したのは、月見の席に合わせたような和のメニュー。
「パティシエルルの新作ね」
 器を受け取ったシホに、ルルチェリアは胸を張り。
「フフン、お菓子作りも上達してるのよ」
「うん。小豆が優しい甘さで美味しいです♪」
 モンブランとはまた違う甘さを楽しんでいく。
「お酒もいっぱいあるよ、シホ」
 そこに、爛がお酌をするように声をかけて。
 ふと、気付く。
「シホの誕生日……やだ、月日が経つのは早いわ。
 ……シホも呼び方変えなきゃかしら、ね! お姉様♪」
 そして思い付いたいつもとは違う呼び方を口にするけれども。
「んー、しっくりこないわ」
 不慣れゆえにか、爛は何となく首を傾げ。
「う~ん……
 私は燦の婚約者という立場ですから、今まで通りシホで良いと思うよ」
 気遣ってか、シホもそう受けれども。
「爛がシホの事をお姉様って言うと、やっぱり家族って感じがするね」
 焔は気に入ったように笑った。
 その一連の流れを聞いていた燦は、はっと気付いたように振り返り。
「爛、アタシをお姉様と呼んでも良いんだぜ。
 むしろ呼ばれてみたい……」
 要求を伝えてみるけれども。
「とりあえずケーキ食べましょ」
 爛は改めてモンブランに向き直り。
 その動きが自然と燦から顔を反らしたようになっていたから。
「え、ええと……お姉様ー」
 おろおろとテフラが呼んではくれたけれども。
 燦は、むむ、と難しい顔になり。
「飲んでるか、神野悪五郎!」
 モンブランを味わっていた神野悪五郎に絡み出した。
「あれだよ。対抗心だけでは親分に愛は届かないんだよ……」
 飲めよ飲めよと暗黒芋焼酎(甲)をどんどん注ぎながら、グダグダと説教をする、酔っ払いの絡み酒。
 と見せかけて、燦の話はユーベルコード『稲荷巫女のお説教』になっていて。
 言い訳も許さない質の悪さではなく、その場に敵を足止めする効果で、神野悪五郎を引き留める作戦……のはず。
 しかし燦の話はだんだんとわやわやになり。
 ぐでーっとシホへ倒れ掛かり。
「シホも飲もうよー……」
「もう酔っちゃったの?」
 あら、と受け止めたシホの膝で、酩酊した燦は眠りに誘われていった。
「あは、あたたかいー……」
 仕方ないと優しい苦笑を浮かべたシホは、そっと燦の灰色の髪を撫でて。
 ふっと顔を上げ、周囲を見る。
 素敵なプレゼントと。
 大切な家族同然の仲間と。
 紡がれた、嬉しく幸せな時間。
 その思い出を胸に抱いて。
 シホもユーベルコードで、花火の様に色鮮やかで心奪われる旋律の魔弾を放った。
 複雑に飛翔した弾幕結界は、美しく夜空を駆け。
 そこに皆のデフォルメイラストを描き出す。
 焔が。爛が。テフラが。ルルチェリアが。
 空を見上げて自身を見つけると、歓声を上げて。
 燦も、眠ったまま、どこか幸せそうに笑みを深める。
 そんな皆を、シホは目を細めて愛おし気に眺めて、告げた。
「お誕生日祝いをありがとう。
 こちらこそこれからもよろしくね♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんにき】
ほふ。
わたしは当然ノンアルコール状態だけど
楽しそうなシリン達の呑みっぷりを見てるとほろ酔いがうつった感じ
ふふ…楽しい
無意識に体を揺らすとひらひらと踊り舞い始めて
ん、シリンも踊る
宴の余興、親分もご一緒いかが?

楽しみついでにお団子やお供えはお重に詰めて
ん、これは双子の兄へのお土産
…んむ?どなた?
男の人ではなく花魁はんなんし?
大丈夫、まだまだ食べる物残ってる
足りなければわたしの貯蔵肉も追加しよう

…花札?
ガーネット知ってる?
ほはほふと説明を聞けば納得
なるほど、月に紅葉に菊、ここの景色と同じ
鹿の代わりにうさぎ達がいるし、…毛玉もいる(他人のフリ)
写真!皆で一枚、今日の記念
悪五郎も入んなし


木元・あかり
【かんにき】
※もきゅっとしたモラ語(?)しか話せません

きゅきゅきゅー…(ほろ酔いで千鳥足)
いかん、酔い過ぎた感があるが敵と遭遇する予感
しっかりパトロールせねば!
きゅきゅーとアキからの気付けの一杯はしっかり頂き
あっちにふらふら、こっちにふらふら
モラスパークを無意識に飛び散らせ、悪太郎と遭遇すればぴちぴち攻撃はしておく

きゅっ(船員が増えて女子会から普通の宴会の予感)
そわそわと宴会の中に入り、腕相撲を見たり参加したり
更にほろ酔いつつも娘(杏)の舞はしっかり鑑賞
きゅー(うむ、知らぬ内によく成長し…なんか太ってないか気のせい?)

すすきに紅葉、猪でなく兎に囲まれる月夜の宴会
なかなか絵になるもんだな、きゅ!


ガーネット・グレイローズ
引き続き【かんにき】

宴もたけなわだね。
私もグリードオーシャンの、ガーネット商会が扱っている食べ物(南国の果物や、干し魚)やお酒を提供していこう。

「おーい、皆出てきて」
浴衣姿の屈強な男たち(船乗り)が荷物を手に現れて、ノリノリで宴会に混じってくる。猟書家にも気づかず大声で歌ったり、楽器を演奏したり、腕相撲大会を始めたり。
私はその様子を眺めながら、ウイスキーをちびちびと飲むよ。
…おや、シリンも踊れるのかい?
杏もうさみん☆と一緒に混ざってくる?

アキ、花札とは?……なるほど、ニホンの古いカードゲームのことなのか。ここに在るのは満月にススキ。鹿はいないが……可愛い兎がいるね。


駒鳥・了
親分さーん! 足取りが確りするまでゆっくりしてこ?
っつかモラちゃん潰れんなあ、気付けの一杯はどーお?

気付けば歌や踊りが始まってる
オレちゃんは観客側で賑やかしやってんね!
センセーは後ろから脅かせば吃逆止まるかな?
色々と摘まむ手も動いてるよ

ところでココの景色って花札っぽいよね
ススキに満月、萩にえーと紅葉はある?
花札ってのはこーゆー(スマホで検索説明
ってコトで記念写真を花札っぽく撮るのとかどうだろ!
勿論雷もあるよ!
(モラちゃんのスパークと一緒にどーんとUC発動。
 もちろん悪五郎ちゃん宛て
え、雷の札はなかったっけ?まーいっか!
鹿とか猪とかは居ないから、代わりに魔獣ベーコンも一緒に写そっか!


シリン・カービン
【かんにき】

「ふう、今日はだいぶ聞し召しましたね」
ほんのり頬を染めてほろ酔い気分。

ガーネット商会の船乗りたちに手を振りつつ
流れ来る調べに身を任せ、月下の舞台で舞をひとさし。
ふふ、杏も上手ですよ。
どうです、親分さんもご一緒(ヒック)
……(ヒックヒック)
あら、止まらな(ヒック、ヒック、ヒック……)

……ふう。
ようやく治まりました。気を緩め過ぎたようです。
猟書家もいることですし、警戒は怠らないようにしないと。
あ、ガーネット、私にも一杯お願いします。(言った傍から)

花札、ですか。
なるほど、この場に合いそうですね。
……毛玉も?
まあいいでしょう。(ガシと毛玉掴み)
ほら、親分さんも神野ももっと寄って下さいな。



「きゅきゅきゅー……」
 ふらふらふわふわ。右へ左へ上へ下へ。
 頼りない軌跡を描いて宙に浮かぶ白い毛玉……じゃなかった、モーラットの木元・あかり(f35690)は、ほろ酔いの心地良さの中で、ハッと気を引き締めた。
(「いかん、酔い過ぎた感があるが、敵と遭遇する予感。
 しっかりパトロールせねば!」)
 そう思いながらも、あっちにふらふら、こっちにふらふら。
 多分、人型であったなら、千鳥足と言われるような不安定さで辺りを漂う。
 そうしてパトロールになってないパトロールをするうちに。
 気付けば、その傍に、猫尻尾が揺れていて。
(「……あれ?」)
 振り仰いだそこには、ふにゃふにゃした幸せそうな赤ら顔の山本五郎左衛門が、見事な千鳥足であかりの隣に並んでいた。
「親分さーん! 足取りが確りするまでゆっくりしてこ?」
 そこに声をかけたのは、駒鳥・了(f17343)。
 酒解禁までカウントダウン中だからまだまだ飲めないお年頃な了は、もちろん素面。
 でも酔っ払ったように陽気に、けらけらと笑いながら手招きする。
「っつか、モラちゃん潰れんなあ、気付けの一杯はどーお?」
「きゅきゅー」
 山本親分の傍に浮かんだ毛玉にも気が付いて、そちらにも誘いをかけると。 
 断る理由などなにもないとばかりに、あかりは山本親分と共に近づいてきた。
 戻ってきたきた2匹がまた杯を傾けるのを眺めて。
「ふう、今日はだいぶ聞し召しましたね」
 シリン・カービン(f04146)の普段は白い顔も、今はほんのり赤く染まり。
 ほろ酔い気分で、ふふっと微笑む。
「ほふ」
 その隣で、ノンアルコール状態のはずの木元・杏(f16565)までもがふわふわ顔。
 おや、とシリンが視線で問えば。
「楽しそうなシリン達の呑みっぷりを見てたら、ほろ酔いがうつった感じ」
 ん、と頷き、説明だか独り言だか分からない感じで呟いていた。
「宴もたけなわだね」
 穏やかに心地良い、でもどこか気分が高揚した、楽しい一時を感じて。
 ガーネット・グレイローズ(f01964)も、一旦酒を置くと。
「それじゃあ、もっと盛り上げようか」
 にっこり笑って呼び出すのは、ガーネット商会の屈強な男達。
「おーい、皆出てきて」
 船乗りらしい体格の良さで、荷物担いで現れた彼らも、しっかり浴衣姿で月見仕様。
 荷物の中身も、ガーネット商会が扱っているグリードオーシャンの品物の中で、宴に合いそうなものを選んであって。南国の果物や、干し魚などの食べ物に加え、お酒もしっかり入っていたから。
 追加の品々に、また場が豪華になり。
 そして何より、船乗り達がノリノリで宴会に混じってくるから。
 大声で歌ったり、楽器を演奏したり。腕相撲大会が始まったり。
 一気に賑やかになっていく。
「きゅっ」
 女子会から普通の宴会に変わってきた雰囲気に、あかりがふらふら近寄り。
 そわそわと男達の中に入ると、先ほどまでと違う洋酒を勧められたりして。
 心地よく、腕相撲大会を鑑賞していると。
 参加するかい、と声をかけられ、挑戦は受けねばと挑みかかれば。
 瞬間で、潰れた毛玉が出来上がった。
「……きゅー」
 ま、まあ、酔っ払いですしね。それ以前に体格差とかいろいろありますが。
 そんな様子を楽し気に眺め、ウイスキーをちびちび飲んでいたガーネットは。
「ん?」
 船乗り達の豪快な歌や演奏に合わせて、杏が身体を揺らしているのに気付いた。
「ふふ……楽しい」
 最初は無意識に。でも次第に意図して。
 身体を動かしていた杏は。
 そのうちに立ち上がり、ひらひらと踊り舞い始める。
「月下の舞台で舞をひとさし、ですか」
「ん、シリンも踊る」
 ほう、と眺めたシリンに、杏が誘いの手を伸ばせば。
 いいですねと言うようにシリンも立ち上がって。
「おや、シリンも踊れるのかい?」
「センセ―と杏ちゃんと……あ、うさみん☆も踊るんだ?」
 珍しそうなガーネットと共に目を向けた了は、さらに杏のからくりメイドさん人形(うさ耳付)も現れたのを見て、期待のような手拍子を送る。
 船乗り達の曲も、踊る女性達に合わせて、元気ながらも荒っぽさを幾分か抑えたような曲調に変わっていって。
「シリン、素敵」
「ふふ、杏も上手ですよ」
 それに合わせた2人+人形の踊りも華やかに賑やかになっていく。
「きゅー」
 ほろ酔いあかりもその様子を、特に娘の杏の舞を眺めて頷き。
(「うむ、知らぬ内によく成長し……なんか太ってないか気のせい?」)
 声が聞こえていたなら杏に投げ飛ばされそうなことを思って首を傾げた。
 もちろん、モーラットの心の声が聞こえる、なんてことはないので。
 やんややんやと合いの手を入れる了の方へと、杏の金瞳がふっと微笑んで。
 その近くで尻尾を揺らしている山本親分にも視線が流れる。
「宴の余興、親分もご一緒いかが?」
「あっ、いいね。親分も酔い覚ましにどーぞ」
 杏の誘いに、了も山本親分の背を押して、是非にと勧めれば。
「どうです、親分さんもご一緒……ヒック」
 それに同調したシリンも声をかけ、たところでその肩が跳ねた。
「……ヒック、ヒック」
 口元を抑えながら、戸惑いを見せるシリンだけれども。
「ヒック……あら、止まらなヒック……」
 突然始まってしまった吃逆は一向に止まる気配がなく。
「センセ―、大丈夫?」
「大丈ヒック、です……ヒック」
 全然大丈夫じゃなさそうなので。
(「後ろから脅かせば吃逆止まるかな?」)
 こっそりとシリンの視界から外れた了は、狙った位置で、いいものを見つけて。
 後ろから、がっしと掴んだあかりを投げ放った。
「もきゅー!?」
「ヒッ……っ」
 もふっとぶつかる衝撃と予想外な驚きに、シリンは慌てて振り返って。
「…………ふう」
「よっし、大成功」
 ようやく落ち着いたシリンに、了がにかっと笑った。
「気を緩め過ぎたようです。
 猟書家もいることですし、警戒は怠らないようにしないと」
 シリンは自身に言い聞かせるように告げ、舞いを終えると、キリッとした顔で周囲を見回して。
「あ、ガーネット、私にも一杯お願いします」
「ああ、どうぞ」
 言った傍から、ガーネット商会の洋酒を手にしていた。
 了も、賑やかしをしつつ、団子やら食べ物やらに手を伸ばしていて。
 その様子に、杏も踊りを終え、そそそ、と近寄ってきた。
 そして手にしたのは大きなお重。
 宴会料理を摘まみながらも、お重に詰め始めた杏に、了が首を傾げると。
「ん、これは双子の兄へのお土産」
 こくん、と頷き、干し魚へと手を伸ばし。
 その先にぺたり、と座り込んだどこかボロボロな魔王『神野悪五郎』に気付く。
「……んむ? どなた?」
「わちきは神野悪五郎……」
「男の人ではなく花魁はんなんし?」
 名乗りと見た目の差異に、一瞬、きょとんとした杏だけれど。
 どこか力ないその様子を見て。
「大丈夫、まだまだ食べる物残ってる。
 足りなければわたしの貯蔵肉も追加しよう」
 お腹が空いてるのかな、的な対応。
 もはや言い返す気力もない神野悪五郎は、黙って月見団子を食べていました。
「ところでココの景色って花札っぽいよね」
 そんな中で、唐突にそんなことを言い出したのは、了。
「ススキに満月、萩に、えーと……紅葉はある?」
 きょろきょろ辺りを見回して、あああった、なんて言っているけれど。
「……花札? ガーネット知ってる?」
「いや。アキ、花札とは?」
 他の面々にはなじみのないものの様子。
 ゆえに了はスマホを取り出し、ちゃちゃっと検索して。
「花札ってのはこーゆー……」
「……なるほど、ニホンの古いカードゲームのことなのか」
「確かに、この場に合いそうですね」
 覗き込んだガーネットとシリンが頷き。
 杏も納得の色を見せ、周囲を見回した。
「なるほど、月に紅葉に菊、ここの景色と同じ。
 鹿の代わりにうさぎ達がいるし……毛玉もいる」
「きゅー!」
 最後の1つはどこかよそよそしく、他人のように告げるから。あかりが抗議の声を上げるけれども、まあ、聞きはせず。
「ってコトで、記念写真を花札っぽく撮るのとかどうだろ!」
「写真! 皆で一枚、今日の記念」
 了の提案に、杏が飛びつき、ガーネットとシリンも頷いた。
「きゅきゅきゅー」
 あかりも入れてとばかりに主張すれば。
「……毛玉も? まあいいでしょう」
 シリンががっしと掴んで、仲間に入れてくれました。
「ここに在るのは満月にススキ。鹿はいないが……可愛い兎がいるね」
 ガーネットは、花札っぽい要素が上手く写真に入るように、探して呼び寄せ。
「山本親分もどうぞ」
「いいですかにゃ」
 ほろ酔い猫又にも呼び掛けて。
「悪五郎も入んなし」
 杏が神野悪五郎の手も取れば。
「ほら、親分さんも神野ももっと寄って下さいな」
 シリンがずずいっと皆を寄せて。
「鹿とか猪とかは居ないから、代わりに魔獣ベーコンも一緒に映そっか!」
 了がちょっと違うものも持ってきながら。
 カメラの用意をしつつ。
 さり気なく、神野悪五郎の位置を調整する。
 そして了は、花札要素を確認するように指差し、声に出し。
「勿論雷もあるよ!」
 放つは、ユーベルコード『黒ノ衝撃』。
 それに合わせたかのように、楽し気に弾むあかりも無意識にモラスパークを放ち。
 2重の雷が神野悪五郎に落ちた。
「え、雷の札はなかったっけ? まーいっか!」
 ぺろっと舌を出して、悪びれなく告げた了の前で。
 頽れた神野悪五郎の姿が消えていき。
 カメラのシャッター音が、響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年11月02日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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※このボスの宿敵主は💠大宝寺・朱毘です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
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