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【サポート優先】星屑は夜霧に微睡みて

#アックス&ウィザーズ #グリモアエフェクト #恐怖の刻印 #ピルグリム


●流星は誰の願いに応えたか
 夏を過ぎ、夜ともなれば冷えた空気は星空をよく冴えさせる。
 その流れ星は誰に見止められることもなく、何の願いを掛けられることもなく、その煌めきも長く引く尾も刹那に夜空に溶け、それで終い――の筈だった。
 成層圏で燃え尽きるには質量のありすぎた流星は、深い霧に微睡む谷へと重力の導くまま墜ちた。その谷には、妖精以外のいのちを嫌って息を潜める様にして、病魔を振り撒く妖精たちが棲んでいる。突然降った音と衝撃に妖精たちは身を竦め、ただ怖々とそれを見た。だが幸いなことに誰ひとりとして隕石の下敷きにならず済んだらしい。
 嗚呼、果たしてそれは本当に幸いなことであっただろうか?
 妖精たちの華奢な身に奇妙な刻印が現れたのは数日後。そこからはもう、彼女らの身を食い破り無数の白い触手が生え出でるのにも、耐えかねた無数の躰が生ある内に爆散するのにも、さしたる時間は要さない。
 肉片になり損なって辛くも命ばかりは繋いだ生き残りとて、所詮取り留めたのは文字通り命ばかりだ。正気も理性も残らない。その身に生やした白く濁った触手の先に鋭い針を揺らして、次の贄を求めて彷徨う姿はいかにも生ける亡者と呼ぶに相応しい。
 ヒトでも、鳥でも、獣でも、生あるものなら何だって良い。星空より訪れたこの招かれざる災厄は、この星に住まうものになら等しく寄生が能うのだから。

●星に願いを
「ねぇ、皆、中秋の名月は見た? 綺麗だったらしいねぇ」
 卓上に三脚で立てた小ぶりな望遠鏡を弄りつつ、白い軍服姿のグリモア猟兵、チェーザレ・ヴェネーノは人懐っこく笑ってみせた。
「俺はね、星の方が好きだよ。流れ星に願い事とかなんか夢があるでしょ? 今月末のグリフォン座の流星群をよく見られるベストスポットとか、誰か知ってたら教えて欲しいんだけどさ」
 普段はさして熱のない灰の瞳を輝かせつ、憲兵崩れの声は弾んでいる。
「――と、いけない、脱線しちゃうよね。今回はそんなロマンチックな星に纏わる依頼だよ。アックス&ウィザーズに流れ星が落ちたんだけど、それに何だか良くないものがくっついていたみたいなんだよね」
 仕事であることを意識するかの様に僅かに居住まいを正しながらも、彼の白手袋の指先は相も変わらず望遠鏡に触れている。
「寄生生物、って言うの? 気持ち悪いよねぇ。その流れ星って、とある霧の深い谷に落ちたんだけど、そこに住んでた妖精ちゃんたちが白くて不気味な触手に寄生されちゃったらしいんだ。可哀想だけど彼女たちはもう助けるのは無理みたいだし、っていうか、そもそもオブリビオンだし、とりあえず楽にしてあげて欲しいんだよね」
 いかにも痛ましげに眉を下げながら、チェーザレは猟兵たちを見つめる。
「で、気を付けて欲しいのが、その触手にはなんか寄生する為の器官みたいな針がついてて、上手く防がないと猟兵も普通に寄生されちゃうみたい。だからなんか良い感じに対策して欲しいんだよね。……だってさ、俺、やだよ? 皆が予知で見た妖精ちゃんたちみたいになるの見るとかさ」
 笑えない冗談を傍らに、白手袋の片手が浮かべたピジョン・ブラッドのグリモアが、およそ光とも呼び難い血の色をした魔力の渦を猟兵たちへと投げかける。
「あっ、言うの忘れてた。妖精ちゃんたちは単なる前座で、その霧の谷の支配者はね――」
 その先に続く言葉を、既に転送されてしまった猟兵たちは結局聞けず終いだ。
 欠け始めた月を囲んで名も知れぬ星座が満ちた空の下、猟兵たちの目の前に、音さえ飲み込むかの様な濃霧に沈む谷がある。


lulu
ご機嫌よう、luluです。
星よりも月が好き。

こちらはサポート優先シナリオです。
タイミングが合えば通常プレイングをお受けすることは可能かと存じます。

●一章
気の毒な妖精さん。
既に正気を失くしていますが、妖精以外は本能でお嫌いなご様子。

●二章
霧の谷の主、霧を制する暴君です。
視界の悪い霧中ですので、索敵を推奨。

一章、二章共にもしも通常プレイングでご参加の場合には触手の針への対策をお願いいたします。
寄生されてしまいますよ。
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第1章 集団戦 『病をばらまく妖精』

POW   :    あなたをむしばむ毒
【毒液】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    あなたをこわす香
【甘い毒の芳香】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    わたしたちをいやす薬
【鱗粉】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
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ジュジュ・ブランロジエ

気持ち悪い!
絶対寄生されたくない!
『星に乗ってやってくるならもっと違うのがいい!全然ロマンチックじゃない!』

オーラ防御を展開
無機物は大丈夫かもしれないけど一応メボンゴにも
なるべく距離取ろうね
『気持ち悪いからだね!』
それもあるけど寄生への二重の対処だよ

風で毒を吹き飛ばしつつ攻撃
可哀想な妖精さん、今楽にしてあげるね
『こんなのに寄生されてるの可哀想!』
接近されたら炎属性衝撃波
『近寄らないで!』

オブリビオンにも寄生できるって一体何者なんだろう
意思とかあるのかな…?
宇宙から来たんだよね
こんなのがいっぱい居たらどうしよう
『わからないからとりあえず倒そう!』
それもそうだね!
今できることをするしかないよね



●白き恐怖は星屑と共に来たれり
「気持ち悪い!絶対寄生されたくない!」
『星に乗ってやってくるならもっと違うのがいい!』
「どっちかって言うと来て欲しくない!もうちょっと言うと帰って欲しい!」
『全然キラキラしてない!全然ロマンチックじゃない!』
 言いたい放題の乙女二人の大絶叫はジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)とその腕にしがみつきながら抱きしめられた白兎頭のフランス人形・メボンゴによるものである。まぁ随分な言い様だ。
『どうしよう!気持ち悪くて麺類食べられなくなっちゃうかも!』
「やめてメボンゴ!私の唯一の得意料理が!」
 ちなみにジュジュの唯一の得意料理は具無しの素麺だ。この触手たちを見た後だと色と形状がだいぶキツい。でも多分、うどんよりかはちょっとマシ。
 元は可憐な容色でありながら今は全身から白濁した触手を生やして虚ろな瞳でふらふらと飛び交う妖精たちに、もはや理性がなかったことはせめてもの救いかもしれない。いかに妖精達自身を指して喚いているものではないと言え、もし彼女らが繊細な精神の持ち主であったならその言の葉の流れ弾だけで十分に致命傷を負いかねない。概ね精神的に。
「よし、なるべく距離をとる!」
声に出して宣言しながら間合いを稼ぎつつ、ジュジュは淡く輝くオーラの護りを展開した。あの触手は生物に寄生する存在だと聞いている。無機物は大丈夫かもしれないが、念のためジュジュはメボンゴにも護りを施しておく。何と言っても、もしも、万が一にだって、ある朝起きてメボンゴからあんな触手が生えていたならば絶対に泣く自信がある。
『気持ち悪いからだね!』
 ジュジュの言葉にメボンゴが確信をこめて返す。
「それもあるけど」
 あるらしい。
「寄生への二重の対処だよ」
 いや、嘘でしょう。とはメボンゴは口にしない。ひゅう、と誤魔化すような口笛がひとつあるのみだ。
 ちなみにメボンゴの台詞が全てジュジュの腹話術であることは今更ながら申し添えたい。だがその上で不思議とジュジュが自覚もしていない深層心理を口にすることがあるのもまた事実。その事実が示すのは――いや、彼女の名誉の為に敢えて記さずおくべきか。
 好き放題に言われながらも意にも介さぬものらしく、毒々しい紫色の香水瓶を抱きしめた妖精たちが一斉に瓶の蓋を開け放つ。眩暈のする様な甘い香りが秋の冷たい夜風に乗って戦場に満ち、それは本来は生ある者らの皮膚を爛れさせ肉を腐らす筈である。だが、まるで迎え撃つかの如く、星月夜の淡い煌めきをかき消す様に眩く宙へと展開された魔法陣が旋風を呼ぶ。夜風に逆らう様にして鋭く切り裂く様に吹き抜ける風の刃が妖精たちの毒を攫って、散らしゆく。
「可哀想な妖精さん、今楽にしてあげるね」
『こんなのに寄生されてるの可哀想!』
 そこはやはり正義の味方の猟兵と言うべきか、手向けの言葉は弱き者への憐憫混じり。
 だが、風に毒が攫われるならばと妖精たちがジュジュへと距離を詰めんとした刹那。
『近寄らないで!』
 多分こちらこそが彼女の嘘偽りのない本音なのだろう。いくら病魔を撒き散らす妖精とは言え、正しく黴菌扱いである。汚物は消毒と言わんばかりに風の刃が炎を帯びて妖精たちを焼き焦がしながら切り裂いてゆく。可哀想。
「わー、もう、こんなのがいっぱいいたらどうしよう」
『わからないからとりあえず燃やそう!気持ち悪いし!』
 言葉の刃が風よりももっと鋭い。可哀想。
 妖精たちの身体から伸びた触手は焼かれ、断たれて、ジュジュとメボンゴには届かない。うねる触手が地に落ちる様を眺めてジュジュは思案を巡らせる。オブリビオンにも寄生するこの生き物は果たして何者なのだろう。
 だが結論は先述通り、『わからない』。
 今出来ることをするしかない。その答えへと行きついて、白薔薇の乙女は風の刃を躍らせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

メルガシェラ・トヴェナク
ベストスポットですか? 星を見るための?
うーん、月とかでしょうか?
ごめんなさい、ボク食べられないものには詳しくなくって

それで、えっと
寄生でしたっけ?
それって実体があるものですよね?
つまり、ごはんが向こうから来てくれるってことですね!
うれしい!

毒液ですか? いただきます!
触手が刺さりました! いただきます!
卵が産みつけられました? いただきます!
ボクはこの体も髪の毛も洋服も、ぜんぶナノマシンで出来ているんです
メインは捕食性でして
なので、体内に潜り込んだということは、胃の中に入ってくれたのと同じことなんですね
全部いただきます!

もちろん妖精さんも食べますよ!
安心して、痛いとか感じる前に食べちゃいます



●月より団子、だが団子より
「ベストスポットですか? 星を見るための?」
 グリモア猟兵の言葉にメルガシェラ・トヴェナク(スノウ・ドロップ・f13880)は花の唇にか細い指を当て、愛らしく小首を傾げた。
「うーん、月とかでしょうか?」
 月。地上に生きる者たちからしてみればそれは天体観測をする時に観測する対象の一つである。あらゆる環境をものともせずに兵器として翔ける彼女にとってはもしかして、ちょっとそこまで、みたいなノリで行けてしまう場所なのかも知れないが。
「ごめんなさい、ボク食べられないものには詳しくなくって」
 継いだ彼女の言葉へと、成る程、花より団子なタイプだね? グリモアベースに居合わせた何処かの誰かはそうと断じたかもしれない。否。実に的外れな話。
 食べられるものと食べられないもの、生粋のフードファイターたるメルガシェラに取って万物はその二つのいずれの枠にしか収まらぬ。そんな雑な括りがあるかと言わんばかりのその二分、だが真に恐ろしいのはその定義する範囲である。誰ひとり予想だにすまい、斯くも可憐な白雪の結晶の様に儚げな容色の少女を模した機体の、「食べられる」ものの定義がブラックホールを超えんばかりにあまりに広いということを――。
 グリモアベースに居合わせた誰かはこの依頼の報告を受けるまではよもや知るまい。もしかすると、自分も下手をするならば「食べられる」ものに含まれているであろうという事実など。

「わぁ、美味しそう!」
 赤黒いグリモアの光に誘われて霧深い谷へ降り立ったメルガシェラの第一声がそれである。此処は戦地だ。断じてユーザーの口コミ評価の高い飲食店等ではない筈だ。
 白い触手に身を侵された妖精たちがその言葉に振り向いたのは単純に音に対する反射であろう。そう願いたい。断じてその言葉の奇異さに対してなどではなかったとそう信じたいものである。それは何処までも不憫ゆえ。
「寄生でしたっけ、それって実態があるものですよね?」
 白い触手を眺めやるメルガシェラの銀の瞳に恍惚の色がある。
 答えも寄越さず毒液を湛えた香水瓶の蓋を開け放ち、白い触手を従えてか白い触手に従えられてか、妖精たちが一斉にメルガシェラへと飛び掛かる。
「つまり、ごはんが向こうから来てくれるってことですね!」
 歓迎すると言わんばかりに両手を広げて待ち受ける白雪の身に、妖精たちが手にした瓶の毒液を狙いすましたかの様に覆すのに――
「うれしい!」
 ……なんて?
「毒液ですか? いただきます!」
 身に染みわたる毒液に、澄み渡るメゾソプラノは無風どころか嬉しげに告げ、
「触手が刺さりました! いただきます!」
 焦れた様な妖精たちが身に纏う触手が襲えば尚も歓喜の声を上げ、
「卵が産みつけられました? いただきます!」
 本来は絶望しかない筈のその感覚に、喜色満面で告げるのだ。
「いただきます」、と。
 礼儀正しくて大変結構。嘘、やだ怖い。可愛い顔してこの子さっきからいただきますしか言ってない。妖精たちとか触手だとかが一体何をしたならばいただきます以外の言葉を彼女の口から引き出せるのか、仮に妖精たちに理性が残って居たとして絶対解らなかっただろうし、そうでなくても多分誰にもわからない。神のみぞ知――らない。神だって匙を投げるに違いない。この状況下でツッコミ役が不在のこの場を辛いだなどと思う理性が誰にもないことだけが不幸中の幸いか。幸いだろう、多分きっと。憐れみ給え、神とか何か、そういう何か。
 メルガシェラの歓喜の理由は見れば知れよう。無数のナノマシン、即ち無機物が成した身体はこの触手らに寄生をされることもなく、逆にその身に触れた者らを喰らい、侵食し、その華奢な身のエネルギーへと変えてゆく。嘗てある戦場を両陣営とも飲み込んでその戦乱に幕を引いた大量破壊兵器たるメルガシェラにしてみれば、嗚呼、遥々宇宙から来たりて何とご苦労なことだろう、この程度の敵の質量などは小腹を満たすための夜食にすら足りぬ。
 今宵のメルガシェラのメインディッシュは無数の触手、フェットチーネにしてはよく動く。添え物の様についでで喰らわれる妖精たちが痛みを感じる間も無かったことだけは今宵唯一、本当に幸いかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

丸越・梓


怖れはない
勇猛果敢に前線へ
触手はオーラ防御にて弾き、居合で斬り刎ねる
偶々落ちてきてしまっただけなのか
それとも新天地を求めにきたのか
何にせよ放っておくことは出来ない
これ以上の惨事になる前に此処で食い止める
悪いがご退場願おう

肌を食い破られる痛みも、苦しみも、如何なものだっただろうと
オブリビオンだろうと関係なく
想像するだけで胸が苦しくなる
せめて最期は痛みなく安らかに
労りを込めて、断つはオブリビオンたる縁

……伴であり友である愛刀『桜』は気丈だが
今回ばかりは心なしか嫌がっている、…気がする
何となく察してからは銃に切り替えつつ
すまない桜、帰ったらすぐに手入れしよう

_

(『約束ですよ、梓…!』)



●一等星の煌めきは星屑の使者を蹴散らして
 得体の知れぬ白い触手に寄生をされた妖精たちが霧の夜をふらふらと飛び交う様は、不気味とも悍ましいとも形容出来よう。常人ならば一刻も早く立ち去りたいこの光景を前に、丸越・梓(零の魔王・f31127)は怯むことなく真っ直ぐに最前線へと進み出た。その歩様の、佇まいの纏う威厳を、妖精たちは理解出来まい。一斉に梓へと向く妖精たちの瞳は濁り、もはや理性の光は持たぬ。
 だがしかし、宿主が理性を失くそうとも、それは寄生した何かの本能によるものか。濁った瞳は梓を映して「獲物」と捉えたらしい。先端に鋭い針を光らせた無数の触手が波の様に襲いかかるのを、淡く光る魔力の障壁が妨げて、無数のそれを全ては到底防ぎ切れねども、端からその必要もあるまい。防がなかった触手たちは梓の振るった「桜」の名を持つ日本刀の一閃の下に斬り刎ねられて、暫しは不気味な蠢きを残しながらも地に落ちる。
 事の発端は流れ星であると言う。それがこの地へと墜ちたのは、ただの偶然であったのか、はたまた何かの意志持つ存在が新天地を求めるがゆえこの地に導いたものだったのか。襲い来る触手の第二波を斬り伏せながら、無言の内に梓は思案を巡らせる。前者であるとしたならばその偶然がまた別の場で起き得ないとも限らない。他方、もしも後者であるとしたならば、このアックス&ウィザーズと呼ばれるこの世界は何らかの侵略に曝されている事になる。
 何れにせよ、と梓は結論づけるのだ。この存在がこの世界に仇成すものである以上、一人の猟兵として、ダークヒーローとして、放っておくことなど出来ぬ。
 触手を断たれても妖精たちに自我や理性の類が戻る気配はない。依然操られるままに飛び交うそれらが、鮮やかな翅から光の粒子の様な鱗粉を撒き散らす。それは癒しの力を持つのであろう、他の誰かが撒いた光へ救いを求めるかの様にふらふらと近寄る妖精たちは斬り落とされた触手を再生させてゆく。触手が再生しても尚、何処か名残惜しげに光の傍を彷徨う様子は――嗚呼。肌を食い破られる痛みも苦しみも如何なるものであっただろうかと、梓の胸を締め付ける。
「悪いがご退場願おう」
 この悲劇を繰り返させぬ為、この場で食い止めねばならぬ。断固たる決意の下に、愛刀を握り直して構えた梓のその身に触手風情の届こう筈もない。梓のその居合、刃の届く距離即ち全て剣帝の支配下だ。不遜にも立ち入らんとした触手の先の全てが薙がれ、もう一刀の下に根本から断ち切られる。見目ばかりは元の姿に戻った妖精たちへと梓が見舞う最期の一刀は彼女らをオブリビオンたらしめる縁のみを葬り去った。せめて最期は痛みなくと願った梓の心に応えるかの様に、墜ちる彼女らを迎えた地面は夜露にしとりと濡れて、柔らかに彼女らを受け止めた。
 だが未だ触手に操られ続ける彼女らの朋輩は梓が哀悼の祈りの一つ捧げる時間もくれぬらしい。引っ切り無しに襲い来る白い触手を刻む刀を梓が銃へと持ち替えたのは、黒い手袋を越してでも解る程度に手のひらに伝わる動揺を感じ取ったがゆえ。
 梓こそ「桜」の名で呼ぶこの刀は嘗て幾人もの主人の首を刎ねて、その血塗られた由縁故に邪悪な名を得た妖刀だ。己の来歴故に梓の身を案じ主人とすることを一度は拒もうとしたこの刀の付喪神は、常は気丈に振る舞えど、しかしその本質は未だうら若き乙女のそれである。
 流石に此度の敵は彼女から見て、生理的に受け付け難いものだったらしい。
「すまない桜、帰ったらすぐに手入れしよう」
 銃のトリガーを引きながら、腰に佩いた妖刀へと梓は語り掛けてやる。
(『約束ですよ、梓……!』)
 脳裏に響く声はらしくもなしに僅かに震え、何処か縋る様な趣があった。
 梓が己の友たる愛刀を持ち替えれども、夜空にてひときわ輝く一等星の名の銃が放つ弾丸は、星屑如きが引き連れて来た触手どもを穿ち蹴散らすには十分に眩かろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦

称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。

複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を殲滅しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!



●極彩色の独壇場
「随分楽な依頼じゃないか」
この地を踏んだシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)の率直な心根を述べるならば、先ずは「安堵」だ。急な支出ゆえ金策の必要に駆られ、さして仔細を聞きもしないで受けた依頼だが、この場にはどうやら身を挺してまで庇わねばならぬ存在は無いらしい。であれば、彼は家も屋敷も易く建つ程の大金を湯水とばかりに注いだ己の身ひとつを案じて護れば良いと言うことに他ならぬ、それはそうした安堵であった。とは言え彼のその心の内が表に表したのは、気難しく寄せていた柳眉が僅かに和らぐ程度の変化に過ぎず、不遜なまでの自信に満ちた表情は何一つ変わるものではなけれども。
シェーラの麗姿を遠巻きに眺める妖精たちはどれも正体の知れぬ触手どもに侵されて狂い果て、そも、生命が残っているか否かも解らない。その身を侵す触手を刈ったところでもはや元に戻ることなどないのであろう。
であれば、シェーラの判断は迅速だ。その手に取って宙を舞わせた宝石の様な銃身の精霊銃は無数、その技は大道芸人の軽業のようだ等と称すには些か洗練と気品が行き過ぎて居るだろう。その背中にて、今、この場へとシェーラに喚ばれて顕現した勝利を司る精霊の双眸は、今やシェーラしか映さない。彼女の尽きぬ寵愛をシェーラは一身に受けながら、差し向けたその白い指先に応える様に、精霊銃が一斉に極彩色の光線を迸らせる。色とりどりの光線は幻想的な煌めきの内に、可憐な少年の身へと差し伸ばされた触手たちの群れを鮮やかに焼き焦がし、消し炭と成して崩れ落ちさせる。
無料タダでこの美しさを観賞出来るとはまさか思っていないだろう?」
 この場に前衛も後衛もない。紫の瞳はさながら照準のよう、その映す全てが的となる。味方の負傷と劣勢を察し、妖精たちが振り撒く癒しの鱗粉がその朋輩の傷を癒して行くより早く、シェーラの精霊銃が放つ銃が灼く。こんな状態で命を繋がせ戦い続けさせるより、一刻も早く楽にしてやる方がシェーラの正義に叶う。加えてこの場で立てた手柄の分だけ彼が受け取る金も増えるのだ。
 夜霧の満たす谷は暫し、己の正義と金が為に戦場を征く見目麗しき人形の独壇場となる。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ラジル(サポート)
あーあー、てすてす、マイクテスト…OK?

アタシはシキ・ラジル!
戦闘に救助、呼ばれたらなんでもがんばるよ!あっでも頭使うのは苦手だからごめんね!

戦い方
基本はWIZ型
サウンドウェポンを持って「パフォーマンス」しながら「衝撃波」「薙ぎ払い」で敵をぶっ飛ばしちゃう!
皆でボスに立ち向かう時は「鼓舞」と「援護射撃」でサポートするねっ

敵が多い時、人手が欲しいなら【アミィズ・マーチ】でミニシキちゃんたちがお手伝いするよ!「時間稼ぎ」に「一斉射撃」ちっちゃいけど数はいるからね!

性格傾向
やかましいくらいにハイテンションな音楽大好きっ子
キマフュ民なので楽しいことはなんでも首を突っ込む

☆アドリブ連携OK!



●その旋律はいつも彼女の傍らにありて
「うわー、何だか苦しそうだねー!」
陰鬱な夜霧に沈む谷には不似合いな程に明るい声を響かせたのは、シキ・ラジル(揺蕩う雷歌・f11241)。楽しいことが大好きなキマフュ民の彼女としては本当はもっと愉快な依頼に参加したかったのが本音だが、その程度のことは露ほども彼女の笑顔を翳らせることはない。
「元は可愛いのに可哀想……どうしてこんなことになっちゃったんだろう? 今楽にしてあげるから待っててね!」
 シキの底抜けのハイテンションも、気遣う言葉も、今の妖精たちにはもう届かない。彼女らの濁った瞳にこの世界の生ある者は等しく次の贄としてしか映らない。命の尽きた彼女らの身が朽ち崩れるまでに宿主を乗り移らせる対象、ただそれだけだ。
「あーあー、てすてす、マイクテスト……OK?」
 ヘッドフォンと一体型のマイクをシキが確かめる間すら与えず、妖精たちが身に宿す白い触手が津波の様に彼女へと襲い掛かる。それを退けたのは桃色と紫色の稲妻だ。シキが機動させたElectシリーズδは稲妻の形を成した衝撃波にて触手たちを薙ぎ払い、脅威たるその先端の針をその威力にてへし折って行く。
「テンション上げていけーっ!アタシ!」
 触手の波が引いたその隙にシンセサイザーを掻き鳴らし、シキは澄み通るソプラノの声も高らかに観客に――否、己へと告げるのだ。シンセサイザーで奏でるは彼女がこの世に生を受けた時から時折頭の中で流れる「歌」だ。幾ら耳を澄ましてみても聴き取ることの出来ないその歌詞は、母国語なのか異言語なのか、シキにはそれすら解らない。だが、何の衒いも気負いもなしにシキはその歌が好きだった。故に、大好きなその旋律を奏でるこの今、それに合わせて舞い踊る彼女の足取りは何処までも軽く、用いた異能の特質故にそのステップは易く触手を掻い潜る。
 妖精たちが互いを癒す鱗粉を撒いてみせても同じこと。先の衝撃波の傷が癒えれど、次に襲ったもう一陣は異能に力を嵩上げされて、その華奢な翅を、既に尽きて尚繋がれる命を易く刈り取ってゆく。
「踊り明かそう!」
 何処か痛ましく思う気持ちを胸に秘め、シキは殊更に明るい声を張り上げる。

成功 🔵​🔵​🔴​

氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、15歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にブリザード・キャノンを使って戦う。
 あとはお任せ。宜しくお願いします!


ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
かつてオブリビオンに滅ぼされた都市で自分一人だけ生き残ってしまった過去を悔いており、人々を守り、被害を防止することを重視して行動します。

●戦闘において
「露払いは私が努めよう」
(敵に)「貴様らの技で、私が倒せるのか……試してみるがいい」

・牽制攻撃
・敵の攻撃から他の猟兵や一般人を守る
・敵の攻撃を回避してカウンター
・ついでに敵の強さを解説する
など、防御的・補助的な行動を得意とします。

メイン武器は「黒剣」です。

他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。



●冬遠かれど雪は降る
「暑いですね……」
 秋とは言えどまだ半ば。先日までの酷暑の名残は消えず、霧煙るこの場は纏わりつくかの様に湿度も高い。この気候に似つかわしくもなく随分と厚着をした少女、氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)がか細く零した呟きに、けれども答えるものはない。
 夜風は霧をたなびかせ、雪菜の蒼い髪を揺らした。霧の中で無数に光る双眸は彼女を次の贄として狙いを定める妖精たちのものである。得体の知れぬ白く濁った触手に巣食われてとうに命も果てた筈の身を尚動かすのはやはりその触手どもなのだろう。自らの意志に依らず浮世を亡骸ばかりが彷徨う様の痛ましさに、雪菜のいとけない眉目が僅かに曇る。だがそんな感傷も同情もおかまいなしとでも言わんばかりに妖精たちの身に宿す触手が伸びて、無防備な彼女へと魔の手と針を一斉に伸ばし――
「露払いは任せろ」
 雪菜が、妖精たちが感じ取ったのはただ吹き抜けた一陣の風。白く濁る触手の群を断ち切ったのはギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)の携えた黒く冴え渡る剣であった。纏う鎧の重ささえ感じさせずに立ち回り、その右手にて光さえ吸い込む程の漆黒の剣はさながら影のよう。尚も重ねたその斬撃は夜闇に溶けて閃きすらも伴わぬまま、触手どもを狩ってゆく。
 戦地を踏むたびギャレットの脳裏に浮かぶ光景がある。地獄の業火が如くに燃え盛った火の手ももはや疎らに残るばかりの都のなれの果て、誰のものとも知れぬ屍が散らばって、呼べども答える者はない。護れなかった。己ひとりが生き延びた。それを何処までも悔いながらも、だが、それならば生き延びたが故の責務を負わねばならぬ。かつて護れなかった者の代わりに、今、目の前に在る朋輩を今度こそは護ってみせるとギャレットは心の内に誓いを立てる。
「その触手如きで、私が倒せるのか……試してみるがいい」
 灰の鬣を靡かせて静かに吼える黒き獅子の奮迅を目の前に、雪菜とて見目こそ無垢な少女なれども一介の猟兵だ。この場にてただ後方で護られて居ることを良しと出来よう筈もない。
「『雪よ、降りなさい……』」
 己が身を護る存在が目の前にあればこそ、その詠唱は落ち着き払ったものである。
「『そして全てを凍てつかせ、世界を白く染めなさい!』」
 冴えた星空より雪が降る。儚い筈の結晶たちの集まりは、だが、この暑気の名残に溶けることもなく、降り積もり、雪菜の言葉の命じた通りに世界を白く染めてゆく。季節外れの一面の雪景色、この積雪地帯に適応した者が加護を得るこの異能の下で、常より真冬の装いの雪菜が腕に携えた魔力の増幅器から放つ氷の弾丸は常にも増した威力で妖精たちの身を穿つ。
「足場が悪いな……で、あれば」
 降り積もる雪に足を取られるこの戦場の特質を理解したギャレットの適応もまた速い。
「『我が黒剣の姿は一つではない』」
足を動かさぬが得策だろう。まるで飴細工かの様に、溶ける様に輪郭を崩した黒剣は鞭に似た形状へとその姿を替えて、ギャレットの力強い一振りの度に彼方まで無軌道に伸びてその動線上の敵を薙ぎ払う。
 霧の漂う星月夜、大地を染めるは厚い積雪。酷くちぐはぐなこの宵に、ただ偶然に居合わせただけでありながら二人の猟兵は息もぴったりに、氷の弾と黒き鞭剣で哀れな妖精たちを討ち減らしてゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

富良裳・アール(サポート)
「えっと、ぁぅぁぅ…こ、こんにちは…」

赤くなったり青くなったりよく顔色が変わり、基本もじもじしています。
かわいいものが好きで、甘いお菓子も好き。
お化けは怖いし、大きな声にもびっくりする。
一般的な感覚を持った、人見知り気味の、普通の女の子です(本人談)。

普通の女の子なので、戦闘になると
「きゃー!」「うわー!」「こないでくださいっ」
等、よく涙目で叫んでいます。
そして叫んでいる限りは的確に、それはもう的確に
武器、ユーベルコードを使用します。
戦える、普通の女の子だからです。

なので依頼は頑張ってこなそうとしますし、
非戦闘員は守ります。
でもやっぱり、平和な依頼がいちばん好き。


桜井・乃愛(サポート)
 桜の精のパーラーメイド×咎人殺しの女の子です。
 普段の口調は「元気(私、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は明るく天真爛漫で、少し天然ボケな感じの少女。
一番好きな花は桜で、その他の植物も好き。
強敵にも怖気づく事は少なく、果敢に挑む。
人と話す事も好きなので、アドリブ歓迎。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●弾幕と炎の渦は夜霧も毒も蹴散らして
「きゃー!こないで、こないでくださいっ」
 絹を裂く様な悲鳴は富良裳・アール(普通の女の子・f36268)の上げたものである。ミモレ丈のミントグリーンのスカートに、鮮やかに青いボンネット。何処かの街角の風景に難なく溶け込めそうな装いは、ある意味で戦場たるこの場にはそぐわない。その二つ名が示す通りに、アールは何処までも『普通の女の子』なのである。
「あの、本当に……その触手ちょっと気持ち悪いし怖いって言うか……」
 生きているのか死んでいるのかも解らぬままに操られる妖精たちの姿に、彼女らの身体から生えた無数の白い触手。ちょっとしたホラーだ。ごく一般的な感覚を持つ普通の女の子が生で間近で見るには割とキツい類の代物だ。アールの怯えを感じ取りでもしたかの様に、畳み掛けるかの様に触手が一斉にアールへと襲い掛かる。
「うわー!誰か助けてくださいっ」
「よーし、私の出番だね!」
 青褪めて絶叫したアールの声に応えたのは朗らかな少女の声と、軽快に鳴り響く銃声だ。横合いからの花咲く様な弾幕が白い触手を抉り、爆ぜさせ、アールの元には一本たりとも届かせぬ。まだ蠢く触手の残骸は刹那に燃え上がって灰と散り、妖精たちの身に切れ残った触手を這い上がって妖精たちの身をも焦がす。
「助けを求める声が聞こえたわ。大丈夫?」
 アールへと声を掛けたのは桜井・乃愛(桜花剣舞・f23024)。ヒーローはピンチの時に現れる。桜色のツインテールと、桜花の咲いた振袖を夜風に揺らして微笑む彼女は、いっそヒロインと呼びたい様な可憐さなれど、肩に担ぎ上げた片手用の軽機関銃が、その出で立ちからはおよそ思いも及ばぬものながらも、先の猛攻が彼女のものだと告げている。
「えっと、ぁぅぁぅ……だ、大丈夫です……」
「あら?」
 辛うじてこくこくと頷くアールの言葉に、乃愛が円らな金色の瞳を瞬いた。撃ち穿った触手の残骸がぱちぱちと未だ爆ぜている。炎。それは乃愛のユーベルコードによるものではない。
「い、一応、わたしも戦えますので……でも、ありがとうございますっ」
 小さな手のひらの上に炎を浮かべて見せながら、アールがおどおどと答えた。彼女はあくまで「戦える」『普通の女の子』なのである。
 消えぬ炎に纏わりつかれながら、妖精たちが抱きしめていた香水瓶の蓋を開け放つ。鼻腔を擽る甘ったるい香気を、けれどもそれが人体に決して望ましいものではないと二人の少女が即座に感じ取ったのは猟兵としての本能か。
「えっと、短期決戦で行きましょうっ」
「了解だよ!」
 手のひらに浮かべた炎を、猛る様な炎の渦へと変じて妖精たちへと差し向けながらアールが告げるのと、乃愛が頷いて愛銃の引き金を引くのはほぼ同時。炎によって紅蓮に彩られた戦場を妖精たちが逃げ惑い、逃げた先にて、花の開く様な彩で流線を描く弾丸が乱れ撃たれてとどめとばかりに身を穿つ。戦場を満たす毒の香は夜霧に負けず劣らず濃密で、息を止めても身を蝕む。おそらく長くは持ち堪えられぬ、時間制限つきの戦闘なればこそ、少女二人の攻め手の苛烈さも増す。
 夜霧さえ蒸発する程の熱気と、賑やかに騒ぎ続けた銃声が消える頃、二人の少女の視界にて動くものもまた消えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

コーデリア・リンネル(サポート)
 アリス適合者の国民的スタア×アームドヒーローの女の子です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

内気な性格のため、三点リーダーや読点多めの口調になります。
ですが人と話すのが嫌いでは無いため、
様々な登場人物とのアドリブ会話も歓迎です。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


土御門・泰花(サポート)
※アドリブ・連携・苦戦描写・UC詠唱変更・その他歓迎

「あらあら……。ふふ、ご安心を。お手伝い致します」

一人称:私
口調:基本的に敬語。柔和な印象を与える口ぶり。
表情:基本的に柔和な笑みを湛え、義憤もその下に隠す。
性格:普段はおっとりだが「陰陽師の家系の当主」という自覚があり、凛々しくみせる時も。

先ずは【早業】で私や仲間へ【オーラ防御/結界術】展開、守りを。
【早業/軽業/地形の利用】で移動。

敵の攻撃は防御結界で弾き、物理攻撃は薙刀で【武器受け】、薙刀or式神の黒揚羽で【咄嗟の一撃/カウンター/2回攻撃】。

UCは戦況と効果次第で適切なものを使用。
可能なら【早業】で敵のUC発動前に発動。

後はお任せ。



●光線銃と薙刀は夜霧を裂きて煌めきて
「あぁ……どうして……」
 コーデリア・リンネル(月光の騎士・f22496)の密やかに零す呟きは夜霧に溶けて消えた。コーデリアが物語に知る妖精と言うものは何処か可憐な存在だ。それがどうして、名残はとどめて在りながら斯くも痛ましい有様に成り果てるのか。よく磨かれた艶やかなパンプスの足先が思わず彼方を向く程に、直視をすることが儘ならぬ。
 フリルをふんだんにあしらうドレスを纏うコーデリアの華奢な身は、騎士としてと言うよりは国民的スタアとしての正装を纏いているのであろう。傍目にはおよそ武を持つ様には思われぬ。それを狙った触手がしなる様に伸びてその身を狙うのを、妨げるのは月の加護の如き清らかなオーラの護りだ。触手がその先に備えた針を、触手そのものを、跳ね除けて決して近づかせなどしない。だが、護りの一手で凌げる程にこの敵たちは易しくはない。
 月の光の加護に重ねる様に、朧に輝く結界が重なる。度重なった触手どもの攻撃に微かな罅を滲ませた月光の護りを更に護りて展開されたそれは、男装めいた紫の狩衣の袖から覗く白い指先が差し向けたものである。
「あらあら……。ふふ、お手伝いがご入用ですか?」
 コーデリアの僅か後方にて、嫋やかに微笑むは土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)。携えた薙刀はその細身の躰に似つかわしく、刃も柄も華奢なものでありながら、敵へと向けた切っ先の寸分もぶれぬ様子からしてみてもかなりの使い手と見て取れる。
「あ……もしご助力頂けるなら……」
「ええ、勿論。そのつもりでこの場におります」
 国民的スタアでありながら元が内気でインドア派のコーデリアだ。控えめな助力の願いに、だが、泰花の答えは最初から読み切ってでもいるかの様に明快なものだった。事実、読み切っていたのであろう。旧くより連綿と連なる陰陽師の家系の末裔、当代の主として泰花は女だてらに武の鍛錬を欠かしたことはない。この場の配役をも含めこの戦局を至極冷静に読み解いていた。
「援護してください」
 コーデリアへの短い耳打ちは地を蹴ると同時。
「私の動きについてこられますか?」
 重力を感じさせぬ跳躍は正しく飛翔と呼ぶべきか、その手が振るう薙刀が触手の群を刈り取って行くのが瞬きほどの後のこと。
「せめて安らかに眠れます様に……」
 その傍らで、陽動の如く派手に立ち回る泰花ばかりに気を取られていた妖精たちに鮮やかなビームキャノンが音も無く慈悲の致命打を見舞ってゆく。それは脳天であり左胸、妖精たちに気取られぬ限り、コーデリアの狙いは過たぬ。
「貴女の相手はこちらですよ」
 伏兵の存在に気付いたらしい妖精、あるいはそれに寄生した触手たちが注意をコーデリアへと向けれども、泰花の刃が立ちはだかりて妨げて、伸ばす触手も撒いた毒香もコーデリアの元に至らない。毒を嫌って狩衣の片袖で口元を覆いつ、それでも泰花の振るう刃の冴えは衰えることもなく触手を刈りて、妖精たちを狩ってゆく。
「貴女たちの無念は陰陽師、土御門・泰花が確かに連れてゆきましょう」
 世に在る怪異はこうした弱き誰かの無念や未練が形を成したものであろうと思うが故にこそ、泰花は振り下ろす薙刀に手心などは加えない。その刃が、妖精の抱きかかえた毒の香水を湛える瓶ごとその身を断った時、広がる甘いだけの香はもはや誰を蝕むこともない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

サエ・キルフィバオム(サポート)
アドリブ歓迎

基本的には情報収集が得意かな
相手が何かの組織だったら、その組織の一員になり切って潜入して、内側から根こそぎ情報を頂いちゃうよ
そうじゃなければ、無害で魅力的な少女を演じて、上手く油断させて情報を引き出したいね
効きそうな相手なら煽てて誘惑するのも手段かな♪

戦いになったら、直接力比べの類は苦手だから、口先で丸め込んだりして相手を妨害したり、糸を利用した罠を張ったり、誘惑してだまし討ちしちゃうかな
上手く相手の技を逆に利用して、手痛いしっぺ返しが出来ると最高♪
敢えて相手の術中に陥ったふりをして、大逆転とかも良く狙うよ



●その相愛は夜霧と彼女らのみぞ知る
「なにこれ!ちょっと、やめてって言ってるのに!」
サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は焦っていた。その豊満な肢体もあどけなくも妖艶な美貌も異性やときには同性の本能に訴えかけるものでありながら、それはあくまで相手が生命と自我を持てばと言う話。今や得体の知れぬ触手らに寄生されて徘徊するばかりとなった妖精たちの残骸とも言うべき存在に、彼女の魅力は通用せぬらしい。
 宙を切る様に、鞭の様にしなる触手が襲い来るのを紙一重で躱して、さして走るにも向かぬヒールでサエは逃げ回る。岩石の多く足場の悪い渓谷はその駆ける足取りの軽やかささえも削ぎ、追い縋る触手らとの距離を狭めて来る。加えて、行く手に難所があれば無意識にそれを避けるが故に、気付けば最初駆け出した地点と同じ場にサエは居た。
「やだ……来ないで……!」
 獲物の痛切な悲鳴へと、無数の触手が蠢いた。我先にと言わんばかりに襲い来るのは、捕食者としての本能であろう。獲物が弱っているならば、一息に仕留めようとでも言わんばかりに――だが、伸ばす触手の先がない。まるで中空で鋭い刃に断たれでもしたかの様に斬り伏せられて、否、否。断ち切ったのは刃ではない。此処に至るまでに逃げへと徹する振りをしてサエが張り巡らせて来た糸だ。妖精たちは、触手たちは、いつまで己が捕食者だなどと錯覚をしていたのだろうか。サエの髪を元にして成された糸は自由自在のその硬度を、触手が触れたその刹那に最高値としてその『獲物』をもてなしたのだ。
 生き残った妖精たちが慌てた様に香水瓶から毒の香りをたなびかす。だが同時、無機質な機械の咆哮が妖精たちの後方より放たれた。サエの身を危機が襲う今、彼女と深い絆で結ばれた愛機がそれを見逃す筈も無い。液体金属の装甲に星月夜の煌めきを返す壮麗なオブリビオンマシンはサエの望むまま妖精たちの背後より蹂躙戦を開始する。人の身さえも易く踏み躙るその機体が遥かに小さく儚い妖精たちなどに手間取る筈のあるべきか。
 全てが終わった後にサエを抱き上げ、コクピットへと迎えようとする愛機『メルク・フィクター』の腕へと抱かれ、サエが浮かべた慈愛に満ちた微笑みを認めたものは愛機の他に誰も無い。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『霧中の暴君『グラドラゴ』』

POW   :    死の竜霧
自身に【触れるだけで出血毒と麻痺毒に犯される霧】をまとい、高速移動と【毒霧と身体が裂けるような咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ミストリフレクト
【相手の姿をしている霧製】の霊を召喚する。これは【霧の中で強化され、真似た相手の武器】や【同じユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    霧中に潜むもの
戦闘用の、自身と同じ強さの【霧で作られた自身と同じ姿の無数の竜】と【霧に隠れた本体を守る巨竜】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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●霧を制するもの
 大気が震える程の咆哮が夜霧の谷に轟き渡ったのは突然だ。
 何処かから湧き出てでも来るかの様に、俄かに霧が濃さを増す。間近を過ぎる翼の音を、咆哮を、猟兵たちは確かに聴きながら、一寸先さえ見通せぬ程の濃霧はそこにある筈の巨体の影さえ彼らの瞳に映させぬ。
 『姿無き竜』。それがこの霧中の暴君『グラドラゴ』の異名であった。霧を操り、霧に潜み、彼の領域を侵した者はその姿を目にする前に死んでいる。
 だが、その死は本来は霧に紛れて音もなく忍び寄る類のものである。その竜が今、斯くも吼え猛る理由はひとつ。
「おのれ、おのれ巡礼者ピルグリム……!」
 姿を見せぬ筈の竜の巨躯が霧を引き、霧を逃れて空へと舞い上がる。
 猫の目の様な月の明かりが暴くその威容はーー猟兵達には見覚えのある無数の白い触手に蝕まれ、猟兵達が手を下さずともその終焉が秒読みであると告げていた。
 だが、この竜の命が尽きれども、この地の悪夢はそこで終わらぬ。再び霧中に姿を沈めたグラドラゴを猟兵達は追いかける。
ジュジュ・ブランロジエ

真の姿解放
全力で寄生回避!
あっ、もちろんお仕事ちゃんと頑張るよ!

うわっ、大きい奴が寄生されてるのも気持ち悪いね
『触手いっぱい…』
しかもなんか増えたー!

常時炎属性オーラ防御
『お触り禁止!』
寄生だけは!寄生だけは防ぎたい!
『どうしても守り重視になるよねー気持ち悪いもんねー』

走り回り距離を取りながら
UCに風属性付与し2回攻撃
霧吹き飛ばしつつ広範囲に広げ
浅くてもいいから片っ端から傷付けていく
全部相手にしてられないよ!
本体見つけるまで防御&回避重視
本体分かれば集中攻撃
でもやっぱり距離は取る
深追いするより安全第一!
『いつにも増して慎重!』

元は格好良いドラゴンだったのに可哀想に…
『こんな姿は無念すぎる!』



●霧中に息を潜めるは
 白いドレスを纏って地を踏んだジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)の髪を、フリルをあしらう裾を、冷えた夜風が揺らしてゆく。真白き濃霧の中にあって尚纏う白が際立つかの様なその様は、彼女の心根や魂の在り方がその純白を齎して居るとでも言うのだろうか。
『触手いっぱい……』
 視界の端を翔けた巨体の影は無数に蠢く何かに覆われていた。それを目にしたメボンゴが小さくぽつりと声を漏らした。敵の気配を察知しながらジュジュが闇雲に近寄らぬのは、霧を警戒したと言うより、アーチャーらしく適正な敵との距離を保つと言うより、触手の携えた針を厭うてその間合いから逃れていると言うのが正直なところである。
 ひと際高い咆哮と共に濃霧が、大気が揺らぐ。ジュジュはその揺れを肌で感じ取り、己の周りに炎を纏うオーラの護りを張り巡らせて、而してそれは正解だ。霧が模る無数の竜は、かの霧中の暴君と同じ姿を成していた。在りし日の、と言うのも本体が未だ存命である以上些か妙な話であるが、触手に寄生をされる前と思しき竜の姿はたかだか霧が模したものであれ確かに雄々しく威厳に満ちたものである。それがあの様な無残な有様に至るのは、如何な心地か。姿を隠して霧の中を泳ぐ様は、慣れた戦法と言うよりも未だ狂い切れぬ竜の矜持がゆえの何かと映り、ジュジュは仄かに湧き上がる様な同情を禁じ得ぬ。
『お触り禁止!』
 霧が模る竜たちの爪牙を逃れて立ち回る中で、霧の彼方から襲い来る無数の触手を、炎を纏う白薔薇の花弁が迎え撃つ。ジュジュが携えたナイフが姿を変えたその花弁は縦横無尽に無軌道に舞い散るかの様で、その実、その動きはジュジュの随意に統率の取れたものである。夜霧を裂いて、霧が造った竜たちを刻み、触手を斬り落とす。
 だが、随意と言うならばジュジュの視覚の及ばぬ先での動きはそれ相応。故に、視界を妨げる霧を攫った突風はジュジュの魔力が呼んだものだ。かの竜の力によって尚も溢れ出る霧が、視界が晴れたのは瞬きをする程の一刹那。だがそれでジュジュには十分だ。霧の竜たちの所在と、その奥にて待ち構える同じく霧が成す巨竜の姿、その後ろより伸びる無数の触手を見て取れば、本体の居場所は知れる。
 再び降りた霧の中を、白薔薇の花弁を護りの様に従えてジュジュは駆けた。追い縋る牙も鍵爪も、白薔薇の刃にて防ぎ、まともに対峙せぬ以上敵にも致命傷は与えられぬが構うまい。最も警戒すべき触手の出所が解り、相手が動かずあの場に留まっているとするならば、視界の不利は五分と五分。ひとつ所に留まる方が触手に易く狙いを定めさせると踏んでのジュジュの立ち回りは正解だ。所在が知れているがゆえ四方八方から火の子を伴い襲い来る花弁にグラドラゴが触手で応戦する傍らで、ジュジュは弓を引き、相手の姿も見えぬまま脳裏に覚えた位置関係を手掛かりに矢を放つ。
 返るのは咆哮ひとつ。霧の竜が散り、巨竜も消える。何処に当たったかは解らねど、ジュジュの矢が狙い過たず本体の身を射たことだけは間違いがない。身を護る霧の巨竜も失くし、炎を宿す花弁に纏わりつかれたグラドラゴの咆哮が距離を詰めて来るのを察したジュジュは踵を返して霧の中から逃れる様に駆け出した。
「深追いはしないでおこう」
『安全第一!』
 あんな得体の知れない触手の次の宿主になるなんて、死んでもお断りなのだから。
 逃げる少女の背中を追いかけた白い触手は届かない。

成功 🔵​🔵​🔴​

セレナリア・アーチボルト(サポート)
『どんなピンチもズバッと解決! このメイドにおまかせあれ!』
一人称:私(わたくし)
二人称:〜様、貴方

離れ離れの主人を探して彷徨うメイドです
全ての行動は主人を想ってでありオブリビオン退治もその一環です
なお、主人に関する記憶の一切を無くしているため「なんかあの人、主人っぽくないですか?」という雑な判断により老若男女を問いません

戦闘冒険日常問わず大抵の事は「メイドですから!」と物理的にゴリ押しでどうにかします
おおよそメイドらしからぬ事でもメイドに不可能はないのでどうにでもします(よろしくお願いします)
比較的穏便ですが「こいつ主人じゃないな」と気づきだしたら扱いがやや雑になりますが命に別状はありません


御門・勇護(サポート)
 人間のフランケンシュタインの花嫁×死霊術士、22歳の男です。
 普段の口調は他人行儀(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
戦闘中は 黒い笑みを湛えて(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の前衛のサポートを行います。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●主従、感動の再会劇――は成されねど
 御門・勇護(求道者・f35310)の琥珀色の瞳は静かに霧の向こうを見据えていた。その濃さ故にいっそ実体を持つのではないかと紛う程に液体めいて流れて来る白は、霧中で蠢く巨大な敵の存在があることを定かに告げてくる。だが、その姿までは見通せぬ。
 己がこの場に立つ訳を勇護は半ば理解していて、半ば解らない。かつて居た別の世界、世界の存亡を賭けた大戦が終わった時に勇護は確かに『次なる宇宙』へと旅立った筈だった。曖昧な微睡の内を漂い、それなのに、気付いた時には見慣れた学園の門の前に居て――世界が己を呼ぶのならばと、再びイグニッションカードを手にして、今は猟兵として此処に居る。
 斃すべき敵がこの地にあるならば、それを屠ることが己の使命であろう。勇護がそう心得ながら、夜霧に濡れた大地を踏みしめた時。
「あの……もしかしてあなたは私の主人では……!?」
 背後から掛けられた、妙な期待と確信に満ちた声はセレナリア・アーチボルト(ストレンジジャーニー・f19515)のものである。若草色の髪をしたメイド姿の娘は、瞳を輝かせながら勇護のことを見上げていた。勇護の備える要素や属性の何処にどうそれを見出したのかはわからないが、彼はどうやらセレナリアの主人だと推定される何かがあるらしい。尤も、セレナリア本人が主人の顔も名前も憶えていない為、その要素が何であるのかは永遠に闇の中ではあるが。
「違います」
「あ、そうですか」
 はい、終了。この霧の夜にドラマチックな主従の再会が成就するということもなく、このお話はここでお終い。
 だが、戦闘は始まったばかりだ。不意を突く様に霧の奥より襲う竜の翼も爪も、無数の触手も、始まる前に残念な結末を迎えた再会劇の成り損ないの行く末なんていちいち気にして待ってなどくれぬ。
「とりあえず戦闘です」
「主人以外の命令は聞きたくありませんけど、まぁ、そうですよね」
 勇護の言葉に何処かやる気のない声で返しつつ、セレナリアは手斧を振り回し、迫る触手を叩き切りながら駆け出していた。
「『我が祈りは劔、我が願いは鎧――』」
 自身は後衛向きであると自覚するがゆえその背を追いもせず見送って詠唱を始めた勇護の首元で、銀の鎖に通してネックレスの様に身につけたシルバーリングの、若草色のくさび石が煌めいた。同時、濃霧の白を塗り替える様に辺りを染めるのは藤の花。戦地の只中、星空を覆わんばかりに枝を広げた藤の巨木は、神樹たるその力にてセレナリアに加護を与えつつ、霧中に姿を潜めた竜の生命を圧し削る。
「生意気な――!」
 白と藤の花の彼方にて歯噛みする様な竜の吼える声と同時、霧の中に蠢く気配が増えた。霧が成す無数のグラドラゴの紛い物たちが襲い来て牙を剥けども、生来の怪力に加えて今や勇護の喚んだ神樹の加護により強化を受けたセレナリアの振るう斧は寸分も後れを取らぬ。合間に襲う触手の攻撃も躱し、切り伏せ、その来し方へと一目散に駆け、迫る。
「争いはここで終わりにしましょう――!」
 人が如き矮小な存在などは片脚にて踏み躙らんとした霧の巨竜の前肢をも掻い潜り、セレナリアは拳を振りかぶる。愛と勇気をこめた一撃は霧の支配者本体の頭蓋を激しく揺らし、音さえ飲み込むかの様な濃い霧の中にありながら、彼方まで響く爆発音を轟かせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エダ・サルファー(サポート)
アックス&ウィザーズ出身の聖職者で冒険者です。
義侠心が強く直情的な傾向があります。
一方で、冒険者としての経験から割り切るのも切り替えるのも早いです。
自分の思想や信条、信仰を押し付けることはしません。
他人のそれも基本的に否定はしません。
聖職者っぽいことはたまにします。
難しいことを考えるのが苦手で、大抵のことは力と祈りで解決できると言って憚りません。
とはいえ、必要とあらば多少は頭を使う努力をします。
戦闘スタイルは格闘で、ユーベルコードは状況とノリで指定のものをどれでも使います。
ただ、ここぞでは必殺聖拳突きを使うことが多いです。

以上を基本の傾向として、状況に応じて適当に動かしていただければ幸いです。


パルピ・ペルポル(サポート)
名乗るときにはフルネーム。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用。
基本は隠密行動。
空中に雨紡ぎの風糸を張り巡らせて攻守両方に利用し、敵の行動を阻害したところに穢れを知らぬ薔薇の蕾を併用して行動を封じる、もしくはそのまま糸で切り裂くのが主な攻撃方法。
もしくは徳用折り紙で作成した折り鶴を筆頭に折り紙動物たちをけしかけてのかく乱兼攻撃を行う。
敵UCは古竜の骨のマン・ゴーシュで受け流す。

他の猟兵に迷惑をかける行為はしない。
好奇心旺盛ではあるが、行動は慎重。
お宝は勿論素材になりそうな物も出来る限り確保しエプロンのポケットに格納する。
もふもふは抵抗できないよう拘束してもふる。

アドリブはご自由に。



●小さきモノらの共同戦線
「アックス&ウィザーズにこんな災禍を広げる訳には……」
 無数の触手に蝕まれた見るも無残な竜の有様を目にして、エダ・サルファー(格闘聖職者・f05398)は小さな拳を握りしめた。この敵を討ち、災厄の根を断つことは猟兵として無論当然の役目であると同時に、それはこの世界に生まれ育ったエダにとってはただの依頼のひとつとして以上の使命感を覚えざるを得ぬ。まして、彼女は聖職者なればこそ、無辜の民が脅かされかねないこの手の話は捨て置けない。
「大丈夫よ。サクッと何とかしちゃいましょ」
 険しい表情を浮かべたエダを窘めるかの様に、気安い調子で声を掛けたのはパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)。エダの左肩の側近くに透明な翅でその身を浮かべたフェアリーの女は、愛くるしい顔に人懐っこい笑みを浮かべて見せる。
「ここでやっつけちゃえば何の問題もないでしょう?」
「確かにね」
 その笑顔と気遣いに励まされるかの様にエダは頷く。その間、パルピはかの竜の鱗を持ち帰って売れば幾らくらいになるかと脳内で算盤を弾いているのは別の話だ。少なくとも見目は可憐な笑顔にはそのシビアすぎる思考は露ほども滲んで来ないのだから、見た目詐欺たる称号は言い得て妙と言わざるを得ぬ。
「じゃあ、とりあえず頑張っちゃうよ~」
「援護するわ!」
 二人が頷き交わした刹那、身を裂くばかりの咆哮が大気を、大地を震わせる。肌の痺れる様な心地はその方向の齎す振動のみならず、辺りを満たす霧が気配を変えた為でもある。ただの霧から竜の異能によって毒霧へと転じたそれが、その場に在るだけで生命を蝕む強い毒性を持つことを二人は猟兵としての嗅覚めいた何かで感じ取る。
 同時、霧中で此方へと迫る敵意が爆発的に速度を増したこともまた然り。
「攪乱は任せて!」
 辺りを満たす毒霧の比にもならぬほど強い毒性の霧を従えた竜の目の前へとパルピは臆することなく飛び出した。自棄や無謀によるものでもなければ自己犠牲の類でもない。現実的な彼女らしい確たる勝算に基づいて――己を超える身長の敵と対峙する際に、回避率も命中率も三倍に跳ね上げると言う異能を備えているが故に打って出た形である。
 体当たらんとする巨躯を、毒霧など纏わずとも致命傷を見舞うであろうその爪牙をパルピは蝶が舞うが如くに躱しながら、それを追う竜がある時点で動きを止める。目を凝らしても見落とす程の細い糸、パルピが逃げるに徹するふりをして張り巡らせた雨紡ぎの風糸が竜の巨体を絡め捕っていた。
 奇しくも――否、否。それは彼女たちが示し合わせて狙い定めた場所なのだ。パルピが陽動に出る間、この直前まで己の神に祈りを捧げ続けていたエダが、その心からの祈りをこめて振りかぶる拳の真正面。
「くらえ必殺!聖拳突きぃっ!」
 その掛け声と裂帛の気合と共に突き出された小さな拳が毒霧をも散らして竜の眉間を穿つ。人間と比べてさえも遥かに小柄なエダの一撃に、彼女が体格では遥かに及ばぬ程の巨竜が身を捩らせて慟哭めいた声を上げる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

丸越・梓


恐れはない
されど敬意は忘れない
その身に巣食う侵略者を
我が手を以て払おう

彼の終焉は遠くはないとしても
嬲られ、尊厳を踏み躙られながら迎えるような死を
放ってはおけない、おきたくない
全てを掬うなどは傲慢だと判っている
けれど、少なくとも眼前にて起きた問題に手を差し伸べぬ理由にはならない
何と言われようが知ったことではない
俺はやりたいことを、やるべきことをやるだけだ

銃のトリガーにかかる指へ力を込めたその刹那
実体は無けれどふと制する気配
「……桜?」
愛刀の名を呼べば
頷く様な気配

ここで退くのは戦刀の矜持が許さぬのか
それとも別の理由か
先程までの震えを押し殺して前を向く彼女の姿を見た気がした
無理はするなと口にしようとして
それは彼女の決意に対する侮辱だと感じ飲み込む
「──共にいこうか、桜」
代わりに不敵に微笑んで柄に触れ
当たり前でしょう、と澄んだ気配が応える


片足引き、構え
迫る霧も咆哮も前に瞳を閉じる
柄に触れる手に重なる温度
──刹那
一切を斬り祓う一閃

願うはどうか
安らかな眠りを



●白刃は夜霧を散らし因果を断ちて
「おのれぇ……許さぬ、許さぬぞ巡礼者ピルグリム……!」
 視界を満たす霧の向こうに、無数の触手が蠢く様が見て取れる。今、それをその身に宿す宿主は、見目には可憐な妖精らから、見目からしても脅威の知れる強大な竜へと転じていた。だが、霧の彼方を見据える丸越・梓(零の魔王・f31127)の瞳には相も変わらず恐れなどない。幾つもの死地を潜って来た身にしてみれば今更恐るるに足らず――ただ、せめてもの矜持と言わんばかりに触手どもに蝕まれた身を隠すかの様に霧の中を泳ぐかの敵に敬意を以て対峙するのみだ。
 本来は違う形で相見えることもあったであろう。それは今と同じく霧を隔ててのものであるやもしれぬ。だがしかし、この得体の知れぬ流星が連れて来た侵略者に水を差される形ではなく、理性を以ての戦略によるものならば梓は快く受けたであろう。その全てを踏み躙るかの様なこの狼藉を、侵略を、梓はこの場でこの手を以て払うと誓う。
 侵略者に蝕まれた、かの竜の終焉はもはや遠からぬものと知れている。先の妖精たちの有様を見るならば、この期に及んで未だ欠片なれども理性を残していることが奇跡であると言えるだろう。懸命に抗う彼のその尊厳を踏み躙るかの様な終焉を梓は決して許すまい。全てを救うなどと言う理想が傲慢だとは知れども、せめて眼前で救いを求める存在が在るこの今それを助けずして、何が猟兵だと言うのだろう。――仮令相手がその矜持ゆえ言葉に出して救いを求めることなど決してあらねども。
 エゴだと言うならばその通りだ。周りの誰が、目の前の相手が、何を言おうと望もうと、梓は知ったことではない。梓の思う救いの形が仮令相手の思う形と同一であろうと異なろうとも、どうせ己が齎せる救いの形は多くない。であれば惑う時間が無駄だ。襲い来る無数の白い触手を歓迎するかの様に梓の黒手袋の手の内にある一等星を名に負う銃が啼く。無造作に向けた様でいて定かに標的を捉えた銃口が火を噴いて、有象無象の触手らを半ばから、或いは根本から吹き飛ばして断ち切って、その使い手に寄せ付けぬ。焦れた様に、或いは触手らからの責め苦に耐えかねたかの様に霧の向こうで竜が吼えた。刹那に揺れた空気を、その数を増やす敵意を梓は肌で感じ取る。霧が生み出した新たな敵へと愛銃Siriusの銃口を向け、トリガーに掛けた指へと梓が力を込めた刹那、それを引き止められた心地がしたのは目に映る事実も実体もなく、ただの気配と言えばそれまでだ。だが、梓には確信がある。
「……桜?」
 腰に佩く愛刀の名を呼べば、彼女が確かに頷いた気配をその主として感じ取る。今の彼女は一振りの刀の姿の儘なれど、己の傍らに寄り添う様に立つ白無垢の娘の姿を梓は見た、様な気がした。常と変わらず鬼面の下に湛う表情はわからねど、おもてを上げたその双眸が毅然と霧中の敵を見据えていることは定かに判るのだ。
 それが戦刀として打たれた彼女の矜持によるものか、他の理由によるものか迄もは判らない。無理を推してはいないかと、懸念がないと言うなら嘘になる。だが、先までこの戦いを厭うた筈の彼女が今再びに戦いを望むなら、なまじ気遣いの類を向けてやることはその決意への侮辱となろう。
「――共にいこうか、桜」
 飲み下した軟な配慮の言葉の代わり、不敵な笑みと共に向けた応諾に返るは鼻で笑わんばかりの勝気で澄んだ気配だ。当たり前でしょう、と梓だけが聴く声は笑みを湛えた声音で告げた。
 刀の柄へと手を触れ、片脚を引く梓の隙のない構えに警戒したか、攻撃の機を伺うかの様に遠巻きに霧の竜たちが距離をおく。だが、造物主を一にするそれらが息を合わせたかの様に襲い来るのは同時である。梓が瞳を閉じた様を好機だとでも錯覚したか、霧の成す無数の翼が風を切る。巨躯の不利すら思わせぬ疾さで霧の竜らが突進する様は、その位置は、精神を統一した今の梓は空気の揺らぎからすら読み取れる。刀の柄を握る己の右手に重なる温度を梓が覚えたその刹那、眩いばかりの光輝を纏いて鞘走らせた白刃が閃いた。同時、踏み込んでいた梓の振るう刃が切り裂いたのは、霧中にて本体を護る霧の巨竜であり、その背後にて息を潜めたグラドラゴそのものである。
 黒の外套を靡かせて愛刀を納める魔王の背中にて、姿無き竜が最期に放つのは己にとどめを刺した存在への怨嗟の咆哮でも、その身を蝕みこの結末を招いた巡礼者への呪詛のそれでもありはせぬ。辛くも自我を保つまま逝けることへの安堵の様な、短く穏やかな吐息であった。

 主を失くして霧の晴れゆく谷の夜空を、悼む様な流れ星がひとつ滑り落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月11日


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#アックス&ウィザーズ
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト