アルカディア争奪戦⑧~絢爛に咲け百花の檻
●碧空の果て、勇士殺しの理想郷
「よく来てくれた。アルカディア争奪戦についてはもう知っているだろう。ついては、行ってほしい戦場がある」
フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は自らの呼びかけに応えて集まった猟兵に礼を述べると、その薄氷色の左目を厳しく輝かせてそう切り出した。
「アルカディア・ガーデン――屍人帝国たちが狙う「アルカディアの玉座」を隠していた雲海の聖域の一つだ。見た目には美しい花々が咲き乱れる楽園だが、その花たちには例外なく恐るべき殺傷能力を持っている。そして、アルカディアガーデンにまで訪れることのできた「偉大な勇士」を殺しては、花に包まれた「アルカディア・オブリビオン」へと改造して、楽園を護らせている」
戦ってほしいのは、その「アルカディア・オブリビオン」の一体「亡国の処刑人」であるのだが――男は、数秒考えるかのように口ごもり、そうして結局は口を開いた。言わねばならないことは、言わねばならないのだというように。
「「亡国の処刑人」もまた、かつては勇士たちの一人であった。故に、皆に同行する
飛空艇艦隊の勇士の中には、彼女を知っている者がいる。彼らから生前の「亡国の処刑人」の情報を得れば、少しでも有利に戦うことができるだろう」
亡国の処刑人、その名はアンゼロット。一見して男性にも見えるが、男装の麗人だったのであろうと男は言った。彼女は大鎌、あるいは首を斬るのに適した形状の様々な刃物を用い、時には召喚し、そして自身が処刑してきた者たちの怨霊をも召喚して戦う。
「アンゼロットの名を訪ねれば、同行する勇士たちからは生前の彼女の情報を得られる筈だ。その情報を駆使して、何としてでも「アルカディア・オブリビオン」と化した彼女を打ち倒して欲しい」
現地への転送は、私が受け持とう。準備が出来た者から、私に声をかけて欲しい。
「どんな情報であろうと、それは大きなヒントになるはずだ。――彼女を解放するためにも、情報収集を怠るなよ」
遊津
遊津です。ブルーアルカディアの戦争シナリオをお届けします。
ボス戦一章構成となっております。また、当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在します。
※プレイングボーナス……
飛空艇艦隊の勇士から得た敵の情報を利用して戦う。
「敵の情報について」
猟兵には飛空艇艦隊の勇士たちが同行します。(戦闘時には避難しています)
亡国の処刑人・アンゼロットの「情報・弱点」などを聞きだしたとして、それをプレイングに明記頂ければ、
それがどんなものであっても(公序良俗に反する者・世界観を壊しかねないもの、マスターページで採用できないと書かれている者を除き)正しく情報・弱点として採用されます。
オブリビオンの弱点・情報を考え、プレイングに書いてください。つまり勝手に作ってください。採用します。
(例:子供を攻撃する時には刃が鈍った、実は右目が見えていなくて右からの攻撃には対処が遅かった、など)
「戦場について」
殺戮花が咲き乱れる花園ですが、花々が猟兵たちを攻撃することはありません。
開けた屋外であり、非常に広く、空中戦を行うことが可能です。
太陽の光に照らされており、暗闇ではありません。
一面の花畑で、花々で覆いつくされており、それ以外には戦闘の邪魔をするものも戦闘に利用できるものもありません。
戦場にある何かを利用しようという場合、「使えるものは何でも使う」といった曖昧な表現ではなく、「何を」「どうやって使うか」明記してください。
リプレイ開始時点で既に戦闘は開始されており、何かをあらかじめ準備しておくということは出来ず、何らかの準備行動には戦闘と並行して行うこととなります。
(例外として、オブリビオンの情報を得ることは事前に行っていたことになります)
オブリビオンの生前・勇士だった頃の情報を教えてくれた飛空艇艦隊の勇士は戦場には存在しません。
「ボス敵について」
男装の麗人「亡国の処刑人」アンゼロットです。花々に包まれた「アルカディア・オブリビオン」と化しています。
猟兵が一切のユーベルコードを使用しなかった場合でも大鎌、もしくは刃物を用いて戦います。
チームを組んできた場合、猟兵たちだけで長く話をしていると、先手を取って攻撃してくる場合があります。
当シナリオのプレイング受付開始は9/7(水)朝8:31からとなります。
シナリオ公開の時間によっては上記タグ・マスターページにプレイング受付中の文字が出ていないことがありますが、その状態でもプレイングを送ってくださってかまいません。
諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
また、送られてきたプレイングの数によっては全員採用をお約束できない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『亡国の処刑人』
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POW : 大丈夫、痛くはありません。
【大鎌】が命中した対象を切断する。
SPD : お労しい……もうお眠りなさい。
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【首を斬るのに適した形状の様々な刃物】で包囲攻撃する。
WIZ : その魂がどうか安らかでありますように。
自身が【首を斬りたいという衝動】を感じると、レベル×1体の【これまでに処刑して来た者達の怨霊】が召喚される。これまでに処刑して来た者達の怨霊は首を斬りたいという衝動を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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ヴェルンド・ラスリス
※アドリブ共闘歓迎
情報:アンゼロットは処刑人故の矜恃か癖なのか、攻撃する際は、一撃で殺せる箇所、主に首を狙う傾向にある。
おまえが、どうオブリビオンに堕ちたのかは俺には分からない。が、そちら側に堕ちたと言うのなら、倒さなければならない。
流石は処刑人。鎌のキレは一流。しかし、狙いはお粗末、首を狙いすぎだぜ。
自らの首を囮に、アンゼロットの大振りを誘う。それを躱しながら、『炎爪』を叩き込もう。
●
見渡す限りの百花繚乱、美しい花が咲き乱れる花畑。その花々は全て勇士を殺すために咲く殺戮の花。それらを踏み潰しながら、ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)はオブリビオン「亡国の処刑人」――アンゼロットの大鎌の一撃を紙一重で躱していた。
飛空艇艦隊の勇士の一人が言っていた。いくらか年を経た隻眼の翔剣士は、生前の彼女の癖について教えてくれた。
『アンゼロットは処刑人故の矜恃か癖なのか、攻撃する際は一撃で殺せる箇所、主に首を狙う傾向にある』と。
既に花々によって生命を奪われオブリビオンと化し、全身に寄生する花々に操られる「アルカディア・オブリビオン」となろうとも、それは同じであった。アンゼロットは執拗に一撃でヴェルンドの首を刈り取ろうとしてくる。
故に、ヴェルンドは自らの首を敢えて囮にしてみせた。無論ヴェルンドとて、首を切り離されれば無事ではいられない。これは賭けだ。いくら生前の得物であり使い熟したものであったとしても、身の丈を越える大鎌は――それこそ処刑のように身動きの取れない状態の咎人の首を落とすのにでなく、乱戦の中で動き回る敵を一撃で倒す為に振るうのは非常に難しい得物だ。それでもアンゼロットは生前と変わりなく、ヴェルンドの首を落とそうとする。そうなれば畢竟、大振りの一撃を繰り返すことになる。
一撃で首を落とすことを狙って大振りを繰り返すのであれば――図らずも、攻撃は単調になる。もう何度目かになる大振りを紙一重で避けながら、ヴェルンドはアンゼロットに対して思う。
(おまえが、どうオブリビオンに堕ちたのかは俺には分からない。――が、そちら側に堕ちたと言うのなら、倒さなければならない……!)
亡国の処刑人。アンゼロットがなぜ国を失い、何故勇士となって大空を駆けたのか、ヴェルンドは知らない。どうしてこの殺戮の花園に訪れてしまったのかも。けれどアンゼロットは死んだ。この花々に殺された。そうしてこの花園を護るだけの、アルカディア・オブリビオンに成ってしまった。成ってしまったからにはもう、ヴェルンドはアンゼロットを倒さなければならないのだ。
アンゼロットの大鎌がヴェルンドの首の後ろを掠める。このまま刃を引けば、ヴェルンドの首は胴体と泣き別れになることだろう。だが、ヴェルンドはそれを知っていたかのようにそこで無理矢理にも体勢を屈めた。ちり、と刃が髪の数本を斬り裂いていく。物言わぬアンゼロットが、驚きに目を見開いたのをヴェルンドは見た。
「流石は処刑人。鎌のキレは一流だ。だが、狙いはお粗末だな。首を狙いすぎだぜ……!」
そのままユーベルコード【炎爪】を発現させる。飛翔する蒼き炎、獄炎の斬撃がアンゼロットの全身を斬り裂いて。背中に担いだ大剣「黒焔」が蒼炎を纏ってアンゼロットを断ち切った――しかし。
アンゼロットの体内からあふれ出たのは血と臓物ではなく、狂おしいばかりの花々。繚乱の花々に覆われた切り口は無理矢理に繋がれ、アンゼロットはまるで人形のようにぎくしゃくとした動きで立ち上がりながら、大鎌を拾い構える。
「これが、アルカディア・オブリビオンって奴か……!」
その悍ましさに空恐ろしいものを感じながらも、ヴェルンドは大剣を握りなおすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
木々水・サライ
(UC【親子共闘の白黒人形】を発動させてから)
母さんちょっと情報収集。俺と父さん突撃。OK?
「久しぶりに顔見せてくれたと思ったらいきなりの過酷労働。親を何だと思ってんだ」
『そーよそーよ。サライのばーか』
母さんあとで大量ピーマンの青椒肉絲な。
2回攻撃、だまし討ち、部位破壊を的確に使用した紅と蒼による連続攻撃。
黒は父さん、白は母さんが同じように使ってくれるさ。
俺がヤバけりゃ父さんが、父さんがヤバけりゃ俺がカバー。
『どうやら、生粋の猫好きらしいわよ! 猫が通りがかると視線がそっちに行くんですって!』
「ってことは精霊猫使えば一発だな!」
\ふぐるにょわー/
……それを敵さんが猫と認めるか、怪しいけど……。
●
「……来い!いやごめん、ちょっと来てくれ、えっと、父さんと母さん!!」
木々水・サライ(
白黒猫使い人形・f28416)は自らのユーベルコード【
親子共闘の白黒人形】を発動させた。サライの手にしていた黒鉄の刃がかつて死し、そして一度はオブリビオンとしてその刃で首を刎ねた実父の姿となり、同時に白銀の刃が同様に実母の姿を取る。
「久々に顔見せてくれたと思ったらいきなりの過酷労働か。親を何だと思ってんだ」
「そーよ、そーよぉ。サライのばーかぁ」
「母さんあとで大量ピーマンの青椒肉絲な」
「ええー、ピーマン嫌いぃ」
久々の団欒を戦場で繰り広げないでもらえますか。しかしその雑談もここまでだ。空気を読まないアルカディア・オブリビオンたる「亡国の処刑人」アンゼロットは腰の剣を抜くと、サライへと真っすぐに斬りかかってくる。
「お喋りはここまでだ、サライ!その刀の一振り、借りるぞ!」
父ヴォルフは琥珀の刀を抜いてアンゼロットと応戦する。すぐにサライも紅玉と蒼玉の刃二振りでもってその戦いに参加した。
「ねぇ、お母さんはなにすればいいの? ねぇねぇなにするのー?」
「母さんは……あー、情報収集!」
「はぁい!頑張るわねぇー!」
なおここは一面の花畑である。そこにあるのはアルカディア・オブリビオンたるアンゼロットを除けば、花しかない。母アンナはその場で黄金の刃を抜くと、じっと花畑を見つめ始めた。なお、先にも言ったがこっちの戦場の花々は別に猟兵を襲ってくるみたいなことはないので、お母さんだけお花畑でお花とにらめっこしている状態だった。
父と息子のコンビネーションは抜群で、アンゼロットを斬りかかり、フェイントを交えて打ちかかり、的確に関節を貫く。そうして幾合か打ち合ったのち、父親は息子に言った。
「……どうも、妙だ」
「妙ってなんだよ」
「これだけ攻撃して、感覚じゃあ確かに腕の腱も斬ってやった筈なんだ。それがあんなにピンピンしてて、しかも血の一滴も流れてねえってのはおかしい。用心しろよ、サライ」
「……わかった」
父ヴォルフは医者でもあった男である。その父が言うのだから間違いない。アルカディア・オブリビオンゆえに血が流れないのか、それともアンゼロットのオブリビオンとしての性質か。サライは真顔になってアンゼロットを睨む。と、そこへ――
「あなた、サライ!」
「何だアンナ!」
「あのね、情報収集しててわかったんだけど……」
――二人の足元の白いお花、とっても可愛いわね!顔が浮かんでるわ!
「……いやこれ、可愛い、かぁ……?」
「絶妙に……いや……これは……うん……」
パンジーに似た花が群生していた。何か苦悶の表情を浮かべてるみたいだった。サライは思い出した、母アンナの可愛いのセンスはおかしい。
「それでねそれでねサライ、あなた勇士のみなさんからそちらの方の情報聞いてるんじゃなかったかしらぁ」
「おう、それがあったんじゃねぇか。何だったって?」
「えーと……」
飛空艇艦隊に乗っていた、ちょっと母アンナにも似たふわふわした感じの勇士は何と言っていたか? 確か、こう言っていた筈だ。
「生粋の猫好きらしくて、猫が通りがかると視線がそっちに行くらしい、って……」
「ってことは精霊猫使えば一発だな」
父ヴォルフと母アンナはユーベルコード【
精霊猫召喚】を発動させる。もとよりサライが用いた【
親子共闘の白黒人形】は、両親に変身させた黒鉄と白銀の刃にこのユーベルコードを使わせるというユーベルコードなのだ。ここにいるのは本物の両親ではなくて、あくまで彼ら彼女らが遺した刀が変身したものに過ぎない。
そうして、花畑に精霊猫たちが112匹ほど召喚される――
「ふぐるるるるるるる」
「「「にょわー」」」
「にょわーん」
「にゅよーん」
「にゅわにゅよーん」
「アレッ!? なんかいつもの精霊猫じゃねえ!? なんか生えてる!?」
呼び出された精霊猫の鳴き声がおかしいのはいつものこと。翼が生えていた。コウモリの羽とか白い天使の羽とか機械の翼とか、バリエーション豊かに。
「これ、猫として認めてもらえんのか……?」
突然現れた112匹の猫たちは花畑で思い思いにくつろぎ、まるまり、空を飛ぶ、それにしっかりと視線を奪われていく亡国の処刑人アンゼロット。
「あ、効いてるわ」
「猫判定、ヨシ!」
大量の猫に視線があっち行ったりこっち行ったりしているアンゼロットの喉を、ヴォルフの琥珀の刃が斬り裂き、両腕をサライの二振りの刃が断ち切る。しかしその瞬間溢れてきた物を見て、父子は目を疑った。
「「……!!」」
花であった。血の代わりに大量の花が、斬り裂かれた喉から溢れ出す。色とりどりの花は両腕からも同じく溢れ出し、そうして斬り裂かれ断ち切られた傷を無理矢理に繋いでいく。これが、殺戮の花に殺された成れの果て――アルカディア・オブリビオンの姿であった。
「サライ、気い抜くんじゃねぇぞ」
「……わかってる!」
父ヴォルフは琥珀の刃をアルカディア・オブリビオンに向ける。サライもまた、両の手に握った刃に力を込めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィオット・シュトルツァー
ほーん、猫が弱点っぽいな。
ってことは俺が最大級の敵やないの?
だって、精霊猫使えるのはアイツだけやないもん。
UC【精霊猫のお祭り会場】発動。
只今よりこの現場は精霊猫と戯れるもふもふ会場とする!
ほらかわええやん!! かわええやろ!?
うちのヴァニーとかグラナートとかスマラクトとかサフィールとかアメテュストとかオニキスとかテュルキスとかバリ可愛いやん!?
ほら処刑人さんも触ってみ!? くっそもふもふしとるやん!?
などといいながらも精霊猫達は俺と従兄弟と知り合い以外に触られるのを嫌うので、思う存分引っかかれてください。
ついでにその様子をビデオカメラに収めて精神的ダメージでも与えてやろ。
後日ばらまいたるわ。
●
「ほーん……猫が弱点なんかぁ……」
ヴィオット・シュトルツァー(
地獄の先駆者・f35909)は美しい花々咲き乱れる花畑で、アルカディア・オブリビオンと化した「亡国の処刑人」アンゼロットの前に立つ。
既にかつて勇士であった頃のアンゼロットが『生粋の猫好きで、猫が通りがかると戦いの最中であっても視線を奪われるほどである』ことは従兄弟と共に確認済みである。
「ほんならこれ、俺が最大級の敵っちゅうことやないん?」
ヴィオットはビデオカメラを手にしながら、いくつかの猫宝石を取り出す。猫宝石とは猫の形をした宝石である。
「やって、精霊猫呼べるんは
従兄弟だけやないもんな!」
――むしろ俺が本家本元みたいなもんやし!
そうしてヴィオットはユーベルコードを発動する。その名も【
精霊猫のお祭り会場】。
「只今よりこの現場は精霊猫と戯れるもふもふ会場とする!」
100メートル半径内がもふもふ会場と化した。猫宝石に応じた精霊猫、それだけでない精霊猫たちが現れた。
「ふぐるにょわー」
「にょわー」
「ふぐるるるる」
いつものことだが鳴き声がおかしい。
「ほらかわええやん!かわええやろ!!うちのヴァニーとかグラナートとかスマラクトとかサフィールとかアメテュストとかオニキスとかテュルキスとかバリ可愛いやん!?」
オタク特有の早口になるヴィオット。亡国の処刑人アンゼロットはちょっとたじろいだ。しかしここはもふもふ会場。
正確に言うならば敵味方の全てが「猫に対する愛情と撫で回したい欲」を強化され、「敵対心や破壊行動、破壊欲」を弱体化させられる猫天国。余談だが、人間に可愛がられる犬は「こんなによくしてくれるなんてこの人間は神様なんじゃないだろうか」と思うらしいのに対し、同じく可愛がられる猫は「こんなによくしてくれるなんて自分は神様なんじゃないだろうか」と思うらしい。いやほんとにそう思ってるかどうかは知らんけど。
からんからんからん。アンゼロットの手から大鎌が落ちた。そう、もふもふ天国に武器は相応しくない。ヴィオットだって持ってない。そもそもヴィオットは武器と言っていい武器を最初から持ってない。全身から花を咲かせたアンゼロットは精霊猫たちにふらふらと寄っていく。撫でたい。愛でたい。この可愛い生き物を思う存分なでなでもふもふしたい――生前からの愛着も相俟って、その欲求はマックスになっている。
……しかし。
「ふぐるるるるる!!」
「にょわーん!」
「にょーん!」
精霊猫たちはアンゼロットに爪を立てた。そう、このもふもふ天国には罠があった。ヴィオットの召喚した精霊猫たちはヴィオットとその従兄弟、あとは少数の人間にしか懐かない、触られるのを嫌うプライドの高いお猫様だったのである。
「にょわーお!」
「にょわーお!」
「にょわーお!」
「にょわーお!」
撫でたくて撫でたくて近寄ったのに次々と爪を立てられ引っ掻かれる可哀想なアンゼロット。容赦ない精霊猫たち。その様をヴィオットはビデオカメラに収めていた。ドSの所業であった。
(後日ばらまいたろ)
それほんとにたのしい?
そんなわけで、アンゼロットは精霊猫にしこたま引っ掻かれたのであったが――肉体的にはそれほどのダメージでは、ない。ただただかわいそうなだけであった。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
弱点・情報
首を狩る事に執着するあまり攻撃は全て一撃必殺となり
強力である反面攻撃箇所が読み易く。
反撃される事を前提としない為、攻撃後の隙が大きい。
「元は勇士の一人でも今振るう鎌はただの凶器。
罪なき人々を脅かす存在だ。
なら此処で止めるしかない。」
弱点の情報を基に危険は承知で敵の一撃からのカウンターを狙う。
召喚された怨霊は【破魔】【除霊】の力を持たせた
デモニックロッドの闇の魔弾で祓うと同時に
表の呪い裏の呪詛を発動し受けた傷を回復。
死の【呪詛】を敵に与える事でも攻撃していく。
他の敵の攻撃は多少喰らっても
常にアンゼロット鎌の構えや目線、攻撃態勢には気を配って
攻撃タイミングとその方法を【見切り】
首回りには【全力魔法】の【オーラ防御】を施し一撃に備える。
首への一撃を凌いだら真の姿を解放。
血煙の様なオーラを纏った姿となり
(今先に討てなければ俺の負けだ。)
残った魔力、呪力を集中した
死の呪詛を【カウンター】で撃ち込む。
「……中々際どかったけど。
この勝負俺の。いや、この情報をくれた勇士も含めて
俺達の勝ちだ。」
●
色とりどりの花々が咲き乱れる天国の様な花畑。しかしここに咲く花はすべてが勇士の命を刈り取る殺戮花。花々を全身から生やし、大鎌を手に立つアルカディア・オブリビオン「亡国の処刑人」アンゼロットの前に立つのは、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)。
アンゼロットは既に猟兵の攻撃を幾度も受けている。しかし、その体に目に見える傷はない。その理由を、既に交戦を終えた猟兵から聞いたフォルクは知っていた。
――花だ。アンゼロットの肉体の中には、血肉の代わりに花が詰まっている。花々に食い殺され、そしてアルカディア・オブリビオンとなった後に体の内側すらも花に食われて成り代わられているのだ。喉を裂いても、心臓を貫いても、すぐに花が傷ついた場所を修復してしまう。
「……やりようを変える必要がありそうだな」
フォルクは
飛空艇艦隊の勇士の一人から聞いた情報を思い出す。それは生前の彼女の話。けれど、今オブリビオンとなった彼女も花に蝕まれながらも生前の戦い方の癖や弱点を同じくしていることも、これまでに戦った猟兵から聞いて知っている。勇士たちから得た情報は、決して無駄にはならないのだ。
屈強な体に大きな傷を負った魔獣解体士は言っていた。生前のアンゼロットは――
『首を狩ることに執着するあまり、攻撃はすべて一撃必殺のものとなる。強力である反面、攻撃箇所が読み易い。そして一撃必殺の攻撃を繰り出すがゆえに反撃されることを前提としていないため、攻撃後の隙が大きい』
「元は勇士の一人でも、今振るう鎌はただの凶器。罪なき人々を脅かす存在だ。なら……此処で、止めるしかない」
危険は承知でカウンターを狙うしかない、フォルクはそう結論付ける。魂喰らいの大鎌を封じた呪われし黒杖「デモニックロッド」に破魔と除霊の加護を纏わせる。フォルクが得物を取り出したのを見て、アンゼロットは大鎌の石突で地を突いた。彼女がこれまでに処刑してきた者たちの怨霊――窶れた生首たちの130体近くが召喚される。怨霊たちは花畑を埋め尽くすように渦を巻きながら、フォルクへと襲い掛かる。それを次々とデモニックロッドから発射される闇の魔弾で祓い撃ち落としていくフォルク。同時にフォルクはユーベルコードを発動させた。
「冥府の果てにある忌わしき呪詛。我が手に来たりてその死の力と転変の呪い、現世のものに存分に振るえ――!」
【表の呪い裏の呪詛】。そう名付けられたユーベルコードにより、怨霊の生首の歯が肉を噛んで出来た傷を怨霊そのものに呪詛でもって移し替える。フォルクを攻撃すればするほど呪詛は傷を怨霊に与えてゆき、フォルクの肉体のダメージは癒される仕組みであった。怨霊の渦の中を抜けて、アンゼロットは文字通り一撃必殺の首刈り鎌を振るう。その刃をギリギリのところで見切って躱しながら、フォルクはアンゼロットの攻撃タイミングを覚えていく。首回りにはオーラによる防護膜を幾重にも纏わせている。例え怨霊相手にかかりきりになっていても、不意の一撃で持っていかれることはない防護だ。
再びアンゼロットの大鎌がフォルクの首を刈り取ろうと振るわれる。それを防護膜で凌ぎ、フォルクは真の姿を解放する。血煙の様な赤い霧のオーラがフォルクの全身を覆った。
(今先に討てなければ……俺の、負けだ……!)
杖を振りかざす。その体に残った魔力、呪力を次の一撃に集中させる。全力を注いだ代償に、どこかの血管が切れたのだろう、視界の隅が赤く染まった。
半端な攻撃では、花に癒されてしまう。ならば、全力を注ぎこんだ「死の呪詛」、死の概念そのものを叩き込んで、内部に巣食った花ごと殺してしまう他にない――!!
叩き込まれた死の呪詛は、過たずアンゼロットの心臓を穿ち抜き。それを繋ぎなおそうとまろび出てくる花々もまた、呪詛によって枯らし尽くされていく。アンゼロットの肉体は花畑の中央に倒れ込み、胸元から枯れた花々を吐き出し続けながらその肉体は花びらのようにボロボロと崩れていく。それが、殺戮花に殺されてオブリビオンとなった者の成れの果て、「アルカディア・オブリビオン」アンゼロットの最期であった。
崩れ風に攫われて碧空へと還っていく花弁を見送りながら、フォルクは告げる。もう聞こえてはいないだろうけれど。
「……中々際どかったけど。この勝負、俺の……いや。この情報をくれた勇士も含めて――俺達の、勝ちだ」
花びらは碧空の彼方へと飛ばされていく。
斯くして、アルカディア・オブリビオンは倒されたのであった――。
大成功
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