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スウィートドリーム・メガリスクライシス

#シルバーレイン #メガリス #【Q】 #オーバーロードについてはマスターページ参照ください #🔵>👑到達予定日時までプレ受付中 #3名自動サポートです(8/31の22:06 #3章、冒頭&状況説明、追加しました。 #3章プレ受付開始⇒9/1の8:31~ #🔵>👑到達予定日時⇒9/5の7:00 #デイドリーム・アゲイン #路子のグリモア記録



 ――最初の動機はただのインスピレーション。

 これを作らなくちゃ、って思った。
 夢の中で見た勾玉は今まで見たことも無い、名前もわからないような不思議な勾玉。
 いつの間にか、その勾玉をいつもの勾玉工房で再現することに躍起になっていた。なんでそこまで必死だったのかは今となってはちょっとよくわからない。

「ああ、これってもしかして『生玉いくたま』?」

 同じ勾玉工房に通う、ちょっと古典に詳しい友人がそう言った。私にはわからなかったけど、その言葉を聞いた時、すとんと腑に落ちた。

 ――ああ、あなたは生玉というのね?

 そんな想いを抱きながら、込めながら。
 そして……私はようやく作ることに成功する。完成だ、と思えるほどの再現度。これが私が『夢で見た』生玉だ。

 そして。
 私は気付く。私の作り上げた生玉レプリカちからが宿っていることに。どういう理屈かはわからない。それでも。その力が超常のものだとわかる。

 不意に。

 どこからか紛れ込んできた死にかけのセミが生玉にぶつかって地に墜ちる。まるで生玉が死因だと言わんばかりに。
 でもその数分後。セミが元気に飛び回る光景を私は目にしたの。


「集まってくれてありがとう。タピる?」
 そう言って遠野・路子(悪路王の娘・f37031)はグリモアベースに集まってくれた猟兵たちにお礼を告げつつ、コンビニで買ってきたタピオカミルクティーを振舞う。新世代ゴーストといっても、普通に生活している分にはヒトとなんら変わらない。
 そんな路子だが、今日猟兵たちに集まってもらったのはもちろんグリモアの予知を得たからである。

 事件の場所はシルバーレインのとある地方都市だ。
「ここで『メガリス』が見つかった」
 メガリス――強大な力を秘めた脅威の古代遺産。元はグリードオーシャン産であるとか、謎は多いがそれはさておき。
「メガリスを回収してきて欲しい」
 これが今回の依頼である。


十種神宝とくさのかんだからって知ってる?」
 首を傾げながら路子が尋ねる。
 なんでそんなことを聞いたのかというと、今回のメガリスがその内のひとつ、生玉いくたまなのだ。上部の尖った形が特徴の玉で『生き生きとした活力を与える』とされている。
「今回の事件はこの『生玉』をとある女性が再現してしまったことによる」
 勾玉作りが趣味の『西野・茜』。とはいっても茜は一般人である。さらに勾玉作りといっても翡翠を使ったガチなものではない。ろう石とか耐水ペーパーを使った庶民的なものだ。子供でも頑張ればできるやつ。
「そんな趣味で作った勾玉が国宝級の神器になってて、街の中は混沌の最中にある」
 そりゃそうだ。
 だが実は今回の問題はそこでもない。
「実は……生玉は完全な状態じゃない」
 そのために『生き生きとした活力を与える』力の発現の仕方がおかしくなっているのだ。
「この生玉は、『弱っている生命を吸い尽くした後に偽りの生命を与える』ことで対象に『生き生きとした活力』を与えている」
 さっきの予知のセミの例で言えば。
 セミに活力を与えて復活させたわけではなく、セミに残っていた生命力を吸い取り切った後に偽りの生命を与えて元気にしたのだ。
 これがもし、ヒトに使われたら?
「見た目は奇跡の復活。でもその実は『助かる可能性がある命にトドメを刺して、「ゾンビ」を作り上げる』ということになる」
 どうしようもなく救いの無い話だ。対象が犬や猫であっても。加えて言えばゾンビ化した対象が理性を失って周囲を襲う可能性すらある。
「今ならその悲劇は阻止できる。だからお願い」
 いつになく、真剣な表情で路子が告げる。


 というわけで、メガリス回収作戦である。
「回収には3段階の手順が必要」
 ぴっ、と3本の指を立てて路子が説明を始める。

「ひとつめは生玉のところまで辿り着く」
 今、生玉は茜が住む街の博物館に預けられている。日中はさすがに目につく可能性が高いので、人気のなくなった夜に侵入する。生玉による妨害もあるのだが突破してほしい。
 詳しくは後ほど。

 生玉のある研究室まで辿り着けば次のミッションだ。
「ふたつめは生玉の力を削ぐ」
 猟兵の接近を確認した生玉は大量のオブリビオン化ゴーストを発生させる。
「この『セミキノコ』の大群を倒し切って欲しい」
 セミキノコの強さは大したものではないが、数が多い。その勢いに飲み込まれないようにしてほしい、のと。
「セミキノコは生玉が取り込んだ『死』の象徴と同時に不完全な状態の具現化」
 これを『排除』することで生玉を完全な状態にすることが出来る。そのためにも1匹たりとも逃がさないでほしい。
 これも詳しくは後ほど。

 そこまで終わったら、一度撤収。最後のミッションは翌日。
「メガリス『生玉』の今の所有者は茜。だから回収の前に所有権をどうにかしないといけない」
 そうしなければ生玉は『茜の生命力を使って周囲の人を元気にする』能力を使い続ける。生玉が手元に無くても運命の糸パスが繋がっている以上は尽きるまで生命力を吸い取られるのだ。
 これを防ぐには譲渡してもらうか、認識のすり替えが必要だ。
「翌日、生玉のお披露目会がある。けど、ここに生玉の力に惹かれたモーラットたちがいっぱいやってくる」
 そして事件はもふもふに埋め尽くされる。具体的に言うとモーラットが詰まる。
「この混乱をうまく利用して」
 詳しい作戦は後ほどもう一回考えよう。

 というわけでメガリス回収作戦はこのような流れになる。
「シルバーレインの平和のために、どうかお願い」
 説明を終えた路子が猟兵たちに頭を下げる。
 そして猟兵たちをシルバーレインの世界へと転送するのであった。


るちる
 まいどです。いつもありがとうございます、るちるです。
 あなたの初めての『十種神宝』はどこからー? 私は赤石路代先生の『永遠かもしれない』からー。
 影響受けまくりでシリアスっぽい雰囲気ですが、実はコメディで突破できるお気軽お気楽なシナリオです。

●全体
 3章構成の通常シナリオです。
 1章が冒険、2章が戦闘、3章がモラ……じゃなかった日常です。もきゅ。
 オープニングで『詳しい話は~』となっている部分は章が始まる前に詳しく説明します。概要はこのコメントにて。

 最終的な目標は『メガリス・生玉を持ち帰ってくること』になります。
 なお希望いただければ、所属の旅団に持ち帰ることが可能です。3章プレイング時に『持ち帰り希望』とご記入ください。

 禁止事項は公序良俗に反すること。博物館と一般人に危害を加えること。

●西野・茜
 勾玉好きのごく普通な大学生。一般人です。もしかしたら覚醒していないメガリス・アクティブという可能性はある、かも。
 生玉の製作者で所有者。生玉にはその超常能力よりも芸術面(形とか美しさとか)に心を惹かれています。

●メガリス『生玉』
 能力は『所有者の生命力を吸収、増幅した後に周囲に分け与える』というもの。生玉を持っている人の近くにいると元気になります。吸収する量はほんのわずかなのですが、所有する限り勝手に継続的に吸われ続けるため、死期が格段に早まるという代償があります。

●1章
 冒険『負の残留思念が渦巻く場所』
 博物館に存在していた負の残留思念が怨嗟の声を吐きながらゾンビのように纏わりついてきます。特殊空間の特性で、纏わりつかれると進むことが出来ません。
 残留思念をどうにか振り払って突き進んでください。

●2章
 集団戦『セミキノコ』
 生玉が作り出したオブリビオン化ゴーストの群れ。倒し切る必要があります。それによって生玉に変化が発生します。具体的に言うと完全版メガリスになります。

●3章
 日常『モラ詰まり・夏』
 生玉のお披露目会場にモーラットが押し寄せます。そして各所に詰まります。モーラットを助けつつ、茜と接触して生玉の所有権をどうにかしてください。


 各章ともプレ受付開始前に冒頭説明or補足説明を追加します。プレの受付開始についてはタグでお知らせします。毎度ですが、1日の執筆人数が多いと採用できない人が出るかも?

 それでは皆さんの参加をお待ちしていまーす!
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第1章 冒険 『負の残留思念が渦巻く場所』

POW   :    力尽くで残留思念を倒す

SPD   :    言葉や行動で残留思念の負の感情へアプローチする

WIZ   :    神秘的な力で残留思念を祓う

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●ミッション・イントルージョン、アーユーレディ?
 メガリス『生玉』が預けられているとある都市の博物館。せいぜい県立というクラスのそんなに大きな博物館ではないが、この地方から出土した遺物などを収蔵する由緒正しい博物館である。
 ゆえに、能力の片鱗を見せた生玉が調査のために預けられたのは必然だろう。

 メガリスの回収を行うには所有者である『西野・茜』を無視する事ができない。例えば、『盗まれた』と思われてしまった場合、彼女が生玉を諦めるまで所有の意識は抜けない。その結果、猟兵たちは彼女の命を使い潰すことになる。
 そういった事態を防ぐためにも、彼女に疑念を抱かせる要素は極力排除しなければならい。

 そのためには限りなく人目に触れることなく、さらには痕跡をなるべく残さず、まずはメガリスが起こす超常現象を解決しなければならない。

 夜を選んだのはそのため。単純に人目を避けるためだ。
 いかに猟兵たちが超常の異能を使うと言っても、周囲に対して微小な違和感は発生する。それを知覚する人が多ければ多いほど、疑念が発生する可能性が高まってしまうからこそ、人目を避けなければならない。

 今回の作戦の意図を押さえた夜間の侵入。猟兵たちは特に問題なく、博物館への侵入を果たす。

 ――直後。

 不思議な感覚に猟兵たちは飲み込まれる。
 ふと周囲を見渡せば……どうやら特殊空間に取り込まれたようだ。同時に力が抜ける感覚がある。
 これがグリモア猟兵の言っていた妨害トラップなのだろう。足止めしつつ、その力を吸い取る。
 今の生玉の標的は超常の力か死にかけの生命力のみ。元気な一般人など消化もできない異物だし、そもそも生玉を害することもできないわけだから、この空間に取り込むなんてことはしない。

 そして。この特殊空間は博物館に集まっていた『負の残留思念』を具現化する。博物館に対して強い怨みや後悔の想い……例えば『その遺物は俺が発見するはずだったのに!』とか『博物館が持つ収蔵品を全て見たかった!』とかそういう強い感情だ。
 そういったものが不定形のゾンビのように形を作り、怨嗟の声を吐きながら纏わりついてくる。これに纏わりつかれたら、先に進めないのはグリモア猟兵からの注意にあった通りだ。

 だが先に進むのが、今の最大の目的だ。そのためにはこの負の残留思念をどうにか突破する必要がある。
 力づくで排除してもいいし、後悔や怨みを晴らす方向に導いても良い。あるいは浄化してしまうか。何らかの手段を取れば突破は難しくない。

※シナリオ補足※
 特殊空間内での行動になります。迷路のような構造になっていますが、道に迷うことはありません。
 ただし、立ち塞がる負の残留思念に触れると動けなくなります。
 何をしても外の通常空間には影響を与えないので、戦略兵器を使ったとて博物館も一般人も傷つくことはありません。その点はご安心ください。
ウルスラ・ロザーノ
昔は、メガリス一つ手に入れたりするのにもえっらい手間かけたりしてたけど
今じゃ作成だとか予知だとか、旅団持ち帰りもええんか?
時代も変わったって思うなー
まあメガリス放っておくのはあかんね、問題解決してきっちり回収したる!

ボク的にも、こういう空間怖がらんようになったとかは成長したと思うわ
成長…いやまあ、年だけは取ったね…
ともかく! 負の残留思念が邪魔するってんなら、よく効くビームで対抗や!
両手でハートの形を作って、そーれ、ずっきゅーん♪ってな!

同行しとる人もおるんなら、元気の御裾分けや!
っても、完全に空間を浄化とかまでは無理やろ
エアシューズを全力でブン回して、今のうちにさっさと突っ切ってしまおかな




 メガリス『生玉』を回収する。
 その依頼を受けて猟兵たちはシルバーレインの世界に降り立つ。

 もっとも。

 ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)にとっては『遠征から帰ってきた』感があったかもしれないが。
「昔は、メガリス一つ手に入れたりするのにもえっらい手間かけたりしてたけど」
 よいせっと博物館を取り囲む塀を乗り越えるウルスラ。単なる塀なので能力者とか猟兵とか関係なく身体能力でクリアできる部分である。防犯システム? なんで反応しないんだろうね?
 ともあれ。敷地内へと侵入は比較的容易にクリア。
「今じゃ作成だとか予知だとか、旅団持ち帰りもええんか? 時代も変わったって思うなー」
 てってってっ、と目的地の建物に向かって歩きながらウルスラは感慨深く呟く。
 過去、『銀の雨が降る時代シルバーレイン』においてメガリスといえば、手元にあるかないかでその勢力の動向が変わるほどの超重要アイテムであった。運命予報にひっかかることもほぼ無く、わずかに垣間見えた運命の糸から手繰り寄せるのが普通であった。そしてメガリスの効果はもちろん、『メガリス破壊効果』の恩恵は見逃すわけにはいかない。まさに決戦兵器だったのである。
 それがまぁ、生命の埒外の所業とはいえ、グリモアの予知で場所がわかるわ下手をすると猟兵数人で確保が可能だとか、そりゃ時代も変わったって思いますよねウルスラさん。
 個人所有とかお持ち帰りとかについては基本的にグリードオーシャンが悪いです。全部やつらのせい。
「まあメガリス放っておくのはあかんね、問題解決してきっちり回収したる!」
 そんなわけで意気揚々と博物館に足を踏み入れるウルスラさんでありました。


 空間が、歪む。
 いや、視界に映る博物館の様子が変容したわけではない。感覚、あるいは纏わりつく雰囲気。そういったものの変化でウルスラは自身が特殊空間に取り込まれたことを感じる。
 その雰囲気を一蹴するようにウルスラは一歩踏み出す。
「ボク的にも、こういう空間怖がらんようになったとかは成長したと思うわ」
 能力者であった昔を振り返れば、まぁそのなんといいますか。結構な臆病者で泣き虫だったなと思うものの、今のウルスラからすれば本当に遠い昔のこと。
「成長……いやまあ、年だけは取ったね……」
 それは言うたらあかんやつやね……。ちな、某グリモア猟兵はアラサーって言われたら『まだ20代ですぅ!!(29歳)』って頑張ってるらしい。なおウルスラの外見について言及するのはNGだ。本当にダメだぞ☆

「ともかく!」

 危うく自身が負の概念に飲み込まれそうになっていたウルスラであるが、そういう気配を振り払う。
 それを不満に思うかのように目の前に現れる、不定形で不透明でそれでいて明らかに不快な存在。特殊空間によって顕在化した負の残留思念だ。
「邪魔するってんなら、よく効くビームで対抗や!」
 元気でまっすぐ。三つ子の魂百までとはよく言ったもので、ウルスラの本質は今も変わっていない。不快すら与えてくる負の残留思念に対してすら、笑顔を浮かべて胸元に両手でハートの形を作って。
「そーれ、ずっきゅーん♪ ってな!」
 ウインクしつつ満面の笑顔で放つのはハート形の情熱ビーム! こういう敵には覿面に効果を発する陰気によく効くビームなのです!
【ヘブンズパッション・スプレッド】がウルスラの目の前にいた負の残留思念に直撃っていうかハートを撃ち抜いて消滅させつつ、その後弾けて特殊空間全体に広がっていく。
「元気の御裾分けや!」
 ウルスラのパッションは、味方にとっては戦意高揚をもたらす恩恵しかない。
 残念ながら今現在、同行者というか視界内に猟兵と思しき仲間の姿は見えないのだが。
 ウルスラの元気な叫びとともに想いを乗せて、彼女のパッションが広がっていく。なんてたって戦場全体に届くのだから。
 たかだが猟兵を取り込んで足止めする程度の力しか持たない特殊空間、ウルスラのパッションを止める力など無い。ならば『同じ場所に居る』というだけでウルスラの情熱は届くはず。

 とはいえ。
「完全に空間を浄化とかまでは無理やろ」
 特殊空間を解除するまではいかなかったようでして。
 まぁまぁ、想定内の結果に満足げなウルスラが足元に視線を遣る。念のための確認。

 そう、残すは突破のみ。

「エアシューズを全力でブン回して、今のうちにさっさと突っ切ってしまおかな」
 ウルスラの声に呼応するようにエアシューズの回転動力炉が唸りをあげて回り出す。

 そして昔のジョブの力を彷彿とさせるような動きで。ウルスラは特殊空間を悠々と突破していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
メガリスって人の手で作れるものなんですね。
まぁ、確かに剣とか舵輪とかのメガリスはあったみたいですけど、こうして作られる過程を解説してもらうと、そんな感想も出るわけで。
ただ、勝手にできちゃった、というのもメガリスっぽくはあります。

既に暴走気味なところもありますし、早々に回収したほうが良いですね。

しかし、この負の残留思念はしつこいですね。
こういう祟ってくる相手は殴っても効果がないだけに面倒です。
ここはスルーするに限ります。
きっとあとに来るスペシャリストが祓ってくれるでしょう。

残留思念は魔法剣『緋月絢爛』に【電撃】を加えて、強制排除。
あとは【呪詛耐性】を活かしながら、無理やり進みます。


暗都・魎夜
wiz
【心情】
普通の女の子が作った勾玉に、メガリスの力が宿っちまった、ってことか
そんなことで姿を見せていいレベルの危険度じゃねえぞ、こりゃ
確実に回収しねえとな

【行動】
「こいつは随分と景気よく暴れてやがるな。ある意味じゃ、ちょうどいい掃除のタイミングなのかね」

「GTだったらかき入れ時だったのにな」
「除霊」を用いて、自身の持つ詠唱銀の中に残留思念を集め、集まったところでプロミネンスパンチを用いて破壊する
「本音を言うともっとしっかり弔ってやりてぇ所なんだけどな。時間がないんで勘弁してくれ」

「索敵」「偵察」を用いて、不意を撃たれないように気を付けながら前進
多少遠回りでも、多めの残留思念を回収しておく




 メガリス『生玉』を回収するというミッション。
 所有者は一般人ということでこのミッションはそう難しいものではない……と考えられる。
 ただ。
 メガリスという存在が事態を少々複雑にしているように思える。

「メガリスって人の手で作れるものなんですね」

 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は首尾よく侵入した博物館内の敷地を進みつつ、首を傾げつつ、そんなことを呟く。
 いやまぁ見た目と経緯からするとそう見えなくはない。一般人がメガリス作っちゃった、とか大事件にも程がある。
 しかし、である。
「まぁ、確かに剣とか舵輪とかのメガリスはあったみたいですけど、こうして作られる過程を解説してもらうと、そんな感想も出るわけで」
 摩那さんの言うことも一理あるだろう。グリモアの予知を通じて一連の流れを把握した猟兵たちにとっては筋の通っている話なのかもしれない。
 でもほんとに人の手でメガリス作れるのかな?
「ただ、勝手にできちゃった、というのもメガリスっぽくはあります」
 そんな相反する意見も出てきちゃうところがメガリスの存在である。
 今は出ない答えに対してひと通り思案を巡らせつつ、摩那は歩を進める。目的の建物はすぐに見つかった。
「既に暴走気味なところもありますし、早々に回収したほうが良いですね」
 建物内には既に展開されている特殊空間。仲間が先に突入しているのだろう。だがその奮闘のおかげか、特殊空間内にはユーベルコードによる加護の力も広がっている。
「それではいきましょうか」
 そう呟いて、摩那は特殊空間へと足を踏み入れるのであった。


 思った以上に負の残留思念の数が多い……が想定以上に動きが鈍い。おそらくは仲間が展開したユーベルコードの効果。
 だが残念ながら、行動を完全に諦めてくれる程度の思念……ではないようだ。動きが鈍かろうが自身の存在が一部欠けようが、負の残留思念たちは摩那目掛けて押し寄せてくる。
「しかし、この負の残留思念はしつこいですね」
 魔法剣『緋月絢爛』を抜き放つと同時に一閃するが、形が揺れるだけで効果が無い。
「こういう祟ってくる相手は殴っても効果がないだけに面倒です」
 一閃は単なる確認であったが、確認できたところで面倒さは変わらない。だが次の行動に移る判断材料にはなったようだ。
「ここはスルーするに限ります。きっとあとに来るスペシャリストが祓ってくれるでしょう」
 そう言って緋月絢爛を両手で構える摩那。数瞬の後、刀身のルーン文字が輝くと同時に刀身が紫電を纏う。
「無理やり進みます!」
 緋月絢爛を振るって負の残留思念を強制的に排除。強烈なダメージに動きが止まったその隙を摩那が駆け抜ける。伸ばされる手は無理に相手せず、自身の呪詛耐性の高さを信じて振り払う程度に留め、とにかく駆け抜けることを重視する摩那。
 その作戦は功を奏して、摩那は特殊空間を程なくして突破する。

 電撃によるダメージで身が崩れて動きを留めた大量の負の残留思念が摩那の背中を恨めしそうに見送るのであった。


「……なんだこれ」
 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)が特殊空間に足を踏み入れた直後の第一声である。何故かって言えば、なんかぐにょぐにょ再生中の負の残留思念がそこら中に固まっていたからである。
 『お待たせしましたスペシャリストの登場だ!』ってプロレスとかだったらアナウンス入るヤツ。
 されど、先に摩那が通り抜けた後だなんて、魎夜にはわからないわけでして。

 博物館の敷地へ侵入しつつ、これまでの情報を整理しながら歩を進めていた魎夜。
「普通の女の子が作った勾玉に、メガリスの力が宿っちまった、ってことか」
 メガリスの特異性、あるいは超常性を考えるならそれが妥当のような気がする。だがそうだとしても、だ。
「そんなことで姿を見せていいレベルの危険度じゃねえぞ、こりゃ」
 銀誓館学園出身……すなわち元能力者である魎夜にはこの世界におけるメガリスの重要性、あるいは危険性についてよくわかってる。だからこそ頭の中にメガリスの発生に関する疑問はあれど、進む足に迷いはない。
「確実に回収しねえとな」
 そして特殊空間に足を踏み入れたのだ。

「……なんだこれ」
 そして今に至り、冒頭のセリフである。
 まぁ、想定とは違うが……負の残留思念が魎夜を狙って襲い掛かってくることには相違ない。ちょうど再生を終えたのか、足を留めていた負の残留思念たちが一斉に魎夜へ向き直る。
「こいつは随分と景気よく暴れてやがるな。ある意味じゃ、ちょうどいい掃除のタイミングなのかね」
 押し寄せてくるゴースト擬きたちに対して、魎夜は冷静に構える。
「ゴーストタウンだったらかき入れ時だったのにな」
 死と隣り合わせの青春の裏側にある世知辛い事情が垣間見える言葉。あの時代は戦うためにも大規模な作戦を行うためにもとにかく詠唱銀が必要だったのです……。一番手っ取り早いのはゴーストを倒すことっていうね。
 そんな経験値が魎夜の行動を最適化している。流れるように手に掴み、胸の前に構えるのはまさしく詠唱銀塊。
「こいつにゃ抗えないだろ?」
 負の残留思念たちに魎夜が語り掛ける。それは単なる会話ではなく、『除霊』という儀式のワンターンだ。見せられた詠唱銀に魅せられた残留思念たちの動きが完全に止まり、その隙に魎夜の術によって残留思念たちが詠唱銀に吸い込まれる。
 残留思念と詠唱銀が混じり合えば……そこに生まれるのはゴーストだ。
 一箇所に集まるように顕現したゴーストたちに対して、魎夜は太陽のエアライダーのアビリティで一気に破壊していく。単なるゴーストであれば、能力者の力で十分。
「本音を言うともっとしっかり弔ってやりてぇ所なんだけどな。時間がないんで勘弁してくれ」
 情に流されることなく、ゴーストを倒していく魎夜。その場に残るように舞う詠唱銀の回収も忘れない。
 そして周囲の索敵も怠らず、不意をうたれないようにしながら特殊空間の中を突き進む。
 が、ふと足を止めて。
「……あっちにもいるな」
 負の残留思念の気配。それを感じて魎夜は進行方向を変える。
(多少遠回りでも、少しでも多く回収しかないとな)
 さっきも言ったが詠唱銀は貴重なのだ。
 その機会を逸することなく、魎夜は自身が感じた方向へと歩を進めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
へえ、中々面白い特殊空間ですね
ですが…身体はおとなっ(22歳)、中身は子供(今年4さい…)の、この天才少女キアラちゃんに良いアイディアがありますっ!

さあ「隠された森の小路」発動っ!
普通のヤドリギ使いは植物しか避けられませんが、私のは特別製で何でも無力化できちゃうのです!

負の残留思念だろうが特殊空間の迷路だろうが、何でも捻じ曲げ真っ直ぐ進めちゃいますよ!?

ふふ…この私の天才ぶりが炸裂しましたね…前に似たような慢心したら、見事に考え抜けてて大失敗しましたが、今回は大丈夫!…たぶん

…あれ、ゴールどこ?
これ使いすぎると私死んじゃうんですけどー!?
抜けるにはどっちいけばいいのー!?(半泣きでたったか走る




 メガリス『生玉』が預けられている博物館は、先も言ったようにそんなに大きなものではない。警備も防犯もそれなりといった感じだ。なので猟兵たちにとって敷地の中に入るまでは余裕だろう。転送で直って方法も無くはない。
 そんな感じでキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)も悠々と博物館の別棟、すなわち生玉が保管されている建物へと足を向ける。
「へえ、中々面白い特殊空間ですね」
 建物に足を踏み入れて、そのまま特殊空間に取り込まれて。
 キアラは第一声でそう告げた。意外と肝が据わっているようだ。クールに告げたその後にキアラは目を細めて口を開く。
「ですが……身体はおとなっ22歳、中身は子供今年4さい……の、この天才少女キアラちゃんに良いアイディアがありますっ!」
 色々と台無しだった。いや、本当に天才なのかもしれないが、その片鱗はいまだ……いや、やめておこう。

「さあ、【隠された森の小路】発動っ!」

 キアラの声に応じてユーベルコードがその力を発揮する。ユーベルコード【隠された森の小路】は本来、能力者としてのヤドリギ使いに備わる力。それをユーベルコードの域まで進化させたキアラの場合。
「普通のヤドリギ使いは植物しか避けられませんが、私のは特別製で何でも無力化できちゃうのです!」
 と完全にドヤ顔のキアラさんである。さらに告げることには。
「負の残留思念だろうが特殊空間の迷路だろうが、何でも捻じ曲げ真っ直ぐ進めちゃいますよ!?」
 とのことでして。
 現に目の前の空間がキアラの進みたい方向――すなわち、生玉が保管されている部屋の道として真っ直ぐに形成されていく。よほど『真っ直ぐ進みたい』という強い想いが元にあるのだろう。なお、ゴーストやオブリビオンも障害物扱いっていうかなり強引なユーベルコードです。ヤドリギ使い、ネミの裔とは? とは聞いてはいけない。
 そんなこんなでとりあえず道は確保された。負の残留思念は近寄ることすらできず、さらに迷路もその体を為していない。
「ふふ……この私の天才ぶりが炸裂しましたね……」
 自分の才能が恐ろしいって感じのキアラさんの独白である。内心、『前に似たような慢心したら、見事に考え抜けてて大失敗しましたが』とか思っているがさておき。
「今回は大丈夫! ……たぶん」
 自信ねーな!?
 今回は大丈夫です。まぁ強いて言うなら、この迷路は『惑わすためではなく、滞在時間を増やすため』のものなので(『迷路のような構造になっていますが、道に迷うことはありません』表記あり)

「……あれ、ゴールどこ?」

 道を見失ったのは自身の能力による、という点だけですかね?
「これ使いすぎると私死んじゃうんですけどー!? 抜けるにはどっちいけばいいのー!?」
 半泣きでたったか走りだすキアラ。
 来た道を戻らなければ辿り着けるはずである。がんばれキアラちゃん!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

天宮・紫苑
アドリブ・連携:可

メガリスを作った、ですか……。
未覚醒のメガリス・アクティブとかですと、今後も生玉絡みの事件が起きそうですね。
「まぁ、今は目の前の事件を解決しましょう」

さて、残留思念が妨害してくるそうですが……。
とりあえず、UCを使って姿や音、匂いなどを完全に消して進んでみます。
残留思念や生玉に気づかれないならそれで良し、駄目なら駄目で力付くで突破です。
それに、残留思念が力を持つ原因が生玉の力なら、UCの生命力を奪う力が効果あるのではないでしょうかね。
「さて……こちらも仕事なので、無理矢理にでも通らせていただきます」




 メガリス、と聞くとどうしても不穏な空気が漂ってしまうのはどうしようもないのかもしれない。
 銀誓館学園卒業生ならではの妙な緊張感を感じながらも天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)は博物館の敷地へ侵入を果たす。魔剣士の本業能力である闇纏いはこういう仕事の際に確実に有能だ。世の中にはコミマスのゴーストライティングみたいな『ゴースト事件で役に立つ??』みたいな本業能力だってあるんですよ。羨ましい……こほん、失礼しました。
 ただでさえ有能な闇纏いがユーベルコード【黒影剣・気魄】として進化している。闇のオーラで覆われた紫苑と背負うように携えた大太刀『闇纏』は、周囲から視聴嗅覚での感知を不可能とする。ならば警備程度に悟られることはない。

「メガリスを作った、ですか……」

 紫苑の口から思わず零れた言葉。それは能力者として駆け抜けた過去からすると本気であり得ないような事態である。だって作れるならあんな死人が出そうな戦いを経ずとも『銀の雨が降る時代シルバーレイン』を戦い抜けたはずなのだから。
 それほどにまでメガリスの影響は大きい。世界結界が復活した今の時代であってもだ。
「未覚醒のメガリス・アクティブとかですと、今後も生玉絡みの事件が起きそうですね」
 様々な憶測が出てくるのは経験からであろう。だがまたその経験が言っている。
「まぁ、今は目の前の事件を解決しましょう」
 そう言って紫苑は件の建物まで辿り着く。
 この中に、メガリス『生玉』が『いる』のだ。


 慣れた感覚。世界の超常を踏み込える、あの感覚だ。

 大きな戦いを経て、銀誓館学園を卒業してもなお、紫苑は能力者として戦い続けてきた。世界結界が壊れていく中でもゴースト事件は絶えなかった……というより増えていくに決まっている。隠すものがなくなっていくわけだから。オブリビオンの出現、アビリティの弱体化……襲い掛かってきた理不尽を乗り換え、猟兵に覚醒して戦う力を取り戻した紫苑は再び戦いの場に戻ってきた。
 ならば油断することなどありえない。

「さて、残留思念が妨害してくるそうですが……」
 闇纏の柄を強く握る。魔剣士が使うことを前提として鍛えられた、身の丈ほどもある長大な大太刀は紫苑の手によく馴染む。ゆえに……突如降ってきた負の残留思念にも動じることなく体が動く。
 一閃。
「とりあえず、と思いましたが、駄目そうですか」
 【黒影剣・気魄】による姿隠しは姿や音、匂いなどにも及び、完全に存在を消して進んでいたはずだ。それでもなお気付かれたのだから、別の何かが作用しているのだろう。
 斬り捨てられた負の残留思念が真っ二つにされて地に落ちて。それを合図にして大量の負の残留思念が姿を現わす。
 だが問題は無い。
「駄目なら駄目で力付くで突破です」
 闇纏の刀身に闇のオーラが伝播していく。漆黒の刀身が輝くような闇を纏い。紫苑が全力で振るえば、その軌跡に合わせて残留思念が霧散していく。
(残留思念が力を持つ原因が生玉の力なら、ユーベルコードも効果があるのではないでしょうかね)
 とは紫苑の希望的観測であったが、正解だったようだ。刃が触れれば負の残留思念に宿る生命力が吸い取られ、彼ら彼女らは姿かたちと力を保てない。
「さて……こちらも仕事なので、無理矢理にでも通らせていただきます」
 押し寄せる波のような負の残留思念の群れ。
 ゴーストタウンにおける大量のゴーストにも似た光景に思わず苦笑を浮かべながら。
 それでも紫苑は剣閃とともに、特殊空間の中を軽やかに駆け抜けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

護灯・れんじゅ
メガリス絡みの話と聞いて、メガリスアクチブとして参加しないわけには行かないのです!
…って、何ですかコレ、変な感じ…これが特殊空間なのですか?
そして、あっちでウゾウゾしているのが残留思念…と!

メガリス『空海の数珠』からごっほくんを召喚

―ふむ、此処は戦場と見た。娘よ、我が力が必要か?

はい、お願いするのです、ごっほくん!

―我は護法童子……いや、もう良い。行くぞ、娘よ!気を引き締めろッ!

鈍器のような詠唱大筆を手に、ごっほくんと背中合わせで戦う
敵の体勢を崩してから、ごっほくんのユーベルコードで一体ずつ調伏していく

―遺物への執着、か。涅槃の果てに人として出づる事在れば、孰れまた見える事も在ろうぞ…南無三。




 メガリスはシルバーレイン世界における重要なアイテムだ。強いとかそういうものではなく、存在そのものが世界を揺るがす。世界結界がオブリビオン化し、幾多のメガリスが力を失ったり消失したりしたとしても、その重要度は変わらない。いまだなお、この世界に残るメガリスは影響をもたらし続けている。
 ゆえに猟兵として覚醒したメガリス・アクティブがメガリスに引かれるのは必然だろう。

「メガリス絡みの話と聞いて、メガリスアクチブとして参加しないわけには行かないのです!」

 噛んだのかどうかは気にしないで欲しい。気にしてほしいのはその意気込みとやる気だ。護灯・れんじゅ(熱筆入魂ゴーフォーリット!・f37965)さんである。
 れんじゅは過去の戦いを経験した能力者ではない。しかし、運命の糸、あるいは縁が繋がったのだろう。メガリス『空海の数珠』に触れた彼女は猟兵へと覚醒したメガリス・アクティブである。だからこそ、この時代に現れたメガリスに対して敏感に反応する。

 第六感に従い、ダッシュで博物館の建物へ乗り込んだれんじゅ。
 直後、ぞわっ、とした感覚に身を震わせる。
「……って、何ですかコレ、変な感じ……これが特殊空間なのですか?」
 思わず足を止めて周囲を見渡すれんじゅの存在に反応したかのように湧き出てくるモノ。
「そして、あっちでウゾウゾしているのが残留思念……と!」
 師匠の鍛え方が良いんでしょう。危機に対してれんじゅは感情よりも先に体が動く。メガリス『空海の数珠』を手にして念を込めれば、空海の数珠がその姿を変えていく。
『ふむ、此処は戦場と見た。娘よ、我が力が必要か?』
 現れたのは護法童子たるモノ。
「はい、お願いするのです、ごっほくん!」
『我は護法童子……いや、もう良い。行くぞ、娘よ! 気を引き締めろッ!」
 【護法童子使役「覆滅」】――メガリスの力を引き出すれんじゅのユーベルコード。空海の数珠は『護法童子ごっほくん』としてれんじゅの傍に立つ。
 ごっほくんの言葉にれんじゅもまた得物である『詠唱大筆』を構える。鈍器のようにも使える回転動力炉付きの詠唱大筆を手にごっほくんと背中合わせの態勢になるれんじゅ。
 じりじりと近づいてくる負の残留思念たちに対して、二人は待ちを選択しない。
「そりゃーーー!!」
 ぶんっ、と丸太のように振るわれた詠唱大筆が負の残留思念をなぎ払う。れんじゅの一撃は負の残留思念たちを数体なぎ払い、近づけさせないと同時に態勢を崩す。
『――噴っ!!』
 その隙を逃さず。ごっほくんが踏み込み、強烈な拳の一撃を叩き込む。同時に流し込まれる法力。それによって負の残留思念が調伏されていく。
 それを1体ずつ確実に、繰り返し調伏していくれんじゅとごっほくん。
「やふーーーっ!」
 絶好調(?)のれんじゅの背中を見守りつつ、ごっほくんが負の残留思念たちに一瞥する。
『遺物への執着、か。涅槃の果てに人として出づる事在れば、孰れまた見える事も在ろうぞ……南無三』
 その言葉は慈悲、あるいは真理なのか。しかしその手が緩まることなく、周囲の負の残留思念たちを全て調伏したれんじゅとごっほくんはこの特殊空間を突破するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『セミキノコ』

POW   :    炸裂毒胞子
自身の【キノコ】から、戦場の仲間が受けた【攻撃の威力】に比例した威力と攻撃範囲の【毒胞子】を放つ。
SPD   :    抗体化
【セミの幼虫の殻】を脱ぎ、【「セミ人間」形態】に変身する。武器「【ガトリングガン】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ   :    セミシャウト
【耳をつんざくようなセミの鳴き声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
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●そのメガリスは……
 メガリス『生玉』回収作戦。
 その第一の障害である特殊空間を猟兵たちは突破した。ほぼ事もなげに突破した特殊空間であるが、わずかとは言えその中に滞在したせいでやはりほんの少し『力』を吸われているようだ。
 とはいえ、吸われた量は全然大したことない。ヒットポイントという概念があるのなら全体の0.1%~1%といったところだろう。もちろん戦闘にも普段使いの能力にも何ら影響はない。

 しかし。

 力を吸われた気怠さを回復させるために小休憩を取った猟兵たちは、脳裏にひっかかっていた疑問を改めて口に出す。

 ――メガリスは人の手で作成できるのか?

 それが未覚醒のメガリス・アクティブであっても、だ。

 過去の戦いにおいて得られた情報。それにメガリスは『新たに作り出すことは不可能ではない』ものの、『偶発的に発生』するものであり、また『ディアボロスランサー』を元にする、というものであった。
 オブリビオン化した世界結界に覆われている現在、この情報が活きているのか否かという問題もあるが、変質していたとしても『そんなに簡単に作成できるモノではない』という点は変わりないだろう。
 メガリス・アクティブの性質もまた『特定のメガリスと高い親和性を持つ』『メガリスを完全解放できる』であり、メガリスを作り出せるわけではない。

 ならば誰かが言ったように『普通の女の子が作った勾玉に、メガリスの力が宿ってしまった』ということなのか。そんなことがあり得るのか……といえば、近しい現象は存在する。

 ――メガリスゴースト。

 破壊されたメガリスの『修復期間』中に発生する特殊なゴースト。メガリスの力が稀に、誤って『元のメガリスに似た形状の物品』に宿ってしまい、ゴースト化したものである。いわくつきの物品というのが相場なのだが、今回の生玉はメガリス・アクティブ(仮定)である茜の強い想いが籠もっていた。それに反応した可能性はある。
 もし、今の生玉がメガリスゴーストであるならば。本来の能力が『所有者の生命力を吸収、増幅した後に周囲に分け与える』にもかかわらず、不完全な『弱っている生命を吸い尽くした後に偽りの生命を与える』能力になっていることも理屈が通る。
 とすれば逆に。このままの状態で生玉を放置しておくわけにはいかない。メガリスゴーストの行動は多くの場合、人々に危険な被害を及ぼすからだ。

●そのメガリスを討て
 猟兵たちは生玉が安置されている研究室の前へと辿り着く。ドアノブを掴むも、妨害は無い。ゆっくりとドアを開き、中に足を踏み入れるとそこは新たな特殊空間であった。
 だが特別な能力は無く、ただただ広大な空間と化しているだけのようだ。やたらと広い、何もない部屋のど真ん中に生玉がある。

 猟兵たちの突入に反応したかのように、生玉の周りにキノコを生やしたセミのような存在が生み出されていく。オブリビオン化ゴースト『セミキノコ』の大群。
 ゴーストがオブリビオン化しているということは、生玉のメガリスゴーストもまたオブリビオン化しているのかもしれない。
 しかしこのセミキノコたちはいわば生玉の最後の手段。諸刃の剣にして溜め込んできた力を全解放するようなもの。
 それを打ち破れば、生玉の中に蓄積されていた『死』と『力』は消滅する。それはイコール、メガリスゴーストとしての生玉を倒すことに繋がるのだ。

 だからこそ、見逃すわけにはいかない。
 猟兵たちは目の前のセミキノコの大群に対して、戦闘態勢を取る。
黒木・摩那
もう夏も終わりになりつつありますが。
セミまだ残ってたんですね。キノコ生えてるけど。

あとはこのセミキノコを片付ければ、ひとまず依頼は解決。心穏やかに明日を迎えられるというものです。
数が多いですから、一気に片を付けましょう。

魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
加速エンジン『ジュピター』でセミキノコの懐に【ダッシュ】。変身する前に【なぎ払い】【武器落とし】をします。
切りきれなかった分は【敵を盾にする】しながら、ガトリングガンを避けて移動。

混戦に持ち込んで、こちらにセミキノコが集まったところをUC【乱舞雷花】を発動。
まとめて始末します。




 メガリス『生玉』回収作戦。その第二段階。
 生玉のメガリスゴーストと思しき存在は自身が取り込んだ力を解放するかのように、オブリビオン化ゴースト『セミキノコ』を大量に召喚する。

「もう夏も終わりになりつつありますが。セミまだ残ってたんですね。……キノコ生えてるけど」

 そのセミキノコたちと相対した黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は冷静に状況を見据えていた。

 じーじーじー。
 みーん、みんみんみーん。
 しゃわしゃわしゃわー。

 セミキノコの中には色んな種類が混じっているのか、セミの鳴き声もまた入り乱れている。
 だが落ち着いてよく見て欲しい。
「……幼虫ですね?」
 本当に冷静な摩那さんだった。セミキノコって名前だからといって『そこ見た目』を見落とすような子じゃなかった。このセミキノコは、セミに羽化する前にキノコに乗っ取られてる。その事実はほんの少し悲しい。だが名前はセミキノコだ。
 そして猟兵として回収作戦でやることはただひとつ。摩那はブレない。
「あとはこのセミキノコを片付ければ、ひとまず依頼は解決。心穏やかに明日を迎えられるというものです」
 愛刀の魔法剣『緋月絢爛』をすらりと鞘から引き抜きながら。体の側面で構えた緋月絢爛の刀身にルーンの加護が灯る。ひと振り、試しに空を薙いだ一閃が仄かな光の軌跡を残す。
「数が多いですから、一気に片を付けましょう」
 セミキノコたちが警戒に鳴き出す中。
 摩那は地を蹴ってセミキノコの大群へ走り出すのであった。


 呪力型加速エンジン『ジュピター』――靴に装着する宝石型の加速装置は地表との反発力を高めて、摩那はその勢いを加速に乗せる。
 摩那の急速接近を感知したセミキノコたちが抗体化、セミの幼虫の殻を脱ぎ、『セミ人間』形態へと変身しようとするが……その変化より摩那の踏み込みの方が速い。
「――はっ!!」
 小さい呼気とともに真横になぎ払われる緋月絢爛。殻を脱ぎ切る前のセミキノコたちが緋月絢爛が描く弧に飲み込まれて真っ二つに崩れ落ちる。
 しかしセミキノコたちの数が多い。その数の多さ、物量で押し寄せるセミキノコたちに対して、摩那は退くことをせず、逆――さらに踏み込む。
『――!!』
 セミ人間化したことによって生えた手足。その手が構えるのは抗体ガトリングガン。生をなぎ払う弾幕が摩那目掛けて四方から放たれるが。
「……っと。食らうわけにはいきません」
 弾幕を置き去りにするように加速。その道すがら、セミ人間を斬り捨てつつ、別のセミ人間の後ろへ潜り込む。あまりの速度にセミ人間は反応しきれない。ゆえに摩那を追いかけてくる弾幕をまともに浴びてそのまま消滅する。
 その頃には摩那は別のセミ人間の元にいる。捕まらない、当たらない。そんな摩那に翻弄されるセミ人間たちは、いつしか誘導されている。否、摩那が群れの中心点へと移動したのだ。すなわち、一網打尽にできる位置。
 摩那が静止したのは一瞬。
「励起。昇圧、帯電を確認……散開!」
 詠唱を受けてユーベルコード【乱舞雷花】が放たれる。直後、緋月絢爛の刀身が七色の花びらへと変化。くるりと身を翻す摩那の動きに従って周辺へと舞い散る花びら。
 だがその花びらは美しいだけではない。摩那が得意とする戦法――高圧電流を帯びたソレはセミ人間に触れると同時にその身を焼き尽くす!
「まとめて始末です」
 淡々と放つ摩那の言葉と周囲に振り続ける七色の花びら。
 それによって摩那の周囲に存在するセミ人間たちを消し炭と化していく。崩れ、砕け、小さな黒い粉となったセミキノコたちはそのまま空間へと溶けていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
なるほど、メガリスゴーストでしたか
ふふ…ここ最近の鍛錬の成果を見せる相手として不足はありません
では古式ゆかしき伝統に則って…イグニッション!(魔女服から動きやすい白ドレス姿へ

金枝祀るネミの裔としてではなく、ヤドリギ使いとしてでもなく、一人の能力者として鍛錬し追及した、魔法と体術とナイフ術の融合
『アサシンキアラ』スタイルの初陣ですっ

さあ、この両手に在る一対のケルト十字型スティレットに貫かれ、セミキノコよ…自然に還れっ!

母の称号でもあった「ネミの白魔女」である事はやめません。でも私は母と同じじゃない、それではきっと母を越えられない

「キアラ・ドルチェ」として、この世界と相対する
今日がその第一歩です!




 メガリス『生玉』の周りに生まれるオブリビオン化ゴースト『セミキノコ』たち。様々なセミの鳴き声をまき散らしながらゆっくりと押し寄せてくる波のような大群を前に、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は足を止めて様子を見据える。
「なるほど、メガリスゴーストでしたか」
 と呟くキアラにこの状況を焦っているような様子はない。むしろ。
「ふふ……ここ最近の鍛錬の成果を見せる相手として不足はありません」
 その様子は威風堂々というかドヤ顔に近い。やる気満々である。そんなキアラの手には1枚のカード。
「では古式ゆかしき伝統に則って……起動イグニッション!」
起動イグニッション』――銀誓館学園の能力者たちを見えざる狂気から守り、さらに戦う力をもたらし続けたその技術は今もなお、この世界の戦う者を支えている。
 力ある言葉によってキアラの衣装が白き森の魔女の姿から動きやすさを重視した輝くような白いドレス姿へと変化する。
「金枝祀るネミの裔としてではなく、ヤドリギ使いとしてでもなく」
 告げながらキアラが両手に構えるのは一対のケルト十字型スティレット『宿木剣-Celtic Mistilteinn-』。木々の間を風が抜けるようにスティレットを構えるキアラの動き。それは決して思い付きや一朝一夕の動きではない。
「一人の能力者として鍛錬し追及した、魔法と体術とナイフ術の融合……『アサシンキアラ』スタイルの初陣ですっ」
 宣言するように声を張り上げて。キアラはセミキノコたちに向けて地を蹴るのであった。


 キアラの接近に対してセミキノコたちが一斉にシャウトする。様々な種類の鳴き声が響き渡る。それそのものに殺傷力が無かったとしてもオブリビオン化ゴーストが放つ鳴き声ならば、猟兵とて足止めすることは可能だろう。
 だがその鳴き声をキアラのスティレットによる十字の一閃が切り裂く。刃の軌道に合わせて鳴き声が割れて、空気の切り傷の間をキアラがすり抜けていく。そのまま、アサシンキアラがセミキノコの大群に肉薄する。

「豊穣の女神アルティオに聖別されしヤドリギよ、つらぬくものとなりて我と共に速く疾く駆けよ!」

 直後、キアラがセミキノコの大群を取り囲む。残像――否、分身体。それを生み出したのはスティレットと同じ名を抱くユーベルコード【宿木剣-Celtic Mistilteinn-】――それはスティレットをバルドル殺しのヤドリギに見立て攻撃する、ケルトと北欧剣術の融合技
「さあ、この両手に在るケルト十字に貫かれ、セミキノコよ……自然に還れっ!」
 キアラたちによる包囲攻撃がセミキノコを貫き、屠る。斬り裂かれた傷跡から霧散して形も残さず消えていくセミキノコたち。小さな黒い無数の塵と舞い上がるその中に着地したキアラの分身体もまた陽炎のように揺らぎ、最後に立つのはキアラ本人ただ一人。
 ふぅ、とひと息ついて。キアラは天井を見上げる。
(母の称号でもあった『ネミの白魔女』である事はやめません)
 それは『ドルチェ』を名乗る者にとって誇りであり、当然のように継いでいくモノであろう。……でも。
「私は母と同じじゃない、それではきっと母を越えられない」
 そう、彼女は『シーナ・ドルチェ』ではない。『銀の雨が降る時代シルバーレイン』を駆け抜けた英雄ではない。
 だからこそ。
「『キアラ・ドルチェ』として、この世界と相対する……今日がその第一歩です!」
 世界に、彼女に縁ある者にキアラは告げる。そして彼女はシルバーレインの世界に自身の両足で立つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
メガゴと言われれば、メガゴとしか言いようのない内容だな、これ
生玉本物の回収自体もいずれはやらないといけないわけだが、その前にまずはこいつらが相手か

【戦闘】
毒の胞子をまき散らす妖獣セミキノコ
GTではそこそこ戦った相手だが、オブリビオンとしては進化の性質すら手に入れているようだ
ここに集まったのは幸いだ
ここで終わらせてやるさ

UCを発動して攻撃を「見切り」「ジャンプ」「ダッシュ」で回避
「切断」「斬撃波」による「なぎ払い」で、UCで強化された攻撃
胞子の範囲に入らないように戦闘を行う

「お前らもほとほと運がなかったな。せめて、苦しまないようにやってやる」

……これだから、メガリス絡みの事件は困るぜ




 生み出す、いくらでも生み出されていく。それは『生命力を強化する』というメガリス『生玉』の性質が残っているのだろう。
 メガリスゴーストのような存在となってもなお、生玉のその能力は健在で、自身の周辺に大量の『セミキノコ』を生み出していく。
 その様子を見据えて、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)が呟く。
「メガゴと言われれば、メガゴとしか言いようのない内容だな、これ」
 銀誓館学園出身の能力者ならば目にしたこともあるだろう。メガリス破壊効果、銀誓館学園としては生命賛歌の代償ともいえるその存在を無視するわけにはいかない。
「生玉本物の回収自体もいずれはやらないといけないわけだが、その前にまずはこいつらが相手か」
 無限とも思える湧きを見せるセミキノコたちに対して、魎夜は油断なく。炎を模した姿の魔剣『滅びの業火』を構える。
「毒の胞子をまき散らす妖獣セミキノコ……ゴーストタウンではそこそこ戦った相手だが……」
 どうやら抗体化――オブリビオンとしては進化の性質すら手に入れているようだ。しかし『この場に集約されている』のは幸いと言えよう。何故ならば。
「ここで終わらせてやるさ」
 此処で仕留めればいいだけなのだから。


 セミキノコたちの体が震える。直後、キノコ部分から全周囲に一斉に放たれる毒の胞子。それは視界を覆うほどにどす黒くまき散らされ、魎夜を埋もれさせんと降りかかる。
 だが魎夜は悠然と吼える。
「全力で行くぜ!」
 魎夜が叫ぶとともに、彼の体を燃え盛る太陽の炎が包み込む。ユーベルコード【赤い太陽】によって装甲のように炎を身に纏った魎夜は、その上昇気流で毒の胞子を吹き飛ばす。
「こいつに耐えられるか、試してみな!」
 同時に地を蹴ってセミキノコに一瞬で肉薄。脇に構えた『滅びの業火』もまた燃え盛る太陽の炎を宿した剣と化し、その刀身を魎夜は一気に振り抜く。炎がセミキノコを切断し、斬撃の余波が弧を描いて周囲のセミキノコたちをなぎ払っていく。
 【赤い太陽】は魎夜の攻撃力を8倍にまで引き上げ、その代わり、防御力を犠牲とする。ハイリスクハイリターンはエアライダーの習性……じゃなくて特徴であるが、決して博打ではない。

 ――当たらなければどうということはない。

 これを地で行くのがエアライダーたちなのだから。
 毒胞子の流れを見切り、ジャンプとダッシュを駆使して攻撃を回避していく魎夜。その軌跡の中で、『滅びの業火』がセミキノコを焼き斬っていく。身に纏った炎がセミキノコの残りを燃やし尽くし、降りかかる胞子を上昇気流で追いやっていく。
 もはやセミキノコたちの攻撃は魎夜まで届かない。
「お前らもほとほと運がなかったな。せめて、苦しまないようにやってやる」
 そう告げて。魎夜はセミキノコの群れに一気に迫る。集まり切ったセミキノコたちへ……一閃。
 炎の斬撃が放たれ、魎夜の視界内にいるセミキノコたちが燃えていく。
 だが、まだ終わりというわけでは無さそうだ。まだセミキノコは『生まれている』。
「……これだから、メガリス絡みの事件は困るぜ」
 嘆息をつきながら独り言のように呟く魎夜。
 迫りくるセミキノコたちを再び魎夜の炎の刃が焼き斬っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルスラ・ロザーノ
なるほどメガリスゴーストか~、確かにアレに似とるかもしれんね
ま、ホンマのところは良ぉ分からんけど、ボクらが来たことでこんだけ抵抗するんなら、大体そっち系って解釈してええやろ

敵の数がえらい多いし、支援をメインに立ち回ろか
高速機動でガトリング弾を避けつつ、隙を見せた奴に蹴撃波を叩き込むよ
引き寄せた奴を銃弾からの盾に使ったり、逆にボクの方から瞬間的に距離詰めて不意討ちの蹴り入れたり
戦場全体を自在に走り回るだけでなく、更に位置関係の攪乱をしてくで!
この隙にみんなも攻撃してくれたらええわ

ボクはセミ、別に嫌いでもないしな
蹴っ飛ばすのも全然問題あらへんし
むしろ、なんか夏! って感じで元気出てけーへんか?




 先の特殊空間が『近づけさせない』ものならば、この特殊空間は『戦う』ためのものなのだろう。あるいは十全に力を振るいながら、世界結界の影響下にある世界に潜み続けるためのものかもしれない。
 メガリス『生玉』によって『セミキノコ』たちが大量に生み出される光景を目の当たりにしつつ、ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は『ふむ』と吐息ひとつ。
「なるほどメガリスゴーストか~、確かにアレに似とるかもしれんね」
 言われてみれば記憶の端っこにひっかかっているメガリスゴーストの『生態』に似ているような気もする。
「ま、ホンマのところは良ぉ分からんけど」
 そう、本当のところはよくわからない。今の時代はウルスラたちが駆け抜けてきたあの戦いの時代ではない。世界結界はあくまで『再構成オブリビオン化』しているだけで、ウルスラたちが自然のままに壊れていく様子を見守っていた世界結界とは違うのだから。
 ただ。
「ボクらが来たことでこんだけ抵抗するんなら、大体そっち系って解釈してええやろ」
 それだけは間違いない。
 ウルスラは自身に迫ってくるセミキノコたちの群れを前に、ストレッチしながら戦いに備える。


 何度か仲間の猟兵たちがセミキノコたちを一掃しているのだが、それでもなお生玉はセミキノコたちを呼び出し続けている。まだ、あの勾玉の中に力を溜め込んでいるのだ。
 その証拠に一度に生み出される数は徐々に増えている。それは逆に猟兵たちを『脅威』としてみなしているとも言える。
「敵の数がえらい多いし、支援をメインに立ち回ろか」
 真正面から戦うだけが脳じゃない。
 地を蹴って駆け出すウルスラ。
『!!』
 ウルスラの動きに反応したセミキノコたちが一斉に抗体化を始める。セミの幼虫の殻を脱ぎ、『セミ人間』形態に変身したセミキノコが手にしているガトリングガンで弾幕をばらまく。
「っと!」
 しかし、威力は上がっても理性を失うその攻撃は単調だ。エアライダーの十八番――ウルスラの高速にして複雑な機動を捉えられるはずもなく、ウルスラの駆けた『後』を弾丸が撃ち抜いていくのみ。
「隙あり! やよっ」
 セミ人間たちの攻撃と意識を置き去りにしつつ、空中へ跳びあがったウルスラはその隙へと蹴りを放つ。空中で弧を描いた蹴りの軌道がそのまま蹴撃波となって群れに直撃する。

 直後。

 セミ人間たちの立っている場所が『移動する』――否、ウルスラに引き寄せられたのだ。ユーベルコード【セロ・ディスタンシア】は強制的に、彼我の相対距離を奪う。それによってウルスラを狙う弾幕への盾とされたセミ人間たちが群れの仲間の弾丸で消滅していく。
 その間に着地したウルスラは今度は一気に真っ直ぐ距離を詰める。駆けだすと同時に手から放つのは『meteoro negro』――丈夫な鋼糸付きの黒塗りナイフ群。
 セミ人間たちの表面に突き刺さったナイフを追撃。蹴りで深く叩き込んで仕留めた後に、クレセントファングの軌道で蹴りを放つ。軌道上にあるのはもちろん『meteoro negro』。投げるだけがナイフではない。
「変幻自在ってやつやね」
 強烈な蹴りで射出されたナイフ群が新たに抗体化しようとしていたセミキノコたちをその前に屠っていく。
 同時に【セロ・ディスタンシア】を放てば、ナイフから逃れたセミキノコたちを引き寄せる。
「近寄るんでなく、引き寄せるって方法での接近もあるんやで?」
 そう言って零距離となったセミキノコたちをボレーシュート。まとめてなぎ払って倒していく。
「ボクはセミ、別に嫌いでもないしな。蹴っ飛ばすのも全然問題あらへんし」
 蹴り終えて再び両足で大地を掴んだウルスラがにかっと笑う。
「むしろ、なんか夏! って感じで元気出てけーへんか?」
 ウルスラに笑いかけられたセミキノコたちは返事の代わりにガトリングガンを放ってくる。
 その弾幕を回避しつつ、戦場全体を縦横無尽に駆け回るウルスラの笑顔に、仲間たちが微苦笑していたのはさておいて。
「敵さんの位置関係の攪乱をしてくで! この隙にみんなも攻撃してくれたらええわ」
 ウルスラの支援によって、大量に生み出されているはずのセミキノコたちは猟兵たちが相対するに適度な群れへと分断されていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天宮・紫苑
アドリブ・連携:可

そういえば、メガリスゴーストなんていうものもありましたね。
製作者が強い思いをもって作った似た形の物……条件は満たしている、のでしょうか?
「まぁ、何であれ……早急に無力化してしまいましょう」

最初はゾンビの集団で、次が冬虫夏草の集団ですか。
生命力の無さ気な集団ばかりですね。
「手早く終わらせて帰りましょう」
「明日に備えないといけませんからね」

戦闘はまずUCを使って、範囲内の相手の生命力を奪います。
そのまま生命力を奪い切れるならそれで良し、
駄目なら適当に手近な奴から切り捨てていきます。
多少のダメージは無視して倒すことを優先します。
「その生命力、私が頂くといたしましょう」




 元エアライダーの猟兵が戦場を駆けまわり、敵――『セミキノコ』の群れを分断していく。それでも元々生み出されている数が多すぎる……というか、壊れた蛇口のように『生玉』はセミキノコたちを生み出し続けている。
 その様子と戦場を見据えつつ、天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)はため息のように言葉をこぼす。
「そういえば、メガリスゴーストなんていうものもありましたね」
 あんな傍迷惑なゴーストは忘れていた方が幸せだったかもしれない。だいたいろくな目に合わなかったし。だが目の前のソレはなんとなくメガリスゴーストに似ている、らしい。
「製作者が強い思いをもって作った似た形の物……条件は満たしている、のでしょうか?」
 満たしている……のかもしれない? 正直なところ、厳密なことはわからない。何故かといえばグリモアの予知をもたらしたグリモア猟兵はメガリスゴーストを見たことが無いし、そもそも言及もしていなかった。
 目の前の現象を強いて言うなら、という状況が今一番しっくりくる説明かもしれない。
「まぁ、何であれ……早急に無力化してしまいましょう」
 既に抜き放っている身の丈ほどもある長大な大太刀『闇纏』。魔剣士が使うことを前提としたという日本刀は名前もその在り方も見る者が見れば納得するだろう。回転動力炉が詠唱銀を得て回り始める。その力が刀身に伝わっていく。
「最初はゾンビの集団で、次が冬虫夏草の集団ですか。生命力の無さ気な集団ばかりですね」
 メガリスは生玉という名前で、生命力をもたらす存在であるのに。
 皮肉たっぷりに告げた紫苑の言葉が気に入らなかったのか、セミキノコたちが背中のキノコから大量の毒胞子を放つ。威力と範囲が拡大されているソレを紫苑は斬撃波の一閃で受け流す。
「手早く終わらせて帰りましょう」
 両手で闇纏の柄を握り込んで切っ先は体の後ろ。刀身を斜め下に下げながら脇に構えた紫苑が告げる。
「明日に備えないといけませんからね」
 直後、紫苑の体が射出されるように地を駆けた。


 高速で接近してくる紫苑に対してセミキノコたちも迎撃の態勢。再び毒胞子を放とうとしているその仕草に紫苑は小さく息を飲んでから……呟く。
『闇よ……』
 紫苑の言葉に応じるかのように彼女の眼前に広がっていく闇のオーラ。【黒影の領域】がセミキノコたちを飲み込み、その生命力を吸い取っていく。
(生命力を奪い切れるならそれで良し……)
 闇のオーラがセミキノコたちを飲み込んだ経過を見据えて紫苑が一瞬視線を巡らせる。込められた生命力の差だろうか。大部分はそのまま闇のオーラと共に霧散していくセミキノコだが、まだ形を保ってなお毒胞子をまき散らしている。
「……っ」
 近距離でまき散らされた胞子の全てをさすがに回避しきれない。胞子が触れた頬と肩が毒によって焼かれていく。わずかに顔をしかめる紫苑。だが足を止めるには……不十分に過ぎる。
 痛みを無視して踏み込む紫苑。横薙ぎの態勢、体をねじるように構えた紫苑が告げる。
「その生命力、私が頂くといたしましょう」
 受けた痛みの代わりと言わんばかりに振るわれた一閃がどうにか残っていたセミキノコの形を真っ二つに切断。闇纏の刀身がこの世からセミキノコの存在を吸い取っていく。
「まだ終わりではありませんよ」
 再び【黒影の領域】を展開する紫苑。
 いかに生玉がセミキノコを生み出そうとも。それを上回る勢いで生命力を奪っていけばいい。
 闇のオーラがセミキノコの群れを飲み込み、紫苑がその闇ごとセミキノコを斬り裂いていく。
 紫苑の眼前のセミキノコたちは成す術もなく、闇に飲み込まれていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穢宮・風月
SPD
【銀澱】で参加

すみません、出遅れましたっ。
「妹弟子の実力、見極めてあげましょう」なんて偉そうな事を言っておきながら、
特殊空間から締め出されてしまうなんて…

と、慌てた様子で合流

…おや、また特殊空間のようですね。
まあ、これで収蔵品を壊す心配をしなくても、思い切り戦うことが出来そうです。
ってひっ…何ですあれ?冬虫夏草の大きいやつ?わー…動いていますね…

忍小太刀を振るい、れんじゅさんがUCを発動するまでの時間稼ぎを引き受ける

ここぞの所で神酒「笑ひ蛇神」を周囲にぶちまけ、UC同時発動

神酒を以て此処を神籬とす……関八州の水蛇神様よ、おいでませいっ!

【技能:リミッター解除、竜脈使い、見切り、受け流し】


護灯・れんじゅ
【銀澱】で参加

良かった、合流出来たのです…!一時はどうなる事かと…
さー、次の敵は…?み、みんみんキノコなのです?…ひ、人型に変身っ…うえー。

うんざりした顔で鈍器のような詠唱大筆を振り回しながら、しづさんと一緒に戦う

…て、敵が多くってキリが無いのですヨ…一網打尽に適したワザはあるんですけど、
発動に時間が掛かるっていう欠点があって…えっ、しづさんが敵を引き付けてくれるのです?
しゅ、しゅみません!それでは行きます!にゅおおおお!!

ユーベルコードを発動するための戦文字「補陀落渡海」を、
早業を駆使しながら大急ぎで空中に書き上げ、ばばんっとしづさんとの併せUCを発動させる

せーのっ、南方浄土に辿り着けっ!!




 特殊空間を抜けた先はまた特殊空間でした。
 これがグリモアの予知によらない事件なら、猟兵である護灯・れんじゅ(熱筆入魂ゴーフォーリット!・f37965)にはのんびりまったり案件であったかもしれない。まぁその場合、メガリスが関係してこないのでメガリス・アクティブたる彼女が参加していたかどうかは微妙だが。だが、目の前にメガリス『生玉』がある以上、彼女とて見過ごすわけにはいかない。それが危機的状況でも、だ。
 しかし、そんな中でも喜ばしいことがある。
「すみません、出遅れましたっ」
 声に振り向いた先には姉弟子がいたからだ。
「しづさん! 良かった、合流出来たのです……! 一時はどうなる事かと……」
「『妹弟子の実力、見極めてあげましょう』なんて偉そうな事を言っておきながら、特殊空間から締め出されてしまうなんて……不覚っ」
 慌てた様子の穢宮・風月(禍祓いの巫女忍・f36880)を視認して、しかし無事に合流できたことでれんじゅの顔に笑みが浮かぶ。どうやられんじゅに同行していたようなのだが、先の特殊空間に入った際に分断されてしまったらしい。

 だが合流できたなら百人力。

 れんじゅと風月は半身になりながら背中合わせに構えを取る。それぞれ『詠唱大筆』と『忍小太刀』を手にしながら視線は周囲をくまなく見据え。
「……また特殊空間のようですね」
「さー、次の敵は……?」
 油断なく、呼吸を合わせながらじりじりと間合いを詰める風月とれんじゅ。その前に、生玉が呼び出したオブリビオン化ゴーストが地面から滲み出してくるように出現する。それは生玉自身が溜め込んだ死を具現化していく光景。
「ってひっ……何ですあれ?」
「み、みんみんキノコなのです?」
「冬虫夏草の大きいやつ? わー……動いていますね……」
 『特殊空間だし、博物館の収蔵品を壊す心配をしなくても、思い切り戦うことが出来そうです』とか気楽に思っていた風月さん、思わず短い悲鳴をあげるの図。対してれんじゅのほうはうんざりしたような顔になっている。虫耐性の差かもしれない。
 そんな生理的な感情に二人が一瞬というか数瞬、身を強張らせた後。
 セミキノコたちが変態する。否、進化あるいは抗体化。セミの幼虫の殻を脱ぎ、『セミ人間』形態へと変じたセミ人間たちが手にしたガトリングガンを掃射してくる。
「……っ!」
「うわぁっ、なのです?!」
 咄嗟にお互いの背中を起点に、弾けるように飛び退く風月とれんじゅ。その間をガトリングガンの弾丸が通り過ぎていく。
「……ひ、人型に変身っ……うえー」
 心底げんなりした表情のれんじゅだが、戦闘態勢は解いていない。着地後、一瞬で間合いを詰めたれんじゅが詠唱大筆をぶん回す。鈍器のような大きな筆がセミ人間たちをなぎ払っていく。
 ほぼ同時に風月もまたセミ人間の懐に踏み込んで忍小太刀を一閃。腹をばっさりと切断して屠る。その場にとどまることなく、次のセミ人間へ。忍小太刀が風月の移動とともにセミ人間を斬り裂いていく。
「……て、敵が多くってキリが無いのですヨ……」
 ガトリングガンを回避しながらセミ人間をなぎ倒すれんじゅだが、この数の多さ……というか後から後から湧いてくるセミキノコの群れに押し切られそうな勢い。
「確かに……っ。これはキツイ」
「一網打尽に適したワザはあるんですけど」
「えっ、あるんですか?」
「発動に時間が掛かるっていう欠点があって……」
「ならばその役目、引き受けましょう」
「えっ、しづさんが敵を引き付けてくれるのです?」
 どうして最初に提案しなかったのか、という勢いでさくっと連携が決まっていく。もちろん両者とも動きながらだ。阿吽の呼吸……というよりは姉妹弟子だからという方がいいかもしれない。
 立ち位置が変わる。
 風月が前に出て、れんじゅが後方へ。それに伴ってセミ人間たちの標的が風月に変わるのを不安そうな顔で見ながら。
「しゅ、しゅみません! それでは行きます! にゅおおおお!!」
 しかしれんじゅは姉弟子の申し出に報いるべく、一網打尽の態勢へと移行する。
 大筆が虚空に描くのは戦文字。書かれる文字は『補陀落渡海』と決めてある。ユーベルコード【戦文字「補陀落渡海」】――敵対者だけを呑み込み、押し流す大海嘯を召喚する術だが、戦文字の総画数が多い。それだけに強いのだが書き上げるのに時間がかかる。
 風月が引き受けてくれると言っても限界がある。
(早く……っ)
 焦らず急ぐ。早業を駆使してれんじゅが大急ぎで空中に文字を描いていく。

 対して風月は追い込まれてながらも耐えていた。
(もう少し……っ)
 あと少しでこの事態は打開される。だからここが正念場だ。
 縦横無尽に忍小太刀を振るいながら、もう片方の手で着実に印を結んでいく。外すわけにはいかない……!
 風月がさらに踏み込む。その動きに対してセミ人間たちの意識が一斉に風月に向く。
(……今!)
 セミ人間の攻撃をかかんで回避しながら、体を回転させて。神酒「笑ひ蛇神」を地面にぶちまける。態勢を整えると同時に空いている手を地面について、風月が祝詞を紡ぐ。

「神酒を以て此処を神籬とす……関八州の水蛇神様方、おいでませいっ!」

 直後、地面から召喚されるのは12体の水蛇神様の御魂。それがセミ人間たちを囲うように出現する。開いた顎からゆらりと見えるのはその力、水流のブレス。
「……はっ!!」
 風月の発声とともに水蛇神様が水流のブレスを解き放つ。
 同時に、れんじゅの戦文字がばばんっと完成する。
「せーのっ、南方浄土に辿り着けっ!!」
 風月の真後ろから地面を走る大海嘯。
 逃げ場のない水の暴力がセミキノコとセミ人間の群れを完全無欠に飲み込んでいってそのまま彼方へと屠る。
「「……ふぅ」」
 ほぼ同時に。安堵のため息をついたれんじゅと風月。
 そして顔を見合わせて。二人は笑い合うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『モラ詰まり・夏』

POW   :    アイスクリームでおびき寄せて詰まりを解消

SPD   :    冷たいジュースでおびき寄せて詰まりを解消

WIZ   :    涼しい場所に誘って詰まりを解消

👑5
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●脱したメガリスの危機メガリスクライシス

 ――ぱきん、と。

 乾いた音が響いた。音がした方に視線を遣ればそこに在ったのは『生玉』……否、メガリスゴーストか。それがひび割れた、というか真っ二つに割れた音であった。
 力を使い果たしたメガリスゴーストは力を宿した物体を残して消滅する。そして残された物体は壊れるのが通常で、その例に漏れず生玉も壊れたようだ。
 だが通常と違うこともある。
 真っ二つに割れたその中から、神々しい輝きを持つ寸分違わない『生玉』が現れたのだ。それを目撃した猟兵たちは察する。

 ――これは紛れもなくメガリスだ、と。

 どのような経緯でメガリス『生玉』が復活したかはとりあえず横に置いておいて。
 グリモアの予知が示したようにメガリスは復活した。ならばこれを回収するのが任務なのだが、これを一度、西野・茜の手に委ねないといけない。
 メガリスが本来の力を取り戻した以上、運命の糸パスが茜に繋がっている。これを一度切らないといけない。発生する問題はグリモア猟兵から伝えられたとおりだ。
 その作戦は……明日になる。

●いつも見ていた優しい夢スウィートドリーム
 私の祖母は看護師だった。
 いつも命の最前線にいて、命の側にいて、生きることを助けていた祖母を私は尊敬していた。うん、決して綺麗事だけでは済まない世界だっていうことは今ならわかる。でも小さな頃の私にはどうしようもなく祖母は素敵な人で、私もそういう人になりたいって思って生きてきた。
 勾玉が好きになったのは偶然、と思っていたけどもしかしたらそうじゃないのかもしれない。最初に好きになったのはその形。それから『足りない部分を補う』という意味と込められた様々な願い。
 医療とはまた違った形で命を助けてくれてるんだって思ってた。そんな存在に心惹かれていた。

 ――ああ、私はいつも、命の輝きに恋焦がれている。

 だから。
 私の手元に『生玉』が現れたのは運命だと思った。私なら使いこなせると思っている。

 ――迎えに来たよ。一緒に帰ろう?

●メガリスのお披露目、そして……
 猟兵たちが奮闘した翌日。
 西野・茜は博物館に預けてあった自分の勾玉生玉を受け取りに、研究室に訪れる。
(あれ?)
 何か、昨日までと違う。
 内包する生命の輝きは昨日よりも眩く、というかこんなに輝いていたっけ? と思うくらい力強い。
 だが。手に取った感触が昨日までと全然違う。外見は寸分違わず一緒だというのに。
(これは……私の生玉ではないの?)
 誰かがすり替えた? それにしては見た目や作り方のクセが私のものと一緒すぎる。微かに、しかし確実に感じた違和感を抱きながら、茜は生玉を持ってお披露目会の会場へと足を運んだ。

 生玉のお披露目会場は六角形の部屋。その中は等間隔に分割したような形に備えられた花壇があり、その間を走る通路は全て真ん中で集約して。その真ん中に生玉が備えられていた。

 人が増えてきた。生玉をひと目見たい。あるいはあわよくば触れて恩恵を得たい。そんな人々が溢れかえる会場……に。
「もきゅ」
「きゅきゅー!」
「きゅぴ?」
 まっしろなもこもこが現れた。というかどこからともなく際限なく部屋の中に押し寄せてくる。
「なっ……なにこれ!?」
 全然怖くはない。でもこのまま放置しておくと大変なことになりそうな予感。
 そんな予感に駆られて生玉に手を伸ばす茜だが、一歩遅かった。白いもこもこの波にさらわれる茜。
「誰か! 誰か私の生玉を!!」
 そう叫びながら押し流される茜と一般人たち。
 もこもこ――モーラットがいかに無害とはいえ、一般人では対応のしようもない。この状況で茜の希望を叶えられるのは猟兵以外にいない。
 その立場を利用して……生玉を回収しよう。ただし、茜の手元にも『生玉にせもの』が残るようにして。

※シナリオ補足※
 生玉回収作戦最終段階です。
 持ち帰り希望者は『持ち帰り希望』とご記入ください。

 現在部屋の中はモーラットで埋まっています。っていうか順番に生玉の元へ訪れて力をもらっては去っていくを繰り返しているのでモーラットの波が絶え間なく押し寄せています。一般人と茜はその流れで外に追い出されそう=生玉と距離が離されています。
 モーラットの波に抵抗できるのは猟兵だけ、という状況です。

 茜から生玉を回収するには以下のいずれかが必要です。
 (1)譲渡してもらう
 (2)諦めてもらう
 (3)すり替える

 (1)は真正面から交渉です。ただし、茜自身も生玉を持つことに運命を感じているのでその代替になる何かが無いと厳しいでしょう
 (2)交渉パターンその2です。モーラットの波を利用しましょう。モーラットは一般人にも視認できるくらい存在感が増しています(生玉のせい) モーラットと生玉を繋ぎ合わせて『手放すのは運命なのだ』という方向に持っていくパターンです。
 (3)そっくりの生玉を用意するパターンです。実は壊れたメガリスゴーストの抜け殻がまだ残っています(夜の内に回収しています)これを上手く加工すれば、見た目は生玉ができます。

 茜自身は生玉に運命を感じていますが、メガリス・アクティブとして完全に覚醒していない状態です。『まだ』メガリスを所有するには早い、という感じ。
 物体だけに注目すると、『茜が作った生玉』は壊れた方の生玉です。手触りなどが違うのはそのせい。
 茜は生玉の『超常能力』と『芸術面』、どちらにも魅力を感じていますが最初にコメントした通り、『芸術面』>『超常能力』という重点の置き方です。

 ちなみにメガリス復活の種明かしは、1章の特殊空間にあります。あそこで皆さんの『力』を吸いましたね? その結果、生命の埒外にある猟兵の力とセミなどの虫から得た『死にかけの生命力』のふたつがメガリスゴーストの中にありました。ここで『死にかけの生命力』を使い果たしたことでメガリスゴーストは消滅。ただ、残っていた皆さんの『力』と修復中のメガリスのエネルギーが結びついて、常識外の復活を果たしました。
 というわけで今の生玉の輝きの一部は皆さんの力です。ということはフェイクメガリスくらいなら作れるんじゃないでしょうか。

※持ち帰り部分は最後に記述します。この部分だけリプレイに他の方のお名前が出ます事、ご了承ください※
護灯・れんじゅ
WIZ
【銀澱】

しづさんにくっついてすり替え作戦を決行
夜なべして作業するしづさんを訳知り顔でふんふん頷きながら見てる

へー、勾玉ってそうやって直すのですかー……

現場到着後、会場の様子をちょっと覗いて、

うへー、モラちゃんがぎちもこなのですヨ…では、手筈通りに!

ダッシュ、情報検索、早業、軽業を使って別行動
広めの別室に忍び込み、冷房で18℃くらいにぴぴっと設定、冷えてきたなーって頃にドアを開けて会場に戻る

はいはいみなさーん!詰まりすぎてて暑いですねー、こっちの部屋は冷房が効いていて涼しいのですよーっ!

自分でもっきゅ♪もっきゅ♬鳴きながら、モラを誘導する
何度か行き来して、道案内であぶれた子のフォローもする


穢宮・風月
WIZ
【銀澱】
持ち帰り希望
状況から、すり替えが最善と判断

実家が神職で勾玉の取り扱いは初めてではないので、ここはお任せを…

割れた抜け殻を、ろう石の粉末で作った石粉粘土+耐水ペーパーで、
破損前と遜色のない状態まで修復し、会場に急行

…はい、モラ詰まってますね!もっこもこであっついですね!

れんじゅさんに広めの別室を冷房でキンキンにしてもらっている間、
自分はモラの海を掻き分けつつ展示台に
すり替え後は生玉をチラつかせつつ、モラを別室に誘導

『まだ』メガリスを所有するには早いとのことですので、生玉は自旅団の金庫室に厳重保管
いつか茜さんが猟兵の力に目覚めることがあったなら、その時には生玉をお返しすることにします


キアラ・ドルチェ
いきなり白魔女姿で現れ、「皆の者! 静まりなさい! これは天命なのです! 偉大なる白き聖獣が、世界平和のために彼らの秘宝を取り戻しに来たのです…そう、猛羅斗(モーラット)たちがっ」
「そのケダモノ、白き衣をまといて六角の花園に降り立つべし。失われし生玉との運命の糸を結び、ついに人々を清浄の地…タマタマランドに導かん」

「私は預言者としてここに参りました…さあ、これがその証拠です!」
ヘリオンサインで『猛羅斗暴走、遂に人々をタマタマランドへと導かんとす』との文字を天井に映し出します

さあ皆さん道をおあけなさい! そして最敬礼で聖獣…と私を見送るのですっ!(生玉奪いつつ、モーラットを何匹抱え逃亡モード!



●猟兵の朝は早い(?)
 『生玉』の負の部分が生み出したセミキノコたちを撃破した猟兵たちはこの場から撤退を開始する。何故かといえば決戦の場は明日だからだ。
 それを事前にグリモア猟兵から聞いていた護灯・れんじゅ(熱筆入魂ゴーフォーリット!・f37965)と穢宮・風月(禍祓いの巫女忍・f36880)もまた博物館から撤退するのだが……順番としては最後だった。他の猟兵たちから遅れて撤退したのは理由がある。
 割れた『生玉』のガワを回収していたからだ。

「状況から、すり替えが最善と判断します」
 既に明日のことに思考が移っているのだろう。風月がれんじゅにそう告げる。
「なら、すり替え作戦を決行ですね!」
 姉弟子の言葉にふんふんこくこく頷きを返すれんじゅ。

 そしてそのまま今宵の宿へ移動した二人は早速明日の準備を行う。ちなみに宿は能力者御用達なため、中で何をしていてもツッコまれることはない。すごいよね。
 和室な部屋の中で今日の戦利品(?)を広げる風月。
「勾玉の取り扱いは初めてではないので、ここはお任せを……」
 実家が神職――まつろはぬ神を祀る巫女一族の末裔にして、甲賀流忍体術使いの忍び巫女な風月にとっては、勾玉もまた馴染みのアイテムだ。
「まずは……」
 割れた抜け殻をベースに、ろう石の粉末で作った石粉粘土と耐水ペーパーで補強していく風月。
「へー、勾玉ってそうやって直すのですかー……」
「直すというか、作るというか。もっと簡易的な材料なら100均とかでも売ってますよ?」
「なのですか!?」
 生玉を破損前と遜色のない状態にまで修復していく風月の手元を覗き込みながら訳知り顔でふんふん頷いているれんじゅ。夜なべして作業する風月にはありがたい存在であっただろう。
 夜が明ける前には準備が整った。
「それでは会場に急行しましょう」
 短い仮眠を取った後、身支度を整えて風月が告げる。
「しづさんにくっついてすり替え作戦を決行なのです!」
 こっちも身支度から準備万端のれんじゅ。

 そして件の会場へ二人は突入したのである。

●んで、何かいた
 そう、いたのである。
「皆の者! 静まりなさい! これは天命なのです!」
 とか叫んでいる白い人物がいた。いや、肌が白いとか真っ白な不審人物とかではなく、白いローブに白いとんがり帽子の魔女であった。
 昨日の戦いに参加した猟兵なら見覚えがあるであろう、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)さんである。
「偉大なる白き聖獣が、世界平和のために彼らの秘宝を取り戻しに来たのです……そう、猛羅斗モーラットたちがっ」
「「……」」
 正直何言ってるの? って感じであった。風月とれんじゅが無言で顔を見合わせたのも致し方ないだろう。
 だがこれはキアラの作戦だ。

 キアラとしてはモーラットの氾濫(?)を利用して西野・茜から生玉を引き離そうとしていたのだ。すなわち、これは『天命』である、と。先に告げたようにこれを事実として見せつけようとする作戦。

「そのケダモノ、白き衣をまといて六角の花園に降り立つべし。失われし勾玉との運命の糸を結び、ついに人々を清浄の地……タマタマランドに導かん」

 白いモーラットの波の上に立つ白魔女の姿はなんていうか某国民的ジ〇リ映画のような光景になっているが、落ち着いて観察して欲しい。足元のモーラットたちはキアラの方を一切見てねぇ。
「せ、清浄の地……タマタマランド……?」
 だが神々しい雰囲気に射抜かれた茜が呆然とした表情で呟く。
 女の子になんて言葉を言わせているんですかキアラさん。そもそもなんでそんなネーミングなんだよダメでしょ女の子として。生玉の玉(この場合は『美しくて貴いとかすぐれて美しいとかいう意味)なんでしょうけども!
 だが周囲にそんな冷静なツッコミができる者がいない。

 一方その頃……に至るまでの風月とれんじゅである。
「……はい、モラ詰まってますね! もっこもこであっついですね!」
 なんか風月さんは目が死んでたし。
「うへー、モラちゃんがぎちもこなのですヨ……」
 れんじゅさんもぐったりしていたし。
 いや、だが好機だ。
 生玉の周りはモーラットが全力でもきゅもきゅしている。そして四方八方から押し寄せている関係で詰まっている。モラは詰まる、ここテストに出ますよ?

「では、手筈通りに!」
 気を取り直したれんじゅがしゅばっとこの場を離れる。
「はい、お願いします!」
 部屋を出て廊下へ飛び出すれんじゅにそう告げて。風月は改めて部屋の中を確認する。周囲の注目は色々と語っているキアラに集中している。今なら『忍び込む』のは風月にとっては容易い。
(……っ)
 小さくひと息整えて。風月の体が沈み込む。と同時にモーラットの波に飛び込む風月。目的地は生玉が鎮座している台座。

 部屋を飛び出したれんじゅはダッシュで階段を駆け上がる。ここは塔状の外観をしている。六角形の部屋の外には外周を回るように廊下があるだけ。だがここは『人が訪れること』を前提にしている。
(上に、お部屋があるはずなのです!)
 1階と同じように展示するためのスペースなのか、あるいは来賓室なのかはわからないが。それともうひとつ。ここが『展覧会を行うこともある』施設であることは調べ済。であるなら、あるはずだ――作品を守るための空調ってものが。
 2階に飛び込むれんじゅ。2階は1階の六角形の部屋と違い、4つの部屋に分かれていていた。一番手近な部屋のドアノブに手をかけて。
「鍵がかかっているのです!?」
 そりゃそうだって感じだが、そこは想定済。こんなこともあろうかと風月から借りておいた忍び道具がある。素早くかちゃかちゃっと鍵を外して中に飛び込み、そして中の冷房を全力スイッチオン。18℃とかほほ下限ですね?
 そこまで仕込んだ後、素早く部屋を出てドアを閉める。その間に行うのは衝立を立てること。冷気を1階に流し込まないといけないので。その準備をしている間に上手く冷気が溜まったようだ。
「ごー! なのです!」
 ばんっ、とドアを開けてから冷気が漂うのを確認して。冷気が1階に下りていくよりも早く、れんじゅが再び六角形の部屋へ戻る。

「……!」
 風月の手が台座に届く。そのまま素早く生玉を『すり替える』。
(……)
 そのまましばらくモーラットの波に埋もれながら周囲に対して神経を尖らせる風月。
(……大丈夫)
 モーラットの波に潜り込んでいたせいか、どうも気付かれていない。いや、キアラの演説も効いていたかもしれない。なんか【ヘリオンサイン】で天井に文字書かれてるし。
 元居た位置に戻ろうとして……風月はれんじゅが戻ってきたことに気付く。
「……!」
 れんじゅが掲げたサムズアップに風月がこくり頷きを返して。
 懐に仕舞い込んでいた生玉をモーラットの波の中でチラ見せする。
「もきゅ!?」
「きゅぴ?!」
「静かに。ゆっくり、ついておいで」
 そう言って生玉に気付いた一部のモーラットたちを連れて風月はその場を離脱するのであった。

 一方、れんじゅは廊下から流れ込む冷気を利用して六角形の部屋の中でも外周に近い場所に居るモーラットたちへアプローチ。
「はいはいみなさーん! 詰まりすぎてて暑いですねー、こっちの部屋は冷房が効いていて涼しいのですよーっ!」
 詠唱大筆を扇風機のように振り回して冷風を送り込むと。
「もきゅ?」
 冷気に気付いたモーラットたちが振り向く。風月が生玉を交換していたことで部屋の中から放たれる生命力が弱まったのもプラスに働いたのだろう。れんじゅの案内に反応するモーラットが増えてきた。
「もっきゅ♪ もっきゅ♬」
 リズムを取るように自分でも鳴くれんじゅ。
「もっきゅ♪」
「もっきゅ♬」
 それに合わせてモーラットたちも移動していく。

●キアラ・オン・ステージ
「そのケダモノ、白き衣をまといて六角の花園に降り立つべし。失われし勾玉との運命の糸を結び、ついに人々を清浄の地……タマタマランドに導かん」
 それはキアラがモーラットの波の上(なんかの手段で浮いてます?)で告げた言葉である。その言葉を聞いた人々はわけのわからない展開に動きが止まっている。悲痛な声をあげていた茜でさえ、『え?』って顔をしている。なので女の子が口にしちゃいけないような言葉を口走ったわけですね。
 だがそれはこの場の注目がキアラに集中していることの証左でもある。
(……)
 ちらり、と視線を遣ると、どうも同じようなタイミングで突入してきた仲間たちがいるっぽい。しかも隠密行動のようだ。ならばここは。
(私が頑張るしかないですね!)
 これ絶対変な方向にスイッチ入ったよなー。
 ますます演技がかったキアラの仕草。ゆっくりと振った杖にモーラットが飛びついていく。
「もきゅ」
 アレですよ、猫がねこじゃらしに飛びつくような生理現象。しかしそれでも周囲には不思議を操る光景に見えただろう。
 満を持してキアラが告げる。
「私は預言者としてここに参りました……さあ、これがその証拠です!」
 杖を振り上げるキアラ。そして放たれる【ヘリオンサイン】。光り輝く文字が天井に描かれる。ユーベルコードになって攻撃できるようになっても、こういう使われ方をされるのが【ヘリオンサイン】の宿命なのか。
 さておき。文字は光り輝いて、その場に居る者たちの目に焼き付けられる。

 ――猛羅斗暴走、遂に人々をタマタマランドへと導かんとす

「『………………』」

 沈黙する一般人(茜含む)。
 あの、ですね? 『タマタマランド』って字面を視覚から叩き込まれる暴力考えてます??
 これで悪気が無いんだからたちが悪い。いや、無邪気すぎるのかキアラちゃん3歳。
 その文字に合わせて……ではないのだが、『タイミングよく』モーラットたちが移動を始めた。部屋の中央に行こうとしていたモーラットたちが、もっきゅもっきゅ言いながら部屋の外へと移動しようとし始めたのである。
「さあ皆さん道をおあけなさい! そして最敬礼で聖獣……と私を見送るのですっ!」
 ちらっと部屋の中央を見ると……どうやら『生玉』は確保済っぽい。ならばキアラがやることはただひとつ。
 しゅばっと近くにいたモーラットを何匹か脇に抱えて素早く外へと逃亡モード!
「「もきゅぅぅぅぅぅぅぅ!?」」
 おーい、聖獣が悲鳴上げてるぞー?

●そんなわけで
 各々の思惑がうまい具合にハマった。
 モーラットの波によるかく乱からキアラの陽動、そして風月の潜行とれんじゅの誘導がばっちりハマって、メガリス『生玉』は六角形の部屋から無事持ち出された。
 茜が気付いていないということは台座にあるものをまだ『生玉』だと思っているということだろう。すなわち、『認識のすり替え』は完了した。
 彼女の認識は『今、台座にある生玉の所有者』というわけだ。後はアレが偽物と気付かれないことを祈るばかり。

 博物館の敷地から離脱が完了した3人。
「「いえーい」」
 性格的に気が合いそうなれんじゅとキアラがハイタッチしている。なお、モーラットが数匹足元にいる。
 そんな光景を微笑ましく見ながら、風月は視線を茜がいるであろう方角に向ける。
(『まだ』メガリスを所有するには早いとのことですので)
 それはグリモア猟兵からもたらされた情報だ。彼女がメガリス・アクティブならば、きっと必ず。またこの『生玉』を手繰り寄せるはずだ。
「いつか茜さんが猟兵の力に目覚めることがあったなら、その時には生玉をお返しすることにします」
 風月は言葉にして誓い。その言葉を聞いていたれんじゅとキアラも頷きを返す。

 まだどこで保管するかは決まっていない。何故ならメガリス回収作戦はまだ終わってないから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
次から次へとモーラット!
いるところにはいるものですね。

ともかくモーラットの波に飲まれて運命を感じさせる、というのは簡単ではないですね。
ちょっとした演出が必要になりそうです。

まずはモーラットに飲まれた生玉を探します。
モラをかき分けて、つかんで投げて、モラ玉の中央に向かいます。
なんとか生玉を見つけることができたら、【念動力】で生玉を操作。
いかにも転がり出てきました風を装って、茜さんの前に出します。

そして、手に取る瞬間に、また【念動力】かモラで生玉を操作。手に取らせません。

これを2,3度繰り返せば、何となく石に嫌われてる?風に思わせられそうですかね。


ウルスラ・ロザーノ
うーん、代替品も偽物も作るなんてのはできんし、ボクはモラの騒動を制御する方向で動いてみよか
ってか一般人の救助は必要やろ
モラたちにむぎゅっと巻き込まれても、そう危険はあらへんと思うけど、流れに転ばされたり窒息とかは怖いしな

モラはぽんぽん掻き分けて、混乱してる人たちを救助してくで
なはは、でっかいボールのプールを進んでくみたいな感じやな
流れの中から助け出して、安全な場所にまで連れてくよ
いやー、モラの波とか最高やな♪

ついでに茜もその流れで、救助するフリをして生玉から離れてもらおか
茜の視線とか意識を生玉から切らせたら、その隙になんか小細工をする仲間もおるやろ
ほらほら、危ないから一旦落ち着いてな?



●モラ詰まり継続中
「もっきゅ!」
「きゅぴ?」
「もきゅーーー!!」
 白いもこもこが六角形の部屋の中を縦横無尽っていうか、ボールが跳ねるがごとく暴れ回っている。

「次から次へとモーラット! いるところにはいるものですね」

 入り口付近から冷静に状況把握をしているのは黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)さんである。なんだろう? こう、元気になっているっぽい。その辺はさすがメガリスかって感じなのだが、巻き込まれた一般人(西野・茜含む)はたまったものじゃない。
 悲鳴が響き渡る。
「ってか一般人の救助は必要やろ」
 摩那の隣で背伸びしつつ額に手を当てつつ部屋の中を眺めているウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)の結論。
 モーラットたちはふかもこで火花でも出さない限り、ぬいぐるみより安全ではある。あるが。
「モラたちにむぎゅっと巻き込まれても、そう危険はあらへんと思うけど、流れに転ばされたり窒息とかは怖いしな」
 そんな危険性は排除できない。
(ボクは代替品も偽物も作るなんてのはできんしな)
 ここは『モラの騒動を制御する方向』で動くのがよさそうだ。そう考えたウルスラは隣にいる摩那に視線を遣る。単純にどう動くかの確認である。
「ともかくモーラットの波に飲まれて運命を感じさせる、というのは簡単ではないですね。
 摩那は摩那でモーラットを利用してどうにか茜に『生玉』を諦めさせようという作戦らしい。
「ちょっとした演出が必要になりそうです」
 そう言って顔を見合わせる摩那とウルスラ。
 軽く作戦を合わせた後、二人はモーラットの波の中へ突入していった。


 引いては押し寄せる白い波。これがさざ波ならちょっと季節外れでも気持ちよかったかもしれないが、もふもふもこもこなモーラットである。手触りは気持ちいい。
「なはは、でっかいボールのプールを進んでくみたいな感じやな」
 楽しそうに笑いながらモーラットの海をかき分けて進むウルスラ。そうやって進んでいくとやっぱりモーラットに埋もれている人がいたりするわけで。まぁウルスラの予想通り、ケガはない。モーラットに囲まれて(モーラットにも他意はない)動けなくなっていただけのようだ。
「助けにきたで」
 近くにいたモーラットをぽんぽーんと上とか遠くに放り投げて(『もきゅー♪』とか言ってるので楽しそう)ウルスラが一般人の手を引く。
 かき分けてかき分けて。白いもこもこが思うように動いていく様は控えめに言っても楽しい。
「いやー、モラの波とか最高やな♪」
 こんなことならサーフボードとか持って来ればよかった。モーラットたちが運んでくれるので波乗り気分が確実に味わえたはずだ。
 そんな楽しそうな様子のウルスラに、助け出された一般人も事態が重くないことを察したようだ。重かった足取りは軽くなり、避難も徐々にスムーズになる。
「よし、もう安全やよ。ここで待っとってな」
 一般人を退避させたウルスラはもう一度モーラットの波へ突入していく。視線の先には先ほど生玉目掛けて、同じようにモーラットの波に飛び込んだ茜の姿がある。
(あれも助けやんといかんね)
 その前に摩那が仕込んでいるはずなのだが……。
 ちらりと振った視線の先ではバッチリ摩那が仕込んでいた。

(えーと……さっきまではこの辺に)
 六角形の部屋の中央。生玉が設置してあった台座。その上から生玉は姿を消していた。何故かっていうとモーラットの波に飲み込まれたからである。
(それにしても?)
 昨日、撤退時に感じた生玉の雰囲気とさっき見た台座の上にあった生玉の雰囲気がちょっと違った。もしかしたら先行した猟兵たちが既に『仕掛けた』後なのかもしれないが、茜が『ソレ』を求めている以上、前の前にある生玉が茜の生玉だ。
(まずはモーラットに飲まれた生玉を探さないと)
 勢い任せにモーラットの波をかき分けていく摩那。具体的には足を隙間に滑り込ませて、爪先で跳ね上げ、浮き上がったモーラットを掴んでキャッチ&リリース(放り投げる)。流れるような動きでモーラットを進路上から排除しつつ中央に向かう摩那。
 そしてこつん、と爪先が何かを捉える。
「あ、ありました」
 手を伸ばす……とモーラットが『遊びたい』って寄ってくる。ので、念動力で生玉を地面から跳ね上げる。
 傍目から見れば、生玉が自分でモーラットの波から飛び出したように見えるだろう。
(これを利用して……)
 摩那が軌道をコントロールする。自然な流れで飛び上がった生玉が茜の目の前に辿り着くように操作。
「あっ……!」
 嬉々とした茜の声。放物線を描いて落ちてくる生玉に茜が手を伸ばすが。
(ごめんなさい)
 そこへ摩那が再度念動力発動。横からモーラットがインターセプト(摩那の念動力操作)した。
「えーっ!?」
 慌ててモーラットを追いかけようとする茜。しかし足元には先ほどまでとは比べ物にならない高さのモーラット。これは確実に埋もれる。
「危ない!」
 モーラットの波に飛び込もうとする茜をウルスラが後ろから抱きかかえて制止。見た目、ウルスラが茜を助けた感じに見えるが。
(救助するフリをして生玉から離れてもらおか)
 という摩那との共同作戦である。
「はなして! 私の! 私の生玉が!」
「あかんって!!」
 茜が叫ぶがウルスラは離さない。作戦である。
 そんなことをしている茜の前に再び生玉が! 摩那の再インターセプト(別のモラに突撃させたよ)によって弾かれた生玉がまた目の前に落ちてきたのだ。
「今度こそ!」
 手を伸ばす茜。そして再び空中キャッチ(めっちゃ速い)するモーラット。
「そんなー……!」
 徐々に暴れ始める茜。
「ほらほら、危ないから一旦落ち着いてな?」
 そんな茜を宥めつつ、崩壊(雪崩?)しそうなモーラットの波から徐々に引き離していくウルスラ。
「……くっ」
 危ないのは確かだ。モーラットが押し寄せてくる事態に対して茜は渋々ウルスラの誘導に従う。その間に生玉はモーラットの波の中に消えていく。

(これで何となく石に嫌われてる? 風に思わせられそうですかね)
 摩那が茜の方を見る。完璧に諦めきれているかというと難しいところだが、今『手に取れなかった』ことは認めているようだ。このままモーラットが持ち去ったとなれば、ひとまずは諦めそうか。
「上手いこといった?」
 茜を退避させて側にきたウルスラがこそっと耳打ち。
「たぶん。仕込みとしてはオッケーかと」
 あともうひと押し。何かがいるかもだが、それは他の仲間たちもいる。そっちに任せるとしよう。

 そんなわけで摩那とウルスラの作戦は無事完了&成功したのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
持ち帰り希望
【心情】
後は仕上げだ
可能な事なら知らせずに済ませたかったが、こうなった以上は多少の無茶は仕方ねえな

【行動】
(2)
「演技」が得意なモーラットを召喚
モーラットに以下をやらせる
・押し寄せてくる野良モラの対応
・火花で危険を演出させる
「やりすぎない程度に、派手にやってくれよ」

茜にゴースト事件の解決を図る人間として接触を取る
そもそも猟兵よりもそれが本業だ
「この件について、君の勾玉に超常の力が宿ったのが原因なんだ」
「大変すまないが、それを回収させてもらいたい」

その上で、無事に渡してもらえるのなら、彼女の今後については応援する
「センスあるし、今後も勾玉作りやるなら応援するよ」




 メガリス『生玉』のお披露目会、というか、西野・茜が考えていたお披露目会はモーラットの波によって大混乱の最中にあった。
 中央の台座にあった生玉は鎮座していたその場所から投げ出されて視界の中には無く。いや、もしかしたら地面に落ちているかもしれないが、地面は文字通りモーラットが埋め尽くしている。
 そんな大混乱の中、茜は部屋の中に戻ろうとして何度も制止されている。
(まぁそうなるな)
 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)たち能力者ならば、モーラットが比較的無害(たまにびっくりして火花を飛ばすことはあるが、基本的にはぬいぐるみ)であることもわかるが、そうじゃない一般人――特に世界結界が復活した今の世では『モーラットすら未知の存在』だろう。
 ならばその波に飛び込もうとする茜を制止する周りも当然の行動だ。猟兵も混じっている気もするけど。
 となればやることは。
(後は仕上げだ)
 魎夜がこっそり『イグニッションカード』を手に取る。
「頼んだぜ」
 と呟くように告げれば、イグニッションカードの中からモーラットが9体現れる。魎夜の【モラ使い】によって呼び出されたモーラットは演技上手な個体ばかり。
(可能な事なら知らせずに済ませたかったが、こうなった以上は多少の無茶は仕方ねえな)
 この混乱を利用するしかあるまい。
 魎夜がモーラットに指示したことは2つ。
 『押し寄せてくる野良モラの対応』と『火花で危険を演出させる』だ。
「やりすぎない程度に、派手にやってくれよ」
「『もきゅ!』」
 そして魎夜は自身のモーラットを野良モーラットの波へと放り込む。

「ひっ……!?」
 誰かの悲鳴が上がる。何故かといえば、今までもこもことしていたモーラットの波からぱちっと火花が散ったからだ。ここまで色々と情報を見せつけられていた一般人たちはその火花にどうしても警戒してしまう。
 その様子を見て、先ほどまでよりも強く茜を押し留める周りの人々。
「でも……まだあの中にあるかもしれないのに……」
 茜はまだ諦めきれない。モーラットの足元に生玉があるかもしれないからだ。

 そこへ……魎夜が接触する。それはゴースト事件の解決を図る人間として。
(そもそも猟兵よりもそれが本業だ)
 だから魎夜は臆することなく、茜の前に立つ。
「あの……?」
 不意に目の前に立った……というか進路を塞いだ魎夜を茜は不思議そうに見上げる。
「この件について、君の勾玉に超常の力が宿ったのが原因なんだ」
「……!!」
 前振り無し。直球で魎夜は茜に告げる。この事態の裏側にある事実を。
「大変すまないが、それを回収させてもらいたい」
 それは能力者として当然の行為であっただろう。一般人を超常の世界から遠ざけるのは能力者の基本スタンスだから。
 しかし。
「それが事実として……何故持っていく必要があるんです? あの子が不思議な力を持っていることは悪いことなんですか?」
「……それは」
「あの力は私が使いこなしてみせます。だから問題ありません。どいてください」
「……!」
 魎夜を突き飛ばすようにしてモーラットの波に飛び込む茜。
 残念ながら短い言葉では……茜の感じている『生玉を持つことへの強い想い運命の糸』を断ち切ることは難しいようだ。いまだ覚醒していないとはいえ、茜はメガリス・アクティブ。生玉を所有する運命を持つのであれば、それを断ち切るにはそれ相応の作戦と方法が要る。危険なだけで引き下がるような情熱ならとっくに避難しているだろうから。
 この場の交渉はうまくいかなかった。ならば仕方ない。後は野良モーラットが茜を傷つけないようにするだけだ。
 魎夜は自分のモーラットたちに指示を出し、茜に野良モーラットが押し寄せないようにするのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
生玉は回収できたら銀誓館へ。

説得ですが、真正面から交渉しましょうか。
「さて、こういうことは真正面から行くとしましょう」

モーラットの前に説得します。
説得方法は、ざっくりとですが全て説明します。
目の前のモーラットから、能力者やゴースト、世界結界、メガリス・アクティブを含むメガリス関係について説明します。
異能の説明で必要ならUCで姿を隠してみせたりもします。
次に、メガリスの生玉について説明し、このままだと茜さんの寿命が大きく失われることを伝えます。
壊れた生玉を渡して、メガリスの生玉を手放すようにお願いします。
最後、茜さんがメガリス・アクティブなら、いずれメガリスの生玉に関わる可能性も教えます。
「どうか、メガリス『生玉』の所有権を手放してはいただけないでしょうか」
「お願いします」

モーラットについては、ジュースなりおやつなり手近な奴を適当に掴み取るなり適当に確保して、
モラに説教しつつ、窓の外にでも捨て……開放していきます。
「なんでコイツらは、すぐに詰まるんですかね」




 結論から言えば、天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)が六角形の部屋に着いた時にはメガリス『生玉』は運び出された後であった。しかし、紫苑は目の前の状況をしっかりと確認する。
 西野・茜は生玉を諦めきれていない……しかしモーラットの波をかき分ける力は弱い。

 おそらくは。他の仲間たちの仕込みが効いているのだろう。強烈に生玉を求めていた茜の姿はもはや無く、必死に探しているというよりは一縷の望みをかけて細い細い糸を探しているような、そんな泣きそうな顔だ。

「……はぁ」
 紫苑が盛大に吐息をつく。何に対してかっていうと、茜の状況とモーラットの多さ、にである。
 茜に関してはちょっと面倒な話になりそうだ。それでも……こういう場合は『真正面から交渉・・・・・・・』するほうがいい。
 そしてモーラットに関しては、もうなんかことばがでない。
「なんでコイツらは、すぐに詰まるんですかね」
 愚痴っていても事態の進展はない。仕方ない。
「いきますか」
 そう言って紫苑はモーラットの波をかきわける。


 かきわけるだけではモーラットは波のように戻ってくる。……ので紫苑はまず手におやつ(甘いドーナッツの箱入りだよ)を掲げる。
「『もきゅ……!』」
 よし、数匹が反応した。そのタイミングを逃さず、紫苑が箱ごとドーナッツを窓の外へ投擲する!
「もきゅ~♪」
「『もきゅきゅ~~♪』」
 1匹いけば数匹が釣られ、後はよくわからなくても外に出ていく。
「ついでに」
 むんずっと近くにいたモーラットを掴んで無造作にオーバースローから投擲。
「もきゅー!!!」
 別のモーラットが抗議してきた。何するんだと言わんばかりの勢いであるが。
「あのですね。通れません、邪魔です」
「もきゅ……」
 紫苑の真っ当すぎる反論に撃沈するモーラットたち。大人しくなった子を投げるのはちょっとアレなので、いっぱい抱えて窓の外に捨て……開放していく紫苑。猫の子供じゃないんだから、と思わなくもないが。生玉が本物から入れ替わっているからだろうか、モーラットたちも室内に執着することなく、そのまま外へと散っていく。
「さて」
 まだ残っているモーラットを、がっ、と掴んで、ぺいっと投げながら。ぽーんと跳ねていくモーラットを尻目に、どうにか茜の側まで道を切り開く紫苑。
「茜さん」
「……!」
 よほど集中していたのだろう、紫苑の接近に気付かなかった茜がすごい勢いで振り返る。
 そこにいたのは冷静な佇まいをしていた紫苑だ。その様子を見て……茜の手が止まる。まっすぐ『真剣に茜だけを見つめる』視線がそこにあったからだ。
「話、聞いてもらえませんか?」
 紫苑が手を差し出す。どこかへ行こうという話ではない。とりあえずモーラットの波から出ようというお誘いだ。
「……」
 その手を無言で取る茜。モーラットの波を戻っていく最中、やっぱりどうしても気になって。茜はどこかにあるであろう生玉を振り返るのであった。


 六角形の部屋のある塔、その2階へと移動する。誰かがエアコンを入れっぱにしてあるため、その部屋にはモーラットがぎゅうぎゅうに詰まっていた。
「本当、なんでコイツらはすぐに詰まるんですかね」
 本日2回目の紫苑さんのため息である。
「……これが何か、知っているんですか?」
「ええ」
 モーラットが詰まっている部屋の、廊下を挟んで反対側。応接室をなっていたその一室に陣取ってドアの外で『もきゅもきゅ』言っているモーラットを眺めながら紫苑は茜に話を始める。
「茜さんは生玉のことをどこまで知っていますか?」

 ……。

 紫苑は茜と言葉を交わす。それは説得の言葉ではなく、同じ高さの『立ち位置』に立とうする言葉。

 ……。
 ……。

 茜たちの目の前に現れたモーラットたち。これを説明するには『世界の仕組み』を伝える必要がある。世界結界、銀の雨、能力者、ゴースト……そしてメガリス・アクティブ。
「ざっくりと、ですが」
 概要を本当にざっくり。紫苑は茜に伝えて、まずは反応を見る。真正面に座る茜の表情は……なんか子供のように輝いていた。どうやらこういう『物語事実』はお好みの展開のようだ。
「あなたは能力者、なんですか?」
「そうとも言えますし……違うとも言えますね」
 能力者と猟兵はまた違う世界の『力ある者生き物』だ。だから能力者であることと猟兵であることはイコールではない。逆もまた。
 ひとつ確実に言えることは、紫苑は茜よりも『こういう事態に慣れている』ということで。その経験は言葉を選べば強力な説得力となる。
「茜さんはメガリスに触れてそういう力に目覚めかけている……」
 真っ直ぐに正面から茜を見ながら紫苑が告げる。
「切欠は間違いなく『生玉』でしょう」
「…………」
 紫苑の言葉に茜はテーブルの上に置いた手をきゅっと握る。その手は何かを握りたくて、でも今は何もない……いや、あるはずだ、まだ。でも……。
 そんな逡巡したような表情を見せる茜に紫苑が語り掛ける。
「このままだと……茜さんの寿命が大きく失われます」
「……大丈夫。私なら……あの子を使いこなせる」
 心当たりがあるのだろう。それでも自信に満ちた表情で茜が告げた言葉に、紫苑は首を横に振る。
「『メガリス』はそんな生易しいものじゃない」
 そして紫苑が告げるのは過去あった事件――メガリスを使った故に発生した『代償』の話。それは容赦がない。強大な力を秘めた古代の遺産であるメガリスは人の都合など考えず、ただただ力を振るうために『代償』を求める。そこに悪意はなく、それ故に遠慮もない。
 そういう意味では生玉はまだ優しいほうかもしれない。生命力を周りに還元するだけなのだから。それでも代償は必ず発生する……メガリス・アクティブがメガリスを『完全解放使いこなすこと』が出来ない限り。
「「…………」」
 重い沈黙が二人の間に落ちる。次の言葉をお互い測りかねて……そこに現れたのは意外な存在だった。
「もきゅ」
「おや」
「あっ」
 モーラットが1体。背中に羽根が生えてぱたぱたと飛んでいるので進化したらしい。その手には生玉を抱えていた。お届けが出来る賢い子。
「生玉……!」
 茜が手を差し出すとモーラットがその手の上に生玉を置いていく。
「……」
 愛おしそうに生玉を眺める茜を微笑ましくも思いながら、紫苑が『事実』を告げる。
「それはメガリスの生玉ではありませんよ」
「……えっ?」
 紫苑の言葉に顔を跳ね上げるようにして見上げる茜。
「いえ、そんなことは……だってこの手触り、間違えるはずはありません」
「正確には昨日までの生玉はそれです。でも『メガリス』の生玉ではありません」
 謎かけのような言葉を告げてから紫苑は昨日の顛末を話し出す。
 生玉の状態、メガリスゴースト、そして今、茜が手にしている『生玉』の状態。
 その事実に茜は複雑そうな表情を浮かべて、そして再び手元の生玉に視線を落とす。
「あの違和感は……そういう……」
 納得したような、逆に納得できないような。そんな声音の言葉を絞り出すようにして吐き出して。茜は俯いたまま動かない。
「茜さんがメガリス・アクティブなら……いずれメガリスの生玉に関わることもあるでしょう」
 紫苑の言葉はメガリス・アクティブの能力、否、本質ともいえるもの。特定のメガリスと必ず巡り合う運命にあるのがメガリス・アクティブなのだから。茜の感じた運命は決して夢物語では終わらない。
 ただ、今だけは。
「どうか、メガリス『生玉』の所有権を手放してはいただけないでしょうか。お願いします」
 頭を下げる紫苑とそれを見つめる茜。少しばかり長い沈黙の後、茜が口を開く。
「私、は……」


 紫苑が博物館を後にして向かう先は、この街にある能力者御用達の宿。護灯・れんじゅ(熱筆入魂ゴーフォーリット!・f37965)と穢宮・風月(禍祓いの巫女忍・f36880)が泊まっていた宿である。そこにいたのはれんじゅと風月、そして暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)。事前にメガリスの管理を申し出ていた者たちだ。
「ああ。やっぱりこちらにありましたか」
「ええ。混乱の中ですり替えました」
 紫苑と風月が言葉を交わす。
「そのすり替えた後の生玉はしっかりと茜さんに渡してきました」
「問題なかったのです?」
 紫苑が告げればれんじゅが問いかける。
「ええ。『いずれ』のために『今はこれ』でいい、と」
「そっか。なら大丈夫そうだな」
 そう言う魎夜に紫苑が頷きを返す。
「さて。誰が持ち帰りますか?」
 紫苑が問いかけるのはメガリスの所有に関して。猟兵が管理する以上、誰が持っていても特に問題ないのだが、物理的な『個数』という問題がある。
「私は銀誓館に持っていくつもりだったので、どちらでも」
「私は付き添いなのでっ!」
 そう言って下がる紫苑とれんじゅ。
「ということは」
「わたしとあなたのどちらか、ですか」
 というわけでじゃんけんである。ここまできたら運の問題だよ。
「「じゃんけん……!」」

 ぽん。パーとグー。

「……!」
「む……」
 出したパーの手のまま、れんじゅとハイタッチする風月と残念そうにグーを見つめる魎夜。
「まぁ、一時預かるだけですから」
 風月が言うのは目的。『いつか茜さんが生玉を持つべき時まで』厳重保管しておくという先に述べた理由だ。
「有事で入用ならともかく、普段はその方がいいかもしれませんね」
 紫苑も頷きを返す。
 目的もはっきりしたところでメガリス『生玉』は風月の手に委ねられる。

 いつかまた。このメガリスが必要となるその時まで。おやすみなさい。


 いつかまた夢を見るために。

 今はこの『生玉』が私の身の程というわけだ。いや、これも『今の私にとっては』とても素敵すぎる宝物なんだけど。持っているとほんのちょっとだけ力が湧いてくるようなそんな感じ。でも私がコントロールできない力じゃない。それは紫苑さんとも確認した。問題ない。

 すり替わっているなんて全然知らなかった。あの人たちの作戦が巧妙だったとも言えるけど、私が感じていることなんて、まだまだ世界のほんの小さなことに過ぎないんだ。

 ああ、私もまだまだ勉強が足りない。あんな世界が人知れずあるのなら。私はもっと色々な知らないといけない。

 不思議な力は消えちゃったけど。キミに繋がっている感覚も切れちゃったけど。でも、また会えるっていう予感と確信は全然消えない。

 だからこの『運命の糸出会い』がなくなってしまわないように、私は頑張る。いつかまた。会える日を楽しみにしているね。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月18日


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#シルバーレイン
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#【Q】
#オーバーロードについてはマスターページ参照ください
#🔵>👑到達予定日時までプレ受付中
#3名自動サポートです(8/31の22:06
#3章、冒頭&状況説明、追加しました。
#3章プレ受付開始⇒9/1の8:31~
#🔵>👑到達予定日時⇒9/5の7:00
#デイドリーム・アゲイン
#路子のグリモア記録


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト