今治市解放戦〜甘美で淫なる虚構の追憶
●虚
僕はごく普通の男子学生。
ごく普通の家に生まれ、ごく普通に育ち、ごく普通に毎日を過ごしている。
「ほら、早くしないと遅刻よ」
そう言うのは、お隣の幼馴染の女の子だ。
同級生で同じクラス。可愛くて、スタイルが良くて面倒見が良くて。僕らは決まって隣り合ったまま登校していた。
そんな僕らだから周りは夫婦だとか囃し立てて、二人で否定する日々。
ある時、僕の汚い部屋を見かねて、勝手に掃除を始めてしまった幼馴染が、ベッドの下からエッチな本を見つけてしまった。
「ふーん、こういうのがいいんだ……」
蔑んだ目でパラパラとページをめくる幼馴染。そんな時。
「本物が目の前にあるのに……」
などと呟くものだから。僕は――!!
「まあうそなんですけどね」
虚空を見つめて恍惚の表情を浮かべる男を見下ろして、そのリリス『揺籠の君』は告げた。
「えっちながんぼう、あたまのなかでもかなってうれしいですね」
耳元で囁かれた言葉に男はびくんと震え、その後ぐったりと動かなくなる。
「えっちなのうみそおいしいです」
揺籠の君は、ぺろりと舌を舐めて、血に濡れた顔で笑うのであった。
●今治解放戦
「皆様、シルバーレインの今治市に、大規模なオブリビオンの集結が予知されましたわ!」
集まった猟兵達に、エリル・メアリアル(
孤城の女王・f03064)が叫んだ。
愛媛県今治市。かつて、この世界において大きな戦いが起こった地であると猟兵達は知らされていた。
「かつて今治では『土蜘蛛組織』と『リリス』の軍勢と銀誓館学園が戦ったという記録がありますの」
それが、銀誓館学園の記録にある『今治解放戦』だ。二つの勢力が互いの利の為に手を組み、今治を支配下においてしまったのである。
「その時戦った者達がオブリビオンとなって蘇り、今治で再び大規模な殺戮を行おうとしているようなんですわ!」
そんな予知を伝えながら、エリルは言う。
「以前、四国の天輪宗の皆様をお助けしたことが、今回の予知に繋がったようですわ」
エリルが過去に起きた事件を振り返りながら告げる。その時に天輪宗と繋がりを得たことで、四国に対して強い予知の力が働いたのだろう。
「このような予知の機会は多くはありませんわ。今こそチャンスと言えますの」
そうして、エリルは猟兵達に聞く。
「ですから皆様、今治を解放するために戦ってくださいますかしら?」
「現在今治では、強力なオブリビオン『土蜘蛛の女王』と『揺籠の君』によって結成された軍勢が動いていますわ」
エリルが二本立てながら告げる。どちらも過去の今治解放戦で相手をした者達だ。
「この二つの組織はそれぞれ別の場所に本拠地を置いている為、同時攻略は困難。ですから、わたくし達は『揺籠の君』を攻略いたしますわ!」
そう言うとエリルは地図で今治フラワーパークを指さした。
「揺籠の君の本拠地はここ。けれど、ここに直接踏み込む前に、やるべきことがありますわ」
そう言うと、エリルはその周辺を大きく丸で囲う。
「現在この地域に、オブリビオンの大群が人々を襲っていますの」
オブリビオンのボスは当然『揺籠の君』だ。揺籠の君の魅了によってリリス化したオブリビオン達は、揺籠の君の指揮のもと、人々を集めているらしい。
「集められた人々は……その……」
エリルが目を逸らし、頬を赤らめた。
「『悦楽の宴』という儀式をしている……とか」
リリス化オブリビオンとなれば、推して知るべしだったか。オブリビオン達は快楽に耽る一般人たちを殺し、血肉を啜っているのだ。
「この宴にはもう一つ意味があって、捕らえた中でも美男美女とされる方が、揺籠の君への供物にされるようなんですの」
揺籠の君に送られた者達は、『悦楽の宴』に奉仕させられ、強烈な快楽の中で死ぬことで揺籠の君の力を増強させる役目を担っている。
「ですから、まずは一般人を捕らえる者達、美男美女を選りすぐる者達を倒して一般人を解放することで、本陣への供給を断とうというわけですわ!」
そう言って、細かい言及は避けるエリルであった。
●甘美な虚構
「まずは『存在しない想い出の写真』。この写真を見た方は、偽りの記憶を植え付けられ、その過去に縛られてしまいますわ」
それはあくまで虚構の記憶だが、写真達は見た者の『こうであれば良かった』『こうなりたかった』などの願望を読み取り、それに基づいた記憶を構築する。
「ですから、きっと甘美な記憶になるのでしょうね」
写真はそのまま偽りの記憶の世界へと誘い、閉じ込める。
それはたとえ荒唐無稽であっても信じ込んでしまう程の力を秘めており、その世界に囚われている間は、記憶に限らず、五感全てが『リアル』に感じてしまう事だろう。
「そうなったら最後、ずっと同じ記憶を繰り返し続け、その甘い記憶に委ね続ける羽目になる……というわけですわ」
そうなってしまっては、もはや廃人も同然だ。オブリビオン達はそうなった者達を容易に捕らえ、悦楽の宴へと連れてゆくのだ。
「皆様であっても、この力から簡単に逃れることは出来ませんわ。その分オブリビオン自体は弱いから、強い精神力を持って偽りの記憶を打破しさえすれば、オブリビオンを倒すことは容易ですわ」
エリルは、信頼した目で猟兵達へ目を向ける。
猟兵達なら虚構の世界など打ち壊してくれると思っているのだ。
「そして、写真達を倒すことが出来たなら、悦楽の宴の会場のオブリビオン達を倒して一般人の皆様を救出し、揺籠の君へと挑む、という流れですわ」
エリルが口早に告げてゆく。
「先程も申し上げた通り、揺籠の君の周囲には一般人の男女が『悦楽の宴』に耽っていますわ。その状態で命を失えば、揺籠の君はさらに強くなってしまう」
だからこそ、一般人を救出し、敵の力を削ぐことも考えた方が良いだろうとエリルは助言した。
「そうして力を削っても、揺籠の君は強敵ですわ。油断してはいけませんわよ!」
そう忠告して、エリルはグリモアを輝かせた。
「今治解放戦……再びですわ!」
G.Y.
こんにちは。G.Y.です。
今回はシルバーレインの決戦シナリオです。
愛媛県今治市を舞台に、オブリビオンフォーミュラ『揺籠の君』との対決です。
性質上、シナリオ全編通して性的な匂わせの多いシナリオとなりますが、過度なプレイングに対してはぼかす、あるいは不採用になる可能性がありますのでご注意下さい。
第1章は集団戦です。
『存在しない想い出の写真』が街中にばら撒かれており、その姿を見た者を、虚構の記憶で作られた精神世界に閉じ込めてしまいます。
その世界に閉じこめられた者は、その者の欲望や願望に基づいた偽りの記憶が植え付けられ、その記憶に基づいて生み出された世界の中で、記憶にあった出来事を延々と繰り返すことになります。
想い人と結ばれた記憶、有り得なかった青春、本来されたかったこと、隠された願望を具現化した世界など、捕らわれる世界は人によって様々。
自分の立場や姿すらも記憶によって上書き、変質させ、その内容がどれだけ荒唐無稽であっても、よほど強い精神力がなくてはその世界に取り込まれてしまう危険性が高いです。
さらに、今回の写真はみな揺籠の君の魅了によってリリス化オブリビオンとなっており、見せてくる記憶もより欲望を高めるような、放蕩とした刺激的な内容となります。
どのような記憶の世界に捕らわれるか、そしてそれをどう打破するかがポイントとなります。
なお、精神世界はあくまで偽りの記憶が作り上げた妄想上の空間ですので、脱出すればすべての記憶や姿は元に戻ります。
第2章は集団戦です。
場所は学校の体育館。そこでオブリビオン達は第1章の手法にて正常な判断力を失わせた市民を集め『悦楽の宴』を行っています。
宴を行っているリリス達を倒し、一般人を救出してください。
第3章はボス戦です。
事件の首謀者でありオブリビオンフォーミュラ、揺籠の君との対決です。
揺籠の君の周辺には、彼女に籠絡された選りすぐりの美男美女が『悦楽の宴』に奉仕させられています。
彼らは強烈な快楽の中で次々に死ぬこと揺籠の君に力を送っています。
その為、放置しておけば揺籠の君が強くなるばかりか一般人に死者が続出してしまいますので、対策が必要でしょう。
しかし、それでも揺籠の君は相当な強敵ですのでご注意下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『存在しない想い出の写真』
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POW : もしあの日がこうだったら
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【あの日の正しい記憶を一時的に 】、否定したら【あの日感じた気持ちを一時的に】、理解不能なら【冷静さと客観性】を奪う。
SPD : 何しに来たんだっけ
【写真 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【「見た者が望む映像や音や香り」】」を放ち、ダメージと【やるべきことを忘れてしまう程の無気力状態】の状態異常を与える。
WIZ : 何処にも行きたくない
【写真 】から【過去の一部】を召喚する。[過去の一部]に触れた対象は、過去の【感情に囚われて、ここを離れたくない気持ち】をレベル倍に増幅される。
イラスト:すずや
👑11
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アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
ふむふむ、IFの記憶と。そうなると私が猟兵に目覚めなかったらという内容よね、やっぱり。
私が猟兵に目覚めた日に討った
吸血姫。実力にありえなかったそれはしかし『あの子』の望んだ結末。今なおエミュり続けている私のオリジナル、
アリス・ロックハーツ。
もしも、猟兵に目覚めなかったら。私達は今なお
親友としてあり続けていたのだろうか?
そのもしもがここにある。ああ、しかし、それは、私にとっての地雷である。なぜなら、
私はココにいる。そう、あの日私達は『ひとつになった』のだから。
私は
『あの子』で
『あの子』は
私。ねぇ、そうでしょ?
『ええ、そうね』
ならば『あの子』がこの茶番を打ち破る。もしも、あの日がなければ私達はこうしていない。それの否定は万死に値する。覚悟はよろしくて?
今治の街に、ふわりふわりと写真が舞った。
何も写っていないフレームの内側は、見るものによって色づいて、引き寄せ、誘い、見せつける。
ある筈のない記憶、願望によって形作られた思い出を。
「あら……ここは?」
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト艶魔少女・f05202)がきょとんとした顔であたりを見渡した。
「ねぇ、どうしたの?」
隣から馴染みのある声がして、アリスはどきりとしながら振り向いた。
「……アリス」
じわりと胸が暖かくなって、自然と嬉しい気分になる。アリスの前にいたのは、異母姉の『あの子』、大好きなアリス・ロックハーツだったから。
「ねぇ……」
「うふふ」
二人は微笑み合って、口付けを交わす。甘くてとろける味は、親友と恋人、二つの味。
愛おしくて、恋しくて。焦がれた味は熱を帯びて、じわりと爪先まで広がってゆく。
ずっとこうしていたい。繋がり合って愛を確かめたい。でも……。
「ああ、これは、私にとっての地雷だわ」
唇を離して、アリスは自身の胸に手を当てる。
「だって、
私はココにいるもの」
――アリス・セカンドカラー。
「あの時……」
泣くように笑って、アリスは
アリスに指を絡める。
アリスの温もりが急速に失われてゆく。
あの日、アリスが猟兵に目覚めた日、アリスは
吸血姫を討った。
実力の差は歴然だった。なのに、冷たくなったのは
吸血姫のほう。
「それは『あの子』の望んだ結末」
ゆらりと
アリスの影が揺れる。
「もしもあの時、猟兵に目覚めなかったらなんて……こんなの違うわ」
絡めた指が重なってゆく。
「あの日私達は『ひとつになった』」
再び唇を近付ける。息のかかる距離で、アリスは囁くように
アリスに告げた。
「
私は
『あの子』で
『あの子』は
私」
――ねえ、そうでしょ?
――えぇ、そうね。
唇同士を重ね合って、アリスと
アリスは一つになった。
その瞬間、ぱりぱりと鏡が砕けるように、周囲の景色が崩れ落ちてゆく。
――気が付けば、アリスは写真の前に立っていた。
「もしも、あの日がなければ私達はこうしていない」
写真を睨みつけて、アリスは告げる。ふ、とその像が二つに分かれた。
「「それの否定は万死に値する。覚悟はよろしくて?」」
アリス達が写真を切り刻む。変えてはいけない甘い毒を味わわせた写真への、当然の報いであった。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
写真どもを焼き祓い、リリス達を調伏し、揺籠の君をも説得してアタシが市長になるぜ
条例で女性の服は今治バスタオルのみにして、男子は市街追放するのだ
ゆりゆりに政府を篭絡してもらえば地方交付税は千兆円!
リリス達と享楽的に過ごすぜ、うへへー
…みたいな記憶を捏造されるのかな(アレンジ大歓迎)
一番大事な恋人がいない感覚ですぐに冷めちゃうけどね
正気に戻ってなお、少しだけリリスとも仲良くできる世界を楽しんでみるよ
最後に庁舎から
新生今治市を見下ろして満足したところで、辞職願を出して幻覚世界にお暇します
落ち着きて狂気耐性を振り絞り幻覚を祓うぜ
玖式で炎のブーツを生んで、げしげしと写真を踏み焼いておこっと
「へっ、こんな写真なんか」
四王天・燦(
月夜の翼・f04448)は写真を燃やしながら、自信たっぷりに笑った。
今治の街にうようよと浮いている写真達はえっちな夢を見せてくるらしい。そのせいで今、今治の街は至る所で男女がくんずほつれつ。虚ろな目をしてだらしなく笑う奴らをリリスが『喰って』いたりする。
こんな惨状放ってはおけない。
「写真共を焼き祓い、リリス達を調伏し、揺籠の君をも説得してアタシが市長になってやるぜ!」
そう言って、燦は道すがらのリリス達の手を取り、抱き上げつつ、今治庁舎へと向かっていった。
「わたしのまけです。いまばりはあきらさんにあげます」
市長室で揺籠の君が燦に平伏していた。なんやかんやあって、庁舎内、それも何故か市長室にいた揺籠の君に対し、燦は説得することに成功したのだ。
「ならこれからアタシは今治市長! 条例で女性の服は今治バスタオルのみ、男子は市街追放だ!」
びしっと天に向かって指させば、庁舎職員のお姉さんたちのお洋服がはらりと脱げて、アスタオル一枚になり、男達は檻にぎゅうぎゅうに詰められてドナドナされてゆく。
「ついでにゆりゆり、政府を篭絡してくれよ」
「おやすいごようです」
庁舎から揺籠の君が誘惑ビームを出すと、国会議事堂がビクンビクンと痙攣する。続けて議事堂からだばぁと千兆円が流れ出て、燦はそれをお風呂に溜め始めた。
「さぁ、邪魔者はいなくなったぜ。あとは……たのしもうぜ♪」
札束風呂に侍らせたリリス達に流し目を向けて、燦はリリスが巻いたバスタオルに手をかける。
「まってください。ゆりゆりもあなたのことがだいすきです」
そこに一糸纏わぬ揺籠の君が乱入してきて、周囲のリリス達も燦と歓びを共有しようと押し寄せる。
「うへへ~」
リリス達の柔らかい肌と甘ったるい匂いにもみくちゃにされながら、燦は鼻の下を伸ばして彼女達を受け入れる。
「焦んなくてもアタシは逃げ――……」
ふと、リリス達の顔を見る。一人一人違う顔。なのに全員知らない顔だった。
「……あー……」
すぅ、と燦の気持ちが覚めてゆく。今この中に一番大事な人……恋人がいないことに気が付いたからだ。
あぁそうか。これは夢か。そういう記憶か。燦がそれに気が付くと、空にぱきりとヒビが入った。
(「なるほど、これこそが写真共が見せてる記憶ってわけか」)
浸かった札束風呂も、今見下ろせば紙屑みたいな気持ちになってくる。早くここから抜け出さなければ。
「ま、でもちょっとだけ……♪」
そう言って、燦はリリス達の中へとダイブしてゆくのであった。
そして夕日の今治庁舎。
新生今治市を見下ろすと、至る所で甘く激しい声が重なりあう、美しい営みが広がっていた。
「ま、こんなとこだな」
燦が懐から辞職願を抜き出すと、それを足元に叩きつける。
「そろそろお暇するぜ」
庁舎に亀裂が入り、地割れとなっ世界中が崩れてゆく。
燦は浮遊感に襲われて、割れた世界の向こう、現実世界へと落ちてゆく――。
「おりゃっ!!」
燦が眼前にいた写真を蹴り飛ばした。燦は周囲を見渡すと、そこは変わらず今治だった。しかしバスタオルの女の子たちはいないし、男達もうろうろしている。そして何より肌の感覚で、ここが『現実である』と実感した。
そのまま燦は狐火を纏ったブーツでげしげしと写真を踏み焼いて、ぶすぶすと消し炭になったところで顔を上げる。
「ま、少しは楽しめたぜ」
大成功
🔵🔵🔵
マオ・イェンフー
【魎夜/f35256】
【記憶の世界】
中国の都市部の街角で、平穏に暮らす
粗暴だが仁義の有る連中と最愛の両親と弟がいる生活
※親は死に分かれ、弟はリリスに殺されている
ありえない人たちの笑顔に心が軋む
「止めろ…お前は、お前等は亡霊だ。もういない」(電光を纏う)
「命預けれるダチと、愛すべき嫁とガキがいる。墓前にまた報告にいくから…だからそれまでは…再见亲爱的家人(さよなら、愛するみんな)」
UC雷神で幻影を吹き飛ばす
心は悲鳴を上げるが、後悔は無い
今を生きる愛する人たちを俺は守りたいのだから
【脱出後】
「(魎夜に)当たり前だろ?俺の帰る場所は、もう有るんだからな。さあ、糞リリスをぶちのめしにいこうぜ?」
暗都・魎夜
【マオ/f36169】
【記憶の世界】
神秘や超常のない、平凡で退屈だけど平和な世界
両親も健在で、友達と仲良く暮らしている高校生の姿になる
※両親は幼い頃、悪の能力者組織に殺されている
俺が憧れているのはこういう平和だ
だけど、同時にそれを奪うやつも許せねえ
「自分の運命を呪ったこともある。だけど、今は感謝しているぜ。仲間たちと出会えた運命をな!」
特殊空間を「天候操作」によるUCで吹き飛ばす
これからも何度だって、何も知らない平和な生活を夢見るだろう
だけど、平凡な生活を失ったことが俺の誇りだ
【脱出後】
「(マオに)お、マオもお疲れさん。まあ、マオなら余裕で出てくるよな」
明るい余裕の表情を作ってマオに手を振る
●ある朝
――朝。
窓からさす光でマオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・f36169)は目を覚ました。
サングラスを手にして窓の外を眺めれば、そこは中国。マオにとって見覚えのある景色が広がっていた。
「起きた?」
そんな声に顔を向ければ、そこには最愛の両親と弟の姿があった。
両親の周りには、粗暴だが仁義のある仲間達。
「おはよう」
その言葉に、マオは思わず言葉を返す。
――おはよう。
●ある日
「ふぁ……」
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は大きくあくびをして、頭をかいた。
晴れた日の、なんでもない登校時間。制服の内側にカードは無く、死とは無縁な学園生活。
退屈で平凡で、しかし平和なその一日を、魎夜はなんとなく過ごしている。
あぁ、今日の授業は退屈だな、とか。
今日の昼は何を食べよう、とか。
放課後は誰と何して遊ぼうか、とか。
その一つ一つがやけに愛おしくて、魎夜は自分でも不思議なほど、顔を緩ませていた。
●夢現
テーブルにお茶が出されて、香りが鼻をくすぐった。
マオは椅子に座り、家族の顔を見る。
なんて眩しい笑顔だろうか。そう思うと、マオの心の奥がぎゅぅ、と締め付けらた。
魎夜は平和を享受すればするほどに、ふつふつと怒りが湧いてきた。
この矛盾する感情は一体何なのか?
ここは確かに、かつて自分が体験した記憶のはずなのに。
「いいや……違う」
魎夜は呟いた。
「止めろ……お前は、お前等は亡霊だ。もういない」
マオが絞り出すように叫んだ。
二人を覆うそれぞれの世界に、一筋のヒビが入った。
●割れる世界
「俺には命預けれるダチと、愛すべき嫁とガキがいる」
マオの言葉でまた一つ亀裂が走る。
「俺が憧れてるのはこういう平和だ。だけど、同時にそれを奪う奴も許せねえ」
魎夜が拳を握る。本来あり得なかったはずの超常の力が溢れ出す。
「自分の運命を呪ったこともある。だけど、今は感謝してるぜ」
腕を天に翳し、魎夜が叫ぶ。
「仲間達と出会えた運命をな!!」
突如、空から豪雨が降り注ぐ。雨は世界のヒビに流れて、さらに大きな亀裂を生み出した。
(「これからも何度だって、何も知らない平和な生活を夢見るだろう……だけど」)
水流の中で、魎夜は胸を張る。
「平凡な生活を失ったことが、俺の誇りだ」
ぽたり、とマオの肩に水が落ちた。
そうだ。早く行かなければ。マオの全身から電光が迸った。
涙は流れない。だが心はこの決断に悲鳴を上げる。だが、マオにとって大切なのは今なのだ。
「墓前にまた報告にいくから……だからそれまでは……」
この選択に後悔はない。今を生きる、愛する人達を守るために。
稲妻が世界中を走る。空が崩れ、雨が降り注ぐ。
「……
再见亲爱的家人」
雷光が世界を白く吹き飛ばした。
●今ある世界
気が付けば、二人は路上に立ち尽くしていた。
足元には破れ、濡れ、焦げた写真達が落ちている。魎夜はその写真を踏みつけ、傍らに立つマオに手を振りながら笑った。
「お、マオもお疲れさん。まぁ、マオなら余裕で出てくるよな」
「当たり前だろ? 俺の帰る場所は、もう有るんだからな」
サングラスをくい、と上げて、マオは静かに言った。
「さあ、糞リリスをぶちのめしにいこうぜ?」
「あぁ!」
そうして、二人は写真に背を向け、歩き始めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
把繰理乃・えんら
……ここは、ザナドゥ?
私の体がない……いえ違う、これは
私の体が巨大な波になって有機物も無機物もオブリビオンも侵食している
私は……あの世界を消し去りたかったのでしょうか
私を生かしてくれなかったあそこを
生物が飲み込まれて私のバグの波に溶けてゆく、何だか、甘美な、気分、です
ふと波の中を漂うあやかしメダルが目に留まる……何だか落ち着きますね
……そうでした、私はこうならない為にあの世界からお嬢様に連れ出してもらったんです
本来の体は棒立ちのはず、ならば
UCを使用、私の体から出る音で周囲の人間を私に突撃させて痛みで強引に意識を戻します
まぁ、いい夢でしたよ
バッグテルシューターで写真にレーザー射撃、焼き払います
なにもない。
なにもない。
凪いだ海のように深く静かで、しかし嵐のように渦を巻いた激しい波が、そこに漂っていた。
(「……ここは、ザナドゥ?」)
把繰理乃・えんら(嫌われ者のバーチャルメイド・f36793)は瞼をゆっくりと開く。いいや、正確には開いたように感じただけだ。何故なら今、えんらに瞼も、瞳もなかったからだ。
(「私の体が無い……いえ違う、これは……」)
えんらはそこでようやく、自身が巨大な波となっていたことに気が付いた。そして、その波が何もかもを飲み込み消し去ってゆくことにも。
(「私は……あの世界を消し去りたかったのでしょうか。私を生かしてくれなかったあそこを」)
だから、逆に今、えんらは消し去った。生物の命がえんらのバグの波の中に溶けてゆくのを感じて、えんらはぞくりと快感が走るのを感じた。
(「何だか、甘美な、気分、です……」)
そうだ、これが正しい。これこそが正しい過去である。何もかもを飲み込む快楽に身を委ね、波となってうねり続ける。それがえんらの選択だった。
その時、えんらは波間に漂う小さな輝くものをみつけた。それはどこかで見たあやかしメダル。どうやっても溶けて消えないそれがえんらの中に沈み込み、じんわりと暖かな感触を与えていた。
(「……何だか落ち着きますね……」)
あやかしメダルの与えるぬくもりに、えんらはとても良い心地になっていた。生命を飲み込む時なんかよりも、ずっと気分が良い。
でも何故、このメダルが? そう考えた瞬間、えんらの脳裏に信号が走った。
「……そうでした」
波が収束してゆく。世界を覆い尽くそうとした濁流は、えんらの足を、腕を、顔を、そして胸を形作ってゆく。
「私はこうならない為に、あの世界からお嬢様に連れ出してもらったんです」
えんらはえんらの形を取り戻し、荒涼とした世界を見上げた。そして、この偽りの世界をどう脱すればよいかしばし思案する。
「本来の身体は棒立ちのはず、ならば」
えんらが意識を集中させる。ここではないどこかに神経をアクセスさせ、放つ。
どぅむ、どぅむ、とくぐもった音が世界の外から響いてくる。
えんらが『現実の世界』で周囲に激しい音を放ったのだ。その音は聞いたものに狂気や不安を与え、えんら目掛けて突撃を仕掛けてくれるはずだ。
「うっ
……!!」
痛みと共にえんらが目を覚ます。周囲には耳を塞いで悶える人々の姿。そして正面にふわふわと浮かぶ写真が1枚。
「これが元凶でございますね」
バグッテルシューターを構えてえんらは告げた。えんらは迷わずトリガーを弾くと、直後、バグの光線が写真を貫き、写真は点滅や表示不良を起こしながら消滅してゆく。
「……まぁ、いい夢でしたよ」
消えた写真に背を向けて、えんらは歩き出す。手に『煙々羅』のあやかしメダルを握りしめながら。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
※えっちなアドリブ等大歓迎
『存在しない想い出の写真』……あたしには何が見える?
高い壇の上、男女の嬌声が聞こえる。裸身を這う二人の感覚。アヤメと羅睺ね。
目を開ければ、学校の体育館のような場所で、沢山の見目麗しい男女が絡み合い睦み合っている。
まさに『悦楽の宴』。そして主催者はあたし。式神の二人に適度に愛撫を返しながら(当然三人とも全裸)、『宴』の熱気を取り込んで。
ああ、そうか。『あたしは揺籠の君になりたかった』んだ。
快楽に耽る人々が羨ましい。それが分かるのか、二人の愛撫が一層激しくなる。
脳裏で何かが弾けた。
これは、遅発性に設定した、「破魔」と「浄化」の霊符。これで目が覚めた。
やることやらなきゃね。
カーテンが閉じられた体育館。
熱を帯びた男女の声が幾重にも重なりあって、高い天井に響き渡る。
「んっ……」
村崎・ゆかり(
“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、肌を伝うもどかしいくすぐったさを感じて目を開いた。
「ここは……」
見れば、ゆかりは体育館の壇上に座っていた。眼下には裸の美男美女達が絡み合い、快楽を貪り合っている。
蒸れた獣のようなにおいが漂い、ゆかりの鼻孔をくすぐる。それと同時に、つぅと胸をなぞる甘い刺激に、じわりと身体が熱くなる。
ゆかりもまた、一糸纏わぬ姿でそこにいた。左右には彼女の式神、アヤメと羅睺が絡みつき、ゆかりを愛撫し続けていた。
「ふふ……」
ゆかりが妖艶な笑みを浮かべ、アヤメの肌を撫でる。
(「そうだ、あたしは……」)
ゆかりの白い肌に青い刺青が浮かび上がる。
(「あたしは揺籠の君になりたかったんだ……」)
「ん、んふぅっ」
「あぁっ、あ……」
熱の籠った嬌声が響き渡る。繰り広げられる男女の情交は、まさに『悦楽の宴』であった。
体育館の板張りに、ぽたぽたと垂れた液が水たまりを作る。肉と肉がぶつかりあう音に、ぐちゅぐちゅと粘液をかき混ぜる音が重なる。
「ふっ……ふぅ……」
それを見下ろすゆかりはその熱を取り込みながら、切なさに身を捩る。艶やかで扇情的な光景だ。だからこそゆかりはそれを羨ましく思った。
足りないものを求めるような、下腹部の奥から湧き出る欲望がゆかりを苛む。そんな時、アヤメと羅睺の手の動きが激しくなった。
「あっ……んんっ……っ!」
汗と熱を帯びた肌から、内腿の中側に指が伸びる。溢れるゆかりの劣情に触れて、刺激にゆかりは身悶える。
「あ、あぁ、あぁあっ……!」
その時であった。
「あっ――」
ぱぁん、と脳裏で何かが弾けた。白く清浄な光が広がり、体育館を呑み込んでゆく。
「はぁ……はぁ……」
気が付けば、ゆかりは今治の街の路上に立っていた。
「これが発動したのね……」
ゆかりが見たのは、『破魔』と『浄化』の力を秘めた霊符であった。あらかじめ、ゆかりはこの霊符が時間差で発動するように設定していたのだ。
身体は当然服を着ていて、目の前にはあの世界へと誘った写真が浮かんでいた。
「やることやらなきゃね」
ゆかりは薙刀を手に、すっと一振り。直後、すっぱりと写真は切り裂かれ、静かに消えてゆく。
「ふぅ……」
薙刀を納めて、ゆかりは一息ついた。しかし、妙に身体が疼く。
欲望で満たされた夢の影響か、まだ肌が熱を帯びているようであった。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
幻惑で攻める敵は苦手だなあ
後悔する過去は幾つもあるし
逆鱗に墨糸を繋いだ物を手に写真を見る
…あれは葛城山ではなく
忘却期前の僕の故郷
奥高野の陣ヶ峰だ
直属の主の土蜘蛛と彼の巫女達、配下の僕ら鋏角衆
それに童達と古い屋敷で暮らした
人間もよく狩ったから妖怪討ちの輩にも追われたけど
1番幸せだった頃
一人の娘にも出逢った
…忘れ得ぬ人だねえ
『あら、声も横顔もおとなびたわ興和』
おや
あんたにそんな言葉を掛けられるなんてね?
…有り得ないよ
一冬を過ごし春に僕が狩った
血塗れの彼女とツツジを憶えてるのに
【咄嗟の一撃】自分の指先を牙で噛み裂き痛みで現実に戻る
【狩猟、逃亡阻止】に逆鱗で攻撃、同時にUCの仕込みを完成させUC行使へ
「幻惑で攻める敵は苦手だなぁ」
今治の街を襲うオブリビオン達を見て、酒井森・興和(朱纏・f37018)は一人ごちた。
誰であろうと後悔はあり、興和はそういった過去を幾つも持っていた。
あの過去が変えられたなら……誰もが抱く願望だ。興和はそれを警戒しながら、白い靄の中へと足を踏み入れた。
靄は一歩進むごとに濃くなって、興和は何故自分がここを歩いていたのか、どこへ向かっていたのかも分からなくなっていた。
「……あれは」
不意に靄の奥から見えたのは、興和にとって馴染みのある光景であった。
忘却期前、700年あまりもの昔だというのに、一目見た途端に興和にはそれがどこだか理解出来た。
「奥高野の、陣ケ峰」
興和の故郷であった。
「そうだ、行かなくちゃ」
興和はふと思い立ち、踵を返す。向かう先は古い屋敷。興和の主の土蜘蛛の住まう場所であり、同時に興和達鋏角衆や蜘蛛童達の住処であった。
身体が縮み、子供のようになっていることなど気にも留めない。足取りが軽くなり、理由もないのに心が躍る。
だって今、興和が歩いている道は、彼が一番幸せだった頃の道なのだから。
「人間もよく狩ったから、妖怪討ちの輩にも追われたけど、一番幸せだった」
興和は後にそう語る。だが、だからこそ、取り戻したい過去がある。
ざわ、と草木がざわめく音とともに現れた気配に、ふと興和は顔を向けた。
「あら」
その声は、ずっと聞きたかった声だった。
興和の前にいたのは、一人の娘。興和の良く知る、忘れ得ぬ人。
ざわり、ざわりと胸が騒いで、ごくりと唾を呑み込んだ。
『声も横顔もおとなびたわ、興和』
その言葉に、興和の眉がぴくりと動く。
「……おや」
興和が失笑する。身体は今のものに戻っていた。
「あんたにそんな言葉を掛けられるなんてね?」
そうだ。と興和は思い出した。
「……有り得ないよ」
空が赤く染まり始める。この記憶は、違う。
「一冬を過ごし、春が僕に狩った血塗れのあんたと、ツツジを覚えているのに」
ぎゅぅ、と拳を握りしめると、ぐしゃぐしゃに世界が崩れ始めた。
血のような雨が降り注ぎ、ざくりと指に痛みが走る。
雨が靄を払い、世界が晴れてゆく。気が付けば、興和は今治の街で、写真の前に立っていた。
自身の牙で噛み裂いた指からぽたぽたと血が垂れる。興和は自らを傷付けることで、現実へと舞い戻ったのだ。
それに気が付いた写真がひらりと舞い、その場を離れようとする。
「逃がさない」
ひゅん、と腕から逆鱗が飛び、写真を貫いた。写真の幻惑にかかる前からあらかじめ用意していた策である。逆鱗から繋がった墨糸が写真を囲い込む。
「イグニッション。八糸、禍炎」
その合図とともに、八連の白熱火矢が写真に落ちた。写真は為す術もなく炎に焼かれ、あっという間に燃え尽きてしまうのであった。
「だから苦手なんだ」
跡形もなく消え去った写真のあったところに背を向けて、興和は一人ごちた。
大成功
🔵🔵🔵
チェルシー・キャタモール
酷く胸騒ぎがする
でもたくさんの人が危険に晒されているんだもの
早く助けに行かなくちゃ!
……それで、ここが精神世界かしら
見えたのはリリスが繰り広げるような宴の景色
でもその中央にいるのはリリスじゃない
中央にいるのは……私?
私が本当は人を傷付けるような魔の者で
ただ他人を餌としか認識してなくて
あの恐ろしい揺籠の君のような存在で……
失った記憶がそうだったら、と恐れていた光景が目の前にあるのに
何故だか飲み込まれそうで……
……でも、恐れるだけじゃ駄目
私は私の正体が分からない
本当は人を貪る魔の者かもしれない
でも、今ここにいる私は猟兵よ!
悪夢には悪夢で立ち向かう
呼び出したナイトメアに全て蹴散らさせて先へと進むわ!
「うぅ……」
チェルシー・キャタモール(うつつ夢・f36420)は胸をおさえつつ、嫌な予感に身をすくめた。
今治に降りた時から、酷い胸騒ぎが続いている。それでもチェルシーが顔を上げるのは、使命を果たす為。
「たくさんの人が危険に晒されているんだもの。早く助けに行かなくちゃ!」
その為にも、まずは人に偽りの記憶を見せるという写真を退治せねば。
そう意気込んで歩を進めるチェルシーの周囲が暗く、淀み始めた。
チェルシーは不思議に思いながらも、その歩みを止めることが出来なくなっていた。
そうして歩き続けるチェルシーの耳に、小刻みな男女の声が響き始めた。
「あれは……」
チェルシーの前に広がっていたのは、享楽に耽るリリス達と、それに踊らされ、快楽を貪る人々の姿。
その光景は、まさしくこれから阻止をしようという『悦楽の宴』そのもののようであった。
だが、そのような退廃的な宴の中で、チェルシーが一際目に留まった存在がいた。
その宴の中心に座し、全てを支配するもの。それはリリスではなく。
「……私?」
そこにいたのは、蠱惑的な笑みを浮かべるチェルシーの姿であった。
「ふふ……」
記憶の中のチェルシーは、人々を餌としか考えていなかった。
記憶の中のチェルシーは、人を堕落させることを悦びとしていた。
記憶の中のチェルシーは、まるで、揺籠の君のようであった。
「そう、あなたはそういう存在」
チェルシーがチェルシーに語り掛ける。その言葉に、チェルシーは無意識に頷きそうになる。
これは偽りの記憶の筈だ。だが、過去を知らないチェルシーにとって、誰が偽りだと教えられよう。
そうだ。これが正しい姿。そう言い聞かされているような感覚。飲み込まれてしまうような感覚。
――だが。
「……だめ!」
チェルシーは首を振った。
「そう、本当は人を貪る魔の者かもしれない……」
そう考えれば考える程に自らを恐れる心は膨れ上がってゆく。しかし、それでも。
「今ここにいる私は猟兵よ!」
そう叫び、迫り来る闇へ向かい、チェルシーはキッと睨みつける。
「悪夢には悪夢で立ち向かう」
現れたのは、チェルシーのナイトメア。馬のような姿の怪物が、悪夢を喰らい、闇を祓ってゆく。
その闇の帳が晴れれば、そこは今治の街並み。足元にはビリビリに破れた写真があった。
「私は先に進むわ!」
そうだ。例え自分が何者であろうと、彼女の果たすべき役目は決まっている。それは過去が決めることではないのだ。
そう心に刻み、チェルシーは進むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
イクシア・レイブラント
公序良俗に従い他の猟兵に迷惑をかけない。偽りの記憶のアドリブOK、お触りはNG。
暖かい日常にて、男女のカップルを見かけることはよくある。
戦闘しか知らない私は男女の付き合い方とか詳しいことは知らない。
でも、そのやり取りは眺めていて心地よい。
それはそうと、そろそろの仕事の通知が来るはずだけど…いや、違う。今が任務中。
論理的思考制御回路が働き[落ち着き][狂気耐性][瞬間思考力]でやるべきことを思い出して。
UC【不撓不屈の翼】で無気力状態の状態異常を反射して無効化。写真を切断処分する。
「鎧装騎兵イクシア、突破完了。これより任務を再開する」
ぽかぽかと暖かな陽だまりの中、公園のベンチには若い男女が座っていた。
手作りのお弁当を間に挟んで、二人は顔を合わせて微笑み合う。
女が箸でおかずをつまんで男に差し出すと、男はあーんと大きく口を開ける。
「心地の良い光景だ」
イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は静かに傍で佇み、それを見守っていた。
戦う事しか知らないイクシアは、男女の付き合い方がよくわからない。だが、それでもイクシアが見守るカップルのような光景は微笑ましく、戦う事以外の感情を沸き立たせるようであった。
だが、そういった中にあっても、イクシアの日常は『任務と戦い』であった。
「そろそろ仕事の通知が来るはずだけど……」
サイバーグラスとコミュニケーターを撫でてみて、故障がないことを確認するイクシア。
そういえば、どんな任務だって聞いていたっけ、と、事前情報を思い返したところで、イクシアはふと違和感を覚えた。
「ここは……どこだ?」
公園のベンチに座る若い男女が、お弁当のおかずをつまんで『あーん』をしている。
心地の良い光景だ。そのようなカップルの姿には戦う以外の感情を沸き立たせる。
「いや、違う」
公園のベンチに座る男女がお弁当のおかずをつまんだ。
その光景に、イクシアはやるべきことを思い出した。
「……今が任務中だ」
その時、イクシアの背から翡翠色に輝く翼が発現した。その輝きは、偽りで覆われた世界を剥がしてゆく。
「羽搏け翼……」
その言葉と共に、イクシアが飛び上がる。剥がれゆく世界の端に向かって突き進みながら、フォースブレイドを構える。
イクシアは気付いていた。消えゆく世界の先に『任務』があることを。
フォースブレイドを大きく振り下ろし、世界を一刀両断に切り裂いた。
すると、はらりと2枚に分かれた空を舞った。それと同時にイクシアが見る景色が、今治の街へと変わり、あの世界が精神世界であったと実感させた。
イクシアは再び剣を振い、写真を細切れに切り裂くと、凛とした表情で告げた。
「鎧装騎兵イクシア、突破完了。これより任務を再開する」
大成功
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第2章 集団戦
『ファントムミラージュガール』
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POW : 夢魔の檻
レベルm半径内を【濃密な桃色の霧】で覆い、[濃密な桃色の霧]に触れた敵から【生物か非生物を問わずに精気】を吸収する。
SPD : 避けられぬお約束
【よーく絡まった桃色の運命の糸】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【社会的ダメージを負う事故】を誘発する効果」を付与する。
WIZ : 揺蕩う欲望
【悟らないと耐えられない桃色のオーラ】を放ち、命中した敵を【思春期のように悶々とした情動】に包み継続ダメージを与える。自身が【体表の80%以上を露出(ソックスは除く)】していると威力アップ。
イラスト:赤霧天樹
👑11
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今治の街で人々を襲うオブリビオン達は撃退出来た。
これで新たに捕らえられる者はいなくなるだろう。
ならば、次は既に捕らわれている者達を解放しなくてはならない。
猟兵達は『悦楽の宴』の会場とされている体育館へと足を踏み入れた。
入口の扉をひらけば、むわっと据えた臭いとともに、悲鳴にも似た喘ぎ声、肉同士のぶつかり合う音が飛び出してくる。
体育館の中では、誰もが自らの身を顧みず、ただひたすらに享楽に耽っている人々の蠢く、おぞましい光景が広がっていた。
「あら、新しい人ぉ?」
そんな宴を楽しそうに監視するリリスが、猟兵達に目を向けた。
「違いそうね。だって目がまっすぐだもの」
悦楽の宴に奉仕されられている男女の目は、誰もが虚ろだ。そんな顔と猟兵達を見比べて、リリス『ファントムミラージュガール』は笑う。
「でも、美味しそう♪」
体育館に潜むリリス達が、人々の中から、二階から、倉庫の中から、望まない闖入者を覗き込み、臨戦態勢に入る。
悦楽の宴を止めるべく、猟兵達の戦いが再び始まる!
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
多重詠唱結界術で
拠点構築して一般人を
救助活動。異空間内では
多重詠唱式神使い達が保護した一般人を
多重詠唱医術、催眠術、読心術でケアしてるわ。ま、私の医術は房中術も含むので望まれればそっちで
エネルギー充填で元気にもするわ。
さて、
ファントムミラージュガール達とってもおいしそう❤
ゆりゆりの前にちょっとつまみ食いしてもいいわよね♪
サイキックヴァンパイア式戦闘料理でクリームパイ(比喩)を作りましょ❤分身達と股間から生やしたパラサイトテンタクルでたっぷりとファントムちゃん達にクリームを注ぐわ♪
サイキックヴァンパイア(アイテムの方)の触手状攻性バリアで脳の快楽神経も弄ってー、
マヒ攻撃気絶攻撃ほどの快楽で蹂躙し
大食いするわ♪
快楽エナジー❤
今治の体育館内の状況を見て、アリスは目を細めた。
「ふふ……」
猟兵達の乱入にも目もくれず、肉欲を貪り合う男女。その様子を楽し気に眺め、時にはその宴に混ざるリリス達。
それを取り仕切るファントムミラージュガール達も、どれもアリスにとっては至高の光景だと言えた。
「美味しそう♪」
と、ファントムミラージュガールは言った。だが、それはアリスにとっても同じであり。
「
ゆりゆりの前にちょっとつまみ食いしてもいいわよね♪」
と、アリスはぺろりと舌なめずりをして、アリスとファントムミラージュガール達は互いに距離を詰めてゆくのであった。
アリスが一歩、二歩と進むにつれて姿がブレる。一人が二人に、二人が三人にと姿を増やし、多重詠唱と式神を使った分身達だ。
「ふふ、これなーんだ❤」
そんなアリス達が一斉にスカートをたくしあげた。
「きゃっ」
ファントムミラージュガールが歓喜か悲鳴かわからないような声色で小さく叫ぶ。
何故ならアリスのそのスカートの下からは『パラサイトテンタクル』が伸びていたからだ。
「わぁ……おっきぃ……」
思わず頬を赤らめるファントムミラージュガール。そんなリリス達にアリスは嗜虐的に笑い、告げる。
「ふふ、サイキックヴァンパイア式の料理をしてあ・げ・る❤」
「ど、どんな料理されちゃうのぉっ!?」
どき~~ん★ と、これからの行為への期待感に、リリスは胸を膨らませる。だが、それは生半可な気持ちでやってはいけないものであった、と後にリリス達は気付くのである。
「あぁぁあ~~~~っ!?」
「あぁっ、あぁぁっ、やぁんっ」
リリス達の悲鳴にも似た喘ぎ声が聞こえる。
「脳の快楽神経も弄ってー」
ゆらめく触手のようなオーラにファントムミラージュガールの身体が跳ねる。
「ふふ、かわいい❤」
ちゅっとおでこにキスをして、リリスの揺さぶられた脳から快楽物質がどばどばと溢れ出て、腰が抜け、意識が吹き飛んでしまう。
「あぁっ、あああっ」
「うふっ、ふふ、クリームパイの出来上がり♪」
ぐったりしたファントムミラージュガールの体にクリームが注がれた。そこから生まれる快楽エナジーをぱくりと食べて、アリスは舌をぺろりと舐める。
「えっちなのうみそおいしいです❤」
そんな光景を傍から見ていた残りのファントムミラージュガール達は目を輝かせた。
「す、すっごぉい……」
その空気にリリスですらあてられてしまったか、頬を染めつつ、自身が満たされたいという欲を湧き上がらせる。
「私達も……」
手早く、手頃な一般人でも相手にしよう、と周囲に目を向け、口をあんぐりと空けた。
「ど、どうして!?」
周囲に、いつの間にやら一般人がいなかったのである。
「うふふ、こっちよ」
そんな声が聞こえて顔を向ければ、そこにはアリスがいた。いいや、本人は今リリス達と戦っている以上、彼女は分身だろう。アリスの分身は、彼女が作った異空間に一般人たちを避難させていたのだ。
「悪いけど、ケアは任せて貰うわよ♪」
「あ、ちょっ!」
追いかけるファントムミラージュガールであったが、アリスの作った異空間の入り口はあっさり閉じて、一般人たちは無事に安全な場所に保護されるのであった。
「さぁて……」
異空間の中のアリスは、ぐったりとした一般人たちを見下ろして精神のケアを図り始めた。
リリスの香気から離れれば、徐々に正常な意識に戻っていくだろうが……。
「ふふ、リリスから離れてもまだそんななの?」
そんな中でも、まだまだ濃い気にあてられている一般人に対しては、アリスもまた、少しリリス的なやり方で
エネルギー充填で元気にさせてあげるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
ああ、皆で愛し合って。羨ましい。下腹部が疼く……。出来ればあたしも混ざりたいけど……ここは助けなきゃいけないところなのよね。ぐっと我慢して、戦闘に臨むわ。
アヤメ、羅睺、一般人を体育館の外へ連れ出して。
あたしはオブリビオンの相手をする。
「全力魔法」炎の「属性攻撃」「破魔」で不動明王火界咒を手近な個体から攻撃していく。熱くなりましょ!
オブリビオンの濃密な霧は、封魔装甲『アルマドゥラ』の機能と、「オーラ防御」「結界術」で身体に触れないように。
一般人の連れ出しに手を避けないよう、派手に暴れるわ。距離が詰まったら、「斬撃波」を放つ薙刀で「なぎ払い」「串刺し」にしていく。
リリスか、本当やりづらい相手だわ。
「あぁ……皆で愛し合って……」
ゆかりが『悦楽の宴』を続ける人々の姿に、羨望のまなざしを送る。
彼らはリリスの魔力で、周囲を顧みることなくただ快楽だけを貪っている。猟兵達の乱入などは、眼前の悦楽の前には些末な事なのだ。
「ふふ、混ざりたい?」
そんな視線に気付いたファントムミラージュガール達がにやにやとした笑みを浮かべながら聞く。
その背後からは甘く鼻にかかった嬌声が響き、むわっとした汗のにおいが漂ってくる。
「……っ」
図星だった。これがオブリビオン絡みでなければ或いは、などと考えてしまう思考を振り払って、ゆかりはぐっと目を閉じ、式神に告げた。
「アヤメ、羅睺、あの人達を体育館の外へ連れ出して」
そしてゆかりは目を見開くと、きっとファントムミラージュガールを睨む。
「あたしはオブリビオンの相手をする」
白紙のトランプを構えて、ゆかりは不敵に笑うのであった。
「逃がさないわよぉ♪」
ファントムミラージュガールの周囲から桃色の霧が漂い始めた。霧は救助活動を行う式神達へと広がってゆくが、それを突如として上がった炎が遮った。
「人の相手をしてる時によそ見はよくないわね」
ゆかりが言う。炎は彼女の生み出した不浄を灼く炎。
「もう、何よこの炎!」
鬱陶しそうに炎を振り払おうとするファントムミラージュガールにゆかりは肉薄し、笑ってみせる。
「ほら、あたしと熱くなりましょ!」
その挑発に乗るようにファントムミラージュガールがぺろりと唇を舐める。
「なら、ぜぇんぶ受け取って♪」
ファントムミラージュガールから濃密な霧が吹き出す。今までの比ではないほどの濃霧は一度触れれば失神してしまう程だろう。だが。
「効かないわ!」
ゆかりが薙刀を抜いて告げる。
「どうしてぇ!?」
それはゆかりの封魔装甲『アルマドゥラ』のおかげであった。ナノマシンアーマーに加え、重ねられたゆかりのオーラや結界術が、霧の影響は最小限に抑えたのだ。
完全に虚を突かれたファントムミラージュガールに、ゆかりが薙刀を横薙ぎに払う。
「あぁっ
……!!」
ファントムミラージュガールの肌が切り裂かれ、小さく悲鳴を上げる。
「リリスか……本当にやり辛い相手だわ」
ゆかりはそうぼやきながら、ファントムミラージュガールを刃で突き刺すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
イクシア・レイブラント
センシティブな場所だけど、私は公序良俗に従い他の猟兵に迷惑をかけない。行為NG。
* * *
「…っ!? この状況は、なに…?」
初めて目にしてしまった光景。知識と経験がなくても判断はできる。これらはすべてが毒。流されてはダメ。
私は体育館の中央へ飛ぶ。
揺蕩う欲望による情動を、倫理回路の[狂気耐性][呪詛耐性][落ち着き]で耐えつつ、[おびき寄せ]で寄ってきたリリスたちの攻撃を[瞬間判断力][見切り][空中機動]などで凌ぎ、大型フォースブレイドで[空中戦][鎧防御無視][なぎ払い]。
「こういう使い方は初めてだけど、やってみる」
温存していたサイキックエナジーを使ってUC、『悦楽の宴』を止めてみる。
「……っ!?」
体育館に入ったイクシアは、その光景に目を疑った。
リリス達によって『悦楽の宴』の奉仕を続ける男女の姿。一糸纏わぬ者達が虚ろな表情でただひたすらに肉欲を貪る様子。それはイクシアにとっては初めて見る光景であった。
「この状況は、なに……?」
戸惑うイクシア。彼らが何をしているのか、知識も経験もないイクシアには理解が出来ない。だが、それが『毒』であることは判断できた。
「……流されてはダメ」
そう言い、イクシアが飛ぶ。一般人たちの頭上を飛び越え、体育館の中央へと着地すると、この宴の主であるファントムミラージュガール達の視線が一手に集まった。
「うふふ、ウブな子が来たみたい♪」
笑うファントムミラージュガール。
「イイコト、教えてあげよっか?」
にやにやと笑うファントムミラージュガールから、桃色のオーラが放たれ始める。
下着同然の姿であるファントムミラージュガール達の肌から染み出るオーラは濃密で、その作用によってイクシアは情動を掻き立てられる。だが。
「必要ないよ」
イクシアが首を振る。
「じゃあ無理矢理教えちゃおっかな?」
微笑みながら、ファントムミラージュガール達が近付いてくる。手を広げて、抱擁を求めるようなポーズ。
既に桃色のオーラの中にいるイクシアの欲望は、いくら耐えていようと僅かなきっかけで崩壊する。リリスの色香に抗う術はなく、あとは絡め取られるだけ、の筈であった。
「待っていたよ」
「えっ……?」
ファントムミラージュガールが驚愕する。イクシアの姿が消えたのだ。瞬間、足元に影が落ちていることに気が付いたファントムミラージュガールが顔を上げると、そこには大型フォースブレイドを構えたイクシアの姿があった。
「うそっ
……!?」
何故、とでも言わんばかりの表情のままに、ファントムミラージュガールがフォースブレイドによって切り裂かれた。
それはイクシアに備えられた論理的思考制御回路の賜物であった。倫理回路とも言えるその回路が、イクシアの精神的な堕落や暴走を抑制したのであった。
ファントムミラージュガール達は骸の海に消えたが、未だ人々は享楽に耽っていた。これを止め、人々を元に戻さなければ本当の勝利とは言えないだろう。
「こういう使い方は初めてだけど、やってみる」
イクシアは体育館の中央で、サイキックエナジーを集中させる。すると、青白い光がイクシアを淡く包み始めた。
「思考接続……」
光が体育館に広がってゆく。その光に、不意に人々の目が向いた。
『――眠りなさい――』
イクシアの声が頭の中で響き渡り、人々はその場でこてんと倒れ込む。
次々と倒れてゆく彼らの表情は穏やかで、彼らが地獄の快楽から解放されたことが示されていた。
大成功
🔵🔵🔵
把繰理乃・えんら
今更ですがここは私がいていい場所なんでしょうか……一応14歳なのですが
いえまぁ考えていても仕方がありません、早々にどうにかしましょう
ちょっと、気が変になりそうですし
まずはこの、えっと……宴、そう宴を止めましょう
UC使用、これでこの場にいる者全ての体がねじ曲がります
そう簡単に適応できるものでもないですしこれでその……あの、そう行為、行為は止まるはずです
先程より凄まじい絵面ですけれど死にはしませんよ
後はリリスの処理ですね
私は落ち着いて体の曲がり具合の情報収集をしまともに動けないであろうリリス達へ向けてバグッテルシューターのレーザー射撃、近寄れそうならバグルケインで斬りつけ鎧無視の貫通攻撃を行います
「今更ですがここは私がいていい場所なんでしょうか……一応14歳なのですが」
リリス達による『餌場』である体育館は、未成年には少々目に毒な光景が広がっていた。
今治の街中から連れ去られた一般人達が、理性を吹き飛ばし、本能のみを解放した『悦楽の宴』を行っている。
「まずはこの、えっと……宴、そう宴を止めましょう」
14歳には刺激的過ぎる光景に、えんらは僅かに頬を赤らめながらそう決める。
考えても仕方がない、そんな時間があるならば、この状況を早々にどうにかするべきだと考えたのだ。
(「ちょっと、気が変になりそうですし」)
そうしてえんらはいそいそとユーベルコードを起動する。すると。
「えっ」
「きゃっ!?」
えんらを中心に、宴に耽っていた人々やリリスの関節がぐにゃりと捻じ曲がった。
「な、なぁにこれぇぇっ!?」
「これでその……あの、そう行為、行為は止まるはずです」
これこそがえんらの『崩壊型行動制限バグ』。関節という関節を、イっちゃいけない方向に曲げてしまうバグが発生する世界に変えたのだ。
痛みもなければこれによる不調も起こらない。いたって健康なので絵面はかなりヤバイ。絡み合う男女がそれぞれ変な方向に関節を曲げたりしているので、別の意味で絡み合ったりしている。
しかし確かに、これではうまく身体を動かすことが出来ないので自然と宴は収まっていくはずだ。
「それに、死にはしません。……後はリリスの処理ですね」
強引に宴を止めたえんらが向き直る。なお、えんらもこの世界の法則に漏れず、身体が変な方向に曲がっている。
しかし、えんらにとってはこの世界の法則など慣れたもの。曲がった関節の具合を確認し、誰よりも早く適応を終える。
「さぁ、行きますよ」
バグッテルシューターを手に、えんらがリリス達へと向かってゆく。
「うっそぉ、どうしたらいいのこれぇ?」
「あ、でもなんか新しい体位生まれそうなカンジ……」
リリス達も徐々に適応を始めようとしていたが、それでは遅い。
「きゃぁっ!?」
えんらのレーザー射撃の直撃を受けて、ファントムミラージュガールが悶え苦しむ。
「トドメです」
「ひぃっ!?」
えんらがファントムミラージュガールへと飛び掛かる。手にはバグルケイン。関節が変な方向に曲がっているにも関わらず、えんらは器用にリリスを斬りつけ、刺し貫き、骸の海へと還すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
チェルシー・キャタモール
……酷い光景ね
でも貴女達も「そうしないと生きられない存在」だものね
多少は同情するわ
けれど決して見逃したりはしない
いいわ、貴女達の好みそうな手段で戦ってあげる
オーラは出来れば回避しに行くけれど、受けてしまったら諦めるわ
うう、変な気分になるのは嫌ね
でもお陰で……迫ってくる相手に抵抗がない
貴女達が好んでいるのは肌の接触でしょう?
それなら素直に抱きしめてあげましょうか
一般人に手を出され続けるよりマシだもの
けれど私もサキュバスよ
抱きしめ合えばUCを発動し生命力を奪い取る
そんな肌を出した格好してるからこうなるのよ
夢見たままで消え去りなさい
奪い取った生命力は一般人の治療に使うわ
一人でも多く助けないと……
「……酷い光景ね」
体育館の光景を前に、チェルシーが吐き捨てるように呟いた。内部では連れ去られた男女が一糸纏わぬ姿で絡み合い、『悦楽の宴』を繰り広げている。
チェルシーは瞼を僅かに伏せて、その『悦楽の宴』を仕切るファントムミラージュガール達を一瞥する。
「でも貴女達も『そうしないと生きられない存在』だものね。多少は同情するわ」
そんな言葉に、ファントムミラージュガールは首を捻り、ぱちんとウィンクをしてみせる。
「そうかなぁ? とっても楽しいわよ?」
宿命でそうあらねばならないとしても、リリス達にとってはそれこそが生きがいであったようだ。そんな様子にチェルシーは溜息一つ。
「……いいわ、貴女達の好みそうな手段で戦ってあげる」
決して見逃したりはしない。そんな決意でチェルシーはリリス達に立ち向かうのであった。
「ふふ、貴女も楽しみましょうよ♪」
ファントムミラージュガールから桃色のオーラが噴き出した。常に肌を晒すリリス達から放たれるオーラは濃密で、チェルシーを包み込んでゆく。
「うぅ、変な気分になるのは嫌ね……」
悶々とした気持ちがチェルシーの内側から溢れ出る。思春期特有の好奇心が、周囲の宴の様子に刺激され、自然と色々な妄想が浮かび上がってしまう。
「でもお陰で……迫ってくる相手に抵抗が無い」
チェルシーは頬を赤らめながらもファントムミラージュガール達を見た。オーラにあてられたチェルシーに迫り、魅了・篭絡しようという彼女達から逃れようという気持ちが生まれない。
「そうそう、素直になればいいの」
そんなチェルシーの姿を満足そうに見つめながら、ファントムミラージュガールがチェルシーに肉薄する。
「素直に……そうね」
手を広げ、胸元に迎え入れようとするファントムミラージュガールに向かって、チェルシーは自分から身体を預けた。
「一般人に手を出され続けるよりはマシだもの」
リリスの柔肌に、チェルシーの腕が絡みつく。きゅっと細い腕で抱きしめ、互いの体温を感じ取る。
「うふふ、いい子ね」
チェルシーの背に腕を回して、ゆっくりと撫でるファントムミラージュガールの顔を見ず、チェルシーは言った。
「そうかしら」
「えっ……あっ」
がく、とファントムミラージュガールの膝が揺れる。
「私もサキュバスよ」
「あっ……あぁっ……」
チェルシーの抱きしめた腕から、生命力が急激に吸われてゆく。素肌に触れた者から生命力を奪う、チェルシーの力である。ファントムミラージュガールは瞬く間に体力を奪われ、チェルシーを振りほどくことさえ出来ないほどにまで衰弱してゆく。
「そんな肌を出した格好してるからこうなるのよ」
既に抵抗することも、声を発することも出来なくなったファントムミラージュガールに告げる。
「夢見たままで消え去りなさい」
その言葉と共に、チェルシーの胸の内にいたオブリビオンは骸の海へと消えてゆくのであった。
「ふぅ……」
ファントムミラージュガール達を倒し、奪った生命力を溜め込んだチェルシーは一般人たちを見る。
現在もまだ『宴』に耽る者達も、既に仲間の猟兵達が助けた者の中にも、限界を超えた『宴』によって衰弱している者達は多い。
「一人でも多く助けないと……」
そう言い、チェルシーは一人一人の肌に触れ、生命力を分け与えるべく奔走するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
可愛い
娘に美味しそうと言われると悪い気はしないね
恋人最優先は当然だが、ミラージュガールをどうすれば良いかが悟れない…
情動に流され肌を重ねるよ
滴る汗や吐息から精気を奪われダメージを受けるのかな
八重歯を突き立てて吸血し生命力吸収で精気を奪い返します
精気交換とはマニアックだね
決めた
この子をアタシのものにしよう
悟らば盗み攻撃でソックスを脱がして足の裏をくすぐって攻勢に出るぜ
こちょこちょぺろり
服も奪っちゃう
綺麗だよと誘惑
実際に綺麗だよ
全裸状態の桃色オーラを悟りと落ち着きで退け敗北感情を完成させ琥珀の檻に封じるぜ
大事にする、精気の供給も行うと約束するさ
アタシが存命中は現世に留まってくれるかな
「可愛い
娘に美味しそうと言われると悪い気はしないね」
『悦楽の宴』の中、現われた猟兵達にそう言ったファントムミラージュガールを見て、燦はへらりと笑った。
「うふふ、じゃあ、遠慮なく食べちゃお~っと♪」
ファントムミラージュガールもくすくす笑って、桃色のオーラを放ち始める。
「うっ……」
濃密なオーラは燦の情動をかき立て、身体を火照らせる。『悟れ』ばオーラの影響を受けなくなるというが、燦はうーんと悩んでしまう。
(「恋人優先は当然だが、ミラージュガールをどうすれば良いのかが悟れない……」)
そうなってくれば、燦はあぁもういいやと情動に流されるままにファントムミラージュガールへと近付いてゆく。
「うふふ、いただきまぁ~す♪」
ファントムミラージュガールの腕が、燦を抱きしめる。肌と肌が触れ合い、甘い香りが燦の思考を鈍らせる。
「ぁっ……」
滴る汗、吐息。ファントムミラージュガールを感じる燦の身体から精気が漏れる。それをぺろりと舐め取って、ファントムミラージュガールは恍惚の表情を浮かべた。
「ふふふ、美味しい……♪」
「ふぅん、そう?」
ご満悦といったファントムミラージュガールの首筋に、燦の吐息が触れる。そして。
「んっ
……!?」
燦が八重歯を突き出して、首筋に噛みついた。
と歯を突き立てた肌から染み出た血をちゅう、と吸い上げ、燦が精気を奪い返す。
「はぁう……っ」
「精気交換とはマニアックだね」
精気を奪われ顔を赤らめるファントムミラージュガールを見ながら、燦がぺろりと唇を舐める。そして互いに肌を重ねたまま、燦はファントムミラージュガールの耳元で囁く。
「決めた。お前をアタシのものにする」
「ひんっ!?」
吐息と共に告げられた宣言に、ファントムミラージュガールの背筋のぞくぞくと電撃が走る。その隙に燦の手は太腿に触れ、そのままゆっくり……ソックスへと手にかけた。
「そ、ソックスはだめぇっ!?」
謎のこだわりか、いやいや首を振るファントムミラージュガールを無視して、燦がするりと脱がし切る。
「なんでさ、可愛いぜ?」
そんな燦の誘惑の言葉に顔を真っ赤にするファントムミラージュガール。燦はさらに足の裏をこちょこちょとくすぐって、ぺろりと舐めてやる。
「や、やぁんっ」
くすぐったさに身悶えするファントムミラージュガールに、燦はさらに手早く、服も奪い去ってしまう。
あっという間に全裸にされてしまったファントムミラージュガールに、燦が笑いかける。
「綺麗だよ」
本心からの言葉を感じ、ファントムミラージュガールが恥じらい顔を背ける。
もはや桃色のオーラは燦に効果を為していなかった。その濃度は濃くなったが、とっくに思春期の情動などを越えた、悟りの域に達していたのだ。
「あ、や、あ……ああぁぁあ~~~っ」
こうして燦の責めに翻弄され、ファントムミラージュガールは敗北を認めざるを得なかったのであった。
「はぁっ……はぁっ……はぁぁ~~……」
荒く息を吐くファントムミラージュガールに、燦が琥珀をかざす。
「御狐・燦が命ず。符よ禁断の琥珀を召喚し、彼の者を永劫の檻へと誘い給え!」
琥珀から伸びた魔手がファントムミラージュを捕らえる。
「大事にする、精気の供給も行うと約束するさ。だから、アタシが存命中は現世に留まってくれるかな」
そんな誘いにこくりと頷いて、ファントムミラージュガールは琥珀へと閉じ込められるのであった。
ちょっとした脱線のようでもあったが、これでリリスは一人減った。これも悦楽の宴を止め、一般人を解放する第一歩となったのは間違いないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
あの幻術で誑し込まれるとこうなる訳か…大人になってまであのひとに弄ばれ無くて良かったよ
にしても…ひどい有様だ
ここまで肉欲への没頭は単なる苦行だろう
監視者の貴方達が消えればこの人間達も正気に戻れるのかい?
UCの飛斬帽を敵へ【集中力で追跡、切断も狙い】攻撃
近い敵には三砂の嘴で【なぎ払い】返す石突きで突きあげ距離取り逆鱗を【毒も使い威嚇射撃】
不意打ちには【咄嗟の一撃】で飛斬帽や三砂使い【重量攻撃】返す
人間踏まぬよう【悪路走破】活用
>敵UC
この霧を避けるのは難儀か…
人間を狩って精気を抜くのは僕らもやったよ
あなた方とはやり方は違うがね
盗られたら報復しよう
【狩猟、捕食】使い喉笛や相手の体を食い破る気で反撃
「あの幻術で誑し込まれるとこうなる訳か……」
『悦楽の宴』が繰り広げられる体育館内の光景に、興和は目を丸くした。
「大人になってまであの人に弄ばれなくて良かったよ」
先程の戦いを思い返して一人ごちた後、興和は改めて宴の様子を見渡す。
「にしても……酷い有り様だ。ここまでの肉欲への没頭は単なる苦行だろう」
現に、快楽を貪り続ける人々の顔には衰弱の兆しが見えた。寝食を忘れて行為に耽る彼らは、リリス達の力によってそれ以外を考えることが出来なくなっているのだ。
そんな宴の中で笑うファントムミラージュガールに目を向けて、興和が問う。
「監視者の貴方達が消えればこの人間達も正気に戻れるのかい?」
だが、ファントムミラージュガール達は顔を見合わせて笑うばかり。
「そんなこと考える必要ないんじゃなあい?」
その言葉と共に、ファントムミラージュガール達の周辺からむわっと濃密な桃色の霧が立ち込め始める。
「だってあなたも皆あの子達と一緒になっちゃうんだから♪」
リリス達がふらりと興和へと近付いてゆく。その自然な動作に接近を許す興和であったが、咄嗟に飛斬帽と逆鱗を投げ、三砂を振って距離を取る。
「やぁん、もう危ないじゃないっ」
ぶーぶーとファントムミラージュガールによるブーイングも意に介さず、興和は飛斬帽を手元に戻す。
(「……この霧を避けるのは難儀か……」)
幾ばくかの精気を奪い取られ、疲労感が興和を襲う。だが、同時に懐かしさを覚えてふっと笑い、告げる。
「人間を狩って精気を抜くのは僕らもやったよ」
興和は足元でまぐわい続ける一般人達を避けながら、ゆっくりと間合いを取る。
「あなた方とはやり方が違うがね」
そして、興和は飛斬帽を投げつける。
「盗られたら報復しよう」
「きゃあっ!?」
飛斬帽に炎が宿る。飛斬帽に取り付けられた刃が、回転の摩擦熱で燃え上がったのだ。
「飛斬の笠を繰るは、我ら鋏角衆の得手とするところ」
そう言い、興和は飛斬帽を縦横無尽に操ってゆく。いくらファントムミラージュガールがそれを避けても、飛斬帽は追跡を続け、敵を切り裂き、傷口を焼く。
「い、いやぁっ!!」
悲鳴を上げるファントムミラージュガールに向かい、興和が距離を詰める。
三砂で薙ぎ、喉笛を食い千切る。
これが鋏角衆の精気の抜き方であった。
「あっ……うぅ……!」
ファントムミラージュガールが力を失い、骸の海へと還ってゆく。
人々は未だ宴の最中であったが、リリスの力が弱まったのか、徐々に動きが緩慢になってゆく。この場から全てのリリスが消えれば、きっと彼らは解放されるだろう。
興和は飛斬帽を手元に戻し、新たなリリスへと向かってゆくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
マオ・イェンフー
【魎夜/f35256】
▼心情
普段女を殴る趣味は無いが、家族の仇たるリリスの所業は虫唾が走る
一般人が鬼畜の所業に襲われるのは我慢ならないが、頭は冷静に
我を忘れれば足元を掬われる
魎夜…冗談はその辺にしとけ
ここからでも分かる嫌な匂いだ…いくぞ(イグニッションカードを準備し)
「やはり好かんな…」
「クイックドロウ」で二丁拳銃を抜き打ちしつつ距離を保ち「二回攻撃」で交戦。
誘惑は怒りと痛みで耐える
魎夜と連携しつつ隙を見てUC雷神をチャージ。威力を底上げして仕掛ける
「充分だ!食らえ雷神!」
暗都・魎夜
【マオ/f36169】
【心情】
改めてだが、やっぱり今治は相性が良くないぜ
リリスの質も色んな意味で高いし、帰ってもいいかな?
※昔、今治の戦いで大けがしたことから苦手
「分かってるよ。"退路は前にしか無い"ってな。行くぜ、イグニッション!」
半分位は本気なんだけどな
【戦闘】
リリスの武器、ここに極まれり、ってタイプだぜ
かわいい女の子と戦うのは趣味じゃねえが、これは手を抜くわけにはいかねえな
距離を取って「斬撃波」で攻撃
「見切り」とUCで回避
「ガキの頃ならいざ知らず、今更社会ダメージは勘弁してくれ」
マオがUCを発動するタイミングでこちらもUCを用いてオブリビオンに肉薄して隙を作る
「今だ、決めちまえ!」
●
「改めてだが……やっぱり今治は相性が良くないぜ」
魎夜が体育館の前でぼやく。
魎夜は当時の銀誓館学園生徒であり、今治解放戦の生き証人でもある。その時受けた大怪我から、どうにも苦手意識を抱いていた。
「リリスの質も色んな意味で高いし、帰ってもいいかな?」
そんなことを聞く魎夜に、マオは窘めるように言う。
「魎夜……冗談はその辺にしとけ」
冷たく張り詰め、しかし激情を秘めた声色だ。
マオにとってリリスは家族の仇である。
(「普段女を殴る趣味はないが……」)
リリスとあれば、話は別だ。彼女らの所業に、マオの虫唾が走る。だがそれでも、努めて冷静に、マオは振る舞っているのだ。
そんなマオの言葉に小さく笑い、魎夜はイグニッションカードを取り出す。
「分かってるよ。"退路は前にしか無い"ってな」
まぁ、半分は本気だけど、と小さく呟く魎夜の隣で、マオもカードを取り出した。
「ここからでも分かる嫌な匂いだ……いくぞ」
「いくぜ!」
「「イグニッション!!」」
●
体育館の中は、脳を麻痺させるような甘くドロドロとした香りに満ちていた。それは人々を惑わし、『悦楽の宴』へと駆り立て、リリスに精気を奪わせる。
「やはり好かんな……」
マオが吐き捨てるように呟いた。
「じゃ、好きにさせてあげる♪」
二人の登場に気付いたファントムミラージュガール達が集まってくる。猟兵達にかなりの得物が減らされてしまったのだから、リリス達にとってもこれ以上なりふり構ってはいられないのだろう。
ファントムミラージュガール達は桃色のオーラを発して猟兵達を包もうとするが、マオはそのオーラが届くよりも早く距離を取り、二丁拳銃での銃撃をお見舞いする。
「きゃっ、いたぁ~いっ!」
傷口を抑えて、ファントムミラージュガールが大げさに痛がる。その様子に、魎夜は挑発するように言う。
「リリスの武器、ここに極まれりってタイプだぜ」
その言葉に、ファントムミラージュガール達の視線が一手に集まった。
標的が魎夜に移ったことを感じ、魎夜は剣を構える。
(「かわいい女の子と戦うのは趣味じゃねえが、これは手を抜くわけにはいかねえな」)
オーラの範囲外から剣を振うと、斬撃波がオーラを切り裂いてファントムミラージュガール達を襲う。
「やん、これ以上乙女の柔肌を傷付けないでっ!」
斬撃を受けながらも、ファントムミラージュガールが小指を立てる。そこに絡まった桃色の運命の糸が、魎夜へと勢い良く放たれた。
当たれば様々な力を得る代わりに、社会的ダメージを負う事故が発生する。魎夜はその糸に絡め取られないよう、水鏡をかざす。
「ガキの頃ならいざ知らず、今更社会ダメージは勘弁してくれ」
背負うものの多くなった29歳の悲哀かもしれない。ともあれ、糸は水鏡に吸い込まれ、異空間へと消えてゆく。
「もうっ、あたしの愛が受け取れないの……って、あら?」
ファントムミラージュガールが呆然と周囲を見渡した。気が付けば、魎夜の姿が消えていたのだ。
「こっちだぜ」
聞こえたのはファントムミラージュガール達の背後。魎夜は水鏡を使って、敵の背後に回ったのだ。
「きゃあっ!?」
不意の、そして至近距離からの斬撃に、ファントムミラージュガールが悲鳴を上げる。だが致命傷には至らない。敵もそれを感じて、即座に反撃を狙おうとした瞬間。
「どうだ!?」
魎夜が叫ぶ。それにマオが呼応する。
「十分だ!」
気が付けば、マオの周囲には眩い生体電流が全身を巡り、激しくスパークしていた。
「今だ、決めちまえ!」
魎夜が叫んだ。同時にマオも叫ぶ。
「これが俺が練り上げた独自のライトニングヴァイパーだ!」
激しい雷が光線となって迸る。魎夜が時間を稼いでくれたおかげで、それは必殺の威力となった。
「食らえ、雷神!」
「きゃあああああーっ!!」
ビームに呑まれ、ファントムミラージュガール達が消えてゆく。これにより、全てのオブリビオンは体育館より駆逐されたのであった。
捕らわれていた人々も、猟兵達による介抱のおかげもあって、少しすれば正気に戻ることが出来るだろう。これで、悦楽の宴を行う会場は潰すことが出来た。
残るは――揺籠の君ただ一人。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『揺籠の君』
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POW : じょおうのこうき
全身を【淫猥な香気】で覆い、自身が敵から受けた【視線】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : さばとをつげるあめ
【甘い桃色の雨】を降らせる事で、戦場全体が【リリスの淫猥儀式場(サバト)】と同じ環境に変化する。[リリスの淫猥儀式場(サバト)]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : いんごくのゆりかご
自身が【戦闘を放棄して】いる間、レベルm半径内の対象全てに【精神侵食】によるダメージか【性的興奮】による治癒を与え続ける。
イラスト:匡吉
👑11
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今治フラワーパークのステージ上で、美男美女達が一心不乱にまぐわっている中心で、一人の少女が座り、その様子をじっくりと眺めていた。
身体を隠す衣服は纏わず、惜しげもなく晒された肌は陶器のように白く、扇情的な体型は情欲を駆り立てた。
「まってました、いぇーがーたち」
たどたどしい口調で、少女が告げる。その瞬間、どす黒く、それでいて甘美な気配が背筋を凍らせた。
彼女こそが、揺籠の君。
びりびりと張り詰める気配と、ひとたび気を抜けば、たちまち脳が痺れてしまうほどの甘い香気が発せられる。一目見ただけで、彼女が強敵であると理解出来た。
「ゆりゆりはあなたたちのあじがしりたいです」
揺籠の君が語る。無垢な口調に、昂りを感じさせていた。
「ほんとうはせいはいをけがすためのたんじゅうとせいえきとあいえきを、いっぱいいっぱいあつめなくちゃいけないんですけど、もうがまんできません」
揺籠の君はゆらりと立ち上がり、猟兵達へと向かってゆく。
「えっちなのうみそあじみさせてください」
村崎・ゆかり
やっと会えた、揺籠の君。淫蕩を極めたりリスの女王。愛し愛され楽土に至りましょう。
あたしののうみそ噌はまだえっちに染まってないよ。食べるには早い。ねぇ、
来て。
「呪詛耐性」と「狂気耐性」があたしの欲情に溺れそうな自我を保ってくれる。
ゆりゆり。あたしを愛して。いっぱいたくさん。そうしたら、あたしもっとえっちになれる。あなたのことも愛してあげる。だから、あたしの
式神にならない?
快楽で焼き切れそうな神経。それもゆりゆりの力が癒やしてくれる。いつまでだって愛し合えるよ。ずっと一緒にいたいな。
でも、式神になってくれないなら、不動金縛り法で動きを止めさせてもらう。
後は他の人たちに任せた。
「やっと会えた、揺籠の君」
ゆかりは揺籠の君の前に立って、待ち侘びたとばかりに告げた。
「放蕩を極めたリリスの女王、愛し愛され楽土に至りましょう」
そうして、手を広げる。揺籠の君に対し、一切の攻撃姿勢を取っていない。
「あたしの脳みそはまだえっちに染まってないよ。食べるには早い。ねぇ、
来て」
その言葉に、揺籠の君がぺろりと唇を舐める。
「いいですよ。えっちないぇーがーはきょうみぶかいです」
揺籠の君がゆかりへ、ふらりと近付いた。
それは、ゆかりが思う以上の快楽であった。
「あ、あああぁっ」
ほんの僅かに肌が触れるだけで、何度でも達してしまう。揺籠の君はそんなゆかりを玩具のように扱い、反応を楽しんでいる。
「……ゆりゆり。あたしを愛してっ……いっぱいたくさん」
ゆかりが息も絶え絶えながらに揺籠の君へと懇願する。そんな声を発するだけでも、喉の奥が痺れて、脚ががくがくと震える。
ただひたすらに快楽を得ることしか考えられなくなる。神経が千切れて焼き切れそうで、それでも身体は求める事しか出来ない。
だからこそ、もっともっと、ゆかりは揺籠の君との共に居たいと思った。
「そうしたら、あっ、あたし……もっと、えっちに……んっ、なれる。あな……った、のこともっ、んんんっ、愛してあげる……っ」
甘い声を発しながら、息も絶え絶えで言葉を紡ぐ。
「だから、あたしの……
式神にならない?」
「それはだめです」
揺籠の君はつぅ、とゆかりの背中を撫でて告げた。
「ひゃぅううっ!」
ゆかりはぞくぞくと弓なりに跳ねて、視界がぱちぱちとスパークする。それでも揺籠の君は愛撫を止めない。
「りりすのやくめも、『ふぉーみゅら』のやくめもそれじゃたりません」
その言葉は確かに、オブリビオンであった。彼女は確かにリリスで、そして世界に破滅を齎す存在なのだ。
揺籠の君からの拒絶に、ゆかりは仕方がない、と霊符を取り出そうとする……が、指がおぼつかない。
「いぇーがーはじょうぶです。のうみそたっぷりえっちでみたしてくださいね」
そこでゆかりは気が付く。今、ゆかりは揺籠の君から性的興奮による癒しを与えられていたのではなかったのだと。
「くぅっ
……!!」
かろうじて残された身体の自由、震える指を必死で動かして、ゆかりは霊符を掲げる。
「ノウマクサンマンダ……バサラダンセン……! ダマカラシャダソワタヤ……ウンタラタカンマン!」
霊符の力が発動し、揺籠の君の全身が縛り上げられる。その隙に、ゆかりは揺籠の君のもとから離れ、大きく息を吐いた。
「あとは……他の人達に……任せた……っ」
揺籠の君から離れても、全身はひどく敏感になっていた。今ならば風がそよぐだけでも大きな快楽を与えられてしまうだろう。
オブリビオンフォーミュラ、揺籠の君。全てのリリスに君臨する存在であることを、猟兵達は改めて実感するのであった。
成功
🔵🔵🔴
イクシア・レイブラント
公序良俗に従い他の猟兵に迷惑をかけない。堕落・性的行為NG
* * *
くぅ…身体が熱い。明らかに負担が大きい。
だけど『悦楽の宴』に囚われた被害者たちはこの負担に長時間晒されている。速やかな安全確保が必要。
フラワーランド、ということは野外…なら、こうする。
私は揺籠の君に捕まる…いや、[おびき寄せ]て抱き着く。
機械の腕でしっかり[グラップル][拘束]して【
最大稼働】。11,000km/hの速度で遠くまで連れていく。
「こちら鎧装騎兵イクシア。揺籠の君を確保、指定座標に援軍を求む」
戦場を変えたら、改めて武器を構える。道中でボロボロになるかもしれないけれど、後続が来るまで戦ってみせる。
今治フラワーパーク。季節に応じて一面に咲き誇る花木を、一年通して楽しむことの出来る公園は、今や花の香りも覆い隠すほどに淫靡な香気に満ち溢れていた。
その香気の主、揺籠の君を前にして、イクシアは顔をしかめた。
「くぅ……身体が熱い。明らかに負担が大きい……」
揺籠の君の香気は、それほどまでに凄まじかった。思考制御回路をフル回転させても、それを上回りそうなほどであり、それはすなわち、揺籠の君の周囲に侍らされた一般人達にも想像を絶する程の負担を敷いていることになる。
「速やかな安全確保が必要……なら」
イクシアが揺籠の君に視線を向けると、揺籠の君は無垢な少女のようににこりと笑い返す。
見つめ返されるだけで、生命力が奪われるような気すらした。だが、それでも目を逸らしてはいけない。
「……こっちよ」
イクシアは武器を構えず、無防備に近い状態で揺籠の君へと対峙した。揺籠の君はそんなイクシアに微笑み続けながら、ゆっくりと近付いてゆく。
「ていこうするぶん、えっちがみちたらおいしくなります」
香気を放ちながら、イクシアに手を伸ばす。そして頬を撫でようとしたその時。
「今……!」
揺籠の君よりも早くイクシアが揺籠の君に抱きついた。しかしそれは抱擁などではない。
「フォースリアクター、イグニション!」
全身に緑色のサイキックエナジーが覆われる。背のユニットが開き、ジェットパックのスラスターが唸りを上げる。
「
最大出力」
揺籠の君を掴みながら、イクシアが天高く飛んで行く。その勢いは時速11,000km/hにも及び、フラワーパークから遠く離れた場所目掛け、二人を運ぶ。
「ゆりゆりもこんなにあついほうようはじめてです」
イクシアに抱かれながら、揺籠の君が恍惚の表情で告げる。しかし。
「でも、かえらせてくださいね」
するりとイクシアの腕の隙間に蛇を這わせ、その腕を振りほどこうとする。
「そうはさせない」
イクシアも拘束を解かれまいと腕に力を籠める。しかし、その結果体勢が崩れ、二人は急降下。墜落をしてしまう。
落ちたのはフラワーパークからほど近い林の中であった。
(「それでも今なら……」)
今フラワーパークは揺籠の君から解放されている。一般人の救出も今なら安全に行えるはずだ。
地上に墜落したイクシアは即座に揺籠の君から離れ、仲間へと通信を送る。
「こちら鎧装騎兵イクシア。揺籠の君を確保、指定座標に援軍を求む」
そうして必要な情報を送った後、ようやくイクシアは武器を構えた。
「いぇーがーはたのしいです。いろんなことで、ゆりゆりをかんじさせてくれます」
揺籠の君もぱんぱんと土を払い、にやりと笑った。
ぞくりと背筋が凍る。これだけの怪物を一人で相手に出来るだろうか?
「けれど……」
フォースブレイドを構えて、イクシアは揺籠の君に立ち向かう。
例えボロボロになろうと、仲間が来るまで戦ってみせる。
そんな強い意思のもと、イクシアは揺籠の君へと向かってゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
マオ・イェンフー
アレンジ歓迎
【魎夜/f35256】
【心情】
相見える機会が出来るとはな…正直言って嬉しいぜ。
在校生時代は叶わなかったが、俺のもっとも嫌いな輩の代表格を黄泉路の向こうに叩き帰す真似が出来るんだからよ。
蛇女にくれてやるほどこの命は安くねーんだよ。(銃撃)
【戦闘】
『超克起動(オーバーロード・イグニッション)』ッ!!
真の姿として周囲に風が吹き荒れロングコートがではためく
リリスに対する怒りと殺意を精神力でねじ伏せ「落ち着き」、「環境耐性」で甘い芳香に惑わされぬよう耐え忍びつつ口を端を噛み切き痛みで「気合」を入れる
「クイックドロウ」「二回攻撃」で魎夜と連携し相手を常に休ませないよう立ち回りつつ、相手からの絡みは「受け流し」魎夜の一撃をアシスト
最後は連携して【白虎絶命拳】をぶち込む
「後ろに飛べ魎夜ッ!」
「許せねぇ。昔からお前等リリスの所業は虫唾が走る!」
「破ァー!」
「(相手が無念そうなら皮肉気に)その表情のが俺は好みだね。あばよ」
戦闘後は魎夜の傍で警戒
危険があれば即座に射撃できるようにして調査を助ける
暗都・魎夜
【マオ/f36169】
【心情】
目の前に現れると、当時からヤバイ奴だったってのが実感できるぜ
追い詰めたなら降伏勧告したい所だが…こいつに限っては無しだな
味が知りたきゃ、望み通り教えてやるよ
お代はいただくがな!
【戦闘】
「俺は、通りすがりの能力者さ、覚えておきな!」
俺は銀誓館とか、猟兵とか、そういう理由で戦う訳じゃない
俺は俺であるため、命を奪う奴と戦う
「見せた夢に関しては、少しだけ感謝してるよ。でも俺が選ぶのは、傷だらけで死と隣り合わせの生き方だ」
生命の力をフルに「リミッター解除」
マオが射撃しやすいよう前線で壁になる
UCに任せた「捨て身の一撃」「斬撃波」で攻撃
傷の痛みは「激痛耐性」「覚悟」「気合い」で耐え
「残像」「ダッシュ」「ジャンプ」を用いた「フェイント」で確実に当てる
「今のは助かったぜ、マオ」
「師匠が言ってたぜ!「仲間の絆は最強の武器」ってな!」
「俺の生命、食いきれるものなら食ってみやがれ!!」
戦闘後は『悦楽の宴』について「情報収集」
聖杯とか調べる一助になれば幸いだ
「正直、マジにキツい」
●再戦
仲間の作戦によって今治フラワーパークの『悦楽の宴』会場から引き剥がされた揺籠の君。
今揺籠の君に力を送り続ける者はおらず、フラワーパークに連れられた人々も、今ならば魅了の力が薄まっているだろう。
「はやくかえらないといけません」
フラワーパークからほど近い林の中で揺籠の君が呟いたその眼前に、二つの影が飛び込んできた。
「相見える機会が出来るとはな……」
「目の前に現れると、当時からヤバイ奴だったってのが実感できるな」
それはマオと魎夜であった。
当時の銀誓館に所属し、揺籠の君を知る二人ではあるが、実際に対峙したのはこれが初めてとなる。
「追い詰めたなら降伏勧告したい所だが……こいつに限っては無しだな」
魎夜の言葉に、マオが頷く。
「正直言って嬉しいぜ。在校生時代は叶わなかったが、俺のもっとも嫌いな輩の代表格を黄泉路の向こうに叩き帰す真似が出来るんだからよ」
マオが皮肉気味に笑って告げる。言葉とは裏腹にその声には怒りを孕ませ、リリスへの憎悪を滲ませていた。
そんな二人に、揺籠の君が口を開く。
「のうりょくしゃ、いいえ、いまはいぇーがーですね」
ぺろりと唇を舐めて、にたりと笑みを浮かべる。
「ゆりゆりは『ふぉーみゅら』なので、おしごともだいじです。しにたくもないしこうふくもしません」
そこまで告げて、揺籠の君は「でも」と続けた。
「いぇーがーがたくさんで、がまんもげんかいです」
ぞわ、と揺籠の君から甘い香気が噴き出した。それは淫猥で、猟兵達の身体を自然と熱くさせる。
揺籠の君に視線が集まると、その度に揺籠の君は強くなってゆく。だが、その視線は欲情の証ではなく。
「……蛇女にくれてやるほど、この命は安くねーんだよ」
マオの放った銃弾が揺籠の君の足元で弾けた。
「味が知りたきゃ、望み通り教えてやるよ」
魎夜がマオの前に歩み出て叫ぶ。
「お代はいただくがな!」
それを合図に、猟兵達の攻撃が始まった。
●激戦
「
超克起動ッ!!」
その叫びと共に、マオの姿が変わってゆく。周囲に風が吹き荒れ、ロングコートが強くはためく。これこそマオの真の姿。リリスに対する怒りを力に変え、二丁拳銃の銃弾を揺籠の君へと叩き込む。
「くすくす」
揺籠の君が笑う。銃弾を避けて近付けば、その香気はさらに強くなってマオを惑わす。
「ぐぅっ……!」
唇を噛み、その誘惑に耐えるマオ。痛みで正気を保ちつつ銃撃を続けるが、その精度は落ちてしまう。そんな弾の雨を難なく掻い潜り、揺籠の君がマオへと肉薄する。
「いただきます」
揺籠の君の手がマオに触れようとした時――。
「させねぇ!」
魎夜が炎の魔剣を振り下ろして、二人を引き剥がした。
「じゃましないでください」
ぶすっとした口調で魎夜に顔を向ける揺籠の君。魎夜は自分を指さし、叫ぶ。
「俺は、通りすがりの能力者さ、覚えておきな!」
流れるような横薙ぎの斬撃に揺籠の君は後退し、再び接近の機会を伺う。
この場に二人しかいない以上、視線による強化は望めないだろう。揺籠の君にとっても戦いにくい場であったことは、二人に幸いしていた。
「見せた夢に関しては、少しだけ感謝してるよ」
互いに間合いを測りながら魎夜が言う。それは今治の街を漂っていた写真のことだ。
あの写真は、何もない日常の学園生活を魎夜に見せてくれた。それは幸せな世界であった。
「でも俺が選ぶのは、傷だらけで死と隣り合わせの生き方だ」
それは魎夜が銀誓館学園の生徒であったからだとか、猟兵だから、とかではない。
「俺が、俺である為に、命を奪う奴と戦う!」
魔剣を掲げ、魎夜が叫ぶ。
「起動せよ、詠唱兵器! 鳴り響け、生命の歌!」
その叫びと共に、魎夜を生命のエネルギーが覆ってゆく。湧き出る生命の炎は、まさに銀誓館が誇る力、生命賛歌。
それを魎夜はユーベルコードで疑似的に起こし、全身に力を漲らせたのだ。
「すてきなかがやきです。せいめいりょくにみちていて、とってもきれい」
惚けたように揺籠の君が言う。
「いくぜぇっ!!」
勢いに任せた斬撃波を魎夜が放つ。だが、揺籠の君はそれを避け、ぐんと距離を詰める。
「後ろに飛べ魎夜!!」
「うぉっとっ!」
マオの言葉を受けて、咄嗟に魎夜が下がると、揺籠の君の手刀が眼前を鋭く過ぎてゆく。
「今のは助かったぜ、マオ」
「油断するな」
マオが銃撃を放ち揺籠の君を牽制する。
「おいしくたべられそうだったのに、ざんねん」
その言葉に、マオが声を荒げた。
「許せねぇ。昔からお前等リリスの所業は虫唾が走る!」
だからこそ、その長を殺さねばならないと心に誓い、マオは銃を放つ。そうして、互いに一進一退の攻防が続いてゆく。
●共鳴
長く思えた戦いも、終わりの時が近付いてきた。
二人の連携攻撃に、揺籠の君が押され始めたのだ。
揺籠の君が2対1でこれだけ戦えたことも驚異的ではあったが、状況を猟兵優位に傾けた最大の要因は、彼らの連携にあっただろう。
「師匠が言ってたぜ! 『仲間の絆は最強の武器』ってな!」
その言葉を裏付けるかのように、魎夜の斬撃が揺籠の君の肌を切り裂いた。
「俺の生命、食いきれるものなら食ってみやがれ!!」
たじろぐ揺籠の君。今こそ最大のチャンス。
「今だ!」
「あぁ!」
魎夜の言葉に、マオが銃を納める。そして揺籠の君へと肉薄すると、指で触れ、一気に練り上げた『気』を放つ。
「破ァー!!」
気のエネルギーが揺籠の君の内部を破壊した。揺籠の君の口から、ごぼりと血が零れる。
「やっぱり、のうりょくしゃも、いぇーがーも、だいすきです」
身体から吹き出る血をそのままに、揺籠の君は笑った。そして、二人のほんの一瞬の隙をつき、揺籠の君は林を突破して逃走してしまう。
おそらく、フラワーパークへと戻ったのであろう。だが、二人は揺籠の君に手傷を負わせることに成功した。それに、フラワーパークには仲間の猟兵達がいる筈で、悦楽の宴に囚われた人々も幾分か解放されている筈。
ならば、この場での討伐もきっと可能であろう。二人は仲間の猟兵達に後を託し、その場で息を吐いた。
「……っくぁはっ
……!!」
魎夜を覆っていた生命賛歌の力が消え、これまでに負っていた傷や疲労が一気に押し寄せる。ふらふらと体勢を崩し、魎夜は尻餅をついた。
「大丈夫か」
「正直、マジにキツい」
マオの問いに、魎夜が笑って答えた。とはいえ、このままのんびりとはしていられない、と魎夜は立ち上がる。
「今のうちに『悦楽の宴』について、調べてみようぜ。聖杯とか調べる一助になるかも」
揺籠の君はオブリビオンフォーミュラとして復活し、聖杯を目指していた。その聖杯がこの世界の破滅にどうつながるのか、調べてみる価値はあるだろう。
とはいえ、今はまだ戦いの最中。マオは拳銃を構えて周囲を警戒をしながら、情報収集に勤しむのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
四王天・燦
綺麗だね
体液の汚れが少ない
お眼鏡に適う相手がいないのか、愛し方が分からないのかな
ねえ愛ってどう思う?
問いながら一般人女性を夢匣に回収するぜ
野郎は桃色の雨が当たらないところに蹴とばしておきます
淫気に呑まれないよう狂気耐性で心を強く持ち、ナイフで手を切って痛みで意識を覚醒させるよ
一般人を回収したらフェイント交じりのステップでゆりゆりに迫るぜ
グラップルで押し倒し、自傷による血を垂らして飲ませる
情欲の伴わない呪的な性的興奮の血なんて美味しいかい?
淫らで歪な無垢に憐憫を覚えながら髪を撫でるぜ
魂喰らいの接吻で吸血して精気をごっそりと、狂わない程度に僅かに魂を頂くよ
これが精一杯の愛だ
後は安らかに眠れますよう
今治フラワーパークの主無きステージ。
仲間の猟兵によって揺籠の君はステージ外へと運ばれ、『悦楽の宴』に興じていた一般人たちは、僅かながらに自我を取り戻していた。
「ねえ愛ってどう思う?」
燦はそんなことを聞きながら、女性達を夢匣へと導いてゆく。
そんな時、燦の肌をぽつりと水が打った。
「――!」
燦が空を仰ぐと、桃色の雨が降り始めていた。
「おらっ!」
燦は男達を雨の外に蹴り飛ばすと、気配のする方を見やる。
すた、すたと木々の隙間から、甘ったるい香気を漂わせた少女が現れる。
「えっちなうたげはおわらせないです」
ほとんど裸の白い肌に、桃色の水滴が伝って落ちる姿を、燦は美しいと思った。
「えっちないぇーがーさん、さばとへごしょうたいです」
「うぅっ……!」
甘い香りに脳が痺れる。今すぐにでも快楽を貪りたいような衝動に駆られ、燦はナイフを腕に突き立てた。
「……っくぅ
……!!」
痛みが燦の精神を現実へ引き戻す。歯を食いしばり、揺籠の君を睨みつける。
「がまんはからだにどくですよ」
にこりと笑う揺籠の君に、燦の心が揺らぐ。それこそが放蕩たるリリスの頂点、揺籠の君の魅了能力。
火照る身体を無理矢理に動かし、燦が揺籠の君へと駆ける。腕から垂れた血をそのままに、ステップを踏んで組み伏せた。
「――――……」
自らの影が落ちる揺籠の君の顔を見て、燦の心臓が高鳴った。血が沸騰しそうな気になって、それでも腕の痛みを頼りに正気を保てば、肘から垂れたその血を、揺籠の君へと落とす。
揺籠の君はそれをためらわずに、口を開けて飲み込んだ。こくん、と小さく喉を鳴らし、ぺろりと舌で舐めて、揺籠の君は恍惚の笑みを浮かべる。
「情欲の伴わない呪的な性的興奮の血なんて美味しいかい?」
燦の問いに、揺籠の君はさらりと返す。
「こうふんしてればなんでもおいしいです」
その言葉と表情に、燦の息が荒くなる。だが、彼女は淫らで歪で、無垢で、そしてオブリビオンフォーミュラだ。
興奮の中から、憐れな気持ちが湧き上がる。燦は揺籠の君の白く透き通った髪を撫で、顔を近付けた。
「ん……っ」
揺籠の君に口付けをして、燦は熱を感じ取る。仲間達の攻撃で受けた傷から溢れた血を吸い上げて、精気を奪ってゆく。
「……んんっ……っ!!」
ほんの僅かな精気ですら、ぞわぞわと背筋を甘く疼かせる。肌と肌が触れれば溶け合ってしまいそうな気分に陥って、燦は咄嗟に唇を離した。
「はっ……はっ……!」
あまりにも強すぎる淫の気に気圧されながら、燦は荒く息を吐く。
こちらが攻撃をしているはずなのに、一歩間違えれば立場はまるで逆転し、揺籠の君の魅了に完全に嵌ってしまう所であっただろう。
「もっとすなおになってよかったんですよ」
揺籠の君の言葉に、燦は笑い返す。
「これが精一杯の愛だ」
燦の口付けは確かに、揺籠の君の力を削いでいた。
いかに強力なオブリビオンである揺籠の君であっても、じきに光明は見えることを実感した燦は、仲間に後を託し、静かに願った。
(「後は安らかに眠れますように……」)
成功
🔵🔵🔴
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
封印を解く、リミッター解除、オーバーロード、
限界突破、
継戦能力。真の姿を解放した私は何度果てても凌駕して起き上がってみせるわ。
いいえいいえ、ゆりゆりの
快楽エナジーを味わうのは私の方よ。
リリスの淫猥儀式場はいつものスタイルなので適応できる。決闘結界術で戦場を私とゆりゆりの間だけに隔離すれば一般人は護れる、筈よ。
完全なる『夜』の侵蝕、【悪腫摘出】でゆりゆりのオブリビオン因子を摘出し情熱の炎に焚べながら、
多重詠唱医術による
大食いで
エネルギー充填するわよ。
化術肉体改造でゆりゆりに御理解竿を生やしてー、たっぷりとクリームを搾り取ってあげる❤『夜』闇に覆い、『夜』に蕩かし、『夜』に堕として、『夜』が魂を貪る抜かずの129連戦でね♪
ゆりゆりのオブリビオン因子おいしいです❤
桃色の雨のふりしきる今治フラワーパーク。
「さばとをつげるあめです」
その雨を呼び出した主、揺籠の君は、その雨を気持ちよさそうに浴びて告げた。
肌を滴る水滴が揺籠の君の魅惑的な曲線を伝って、彼女の魅了の力をさらに膨れ上がらせた。
「えっちなのうみそあじみさせてください」
その言葉ひとつで、身も心も捧げたくなってしまう。だが、その言葉に乗ってしまっては最後、待っているのは地獄の快楽の果ての死だ。
「いいえいいえ、ゆりゆりの
快楽エナジーを味わうのは私の方よ」
雨に打たれながら、真の姿を解放したアリスが告げる。
桃色の雨に打たれた空間は『リリスの淫猥儀式場』と同じ環境に変わる。それに適応できる者だけがこの環境内で自由に動くことが出来るが、その状態で戦闘を行うのは至難の業と言える。
「けれど、この状況はいつものスタイルよ」
アリスは笑いながら背に結界術を施して、揺籠の君と二人だけの空間を作り出す。
「これで一般人は護れる、筈よ」
僅かに自信が揺らぐ。それは眼前の存在の強大さ、そして享楽に開放的なアリスでさえも飲み込まれそうなほどの淫気がそうさせていた。
「完全なる『夜』に覆い、融かし、堕とし、心魂を掌握し、世界を破壊・停滞させる
オブリビオンの因子を摘出いたしましょう」
「えっちないえーがーはだいすきですよ」
揺籠の君は嬉しそうに笑った。
「たっぷりとクリームを絞ってあげる❤」
アリスが御理解竿と呼ばれるものを揺籠の君へ生やす。揺籠の君はそんな身体の変化を理解しつつ、アリスへと肉薄した。
「あなたはよくぼうにすなおですね」
揺籠の君が耳元で囁く。それだけでぞわぞわと膨れ上がる快楽と、達しそうになるほどの快感がアリスを襲い、肌に触れる指の動きに、嬌声が漏れてしまう。
「あっ、あぁっ、あ……❤」
ぺろりとアリスの耳を舐め、身体を密着させる揺籠の君。
アリスは淫猥儀式に適応したとはいえ、この場そのものがアウェーである以上、利は揺籠の君にあった。アリスは押し寄せる快楽に翻弄され続け、何度も何度も果ててしまう。
だが。
「うふふ……まだ、まだ……❤」
アリスはまだ揺籠の君を求めていた。真の姿となり、限界を超える力を湧き上がらせたアリスは、何度だって立ち上がるのだ。
「いいですよ、たっぷりえっちにしてあげます」
揺籠の君も笑って、再びアリスを愛撫する。
「あぁあぁぁっ❤」
その嬌声は129連戦にも及ぶのであった。
「はぁっ……はぁ……❤」
アリスが顔を上気させ、満足そうな表情で荒く息を吐いた。もう腰も立たない、動くことも出来ない状態だ。
「そろそろいただきます」
揺籠の君がアリスに手をかけようとしたその時、手が止まった。
「……ちょっとつかれました」
揺籠の君が離れてゆく。このままでは殺しきることが出来ないと判断したのだ。
その上で、猟兵達の増援が現れてはいくら揺籠の君と言えどひとたまりもないのだろう。
「ゆりゆりのもくてきはなるべくしなないことですから、がまんです」
それはオブリビオン・フォーミュラとしての役目であった。
離れてゆく揺籠の君を見て、アリスが起き上がる。
「ふふ、えっちなのうみそおいしいです❤」
アリスは荒い息を整えながら、揺籠の君から奪った快楽エナジーを感じながら、お腹をさするのであった。
成功
🔵🔵🔴
把繰理乃・えんら
華蘭お嬢様(f30198)と
加勢に来て頂きました
残念ながら脳は差し上げられません、そもそも私にはあるのかどうかわかりませんが
し、しかしまたこのパターンですか……もう勘弁願いたいです
お嬢様……あの、相変わらず、している方々ですが如何しましょう?
足があるのだから自力で逃げてもらえばいい、ですか
承知致しました、戦法はお嬢様にお任せいたします
お嬢様が化かしを行われるまで私は目立たぬよう屈んで揺籠の君の攻撃範囲の外で待機しておきます
騒ぎが起きたら行動開始です
発見されないよう落ち着いて、しかしダッシュして素早くステージに接近、攻めるお嬢様による混乱に乗じて私は騙し討ちの形で揺籠の君に触れUCを使用します
侵食なら私にもできます
聖杯を穢してどうするのですか、などと繋がった頭の中で質問し続けます
あちらの思考を侵食して動きを鈍らせたらこちらのものです
お嬢様が揺籠の君の注意を惹き付けてくださることですし私もバグルケインを突き刺す貫通攻撃をいたしましょう
はぁ、さすがにもう早く帰りたいです……
隠神・華蘭
えんら(f36793)と
まったく未成年の前でなにやってんですか教育に悪い!
さて、あやつの力の源は醜く盛ってる人間どもですか
面倒ですし己の力でご帰宅願いましょう
あやつの視界に入る前にUC使用、呼んだ狸達を盛ってそうな裸の人間の男女に化けさせます
ついでに天候操作、大雨でも降らせましょう
作戦開始です、先に化けた狸達を必死に逃げてる演技させながらすてーじに走らせます
わたくしは鉈についた雨を血に化術で変え振り回しながらその後ろを追撃です
人間が襲われてる図に見えるように適当に何匹か斬ったふりして倒れてもらいつつですね
前の狸達に『逃げろ!殺されるぞ!』などと叫んでもらってぱにっくを引き起こします
これで人間達は散り散りになってくれるでしょう、後は貴女です
人間狩り(のふりを)しながら迫ってくる異常な猟兵なんて来たら戦闘放棄している場合じゃないでしょう?
鉈で切断、あちらの攻撃は逃げ足すてっぷで回避しながら蛇さんこちらと挑発しわたくしに注目させておきます
えんらが触れる隙を突けるように
あとは侵食を待つだけですね
今治フラワーパークのステージ。それを一望できる物陰で、二人の猟兵が様子を見張っていて。
「ま、またこのパターンですか……もう勘弁願いたいです」
えんらが顔を赤くして言う。揺籠の君を中心とした男女が繰り広げる『悦楽の宴』。その様子はえんらには刺激的だったようだ。
「まったく、未成年の前でなにやってんですか教育に悪い!」
そんなえんらの前にずずいっと割って入って、隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)がぷりぷりと怒りを露わにする。
えんらに乞われ加勢に来たはいいが、あまりにもひどい光景だった。
「お嬢様……あの、相変わらず、している方々ですが如何しましょう?」
えんらが目をうろうろさせながら華蘭へ聞く。
「あやつの力の源は醜く盛っている人間どもですか」
華蘭は揺籠の君の周囲でまぐわい続けている男女を一瞥する。彼らがあの宴の果てに命を落とせば、揺籠の君は力を得てしまう。
「足があるのです。面倒ですし己の力でご帰宅願いましょう」
「承知いたしました。戦法はお嬢様にお任せいたします」
そう言って、華蘭とえんらの二人は揺籠の君へ向かい始めた。
ぽつり、ぽつりと空から雨が降り始めた。
これまでに揺籠の君の降らせた桃色の雨とは違い、普通の雨のようだ。
その雨は次第に強くなり、大雨に変わる。その雨の中、ステージ外の林から裸の男女が慌てた様子で現れる。
「た、助けてくれ!」
「殺されるー!!」
その言葉に、ステージ付近の人達もふと顔を向ける。
その目の先に現れたのは、血の滴る鉈を振り回した華蘭の姿であった。
華蘭は逃げ惑う男一人へ向かって鉈を振り下ろすと、鮮血が雨の中で吹きあがる。
「ひっ……」
「逃げろ、殺されるぞー!!」
「わ、わぁっ!?」
突然の乱入者にパニックになった人々の一部が、それまでしていたことを放棄して走り出す。
実は、林の中から現れた人々は華蘭の呼び出した狸達が化けたものであった。当然、華蘭が切り裂いた男も狸が化けたもので、狸もあくまでやられたふり。
それでも見た目のインパクトは大きかったようで、ステージの外側、揺籠の君から離れた人々を正気に戻したようであった。
だが、揺籠の君の力もまだ強く、そんなことすら気にせず、一心不乱に行為を続ける者達もいたが、宴の規模を確実に減らすことが出来ただろう。
「あめがにおいをよわめてしまいました」
濡れた髪をかきあげて、揺籠の君がアンニュイな表情を向ける。
「それにしてもこれじゃえっちできません」
迫ってくる猟奇殺人鬼(華蘭)は十中八九猟兵だ。罠であろうとなんであろうと、直接攻撃を仕掛けてくる以上は戦闘行為の放棄は出来ない。
「えいやぁっ!!」
そんな華蘭が振り下ろした鉈を揺籠の君は避けると、そのまま手を伸ばして搦め取ろうとする。
「おっとっと」
伸ばした手を逃れ、華蘭が距離を取る。
「蛇さんこちらです!」
そんな風に華蘭が挑発をしながら、揺籠の君を惹きつける。
「ならいっちゃいます」
と、揺籠の君が華蘭へと向かおうとしたその時。ふと、揺籠の君の肌に何かが触れた。
「侵食なら私にもできます」
揺籠の君の背後にいたのは、えんらであった。
えんらの触れたところから、揺籠の君と思考が繋がってゆく。
(「あぁ、いぇーがーのかんがえがわかります」)
(「あぅ
……!!」)
えんらが眉をひそめて顔を赤くする。揺籠の君の思考はどんな状況にあってもどこまでも淫靡で、かえってえんらのほうが侵食させそうであった。
しかし、それでは繋がった意味がない。えんらは意を決し、頭の中で揺籠の君に問いかける。
(「聖杯を穢してどうするのですか」)
(「ふぉーみゅらのしごとをするのです」)
その言葉と共に桃色の雑念が押し寄せる。人々は勿論、仲間の猟兵達、そしてえんらに対する妄想も含まれていて。えんらは更に顔を赤らめる。
しかし、その思考の繋がりは確実に揺籠の君の動きを鈍らせていた。
「今です!」
華蘭が隙を突き、鉈を振り下ろす。そして同時に、えんらもバグルケインを抜いて、揺籠の君へと貫いた。
「あぁ、いたいです、いぇーがーもわたしをかんじさせてくれるのですね」
目を細め、揺籠の君が嬉しそうに言う。だが、まだ死ねないと、猟兵達を払いのける。
揺籠の君もまたかなりのダメージを負っていた。この調子で行けば、撃破も目前のはずだ。
だが、そんな中でくじけそうな人が一人。
「はぁ、さすがにもう早く帰りたいです……」
えんらはそう言って、大きく溜息をつくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
酒井森・興和
笑窪の底の邪(蛇)が怖い、なんて歌もあったが
あの声、佇まいは相変わらずか
出来損ないの旧い鋏角衆に興味は持たないだろうけど【集中力】で惑わされぬよう注意
揺籠の糧をこれ以上増やせないねえ
UC撃ち距離とり【時間稼ぎ】
絡んだ男女を構わず引き剥がし意識があれば脱出促し、無ければ叩いて気付けを
ともかく生きてこの場から離れて貰うよ
余り揺籠の君に接近しないようUCと逆鱗、飛斬帽【投擲で威嚇射撃】する
けど僕自身は明らかにサバト、とやらに適応してるとは…
不意の接近や攻撃には三砂でまず【咄嗟の一撃】
それから…いや、距離を取るだけでは勿体ない
せめて一撃入れよう
【落ち着き】近距離から三砂で【重量(攻撃)乗せ捨て身の一撃】
至近距離で更に【追撃】
牙を立て【捕食】まがいに皮膚食い破り【切断】、拳を撃ち出し→UC使用
取るに足らぬ蜘蛛の残党の僕だけど、貴方の餌になるワケにはいかないな
仕える命や操はそれぞれ捧げた人がいるのでねえ
距離や余裕があれば脱出する人間のフォロー
手遅れの者も捨て置かず離脱時連れる
弔いは人間に任せるけどね
チェルシー・キャタモール
悍ましいのに目が離せない
彼女を見ていると胸がざわつく
……一瞬だけ、羨ましいと思ってしまった
好きに振る舞えるのが、欲望に素直なのが羨ましいって
でもそれ以上に思うのは「許せない」って気持ち
ここにいる人達も外にいた人達も……傷付けたんだもの
私は猟兵として、貴女を倒すわ
揺籠の君の力を削ぐためにも、出来る限り一般人を助けないとね
ウィザードブルームに乗って【空中浮遊】しつつ移動しましょう
精神侵食には負けないようにしっかり意識を保って
いざとなれば自分の身体を軽く傷付けても集中するわ
私は……貴女みたいなはしたない女じゃないもの
敵には常にUCで攻撃し戦闘を完全放棄出来ないように
特に一般人を殺そうとした場合は魔法剣と一緒に突撃してでも止めるわ
貴女の敵は私よ
こっちを見なさい
敵から一般人を引き剥がしたら抱えて離脱
安全な位置まで運ぶ時間はあるかしら?
そうでなくても出来るだけ巻き添えにならない位置へ
一般人の救出を続けつつ絶えずUCで攻撃しましょう
魔力尽きるまで頑張るつもりよ
最後まで……貴女の存在を否定出来るようにね
「笑窪の底の邪(蛇)が怖い、なんて歌もあったが……」
今治フラワーパークのステージを見る興和が、その中央に座る存在を見やる。
「あの声、佇まいは相変わらずか」
揺籠の君。かつて銀誓館と対峙したリリスは、当時の姿のまま、そこにいた。
それがオブリビオンという存在だ。だが、当時を知る興和にとっては何とも言えない感情が湧き上がってくる。
(「出来損ないの旧い鋏角衆に興味は持たないだろうけど……」)
そんな風に自嘲気味に思いながらも、興和は意識を集中する。
空からは桃色の雨が降り始めていた。
ウィザードブルームに乗って空をゆくチェルシーは、足元に広がる光景に目を開いた。
降りしきる桃色の雨の中で、男女が一心不乱に絡み合う。
その様子を眺めて、揺籠の君は笑う。
――悍ましい光景だ。
そう思うのに、チェルシーは目を離すことが出来なかった。
人には耐えがたい快楽を与え、何もかもを魅了する。
放蕩を極めたような揺籠の君の姿に胸がざわついて、チェルシーの思考が纏まらなくなる。
だが、恍惚とした表情で呆ける男へと揺籠の君の腕が伸びた時、チェルシーは咄嗟に、その間に割って入っていた。
「うっ……!」
チェルシーの肩から鮮血が吹きあがる。痛みに顔をしかめるが、視線は逸らさず、歯を食いしばる。
「どうしてですか?」
揺籠の君が首を傾げる。
「……一瞬だけ」
チェルシーは小さく呟く。
「羨ましいと思ってしまった」
口に出すと、認めたくなかった感情が発露する。
「好きに振る舞えるのが、欲望に素直なのが羨ましいって……」
チェルシーは忌々しそうにしながらも、正直に語り続ける。だが、それを告白するからこそ、湧き出る思いもある。
「でも、それ以上に『許せない』って気持ち」
チェルシーは金色の瞳を輝かせ、揺籠の君を睨みつけた。
「ここにいる人達も、外にいた人達も……傷付けたんだもの」
チェルシーはミゼリコルディア・スパーダを発動し、告げる。
「私は猟兵として、貴女を倒すわ」
「ひとのためにきずつくことをためらわない、すてきなこころをもってますね」
揺籠の君が感心したように語る。
「けれどまだあなたをたべたほうがおいしそうです」
その言葉と共に、ぞわっとチェルシーの身体に悪寒と疼きが走る。まるで身も心も捧げてしまいそうな……その時であった。
揺籠の君の脇を、ひゅん、と小さな刃が掠めた。それは興和の放った燕刃刀『逆鱗』であった。
興和は続けて大地に拳を打ち付ける。
戦場に炎が吹きあがり、周囲を包んでゆく。
「さぁ、早く離れるんだ」
興和の言葉に、チェルシーが男性を抱えて離れてゆく。
それを追おうとした揺籠の君との間に、興和の放つ炎が吹きあがる。
「揺籠の糧をこれ以上増やせないねえ」
挑発的に告げると、揺籠の君は興和を見やる。その視線だけでも拳を解いてしまいそうになるが、ぐっと握りなおして、再び大地を叩く。
「まずは彼らからさ」
興和は自分との間にも炎の壁を作り出し、周囲で倒れている男女を担ぎ上げる。
「ほら、しっかりするんだ」
揺籠の君の魅了にかかって呆然としている男女の顔をぱしぱしと叩く。
正気に戻った彼らは、興和の指示に従い、その場を離れてゆく。
生きてこの場から離れられれば僥倖。興和はそれを見送った瞬間に強い淫気に混ざり合った殺気を感じ取って三砂を構えた。
「あのひとたちがいなくなるとこまるんです」
「そうは言ってもねぇ」
三砂で揺籠の君の攻撃を受け止めて、そのまま肌を切り裂いた。
(「再び距離を取らねば……いや」)
揺籠の君との戦いにおいては常に遠距離での戦いを心掛けていた興和。それは、雨によって戦場はリリスの淫猥儀式場(サバト)と同じ環境になっていることにも起因しており、正直、興和はそれに対応しているとは言い難い自覚があった。
だからこそ接近することは危険であると判断していた、のだが。
(「せめて、一撃を」)
肉薄した揺籠の君を睨む。三砂に重量を乗せて振り下ろし、揺籠の君を怯ませる。
「今……!」
だが。
「だいすき」
揺籠の君の言葉が、興和にぞわぞわと電撃を走らせた。
興和の身体の軸がブレる。まずい、そう思ったときには死の気配が興和を支配していた。
「おいしそうないぇーがー、いただきます」
あん、と口を開いた揺籠の君。しかしその瞬間、揺籠の君の脇腹に魔法の剣が突き刺さる。
「おかえりなさい。ゆりゆりはとってもうれしいです」
流れる血をそのままに、揺籠の君が剣の放たれた方向を見る。
そこには、一般人を避難させて戻ってきたチェルシーがいた。
「うれしいけれど、ふたりあいてじゃゆりゆりはしんじゃいますから、ちょっとごはんたべますね」
そう言って揺籠の君は興和から離れ、近くで絡んだままの一般人へと向かってゆく。
「貴女の敵は私よ」
それを咄嗟に、チェルシーの魔法剣が阻む。
「こっちを見なさい」
「じゃあ、あなたがえっちになってください」
にま、と笑う揺籠の君のその瞳が、チェルシーの理性を奪おうとする。
「うっ……く!!」
その魅了の力に耐えながら、チェルシーが浮かべた魔法剣のうち1本を手に取って、腕を裂く。
「私は……貴女みたいなはしたない女じゃないわ」
その痛みで理性を取り戻し、チェルシーは集中力を高めてゆく。
そのまま魔法剣を放つが、揺籠の君はそれを軽々と避ける。
「すごいがんばりです。どこまでがんばるんでしょう」
「魔力尽きるまで頑張るつもりよ、最後まで……貴女の存在を否定できるようにね」
揺籠の君の言葉に、チェルシーは脂汗を流しながら笑う。限界が近い。だが、揺籠の君も度重なる戦闘で、かなりの傷を受けている。
どちらに転ぶにしても、決着はもう間もなくであった。
その時、揺籠の君の背後に興和が肉薄した。
「取るに足らぬ蜘蛛の残党の僕だけど、貴方の餌になるワケにはいかないな」
牙を立てて揺籠の君の皮膚を食い破る。毒気に満ちた血をぶっと吐き出して、拳を握って告げる。
「仕える命や操はそれぞれ捧げた人がいるのでねえ」
拳を打ち付け、炎を放つ。
「八相、烈火!!」
揺籠の君の腹を突き抜けるように炎が上がり、揺籠の君の身を焦がす。
「……――っ!」
決まった。その一撃は確かに、揺籠の君の命の灯火を打ち貫いていた。
「たのしかったです。のうりょくしゃもいえーがーも、やっぱりわたしをたくさんかんじさせてくれます」
揺籠の君は笑って告げた。それはどこまでも無垢で、どこまでも欲望に素直なリリスの姿。
「またあいましょう」
そう言って、揺籠の君は静かに、骸の海へと還っていった。
主が消え、今治全体を覆っていた淫気も徐々に薄れ始めていた。
正気に戻った人々はまるで夢でも見たかのように元の生活へと戻り、この出来事を忘れてゆく。それが世界結界の力なのだ。
だが、強力なオブリビオンは未だに今治の街を襲っている。彼らはまだ、危険に脅かされているのだ。
今治に平穏を取り戻すべく、猟兵達は再び、戦い続ける。
成功
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