●追憶の揺らめき
キマイラフューチャーは世界中が巨大なリゾートになっている。
ポップでキッチュなサイバーパンク都市には様々な遊び場が存在しており、日々キマイラ達が楽しいことの限りを尽くしているワクワクな世界。
リゾート施設のひとつ、『追憶水族館』。
此処は映像技術を駆使して作られた、不思議でイカした水族館だ。
透き通った青の世界に游ぐのは色鮮やかな水棲生物達。
入り口はドーナツ型になった水槽。投影された映像の魚が游ぐトンネルをくぐれば、大きなイカ博士のイメージキャラクターがお出迎え。
一歩でも踏み入れば、其処はヴァーチャルな海の中。
きらきらと煌めく海中には絶滅したはずの魚や、海中に棲んでいる生物達が自由に泳いでいる。もちろんそれは本物ではなく、手を伸ばせば擦り抜けてしまう幻。けれども魚達は本当に生きているように動き、時には此方に近付いてきてくれる。
かつて、生きていたものを忘れないように。
触れられない過去であっても、忘却されないように――追憶を。
そんなコンセプトのもとに作られた場所だが、此処はいつも賑やかで楽しくて、同時に穏やかな雰囲気にも包まれている。
しかし、追憶水族館では不可解なことが起きていた。
来場者が『何かを忘れてしまったような気がする』語ることが多くなっている。キマイラ達には原因が突き止められなかったが――それは、追憶水族館の奥に潜むオブリビオンが仕業だった。
薄暗い雰囲気の深海領域に小さな灯が灯る。
「この記憶は、そんなに大事なものだったのか?」
鉱石ランプを揺らし、掌の中にあるちいさな石の欠片を見下ろしたのはランプリット・リシュアという怪人。揺らめく追憶の灯りに照らされている鉱石。それは此処に訪れた者の記憶を奪い、形と成したもの。
ランプリット・リシュアは悲しげに呟く。
「記憶なんて、こんなにも脆くてすぐに無くなってしまうものなのに」
そして、鉄の鳥籠に入っている数多の鉱石を見下ろした怪人は頭を振った。海の深い色彩の中、鳥籠から鉱石が零れ落ちていく。
忘れられてしまった記憶の欠片。こんなものに意味があるのかと考えるランプリット・リシュアはそのまま、更に奥へと歩いていった。
●記憶の海
「お主達、水族館に遊びに行かぬか?」
キマイラフューチャーの或る都市に楽しい遊び場があるのだと語り、鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)は仲間達を誘う。
その場所の名前は『追憶水族館』。海の中のようなヴァーチャル・リアリティ空間で、投影された魚や海の生き物を見て楽しむリゾート施設だ。
水族館の内部は様々なゾーンに分かれており、それぞれに違った楽しみ方が出来る。
「まずは海中鉄道!」
一番人気は、ディープブルーカラーのレトロな汽車に乗って海を巡る旅を楽しめるコース。透き通った珊瑚礁の海の中を走っていく汽車は窓がない開放的な作りになっており、周囲を泳いでいる魚達が汽車内に入ってくる。
投影映像なので触ろうとすると擦り抜けてしまうが、少しだけふんわりした感覚が味わえるので、積極的なふれあいも推奨されている。
「次は絶滅水族館ゾーンじゃ」
こちらは絶滅してしまった水中生物を模した生き物が泳いでいるコーナーだ。
アンモナイトやアノマロカリス、現在では見られないサンゴや熱帯魚など、絶滅した生き物がふわふわと漂っている。なかにはシーラカンスなどもいるので、ただ古代っぽい雰囲気を模している感もあるが、どれも珍しいのでキマイラ達に人気だ。追憶水族館という名前の由来になったのもこのゾーンらしい。
「それから、深海の冒険宝探し企画もあるらしいぞ」
此処は揺らめく深海が投影されたコーナー。
海底をイメージした岩のオブジェや、ぷかぷか浮かぶ泡沫が満ちている場所がたくさんあり、一帯は迷路のようになっている。
その裏や影に隠された宝箱に真珠やアクアマリン、ラリマー風の石やイクラや珊瑚のような赤い石など、海を想起させるお土産が入っている。
特別な宝探し気分を味わえる冒険ゾーンは一番わくわくを感じられるそうだ。
「休憩するなら、オーロラが降りそそぐ海中カフェじゃ!」
穏やかな波の音がBGMになっているカフェに用意されたメニューは様々。
海色クリームパフェ、おさかなビスケットタワー。海星のクッキーアソートとドリンクセット、海月のふわふわパンケーキや、漣の琥珀糖。
合成イカゲソ串焼きにイクラタピオカジュース。波音サイダーかき氷に、シェフのお任せスペシャルマリンコースなど盛りだくさん。
「たくさん遊べる良い所じゃが、実はオブリビオンが入り込んでおっての」
怪人の名はランプリット・リシュア。
このところ、来場者の記憶が奪われる事件が多発しているのも彼女の仕業だ。敵はあまり人が訪れない冒険深海ゾーンの奥に潜んでおり、通り掛かった者の記憶を鳥籠に閉じ込めて鉱石にするということを繰り返している。
「近付かなければ被害に遭うこともないのじゃが、放っておくわけにもいかぬ」
まずは普通に水族館を楽しみ、来場者が少なくなった頃合いを見計らってランプリット・リシュアの元に向かって退治して欲しい。
そのように願ったエチカは、そっと仲間達に微笑んでみせる。
「心配はしていないのじゃ。お主達ならば思いっきり楽しんで、全力で事件を解決してくれると信じておるからのう」
そして、エチカは幾度か瞬きをした後に真っ直ぐな視線を向けた。
犬塚ひなこ
今回の世界は『キマイラフューチャー』
追憶水族館に記憶を奪う怪人が現れました。まずは水族館を楽しんでから、怪人をやっつけて事件を解決しましょう!
●第一章
日常『うみあそび!』
OPの背景のような雰囲気の映像が360度に投影されたヴァーチャル水族館です。
あれもこれもと全部に挑戦するよりも、行動を絞る方がリプレイの内容が濃くなるのでおすすめです。
▼できること
🚂『海中鉄道』
開放的な汽車に乗って水族館を巡るアトラクション。
座席でゆっくりのんびり楽しめます。運行中も魚達が近寄ってくるのでふんわりとしたふれあいも出来ます。お魚やサンゴ、ヒトデ、サメやクジラなど海の生き物ならば何にでも出会えますが、危険はありません。
🐚『絶滅水族館ゾーン』
絶滅してるっぽい水生生物の映像が展示されているコーナー。
こちらは歩いて進むタイプで静かな雰囲気です。過去を忘れない、追憶する、がテーマ。しっとりしたデートや過去への思いを馳せる場所として最適です。
💎『深海迷路で冒険宝探し』
深海を模したオブジェが迷路のようになっているゾーン。
歩いて岩陰や泡の奥に進み、隠された宝箱を見つける冒険コーナーです。宝箱に入っている海の宝石はお土産としてお持ち帰り出来ます。お土産おまかせも可能です。
☕『カフェで一休み』
青の世界にオーロラの映像が降りそそぐカフェコーナー。波音のBGMが心地よく、おいしいカフェメニューが楽しめます。
●第二章
ボス戦『ランプリット・リシュア』
場所は絶滅ゾーンの奥。
人々の記憶を鉱石に変える、鉱石ランプの女怪人との戦闘になります。
彼女は滅ぶことへの恐怖を忘れられず、自分の弱さを克服するのに役立ちそうな記憶を集めているそうです。楽しく暮らす者への羨望を密かに抱き、明るく生きられる日を夢見ているため、キマイラを狙っていたようですが、どうも上手くいっていないようです。
猟兵の記憶を奪おうとしてきますが、強い意志があれば抵抗可能です。
奪われたけれど絶対に取り返す! という戦いも熱いので、お好きな形で戦ってくださると幸いです。
第1章 日常
『うみあそび!』
|
POW : ぼうけんだー!素敵なものを探すぞー!
SPD : おあそびだー!魚と泳ぐよ!
WIZ : のーんびり。きれいなところでお喋り!
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兎乃・零時
💎🌈
◎
心結と一緒に🐚のコーナーを共に歩くぜ
心結は色々知ってたんだなぁ
海は俺様にとっちゃ
藍玉ってのも在って鉱物的な縁はある
故郷に海があったわけじゃねぇから、心結みたいに事前に細かい内容を知ってたわけじゃねぇんだけど
そんでも色んな世界で見たり知ったりしたからな
既存の奴は其れなりに…だけど、俺様が知る魚とも違うな?
確か絶滅したっぽい水生生物のコーナーだから、今は居ないんじゃねぇの?
考えすぎるのもたまにはいいんじゃねぇか
…しかし、此奴らが居たから、きっと今の生命体が産まれてるんだよな?
すげぇよな
生命の神秘って奴だ
喜んでくれるさ
忘れない限り、ずっと心の中にいるわけだしな!
音海・心結
💎🌈
◎
🐚で生命の大切さに触れる
みゆの故郷に海はありませんが、
パパがくれた本に、外の世界に関する情報が記載されていたから
海や海の生物について少しは知っていたのですよ
そして、猟兵になって、外の世界に飛び出して
本物の海に何度も行って、海の生物も見たのですが、
……みゆの知っているお魚さんと少し違う
他の生物もどこかで見たような記憶はありますが……
――あ、
この子たちは絶滅しているので、今はいないんでしたよね
うっかり考え過ぎちゃうところでした、えへへ
この子たちは絶滅こそしましたが、記録として、記憶として
これからも誰かの頭の片隅に残され続ける
……みんな、喜んでくれますかねぇ
笑ってくれていると嬉しいですね
●消えたとて残るもの
此処は追憶水族館。
またの呼び名を、絶滅水族館とも云う。周囲に投影されている揺らめく水面を見上げれば、光の階が降ってきているような光景が瞳に映った。
見知らぬもの。或いは図鑑や書物、伝聞などで見聞きしたことのある海の生き物が游ぐ場所。その最中で、零時と心結は一緒に歩いている。
「あれは……アンモナイトでしょうか」
心結は投影映像の中を進んでいく貝のような生き物を指差した。彼女がその名前を口にしたことに感心を抱いた零時は、アンモナイトが向かう先に目を向ける。
「心結は色々知ってたんだなぁ」
「みゆの故郷に海はありませんが、パパがくれた本に書いてあったのですよ」
その本には外の世界に関する情報が記載されていた。それゆえに心結はこうして、魚や水棲生物、海に住まうものについて知っていたのだ。
そして、猟兵になって、外の世界に飛び出して。これまで以上の知識をつけて、心結はいま此処に立っている。
その話を聞いた零時はこくこくと頷き、自分のことを話していく。
「海は俺様にとっちゃ
藍玉ってのも在って鉱物的な縁はあるんだけど、故郷星に海があったわけじゃねぇからな」
「アクアマリンも海らしいものなのです」
「だな! けど、心結みたいに事前に細かい内容を知ってたわけじゃねぇんだけど……俺様も一応、色んな世界で見たり知ったりしたからな」
「はい、本物の海に何度も行って、海の生物も見てきましたね」
ちいさく笑ってみせた心結はこれまでの記憶を思い返していった。零時にも思わず笑みが溢れたが、不意に二人の前に知らない生物が横切っていく。
零時と心結は顔を見合わせ、きょとんとした。
「あれ……なんだ?」
「みゆにもわかりませんでした」
様々な魚や生物が投影展示されているというだけあって、見慣れぬものも多い。零時は首を傾げ、今しがた通ったものについて考えた。
「既存の奴は其れなりに知れた……けど、今のは俺様が知る魚とも違うな?」
「……みゆの知っているお魚さんと少し違いました、けど」
他の生物もどこかで見たような記憶はあるが、それそのものかというと違う。
しかし、其処で心結がはたとした。
「――あ、この子たちは絶滅しているので、今はいないんでしたよね」
絶滅した、或いは絶滅しそうだったという生物達が集められているゾーンであるゆえに名前すらわからないものがいるのだ。
「そうそう! 確か絶滅したっぽい水生生物のコーナーだから、今のこの世界の時代には居ないんじゃねぇの?」
そういえば、と二人は思い立つ。
最初に見たアンモナイトもそういった部類だ。また、もし見知った魚などが見えたとしても、この世界では絶滅してしまった、という括りなのだろ。
また、このキマイラフューチャーには人間という種族はいない。人間は水棲ではないので此処には展示されないだろう。
もしいたとしても、怪人という存在に成り果ててしまったものしか――と、其処まで考えたところで心結はふわりと口許を緩めた。
「うっかり考え過ぎちゃうところでした、えへへ」
「考えすぎるのもたまにはいいんじゃねぇか」
心結に対し、零時は明るく答える。
考えて眺めるのもよし。考えずに目の前のものを興味深く眺めるのもよし。どういった楽しみ方をしても、きっと此処は受け入れてくれる。
「……しかし、此奴らが居たから、きっと今の生命体が産まれてるんだよな?」
「そうなのです、きっと」
「すげぇよな、生命の神秘ってやつだ」
二人はゆったりと歩きながらも、それぞれの思いを馳せていく。
頭上を通っていった水棲恐竜めいた影を見上げた零時。その隣で、心結もぐるりと周囲を見渡していた。
ちいさな魚、大きな貝類、軟体動物。
様々な生き物が生死を繰り返し、世界は進化してきた。
「この子たちは絶滅こそしましたが、記録として、記憶として、これからも誰かの頭の片隅に残され続けるのですね」
絶滅。それは悲しいことでもあるが、全部が消えてなくなったわけではない。
心結は目の前を通り過ぎていく投影魚をじっと見つめた。そうして、彼女はぽつりとちいさな思いを零す。
「……みんな、喜んでくれますかねぇ」
「喜んでくれるさ」
その声を聞きつけた零時は真っ直ぐに、少しの迷いもなく話してゆく。顔を上げて彼の横顔を見た心結も双眸を細めた。
「忘れない限り、ずっと心の中にいるわけだしな!」
「はい。笑ってくれていると嬉しいですね」
零時にそっと笑い掛けた心結は、胸の内に燻っていた何かが晴れていくような感覚を抱いていた。きっと、こんな気持ちになれたのは彼が隣にいてくれるおかげ。
快い思いを抱きながら、二人は海路を散策していく。
本物はもう何処にもいなくても、きっと憂うことばかりではない。
何故なら、此処には――たくさんの命が産まれて生きてきた証と、ちいさくとも確かな歴史の記録が残り続けるのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティア・メル
【塩飴】
ソルくんソルくんっ
見て見て!すっごーく綺麗なんだよ!
手を引いてカフェへ
んふふ、ぼくはねー
海月のふわふわパンケーキにするよ
ソルくんは?
待ってる間も足先が楽しくて揺れちゃう
ソルくんにはまだ紹介してなかったよね
ぼくの親友のクラゲ、ノアっていうの
クノちゃんがふわり漂ってご挨拶
良かったね、クノちゃん
ティアちゃんも、よろしくね
そういえば、さ
好きな人が居るって言ったでしょ?
た、多分だけど
実った、よ
ソルくんには伝えておきたくて
ありがとう
ソルくんには居ないの?好きな人
んにに?
あ、本当だっ
ふわふわなんだよ
美味しいね
ソルくん、あーん!
ふふふー美味しいの半分こ!
楽しい時間も、きっと半分こ
暗い顔は、気のせい?
ソル・サン
【塩飴】
ティー
そんなに急ぐと転ぶぞ
はしゃぐ彼女が可愛くて
思わず笑みが零れる
席に座ってメニューを開く
ティーは何にする?
オレも同じ物にするわ
ティー、その海月は?
へえ、ノアか
よろしく
仲良くしてくれよ
ティア、お前も挨拶しておけ
元気良く挨拶する悪魔はまさに“ティー”
合格点、と内心
ああ、言ってたな
聞きたくねえ
でも聞かねえと怪しまれる
…そ、っか
わかってる
オレの片想いは最初から
愛しい女が幸せになるのを喜べねえ程
男として落ちぶれてはいないつもり
良かったな、ティー
頭をぽんぽんと撫でて
居ねえな、きっと、ずっと
嘘
(きっと、ずっと、お前が好きだ)
ほら、パンケーキ来たぜ
あーんとか、おい
美味いな
ティーも、あーん
臆、幸せだ
●揺蕩うこころ
揺らめく水中のような投影映像の最中。
カフェに向かう順路に明るい声が響き渡った。青の世界にオーロラの映像が降りそそぐ景色はとても心地よさそうだ。
「ソルくんソルくんっ、見て見て! すっごーく綺麗なんだよ!」
「ティー、そんなに急ぐと転ぶぞ」
ティアはソルの手を引いてカフェの店内に入っていく。嬉しそうにはしゃぐ彼女を可愛いと感じたソルの口許には笑みが宿っていた。
いらっしゃいませ、と迎えてくれたキマイラの店員に席に案内されれば、此処からは楽しくて甘やかな時間のはじまり。
腰を下ろしてメニューを開いたソルは、目の前の席に座るティアを見遣る。
「ティーは何にする?」
「んふふ、ぼくはねー」
どれにしようかな、とメニュー表を眺めるティアは楽しげだ。暫くしてティアはひとつの品物を指差し、これ、と示した。
「海月のふわふわパンケーキにするよ。ソルくんは?」
「オレも同じ物にするわ」
「それじゃあ決まり! すみませーん!」
ティアが店員を呼び、メニューを注文していく。用意されたグラスの氷が周囲の映像を映し込んでいる。
揺らめくオーロラを眺めるティアは本当に楽しそうに足を揺らした。パンケーキが届くまで、待っている間も楽しめるいい場所だと感じているのだろう。
そんな中、ソルがティアの傍らを指差した。
「ティー、その海月は?」
「ソルくんにはまだ紹介してなかったよね。ぼくの親友のクラゲ、ノアっていうの」
「へえ、ノアか、よろしく」
紹介された海月に、仲良くしてくれよ、と告げたソル。ふわりと漂ってご挨拶した海月に向けて、ティアは良かったねと笑いかける。
そうしていると、次はソルが人形を紹介していく。
「ティア、お前もティーに挨拶しておけ」
「ティアちゃんも、よろしくね」
ソルの傍にいるのはティアと同じ名前をしたもの。元気良く挨拶する悪魔はまさに彼女そのものだった。合格点だ、と内心で呟いたソルは満足気だった。
からん、とグラスの中の氷がとけて音を鳴らす。
そのことでふと話したいことを思い出したティアは、そっと微笑む。
「そういえば、さ」
「ん?」
「前に好きな人が居るって言ったでしょ?」
「ああ、言ってたな」
ティアがそわそわとしはじめたことで、ソルはこれから続く話の想像を巡らせた。
(――聞きたくねえ)
思わず否定したくなったが、聞かなければ怪しまれるだろう。ソルはそのまま何も言わず、ティアが話し出すのを待った。
「た、多分だけど……実った、よ」
「……そ、っか」
歯切れの悪い返答であったことには気付かず、ティアはソルに語っていく。
「ソルくんには伝えておきたくて」
(……わかってる、オレの片想いは最初から――)
ティアが好きな人のことについて話していく中、ソルは思いを胸に秘めた。愛しい彼女が幸せになるのを喜べないほど、男として落ちぶれてはいないつもりだ。
ソルは言いたくなった言葉を押し殺し、手を伸ばした。
「良かったな、ティー」
「ありがとう」
頭をぽんぽんと撫でてくれたソルに対し、ティアはお礼と純粋な疑問を投げかけた。
「ソルくんには居ないの? 好きな人」
「居ねえな、きっと、ずっと」
「んにに?」
彼が不思議な回答をしたのでティアは首を傾げる。そんな仕草も反応も彼女らしいと感じたソルは敢えて謎が深まる物言いをした。
「――嘘」
(きっと、ずっと、お前が好きだ)
だから、本当のことは言わない。幸福を願うのもまた愛だ。
そうしていると注文したパンケーキが席に届けられた。
「ほら、パンケーキ来たぜ」
「あ、本当だっ」
表情と瞳を輝かせたティアの意識は完全にパンケーキに向いている。これを楽しみにきたのだから、これ以上は深く語らなくともいい。ソルはティアの笑顔を双眸に映し、フォークを彼女に渡してやった。
「ふわふわなんだよ、美味しいね」
「そうだな」
「ソルくん、あーん!」
「あーんとか、おい……ん、美味いな」
ティアから差し出された一口を頬張ったソル。同じように美味しいと言ってくれた彼の答えが嬉しくて、ティアの笑みも深まった。
「ふふふー美味しいの半分こ!」
これならば楽しい時間も、きっと半分こに出来る。けれど――彼の暗い顔は、気のせいだろうか。ティアは言い出せず、暫しきょとんとしていた。
ソルは気付かれまいとして自分からもパンケーキを差し出してやる。
「ティーも、あーん」
「あ、あーん!」
過ぎていくのは何気ない時間。ちくりと痛む胸の奥の感覚は無視して、ソルは自分に言い聞かせるように胸中で呟く。
――噫、幸せだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュナ・メル
◎
ああ、
後ろめたい理由はわかっている
僕はここに来るべきではなかった
でも
君たちは相変わらず綺麗だね
ずうと昔の話
深海は暗くて、生まれたての僕は
君たちの明かりがないと怖くて仕方ながなかった
……だからそばに寄った
無知な僕が君たちを苦しめてしまった
ごめんね、苦しかったよね
そして僕は姿を変えた
嫌いな紅を白に染めて
毒の体は誰にも触れられぬよう硝子ドームで眠った
全て忘れて、紅い僕を知らん振りしていた
僕が棄てた
紅い僕は今もどこかを漂っているのかな
忘れることも、目をそらすこともーー。
ああ、君たちはここで生きていたんだね
そこには僕はいないから、どうか安心して。
……さようなら。
●紅と白の僕
ああ、心が軋む。
此処に訪れてから、ずっと後ろめたさを感じている理由は理解していた。
痛みのような感覚が胸裏で渦巻いているのは、きっと――。
リュナは投影された海中の映像を振り仰ぎながら、静かな言の葉を落とした。
「わかってる、僕はここに来るべきではなかったんだよね」
追憶水族館。
或いは絶滅水族館とも呼ばれる場所で、リュナは切なさにも似た思いを抱いている。
でも、と口にしたリュナの視線の先には魚達が游いでいた。
「君たちは相変わらず綺麗だね」
かれらが存在したのは、ずっと、ずっと昔の話。記録としてしか残っていないものたちの映像を見つめながら、思うのは遥か過去のこと。
深海は暗くて、冷たかった。
「生まれたての僕は――」
君たちの明かりがないと怖くて仕方ながなかった。
そして、リュナはかれらのそばに寄りそった。そうすることがどのような結果になるかを考えずに、ただ自分の思いを優先してしまった。
リュナは胸元を片手で押さえ、あのときのことを考える。
――
無知な僕が君たちを苦しめてしまった。この映像に重ねて思うのは贖罪の気持ちだ。
「ごめんね、苦しかったよね」
手を伸ばして魚達に振れてみても、擦り抜けて透き通っていくだけ。
そのことがまたリュナの心に痛く響いていく。
(そして、僕は姿を変えて――)
嫌いだった紅を白に染めて、毒の体は誰にも触れられぬように硝子ドームで眠った。ごめんなさい、と伝える相手はもういなかったから。
全てを忘れて、紅い自分がいたことも消したくて。何もかもに知らん振りしていた。
「ねぇ……」
誰にも呼びかけることなど出来ないというのに、リュナは声を零していた。
(僕が棄てた
紅い僕は今もどこかを漂っているのかな)
わからない。
わかろうとしていないからだと知っているが、どうしてか目を背けたくなる。それでも、どうしても出来なかった。
忘れることも、目をそらすことも。
暫しリュナが其処で立ち尽くしていると、周囲に海の生き物達が漂ってきた。
はたとしたリュナは触れられないことが幸いだとして、もう一度腕を伸ばしてみる。
「ああ、君たちはここで生きていたんだね」
そこには、僕はいないから。
どうか安心して。
リュナは自分の手を擦り抜けて游いでいくもの達の姿を見送った後、踵を返す。
「……さようなら」
幻想的な空間に別れの言葉が落とされ――そして、辺りは静寂に包まれた。
大成功
🔵🔵🔵
塔・ルーチェ
◎
イフ(f38268)と
🐚『絶滅水族館ゾーン』へ一緒に
そうだね、こんなに綺麗なのに絶滅してるなんて
少し物悲しいなぁ
滅んでしまった“いつか”へ想いを馳せて目を伏せる
イフは大人びてるね
なんて、ちょっとからかうようにくすくす笑って
あどけない見た目も
大人びた内面も好きだけどさ
もちろん
―――ボクは忘れないよ
何があっても、何が起こっても
キミのことだけは忘れない
優しく包むように手を握り
青の中にキミが沈んでしまわないように
瞼の裏で赤が蘇る
キミが何度も何度も赤く染まって
ううん、大丈夫
今のイフはボクの傍にいる
何があっても護るから
ずっと傍にいて、イフ
キミが居ないとボクは
同じように首に下げた指輪を握り締め
塔・イフ
◎ルーチェ(f38269)と一緒に
🐚『絶滅水族館ゾーン』へ
絶滅した水の生き物……
ふしぎね、まるで生きているみたいだけれど、にせものなのね
だけど、とっても綺麗
ゆっくり歩いてみて回りながら、ふと不安になる
永劫回帰するたび、塗りつぶされてゆくあなたとの記憶
ここの生き物たちは、死んでも覚えていてくれるひとが居たのね
だからこうしてここにいる
ねえルーチェ、手をつないでいてもいい?
――忘ないように、覚えていてもらえるように
「青が綺麗だけれど…転んでしまったら怖いもの」
なんて、言い訳だけれど、ね
私も忘れない
幸福だけれど痛む、炎の赫の記憶
ずっと忘れないわ
どうか、ずっとそばに
もう片手で首に下げた指輪を握りしめて
●永劫の痛み
「絶滅した水の生き物……」
揺らめく海の映像が流れている空間で、イフはちいさな言葉を紡いだ。
形だけを知っているもの、見たことすらないもの、今も生きている海の生物に似ているものなど、周囲には様々な姿が見えた。
「ふしぎね、まるで生きているみたいだけれど、にせものなのね」
「そうだね、こんなに綺麗なのに絶滅してるなんて」
イフが続けて語った声を聞き、ルーチェも頭上を見上げてみる。此処にいるものは記録の中にしかいない、もういなくなってしまったもの。
「少し物悲しいなぁ」
「だけど、とっても綺麗」
「……うん」
ルーチェの思いに対し、イフは感じたままの思いを伝えた。頷いたルーチェもそれは間違いないと思いながら、滅んでしまった“いつか”へ想いを馳せる。
目を伏せて思うのは、滅びと死という概念について。
魂人である自分達には遠い存在であり、そして――。
思いを巡らせるルーチェはイフと共に絶滅水族館のゾーンを歩いて行く。ゆっくりと歩を進めながら、二人はそっと語り合う。
「イフは大人びてるね」
「そう?」
「綺麗だって話してたところが、そう思ったよ」
ルーチェは少しからかうようにくすくすと笑った。あどけない見た目も、その大人びた内面も好きだけど、と話したルーチェは周囲を見渡していく。
辺りの景色は幻想的だ。
そんな中、イフはふとした不安を抱いた。
永劫回帰するたび、塗りつぶされてゆく。あなたとの記憶も、大切な思いも、嬉しかった思い出も、全部が苦しいものに変わっている。
「ここの生き物たちは、死んでも覚えていてくれるひとが居たのね」
だからこうしてここにいることができるのだろう。
イフは自分達と此処の生物を重ねているらしく、ときおり遠い目をしていた。そして、イフはそうっとルーチェを呼ぶ。
「ねえルーチェ、手をつないでいてもいい?」
――忘れないように、覚えていてもらえるように、繋いで欲しい。
イフは願いを胸に秘め、願った理由をちいさな言い訳に包んで告げた。
「青が綺麗だけれど……転んでしまったら怖いもの」
「もちろん」
そして、二人は手を繋いだ。
ルーチェにはイフが願った意味が分かっていた。しかし、彼女が言葉にしなかったので自分も胸裏にだけ思いを沈めておく。
(――ボクは忘れないよ)
何があっても、何が起こっても、どんな苦しみが待っていたとしても。
キミのことだけは忘れない。
絶対に、と強く告げるが如く。優しく包むように手を握り返したルーチェは青の世界を瞳に映し込んだ。
「青の中にキミが沈んでしまわないように、守るよ」
ルーチェの瞼の裏で赤が蘇る。
キミが何度も、何度も、幾度も赤く染まって――。
そんな光景が見えてしまいそうになったが、ルーチェは目の前の青に集中した。
「ルーチェ?」
「ううん、大丈夫」
イフが心配そうに覗き込んできたが、ルーチェは首を横に振った。今のイフは自分の傍にいて、こうして手を握ってくれている。大丈夫、ともう一度繰り返したルーチェは、確かめるように囁いた。
「何があっても護るから」
ルーチェからの思いが籠もった言葉を聞き、イフはそっと寄り添う。
「私も忘れない」
幸福だけれど痛む、炎の赫の記憶。それがあるから心が痛む。だけれど、あのことがあったからこそ大切な思いだって増えていった。
「ずっと忘れないわ」
「ずっと傍にいて、イフ。キミが居ないとボクは……」
「どうか、ずっとそばに」
同じように首に下げた指輪を、もう片手で握りしめて。
赫を打ち消すように、青に溺れないように、二人は身体を寄せ合った。
揺らめく水の世界には、消えてしまったもの達が游いでいる。記憶と記録。似ているようで違うものを思いながら、少女達は箱庭世界を眺めてゆく。
その心に、確かな思いを宿しながら――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マクベス・メインクーン
🐚
グラナトさん(f16720)と
ふふふ、グラナトさんとの水族館デート
もう定番になってきてるよね♪
へぇ~、絶滅した水生生物の展示か
動いてる魚も綺麗だけど、こういう昔いた生き物を見るのも楽しいかも
あっ、アノマロカリスとかかっこいいよな~っ
アンモナイトも、思ってたよりでっかいな
(目をキラキラさせながら見て、グラナトを見上げ)
ねっ、グラナトさんは生きてる時を見たことある?
どうしたの?ぼーっとして
さてはなんか考え事してたでしょ、このあと戦う敵の事とか?
大丈夫、俺は記憶取られない自信あるから忘れたりしないよっ
グラナト・ラガルティハ
マクベス(f15930)と
水族館か…世界こそ違うがやはりマクベスと訪れる場所の中でも格別だな。
私にとっても思い入れのある場所と言える。
まさかそんなものが出来るなどとマクベスに出会う前は考えもしなかったな。
『絶滅』水族館。既に絶えた種と言うわけか。長い時の中ではそういったこともあり得る。
この世界では人間すら滅んでいるのだから。
実物…いや流石に海の中は見ていないな。
マクベスは楽しそうだな。なるほど…あぁ言ったものが好きなのか…。
(微笑ましげにマクベスを見ていると急にあれを見てと言われ慌てながらも)
ん、何か気になるものがあったか?
…思い出。確かに盗られたくはないが…そうだなマクベスを信じている。
●楽しい記憶
煌めく光と混ざり合う水面の揺らめき。
美しい景色を目にしながら、マクベスとグラナトは先へ進んでいく。近くを通り過ぎていく見知らぬ生物や、知っている生き物を眺める時間は心地いい。
「水族館か……」
「ふふふ、グラナトさんとの水族館デート!」
周囲の様子に感心するグラナトの隣では、マクベスが楽しげに燥いでいる。グラナトは彼のそんな様子を愛しく思い、流れていく時間の快さを改めて実感していく。
「世界こそ違うがやはりマクベスと訪れる場所の中でも格別だな」
「もう定番になってきてるよね♪」
思い返せば、何度もこうして水族館に訪れていた。それぞれに違う思い出があるが、それゆえに思い出深い出来事になっている。
「ああ、私にとっても思い入れのある場所と言える。まさかそんなものが出来るなどとマクベスに出会う前は考えもしなかったな」
「本当? だったら嬉しいな!」
グラナトはしみじみと語っていた。
自分と出会って、特別が増えたということだと受け取ったマクベスは本当に嬉しそうに尻尾をぴんと立てる。
そうして、展示ゾーンを進む二人は一歩ずつを大切に踏みしめていく。
マクベスは辺りをきょろきょろと見渡し、近くを通っていった魚に目を向けた。
「へぇ~、絶滅した水生生物の展示か」
「そうだな、『絶滅』水族館というだけあって既に絶えた種と言うわけか」
グラナトはこのエリアの名前の由来を思い返す。
マクベスは絶滅した生き物が映像として再現されている様を眺め、感嘆の声を零していった。すごい、あっちにもいる、と指差していくマクベスは無邪気だ。
「今を生きて動いてる魚も綺麗だけど、こういう昔いた生き物を見るのも楽しいかも」
「絶滅……長い時の中ではそういったこともあり得るな」
グラナトはふと思う。
この世界においては人間すら滅んでいる。水棲ではないゆえに人間は展示されていないが、怪人という形で残っている者もいるらしい。
グラナトはこの水族館の奥に潜んでいるという怪人を思う。そうしていると、マクベスが何かを見つけたらしい。
「あっ、アノマロカリスとかかっこいいよな~っ」
「あれのことか」
「アンモナイトも、思ってたよりでっかいな」
マクベスは瞳をきらきらと輝かせながら、ひとつずつを確かめるように見つめる。それから、不意に視線をグラナトに向けた。
「ねっ、グラナトさんは生きてる時を見たことある?」
見上げてくるマクベスの眼差しには期待が宿っている。見たことがあると答えられればよかったのだが――。
「実物……いや流石に海の中は見ていないな」
「そっかぁ。あ、見てグラナトさん!」
頷いたマクベスは新たな生き物を見つけ、声をあげる。楽しげな彼を見つめるグラナトは微笑ましい気持ちを抱いていた。
「なるほど……あぁいったものが好きなのか……」
「あっちもだ! グラナトさん、早く!」
「ん、何か気になるものがあったか?」
急にあれを見てと言われ慌てながらも、グラナトは優しく答えた。マクベスは先に駆けていき、珍しい生き物をじっくりと堪能していく。
そんな中、グラナトは先程の考えについてもう一度思い返していた。
「……思い出、か」
「どうしたの? ぼーっとして」
その様子に気付いたマクベスが戻ってきて、なるほど、と合点する。ずっと一緒にいるのでグラナトのことをよくわかっていた。
「さてはなんか考え事してたでしょ、このあと戦う敵の事とか?」
「それもあるな」
「大丈夫、俺は記憶取られない自信あるから忘れたりしないよっ」
マクベスが明るく語るので、グラナトの口許に笑みが宿った。此処で不安を覚えているよりも、信じて今を楽しむ方が良いはず。
「確かに盗られたくはないが……そうだなマクベスを信じている」
「うんっ!」
そして、二人の笑みが重なった。
揺らめく水の投影映像の中で、二人は暫しの穏やかな時間を過ごしていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
💎お土産おまかせ
ふわぁ、すごい水族館です。
さすがキマイラフューチャーですね、アヒルさん。
ふえ?アヒルさん聞いてますか?
あ、そうでした。
この時はアヒル船長と呼ばないといけないんですね。
さすがキマイラフューチャーですね、アヒル船長。
ふえ?この海底に隠されたお宝を探しにいくぞって、だからこの海賊風の水着で来いって言ってたんですね。
はい、頑張りましょう。
ふええ、掛け声が違うって
あ、アイアイサー。
ところでアヒル船長何か手掛かりはあるんですか?
この宝の地図って、
これここのパンフレットですね。
アヒルさんも乗り気ですし合わせておきましょう。
ふわぁ、さすがアヒル船長です。
お宝目指して出発です。
●アヒル船長の冒険
「ふわぁ、すごい水族館です」
現実と見紛うほどの優美な映像で構成された場所。それが、この追憶水族館だ。
感心と感動を抱くフリルは、周囲に満ちている水中の映像や、隣をすいすいと泳いでいく魚達を見つめている。
「さすがキマイラフューチャーですね、アヒルさん」
フリルは水族館を楽しみながら、相棒のガジェットに語りかけた。
しかし、アヒルさんは何の反応も見せない。
「ふえ? アヒルさん聞いてますか?」
首を傾げたフリルに対してアヒルさんは何かを告げるような眼差しを向けてくる。其処ではっとしたフリルは事前に言い聞かされていたことを思い出した。
「あ、そうでした。この時はアヒル船長と呼ばないといけないんですね」
映像といえど海の中。
アヒルさんには拘りがあるらしく、フリルにルールを守ってほしいと願っていた。
――ということで、もう一度。
「さすがキマイラフューチャーですね、アヒル船長」
すると先程とは違い、グワ、と良い返事が戻ってくる。そして、アヒルさんは深海迷路の冒険ゾーンに進んでいった。
後をついていくフリルは、やっと今回の服装の意味を理解する。
「ふえ? この海底に隠されたお宝を探しにいくぞって……だからこの海賊風の水着で来いって言ってたんですね」
「グワワ!」
「はい、頑張りましょう」
威勢のいいアヒルさんの声に対し、フリルはいつも通りに答えた。だが、海でのルールが厳守されていないといってアヒルさんが怒ってしまう。
「ふええ、掛け声が違うって……」
――ということで、やり直し。
「グワワ!」
「あ、アイアイサー」
フリルが乗組員らしく答えたことで、アヒルさんは誇らしげに胸を張った。それから二人は本格的に冒険宝探しに挑んでいく。
「ところでアヒル船長何か手掛かりはあるんですか?」
岩陰を探しながら進む最中、フリルはふと問いかけてみる。アヒルさんは何やらごそごそと紙を取り出してきた。
「この宝の地図って、これここのパンフレットで……あ、いえ、宝の地図ですね」
冷静に突っ込みそうになったが、此処は合わせておく方がいい。乗り気なアヒルさんをがっかりさせることはフリルもしたくない。
「ふわぁ、さすがアヒル船長です。お宝目指して出発です!」
やる気になったフリルをみて上機嫌になったのか、アヒルさんも意気揚々と進む。
それから暫し後。
「見てください、アヒルさん。この宝箱の中……!」
フリル達はちいさな小箱を見つけた。形は小さくとも、中に入っていたのはアクアマリンのような石があしらわれた王冠アクセサリーが入っている。
ちょうど頭にぴったりなサイズだったため、アヒルさんも満足そうにしていた。
「良かったですね、アヒルさん」
フリルは微笑み、今回の海の冒険を思い返す。
そうして、ふたりは仲良く不思議な深海の心地を楽しんでいった。
大成功
🔵🔵🔵
椚・一叶
友のトリス(f27131)と
汽車で海の中行けるのか
海中だと汽車の音はどう聞こえるだろうか
窓から外を覗こうとして驚く
なんと、窓硝子なかった
泳いでくる魚、本物みたい
触れられないのに触れられそうなのが面白くて
何度も手を伸ばす
ほんの少し感じる存在感、不思議
こいつ等なら儂が触っても壊れない
こいつ、トリスに似ている…と
深い青の魚を手招いてみたり
サメやクジラは何処だろう
魚にいっぱい囲まれているところ撮れたら
きっと良い自慢になる
さあ、共にぴーすと端末構えていたら
…サメ!
驚いたところ、撮れてしまったかも
でも魚に囲まれた良い写真残せた
まだまだ楽しみたいから、この旅が出来るだけ長く続けばいい
次はクジラを見付けよう
鳥栖・エンデ
友人のイチカ君(f14515)と
一番人気は海中鉄道だってねぇ、なになに
レトロな汽車に乗って海を巡る旅……
なんだかすごいアトラクションだなぁ
海の景色と鉄道旅行が一石二鳥で
投影映像とはいえ楽しも〜
景色を眺めて座ったままでも
魚達が遊びに来てくれるのが良いよね
あの角みたいのが見えるのはイチカくん似かなぁ
折角だからサメやクジラも探してみようか
触れない魚に手を伸ばしたり
サメ肌な体験出来ないのはちょっと残念だけど…
画像に残せたら映えたりしない?
まだまだ線路が続きますように〜
クジラを見つけた思い出残す迄は
きっと旅は終わらないよぅ
●旅の記録と海景色
入り口のドーナツ型になった水槽。
投影された魚が游ぐトンネルをくぐれば、其処は追憶水族館の最中。共に観光に訪れた一叶とエンデが向かうのは、この世界のキマイラ達にも大人気なコーナー。
「汽車で海の中に行けるのか」
「一番人気は海中鉄道だってねぇ、なになに――レトロな汽車に乗って海を巡る旅……」
関心を抱く一叶の隣でエンデがパンフレットを覗き込む。
「海中だと汽車の音はどう聞こえるだろうか」
「なんだかすごいアトラクションだなぁ」
「乗ってみるか」
「そうだね、行こう」
二人は意気投合していき、汽車が停車している海中鉄道ゾーンに向かっていった。
暫くすれば汽車は発進していき、周囲の景色が流れるように進んでいく。エンデは周囲に投影されている光景を眺めながら心地良さそうに伸びをした。
二人が座ったのは向かい合わせになっている席。
「海の景色と鉄道旅行が一石二鳥だ。投影映像とはいえ楽しも~」
「ああ、そういえば音は――」
頷いた一叶は窓から外を覗こうとして驚く。汽車の音は聞こえず、窓硝子がなかったからだ。エンデは彼が驚いていることに気付き、楽しげに笑う。
そうしていると不意に窓から魚が入ってきた。
汽車のスピードもゆっくりめであるため、自由に行き来できるようだ。
「わぁ、かわいい」
「泳いでくる魚、本物みたい」
一叶は物珍しそうに魚を見上げた。魚の方も一叶達に興味があるような仕草をしており、車内をふわふわと泳ぎ回っている。
「景色を眺めて座ったままでも、魚達が遊びに来てくれるのが良いよね」
エンデは辺りの海中景色が流れていく様にも目を向けた。
その間、一叶は魚達に手を伸ばす。触れられないのに触れられそうな感覚が不思議だが、それもまた面白い。
何度も手を伸ばしてみれば、一匹の魚がふんわりと一叶に寄り添ってきた。其処から感じるのは、ほんの少しだけ其処に或るような存在感。
「不思議。こいつ等なら儂が触っても壊れない」
一叶が彼なりの独特な感心を抱く。そして彼は真向かいの席に座っているエンデを見遣り、魚と見比べてみた。
「こいつ、トリスに似ている」
「そう? 可愛い魚だから嬉しいな」
一叶が触れている深い青の魚は、その場でくるりと回っている。エンデも名を呼ばれたことで魚に注目した。
少し離れてしまった魚を手招いた一叶は楽しそうに目を細めている。同様にエンデも外の景色を見つめ、様々な生き物を観察していった。
「あの角みたいのが見えるのはイチカくん似かなぁ」
「サメやクジラは何処だろう」
「折角だからサメやクジラも探してみようか」
「そうしよう」
二人は言葉を交わしながら、和気藹々とした時間を過ごしていく。汽車が進む度に景色が少しずつ変わり、泳いでいる魚の種類も変化していた。
エンデも触れられない魚に腕を伸ばし、愛らしい子達と戯れる。まだクジラもサメも発見できていないが、魚達も可愛い。
「サメ肌な体験出来ないのはちょっと残念だけど……画像に残せたら映えたりしない?」
「ああ、魚にいっぱい囲まれているところ撮れたらきっと良い自慢になる」
「じゃあ撮影だ!」
「さあ、共にぴーす……ん?」
一叶とエンデは魚達と一緒に撮影しようと決めた。そうして、撮影のために端末を構えていたら――。
「どうかした?」
「……サメ!」
「えっ!?」
其処でカメラのシャッター音が響く。驚いた二人だったが、ちょうど吃驚した瞬間が撮影できたかもしれない。
「驚いたところ、撮れてしまったかも」
「本当だ!」
笑いあった二人は楽しい気持ちを満喫している。サメはすぐに何処かに泳いでいってしまったが、魚に囲まれた良い写真が残せた。
「まだまだ楽しみたいから、この旅が出来るだけ長く続けばいい」
「うんうん、まだまだ線路が続きますように~」
同じ思いを抱いた一叶とエンデは汽車の窓から海の光景をじっくりと眺める。色とりどりの海景色の中に游ぐ生き物達はまるで、思い出までも彩ってくれるかのよう。
「次はクジラを見付けよう」
「クジラを見つけた思い出残す迄はきっと旅は終わらないよぅ」
一叶とエンデは次の目標を立て、快く笑いあう。
そうして、二人で過ごす汽車の旅は続いていく。やがて、彼らの端末にはたくさんの写真が保存されることになるだろう。
その中には、大きなクジラが映った一枚もあるはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティーシャ・アノーヴン
【ラボ】
いつ来てもここは不思議な世界ですね?
幻覚魔法にかけられたような・・・遠い何かを感じます。
宝探し、楽しみです。冒険!という感じがしますわね。
水着はちょっと新しくしてみました。どうでしょう?
幻とは言えど、深海はちょっとぞっとしますね。
そこを歩くのですから、新鮮ではあります。宝箱はあるでしょうか?
あら、シェスカさんがなにやら楽しそうなことをしておられますね?
何でしょう、近寄ってみましょうか・・・って、わぷッ!
な、なんです!?
あ、ああ・・・キカイでしたか、なるほどなーですわね。
ペンギンさんたちも可愛いですね。ふふ、何か見つかりましたか?
お互い、迷子にならないようにしましょうね?
秋吉・シェスカ
【ラボ】で冒険宝探し
アドリブ歓迎
深海の宝探しなんて面白いじゃない
私の科学力の見せ所ね!
鈴鹿がペンギンクルーを操るのを見て、
私もタコ型ドローン3体を持ち込みラジコン操作で探索
…が、操作ミスして一体がティーシャの顔に貼りつく
「…あ、ごめん」
でもタコやペンギン達みたく頭数がいれば、迷路のマッピングもし易いわ
早速タコが見つけてきた宝箱を開けると、中に黄金のインゴットを発見!
「すごい…けど流石に本物じゃないわよね」
海賊の遺したお宝風なのかしら?
まだまだ見つけるわよ!
張り切る中、憧憬を抱く鈴鹿に同調して
「ここの海が半ば作り物でも、人に夢を与える物であることには違いないしね」
それもまた、私達の科学の務めかな
国栖ヶ谷・鈴鹿
【ラボ】
💎『深海迷路で冒険宝探し』
ひんやりしてて本当の海にきたみたい、幻想的な場所だね。
今日は宝探しをしながら、シェスカとティーシャと水族館を楽しんでいこう!
探検隊の役として、ぼくはユーベルコヲド🐧ペンギンクルーを呼んでおくよ。
なにが見つかるだろうね?
地図を見るのが得意な道案内ペンギン🐧はシェスカのマッピングのお手伝いしてあげて!
優しさペンギン🐧は迷子にならないようにみんなと手を繋いで案内してね。
深海を歩く……かぁ、海底2万マイルを思い出すね……ぼくは不思議なロマンを感じるよ。
忘れないようにと願い、作られた幻影の海を歩けば、それだけでも、この世界の海への憧憬も見えると思うんだよね。
●宝物はすぐ傍に
揺らめく水面の映像が美しい光を作り出している。
周囲に游ぐ魚達や珊瑚礁の景色もまるで本物のようで、思わず見惚れてしまうほど。
「いつ来てもここは不思議な世界ですね?」
「ひんやりしてて本当の海にきたみたい、幻想的な場所だね」
「幻覚魔法にかけられたような……遠い何かを感じます」
辺りを見渡しているティーシャと鈴鹿は感じたままの思いを言葉にした。その隣に立っているシェスカも幾度か瞬き、これから始まる時間に思いを馳せている。
「こんな場所で深海の宝探しなんて面白いじゃない。私の科学力の見せ所ね!」
そう、此処は冒険迷路の最中。
エリア内の何処かに隠されている宝探しを楽しむゾーンだ。鈴鹿は岩陰などに気を配りながら、意気揚々と先に進んでいく。
「それじゃあ行こうか! なにが見つかるだろうね?」
みんなで宝探しを楽しむひとときはきっと良い時間になるはず。鈴鹿は探検隊の役としてペンギンクルーを呼んでいた。てちてちと歩いていくペンギンを見ていたティーシャは、ふわりと微笑む。
「宝探し、楽しみです。冒険! という感じがしますわね」
「鈴鹿はペンギンなら、私は……」
対するシェスカはタコ型ドローンを操作していく。三体のドローンをラジコンで動かしていくシェスカも探索する気満々だ。
「幻とは言えど、深海はちょっとぞっとしますね。そこを歩くのですから、新鮮ではありますが……宝箱はどこにあるでしょうか?」
ティーシャは慎重に、ゆっくりとあちこちを見回っている。
そんな中で傍にタコドローンが通り掛かったので、ティーシャは興味を持つ。ふわふわと海中を自由自在に飛び回っているように見えるドローンは可愛らしい。其処に鈴鹿のペンギンクルーが走り回る様子は微笑ましかった。
「あら、シェスカさん達がなにやら楽しそうなことをしておられますね?」
何でしょう、と不思議に思ったティーシャはタコとペンギンに近付いていく。シェスカは彼女に面白い動きをしてみせようとラジコンを操作した。
だが、其処でとある事件が起こる。
「可愛……って、わぷッ!」
「……あ、ごめん」
うっかりの操作ミスで一体がティーシャの顔に貼りつく。思わず謝ったシェスカだったが、驚いたティーシャは後ろに倒れ込んでしまった。
「な、なんです!?」
「大丈夫? 今すぐに取ってあげるよ」
駆けつけてきた鈴鹿とペンギンクルー達が優しくティーシャを助け起こす。はっとしたティーシャは起き上がり、鈴鹿に礼を告げた。
急に視界が塞がれたことで慌ててしまったうえに困惑してしまったが、其処でやっとティーシャは現状を把握する。
「あ、ああ……キカイでしたか、なるほどなーですわね」
「平気そうね。ごめんなさい、気をつけるわ」
シェスカは彼女の無事だったことに安堵を抱き、改めてドローンを飛ばしていく。
その際に行うのは周囲のマッピング。
「タコやペンギン達みたく頭数がいれば、迷路の把握もし易いわ」
「道案内ペンギンはシェスカのマッピングのお手伝いしてあげて!」
地図を見るのが得意な子を補助につけてやった鈴鹿は、次に優しさペンギンに指示を出していく。誰かが迷子にならないようにみんなと手を繋いで案内するクルーはとても可愛らしく、いつしかティーシャもその輪に入っていた。
「ペンギンさんたちも可愛いですね。お互い、迷子にならないようにしましょうね?」
ほのぼのとした時間が流れていく。
そうしていると、早速タコドローンがちいさな宝箱を見つけてきた。
「ふふ、何か見つかりましたか?」
「中身は何かしら」
「さっそく開けてみよう!」
ティーシャが宝箱を覗き込み、シェスカと鈴鹿がそっと手を伸ばす。そして、宝箱を開けると――中に黄金のインゴットがたくさん詰まっていた。
「すごい……けど流石に本物じゃないわよね。海賊の遺したお宝風なのかしら?」
「見て、水族館のロゴが入ってる!」
「綺麗ですねぇ」
シェスカが首を傾げると、鈴鹿とティーシャがロゴ入りインゴットに和む。きっとこれ以外にもまだまだ多くの
「よーし、まだまだ見つけるわよ!」
大いに張り切るシェスカ。その隣では鈴鹿も意気込んでいた。
「それにしても深海を歩く……かぁ、海底二万マイルを思い出すね……ぼくは不思議なロマンを感じるよ」
鈴鹿はふと感慨深く呟き、周囲の揺らめきをもう一度じっくりと見つめる。
憧憬を抱く鈴鹿に同調したシェスカはそっと頷いた。
「ここの海が半ば作り物でも、人に夢を与える物であることには違いないしね」
それもまた、私達の科学の務め。
シェスカが思いを言葉にすると、ティーシャも同意を示すように首を縦に振った。
そして、鈴鹿も思いを深める。
「忘れないように。それから忘れられないように、だね」
そう願い、作られた幻影の海を歩けば――それだけでも、この世界の海への憧憬も見えると思うから。
すべてのことが永遠に続くことなど絶対にない。
静かに消え去り、或いは淘汰され、世界と歴史は少しずつ未来に進んでいくもの。
その中に科学という力が生まれ、幻想という追憶が巡り、記憶という名の思い出が増えてゆく。何気ないひとときもまた宝物なのかもしれない。
それから暫し、三人は楽しい時間を過ごしていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夜桜・蝶子
由貴真さん(f38303)と
水族館なんていつぶりかしら
きまいらふゅーちゃーの水族館でしょう?
ふつうの水族館よりきっと楽しいわよ
なによ、あなたが暇でたまんないっていうから
連れてきてあげたのに……
もういい、ほんとにそういう所よ。
(世話になってる分強く言えないのが嫌なんだから)
海の生き物が挨拶をしてくれたら
優しく指で触れてお返し
由貴真さん…ぼうっとお魚見てる。
なんだかんだ楽しそうよね
SNS、私はしてないからよく分からないけど
写真とってあげましょうか?
…ふぅん
……ねえ、後ろを見て
うふっ、あははははっ!
久しぶりにこんなに笑ったわ
ありがとう、由貴真さん
皇・由貴真
◎
夜桜・蝶子(f38302)
キミがいつまでも湿っぽいし、
偶には外に連れ出してやらんと
体に悪い思て――まあ、死んでんねんけど
うわ、人多ッ
水族館とかガキとカップルしかいーひん所やん
キミとカップル思われたら俺困るわ
ほな早う見て混まへんうちに帰ろ。
まあ映えそうやしええわ…君、写りこむなよ。
SNS用の写真撮ったしもうええわ。
ちっこいのが追いかけおうてかいらしいなぁ
俺の顔になんかついとる?
顔載せてへんからいらんわ。
あっち魚おるで、見とき
……は?どっっわ!!!!
~~ッ…… ほんまにキッショイわお前
鮫くんもどっか行けや
人の背後に音のう近づくんは危ないヤツやで
何わろてんねん、うるさ
●驚きと微笑みを
「水族館なんていつぶりかしら」
嘗てのことを思い返しながら、蝶子は揺らめく空間を見渡す。
その隣、少し離れたところでは由貴真が追憶水族館の案内板を眺めていた。蝶子は映像で投影された魚達の様子を興味深く見つめている。
「きまいらふゅーちゃーの水族館でしょう? ふつうの水族館よりきっと楽しいわよ」
ねぇ、と蝶子が由貴真を呼ぶと、彼の視線が案内板から移動する。
「キミがいつまでも湿っぽいし、偶には外に連れ出してやらんと体に悪い思て――まあ、死んでんねんけど」
その物言いに対し、蝶子は僅かに視線を伏せた。
「なによ、あなたが暇でたまんないっていうから連れてきてあげたのに……」
どうにも思いがすれ違っている気がする。
しかし、せっかくの水族館の楽しげな雰囲気をふいにしてしまうわけにもいかない。行きましょ、と蝶子が先に進んでいくと、由貴真から声があがった。
「うわ、人多ッ」
「人気のリゾート施設のひとつみたいだからね」
「水族館とかガキとカップルしかいーひん所やん。キミとカップル思われたら俺困るわ。ほな早う見て混まへんうちに帰ろ」
蝶子が思わず紡がれた言葉に対する返答をすると、由貴真は頭を振る。
その言い方にデリカシーがないと感じた蝶子は肩を竦めた。
「もういい、ほんとにそういう所よ」
彼に世話になっている分、あまり強く言えないのが嫌になってしまう。されどこういった物言いや態度も由貴真らしいものだ。
「まあ映えそうやしええわ……君、写りこむなよ」
「わかったわ」
蝶子は自分だけでも水族館の雰囲気を楽しもうと心に決め、悠々と泳いでいる魚の方に歩いていった。
頭上には回遊する魚の群れ。足元にはゆらめくヒトデ。
傍には小魚が寄ってきてくれたので、蝶子の口許にもちいさな笑みが宿る。海の生き物達が挨拶をしてくれたように思え、蝶子は指先を伸ばした。
「こんにちは」
蝶子は優しく指で触れてお返しをしてみる。すると、可愛らしい小魚がくるりと周囲を回ってくれた。
そんな中、由貴真はSNS用の写真を撮った後にぼうっと魚の群れを見ている。
「ちっこいのが追いかけおうてかいらしいなぁ」
「由貴真さん……なんだかんだ楽しそうよね」
蝶子が話しかけると、由貴真は黒檀の髪を軽くかきあげた。
「ん? 別にもうええわ」
「そうなの?」
「俺の顔になんかついとる?」
じっと見つめてくる蝶子に対し、由貴真は首を傾げる。どうやら蝶子はSNS用の写真について関心があるらしい。
「SNS、私はしてないからよく分からないけど、写真とってあげましょうか?」
「顔載せてへんからいらんわ。あっち魚おるで、見とき」
由貴真は申し出を断り、自分とは違う方向を指差した。体よく追い払われているのだと分かった蝶子は複雑そうな顔をする。
「……ふぅん」
返事も曖昧に、蝶子は示された方に歩いていった。しかしそれだけでは終わらない。
蝶子は由貴真の方をちらりと見遣り、或ることに気が付いた。再び視線を感じた由貴真は、まだ何かあるのかと言いたげに灰色の瞳を緩く細める。
「何や?」
「……ねえ、後ろを見て」
「は?」
蝶子は彼の背後を指差し、意味ありげなアイコンタクトを送った。意味がわからずそのまま振り向いた由貴真の後ろにいたのは――サメだ。
「どっっわ
!!!!」
驚かずにはいられず、由貴真は一気に駆け出した。映像だとは分かっていたが流石にサメが牙を見せている場面にずっと佇んではいられない。岩のオブジェの裏に回り込んだ由貴真は胸元を押さえていた。
その様子を見つめていた蝶子は最初こそ口許を隠していたが、次第に笑っていることを隠さないほどに盛大に声をあげた。
「うふっ、あははははっ!」
「~~ッ……ほんまにキッショイわお前」
思いっきり笑う蝶子を見遣り、由貴真はしっしっと手を振る。やりきれない気持ちを抱きながら、次に語りかけたのは映像のサメ。
「鮫くんもどっか行けや。人の背後に音のう近づくんは危ないヤツやで」
その声に応じたのか、サメは何処かに泳ぎ去っていった。
お腹を抱えるほどに笑った蝶子は半ば涙目になっているほど。よほど面白かったのだろうが、由貴真としては愉快ではないことだ。
「あははは、ふふ、ふふふ……!」
「何わろてんねん、うるさ」
「久しぶりにこんなに笑ったわ。ありがとう、由貴真さん」
「……まぁ、どういたしまして」
複雑そうな表情をしている由貴真に向け、蝶子は心からの言葉を送る。その声を聞いた由貴真は頬を掻き、これまた複雑な心境で答えていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ドルデンザ・ガラリエグス
藍夜くん(f35359)と🐚
そうですね、実に静かです
……それこそ、何者にも邪魔されない
はあい、何ですか藍夜くん
ん?ああ、あれは――アンモナイトかな
つまらないですか?
隠さなくてもいい、大丈夫
はあい、何でしょう?
あ、もしかして飽きてきたんです?
しょうがないですねえ私ピアノでも持ってくれば良かったでしょうか
分かりますよ
君の気持ち
別に声せずとも結構
どうにも私は耳が良いようで
君は非常に忍耐強い人だ
何でも当たり前の様に、息をする様に耐える
私はそれが心配です
私は藍夜くんを案じるまでは出来ても
止めることは出来ないし、代わってもやれない
大切になさい、自分を(上着を掛けて)
あー!ひどーい!失礼ですねこの坊やめ!
御簾森・藍夜
おっさん(f36930)と🐚
静かだな
ほんとうに静かだ
……おい、おっさん
――あれ、何だ。あのなんかデカイ貝にイカが刺さったみたいの
ふーん。別にそんなことは――
……なあ。
いや、そんな、良い。別にいい。
べつ、に
(苦しい、辛い、訳が分からない)
(馬鹿みたいだ)
(なんでこんな)
(静かに静かに声を殺して泣きながら)
そうか……耳が良いのは、助かるな
助かるよ、ありがとうおっさん
別に……こんなこと、人前でどーたらこーたらする話じゃない
べつに、我慢なんざ……
心配すんな煩いぞ
……おぼえておく
善処はする
おっさんあんただって……あんただって自分を大事にしろ
やめろばか上着加齢臭がするだろうが……くそ(強く握って泣いた)
●追憶の境界線
波の音すら聞こえない静寂。
海中の映像が映し出された青の世界には、音のない光が揺れていた。
「静かだな。ほんとうに静かだ」
藍夜は水面の天上が見える頭上を振り仰ぎ、ちいさな言葉を落とす。その声を聞いたドルデンザは穏やかに頷いた。
「そうですね、実に静かです。……それこそ、何者にも邪魔されないような――」
ドルデンザも追憶水族館に満ちる空気を緩やかに楽しんでいた。藍夜はそんなドルデンザとは別の方向に視線を巡らせていく。
「……おい、おっさん」
「はあい、何ですか藍夜くん」
不意に彼に呼ばれたことでドルデンザが振り向く。藍夜は今しがた遠くを通っていった生き物が気になったらしく、それを指差していた。
「――あれ、何だ。あのなんかデカイ貝にイカが刺さったみたいの」
「ん? ああ、あれは――アンモナイトかな」
「ふーん」
ドルデンザから謎の生き物の名前を聞いた藍夜は相槌を打つ。そのままぼんやりとした様子で、アンモナイトが泳いでいく軌跡を眺めた彼は暫し無言だった。
その様子が気に掛かったドルデンザは問いかけてみる。
「つまらないですか?」
「別にそんなことは――」
「隠さなくてもいい、大丈夫」
藍夜は取り繕うように首を触ろうとしたが、ドルデンザがそれを制止した。しかしその仕草も言葉も優しくて穏やかなものだ。
それ以上は何も言えなくなった藍夜は暫し、彼の傍に佇んでいた。そして、何処か頼りなさげな視線を向ける。
「……なあ」
「はあい、何でしょう? あ、もしかして飽きてきたんです?」
「いや、そんな」
「しょうがないですねえ。私のピアノでも持ってくれば良かったでしょうか」
「良い。別にいい。べつ、に」
ドルデンザは気遣ってくれているが、藍夜は上手く話せなかった。既に滅びてしまった生き物達が行き交う光景は物悲しく思えて、どうしても言葉が出て来ない。
苦しい、辛い。
これほどに胸が締め付けられているというのに、訳が分からない。
(馬鹿みたいだ)
胸裏には次々と思いが溢れてきているが声にはならない。目の前を通り過ぎていく魚の游ぐ様を見つめていることすら今は辛い。
(なんでこんな)
藍夜は静かに、静かに声を殺して泣いていた。
するとドルデンザが自分達以外には聞こえない、ちいさな声で囁く。
「分かりますよ」
「……え?」
「君の気持ち。別に声せずとも結構」
「そうか……」
思わず顔をあげた藍夜に対し、ドルデンザは優しく伝えた。
「どうにも私は耳が良いようで」
「助かるよ、ありがとうおっさん」
上手く言葉にできなかった思いを感じ取ってくれているのならば幸い。藍夜が一度だけ目を閉じる中、ドルデンザは彼の背に触れた。そのまま人気のないところへさりげなく連れていってくれるのも彼の優しさだ。
「君は非常に忍耐強い人だ。何でも当たり前の様に、息をする様に耐える。分かるからこそ……私はそれが心配です」
「別に……こんなこと、人前でどーたらこーたらする話じゃない。べつに、我慢なんざ……。それにそんなに心配すんな、煩いぞ」
藍夜はドルデンザの思いを聞きながら普段からの鋭い言葉で返す。
ドルデンザの方は気にした様子もなく、ただ己の考えを声にしていった。周囲に揺らめく青色は二人を包み込むように揺れている。
「私は藍夜くんを案じるまでは出来ても、止めることは出来ないし、代わってもやれませんから。だから――」
「……おぼえておく」
善処はする、と呟いた藍夜は心の奥底から何かが溢れているような感覚を抱いた。こうしてドルデンザが傍についていてくれるからだろうか。
「大切になさい、自分を」
「おっさん、あんただって……あんただって自分を大事にしろ」
藍夜は言葉に詰まりそうになりながらも、それはお互い様だと語った。静かに微笑んだドルデンザは藍夜に上着を掛けてやった。
「やめろばか。上着の加齢臭がするだろうが……くそ」
藍夜は敢えて言葉を強くした。優しさを素直に受け止められない気がしたゆえ、こうするしかなかったからだ。だが、ドルデンザも彼のことはよくわかっている。
「あー! ひどーい! 失礼ですねこの坊やめ!」
藍夜が本気で言っているわけではないと知っているので、ドルデンザもおどけた様子で笑ってみせた。彼は何処までも、どんなときも優しい。
ときには優しさが痛みを齎すこともあるが、それでもいい。藍夜はドルデンザの上着の裾を強く握って、静かに泣いた。
揺蕩う波間と水面から降りそそぐ光だけが、彼らをそっと見守っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と
💎お土産お任せ
大きなサメ、どきどきしましたね…!
汽車に乗って触れ合った魚や見てきた展示を思い返しつつ
辿り着いた先は…
宝探しです、ラナさん!
深海の風景は歩いてる筈なのに
泳いでいるような感覚で
足元がふわふわしているような
繋ぐ手に僅か力を込めて
楽しみですねと彷徨いながら泡を潜り
迷路を奥へ進んでいく
どんな宝物でもラナさんと一緒に探した物なら
とびきりの特別になるのは違いないけど
ラナさんは何が見つかりました?
交換は勿論喜んで
疲れたのならカフェに行きましょう!
海色クリームパフェがちょっと気になってるんです
特別という言葉が擽ったい
じゃあこれからも
もっと特別をラナさんに差し上げますね
ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)
💎お土産お任せ
大きくてドキドキしましたね
私はイカ博士さんが好きです!
これまでの道程を語りながら
辿り着いた宝探し
離れてしまったらと不安で
つい繋いだ手を確かめて
どんな物が見つかるか
勿論ワクワクするけど
深海の世界を揺蕩うことが十分幸せ
一緒に見つけた宝物は勿論特別だけど
蒼汰さん、よろしければ交換しませんか?
向日葵迷路で交換した宝物
海の迷路でも、と思ったから
少し歩き疲れましたね
私もパフェが気になります!
水族館は蒼汰さんとお仕事以外で初めて出掛けた場所なので
…ちょっぴり特別、なんです
少し照れながら紡げば
優しい言葉に胸がきゅっとなるけど
…私も
蒼汰さんに特別を差し上げたいです、よ?
●特別を重ねて
今日は青の世界を巡りゆく日。
揺らめく海中の投影映像の最中で、蒼汰とラナは先程までのことを思い返していた。
「大きなサメ、どきどきしましたね……!」
「予想以上の大きさで、いま思い出してもドキドキします」
水族館に到着して、まず乗ったのは海中鉄道。汽車の中に入ってきた魚達と触れ合ったり、絶滅した生き物達の展示は実に楽しくて興味深かった。
「ラナさんはどれが好きでしたか?」
「私はイカ博士さんが好きです!」
歩きながら蒼汰が問うと、ラナは入り口で迎えてくれたマスコットキャラクターが可愛らしかったと答えた。
明るく笑いあう二人が、次に辿り着いた先は――深海迷路の冒険宝探しゾーン。
「宝探しです、ラナさん!」
「冒険に出発ですね」
二人は隠された宝を見つけるための意気込みを抱く。けれども内部は入り組んだ迷路になっているらしい。そのことを思い出したラナは蒼汰の掌を握る。
もし離れてしまったら不安で、繋いだ手の感覚を確かめたかったからだ。
「大丈夫ですよ」
「……はい、ありがとうございます」
ラナの思いを仕草から感じ取った蒼汰は優しい眼差しを向けた。ラナも安心している様子で迷路の奥に歩みはじめる。
深海の風景はやはり不思議だ。しっかりと足をつけて歩いているはずなのに、まるで泳いでいるような感覚がする。
足元がふわふわしているようで、蒼汰もラナと繋ぐ手に僅かに力を込めた。
「何が見つかるでしょうか」
「楽しみですね」
最初は岩陰へ、次は揺らいでいる海藻の奥へ。あちらこちらへ彷徨いながら泡を潜り、宝箱を探して進む心地は良いものだ。
ラナは時折、蒼汰の横顔を見上げた。どんなものが見つかるかという期待も大きいけれど、こうして二人だけで深海の世界を揺蕩うことが十分に幸せ。
蒼汰も時々ラナを見つめ、快い思いを感じていた。
どんな宝物でも彼女の一緒に探した物ならば、きっととびきりの特別になる。
そして、二人はそれぞれに小さな小箱を発見した。
「これは……」
「ラナさん、何が入ってました?」
二人は互いの箱に入っているものを確かめる。ラナが見つけたのは黒蝶真珠が一粒あしらわれたブレスレット。蒼汰は花珠真珠が幾つも連なっているネックレスだ。
「真珠のアクセサリーみたいです」
「こっちも真珠の宝物です。どちらも綺麗ですね」
近くに置いてあったからなのか、どちらも真珠を使った宝物だったようだ。二人は無事に宝が見つかったことを喜んだ。
すると、ラナがそっと提案を投げかける。
「あの……蒼汰さん、よろしければ交換しませんか?」
「はい、勿論。喜んで」
二人は自分が見つけたものは相手にこそ似合うと感じていた。ラナから蒼汰へブレスレットが手渡され、蒼汰からラナにはネックレスが贈られる。
海の迷路でもまたひとつ、二人の特別を彩るものを見つけられた。
「それにしても、少し歩き疲れましたね」
これまでずっと歩き通しだったからか、ラナはそっと立ち止まる。その視線の先にはカフェに向かうための順路案内があった。蒼汰は自分も丁度同じことを思っていたと話し、ラナを誘って先に進む。
「カフェに行きましょう! 海色クリームパフェがちょっと気になってるんです」
「私もパフェが気になります!」
行ってみましょう、と答えたラナは嬉しげな微笑みを浮かべる。
ゆっくりと順路を進む二人は心地良さを感じていた。特にこういった水族館で過ごす時間となると、ラナの心はふわふわとした快さに包まれる。
「ラナさん、どうかしましたか?」
「いえ、楽しいなって思って。水族館は蒼汰さんとお仕事以外で初めて出掛けた場所なので……ちょっぴり特別、なんです」
蒼汰はラナからの言葉を聞き、心からの嬉しさを抱いた。
――特別。
少し照れながら紡いでくれた彼女の言葉が擽ったくて、何よりも喜ばしい。
「じゃあこれからも、もっと特別をラナさんに差し上げますね」
蒼汰は真っ直ぐな思いを向け、ラナに笑いかけた。彼の優しい言葉に胸がきゅっとなり、ラナはその肩にそうっと寄り掛かる。
「……私も、蒼汰さんに特別を差し上げたいです、よ?」
「ラナさん……」
澄んだ青に染まった世界で重なるのは、互いに捧げる想いと心。
海色に揺らぐ光は穏やかで――此処からも亦、二人で過ごす特別な時間は続いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
【月風】
🚂
ヴァーチャルな水族館かぁ…さすがキマフュ
ヴァーチャルな海とは言え汽車の色も海仕様だ
楽しみだな
手を取り汽車に乗り込み
おおーすげぇ
珊瑚礁の中走ってる!
魚になった気分だな
なーリアリティすげぇよな
あっ入って来た!
クマノミに手を伸ばしすり抜けないように触れ
確かに少しふんわりとしてる…
って通り過ぎた!
面白ぇ
見て見て瑠碧!
イソギンチャクと握手!
触手を軽く握って
本物は毒があるんだっけ?
バーチャルならではだろ
開放的だからすごいよく見えるな
瑠碧ほら
今度は鰯の群れ!
見上げ
美味そうとか思ってねぇぞ?
…映像だし
んっ
イルカだ
合わせて泳いでくれてるみたいで可愛いな
背を撫でて
ほら瑠碧も
小さく笑む様子に可愛いと笑い
泉宮・瑠碧
【月風】
🚂
ばーちゃる、とは…?
不思議そうにしつつ
汽車は数回乗りましたので不安は少しだけ
手を繋いで乗り込めば収まります
海の中みたいなのに
息も服も大丈夫で…不思議ですね
入ってきた魚に手を伸ばす理玖を見てほのぼの
魚に声を掛けても反応が無く
理玖の手をすり抜ける姿にばーちゃるを少し把握
理玖の声に目をやれば
握手をしている様な姿に
一瞬驚いて引き離そうとして…
すり抜けるのでした、よね…
はい、毒がある筈です
鰯…?
本当…きらきらしてます
でも、食べられるお魚では
そう思ってちらりと理玖を見て
…違いましたか
車体の横の影を見れば…イルカ
人懐っこいですね
本物では無いと思い出しても
手を伸ばせば
何となくの感覚に小さく笑みます
●青色の記憶
「ヴァーチャルな水族館かぁ……さすがキマフュ」
様々な映像が投影された館内を見渡し、理玖は感嘆の声を落とした。
本物ではない海とはいえ、目の前の汽車の色も海仕様。なかなか良い雰囲気だと感じた理玖の傍ら、瑠碧は不思議そうに瞼を瞬かせていた。
「ばーちゃる、とは……?」
瑠碧には分からないことばかりだが、こういったものは習うより慣れた方が早い。
「楽しみだな」
「はい、どきどきしますが……わくわくもします」
理玖に連れられた瑠碧は彼と一緒に汽車に乗り込み、青の世界への思いを馳せた。これまでに汽車は何度か乗ったことがある。不安は少しだけあったが、理玖と一緒ならばどんなことでも興味と楽しみに変わる。
二人は空いている席を探し、向かい合わせになった窓際の席に腰を下ろした。発進していく汽車の窓に硝子は設置されておらず、海色の景色がそのまま見える。
「おおーすげぇ。珊瑚礁の中走ってる!」
理玖は車窓から見える光景を見つめ、無邪気に笑っていた。瑠碧は少しだけ慎重に外を見つめ、泳いでいく魚に目を向ける。
「海の中みたいなのに、息も服も大丈夫で……不思議ですね」
「流石、リアリティ。俺達も魚になった気分だな」
「わ……」
「あっ入って来た!」
二人が話していると、窓から魚達が訪れた。目の前に現れたクマノミに興味を持った理玖は腕を伸ばしてみる。そのまま、すり抜けないようにそっと触れれば、ふんわりとした感触が伝わってきた。
「って通り過ぎた! 面白ぇ」
「楽しそうですね、理玖」
瑠碧は魚と触れ合っている理玖を見て、ほのぼのした気持ちを抱く。こんにちは、と小魚に挨拶をしてみても普段のような反応はなく、ヴァーチャルリアリティというものがどんなものなのか、少し理解できた気がした。
その間も理玖は魚と戯れており、その指先が時折すり抜けていた。それでもこれはこれで不思議で面白く、瑠碧も倣って指先を伸ばしてみる。
まるで本当に生きているようだと感じていると、理玖が瑠碧を呼ぶ声がした。
「見て見て瑠碧!」
「……はい?」
「ほら、イソギンチャクと握手!」
理玖は宙に浮いている生き物の触手を軽く握る仕草をしている。
「ぴゃ……理玖――大丈夫みたいですね」
一瞬、驚いて彼とイソギンチャクを引き離そうとする瑠碧。しかし、すぐに安全だと悟って席に座り直す。
「大丈夫だって。本物は毒があるんだっけ?」
「はい、毒がある筈です」
こうやって戯れられるのも此処だけの特別なことだ。理玖は心配してくれた瑠碧に感謝の視線を送り、楽しげに笑ってみせた。
「バーチャルならではだろ」
「すごい、です……」
「それに窓が開放的だからすごいよく見えるな。瑠碧、ほら」
「あれは……」
「今度はあっちに鰯の群れ!」
「鰯……?」
瑠碧は理玖が示す方向に目を向け、首を傾げた。光を反射して煌めく魚達が群れをなして泳ぐ様は美しく思える。
理玖は暫し群れを見上げ、瞳に海中の景色を映していた。
「本当……きらきらしてます。でも、食べられるお魚では――」
「あ、美味そうとか思ってねぇぞ? ……映像だし」
瑠碧は理玖の考えていることを想像していたが、彼は首を横に振る。
違いましたか、と告げて軽く目を背けた瑠碧は、もし本物であったら食べたくなっていたのだろうかと考えていた。
それはさておき、汽車はどんどん進んでいく。
珊瑚礁や深海を通った後は、波間から降りそそぐ光が目映いエリアになった。理玖は前方を指差し、再び瑠碧を呼ぶ。
「んっ、イルカだ」
「横に泳いできてくれました、ね」
瑠碧は自分達の車窓の隣に訪れたイルカを見て、そっと微笑んだ。可愛いな、と言葉にした理玖は窓の外に手を差し伸べる。
その背を撫でると、ふんわりとした心地を感じられた。
「人懐っこいですね」
「ほら瑠碧も」
理玖は彼女の手を優しく掴み、イルカの背の方に持っていってやる。瑠碧はどきどきした感覚をおぼえながら静かに背中に触れてみた。
本物ではなくとも、理玖と一緒に見ているものは同じ。嬉しそうにちいさく笑む瑠碧の横顔を見て、理玖も楽しそうな笑顔になった。
海と青の世界は美しく――今日もこうして、二人の思い出が紡がれている。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朧・ユェー
【月光】🚂◎
ヴァーチャルな世界
映像の水族館なんて珍しいですね
大きなイカさん?博士が説明してくださってますね
おや、ルーシーちゃん
彼方に綺麗なブルーの汽車がありますよ
乗りますか?
彼女と手を繋ぎ、手を引いて汽車の中へ
隣の席にひょいっと乗っけて
空いてる窓の方へ
海の世界はどうですか?
窓から入ってくる沢山の魚達
おやおや、大きなサメが入ってきましたね?
こちらを大きな口を開けて
そうですね、本物ならルーシーちゃんは一飲みかもしれません
ふふっ、大丈夫ですよ?
その時は僕の後ろに居てくださいね
イルカも入って来る
そっと触ると透けてしまうがふんわりとした感触に
ルーシーちゃんも触りますか
とても楽しかったですね
汽車から彼女を下ろし
再び手を繋いで
ここにもクマノミ?ルーシーちゃんはその子が好きですね
次は何処に行きましょうか?
一緒に宝探しでもゆっくりカフェでも良いですね
えぇ、じゃ全部行きましょうか
ルーシーちゃんの頼みなら何処でもお供しますよ
ルーシー・ブルーベル
【月光】◎🚂
これ全部映像なの?すごい!
ふふ、本当
イカ博士さん、かわいいわ
ブルーの汽車?わ、ステキ!乗りたい
手を引かれるままに座席へ
もちろんルーシーはゆぇパパのおとなり、トクトウセキ!
えへへー、ありがとう
窓際に座らせて下さったけど、パパもちゃんとお外見えてる?
わっ、たくさんお魚が来てくれたよ、パパ!
色とりどりのサンゴもきれい!
海の世界って、ステキね
サメ?と振り向くとまさに大きな口を開けてくる瞬間!
ひええ
映像と分かっていても思わずパパにしがみ付く
び、ビックリした
だって鋭いキバがいっぱいだったのよ
ひとのみ…!
で、でも
後ろに居たらパパが飲まれちゃうかもでしょ?
なら後ろじゃなく隣にいる
まあ今度は親子のイルカさんね!
うん、触る!
指を伸ばせばふんわりした感触
それも楽しくてたくさん撫でたり擽ってみたり
イルカさんに手を振りお別れ
とても楽しかった!
降りたらまた手を繋いで
ふわり隣を泳ぐクマノミさんをつんつん
ふふ、パパの傍にも居るよ
あのね、ワガママ言ってもいい?
宝探しもカフェも、ぜんぶ!
やった!行きましょう!
●透き通る思い出
水槽のトンネルを潜れば、其処はヴァーチャルな世界。
ユェーとルーシーはいつものように手を繋ぎ、追憶水族館に足を踏み入れる。
「映像の水族館なんて珍しいですね」
「これ全部映像なの? すごい!」
辺りを見渡すユェーの隣でルーシーは興味深く入り口のオブジェを見つめていた。其処にはマスコットキャラクターであるイカ博士が手を振っている。
「大きなイカさん? 博士がこの場所のことを説明してくださってますね」
「ふふ、本当。イカ博士さん、かわいいわ」
ユェーが先を示したことでルーシーは楽しげに微笑んだ。入口付近の案内板を軽く眺めたユェーがまず気になったのは海中鉄道だ。
ちょうど見遣った先に乗り場があり、間もなく発車の時間が近付いているらしい。
「おや、ルーシーちゃん。彼方に綺麗なブルーの汽車がありますよ」
「ブルーの汽車? わ、ステキ!」
カフェや宝探しのゾーンへの地図を見ていたルーシーは顔を上げた。ユェーと同じ方向に目を向ければディープブルーカラーのレトロな雰囲気の汽車が見える。
「乗りますか?」
「うん、乗りたい! ……乗って良い?」
「勿論です。さぁ、行きましょうか」
ルーシーが上目遣いで見上げる姿を可愛らしく思いながら、ユェーは承諾した。少し遠慮がちだったがルーシーも彼が断るとは思っておらず、とても嬉しそうに笑っている。
そうして、ユェーは少女の手を引いて汽車に乗り込んだ。
向い合せの席や隣合わせの席など様々だったが、二人が選んだのは隣同士の座席。
「この辺りに座りましょうか」
「うん!」
ユェーはルーシーに窓側の席を示し、其処へひょいっと乗せてやった。その隣、通路側の席に腰を下ろしたユェーは少女に海の景色がよく見えるように配慮している。
「えへへー、ありがとう」
「落ち着いて景色が眺められそうですね」
「ルーシーはゆぇパパのおとなり、トクトウセキ!」
「おや、出発するようですよ」
丁度そのとき、発車を知らせる汽笛が鳴り響いた。ゆっくりと進んでいく汽車の揺れは心地よく、二人はそっと微笑みあう。
それまで乗車ホームの光景だった車窓の景色も動いていき、青の世界が広がっていく。
ルーシーは敢えて硝子がはめられていない窓から外を眺めた。わぁ、と感嘆の声をあげた彼女は暫し景色に見惚れていた。
しかし、すぐにはっとしてユェーの方に振り返る。
「窓際に座らせて下さったけど、パパもちゃんとお外見えてる?」
「平気ですよ、ちゃんと見えていますから」
「それなら良かった……!」
自分が窓際に座ったことでユェーが景色を楽しめていないかもしれないと思ったが、ユェーもちゃんと車窓の光景を見ているようだった。にこにこと笑っているユェーは窓の外を指差し、ルーシーに問いかける。
「海の世界はどうですか?」
そういうと車窓から色とりどりのたくさんの魚達が入ってきた。
「とっても綺麗……わっ、たくさんお魚が来てくれたよ、パパ!」
「本当ですねぇ」
二人の目の前を通り抜けていった魚達は逆側の窓から海に出ていく。しかし、また別の魚が窓から訪れた。名前の知らない魚も多くいて、ルーシーは瞳を輝かせる。
「色とりどりのサンゴもきれい! 海の世界って、ステキね」
「おやおや、大きなサメが入ってきましたね?」
ルーシーが感動していると、ユェーが前方の窓に注目した。車内にいる魚に目を奪われていたルーシーは首を傾げ、彼の視線を追ってみる。
「サメ?」
するとサメは大きな口を開けて此方に向かってきた。おや、と言葉にしたユェーの横で、ルーシーは思わず驚いてしまう。
「ひええ」
映像と分かっていても恐ろしく、ルーシーはユェーにしがみついた。しかしサメの映像はルーシーを擦り抜けながら後方に行ってしまったようだ。
「び、ビックリした」
「そんなに驚きましたか?」
「だって鋭いキバがいっぱいだったのよ」
まだ胸がドキドキしていると語るルーシーは予想外のスリルを味わったらしい。ちいさく笑ったユェーはそんな彼女が可愛らしいと感じた。
「そうですね、本物ならルーシーちゃんは一飲みかもしれません」
「ひとのみ……!」
「ふふっ、大丈夫ですよ? その時は僕の後ろに居てくださいね」
ルーシーを落ち着かせようとしたユェーは優しく語りかける。だが、ルーシーは別のことが気になってしまった。
「で、でも、後ろに居たらパパが飲まれちゃうかもでしょ?」
「そうなるかもしれませんねぇ」
「なら後ろじゃなく隣にいる!」
ぎゅ、とユェーの腕に掴まり直したルーシーは意気込んでいた。先程の驚きも忘れて、大切な人を守りたい気持ちを強く持っている少女。彼女の心がとても優しくて嬉しいと感じつつ、ユェーは更に笑みを深めた。
そうして、暫し後。
次に車窓から入ってきたのは人懐っこそうなイルカ達だ。
「おやおや、イルカも入って来ましたね」
「まあ今度は親子のイルカさんね!」
ユェーは腕を伸ばしてそっと親イルカの方に触ろうとしてみた。映像であるゆえに透けてしまうが、指先に感じたのはふんわりとした感触。
「わ、どんな感じなのかな」
「ルーシーちゃんも触りますか?」
「うん、触る!」
ユェーが触れても大丈夫みたいだと語ってくれたことで、ルーシーは子イルカの方に手を伸ばした。自分から鼻先を擦り寄せてくれた子イルカは愛らしい。
ふんわりした感触を確かめたルーシーもまた、ふわりと笑った。イルカ達は暫く二人の元に留まってくれており、ルーシーはたくさん撫でたり擽ってみたりと大いに楽しんだ。
そして、楽しい汽車の旅もそろそろ終わり。
「イルカさん、またね!」
ルーシーは海の彼方に去っていくイルカに手を振って別れ、ユェーもその背を優しく見送った。やがて停車した汽車から下りた二人は、汽車の中で起こった楽しい出来事をそっと思い返していく。
「とても楽しかったですね」
「うん、とっても、とーっても楽しかった!」
ユェーとルーシーは同じ気持ちを抱いているらしく、花のような笑みが咲いた。
再び手を繋いだ二人はふと、少し先の足元に何かが投影されていることに気付く。
「クマノミさん!」
「ここにもクマノミ? ルーシーちゃんはその子が好きですね」
「ええ、だって可愛らしくて……ルーシー達みたいだもの」
ルーシーは隣を泳ぐクマノミをつんつんとつつきながら、好きな理由を語った。いつも親子が一緒にいる魚達は愛らしい。ルーシーはクマノミを少し真似た様子でユェーにぴったりとくっついてみる。
「ふふ、パパの傍にも居るよ」
「えぇ、ルーシーちゃんが一緒に居てくれます」
穏やかな気持ちを抱いたユェーは頷き、愛しい少女を優しく見つめた。
そして、ユェーは辺りをもう一度見渡してみる。
「次は何処に行きましょうか?」
「あのね、ワガママ言ってもいい? 宝探しもカフェも、ぜんぶ!」
問いかけられたことに対してルーシーは遠慮なく我儘を伝えた。彼ならば拒否しないと信じて甘えている少女は目映い笑顔を湛えている。
「一緒に宝探しでもゆっくりカフェでも良いですね。えぇ、じゃ全部行きましょうか」
「やった! 行きましょう!」
「ルーシーちゃんの頼みなら何処でもお供しますよ」
手を繋いだ二人は仲良く先に進んでいく。
何処でも、と告げたのは今日この日だけのことではない。これからもずっと、彼女が望む世界や場所、催しや遊びに一緒に向かいたい。
ルーシーを想うユェーもまた笑顔を絶やさず、楽しい気分を満喫していた。
カフェで過ごしたゆったりとした時間。宝探しで見つけた特別なお土産を交換したり、今はもういない生物に思いを馳せたりした。
思い出はたくさん。互いを大好きだと思う気持ちは、もっともっと大きく――。
そうして二人は、今日という日をめいっぱいに楽しんでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩迎櫻
🐚◎
サヨ、リル!見たことも無い生き物が泳いでいるよ!独特な姿をしている魚も多いね
とても興味深い
ホムラもヨルと一緒に楽しんでいて微笑ましい
リルは水族館が苦手だったのかい?
大丈夫、そなたが閉じ込められる事は無い
助けに行くからね
サヨ、絶滅水族館コースのようだ
そうか過去に滅びた…過去になった生命達なのか
過去の光景を今に見ているようだね
過去に滅びた…私達の様だな、なんてイザナの呟きが聴こえて反射的にそんな事はないと言い返す
そうなのかもしれないが、イザナや神斬の存在は終わった過去という言葉で現したくない
リルの言う通りだよ
過去があるからこそ今がある
神斬がいたから私が居るように
私が継いだように
彼等の証は姿を変えて、しかと今にも継がれている
消え去ることなんて無いんだよ
例え忘れていても変わらずにあるんだ
それを見つけられなくなっているだけだ
神斬にくっつくサヨを傍らへ引き寄せながら泳ぐ過去を観る
…私はこれから数多の今を見送って、追憶を積み上げ生きるのだろうが…私は忘れたくない
こうして皆で過ごす、今も全て
リル・ルリ
🐟迎櫻
◎🐚
カムイが子どもみたいにはしゃいでるや!
僕はカムイよりお兄さんだから落ち着いているよ……さ、櫻!!尾鰭つつかないで!
同じく素直にはしゃぐヨルとホムラにふふりと笑う
水族館は苦手だった
水槽だらけで、世界から切り取られて、息が出来なくなりそうで
でも今は違うよ!
櫻とカムイが、両手をつないでいてくれるんだから
僕は平気なんだ
競り??
絶滅…
今はもういない魚達なんだ…
ぷくぷく游ぐ魚達をみる
もう無い…滅びた
ふと、カナン・ルーの光景が重なって見えた気がして
僕がいる限りなくならないんだ
とうさんやかあさん、パンドラ姉さんにユリウス……皆が生きた故郷は、ある
過去があるから今があるんだよ
二人とも過去じゃなくて今を生きてるじゃないか
カムイも櫻もいる
出会えた事に僕は感謝してるんだから!
すかさずヤキモチをやくカムイににこにこしながら過去になった魚達をみる
そうだよ
継がれているんだ
別の姿になったってきっとね
カムイは神様だからこれからたくさんを見守っていくんだね
櫻も隣で寄り添っていてほしいな
……僕も、なんて
我儘かな
誘名・櫻宵
🌸迎櫻
◎🐚
あらあら本当!変わった姿の魚達がいるわね!
…魚なの?
ふふ、お兄さんぶってるリルの尾鰭はワンちゃんみたいにぶんぶんしてるわよ
ちょんとつついて、はしゃぐ神と人魚に笑みが咲く
ヨルが魚食べないように見てた方がいいんじゃない?
…そうよ!リルが競りにかけられたり閉じ込められたりしたらすぐ助けにいくんだから!
へぇ、絶滅した魚ゾーンなのね
時の流れについていけなかった命達…
何だかしんみりしちゃうけど──あら師匠ったら!
本来は私もこうなるべきだった、なんて言わないで頂戴
師匠はおじい様として、神霊としてまたうまれたんだから!
ぎゅーっとしちゃう
リルの言う通り!
おじいちゃんの血も魂も私が継いでるのよ
私だって誘七なんだから
追憶はきっと必要なのよ
どんな過去だって、私を形作る大切なひとひらなのだと…今なら思えるから
これも皆のおかげかしら?少しは私も成長したでしょ?
カ、カムイったらまた!
……一人で追憶を見送る旅になんて行かせない
私も隣で一緒にいる
忘れないわ!桜が咲く限り…桜は忘れないでと散っても咲く華だから
●追憶の花
此処はキマイラフューチャーの水族館。
海中の景色が全周囲に投影されている様子は不思議だが、この光景から感じるのは賑やかな様子。
「サヨ、リル!」
追憶水族館の一角に響く、カムイの声は明るい。
まるで少年のように燥ぐ彼に呼ばれた櫻宵とリルはにこやかに後についていった。ほら、と周囲を示したカムイは興味深すに語る。
「見たことも無い生き物が泳いでいるよ! 独特な姿をしている魚も多いね」
その横ではホムラを頭に乗せたヨルがきゅいきゅいと跳ねている。リルは微笑ましさを感じ、櫻宵はカムイの隣に並んだ。
「あらあら本当!変わった姿の魚達がいるわね! ……魚なの?」
中には変わった見た目のものもいたので、櫻宵は思わず首を傾げる。その最中、リルは楽しげに尾鰭を振っていた。
「楽しそうでいいね。だけど僕はカムイよりお兄さんだから落ち着いているよ」
「ふふ、お兄さんぶってるリルの尾鰭はワンちゃんみたいにぶんぶんしてるわよ」
「……さ、櫻!! 尾鰭つつかないで!」
「ヨルが魚食べないように見てた方がいいんじゃない?」
櫻宵はリルをちょんとつつき、神と人魚の愛らしさを確かめる。そうかも、と冗談めかしながら返答したリルは今は明るく笑っているが――水槽や投影映像を見つめた彼は、ふとした呟きを落とした。
「僕ね、水族館は苦手だったんだ」
水槽だらけで、世界から切り取られて、息が出来なくなりそうで。
その話を聞いていたカムイが神妙な顔になる。
「そうだったのかい?」
「うん……。でも今は違うよ!」
はっとしたリルはすぐに笑ってみせた。苦手だったのは昔のことで、今は櫻宵とカムイが両手をつないでいてくれる。だからもう平気だと語ったリルはふわりと双眸を細めた。
すると櫻宵が拳を強く握る。
「そうよ! もしリルが競りにかけられたり、狭い水槽に閉じ込められたりしたらすぐ助けにいくんだから!」
「競り??」
「大丈夫、そなたが閉じ込められる事は無い。助けに行くからね」
途中で不可解な言葉も聞こえたが、二人ともリルを思ってくれている。ホムラもヨルもそれぞれに「ちゅん!」「きゅ!」と鳴いて意気込んでいた。
頼もしくて愛おしい二人がいれば、どんな場所だって怖くない。リルはたしかな信頼と嬉しい思いを抱きながら、そっと思いを馳せた。
二人が支えてくれるならば、自分も支え返せるだけの力が欲しい、と。
そうして、一行は次のゾーンに向かう。
「へぇ、ここが追憶って名前の由来になっている場所なのね」
「噫、サヨ。ここが絶滅水族館コースのようだよ」
「絶滅……今はもういない魚達なんだ」
櫻宵が視線を巡らせ、その隣でカムイが案内板の説明を読む。リルもぷくぷく游ぐ魚達を見つめながら、不思議な感覚を抱いた。
「そうか過去に滅びた……過去になった生命達なのか」
「時の流れについていけなかった命達……」
「過去の光景を今に見ているようだね」
「何だかしんみりしちゃうけど――」
カムイと櫻宵が魚や水棲生物を眺めていると、近くに控えていた神斬とイザナも魚達を振り仰ぐ。そして、二人は何やら真剣に語り始めた。
「過去に滅びた……私達のようだな」
「本来は私もこうなるべきだった」
二人は滅びの歴史に自分達を重ねているようだ。その声を聞いたカムイと櫻宵はすぐに首を横に振った。
「そんなことはないよ」
「あら師匠ったら! そんな風に言わないで頂戴」
「過去の存在という意味ではそうなのかもしれないが、イザナや神斬の存在は……終わった過去という言葉で現したくないんだ」
「それに過去だけじゃないわ。一度は滅びたとしても、師匠はおじい様として、神霊としてまたうまれたんだから!」
「……そう、だろうか」
「うまれた、か」
櫻宵達の言葉に対し、イザナは神妙に、神斬は少し嬉しそうに頷いた。リルは四人の様子を静かに見守っている。その際に気になったのは滅びという単語。
「もう無い……滅びた」
ふと、カナン・ルーの光景が重なって見えた気がした。
世界も情景も違うというのに、どうしてだろうか。そんなことを思ったりルだったが、違う、と呟いた顔をあげた。
「僕がいる限りなくならないんだ」
とうさん、かあさん。パンドラねえさんにユリウス。
故郷を思い返すリルは自ずと理解した。皆が生きた故郷は水底に沈んで誰も住めなくなっているが、まだ在りし日の記憶は残っている。
カムイはリルの声を聞き、そっと首肯した。
「リルの言う通りだよ」
「ええ、リルの言う通り!」
櫻宵も声を合わせ、滅びたものも完全に忘れ去られたわけではないと語る。
過去があるからこそ、今がある。
「神斬がいたから私が居るように、私が継いだように――彼等の証は姿を変えて、しかと今にも継がれている。消え去ることなんて無いんだよ」
たとえ普段は忘れていても記憶や記録は変わらずに在り続ける。
もし見えなくなったとしても、それを見つけられなくなっているだけ。そして、この追憶水族館は思い出すことを示してくれている。
櫻宵も穏やかに笑み、近くを擦り抜けている魚を振り仰いだ。ゆっくりと周囲を眺めてから視線を下ろした櫻宵はイザナ達を瞳に映す。
「おじいちゃんの血も魂も私が継いでるのよ。私だって誘七なんだから」
「噫……」
「追憶はきっと必要なのよ。どんな過去だって、私を形作る大切なひとひらなのだと……今なら思えるから」
「立派になったな」
櫻宵が語っていく言葉を神斬とイザナは感慨深く聞いていた。二人が自分を認めてくれていると感じた櫻宵は更に明るく微笑む。
「これも皆のおかげかしら? 少しは私も成長したでしょ?」
「そうだね、過去があるから今がうまれた。二人とも過去じゃなくて今を生きてるじゃないか。カムイも櫻もいて……ふふ」
リルもいつしか笑顔になっていた。特に櫻宵とカムイを見つめるリルの眼差しには、過去にはなかった色が宿っている。
「出会えた事に僕は感謝してるんだから!」
リルの満面の笑みを見つめ、櫻宵は嬉しそうに目を細めた。その際、神斬に甘えるようにくっついた櫻宵を見たカムイが二人を引き剥がす。
「……サヨ」
「カ、カムイったらまた!」
「カムイってば今日もヤキモチだ」
櫻宵とカムイの様子に耐いてにこにこしながら、リルも過去になった魚達をみる。
そのすぐ傍には二羽の幽世蝶がふわりと翅を揺らしていた。
「そうだよ、継がれているんだ」
別の姿になったって、きっと。
魂は巡り、新たな生命となり、いつか何処かで。
リルの瞳は未来を見つめているのだと気付き、カムイも静かに思いを馳せる。
「……私は――」
これから数多の今を見送って、追憶を積み上げて生きることになるだろう。
しかし、それは幸いなことでもある。
こうして皆で過ごす、今も全て。
「忘れたくないことをたくさん抱えていきていくのだろうね」
「うん、カムイは神様だからこれからたくさんを見守っていくんだね。櫻も隣で寄り添っていてほしいな」
「一人で追憶を見送る旅になんて行かせないわ。私も隣で一緒にいるから、大丈夫」
「……僕も、なんて」
我儘かな、と小さく付け加えたリルには密かな希望が宿っていた。きっとリルの願いは叶えられるとして、櫻宵も未来を思う。
それにね、と続けた櫻宵の角の花が揺らめいた。
「忘れないわ! 桜が咲く限り……桜は忘れないでと散っても咲く華だから」
ひらり、ふわりと散りゆく桜。
桜の花は散っても、また新たな花が咲く。
それに花が美しく咲いていた記憶はきっと誰かの心に残っていく。過去を見送り、苦難を乗り越えた者達が見つめる先には光が満ちているはず。
未来へ游ぎ、進んでゆく。
それはきっと追憶にも似ていて――。
大成功
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第2章 ボス戦
『ランプリット・リシュア』
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POW : その記憶は大事なものか?
【記憶を鉱石に変える力】を籠めた【大鎌】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【失いたくない記憶】のみを攻撃する。
SPD : 思い出したら教えてくれよ
【鉱石ランプ】から【追憶の灯り】を放ち、【記憶を鉱石に変えて取り出す事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : お前が持つ強さの訳を知りたいんだ
自身が【敵意】を感じると、レベル×1体の【記憶を鉱石に変えて奪う鉄の鳥籠】が召喚される。記憶を鉱石に変えて奪う鉄の鳥籠は敵意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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●ランプリットの憂鬱と渇望
「――記憶なんて、こんなにも脆くてすぐに無くなってしまうものなのに」
追憶水族館内に何処か悲しげな声が響いた。
絶滅生物ゾーンの更に奥を抜けた先に人気のない一角がある。其処に立っているのはオブリビオンとして存在している怪人、ランプリット・リシュア。
その手にはひとつの鉱石が握られている。
「簡単になくしてしまうものに価値など……」
ない、とは言い切れないらしく、彼女の言葉が途中で途切れた。何やら忘れ去られることに深い思いがあるようだが――。
鉄の鳥籠に入っている数多の鉱石の集合体は、この水族館に訪れたキマイラからランプリット・リシュアが奪った記憶が形となったものだ。
「……誰だ?」
それまで握っていた鉱石を頭の鳥籠の中に入れ込んだとき、ランプリット・リシュアは自分以外の存在に気付く。それが猟兵であると悟った彼女は身構えた。
「お前達に大事な記憶はあるか?」
彼女はそれだけを問いかけてくる。おそらく此方の記憶も奪おうとしているのだろう。
相手にどのような思想や考えがあったとしても、その存在がオブリビオンであるならば放ってはおけない。
そして――此処から、追憶と記憶を巡る戦いが始まる。
フリル・インレアン
ふええ、アヒル船長待ってくださいよ。
お宝発見って、宝物って、鳥籠の中に入れたりは・・・。
ふええ、アヒルさんの記憶が奪われてしまいました。
アヒルさんの記憶なんて、どうせ私を怒ってばかりの記憶でしょうけど、返してもらいます。
あの灯りつまり光が危険なのですから、美白の魔法です。
美白の魔法で灯りを防いだら、念動力でアヒルさんの記憶を奪い返しましょう。
●どんな記憶も宝物
「ふええ、アヒル船長待ってくださいよ」
水族館の奥を目指し、フリルはぱたぱたと駆けていく。
先を進むガジェットのアヒルさんは胸を張っていた。その理由はフリルが自分を船長と呼び続けてくれているからだ。そのまま向かっていった先には、ランプリット・リシュアが立っていた。
彼女の頭の鳥籠を見遣ったアヒルさんはグワっと鳴く。
「お宝発見って……」
ランプリット・リシュアの頭部を示しているアヒルさんは得意気だ。しかし、フリルは相手が怪人だと分かると首をふるふると横に振った。
「宝物って、鳥籠の中に入れたりは……」
「その記憶は大事なものか? なぁ、思い出したら教えてくれよ」
敵は鉱石ランプから追憶の灯りを放ち、標的の記憶を変化させていく。アヒルさんは素早く逃げ出そうとしたが、ランプリット・リシュアの方が僅かに速かった。
一瞬後、フリルは自分の方にふらふらと歩いてきたアヒルさんを受け止める。しかし、アヒルさんは不思議そうな雰囲気だ。
「ふええ、アヒルさんの記憶が奪われてしまいました」
グワグワと声が聞こえる中でフリルは思い直す。
アヒルさんの記憶なんてどうせ自分を怒ってばかりの記憶かもしれない、と。だが、どんな記憶だって大切な思い出だ。どれほど怒られてもフリルはアヒルさんと一緒にいた。これまでの記憶がなくなってしまうことなど許してはおけない。
それに、ランプリット・リシュアがあの記憶の鉱石を持っていてもきっと意味がない。
「アヒルさんの記憶、返してもらいます」
「お前は記憶をなくしていないのか。なるほど、面白い」
フリルは真剣な眼差しを向け、敵を瞳に映し込む。対するランプリット・リシュアも身構え、次の動作に入ろうとした。されど次はフリルがやり返す番だ。あの灯り、つまり光が危険ならば――。
「ここは美白の魔法です」
フリルが発動させたユーベルコードは、有害な光から身を守りケアする魔法。まさにこの場にぴったりな魔法を巡らせたフリルは灯りの影響を防ぐ。
「アヒルさん、受け取ってください!」
念動力でアヒルさんの記憶の鉱石を操ったフリルは、一気に思い出の欠片を奪い返していった。
その際、敵の手にあったいくつかの鉱石が零れ落ちる。アヒルさんはすぐさま自分の鉱石を割り、記憶を取り戻した。フリルも奪われた誰かの記憶を割っていった。こうすることで記憶をなくした者に思い出が戻っていくことだろう。同時にフリルはランプリット・リシュアの灯りを防ぎ続けている。
「く、それほどの力を持っているとは――」
「もしまた奪われてしまっても、何度だって取り返します」
両者の視線が重なり、緊張感が走る。
そして、青の世界で繰り広げられる戦いは此処からも激しく巡っていく。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲(サポート)
『さてと、I.S.T起動。お仕事お仕事。』
口調 元気(私、~君、だね、だよ、だよね、なのかな? )
お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ
さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ
模造神器という独自の兵器開発を生き甲斐とする研究者
誰にでも気さくに砕けた口調で話しかける
戦いは全て研究の為、楽しみながら戦闘を行う
全ては研究の為、研究と戦闘を楽しめる猟兵生活は結構気に入っている
戦闘スタイルは4本の模造神器から2本を選び、二刀流で敵と戦う形です
UCで遠距離戦闘にも対応したSF剣士
日常ではのんびりと景色を楽しんだり風情を楽しんだり
冒険では考察しながらじっくり進む
あとはお任せ!
●追憶の果て
怪人が出現する水族館の話を聞きつけ、玲はこの場に訪れた。
今回は観光ではなく仕事で来ているのだが、彼女は静かに双眸を細める。解決を願われている事件に関わるついでに研究も出来る現状は良いものだ。
「やっぱり、この仕事良いよねぇ」
「ふむ、新手か」
怪人ランプリット・リシュアが此方に向き直る。そうだよ、と答えた玲は模造神器を構えた。
「さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ」
「その思いの源である記憶を奪うのも面白そうだな」
怪人は敵意を感じ取り、記憶を鉱石に変えて奪う鉄の鳥籠を召喚していった。鳥籠は玲に向かって飛び立ち、記憶を奪い取るために動き出す。
「そうはさせないよ」
対する玲は薄く笑み、研究には丁度いいと感じながら二刀流スタイルで得物を振るった。鉄の鳥籠を地に落としていく中で玲はユーベルコードを発動していく。
「コール……何か変なやつ!」
刹那、召喚されたのはブブゼラを吹くおじさん達の霊。
「……え?」
一瞬、そのビジュアルに驚いたランプリット・リシュア。彼女に目掛けておじさん達はブブゼラから発する音波や、ブブゼラそのものを向けた。
「シュールで面白いでしょ? 面白さを求めていたみたいだからね」
「まさかこんな手で来るとはな」
たじろいだ怪人に向け、玲は不敵に笑ってみせる。
鉄の鳥籠は今も尚、玲の記憶を奪おうと迫ってきていた。されど彼女に届く前にどれもが叩き伏せられている。怪人に奪われていた一般人の記憶の鉱石も取り戻されていた。
そうして、玲は研究としての戦いを行ってゆく。
成功
🔵🔵🔴
グラナト・ラガルティハ
マクベス(f15930)と
以前マクベスの記憶を失った時に改めて気付いた。マクベスとの思い出の大切さに。
大切なら誰だって失いたくないだろう?
奪ったと言う事はその心に思い出があったと言うことそもそもないものなど奪えない。
そこにあるのはきっとそう言ったものだ。
(マクベスの言葉にクスリと笑い)
そうだな私の記憶が全てお前になるのならば私も幸せだ。これからも思い出を増やしていこうマクベス。
私はマクベスとの思い出は一片たりとも失いたくないからな。
遠慮なく行かせてもらう。
UC【柘榴焔】
強さの訳を聞くならば…これが答えだ
マクベス・メインクーン
グラナトさん(f16720)と
滅びの恐怖……
うん、俺も恐怖がないって言ったら嘘になるかな
だって『俺』がグラナトさんと過ごせる時間ってやっぱり有限だしさ
グラナトさんの生の中のほんの1%にも満たないかも
でも、だからって他人にグラナトさんの記憶をくれてやるわけないだろ
これは全部オレが貰ったもんだ
それに俺が死んでも全部グラナトさんが覚えててくれる
なんならグラナトさんの記憶容量全部俺で満たしてやるから
俺から記憶盗みたいならそれぐらいの覚悟あんだろうな?
双剣を持ってUC使用
炎の属性攻撃、鎧無視攻撃、限界突破で
グラナトさんの攻撃に合わせて焼却してやる
明るく生きたいならまず誰かと繋がってみろよな
●誰よりも大切な人
目の前の敵は記憶を奪う力を持っている。
周囲に転がっている石や、鉄の鳥籠に入れられている鉱石が思い出の欠片らしい。
グラナトは敵を見据えながら過去を思い出す。
「以前、マクベスの記憶を失った時に改めて気付いた。マクベスとの思い出の大切さに」
「グラナトさん……」
その言葉を聞いたマクベスは彼を見上げた。
するとランプリット・リシュアが興味深そうに首を傾げる。
「そうか、それほど大切な記憶があるのか」
「ああ。大切なら誰だって失いたくないだろう?」
「それが、私の中にある滅びの恐怖を克服するに至るものか興味がある。その記憶、奪わせろ」
怪人はグラナトを見ているようだった。
しかし、間に割り込んだマクベスが両手を広げる。まるで奪わせないと宣言しているような仕草だった。
「滅びの恐怖……うん、俺も恐怖がないって言ったら嘘になるかな」
「ほう?」
「だって『俺』がグラナトさんと過ごせる時間ってやっぱり有限だしさ。グラナトさんの生の中のほんの一%にも満たないかも」
正直に話したマクベスに続き、グラナトも己の思いを怪人に告げていく。
「奪ったということは、その心に思い出があったと言うこと。そもそもないものなど奪えない。そこにあるのはきっとそういったものだ」
グラナトは真っ直ぐに語る。
対するランプリット・リシュアは記憶を鉱石に変えて奪う鉄の鳥籠を召喚する。
「ふむ、そちらの言い分は私には理解できないが……奪えば分かるか」
「グラナトさん!」
「問題ない、大丈夫だ」
マクベスが危険を知らせたことでグラナトが即座に動いた。そして、鳥籠の攻撃を避けたグラナトに続き、マクベスも素早く立ち回る。
「でも、だからって他人にグラナトさんの記憶をくれてやるわけないだろ。これは全部オレが貰ったもんだ」
それゆえに絶対に渡せないと少年が主張した。
「そこまでの強さを持つか。ならばお前が持つ強さの訳を知りたい」
「それに俺が死んでも全部グラナトさんが覚えててくれる。なんならグラナトさんの記憶容量全部俺で満たしてやるから」
その言葉を聞いたグラナトはくすりと笑ってみせる。
「そうだな、私の記憶が全てお前になるのならば私も幸せだ。これからも思い出を増やしていこう、マクベス」
「もちろん!」
絆の力を示した二人は攻勢に入っていった。
この気持ちは何人たりとも奪えるものか。そのように感じたグラナトは全力を出すことを決める。
「私はマクベスとの思い出は一片たりとも失いたくないからな」
――柘榴焔。
神の炎を放ったグラナトは次々と鳥籠を焼き払っている。その中に入っていた鉱石が割れることで記憶が戻っていくらしい。ああ、と声を零したランプリット・リシュアに鋭い眼差しを向けるグラナト。
「遠慮なく行かせてもらう」
「俺から記憶盗みたいならそれぐらいの覚悟あんだろうな?」
それに合わせてマクベスも双剣を振るった。同時に放つユーベルコードでグラナトを援護することを心掛けながら、彼は凛と言い放つ。
「強さの訳を聞くならば……これが答えだ! 焼却してやる!」
「ぐ……ああ――!」
マクベスの一閃がランプリット・リシュアを貫いた瞬間、グラナトの焔が飛んだ。
「柘榴が如く燃えよ」
「明るく生きたいならまず誰かと繋がってみろよな」
二人の息の合った連撃が怪人の身体を穿つ。その瞬間、奪われて囚われていた記憶の鉱石がすべて砕け散り、思い出が元の持ち主の元に戻っていった。
●海の如き追憶
滅びの恐怖を抱いたまま、ランプリット・リシュアは消滅していく。
骸の海に還っていく姿を見送った猟兵達は勝利を確信した。これで水族館は元の平和なリゾート施設に戻った。
此処で生まれた楽しい記憶や思い出も、青い海のように深くなっていくはず。
きっと、追憶という言葉の意味と共に――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵