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大門教授の残したもの

#サクラミラージュ


●満たされない感情
 女が手慰みに首輪から伸びる鎖を弄ぶ。
 それは理想と熱狂の証であったが、今は意味をなさない。
「嗚呼……」
 溜息を洩らし、女は――。
「お父様、何故死んでしまわれたの」
 虚空より現れた銃を握り、壺を撃ち抜いた。
 それなりの価値があったと聞いたことがあったが自分も主人も特に無頓着だったので花瓶の代わりにしかならなかったもの。
「貴方はワタクシが殺すはずだったのに、そういう約束だったのに……獄中で病死だなんてつまらなくはありません?」
 割れた陶器を踏みつけながら、女は踊る。
 主の居ない洋館の一室で。
「お父様、オトウサマ、おとうさま……もう一人のお父様」
 空気が澱み、重いのは密室故か。
約束は守って頂戴、大門教授ワタクシを一人にしないで

 ――いや、違う。

 集まるは影、朧。
 洋館の奥、使われなくなったガラクタ。
 その中の何かが殺意を持つ。
 女に応えるように。
 情念に操られるように。

●グリモアベース
 タイプライターを打鍵し、珈琲を飲む男の名は氏家・禄郎(探偵屋・f22632)。
 グリモア猟兵にして、今回の依頼者。
「昔と言うか、つい最近の話なんだけど大門教授という男が居てね……まあ、悪い男だった」
 まるで昔のなじみのように男の話を始めた。
「大門デバイスと称した複雑怪奇な電算機を使って悪魔召喚を行い、犯罪を行う。いや、大門デバイスを改造するために副業で悪さをする男さ。最も、今はもう墓の下だけどね」
 煙草を咥え、燐寸を擦り、尖端を炙る。
「獄中死……正確には病死だ、高齢に加え研究に熱が入りすぎての過労だと私は考えるよ。さて、ここからが本題だ」
 煙を肺に送り込んだ後、探偵屋は本筋を切り出す。
「彼には娘が居た――正確には自分が召喚した悪魔ダイモンがね」

 タイプライターで打ち込まれた用紙に挟みこんだ一枚の写真。
 そこに映るのは若い娘の姿。
「知っての通り、悪魔は転生への導きを受けながら次の生を得る前に現世でユーベルコヲド使いの力となることを選んだ影朧達なんだが、彼女は特殊でね」
 グリモア猟兵は頭を掻きながら説明を続ける。
「生前の悪行たる破壊行為を契約者にも実行することを望んだ――つまりは大門教授を殺すということ。まあ教授本人もそれを良しとしていたし、身の危険を感じたら官憲に捕まって刑務所に逃げ込み、ほとぼりが冷めたら脱獄するという感じで、のらりくらりとやっていたのだけれども……今回、こんなことになってしまってね。そうなったら悪魔たる彼女はまあ大変だ、契約は果たされず、かと言って悪魔たる自分は自由に動けない」
 深いため息が漏れた。
「そんな関係でも感情はあったのだろう。死に目に会えず、墓にも行けない……孤独は絶望の格好のスパイスとよく言ったものだ」
 ベルが鳴る。グリモア猟兵のタイプライターが奏でるそれは門を開く呼び鈴。
「君達に頼むのはそんな影朧となった女を鎮め、転生に導く事。門の先は大門教授の隠れ家だった洋館。そして分かっていると思うが邪魔者がうじゃうじゃいる」
 サクラミラージュへと繋がる向こう側からは歯車が嚙み合う音、発動機から吐き出される揮発油の臭い。
 もはや戦場となり果てているのだろう。

「男は女を泣かしてナンボと言ったものだが、今回ばかりは面倒だ。すまないがよろしく頼むよ」
 肩を竦めつつ探偵屋は軽口を叩き、そして眼鏡の奥でのみ真実を伝える。

 ――彼女を自由にしてやってくれ、と。


みなさわ
 悪い科学者とかつて熱狂に酔った娘の奇妙な縁。
 父娘に似たその縁が切れた時、娘はかげおぼろとなり果てる。
 闇に散るか、桜と散るか、決めるのは超弩級戦力たる猟兵の双肩に。

 こんにちは、みなさわです。
 今回はサクラミラージュの奇妙な関係から生み出される、残されたものの話。

悪魔ダイモンたる影朧
 教授に召喚された、本人曰く「最高の悪魔」にして破壊至上主義者です。
 契約者の殺害を条件に契約されましたが、やり方が派手すぎたのでのらりくらりと逃げられておりました。
 そんな関係を楽しんでいましたが、契約者が死んだ今は深い絶望感に陥り再び影朧となり果てました。
 ちなみにトリガアハッピヰ。

●大門教授
 超最新鋭(自称)電算召喚機、大門デバイスの発明、改良に人生をかけ、費用捻出と命の確保のために犯罪を行い、刑務所入りと脱獄を繰り返した科学者です。
 手近なもので突飛な発明を行う知恵がありますが、大体のものはスパゲティコードと科学者としての勘で仕上げられており、教授以外は扱えない品物ばかりでした。
 召喚した悪魔との奇妙な関係を楽しみつつも自分の身体には無頓着だったので、うっかり獄中で病死しました。

●舞台となる洋館
 大門教授のアジトたる館です。
 研究材料として色々なものが転がっています。
 教授の研究室と悪魔の部屋と台所を中心とした生活区画だけは綺麗ですが、色々な物を媒介に影朧達が集まってきました。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 では、皆様。
 残されたものの運命の看取り、お願いします。
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第1章 集団戦 『大日本帝国陸軍八〇式『柳月』』

POW   :    死スル覺悟デ進ムベシ
【飛翔の勢いに乗って振るわれる軍刀 】が命中した対象を切断する。
SPD   :    敵撃摧ト舞イ降ル
【手榴弾による爆撃 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【小銃狙撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    御世ノ栄ヲ祝ギ奉ル
対象の攻撃を軽減する【決死の突撃体勢 】に変身しつつ、【銃から拳に至るまで死力の限り】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●大門教授が残したモノ

 洋館周辺は平穏な帝都とはかけ離れていた。
 鋼の武者が館の空を埋め尽くし、庭に着陸した者が軍刀を抜く。
 傍らにいた武者が構えるのは騎兵銃カービン
 機甲挺身兵達が好んで使う取り回しの良い小銃だ。

 彼らの名は機甲武者八〇式『柳月』
 その飛行能力を以て敵に肉薄し、あらゆるものを打ち倒す空のサムライ。
 だが今、ここにあるのは中身無き鎧のみ。
 研究のために大門教授が入手した、修復不可能と認定されたモノ……だった。

 洋館の奥より湧き上がる情念に引き寄せられた影朧。
 そいつらがが八〇式の欠損した部位を補い、姿形を模倣し仮初の姿として群を成しているのだ。
 かつて英雄が纏い、帝都を守りし機甲武者。
 今、立つのは破壊の情念と熱狂に当てられた、ただの殺人機械。

 道を切り開くため。
 意義を失ったものを再び平和の礎とするため。
 猟兵は大門教授が残したモノへと葬送の靴音を鳴らし、館へと飛び込むことを求められている。

 本当に会うべき人は建物の奥に居るのだから。
四軒屋・綴
※アドリブ絡み改変△歓迎

 予備役保管モスボールにすら拒否きらわれたモノを飛ばして見せる、教授殿のお熱も理解は出来るのだがな。

 俺自身に飛翔能力はない、騎兵銃カービンとは撃ちあえても爆撃にはジリ貧……となれば召喚カモン銃砲塞ガンフォートッ!!手榴弾ごと巻き込むように弾幕を張り敵を撃ち落とすッ!剣撃による直接攻撃を狙うならしめたもの、飛び付いてパイルドライバーで仕留めるッ!
 となれば残るはジャンク品、電脳魔術で損傷を補い装着ッ!フライングジョウキングで突撃だッ!

「赤菊の花言葉など、知りはしないが。」
「『戦士達へ、哀を込めて』といった所か。」



●銃砲列車、始・発!

 発動機が燃やす揮発油の臭いと排気ガスが黒く空を汚す中、それらを吹き飛ばす様に蒸気が――辺りに立ち込めた。

予備役保管モスボールにすら拒否きらわれたモノを飛ばして見せる、教授殿のお熱も理解は出来るのだがな」
 白い水蒸気の中、輝くのはゴーグル。
「勇蒸連結ッ!」
 現れるは鋼。
「ジョウキングッ!!」
 その姿は列車。
 四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇ダイナミックスチームパンク・f08164)は蒸気機関車を思わせるそのフォルムはヒイロヲ然とした振る舞いと共に名乗りを上げる。
 幻朧桜が舞う中、始まるのはそう――幻朧蒸煙活劇ファンタズムスチームパンク
「悪いが突き進むッ――レールの通りにな!」
 そしていつだって、ジョウキングの言葉は真っ直ぐだった。

 猟兵に襲い掛かるのは空爆。
 綴の姿、言葉から、その人となりを判断したのだろう。
 二手に分かれた八〇式の内、空を舞う者達が進路と思しき所へと手榴弾を投擲していく。
 有る者は地面で爆発するように、あるものは起爆のタイミングを調整し空中で爆発するように。
 爆発の間隔をコントロールすることで爆風と爆炎がジョウキングの動きを止める。
 飛ぶ能力のない綴にとっては防戦一方にならざるを得ない。
 そこへ――弾丸が飛んだ。
「ヌゥ!!」
 咄嗟にガードすれば小銃弾が装甲を削り火花を散らす。
騎兵銃カービンとは撃ちあえても爆撃にはジリ貧……となれば!」
 流石にジョウキングでも爆発は手ごわい。
 何よりも動けないのが痛かった!
 ならばと講じる策は一つ。
召喚カモンだ銃砲塞《ガンフォート》ッ!!」
 防壁及び対空砲火。
 そう――火力には火力で圧倒するのだ。

 銃・砲・列・車 ガンフォートレインッ!!

 電脳魔術が産み出す要塞鉄道。
 高射砲、対空機関砲、多種多様な銃砲が列車より放たれ、機甲武者の肉迫爆撃を封じる。
 手段を封じられた一騎が起死回生を狙わんと軍刀を抜き、ジョウキングへと飛び掛からん!
「そう来たか! ジョゥアー!!」
 同じように跳躍した綴が八〇式の刃を飛び越えるように空中で前転、胴体を掴めばそのまま一回転してのパイルドライバー!
 頭部から叩き落された影朧が飛行ユニットを残して四散する。
「空装・連結ッ!」
 すかさず電脳魔術にて柳月の機構を分析したジョウキングがユニットを身につける。
 それは新たなる力を得て進化する事への兆し!
 その名も――
「フライングゥ……ジョウキングッッ!!」
 空の列車、フライングジョウキングが敵陣へと飛び込む。
「赤菊の花言葉など、知りはしないが」
 蒸気を纏って空を突き進むはまさしく弾丸特急。
「『戦士達へ、哀を込めて』といった所か」

 哀悼の言葉は背後にて爆発した武者達へと捧げられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「プロペラ…え、プロペラ代わりにあの人型部分が回るんでしょうか?」
目を見開く

「其の手榴弾に当たらなければ良いのでしょう?」
UC「幻朧桜召喚・桜嵐」使用
戦場全体に桜吹雪
敵に視界不良・幸運及び生命力の低下付与し投擲や射撃を躱し易くする
自分は幸運及び生命力上昇で被害抑えつつ第六感や見切りで進行ルート選択
また可能なら高速・多重詠唱で召喚した精霊に雷と浄化の属性付与させ制圧射撃
例え数体でも転生又は骸の海へ還る敵が出るよう努力する

「ごめんなさい、何時か貴方達も転生出来ますよう…」
自分の弱さに歯噛みしつつ敵を抜けるのを優先する


飛・千雨
SPD アドリブ歓迎、描写方針はご随意に。

破壊至上主義者……その暴力性を、性(さが)を抑えきれないのですね……。
それでも、契約者との、大門さんとの絆は確かに合った……。
……否定はいたしません。ですが、このまま見過ごす訳には参りません。
助太刀させていただきましょう。

情念に寄せられた殺人機械たち。……中身のない、仮初の兵士たち。
今は、あなた方に思いを寄せる猶予はないのです。
……神器変形。
ストームモードは精密操作が難しいのですが、相手が多勢であるならば効果的でしょう。
手榴弾も破壊の嵐で巻き取れば、私に届くことはないのですから。

……頭に血が上らぬように意識して、冷静に……。柳月たちを排除しましょう。



●嵐の中、歩みて

「破壊至上主義者……」
 飛・千雨(偽神宝貝の使い手・f32933)が洋館を視界に収め、白い肌に咲く桜色の唇を動かした。
「その暴力性を、さがを抑えきれないのですね……」
 言葉は館の奥にいるであろう悪魔ダイモンに。
「それでも、契約者との、大門さんとの絆は確かに合った……」
 これだけは分かる。
 グリモア猟兵が嘘を言う理由が無いのだから。
「……否定はいたしません。ですが、このまま見過ごす訳には参りません」
 だから千雨は行く。
「助太刀させていただきましょう」
 為すべきことをするために。

「プロペラ……え、プロペラ代わりにあの人型部分が回るんでしょうか?」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が八〇式柳月の複葉の翼によって構成された飛行機構を凝視する。
 残念ながら回転翼プロペラは無い。
 代わりに墳流ジェットで空を舞い、爆撃を敢行するのだ。
「ジェットでしたか!?」
 桜花が見開いた目に刻み込まれるは天より落とされていく手榴弾。
 お世辞にも直撃は避けたいところ――ならば!
「其の手榴弾に当たらなければ良いのでしょう?」
 桜の精が笑う。
 真面目で天然だが、死には慣れている。
 だから死なないための方法だって知り、使いこなせるのだ。
 ――ユーベルコヲドとして。

 幻朧桜召喚  ゲンロウザクラショウカン桜嵐オウラン

 戦場を桜吹雪が覆った。
 それは帝都を覆う幻朧の桜と違う力を帯びた華。
 八〇式の視界を奪い、彼らから力を、運を、奪い取る。
 そして猟兵には――幸運と活力を与える。
「情念に寄せられた殺人機械たち。……中身のない、仮初の兵士たち」
 桜舞う中飛び上がるは天女、いや千雨。
 その身は桜の祝福によって活力に満ちている。
「今は、あなた方に思いを寄せる猶予はないのです」
 右手に持つは兀突刀、左手に握るは祝飛刀。
「……神器変形」
 それは合わされば一本の飛刀。
 飛翔した刀が天頂へと届けば――暴風が舞い降りた。

 偽神宝貝・暴風形態ストームモード

 桜吹雪に破壊の嵐が合わさり、影朧が次々と駆逐されていく。
「手榴弾も破壊の嵐で巻き取れば、私に届くことはないのですから」
 さらに続くはタイプライターを叩くようなけたたましい銃声。
 桜花の構えた軽機関銃が火を吹く。
 吐き出すのは物言わぬ鉛ではなく破邪の雷と浄化を担う精霊の祝福を受けた弾丸。
 過去の澱みから生まれし影朧が銃弾に貫かれ、落下し、弾丸の雨に機甲武者が身の危険を感じ、本能的に距離を置く。
「ごめんなさい、何時か貴方達も転生出来ますよう……」
 遠くから様子を伺う八〇式へと謝るように呟きながら桜の精は歩を進める。
 全てを救い、転生への道へと歩ませたい。
 だが今はやるべきことがある。
 故に桜花は歯噛みしつつも前に進むのだ。
 天然ボケで頓痴気な所はあっても、御園・桜花が転生に臨む心だけは真剣。
 だから、それを成し遂げられない今の自分に悔しさを禁じえなかった。

「……うらやましい」
 桜花の姿に千雨の唇が動いた。
 偽神宝貝の羽衣人は咄嗟に辺りを見回したが、聞かれてはいないと確認すると心の中で安堵し、そして再び自分を律する。
 破壊の嵐で爆発していく影朧達。
 その姿に心の奥で何かが動きそうになる。
 それを抑え込み、思いを寄せる誘惑を振り払い、千雨も進む。
 信念より任務を優先し、前を進む桜の精の背後を守るため。
 彼女が切り開く道に割り込む者を排除するため。
 頭に血を上らせてはいけない、冷静に破壊してくのだ。

 背後の居る千雨の気配を感じながら桜花は心の中で溜息をつく。
 自分も彼女のようでありたいと。
 そうすれば全ての影朧を転生か骸の海へと返すことが出来るのかもしれないと。

 互いに気づかないすれ違い。
 想いは口にしなければ届かないもの。
 だけど、今は前に進まねばならぬ。
 想いは洋館の奥に居る者へと伝えなければならないのだから。

 二人の女は前に進む。
 今、やるべきことを成すために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

比良坂・彷
【らんちゃん(f35359)】と
アドリブ歓迎

「あはは、ね…囮になったら怒る?」
「いって!駄目だ俺死ぬわ」

咥え煙草
死角消すよう背中合わせ
空の月に喫驚

「月?らんちゃんがやったの?どうやって?」
「なんかって雑」

悪目立ちで多く惹きつけては
煙草放り彼岸花で攻撃
手元には赤と青の幽世蝶
敵UCの相殺に使う
「青あげる、お守り」
俺は赤連れまた煙草吹かす

「狼さんが守ってくれんでしょ?ちょっと無茶しよっと」
羽ばたき急接近
連携する敵へUC放ち同士討ち誘う
藍夜の守護は有り難く
あと麻雀牌ばらまき隠遁自力離脱もする

「洋館の探索ってワクワクするわ
あらぬ秘密が眠ってそ
月を出せたんだから他の魔道書とかにもっとすげぇのあるかもよ?」


御簾森・藍夜
彷(f32708)と
煽る時だけ、ほっちゃん
アドリブ歓迎

「――良いだろう。怪我したら後でチキンの刑だからな、ほっちゃん」

なんだこいつ自分囮にするのにニタニタしやがって
ちょっと腹立つから合わせた背中から頭突きしてやる
だがまたなんやかんや文句垂れられても困るから――UC

「知らん」
「なんかこう、こう、何か出た」

実際分からん
家にある魔術書を読み漁って手に入れたんだ
努力の結晶と呼べ馬鹿者

狼は複数で走らせ確実に一機ずつ落とす
彷にも月の魔力と、
「そうかそれは有難い
彷の死角は俺の範疇だから梟葬でスナイプ
威嚇射撃で近付かせず誘導弾で狼に食わせる
近距離は鴉でカウンター
狼が減ればUCを再度
「秘密?お宝じゃないのか?」



●青月の下、幽世へ、幽世へ

 日が傾き、月が太陽に照らされる頃。
 洋館へと歩むのは男二人。
 何気なく進んだその先は機甲武者の群れの中。

「あはは、ね……囮になったら怒る?」
 大ぶりな鞄片手に比良坂・彷(冥酊・f32708)が口角を上げて笑みを見せた。
「――良いだろう。怪我したら後でチキンの刑だからな、ほっちゃん」
 敵に囲まれつつある中、背中合わせに立った御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)が眉を顰め、そして自分の後頭部を彷の頭にぶつけた。
「いって! 駄目だ俺死ぬわ」
 頭を抑え、片翼の學徒が煙草を咥える。
 その様子が藍夜には何故か腹立たしかった。
 なんで自分が囮になるのにニタニタ出来るのだろう。
 とは言えこっちの心情を詮索されて頭突きの理由を話すのも御免だ。
 なのでユーベルコヲドの火蓋を切った。
 それが一番手っ取り速い。

 氷月狼の群れ ヒョウゲツノトオボエ

 月が……蒼に染まった。
 それは命無き大地の星。
 青月が呼ぶのは暴風雪夜、疾駆するは氷月狼の群れ。
「おおっ!?」
 月が色を変えたことに彷は驚きを隠せない。
「月? らんちゃんがやったの? どうやって?」
「知らん」
 藍夜の回答は素っ気ない。
「知らんの?」
 學徒が問い返せば。
「なんかこう、こう、何か出た」
 夙夜の森番は手で何かを回すような動作を添えて答えを返した。
「なんかって雑」
 彷の言葉に藍夜の眉がまた動いた。

 実際、魔術の根源全てを知っているわけではない。
 家にある魔術書を読み漁って手に入れたものであったのだから。
 なので努力の結晶と呼べ馬鹿者と言いたくもあったが、それは口にしない。
 何せ、このうるさいほっちゃんを黙らせるために使ったのだから、これ以上煽ったらそろそろ爆弾が飛んできそうなものだ。
 もっとも影朧達は暴風に煽られた身を維持し、何とか着地するのに精一杯。
 そこへ疾走するは氷月狼。
 彩るは彼岸花。
 ――彷だ。

「賭けをしようか……一緒に堕ちてくんない?」
 彼岸花を咲かすのは片翼の學徒。
 さらに飛ばし離すは青の幽世蝶。
「青あげる、お守り」
 全てが襲い掛かる中、彷は赤の幽世蝶と共に煙草を吹かす。
 それは如何様な風景か、煉獄か幽世か、どちらにしても影朧に害を無し。
 意思は無くとも残っている殺意を狂わせ、混乱を導き、同士討ちを誘う。
 そこへ狼の牙が襲い掛かった。

「狼さんが守ってくれんでしょ? ちょっと無茶しよっと」
 オラトリオが羽ばたく。
 この混乱を好機と見れば、煙草を放り練り上げていたユーベルコヲドをここに完成させる。

 奈落道連  レイズ

 機甲武者達は吊り上げた賭けから降りることは許されなかった。
 夙夜の森番が起こした暴風雪夜は猟兵に笑みを浮かべ力を与えるのだから。
 それは最早、地獄絵図。
 影朧は文字通り、かげ、おぼろ、と消えるであろう。
 だが抗うものが一騎、軍刀片手に彷へと飛び掛かる。
 銃声が鳴り、振り上げた刀が弾き飛ばされ地面に突き刺さった。
「そうかそれは有難い」
 紫煙たなびく金の蔦模様が刻まれた狙撃銃を構え藍夜が呟いた。
「良いように影朧が動いてくれるな」
 そこへ狼が飛び掛かり、八〇式の首を喰らいねじ切った。
「それはどうも……と!」
 すかさず近づいて来る影朧へ麻雀牌をばらまき、距離をとる彷。
 代わりに襲うのは新たなる暴風と氷月狼であった。

「洋館の探索ってワクワクするわ」
 道を確保し、先を進む學徒兵が口を開く。
「あらぬ秘密が眠ってそ」
 視界は後ろを守る夙夜の森番へ。
「秘密?」
 藍夜が問う。
「お宝じゃないのか?」
「月を出せるんだから他の魔道書とか見つければ、もっとすげぇの出来るかもよ?」
 彷の答えに森番は最初どんな表情をすればいいのか分からなかったが、やがて。
「……そうだな」
 ただ一言だけ、呟くように答えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御桜・八重
「これでよし、と」
桜学府にあの女性の名前の調査依頼を済ませて出発!

話を聞く限り、あの二人の関係は前に見たことのある
ネコとネズミの漫画映画みたいに思えた。
仲良くケンカしなってやつ。
「愛情表現って、色んな形があるんだね……」

どんな形にせよ、きっと愛情は深かったと思う。
なら、その絶望はなんとかしなくちゃ!

「どいてどいてー! 邪魔だよっ」
機甲武者の群れに突撃。
敵が四方から押し寄せて押し合いへし合いになったら
花弁に変化してすり抜ける。
団子状態の敵を機関銃のようにホウキングで蜂の巣に。

空から来る機体も軍刀を花弁になってすり抜け、
振り向きざまに二刀の一閃で翼を切り落とす。

かつての英雄に手を合わせつつ、前へ!


荒谷・ひかる
父娘ぷれいとはなんともまたまにあっくな……何となくですが探偵屋さん、好きそうです?(多分勘違いな上に風評被害)
それはともかく、痴情の縺れは厄介です。
何とか丸く収められると良いのですけれど……まずは目の前のコレ、ですね。

小銃装備の機甲挺身兵……ちょっとわたしには荷が勝る相手です
なので遠慮なく「ステラ」(※キャバリア)で戦場に乗り込みましょう
お外ならキャバリアでの戦闘も問題無いはずです
重力制御と風の力による変幻自在の空戦機動で敵機を翻弄
装備している拳銃や宝石剣で牽制しつつ、【本気の炎の精霊さん】発動
生成した1210本の炎の槍で以て、戦場全域の敵機を殲滅します

スクラップは、纏めて焼却処分ですっ!



●葬送は焔の桜にて

 日は大地に沈み、月が空を支配する。
 機甲武者達はだいぶ数を減らしていくが行く手を阻むには充分と言った所。
 そこへ――鋼鉄の巨人が足を踏み入れた。

「父娘ぷれいとはなんともまたまにあっくな……何となくですが探偵屋さん、好きそうです?」

 違 い ま す 。

 荒谷・ひかる(精霊寵姫Elemental Princess・f07833)の言葉を何かが否定したような気がした。
 それはさておき。
 ひかるは鋼鉄の巨人、キャバリアの中に居る。
 小銃装備の機甲挺身兵相手に精霊さんの力を借りるだけだとタイムラグもあり不利と考えたからだ。
「痴情の縺れは厄介です」
 キャノピー越しに八〇式柳月の軍勢を視界に収め精霊の娘は溜息を漏らす。
「何とか丸く収められると良いのですけれど……まずは目の前のコレ、ですね」
 ひかるの言葉に応えるようにX-063C-2 Guardian Spirit改『ステラ』は影朧の群れの中へと飛び込んだ。

「これでよし、と」
 御桜・八重(桜巫女・f23090)が携帯端末をタップし、桜学府に調査を要請する。
 犯罪を繰り返してきた大門教授の召喚した悪魔ダイモンなら名前の一つも分かるはず。
「それにしても……」
 話を聞く限り、二人の関係はまるでキネマの様であった。
 仲良くケンカしなと言われそうな奇妙な関係。
「愛情表現って、色んな形があるんだね……」
 苦笑しつつも八重の視線は洋館へと。

 ――どんな形にせよ、きっと愛情は深かったと思う。
「なら、その絶望はなんとかしなくちゃ!」

 月の夜、下駄を鳴らして桜の巫女は全力で駆けた。

 後がない影朧が決死の突撃体勢へと姿を変える。
 後退の歯車を無くしたそれは挺身と言われるに等しい。
 ただ前を進み、阻む者を駆逐する。
 そんな決死の一撃をステラが舞うように回避した。
 墳流式発動機ジェットエンジンによる飛行が主体の八〇式柳月に対し、ひかるのキャバリアが行うは重力操作と風の力による空中機動。
 速度が同じなら小回りの利く方が強い。
 さらに機体の質量差は大きかった。
 何せ軍刀を以て突撃を敢行しても、宝石剣を振るうだけで薙ぎ倒されるのだから。
 突撃と言うのは攻撃力と引きかえに防御力は低い。
 故に充分な支援攻撃で叩いた末に行うものだが、影朧は選択を誤っていた。
「スクラップは、纏めて焼却処分ですっ!」
 ステラの周囲に顕現する炎の槍、1210本。
 射程距離はこの戦線全てを捉えていた。

 本気の炎の精霊さん フレイム・エレメンタル・オーバードライブ

 それは幾何学模様を描き複雑に飛翔する精霊の墳進弾。
 空を支配する機甲武者ほぼすべてが炎に撃ち抜かれ、赤に染まりながら地に堕ち、そして陰と消えていく。
「今よ、八重さん!」
「わかったよ、ひかるちゃん!」
 精霊の娘の言葉に桜の巫女は走る速度を上げた。

「どいてどいてー! 邪魔だよっ」
 御桜・八重の辞書に避けるという言葉は無い。
 正確には――避ける理由が無かった。
 真っ直ぐが心情の學徒兵。
 時には吹き飛ばし、時には桜の花弁のようにすり抜けるのだから。
 ――今、軍刀を振り回した影朧にしたように。

 桜吹雪化身ノ舞  サクラフブキケシンノマイ

 前に進むがために身に着けた、桜と化すユーベルコヲド。
 舞い散る花を刀で切れるのは達人くらいであろう。
 ならば、がらんどうの鎧を借りた肉無き影には捉える事すら出来ない。
 たちまち背後を取られた影朧はホウキングの照準の中に。
 直後、機関銃のようにオーラの弾丸が吐き出され、甲冑は蜂の巣となって転がった。
「――!?」
 背後の安全を確保し振り向いた八重に空から襲うは機甲武者一騎。
 炎の槍を逃れるために低空で飛行し軍刀を抜けば、その刃を桜の巫女の細い首へと叩き込まん。
 だが刀は空を切り、纏わりつくように桜の花弁が影朧の鎧にぶつかった後、煌めくは八重が持つ陽と闇の二振り。
 すれ違いざまに翼を切り落とし着地する桜の巫女の背後で最後の八〇式柳月が地面に叩きつけられ、転がり、爆発する。
「…………」
 燃え盛る最後の炎、その焔に八重は手を合わせる。
 例え偽物でも。
 例え影朧でも。
 姿形は国を守った者達なのだから。
「……八重さん?」
 キャバリアから降りたひかるが心配そうに問いかける。
「行こうひかるちゃん!」
 八重が真剣な目で応え、そして洋館を見る。
「待っている人がいるから」

 二人は前に進む。
 館の奥に居る人物に会うために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『ヴァンダリスト』甘粕・妙子』

POW   :    ラヰフル・トリガアハッピヰ
【いくつもの自動小銃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    キルゾーン・ラピッドファヰア
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【銃火器】で包囲攻撃する。
WIZ   :    マシンガン・クロスファヰア
【哄笑】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【機関銃】で囲まれた内部に【集中砲火の弾幕】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
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●思ヰ出ハカゲロウノ向コウヱ

 目を開ければ、子供のように目を輝かせた老人がいた。
「よし、成功した! ……ん? その首輪と鎖は?」
「昔の名残でございます。今は転生の前に人に力を貸そうとする存在――そう悪魔ダイモンとお呼びくだされば」
 かつて破壊主義者ヴァンダリストの名を欲しいままにした少女は老人の問いにそう答えた。
「ああ、かつて人としての名は、甘粕・妙子と申します」
「私は大門教授。まあ、下の名前は忘れたよ。で、早速なんだが妙子君……この牢をぶち破ってくれないか?」
「えっ?」
「えっ?」
 そこは刑務所の中だった。

 爆音と銃声が響き渡った後、刑務所の門を突き破った車が一台疾走する。
「ワタクシ、まさか犯罪の片棒を再び担ぐとは思いませんでしたわ」
 車の窓から身を乗り出し、後を追う官憲へと片手で自動小銃を乱射しながら妙子は毒づいた。
「まあ、そういう事もあるさ。君がもし不満なら契約を破棄していい……もっとも、そうは思わないと私の頭脳は推測するが」
 大門教授がハンドルを握りながら豪語する。
「まあ、面白いことをおっしゃる――では一つ、条件を」
 かつて幻朧戦線に与した影朧だった少女は後部座席に座ると拳銃の撃鉄を起こす。
「いつか、貴方を壊させてくださいませんこと?」
「いいだろう!」
 老人は快活に応えた。
「老い先短い人生、後は我が研究の結晶、大門デバイスを完成させること。そのために手も汚した。最後はそういう終わりも悪くない……最も研究は終わらせたいところだね」
 子供のような目をしていたはずの教授が妙子に見せた顔は人生を最後まで楽しもうとする生きた男の姿。
「……では契約成立ということで、よろしくて?」
 自分の力が正しく使われることは無いが、少なくともつまらない主ではなさそうだ。
 その証拠に、老人の笑みを見てから引鉄にかけた指には力が入らないのだから。

「ワタクシ、思うんですけど」
 破壊された銀行の倉庫。
 その入り口で見張りをしつつ、妙子は問う。
「ワタクシを召喚できた時点で大門デバイスは完成ではございませんか、教授?」
「それは違うよ妙子君」
 倉庫の中で伸縮義腕を使いこなし、金塊と札束をしまい込みながら大門教授は応える。
「科学とはだれでも再現できなければならない、私しか使えないなら、それは未完成という物だ」
「だからって研究資金の為に銀行強盗をなさらぬとも良くては?」
 悪魔が問う。
 自分の召喚主は研究の為なら平気で犯罪を犯す。
「そりゃあ、あれだよ妙子君。後援者パトロンがつかない」
「……自業自得と言う言葉を御知りで、教授?」

 館に銃声が響く。
「悪魔死んだー!?」
「何か、むかつきました。ワタクシ以外にも悪魔を召喚するのが」
 頭を抱える教授に少女は機関銃を向けた。
「壊させてくださいまし教授」
 その夜はトリガアハッピヰな一日だった。

 珈琲の入ったカップを二つ。
 砂糖はたっぷり入った方を老人の机の置き、妙子はソファに座る。
「そういえば教授、御家族はいらっしゃいませんの?」
「ああ……流行り病で死んだよ。息子夫婦も孫もみんなね」
 いつも机に向かってばかりの大門教授が珍しく振り向いた。
「そうなるとね、どうでもよくなるか。それとも、もっと自分らしく生きるか、のどちらかになるものさ。私はそうだな……後者だ」
「それは見て分かりますわ」
 コーヒーカップ片手に皮肉を言う少女、いつでもスカートに差した拳銃を抜けるけれども。
「楽しそうな人生だこと」
「少なくとも、君が来てからは不足はないな。そう……なんというか、家族が増えたような気分だ」
 カップが落ち、絨毯が黒い液体で汚れた。
「今、ここで殺してしまってもよろしいのですよ『お父様』」
 妙子が銃を抜き、そして自分が口にした言葉にはっと表情を固める。
「なんだ」
 逆に老人は笑う。
「君も同じ考えか、妙子君」

 ……
 …………
 ………………

 けれど、それはもう昔の事。
 犯罪の片棒を担ぎ、召喚された別の悪魔に嫉妬し、主を父と呼んだ少女はもう居ない。
「嗚呼……約束を果たせないというのなら」
 そこに居るのは。
「……スベテコワシテシマエ」
 ただの破壊主義者ヴァンダリスト
「そうすれば、ワタクシと出会えるでしょう、お父様?」
 自らの心すら破壊した少女は最早ただの影朧と変わらない。

 ――そうだろうかいや違う

 彼女には思い出があった。
 彼女には転生の前に人々の為に力を役立てようとした意志があった。
 ただ、その思い出が犯罪者たる男によって召喚され。一見、理不尽な契約によって成立し。そして奇妙で疑似的な親子関係にまで昇華されたというだけ。
 外から見ればはた迷惑な二人であった。
 けれど彼女にとっては教授の力になることが癒しであり、満たされる関係であっただけ。
 だからこそ、縁は深く。
 切れた縁は怨に変わる。

 思ヰ出は影朧の向こうに。
 けれど、消えたわけではない。
 だからこそ――求められるのだ、超弩級戦力いまを生きる猟兵達が!
御簾森・藍夜
【導雨】△

……家族だったのか
少なくとも、“お前”心の底の底ではそうだったんだな……甘粕妙子

悲しいな、置いて行かれるのは
苦しいな、一人ぼっちは
分かるさその悲しみは

その弾丸が涙だというなら受けてやる
彷、お前は自分の身は自分で守……は?おい。待て誰が庇えと――っ、何が幸運だ、彷!!
あと使えなくなったら俺は適当に捨てとけって言っただろう!

ああもう!だったら幸運なお前に全部預けるからな!
対価は死なない最大限
これは死にたいお前に貸だからな、“大門妙子”

さっきのは、あの月の力の使い方の応用で出来た延長線だ
さっむ…くそ、仲良くって…
何が元気だこの野郎
ここって教授の家だろ?研究者なら珍しい蔵書の一冊二冊…見たい


比良坂・彷
【導雨】△
指定以外藍夜呼び
アドリブ歓迎

うん、好きにやっといで
しばしUC使わず見守り
水さしたくない
己は幾何学模様を見極め回避に徹す
同時に藍夜の負傷状況注視
敵に対抗不可or3回喰らうと倒れるでUC発動

さァ
そろそろ俺とも遊んでよ、妙子ちゃん

藍夜庇い攻撃全て食らう
けれど急所は外れる、絶対に
ねぇ、人が持つ運って定量だって知ってる?キミの運は俺が喰った

藍夜に
ばぁか捨ててけるかよ
妙子ちゃんも後味悪くなるでしょ

あとは麻雀鞄でしばき倒す
攻撃は最大の防御
運がある限り俺は死なない

妙子ちゃんはね
孤独な教授を救った
思い出しなよ、教授は笑っていたでしょう?

らんちゃん元気ィ
月に好かれてんだ
じゃもっと仲良くなったら?



●涙ハ鉛ノ味ガスル

 空気が重く澱む。
 窓を閉め切った部屋故か……違う。
 そこに影朧泣いている少女がいるのだから。

「行っていいか?」
「うん、好きにやっといで」
 御簾森・藍夜が口を開き、比良坂・彷が背中を押した。
「……家族だったのか」
「違いますわ」
 藍夜の言葉を少女は否定する。
「少なくとも、“お前”の心の底の底ではそうだったんだろう……甘粕妙子」
認識にすれ違いがございますそうだったのかも知れない
 甘粕・妙子は再び否定した。
「改めていただければ幸いかと」
 どこからか現れる自動小銃。
 木と鉄で作られた命奪うただの道具。
 胡桃材の銃把を右手に握り妙子は夙夜の森番へと銃口を向けた。
 それ以上、口を開くなと暗に伝えるかのように。
「悲しいな、置いて行かれるのは」
 銃声、左肩を鉛が掠る。
「苦しいな、一人ぼっちは」
 修正射、左肩に孔一つ。
「分かるさその悲しみは」
「分かってなど欲しくはありません!」
 影朧は藍夜の言葉を弾丸とともに否定する。
 銃声は彼女からの音を遮り、紫煙が自分を見つめる黒い瞳を隠してくれる。
 それでも……
「その弾丸が涙だというなら」
 左腕を穴だらけにした森番が言葉を続けるのだ。
「受けてやる」
 壊すしかない。
 妙子はさらに銃火器を呼びだし、視界にとらえられないように複雑な軌道を取らせ、そして藍夜を撃ち殺さんとした。
「彷、お前は自分の身は自分で守……は?」
 ユーベルコヲドを放たれ、四方八方からの銃撃に覚悟を決めた夙夜の森番。
 彼を何者かが覆いかぶさるかのように庇っていく。
 銃声が響き渡り、鼻腔を火薬の臭いが支配した。
「おい。待て誰が庇えと」
「大丈夫、運がある限り俺、死なないもん」
 藍夜の言葉に顔を顰めつつ彷が返す。
「――っ、何が幸運だ、彷!!」
 そんな表情見せられたら語気だって荒くなる。
「あと使えなくなったら俺は適当に捨てとけって言っただろう!」
「ばぁか」
 痛みを隠す様に學徒が笑う、足元に赤い羽根を散らしつつ。
「捨ててけるかよ」
 そう告げると森番に背を向け、視線は影朧へ。
「妙子ちゃんも後味悪くなるでしょ」
 館の中を舞う銃火器、その中心で甘粕・妙子は彷を睨んだ。
「さァ、そろそろ俺とも遊んでよ、妙子ちゃん」
「殿方との接触は断るように命じられておりますの」
 退廃博徒の軽口を悪魔は丁重に謝絶した。

 幾何学模様を描くが如く銃火器が飛翔する。
 彷が歩むごとに肉を削り、羽を散らし、絨毯を朱で汚す。
「妙子ちゃんはね」
 それでもオラトリオは笑うだろう。
「孤独な教授を救った」
 そんな生き方しかできないのだから。
「思い出しなよ、教授は笑っていたでしょう?」
 銃火が激しさを増した。
 彷の言葉を否定するかのように。
 いや、否定したかったからこそ、本気で殺しにかかった。
「……ねぇ?」
 けれど、返ってくるのは問い返し。
人が持つ運って定量だって知ってる?キミの運は俺が喰った

 賭け狂い 払うは狂気

 命知らずの狂い人が敵を運を奪い、そして自らの懐に引き込む。
 金属が嫌な音を立てて噛み合う。
「弾詰まり!?」
 妙子が声を上げる、いくら自動小銃とは言え全ての銃が弾詰まりを起こすわけがない。
 ……いや、そうするように仕向けられた。
 影朧が気づいた時には彷は鞄を振り上げた。

 麻雀牌の詰まった鞄は重く、硬い。
 それをこめかみに叩き込まれた妙子が膝を崩し、もんどりうって倒れる。
「ああもう! だったら幸運なお前に全部預けるからな!」
 鞄を振り回した直後、尻餅をついた彷に対し、普段からは想像もつかないほどの荒っぽい声で藍夜が叫ぶ。
 その肌からは朱が消え、元々色白の肌は白磁の如き美しさを見せる。
 体温が……失われているのだ。
 温もり、鼓動、魔力。
 全てを代償に錬成するのは一発の弾丸。
 遊底を開放し、薬室に銃弾を叩き込むと金の鳥足を模した黒い細巻の傘を支えに右腕一つで黒装の狙撃銃を構える。
「これは死にたいお前に貸だからな、“大門妙子”」
「それは……」
 照準の向こうで立ちあがろうとした影朧がむず痒そうに笑う。
悪魔ダイモンにとっては洒落が効いた言葉ございますわ」
 直後、雷管が叩かれ絶対零度の月光弾が螺旋を刻む。

 月狼の氷牙 ゲツガノツララ

 甘粕・妙子の左肩が貫かれ、腕まで凍り付く。
 その一撃に耐え切れず部屋から吹き飛ばされれば、そのまま逃げるように影朧は洋館の廊下を走った。

「らんちゃん元気ィ」
 天井を仰ぐように寝っ転がり、彷が問う。
「何が元気だこの野郎」
 藍夜の悪態に學徒は笑った。
「さっきのは?」
 オラトリオが聞く。
 深い理由は無い、単純に凄い一撃だと思ったから。
「あの月の力の使い方の応用で出来た延長線だ」
「月に好かれてんだ。じゃもっと仲良くなったら?」
 森番の言葉に彷は素直な言葉を返した。
「さっむ……くそ、仲良くって……」
 普段は夙夜の傘を持つ雨からの守り手も今だけは閉店中だ。
 それ以上、何か言うのも億劫であったが視線に入ったものを見て身体を起こす。
「ここって教授の家だろ?」
「そういやそうだねェ、魔導書か何か探す?」
 藍夜の言葉に彷も楽しそうに身を起こした。
「研究者なら珍しい蔵書の一冊二冊……ああ、見たい」
 夙夜の森番も今だけは素直になり、そしてオラトリオに肩を貸した。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

四軒屋・綴
※アドリブ絡み△歓迎

寂れ館に黒セヱラア、少しばかり退廃趣味デカダンスが過ぎるな?

ユーベルコヲド発動、防御力重視で変身。

落ち着いて話せないなら…
撃ち合いながら話すとしようッ!
『アームズジョーク』を右腕に装備、『シュートケムール』『アッツィーコウル』、左手の『バリアランチャー』で弾幕を張りつつ、敵の射撃は『ミスティバリア』と装甲で最小限を受け『ジョークコート』の推力で振り切る。

勝手に話すが、やはり癒しを受け入れるべきだ。
もしも生まれ変わりを信じるなら、百年か千年か、再会の可能性はゼロではない。
何より、文明開花デモクラシヰは何時も何処でも、娘さんフロイラインの出奔から始まるものだ。



文明開花デモクラシヰ――蒸騎構築ジョークアップ

 左腕を抱えて甘粕・妙子が走る。
 壊すはずが壊された、撃ち込まれた弾丸は冷たくて熱い。
 そこへ――
「寂れ館に黒セヱラア、少しばかり退廃趣味デカダンスが過ぎるな?」
 更なる熱風が押し寄せてきた。

 廊下を疾走するは蒸気機関車。
 それが立ち上がるように車体を起こすと連結貨車が手足となって接続し、機関車の先頭は折れ曲がり、胸部と変わり、頭部が現れる。
 最後にゴーグルが頭部に接続されれば、硝子の向こうに光が宿り、機関車を思わせる鉄人がそこに立つ。

蒸騎構築ジョークアップッ!」

 現れたのは四軒屋・綴。
 またの名を――

「勇蒸連結ッ! ジョウキングッッ!!」
「これは……とても暑苦しいお姿で」
 邪魔者の姿に対し妙子の言葉には棘がある。
「よろしければ、道を開けていただけませんか?」
 現れるのは大量の自動小銃。
 拒絶を許さぬその姿勢に。
「落ち着いて話せないようだな……なら!」
 ジョウキングも背部の武装を右腕に取り付ける。
「撃ち合いながら話すとしようッ!」
「対話というには何というか荒っぽいですが……ワタクシには好みの所作かと」
 影朧が笑い、そして……
 廊下は紫煙と黒煙が支配した。

「シュートケムールッ!!」
 90度展開した上下二連銃。
 発射されるは黒煙を纏った弾丸。
 それを貫くは7.7mmの小銃弾。

 ラヰフル・トリガアハッピヰ

 綴の石炭型榴弾が起爆前に撃ち飛ばされ、空中で爆発した破片が廊下を跳ねまわる!
「勝手に話すが、やはり癒しを受け入れるべきだ」
 左手で衝撃弾を放ち弾丸数で凌駕を試みながらジョウキングは口を開き、右手の白手袋に蒸気の防壁を張り巡らせ距離を詰める。
「もしも生まれ変わりを信じるなら、百年か千年か、再会の可能性はゼロではない」
 被弾上等の心意気で妙子の自動小銃の嵐を潜り抜け。
「何より、文明開花デモクラシヰは何時も何処でも、娘さんフロイラインの出奔から始まるものだ」
 その肩に手を置いた。
「お言葉は嬉しく存じます……しかし」
 返ってくるのは銃声。
 貫かれるのは綴の腹。
「私は再会など望んではおりませぬ」
 もう一発。
「私は破壊主義者ヴァンダリストなる悪魔ダイモン。望むのはお父様との約束のみ」
 膝を着いたジョウキングの目の前に拳銃一つ。
「それが果たされないのなら……全てを壊すのみでございます」
「それは大門教授は望んだ事かッ!!」
 鋼鉄の手が拳銃ごと妙子の手を掴んだ。

「父親が娘が無鉄砲に暴れるを望むか!? いや違う!」
 手を掴みつつ四軒屋・綴が立ち上がる。
「親なら娘の幸せを望むものだッ! 例え犯罪の片棒を担がせようが最後には旅路を見送るはずだッ!」
「ならばなぜ、先に逝ってしまわれたの!?」
 妙子の言葉が痛い。
「答えてくださいまし、超弩級戦力! お父様!」
「それは……君が一番知っている――はずだッ!!」
 虚空に浮かぶ自動小銃が自分を狙う中、ジョウキングは影朧を掴みライフルの巣へと放り投げた。
 同時に放たれる銃弾。
 煙が晴れ、綴はその場に膝を着く。
 負傷は大きい、もう追う事は出来ない。
 だが充分だ……伝えるべき言葉は伝えたのだから。

「あとは……任せた」
 暗くなる意識の中、綴は全てを仲間猟兵へと託した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
【鬼桜】

最期に壊す約束が、守られなかったから。
でも、もしかすると……本当は壊したくなかったのに壊れたから、なのかも?

うわぁ、すっごい弾幕。
ですが、撃ちっぱなしの弾ならどうとでもなります。
――道はわたしが作ります、八重ちゃんは真っ直ぐに!

八重ちゃんの前に立ち【闇の精霊さん】発動、二人で突撃
正面からの弾をマイクロブラックホールを盾にし吸い込み無効化、八重ちゃんを守る
哄笑が来たらその場で全方位に複数発生させ吸い込んで防御
火線を引き付けつつ、八重ちゃんを送り出します
彼女が突っ込んでいったら、状況に応じて吸い込んだ弾を吐き出して援護射撃です

聞かせてください。
貴女は、本当に「全て壊したい」んですか?


御桜・八重
【鬼桜】

甘粕・妙子。
破壊主義者の異名を持つ幻朧戦線のメンバー。
でも、彼女が真に求めていたものはそこには無かったのだろう。
召喚時、彼女は人のために力を貸そうとしていたのだから。

「トリガーハッピヰは性格だろうけどねー!」
弾幕の中、物陰からひかるちゃんの方を伺えば。
「ん!」
準備OK。弾丸はひかるちゃんが防いでくれる。
わたしは迷わず突進!

「ダメだよ!それじゃ思い出を壊しちゃう」
一気に懐に入り込んで銃身を斬り飛ばし、
更に踏み込み刀を胸元に突き入れる!

斬るのは彼女を縛る絶望。
怨を斬って縁を繋ぎ直す!

……教授は最後にあなたに何を伝えたかったのかな。
ううん。
あなたにはわかっているよね。

自分らしく生きろ、って。



破壊主義者ヴァンダリストガ望ムモノ

 廊下を走り抜け、ホールに出る。
 吹き抜けの天井。教授の持ち物としては凝っていた広い空間が今は空虚に思えるのは何故だろう?
 甘粕・妙子がわずかな時を思索に浸っていたのを二人の少女の足音が打ち切り、現実へと引き戻した。

 ――甘粕・妙子。
 破壊主義者の異名を持つ幻朧戦線のメンバー。
 でも、彼女が真に求めていたものはそこには無かったのだろう。
 召喚時、彼女は人のために力を貸そうとしていたのだから。

 視界に影朧を納め、御桜・八重は思う。

 ――最期に壊す約束が、守られなかったから。
 でも、もしかすると……本当は壊したくなかったのに壊れたから、なのかも?

 ホールを歩く妙子の姿に荒谷・ひかるは考える。

 どちらにしても感情に浸る時間も理解を深める時間も終わりだ。
 影朧が右腕に握った自動小銃を掲げると周囲に隠しておいた機関銃が猟兵を狙う。
 侵入者に対しての防衛装置にしてユーベルコヲド。

 マシンガン・クロスファヰア

「――――」
 言葉も仕草も要らなかった。
 甘粕・妙子が笑うだけで銃弾は放たれるのだ。
 昔、影朧だった時のように。
 そう、昔のように。

「うわぁ、すっごい弾幕」
 友達の前なのでちょっとだけ言葉に素が出たひかる。
「トリガーハッピヰは性格だろうけどねー!」
 咄嗟に物陰に飛び込んだ八重。
「ですが、撃ちっぱなしの弾ならどうとでもなります」
 続くように聞こえた精霊の娘の台詞。
 それを耳にした桜の巫女は気づいた。
 銃弾は放たれたはずなのに、どこにも当たっていないことに。
 物陰からそっと顔を出せばひかるの目の前に闇が生まれていた。

 闇の精霊さん ダーク・ヱレメンタル

 闇の精霊が産み出す指向性のブラックホール。
 超重力が銃弾の軌道を曲げ、全てを呑み込んでいく。
 正しくは重力が司る事象ではあるが、森羅万象を構築する精霊にとっては闇が扱うものであろう。
 故にそのブラックホールは精霊の娘に意に応じるのだ。
「――道はわたしが作ります、八重ちゃんは真っ直ぐに!」
「ん!」
 ひかるの言葉に彼女の友人は一言頷いて、そして走った。

「ダメだよ! それじゃ思い出を壊しちゃう」
「いいえ、壊してしまいましょう、何もかも」
 八重の言葉を拒むが如く、妙子が自動小銃を向けた。

 ラヰフル・トリガアハッピヰ

 だが自動小銃の弾丸は桜の巫女には届かない。
 精霊の娘が闇から放った弾丸が打ち落とすのだから。
 皮肉にもそれは甘粕・妙子が放った機関銃弾。
 吸い込んだものを解き放つ、闇の精霊が行ったのはただそれだけだが……ユーベルコヲドの弾丸なら同じ弾で防げる道理。
「――えいっ!」
「――ッ!?」
 八重が抜刀し、自動小銃を切断する。
「聞かせてください」
 ひかるが問いかける中
「貴女は、本当に『全て壊したい』んですか?」
 桜の巫女はさらに踏み込み、妙子の腹へと刀を突き刺した。

 強制改心刀 其は絶望を切る刃

「……教授は最後にあなたに何を伝えたかったのかな」
 斬るのは影朧を縛る絶望。
「ううん。あなたにはわかっているよね」
 怨を斬って縁を繋ぎ直す!
「自分らしく生きろ、って」
「あ……あああああああああっ!」
 甘粕・妙子が顔を抑える。
 全てを拒むかのように八重を蹴飛ばすと、虚空に浮かんだ小銃が転げ落ち、衝撃で暴発し踊っていく。

「ワタクシは……ワタクシは……!」
 言葉が出ない。
 心が形にならない。
 吐きそうなほど苦しい。
 お父様、オトウサマ、おとうさま!
 どうすればいい――

 混乱を納めるかのように熱い何がが影朧を貫く。
 暴発を繰り返した自動小銃から飛んだ弾丸が一発、妙子の腹を貫いたのだ。
「ふ……ふふふ」
 痛みに顔を顰めつつ妙子は作り笑いを浮かべた。
「取り乱すなんてワタクシらしくない……だから、お父様はご立腹なのかしら?」
 被弾した腹を抑える手が赤く染まっていた。
「違う!」
 八重が否定する。
「そんなことありません!」
 ひかるも続く。
「教授はあなたが傷つく事なんて望んでないはず!」
 伝わらないもどかしさに八重の声が大きくなる。
「自分の娘が傷ついて悲しくない家族なんていませんよ!」
 過去を思い出し、ひかるが揺れる心を抑えて叫ぶ。
 そんな二人を甘粕・妙子はまだ動く右腕で制した。
「落ち着いてくださいませ。弾丸一つで悪魔が死ぬなんて大門デバイスによって呼び出された者としての恥ずかしい終わりと思いません?」
 口元から血を零し、影朧は諧謔の笑みを見せた。
「銀髪のお嬢さん、貴女はおっしゃいましたね。『全て壊したい』のかと?」
 ひかるに視線を向け、妙子は問う。
 その声色は鈴のように澄んでいた。
「答えはイヱスと。それがワタクシの矜持であり、お父様との約束なのですから」
 契約は既に約束に変わっていた。
 だが、偽りではない。
「主を壊せば、全てを壊したことになるのですから」
 情念とかげ、うつろ、が曇らせたモノを正しく定義する。
「黒髪のお嬢さん、貴女は言いましたね。自分らしく生きろと?」
 次に八重に視線を向け、問いかけると転がっていた自動小銃を拾う。
 その声色は凛として、自分がなんであるかを知っている様であった。
「ならば、ワタクシはワタクシらしく――大門教授の悪魔ダイモンとして全てを壊してさしあげますわ……嗚呼、そんな顔なさらないで」
 銃を片手に甘粕・妙子は首を振る。
「ワタクシは感謝しているのです」
 ホールの真ん中で軽く頭を下げ、悪魔は微笑んだ。

「最後は悪魔としての使命を果たさせてもらえるのですから――さあ、出て行きなさい最後に一花上げさせていただきます。ここはお父様の館。何人たりとも主の許可なく入ってもらっては困ります」
 大門教授の悪魔、甘粕・妙子の言葉に八重とひかるはただ頷きを返す。
 闇は打ち払った、後は最後の仕上げを託すのみ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「自らの手で何時か召喚者の犯した罪を償う…召喚者の命を以て。其れが貴女の望みと言う事で宜しいですか、妙子さん」

「ならば其の灌ぎ、大門教授に代わり承ります。掛かっていらっしゃい」

UC「幻朧桜召喚・桜嵐」
第六感や見切りで攻撃躱しながら吶喊
幸運と生命力上昇頼み多少掠めるのは気にしない
接敵したら桜鋼扇で首や手狙い連打連打
打ち倒し思い変わる迄連打&説得

「貴女の、望みはっ!元々叶わぬ、ものでしたっ!父とも慕う方を、罪を償わせるなんて理由で、討てる訳がないでしょう!納得、なさいませ!」
「生命には!限りがある!必ず 、終わりが来る!其の時が、来ただけなのです!大門教授を、父とも仰いで居たならば!追いかけなさいませ!転生を、なさいませ!心地、良かったのでしょう!他者と思い合うこと、繋がり合うことは!」
「此処で嘆いて、全弾撃ち尽くして!其れでも、其れよりも!共に在る事、共に思い合う事の方が!心地良かったでしょう!違いますか!」

「貴女も、巡る生命と想いの輪にお戻りなさい。繋がり、思い合う為に。転生なさいませ」


飛・千雨
SPD アドリブ連携歓迎。

妙子さん……。
大門さんは、あなたとの交流で賑やかな日々を送れたのですね。
決して善人と呼べる方ではありませんが……それでも、互いに心が満たされていたのであれば、その縁を蔑ろにする訳にはいきません。
ほかならぬ、あなた自身の手によってであっても……!

神器変形。
存分に暴れなさってください。気が済むまでお相手いたしましょう。
私たちがあなたの想いの発露にお付き合いいたします。
『木鹿振鈴』による風で飛翔する銃火器の弾丸を逸らし、捕食形態で銃火器を食らいましょう。
銃火器への攻撃性能を増強させることで……妙子さんが撃ち尽すまで、攻防の応酬を維持します。
あなたが止まる、その時まで……!



●ソノ役目、終ワルマデ

 影、朧。
 猟兵の信念が、願いが、情念によって引き寄せられた闇を払えば後は悪魔ダイモンが一人。
「今はお父様が留守でございます。ご依頼でしたらお引き取りを、捕縛なり探索でしたら、ここで壊されてくださるとワタクシとしては都合良く……どちらでお客様?」
 それが建前だという事は甘粕・妙子本人が分かっている。
 それでも、為さねばならぬことは有るのだ。
 契約はまだ履行中であり。
 そして、自分はまだ歩けるのだから。

「自らの手で何時か召喚者の犯した罪を償う……召喚者の命を以て。其れが貴女の望みと言う事で宜しいですか、妙子さん」
 御園・桜花の問いかけに興味深そうに妙子は眉を動かす。
「そういうストォリヰも面白そうですわ。でも御免なさい。ワタクシそこまで善人ではございませんの」
 申し訳なさそうに大門教授の悪魔は否定する。
「留守がちなお父様にまずは一度、引鉄を引いてからライフルで追いかけまわすのが今の私の望みといったところかしら……おかしいでしょう?」
 代わりに口にしたのは叶わない望み、だが……。
「頭では理解しても、心は納得しない……残されたものとはそういうものではありません?」
「ええ」
 人が葬式をするのは生者が納得するため。
 桜花もそれを知っているからこそ、悪魔の言葉に同意し。
「ならば其の望み、大門教授に代わり私が承ります。掛かっていらっしゃい」
 葬送の祭司を自らが担う事を宣言した。

「…………」
 二人のやり取りを飛・千雨は黙って見守っていた。
 役目に自らを縛る悪魔。
 彼女を自由にするために立つ桜の精。
 過去に突然、自由を得た自分とは違う、枷を外す儀式。
 先に自由になったものとして何ができるか……千雨はそれを知っていたからこそ桜花の横に並び立ち、口を開いた。

「妙子さん……」
「はい、なにか?」
 羽衣人の問いかけに丁寧に応じる妙子。
「大門さんは、あなたとの交流で賑やかな日々を送れたのですね」
「お父様が穏やかな日々を送っていたかは存じませぬが、少なくとも退屈しない日々ではありました」
 それは彼女なりの諧謔なのであろう。自動小銃を片手に館の天井を見て思いを馳せているのだから。
「決して善人と呼べる方ではありませんが……それでも、互いに心が満たされていたのであれば、その縁を蔑ろにする訳にはいきません」
「そうなのですよ。ワタクシ、大変男運が悪いと思いません?」
 続く妙子の諧謔に千雨も笑みを漏らす。
 だがそれもすぐに終わる。
「ほかならぬ、あなた自身の手によってであっても……!」
 告げなくてはいけないからだ。
 悪魔が望む通り。
 桜花が望む通り。
 そして千雨が望む通り。
「神器変形!」
 ここで戦わなければ区切りがつかないのだから。

 偽神宝貝・捕食形態 プレデタアモヲド

「存分に暴れなさってください」
 羽衣人の宝貝が牙をむき出しにする。
「気が済むまでお相手いたしましょう」
 あなた 妙子さんの想いの発露に付き合うために!
 銃火器が飛び交う中、まずは千雨が飛び込んだ。
「お気遣い、大変感謝いたします」
 笑みともに幾何学的な軌道を描いている銃火器がまず羽衣人を狙った。

 キルゾーン・ラピッドファヰア

 銃が飛び交うのは確実に対象を捉えるため。
 複数飛び交うのは隙間を埋めるため。
 囲い、捉えるのだ――破壊の領域キルゾーンへと!
「木鹿振鈴!」
 けれど千雨が長柄の偽神宝貝が振り回せば涼やかな鐘の音と共に吹きすさぶ烈風が弾丸の軌道を乱す。
 そこへ――捕食の牙を持った宝貝が繰りだされ、銃火器が呑み込まれる。
 砲門が削り取られ、キルゾーンに綻びが……できた!
「今です、桜花さん!」
「……はい!」
 羽衣人の声に応え、桜の精が今――嵐を呼ぶ。

 幻朧桜召喚  ゲンロウザクラショウカン桜嵐オウラン

 桜吹雪と共に桜花は飛び出した。
 綻びを見せたとは言え、キルゾーンは健在。
 桜吹雪が視界を塞ぎ、千雨の風が弾丸を逸らしても、数発は掠り、その白い頬を紅が引かれる。
 それでもなお、進むのだ。
 桜の精たる彼女にはそのための理由と信念があった。
「貴女の、望みはっ! 元々叶わぬ、ものでしたっ!」
 桜の花弁が刻まれた鉄扇を畳み、鈍器として桜花は振るう。
「父とも慕う方を、契約だからと言って、討てる訳がないでしょう! 貴方が一番、わかっているはず!」
 自身へと自動小銃が向けられるとその手を叩き、落ちた銃を蹴り飛ばす。
「生命には! 限りがある! 必ず 、終わりが来る! 其の時が、来ただけなのです!」
 さらに凍り付いた妙子の左腕に鉄扇を叩き込み、その左腕に亀裂を刻む。
「大門教授を、父とも仰いで居たならば! 追いかけなさいませ! 転生を、なさいませ!」
 それは言葉を刻むが如き乱打。
「心地、良かったのでしょう! 他者と思い合うこと、繋がり合うことは!」
 さらに喉へと突き刺すような鉄扇の一撃に妙子は声を出せない。
「此処で嘆いて、全弾撃ち尽くして! 其れでも、其れよりも! 共に在る事、共に思い合う事の方が! 心地良かったでしょう! 違いますか!?」
 さらに鉄扇を振り上げようとした桜花の手を何者かが止めた。
 千雨だ。
「もう充分ですよ、桜花さん」
 羽衣人に諭され、肩で息をする桜花。
 強烈な一撃に喉を抑え、何度もせき込む妙子。
「貴女も、巡る生命と想いの輪にお戻りなさい。繋がり、思い合う為に。転生なさいませ」
「ケホッ……そうですわね」
 ようやく、声を絞り出した妙子が二人に笑う。
「為すべきことは為し、そして打ち倒されました。悪魔としての役目は終わり……そろそろお暇の時間をでございます」
 降参の意を示す悪魔の言葉に二人も……その場に集まった猟兵も頷きを返す。
 直後、腰が抜けたように桜花の膝が崩れ、千雨が咄嗟に支える。
「お恥ずかしい……全てが終わったと分かると力が抜けちゃって」
「ええ、分かります」
 桜の精の言葉に羽衣人は頷く。
 自分も戦いの熱狂に酔えば、人の事は言えないのだから。

「それでは転生までの最後の時間……よろしければワタクシのほんの気まぐれにお付き合いいただけますでしょうか?」
 戦いが終わり、役目を終えた甘粕・妙子が猟兵へと頭を下げた。

 ――本当の終わりはこれから始まるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人里離れた館にて、幽世の如き夜を』

POW   :    語り明かそう。キミと、朝まで。

SPD   :    舌へ、喉へ、その心へ。香茶と酒精を心行くまで。

WIZ   :    散るがゆえに。藍夜に舞う桜を瞳に映して。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●大門教授ノ残シタモノ

 戦いが終わった洋館。
 館の中では影朧エンジンが唸りを上げ、散乱した屋敷のゴミを吸い取っていく。
「ああ!? ……ええ、これは忘れておりました」
 銃ではなく古めかしい大き目の掃除機を片手に甘粕・妙子が猟兵の視線に気づく。
「さっきのようなことは日常茶飯事。終わった後はいつも大掃除。ワタクシ、悪魔でございますのに?」
 苦笑しつつ、手早く掃除を進める悪魔。
「終わりましたら、お茶をご用意しようと思います。もしお手隙なら……手伝いますか? いつもなら腰の悪い年寄りが手伝いと言うか邪魔をしておりますが、今は長い留守を決め込んでおりますので」
 まだ動きにぎこちなさが残る左腕でモップを振り回しながら少女は問いかけた。

 これから始まるのは全ての終わり。
 かつて絆を深めた洋館、だがもう主はおらず、残った者も後を濁さないように後始末を行っている。
 猟兵が出来ることはいくつかある。
 見守ること。
 手伝う事。
 そして……。
「今回、ワタクシ一人の転生に付き合ってくださるのも仕事だと理解はしております。だからこそ、アナタ方への少しばかりのお礼というわけではありませんがほんのおもてなしを」
 ――最後を見送ること。

「少なくとも紅茶の銘柄だけはそろっております、ワタクシの趣味ですので。珈琲と酒に関しては……ワタクシもお父様も無頓着でしたから、はい」
 ちょっとだけ視線を逸らした少女は普通に生きている人間のようだ。
 だが、それも今だけ。
 やがて消えゆくだろう。
 新たに転生するか、悪事の償いとして地獄に行くか。
 それは分からない。

 でも、それまでに何かをすることは出来るはず。
 君は……何をしたい?
比良坂・彷
【導雨】
らんちゃんだって喰らう気満々だったでしょお
想定より彼女が強かったんだよ

妙子ちゃん
教授に逢った事ないのにどんな爺さんか知れたわ
キミの事教えてよ、語るから
語られ続ける限りその人は死なないんだよ
まずは好きな紅茶頂戴

あとー
此奴の言ってる本思い当たるのある?
自分が“何者になれるのか”探してんだよ
キミが教授の唯一になれたように

“俺らしい”かァ
俺は人から観測された像を自己認識に加え己を捉えたフリしてる
いつだって自分迷子で彷徨ってんの

さっきの治癒の月光 
まさに藍夜だよねぇ
名は体を表すというか
らんちゃんは自分を削って治したがり

妙子嬢の見送り
煙草とマッチ
教授へのお土産と手渡し笑む
どうかよき旅路来世


御簾森・藍夜
【導雨】
…彷
誰が守ってくれなんて言ったんだ…!
ぐう゛…だって逃げよう無いんだ仕方ないだろ

まあ、治せばいいかと彷にUC
っ、あー…疲れたでも読みたい腕痛い
大門妙子…なあ、教授は月関連の魔術書籍はお持ちでは無かったか
何でも良い
どうしても、俺は掴まねば
やっと最近その糸口が出来て来たんだ
…諦めたくない

元甘粕妙子は厳しいが聞くには善良、話せば頭の固い紅茶と銃火器大好きな教授の娘
で、教授は風変わりな悪魔召喚成功者であり悪魔を持った一人の男、だろ

…俺らしいって何だろう
このままでも良い気はするんだが

ただ―まあ、そうだな俺は俺を探している
だから俺はお前が羨ましいよ、大門妙子
良い旅路を―教授に逢えると良いな



●唯一無二は琥珀の色

 数少ない、綺麗に片付いた部屋。
 おそらくは居間として使われていたのだろう、その真ん中にあるテーブルに座るのは男二人。
「……彷」
 御簾森・藍夜が咎めるようにも咎められない、そんな表情で煙草を咥える。
「誰が守ってくれなんて言ったんだ……!」
 それは罪悪感というものなのか喪失への恐怖なのか分からない。
「らんちゃんだって喰らう気満々だったでしょお」
 そんな藍夜の向かいで比良坂・彷は燐寸を擦り、火の灯った棒を相手の口元へ運び、自分も唇に挟んだ一本へと火を灯した。
「ぐう゛……だって逃げよう無いんだ仕方ないだろ」
 外見からは想像できない幼さの片鱗を見せた後、藍夜は煙を吹かした。
「想定より彼女が強かったんだよ」
 少しだけ醒めた目で彷は答えた。命のやり取りが終わり、戦いの熱は消え、また心に空虚が出来る。
 傷の痛みと熱がそれを紛らわせてくれる間に學徒は肺へと煙を送った。

 二人の下に置かれる2つのティーカップ。
「お待たせいたしました」
 甘粕・妙子がポットに湯を注げば、香るのは薔薇の芳香かメントールらしき爽やかな香りか。
「ウバか」
 天窓から差し込む月光を操り彷の傷を癒しつつ、藍夜は咥えていた煙草を灰皿に押しつける。
 折角の香りを邪魔しそうに思ったから。
「はい、お二人には錫蘭の葉がよろしいかと思いまして」
 ティーポット片手に妙子が答えた。
「よろしければミルクもお付けいたしますか?」
「いいや、このままで」
 悪魔  ダイモンの問いかけを學徒が断った。
「まずは好きな紅茶頂戴したいからね」

 甘い香りと清涼感が合わされば、後に引かない飲み口が今は身体に合い、戦いで残った身体の熱も消し去ってしまいそう。
「妙子ちゃん」
 その香りに今、刹那の合間だけ己の虚しさを忘れつつ彷が口を開く。
「教授に逢った事ないのにどんな爺さんか知れたわ」
「新聞にもたびたび載りましたからね」
 そうじゃなくてと笑いながら手を振りながら。
「キミの事教えてよ、語るから」
 本題へと入る。
「語られ続ける限りその人は死なないんだよ」
「やめてくださいまし」
 丁重に断るは甘粕・妙子。
「転生した先で自分の昔話を聞かされるのは流石のワタクシもその場で死にたくなってしまいますわ」
「そりゃダメだねぇ」
 彷も思わず手を叩き、話題を変えた。
「あとー、此奴の言ってる本思い当たるのある?」
 オラトリオの手が向けられた先では、藍夜が傷の痛みに顔を顰めていた。

「っ、あー…疲れたでも読みたい腕痛い」
 負傷した上にユーベルコヲドで回復もしたのだから、疲れは人一倍溜まっている。
「大門妙子……なあ、教授は月関連の魔術書籍はお持ちでは無かったか」
 けれど知的好奇心と。
「何でも良い。どうしても、俺は掴まねば」
 自らがどこに来たかを知りたいという欲求がそれを凌駕する。
「自分が“何者になれるのか”探してんだよ」
 補足するように彷が言葉を挟めた。
「キミが教授の唯一になれたように」
「やっと最近その糸口が出来て来たんだ……諦めたくない」
 藍夜の言葉には渇望があった。
「お父様の姓で呼ばれるのは何かむず痒いものがありますわね」
 甘粕・妙子は言葉に出来ない何かを表情に浮かべる。
「あと悪魔ダイモンとかかっておりますし」
「もしそうだとしたら?」
 向かいに座る學徒が問いかければ。
「センスはよろしいかと」
 少女が答える。
 その一方で夙夜の森番の表情は伺い知れない。
 その時の顔は本人とこの場に居る者だけの秘密。
「月に関してですが、英吉利の洋書が一つ」
 場のタイミングを見計らって妙子は口を開く。
「名は月光狂典……これだけでお察しいただけるかと」
 少女の問いに藍夜は深いため息とともに頷いた。
「月は人を狂わす……古い迷信だな」
 夙夜の月に立つ者は迷信と真実を見分ける知識があった。
「お父様は元々科学者でした」
 妙子が頷き、言葉を続ける。
「魔術の分野も科学で解釈し、最終的には大門デバイスの発明と改良にいそしんだ次第です」
「なるほど……話に聞いた教授らしいよ」
 森番が天を仰ぎ、灯りをともしたシャンデリアを見つめる。

 厳しいが聞くには善良、話せば頭の固い紅茶と銃火器大好きな教授の娘。
 風変わりな悪魔召喚成功者であり悪魔を持った一人の男。
 彼らは自分が何者かを知っている。
 それに比べて――

「……俺らしいって何だろう」
 藍夜が呟いた。
「このままでも良い気はするんだが」
 そんな姿を見て、彷が微笑む。
「さっきの治癒の月光、まさに藍夜だよねぇ」
 蒼き月の光を思い出しながら、何もない男が話を続ける。
「名は体を表すというか、らんちゃんは自分を削って治したがり」
「……そうか?」
 自分を探している男の問いに返ってくるのは笑み一つ。
「ワタクシには自分を探そうとしている御簾森様のお姿が貴方の唯一無二かと思われます……ええ、この紅茶のように」
 妙子の視線の先に有るのは錫蘭の高地で取れるたった一つの茶葉。
「お替り、いりますか?」
 彼女の言葉を二人は断る。そろそろ別れの時だから。

「ただ――まあ、そうだな俺は俺を探している」
 藍夜は少しだけ柔らかい笑みを浮かべた。
「だから俺はお前が羨ましいよ、大門妙子」
 あくまでも教授の娘として森番は彼女の名を呼ぶ。
「良い旅路を――教授に逢えると良いな」
「次も悪事の片棒を担いでいたらどうしましょう?」
 少女の諧謔に藍夜は肩を竦めた。

「はいこれ」
 妙子の手に渡されるのは煙草と燐寸。
「教授へのお土産」
 笑みを浮かべる彷に対し少女はありがとうございますと頭を下げる。
「どうかよき旅路来世を」
「はい、行って参ります」

 ティーカップが片付けられ、ワゴンを押し少女はドアを開ける。
 残ったのは男二人。
 旅立った者の余韻は甘さと爽やかさをもった唯一無二の香り。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「確かにお掃除は大事です。是非手伝わせて下さい」
UC「古木の宿」
掃除道具引っ張り出し片付け手伝い
(女の子ですから、おうちは綺麗にしていきたいですよね、きっと)
磨ける場所は雑巾掛けして磨く

「そう言えば、最近お祭りに行って買い貯めしたんです」
UCからチョコとクッキーをお茶請け用に出す

「やりたい事やれそうな事はやれる限りやりましょう。楽しい思い出は多ければ多いほど良いですし」

「地獄…此の世界には無いんじゃないでしょうか。転生はありますけど、地獄還りの方の話は聞いた事無いです」
首傾げ

「転生したら、またお会いしましょう、妙子さん」
最後は鎮魂歌歌い見送る

帰り
柳月が残っていたら戦闘で叩きのめして転生促す


飛・千雨
アドリブ連携歓迎。

ええ、もちろんです。
言いましたでしょう、とことんお付き合いいたします。
まずは、……館の片付けの手伝い、ですね。
特技とはいえませんが、散乱した瓦礫の撤去や埃取り、掃除は慣れております。
(居候先がアポカリプスヘルなので)

見送りの茶席にも同席させていただきましょう。
多少の礼儀作法は嗜んでおります。
お茶の淹れ方も、独学でよろしければお手伝いさせてくださいな。
妙子さんは、紅茶と珈琲どちらが好まれるのでしょうか。
(千雨はどちらも好み、お酒でもイケる口なので、場に合わせます)

……私にできることは、見送ることだけ。
お茶を酌み交わし、妙子さんと団欒をして、彼女が安らかに逝けるよう祈ることだけ……。
それが少しでも、妙子さんの慰めとなるならば。微笑んで見送りましょう。
他世界のオブリビオンたちとは異なる、影朧なる彼女が……無事に転生できればと、……救いがありますように、と。切に願います。


四軒屋・綴
※なんでも歓迎

さて全員整列ッ!!
パーツ拾いに草むしりッ!!庭木……?鋏かなんかを探して来なさいッ!

敵に回せば恐ろしいが、停止した以上は老教授の収集物、八〇式の欠片を拾い集め熱で溶接、時間も無いが輪郭程度には組上がるだろう、庭も出来る限りは整えておく。

地獄なら?悪魔と往くのだ、鉄火も獄炎も恐れることはない。
天国なら?喫茶ティータイムにお誂えの洋館程度はとあるだろう、腰を痛めたご老体向けの安楽椅子と一緒に。

乞い焦がれ、いと惜しむなら……道理など蹴飛ばして往くがいい。

庭の手入れが終わったら、冷たい紅茶でもねだりに行こう、文字通り面の皮は厚いからな。



●未来へ恋焦がれ

 ――時は少しさかのぼり。

「全員整列ッ!!」
 四軒屋・綴の号令に従うのは目に数字が刻印されたジョウキングの分身。
 彼らはさしずめ臨時雇いの在倍列車アルバイトレイン
 庭に集められた125体と一人のジョウキングに甘粕・妙子は驚きを隠せない。
「ワタクシ思いますけれども」
 その言葉に毒は無いが。
「ちょっと庭の片づけには多すぎません?」
「ウム、正論ッ!!」
 綴も答えた通り多すぎた。
 というか何名か庭からはみ出てます……。
 そんなわけでちょうどいい人数に減らされたアルバイトジョウキングを率いて、綴は庭の片付けに入る。
「パーツを拾って一か所に! 草むしりは整列して同時に! 庭木……? 鋏かなんかを探して来なさいッ!」
 本体の指示に従ってテキパキすぎるほどに動くジョウキング達。
「はい、鋏です」
 妙子も様子を見て、不足を補うだけで充分。
「うむ、感謝ッ!」
 そして分身もやっぱり大騒動蒸煙暑苦しい

 片付けにいそしむ中、少女の視界に入るのは壊れた鋼鉄の鎧。
「八〇式も直すのですか?」
 それは超弩級戦力の障害となっていた機甲武者、八〇式柳月。
「何というか、壊れたままにしておくのも忍びなくてな」
「教授も同じでしたわ。壊れたままは悲しいだろうと……その後、顧客にお貸ししたところ、また壊れたそうですが」
 顧客に関しては聞かないでおこう、綴は頭の中によぎった思考を打ち消し、話題を変える。
「そういえば地獄に落ちると言っていたな?」
「ええ……かつて影朧たるワタクシはこうして転生し悪魔となりましたが、転生の前に禊が必要。と考えれば地獄の一つもあってはおかしくないかと」
 サクラミラージュにおいて地獄が有るという話は聞いたことがない。
 だが文献、その他を綴れば記載の一つは有るのだろう。
 妙子が口にしたのはそういう意味での地獄。
「地獄なら? 悪魔と往くのだ、鉄火も獄炎も恐れることはない」
 機関車の様な男の言葉に少女は首をかしげる。
「天国なら? 喫茶ティータイムにお誂えの洋館程度はとあるだろう、腰を痛めたご老体向けの安楽椅子と一緒に」
「一緒に行けますでしょうか?」
 言葉の意味を理解し問い返す妙子。
乞い焦がれ、いと惜しむなら……道理など蹴飛ばして往くがいい」
「……はいっ!」
 要らぬ心配は無用とばかりに言い放つ綴の言葉に少女は力強く返事を返した。

 ――柳月が残っていたら転生を促そうと思っていましたが。

 その様子を見ていた御園・桜花は武器をしまい。

 ――要らぬ心配でしたね。

 洋館の中へと入っていった。
 庭に一体だけ、座っている役目を終えた機甲武者を残して。


 庭の手入れをジョウキング達に任せ、屋敷に入った妙子を出迎えるのは桜花と飛・千雨。
「お二人とも……?」
「ええ、もちろんです」
 甘粕・妙子の問いかけに千雨が答えた。
「言いましたでしょう、とことんお付き合いいたします」
「お掃除は大事です。是非手伝わせて下さい」
 羽衣人の言葉に桜の精が続いた。

「まずは、……館の片付けの手伝い、ですね」
 言葉を区切りつつ千雨が手馴れた動きで瓦礫を撤去していく。
 居候先が居候先だけあって慣れてしまっている自分が居た。
 一方で桜花は袖口から掃除用具を器用に引っ張り出す。
「ユーベルコヲドですか?」
「はい」
 妙子の質問に古木の宿より引き抜いたモップ片手に桜の精が答えた。
 瓦礫が片付けられ、埃を払い、磨けるところは雑巾をかけて磨いていく。

 ――女の子ですから、おうちは綺麗にしていきたいですよね、きっと。

 桜花の視線の先には影朧エンジンを唸らせて掃除機をかける妙子の姿。
 最後の後片付けをする後姿に少しだけ寂しさを感じたのは気のせいだろうか。

「では、お茶にしましょうか?」
 片付いたところで少女がワゴンを押し、ティーセットを運んでくる。
「そう言えば、最近お祭りに行って買い貯めしたんです」
 桜の精の袖口から大量のチョコとクッキイが溢れるように出てくる。
「……やはりユーベルコヲド?」
「はい!」
 妙子の再度の問いかけに、再び桜花は頷いた。
 そんな二人のやり取りを微笑ましく見守りつつ、千雨はケトルを手に取る。
「お茶の淹れ方も、独学でよろしければお手伝いさせてくださいな?」
「ええ、勿論」
 少女は快諾した後、少しだけ口をとがらせて。
「でもお二人がお客様だって事忘れてもらっては困りますからね」
 ちょっとだけ、本音を見せた。
「やりたい事やれそうな事はやれる限りやりましょう。楽しい思い出は多ければ多いほど良いですし」
 助け舟を入れるように桜の精が、二人を促す。
 女三人集まれば何とやら。
 自然と話が弾んでいく。

「妙子さんは、紅茶と珈琲どちらが好まれるのでしょうか」
 千雨がケトル片手に問いかける。
「勿論、紅茶でございます。ここにある茶葉は全部ワタクシが集めた物なのですから」
 少女が答えつつティーポットに茶葉を入れる。
「よかったら、こちらをワタクシ達で独占してみませんか?」
 促されるように羽衣人が湯をポットへと注ぎ込む。
 蘭の花を思わせる香りが辺りを包み込んだ。
「祁門紅茶……ですか?」
「ご名答でございます、千雨様」
 羽衣人の言葉に妙子は嬉しそうに答える。
「一時期は品質が危ぶまれましたが、今の帝の世となってからは良質な茶葉が簡単に手に入るようになりました」
 二人の元にカップを置けば、自分も琥珀色の液体を流し込む。
「……あら、失礼しました。ワタクシとしたことが、先に頂いてしまって……」
 慌てる妙子の姿に桜花も千雨も笑みを隠せなかった。

「そういえば」
 紅茶を味わう時間も一段落し、菓子を片手に会話が弾む中、桜花が口を開く。
「地獄……此の世界には無いんじゃないでしょうか。転生はありますけど、地獄還りの方の話は聞いた事無いです」
 首を傾げる桜の精。
 妙子は頷きを返す。
「御園様のおっしゃることは分かります。ワタクシも文献で目にしたくらいで、実際に行ったことは無いのですから」
「ではなぜ?」
 再度の桜花の問いに少女はティーカップを傾け、残った紅茶を喉の奥へ。
「世の中、分からない事ばかりです。ひょっとしたらそういう場所があってもおかしくないかと思いまして、それに……」
 ソーサーにカップを置き妙子を言葉を続けた。
「召喚されたとはいえ、悪事に手を染めた者が転生でそれが無しになるのは虫が良すぎません?」
「そういうもの、なのでしょうか?」
 桜花の疑問は解けない。
 転生し、生まれ変わったとしたら、その過程で何かあるのだろうか?
 人として生きるために……。
「やっとひと段落した!」
 桜の精の思考を大きな声が打ち消した。
「流石に身体が熱くなってきた、冷たい紅茶はあるかな!」
 四軒屋・綴の台詞に妙子はちょっとだけ困ったような顔を浮かべる。
「水出し……時間かかりますわよ?」
「問題なしッ!!」
 委細構わずな面の皮の厚い男に苦笑しつつ少女は水出し紅茶の準備をした。
 その振る舞いを千雨は目に焼き付ける。

 ……私にできることは、見送ることだけ。

 桜の精でもなく、偽神細胞を埋め込まれた羽衣人には甘粕・妙子を癒し転生に導くことが出来ない。
 だから、その一挙一動を目に焼き付け祈るのだ。
 安らかに逝けるようにと。
 そのためなら微笑んで見送ろう。
 それが千雨に出来るただ一つの事だから。

「では……そろそろ行って参ります」
 茶会は終わり、全てを片付けたかつての悪魔が超弩級戦力達へと一礼する。
「うむ、往って来るが良いッ!」
 綴は相変わらず暑苦しく。
「…………」
 千雨は救いがあるようにと心から祈る。
「転生したら、またお会いしましょう、妙子さん」
 桜花が呼びかけると少女は「はい」と応え、背を向けた。
 ――鎮魂歌が聞こえる。
 桜の精の喉から奏でられるその歌は安らぎの詩か、旅立ちの歌か。
 どちらにしても甘粕・妙子にとっては充分すぎるものであろう。
 だからこそ少女は振り向かず、静かにドアを開けその場を去った。

 ドアが自然と閉じられれば、香るのは蘭の花。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御桜・八重
【鬼桜】

ひかるちゃんの言葉にうんうん頷く。
まー、人生色々ってことだよね!

「まずはお掃除、だね!」
襷で袖を結わえてホウキングを手にさっさかさっさか!
え、埃が立つからもっと丁寧に?

掃除してると色々なところに弾痕が残っていることに気づく。
そりゃ掃除で綺麗には出来るだろうけど、傷を消すのは難しいよね。
……どんな思い出があるのかな?
ねえ、甘粕さん。ここの弾痕なんだけど、何があったの?

一般的には過激な内容だろうけど、この二人の物語と思うと
バイオレンスコメデヰにしか見えないような。
ケラケラ笑いながら聞いてます。

甘粕さん手づからの紅茶をいただきながらお見送り。
転生してまた会えるといいね。
「いってらっしゃい!」


荒谷・ひかる
【鬼桜】

わたしの理解の範疇を超えていて、なんとも言い難いのですが……
何はともあれ、丸く収まったのでしたら何よりです。

八重ちゃんや【闇の精霊さん】と一緒にお掃除の手伝いを
マイクロブラックホールの中に瓦礫やゴミを吸い込んでもらいます
わたしは箒や雑巾を手に手伝いつつ、博士との思い出について聞いてみます
お屋敷の中でも銃撃を交えたコミュニケーションが日常茶飯事であったなら
弾痕それぞれにエピソードがあるでしょうしね
まあ、内容は結構あぐれっしぶ&ばいおれんすでしょうけれど
(笑顔を引き攣らせ軽く「うわぁ」「えぇー……」となりつつ聞く)

終わったらお茶を頂いてお見送りします
「お疲れ様でした。良い来世を」



●素晴らしきかな人生は

 時はいつごろか。
 ここは最初に超弩級戦力と甘粕・妙子が戦った部屋。
 所々に散乱するのは銃弾によって壊された残骸らしきものと空薬莢。
「わたしの理解の範疇を超えていて、なんとも言い難いのですが……」
 少なくとも、それ以上の騒動の痕跡を見つけた荒谷・ひかるは慎重に言葉を選ぼうとして。
「何はともあれ、丸く収まったのでしたら何よりです」
 結局は平易な言葉で終わってしまった。
 その隣で御桜・八重は腰に手を当て、うんうんと頷いている。
「まー、人生色々ってことだよね!」
「そうですよね!」
 ひかるも友人の言葉に納得し、目の前の惨状へと意識を向けた。
「まずはお掃除、だね!」
「ええ、そうです。八重ちゃん」
 それを察した八重が言葉にする。
 言葉は要らない仲だけれども、それでも口にすることで切欠は生まれるもの。
 二人の関係はそういうものだった。

 襷で袖を結わえ、箒を片手に八重が走る。
 埃が舞うが、そこは闇の精霊さんがブラックホールで吸い込んでしっかりとフォロー。
 仕事のできる精霊さんの姿に桜の巫女は舞い上がっている塵芥に気づいた。
「え、埃が立つからもっと丁寧に?」
「その辺りは……ワタクシも人の事は言えないので」
 その場にいた甘粕・妙子が苦笑した。
 彼女自身も掃除が得意というわけでは無い様だ。
「……おや?」
 ふと、八重が目にしたのは壁に穿たれた弾痕。
「ねえ、甘粕さん。ここの弾痕なんだけど、何があったの?」
「ええ、ああ……そちらですか?」
 少女が目を逸らす。
「昔、教授が新しい悪魔を召喚したので、つい機関銃で穴だらけした時の名残りですわ」
「激しいねー、もしかして嫉妬?」
 笑いながら桜の巫女が再び問うと、妙子は「さあ、どうでしょう」と話を逸らす。
「……」
 そんな二人の様子をうわぁとひきつった笑いを浮かべ、ひかるはただ見つめていた。

「じゃ、じゃあ……この柱の傷も、もしかして……?」
 若干戸惑いながら柱を指差す精霊の娘の言葉に少女は恥ずかしそうに両手で頬を隠した。
「それも……教授を追いかけまわした時に銃弾が掠った痕でございます」
「えぇー……」
 やっぱりひかるの笑顔はひきつったままで。
 そんな友達と少女の表情と裏腹なバイオレンスコメデヰにしか見えないような物語を聞いて八重は楽しそうに笑い、そして言うのだ。
「ねえ、もっと聞かせて」
 ……と。

 掃除が終わり、紅茶が運ばれる。
「茶葉はダージリンでよろしかったでしょうか?」
「はい!」
「それでお願いします」
 妙子の問いかけに八重とひかるがそれぞれの答えを返す。
「いやー、面白かったねー。まるで亜米利加のキネマみたいだった!」
 桜の巫女が先ほどの話を楽しそうに思い返すと少女はまた恥ずかしそう。
「結構……あぐれっしぶ&ばいおれんすだったんですね、お二人は」
「やめてくださいませ、ワタクシちょっと恥ずかしい」
 慎重に言葉を選んでいる精霊の娘。
 二人から改めて自分の話を聞かされると妙子は恥ずかしくなり、手で口元を隠す。
「自分で話しておいてなんですが、ワタクシ結構無茶をやらかしていたのですね……ああ、もう転生したい……」
「待って! 待って!?」
 八重が止める。
「お別れはちゃんと挨拶を済ませてから」
「そうですね……まだ、皆様にお別れを告げてませんでした」
 深く呼吸を整える甘粕・妙子。
「それに……まだ、紅茶残ってますよ」
 ひかるが笑みを浮かべて指さしたカップ。
 少女の手の中にはまだ琥珀色の液体がマスカットを思わせる香りを漂わせていた。

 そんな茶会もやがて終わる。

 空になったティーカップ。
 それが片付けられると妙子は改めて二人の少女に頭を下げる。
「皆様には大変お世話になりました」
 そこにはもう影朧だった時の澱みはない。
「紆余曲折はありましたが、悪くない転生……いや人生だったと思います。最後をこうして迎えられることが出来、ワタクシに大変感謝しております」
「そんな照れるなぁ……でも、転生したらまた会えるといいね」
 八重の言葉に妙子は「はい」と力強く答える。
「お疲れ様でした」
 続くひかるの言葉に妙子は深く頷いた。
「良い来世をお迎えください」
「はい、良い現世をお過ごしください」
 かつて悪魔だった少女はそう答え、再び一礼をすると二人に背を向け扉に手をかける。
「それでは……ごきげんよう」

 ドアが閉められた後には人も影朧の気配もなく。
 ただ、無人の館が残るだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●大門教授の残したもの

 洋館にはもう誰一人残っていない。
 あるのは館を守るように立っているハリボテのような鋼の甲冑のみ。

 闇の中、一人の少女が歩を進める。
 その先に何があるかは分からない。
 けれど、また転生を果たすだろう。
「そうでないと、悪魔ダイモンとしての仕事を果たしたとは言えませんからね」
「相変わらず、そういうところは生真面目だな君は」
 少女が自分を呼びかける声に振り向くと見覚えのある顔に表情が固まり、そして雪解けのように崩れていく。
「ああ……嘘では……ございませんか?」
 足元に煙草と燐寸が落ちる、手渡す予定の土産物だったのに。
「えっと何というかな……まあ、悪かった。約束破って」
 そういう事じゃない、そんなことどうでもいいとばかりに少女は首を振る。
 その様子に困ったように彼は頭を掻き、そして年かさを重ねた口元を動かす。
「改めて……只今帰ったよ」
 その言葉が聞けるだけで充分だった。
 全てが叶うような気がした。
 そうだ、約束なんてどうでもよかったんだ。
 ただ一緒にいて、最後にこう言いたかったのだ。
「お帰りなさいませ、お父様」

 ……。
 …………。
 もう館には誰も居ないし、何もない。
 当然だ。
 大門教授が残したものは皆、一人の少女が持って帰ったのだから。

最終結果:成功

完成日:2022年08月27日
宿敵 『『ヴァンダリスト』甘粕・妙子』 を撃破!


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#サクラミラージュ


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠バルタン・ノーヴェです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト