猟兵たちの夏休み~和菓子と清流で夏涼み?
●サムライエンパイア・とある藩
――清流沿いの街道に佇む、小さな茶屋にて。
多数の旅行客が行き交う街道沿いにある茶屋に現れたのは、領内を巡回し城へ戻る途中の藩主様ご一行。
突如現れた藩主に対し、茶屋の主人は涼をとれる席を案内した上で、冷茶と店自慢の和菓子を丁重に差し出しました。
「藩主様、当店自慢の団子とあんころ餅でございます」
ところが、主人に出された和菓子を見た藩主の顔が、一気に渋くなりました。
「……つまらぬ」
「どうされました?」
「ありきたりの菓子はつまらぬ! 今すぐ【変わった菓子】を用意してまいれ!」
「ひ、ひえええええええええ!?」
「用意するまで、儂はここから動かぬからな!!」
そんな無茶な! と悲鳴を上げる家老と侍たちをよそに、茶屋の店主は頭を抱えて蹲ってしまっています。
藩主一行に店内を占拠……もとい、店内でお休みいただいている今、他の旅行客を店に入れることはできません。
一刻も早く藩主を満足させてあげないと、茶屋としても商売あがったりですが、急ぎ代わりの菓子を調達するにも、時間がかかってしまいます。
(「だ、誰か、この事態を解決してくれる者はいないのか
……!?」)
茶屋の主人の、内心の悲鳴が届いた、その先は――。
●和菓子片手に茶屋で一服しませんか?
「あー……こういう藩主がいてもおかしくはないが……」
三々五々と集まる猟兵たちが目撃したのは、首を傾げているグリモア猟兵、藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)。
「それは横に置いといて、サムライエンパイアで侍たちが少し困っているようなのでな、ちょっと困りごとを解決してきてくれないか?」
どういうことだと興味深そうに寄って来た猟兵たちに、美雪は冷たいほうじ茶を振る舞いながら、事の次第を話し始めました。
事の起こりは、ある藩主が家老たちを従えて領内を巡回し、城に戻る途中に街道沿いの茶屋に立ち寄ったこと。
この茶屋、旅行客や近隣住民の間では団子とあんころ餅が有名なため、家老も藩主が気に入ると思って寄ってみたのですが……。
「ところが、藩主が気まぐれで【変わった菓子】を茶屋の主人に要求したらしく、主人や家老たちが困り果てているそうだ」
この場合の菓子とは、もちろん和菓子のこと。
急いで城下町に使いを出したとしても直ぐに【変わった菓子】が手に入るわけでもなく、家老たちが城主を説得しようにも「【変わった菓子】を出すまで動かん」の一点張りで、このままでは茶屋の営業妨害にもなりかねないとか。
「こういう時は我々猟兵の出番だ。家老たちに代わって、藩主のお眼鏡にかなうような【変わった和菓子】を持って行き、藩主に献上してあげてくれないか」
なるほど、と頷いた猟兵たちに、美雪は「頼んだぞ」と頭を下げました。
ちなみに、藩主の言う【変わった菓子】の定義は極めて広く、とにかく団子とあんころ餅以外なら何でもよいとか。極端な話、創作和菓子であっても問題ないそうです。
藩主に和菓子を献上したら、藩主はじっくり和菓子を味わった後、お供を従えて城へ戻っていくそうです。
「私からの依頼としてはそこで終了になるのだが、藩主たちを見送った後、茶屋の主人がお礼に美味しい冷茶と団子とあんころ餅を振る舞ってくれるそうだ」
藩主一行を見送った頃には、日はすっかり傾き、山に沈みかけている頃。
その頃には、川から吹き上げる風が茶屋の周囲の熱を騒動の熱気ごと冷まし、過ごしやすい気温にまで下がっているはずです。
「せっかくだから、茶屋からせせらぎでも眺めつつ、のんびり涼んできたらどうだ?」
成程、と頷く猟兵たちに、美雪はにこりと微笑みかけました。
涼し気な風に吹かれながら団子とあんころ餅に舌鼓を打つもよし。持参した和菓子が余っていたら皆で分け合うもよし。
街道を挟んで反対側を流れる清流と、その奥に広がる大自然を眺めながら味わう和菓子は、また格別な味がするはずですから。
「というわけで、是非ともあの困った藩主を納得させて、茶屋の危機(?)を救ってやってくれ」
ついでにゆっくり涼んで来てくれよな、と呟きながら。
美雪はグリモア・ムジカに閉じ込められている音符を展開し、転送ゲートを形成して、猟兵たちを茶屋へと導きました。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願いいたします。
サムライエンパイアのある藩主に、和菓子を献上して納得させてあげましょう!
困りごとを解決した後は、川のせせらぎを眺めながら和菓子を堪能してみませんか?
本シナリオは【おひとり様参加限定】とさせていただきます。
また、アドリブ多めとなるため、描写量にばらつきが生じるかもしれません。
上記2点をご了承の上、ご参加いただけると幸甚です。
●本シナリオでできること
本シナリオは、夏休みの「期間限定1章シナリオ」となります。
一応、プレイングボーナスは【水着を着る】となっておりますが、着用するか否かは任意です。
参加にあたり、猟兵の皆様には、藩主が所望する【変わった和菓子】を最低1種類持参いただくよう、お願い致します。
とはいえ、【変わった和菓子】の範疇は相当広いので、オープニング中に記載がないものなら何でもOKです。(商標には注意してください)
サムライエンパイアに現存しない和菓子であっても、藩主は「天下自在符を持つ者が持って来たものなら安全」という理由で食べてくれますが、くれぐれも信頼を裏切るような行為はなさらぬよう。
本シナリオでは、グリモア猟兵藤崎・美雪の同行が可能です。
同行を希望される場合は、その旨プレイングにてご用命いただければ、喜んで同行させていただきます。
ちなみに美雪が同行する場合は、2021年に仕立てた水着(立ち絵参照)を着用の上、「中のあんがイチゴ味とパイン味の水まんじゅう」を持参する予定です。
その他、飲酒喫煙は年齢問わず全面禁止。
また、著作権や商標に抵触する内容、公序良俗に著しく反する内容は採用できません。
●本シナリオ運営スケジュール
プレイングの受付はオープニング公開直後から。断章の追加はありません。
通常プレイングの受付締切は「先着2名様の参加を確認後、タグとMSページで告知した時点」となります。
オーバーロードはシステム的に締め切るまで受け付けますが、納品はゆっくりお待ちいただくことになるかと。(グリモアエフェクトの期限には間に合わせます)
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『茶屋にて一服いかがでしょう?』
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POW : お茶の味を楽しみながらまったりとする。
SPD : 和菓子の味に舌打ちながらまったりとする。
WIZ : 茶屋からの景色を眺めてまったりとする。
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鳴上・冬季
「水練用の白褌で闊歩し御領主と面通し、ですか。…歌舞いた方が話を聞いていただけるかも知れませんが」
嗤う
平らな四角い葛餅で緑の漉餡を巻いた水藻
吉野葛に小豆餡を練り込み焼いた葛焼
焼皮で味噌餡を包んだ鉾餅
四角い外郎の上に小豆を置いて葛で固めた水底
漉餡を焼いた羽二重餅で包み魚に見えるよう焼鏝をあてた若鮎
漆塗の盆に懐紙を敷き5品を並べ献上
「お気に召しましたら、御領主様にお願いがございます。この時期の餡ころ餅は土用餅と言い、夏の無病息災と厄除けを願う縁起物です。御領主様の健勝を願いこの店を選んだ家臣の方々の心も汲んでいただけませんか」
「私も甘味で棲みかを選んだので気持ちが分からなくはありませんがね」
嗤う
●茶屋に流れる和菓子の清流
――街道と並行して流れる清流から時折涼し気な風が吹き込む、小さな茶屋にて。
「ご領主様の願い、聞き遂げに上がりました」
鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、茶屋の前で困り果てていた家老に天下自在符を見せ、藩主に取り次ぎを願う。
本当は、水着姿で面通ししたほうが涼し気に見られるのかもしれないが、冬季が持っている水着は水練用の白褌のみ。
(「あの姿で闊歩し御領主と面通し、ですか」)
――目の前で歌舞いた方が、話を聞いていただけるかも知れませんが。
そんな考えを口端に浮かべた嗤いにしまい込みながら、冬季は帝都桜學府の制服のまま、家老に御目通りを願った。
「おお!! 有難きことで。さささこちらへ!!」
家老もまた、心底困り果てていたのだろう。
まさに渡りに船とばかりに、冬季を茶屋の一室へ案内した。
「お初にお目にかかります。ご領主様御所望の菓子をお持ち致しました」
「ほほぅ」
冬季は藩主に一礼すると、式神に命じて東屋風無限倉庫から持参した和菓子を取り出させた。
平らな四角い葛餅で緑の漉餡を巻いて、水中に揺らぐ藻を模した『水藻』。
吉野葛に小豆餡を練り込み、焼いたのは『葛焼』。
『鉾餅』の銘を持つ菓子は、焼皮で味噌餡を包んだもの。
四角い外郎の上に小豆を置き、葛で固めた『水底』は、近くの清流の川底を模したように透明。
最後は漉し餡を焼いた羽二重餅で包み、魚に見えるよう焼鏝を当てた『若鮎』。
いずれも見た目が涼しげな、夏ならではの和菓、五品。
冬季はそれを懐紙を敷いた漆塗の美しい盆に一工夫凝らしながら並べ、藩主に献上した。
「おおお」
その菓子の並びを一目見た藩主の表情が、一気に緩んだ。
「これはこれは、どれも涼し気ではないか」
まるで近くの清流を切り取って再現したようじゃ、と、藩主はすっかりご機嫌を直して、扇子片手に冬季を褒め称える。
その後、藩主が清流に見立てた菓子を一つずつ口にし、さらに喜んだのは言うまでもない。
「お気に召しましたら、ご領主様にお願いがございます」
「ほう、何とでも申せ」
和菓子の清流を目にしすっかりご機嫌になった藩主は、冬季の頼みに耳を傾ける。
「この時期のあんころ餅は『土用餅』と言い、夏の無病息災と厄除けを願う縁起物です」
「ほう」
「御領主様の健勝を願い、この店を選んだ家臣の方々の心も汲んでいただけませんか」
「む、むぅ……」
家臣を許せ、との諫言に、藩主もさすがに口ごもってしまうけど。
最後には冬季の意を汲み、頷いてくれた。
「相分かった。城に戻り次第、良きに計らおう」
「私も甘味で棲み処を選んだので、気持ちがわからなくはありませんがね」
七度転生を繰り返し、現在はサクラミラージュに住まう仙人は、ご機嫌を取り戻した藩主に同情するかのように、微かに口端を吊り上げる独特の笑みを浮かべていた。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人な複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
藤崎・美雪さん同行希望
茶屋も災難ですねー。
持参したのは、数日前に作って乾燥させてた『琥珀糖』ですねー。外と内の食感の差を楽しめますー。
食紅で琥珀色はもちろん、青や緑に色付けしてますー。見た目にも涼やかに。
そして、夕涼み。たくさん持参しましたので、余ってましてー。なので、分け合えれば、と。
ふふふー、こうして何種類か食べてみると、食感の違いも楽しめてよいですねー。
※
陰海月「ぷっきゅ!」
霹靂「クエ!」
わーい!お団子、あんころ餅おいしそー!水まんじゅうも食べてみたーい!な二匹。
お茶も合わせて、至福の時。
●涼し気な和菓子は清涼感すら伴って
――少しだけ、時は遡って。
「茶屋も災難ですねー」
街道沿いに建つ小さな茶屋と、中から漏れ出すほとほと困り果てた気配を察しながら、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は目を細めてのほほんと呟いていた。
『疾き者』を表出させた義透の傍らに付き添うのは、空中をふわふわ揺蕩う巨大水クラゲ『陰海月』と、金色混じりの焦げ茶の羽毛が美しいヒポグリフ『霹靂』。
「……あの、陰海月がゲーミングクラゲに見えるのだが」
義透に頼まれ同行したグリモア猟兵藤崎・美雪が、1680万色に輝く陰海月……の水着を見て、思わず目を点にしているけど。
「ぷっきゅ!」
嬉しそうに触手を握りしめる(?)陰海月の姿を見ると、美雪もまた、自然に口元が綻ぶような気がした。
ひとまず陰海月と霹靂を茶屋の外に待たせておき、家老に御目通りを願った上で、義透が藩主に献上したのは、琥珀糖。
色付けした寒天を固めて切り分け、涼しい場所で数日間乾燥させた琥珀の様なお菓子は、文字通りの琥珀色だけでなく、青や緑など涼し気な色に着色されたものもあった。
見た目にも涼やかで、かつ外と内の食感の差が楽しめる。この季節ならではの一品だ。
「美雪殿もどうぞー」
「ああ、藩主殿、私からも」
義透に促された美雪もまた、藩主に水まんじゅうを献上するのだけど、その肩は僅かに震えていた。
(「こうなるとわかっていたら、水着じゃなく普段着にすればよかった
……!」)
まさか水着を着用しているのが陰海月とは思っていなかった美雪は、着流し姿の義透にちらりと横目を向けつつ、必死に羞恥心を押し込めていた。
それはさておき、琥珀糖と水まんじゅうを受け取った藩主は、まずは琥珀糖をひとつ口の中に。
「うむ、この色合いに程よい甘さ、夜空の星を食しているようじゃ」
かりっとした外側と柔らかな内側の食感の違いもまた、格別じゃ、と褒め称えて。
続けて美雪の水まんじゅうを口にした藩主は、目を丸くして驚いた。
「これはまた、変わった甘さの水まんじゅうじゃな」
「イチゴとパイナップル味なんだ。私の世界にある和菓子だな」
「はて、いちご、と、ぱいなっぷる……とは?」
「あ」
サムライエンパイアにはイチゴもパイナップルもないため、藩主の反応は当然ではあったけど。
それでも、涼し気な甘味に満足したのか、藩主の表情は最初にお目にかかった時よりは幾分か和らいでいた。
――この後、藩主に対して小一時間イチゴとパイナップルの説明に費やしたのは、また別の話。
●静かな山間で楽しむ和菓子
機嫌を直した藩主一行を皆で見送った後、義透と美雪は茶屋の外にある席に案内される。
日はすっかり山間に沈み、周囲には少しずつ薄闇が下り始めていた。
程よく昼間の熱気を冷ましてくれる風に吹かれながら、義透と美雪は、茶屋の主人が礼にと用意した団子とあんころ餅、冷茶を挟むようにして座り、お互い持参した和菓子を並べていた。
「たくさん持参しましたので、余ってましてー」
「私も多めに持参したから、良ければ食べてくれ」
陰海月と霹靂もどうだ? と美雪が大人しく待っていた二匹に水を向けると。
「ぷっきゅ!」
わーい、お団子、あんころ餅美味しそー! と全身を光らせながら主張する陰海月は、小躍りしながら大喜び。
「クエ!!」
水まんじゅうも食べてみたいなー! と翼を静かに羽ばたかせる霹靂も、心なしか嬉しそう。
そんな二匹を微笑ましく見つめながら、義透と美雪は、それぞれ持参した菓子を口にして、口元をほころばせる。
「おや、これは面白い味ですー」
「琥珀糖も格別だな。この季節ならではだ」
待っていた陰海月と霹靂もまた、琥珀糖と水まんじゅうを口にして小躍り。
「ぷっきゅうううう!」
「クエエ~」
美味しそうに和菓子を味わう2匹を、義透は孫を見守る老人のようにさらに目を細め見つめながら。
「ふふふー、こうして何種類か食べてみると、食感の違いも楽しめてよいですねー」
「ああ、今回は良い経験をさせていただいたよ」
今回は有難う、と美雪は丁寧に義透に頭を下げていた。
その後、ふたりと2匹は、冷茶と一緒にお団子とあんころ餅をしっかり味わって。
闇の帳が完全に落ちるまで、至福のひと時を堪能したのでありました。
大成功
🔵🔵🔵
久留米・圓太郎
■SPD
■衣装(水着)はステシのとおり
……前に(この地じゃ無いにしても)バレンタインの和菓子でお世話になったしなぁ
ここは師匠の方が詳しそうだからなぁ。【UC発動】
呼び出された師匠には、そんなことで呼び出すな、な顔をしてくるだろうけど、ここは状況を説明せねばいけないな、うん!
師匠の返答
「持参する和菓子=わらび餅はどうだろうか?
これなら見た目も涼しそうだし、きな粉、抹茶、黒糖がけといったバリエーションが可能だぞ」
■首尾良く上手く献上できたら
レシピは師匠が知っているというから、オレは材料(わらび粉とかくず粉とか)を持っていって、頑張ってつくってお茶屋さんにも振る舞ってみるか!
※連携・アドリブ共歓迎
●わらび餅は買うべきか、作るべきか
――少しだけ、時は遡って。
茶屋から少し離れた街道沿いで、紫のサーフパンツ姿の久留米・圓太郎(自称魔法使いの一番弟子・f00447)は頭を抱えておりました。
今回の依頼では、洋菓子ではなく和菓子を献上せねばならないのですが、圓太郎には何を献上すれば良いのか、今一つピンと来ていなかったのです。
「ここは師匠の方が詳しそうだからなぁ……Please help me!!」
この地ではないにせよ、以前バレンタインの和菓子で世話になったしなぁ……とぼやきながら、圓太郎は師匠の助言を頂くべく師匠召喚。
ちなみにその時、師匠と今川焼きの呼び名論争をしたのは、皆には内緒。
それはさておき、麦わら帽子と紫のビキニでバッチリ決めた状態で呼び出された師匠を見て、圓太郎は思わず口を半開きに。
(「……あの、準備良すぎですね師匠!」)
と、思わず突っ込みたくなるのをぐっとこらえながら、圓太郎はきり、と表情を戻して師匠に頭を下げました。
「師匠、この地のお偉方に献上するために適した和菓子を教えてください!」
『圓太郎、そんなことで呼び出すな!!』
顔で訴えるどころかストレートに口に出して呆れる師匠に、かくかくしかじかと圓太郎が状況を説明すると、師匠はため息ひとつつきながら。
「そういうことなら、わらび餅はどうだ?」
「何故ですか?」
「これなら見た目も涼しそうだし、黄な粉、抹茶、黒糖がけといったバリエーションが可能だぞ」
「なるほど、ありがとうございます師匠!」
ポン、と手を叩いて納得したのもつかの間。圓太郎の脳裏に疑問がひとつ。
「ところで、どうやって調達すればいいのでしょう?」
『急いでそこの城下町に向かえば良いではないか』
平然と遠目に見える白亜の城を指差す師匠に、目を点にする圓太郎。
そんな弟子を見つめる師匠の目は『お主の身体能力なら十分いけるじゃろ?』と語りかけていました。
ちなみにこの後、圓太郎はキマイラの翼と脚力をフル活用し、城下町の和菓子屋に急行してわらび餅を購入し、藩主に献上したとか。
首尾よくわらび餅を献上した後、藩主一行を見送った圓太郎は。
「じゃあ、頑張ってつくってみるか!」
茶屋の台所を借りて、わらび餅づくりに挑戦! と張り切り始めていました。
「師匠、レシピはご存じですよね!」
『いや、作るなら止めぬが……』
なぜ今から……と呆れ半分のため息をつきながら、師匠は圓太郎にレシピを伝授。
伝授されたレシピ通り、圓太郎は持ち込んだわらび餅粉を水に溶かし、上白糖を加えてよく混ぜてから火にかけ、しっかりと練り上げ始めます。
ところが、この練り上げの作業がなかなか大変で、特に完全に火が通ってからは、かき混ぜるへらが一気に重くなって一苦労!
それでも、苦労してしっかり練り上がったわらび餅を、流し箱に流し入れて冷たい清流で一気に冷やすと、ほんのり茶色がかった透明なわらび餅へと大変身!
固まったわらび餅を流し箱から取り出し切り分け、黄な粉や黒糖をまぶして皿に盛ると、涼し気な見た目とぷるんとした食感がありありと伝わってきて、美味しそう。
「ご主人、良かったら食べてくれないか!」
圓太郎が完成したわらび餅を茶屋の主人に差し出すと、主人は一切れ手に取り口の中へ。
しばし味と食感を堪能するかのように咀嚼した後、主人の顔がぱっと笑顔に染まりました。
「おおう、うまいじゃないか。頑張って作ったな!」
「ありがとうございます!」
その後、残りのわらび餅は、師匠も交えて3人でしっかり食べきりましたとさ。
……ところで、圓太郎さん。
「ん?」
これ、茶屋の台所でわらび餅を作ってから藩主に献上しても良かったのでは?
「はっ!?」
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
えー?もったいな
団子とあんころ餅も絶対美味いのに
(肩で羽繕いしてる相棒の鸚鵡ユキエに【動物と話す】
『ユキエ、あんこ食べさせて貰ってないから知らな~い』と人語で返事
羽根の手入れに夢中で返事おざなり~…
ま、いいけど
そいやオレ特に水着って持ってねーや
旅着の中でもちょっと小綺麗にした物を着ていく
そいじゃ焼き菓子と寒天のお菓子、持ってこかな
殿様に直接会うのは、ん、まァ身分的にアレなんでご家来衆に渡すね
これは玉子せんべい
粉にはちみつと鶏の卵を練って焼いたやつねー
かすていら、とは違ってあんなふわふわしてないぶん日持ちするぜ
あとこれは寒天寄せが2種類な
みかんの砂糖漬けと青梅の砂糖漬けで見た目に涼しーだろ?
っと、ご無礼を
あは
オレは自在符持ちだけど普段はしがない飴行商
殿様に拝謁は出来ませんでね
ご家来衆からお渡し願いますよ
茶屋の振る舞いは有難く頂くよ
郷だと団子はともかく餡子って結構イイもんだし
ん…(甘くて美味しい)師匠やねーちゃんにも食べさせたいや
ユキエには獲れたての菜っ葉とか少し貰えれば嬉しーねェ
アドリブ可
●茶屋は郷への郷愁を呼び覚まし
――少しだけ、時は遡る。
「えー、もったいな。団子とあんころ餅も絶対美味いのに」
旅着の中でもちょっと小綺麗にしたものを身に着け、飴商人に身をやつした鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、茶屋に向かいながらも半ば呆れを隠せない。
どれだけ隠せないかというと、歩きながら肩で羽繕いしている相棒たる鸚鵡の『ユキエ』に同意を求めるほど。
もっとも、ユキエはユキエで羽根の手入れに夢中だから、流暢な人語を話しながらも、その声音はどこかおざなり。
『ユキエ、あんこ食べさせて貰ってないから知らな~い』
これにはトーゴも思わず苦笑いを隠せないけど。
「……ま、いいけど」
まあいつものことか、と半ば諦めつつ、トーゴは目的の茶屋を見つけ、足を速めた。
トーゴが茶屋の入り口から中を伺うと、藩主と家老たちは程よく寛いでいる。
先の猟兵たちが献上した和菓子のおかげで、藩主のご機嫌はかなりよくなってはいるものの、出立するまでにはまだ時間がありそう。
(「殿様に直接会うのは、ん、まァ身分的にアレだけど」)
トーゴは直接藩主に献上せず、ご家来衆に渡すことにして、茶屋の主人を通し家老に御目通し願う。
「そこの飴商人……いや、天下自在符を持つ者、いかがした?」
トーゴの元にやってきた家老の目に留まったのは、懐からちらりと覗く天下自在符。
意図的に仕込んだわけではないけれど、それなら話は早い、とばかりにトーゴは小さな風呂敷包みを家老に手渡した。
「これ、殿様に渡してもらえるかな?」
「念のため、中身を改めさせていただくぞ」
頷きながら家老が包みを解くと、目に入ったのは焼き菓子と寒天のお菓子。
焼き菓子は、粉にはちみつと鶏の卵を練って焼いた、玉子せんべい。
「かすていら、とは違って、あんなふわふわしてない分日持ちするぜ」
「かすていら、とは?」
「……あ、そっか。失礼失礼」
首を傾げた家老に、トーゴはかすていらについて説明。
そもそも、日ノ本の国の外が存在しないサムライエンパイアにおいて南蛮渡来の品が存在する場合、『南蛮由来のオブリビオンが持ち込んだ』可能性が高く、必然的に稀少品になりがち。
もしかしたら、菓子好きの南蛮渡来のオブリビオンが日ノ本のどこかでかすていらを広めている可能性もあるけれど、少なくともこの家老たちは存じないようで。
ちなみにかすていらの説明を受けた家老の感想は「是非とも食べてみたいのぅ」だったとか。
閑話休題。
「あと、これは寒天寄せが2種類」
透明な寒天の中に閉じ込めてあるのは、みかんの砂糖漬けと青梅の砂糖漬け。
それはまさに、透明な水晶に橙や緑の宝石を封じ込めたように、美しく輝いていて。
もちろん、家老にとっては初めて目にする菓子らしく、目を輝かせて魅入っていました。
「見た目に涼しーだろ?……っと、ご無礼を」
「天下自在符をお持ちの貴殿であれば、多少の非礼は気にせぬよ」
何なら今からでも藩主に計らうが、との家老の気づかいを、トーゴは首を振る。
「オレは自在符持ちだけど、普段はしがない飴行商。殿様に拝謁は出来ませんでね」
忍びの素性を隠すための仮の身分を名乗りながら、やんわりと断るトーゴに、家老もそれ以上は強く言わず。
「だから、ご家来衆からお渡し願いますよ」
「相分かった。確かにお渡ししておこう」
ちなみにトーゴが献上したお菓子は、藩主の口によくあったのか、大好評だったようです。
その後、茶屋を立つ藩主一行を遠目に見送ったトーゴは、冷茶を片手に茶屋の主人から振る舞われた団子とあんころ餅を頬張りながらニコニコ。
ユキエも茶屋の主人から採れたての菜っ葉を分けてもらい、ご機嫌です。
「郷だと団子はともかく餡子って結構イイもんだし」
貴重品たる砂糖を存分に用いた餡子は、一口含めば砂糖の甘さが口いっぱいに広がって。
団子もまた、米の甘みとタレの素朴な組み合わせがまた格別。
(「やっぱ、甘くて美味しいや」)
「師匠やねーちゃんにも食べさせたいや」
思わずぽろり、と口から漏れ出る想いは、トーゴ以外のヒトの耳には入らない。
だが、肩に止まるユキエの耳には入るもので、菜っ葉をついばみつつトーゴに軽くひとこと。
『持って帰ればいいじゃない?』
もっとも、意識は菜っ葉に向かっているからか、その返事もおざなりに聞こえるけど、同時にユキエなりの心遣いも垣間見えて。
「……今回はいいや」
いずれまた、忍びの里に戻る機会があれば買いに来ようか、と考えながら。
トーゴは夜闇の帳が少しずつ下り始めた清流を、静かに眺めていた。
大成功
🔵🔵🔵