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夏空シトロン

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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●夏空の下
 高く青い空が広がる中――視界に広がる緑と黄色は鮮やかで。夏の陽射しを浴びてキラキラと輝く宝石のよう。
 熱を帯びた風が吹けば、鼻を擽るのは夏の薫りに混じる爽やかな香。
 甘酸っぱく、爽やかで、どこか愛らしいその果実の先には。漂う海の生き物がいた。

●シトロンの薫り
「皆さん、アックス&ウィザーズでのお仕事をお願い出来ますか?」
 猟兵達へ向け、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は唇を開いた。楽しそうな笑顔で述べるその姿から、危機感は感じられない。
 それもその筈、未だ事件は起きていないのだ。けれど、アックス&ウィザーズは元々モンスターの住まう世界。モンスター退治の依頼は日々酒場に持ち込まれているけれど、その中にオブリビオンが混じっていてもおかしくは無い。
 そして、今回は未来に何かあるかもしれない、オブリビオン退治のお話だ。

「皆さんに向かって頂きたいのは、海の近くにあるレモン畑です」
 遠い遠い青い空はどこまでも続き、視界の奥には青く夏の陽射しにキラキラと輝く海が見えるだろう。夏風が運ぶ潮の香りに混じり、鼻をくすぐるのは爽やかな果実。
「本来レモンの旬は冬頃なんですけど、やっぱり食べたいのは夏じゃないですか。それで、この辺りは夏に美味しいレモンを作っているみたいなんです!」
 丁度夏に美味しくなるような品種を開発しており、この辺りは夏と云えばレモンと云う認識が強いようだ。
 青い空の下、夏になり濃く染まる緑の葉がどこまでも続き、その葉の中に生るのは鮮やかで爽やかな黄色の果実。その広大な世界と色合いは、夏らしさを閉じ込めた一枚。
 そのレモン専門の喫茶店があるので、まずは楽しんできたらどうかとラナは語る。
 鮮やかなレモン畑の中に建つ建物は木造りの広々としたカフェ。メニューはレモンチョコをコーティングしたレモンケーキやレモンピールを混ぜ込んだスコーン、そして爽やかなレモンの香りを強く感じられるレモネード。水と炭酸水から選ぶことが出来て、シロップと共に提供されるのでお好みで濃さを調整出来るのがポイントだとか。
 特にお勧めなのはタルトだ。レモンゼリーをタルト生地に流し込んでおり、切り分けられた1ピースが運ばれてくれば、透き通るゼリーの中に咲く輪切りレモンの花が美しい。蜂蜜漬けのレモンなので、酸味と共に優しい甘味も口の中に広がるだろう。
「どれもこの辺りで栽培されているレモンを使っているので、新鮮で美味しいですよ!」
 夏の暑さの中で食べる爽やかな味わいは、本来の旬である冬に食べるのとは違った味わい。――きっとその瞬間は、夏の暑さも忘れてしまうだろう。

 お腹が満たされ満喫した後には、レモン畑の中へと足を踏み入れることになる。
 青々と茂る木々に実る鮮やかな黄色は美しいが、その中に現れるのがオブリビオンだ。
「皆さんに倒して来て頂きたいのは、タツノオトシゴのような姿をした子です。本来海の生き物ですけど、この子は宙を浮かんでどこにでも現れるみたいですね」
 大きさは大体30センチくらいで、キラキラと輝いている為すぐに分かるだろう。更に人懐っこい性格のようで、むしろ向こうから気配を感じ次第猟兵の元へとやって来るので探すのに苦労はしない筈だ。
 基本は温厚で攻撃は仕掛けてこない生き物。――なので放っておいても良さそうだが。
「この子達の性質に問題があって……その、人の生気を吸い取ってしまうみたいで」
 腕に巻き付き遊んで欲しいとじゃれてくる程に無邪気なのだが、同時に人の生気をみるみる吸い取り最後には死に至ってしまうのだと云う。猟兵ならばそれでもさほど問題は無いだろうけれど、一般人に被害が出るのは恐らく近いうちに。
 だから、可愛いけれどしっかりと退治をお願いしますと。ラナは苺色の瞳をほんの少し寂しげに伏せながら紡いだ。

「あ、カフェではお土産にサブレ・シトロンを購入出来るみたいです」
 サブレ・シトロンとは。サブレ生地にレモン果汁を混ぜ込んだ砂糖掛けを施したもの。このお店のものはレモンの形をしており、爽やかながらもさくさくとした口当たりが食べやすいお菓子だ。
 大切な人へのお土産に。今日の日の思い出を家でも楽しむ為に。はたまた道中小腹が空いた時に――その用途は人によるだろうけれど。手に取るのも良いのでは、とラナは無邪気に微笑みながら。その手にグリモアを輝かせた。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『アックス&ウィザーズ』でのお話をお届け致します。

●シナリオの流れ
 ・1章 冒険(海へ続くレモン畑)
 ・2章 集団戦(空飛ぶオトシゴ)

●1章について
 レモン畑の中の喫茶店でのひと時です。
 レモンゼリーのタルト、レモンケーキ、レモンのスコーン。新鮮なレモンを使った品々がメインです。
 飲み物は紅茶やコーヒーの他、香りが爽やかなレモネードも。こちらは水割と炭酸割でお好みで選択出来ます。
 陽射しは夏模様。大きめの窓から夏の風がそよぐ、ほんのり夏の熱を感じる空間です。
 テラス席もあります。陽射しと緑の中でのお茶を楽しみたいのならこちらへ。

●2章について
 レモン畑の中で漂うオトシゴ。
 基本的には人懐っこく、猟兵が近付けば向こうから姿を現します。
 木や人の腕等、何かに長い尾を巻きつかせる習性があります。雑食ですが好物は花や果物。
 人の生気を奪う性質がありますが、猟兵ならさほど気にすることではありません。

●その他
 ・全体的にお遊びです。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『海へ続くレモン畑』

POW   :    起伏の道もなんのその。

SPD   :    速さを生かして駆け抜ける!

WIZ   :    品種や環境を気にしつつ進む。

イラスト:いわた湯水

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●シトロン・デイ
 どこまでも続く、青い青い空。
 注ぐ陽射しはすっかり夏色。そよぐ風は夏らしい熱気を孕みつつも、此の世界がアックス&ウィザーズだからか、そこには不思議なことに不快さは感じられない。湿気の少ない風は日陰に入れば、むしろ肌の熱を優しく撫で逃がしてくれるように心地良い。
 風に揺れる葉の音と、鮮やかな果実に導かれるまま。心地良いレモン林に包まれた此処へと腰を落ち着ければ、夏の心地良さに包まれるから不思議なもの。
 風通しの良い店内は、しっかりと夏の気配を感じられて。今鼻をくすぐった、甘酸っぱい香りは風が外から運んできたのか、それとも手元の鮮やかな黄色が芳しいからか。
 それが分からない程に、此の世界は鮮やかなシトロンに満ちている。
 喉を潤して。甘酸っぱい果実の菓子にフォークを落として。今日の日を楽しもう。

 遠く遠く、聴こえるのは海の波音。
 鳥の声と、そよぐ風の音色が重なる中。
 夏ならではの甘酸っぱいひと時を。
鳥栖・エンデ
友人のイチカ君(f14515)と
レモン専門な喫茶店って珍しい気もするねぇ
柑橘系のスッキリさで夏の暑さを乗りきろ〜

先ずは気になってたレモネードを頼んで
ボクは炭酸割りにしようかなぁ…
イチカ君は如何する?お揃いだねぇ
両方飲み比べてみるのも楽しそうかも
スイーツは香りも良さそうな
レモンケーキとスコーンが食べたいな
お土産のサブレも如何しようかと迷いつつの

テラス席だと、海の波音もよく聴こえそうだよね
すっかり夏だなぁ…と景色を眺めなら
涼しくなりそうな夏の遊びでも
ふたりでまた相談でもしようか、なんてね
早速海に行く予定が決まったみたい〜


椚・一叶
友のトリス(f27131)と
暑い日はさっぱりすっきりした物が良い
レモンのびたみん、色々効果あると聞いた

儂もレモネードは炭酸で頂こう
おかわり必要になったら水割りにし
トリスの言う飲み比べ、やってみたい
おすすめのタルトとケーキも選ぶ
レモンをそのまま食べるの、流石の儂でも難しいが
甘めに料理されると最強な気がする
蜂蜜と一緒は無敵
輪切りレモンの花には感動し、トリスにも見せる
レモンは皮まで美味しい
スコーンの中のレモンピール、どうだ?

テラス席は気持ち良くて、レモンは美味くて
これはとても元気になれそう
夏の相談良いな
取り敢えず儂は、後で海に行きたい
音が聞こえてうずうずしてる
また腹が減った時用にサブレを買っておこう




 緑濃い世界の中、通された陽射しの眩いテラス席へと腰掛ければ、夏風が吹き肌を撫でる。外を歩けば汗ばむ位の気温だが、湿気が少ないからか風が吹けば随分と過ごし易く甘味を楽しむのに問題は無い。
「暑い日はさっぱりすっきりした物が良い。レモンのびたみん、色々効果あると聞いた」
 レモン畑内に用意された為か、極僅かな品が並ぶだけの薄いメニューを手にし。椚・一叶(未熟者・f14515)はオレンジ色の瞳で並ぶ文字を辿りながらそう紡ぐ。
 彼の言葉に鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)は顔を上げると、笑みを浮かべ。
「柑橘系のスッキリさで夏の暑さを乗りきろ~」
 何時も通りののんびりとした口調で、ぴくりと耳を動かしそう紡ぐ。並ぶメニューはどれもこれも美味しそうで、つい悩んでしまう程だけど。
「ボクは炭酸割りにしようかなぁ……。イチカ君は如何する?」
「儂もレモネードは炭酸で頂こう」
 紅茶も珈琲もお菓子の魅力を高めてくれるだろうけれど、やはり此処ならではの品が味わいたい。新鮮な果汁をたっぷり詰め込んだ飲み物を二人が注文をすれば、エンデはお揃いだねぇと嬉しそうに琥珀色の瞳を細めた。
 暫し待てば席へと運ばれてくるのは鮮やかな黄色の品々。その中から二人がまず口へ運ぶのは、しゅわしゅわと小さな炭酸が上がるレモネード。少し濁った黄色が果実を絞ったものだとよく分かり、口に含めば爽やかながらも蜂蜜の程よい甘味が口に広がった。
「両方飲み比べてみるのも楽しそうかも」
 強い酸味を包み込むような優しい甘さと、暑さを吹き飛ばす爽やかさに二人が顔を見合わせ笑みを零せば、ふとエンデは思いついたことを言葉にする。爽やかさならばやはり炭酸が一番だろうけれど、水で割ったものもまた違った味わいが楽しめそうで。
「飲み比べ、やってみたい」
 彼の言葉にこくりと一叶は頷き――そのまま手元のレモンの花咲くタルトを手元へ寄せた。ゼリーの中に咲くレモンの輪切りは鮮やかな花のように美しく、ついトリスへも見て欲しいとお皿を向けてしまう程。
「レモンをそのまま食べるの、流石の儂でも難しいが。甘めに料理されると最強な気がする。蜂蜜と一緒は無敵」
 フォークを落とせばゼリーの柔らかさと固いタルト生地の感触。対照的な感覚を楽しみながらぱくりと食べれば――小麦の香りと共に広がるレモンの味わい。ゼリー故か舌の上でとろけるように広がり、レモンの輪切りがより強い香りを添えてくれている。
「レモンは皮まで美味しい」
 物によっては渋みを感じてしまうのが皮だけれど、品が良いのか蜂蜜にしっかりと浸かっているからか。雑味は無くただ爽やかに鼻を抜けていく香りに心地良さそうに一叶は笑うと――目の前のエンデもレモンケーキとスコーンを味わい嬉しそうに笑っている。
 レモンチョコは爽やかさと甘味のバランスが程よく、スコーンのレモンピールは少し苦みを感じる大人の味わい。レモンピールが気になるのか、一叶が問い掛ければエンデは美味しいよと笑顔で言葉を零す。
 喉を潤す冷たい飲み物が沁み。広がる爽やかな香りが心地良い。
 これは――。
「すっかり夏だなぁ……」
 どこかしみじみと、琥珀色の瞳を細めエンデはそう紡ぐ。
 遠くから響く波の音は心地良く耳を撫で、注ぐ陽射しと吹く風を直接感じられる此の席は季節を強く感じられる。季節の巡る早さを実感しながら、彼はそのままひとつ問う。
「涼しくなりそうな夏の遊びでも、ふたりでまた相談でもしようか、なんてね」
 冗談交じりの言葉は、目の前の一叶へのお誘い。まだ夏は始まったばかりの今ならば、紡いだことは全て叶えることだって可能な筈。
「夏の相談良いな。取り敢えず儂は、後で海に行きたい」
 実は、ずっと音が聞こえてうずうずしていたのだと笑みと共に彼は白状する。彼の言葉にエンデは頷くと。早速決まった予定に穏やかに瞳を細めた。
 ――ああそうだ、お腹が空いた時用にサブレも買っておこうと。彼等は笑みを零し合いながらこの後の予定を紡ぎ合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネェル・ユピカ
合言葉【旅人コンビ】ルフェ・スカルリリー(f37378)と参加するね。

テラス席へ案内されてはしゃぐルフェを微笑ましく思っていたら聞こえてくる「初めて」の言葉にほんのり不穏なものを感じるよ。そう言えばこの子、初めて会った時生焼けのお肉食べてたなぁ

うん、キミはいろんなものをたくさんお食べ。ほら、ケーキもタルトも注文してあげるから。良いもの食べて……

自分の分のレモンケーキは確保しつつ全種制覇する勢いで一個ずつ注文して二人でシェアするよ。店員さんにお願いして席を用意してもらった相棒(からくり人形)も、じっとルフェを見つめているような気がする。やっぱりこの子、放っておけないよね、相棒?


ルフェ・スカルリリー
合言葉:【旅人コンビ】
ネェルさん(f25697)と参加します。

依頼のついでに素敵な喫茶店に寄れて、何だかお得な気分です。
ふふふ、レモンの木、初めて見ました!あと、海も初めて見ました!
なんだかそわそわしますね!どんなメニューがあるんでしょうか?
あ、ネェルさん(f25697)、ケーキとかタルトがありますよ!久しぶりに見ました!
ネェルさんは何にします?私はせっかくなのでタルトにします。

と、はしゃぎなぎながら過ごしているとネェルさんがたくさん注文し始めて私にどんどん勧めてきます。
私は栄養を摂らなくても大丈夫な体なのですが……まぁ、喫茶店に来たのも初めてですし、せっかくならいただきましょう!




「ふふふ、レモンの木、初めて見ました! あと、海も初めて見ました!」
 注ぐ陽射しが心地良いテラス席へと腰を下ろせば、ルフェ・スカルリリー(白い旅人・f37378)は金瞳を楽しそうにキラキラと輝かせながら、どこか興奮気味に言葉を紡ぐ。
 紡ぐ言葉の軽やかさに合わせて白い頬はほんのり赤く染まり、彼の感情を露わにする。そんな彼の口から零れた『初めて』の言葉に、ネェル・ユピカ(何処までも旅人なエルフ・f25697)は微笑ましさと共にほんのりと不穏なものを感じた。
(「そう言えばこの子、初めて会った時生焼けのお肉食べてたなぁ」)
 あの日のことを思い出し、つい琥珀色の瞳を細めてしまう。そんな彼の心の声には気付かずに、ただルフェは無邪気に品数の少ないメニューを眺める。
「あ、ネェルさん、ケーキとかタルトがありますよ! 久しぶりに見ました! ネェルさんは何にします? 私はせっかくなのでタルトにします」
 どれにしようかと一瞬迷ったように指を動かしたけれど、彼が指差したのは透き通るゼリーの中にレモンの花咲く美しいタルト。無邪気な笑顔と、真っ直ぐにネェルを見るその眼差しを見返しながら、どこか遠い目のままネェルは。
「うん、キミはいろんなものをたくさんお食べ。ほら、ケーキもタルトも注文してあげるから。良いもの食べて……」
 そう言葉を紡ぐと、注文を取りに来た店員へと全ての品を注文する。彼のその行動にルフェは少し驚いたように大きな瞳を瞬いた。
「私は栄養を摂らなくても大丈夫な体なのですが……」
 わざわざ摂取せずとも必要は無い。けれど――さわりと吹く夏風が優しく肌を撫で、注ぐ夏色の陽射しと遠く聴こえる海の音。夏の一幕へと身を寄せたことへの興奮と、初めて訪れた喫茶店と云う事実にすっかりルフェも楽しくなっていて。折角なら頂こうと胸を躍らせながら微笑んだ。
 今は大切な依頼の最中だけれど――。
(「依頼のついでに素敵な喫茶店に寄れて、何だかお得な気分です」)
 ルフェの胸に満ちる温かさは、きっと初めてなことに沢山触れた喜びから。そんな彼を見守るようにネェルが微笑めば、ふと彼は隣の席に座る相棒――少年の姿をしたからくり人形へと視線を移す。
 彼は物言わぬ人形だけれど、その瞳はじっとルフェを見ているように感じて。
「やっぱりこの子、放っておけないよね、相棒?」
 そっと傍らの彼へと問い掛ければ、その人形からは勿論返答など返ってはこないけれど。それでもネェルは満足気に頷き微笑んだ。
 ――それは、いつもの光景なので誰も気にはしない。過ぎ去った過去をなぞるかのように、ネェルは何時ものように返事のない問い掛けをして遊んでいるのだ。
 笑みを零し、彼がそのまま手元に寄せたのは、白いレモンチョコをコーティングしたレモンケーキ。しっとりとした生地の食感に練り込まれたレモンの風味は爽やかで、同時にチョコの甘さが口に広がれば絶妙なバランス。美味しい、と自然と口許を綻ばせれば目の前のルフェも初めて味わうゼリーのタルトに興奮気味。
 そのまま二人は、数々のレモンの甘味を味わう。
 ひとつを二人で分け合うのは、味のシェアだけでなく幸せをも分け合うかのよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星崎・千鳥
【空鳥】
ここはレモン染め炭酸レモネード
お菓子はどれか一つなんて選べない
双良をじーっと見、しぇあーしぇあー(電波送る

窓際の席で向かいあいつつく

いいよね、こーゆーの
この後も戦い?もあるし

みんな能力者になったけど
やっぱボクはどこか村人側でさ
双良も学校のせんせーになってそうそう遊べなくなって
ボクも予知から遠ざかってたし

実はちょっとつまんなかった
禁断の本音をレモネードで流し込んで笑う

ボクは「わーありがとうございました」って村人側から
危ないコトもあるけど双良と戦いにいける今がすっごいたのしーし幸せ

ん、我慢しないよ
また隣で遊んだり戦ったりできるよーになったんだから
双良も我慢はなーしー
さぁどれが一番食べたい?


蓮見・双良
【空鳥】
折角だし僕も炭酸レモネード
ちぃの視線にはすぐに気づいて苦笑を返し
じゃあ、タルトとケーキとスコーンは1つずつね

そうだね
こうしてのんびりするの、久々かも
…って、やけに闘いに積極的だね

相槌を打ちながら聞き
本音には静かに驚き、瞠って、己への呵責が染む

…僕に対して我慢する事なんてないのに
言って良いんだよ
寧ろ言って欲しい

視線が合えば、声を聞けば
明確な言葉がなくともわかるけど
学生から大人になった今
交流がなければそれも叶わぬ事に今更ながら気づく

じゃあ、また一緒にどこか行こうか
依頼でも遊びでも
…キミが幸せなら、多少の気苦労も、まぁ…甘んじて享受するよ

んー…全部半分こにしない?
それなら2人とも幸せでしょ?




 折角だしレモン染め炭酸レモネード。
 それは簡単に決まったのだけれど、並ぶ甘味に星崎・千鳥(元電波系運命予報士・f35514)は迷うように赤い瞳をうろうろ。――そのまま瞳は、目の前に座る青年へと向けられる。
 その無言の念に、蓮見・双良(夏暁・f35515)は直ぐに気付くとくすりと苦笑を零し。
「じゃあ、タルトとケーキとスコーンは1つずつね」
 ぴっとメニューへ人差し指を当てながら穏やかにそう語る。語らずとも見た目以上の付き合いの年月だけ、しっかりと互いの意志は分かるのだ。
 窓から吹き込む夏風が肌を撫で、二人の髪を揺れ動かす。運ばれてくる柑橘の薫りに包まれながら、その熱へと身を任せていれば。すぐに運ばれてくる黄色の品々。
 何でも無いような風景。けれど――。
「いいよね、こーゆーの。この後も戦い? もあるし」
 くるりとレモネードをかき混ぜながら、千鳥は言葉を零した。彼のその言葉に双良は顔を上げ、青い瞳を向け笑みを零す。確かにこうしてのんびりするのは久々だから、改めてこのような時間を過ごせることに喜びを感じる。
「やけに闘いに積極的だね」
 同時に見えた意外な面には、素直に驚き言葉にしていた。その言葉に、彼の眼差しに。千鳥は何時もの細い赤色の瞳で淡々と唇を開く。
「みんな能力者になったけど。やっぱボクはどこか村人側でさ」
 双良は学校の先生になり多忙故なかなか遊べなくなり。千鳥も予知からは随分と遠ざかっていた。それが大人になることだとしても、それでも。
 ――実はちょっとつまんなかった。
 くるり、かき混ぜ続けていた手を止めると、そのまま彼はぐいっとレモネードを飲む。それは小さく零した禁断の本音を流し込むかのように。
 そのままグラスを口から離した千鳥は――先程までとは違い、笑みが零れている。
「ボクは「わーありがとうございました」って村人側から、危ないコトもあるけど双良と戦いにいける今がすっごいたのしーし幸せ」
 かつての千鳥は、闘いには赴かずただ送り出すだけだった。今と同じように予知する力を持っていたが、戦闘など出来なかったのだ。だが時が進み、時代が変わり、己の力が変わり、こうして友と共に歩める。
 彼のその表情に仕草に、言葉に。双良は相槌を打ちながらも零れた本音に静かながらも驚きを隠せずに瞠ると同時に、己への呵責が胸に染みた。
 ぎゅっと胸元を握り締めて、真っ直ぐに彼を見ると双良は眉を寄せながら紡ぐ。
「……僕に対して我慢する事なんてないのに」
 言って良い。否、寧ろ言って欲しい。それだけの付き合いがあるのだから。
 けれど学生から大人になった今、交流が無ければそれも叶わぬことに今更ながら双良は気付き息を呑んだ。
 その様子に気付いたのかいないのか。双良の言葉に、青い瞳に。千鳥はこくりと頷きながら、再び笑みを零す。
「ん、我慢しないよ。また隣で遊んだり戦ったりできるよーになったんだから」
 紡ぐ千鳥の表情は本当に嬉しそうで。彼のそんな姿を見れば、双良も自然と綻ぶような笑顔を浮かべてしまう。先程までの表情とは違う双良の姿に、千鳥はじっと瞳を見つめながらひとつ忠告を零す。
「双良も我慢はなーしー」
 目の前の彼からの言葉に、双良は少しだけ驚いたように瞳を瞬く。我慢、していたのだろうか。自覚は無いけれど、先程の反省を想えば今語りたい願いはひとつだけ。
「じゃあ、また一緒にどこか行こうか」
 依頼でも、遊びでも。
 キミが幸せなら、多少の気苦労も甘んじて享受するから。
 双良の顔に浮かぶ笑顔は、何時も人に向けているものとは随分と違うように見える。それは、共に歩んできた友の前だからこその笑顔で。心から零れるその願いに、千鳥は当然だと言いたげに頷きを返す。
「さぁどれが一番食べたい?」
「んー……全部半分こにしない? それなら2人とも幸せでしょ?」
 改めて中央に置かれたお皿へと視線を向ければ、双良から紡がれた言葉には二人で笑顔を零してしまう。

 ――あの時の姿のままだけれど。
 ――実年齢の分だけ離れてしまった時間を、取り戻すかのよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

明・金時
仕事仲間の吉川(f37193)と
まァ弟分みたいなモンだ

へェ、お前さんも知らなかったのか
おお、いいな
向学心旺盛なのは良い事だぜ
感心感心

若い内は一杯食べろと言いたいとこだが、一応この後に軽く運動あるからな
あんま食い過ぎるなよ
んじゃ、俺はレモンティーでも貰うかね
夏だしアイスでな
折角だからテラスに出て、畑のレモンでも眺めるか?

おっと、土産も忘れずに買わねえとな
里の奴らの分と、屋敷で留守番の仕事仲間たちにもな
まあまあ、細かい事は気にしなさんな
お前さんの分も買ってやるから

……ちゃっかりしてんなお前……いいけどよ
ほれ、全員分あるから喧嘩せずに食えよ


吉川・清志郎
仕事仲間の金時さん(f36638)と!
お屋敷を溜まり場に使わせて貰ってるんだ

僕、この世界で沢山冒険してきたけど
このカフェと畑のことは知らなかったよ
来るのも初めて!
でもいいところだねー
新しい発見がある度に、冒険やめられないなって思うよ

レモネードにー、タルトにケーキ、スコーンも
選べないから全部いただきます!
勿論、忘れてないよー
いいね、外行こ!
きっといい風が吹くよ

おおー、お土産一杯だねぇ
確かに僕らお屋敷によく集まってるけど、いつもいるとは限らないよ?
えー?
じゃあ、僕と父さんと母さんと妹の分も!

えへへ、冒険者たるもの交渉事も出来ないとね!
ありがとーございますっ!




 一面に広がる緑の葉と黄の果実。遠くに続く青の空と煌めく海。
「僕、この世界で沢山冒険してきたけど、このカフェと畑のことは知らなかったよ」
「へェ、お前さんも知らなかったのか」
 歓声を上げる吉川・清志郎(星巡りの旅人・f37193)の姿を見て、明・金時(アカシヤ・f36638)はどこか驚いたように言葉を紡ぐ。
 複雑な生い立ちだけれど、清志郎の育ちは此の武器と魔法と竜の世界。馴染む空気と空だけれど、世界は広く外との交流も少ない世界観故かまだまだ知らない世界があるのだと彼はどこか嬉しそうに笑みを零す。
 そう、こういった感覚こそが。
「新しい発見がある度に、冒険やめられないなって思うよ」
 冒険者としての楽しみで、醍醐味である。幼い見目に合う無邪気な笑みを浮かべれば、金時は笑みを零し頷きを返す。
「おお、いいな。向学心旺盛なのは良い事だぜ」
 その表情はどこか兄のように優しいもので。金時の言葉に清志郎は満足そうに笑みを浮かべた時、テーブルの上に注文したメニューが運ばれて来た。
 氷が響くレモネード。タルトにケーキにスコーンと、レモン尽くしなテーブルはすっかり夏らしい黄色に染まり。華やかに変貌した光景に金時は苦笑を零してしまう。
「若い内は一杯食べろと言いたいとこだが、一応この後に軽く運動あるからな。あんま食い過ぎるなよ」
 グラスを傾けて、忠告を零す金時の喉を潤すのはレモンティー。レモンの輪切りが添えられたグラスは見目も華やかだけれど、口に含んだ瞬間広がる紅茶の華やかさと、奥に沈むレモンの風味が心地良く。暑い陽射しの注ぐテラス席故かその冷たさが身に沁みる。
「勿論、忘れてないよー」
 金時の行動を見守った後、こくりと頷いた清志郎は彼に倣うかのようにレモネードを口にして、次にスコーンへと手を伸ばす。まだ熱い生地に触れれば一瞬手を引っ込めるけれど、割ってみればふわりとレモンの香りが湯気と共に鼻をくすぐる。
 カラカラと氷を鳴らしながらグラスを揺らして、清志郎の姿を見守っていれば。ふと思い出したことを金時は口から自然と言葉にして零していた。
「おっと、土産も忘れずに買わねえとな」
 里の奴らと、屋敷で留守番の仕事仲間達。全部でいくつだろうと指折り数えていれば、その増えていく数に一杯だと清志郎は笑みを零す。
 でも、
「確かに僕らお屋敷によく集まってるけど、いつもいるとは限らないよ?」
 清志郎から零れた疑問は当然のこと。こうした店の食物は日持ちしないものも多い為、それでも本当に大丈夫かと疑問に思ったのだ。しかし彼の言葉に金時はからりと笑う。
「まあまあ、細かい事は気にしなさんな。お前さんの分も買ってやるから」
「えー? じゃあ、僕と父さんと母さんと妹の分も!」
 一瞬だけ唇を尖らせて。けれどすぐに零れた少年のおねだりに、金時は紫色の瞳をひとつ瞬き、そのまま苦笑が零れてしまう。
「……ちゃっかりしてんなお前……いいけどよ」
「えへへ、冒険者たるもの交渉事も出来ないとね!」
 今まで積み重ねてきた経験だと自慢げに語る清志郎の姿を見れば、何故だか悪い気はしない。それなら、と増える指の数を眺めながら金時はどこか満足そうに微笑んだ。
 喧嘩せずに食えよ、と添えた忠告は兄貴分故の言葉だけれど。嬉しそうに無邪気に笑う清志郎の姿を見れば満ちる想いは温かなもの。

 ふわり、肌を撫でる独特の夏風とこの景色を伝えることは出来ないけれど。
 爽やかなレモンの香りを一緒に味わえば、きっと欠片だけでも共有出来るから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
メノン(f12134)と

レモン畑を直に見たのは初めてだけど、こういう風に生えてるもんなんだねぇ
それであれが話に聞いた喫茶と。中々に洒落てるなぁ
せっかくだしテラス席に行こうか、メノン?
良い感じだ(日陰へ

タルトとレモネードでも頼もうかなぁ
成程。アイスティーの方も気になるし、こっちのレモネードと少し飲み比べするかい?ああ、炭酸割りだよ。メノンが苦手でなければね

自然を感じながらティータイムとはなんと優雅な事か。メノンが誘いに乗ってくれたお陰で華もある。実に充実さぁ
うん、タルトも甘酸っぱくて爽やかだ。レモネードもスッキリで素晴らしい
(メノンと交換して飲み比べ)お、これも香りが凄くいい。実にレモン尽くし!


メノン・メルヴォルド
永一さん(f01542)と

青い空とレモン畑の黄色がとても眩しいのよ
風も爽やかで気持ちいい

ん、テラス席に行きたいの(頷き着いていく
永一さん、あそこの日陰は?

ワタシもレモンゼリータルトを
…飲み物は、アイスレモンティーかレモネード、迷ってしまうの
永一さんは炭酸で割るの?
飲み比べしてみたい、それなら紅茶にするのよ
欲張りになっちゃう(照れつつも、気になっていたから嬉しい

ふふ、永一さんが誘ってくれて、色々な場所へ連れてきてくれるから
ワタシの方こそ楽しいの

わあ、ゼリーがキラキラしてる
お味も…んー…さっぱりした甘さが広がるの
おかわりもできそう
レモネードはシュワシュワで、香りが濃いのね
ね、レモン尽くし(くすくす




 どこまでも遠く広がる空は青く、注ぐ夏陽は眩しく世界を照らす。
 あまりの眩さにメノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)は思わず瞳を細めてしまう。そんな彼女の様子を見て、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)はどこか楽しそうに笑みを零した。
「レモン畑を直に見たのは初めてだけど、こういう風に生えてるもんなんだねぇ」
 そのままぐるりと辺りを見れば、濃い緑の中実る鮮やかな黄色の果実。その色合いのコントラストも美しく、夏らしく感じるのは何故だろう。――そして、夏色の中佇む木造りの建物もまた趣があり。こじんまりしているが随分とお洒落な様子。
「せっかくだしテラス席に行こうか、メノン?」
 こくこくと頷きをメノンが返せば、永一は微笑み光の中並ぶ座席を見渡すが――メノンの瞳に留まったのは、レモンの木々により影が出来る席。
 彼女の指差しながらの提案には勿論頷いて、二人はその席へと腰を下ろした。
 木々の間から零れる木漏れ日は美しく、さわりと吹く風がメノンの長い波打つ髪を泳がせる。爽やかな風が心地良く、彼女は思わず溜息を零していた。そんな心地良さそうに瞳を細める少女にまた笑みを零すと、永一はメニューを開き。
「タルトとレモネードでも頼もうかなぁ」
 ぽつり、独り言のように零れる声。
 彼と同様、メノンも同じタルトをお願いしようと思っているのだけれど。
「……飲み物は、アイスレモンティーかレモネード、迷ってしまうの」
 二つの文字を瞳で何度も追った後、こくりと首を傾げ問い掛ける少女。少女の戸惑うその瞳を見れば、成程と永一は頷く。
「アイスティーの方も気になるし、こっちのレモネードと少し飲み比べするかい?」
 穏やかに紡ぐ永一の、その優しさにメノンは瞳を輝かせる。――炭酸で割ったレモネードは、きっと此処でしか味わえない。けれど、お菓子の魅力を高めてくれるのは紅茶の華やかな香りだろうから。
「欲張りになっちゃう」
 ほんのりと頬が染まるのは外気にやられたからではない。彼の優しさに心が満ちつつも、己の行動が少しだけ恥ずかしいと思ったから。けれど、それ以上に嬉しさが溢れる。
 注文を告げ、暫し後に運ばれてきたレモンゼリータルトと、ふたつのグラス。空のグラスへ炭酸水を注げば、しゅわりと弾ける音が心地良い。
 耳に届く木々の擦れる音もまた心地良く、肌を撫でる風が熱を冷ます。木々が揺れると同時に注ぐ木漏れ日も変化を生み、自然を感じながらのティータイムは何と優雅な事だろうと永一は笑みを零してしまう。
「メノンが誘いに乗ってくれたお陰で華もある。実に充実さぁ」
 一口レモネードを味わって。その爽やかさにまた満ちた心地のまま彼が紡げば。その言葉にメノンはストローを咥えたままぱちぱちと大きな瞳を瞬いた。
「ふふ、永一さんが誘ってくれて、色々な場所へ連れてきてくれるから。ワタシの方こそ楽しいの」
 そのまま零れる笑顔で、彼女はそう語る。
 一緒だから、彼が導いてくれるから。
 そう、だって――。
「わあ、ゼリーがキラキラしてる。お味も……んー……さっぱりした甘さが広がるの」
 こんなにも素敵なものに、出逢えたのだから。
 お皿を手に持ち、陽射しを浴びて輝くレモン咲くゼリーを眺めた後。一口食べて嬉しそうに綻ぶ彼女の姿を見れば永一も釣られて笑みを零してしまう。更にその笑みが深くなったのは、彼女と揃いのタルトを口に運んだから。
「うん、タルトも甘酸っぱくて爽やかだ。レモネードもスッキリで素晴らしい」
 どうぞと差し出せば、メノンは嬉しそうにレモネードを口にする。しっかりとした濃い香りと爽やかな味わいに、彼女の瞳がキラキラと輝いたのを見て。
「実にレモン尽くし!」
「ね、レモン尽くし」
 零れる言葉には当然同意が返ってくる。
 瞳を交わし、微笑み合って。
 今日と云うレモンの日を夏色と共に味わおう。
 華やかな紅茶の香を添えれば、また違った楽しみがある筈だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎖木・茜
【茜星鏡】
青と緑と黄の光景に目を見開き見入り
風の匂いも日差の熱も
深呼吸で全身で受け止め
ずっと引籠りでしたから
物を知りませんの
頬を赤らめ

なでなでに照れて逃げ
子供ではありませんわ
でもムースは分け合いたくてよ

冷紅茶のグラスに櫛切り檸檬が縁に
綺麗な色ですわね
さぞ甘くて美味し…
果実をつまみ皮ごとぱくり
途端に広がる酸味と苦味に
平静を保とうと
おいひいれふわ
思わず涙目

勧められたタルトを恐る恐る一口
檸檬の風味が心地よくて驚いて
レモネードを口に運べば甘酸っぱさに癒されて
美味しいですわ
思わず笑顔

檸檬は疲れや美容にも?
万能ですわね
菓子作りにも一度挑戦してみたいですわ

同じサブレを購入
これで楽しい時間をお裾分けできますわ


月水・輝命
【茜星鏡】
まぁ! レモンの甘酸っぱい香りに溢れておりますわ!
エリシャさん、茜姫さん、お誘い頂きありがとうございますわ♪
いざ、プチ女子会!

茜姫さん、楽しそうで何よりですのよ。頬が赤くなる姿は可愛らしいですわ♪
ついつい茜姫さんの頭を撫でそうになります

ふふっ、そうでしょうか?
レモンのお菓子は、実は初めて知りましたの
さて、わたくしはレモンのスコーンと水で割ったレモネード
分け合うのも良いですわね♪

あっ、茜姫さん、そのままは酸っぱいかと……!
良ければ、甘めにしたレモネードもどうぞですわ?

疲労回復は聞いた事ありましたが、肌にも良いのですね?

サブレ・シトロン、名前からして美味しそうですわね!
是非買いましょう♪


エリシャ・パルティエル
【茜星鏡】

茜姫はこれから外の世界をたくさん体験しましょうね
せっかくだしテラス席にしましょうか
レモン畑と青空の景色が見れて素敵!

輝命は美味しいスイーツをたくさん知ってそう!
レモンは好き?
あたしは大好き!
ここはやっぱりレモンタルトね
でもレモンケーキも捨てがたいわよね…
分け合って食べる?

飲み物は水割りの方のレモネード
茜姫さすがにレモンそのままは、すっぱ……
ふふ、びっくりしたわよね?
スイーツはちゃんと甘酸っぱくて美味しいわよ
食べてみて

このタルト絶品ね
あたしも作ってみたいわ

レモンはねお肌にもいいのよ
疲れも取れるしいいこと尽くめ

お土産にはサブレ・シトロンがあるって
見た目も可愛いし喜ばれること間違いなしね




「まぁ! レモンの甘酸っぱい香りに溢れておりますわ!」
 風が運んでくる甘酸っぱい香りに鼻を鳴らしながら、月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)は鏡のような大きな銀色の瞳を煌めかせる。そのままくるりと振り返り、彼女は同行するエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)と鎖木・茜(自由を手にした姫君・f36460)へお誘いの感謝を述べるが――佇む茜はどこかぼんやりとしていた。
 不思議そうに瞳を瞬く輝命の姿に気付いたのか、茜ははっとするとそのまま頬を染め。
「ずっと引籠りでしたから、物を知りませんの」
 熱くなった頬を隠すように両手を添えて、ぽつぽつと恥ずかしそうに零す。
 遠く広がる青の夏空。色濃い緑に鮮やかな黄色に溢れた世界は眩しくて、彼女の大きな緑色の瞳に飛び込む情報はあまりにも多い。潮を含んだ夏風の匂いも、肌を焼くような強い陽射しの熱も、身体中で受け止めながら彼女は深呼吸をした。
 そんな彼女の姿に輝命とエリシャは顔を見合わせ微笑ましく想う。
「茜姫さん、楽しそうで何よりですのよ。頬が赤くなる姿は可愛らしいですわ♪」
「子供ではありませんわ」
 その愛らしさに思わず輝命が彼女の頭へと手を伸ばせば、茜は更に頬を染めするりと逃げ出した。少しだけ唇を尖らせているのも、拒否では無くあくまで恥ずかしいから。照れ隠しをする仕草もまた愛らしく、二人のやり取りにエリシャは小さな笑い声を零した。
「茜姫はこれから外の世界をたくさん体験しましょうね」
 さあ、色濃い世界を楽しむ為にテラス席でお茶会にしよう。
 風と陽射しが心地良く、レモン畑と青空の景色を身体中で堪能出来る此処は正に特等席。大き目な丸いテーブルに三人で腰を下ろせば、六つの瞳が文字を追う。
「輝命は美味しいスイーツをたくさん知ってそう!」
「ふふっ、そうでしょうか? レモンのお菓子は、実は初めて知りましたの」
 レモンの品が並ぶメニューを指差しながらエリシャが紡げば、輝命は穏やかに微笑みながら言葉を返す。初めてだから、今日の日は貴重な体験なのだ。
 どれもこれも食べたいけれど、乙女のお腹には限界がある。だから分け合って食べようとエリシャと輝命が紡げば、茜も控えめに同意する。――それもまた、女子会らしい。
 運ばれてきた品々は皆鮮やかな黄色を纏い美しいが。その中で、目の前に置かれた美しい色のアイスティーを前に茜はぱちぱちと瞳を瞬く。
 沢山の透き通る氷の中、紅茶色の液体はほんのり赤みを帯びていて。鼻をくすぐる爽やかな香りは、グラスの縁に飾られた櫛切りレモンからだろうか。
「綺麗な色ですわね。さぞ甘くて美味し……」
 ほう、と溜息を零しながら。茜はその黄色へ惹かれ細い手を伸ばし――そのまま果実を摘まむと、皮ごとぱくりと口に含んだ。
「あっ、茜姫さん、そのままは酸っぱいかと……!」
 口に含む直前、察した輝命達に注意はされたけれど。人の行動はそう簡単に止めることが出来ないのはミレナリィドールであっても同じこと。すぐに満たされていく強い酸味と苦味に茜は思わず口を押さえるが。
「おいひいれふわ」
 平静を保とうと努めながら、それでも大きな緑色の瞳に涙をいっぱい溜めてそう紡ぐ。
「ふふ、びっくりしたわよね?」
 そんな彼女の姿が微笑ましくて、エリシャは安心させるよう笑みを零しながら言葉を紡ぎ。そのまま自分の目の前にあったタルトの皿を、そっと彼女の前へと運んだ。
「スイーツはちゃんと甘酸っぱくて美味しいわよ、食べてみて」
 透き通るゼリーの中に咲く黄色の花は先程と同じレモン。先程の味わいがよほど強烈だったのか、恐る恐ると茜はフォークを下ろし口へと運ぶが――すぐに口いっぱいに広がる甘味のあるレモンの香り。そしてとろけるゼリーとほろほろ崩れるタルト生地に、先程の衝撃も忘れて瞳を輝かす。
 同じレモンなのに、こんなにも違うのかと。声にならない驚きを表す彼女を見ては、どこか満足げにエリシャと輝命は顔を見合わせた。
「良ければ、甘めにしたレモネードもどうぞですわ?」
 蜂蜜をたっぷり入れたレモネードは、爽やかさよりも甘さが強く。先程の衝撃を和らげるのにぴったりで。その特有の甘酸っぱさに、思わず茜は癒される。
「美味しいですわ」
 笑顔と共にそう零す茜の瞳には、もう涙は滲んでいない。その姿に安心すると、エリシャもタルトへとフォークを落とす。
「このタルト絶品ね。あたしも作ってみたいわ」
 自身の出身世界で作れるのならば、きっとエリシャにだって作れる筈。どうやって作るのかと考えながら、ゆっくりと口へ運ぶ。
 ゼリーを用いている為軽くて、夏の屋外でも美味しく頂ける。正にこの場に相応しいスイーツとして考えられたのだろう。そう思えばエリシャは納得したように何度か頷き、同じく甘味を楽しむ目の前の乙女達に向けひとつ豆知識を。
「レモンはねお肌にもいいのよ。疲れも取れるしいいこと尽くめ」
 爽やかで愛らしい見目に癒されるだけでなく、その実自体にも確かな効果があるのだとエリシャは告げた。その言葉に輝命は手元のレモネードをまじまじと見ながら。
「疲労回復は聞いた事ありましたが、肌にも良いのですね?」
「万能ですわね。菓子作りにも一度挑戦してみたいですわ」
 感心したように述べれば、茜も驚いたような吐息と共に自身の望みを口にする。その望みには、エリシャが今度教えてくれるだろう。美味しいレモンを再び味わっても良いし、季節が巡れば他にも美味しい食材は沢山あるから。
 美味しい甘味と共に話に花を咲かせるのは、女子の特権。舌鼓を打ちながら、消えていく甘味が名残惜しいけれど――。
「お土産にはサブレ・シトロンがあるって。見た目も可愛いし喜ばれること間違いなしね」
「サブレ・シトロン、名前からして美味しそうですわね!」
 そう、お土産に購入すれば今日の日の味を持ち帰ることが出来る。その形もだけれど、この店の物ならばしっかりとレモンの風味を感じることが出来るだろう。
 お土産に購入して帰ろうと笑い合うエリシャと輝命を見て――。
「これで楽しい時間をお裾分けできますわ」
 頬を染め、微笑みながら告げる茜。
 その姿は今日の日を特別なものだと感じているからこその、綻ぶ花のようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです

【檸檬の香りに】

良い香りだね!
パーラーメイド&パテシエイルとして、見過ごせないね!

【檸檬と海の音🍋】
店内で寛ぎながら、メニューをあれこれ観て、一人で食べるには決めきれないので、ユーベルコヲドでもう一人のぼくを呼ぶ。

「ねぇ、ぼくはレモンゼリーのタルトがいいけど、ぼくは何にする?」

『ぼくはレモングレーズのレモンケーキ!飲物はレモンティーが良いかな?』

「それじゃあ、ぼくはレモネード!お互い感想教えてね!」

気分は双子、気持ちも一緒。
甘酸っぱい檸檬を今日は目いっぱい楽しんで、今年の夏の一品に加えようと考えながら、甘い香りと夏の風を感じて……。




 夏の風が運ぶのは、潮に混じる爽やかな香り。
「良い香りだね!」
 鼻をくすぐる香りに、国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は大きな瞳を輝かせる。こんな素敵な舞台で味わえる、レモンに溢れたメニュー。パーラーメイドでありパティシエイルとしては見過ごせないと少しだけ前のめり気味。
 席の間隔が広く取られた店内はゆったりとしていて、大きな窓から夏風が吹き肌を撫でる。陽射しを遮れば随分と涼しく感じる為、ほんのりと熱を帯びた風がむしろ心地良い。
 二人掛けの席に一人で座っていた鈴鹿だけれど――何時の間にやら目の前には、鈴鹿とそっくりの人物が座っていた。
 その理由は、一人でメニューを見ていたのでは決められなかったから。同じ姿で頭を寄せて、メニューを指差して彼女は二人で相談をする。
「ねぇ、ぼくはレモンゼリーのタルトがいいけど、ぼくは何にする?」
『ぼくはレモングレーズのレモンケーキ! 飲物はレモンティーが良いかな?』
「それじゃあ、ぼくはレモネード! お互い感想教えてね!」
 見た目が同じならば思考も一緒。記憶すらも共有している『自分』との相談をすれば、メニューが決まるのは早いもの。まるで双子のように笑い合う彼女達の心も一緒なのだ。
 だから、運ばれてきた甘酸っぱいレモンの香りに満たされる心地も同じ筈。
 鈴鹿が甘酸っぱいレモネードで喉を潤せば、同時に自分もレモンティーを口にする。フォークを取れば同じようにフォークを取り、まるで鏡映しのよう。
 そんな揃いの行動がなんだかおかしくて、けれど一人では無いことが心地良くて。鈴鹿は笑みを零しながら――甘酸っぱい味わいを堪能する。
 同じくレモンのお菓子を、今年の夏の一品に加えようか。そんな事を考えながら瞳を閉じれば。甘い香りを含んだ夏風が鈴鹿の肌を撫でた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

この世界も夏真っ盛りだねえ。相変わらずここは空気が澄んでいる。何より子供達が目を輝かせていてねえ。まあ、胃袋ブラックホールの奏と隠れ甘味好きの瞬にとってレモンのスイーツを食べれるとなれば。家族3人で行こうか。高速で店に向かう奏を追いかける瞬の姿を見守りながらアタシはマイペースで歩いていく。

レモンケーキ、スコーン、タルト。たちまちレモンのスイーツで埋まるテーブルに苦笑しつつ、炭酸水のレモネードをゆっくり飲む。あ、薄めで頼む
よ。

ああ、いい音が聞こえてくるよ。いいねえ。家族でこうしてゆっくり過ごすのも大切だ。あ、サブレ・シトロン買いたいのかい?折角だから奮発紫陽花。


真宮・奏
【真宮家】で参加

ああ、レモンの季節ですね!!青い空、海の波の音、心地よい風。何より美味しいレモンのスイーツが食べれる店!!早く食べたいです〜(待ちきれずに走っていく)

瞬兄さん、ケーキもスコーンもタルトも美味しいですね!!特にタルトは蕩けるような甘さです。レモネードはもちろん炭酸で濃いめ!!兄さんももちろん濃いめですよね。

一杯食べれて満足です。最高のシチュエーションで食べるスイーツは最高ですね。母さん、サブレ・シトロン買っていきましょう。家に帰って食べるんですよ。いいですよね?


神城・瞬
【真宮家】で参加

色々世界は騒がしいですが、休める時は休んでおきたいですよね。レモンのスイーツですか。顔には余り出しませんが、隠れ甘味好きとしてはかなり楽しみにしてまして。思わず店にダッシュしてしまう奏の気持ちもわかるんですが。転ぶと大変なので急いで追いかけます。

ええ、レモンケーキ、スコーン、タルト。それぞれにお店の人の拘りがわかって凄く美味しいですね。タルトは僕が丁寧に切り分けて母さんと奏に。余りの美味しさに無言になって満足そうに微笑みます。レモネードは炭酸水で濃いめですね。

この心地よい時間の記念に。サブレ・シトロン、買っていきたいですよね。母さんの財布的には少々痛いでしょうが、いいですか?




 潮に混じる爽やかな香り。緑濃い葉の中で揺れる鮮やかな黄色。
「ああ、レモンの季節ですね!!」
 その景色に真宮・奏(絢爛の星・f03210)は瞳を輝かせ、大きな声で喜びを表現した。
 高く青い空、遠く聴こえる波の音、そして肌を撫でる夏の風。
「この世界も夏真っ盛りだねえ」
 揺れる髪を押さえながら、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は夏を詰め込んだ世界をその身で感じる。相変わらずの澄んだ空気は、この世界が豊かな自然に溢れているからか。だからこそ、心地良いものがあるだと思えば瞳を閉じて空気に身を委ねてしまう。
 季節を楽しむ母の声にくるりと振り返ると、奏は輝く瞳のまま。
「何より美味しいレモンのスイーツが食べれる店!! 早く食べたいです~」
 喜びを言葉で表現すると、待ちきれないとばかりに走り出す。――だって、目の前に話に聞いていた喫茶店が見えたから。レモン畑の中に建物は少なく、一目見れば直ぐに分かる。そんな彼女の遠ざかっていく後姿に、神城・瞬(清光の月・f06558)は「あ、」と声を漏らした。
 彼女が止まらないことは分かっている。
 何時もと変わらぬ表情な瞬だけれど、隠れ甘味好きとしてかなり楽しみだった為、走り出したくなる奏の気持ちも分かる。
 けれど、彼女が転ぶと大変だから。急いでその後を追い掛ける彼の姿を見送る響は、ゆったりと何時もの調子で目的地を目指した。

 響が喫茶店へと辿り着けば、2人はもう窓際の広めのテーブルへと腰を下ろしていた。
 そして、そのテーブルの上に溢れるのは黄色の甘味。濃い茶色の上を覆わんばかりの鮮やかな黄色に、つい響は苦笑を零してしまう。
 氷の入ったグラスへと炭酸を注いでいけば、しゅわしゅわと心地好い音が耳へ届き。薄目で作ったからか淡い黄色の夏の飲み物は、此処まで歩いて火照った響の身体をゆっくりと冷やし、癒していく。
「瞬兄さん、ケーキもスコーンもタルトも美味しいですね!!」
 まずは、と味見がてら全て一口ずつ食べてみた奏。どれも爽やかでレモンの味わいを感じる絶品だけれど、特にお勧めだと云うタルトは特別。蕩けるような甘さだと頬を押さえながら嬉しそうに紡げば、声を掛けられた瞬は顔を上げ頷きを返す。
「ええ、レモンケーキ、スコーン、タルト。それぞれにお店の人の拘りがわかって凄く美味しいですね」
 生地はきめ細かく丁寧な仕事ぶり。レモンの風味も香り立ちもそれぞれで違っていて、恐らく全て違う工程で作っているのだろう。――それ程に店の人がレモンにこだわっているのだと気付き、瞬の口許には笑顔の花が咲いてしまう。
 言葉に表すのも忘れる程に夢中になる瞬の姿を見て、響は微笑みながらレモネードを傾ける。美味しい、と音にならずに彼女の口の中でだけで紡がれる声。
 その美味しさはきっと、家族と共に食べているから。
 満足そうに笑う娘と息子を見ることが出来ているから。
 そう想い、満ちる心地に響は浸るかのようにそっと瞳を閉じていた。

 一つでは足りずに二つ、三つと追加で頂いて、満足をした奏はフォークを置き晴れやかに笑い大好きな人達を見る。
「一杯食べれて満足です。最高のシチュエーションで食べるスイーツは最高ですね」
 遠く聴こえる海の音。木々のざわめく音。夏の匂いのする、熱を伝える風。
 その全てが心地良くて――。
「ああ、いい音が聞こえてくるよ」
 頷き、僅かに残ったレモネードを響は一気に飲んだ。
「この心地よい時間の記念に。サブレ・シトロン、買っていきたいですよね」
「母さん、サブレ・シトロン買っていきましょう。家に帰って食べるんですよ。いいですよね?」
 瞬の言葉に反応し、瞳を輝かせる奏。――そのままちらりと、瞬が響を見る眼差しは心配そう。母さんの財布的には、少々痛いだろうかと。気を遣う出来た息子に、そして期待する奏に、響は微笑むと――。
「折角だから奮発」
 そう一言紡いで、席を立った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
イチ(f05526)と

気持ちがいいね
イチから貰った半袖のYシャツのおかげかも
ありがとうね

くろ丸を店内に連れて良いか聞いて
大丈夫なら窓際の席へ
スコーンもタルトもケーキも、全部頼んじゃおうと思うんだけど
イチ、食べられるでしょう?
テーブルいっぱいに並んだ檸檬は、きっと見目も華やかだよ

炭酸水にレモネードシロップを濃いめに溶かし
可愛らしいタルト食めば
甘酸っぱさに目元も和らぐ
イチ、タルト美味しいよ
そうだね
イチや友のお陰で随分と拡がったと思う
もう一目では見渡しきれない程だ

くろ丸はどれが食べられそう?
…ふふ、それじゃあ此方をどうぞ、お嬢様
執事のよにケーキを差し出し

勿論
…そうだ、イチ
お土産も全種買っちゃおうか


青和・イチ
ディフさん(f05200)と

景色がいい…
黄色が眩しくて…風も、レモンの薫りな気がする
ん、ディフさん、夏服も似合う

わんこ同伴の許可が出たら、相棒のくろ丸を連れて店内へ
ディフさんにお礼を言いつつ、提案にもうんうん頷く
もちろん。幾らでも食べる …メニューの全部、頼もう
視界いっぱいの甘い物…世界一幸せな光景…

飲み物は僕も、炭酸レモネード
すごく良い香り
ん、スコーンもうま…クリーム付けても良さそう
ディフさんが美味しそうに食べてるので、僕はとても嬉しい
また、世界が拡がった?

(そして「何でも食べます!」とばかりに、嬉しげにディフさんの傍でお座りするくろ丸

持ち帰りって、出来るかな?
ディフさん、お土産も買って行こ




 遠くまで広がる青い空。奥に見える海は夏の光に反射して輝き、緑濃い葉の揺れる音と鮮やかな黄色の果実達が賑やかで、爽やかな風が流れればレモンの香が漂う様に。
「景色がいい……」
 青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は思わず、唇から一言零していた。
 あまりに強い夏の光に眼鏡のグラスが反射して輝き、眩しくてぱちぱちと瞬くけれどその表情は変わらない。そんな彼の様子を眺めながら、ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は穏やかに笑む。
「気持ちがいいね」
 そっと己の衣服に思わず触れてしまうのは、何時もの装いとは違うから。傍らの彼、イチから貰った半袖のYシャツを纏ったから、こんなに気持ち良いのかだろうか。
「ありがとうね」
「ん、ディフさん、夏服も似合う」
 半袖部分に触れながら礼を述べれば、イチはこくりと頷きながら彼の姿をじっと見た。
 そのまま彼等は陽射し注ぐレモン畑から木造りの喫茶店へ。――イチの足元をずっと付いてくる相棒、くろ丸も一緒で良いかと問えば勿論ですと即答が。此処は武器と魔法と竜の世界なので特に問題にもならないのだろう。
 ディフへと礼を述べつつ、大丈夫だとくろ丸へと語り掛ければ、彼女は嬉しそうに尾を振りイチの足へとその身体を擦り付ける。そのまま彼等は窓際の吹きこむ風が心地良い席へと腰を下ろした。
 テーブルに置かれたメニューを開けば、品数が少ないせいか捲る頁も無い。指先でひとつひとつ品々を指差しながら、ディフは顔を上げると。
「スコーンもタルトもケーキも、全部頼んじゃおうと思うんだけど。イチ、食べられるでしょう?」
「もちろん。幾らでも食べる ……メニューの全部、頼もう」
 さらりと述べられたディフの言葉に、イチは当たり前だと言いたげにこくりと頷く。
 テーブルいっぱいに並んだレモンの甘味。鮮やかな黄色で埋め尽くされる焦げ茶のテーブル。その光景を考えただけで、イチの眼鏡の奥の藍色の瞳は輝き、その姿を見守りながらついディフは笑みを零していた。
 注文をし、直ぐに運ばれる三種の甘味とレモネード。氷の入ったグラスへとシロップと炭酸水を注げば、カランと涼やかな音色としゅわり弾ける泡の音が心地良い。
「すごく良い香り」
 広がる甘酸っぱい香りを胸いっぱいに吸い込みながら、イチは早速一口。鼻をくすぐる香りだけでなく、口に広がる爽やかで甘酸っぱい味わいにどこか満足そうに頷きながら、レモンピールがほろ苦いスコーンをぱくり。
 そんな彼を見ながらディフもレモンの花咲くタルトを頂けば、広がる甘酸っぱさに思わず変わり難い目許を和らげていた。
「イチ、タルト美味しいよ」
 共有するようにディフにそう言われては、スコーンを一旦置いてタルトへと。彼の言う通りスコーンとは違うレモンの味わいが心地良く、きゅっと瞳を閉じた後。
「また、世界が拡がった?」
 浮かんだ疑問を、タルトを食べる合間に零していた。
 その言葉にディフは一瞬瞳を瞬いたけれど。すぐにその口許は微かに和らぐ。
「そうだね。イチや友のお陰で随分と拡がったと思う」
 ――もう一目では見渡しきれない程だ。
 こくり、頷き返す言葉は穏やかで。数多の人のお陰で変わった世界を実感する。穏やかな空気が流れるその時――わふっとくろ丸が、ディフの膝へと頭を乗せてきた。アピールするような仕草にディフは驚いた後、すぐに笑顔を浮かべ問い掛ける。
「くろ丸はどれが食べられそう?」
 穏やかに問い掛ければ、彼女は「何でも食べます!」と言いたげにお行儀よくお座りする。そんな彼女の姿にくすくすと微笑むと、ディフはケーキをくろ丸へと差し出し。
「……ふふ、それじゃあ此方をどうぞ、お嬢様」
 優雅なその所作はまるでお嬢様に仕える執事のよう。
 彼等の様子を見守るイチは、顔では分からないがどこか嬉しそうな雰囲気で。――そのまま彼は、今日の日の思い出を此処で終わらせたくないからか。お土産を持ち帰ろうとディフへと声を掛けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

猪鹿月・カノ
【FANG】

頬を撫でる夏の風
眩しい太陽と冴え渡る青空に
気分は上がっちゃう

カランと涼し気なレモネードはシュワシュワ炭酸
レモンタルトは見た目も素敵で食べるの勿体ない

せっかくだからテラス席なんてどう?
レモン畑見ながら夏感じちゃおーよ

レモネードおいし〜っ
これはリピっちゃうやつ!
暑いから余計に美味しく感じちゃうな

三人仲良くおそろーい
全部美味しそうだったから迷ったけど
甘酸っぱくて爽やかなレモンタルトにして大正解
思わずスマホでパシャり

シズくんとフィルのやりとりを楽しそうに眺めて
ねぇ、初お出掛けってことで
思い出に写真撮ろうよ

スマホをインカメにして
小雪とシズくん、フィラメントとあたし
もちろんレモネードも一緒にね


シズ・ククリエ
【FANG】

青い空と海
肌を撫でる風が心地良い
おおーすごい、檸檬畑初めて見た

テラス席はおれも賛成~
晴れてるし、きっと良い景色が見れるはず

お勧めがあるなら選ばない理由は無いよね
頼んだのはふたりとお揃い
炭酸弾けるレモネードと酸味と甘味交るタルト

なにこれ、めっちゃ美味しい!
頬っぺたが落ちるってこのことだね

スコーンも気になるな…なんて零したら
『相変わらず欲張りだなァ、シズさんよォ~』
喋る武器のフィラメントの言葉に
別腹だから問題なし!と一蹴

お、カノ写真撮ってるの?
良いね良いね、初めてのお出かけ記念
ほらほら小雪もこっちおいで
あとでおれにも写真頂戴ね?なんて言って
レモネード持って控えめ笑顔でぴーすぴーす


橘・小雪
【FANG】

いつもは紅茶党のあたしでもこのレモネードには敵わない
しゅわしゅわ炭酸 透明の氷
夏だなあって幸せになっちゃう!
レモンタルトも幸せの色
黄色が日差しに眩しい

カノさんのテラス席のお誘い、賛成!
緑の中に見える黄色の果実がまた夏色で

タルトを一口ぱくりと食べて
ん~っ!この絶妙な酸味と甘味、最高!

選んだのは偶然にもカノさん・シズさんとおそろい
やっぱりおすすめされたら選んじゃうよね

シズさんの相棒?のフィルさんのツッコミに返す刀のシズさんの言葉
うんうん、別腹、問題なし!

初めてのお出かけが嬉しくて
カノさんのそれなあに?写真が撮れるの!?
思わずそわそわすまし顔
よかったらレモネードと一緒に映してね




 頬を撫でるは熱を孕む夏の風。
 世界を輝かせる眩しい太陽に、冴え渡る青空。
 夏を閉じ込めたこの景色の中へと身を委ねれば、自然と猪鹿月・カノ(G.S.FANG・f35770)の気分は上がり。温かなオレンジ色の瞳は輝き、頬が染まる。
「おおーすごい、檸檬畑初めて見た」
 この光景に気分が高まるのはシズ・ククリエ(レム睡眠・f31664)も同じ。真白の身体に注ぐ陽射しは随分と暑そうにも見えるけれど、彼の青い瞳は楽しそう。
 濃い緑の中の黄色が鮮やかで。空の青とのコントラストが美しく、思わず溜息が零れる程。この景色を楽しむには、やはり――。
「せっかくだからテラス席なんてどう? レモン畑見ながら夏感じちゃおーよ」
 彩添えた指先で指差し、カノが提案すれば勿論否定など出る筈も無い。晴れて陽射しが心地良い中ならば、きっと良い景色が見られるはずだ。
 大きな丸テーブルに三人で腰を下ろせば、自然の中へと溶け込んだよう。流れる風も爽やかで、優しく彼等の髪を撫でていく。そんな彼等の元へと運ばれた三人お揃いの品を前に、橘・小雪(Tea For You・f37680)は小さな声にならない歓声を上げてしまった。
 普段は断然紅茶党な小雪はサクラミラージュのカフェの看板娘らしい趣向だ。けれども、今日ばかりは紅茶よりもレモネードに惹かれてしまった。
 カラン――。
 陽射しにか、暑さにか。溶けた氷が小さく涼やかな音色を響かせる。
 その音色もまた風流で、しゅわしゅわと弾ける炭酸の音色も心地良い。
「夏だなあって幸せになっちゃう!」
 桜色に染まる頬を手で押さえ、小雪の唇から零れる言葉は幸せそうに弾んでいて。彼女の言葉にはカノとシズも頷いて、三人は同時にストローへと口を付ける。
「レモネードおいし~っ。これはリピっちゃうやつ!」
 きゅうっと両眼を閉じて、カノは身体で喜びを表現する。冷えた甘酸っぱい飲み物が美味しいのは、恐らく暑い中頂くから余計に美味しく感じるのだろう。
 くるりとストローを回せばまた泡立つ姿に微笑めば、小雪がタルトを口に運ぶ。
「ん~っ! この絶妙な酸味と甘味、最高!」
 口に含めば広がる香りに、嬉しそうに身体を震わせる。その拍子に彼女の頭の枝が揺れ、夏の陽射しに染まる桜の花が揺れ動いた。
 彼女のその仕草に、興味を持ったシズもフォークを手にすると。
「なにこれ、めっちゃ美味しい! 頬っぺたが落ちるってこのことだね」
 口に含んだ瞬間の優しい味わいに、思わず瞳を輝かせていた。
 ゼリー部分は口に含むと同時に優しく溶け、蜂蜜に漬け込んだ優しい甘さと酸味のレモンが口の中に強く香り出す。更にタルト生地の小麦の芳ばしさが加われば、夏でも美味しい軽い味わいのスイーツの完成。
 レモネードもタルトも、どちらも酸味と甘味が見事に交わっている。それぞれ味わいのバランスも全くの別物で、同じレモンを扱った食品でもこんなにも違うのかと驚くほど。
「全部美味しそうだったから迷ったけど、甘酸っぱくて爽やかなレモンタルトにして大正解」
 スマホに収めていたタルトの写真を確認しながら、カノが紡ぐ。三人お揃いだったのは偶然だったのだけれど、お勧めされただけあってやはり間違いは無かったと強く想うのは皆同じだろう。――だって、溢れるような笑顔が満ちているから。
 けれど、こんなにも美味しいのなら他も気になるのが人の性。
「スコーンも気になるな……」
 端へと追いやったメニューをちらりと見て、シズがそう零した時。
『相変わらず欲張りだなァ、シズさんよォ~』
 不意に聴こえる声。それは先程まで上がっていた三つの声とはまるで違う新たな声だけれど、驚く者はいない。――だって、その声の主がシズの所持する武器だと知っているから。杖の装飾を風に揺らし、電球部を小さく明滅させながら紡ぐ言葉は何時もの通りで。ちらりとそちらを見た後、シズはメニューへと手を伸ばしながら。
「別腹だから問題なし!」
 単的に一言だけ述べた。
「うんうん、別腹、問題なし!」
 彼等の微笑ましい流れに小雪は微笑むと、シズへと加勢しメニューを覗き込む。そんな彼等のやりとりを、カノは楽しそうに眺めながらスマホを握り締めて。
「ねぇ、初お出掛けってことで。思い出に写真撮ろうよ」
 シズと小雪の二人をフレームに収めながら、楽しそうに告げた。
 彼女の誘いに真っ先に頷いたのはシズ。
「良いね良いね、初めてのお出かけ記念。ほらほら小雪もこっちおいで」
「カノさんのそれなあに? 写真が撮れるの!?」
 手招きされた小雪は一瞬理解が出来なかった。――それは彼女の出身であるサクラミラージュでは、スマホと云うものは無く写真と云えば別の形だから。けれど写真が撮れるのだと理解すれば、少しだけ顔を引き締めすまし顔を作る。
「あとでおれにも写真頂戴ね?」
 ピースを作りながら紡ぐシズに、勿論だとカノは述べると慣れた手付きでスマホをインカメへと変えカメラを構える。
 画面に映るのは三人とフィラメント。勿論、美味しいレモネードも一緒に。
 ――緑と黄色の背景と共に残る写真は、今日の日を色濃く残してくれるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

夏の空に木々が揺れる
心地いいものだね
炭酸で割ったレモネェドも夏風に微笑む私の巫女の美しさも…奇跡のように愛おしくてつい笑みが零れてしまう

ん?
お菓子を楽しみにするサヨが愛おしくて
何より美味しそうでたまらないからだよ?
素直に告げれば赤くなる、そんなきみも愛おしく…ついついからかいたくもなる
私の可愛い巫女が食べさせてくれるのかい?
分けられたのはレモンケーキ
チョコとレモンもとても合うんだね
とても美味しいよ

私はレモンゼリーのタルト
サヨにも分けてあげる
二人で分ければ幸せも倍増だ
爽やかで香り高く美味しいよ

まるで初戀の……ようだろう?
本当の事だ
私の初戀は─

お土産に?いいね
皆にも爽やかな幸せを持って帰ろう


誘名・櫻宵
🌸神櫻

テラス席に座り辺りを見渡す
夏の陽射しも木々の梢もなんて心地いいこと
暑さはしゅわりと弾けるレモネードで和らげて、愛しい神様に咲む

檸檬のお菓子、なんてわくわくしちゃう
私、檸檬も好きなのよ…カムイ?
そんなニヤニヤしてどうしたの

……なっ!恥ずかしいことを……
照れ隠しに、レモンケーキをパクリと食めば、香り豊かで爽やかで…甘酸っぱさもたまらない
美味しい……チョコレートともすごく合うわね!
カムイもお食べ
あなたのかぁいい巫女が、食べさせてあげる
カムイのタルトも頂戴な
うふふ
爽やかで美味しい──初恋のってまたそんな恥ずかしいことを!


サブレ・シトロンはお土産にしましょ!
誤魔化すように話をふる
幸せのお裾分けよ




 開放感のあるテラス席へと腰を下ろせば、夏の陽射しが降り注ぎ、遠くに聴こえる海の音が耳を撫でる。爽やかな香りと共に夏の気配を感じる香りへと身を委ねれば。
「心地いいものだね」
 そっと微笑み、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)が吐息と共にそう零せば。誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)も穏やかに微笑む。
「夏の陽射しも木々の梢もなんて心地いいこと」
 流れる風に、二人の桜鼠と銀朱の長い髪が揺れ動き、世界へと美しき色を添えている。
 その色をつい視線でカムイは追ってしまい、手元のレモネードをかき混ぜながら嬉しそうに笑みを零していた。
 ――だって、炭酸で割ったレモネェドも夏風に微笑む私の巫女の美しさも……奇跡のように愛おしく想ったから。
 そして、それは櫻宵も同じこと。しゅわしゅわと小さな音色に包まれながら、夏陽を浴びて金色に輝くカムイの髪は美しく、まさしく神の姿で。見惚れてしまう程に愛おしいと想ってしまうのは仕方が無いこと。
「私、檸檬も好きなのよ……カムイ? そんなニヤニヤしてどうしたの」
 櫻宵は嬉しそうに細い手を合わせ、喜びの声を上げたけれど。目の前の彼は食べ物へでは無く櫻宵へとその眼差しを向け、嬉しそうに微笑んでいる。その姿が不思議で、ほんの少し訝しむように問い掛ければ。カムイは瞳を瞬き、
「ん? お菓子を楽しみにするサヨが愛おしくて、何より美味しそうでたまらないからだよ?」
「……なっ! 恥ずかしいことを……」
 さも当たり前だ、と言わんばかりの姿と声色。
 その言葉に、彼の姿に。みるみる櫻宵の顔は赤く染まっていく。
 勿論本意だけれど、今のように赤くなる櫻宵の姿が愛おしいと思うから、ついついからかいたくなってしまったのだ。
 そんな彼の眼差しを受け止めたまま、自分でも熱を帯びていることが分かるから。櫻宵は誤魔化すように手元のレモンケーキにフォークを落としぱくり。すると、その拍子に口の中に広がる豊かで爽やかさを強く感じる、甘酸っぱい味わいに瞳が輝く。
「美味しい……チョコレートともすごく合うわね!」
 ふわりと咲く笑顔の花は先程の熱を帯びない輝くほどの美しさ。そのまま櫻宵は、カムイへと欠片の刺さったフォークを差し出した。
「私の可愛い巫女が食べさせてくれるのかい?」
 その仕草に一瞬きょとんとしながら、微笑む櫻宵の誘いに乗ってそっと口を開き欠片を頂く。甘酸っぱく、とろける心地はチョコレートだろうか。心地良いと思うのは、このケーキにだろうか、それとも――。
 口許についた欠片を拭いながら、美味しいとカムイが告げれば櫻宵は満足そうで。そのまま彼の手元にある、美しいレモンの花咲くタルトへと視線が向けられる。
「サヨにも分けてあげる」
 その視線に気付き、カムイは察したのか直ぐに自身のケーキを一欠片。お返しのように櫻宵の口許へと運べば、美しい花唇が開きタルトを落としていく。
「うふふ、爽やかで美味しい」
「まるで初戀の……ようだろう?」
 優しさの中の甘酸っぱさ。隠れる程の苦さ。その味わいが心地良く嬉しそうに微笑めば、カムイも笑みを返し一言紡ぐ。
「──初恋のってまたそんな恥ずかしいことを!」
 彼の言葉を直ぐには落とせなかったから、幾度か瞳を瞬いて。理解をすればまた頬に熱が上がっていく。けれど、カムイは本当の事だとさらりと告げた。
(「私の初戀は――」)
 そのままじっと櫻宵を見つめながら、想うことは言葉にはせず。今は己の胸へと閉じ込めておこう。そっとレモネードを引き寄せて、言葉と共に彼は飲み込んだ。
 そんな彼の想いは櫻宵には分からない。熱い頬を誤魔化すように、彼は唇を開くと。
「サブレ・シトロンはお土産にしましょ!」
 今日の日の思い出の、幸せの、お裾分け。
 勿論それは誤魔化すだけでなく、櫻宵の強い意志でもある。これだけレモネードもケーキも美味しいのだから、きっとサブレも美味しい筈。爽やかな味わいを想像すれば口許が自然ときゅっとなるから、ヒトとは不思議なもの。
「お土産に? いいね。皆にも爽やかな幸せを持って帰ろう」
 櫻宵が誤魔化していると知ってか知らずか、カムイは優しい眼差しで笑むと直ぐに頷きを返す。櫻宵の意見と云うのもあるけれど、皆に幸せを分けたいと思うのは同じだから。
 ――爽やかで、甘やかで、心に響く、恋の味を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

おや、一面に黄色の花の様ですね
えぇ、甘酸っぱい良く香りぇす
ふふっ、その酢っぽいのがいいのですけど
でもルーシーちゃんにはそのままは少し食べづらいかもしれません

手を繋ぎ、彼女とカフェ
彼女を座らせて横に座る
そうですねぇ
では僕はレモンケーキにしましょう
僕もコーヒーで
おや?店員さんと内緒話ですか?
ふふっ、楽しみにしてます

えぇ、ゼリー状で綺麗なタルトですね
僕は黄色に飾られて可愛らしいケーキですね
とても甘酸っぱい美味しいです
ケーキ一口食べますか?
はい、どうぞ
ありがとうねぇ、あーん
ん、美味しいですね

お土産、きっと皆さん喜びますよ
今度のお茶の時間に出しましょう
と頭を優しく撫でて

これが秘密のモノですか?
美味しそうなケーキですね
ウィークエンド・シトロン?聞いた事はありますが実際見た事も作った事もありませんでしたねぇ
大切な家族と…
えぇ、一緒に食べましょう
先程、レモンを頂いたので
ハチミツレモンのジュースを作りましょう
えぇ、一緒にね


ルーシー・ブルーベル
【月光】

甘酸っぱくて良い香りね!ゆぇパパ
レモンって黄色で
香りも見た目も好きなのだけど、ルーシーには時々すっぱすぎて…
すっぱいのが良い…大人…
今日はおいしい発見があると良いな

手をつないでカフェへ
パパのお隣でニッコリ
何にする?
ルーシーはおススメのタルトにするわ
飲物はコーヒー!
…それと、お願いがあるの
パパに聞こえないように店員さんに内緒話
後のお楽しみよ

タルト来た!
透き通っててキレイ
食べるのもったいないけど
食べないのはもっともったいないね
すっぱくておいしい!
パパのケーキもかわいくておいしそう
いいの?じゃ、あーん!
ふふーおいしい
パパにもタルト!はい、あーん

お土産にサブレも買いましょうか
皆と食べれる様に沢山
喜んで下さるかな

それと、お店の人にお願いしていたお土産をもうひとつ
レモンコーティングされたバターケーキ
ウィークエンド・シトロンってご存じ?
ルーシーも聞いただけだけど、
週末に大切な人と…主に家族と過ごす時に食べるんだって
これを帰ったらパパと二人で食べたい、です
えへ、ありがとう
ジュース作りも手伝うわ!




 青く晴れ渡る空の下、注ぐ陽射しに煌めく濃い緑と鮮やかな黄色。
「おや、一面に黄色の花の様ですね」
 光に当たる黄色があまりにも眩くて、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は眼鏡の奥の月色の瞳を幾度か瞬く。鼻をくすぐる、潮に混じる爽やかさが心地良く、口許に笑みを零せば、手を繋いだ先の少女が手を引いた。
「甘酸っぱくて良い香りね! ゆぇパパ」
 ユェーを見上げるルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)の左目はキラキラと輝き、嬉しさに満ちていて。彼女のそんな姿を見れたことが嬉しくて、ついついユェーの口許の花が濃くなるが。「でも……」と続く言葉に不思議そうに小首を傾げる。
「レモンって黄色で。香りも見た目も好きなのだけど、ルーシーには時々すっぱすぎて……」
 思い出しただけで口が酸っぱくなったような気がして、つい青い兎を抱き締めながら口許を押さえてしまう。きゅっとなる心地がほんの少しだけ不思議だ。
 そんな少女の姿を見れば、ユェーは少しだけ安堵したように笑みを零してしまう。
「ふふっ、その酢っぽいのがいいのですけど。でもルーシーちゃんにはそのままは少し食べづらいかもしれません」
 強い酸味とほんのりした苦みが分かるのは、もう少し大きくなってからだろう。彼のその言葉に、不思議そうにルーシーは小首を傾げ瞳を瞬く。
「すっぱいのが良い……大人……。今日はおいしい発見があると良いな」
 ユェーの言葉を反復して、そういうものだと納得しながら。今日の日に弾む心地を隠せぬままきゅっと胸元で手を握り、迷い無くカフェへと入って行く。
 室内に入れば陽が遮られたからか随分と涼しく感じ、二人は手を繋いだまま窓際の席へ。ぐるりとソファーがテーブルを囲う席へまずはルーシーが座り、その隣へとユェーが腰を下ろした。――すぐ傍に、温もりが変わらず在ることにルーシーは笑みを零し、そのままテーブルに置かれたメニューを見る。
「何にする? ルーシーはおススメのタルトにするわ。飲物はコーヒー!」
 ぴっと小さな指でメニューの文字を指差して、期待を胸いっぱい告げるルーシー。そんな彼女を微笑ましく想いながらユェーはレモンケーキと珈琲を注文するけれど――店員が去ろうとした時、ルーシーが彼女を止めこそこそと内緒話を。
「おや? 店員さんと内緒話ですか?」
 そんな二人の姿を見て、紡ぐユェーは聞き出そうと言うよりもただ楽しくて仕方が無いと言わんばかりの穏やかな声色で。耳をそばだてるでも無く優雅に笑うだけ。
「後のお楽しみよ」
 元の体勢に戻ると、内緒と言いたげに口許に人差し指を当てるルーシー。そんな彼女から無理に聞き出そうなんて、ユェーは無粋なことはしない。
 だって、ルーシーはとびきり素敵なことを考えていると分かるから。穏やかに微笑んで、ただ「楽しみにしてます」と紡いだ。

 暫しの時間待てば、運ばれて来た食器にルーシーは瞳を輝かせる。
「タルト来た!」
 嬉しそうに声を上げ、目の前に置かれたタルトをじっと見る。
 透き通るゼリーは驚くほど透明で、その中に咲くレモンで出来た黄色の花が美しい。触れれば砕けてしまいそうな繊細感を感じられて、フォークを手にするも食べるのが勿体無いと思い触れることが出来ない。
「えぇ、ゼリー状で綺麗なタルトですね。僕は黄色に飾られて可愛らしいケーキですね」
 キラキラと瞳を輝かせる傍らの娘にこくりと頷きながら、ユェーも自身のレモンケーキをじっと見つめる。淡い黄色に色付けされたチョコレートは滑らかで、美しくも可愛らしいケーキだ。こちらも崩すのは勿体ない程だけれど――。
「食べないのはもっともったいないね」
 こくりと頷き、覚悟を決めて。フォークを入れればゼリーの柔らかな感触と、タルト生地のさっくりした感触。そのまま口へと含めば広がる香りに瞳を見開く。
「すっぱくておいしい!」
 酸っぱいけれど、口がきゅっとなる感覚は無く。むしろ広がる華やかで爽やかな味わいが心地良く、甘い心地が広がるのは蜂蜜のお陰だろう。初めて触れるレモンの味わいに、ルーシーはキラキラと瞳に星を宿しながらタルトを見て、そのままユェーの手元へ。
「パパのケーキもかわいくておいしそう」
「とても甘酸っぱい美味しいです。ケーキ一口食べますか?」
 ルーシーと同時にケーキを食べ、言葉にはせず静かにその味わいを堪能していたユェーは。愛らしい少女の眼差しに小さく笑い声を零しながら、問い掛けてみる。彼の言葉にルーシーは大きく頷くと、差し出されるフォークに向け素直に口を開けた。
 口に広がるチョコレートの甘味の中の爽やかさ。しっとりとした生地も絶妙でタルトとは違った甘やかな味わいが広がる。
「ふふーおいしい。パパにもタルト! はい、あーん」
 落ちそうな頬を押さえるかのように手を添えて微笑んだ後、お返しとルーシーも銀色のフォークを差し出せば、お礼を述べてユェーも口を開ける。レモンケーキよりもさっぱりとしたその味わいに、彼も笑顔で美味しいと。
 こんなに美味しいのなら、この場で終わらせてしまうのは勿体ない。
「お土産にサブレも買いましょうか。皆と食べれる様に沢山」
 この場には並んでいないメニューが気になるのもそうだけど、やっぱり一番の想いは思い出を共有したいということ。――けれど、喜んで貰えるかは心配で。
「お土産、きっと皆さん喜びますよ。今度のお茶の時間に出しましょう」
 伏せられたルーシーの眼差しに気付き、安心させるようにユェーは優しくそう紡ぐ。そのまま少女の柔らかな頭へと手を乗せれば、ルーシーは笑顔の花を咲かせた。
 その時――新たに店員が運んできた品を見て、ユェーは少し驚き瞳を瞬く。
 もう注文した品は揃った筈で、お土産については今話していたところ。それでは、このレモンコーティングされたバターケーキは何だろう。
「ウィークエンド・シトロンってご存じ?」
 じっと見つめるユェーに向け、小首を傾げルーシーは問い掛ける。その言葉を聞いたことはあるけれど、実際に見たことも作ったことも無いと素直にユェーは告げる。
「これが秘密のモノですか? 美味しそうなケーキですね」
 先程ルーシーが店員に耳打ちしていたのがこれなのだろう。それを察して零せば、少女は頷きこの品を選んだ意味を言葉にする。
 ウィークエンド・シトロンとは――週末に大切な人と、主に家族と過ごす時に食べるもの。そんな、家族を大切にする地で生まれたお菓子なのだ。
「これを帰ったらパパと二人で食べたい、です」
 少しだけ緊張するのを隠すように、きゅっとスカートを握りながら。ルーシーが言葉を紡げば――彼女の想いと、その優しさに触れユェーは静かに息を零す。
 大切な家族。
 彼女の口から改めてそう語られたことが嬉しくて。ユェーと一緒にこのお菓子を食べたいと思って、行動をしてくれたことが嬉しくて。心が震える様子に思わずきゅっと唇を結んだ後、彼はルーシーを見て、何時もの優しい笑みを浮かべ頷きを返す。
「えぇ、一緒に食べましょう」
 返る言葉は勿論同意。そして、優しい顔に浮かぶ笑顔はどこか何時もよりも深いようで。彼の返答にルーシーは頬を染めると、嬉しそうに頷いた。
 彼女の好意をただ受け取るだけでは申し訳ない。暫し考え、ユェーは先程貰った新鮮なレモンで、ハチミツレモンのジュースを作ろうと閃き告げる。勿論、週末に。
「えへ、ありがとう。ジュース作りも手伝うわ!」
「えぇ、一緒にね」
 くすくすと顔を寄せ、幸せそうに微笑み合う二人。
 それは正に、週末を楽しみにする家族の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『空飛ぶオトシゴ』

POW   :    仲間を呼ぶ声
自身が戦闘で瀕死になると【仲間の空飛ぶオトシゴ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    未来の予言が聞こえた気がする
自身が【何となく祈りを捧げているような動作をして】いる間、レベルm半径内の対象全てに【不吉な予言】によるダメージか【幸運の予言】による治癒を与え続ける。
WIZ   :    力を受け取る
全身を【輝く光】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:羽月ことり

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●泳ぐオトシゴ
 甘酸っぱい果実に包まれて。
 心も身体も満たされた時には、太陽の光は幾らか傾いていた。
 注ぐ陽射しの眩さも、色濃い緑と鮮やかな黄色の果実が輝く様も変わらないけれど。暑さに関してはほんの少しだけ和らいだ気がするのは、外気が少し落ち着いたからか。波の音が遠く聴こえるレモン畑の中を再び歩めば、それほど掛からずお目当てが姿を現した。
 鮮やかな木々の間、ぴかぴかと光ったかと思い目を凝らせば、そこには細い、このレモン畑には似つかわしくない存在が。
 細い身体をぷかぷかと浮かせていたり。枝に巻き付きまるで葉に擬態するかのようにひらひらと踊ったり。その姿は様々だけれど、いつの間にやら此処には沢山の彼等が居て、猟兵達は囲まれてしまったようだ。
 敵意は無い。
 むしろ風に乗るように楽しそうに身体を揺らし、猟兵を見つけてはひらひらとした手のような部分をぴるぴると嬉しそうに動かして近付いてくる。
 傍へと寄れば、その長い尾を腕へと巻き付かせる者もいるだろう。
 遊んで欲しいと辺りをくるくる回る者もいるだろう。
 彼等はただ単純にこの場で遊び。姿を現した猟兵に興味を持つだけ。
『ぷう、ぷうー』
 ラッパのような口から零れる鳴き声は、吐息のような不思議な音。
 輝く彼等と、まずは何をしようか。
霑国・永一
メノン(f12134)と

さて、レモン畑に行こうかメノン
聞いた通りならこの辺に…お、来た来た。成程、これは可愛らしいねぇ
ほーら、おいで…わぉ、なんか予想以上に来たなぁ(両腕拡げてカモンしたら結構な数のオトシゴ来て埋もれる)
おーい、メノンへーるぷ!(笑)
(目線合わせ)勿論好きだよ

腕に巻き付いてるこの子を撫でよう。体躯もヒレっぽい部分も不思議な感触だなぁ
メノンもどうだい?
(見る)おや、懐かれてるねぇ。子守りしてる慈母のようだ

ではそろそろお別れだ。手を振って背を向ける刹那、狂気の透化で姿を消し高速でオトシゴらの生命力を盗み尽くして安らかな退治を
メノンが居るからか、俺にしては優しい命の盗み方だったねぇ?


メノン・メルヴォルド
永一さん(f01542)と

ん、行きましょう
あの辺り、光ったの…わ、いつの間にかたくさんいるのよ
囲まれてる、ね
ふよふよっと寄ってきたオトシゴが腕に巻き付く

…ぷうぷう鳴いて可愛いの(心の中では可愛さに大はしゃぎ
ふふ、永一さんも、いっぱい懐かれてる(くすくす笑って
好き?
下から覗き込むように聞いてみるね

おいでおいで
手を軽く差し伸べれば更に集まってくる

触ってもいいと思う?
そっと撫でれば不思議な手触り
わあ…
頬に擦り寄ってくれるのが嬉しい
永一さん、見て?

UCを使ってくれたのを感じて
お別れを躊躇う気持ちもあったから永一さんとオトシゴにありがとうの想いも込めて
エレメンタルファンタジア
そよ風を起こす

また、いつか…




 そろそろ行こうかと二人で青空の下のレモン畑を進んで行く。
「聞いた通りならこの辺に……」
「あの辺り、光ったの……わ、いつの間にかたくさんいるのよ」
 きょろきょろと辺りを見回して、霑国・永一が紡げば。同じように辺りを見回していたメノン・メルヴォルドが瞳を瞬く。陽射しの中、緑の瞳が確かに捉えたと思った時――気付けば辺りには葉のような子が。
 ふわふわと漂い、葉のようなヒレを揺らして。木の影、葉の影、至るところからオトシゴが姿を現し、二人の姿に気付き近付いてくる。
「お、来た来た。成程、これは可愛らしいねぇ」
 相手はオブリビオンだと分かってはいるけれど、その姿にも仕草にも。話し通り敵対心は感じられず、威圧感も一切ない。だから緩やかに微笑んで、近付いてくる彼等へと進んで永一が両手を広げれば。
「……わぉ、なんか予想以上に来たなぁ」
 身長の分だけ彼の腕が長いからだろうか。懐っこい彼等は喜んで永一の元へと飛んできて、するりと腕へと絡みつく。――その数は1匹、2匹と。腕に絡めつけるだけ次々と。そんな彼等の様子に瞳を驚きで瞬いて、思わず小さな笑みを零す。
 囲まれる彼へと微笑んで。メノンも細い腕を伸ばせば、1匹が待ってましたと言わんばかりにするりと長い尾を絡めて来た。
 顔を近付け、じっと見つめるメノン。瞳を交わせば『ぷうぷう』とご機嫌な様子で。
「……ぷうぷう鳴いて可愛いの」
 くすりと小さな笑みを浮かべてラッパのような口を人差し指で突くメノン。表情には現れていないが。彼女の心は愛らしさに浮き立っていて。そんな嬉しさを感じ取ったのか、ゆらゆらと揺れながらオトシゴはまた嬉しそうに鳴き声を上げヒレを動かす。
「おーい、メノンへーるぷ!」
 愛らしい仕草に心和ませていたら、不意に掛かる声にメノンは顔を上げる。声の方を見て見れば、永一の両腕には溢れる程のオトシゴが群がり、しかも辺りには順番待ちなのかじいっと永一を見つめている子が多数。
「ふふ、永一さんも、いっぱい懐かれてる」
 そんな彼の姿を見て、ほわりと微笑むメノン。そのまま彼の元へと近付くと、じっと彼の金色の瞳を下から見つめ。 
「好き?」
「勿論好きだよ」
 小首を傾げ問い掛ければ、直ぐに頷く栄一。金色と緑が交われば、『ぷうー!』とオトシゴがアピールするように永一へと擦り寄った。すっかり懐かれた様子に、恐る恐る手を伸ばしてみれば。彼はむしろ期待するように永一を見つめ、大人しく撫でられる。
「体躯もヒレっぽい部分も不思議な感触だなぁ。メノンもどうだい?」
 海の生物らしい柔らかくすべすべな感触。ヒレは本物の葉のように薄く、風に流れゆらゆらと揺らめく様は美しい程。触れながらしみじみと言葉を零し、メノンを誘えば彼女は少し戸惑いながら――そうっと手を伸ばせば、オトシゴのほうから顔を寄せて来た。
「わあ……」
 オトシゴの滑らかな顔がメノンの頬へと擦り寄ってくる。熱は感じず少しひんやりした身体が心地良くて、擦り寄ってくれたことが嬉しくて。自然とメノンの口許が綻ぶ。
「永一さん、見て?」
「おや、懐かれてるねぇ。子守りしてる慈母のようだ」
 尚も擦り寄る子を見せれば、彼は微笑み――そんなメノンの姿を称する。その言葉にメノンは仄かに頬を染めながら、照れ隠しをするかのように微笑んだ。
 ――どれ程の時間、共に過ごしただろう。
 吹く風がほんのり冷たさを感じるようになった時、そろそろと言葉を切り出したのは永一だった。その言葉にメノンは残念そうに、けれど頷くと花咲き光灯る杖を握る。
 彼女の仕草に頷き、永一は手を振って背を向ける。その刹那、狂気の透過で姿を消したかと思えば、その瞬間には愛らしい彼等の姿は消えていた。
 きゅうっと唇を結んで。けれど覚悟を決めるメノン。
 お別れを躊躇う気持ちはある。けれど、同時に永一とオトシゴ達への感謝の想いもあるのだ。杖を握り直し、淡い唇から呪文を零し、そよ風がオトシゴ達を包み込む。
(「メノンが居るからか、俺にしては優しい命の盗み方だったねぇ?」)
 優しいそよ風が頬を撫でる中、永一は細めた眼鏡の奥の瞳で静かに空を見上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉川・清志郎
金時さん(f36638)と!

よーしやるぞやるぞやるぞー
準備運動ーっと、あれっ
(ふより寄って来るオトシゴたちに目ぱちくり)

あんまり可愛がると情移ってやりにくくなーいー?
(と言いつつ一番近くに寄ってきた子の頭を指で撫でて)

まあ、気を抜くと死ぬかもって時も――あいたっ!!
(オトシゴのUCの影響で何もないところで転ぶ)
理不尽!! もー
こうなったらヘトヘトになるまで遊んでやるもんねー!!
(鬼ごっこ開始!)

(ある程度遊んだら)
まあ、僕だって悪鬼羅刹じゃないわけですよ
(痛みを感じないよう、光に包んで眠るように終わらせようと)
おやすみなさい
風が爽やかだし、檸檬のいい香りがするから
ここは眠るにはいいとこだよ


明・金時
清志郎(f37193)と

やる気充分だなァ
ん? 早速寄って来てんな
(寄って来る子の頭を指で撫でながら)

お前さん、案外ドライだよな
悪いとは言ってねェよ
それがお前さんの個性で、生き方だからな
それも冒険者故か?

(転んだ清志郎を見てからから笑い)
はっはっは、そりゃお前さん
今そんな殺伐とした話は野暮だって言われてンだよ
おー元気だなー、行ってこーい
(自身は自分の方に来てるオトシゴにサブレを分けてやり)

……(悪鬼羅刹じゃない、の言葉に穏やかに微笑み)
よっし、仕事しますかね
『お前さんの、やりたいようにやればいい!』
(言の葉にユーベルコードを乗せて、気持ち清志郎を強化)
お前さんが決めたことなら、協力は惜しまないぜ




「よーしやるぞやるぞやるぞー」
 レモン畑へと足を踏み入れれば、吉川・清志郎は早速準備運動を。屈伸をして、腕を伸ばしてやる気満々な様子に、明・金時は思わず笑みを零してしまう。
「やる気充分だなァ。ん? 早速寄って来てんな」
 和やかな心地の中、気付けば辺りにはふよふよと漂うオトシゴの姿が。その数は次第に増えていき、彼等の回りをくるくると回りながら少しだけ様子を伺っている。金時が大きな手を伸ばせば、1匹のオトシゴが近付いてきたのでな頭を指でそっと撫でてやる。『ぷうー♪』とご機嫌に鳴き、ヒレを揺らす姿が愛らしい。
「あんまり可愛がると情移ってやりにくくなーいー?」
 そんな金時の様子を眺めながら、清志郎はそう紡ぐ。――けれど彼だって、近付いてきたオトシゴに手を伸ばしてその頭を指先で撫でていた。
 彼の姿を見て、思わず金時は微笑みながら。
「お前さん、案外ドライだよな」
 紡ぎながら、その手は変わらずオトシゴを撫でている。こんなにも愛らしい姿だけれど、彼等の正体はオブリビオンで在り倒すことは猟兵の定め。それは悪いことでは勿論なしい、それが清志郎の個性で、生き方だ。
 そう、その考えはきっと――。
「それも冒険者故か?」
「まあ、気を抜くと死ぬかもって時も――あいたっ!!」
 幼い彼の過ごした時間から身に付いた感覚なのだと、頷きを返すと同時に上がる声。
 ふよんふよんと、ヒレを動かしながら上下の動きをする様はどこか祈りを捧げているかのようで。彼等のその行動がきっかけか、清志郎は何も無い所で派手に転んだのだ。そんな彼に心配そうに近付いてくるオトシゴ達は、自分が原因だとは分かっていない模様で。
「理不尽!! もー」
 むくりと起き上がり、両手を挙げて感情を露わにする。そんな少年の一連の流れに、
「はっはっは、そりゃお前さん。今そんな殺伐とした話は野暮だって言われてンだよ」
 金時は思わず笑い声を上げる。
 少年が過ごした世界と同じではあるけれど、今このひと時はレモンを楽しみ、そしてレモン畑を漂う愛らしい生き物との時間。そうだろうと金時はオトシゴへと問い掛ければ、彼は嬉しそうに返事を返してくれた。
 金時の言葉に。返事をしたオトシゴに。――そして、心配そうに揺れるオトシゴ達をを見て。清志郎は起き上がり土汚れを払うと、琥珀色の瞳を向け。
「こうなったらヘトヘトになるまで遊んでやるもんねー!!」
 足を踏み出し、オトシゴの元へと駆け出す。急なことにオトシゴは最初驚きを露わにしぴんっと尾を伸ばしたけれど、察した1匹が逃げ出して。その後を追うように集うオトシゴ達がレモン畑を漂い出す。
 ふよりと泳ぐ姿は決して早くは無いけれど、彼等に合わせるように清志郎も幾分緩やかに。そんな彼等の姿を見つめる金時の眼差しはとても優しい大人のもので。
「おー元気だなー、行ってこーい」
 あくまで傍観者のまま、ただ楽しそうな彼等を眺めていた。

 金時がレモンサブレを与えれば、すっかり打ち解けたようで。彼の腕には数多のオトシゴが巻き付き風に揺れている。――彼等は自然界に無いサブレに最初は不思議そうにしていたが、その爽やかな味わいにすっかりお気に入りになったようだった。
 レモンの木の下、木漏れ日が心地良い世界で穏やかなひと時を過ごしていれば。思う存分遊んだ清志郎が金時の元へと駆けてくる。――その姿はほんの少しだけ真剣なもので。
「まあ、僕だって悪鬼羅刹じゃないわけですよ」
 彼の表情に、言葉に。全てを察すると金時は穏やかに微笑み。
「よっし、仕事しますかね」
 立ち上がり呪文を唱える。――言の葉に乗せる力は清志郎の力を強め、少年はその魔力を感じたのか手を握り締める。
「お前さんが決めたことなら、協力は惜しまないぜ」
 笑みのまま、語る金時の言葉に偽りは無い。彼の瞳を見返して、こくりと頷くと清志郎は光を生み出す。それは痛みなど与えない、優しき力を秘めたもの。
「風が爽やかだし、檸檬のいい香りがするから。ここは眠るにはいいとこだよ」
 おやすみなさいと呟いて、少年の生み出した光が楽しげに揺れるオトシゴ達を包み込めば――その姿は一瞬で消えてしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青和・イチ
ディフさん(f05200)と

外はもっと良い香りがするね
檸檬の香り…それいい、ずっと居ようかな

あれがオトシゴ…って、え、くろ丸?
(ふわふわ漂う輝きに、じゃれたくて走り寄る犬
…ん。危なそうなら、止めに入ればいいか

ふと横を見れば、微笑んでオトシゴを撫で遊ぶディフさんが
うっ眩しい…
なに…?神様と妖精が遊ぶ絵…?

くろ丸も、鼻で突いたり、追っては逃げられたりと楽しそう
可愛いから写真撮ろう
…ディフさんも撮ろう…神々しくて映るか分かんないけど

自分の所へ来た子は、そっとじゃらして
ひらひら躍る羽?が擽ったい
…うん、悪意のない害は残酷だね

充分遊んだら、指先にサイキックで風を呼んで
彼等をくるくるっと舞わせて海へ還そう


ディフ・クライン
イチ(f05526)と

爽やかな香りと黄色鮮やかな色彩
ここに居たらオレたちも檸檬の香りになりそう

姿を現したオトシゴたちに
おいでと手を伸ばし
遊ぼう、何がしたい?
じゃれる子を指で撫ぜ
巻き付く子には微笑んで
この子たち、結構可愛いね
悪意なき様子にこの後の「ぺしん」はやや気が引けるけれど
…ところでイチ、なんでそんなに眩しそうなの?

くろ丸が生命力を吸収されないように気をつけながら
イチと共に遊んだり
オレもイチたちの写真撮ろうかな

オトシゴたち、風で遊ぶのは好きかい
広い場所で召喚するのは森の主
ヘラジカのムース
風纏う雄々しい角で遊ばせ
そして最後には
ムースの巻き起こした風に破魔の力乗せ
風に乗って、在るべき海へお帰り




 ふわりと風に乗るのは、潮に混じる夏の気配とレモンの爽やかな香り。
「外はもっと良い香りがするね」
 くすぐる香りに鼻を鳴らして。青和・イチの言葉にディフ・クラインも静かに青い瞳を細めその香りと鮮やかな色彩に身を委ねる。
「ここに居たらオレたちも檸檬の香りになりそう」
 小さく笑ってディフがそう紡げば、ぱちりとイチは瞳を瞬き――それはいい、ずっと居ようかなと変わらぬ表情のまま零す。
 「わふ」とくろ丸が鳴いたかと思えば、何時の間にやら辺りにはひらひらと宙を泳ぐオトシゴ達で満ちていて。するりとイチの横をくろ丸が駆け出した。
 きっと、ふわふわと漂う輝きに興味を持ったのだろう。尾をぶんぶんと振りながら駆ける彼女を見送って――イチはこくりと頷く。
(「……ん。危なそうなら、止めに入ればいいか」)
 くろ丸ならば、敵と云えど相手が害なす存在では無いことは分かるだろう。そのままふと隣を見れば、ディフがじっと近付いてくるオトシゴを見つめていた。身体を揺するオトシゴに向けディフが「おいで」と手を伸ばせば、彼は嬉しそうにその腕に巻き付いた。
「遊ぼう、何がしたい?」
 期待するような眼差しに小さく笑み、問い掛ければ。彼は『ぷうぷう』と鳴き声を上げながら葉のようなヒレをぴるぴる動かす。するとディフの周りには次々とオトシゴが集まってきて、彼はそっと指を伸ばし頭を撫でてやる。
(「うっ眩しい……」)
 そんなディフの姿と微笑みに、思わずイチは瞳を細めてしまう。
(「なに……? 神様と妖精が遊ぶ絵……?」)
 木漏れ日の中のディフと云うのも美しいのだが、更に不思議な生き物と戯れる彼の姿に心から想う。動揺隠せぬまま瞳を瞬いて、目の前の光景を確かめるようにじいっと藍色の瞳を向けていれば。「わん!」と鳴いたくろ丸の声に現実に戻される。
 視線を向ければ、くろ丸が宙を泳ぐオトシゴ達と鬼ごっこをしたり、むしろ追い掛けられたり鼻で突いたりして戯れていた。
「可愛いから写真撮ろう」
 何時も一緒の彼女の愛らしい姿に心和ませ――写真を何枚か収める。満足したように吐息を零し、直ぐに改めてカメラを構えた。
(「……ディフさんも撮ろう……神々しくて映るか分かんないけど」)
 そう想いカメラをディフへと向ければ、彼も同じことを考えていたらしくカメラを構えるイチを写真へと残していた。どこかくすぐったそうに頬を掻くイチ。すると、カメラを持つイチの腕にも一匹のオトシゴが絡みついてきた。
 じいっとイチの姿を見る様子は大丈夫かと様子を伺っているようで。イチはこくりと頷くと、そっと泳ぐ葉のような部分に触れてみる。
 それはヒレのようだけれど、長い分だけイチの腕を掠めくすぐっていく。身体を震わせるイチの様子に微笑むと、ディフは。
「この子たち、結構可愛いね」
 淡い笑みを浮かべたまま、穏やかにそう紡ぐ。そのまま囲まれた彼等を一匹ずつ撫でながら「悪意なき様子にこの後の「ぺしん」はやや気が引けるけれど」と苦笑を零した。
「……うん、悪意のない害は残酷だね」
 一匹を受け容れればイチの周りには数多のオトシゴが集っていて。嬉しそうに鳴き声をあげる彼等には罪悪感さえ覚えてしまう。
 けれど、それが猟兵としての使命だと分かっているから。
 覚悟を決めるようにきゅっと手を握り、傍らのディフへと頷くイチ。頷きを返しながらディフは、ずっと思っていた疑問を投げかける。 
「……ところでイチ、なんでそんなに眩しそうなの?」
 不思議そうにディフに問い掛けられれば、イチは何でも無いと首を振る。そんなイチの様子に笑い声を零し、ディフはオトシゴへと問い掛ける。
「オトシゴたち、風で遊ぶのは好きかい」
 彼等はその声に鳴き声を上げたり、身体を揺すったり。その行動は好きだと答えるかのようで、ディフは微笑むと呪文を唱え、森の主であるヘラジカのムースを召喚する。
 風纏う雄々しい角で風を生み出せば、合わせるようにイチも風を呼びオトシゴ達を包み込んでいく。吹き荒れる風の音に辺りの木々がざわめけば。
「風に乗って、在るべき海へお帰り」
 静かに紡いだディフの声は何故か風にも負けず確かに響き。
 ひとつ息を零す間の後、気付けばそこには先程までの存在はいなく。どこか悲しそうに尾を垂らすくろ丸の姿が居た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橘・小雪
カノさんと(f35770)

レモネードもタルトもとっても美味しかった!
お腹もいっぱいになったし
シズさんの分もお仕事頑張らなくっちゃね

傾いた太陽
少しだけ涼やかな風が吹く
カノさんの声に首を巡らせれば
本当だ、オトシゴさん、可愛らしい
先に近づくカノさんの後ろから覗き込んで

あたしも遊べるよ?おいで
腕を伸ばせば絡んでくる子たちに目を細めて

一緒にラッパのようにぷうぷう言ってみたり
かくれんぼ、おいかけっこ

こんなに可愛いのにね
でも、害になるならやっぱり遊んだ後はさよならしなくちゃ

ごめんねって言いながらティースプーンでぽかり
君たちのことは忘れないよ
今日の思い出と一緒にね


猪鹿月・カノ
小雪(f37680)

レモネードもタルトも美味しかった~
シズくんの分まで頑張っちゃうよ
和らいだ日差し
レモンの葉がさわさわ揺れる微かな音に振り返り

わっ、小雪見て見て!
空飛ぶオトシゴくんだよ
タッタと傍に近寄って
ぷうぷうと鳴くラッパのような声にくすり

あっは!かわいい~
つん、と指先でつつく
あたし達と遊んじゃう?
人が好きなだけなんだもんね
最後にはバイバイだけど
今日はいっぱい太陽浴びたから
キミに活力奪われたってへっちゃらよ

レモン畑で隠れんぼしたり追いかけっこしたり
小雪とオトシゴくんをスマホでパシャり
うん、二人ともカワイイよ!
たくさんの思い出をメモリへ残して

お別れは寂しいけど忘れないよ
どこかで会ったらまた遊ぼ




 レモネードもタルトも美味しかった、と。
 会話に花を咲かせながら橘・小雪と猪鹿月・カノはレモンの木々の中歩んで行く。
 ほんの少しだけ和らいだ陽射し。潮とレモンの香り混ざる、風により奏でられる葉擦れの音色に少しの違和感が混じり、カノが振り返ってみれば――。
「わっ、小雪見て見て! 空飛ぶオトシゴくんだよ」
 何時の間にやら沢山のオトシゴが、木々にぶら下がっていたりふわふわと浮いていたりしていて。皆こちらをじっと見て、様子を伺うその姿に振り返った小雪も瞳を輝かせる。
「本当だ、オトシゴさん、可愛らしい」
 こくりと頷けば先に駆け出したのはカノのほう。すぐ傍までに近寄っても逃げるどころか近付いてきて、『ぷうぷう』とラッパのような鳴き声を上げる様子にカノは微笑む。
「あっは! かわいい~」
 その愛らしさに、思わず笑い声を零しながらつんっと指先で突いてみれば。彼は嬉しそうに葉のようなヒレをぱたぱたと動かしながら、その場で宙をくるり一回転。その仕草がまた愛らしくて、頬を緩めながら「あたし達と遊んじゃう?」と問えば元気な返事が。
 くるりと腕に巻き付いて、元気に鳴くその様子を見て。小雪もそっと後ろから覗き込むと、自分も混ざりたいと言いたげな周りの子へとピンク色の瞳を向けて。
「あたしも遊べるよ? おいで」
 自ら腕を伸ばせば、嬉しそうに辺りの子が小雪の細い腕へと巻き付いていく。一匹、二匹と増えていく様に笑う小雪の様子を微笑ましく想いながら、カノは傍のオトシゴと視線を交わし、無邪気な瞳へと言葉を掛ける。
「人が好きなだけなんだもんね」
 悪意など無いのは、その瞳を見れば判る。
 最後にはバイバイしなければならない。それが猟兵の定めであるとは分かっているけれど、純粋な彼等をすぐに倒す事など出来ない。
 だからほんの少しだけでも一緒に過ごして、楽しい想いをして欲しいと思うのだ。今日はいっぱい太陽を浴びたから。少しくらい彼等に活力を奪われたってへっちゃらだ。
 ぷうぷうとご機嫌に鳴く彼等に合わせ、一緒にラッパのように言葉を零す小雪。そんな二人の様子にカノはスマホを構え――。
「うん、二人ともカワイイよ!」
 パシャリと響くシャッター音。小さな画面に綻ぶ姿を残せば、こちらまで嬉しくなるような笑顔が詰まっていた。その画面を小雪が見れば更に嬉しそうに笑って、写真が分からない筈のオトシゴもどこか嬉しそうに身体を揺すっている。
 ――そのまま、彼女達はオトシゴ達とかくれんぼにおにごっこ。
 広いレモン畑を用い、自然を堪能するように駆け回れば。枝に巻き付き様子を伺っていたオトシゴ達も姿を現し、いつの間にやらすごい数に。こんなに居たんだとついカノと小雪は顔を見合わせ笑ってしまう。
 勿論誰もが敵意など無く、純粋に楽しんでいるのだけれど――陽が傾いてきて、風がほんの少し冷たさを帯びてきた。
 今日の出逢いは永遠では無い。それは最初から分かっていたこと。
「君たちのことは忘れないよ。今日の思い出と一緒にね」
「どこかで会ったらまた遊ぼ」
 悲しげに潤んだ小雪の瞳をちらりと見て、カノは唇をきゅっと結ぶ。
 寂しい気持ちは恐らく同じ。――けれど、彼女達はしっかり猟兵の役割を果たすのだ。
 小雪が遠慮がちに、けれどしっかりとオトシゴをティースプーンでぽかりと殴れば。小さな悲鳴を上げた後一瞬でその姿は消えていく。その様子にほんの少しだけカノは戸惑ったけれど、覚悟を決めるように手を握ると踊るような紅蓮の炎を生み出し、一気に彼等の姿を包み込んでいった。

 今日の思い出は、爽やかで甘酸っぱいレモンに。
 友との語らいにほんの少しの寂しさを添えた味。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎖木・茜
【茜星鏡】
ふわふわ飛ぶ空飛ぶオトシゴに目をぱちくり
檸檬の木にはこんな愛らしい生物が付き物なのですわね
え?違う?オブリビオン?
では倒さねばなりませんわね(手を握り締め

お二人の言葉に握った手を解き
ぷうぷう言う空飛ぶオトシゴに恐る恐る指を伸ばして
すり寄る肌のなめらかさに目を輝かせ
一緒に遊びませんこと?

では一緒に歌うのはいかが?
ぷうぷういう声に合わせ歌ってみる
歌を歌っていると楽しくなってきて

お土産の小袋をつつかれ
食べたいんですの?
よろしくてよ
お茶会を致しましょう
お土産はまた買いますわ

…これも猟兵の務めですわね
指定UC発動
オトシゴ達を敵と思い込み
動かないでくださいませ

開いた手で小さく手を振り見送りますわ


月水・輝命
【茜星鏡】
可愛らしいタツノオトシゴですが、あれはオブリビオンですわね、茜姫さん。
本来なら追い払わないといけませんが……ふふっ、確かに遊びたそうにしているみたいですのよ♪

えぇ、エリシャさんの仰る通り。わたくし達は大丈夫でも、周りの人達に被害が出てはいけませんからね。
では、わたくしも一緒に歌いますわ♪
ぷうぷう〜♪ ぷう〜♪
ふふっ、とっても楽しいですわね!

お菓子が気になるのでしょうか? そうですわね、ここでお茶会をしましょうか。
また、ここでサブレ・シトロンを買いましょう♪

エリシャさんが歌う傍ら、わたくしは五鈴鏡の複製を取り出して、UCを。
飛沫のようにきらきらと煌めく、爽やかな夏の光を思い描いて。


エリシャ・パルティエル
【茜星鏡】

レモン畑なのになんだか海の中にいるみたいな気分ね
茜姫、この子たちはこう見えてオブリビオン
でも敵意はないみたい
遊びたいのかも

あたしたちは大丈夫でも
他の人にとっては命取りになることもあるんだって
だからいっぱい遊んで…還ってもらいましょう

ふふ、ほんと歌ってるみたい
あら、輝命も?
あたしは歌は自信ないけど
みんなに合わせて歌うわね
この子たちも楽しそうね
腕に巻き付いてきたオトシゴをよしよし撫でたりしつつ
茜姫たちの様子を楽しく見守って

雑食みたいだからお菓子もきっと食べるわね
そうねレモン畑のお茶会
お菓子と女子が集まればどこだってお茶会ができるの

たくさん遊んだ後は眠らせてお別れしましょう
おやすみなさい




 さわさわと葉擦れの音が耳に心地良い中、宙を漂うのは海の生物。
「レモン畑なのになんだか海の中にいるみたいな気分ね」
 枝に巻き付き揺れたり、風に流れるように漂う姿を見てエリシャ・パルティエルがそう紡ぐ中。鎖木・茜は彼等の姿に緑色の瞳を瞬いた。
 じっと見つめれば彼等は『ぷうぷう』と鳴き声を上げ、長いヒレを振っている。
「檸檬の木にはこんな愛らしい生物が付き物なのですわね」
 ほうっと零れる溜息は驚きにか。何も知らない彼女が誤った知識を身につけてしまわないようにと、愛らしいその姿に月水・輝命は訂正する。
「可愛らしいタツノオトシゴですが、あれはオブリビオンですわね、茜姫さん」
 敵であると聞けば茜は輝命を見て、再びオトシゴを見て。先程までとは違い真剣な色を瞳に宿すと、倒さなければと拳を握る。そんな彼女の拳へ輝命はそっと手を重ね。
「本来なら追い払わないといけませんが……ふふっ、確かに遊びたそうにしているみたいですのよ♪」
「あたしたちは大丈夫でも、他の人にとっては命取りになることもあるんだって」
 穏やかに笑む輝命の言葉に頷いて、エリシャが紡ぐ言葉は数多の事件を告げる身としての説得力があった。けれど、彼等には敵意も無くただ純粋に遊びたそうにふよふよと漂い此方の様子を伺っているから。――いっぱい遊んで還って貰おうとエリシャが告げれば、そっと茜は握った手を下ろした。
 そのまま彼女は――握っていた手を開くと、恐る恐るすぐ傍まで近付いてきたオトシゴへと指先を伸ばす。ラッパのような長い口をちょんっと突けばきゅっと瞳を瞑る彼。そのままそうっと頭を撫でてやれば、心地良さそうに瞳を閉じた。
 その愛らしさに、茜の胸がきゅんと鳴る。擦り寄る肌のなめらかさが心地良く、海の生き物らしい不思議な感触に瞳を輝かせながら。
「一緒に遊びませんこと?」
 問い掛ければ、彼はご機嫌に鳴き声を上げて。一匹が『ぷうぷう』と鳴き出せば、辺りの子達も合わせるように鳴き声を上げる。
「ふふ、ほんと歌ってるみたい」
「では、わたくしも一緒に歌いますわ♪」
 彼等の様子にエリシャが微笑めば、輝命も合わせて歌いだす。二人と、数多のオトシゴの大合唱がレモン畑に響き渡れば、歌に自身の無いエリシャも合わせて歌い始めた。
 爽やかな風の中、歌を紡ぐひと時は穏やかで、心地良くて。
 すっかり懐いたのか腕に長い尾をしゅるりと巻きつけて、風に身を任せ揺れながら歌を奏でる彼等が可愛くて。ついついエリシャもその頭を撫でてやる。人の温もりが心地良いのか、触れればまた嬉しそうに鳴き声を上げるのが愛らしい。
「ふふっ、とっても楽しいですわね!」
 零れる笑顔と共に輝命から紡がれる言葉は、きっと此処に居る皆の想い。
 種族の違うヒトも、敵であるオブリビオンも。重ねることの出来る想いはあるのだと思えば、何と穏やかなひと時だろう。
 気分が高揚したからか、頬が熱くなるのを茜が感じていれば――ふと、一匹のオトシゴが茜の手にしていた小袋を突き出す。
「食べたいんですの?」
 そっと問い掛ければ、彼は『ぷうー!』と一際大きな声を上げた。すると周りのオトシゴ達もどこかそわそわと身体を揺れ出して。
「お菓子が気になるのでしょうか? そうですわね、ここでお茶会をしましょう」
「そうねレモン畑のお茶会。お菓子と女子が集まればどこだってお茶会ができるの」
 皆同じようにお菓子が気になるのか、輝命が零ればエリシャも大きく頷いて。突発的なお茶会が開催される。
 木々の中、夏の陽射しが木漏れ日として差し込むレモン畑は心地良く。椅子は無くとも十分穏やかなひと時になるだろう。先程よりも参加者の多いひと時は、もっともっと楽しいものになるだろうから。
 パキリと響くサブレの割れる音。
 ご機嫌な声は先程のお茶会では聞けなかった声。
「また、ここでサブレ・シトロンを買いましょう♪」
 次々と消えていくレモン型を眺めながら、穏やかな笑顔と共に輝命がそう紡ぐ。
 ――その時にはきっと、彼等と会うことは出来ないだろうけれど。
 その為に、今日彼女達が訪れたのだから。
 全てのサブレが消えた時は、彼等との別れの合図。
 名残惜しいと思ってしまうのも仕方が無い。倒さなくてはいけないと、猟兵としての務めだと、自身に言い聞かせるように茜は心で唱え続ける。
「動かないでくださいませ」
 腕に巻き付く彼は離れない。その温もりが惜しくて、きゅうっと唇を結びながら。彼女は呪文を唱え彼等の動きを封じていく。その隙にエリシャが輝きを放ち眠らせると、痛みを感じない間にと輝命が破魔の矢を放つ。
 世界に満ちるのは、飛沫のようにきらきらと煌めく夏の光。
「おやすみなさい」
 エリシャが瞳を閉じ、優しく紡げば。茜は消えゆく彼等へと、小さく手を振っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

タツノオトシゴ、さん?
本当に葉っぱみたいな形
ごきげんよう!
手をのばしてみたら、くるりんと巻き付いてきた!

ふふ…!かわいい
見て見てゆぇパパ!楽しいよ
オトシゴさん達、一緒にあそびましょう!
そうね、かくれんぼなんてどうかしら
ルーシーとパパがオニよ
オトシゴさん達がレモン畑に隠れるの
いい?じゃ、10秒数えるわ!いーち、にーい…

ーーといったものの
全然見つからないわ…!
流石隠れるのお上手
パパみつけられそう?
うん、教えて!
耳を…?
両耳に手をあてて、目を閉じる
…聞こえた、ラッパみたいな声!あっちね!
ふふー、オトシゴさん達ったら結構おしゃべりさん!


パパのアドバイス通りの場所を探したら…あ!みーつけた!
えへ、
パパのアドバイスが良かったからよ
さ、この調子でみんな見つけましょう!

う?そこの木に腕…?
何があるのか見てると
…わわオトシゴさん達がいっぱい!
ルーシーの腕にもいつのまに!?

ふふ、見つかったらダメなのに
隠れてたらひと恋しくなっちゃったのかな
次は追いかけっこする?
それは…本気でにげなきゃ!


朧・ユェー
【月光】

タツノオトシゴ?
おや、本当に可愛いらしい姿
海の中に居る子とは別な子達ですね
空をふよふよとまるで泳いでる様です

ルーシーちゃんに近づいて来てますね
遊んで欲しいのかもしれません
えぇ、一緒に遊びましょうか
かくれんぼ?
それは楽しそうですねぇ
ルーシーちゃんと僕が鬼ですか
オトシゴさん達は頑張って隠れて下さいね
くるりの背を向けて、彼女の数える声を聴きながら
オトシゴさん達の声を聴く

そうですね
レモン畑も広いですし
葉っぱの様なお姿ですから探すのは大変でしょうね

見つけるコツを教えましょうか?
ルーシーちゃん、耳を澄ませて下さい
きっとオトシゴさん達の楽しそうな声の音が聴こえますよ?
みつけました?頑張りましたね
頭を優しく撫でて

じゃ僕はそっと木の中に腕を入れる
引き抜くと腕に絡まったオトシゴさん
みつけました、本当に可愛らしい
いつの間にかルーシーちゃんの腕にも
そうかもしれませんね

次は追いかけっこですね
では僕が鬼になりますから
ルーシーちゃんとオトシゴさん達は逃げてくださいね?




 木々の間から眩しい程の光が射し込む中、ふわふわと漂う生き物に青と金の瞳が瞬く。
「タツノオトシゴ、さん?」
 その姿にルーシー・ブルーベルが小首を傾げながら言葉を零せば、聴こえたのか彼はくるりと向きを変え、こちらを見ると尾をくるくると動かしながら一声鳴いた。
「海の中に居る子とは別な子達ですね。空をふよふよとまるで泳いでる様です」
 その愛らしい姿にルーシーが瞳を輝かすのをちらりと見て、微笑ましく想いながらも朧・ユェーは穏やかに紡ぐ。
 注ぐ木漏れ日の輝きは、まるで水中へと射し込む光のカーテンのようにも感じられる。濃い緑と夏色の青空の下、漂う彼等はとても心地良さそう。そんな、近付く彼等に敵意は無く。けれどほんの少しだけ離れた距離が、何かを図っているように感じて。
「ごきげんよう!」
 だからこそルーシーは満面の笑顔でオトシゴへと語り掛けると。小さな手を彼の方へと伸ばしてみる。――すると、彼は嬉しそうに尾をぴんっと伸ばした後、するりとルーシーの腕へと尾を伸ばし巻き付いた。
 すぐ傍でじーっと見つめる小さな瞳。風に乗りゆらゆら揺れる姿はちょっぴりご機嫌にも思えて、ルーシーの顔には笑みが零れる。
「ふふ……! かわいい。見て見てゆぇパパ! 楽しいよ」
 ちょんっとラッパのような口を突けば、彼は嬉しそうにルーシーの細い指を押し返す。そんな彼の仕草が可愛らしく想えば、羨ましそうに他のオトシゴ達も集まって来た。
 囲まれたことに瞳を見開くルーシーに、ユェーは微笑むと彼等の想いを言葉にする。
「ルーシーちゃんに近づいて来てますね。遊んで欲しいのかもしれません」
 ユェーがそう紡げば、オトシゴ達は同意するかのようにその場で上下に揺れ動く。ひらひら風に流れる葉っぱのような手を優しく手で握りながら、ルーシーはユェーを見て、またオトシゴ達を見て。どうしようかと少しだけ考えてから。
「そうね、かくれんぼなんてどうかしら。オトシゴさん達がレモン畑に隠れるの」
 ルーシーとパパが鬼だと、オトシゴ達へと紡いだ後ユェーを見れば。彼は突然の提案にも穏やかに微笑んで、頷きを返す。
「オトシゴさん達は頑張って隠れて下さいね」
 穏やかに微笑んで、ルーシーの手を取りくるりと背を向ける二人。
 いーち、にーい……――。
 ルーシーのゆっくりと刻まれていく数字を耳にしながら。月色の瞳を閉じたユェーは、遠く聴こえるオトシゴ達の楽しそうな声を聴いていた。
 そして数え終わった時。ルーシーが瞳を開けば――最初に彼女の腕に巻き付いた子は離れていなかった。ルーシーが「みーつけた」とまたその口を突いてやれば、彼は嬉しそうに瞳を瞑る。きっと離れたくないと思ったのだろう。
 折角だから一緒に仲間を探しに行こうと、彼をお供に親子は歩き始めた。

 潮混じりの夏風に揺れるレモン畑は広大で、心地良いけれど揺れる葉に目移りしてしまい。この中にはどれ程の彼等が隠れているのか――。
「全然見つからないわ……!」
 あっちへこっちへうろうろと歩き、葉を下から覗いてみたりしてもルーシーは一匹もオトシゴ達を見つけることが出来なかった。腕に絡みつくオトシゴは少し心配そうにふよふよして、ユェーは手を繋いだまま辺りの木々を見ている。
「パパみつけられそう?」
「ルーシーちゃん、耳を澄ませて下さい。きっとオトシゴさん達の楽しそうな声の音が聴こえますよ?」
 問いには笑顔で返して、そっと空いた手を自分の耳へ当てるユェー。その仕草と言葉に、ルーシーは不思議そうに瞳を瞬いて。繋いだ手を離すと両手を自身の耳に当てた。
 ――。
 ――――ぅ。
 ――――ぷう。
 その耳に届くのは、遠いのか小さいのか、奏でられる楽しげな音色。
 閉じた瞳を開き、キラキラ輝く青い瞳でユェーを見ると。ルーシーは頬を赤らめ楽しそうにその場で跳ねる。
「……聞こえた、ラッパみたいな声! あっちね!」
 再び手を繋ぎ、嬉しそうに声の聞こえたほうへと歩くルーシー。彼女が楽しそうなのが嬉しいのか、腕のオトシゴも歌を歌うように鳴いている。そんな彼へと微笑んで、ルーシーはオトシゴ達は結構おしゃべりさんだと嬉しそうに語った。
 足を止めて、耳を澄まして。こちらのほうだと木々の間を見上げれば――。
「……あ! みーつけた!」
 上がる少女の声の先、ひらひらした手を葉の中に紛れ込ませた一匹のオトシゴが。声を上げれば彼は『ぷうー!』と嬉しそうに鳴いて、ルーシーの元へと降りてくる。すると彼に釣られたのか、葉の奥からまた一匹、また一匹と降りてきた。
「頑張りましたね」
 すっかり囲まれてしまったルーシーへと微笑んで、そっと小さな頭を撫でてやれば金色の髪は夏の熱を吸ってしまい暑さを感じる。けれど、ユェーの体温にルーシーは嬉しそうに瞳を細めその熱を受け容れた。
 その後――ユェーは腕をそっとレモンの木の中へと入れて、動きを止める。
「う? そこの木に腕……?」
 突然のユェーの行動に不思議そうにするルーシー。ユェーがそっと唇に人差し指を当てたので、こくこく頷いた。暫しの間の後その腕を戻すと。
「みつけました、本当に可愛らしい」
「……わわオトシゴさん達がいっぱい!」
 戻した腕には、沢山のオトシゴ達が絡まっていた。長いユェーの腕の分だけ沢山絡まった彼等は、見つかってしまっても楽しそうに歌ったり揺れたりしていて。彼の習性を活かしたユェーの勝利だろう。頼もしく賢いパパににっこりと笑顔をルーシーが浮かべていれば、こちらに気付いたユェーは月色の瞳を向けて、くすりと笑む。
「いつの間にかルーシーちゃんの腕にも」
 彼に指摘されたのでルーシーが腕を見てみれば、いつの間にやらずっと一緒の一匹だけで無く三匹ほどくっついていた。小さな彼女の腕に頑張って巻き付いている姿が可愛らしくて、一瞬驚いたけれど直ぐにルーシーは笑みを零す。
「ふふ、見つかったらダメなのに。隠れてたらひと恋しくなっちゃったのかな」
 そっと顔を寄せてみれば、すりすりと顔を寄せてくるオトシゴ達。動物とは違うするりとした感触が不思議で、けれど心地良くて。瞳を交わして楽しそうに笑うルーシー。そんな愛しい子の姿を見れば、ユェーは自然と笑みを浮かべながら彼女の言葉に頷いていた。
 腕に絡みつく子の他にも、気付けば皆姿を現していて。二人の周りをくるくる回ったり風に乗って揺れたり。見つかってしまっても楽しそうな様子は、ひと恋しいのは間違いではなさそうだ。それでも、愛らしい彼等とお別れはしないといけないけれど――。
「次は追いかけっこする?」
 まだ、時間は残っているから。太陽はまだ高い位置で世界を照らしているから。
 もう少し遊びたいと想いルーシーが問い掛ければ、オトシゴ達は同意するように鳴き声を上げる。そんな彼女の心も、そしてオトシゴ達の無邪気さも。汲み取ったユェーは微笑んで、そっと繋いだ手を離すと。
「では僕が鬼になりますから、ルーシーちゃんとオトシゴさん達は逃げてくださいね?」
「それは……本気でにげなきゃ!」
 悪戯な笑みと共にそう零し、そのまま数を数え始める。
 ルーシーはオトシゴ達へと声を掛けると、そのまま一緒に駆け出した。さくりと響く地を駆ける音は、葉擦れの音と共に軽やかなリズムを奏でて。楽しそうに泳ぐオトシゴの声が重なればそれは見事な合奏となる。

 この音色を、心に刻んで。
 海と共に夏を楽しんだ日を想い出に残そう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年08月03日


挿絵イラスト