Convoy raid
『シュウェリン』北方で見つかったプラント調査から始まった一連の事件は、猟兵たちの力を借りてなんとか沈静化。
暴走していた生体キャバリアもその全てをうち倒すことに成功した。
その後、ひととおりの内部調査を終えた『シュウェリン』政府は、プラントが再び雪と氷に閉ざされる前に持ち出せるものを運び出し、少しでもプラントの研究を進めようと考え、輸送隊を編成したのだが……。
「その輸送隊が襲われちゃうんだよ!」
どどん、と効果音をつけて菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が言う。
襲撃してくるのは『シュウェリン』の南西にある、『リーゼン』っていう国の部隊だよ。
『シュウェリン』と小競り合いを繰り返していた国なんだけど、『シュウェリン』北部でプラントが見つかったことで、一気に押し込まれるかもしれないって危機感は持っていたみたい。
そう説明しながら、理緒がタブレットを操作してホログラムマップを展開する。
プラント自体はもう稼働はできないことを知っているようなんだけど、技術研究を進められて、先手を取られるのも危険ってことになったみたいで、今回プラント内部から持ち出されるパーツや資料を、できるなら強奪、それが無理なら破壊してしまおうってことになったみたい。
それだけなら国家間の争いだし、わたしたちが出向くこともなかったんだけど、その襲撃隊の指揮官がオブリビオンマシンに洗脳されちゃっててね……。
このままだと、輸送隊を襲撃した勢いのまま『シュウェリン』に攻め込んで、本格的に戦争になっちゃうんだよ。
みんなには、そうなる前にこの襲撃を阻止して欲しいんだ。
理緒の指が滑るとホログラムマップが切り替わり、緑の矢印で輸送隊のルートが記される。
輸送隊は陸路で『シュウェリン』を目指しているんだけど、途中で大きな谷を抜けないといけなくてね。『リーゼン』の部隊は、輸送隊がその谷の中央付近にさしかかったときに襲撃してくるよ。
正面を指揮官……オブリビオンマシンが塞いで、襲撃隊の他のキャバリアは崖の上から突撃を仕掛けてくるみたい、
まずは両側から谷に押し寄せてくるキャバリアの部隊をなんとか撃退して、その後、正面に陣取るオブリビオンマシンを撃破し、輸送隊を無事『シュウェリン』までたどり着かせてあげて欲しいんだ。
地図に輸送隊と襲撃部隊の配置が示されていく。谷の両側に無数の赤い光点、出口にはひときわ大きな赤い光点が浮かび上がる。
『シュウェリン』に到着したら、運び込んだパーツや資料は自由に研究させてもらえるみたいだから、それを参考にキャバリアの強化をしてもいいし、新兵器の開発とかしてもいいみたいだよ。
ただ最初の襲撃までは時間的にあまり余裕がなくて、襲撃とほぼ同時くらいになっちゃうんだ。
相手が攻撃を始めたところからの防衛戦で、ちょっと厳しい状況なんだけど、オブリビオンマシンに仕組まれた戦争なんて起こさせるわけにはいかないから、みんな、なんとかお願いします!
理緒は、ドラッグアンドドロップしてゲートを開くと、ぺこり、と頭を下げた。
すい
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かなりなお久しぶりになってしまいました。のんびり系マスターのすいです。オープニングに来てくださり、ありがとうございます。
はじめましてのかたも、お久しぶりのかたも、よろしくお願いいたします。
今回は、以前に出した『シュウェリン』シナリオの第2弾になります。
リンクは張っておきますが、前回を知らなくてもまったく問題ありませんので、お気に召しましたら気にせず参加していただけますと嬉しいです。
(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=35631)
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第一章は集団戦。
プレイングボーナスは『高所からの攻撃に対応する』です。
輸送隊が襲撃された直後に転送され、そのまま戦闘に入ることになります。谷に足止めされた形の輸送隊を救出してください。
第二章はボス戦。
谷の出口に陣取るオブリビオンマシンとの戦闘になります。精鋭の襲撃部隊の指揮官らしく、技量、キャバリアのスペック、どちらも高く、かなりの強敵です。
第三章は日常。
輸送隊が持ち帰ったパーツや機材の研究と、それを加味した新武器や新アイテム、もしくは新型キャバリアの開発などがメインとなりますが、普通にのんびりと過ごしたり、『シュウェリン』観光などをされてもかまいません。ひとときの時間、自由に過ごして頂けましたら、と思います。
●キャバリアについて
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターは、『シュウェリン』政府からレンタルできます。
●プレイングの募集について。
第一章は断章がありません。
プレイングの受け付けは、7月21日(木)8:31~、締め切りはタグにてお知らせしますね。第二章以降の募集と締め切りについてもタグにてお知らせいたします。
それでは皆様の素敵なプレイング、お待ちしています。
第1章 集団戦
『RW-62M『霧影』』
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POW : RS-H/MC-21『ファイアブレス』機関砲
【巻物を咥えた忍者を思わせる頭部】を向けた対象に、【口部に内蔵した機関砲】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : RS/ACD-03『ジライヤ』対鉄鋼騎兵クナイ
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【追尾機能を備えたクナイ型成形炸薬弾の投擲】で包囲攻撃する。
WIZ : EP-B/WC-04『ヴェイグシャドウ』波動迷彩
【嗅覚以外での探知を困難にする透明化状態】に変形し、自身の【稼働可能時間】を代償に、自身の【ステルス能力と武器『対鉄鋼騎兵カタナ』】を強化する。
👑11
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イクシア・レイブラント
公序良俗に従い、他の猟兵に迷惑をかけません。
多少のダメージは歓迎、「いい勝負」を望みます。
よろしくおねがいします。
* * *
「…こちらイクシア。敵の攻撃を引き付ける」
仕事は陽動。輸送隊が無事に通過できるならそれでいい。
ジェットパックで崖の上まで飛翔してして、SPDのユーベルコード【決戦武装、解放】。
「…リミッター解除。フォースブレード、ファイナル・モード」
大型フォースブレイドを5m近くまで巨大化、輝かせ、【存在感】を強調する。
敵の注目を集めたら【推進移動】で加速、【空中機動】で敵の攻撃を避け、【武器受け】で防御しながら接近。
接近したら【鎧無視攻撃】の【なぎ払い】。派手に立ち回る。
フレスベルク・メリアグレース
転移と同時にUCを発動
『透明化状態』と『超嗅覚』の2つの概念を機械化し、ノインツェーンの外装パーツとして搭載し、UCに対応します
我が名を恐れなさい、リーゼンの特殊部隊
わたくしはフレスベルク・メリアグレース
メリアグレース第十六代教皇にして神子代理たる者
騒乱を食い止めるべく信仰と義心を以てシュウェリンの方々へと助太刀させて頂きます
そう凛とした声でオープン回線で宣戦布告を告げ、機械化した概念外装パーツを用いての迷彩状態によるキャバリアの探知と撃破を行っていきます
我が帰天はオブリビオン・フォーミュラの力さえ司る!
戦乙女の如くシュウェリンの兵士を奮い立たせ、士気を上げて戦いを望みます
ノエル・カンナビス
まー、何と申しますか。
ユーベルコードに頼ると、こうなっちゃうんですよね。
UCの距離感覚はパイロットが基準になりますので、
機械力が支配する戦場ではぜんぜん足りないんです。
30mmですら1600mを超える交戦距離で有効ですのに、
最低射程のUCなんて……。
ちなみに荷電粒子は中性粒子よりも短射程になりますが、
電子ビームでガイドしたら5000mくらいは軽々いけます。
電力が勿体ないので、そこまではやりませんが。
というわけで遠距離からスナイパー/貫通攻撃/ライフル。
なお接近した場合は、咄嗟の一撃/武器受け/指定UCから
2回攻撃(二回目)/カウンター/鎧無視攻撃のUCで迎撃。
UCの選択も割切りが足りませんよ。
●
『シュウェリン』の輸送隊が谷の中程に差しかかったときに、谷の出口に現れた高エネルギー反応。目視でも捉えられたそれへの迎撃態勢を整えた瞬間に、谷の両側からステルスを解除した『霧影』が襲いかかった。
大きな事件が一段落したあとの輸送任務ということで、気を抜いていたところはあったかもしれない。
しかし、それを差し引いてみても、これほど完璧な奇襲というのは教科書にもなかなか載っていない。そんなレベルで成功した攻撃だった。
谷の上からの突撃に、輸送隊を護衛していたキャバリアはあっというまに乱戦に持ち込まれ、数で劣る『シュウェリン』の機体はみるみるうちに数を減らしていく。
護衛の部隊を壊滅させるまでそう時間はかからないだろう。
『リーゼン』の部隊のだれもが作戦の成功を確信したとき、輸送トラックに迫っていた『霧影』が吹き飛んだ。
「間に合ったみたいですね」
愛機である『エイストラ』のコクピットで、ターゲットスコープを覗きながらノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)が呟く。
そんな呟きの余韻も終わらないうちに瞳が次の獲物を捉えると、静かにトリガーを引き絞る。銃口に荷電粒子の名残を残して放たれたビームが新たな標的に突き刺さり、その威力に『霧影』が一回転して崩れ落ちた。
ノエルの狙撃は射程においてユーベルコードを大きく上回るが、それゆえ『埒外』の力は使えない。しかし『リンケージベッド』で『エイストラ』とシステムリンクすることによって、コンマ単位での目標捕捉と射線計算を可能にしていた。
ユーベルコードは確かに強力だ。しかしそれだけが戦闘手段ではない。ノエルは緑の瞳をターゲットに重ねると、次の目標を撃ち抜いていく。
(さらに射程をあげることもできなくはないですが……)
ノエルはそう思いながらもライフルのエネルギー量を確認し、この距離を保ちつつの狙撃を選択した。
ノエルの狙撃により得られた時間と隙。それは決して大きなものではなかったが、歴戦の猟兵たちにとってはそれだけで十分だった。
「こちらイクシア。敵の攻撃を引き付ける」
ジェットパックのブーストを噴かし、崩れた陣形の中に突撃したイクシア・レイブラント(鎧装騎兵/空戦仕様・f37891)の静かに冷たく、それでいて明確な意思を伴った声とともに振るわれたフォースブレイドが、敵を谷の斜面に叩きつける。
「……リミッター解除。フォースブレード、解放ファイナル・モード」
イクシアは意思の力を刃に変え、刀身をキャバリアを凌ぐ大きさにまで巨大化させると、大きく振りかぶり、さらに加速して敵の陣形を崩しにかかる。
そんなイクシアを作戦の脅威とみなした『霧影』たちから放たれた無数のクナイでの迎撃。
『霧影』のクナイは目標を確実に捉えて放たれていた、が、キャバリアのクナイはイクシア相手には大きすぎた。狙い飛んでくるクナイを谷の斜面を利用した翔ぶような立体機動で易々と躱すと、駆け抜けざまのフォースブレイドの一刀が『霧影』を鎧ごと熔断していった。
ノエルの精密な射撃に撃ち抜かれ、イクシアの高速機動と火力に襲撃隊が引きつけられたことで、襲撃者たちと輸送隊の間にできたわずかな間隙、そこに1機のキャバリアが降臨する。
「我が名を恐れなさい、リーゼンの特殊部隊。わたくしはフレスベルク・メリアグレース。メリアグレース第十六代教皇にして神子代理たる者」
輸送隊と襲撃者達の間に割り込むように降り立った神機から、フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)の凜とした声が響き渡る。白金の光を纏ったその姿が一瞬にしてかき消えると、背後から不意を打とうと姿を隠し近づいていた『霧影』が四肢を砕かれ擱座した。
「騒乱を食い止めるべく、信仰と義心を以て『シュウェリン』の方々へと助太刀させて頂きます!」
外部スピーカーから聞こえる声がことさらに大きく谷に反響し、『シュウェリン』と『リーゼン』、2つの部隊の間を駆け抜けた。
「援軍だ! 陣形を立て直せ! ここを抜けるぞ!」
虚空より聞こえた堂々たる宣戦布告と、いち早く戦況を理解した輸送隊隊長の檄に『リーゼン』の部隊に動揺が走り、『シュウェリン』の部隊が活気づく。
とはいえ『リーゼン』の部隊も引く気配はない。動揺は残るものの態勢を立て直し、反撃に移ろうとするところは、襲撃部隊が選ばれた精鋭だということだろう。それに『リーゼン』の部隊は、数ではまだまだ勝っているのだ。
●
『霧影』が武装を近接戦闘に切り替えると、立体機動を続けるイクシアにむけて機関砲を斉射し、『霧影』数機による驟雨のような対空砲火がイクシアを襲った。
キャバリア相手には若干火力不足な機関砲も、生身のイクシアでは掠っただけでも致命傷になりかねない。音速を超える弾丸が広範囲にばら撒かれ――。
(躱しきれない)
瞬間的に感じた思考を、思考制御が冷静な判断へと高める。そしてそれは淀みなく全身をも制御した。音速を超えるはずの攻撃がやたらとスローに見える。イクシアはフォースブレイドを振るうと、噴き上がるオーラの刃で弾丸を蒸発させ、刃をくぐり抜けた弾をバリアバングルが弾く。
『仕留めた』
そう思っただろう『霧影』の懐に飛び込んだイクシアの横薙ぎの一撃が機体を両断する。それでもコックピットには傷をつけない攻撃が、両者の技量の差を物語っていた。
後方から援護射撃を続けていた『エイストラ』のコックピットにもアラートが響く。
入り組んだ峡谷内では狙撃できるポイントというのはそう多くはない。そんな中で一射一倒の離れ業をやってのけるノエルの脅威を取り除こうと、襲撃隊がそのポイントを割り出し、数で押してきたのだ。
(やはりこの距離では特定されますね)
前後に3機、しっかりと囲まれていて逃げ出す隙はない。
ステルスを解除した『霧影』の一撃をライフルで受け止めると、ノエルはわざと機体を前に進ませた。囲んでいた『霧影』たちにはそれが躊躇いのように見えたのだろう。一拍を置いて3機の『霧影』から数十本のクナイが投擲され、複雑な奇跡を描いて『エイストラ』に迫る。
ノエルはそれを待っていた。
「H・S・F、ラディエイション」
瞳がエメラルドに輝くと、クナイと取り囲んでいた『霧影』が吹き飛び、一瞬遅れて轟音が響き渡る。音速を超えた衝撃波は谷ごと周囲を削り飛ばし、あとに残るのはすり鉢状にえぐれた大地と『エイストラ』、そしてかろうじてコックピットブロックを残した『霧影だったもの』だけだった。
イクシアとノエルが『霧影』を引きつけ数を減らしてくれたことで、輸送隊は体勢を立て直すことに成功していた。こうなると戦況は徐々に『シュウェリン』に傾いていく。
フレスベルクも『ノインツェーン』のステルスを解除し、輸送隊の守りを護衛隊に任せて『霧影』の迎撃に回っていた。
「あなたがたが守るべきもののために!」
『フレスベルク』と『ノインツェーン』が祈りにも似た言葉とともに『霧影』を斬り伏せる。
『シュウェリン』は『メリアグレース教』が盛んというほどの国ではない。がしかし、フレスベルクが操る『ノインツェーン』の優雅さすら感じられる軽やかな機動と、『霧影』を一撃の下に滅する圧倒的な帰天の力は、戦場に舞う戦乙女の如く、その姿は見るものに勇気を、そして言は愛する心を奮い立たせた。
しかしこれだけの被害をだしてなお襲撃隊の士気は、『我らが希望のために』と、衰えることがない。『シュウェリン』輸送隊を守り切るための戦闘は、まだ終わる気配を見せてはいなかった。
大成功
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コニー・バクスター
「コニー、『シュウェリン』輸送隊の危機に登場☆」
コニーがBRRに搭乗して現れる。
だが、輸送隊の交戦中の地帯から離れた別の谷間で。
基本的にここから狙撃する。
『狙い撃て! コニーの黒き兎!』
UCのラビット・バスター・ライフルで狙撃して高所の敵を撃ち落としていくよ!
我彼の距離はレベルの二乗m(10,404m)の超遠距離攻撃だから敵の反撃も怖くないかな。
狙撃で敵の頭数を減らす事と囮の役を引き受けるよ。
「逃げ回れ、コニーの速き兎! 捕まるものか☆」
EPミラージュユニット(Code:BRR)を展開しておくよ。
囮役だから、高所から追跡や攻撃等を受けたとしても、幻影発生の回避で逃げ回るよ。
アドリブ、連携歓迎。
シャルロット・バニー
補給は大事ですからねー
だからこそ、輸送体を狙うのは戦略の基礎の基礎!
…なんですが、それをするのがオブリビオンでは、ここは正義のバニーちゃんが武力介入するしかありませんねっ!
てなわけで!バンク省略いきなりウサウサMk2でいっきますよー!どーん!
ピンクのプリティバニーちゃん、定刻通りに只今到着、ですっ!
と、名乗りで注目を集めておきまして―
そのまま展開【空飛ぶ人参】全機発射ぁ!
高所にいる的に…じゃなくて敵に、バニーちゃんからニンジンのご馳走です
人参ビーム一斉射撃かーらーのー人参カッターで体当たりアタック!
確実に1体ずつ集中して潰していきますよー
こちら本体への攻撃はハンマー振りまわして迎撃ですっ!
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
クロムキャバリアの事情は複雑で分かりにくいの
でも、守れる人は、守っていこうと思うの
防衛対象は、谷底を移動中
敵は谷の上から…
なら、谷間を高速飛行すれば、殲禍炎剣の影響は受けずに駆け付けられるね?
操縦システム、魔力接続
システムオールグリーン
UC発動
頭部・腕部・脚部を格納して鳥の様な超高速飛行形態に変形なの
ブースター・チャージ
前面魔導レーダーと界面相殺結界を展開
アルターギア、行くの
捉えたの
光属性魔術のレーザーで牽制
回避先に雷魔術を撃ち込んで操縦系統を麻痺させるの
通り抜け様に魔力の粒子を散布
範囲内のクナイをジャミングして同士討ちするようにシステムを書き換えるの
このまま、ボスに向かうの
スルーズ・イデアール
シュウェリン…
またそこの人たちがピンチなんだね…
…今度こそ、助けないと…!
キャバリア側の私とシンクロして出撃するよ!
交戦状態になったら、崖の上から攻めてくる敵に対して、マルチライフルで牽制つつ、回避した直後のスキを狙ってバックキャノンで狙い撃つよ!
狙う際は輸送隊を狙う、彼らとの距離が近い相手を優先
また、狙えそうなら複数の敵をできるだけ散らさず、近くにまとめるよう牽制で誘導してから砲撃!
敵が色んな方向に散開してきたり、包囲してこようとしたら、フルバースト・マキシマムでできるだけ迎撃して、みんなを攻撃させないように!
敵の攻撃は、回避、ライフルでの迎撃、ダブルダガーでの武器受けを使って防いでいくよ
食料・弾薬の補給はもちろん、資源や研究成果なども含めて、相手の連絡や補給線を絶つというのは、戦いにおいては当然の戦略である。『リーゼン』の奇襲はその点では至極真っ当な仕掛けであったといえるだろう。
ただしそれは、オブリビオンマシンに操られていなければ、のことだ。
目指すものが『勝利』ではなく『さらなる戦乱』である戦いなど、起こして良い訳がない。
「ここは正義のバニーちゃんが武力介入するしかありませんねっ!」
シャルロット・バニー(ヴォーパルバニー・f30079)が巨大な着ぐるみウサギ……『ウサウサMk2』で、手にしたピコハンをぶんぶんと振り回し、どーん、と効果線をつけながら前方に突き出し胸を張る。
そしてその隣では、巨大な美少女が青い瞳を輝かせ、拳をぐっと握りしめていた。
それはパイロットであるスルーズ・イデアール(レプリキャバリア・f30206)とうり二つの外見を持ち、思考までフルシンクロしているキャバリア『スルーズゲルミル』だ。
「『シュウェリン』の人たち……またピンチなんだね……今度こそ、助けないと……!」
決意を込めて呟くスルーズの言葉に、シャルロットが大きく頷いて同意の意を示す。
スルーズとシャルロットは、先のプラント戦でもともに戦い惨劇を目の当たりにしているだけに、この戦いに思うところがあるのだろう。一頭のウサギと一人の美少女は気合いを入れて谷へと足を踏み入れた。
それに先んじて谷へと先行する機体があった。
「操縦システム、魔力接続。システムオールグリーン」
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)の瞳がアメジストの光を湛えると、『アルター・ギア』が頭部・腕部・脚部を格納し、超高速飛行形態へと変形し、魔力の粒子をきらめかせながらふわりと浮き上がった。
「ブースター・チャージ。前面魔導レーダーと界面相殺結界を展開」
前面モニターに簡素化されたワイヤーフレームのような谷の風景が映し出され、電脳術式で編まれた結界が機体を包み込む。
「抗力係数値0.003。アルターギア、行くの」
エネルギーゲージがフルチャージされたのを確認してロランがペダルを踏み込むと、『アルター・ギア』は滑るように加速していく。
小国家の乱立するクロムキャバリアの情勢は複雑なため、戦争という手段は最善ではないが、一概に悪いとも言えない。それでも……。
「守れる人は、守っていくの」
魔導レーダーに誘導され、入り組んだ谷を翔ぶように駆ける。谷間ならば高高度での飛行を対象にした『殲禍炎剣』の影響も受けることはない。
ただし、谷間を抜けると言うことは、上方に敵を抱えるということでもある。
谷を駆けるロランを狙って、上からの援護をしていた『霧影』がクナイをばら撒こうと狙いを定めていた。しかしそれを放とうとした瞬間、弾けるようにバランスを崩すと、そのまま谷に転げ落ちていく。
「コニー、『シュウェリン』輸送隊の危機に登場☆」
スナイパーライフルから硝煙を揺蕩わせ、『ブラック・ラピッド・ラビット(Code:BRR)』のコックピットでコニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)がにぱっと笑う。
スコープからは目を離さず、そのまま次の目標を捉えると、トリガーを引き2機目を谷へと叩き落とす。
「狙い撃て! コニーの黒き兎!」
谷の入り口に陣取る兎の肩から伸びるロングバレルがその角度を変え、限界を超えた集中に緑色の瞳の瞳孔径が限りなく広まり、呼吸すら止まる。
谷の入り口から交戦ポイントまでは、およそ10000m。望遠スコープで捉えた目標は米粒ほどの大きさもなく、キャバリアによる電子的なサポートがあるといえど、通常ならば狙撃など可能な距離ではない。
けれど、それを可能にするからこそ『埒外』なのだ。三度トリガーが引かれた一瞬の後、3機目の『霧影』が谷を転げ落ちていくのを確認し、黒兎が跳ねるように谷の斜面を駆け上がっていった。
「進路クリアなの」
コニーの援護を受けたロランの『アルター・ギア』が、一切のスピードを落とさないまま戦場に飛び込みんでいく。接近に気がついた『霧影』が迎撃を試みるが、撃ち出された弾はロランを捉えることなく岩肌に弾けた。
電子の目でも追いかけることのできない速度を保ちながら、ギアはさらに精密な機動で『霧影』の間をすり抜けていく。残された魔術粒子が『霧影』のインテークから吸い込まれると、それは内部回路を浸食しIFFを書き換えていった。
『なんだ!?』
『霧影』のコックピット内で、味方を表す緑色の好転が一瞬にして赤い光点に置き換わる。反射的に反撃行動に移り、投げ込んだクナイが味方機に炸裂し数機を吹き飛ばした。
そこに岩肌に沿ってループをかけた『アルター・ギア』が突撃していく。
魔術回路が輝きを増し、放たれた雷撃に『霧影』の内部回路が悲鳴を上げるように火を噴いて、痙攣を起こしたところに、ロランが4レーザーを打ち込んで完全に沈黙させると……前が開けた。
「捉えたの」
ロランは高エネルギー反応にロックすると、残る指揮官クラスのキャバリアを討つべく攻撃コースを弾き出し進路を定めた。
戦場を抜けたロランを見て崖上からクナイを放とうとする『霧影』たちに、パルスマシンガンの斉射を浴びせかけ、黒兎が走る。
新たな敵の出現に『霧影』たちも対応するが、四足ならではの安定性と黒兎の見た目に違わぬ跳躍力に翻弄され、撃ち出された銃弾がむなしく空を撃つ。
「逃げ回れ、コニーの速き兎!」
そこにさらにミラージュユニットを展開され、電子的な目を完全に潰されてしまえば、目視だけでは狙いを定めることすらままならない。
「捕まるものか☆」
コニーは機体の敏捷性を最大限に活かしマシンガンによる一撃離脱を繰り返し『霧影』を引きずりだし、楔を穿つように徐々にその陣形を崩していく。そして――。
「ピンクのプリティバニーちゃん、定刻通りに只今到着、ですっ!」
崖上で有無を言わさない存在感の着ぐるみウサギが名乗りを上げると、両手を広げ人参をばら撒いた。あまりに戦場にそぐわない光景に『霧影』たちに一瞬の戸惑いが生まれ……人参はその隙を見逃さなかった。
『霧影』たちを取り囲んだ人参が煌めき、一斉にビームを放ったかと思うと、そのまま葉のようなビームソードを生やして突撃をかけてくる。
『人参のオールレンジ攻撃』
言葉にすれば冗談のようだが、その攻撃力は冗談で済むものではなかった。放たれたビームに動力炉を撃ち抜かれ、ビームソードが四肢をばらばらに解体していく。
それでも戦意を失わず、突撃をかけてくる『霧影』を『ゴールデンピコピコハンマー』の一撃で分解し、『ウサウサMk2』は光の粒子の中でガッツポーズを決めるのだった。
それとタイミングを合わせるように、崖下ではひとりの美少女がチライフルを斉射していた。
パワードスーツを纏った麗しき美少女。ただ見た目だけをいうならば、それがいちばんぴったりとくるだろう。こちらもまた『ウサウサMk2』と違う意味で戦場にはそぐわない。が、しかし、『霧影』にも匹敵する大きさをもつ『彼女』は、スルーズの分身でもあり、精密精緻なキャバリアなのだ。
スルーズは巧みな射撃によって崖を滑り降りてくる『霧影』の着地ポイントを誘導した。銃弾を避けつつ崖下に着地した『霧影』たちは真正面に立つ美少女を見ただろう、そしてその瞬間、鉄球に殴られたような衝撃とともにバックキャノンの連射に吹き飛ばされ、その動きが停止する。
それ見た残りの『霧影』たちが『スルーズゲルミル』を囲むように散開する。犠牲覚悟で全方位から一斉攻撃をかけるかけるつもりなのだ。
キャノンに狙われた機体はただではすまないが、彼らにはそれも作戦遂行のための必要な犠牲ということなのだろう。
戦場に一瞬の静寂が走る。
じりっ、と間合いが詰まり攻撃の間合いレンジに踏み込んだ瞬間『霧影』が動いた。囲んでいた半数が飛び、残りの半数が地を駆ける。ただの突撃ではない、上下からの立体突撃が『スルーズゲルミル』を襲い――閃光が弾けた。
光と煙が収まったあとそこに立っていたのは、正面から攻撃をかけた一機の『霧影』と『スルーズゲルミル』だけだった。
タイミングを完全に見切った『フルバースト・マキシマム』が残りの『霧影』を吹き飛ばしたのだ。マルチライフルがアームドフォートが、そしてバックキャノンが全力の一斉射による放熱に陽炎に揺らめいている。
射撃を掻い潜ってきた最後の一機の攻撃をダブルダガーで受け止め、いなし、その刃を動力炉に突き立てて動きを止める。
ピンと立ったBRRの耳が周囲をスキャンし、コニーが襲撃部隊の沈黙を確認する。今は輸送隊の周囲に動ける敵はいない。
敵指揮官への道は開けた。熱源反応がまだ残っていることに不安を感じないといえば嘘になるが、指揮官を叩いてしまえば敵も撤退せざるを得ないだろう。
そう考え、3機はロランに続くべく谷の出口を目指した。
大成功
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セレーネ・ジルコニウム
「国家間の争いならば静観するところですが、オブリビオンマシンが絡んでいるとなれば話は別です。
私設軍事組織ガルヴォルン、紛争に介入します!」
AIのミスランディアに指示を出し機動戦艦ストライダーを渓谷に向かわせます。
「ミスランディア、このままストライダーで敵キャバリアを蹴散らしちゃってください」
『セレーネよ、渓谷が狭すぎて、ストライダーでは抜けられぬぞ』
「ええっ、そんなぁ」
仕方ありません。
こうなったら私自らスティンガーⅡで出撃しましょう!
「狙撃フレームに換装したスティンガーで敵を狙い撃ちます!」
『追尾型の成形炸薬弾が向かってきておるぞ』
「ふっ、そんなもの、全部撃ち落として……きゃあああ」(迎撃失敗
メサイア・エルネイジェ
お山賊みたいなお連中ですわねぇ
輸送隊の皆様〜!
愛と平和の使徒!メサイアとヴリちゃんがお助けに参りましたわよ〜!
敵は崖の上から降りて来られるのですわね?
では本日のヴリちゃんはガンフューラーで行きますわよ
ホイホイ降りて来た所をロングレンジビームキャノンで狙い撃ちですわ
砲塔が360度回転致しますのでどこからでもかかって来やがれですわ
おクナイ型のグレネードがうざってぇですわね!むきー!
ヴリちゃん!狂竜咆哮で敵諸共吹っ飛ばしてしまうのですわ!
わたくしも吼えますわ!ばうばう!
すっ転んだ所を更に狙い撃ちですわ
おほほ!わたくしが怖いでしょう?
なら早く降参なさって?
降参しないとぶち抜いてしまいますわよ〜!
シャナミア・サニー
ありゃりゃ
こりゃまたホットスタートだねぇ
よっし、レッド・ドラグナー!
派手に行こうか!
器用貧乏なめるなっての
どんな状況でも動けるのがこっちの強さだからね!
スケイルカイトシールドを構えつつ敵機と輸送隊の間に割り込む
まずは相手からの射線切ってっと
こっちの反撃はツインバレルライフルのビームで!
注意を私に引き付けつつ
いや、一気に行くんだけどさ!!
【キャバリア・オーバーロード】!!
この106秒で決める!
ドラグナー・ウイング、フルバースト
谷上まで一気にあがりつつ
ツインバレルライフルの実弾とビームを超連射で
ばら撒き気味の弾幕をぶっぱ
範囲&制圧射撃で谷上を制圧する
シャットダウン状態になったら後はよろしく!
ヴィリー・フランツ
心情・理由:挟撃の状態からひっくり返せってか。
やれやれ、こいつは高くつくぜ?
手段:EP-Aスパイクシールドと増加装甲を取り付けたHL-T10 ヘヴィタイフーンMk.Ⅹで出撃だ、どうせ四方八方から撃たれるから被弾前提だな。
攻撃はおもにRS一六式自動騎兵歩槍による射撃、こいつには【指向性EMP発振弾頭】装填し相手の無力化を試みる、肩のEP-Sアウル複合索敵システムもあるし外さんだろ。
但し、今回の依頼は輸送隊の護衛、護衛目標に被害が出そうなら容赦なく実弾やグレネードのRSファイアクラッカーに範囲攻撃、RXバーンマチェーテによる攻撃でコアを破壊させてもらう、人命優先して失敗したんじゃ本末転倒だからな。
猟兵というイレギュラーの存在に戦いの天秤は『シュウェリン』に傾きつつあったが、それでもなお『リーゼン』の部隊は諦めていなかった。ここにきて最後の予備兵力を投入してきたのだ。
輸送隊の運ぶ機材群はたしかに重要なものではあるだろう。だが国と国のバランスを崩すにはまだまだ時間のかかるものであるはずだし、そうなるのかすら不確定だ。
本来最初の奇襲を防がれた時点で撤退してもいいところである。
しかしオブリビオンマシンはそれを許さない。なぜならば、そのいちばんの目的が『戦争』であるからだ。
「国家間の争いならば静観するところですが、オブリビオンマシンが絡んでいるとなれば話は別です。
私設軍事組織ガルヴォルン、紛争に介入します!」
『機動戦艦ストライダー』の艦橋で、セレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)が高らかに宣言する。
「ミスランディア、ストライダーの進路を渓谷へ。このまま敵キャバリアを蹴散らしちゃってください」
艦長席に座るセレーネがストライダーのAIであるミスランディアに指示を送る、が。
『セレーネよ、渓谷が狭すぎて、ストライダーでは抜けられぬぞ』
このままだと岩肌を削り、ともすれば味方を生き埋めにする可能性まである。地形状況をスキャンしたミスランディアが、結果を伝えると、
「ええっ、そんなぁ」
あれ? という表情から困り顔へ。作戦の根幹が崩れてしまった。
だがしかし、ころころと変わる表情は年頃の女の子のものだが、その意思は軍人であり、猟兵である。
「それなら仕方ありません。私自らスティンガーⅡで出撃しましょう!」
セレーネはストライダーに現位置での待機を命じ、ハンガーにはスティンガーⅡを狙撃フレームで出撃準備を整えるよう指示を送ると、颯爽と艦橋から飛び出して行った。
ミスランディアのハンガーには、以前も作戦でいっしょしたことのあるシャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)と、今回客員として同行しているメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)、ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)が出撃準備を整え待機していた。
「ありゃりゃ。ストライダーは入れないのかい? こりゃまたホットスタートになっちゃったねぇ」
シャナミアが困った風に言ってみせるが、どうやら3人ともこの艦が谷に入るのは無理と判断し、すでに準備を終わらせているようだ。
「挟撃の状態からひっくり返せってのに、支援なしか。やれやれ、こいつは高くつくぜ?」
ボヤくヴィリーに、今回の請求は『シュウェリン』政府にお願いしますね? とセレーネが返す。
戦闘前、それも相手の予備兵力投入による激戦が予想される状況でも、歴戦の猟兵たちに気負いはみられない。むしろ軽いやりとりで緊張をほぐし、互いのコミュニケーションを図っているのだ。
『艦長、スティンガーⅡ、出せます!』
整備班長からの連絡がそのまま出撃の合図になった。4人が素早く愛機に乗り込むと、ストライダーのカタパルトにデッキアップされていく。
『スティンガーⅡ』
『HL-T10 ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ』
『レッド・ドラグナー』
『ヴリトラ・ガンフューラー』
4機のキャバリアがカタパルトに並ぶ。数にすれば1箇小隊。
だがしかし、ここに並ぶのはただの1箇小隊ではない。電磁カタパルトから射出されていく1機1機が激戦をくぐり抜け、生き延びてきた機体であり、パイロットなのだ。
「お山賊みたいなお連中ですわねぇ」
戦い方に優雅さがありませんわ。と、再び谷の上から攻撃をかけようとする『リーゼン』の部隊を一瞥し、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)が少し呆れたように吐き出した。
たしかに『リーゼン』の部隊に余裕はなくなっていた。『楽に勝てる』と思われていた作戦が、猟兵というイレギュラーの参戦により予想外の苦戦どころか失敗寸前まで追い詰められ、予備兵力まで投入したことによって、犠牲は出したが『物資の強奪』という作戦目標だけは果たさなければいけないと、必死の攻勢をかけてきたのだ。
だがしかし……。
「よっし、レッド・ドラグナー! 派手に行こうか!」
器用貧乏を舐めるな! とばかりにシャナミアがペダルを踏み込むと、真っ赤な機体が速度を上げ、敵機と輸送隊の間に割り込んでいく。
器用貧乏ということは、裏を返せば装備とパイロットの技量次第で、どんな状況にも柔軟に対応できるということだ。
シャナミアに操られた『レッド・ドラグナー』は、その極みといっても過言ではない。左腕のスケイルカイトシールドを上空に向けてかざしつつ走り抜ける竜騎兵は、そのことを証明するように。トラックに降りそそぐ銃弾のほとんどを弾き飛ばしていった。
そしてその後に続いたヴィリーの『ヘヴィタイフーン』は、『レッド・ドラグナー』と逆側、輸送隊を挟み込むように位置を取る。
「そんな豆鉄砲じゃ、傷ひとつつかねぇよ」
ただでも防御線において真価を発揮すると言われた機体。そこにさらに『増加装甲』を取り付け、両腕を交差させるように『スパイクシールド』を掲げれば、重装甲を最大限に活かした防御が相手の攻撃を跳ね返していく。
さらにセレーネと『スティンガーⅡ』が前方にでると輸送隊の正面へと立ち、これで前方と左右の防御は固められ、遊撃すら行える反撃の体勢が整った。
「ばかな! 相手にもまだ予備兵力があったというのか!?」
『リーゼン』の予備兵力を指揮をしていた機体のパイロットがそれを見て叫んだ。実際は転送時のタイムラグによるものなのだが、それを知る術のない『リーゼン』の部隊からすれば、まだ兵力を温存していたという風に見えたのだろう。
そしてその勘違いを広げるように2機の『霧影』が崖の途中で火を噴き落下していく。
「輸送隊の皆様〜! 愛と平和の使徒!メサイアとヴリちゃんがお助けに参りましたわよ〜!」
砲塔をぐるんぐるんと回転させ『ロングレンジビームキャノン』を乱射しながら、外部スピーカーを使ってメサイアが輸送隊に声をかける。
援軍というのは兵力もさることながら、「来た」という事実が大きいのだ。それを知らせることにより味方の士気をあげ、敵の動揺を誘う。呼びかけと乱射はそのためのパフォーマンスだったのだろう。たぶん。
そして戦場において動揺はそのまま隙となる。
「サージ電圧で焼かれてろ!」
それまで輸送隊の守備に回っていたヴィリーがそれを見逃すはずもなく。『アウル複合索敵システム』でロックした目標に『一六式自動騎兵歩槍』の銃弾を叩き込んだ。内部で炸裂した『指向性EMP発振弾頭』は命中した『霧影』はもちろん、その周囲にまで電磁波をまき散らしていく。機能障害を起こしながら、それでもなお輸送隊に攻撃を加えようとする『霧影』に、ロランは『ファイアクラッカー』を投げつけると、爆発の振動で崖を滑落させ、『バーンマチェーテ』で動力炉を破壊し無力化していった。
逆側ではもちろんシャナミアも動いていた『ツインバレルライフル』でビームを二連斉射。
「敵の足を止めて注意を……いや、一気に行くんだけどさ!!」
シャナミアの瞳を輝かせながら、ブーストキーを押し込むとサイドモニターに『106sec』と浮かび上がり、カウントダウンが始まる。
「いくよ! エンジン、オーバーロード! 後は野となれ山となれ!」
『ドラグナー・ウイング』の炎が青く絞られ、ノズルを赤熱させ――キャバリアが翔ぶ。
『レッド・ドラグナー』は一瞬のうちに谷の上空まで翔け上り、『殲禍炎剣』の効果範囲ギリギリから『ツインバレルライフル』の実弾とビームをばら撒いていく。複合連射で張り巡らされた範囲弾幕は、質量とエネルギーの暴雨となって、谷上に残っていた『霧影』を穴だらけにしていった。
「私も敵を狙い撃ちます! 狙撃フレームに換装したスティンガーの真価を見せますよ!」
輸送隊への流れ弾と伏兵に留意し、それまでは指揮を執っていたスティンガーⅡも攻撃態勢を整える。
『追尾型の成形炸薬弾が向かってきておるぞ』
「ふっ、そんなもの、全部撃ち落として……きゃあああ!?」
言い終える前にスティンガーⅡに着弾したクナイが炸裂するが、さすがは最新鋭機。外装の一部が剥がれ落ちたものの稼働に問題はなかったが、乗っていたセレーネはそうはいかなかったようだ。
コックピット内で激しくシェイクされ目を回してしまったらしく、きゅう~、という可愛らしい声が通信機から聞こえてくる。
そんな炸裂弾に狙われていたものがもう一人。
「おクナイ型のグレネードがうざってぇですわね!むきー!」
『ヴリトラ』の高機動力でクナイを躱し続けていたメサイアの叫びが、可愛らしい声を遮って割り込んできた。
ばんばんとコンソールを叩く音まで聞こえる感じからして、相当にイラっとしているのだろう。
ふと、訪れた静寂の後……。
「ヴリちゃん!狂竜咆哮で敵諸共吹っ飛ばしてしまうのですわ! ばうばう!」
聞こえてきたのは、不穏な
命令と『ヴリトラ』ではなく、メサイアの吠え声。
メサイアと『ヴリトラ』から放たれた衝撃波を伴う猛々しい咆吼が谷を揺るがし、岩を削りながら、ばら撒かれたクナイと『霧影』をも吹き飛ばしていく。
「おほほ!わたくしが怖いでしょう? なら早く降参なさって? 降参しないとぶち抜いてしまいますわよ〜! ……って、あら?」
見れば『霧影』のコックピットから、パイロット達が強制的にベイルアウトされていた。あまりの恐怖に声を出すこともできず、これが降伏の印、ということなのだろう。
予備兵力すら失った『リーゼン』の襲撃部隊は壊滅し、残るのは隊長機――オブリビオンマシンのみ。だが油断はできない。猟兵が『埒外』であるのと同じように、オブリビオンマシンもまた『埒外』なのだから。
大成功
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第2章 ボス戦
『H・O・P・E』
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POW : Harmony=Origin
【高速】で敵の間合いに踏み込み、【爪による攻撃】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
SPD : Origin=Peaceful
【機械仕掛けの無数の羽根】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : Peaceful=Emotion
【操縦サポートAIが起動し、自動操縦モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
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●
コックピット内のレーダーから味方を表す緑の光点が全て消え、複数の赤い光点が近づいてくる。
「全滅……全滅だと? 一個大隊が全滅したというのか? しかもあの完璧な初動の奇襲から!」
ぎり、と音が聞こえそうな力で奥歯を噛みしめる。
……そうか、そうなのか。これが猟兵、我らが『希望』を打ち砕くものたちか。
『猟兵』と呼ばれる傭兵の噂は聞いていた。神出鬼没のエース集団、その力はたった1機で10機のキャバリアと渡り合うと聞いたこともある。
実際に見るまでは誇張だと思っていたが、どうやら噂はほんとうだったらしい。
『あの声』もそう言っていた。
『猟兵はリーゼンの、そしてお前の希望を砕くものたち。殺せ、全て殺せ』
それが成就の道なのだと、俺に希望をもたらした声は言っていた。
「ならば殺そう」
部隊の壊滅など些細なことだ。俺が猟兵を殺し、そして全てを奪えばいい。それで元通りだ。いやむしろ足手まといがいなくなったぶんやりやすいかもしれない。
俺は『あの声』に導かれた同志とともにすべてを手に入れる。そのための人手は必要だが、そんなものはあとでどうにでもなる。
大事なのはあの積み荷を奪うこと。ならば今は俺だけ……俺と、この機体があれば十分だ。
「くるがいい猟兵。俺の希望の贄としてくれよう」
『H・O・P・E』はその翼を大きく広げると、迫り来る猟兵たちを迎え撃つべくふわりと浮き上がった。
--マスターより--
今回は谷の出口に陣取ったオブリビオンマシンとの純戦になります。
戦闘自体に制約などはありませんが、戦略兵器クラスの広範囲殲滅兵器などを使ってしまうと、谷が崩れ、通行不能になったり、最悪輸送隊が生き埋めになったりになってしまう可能性もありますので、注意してください。
プレの受け付けは7/29(金)8:31~とさせてください。
みなさま、よろしければ第二章もお願いいたしますですね。
ノエル・カンナビス
H・O・P・Eですか。
これとは交戦経験もあり、データも持っています。
特段の改造もされていないようですし、問題はありません。
先制攻撃/指定UC。
羽根の数が多かろうと、ガーディアン装甲の近接防御衝撃波で、
カウンター/武器受け/咄嗟の一撃/衝撃波/吹き飛ばしという所で
空間を確保して抜けるだけですし――自動制御なので楽々です。
長射程のビーム砲台でも並べた方が良かったのではありませんか。
まぁ、相手の心配をする義理もありません。
索敵/見切り/操縦/推力移動/空中機動/軽業の真っ向勝負です。
貫通攻撃/ライフルと範囲攻撃/キャノンの組み合わせで2回攻撃、
どちらも高出力ビームですので鎧無視攻撃が乗りますよ。
イクシア・レイブラント
公序良俗に従い、他の猟兵に迷惑をかけません。
多少のダメージは歓迎、「いい勝負」を望みます。
よろしくおねがいします。
* * *
「指揮官機を確認。交戦を開始する」
彼らは隣国に怯える境遇に我慢ができなくなった。
オブリビオンマシンの声がなくともいずれれは暴発したかもしれない。
「だけど、あなたたちの暴走はここで止める」
高速飛行は得意分野。ジェットパックの【推進移動】【滑空】で近づいて【空中戦】。
大型フォースブレイドを使い、【鎧無視攻撃】で攻撃を行う。
敵の爪による攻撃は【武器受け】と【空中機動】、羽根による攻撃はバリアフィールドで耐えつつ突破と一撃離脱を繰り返す。
ユーベルコードは頃合いを見て使ってみる。
ヴィリー・フランツ
※へヴィタイフーンに搭乗
心情:ようやく大将の御出座しか?なら、さっさと片付けるぞ。
手段:残念だが、既に同型機とは交戦してんだ。
奴の操縦が自動に切り替わりを確認次第、【スーサイダードローン】を1105機出撃。
反応速度が上がっても無差別じゃ意味がねぇな、玩具で遊ぶ猫みたいにドローンを追ってやがれ、中のパイロットが急制動のGの中でも生きていられたらの話だがな。
堪えかねて手動に戻したら、温存してたピラニアミサイルを全弾発射、これで勝負を決めてやる。
敵の攻撃は、まぁ装甲で受け止めたりマチェーテの切り払いで対応だな、その辺は他の猟兵と連携しながらうまく対応するさ。
『リーゼン』奇襲部隊を文字通り蹴散らした猟兵たちが谷の出口へと迫る。残っているのは指揮官機ただ1機。
ただ猟兵たちは知っていた。先ほどの『霧影』も、個々の操縦技術、部隊としての統制、全てがハイレベルな精鋭部隊であり強敵だったが、あれは通常のキャバリア部隊。しかしいま谷の入り口を塞ぐあれは『オブリビオンマシン』だ。
機体のスペックもクロムキャバリアとして高いだろうが、それだけではない。怨讐とも言うべき未知の力がパイロットの思考を狭め、その妄執と狂気に犯された恐るべき敵なのだ。
けれど……。
「指揮官機を確認。交戦を開始する」
先行していたイクシア・レイブラント(鎧装騎兵/空戦仕様・f37891)には恐怖も怯みもない。目視で敵を確認すると、短く、しかし淀みない通信を残して、ジェットパックのバーニアを噴かすと、谷の上空へ大きく舞い上がり『殲禍炎剣』に捉えられるぎりぎりでバーニアをカットし、フォースブレイドを構えると滑るように敵への突撃をかけた。
イクシアが舞い上がり攻撃の体勢を整えた頃、それにタイミングを合わせるように2機のキャバリアが砂煙を上げながら『H・O・P・E』に迫った。
「ようやく大将の御出座しか?」
ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)が、翼を広げ浮遊する機体をその視界に捉え、大儀そうに吐き出せば、
「『H・O・P・E』ですか……」
モニターに映る機体を確認した、ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は静かに呟く。
翼を持つ純白の機体。2人はそれを知っていた。
「悪いが、既に同型機とは交戦してんだ」
「ええ。データも持っています。特段の改造もされていないようですし、問題はありません」
大きく翼を羽ばたかせ、羽根を舞い散らせる『H・O・P・E』を見てヴィリーが不敵に笑えば、ノエルが冷静に彼我の戦力差をはじき出す。
さっさと片付けるぞ、とヴィリーの『HL-T10 ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ』が装甲を盾に前に出ようとすると、ノエルがそれを制するように『エイストラ』にナノクラスタ装甲を纏わせスピードをあげた。
「あの羽は任せてください」
空間を埋め尽くすようにばら撒かれた羽根【
平和を生み出すもの】が全天から『エイストラ』に襲いかかったその瞬間、ノエルの瞳が輝き『エイストラ』が舞う。裏拍でステップを踏むようなその動きを羽根は捉えることができない」。
長射程のビーム砲でも並べられたほうが厄介でしたね。と涼しい表情のまま攻撃を躱し、羽根よりも軽やかに踊りつつ衝撃波を放つと、羽根が吹き飛ばされ千々に砕けた。
『あれを躱すか!』
コックピットから聞こえた驚愕と感心をないまぜにした叫びに、『H・O・P・E』の
戦闘用AIが応えた。
超高速機動。およそ人の身にはなしえないその機動が『エイストラ』の舞を速度でねじ伏せる。速度勝負の近接戦闘に持ち込まれた『エイストラ』が致命傷を負わずに済んでいるのは、ひとえにノエルの技量によるものではあったが、それも限界に近い。
(押し切られる……!)
ノエルの頬を一筋の汗が流れたそのとき、『H・O・P・E』が弾け飛ぶような勢いで離脱していく。そして半瞬前に『H・O・P・E』のいた位置を爆発の炎が埋め尽くし、それによってできた隙間にヴィリーが『HL-T10 ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ』をねじ込んだ。
「しばらくそいつらとじゃれてやがれ」
ヴィリーの『スーサイダードローン』――1105機からなる自爆型ドローンの編隊が『H・O・P・E』を追い囲むと、少数の編隊に分かれて高速機動での突撃を繰り返していく。
『H・O・P・E』のAIはさらに機体のギアをあげ、ドローンの突撃と爆風を躱すと、さらに翼から放たれた羽根がドローンに突き刺さり誘爆を誘った。
まさに神速。猟兵たちでさえ目を見張るスピードを持って、ドローンを撃ち減らしていく『H・O・P・E』だったが、
「反応速度が上がっても無差別じゃ意味がねぇな」
あの機動は中のパイロットのことは考えられていない。どんなに高性能な耐Gスーツを着用していても、人はあのシェイクに耐えられない。
変化はドローンの数が1/3ほどにまで減ったときに訪れた。『H・O・P・E』の動きが変わり、突撃を駆けてくるドローンだけを撃ち落としはじめたのだ。
(頑張ったほうだな)
明確に意思を持った動きに、ヴィリーはパイロットが限界を迎えたことを見て取ると、残りのドローンを一斉に突撃させていく。
それでも致命傷を避け続ける『H・O・P・E』の動きは驚嘆すべきものではあったが、褒める気にはならなかった。なぜならそれは、爆風により自らの目を潰す行為だったからだ。
「あなたたちの暴走はここで止める」
イクシアが音もなく空を滑り、爆風により舞い上がった煙を突き抜けると、バーニアを一気に全開まで噴かして加速をかけた。この間合いならば、いかな『H・O・P・E』であっても躱しきることはできない。
『リーゼン』は「隣国の脅威に怯えて過ごす」という可能性からくる恐怖に我慢できなくなったのだろう。オブリビオンマシンの声がなくともいずれは暴発したかもしれない。
だがそれならそれで構わないのだ。国が、人がそれを選んだのであれば猟兵が介入することはない。問題はオブリビオンマシンが糸を引いているということなのだ。それを許すことはできなかった。
横薙ぎに振るわれたフォースブレイドの一撃が装甲を溶かし、内部フレームにまで届く一撃に機体が揺らいだ。
しかし、それだけのダメージを受けてなお『H・O・P・E』の爪はイクシアに襲いかかってくる。高速機動ゆえの弱点、大きく読みやすくなる旋回半径を狙われたのだ。すれ違いざまに振るわれた爪はフォースブレイドで弾き飛ばしたが、さらに機体を捻って繰り出された一爪が身体を掠めバリアフィールドを斬り裂いていく。
竜巻のような『H・O・P・E』の旋風機動から反転上昇で逃れようとするイクシアを狙い振るわれた三撃目を、肉厚の刃が受け止め火花を散らした。
「まだそこまで動けるのは驚きだが、好きにはさせねぇよ」
『ヘヴィタイフーン』の『マチェーテ』と『H・O・P・E』の爪。両機のアクチュエーターが悲鳴を上げそうな力比べの末、『マチェーテ』が爪を溶断し、その直後刃が砕け落ちた。
溜め込んでいたパワーを逃がしきれず2機がバランスを崩した直後、『H・O・P・E』が一条の光に貫かれ、その機体が立ち尽くした。
『H・O・P・E』の目の前に立つ『エイストラ』。その右手に構えられた『プラズマライフル』と肩から伸びる『プラズマキャノン』から、電子の残滓が弾けていた。
たたらを踏んですれ違い、『ヘヴィタイフーン』と『H・O・P・E』の位置が入れ替わる瞬間を狙って放たれたノエルの一撃は、イクシアが斬り裂いた痕を寸分違わず貫き、その傷口を広げつつ、駆動系の制御回路を一時的に麻痺させたのだ。
「いまです」
ノエルの冷徹な一言に、機体を立て直したヴィリーがトリガーを引くと『ピラニアミサイル』の轟音がその静かな声音をかき消していく。
『ヘヴィタイフーン』の肩から放たれた8発のミサイルが喰らいつき、その機体を吹き飛ばすが『H・O・P・E』はまだ倒れない。
『……機体各部、安全装置解除。フォースリアクター、イグニション』
上空へと舞い上がっていたイクシアもまた、ノエルの言にその身を翻し無音で翔ける。だが今度は滑空ではない。音速を遙かに超える速度に音がついてこられないだけだ。
全ての音を置き去りに、翡翠の弾丸と化したイクシアのフォースブレイドが『H・O・P・E』を貫き、遅れてきた衝撃波が機体を谷壁に叩きつけた。
わずかに機体を捻ることができたのは、操縦者の腕か、オブリビオンの執念か。腰部のフレームを両断される代わりに右の翼をもぎ取られた『H・O・P・E』がゆらりと動く。
「まだ動ける……!」
そんな声が聞こえてきそうなぎこちない動きだった。
大きな手応えはあったが、猟兵たちの機体の損耗もエネルギー残量も限界に近い。とどめを刺せなかったことは口惜しいが、ここで無理をする必要はない。こちらにはまだ頼もしい仲間が残っているのだから。
そう思い、3人は目隠しの弾幕を張ると、機体を休めるべく後を託すのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
メサイア・エルネイジェ
おほほ!
貴方がけしかけたおキャバリアは全部スクラップにしてしまいましたわ
次は貴方の番でしてよ
覚悟はよろしくて?
地形は一本道の谷間…閃きましたわ!
ですが弾がありませんわね
先程ぶっ放し過ぎてしまいましたわ〜!
なんですヴリちゃん?クイックドレスチェンジで再装填しろと?
なるほど!ヴリちゃんは賢いですわね!
お準備完了!
ガンフューラーユニット
フルバーストですわ〜!
ビームガンにキャノンにミサイルの特盛セットでしてよ!
どんなに素早くても縦に長く横に狭い谷間では弾幕から逃れる術などございませんわよ〜!
勿論近付けばそのまま蜂の巣ですわ
わたくしに出会った不幸を呪えばよろしいのですわ〜!
コニー・バクスター
「いよいよボス戦だね! コニー、頑張る☆」
コニーがBRRに乗り引き続き登場。
今回も交戦中の地帯から離れた別の谷間で。
基本的にここから狙撃する。
最前線は前衛得意な味方に任せてコニーは後衛に回るよ。
敵は接近戦が危なく強いタイプだから近距離に来ないように気を付ける。
『狙い撃て! コニーの黒き兎!』
UCのラビット・バスター・ライフルで敵を狙撃していくよ!
我彼の距離はレベルの二乗m(約10,000m)の超遠距離攻撃だね。
狙撃で敵の装甲にダメージを与える事と注意を逸らす役を引き受けるよ。
コニーが狙撃で敵の隙を作ったら皆で総攻撃して欲しいな。
アドリブ、連携歓迎。
シャルロット・バニー
ふっ
堂々と待ちかまえるとはなかなか潔いですね!
ならばこちらも名乗らねば失礼というもの!
無限!不思議!究極!愛!
誕生!無敵の可愛さ爆発ぼくらのウサギ王!
さぁ、ウサウサMk2の実力思い知りやがれですよー!
ピンク色のエプロンドレスを可憐に翻しながら
巨大ピコピコハンマーを華麗に振り回し、敵の高速の爪攻撃も受け止めていきましょう
スーパーロボットだから動きが鈍いとか思いましたか?
それはウサウサを嘗めすぎです
もちろんスパロボなので多少の損害も何のその
エプロンドレス破かれるのはちょっといや~んですけどもっ
そして射程に入ったらいざ受けやがれです
最大最強の一撃【黄金の衝撃】で光になりやがれええええ、ですぅ!
弾幕による煙が晴れたそこにいたのは、2機……いや2頭というべきだろうか……の獣型キャバリアだった。
「舐めるなよ猟兵。まだたかが飛行ユニットを持っていかれただけだ!」
腰部に深い傷を負い、翼を散らしながらも『H・O・P・E』の両足はしっかりと大地を踏みしめ、その力はまだ衰えたようには見えない。いや衰えるどころか、どす黒いオーラは目に見えそうなくらいに膨れ上がり、圧力となって猟兵たちを押し潰そうと機体とともに立ちはだかる。
それを見て、首のない巨大なウサギの着ぐるみの上に立ったシャルロット・バニー(ヴォーパルバニー・f30079)が、ふっ、と笑いながら髪をかき上げた。
「堂々と待ちかまえるとはなかなか潔いですね! ならばこちらも名乗らねば失礼というもの――!」
言って、とうっ、と大きく跳ねるとなにかのバンクシーンのようにシルエットになったシャルロットがウサギの頭部へとモーフィングし、着ぐるみとフュージョンする。
『無限!不思議!究極!愛! 誕生!無敵の可愛さ爆発ぼくらのウサギ王!』
谷を揺るがすピンク色の爆発を背に着ぐるみスーパーロボットがポーズを決める。
『さぁ、ウサウサMk2の実力思い知りやがれですよー!』
外部スピーカーから声を響かせながら、巨大ピコピコハンマーを華麗に振り回し、二足歩行のウサギが谷を走りぬけていく。
「おほほ! シャルロット様がウサギ王なら、こちらは龍王ですわ!」
シャルロットの名乗りに続きメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)が高らかに叫べば、その身を大きく猛らせた
ヴリトラの背で蒼光が煌めいた。
「貴方がけしかけたおキャバリアは全部スクラップにしてしまいましたわ。次は貴方の番でしてよ」
覚悟はよろしくて? とばかりに龍王の瞳がギラリと光る。
そしてもう一頭。キャバリアのレーダーレンジにすら入らないポジションでスコープ越しにこの光景を見つめる瞳があった。
「いよいよボス戦だね! コニーも頑張る☆」
ブラック・ラピッド・ラビットのコックピットで、コニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)が呟いた。自らの声が頭蓋に響き、脳と瞳をほぐしていく。狙撃に過度の緊張は厳禁である。凝り固まった思考は判断を狂わせ、震える瞳と指先がその精度を落とす。
超遠距離からの射撃を得意とするコニーはそのことをよく理解していた。だからこその発声、そして、軽い口調なのだ。
片時たりともスコープからは目を離さず、それでいて適度な緊張と高揚を保ちながら、コニーは最適な『時』を待つ。
『H・O・P・E』をめがけて前を走る『ウサウサMk2』の背を見ながらメサイアは思う。地形は一本道の谷間、射撃には絶好の状況だ。ヴリトラ・ガンフューラーの一斉射撃ならば避ける隙間など与えない斉射ができる……のだが。
「弾がありませんわね」
輸送隊を守るためとはいえ、多数の『霧影』相手に固定砲台のようなぶっ放し戦法をとっていたため、弾薬がつきかけていたのだ。コクピットで悩むメサイアに『ヴリトラ』の声が響いた。
「なんですヴリちゃん?
クイックドレスチェンジで再装填しろと?」
なるほど! ヴリちゃんは賢いですわね! パン、とひとつ手を打つと、大きく頷きながらメサイアが青い瞳を輝かせる。
「お準備完了! わたくしに出会った不幸を呪えばよろしいのですわ〜!」
ヴリトラ・ガンフューラー
フルバースト。
ビームガンにキャノンにミサイルの特盛セットが狭い谷間を弾幕で満たす。どんなに素早い機体だとしても、空間全てを埋め尽くした弾幕から逃れる術などなかった。
ならば、と『H・O・P・E』は前へ進みでる。
「そのまま蜂の巣になるといいですわ!」
コクピット内のメサイアが
おファッキュなポーズを決めて叫んだ瞬間、『H・O・P・E』の姿が陽炎のようにブレた。戦闘用AIを起動させ、残った翼を盾にして超高速機動で『ウサウサMk2』へと突撃をかけたのだ。
『ヴリトラ・ガンフューラー・フルバースト』その唯一の死角。それがフレンドリー・ファイアを避ける意味で、誘導弾による射撃を行った『ウサウサMk2』の周囲だった。
『H・O・P・E』が無傷、ということではもちろんない。しかし超高速で『ウサウサMk2』へと迫ることにより、弾幕の被害を盾にした翼で受け止め、さらに爪による一撃を目の前のウサギへ叩き込もうとする。
考え得る最適な反撃の一手。
このウサギを斬り裂けば、あとは遠距離特化の龍型のみ。勢いのまま突破し、『シュウェリン』輸送隊の積み荷を奪って離脱すればいい。それで『希望』は成されるはずだ。
「四撃で殺す!」
『H・O・P・E』のパイロットが裂帛の気合いで放った爪撃。しかしその一撃目すら『ウサウサMk2』には届かなかった。
高速の爪撃を、ピンク色のエプロンドレスを可憐に翻しながら、華麗に躱しき……ってはいなかった。大振りの爪がふわりと舞ったエプロンドレスの裾を引っかけ、わずかに斬り裂いていく。
これでもいちおう、一撃目は当たった、ということになるのだろうか?
シャルロットはそんなことを考えながら、いや~ん、とばかりに片手で裾を押さえつつ、相手を踏み台にして一跳ねすると距離を取り直す。
『スーパーロボットだから動きが鈍いとか思いましたか? それはウサウサを嘗めすぎです!』
必殺の連撃をあっけなく躱された『H・O・P・E』だったが、戦意が衰えた風ではない。速度のみの単調な突撃などで仕留められる相手ではないことは想定内でもあったからだ。信じるのはAIなどではない。信じるのは『あの声』と己の技量のみ。
『着ぐるみウサギ』と『希望の鳥』は、獣が間合いを探るように向かい合い動きをとめる。それは『H・O・P・E』がAIによる速度重視の機動から、パイロットの手による精緻な機動へと切り替えたた証だった。隙を探り合う二頭の獣は互い以外が見えていない。そして、そんな大きな隙をコニーが見逃すはずはなかった。
限界まで息を吐き出し、肺を潰して身体を安定させると、トリガーに指をかける。
『狙い撃て! コニーの黒き兎!』
光を吸い込んだ瞳を森の緑に輝かせてトリガーを引き絞ると、『ロングレンジライフル』の銃身から放たれた銃弾が、緩い弧を描き空を切って飛んでいく。
着弾までおよそ7秒、6・5・4・3……。瞳をゆっくりと閉じ数えた。コニーが再び瞳を開いた時スコープの中の『H・O・P・E』は左肩を大きく抉られ、上体を捻り――首をぐるりと回し、青いアイセンサーをコニーに向けて輝かせた。
(まさか……捉えられた!?)
見えるはずのない距離からの視線に射貫かれ、コニーの背を冷や汗が流れる。しかし次の瞬間スコープに映る機体が爆風に包まれ、真っ赤に染まる視界にコニーは思わず瞳を閉じた。
オーバーフレームを捻り転倒を防いだ『H・O・P・E』に光条と質量の雨が襲いかかっていく。
「残りのお弾薬、全部持っていけですわ~!」
『H・O・P・E』の左肩が弾けたと同時に引き金を引いたメサイアが、刹那的トリガーハッピー状態のまま叫び、それに応えた『ヴリトラ・ガンフューラー』が高密度の弾幕を叩きつけていく。
弾幕の勢いで谷壁に押しつけられた『H・O・P・E』が、盾にしていた残りの翼を今度こそもぎ取られながらも射線から逃れたとき、その目の前にはエプロンをひらめかせたウサギが立っていた。
「
ゴールデン・ラビット・ストライク、セーフティリリーヴ」
機械的なコマンド音声とともに黄金のオーラに包まれた巨大なピコハンが大きく振りかぶられ、そして……。
「光になりやがれええええ、ですぅ!」
魂の叫びを乗せて振りぬかれたハンマーは『H・O・P・E』を強かに打ちのめし、フレームを歪ませながら周囲の岩壁をも吹き飛ばしていく。
谷の出口にまで飛ばされた『H・O・P・E』だが、片膝をつきながらもまだその動きは止まっていない。猟兵へと向けられたアイセンサーはまだ死んではいなかった。
恐るべきはその怨讐。
猟兵たちもまだ戦えなくはないが、このままでは決め手に欠けるのも事実だった。いたずらに戦いを長引かせるよりは次に任せるのが良策といえるだろう。そう判断した3頭のキャバリアは輸送隊の護衛まで引くことにしたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
フレスベルク・メリアグレース
希望ですか
罪無き民を巻き込んでの希望など、滅びてしまえばいい
コックピット内で指を鳴らし、UCを発動
瞬間オブリビオンマシンの操縦サポートAIに『過去より浮かび上がる斬撃』が刻み込まれる
幾ら超耐久力が増強しようとも、自身の過去そのものから浮かび上がる斬撃には対処は不可能
動く前に斬撃を叩き込み、行動不能に追い込みます
我が名を聞きなさい、リーゼンの特殊部隊の指揮官よ
我が名はフレスベルク・メリアグレース
メリアグレース聖教の教皇……
罪無き民の信徒を救うべく、偽りの希望を砕きに推参しました
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
※引き続きフルブースト形態
指揮官機発見なの
急速上昇、殲禍炎剣の射程ギリギリまで上がって相手の射程範囲から離脱
後ろに駆け抜けるの
同時に、魔術式投下指揮官機の周辺にマーキングするよ
旋回、高度低下
今度は地面すれすれにマーキングした魔術陣に向かって一直線に飛ぶよ
魔術式構築、アルターギアの装甲に刻んだ魔術回路も全開にしてオーラ防御の結界を展開
光属性魔術のレーザーで羽を撃ち落とし、結界で防ぎながらまた駆け抜けて、谷の壁に熱・衝撃耐性の結界を張っていくのを誤魔化すよ
駆け抜けて射程外に出たら反転
簡易転移陣起動
インフェルノランチャー、セットアップ
※脇に抱える様に構える超砲身の白い装甲の魔導式プラズマ砲
魔力装填、全力でいくの
壁面防御の魔術陣を展開、マーキング魔術陣からジャミングを放って一瞬動きを止めて、破魔の業火でオブリビオンマシンだけ焼き尽くすの
インフェルノバースト!
余りの威力に墜落して
………、腕部駆動系応答なし
航空制御システムフリーズ…
色々見直しがいるね
え、英雄さんはどうなったの?
ハロ・シエラ
あの機体……なるほど、ロランさんが頑張っているようですね。
私も微力ながらお手伝いしましょう。
この谷の中、生身の人間の方が動きやすい所もあるでしょうしね。
敵の目的が積荷なのであれば、戦闘よりそちらを優先する事もあるでしょう。
そこを狙います。
敵がキャバリアの爪で攻撃してくれば生身の私は4回と言わず1回の攻撃が命中しただけで致命傷ですし、敵もそのつもりで攻撃してくるでしょう。
そこを【騙し討ち】します。
積荷に向かいくる敵目掛け、全力で【カウンター】によるユーベルコードの一撃を叩き込みます。
敵に損害を与えられれば、最後の力でどこかの影の【闇に紛れ】て隠れます。
後は皆さんが上手くやってくれるでしょう。
「噂以上の脅威だ、猟兵。しかしまだ俺も希望を捨ててはいないぞ」
『H・O・P・E』のコックピット内でパイロットはいまさらながら猟兵への認識を改めていた。
その力をみくびっていたと認めざるを得ない。いまのまま猟兵を殲滅するというのは不可能だろう。
そう、いまのままでは。
だからこそ輸送隊の積み荷だけは奪わなければならない。『希望』はその中にあると『あの声』は言ったのだから。
猟兵の殲滅は無理でも任務の遂行はまだ可能だ。いまは膝を着くときではない。
谷から向かってくる砂煙を確認したパイロットがコンソールを叩き、ダメージパーツをパージして、
操縦桿を引くと、メインフレームを軋ませて『H・O・P・E』が立ち上がった。
フルブースト形態の『アルター・ギア』が狭い谷間を縫うような機動で飛翔していく。狭い谷間を飛ぶことだけでも至難の業であるはずなのに、『アルター・ギア』はその速度をまったく落とす気配がない。
「指揮官機発見なの」
レーダーに映る赤い光点、そして瞳に映る白い影、2つの目で敵機を捉えたロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)が見たのは、軋む全身を奮い立たせるようにして立ちあがり、『アルター・ギア』を待ち受ける『H・O・P・E』の姿だった。
ロランは敵機に向けて突っ込みをかけると、その目の前で逆噴射をかけ、そこから機首を上げ、バーニアを全開にして急速上昇していく。
ロランの操縦技術、『アルター・ギア』の性能、どちらが欠けてもできないだろう立体機動のような動きで、ロランは『H・O・P・E』の射程範囲から離脱しながら魔術式を投下し、その機体に魔術陣を刻むと、そのまま『殲禍炎剣』の射程ギリギリまで高度を上げて背後へと駆け抜けていった。
「なんだ? なにがしたい!?」
高速機動での衝撃波を叩きつけられバランスを崩された『H・O・P・E』だったが、機体にダメージらしきものはない。それを確認してパイロットはにやりと笑う。
前が開いた。
『H・O・P・E』が輸送隊に向けて急加速をかける。時折火花を散らす歪んだフレームでこの動きができること自体が脅威だが、なにより『H・O・P・E』のパイロットは後のことなど考えていなかった。
積み荷さえ奪えばなんとでもなる。そう思い込み輸送隊へと迫る。しかしその背を反転降下してきた『アルター・ギア』が追い、地面すれすれまで急降下すると『H・O・P・E』の魔術陣をめがけてさらに加速をかける。
背に迫る『アルター・ギア』を関知した『H・O・P・E』が、もがれたはずの翼を広げる。しかしそれは以前とは違う黒い、影のような翼。それは大きく羽ばたくと『アルター・ギア』を迎撃すべく影羽根を散らした。
「魔術式、構築」
『アルター・ギア』の装甲に刻まれた魔術回路が輝きを増すと、レーザーが斉射され影羽根を撃ち落とし、落としきれない羽根は機体を包む魔術障壁が弾いていく。
そのまま敵の背を追い越しながら撃ち込んだレーザーの斉射が土煙を巻き上げて、視界を奪い、わずかに『H・O・P・E』の速度を鈍らせた。
そしてそれと同時に機体に浮かび上がった魔術陣が放たれ、その術式が谷壁に吸い込まれていく。
「
あの機体……なるほど、ロランさんも頑張っているようですね。私も微力ながらお手伝いしましょう」
谷という地形の特性上、道は限られている。故に、キャバリアのような5mクラスの機体ではどうしても動きは限られてしまう。
そう考え、他の猟兵たちとはタイミングをずらして転送されてきたハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、輸送隊に紛れ護衛役を買って出ていた。
『リーゼン』の奇襲部隊は全滅させた。
けれどオブリビオンマシンはまだ健在だ。敵の目的が積み荷であれば、いざとなれば戦闘よりそちらを優先してくるだろう。
もし『H・O・P・E』がここまでくるのなら……。
大きな砂煙がこちらに迫ってくるのをハロが確認したのは、そんなことを考えていた時だった。間の悪いことに他の猟兵たちは輸送隊から離れているか、機体が整備中。いま輸送隊を守れるのはハロだけだった。ハロは迷わず輸送隊への接近を阻むべく前に出る。
「あれも猟兵か? キャバリア相手に生身とは、いくらなんでも過信が過ぎる!」
行く手を遮るように進み出るハロを見て、『H・O・P・E』のパイロットは溜めていた苛立ちを爆発させた。ここまで猟兵には煮え湯を飲まされっぱなしだ。ここで一人でも数を減らせるなら、それに越したことはない。
「積み荷のついでで悪いが、潰させてもらう」
『H・O・P・E』の攻撃をハロは生身ならではの変則的な動きで躱しながら、その足を止めにかかる。
岩壁から地面へ、そして岩陰に潜み、また岩壁へ。動きを言葉にするとシンプル。だが、その一つ一つが死と隣り合わせの極限の動きだ。
1回でも攻撃が当たれば、『H・O・P・E』の爪は生身であるハロの身体など、容易く斬り裂くだろう。
極度の緊張を強いられる攻防の繰り返しに、ついにハロがバランスを崩した。足場にした岩が崩れ、踏ん張りのきかないまま地面へと滑り落ちたのだ。
棒立ちとなったハロに鈍く光る爪が横薙ぎに襲いかかる。
「殺った!」
『H・O・P・E』のパイロットは、そう確信しただろう。しかし……。
「それが狙いです」
ハロの瞳が燃えるように輝き、『リトルフォックス』から噴き上がった炎が巨大な炎剣となって繰り出された。
「ちぇえすとぉおぉおぉおぉぉぉぉ!」
裂帛の気合いとともに放たれた全身全霊の斬撃が『H・O・P・E』の右腕、肘から先を斬り飛ばし、ハロは残る力を振り絞り岩陰に飛び込み影に紛れる。
(ここまで時間を稼げば、皆が戻ってきてくれる――)
「すさまじい斬撃ではあったが、一撃でガス欠ではな!」
影に紛れたハロの姿を『H・O・P・E』のアイセンサーは、熱感知で浮かび上がらせていた。
『H・O・P・E』に残された左腕、振り上げられた先端の爪がギラリと光る。
岩陰で膝を着いたまま動けないハロに狙いを定め、いままさに振り下ろされようとしたそのとき、『H・O・P・E』の腕を白きキャバリアの御手が掴んだ。
「我が名を聞きなさい、『リーゼン』の特殊部隊の指揮官よ。我が名はフレスベルク・メリアグレース
メリアグレース聖教の教皇……罪無き民の信徒を救うべく、偽りの『希望』を砕きに推参しました」
神機の名にふさわしき威容。フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)の駆る『ノインツェーン』は、機体から魔力のオーラを立ち上らせながら、掴んだ左腕を強引に引いて『H・O・P・E』を自らの目の前に引きずり出すと、ハロとの間に立ちはだかった。
「罪無き民を巻き込むあなたの名が『希望』とは皮肉ですね」
民を犠牲にして得られる希望などありえない、と、フレスベルクが憐れむようにいう。
しかし『H・O・P・E』は、パイロットは答えない。かわりにアイセンサーを輝かせ影羽根を舞わせると『ノインツェーン』めがけて撃ち込んでくる。
フレスベルクはその攻撃を敢えて躱さず、受けきってみせた。
「そうですか……ならばそんな『
希望』など、滅びてしまえばいい」
凜と宣告し、フレスベルクがコックピット内で指を鳴らすと、その瞳がユーベルコードに輝き、『ノインツェーン』を包むオーラが黄金に輝く。
瞬間『H・O・P・E』のコックピット内でアラートが響き渡り、ディスプレイがエラーメッセージでうめつくされた。『過去より浮かび上がる斬撃』がAIのプログラムを切り刻み、回路がオーバーロードをおこし、ディスプレイが罅割れ火花を上げる。
青いアイセンサーが明滅を繰り返し、『H・O・P・E』の動きががくりと止まった。フレスベルクは左腕ごと振り回すようにして『H・O・P・E』を放り投げ距離を取ると、『ノインツェーン』の大上段からの斬撃で左腕を肩から切り飛ばした。
両腕を失った『H・O・P・E』めがけて、『アルター・ギア』が再び反転降下をかける。動きが止まっているいまが好機だ。
「簡易転移陣起動。インフェルノランチャー、セットアップ」
宙に描かれた魔術陣から転送されてくるのは『インフェルノランチャー』。魔導の粋を尽くし、非実体の存在さえ焼き尽くすプラズマ砲だ。
通常形態に戻った『アルター・ギア』がその白く巨大な大砲を脇に抱えるように構えると、魔力供給回路を兼ねたホールドラッチが砲身を固定する。
「魔力装填開始、全力でいくの」
ロランと『アルター・ギア』から、魔力がランチャーへと流れ込んでいく。
72……78……90……。
「レディ」
ロランのコマンドを受けて、谷壁に無数の耐熱・耐衝撃魔術陣が積層展開されていく。これで谷が崩れることはない。
102……112……120!
エネルギーゲージが最大まで満たされて、砲身からは抑えきれない魔力が放電という形で溢れている。ロランはターゲットスコープの中央に『H・O・P・E』を捉えると、躊躇なくトリガーを引いた。
「インフェルノバースト!」
破魔の業火が周囲一体を埋め尽くし、視界が蒼白で染め上げられる。谷では防御術式を展開していてなお落石が起こり、着弾地域の状況など掴むことすらできなかった。
「………」
ロランが気がついたとき『アルター・ギア』は地上に横たわっていた。
『インフェルノランチャー』にエネルギーを全て持っていかれて、機体が墜落し始め、なんとか立て直そうとしたところまでは覚えているが、どうやら着陸には失敗し、衝撃で少しの間気を失っていたらしい。
それでもなんとか生きているのは、緊急着陸のシステムが働いてくれたからだろう。
コックピット内にはいまもアラーム音が鳴っている。
『腕部駆動系応答なし』
『航空制御システムフリーズ』
『魔力残量0.3%』
赤く染まったディスプレイにアラートが止めどなく流れていく。
(色々見直しがいるね)
姿勢制御もなにもあったものではなかった。あらゆる意味で威力が強すぎるのだ。
そんなことを思いながら周囲の状況を確認するが、そこに『H・O・P・E』の姿は見えない。手応えはあったが『H・O・P・E』を撃破したという感じはない。けれどこれ以上の戦闘続行は不可能だった。
ロランはハッチを強制開放すると仲間たちに救助を求め、3人は輸送隊のいる場所へと向かうのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
セレーネ・ジルコニウム
「谷の出口に陣取ったオブリビオンマシンですか。
ミスランディア、ストライダーからの戦略兵器で殲滅しちゃいましょう!」
『セレーネよ、そんなことをしたら、最悪輸送隊が生き埋めじゃぞ』
くっ、なんて卑怯な手を使ってくる敵でしょうか!
こうなったらスティンガーで撃破してみせます!
『敵機、サポートAIによる自動操縦に切り替わったようじゃ。
セレーネよ、こちらもわしの優秀なサポートを見せて――』
「ふっ、ここは私の天才的な操縦テクニックを見せましょう!」
狙撃フレームのスナイパーライフルを構えて、勘で狙撃をおこないます!
「たぶん、このへんっ!」
『なんかベテランっぽいセリフじゃが、お主の腕では勘で当てたりできんぞ!?』
シャナミア・サニー
うっし!レッド・ドラグナー復活!
コンディション確認してっと、こっちもオッケー
じゃあ突っ込むとしようか!
谷の出口って場所に制限があるなら
【メインウェポン・チェンジ】で
スチームエンジン・ハンマーガントレットに換装
他の武器持てなくなるけど接近戦で殴り倒す!
そう言う戦い方が得意なのはそっちだけじゃないってこと!
くるがいいって言われたから行くよー?
カッコつけてて押し負けると恥ずかしいぞー?
と挑発しつつも
4回喰らうとヤバいのはしっかり対処しないとね
まぁ爪を狙って殴って弾き飛ばすだけなんだけどさ!
4回攻撃が成立する前に
加速と質量と上記の力を乗せた一撃を叩き込む!
問答無用で吹っ飛べ!
あと、色々とやかましいっ!
スルーズ・イデアール
そっちにも「希望」があるんだね…
でも、同じ希望を抱いた人達を省みないんじゃ、その希望がみんなを苦しめる事になる…!
引き続きキャバリア側の私と一緒に戦闘していくよ
マルチライフルで牽制しながら
敵が攻撃体制に入ったら
回避しながらライフルとダブルダガーで迎撃
特に接近戦の状況…敵が爪での格闘を仕掛けてきたら回避を重視するよ!
そして、攻撃の後の隙を狙って
迎撃に使った武器に加え、バックキャノンも使って攻撃!
その際はキャノンを多く当てれるように意識していくよ
敵が自動操縦モードに入ったら
Boot:FenrirModeを起動!
機動力を活かしてしっかり回避しつつ
一撃離脱戦法で引き付けつつ
翻弄しながら攻撃していくよ!
両の腕を失い、右足は半ば溶け落ち、機体の各部から火花を上げながら、それでも『H・O・P・E』は生きていた。
あのプラズマの光の中パイロットは敗北を悟った。しかしその敗北感と同じだけ膨らんだ怨讐がオブリビオンの力と混ざり合い『H・O・P・E』を生かしたのだ。
「俺は負けた。俺では勝てない。だからお前に俺をくれてやる」
そして、猟兵を……『あの声』の仲間とともに我らの『リーゼン』を……。
『あの声』への盲信はパイロットに自らを贄として捧げさせ、その命を吸い上げた『H・O・P・E』は黒き『負の希望』へと変貌を遂げていく。
パイロットの生命力を糧にその力を取り戻した『黒きH・O・P・E』が、猟兵へと立ちはだかる――。
「谷の出口に陣取ったオブリビオンマシンですか。ミスランディア、ストライダーからの戦略兵器で殲滅しちゃいましょう!」
『セレーネよ、そんなことをしたら、最悪輸送隊が生き埋めじゃぞ』
「ええっ、そんなぁ」
『それ、もうやった』
地上で『レッド・ドラグナー』のリブートをかけていた、シャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)が、通信機から聞こえてきた、どこかで聞いたやりとりに思わずツッコミを入れるが、
「くっ、なんて卑怯な手を使ってくる敵でしょうか! こうなったらスティンガーで撃破してみせます!」
セレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)はめいっぱい聞こえないふりをして踵を返すと、少し慌てて『ストライダー』の艦橋から出て行った。
先の戦いでセレーネは機体にダメージを、シャナミアは機体のシステムダウンを起こしており、2人は一時後方に下がって機体の調整をしていたのだ。
『うっし! 『レッド・ドラグナー』復活! コンディションもグリーン。こっちはオッケー!』
OSのリブートを終えたシャナミアからの通信に、
「こちらも準備完了です。スティンガー出撃します!」
なぜかチアのボンボンを振る整備班に見送られ、そしてなぜか頬を赤らめているセレーネの『スティンガーⅡ』がカタパルトから射出され、『レッド・ドラグナー』がスラスターを噴かしそれを追う。
2機のキャバリアが再出撃を完了したころ、スルーズ・イデアール(レプリキャバリア・f30206)は『黒きH・O・P・E』を捉え、それと対峙していた。
相手にも『希望』はある……それは解っている。しかし、人を省みることのない希望は、みんなを苦しめることになるということを、スルーズは知っていた。
そして目の前にたつ『黒き希望』は、それを具現化したかのように禍々しい。
前へと進み出ようとする『H・O・P・E』の足下にスルーズがマルチライフルを撃ち込みその足を止めようとするが、『H・O・P・E』は何事もなかったかのように歩を進め、ゆらりと前のめりになると、そのままスルーズへ向かって加速をかけた。
一直線に向かってくる『H・O・P・E』を真正面に見据え、スルーズがライフルをフルオートで斉射して迎え撃つ。が、しかし『H・O・P・E』は交差させた腕でライフル弾を受け止め、それを弾きながら懐に入り込み両腕を広げた。
胴を薙ごうと振るわれた爪を『スルーズゲルミル』はダブルダガーで受け止めて、その身を翻し力を受け流して体を入れ替え、零距離からのバックキャノンの一撃で『H・O・P・E』を弾き飛ばした。
再び開いた『スルーズゲルミル』と『H・O・P・E』との距離。そこに実弾とビームが撃ち込まれた。爆風を避けて飛び退き、さらに広がった2機の間に『レッド・ドラグナー』が突っ込んでいく。
「くるがいいって言われたから行くよ?」
それを見たシャナミアの緑の瞳が輝くと、機体を光が覆い、機械仕掛けの籠手が両腕を飾る。
「カッコつけてて押し負けると恥ずかしいぞー?」
量の拳をガツンと合わせ『レッド・ドラグナー』が煽ると、それに応えるように『H・O・P・E』がその爪を大きく振りかぶり構えをとった。
間合いが詰まる。
2機がほぼ同時に加速をかけ、轟音と火花を上げながら打撃を打ち合う。左の爪を右の拳が弾き、左の拳は右の肘に打ち落とされ、膝と膝がぶつかりあう。
「
そういう戦い方が得意なのはそっちだけじゃないってこと」
さぁ、まだまだやり合おうか――!
超高速での打撃を、時には躱し、時には受けとめ、赤竜と黒鳥の接近戦は
致死の四連撃どころか、互いに一撃目すら入れることができないまま続いていく、が、一瞬の揺らぎがシャナミアを襲った。
生身と偉業の差……極度の集中、その限界がきたのだ。
防戦に追い込まれ、徐々に押されていく『レッド・ドラグナー』に三撃目が入ろうとしたとき、振り上げた『H・O・P・E』の爪が大きく薙ぎ払われ『スルーズゲルミル』の砲弾を弾き飛ばした。
続けて放たれるキャノン砲の攻撃を『H・O・P・E』は後方へジャンプして躱すと、周囲に黒い羽根を撒き散らして視界を遮り、高速機動でセンサーからもかき消える。
『敵機、サポートAIによる自動操縦に切り替わったようじゃ。セレーネよ、こちらもわしの優秀なサポートを見せて――』
「ふっ、ここは私の天才的な操縦テクニックを見せましょう!」
ミスランディアのサポートを途中で遮り、セレーネがコックピットで瞳を輝かせ、どんと拳で胸を叩き、その勢いに多少咳き込みながら狙撃フレームに換装された『スティンガーⅡ』を膝立ちにするとスナイパーライフルを構える。
(いけるのっ?)
一抹の不安を感じつつも、狙いを定める『スティンガーⅡ』を狙われないよう、シャナミアが『レッド・ドラグナー』でフォローし、『スルーズゲルミル』もその援護を固めた。
「たぶん、このへんっ!」
『なんかベテランっぽいセリフじゃが、お主の腕では勘で当てたりできんぞ!?』
「ちょっ!?」
直感に任せて引き絞られたトリガーはミスランディアとシャナミアのツッコミも間に合わず、スナイパーライフルから放たれた大口径弾が、黒羽根の嵐の中に吸い込まれていき――。
命中時のストッピングパワーに弾かれた『H・O・P・E』が、殴り飛ばされたように地面に転がった。
「「『「えっ
!?」』」」
4人の声が綺麗にハモる。
(おい、色々おかしくないか!?)
喉まで出かかったツッコミを飲み込み、地に伏す『H・O・P・E』をめがけてシャナミアが動く。
「吹っ飛べ!」
起き上がろうとする『H・O・P・E』に向け一気に加速をかけると、その速度と重量、そして蒸気炸薬の爆発、全てを打撃力に変えたアッパー気味の一撃が『H・O・P・E』が宙に浮かせた。
ガードすらできない状態に追い込まれた機体に、さらに『スルーズゲルミル』が迫る。
アーマーを脱ぎ捨て、フェンリルモードへと変形した『スルーズゲルミル』は黒い羽根の中を走り抜けると、神話の狼すら凌ぎそうなスピードと威力の連撃を叩き込み『H・O・P・E』を谷の外まで吹き飛ばした。
地面に叩きつけられ、弾けるように転がり、谷外の岩に激突して地に横たわった『H・O・P・E』がぎしりと動く。6つの瞳が見つめる中、膝を立て、立ち上がりそして……フレームごと罅割れ、砕けた。
黒い残滓が宙を舞い、消えていく。
生命力を削って維持していた機体の崩壊。これはすなわちパイロットの死を意味していた。
恐怖と怨讐に塗れた希望は猟兵たちの活躍によって、骸の海へと還った、
猟兵たちは、恐るべき敵から輸送隊を守り切ったのである――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 日常
『キャバリア改造計画』
|
POW : 強化装甲を装備して、パワーアップ!
SPD : 新しい武装を装備して、パワーアップ!
WIZ : 未知の部品を装備して、パワーアップ!?
|
戦いから数日を経て、輸送隊は『シュウェリン』の城門へとたどり着いた。戦闘での犠牲はだしてしまったものの、その後は『リーゼン』からの攻撃もなく、積み荷もすべて回収することができた。
「猟兵さん、ありがとうな。あんたたちが来てくれなきゃ、俺たちは全滅だった」
輸送隊の指揮官である『リック』中尉が猟兵一人一人に握手を求める。
中尉の話だと、任務を成功に導いてくれた猟兵たちには『シュウェリン』政府から報奨金が出るらしい。それと機体の整備や補給などに『シュウェリン』の工廠を使って構わない、かかった金額も必要経費として認めてくれるということだった。
「もちろんその間の行動の自由も保障される」
整備チームといっしょに機体の整備をしてもいいし、ゆっくりと『シュウェリン』観光をしてもいい。北部の国ゆえ、果物などはあまりないが食べ物ならば小麦やパンが美味しいし、それに木工ではかなり有名で、木を使った細工物などは人気が高いとのこと。
「あとは……」
と、中尉がちょっと声を潜めて話し始める。
今回、プラントで見つかったものを持ち帰ってきているので、その研究に立ち会ってもらっても構わないという。
任務の後の自由な時間、しかも費用はすべて政府持ち。なにをして過ごしてもいいということのようだ。
---マスターより---
今回は任務後の日常。自由時間となります。
なにをするかはみなさま次第。ゆっくりと観光を楽しんでもかまいませんし、機体の整備や改造をしてもらっても構いませんし、研究と称してアイテムを開発してもおっけーです。
※誠に申し訳ありませんが、お土産として購入したものや開発したもののアイテム化はシナリオ内ではできませんので、ご自身にて作成くださいますようお願いいたします。
イクシア・レイブラント
時間を見つけて、私は戦いがあったあの谷へ向かう。
人間は死した同胞に追悼の祈りを捧げるものだという。
だから真似をしてみよう。祈る神を知らないから形だけだけど。
「リーゼンに存在する、オブリオンマシンの情報が知りたい」
私は莉緒さんに報告を行い、リーゼンの情報を聞いてみたい。
オブリビオンマシンがあの1機だけとは限らない。
もし、別の誰かが『声』を聞いて惑わされることがあれば、再びリーゼンと戦うことになるだろう。
だけど、リーゼンの国民がオブリビオンマシンに襲われる事件が起きたなら。私は彼らの『希望』として活動したい。―それが、彼らに引導を渡した猟兵の務めだろうから。
オブリビオンマシンとの戦いの痕が生々しく残るこの谷は、『シュウェリン』の人たちには嘆きバンシーの谷と呼ばれている場所だった。
その谷の入り口でイクシア・レイブラント(鎧装騎兵/空戦仕様・f37891)は、ゆっくりと大地に跪き、手を組んで、瞼を閉じる。
「『リーゼン』に存在する、オブリオンマシンの情報が知りたい」
イクシアは谷に向かう前、理緒にそう尋ねていた。
今回『H・O・P・E』は倒したが、『リーゼン』にいるオブリビオンマシンがそれだけとは限らないと考えたからだ。
それに対する答えは「『声』を聞いた者は複数いる」という、少しはっきりしないものだった。イクシアの問いに対してストレートな答えではないが、これからもまだ『リーゼン』と戦う可能性はあるということだろう。
ならば、とイクシアは思う。
彼らの『希望』になったかもしれないもの――たとえそれがオブリビオンマシンに操られた結果だったとしても――を砕いたものとして、もしもこの先『リーゼン』がオブリビオンマシンに害されるようなことになった時は、自分が彼らの本当の『希望』となろう。
それが『希望』を信じて戦った相手へのいちばんの手向けになるであろうから。
深く真摯な沈黙の後、イクシアは瞳を開いて立ち上がった。イクシアの祈りに言葉はない。そもそも祈りであるのかすら解らない。
なぜならイクシアに信じる神はなおらず、この祈りも以前にどこかで見た誰かの真似であったからだ。
それでも、守るべき人たちために命を捧げた戦友と、自らの信念を貫いた敵に抱いた最大限の敬意、そして胸に抱いた想いは確かなものだ。
イクシアは踵を返すと歩き始める。
峡谷には風が吹き抜け、悲しげに聞こえる風の鳴き声が耳に響いていた。
大成功
🔵🔵🔵
コニー・バクスター
理緒と同行したい。
無理そうならPCや一般NPCと。
アドリブ、連携歓迎。
「うぅむ? コニーのBRRは修理が必要だね?」
首を傾げたコニーがシュウェリンの工廠へBRRを修理に出す。
UCリモート・レプリカントでBRRを操って行く。
ところで、理緒はメカニックだよね? BRRの修理とかお願いしても大丈夫?
激戦続きで特に機動部が故障気味でさ。弾薬とかの補給も欲しいね。
「シュウェリンは『食べ物ならば小麦やパンが美味しい』の?
コニーはパンケーキが食べたいけれど、どこか良いところないかな?」
BRRの修理が終わったら理緒や他の参加者達等とご飯を食べに行くよ。
レストランで可愛らしくて美味しいパンケーキでも食べたい。
「うぅむ? コニーの『BRR』は修理が必要だね?」
シュウェリンの工廠に自らのキャバリア――
ブラック・ラピッド・ラビット――を持ち込み、リモート・レプリカントで動かしながらチェックをしていたコニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)が、かくん、と首をかしげながら呟くと、
「これはちょっと手がかかりそうだね」
と、コニーに誘われて街にきていた理緒も同意する。
『BRR』はここのところ激戦続きで機体全体が限界に近く、特に機動部は故障気味、弾薬なども残りが乏しく、整備も補給もこの機会にしっかりとしておきたいところだった。
「そういえば、理緒ってメカニックだよね? 『BRR』の修理、手伝ってもらって……」
「いいの!? これイジっていいの!?」
コニーの言葉を聞ききる前に、理緒はずいっ、と前のめり。まだUCを使ってないのに瞳がきらきらしている。
そんな理緒にコニーは、ちょっと引きつり気味の笑顔で頷いた。
それでも腕のいいパイロットとメカニックが揃っての作業はとっても順調。
駆動部の反応や砲身の細かな角度調整など、ひとりなら時間のかかりそうな作業をわずか数時間で終え、『BRR』を新品同様にまで仕上げた2人はのんびりと街に繰り出していた。
「シュウェリンは『小麦やパンが美味しい』んだよね?」
工廠を出たコニーが嬉しげに尋ねる。
『BRR』のダメージを見て話がそれてしまっていたが、コニーはもともといっしょにご飯を食べるために、理緒を誘ったのだ。
「コニー、パンケーキが食べたいな☆ いいところ知ってる?」
「もちろんばっちりリサーチ済みだよ!」
基地で聞き込んできたのだろうメモを見ながら理緒が笑顔で答えた。楽しげに話をしながら街を歩く姿は、猟兵と言うよりは学生のように見えてしまう。
仲良く並んで入ったおすすめのお店で出されたパンケーキはクリームがとてもが甘くて、いちごがとても可愛かったけれど、どうみてもひとりぶんの量とは思えないデカ盛りだったのは「軍隊あるある」なのだろうか……。
大成功
🔵🔵🔵
フレスベルク・メリアグレース
このシュウェリンにも我が聖教に帰依した教徒がいましたね
メリアグレースの聖堂があれば、なければ許可を貰った広場で演説を
暴走衛星により、世界から航空網と広域通信網が閉ざされはや百数年
人類は、争いを続けています
しかし、少しづつ…闘争の業から人々は脱却しようとしています
そして…もし仮に、あの暴走衛星が世界を滅ぼそうとするならば、我ら聖教の教えに殉じる者達は、その世界の終わりに抗う事を約束しましょう
UCで巧みになった演説能力でそう語りかけ、聖教に帰依した教徒も含めた人々を鼓舞
残酷な世界だからこそ、その果てにある未来が美しいと信じましょう
「演説? 解った。許可はこちらで取っておこう」
フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)の申し出に『リック』中尉が答える。
『シュウェリン』にメリアグレースの聖堂はなかったが、大広場での演説なら問題ないと言うことだった。
この国にも国教はあるが、政治形態が合議制なこともあって『シュウェリン』は宗教的にとてもおおらかな国風で、公共の場所での演説なども許可さえ取ればどんな宗教でも自由に行うことができる。
それが国を助けてくれた猟兵が行うということならば、拒否される理由もないだろう。
そして演説の日。
教皇として天衣に身を包んだフレスベルクが設えられた演壇に立つと、メリアグレース教の旗を掲げられ、集まっていた『シュウェリン』に住む聖教徒と思しき者たちが、ある者は跪き、ある者は小さく祈りの言葉を唱えて、その言葉を待つ。
「暴走衛星により、世界から航空網と広域通信網が閉ざされはや百数年。人類は、争いを続けています」
静かだがはっきりと通る声が信徒の間を通り、広場を行く人々の間を流れていく。
「しかし、少しづつ……闘争の業から人々は脱却しようとしています。そして……もし仮に、あの暴走衛星が世界を滅ぼそうとするならば、我ら聖教の教えに殉じる者達は、その世界の終わりに抗う事を約束しましょう」
フレスベルクの瞳が淡く輝き、凜とした『力もつ言葉』と静謐な空気が広場を包み込んでいく。普段は賑わいで溢れている広場に流れる厳かな存在感に、人々は足を止め、その言葉に耳を傾けた。
「……残酷な世界だからこそ、その果てにある未来が美しいと信じましょう」
フレスベルクがその言を締め、メリアグレースの神に祈りを捧げる。
集まった人々を分け隔てなく鼓舞するその言葉と祈りに、信徒だけでなく、すべてに聴衆から沸き起こった大きな拍手は、フレスベルクの姿が見えなくなってもしばらくの間止むことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
まずはリック中尉に、他の猟兵が去ってから話します。
私はフリーランスの傭兵という立場です。
よって、現地政府からの報奨金については辞退させていただきます。
契約相手に対する誠実さに疑問を持たれる危険性があるためです。
普通の傭兵であれば気にしないでしょうが、それが私の方針です。
あえて我が儘を言わせて戴けば、私の分の予算に関しては、
輸送隊の遺族補償に積み増して戴けると幸いです。
それともう一つ。
この辺りに専門書店はあります?
というわけで、データ化された専門書を買いにお出かけ。
書店に出向くのは案内が要るからですね。
材料力学やら冶金学やらのテキストや論文集を自腹で漁り、
当地の独自技術を探す種本にします。
猟兵たちへの連絡を終え、本部へ帰ろうとしていた『リック』中尉を、ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)が呼び止めた。
ノエルは、周囲を確認し、他の猟兵たちがいないことを確認すると、
「報奨金については辞退させていただきます」
と、告げた。
『リック』中尉は少し驚いた表情で見返すが、ノエルの緑の瞳は落ち着いた光を湛えていて、何か冗談を言っている風ではなかった。
「理由を教えてもらっても構わないか?」
中尉が尋ねる。
便宜上『報奨金』としてはいるが、実際は『傭兵報酬』の後払いのようなもので、断る理由などないし、その額も安いものではなかったからだ。
「フリーランスの傭兵という立場からです」
当然の問いに頷くと、契約相手に対する誠実さに疑問を持たれる危険性があるからだ、とノエルは答え、言葉を発しようとした『リック』中尉を手で制すると、
「普通の傭兵であれば気にしないでしょうが、それが私の方針です」
と言い切った。
そして、あえて我が儘を言わせて頂くなら、と前置きし、
「私の分の予算に関しては、輸送隊の遺族補償に積み増して戴けると幸いです」
と中尉に頼んだ。
そんなノエルの態度から、意思が固いことを見て取った中尉の、戦没者基金に匿名での寄付という形ではどうか、という提案に肯定の意を示し、ノエルは「あとひとつ」と指を立て、
「この辺りに専門書店はあります?」
材料工学や冶金学で、できれば『シュウェリン』独自の技術や研究などの書物を扱っている店を教えて欲しい、ノエルはそう尋ねた。
中尉は、すこし考えてから、
「そこまでの専門書なら、書店より国立図書館の方がいいだろう」
と、取り出した書類に何かを書き込んでいく。
「これを見せればたいていのものはコピーさせてもらえるはずだ」
手渡された書類を持ち、国立図書館に向かったノエルが、鞄いっぱいにディスクを詰め込んでそこからでてきたのは、夕暮れも近くなってからのことだったという。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリー・フランツ
心情:ミッションオーバーだ、取り敢えず失った弾薬の補給と…何か新しい武装を探すか
手段:先ずは街に出て買い物だな。
今回はRS一六式自動騎兵歩槍の30mm実包とRXバーンマチェーテの刀身、RSファイアクラッカーにRS-Sピラニアミサイルを全弾消費したからな、メーカー純正品を注文だ。
後は……キャバリア用のスナイパーライフルを探すか、威力は劣るがなるべくジェネレーターに負担をかけない実体弾方式で探す、何か良いもんはねぇもんか(カタログを捲り)
ふむ、注文を終えたら請求書の作成だな、その辺の喫茶店でこの国自慢のパンと適当な飲み物を頼んで端末を叩くか。
何せ今回は諸経費は向こう持ち、それプラス成功報酬を請求だ
使った諸経費は向こう持ち、それプラス依頼成功の報奨金。
(稼ぎとしてはまずまず、だな)
『シュウェリン』の町外れにあるオープンカフェで煙草を燻らせながら、ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)が端末を叩く。
「とりあえずは『一六式自動騎兵歩槍』30mm実包の補充と、欠けちまった『バーンマチェーテ』の刀身の交換パーツ……『ファイアクラッカー』と『ピラニアミサイル』は全部使い切っちまったし、ボックスでいくつか頼んどくか」
使った分からは多少はみ出るが、このくらいは誤差ってことでいいだろう。ヴィリーはメーカーに注文票を送信すると、自動で送られてきた領収メールをメモリーカードに移していく。
「後は……何か新しい武装でも……」
スナイパーライフルとか一挺あっても良さそうだ。今回の戦闘でも上手く使ってたやつがいたし、今後の戦いの選択肢としては十分に考える余地がある。
そんなことを思いながら工廠でもらってきたカタログを取り出す。
一撃の威力よりも射程距離を優先。それにジェネレーターへの負担を考えると、ビームよりも実体弾のほうが使い勝手がいいだろう。
(何か良いもんはねぇもんか)
頭の中で戦術を組み立てながら、それに合うスペックの銃はないかとページを捲っていると……。
「ジオメタルのニューモデル?」
ジオメタル社の1ページ目に載っていた、対キャバリアスナイパーライフルが目にとまった。
口径は50mm。実包形式でマガジンはボックスタイプ。装弾数は8+1発。
「徹甲弾だけでなく、焼夷弾、榴弾など、弾頭の変更により、様々な戦況に対応可能、か」
初速や射程距離も申し分ないし、なにより使い慣れたメーカーなのはありがたい。
いつの間にか吸いきっていた煙草を灰皿に押しつける。りんごのムストで口を潤し、カフェ自慢のカルダモンロールを一口囓ると、ヴィリーは早速注文書と請求書をまとめ始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
お経費は全額そちら持ちですって?
助かりましたわ〜!
本日もつい調子に乗ってミサイルをバカスカ使ってしまって、危うく弾薬費でまたお赤字になる所でしたわ
ミサイルを使った日のおディナーは寂しいのですわ…
何度サラダチキン一切れで堪えた事か…
ヴリちゃんのお修理に工廠をお借り致しますわよ〜
装甲は勝手に治りますのでお気になさず
それより背中のロングレンジビームキャノンを新品に交換していただけませんこと?
ぶっ放し過ぎて砲身が焼けてしまいましたわ
ミサイルもランチャーごと丸々交換してくださいまし
あぁついでにビームガンも…
なんですヴリちゃん?がめつい?
何を仰いますの!人の好意はありがたく受け取るものですわ!
「お経費は全額そちら持ちですって!?」
そう聞いたメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は、大きく息を吐き出し、心の底からほっとしていた。
報奨金もあるとはいえ、ビームとミサイルを乱射しまくる戦法で突撃したメサイアは、エネルギーと弾薬の費用でがくぶるしていたのだ。
特に再装填までしてぶっぱしてしまったミサイルの費用は計算したくなくなるレベルだったのである。
またしばらくサラダチキン一切れで過ごす生活なのかと覚悟を決めていただけに、この申し出にはテンションが上がらざるを得ない。
そして、それならばせっかくだし、と、
「ヴリちゃんのお修理に工廠をお借り致しますわよ〜」
『シュウェリン』の整備班に明るく声をかけ、愛機『ヴリトラ』を工廠に持ち込むと、話を聞いていた整備チームが、メサイアと『ヴリトラ』の周りに集まってきた。
メサイアは、まずは装甲を、とダメージを負った装甲を取り外そうとした整備員を、
「装甲は勝手に治りますのでお気になさらず」
と制して、
「それより背中のロングレンジビームキャノンを新品に交換していただけませんこと?」
と、乱射のしすぎて赤黒く焼けて歪んでしまった砲身を指さした。
それと……。
「ミサイルもランチャーごと丸々交換してくださいまし。あぁついでにビームガンも新しいのが欲しいですわ。それにマシンガンの弾薬にスラスターとブースターの調整も……」
矢継ぎ早に指示を飛ばしていくメサイアに、
「なんですヴリちゃん? がめつい?」
さすがにツッコミを入れる『ヴリトラ』だったが、テンションあげあげのメサイアは、そんな『ヴリトラ』にずびしっ、と指を突きつけると
「何を仰いますの!人の好意はありがたく受け取るものですわ!」
胸を張って言い放ち、でもその後小声でこっそり、
「こんな機会でもないと、
完全整備なんてできないのですわ……」
『ヴリトラ』にだけ聞こえるように囁くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・バニー
持ち帰ったパーツから、私のウサウサの改良とか計画してみたいですねー
バニー姿で動きまくって、開発スタッフさんとか、あるいは理緒さんとかも巻き込んで!
上手くすれば、マークツーからマークスリーにできるかもしれませんし!
実際のところ、ハンマーとニンジンビットの他にはめぼしい武装のないウサウサですからね
何か新兵器は欲しい所
かといって、重火器とかミサイルポッドとかごてごてつけたら、ピンクのふわふわな魅力を損なってしまいます
なので、可愛らしい手持ち武器の方向で何かいい素材はありませんかねー?
え?スカートの下にミサイル入れて、スカートめくって発射?
それは恥ずかしいじゃないですかーもー!
手持ち武器がいいでーす!
「これと、これ。あとこれも使ってみたい気がしますね」
研究所に運び込まれた機材やパーツのデータを見ながら、シャルロット・バニー(ヴォーパルバニー・f30079)は何度も大きく頷き、気になったものを片端からピックアップして『ウサウサmk2』のデータと照らし合わせてみる。
自分でよくわからかったりするところは、研究所のスタッフを捕まえて聞いてみれば、所員は自分の仕事を明後日に投げる勢いで相談に乗ってくれた。
普段研究しかしていない所員に、バニー姿から押しつけられる柔らかな感触の破壊力は絶大だ。
これは『マークツー』から『マークスリー』へ進化まであるかもしれない。
そんな風に思い始めたシャルロットの『機体バージョンアップ計画』は、研究所の見学に来た理緒を捕まえてさらに加速していく。
『ウサウサmk2』本体は、生体キャバリアの筋細胞を応用して新開発されたバイオアクチュエーターで機動性をさらにアップさせるプランを採用、そして本体の目処がついたとなれば、次は装備の番だ。
ハンマーとニンジンビットに不満があるわけではないが、せっかく機体がバージョンアップするなら武器も、となるのが乙女心というもの。
とはいえ無骨な銃火器やミサイルなどでは、せっかくのふわもこピンクの魅力が損なわれてしまうし、鋭い爪や牙というのは、戦い方としてホラー過ぎる。
「スカートの中にミサイルを隠しておいて、捲って撃つ、とか可愛くないかな?」
セクシーさもプラスされると思うよ! とイイ笑顔で提案する理緒に、ショルロットはもじもじしながら、
「それは恥ずかしいじゃないですかー! もー!」
と、赤らんだ頬を両手で押さえながら、くねくねっ、と身体をくねらせてから、
「やっぱり可愛らしい手持ち武器がいいでーす!」
手を上げ、元気にリクエストしたシャルロットに、理緒と研究員は「うーん」と頭を捻っていたが、しばらくして理緒が、ぽんと手をうち端末を操作しだした。
「こういうのどうかな!」
そう言ってこちらを向けたモニターの中には、ピンクの持ち手にいちご柄のリボンがついた巨大なハサミが映し出されていた。
ファンシーな見た目だけに逆に怖い。そんな意見もありそうだが、威力と使い勝手は申し分なさそうだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャナミア・サニー
はー、おわったおわったー
大変だったねぇほんと
のんびりしたいところだけど、レッド・ドラグナーって
皆のキャバリアほど特殊じゃないからメンテが大事っていうか
毎回修理が大変っていうか
とほほ、あんなぼろい工房無くなっても支障ないんだけど
約束した以上はなぁ……
さって愚痴ってても仕方ないしメンテしますか
ハンマーガントレット診ておかないと
楽なんだけど直接殴るからなー
接続部とかほんとよく摩耗するし装甲部もよく壊れるしなー
……うん、今回は大丈夫そうだ
レッド・ドラグナー側の
接続部も大丈夫っと
うーん……コレも装甲強化した方が良いのかなー
盾も持てないから敵の攻撃をガード出来ないんだよね
硬さ=ダメージだしねコレ
とはいえ重くなったら動き辛くなるし
うーん……なんかいいパーツ無いかなー
サイキック系はエネルギーコストがもたないからダメだし
ほんと器用貧乏っていうか
特別な装備がない
特別機って困ったもんだよ
完成して量産できたら誰でも使えるってことだけどさ
なーんか運命の出会いないかなー?
「はー、おわったおわったー。大変だったねぇほんと」
『シュウェリン』の工廠に運びこまれていく『レッド・ドラグナー』を見ながら、大きく伸びをして固まった身体をほぐすと、シャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)は、いそいそと更衣室に向かいメカニックスーツに身を包んだ。
作戦後のパイロットは基本的には休息が仕事である。
だがシャナミアの『レッド・ドラグナー』は、自らのキャバリア工房から託された試作キャバリアで、稼働後のメンテとデータの保存は必須であり、しかも量産を目指している機体でありながら『お前のような以下略』な性能のため、自分と自分の工房以外のだれかに整備を任せることがちょっとしにくい。
「あんなぼろい工房無くなっても支障ないんだけど、約束した以上はなぁ……」
とほほーっと、シャナミアが呟く。
紆余曲折あったとはいえ、工房の跡取りとなった以上、期待の新型機を他人に任せることもできず、そのため工房に帰るまではシャナミアがチェックをするしかないのである。
「さって、愚痴ってても仕方ないしメンテしますか」
顔を上げ、テンションを入れ直してシャナミアが機体に向かう。
今回一番チェックしておかないといけないポイントは『ハンマーガントレット』だ。
シンプルで威力もあるが、直接打撃系の武器だけに使用後の損耗が激しい。接続コネクト部の摩耗とか、装甲部の罅など知らないうちに壊れていることも多い。
シャナミアが目視と端末を使った透過検査で細かくチェックをしていく。小さな綻びを見逃せば、次の戦いの時に何が起こるか解らない。
「……うん、今回は大丈夫そうだ」
ドラグナー側、ガントレット側、どちらにも異常は見られないことにシャナミアはほっとする。
「コレも装甲強化した方が良いのかな?」
両腕に装備する武器のため、これをつけると盾が持てない。自然、相手の攻撃もガントレットで受けることになるし、なによりこの武器は『硬さ=ダメージ』なのだ。
「なんかいいパーツ無いかなー」
シャナミアが端末で検索をかける。
重い素材を使えば硬くできるが、それでは速度が犠牲になるし、エネルギーコストの高いサイキック系ではジェネレーターが保たない。
『レッド・ドラグナー』は量産型の試作機で、よく言えば万能、悪く言えば器用貧乏で、特別な装備がない
特別機なのだ。
機体が完成して量産にこぎつけることができたら、このスペックを誰でも使うことができるようになるのだろうが……。
(なーんか運命の出会いないかなー?)
そんなことを思いながら研究資料を眺めていると、『rejected』というフォルダがシャナミアの目にとまった。
(アイディアってこういうところにあったりするよね)
フォルダに詰めこまれていた無数の没案は、ほとんどが実用性や実現性がないものだったが、その中でシャナミアの感覚に引っかかったものがあった。
「『オクトジャミング装甲』……正八角形の特殊素材を組み合わせ、熱と圧力によって固さの変わる装甲を組む、か」
しかも硬度を落としているときにはある程度の自己修復もしてくれるらしい。エネルギーも、熱ならジェネレーターからフィードバックさせられそうだし、これはガントレットの強化案だけでなく、いろいろ応用が利きそうだ。
「工房で研究してみる価値はあるかな」
シャナミアは早速データをコピーして、自らの工房に送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
セレーネ・ジルコニウム
「うう、なんで艦長の私が……」
『戦闘中だったゆえ、スティンガーの修理は応急処置じゃ。
きちんと精密調整をしておかねばならぬ。
誰かさんが成形炸薬弾の直撃をもらったからのう』
「だからって、なんで私がウェイトレスの格好で整備班の皆さんにドリンクを出したりしないといけないんですか……」
そう、私は今、シュウェリンの工廠で、整備班の皆さんにウェイトレス姿で給仕をしているのでした。
ひらひらしたミニスカートの制服姿で、高所に組まれた足場で作業するスタッフのところまでドリンクや簡易食料を届けるお仕事です。
『費用はシュウェリン政府が出してくれるということじゃが、精密調整にどれだけ手間がかかると思っておるのじゃ。
これくらい誠意を見せねば、整備班のメンバーが反乱を起こしかねんぞ』
「そんなぁ……」
あの、ハシゴを登ったり、高い足場を伝って歩いてる時に、下の方からなんか視線を感じるんですけどっ!
「そこ、カメラ向けないでくれませんかっ!?」
『セレーネよ、あれは機体の整備記録を撮っておるだけじゃ』
「ほんとでしょうねっ!?」
「うう、なんで艦長の私が……」
『シュウェリン』の工廠の一角で、肩から大きなバッグを提げたセレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)が小さく呟くと、
『戦闘中だったゆえ、スティンガーの修理は応急処置じゃ。きちんと精密調整をしておかねばならんじゃろう』
誰かさんが成形炸薬弾の直撃をもらったからのう、とミスランディアが自業自得、とばかりに答えた。
「だからって、なんで私がウェイトレスの格好で整備班の皆さんにドリンクを出したりしないといけないんですか……」
うっすら頬を赤らめながら、セレーネが上半身をひねってスカートの後ろを確かめる。
フリルたっぷりのブラウスに長手袋をはめ、胸には『せれーね』と書いたハート型の名札をつけ、ジャンパースカートにニーハイソックスを履いた、某有名ファミリーレストラン的な衣装のセレーネ。本来胸部装甲が強調される仕様だが、防弾パッドがないこともこの場合はレア的な意味でポイントアップである。
そしてそのスカートはセレーネが動くたびひらりふわりと舞うが、ニーハイソックスとの絶対領域は確保しつつ、どれだけ動いても乙女の秘密が見えない仕様なのは、緻密な計算に基づいた整備班・服飾部の努力の結晶なのだが、だから恥ずかしくないというわけではない。
と、いうよりは『恥ずかしがる』までが衣装なのだ。
もじもじと恥ずかしがる姿は整備班の狙い通りとはいえ、それになかなか納得できていない様子のセレーネにミスランディアは言う。
『機体の修理費用は『シュウェリン』政府が出してくれるということじゃが、精密調整にどれだけ手間がかかると思っておるのじゃ』
セレーネの『スティンガーⅡ』は、
専用機であるがゆえ、その調整は量産機とは比べものにならないほど複雑で緻密なものである。
その作業の大変さはセレーネもよく解っている。だから、
『これくらい誠意を見せねば、整備班のメンバーが反乱を起こしかねんぞ』
ぴしゃりと言われてしまえば、「そんなぁ……」と言いつつも甲斐甲斐しく給仕に勤しまざるを得なかった。
そしていうまでもないことだが『スティンガーⅡ』はキャバリアである。その全高は約5m。
コックピット内のチェックはもちろん、頭部センサーなどの調整は当然高所での作業になる。そうなるともちろん、そこで作業するスタッフにもドリンクや軽食は届けなければならないということになるのだが……。
「あの……下の方からなんか視線を感じるんですけどっ!」
ハシゴを登り、おっかなびっくり足場を伝っていたセレーネが、アンサーヒューマンとしての超感覚でなにかを感じ取ったらしい。
「そこ、カメラ向けないでくれませんかっ!?」
こちらに向けてカメラを構えていた整備班長に、セレーネがさすがにツッコミを入れるが、
『セレーネよ、あれは機体の整備記録を撮っておるだけじゃ』
ミスランディアがしれっと答えた。整備班長はなぜかサムズアップしている。
「ほんとでしょうねっ!?」
真っ赤になって慌ててスカートの裾を押さえるセレーネ。
整備班長の記録映像、それは確かに整備記録だった。
『スティンガーⅡ』が調整されていく様子がしっかりと記録されている。
ただ、その映像のほとんどがセレーネにピントがあってしまっており、高所で給仕をするセレーネのぱんつが録画されしまっているのは、整備班長の撮影の技量と、地上からの撮影だったことを考えれば、しかたのないことだったのだろう。
そしてそれが整備班の間で共有されているのは、整備記録として当然のこと……なのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
スルーズ・イデアール
今度は何とか助けられて良かった…
全員、とまではいかなかったのは心残りだけど…
弔いの後で、休息がてら街を散策しているうちに目にとまった、木工品の工房に立ち寄ってみるよ
そこで作られた品々は、いずれもあったかな感じと、心が込められた感じがいっぱい感じられて
それに惹かれて色々見つめていたり、軽く触れていたら…
工房の人がひとつプレゼントしてくれることに!
色々迷った末に、ゆらゆら揺れる馬のおもちゃを貰うことにしたよ
そのゆらゆら揺れる姿から感じるあったかくて癒やされる感じは
とっても心地よくて…
ちょっと憧れちゃう
そう思いながら、いつの間にかうとうとして…
私を呼ぶ声で目を覚まして、そちらに向かうと…!
そこには人が乗れそうな大きさの
馬のおもちゃが…!
どうやら木工工房の人が、キャバリア側の私のことを聞いたらしく、お揃いの物を作ってくれたみたい…!
私、どっちも大切にするからね…!
って、工房の人にいっぱいお礼をしていくよ!
(今度は何とか助けられて良かった……全員、とまではいかなかったのは心残りだけど……)
『シュウェリン』に到着した次の日の昼下がり、スルーズ・イデアール(レプリキャバリア・f30206)
が戦没者慰霊碑の前に花を手向ける。
輸送隊は無事『シュウェリン』にたどり着くことができた。だけど犠牲がでなかったわけではない。
だからせめてその魂たちが安らかに眠れるようにと、スルーズは静かに祈りを捧げ、願った。
数刻の後。ひと息つきながら街を散策していたスルーズの目が一軒の店に向けられた。
クロムキャバリアの世界にはちょっと珍しい木の家は、大きな絡繰り時計を模しているらしく、屋根や扉に飾られた動物たち――これも木製だ――が、なんともいえず可愛らしい。
おとぎ話にでてくるお家のようだ、そんなことを思いながらしばし見惚れていると、それに気がついた店員さんが、扉を開けてスルーズに声をかけた。
招かれて入った中は、木工品の工房兼店舗ということで様々な人形や細工品が綺麗に並べられていて、どれも温かく柔らかな雰囲気で、丁寧に心を込めて作られていることが感じられる。
ほんとうにおとぎの国に迷い込んだようだった。
「アンタ、猟兵さんだろ?」
動物たちの人形を撫でていたスルーズが、不意に声をかけられ「はい」と頷くと、いつのまにか出てきていた店主らしき人が、
「やっぱりそうか。さっき慰霊碑のところでアンタを見かけてね。なにか気に入ったのがあったら、プレゼントさせてくれないか」
と、スルーズに笑いかけた。
どうやら先ほど祈りを捧げているところを見られていたようだ。店主が言うには、タイミング的に今回の輸送隊絡みだろうし、見慣れない服装から猟兵だと思ったらしい。
しかし猟兵であることと、プレゼントしてもらうことがどうにもつながらない。不思議そうに首をかしげるスルーズの表情を見て、店主が続ける。
「今回の輸送隊には俺の甥っ子が参加しててな。それを助けてくれたアンタは恩人だ」
こんなものではたいしたお礼にはならないだろうが、気持ちということで受けてもらえたら嬉しい。
そんな風に言われては、スルーズにも断る理由はない。ありがたく申し出を受け店内を見て回っていると、やわらかな曲線を描く白い身体に、くるんとした黒い瞳のロッキングホースが目にとまった。首に巻かれた真っ赤なリボンがとても愛らしい。
「それが気に入ったのか?」
こくりと頷くスルーズを見て、店主はしばし考えてから「よし!」と頷くと、スルーズを店の奥のテーブルに座らせると、
「もうしばらく、待っていてくれるか?」
そう言って、自分は工房の方へと引っ込んでしまった。
出された紅茶で喉を潤し、スルーズが目の前の白馬の鼻先を軽くつつくと、その馬体が揺れる。
ゆらり、ゆらり。
ゆっくり、やさしく揺れ動く瞳を見ていると、どこか微笑んでいるようで、温かく癒やされていくような気がした。
(わたしもこんな風に誰かを癒やすことができているかな)
そんなことを思いながら眺めているうち、ゆらゆらに心がほぐれてきたのか、いつのまにか瞼が閉じていって……。
「猟兵さん、待たせたな!」
店の外からかけられた声に、スルーズがはっと目を覚まし、扉を開けてみるとそこにあったのは、スルーズがプレゼントしてもらったものとお揃いの、大きなロッキングホースだった。
「こっちはおっきい猟兵さんのだ」
どうやら工房の人に、キャバリア側の私のことを聞いていた人がいたらしく、それならばと、お揃いの物を作ってみたということだった。
スルーズがもうひとりの自分を呼び、大きな白馬をつつかせると、それは小さな子と同じようにゆらりゆらりと揺れる。
「わたしスルーズっていいます。この子は『スルーズゲルニル』。また必ず遊びに来させてもらいますね!」
二人は見送りに出てくれた店主と工房のスタッフにちょっと遅い自己紹介をして頭を下げ、しっかりと約束を交わすと、2人で2頭の馬を大事に抱えて帰って行くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ歓迎
ハンガーに収容されていくアルターギアを見ながら、改修案を担当の人にチェックしてもらってたらハロちゃん(f13966)と会ったの
あ、ハロちゃんも来てたの?
疲れてそうだね…、あっちの休憩室でお話しよ?
はい、飲み物もらってきたの
ぼくは大丈夫だよ、ハロちゃんの方こそ大丈夫?
いきさつをお話して、改修作業をお願いした事を伝えるの
ハロちゃんから貰ったインフェルノランチャーのマッチングをするの
これが、予定図なの(マジックビジョンで改修図を見せる)
きっとこれからの強力な武器になるの
せっかくだし、キャバリアを見ていかない?
ハロちゃんの意見や要望、入手手段とかの相談を受けつつ、楽しく見て回るの
今回、危なかったみたいだし、持っててもいいと思うの
スーパーロボットが扱いやすいって言ってたっけ?
ハロちゃんのキャバリアと連携するなら…
(アナウンスを聞いて)
あ、できたみたい
ん、とってもいい仕上がりなの
ぴかぴかのアルターギアと、左腕に直接接続で、装甲にレイラインが追加されたインフェルノランチャーを見上げるの
ハロ・シエラ
終わったようですね。
まずは(f04258)ロランさんと合流しましょうか。
アルターギアの事も気になりますし。
ええ、途中からですが少しお手伝いに参りました。
怪我などありませんでしたか?
そうですね、私も体力を使いすぎましたし……お互い少し休憩しましょうか。
ありがとうございます、いただきます。
お互い無事で何よりです。
……なるほど、改修すればあのランチャーも使える状態には出来るのですね。
良い具合になると良いのですが。
キャバリアですか。
場合によってはそう言う選択肢もありますね。
もし所有してロランさんと連携するならやはり剣を振るうべきなのでしょうか……それとも他の事?迷います。
私はこう言うものの操縦は素人ですが、スーパーロボットは気合いで動くのもあるので良いですね。
呼べば現れると言うサイキックキャバリアと言うのも便利そうですし、汎用性が高い量産型も面白いでしょうか。
そのようですね、参りましょう。
私はメカニックに関してはからきしなのですが……綺麗ですね。
きっとロランさんの力になってくれると思います。
「終わったようですね。まずはロランさんと合流しましょうか」
護衛として最後まで『シュウェリン』輸送隊についていたハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)だったが、輸送隊が無事に門をくぐるのを見送ると、急ぎ足で工廠のほうへと向かって歩き出す。
先の戦い、その時の『アルター・ギア』の挙動が気になっていたのだ。墜落はしていないだろうがダメージは負っているだろう。だからこそパイロットが気にかかる――。
その工廠では、ハンガーに収容された『アルター・ギア』を、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)が『シュウェリン』の整備チームといっしょにチェックしていた。
緊急着陸に成功したおかげで外装へのダメージは少なくてすんだものの、『インフェルノランチャー』の全開使用によって、内部回路や動力部へのダメージはだいぶ深刻なものになっていたのだ。
整備や修理は『シュウェリン』政府持ち。この言葉に甘えてロランが修理リストと改修案をまとめ、整備チームへのチェックに提出しハンガーへ戻ろうとしたとき、そこにちょうど工廠の扉から入ってきたばかりのハロを見つけ、ちょっと驚きながら声をかけた。
「あ、ハロちゃんも来てたの?」
今回はハロがタイミングをずらして転送されてきていたため、ロランはいままでハロが参加しているとは知らなかったのだ。
「ええ、途中からですが少しお手伝いに参りました」
そしてハロはロランに気づいてはいたが、輸送隊の護衛を最優先に考えて敵と戦っていたため、2人が戦場で顔を合わせることはないままだった。
「怪我などありませんでしたか?」
心配そうにハロが尋ねる。
ハロは生身での戦いを得手としていて本来工廠やハンガーにあまり用はない。いつもなら作戦後でも、もうちょっと落ち着いた場所で会っていたのだが、今回ハロはロランの戦いを見て、早く無事を確認したかったのだ。
「ぼくは大丈夫だよ」
そんなハロの様子をみて、ロランはことさら明るく答え、
「ハロちゃんの方こそ大丈夫? 疲れてそうだね。あっちの休憩室でお話しよ?」
そう言って微笑むと、ハロの手を取った。
「そうですね、私も体力を使いすぎましたし……お互い少し休憩しましょうか」
ロランの笑顔にハロが静かに頷くと、二人は休憩室へと向かっていった。
「はい、飲み物もらってきたの」
ロランが2つ持った持ったカップのうち1つをハロへと差し出すと、
「ありがとうございます、いただきます」
丁寧に礼を述べたハロが、両手で受け取ったカップを口へと傾ける。色気のない紙コップに中身も水なのはハンガーという場所である以上しかたのないところだったが、それでも喉に流し込むと安心感に包まれた。
「お互い無事で何よりです」
息を吐き出し、ちょっと真剣な表情で「心配しました」とハロが言う。
谷での戦いを見ていたことを伝えると、ロランはちょっと照れくさそうに頬をかき、戦いの経緯を話してから、機体の改修、特に『インフェルノランチャー』の改良をすることにした、と言って、マジックビジョンの中にランチャーの改修予定図を浮かび上がらせた。
「せっかく貰ったのに、相談もなしにごめんなさいなの」
ちょっと申し訳なさそうに言うロランだったが、ハロは先の戦いを見ていたし、エネルギーのオーバーロードや魔力のリバースで『アルター・ギア』が制御不能になったということも教えて貰った。
それに改修しても使い続けようとしてくれるというのは、贈ったほうとしては嬉しいことだ。
「改修すればあのランチャーも使える状態には出来るのですね」
ハロが予定図を一通り見てそう答え「良い具合になると良いのですが」と微笑むと、
「そこは自信があるの。きっとこれからの強力な武器になるの」
ロランは自信たっぷりに言い切ったのだった。
「せっかくだし、キャバリアを見ていかない? 今回ハロちゃんも危なかったみたいだし、持っててもいいと思うの」
話がハロのことに移り、戦闘でのことを聞いたロランがハロに言う。
ハロの攻撃がキャバリアに通用しないということではないが、生身でキャバリアを相手にするというのはやはり負担が大きいのではないか。そんな思いから出た言葉であった。
「キャバリアですか。場合によってはそう言う選択肢もありますね」
メカに強いわけではなく、パイロットとしての訓練なども受けたことはないが、そこはこれからなんとでもなる。今回のようなことがまたあるかもしれないし、それならばキャバリアという選択肢を持っておくのは損にはならないだろう。
思案顔のハロに、ロランはまっすぐな視線を向けていた。ハロがロランのことを心配したように、ロランもハロのことが心配なのだ。
表情からそれを察したハロは「それでは見に行ってみましょうか」とハンガーへと足を向ける。
2人がハンガーで整備班長らしき人を捕まえ「キャバリアを見せて欲しい」と頼むと、班長は少しの間考えていたが、
「猟兵さんならいいか。だけど口外はなしで頼むぜ」
そう言うと『持ち出し禁止』と書かれた端末を開いて、キャバリアの3Dモデルを表示していく。
「ハロちゃん、スーパーロボットが扱いやすいって言ってたっけ?」
「私は操縦などは素人ですから、スーパーロボットの気合いで動くタイプは動かしやすくて良いですね」
2人の話を聞き、班長がスーパーロボットとトレースタイプのコックピットのモデルを表示してくれる。
レバーやペダルで操縦するグラスコックピットと違い、トレースタイプは自分の動きがそのままキャバリアの動きになる。機体の動きはパイロットの運動能力に左右されてしまうが、直感的な操縦という点ではこちらのほうがハロにあっているだろう。
それと呼べば現れると言うサイキックキャバリアにも興味はあるし、実際に『使う』ということになると、汎用性や拡張性が高い量産型は使い勝手が良さそうだ。でもなにより――。
「ハロちゃんのキャバリアと連携するなら……」
「ロランさんの『アルター・ギア』と連携するなら……」
2人が同時につぶやき、顔を見合わせた。
こういうときに考えるのはやはり連携。信頼できるパートナーと連携できれば、戦いはこれまでよりもいっそう心強いものとなる。
ロランが上空からの射撃なら、ハロはやはり地上で剣による接近戦がいいのだろうか? 場合によっては射撃のサポートとして、スポッターとして動くことも考えられる――。
『『アルター・ギア』メンテナンス終了。パイロットは6番ハンガーへ』
キャバリアや武器のデータをみながら、あれこれと戦い方を練っていたところにアナウンスが響いた。
「あ、できたみたい」
「そのようですね、参りましょう」
2人は班長にお礼を言って席を立つと、
「量産機やクロムならこのハンガーにもある。よかったらあとで実機を見ていくといい」
そう言ってひらひらと手を振る班長に見送られ、6番ハンガーへと向かっていった。
ハンガーに着いた2人を、メンテナンスを終え、磨き上げられた『アルター・ギア』が出迎えた。その左腕には、いちばんの改修点であった『インフェルノランチャー』が直接接続されている。その接続コネクタと装甲には、4本の魔力供給用レイラインが追加され、これは魔力の過剰供給を防ぎながら、全開にすれば魔力を従来の4倍の速度でチャージできる仕組みになっていた。
「……綺麗ですね。」
機体やメカのことに関してはよくわからないハロだったが、メンテナンスを終えて立つ『アルター・ギア』を見て、ハロは素直にそう思った。
「ん、とってもいい仕上がりなの」
整備・改修された愛機を見て、ロランが嬉しそうにその機体に触れる。
「はい。きっとロランさんの力になってくれると思います」
ハロがそんなロランと『アルター・ギア』をまぶしそうに見つめていると、
「次はハロちゃんのキャバリアの番なの」
そう笑いかけるロランにハロも頷き返すと。ハンガーの奥へと戻っていくのだった。
大成功
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