未来世界のヘパイストスよ
●ある男の後悔
「クソックソッ! なんだってこんなことに……!」
無精ひげを生やした男が、改造バイクでハイウェイを駆ける。
人に近い義体を選んでいるのだろうか、その表情には様々な表情が浮かび、男の焦燥を如実に表していた。
「あ、あの、やっぱりボクの事は……」
「いいから黙ってろ! 舌噛むぞ!!」
座席の後ろ、自分にしがみつくように乗る《荷物》の言葉を遮りながら、男はアクセルを全開にし続ける。
荷物は男より小柄だが重く、バイクは普段ほどの速度は出ない。
後ろから響くメガコーポの追手が追走する音は少しずつ大きくなり、男の焦燥をますます加速させるのだ。
メガコーポの目的は背後の荷物であり、自分はあくまで木っ端のフリーランサー。
手のひらを返して同乗者を蹴り落としてしまえば、少なくともこの場ではこれ以上追われることも無いだろう。
「畜生、畜生……!」
これまで孤独に生きてきた男に、何故その選択肢が取れないのか。
男自身にも理解できぬ感情に追い立てられながら、絶望的な逃避行は続けられていた。
●疾走する盗人
「皆ってバイクや自動車は運転できる?」
猟兵たちの集うグリモアベースにて、狼の耳を生やした少女が問いかける。
彼女の背後に浮かぶグリモアが映し出すのは、近未来的な大きな道路を疾走するバイクの姿だ。
「サイバーザナドゥでの予知が出たの。メガコーポから荷物を運ぶ仕事を受けたハイウェイスターの人がそのまま荷物を盗んじゃって、追手のオブリビオンが追いかけてるのね」
一台のバイクを追走する無数の影。
じわじわと距離を詰めるそのすべてがオブリビオンなのであるなら、一介のハイウェイスターには太刀打ちできないだろう。
この事件に介入するのが、今回の猟兵たちの任務である。
しかし、オブリビオンを倒すというのは猟兵の責務ではあるが、追われている泥棒はどうすればいいのだろうか?
「それなのだけど……まず、盗まれた《荷物》について説明させて頂戴」
そうして少女が映し出したのは、一人の少年の姿。
年齢は、5歳を少し超えるかという小さな子供。その肉体の殆どは、無骨な機械パーツで構成されていた。
「この子はLarfied《ラーフィード》という製薬関連のメガコーポが偶々生みだしたレプリカントなの。メガコーポが作りたかったものとは違うみたいだけど、凄く頑丈なんだって」
耐久性のある素体というのはメガコーポにとって使い道の多い代物だ。
とはいえ、Larfiedにとってはそこまで魅力的な存在ではなかったらしい少年は、別の街に存在する軍需企業への引き渡しが決まっていたのだという。
「……人と変わらない自分の意思があるレプリカントを物みたいに売っちゃうのも酷いけど、問題はその後! 買う側のメガコーポは、強いレプリカントを作る研究のために少年をバラバラに解体しちゃうつもりなの!」
つまり、メガコーポが行おうとしているのは明確な人身売買と、殺人だ。
それに気づいたハイウェイスターが良心の呵責に耐えかねて逃走を選んだのが、今回の事件のあらましである。
「と、いうわけで! メガコーポに狙われてるその子とハイウェイスターさんを助けてほしいの! 助けた後については、私に良い考えがあるわ!」
そう言って人狼の少女が映したのは、Larfiedが治める街の外側に広がるスラムだ。
ラーフィド・スラムと最近呼ばれだした其処は、メガコーポにも把握しきれない住民が暮らしており、その中に紛れ込んでしまえば一先ずの捜索は誤魔化せるという狙いだろう。
なにより、以前に猟兵に助けられたスラムの住民たちならば、ある程度の協力を望めるはずだ。
「だから、皆は二人を助けてあげる事に集中してほしいんだけど……舞台が“はいうぇい”なのよねぇ」
唯一懸念があるとすれば、事件が起きるその舞台。
高速で走るハイウェイスターとオブリビオンに追いつき、戦闘を行うのであれば、猟兵と言えども徒歩での移動は不安が残るだろう。
「多分、スラムにもある程度使えるバイクはあると思うんだけど……皆が慣れた手段を用意できるならそっちでも良いと思うわ!」
話は私が通しておくと、何故かふんぞり返った少女がグリモアを弄りだすと、予知の光はもう一つの色、転移の光を放ち始める。
「説明することはこのくらいかしら? それじゃあ皆! 思いっきり道路をかっ飛ばして、オブリビオンを成敗してきて頂戴!」
手をぶんぶんと振る少女に見送られ、猟兵たちが光の中へと進んでいく。
彼らを迎えるのは、サイバーザナドゥ特有の華やかなれど退廃的な輝き。
その中に聞こえるエンジンの音に、猟兵たちは新たな戦いを予感するのであった。
北辰
OPの閲覧ありがとうございます。
近未来でのハイスピードバトルだぜ! 北辰です。
当シナリオはハイウェイを舞台にした戦い。
メガコーポに狙われる幼気なレプリカントとおっさんをお救いください。
●舞台:ラーフィド・シティ
製薬を主産業とするメガコーポを中心に発展した模範的ザナドゥ市街です。
利益の為に人道は軽視され、企業は人体実験を平然と行い、享楽的な娯楽に多くの金と薬と命が消費されていく美しい街です。
前述通り、今回は此処と他の街を繋ぐハイウェイが舞台なのであんまり関係ありません。
●NPC
ハイウェイスター:ノピ
今回の輸送のお仕事を途中でぶっちした不良ハイウェイスターのおっさんです。
模範的ザナドゥ市街で普通に暮らしてた辺り、現代的基準で言うと善人とは言い難いのですが、子供を売り飛ばすのを躊躇う程度の善性はあったようです。
勢いで行動して孤立無援状態なので、猟兵が助けを申し出れば藁をも縋る思いで承諾するでしょう。
1章の敵とは1対1なら上手くやれば勝てるかもくらいの力量です。
ほっといたら死にます。
レプリカントの少年:タロス
今回狙われている《荷物》です。
偶発的に生まれた頑丈なレプリカントであり、他の街に売られる予定です。
研究所生まれの世間知らずな少年ですが、自分の身の危険はぼんやり理解してます。
そもそも頑丈なのと、オブリビオンたちも回収を目的としているので、守る必要はありません。
●状況
ノピとタロスがオブリビオンに追いつかれるその間際に猟兵たちも現れる形になります。
止まったらそのまま囲まれる状態なので、基本的に敵も味方も全速力で走り続けます。
シナリオの性質上、バイク、もしくはそれに準ずる高速移動手段と、その状態での戦闘を行える準備を強く推奨します。
一般的なバイクであれば、現地協力者から借り受けることは可能です。
●コネクション
今回のシナリオで得られるコネクションは不明です。
ノピとタロスが生き延びれば猟兵に感謝するでしょうが、それがどのような利益につながるかは分かりません。
以前のシナリオで地元住民と繋がりができている猟兵の場合、借りるバイクを事前に改造可能となります。
●プレイング受付期間
プレイングを受け付ける期間に関しては、タグでの管理を行う予定です。
それでは、近未来で産み落とされた人造の命を守るため、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『纏型レプリドール『プロモーション』』
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POW : メタルドレス
【変幻自在の液体金属】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【対象の姿の誤認】を誘発する効果」を付与する。
SPD : メタリックウィップ
【液体金属】から、戦場全体に「敵味方を識別する【液体金属の触手】」を放ち、ダメージと【捕縛】の状態異常を与える。
WIZ : ユーベルドレイン
自身の【液体金属】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[液体金属]から何度でも発動できる。
👑11
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●接敵
「目標補足。回収を開始します」
「お、追いついてきたよおじさん!」
逃げる二人に対して、オブリビオンの操作するバイクが肉薄し始める。
少女のような姿をしたオブリビオン・レプリカントたちは、美しい顔に一切の感情を浮かべず、その兵装たる液体金属を展開する。
それがそのまま鞭のように振り下ろされれば、鉄槌の如き一撃はサイバーザナドゥの高度な技術で作られたハイウェイの路面を容易く砕いてしまう。
「うおっ! まずいな、いよいよ年貢の納め時か……?」
辛くもハンドルを切り回避するノピ自身、自分と彼女たちの実力差をよく理解していた。
この調子で攻撃を受ければいずれ致命的な一撃を受けることは明白であり、自分の手の中にこの状況を打破する手段はない。
それでも背中の小さな命を見捨てられぬと、使命感と絶望で埋め尽くされる思考の中で微かに響く、ノイズ音。
「おじさん……」
「ああ、メガコーポの連中の更に後ろから……誰だ?」
二人の知らぬ、世界を渡る救い手の音。
ハイウェイを駆ける彼らが現れるのは、もうすぐの事だった。
黒木・摩那
あれが依頼のあったハイウェイスターですね。
確かに厄介な相手に追われているようですね。
相手もそれだけ必死ということでしょうか。
やり方はともかく、やってることは正しいのでハイウェイスター達の逃走の手助けをします。
高速にはマジカルボード『アキレウス』に乗っていきます。
まずは追っ手の妨害ですね。
勢いそのままにボードを追っ手に向けて、スライディング【空中機動】からの【シールドバッシュ】で踏んづけます。
こちらに注意を向けてくれたら、攻撃開始。
魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
UC【トリニティ・エンハンス】で【水の魔力】【風の魔力】を剣に付与。
擦れ違い時に【なぎ払い】する形で、追っ手を切りつけていきます。
悪七守・あきら
※連携、アドリブ歓迎
騎兵隊をお望みかや?
(局地戦用特殊下肢義体『紅蜘蛛』のローラーダッシュでオブリビオンに追随しながら軽口を叩く)
中途半端に良心があるせいで苦労するのう。だがそこが気に入った!
(と、逃げる二人と追うオブリビオンの間に強引に割って入ると、対機甲マイクロミサイル『天神』で道路ごとオブリビオンを破壊し、追っ手を遅らせる)
礼はいらんぞ、メガコーポの悪行、捨て置くわけにはいかん。
(次いで、7.62x51mmモジュラーライフル『雷神』と多機能フルオートショットガン『風神』を使用UCで倍率10で使用し、弾幕を張りつつ牽制、撃破していく)
ラーフィド・シティに入ればこっちのもんじゃ!気張れい!
●ファーストスクランブル
「あれが依頼のあったハイウェイスターですね」
宙に浮かび疾走する不可思議なボード。
その上に立ち艶やかな黒髪を後方に靡かせながら、少女が呟く。
その視線の先に走るのは、一台のバイクとそれを追うオブリビオンの群れ。
バイクを操作する追手、プロモーションたちは両腕をハンドルに添えたまま宙に浮かぶ液体金属を操り逃走者への攻撃を狙っている。
高速で逃げる相手を追うには確かに合理的であり、それと敵対する此方にとっては厄介極まりない。
だが、猟兵ならぬ逃亡者相手にオブリビオンを軍隊として動かすということは、メガコーポ側も必死になっている証左であろう。
上手く二人を救い出せれば、メガコーポ打倒への糸口になるかもしれない。
つらつらとそんな事を考えた少女は、しかし張りつめた表情を少しだけ緩めて。
「まあ、やり方はともかく、やってることは正しいですし。ハイウェイスターたちを助けに行きましょうか」
助けるべき相手だから助ける、そのシンプルな理由を口にして、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はマジカルボードの速度を上げた。
さて、猟兵が追い付いた時、子供を背負い逃走を続けるハイウェイスターであるノピには応援を喜ぶ余裕はなかった。
そもそもオブリビオンの攻撃から逃れるのに必死というのもあるのだが……。
「応とも! 今日も絶好の反逆日和じゃの!」
「は……せ、戦車ァ!?」
思わずそう叫んでしまうほどに巨大な義体を唸らせて接近してくる悪七守・あきら(クリムゾンウィドウ・f37336)の姿に、驚愕するので精いっぱいなのだ。
同行しているのが静かに走る空中ボードを扱う摩那であったことも手伝い、火花が散るほどの高速ローラーダッシュで走るあきらは非常に目立った。
一瞬、メガコーポLarfiedはこのような大戦力を投入してでも《荷物》を取り戻したいのかと青ざめるノピであったが、認識の相違に気づくのに時間はかからない。
「不明な高エネルギー体を二つ確認」
「猟兵と推測。迎撃します」
自分たちを狙っていたオブリビオンの金属鞭の幾つかが、背後の乱入者に向けられる。
ノピたちが直撃を受ければ一発で致命傷となるだろう激しい攻撃が、猟兵たちを容赦なく襲いだす。
しかし、二人の女猟兵はそれを避けるそぶりは見せない。
理由は単純、そのようなロスをしていては守るべき二人に追いつけないのだから。
積み重ねた功夫によるものか、まったく姿勢を揺らさずにボードに乗る摩那が細剣を軽やかに振るう。
「っと、やはり斬ってもすぐ繋がるようですね」
それと同時に猟兵に向かう金属の触手がぶつ切りにされるが、オブリビオンたちに動揺の素振りは無い。
摩那の言葉通り、金属鞭はすぐに再生される。元々液体金属であるのだから、切断はほぼ無意味なのだ。
「――兵装に空気と水が混入。不明な力場により排出が妨害されています」
だが、剣技は摩那が持つ数多の選択肢の一つに過ぎない。
剣に纏わせた魔力によって水を混入させられたプロモーションご自慢の兵装は制御に精彩を欠き、空気を含んだそれは大幅に『軽く』なる。
「じゃが使えぬ兵装に意味はない! こやつらの制御が効かぬまで吹き飛ばせばよい!」
それに合わせてあきらのフルオートショットガンから放たれる弾幕。
爆薬を仕込んだ弾丸を大量に叩き込む事によって生み出される爆風は、一気にオブリビオンの液体金属を吹き飛ばしてしまうのだ。
炎と風ならば、ユーベルコード【トリニティ・エンハンス】の魔力を纏う摩那が干渉可能だ。
摩那は自身の魔力と合わせ、熱と風を自分たちを押し出す追い風に変換することで、一気に先頭を走るノピとタロスに追いついてみせる。
その過程でボードはオブリビオンをバイクから叩き落し、他の個体にも斬撃を加えていくおまけも忘れずに。
それにより油断ならぬ逃走劇の最中、初めてオブリビオンたちの追跡が緩む。
「さて、助けに来ましたよ」
「礼はいらんぞ、メガコーポの悪行、捨て置くわけにはいかん」
「た、助けにって……ボクたちを?」
張りつめた表情でバイクを操縦するノピの背中、二人を振り返る少年タロスはどこか戸惑うように告げられた言葉を繰り返す。
商品として売られゆくレプリカントにとって、猟兵たちという救いの手はあまりに非現実的なものだった。
「ええ、いきなり言われても戸惑いますよね……あきらさん」
「ああ、派手に暴れてやろうぞ!」
ならば態度で示そうと、猟兵たちが急減速をかける。
時に【死神】と称されるユーベルコードを使用したあきらがマイクロミサイルを取り出せば、その照準は後方の路面へ。
「……っ、すまねぇ! 礼を言う!」
「だからいらんと言ったろうに……ラーフィド・シティに入ればこっちのもんじゃ! 気張れい!」
その意図を察したハイウェイスターに激励の言葉を叫び、あきらは道路へマイクロミサイルを撃ち込み、一気に破壊する。
荒れた路面に二人の猟兵、大幅な足止めを食らう事となるオブリビオンを置き去りに、逃走者たちはハイウェイを進んでいくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月白・雪音
…この世界は弱肉強食。法が崩れ人道無き企業が秩序を司るとあらば、
幼子とてその理からは逃れる事叶いません。
されど、其れはヒトの理に在らず。
この地に生きる命を、未来ある子を踏み躙るが法などと、どうして許容できましょうか。
幼子の手を取った方とて決して善では無く、重ねた業も在りましょう。
それでも、今この時小さき命を守らんと奮起したとあらば。
──その想いに、我が武を以て応えましょう。
UC発動、残像の速度にて『ただ走って』ハイウェイを最高速度で駆け抜ける
怪力、グラップルも交えた高速格闘戦にて戦闘展開
継戦能力にて休むことなく走り続け野生の勘、見切りで相手の攻撃と動作を感知
2人に攻撃が及ぶ前に急所を打ち抜く
エスタシュ・ロックドア
シンディーちゃんに【騎乗】
盗みはいけねぇなぁ
だが、どんなに罪深ぇ奴だろーと善行の一つでもありゃ、
十王サマ方だって斟酌して下さるもんだ
っつーわけで地獄の徒が来てやったぜ
まずはおイタが過ぎる連中を折檻といこうか
ブルーフレアドレス展開
【ダッシュ】でノピのそばにいる敵に近づく
外道の徒らしく、道を外れてもらおうか
追い抜きざま【怪力】でフリントぶん回して【なぎ払い】【吹き飛ばし】
ハイウェイからぶっ飛ばす
敵の攻撃が来たら、待ってたぜ【カウンター】
『大鴉飛翔』発動
その手癖の悪ぃ触手を跳ね返したらぁ
少々のダメージは【激痛耐性】でゴリ押す
敵は片っ端から俺がホームランしてやる
だからノピは前だけ見て、真っすぐ走れ
●義を見て走るは
「うわぁっ!?」
「もっとしっかり捕まれ! 振り落とされても助けるヒマねえぞ!」
オブリビオンと猟兵の戦いが始まり、ハイウェイの路面は瞬く間に破壊され荒れ果てていく。
逃走劇の都合上、先頭を走るノピの周囲はまだマシなのだが、時折前方に飛ぶ流れ弾によって瓦礫が発生し、その上を通ってガタガタと揺れるバイクでタロス少年は必死に腕に力を入れていた。
一方でバイクを操作するノピの表情は険しい。
追手であるプロモーションたちは自身の兵装である液体金属でバイクを覆い、流動的に変化し路面を掴む銀色のタイヤを持って追跡を続けていたのだ。
このままでは、先の猟兵たちが作ってくれた彼我の距離はどんどんと狭まっていく。
そう、逃走者が焦燥を募らせていた、その時であった。
「幼子の手を取った方とて決して善では無く、重ねた業も在りましょう」
「つーか普通に窃盗だよな。ああ、盗みはいけねぇなぁ」
路面を覆う特殊コンクリートが砕ける音の中、決して大きくはない筈の二人の声が響く。
ハイウェイスターが、レプリカントが、オブリビオンすら僅かな驚愕と共にその方向を見れば、驚異的なスピードで此方に迫る二つの影があった。
「だが、どんなに罪深ぇ奴だろーと善行の一つでもありゃ、十王サマ方だって斟酌して下さるもんだ。っつーわけで地獄の徒が来てやったぜ」
黒曜石の角を生やした大柄な男、エスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)が操る宇宙バイク、彼が『シンディーちゃん』と呼び愛用するその機体が跳ねる。
宇宙空間を走る特殊な車体は、重力下であっても単純なジャンプ程度ならなんなくこなせるだけの運動性能を兼ね備え、悪路を物ともせず走行していた。
「ええ。それでも、今この時小さき命を守らんと奮起したとあらば──その想いに、我が武を以て応えましょう」
月白・雪音(月輪氷華・f29413)の側は、より常識外れ。
女性としても小柄なその身体に如何なる膂力が秘められているというのか、振り下ろす足は路面を踏み砕き、必然その大きなエネルギーで身体を押し出し加速する。
そう、この場で唯一“自らの脚”で走る彼女もまた、荒れ果てた高速戦場を残像を残し駆け抜けていく。
「猟兵が接近、迎撃を試みます」
当然、オブリビオンも指をくわえて見ている訳ではない。
一部が追跡を中止し、足止めの為に猟兵の側へと向き直る。彼女たちにとってはメガコーポの意向が最優先であり、自分たちがほぼ壊滅しようとも、猟兵に何ら痛手を与えられずとも、最後の一人がタロスを確保し帰還できれば良いのだ。
「しゃらくせぇ!」
「押し通ります」
だが、目の前の相手が二の次なのは猟兵も同様。
向けられた液体金属の触手、流体故に防御を困難とするその攻撃を雪音の掌底が弾き飛ばした。
打撃ではなく、面で押しのける技術で兵装を剥がされたプロモーションの無防備な本体が守りを固めるよりも早く、エスタシュはバイクのジェットエンジンを起動する。
急加速に合わせて振るわれる大剣は、火打石と呼ぶにはあまりに大きな閃光と共に、オブリビオンをバイクごと両断し、ハイウェイの外へと吹き飛ばす。
その勢いのままエスタシュは振り抜いた大剣を後ろに構え、ノピへと一気に追いついてみせる。
ノピもタロスも、喜びの前に驚愕を持ってその姿を見返していた。
ジェットエンジンで猛加速をするバイクを制御しきる卓越した操縦技術も、大剣の切っ先を掴んだだけでそれについてくる雪音の剛力も、彼らには理外の存在であったのだ。
「すげぇ……」
「だろ? やっぱハイウェイスターなら分かるよなぁ、シンディーちゃんのこの凄さ!」
「し、しんでぃーちゃん……?」
ニヤリと笑うエスタシュをキョトンと見つめるタロスの屈託のない顔を、雪音が静かに見つめる。
身体の大半を無骨な機械義肢で構成されたレプリカントの表情は、確かにあどけない子供のものだ。
幼く、小さく、弱い子供。利益のみを貪る企業が秩序を作るこの世界においては、被食者にしかなれない存在であろう。
この世界においてそれは、善悪よりも優越する“ルール”である。
だが、それはヒトの理とは呼べぬもの。
「……この地に生きる命を、未来ある子を踏み躙るが法などと、どうして許容できましょうか」
「っ、アンタ、それは……」
雪音の言葉に、タロスを背負うノピが言葉を返しかけ、口を閉ざす。
サイバーザナドゥの小市民、小悪党とすら呼べる彼の中に雪音に賛同するための言葉はない。
だが、彼女が口にした義憤には、企業の秩序しか知らない彼の背を押した感情に近しいものを感じたのだ。
「さて、お喋りはここまでだ。イキのいいのがそろそろ追いついてくる!」
もっとも、此処は未だ彼らの逃走するハイウェイの只中。
エスタシュの言葉通りに、オブリビオンたちは着実に追いついて金属鞭を放ってくる。
だが、既に二人の猟兵が合流したこの状況でただの攻撃が通用するはずもない。
生身ゆえの機動力で雪音が素早く反転すると、幾本もの金属触手に手を添え、液体であるはずのそれを掴み、投げてみせる。
その先にいるのは、バイクを駆るエスタシュ。味方から向けられた攻撃に笑みを返す彼は金属の鞭に頑丈な身体で耐え、同時に周囲に舞うのは美しい黒曜石の羽だ。
瞬間、エスタシュに向かうはずの捕縛機能は反転し、多くのプロモーションがその身を硬直させてバイクを横転させていく。
「敵は片っ端から俺がホームランしてやる」
「ですから、貴方方は先へ」
「ああ……ありがとう!」
猟兵の知識がないノピとタロスにとって、二人も正体不明の乱入者であることに変わりはない。
それでも、ハイウェイスターはその表情に信頼を滲ませ始め、バイクのハンドルを強く握りなおすのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
堂島・アキラ
運び屋の癖に荷物ちょろまかすとはふてぇ野郎だが、その度胸は認めてやる。
いっちょ喧嘩の助太刀してやるとするか。
オレのバイクのスピードならヤツらには簡単に追いつける。
背後からマシンガンとショットガンで、ザコ共のバイク諸共ハチの巣にしてぶっ壊してやる。
液体金属の攻撃も飲薬運転中のオレには止まって見えるぜ?
華麗なハンドル捌きで余裕の回避だ。お返しに弾丸をたっぷりくれてやる。
クスリが切れてきたら追加で服用しなきゃな。へへ、おかげ様でテンションブチ上がりだ!
岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎
製薬系メガコーポが作ろうとしたものも気になりますが今は進行中の事態を解決しましょう。
移動手段は自前のオフロードバイクを使用。
扱いやすい拳銃とカービン銃を装備し、足りない火力は魔法で補っていきます。
到着したら運び屋の方に加勢しに来たと伝え行動開始。
銃器による牽制を行いつつUCを発動し、鉱石の槍でバイクごと敵を貫きます。
本体に致命傷を与えられなくても、バイクを破壊すればそれ以上の追跡は困難になります。
逃走している対象を守りつつという事を考えると追跡者を確実に減らすことを重視した方が良いでしょうね。
素行がどうであれメガコーポに抗っている人物ですし犠牲を出さないよう立ち回りたいですね
●
「運び屋の癖に荷物ちょろまかすとはふてぇ野郎だが、その度胸は認めてやらなきゃな」
最新型のバイクを操り、堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)は愛らしい口元を吊り上げる。
ニヤニヤと少女の姿に似つかわしくない表情ではあるが、その機嫌はそう悪いものでもないように見える。今日もお薬はよくキマっていた。
「製薬系メガコーポが作ろうとしたものも気になりますが……」
その横をオフロードバイクで走る岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)の関心は、狙われた《荷物》であるタロス少年へ。
偶々生み出されたレプリカントとは言うが、その『偶々』が無かったとしたら、何が生まれていたというのだろう。
素直に考えれば、タロスとは別の特性を持ったレプリカントだろうか。いくら何でも、風邪薬を作ろうとしてレプリカントが出来てしまうほど、メガコーポも混沌とした存在ではない筈だ。
「今は進行中の事態を解決しましょう」
「おう、いっちょ喧嘩の助太刀してやるとするか!」
だが、思考はそこまで。
流石に考察の材料も足りていないと見切りをつけたサラの言葉にアキラも元気よく答え、二人はバイクの速度をさらに上げるのだ。
「見えてきましたね。アレが件のハイウェイスターとレプリカントでしょう」
「そして、そのケツをせっせと追いかける団体サマだな。それじゃあバイクごとぶっ壊してやろうか!」
集団に追いつくと同時に、アキラが両手にマシンガンとショットガンを構え、躊躇なく撃ち放つ。
高速で走行するバイクのハンドルを手放し、最前方に守るべき護衛対象が居る中での乱射など、どれをとっても暴挙でしかない行動であるが、同行者であるサラにそれを止める気配はない。
バイクを動かす繊細な体重移動、腕の僅かな制動により反動と射線を制御した銃撃等、見るべき者からすれば、これは暴挙でも暴走でも無いのだから。
「新たな敵対勢力が出現。部隊を分け、防御を行います」
「おっと、流石にぼけっと撃たれるだけのポンコツじゃねぇか! だが……」
「後方に注意を向ければ、その他の警戒は緩むでしょう?」
アキラからの弾幕に晒されたオブリビオンたちは、縦長の陣形を取り最後方の個体に防御を任せる。
彼女たちが液体金属の兵装を展開すれば、多少の銃撃ならば防げるのは確かだろう。
「がっ!? ふ、不明な衝撃によりバイクを損傷、走行不能……!」
しかし、次に追跡者のバイクを襲うのは、足元から伸びる黒い槍であった。
サラのユーベルコードによって生み出される鉱石の槍は、アキラの銃弾を警戒していたオブリビオンの死角となる真下から襲い来る。
なにより、視線を起点に瞬間的な出現をする槍は命中率という点で特筆すべき性能を誇っており、オブリビオン自身が致命傷を避けようともバイクを破壊された時点で無力化に等しいこの状況においては、極めて強力な攻撃手段であった。
銃撃を防げば足元からの槍に襲われ、そちらに防御を割けばハチの巣にされる。
この多重攻撃によりオブリビオンの足並みを乱したアキラとサラは一気に加速し、先頭を走るノピとタロスへの接近を果たした。
「よーう、調子はどうだい? ショタ誘拐とは結構な趣味じゃないか」
「ええっ!? い、いきなり何を……」
「しょた……?」
バイクを転がしながら軽口をたたくアキラに対して、ノピはうろたえタロスは首を傾げる。
ノピは彼女……もとい彼がサイバーパンク美少女義体おじさんなんて事は知る由もないので、可愛らしい少女から予想外のフレーズが出てきて酷く動揺していた。
「加勢をしに来ました。オブリビオンは我々に任せて、運転に集中を」
とはいえ、逃走劇を続けていた彼にとっては悪い弛緩ではない。
すかさずサラが自分たちの目的を簡潔に告げると、ノピは少しだけホッとした様子で頷くのだ。
「敵の合流を確認。脅威レベルを修正、『ユーベルドレイン』を使用します」
「おっと、何か新ネタだってよ?」
アキラが見やる先で、オブリビオンが新たな行動に出る。
金属の鞭として扱っていた液体金属の球体が膨張すると、それは口を象るような形状となり、カチカチと歯を鳴らす。
「予知にあったユーベルコード吸収の力ですね。私の槍を奪われると事です」
自分たちはともかく、ノピが真下からの槍に対応できるとは限らない。
そう判断したサラはユーベルコードの発動を取りやめ、銃での牽制で敵のバイクを攻撃しだす。
「なるほどなるほど、こっからはいよいよ銃オンリーか。そいつはいい!」
そして、それを聞いたアキラはイキイキとした表情で何かを口に含み、ハンドルを握りしめる。
次の瞬間には、アキラのバイクは急減速を行いオブリビオンへと肉薄していく。
一人くらいは敵側に近づいている方が足止めも容易いという目論見であり……。
「敵が接近、通常兵装で迎撃を……なっ!?」
「おお、それくらいの顔してくれた方がからかう甲斐があるなぁ!」
敵が撃ちだす銃弾を、純粋なドライビングテクニックで躱してみせる。
オーバードーズによる絶技に驚愕する敵をサラが撃ち抜き、また一つ敵バイクは大破する。
こうして二人は、着実に敵船力を減らしていくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ウルリック・イーゴン
(その意気や良し。少なくとも俺は、愚行だとは思わない。)
だからこそ、彼の行為を愚かと嗤わせない様にしなくてはいけませんね
ノビとタロスを援護
【ブラッド・ガイスト】を起動し、Deathstalkerと殺戮刃物を捕食形態へ
俺自身も【リミッター解除】による【限界突破】を果たし、その勢いのまま【切り込み】、敵を【解体】
敵の攻撃を【受け流し】つつ【切断】し、【体勢を崩す】事で二人への攻撃を抑制
敵は姿を誤認させてくる様ですが…
【第六感】で動きを【見切り】敵味方を判別
追う者と追われる者は必然的に違う動きをするものです
更に言えば、同じ追う者でも貴女達と猟兵の動きは同じではありませんので見間違う心配は無いでしょう
ジェイ・ランス
【SPD】※アドリブ、連携歓迎
■心情
うーん、オブリビオンの数はっと……多いねえ。ま、こっちもそれなりに武装はあるけどさ。
にしても、久し振りだねえ、人助け。ま、たまにはいいっしょ。
と、いうことで……
へーい、そこのにいちゃん!?困ってるなら助けようかい?
■行動
キャバリア"レーヴェンツァーンTypeⅡ"に搭乗し、それを"ツェアライセン"に乗せて運用します。操縦にはUCを使用します。
"慣性/重力制御術式"にて高速飛行(空中機動、空中戦、滑空)し、敵からの攻撃は重力障壁(オーラ防御)と"ツェアライセン”の破断の概念(切断)にて防ぎます。
攻撃手段としては"機関砲"複数門に"光線"を使用します。
●チェック
メガコーポが支配するサイバーザナドゥにおいて、正しさとは企業の頂点に位置する一握りが決めるものである。
倫理や道徳、良心を超越したそれに逆らう者に与えられる居場所はなく、反逆者とは愚か者の代名詞だ。
ましてや、縁もゆかりもない子供の為にそれをするとなれば、極め付きの愚行と呼ぶべきだろう。
「目標減速、捕獲可能圏まで残り5秒と推測」
「く、くそ、此処まで来て……!」
猟兵たちの援護でここまで逃げてきた二人であるが、人域を越えた猟兵とオブリビオンの戦いに巻き込まれたノピの体力はもはや限界に近く、ハイウェイスターとして何年も乗ってきたはずのバイクの運転は明らかに精彩を欠いていた。
愚行の代償は、命を含めたすべての喪失だ。
オブリビオンの目当ては彼が背負うタロス少年のみ。
それ以外はいらぬと、液体金属が変形した鉄槌が逃亡者のバイクを容赦なく襲い……。
「へーい、そこのにいちゃん!? 困ってるなら助けようかい?」
それよりも速く、一条の光がオブリビオンを貫くのであった。
「にしても、久し振りだねえ、人助け。ま、たまにはいいっしょ」
オブリビオンを一体仕留めながらも、リラックスした様子でジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)が呟く。
情報戦用の小型キャバリアに乗り込み、その上で7mもの巨大サーフブレイドを駆って現れる彼の出現に、オブリビオンの対応は何故遅れたのか。
「な、なんだあのデカいのは。どんな技術を使えば、こんな静かに
……!?」
その理由の一端は、ジェイに助けられたノピの言葉にある。
重力と慣性を制御して飛翔するサーフブレイドは、バイクのエンジン音を遥かに下回る静かな制動音でここまで接近することに成功していた。
そして、上空からの機関砲と光線を織り交ぜた攻撃にオブリビオンの動きが乱れているその隙を縫い、一つの影が先頭への合流を果たす。
「もう少しです、俺たちも援護しますから、あと少しだけ気力を保ってください」
「あ、ああ! ありがとう!」
殺戮と捕食を求めた禍々しい姿のバイクを操るウルリック・イーゴン(Volker・f27829)が、手にした黒刀を振るいオブリビオンを切り捨てながらノピとタロスへと声をかける。
礼を言う余裕は残しているノピとは異なり、その背にしがみつくタロスは無言で頷くだけ。
いくら頑丈なレプリカントと言えども、子供の身でこのような逃走劇に巻き込まれては、体力の限界も近いのだろう。
「…………」
その様子を見て、ウルリックは後方のオブリビオンへと意識を移す。
この世界は、幼い子供をこれほどまでに追い詰めるオブリビオン、ひいてはメガコーポが正しく、それを良しとしないノピのような人間が間違っている。
「(……少なくとも俺は、愚行だとは思わない)」
それこそが最大の誤りであり、この行為を誰にも嗤わせないためにウルリックは此処に来たのだ。
彼の握る刀もユーベルコードの影響で禍々しく変化するその様こそは、彼が猟兵として此処にいる証左であった。
「それじゃ、俺が追手を減らすから……」
「それが終わるまでは、俺が二人の護衛ですね」
上空のキャバリアから響くジェイの言葉に頷きながら、ウルリックが再び刀を振るう。
戦闘を目的とした人造の肉体は容易に限界を踏み越え、片腕にあるまじき膂力を持って、オブリビオンが振るう金属鞭を切り払う。
そして、オブリビオンが攻めあぐねている間にも、ジェイによる高所からの砲撃は続きオブリビオンを、あるいはその搭乗するバイクを破壊し無力化していくのだ。
「……目標の優先順位を変更、猟兵の排除を優先します」
このままでは一方的に全滅させられると考えたのか、オブリビオンの行動に変化が生じる。
今まではノピとタロスへの攻撃を優先し、彼らの死角となる後方に位置していたオブリビオンたちのバイクだが、急に速度を上げた集団が猟兵を含めたターゲットを追い越し、包み込むような陣形を取り始める。
「な、俺たちの姿に!?」
そして、彼女達の兵装である液体金属を纏ったオブリビオンは、次の瞬間猟兵たちが守るタロスとノピ、あるいはウルリックと瓜二つの姿へと変身するのだ。
「なるほど? 俺たちが二人を見失えば守りようがないってわけだ」
「俺にも化けているのは、誤射狙いですかね? 中々高度な変装です、見た目では判別がつきません」
加えて、ノピ側を惑わせて自分からウルリックの傍を離れさせようということだろう。
接近戦を狙っているのか、じわじわと距離を詰めてくるイミテーションたちとの混戦が始まれば、その目論見が果たされる公算は高いだろう。
だが。
「――追う者と追われる者は、必然的に違う動きをするものです」
「まあ、“トロイの木馬”くらい対処できないと防衛AIなんてできねぇし?」
片や戦場での経験値に裏付けされた第六感で、片や情報戦を制するハッキング能力で擬態を看破し、変わらず敵を排除する。
搦手すらも破られたオブリビオンはいよいよ攻め手を失い、戦闘継続不能な域までその数を減らしていく。
こうして、猟兵たちは追跡者を退け、ノピとタロスと共にハイウェイの更に先へと進んでいくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 冒険
『ハイウェイチェイス』
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POW : 邪魔する奴を体当たりで跳ね返す
SPD : 最高速度でかっ飛ばす
WIZ : 敵の移動ルートを読み、別ルートから攻める
👑7
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●逆転
猟兵たちの活躍により、追手として放たれたオブリビオンはその数を大きく減らす。
既に大勢は決し、メガコーポの企みはここに挫かれた……かに見えた。
「うわぁ!?」
「タロスっ!?」
生き残りのプロモーションが放つ金属球による攻撃。
ノピとタロス自身を狙わなかったゆえに周りの防御もすり抜けたそれが砕いたのは、一団が走る先の路面だ。
無論、曲がりなりにもハイウェイスターと呼ばれるノピは多少の悪路で転倒する事は無いが、幼いタロスはそうではない。
疲弊した腕はバイクの振動によりあっさりほどけ、少年の身体は宙へと投げ出される。
咄嗟に宙へ飛ばされた子供へと手を伸ばすノピへ、猟兵たちは叫ぶのだ。
――そちらではない、と。
ノピが手を伸ばした先に居たタロス……最後のプロモーションが化けた偽物が正体を現し、攻撃を仕掛ける。
それ自体は猟兵が介入し撃破するものの、そこに生じた僅かなロスの間、本物のタロスは無防備となる。
「ああっ、そんな……!」
瞬間、これまでのオブリビオンよりも速い何かが一瞬で通り過ぎ、タロスを攫い走り去ってしまう。
一瞬の判断ミスにより、取り返しのつかない事になったしまったと嘆くノピを宥め、猟兵たちはハイウェイの先を見据える。
メガコーポがタロスの“販売”を狙う以上、今すぐに殺されるわけではない。
今ならまだ取り返せると、猟兵たちは行動を開始する。
増援として現れる新たなプロモーションに構う暇も惜しいと、追う者と追われる者の立場が逆転し、ハイウェイの戦いは再び始まるのであった。
●状況
乱入してきたオブリビオンの首魁により、タロスが攫われてしまいました。
先の戦闘で荒れ果てたハイウェイの中、増援に現れるプロモーションの妨害を退けつつ、最速で敵を追いましょう。
ハイウェイスターのノピもついてきてはおりますが、メガコーポにとって既に価値のない相手になった彼は放っておいても害されることはありません。
ジェイ・ランス
【SPD】※アドリブ、連携歓迎
■心情
ありゃりゃ、ずいぶん速いやつだなあ。とはいえ、そういうのはオレも得意分野なんだけどね。
じゃ、追いかけっこと行きますかね!
『―――Ubel:Code Edler_Löwe Dame.』
■行動
引き続き"レーヴェンツァーンTypeⅡ"に搭乗。"事象観測術式"によって【世界知識】から【情報収集】し、【索敵/偵察】します。
その後、UCを使用。進行方向に「落下」することで、一気に距離を縮めようと試みます。
いやはや、飛んでてもさすがというか何というか。構想ビルの高い事高い事。
ま、いいスパイスって感じだよな。
岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎
少年を攫う手口から推察すると、敵は優れた運転技能を持っているようです。速やかに追跡しなければこのまま逃げ切られてしまうのでしょうが……先程の戦闘で道は荒れ果てていますね。
特殊な運転技能を持つ方であれば、こういった悪路を物ともせずに戦闘と追跡を両立できそうですが運転が専門というわけではない私ではそういったことは難しいでしょうね。
であれば、ここは無人機を使うとしましょう。
UCで召喚したガトリングを装備したドローンを自身に追随させながら追跡してくるオブリビオンへの自動射撃を行わせます。
ドローンに攻撃を任せつつ私はレプリカントの少年を攫ったオブリビオンの追跡に集中します。
●最高速度
「ありゃりゃ、ずいぶん速いやつだなあ」
あっという間にタロスを攫って行ったオブリビオン。
明らかにこれまで戦ってきたプロモーションとは格の違う、強力な敵の出現に対しても、ジェイは自身のペースを崩さず薄い笑みを浮かべる。
「少年を攫う手口から推察すると、敵は優れた運転技能を持っているようです。速やかに追跡しなければこのまま逃げ切られてしまうのでしょうが……」
それに対して、サラが鋭い目で見るのは自分たちが立つハイウェイの路面。
サイバーザナドゥの高度な技術で作られた高速道路も、猟兵とオブリビオンの激しい戦いの舞台にされれば荒れ果てた悪路へと変わってしまう。
この状況で更に増援として現れたオブリビオンへの対処も必要となれば、相手に振り切られてしまう可能性は十分に存在した。
だが、サラもジェイと同様、危機感こそ持とうともそれが焦燥となる事は無く。
「ならば、あらゆる手段を持ってそれを為すだけです」
「頼もしー! オレもこういうの得意分野!」
二人の猟兵は、彼方へ消えようとしているオブリビオンの追跡を始めるのだ。
瓦礫が点在する路面を、サラの操るバイクが疾走する。
がたがたと揺れる車体の上でハンドルを握りしめる彼女の背後を狙うのは、増援として現れたオブリビオンの群れだ。
銃を握り、背中の敵に対処するのであればどうしても減速の必要があるが、そのようなロスを許容できる状態ではない彼女は、キャバリアで同じく高速移動中のジェイに呼びかける。
「背後は私が対処します、索敵を」
「おっけー、任せて任せて!」
軽妙な返答と共に、ジェイの赤眼が淡い虹色の光を帯びる。
その身が情報で構成されたバーチャルキャラクターである彼が有する事象観測のプログラム術式は、視覚に頼らずとも背後の敵を正確に捉え、その情報を
送信した。
「ありがとうございます――
特殊武装「無人攻撃機」射出準備、完了。航空攻撃を開始します」
その送信先となるのは、サラが展開するユーベルコード製無人攻撃機である。
ガトリングを備えた飛行ドローンは、ジェイから提供された敵情報を元に背後に迫るプロモーションたちを捉え、猛烈な弾幕を張る事でその接近を拒絶する。
「おお、凄い勢い。イイ機体使ってんねー!」
本来であれば、状況に応じた使い方の入力……臨機応変なプログラム構築が必要となるであるが、今回は優秀なハッカーであるジェイが傍にいる。
彼のサポートも受けることで、サラのドローンはそれ単体でオブリビオンを押しとどめる優秀な戦力として機能するのだ。
「プログラムはこんなもんで……そろそろ俺も本気で追った方がいいよね?」
「ええ、背後のオブリビオンは私一人で十分でしょう。早く追いつけるのであれば、その方がいい」
そして、一度プログラムを組んでしまえば、ジェイの能力は完全に追跡に振り切ることができる。
サラも、ドローンの活躍により十分な速度での追跡が出来ている以上、心配はいらないだろう。
ジェイの身体部位……その電子の脳髄が、ユーベルコードの目覚めにより変質を始める。
「――
慣性制御術式 『高貴なる獅子』」
獅子の名を冠する奇跡により強化される、慣性を統べる力。
それにより眼前への『落下』を始めるジェイは、サイバーザナドゥに立ち並ぶ高層ビルを横目に、オブリビオンとの距離を一気に縮めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
悪七守・あきら
※アドリブ 連携歓迎
ちぃ…!小癪な真似を…!
いでませい!蜘蛛童子!
義体から多用途支援型ドローン『蜘蛛童子』を散開させ、【偵察】でタロスをさらった首魁のオブリビオンを追いつつ、自身は経口型燃料電池電解質を取り出してくちに放り込み、【エネルギー充填】で補給する。
ノピよ、ここからはさらなる鉄火場じゃ、手に余ると思うなら降りても良い。だが最後まで見届けたいというのであれば、わしらがお主の身を守る。
どうするかは自分で決めよ。
そう言って義体のローラーダッシュをフル回転させ、【悪路走破】でタロスを追っていく。さらに口ずさむUCで、プロモーションの武装を封じていく。
ウルリック・イーゴン
(嘆くのはまだ早い。まだ趨勢は決していないのだから。)
叛逆者が愚者の代名詞なのだとしても…
では支配者が賢者かと問われれば、その答えは否です
賢者に非ざる相手なれば、出し抜く手はまだ残されています
つまり、諦めるにはまだ早いと言う事です
【悪路走破】の為の技術も装備も揃っています
追跡を躊躇う理由は無いでしょう
【リミッター解除】で【限界突破】した【第六感】で最短ルートを【見切り】追撃を始めましょう
【ブラッド・ガイスト】を起動し、全武器を捕食形態へ
障害物は【吹き飛ばし】【解体】し、最短距離をひた走ります
増援のプロモーションも同じく障害物です
…あらゆる障害を排除して押し通る
だから、命が惜しければ邪魔をするな
●退くか進むか
「(嘆くのはまだ早い。まだ趨勢は決していないのだから)」
強大な支配者に抗う者が愚か者であれば、支配者そのものは賢者であるのか?
その答えが否であることを、ウルリックは十分に理解していた。
「賢者に非ざる相手なれば、出し抜く手はまだ残されています」
「ああ、これしきでわし等を振り切れると思ったら大間違いじゃ!」
ウルリックも、それに答えるあきらにも諦めの色はなく。
それは視線の先にいる敵に宣するように、現状を嘆く誰かに言い聞かせるように。
ハイウェイの彼方に消え去ろうとしているオブリビオンの背を追い、猟兵たちの追跡は始まるのだ。
「悪路を走破する技術も装備も整っています。さあ。もう一度……」
ウルリックの操るバイクが、いや、彼が有するすべての武装が再びその姿をうごめかせる。
先ほどのプロモーションたちとの戦いでも使用したユーベルコード、ブラッドガイスト。
彼自身の血を啜る事で目を覚ます捕食の力を、ウルリックは躊躇なく再使用する。
スーツの背からは獲物を捕らえる触手が伸び、手にした剣には敵を引き裂く牙が並び、バイクはエンジン音とは明確に異なる鼓動を刻む。
「血の気が多いのう……ほれ、追いついてからが本番じゃぞ」
「これは、ありがとうございます」
そんなウルリックの我が身を顧みぬ姿勢を横目に、あきらが小さな何かを投げ渡す。
その正体は経口型の筋力増強剤。本来は人を選ぶ性質であるエネルギー源であるが、捕食に特化したウルリックのバイクは何の問題も無くそれを食い力を回復する。
「おう、それじゃあ……いでませい! 蜘蛛童子!」
そして当然、あきら自身もエネルギーを補給し、直後に擬態から展開するのは小型のドローン群だ。
地形を選ばず最高速度を出せるその小蜘蛛たちは、猟兵たちより先行しオブリビオンの追跡を始める。これで、オブリビオンを見失う事はないだろう。
優先すべき緊急の問題へ対処したあきらは、次いで
背後へと目を向ける。
「さて、後はお主じゃな」
「俺……?」
プロモーションたちの意識が猟兵に向けられている為、どうにか猟兵たちへと追従している一般人。
だが、この先に待ち受けるのはそれを上回る脅威となるオブリビオンだ。
「ノピよ、ここからはさらなる鉄火場じゃ、手に余ると思うなら降りても良い」
「……それを臆病とは言わせません。あなたは、既に行動したのですから」
あきらもウルリックも、ノピが此処で逃げ出しても責める事は無いだろう。
彼がタロスを連れて逃げ出したからこそ、手遅れになる前に猟兵たちが現れたのだ。
それ以上を求める方が酷であると、二人は十分に理解していた。
「……だが」
そして、その一方で。
人間としての良心、尊厳。メガコーポがこの世界から奪おうとするそれらを守るためには、必ずしも保身が正解ではないという事も、猟兵は知っている。
「最後まで見届けたいというのであれば、わしらがお主の身を守る。どうするかは自分で決めよ」
童女のような風貌に似合わぬ、あきらの問いかける眼差しがノピを射貫く。
ウルリックも見守る中、ハイウェイスターはその首を縦に振った。
「お、俺も行かせてくれ! 理屈は分からねぇけど、此処でアイツを見捨てちゃ駄目なんだ!」
子供を守るという、別世界では当たり前の道徳も知らぬ男が、感情のままに叫ぶ。
その答えを聞いたあきらは、満足そうに頷いて。
「よく言った! ならばしっかり着いてくるのじゃぞ、走り位は自力でやってみせい!」
「障害は、俺たちが打ち払いましょう」
義体のローラーをフル回転させながらあきらは何かの歌を口ずさみ、ウルリックのバイクが叫びをあげる。
当然、それを追うノピも含めた一行へ、プロモーションたちは足止めの為に攻撃を仕掛ける。
だが、そのすべてがウルリックにより吹き飛ばされ、メガコーポのレプリカントはバイクごとその機体を粉砕されていく。
元々、ウルリックの相手になっていなかったオブリビオンが更なる
弱体化まで食らえば無理もない。
あきらの歌うバトルクライの響く中、一行は全力でハイウェイを進んでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒木・摩那
敵もなかなかにやりますね。
かと言って、タロスくんを攫われたまま逃がすわけにはいきません。
引き続きマジカルボード『アキレウス』で追います。
追いかけるのはもう他の猟兵がやられてるでしょうから、こちらは先回りしてみます。
そもそも、タロスが作られたのはメガコーポLarfiedで、売り先は別の軍需企業ということですから、行き先はそのどちらかでしょう。
ならば、近くや向かう先にその関連施設があるか、『スマートグラス』を使って【情報収集】します。
目星が付いたら、そこに先回り。
ヨーヨー『エクリプス』を使ってUC【紅月疾走】を発動して、道路を削り取って進路を妨害します。
●逃走手段
猟兵という『勢力』を評価するのであれば、極めて質の高い烏合の衆と呼ぶことができる。
個々人が人域を越えた力を有する上に、明確な指揮官となる存在も居ないのだから当然の帰結ではある。
だからこそ、集団として柔軟な行動を取る事を不得手とすることが多いのだが、それが問題になる事は殆どない。
理由の一つは、猟兵の質がその不利をねじ伏せるまでに圧倒的な領域にあるという事。
そして、また一つには。
「――先回りしてみましょうか」
摩那のような、目端が利く猟兵の存在だ。
ボードを走らせハイウェイを進む彼女にとって最も警戒するべきは、新たな戦力をメガコーポが投入してくることだ。
摩那以外の猟兵もオブリビオンを追い、その追跡が続けられている限り、敵を見失う事は無い。
彼らも全速力だ、正攻法で追いつける相手であれば最早時間の問題であるとすら言える。
問題は、タロスを攫ったオブリビオンと自分たちを妨害せんとするプロモーション、それ以外が現れた場合。
単純な戦力以外に、猟兵を振り切るほどの高性能な車だとか、瓦礫の範疇に留まらないバリケードを作られた時点で取り逃がす危険度は跳ね上がるだろう。
それは防がねばならぬと、摩那の
トレードマークに光が奔りはじめる。
警戒すべきは、今回の件に関わる二つのメガコーポ、売り手であるLarfiedと買い手である軍需企業、どちらかの息がかかった施設だ。
無論、一般に開放されるネットワークにメガコーポの企みが載っているわけではないが、突破口があれば摩那のハッキング技術が秘密を暴く。
ガソリンスタンド、病院、役員用の秘密クラブ、工場などなど、驚異的なスピードで情報を精査する瞳はしかと正解にたどり着く。
「数十分前に急に始まった、ジェット機の整備……」
タロスを買おうとしている軍需企業の私設空港で行われる、不審な動き。
相手はオブリビオンと繋がりを持つメガコーポ、それが逃走手段として用意するのであれば、猟兵でも追いつけないかもしれない。
「逃げ込ませるわけにはいきませんね」
静かに呟く摩那が取り出すのは、刃が展開されるヨーヨーだ。
最短距離で空港に繋がる道路へ向かい、オブリビオンが渡る前にそこを封鎖する。
自身の役目を定めた女猟兵は、高速回転する刃で道路を引き裂きながら、目的の地へと向かうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エスタシュ・ロックドア
はっはーん?
やりやがったな?
上等ォ!
引き続きシンディーちゃんに【騎乗】
俺のライディングテクにかかりゃ酷道なんざなにするものぞ
『群青業火』発動
業火をブルーフレアドレスに供給する
だけにとどまらず、自身もマシンも包み込んで火炎弾と化すぜ
【ダッシュ】でタロスを追いかける
邪魔するヤツぁもちろん【怪力】を振るう【なぎ払い】【吹き飛ばし】
さっきと違って業火で赤熱するまで炙った鉄塊剣でな
敵がさっきのと同じなら業火を纏った体当たりで液体金属を【焼却】できるかぁね
離れようとしても業火の範囲を拡大して【範囲攻撃】
もちろん他の味方とか余計なモンは燃やさねぇように適宜消火はするがな
おいノピ、ちゃんと付いて来てるか?
月白・雪音
…不覚です、してやられましたね。
ノピ様の身も憂慮に堪えぬ所ですが、彼はタロス様を己が身よりも優先し守らんとしました。
故に、敢えて傍で護る事は致しません。タロス様の身は私共にお任せを。
UC発動、残像にてハイウェイを疾走
見切り、野生の勘で敵の攻撃を察知し回避或いはカウンター
進行の妨げになる相手は怪力、グラップルによる無手格闘にて即座に殲滅
ジャンプ、悪路走破も駆使しハイウェイのフェンスや障壁も足場として生身ゆえの機動性を活かし妨害の間隙を駆け抜ける
追撃対象に追い付くならアイテム『氷柱芯』を飛ばし走行を阻害、
タロスの救出に動く
…私は彼の想いに応えると申し上げました。
――その約定を、果たさせて頂きます。
●チェイス・オーバー
ある種の人間は、危機的状況にこそ笑うものだ。
「やりやがったな? 上等ォ!」
少なくとも、エスタシュはそういう男である。
攫われた護衛対象、状況から殺される事は無かろうとも、この追跡を一度振り切られてしまえば詰みだ。
その状況を正確に理解した上で、エスタシュは凶悪な笑みを浮かべて見せる。
「おいノピ、ちゃんと付いて来てるか?」
「ああ!」
こういった闘争心は、時に当人以外の心にも伝播する。
自らのミスでタロスを攫われたノピも、エスタシュの勇ましさに当てられたか、気落ちしすぎずにバイクの操作に集中できている様子であった。
「…………」
その様子を、雪音の赤い眼差しが静かに見つめる。
大人であるノピは最低限の自衛力を有してはいるが、プロモーション程度のオブリビオンとどうにか渡り合える程度の力は、猟兵から見れば幼いタロスと大差はない。
万一を考えるなら、彼も守るべき相手として後方に下がらせるべきだろう。
だが、タロスが攫われる間際、己が身よりも少年を優先しようとした彼の意思を汲み取るのであれば。
「……急ぎましょう、一刻も早くタロス様をお救いせねば」
ハイウェイを生身で駆ける雪音の脚が、一段と強く踏み込まれる。
ともすれば周りを置いていってしまいそうなほどのその加速こそ、幼子を救う為に研ぎ澄まされた、雪音の決意の証であった。
瓦礫を飛び越え、ハイウェイの街灯を足場にして雪音が更に跳ぶ。
生身ゆえの柔軟性と、勘と呼ぶにはあまりに洗練された武人の感覚が荒廃したハイウェイの中に彼女だけの最速を可能にする。
拳 武を極めた彼女にとって、寸断された道路も道を塞ぐオブリビオンもさしたる障害にはならない。
軽やかに走り、その次の瞬間には恐るべき剛力をもってプロモーションを兵装ごと拳で穿つ。
この悪路において、彼女ほどに早く、そして自由に駆ける存在もいないだろう。
「――なんて認めるほど、
俺とシンディーちゃんはお淑やかじゃねえからな!」
ただしそれは、同じ猟兵を除いたら。
エスタシュの屈強な体躯に刻まれた無数の傷跡。そこから噴き出す
群青業火がバイクのジェットエンジンに注がれ、そこに留まらず溢れ出す。
マシンも、エスタシュ自身をも飲み込む炎はやがて群青色の巨大火球へと変貌を遂げる。
もはやバイクの域に留まらない速度と勢いを持って走り出すエスタシュの手に握られるのは、青い業火の中でも煌々と赤熱する鉄塊剣だ。
彼がそれをひとたび振るえば道を塞ぐ瓦礫は一瞬で焼き切られ、業火で近づけなくなったオブリビオンたちは、その膨大な質量と熱波が呼ぶ暴風になぎ払われハイウェイから脱落していく。
「く、こっちまで熱い……!」
「わりーわりー! 焼きはしねえよ、信用してくれ」
猟兵のものに比べればいくらか拙い
フリーダムブレイズを纏うノピへ、エスタシュが笑う。
この業火舞う道路の中で、もはや走れるのは二人のバイク乗りと先行する雪音のみ。
プロモーションたちを振り切った彼らの目に、ようやくその影はハッキリと映るのだ。
「……そこっ」
「ッ、猟兵……!」
その時雪音が繰り出したのは、氷柱のように透き通るワイヤーアンカー。
タロスを抱えるオブリビオンはそれを完全に回避してみせるものの、この状況下でわずかに生じた速度のロスは致命的。
二度の追走劇を経て、とうとう猟兵たちとリーダー格のオブリビオンの視線が交錯する。
雪音の口が開き、声が発せられる刹那。
口にすべきは、オブリビオンへの宣戦布告か、タロスへの言葉か。
あるいは、先に自らが言った……。
「――約定を、果たさせて頂きます」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ゴシャク・バスター』
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POW : ゴシャク・バスター
【五尺の釘】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : クギ・パーティー
自身からレベルm半径内の無機物を【無数の釘】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ : ビビッド・スターダスト
戦場全体に【極彩色の星の雨】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【自動追従する極彩色の星屑】による攻撃力と防御力の強化を与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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●終着点
「……チッ、プロモーション共も役に立たねぇな!」
猟兵に追いつかれたリーダー格のオブリビオン……ヘルメットを被ったままの少女、『ゴシャク・バスター』は不快そうに声を荒げる。
猟兵へと向き直るその刹那、彼女が見やるのは自分が向かおうとしていた先……猟兵によって破壊された道路である。
「(誰か
逃走手段に気づきやがったな……隙見て逃げ出す、ってのは現実的じゃねえか)」
抱えるタロスは、人質としては役に立たないだろう。
猟兵の持つ不条理なまでの情報収集能力を考えれば、自分が
タロスを害せない立場にある事はバレていると考えるべきだ。
「なら……こうだ!」
「う、うわぁ!?」
突如、ゴシャク・バスターは攫ったタロスを猟兵の方へと放り投げる。
当然、猟兵は少年の身体を受け止めようと手を伸ばすが……。
ズドンッ!!
「……ま、この程度で仕留められる程カンタンじゃないよな」
その次の瞬間、猟兵が下がったその路面をオブリビオンの釘が穿つ。
固い特別舗装のハイウェイをあっさりと貫くその威力は、猟兵であっても深い手傷を負わせるには十分な威力だろう。
戦闘態勢の為、保護したタロスをノピに預ける猟兵へと釘を向け、最後の敵が怒気を放つ。
「こうなったら、お前らを皆殺しにして……その後で商品を回収してやるよ!!」
逃走の隙は無いが、この場だけでもバイクで走り回り、戦闘を行うには十分だとゴシャク・バスターは此処で決着をつける意志を示す。
かくして、ハイウェイを舞台にした最後の戦いの火ぶたが切って落とされるのだった。
ウルリック・イーゴン
(此処が正念場か。)
ノピさん
タロスさんの護りを任せます
あなたの操縦で動き回れば、大丈夫ですよ
【ブラッド・ガイスト】を起動し、全武器を捕食形態へ
俺自身も【リミッター解除】
【限界突破】した【第六感】で敵の動きを【見切り】、Deathstalkerで【切り込み】
殺戮刃物で【切断】し【解体】していきます
敵の攻撃は【グラップル】を駆使して【受け流し】つつScorpioを喰らい付かせ【焼却】
義体と言えど皮膚に浸み込めば消火困難な炎と成り、【目潰し】効果にも期待出来ます
俺は【暗視】にて白燐煙を透過出来ますので一方的に此方が有利と言う訳です
…雇われの辛い所だな
あなたとノピと、果たしてどちらが自由なのだろうな?
●立場
「ノピさん、タロスさんの護りを任せます」
そう短く告げるウルリックへ、タロスを抱えたノピは頷きだけで返事を返す。
猟兵が対峙するゴシャク・バスターが放つ怒気には凄まじいものがあり、口を開くこともできないのだ。
とはいえ、只人を圧倒する威風を放つのは、オブリビオンだけではなく。
「……此処が正念場か」
誰に聞かせるでもなく呟くウルリックもまた、人智を超越した猟兵としての力を解放するのであった。
猟兵とオブリビオンの初手は同じだった。
片や己が血を啜らせた異形のバイクの超常的スペックを、片やメガコーポのバックアップにより用意した超ハイエンドの最新バイクの力を持って、戦場を疾走する。
一合、二合。
ウルリックが殺戮刃物を振るいオブリビオンの急所を狙えば、槍のように振るわれる巨大釘がそれを阻む。
一方でオブリビオンが反撃に転じ釘での刺突を放てば、
殺戮捕食態の力を得たウルリックのカスタムバイクが生物的な超人的走行で回避してみせる。
防御か回避か、手段の違いはあれどお互いの攻撃が通じない戦いの中、笑い声をあげるのはゴシャク・バスターだ。
「中々動けるじゃねえか猟兵! けどよぉ……ソレ、
いつまで続くんだ?」
「…………」
あくまで己の身体能力で戦っているオブリビオンに対して、ウルリックは自分の血を代償としたユーベルコードで渡り合っている。
敵の攻撃を回避するための限界を超えた過集中も相まって、体力の消耗が激しいのはウルリックの側であり、時間は彼に味方にはならないだろう。
そのような中で、ウルリックの行動に変化が出る。
それまでの回避軌道と異なり、手にした武器を斜めに構えた猟兵がオブリビオンとの距離を詰める。
あくまで己が優位に立っているとヘルメットの向こうで笑みを浮かべるオブリビオン、その五寸釘を受け流したウルリックは、手にした武装を投擲する。
だが、敵はバイクの機動力を活かしてそれを躱し、苛烈な刺突でウルリックの身体を引き裂く。
「そんな見えすいた攻撃、食らう訳がねぇ……ガッ!?」
「そうでしょうね、見えていれば、ですが」
その時、オブリビオンの死角から何かが食らいつく。
正体は、ウルリックが投擲し外した手榴弾……主の血を啜り、獲物を食らう牙と触手を得た兵器だ。
「ガーリック臭……白燐かッ!」
オブリビオンが気づくより一瞬早く、手榴弾は激しい炎を噴き出しその身体を焦がす。
それ以上に彼女を追い詰めるのは、激しく立ち上る煙により塞がれる視界だ。
一気に劣勢に立たされたゴシャク・バスターをウルリックの攻撃が襲うが、メガコーポの命を受けた彼女に撤退は許されない。
「……雇われの辛い所だな。あなたとノピと、果たしてどちらが自由なのだろうな?」
「くそっ、舐めた真似しやがって!」
ウルリックの言葉に激昂するオブリビオンであるが、今この瞬間に煙を晴らす手段などはない。
ただ吼えるしか許されぬ哀れな獣へと、猟兵の刃は容赦なく振り下ろされるのだった。
成功
🔵🔵🔴
悪七守・あきら
【POW】※連携、アドリブ歓迎
いよいよ後がなくなったのう、若いの。
まずは
7.62x51mmモジュラーライフル と
多機能フルオートショットガン 、そしてマイクロミサイル『天神』を一斉発射し、【制圧射撃】で動きを牽制。
そしてローラーダッシュで間合いを詰めると高周波ブレード『草薙』を居合斬りの要領で脚部へ叩き込み、【部位破壊】【体勢を崩す】で機動力を奪う。
仕上げじゃ!
見せてやろう!最後の技を…!
使用UCで動力炉を露出させ、足回りの弱ったゴシャク・バスターへ極太の荷電粒子砲を放つ!
岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎
敵の武装は巨大な釘ですか…
あの長さや貫通力なら、バイクに乗ってランスの要領で突撃するだけでも十分驚異になるでしょうし、即席のクレイゴーレム程度では防ぎきれませんね。油断せず対処しましょう。
相手はバイクに乗って襲ってくるようなので、こちらも引き続きバイクを「運転」しつつ戦っていきます。
相手と距離を取りように立ち回りつつ、敵の接近をカスタムカービンによる「制圧射撃」の「弾幕」で阻害します。
敵が無理やり突撃しUCの使用を目論んできた場合は、「戦闘知識」から突撃経路を割り出し、「高速詠唱」によりUCを発動し敵の突撃を迎撃します。
大質量の鉄拳であれば敵の突撃にも対処できるでしょう。
●籠の中
「いよいよ後がなくなったのう、若いの」
「ハッ! ガキ相手ならハンデが足りないくらいだよ!」
あきらの軽口に対して、ゴシャク・バスターも気力十分と言った様子で返す。
逃走を封じられ、多少の手傷を負ったといえども相手はメガコーポがリーダーを任せる強力なオブリビオンだ。
その赤く汚れた巨大釘は、猟兵にとっても油断ならぬ脅威であろう。
「さあ、どっちから風穴開けてやろうかァ!」
「おっとっと、怖い怖い!」
「……防御は現実的ではありませんね」
バイクを走らせて、騎馬突撃のような単純な攻撃が始まり、あきらとサラもまた機械の機動力で初撃を回避する。
使い慣れた
粘土人形を盾にしなかったサラの判断は正しい。敵の攻撃は単純ながら重く、土や岩程度なら容易に貫通しうる威力を備えていた。
機動力という面では猟兵たちも劣らぬからこその今しがたの回避であるが、ゴシャク・バスターはその速度をそのまま攻撃の重さとして活かせる分、この走り回れる戦場が利するのはオブリビオンの側だろう。
「足回りを潰さなければ。合わせてください」
「おう! このまま倒してしまわぬかが心配じゃがな!」
だからこそ、確かな戦闘経験を有する二人は敵の優位を許容しない。
まず動くのはサラ。彼女はバイクを操作しながら、カスタムカービンでの弾幕を張る。
その牽制により僅かに攻め手が緩んだのなら、全身武器とすら呼べるあきらの本領が発揮されるのだ。
ピック状の脚部を路面に突き立てて、反動に備えた姿勢となった彼女の義体から展開されるのは三柱の神。
「……おいおい、そんなものまで持ちだしてくンのかよ!」
7.62x51mmモジュラーライフル、
多機能フルオートショットガン、
対機甲マイクロミサイル。
あきらが有する火器の一斉発射に晒されるオブリビオンが怒気を込めた呟きを発した後、彼女の身体は爆炎に包まれる。
その威力は並大抵の……いや、猟兵やオブリビオンであっても致命傷となり得るほどの火力だろう。
しかし。
「クソッタレが! この道路直すの誰だと思ってるんだ!」
「出てくる文句がそれとは、企業人の悲哀じゃのう……」
爆炎の中から現れるゴシャク・バスターは、身体の各所に火傷を負いながらも重篤な負傷を受けた様子はない。
猟兵たちと同じくバイクを走らせたオブリビオンは火力の集中地点から逃れつつ、人外の身体能力をもって可能な限りの弾丸を釘で叩き落したのだ。
傷は負いつつも猟兵の同時攻撃を最小限のダメージで抑えたゴシャク・バスターはヘルメットの奥で笑みを浮かべ、再びバイクを走らせる。
目標は派手な攻撃を浴びせてくれたあきら。敵も高周波ブレードを構えて迎撃の体勢を取るが、接近戦に分があるのは此方だと、オブリビオンはその手の釘を握りしめる。
――瞬間、
真上から降ってきた巨大な何かを咄嗟に釘で受け止めたオブリビオンは、確かに優れた白兵能力を持っていたといえるだろう。
「ガッ、これは
……!?」
「ミサイルで瓦礫が増えましたから。随分読みやすい
突撃経路でしたよ」
潰されそうになっているオブリビオン当人以外には、巨大な落下物の正体は一目瞭然だ。
クレイゴーレムに手早く見切りをつけたサラであったが、彼女の有する手札はそれだけではない。
戦闘魔法 「鉄の巨腕」によって召喚された大型アイアンゴーレムの鉄拳。
サラの言うように先の攻撃で路面の破損は拡大しており、その限られた戦場を走るオブリビオンを捕えることは彼女にとっては造作も無い事。
巨大な質量を誇るユーベルコードはゴシャク・バスターの釘でも容易には貫けず、彼女の脚を完全に殺したのだ。
「さて、先ほどは上手く攻撃を凌いだようですが……」
「今度はどうかのう!」
動きを止められたオブリビオンの眼前で、あきらの胸部が輝きだす。
熱せられ膨張した空気が勢いよく噴き出すと同時に開く胸部装甲、そこから露出するのはあきら自身の心臓とも言える動力炉だ。
「クソ、ナメんじゃ……ぐっ」
「無駄です」
明らかに危険な攻撃の兆候に、ゴシャク・バスターはどうにか脱出を試みるものの、当然サラはそれを許さない。
魔石を砕き、更に質量を増加させる鉄拳に押しつぶされていない時点でオブリビオンの膂力には凄まじいものがあるが、サラに動きを封じられていることに変わりはないのだ。
「仕上げじゃ! 見せてやろう! 最後の技を……!」
「く、ああああああ!!」
そして、
炉心開放を経て放たれる極太荷電粒子砲。
動きを止められたオブリビオンがその光に飲まれる刹那に許されるのは、意味をなさない憤怒の叫びだけであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒木・摩那
うまく策がハマったようですね。
ようやく追い詰めました。
ここで反撃するつもりのようですが、そうは行きません。
ここで釘付けになってもらいます。
しかし、豪語するだけあって、危ないオブリビオンですね。
下手に近づくことだってできません。
そんな厄介な相手には近づかないのが一番です。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーで牽制することで、こちらとの距離を確保して。
ヨーヨーを回避させてからの【念動力】を使ったクイックターンで、オブリビオンの足を捕らえます。
そこからUC【獅子剛力】を発動。
一気に釣り上げて、ウェーブを付けた、ぐるんぐるんの大車輪します。
……あ、ヘルメットの中で吐くと大変なことに!
エスタシュ・ロックドア
皆殺したぁ剛毅剛毅
その意気は嫌いじゃないぜ?
やらせる気は微塵もねぇが
引き続きシンディーちゃんに【騎乗】
『群青業火』で燃えっぱなしよ
バイクで走り回りながら【怪力】でフリントぶん回して【なぎ払い】【吹き飛ばし】
さっきと同じ戦法だって?
いやこれフェイント
鉄塊剣ぶん回しながら【範囲攻撃】で業火を飛ばす
狙いは敵の足回り
バイクを攻撃するのは気が引けるが敵がやる気満々だからしょうがねぇ(棒読み)
まぁホイールごと交換すりゃ大丈夫だろ
タイヤ破裂するまで【焼却】
体勢崩すなりなんなりで隙ができたらすかさずフリントぶち込む
敵のユベコは近寄ってきたら業火浴びせる【カウンター】
シンディーちゃんに触れたら火傷してもらうぜ
●上へ、下へ
「うまく策がハマったようですね。ようやく追い詰めました」
「あ……?」
猟兵との激しい戦闘の中、手傷を負い苛立った様子のオブリビオンが摩那の呟きに反応する。
はたして、このハイウェイでの逃亡劇において、策と呼べるような行いがあったか。
ある。真っ先に思い至るものが、一つ。
「――
ジェット機を潰したのはテメェか! ふざけやがって、お前は念入りにくし刺しにしてやるよ!」
「おお、怒ってる怒ってる。何やったんだ?」
「大したことは。
先回りしてみただけです」
エスタシュの問いに、摩那は何でもないという風に答える。
空港への道路を破壊し、ゴシャク・バスターが狙っていたメガコーポ傘下の空港を利用しての逃走を潰したのは彼女であるが、それはあくまでタロスを空へと攫われる“詰み”を回避しただけ。
あくまで、オブリビオンを撃破しメガコーポの企みを真に挫くのはここからであると油断なく構える。
その様子を見て、エスタシュはそれでこそと笑みを深めてオブリビオンへと向かい合う。
皆殺しを謳う敵の剛毅さは買っている。倒すべきオブリビオンであっても、そういった意気込みは嫌いでは無いのだ。
「……やらせる気は微塵もねぇが」
そして、
剛毅はオブリビオンだけのものではない。
地獄の業火で燃え上がるエスタシュは、手にした鉄塊剣を構えて愛車を走らせるのだ。
「プロモーション共に使った手だな……見飽きたんだよ、それは!」
炎を纏うエスタシュに対して、ゴシャク・バスターもバイクのエンジンを唸らせて迎え撃つ。
さながら騎馬が
突撃槍を扱うように巨大釘を振るうオブリビオンの攻撃を、エスタシュもまた超人的な操縦テクで回避し、両者がすれ違う。
「あの業火に全く怯んでませんね……やはり、耐久面でも部下のオブリビオンとは格が違うとみるべきでしょうか」
その交錯を経て、冷静に敵を分析する摩那。
敵の釘は一見単純な槍でしかないが、それを扱うのは猟兵と同じ
奇跡を振るうオブリビオン。
バイク操作に長けたエスタシュだからこそ接近しても回避の目はあるだろうが、自分が同じ間合いに入るのはあまりに危険だ。
「そんな厄介な相手には近づかないのが一番です」
だからこそ、摩那は堅実な一手を放つ。
エスタシュが前衛となっている内に放つのは、道路の破壊にも用いた超可変ヨーヨー『エクリプス』。
当たればオブリビオンの身体でも手傷を負うだろう、強力な破壊力を秘めた代物だ。
「おっと、馬鹿正直に付き合う義理はねぇな?」
「てめっ、オレはともかくシンディーちゃんを盾にすんじゃねえよ!!」
もっとも、それは当たればの話。
器用にバイクを操作するゴシャク・バスターは、摩那との間にエスタシュを挟むように立ち回り、ヨーヨーの軌道を制限する。
自分よりも
シンディーちゃんを盾にされた怒るエスタシュの側も、攻めあぐねている状態だ。
敵と接近するタイミングで業火を浴びせることは可能だろうが、そちらに意識を割けば敵の刺突を避けきれない。
捨て身のカウンターを狙うほどの戦況でもないと、エスタシュは戦場を走り回っていた。
彼を少しだけ知る者は、その消極的な戦いに『らしくない』と首を傾げただろう。
そして、もう少し深く彼を知る者は、彼がただ真っ向から戦うだけの蛮勇な戦士ではないと頷くのだ。
「くそ、ヨーヨーもバイクもちょこまかと……なっ!?」
声を荒げたオブリビオンが、突然の
熱に驚愕する。
彼女が操るバイクが、突如燃え上がる。
だが可笑しい。猟兵が釘を躱すように、エスタシュが放つ業火はきっちりと回避したはずだ。
「おお、やっと踏んだか。思ったよりかかったな」
群青業火は
延焼する。
エスタシュが命じない限り延々と燃え広がるその炎は、彼から分離した後も地面に残り続け、戦場を走り回るオブリビオンのバイクはその上を通ったのだ。
それに気づいたオブリビオンの声に、明確な焦りが混ざる。
オブリビオン自身はこの炎だけで戦闘不能になる事は避けられるだろう。だが、バイクはそうではない。
これほどの高熱に晒されれば、タイヤ等が変成し、機動力を損なわれることは避けられない。
それを危惧したオブリビオンはユーベルコードにて消火を試み、それ以外から意識を逸らす。
「――捕まえました。接地、反転。アンカー作動……力場解放!」
「ッ、今度はこっちか……!」
それを見逃すほど、摩那は甘くない。
念動力で操られるヨーヨーがオブリビオンに巻き付くと、その身体が勢いよく宙へと持ち上げられる。
まるで、玩具のヨーヨーで大車輪をするように。
勢いよく空中を振り回されるオブリビオンは、悲鳴を上げるも間もなく地面へと叩きつけられる。
いや、地面ならまだマシだったろう。
「――やっぱバイクを攻撃するのは気が引けるな、てめぇにしとくわ!」
地上でオブリビオンを待つのは、勢いよく振り上げられる、エスタシュの鉄塊剣だったのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ジェイ・ランス
【WIZ】※アドリブ、連携歓迎
■心情
おうおう!袋の鼠、しかして窮鼠猫を噛むってやつか!
ま、タロちゃんは返してもらったけど、オブリビオンの撃破が元々のオシゴトでね。還ってもらうぜ。
『―――Ubel:Code Löwen_Konzert Dame.』
■行動(生身で戦闘します)
UCを起動、『手乗りクーちゃん』に前衛、【陽動】を任せ、自身は"機関砲"、"光線"に【誘導弾】を乗せて【一斉発射】、敵UCの迎撃を行います。
同時、【瞬間思考力/戦闘知識】による【情報収集】にて敵の隙を伺い、"砲塔"による狙撃(スナイパー)を行います。
自身の防御は重力障壁(オーラ防御)にて行います。
月白・雪音
…或いは貴女もまたこの世界において、ただ生きるが為に己が職務に従事したに過ぎぬのでしょう。
過去の残滓と化したとて、生を求むるは命の道理です。
されど今の世界は今の命が生きるべき未来。
故に過去の威にて今を脅かすとあらば。
――猟兵として立つこの身の責務と業を、全うさせて頂きます。
UC発動、残像の速度にて距離を詰め、闇雲に釘を飛ばせば自身をも巻き込みかねない密接距離を保つ
野生の勘、見切りで攻撃や足場の破壊を察知し回避或いはカウンター
怪力、グラップルによる無手格闘にて戦闘展開
隙を見て同技能でバイクから投げ落とし機動力を削ぎ、殺人鬼としての技巧も併せ
急所を的確に見極め打ち抜く
…末梢であろうとはいえタロス様はかの企業の内部をその眼で見た方。
ある種不自然とも取れるその身の頑強さにも理由は在りましょう。
そしてノピ様はこの世界を善性に捉われないその腕ひとつを以て生き抜いた知識と知恵が在る…。
お二方共に、かの企業よりこの地を開放する大きな一助となり得る方々です。
猟兵とて所詮は余所者。
助けを乞いたく存じますね。
●ロスタイムは残らない
槍の如き釘が振るわれ、砕けた路面が爆風に乗って瓦礫の雨となる。
超常のユーベルコードが飛び交うこの戦いの中で、ただ一人で立つゴシャク・バスターの身体には無数の傷が刻み込まれている。
それでも、ヘルメットに隠された眼差しから猟兵たちへ突き刺さる、純粋な戦意に陰りは見えない。
「……或いは貴女もまたこの世界において、ただ生きるが為に己が職務に従事したに過ぎぬのでしょう」
「ああ、そうさ。真面目な勤務態度に免じて、さっさと死んでくれるとありがたいね!」
また一閃、必殺の威力を秘めたオブリビオンの突きを軽やかに躱しながら、雪音は思考する。
この世界のオブリビオンは、その殆どがメガコーポの支配下にある。
それこそメガコーポの庇護のもとに生きていたり、あるいは元よりメガコーポに生み出された存在であったり。
選ぶ善悪すら与えられないという意味では、この世界の無力な人々に近しいものがあるのだろう。
「されど、今の世界は今の命が生きるべき未来」
「ま、タロちゃんは返してもらったけど、オブリビオンの撃破が元々のオシゴトでね」
けれど雪音が、そしてジェイが此処に立つ理由は、目の前の過去の亡霊ではなく。
彼らの後方、ノピに抱えられたタロスが静かに息を呑むその先で。
「――猟兵として立つこの身の責務と業を、全うさせて頂きます」
「つまり、アレだよ――還ってもらうぜ」
猟兵は、最後の戦いを宣するのだ。
ぱぁん、とハイウェイの路面が爆ぜる音がする。
砕くのは、銃弾ではない。オブリビオンの釘でもない。
音の正体は、雪音が加速する
踏み込みの音だ。
超人の世界においてなお驚異的な速度で走る雪音の姿は、残像が繋がり白い龍のような軌跡を描いてゴシャク・バスターへと襲い掛かる。
「Ubel:Code――
獅子の協奏曲」
更に、そこにジェイのユーベルコードが重ねられる。
大鎌が変じた電子妖精が放つのは、目の前のすべてを白く染めるような猛吹雪。
その中に織り交ぜられた氷のつぶてや氷柱の刺突は、雪音ごとオブリビオンを屠らんとばかりの密度だ。
背後どころか未来すら見えているような雪音の察知能力を信用しての攻撃であり……事実、雪音は自身の速度を緩めぬまま、味方の攻撃の僅かな隙間に身を置いてみせる。
「…………チッ」
ゴシャク・バスターは、これまでの猟兵たちとの戦いでバイクを破壊されている。
彼女の機動力を支えた重要な装備を失った現状、ジェイの攻撃を凌ぎ、雪音から逃れることは容易ではない。
そんな状況下で、オブリビオンの姿が
消える。
「な、ワープしたのか!?」
「……違うね」
後方で様子を見守っていたノピの驚愕を、ジェイが静かに否定する。
そして、最も接近していた雪音の赤い目はその瞳孔を細め、気の弱い者ならそれだけで失神するだろう武人の視線が
眼下のオブリビオンを捉える。
「欠片もビビらねぇとは、ほんと可愛げが無い連中だ、な!」
それと同時に、無数の釘に沈んでいたオブリビオンが、支配下にある釘を雪音へと向ける。
その攻撃はあっさりと打ち払われる。だが、先ほど瞬時に足元の路面を釘に変え、その鉄のプールに落ちる形で回避をしたゴシャク・バスターの身体が釘の波に乗って移動する。
鋭利な釘の海に飛び込んだその身体には無残な傷がいくつも浮かぶが、あのまま猟兵の攻撃をモロに食らうよりはマシだった。
「来いっ、
星の雨!」
そして、オブリビオンは攻め手を緩めない。
プロモーションとの戦いで分かっていた事だが、白兵戦に長けた雪音に接近されれば自身に勝ち目はなく、それなのにあの速度から逃げる手段は残っていない。
「これは……窮鼠猫を噛むってやつか!」
だからこそ、ゴシャク・バスターは最後の勝負に出る。
星の雨と釘の海、二つのユーベルコードを限界まで使用する彼女の息切れはすぐそこだろう。
しかし、それと引き換えに実現される圧倒的な物量は、それを瞬時に分析できるジェイの驚嘆を引き出す。
圧倒的な攻勢で、ジェイの兵器も雪音の武も追いつかない僅かな隙を作り出す。
この攻撃に失敗すれば死ぬだろうという確信の下、オブリビオンはその手の長大な釘を雪音に向けて……。
釘が刺さる雪音の額から、一筋の血が流れる。
「お見事です――ジェイ様」
「ま、コレくらいはね?」
肉を刺し、頭蓋に届く事は無いささやかな刺し傷。それがオブリビオンの限界であった。
星と釘をすり抜けて、ゴシャク・バスターの胸部を貫いた雪音の貫手。
傷口から漏れる火花は、この世界の人々がそうであるように、オブリビオンの身体も機械に置き換わっていたことを示す。
急所の
一つである胸の炉心を貫かれたまま、釘は振り下ろされていた。
即死を避け、絶命の間際に猟兵を殺しきれると確信したオブリビオンの最期の攻撃はしかし、完了する事は無い。
電子妖精が切り開いた、僅かな隙間を通したジェイの狙撃がオブリビオンの額を貫いた時に、その第二の生は終わったのだから。
●エピローグ
「……お、終わった、のか?」
釘を握ったまま、動きを止めたオブリビオン。
そこから離れる猟兵たちの姿を見て、ノピが呟く。
目の前の戦いがあまりに超常的であり、現実に思考が追い付かないという様子だ。
「とりあえずはね。ほら、笑って笑って」
朗らかにそれを肯定するジェイが、自分の口角に指を当て、ワザとらしい笑顔を作る。
それは、ずっと身を危険に晒されてきた少年、タロスへの言葉でもある。
――もう大丈夫だと。
「ありがとう……本当に、なんて礼を言ったらいいのか」
「えっと、ありがとう、ございます!」
話の通っている潜伏先のスラムへ向かう途中、万が一があってはいけないと同道する猟兵へ救われた二人が何度も礼を述べる。
それに雪音が、目を細めて頷く。笑みを作るのも少し苦手な彼女ではあるが、タロスの安心した様子を見るに、彼女の想いは伝わっているらしい。
末梢であろうとも企業の内部を見てきたタロスに、企業に寄らずに腕一つでこの世界を生きてきたノピは、どちらもメガコーポに立ち向かう過程で大きな力となり得るだろう。
それも、まずは彼らが身を休められる場所まで送り届けてからの話。
そう思考を切り替えた雪音は、その健脚を持ってハイウェイを駆けるのだった。
●ヘパイストスたちの議事録
「結局、タロスは盗まれたままか……」
「我々にとっては、失敗作を使った小遣い稼ぎが失敗しただけだろう?」
「問題はそこではない! タロスは『クオリア』の事を知っているのだぞ!」
「アレは子供だ。精々が仲の良かった姉代わりという認識しかできまい」
「とはいえ、プロモーションとバスターを返り討ちにする勢力に情報が漏れるのは拙かろう……」
「タロスと違い、クオリアを社外に出す意味もない。警備の強化で十分だ」
「異議なし」
「異議なし」
「……異議なし」
大成功
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