●アスリートアース、サポロンドームスタジアム。
それは突然やってきた。
「北の最強チーム、シルバーカムイとは貴方達ですわね!」
女の声にシルバーカムイのエース、トップ・Jが振り向いた。
「いかにも、ミーたちがシルバーカムイネ!」
陽気な口調と裏腹にその声色には長き戦いを経た重さがあった。
「シルバーカムイ! そしてエースストライカー、トップ・J! 貴方達に試合を申し込みますわ!」
サポロンドームの屋外競技場が突如、闇のフィールドに包まれた。
「このダークネス・オブ・レラが!」
まるで彼女の言葉に応えるかのように。
「ダークネス・オブ・レラ……闇の風だと!?」
トップ・Jの良き相棒にして妙に声に若さのあるU・カッペイがその名を聞いて驚愕の表情を浮かべる。
「お分かりの様ですね……我々がダークリーガーだという事を」
女――ダークリーガーの言葉と同時に競技場が動き始める。
サポロンドームはサッカースタジアムをドーム内に運び込む機能を持ち、屋内外両方での試合を可能とする。
だが、今、その機能は闇の牢獄へと化していた。
「ドームという密室、そしてこのダークフィールド……貴方達に逃げ場はございませんわ」
ダークネス・オブ・レラのエースにして唯一の女が笑みを浮かべサッカーボールに足をかけた。
「さあ、キックオフですわ!」
「止む得ないネ、行くヨ! カッペイ!!」
「……任せろ」
ダークリーガーの言葉にシルバーカムイのツートップ、トップ・JとU・カッペイが眉を歪め、そして走り出した。
それが闇への誘いと知らずに……。
●グリモアベース
「限りない過ち、それを打ち砕く時が来た!」
グリモア猟兵、雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)が左手を掲げ、皆を見回した。
「新しく見つかった世界、アスリートアースで事件だ。北のサッカーチーム、シルバーカムイが練習中にダークリーガーに襲撃された。このままではシルバーカムイのみんながダークリーガーにされてしまう!」
グリモア猟兵の用件は急を要する物であることは間違いなかった。
「奴らは試合場であるサポロンドームだけでなく、周辺もダークフィールドに覆っちまった。俺でもスタジアムに直に転移できねえ、悪いがダークフィールドの中を突破してくれ。でも気を付けてくれ……補欠のダークイレブンが行く手を阻んでいる」
ドームを包む広大な公園が書き込まれた地図を広げつつ、通はルートを説明する。
「奴らを蹴散らせば前半戦に間に合う、上手く選手交代してダークイレブンを撃破してくれ。そうすれば後半にエース格であるダークリーガーが出てくる」
サッカーボールを転がすと、それを猟兵に向けてパスしながらグリモア猟兵は話を続ける。
「そいつと勝負して、勝てばダークリーガーは消滅し、洗脳されているダークイレブン達も解放される。傷つくことはあるかもしれねえ、でも殺し合う必要はない。俺達にもあいつ等にもあるんだ……アスリートシップが」
もし同じ思いを胸に抱きしめれば、目にするだろうサポロンドームへの道が。
「新しい世界で戸惑うことがあるかもしれねえ……でも、これがその世界のやり方なら俺達は正々堂々ルールを守って戦おうぜ、それが……」
ボールが自然と転がっていく、開かれしグリモアの問へ。
「俺達、イェーガーの使命だ」
みなさわ
デンデデデンデデデンデデデンデン!!
第六猟兵!!
こんにちはみなさわです。
今回はみんなの血液とオイルが沸騰する何かです。
●注意
シナリオのテイスト上、キャラの崩壊の可能性があります。
譲れないラインはプレイングに記載していただくと幸いです。
●第一章
サポロンドームへの道です。
洗脳された補欠のダークイレブンが邪魔をします。
オープニングでグリモア猟兵に託されたサッカーボールを蹴ってドームまで駆け抜けましょう。
途中の池で自分ごと氷漬けにしたり、公園に割れ目を作って仲間を先に行かせてもいいかもしれません。
●第二章
前半戦に乱入可能です。
華麗に乱入して、洗脳されたダークイレブンを蹴散らしてアスリートシップを見せてください。
●第三章
勝負の不利を悟り、ダークリーガーがピッチに現れます。
統率されたチームワークとダークリーガーの魔球からチームと自分達を守り、心のシュートで見事勝利を掴んでください。
●その他
マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。
では、皆様。
正々堂々と、試合開始!!
第1章 冒険
『ダークフィールドを駆け抜けろ!』
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POW : 気合やパワーで暗黒トラップを破壊する
SPD : 発動したトラップを華麗に避ける
WIZ : 暗黒トラップの弱点を見破り、解除する
👑7
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●イレブンから外れたもの
サッカーボールが転がった先に広がるのは広大な公園。
だが、静かとはとても言い難い。
何故なら闇の気配を纏いし者達が立ちふさがっているのだから。
「ここから先は一歩も通さないぜ」
ダークネス・オブ・レラのユニフォームを纏ったフットボールヘルメットをかぶった男が口を開いた。
「スタジアムはサッカーに情熱をかけるものと、戦うために戻ってきたミズ・コメットの為にある……俺達は入れない」
男に続いて姿を見せるのはテニスラケットを持った女子選手やホッケースティックを構える青年。そしてグローブにパイプを繋げて捕球した球を武器に変えるレールガンを持った少年。
「不思議に思っているだろう、サッカースタジアムに場違いな選手がいることに。教えてやろう……ダークネス・オブ・レラは混成チーム! 目指すは全競技制覇! そのために最初はサッカーを制するのだ」
ここまで喋ってフットボールヘルメットを被ったリーガーが自嘲した。
「柄もなくしゃべりすぎたな……だが、此処は外でもサッカースタジアム。勝負だ!俺達を潜り抜け、スタジアムまで走り抜けてみろ」
甲高いホイッスルの音が響いた。
もう話は終わりだ。
ここから先は……スポーツで決着をつける。
それが――アスリートアースなのだから。
※この章は一場面のピックアップがメインのリプレイとなる予定です。
全体を攻略するプレイングより、「俺はここで命を懸ける、後は任せたぞ!」という感じでいく方がやりやすいかと思います。
よろしくお願いします。
エル・クーゴー
躯体番号L-95、アスリートアースに現着
当機は当該世界に高い適性を発揮します(ボディスーツデザイン的に)
サッカーボールを確保しました
これより最適動作を演算開始――、終了
>モーションを実行します
・電脳ゴーグル内に見る電脳世界より情報を集積、超人サッカーの作法を即DLし己の体で実行する(情報収集+学習力+プログラミング+瞬間思考力)
進行経路上に敵影を多数捕捉
ユーベルコード使用を解禁します
【ウイングキャット『マネギ』】、MAX120体を一挙召喚
マネギ全数に手足を折り畳ませ、地をコロコロ転がらせることで、当機がドリブルするサッカーボールがどれであるか敵から見て非常に分かり辛くするとてもかしこい作戦です
●魔球ワン・トゥー・ワン!
「サッカーボールを確保しました」
最初にボールを受け止めたのは女だった。
いや、違う。
「躯体番号L-95、アスリートアースに現着」
その姿は人に近く、それでいて人でない。
「当機は当該世界に高い適性を発揮します」
ミレナリィドール、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は確かにこの世界において高い適性を発揮していた。
まず動きやすい服装面において。
「ボールはあちらの手の中……いや、足の中か」
「何、奪い返せばいいだけだ」
最初に立ちはだかったアメフト姿のダークリーガー。
ラインマンの言葉にクォーターバックであり、最初に猟兵に話しかけた男が答えを返す。
「相手は1人、こちらは120人。数で潰すぞ!」
クォーターバックの言葉に反応しラインマンが壁を作り、サイドからランニングバックが回り込む。
「これより最適動作を演算開始――」
エルのゴーグルから電子音が鳴り、ダークリーガーのタックルが迫った時、ミレナリィドールはボールと共に高く舞い上がった。
「終了。これよりモーションを実行します」
着地と同時にエルが走り出す、計算されたようにボールが脚に吸い付く綺麗なドリブル。
洗練された動きにラインマンの壁はただの置物に過ぎなかった。
「やはり同じフットボールでも違うという事か」
「当機との差異を比較したところ……」
ボールを奪いに来るクォーターバックの呟きをクライフターンで切り抜けミレナリィドールは的確に分析する。
「サッカーに対する解釈に差異が見られ、それが戦力差を生み出すと考えます」
「分かっている」
エルの言葉にダークリーガーは静かに応えた。
「アメリカンフットボールの認知度は低い。だが、それでも俺達はアメフトをやりたい……そのためなら闇にだって染まってやろう」
その言葉に対しエル・クーゴーが問いかける。
「……闇に染まって掴んだものに人は熱狂するのでしょうか?」
「それは未来の者が作り上げる。俺達はその切っ掛けの為に闇となる――セット!」
エルの問いに応えたクォーターバック。
彼の叫びに応えてダークリーガー総勢120名が並び立つ。
「……今、ここで全力を以てお前を止る!」
全員が走り出した、雪崩の如き勢いで。
「アバランチウォール!!」
「進行経路上に敵影を多数捕捉ユーベルコード使用を解禁します」
エルのゴーグルが光を放ち、現れるのは羽根を生やしたデブ猫型機械兵器『マネギ』
「数には数で――当機は飽和射撃に類する行動に定評があります」
ミレナリィドールの言葉に応えるように全てのマネギが手足を折り曲げ回転。
それは最早ボールの様。
エレクトロレギオン・オルタ
……いや、これは最早魔球であった。
120のリーガーと121のボールがぶつかり合えば、数が多くサッカーへの理解が高いエルが突破するのは当然であった。
「……次はアメリカンフットボールの会場での再会を希望します」
パスを放つエル・クーゴー。
その言葉を背中で聞いた男達はただ一言「ああ」とだけ答えた。
大成功
🔵🔵🔵
ミニョン・エルシェ
サッカー。ボールがゴールラインを割ればよし、それ以外は…ええ、何とも恐ろしい競技です。
では、お見せしましょう。私の戦車ドリブルを!
戦車道ではなく、私は競技かるた。競技かるたの!アスリートですので、お忘れ無く。
無敵の城は万里の長城の如くコースとなり、操縦、蹂躙、逃げ足を駆使して戦車が驀進する無敵のデス・道路!ふっとばされたー、では済みませんよ!
いっけー、マグナーム!
…こほん、トルネードしたらドリブルどころではないですね、反省。
味方にパスを繋ぐなら、この城壁の道も役に立つでしょう。
敵も城壁を利用して追って来るならば、戦車の巨体を横付けして封鎖しましょう。
…かるたらしい事、しませんでしたね!
●吹き飛ばせ! 戦車ドリブル!!
パスを受け取ったのはミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)。
小さな身体にしては安定したドリブルを見せる。
それもそのはず、城郭マニアである少女は一人で山に分け入るほどの登山好き。
不安定な足場で培われた体幹が堅実な足運びを可能とするのだ。
「サッカー。ボールがゴールラインを割ればよし、それ以外は……ええ、何とも恐ろしい競技です」
彼女の言葉の理由は目の前にあった。
何せホッケースティックを持った男が滑るように飛びこんできて、スティックを振り上げているのだから……。
「……くっ」
咄嗟にミニョンがボールをヒールで蹴ってバックへ、追走するように後ろ向きでドリブルをこなしてホッケースティックから距離を取るとボールをトラップ。
「なるほど、若いから……いや、何かをやっているな」
「ええ、競技かるたを」
ダークリーガーの問いかけに普請術師にしてかるたリーガーの少女が答えた。
「では、お見せしましょう。私の戦車ドリブルを!」
今度はこちらの番だ。
そうとばかりにミニョンがドリブルを開始した。
「戦車ドリブルだと……その身体で力攻めか!」
「私は競技かるた。競技かるたの! アスリートですので、お忘れ無く!」
ホッケーリーガーの言葉を訂正しドリブルを続ける競技かるたのアスリート。
彼女の進む道に何かが……構築される。
「バトルタンク・デサント!!」
我城普請・蹂躙鐵轍!
それは無敵の城郭にして万里の長城。
そして現れるのは水陸両用戦艦にして戦車。
「タンク……デサントだと!?」
ダークリーガーの言葉からは驚愕の色は隠せない。
突進力のある戦車。
その弱点と言えば小回りが効かない事。
それを解決する方法の一つが戦車の上に人を乗せる――それをタンクデサントと呼ぶ。
言葉の通りミニョンは戦車の上に乗り、狭い城郭のレールを突き進んだ。
「させるかぁ!!」
そうはさせじとホッケーリーガーが城壁を駆け上がり、滑走するように迫る。
「ふっとばされたー、では済みませんよ! いっけー、マグナーム!」
ダークフィールドに包まれた公園に光の柱が立ち、直後吹き飛ばされるのはダークリーガー。
追走してくる他の選手を塞ぐため戦車を横づけにすると、かるたアスリートは次の選手へとパスをつなぐ。
「……かるたらしい事、しませんでしたね」
そういえばと呟いた後、ミニョンは戦車の砲塔をダークリーガーたちへ向け、その威圧力で彼らを食い止めにかかった。
大成功
🔵🔵🔵
ツバサ・ホシノ
※アドリブ歓迎、共闘希望
WIZ判定
・行動
地面設置系のトラップゾーンを【スターライト・エアリアル】で
呼び出したティンクルスターのジャンプ台で回避していく
その後次の選手にパスを出してボールを回していく
・UC演出
「ボクのキラメキは止められないよっ☆」
輝く星型のアスリートオーラをコースにセッティングして
その上を跳ねるようにリフティングしながら上空を駆けていく
最後に高く飛び上がってオーバヘッドキックで前方へパスを出し
ゆっくりと落ちてくる
・心情
スポーツで決着をつけると言っておいて
スタジアム外で襲ってくるなんて……
キミたちもアスリートなら
こんな事は間違っているって分ってるはずだよ!
ボクが目を覚まさせてやる!
ウィーリィ・チゥシャン
(SPD)
だったら、料理人がここにいてもいいよな?
安心しな、ちゃんとスポーツで勝負するからさ。
【ダッシュ】でスタジアムを目指し、ディフェンスの隙を【見切り】、【フェイント】でブロックをすり抜ける。
当然、派手にやれば囲まれるし抜け目もなくなる。
けど、その方が俺にとっては好都合だ。
何故なら、他が手薄になるからな。
「忘れちまったようだな。スポーツってのは一人でやるんじゃない。みんなでやるもんなんだぜ!」
そして俺は【超音刀工】の衝撃波を足場代わりに【ジャンプ】して、奴らの頭上を飛び越える。
「後はうまくやれよな、みんな!」
●繋げボールを! 必殺のスターライトソニック!!
次にボールを受け取ったのはツバサ・ホシノ(人間の「ローラー」アスリート・f37786)
その彼女に向けて狙いをつける少年が居た。
「マグネティックインパクト!!」
右腕のレールガンから発射される野球ボール。
だがそれは丸みを帯びた鉄の鍋に弾かれた。
「なるほど、サッカー選手でないからここにいると」
避弾経始の要領でボールの軌道を逸らし鍋から顔を見せるのはウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)
「だったら、料理人がここにいてもいいよな?」
料理リーガー……いや、料理人であった。
そこへ飛ぶもう一つのボール。
「料理はスポーツじゃないのよ」
後に続くは女の声。ウィーリィが包丁を振るえば、両断されたそれはテニスボール。
「安心しな、ちゃんとスポーツで勝負するからさ」
「ふぅん……?」
テニスボールを放った女は興味深そうに笑い、そしてラケットを構えた。
「マグネティックインパクト!!」
「ウィザード・ミサイル・ショット!」
無数に降り注ぐ拡散属性を持ったミサイルが如きテニスボールの雨。
その中を貫くようにイオン臭と共に、電磁力で発射された野球ボールが襲い掛かる。
「スポーツで決着をつけると言っておいて、スタジアム外で襲ってくるなんて……」
ツバサの金色の瞳がボールを見据える。
彼女自身もローラーアスリート。
だからこそピッチに上がることが出来ず、裏側で汚れ仕事をする理由も理解できる。
けれども、心がそれを否と叫ぶのだ。
アスリートなら自分のフィールドで、マウンドで、コートで、そして……パークで決着をつけるべきなのだ。
「キミたちもアスリートなら、こんな事は間違っているって分ってるはずだよ!」
ツバサが叫ぶ。
「だが私達はダークリーガー」
「マウンドに速く立てるなら闇にだって手を染めてやる!」
その言葉を打ち消すかのようにローラーアスリートのボールが襲う。
彼女の持つサッカーボールを破壊するかのように。
「なぁ……」
ツバサの前に立ったウィーリィが問いかける。
「それは本当にお前達の求めるものなのか」
テニスボールの雨の中、左手を伸ばせば正確に受け止める。
――電磁力で放たれた硬球を。
「忘れちまったようだな。スポーツってのは闇の力でやるんじゃない。みんなでやるもんなんだぜ! それが……」
料理人の言葉をローラーアスリートが継ぐ。
「ええ、スポーツマンシップだよ!」
ボールの降る中、二人は走る。
「ボクが……ボクたちが目を覚まさせてやる!」
「それが……イェーガーの使命だ!」
闇の奥に燻る炎を目覚めさせるために!
ウィーリィが先行する。
ボールを持たずにポジションを確保するため。
「うおおおおおおおっ!」
振るうは大包丁。
普段の力強い一撃とは違う、超音速の連撃。
刃に触れたテニスボールがみじん切りとなって次々と地面に落ちる。
「逆サイを狙われてるわ!」
「構わねえ、ボールを持ってるやつを倒せばいいんだ――マグネティックインパクト!!」
テニスリーガーの言葉を無視するかのように野球リーガーの少年が魔球をレールガンから放つ。
若さゆえの焦りか、それとも……過去に捨てたはずのスポーツマンシップに燻る炎が揺らいだのか。
だが、ボールは地面を貫き。
「どんなに速いボールだとしても……ボクのキラメキは止められないよっ☆」
狙ったはずのローラーアスリートの声は空から響いた。
スターライト・エアリアル!
輝く星型のアスリートオーラ――ティンクルスターを召喚し、跳ねるようにジャンプ。
同時にサッカーボールもリフティングで蹴り上げて星の頂点まで駆け上ったところでヘディング、空高くへとボールを上げる。
「見せてあげる! これが……ボクの、ボク達のプレイ!」
跳びあがる姿は鳥のように美しく。
オーバーヘッドキックを叩き込む様はアスリートの輝きに満ちていた。
「行ったよ、ウィーリィくん」
「ああ、任せろ」
空からにツバサが舞い降りる中、天空を走るのはウィーリィ。
足場はもう既に作っていた。
自らが振るった大包丁。
その余波で発生した衝撃波の上を料理人は飛び移っていたのだから。
「空を……走る?」
テニスリーガーの女が呟く。
これこそが超音刀工……いや。
超音踏航!
「後はうまくやれよな、みんな!」
逆サイドへのポジショニング、三次元機動、そして誰も届かないであろう超高々度のパスワーク。
ウィーリィが他のイェーガーへとつないだパスを止められるものはいなかった。
星は……光は……夜の、闇の、遥か空に輝いているのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御桜・八重
桜色のサッカーユニフォームで現着。
「あっちだね」
スタジアムの方向を確認。
トントンとつま先を地面に打ち付け、
ボールを足元に寄せて、準備ヨシ。
「GO!」
旋風のごときダッシュ。
走る、躱す、また走る!
決して止まることのない風の様に
小柄な体躯と俊足を活かして
ダークリーガーをすり抜ける。
「!」
立ち塞がるアメフトリーガー。
でも、止まらない。
正々堂々真っ向から、気合いを込めてぶつかる。
「あなたたちにはあなたたちの情熱があるんでしょ!!」
吹きあがる桜色のオーラ。
闇に負けず、彼らの情熱を呼び覚ます。
命をかけて!
吹き飛ばした彼らに今は手を差し伸べないよ。
きっと彼らは後からついてきてくれる!
●桜舞え! 情熱のスタジアムへ!!
最後にボールを受け止めたのは桜色のサッカーユニフォーム姿の少女。
「あっちだね」
少女――御桜・八重(桜巫女・f23090)はスタジアムの方向を確認するとシューズをトントンとつま先を地面に打ち付け、ボールを蹴りだした。
「GO!」
最初に猟兵に抜かれたアメフトリーガー達……彼らの中で一人だけ心の整理がつかない男が居た。
皆を率いたクォーターバックは頭のいい奴だ、もう気持ちの整理がついただろう。
ラインマンは気持ちのいい男達だ、正しいスポーツマンシップを見せつけられた以上、新しい道を歩くだろう。
だけど、彼は――ランニングバックは割り切れなかった。
自分は走るのが仕事。
ボールを運ぶのが仕事。
勝利を運ぶのが仕事。
闇に染まってまでもそれを遂行するのが生き方だったというのに……今更光の照らすスタジアムになんて。
「立てるわけないんだよぉ!!」
旋風の如き八重のダッシュに男は追従した。
「速い……でも!」
そうはさせじとダークリーガーの手を掻い潜り、再び走り出す桜の巫女。
だが、ランニングバックは追撃を緩めない。
八重の目の前で正面を向き走り続ける――つまりはバック走で。
「!」
「お前は速い、確かに速い――けど、アメフトにはお前を逃さない技があるんだよ」
少女と男の速度が等しくなる。
どちらかが遅くなるか、速くなるか……先手を選べば確実にボールを手に入れることが出来ない均衡状態。
だが、敢えて八重は速度を上げた。
ダークリーガーと正面からぶつかるために。
「そこまでアメフトをしたいのに……こんなことをしなくても!!」
ランニングバックが前に出る、ボールを奪い取るために。
「俺はランニングバックだ……得るもののために前に進むのが役目!」
ボールを挟んで二人の足がぶつかりあう。
「今更、スタジアムに立てるほど綺麗な足はしてないんだよ!」
「この馬鹿!」
桜色のオーラが八重を包んだ。
「あなたたちにはあなたたちの情熱があるんでしょ!!」
信念には情熱を。
覚悟には命を。
燃やすものは魂。
その輝きの名こそ――
桜彗星!
彗星の如き輝く桜のドリブル。
「情熱だと……くそったれぇえええええええええええ!!」
対抗するために、ランニングバックが叫ぶ。
それは燻っていた情熱にオイルを注ぎ込み今、爆発する。
「10ヤード・インフィニティ!!」
闇を払い、光と化したランニングバックのランがぶつかり合う。
二つの光が互いを照らし。
そして輝くは桜。
ダークリーガーを吹き飛ばした八重が後ろを見て、そして駆け出す。
手を伸ばす必要はない。
きっと彼は後からついて来る。
ランニングバックを助け起こすチームメイトがそこに居たのだから。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『洗脳サッカー選手』
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POW : ツンドラベア・シュート
自身の【体温】を代償に【ひとりでに動く全身が氷で出来た巨大熊】を創造する。[ひとりでに動く全身が氷で出来た巨大熊]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
SPD : 破天荒ドリブル
自身に【破壊の嵐】をまとい、高速移動と【破壊エネルギー】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 鳥籠のとりこ
敵より【多くの人数で包囲している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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●暗黒のフィールド
シルバーカムイとダークネス・オブ・レラの戦いは0対0のまま進行していた。
表向きは……。
「カッペイ、風を読むネ!」
「ドーム内に風などあるものか!?」
トップ・Jの言葉を不可能だというばかりに吐き捨てるダークリーガー。
だが、それはU・カッペイの瞳が開かれた時、現実となった。
「そこだ、トップ・J!」
ドームの上空数メートル。通風口、換気口などによって流れる大気がとどまる一点。
そこへカッペイのパスが上げられるとボールが静止したようにその場にとどまる。
「馬鹿な!」
「ドームだって風が流れるし留まるヨ! 行くネ! コズミックユニコーンショット!」
高く舞い上がるのは元バスケ選手が故のバネの強さ。
トップ・Jの右足から鋭いシュートが放たれた。
「そうはさせるか! 破天荒フォーメーション!!」
ダークネス・オブ・レラのディフェンス陣が破壊の嵐を纏い一斉に走り出す。
嵐は風を呼び、全てを呑み込むトルネードとなってボールを呑み込むとリベロが一人嵐の中へと飛び込む。
「ハリケーンベア! ツンドラドライブ!」
ボールが嵐を纏った巨大熊によって覆われ、トルネードを抜けると今度はシルバーカムイディフェンス陣を襲う。
「ぐあぁあああああああああああ!!」
強烈な破壊エネルギーによって吹き飛ばされるバックス達。
残ったスイーパーがキーパーとスクラムを組むことでボールの威力を殺し、ゴールを守る……が!?
「……みんな、大丈夫ネ?」
「ダメだ……立ったまま意識を失っている」
トップ・Jの心配、それはU・カッペイの言葉が答えとなった。
「これで、後はお前たち二人……どうする? 続けるかい?」
ダークネス・オブ・レラのメンバーが挑発する。
勿論、シルバーカムイの二人も受けて立つつもりだ。
だが、これが最後の攻撃になるのは明白であった。
――その時だった。
彼らが現れたのは。
誰かが言ったかは分からないが人は彼らを猟兵と呼ぶ。
鋼の意思を持ち、オブリビオンやダークリーガーと戦う戦士。
奴らの名はイェーガー!
さあ、選手交代だ。
まずはシルバーカムイの二人と共に点を取りに行こう。
トップ・JもU・カッペイもサッカー選手。
猟兵の協力を拒む理由は無いのだから。
前半残り15分、戦いの流れは変わる!!
ミニョン・エルシェ
このサッカーで、競技かるたの技を活かせるポジションとなると…
ふふ、キーパーですね?
【指定UC】を起動。
サッカーの一つに、ブラインドサッカーというものもありますね?
私も、コート内の凡ゆる音を支配します。
相手選手たちのポジショニング、筋肉の軋む音、ボールを蹴り出す音。
ええ、鳥瞰図の様に思い描けますとも。【集団戦闘】の戦術指示はお任せ下さい。
かるたのクイーンとして、あなたたちを勝利に導きましょう。
敵のシュートは音と【視力】、【第六感】と集中力を頼りに【出札】を払い(パンチング)し、【カウンター】でお返し!
敵を吹き飛ばしながら味方にパスします!
むべやまかぜを あらしといふらむ
と言ったところでしょうか?
●反撃の切り札! ボールの叫びを聞け!
「お主達は……」
突然現れた猟兵の姿に戸惑いを隠せないU・カッペイ。
「グッドタイミング! 早速頼むネ!」
けれどそれを受け入れる度量がトップ・Jにはあった。
正確には何も考えてなかったかもしれない。
だが、逆転の鍵はここにしか無いのも確かだった。
「わかりました」
ミニョン・エルシェがグローブを嵌めてピッチに立つ。
「このサッカーで、競技かるたの技を活かせるポジションとなると……」
ミニョンの視線の先にあるのはゴール。
「ふふ、キーパーですね?」
楽しそうに笑い、競技かるたアスリートは自分のポジションへと走っていった。
フィールドに嵐が巻き起こる。
「……来るぞ!」
カッペイが警告する。
既にダークネス・オブ・レラのオフェンスが破天荒なドリブルから風を呼び起こしていた。
「ダークネス・オブ・レラとは闇の風」
ミッドフィルダーが先行し嵐を巻き起こす。
「闇に吹く、勝利の為に全てを拒む嵐」
放たれたパスが渦巻くトルネードへ、そしてフォワードが続く。
「嵐が産み出す凍れる一撃、受けてみろ!」
嵐の中回転するダークリーガーとボール。
その速度故に身は凍るがそれは覚悟の上。
「ツンドラベア・ブリザード・スペシャル!!」
フォワードの身を白く彩っていた氷がボールへと移り、生み出されるは巨大熊。
シュートというにはあまりに重い熊の突進がシルバーカムイの防御を突破しミニョンへ、その奥のゴールを食い破らん!
「サッカーの一つに、ブラインドサッカーというものもありますね?」
かるたアスリートが語るのは目隠しをして行うサッカー。
「私も、コート内の凡ゆる音を支配します」
ミニョンの言葉には嘘はない。
競技かるたは読み上げからの符の奪い合い。
研ぎ澄まされた聴覚から得た情報を脳内で統合し、腕を動かす。
故に思い描けるのだ、鳥瞰図の様に。
故に聴き取れるのだ。
相手選手たちのポジショニング、筋肉の軋む音、ボールを蹴り出す音。
そのシュートの弱点……声すらも。
「むべやまかぜを」
一首必殺
「あらしといふらむ」
イチジキマリ
壱字極!
出札を払いのけるようなパンチング。
通常ならボールの軌道を逸らすだけだがこれはユーベルコード。
強化された勘、感覚、集中力、瞬発力。
そこから放たれる一撃はカウンターで相手のフィールドまでボールを飛ばすのに充分であった。
「この一撃で……かるたのクイーンとして、あなたたちを勝利に導きましょう」
反撃の狼煙が今――上がる!!
成功
🔵🔵🔴
御桜・八重
「おっ待たせーっ!」
空中高く飛び出して回転着地。
「ここからは反撃の時間だよ」
二人にウインク、駆け出す!
「あなたたちが正々堂々と戦わない限り、
わたしは止められないよ!」
相手がラフプレーで潰しに来るのなら直接選手を狙うはず。
それなら!
【桜吹雪化身ノ舞】発動。
わたしを狙うタックルやキックが当たる瞬間、
そこだけを花弁に変えてすり抜ける。
ボールより選手を狙う行動を利用し、
風に舞う花弁のように次々と相手を突破。
「来た!」
氷の熊の一撃を受ける瞬間、
全身を花弁に変えて視界を花吹雪で覆う。
足先だけ実体化して横へパス。
熊の両側を走り抜けるトップとカッペイにつなぐ。
「行っけぇーーっっ!」
あなたたちは一人じゃ無いよ!
ウィーリィ・チゥシャン
スポーツはさっぱりだが、シルバーカムイの奴らが「やる」って事だけはわかる。
だったら、俺も負けちゃいられないぜ!
敵のパスを【見切り】、【ダッシュ】【早業】でボールをキープ。
当然こっちに敵が集中するだろうから、敵がUCを使った瞬間に【物を隠す】【フェイント】でボールを敵の目から隠し、その隙にシルバーカムイのメンバーにボールを回す。
「向こうは巨大熊を創造するために体温が落ちているから体力も落ちているはず! その隙に頼むぜ!」
そして巨大熊は俺が【神火の竈】の強火の炎で相手する。
奴らの凍り付いたダークリーガー魂を、俺の料理人魂で溶かしてみせるぜ!
●凍れる心を溶かせ! 魂の反撃!!
「おっ待たせーっ!」
投げられたボールを空中で胸トラップするのは御桜・八重。
「ここからは反撃の時間だよ」
着地からウィンク、そしてダッシュ。
それを見たトップ・JとU・カッペイは頷き、共に駆け出した。
「カウンター来たぞ!」
ミッドフィルダー達が対応に動き出す。
ピンチでもあるがボールを奪い返せば即、フォワードへとつなげられる位置。
攻めない理由は無かった。
「数を増やせ……ツンドラベア・フォーメーションだ!!」
ダークリーガー達がシュートを放つ。
ボールは無い。
だが勝利の為に何もかも厭わない暗く貪欲なハートはある。
それをひとつまみ……燃やせば生み出されるのだ……氷の巨大熊が。
「来たぞ、トップ・J! 御桜!」
警告の叫びと共にカッペイは熊の腕を掻い潜り、トップ・Jは飛び越える。
そして八重は……
「あなたたちが正々堂々と戦わない限り、わたしは止められないよ!」
正面から飛び込んだ。
「馬鹿め! ツンドラベアに飛び込むとは!」
「そのまま吹き飛ばされてしまえ!」
ダークネス・オブ・レラのメンバーが叫ぶ中、熊の一撃が桜の巫女を襲う。
「来た!」
直後、桜が舞った。
桜吹雪化身ノ舞!
その身を桜と化した八重が巨大熊をいなし、次々と襲い掛かるダークリーガー達すらも桜吹雪のように舞うように翻弄し、そして走っていく。
それはまさに幻想――ファンタジスタであった。
「行っけぇーーっっ!」
ミッドフィルダーを抜いた桜の巫女がパスを飛ばす。
受け止めるはトップ・J。
そう、彼らもいる。
もうシルバーカムイは二人だけでも猟兵だけでもないのだ。
「行くネ、カッペイ!」
エースがパスを飛ばし、自らも跳躍する。
「ロングで仕留めるぞ、トップ・J!」
トップ下の放った浮き球はトップ・Jの目の前に。
「決めるネ!!」
ジャンピングボレーシュート!
「させるかぁ!」
それを防ぐのは同じくジャンピングボレーを放つダークネス・オブ・レラのリベロ。
だが守備的ミッドフィルダーが打ったのは弾丸ではなく巨大熊。
「ツンドラベア・カウンタードライブ!」
ボールと熊がぶつかり合って、ツンドラベアの顎がボールを咥えてシルバーカムイのツートップを抜く。
そのまま前線にボールを運んでいく狙い……だった。
「させるかよ!」
それを断ち切ったのはウィーリィ・チゥシャンのオーバーヘッド。
「スポーツはさっぱりだが、シルバーカムイの奴らが『やる』って事だけはわかる」
真っ向勝負は避け、熊からボールだけを奪い取るのは職人芸の領域。
「だったら、俺も負けちゃいられないぜ!」
本来なら料理で発揮されるその腕が、今、フィールドで花開く。
一方で対峙するのはシュートをカットしたボランチ。
当然だ、此処を突破されたらディフェンダーへの道が開かれる。
「ここは通さねえ。お前達はダークネス・オブ・レラのサッカーメンバーだけで倒す!」
素早い足さばきでボールをキープする料理人に対しダークリーガーもそれに追随する。
「どういうことだよ!」
「お前が知らなくていいことだ!」
問い、そして抜きにかかるウィーリィ。
返ってくるのは拒絶、そして。
「俺達はサッカーのアスリート。お嬢をピッチに立たせるわけにはいかないんだ!」
放ってくるのは二発目の巨大熊。
「ハリケーンベア! ツンドラドライブ!」
戻ってきた他のミッドフィルダーが起こす嵐に飛び込んだ巨大熊が破壊エネルギーを増して襲い掛かる。
「だったら! ボールを狙ったらどうだ!? 俺を倒そうとせずに!」
「なんだと!?」
料理人の言葉にボランチは気づく、彼の足元にボールがないことに。
咄嗟に放ったバックパス。
「向こうは巨大熊を創造するために体温が落ちているから体力も落ちているはず! その隙に頼むぜ!」
それを受け取ったトップ・JがU・カッペイとのワンツーリターンで守備的ミッドフィルダーを抜きゴールへと走る。
「教えてもらうぞ、あんたの言葉の意味を!」
熊に対峙するウィーリィが抜くのは大包丁。
その刃に業火が迸る。
神火の竈
熊が飛び込んだ間合い、それは神火のレンジ――距離。
氷と炎が真っ向からぶち当たる。
「ぶち抜け……俺のツンドラベア!」
力を使い果たし膝を着くダークリーガー。
最早出来るのは祈ることのみ。
「あんたは『お嬢』と言った……居るんだな? このチームを指揮するダークリーガーが!」
巨大熊に突き刺さる刃。
「そいつにピッチに立たせたくない……つまり、リーダーは別の競技の選手」
振り下ろした大包丁。
余韻の如く炎が舞い、そしてフィールドは熱い。
「あんたはそいつにサッカーをさせたくない……そうだな?」
「……さあな」
ウィーリィの瞳を見ていられなくなったボランチは顔をそむけのであった。
戦いには隠された何かがある。
だが、それを知るためには――引き出さなくてはならない。
ダークネス・オブ・レラのエースを!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ツバサ・ホシノ
※アドリブ歓迎、共闘可
SPD判定
・行動
破天荒ドリブルで突っ込んでくる相手に対して破壊の風を読み、
アイテム「天空のアスリート魂」を足に集中してボードを形成
UC【ムーンウォーカー】で破壊エネルギーの余波に乗るような感じに空中で躱しながら敵のボールを奪う
(技能「ダッシュ、ジャンプ、サーフィン、空中機動」)
その後はボールを高く蹴り上げ、宙を走りながら自分で受け止める
一人空中パスでゴール前までボールを持って行き
その後パスを出すか、味方がいなければ打ち下ろしのシュートを放つ
・セリフ
キミたちの風には余分が多いねー、
だからこんな風に相手に利用されちゃうんだよ♪
(飛び上がって相手のエネルギーの上を滑りながら)
エル・クーゴー
●SPD
アーカイブ_アクセス
当該スポーツのルールブックを参照――読込完了(情報収集+学習力)
ルールに照らした際、この局面に於ける助勢は正統なものであると判断されます
躯体番号L-95
当機はFWに高い適性を発揮します
・シルバーカムイ両名に助勢
・連れのドローンの『マネギ(親機)』に二方を気遣わせたりして
・敵ゴールへシュートを通すには、敵方が巻き起こす嵐……乱気流にも負けず射抜く直進性(貫通攻撃)が必要と判断
・故に――【L95式電磁投射砲】!
・ボールをキープ次第、渾身の弾速でサッカーボールをブッぱなす!
・射出後の初速から最高速到達時点で敵陣を経由するよう計算(瞬間思考力)し、ロングレンジからシュート
●嵐を貫け! 私達の必殺シュート!!
もうボールはダークネス・オブ・レラのゾーン半ば、後はゴールへと叩き込むだけ。
「アーカイブ_アクセス」
ボールを受け止めたエル・クーゴーがゴーグルを下ろし情報を検索。
「当該スポーツのルールブックを参照――読込完了」
サッカーボールに足をかけ、ゴールを見据える姿は最早アスリート。
「ルールに照らした際、この局面に於ける助勢は正統なものであると判断されます」
状況を把握した鋼鉄の猟兵はボールを蹴りダークリーガーへと切り込んでいった。
「躯体番号L-95、当機はFWに高い適性を発揮します」
「OKネ、ならミーとツートップネ!」
「コンビネーションでいこう、飛べトップ・J、クーゴー!!」
エルの言葉を聞いたトップ・JとU・カッペイが即座に攻撃の手を組み立てる。
滞空時間の長いロングパス。
跳びあがったミレナリィドールがバーニアを吹かして空にとどまると元バスケ選手だったエースがその発条を活かして跳びあがりエルの爪先を掴む。
「大回転ネ!」
猟兵を軸に二人が回転する。
遠心力をその踵に乗せたコンビネーションがボールに叩き込まれれば地を這うようなシュートが唸りを上げる。
「破天荒フォーメーション!!」
対するダークネス・オブ・レラのディフェンス陣が一斉に走り出した。
破壊の力を嵐を伴って。
「やったか!?」
カッペイが嵐の中に飛び込んでいくボールを見つめ、叫ぶ。
「いえ、阻まれました」
だがエルのゴーグルは自分達のシュートが阻まれたことを観測しデータを収集し、弱点を探す。
「今の攻撃からの推察で敵ゴールへシュートを通すには敵方が巻き起こす嵐……乱気流にも負けず射抜く直進性が必要と判断します」
だが、それを行う事は最早不可能に等しい。
ボールは奪われた上に、これまでのオーバーラップでシルバーカムイの二人の疲労が激しい。
ミレナリィドールが連れたデブ猫がアスリートを気遣い、困った顔でエルを見つめていた。
「問題ありません」
だが彼女の目は真っ直ぐに嵐を見据えている。
「嵐には風を……友軍は風を舞う事に高い適性があると確信します」
エルの横を走り抜ける一陣の風。
ツバサ・ホシノが天然芝のフィールドをインラインスケートで滑走し、今、立ち向かわんとしていた。
「キミたちの風には余分が多いねー」
嵐を目の前にしてツバサは余裕を崩さない。
時にエクストリーム、時にファンタスティックにストリートをパークをコースを走るアスリートにとっては風は友のように。
そう、その友が今ボードとなってツバサの足元に形成される。
ボードの名は天空のアスリート魂。
ツバサ・ホシノの魂が大空を舞う風となって具現化したもの。
嵐の中に飛び込んだアスリートは嵐と破壊エネルギーをものともせず、跳ね上がるように空へ舞っていく。
そう月に届かんばかりに……。
ムーンウォーカー
エネルギーの余波を波として嵐の中で魅せるトリック。
誰もが視線をツバサに向ける中、ボードが疾走し、ボールを奪い返す。
「だからこんな風に相手に利用されちゃうんだよ♪」
嵐を駆けのぼりアスリートをボールを高く蹴り上げ、そして自分も空高く舞う。
「……エル」
「了解しました」
一言で充分だった。
ツバサの言葉を受けたエルの右脚のハードポイントに取り付けられたマグネティックユニットが発動しその足は電光に包まれる。
「確かにこの嵐は強力だよ! でもエルが言っていた通り強い直進性のあるシュートだったらどうかな」
「ならば!」
アスリートの言葉をダークリーガーが一蹴する。
「全ての嵐を集め、強大なトルネードをなって防いで見せる!」
「残念ですがそれは不可能と予想します」
だが、ダークネス・オブ・レラのディフェンス陣の言葉をミレナリィドールが否定した。
「なんだと!?」
「確かに直進性だけなら、この巨大な嵐は突破できません」
ダークリーガーへと解を伝えるため、エルはまず敵の力を正確に評価する。
「ですが、破壊エネルギーと嵐の波を超えたボールをノートラップで放った場合……その想定は覆ると確信します」
「その通りよ! エル……ここで決めて!」
紫電を纏った足で構えた時、ツバサのパスがミレナリィドールの前に飛んでくる。
先ほど放った合体シュート。
それを受け止めた嵐と破壊エネルギー。
その猛威の中を乗り越え、繋いだパスを今――エル・クーゴーが蹴る。
「故に発射するのは――L95式電磁投射砲……いえ」
ナインティファイブ・レールガン!!
ペナルティエリアから放たれるは電磁加速された超高速シュート。
電光の如き一撃は嵐を貫き、ゴールを貫く。
ホイッスルが鳴った。
それは点が入ったことの証明と……前半が終了したことを知らせる時の報せ。
「やったネ!」
「ところで思ったんだが……ナインティファイブ・レールガンとは?」
1点をゲットし喜ぶトップ・J、その横でU・カッペイは冷静に呟く。
「そこ、気になるのよね。どうして名前変えたの?」
ツバサもそこだけは気になっていたようだ。
「当該スポーツのルールブックを参照した結果」
ゴーグルをずらしエルが皆の方へ振り向き。
「その方が『様になる』と判断しました」
少しだけ無表情な口元を緩めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ジェノサイドピッチャー』
|
POW : 魔球『ジェノサイドアルゴル』
【敵を引き寄せ粉砕する変動超重力】を宿した【魔球】を射出する。[魔球]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
SPD : 魔球『ギガントダークネス』
【自身が投擲した球状の物体】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : 魔球『眠りの森』
【催眠軌道を描く超スローボール】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●還ってきた彗星
1対0の前半が終了しシルバーカムイ有利の中、ハーフタイムが進行していく。
その頃にはシルバーカムイのレギュラー陣も復活し、猟兵含め11人でのサッカーが可能となっていた。
だが、良い材料だけではなかった。
ベンチで試合を見ていたダークネス・オブ・レラの女。
彼女が立ち上がりフィールドへと歩き出す。
「お嬢、こいつらは俺達だけで充分だ」
「その気持ちだけで充分ですわ」
ボランチが止める言葉をお嬢と呼ばれた女は手で制し、そしてベンチコートを脱ぐ。
「我々は全種目の完全制覇が目的。そのためなら他の競技のアスリートすら投入する……それが我らダークネスのスタイル。このままでは負けると分かって何もしないのはダークリーガーとして恥……お分かりになって?」
「でも……アンタは野球がやりたいんじゃ!?」
それでも食い下がるボランチの言葉にダークネス・オブ・レラのエンブレムを縫い付けた野球のユニフォームを身にまとった女は彼の肩を叩き、微笑んだ。
「私はもうダークリーガー、貴方がたに全てを背負わすのはプライドが許さない――ジェノサイドアルゴル!」
近くにあったボールに叩き込まれたシュート。
超重力を宿したボールがシルバーカムイ側のゴールに突き刺さり、インパクトの際に発生した空気の震えがアスリートと猟兵の身体と心に響く。
「名乗るのが遅れました、私の名はミズ・コメット。かつては野球に輝く星を見出していたもの」
一礼と共に名乗る、ミズ・コメット。
「今はただのダークリーガーにして全てを虐殺するジェノサイドピッチャー。これは挨拶代わりですわ」
「ミズ・コメット!? 彗星の如き剛速球と星の軌道が如き変化球を得意としたピッチャーじゃないか……もう亡くなったと聞いていたが」
ジェノサイドピッチャーの名を聞いてU・カッペイが記憶を掘り起こす。
「それはもう過去の話。今はマウンドに戻る為に……いえ! ダークネス・オブ・レラの勝利の為にここに立つ闇の者。私が立つからには、逆転劇をお店しますわ」
カッペイの言葉に首を振り、ミズ・コメットはフォワードとしてフィールドに立った。
「もうそろそろハーフタイムも終わりですね。さあ始めましょう――ここからが真のダークネス・オブ・レラです」
かつての名選手が帰ってきた。
闇を纏って。
彼女が何故、サッカーチームに居るのか。
何故ボランチはそれを止めたのか。
真実はボールを介して探るしかないだろう。
後半戦の笛はもうじき鳴り響かんとしていた。
ツバサ・ホシノ
※アドリブ歓迎、共闘希望
SPD判定
・行動
相手の魔球をゴールポストを背にしながら
UC【応援の翼】で加速させたレガリアスシューズで受け止め
ホイールの高速回転で勢いを殺しながらカットに入る
(振り絞り、ダッシュ、継戦能力、吹き飛び耐性)
ロスタイム突入で反撃を開始
自ゴール近くから味方チーム(シルバーカムイメンバー含む)に
【勝利への意志】を共有するサッカーボールへ【光の翼】を付与したパスを
回していく、パスは回されるごとに全員の意志が積み重なってボールの光はどんどん増し、そして最前線の一人が最後のシュートを放って逆転のゴールを狙う
(情熱、集中力、パフォーマンス)
・セリフ
「一芸は道に通ずる」かー、
ボールが変わってもミズ・コメットの魔球は健在ってところだね
面白いじゃない♪(ワクワクした顔)
ボクたちは決して負けない!
この一つのボールにはみんなの勝利への願いが詰まっているんだから
今からそれをキミたちに見せてあげるよ! カッペイ!
(最後のパスを出す)
(試合後コメットに)
楽しかったね、またやろうよ今度は野球で!
エル・クーゴー
●WIZ
最終撃破目標を目視で捕捉しました
これよりワイルドハントを開始します
・【L95式ペイントブキ】発動
・敵を直接攻撃するではなく、グラウンドそこかしこを塗布するように射出
・地中へ潜航し、宇宙空間に於ける三次元機動もバッチコイな飛行ユニット――鎧装騎兵のプラズマジェットを『L95式バトルスーツ』背面より展開
・試合時間に耐え得る【継戦能力】を以って【推力移動】でカッ飛ばし、敵の催眠技を直視せぬようにフィールドを縦横無尽に移動、敵ボールのカットや味方間のパスワーク、そしてシュートにと立ち回る
・自身が地中に潜航している間は、ドローン『マネギ(親機)』を地上に残し、敵の動向を観察させ地上の情報を共有
ウィーリィ・チゥシャン
何度も言うが俺は料理人だ。
スポーツの事はさっぱりだ。
それでも、何故名ピッチャーだった彼女がサッカー選手としてダークリーガーになったのか。
そして、試合中に語ったボランチの言葉の意味とは。
疑問は山積みだ。
それでも、料理人が料理で語る様にこっちもスポーツで語るしかない。
奴のシュートはまともに喰らったら俺の【料理の鉄刃】でも太刀打ちできない。
けど、その変動超重力を断ち切れば!
砂煙などから奴のシュートの変動超重力を【見切り】、それを【料理の鉄刃】の【斬撃波】で断ち切る。
それでも、シュートの勢いは変わらないから【捨て身の一撃】【ジャストガード】【カウンター】で全力で迎撃し、ロングパスとして仲間に回す。
生憎と【勇気】と【覚悟】なら負けちゃいないんでな!
そして必殺シュートと共に彼女の凝り固まった心をも打ち砕く。
「なぁ、あんたの居場所はこのフィールドじゃなく、マウンドの上じゃないのか?」
「あんたの栄光は『伝説』なんだ。それを勝手に『過去』にするなよ」
「あんたの『仲間』は、それを望んでいるのかよ!」
ミニョン・エルシェ
ええ、面白い。実に面白い。
あの魔球に打ち勝ってこそのクイーン、でしょう。
会津若松、熊本、五稜郭。四方八方からの、数多の砲弾を耐え切った城をイメージ…
敵は粉砕出来ても、城壁は無機物!引き寄せられる事なくぶつかり合える!!
貴女の魔球…いえ、その慟哭!
止める、受け止めてみせます!!
私は…このピッチの捕手(キーパー)だから!!
…ふふ、私には何とか止めるのが精一杯、ですが。
貴女とバッテリーを組んだ正捕手なら、これを苦も無く受け止めたのでしょうね。
さあ、反撃です!
ゴールという【拠点の防御】、ボールを【誘導弾】と化し、ロングスローによる【カウンター】と味方への【援護射撃】。
勝利に向けて連携していきましょう!
御桜・八重
みんなそれぞれに情熱をかけた競技があった。
そしてそれはあなたにも。
「あなたは、あなたの競技で戦うべきだよ、ミズ・コメット。
その情熱が沸騰する場所で!」
変幻自在な魔球は超重力で敵を引き寄せる。
「なら、受けきればいいんだよね」
覚悟完了、顔面トラップもドンと来い!
とにかく気合いだ!
同じ彗星の名を抱くものとして、あの人の魂に響かせる!
彼女がマウンドに立つことをチームメイトも望んでる。
彼女だけでなく、観客もシルバーカムイも、わたしたちも。
みんなの想いがわたしの彗星に力をくれる!
「いざ、突貫!」
どんなに遠くに行っても戻ってくるんだよ彗星は。
だから、今度はみんなが大好きなミズ・コメットとして
帰っておいでよ!
●強敵! ミズ・コメット
ホイッスルと共に動き出すダークネス・オブ・レラ。
迎え撃つはシルバーカムイ。
ボールは猟兵の足元。
フルメンバーの上にイェーガーがいるのなら怖いものはないとシルバーカムイのメンバーが思った瞬間。
猟兵の動きが止まった……いや、止められた。
プレス
ディフェンス陣が攻撃を担う猟兵にプレッシャーをかけるべくマークをかけていくことで、イェーガーの動きは一瞬だが止まる。
だが、それで充分なのだ。
ボールを奪い取ったボランチが破天荒なドリブルで走り抜ける時間を作るには。
「敵ボランチ、シルバーカムイ側フィールドに侵入」
エル・クーゴーが状況を分析する。
こういう時に自分が何をすべきかを真っ先に理解するのは彼女の役目であった。
「ドリブルで切り込んでくるつもりだ! 走れ!」
トップ下を担うU・カッペイが戦術を看破し、皆へと声をかけ、足の速い御桜・八重がボランチに追走する。
「速い!?」
「何としても……このボールはお嬢に届ける」
ボランチの決意。
距離が段々と空いていく。
「そこまでの考えがあるのなら、どうしてダークリーガーなんてやっているのよ」
「決まってる!!」
ボールが蹴り上げられた。
「俺はサッカーのアスリートだからだ……お嬢!」
「分かってますわ」
センタリングに合わせるようにミズ・コメットの足に発生する超重力。
「だからこそ、私は勝ちをつかみ取る――それがダークリーガーとしての貴方がたに報いるただ一つの事!」
放たれたシュートがボールがひしゃげる。
「ジェノサイドアルゴル!」
急上昇からの急降下。
重力加算のドライブシュート。
闇の超軌道にミニョンの反応が遅れた。
ホイッスルが鳴った。
後半五分。
勝負は五分に戻された。
●心の闇を切り払え!
「ええ、面白い。実に面白い」
ミニョン・エルシェの口元に笑みが浮かぶ。
ゴールを奪われたショックは有るけれども。
「あの魔球に打ち勝ってこそのクイーン、でしょう」
それ以上に
強敵たりうるダークリーガーの出現に興奮とアスリートとしての魂が揺さぶられる。
「けど真面目にサッカーをされるとあちらの方が実力は上ネ」
「トップ・Jの発言にはサッカー選手としての経験が裏打ちされていると推測します」
トップ・Jの言葉をエルが補強する。
「そうだな。個々の実力はともかく。組織的にサッカーを行うとなったら悔しいがあちらの方が上手い」
カッペイの言葉にウィーリィ・チゥシャンが頷いた。
「その通りだ。何度も言うが俺は料理人だ、スポーツの事はさっぱりだ。だからサッカーとなった場合には個人の集まりである猟兵でも不利を取られる」
「なら個人技で行くしかないって事だね!」
「そうよ!」
ツバサ・ホシノの言葉に八重が同意した。
「スタンドプレーかもしれない……でも、お互いの目的が同じならきっとそれは一つになるから!」
「ああ……そうだな」
ウィーリィが頷いた。
「見せてやろうぜ、猟兵の力って奴を!」
ホイッスルが鳴り、ボールを持つのはシルバーカムイ。
トップ・Jのパスをエルが後ろに回し、フォワードが先行する。
受け取ったのはカッペイ、そしてツバサに回したところへ疾風が走った。
「スティーリング・スライディング!!」
それはミズ・コメットのスライディングタックル。
盗塁やホームベースを奪うために培われた技術がボールを奪い取る。
「行きますわよ――ジェノサイドアルゴル!」
速攻。
ロングシュートを放つジェノサイドピッチャーの一撃に。
「オン・ツンドラベアー!!」
もう一人のフォワードがユーベルコードを重ねる。
超重力を纏った巨大熊の魔球に吹き飛ばされるシルバーカムイのディフェンダー。
だが一人下がっていた料理人が持っていた大包丁を抜く。
「包丁一本で防げると思って?」
コメットが問う。
自信があった。
闇の力はそれだけのものがある。
「確かにまともに喰らったら俺のユーベルコードでも太刀打ちできない」
これは事実だ。
それを受け止めるだけの器をウィーリィは持っている。
「けど、その変動超重力を断ち切れば」
大包丁が煌めき。
「それはただのシュートだ!」
ユーベルコードによって放たれた斬撃波が超重力と真っ向からぶつかり合う。
料理の鉄刃
「なぁ、あんたの居場所はこのフィールドじゃなく、マウンドの上じゃないのか?」
衝撃波と重力波がぶつかり合う中、料理人が問う。
彼には分らないことがあった。
何故名ピッチャーだった彼女がサッカー選手としてダークリーガーになったのか。
「知れたこと! ダークネスのリーガーとして勝利すれば私にはマウンドが約束される」
答えは陳腐なものかもしれない。
「そうすれば、私は過去を続けられる……ピッチャーとしての私を!」
それでもジェノサイドピッチャーとなり果てたミズ・コメットには取り戻したいものであった。
「あんたの栄光は『伝説』なんだ。それを勝手に『過去』にするなよ」
「伝説と言ってくれるのなら……私はそれをまだ続けて行きたい。それに……」
「あんたの『仲間』は、それを望んでいるのかよ!」
「チームの方針とは言え、私を受け入れ、マウンドに立たせまいと戦った彼らに対しても勝たなければ申し訳が立ちませんわ!」
「!?」
ダークリーガーの言葉にウィーリィは答えを返せなかった。
斬撃波と重力波は拮抗し合い、やがて鋭いシュートがシルバーカムイのゴールを襲う。
「あなたは、あなたの競技で戦うべきだよ、ミズ・コメット」
ボールに真正面から飛び込んだのは八重。
一か八かの顔面トラップ。
とにかく気合いだ!
「その情熱が沸騰する場所で!」
そうでなければ同じ彗星の名を抱くものとして、ダークリーガーの魂を震わせることが出来ない。
鼻を抑えてパスを出せば、ツバサが受け取ってダークネス・オブ・レラの陣地へと切り込んでいった。
「一芸は道に通ずる、かー」
ローラーで芝のフィールドを滑走するアスリートは
「ボールが変わってもミズ・コメットの魔球は健在ってところだね」
――隠せなかった。
「面白いじゃない♪」
自らの心に湧き上がるワクワクした心を。
「止めるぞ、お前達!」
ボランチが叫び、ミッドフィルダーがプレスをかけ、ディフェンダーはゾーンを組む。
「堅実に来たな」
カッペイが作戦を看破する。
「大勢で来るネ、気を付けて!」
トップ・Jが警告を発する。
「大丈夫、ボクたちは決して負けない!」
ツバサがその場で回転する。
「この一つのボールにはみんなの勝利への願いが詰まっているんだから」
ローラーアスリートとして身に着けているスピン。
それを応用し相手を抜き去っていく。
そしてボールはというと……
「上を取られた!?」
相手の頭上を越えていた。
スピンに惑わされ、ツバサがボールを蹴りあげたことに気づけなかったのだ。
「シャポーか、流石は猟兵と言った所か」
カッペイがローラーアスリートが行ったテクニックを見抜き、称賛の声を上げる。
「そう……そして、今行ったことをキミたちに見せてあげるよ! カッペイ!」
ディフェンダー陣まで切り込んでからのセンタリング。
ツバサのテクニックからのドリブルの速度にダークネス・オブ・レラのディフェンダーも反応が遅れていた。
「うおおおおおおおっ!」
ゴールへ向かって疾走するU・カッペイ。
彼の目の前にはトップ・J。
「たまには空を飛ぶネ!」
カッペイの足を両手で受け止めればシルバーカムイのエースはトップ下を空高くへと飛ばした。
「この一撃、波濤が如し!」
U・カッペイのオーバーヘッドキックがダークネス・オブ・レラのゴールへと突き刺さった。
「また逆転されましたわね……」
「お嬢、済まない」
ボランチの謝罪をその手で制し、ミズ・コメットは自らボールを持って走る。
「また逆転すればいいのですから」
「いいや、それは出来ない」
ジェノサイドピッチャーの言葉を否定したのは料理人だった。
「例え、仲間が望んでいたって。例え、勝利の為だからと言って……野球をやりたいあんたのシュートはもう届かない」
「ええ、そうよ!」
ウィーリィの言葉を継ぐのはツバサ。
「ボク達は……サッカーをしているの。ねえ、ミズ・コメット?」
ローラーのアスリートが問いかける。
「何のためにサッカーをしているの? ボクは楽しいからサッカーをしている♪ キミはどうなの?」
「楽しい? ……私は……勝たなければいけないのに……そう勝たないとならないのに」
ボールをセンターサークルに置いたダークリーガーは心を揺らす何かに囚われボールを蹴ることが出来なかった。
●復活の彗星
ホイッスルが鳴り、フォワードがミズ・コメットへとボールを渡す。
けれどサッカーボールは足に当たって跳ね返るのみ。
それをエルが奪い取る。
「させねえ!」
ボランチが上がりスライディングでボールを奪い返すと再びジェノサイドピッチャーへパスをする。
「お嬢!」
「私は……勝たないと……でも……」
叫ぶボランチの声にダークリーガーは応えることができない。
再びボールがシルバーカムイの手に渡れば、意地でもそれを取り返すダークネス・オブ・レラのメンバー。
「足が……動かないのです……」
「お嬢のプレーを俺達が支えてサッカーにする。それしか勝利の方法は無いんだ!」
ミズ・コメットがその場から動けずに表情が歪む中、ミッドフィルダーが叫ぶ。
「大丈夫だ、俺達がいる!」
三度、パスを渡し破天荒なドリブルで嵐を起こしダークリーガーを庇うフォワード。
「お嬢」
「お嬢!」
「お嬢!!」
「……貴方達」
ダークネス・オブ・レラの選手の言葉にコメットの膝が折れそうになった時。
「シルバーカムイの猟兵が言った言葉を思い出すんだ! 何のためにサッカーをしているのか!」
ボランチの声がジェノサイドピッチャーの心を揺らす。
「勝つためだろ! マウンドに戻る為だろ! やりたかったことの為に! サッカーをしているんだろ!」
「……私は」
ミズ・コメットの足元にボールが転がる。
「シュートを打て! ミズ・コメット!!」
「私は――貴方がたと勝利を分かち合いたい! そうでなくてはマウンドに!」
振り上げられたダークリーガーの右足。
「立つ資格がない!!」
超重力が周囲の空気を歪ませ生まれるのはエネルギーの尾。
放たれし一撃に込められたエネルギーが今、彗星となってシルバーカムイのゴールへと進む!
「ジェノサイドアルゴル――いえ!」
貫くは彗星の魔球!!
彗星は今、此処に甦り。
ゴールを貫いた。
ホイッスルが鳴り、後半が終わった。
試合は――延長、ゴールデンゴールで決まる!
●決着! 勝利へのコンビネーション
「これが本当のミズ・コメット」
ミニョンがグローブを嵌めなおす。
「今度は必ず受け止めます――いや、受け止めなければアスリートと名乗れません」
その目には競技かるたのアスリートとしての矜持が宿っていた。
「だが、もしシュートを止めたとしてもこっちのシュートを入れるのは難しいぞ」
「あっちも今度は本気の本気だもんね」
カッペイの言葉に八重は頷く。
二人の言葉通り、自分を取り戻したミズ・コメットを中心にダークネス・オブ・レラは本来の戦い方を――いや、さらにレベルアップさせたチームワークで挑んでくるだろう。
「推奨しませんが一つ方法があります」
エルの言葉に猟兵全員が振り向き。
「よし、それで行こう」
その中でいち早くウィーリィが賛成の声を上げた。
「……良いのですか?」
首をかしげるミレナリィドール、その顔色はゴーグルに隠れて見えない。
「推奨はしないが一つ方法があるってことは――『勝てる方法』だろ?」
「なら、乗った! このまま普通にサッカーしてたら勝てない、ならリスクを取るのがアスリートだよ♪」
「ミーも賛成ネ!」
ツバサもトップ・Jも賛同する。
「仕方がないですね……」
エルの表情が緩んだような気がした。
「なら行こうよ! 最後の決着に」
八重が促す様に声を出す。
そうだ、前を行くのはいつも桜の巫女だった。
「ええ、これが最後の戦いです!」
後ろは任せろとばかりにミニョンはグローブを嵌めた手を叩いた。
決着をつける時が来た。
「…………」
ミズ・コメットが自らの手を見つめる。
微かに浮かび上がるは光の粒子。
そして薄れつつあるその肉体。
「お嬢……」
「スポーツマンシップに目覚めてしまった以上は仕方がない事です」
表情を落とすボランチに古のエースは微笑んだ。
「さあ、始めましょう。これが最後の戦い。行きましょう、私と共に」
「「「応
!!」」」
かつてジェノサイドピッチャーだった女の言葉にダークネス・オブ・レラのメンバーが応える。
ここで応えられなければ、どんなに闇に染まろうとも――アスリートじゃない!
ボールはダークネス・オブ・レラで開始される延長戦。
フォワードから渡されたボールをミズ・コメットがノートラップでシュートした。
輝くは彗星の魔球!!
放たれるは重力を帯びた一撃ではなく、巨大なエネルギーの弾丸。
彗星が太陽に近づくにつれて輝きを増し巨大な星に見えるように、そのシュートも巨大化する。
まばゆいほどの
猟兵達のアスリートシップに磨かれるように。
「させない!」
いち早く動いたツバサが自らの名の如き黄金の翼を背中に顕現させ、彗星に向かってレガリアスシューズを叩き込む。
魔球の回転とローラーの回転が互いの勢いを相殺し、そして力を振り絞ったローラーアスリートのカウンターシュートが地を這うようにダークネス・オブ・レラのゴールを襲い掛かる。
「怯むなぁ!」
ボランチが声を上げた。
「ここで返して、お嬢へとつなぐぞ!」
「応!!」
真っ先に答えのはディフェンダーであった。
キーパーもそろっての全員でのガード。
数で上回れば実力は三倍。
ならばツバサのシュートも跳ね返すことが出来る。
「お嬢!」
鳥籠のとりこから放たれるカウンターパス。
「お嬢!!」
ミッドフィルダーが破天荒なドリブルで嵐を起こしボールを受け止めると破壊エネルギーを乗せて空へと蹴り上げる。
「お嬢!!!」
空に居るのはボランチ。
今、全ての感情を込めて放つのは――ツンドラベア・シュートによるラストパス!
全ての体温をボールに捧げ、凍り付いたボランチがピッチに落下する。
「分かってますわ――これがダークネス・オブ・レラの」
真のジェノサイドアルゴル。
またの名を――
「魂の結晶なのですから!!」
貫くは彗星の魔球!!
「来たぞ!」
ボールが迫る中、ウィーリィが皆へと檄を発する。
「俺達猟兵とシルバーカムイの全てのユーベルコードを乗せたシュートで決着をつける!」
エル・クーゴーが提案した作戦。
それは――全員のユーベルコードを乗せたパスを重ねたシュート。
ミズ・コメットを中心とした連携を見せるダークネス・オブ・レラに打ち勝つには全員のチームワークとユーベルコード。
それ以外に打ち破る手は無かった。
「貴女の魔球……いえ、その慟哭!」
ミニョン・エルシェの背中を支えるようにシルバーカムイのメンバーがスクラムを組む。
「止める、受け止めてみせます!!」
超重力のシュートに対して構えたミニョン。
その周辺に浮かぶのは数々の砲撃に打ち勝った古の城塞。
我城普請・天守顕現
次々と粉砕されていく城塞。
だが競技かるたのクイーンの心が折れることは無い。
共に居るシルバーカムイという城が自分の心にそびえ立っているからだ。
「私は……このピッチの
捕手だから!!」
ボールがミニョンの手の中で回転し、やがて……止まる。
「……ふふ、私には何とか止めるのが精一杯、ですが」
シュートを受け止めたミニョン。
「貴女とバッテリーを組んだ正捕手なら、これを苦も無く受け止めたのでしょうね」
その手からボールが落ちる。
「トップ・J!」
ボールを繋げるために。
「カッペイ!!」
発条の強いエースの足から放たれるコズミックユニコーンショットが相棒へと繋がる。
同時にピッチを低空飛行するエル。
「最終撃破目標を目視で捕捉しました」
グランドを染め上げるように発射されるのはL95式ペイントブキ。
「これよりワイルドハントを開始します」
「クーゴー!!」
ミレナリィドールの行動に合わせるように風を読んだU・カッペイの無明スルーパスが塗料弾で染まったフィールドを飛んでいく。
行き先はミッドフィルダーとディフェンダーの間のスペース。
そこではデブ猫型のドローンが手旗を上げていた。
「ツバサ!」
塗り替えられたフィールド。
その地下から現れた、パスを繋ぐのはエル・クーゴー。
グラフィティスプラッシュによって支配されたピッチは最早猟兵の戦場。
「ウィーリィ!!」
ツバサ・ホシノがボールに勝利の意志を込めた黄金の翼を付与し、センタリングを行う。
全員の勝利の意志を受け止めたボールは翼をはためかせて天空へ。
空ではブレイドワーク・オブ・アイアンシェフによってゴールへの道を切り開くウィーリィ・チゥシャン。
「御桜ぁ!!」
ラストのパス、全ては御桜・八重に託された。
八重が走った。
その姿が桜色のオーラに包まれる。
ミズ・コメットがマウンドに立つことをチームメイトは望んでいた。
彼女だけでなく、シルバーカムイも、自分たちも。
皆の想いが桜の巫女の力に――彗星になる。
「いざ、突貫!」
桜彗星
低空をジャンプしつつ放った八重のダイビングヘッド。
ボールがオーラに包まれ桜色の彗星となって――ダークネス・オブ・レラのゴールへと突き進む。
「これが!」
八重が滑り込む様にピッチに倒れる。
「ボク達の!」
ツバサが彗星を見つめる。
「全てを込めた!」
ミニョンが右手を握る。
「シュートだ!!」
ウィーリィがボールの軌道を空から見送る。
「躯体番号L-95」
エルがアーカイブ記録すべく唇を動かす。
「当チームはワイルドハントをここに完了いたしました」
ホイッスルが鳴り響いた。
それは勝利の叫び。
シルバーカムイの一撃がダークネス・オブ・レラの闇を貫き、ゴールへと突き刺さった瞬間だった。
●彗星消える時
「終わりましたわね……」
ミズ・コメットの身体が光を帯びていく。
スポーツマンシップを心に叩き込まれダークリーガーでなくなった自分はもう存在できないのだから。
「お嬢……そんな!?」
ボランチがすがるように駆け寄ってくるのをかつてのダークリーガーは手で制す。
「楽しかったですわよ、貴方がたとサッカーが出来て」
コメットの言葉にボランチは何も返せなかった。
「どんなに遠くに行っても戻ってくるんだよ彗星は」
そんな二人の間に入ってくるのは八重。
「だから、今度はみんなが大好きなミズ・コメットとして帰っておいでよ!」
「またやろうよ今度は野球で!」
続くように次の試合を申し込むツバサにミズ・コメットは苦笑する。
「私のようなお婆さんの相手ばっかりしないで、他の人と試合をなさい」
自分はもう引退した身で、足りなかったモノも満たされたのだから。
「伝説を作るのはいつだって若者なのですから」
光が風に乗る。
ダークフィールドが晴れ、ドームが機能を取り戻し、屋根が開く。
光りは天に昇り、そしてかつての彗星は消えていく。
猟兵も、シルバーカムイも、ダークネス・オブ・レラも、誰もが空を見つめていた。
いつまでも、いつまでも。
大成功
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