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7thKING WAR⑱〜デザイア・メイルストロム

#デビルキングワールド #7thKING_WAR


●開幕・7thKING WAR
 デビルキング、それはデビルキングワールドを統治する悪魔の王。
 6thKINGビームスプリッターの没後、長らく続いた空位を埋めるべく、先ごろ目覚めた魔界裁判長『ジャッジメントガール』が7代目のデビルキングを決定する『7thKING WAR』の開催を宣言した。
 そこに真っ先に名乗りを上げたのは、まさかの伝説の1stKING『魔王ガチデビル』であった――。

●欲望の大渦潮
「で、その魔王ガチデビルがオブリビオン・フォーミュラだったってのは、皆も承知の処だと思うので、さくっと話を先に進めさせてもらうな」
 ぐっと前髪をかきあげた虚空蔵・クジャク(快緂慈・f22536)は、顕わにしている左眼を糸のように細めると、口の端だけでニッと笑う。
 デビルキングワールドの成り立ちそのものや、これまでの経緯、そして今回の事態を愉しんでいるのだ。
 確かに、なかなかに独特(褒め言葉)な世界であり、『7thKING WAR』にもツッコミどころ満載(褒め言葉)な戦場が乱立している。
 もちろん、クジャクが語ろうとしている事案もまた然りだ。

 曰く、総黄金造りの迷宮がある。
 黄金である。金ぴかキラキラであり、資産価値も抜群な黄金である。
「そんな黄金製の迷宮だからな、どれだけ危険であろうと、大量のD(デビル)を稼げるので元からたいへんな人気だったそうだよ。まさに目指せ一攫千金だな」
 そしてその一攫千金ドリームは、『7thKING WAR』でも健在。
 迷宮内部に隠された、無数の「黄金宝物庫」のひとつを見つけ出し、超高価(時価数十億D相当)なお宝を召喚魔王陣営の悪魔より先に確保するのが、今回のミッションであるわけだが、先述の通り危険もある。
「迷宮を構成する黄金の輝きが、踏み入る者の精神を侵蝕し、ありもしない『欲望の幻影』をみせ、危険な罠へ誘導するようだよ。つまり、お宝に辿り着きたければ、この欲望の幻影を打ち破らないといけないというわけだな」
 欲望。
 それは欲する心。足りぬものを満たそうとする、本能的な欲。心の飢えの具現。
 そんなものが、幻影とはいえ、目の前に現れるのだ。
 いったいどうして抗うことが出来よう?
 なれど、耐え、抗い、打ち勝たねばならぬのだ。デビルキングワールドの為に。己自身の為に!

「皆のことだ。なんやかんやでどうにか出来るさ。気楽に行ってきてくれると助かるよ」
 斯くしてクジャクはお気楽に猟兵たちを黄金迷宮へ送り出す。
 まぁ、偶には?
 無自覚だったり、自覚ありありだったりする欲望と、まじまじ対峙するのも有りなんじゃないですかね?


七凪臣
 お世話になります、七凪です。
 『7thKING WAR』シナリオをお届けします。

●プレイング受付期間
 受付開始:オープニング公開次第。
 受付締切:タグにてお報せします。
 ※導入部追記はありません。

●シナリオ傾向
 全力ネタでもシリアスでも。
 プレイング次第。
 なお、過剰なお色気ネタには対応できません。

●プレイングボーナス
 幻影として立ちはだかる「具現化した自身の欲望」を描写し、それに打ち勝つ。

 プレイング内に必ず『欲望の内容』『具現化した状態』の記載をお願い致します。
 ゲットするお宝に関してはあってもなくても構いません(欲望を打ち破ることがメインのシナリオになりますので)。

●採用人数
 👑達成+若干名程度。
 全員採用はお約束しておりません。
 採用は先着順ではありません。

●同行人数について
 ソロ、あるいはペアまでを推奨。

●他
 文字数・採用スタンス等は個別ページを参照下さい。

 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
 宜しくお願い申し上げます。
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第1章 冒険 『欲望を煽る黄金の光』

POW   :    自分自身をぶん殴り、目を覚ます

SPD   :    黄金の輝きを目に入れないようにして進む

WIZ   :    魔術や護符、意志の力で幻影を打ち破る

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​
シズ・ククリエ
うわあ…マジで金ピカじゃん
えっ、趣味悪…
お金はおれも大好きだけど
こんな使い方趣味じゃないね
フィルもそう思いでしょ?
喋る武器、電球杖フィラメントに話かけ
『ケケケ、まったくその通りだぜ!』
そんな声が返ってきて

具現化するは、瓜二つの自分
欠けた記憶は此方だよ
そんな声が聞こえて来て
手招きしてくる

ああ、嫌だいやだ
無意識にそんなモノ求めてるんだ
あっても無くてもどっちでも良いのに

ちょっと黙ってよ
咎力封じで動作止めたなら
電球杖でガツンと一発殴っておこう、そうしよう
フィル、ちょーっと痛いけど我慢してねー
苦情は受け付けません

趣味悪な幻影を倒したら
さっさとお宝横取りしちゃお
黄金王冠にコインを沢山手に取ってご満悦



 しょぼしょぼと眠たげな双眸を、さらに胡乱に眇め、シズ・ククリエ(レム睡眠・f31664)は憂鬱な溜め息を吐く。
 見渡す限りのキラキラが薄氷色を突き刺し、眼底はツキツキと痛みを訴えるようだ。
「……趣味、悪」
 ぺたりと触れた壁の冷たさに、シズの眉間に縦皺が寄る。
 他でもないシズ自身、『お金』は嫌いじゃない。むしろ、大好きだ。とはいえ――。
「こういう使い方は無いよね。フィルもそう思うでしょ?」
 心の底からの呟きに、電球を模した杖のFILAMENTがバチバチと応える。
『ケケケ、まったくその通りだぜ!』
「だよね――、」
 率直な是にシズの留飲は下がりかけた。が、壁に触れたままの指先に感じた違和に、シズは反射で数歩退き、形を成したソレに喉を詰まらせた。

 ――おいで?
 シズと瓜二つの青年が、慈母が如き笑みを浮かべて手招きしている。
 いや、瓜二つを通りこして、鏡写しだ。ミルククラウンを模る光輪の一滴までもが、同じ動きをしている。
 ――さあ、おいでよ。
 満たされた聲だと思った途端、シズの内側に否定の衝動が膨れ上がる。
 ――欠けた記憶は此処だよ。
 そして、弾けた。

「ああ、嫌だいやだ。ちょっと黙ってよ」
 理解っている。目の前の鏡像は、幻影だ。そう理解っているからこそ、シズは己に覚えた腹立たしさのまま、FILAMENTを振り上げる。
 シズに過去の記憶がないのは事実だ。或いは、造られたものなのかもしれないとさえ思うことはある。
 でも、シズはシズだ。記憶など、あっても無くてもどちらでも良いと割り切っているはずなのに。そうではないのだと――シズの無意識を、欲望の具現が暴いてしまった。
「フィル、ちょーっと痛いけど我慢してねー」
『ナ!? そういうことは前もって――』
「はいはい苦情は受け付けませんー」
 平気を装い、嘯いて。シズは変らず微笑む幻影を、電球杖で殴打する。

「大量大量。大丈夫、おれはきちんと有効活用するし」
『ホントか?』
「本当だって。あ、フィルに装飾増やすのにも使おうか?」
『そりゃ、余計なお世話だぜ』
 逃げも隠れもしない、それどころか命さえ持たぬモノの消失は呆気なく。
 留飲は十二分に下がった。
 然してシズは、黄金王冠にコインをたくさん手にし、何事もなかったようなご満悦気分で、黄金迷宮を後にする。

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬河・辰巳
欲望:大きなもふもふに包まれたい
状態:通常以上に大きくてもふもふした動物達がのんびりくつろいだり遊んだりしている

な、何このもふもふ天国!?
こんな大きなもふもふ狼に抱きつけるなんて子供の頃以来だ……あれ、フロッケどこ行くの?
化粧や髪染めをしてない素顔なうえに、他のもふもふにデレデレしない俺が散歩に誘ってくるって?それ絶対見てはいけないモノだよ!?

え、100%偽物って分かってるけどついって……ならせめてUCで素顔に近い姿にするから、戻っておいで。

さすがに凹むから、フロッケを抱っこしながら飛んでさっさとお宝を持ち帰ろう。
大きなもふもふは魅力だけど、相棒を失うのは一番嫌だからね。



 もふもふもふもふ。
 もふもふもふ、もっふもふ。
 犬に猫に、ヒツジにヤギに、ウサギにアライグマにキツネにアルパカにエトセトラエトセトラ。
「な、何このもふもふ天国!?」
 右を見ても、左を見ても、もふもふもふもふ。あれ自分はいつのまに触れあい動物園に足を踏み入れたのだろう――などと考える間もなく、瀬河・辰巳(宵闇に還る者・f05619)は立派な毛並の狼の首筋に顔をうずめた。
 頬を撫でる毛先は、全くチクチクしないどころか、お日様に干したばかりの綿のよう。
(冬毛かな? これだけの毛量だと、換毛期が大変そう……)
 一瞬だけ過った現実は、ぐりぐりと額で堪能するふくよかな柔らかさに消し飛ぶ。
 こんな大きなもふもふに抱きつけるのは、子供の頃以来だ。心ゆくまで楽しまねば、もふもふに失礼というもの。
 この時点で辰巳の頭からは、本当はここが黄金迷宮で、ふるもっふな世界は己の欲望の具現であることは忘れ去られていた。つまり、迷宮の罠にドはまりしていたわけ、だが。
「……あれ? フロッケ、どこ行くの」
 一番の相棒である真っ白なサモエドが、てとてとと歩いて行く姿に、ひやりと心の芯が冷えた。
 ふりふり振られる尻尾は、ご機嫌な証拠だ。でもフロッケの眼中に自分はない。
「フロッケ……?」
 不安に駆られてもう一度呼ぶと――ただし狼の首筋には抱きついたまま――、ちらりとフロッケが辰巳を振り返る。その円らな瞳のキラキラ具合に、辰巳は全てを悟った。
 きっとフロッケの目には、化粧どころか髪も染めていない素顔の辰巳の姿が見えているのだ。しかもその辰巳は、他のもふもふになぞ目も呉れず、フロッケを散歩に誘っているに違いない。
「って、それ絶対見てはいけないモノだよ!?」
 慌てた辰巳へフロッケが向ける眸は、さながら悟りを啓いた菩薩が如く。
 フロッケだって分かっている。こんなのニセモノだって。100%あり得ないって分かっているけど、つい、つい、つい、つい――。
「……フロッケ!」
 嗚呼、フロッケも抗えぬ欲望と戦っているのだ。そう理解した途端、辰巳は腹を括る。
 ――忌々しく、醜いこの姿もまた、自分自身。
 反転した左眼に、淡い金髪。
 顕わにした真の姿は、辰巳にとって忌むべきものだ。けれど限りなく素顔に近い。
「戻っておいで?」
 狼から離した両手を広げた辰巳に、フロッケは瞠目すると、くるりと身を翻す。
「お帰り、フロッケ」
 胸に飛び込んできたフロッケを辰巳は抱き締め、優しく頬擦りする。
 大きなもふもふは魅力的だ。なれど、相棒を失うくらいなら欲望なぞ容易く捻じ伏せることができる(むしろフロッケに見放されたら、凹んで立ち直れない)。

 こうして恐るべき罠に打ち勝った辰巳は、無事にお宝をゲットし黄金迷宮を後にする。
 その間、辰巳がフロッケをずっと抱きかかえていたことをここに付記しておく。フロッケを信用してないわけじゃないよ? ちょっとでも浮気(?)されたくなかっただけです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルファラ・ガーデンニア
僕の欲望ってなんだろうね。
自分で言うのもなんだけど僕って欲がない方だから…。
欲と言うかは分からないけど希望としては自分の城に篭ってガーデニングがしたい。ってのがそれかなぁ。
デビルキング法とか気にせずまったり引きこもるの最高。
…でもこれってねある意味平和なデビキンだから出来ることで
今みたいな7thKING WARとかされたらおちおち引きこもってもいられないって言うか。

…もとのデビルキングワールドに戻ってもらう為なら多少の労力は厭わないさ。

だからね自分の欲になんてかまってられないんだだから行くよ。じゃあね。



 ぱつり、ぱつり。
 野放図に伸びかの若い芽を、ファルファラ・ガーデンニア(花の悪魔の魔王・f31697)は剪定鋏で丁寧に摘む。
 少しだけ可哀想な気もしたが、植物を弱らせない為でもある。それに丁寧に手入れすればするほど、咲く花は美しい。
 だからこそ、ファルファラはガーデニングに精を出す。
 ファルファラは花の悪魔だ。そして静かな場所を好む。つまり自分の城に引き篭もることこそ至上。
「ああ、最高だな……」
 頬にかかる緑の髪をそっと背へ流し、ファルファラは琥珀色の眸を細める。
 楚々と降る日差しは麗らかだ。花たちの光合成もさぞ捗るに違いない――と、そこでファルファラは自身の記憶に違和感を覚えた。
(僕はいったいいつ、庭に出たんだろう?)
 誰かから仕事の話を聞いていた気がする。そして何処かへ出向いた。
「……」
 つきりと痛んだこめかみに、五月蠅い金色が煌めく。
 そこで、思い出した。今が『7thKING WAR』の最中であることを。
「なるほど。これが僕の欲望かぁ」
 手を翳し、ファルファラは空を仰ぐ。けれどそこに先ほどまでの温もりは感じない。
 欲の薄さを自認するファルファラではあるが、状況には得心がいく。
 デビルキング法に馴染めず、自分の城に籠ってガーデニングに勤しみがちなファルファラだ。確かに、世事に煩わされず、まったり引きこもるのは最高だろう。
(……でも、これって。ある意味、平和なデビキンだから出来ることだよね)
 上の上まで見晴るかすよう、ファルファラは視線を透かす。
 幻想と現実の境は見えない。城は城で、庭は庭のままだ。でももう認識はした。
 デビルキングワールドは騒がしい。それでもファルファラに引き篭もりを許す自由をくれた。その平穏を取り戻す為ならば、さすがのファルファラも多少の労は惜しまない。
 裾についていた土を払い、ファルファラは背筋を伸ばし両手を広げる。その掌から、はらはらと白いポピーの花弁が舞い踊れば、夢は終わり。

「今はね、自分の欲になんてかまっていられないんだ。だから、行くよ――じゃあね」

成功 🔵​🔵​🔴​

龍巳・咲花
罠だらけの迷宮でござるか!
忍びとしての腕前の見せ所でござるな!
安心されよ、拙者、財には全く持って興味ないでござるし、明鏡止水の訓練も受けているのでござるよ!

『欲望の内容』
きらきらした学園生活とか日常
『具現化した状態』
自分と同じくらいの年頃の男女達で、まるで最初から友達だった位の勢いで凄く親し気に接してくれる

(つい誘われるがままの所をムシュマフの首にガブリと腕を噛まれて正気に戻ります)
い、いかんでござる!?
危うく幻影に呑み込まれる所でござった……これはなんと恐ろしい罠でござろうか!
不甲斐無い拙者を許して欲しいでござる!
これ以上は不覚を取らぬ故!(自分の頬を抓りながら幻影を退けつつ進んでいきます)



『ねえ咲花ちゃん、お弁当持ってきた?』
『持ってきてないなら、学食に行こうよ。新しいメニューがね、けっこう映えるんだよ』
 白地に橙色のラインが入ったセーラー服に結ぶリボンは赤。
 皆と揃いの制服に身を包んだ龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)は、大きな瞳をきょとりと瞬かせた。
『おい、何ぼんやりしてるんだよ』
『もしかして具合でも悪い? 保健室に付き添おうか?』
 無理に気を遣った風でもなく、ごくごく自然に差し伸べられた同年代の少年の手に、咲花は無意識に息を詰めた。
 咲花の身を案じてくれた少年だけではない。学食に誘ってくれた少女も、他の皆も、まるで咲花の旧知――親しい友人のようだ。
 理解が追いつかない咲花は、今度はゆっくりと瞬いて周囲を見渡す。
 たくさんの机や椅子が並べられた、四角い部屋。開け放たれた窓の向こうは、新緑が眩しく煌めいている。
 いや、眩しいのは新緑ではない。今の在り様そのものが眩いのだ。
(拙者は、何、を……?)
『ほんと大丈夫、咲花ちゃん』
『無理そ? せんせーに言っとく??』
 悪意の欠片もない≪友人≫たちに、咲花はゆるく首を横に振ると、花咲くように微笑む。
「だいじょうぶでござるよ。さあ、一緒にお昼にするでござ――」

「い、痛っ! 何をするでござるか――」
 ――あ。
 反射で発した己の科白に、他でもない咲花が我に返る。
 腕には、噛みついたままのムシュマフの首。そしてその腕を覆うのは、セーラー服ではなく忍の籠手だ。
「なんたること! よもや拙者が敵の罠に落ちようとはっ」
 ぐぎぎぎ、と咲花は歯ぎしりをする。財への興味のなさと、明鏡止水の訓練から、黄金迷宮の罠なぞ物の数でもないと自負した結果が、これである。情けなくて涙が出そうだ。
「ふ、不甲斐ない拙者を許して欲しいでござる!」
 相変わらず自分の腕に噛みついたままの炎竜(の首)に咲花は詫び、えいっと頬を抓る。
 これで二度と、同じ罠にはかかるまい。暫く痕は残るかもしれないが、任務達成の前には些末事だ。
 然して咲花、お宝を探して黄金迷宮をぐいぐい進む。結果は勿論、無事の任務達成。
 その達成感に咲花は忘れる。
 幻影に見た、友人たちと親しく過ごす眩しい≪日常≫が、己の裡に密かに根付く何かであったことを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
欲望、か
努めて抱かないようにしているが
叶うことの無いものが、ひとつだけ

人間に成りたい

今までも、これからも
ずっと抱え続けるであろう希い
それを具現化したカタチが目の前に在る

櫻舞う世界で何時か
綴り手に紡いで貰ったヒトたる己の姿に
感慨と迷いと僅か憤りが湧き上がる
成程、コレが嫉妬――羨望か

他機に比べて俺は出来が悪いが
世界より叶わない夢を優先する程バカじゃない
鋼鐵の腕を銃火器に転じさせ
幻想の己に突きつける

ヒトは、こんなこと出来ないだろ
この異形の力で、俺はヒトを護って来た
其処には一欠片の悔いも無い

祖国から貰った唯一のモノ
――此の躰を何時か誇れる日が来れば
こんな夢想も、見なくなるんだろうか
希いながら引鉄をひく



 長身の男がいる。
 ハイブランドのダブルスーツを難なく着こなす、褐色の肌をした男だ。
 長い黒髪と黒のマスクに隠れがちだが、耳たぶのピアスも安物でないのが傍目にもよく分かる。
 間違いなく、世で言う『イイ男』に分類される男だ。十人の男がいれば、うち八人は嫉妬を覚えるに違いない。
 だがそこにジャック・スペード(J♠️・f16475)のこころの棘の理由はない。
 何故なら目の前の『彼』は、何処かの綴り手が何時ぞや書いたジャックの姿だから。
(欲望、か――)
 立ち姿も涼やかな『彼』をモノアイに映し、ジャックは形容しがたい感情を演算する。
 生まれ付いた鋼の躰(うつわ)にいつしか「こころ」を宿しはしたが、ジャックがジャックである以上、ジャックは柔らかな肉の身体を得る事はない。

 ――人間に成りたい。

 望んだところで、叶わないことは分っている。だから努めて抱かないよう、心掛けてきた。
 一度、遊び心で『もしも』を託したことはあったが、それでも『文字』の世界だ。イメージは出来ても、目の当たりにすることはなかった。
 その姿が今、ジャックの前に在る。
 今までも、これからも、ずっとずっと、ずっと希い続けるだろうカタチが、具現化されている。
(……、)
 音声出力不可なこころの機微を、ジャックは躰の内側に響かせた。
 此れは感慨であり、迷いであり、僅かの憤りでもあるもの。
(成程、コレが嫉妬――羨望か)
 理解した瞬間、ジャックは鋼鐵の腕を銃火器に転じさせると、余裕さえ感じさせる男の眉間に銃口を突き付けた。
「悪いな。確かに俺は他機より出来が悪いが、世界より叶わない夢を優先する程バカじゃないんだ」
 なるべく平坦に聞こえるよう声を発し、ジャックは躊躇なく幻想の己を撃ち抜く。
 いや、違う。コンマ1秒にも満たない躊躇はあった。希う間が、あった。
(――此の躰を何時か誇れる日が来れば、こんな夢想も見なくなるんだろうか)
 鋼の躰は、祖国が唯一ジャックへ与えたもの。ジャックに『命』を吹き込んだもの。
「ヒトは、こんなこと出来ないだろ」
 ヒトではないから、ジャックは躰を自在に変化させられる。その異形たる力で、ジャックはこれまで数多のヒトを護ってきた。ヒーローたりえた。
 ジャックは、ジャックだ。
 其処に一欠片の悔いも無い。

 『彼』は頽れることなく、消え失せた。
 煌びやかな黄金迷宮に戻った世界に、ジャックは二度と同じ夢は視なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明・金時
欲望、ねぇ
強いて言うなら『里の連中が皆、平穏無事、出来りゃ幸せに暮らせること』かな
難しいのは解ってるさ
望むことなんてそれぞれ違うし
俺は外を知ってるからな、どうしたって閉鎖された村じゃ外と比べちゃ儘ならないこともある

(どこか里の人々は意気消沈しているようで、里の外の都の方角が輝きそちらに向かっているように見え)
都はやっぱり便利なモンだったよ
美味い食事も、仕立てのいい服もある
他にも色々、言い尽くせねぇさ
里から出る奴も今後増えるのかもな

……だがな、
都で暮らすことが幸せだと決めつけるようなコレは――

気に入らねえ!!(クソデカ大声)

(解消後)
……決めつけてるのは俺の方か
もっとあいつら、信じてやらなきゃな



 爽やかな朝だ。
 新緑の香りが濃いのは、前日の夜に雨が降ったからだろうか?
(……まあ、いいか)
 繋がらない記憶に首を傾げかけた明・金時(アカシヤ・f36638)は、鳥たちの合唱より賑やかな声に意識を切り替えた。
『おはようございます』
『昨夜はよく眠れましたか?』
『おはようございます!』
 次々と投げかけられる朝の挨拶に、金時も柔らかく応える。
 閉ざされた山の奥にひっそりとある里だ。住まう人数もさして多くはない。里をひと時、離れたこともある金時でも、顔と名前の一致しない者はいないはずだ。
 いや、顔と名前が一致するのは、金時が置かれていた立場ゆえかもしれないが。
(それも過去のことだ)
 両手を大きく振る子供へ右手を振り返し、金時は里を一望する。
 都の華やかさを知る金時だ。楚々とした暮らしの里の儘ならなさは、嫌というほど知っている。
 それでも、里の皆は平穏無事に日々を送っているし、幸福だって享受できている。
(本当にそうか……?)
 チラ、と。木漏れ日にしては棘がある金色が、金時の網膜の奥で煌めいた。
 そして目にしていた光景が翳りを帯びる。
 鮮やかな色は褪せ、朗らかだった人々の顔にも影が差す。
 最初に首を巡らせたのは誰だったか。続いて誰もが、一様に同じ方へと眼差しを遠くする。
 それは都のある方角だ。いつの間にか広がった曇天を突き抜け、燦然とした灯りが里まで届いている。
(……ああ、そうか)
 途切れたていた記憶が繋がった感覚に、金時の貌が僅かに歪む。
 確かに、都は便利だ。美味い食事も、仕立てのよい衣服も、里では満たされないものが山とある。
 人々が都に憧憬を抱くのも止む無しだ。里を出る者も、増えていくのだろう。
「……だがな」
 食いしばった奥歯が、ギリと鳴った。
(都で暮らすことが幸せだと決めつけるようなコレは――)
 腹の底から込み上げる苛立ちを、金時は大音声へと変えて世界へ放つ。
「気に入らねえ!!」

「……決めつけているのは、俺の方か」
 他でもない、自身の咆哮で幻惑を破った金時は、黄金迷宮で肩を落とす。
 気付かぬうちに抱いていた欲望は、存外に根深くて。
「俺が……俺が、もっとあいつらを信じてやらなきゃな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクアス・サラザール
☆陛下☆
命令して

これ以外の欲望が俺に存在するとでも?
そして常日頃から陛下の命令を受ける立場の俺に死角があるとでも?
余裕ですよ余裕
陛下、すぐに我らが魔王国にお宝を持ち帰りますね!

あっ、でも、待ってください
幻影とは言え、陛下の命令を…無視していく…?
無理では?
無理過ぎるのでは??

くっ、だがここで足止めをされるわけには…わけには…
あ~~陛下~~!
貴方の右腕が直ちに参ります!
何なりとお申し付けください!

うう、なんて恐ろしい罠なんだ…こうなったらこれです
魔王陛下の御為ならば!(UC)
よし、これで分身の俺が頑張って幻影陛下の命令を遂行するでしょう
俺は颯爽とお宝を回収して本物の陛下に献上するんですからねっ!



『 』
「お茶の時間ですね、承りました。温かいのに致します? それとも冷たい……いえ、陛下のお身体が冷えてはなりませんから、温かいのにしておきましょうね」
『 』
「部屋が暑い? では失礼して――」
 ばさ。
 一番星めく小さな魔王の一挙手一投足を素早く見て取り、ルクアス・サラザール(忠臣ソーダ・f31387)は何処からともなく取り出した団扇で柔らかな風を起こす。
『 』
「俺のことはお気遣いなく。陛下にご命令頂くことこそ、俺の幸せですから」
 陛下の右腕を自認するルクアスだ。陛下の御為ならば、身を粉にすることも厭わない(おそらく物理的にも)し、陛下の命令ならば完遂してナンボである。
 例えそれが、幻の陛下が下す命令であってもだ。
(うう、なんて恐ろしい罠なんだ……っ)
『 』
「ホットケーキを召し上がる? ならばバターとはちみつはたっぷりですね」
 ……ルクアスは今、自身が黄金迷宮の罠に囚われていることをしっかり自覚している。
 自覚していても、陛下の命令は陛下の命令だ。陛下に命令してもらうことこそ、ルクアスの望み。ルクアスにとっての幸福。で、あるからして体どころか頭までも勝手に動いてしまう。
 警鐘を唱えるのは、思考の片隅のそのまた片隅の、さらに片隅に残った理性のみ。
 ――常日頃から陛下の命令を受ける立場の俺に死角があるとでも?
 ――余裕ですよ、余裕。
(余裕じゃ、ありませんでした……っ!)
 陛下の為にお宝をゲットし、魔王国に持ち帰らねばならないのに、絶対唯一の欲『陛下に命令して欲しい』の前にあってルクアスは無力であった。
 幻影とはいえ、陛下の命令を無視することは出来ない。
(ここで足止めをされるわけには……わけには……わけ、に、は……っ)
「あ~~陛下~~! 何なりとお申し付けください!」
 ほぼほぼ反射と本能で傅いて、ルクアスは至福に酔いながら苦悩する。この状況を如何に脱すれば良いのか。いっそ自分が二人いればよかったのに――。
(俺が、二人? そうです!!)
 天啓の訪れは不意に。隅っこの隅っこの隅っこの隅っこで閃いた妙案に、ルクアスは貌を輝かせた。
「全ては俺の陛下のために」
 途端、計106(108体になる日も近い)のルクアスの分身体ソーダ水が現れる。
「これで全ての魔王陛下の命令を遂行することが叶います!」
 ルクアス、心底喜々としていた。ミリの疑いもなく、喜々としていた。
 一人では無理でも、数さえいれば怖くない。今ならば、陛下の幻影が何体現れようとも無問題だ。
 斯くして――。

「ふふふ、実に充実した時間を過ごさせて頂きました」
 黄金迷宮のお宝を颯爽と回収したルクアス(本体)は、肌艶ぴかぴかになって陛下(本物)の元へ帰還するのであった。めでたしめでたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菱川・彌三八
金尽くしなんて趣味じゃねえ…が、一目くれえは
なんならひと欠片くれえは

俺の欲かァ…
…影が絶妙に色気を孕んだ形になりそうになったンで、一先ず慌てて直す
今ァ駄目だ、考え直す、良ーし良し
エ、気を取り直して
矢張り~…『喧嘩』かね
そらもう暴れたくって仕方なかったンで
したら『良い具合に数人で、良い具合に統制があり良い具合に投げたり殴ったり出来る奴等』と『其の親玉を後から』
此れで
出来れば場所は広めで頼まァ
勿論ステゴロな
注文が多いとか云うねえ、欲だよ、欲

後はもう、雑魚を千切っては投げ、掴んで振り回し、たまに強襲されつゝ其の反動も利用して連続殴打数を稼ぎまくる
親玉との喧嘩も元気に制して十八部完

一応拾う物は拾う



「イイねえ、いいねェ。喧嘩はこうでなくちゃ、面白くねえや!」
 右頬に貰った拳を左手で掴み、えいやと地面へ捻り倒した菱川・彌三八(彌栄・f12195)は、白い歯を見せて笑う。
 まとめて突っ込んできた三人のうち一人は、足をかけてひっくり返した。次の一人が今の其れで、残る一人とはしっかと組み合う。
 肩にかかるずしりとした重みが、彌三八にとっては堪らなく愉しい。
(さて、どう捌くか)
 ふたつの眼と至近距離で睨み合う。浮かれて上がりかけた口の端を、彌三八は気合で下げる。相手は本気だ。遊びで対峙していると思われては、格好がつかない。
 否、彌三八にとっては徹頭徹尾、面白可笑しい遊戯ではあるのだが。
「そらヨ、っとお」
『ちくしょうめが!!』
 押し合っていた力を彌三八だけが不意に引き、つんのめった相手の胴を捉えて、これまたひょいとひっくり返す。
 どでんと草原に背をつけた巨漢は、さながら食うだけ食った蛙のようだ。場所が河原であることを考えれば、比喩としては的を得ている。
(あー、描いときてえなァ)
『巫山戯た真似をしやがって! 無事に帰れると思うなよ』
「、っとお。おいでなすったか!!」
 ふっつりと浮かびかけた新たな欲は、いよいよの『親玉』のお出ましに、彌三八の裡にひっそりと沈む。
 ――趣味とは言い難い金ぴか御殿。真っ先に形を成しかけた影は真昼のお天道様が不似合いに過ぎる色気を孕んでいたので、鼻息交じりの気概で吹き飛ばした。
(ありゃ、欲っつうより煩悩だナ)
 言葉遊びを出ない建前も、喧嘩を前にすれば立派に成り立つ。その相手に『場所』やら『人数』やら『出番の順』に注文をつけたのだって、『欲』だからだ。
 喧嘩と花火は江戸の華。疼いた熱は、喧嘩で晴らすに限る。当然、ステゴロ上等だ。
『甘く見ンなや、糞餓鬼がっ』
「――っ、流石に重えや」
 繰り出された前蹴りを腹で受け止めた彌三八は、詰まりそうな息を無理やり吐き出し、腰を落とす。
 伸した雑魚の数は両手で足りず。その後に出張った三人との遣り合いは、それなりに手応えがあって痛快だった。
 髷はとっくにひん曲がっているし、草履も羽織も何処へ行ったか分からない。だが彌三八の眼光は増す一方。
「おらよ、っとお!」
 仕上げは頭突き。ぱっくり割れた眉間に、爽快感も突き抜けた。

「拾えるもんは、拾っとくかね」
 目端に止まった金盃を、彌三八は痣だらけの手で拾い上げる。
 欲とは、叶わないから溜まるもの。つまり晴らしてしまえば、つるりと消えた。
 然して文字通りの『力技』で罠を制した彌三八は、ご機嫌ながらもふらつく足取りで、黄金迷宮を後にする。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百合根・理嘉
欲望に打ち勝て?
任せて!多分、今のオレならだいじょぶ!(たぶん!)
寧ろ、あれじゃん?何が出てくるかちょいと楽しみじゃん?

Silver Starで進む!
歩いてとかさ、面倒くせぇもん

バトルキャラクターズ使用
召喚したにーさんたちで出来るだけ黄金の輝きを遮る形で進む!
どーせ、目視出来ても出来なくても出るんだろ!
出るよな?!
でもまぁ、保険かな!

え?は?!
いや、うん。あれ、物凄い悔しかったしな!
今、俺のココロの中の8割くらい占めてる!けど!

昨夜!兄貴分お手製の!竜田揚げ喰いっぱぐれたけど!
そこピンポイントで出てくんのかよ?!
竜田揚げの山出て来てんですケドー?
くっそ!腹減る!
つか、幻影喰っても虚しいからサクサクっとクリアすっぞ!

あ、にーさんやめて?サクサクっと捌くなよ!
匂い!香ばしいニンニクと生姜と醤油の香り!
美味そうな匂い!
充満すっから!やーめーろーぉ!

フィー(兎幻獣)まで反応すんなよ、ばか……!
ああああ!腹が鳴るぅぅぅ!

くっそー!
腹の膨らむリアルの竜田揚げをくーわーせーろー!

ノーブレーキで疾走!



 百合根・理嘉(風伯の仔・f03365)、二十歳(あとちょっとで誕生日)。
 体格に恵まれた彼は、見目に反さずなかなかの健啖家である。ちなみに好みはジャンクフード。
 濃い味付け、いいよね。油(脂)っこいのも、いいよね。若いし、健康体だから、カロリーとか塩分とかまだ気にしない。きっと代謝も良いのでしょう。食べたところで、無駄なお肉が(腹周りとかに)つくこともない。
 腹が減ったら食う。目の前に出されたら食う。それが好物だった日には、分かり易く顔を輝かせ(内心は小躍り)て食う。山のように食う。
 そんな理嘉が、好物を食いっぱぐれたらどうなる?
 答は、これだ――!

「あーあーあー! やーめーろおおおおにーさんたちやめろおおおおおお」
 風のように黄金迷宮を疾駆する宇宙バイクのシートに跨る理嘉は、今にも溢れそうになる涙をぐっと耐え、無限に湧き上がってくる生唾を懸命に嚥下する。
 欲望に打ち勝て?
 正直、チョロいと思ってました。
 むしろ何が具現化されるのか楽しみにしてました。
 この謎の自信を、人は『若者の無謀』と言うのかもしれない。或いは、『若気の至り』か。
 何れにせよ、理嘉は窮地に陥っていた。
 ちんたら歩くの面倒くさいと駆るSilver Starから今すぐ飛び降りてしまいたい衝動に、ハンドルを握る手は小刻みに震えているし、潤みかけの視界は歪んでいる。
 でも、視覚情報だけならまだいい。きついのは、匂いだ。
「うん。確かに、確かに?? 物凄く悔しかったぜ――うぐっ」
 自棄になって叫んだのがまたよろしくなかった。開けた大口に忍び込んだ匂いが、味覚をも刺激してしまったのだ。
「……」
 記憶から蘇る味わいに、理嘉の口元が緩む。間違いない、これは『兄貴お手製、竜田揚げ』だ。昨夜、哀しいかな食いっぱぐれてしまったジャンクなフードだ。
「なんでこんなピンポイントで出てくんだよ!?」
 それは貴方の脳内が、竜田揚げ一色だったせいです――というのはさておき。
 煽られまくった食欲は臨界点を超え、空腹は怒りと絶望をも呼び覚ます。
「どうせ幻なんだろっ、食ったところで虚しいだけだろっ!! サクサク進ませろよ……って、揚げたてはサクサクだよなああああっ」
 理嘉、またしても自ら地雷を踏んだ。いや、地雷へ飛び込んだ。
 そも『念のために』とバトルキャラクターズ(通称、にーさんたち)を周囲に展開していたのも不味か――ではなく、拙かった。
 理嘉の欲望を嗅ぎつけた黄金迷宮は、竜田揚げの山を出現させたわけだが、にーさんたちはそれを排除しようと、切って、切って、切りまくってしまったのだ。
 Q.竜田揚げを切ったらどうなりますか?
 A.香ばしい油、ニンニク、生姜に醤油の香りが、いっそう際立ちます。
 ――とんだご愁傷様である。
 想像しただけで腹が鳴る。炊き立てご飯を御櫃につめて駆け付けたくさえある。
「ちょ、ま、フィーまで反応すんなよ……っ」
 懐からちょこんと顔を出していた焦げ茶のラビットグリフォンが、ふんふんふんふん鼻を鳴らす仕草に、理嘉は力なく「……ばかっ」と呟く。
 走っても走っても、竜田揚げ。
 進んでも進んでも、竜田揚げ。
 右に折れても、竜田揚げ。
 左に折れても、竜田揚げ。
 引き返さないのは、もはやただの意地だ。こんなところで尻尾を巻いて逃げ帰ったと『兄貴』に知られたら、しばらく竜田揚げは作ってもらえなくなるかもしれない。
 それは駄目だ。可及的速やかに兄貴手製の竜田揚げが食べたい。幻ではなく、食ったらちゃんと腹が膨れるやつを食いたい。
「くっそーー!! オレは負けねえ!!! 竜田揚げの山なんざ、こうしてやるううう!!」
 思い余った理嘉、ついに一際高い竜田揚げの山へSilver Starごと突っ込んだ。
 すわ大事故か!? いえ、ご安心ください。敵(?)は揚げたての竜田揚げの山。タイヤウォールより優しく理嘉を受け止める。ちょっぴり熱い(うそ、かなり熱い)のはご愛敬。
「やった、やった!! オレは、竜田揚げに勝った!!!」
 しかも執念でブレーキをかけなかった理嘉は、竜田揚げの山をひとつ振り切るのに成功した(注釈。『ひとつ』がポイントです)。
 おそらく理嘉が一人で黄金迷宮に居たならば、どこかで心を折っていたかもしれない。
 でも理嘉には無数のにーさん達と、わんぱくウサギが一緒だ。彼らに虚しい姿を見せない為にも、理嘉は五月蠅く鳴る腹を必死で無視し、ひたすらフルスロットルで黄金迷宮を突き進んだ。
 そうして理嘉は、辿り着くのだ。呆然自失にも似た無我の境地に。

「あ……うん……」
 真っ白に燃え尽きることで欲望から解放された理嘉は、迷宮の奥で金のどんぶりを手に入れる。
 それは竜田揚げ丼(肉増し大盛り)をよそうのに、ちょうど良さげなサイズであった――……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月05日


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#7thKING_WAR


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト