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アポカリプス・ランページ延長戦〜摩訶不思議な邂逅〜

#アポカリプスヘル #戦後 #ドクター・オロチ #デミウルゴス #風魔小太郎 #魔軍転生


「ムシュ〜! いくらなんでも痕跡がなさ過ぎじゃなーいー?」
 そう苛つきながら、ドクター・オロチはソファの上に寝転がった。
「申し訳ない。己が不甲斐ないばかりに」
「いいよ、猟兵もフィールド・オブ・ナインの尾っぽすら掴めてないみたいだから。なんか最近は賢い動物の研究施設をやたらめたら漁ってたみたいだけど、どうやらハズレに終わったみたいだしねー」
 頭を下げる風魔小太郎を責めはせず、オロチは起き上がる。
「この調子じゃーさ、ここが先に見つけられたりしちゃうかもね? それだったらもう諦めて別の世界に拠点を移す、ってのも一つの手だと思うんだよねー」
 オロチの考えを遮ることを風魔は出来なかった。前線を張り続けている者として、あまりの手応えの無さをオロチ以上に感じていたからだ。
 しかしまだこの場所が発覚したわけではない。ならば全てが終わるまで足掻き続けるつもりであった。
 風魔の巨体が萎み、長い銀髪に青い眼をもった白いスーツを着た男へと変わる。
 「ブラッド・ウォーデン」と名乗る武器商人へと姿を変えた風魔は恭しいお辞儀をした。
「ではまた商談ついでに捜索して参ります。今度こそは、良い成果を持ち替えられるようお祈りください」
「……風魔忍法奥義『百面鬼の術』だっけ。すごいねー、一瞬で口調から何まで切り替えられちゃうんだから」
 風魔の後ろ姿を見送ったオロチはしみじみとそう呟くと、撤退のための荷造りを始めるのであった。

「皆様、ドクター・オロチの方の尾っぽがついに出ました。……まさかフィールド・オブ・ナインより先に見つかるとは思ってませんでしたが」
 ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう苦笑いを浮かべつつも、知らせを聞いてグリモアベースに集結した猟兵達の前に立った。
 オロチの潜伏地は地下も含めた全域が消える事のない「黒い炎」に覆われた死の草原、メンフィス灼熱草原。
 一部の猟兵達の手によって消火作業が細々と進められていたが、まだ1割ほどしか終わっておらず鎮火にはまだまだ時間がかかるだろうと言われていた場所だった。
「そのためまだ、メンフィス灼熱草原のどこに拠点があるのかは分かっておりません。今から全土を鎮圧するのも難しいので……今回は奴の口を割らそうと思います」
 狙いはただ1つ、魔軍将が1人「風魔小太郎」だ。
「今回風魔は『ブラッド・ウォーデン』という名前の武器商人として近隣にある普通の拠点に潜り込もうとしています。見た目としては長い銀髪に青い眼をもった白いスーツを着た男です」
 彼がメンフィスから出たところを叩き、彼に道案内をさせるか脳内を読み取って道を暴けばオロチが潜む場所へ着けるのではないか……それがルウの思い描く最高のシナリオだ。
 風魔の見た目や作戦は分かった。だが問題としては、今回風魔は商談の目玉として戦場で無限に増殖する戦闘機械「増殖無限戦闘機械都市」を持っている上に、自分の体に「デミウルゴス・セル」を投与しているということだ。
 この細胞を得た者は元々の持ち主たるデミウルゴスと同じく、ストームブレイドなど偽神細胞をその身に宿している者でなければ致命傷は与えられない。普通に戦っては持久戦で押し負けてしまうだろう。
「ソルトレークシティで相対した物のように自壊する不安定な物ではなく、ストームブレイドやデミウルゴスの時のように偽神細胞を得ている第三者は拠点にはいません。つまり、これを使うしかない……ということになります」
 一転して苦い顔を浮かべながらルウが取り出したアタッシュケースの中には、一部の猟兵達には見覚えのあるラベルと注射器が収められていた。
 偽神細胞の接種は激しい拒絶反応をもたらし、絶命の危機さえある危険な行為。一度目は大丈夫でも、二度目三度目も同じように上手くいく保証はない。
「戦争での死亡例が無かったので今回から解禁しますが……くれぐれも無茶はしないでください。命あってこその物種なんですから」
 そうしてルウは最後に猟兵達へ告げる。
「そしてドクター・オロチですが織田信長が使っていた『魔軍転生』の再現に成功したそうです。何を憑依してくるかは不明ですが……昔と同じようにはいかないかもしれませんので、ご注意下さい」


平岡祐樹
 平岡陣営としては2度目の邂逅、第六猟兵では3ヶ所目の邂逅……人によっては4ヶ所目の邂逅とな?でしょうか。お疲れ様です、平岡祐樹です。

 第1章で対峙する風魔小太郎はユーベルコードとは別に2つの能力「増殖無限戦闘機械都市」「デミウルゴス・セル」を使用します。これへの対処がなければ、苦戦は必至でしょう。

●重要事項
 今作を含める、ドクター・オロチとの最終決戦シナリオの成功本数が20本に達した日でその後の展開が変わります。どの未来を選ぶかは皆様次第です。

 5月1日午前中まで→風魔小太郎とドクター・オロチを完全撃破し、オロチが何度でも蘇っていた原因とみられる「コンクリ塊」を回収・保存します。
 5月15日午前中まで→風魔小太郎とドクター・オロチを撃退し、何も持ち帰らせません。「コンクリ塊」は回収できません。
 それ以降→風魔小太郎は撃退できますが、ドクター・オロチは残る3体のフィールド・オブ・ナインを発見し、そのうち2体を連れ帰ります。1体はアポカリプスヘルに残ります。
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第1章 ボス戦 『🌗『戦争代理人』ブラッド・ウォーデン』

POW   :    汝、平和を欲するならば戦争に備えよ
【“敵”への賛辞と敬意を込めた宣戦布告】を放ち、戦場内の【“戦争”に関わり発展した技術、理論、素材】が動力の物品全てを精密に操作する。武器の命中・威力はレベル%上昇する。
SPD   :    利き手で握手を、懐の手にはナイフを
指定した対象を【自身の言葉に従い戦う“兵士”】にする。対象が[自身の言葉に従い戦う“兵士”]でないならば、死角から【“報復”を行う、赤い剣で武装した千の騎士】を召喚して対象に粘着させる。
WIZ   :    一人を殺せば悪漢が、万を殺せば英雄が生まれる
自身の【所有する任意の必要量の武装類】を代償に【対象が最も愛する者に変わる“模造英雄”】を創造する。[対象が最も愛する者に変わる“模造英雄”]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
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バルタン・ノーヴェ
【ダマスカス】
SPD アドリブ連携歓迎!

逃しマセーン!
ドクター・オロチにも小太郎にも面識はありマセンガ、決着を付けさせていただきマショー!

まずは風魔小太郎からインタビュー(物理)でありますな!
ワタシは偽神細胞を維持できていないので、今回は千雨殿をメインに据えてサポートに回りマース!
本体ボディのブラッド・ウォーデンに到達する前のお邪魔者、戦闘機械都市への対処はワタシにお任せを!

相手が手勢を召喚するならば、片っ端から吹き飛ばせばOK!
「六式武装展開、鉛の番!」
小太郎に傷はつかずとも、それ以外のエネミーにダメージは通るはず!
戦闘機械もろとも弾幕を張ってハチの巣にしマース! レッツ、フルファイア!


飛・千雨
【ダマスカス】
SPD アドリブ連携歓迎です。

デミウルゴスの力を……。ようやく、静かに休めた彼を……。
野郎ぶっ殺して……! コホン。
魔軍転生とやら、かなりの脅威とお見受けします。
これ以上普及されぬよう、ここで仕留めさせていただきましょう。

私の持つ偽神宝貝はデミウルゴス・セルを食らうことができる兵器。
バルタンさんに投薬のリスクを負わせる訳には行きません。
白いスーツの風魔小太郎は私の手で叩きのめします。

「神器変形」
戦闘機械や敵の兵士騎士はバルタンさんに任せ、私は高速飛翔で飛び越えて、上空から祝飛刀を小太郎にめがけて投擲して破壊の嵐を放ちます。
さ、貴方の望む争いの力ですよ?
その身に浴びて……死ねやぁ!



「デミウルゴスの力を……。ようやく、静かに休めた彼を……」
 飛・千雨(偽神宝貝の使い手・f32933)は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の科学者を除かなければならぬと決意した。
「野郎ぶっ殺して……!」
 そこまで呟いたところで全体の視線が自分1人に集まっていることに気づいた千雨は怒気を引っ込め、誤魔化しの咳払いをした。
「魔軍転生とやら、かなりの脅威とお見受けします。これ以上普及されぬよう、ここで仕留めさせていただきましょう」
「そうデスネー?」
 そんな千雨の背中をバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は笑いながら叩いた。
「ドクター・オロチにも小太郎にも面識はありマセンガ、決着を付けさせていただきマショー!」
「いや、風魔とは一回やってますよ。アメリアさんの案件で」
「アレ、そうでしたカー?」
 タブレットでこれまでの動向を確認したルウからの指摘にキョトンとした表情になったバルタンは余裕の笑みを浮かべ直す。
「まー、あちこち走り回ってるから覚えてられないデース!」
 そんな記憶に残る相手では無かったと言外に匂わし、バルタンは千雨の背中を押しながら会議室を後にした。

「……相変わらず心臓に悪い」
 炎のない荒野に踏み出した小太郎はハンカチで顔に浮かんだ汗を拭う。
 メンフィスの黒い炎の中は自分の知る「恐るべき敵の幻影」が実体を伴って現れる魔窟。恐怖を乗り越えて殴れば一発で消失する存在だが、そうだと分かっていても気分はあまりよろしくない。
「どちらにせよ、早くここから離れたいものだ」
「オヤオヤどちらに行かれるおつもりデ?」
 誰もいないはずの荒野に大きな声が響く。視線を横に向けると見覚えのある、緑髪の女がほくそ笑みながら立っていた。
「ハロー、小太郎殿! インタビューお願いデキマスカ?」
「……今日は軍服では無いのだな」
 炎の中で度々垣間見た物とは異なる様相に小太郎は舌打ちしつつ目を細める。
「それはコチラのセリフでアリマスな。ワタシは覚えてませんデシタガ」
 忘れられていたという告白に、小太郎の眉が動く。
「なら冥土の土産に出来るほど忘れられない記憶を刻ませていただきましょう」
 持っていたアタッシュケースの留め金を外し、地面に乱暴に投げ捨てる。その反動で開いたそこからは内容量を遥かに超す戦闘機械群が湧き始めた。
 同時に赤い剣で武装した千人の騎士がどこからともなく現れ、迫ってくる。対するバルタンは笑みを保ったまま腕を変形させ、ガトリングガンを構えた。
『六式武装展開、鉛の番!』
 その砲塔は機械都市と同様、騎士達が一歩一歩歩を進める度に増えていく。
「戦闘機械もろともハチの巣にしマース! レッツ、フルファイア!」
 戦闘機械都市とバルタンの砲塔がほぼ同時に火を噴く。
 板挟みにあった騎士達が避け切れずに次々と倒れる中、押し切ったバルタンの弾丸が機械都市を片っ端から破壊していく。しかし次々と増え続ける機械都市に対してそれは焼け石に水に等しかった。
「そちらは有限だがこちらは無限。私の下へはどうやっても辿り着けなさそうですね」
「別に」
 強がりではない、全然自分に興味がなさそうな態度に風魔は怪訝な表情を浮かべる。
「アナタがデミウルゴス・セルを投与してるのはもう聞いてマスから」
『神器変形』
「ワタシは偽神細胞を維持できていないので? 今日のお仕事はアナタに到達する前のお邪魔者、戦闘機械都市への対処デス!」
 攻撃手段を失った機械群の間を旋風と共に桃色の物体がすり抜ける。
 そしてそれが突き出した刃は風魔が咄嗟に取り出した忍者刀と交錯し、激しい火花を散らした。
「流石は幹部格、不意打ち程度では首を取らせてはいただけませんか」
「偽神兵器……ストームブレイド。派手な動きは囮のため……!」
 自分の腕にかかる圧に風魔の顔が険しくなる。しかし防御の構えが解ける気配はない。
「ですが、この程度でやられる私ではございません!」
 力任せに跳ね返された千雨は曲芸のような動きを見せて距離を取る。風魔は手裏剣を投じることで追撃をかけたが、それらは全て地面に突き刺さった。
「下の者達は……皆足止めされているか。肝心な時に使えないとは……」
 完全に封殺されている部下の無能さに風魔が恨み言を吐く中、千雨は持っていた小刀を高々と放り投げる。すると回転する刃の周りの空気が段々と荒れ始めた。
「さ、貴方の望む争いの力ですよ?」
 雲が生まれ、発達し、黒ずみ、雷鳴が轟き始め、渦巻く。
「その身に浴びて……死ねやぁ!」
 この世界を滅ぼした竜巻の模倣品は周囲の黒い炎や機械群ごと風魔を飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トゥリフィリ・スマラグダス
やれやれ……やっと眠れたというのに災難ですね、デミウルゴス。


相手のUCは無視。どうせ、周囲は増殖した『増殖無限戦闘機械都市』が埋め尽くすのでしょうし、そこに騎士が千ばかり増えたところで些事です。

展開され増殖する『増殖無限戦闘機械都市』、及び騎士はUCで実体化させて大蛇の形を取らせた影で纏めて薙ぎ払いましょう。
全方位を攻撃すれば死角など関係ありません。無差別設定で3回薙ぎ払えば空隙もできるでしょう。

『増殖無限戦闘機械都市』に空隙ができたらその間を駆け抜けて、「闇鬼」の能力で作り出したナイフでブラッド斬りかかりましょう。



 トゥリフィリ・スマラグダス(つぎはぎの半端者・f33514)は早々に騎士達は捨て置くことにした。
 どうせ周囲は『増殖無限戦闘機械都市』が埋め尽くす。そこに騎士が千人ばかり増えたところで些事でしかない。
 さらに弾丸の雨霰に沈んでいたところを見るに、騎士達にデミウルゴス・セルは投与されてないのだろう。そんな彼らに割く意識のリソースなど無駄でしかない。
「やれやれ……やっと眠れたというのに災難ですね、デミウルゴス」
 死してもなお細胞を使い回されている偽神を哀れに思いつつ、トゥリフィリは足元に伸びてきた鋼鉄の板材に跳び乗った。
 どれだけ鋼が地面を覆っていても太陽が光る空は隠しきれていない。日光によって伸びていたトゥリフィリの影はひとりでに蠢き出すと質量を得ながら巨大な存在へと成長していった。
『Code:Nachzehrer starting.』
 声帯のない口を大きく開けて威嚇した影の大蛇は味方のことなど露ほども考えず進路にいた砲塔や騎士達を轢き、削り潰していく。
 対する戦闘機械群も騎士達もやられ放しでは終わるまいと反撃を仕掛けたが、傷はついたそばなら周りの影によって塞がれてしまう。
『ーー逃しません!』
 とぐろを巻くように全方位を薙ぎ払ったタイミングでトゥリフィリはすれ違いざまに蛇の鱗を一枚抜き取り、ガラ空きになった機械の上を駆け抜ける。
 鱗は風圧で削られたかのようにナイフへと姿を変え、トゥリフィリは擬似オブリビオン・ストームから解放され、鋼材の上に転がっていた風魔に切りかかった。
 その動きに気づいた風魔は転がって避けようとしたが、振り下ろされた刃は逃げ遅れた背中を捉える。
「くっ……!」
 大蛇と違い、風魔の体は傷を一瞬で塞げられない。
 勢いそのままに立ち上がった風魔は激痛に歯を食いしばりながらトゥリフィリを睨みつけた。

 一方その頃。
「ムシュ? なんで増殖無限戦闘機械都市が出てるのさ」
 誰に何を提供したかの情報を黒い炎にくべ終えたオロチがふと外を見ると、大量の戦闘機械が火から離れたところに展開されているのを見つけた。
 何も起きなければうっかりロックを解除してしまっただけかと思うところだが……直後に現れた巨大な大蛇が暴れ出したところでオロチは全てを察した。
「うっわぁうっわぁ、噂をすれば何とやらじゃん……。マジかー、アイツらマジで、なんで人の退路をこうも的確に潰してくるかなぁ!」
 苛立ちながらもオロチはまだ片付け終えていなかった荷物の中から偽神細胞を組み込んだ水晶剣を取り出し、まじまじと眺める。
「こうなったらボクも『魔軍転生』でフィールド・オブ・ナインを憑装しておこう! いくよ、魔軍転生・デミウルゴス!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

宵空・鈴果
ん〜と?とりあえず、スターライト・エアリアル☆
ティンクルスター(星)の飛翔で事前に空へと上がって移動、真上あたりに来たら急降下で襲撃しますりん☆
人間大の小さいものだとよほど群れてないとレーダーとかにもうつりにくいハズで視覚的にも気づきにくいハズですりん☆あっ移動中は星も散らして見つかりにくくしますりん☆
めんどっちいのは避けてピンポイントでターゲットだけ狙いますりん☆
あとは落下耐性でがんばりますりん☆

相手のUC対策は〜…新たに召喚した星をぶつけて動きを邪魔したり封じたりするりん☆
そしてりんかはこの白いやつの顔を蹴飛ばしてやるり〜ん☆
星と月のエアライダー♪りんかの参上ですりん☆


カグラ・ルーラー
元々『アリス』と『オウガ』の混ざりモンだし偽神細胞が混じったところで大差ねェ……とはいかねェな。
とっととボコるぜ。

「汝、平和を欲するならば戦争に備えよ」に対し「アリス・ブラッド・フラッド・オウガ・ゴースト」だ。

出やがったな増殖無限戦闘機械都市。
機械なんて大体戦争で発展するモンだ。
俺一人じゃ太刀打ち出来ねェ。蜂の巣にでもなるかもな。

……それでいい。
流れ出た血にも偽神細胞は混じるだろ。
血の中のオウガと偽神細胞を反応させて、炎のオブリビオン・ストームを巻き起こす!
機械なんて突き詰めれば金属の塊だ。融解するまで焼き尽くしてやるさ。
偽神細胞入りの炎で小次郎も焼いて俺は偽神細胞デトックスで復活。さぁ次だ。



「あ゛ー……」
「カグラさん、どうしたりん?」
 見るからに具合を悪そうにしているカグラ・ルーラー(バーバリス・f21754)の顔を宵空・鈴果(星と月のエアライダー・f37140)が覗き込む。カグラは険しい表情は崩さぬまま首を振った。
「元々『アリス』と『オウガ』の混ざりモンだし偽神細胞が混じったところで大差ねェ……とはいかねェな」
「どうするりん? りんかが1人でやっちゃうりん?」
「てめぇは打ってねぇだろ……とっととボコるぜ」
 ニコニコ笑顔を崩さない鈴果を尻目にカグラは重い体を引きずりながら、片膝を付いている風魔を見据えた。
「……こうなることは大体予想がついてましたよ。あなた方は我々の予想を越えることを現れてはやってくる」
 絞り出すように言いながら立ち上がった風魔は赤いシミがあちこちについたボロボロの白いスーツについた砂埃を手で払う。
「ですが、私にも任務という物がありますので。やられ放しでは終われないのですよ!」
 砕け散って地面に転がった金属片が繋がり、再び新たな戦闘機械へと変貌していく。
「出やがったな増殖無限戦闘機械都市」
「ん〜と? とりあえず、【スターライト・エアリアル☆】」
 召喚したティンクルスターの飛翔と共に鈴果は機械都市の展開が終わる前に空へと上がる。人間大の小さいものだとよほど群れてないとレーダーとかにも映りにくいはずで視覚的にも気づかれにくいはずだ。
 あとは星を散らして見つかりにくくしつつ、風魔の真上あたりに来たら急降下で襲撃するだけ……だったのだが、鈴果が振り返った星の上にカグラの姿は無かった。
「機械なんて大体戦争で発展するモンだ」
 その頃地表に残ったカグラは巨大なアイスバーを肩に乗せ、自分1人に集中する銃口に睨み返す。
「俺一人じゃ太刀打ち出来ねェ。蜂の巣にでもなるかもな」
 予測通りカグラの体は機械都市から放たれた大量の銃弾の雨霰を浴びることになる。
「……それでいい」
 だがその目から光が消えることはない。傷だらけ穴だらけになった体から溢れた血は炎をあげ、巨大な竜巻を引き起こした。
 どれだけ量があろうと機械なんて突き詰めれば金属の塊。融解するまで焼き尽くされていく。その熱気に圧されていた風魔に向け、大量の星屑が落ちてきた。
「めんどっちいのは避けてピンポイントでターゲットだけ狙いますりん☆」
 風圧にも負けず鈴果は2本の足で星に乗り、凄まじい速さでその後に続く。
 カグラの炎で金属の屋根が薙ぎ払われた今は視界良好。狙うはただ一つ、白くて長い髪を持っている男の頭だけ。
「星と月のエアライダー♪ りんかの参上ですりん☆」
 星から飛び降り、一回転してから足を振り下ろす。その一撃を顔面で受け止めた風魔は身動ぎもせず、鈴果を睨みつけた。
「あれっ♪」
「コケにされっぱなしでは終わらないと、言ったでしょうが!」
 血走った目に危機感を覚えて新たに星を召喚し、ぶつけて動きを邪魔したり封じたりを試みるが風魔はそれらをお構いなしに手を伸ばし、鈴果の足を掴んで豪快に振り回した。
「ひゃああああっ!?」
「偽神細胞打ってねェの、忘れんじゃねぇって言ってただろうがァ!」
 そのまま地面に叩きつけようとする前にカグラが全速力で駆けつける。
 その行く手を機械都市が生み出した銀色一色の鈴果の偽者が立ちはだかろうとしたが、真っ赤に色づいたアイスバーの横薙ぎを食らい、一瞬で液状化して地面に散った。
『俺の血でヤキ入れだコラァ!』
 再び巻き起こった炎の竜巻が鈴果ごと風魔を飲み込む。舞い上がった炎は真っ先に風魔の細い腕を焼き切り、鈴果の身柄を解放した。
「この炎、偽神細胞を、燃料にっ!?」
 流れ出た血にも当然偽神細胞は混じる。
 血の中のオウガと偽神細胞が反応して巻き起こった小規模なオブリビオン・ストームは風魔の体を刻一刻と消し炭に変えていった。
「私の、オロチ殿の、己の、野望はっ……!」
「ここで終わるんだよォ!」
 最後の一撃で辛うじて人の形を保っていた風魔の体は粉々に砕けた。
「カグラさん、助けてくれてありがとうだけどちょっと激し過ぎだよー☆」
「うるせェ。……さぁ次だ」
 流れ切ったのか順応したのか、体の怠さは消え失せた。カグラは鈴果の頭を軽く小突くと、黒い炎の中にうっすらと見える黒い日本式の城へ視線を向けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ドクター・オロチwithデミウルゴス』

POW   :    偽神水晶剣
任意の部位から最大レベル枚の【偽神水晶剣(偽神細胞と融合した水晶剣)】を生やして攻撃する。枚数を増やすと攻撃対象数、減らすと威力が増加。
SPD   :    クルーエル・セイント
状態異常や行動制限を受けると自動的に【聖なる光のオーラ】が発動し、その効果を反射する。
WIZ   :    デミウルゴス・ポリューション
【指先】で触れた敵に、【強毒化した偽神細胞の侵食】による内部破壊ダメージを与える。
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 まとめられた荷物が振り回された水晶の剣に切り刻まれ、散乱する。
「ああああああああああああああっ!!?」
 その剣の持ち主であるドクター・オロチは喉が壊れることを厭わず、ただ叫び続けていた。
 猟兵達が間近に迫ってきているという事実や、2つの兵器を身に宿した風魔が目の前でやられた様を見て発狂したのではない。デミウルゴスをその身に宿した代償を味わっていたのだ。
 それは、今まで聞くどころか聞こうとも思わなかった何十万人もの声を聞き続けること。
 感謝の声、祈りの声、赦しを乞う声、見捨てられたことに憤る声、不条理に嘆き悲しむ声。
 一つ一つは頼りない声でも、幾重にも組み合わさればそれはただのノイズでしかない。
 しかしオロチの脳髄にはそれらが一言一句意味が伝わる状態で届き続けていた。
「違う違う違う! なんでボクに救いを求めるんだ! 違うだろうが!! ボクはさぁ、お前達の神様なんかになった覚えはないんだよ!!」
 どれだけ大声で喚き立てて主張しようと耳を押さえて首を振ろうと目をつぶって無視しようとしても声はお構いなしに響き続ける。共鳴し、反響し、鳴響し、残響し、永久に絶えることはなく。
「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。ボクは、俺は……いや、違う! やめろ、やめてくれっ! ボクは、ボクはっ、狂いたくなんかないっ……!」
 誰にも助けを求められないのに、助けを一方的に求められ続ける状況に、4つの世界で好き勝手に暴れまくった男の精神は崩壊を迎えようとしていた。
トゥリフィリ・スマラグダス
あぁ……デミウルゴスを魔軍転生したことで、彼が「聞かされていたもの」まで再現されたのですか。
都合のいいように使おうとするからですよ。自業自得です。


鉈のような大剣の形にした「影之装」を手に、真っ向から打ち合います。
相手のUCはこちらから発動条件を満たさなければ発動しないカウンタータイプ。物理のみの殴り合いなら発動しにくいでしょう。
操作するレーザービット「ヘリオス」による死角からの射撃やシールドバッシュを織り交ぜながら攻め立てていきましょう。


貴方、自分のためとあらば他の声など知らんふりだったんでしょう?因果応報とはこういうののことを言うんでしょうね。



 ひっきりなしに聞こえてくる怒声や悲鳴、そして物が砕ける音の発生源を真っ直ぐ辿ったトゥリフィリが扉を開くと、真っ黒な壁に向かってオロチが水晶の剣を叩きつけているところだった。
「うるさい黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙って黙って黙って黙ってよぉぉぉ!」
「あぁ……デミウルゴスを魔軍転生したことで、彼が『聞かされていたもの』まで再現されたのですか」
 呆れたように呟くトゥリフィリの小さな声を自身の声でかき消してしまったのだろう、オロチは振り返る素振りすら見せず、荒い息を吐きながら壁から引き抜いた刃を再び叩きつけようと振り上げていた。
「都合のいいように使おうとするからですよ。自業自得です」
 トゥリフィリは鉈のような大剣の形に変えた影を持ち上げると元の形が判別出来ないほどぐちゃぐちゃになった書類や部品を踏みながらゆっくりと歩み寄る。
 そしてオロチが壁に対してしていることと同じように、トゥリフィリも大剣を振り上げてオロチの脳天に叩きつけた。
 相手による状態異常や行動制限を受けなければ、何もかもを弾く聖なる光のオーラは顕現されない。小細工なしの真っ向勝負は完全にうわの空だったオロチに直撃した。
「ムシュッ!? ぼ、ボクの優秀な頭脳に何をしてくれるのさ!?」
 我に返ったオロチは勢いよく振り返る。しかし剣を構えようとしたところで頭を抱え、跪いた。
「ああ、やっと収まったと思ったのに! せめて神だと崇めるなら、ボクが苦しんでいる時は心配ぐらいしやがれよ!」
「貴方、自分のためとあらば他の声など知らんふりだったんでしょう? 因果応報とはこういうののことを言うんでしょうね」
「うう、うるさいうるさいうるさいよ! 決めた、お前を殺してせめての気晴らしにしてやる!」
 立ち上がったオロチがめちゃくちゃに剣を振り回して迫ってくるとトゥリフィリの腰部のジョイントに接続されていたレーザービットが展開され、その斬撃を受け止める。
 その跳ね返された衝撃で体勢を崩したオロチに向けてトゥリフィリは追撃を仕掛けた。
「そんなに苦しいなら『魔軍転生』を切ったらいかがですか? 切ったら切ったで自分達には敵わないでしょうが」
「ああ、やりたいさ! というか、もう何度も試してるさ! なのに、なのにさ、こいつらしがみついて離れてくれないんだよ! 黙らせてくれよ出来んだろお前らだったらさぁ!」
 怒りに任せて真横に薙ぎ払われた刃を軽く避け、距離を取ったトゥリフィリは肩をすくめる。
「この世界の住人全員を皆殺しにしろ、ということですか? 謹んでお断りいたします」
 そしてオロチの背後を取っていたレーザービットに光線の掃射指示を出す。
 死角から撃たれたオロチは呻き声をあげながら身を反り返らせ、そのまま仰向けに倒れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
【ダマスカス】
POW アドリブ連携歓迎!

やれやれ、情報収集不足デスヨ、オロチ。
強敵の力を活用するためには、十分なデータが必須であります。
このように!
「骸式兵装展開、笠の番!」

此度のワタシの役目はサポート!
城の中に九龍城砦の複製を出現させ、ドクター・オロチの視聴嗅覚での感知能力を吸収!
偽神細胞を接種していないためダメージは与えられずとも、こうして弱らせることはできるデース!

闇雲に《偽神水晶剣》を生やしてくれるなら好都合。
数が少なければ避け易く、数が多ければ九龍城砦の内装に引っかかる。
あとは残った触覚をかく乱するように拳銃を撃って苛立たせよう。
味方の感知能力は吸収しないからね。後は任せたよ、千雨。


飛・千雨
【ダマスカス】
WIZ アドリブ連携歓迎。

……ドクター・オロチ……!
デミウルゴスの苦しみを、想いを知らず。
その力だけ得ようなど、無礼千万!
その身勝手さ、度し難い。疾くと滅びなさい!

バルタンさんが目立っている間に身を潜め、偽神宝貝『兀突刀』を構えて隙を伺います。
……ことを急いて仕掛ければ、《クルーエル・セイント》で反射される。
ここは羽衣人としての身軽さを活用して、じっくりを機を窺います。
オロチの攻撃は風に舞い回避し、しびれを切らす時を待ちます。

……ここっ!
指先で触れようと手を伸ばした瞬間、軽やかに飛び込んで一刀のもと暗殺を試みます。
誰も助けなかった貴様に、救いを求める権利はありません!
オラァッ!



「……ドクター・オロチ……! デミウルゴスの苦しみを、想いを知らず。その力だけ得ようなど、無礼千万! その身勝手さ、度し難い。疾くと滅びなさい!」
 激しい交戦の物らしき音を聞きつけ、千雨は階段を駆け上がる。頭の中では絵姿でしか見たことのないオロチをいかにして八つ裂きにするかしか考えていなかった。
「ちょーっと、頭に血がのぼりすぎデスよー?」
 故に壁に沿うように立っていたバルタンに気づかず、足を引っ掛けられて床に頭から突っ込むこととなった。
「冷静にならないと、こんな感じで足を掬われかねませんよ。相手は我々に何度も返り討ちにされていて、フォーミュラではないとはいえ、これまで戦ってきた相手の中で上位にくる実力者であることに違いはないんですから」
 カタコト口調が引っ込み、真面目そのものの表情で語るバルタンに千雨は口を拭いながら起き上がりながら謝意を述べる。
「すいません……」
「まあ、こうやって手綱を取るのが今回のワタシの役目ですカラ? 豪華客船に乗っているつもりでドンと体を預けてクダサーイ!」
 そう胸を叩いた瞬間、音の出所とみられる一室の壁や扉が大量のレーザーによって内から撃ち抜かれた。
 バルタンは手を出して千雨へ近づかないよう無言で制すと、辛うじて存在意義を保っている扉を開けて顔を覗かせる。
 そこにいたのはレーザーで撃たれた背中から煙を発して倒れているオロチと、その犯人であろうトゥリフィリの姿だった。
「おやおや、スゴい音がしたかと思って来れば随分一方的でありマスなー?」
 ボロボロになった室内を軽やかなステップで進んだバルタンはオロチが倒れているままでも見える場所でしゃがみ込む。
「やれやれ、情報収集不足デスヨ、オロチ」
 そしてどこからともなく取り出した煙管でオロチの脳髄を突っつきながら自分の頭を人差し指で叩いた。
「強敵の力を活用するためには、十分なデータが必須であります。このように!『骸式兵装展開、笠の番!』」
 書類や残骸が散乱する部屋が崩れ落ちると、コンクリートや魔術的な結界が迷宮の如く積み上げられ、ネオンの色鮮やかな光と八角の特徴的な匂いが辺りを包み込む広大な繁華街がお目見えする。
 突然乱雑だが、元よりも広くなった空間に置かれたオロチから困惑の声が漏れる。しかし立ち上がろうと床に手を着いた瞬間にそれらの風景は全て闇に閉ざされた。
「ムシュッ!?」
「HAHAHA、偽神細胞を接種していないためダメージは与えられずとも、こうして弱らせることはできるデース! さあ、追いかけてミナサーイ!」
 バルタンの嘲笑う声を最後に、頭の中を木霊していた群衆の声が止む。自由を取り戻したオロチはいつもの調子を取り戻し、罵声を吐こうとした。
「あいつっ……!?」
 しかし自分の声すらも聞こえない状況に今自分が置かれた立場を理解し、立ちすくむ。そこへ鋭利な弾丸が体を掠っていった。
「舐めやがって……! こうなったらかすり傷でも致命傷になる最強の体勢を取ってやる!」
 相手がわざと致命傷を狙わなかったことを察したオロチは怒りから全身に水晶体を生やし、まるでハリネズミのような姿を取った。
 そして手当たり次第に引っかかる立て看板や飾りを薙ぎ払いながら突っ込んでいくが、バルタンはオロチの手が届かない、高い所にある看板に悠然と座って眺めていた。
「味方の感知能力は吸収しないからね。後は任せたよ、千雨」
 その頃、千雨は大太刀を構えつつも立て看板の裏にしゃがみ込み、息を潜めていた。
「……ことを急いて仕掛ければ、【クルーエル・セイント】で反射される」
 芯から頭を冷やした千雨は羽衣人としての身軽さを活用すれば必ず討てるはずだと、じっくりと機を窺う。
「……ここっ!」
 そして紐が刃に引っかかったことで落ちてきた洗濯物にオロチが気を取られた瞬間に千雨は飛び出した。
 オロチはその接近に全く気づかず、苛立たしげに顔面にまとわりつく生乾きの衣類を剥ぎ捨てる。そんな日常の動きで起こる風圧だけでも体を舞い上げられた千雨は目を大きく開けて叫んだ。
「誰も助けなかった貴様に、救いを求める権利はありません! オラァッ!」
 人によっては曲芸の最中にしか見えない動きでも、羽衣人にとっては何も変哲もない体勢である。
 強烈な毒が滴る指先や偽神細胞と融合した水晶剣の切っ先が間近に迫っていても平然と体を翻しながら、千雨は大太刀をオロチの顔面に叩きつけた。
「あ、ああああああっ!」
 その衝撃でオロチは視界を明滅させながらも取り戻すことが出来たが、同時に脳を揺さぶる痛みと響き渡る大音量の雑音に悲鳴をあげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

伊吹・次郎
「さて困りました。知り合いの方に頼まれましたけど、若輩の私でどこまで目の前のドクター・オロチと戦えるか。」「まあ、全力は尽くしましょう。」
行動は【WIZ】です。
戦闘は、相手の攻撃を【オーラ防御】と【武器受け】の技能でできる限りダメージを軽減します。その後、【カウンター】で【鎧無視攻撃】の【怪盗紳士】で、『ドクター・オロチwithデミウルゴス』を攻撃します。
「(相手の攻撃を受けて)そう簡単に倒れる訳にはいきません。」「(攻撃時)あなたのユーベルコードを借用させてもらいますよ。」
アドリブや他の猟兵の方との連携等は、お任せします。



 下から上へと断続的に舞う風が黄金色のマントを翻す。
「さて困りました。知り合いの方に頼まれましたけど、若輩の私でどこまでドクター・オロチと戦えるか」
 風の出所を見つめながら飄々と話す伊吹・次郎(ヒーローマスクのガジェッティア・f12899)に象られているのは道化師の表情。それはどれだけ不安であっても笑みを絶やすことのない信念を持った者の名称であった。
「まあ、全力は尽くしましょう」
 ほんのちょっとの覚悟も添えて軽く屋上の床を蹴り、乱雑とした路地裏を模した床に降り立つ。
「ああああああ!」
 生やした剣が砕けるのも厭わず半狂乱になって両腕を振り回していたオロチは伊吹の姿に気づくと、千雨から標的を変えて一目散に駆け寄ってきた。
「おや、どちらの方が弱いかの分別はまだつくのですね?」
 皮肉と同じ声色で呟かれた賞賛の言葉に反応せず、意味を持たない同じ音を叫び続けるオロチは欠けた水晶で覆われた右腕を伸ばして伊吹を掴もうとする。
「ですが、そう簡単に倒れる訳にはいきませんので」
 しかしオロチが掴んだのは黄金の仮面でも黒色のタキシードでもなく一輪の赤い薔薇だった。
 薔薇の棘がささった指先から滲み出る強毒化した偽神細胞に侵されてどんどん萎れていく薔薇越しに伊吹はじっと歪に凹んでいるオロチの脳髄を見つめる。もし自分の相棒と同じように顔があったなら、今頃顔を青くさせて涙と鼻水と涎で顔をベトベトにしているのではないか、と想像しながら。
「『我に盗めるものは無し。』あなたのユーベルコードを借用させてもらいますよ」
 枯れ落ちた薔薇の最後のひとひらが落ちた瞬間、溜め込まれた偽神細胞がオロチの体内へ逆流する。
「む、おおおおおおお……!」
 海洋生物のように自分自身が作り出した毒に耐性はなかったのか、オロチは反射的に残った茎を投げ捨てた右腕を必死に掻き毟る。
「『欲は身を失う』とはよく言ったものですが……ずっと見せられるのは気分が悪いですね」
 偽神細胞による痛さがよっぽど酷いのか完全に狂ってしまったのか、自分が生やした水晶剣で一心不乱に自らの腕をズタズタに切り裂いている様を、伊吹はシルクハットの鍔を下ろして目を逸らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

カグラ・ルーラー
もう一丁偽神細胞を打つぜ。

「助けて」が聞こえる心地はどうだ?
キツいだろ。てめェはその声に応える義理以前に力が無ェんだからな。
俺だって結構な数の「アリス」の「助けて」を聞いてきた。勿論、助けられなかった数は少なくねェ。

だがてめェはシルバーレインで俺より遥かに多い「助けて」を聞いてきたらしいな。
「アリス」の俺は詳しくねェし、無くした記憶がそこかどうかも知らねェ。

ただ、てめェもオウガも大差ねェからとっととボコるわ。こっちも拒絶反応でしんどいんでな。

必殺の一撃を浴びせるべく突撃だ。
「偽神水晶剣」に対し、ユーベルコード「『罪科の』レクリス・ビート」。
何枚生えようが関係ねェ。脳のツラをボコるだけさ。



 風魔と共に偽神細胞は燃え尽きたのだろう。明らかに軽くなった足取りが何よりの証拠だ。
 では元の健康体に戻ってしまった者の攻撃は風魔と同じようにデミウルゴス・セルを投与しているはずのオロチに通るだろうか。
 答えは殴る前から大体予測がつく。
 一回打って大丈夫だとしても二回目三回目も同等に大丈夫だとは限らない、とあの人狼は言っていた。
 だが次を打つとしたらどれだけの期間を置かないといけないか、などの説明は無かった。
「『助けて』が聞こえる心地はどうだ? キツいだろ。てめェはその声に応える義理以前に力が無ェんだからな」
 空になった注射器を床に落とし、踏み割る。
 少なからず抗体が出来て残っていたのか、単なるプラシーボか、初めて打った時と比べて少し軽くなった気がする症状を引きずりながら、カグラは目の前にいた仲間を軽く押し退けた。
「俺だって結構な数の『アリス』の『助けて』を聞いてきた。勿論、助けられなかった数は少なくねェ。だがてめェはシルバーレインで俺より遥かに多い『助けて』を聞いてきたらしいなァ?」
 オロチは返答せず、ただひたすらに荒い息を繰り返すのみ。だがカグラはどんな答えが返ってこようともやることは一つだけに定めていた。
「『アリス』の俺は詳しくねェし、無くした記憶がそこかどうかも知らねェ。…… ただ、てめェもオウガも大差ねェからとっととボコるわ。こっちも拒絶反応でしんどいんでな」
 まるで重戦車のように突き進むカグラに対し、オロチは逃げようともせずに全身に再び大量の水晶剣を生やす。
 近づけられなければそれでいい、とでも考えたのだろうか。だが何枚生えようが関係はない。
「……罪科」
 見るからにしわくちゃなあの脳のツラをボコるだけだ。
『罪科罪科罪科! 罪科の!』
 傷つくことも厭わず、カグラは頭頂部に生えた刃と刃の間に出来た僅かな隙間に手を突っ込ませて逃げられないように掴む。
『レクリス・ビートォォォォォォ!』
 そして力任せに、豪快に床に叩きつけた。
 圧し折られた大量の水晶が宙を舞ってネオンの光を反射して輝く中、オロチの顔面がめり込んだ床がひび割れ始める。
 そして凄まじい音と共に周囲の租界めいた光景が崩れ落ち、様々な残骸があちこちにばら撒かれた黒一色の城が戻ってきた。
「わりィ、壊しちまった。でもコイツを倒すためだ堪忍してくれや」
 狭い路地裏から一転して広くなった空間の中心で頭をめり込ませていたオロチは自らの手で引っこ抜いた。
「ムシュ〜……、どうやら頭に強い衝撃を与えると、変な声を受信する器官がバカになってくれるみたいだ。ありがとね。お礼は君達の命を奪うことで返してもらうよ」
 正気を取り戻したようだがこれまでに浴びた損傷も無くなるわけがなく、オロチは一ヶ所に立ち続けることが出来ずに後ろへよろめいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宵空・鈴果
偽神細胞を注射して、偽神化することで、無敵を突破できると…☆
拒絶反応…はよくわかんないけど、りんかはこれ打つのまだ一回目だしなんとかなりそうですりん☆
(スマホに保存していた過去のアポカリプス・ランページの記録を確認してた)
●偽神細胞を使ったら
夜空のお星さまはどんなに苦しくてもキラめきで明るくてらすものりん☆
苦しみも、悲しみも、み〜んなまとめて、元気づけるのがスターですりん☆
星に対する想いと情熱で、自身と仲間を鼓舞する歌唱とダンスでノッて乗り越えるりん☆

●攻撃
エアシューズでの悪路走破しつつ歌って、たまにジャンプしたり回ったりして踊り、翻弄を狙いつつ
隙があればとりゃっ☆とクレセントフラッシャー



「ほうほう……偽神細胞を注射して、偽神化することで、無敵を突破できると……☆」
 座り込みつつスマホに保存されていたアポカリプス・ランページの記録を読み込んだ鈴果は足元に置いておいた小さな箱を見遣る。
 みんな打ってないから別にいらないのだろう、と思っていたが、打っていない者達はそもそも偽神細胞をその身に宿すストームブレイドだったからいらなかっただけで、生まれてこの方手術らしい手術を受けたことはない鈴果はカグラと同じようにこれを打つ必要があったようだ。
 てっきり打ちたい人だけ打てばいいのだと思っていた鈴果は箱を開き、片手でも押しやすいように設計された注射器の蓋を外す。
「拒絶反応……はよくわかんないけど、りんかはこれ打つのまだ一回目だしなんとかなりそうですりん☆」
 そしてとある病気の患者がインスリンを打つように、軽い気持ちで偽神細胞液を打った。
 しばらく安静にしていると打った箇所から鈍い痛みがし出し、嫌な汗も滲み出してきた。
「うっ……キッツいなぁこれ……」
 どうにか立ち上がった鈴果は壁に寄りかかりつつも、一歩一歩歯を食いしばりながらオロチが待ち受けているはずの部屋へ近づいていく。
 そして穴があちこち開いた扉が視界に入ったところで止まり、息をゆっくり整え、笑顔を浮かべた。
「夜空のお星さまはどんなに苦しくてもキラめきで明るくてらすものりん☆ 苦しみも、悲しみも、み〜んなまとめて、元気づけるのがスターですりん☆ 星に対する想いと情熱で、すずかと仲間を鼓舞する歌唱とダンスでノッて乗り越えるりん☆」
 勢いよく扉を開けた鈴果は元気よく部屋のあちこちに突き刺さった水晶剣や棚の残骸を足場にジャンプしたり回ったりして踊り、歌う。
 副作用で万全ではない、という事実が偽りだと錯覚させるような鋭敏な動きにオロチの視線は追いつかず、ムシュムシュ声を上げながら首を振るしか出来ない。
 明確な状態異常や行動制限を受けなければ発揮されないデミウルゴスの聖なるオーラは、今この時完全に無用の長物と化していた。
『お星さまにしてあげるりん☆ とりゃっ☆』
 残像に気を取られて明後日の方向を見た瞬間、鈴果は可愛い声からは想像できない、速度マッハ5.0以上の極超音速蹴りを叩き込む。さらに軌跡に生じた三日月型の衝撃波が壁に叩きつけられたオロチを追撃した。
 度重なる衝撃で劣化していた壁は耐え切れずに崩壊し、支えを失って宙に投げ出されたオロチは悲鳴をあげながら黒い炎の中に消えた。
「悪は必ず倒されるりん☆」
 風通しが良くなった室内に着地した鈴果は壁に開いた穴を指差し勝ち鬨をあげる。
 万全ならば落ち切る前に追いついてさらに打ち上げていただろうが、今の鈴果にそんな余裕はなかった。

 この後、影の城の一斉捜索で猟兵達はなぜか厳重に守られた謎のコンクリートブロックを発見する。
 このコンクリートブロックの存在と出来るまでの顛末を親の世代から聞かされていた鈴果は自分の目を疑い、驚愕し、その様子を見ていた他の猟兵達から質問攻めにあうのは数刻後の、別のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月13日


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#魔軍転生


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレナ・ヴァレンタインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト