かれらは、青ざめた月に召された
●
猟兵達の拠点「グリモアベース」。
その片隅に、陰のある、青白い顔の男が立っていた。
よく見ればととのった顔立ちとわかるが、眼下のくまは色濃く、だれが見ても健康的とは言い難い。
全身を隙間なく覆うのは、重厚な漆黒の武具。
各所に禍々しい獣の意匠がかたどられ、心なしか、その眼がこちらを睨みつけているような――。
やってきた猟兵たちの気配を受け、男は厳かに向き直る。
「……来たか」
決して大きくはない。
しかし、ひくく通りのよい声が響き、改めて猟兵たちを値踏みする。
ふいに、鍵爪の右手を掲げ。
手のひら上に、『グリモア猟兵』の証であるエネルギー体――『グリモア』を浮かべ見せ、言った。
「俺の名は、ヴォルフラム・ヴンダー。ダンピールの黒騎士だ。理不尽に支配された世に、『奇跡』をもたらすため。おまえたちの力を、貸してくれ」
●
――グリモア猟兵にいざなわれ、任務に出発する時。グリモアベースは『これから向かう世界の風景』に変わる。
ヴォルフラムが語ると同時に、グリモアベースの情景が変じて。
あたりに、闇と濃霧に包まれた、ひとけのない街の情景がひろがった。
ここは、夜と闇、そしてヴァンパイアに支配された『ダークセイヴァー世界』。
人々は100年ほど前に甦ったヴァンパイアの支配を受けながら、息を殺すようにして暮らしている。
おそらく、いにしえの職人が手掛けた建築物なのだろう。
石畳の街には整然と、それでいて個性をもった家々が並び、街の歴史を物語る。
しかし、月明かりに照らされた街のどこにも、住民の姿は見当たらない。
どんなに寂れた場所であっても、たいてい、ひとりふたり、ひとの姿は見えたものだが――。
「この街、どうなってるんだ? どこにも人の姿がないぞ」
問いかけた猟兵に、ヴォルフラムが頷く。
「この街には、今、病が蔓延している」
本来なら、十分な食事と休息。
そして薬さえあれば、問題なく治る病。
――だが、放置すれば、確実に死に至る病。
圧制で食料は乏しく、満足に眠れず、そして薬の材料を採りに行く余裕もない街では、感染の拡大を防ぐ手だけはなく。
瞬く間に、住人の多くが病にかかった。
「このままでは、薬も食料も手に入らないまま、住人たちは全滅してしまうだろう。おまえたちには、住人たちの支援にあたってくれ。――併せて、調べて欲しいことがある」
そう告げ、ヴォルフラムは眉根をひそめた。
「街外れのどこかに、医者の屋敷があるらしい。住民の多くは、いつもその医者の世話になっていたそうだが……。最近、姿を現さなくなったという」
病を避け、身を潜めているのか。
あるいは、病にかかり倒れたのか。
「いずれにしても、今はひとりでも多くの手が必要だ」
手すきの者はすぐに街へ向かってくれと、ヴォルフラムは転移を開始するべく、グリモアを掲げた。
●
着いた先は、街の中心部であるらしい。
かつては憩いの場だったのだろう。
眼前に据えられた噴水は、今は枯れ果てているが、目印にはちょうどいい。
噴水の『真正面の道』を行くと、比較的大きな家がならんでいる。見るからに、贅を施した家々とわかる。住んでいるとすれば、富裕層の住人だろうか。
噴水の『左右の道』には、小さな家がひしめき合うようにならんでいる。衛生的にも、あまり良い場所とは言い難い。住んでいるとすれば、貧民層の住人だろうか。
噴水の『背面の道』に向かえば、街を抜け、街道をたどり、近くの森へ行くことができそうだ。
病の対策をするにしろ、街の手伝いをするにしろ、情報を集めるにしろ。
どこかへ行き、なにかしらのアクションを行う必要がありそうだ。
さて、何から手を付けたものか――。
西東西
こんにちは、西東西です。
『ダークセイヴァー世界』にて。
街の窮地を救うことができれば、任務達成です。
本シナリオではプレイング募集期間を長めにとり、実験的にゆっくり執筆してみます(とはいえ、挑戦者が集まりしだい執筆は進めます)。
まずは、街での対応から。
あなたは『どこ』へ行き、『なに』をしますか?
それでは、まいりましょう。
終わることのない、常闇の世界へ――。
第1章 冒険
『死に至る病』
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POW : 病人の看護、病気で行えなくなった労働の代行
SPD : 村の近くの森での狩猟、薬の材料となる薬草の採取など
WIZ : 薬の調合、衛生管理など
👑11
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リンネ・ロート
(口調はリンネ)
ココ・タマーニャさん(f01181)と一緒に行動します
他2つより高めなWIZを活かして主に富裕街の公衆衛生の指導を行います
具体的には
生活用水としての井戸水の使用を止める
できる限り川の上流の水を使うように勧め、さらに煮沸消毒してからの使用を勧める
食事や食器など口に入れるものに加熱処理
衣類や寝具(シーツ)なども同様
ごみや汚物などの適切な処理(焼却処理)を勧める
可哀そうですが、特にご遺体はお墓へ入れる前に火葬にすることを徹底
指導ついでに住人から話を聞きます
私から話しかけるのは苦手なので、話しかけられた内容に耳を傾け頷く程度
特にお医者さんの行方が気になるので、噂程度のことにも注意を払う
ココ・タマーニャ
リンネ(f00364)さんと一緒に行動しますっ
富裕層に行って、WIZ衛生管理を担当します!
リンネさんと一緒に1つずつご訪問。
猟兵リンネさんが衛生指導をしますよ~聞いてね、って呼びかけますね!
わわ、私はここだよー見逃しちゃやだよっ
衛生指導が終わったらリンネさんはお仕事!
私はその間に…おうたを歌うの!
シンフォニックキュアで、心が癒されますように。
辛い時は、助けてって歌うの『m'aider』!
ユーベルコードをゆっくりアカペラで歌います。
私たちはあなたの未来を助けるよっ!
メーデー、覚えて欲しいな
富裕層に向かうのは、行方不明のお医者さんの手がかりを探すため。
私たちは富裕層が怪しいと見たよ。
噂に聞き耳っ!
●
「こ、ここが富裕街……なんでしょうか?」
噴水の『真正面の道』を進んだリンネ・ロート(多重人格者のサイキッカー・f00364)が、頼りなげにあたりを見渡しながら呟く。
その頭上には、ちいさなフェアリーのココ・タマーニャ(玉の音りんりん・f01181)も、八の字を描きながらひらひらと飛んでいる。
「この街の富裕層、とっても怪しいですもんね! 行方不明のお医者さんの手がかりを探すため、噂に聞き耳たてちゃいましょっ!」
「コ、ココさん……! しーっ! しーっ!」
身体は小さくても、声はよく通るココの口をふさぎ、リンネが慌てて周囲にひとが居なかったかどうかを確認する。
ココは、「も~、リンネさんは心配しすぎです!」と、腕を組んで。
「心配しなくても、ここには誰もいないみたいですよ~」
と、今いる地区を示して見せる。
調査の目的を聞かれなかったことは、好都合。
しかし、ひとけがないということは、うわさ話も聞きようがないということでもあって。
「通行人……とかは、きっと居ない、よね。やっぱり、一軒一軒、尋ねてみるしかない、かな」
「公衆衛生指導って名目なら、不自然じゃ……ない、ですよね?」と確認するリンネに、
「水がどうとか、ゴミがどうとか、そんなに詳しいんですから大丈夫ですって! さあ、さっそく行ってみましょう!」
――1軒目。
「あ、あの、ごめんください。流行り病のことで、公衆衛生指導にきた者です」
ココに言われるまま、勢いこんで呼び鈴を鳴らし、扉をノックしたリンネだったが。
何度繰りかえしても反応がないことに、首を傾げる。
「単に、不在だとか?」
「空き家……ってことも、あるんでしょうか?」
その時は、そうとしか考えなかったのだが。
2軒目、3軒目……5軒目…………10軒目……。
どれだけ尋ね歩いても、どの家もまるで反応がない。
そうして、気づいたのだ。
呼び鈴やノックの反応はなくとも。
家の中には、誰かしらの気配がすることを。
「ちょ、ちょっと。これは……これはおかしくない、ですか?」
リンネはいったん富裕街の住宅からはなれ、ひと眼につかなさそうな路地に駆けこんだ。
つい先ほど尋ねた家の窓を見やれば、いくつかの人影が映っている。
「どうして、居留守をする必要が……あるんでしょうか」
「流行り病にかかっているから、ほかの人にうつさないためとか?」
ココも一緒になって考えるが、接触できなかった以上、推測することしかできない。
「あ~あ! リンネさんのお仕事がうまくいったら、おうたを歌おうと思っていたのに!」
2人は後ろ髪を引かれながら、どこか冷たい印象のする街並みを、後にした。
失敗
🔴🔴🔴🔴🔴🔴
バジル・サラザール
本業の薬剤師として頑張りどころね。
比較的急を要しそうなのは、噴水の『左右の道』に住んでる人たちかしら。そちらから優先して一軒一軒回りましょう。
もちろん一人だけじゃ手が足りない、採取とかはみんなにお願いするわ。役割分担しつつ助け合いましょう。
私は材料とかが用意されていたら調剤、それまでは掃除や洗濯の衛生管理ね。
問診で病気の治療を進めつつ、情報も集められたらいいわね。
私の体力なら問題ないけど、私自身もマスクで感染予防もしっかりとね。
そして心のケアも忘れずに。
私達猟兵が特効薬となって、必ずこの街を救ってみせるわ。
四辻路・よつろ
【POW】
まずは病人の看病からするわ
こんな状態でバタバタと死んでったら、余計な病気が蔓延しちゃうわよ
最初に行くのは貧民街ね
どんな有様になってるかは、踏み込んでからじゃ分からないけど
まあ、取り敢えずは最低限の処置は施しましょう
体力の少ないものから順番にね
それから、同じような行動をしている人との協力も忘れずに
あとは…、そうね
会話が出来そうな者に、元々街にいた医者がどこに行ってしまったか
聞けそうなら聞いてみましょうか
●
「ここは、本業の薬剤師として頑張りどころね」
――比較的急を要しそうなのは、噴水の『左右の道』に住んでる人たちなのではないか。
そう見当をつけ貧民街にやってきたのは、バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)だった。
「まずは、病人の看病かしらね。こんな状態でバタバタと死んでったら、余計な病気が蔓延しちゃうわよ」
同様の目的で貧民街へ向かっていた四辻路・よつろ(Corpse Bride・f01660)が、路上の荒れ様に眉根をひそめ、言った。
貧民街に入った時から、鼻をつく異臭が気になっていた。
その上、ゴミや汚物らしきものがそのまま路上に放置されて、不衛生極まりない状態だ。
「街の清掃は、後で担当してくれそうな猟兵に頼んで、私たちはこのあたりの一軒一軒を回りましょう」
「賛成。今は一刻も早く、患者を診なくては」
バジルの提案によつろが賛同し、さっそく、手近にあった家へ。
もっとも、富裕街のような門構えなどはひとつもなく、どこも壁と屋根があるだけ。
『小屋』と言っても良いような家ばかりだ。
訪ねればたいていの家の住人は顔を出した。
多くは、猟兵たちをいぶかったものの。
バジルが問診を行うとわかると、素直に応じてくれるようになった。
マスクをつけて、念のため感染予防を行って。
「今は、どんな体調なのかしら。ほかに、ご家族で病にかかっているひとはいる?」
「うちは、皆やられてて……。まだ動けるのは、俺くらいだ。先生、あとでうちのもみてやってくれ。もうずっと、身動きがとれずにいるんだ」
すがる患者に向かい、よつろが優しく背中をさすって。
「取り敢えず、最低限の処置は施すわ。体力の少ない者から、順番にね」
何人かの患者にあたり、詳しい話をきいたところ。
街には薬のたぐいが一切なく、皆、体力を消耗する一方であったという。
「そういえば。この街には、医者がいたと聞いて来たのだけれど」
よつろが水を向ければ、ある家の老婆と孫は、被りを振って、うめいた。
「先生にはもう、しばらく会ってないんです」
「街の病に嫌気がさして去ったんだとか。先生も病にかかって……亡くなったんだとか。色んな噂が流れてます」
しかしだれも、真実を知らないのだという。
「……一体、どういうことかしら」
呻くよつろをよそに、バジルは住人たちの様子を前に、新たに決意を固めていた。
「私たち猟兵が特効薬となって、必ず、この街を救ってみせるわ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
噴水の『左右の道』へ行き、住民の支援をします。
動けない人の代わりに、労働を代行しますと申し出る。
こうみえて力はあるほうなので、ご心配には及びません。
これでも昔は医者を目指した身。
こんな形でも、人の助けになるのであれば嬉しいのです。
労働をしつつ、医者の所在について住民に聞き込み。
「この街に医者はいないのですか?どこに住んでいるかご存知か?」
医者が健在であれば、この惨状そのままにしておくものなのだろうか……?
ルセリア・ニベルーチェ
噴水の『左右の道』小さな家がひきめき合うように
並んでいる方へ向かい、病気で行えなくなった労働の代行を。
ダンピールの手も借りたい?成程、ならばルセリアさんが手伝ってあげよう
技能『怪力』で力仕事であれ、問題なっしん!
物理的な手が足りなくなれば、『念動力』も使用して運搬しようかしら。
お仕事しながら、最近姿を現さなくなった医者の情報を集めるわ
『情報収集』と『コミュ力』で住人から聞き込み調査。
●
貧民街の支援には、多くの猟兵たちが足を運んだ。
ルセリア・ニベルーチェ(ルセリアさんは自由民・f00532)と、有栖川・夏介(人間の咎人殺し・f06470)は、労働の代行を申し出、住人たちに歓迎された。
「ダンピールの手も借りたい? 成程、ならばルセリアさんが手伝ってあげよう」
とはいえ、女の細腕と、色白の優男の2人組とあって、最初は半信半疑だったようで。
「……おまえさんたち、本当に頼んで大丈夫なのかい?」
「力仕事であれば、問題なっしん!」
「こうみえて力はあるほうなので、ご心配には及びません」
それぞれ軽々と大きな荷物や、重い荷物を運べることを見せたところ、聞きつけた住人たちが集まり、2人に仕事を頼むようになった。
明るく快活なルセリアは、気をふさぎこみがちな住人達も、気軽に声をかけた。
「闘病に際して、家具を移動させたかったんだけど……」
「そんなの楽勝、楽勝! どこに移動させたらいいのかな~?」
「薪割りなんかも頼んでいいんかねえ」
「はいは~い! 牧割りでも風呂焚きでも、このルセリアさんにお任せあれ!」
夏介も家事仕事を請け負いつつ、昔は医者を目指した身であったのだと告げれば、
「へえ。あんた、医学生だったのかい」
「若いのにえらいんだねえ」
「とんでもありません。こんな形でも、人の助けになるのであれば嬉しいのです」
殊勝な言葉に、街の女はいたく感心した様子で、言った。
「あんた、この街の医者になっちゃくれないかい? 少しでもいいんだ。医療の知識をもつ人間が、ここにはひとりもいないんだよ」
「お言葉はありがたいのですが」と、夏介は短期的にこの土地を訪れていること。
しかし、仲間たちとともに、街の病の対策に乗り出していることを伝え、続ける。
「この街に、医者はいないのですか?」
その問いに、女はばつが悪そうに、うなだれた。
「……昔はね、居たんだよ。でも、今は居ないね」
「どこに住んでいたか、ご存知ですか?」
「町はずれさ。森へ行く道を外れたところにある。でも、近づかない方が良い」
――何故か。
問いかけると、街の女はこう言って、忠告した。
「あのあたりには、前々からアンデッドが出るのさ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フェル・サッカート
「メイドとしてこのような不衛生な環境は放置できません。不肖、このフェル・サッカートがこの環境の改善に全力をもってしてあたりましょう」
私は貧民層の住人が住む家々を巡り家屋の掃除、炊事洗濯を行いましょう。食べ物の調理は狩猟に向かった方々の素材を使わせていただいて、材料があるならば、病人の胃にもやさしい薬膳料理を作りたいと思います、難しいならば肉類を食べやすい大きさまでに切ったりして工夫をして見ましょう。
合わせて、病人の方の看病をさせていただきつつ、お医者様の行方、この病が何時頃流行り出したか、原因に心当たりが無いか聞いて情報を薬を作る方に渡します。
コノハ・ライゼ
【POW】
噴水左右の街へ
長く患えば身辺に手が回らず、悪環境はさらに病気を深刻化させる――良く、知っている気がする
さあ先ずは街を綺麗にし、労働に手を貸そう
気持ちが少しでも上向くよう
「だいじょーぶ大丈夫、コレでも力持ちだから
ゴミや瓦礫、不衛生になり易い場所をどんどん片付ける
店やってるからこーゆーのは得意よ
人手がなく不便している家庭回り、手伝える事を聞き代わりにする
水があるなら沸かし、せめて温かい飲み物位作れればいいンだけど
片付けや労働の傍ら【コミュ力】も使用し話聞くヨ
医者のコト、富裕層のコト
暗い話題で気が沈みそうだったら折見て切り上げる
だって沈む気持ちは病のご馳走だもの
好き勝手、させたくないデショ
●
続いて貧民街に支援に入ったのは、コノハ・ライゼ(空々・f03130)だった。
(「長く患えば身辺に手が回らず、悪環境はさらに病気を深刻化させる。――良く、知っている気がする」)
薄氷の瞳に鬱屈とした街並みを見やり、うつむいて。
コノハはそっと、眼をひらく。
すると、不思議そうに見上げる幼い子どもが、顔を覗きこんでいて。
コノハは小さな住人の前に膝をつき、へらりと笑った。
「さあ、先ずは街を綺麗にして、仕事を片づけていこうね。気持ちが少しでも上向くように」
「あのお姉さんも手伝ってくれるよ」と示した先には、
「メイドとして、このような不衛生な環境は放置できません。不肖、このフェル・サッカートが、この環境の改善に全力をもってしてあたりましょう」
そう明言し、1秒も無駄にしてはられないと活動をはじめる、フェル・サッカート(さまようめいど・f03627)の姿があった。
既に活動していた猟兵たちのおかげで、住人達は恐る恐るではあるが、顔を覗かせるようになっている。
「掃除をお願いしても、良いんだろうか……。娘の看病で、どうしても手が回らなくて」
「ええ、もちろん構いません。伺わせていただきます」
「そっちが終わったら、うちの洗濯も手伝ってくれないか」
「わかりました。後ほど、必ず伺いますので、お待ちいただけますか」
炊事も手伝うと提案するも、住人たちはかぶりを振る。
「街にはもう食材はないよ。ここは病人だらけだしね。みんな飢える寸前なのさ」
「街の外にはアンデッドが出るので、調達にいくとしても命がけなんです」
食料を取りに行くと言ったまま、帰らぬ人となった者もいるのだという。
「わかりました。別の旅人たちにも伝え、食べ物の調達もお願いしましょう」
助かるねえと言葉交わす住人たちへ。
フェルは、しかしこの対応では付け焼刃に過ぎないと告げ、問いかける。
「この病は、いつ頃流行りだしたか覚えていらっしゃいますか? 原因に心当たりは?」
「お医者の先生がいなくなったあたりだったかしら?」
「いやいや、吸血鬼の支配さえなければ。それまでは、食料もギリギリでなんとかなっていたんだがねえ」
「この状況じゃあ、ねえ……」
フェルの調査では、これ以上の情報は得ることはできなかった。
自分は何をしようか、とコノハが立ち上がろうとすると、袖を引く気配がある。
「……」
傍らに佇んでいたのは、先ほどから傍に居た幼い少女だ。
「だんろ。ススだらけで、火をおこせないの……」
「ああ。それは、煙突掃除が必要かもネ」
「家は?」とたずねると、「こっち」と袖を引いて歩き出す。
今にも崩れそうな家には病床の両親がおり、どちらもコノハの顔を見やって。
「あの、本当にお任せしても……?」
「だいじょーぶ大丈夫、コレでも力持ちだから」
店をやっているとはいえ、煙突掃除の経験ははじめてだ。
(「水はあるようだから、火を使えれば沸かせるし。これで、温かい飲み物を作れればいいンだけど」)
手探りですす払いを行い、煙突に登って、家主のいない鳥の巣を払う。
空気の通るようになった暖炉に火を入れれば、少女の顔に、笑顔が灯って。
「オレたち、この街の手助けをしたくて。医者のコト、富裕層のコト。知っていることがあれば何でも知りたいンだけど」
「せんせーはね、ひとがかわっちゃったのよ」
ぽつり、零した少女の言葉は、
「こら! やめなさい!」
すぐに両親が叱責し、途切れてしまった。
うつむく少女の様子を気にかけながらも、コノハは話題を切り上げることにする。
「沈む気持ちは、病のご馳走だもの。好き勝手、させたくないデショ」
呼びかければ、こくり、少女が頷いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ダヴィド・ゴーティエ
妻のミェル(f06665)と共に
嗚呼、酸鼻極まる光景だ
一つの街が民ごと死に逝こうとしている
まるで我が故郷が滅んだあの時の様に
――否、嘆くばかりでは状況は好転せぬ
今は己に為せる事を為そうではないか
【SPD】
我等は森へ向い食糧と薬草の調達を行う
先ずは捌き易く世代問わず
食し易い鳥獣を狙おう
野兎や山鷸と言った小動物であれば
捕獲数も見込めるだろうか
生憎薬草の知識には疎い身故
其方は医師の卵たる妻の指示に従う
薬草を剪定する彼女を狙う
獰猛な大型獣とでも遭遇出来れば
『生命力吸収』を用い捕縛して一石二鳥だ
獲得した獣は街に戻ってから捌き
盲いた老人や働き手を亡くした子等から優先的に
妻が作る温かい食糧を振る舞えたらと
ミェル・ゴーティエ
夫のダヴィド様(f06115)と
【SPD】
まあ、なんて労わしい
消えた医師の行方も気になりますが
まずは病を直す薬草を持ち帰り
温かい食事で活力を取り戻して貰いませんと
不慣れな狩猟では精一杯
旦那様をアシストさせて頂きますね
薬草採取はわたくしの領分です
心服する旦那様からの信頼が嬉しくて
お任せ下さいと胸を叩き
効能別に分けて手早く剪定して参ります
えっ、もしかしてわたくし囮ですか……?
ダヴィド様のお言葉に愕然としながらも
そんなつれない所も素敵ですアナタ
野獣だろうと魔獣だろうと旦那様に牙剥く者には
鈍器による気絶攻撃も厭いません!
帰還後は薬草を煎じ狩猟した獲物を調理します
噴水前で炊き出し等が出来れば良いのですが
●
「嗚呼、酸鼻極まる光景だ。一つの街が民ごと死に逝こうとしている。まるで、我が故郷が滅んだあの時の様に」
人間の父親と、吸血鬼の母親との間に生を享けたダヴィド・ゴーティエ(ダンピールの黒騎士・f06115)は、かつての故郷を想い、胸を痛める。
「本当に、なんて労わしい……」
ダヴィドの妻であるミェル・ゴーティエ(人間の聖者・f06665)も、苦境に立つ街の状況を目の当たりにし、眉根をひそめる。
――否、嘆くばかりでは状況は好転せぬ。
すでに多くの猟兵たちが街に入り、住人たちの手助けを行っている。
「今は、己に為せることを為そうではないか」
告げた夫の言葉に、ミェルも頷いて。
「消えた医師の行方も気になりますが、まずは病を直す薬草を持ち帰り、温かい食事で活力を取り戻して貰いませんと」
噴水の『背面の道』を進んだ2人は、街を抜け、街道をたどり、近くの森へ踏みこんだ。
闇に包まれた世界の森は常にも増して暗く、ミェルはランタンを手に、夫の背について歩くので精一杯。
ダヴィドはというと、手持ちの武器を使い、器用に小動物を仕留めていく。
1時間も狩りを続ければ、あっという間に、荷袋一杯の野兎や山鳥が集まった。
「鳥獣であればさばき易く、世代問わず食せるであろうか」
「ええ。それだけ集まれば、ひとまずは十分かと」
夫婦は次に、薬草の調達にとりかかる。
村では食料はもちろんのこと、薬も不足している。
こちらも、多くあれば多くあるほど、街の助けとなるはずだ。
「生憎、薬学には疎い身ゆえ。其方は、医師の卵たるおまえの指示に従おう」
心服する夫からの信頼が嬉しく、ミェルは「お任せ下さい」と胸を叩き。
「薬草採取は、わたくしの領分です。効能別に分けて、手早く剪定して参ります」
意気揚々と草木の選別を行う妻の護衛についている間も、ダヴィドは周囲に眼を光らせ続けていた。
なぜなら。
「そこだ!」
振るった黒剣により一閃されたのは、獰猛な狼。
ランタンの灯りと、仕留めた獣の血の匂いをたどって来たのだろう。
気がつけば、他にも複数の狼が夫婦を取り囲んでいる。
「こやつらも捕縛すれば、一石二鳥だ」
「えっ、もしかしてわたくし、囮ですか……?」
夫の言葉に愕然としながらも、「そんなつれない所も素敵ですアナタ」と、メイスを構え夫の支援へ。
かくして、夫婦は大量の食料と薬草を抱え、大急ぎで街へと戻った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティル・レーヴェ
背面の道より向かえる森には薬草もあるじゃろう。採取は得意なものに任せ、そこで得たもので薬の調合を行おうぞ。簡単な調合だけでも現地で出来ればよいか…携帯可能な器具も用意するかのぅ。
薬草の知識が必要ならば採取担当に伝える事で効率も上がるかのぅ…?
街の者のみならず、件の医師が病に倒れておるならば、かの者を治すにも薬が役立つであろう。他の者と意思疎通し、余裕を持って調合するとしよう。
万が一身の危険が及ぶなり、癒しの力が必要であればユーベルコードも活用する。妾の疲労など二の次じゃ、複数治療も厭わぬ。この身に意味があるならば、のぅ、妾は其方らの癒しになれるかえ?
法月・フェリス
志蓮(f02407)と共に調査するよ。
ぼくたちは街で情報収集をした後、街外れの森で食糧集めと薬草集めをする。病人にはビタミンが必要だ。十分な山菜があると良いが。街人には調理する体力もないだろう。志蓮の獲ったお肉とぼくの集めた山菜でスープが作れたらいいな。どこかの台所が借りれないか……まあ人がいなければ片っ端から家の戸を叩こう。
街人の協力が取り付けられたら森へ狩猟、採集に。
「ごめんね、志蓮。観測手としての仕事は放棄する。ぼくは山菜と薬草を探すのに手一杯だから、狩猟は任せたよ」
医者の屋敷は見つかれば上々。病気ではなさそうにも関わらずコソコソしてる奴を見かけたら、電子の海に揺らめく水月で追跡しよう。
法月・志蓮
フェリス(f02380)と参加
俺たちは街の外で狩猟・採集をしにいこう。街外れの医者の屋敷の情報も少し集めておきたい。
とはいえ、色々情報が足りない。まずは街で比較的病状がマシそうな住人数人ほどから薬草の特徴や群生地、医者の屋敷の場所などの情報を集めよう。情報料として俺がこれから獲る食料などをある程度優先的に回す事にして交渉すれば少しはスムーズに話が進むかもしれない。
「悪い、ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
情報がある程度集まったら森へ移動だ。【夜陰の狙撃手】で闇を見通しながら色々と取ろう。医者の屋敷は森の近くにあれば軽く探る程度にしておく。
「ああ、分かった。さて、今回は大分狩らないとな……」
●
一方、噴水広場にて。
髪に咲いた白き鈴蘭を揺らし、ティル・レーヴェ(オラトリオの聖者・f07995)は、調合用の携帯器具を見せながら、猟兵たちに言った。
「妾は調合用の器具を持参しておるゆえ、すぐにでも作業にとりかかることができる。採取は得意な者に任せ、薬の調合に専念しようと思うが、どうかのぅ?」
幼き齢と、一見儚げな容姿に不釣合いな、雅然とした口調。
役割分担を行い、それぞれが作業に専念した方が効率が良いというのは、なるほど、確かに頷ける話だ。
作業を続けるうちに、協力してくれる猟兵も増えていき。
しばらくすると、話を聞きつけた一組の夫婦が通りがかった。
「ちょうど良かった。採取した薬草がいくらかあるから、これも調剤してくれないか」
「ありがたく頂戴するのじゃ。調合できしだい、すぐにでも街の者に届けると約束しよう」
ティルが礼を告げると、男は法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)だと名乗り、さらに続ける。
「俺たちは今、森で狩ってきた食材と引き換えに、街で情報を集めてきたところなんだ」
「富裕街では、だれにも会えなかったから良くわからないんだけど……。貧民街の人たちの様子だと、栄養失調も要因のひとつだと思うんだよね」
妻である法月・フェリス(ムーンドロップ・f02380)は、栄養のある食材や、山菜を集めに行った後は、どこかの台所を借りて調理も手伝うつもりなのだと言う。
「持っていた肉を優先的に渡すと言ったら、街の周辺で採取できる薬草の種類や、群生地も教えてくれたよ。あとは、医者の屋敷のだいたいの場所も」
「ほぅ! そこまで根回しが済んでおるのなら、話が早い」
ティルは、件の医師については自分も心配をしていたのだと、前置いて。
「医師も、病に倒れている可能性があるのではと思うてな。先ほど、余分に薬を作っておいたのじゃ。これを、ぬしらに託しても構わぬかぇ?」
「もちろん! もし必要そうだったら、ありがたく使わせてもらうね」
栄養のある薬草についてティルと情報交換を行った後、志蓮とフェリスは、再び街の外へと向かった。
「ごめんね、志蓮。ぼくは今回も、観測手としての仕事は放棄する。山菜と薬草を集めるのに手一杯だから、狩猟は任せたよ」
「ああ、分かった。さて、今回もたくさん狩らないとな……」
とはいえ、一度入った森での採取。
必要な薬草も明確になったとあって、作業は比較的短時間で完了。
「たしか、街の住人によると、医者の屋敷は『森へ行く道を外れたところ』にあると言っていたよな……」
狩猟・採取した荷物を抱えては、たいした偵察はできない。
志蓮は軽く探る程度にと考え、夜闇を見通すユーベルコード『夜陰の狙撃手(ナイトハイド・スナイパー)』を発動させた状態で、医者の屋敷へ向かうことにした。
それから、すぐのこと。
先を歩いていた志蓮が、後続のフェリスを制止する。
「志蓮?」
問いかける妻に、志蓮はジェスチャーを使い、声を出さず、身を低くするように伝える。
志蓮の眼には、今、24m先までの情景が視認できている。
――なんだ、あの複数の影は。
異変を察知したフェリスが、ユーベルコード『電子の海に揺らめく水月(エレクトロニックルナワールド)』を発動。
(「在るのにいない。見えないのにそこにいる。ぼくの視線からは逃げられないよ」)
目に見えず、触れることもできない電子精霊を召喚し、『夜闇のなかでうごめくもの』を追跡する。
「!」
電子精霊と五感を共有した、フェリスが見たのは。
街を目指し歩く、数えきれないほどの骸の群れだった――。
大成功
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第2章 冒険
『骸の群』
|
POW : 骸の群を、単純に力で排除します。判定次第では重いダメージを受けることになります
SPD : 町へ行こうとする骸の群を足止めするため、罠を張ります。また、遠距離攻撃で骸を土に返します
WIZ : 罠を張った上で草原に火を付け、骸の足止めと攻撃を兼ねます。
👑11
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|
●
猟兵たちの活動によって、食料の調達と、薬草の採取、薬の調剤は、ひとまずの分は整った。
炊き出しや仕事の手伝い等は、現在も有志の猟兵たちによって行われており、街の住民たちの間にも安堵が広がっているという。
「もっとも、反応があるのは貧民街だけで、富裕街には特に動きはない。例の医者についても、詳細はいまだに不明だ」
ヴォルフラムは、現在までの状況について伝えた後、言った。
「その、医者の屋敷があるという方角だが。調査によって、『骸の群れ』が発生。街へ向かい進軍していることがわかった」
幸い、骸の動きはゆったりとしており、街まではまだ距離もある。
しかしこのままでは、1日とかからないうちに街へ到達し、人々を襲うことになるだろう。
「敵の近接攻撃は強力だ。攻撃を受ければ痛手を受ける可能性がある。各々、持てる手段でうまく立ち回り、骸を掃討していってくれ」
有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
なぜ医者の屋敷がある方角から骸の群が?
ということは、医者は既に……。
いえ、今気にするべきはそこではないですね。
あの骸の群を、街に近づけるわけにはいきません。速やかに排除します。
【ジャッジメント・クルセイド】を空打ち。
敵の注意をそちらに引きつけたところで、住民から借りた狩猟用の網を投げて敵を足止め。
足止めに成功したら、他の猟兵達とも協力して、骸の群を一掃に努めます。
「さて、サヨナラの時間です」
須藤・莉亜
「骸の血って味はどんなかな?…そもそも血は流れてるの?」
僕はちょっと離れた位置で、大鎌を複製して敵に放っていこうかな。近寄ると危なそうだしね。
16本の大鎌の斬撃でバラバラにしちゃおう。上手いこと手足がなくなれば、味方も攻撃しやすくなるかも?
「バラバラにするのも大変だねぇ。あ、でもすっごく楽しいからどんどん切らせてね?」
西院鬼・織久
【SPD】
【心情】
骸の群とはよい所に行き当たったものです
丁度飢えていたのです。我等が怨念の糧としましょう
【行動】
ユーベルコード:「咎力封じ」
骸の足止めとユーベルコード封じを試みる
技能:「なぎ払い」「吸血」「生命力吸収」「傷口をえぐる」
できるだけ咎力封じが成功した対象を狙う
成功した対象がいなければ
主に使用する装備:「闇焔」
●
「なぜ医者の屋敷がある方角から骸の群が? ということは、医者は既に――」
有栖川・夏介(寡黙な青年アリス・f06470)はかぶりを振り、月下をそぞろ歩く骸の群れへ向き直る。
いかに歩みは遅くとも、相手は疲れ知らずの骸たち。
放置すれば、それだけ前進させることになる。
「今気にするべきは、そこではないですね。あの骸の群を、街に近づけるわけにはいきません」
赤い瞳は、群れへと見据えたまま。
白い指先を、あえて敵の居ない中心部へと向ける。
そして、
「――速やかに排除します!」
力ある言葉とともに、天から降りそそぐ光を撃ちはなつ。
空撃ちではあったが、骸たちに己の存在を知らしめるには、十分。
夏介はすかさず、己の元へと向かい来る骸たちを前に、貧民街で借り受けた狩猟用の網を投げはなった。
しかし人外の力をもつ骸は、ひとの手で作った網をいとも簡単に引きちぎり、変わらず前進を続ける。
「この程度では、足止めは叶いませんか……!」
後退して体勢をたて直そうと考えた、その時だ。
「――バラバラにした方が、いっぱい血が出るよね?」
後方から、複数の白い大鎌が飛来し、前進を続けていた骸1体の手足を切断する。
夏介が振り返れば、立っていたのはぼんやりとした表情の青年――須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)だった。
得物を通して舌のうえに広がる味を確認し、小首を傾げる。
「骸の血の味って、こんな感じなんだ? ……そもそも、血が流れているか怪しいのもいるけど」
骸といっても、敵の姿は様々。
生きた人間のようでありながら、土色の肌をしたもの。
半分骸となりながらも、なお半分はひとの姿をのこしたもの。
完全に白骨と化したもの。
共通していることといえば、『死の淵から蘇ったもの』たちであることだろうか。
「骸の群とは、よい所に行き当たったものです」
駆けつけた西院鬼・織久(ダンピールの黒騎士・f10350)も、怨念と血色の炎をまとう黒い大鎌を手に、ユーベルコードを発動。
「丁度飢えていたのです。我等が怨念の糧としましょう」
【手枷】【猿轡】【拘束ロープ】を投げはなち、骸の動きとユーベルコードを封じれば、すかさず莉亜が大鎌をはなち、敵を解体していく。
「この数です。ひとりで足止めと撃破を担い続けるのは難しいと感じていました。ここは互いに協力し、片づけませんか?」
呼びかけた夏介の言葉に、莉亜は機嫌よく応えた。
「僕は構わないよ。バラバラにするのは大変だけど。でも、すっごく楽しいから、どんどん切らせてね?」
「一体でも多く、オブリビオンを葬ることができるなら。俺も、異論はありません」
織久も、淡々とした口調に狂気と殺意を浮かべながらも、同意する。
「では、いきます」
夏介の向けた指の先に、天の光が落ちて。
敵が動きを止めた瞬間、織久が拘束し、莉亜が確実に手足を切断していく。
驚異的なことに。
骸は手足がない状態でも前進するべく動き続けていたが、手足が無い状態ともなれば、進行速度ははるかに落ちる。
とはいえ、このやり方では。
敵の群れを一掃するには、あまりにも時間がかかり過ぎる――。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
法月・フェリス
「なんだ、あの亡者の数……街に向かっている……?とにかく、数を減らさないと。志蓮、狙撃ポイントを見つけるよ。行こう!」
亡者の進路とは外れた場所で、森の木々が狙撃を邪魔しないよう立っているところが良いだろう。
亡者が近寄ってきているのに気づいたら狙撃ポイントを変えよう。
亡者を押し留めつつ、街の方まで押されてしまったら、家屋の屋根を借りようか。
ぼくはとにかく亡者の動きを観察する。
狙撃ポイントに入ってきそうな亡者の位置を志蓮に伝え、亡者達を追う電子精霊の位置から戦線を把握する。
もちろん周囲の警戒も怠らない。幸い亡者の動きは鈍いから、囲まれないうちに移動は可能だろう。
使用装備は電脳ゴーグルと軍服。
法月・志蓮
「亡者どもの群れの進軍か。生者なら負傷者でも作って遅延ができたんだが……さて」
フェリスが決めた狙撃ポイント、その暗闇の中で《迷彩》を行い、【夜陰の狙撃手】を用いて骸を一体一体狙撃していこう。出来る限り頭部、次点で足を狙う。
フェリスの警戒と指示を信頼して自分は狙撃に専念。他にも猟兵たちが頑張ってくれるはずだし、無理に欲はかかず必要なら逃げ隠れしながら着実に削っていくぞ。
現在暗闇の中で確実に当てられる自信がある距離は196m以内。200m弱という距離は森の中という事を考えれば十分なはずだが、木々が射線を遮らない位置関係だけに直線的に近寄られる危険性はある。常に逃走経路は頭に入れておく。
●
「なんだ、あの亡者の数……。街に向かっている……?」
「生者であれば、傷を負わせることで遅延を狙うこともできただろうが……。さて」
「とにかく、数を減らさないと。志蓮、狙撃ポイントを見つけるよ。行こう!」
法月・フェリス(ムーンドロップ・スポッチャー・f02380)は法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)に呼びかけ、夫に先駆けて戦場を移動する。
亡者の進路方向から外れた場所。
かつ、敵から身を隠すことができ、狙撃に影響を与えない場所。
(「――よし。ここなら
……!」)
敵と月明かりを避けフェリスが手招いた先は、森の木々が生い茂る暗がりだった。
すぐさま2人で身を隠し、志蓮は『迷彩』スキルでさらに気配を覆い隠す。
「フェリス。他にも猟兵たちが頑張ってくれるはずだし、無理に欲はかかず、必要なら逃げ隠れしながら着実に削っていくぞ」
「了解」
フェリスは電脳ゴーグルを装着し、再びユーベルコードで電子精霊を召喚。
敵の追跡を命じ、視界を共有したうえで、戦線の把握と敵の観察に専念する。
視野髙く戦場を一望すれば、骸の数の多さに驚いた。
しかし、2人が相手にできる数は限られている。
射程範囲外の敵は、ほかの猟兵たちに処理を託すとして、
「志蓮。左手奥に、動きの早い亡者を数体発見。他のよりどんどん進んでる。あいつら、ここで逃したら厄介だよ」
個体差によるもの、なのだろう。
フェリスの捉えた目標たちはきわめて人間に近い骸で、ひととして不完全な形態の骸よりも、格段に移動速度が速かった。
「目標了解。――捕捉した」
志蓮は短く返し、紅い瞳を見開く。
(「この暗闇の中で、確実に当てられる自信がある距離は、225m以内――」)
確実に仕留められる位置まで引きつけ、
(「…………仕留める」)
闇を引き裂き、弾丸が骸の頭蓋に命中!
狙った敵複数の頭部を弾丸が貫通し、おびただしい量の血が飛散するも、どの亡者も足を止めることはなかった。
精霊の眼を通し、敵の状態を確認したフェリスが、鋭い声で告げる。
「ダメだ。鈍ったけど、まだ動いてる……!」
「頭を吹き飛ばしたところで意味がない、ということか。それなら」
続けて志蓮は亡者たちの足を狙い、集中的に攻撃。
いくらかの敵の足止めと殲滅に成功するものの、ある程度攻撃を続けた後は、気配を察知、特定されないようにと、場所を変えなければならない。
囲まれないうちにと、フェリスが立ちあがり。
志蓮は再び、妻の背を追い、戦場の闇を駆け抜けた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
コノハ・ライゼ
さてさて、本領発揮ってヤツかしら
カワイイ子に笑顔を届けるのもイイ男の務めってネ
【WIZ】群とあらばお任せあれ!
骸の進路上で森に延焼しない場所選び、わざと音を立てるなどして誘き寄せる
幾らか寄ってきたら【月焔】を放ち円状の炎の壁を作るヨ
退路経つ為に敵後方にも炎を分散させるのを忘れずにネ
閉じ込めたなら炎を数に合わせ分散・合体し攻撃
迫った敵には右目に仕込んだ刻印「氷泪」を展開し
青白い稲妻で捕らえ【傷口をえぐる】
美味そうじゃあねぇケド……
とっとと片して、あの子らにホントのご馳走食わせてあげてぇもんね
少女の話からして医者が病に倒れた線は無ぇカンジ
理由は知らンがひとつ締め上げにゃあならねえよネ
●
「さてさて、本領発揮ってヤツかしら」
コノハ・ライゼ(空々・f03130)は敵の一群を見渡し、へらり笑って、敵の前へ身を躍らせた。
「群とあらばお任せあれ!」
わざと大きな声をあげ、音をたてて戦場を駆け抜ければ、コノハを捕捉した骸たちが彼を追い歩きはじめる。
――おびき寄せる先は、骸の進路上でありながら、森からはいくらか距離のある場所。
複数の敵の姿が射程内に入ったのを確認し、すかさずユーベルコードを発動する。
「暖めてあげようか」
周囲に十と九の白き炎が浮かびあがり、コノハを中心に、円状の冷たい炎壁を構築。
骸たちにしてみれば、前にはコノハ。
四方には炎と、八方ふさがりになる配置だ。
壁の内にいるのは、6体の骸たち。
生みだした炎をそれぞれに3~4つ撃ちはなてば、骸たちは炎をまとい、もがきながらも攻撃を繰りだしてくる。
「カワイイ子に笑顔を届けるのも、イイ男の務めってネ!」
右目に仕込んだ刻印『氷泪』を展開し傷口をえぐれば、亡者たちはそろって土くれとなって滅びた。
「さすがに、こいつらは美味そうじゃあねぇケド……。とっとと片して、あの子らにホントのご馳走食わせてあげてぇもんね」
貧民街で出会った少女を思い浮かべ、次の敵を見定め、走りだす。
(「あの少女の話からして、医者が病に倒れた線は無ぇカンジ。理由は知らンが、ひとつ締め上げにゃあならねえよネ――」)
大成功
🔵🔵🔵
ココ・タマーニャ
リンネさん(f00364)もといニノと行動しますよ!
こんな所で恥ずかしいけど……今度こそ成功したいの、
行きます、真の姿解放!
服を脱いでビキニココですよっ!
ただ、今回は隠密するのでフォリッジグリーン色の布を纏いますね。
赤の髪もまとめてバンダナに入れましたよ。
【SPD】
ニノが引き付けている間に、私はこの身体の布に隠した袋の中身、
油で湿らせた枯れ草を罠としてこっそり撒きます。
炎で足止めと、大量に巻き込めるように。
私ちっちゃいもの、見つからないです!
私が見つかる、ニノが持ち堪えられないとか変化があったら
遠距離ナイフでシーブズギャンビットを骸に素早く打って合図!
そして逃げますっ!
ニノっ、ファイヤー!!!
リンネ・ロート
(性格・口調はニノ)
ココさん(f01181)と行動します。
リンネがミスった分はアタシがカバーするわ。
このままじゃ終われないもの。
【WIZ】
ココさんによる支度が済むまでアタシが引き付けるわ。
使える技能は何でも使ってみせる。
具体的には、おびき寄せ・誘惑でこちらに目を向けさせる。
できるだけ距離を取って誘導。
上手く目を向けさせたら、見切り・オーラ防御を駆使して時間を稼ぐから。
引き付けに失敗・ココさんが見つかる・ココさんからの合図のどれかがあったら、引き揚げよ。でもタダで引き揚げないわよ、できる限り燃えやすそうな場所を狙って高速詠唱から【ウィザード・ミサイル】を放つ。
みんな燃えてしまえばいいのよ!
バジル・サラザール
まだまだ根治には至らないってわけね。
いいわ。相手してあげましょう。
燃やしたりしても大規模な火災にならなそうな草原に罠を仕掛けるわ。被害を防ぐために別の被害を生んだら意味ないものね。
いろいろ仕掛けたいけど……主に爆発物を用意しようかしら。
地雷とかが用意できればいいけど、手榴弾とかなんならガスボンベとかでも。
敵がポイントについたら、できるだけ離れた物陰から「ウィザード・ミサイル」で攻撃しつつ、着火しましょう。
もちろん全滅、あるいは撤退させるまで戦闘を続けるわ。
他の人の作戦を妨げないようには注意しましょう。逆に作戦が噛み合ってるなら協力させてもらいたいわ。
●
――富裕街の調査では、思うような成果を得られなかった。
「リンネがミスった分は、アタシがカバーするわ」
「こんな所で恥ずかしいけど……。今度こそ成果をあげたいですからね!」
決意を胸に告げるリンネ・ロート(多重人格者のサイキッカー・f00364)――もとい、別人格ニノの言葉に、小さなフェアリー、ココ・タマーニャ(玉の音りんりん・f01181)が頷いて。
「行きます、真の姿、解放!」
ばっと服を脱ぎ捨て、身軽なビキニ姿に早変わり。
念のためにとフォリッジグリーンの布をまとい、髪もバンダナの中にまとめ、ビキニ姿なりの隠密に徹する。
「ココさんの支度が済むまで、アタシが引き付けるわ。それじゃ、行くわよ!」
告げたニノが地を蹴り、迫りくる亡者たちの前へ駆けだす。
攻撃をすると見せかけ、敵に己を認識させた後は、得意の見切りで、ひたすらに攻撃を回避していく。
「ほら、どこを狙ってるの? そんな攻撃じゃ、アタシには当たらないわよ!」
派手に動き回ったおかげで、複数の骸たちがニノに標的を絞り、集まり始めた。
ココはというと、小さな身体で敵の合間をかいくぐり、ある仕掛けを施している。
だが、準備が整うまでは、まだ時間を要する。
最初は余裕をもって逃げ回っていたニノも、いかに相手が動きの遅い敵とはいえ、一撃の重い敵。
複数相手ではしだいにかわしきれず、オーラ防御で受けきれなかった攻撃が、その身に傷を重ねていく。
それでも、ニノは血を流し、歯を食いしばりながら、耐えた。
「このままじゃ、終われないもの……!」
その瞬間、ココの行っていた仕掛け――油で湿らせた枯れ草の散布が完了。
「ニノーーーーーーーっ!」
ユーベルコード『シーブズ・ギャンビット』を発動し、手にしたダガーでニノへ迫っていた敵へ突撃!
一撃を加えた後、すぐさまその黒髪へ飛び込むようにして、叫んだ。
「ファイヤー!!!」
次々と伸びる骸の手を振り払い、オーラ防御で凌ぎきり、ニノは高速詠唱を完成させる。
「――みんな、燃えてしまえばいいのよ!!」
渾身の叫びに、80本の火矢が弾けた。
至近距離で魔法矢を喰らった骸たちは吹き飛び、断末魔をあげて土塊と化していく。
しかし、全ての敵を土に還すには至らず。
敵と同じく爆風に倒れたニノが覚悟を決めた、その時だった。
眼前に立ちはだかった敵が、魔法矢の雨によって燃えあがったのだ。
「お嬢ちゃんたち、今よ! 早くお逃げなさい!」
とっさに声のする方へ駆ければ、そこには下半身が蛇姿のキマイラ女性――バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)が佇んでいた。
ニノが撃ちもらした敵へ向け、さらに90の火矢をはなち、敵を駆逐していく。
「……助かったわ」
「危ないところを、ありがとうございましたっ!」
ニノとココの礼に、バジルは「お礼を言うのはこちらの方よ」と微笑む。
「爆発物を仕掛けしかけたかったんだけど、あの街、使えそうな物がなにもなくて、準備できなかったのよね」
これという決め手に欠けていたところに、ココの仕掛けを見かけ、便乗させてもらったというわけだ。
「やっぱり、油はよく燃えるわねえ」
至近距離で行う作戦で危険が伴うとはいえ、少人数で、なおかつ多くを巻きこむには効率の良い作戦だったといえよう。
「さあ、あとは任せて。一度、傷の手当てをすると良いわ」
バジルの提案に、ココとニノが同意し、戦場から退くのを見送って。
数が減ったとはいえ、なおも歩き続ける亡者の群れを見渡し。
女はさらに火矢を顕現させ、艶然と微笑んだ。
「まだまだ根治には至らないってわけね。――いいわ。相手してあげましょう」
成功
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アルバ・アルフライラ
ふぅむ…気になる事項は山程あるが
どうやら調べる時間すら与えてくれぬらしい
兎にも角にも、先ずは骸共を灰燼に帰さねばな
希望が絶望に染まるのは惜しい
罠が張られ、前に出る者以外が安全圏迄戻ってから【愚者の灯火】で草原に火を放つ
燃やすのは草原のみ
街や森、そして前で戦う者達に火の手が及ばぬよう調整
魔法発動前、草原を見渡し
…すまない、大いなる大地よ
御身、活用させて頂く
常に戦場の状態を後方にて注視
特に直ぐ街迄迫っている骸に優先して火を合体、足止め且つ攻撃
前衛にて体力が危険な者がいた際は率先してサポート
――御安心を、火加減ならば心得ております
骸を全て再殺後は欠かさず消炎
然し病気が蔓延しての進軍とは…些か奇妙よな
ダヴィド・ゴーティエ
前線に立ちアンデッドを掃討する
街の入口を守ると言い張る妻の言葉に
「お前らしい」と瞳を細め
――街の守りは任せたぞ
【POW】
UC《嘶く骸馬》を使用
魔女の業火に焼かれ命を落した
愛馬モルガンを冥府より喚び戻し
その漆黒の背に跨り黒剣を抜く
征くぞモルガン
意志なき亡霊共の群れを殲滅してくれよう
馬上にて刃を振い戦場を駆け
薙ぎ払えど尚もしぶとく立ち上がる骸には
《傷口をえぐる》で追い打ちをかけ
心の臓を繰り返し穿ち再起不能にする
足りぬ、足りぬ、足りぬ、
この程度の責苦では我が怨嗟は
死した同胞達の無念が晴れるものか
叢る雑魚共は剣戟で一掃するが
敵軍に首領級の不死者がいたならば
《咎力封じ》で弱体化した上で鍔迫り合いに臨む
西院鬼・織久
【POW】
【心情】
なるほど、バラバラになっても動きますか
ならば微塵に切り刻み、薙ぎ払います
粉々になってまで動けるでしょうか
【行動】
ユーベルコード:血統覚醒
技能:なぎ払い、二回攻撃、範囲攻撃、生命力吸収
「血統覚醒」を行い「範囲攻撃」で敵の群れを攻撃
撃ち漏らした対象は「なぎ払い」「二回攻撃」で追撃する
ある程度負傷した時は「生命力吸収」を使用
また複数を纏めて撃破できる機会があれば「範囲攻撃」で一気に倒す
●
――愛する旦那様のお傍で戦いたいのは山々ですが、疲弊した街の守りが手薄になるのも心配なので。
そう告げ、街の入口を守ると言い張った妻とは行動を別にして。
「墓碣の下は怠屈であろう? 目醒めよモルガン、惨澹たる夜を再びともに駆け抜けようぞ」
かつて魔女の業火に焼かれ命を落した、愛馬モルガン。
ダヴィド・ゴーティエ(ダンピールの黒騎士・f06115)は、冥府より喚び戻した漆黒の愛馬にまたがり、黒剣を手に戦場を駆け抜ける。
「征くぞモルガン。意志なき亡霊共の群れを殲滅してくれよう!」
馬上にて刃を振るえば、何体もの骸の首が飛び、胴体が真っ二つにわかれた。
しかし、亡者たちはどれだけ傷を受けようと動きを止めない。
足があれば立ちあがり、手があれば手だけで這い、前進を続ける。
「しぶとい骸どもめ……!」
奮戦を続けるも、派手にたちまわるダヴィドは敵の目を惹き、多くの敵に囲まれつつあった。
別の戦場から駆けつけた西院鬼・織久(ダンピールの黒騎士・f10350)がヴァンパイアに変身し、ダヴィドに襲いかかろうとしていた敵を斬り裂いた。
沸きあがる力は強大ではあるものの、その力は、刻一刻と織久の命を蝕んでいく。
覚醒した真紅の瞳を向け、告げる。
「あいつらは、バラバラになっても動き続けます。微塵に切り刻み薙ぎ払うか、粉々にすれば動きを止めることはできるかもしれませんが――」
「ならば、迷うべくもない」
同胞の幼いダンピールの眼に、どこか己と通じる狂気を見いだし。
ダヴィドは漆黒の剣を天に掲げ、言った。
「多少の傷で動きを止めぬというのなら、奴等の心の臓までも粉微塵に斬り穿ち、再起不能にしてくれるまで」
(「仕方ありません。ここは、あの方に続くしかないようですね」)
雄々しく敵の群れに突撃するダヴィドの背を見やり、織久は手近にいた骸を、連撃で叩き斬った。
ダヴィドが斬った敵を。
あるいは、織久が範囲攻撃で圧倒した敵を、ダヴィドが追撃を仕掛け、粉々に解体していく。
「足りぬ、足りぬ、足りぬ! この程度の責苦では我が怨嗟は、死した同胞達の無念が晴れるものか!」
ダヴィドが吠えた瞬間、粉微塵にした骸の山に火が付いた。
火は周囲の骸にも広がり、次々と土塊へと還していく。
「彼方に魔術師が。援護のようですね」
察した織久が視線を送り、即座に攻撃に戻って。
ダヴィドも意に介すことなく、猛攻を続ける。
(「――御安心を、火加減ならば心得ております」)
遠く戦場を見晴るかし、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)はそう胸中でひとりごちた。
前線にて戦う猟兵たちを引き続き援護しつつ、役目を果たした火は、欠かさず消炎していく。
援護にまわる一方で、味方が居ないことを確認したうえで草原に火をはなち、敵の行動範囲を狭めていく。
「……すまない、大いなる大地よ。御身、活用させて頂く」
気になる事項は山ほどあるが、迫りくる敵を前に、悠長に調べているだけの時間はない。
(「兎にも角にも、先ずは骸共を灰燼に帰さねばな。希望が絶望に染まるのは惜しい」)
――然し、病気が蔓延しての進軍とは……。些か奇妙よな。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
伍島・是清
【SPD】
「御前も居たのか」
顔見知りの四辻路(f01660)を発見
意外なのは、御前もな。
まァ、精々頑張れ。――怪我すんなよ。
…死んでるモノ…御前も大概な女だな…
まァ、俺も変わンねェけどさ…
"視力"と"聞き耳"で敵の位置や進行状況を確認
からくり人形をけしかけて"時間稼ぎ"をしつつ罠を張る
土草の中に鋼糸を密かに張り巡らせる罠
良いよ、何時でも
頃合いもそろそろか
――ユーベルコード、領域切断
鋼糸に当たった対象を一気に切断
四辻路、医者は任せた
戦況に余裕があるなら富裕街に行き
「骸の群れが来たぞッ!『貧困街』に向かってるッ!」
富裕街に向うなら出てこねェだろうけど
対岸の火事を視る心理で富裕層が出てくることを狙う
四辻路・よつろ
【SPD】
伍島・是清(f00473)と共に
――あら、是清もいたの?意外
死体って厄介よね、すぐに起き上がってくるし
やたらと頑丈だし
まあでも、多少の分野違いはあるけれど生きていないモノなら私の領分
死んでるモノとは相性がいいの
罠とかそういう細かい作業は苦手だから任せるわ
ド派手にやるわよ!是清、罠の準備はOK?
リザレクト・オブリビオンで召喚
【死霊騎士】でアンデットの足を切断
動きを止めて【死霊蛇竜】の炎で焼き尽くす
敵の勢いが落ち着いたら噂の医者の屋敷とやらに行ってみましょう
この調子じゃ、彼も恐らく無事じゃないかもしれないけど
使えそうなら【影の追跡者】で医者の居場所を追跡
どこにいるのかしら、件の人は
ミェル・ゴーティエ
【SPD】
愛する旦那様のお傍で戦いたいのは山々ですが
疲弊した街の守りが手薄になるのも心配なので
わたくしは街の防衛と後方支援に努めますね
……どうかご武運を、あなた
●
不安気な表情を浮かべる街の方々に
大丈夫ですよ、と微笑んで見せ
穢れを纏う異形の戦士達を
決してこの街には入れません
怪力を駆使して頑丈な横木を担ぎ
一時的に閂を掛け街の出入口を塞ぎます
街の守りを固めた後は
街の全景と草原を望める
鐘楼などの高い場所へと上り
双眼鏡を用いて敵軍の位置を捉えたなら
ジャッジメント・クルセイドで
敵兵めがけて裁きの光を撃ち込みます
頭数があまりに多い場合は
絶望の福音で行軍の進路を予測し
威嚇射撃を兼ね進路を阻む形で攻撃しますわ
●
月が煌々と照る夜の情景。
草地のあちこちが、まだ赤く燃えている。
一面が燃えていないのは、猟兵たちがうまく火を制御し、無駄な延焼を防いでいるからだ。
進軍していた骸たちの多くは、猟兵たちの活躍によりほとんどが土へと還った。
さて。
この光景は、街からは一体どう見えているのか――。
戦場にあって、
「あら、是清もいたの? 意外」
と声を掛けたのは、四辻路・よつろ(Corpse Bride・f01660)だった。
対する伍島・是清(骸の主・f00473)も、
「意外なのは、御前もな」
と、そっけない声を返す。
「死体って厄介よね、すぐに起き上がってくるし。やたらと頑丈だし」
告げる女は、ユーベルコードを用いて召喚した【死霊騎士】と【死霊蛇竜】に命じ、これまで淡々と亡者たちの『処理』をしていたらしい。
「まあでも、多少の分野違いはあるけれど、生きていないモノなら私の領分。死んでるモノとは相性がいいの」
「……死んでるモノ……。御前も大概な女だな……」
「まァ、俺も変わンねェけどさ」と是清も続け、夜闇に目を凝らし、聞き耳をたて、残る骸の気配を探る。
『骸』――己が仕立てたからくり人形を手繰り、近場の敵へけしかけ時間稼ぎ。
その一方で、是清は土草の中に鋼糸を張り巡らせ、罠を仕掛けて回った。
「そういう細かい作業は苦手だから、任せるわ」
よつろは敵に気取られぬよう、先んじて離れた位置へ。
遅れて、準備を終えた是清が、よつろの元へ参じた。
「是清、罠の準備はOK?」
「良いよ、何時でも。頃合いもそろそろか」
からくり人形におびき寄せられ、骸たちが先ほど設置した罠へさしかかる。
女は口を曲げ、愉しげに声をあげた。
「さあ、ド派手にやるわよ!」
声に気づいた骸たちが、一斉によつろを見た。
瞬間。
「――俺の領域へ、ようこそ」
闇に煌めく『絲』がうなり、接触していた骸を一気に切断。
バラバラに解体する。
間をおかず、糸から逃れた骸めがけ、死霊騎士が斬りかかった。
足を狙い両断するも、それでも動こうとする敵の背には剣を突きたて、地面に縫いとめた。
そうしてとどめに、死霊蛇竜が火を吹き、土塊へと還す。
何度か連携を繰りかえすうちに、辺りの気配はなくなって。
草原には、ふたたび静寂が戻ったように、見える。
――この街には、まだ何かがある。
そう感じていた是清は、傍らの女へ向け、言った。
「俺は、街へ戻る」
そして。
ミェル・ゴーティエ(人間の聖者・f06665)は貧民街の住民たちに説明を行い、街の入口に閂を掛け、街の守護についていた。
貧民街の者たちは一様に不安そうな表情を浮かべたが、
「お医者先生の家の近くに、アンデッドが居るのは確かだからね」
「群れで来るなんて聞いたことも見たこともないが……」
「あんたたちの言うことなら、信じるよ。なあ」
外からきて、手を尽くしてくれた猟兵たちの言葉を疑う者は居なかった。
できる限り街の入口から離れるよう指示した後、ミェルは街を一望できる地点に立ち、逐一、戦況を確認していた。
しかし、夫を含む猟兵たちの向かった場所までは距離があるため、ミェルは見守ることしかできない。
――街の守りは任せたぞ。
送りだした夫の言葉を胸に、ミェルは固く手を組み、祈る。
「……どうかご武運を、あなた」
しばらくの後。
戦況は不明だが、火の手や戦闘音が少なくなったところを見ると、勝敗は決したのかもしれない。
急ぎ噴水前に戻ると、貧民街の住人たちと対立するように騒ぎたてる、身なりの良い男女の姿が見えた。
どれも、貧民街を訪れた際には、見なかった顔だ。
「これは一体、なんの騒ぎだ!」
「なぜ入り口を封鎖しているの。おまえたちの勝手は許しません。すぐに解放なさい」
詰問するように問いかける男女と、貧民街の住民たちの間に入り、ミェルがうやうやしく膝を折る。
「紳士淑女ともあろう皆さまが、そのように声を荒げて……。一体、どうなさったのですか」
問えば、別のところから声が返った。
「旅人さん、そいつらは上の住人だよ」
「俺たちが困ってる時には、引きこもって何もしようとしない」
「都合が悪くなると、しゃしゃり出てくるやつらさ」
「なんだと!」
紳士の振りあげた杖を、ミェルが己の腕を盾に、受け止める。
「ご無体はおやめください」
柔らかな空気を纏う淑女の気迫に、富裕街の住人たちが、押し黙った。
その時だ。
「骸の群れが来たぞッ! 『貧困街』に向かってるッ!」
戦場から駆け戻った是清が、門を乗り越えて戻り、噴水前に集まった者たちへ向け叫んだ。
『貧困街』へ向かっている、というのは、でまかせだったのだが。
真っ先に反応したのは、貧民街の住人たちではなく。
「なんですって!?」
「馬鹿な! これでは約束が違うぞ……!」
顔色を変えた、富裕街の男女だった。
大成功
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第3章 ボス戦
『ヴァンパイア』
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POW : クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑17
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●
貧民街の住人たちに問い詰められ、富裕街の男女は洗いざらい白状した。
曰く、『街はずれの医者』は病が流行り始めた頃、ヴァンパイアによって殺害されたこと。
いらい、ヴァンパイアは医者の屋敷に住みつき、訪れる病人たちを餌食にしていたこと。
獲物たちが自ら屋敷を訪れることに味をしめたヴァンパイアは、富裕街の住民の安全を保障する代わりに、貧民街の病人たちを屋敷まで連れてくるよう約束させたこと。
街へ骸を差し向けたのは、おおかた、この『遊び』に飽きたのだろう。
「まさか、あの子の言うとおりだったなんて……!」
貧民街の病床の夫婦が、涙を流しながらくずおれた。
――せんせーはね、ひとがかわっちゃったのよ。
それは文字通り、『医者』が入れ替わっていたことを意味していたのだ。
少女は、富裕街の住人たちが馬車を出すたびに、この噴水前の門から見送っていた。
門から出て行った彼らが、二度と戻ることがないと知りながら――。
猟兵たちはすぐさま医者の屋敷へと向かい、屋敷を包囲した。
なるほど、ヴァンパイアの好みそうな豪奢な屋敷ではあったが、ひとが住むには、血の匂いに満ちすぎている。
しばらくして玄関口から現れたのは、1体のヴァンパイアだった。
「おやまあ。今日の患者はずいぶんと多い。それに、殺気が過ぎるようだ」
物腰やわらかな印象だが、あれだけの骸を操っていた吸血鬼だ。
「病人ばっかりってのも、味気ないしね。この『遊び』は、もう終わりにしようと思っていたんだ」
そう告げて。
青白い顔をしたオブリビオンは、三日月のように両の眼を細めた。
須藤・莉亜
「前にもヴァンパイアの血は吸ったけど、君のはどんな味かな?」
まずは眷属の蝙蝠たちを召喚して敵にけしかけてみよう。
蝙蝠たちに全方位から攻撃してもらって、その隙に自分は敵に接近して切っていこう。
技能【傷口をえぐる】で、蝙蝠がつけた小さい傷でもぐちゃぐちゃの傷にして、いっぱい血を流してもらおうかな。
チャンスがあれば自分の口で血を吸いたいね。まあ、そう簡単には行かなそうだけど。
「まずは大鎌で味見、その後に実食?」
そのためにもまずはしっかり弱らせよう。じっくりとね。
コノハ・ライゼ
たまにゃ血気盛んな患者も診とくとイイんじゃねぇの、エセ医者サン?
【WIZ】
まずは牽制と目眩まし兼ねて
【月焔】を分散させ広範囲から敵へ集中させる軌道で撃ち込む
仲間の攻撃する隙が作れりゃヨシ
でなくとも敵の攻撃等の隙見て懐に飛び込み
「柘榴」にて『傷口をえぐる』のと同時に『生命力吸収』する
「その血は特に不味そうダケド
『2回攻撃』の返す刃で切りつけると見せかけ
また【月焔】を全弾合わせた最大威力で撃ち込む
複数の仲間が同時に打ち込むチャンスがありゃ
『捨て身の一撃』で至近距離から【月焔】
炎に撒く事で大きな隙を作ろう
言われなくとも
テメェごと終わりにしてやるさ
無事終えれたら村の人達に温かいスープを作ってあげたいネ
●
真っ先に仕掛けたのは、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)とコノハ・ライゼ(空々・f03130)。
「前にもヴァンパイアの血は吸ったけど、君のはどんな味かな?」
「あの血は、特に不味そうダケド」
一呼吸早く十九の炎を出現させ、コノハが四方八方からヴァンパイアへと撃ちはなつ。
敵が回避行動をとった瞬間を狙い、莉亜も己の眷属を召喚。
「さあ、ご飯の時間だよ」
吸血蝙蝠の群れ。
その数、八十五ともなれば、群れ動くさまはまるでうごめく暗雲のよう。
しかし、ヴァンパイアはそれまで保っていたひとの姿――人間の医者のフリをやめ、隠していた両翼を広げると、嗤った。
顕現した剣を振るえば、その数が30にも増え、主の周囲に行儀よく並び浮かぶ。
『残念だったね。この程度、僕の剣の前には無力さ』
飛来する剣の舞を受けた蝙蝠が、翼を引き裂かれ、次々と地に墜ちていく。
それでも、蝙蝠たちは最後の1体になるまで主の命に応え、全方位から攻撃を続けた。
莉亜が死角から間合いを詰めるには、十分な隙。
「まずは大鎌で味見、その後に実食?」
『血飲み子』と名付けた白い大鎌を、ひと振り。
傷口をえぐるように手首を返せば、白い刃を伝い流れた血の味が、じわり、口の中にひろがる。
ヴァンパイアはうめきながらも、流れた血で書いた誓約書を莉亜へ投げつけ、宣告した。
『動くな』
「――!?」
瞬間、莉亜の全身に雷を撃ったような衝撃がはしり、たまらず地に伏せる。
コノハはその隙を逃さず、鉱石の貌もつナイフを一閃。
刻まれた溝が真紅に濡れるのを横目に、さらにもう一撃。
そう、見せかけて――。
「たまにゃ、血気盛んな患者も診とくとイイんじゃねぇの、エセ医者サン?」
発動していたユーベルコード『月焔』を、至近距離から、最大威力で叩きこむ。
『グ……ハッ!!』
ヴァンパイアはとっさに翼で身を護ったが、盾とした翼は煌々と白い炎に包まれ、延焼している。
莉亜は身体を起こし、大鎌を構え直して。
「チャンスがあれば自分の口で血を吸いたいね。まあ、そう簡単には行かなそうだけど」
「まずはしっかり弱らせよう。じっくりとね」と続ける猟兵に、コノハも頷いた。
「無事終えれたら、村の人達に温かいスープを作ってあげたいしネ」
そのためにも。
「テメェごと。全部、終わりにしてやるさ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
四辻路・よつろ
是清(f00473)と共に
今のエサに興味が尽きたら、次に目を付けられるのは眼前をウロチョロしているもう一つのエサよ
あなた達はさながら、猫に遊ばれるネズミだったようね
真剣な顔した是清に、余計な事は言わず
軽い足取りで月を砕くと言った男の後ろを付いていく
こんばんはドクター、一緒に遊びましょう
呼び出すのは彼女の騎士と蛇竜
是清の行動を援護、陽動するように動いてヴァンパイアの注意を逸す
終いの合図を確認し、愛用の仕掛け杖から仕込み刀を抜き
ほんの少しの呪詛を含んだ白い骨は、明確な殺意と攻撃力を持って敵を串刺しにする
もうお終い?
随分と味気ない遊びだったわ
伍島・是清
──『遊び』
「愛しいものを亡くすとき、ひとは何れ程嘆くのか。御前は──」
知っているかと問いそうになり、言葉を呑む
吸血鬼は、或いは其れこそも興で
決して届きはしないだろうから
往くぞ、四辻路(f01660
あの月を、砕く
人形をけしかけ幾度も爆破
人形の爆破を敵に意識付けながら
何時か聞いた
人形でもいい生き返らせてくれと、亡骸を抱えた泣き声を想い出す
…そんな人間を、御前は幾人も生んだんだ
人形を敵の眼前に浮かべ
そちらに相手の気を散らせ
自身が死角を取る
四辻路とタイミングを合わせ
──ユーベルコード、プログラムドジェノサイド『絲駒』
自分の周りに弧の鋼糸を幾重も巡らせ高速回転
絲で切り刻む
此れで終いだ
じゃあな、青い月
●
――『遊び』。
「愛しいものを亡くすとき、ひとはどれ程嘆くのか。御前は──」
「知っているか」と、続けようとした言葉を、伍島・是清(骸の主・f00473)は呑みこんで。
傍らに立つ四辻路・よつろ(Corpse Bride・f01660)へ、顔を向けぬまま、言った。
「往くぞ、四辻路。あの月を、砕く」
同意するでなく、首肯するでなく。
女は真剣な顔をした男の背について、軽い足取りでついていく。
「今のエサに興味が尽きたら、次に目を付けるのは眼前をウロチョロしているもう一つのエサ。あの街の住人達はさながら、猫に遊ばれるネズミだった――というわけね」
他の猟兵と攻防を続けていたヴァンパイアが、その声に気づいて。
瞬時にあらわれた30の剣が、青白い月光を照りかえしながら、女めがけ雨のように降りそそぐ。
――ッン! キン!!
鉱石を弾くがごとく、微かな音。
是清の繰りだした人形が全身を貫かれ、糸切れたように倒れていった。
『目障りだよ……!』
次から次へ。
眼前へけしかけられる人形を薙ぎ払うようヴァンパイアが腕を振るえば、再び、きらきらと剣の雨が降る。
「何時か聞いた。人形でもいい生き返らせてくれと、亡骸を抱えた泣き声を想い出す。……そんな人間を、御前は幾人も生んだんだ」
『それが? そんなことが、一体、なんだっていうんだい』
是清の言葉を受け、ヴァンパイアは嗤っていた。
剣風にあおられ、よつろの灰の髪が流れる。
手の内には、白い骨の仕掛け杖。
すらり、抜きはなち。
地を蹴る。
「此れで終いだ、『青い月』」
告げた是清が、ユーベルコード『絲駒』を発動。
己の周囲に弧の鋼絲を張り巡らせ、高速回転と同時に、幾重にも斬り刻む。
オブリビオンがその攻撃を受けきった時には。
よつろは、彼の間合いに迫っている。
「こんばんは、ドクター。一緒に遊びましょう」
唇に、うすい笑み。
ほんの少しの呪詛を含んだ白い骨は、明確な殺意と攻撃力をもって、ヴァンパイアの身体を刺し貫いた。
刀身に紅い筋を描き、ぽたり、赤黒い体液が地面にしたたり落ちる。
ぐいと、刃をねじこんで。
蹴りとともに勢いよく抜きはなてば、
『ぐぁ……っ!』
血を吐き、膝をついた男へ。
よつろは紫の眼をよこし、言い捨てた。
「もうお終い? 随分と味気ない遊びだったわ」
しかし、ヴァンパイアはくつくつと嗤いながら、再び立ちあがる。
『これで終わり? まさか。まだ、始まったばかりだよ』
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルバ・アルフライラ
ああ、まさに人が変わったな
…よもや『人』ですらないとは恐れ入ったが
等と感情を乗せぬ声を舌に乗せて
仕込み杖で描く魔方陣
後方より<高速詠唱>で召喚する【死霊騎士】と【死霊蛇竜】
<全力魔法>に体が耐え切れず罅が走ろうが詠唱は止めぬ
――死霊共、見事『青ざめた月』を狩ってみせるが良い
騎士には我が護衛を、蛇竜には前線にて吸血鬼と戦わせる
他の猟犬の隙を補う様に、又は作られた隙を狙う様に
叶うならば<2回攻撃>で攻撃を重ねていく
敵の行動は常に注視
誓約書であろうが刀剣であろうが、向けられたものは払い落とす
集る蝙蝠は騎士に<範囲攻撃>で払わせよう
一匹たりとも逃しはせん
忌々しい『過去』より出でた亡者め、鏖にしてくれる
コーディリア・アレキサンダ
とてもいい趣味、とはとても言えないね
「その『遊び』が終わりなら、ボクたちと遊んでいきなよ。なにをして? そうだね――」
「――ボクたちと、キミとで鬼ごっこはどうだろう。鬼はボクたちが務めるよ。猟犬らしく、ね」
『喰らい、侵すもの』を起動
悪魔――翼を持った猟犬『バーゲスト』をヴァンパイアに向かってけしかけよう
これだけのことをやった相手だ、ボクの敵意も十分だよ
ヴァンパイアが何か――影の蝙蝠を出してくるのならそれに敵視を向けよう
見えなくても、何かいるとわかれば敵意を持てるからね
ボクの猟犬なら発見の困難な相手でも知覚、迎撃が可能なはず
「気を付けなよ。ボクはともかく、バーゲストは加減が出来ない」
●
「そうさ。もっと、ボクたちと遊んでいきなよ。なにをして? そうだね――」
コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)は赤い瞳を向け、斬りかかって来たヴァンパイアの剣を、魔力障壁で受け流す。
「――ボクたちと、キミとで鬼ごっこはどうだろう。鬼はボクたちが務めるよ。猟犬らしく、ね」
ヴァンパイアがコーディリアに狙い定めるのと、コーディリアがヴァンパイアに殺意を向けるのは、同時だった。
姿の見えない敵が召喚され、迫る。
しかし。
――見えずとも。『何かがいる』とわかりさえすれば、敵意を向けることはできる。
「気を付けなよ。ボクはともかく、『バーゲスト』は加減ができない」
次の瞬間には、高速詠唱を完了。
権能選択、限定状態での顕現――承諾確認。
「我身に宿る悪魔、空を駆ける魔犬――喰い殺しなさい」
コーディリアの眼前からとつじょ魔犬が出現したかと思えば、羽ばたき駆ける勢いそのまま、主の背後めがけ牙を剥く。
強靭なあぎとで空を喰いちぎれば、ギィギィと断末魔が響き、眷属の気配が霧散する。
『チッ。次から次へと……!』
ヴァンパイアは続けざまに、30の剣を召喚。
この時には、魔法陣を描いたアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の高速詠唱も、完了している。
「――死霊共、見事『青ざめた月』を狩ってみせるが良い」
襲いかかる【死霊蛇竜】の攻撃は、しかし容易く回避されてしまう。
二度めの喰らいつきが通るものの、敵もさるもの。
時おり牽制するよう飛来する剣は、護衛代わりの【死霊騎士】が、逐一撃ち払っていく。
「ああ、まさに人が変わったな。……よもや『人』ですらないとは恐れ入ったが」
つぶやく声に、感情の色はない。
全力魔法の負荷に、パキンと、ひび割れる音。
それでも蛇竜をけしかける青眼には、一歩も退かぬ気迫がこもる。
――己が身など、いくらでも繋ぎ直せば良い。
アルバは仕込み杖を持つ薔薇の指先に、力をこめる。
「一匹たりとも逃しはせん。忌々しい『過去』より出でた亡者め、鏖にしてくれる」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
西院鬼・織久
【WIZ】
【心情】
肉もなく血も流さない骸ではやはり少々物足りません
斬り裂くにしても焼き尽くしにしても
あなたは我等が怨念の良い糧になりそうです
【行動】
ユーベルコード:殺意の炎
技能:範囲攻撃、なぎ払い、二回攻撃
主な装備:黒衣、闇焔、闇器
敵が味方の攻撃で怯んでいる所を強襲
敵とその周辺に対して「殺意の炎」で焼き払う
焼け残った敵には「範囲攻撃」と「なぎ払い」
蝙蝠複数体と敵をまとめて攻撃できるよう狙う
上記の攻撃で敵を削り、生き残った対象に追い打ちで「二回攻撃」
須藤・莉亜
「さて、もう飲み頃かな?」
自分の大鎌を複製して放つユーベルコードで仕掛けようかな。
18本に増えた大鎌で、敵さんの手足を切り刻む。【範囲攻撃】【2回攻撃】で敵の全方位から大鎌の斬撃をくらわしてやろう。
動きが止められたら、吸血チャンスかな。多少の攻撃は無視して血を吸わせてもらおう。
「うん、前の豚よりはマシだね。70点をあげるよ」
でも、もういいかな。さようなら。
フラウロス・ハウレス
くくっ、つまらぬ遊びをしているじゃないか、吸血鬼。
富める民を脅し、貧しき病める民を捧げさせその血を啜るとは考えたものだ。
ふん、貴様は支配者たる器ではない。つまらぬ悪党だ。
我が崇高なる反逆の牙に掛ける価値もない。ただの獲物として殺してやろうぞ!!
何だ、何を憤っておる。
自らの矜持が傷つけられたとでも?
貴様は労せず血を得る手段を模索した。圧倒的な力を誇示して支配する事なく。
そのような、反逆を恐れ自らの身の安全を優先した腑抜けのどこに支配者たる器があろうか!身の程を知るが良い!!
この地に住まう者たちのためにも、この館ごと貴様を潰してやる。
覚悟せよ、吸血鬼!妾はフラウレス・ハウロス、吸血鬼を狩る者だ!!
●
入れ替わり立ちかわり攻撃を仕掛ける猟兵たちに翻弄され、ヴァンパイアの動きに陰りが見えはじめたころ。
「くくっ、つまらぬ遊びをしているじゃないか、吸血鬼。富める民を脅し、貧しき病める民を捧げさせ、その血を啜るとは考えたものだ」
若干7歳にして戦場に立つフラウロス・ハウレス(リベリオンブラッド・f08151)は、眼光鋭い赤の瞳をぎらつかせ、ためらうことなく己の刻印に血を捧げる。
『うるさいガキは嫌いだよ』
それまで顕著に感情を露わにすることのなかったヴァンパイアが、その時はじめて、嫌悪を浮かべた。
対するフラウロスも、ヴァンパイア社会の体制に反逆することを運命付けられて生まれた少女だ。
「ふん! 貴様は支配者たる器ではない。つまらぬ悪党だ。我が崇高なる反逆の牙に掛ける価値もない!」
その本性は、幼いながらも獰猛。
眼前の敵を屠殺するためなら、微塵の躊躇いも浮かべない。
「――妾の一撃、耐えられるものなら耐えて見せよ!」
ユーベルコードによる、重たくも単純な一撃。
しかし、拳は大地を抉るばかりで、ヴァンパイアには届かなかった。
(「――肉もなく血も流さない骸では、やはり少々物足りません」)
フラウロスの攻撃を避けたヴァンパイアの動きは、西院鬼・織久(ダンピールの黒騎士・f10350)が捉えている。
死角に回りこみ、一足飛びに間合いへ。
「斬り裂くにしても、焼き尽くしにしても。あなたは、良い糧になりそうです」
血色の炎まとう漆黒の大鎌『闇焔』を振りかぶれば、殺意と狂気により爛々と光る赤い瞳が、きらと光って。
「我等が怨念、尽きる事なし」
胸中渦巻く狂気は黒い炎と化し、ヴァンパイアめがけほとばしる。
一度目の炎は翼の端を焼いたが、もう一方はかわされ、敵の勢いを落とすには至らない。
『ああ、嫌だ嫌だ。なりそこないばかりがよってたかって』
挑みかかる猟兵たちと、同じ色の肌。
ととのった顔だち。
すらと伸びた指先が、月をしめして。
『――汚らわしい』
青白く光る30の剣が、猟兵たちに降りそそぐ。
「さて、もう飲み頃かな?」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)がとっさに己の大鎌を複製させ、全方位から仕掛けたが、全てを抑えるには力及ばず傷を受けた。
それでも、敵方にもかすかに傷を与えることはできたらしい。
愛用の大鎌を通じ口のなかにひろがる血の味に、ヴァンパイアを見やって。
「うん、前の豚よりはマシだね。70点をあげるよ」
――喰らいつきたいのは、首筋。
しかしうまく動きを止めない限り、そこへ至るのは難しい。
「何だ、何を憤っておる。自らの矜持が傷つけられたとでも?」
流れた己の血を魔術装置に捧げ、フラウロスはひたすらにヴァンパイアを挑発し、攻撃を続けた。
「反逆を恐れ、自らの身の安全を優先した腑抜けめ! この地に住まう者たちのためにも、この館ごと貴様を潰してやる。覚悟せよ、吸血鬼! 妾は――」
『だまれ』
再び大地に拳を打ちつけようとした矢先、ヴァンパイアは血の誓約書を投げつけ、命じた。
そのユーベルコードは、単純であればあるほど力をもつ。
衝撃に撃たれたフラウロスは、名乗りをあげること叶わず。
術が解けるまで、地に伏せるしかなかった。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
コノハ・ライゼ
しっかり、じっくりネ。ならもうひと手間、ってヤツ?
【WIZ】
折角飛び込めたんだ、近い位置保ったまま
敵を包む炎が打ち消されるごとに【月焔】を放って
常に炎をまとわりつかせてあげようじゃナイ
隙見て炎越しに「柘榴」を突き立て『傷口をえぐる』
今度は『2回攻撃』で返す刃もそのまま突き立て『生命力吸収』しとこ
反撃も中々に厄介
誓約書取り出すのが分かったら炎で燃やせないか狙う
剣には分散させた炎を差し向け軌道変えれりゃ
なあに、ちょいとセンセーの真似したまでで
そン時も隙を突かれぬ様『2回攻撃』の姿勢崩さずすぐに攻撃の構えをとる
さあ、そろそろ助けが欲しいかい?
それが叶わぬ絶望はさぞ美味だろうよ、目一杯その身で味わいな
リンネ・ロート
(人格・口調はニノ)
ココさん(f01181)と同行
そういうことだった訳ね、道理で富裕街の人達はココさんと私(正確にはリンネだけど)を相手にしないはずだわ
どっちも許しがたいけどまずはヴァンパイア、アンタからよ!
ココさんがみんなの回復に回ってくれるから、私はそれを護るわ
ココさんとはしっかり声を掛け合う
敵の射程は長くて40Mってとこかしら?
この範囲内にココさんを入れないように立ち回るしかなさそうね
アタシより後ろに下がらせれば大丈夫でしょ
逆にアタシは敵の射程内に入っても下がらないわよ
様子を見て敵が先に動いたら、見切りとオーラ防御を駆使
近付いてサイキックブラストをお見舞いよ
できれば攻撃手の人と連携
ココ・タマーニャ
リンネさん(f00364)もといニノと同行
くーっ……私たちが富裕街に行っても居留守されたのは、あなたの差し金ですね!
脅されてたら冷静な判断なんて出来ないですよ……悔しいっ!
まずはあなたをぶっ倒します!
これ以上、命を失うことも、街の関係が引き裂かれることも、絶対させないんだから!!
他の猟兵さんとも連携します。
ニノが守ってくれるから、私は皆さんの回復。
私のシンフォニックキュアを戦場目一杯に響かせます!
ニノの髪の毛に隠れたり転々とするね。
ふふーん、さあ何処から歌がしてるでしょう?
その間、皆さんっ攻撃のチャンスでーす!
♪この身が壊れど歌う
泣かないあなたの代わりに
……あの女の子、どんな想いだっただろう
●
――傷は負わせても、決定打に欠ける。
そんな状況が続くなか、戦場を舞う剣の攻撃を回避しながら、フェアリーのココ・タマーニャ(玉の音りんりん・f01181)はヴァンパイアに対し憤っていた。
「くーっ……! 私たちが富裕街に行っても居留守されたのは、あなたの差し金だったんですね! 悔しいっ!」
街へやってきた当初の富裕街での仕打ちを思い出し、連携するニノ(多重人格者のサイキッカー・f00364)も同じく声をあげる。
「どおりで富裕街の人達は、ココさんと私――リンネを相手にしなかったはずだわ!」
あの日、2人が家々を回っている間、富裕街の住人たちは、家のなかで息を潜めていた。
ただでさえ得体のしれない旅人の呼びかけ。
その上、ヴァンパイアのもとへ送りこむ病人がいなくなれば、せっかく取りつけた身の安全が保障されるかどうかが、わからなくなってしまう。
――オブリビオンとの取引は、砂上の楼閣のようなもの。
だからこそ、富裕街の住人たちは互いに互いを監視しあい、一切の抜け駆けをゆるさず、ヴァンパイアの言いなりになってきたのだ。
――しかし。もしもあの時、2人が行動を起こさず、富裕街の住人たちの様子に気づかなかったら。
富裕街への疑念は、浮かばなかったかもしれず。
集団戦後に、是清が叫びに戻ることもなかったかもしれず。
吸血鬼の居場所を、突きとめられぬままだったかもしれず。
だからこそ。
悔しい想いはしたけれど。
――こうしてたどり着いた『今』には、ひとつも、悔いはない。
(「ずっと馬車を見送っていたって。……あの女の子、どんな想いだっただろう」)
ココの脳裏に、重たい真実を抱え続けた幼子の顔がよみがえる。
傷を受けながらも、ヴァンパイアを追い詰める仲間たちへ。
小さな手のひらに歌うたいの拡声器をしっかりと握りしめ、ココは胸いっぱいに息を吸いこんで。
「この身が壊れど歌う 泣かないあなたの代わりに――♪」
――わくわくと、心と、声。私の歌声、世界に響け!!
ちいさな妖精の大きな歌声は、戦場いっぱいにひろがっていった。
歌に鼓舞された猟兵たちの傷が、たちどころに消えていく。
「これ以上、命を失うことも、街の関係が引き裂かれることも、絶対させないんだから!! さあ皆さんっ、攻撃のチャンスでーす!」
「ココさんは、そのままみんなの援護を!!」
飛来する剣の追撃を見切ってかわし、ニノは仲間たちの動きを横目に、力強く地を蹴った。
振り向いたヴァンパイアの間合いへ飛びこみ、両掌を前方へ突きだす。
「どっちも許しがたいけど! まずはヴァンパイア、アンタからよ!」
敵が攻撃を避けられない、至近距離。
それはまた、敵の攻撃が己にも届くということ。
しかし。
(「――アタシは絶対に、下がらない!」)
決死の想いで、大地を踏みしめ。
「喰らいなさい!!」
ヴァンパイアの剣先がニノの腹を斬り裂くのと、彼女の手から高圧電流が放出されたのは、同時だった。
『ぐぁあああああああ
!!!!』
感電したヴァンパイアの死角には、ニノがタイミングをあわせ動いた、コノハ・ライゼ(空々・f03130)の姿がある。
「暖めてあげようか」
この街を訪れ、何度どの言葉を繰りかえしただろう。
敵の動きが止まったと同時に、背面から月白の冷たき炎をたきつける。
磨かれた鉱石のナイフに、燃えあがる炎が映る。
それはさながら、ヴァンパイアの剣に移っていた、あの青白い月のようにも見えて。
「しっかり、じっくりネ。ならもうひと手間、ってヤツ?」
一閃、二閃。
返す刃も突きたて傷口を抉り、残る生命力をも奪いとる。
あれこれと反撃の用心もしていたが。
いまだその身をもやし続けるヴァンパイアは、苦悶の声をあげるばかり。
「さあ、そろそろ助けが欲しいかい?」
――どんなに声をあげようにも。環境が許さず、叶わぬ幼子もいた。
理不尽な怒りに怯える、恐怖の表情。
追求せぬと告げた時の、安堵の表情。
それを目の当たりにしたからこそ。
コノハは、いつものようにへらりと笑い、言いはなった。
「それが叶わぬ絶望は、さぞ美味だろうよ。――目一杯。その身で味わいな」
大成功
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有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
「お前を処刑し、全て終わらせる!」
……おっと、少し熱くなってしまいました。
医者を利用したこのヴァンパイアに、憤りを感じているのかも……です。
拷問具を構えて呼吸を整える。
「では、刑を執行します」
相手の攻撃は【絶望の福音】で回避。敵の気を引きつつ反撃に転じる機会をうかがいます。
相手が隙をみせたら、拷問具で反撃。傷口をえぐる攻撃をします。
痛みなく逝かせてあげるのが、良い処刑人なのでしょうけれど、私にはそんな真似できません。
「痛いですか?……すみません、まだ未熟者なので」
住民がうけた痛みを考えたら、きっとこの程度の痛みじゃ足りないはずだ。
バジル・サラザール
街を支配して病気を蔓延させ、すがってきた病気の人たちも騙し、さらには富裕層と貧困層の亀裂も狙っていたのかしら?
お望み通りもう終わりにしてあげる。
真の姿を開放、容赦なしよ。
ウィザードロッド等で応戦しつつ、
「どうして私たちなんかに苦戦すると思う?」
「私たちに勝てると思ってる?」
等と挑発しながら、「謎を喰らう触手の群れ」の発動を狙うわ。
敵の攻撃は「野生の勘」も利用しつつ、回避や防御をしていくわ。
あなたはここで終わりでも、私達はまだまだ街のために色々しなきゃいけないことがあるのよ。
さっさとどいてもらえるかしら。
●
――簡単な問診でも、ありがたいと喜んでいた者たち。
――医者になってくれないかと、猟兵を信じ、頼ってくれた者たち。
街の住人たちの。
そして、戦い繋いできた猟兵たちの想いを受け、有栖川・夏介(寡黙な青年アリス・f06470)とバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は、炎にもだえるヴァンパイアと対峙する。
『くそ、骸は……! 使える骸はどこだ……!』
本物の医者をはじめ、ヴァンパイアが手に掛けた病人はどれほど居たのだろう。
草原を歩いていた骸の数は、10や20では片付かない。
しかしそれも、猟兵たちが手を尽くし、すべて、土へ還した後だ。
――使える眷属はいない。
――助けもこない。
その状況をようやく理解した上で。
焼けただれた顔を押さえ、呻きながら、ヴァンパイアは言った。
『わかった、取引をしよう。屋敷から去る。この土地も手放す。二度と支配しない』
普段は人形のように表情の乏しい夏介の頬が、ぴくりと痙攣する。
(「――こんな。こんな無様な男が、医者を騙るなど」)
鮮血を思わせる真っ赤な瞳が見開かれ、ヴァンパイアを捉えて、離さない。
『言っただろう! もうこの遊びは、終わりにするところだった――』
「お前を処刑し、全て終わらせる!」
――道具に捧ぐ血は、十分に。
感情のまま拷問具で殴り掛かり、「おっと」と呼吸を整える。
「私としたことが。少し、熱くなってしまいました」
『この……!』
今は、白炎に燃える我が身を映す、30の剣。
しかし、オブリビオンが苦しまぎれに撃ちはなった剣は、夏介にはかすりもしなかった。
――なにしろ彼には、10秒先の剣の軌道が視えている。
それはユーベルコードの名にふさわしく、ヴァンパイアにとっては『絶望の福音』のように感じられて。
「あなたはここで終わりでも、私達はまだまだ、街のためにしなきゃいけないことがあるのよ。さっさとどいてもらえるかしら」
バジルは飛来する剣をウィザードロッドで弾き飛ばし、真の姿を解放しながら、静かに問うた。
「どうして、私たちなんかに苦戦すると思う?」
――ず、ぞ。
召喚したモノが、足元で蠢く。
強化された身で野生の勘を働かせれば、苦境に立たされたヴァンパイアの攻撃など手に取るよう。
立て続けにはなたれた剣を、ロッドのひと振りで打ちはらう。
「私たちに、勝てると思ってる?」
この状況下で問いかけるその言葉の、なんと重いことか。
それが、敵のユーベルコードであると理解していたとしても。
ヴァンパイアは、もはや己の状況に疑問を抱かずにはいられなくなっていた。
――ず、ぞぞ、ぞ。
這い出したソレらが、一斉にヴァンパイアを、視る。
『くそっ! くそおっ! なんで……! なんでこんなことに!!!』
瞬間、蠢いていた紫のかたまりが弾け、幾つもの触手が伸びヴァンパイアに絡みついた。
謎を好物とする彼らも、ヴァンパイアの味はお気に召したらしい。
触手によって包みこまれるように拘束されたヴァンパイアを見やり、バジルは言った。
「お望み通り、もう終わりにしてあげる」
視線を向けた先には、薄緑の髪の青年が立つ。
彼が手にするのは、罪深きヴァンパイアにあつらえ向きの、処刑道具だ。
紫の触手が、名残惜しそうにオブリビオンを刑具に据えて。
夏介はこれまで何度もそうしてきたように、淡々と、言った。
「では、刑を執行します」
拷問器具にかければ、聞くに堪えない絶叫が続く。
「……痛いですか? すみません、まだ未熟者なので」
仕事をする時は、私情を捨てる。
それでも。
――医者を利用したこのヴァンパイアには、憤りを感じているのかも、しれない。
「痛みなく逝かせてあげるのが、良い処刑人なのでしょうけれど。私には、そんな真似できません」
住民がうけた痛みを考えたら。
きっと、この程度の痛みでは足りないはずなのだから――。
●
すべての元凶となっていたヴァンパイアを討伐したという知らせを受け、貧民街、富裕街の別なく、街全体が喜びに沸きたった。
もともと医者の屋敷があった場所には、住人と猟兵たちの手によって、医者と犠牲者たちの墓が設けられた。
棺のなかは、どれもからっぽだったが。
住人たちの持ち寄る花で、墓地周辺は、すぐに賑やかになった。
夜の続く世界では、ほのかに灯るようなささやかな花しか供えることはできないけれど。
いつか『朝』が戻れば、森近くのここは緑と花に囲まれ寂しくはないだろうと、街人たちは笑っていた。
ココとリンネはあらためて富裕街を訪れ、今度こそ懇切丁寧に、公衆衛生指導を行った。
バジル、よつろ、そして夏介の3人は、街を去る直前まで、街の住人たちの看護に手を尽くして。
コノハは件の少女と街のこどもたちと再会し、栄養満点のあたたかい食卓を囲んだ。
ヴァンパイアが消え去ったところで、すぐに病が沈静化するわけではないけれど。
圧政のない時間が続けば、住人間の問題も、住環境も、しだいに改善されていくだろう。
オブリビオンは、骸の海に捨てられた『過去』が、世界に染みだした存在。
『現在』が過ぎゆくかぎり、骸の海には新しい『過去』がうまれ続ける。
いずれこの街にも、新たな『過去』が染み出すのかもしれない。
しかし、叶うならば。
一日も長くこの平穏が続きますようにと、猟兵たちは願い、街を後にした。
夜闇にうかぶ、青白い月は。
今も、世界をひとしく、照らし続けている――。
大成功
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