これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
●戦意のざわめき
ここは人類砦ヤルグムレシュ。
最も大きな館の大広間にて、指導者ルグナルは集まった住人達に向けて、高らかに演説していた。
「我々は機会を勝ち取った。
何の機会をか? 勝利のために戦う機会をだ。
ついこの間まで我々は、戦う資格すら持たなかった。
吸血鬼どもにいいようにされていた。
だが今は違う。我々は今や『闇の救済者(ダークセイヴァー)』となった。
奴らに一矢報いる時が来たのだ!」
演説を聞き、戦士カーレは心を震い立たせていた。
その手には剣が、古くなり刃こぼれしたが、まだ切れ味は失ってはいない剣が握りしめられている。
家には妻と、新しく生まれてくる子供が胎内にいる。
主体的に生きる権利を、人間の手に。
剣を掲げ、叫び続ける。
●顔をしかめたグリモア猟兵
「まずい状況だ」
アノルルイ・ブラエニオンは低い声で言った。
「ダークセイヴァーでは今人類の反抗が盛んになっている。
今やかれらは強くなった。戦っても簡単には負けはしない……。
ただの吸血鬼が相手ならな」
第五の貴族。
アノルルイはそれだけ言った。
「猟兵の助けがいる。わかるな」
アノルルイの鋭い目が猟兵達を見る。
そして今回の作戦について説明を始めた。
「まずは大規模戦闘から始まる。
ヤルグムレシュ砦を始めとした『闇の救済者』の軍は砦から出撃し、西にある領主の館へと進軍する。
その途中にある月哮獣の野にて、迎え撃つ領主の軍勢と衝突する。
君達は開戦する前に合流しろ。主に相手どる敵は人狼の兵士となるだろう。咆哮で敵を蹴散らし、月光で強化される。
その戦いを終えたら領主の館に迎え。
そして領主を討て。
ここまでは良い。
それが終わったら第五の貴族から差し向けられた刺客を迎え撃て。
そいつは「殺戮者の紋章」を授けられ、人族鏖(じんぞくみなごろし)の指令を受けている。
しくじれば住民は全滅する」
言葉はそこで切られた。
デイヴィッド
このシナリオはサポート優先です。
自分のペースでゆっくりやって行きます。
第1章 集団戦
『狂化人狼兵』
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POW : 群狼死重奏
【集団で一斉に人狼咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 群狼狂爪牙
自身の【狂気に身を委ねた兵達が魔獣化し、天に月】が輝く間、【魔獣化した人狼達全員】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 群狼月光陣
【月の光】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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ここ月哮獣の野は獣の狩場として知られ、時折野獣の咆哮が聞こえる危険な場所だ。人狼の狩場でもあり、人間が一歩踏み入ろうものなら死を覚悟せねばならない。そんな場所であっても、軍を動かして領主の館へと攻め入ろうと思えばここを通るしかなかった。
静寂の中に、いくつもの狼の遠吠えが聞こえては消える。
今日はそれが特に多い。
何故なら、闇の救済者を迎え撃つ領主の軍勢の中には、獲物を求め猛り狂う人狼が多く含まれているからだ。
心せよ。死が、ここの掟だ。
リーリア・ブラッドスノー(サポート)
強化人間のアリスナイト×バロックメイカーの少女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、後輩の前では「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードはイマワシキキオクを使用し、怪我は厭わず積極的に行動します。
依頼成功の為には己の身体も道具にします。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
負傷描写は重め、多めな傾向が好み、NGは無いので瀕死や内臓がはみ出すくらいグロテスクな描写を好みます。
遠慮なくぶちまけてください。
ほかはお任せ。
よろしくお願いいたします。
闇の救済者と領主の軍、双方が向かい合い、合戦は始まった。
戦士達は強い獣の臭いを嗅いだ。月光を浴びた領主軍の兵が、狼へと変わっていくのを見た。
「ガウッ! ウガアアアアッ!」
人狼の兵士達は、野獣の咆哮をあげ人間達に襲いかかろうとする。
「防御陣形をとれ!」
これに対し闇の救済者の兵士達は、長槍を向けて密集形態をとり、近づけまいとする。
かれらの相手は極力避ける。
相手をするのは──猟兵だ。
故に。
リーリア・ブラッドスノー(うつろなる幻想・f27329)は銀の髪をなびかせ人狼兵の前に出た。
その手に光るのは解剖用のメスだ。
リーリアは無造作に、それを掲げる。
「ガアアアアアッ!」
人狼兵達はすぐにリーリアを獲物と判じ、猛り吠えて襲いかかった。
リーリアはこれに対し動かなかった。人狼達はリーリアの腕に、脚に、首に食らいつき、力任せに四肢を食い千切った。
鮮血の中に倒れたリーリア。人狼達はその腸を咥えて引摺り出す。
「嘘だろ、一瞬で……」
リーリアの有り様を見た闇の救済者の戦士達の間に戦慄が走る。
どう見ても死んでいた。
今や彼女は、獣に食い散らかされる肉塊にすぎない。
だが、次の瞬間。
糸の切れた操り人形のように、人狼達はその場に倒れ伏した。
リーリアに食らいついていた人狼全てが、である。
「何が……起こったんだ……」
「ぼうっとするな! 彼女を取り返して、敵に火を放つんだ!」
戦士達によって火矢が放たれ、人狼の兵は瞬く間に炎に包まれる。
まるで抵抗せずに、焼かれていった。
それは、彼女の忌まわしき記憶。
リーリアはかつて実験体として扱われ、数えきれないほどに生体解剖されていた。
彼女のユーベルコードは解剖用メスを見せる行為がトリガーとなり、自身の生体解剖をされた記憶を対象に追体験させ、麻酔無しで解剖される幻痛、幻覚を感じる事により対象の動きを一時的に封じるものだった。
生体解剖疑似体験と呼ばれている──又は、忌まわしき記憶と。
果たして、人狼兵達も実は実験の産物であった。
戦闘用に強化改造された者達であり、実験中の使い捨て部隊という側面が強い。
死を恐れず戦う反面、生への執着が全くなく、故に、強烈な死のイメージを植え付けられれば、それを疑わず受け入れる。
月光の元では強力な再生力を持つが、動きを完全に封じられた上で、全身を焼き尽くされれば死ぬ以外無かった。
(死を恐れぬのなら、死ぬがいい)
リーリアは思った。
四肢をもがれ、腸を引摺り出されても、
死なぬ体にされたが故に。
(それで救われることは、幸せなことなのだから)
成功
🔵🔵🔴
河崎・統治(サポート)
絡み、アドリブ歓迎
戦闘前にイグニッションカードから装備を展開し装着。
味方と連携しつつ周囲を警戒、索敵して進む。暗所では暗視ゴーグルを使用する。
敵と遭遇したらアサルトウェポン、21式複合兵装ユニット2型で攻撃しつつ接近し、白兵戦の間合いまで接近した所で武器を水月に持ち替えて攻撃する。
使用UCは状況に合わせて変更。
人狼の脚ははるかに人間のそれより速く、躊躇しない。
被害も考えずに突っ込んでくる。
対する闇の救済者の戦士達は、長槍を突き出して防御の姿勢をとるが、何せ敵は突き刺さるのも構わずに突っ込んでくるのだ。
その身に槍の穂先が突き刺さるのも構わず、その姿勢のまま、人狼の一人が大きく息を吸い込む。
「いかん! 逃げろ!」
誰かが叫んだ。
人狼の咆哮は、凄まじい衝撃波を放つ。
それが何体も同時に突っ込んできて、咆哮しようとしている。
同時多発の大規模破壊が起ころうと──
その時、飛来してきた何かが人狼の一体に直撃し破裂した。
別の個体は頭部で何かが炸裂し、また別の個体は収束した光の束に焼かれた。
結果、人狼の決死の攻撃は不発に終わった。
「お前達の相手は、俺だ──」
戦いに臨む男の姿がそこにはあった。
ミサイル、アサルトキャノン、レーザー──複数の火器を用いて人狼の攻撃を阻止したのは、河崎・統治(帰って来た能力者・f03854)。
人狼達は先に排除すべき驚異と判断したのか、統治へと向かう。
(三体、か)
一度に相手取れない数ではない。
統治はアサルトキャノン・レールガン×2・8連ミサイル×2・連装レーザー砲×2・アームガトリングを一斉発射し弾幕を張る。
うち一体は頭部を撃ち抜かれてその場に倒れ、一体はレーザーで脚を切断されて動きを止めた。しかし一体だけは止まらず、統治へと迫る。
至近距離までは踏み込まない。
咆哮の範囲内だ。
統治は火器を操作する手を止め、駆けた。
人狼が息を吸い込む。
統治の──
その手には、水月。
鞘から抜き放たれた刃は、一瞬にして、凄まじい閃光と熱を放つ。
フェニックス・スラッシュ。
それは不死鳥の力を乗せた斬撃を放つユーベルコード。
人狼の一体は光に飲まれるように消え失せ、そこに立っているのは統治だけだ。
この太陽のなき世界に、太陽のごとき者。
「なんて美しいんだ……」
ほんのわずかの間、この世界の住人達は見蕩れた。
そして、奮い立った。
あの『熱く美しいもの』が味方なのだと知って。
成功
🔵🔵🔴
アトシュ・スカーレット(サポート)
性格
悪ガキから少し成長したが、やっぱり戦うのは好き
大人になろうと背伸びしてる途中
目の前で助けられる人がいるなら積極的に救おうとする
口調は「〜だな。」など男性的
最近の悩みは性別を間違えられることと年相応に見えないこと
最悪【幻想憑依・無想式】を使って誤魔化す
戦闘
【呪詛(腐敗)】を何かしらの形で使用する。昔機械相手にやって痛い目を見たのでその場合は使わない
前衛も後衛もやれる万能型だが、前衛の方が好き
複数の武器を同時に操ることも可能
高速戦闘も力任せの戦闘も状況に応じて使い分ける
(装備していれば)キャバリアにも対応可
非戦闘
聞き耳などを駆使した情報収集を中心とする
化術で動物に化けて偵察することも
「ガアアアアッ!」
吠え声をあげて、三体の人狼兵が闇の救済者の戦士達に迫る。
その脚力は人間の比ではない。疾風のごとく距離を詰めてくる。
だが、人狼兵が戦士達に襲いかかるよりも早く、迫るものがあった。
風を切るいくつもの音。
無数の剣が、幾何学模様を描いて飛来し、複数の角度から人狼達の身に突き刺さった。
恐るべきはその数、1200本。
三体の人狼は瞬く間に針のむしろとなる。
……だが、倒れない。
人狼達は月光を浴びることにより、傷を治療することができる。
たとえ刃物に全身を貫かれようと、致命傷でない限りは死ぬことはない。
そして、この者達は痛みで止まることはないのだ。
「止めとけ。苦しむ時間が増えるだけだ」
だというのに、アトシュ・スカーレット(境界の旅人・f00811)が現れて言った。
先程放たれた剣は彼のユーベルコード、展開術・剣聖式(ベラーゲルング・エスパーダ)によるものだ。
「って言っても、聞きやしねえか」
彼がこう言うのには理由がある。展開術・剣聖式によって発された刃はただの剣ではなく、腐敗の呪詛が込められた魔剣であるからだ。
現に再生力が発動しているにも関わらず、人狼達の肉体は呪詛に脅かされ、通常ほど速やかではないにしてもその肉体は破滅へと歩みを進めている。
「グルル……ガアッ!」
三体の人狼達はアトシュに向き直り、吠えた。
四肢を蝕む呪詛によりぎくしゃくした動きではあったが、それでも牙をむきアトシュに襲いかかっていく。
「いいぜ、そう来なくちゃ面白くねぇ」
アトシュは少女のような顔に獰猛な笑みを浮かべ、魔剣Tyrfingを構える。
それもまた、呪詛を纏いし魔剣だった。
「斬り合いってのはいいよなあ!!!」
襲いかかる三体の人狼にアトシュは真っ向から向かい合う。
吠え声が僅かの距離まで迫る。
次の瞬間──
魔剣が一体の首を跳ねた。
続けざまに、次の一体の胴を払う。
最後の一体の胸を貫く。
背後で2つ倒れる音がして、剣を抜くと最後の一体も地に伏した。
いずれも、ほどなくして跡形もなく朽ち果てる運命にある。
死が、ここの掟だった。
「さあ、次に行くぜ」
振り返らない。背後に敵の気配はなかった。
得るべき勝利のために、魔剣の担い手は駆ける。
成功
🔵🔵🔴
コーデリア・リンネル(サポート)
アリス適合者の国民的スタア×アームドヒーローの女の子です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
内気な性格のため、三点リーダーや読点多めの口調になります。
ですが人と話すのが嫌いでは無いため、
様々な登場人物とのアドリブ会話も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
人狼兵が荒野を駆ける。
闇の救済者の軍勢に対して複数方面から単独で駆け、同時に咆哮をあげることにより集団に被害を与えようというのだ。
その咆哮は恐るべき衝撃波を放つ。闇の救済者にとっては脅威であった。
展開した部隊の横に位置どった人狼が、今まさに咆哮をあげんとする。
だが、その瞬間、光に飲まれて消えた。
それは人の作りし叡知の光。闇を切り裂く刃。
致死量の光と熱が歪められた生命を焼き尽くした。
(……この戦いの、勝利は……)
コーデリア・リンネル(月光の騎士・f22496)は思う。その手には光学兵器『フォトンサイクロン』が握られている。
(この世界の人達が笑い合う明日に、きっと繋がります……!)
だから、少女は戦う。
迷いはない。
闇の救済者の部隊から見て右後方に位置取っていた。
この位置から、攻撃に移ろうとする敵を狙い撃つ。
先程の人狼の攻撃は、コーデリアの攻撃の他に、闇の救済者達の機転により回避され、或いは他の猟兵の攻撃により、被害は最低限に抑えられていた。
だが気を抜くことはできない。
一体でも逃がせば、少なくない被害が出る。
猟兵ではない、それでも懸命に戦おうとする、名も無き戦士達に。
(大丈夫……そのための……)
重武装モード。
ユーベルコード『ヘビーアームド・ウェポナイズ』により高火力・長射程となったフォトンサイクロンは、人狼が咆哮の射程に戦士達を収めるよりも早く、その光で焼き尽くす。
(だから、私は戦える……!)
光が迸り、人狼を貫く。
緋色の煌めきと焦げた臭いを残して、コーデリアはまた一体の人狼を焼き払った。
その光は、この闇に包まれた世界に、人々の未来を照らし出す希望となるのかもしれない。
成功
🔵🔵🔴
ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
かつてオブリビオンに滅ぼされた都市で自分一人だけ生き残ってしまった過去を悔いており、人々を守り、被害を防止することを重視して行動します。
●戦闘において
「露払いは私が努めよう」
(敵に)「貴様らの技で、私が倒せるのか……試してみるがいい」
・牽制攻撃
・敵の攻撃から他の猟兵や一般人を守る
・敵の攻撃を回避してカウンター
・ついでに敵の強さを解説する
など、防御的・補助的な行動を得意とします。
メイン武器は「黒剣」です。
他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。
大倉・新月(サポート)
アドリブ・連携歓迎
キャラ解釈幅広くどうぞ!
噛ませ展開も歓迎です
スカルロードの満月(ミヅキ)ちゃんを溺愛しています
新月→満月の一方的なヤンデレですが連携はきちっとこなしていきます
主に脳筋な行動で何とかしますが、知ってそうなことは出し惜しみしないタイプです
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動や性的な絡みはしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
月哮獣の野における、闇の救済者と領主軍による戦いは、闇の救済者有利で進んでいた。
今や領主軍は戦力の七割を失い、通常の戦であれば降伏も考えてしかるべき状態にあった。
だが領主軍の要となる戦力である人狼兵は狂戦士である。
死を恐れず、殺すことを止めない。
領主軍の部隊は一丸となり、最後の攻撃に出ようとしていた。
闇の救済者で最も高い戦力を持つ部隊の前方に人狼兵が集まっていく。
狂っているように見えても知能がないわけでなく──殺すことにかけてに限るが──効率のよい方法を選ぶ。
人狼達は二列となり、そのうち前列は姿を変えた。
人の特徴を残していた人狼兵達だったが、獣じみた吠え声とともに、その身を完全な獣へと変じた。
それは巨大な狼だ。
そして、その後方に控えた人狼達は、狼と化した仲間を盾として、仲間もろとも咆哮による衝撃波で敵陣を吹き飛ばす試みに出る。
自軍への被害を考えず、最も多くの敵を倒す手段。それは人狼兵達の生き様そのものだった。
それは勝利を覆せぬまでも、闇の救済者に多大な被害を与える一撃となる。
この後領主の館を攻める戦いが控えている。
ここで被害を受け、次の勝利に繋げられなければ、結局無意味に終わるしかない。
だが、その時、人狼達の間を黒い影が駆け抜けた。
尋常でないスピードで魔獣化した人狼達とすれ違い、咆哮をあげようとする人狼達の前に現れる。
かと思うと、目にも止まらぬ速さで人狼達は長く柔軟な刃で凪ぎ払われた。
これによって、咆哮は止まる。
果たして、そこには。
闇が凝り固まったかのような、黒き甲冑。
ギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)の姿があった。
その手には黒剣『漆影剣リグガガ』が握られ、
それはユーベルコード『黒刃鞭(ブラック・ブレイド・ウィップ)』により鞭剣の形状となり、複数の人狼達を一度に斬り裂いた。
「強化改造実験の産物として生まれた人狼兵か……出自を見れば同情しないでもないが……。
貴様らの好きにはさせん」
甲冑を鳴らして、黒き騎士は人狼達に殺気を向ける。
それに呼応するように人狼達は唸り、牙をむく。
地面を蹴り、飛びかかろうとした瞬間、黒い旋風が吹き荒れた。
鞭剣と化したリグガガはギャレットの意のままに襲いかかる人狼を蹴散らす。
喰らった人狼達は吹き飛ぶが、一体だけが左腕に牙を突き立てた。
「やるな……だがその程度では」
だが、頑丈な籠手に阻まれ、皮膚に至ることはない。
「勝利をくれてやるわけにはいかん!」
腹に膝蹴り。
何発かくれてやり、地面に叩きつけると、もう動かなかった。
「さあ……次に倒されたい奴からかかってくるがいい」
ギャレットは再び構え直す。まだなお戦う力を残した人狼達が彼を囲んでいた。
一方、魔獣化した人狼達が闇の救済者の部隊へと迫っていた。
相貌に焔を燃やし、暴力的な四肢が地を蹴る。
瞬く間に殺戮をもたらすものだ。
だが、そうはならなかった。
こちらにも突如として黒い影が現れた。
黒衣を纏った骸骨だった。
それはさながら瞬間移動をしているかのように魔獣達の前に現れ、大鎌を振るい、柄で魔獣どもを殴り飛ばし、押さえつけ、その進行を止める。
「ミヅキちゃん、ミヅキちゃん、はぁ……❤️」
闇の救済者の部隊の中で恍惚とした声を出す、大倉・新月(トータルエクリプス・f35688)。
「ミヅキちゃん、いいわ……素敵……ミヅキちゃんの格好いい所を見るためなら人間なんて何度でも助けちゃうわ……誰も困らないしいいわよね……?」
彼女は恍惚としていた。さっきから語りかけているのは彼女の使役するスカルロード・満月(ミヅキ)。
魔獣と化した人狼を止めている、黒衣の骸骨がそれだ。
「あは……此方は彼方……彼方は此方……」
恍惚とした声で新月は詠唱を紡ぐ。
「鏡に映して遊びましょ……?」
新月の詠唱が完成すると、満月の体は変異を始めた。
身体が大きく膨れ上がり、骨の体は剛毛に覆われ、口は広がり鋭い牙が並び……それは巨大な狼だった。
満月の目の前の人狼と同じように。
これこそは新月のユーベルコード『欠片に宿る鏡面世界』。その効果は、満月が受け止めた敵のユーベルコードをコピーし、使用するというもの。
「素敵ッ! ワイルド! ミヅキちゃん抱いてッ!」
新月は満月の変異を見届けて黄色い声を出す。ちなみに二人の関係は姉妹である。
さておき、巨大な狼と化した満月は同じく狼達に襲いかかった。
姿は同じでも強さは人狼兵と同じとはならない。満月の実力に魔獣化のユーベルコードの効果が発現し、満月の実力を強化している。
その攻撃速度は通常の9倍。
瞬く間に、爪は肉を裂き、顎は喉を噛み砕く。
「ミヅキちゃん……あは……❤️……ミヅキちゃん……!」
新月は昂っていた。自らも満月を援護すべく、呪殺弾を発射する。
やがて、闇の救済者へと向かう人狼は無力化された。
「今だ、同胞達よ!」
ギャレットが高らかに叫んだ。
彼もまた、周囲の人狼をほぼ無力化し終えていた。
「歩みを止めるな!
敵がいなくなるまで、攻め続けるのだ!」
その声に応え、闇の救済者たる戦士達は歓声をあげた。
「…………」
満月は周りの敵を打ち倒すと、何も言わずに残りの敵へ求め獣の双眸を巡らせた。
「狼の姿をしていてもミヅキちゃんなのね……だから唸り声は出さない……そこが……たまらなくクール……! うふふふ……」
新月は闇の救済者とともに歩みを進める。「この人はここで何をしてるんだ」と周りから声がしたが、まるで気にした様子はない。
闇の救済者は一気に勢いを増して敵陣へと攻め込んだ。
領主軍にはその勢いを止めるだけの力はなく、やがて闇の救済者は勝ち鬨をあげた。
ここに、月哮獣の野における戦いは闇の救済者と猟兵達の勝利で終わりを迎えた。
この荒野における死の掟も、もはやかれらを縛ることはない。
かれらは進軍する。目指すは、領主の館だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『黒茨の魔嬢『メローゼ・トロイメツァライ』』
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POW : おなか、へった
全身を【黒茨の咎の牢獄】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : ……ねむい
【夢幻の眠りを齎す蝶の残滓】【幻惑し迷いを齎す蝶の亡骸】【焼け焦げた黒茨の咎鞭】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 大輪の薔薇にて紅く染めテ
自身の装備武器を無数の【伝染する呪詛の込められた薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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憂鬱に満たされた場所だった。
大きな館だ。壁や柱には凝った装飾が施され、そこかしこに格調高い調度品が設置されている。
だが活気だけはなかった。
この館は朽ち果てることもなく、死んでいた。
そんな館の中にある一つの部屋では、天蓋付きのベッドで幼い少女が眠っていた。
ドアが遠慮がちにノックされる。反応はない。
次にもう少し強い音でノックされる。呼び掛けも同時にされた。
「領主様。緊急のお知らせです」
何度か領主様、領主様と呼び掛けられると少女は起きた。
「……なに」
目を擦りながらドアを開ける。
立っているのは館の家令だった。
「領主様、たった今伝令よりお知らせが届きました。我が軍は月哮獣の野において敗北、人間どもの軍はここに向かっているとのこと」
「……負けた?」
「はい。負けでございます」
「……そう。着替えるわ」
「はっ」
家令は下がる。
少女は──領主メローゼ・トロイメツァライは服を着替えるためにクローゼットの扉を開けた。
こんな事になるはずはなかったのだ。
自分の軍勢が人間に負けるなどと。
「ちょっと勘違いしているみたいね」
そう、ほんの気の迷いなのだ。
人間が自分達と戦って勝てるなどと。
負けたのは何かの偶然。
人間は弱く矮小な玩具にすぎない。それがわかっていない。自分が見えていない。
そして自分達に歯向かうということは、第五の貴族に歯向かうということでもある。
自分達なら到底恐ろしくて出来ないことだ。
それを人間どもがやる?
知らないということは恐ろしい。
「愚か……愚かだわ……」
思わず声に出ていた。
「教え込んであげないとね……人間は希望を持ってはいけない……。
それが掟だってことを」
レイン・ファリエル(サポート)
『さぁ、貴方の本気を見せて下さい』
人間のサイキッカー×ダークヒーローの女の子です。
普段の口調は「クールで丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、機嫌が悪いと「無口(私、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は落ち着いてクールな感じのミステリアスな少女です。
人と話すのも好きなので、様々なアドリブ会話描写も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
闇の救済者は今や館を包囲し、館の中から迎撃するメローゼの配下を相手にしていた。
一方、館の中には領主を討つことを目的とした猟兵達が突入していた。
玄関エントランスホール。
大階段の上からメローゼは見下ろす。
その視線の先には、彼女を倒そうとこの館に攻め込んできた、猟兵達の姿があった。
「そう、もう来たのね」
眠たげな口調、しかしその内心はうかがい知れない。
メローゼは行動を起こした。
一瞬にして、エントランスホールは紅い薔薇の奔流に包まれた。
その退廃的で美しき華は勿論、ただの華ではない。
その花弁の一枚一枚に至るまで、濃厚な呪詛が込められている。
やがて、薔薇の奔流は止んだ。
メローゼの洗礼は猟兵達にとってその命を脅かすのに十分なものであった。
──しかし。
レイン・ファリエル(クールビューティー・f17014)は前に出る。
両手からは緑色の光を放っていた。メローゼのユーベルコードを防御するために展開したエーテル・ウォールだ。
それでも防ぎきれず、レインは傷を負っていた。だがそれは彼女の闘志を削げるものでは到底なかった。
「この館は見た目は立派ですが、もてなしは三流ですね。紅茶のひとつも出ないとは」
冗談めかして言った。
そして、淑女は気高く立ち、
口を開いた。
陰鬱な館に、レインの柔らかな歌声が響き渡る。
それは聖歌の響きだ。
ダークセイヴァーにおいて、もっとも欠けていると言える『神聖さ』が、この場所にもたらされる。
主よ、憐れみたまえ。
主よ、憐れみたまえ。
救済者よ、救済者よ、
慈悲を与えたまえ。
人々の救いを願う祈りは、ここにいる猟兵全てに共感するものだった。
かれらの想いと同調した祈りは、活力を与える。
傷が癒えていく。邪悪なる意思によって与えられた傷が、敬虔な祈りによって、浄められていく。
「やはり三流ですね。この程度の攻撃で、私達は倒せません」
淑女は毅然として告げた。
「倒れるのは、貴女です」
成功
🔵🔵🔴
大空・彼方(サポート)
《アドリブ、連携、苦戦描写、UC詠唱変更、その他何でも歓迎です》
「はじめまして。今回バックアップに回る舞姫です。未熟者ではありますがなんなりとご用命ください。」
UDC組織に所属する新人猟兵。戦闘経験は豊富。
一人称:私
口調:敬語で機械的
性格はクールでマイペース。そしてドがつく程の面倒くさがり。一見、常識人で冷静沈着に見えるが、どこか天然なところがある。獲物は日本刀。
前衛であれば未来視を用いて舞うように敵の攻撃を引き付けながら隙を伺う。
後衛では異界召喚により援護と回復役をこなす。
UCは指定した物をどれでも使用可能。基本的に情報を収集し、慎重に行動。命令や指示には忠実に従い他の猟兵をサポートします。
青原・理仁(サポート)
人間
年齢 17歳 男
黒い瞳 金髪
口調 男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)
性格面:
やさぐれ、ぶっきらぼう
積極的な人助けはしないが、見捨てきれずに手を貸してしまう
戦闘:
武器は使わず、殴る・蹴る・投げるなど、技能「グラップル」「怪力」を生かしつつ徒手空拳で戦う
構え方は古武術風
雷属性への適性があり、魔力やら気やらを雷撃に変換し、放出したり徒手空拳の際に纏わせたりします
「そして……これがお前を倒す拳だ!」
雷光が閃いた。
紫電を纏って走る青原・理仁(青天の雷霆・f03611)の動きを止められる者はいない。
ダークセイヴァーにおいて人間を弱者として虐げる領主であるメローゼが、一方的に拳を受ける。
理仁のユーベルコード、ライトニングアクセルは肉体に雷電を纏い、攻撃に転用するものだ。
理仁が拳を繰り出す度に雷鳴が響き渡り、電光がスパークし、拳を通してメローゼに叩き込まれていく。
(感覚が生身じゃねぇ。ユーベルコードだから効かねえってことはねえだろうが……)
理仁は目の前の幼い少女の姿をした敵に対して、見た目通りではない得体の知れなさを感じていた。
「うっ
……?!」
理仁は突如として、強烈な眠気を感じた。
気づけば周囲にはおぼろげな蝶の形をしたものが飛び回っており、足元は蝶の死骸で埋め尽くされていた。そしてその身には黒く焼け焦げた茨が巻き付いている。
(これは……敵のユーベルコードか……まずいぞ、意識が……)
眠気とともに戦意までも萎びていく。
「いいえ。反撃は許可しない」
理仁の背後から声がする。
その時、メローゼの視界には、圧倒的な存在感をもって自身を見つめる巨大な眼があった。
いつの間にか館の天井は闇に閉ざされており、その中に深紅の、巨大な瞳が浮かびあがっている。
「しばらくそのまま、棒立ちになっていなさい」
そして声が聞こえた。
「良いわよ」
メローゼは不意にそう言って、口を押さえた。
一瞬、声に従いたいと思ってしまった。そしてそれは返事ばかりでなく、何秒であろうか……実際にメローゼは棒立ちになっていた。
気がついたメローゼはとっさにユーベルコードを発動し、呪詛の薔薇を発生させるが遅い。
すでにそこに猟兵達の姿はなかった。
「もう効果が切れましたか……面倒だからそのまま倒されて欲しかったのですが」
大空・彼方(眠れる神の巫女・f33087)は言った。先程の効果は、彼方のユーベルコード「限定解放・緋色の夜」の効果によるものだ。
眠れる神の瞳を投影し、その視線がとらえた者にしばらく友好的な行動をとらせる。
メローゼに対しては効果を発揮せず、わずかの間で効果は切れたが、彼方が理仁を戒めから解放し、安全な所に退避するには十分な時間だった。
「まだこんなものじゃねえぞ、猟兵の力は……」
「どこまで抗えますか?」
理仁と彼方は再び構える。
戦いはまだ始まったばかりだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
春霞・遙(サポート)
UDC組織に所属して、UDC関連の一般病院に勤務している小児科医です。
行動の基本方針は困っている人が居るなら助けたい、人に害をなす存在があるなら退けたい。
戦う力はあまりないですけど、自分が傷を負うとしてもみなさんのお手伝いができれば嬉しいです。
基本的に補助に徹します。
「医術」「援護射撃」「情報収集」から、【仕掛け折り紙】【葬送花】での目くらましや演出、【生まれながらの光】【悪霊祓いのまじない】で照明や目印を付けるなども行えるかと思います。
攻撃は拳銃による射撃か杖術が基本で、その他はUCを使用します。
【悔恨の射手】【未来へ捧ぐ無償の愛】は基本的に使用しません。
シリアス以外ならいたずら好きの面も。
メローゼは猟兵の攻撃にさらされる。
だが、その瞬間メローゼの体を夥しい数の黒い茨が包んだ。
館の、高い天井まで達する程の黒い茨。
さながら異界の様相だった。
そうなってからは、メローゼは一切の攻撃を受け付けなくなっていた。
「これは、あらゆる攻撃に対し無敵になるユーベルコード……だったら」
周囲の猟兵が様子を伺う中、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が前に出る。
杖を手にし、精神を統一させる。
「長き刹那の無力を糧に。生者を屍に、祝福を呪いに、強者は地に臥せよ……」
詠唱が紡がれるごとに、遙を中心に渦巻いていくのは、恨みの念だ。
「はっ!」
詠唱の完成とともに、踏み込み、突きを入れる。
その一突きは茨に遮られ、メローゼに届かなかったに見えたが……
次の瞬間、茨は一瞬にして朽ち果て、メローゼの姿が露になった。
「このようなものがオブリビオンとは……いえ、見た目は関係ない」
小児科医である遙にとって、子供は救う対象であって倒す対象ではない。
しかし、子供の姿をしていても、この者がダークセイヴァーの人々を虐げていたことは事実だ。
なによりなんの躊躇もなくこちらに攻撃を仕掛けてきていたではないか。
それに、この者からは、生気を感じない。
まるで館の一部であるかのような……。
或いは、館が彼女の一部なのか。
(考えてわかることじゃない)
何であれ、倒さねばならない。遙は杖を振りかぶる。
大上段からの打ち下ろしにメローゼは何の抵抗もできずに打たれる。
遙の放ったユーベルコードは退魔呪言突き。これは相手の強化を反転させる効果がある。
これによって、メローゼのユーベルコードによる【あらゆる攻撃に対し無敵になる】強化効果を反転し、あらゆる攻撃に対し無力にしたのだ。
それ故に、今やダークセイヴァーに領主として人々を苦しめていたメローゼは一方的に打たれる側となっている。
変化が、訪れていた。
成功
🔵🔵🔴
厳・範(サポート)
長年の修行で誘惑に強いお爺です。
食べ物に制限はありません。
話し方は古風です。
亡き親友との約束(世界を守る)で、封神武侠界のみで活動していましたが、『仁獣』性質と親友の幻影の後押しで決意し、他世界でも活動し始めました。
「放っておけぬのよ」
動きとしては、主にサポートに回ります。
【使令法:~】では、麻雀牌を利用して、対象生物を呼び出します。
【豹貓】は睡魔を呼ぶ、【胡蜂】は恨みの毒(理由は秘密の設定にて)という感じです。
また、半人半獣もしくは本性の麒麟形態だと、背に人を乗せることがあります。
なお、武侠の血が騒ぐと足技が出ます。
依頼達成のためとはいえ公序良俗に反する行為はしません。
あとはお任せします。
エリック・ガルベルト(サポート)
連携・苦戦・ネタ歓迎!
性格:面倒見がいい、若干目立ちたがり、子供好きの青年。
「お手伝いは必要ですか?」
基本的な戦い方はダッシュで敵の懐に入り、早業による拳・脚での乱打ですね。遠距離攻撃として闘気での衝撃波も使いますよ。
敵の攻撃に対しては第六感、見切り、オーラ防御、受け流し、武器落としを駆使して対処します。
現地民が周りにいる時は、住民の保護を優先し、負傷者には祈りの力と医術で治療や救助活動を行います。
ヴァンパイア由来の力(「血」と入るUC等)は周りに住民がいる時やピンチでなければ使いたくありませんね。悲惨な結末となるので…
その他UCは何でも使い、他の猟兵への迷惑行為はしません。
他はお任せです!
「今が好機……!」
エリック・ガルベルト(聖拳・f35891)が畳み掛けるように、メローゼへと向かう。
その読みは間違ってはいない。まさしく今は攻撃に出て、一気に倒すべき時だった。
とはいえ、敵は──メローゼ・トロイメツェライはダークセイヴァーにおいて領主の座についている程の者。
埒外の身体能力をもって迫るエリックにすら、近づく前に気づいた。
力強く床を蹴る足が止まる。彼の周りには白く朧気な蝶の影が舞い、足はうずたかく積もった蝶の死骸で埋まった。その体には黒い茨が巻き付いている。
それでもすぐ意識を失わず、立っていることはできた。
(しかし、このままでは……)
強烈な睡魔と病のような虚脱感がエリックを襲っていた。
その時、音が響いた。
館の陰鬱な静寂を吹き飛ばす程に甲高い音。
それは戦闘中にもかかわらず、その場にいる者達が気を取られるほどに大きかった。
同時に、エリックが纏っている幻影が燃え上がった。
「これは
……?!」
エリックは自由になったことを感じる。見れば、メローゼも全身を炎に包まれている。
「待たせたな」
背後より年を経た、しかし力強い声がした。
そこには黒い獣が──しかし、黒がもたらす不吉さとは無縁、かつ獣なのに知性を感じさせる存在──いた。
それは違う世界において黒麒麟と呼ばれる瑞獣にして猟兵。
名を、厳・範(老當益壮・f32809)と言った。
彼のユーベルコードは『声』だ。その鳴き声を聞いた者を燃やす。ただし、焼かれるのはオブリビオンのみだ。
名を、声焔と言う。
「伏兵の存在を疑いはせなんだか?」
範はメローゼに問う。ユーベルコードが音ゆえに、敵の視界の外から撃つことができたゆえに、悟られることなく撃つことが出来たのだ。エリックを包んでいたメローゼのユーベルコードが燃えた理由は、実は彼を蝕んだ呪詛もまた、メローゼの一部であったからだ。
「恩に着ます!」
エリックが短く言い、動いた。
もはや彼を止めるものはない。爆発的な一歩とともに間合いに踏み込む。
拳の間合いに。
一瞬で息を吸い込み、腰を落とす。
踏み込みとともに繰り出される拳が、人中、顎、喉、鳩尾に叩き込まれた──聖中線四連突き。
その威力にメローゼは吹き飛ばされ、壁に突き刺さる。壁は大きくへこみ、少し遅れて、メローゼは床へとゆっくりとずり落ちた。
「…… …… …… ……」
メローゼは小声で何かを呟いている。
いや、これまでずっと呟いていたのだ。
攻撃を受けても、攻撃を繰り出す時も、ほぼ無言だったのはこのためだ。
「…… ……て ……ら ……が」
「お……て……だ……ら ぜ……う……ことが」
「おきて……だから……ぜつぼう……することが」
掟だから。絶望することが。
それはかつて古の時代を生きた黒茨の魔嬢メローゼ・トロイメツェライという魔女が紡ぎ続けた、人間に向けた呪詛だ。
メローゼにかつて何があったのか、知るものは誰もいないだろう。しかし、はるか昔に彼女は人間を呪い、肉体が滅びてもその呪いは残り続け、いつしか呪詛そのものが凝り固まって人の姿をとるようになった。それが今のメローゼ・トロイメツェライの正体だ。
この地に現れたのは骸の海から浮き出たメローゼの呪詛の一端にすぎない。
ゆえに、この場で完全に祓いきることはできない。しかし、それでも猟兵達の武勇によって、この地を蝕む呪いであるメローゼは祓われた。
「掟…………なのに
…………」
呪いに満ちた言葉を吐きながら、メローゼは消滅していった。
同時にこの館を覆い尽くしていた、陰鬱な死に満ちた空気も晴れたように猟兵達は感じた。
「呪いによって立つ者か」
範は消え去ったメローゼがいた場所を見つめながら、言った。
「わしは誓いによって立っているのだ。亡き友との、世界を守るという……な」
ゆえに、負けるわけにはいかない。
「オブリビオンが人を苦しめるのなら、私はいつまでも戦い続けます」
残心の姿勢から元に戻りつつ、エリックが言う。
「だって、たくさんの人が笑顔でいる方が楽しいですからね」
ここは絶望に満ちた世界。今はそうかもしれない。
だが、変えることは可能なのだ。
人間を縛る掟は、破れつつあった。
成功
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第3章 ボス戦
『『鳴響止酔』デルロッサ』
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POW : 従え
【翼の炎】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
SPD : 捧げよ
【静寂を憎む暴虐】を解放し、戦場の敵全員の【希望の声】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ : 躍り狂え
自身が装備する【炎の尾】から【絡み付く燃える茨】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【激痛】の状態異常を与える。
👑11
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領主討伐に沸く、闇の救済者の戦士達。
かれらの勝鬨は響き渡った。
そんな中、猟兵達は静かに姿を消す。
「殺戮者の紋章」を授けられ、人族鏖(じんぞくみなごろし)の指令を受けた、第五の貴族より放たれた刺客を迎え撃つためだ。
それが叶わなければ、今日の勝利は無意味に終わるだろう。
……
昏い道を、月明かりに照らされ一つの人影が歩く。
白い髪、紫の角と尾、黒い肌。
(下らねえ。下らねえ。下らねえ)
そいつは心中で何度も悪態をついていた。
(この世界に安心して暮らせる場所を作るだと?)
紫がかった白い双眸が闇を睨み付ける。
(ふざけんな。そんな事は許されてねえんだよ……お前らにも、俺にも)
その表情を苦痛に歪める。
絶えず己を焼いている炎のためだ。
(勘違い甚だしい低能どもめ。
わからせてやるよ、俺が……。
この世界じゃ……苦痛が掟だってことを)
彼は『鳴響止酔』デルロッサ。
第五の貴族より放たれた刺客だ。
満月・双葉(サポート)
ダメージは【激痛耐性】を用いて無視
連携が必要であれば行う
仕事を完遂するためなら手段は選ばず、何らかの犠牲を払う事もする
【爆撃】の魔術が専門で格闘技に爆撃を混ぜて威力をあげるなど戦術に織り交ぜる
アイテム【虹瞳】は義眼として左目に収まり、裸眼として晒せば視界に収める対象に対して【生命力吸収攻撃】を行う。仕様の際に眼鏡(魔眼殺し)を外す必要がある
大根には爆発の【属性攻撃】が付随し【爆撃】で広範囲の攻撃を行う
敵の攻撃は【野生の勘】で交わすことが可能
武器桜姫は【捕食】による【生命力吸収攻撃】がある
請け負った仕事は完遂させるが、『自分は滅ぼされるべき悪』という思考回路から破滅的な行動をとることが多い
乾いた風の吹くダークセイヴァーの街道、そこを行くデルロッサの前を遮るように現れた者がある。
乳白色の瞳と髪と肌 、そして背から虹色の翼を生やしたオラトリオの女だった。
「何だてめぇは……邪魔だ……」
デルロッサは威嚇する。そしてすぐに気づく。まるで動じないそれは、自分を阻むためにここに立っているのだと。
「何のつもりだ……? この俺を倒して……人間どもを守ろうってのか……?」
嘲笑するデルロッサ。
しかし、返ってきたのも嘲笑だった。
「いいや違うね……。
お前がやろうとしていることを僕が代わりにやろうっていうのさ……! お前を倒してな……」
女は──満月・双葉(時に紡がれた忌むべき人喰星・f01681)はそう言った。
自らは人の守り手ではなく、敵なのだと。
「はっ! 何だか知らねえが……
この役は誰にも譲れねぇ……消えろ」
その言葉の意味を真に理解したのか、定かではなかったが……
デルロッサは目の前の存在を排除するべく動いた。
双葉の視界から一瞬で炎の残光だけを残して消え、気がつくと紫の尾を双葉の体に巻き付けていた。
「踊り狂え」
嗜虐的な響きと同時に双葉の体は青紫の炎に包まれた。
「ヒャーッハッハッハ
!…………?!」
だがデルロッサの期待した反応は起こらない。双葉は平然として笑みを絶やさぬままだ。
彼女は激痛への耐性があった。たとえその炎に全身を焼かれていたとしても、デルロッサの苦痛への期待になど答えてやる理由はない。
「踊り狂え、って言うんならさあ」
双葉は眼鏡を外す。
「一緒に踊らない?」
その瞳は虹色に輝いた。
双葉の背後に、虹色の薔薇を咲かせながら。
花弁が散っていく。それは灰色の風景に躁病めいた色彩をもたらしながら、デルロッサにまとわりついた。
「ぐ……があああああ!」
デルロッサは膝をつく。
「てめえ……何をした?!」
双葉は答えない。見下ろしながら口元を上げるのみだ。
双葉のユーベルコード・虹薔薇の静踊は、裸眼による視線を向けた対象に、オーラで構成された虹色の薔薇の花弁でダメージを与えるもの。
青紫の炎と虹色の花弁が織り成す色彩の乱舞から、戦いは始まった。
成功
🔵🔵🔴
ハロ・シエラ(サポート)
私はハロ・シエラ。
戦う事以外は不得手です。
また、オブリビオンによる問題に対しては説得などより戦いで蹴りをつけるのを好みます。
口調は(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)。
基本的には誰に対しても敬語です。
戦術としては【第六感】と【見切り】を駆使して勝機を見出し【カウンター】や【鎧無視攻撃】で敵を仕留めるスタイルです。
真面目に戦いますが、強敵が相手なら【毒使い】や【投擲】、【物を隠す】による【だまし討ち】も視野に入れましょう。
ユーベルコードは戦況に応じて何でも使用しますが、味方や一般人は巻き込まない様に努力します。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
デルロッサを討たんとする猟兵達が集いつつあった。戦いは本格的に始まろうとしていた。
「うぐぐ……テメェら……ッ!」
デルロッサは苦痛に呻く。最初の猟兵による攻撃のダメージによるものだ。
しかし、苦痛はデルロッサの嗜虐心をこの上なく煽るものだ。
「捧げよ! この俺に、その希望に満ちた声を!」
そして展開する。邪悪なるユーベルコードを。
紡がれた呪いは猟兵達に不幸を与えるものだ。
この暗黒に閉ざされた世界で、心までも閉ざす、昏い呪い。
「……」
しかし。
猟兵ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は前に出る。
その手にレイピア・リトルフォックスを携えて。
攻撃と防御に適した足運びで、デルロッサに迫る。
「無駄だ、今の俺には誰も勝てねえ!」
デルロッサは両腕を広げ、迎え撃つ。
彼のユーベルコードは敵対者に不幸を与えるだけでなく、希望を奪い、その分だけ幸運を得る性質をも持つ。
ゆえに、戦いでは有利に立つ。
其れでも──
ハロはその足を止めない。
その眼差しを、敵から逸らさない。
「シャア────ッ!」
デルロッサは腕から炎を繰り出し、ハロを焼かんとした。
だが、そこにはすでにハロの姿はなかった。
すぐさまデルロッサは視線を巡らし、ハロの姿を認める。
尾を繰り出し、締めつけようとするが──当たらない。
カウンターに繰り出されたレイピアの切っ先が尾を斬り付け、ハロは離れた。
かと思うとデルロッサの視界の外に回り込み、踏み込みとともに突きを見舞う。
「うぐっ……! 何故だ、なぜ当たらねえ!?」
「見えるものが絶望しかなかったとしても……」
ハロは足を止めない。
鋭利な刃が再びデルロッサの身を斬り付けた。
「そうであると知っていれば、戦える」
「何
……!?」
突きつけられたハロの言葉に、デルロッサは驚愕した。
それは絶望の福音。
まるで10秒先の未来を見てきたかのように対象の攻撃を予想し、回避する。
この暗闇に覆われた世界に生まれ落ちたハロは。
生まれたときから吸血鬼と戦うべく運命付けられたハロは。
吸血鬼によって生き方を歪められたハロは。
絶望を、誰よりも知っていた。
「どれだけ希望を奪おうと無駄ですよ」
ハロはレイピアを構える。
まるで隙がなかった。
「人々の幸福と自立を求める心は、貴方達には止められませんから」
成功
🔵🔵🔴
中村・裕美(サポート)
副人格のシルヴァーナで行動します
『すぐに終わってしまってはもったいないですわね』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
裕美のもう一つの人格で社交性と近接戦闘特化。
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【切断】を【早業】で繰り出す。
ドラゴンランスを使うことがあれば、相手を【串刺し】にするか、竜に変えて【ブレス攻撃】
【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー
電脳魔術が使えないので裕美の能力が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します
あと、虫が苦手
凄まじい殺気を感じてデルロッサは振り向く。
それはユーベルコードで得た幸運のおかげだったのだろう。繰り出されたナイフをすんでのところで避けた。
大きく見開かれた、赤く光る両眼がデルロッサに向けられていた。
その顔には、猟奇的な笑みを浮かんでいる。
多重人格者の猟兵、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)の副人格・シルヴァーナが狙っていた。
「うふふふ。いい動きですのね」
上品に笑い、ナイフを構える。
優雅に人を殺せる動きで。
シルヴァーナは長い白の髪を振り乱しながら、凶刃を再びデルロッサに向ける。
「はっ! 未来が予測できるってのならともかく、今の俺にはそうそう当たらねぇんだよ!」
デルロッサは嘲笑とともに繰り出される刃を避ける。
シルヴァーナは突風が吹き付けられたり、足を地面の窪みにとられたりと、ささいな事が原因となってわずかに手元が逸れていた。
「まだまだ、これからですわよ」
それでもシルヴァーナの抜き身の刃のごとき殺意は、曇ることはない。
「甘ぇんだよ!」
繰り出したナイフを押さえ、デルロッサは爪をシルヴァーナの引き締まった腹に食い込ませる。
デルロッサは獰猛な笑みを浮かべた。
「フッ──何ぃ!?」
視界の端に捉えた。
上空に、翼を広げるドラゴンの姿を。
それは月を背にし、大空を統べるかのように見えた。
ドラゴンは顎を大きく開けると、燃え盛る火焔の吐息をデルロッサに向けて吹き付ける。
「「あああああああああああああっ
!!!!」」
デルロッサは、シルヴァーナ共々炎に包まれる。
「て、てめぇ……自分もろともだと!? 何考えていやがる!」
「それはもちろん、あなたを殺すことですわ」
「てめぇが死んでもか?!」
「あら、わたくしは死にません。あなたもそうではなくて?」
猟兵は危機に陥ればグリモア猟兵による送還があるし、オブリビオンも多くの場合、戦いに負けても骸の海に帰るだけだ。
それでも、戦いには死への恐怖がつきまとう……そういうものなのに。
「「ぐああああああああああああああああッ
!!!」」
再び、灼熱のブレスがシルヴァーナとデルロッサを焼いた。
「ふふふ……わたくしがいくら運に見放され、あなたが幸運を得ていても、全て焼き尽くしてしまえば同じ事」
「てめぇ、止しやがれ!」
デルロッサが腕を振り上げると、今度は地上に着陸したドラゴンがより近くからブレスを吹き付ける。
「「ぐぎゃあああああああああああああああああッ!」」
その激しい攻めこそ、シルヴァーナのユーベルコード、覇空竜覚醒(スカイフォールブレス)。
シルヴァーナのドラゴンランス「覇空竜スカイフォール」を巨大なドラゴンに変化させ、自身の周囲の敵全員を攻撃させる。
さらに、敵味方の区別をしないなら攻撃回数は3回に及ぶ。
「あなたには迫力が足りません」
月光に照らされ、シルヴァーナは妖しく笑った。
「弱者ばかりを虐げてきたのではありませんこと?
それでは……わたくし達に勝つことは不可能ですわ」
主人格の敵を排斥するために生まれたシルヴァーナと、苦痛を誤魔化すために他者を虐げるデルロッサでは、強さの理由となるものの量という点で、違っていた。
成功
🔵🔵🔴
ロビン・バイゼ(サポート)
「困っている人を助けたい」と強く願う少年。
時には自身を犠牲にしてでも助けようとします。
アイテム・技能・UCは状況に応じて好きなものを使わせて構いませんが、拷問具・吸血乙女・咎力封じは基本ヴァンパイアにしか使いません(逆にヴァンパイアに対してはよく使用)
絵を描くのが好き。でも描く絵はピカソや岡本太郎のような抽象画。だいたい何描いてあるか分かりません。
基本無表情。何があっても表情変わりませんが、芸術的なもの・博物館・拷問具を見ると瞳が輝きます。
「…」や「、」多めの喋り方。
好きに使ってください。よろしくお願いします。
台詞例
「……びっくり、した」
「……すごい」
「……少しは、役に……立てた、かな」
神塚・深雪(サポート)
※連携およびキャラを逸脱しないアドリブ歓迎
※お色気、公序良俗に反する行動、所謂R18やR18Gの系統はNG
※口調等はステシ参照ください
元能力者の猟兵。
通常依頼であれば、基本的にはお手伝い/サポート役に徹しますが、状況に応じて対応でも可。判断はお任せします。
サポート優先依頼の場合は、状況に応じます。
基本的には高いステータスのUCを状況に応じて使用します。
他の猟兵に迷惑をかけたり、脚を引っ張る、目的達成に反する行為はしません。
人道から外れたような行いには嫌悪感と怒りを強く示します。
基本的には、礼儀正しい丁寧な物腰。
出身の銀雨世界以外であれば興味津々な様子も見せます。
戦場に到着したロビン・バイゼ(芸術と鮮血・f35123)は静かに憤っていた。今相手にしている敵は、明らかに人に不幸と害をもたらすもの。
困っている人を助けたいと願う彼としては、「人族鏖(じんぞくみなごろし)」の指令を実行するその行いは、到底受け入れられるものではなかった。
「……今の……僕は……」
ロビンはダークセイヴァーの生まれであり、かつてはヴァンパイアに囚われた身だった。しかし、今は。
「……猟兵、なんだ」
手にした巨大な絵筆が、花弁に変わっていく。
「……誰も……殺させ、ない……!」
さながら蝶の大群のように、デルロッサを含めた周囲に無数の花弁が嵐となって吹き荒れる。
ロビンのユーベルコード、鈴蘭の嵐だ。
「……! ぐあああああ!」
デルロッサは苦痛に顔を歪めた。
「テメェも、俺を苦しめる……誰も、誰も、誰も!」
デルロッサは嵐に吹きつけられ体勢を大きく崩し、花弁が突き刺さりながらもロビンへと向かう。
「許さねえ! 平穏も、静寂も、テメェらの勝利も、俺の苦しみも、何もかもだ!!!」
ダメージ覚悟で踏み込み、体を回転させて尾を繰り出す。
だが、それがロビンに当たるよりも早く、その前に何かが出現した。
銀色の翼の紋が、空中に。
そして、それは。
「ぐがああああああ!」
光を発し、デルロッサの身を焼いた。
「このユーベルコードは範囲内のどこかであれば発動させられるんですよ」
凛とした声が戦場に響いた。
声の主は、神塚・深雪(光紡ぐ麟姫・f35268)。
ユーベルコード・麟光顕現を発動させ、ロビンへの攻撃を遮った。深雪自身は、ロビンの鈴蘭の嵐の範囲外にいる。
「あなたのような者を倒すためなら、能力を発揮することにためらいはありません」
「くっ……群れやがって! 一人じゃ何にもできねぇザコどもが!」
「確かに私達一人一人はあなたより弱いかもしれない。けれど……その行いを止めるためならば、手段は選ばない」
それは銀誓館学園にいた時から変わらない。
人々に仇なす者と戦う。
「なぜなら、私は能力者であり──猟兵ですから」
黒い瞳に怒りの火を灯し、深雪は言った。
「……なんであれ……誰かを傷つけていい理由には……ならない……!」
「このまま、あなたを滅ぼします」
ロビンと深雪は、なおも攻撃を加えていく。
この苦痛に満ちた世界から、少しでもその原因を取り除くために。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
館野・敬輔(サポート)
※アドリブ、他者連携、派手な負傷描写OK
※NG:恋愛、性的要素、敵との交渉を行う依頼
『吸血鬼をこの世界から駆逐する。例外なく骸の海に還れ!』
ダークセイヴァー出身の、青赤オッドアイの青年黒騎士です。
吸血鬼に家族と故郷を奪われたため、吸血鬼やオブリビオンに強い憎悪を抱いており、憎悪を以て敵を冷酷に斬り捨てます。
直情な性格ですので、黒剣1本だけで真正面から叩き潰す戦術を好みます。
ボス戦では積極的に他猟兵を庇ったり、衝撃波や投擲用ナイフで牽制したり、他者連携を意識した戦い方もします。
ユーベルコードは指定されたものをどれでも使用。
迷惑行為や公序良俗に反する行動は、依頼成功のためであっても行いません。
「何なんだテメェらはァァァ!!!」
デルロッサは絶叫した。
「人間なんざ玩具なんだよ! 人間に味方するテメェらも同格だ! 俺は第五の貴族じきじきに指令を受けて来てるんだよ! テメェらより上なんだ! わかるか!!!」
声を枯らさんばかりに叫ぶ。
背中から翼のように燃え上がっている炎が、さらに勢いを強めていた。
「俺に! 従え!!!」
紫の炎が激しく音をあげて渦巻く。
それが掌に集まり、火焔の球と化した。
それは流星のごとく尾を引いて、敵対者へと飛ぶ。
仇なす者を焼き、力で従わせる邪悪の炎──
──しかし、それは叶わない。
火球は空中で真っ二つに両断された。
斬擊の余波は、衝撃波となってデルロッサを打ち据えた。
それを成したのは一振りの黒き刃。
その担い手こそは、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)。
完全に二等分された火球は、敬輔の左右にしばらく飛んで、やがて消えた。
「黙れ」
突きつけられたのは怒りを孕んだ低い声。
「貴様ごときに語る舌は持たない。今すぐ骸の海に還れ……!」
「……! この、野郎……!」
デルロッサは言葉を失う。その顔は、もはや原型を止めないまでに苦痛に歪んでいる。
自身を焼く炎に、これまでにない熱さを感じていた。
一方、敬輔は静かにデルロッサへと歩みを進めた。
その胸の中では、憎悪が激しく燃え盛っている。
オブリビオンに故郷を滅ぼされたことを切欠に、黒騎士となって以来、戦いに向かう時には常に憎悪が共にあった。
そしてデルロッサは、憎悪を向けるに足る存在だった。
今、敬輔は感情のままに剣を振るう。
そうしない理由がないからだ。
怒りと憎悪、闘争心に導かれるままに。
「……貴様を両断する!!」
「があぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
熱く宣言する敬輔。
獣の如く咆哮するデルロッサ。
両者が交差する。
デルロッサの爪が敬輔に触れるよりも早く、敬輔の剣がデルロッサを脳天から両断した。
その技こそユーベルコード、憤怒の解放・両断剣。
至近距離の敵に超高速・大威力の黒剣による一撃を見舞う必殺の技だ。
その様子を見た者には、青く輝く右目の軌跡がしばし残っただろう。
デルロッサはその場に倒れこみ、もう何も言葉を発することはなかった。
「人を縛るだけの掟なんて、必要ない……」
理不尽な死も。
永劫の絶望も。
理由なき苦痛も。
「そんなものは、俺達で壊すんだ」
敬輔は誰にともなく言った。
視線の先には、すでに領主無き館がある。
そこでは人々が勝利に沸いている。
かれらは今日も生きていく。
それは明日に繋がっていくのだろう。
成功
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