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フロンティアより来た男

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #チャンピオン・スマッシャー #力持ち #猟書家


●フロンティアでマーシャルアーツ
 アリスラビリンスのどこかに、力持ちの愉快な仲間たちが住む村がある。
 先日、とある猟書家がそこを襲撃した。しかし駆け付けてきた猟兵たちによって猟書家は倒され、村は救われたのであった。
 だが、その村にまたもやリングが出現したのである。そして。
『私の名はチャンピオン・スマッシャー!』
 当然、そいつもまた現れたのであった。ただ今回出現したリングは前回とちょっと様子が違っていた。ロープではなく、代わりに巻き付かれているのは有刺鉄線だ。さらに、有刺鉄線に何やら黒い四角いものが、いくつもくくりつけられていた。
「お前はたしか箱舟とかいうトコから来たやつだったな!」
『箱舟?知らんな。私はフロンティアから来た格闘家だ!』
 前回の事を覚えている力持ちのひとりが問い詰めたが、しらばっくれているのか、それとも本当に別人なのか、チャンピオンはそれを否定した。
「なんでもいいや、今度こそやっつけてやるぞ!」
 それならそれで別に構わないと意気込む力持ちたち。だがチャンピオンはたしなめるように、彼らを一度止める。
『オーケイオーケイ。きみたちのやる気は存分に理解した。しかし、戦う前に、このリングについて知らせないのはフェアではないだろう。せっかくなので見てくれたまえ』
 言うなり、チャンピオンは自ら有刺鉄線に突っ込んでいった。これだけでも十分痛そうだが、加えてなんと有刺鉄線にくくりつけられた黒い四角い何かが、チャンピオンに触れた瞬間、大爆発を起こしたのである。
「オウマイ!」「ホーリーシット!」
 驚愕する力持ちたち。だがチャンピオンは倒れない。強烈な爆発を我が身に受けながら、なお傲然と立っていたのである。そして挑発するかのように、言った。
『どうかね!この有刺鉄線電流爆破デスマッチ!このリングに立つ度胸のあるものはいるかね?』
「上等だ!やってやろうじゃあねえか!」
『よろしい』
 チャンピオンの強烈きわまるパフォーマンスを見て、それでも闘志衰えるどころか、さらにやる気を出す力持ちたち。その様子に満足したような様子で、チャンピオンはのたもうた。
『改めて!ここに無限番勝負ロードオブグローリーの開催を宣言する!』

●あるいはエクストリームでチャンピオン
「そして力持ちたちはチャンピオンに挑む前に、その弟子たちに負け、軍門に下る事になるのだ」
 前回同様、冗談ではないという表情で、大豪傑・麗刃(23歳児・f01156)は言った。
 猟書家チャンピオン・スマッシャーはプロレス技で戦う巨漢で筋骨隆々の男である。彼は戦闘に使うユーベルコードにくわえ『ロードオブグローリー』というユーベルコードを使う。これは負かせた相手を強制的に配下にしてしまう、恐るべき力を持つ。逃げればいいじゃないかと思わないでもないが、なんとこのユーベルコード、相手の戦意を高める効果もある。そのため、これをくらった者は、決着するまで戦い続ける事になる。チャンピオンの目的はこうやって配下を増やし、いずれ『鉤爪の男』が起こす『超弩級の闘争』の尖兵にする事なのだ。
 なので猟兵は力持ちたちを守りながら戦わなければならない。

 まずは前座であるチャンピオンの弟子と戦う事になる。今回の弟子は何やら変態ぽい感じではあるが、筋骨隆々な体躯から繰り出されるその力は侮れない。力持ちたちが単独で戦うと、デスマッチのリングに不慣れなせいもあり、負けは確定してしまうのだ。
「そのために、考えられる手段はふたつあるのだ」
 ひとつは力持ちと協力する事。力持ちと組んでタッグマッチ形式にする、あるいは力持ちをなんとか説得してセコンドとしてついてもらう、等が考えられる。いずれにせよ、ただ力持ちを守るだけでなく、猟兵もまた力持ちに協力してもらう事で有利に戦いを進める事ができるだろう。
 そしてもうひとつは。
「ぶっちゃけ、力持ちもドン引きするぐらいのとんでもないデスマッチを考案する事なのだ」
 有刺鉄線電流爆破デスマッチを超える程の過激なデスマッチを提案すれば、さすがの力持ちも戦いを譲ってくれるだろう。あとは力持ちたちに手伝ってもらい、実際にそのデスマッチを実施すれば良いというのだ。
 いずれにせよ、弟子たちをある程度倒したら、血が騒いだチャンピオンが乱入してくる。チャンピオンに対しても基本は一緒だ。力持ちたちと囲んでボコってもいい。あるいはいかなる超絶過激なデスマッチであっても、提案されれば王者のプライドにかけてそれを断る事はしないだろう。

 かくしてアリスラビリンスに再び戦いのゴングが鳴り響こうとしていた。


らあめそまそ
 ネタを思いついてしまったので猟書家とのプロレス第二弾をお送りいたします。
 内容としては『箱舟より来た男』の続編ですが、前回を見ていなくても参加には問題はございません。

 前回は正統派なプロレスラーでしたが、今回はデスマッチです。思い切り過激にやっちゃってください。
 第1章は前座の無敵変態紳士との戦いです。ユーベルコードはプロレス技風のアレンジが加わっております。
 第2章はチャンピオン・スマッシャーとの戦いです。チャンピオンは倒した相手を屈服させて手下にする特別なユーベルコードの使い手ですが、倒されなければ問題はないので、戦闘には直接の影響はありません。ただ、それを差し引いても強敵です。
 敵はみんなプロレス技にこだわりますが、普通にルール無用の戦いですので、猟兵はプロレス技にこだわらず、自分の得意な戦法を使っていただければ良いかと。むろんプロレスやってくださるのでしたら大歓迎です。

 プレイングボーナス(全章共通)……力持ちと一緒に試合に参加する。
 具体的にはOPで提示した通り「力持ちと一緒に(あるいは代わりに)リングに上がる」「力持ちがドン引きするほどの過激なデスマッチを行う」となります。
 力持ちは下記のユーベルコードのうち、どちらか片方を使用できます。

 もっと愉快な仲間達:戦闘力のない、レベル×1体の【陽気な小人達】を召喚する。応援や助言、技能「【トンネル掘り】」を使った支援をしてくれる。
 びったんびったん:レベル×1tまでの対象の【尻尾や足】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。

 デスマッチを提案する場合、力持ちたちは『もっと愉快な仲間達』を使い、デスマッチの設営を手伝ってくれます。一緒に戦う場合は、どちらかを選んでください。

 それでは皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『無敵変態紳士『ブルマニアリス』』

POW   :    【ブ】ルマニアリス・イマジネイション~騎馬戦~
無敵の【ブルマアリス服と騎馬戦フォーメーション】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    【Lu】LuLu…LaLaLa…(ダンディな声)
【流れるようなハグ】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【服をブルマアリスに変え、染み出る汗の臭い】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    【魔】技・ミラクル☆ブルマイウェイ
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【布教用ブルマアリス服】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
👑11
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●運動向けの服装と言えなくもないのだが
 大会開催の宣言後、チャンピオン・スマッシャーは一度リングから下がり、奥の玉座に座って挑戦者を待ち構える構えのようだ。代わりにリングに上がったのは、プロレスラーらしい長身とたくましいの持ち主の男たちだった。
『まずはあたしたちが相手よ!あたしたちが怖くないってんのなら、かかってらっしゃいな!』
 らしくない言葉使いで、連中は力持ちたちを挑発する。
 彼らがちょっと変なのは、その言葉使いだけではない。彼らが身にまとうのは、上は白の体操着に見えなくもないが、どこかデザインがちょっとあやしげだし、下は……黒あるいは濃紺の、プロレスラーがよく着用するパンツに見えなくもないが、なんかちょっと違う感じの、その、何かであった。
 彼らは無敵変態紳士『ブルマニアリス』と言う。もとはUDCアースにいたブルマ好きのUDCだったのが、アリスラビリンスに迷い込んでオウガと化したのである。その際、普通の体操服(彼らが着用すると普通ではないかもだが)がアリスラビリンス仕様に変化したらしい。そしてチャンピオン・スマッシャーと戦い敗北、その配下になった。以来プロレスに目覚め、チャンピオンの指導のもと、激しい特訓にあけくれてきた。ただし、本来持っていた、ちょっと変わった嗜好については、変わらなかったようだが。
『チャンピオンと戦いたいなら、まずはあたしたちを倒す事ね!』
 たしかに連中は変態だ。だが決して油断してはならない。彼らはれっきとしたオブリビオンであり、何よりデスマッチ慣れしたプロレスラーだ。それでも、チャンピオンを引きずり出すためには、こいつらをやっつけないといけないのだ。
カグラ・ルーラー
『びったんびったん』使い、俺と組め。

つまり、だ。
てめェらにとって『アリス』の要素はその申し訳程度のエプロンなんだな?
こっちは過去の記憶も無しにアリスクロス着させられて逃げ惑ってんのによ。
『アリス』をナメんな。

「【ブ】ルマニアリス・イマジネイション~騎馬戦~」に対し「イメージ・ボコーリング」。
騎馬の下側で踏ん張り効かせてるご自慢の無敵のブルマに不可視のローブローだ!

「『アリス』を喰うためなら何でもありでやってんだろ。俺らの方からバーリトゥード挑んでも文句無ェよなァ!」
バーリトゥードでも金的禁止? 知るかバカ!(追撃)

無敵じゃねェと解れば二人で暴れる。
ただし俺は蹴り技だけ。触りたくねェからな。



●なんでもあり
「そこの力持ち、びったんびったんは使えるな?」
 意気込む力持ちたちに、赤い髪と眼の女が声が声をかけた。
「ん?そりゃ使えるが、なんだあんたは?」
 聞き返す力持ちに、その女、カグラ・ルーラー(バーバリス・f21754)は疑問に答える代わりに、さらにたたみかけた。
「だったら、俺と組め」
「……お、おう」
 カグラの迫力ある雰囲気に、さすがの力持ちもそれ以上聞き返す事はできなかった。彼にできるのは、ともにリングに上がる事を了承するだけだった。

『来たわね猟兵』
 既にリングに上がっていたブルマニアリスが、力持ちを伴ってリングに上がろうとしていたカグラに挑発の声をかけた。タッグマッチとなったので、当然ブルマニアリスも2人いる。
『あんたが他のところでどんな戦いしてきたか知らないけど、このリングの上ではあたしたちの方が上よ、それを存分に見せつけてあげるわ』
「……気に入らねえな」
 ブルマニアリスを思い切りにらみつけるカグラ。だがそれは、ブルマニアリスの言い分が気に障ったのではない。カグラの怒りは、別にあった。
『何よ、不満があるならリングで』
「そうじゃねえ」
 カグラはブルマニアリスを指さした。正確には、その服装を、である。
「てめェらにとって『アリス』の要素はその申し訳程度のエプロンなんだな?」
『何よ、体操着とブルマがうらやましいの?心配しなくても後でたっぷり着せてあげるから』
「誰が着るか、んなもん」
 カグラには自分の記憶がない。気が付いた時には、真っ赤なアリスクロス(実は拘束服らしいのだが、カグラを拘束する力はないらしい)を着せられてオウガから逃げ回っていたのである。自分の身に宿るオウガの力を自覚した後は逃走が闘争に代わり、自分の体が壊れる程の力を振るっては自然治癒能力で無理やり治しを繰り返してなんとか今まで生きてきたのだ。
 そんなカグラにとっては、ブルマニアリスのあまりに中途半端なアリスぶりは、どうしても許せないものだった。
「『アリス』をナメんな」
 これがカグラの宣戦布告の言葉となった。

 かくしてゴングが鳴らされた。
「姐さん!先鋒は俺が」
「誰が姐さんだ、俺はまだ14だ」
 力持ちを下がらせ、先にリングに躍り出たカグラを、ブルマニアリスAが睨みつけた。
『何がアリスをナメんな、よ!そっちこそブルマ無礼てんじゃないわよ……あ、舐めるのはOKよ!』
「何言ってんだてめぇ」
 ブルマニアリスAの殺気とわけわからない発言に対し、硬派らしくしかめっ面で睨み返すカグラ。
『ふん!生意気なガキね!だったら最初から全力よ!』
「ごたくはいいから、さっさとかかってきな」
『言われなくとも!』
 Aの言葉に呼応し、ブルマニアリスBもまたリングに入る。
「お、なんでもありたぁ聞いてたが、いきなり2人がかりかよ、まあいいぜ、かかってきな」
「姐さん!俺も行きます!」
「まあ待ちな、あんたの出番はまだ早いぜ」
 リングに入ろうとした力持ちをカグラは止めた。1対2にはなったが、力持ちを呼びこむのは相手の出方を見てからでも遅くはないと判断したのである。

『行くわよ!』
 ブルマニアリスAとBはポーズを決めた。
『『無敵の騎馬戦フォーメーション!!』』

 ふたりの体が光り輝いた。
 光がおさまった時には、ブルマニアリスAをBが肩車する形になっていた。そしてその服装は、以前よりもさらにアリスっぽくなっていた。たぶんフリフリ部分が増えたとか、そんな感じであろうと思われる。

「……なんだ、ありゃ」
 力持ちたちは、リング上で実際に相対している当事者、リング外で見ているギャラリーともども、この頭のおかしい光景に呆然としていた。
「無敵、ねえ」
 一方でカグラは冷静だった。まあ確かにふたりで騎馬戦フォーメーションとか言われれば、こうもなろうとは思う。が、普通に考えれば肩車した状態で戦闘なんかできるわけはないだろう。
「ふざけてんだったら、即行で終わらせ……え?」
『うおおおおおおおお』
 改めて、どうやってこの変態どもをぶっ飛ばしてやろうかと考えたカグラに、ブルマニアリスたちが突っ込んできた。肩車とは思えないほどの、あまりに速い動き。巨漢ふたりの質量にこの速度で突っ込まれたら、ただでは済まない。
「うわっ、と!?」
 カグラは殺人的な加速を危うく回避する。ブルマニアリスABはそのままロープ代わりの有刺鉄線に突入。地雷に触れ爆発する……も、なんと爆発の反動で再度カグラに向け突っ込んでくる。
「って!でたらめか!」
『ホホホホホホホ。言ったでしょう!無敵だって!!』
 これこそまさにブルマニアリスのユーベルコード【ブルマニアリス・イマジネイション~騎馬戦~】の効果だった。彼らのブルマへの執着に基づく想像力の強さが、そのまま戦闘における強さとして表れたのだ。
『おんどりゃああああああ』
「……無敵、ねえ」
 突っ込んでくるブルマニアリスふたりに、再度、カグラは言った。
「本当に無敵なら、こいつを耐えられるか?」
 カグラは想像した。いかなる強者といえど、絶対に鍛えられない部分。そこをボコる事を。そしてアリスがボコると想像した瞬間、既にそれは実行されるのである。
 コキーン。
『あべばらっ!?』
 金属音が鳴り響いたかと思ったら、肩車の下にいたブルマニアリスBが突然悶絶の叫びを上げ、前のめりに倒れた。当然、上にいたブルマニアリスAもそのまま倒れ、思い切り顔面をリングに強打する事になる。
「ほれ見ろ、無敵じゃあ、ねえじゃねえか」
 得意げに、ではなく、ちょっと苦々しい顔で、カグラは倒れたブルマニアリス達を見下ろした。カグラはユーベルコード【イメージ・ボコーリング】を使い、不可視の腕でブルマニアリスBの急所を思い切りボコったのである。
『ば、馬鹿な……』
「『アリス』を喰うためなら何でもありでやってんだろ。俺らの方からバーリトゥード(ポルトガル語で『何でもあり』)挑んでも文句無ェよなァ!」
 何でもありとはいっても、一般的なバーリトゥードでは金的の他に、眼や喉への攻撃、噛みつき等、禁止となっている行為はある。とはいえ、このリングでは別に反則ではない。カグラが文字通りの何でもありを仕掛けたって、問題はないのだ。
『だ、だからって猟兵、それもあなたみたいな女の子が、金的攻撃とか普通する!?』
「知るかバカ!」
 ブルマニアリスの抗議に、カグラは踏みつけで応じた。

 あとは一方的な展開となった。自分たちが無敵ではない事を思い知らされたブルマニアリスは、その想像力に疑問を生じてしまい、結果として戦闘能力を大幅に低下させたのである。
 カグラは今度こそ力持ちを呼び寄せ、2対2の流れでブルマニアリスAとBを思いっきり攻撃した……のだが。
「姐さん、なんでキックしかしないんです?」
「だって気持ち悪いだろこいつら、触りたくねーもん。あと姐さん言うな」
 そんなわけでメインの攻撃は力持ちにまかせ、カグラは蹴りの連発でサポートに徹した。それでもなお、惨劇と言ってもいいほどのワンサイドゲームになった。
「そうりゃ!びったんびったん!」
「そいやぁ!!」
『『げぼばらっっっ』』
 最後は力持ちが両手それぞれにブルマニアリスを持って振り回した所に、カグラが蹴りを叩き込む。これでブルマニアリスはABともに完全に意識を失い、見事なKO決着となった。

(タッグマッチ)
〇カグラ・ルーラー/〇力持ち(XX分XX秒:びったんびったんからのハイキック→KO)ブルマニアリスA●/ブルマニアリスB●

成功 🔵​🔵​🔴​

ティファーナ・テイル
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「え?!奇怪の“悪”だ…」
『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回り『神代世界の天空神』で攻撃や臭気を空間飛翔して避けつつ『天空神ノ威光・黄昏』で敵のUCを封印/弱体化させます♪
触れたく無いので『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化し『セクシィアップ・ガディスプリンセス』『ガディス・ブースト・マキシマム』『ガディスプリンセス・セイクリッド』による♥ビーム/♥弾で絨毯爆撃を仕掛けます!
『ゴッド・クリエイション』で獅子王神を創造して雄叫びで敵のハミングを打ち消します!「ガオォォ!(キショいわ!餌にもならん!)」



●コスプレ対決ではない
「……え?!」
 続いてリングに上がったティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は、対戦相手のあまりの姿にしばし絶句していたが、ようやっと口を開いた。
「奇怪の“悪”だ…」
『なにが奇怪よっ!』
 たしかにマッチョな男が女ものの体操服にブルマ、しかもアリス風に変形、というのは、きわめて珍妙なものであり、それを奇怪としたティファーナの感性は多くの者に指示されるだろう。ただ、ブルマニアリスにしてみれば、一応彼らの趣味嗜好に基づいた、ある種のプライドのこもった服装ではあるので、怒るのもまあ当然ではあった。
『大体ねえ!あんたみたいな恰好の小娘には言われたくはないわっ』
 ブルマニアリスはティファーナに指をつきつけた。
『いい若い子が、そんな布ちょっとのおへそ出しで外ほっつき歩くとか!モラルも何もあったもんじゃあないわ!その年で男に色目でも使ってるの!?』
 自分のモラルを棚に上げて他人の服装にケチつけるブルマニアリスに、さすがのティファーナも怒った。
「失礼ね!これでもボクの故郷の伝統的な衣装だよ!」
 かくして両者の戦意は戦う前から最高潮に達していた。

『行くわよっ!』
 ゴングと同時にブルマニアリスがつっかかっていった。両腕を広げ、ティファーナの華奢の体を抱きしめ……もとい、両腕で締め付けるのが狙いであった。
「させないっ!」
 怪力の相手に両腕で締め付けられてはたまったものではない。それ以前に変態に触られる事などまっぴらごめんと、ティファーナはスカイステッパーで空中を舞い、間合いを取った。
『リングに上がったのに逃げ回る気?』
「なんとでも言ってよね!従属神(レディース)!あーんど!獅子王神!お願い!」
 飛び回るティファーナの呼びかけで、小さな女神たちと、ライオンの顔をしたマッチョな神様が現れた。彼女らが敵の足止めをしている間に強化系のユーベルコードを重ね掛けし、強力な一撃必殺をくらわせるのがティファーナの狙いだった。
 従属神たちや獅子王神はブルマニアリスを見て、あからさまに嫌そうな顔をした。自分はこいつと戦わなきゃいかんの?という気持ちがありありと見て取れる。それでもティファーナの指示には従い、全員でブルマニアリスを囲んだ。
『ふん!雑魚が集まろうと、あたしのブルマの前には無力なのよ!』
 ブルマニアリスは改めて構えを取ると、奇妙なうなり声を上げた。見た目とオカマ口調に反した、ダンディな声だった。
『LuLuLu…LaLaLa…』
 何か仕掛けてくる。そう踏んだティファーナは指示を飛ばす。
「獅子王神!」
『ガオォォ!』
 キショい相手に対する怒りを込めた咆哮をあげ、獅子王神がブルマニアリスに突っ込んだ。その爪と牙で、ブルマニアリスが何かする前に妨害するのが狙いだった。
『甘いわね!あんた確かWIZ系だったわね!』
 相手がWIZ系で来るならこちらもWIZ系を使わざるを得ないと、ブルマニアリスは懐から一着のブルマアリス服を取り出した。ブルマのマニアとしては当然、ブルマも使用用、観賞用、保存用、布教用、予備用等を持っている。今回使ったのはその布教用だった。
『魔技!ミラクル☆ブルマイウェイ!』
 手にした布教用ブルマアリスが光を放ち、消滅した。そしてブルマニアリスの次の行動は確実に成功する……そう。獅子王神に組み付き、強烈なハグをかますという行動を。
『ギャギャギャラバラっっっ』
 悲鳴を上げて苦しむ獅子王神。そしてブルマニアリスが両腕を開放したと同時に、獅子王神は地に倒れ伏した。その服装はブルマニアリスと同様のブルマアリス服に変わっていた。
 目の前で起きた惨劇に声を失うティファーナに従属神たち。
『さあ、次は誰をブルマアリス服姿にしてやろうかしら?』
 気合を入れて両腕をかっぽんかっぽんさせるブルマニアリス。従属神たちは一斉にブルマニアリスを見た後、ティファーナの方を向き……
「あなたたちの力を今こそ見せる時よ!」
『……』
 硬直した顔で、改めてブルマニアリスに向き直った。

 ティファーナは逃げ回りながらユーベルコードを次々に使っていく。【天空神ノ威光・黄昏】でブルマニアリスの攻撃力を下げようと試み、ブルマニアリスが布教用ブルマアリス服を1枚消費した事で回避されてしまった後は、とにかく自己強化に集中する事にした。
 その間、従属神たちは必死で、本当に必死でブルマニアリスの足止めをする。とにかく時間を稼げばいいので、遠距離攻撃主体で取り囲み、ブルマニアリスが突っ込んできたら逃げる。これで良いはずであった。
 だが。
『無駄よ!あたしにはこれがあるわ!』
 何枚持っているのか、ブルマニアリスがブルマアリス服を1枚消費するごとに、従属神がひとり、強烈なハグをくらうことになる。
『~~~~~~!!!!』
 壮絶な表情で、またひとり、ブルマアリス服姿の従属神がリングに倒れた。
 だが従属神たちの献身と犠牲は決して無駄ではない。その間に、ティファーナは【ジェットストリーム・ラヴハート】で『正義の友情』の姿を取り速度を強化、【セクシィアップ・ガディスプリンセス】でその姿をさらに豪華絢爛かつ扇情的で魅惑的なものとし、さらにその速度を上げていく。
『って!きーっ!ますます小娘がなんかすごい恰好になってるわねっ!こうなったら、とっととあんたの事をブルマアリス服にしてやらないと、気が済まないわっ!』
「お断りだよっ!もっともっと、本気出しちゃうよ!」
 こうなったら従属神の事など構ってられないと、無理やり突っ込んでくるブルマニアリスからさらに遠ざかると、【ガディス・ブースト・マキシマム】でその神々しさに磨きをかけ、その上さらに飛行速度を上げた。
「闘神の本気と勇姿を見せるよ!」
 あとは従属神たちと共同でハート型のビームを叩き込むのみ。十分間合いは離したし、これでも安全勝ちだ、そう思っていたティファーナ。だが。
『だったら、あたしも本気の本気よっ!!』
 ブルマニアリスはどこにこんなにしまっていたのやら。ブルマアリス服を5着同時に出したのだ。どうやら布教用のみならず、保存用や予備すら総動員する事にしたらしい。ブルマアリス服が5着同時に光と消え、ブルマニアリスが宙を舞った。超高速で飛ぶティファーナを、さらに上回る速度で一気に間合いを詰める。
「……え?なに、それ」
『ついに捕まえ』
 ティファーナの目の前に迫ったブルマニアリスが両手を広げる。逃げられない……が、ティファーナには最後の手段がまだ残っていた。
「か、神代の天空宮殿よ!」
『!?』
 ティファーナは危ういところで、味方の元に一瞬で移動する【神代世界の天空神】を使い、強烈極まるベアハッグと、ブルマアリス服着用の恐怖から、きわどいところで逃れたのである。
 そして結果として、自分は従属神たちの近くにいる。ブルマニアリスは上空にいる。最高のシチュエーションが、そろった。
「くらっちゃって!神様の懲罰だよ!」
 ティファーナの必殺【ガディスプリンセス・セイクリッド】が発動した。ティファーナ本人と、従属神たちが、ハート型のビームを一斉にブルマニアリスめがけてぶっ放した。
『くっ……ブルマアリス服!足りて!』
 ブルマニアリスは最後の手段に出た。自分に残された最後のブルマアリス服、すなわち今自分が着用している1枚を消費する事で、攻撃を回避し、再度ティファーナに接近する事を試みたのだ。ブルマニアリスが、いや、彼の着用するブルマアリス服が、光に包まれ……

『!!!!!!』

 光は消えた。転移はなされなかった。ブルマアリス服1着では、到底足りなかったのだ。そして代わりの光がブルマニアリスを包み込んだ。いろいろな怒りのこめられたハート型のビームが、ブルマニアリスを飲み込んでいったのであった。

〇ティファーナ・テイル(XX分XX秒:ガディスプリンセス・セイクリッド→KO)ブルマニアリスC●

成功 🔵​🔵​🔴​

魔女・ウィッチ
箒に乗り登場

くくっ!偉大なる魔女である我が相手をしてやるのじゃ…!
『にゃー!』

って、きゃああーっ!?変態変態変態!ド変態!!THE☆ヘンタイ!!!(ツンデレ系萌アニメ声で罵倒するロリ美魔女)

超究極天才最強美少女大賢者のあたしが、あんたらみたいなのと取っ組み合いなんかする訳ないって、一目見て分かるでしょ!

灯箒に騎乗したまま果実を齧って大いなる力を得て、法力の無限の魔力を使用!
従環から全長5mの使い魔、絶対物質ブラキオンゴーレムを召喚!
更に導書を開き、揮杖の欲望具現術でゴーレムに戦闘力増強魔法を掛けて支援するわ!

ゴーレム!力持ちと一緒にびったんびったんやっちゃいなさい!
《ふんがー!》

UCでトドメ!



●理にかなった戦術ではある
 激戦が続き、さて次は誰が行くのか、と盛り上がる力持ちたち。そこに、
「きゃあああー!!」
 叫び声は空から聞こえてきた。何事かとすべての力持ちとブルマニアリスたちがその方を向く。その方にいたのは……
「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、箒に乗った女の子だ!」
 誰かは知らないが、おそらく参加者なのだろうと判断し、あまりに派手なパフォーマンスでの入場に盛り上がる力持ちたち。だが、その当の本人、魔女・ウィッチ(偉大なる魔女のサーガ・f33446)はそう盛り上がってもいられなかった。
「止まって止まって止まってえええええええ」
 ずどーん。リングに着陸した。すさまじい音がしたし、真っ逆さまに落下したように見えるのだが、着陸は着陸である。少なくとも本人はそう言い張ることだろう。
「いてて……まったく、言う事聞かないホウキなんだから」
『ちょっと、あなた、大丈夫?』
 頭を抱えながらようやっと起き上がったウィッチ、よりにもよって既にリング上にスタンバイしていたブルマニアリスDにすら、ちょっと心配そうな顔をされていた。心底痛そうな顔をしていたウィッチだったが、周囲の視線に気が付くと、突然きりっと顔を引き締めた。そして対戦相手に向け、びしっ!と。
「くくっ!偉大なる魔女である我が相手をしてやるのじゃ……!」
『にゃー』
 口調を偉大仕様にして決めた後は、エレメンタルロッドの化身である魔女黒猫がウィッチに合わせて鳴き、そしてひとりと一匹は改めて相手を見据え……
「って、きゃああーっ!?」
 絶叫した。
「変態変態変態!ド変態!!THE☆ヘンタイ!!!」
 そりゃもう、男をバカバカと罵る声が実に似合いそうなアニメ声であった。いまだ10歳の少女から放たれるそれは、ある種の人にとってはむしろご褒美ですとなりうるものであったが、残念ながら目の前の変態はそれには当てはまらなかったようで。
『って!失礼しちゃうわねまったく!小娘の分際で人を変態呼ばわりするなんて、親からどういう教育受けてきたのかしら?』
「……」
 きわめてありがちな、何気ないブルマニアリスの一言は、実はウィッチにとってはかなりクリティカルなものだったが、ウィッチは頬を少し震わせただけで、どうにか耐えた。
「そこの力持ち、セコンドやんなさい」
「喜んでー」
 ブルマニアリスに怒りをぶつける代わりに、ウィッチはアニメ声に魅了されたと思われた力持ちを招き、リング下に控えさせた。怒りを発散させるチャンスなら、戦いの中でいくらでもあるのだ。

 ゴングと同時に、ウィッチはランタンをぶら下げた箒に跨ると、対戦相手もデスマッチなリングも無視して高々と空へと舞い上がった。
『って!あんたもさっきのと同じで空飛ぶのね!』
「当たり前よ!」
 あくまでプロレス技にこだわるブルマニアリスは激高したが、ウィッチは全く取り合わない。
『卑怯者!降りてきなさいよ!』
「超究極天才最強美少女大賢者のあたしが、あんたらみたいなのと取っ組み合いなんかする訳ないって、一目見て分かるでしょ!」
 格闘技の試合の体裁こそとっているが、これはルール無用の戦いだ。わざわざ相手の得意分野に降りて戦う必要など、どこにもないのだ。そもそも、ただでさえ変態と取っ組み合いなどしたくはないものである。
 相手がこちらに手を出す手段がないとみるや、高度を保ったままウィッチは魔女果実(ウィッチフルーツ)を取り出し、一口かじる。たちまち魔力が体中を循環するのを、ウィッチは感じた。あとは上がった魔力で様々な大魔法を繰り出し、決着をつけるだけ……
『仕方ないわね、これはやりたくなかったけど!カモンパイプ椅子!』
 ブルマニアリスの指示に、セコンドをつとめるブルマニアリスがリング上にパイプ椅子を投げ込んだ。プロレスの凶器としてはきわめてポピュラーなものである。
「なに、それをどうする気かしら?」
『こうするのよっ!』
 ブルマニアリスはパイプ椅子を大上段に構えた。上空にいるウィッチに投げつけようというのだろうか。いくらオウガであってもそれは無理だろう。ウィッチがそう判断するのも当然だったかもしれない。
 だが、ブルマニアリスは変態であった。変態だからこそできる技があるのだ。
『魔技・ミラクル☆ブルマイウェイ!』
 ブルマニアリスがいつの間にか持っていたブルマアリス服が一着、光の粒子となって消えた。これはブルマアリス服を代償にする事で、不可能を可能にする技であった。つまりである。
『うおりゃああああ!』
 パイプ椅子を投げて、上空にいるウィッチまで届かせる事も可能になるのだ。
「嘘ぉ!?」
 これにはさすがのウィッチも驚いた。先だって溜めた法力を使い、辛くも飛んできたパイプ椅子を防御したが、これを連続でくらってはさすがに魔力がいくらあっても足りたものではない。
(早いうちに決着付けた方が良さそうね)
 ウィッチは溜めた魔女法力を一気に解放した。魔力を受け、指にはめた魔女従環(ウィッチリング)が光り輝く。
「出でよ!絶対物質ブラキオンゴーレム!」
《マ゛ッ!》
『って、あなたも援軍呼ぶタイプの猟兵だったのね!』
 現れ出でた、全長5メートルのゴーレムには、さすがにブルマニアリスも驚いた。だがゴーレムの巨体も、その戦意を折る事はできなかった。
『まあいいわ。どんなにデカくても、地上にいる相手ならむしろやりやすいわ!それに、あんたもこれだけのデカブツ呼び出すのに、どれくらいの魔力を使ったのかしら?こいつ先にぶっ飛ばして、後であなたをゆっくり料理する事にするわ』
「ゴーレム!びったんびったんやっちゃいなさい!」
《ふんがー!》
『ぬおおおおおお』
 ウィッチの指令を受けたゴーレムと、ブルマニアリスが真っ向からぶつかりあった。本来なら全く問題にならない体格差だったが、そこはブルマニアリス、既に数枚のブルマアリス服を消費していた。
『おんどりゃああああ』
《ふんがあああああー!?》
 ゴーレムの巨体が舞い、リングに倒れ伏す。
「んもう!何やってんのよ!」
 まさかのゴーレムの醜態に怒るウィッチ。だが怒っているだけではいられない。こういう時のために、力持ちをセコンドにつけていたのだ。
「あんたも手伝いなさい!」
「おう!」
『新手ね!何人いようとブルマの前には敵じゃなくってよ!』
 力持ちと起き上がったゴーレムの両方を相手にしようというブルマニアリス。
 むろんウィッチもただふたりを向かわせただけではない。魔女揮杖(ウィッチタクト)を振るい、魔女導書(ウィッチグリモアール)に書かれた強化術で力持ちとゴーレムの両方を強化したのである。ブルマニアリスはブルマアリス服を消費し、強化されたゴーレムと力持ちをもろともなぎ倒そうとする。難易度の高い行為に、ブルマアリス服が次々と消えていく。
 拮抗していたように見えた戦いは、やがてブルマニアリスの力がゴーレムと力持ちを上回ろうとしていた。だがゴーレムと力持ちが稼いだ時間は無駄ではなかった。その間、ウィッチは攻撃魔法のための長い詠唱を行っていたのである。詠唱時間の長さに応じて威力が上昇するユーベルコードを。
「必殺!アルカナ・ブラスター!」
 最後の魔力を全て使い、いろいろな怒りを込めに込めまくってウィッチが放った破壊光線は、ゴーレムと力持ちを潰そうとしていたブルマニアリスの無防備な背中に直撃した。
『のおおおおおおお』
 それでもブルマアリス服が十分にあれば、ブルマニアリスはこの攻撃を耐えきり、ゴーレムと力持ちをなぎ倒し、ウィッチのところまで高々と飛翔して必殺のプロレス技を決める所まで行ったかもしれない。だが、ブルマニアリスの貯蔵は、もはや尽きていた。
「今よ!」
「おおう!」《ふんがー!》
 完全に動きを止めたブルマニアリスに、ゴーレムと力持ちのダブルびったんびったんが見事に決まった。ここから立ち上がるだけの力は、ブルマニアリスには、なかった。

〇魔女・ウィッチ(XX分XX秒:アルカナ・ブラスターからのダブルびったんびったん)ブルマニアリスD●

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコリネ・ユーリカ
この村が再び狙われるなんて!
仲良くなった皆(119人はいるとおもう)を猟書家の駒にはさせない
箱舟戦で着用したリング衣裳を手に駆け付け
故郷に帰ってきた娘くらいの親しさで力持ちに共闘を持ち掛ける

騎馬を組む敵に対し此方も人数を揃えて騎馬戦を
奪うのは鉢巻でも帽子でもなくあのブルマアリス服!
彼等の矜持を破って敗北を味わわせてやるの
マスク剥ぎや髪切りデスマッチに近い屈辱を感じる筈よ

勿論、私も大事なリング衣裳を懸けるわ
奪れるものなら奪ってみなさい!と言いつつ接近戦は仕掛けず
シャッター棒を高枝切鋏的にぎゅーんと伸ばして体操服をちょきん!
何でもアリだもの、武器だって使うわ
文句あるならブルマもちょきんよ!(悪役顔



●機械翻訳なのでこれで正しいかは正直自信はない
「この村が再び狙われるなんて!」
 チャンピオン・スマッシャー再来と聞き、かつてこの村でチャンピオン・スマッシャーと戦い、力持ちの愉快な仲間たちと友情を結んだニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)が再び駆け付けたのは至極当然の流れであった。
「おう!ニコリネ!」
 その姿を認めた力持ちが、親し気にニコリネに声をかける。
「また来てくれたのか!」
「当たり前じゃない!」
 ニコリネは既にリングコスチュームに身を包んでいた。実に気合の入った様子だ。当然だろう。前回親しくなった力持ちはひとりやふたりではない。本人に加えて118人の分身と組んでくれた力持ちは119人いるのだ。彼らが戦いに敗れてチャンピオンの手下となる事など、なんとしても阻止しなければならなかった。
「ということで、また組んでくれない?」
 ひさしぶりに故郷に戻った娘が父親にお願い事をするような感じで、リラックスした態度で力持ちに呼びかけるニコリネ。むろん、力持ちたちに異論などない。
「じゃ、あいつら、ぶっ飛ばしてやりましょ!」
「おーけいニコリネ……じゃなくて、フラワー!」
 リングに向かう途中で、ニコリネの心は既に一個のプロレスラーになっていた。もはや彼女はニコリネではない。フラワー・ザ・グレートであった。

『来たわね』
 リング上では既にブルマニアリスふたり、EとFが待ち構えていた。
『なかなか気合入った服装してるじゃない、さしづめコスチュームの頂上対決といったところかしら』
 ニコリネの服装を見て、にやりと笑うブルマニアリス。その表情が言外に、自分たちのブルマアリス服の方が上だと雄弁に語っていた。
「あなたたち、その恰好にずいぶんと拘りあるみたいね」
『当たり前じゃない、いわばこれはあたしたちの命よ!』
「それなら」
 ブルマニアリスの言葉に、ニコリネもまた、にやりと笑い返す。そして。
「この戦いに私はこのコスチュームを賭けるわ!」
『な!なんだってー!!』
「だから!あなたたちもそのブルマを賭けなさい!」
 プロレスラーの命ともいえるコスチュームと、ブルマニアリスのアイデンティティであるブルマアリス服を賭けて戦うという、ニコリネのとんでもない提案。だが。
『おうよ!やったろうじゃないの!あたしたちのブルマ魂!存分に見せてやるわ!』
 意外にあっさり受けたブルマニアリスたち。プロレスラーは多くの場合、技を逃げてはいけないのである。

 かくしてこの試合は、異例すぎる『ディスフラス(disfraz:スペイン語でコスチュームの意味)・コントラ・ポロロス(pololos:スペイン語でブルマの意味)・マッチ』となった。
「……俺は何を賭ければいいんだろう」
 力持ちがそうつぶやいたとか。

かくしてゴングが鳴り響く。
『早速行くわよっ!必殺!ブルマニアリス・イマジネイション!騎馬戦!』
 魂ともいえるブルマアリス服を賭けているだけあって、ブルマニアリスふたりは最初から本気だった。ユーベルコードを発動すると、ブルマニアリスが着用するブルマアリスがよりゴシック的な感じになり、さらにFがEを肩車するフォーメーションをとった。ふたりで騎馬戦というと、当然こんな感じである。到底戦闘できるとは思えない恰好だが、その実力は先刻の試合で惜しくも敗れたとはいえ証明済みだった。
 とはいえ、一度は見せた戦術。ニコリネには対策があった。
「こっちも騎馬戦で対抗よ!」
「え?」
 力持ちは戸惑った。むろん力持ちだからこそ力持ちを名乗っているわけなので、ニコリネを肩車しても普通に動けるとは思うが、その姿勢で戦闘ともなると、どうだろうか?だが力持ちの懸念に対し、ニコリネは回答を用意していた。
「あとふたり来て!」
「「おうよ!」」
 そう。この戦いはルール無用なので、別に追加の力持ちを呼び寄せ立った何も問題はない。1人で支えるのが不安なら、あとふたり連れてきて、4人で組む正統派な騎馬戦のポジションをとれば良いのだ。
 一方のブルマニアリスEFは、増援のブルマニアリスGおよびHを呼び込む事はしなかった。
『ふん!ふたり増やしたぐらいで、あたしたちの無敵の構えに勝てるとは思わない事ね!』
 ブルマこそ最強。その自信から来る想像力こそ、騎馬戦フォーメーションの強さであり、援軍を呼ぶなど、自らの自信、想像力を裏切る行為だった。ふたりがやることはひとつ。
『そのコスチュームはぎ取って大昔の芸能人水泳大会みたくにしてやるわっ』
 そのままの勢いで突っ込む事だった。対するニコリネは、当然それにまともに付き合ってはいられない。
「今はポロリやっていい時代じゃないわよっ」
 勢い良く突っ込んでくるブルマニアリスを回避、さらに間合いを取った。ブルマニアリスたちはそのまま有刺鉄線に突入、地雷に触れて爆発を起こすも、爆発の反動を利用して再度突撃してくる。
『自分たちからこの形式挑んできといて逃げるんじゃないわよっ!』
「なんとでも言いなさいな!このコスチューム、奪れるものなら奪ってみなさい!」
 その後も、ニコリネは猛烈な勢いで突撃をかましてくるブルマニアリスからひたすら逃げ回った。むろん、これはただ逃げているわけではない。逃げながらも、ニコリネは必殺の一撃に備え、相手の動きを冷静に見極めていたのである。
 そして。
「そろそろ、これを使う時が来たみたいね!」
 ニコリネが取り出したのは、1メートルちょっとの棒の先端がフック状になっているものだった。もともと移動販売車で花屋やってるニコリネが、シャッターを下ろすために使用するシャッター棒である。
『よーやっとやる気になったようね!でも、そんな棒切れ一本で状況は変わらないわよ!』
 むろん、そんなものにひるむブルマニアリスではない。今度こそニコリネを捕らえ、必殺の一撃をくわえるべく、何度目かわからない突撃を敢行した。
 そして今度はニコリネは逃げない。両手でシャッター棒を握り、真っ向からこれを迎え撃つ構えだった。
「まあ確かに、あなたたちをこれで殴ったって、通じないかもね」
 迫るブルマニアリス。それを冷静に観察するニコリネ。これまで見てきた相手の動きから次の動作を予測し、そして取るべき行動を考え……
『ぬおおおおおおお』
「でもそれはそれで、手はあるのよ!」
 ニコリネの叫びに合わせ、孫悟空の振るう如意棒のごとくにシャッター棒がその長さを増すと、肩車の上にいたブルマニアリスEの体を捉えた。だがブルマニアリスの突撃は止まらない。ニコリネはそれを紙一重でどうにか回避した。
『ふん!やっぱりね!そんな棒切れごときで、あたしたちをどうにかすることなんか、できなかったわね!』
「それはどうかしらね」
 勝ち誇るブルマニアリスに対し、ニコリネは、今までで一番悪い顔をした。
『どういうことよ!』
「あなたの体を、よく見てみなさいな」
『そんな事言われたって、痛くもかゆくもな……!?』
 肩車の上にいたブルマニアリスEが絶句した。
『って何があったの……え!?』
 Eに起きた事を察知し、Fもまた、すさまじい形相になった。
 ブルマニアリスEの体には、確かに傷のひとつもなかった。誰の目にもそれはすぐに分かった。なぜなら、ブルマニアリスの肉体が、布地を介さず、直接空気に触れていたからである。
『あ、あたしのアリス服が……』
「探してるものはそこにあるものかしら?」
 むちゃくちゃ悪い顔でニコリネが指さしたリング上の地点に、確かについ先刻までブルマニアリスEが着ていた服が落ちていた。

 ニコリネのシャッター棒はただシャッターを引き下げるだけの棒ではなかった。ユーベルコード【Rude】により、自在にその先端を変化させ、目標に突き刺したら抜去がきわめて困難なものとなる。
 ニコリネは、シャッター棒の先端をハサミに変えたのだ。そしてブルマニアリス本人ではなく、アリス服の方を切断したのだった。

『な、な、な……なんてことをッッッ』
 命と同じくらい大切なアリス服を失ったとあっては、さすがのブルマニアリスも狼狽を隠せずにいた。ブルマアリス服を狙い、ブルマニアリスの矜持を破って敗北を味あわせる事。これこそがニコリネの狙いだったのだ。
「文句あるならブルマもちょきんよ!」
 高枝切り鋏のようになっているシャッター棒を握りしめ、悪い笑顔を浮かべるニコリネ。
『お、おのれぇ』
 ブルマニアリスたちは歯噛みしたものの、こうなってはもはや想像力で無敵を保つ事が不可能なのは、彼らにもわかっていた。
 ほどなく戦いは、ブルマニアリス側の戦意喪失という形で、幕を閉じた。

【ディスフラス・コントラ・ポロロス・マッチ】
〇ニコリネ・ユーリカ/力持ち(XX分XX秒:TKO)ブルマニアリスE●/ブルマニアリスF

成功 🔵​🔵​🔴​

ルード・シリウス
デスマッチか……。嗚呼それならリクエストだ。
ノーロープ地雷爆破インフェルノテキサスチェーンデスマッチ。
互いの手首を鎖で繋ぎ、ロープの代わりに炎でリング全体を覆い、リング全域には地雷、決着はどちらかが死ぬまで終わらせない……まぁ、これでも温いかもしれねぇが、リクエストしたデスマッチのリング設営を頼もうか。

嗚呼そういやプロレスだっけか。なら、こっちもそれに倣ってトドメはプロレス技で締めようか。
予め、試合前に血晶飴を喰らい能力強化。
試合時は怪力で力比べからの相手ごとチェーンを振り回し、そこから自分の方に引き付けてからの掴撃の一撃からのスープレックスで締めてみる



●やりすぎくらいがちょうどイイ!!
「デスマッチか」
 いまだ前の試合の興奮さめやらぬ中、現れたルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)は、力持ちたちに声をかけた。
「なあ、こんなデスマッチやってみないか?」
「……あんた、正気か?」
 それを聞いた力持ちたちは、一様にこんな感じの対応だった。当然だろう。なにせルードが提案したデスマッチというのは……説明は後回しとしよう。
「やっぱりそうなるよな」
 ただ、ルードにとってこの対応は想定の範囲内だった。むしろ、これで力持ちたちがリングから遠ざかってくれれば、結果的に力持ちたちを守る事になるので好都合といえた。
「安心しろ、リングには俺ひとりで上がる。お前たちは設営を手伝ってくれればいいから」

『何をするつもりかしら』
 ブルマニアリスたちが見守る中、力持ちが【もっと愉快な仲間たち】を使い、ルードの指示通りにリングの改造が開始された。
 まずロープ代わりに張り巡らされていた有刺鉄線を取り外す。括りつけられていた地雷も外すと、これはリング中に大量に配置する。そして力持ちが火のついた松明を持ち、リングに近づけると……
『オウマイ!』『ホーリーシット!』
 これにはさすがのブルマニアリスも騒ぎ出した。リングの2方向が炎に包まれたのだ!それを見て、いち早くリングに上がったルードがブルマニアリスたちを挑発する。
「どうだ!このノーロープ地雷爆破インフェルノテキサスチェーンデスマッチ!受ける勇気あるやつはいるか?」

 デスマッチの中でも、リングを炎に包み込むインフェルノ(ファイヤー)デスマッチは特に異質なものとして知られている。一番最初にこれを行った日本の団体は、燃え盛る炎のために選手全員が酸欠状態となって試合にならなくなってしまった。以降も様々な団体が工夫をこらし、この恐ろしい試合を行っている。時として大やけどを負って入院を余儀なくされる選手も出る等、本当に危険な試合形式である。良い子のみんなは決して真似をしないように。Don't try this at home.
 くわえて地雷である。本来『有刺鉄線電流地雷爆破デスマッチ』という場合、地雷といっても本当の地雷ではない。爆弾に触れると爆発するのが地雷ぽいというだけである。それがこのデスマッチでは、文字通り本物の地雷をリング上にばらまいたのだ。さすがにここまでする団体はないと思われる。良い子のみんなは決して真似をしないように(2回目)
 くわえてテキサスチェーンデスマッチである。チェーンデスマッチとは、互いの手首を鎖でつないで行う形式であり、チェーンの使い方が勝敗を左右する。さらに反則なしでどちらかの死をもって勝敗が決まるテキサスデスマッチ(本来は反則なしのKOかギブアップのみで決着)も導入している。繰り返すが良い子の(3回目)

『上等じゃないの!』
 だがプロレスラーは恐れる事を知らない。挑まれた試合形式はとりあえず受けてから考える。これがデスマッチレスラーの生き方なのだ。そんなわけでブルマニアリスGがこの恐るべきデスマッチに名乗りを上げた。
『いくら猟兵であっても、デスマッチではあたしたちの方が上である事を見せつけてあげるわ!』
「お、いい度胸だぜ、その勇気だけは買ってもいいか」
 赤黒の『血晶飴』を口に放り込みながら、ルードはブルマニアリスに応じた。
『そっちこそ、あたしのブルマ根性見てびびるんじゃないわよ!』
「それは買いたくねえぜ」

 ともあれ。
 両者の手首が鎖でつながれ、リングの残り2方向もまた、炎に包まれた。こうなっては、このリングから生きて戻れるのは、ルードとブルマニアリスのどちらか片方だけなのだ。

 ゴングが鳴った。
『一気にケリをつけるわよっ!』
 ブルマニアリスは手首にくくりつけられたチェーンを持つと、思い切り引っ張った。これでルードの態勢を崩しつつ近くに引き寄せ、一気に技をかけようという狙いだった。だが。
「悪くない考えだが、甘いぜ」
『なんですって?』
 ルードは上背はある方だが筋肉量ではブルマニアリスに劣る。それなのに、ブルマニアリスにあっさり引かれる事を許さない。それどころか、チェーンを引く力はブルマニアリスに決して負けていなかった。もともと体格に見合わぬ怪力の持ち主である上に、試合前に食べた血晶飴が、ダンピールであるルードの力をさらに強化させていたのである。
 さらにルードの内にある第二の心臓『暴食の血核』が鼓動を開始する。全身に血液が行きわたり、その力がブルマニアリスを上回った。
『ば、馬鹿な!?』
 相手を引きずるはずが逆に引きずられ、ブルマニアリスは戸惑いの叫びを上げた。
「どうやら、一気にケリをつけるのは、俺の方だったようだな」
 ルードはチェーンをつけた方の腕でブルマニアリスを引き寄せると、空いている側の腕を構えた。必殺の【掴撃・暴食獣咬】で秒殺で決める狙いだった。
 だが。
『なめてんじゃないわよ!ブルマの底力見せてあげるわ!ブルマニアリス・イマジネイション!』
 ルードに血晶飴や暴食の血核があるのと同様、ブルマニアリスにも自己強化の手段がある。ブルマニアリスの体が光り輝き、シルエットと化したブルマニアリスの服がはじけ飛んだ……ように見えた。そこから新たな服が装着され、光がおさまった時には、ブルマアリス服がさらにファンシーでゴシックな感じに変わっていた。
「ふん」
 見た目こそ珍妙極まるが、ルードの目に油断はない。それはチェーンを引っ張る力が明らかに強まっていた事にも表れていた。ブルマへの執着心に基づく想像力により、ブルマニアリスの身体能力は間違いなく強化されていたのである。
「パワーはあるかもしれないが、なら、これはどうだ?」
 ルードはチェーンを振り回た。ブルマニアリスはバランスを崩し、リング上に転倒し……轟音を立てて爆発した。地雷を踏んだのだ。だがブルマニアリスは何事もなかったかのように立ち上がった。
『ふん!大した事ないわね!』
「なるほど、強くはなっているようだな」
『今更気が付いてももう遅いわよ!』
 ブルマニアリスはルードに突っ込んできた。もはや相手を引き寄せてバランスを崩し、などという小細工は不要とばかり、組み付こうとする。
『うおおおおおお』
「近づいてくれるのか、むしろ好都合だ」
 ブルマニアリスはルードに組み付くと、一気にリングサイドまで押し込んだ。四方の炎でルードを焼こうというのである。だが、密着状態はルードの距離でもあった。両腕が、それぞれブルマニアリスの両肩をとらえた。このまま握りつぶす事ができればルードの勝利は確定するだろう。だがブルマニアリスの肉体は思いのほか強い。ルードの怪力をもってしても、容易には傷つくものではなかった。
『このまま自分の選んだ試合形式で焼け死ぬがいいわ!』
 リングサイドで燃え盛る炎の熱を背中で感じつつ、絶体絶命の危機の中で、だがルードは前の試合を思い出していた。あの試合でもブルマニアリス・イマジネイションを使われたが、たしか……ルードは両手を離した。ブルマニアリスの肉体ではなく、そのブルマ服を掴んだのである。
『なあに?つかめさえすれば投げられるとでも思った?実に甘いわね』
「誰がお前を投げると言っ、たぁ!!」
 そして全力で掴むと、思い切り引きはがした。
『なっ!!』
 ブルマニアリスから、アリス服を、である。
『あ、あ、あなた、ブルマニアリスからアリス服をひっぺがすとか、なんという外道な!』
「うるせえ」
 思わず体勢を崩したブルマニアリスに、今度こそルードの【掴撃・暴食獣咬】が命中する。アリス服を失った事で想像力を低下させたブルマニアリスは、その強靭さを低下させており、握撃に抵抗する力はなかった。
『うぎゃあああああああ』
 両腕を握りつぶされ悶絶するブルマニアリス。一方で握りつぶした側は涼しい顔をしていた。この試合は文字通りのデスマッチなのだ。
「嗚呼、そういやプロレスだっけか。なら、こっちもそれに倣ってトドメはプロレス技で締めようか」
 ルードはブルマニアリスに正面から組み付くと、背中を反らすように後方へと放り投げた。必殺のキャプチュードをくらい、ブルマニアリスは頭からリングに落ちると、そのまま炎の中に落ちていった。

【ノーロープ地雷爆破インフェルノテキサスチェーンデスマッチ】
〇ルード・シリウス(XX分XX秒:KO)ブルマニアリスG●

成功 🔵​🔵​🔴​

キャロライン・メイ(サポート)
ダークセイヴァーの貧民街の生まれ。生きるため、悪事に手を染めてきた。ある日商人から一振りの剣を盗み出す。剣は呪われており、その邪悪な魔力によって、呪われし黒騎士へとその身を堕とす。その冷酷な様を人々はアイスドールと呼ぶ。

自身の半生に強いコンプレックスを持ち、心の中では常に自己を否定し続けている。死に場所を探しているかのような言動をとることがある。

ダーインスレイヴ~漆黒の魔剣による強力な一撃。
ライフドレイン~魔剣の血塗られた鉄鎖が無数の棘に変形し敵に突き刺さる。


※エロやグロNG
※5人以上まとめたリプレイNG



●そういやこれプロレスではなかった
『これはまずいわ』
 度重なる敗戦に、さしものブルマニアリスたちも焦りが見えてきた。これ以上の敗北は、玉座におわしますチャンピオン・スマッシャーがお怒りになりかねない。最悪の事態を避けるためには、勝利しかない。
『次の相手は誰?早く出てきなさいよ!』
 リングに上がったブルマニアリスHが叫ぶ。当然、続けざまの勝利に沸く力持ちたちも挑まれたケンカを買う準備は万全である……実際に勝利しているのは猟兵なのだが、まあ、ささいな問題である。
「次こそ俺の出番じゃー!」「なんのわしが行くぞー!」
 気合入りまくりな力持ちたち。だが。
「ここは私に任せてもらおう」
 キャロライン・メイ(アイスドール・f23360)が挑戦者として名乗り出た瞬間、場は一瞬で静まり返った。キャロラインの周囲を威圧するような雰囲気、漆黒の鎧、そして右手に持つ、あまりに禍々しすぎる大剣。これまでリングに上がって来た誰とも違いすぎる空気は、限界近くまで燃え滾った力持ちたちの戦意を強烈に冷やし、氷点下にまで押し下げるのに十分な冷たさだった。
「異存はないな?」
「どうぞどうぞ」
 リングに上がる意思を示したキャロラインに、力持ちたちはただ道を開ける以外に選択肢がなかった。

『なるほどね』
 呪われた大剣に漆黒の鎧姿という、戦場には相応しいが、草も木も白いマットで三本ロープのジャングルにおいてはかなり違和感を感じさせる相手を見ても、ブルマニアリスは動じる事がなかった。プロレスの形式はとっているが、もとよりここはルール無用であり、武器の持ち込みも当然想定されてしかるべきなのだ。
『そんな御大層なオモチャ持ち込めば勝てるとでも思ったのなら、アタシもずいぶんとなめられたものね』
 武器を持った相手なら凶器を使わざるを得ないと、ブルマニアリスもまた武器を持ち込んでいた。金属バットに有刺鉄線を巻きつけた、バットなのにおおよそ野球には使えそうにない、人を殴る以外の用途が思い当たらないものであった。
「別にそんなつもりはない」
 キャロラインとしては、素手での戦いで勝てそうにないから武器を持ち込んだ、などと言われるのは不本意の極みだった。とあるきっかけて手に入れた漆黒の剣『ダーインスレイヴ』はキャロラインを蝕む呪いであり、同時に彼女にとって最強の武器だった。いわば良くも悪くも今のキャロラインを構成するもっとも重要な成分であり、戦いにおいてこれを使わない事は到底ありえない事であった。ただ、そんな事はいちいち説明する必要などなかった。キャロラインがすべき事は、呪いの剣を抜き、眼前の相手を斬り捨てる事だけだった。
「かかってくるがいい」
 かくしてこの試合、キャロラインは漆黒の剣、ブルマニアリスは有刺鉄線バットをそれぞれ公認凶器とするデスマッチとあいなった。形式的な話ではあるのだが。
『言われなくても行くわよ!』
 有刺鉄線バット振りかざし突っ込んでくるブルマニアリス。キャロラインはバットにダーインスレイヴを合わせた。バットを斬り、返す刀でブルマニアリスを斬り捨てる狙いだった。だがブルマニアリスによって振るわれているためか、有刺鉄線バットは存外固く、魔剣の力をもってしても斬る事ができない。
「……ただの鉄の棒ではないようだな」
『当たり前でしょ!伝説のデスマッチレスラーが考案した武器なめてんじゃないわよ!』
 改めてキャロラインはダーインスレイヴを構える。パワーとスタミナのある相手、長引くと不利になるだろう。早めに決着をつけたい。キャロラインはそう考えていた。
「……これでもくらえ!!」
 キャロラインは今度は通常の攻撃ではなくユーベルコードによる一撃を繰り出した。呪われし黒剣による一撃は、敵を確実に破壊する事だろう……並の相手ならば。
『させないわ!ブルマニアリス・イマジネイション!!』
 変身シーンすら省略し、ブルマニアリスの改造体操着が瞬時にアリス度を増す。それにより有刺鉄線バットも強化され、素早く振るわれたそれがダーインスレイヴをはじき返した。返す刀ならぬバットが振るわれ、キャロラインは危うくそれを回避する。
 その後、キャロラインは防戦一方となった。ブルマニアリスの戦いのベースはあくまでプロレスであり、武器を使った戦いは本来は素人だっただろう。だがプロレスにおける凶器攻撃の経験、そしてブルマに対する執着に由来する想像力で大幅に強化された身体能力が、素人が棒を振り回すだけというレベルの攻撃を達人レベルの戦闘力にまで引き上げていたのである。
『ほらほらほらほら!どうしたのどうしたの!逃げてばかりじゃ戦いにならないわよ!』
「なんとでも言うがいい」
 キャロラインはブルマニアリスの挑発には乗らなかった。真っ向から戦って勝ち目のない相手に自分から突っ込むのは自殺行為だ。防御に徹して隙を伺う事で初めて勝利への道筋が見えてくる。そして先の試合。あの時ブルマニアリス・イマジネイションを使った相手に、猟兵はどう戦ったか。
「魔剣よ!」
 やがて答えは出た。キャロラインは逃げるのをやめると、黒剣を構えた。
『ようやっとやる気になったようね!上等だわ!』
 真正面から突っ込んでくるブルマニアリスに、キャロラインはダーインスレイヴを振るった。ただ、ブルマニアリスに突っ込んでいったのは剣そのものではない。
「血を欲するならその力を貸せ!」
 魔剣に絡む鎖がほどけると、それが無数の棘と化し、ブルマニアリスに向かっていったのである。ユーベルコード【ライフドレイン】である。ブルマニアリスはバットを振るうが、大剣と違い不規則に動く鎖は容易に捉えられるものではない。またそれがひとつではなく大量に飛んでくるのだ。延ばされた棘が、ブルマニアリスの体に突き刺さる。
『ふん!こんなもの、有刺鉄線に比べれば、痛くもかゆくもないわ!』
 棘が刺さり、全身から血を流しつつも、無敵状態が続くブルマニアリスは平気な顔をしていた。だがそれはキャロラインにとっては想定の範囲内だった。彼女の狙いは、ブルマニアリスへのダメージではない。
『今度はこっちの番よ!』
「残念だが、貴様の番は来ない」
 キャロラインはライフドレインを解除した。棘がもとの鎖となり、魔剣へと戻っていく……
『……なっ!?』
 鎖が刺さっていた、ブルマアリス服と一緒に。
「……」
 手元に来たブルマアリス服を、キャロラインは嫌悪のこもった目で一瞥すると、無言でぽいと投げ捨てた。
『や、や、や、やってくれたわねえ』
 命と同じくらいに大切なブルマアリス服を奪われた挙句にぞんざいに扱われ、ブルマニアリスは怒り心頭となった。
『ブルマを大切にしないやつは死んでしまいなさい!!』
 その勢いのままに有刺鉄線バットを振るい、真正面からキャロラインに突撃するブルマニアリス。だがその姿は先ほどまでのものと違い、勢いに任せた素人の突撃になっていた。
「体勢が崩れているな、そんな様子では、到底私には勝てん」
 冷徹に言い捨てると、キャロラインは再度、ダーインスレイヴを振るった。それは狙い過たず、ブルマニアリスの急所を捉える。 
『げぼばぁ!!』
 今度こそ、呪われた大剣の一撃をまともに受けたブルマニアリスは、もはや立ち上がる事はなかった。

【公認凶器デスマッチ】
〇キャロライン・メイ(XX分XX秒:KO)ブルマニアリスH●

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『チャンピオン・スマッシャー』

POW   :    グローリーチャンピオンベルト
自身の【チャンピオンベルト】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    キス・マイ・グローリー
【プロレス技】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
WIZ   :    アイ・アム・チャンピオン
自身の【攻撃を回避しないチャンピオンとしての信念】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●チャンピオン登場
『……』
 ついに玉座のチャンピオン・スマッシャーが立ち上がった。その目は怒りに満ちていた。その怒りはふがいないブルマニアリスたちへのものか、はたまた、自分の計画に立ちふさがる猟兵たちへのものか。
『チャ、チャンプ、アタシたちはまだやれますわ、今一度アタシたちにチャンスを』
『うおおおおおおお』
 うろたえたブルマニアリスたちの言葉に、チャンピオンは咆哮で答えた。そのままチャンピオンはリングへと突撃する。
『ま、まずいわ!』
 蜘蛛の子を散らすようにリングから逃げたブルマニアリスたち。チャンピオンはリングインすると、逃げ遅れたブルマニアリスを怒りにまかせて、手にしたパイプ椅子で思い切り殴り吹き飛ばすと、絶叫した。
『私……俺様はチャンピオン・スマッシャー!我と思う者は、かかってこい!!』

 チャンピオン・スマッシャーのユーベルコードは3種類ある。
【グローリーチャンピオンベルト】は、攻撃回数を9倍にするものである。味方と1回も攻撃しないと寿命が減るというデメリットがあるが、チャンピオンはリング外のブルマニアリスを殴る事でそれを回避している。そのため猟兵が受ける攻撃は実質8倍となる。
【キス・マイ・グローリー】は、プロレス技を受けた相手を自身の棲家に戻るか、ダメージを受けるかを選択させるものである。力持ちはロードオブグローリーの効果で家に帰る事を選ぶ事はない。猟兵も自分の家に帰っては依頼達成できないだろう。
【アイ・アム・チャンピオン】は攻撃をあえて回避しない事によって身体能力を上げるものである。中途半端な攻撃は、与えたダメージを上回る身体能力強化を招いてしまう事だろう。

 猟兵としては、ブルマニアリスとの戦いと同じく、力持ちの力を借りるのは有効だろう。普通に一緒に戦ってもいいし、あるいは自分に有利となる試合形式を提案し、その設営を力持ちに手伝ってもらうという手もある。チャンピオンの誇りにかけ、チャンピオン・スマッシャーは提示された試合形式を断る事はしないだろう。
ティファーナ・テイル
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「格下手下に勝って喜ぶ…可哀想」と演技w
飛翔して攻撃を回避し続けたらオブリビオンが有限生命か神同様の無限か分かると思い『ゴッド・クリエイション』“時間刻の神”を創造して急速に時間を経過させ、『月世界の英霊』で攻撃を空間飛翔して避け『天空神ノ威光・黄昏』で敵のUCを封印/弱体化させます!
『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回り『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『ガディス・ブースト・マキシマム』『ガディスプリンセス・セイクリッド』で♥ビーム/♥弾で攻撃!

「力持ち!もっと君達はボクを応援して覆面をガン無視するんだ!」とプロレスでのお約束を投げ掛けます☆



●別にプロレスラーがプロレス技を使わなければいけない道理もないが
「手下を殴って喜ぶなんて、可哀想な頭だね」
 チャンピオン・スマッシャーの呼びかけに応じ、翼を広げてまっさきにリングに文字通り飛び込んできたティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は開口一番、挑発した。
『ふん!格闘家は殴られて痛みを覚えて強くなるもの!鉄拳制裁も立派な指導だ!格闘家でもない外部の者が口を出すではないわ!』
「失っっっ礼だなあ!」
 飛び回り、遠距離攻撃主体の戦い方、また9歳という年齢相応の体躯の小ささ(下半身の蛇部分も含めて考えれば話は変わってくるが)からして、チャンピオンがティファーナを格闘家でないと判断するのは仕方のない事だった。だが。
「ボクはプロレスラーなんだぞ!」
 そう。ティファーナはこう見えて、自称プロレスラーではなく、実際にプロレス団体に所属している立派なプロレスラーだ。人間でいうなら小学生にあたる年齢でプロレスラーとなった実例は女子プロレスでならある。男子プロレスラーでは現時点では中学3年でプロレス団体所属、デビューが最年少記録のようだが。
『ぬかしおるわ。ならばプロレスラーらしく、肉体言語で語り合おうではないか!』
 自称(ではないのだが)プロレスラーの小娘に本物のプロレスラーの何たるかを示すべく、改めてチャンピオンは気合を入れた。全身に闘気が沸きあがり、会場が緊張に包まれた。なおプロレスラーなので当然、パイプ椅子も肉体に含まれるのである。
 かくしてゴングが打ち鳴らされ……
『……おい』
 先の戦い同様、翼を広げて空へと舞ったティファーナに、チャンピオンは真顔になった。
『お前その戦い方でプロレスラー名乗るのか』
「へーんだ!プロレスのどこにも飛んじゃいけないって規則なんかないんだよ!」
 ティファーナは上空から【ゴッド・クリエイション】を発動した。現れたのは杖をついた小柄な老人だった。
「オブリビオンが有限生命なのか!無限の命があるのか!見せてもらうよ!“時間刻の神”よ!」
 ティファーナの指示で、老人が杖を振るうと、チャンピオンの周囲だけ時間が超高速で動く。オブリビオンが有限な存在であるなら、当然時間経過による影響を受けるはずであった……が。
『ふん!小癪な真似を!だが全て受けきってくれよう!アイ・アム・チャンピオン!』
 チャンピオンが吼えた。攻撃を回避しない事で身体能力を上昇させるユーベルコードを発動させたのである。そして驚くべき事が起きた。チャンピオンが身にまとう、闘気ともいえる雰囲気が、素人目に見えても明らかに強化されていたのである。チャンピオンが有限なのか無限なのかはわからないが、少なくとも時間を急速に進めるというすさまじい大技をあえて受けた事により、その大技に相応しいほどの強化は、仮にチャンピオンが時間経過による能力の低下があったとしても、それをはるかに上回るものであったようだ。
「うーん、これはちょっとまずいかな?『天空神の庇護と加護と祝福の威光に黄昏る』!」
 状況が悪いとみたティファーナは、この厄介なユーベルコードを封じるべく【天空神ノ威光・黄昏】を発動させた。威光、後光、天空神護光がチャンピオンへと飛ぶ。ひとつだけでも能力を低下させ、全て受けたらユーベルコード自体が封じられる恐るべきユーベルコードを、だがチャンピオンはそれすらも受けきった。
『甘いと言っておろう!今の私は、もはやユーベルコードを使う必要などないわ!』
 ユーベルコード封じという大技を回避せず受けた事により、さらにチャンピオンの力は強化される。それは【天空神ノ威光・黄昏】による攻撃力低下を上回るものであり、さらに【アイ・アム・チャンピオン】自体の発動を封じる事はできたものの、能力の超絶強化状態自体はそのまま残ったのである。
『ふはははははははは!』
 身体能力の超絶強化が精神にも作用したのか、チャンピオンは高笑いをあげるとパイプ椅子を一振り、まともに受けた“時間刻の神”は吹き飛ばされると、空中で消滅した。そしてそのままの勢いでチャンピオンは全身を縮めて力を溜めると、一気に体を伸ばした。
『うどりゃあああ!』
 なんと、一気に跳躍したチャンピオンは、空を飛ぶティファーナの所にまで舞い上がってみせたのだ。振り下ろされたパイプ椅子の一撃を、【スカイステッパー】で空を蹴って危ういところでティファーナは回避した。
「って、さすがにまずいな、これは」
 巨体がすさまじい速度とジャンプ力で迫ってくる。このままだと追いつかれかねない。さすがにあせりを見せるティファーナ。だがそこに。
「ティファーナ!ティファーナ!」
 力持ちたちがティファーナの名を大声で呼び始めた。これはティファーナが力持ちたちに頼んだ事だった。自分が不利になったら思いっきり応援してくれるようにと。それがプロレスラーに活力を与え、すさまじい力を発揮してくれるのだ。
「そうだ、応援してくれているみんなのためにも、こんな所で負けられない!従属神たち!今こそ力を見せて!あーんど!ボクも闘神の本気を見せるよ!」
 ティファーナは【ガディスプリンセス・レディース】で従属神たちを呼び出した。小型の女神たちがチャンピオンを囲む。さらに【ガディス・ブースト・マキシマム】で、自身は超高速の飛行能力を得、従属神たちにはビームを撃つ能力を付与した。
『その技はさっき見せてもらったぞ!』
 流れからいけばこの次はティファーナ本人と従属神たちが一斉にビームを撃つのだろう。もはや【アイ・アム・チャンピオン】は封じられており、わざと攻撃を受けてパワーアップする手段は使えない。ならばチャンピオンが取るべき手段は、【ガディスプリンセス・セイクリッド】が発動する前に従属神の数を減らしておく事だった。上昇した身体能力をもってすれば、ティファーナひとりだけのビームなら、なんとか耐えられるだろう。
 チャンピオンが一度ジャンプし、パイプ椅子が振るわれるたびに、従属神がひとり消える。従属神たちもただ黙ってやられるわけではなく、ビームを撃ってチャンピオンを迎撃しようとするが、チャンピオンには通用していない様子だった。
「くっ!力持ちたち!もっと君達はボクを応援して覆面をガン無視するんだ!」
 ティファーナが叫ぶ。それを受けて力持ちたちはさらに応援を強める。
「ティファーナ!」「ティファーナ!」
「ティファーナ!」「ティファーナ!」
『ええい鬱陶しい!なぜ誰もこのチャンピオンに声援を送らないのだ!』
 侵略者であり、この場では明らかに悪役である事を完全に失念したのか、チャンピオンは従属神への攻撃を忘れて怒りを見せた。その隙にとティファーナは従属神たちに命じて一度チャンピオンから遠ざけた。チャンピオンがそれに気づいた時には遅く、もはや従属神を攻撃できる状況ではなさそうだ。
『ちっ!こうなったらもはや雑魚を相手になどしてやらん!きさま本人を叩けば済む事だ!』
 チャンピオンがパイプ椅子を構えると、ティファーナに向けて全力で飛翔した。だが、もはやティファーナの必殺技は完成していた。
「くらえー!神様の懲罰だー!!」
 ティファーナと生き残りの従属神たちが、チャンピオンに向けて一斉にハート型のビームを発射する。チャンピオンはパイプ椅子を盾のように構えてビームを受け止めた。それでもなおチャンピオンの勢いは止まらず、ビームを放つティファーナに肉薄すると、パイプ椅子を振り上げ……
「み、みんなの応援があるのに、負けられないん……だよっ!!」
『ぐ、ぐぬっ!?』
 ビームの勢いの前に、チャンピオンの勢いが止まった。振るわれたパイプ椅子はティファーナの鼻先をかすめるにとどまり、そのまま宙を斬った。停止したチャンピオンの体は重力に従ってリング上に落下し、あとはティファーナと従属神たちの集中砲火をひたすら食らい続ける事になったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコリネ・ユーリカ
敵が提示した試合形式を呑み、技を受け、そして耐える
チャンピオンの矜持と貫禄を認めるわ

なのでリングに入る前に営業車の前で花を束ねましょう
王者の風格という花言葉を持つキングプロテアにダリアとバラを添え
チャンピオンが「王者に相応しい」と思う豪華で大きな花束を作る
これをリングへ持ってって、渡しません。売るの
お金は出せないって事はないわよね?

財布か花束で両手が塞がったらタッグを組んだ力持ちとツープラトン!
試合も二回目で練度を増した合体技(おまかせ)を仕掛け
有刺鉄線に押し込んで電流を浴びて貰うわ

オーケイオーケイ。貴方は耐えられるのね
でも力持ちが召喚した陽気な小人達がこの瞬間に出力を上げたら――どうかしら!



●花屋は花で稼ぐお仕事
 ビームの集中砲火によりボロボロになったチャンピオン・スマッシャーだったが、それでもまだまだ元気いっぱいという様子で立ち上がった。
『さあ、次の相手は誰だ?』
「敵が提示した試合形式を呑み、技を受け、そして耐える」
 ニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)はそんなチャンピオンの姿勢に感銘を受けたようだ。
「チャンピオンの矜持と貫禄を認めるわ」
 結果は伴わなかったにせよ、それでも相手の技をあえて受けるプロレスラーの美学、プライドといったものは見せられたようで、それを見て何か感じるものがある者がいたならば、チャンピオンの行動も無駄ではなかったのだろう。
『次の相手は貴様か』
 そんなニコリネを見て、チャンピオン。
『さあ上がるがいい。先刻は妙なルールの試合をやっていたようだが、私はどんなルールでも構わん。相手になってやろう』
 ニコリネを手招きで挑発し、リングに上がるよう促したが、ニコリネは応じなかった。
「まあ、お待ちなさいな」
『何?』
「チャンピオンに対してはそれなりに敬意を払わないとね」
 ニコリネは力持ちたちを呼び、リングの改造を頼んだ。その間、自分は本業の花屋で使っている営業車まで下がる。
『……何をしているのだ?』
 力持ちたちが【もっと愉快な仲間達】で呼び寄せた小人たちとともにリングの改造を始めたものだから、チャンピオンは戸惑いを見せた。だが相手の提案した試合には乗る主義なので、それを妨害する事はないようだ。
 それを確認しながら、ニコリネは営業車のシャッターを開けた。そこには大小さまざまな花、花、花。ニコリネはその中からいくつかを選び出した。
「うん、これとかいいかな」
 まず選んだのはキングプロテアだった。その立派さから、ギリシャ神話に登場する変身を得意とする海神プローテウスの名を冠する花プロテア。その中でも特に大型で荘厳とされ、花の王と言われるのがキングプロテアである。主にアフリカ南部に分布し、南アフリカ共和国では国花とされている。花言葉は、その姿に相応しい『王者の風格』であり、チャンピオンに相応しい花といえた。
 次にダリア。非常に多種多彩な姿をとる花であるが、やはりダリアといって思い出すのは、非常に多数の花びらがまとまっている姿だろう。花言葉は『栄華』あたりはチャンピオンに合っている。『優雅』『気品』は……保留として。『気まぐれ』『裏切り』というのは気になるが、ある意味プロレスラーぽいと言えなくもないか。
 そしてバラ。言わずとしれた超有名な花であり、花の代名詞的な存在であり、美の象徴ともいえる。古来より人や物を問わず、美しいものを例えるのにバラはしばしば使われてきた。その花言葉はバラの色ごとに異なるが、やはり代表的なのは赤いバラの『愛』だろう。その華麗な美しさは確かにチャンピオンに通じるものがあるかもしれない。
 その他、いくつかの花を加えて花束を完成させると、それを手に、改めてニコリネはリングに戻って来た。その頃にはリングの改造は完了していた。手持無沙汰のままリング上で腕組みをして控えていたチャンピオンだったが、ニコリネが持ってきた花束を見ると、満面の笑顔を見せた。
『おお!すごいではないか!』
 おそらくは花に関しては素人と思われるチャンピオンだが、それでもニコリネがチャンピオンに相応しいと選んだ花束の大きさ、豪勢さ、美しさは、素人であってもその価値がわかるものであり、チャンピオンを魅了するのに十分な力を持っていた。
『なるほど試合前の花束贈呈ということか、猟兵にしては気が利いているではないか、たしかにリングに上がるチャンピオンにはこれが相応しい』
「気に入っていただけたようで何よりですわ」
『では早速』
 花束を受け取ろうとしたチャンピオンに、だがニコリネは、
「10万円になりまーす」

 ……
 とんでもない事をのたもうた。

『……なに?』
 さすがのチャンピオンも絶句した。
『カネ、とるのか?』
「当然ですわ、花屋ですもの、これは売り物ですわ」
 チャンピオンに花束を押し売りするとは。さすがはワイルドな花屋である。
『って、そんないきなり言われても、なあ』
「あなたに相応しい、こんなすばらしい花束を、私が選んで差し上げたのに?」
 戸惑うチャンピオンに、さらにニコリネはたたみかける。
「とってもお似合いだと思いますわ。それに、よもやチャンピオン様ともあろうお人が、おカネ出せないなどという事は、ないですよねえ?」
『ぐ、ぐ、ぐ……』
 チャンピオンは口ごもった。そして。
『いいだろう!私も男だ!言い値で買ってやろうではないか!』
 ついに折れた。チャンピオンは懐から財布を取り出すと万札を10枚……正直なんかおかしい気がしなくもないが、まあたぶんチャンピオンは貨幣経済あった場所の出身と思われるし、たぶんアリスラビリンスでは電子マネーは使えないだろうしということで、まあそれ相当のカネを出したという事でご納得いただければ。
「はいどうも、毎度~」
 ニコリネは営業スマイルでカネを受け取り、チャンピオンに花束を渡し、
「ありがとうございましたあっっっ!!」
 さらに腹部への前蹴りもおまけにつけたのだった。
『ぶぼあ!!』
 完全に油断していた状態での腹蹴りに、さすがのチャンピオンも悶絶した。
 とある著名なプロレスラーによれば、プロレスラーの打たれ強さの理由は『覚悟』にあるらしい。技をくらう瞬間に、技から逃げない事への『覚悟』を決める事で、技に耐えるだけの耐久力を得ているらしい。なので、覚悟がない状態ではプロレスラーの耐久力は常人並みになるとか。ちょうど今のチャンピオンのように、である。
「今よ!」
「おう!」
 ニコリネは力持ちを呼び込むと、前かがみになったチャンピオンにふたりで上から降り下ろすようなパンチをくらわせた。俗に『太鼓の乱れ撃ち』と呼ばれる攻撃である。右手に今受け取った花束、左手にまだしまっていないサイフを持った状態のチャンピオンは身動きもとれず、まともに攻撃をくらい、リングに倒れる。
 そもそもである。ニコリネがチャンピオンに売りつけた花束は、チャンピオンへの敬意からではなかったのだ。
『え?そうだったのか?』
 そうなんです。相手をそそのかして花束を買わせる事により、両手の塞がった相手の動きを一時的に封じる、れっきとしたユーベルコード【ProSEEDs(プロシーズ・オブ・シード)】だったのである。
『そ、それに気付いていれば【アイ・アム・チャンピオン】で受けたものをッッッ』
「これで決めるわ!」
 両手が塞がっているので、足を殺しにかかるのは当然の流れと、ニコリネが右、力持ちが左とそれぞれチャンピオンの足をとり、ダブルのアキレス腱固めを決めた。技を逃げないのがモットーのプロレスラーとて、これは逃げないわけにはいかない。思わずチャンピオンがロープに手を伸ばすのは当然といえた。プロレスにはロープブレイクというのがあり、関節技を極められている時にかけられている側がロープに手を伸ばせば、かけている側は技を解かなくてはならない。まあ、今回の戦いではそんなルールはないのだが。さらに言うなら今回リングの四方にあったのは、ロープではなかった。
『あばばばばば』
「チャンス!」
 電流の流れた有刺鉄線にチャンピオンの手が触れ、電撃に苦しむチャンピオンを見て、ニコリネは技を解いた。むろんロープブレイクだからではない。ニコリネと力持ちは、チャンピオンを電流流れる有刺鉄線に押し付けてやった。
『ぐぐぐぐぐっ、だかこれを耐えれば』
 チャンピオンは【アイ・アム・チャンピオン】をここで発動。電撃に耐える事で身体能力を上げる事を狙ったのである。だがこれはニコリネの読み筋だった。
「オーケイオーケイ。貴方は耐えられるのね。でも力持ちが召喚した陽気な小人達がこの瞬間に出力を上げたら――どうかしら!」
『何っ!?』
 チャンピオン・スマッシャーの【アイ・アム・チャンピオン】の攻略法は、相手の能力値上昇を上回るダメージを与える事。そしてプロレスラーの耐久力は覚悟の度合いによる。チャンピオンはもともと有刺鉄線に流れていた分の電流に耐える覚悟はしていた。だが、それを上回る電流が来る事は予想していなかった。
 リングを改造した陽気な小人たちが、ニコリネの言葉に合わせ、無情にも出力を上昇させた。
『ぐおわららばばばばばば』
 リング上にチャンピオンの悲鳴が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルード・シリウス
ルールは先の戦いと同じ、ノーロープ地雷爆破インフェルノテキサスチェーンデスマッチ。力持ち連中に、再びその為のリングの設営をやって貰おうか。
予め血晶飴を喰らって能力強化。更に戦闘開始と同時に【刻印解放】を発動し、相手からの攻撃を受ける及び相手に攻撃を与える事で身体能力強化と生命力吸収能力を付与、ノーガードでの殴り合い及びプロレスを仕掛ける。
そっちが攻撃を受けきるつもりなら、それに乗ってやろうじゃねぇか。端からこっちもそのつもりだからな。
俺が血肉を喰らうに値するだけの力を見せてくれよ。折角あいつ等に用意した戦場が勿体無いからな……さあ、存分に殺り合おうぜチャンピオン。

アドリブ歓迎



●ノーガード対ノーガード
 強烈な電撃を受けて倒れたチャンピオン・スマッシャーは、しかしまだ生きていた。
『くっ、私とした事が慣れたはずの電流に油断してしまったが、だが二度と不覚は取らないぞ』
 そして威厳を取り戻すべく、絶叫した。
『次の相手!出てこいやあ!』

「はいはい、ちょっと待っててくれよな」
 呼びかけに出てきたのは力持ちと、小人たちだった。だが彼らはチャンピオンを無視してリングの改造を始めた。
『なんかさっきもこんな事あったな』
 困惑するチャンピオンをよそに、力持ちたちは小人たちの協力で、リングの四方に張り巡らされた有刺鉄線と、そこに流れる電流を発生させる装置を取り外し、リング上に地雷をばらまく。そしてロープの代わりには……
『なるほど』
 合点がいったような顔でチャンピオンはうなずく。この試合形式は先刻見たからだ。そしてチャンピオンが予想した通り、リングの2方向に燃え盛る火炎が出現した。
「よう、待たせたなチャンピオン」
 そして、炎に遮られていないサイドより、ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)が姿を現した。その顔を見て、チャンピオンがにやりと笑う。
『やはり貴様だったか』
「なるほど、わかってたというわけか」
 リング上には地雷、そしてリングの四方には火炎。この試合形式は、先ほどルードがブルマニアリス相手に提案し、そして見事に勝利した試合形式だった。
「なら、これもわかってるな」
 ルードはリング上にチェーンを投げた。チャンピオンは応じた。
『無論だとも』
「なら、このノーロープ地雷爆破インフェルノテキサスチェーンデスマッチ。よもや逃げはしないだろうな」

 念のため繰り返しておこう。
 デスマッチで地雷爆破という場合、本来はロープにくくりつけられた爆発物が、地雷のように選手が触ると爆発する仕掛けになっている。が、今回は文字通りリング上に地雷が仕掛けられているのである。
 インフェルノマッチは別名ファイヤーマッチとも言われ、リングの四方に炎が燃え盛っている。一般的には炎で相手に火をつけた方が勝利となる。が、今回の勝利条件は後述の通り、別に存在する。
 チェーンデスマッチは、互いの手首を鎖で繋げる試合形式である。不利になっても相手と間合いを離して逃げる事が許されない過酷な形式である。また鎖で相手の動きを封じるなどトリッキーな戦い方も要求される。
 そしてテキサスデスマッチは、一般的なプロレスにある3カウントでの勝敗が存在せず、ギブアップかKOのみで勝敗を決するものである。むろん猟兵と猟書家の戦いである以上、勝敗は互いの生死ということになるのだが。
 以上全てを兼ね備えた試合形式が、ノーロープ地雷爆破インフェルノテキサスチェーンデスマッチということになる。

『当たり前だ!』
 むろん、チャンピオンの返事は決まっていた。
『このチャンピオン・スマッシャー!いかなる試合形式からも逃げも隠れもせん!堂々と戦おうではないか!』
 言うなり、チャンピオンは自らの手首に鎖をはめる。それを見て、ルードは鎖の反対側を自分の手首に付けた。
「いい度胸だ、俺が血肉を喰らうに値するだけの力を見せてくれよ」
 血晶飴を口に放り込みつつ、ルードは不敵な笑みで、チャンピオンに応じた。
「でなきゃ、折角あいつ等に用意した戦場が勿体無いからな」

 リングの空いていた2方向が炎に包まれる。それが戦いの合図だった。

『アイ・アム!チャンピオオオオオン!!』
 開始直後、握った拳を突きあげつつ、いきなりチャンピオンが吼えた。むろんこれはただのアピールではない。これまでも何度か見せた、あえて相手の攻撃を回避しない事で自らの能力を大幅に上昇させるという、じつにプロレスラーに相応しいユーベルコードであった。
「なるほど、いきなり全力ってわけか」
 ルードも、その威力については存分に知っていただろう。だが彼は恐れる事はなかった。
「なら、俺も持てる全てを出させてもらうぜ、その全てを以って、お前を喰らってやる」
 ルードの体に刻まれた呪詛の刻印が蠢動を始めた。それに伴い、ルードの中の闇の部分、その生い立ちと経歴から自らの中に刻まれ、積み上げられてきた、憎悪、狂気、暴力的な衝動。そういったものが増幅されていく。それを限界まで体の中で抑え込み、そして。
「……開放する!!」
 ルードの『闇』がオーラとなって全身を包み込んだ。かつて『大悪災』と呼ばれたドス黒い怨念を持つ女傑がいた。彼女との戦いを契機に、その影響を受けて発現したユーベルコード【刻印解放・斬獲せし者】(コード・カーネイジ)であった。
『おもしろい!互いに全力というわけだ!これは楽しめそうだな!』
 チャンピオンはルードの姿に恐れをなすどころか、むしろ嬉々としてルードに向かっていく。
「さあ、存分に殺り合おうぜチャンピオン!」
 ルードも真っ向から受けて立つ構えを見せた。互いのパンチが交錯し、互いの顔面を捉える。チャンピオンはむろん避けない。そしてルードも、また、避けない。
『ふっふっふ、来たぞ来たぞ!』
 攻撃を回避しない事でチャンピオンはダメージを受けたが、その身体能力は確実に上がっていた。ダメージを上回る身体能力の上昇で、いずれ相手を圧倒する。チャンピオンの常套手段だった。が。
「そっちが攻撃を受けきるつもりなのは、わかっていた」
『何?』
「だから、それに乗ってやろうじゃねぇか」
『ぬうっ?』
 チャンピオンは驚愕した。チャンピオン同様、ルードの戦闘力もまた上がっていた事に気が付いたからである。
「端からこっちもそのつもりだからな」
『き、貴様!!』
 ルードはまさしく真っ向からチャンピオンとやりあうつもりだった。彼の能力はチャンピオンとよく似ていた。ただチャンピオンが攻撃を回避しない事実そのもので能力を上げるのに対し、ルードは相手に与えたダメージと、自らが受けたダメージ、その両方で能力を上げるのである。

 戦いは壮絶なものとなった。
 互いの能力の性格上、お互いに相手の技を避けない。ノーガードで打ち合い、投げ合い、極め合い、いつしか両者とも大流血のボロボロになっていた。
 だが、ここでチャンピオンは気が付いた。明らかに疲労の度合いが違っているのである。互いに能力は上がっているが、それに伴い技を受けた事によるダメージは蓄積しているし、長時間動いた事によるスタミナの消耗も加わって、体を動かすのも一苦労なはずなのだ。チャンピオンはプロレスラーとしての意地、根性で体を動かしている状況だが、ルードの様子はとてもそうは見えない。同じ時間動いているはずなのに、到底疲労しているように見えないし、疲労を隠している者の動きともまた違う。まるで試合開始直後のような元気を見せている。これは一体どういう事か……
『貴様!まさか!』
 ある考えに行きつき、驚愕した顔を浮かべたチャンピオンに、ルードはにやりと笑った。
「今頃気が付いたか」
 ルードの能力はただの身体能力上昇ではない。相手の生命力を吸収する能力もまた得ていたのだ。互いにダメージを負っていたように見せて、実はルードはチャンピオンより生命力を吸収し、ダメージを回復していた。まさにルードはチャンピオンを『喰らっていた』のであった。
『お、おのれぇぇぇぇぇ』
 これ以上長引かせては不利だ。そう悟ったチャンピオンはついに主義を捨てた。ルードの放ったパンチを両手で受け止めたのである。
『もうこれ以上能力を上げる必要はないわ、このままきさまを潰してくれる』
 チャンピオンはそのままルードを引き寄せると、両腕を広げてルードをベアハッグに捕らえ、絞め殺そうとした。だがルードの両腕がチャンピオンの腕を抑えると、その怪力がチャンピオンの力を阻む。
「偶然だな、俺もそろそろ受けるのはいいかなって思っていたトコだ」
『き、貴様!!』
「じゃあ、喰らわせてもらうぜ」
 そのままルードの両腕を通じ、チャンピオンの生命力がルードに流れこむ。
『ぐ、ぐおおおおおお』
 苦悶の声を上げてチャンピオンが最後の抵抗とばかりに暴れる。と、本来ありえない事が起こった。戦いの中で激しく劣化したのか、ふたりをつなぐ鎖が破壊されたのだ。好機とばかりにチャンピオンはさらに激しく暴れてルードから逃れた。そして、
『おのれ、だがこれは3本勝負の1本目に過ぎん、次こそ必ず決着をつけてやるぞ』
 と勝手な理屈を言い残し、なんと逃走してしまった。
「……ちっ、喰い損ねたか」
 テキサスデスマッチでは本来ありえないはずの、対戦相手逃亡という結末。それでもルードの勝利には違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神楽坂・神楽
チャンピオンがリングを背にして何処に行くのかのう

いや、なるほど
草も木もあるこのジャングルがリングというわけか
ならば、その中をより過激にしようではないか

ヴァーリトゥード――
金的に目突きに拳突き
気功波に舞空に転移
なんでもありじゃ

ただ、わしはおぬしとは逆に技を受けぬよう鍛錬してきたのでな
しょっぱい戦いとなるかもしれぬのは容赦せよ

《気》による加速と〈刻印〉による転移を用いて打撃を叩き込もうぞ

さすがチャンピオン
人のままでは倒せぬか
ここからは猟兵として相手をしよう

UCを発動
一気に勝負を掛ける

おぬしは倒した者を配下にするという話じゃが、その逆は考えておったか?
骸の海に還したりはせぬ
全てを刻印で喰らってやろう



●決着は路上マッチで
『おのれ!チャンピオンとしたことが、なんたる不覚!』
 先の戦いでは相手の猛攻に思わず逃走してしまうという、チャンピオンにあるまじき醜態を見せてしまったチャンピオン・スマッシャー。時間が経つにつれ、自らに対する怒りと、それ以上に猟兵に対する怒りがチャンピオンの中に渦巻いていた。
『だが!命ある限りは何度でも立ち上がる!それこそがチャンピオンだ!』
 そして体力も回復しきった所で、チャンピオンはリングに戻ろうと……

「チャンピオンがリングを背にして何処に行くのかのう」
 戻れなかった。
 神楽坂・神楽(武術指導員・f21330)が、今しがたリングに戻ろうとしたチャンピオンに声をかけたからである。見た目に反したその古風な口調は、彼女が積んできた鍛錬の深さを物語るものであった。
『笑いたくば笑うが良い猟兵よ、だがその報いはその身で味わってもらう事になるぞ』
「別にそんなつもりもないんじゃがのお。それはさておき」
 神楽は怒りに燃えるチャンピオンから視線を外すと、あたりを見回した。
「いやなるほど、チャンピオンはリングを離れ、この場所をリングにしようというのじゃな」
 神楽とチャンピオンの周囲にあったもの。それはアリスラビリンスの広大な森林。
「草も木もあるこのジャングルがリングというわけか」
『……ほう』
 神楽の言わんとする事を察したチャンピオンの目が光る。

 路上マッチという試合形式がある。
 リングを使用しない形式の全てを指す言葉である。21世紀に入ってから行われるようになった比較的新しい試合形式である。本来は文字通り道路の上での試合を指す言葉であるが、それ以外の場所でも便宜上、路上マッチと呼ばれるようである。つまり、今回みたいな舗装された道がなさそうな大自然で行う試合もまた路上マッチなのである。なおストリートファイトデスマッチというのは、プロレスのコスチュームを着用せず、代わりに普段着着用で行われる試合形式であり、普通にリング上で行われる試合なので、路上マッチとは別物である。ややこしいが。
 ともあれ、神楽とチャンピオンの戦いは、路上マッチという事になった。ただ、猟兵と猟書家の戦いがそれだけにとどまるはずはなかった。

「ならば、その中をより過激にしようではないか」
『ほう?』
「ヴァーリトゥード――金的に目突きに拳突き、気功波に舞空に転移。なんでもありじゃ」

 先にも説明したが念のため。
 ヴァーリ・トゥード(Vale tudo:ポルトガル語で『何でもあり』)はプロレスではなく格闘技のルールである。ただし、競技として行われる場合、何でもありにも例外があり、挙げられた中だと目潰しは反則。金的はごく一部では可能なルールもあり、といった具合である。が、そこは猟兵対猟書家。文字通りの何でもありとなるのは必至といえた。

『当たり前だ!なんでも使うがいい!このチャンピオン、その全てを受けてやるぞ』
「よう言うた」
 神楽とチャンピオンは互いに獰猛な笑みを交わした。
「ただ、わしはおぬしとは逆に技を受けぬよう鍛錬してきたのでな。しょっぱい戦いとなるかもしれぬのは容赦せよ」
『何を今更。言っただろう!全てを受けてやると!』

 かくして最後の戦いはゴングなき始まりとなった。

「参るぞ!」
 神楽は『気』を全身に張り巡らせた。血液が循環し、体全体が瞬時に戦闘態勢になる。そして真っ向からチャンピオンに突っ込んでいく。
『おう、来るがいい!』
 チャンピオンは右足を前方に出してこれを迎え撃った。ビッグブーツと呼ばれる、正面から走ってきた相手にカウンターで繰り出される顔面蹴りである。かつて巨人と呼ばれた日本人の代名詞とされた技だ。だが突っ込んでくる相手の顔面を捉えるはずだった右足は宙を切った。当たる瞬間、神楽の姿が消えたのである。
『何?』
「ここじゃよ」
 声はチャンピオンの背後から来た。神楽が右腕に宿す謎の『刻印』が生み出す力『瞬転』で、チャンピオンの背後に瞬間転移したのである。足を突き出した体勢のチャンピオンは対応が遅れ、振り向く前に神楽の拳がチャンピオンの後頭部を捉えていた。脳を揺らす強烈な打撃に、思わず前のめりに倒れるチャンピオン。神楽は相手が起き上がるまで待つことなどしない。そのまま後頭部に馬乗りになり、さらなる打撃を加えようとしたが、チャンピオンは横に転がりつつ立ち上がる事でそれを回避した。
『ふん、生意気な芸当を使うようだな猟兵』
「言ったじゃろ、転移もありじゃ、と」
 言ってました。そういえばたしかに。ともあれ互いに間合いを取り合い、次に仕掛けるタイミングを計る。そして先に動いたのはチャンピオンだった。
『いいだろう!私も本気を見せようではないか!』
 言葉とともにチャンピオンの腰に巻かれたチャンピオンベルトが黄金の光を放ちだした。同時にチャンピオンの闘気が膨れ上がるのが、神楽には感じ取れた。仕掛けてくる。神楽は身構えた。
『いくぞ!うおおおおおおお』
「……なんじゃそれは?人を馬鹿にしておるのか?」
 チャンピオンの行動は、なんの工夫もなしに真っ向から突っ込んでくるだけのように神楽には見えた。こんな見え見えの攻撃は、また瞬間移動で回避すれば良い。そう判断した神楽だったが、彼女はすぐにその考えを修正する必要に迫られた。
(……早い!!)
 真っ向から突っ込んでチョップを繰り出すという単純な動きのはずが、その動作がじつに俊敏な動きで繰り出されるのである。まるでたった1発のチョップのはずが、複数発連続で繰り出されるかのように。
「くっ!瞬転!」
 それでも瞬間移動が間に合い、再度、神楽はチャンピオンの背後をとる。だがチャンピオンの攻撃は神楽の予測を超えていた。背後に回ったはずなのに、チャンピオンの攻撃が遠当てのごとくに神楽に迫ってくる。
「ぬうっ!?これは?」
 かろうじてチャンピオンの攻撃を防御した神楽だったが、振り向いたチャンピオンがつかみかかってきた。プロレスラーの掴みを許したらさすがにまずい。神楽は瞬転でどうにか間合いを取り、捕まれる事は逃れた。
『げばぁ!!』
 遠くからブルマニアリスの悲鳴が聞こえた。神楽はブリーフィングで語られたチャンピオンの能力を思い出していた。チャンピオンベルトが光っている間、攻撃回数が9倍になる。そのうちの1発は必ず自分の部下を狙う、と。チャンピオンは攻撃回数増加で素早く動く神楽に対抗してきたのだ。
「さすがチャンピオン」
 窮地に陥りつつも、神楽の表情に焦燥の成分はなかった。
「人のままでは倒せぬか」
『たわけが、今更そんなわかり切った事を抜かすな』
 神楽はまだ切り札を隠していた。そしてチャンピオンもそれに気づいており、それを全て出すようにと要求する。むろん神楽はもはや出し惜しみするつもりはなかった。
『見せてみろ、きさまの全てを』
「ではここからは猟兵として相手をしようぞ」

 瞬間。
 神楽はチャンピオンの目の前にいた。

『何!は……』
「破っ!!」
 チャンピオンの眼前にまで迫った神楽が、その右手をチャンピオンの腹部に突き出した。ごくわずかな動作で相手に大打撃を与える技、寸勁。別名ワンインチパンチ。
『なんだそんなもの、この腹筋を貫けるはず……がっ!!??』

 神楽が極限にまで鍛えた功夫は、もはやユーベルコードと呼べるまでの力になっていた。その技能はレベル倍になる。神楽本来の功夫の技能レベルは772。そして神楽自身のレベルは100。

 772×100=77200

 そんなレベルで殴られたら、そりゃ死ぬ。絶対死ぬ。
 体勢の崩れたチャンピオンに、今度は神楽の両手が添えられた。形意拳の技、虎撲子である。
『な、なめるなあああああ』
 もはや致命傷をは免れないと悟ったチャンピオンはチョップ8連発でせめて相討ちを狙ったが、さすがにダメージは大きすぎた。
「憤!!」
 神楽が気合を込めると、繰り出したチョップもろともチャンピオンを吹き飛ばした。

「さて」
 もはや虫の息で倒れ伏したチャンピオンを神楽は見下ろした。
「おぬしは倒した者を配下にするという話じゃが、その逆は考えておったか?」
 神楽の右手の刻印が怪しく光り輝く。
『き、貴様……』
「骸の海に還したりはせぬ、全てを刻印で喰らってやろう」
 神楽の『刻印』は意思を持ち、神楽と共生関係にあった。神楽は刻印にオブリビオンを与え、刻印はそれを捕食し、それで神楽に力を与えている。猟書家を喰らったなら、その力は計り知れないだろう。
 刻印が猟書家を吸収しはじめる。その体が徐々に消えていく。だが。
『……それではいささか、つまらんな』
 最後の最後に、チャンピオンの目に最後の光が灯された。
「おぬし、何を」
『まだまだ私……俺様は、戦いをやめるわけにはいかんのだ』
 言うなりチャンピオンは自らの胸に拳を叩きつける。拳はその胸筋を貫き、心臓にまで達した。そしてチャンピオンは自らそれを握りつぶす。
「なっ……!」

 そしてチャンピオン・スマッシャーの体は消滅した。
 チャンピオンは全て喰われるより前に、自ら骸の海に還る事を選んだのだった。

「……ふん、まあ、いいじゃろ」
 結果的に逃がした事は悔やまれたが、一部分だけでも取り込む事ができた事で、神楽はひとまず満足する事にした。
『また、戦おうぞ』
 虚空より、そんな声が聞こえたような気がした。神楽の答えは決まっていた。
「懲りん奴じゃの、次に会った時こそ、全て取り込んでくれようぞ」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月29日


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#アリスラビリンス
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト