●十一番目の世界線より、重要な警告
泰山・敏郎(錆びた冠・f35267)は、集まった猟兵たちに対して口を開いた。
「今から話す内容について、ピンとこない奴はそのまま聞き流してくれて構わない。
もし少しでも引っかかることがあれば、黙って退室してくれ。誰もそれを責めたりはしない」
「これから話す依頼は、オブリビオン"国見・眞由璃"についてのものだ。
もしこの名前を初めて聞くのであれば、何も気にすることはない。このまま残ってくれ」
「もし――彼女と既に"刃を交えている"猟兵が居るなら、警告しておく」
「俺が予知したこの依頼を受けるなら、それは即ち【世界線を跨いでの依頼受諾】となる。
もしかしたら彼女が"宿願を遂げた"世界線を経てこの場に立っている奴も居るかもしれない。
勿論、彼女が亡びた世界線を経てこの話を聞いている奴も、だ」
「どちらにせよ、同じことだ。別世界の話ずらない――"世界線を越えた別地平"に踏み込むことになる」
「それによるリスクについて【俺たちグリモア猟兵は一切フォローが出来ない】」
「ここまでの話を踏まえた上で、残るか去るか。今すぐに決めてくれ」
●グリモアベースにて、泰山曰く
暫し後、その場に残った猟兵に対し、大きくため息をこぼしてから泰山は今回の依頼について語り始めた。
「……オブリビオン"国見・眞由璃"が活動を開始した」
かつて土蜘蛛の女王として銀誓館学園と死闘を繰り広げた者。最期には同胞の助命を願い、能力者に討たれし母。誇り高き武人。
それが、オブリビオンとして再び生を受け、一度は絶えた宿願成就への道を再び歩みはじめたのだ。
「標的は、ある"学園"を"繭"で覆い外部とのあらゆる干渉を遮断。
中に居る被害者たちを眷属である"土蜘蛛オブリビオン"に喰らわせ、増殖を狙っている」
国見は、自らの宿願のためひとつの学園を"土蜘蛛の檻"に囚え自らの一族を繁殖、世に解き放つつもりなのだ。彼女は再びの生が歪んだものであろうと、かつての想いを遂げるべく蠢いている。そこには、一切の迷いも曇りもない。
そして、泰山は檻に囚われた場所の名を告げる。
「囚われたのは――シルバーレイン世界、鎌倉にある"銀誓館学園"だ」
●妄執の糸、遂に怨敵を囚える
国見は、一族の宿敵を遂に捉えたのだ。
一度は断たれたその糸を、歪みし生より織り上げ、遂にその本拠を繭として。
「現在の銀誓館学園には、猟兵として覚醒しつつある者も居るが基本的には能力者が主戦力だ。
オブリビオン化した土蜘蛛の力にはまず及ばない。このままでは、国見の仔に喰い尽くされるだろう」
泰山が言う通り、銀誓館の主戦力は能力者である。かつてゴーストと呼ばれていた頃の土蜘蛛たちであれば、まだ勝算はあったかもしれない。だが、今や彼らはオブリビオンである。猟兵としての力がなければ、彼らの餌となって終わりだ。
「オブリビオンには敵わぬとはいえ、あの子たちは能力者だ。
もし国見の仔により餌となった場合、その力がどう増強されるかは予想がつかない」
終焉を迎えた地平より、ただ矜持のみを以て。
国見は編み上げたのだ――願いを、愛を通す未来への糸を。
●銀誓館学園奪還戦
「俺のテレポートゲートで、何とか繭の中までは送り込める。
が、それ以上のサポートは無いと思ってくれ。すまねえ」
深々と泰山は頭を下げる。どうやら、この依頼の予知については見えていない事の方が多いようだ。
見えている情報から想定される内容について、彼は語り始めた。
「まず、繭の中に入った上で学園の状況を把握し、檻に囚われた中の連中をどうにかして我に返らせてくれ。
能力者については檻の効果は及んでいないはずだ。その子たちの力を借りるのもいいだろう」
国見の仕掛けた"檻"は、囚われた者たちの記憶を書き換えてしまう。
眼前で土蜘蛛が犠牲者を貪り喰っていても、それが日常であると認識してしまうというのだ。
「ちょうど卒業シーズンだ、その辺りをうまく活かせばこちら側に引き戻しやすいかもな」
そうして檻に囚われた者たちを記憶改変より救い出していくことで、その強度は低下していくらしい。
無事に作戦が遂行できれば、国見も動かざるを得ないだろう。
「国見がちょっかいを出してくれば、いよいよ檻への打撃も効いてきた証拠だ。
徹底的に叩き潰して、引きずり出してくれ」
出てくるであろう国見の尖兵は、いずれも"土蜘蛛化"が施されている。
明らかに変異している部位を狙い撃てば、効率良く殲滅出来るはずだ。
「そして、国見が出てきたら――迷わず、滅ぼしてくれ」
●十一番目の終わり
これまでにない真剣な顔で、泰山は猟兵たちを見据える。
「グリモア猟兵として言っておく」
「今回の作戦目標は銀誓館学園奪還と、オブリビオン"国見・眞由璃"の討滅だ。
それ以外の結果はすべて【失敗】とする」
「この中にもし土蜘蛛の一族が居るならば、はっきり言っておくが。
国見はかつての戦争で滅びた。今こうして蠢いているアレは、まがい物にすぎない」
「そこにどんな想いがあろうが、どれだけの願いであろうが、それが愛であろうが。
この行いは許されるべきではない。紛れもなく、奴は邪悪だ」
「その上で、国見に対し討滅以外の選択肢を選ぶのなら。
俺はそれについて何も言うことはない」
「――この"世界線"では、そういう選択が為されたということだろうから」
「繰り返すが、今回の作戦目標は銀誓館学園奪還と、オブリビオン"国見・眞由璃"の討滅だ。
それが為されなければ【失敗】となる。忘れないでくれ」
●分かたれる世界線
泰山は、いつものように指を鳴らしテレポートゲートを開く。
向かい先はシルバーレイン世界、銀誓館学園。
土蜘蛛の檻に囚われ、散らぬ桜と決して果たされることのない旅立ちが巡る場所。
「俺が今回出来るのはここまでだ。武運を祈ってる」
過去よりの糸は、遂に世界線を分かつところまでたどり着いた。
その糸の行方を決めるのは、運命ではない。
貴方だ。
ノブ=オーカミ
オーカミでございます。シリーズ「過去からの糸」最終シナリオ、土蜘蛛戦争再演となります。記さなくてはならないことについてはすべてオープニングに書きました。全身全霊を籠めて、プレイヤーの皆様にお応えいたします。ご縁ありましたら、よろしくお願いいたします。
シルバーレイン世界、十一番目の世界線。
ノブ=オーカミが預かります。
第1章 日常
『君のことを教えて』
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POW : 力強い言葉で語らおう
SPD : 数多の言葉で紡ごう
WIZ : 他の誰でもない貴方の言葉で拓こう
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フール・アルアリア
アドリブ他歓迎
■難しいこと考えるの苦手だからちょっと力技!目を覚まさせればいいんだよね?みんなよろしく!盗むのは洗脳された子たちの家の鍵!
■鍵を盗んだ鳥さんたちを追わせて洗脳された子を連れてきてもらう。
ねぇ、君たち放課後は何処に「帰る」の?卒業後の進路の話、家の人とした?帰る場所は繭の中?なーにそれ。
ねぇ、じゃあこれなーに?家の鍵だよね?追っかけてきたくらい盗られたらダメなやつだよね?繭に帰るとき、これ、使った?
思い出して、違和感は気のせいじゃない!繭よりお布団がいいじゃん、お夕飯食べながら進路のこと話したり、うざったくって部屋に篭ってもそこにはゲームとか漫画とかあったはずだよね?
家に帰ろ!
淡紅屋・ほまれ
アドリブ・共闘歓迎
●行動指針
- 学園の状況を把握するため、能力者に聞き込みをする
- 能力者と共に、檻に囚われた者を説得する
- もし抵抗するようならUCを使用
●心境
オブリビオン国見・眞由璃。
僕ははじめて聞く名ですが…。
僕の力で少しでも救われる人がいるのなら、
お力添えをさせてください。
まずは学園の状況を確認したいため、
能力者たちに聞き込みをしましょう。
今どのような状況になっているのですか…?
そうしたら能力者たちと共に、檻に囚われた方々を救いに行きます。
念の為UC使用の準備もしておきます。
もう3月…卒業の季節ですね。
あなたの進路などはもうお決まりなのですか?
…そう、思い出して。あなたの本当の記憶を。
鈴乃宮・影華
銀誓館学園……
どの世界線だろうとも、私が護るべき大切な場所だ
銀誓館学園制服を着こみ、いざ鎌倉
アムレートゥムであちこち写メします
ふふふ今の私は卒業を控え思い出の学園を記録して回る高校3年生――!
「おっとそこ行くあなた、写メ一緒に写ってくれない?」
答えがどうでもパシャリ
――実はこの撮影、私の言葉を受け入れ易くする軽い催眠術です
「ねぇあなた、自分が何年生かちゃんと言える?」
卒業式は、春休みは……新学期は何時からか、あなたは答えられますか?
他には
指定UCを起動し、蟲達を学園中に放ちます
特に知りたいのは『土蜘蛛』と口にした人の所在
その人は多分繭の管理を任されたモノか、狂えなかった能力者ですので
●母校へ
フール・アルアリア(No.0・f35766)は桜咲き誇る母校へと足を踏み入れた。
あまりにも美しく咲き誇る桜に、思わず此処が"檻"の中であることを忘れそうになる。
卒業からそれなりの時間が経ち、あちらこちらが変化しているのは確かだけれど。
それでも、フールにとっては母校であり、青春の思い出が詰まっている場所だ。
ふと、隣に目をやる。
かつての相棒は実家でまったりのんびりしている。
久しぶりの学園、どうせならこの桜を見せてやりたかった気もするが。
……はて。
"銀誓館学園はここまで桜の樹が多かっただろうか"?
「んー……難しいこと考えるの苦手だからちょっと力技!」
フールは周囲の鳥たちに声をかけ、帰路――"繭"への――につく生徒たちから鍵を盗ませにかかる。
それはこの"檻"では無用の長物なのだ。
無事にすべてが終わってから、返せばいい。
●護るべき想い出のために
「――どの世界線だろうとも、私が護るべき大切な場所だ」
鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は"檻"に囚われた学園中に黒燐蟲を放ってから、そう呟いた。
彼女もまた銀誓館学園の卒業生であり、此処は青春時代を過ごした大切な場所なのである。
オブリビオンとして引きずり出された国見について今の所判断は保留しているが、学園を護ることには代わりがない。
暫し後、黒燐蟲が持ち帰ってきた情報を確認し、鈴乃宮は眉根を寄せた。
"完全に檻の中で生存圏を切り離され、包囲殲滅を強いられている"のだ。
"檻"の魔性にかかっている一般生徒が間違っても目に入れぬよう、入念に学園そのものに偽装がされている。
【結社棟】――全面建て替えのため立ち入り禁止ということになっている場所が、実際の戦場だろう。
結社棟の外にも能力者らしき生徒が散在しているが、状況は芳しくなさそうだ。
「……こちらに引きつける必要がある、か」
母校の制服をひらり、とたなびかせ。鈴乃宮は校内に足を向ける。
この場所を、"檻"から解き放つために。
●桜の樹の下
どうしようもない目眩と耳鳴り、それに明らかな異臭を感じ取って淡紅屋・ほまれ(咲き誇る春の君・f35480)はその場にうずくまった。この咲き誇る桜から感じられる瘴気は、桜の精である淡紅屋にとっては毒といっても差し支えないほどで、十分に此処が敵地である事実を思い知らされる。
「あの、大丈夫ですか?」
恐らくは中等部、もしかしたらもっと若いかもしれない少年に声をかけられる。来客が体調を悪くしているところに手助けに入れるような子だ、きっとしっかりとした環境に身をおけたのだろう。
「……あ、はい。大丈夫です。ありがとう」
立ち上がり、力なく微笑んで礼を述べる淡紅屋。この子も、恐らくは記憶を改竄されてしまっている。
その事実に顔色は悪いままであるが、なんとか持ち直して声をかけた少年にもう一度礼を言い、校内の調査へと向かおうとする。
「やっぱり具合悪そう……保健室に案内しますから、ぼくについてきてもらえますか?」
優しい少年の気遣いに、淡紅屋は甘えることにした。
どの道この学園の構造には明るくない。彼の安全を確保する意味もあり、そのまま保健室へと向かう。
その道すがら、少年は語り始める。
「この桜、きれいでしょう?学園自慢の桜なんです」
淡紅屋は今すぐに耳を塞ぎたい気持ちで胸が詰まる。
自分には理解る。この、桜は。
「ぼくたちにとっても、特別な桜です」
この、桜の下には。
「僕たちの大切な"仔"のご飯になった友達の」
やめて。
「食べきれなかったところを肥料にして、こんなにきれいに咲いてるんですよ」
淡紅屋は、駆け出してその場より立ち去った。
●幸せの青い鳥
フールが声をかけた鳥たちが仕事をしたようだ。それぞれに鍵らしきものを咥え、慌てた様子の生徒たちが後を追いかけてくる。その身のこなしを見るに、やはり一般生徒だろう。彼らの人数分、鍵を手にとったフールは息を切らせた生徒たちに向き直る。
「ねぇ、君たち放課後は"何処に帰るの"?」
生徒たちはその問いに困惑した様子を示す。
眼前には家の合鍵を鳥に奪わせた張本人が居るというのに、怒ることも忘れて戸惑っているようだ。
フールはその反応を見て、内心で舌打ちをした。思ったよりも改竄度合いが深い。
「え……あ、いや、何処って……家ですけど……」
家。彼らのその言葉は、温かな食卓とベッドのことを指しているのだろうか。
「卒業後の進路の話、家の人とした?在校生なら、進路指導とかそろそろだよね?」
将来。このままでは永遠に訪れない、未来。
彼らに確かにあった希望。蜘蛛の糸が包み奪おうとしているもの。
「ねぇ、じゃあこれなーに?家の鍵だよね?追っかけてきたくらい盗られたらダメなやつだよね?」
今日と明日をつなぐもの。
一日を始め、終わらせ、明日に向かうための鍵。
「繭に帰るとき、これ、使った?」
決定的な言葉。彼らが持っていた本来の記憶との致命的な齟齬。
その言葉を耳にした瞬間、生徒たちはびくん、と一度痙攣したかと思うとその場で静止した。
キチ。
キチキチ。
キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ。
歯軋りであった。
生徒たちは歯軋りと共に白目を剥き、その口からは蜘蛛の糸が吐き出されていく。
彼らは被害者だ。もしかしたらもう手遅れなところまで壊されているかもしれない。
それでも、手を出すなど絶対にあり得ない。フールは状況解決のため思考を巡らせる。
「フールさん!」
その時、馴染みの声が響き渡った。
●散らずの桜、現世の理に非ず
淡紅屋は保健室より立ち去り際、フールの姿を見て様子を伺っていたのである。
必ず何かしらの手を打っていると信頼し、自らの力が必要となった時には手助けできるよう控えていた。
「ほまれちゃん……これ……」
フールはこの局面において有効となる手札は持ち合わせていない。被害者である彼らを力ずくで抑えるわけにもいかず、このままでは逃げる以外の選択肢が存在しなかった。そこに、かつて土蜘蛛関連で依頼を共にした淡紅屋が来てくれたのだ。天からの助けとはまさにこのことだろう。
「……はい。状況は概ね把握しています。僕の力が及ぶかは分かりませんが……」
淡紅屋は一度深呼吸をし、精神を整える。
あまりにも残酷な事実、そして眼前にも土蜘蛛化が進行している一般生徒の姿。
不安と恐怖が心身に纏わりついている。
だが――それ以上に、淡紅屋の奥底で輝く意思があった。
彼らを、このままにはしておけない。
「……そう、思い出して。あなたの本当の記憶を」
その温かな聖人の微笑みが、桜の精の祈りが、彼らの土蜘蛛化を祓った。
生徒たちは吐き出していた糸が止まったかと思うと、一斉に嘔吐し始める。
落ち着くまで暫くの時間を要したが、生徒たちは無事に記憶を取り戻しつつあるようだ。
「げふ、おえぇ……あ、え、あの、皆さんは?」
我には返ってくれたものの、彼らをこのまま捨て置くにはあまりにも危険すぎる。
この"檻"の支配者たる国見に察知された場合、即座に餌にされることもあり得るのだ。
対応に困る二人。
そこに、気さくに声をかけてきた女子生徒が一人。
●繭はほつれ、やがて終わりへと
銀誓館学園高等部の制服を纏った彼女は、グラマラスなスタイルに大人びた雰囲気を漂わせていた。ここが普通の学園であったなら、すぐに現役生でないことは見抜けただろうが、銀誓館学園は個性派揃いである。そういう生徒も居るだろうと、見逃されるであろう――ましてや、平時でないなら尚の事だ。
「おっとそこのみんな、写メ一緒に写ってくれない?」
言うが早いか彼女は手持ちのスマートフォンで生徒たちを画角に収め自撮りを行う。
彼女の――鈴乃宮のスマートフォンは猟兵仕様である。このカメラアプリには、ライトな催眠効果がアドオンされていた。
「……んー、みんなちょっと顔色悪いね。帰る前に保健室に寄ったら?」
カメラの催眠効果で生徒たちは皆、その忠告に従っていく。
事実、体調を崩しているのは間違いない。少なくとも保健室で休むべきなのは確かだろう。
――その方が、彼らの心身も安全である。
鮮やかに状況を捌いていった鈴乃宮を見て、信頼できる猟兵が合流したことを確信し喜ぶフールと淡紅屋。
そんな二人にぎこちなく微笑んで、鈴乃宮は名乗った。
「銀誓館卒業生、そして今回の依頼を受諾した鈴乃宮です。よろしく」
三人はここまでの経緯、そして情報交換を行う。
淡紅屋が桜の正体について語ることで、深刻なレベルまで一般生徒の記憶改竄が進んでいること。
鈴乃宮が黒燐蟲による諜報の結果、戦闘能力を持つ能力者たちは結社棟に押し込められて殲滅戦を仕掛けられているということ。
そして眼前で起きた土蜘蛛化の事態。
経験の豊富な鈴乃宮が、二人に対して進言した。
「……少なくとも今の手勢では、結社棟に乗り込むのは無謀。
地道に一般生徒の記憶改竄を解き、結社棟に差し向けられている土蜘蛛たちをこちらに引き付けましょう」
【結社棟が壊滅していないということは、猟兵に覚醒した者もそちらに混ざっている可能性がある】のだ。
彼らが殺される前に結社棟の土蜘蛛をこちらに引きつけることができれば、状況を打開できる可能性が大幅に高まる。
「さっきみたいに、精神的にキツいものを見てしまう事もあり得ます。
此処で心を壊してしまったらそれこそ土蜘蛛たちの仲間入りとなりかねない……どうか、無理をせずに」
フールと淡紅屋は、その言葉に頷く。
国見が編み上げたこの"檻"は、あまりにも堅牢で――残酷であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●断章:女王の尖兵
息を潜め、ひとつひとつ絡み合う糸を解すように。
猟兵たちは一般生徒の記憶改竄を解き放っていく。それはとても地道で、いつ終わるかも分からないような苛立ちすらおぼえるほどの作業。初めはそれを気にも止めなかった一般生徒たちも、徐々に猟兵たちに対して目を向けつつあった。
その視線は、とても無機質で。
果てのない作業かと思われていたその時、記憶改竄の解除に強く抵抗した一人の一般生徒が、それまでの口調、声色、自身のすべてが入れ替わったかのような調子で絶叫した。
「不審者です!誰か、風紀委員を呼んで!」
校内の空気が一変する。それまで中立的であった生徒たちは一斉に猟兵を避け、中には明確に逃げ出す者も現れた。咲き誇っていた桜もまるで侵入者である猟兵を包囲するかの如き瘴気を発する。どうやら、"檻"を守る存在が出張ってくるようだ。
銀誓館学園の制服に風紀委員の腕章。
そして【背中から生えた複数の足】に【顔の半分以上を侵食する蜘蛛の頭】。
彼らはもう救うことは出来ない。女王の尖兵として土蜘蛛化が進んでしまい、この"檻"を守る眷属へと成り果てている。元々は一般生徒だったのだろう、詠唱兵器の類で武装しているわけではないが。複数の足に自身の手、いずれも銃器を所持している。一体ならともかく、かなりの頭数がいる。一般生徒は逃げ出しているのが結果的に功を奏した。やり合うにしても、流れ弾の直撃は免れるだろう。
「【結社棟ニ回シテイル同胞ヲ集メロ。猟兵ノ侵入者ダ】」
事前の諜報活動により【戦闘能力を持つ能力者たちは結社棟に封鎖され、包囲殲滅を仕掛けられている】ことが判明している。このまま尖兵たちを相手取っていれば、やがて【結社棟の包囲は破られ、能力者たちの支援を得られる】かもしれない。だが、それには当然だが【危険が伴う】。
熟慮の時間はない。
既に、この"檻"に流れていた偽りの平穏は終わりを告げている。
第2章 集団戦
『死兵』
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POW : ラスト・スタンド
【肉体のあらゆる損壊を無視した状態で攻撃】を放ち、命中した敵を【自身が死亡しても消えない呪詛】に包み継続ダメージを与える。自身が【致命傷を受けた状態で戦闘を継続】していると威力アップ。
SPD : ラスト・アタック
自身が戦闘不能となる事で、【直前に自身を攻撃した】敵1体に大ダメージを与える。【仲間】に【敵の情報】を語ると更にダメージ増。
WIZ : ラスト・コマンド
自身が戦闘で瀕死になると【体内】から【生者を呪い殺す怨念】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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秋枝・昇一郎
ここまで懐に入りこまれたのは無かったんじゃねえか?
まあ、何にせよいい気分じゃあねえな。
だが、渋い顔すんのは後だ。
今はジリ貧になってる後輩たちを助け出すのが先決か。
●
「蜘蛛の巣に”蜂の巣”担いで来る事になるたぁな……!」
ユーベルコード使用で範囲攻撃メインに立ち回る。
ミサイル・手榴弾・スパナ等惜しみなく使い、時にワイヤー移動で距離を取って時々引き撃ち要素も入れつつ、
派手に暴れて結社棟の包囲網がこちらに流れ込んで来るように立ち回る。
「少々建物ぶっ壊すかも知れねえが構わねえよな?こういう事態ならよ!」
「そういや、良い蹴りしてたアイツも結社棟で持ち堪えてるかね。まだくたばってるんじゃねえぞ……」
フール・アルアリア
■此処で躊躇ってたら救える者も救えなくなる…ごめんね、恨みつらみはあの世で聞くから!
■此処、校内だよね?多少の設備損壊は大丈夫、この学校お金はあった筈だから。校庭は…数で包囲されるかな。
という訳で纏めて吹っ飛べ!指定UC発動!窓ガラスの破片も巻き込んで通常より威力増し増しだー!(風速は人がぶっ飛ぶ程度)
廊下なら風の通りが狭いからビル風みたいにえぐくなるし、まず狙撃なんて難しくなる…筈!鈴ちゃん、ほまれちゃんが破片浴びそうなら庇うよ。
花嵐を追い風に【ダッシュ】で斬り込み。せめて判別可能なくらいで仕留めるからね。【貫通攻撃】で急所を狙い、可能ならば【武器落とし】でライフルを奪取。キリがないー!
淡紅屋・ほまれ
アドリブ・共闘歓迎
●行動指針
- WIZ判定
- UCを使って味方を回復・再行動させる
- 防御に重点を置いて行動し、ダメージを受けぬよう慎重に立ち回る
- もし能力者の支援が得られたならば、自身よりも彼らの防御・回復を優先する
●心境
…もう救うことができないのなら、これ以上苦しまないようにしてあげなくては。
辛くて悲しいけれど、生徒たちはもっと辛かったはず。ここで退く訳にはいかないのです…!
『優しさ』を忘れず、『医術』の知識を利用して、味方の回復と再行動の支援を図ります。
敵の、生者を呪い殺す怨念に対しては、土蜘蛛化が進んでしまいもう元に戻せない生徒たちのことを『祈り』、『浄化』を試みます。
鈴乃宮・影華
おっと悪代官もとい女王様から出合え出合えコールです
よろしい、派手に行きましょう
一旦屋外に退避し、『夢幻』を搭載した『熊蟲』を起動
『ウルカヌスⅡ』で弾幕を張り、『蓑蟲』には他の猟兵を巻き込まない程度に遊撃してもらいます
遮蔽物に隠れられても指定UCで刃や杭を作って攻撃したり、『閃閃狂鋏』に飛んでもらったりです
『伍光』の照射で足止めも狙えますしね
いずれにせよ――この耳飾りをくれた友が、この世界線に気付く前に終わらせる覚悟です
蜘蛛の足や頭を狙って潰すようにはしますが、元々は一般生徒だなどと気に……しません
「もっとかかって来なさい土蜘蛛共――アナタ達を喰らい尽くす黒い"蟲"が、此処にいる!」
●異聞・土蜘蛛戦争
秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)は、桜が狂い咲く銀誓館学園の構内を真っ直ぐに歩いている。ありったけの詠唱銀弾頭を手持ちの武器にフル装填しながら、蜘蛛の巣の中心に居座る"女王"を見据えて。
「"蜘蛛の巣"に"蜂の巣"担いで来る事になるたぁな……!」
構内に満ちる瘴気。美しさと殺意が同居する桜の花弁。不自然なまでに居ない一般生徒。
既に奪還戦は次のフェーズに移行している――即ち、女王の尖兵との対峙。
既に此処は戦場なのだ。奴らは間違いなくこの領域を乱した猟兵の先発隊を始末しにかかるだろう。それが終わるまでは、こちらに意識を向けることはない。ならば。
「その横っ面、全力で引っ叩くだけって話だ」
かつての土蜘蛛戦争においても、こちらの本丸に仕掛けられたことはない。
皮肉だが、国見の本懐は彼女がオブリビオンとして歪んだ生を受けたことによりチェックメイト寸前のところまで至っている。
無論、指を咥えてそれを眺めているつもりなどない。
●死兵との相対
女王の尖兵たる風紀委員たちは、その頭数で強引な索敵を行っている。作戦行動には緻密さも練度もなく、ただローラー作戦を行い侵入者を血眼になって探していく。
「ああ、もう!面倒くさい!」
フール・アルアリア(No.0・f35766)は淡紅屋・ほまれ(咲き誇る春の君・f35480)を連れ、構内を巧みに移動していた。相手は元来戦闘員ではなく、持っているのも自動小銃だ。閉所に追い込んで相手取る頭数を減らして叩くのが常道である。
――だが、しかし。
「どうせあの分だと自爆前提でしょ!仕掛けるタイミング間違えたら僕もほまれちゃんもおしまいじゃん!」
女王の尖兵は初めから消耗品扱いであることをフールは見抜いていた。彼らは既に土蜘蛛の眷属となり果てている。
【ならば、女王の悲願のために命を捨ててでも侵入者を狩りにくることは自明の理】であった。
「……フールさん、彼らはもう、救うことは出来ないのですね」
淡紅屋は駆けつつ、フールに向けて問う。
「うん。もう、駄目だね……ほまれちゃんは、無理しなくていいからね?」
フールは空き教室に飛び込み、淡紅屋をカバーしつつ微笑んでみせた。
淡紅屋は銀誓館学園とは一切の関わりがない。だが、この学園の生徒がこのような災厄に見舞われる理由がないことは理解していた。土蜘蛛の尖兵となり果てた彼らも、本当なら普通の青春を過ごし、ありえたはずの未来に向かっていた。けれど。
「……大丈夫です。理解も、覚悟も、出来ています」
退くわけにはいかない。淡紅屋は、ただ決意のみでこの場に踏みとどまっていた。
「んー、そろそろヤバい、かも?」
女王の死兵が包囲網を狭めてきている。幸いなことに一般生徒は"繭"へと避難しているため、これから起きるであろう学園全体を巻き込む戦闘の流れ弾を受けることはないだろう。勿論長い目で見ればそれもかなりネガティブなことではあるのだが、奪還戦までの時間稼ぎくらいにはなる。
いよいよ接敵されるかといったところで、フールと淡紅屋の前に黒燐蟲が舞う。
――間違いない、これは。
●死を乗り越える青春
鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は女王の死兵が出現後、息を潜めて状況把握に努めていた。
存在そのものが呪殺兵器と化している死兵たちは、仕掛けるタイミングを間違えれば"こちらと刺し違えることを前提として"動いてくる。頭数さえ少ないならば速攻で始末して終わりなのだが、あまりにも多勢に無勢だ。女王との交戦前に損耗することは避けたい。
「……おや?」
構内を威風堂々、殲滅武装に身を固めた猟兵が一人歩いている。どうやら後詰めが来たようだ。
たった一人だけ――だが、その男はあまりにも無骨で、後先考えない武装をしている。
「いくら此処が"そういうの"に強いとはいえ、後でそれなりに怒られると思うけど」
どの道学園奪還のためだ、建物への多少の被害は目を瞑ってくれるだろう。
この場において適切な、戦術級の壊し屋がやってきたことで鈴乃宮の腹も決まった。
あとは当初合流出来た二人だ。
遊撃手と癒し手が一人。組み合わせとしては悪くはないが、この状況での開戦は彼らにとって有利には働かないだろう。
構内に展開していた黒燐蟲が三人を捉えた。
位置関係も計算済、後はこちらからコールするのみ。
『こちら、鈴乃宮です。これを聞いてるお二人は、三つ数えたらその教室を飛び出して下さい。
そして後詰めの貴方は、三つ数えたら私の蟲が指し示す方向に全力でどうぞ。
私も支援します。それでは、3、2、1』
●銀誓館学園奪還戦:開戦
爆音。
フールと淡紅屋は鈴乃宮の指示通り潜んでいた教室を飛び出し、直後自分たちが潜んでいた教室がえぐり取られるような爆撃を受けたことを認識する。こんな無茶苦茶な一撃をぶっ放せる存在に心当たりは全くない。恐らくは"後詰め"の猟兵によるものだろう。フロアひとつ瓦礫に変えようとする勢いの範囲殲滅攻撃に、女王の死兵たちは為す術もなく巻き込まれていく。
「……いくらなんでも無茶苦茶すぎるって!?」
もう女王の死兵がどうこうの話ではない。まるごと校舎ひとつ瓦礫に変える勢いの爆撃から淡紅屋をカバーしつつひたすら駆けていくフール。
爆撃範囲から離脱したあたりで、恐らくはこの範囲殲滅をやってのけた張本人である男が笑顔でやってきた。
「いやあ悪いな!こんな事態だ、多少荒っぽかったのは勘弁してくれ!」
フールの直感が告げた。間違いない、この男――銀誓館OBだ。
「此処の校舎あそこまでぶっ飛ばせるとか絶対OBでしょ!?後で絶対怒られるって!」
秋枝はからりと笑い、改めて名乗る。
「秋枝だ。お察しの通りここの卒業生。多分あんたもそうなんだろう?」
フールは一度ため息を吐いてから、満面の笑顔で返す。
「僕はフール!秋枝ちゃんと一緒で卒業生。じゃ、いっちょ母校を取り返しますか!」
●銀誓館学園奪還戦:呪い≒祝いの原則
鈴乃宮は屋外より、秋枝を中心とした範囲殲滅行動に対し徹底した支援砲撃を継続していた。
女王の死兵たちが呪殺兵器であることは把握済であり、そこから執るべき戦術をその豊富な戦闘経験から導き出している。
そしてその狙いは的中した。
――死兵たちは、呪殺すべき対象を認識する前に斃れているのだ。
呪いというものは元来無差別に放つことはできない。呪いを込める為の手法とは別に"誰を呪うのか"を指定して初めて完成する。人を呪うにせよ場を呪うにせよ、それを欠いては呪いは呪いたり得ない。
秋枝の範囲殲滅攻撃と鈴乃宮の外部からの支援砲撃。
死兵たちの呪いその死角を突く攻撃は、彼らに仕掛けられた呪殺兵器としての機能では対応できる代物ではなかった。
フールは秋枝に淡紅屋を預け、構内をその超人的運動能力で駆けていく。
秋枝の圧倒的火力とワイヤを利用した移動能力があれば、淡紅屋の安全は確保されたも同然なのだ。そうなればフールも吹っ切れた仕事が出来る。構内をユーベルコードで生んだ突風に乗って縦横無尽に駆け抜け、死兵たちを翻弄しつつ誘導していく。砕ける窓ガラスも瓦礫もすべてフールに味方した。秋枝と鈴乃宮が指定したポイントまで死兵をおびき寄せ、彼らの圧倒的火力でまとめて始末する。それを繰り返しながら、ふと、フールは気づいた。
「あれ?多少の呪いは覚悟してたけど、全然それっぽいのが来ない」
ワイヤで移動する秋枝に抱えられながら、淡紅屋はひたすらに祈り、願っていた。
どうか、降り注ぐ呪いからフールが護られますように。
どうか、土蜘蛛の呪いに侵食された者たちが苦しみから解放されますように。
どうか、平穏と安らぎを。
どうか、優しき終わりを。
"呪い"と"祝い"は元来同一のものであった。いずれも対象を定め、請い願うことで成立する。
淡紅屋はただ、フールと、呪いにより土蜘蛛と成り果てた死兵たちに祈っていた。
たとえ淡紅屋が隣に居なくとも、淡紅屋の"祝い"はフールを守り抜いていたのだ。
「……淡紅屋、だっけ。いい子だな、ほんとに」
秋枝は淡紅屋を懐に抱えたまま、フールの誘導に合わせてその有り余るほどの弾薬を指定ポイントに叩き込み続けている。初春の大セール、在庫は潤沢なのだ。大盤振る舞いしている中、ただ一生懸命に祈る淡紅屋の様子に目を細める。
「いいえ。僕は……ただ、祈ることしか出来ません」
即座に秋枝は応える。
「自分をそんな風に言うのはやめなよ。祈り続けるってのは、並大抵の奴じゃ出来ねえからさ」
そのまま淡紅屋の頭をくしゃくしゃと撫でて、秋枝は笑った。
●銀誓館学園奪還戦:反撃の狼煙
ふと、以前ここのプールで殴り合った後輩のことを秋枝は思い出す。
能力者としても未熟であったにも関わらず、自分と必死で殴り合い遂には"月のエアライダー"として猟兵へと覚醒した後輩。あの最後の蹴りは、未だに鳩尾が忘れていない。ただ根性と矜持だけで「至った」あいつは、まだ生きているだろうか。きっと、ただくたばるわけが無いと確信してはいるけれど。
「……え……か……」
突如スピーカーから響く全校放送。ノイズ混じりで、内容はよく聞き取れない。
だが、その場にいる秋枝は。秋枝だけは。
その声の主を確信していた。
「聞こえるか!こちら結社棟!放送機材を奪還した!まもなく包囲網も突破できるぜ!!」
そうだ。気合と根性だけで突っ張り通して猟兵に至るほどの馬鹿が。
たかが土蜘蛛に囲まれたくらいで折れるわけがない。
「外で暴れてる先輩方!お陰でこっちはなんとかなった!ありがとう!」
多分、誰もかれも無事なんてことはないだろう。もしかしたらこいつも誰かを亡くしてるかもしれない。
それでも、膝を折らずにここまで戦い抜いたこと。秋枝は心の底から尊敬の気持ちを抱いた。
「それと、絶対居るに決まってるから言っておく。
秋枝昇一郎ッ!こっちは俺が預かるから、先輩は先輩らしいところ見せてくださいよ!」
秋枝は残弾を装填し、満面の笑顔でぶっ放した。
●警告
猟兵たちの活躍により、結社棟は解放された。
以後【猟兵級の能力者と、その指揮下の能力者たちの支援】を受けることができる。
ただし、今後想定される国見との接敵時、対話を求める場合。
【同時に彼ら能力者を抑えるための方策】を練ることが【必須】となる。
それを怠った場合【彼らは独自の判断で国見と戦闘を開始してしまう】だろう。
そうなった場合【まず確実に彼らは死亡する】ことになる。
くれぐれも、そのことについて忘れぬこと。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
シホ・イオア(サポート)
『前へ進む、痛みと祈りがシホの背中を押してくれるから』
怖くなって緊張すると 口調が硬くなる
背中の聖痕で相手の悩みや痛みを感じ取ってしまうため
敵でも癒したい・終わらせてあげたいという方向で動く
罠や防衛戦では建造物を作り豪快に解決することが多い
自衛手段を持たないものがいる場合は救助を優先
ユーベルコードは遠距離戦に強いものが多いが
残像を纏い剣と銃を使って接近戦も行ける
輝いているため隠れるのは苦手
連携アドリブ歓迎
蛇塚・レモン(サポート)
いつも元気で優しく快活な性格
その身に蛇神と妹の魂を宿す21歳の娘
霊能力と技能及びアイテムを駆使して事件解決を試みます
普段の口調は語尾に『っ』を多用します
時々「蛇神オロチヒメ(裏人格)」
老人口調NG
尊大な態度でレモンの母親を自負
UCで召喚されると巨大な白蛇として顕在化
戦闘スタイル
前中後衛どこでもこなせる万能型
武器は蛇腹剣と指鉄砲から放つオーラガン
基本的に脳筋
でも魔法や天候操作での属性攻撃など融通も利く
念動力で行動不能にさせたり呪詛での絡め手も得意
多少の怪我は厭わず積極的に行動
また、例え依頼の成功のためでも、他の猟兵に迷惑をかけたり、公序良俗に反する行動はしません
あとはお任せ
よろしくお願いします!
●銀誓館学園奪還戦:夢の終わり
眼前の戦場はまさに大乱戦の様相である。
先発隊の猟兵たちが既に国見の"檻"へ十分な攻撃を行い、隔離されていた戦闘能力を持つ能力者たちも解放済み。女王の尖兵たちも数で押し切れなくなり、集団戦に不向きな能力も踏まえ猟兵側が押し切りつつある。
「ふんふん……先に来た猟兵さんたち、上手くやってくれたみたいだねっ!」
ふんす、と意気十分な蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)は決死の抵抗を試みている尖兵たちに指鉄砲を向け、BANG☆と空撃ち。その銃口の先に居る集団を蹴散らせば、この混戦にケリもつくだろう。そして、蛇塚の技量を以てすればまず仕損じることはない。このシルバーレイン世界における要地で起きた重大な事態であることは承知しているし、だからこそやって来たのだ――"彼ら"を、救うために。
「……感じます。苦しみと怒り、恨み、そして悲しみを」
シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)は、グリモアベースで聞き及んでいた状況が決して誇張されたものではないことを背中の聖痕で感じ取っていた。あまりにも濃い瘴気、痛み、恨み、悲しみの念。この空間を編み上げた主は、どれほどの想いであったのだろう。想いを馳せるにも、あまりにも背中より伝わるそれが強く意識を刈り取られそうになる。
「シホちゃん、大丈夫?無理しちゃ駄目だよ」
シホが纏う優しい光が明滅しているのを見てとり、蛇塚は声をかける。こんな小さな体で世界の運命を左右する場面に乗り込んでくるのだ、その心の強さたるや大したものである。そんな彼女を一人で行かせるなど、蛇塚が出来るわけがない。
「ありがとう。私は、大丈夫」
明らかに気負った返事を返すシホの頭を軽く撫でる蛇塚。
そして、一度右手を握り、再び指鉄砲を形作る。
「ん。よし、それじゃあ……始めるよっ!」
●銀誓館学園奪還戦:死兵、夢と共に逝くべし
初弾は蛇塚のオーラガンであった。完全に意識外からの急所への狙撃に、呪殺の標的を定められぬまま塵へと還る尖兵。直後のシホから放たれるマジカルガトリングガンによる制圧射撃。尖兵たちが状況把握を終えるまでに、残存戦力の三割以上が討滅されることとなった。
『イジメっ子はお仕置きだよ~っ!』
そこから蛇塚の追撃が始まる。《超霊装顕現術式・幻影に揺らぎし綿津見の乙姫》が起動し、蛇腹剣が本来の姿を顕す。神気を纏うその黒槍と共に、蛇塚は真の姿を化し、上空へと翔んだ。
"汝らに罪有りとは言わぬ"
"だがッ!その魂送らねば最早救済はなし、冥土にて安らかに眠れい!"
蛇神オロチヒメの権能を籠めた渾身の一投。
それは、残る死兵を完全に葬る――はずであった。
●銀誓館学園奪還戦:女王、顕現
その黒槍は、黒いセーラー服を纏う少女に事も無げに受け止められた。
"余の一撃を片手で受けるか。不遜であるな、名を名乗れ"
少女は一瞥し、応じる。
「土蜘蛛が母、国見眞由璃。恐れながら、ひとときその槍、引いていただけますか」
蛇塚とオロチヒメは暫し思案し、槍を引くことにした。
恐れたわけではない――だが、この言葉に従わなかった時何が起こるのか、予想できなかったからだ。
この"檻"を編み上げた主であり、何よりたった今眼前でその力は証明されている。
シホはぴたりと動きを止めた尖兵たちと国見を見据え、あまりにも強い【悲しみ】の思念にあてられていた。
殺気や怒りではない、純然たる【悲しみ】である。どうしても、彼女をすぐに害そうとは思えなかった。
「妖精、ですか」
シホを見やり、穏やかな微笑みで国見は呟く。
続けて紡がれた言葉は、シホには予想出来たものであった。
「貴女は戦場に立つにはあまりにも優しすぎる。今すぐ此処を去りなさい――わたくしも、無用な爭いは好みません」
そのまま二人に意識を向けることなく、猟兵たちに歩みゆく国見。
遂に、オブリビオンにして土蜘蛛の母、国見眞由璃が十一度目の顕現を果たした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』』
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POW : 眞由璃紅蓮撃
【右腕に装備した「赤手」】が命中した部位に【凝縮した精気】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : 疑似式「無限繁栄」
自身の【精気】を代償に、1〜12体の【土蜘蛛化オブリビオン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 土蜘蛛禁縛陣
【指先から放つ強靭な蜘蛛糸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●断章:十一番目の分岐
猟兵たちの前に現れた国見。
彼女の出現と同時に、尖兵たちはすべて武器を引き戦闘態勢を解いている。
「……今回も、どうやら行き止まりなのかもしれませんね」
国見はため息をつき、ゆっくりと語りはじめた。
「此度の件、貴殿らからすれば許せぬ行いかもしれません。
ですが、それはかつての我らも同じこと」
かつてシルバーレイン世界にて起きた土蜘蛛戦争。最終的に土蜘蛛の女王であった国見が同胞の助命と引き換えに討たれ"来訪者"との対峙を迫られる切っ掛けとなった戦役。そこで彼女は生を終えた。
眼前に居るのはその時の彼女ではない。
オブリビオンである。
「わたくしはこうして、十一度目の黄泉返りを果たし此処におります。
総ての結末は識っておりますが、だからといって」
国見の目に力が入る。
猟兵たちをしっかりと見据え、断言した。
「土蜘蛛の母として、その生き様、曲げるつもりはございません」
静寂。
オブリビオンとして無限の再生を強いられているにも関わらず、彼女は一切の曇りもなくその悲願を持ち続けている。
国見は、なおも言葉を続ける。
「此度は、銀誓館学園を我らが繭と変えることに成功いたしました。
その結果、不完全ではありますが、我ら土蜘蛛にとって善き流れがございます」
一瞬、母の微笑みを見せる国見。
そして、続きを語り始める。
「銀誓館学園の能力者、及びその可能性を持つ人間。
彼らの精気を以て、我ら土蜘蛛は――【捕食者としての種を脱却出来る】」
人の精気を喰らい、肉を喰らい、骸を喰らい。
そうして生き長らえる捕食者を、止めることが出来るというのだ。
「それには、今暫くの猶予が必要なのです。
【その猶予を与えてくださるのであれば、これ以上の死は起きぬと誓いましょう】」
ここで国見を、土蜘蛛を見逃すというのであれば。
【捕食者より進化し、土蜘蛛たちが完全たる人類の隣人】となるのだという。
「かつて我らと貴殿らが争い、殺し合ったように。
此度も同じ始まりでこうして再び向かい合った」
国見はうっすらと微笑みつつ、覇気を強めて言う。
「ですが、結末は変えることが出来るはずです。
この歪んだ螺旋、天命に従い続ければ、永遠に我々は殺し合うことになる」
一筋の涙。そこにどのような想いがあるかは、彼女にしか分からない。
それを拭い、国見は告げる。
「どうか、引いてはいただけないでしょうか。
そうすれば、我ら土蜘蛛は、我らと貴殿らを踊らせる天への刃となりましょう」
土蜘蛛の女王にしてオブリビオン、国見眞由璃は。
歪んだ生を与えた"天"と、愛しき我が子を脅かす"地"と、最期まで闘うつもりだ。
「もし、それでも我らに刃を向けるなら。
その時は、これまでのように殺し合うのみ」
「ですが――此度は、命乞いをするつもりはございません」
●警告
これまでの国見の言を踏まえ、猟兵各位は決断を下す必要がある。
――国見を討滅するのであれば【討滅】を。
――国見と協調するのであれば【協調】を。
このどちらかを胸に決め、行動を起こさなくてはならない。
【もしどちらも選ばないのであれば、それは何もしない事と同義】である。
また【協調】を選ぶのであれば、解放された能力者を説得する必要がある。
【もしその説得が相応しくないものであった場合、彼らは制止を振り切り国見を襲撃するだろう。その結果、確実に彼らは死亡する】
この選択を以て"十一番目の世界線"は開かれる。
選ばれた結果に応じ、泰山及び神井のグリモア猟兵両名が予知する内容に重大な影響が発生する。
再度記す。
運命を決めるのは、貴方だ。
フール・アルアリア
【討滅】
回答即答すんね?ふざけるな。協調したいなら手を出したらダメなんだよ、何人かもう殺してるじゃん。人が肉を食うのと同じ、とかそういうのきかないから。だって此処の人間の扱い、家畜以下でしょ。
でもその願いは覚えておいてあげるよ、それだけだけどね!
指定UCで視覚感知を不可にする。もし見えない糸があっても先に花びらがくっつくし。あとは死角から暗殺技術を駆使、レッグギロチンを致命傷狙いで蹴り込みつつ、ヒット&アウェイの繰り返し!
土蜘蛛召喚されたら花嵐で吹き飛ばす!
過ぎたるはなお及ばざるが如し、てやつじゃない?協調を願うにはこれやりすぎだよ。
※バステ受けた場合の自動反射UCについては取扱を一任します。
●フール・アルアリア(No.0・f35766)の決断:【討滅】
「――ふざけるな」
国見の提案に対し、最初に口を開いたのはフールであった。
その反応に、国見は鋭い視線を向ける。
「協調したいなら手を出したらダメなんだよ、何人かもう殺してるじゃん」
事実の指摘。フールからすれば、母校の生徒を既に殺されているのだ。
なかったことになど絶対出来るわけがない。
「そう、ですね。では――貴殿はわたくしたちに刃を向ける、と?」
国見は明確に殺気を籠めて眼前の宿敵に問う。
彼女にとって、フールは怨敵が一人――銀誓館学園の系譜なのだ。
「その願いは覚えておいてあげるよ、それだけだけどね!」
花嵐を纏うフール。これにより、視聴嗅覚による行動感知は妨げられる。
死角からの一撃による打倒。それが、フールの選択した戦術であった。
瞑目する国見。
そして見開いたその目には、執念の炎が宿っている。
「それが貴殿の選択だというなら、お相手いたしましょう。
ですが――後悔することになるでしょうね」
●決戦:正気と狂気、そのボーダー
フールの姿を花嵐がかき消したその刹那、最初の口火は切られた。
卓越した運動能力と殺しの業。普段は意図して遣うことのないその必殺の技術を十分な準備の上で振るう。
巨躯でもなく異形でもない相手だ。視覚・聴覚・嗅覚まで奪ってのこの一撃、決して外しはしない。
そして振るわれたフールのレッグギロチンによる一撃は。
――国見の赤手より呆気なく掴まれることとなる。
「貴殿は――誰を相手にしているおつもりだったのですか?」
蜘蛛という生物は、動くものへの反応を捉える視覚と複数存在する器官による聴覚を主に周囲を認識する。
そして――触覚もまた秀でているのだ。
フールのユーベルコードにより【視覚】【聴覚】【嗅覚】は無効化できた。
だが――【触覚】はその効果は及ばない。
首筋に触れたレッグギロチンの刃、それに反応して国見は赤手による捕縛に成功したのである。
その尋常ではない怪力に足首を握りつぶされる音を聞きながら、フールは致命的な誤算を思い知らされていた。
ただの土蜘蛛ならば地力で圧倒も出来よう。だが、今相対しているのは。
土蜘蛛の女王、国見眞由璃である。
無造作にフールを地面に叩きつけ、国見は告げる。
「貴殿にとって、わたくしたちが簒奪者であるという言も理はあります。
そしてその矜持も、十分に理解が出来る」
赤手の刃をひとつ立て、まるで人差し指のように自身の唇に当てる。
「ならば、こちらも一つ覚悟を示しましょう。
そのような脆弱なる身でわたくしに向かったその覚悟に、敬意を払います」
そして、国見は。
その刃にて、自身の左目を抉り出した。
『潰えた未来 骸の海より引きずり出された穢れし我の残滓へ告ぐ
この灯火を辿り 十一番目の世界へと集え』
《疑似式「無限繁栄」》
●決戦:"すべて"の報われなかった未来のために
抉り出した左目を赤手により爆炎の薪とする国見。
その炎が天まで届かんとした時、突如空が暗転する。
まるで宇宙そのものであるかのような星空。
それは静かにひび割れていき、そこから二つの影が落ちてきた。
影はまるで黒いヘドロのように不定形であったが。
やがて、人の形を為していく。
国見眞由璃と瓜二つの姿へと。
「……喰らったのなら、奪ったのなら。
"最期まで生き延びようと足掻くのが道義"というもの」
そうして、三人の国見は。
寸分狂いもなく同時にその赤手を構える。
「貴殿は正しい――だが、あまりにも"弱い"」
三本の赤手が、爆炎を纏う。
「わたくしは、わたくしの子たちがこの世界に赦されるためなら。
天命へと立ち向かう資格を得るためなら」
歪んだ生を得た土蜘蛛の母、国見眞由璃は血の涙を流す。
抉り取った左目の眼窩からは、あまりにも紅い炎が見える。
「何度でも、たとえそれが無限の地獄であろうとも。
最期まで、足掻いてみせる」
●決戦:妄執≒決意
砕かれた片足首と地面に打ち付けられた激痛を堪え、フールは立ち上がる。
眼前の国見が見せた決意は明らかで、彼女が呼び出したのが"別世界線で討たれた"彼女自身であることも確信が持てた。
征くにしても、引くにしても。
まともに身体が動かせそうにない。
これまでに経験したことがない"死"の気配が過ぎる。
せめて一矢報いることが出来るかと思考を巡らせていたその時。
不意に身体が浮き上がり、そのまま戦場より離れていく。
「……すいませんね、先輩。流石にアレを相手にするのは今のあんたじゃ無理だ。
説教は後でいくらでも聞くんで、今は堪えてくださいよ」
放送で聞いた声。恐らくは、結社棟包囲戦を生き残った能力者生徒のリーダーだろう。
身のこなしからすると、月のエアライダーだ。正しく、自分の後輩である。
彼に抱えられ、戦場から脱出することができたのだ。
「……うん、ごめん。ありがと」
その様子を見送った国見。
他の猟兵たちに向き直ると、厳かに言葉を紡ぐ。
「貴殿たちには一度、わたくしの願いを聞き届けていただきました。
ですから――ここから去るというのであれば、命までは取りません」
この短い時間で出来たとは思えぬ戦闘の痕跡。
それを見やり、国見は続ける。
「まだ、お続けになりますか?」
苦戦
🔵🔴🔴
上野・ユウヤ
【討滅】
後ろから失礼
どっちかと言うと捕食者じゃない土蜘蛛は歓迎っすけど
"この眞由璃さん"はみんなからめっちゃヘイト溜まってるっすね
その分こっちとは思いっきり戦っても大丈夫なので楽しそうっす
UC【悪魔召喚「ネネット」】使用
これは僕らの戦い
本来他の可能性なんて要らないっすよね
7番目の悪魔ネネット、運命の繋がりを閉じて欲しいっす
模倣偽神細胞液て偽神化し翼を生やし飛び攻撃を避け相手の糸を切ってまわる
タイミングをを見て相手からエネルギーを【捕食】
歩み寄りが難しい所まで来ちゃったっすね
仲良くするのも嫌いじゃないんで骸の海で次を考えててください
エネルギーは別の檻で使えるか試しとくっすね
※アドリブ・連携歓迎
●上野・ユウヤ(悪魔憑き/夢遊病者・f26142)のスタンス:【討滅】
「――後ろから失礼、っと」
上野は愛用の大剣を国見の背後から振るい、赤手によって受け流され吹き飛んだところを軽やかに受け身を取った。一切の迷いなく振るわれた斬首の一撃は、その的確さ故に呆気なく捌かれたらしい。
「悪くない一撃でしたが、少々素直過ぎましたね。――それで、貴殿も同じように蹂躙されたい、と?」
国見は顔色一つ変えず、不意打ちを仕掛けてきた上野に向け問いかける。
既に明確な殺意を以て対峙された以上、その問いの答えは決まっている。
「どっちかと言うと捕食者じゃない土蜘蛛は歓迎っすけど」
上野もまた、感情の伺えない目で国見を見据えつつ応える。
大剣を肩に担ぎ、頬をかきつつ軽い調子で。
「"この眞由璃さん"は――どうやらめっちゃヘイト買ってるみたいっすね」
国見はその言に僅かに眉根を寄せた。自らの別の可能性を識っているという事実の提示。
その言葉は、確実に国見の殺意を増幅させる。
「歩み寄りが難しい所まで来ちゃったっすね。
仲良くするのも嫌いじゃないんで……骸の海で"次"を考えててください」
"Summon the energy demon No.7 «NEHNET»"
いつの間にか握られていたダイモンデバイスが、藍色の光をたたえ起動する。
召喚されし悪魔が司るは――"運命"であった。
●決戦:運命の選択
顕現せし悪魔『ネネット』に対し、上野は命令を下す。
「7番目の悪魔ネネット、"運命の繋がり"を閉じて欲しいっす」
運命を司るかの悪魔は、確率操作及び運勢の流れを支配する権能を持つ。その力は鉄火場においては決定的に作用するもので、もしその命令が通ったならばいかに土蜘蛛の女王にしてオブリビオンである国見といえど、苦戦は免れなかっただろう。
――だが、現実は非情であった。
"Failed:Reject your order."
既に『骸の海』より運命を歪められ、定められた死を越えて顕現した国見眞由璃。そしてその彼女が作り上げた"繭"の中での召喚と命令である。運命を司る悪魔は、その場において「有るべき存在」「有るべきではない存在」を選択した。そして――上野は"後者"に振り分けられたのだ。
「あの頃はなかった"小細工"でしたわね……残念ですが、貴殿の子飼いはわたくしを選んだようです」
サモナーであれば想定される事態だ。かといって歓迎出来る事態ではないのも事実だが、上野はこの程度のトラブルに動じるほど未熟ではない。模倣偽神細胞液を自身に投入し、偽神化による変異で戦闘態勢を整える。
「……泥仕合っすか。まあ、已む無しっすね」
上野は飛行能力によるヒットアンドアウェイを選択した。機動力で国見の糸をいなしつつ切断、その間隙を突いて国見の精気を捕食する。決定打とはならないだろうが、彼女を摩耗させる戦術としてはここまでの状況を踏まえるならば最善といって差し支えない。
糸に絡め取られることなく、予定通りに見えた間隙を縫って国見に急襲する上野。
一度の接敵でどこまで削れるかは分からないが、多くの機会がやって来るとも思えない。
出来うる限りの最大限の捕食を実行したその刹那、上野は吸収した精気の爆発により翼を吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
「わたくしの精気、想い、味わえましたか?」
衝撃で立ち上がることが出来ない上野に歩み寄る国見。
特にとどめを刺す様子もなく、ただ、見下ろしている。
「貴殿が相応の腕前を持っていることは認めます。
ですが――あまりにも戰場を甘く見すぎている。そして、このわたくしについても」
国見にもはや殺気はない。既に戦いは決したと判断したようだ。
「まだ続けるのであればいくらでもお付き合いいたします。
その分、時間も稼げますから。わたくしの消耗も皆無とは言いませんが、果たして、貴殿は持ちこたえられますか?」
そう言うと国見は、他の猟兵に対し視線を向けた。
苦戦
🔵🔴🔴
秋枝・昇一郎
あんた、今生きる”同胞”にも手ぇ出したな?
ここを繭で包むってのはそういうコトだ。
生前のあんたの約束を、当時の一人として違える訳にゃいかねえ。
問いに対する答えはノー。【討滅】だ。
色々あった当時を知る人間としても、猟兵としてもこれは変わらねえ。
●能力者へ
「猟兵になれたヤツは何人居る?それ以外は一般生徒の避難誘導か、残るとしても無茶せず後方支援に徹するように頼めるか?」
「能力者でもないのにゴーストどころか、異形を相手するようなもんだぞ。さっき一戦交えておいて、分からないとは言わせねえ」
或いは、猟兵に目覚めた彼を見つけて上記を伝えて貰うように頼む。
●交戦
武器は鎧砕き、ぶん回しで相手のガードごと撃ち抜く勢いで振るい、反動利用の回し蹴り(仕込み刃込)で不意打ち、武器受けやワイヤーでの緊急回避等も駆使して立ち回り。
相手のUCは自前のUCで可能な限り打ち消しつつ立ち回る。
自身へは勿論、共に戦う後輩・猟兵への致命的な一撃には特に気を配る。
「行き止まりじゃねえだろ。土蜘蛛の眷属は今も銀誓館で生きてんだよ!」
淡紅屋・ほまれ
アドリブ・共闘歓迎
●行動指針
- 【討滅】
- WIZ判定
- 敵UCに当たらぬよう距離を取る
- 指定UCを使って味方を回復・再行動させる
- 自身よりも他者の防御・回復を優先する
●心境
国見さん、あなたの言うことを信じたい気持ちはあります。その気持ちに偽りはありません。ですが、まず先に銀誓館学園の生徒たちに対して犠牲を出したというその手段を許す訳にはいかないのです。
猟兵として…そしてひとりの人間として、その行いは認められません。
どんなに誇り高くても…あなたは過去の幻影。十一度黄泉返りをしているのなら、十二度目のとどめを刺すまで。
だから謝りません。僕だってあなたと同じ。仲間をみんなを…守りたいんです!
●秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)と淡紅屋・ほまれ(咲き誇る春の君・f35480)の決意:【討滅】
眼前で証明されたオブリビオンとしての国見の実力。このままでは、猟兵側の意思とは関係なく彼女の悲願は成就する。国見は猟兵たちに対し殲滅の意思はないようだ。それは言い換えるならば――"猟兵という存在はもはや脅威とは見做していない"のかもしれない。
震える足。どれだけ振り切ろうともへばり付く恐怖心。眼前の国見が示した圧倒的戦力差。それでも、淡紅屋は足を進める。
「あなたの言うことを信じたい気持ちはあります」
本心である。
淡紅屋はここに至るまでの土蜘蛛に関する依頼での作戦行動の際も、最後まで土蜘蛛という存在の過去、そして想いについて心を寄せることを止めなかった。"繭"となった学園の惨状と相対してなお――"総て"を救うにはどうするべきかを想い、考えていた。
「ですが、まず先に銀誓館学園の生徒たちに対して犠牲を出したというその手段を許す訳にはいかないのです」
国見は穏やかな表情でその言に対し頷く。
「猟兵として……そしてひとりの人間として、その行いは認められません」
先程までの冷徹にして傲岸不遜たる女王ではなく、ひとりの母として国見が問う。
「……その覚悟、意思、承りました。
されど、貴殿はどうやら"祈り手"の様子。わたくしに挑むには手が足りぬのでは?」
その後ろから同じく歩み出る秋枝。
同時に能力者部隊のリーダーにアイコンタクトを行う。彼らをこの戦いに巻き込むわけにはいかない。
リーダーの青年もそれを重々理解していたのか、言葉を交わすことなく後方支援を展開する。
「こっちは後輩殺られてるんだ――それを棚上げは出来ねえよ。
その上でさ。あんた、今ここに生きる”同胞”にも手ぇ出したな?」
その言葉に国見は目を見開き、秋枝を見据える。
怒りではない。明確に、虚を突かれた様子だ。
「"生前のあんた"の約束を、当時の一人として違える訳にゃいかねえ」
秋枝の声色に怒りは顕れていない。
ただ、明確な決意が伝わってくる。
「ご両人――お名前を伺っておきましょうか」
淡紅屋と秋枝は、それぞれ名乗りを上げる。
「淡紅屋ほまれと申します。十一度目のとどめ、刺させていただきます!」
「銀誓館学園卒業生、秋枝昇一郎。あんたとの約束、果たしにきた!」
●決戦:祈りなき者
国見はここまでに見せた圧倒的な戦闘能力が影を潜め、秋枝と淡紅屋のツーマンセルに押されつつあった。
個体の戦闘能力としては秋枝と淡紅屋を合わせても追いつけぬほどの開きがある国見が何故にこのような状況に陥っているのか。
答えは、あまりにも残酷であった。
"この世界線に生まれ落ちた"国見眞由璃は独りである。
骸の海の気紛れで歪んだ生により顕現したオブリビオンの国見は、眼前の猟兵たちのように連携を取れる子たちは居ない。かつての葛城山のように、自らの寵愛を以て鉄の連携をとることが出来た仔たちは居ない。彼女は、本来存在すべきではない世界線にその意思で以て踏みとどまっているだけなのだ。必然、独りでは得られない戦術的優位など取れるはずもない。
「行き止まりじゃねえだろ。土蜘蛛の眷属は今も銀誓館で生きてんだよ!」
それは"今の国見が預かり知らぬ仔"なのだ。
"かつての自分が願った世界"が今だったとしても、"再び引きずり出された自分"にとっては別の世界線である。
だからこそ――自らが紡ぎ得た別の世界線を突きつけられるのは、あまりにも苦痛なのだ。
「それは"わたくしの"仔ではありませんので」
無造作に吐き捨て、国見の赤手は秋枝を狙い蠢く。
本来であれば癒し手であり戦闘能力としては低い淡紅屋を潰すのが最適解ではあるのだが――それを許すほど秋枝は甘くない。
明らかに後方支援役を狙い打ちたくなる場面で前衛役がカバーに入る。割り切って前衛役に的を絞れば後方支援役の仕事に悩まされる。秋枝と淡紅屋は歴戦のバディというわけではない。むしろ即席のチームであるが、お互いの役割が明確化しているのが功を奏した。
初めて、国見は焦りの表情を表出する。
秋枝と淡紅屋の連携の巧みさも勿論ではあるが、彼らの精神性に圧倒された部分もないとは言えないだろう。
「……単純な暴力性でいえば、わたくしは貴殿らを上回っています。
何故、このように押されているのでしょうね」
秋枝はニヤリと笑い、困惑する国見へと返した。
「さあねえ。多分"今のあんた"と一緒じゃないか?」
淡紅屋は必死に祈りながら、祝詞のように言葉を紡ぎ続ける。
「どうか、国見さんも、学園の皆様も、土蜘蛛の皆様も、穏やかな結末が迎えられますように」
ひたむきな意思。決意。光輝く今を照らすもの。
孤独にして存在を赦されぬ国見は、徐々に余裕を失いつつあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鈴乃宮・影華
【討滅】
「見逃せと、そう言ったか国見・眞由璃」
もし、もしも襲ってきた尖兵が
今も学園にいたはずの、かつての貴女の眷属だったなら
彼等が女王の下に馳せ参じた結果のこの惨状だったなら
あぁ、そうだったなら私は受け入れた!
そうして得られた一筋の希望を、必要な猶予を
血反吐を吐いてでも稼いだだろう
でも……実際に差し向けられたのは
かつて何があったのかを知らない、ただの一般生徒の成れの果て――自爆前提の消耗品だった
この事を、敢えて私に都合よく解釈します――かつての貴女の眷属は皆、今の貴女を否定したのだと
指定UC起動、『彼等』と共に答えよう
「私は今、此処にいる貴女を見逃せない――『葛城山』の続きをしましょう」
※但し【協調】が多数を占めた場合
能力者の説得を行わず見殺しにする代わりに、選択を受け入れます
〇戦闘
幽霊達には自由に動いてもらい
私は召喚維持の為、蜘蛛糸を躱すべく『ソリウム・ベルクス』で動き回ります
後は『伍光』で敵の動きを止め『ウルカヌスⅡ』の弾幕攻撃です
●鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)の迷いと結論:【討滅】
鈴乃宮は、この世界線に顕現した国見とは最早取り返しのつかない断絶があることは理解していた。
生前の自身が生んだ仔、その血脈を告ぐ眷属たちが通う銀誓館学園。
其処を"繭"として選び、改めて始めた"自らの仔"の繁殖。
それはかつての自身の仔を頼ることなく始まった一般生徒への改造。
もしも国見がかつて遺した自身の眷属への決起の結果始めた此度の結末であったのであれば。
在りし日の彼女の願いをその眷属が汲み上げ始めた天命への叛逆であったならば。
【あぁ、そうだったなら私は受け入れた!】
そうだ。これが土蜘蛛の総意であったならば。
きっと鈴乃宮自身はそれを受け容れ、必要な猶予を何としてでも稼いだであろう。
だが、現実として。
この世界線における一族は、誰一人として母に恭順をしなかった。
今の彼女は、強大なオブリビオンでしかない。
現在を殺す、過去の残響でしかないのだ。
「見逃せと、そう言ったか国見眞由璃」
心の内を過ぎった葛藤、それを噛み殺すように鈴乃宮は吐き捨てる。
この現状において、導かれる結論は一つだ。
【かつての土蜘蛛の一族は皆、今の国見を否定した】
そうであるならば、事ここに至り返答は一つしかない。
既にこの世界線は、彼女を否定しているのだから。
「私は今、此処にいる貴女を見逃せない――『葛城山』の続きをしましょう」
●決戦:掃き出された、誰もが願った可能性
『彼の力を以て世界より喚ぶ――我が呼び声に応え、いざ来たれ生命使い!』
天に展開される星空――【骸の海】へと鈴乃宮は請願する。かつて亡びた者たちの魂を呼び自らの戦力とするユーベルコード。
果たして、その請願は海の彼方へと届いた。
――死した可能性、もはや誰も手が届かぬはずであったもうひとつの地平へと。
宙空より舞降りるは能力者の軍勢。
その有り様は様々であったが、目を引く存在があった。
銀誓館学園の制服を纏った、旧き土蜘蛛の一族。いずれもかつて振るった詠唱兵器を携え、死闘を繰り広げたはずの能力者たちと笑い合う。まるでそれは初めから争いの歴史など通ってこなかったように結ばれた絆の糸。願えども乞えども得られなかった、運命の糸。
彼らがどの地平より来訪したのかは分からない。恐らくはこれまで観測されなかった何処からかやって来たのだろう。顧みられることがなかった、骸の海へと沈んでいった一つの可能性、その結末。その彼方より、彼らはやって来たのだ。
そして。
その中には――鈴乃宮自身の姿もあった。
「――ッ!」
あまりにも残酷な、あまりにも容赦のない顕現。"骸の海"その彼方より、此処に居る総ての存在――猟兵と国見双方――が願った結末が"死した可能性"として眼前に展開されたのだ。その数、五百を越える大軍勢である。彼らの戦闘能力はいずれも当時の能力者と遜色はない。そして、"骸の海"よりやって来た存在である以上、オブリビオンを殺すための力は持ち合わせている。
そう、五百を越える猟兵たちが援軍として顕れてしまったのだ。
国見は膝を付く。自身が足掻き、得ようとした可能性はこれを以て全否定された。オブリビオンとしての歪んだ生にすら叛逆し得ようとした結末は、既に"骸の海"に沈んだものであったのだ。もしこれから自らの手で掴み得るものであったとしても――
国見には、それに刃を向けるほどの心の強さは持ち合わせていなかった。
「あ、ああ、嗚呼。アア――」
うめき声。国見の臓腑より漏れる血のような、くぐもった声。
そしてそれは、絶叫となり。
宙空の"骸の海"へと、響き渡った。
成功
🔵🔵🔴
●最終断章:鎮魂歌
心を砕かれた国見は、ただ宙空の"骸の海"へと慟哭し戦人としては最早立ち上がれそうにない。自らがその生を賭け得ようとした可能性に刃を向けねばならないその事実は、彼女の高潔な魂を完全に押し潰してしまった。
雨音。
空からぽつり、ぽつりと雨が降り始める。
その雨はドス黒く、まるで水銀のような粘度で。
かつて能力者において"詠唱銀"と呼ばれたそれは、今の国見を示すかのように穢れ果てておりその場の存在総てに有害なものとして作用した。
黒き銀の雨に国見はその両手を広げ、ただ微笑んで受け入れていく。
その笑顔は母親のものではなく、諦観に満ちたもので。
やがて彼女は、その黒き銀の雨に飲まれ、溶けて、沈んだ。
●最終決戦『骸海の大蜘蛛』
そして、暫く後。黒き銀の雨が止んだその時。
残された穢れし詠唱銀溜まりより、"それ"は顕れた。
八つの足はいずれも国見の赤手を模した"何か"。
その胴には血涙を流す国見の悍ましき貌。
瞳からは穢れし詠唱銀を垂れ流し、それに触れしもの総てを害する。
蜘蛛というにはあまりにも悍ましく、最早この世界線においてその存在を表する言葉は見当たらない。ただの化け物がその場には残された。
ただ願い、請い、戦い抜くことを決めた国見眞由璃はこの世界線において【完全終了】した。もはや、眼前に居るのは現在と未来の破壊者であるオブリビオンでしかない。【共に手を取り生きる道は閉ざされた】。それにより【十一番目の世界線は開かれる】。
国見眞由璃"だったもの"はただ、子守唄を口ずさみながらどす黒い涙を流し微笑んでいる。
とても、幸せそうに。
秋枝・昇一郎
"そういう仕組み"で黄泉がえった上で、どうにかしようと足掻こうとしたんだな、あんたも。
状況違えば違う結末もあり得たかも知れねえ。
けれど、あんたは"ここ"じゃ譲れない一線をのっけから乗り越えていたんだ。
せめてその残骸は後腐れ無く狩り尽くしてやる。
○戦闘
のっけからUCでブーストして全力で。
獲物は大物に相応しく重量武器。
ぶん回しの反動利用での回し蹴り、ワイヤーでの急制動での距離詰め、懐に飛び込んでの一撃、緊急回避等々織り交ぜつつ本命の一撃を鎧砕きで叩き込む。
※能力者の群勢がまだ有効ならそれらに負けじと上記を叩き込みます。
「壮観だな?メガリス要らずかよ。つくづく猟兵の領域ってのは青天井だぜ……」
●対『骸海の大蜘蛛』:過去を殺すということ
骸の海その彼方より顕れた別地平の猟兵達が、同じく骸の海の潮に屈した異形の大蜘蛛を討とうとしている。
秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)もまた、終幕に向けて力を振り絞り彼方よりの軍勢と共に大蜘蛛――かつて"国見眞由璃"であった何か――を終焉らせるべく攻撃を開始していた。
五百を越える猟兵の大軍勢を相手に、大蜘蛛は渡り合っている。
赤手を模した足による八連紅蓮撃、己の流す穢れし詠唱銀から無数に湧き上がる蜘蛛童、そしてこの世界線の地平その果てまでも囚えんばかりの糸。いずれも常軌を逸したその権能は、確実に大軍勢を削り取り再び彼らを骸の海の彼方へと送っていく。
いつしか、彼方よりの猟兵たちの頬には涙が伝っていた。
十一番目の結末、祈りし者、愛する者である眼前の異形は孤独であった。運命の糸により繋がりし彼方の大軍勢はお互いの苦境を助け、励まし合い、共に歩む戦友が居る。如何に骸海の大蜘蛛が強大で、凶悪で、悍ましき者であっても。
彼女は。
国見眞由璃は、独りであるのだ。
秋枝は、心の奥底より湧き上がる想いに向き合っていた。
果たして、この世界線に生きる者として、こんな終わりで本当に良いのか。
結末を、来訪者に委ねて終わることが本当に正しいのか。
「もういい。全員、下がってくれるか」
秋枝は死闘を繰り広げる猟兵の大軍勢に対し語りかける。
彼方よりの大軍勢はその言葉に、全員が振り返った。
「この結末は"俺たち"が引き受けなくちゃ駄目だ。
しんどい思いさせて悪かった。それと、ありがとう」
「後は俺がやる」
●終撃:"愛する者"よ、死に候え
「"そういう仕組み"で黄泉還った上で、どうにかしようと足掻こうとしたんだな、あんたも」
国見に向け、秋枝は語りかける。
「状況さえ違えば、違う結末もあり得たかも知れねえ」
彼方よりの大軍勢は、ひとり、またひとりと詠唱銀へと還っていく。
「けれど、あんたは"ここ"じゃ譲れない一線をのっけから乗り越えていたんだ」
その詠唱銀は、護るように、祈るように、委ねるように秋枝へと宿っていき。
「せめてその残骸は。あんたの願いは」
その意思は、秋枝に【叛逆せよ】と語りかけ。
「後腐れ無く――狩り尽くしてやる」
"英霊"として、秋枝へと憑依した。
骸海の大蜘蛛は、まるで自身の救いが現れたかのように秋枝へと突撃する。歪んだ生にて最後まで手を伸ばし続けた救い。魂が壊れ、骸の海の潮が満たされ未来を殺す怪異に成り果てた今でも、その温かな光は憶えていたのだ。
秋枝はワイヤーを用い大蜘蛛の破壊的一撃を紙一重で凌ぎ、脚部に向け戦鎚を打ち下ろす。
国見を象徴する赤手。我が仔を護り、運命を切り開くための女王の右手。異形の蜘蛛、その脚と成り果てたそれは未来へとつなぐ糸を断つ凶腕へと成り果てていた。
遺すわけにはいかない。
彼女に、彼女自身に【己が結びし約束】を違えさせるわけにはいかない。
「あんたは、最期まで自分の子供の未来を想っていた。
最期まで、誰かのために戦い抜いていた」
張り巡らせていた糸が、秋枝を縛ろうとする。
だが、その糸はすぐに燃え、天に広がる"骸の海"へと還っていく。
「かつてのあんたは、戦うと決めた、戦う力を持った相手を殺すことはあっても。
戦えぬ者を無惨に殺すようなことは絶対にしなかった」
大蜘蛛の凶腕をひとつひとつ潰しながら、秋枝は語りかけることを止めない。
"国見眞由璃"に向け、ただ静かに言葉を紡いでいく。
「俺は憶えているし、この終わり方だって忘れるつもりはないよ」
すべての脚が潰され、ただその場にうずくまる骸海の大蜘蛛。
だが――その胴に張り付いた彼女の貌は、慈母の微笑みをたたえていた。
「あんたとの約束、これからも違えることはない」
戦鎚を振りかぶる。
閉じてしまいたい瞳を、はっきりと見開いて。
ひとつの可能性、ひとつの地平線が終わるその瞬間を見据えて。
「あんたが祈った、願った未来――これからも、護り通す」
振り下ろされた戦鎚。
銀誓館学園を襲撃したひとりのオブリビオンは、骸の海へと沈んだ。
●十一番目の世界線
気づけば、学園に咲き乱れた桜は消え。時計の針は正しい時を刻んでいる。学園に巣食っていた繭もまた跡形もなく消え失せ、囚われていた一般生徒たちも医療的措置を受けた後、日常へと帰還した。
今回の襲撃で土蜘蛛オブリビオンの糧となった犠牲者たちの関係者にはグリモアベースのサポートを受け、学園側より最大限のケアが施された。何もかも元通りとはいかないだろうが、銀誓館学園は無事に解放されたと言ってよいだろう。
【国見眞由璃はこの世界線より完全に消滅した】。彼女はかつて来訪者として学園の能力者と誇り高く戦い、最期まで自らの一族の未来を願い散った武人として語られることとなる。
今回の件についてのレポートには、【今回学園を襲撃したのは彼女の器を借りたオブリビオンであり、国見眞由璃そのものではない】と明記されている。真実は、この戦いに向かった猟兵にしか存在しないのだ。
未来を護る猟兵達と、女王が、母が交わしたかつての約定。
それは今も、果たされ続けている。
大成功
🔵🔵🔵