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カウント/ゼロまであと少し

#シルバーレイン #【Q】 #ナンバード化オブリビオン #ナンバード


●カウント/+1
「あ、あ、あ……!」
 対峙する少女がふたり。
 からん、と、詠唱兵器が片方の少女の手から転げ落ちた。
 否、少女ではない。小柄で痩身ではあるが、よく見ればれっきとした大人の女だ。
 その女が、なすすべなく少女の前に膝をつき、うなだれている。
 対する少女は――否、こちらは少女の姿をしてはいるが、中身はれっきとした化物だ――、膝をついた少女の前に立ち、にっこりと可憐な唇を釣り上げた。
「どうして……どうして魔弾が効かないのですか……!」
 女は化物に対峙する術を持っていたはずだった。そのどれもが化物には通用しなかった。
「ふふふ、簡単よ。とってもとっても簡単なこと」
 ――私はもうゴーストじゃないもの。ただの能力者なんかには、倒されてあげないわ。
「ああ、これで今日も生き延びられるわ、ありがとう」
 そう言って、化物は――女を殺すのだ。

●カウントアップのその前に
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。シルバーレインにて、事件の予知を致しました」
 仮面吸血軍曹・エフ(謎の吸血軍曹F・f35467)は、自らの呼びかけに応えた猟兵たちに恭しく礼をした後、要件を告げる。
「まずは、ナンバード、という種類のゴーストが、オブリビオン化したことをご報告しなければなりません」
 ナンバード。それは、胸元に「数字の刻印」を刻まれたオブリビオンである。この刻印はオブリビオンに強大な力をもたらすが、時間の経過とともに数字は減ってゆき、ゼロになると死んでしまうという特性がある。
「もともとはとある戦争の際に生まれ、そして後に扱いあぐねて消された存在の筈でした。ですが、何者かの力によってオブリビオンに「ナンバード」が復活してしまったようでございます」
 ナンバードの胸元のナンバーは能力者を殺害することで上昇する。ゆえに、ナンバードは「能力者」を殺そうとするのだと、仮面の少年は言う。
「ナンバードには「自分が次に殺すべき能力者」の居場所を感知する能力がございました。それによりターゲットにされてしまったのが、銀誓館学園出身の女性でございます」
 仮面の少年が配った写真には、まだ少女にも見える小柄で細身の女が写っていた。
「彼女の名前は黒耀・桧依(こくよう・ひより)。今年で27歳になるれっきとした成人女性です。銀誓館学園卒業後、一般の会社にて働いておりますが……はい、彼女にはとある趣味がございまして」
 腐った女子と書いて、腐女子。いわゆる男性同士の恋愛に「萌える」性質を持つタイプの女性である。発達した脳内フィルターによりノーマルだろうが百合だろうが非人間体だろうが無機物・非生物だろうが擬人化・男体化して萌えられるというが――。
「ええ、そういうことですので彼女がナンバードに襲われる当日、彼女は近所の区民会館で同人誌即売イベントにサークル側で参加しているのです」
 なお、コミックマスターではなく漫画は書けないため、主に小説を自費出版して活動しているのだとか。
「皆様には、桧依さんとともにこの同人誌即売イベントを満喫し、ついでにそれとなくナンバードに対する警戒網を敷いていただきたいのでございます」
 即売会はオールジャンル、会場を周ってみると同時に自身の好みの本を見つけるもよし、最近は完成度の高いコスプレスペースを見て回るもよし。猟兵たちがやってみたいというのならコスプレをしてみたっていいし、自分の本を持っているのなら桧依のスペースに委託という形で置いてくれるかもしれない。
「ナンバードは刻印の力によって「地縛霊型オブリビオン」の群れを支配しており、桧依さんを襲わせようとしています。その襲撃がイベントの開催中になれば、被害者は桧依さんだけには済みません。一般人は世界結界の力で非日常の存在を錯覚することこそできますが、イベントの最中に襲われてしまえば一般人の被害は免れないでしょう」
 猟兵たちがイベントを満喫することでナンバードを牽制し、桧依を襲う時間帯をイベント終了後の帰宅途中――迎撃に都合のいい場所までおびき寄せることも可能なのだと仮面の少年は言った。
「襲ってくる地縛霊型オブリビオンの群れは、「自称宵闇の使者」という存在です。暗黒炎龍のオーラによって消えない魔炎を放ったり、タルパという人工未知霊体をオリジナルキャラクターとして具現化する、吸血コウモリの群れを放つなどというユーベルコードを使用してくる様子。僕にはよくはわかりませんが、中二病という病を患っている……? などという予知も感じ取れました」
 地縛霊型オブリビオンをすべて撃退すれば、ナンバード化オブリビオンとの決戦となる。数字の刻印によって通常よりも強大な存在になったナンバードだが、数字がゼロになると死んでしまうためにナンバードは常に余裕がなく、焦っているらしい。
「この余裕のない、焦っているという状態を利用すれば、容易く罠にはめることも可能でしょうし……ちょっとした嘘やトリックにも簡単に引っ掛かるでしょう」
 戦いを有利に進めるためにも、まずは――。
「同人誌即売イベントに参加し、敵を牽制しながらイベントを満喫してくださいませ」
 準備の出来た方から、僕が転送を担わせていただきます。
 仮面の少年は、にっこりとそう言って微笑んだ。


遊津
 遊津です。シルバーレインのシナリオをお届けします。
 第一章日常、第二章集団戦、第三章ボス戦の三章構成です。

 「第一章:同人誌即売イベントについて」
 地方の区民会館の一室を使って行われている、小さなものです。
 小さなものですがコスプレスペースも完備されており、オールジャンル。
 とにかくイベントを満喫すればそれだけオブリビオンは警戒してイベント中には襲ってこなくなるので、参加者である一般人を守るためにも思う存分満喫してください。
 日常フラグメントの為必要成功数が少ないのでご注意ください。

 「標的:能力者・黒耀桧依について」
 今年で27歳になる銀誓館学園の卒業生です。卒業し就職して少しだけ自重を覚えた腐女子です。イベントには小説の個人サークルで参加しています。
 能力者ではありますが、猟兵の力に覚醒してはおらず、予知ではオブリビオンに敗北して殺されてしまっていますが、猟兵によって救出することが可能です。
 普段は自重していますが今回はイベント、そしてノーマルだろうが百合だろうが非人間体だろうが無機物・非生物だろうが擬人化・男体化して萌えられるツワモノなので、ご同類の方は話しかけるとトークに話が弾むかもしれません。

 「第二章:集団戦・自称宵闇の使者戦について」
 ナンバード化オブリビオンが支配し使役する集団敵です。
 詳細は第二章の追記にて行います。
 彼女たちとの戦闘の場所は第一章でどれだけイベントを満喫できたかによって変わります。

 「第三章について」
 ナンバード化オブリビオンとの決戦となります。
 詳細は第三章の追記にて行います。
 戦闘場所は第一章でどれだけイベントを満喫できたかによって変わります。

 当シナリオの受付開始日時は3/2(水)朝8:31~となります。
 シナリオ公開の時間によっては上記タグ・マスターページにプレイング受付中の文字が出ていないことがありますが、その状態でもプレイングを送ってくださってかまいません。
 諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『同人フェス開幕!』

POW   :    会場を駆け回って同人グッズ集め

SPD   :    コスプレ会場を見て回ろう

WIZ   :    実は同人グッズを頒布する側・コスプレする側です!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
霧水・砕牙
えっ、マジ? 俺参加側でいいの? やったぁ。
ってことで自費出版本全部持っていこうっと。

えーと、薄い本と薄い本(ちょっと厚い)は在庫あっただろ。
んでこないだ準備した「緋色と藍色」もあるし。
そんで新しく描いた「翡翠と燐灰石の衝突」もあるし。

……そういや当日のスペース参加って大丈夫なのか?? 俺は訝しんだ。
っつか、参加したらまた閃いたからメモ帳に残しとかなきゃなー。
今度はテーブルとテーブルクロスで……ふへへ。

と、ターゲットのお姉さんがこっちに来たら宣伝しておくぜ。
緋色と藍色はいずれ引き離される運命にある男たちの話。
翡翠と燐灰石はお互いを好きになっていく話ってな。
俺でよければいくらでもネタは描くぜ?



●郵便受けは郵便が受けなのか郵便受けが郵便の専属受けなのかで盛り上がれる人種たち
「えっ、マジ!? 俺参加側でいいの? やったぁ」
 霧水・砕牙(《黒の風》[プレート・ヴェント]・f28721)は喜んだ。砕牙はBL大好きである。世に言う腐男子である。勿論夏と年末の年に二回行われる至福の祭典にもしっかり参加している。
「よーし、自費出版本全部持っていこうっと!えーと、薄い本と薄い本(ちょっと厚い)は在庫あっただろ……んでこないだ準備した「緋色と藍色」もあるし。
そんで新しく描いた「翡翠と燐灰石の衝突」もあるし……完璧じゃんよ?」
 そんなこんなで同人誌即売イベント会場。
カートに在庫の段ボール箱を積んだ砕牙は言った。
「……そういや当日のスペース参加って大丈夫なの?」
「いいわけなくないですか? サークル参加をナメておられます?」
 砕牙の後ろからツッコミという名の声をかけたのは、写真に映っていた小柄で細身の少女――否、うっすらと化粧を施している彼女はもう二十歳過ぎの女性、今回オブリビオンに狙われている能力者である黒耀桧依その人であった。
「銀誓館学園から話は聞いてます、あなたの本はわたしのサークルで委託として頒布するのです。本部に見本誌のチェックとかしてもらわなきゃいけないですし、スタッフさんたちも会場の設営がありますし、そもそもイベントには当落という概念があるんですから当日の飛び込みスペース参加とか出来る筈がないですよ?」
 大人向けの本には修正がきちんと入ってるか確認しなきゃいけないしね!
「うぐう……」
 早口で捲し立てられ、砕牙はちょっとぺしょぺしょになった。
「こんなこともあろうかとパイプ椅子を二人分申請しておいてよかったです、まったくもう!」
 そんなこんなで砕牙の本は桧依のスペースに置かれることとなった。イベントが始まり、行き交う参加者たちに桧依は愛想よく呼び込みの声をかけている。
なお、砕牙が新刊として準備してきた「緋色と藍色」はいずれ引き離される運命にある男たちがしっとりと愛し合う物語。「翡翠と燐灰石の衝突」は黒緑髪の男と銀髪の男が仲良くオカルトを探索しに行く過程でお互いを好きになっていく物語を描いた本である。
「既刊新刊合わせて一冊ずつください」
 桧依はいたく気に入って本を買ってくれた。
「ぬぐぐ……これがコミックマスターの力……!」
「俺でよければいくらでもネタは描くぜ?」
「ひよ、わたしは小説で勝負してますから!でも表紙と挿絵はいつかお願いしたいです」
「おう、任せろー」
 そんなやり取りのさなかに唐突に砕牙の中にネタが降りてきた。メモ帳にメモを取る砕牙であったが、それを桧依に見られてしまう。
「ほう、テーブルとテーブルクロスのカップリング……ですか」
「ふへへ」
「テーブルクロスによって覆い隠されるテーブルはそれによって他の誰とも触れ合えない……これはテーブルクロスのヤンデレ攻め?」
「いいやこんな解釈もあるぜ、テーブルクロスはテーブルを自ら包み込むことによってあらゆる汚れから守っているんだ、そしていつかは摩耗し他のテーブルクロスに取って代わられる……包み込む慈愛を持つテーブルクロスと気の多いテーブルの愛と別れのストーリーなんじゃないかって!」
「……ふっ……やりますね……!では、数字の6と9はいかがです!まるで双子の様にうり二つの二人の関係は……!」
 桧依は歴戦の戦士みたいな表情をした。
かくして、変なところで意気投合した二人はその後もスペースで上級者の萌え話に花を咲かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
POW
ふむ
こーゆー集まりって多少変な格好でも容認されんだよな確か
普段の服の上に現代日本で手に入るコートを羽織る
まずは桧依さんて人の目星をつけよ
売る側で少女じみた若い外見…んで男同士の話が好き、と【情報収集/追跡/聞き耳】あの人かね?

個人的に星座のハンコや鳥モチーフのぬいぐるみ(白鸚鵡ユキエが相棒)を売ってるサークルの物販に気を取られたり
ついユキエに似ている小振りなぬいぐるみを一つお求め

それを桧依さんの前で「うっかり」落としそれをきっかけに何か話そっか
ん、男色とゆーものに抵抗ない
てか戦国時代と地続きなエンパイアじゃ普通だし
リアルな話も挟みつつ
桧依さんにBLについて語って貰うのもいーかな

アドリブ可



●ナース服を私服と言い張る界隈もあることはある
「ふむ……こーいう集まりって多少変な格好でも容認されんだよな、確か」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)のコスプレに対する認識はだいたいこんな感じだった。そんなわけなので普段の服の上から、現代日本で手に入る一般的なコートを羽織り、パンフレット代の五百五十円を払って会場に入る。
「更衣室はあちらになっております」
 受付の人からそう言われた。基本的にコスプレは会場内で、更衣室で着替えて行うものだという認識がトーゴにはなかった。だがしかしトーゴには着替える衣装も別にないのでそのまま会場内を歩く。会場内に入ってしまえば基本的に変わった格好をしていても「ふーん? オリジナルのコスプレかな?」で済まされてしまうのがイベント会場というものである。
(まずは、桧依さんて人の目星をつけよ。売る側にいて、少女じみた若い外見……んで、男同士の話が好き、と)
 そうそう広くもない区民会館レベルの会場である、目当ての女性、黒耀桧依を探すのにそれほど時間はかからなかった。先にグリモア猟兵から見せられた写真に映っていた少女のような外見、しかし化粧をうっすらと施し、大人の女性らしい恰好をした女が目に入る。彼女の下へ向かって歩く途中、ハンドメイドのスペースに少しだけ興味がわいた。
(お、星座のハンコ。それに、鳥モチーフのぬいぐるみ……ユキエに似てるな)
「いかがですかー」
 白い鸚鵡のぬいぐるみ。白鸚鵡のユキエはトーゴの旅の相棒だ。つい吸い寄せられると、売り子が快活に声をかけてくる。
「これ、一つ下さい」
 そうして白い鸚鵡のぬいぐるみを手に入れたトーゴは、それを肩に乗せようとして、ころりと転がす。勿論、わざとである。
「あらあら、あらあらあらかわいい」
 ぬいぐるみが転がったのはまさに目当ての女性、黒耀桧依の足元だった。
目をキラキラさせてぬいぐるみを拾い上げた桧依が、トーゴにそれを手渡す。よく見れば彼女の隣のパイプ椅子には別の猟兵らしき青年が座っていた。

 話してみれば、銀誓館学園の卒業生である桧依は猟兵という存在について学園から知らされていた。彼らが戦う為に股にかける世界の事も。
「ん、男色とゆーものに抵抗ない。てか戦国時代と地続きなエンパイアじゃ普通だし」
「はうぅっ……小姓!お稚児!戦国武将にはロマンが溢れて止まらないのです!……じゃなかった、止まりません!では陰間茶屋というものもあるのですか……じゃなくて、ありますか!?」
「それはちょっとわかんねーかな……?」
「そうですか、仕方ありません。陰間は所謂男娼であったと言われていますが陰間茶屋はホストクラブのようなものだったとも聞いています。あとは信長と言えば愛の熱盛・森蘭丸ですが……!」
「そういえば蘭丸見てないな。弥助はアレキサンダーでアフロだったけど」
「斬新なのです!? ……じゃなかった、斬新ですね?」
 サムライエンパイアの文化を桧依は興奮した様子で聞き入る。トーゴは桧依にそれを語りながら、また桧依とその隣に座る別の猟兵とのBL話に耳を傾ける。
「やっぱり6と9なら数字のでかい9の方がでかいわんこ攻めなんじゃないか?」
「いいえ、でかいわんこが攻めというのは少々見識が狭いかと!6は9よりも先に出てきます、つまりは年上、6が不慣れな9を優しくリードする年上攻めを推したいかと!」
 正直言ってやばかった。何言ってるのかトーゴにはさっぱり理解ができなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

南青台・紙代
アドリブ歓迎
【POW】

人を殺めようとする上に
イベント中に騒ぎを起こすなど言語道断である!
この手の催しを開くまでに、作品が完成するまでに、
どれだけの苦労が必要だと思っているのであるか!
猟兵としても、物書きの端くれとしても、悪しき企みは阻止せねばならぬ!

さて、今回は買う側に回らせてもらおう。
あいにく手元に出せるような在庫はなくてな。
この世界の作品はまだ知らぬのでオリジナルを中心に……
むっ、オリジナルではないが好みの絵柄であるな一冊ください。
小説サークルも良さげであるな試し読みをしても?
ああ大丈夫大丈夫、我輩もその
道のものである。
(つやつやてかてかしている蛇女)
(腐っている)



●蛇の道は蛇
(……人を殺めようとする上に、イベント中に騒ぎを起こすなどと言語道断である!)
 南青台・紙代(言の葉綴りし青蛇女・f23355)は憤懣やるかたなしといった内心を抑え、同人誌即売イベントの受付を通った。パンフレット代を払えば、パンフレットそのものが入場券として作用する。紙代はようく知っている、同人イベントという催しを開くまでに主催者側がどれだけの人員を動員し、どれだけ苦労するか――そして、サークル参加者が作品を完成させるまでにどれほど苦労するのかも。それはまさに生みの苦しみと呼ぶに相応しいだろう。
(猟兵としても、物書きの端くれとしても、悪しき企みは阻止せねばならぬ……!)
 そのためにはまず、このイベントを満喫せねばならない。猟兵が存在しているだけで、オブリビオンへの十分な牽制となる。……とはいえ、紙代も俗に言う「腐っている」女子の一廉だ。そんな彼女が同人誌即売イベントに参加して、満喫しないわけがなかった。
 ――生憎の事であったが、紙代には手元に出せるような在庫は持ち合わせていなかった。なので今回は一般参加――つまりは、買う側、である。
(この世界の作品はまだ知らぬのでな、オリジナルを中心にまわらせてもらうとするか……)
 パンフレットの最初に印刷されている地図によれば、現在の最大手ジャンルは所謂週刊少年漫画雑誌の一ジャンル、スポーツものであるらしい。そこから同じ雑誌の様々なジャンルを扱うスペースが広く取られ、奥の方にオリジナルのスペースがこじんまりと並んでいる。規模が小さいという勿れ、一次創作界隈は一次創作界隈で非常に「濃い」のである。既に設定が読者作者の間に共通認識として共有されている二次創作とは違い、この本この物語一本で世界を描き出している。稀に所謂うちの子よその子が絡んでいる(腐った意味でなしに)ところが見たい!見たいけどない!なければ自分たちで書けばいい!という発想から複数の書き手が同じ世界観を共有することもある。とても奥深いジャンルなのである。
 そんな一次創作のスペース――いわゆる「島」を歩き回っていた紙代はあるものを見つける。
「むっ、これは」
 それは一次創作で申し込んだが、二次創作も嗜むサークルの既刊であった。
(好みの絵柄であるな……!)
「中ご覧になってよろしいですよー」
 売り子の声に背中を押されて一番上の見本用の一冊を手に取る。
(ふむ……これはっ!)
 いわゆるマフィアパロ。原作では学生をしていてスポーツに勤しんでいるらしいキャラクターたちを裏社会・マフィアのボスや構成員として書いたパラレルストーリーだ。原作は分からないが、恐らくはライバルチームのメンバーが敵対するファミリーとして描かれ、ボスと右腕の恋・敵対するファミリーの殺し屋たちが正体を知らずに出会ってしまって育んでいく恋と正体を知ってしまって葛藤する物語、二つの(男同士の)恋を軸にして濃密に描き出されている。瞬く間に読み切ってしまって気が付いた。これ、続きモノだ。感極まるあまり喉から絞り出すような声で紙代は問う。
「続きはありますか……!」
「はい、新刊こちらです」
「一冊ずつください」
 また別のスペースでは小説サークルでよさげな本に出会ってしまう紙代。
「試し読みをしても?」
「どうぞー!」 
 こちらは王道ファンタジーと見せかけてちょっと捻った作風だ。ドタバタコメディと見せかけて、いくつもの陰謀策謀が織りなす中を賢者の主人公が相棒の剣士とともに解決していくバディもの。バディ、良い。ライバルに当たる軍師と副将の言葉に出来ない関係も良い。紙代は溢れ出す萌えが脳内に詰まって「良い……」しか言えなくなった。即買いです。
 こうして、イベントが終わるころには紙代が持参した鞄は戦利品でパンパンになっていたのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『自称宵闇の使者』

POW   :    ドラゴンキャノン
【暗黒炎龍のオーラ 】を放ち、命中した敵を【消えない魔炎】に包み継続ダメージを与える。自身が【体表の80%以上を露出】していると威力アップ。
SPD   :    Ron't Look Back Anger
自身のオリキャラ「【人工未知霊体(タルパ) 】」を具現化する。設定通りの能力を持つが、強さは自身の【これまで妄想に費やした時間】に比例する。
WIZ   :    ヴァンパイアストーム
レベルm半径内に【吸血コウモリの群れ 】を放ち、命中した敵から【精力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
👑11
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 同人誌即売イベントはつつがなく終了した。
イベント中に桧依と親交を深めていた猟兵は彼女と並んで、そうでない猟兵も彼女を護るように帰路に就く彼女に近づく影がないか警戒しながら道を歩く。
「せっかくお仲間と仲良くなったのですし、本来ならば打ち上げにカラオケなど行きたいところですが……わたしが狙われているのであれば仕方ありません……!」
 桧依は心底残念そうな声で言った。イベント後の打ち上げ楽しいもんね。推しのイメソンとか歌いたくなるもんね。これこのキャラのイメージじゃない? わかるー!とかいう共感を得たいよね。
 そうして桧依が案内するようにして訪れたのは、駐車場――その看板こそかかっているものの、停まっている車は一台もない。桧依曰く、そもそも駐車料金も誰に料金を払えばいいのかも不明になっているので使用されている気配は全くないという場所であった。
 そこに桧依が足を踏み入れれば、どこからともなく影がうじゃうじゃと湧いてくる。
「我々は「宵闇の使者」……!黒耀桧依、漆黒の秘密結社ブラッディシャドウオニキスの魔女よ、其方の命を頂きに参ったぞ……」
「うーん、ひよ……わたしは確かに魔弾術士の女なので魔女と呼べなくもないですが、その組織名本当にそれでいいんですか?」
「ううううるさい!とにかく!宵闇の導きに従いお前を殺すぞ!我々は!いいか!」
 自称・宵闇の使者たちはちょっと挑発されると慌てて襲い掛かってきた!
少々アレな相手だが、ここからは戦闘の時間だ。猟兵たちは、めいめいに臨戦態勢に入る――!!
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第二章 集団戦「自称宵闇の使者」戦が開始されました

 おめでとうございます。猟兵たちが同人誌即売イベントを満喫したことにより、イベント会場でオブリビオンが暴れる最悪の事態は避けられました。
 それでは容赦なく、オブリビオンを駆逐してください。
 以下に詳細を記します。
 
 「戦場について」
 駐車場となっていますが、人も車も全く存在しない空き地です。
 そこそこの広さがあり、邪魔が入ることは一切ありません。戦闘を目撃されても、世界結界の効果により見間違いをしたのだと錯覚してくれます。(狙われている桧依は能力者の為正しい現実を見聞きし記憶することが出来ますし、彼女に戦闘を隠す必要性は一切ありません)
 地面は舗装されておらず、砂利に覆われています。戦場の物を戦闘に利用する場合、「使えるものは何でも使う」といった抽象的な表現ではなく「何を」「どう使うか」明記してください。
 オブリビオンたちは桧依を狙っているため、桧依をここから別の場所に逃がそうとすると彼女を優先して追いかけます。(ナンバード化オブリビオンにとって桧依を殺すことが重要なので、彼女たちは殺害はしようとしません)
 桧依は戦闘になると「イグニッション」を行い、能力者のアビリティを使って自衛を行いますが、オブリビオンに対しての攻撃手段には全くなりません。(負傷を癒すアビリティを所持しているため、それをフルに使用して傷つかないように行動します)

 「集団敵・自称宵闇の使者について」
 宵闇の使者を自称している中二病の地縛霊型オブリビオンの集団であり、ナンバード化オブリビオンの手先です。
 指定されたユーベルコード以外にも、吸血コウモリの群れを呼び出したり魔炎によって攻撃してきます。棒立ちになることはありません。
 中二病を患っているため、中二病っぽい言い回しには率先して乗ってきます。それを利用することも可能かもしれません。

 第二章のプレイング受付開始は3/9(水)朝8:31~となります。
 時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
 マスターページを一読したうえでプレイングを送信してください。
 
 それでは、能力者の女性の命を守るため、立ちはだかった中二病オブリビオン集団を駆逐してください。
霧水・砕牙
おーっと、早速来たな。
……っておいおいおい、古来より生まれし戦士(訳:中二病患者)か?
これは楽しくなってきたなぁ?
姫の守り手(訳:猟兵)として、ここは1つ本気になってやろうじゃないの。

来たれ、我が相棒!!(UC【蹂躙せよ、黒の風】)
異世界にて現れしその力は……そう、複製実現! 絵に描いたものを全て実体化させ、あらゆる物体を操りし者となる!!
例え自分が知らぬモノでも、それを完璧に操る能力者となるのさ!!

そういや俺が異世界転生したらまずお姫様とかに一発ぶん殴られそうだよな。女性騎士団長とか。
ついでに持ってた薄い本で誤解とかされそう。

ってことを桧依と喋りつつ、彼女をトライデント・ダブルソードで守る!



●最近では異世界転生の際の死因も増えてきましたが未だに第一位はトラックらしい
「――イグニッション!」
 起動のキーワードを叫び、桧依の姿が戦闘に適した格好に変わる。
「無駄だ、シュバルツシャッテンナハトの魔女!お前の力では我々には傷一つつけることなど出来はしない!」
「……さっきはブラッディシャドウオニキスって言ってませんでしたか?」
「ちちちち違いますー! 言ったのあっちの人ですー!」
 かっこつけるあまり自爆する自称宵闇の使者であったが、オブリビオンである彼女たちに能力者である桧依のアビリティが通用しないのは事実であった。桧依の持つ詠唱兵器から放たれた青色をした魔弾が直撃しても、痛みも感じていない様子である。
「う……「オブリビオン」になったゴーストにアビリティが効かないのは聞いていましたが、これほどとは……!」
「おーっと、早速来たな?」
 防御態勢に入った桧依の前に立つ砕牙。
「去れ、異界よりの稀人、猟兵よ!我らが用があるのはそちらの魔女一人だけ!大人しく手を引くなら貴様らを深追いはしない……しなくていいよね?」
「いいんじゃないかな、能力者連れてくるだけでいいって言ってたし」
「深追いはしない!」
「おいおいおい、仲間内での報連相はちゃんとしとけよ、っていうかお前ら古来より生まれし戦士(訳:中二病患者)か……これは楽しくなってきたなぁ?」
 ――姫の守り手(訳:猟兵)として、ここはひとつ本気になってやろうじゃないの!
「……来たれ、我が相棒!!」
 黒い雷が砂利道の駐車場に落ちる。側にいた自称宵闇の使者はそれだけで焼け焦げ消えた。
「何ィっ……」
「この、黒雷は……!」
『――俺を呼んだな?』
 黒い雷が消えたあと、そこに立っていたのは漆黒の鎧に身を包んだもう一人の砕牙……否、砕牙が己のユーベルコード【蹂躙せよ、黒の風(プレート・ヴェント)】によって具現化した、砕牙のオリキャラ……「異世界転生した自分自身」こと最強の魔族・サイガである!
「悪いな、俺に出来るのは……かっこいい俺を創作することだけだ!!」
「うわぁ」
 引き気味の声は後ろ――桧依の方向からから聞こえた。
「えっ?」
「いえなんでも。続けてください」
「――異世界にて顕現せし俺の最強のスキルは……そう、「複製実現」!! 絵に描いた物を全て実体化させ、あらゆる物体を操りし者となる!!例え自分が知らぬモノでも、それを完璧に操る事が出来るのさ!!」
『相棒、俺は今日少しだけ機嫌が悪い……昨夜の晩餐のティュウ=カドゥン(訳:中華丼)に黄金を擁する白露(訳:ウズラの卵)が入っていなかったからだ……暴れていいな?』
「おう、やっちまえ!」
 砕牙の一言を得て解き放たれたように自称宵闇の使者たちを屠っていくサイガ。彼女たちも自らの人工未知霊体・タルパたちを出現させて襲い掛かってくるが、それらをすべて描き出したチェーンソーで引き裂き、黒雷で焼き尽くしていく。
「さすが異世界転生した俺だぜ!そういえば俺が異世界転生したらさあ、まずお姫様とかに一発ぶん殴られそうだよな。女性騎士団長とか」
「えっご自分の事をよくご存じでいらっしゃる……というかまずお姫様に出会える立場なんですか?」
「あと、持ってた薄い本で誤解とかされそう」
 砕牙がけらけらと笑いながらそういうと、桧依はちょっと逡巡した顔をした。そしてそのあと軽く挙手をした。
「はい」
「はい?」
「貴方の言っているそれは……異世界「転生」ではなく、異世界「転移」では?」
 ――説明しよう。異世界転生異世界転移、どちらもまあ大体事故とかで死んで異世界に行くのは同じ。だが異世界においての始まり方が違う。異世界転生の場合は突然前世の記憶として現実の自分の意識が目覚めちゃったりしてから始まるが、その前の「異世界での自分が生まれてから前世の記憶が目覚めるまで」の歴史が肉体にある。が、異世界転移はもっと手っ取り早く、死んで速攻異世界にそのままシュートされるのである。そして女神様とか精霊とか神とかにチート能力を与えられてそのまま冒険の旅に出たり出なかったりスローライフを送ろうとしたりする。ここの所間違えると界隈が学級会と化す。注意しよう。ちなみに死んで幼い頃や若い頃の自分に転生したとかいうのはもう転生ではない。これはこれで逆行という一つのジャンルだ。これも間違えると面倒なことになる。
「いけませんよこれはいけません。異世界転生と異世界転移をごっちゃにしていらっしゃるのはいけません」
「いや……別にごっちゃにしていたわけじゃあ……」
「ならば修正するのです。妄想を改変するのです……もとい、してください。先ず最強の魔族として転生したのならば!ならばお姫様や女騎士団長と出会うのは敵味方としての筈!殴られている場合じゃあないのですよ!」
「お、おおう……!」
「そう、あなたが殴られる可能性があるのはむしろ四天王の紅一点!そしてそれから始まるサクセスストーリー!サクセスしなくてもよいですが、最強の魔族ならばサクセスすべきでしょう!」
「……おう!」
 語り合う砕牙と桧依の前では、今も最強の魔族サイガが自称宵闇の使者たちをちぎっては投げちぎっては投げしていた。桧依の講義はもうちょっとだけ続いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

南青台・紙代
アドリブ連携歓迎
【SPD】
確か、中二病とは大仰な言葉を好む精神的嗜好であったか?
ならばそれらしい言葉遣いをするのである。

「ふむ、念(おもい)の具現化ならば我輩も負けぬよ」
懐から取り出した藍色表紙の文庫本を開いて構える。
「……さぁ出ておいで、黒き獣。
我が筆より滲み出る情念(おもい)たち」
ユーベルコヲドで情念の獣を召喚。
「過去の影とその想念より現れし者共、
我が獣の牙を、爪を、受けてみよ!」
オブリビオンや彼女らの召喚したタルパへ
まとわりつかせて動きを阻害する。

ところで、情念の獣はオートで動くので、
我輩はそこに更に『八百之異聞』から
魔法弾幕を放って追撃などしちゃう。

「獣しか出さぬとは言っておらぬが?」



●十字架・ロザリオ・パワーストーン・銀のアクセサリあたりはいつの時代も人気
「ふむ」
 紙代は襲い来る自称宵闇の使者たちを前にして少しだけ考えた。
(確か、中二病とは大仰な言葉を好む精神的嗜好であったか?)
 思春期特有の「選ばれた自分でいたい」的な自己承認欲求のこじらせの末路であり、やたらと黒い服装をしたがったり、別に怪我とか全くしてないけど包帯とか眼帯カッコいいから巻きたいしつけたくなる症状を持ち、自分には隠された能力があると信じたい、逆に言えば「何物にもなれない自分」の否定――それが、中二病。これについて語ると本当に長くなるので割愛しよう。
 言ってしまえばぬくぬくとしたぬるま湯みたいな環境で育ってきた一般家庭の子供が患う「他人とは違う自分カッコいい」なので、戦って生き抜いてきた猟兵とは真逆の位置にある――というか、中二病患者にとって猟兵のような存在こそ憧れなのであるが――たまに罹患したまま猟兵やってる特例もいる。いや、特例という割には意外と多い。
(ならば、それらしい言葉遣いをするのである)
「くくく、宵闇の使者、と言ったか」
 紙代はくちびるをにやりとつり上げてみせた。
「何を笑っている、女!貴様に用はない、我々の標的(ターゲット)はそこな漆黒の秘密結社(イルミナティ)の魔女一人!手を出さぬならこちらも手は出さんぞ……!」
「嫌だ、と申したなら?」
「殺すのみっ!!」
 人工未知霊体タルパ――これこそ未成年でも気軽に手を出せる(と思われがちだが興味本位で手を出しては絶対にいけないものだ)、手に入れたい能力を手に入れさせてくれる「異なる人格と姿を持つもう一人の自分的存在」。それらを具現化させる自称宵闇の使者たち。それを前に、紙代は魔王の風格で嗤った。
「ふむ、念(おもい)の具現化――ならば、吾輩も負けぬよ」
 懐より取り出だしたるは藍色表紙の文庫本。それは作家たる紙代の著作である、彼女の情念が籠められた一冊だ。
「……さぁ出ておいで、黒き獣。我が筆より滲み出る情念(おもい)たち……」
 それこそ紙代のユーベルコヲド【獣生む言の葉】。敵味方を識別する情念の獣の群れが文庫本より次々と飛び出してくる。
「過去の影とその想念より現れし者共、我が獣の牙を、爪を、受けてみよ!」
 情念の獣たちは砂利敷の駐車場へ降り立つと、真っ先にタルパを食いちぎった。そして自称宵闇の使者たちをその爪牙で切り裂き噛み砕き、纏わりついてその動きを封じる。
「きゃあっ!!」
「いやっ、やだ、来ないでよぉ!!」
 先ほどとは別人のように悲鳴を上げる自称宵闇の使者たち。
 ――中二病の一面として。彼らは包帯や眼帯などを装着し、夜な夜な人知れぬものと戦っているかのような言動をしてみせることがある。けれど現実の彼らにとって戦う相手など存在しない。それらは虚構だ。そして、本当に戦いの現場などに立ち続けることなど出来やしない。だって、現実には妄想の世界の中で遊んでいただけの、遊ぶことが許されるぬるま湯の世界で過ごしてきたのだから!だからいくらゴーストと、オブリビオンとなろうとも、その身を骸の海に沈めようとも、彼女たち中二病患者に真の意味での戦う覚悟など出来ていないのだ――
「ふふ、ふ。所詮はこんなものか。だが、な」
 そう言って自称宵闇の使者たちを睥睨する紙代。情念の獣たちが彼女たちを貪り喰らう中、もう一冊文庫本を取り出す。その表紙には『八百之異聞』と記されていた。
「我輩は――「獣しか出さぬ」とは一言も言っておらぬが?」
 紙代が手ずから綴った短編集を開けば、そこに籠められた紙代自身の情念が魔法の弾幕と化し、自称宵闇の使者たちに向かって掃射される。
 獣と魔法弾幕とが、紙代の敵となるものを食い千切り、貫き焼き焦がしていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
ひよさんのBL世界はヤバかったな
敵もチューニ病…?
青より蒼の字使うとか
詠唱が何故か口語体じゃなく文語体とか
そーゆー病?宵闇の使者ってどゆ意味なん?

とか話しつつ
敵位置を確認【情報収集/暗視/聞き耳】
敵が何か話す最中でもUCへ繋ぐため手裏剣の命中狙い【念動力で投擲】
敵UCへは【野生の勘】活用し躱し【カウンター】でコウモリをクナイで纏めて刺し斬って落とす
>コウモリにUCが効くなら落とした手裏剣を念動力で回収、投擲、毒で機動奪う
被弾時も【激痛耐性】で顔には出さずコウモリをいなしたら宵闇の使者達を直接クナイで【串刺し/暗殺】

名乗りもせず悪りぃね宵闇の姐さん達
オレは二つ名も無い只の羅刹
只の忍びだ

アドリブ可



●各国各地方の神話やら伝承にやたらと詳しくなる症状もある
(いやー、ひよさんのBL世界はヤバかったなー)
 目の前で数字の6と9を男同士に置き換えての恋愛関係を議論されたトーゴはそれを思い出して遠い目になる。
「そんで、今回の敵もチューニ病……?」
「も、って言わないでくださいこの手の人たちとは一緒にしないでください、わたしは大人ですので!」
「そう、貴様は既に魔女だ、黒耀桧依!魔弾の力を持ちながら大人になった女、つまり魔女!漆黒の秘密結社(イルミナティ)に属するブラッディシャドウオニキスの魔女よ、我が主人の手にかかり死ぬがよい!」
 自称宵闇の使者がぴしりと桧依を指さした。が、トーゴはそれには構わずに桧依に訊ねる。
「んーと、チューニ病っていうと青じゃなくて蒼の文字使いたがるとか、詠唱が何故か口語体じゃなく文語体とかそーゆー病?」
「まずここは現代日本なので詠唱し出す時点で割と中二病なのですが……中二病の方々って基本的に戦う敵とか存在してないので……ぬるい環境で育った子供が思春期で自己の承認欲求の方向間違えちゃったやつなので……そのまま死んでしまったこの方たちには本当に可哀想ですが……」
「そんな憐れみがましい目で見るなァ!!」
「まあ、作家としては中二心を忘れると世界設定とか作れなくなる問題がありますのでわたしも意図的に治療してない部分はありますけども!」
「ってことはひよさんもチューニ病なのか!」
「治せない部分があるのは自覚しています、でもこの人たちとは一緒にしないでください」
「そっかー。んでさ、宵闇の使者ってどういう意味なん?ブラッディシャドウオニキスって?」
 トーゴに話を振られた自称宵闇の使者たちは突然だったので慌てた。こういう輩は練りこんでない設定について振られると弱い。
「え、えーと、……我ら宵闇の使者はその名の通り世界の夜の部分……宵闇にて活動する者なり! そこな魔女は我らが主人の贄に選ばれた生贄の羊、大人しく差し出せば貴様に手出しはしない!失せよ!」
「贄に選ばれた生贄ってあたり語彙力のなさがにじみ出てるのです……じゃなくて、出てますね」
「へー、つまり……忍びみたいなもんか?」
 これらの会話の間にもトーゴは用心深く敵対者との位置を確認し、攻勢に転じる隙を窺っていた。懐から取り出した手裏剣を打ち放つと同時に念動力で複雑に操り、自称宵闇の使者たちの首を斬り裂いていく。
「ぐっ……話の最中に攻撃してくるとは卑怯なり……!だが我らはすでに常人を、死を、過去を超越した身、この程度で命脈を断たれはしない……!行け、宵闇の尖兵たちよ……!!」
 自称宵闇の使者たちが身を翻すやバサバサと音を立て、吸血コウモリの群れがトーゴへと襲い掛かる。
(時間は夕刻、暗闇には程遠いってところか……助かった!)
 牙を突き立てんとしてくるコウモリたちを研鑽した野生の勘で避け、そのまま手にしたクナイでまとめて刺し斬り叩き落していくトーゴ。念動力で手裏剣を回収し、再び打つ。
「“千鳥砂嘴ひと刺し浅しニワトコに 天地五感を掠め狩る──”」
「くぅっ!?」
「あっなんかちょっとカッコいい……ずるい……!」
 トーゴの忍技【千鳥庭】。トーゴの攻撃を受けた者たちは、皆一様に痛みを覚えぬまま三半規管を狂わせる「毒」に侵されている。半径120メートル内にいる間は、毒による転倒とそれによる焦り、そしてあらかじめ砂利の地面に撒いておいた毒の塗られた撒菱が彼女たちを苛み続ける。自称宵闇の使者たちの全ては、トーゴの千鳥庭の術の効果圏内に居た。
「負けるかぁ……っ!!」
 吸血コウモリがトーゴに群がり、その血と精力――生命エネルギーを啜る。けれどトーゴは涼しい顔でコウモリたちを手裏剣とクナイで斬り裂き落とし、自称宵闇の使者たちの頸を一人ひとり丁寧にクナイで刈っていく。
「手裏剣程度じゃその命脈は断てないんだろ? だったらひとりひとり殺していくだけさ……名乗りもせず悪りぃね宵闇の姐さん達。オレは二つ名も無い只の羅刹――」
 只の、忍びだ。
 駐車場の砂利道を、真っ赤な血が汚していく。トーゴによって次々と命を刈られてゆく中、自称宵闇の使者たちの誰かが呟いた。
「羅刹で忍びとか……ずるい……かっこいいじゃん……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミーリア・アーベントロート
なるほど、宵闇()の使者。
リアもあのようなころがあったのです。(うんうん)
では、敵の倒し方は……(UC【兄の言葉は絶対です】が発動)

「姐さん、やっぱ無難に叩いたほうが早いと思うで。あの子守ったらなアカンし」
弟の言うことは最もですの。

「リア、貴方のその殺戮刃物をぶん回せば一網打尽です。守るとか気にしなくて良いんですよ」
37歳児お兄様のお言葉。

「いっそバイク持ってきてたほうが良かったと思うんですよ。合法的轢殺」
35歳児お兄様のお言葉。

……うっ、うう。
弟の言葉もお兄様の言葉も最も過ぎるですの……!
でもっ、でも……リアは……。

お兄様の言葉が1番優先ですのーーー!!
(殺戮刃物ぶんまわしながら突撃)



●だから合法的に轢殺できる世界はどこにもないって何度も
「……なるほど、宵闇()の使者」
 エミーリア・アーベントロート(《夕焼けに佇む殺人鬼[LadyAbendrot]》・f35788)は自称宵闇の使者たちの言動を観察したのち、深く頷いた。
「新手か、異世界より現れたる稀人、我らの敵猟兵よ!我らもここまでやられてはもはや手加減は出来ぬぞ……!」
「リアにもあのようなころがあったのです」
 自称宵闇の使者の言葉にうんうん、と懐かしさに浸るリア。
「それちゃんと完治してますです? ……じゃなくて、しましたか?」
「どうでしょう」
 なんでだか知らないけど中二病患ったままガチで力を手に入れちゃった猟兵って意外と多いもんね!中二病って実際には変わった能力とかないどこにでもいる平凡な少年少女が自己承認欲求こじらせて罹患しちゃう病の筈なんだけどね!銀のアクセサリとかパワーストーンとか十字架つけたり愛用の武器の名づけ方とかにこだわったりするよね!†短剣符†とかつかいたがるよね!
「あとドイツ語を使いたがりますね」
「アーベントロートの名前は自前ですの」
「わああん我らの話を聞け!!とにかく!殺すぞ!」
 無視されたことに激昂した自称宵闇の使者たちが吸血蝙蝠を放ってくる。それを殺戮刃物でぶっ刺しうち払いながら、エミーリアは考えた。
「さて、では、皆様方はどのようにしてお片付けして差し上げましょうですの……」
 そう唇に人差し指をあてて考えると、リアのユーベルコード【兄の言葉は絶対です(フリーダム・アーベントロート)】が発動する。
 ほわんほわんほわんりありあ~。
「姐さん姐さん、やっぱ無難に叩いた方が早いと思うで。あの子守ったらなアカンし」
 至極常識的なことを囁いてくるのは、緑のコートを纏った弟そっくりな幻影。
(弟の言うことは尤もですの)
 その反対側から囁いてくるのは、赤茶色の三つ編み胡散臭い眼鏡とエミーリアの色違いのような金色に白眼の三つ編みの二人。
「リア、貴方のその殺戮刃物をぶん回せば一網打尽です。守るとか気にしなくて良いんですよ」
 そう囁くのは赤茶色の髪に胡散臭い糸目の笑顔を張り付けた眼鏡の37歳児な兄の幻影。
「と言いますか、いっそバイク持ってきてたほうが良かったと思うんですよ。合法的轢殺しましょ? 合法的轢殺」
 そう囁くのはリアと色違いな金髪三つ編みに白眼の35歳児な兄の幻影。
「うっ、うう……弟の言葉もお兄様たちの言葉も尤もすぎるですの……!」
 おかしいな本当に尤もだって思ってるの? これ片方は非常識な言葉の筈だよね?
「でもっ、でも、リアは……お兄様の言葉が!!世界で一番優先ですのーーー!!」
 だよね知ってた。
守るべき桧依を置いて兄の言葉通りに殺戮刃物をぶん回して自称宵闇の使者たちを切って捨てていくエミーリア。まあ先に言った通り桧依も自衛は出来るので別に守られっぱなしである必要はないのだが。
 何はともあれ、ユーベルコードの力によりエミーリアの戦闘行動の成功率は八倍になっている。リアは瞬く間に残された自称宵闇の使者たちの命を刈り取ってゆき――そして、彼女が動きを止めたときには、立っているのはリアと桧依のたったふたりだけになっていたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『少女地獄』

POW   :    私が何をしたというの あなたと何が違うというの
【少女達に地獄を与えた欲望】を籠めた【昏い穴から伸びる無数の腕】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【優しい記憶】のみを攻撃する。
SPD   :    私は満たされている そう信じないと耐えられない
戦場全体に【巨大な「昏い穴」】を発生させる。レベル分後まで、敵は【傷口を開き引き裂く無数の腕】の攻撃を、味方は【傷口を撫で回し塞ぐ無数の腕】の回復を受け続ける。
WIZ   :    もう見たくない 私に幸せを教えないで
【「拒絶する心の扉」】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
👑11
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「ああ、使えない、使えないグズたち……あんなにいっぱいいたのに、能力者の一人も連れてこられないなんて、本当に使えない」
 夕暮れ、赤く染まり始めた駐車場に、ふわりと一人の少女が舞い降りた。
軽やかに砂利の地面に降り立った白いワンピースの少女の胸元で、青いリボンが揺れる。
「ねえ、わたしは今日あなたを殺さないと死んじゃうの」
 ――だから、死んでちょうだい? 少女の細くて白い指が、桧依に触れるか触れないかのところまで伸ばされる。
 能力者である女は、少しだけ目を伏せて、そして開くと毅然とした声で告げる。
「……いいえ。いいえ。今日ではありません。あなたはもう死んでいるのです」
 わたしはあなたたちナンバードが現れてから死に絶えた時までを知っています。
「そうね、そうね。銀誓館学園の能力者。だけどあなたがそうだったのはもうずっと前の事。わたしは違う。哀れに廃棄されたモノたちとは違う。あなたを殺して、今日を生き延びて、明日以降もずっと生きていくの」
 ねえ、終わってしまった魔法少女。
「少女であることを辞めた魔法少女に、価値なんてないわ。そんな化粧なんかでごまかせないくらいに醜く老いて、いつかは死んでいくの。どうせ死ぬ命なら、わたしにちょうだい」
「桧依は……!わたしは、大人になったのです、大人になりました!生きているからこそ、ずっと少女のままではいられません!例え、あなたを倒せなくても……あなたに殺されるわけには、いかないのです、いきません!」
 少女の姿をした化物に詠唱兵器を向ける桧依。それが効かないことを、猟兵たちは知っている。放っておけば、桧依は彼女に殺されてしまうであろうことも――グリモア猟兵の予知を聞いて、知っている。
「わたしは少女地獄。終わらない少女時代の、少女たちの痛みと苦しみの象徴。終わった少女が、少女をやめてしまった女が、勝てる筈もないわ」
 化物は薄く笑った。少女そのものをした可憐な笑顔で、何よりもおぞましく。
 そう、桧依には彼女を倒せない。けれど、猟兵にならば、この化物を、殺すことが出来る。
 猟兵たちは戦闘態勢に入る。化物に、ゆがんだ少女の象徴に、終止符を与えるために。
========================================
ボス戦 「少女地獄」が開始されました

 おめでとうございます。猟兵たちの活躍により、オブリビオンの手先は殲滅され、彼女たちを使役していたナンバード型オブリビオンを引きずり出すことが出来ました。
 以下に、戦闘の詳細を記します。
 
 「戦場について」
 時刻は夕刻です。暗闇ではありませんが、太陽は沈もうとしています。逆に言えば日光はまだ存在しています。戦闘中に太陽が沈み切ることはありません。
 戦場は変わらず砂利が敷かれた空き地で、一般人が近寄ることも邪魔が入ることも一切ありません。
 戦場内の物を戦闘に利用する場合、「使えるものは何でも使う」といった抽象的な表現ではなく「何を」「どう使うか」明記してください。
 オブリビオンは桧依を狙っているため、桧依をここから別の場所に逃がそうとすることは出来ません。彼女を優先して追いかけ、殺害しようとします。
 先の戦闘からの続きとなるため桧依は「イグニッション」を済ませており、戦闘態勢となっていますが、彼女は猟兵ではなく能力者であるため彼女の攻撃はオブリビオンには一切通用しません。ただし負傷を癒すアビリティを自分に使用し、戦闘中は自衛に専念します。

 「ボス敵・少女地獄について」
 ナンバード化したオブリビオンです。数字の刻印により通常のオブリビオンを凌駕する強大な力を得ていますが、その数字がゼロとなってしまう明日には死んでしまうため、能力者である桧依を殺すことで明日まで生き延びようとしています。
 そのため、余裕ぶった口調とは裏腹に実は非常に焦っており、余裕がありません。それを利用すれば容易く罠にはめることが出来、嘘やトリックにも簡単に引っ掛かります。
 桧依を殺すことが目的なので、WIZのユーベルコードを桧依に対して使うことはありません。もし何らかの手段を用いて桧依を「対象の棲家」に転移させてしまった場合、彼女は猟兵との戦いよりも桧依の殺害を優先するため、桧依の家族を含めて多数の犠牲者が出るでしょう。絶対におすすめしません。
 猟兵がユーベルコードを仮に使わなかったとしても戦わないということはなく、生み出した昏い穴から這い出る腕を使って攻撃してきます。
 POWのユーベルコードは優しい記憶を傷つけ、精神にダメージを与えます。傷つけられる「優しい記憶」をプレイングに記述頂ければ、リプレイに出来うる限りで反映いたします。

 第三章のプレイング受付開始は3/23(水)朝8:31~となります。
 時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
 マスターページを一読したうえでプレイングを送信してください。

 それでは、能力者の命を守りきるため、終わらない少女時代の象徴に終止符を打ってください。
鹿村・トーゴ
さて
終わらん少女時代の地獄なんてオレには想像もつかない…って事もない
オレも低い身分と閉塞集落でガキ時分を過ごして心身共まァしんどかったしー?
でも差し当たって今一番つらいのはアンタでしょ
陽の影を見なよ
じきに夜になる
夜が明けたらアンタは消える
死期が明確なのもむごいねェ

言葉で煽り行動が雑になれば隙もでる
UCで全強化

代償の毒を【毒使い】活用し解毒剤を飲み抑え
【追跡/野生の勘】【激痛耐性】で敵UCの攻撃を躱すか被弾も耐え接近
強化した体力と膂力で攻撃
少女と腕を敵UC回復が追い付かなくなっても斬り裂き続け弱らせ
少女をクナイで刺し斬り【傷口をえぐり】そのクナイを【念動力で串刺し】貫通させる

…悪りィな

アドリブ可



●太陽は刻一刻と傾いて
「さぁて……終わらん少女時代の地獄なんて、オレには想像もつかない……って事もないんだけどな」
 トーゴとて幼少期には閉塞的な集落の中低い身分で過ごした身。心身ともにまァしんどかった、という自覚はある。
「でもま、差し当たって今一番つらいのはアンタでしょ」
 トーゴは少女の姿をした化物を指し示す。化物の白い顔がさっと蒼褪めた。
「陽の影を見なよ。じきに夜になる。夜が明けたらアンタは消える……死期が明確なのもむごいねェ」
 化物の顔が蒼から赤へと変わる。可憐な声が嫌々と叫んだ。
「嫌、嫌、嫌嫌嫌!!わたしは死にたくない!わたしは死んでなんかやらない!だからちょうだい、欲しいのよ、あなたの命――邪魔するのなら、おまえも死んで!!」
 少女の姿をした化物が叫ぶと、巨大な昏い穴が砂利敷の駐車場に開く。そこから這い出てくる無数の腕が、トーゴを引き裂き傷つけようと襲ってくる。
 トーゴは印を切った。【降魔化身法】――妖怪悪鬼幽鬼の力を宿し、己を超強化する業。代わりに全身には体内に毒が回りつつある――それは、トーゴには馴染みのある毒だ。何度もこのユーベルコードを使って、己の体にどんな毒が回っているのかをトーゴは熟知している。故に、その毒を体内で分解するために適した解毒剤を、トーゴは常に持ち歩いていた。薬入れから取り出した黒い丸薬を飲み下し、忍として培ってきた追跡能力と野生の中で身に着けた勘、そして修行の中で会得した痛みを耐える術を用いて無数の腕から逃げ回り、時に耐え忍び――
「……そこっ!!」
 ユーベルコードによって超強化された肉体、その膂力をもって駐車場に開いた穴を大きく飛び越え、少女の姿をした怪物へと肉薄して手にしたクナイで斬り裂く。
「こんな……こんな傷っ……!」
 すぐに少女を回復する腕が穴から伸び、傷を撫でさすって塞ぐ。
「だったら、回復が追いつかなくなるまで斬り続ければいいだけだ――!」
 トーゴはクナイを振るう。超強化された肉体をたよりに、穴から伸びる腕を次々と斬り落として、そして少女を傷つけ続ける。トーゴが疲れるか、クナイが血脂で鈍って斬れなくなるか――あるいは、そう、少女がこの場に開いた穴の、制限時間が切れるか。トーゴにはユーベルコードで宿した悪鬼たちの力がある、そして忍ゆえに武器の貯蔵は十分だ。
もともと時がたてばたつほど死期が身近に迫る少女には不利な戦いだ。遂に時間が切れ、大穴の開いていた場所はただの砂利敷きの駐車場に戻る。
「あ……やだ……!」
 少女が消えゆく穴に向かって手を伸ばす。その隙をついて、少女の華奢な首へとクナイを突きつけて差し斬り、そして念の力でもってクナイを貫通させる。
 少女の喉からは声は出なかった。声を出す器官をトーゴの武器が潰してしまっていたからである。ただ代わりに、クナイが喉を突き抜けた瞬間に、真っ赤な血飛沫が悲鳴のように撒き散らされた。
「……悪りィな」
 トーゴはそっと呟く。けれど、相手は刻印の力で超強化されているナンバード化オブリビオン。これだけでは死なない。例えこのまま朝を待てば死ぬとしても、その前に彼女は桧依の命を奪って生命を繋ぐだろう。
 だからトーゴはクナイを持つ手に手に力を籠める。少女の姿をした怪物を、確実に殺すために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミーリア・アーベントロート
大人になっても少女の心は忘れたくないものです。
現にリアも少女の心を忘れずに生きているのですから(うんうん)
というか、少年少女の心を忘れて生きてる人なんていないですの。
(思い浮かぶは兄達と弟の顔)

さて、戦いですか。あの無数の腕が邪魔ですの。
邪魔だから……ちょっと、触れさせていただきますね?
UC【毒持ち令嬢は夕焼けに現れる】。
これはリアが触れることで、その無数の腕に毒を仕込むのです。

優しい記憶は……そうですね。
兄様達に(物理で)優しくしてあげた時の記憶でも傷つけちゃえばいいかな。
悪いことは悪いって教えてあげたですの(えっへん)

あのときの兄様達の土下座光景が楽しかったなんてそんなげふんげふん。



●殺人鬼に「少女時代」はいらない
「少女であることを辞めた女に、価値なんてないわ。化粧なんかでごまかせないくらいに醜く老いて、いつか死ぬの。どうせ死ぬ命なら、わたしにちょうだい」
 少女の姿をした怪物が、能力者の女――桧依に言う。
「わたしは大人になったのです!生きているからこそ、ずっと少女のままではいられません!例えあなたを倒せなくても……殺されるわけには、いきません!」
 まだ少女のような、けれどれっきとした大人の女、能力者の女、桧依が少女の姿をした怪物へと叫ぶ。
 二人の言葉を聞いて、エミーリアは……。
「大人になっても、少女の心は忘れたくないものです」
 心なしかほわわんとした感じでそう言った。
「現にリアも少女の心を忘れずに生きているのですから」
 うんうん、と頷くエミーリア。
「というか、少年少女の心を忘れて生きている人なんていないですの」
 リアの脳裏に思い起こされるのは兄たちと弟の顔。なおその兄はさっきユーベルコードで出てきて合法的轢殺とかいう非常識な行動を囁いてきた三十七歳児と三十五歳児だ。弟は可愛い。スライディング戦場乱入してくる一流の狙撃手なわんぱくな子だ。
「あら、じゃああなたはわたしの味方をしてくれるってことかしら?」
 少女の姿をした怪物が綺麗な笑顔に喜色を浮かべる。
「……どうしてそうなるんですの?」
 リアはこてん、と首をかしげる。
「だって今わたしの意見に同意してくれたわよね? じゃあわたしの味方だわ、私と同じだわ、大人の女なんかより少女の方が尊いのよ、私は終わらない少女だもの、この女を殺して明日も生きるの!わたしに同意するのなら、その女を引き渡して、自分の世界に帰ってよ!」
「……なんでですの?」
「ええとちょっと待ってくださいなのです、じゃなかった待ってください、そこのあなたもステイステイ。……エミーリアさん、質問があるのですが」
 もしや? という顔で桧依がエミーリアに問う。なんとなく従ってしまう少女。
「なんですの?」
「――おいくつですか?」
「企業秘密ですの♪」
「……そうですか、でも見たところ学生にはさすがに見えないのです、と言う訳で見た目年齢から推測して22歳は越えているとします、もう一つ質問するのです」
「はい」
「ご職業は?」
「殺人鬼ですの」
 …………かぁー。どこかでカラスが鳴いた。
「ああーこれ駄目な奴ですぅー!!銀誓館学園の能力者の中にもいました!!っていうか兄様……兄がこんな感じです!!このひと生まれ育ちがハードすぎてそもそも私たちとそもそもの論争ができないタイプの人ですー!!このひと!まっとうな!少女時代を!過ごしてないのです!!」
 そう!エミーリアはフラスコチャイルドである。兄と慕う相手はいれど本当の兄弟ではなく、コピーを作ろうとして因子だけが入った実験体生まれ。しかもクズな研究所で育った彼女に、まっとうな少女時代を過ごせたはずもなく、もういい大人なんだからちゃんと化粧して社会人らしくしようね、っていうごく平凡な青春時代からの卒業を経験しているはずもない!そもそも研究所育ちのフラスコチャイルドに青春なんてあったかどうかもわからない!
「え……あなた……そもそも少女時代がないの……?」
「絶対そうですー!!少女なんて言える年頃には戦いに明け暮れてたかスラムかどっかで生きるか死ぬかのデッドオアアライブしてたでしょうー!!」
 少女の姿をした怪物が愕然とし、桧依が叫んだ。生きるか死ぬかとデッドオアアライブは同じ意味だが、まあエミーリアの背景を全く知らない初対面にしてはそれほど的外れでもない推測だ。
「少女時代が……ない……? わたしの……わたしたちの……痛みも苦しみも……絶望も……向けられた欲望も知らない……? そんなの……ずるいじゃない……!!」
 終わらない少女時代の象徴は驚愕し、混乱する。彼女は少女地獄、あらゆる少女の苦痛と絶望と地獄の集合体。故に彼女はエミーリアのような「まっとうな少女時代を知らない」存在に対して――混乱の中で、激しい嫉妬を抱いた。
「ずるい、ずるいずるいずるいわ!!わたしたちの味わった痛みも苦しみも絶望も知らないなんて、そんなの許せない!!あなたなんて、そこの女と一緒に、死んじゃえばいいのよ!!」
 ――ほんとうは。エミーリアが生きてきた歳月の中にも確かに「少女時代」と呼べるものはあって。そして彼女がフラスコチャイルドとして研究所で味わってきた苦痛もまた、少女たちの苦痛と絶望の集合体たる少女地獄の一部の筈だ。けれどそれを「別物だ」と示されてしまったから。そうだと言葉にされてしまったから。この怪物は、その痛みを自分だと認識できなくなってしまった。
 少女の姿をした怪物の背後に開いた昏い穴から伸びる、少女たちに地獄を与えた欲望に満ちた無数の腕がエミーリアに向かって襲い掛かる。
 無数の腕がエミーリアを掴み、彼女の持つ優しい記憶を傷つけようとして――
「ようやく戦いになりましたのね」
 少女地獄は見た。エミーリアの、自らが傷つけようとした「優しい記憶」。
 その中で、エミーリアは――。
 ――男二人に土下座をさせていた。
離れて暮らしていた二人の兄との再会、その時――エミーリアは、兄に対して――
「そういうのって殺人鬼じゃないと思う」という理由でぶん殴ったのである。
 曰く、(物理で)優しくしてあげたときの記憶である。
エミーリアの潜在意識は言っている。
「悪いことは悪いって教えてあげたですの。えっへん。あのときの兄様達の土下座光景が楽しかったなんてそんなげふんげふん」
 これが、エミーリアの「優しい記憶」である。
研究所で肩寄せ合って過ごしたとか、そんな記憶はエミーリアにはない。この記憶を「優しい記憶」だと、本気で思っているのだ。
 少女の姿をした怪物は激しく恐慌した。もう彼女にとっては目の前のエミーリアの方こそが理解できない化け物だった。少女の象徴たるオブリビオンには、エミーリアという女は相性が悪すぎた。
「なに、なんなの、あなた、なんでこんな、こんなことしか、」
「……その腕、邪魔ですの」
 邪魔だから、ちょっと、触れさせていただきますね?
エミーリアはユーベルコード【毒持ち令嬢は夕焼けに現れる(ギフト・アーベントロート)】を発現させる。
「く……うぅぅぅぅぅっ……!!」
 少女は苦しげに呻く。
「なにを……したの……!」
「一瞬で死ぬなんて楽しくありません。なので、リアがちょっと一服盛らせていただきました。お加減はいかが?」
 苦しいでしょう、苦しいように毒を調合いたしましたもの。
少女地獄の体が内部からぼろぼろと崩れていく。その苦痛に声にならない悲鳴を上げる少女。
「さあ、まだまだ苦しんでくださいな?」
 夕焼けに佇む殺人鬼・エミーリアは、そうして綺麗に微笑んだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧水・砕牙
ごめん、お兄さんその手の話ちんぷんかんぷんだからわかりやすく話してくれる?
(同人系の話以外は超雑魚に成り果てるダンピール作家)

というか少女か。少女。いいね。俺の創作意欲が沸き立つ。
笑顔を浮かべ、青年の心を引き込む少女の話。俺は好きだぜ。

っと、怒られちった。
しゃーない、砂利だらけだから抑え込んでたけど……ここからは本気で行くぜ?

UC【穿て、朱色の弾丸】の材料として、無機物である砂利石を使わせてもらう!
半数の弾丸で扉を開かせないように立ち回り、残る半数で少女地獄を連続射撃!
桧依を狙うようであれば、真っ先に守るように射撃!

大人になっても子供の心は大事だ。
そうでなきゃ、いい作品は生まれないからな!



●お前お前お前 お前お前お前お前 お前お前お前(地の文・心の川柳)
――さて、ここからは少し時間軸が異なる。先の続きではない、もう一つの時間の流れだとでも思ってほしい。
「少女を辞めた女に、価値なんてないわ。化粧なんかでごまかせないくらいに醜く老いて、いつか死んでいくんだもの。どうせ死ぬ命なら、今日わたしにちょうだい」
 少女の姿をした怪物――少女地獄が、能力者の女、桧依に言う。
未だ少女のようにも見える、けれどれっきとした大人の女の桧依は毅然と言い放つ。
「わたしは、大人になったのです、大人になりました!生きているからこそ、ずっと少女のままではいられません!たとえあなたを倒せなくても、あなたに殺されるわけにはいきません!」
 少女の姿をした怪物と、少女を卒業した女が、睨み合う中で――。
砕牙ははーいと挙手をした。
「ごめん、お兄さんその手の話ちんぷんかんぷんだからわかりやすく話してくれる?」
 ――冒頭。地の文の心境はまさにこの心持ちになった。お前お前お前。
同人系以外の話では超雑魚に成り果てる霧水砕牙である。
「ええと……説明が必要ですか?」
「アッハイオネガイシマス」
 ――前提として。このオブリビオンはこのままだと明日死んでしまう。その死を避ける唯一の手段が桧依を殺すことだ。この少女の姿をした怪物は、桧依を殺さなければ、明日が来るのと同時に死んでしまう。故に、桧依を殺そうとしている。
「ここまではいいですね?」
「アッハイ」
 詳しく説明してくれる桧依。なんとなく黙っていてくれる少女。
「わたしはもう27歳です。学生時代は自重しないを称号にしていましたが、卒業して一般企業に就職してもう随分と経ちました。さすがに自重しないわけにはいかない年齢です」
「えっ俺28歳なんだけど自重とかしてないぜ?」
「シャラップ。猟兵はいいですね言い値でお給金貰えて!能力者はそうもいかないのです!社会人になって働かないと同人活動するお金ももらえないのです!!」
 平日とは、出勤とは、休日に同人活動をするためのお金を稼ぐためにある。桧依はこのタイプの同人女である。
「だからわたしはたくさんたくさん頑張りました、具体的に言えばパンピーに擬態できるように!働かなければお金がもらえないしお金がなければ同人活動が出来ない!ならば円滑に働ける方がいいしその為なら大人になるのが一番賢いのです!」
 なお、一般人はパンピーって言わない。パンピーって言うこと自体非一般ピープルの証である。
「そしてこちらのナンバード……えーとオブリビオンですか? 少女地獄さんは、少女時代の象徴だといいます!彼女は私に言いました、大人になって将来醜く老いるくらいなら死ねと!少女を辞めたら生きてる価値がないと!私は思います、大人になって生きていくのが普通の人間だと!大人になるのも老いていくのも人間としてごくごく普通の事です!いつまでも子供ではいられません、だからこれからも生きていきます、それがわたしの言い分です!何か質問はありますかこの野郎!」
「えーないけど……というか少女かぁ。少女。いいね。俺の創作意欲が沸き立つ。――笑顔を浮かべ、青年の心を引き込む少女の話……俺は好きだぜ」
「話聞いてましたかこの野郎!!」
「あら、じゃああなたはわたしの味方ってことかしら? 少女、好きなんでしょう?」
 微笑みを浮かべる少女地獄。くすくすと笑いながら魅力的な微笑みを浮かべ、砕牙に笑ってみせる。それは、まさに今砕牙が言ったような、少女が青年の心を引き込もうとするような仕草で――
「あ、ごめん俺カップリングの間に挟まりたくないって言うか、俺がカップリングになるのは解釈違いって言うか、夢男子じゃないんで」
 俺は「俺」じゃあ萌えられないんで。異世界転生した最強魔族の俺とかは考えたけど。
「わかんないわ……あなたの言ってることが全然わかんない! 少女が良いなら私の味方じゃないの!? だったらその女を置いて帰ってよ!わたしは今はその女を殺せればいいんだからぁっ!!」
 地団太を踏む少女地獄。砕牙の負った業の深さはちょっと彼女には理解できなかった。
「だから言ってんじゃん、俺は夢男子じゃないんだってさぁ……それに、桧依を置いて帰るなんていうつもりは毛頭ないぜ? きっちり守ってやるさ、何せ桧依は――」
 俺と、テーブルクロスとテーブルのカップリングで語り合えた戦友(とも)だからな!
「100%この状況で言うことじゃないですがよく言いましたこの野郎!!」
「もうわかんない!いいから帰ってよ、私の目の前から消えて!!帰れぇーーーー!!」
 少女地獄は叫んだ。「拒絶する心の扉」が現れ、砕牙を吸い込もうとする。その扉に吸い込まれたが最後、砕牙は自分の家――砕牙は同人イベントに参加できるように同人イベントが開催される世界のひとつであるUDCアースに住んでいる――に帰されてしまう。そうなればどんなに急いでも、世界まで違うこの場所に戻ってくる頃には桧依は殺されてしまうだろう――。
「しゃーない、砂利だらけだから抑え込んでたけど……ここからは本気で行くぜ?」
 【穿て、朱色の弾丸(ヴェルメリオ・バラ)】。駐車場の地面を覆う、無数の砂利が空中に浮かび上がり、朱色の槍型の銃弾と化す。
「この砂利一粒一粒を俺は弾丸に変えることが出来る……!つまり!この砂利と同じ数だけ、俺には弾丸があるってわけさ……!」
 一気に浮かび上がらせた朱の弾丸、その半数で開こうとする拒絶の扉を抑え込み、残る半数を少女の姿をした怪物へ向かって一気に叩き込む!槍型をした朱の弾丸は彼女を貫くと同時に穿ち引き裂き、一瞬でズタズタにしてみせる!
「大人になっても子供の心は大事だ……そうでなきゃ、いい作品は生まれないからな……!」
「決め台詞と状況があってないのですよこの野郎ー!やっぱり話理解できてなかったですね!? もういいのです、やっちまえー!!」
 桧依の声援(?)を受け、砕牙は更に朱色の弾丸を砂利から無尽蔵に生成していくのだった……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

エーミール・アーベントロート
【秩序】
(ボンバーインセイン号に乗り、メルヒオールを一緒に乗せてご来場)
あっ、見つけましたー! ほらほらメルさん、アレですよアレ!
うちの子(妹)がボコボコにしたっていう相手です!
いやー、ちょっと遅れましたけど間に合いましたね!

ということでメルさんに攻撃を任せている間、私はボンバーインセイン号の操縦に集中。
こっちにはねえ、三流のドライバーと一流の狙撃手がいるんですよ!!

メルさんがいい感じに体勢を崩したら、UC【【豹変】爆発する狂気】発動!
さあ、どんどん轢き潰していきましょうね!
メルさんまで轢きたくないので、ホールドお願いしまーす!

合法的轢殺ができる現場、あー、楽しい!
これは兄さんにも教えなきゃ!


メルヒオール・ツァーベル
【秩序】
(エーミールと一緒にご来場)
おー、おったおった。女の子言うても敵やし、どんどん潰したれー。
なんかおる(※桧依のこと)って言われてたけど知らん。いけいけ、エミさん!

UC【記憶が頼りの創造主】で自分の記憶を元に作った狙撃銃を使い捨てながら、敵をどんどん撃ち抜く!!
足とか腕は全部部位破壊でぶっ壊したるわ!
合わせて四流や!! 文句あっか!! あっても聞かんけどな!!

足を崩して立てなくなったところで、バイクをがっちり掴んで落とされないようにホールド。
落ちないようにUCで紐とか括り付けておくかも。精製が間に合えば……。

エミさんが楽しそうだから俺も楽しくてしゃーないわ!
兄貴にも教えてやらんとな!



●何度言われても合法的轢殺だけは絶対に認めないからな
 ――ブォォォォォォン……
夕焼けに赤く染まった駐車場へと向かって響いてくるのは、バイクのエンジン音だった。
「あっ、見つけましたー!!ほらほらメルさん、アレですよアレ!!」
 うちの妹が、ボコボコにしたっていう相手です!
「おー、おったおったー」
 真っ黒な車体に真っ赤な爆発が描かれたオフロードバイク・ボンバーインセイン号を駆るのはエーミール・アーベントロート(《夕焼けに立つもう一人の殺人鬼》・f33551)。後部座席には緑色のコートをたなびかせるメルヒオール・ツァーベル(トリック&スピードスター・f36178)が乗っている。
「いやー、ちょっと遅れましたけど間に合いましたね!」
「女の子言うても敵やし、どんどん潰したれー。なんかおるって言われてたけど知らん!」
「ちょっとー、なんかって何ですか!わたしはこれでも護衛対象ですよ!ちゃんと護衛してください!」
 いきなりの闖入者に対して非難の声を上げる桧依。
「すまんて」
「わかればいいです」
 和解が成立した!
「では敵味方の識別が出来たところで、爆走(はし)りますよ……!!」
「そう、あなたたちは敵ね? じゃあその女と一緒に殺してあげるわ!!」
 砂利敷の駐車場に巨大な昏い穴が開く。その穴から無数の腕が這い出し、ボンバーインセイン号に――エーミールとメルヒオールに襲い掛かった。
「おっと、こっちにはねえ、三流のドライバーと一流の狙撃手がいるんですよ!」
「合わせて四流や!文句あっか!あっても聞かんけどな!」
 エーミールの言葉にニッコニコの笑顔でそう返すメルヒオール。
這い出る腕を足場にしてボンバーインセインが走り回る中、メルヒオールは自身のユーベルコードを発動させた。
【記憶が頼りの創造主(クリエイター・ツァーベル)】――偽物を作るユーベルコード。けれどその偽物は、メルヒオールの記憶にある物品である限り極めて精巧な代物になる。そして、メルヒオールが最も精巧に記憶しているもの、それが、狙撃銃だ。
ガン、ガンガンガンガンガンッ!!狙撃銃を大胆に使い捨てながら、少女の姿をした怪物を撃ち抜いていくメルヒオール。彼がベストの位置で撃てるように、ボンバーインセイン号を駆るエーミール。正しく彼らのコンビネーションは抜群だった。
しかし、戦場の真ん中に大穴が開いている以上は神出鬼没の這い出る腕を足場にするしかなく、そして足場が不安定なままの状態ではメルヒオールの狙撃も十全ではなく――
 白くぬらりと伸びた腕がメルヒオールの足に絡みつく。彼が体勢を崩した瞬間、エーミールは己のユーベルコード【【豹変】爆発する狂気(エクスプロザオ・ロゥクーラ)】を発動させる。そうと気づくや否や、メルヒオールはロープを生成し、自身の体をボンバーインセイン号に括りつけた。
「ヒャッハァー!! 合法的な轢殺タイムのはっじまっりだァー!!」
 だからそんなものはないと何度も言っている。
狂喜の雄叫びを上げるエーミール、その顔はまさに喜色満面。彼のユーベルコードの効果により、ボンバーインセイン号は地形からのダメージを受け付けない。故に、ボンバーインセイン号は這い伸びる腕を轢き潰しながらも足場に不自由なく爆走することが出来る――!!こうなったエーミールは止められない。メルヒオールには止める気もなかったが。
「さあ、どんどん轢き潰していきましょうねー!!イヤッホーゥ!!」
 少女に最高速度で激突したボンバーインセイン号は、そのままぐるぐると回りながら少女の体をぐりぐりと轢き潰す。なお、メルヒオールが自分の体をボンバーインセイン号に括りつけていなかったなら、エーミールはメルヒオールも轢き潰していただろう。
「あーっはっはっは!!合法的轢殺が出来る現場、あー楽しーい!これは兄さんにも教えなきゃ!」
「エミさんが楽しそうやから俺も楽しくてしゃーないわ!兄貴にも教えてやらんとな!」
「ちょ、嫌、痛い、あ、あなたたち、正気なの……」
 エーミールが駆るボンバーインセイン号に何度も轢き潰され、腕による回復を受けながらも即時にダメージを追い続けるというループに陥った少女はか細い声でそう言う。
――桧依は黙って首を振った。どう見ても正気じゃありません本当にありがとうございました。
そして、時間がやってくる。少女が駐車場に開けた穴には時間制限があるのだ。その時間が過ぎれば、その場所はただの砂利敷きへと変わり――少女を回復させる腕は消え失せる。
そのまま何度も轢き潰され引き回された少女はしくしくと泣きながら消えていった。ヤバい奴を相手にした少女の運が悪かった、としか言いようがない。
まだヒャッハー言いながら走り回っている二人を余所に、桧依は強敵を見送る時みたいな表情を浮かべて言った。
「……恐ろしい敵だったのです、少女地獄……ですが、わたしは生き延びました、生き延びましたよー!!ヨッシャおらあ!ざまーみやがれです!!勝ったぁ!!」

 斯くして。
 夜が来て、そして朝が訪れる前に、ナンバード化オブリビオンは消滅し――能力者の命は、守られたのであった。
 なお、それはそれとして合法的轢殺だけは絶対認めない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年04月01日


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#ナンバード化オブリビオン
#ナンバード


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト