竜宮城の王を討て! ~ デイドリーム・アゲインⅢ
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シルバーレインの日本沿岸区域。静かに見えるその海底で、メガリス『竜宮の玉手箱』は、海底の沈没船を『竜宮城』へと変化させていた。
玉手箱の現在の所有者、原初の吸血鬼が独り言ちる。
「蜘蛛の楔が……破壊されましたか? その分、『力』がこちらに跳ねてきたようですね」
現に先日まで、玉手箱は力の片鱗すら見せてなかったのだ。吸血鬼という組織が無くなった今、メガリスを破壊して影の城を作ることもできず、持て余していたはずのメガリスが……突如として、往来の力を発揮した。
そして竜宮城はその力を振るい始める。城の内部にオブリビオン化ゴーストを作り出し、そして近海のオブリビオン化ゴーストを集めていく。それらはすべて『王』たる原初の吸血鬼の下僕で、王の欲求を満たすために行動する。
すなわち。
――この世に生きる者に『慈悲』――死という名の解放を与えること。
かつて彼が至った、たった一つの結論を実現すること。それが原初の吸血鬼『慈悲深きものクロード』の望みであった。
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「大変です! シルバーレインの日本に竜宮城が現れました!!」
文月・悠(緋月・f35458)がグリモアベースで叫んだ。目の前には招集に応じてくれた猟兵たち。しかし、『竜宮城』という言葉を理解できる者は少なかったかもしれない。
「あ、す、すみません。ちょっと焦ってしまいました。えーと……竜宮城の説明からいきますね」
深呼吸してから悠が再び話し始める。
「竜宮城とは、シルバーレインの世界でメガリス『竜宮の玉手箱』が能力を発揮した結果です」
曰く。
シルバーレインにおけるメガリスは、代償を求める代わりにひとりの手には収まらぬほどの強大な能力・効果を発揮する。竜宮の玉手箱は『海底に巨大な竜宮城を建設する』能力を持つ。
竜宮城の周辺には空気も生まれ、所有者はこの領域の中で『王』として君臨する。
「そして、竜宮城はそのすべてを使って、王の願いを叶えようとします」
とはいっても、複雑な願いは無理で、原初的な欲求を満たすだけ。
王が考えていることをなんとなく感じ取って、周りのゴーストが自律的に行動するだけなので、例えば。
王が『暗い』と考えれば『体が発光するゴースト』が近づいて辺りを照らすとかそんなレベル……なのだが。
「面倒なことに、王となったのが原初の吸血鬼なんです」
これまた、シルバーレインに縁のない者には意味不明なキーワードだ。そこを補足するように悠が説明を続ける。
「原初の吸血鬼とは、自身の体内に大量のゴーストを住まわせ、戦いとなればそのゴーストを放つ、吸血鬼勢力の精鋭。一体で一軍を成す、冗談みたいな存在です」
この原初の吸血鬼は、ゴーストを体内に取り込み、配下に置くことで強大になっていく。個体の強さも重要だが、その数も大きな脅威となるのだ。
「この原初の吸血鬼は、自身の願いのために力を求めています」
その求めを感じ取って、竜宮城はオブリビオン化ゴーストを大量に呼び寄せようとしている。続けていけば、いずれ強い個体も現れるだろう。
「戦争を行う準備が整えば、竜宮城を海上に浮上させて地上に攻め入る、という寸法です」
だが、幸いにして、現時点で竜宮城の存在を把握することが出来た。
「といってもグリモアの予知は何の役にも立ってないんですけどね」
教えてくれたのは、かつての竜宮の玉手箱の持ち主にしてメガリス・アクティブである近江・永都。彼が玉手箱の存在を感じ取り、その座標を伝えてくれたのだ。
その場所とは、紀伊水道。四国と紀伊半島の間にある海の底。
「お願いします。竜宮城が浮上する前に現地へ赴き、原初の吸血鬼を撃破してください」
それが今回の依頼内容である。
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原初の吸血鬼に辿り着くには2つの関門を突破しなければならない。
「ひとつめは、竜宮城の防御機構です」
これは竜宮城の周囲に展開されている『不思議な水域』のこと。
「竜宮城の周りは今、嵐のような潮流が常時流れ、竜宮城が招いていない者を押し流そうとします」
自然ではありえないほどの強い流れであるため、何の対策もなく乗り込めば遠くまで流されるだけ。潮流を突破する勢いや突進力、あるいは潮流そのものを無効化したり遮ったりする何かが必要だ。
「あと、ここ水中なので……生身で到達しようとすると空気がありません」
なので、呼吸できる手段や環境を確保した上で竜宮城まで辿り着けるような、何らかの工夫も要る。
ふたつめは城内。
竜宮城まで辿り着いてしまえば、水域の魔力が解除され、後続は危険無く竜宮城に辿り着けるようになる。そして竜宮城の中は空気があるので呼吸の心配も無いし、城の中は戦闘で十分に立ち回れる広さがある。
「竜宮城の中に入ると、竜宮城が迎撃のための戦力を生み出してきます」
オブリビオン化ゴースト『鉄鼠』。鋼鉄の頭部を持つ、鼠型のゴーストの群れ。
「全部倒す必要はありません。というか、無尽蔵に湧いてくるので、まともに相手をしていると押し切られます」
なので、群れを突破して王の間まで突き進んでほしい。
その中にいる王――原初の吸血鬼『慈悲深きものクロード』さえ倒すことができれば、竜宮城は崩壊を始める。
「原初の吸血鬼との戦いの最中も、鉄鼠が湧いてきます。こっちもまともに相手をしていると手を取られるだけなので」
鉄鼠の動きを止めて、その間に原初の吸血鬼を倒す、という手段が好ましい。
「竜宮城が浮上してしまえば、大きな犠牲は避けられません」
そうなる前に、海の底で竜宮城を止めて欲しい。
「無茶を言ってすみませんが、どうぞよろしくお願いします」
そう言って、悠は絵本型のグリモアを開いて、猟兵たちをシルバーレインへと送り出す。
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「……それにしても、また四国、ですか……」
猟兵を送り出した後、悠は眉をひそめながら小さく呟くのであった。
るちる
まいどです。いつもありがとうございます、るちるです。
シルバーレイン世界、初の決戦シナリオは竜宮城でした、ナンデ?
●全体
3章構成の決戦シナリオです。ですが、通常の3章シナリオとよく似た感じになっています。
1章で防御機構である激しい潮流を突破して竜宮城に到達。2章で鉄鼠を蹴散らしながら突き進み、3章で原初の吸血鬼を倒す、という流れになります。
2章と3章の戦闘場所は空気のある、広い城の中となりますので障害物はありません。
●1章
冒険『竜宮城をめざして』。
海の底にある竜宮城に到達することが目標です。
水中なので普通に行けば呼吸ができず、また水の抵抗で動きが鈍ります。これらへの対策を打ちつつ、ジェットコースター並みの勢いで竜宮城を包み込むように対流している潮の流れを突破してください。水域の魔力が周辺に満ちていますが、魔力は自然現象の超強化に使われています。そのため、モノ自体は自然です。岩場もありますし、海底もきちんとあります。
●2章
集団戦『鉄鼠』との戦闘です。
進行方向から鉄鼠の群れが押し寄せてきます。大きさは様々ですが、柴犬から大型犬程度。ジャンプはしますが、飛んだりできません。小型はさらに小さいです。
周辺に戦闘の邪魔となるような障害物はありません(台座とかはあるので飛び乗ったりして有利に戦うことは可能です)
●3章
ボス戦『慈悲深きものクロード』との戦闘です。
王の間はだだっ広い座敷となっています。その一番奥にある椅子にクロードは座っています。こちらも障害物はないのですが、周辺から鉄鼠が湧いてきます。鉄鼠については攻撃を受けるとしばらく行動を停止するので範囲攻撃を叩き込むことで進軍を止めることが出来ます。クロードの体内から呼び出されたゴーストに関しては別で、止まったりしません。
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各章ともプレ受付開始前に冒頭説明or補足説明を追加します。ご参考にしてください。プレの受付についてはタグでお知らせします。毎度ですが、1日の執筆人数が多いと採用できない人が出るかも? プレ受付開始や状況なども含めて、タグでお知らせします。
それでは皆さんの参加をお待ちしていまーす!
第1章 冒険
『竜宮城をめざして』
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POW : 防衛機構の攻撃を耐え抜き、一直線に竜宮城まで泳ぐ。
SPD : 防衛機構の隙を掻い潜り、竜宮城を目指す。
WIZ : 魔法で呼吸や行動の自由を確保する。
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●竜宮城を囲う繭
それは空中……例えばブルーアルカディアの世界であれば、『嵐の繭』と呼ぶべきものだろう。城を包み込むように激しく風が流れ、時には流れに飛び込んできた物体を切り、砕き、破壊する、自然の暴力。
そんな繭が海の底にある。
竜宮城を中心に置いて、海底からドーム状に展開された水域。通常の海水との境目から水域の内部に激しい風のような潮流が生まれている。それは竜宮城の魔力が生み出した防御機構だ。
境界から竜宮城まで距離にして50mほど。厚みがあるわけではない。
これを突破するには2つの方法がある。
ひとつは『強引に突破する』こと。これには『鉄程度ならねじ切る強さの潮流』に耐える方法が必要になる。
もうひとつは『魔力そのものに干渉して流れを相殺する』こと。竜宮城から常に魔力が放たれているため、恒常的かつ完全に魔力を相殺することは不可能だろう。しかし瞬間なら。消し去ることは可能だ。あるいは弱めることだって。不思議な魔力とはいえ、魔力なのだから干渉のしようはある。
ふたつのいずれかの手段を取った上で、流れをどう乗り切るか。そして水中における呼吸をどうするか。これがポイントになってくる。
仮に。
鉄以上の強度を持つ艦が水中を50ノット(約100km/h)で進むことが出来れば。不思議な水域の強引な突破は可能だ。
あるいは。潮流を一瞬、完全に消し去る大魔法を放つ。放った後の数瞬でどうやって移動するかはさておき。魔法を放ってから数瞬は潮流が消し飛ぶだろう。
工夫と対策を以て、竜宮城へ辿り着いてほしい。
※シナリオ補足※
竜宮城を包むように、ドーム状の不思議な水域が展開されています。この部分は激しい潮流が支配している領域です。
竜宮城の地下にあたる海底の中ですが、こちらはゴーストタウンのように時空の歪みが発生しているようです。まっすぐ進んでいるつもりでも竜宮城に辿り着けないため、何かしらビーコンの役目をするものが必要でしょう。
水の抵抗はありますが、その他の物理法則はある程度無視できます。
どういうことかというと、水中でもロケット噴射ができるとか、雷の魔法を使っても自分は感電しないとか。簡単に言うと皆さん自身が不利になるような判定はしません。
キャバリアの使用もオッケーです。水が浸入しないようにカスタマイズはしておいてくださいね?
見えていない部分(海底の中)
※途中で切れてましたごめんなさい※
見えていない部分(海底の中)には水域は展開されていません。
しかし、海底は砂が主な成分な上、水で押し流されるので単純な力技で突き進むのは難しいかもしれません。何か組み合わせてください。また、竜宮城との接地面はとても硬いのでドリルなりなんなりで破壊する必要があります。
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紀伊水道。よく台風が通っていくルートで、しかもここを通ると被害が大きい。そんな瀬戸内海への入り口でもある海域の底に『竜宮城』はある。
まずは近くまで海上を移動する必要があるが、これは銀誓館学園の手配で一般旅客船を確保してある。竜宮城を刺激しない距離まで近づいたら、そこからが猟兵たちの出番である。
瀬河・苺子
【心情】
ほんっとうに厄介事しか起こさないですね、あのメガリス
あのような姿になってまで力を貸してくださる近江さんの気持ちに報いるためにも必ず、竜宮城の浮上は止めてみせます
【潜入】
・潜水用装備を2セット用意
片方はIGCに収納して脱出用に
行き用のものもちゃんと壊れずに済むか分かりませんし
猟兵の中にはすごい乗り物出せる人もいるとか
少しうらやましいです
・「狩猟体勢」を取って肉体強度を増して、水泳で船を目指す
「索敵」で防御の弱い所を調査
「息止め」「リミッター解除」を利用して一気に突っ切ります
わたしが能力者に目覚めて最初に襲われたのは玉手箱のメガリスゴースト
あんな怖い思い、もう誰にもさせませんから
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銀誓館学園が手配した旅客船の上から『竜宮城』があるであろう地点を見つめるのは瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)であった。
「ほんっとうに厄介事しか起こさないですね、あのメガリス」
過去、『能力者』として経験した記憶を思い出しながら。思いっきり深いため息とともに苺子はそんな言葉を吐き出す。
運命の糸症候群。それによって苺子は本来の年齢ではなく、中学生にまで戻ってしまった。世界結界が無くなって、運命の糸も縁結び程度の意味しかなくなったはずの世界は、再び『死と隣り合わせの青春』を苺子にもたらしているのだ。
そして目の前にはメガリス。ため息をつきたくもなる気持ちもよくわかる。だが危機はそこまで迫っている。
「あのような姿になってまで力を貸してくださる近江さんの気持ちに報いるためにも必ず、竜宮城の浮上は止めてみせます」
近江・永都。玉手箱の代償で年老いた青年を知らない者は銀誓館学園ではいないだろう。竜宮城の件もあるが、メガリス・アクティブの情報を伝えてくれたのは彼自身なのだから。
「『起動!(イグニッション!)』」
手にした『イグナイトホン』を掲げて、苺子は昔と同じく、その『言葉』を紡ぐ。封じていた力が解放されて、彼女は自分の本来の力を取り戻す。
「では、いきましょう」
気合を入れ直す苺子。目指すは海底の竜宮城だ。
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作戦は潜行。その準備として潜水用の装備が2セット。そのうち、1セットはイグナイトホン内のイグニッションカードの中に収納しておく。
(行き用のものもちゃんと壊れずに済むか分かりませんし)
万が一、脱出時に装備が無いようでは困る。何でも入るイグニッションカード、本当便利です。
その時、ふと脳裏によぎるのは、グリモアベースで聞いた話だ。何でもイグニッションカードを使わなくても、すごい乗り物を出せる人も猟兵の中にはいるという。
(少しうらやましいです)
そんなことを思いながら、潜水の準備を整えた苺子はゆっくりと海面から戦場へ潜行していく。
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不思議な海域が見えてきた。激流が竜宮城を包み込み、奥にあるはずの竜宮城がよく見えない。しかし、分かる。この先に……ある。
(これ以上、あなたを許しません)
苺子の瞳が輝き、【狩猟体勢】――ゾンビハンター特有の嗅覚が竜宮城を敵と見据える。それによって肉体強度を最大限に発揮できる状態へと移行した苺子は大きく息を吸い込んで。
―― 一気に突っ切る!
【狩猟体勢】の強化を最大限に利用しつつ、リミッターを解除してさらにブースト。息を止めている間に、激流の繭の弱い部分を一気に突っ切る作戦。
限りなく力技だが、能力者にはよくある正攻法である。
(あんな怖い思い、もう誰にもさせませんから)
苺子が能力者に目覚めて最初に襲われたのは玉手箱のメガリスゴースト。メガリスが破壊された後に発生する、どこからどう見ても最悪なゴースト。あんな思いを再び誰かにさせるわけにはいかない。そんな想いが苺子を突き動かす。
力と想いが揃った苺子に突破できないものはない。
防御機構を突き抜けた苺子の前に、竜宮城は悠然と立っていたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
御鏡・幸四郎
竜宮城の事件は私が銀誓館に来る前のことでした。
まさか改めて過去の事件を体験することになるとは…
水中対策はアクアラングを装備。
呼吸法で酸素を節約しながら行きます。
激しい潮流が渦巻いているのに、
周辺には影響しない不思議な空間。
メガリスの力は凄まじいものですね…
潮流は雑霊の力で突破します。
周辺の雑霊をチャージし、雑霊弾雨を発射。
一か所に集中させ、着弾時に破裂させます。
同時に雑霊の力で魔力に干渉。
二つの力で一時的に潮流を消失させます。
障害が無くなれば一気に進むだけ。
両方の掌から推進力代わりに雑霊弾を発射。
潮流の内側へ突入します。
慈悲深きものクロード。
原初の吸血鬼までオブリビオン化するとは、
厄介ですね…
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静かな海面で停泊している数十人が乗れそうな一般旅客船。
その甲板から水面を見つめて佇むのは御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)であった。
「まさか改めて過去の事件を体験することになるとは……」
思わず零れる声。視線は『竜宮城』があるであろう地点をみつめながら、幸四郎は過去を思いやる。
過去の竜宮城決戦は幸四郎が銀誓館学園に入学する前の事件であった。その内容は資料や伝聞で聞くばかりであったが、今、形を変えたとしても再び竜宮城が現れたのだから、その心境は推して知るべし、というものだ。
だが、ため息ばかりでいるわけにもいかない。
竜宮城へ赴くために準備してきたモノを紐解く幸四郎。
まずはアクアラングを装備。酸素ボンベはそんなに大きくないものをチョイス。この後の行動を考えれば大きなものは邪魔になる。
普通に行けば足らないであろう酸素の問題は、呼吸法で節約していくことにする。元能力者の今猟兵にこの程度余裕である。むしろ水練忍者ならノー装備で行けたすらある。
とぷん、と緩やかな音を立てて幸四郎が海中へと潜る。
慎重に進めば、見えてくる不思議な海域。激流の繭。竜宮城が見えないほどに激しい潮流が渦巻いているのに、海域の外、周辺には一切影響しないという不思議な空間が視認できる。
(メガリスの力は凄まじいものですね……)
無策で飛び込めば流され、弾き飛ばされて終わるであろうことは容易に推測できる。
だからこそ、幸四郎は一度歩みを止めて、大切な酸素をしっかり使って呼吸を調える。幸四郎の力に惹かれるようにして集まってくる周辺の雑霊。ここからが霊媒師の真骨頂。残留思念になる前の雑霊を呼び集め、ゆっくりとじっくりと自身の周辺に漂わせて留め置き…………解き放つは【雑霊弾雨】。
「降り注げ!」
幸四郎の言霊によって呼び集められた雑霊たちが弾の雨となって海中に降る。
(潮流は雑霊の力で突破します)
まだ、残留思念となっていない雑霊たちは幸四郎の意志に従うようにして、激流の繭の一点を狙って降り注ぐ。着弾と同時に爆ぜる雑霊弾。周囲に散らばる雑霊を通じて幸四郎の魔力が潮流に干渉する。
【雑霊弾雨】はまだまとだ降り注ぐ。メガリスの力で潮流が元に戻るよりも早く、次々と破裂していけば、必然そこに出来上がる突破口。
(よし……!)
障害が無くなれば一気に進むだけ。
後ろに構えた両方の掌から、雑霊弾を発射して推進力代わりに突き進む幸四郎。潮流が戻る前に繭の中へすり抜けて突入すれば、眼前に見えるのは竜宮城。
もう一度立ち止まり、呼吸を調える。
この竜宮城の中に新たな王がいる。
(慈悲深きものクロード。原初の吸血鬼までオブリビオン化するとは……)
過去、自身も戦ったことがあるからこそ、幸四郎は臍を噛む。
(厄介ですね……)
態勢を整えて竜宮城の中に入る幸四郎。
ここからは戦いで決めるしかない。
大成功
🔵🔵🔵
リリスフィア・スターライト
【万華鏡】
プリズムと一緒に参加だね。
彼女の方が1つ年上だけれど、先輩猟兵としていい所を見せるよ。
プリズムの支援を受けた所で天体破局を発動して
竜宮城への道を切り開くよ。
強大な渦潮を発生させて潮流の流れを変えて
竜宮城へのルートを確保したいかな。
ルートを確保した後で量産型の
キャバリア『ワイルド・サンダー』に登場して、
海中を一気に駆け抜けるよ
プリズムも搭乗させてサポートをお願いしたいかな。
いざという時の為に水中でも泳げるよう
最低限の装備は整えておくね
反動もあるし竜宮城に辿り着けた後は
プリズムに任せて少し休憩かな。
「一緒に頑張ろうだね」
「いくよ。しっかりつかまっててだね」
プリズム・アストランティア
【万華鏡】
リリスフィアさんと一緒に参加するわ。
猟兵としての経験が彼女が上だから
頼りにさせてもらうわ。
私自身は竜宮城へ到達出来る術がないから
リリスフィアさん任せね。
せめてリベレイションで彼女の力を強化して支援するわ。
竜宮城への道が開けたらリリスフィアさんの
キャバリアに同乗して一緒に向かうわ。
操縦も出来ないけれど竜宮城への
ルートから外れないよう注意し
トラブルに対応できるようにするわ。
竜宮城に辿り着けた後は
リリスフィアさんとキャバリアを安全な
場所で休ませてから戦闘態勢を取るわ。
「猟兵の皆さんはこんな兵器も使いこなせるのね」
「話には聞いていたけれど、こうして竜宮城に行く日が来るとは思わなかったわ」
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銀誓館学園がチャーターした一般旅客船の甲板の上。その上から海面を見つめる猟兵が二人。リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)とプリズム・アストランティア(万色の光・f35662)である。
海底で動きがあるせいか、海面が荒れている……が、どうやら順調にメガリス『竜宮の玉手箱』の不思議な海域は削れているようだ。
「頼りにさせてもらうわ」
「任せてよ」
プリズムの声にリリスフィアが応える。年齢はプリズムの方が1つ上だが、猟兵としての経験はリリスフィアのほうが上。
「先輩猟兵としていい所を見せるよ」
とリリスフィアが告げれば、プリズムが笑みを浮かべる。
まずは海底の不思議な海域まで辿り着かねば。
「リベレイション!!」
プリズムの声に呼応した英霊がプリズムとリリスフィアの二人に舞い降り、憑依する。『突破』する準備は完了だ。
「一緒に頑張ろうだね」
そう言うリリスフィアのキャバリア『ワイルド・サンダー』に二人乗り。そしてゆっくりと潜っていけば、問題なく不思議な海域に辿り着くリリスフィアとプリズム。二人の眼前には行く手を遮る激流の繭。
一度足を止めて、顔を見合わせて頷きあい。一度コックピットから外に出る。
そしてリリスフィアが構える。
「唸れ雷光、轟け嵐、渦に飲まれ、全てを灰燼に帰せ!」
リリスフィアの詠唱によって発動する【天体破局】――生み出された強大な渦潮が激流の繭に激突、【リベレイション】によって攻撃力が5倍となったその一撃はそのまま潮流を喰らうように流れを変えていく。
渦潮が激流を変え、遮り……道が開く。
「プリズム!」
「ええ!」
その一瞬を逃さず、リリスフィアがワイルド・サンダーが招き寄せる。プリズムも応えつつ、もう一度ワイルド・サンダーに乗り込んだ二人。
「いくよ。しっかりつかまっててだね」
リリスフィアが操縦桿を倒せば、ワイルド・サンダーが一気に海中を駆け抜ける。
「そのまま、まっすぐ」
操縦に集中しているリリスフィアをプリズムがサポートする。想定していたようなトラブルは……無い。突き抜けた!
「ふぅ……」
ワイルド・サンダーを竜宮城の入り口手前に着地させて、ひと息つくリリスフィア。
「移動するわ」
細かい操縦はともかく、移動するだけなら。操縦を交代して竜宮城の中までワイルド・サンダーで乗り込めば、そこにあるのは地上と変わらない空気のある世界。
膝をつかせたワイルド・サンダーのハッチを開いて、リリスフィアを抱えてコックピットから飛び降り……そして上を見上げるプリズム。
「猟兵の皆さんはこんな兵器も使いこなせるのね」
キャバリア。異世界の技術を持ち込めるのもまた猟兵の強さだ。
リリスフィアを少し休憩させながら、プリズムは周辺の警戒に移行する。とはいえ、周辺にまだ脅威は無さそうだ。
「話には聞いていたけれど、こうして竜宮城に行く日が来るとは思わなかったわ」
能力者として覚醒した頃には竜宮城どころか、玉手箱のメガリスゴーストが徘徊しようとしていた頃だ。実際に来ることになるとは夢に思わなかったプリズムの口から思わずそんな感想が零れて。
本格的な戦いはこれからだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『鉄鼠』
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POW : 大鉄鼠顕現
自身と仲間達の【キャバリア肉体と呪的エネルギー】が合体する。[キャバリア肉体と呪的エネルギー]の大きさは合体数×1倍となり、全員の合計レベルに応じた強化を得る。
SPD : 必殺前歯
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【鋭く尖った前歯】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ : 鼠算
レベル×5体の、小型の戦闘用【鼠型妖獣】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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●
それは海底にひっそりと、そしてしっかりと存在していた。『竜宮城』……しかし、おとぎ話にあるような幻想的な建物ではなく、それはどこからか運び込まれてきた大きな沈没船を基礎として『城』として再構築されたものだ。
メガリス『竜宮の玉手箱』。
原初の吸血鬼の手にある力ある遺物によってこの建造物は成り立っている。
しかし、侵入者を阻む不思議な海域、激流の繭は猟兵たちの突破によって解除された。いや、もしかすると海域に割いていた魔力すら竜宮城の防衛に回すためかもしれない。
沈没船の艦橋――操舵室にあたる部分から突入する猟兵たち。そこはメガリスから距離が一番遠いせいか、比較的安全地帯でひと息つくことが出来た。
後は深部まで突入するのみ。
竜宮城と同化したせいか、船の材質が元の鉄から変化している。破壊しながら進むのは得策ではなく、操舵室を出て通路に従いつつ。船の底、機関室がある辺りを目指す猟兵たち。
その時。
通路の壁からオブリビオンがにじみ出してくる。それは『鉄鼠』の群れ。竜宮城の自衛機能。柴犬から大型犬程度の鉄鼠たちが通路を塞ぐ勢いで溢れる。
これを突破しないことには、原初の吸血鬼には辿り着けない。
戦闘態勢を整えつつ、猟兵たちは交戦に入った。
※シナリオ補足※
船の通路が基本的な戦闘場所になります。ゴーストタウン現象が発生してるのか、通路の広さは十分あります(実際の戦艦などとは違い、人が3人くらい並んで歩ける広さ)
そこに鉄鼠がずらーっと並んでいる状態です。
範囲攻撃等で一斉に倒すことは可能ですが、足を止めて殲滅する作戦は壁から鉄鼠が無限湧きするので得策ではありません。
突破することを目的としてください。
原初の吸血鬼は船の底の方、機関室の手前にある貨物倉庫の中にいます。
プリズム・アストランティア
アドリブ、連携可
助けもあって竜宮城に入り込めたしここから本領発揮ね。
鉄鼠の大群は一度に相手にするのは危険だから逆に一網打尽を狙うわね。
出来る限り多くの鉄鼠を撃破してボスへの突破口を開くわね。
鉄鼠に包囲されたり奇襲されないよう慎重に進んで
大群が見えたら詠唱を開始するわ。
私に気付いて一斉に襲い掛かってきた所で
鏡月極光を発動するわ。
一直線で出来るだけ多くの鉄鼠を巻き込まれ
タイミングで発射するわね。
発射後も生き残った鉄鼠から反撃を受けないよう
防戦しつつ後退し再発射の準備を整えるわ。
「いつまでも人任せにはしていられないわ。退路を確保してくれている人の為にもね」
瀬河・苺子
【心情】
ここからが本番な訳ですが
前線復帰してわずか1月で、戦闘相手がフェンリルに原初
当時のわたしが聞いたら気絶しそうな話ですね
年末まで前線退いて大学院にいたはずなんですが
いや、当時は割と思い詰めていましたし、前のめりで向かって倒されていた気もします
【戦闘】
一方向からやってくるのなら、ひとまず取り囲まれることはなさそうですね
「斬撃波」「なぎ払い」でUC を用い、近づく端から吹き飛ばします
合体を防ぐべく分断させます
「多数相手の戦闘準備はまだ不足していますが、ここまで来て逃げることもできませんから」
合体されたら「部位破壊」で動きを鈍らせ動きを封じて倒す
「巨大な相手ならそれなりのやり方があります」
御鏡・幸四郎
次は鉄鼠ですか。
もう一々懐かしんでいるヒマも有りませんね。
一気に突破しましょう。
雑霊弾雨はフルチャージで使うだけが能ではありません。
数発分チャージしては、進行ルートを塞ぐ鉄鼠に発射。
大型の個体を優先的に狙い、麻痺させて他の鉄鼠への
バリケードとします。
守りが薄くなったルートから強行突破。全速で駆け抜けます。
前歯の攻撃は死角から急所を狙って繰り出されるのでしょう。
通路の構造、物品の配置、敵の動きをよく観察し、
自分の死角を把握。
狙われやすいように動き、襲撃タイミングを誘導。
第六感も駆使し、前歯の攻撃にカウンターを合わせます。
相手がオブリビオン化していても、私たちも猟兵となりました。
必ず、止めます。
●
『竜宮城』と化した沈没船の内部を進む猟兵たち3人。
「助けもあって竜宮城に入り込めたしここから本領発揮ね」
走る速度を緩めずに、プリズム・アストランティア(万色の光・f35662)が瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)と御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)に告げる。
その言葉を受けて頷きを返す幸四郎と……何やら複雑な表情をしている苺子。
「そう……ここからが本番な訳ですが」
苺子の呟きに幸四郎が首を傾げる。
「前線復帰してわずか1月で、戦闘相手がフェンリルに原初……」
「……ははは」
苺子の言葉に思わず幸四郎も乾いた笑いをこぼす。
過去、銀の雨が降る時代のことを思えば、どちらも命を賭した依頼か、メガリスを破壊して生命賛歌を発動した上で相まみえる相手だったはずだ。それがこの短期間で、かつこんな少人数で。
「当時のわたしが聞いたら気絶しそうな話ですね」
年末まで、戦いの場からは離れて大学院にいたはずなのに。こんな激しい戦闘なんて身に覚えが……。
「……いや、当時は割と思い詰めていましたし、前のめりで向かって倒されていた気もします」
あったっぽい。
そうですよ思い出してほしい。オロチウィークとか善悪の彼岸とか。本当忙しなかった。
そんな様子の苺子を見つめながら、幸四郎も息を吐く。
「やれることが増えている、ということなのでしょうね」
得た力は単に戦うだけの力ではなく。もっと大きな力なのかもしれない。そんな力が宿るなら、それを使う相手もまた。
「……」
幸四郎の言葉に今度は苺子が小さく首肯を返して。
「……お話は一回止めた方がいいみたい」
そこでプリズムが声を上げる。
プリズムの声に釣られるように苺子と幸四郎が視線を前に戻せば、そこにいたのは『鉄鼠』の大軍。
「次は鉄鼠ですか」
嘆息とともに幸四郎が呟く。もう一々懐かしんでいるヒマも有りゃしない。
「大軍を一度に相手取るのは危険だから」
プリズムの言葉に幸四郎が頷く。
「一気に突破しましょう」
「ええ」
「わかりました」
素早く足を止めて戦闘態勢に入った3人の猟兵が、先手必勝と攻撃を放つのであった。
●
戦場は通路。つまり、3人の進行方向に対して、逆行するような形に鉄鼠たちが押し寄せてくる。左右に逃げ場はなく、目の前から雪崩が押し寄せてくるようなものだ。
しかし、逆を言えば『一網打尽を狙える』位置関係でもある。
「――」
プリズムが小さく詠唱を紡いでいくにつれ、高まる魔力。出来る限り多くの時間、詠唱すればするほど威力が増す【鏡月極光】を鉄鼠にぶつける。詠唱中はどうしても動きが鈍るのが難点だが、今は一人ではない。
「【雑霊弾雨】はフルチャージで使うだけが能ではありません」
幸四郎が再び呼び集めた雑霊を雨のように降らせる。こういう1対多こそ【雑霊弾雨】の得意とするところ。数発分をチャージしては距離が近い鉄鼠たちへ発射。麻痺させて行動を阻害するとともに、群れを削ぎ落して奥に控える大型の個体を顕わにさせる。
(アレの動きを止めれば……!)
今度は狙い撃ち。真っ直ぐ飛んだ雑霊弾が鉄鼠(大)を撃ち抜き、その場で麻痺させる。でかい図体の鉄鼠が通路に横たわれば、必然と後続の鉄鼠たちの邪魔になる。敵を利用したバリケードで敵の動きを鈍らせる幸四郎。
「一方向からやってくるのなら、ひとまず取り囲まれることはなさそうですね」
そう言い捨てながら。苺子が鉄鼠たちの群れまで一気に距離を詰める。その手には両手持ちのハンマーがあって突撃しながらも真横にバックスイング済。
「はぁっ!!」
ゾンビハンター必殺の【ロケットスマッシュ】!
ロケット噴射で超加速したハンマーヘッドが斬撃波を放ちつつ、鉄鼠の群れをなぎ払って吹き飛ばす!
止まることなく、再度【ロケットスマッシュ】を放ち、鉄鼠たちを近づく端から吹き飛ばしていく。ただハンマーを振り回しているわけではなく、吹き飛ばすことで鉄鼠たちを分断して合体を防いでいるのだ。
「多数相手の戦闘準備はまだ不足していますが、ここまで来て逃げることもできませんから」
敵陣の中で奮戦する苺子。その攻撃に数を減らしていく鉄鼠たちが鼠算のごとく。小型の戦闘用鼠型妖獣を大量に呼び寄せる。
「……っ」
息を呑む苺子。雪崩、津波。逆らいようのない圧倒的な暴力の波が苺子めがけて押し寄せる。
「異界の月光が悪しきを滅ぼすわ」
その声は混然とする戦場に凛と響いて。
月明かりのような光が一条、プリズムの手から戦場を駆け抜ける。それはオブビリオンのみを溶かし尽くす【鏡月極光】。射線上にいた苺子には影響を与えず、されど押し寄せていた暴力の波を一瞬で霧散させる。
「ありがとうございます」
鼠算が崩壊した瞬間を見計らって、一度後退。態勢を立て直す苺子。
しかし、鉄鼠たちも全滅したわけではない。プリズムの【鏡月極光】から逃れ、しかも群れからも離れて身を潜めていた個体が数体。苺子を狙って『頭上』から降ってくる!
「死角から急所を狙って繰り出されるのでしょう? わかってますよ」
幸四郎がそう告げるとともに。苺子の真横を雑霊弾がすり抜けていく。アッパーの軌道を描いた雑霊弾は寸分違わず、降ってきた鉄鼠の口へ直撃してそのまま鉄鼠を消滅させる。
鉄鼠の必殺前歯。気付く前に放たれれば狙われた部位が確実にやられる攻撃であるが、気付いてしまえばカウンターを叩き込むだけ。
「わたし、うまく出来たでしょうか?」
「ええ。バッチリでした」
気付かないふりをしてくれ、というわけではない。奇襲は幸四郎が防ぐから気にせず戦ってくれ、という事前の作戦。そのために、幸四郎は定点から雑霊弾による攻撃に注力していたのだ。通路の構造、物品の配置、敵の動きをよく観察し、自分や仲間の死角を把握。そうすれば、『どこから』来るかなんて推理も容易い。
「敵が崩れた。今なら突破……」
プリズムが言いかけた言葉を遮ったのは鉄鼠の合体――大鉄鼠顕現。合体に合体を繰り返して、通路を塞ぐ勢いの大きな鉄鼠がその場に現れる。
「これは……」
思わず、眉をひそめる幸四郎。あれを吹き飛ばすには【雑霊弾雨】のフルチャージがいるだろうか。
急ぎ、雑霊たちを呼び集める幸四郎。プリズムも再び詠唱に入っている。
そんな中を、苺子は再び敵に向けて突進する!
凶悪なまでの前脚による振り下ろしを横に飛んで回避しつつ、放つは必殺の【ロケットスマッシュ】! 狙いは攻撃してきた前脚。直撃した強烈な一撃に大鉄鼠の右前脚が吹き飛ぶ。
「巨大な相手ならそれなりのやり方があります」
吹き飛んだ部位が合体で回復するまでは時間がかかる。倒すまではいかなくても動きを鈍らせて動きを封じて。何度も【ロケットスマッシュ】を叩き込んで大鉄鼠を追い込んでいく。
「合わせてください!」
幸四郎の声が後ろから飛んでくる。
「わかりました!」
「【鏡月極光】!」
プリズムの【鏡月極光】――月光の如き白き熱線が突き抜ける。それに合わせて幸四郎が【雑霊弾雨】を放ち、着弾のタイミングに合わせて苺子が真横に振り抜いたハンマーで渾身の【ロケットスマッシュ】!
「どうですか
……!?」
それはフラグだよ、というお約束すら吹き飛ばす強烈な3人の連携に大鉄鼠が跡形もなく吹き飛んだのであった。
●
とはいえ、ここに立っていたらまた鉄鼠たちが湧いてくる。だが、どうやら3人の迎撃に魔力をここに集中させていたらしい。鉄鼠たちの湧きが甘い。守りが薄くなった。
「強行突破します。全速で駆け抜けますよ」
呼吸を整える時間すら惜しんで幸四郎が駆け出せば、それにプリズムが続く。
「いつまでも人任せにはしていられないわ。退路を確保してくれている人の為にもね」
「いきましょう」
苺子が殿を務めつつ、3人の猟兵が目的地へと駆け出す。
「相手がオブリビオン化していても、私たちも猟兵となりました」
足を止めずに幸四郎が呟く。
この先に居るのは原初の吸血鬼。過去、吸血鬼組織の奥の手ともいわれていた強大な敵。だが、幸四郎たちもまた過去のままではない。
「必ず、止めます」
力強く、言葉を紡ぐ幸四郎に、苺子とプリズムも頷きを返すのであった。
大成功
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エリカ・グランドール(サポート)
サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。
※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」
冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。
ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。
●
竜宮城の防衛機構でもある、オブリビオン『鉄鼠』の群れ。その一群を蹴散らして猟兵たちが突破する。
だが、竜宮城の機能自体が死んだわけではない。
新たに鉄鼠たちが壁から地面からにじみ出すように湧いてくる。
「この先の階段で、私が足止めします」
エリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)は先を行く猟兵たちにそう告げる。先の攻撃に参加していなかったのはひとえにこの沈没船の船内マップを回収していたためだ。どうにか残っていた電子制御システムから引き上げた船内のマップと状況を猟兵たちに託して、エリカはくるりと振り返って足を止める。
同時にエリカと鉄鼠の間に現れるのは500体もの小型の戦闘用機械兵器――エリカの【エレクトロレギオン】たち。
エリカたちが陣取ったのは階段を降りて、ほんの少し進んだ地点。押し寄せてくる鉄鼠たちが猟兵たちを追いかけてくる限り、階段を降りてくるしか展開は無く。つまり、相手の出方を制限できる場所。
「レギオンたち。お願い」
エリカの命令を受けてエレクトロレギオンたちが階段を降りてきた鉄鼠たちを迎撃する。
「数はこちらが有利、1対1の強さは向こうが有利……波状攻撃を仕掛けていけば」
エレクトロレギオンたちを数隊に分けて突破させないことを重視して攻撃を仕掛けていく。もちろん後方や側面から鉄鼠が湧いてくることも考慮してその護衛は残した状態で。それでも鉄鼠の数よりエリカが呼び出したエレクトロレギオンの数の方が多い。
波状攻撃の回転をあげていくことで鉄鼠たちを倒しつつ、群れの進軍を抑え込むエリカ。
「原初の吸血鬼との戦いが終わるまでの時間稼ぎ。お任せください」
もう背中が見えないくらい、先に駆けていった仲間たちに。
エリカはそっとそう告げるのであった。
成功
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第3章 ボス戦
『慈悲深きものクロード』
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POW : 何故、世界には苦しみや悲しみが存在するのか……
対象への質問と共に、【自身の体内】から【妖獣のアーマードタートルかマグネクワガタ】を召喚する。満足な答えを得るまで、妖獣のアーマードタートルかマグネクワガタは対象を【自身が使い潰されることで得た高い攻撃力】で攻撃する。
SPD : あなた方に、慈悲を与えましょう……死という名の
自身の【体内に蓄えられた地縛霊一体】を代償に、【使い潰される地縛霊の絶望】を籠めた一撃を放つ。自分にとって体内に蓄えられた地縛霊一体を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
WIZ : 私は手にしたのです、原初の力を――
【体内のリリスを喰らい大きく回復しつつ黒炎】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【これを解除しマヒ】の状態異常を与える。
👑11
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猟兵たちは船底に向かって艦内を突き進む。
妨害機構である鉄鼠の姿は進路上に無い。どうやら殿を務めてくれている猟兵の元に集っているようだ。この好機に一気に首魁……原初の吸血鬼『慈悲深きものクロード』の元へ。猟兵たちは機関室の手前にある貨物倉庫へと辿り着く。
そこは何も残っていなかった。一度は海に沈み、ここに残っていたものは全て海水に侵食されてしまった。かろうじて箱のような何かは形を残しているが、総じて貨物倉庫はがらんどうと言ってもいいだろう。
その中央。海水に侵食されたために空気が戻ってきてなお、濡れた壁面を見せているこの倉庫に似つかわしくない、華麗な椅子に座っている影がひとつ。
「……どうして、あなた方は私の道を塞ごうとするのです?」
本当に悲しそうに嘆息をついて、その影――原初の吸血鬼たるクロードは猟兵たちを見つめる。その視線も口調も優し気に、本当に語り掛けるように。
「かつて私が至った結論。全ての苦しみも悲しみも、『生』の存在にこそ由来する」
ゆっくりと立ち上がりながら、幼子に何度でも読み聞かせるような口調でクロードは話し続ける。
「ゆえに、苦痛と悲しみは世界に満ちている。そこから解放されるには……」
そっと目を伏せて、数瞬考え込むような仕草。そして、クロードが真っ直ぐな視線を猟兵に向ける。
「私はまだまだこの竜宮城で力を得なければなりません。でなければ、私の慈悲が世界に届かない」
クロードが『意志』を紡ぐ。直後、猟兵とクロードの間に陣取ってその進路を阻むように、地面から湧いてくる鉄鼠たち。
竜宮城の王であるクロードの願いを叶えるために、竜宮城の防御機構が牙をむく。
「あなた方に、慈悲を与えましょう。……『死』という名の解放を」
それはとても穏やかに告げられた。さも当然というように。
原初の吸血鬼という強大な力とともにクロードが得た狂気は、彼に『死を生という痛苦からの解放と捉える歪んだ『慈悲深さ』』を与えてしまった。
「世界の全てに慈悲を」
自身の影、あるいはマントの内側から。クロードは取り込んだ『力』を解き放つのであった。
※シナリオ補足※
倉庫内は戦闘を行うに十分な広さがあります。過去の名残として形だけの木箱や鉄のコンテナが少々ありますが、猟兵なら一撃で破壊できます(クロードも同様なので、視界を遮る程度しか使えないと思います)
クロードが呼び出す妖獣や地縛霊、リリスとは別に鉄鼠が地面から湧いて出てきます。ただし、2章の戦闘で戦った個体より弱いようです。ユーベルコードでなくとも、通常攻撃で薙ぎ払っていける強さですが、絶えず湧いてくるので足元を取られないように、あるいは不意打ちに動揺して隙を作らないように、気を付けてください。
全体(全周?)攻撃、制限かかりません。依頼の中ですしね。
プリズム・アストランティア
連携、アドリブ可
この世界にあなたの慈悲なんか要らないわ。
だからここで止めてみせる。
クロードは数で攻めてくるタイプ、原初の吸血鬼らしいわね。
鏡月極光でクロードを巻き込みつつ、呼び出された妖獣や地縛霊、
リリス達を倒し続けて力を削いでいくわ。
囲まれないよう注意して敵が一直線に
並ぶような距離を保ちながらUCで攻撃し続けるわ。
クロードに問いかけられなくても
毅然とした態度で答えるわ。
向こうが満足しなくてもそんなのは関係ないわね。
「苦しみや悲しみから目を背けて、慈悲何て言われても虚しいだけよ」
「このまま竜宮城と一緒に海の底に沈みなさい!」
●
原初の吸血鬼『慈悲深きものクロード』の動きに合わせて、鉄鼠たちが一斉に動き出す。それはさながら小さな雪崩のごとく。
しかし、押し寄せる鉄鼠の波を月明かりを宿す一条の熱線が貫く。
「この世界にあなたの慈悲なんか要らないわ」
プリズム・アストランティア(万色の光・f35662)が放った【鏡月極光】が鉄鼠を溶かし尽くしていく。その射線上にいたクロードもを熱線は飲み込むが、その一撃で終わりというわけにはいかなかったようだ。
だがプリズムの意志は変わらない。
「だからここで止めてみせる」
「やってみるといいでしょう」
体内から呼び出した強化リリス……を徐に喰い千切るクロード。それによってプリズムから受けたダメージを大きく回復して、さらにはリリスを握り潰した手に黒炎を宿す。その手を振るえば、黒き炎が鉄鼠たちに宿り、彼らはさらなる力を得る。
さらには自身の影から呼び出したイノシシ型の妖獣を鉄鼠の群れに加えて、一斉にけしかけるクロード。
(クロードは数で攻めてくるタイプ、原初の吸血鬼らしいわね)
改めてその事実を目の当たりにしつつ、プリズムは素早く横に移動。一か所に留まらないことで囲まれないように注意しつつ、敵が一直線になるように誘導。
「そこよ」
詠唱もそこそこに放つ【鏡月極光】でクロードの力である敵の群れを削っていく。
「慈悲を受け入れた方が楽になると思うのですが」
「苦しみや悲しみから目を背けて、慈悲なんて言われても虚しいだけよ」
言葉と攻撃の応酬。『向こうが満足しなくても関係ない』と言わんばかりに、プリズムは毅然とした態度で答える。
「残念です。押し付けるのは本意ではないのですが」
そう言いながらクロードはさらに強化リリスを呼び出し、喰らう。回復と同時にリリスを贄として全身に黒炎を纏う。妖獣の群れを囮にしつつ、クロードもまたプリズムを狙って動き出す。
「……っ」
妖獣の群れとはまったく別方向に動くクロード。そして次々と湧いてくる鉄鼠たち。効率的に巻き込んで、というには直線状のユーベルコードは相性が悪い。プリズムのわずかな逡巡の間にも敵は距離を詰めてくる。
「くっ……」
鉄鼠たちの突撃を受けて、動きを止めるプリズム。その隙を狙って、クロードが真っ直ぐ突っ込んでくる。
「さぁ……慈悲を!」
大きく振りかぶった、黒炎を纏った手刀の一撃を叩きつけようとするクロード。
だが。
「…………異界の月光が悪しきを滅ぼすわ」
その瞬間、プリズムの詠唱が完了する。クロードが動き始めた瞬間から、つまりプリズムが動きを止めた瞬間から紡ぎ続けていた詠唱。このタイミングが来ることはわかっていたのだから。
「【鏡月極光(ミラーナイト・ルナブラスター
)】!!」
クロードの手刀が自身に触れるより一瞬早く。突き出したプリズムの掌から月光の奔流が迸る。オブリビオンのみを溶かす熱量を持った光の一条がクロードを飲み込む。
「このまま竜宮城と一緒に海の底に沈みなさい!」
言葉とともにクロードの存在を拒絶するプリズムの一撃が決まった瞬間であった。
大成功
🔵🔵🔵
緋月・透乃(サポート)
『今日も元気に食べて楽しく戦おうね!』
人間で22歳の女性です。
いつも元気で、強敵との戦闘、食べる、スリルを味わうことを好みます。
基本的に自分の楽しみのために行動し、敵味方問わず他人の心情等には配慮しません。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用します。
戦闘では真っ正面からの突撃を好み、負傷は気合いで耐えれば良いと考えています。
戦闘以外のことも大体気合いと力でなんとかしようとします。
脳筋です。
武器は主に『重戦斧【緋月】』を使用しますが、他の武器の方が有効そうならそちらを使用することもあります。
クロムキャバリアでも生身で戦います。
不明な点はおまかせします。よろしくお願いします。
エリカ・グランドール(サポート)
サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。
※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」
冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。
ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。
大崎・玉恵(サポート)
妖狐の戦巫女×陰陽師女です。
普段の口調は「女性的(わし、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」、気にいったら「尊大(わらわ、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、公序良俗に反する行動はしません。
ユーベルコードを絡めた【誘惑】による認識操作や籠絡、【呪符】に【破魔】【焼却】等の【呪詛】を込め【呪殺弾】とする、薙刀による【薙ぎ払い】【2回攻撃】が得意です。
卑劣な手段をとる敵には【威厳】【存在感】を放ち神として振る舞います。
●
竜宮城と化した沈没船の貨物倉庫にて。
静かに、続いて苛烈に始まった原初の吸血鬼『慈悲深きものクロード』との戦闘。そこへさらに助っ人として駆け付けたのは、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)、大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)、エリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)であった。
こちらで戦闘が始まったことで竜宮城の防御機構の中心がシフトしたのだろう。通路における足止めの必要がなくなったと判断したエリカは駆け付けた透乃と玉恵と合流して一気にここまで突破してきたのだ。そして戦闘の状況を目の当たりにする3人。
「わぁっ、強そう!」
透乃の声は警戒や忠告ではなく、むしろ喜びの法が強い。何せ、彼女は戦闘大好き、強い敵と戦えるのが楽しみなのだから。
ぶんっ、と重戦斧【緋月】を振りかぶる透乃に。
「これ。振り回すのは良いが、わしらに当てるでないぞ?」
玉恵がひょいっと斧の軌道をかいくぐって透乃に告げる。玉恵の動きも容姿も若い妖狐のそれであるが、実はお婆ちゃ……げふんげふん。ご高齢であるらしい。古来、長く生きたモノには力が宿るという。彼女は『そういう類』のモノだ。
「サポートします。透乃さん、玉恵さん、よろしくお願いします」
二人の少し後ろからエリカが告げる。左目の前にメガネのレンズサイズのホロディスプレイを展開、それを通じて状況を分析。突破口を探るエリカ。
「また……新たな慈悲を求める者たちが……」
猟兵の攻撃で身を灼かれてなお、体の中から呼び出した強化リリスを喰らうことで回復しているクロード。だがダメージも大きい。何度も呼び出し喰らっているが、呼び出せる強化リリスにも限界がある。
原初の吸血鬼とはいっても、いまだその力は全盛期に及ばない。畳みかけるなら今しかないのだ。
そんなクロードを守るように、鉄鼠の群れが地面から湧き出る。
「さて……」
目の前の戦況に玉恵がちらりとエリカに視線を遣る。
「これは……でも……いえ……」
あと一手といったところだろうか。鉄鼠たちが襲い来るまでに分析が完了しそうな勢い。それを聞いてから打って出ても間に合うだろう……と玉恵が判断したその瞬間に。
「まずは準備運動だね。よーし!」
「あっ、待つのじゃ!」」
好戦娘が飛び出していった。慌てて止めようと玉恵が手を伸ばすが間に合わない。
しかしいかに1対大量とはいえ、この程度で臆する透乃でもなく、そして豪快に放たれる【緋月】のぶん回しが鉄鼠たちを埃のように吹き飛ばしていく。
「ええいもう。しかし大丈夫そうかの?」
心配性の玉恵さんがちょっとハラハラしているが、戦況は透乃に有利。ならば、と玉恵はイレギュラー対応とエリカの護衛に注力することにする。
鉄鼠たちを楽しそうに吹き飛ばし続ける透乃。しかしなかなか数が減らない……というより、湧き出す量が増えている気がする。それに加えて。
「わしたちの方へ来なくなった……?」
玉恵が首を傾げる。急に敵の攻撃が緩んだ。
「いえ、透乃さんを優先排除しようとしているみたい」
エリカが口を開く。状況分析から導き出した結論、その規則性。
「クロードがダメージを回復させたいと考えていることで、竜宮城はその時間を作ろうとしています」
そのために一番間近にある脅威――透乃をひたすら足止めすることに防御機構を割いているようだ。
「多い! 近づけないよっ!」
そしてそれは成功しているようだ。透乃が倒されるようなことも無いだろうが、クロードと戦いたい透乃のフラストレーションは急激に高まっていっているわけでして。
「つまり、別の『脅威』を作り出せばいいのじゃな?」
「はい。タイミングはこちらで指示します。よろしくお願いします」
「うむ。任せよ!」
エリカとのやり取りを終えて、なぎなたを構えた玉恵が突進する。透乃に群がっている鉄鼠の群れを後ろから削り取るようになぎ払っていく玉恵。しかし、透乃の重戦斧とは刃の幅と威力で差がある。まったく同じようにはいかず、だが竜宮城は透乃と同じレベルの脅威として鉄鼠たちをけしかける。
「む……ぅ……!」
じりじりと押し込まれ始める玉恵。それを優位と取ったのか、竜宮城の防御機構の矛先が一斉に玉恵に向く。
「あっ!」
透乃が悲鳴をあげるが、まだ自身の周りにも鉄鼠たちが十分にいる。すぐに駆け付けるのは難しい。
「……愚かな。大人しく慈悲を受けていればよかったものを」
ようやく回復してきたのだろう。クロードもまた鉄鼠の群れの向こうから妖獣の群れを放とうとしている。
クロードが玉恵の死を確信したその瞬間。
「……くふ。ならば、奥の手じゃ」
想定通り、と言わんばかりに。狐は嗤う。直後、玉恵のすぐ傍に召喚される彼女を模した殺生石。そこから強烈な周囲を毒する瘴気が放たれる。【殺生転生石】――玉恵に襲い掛かろうとしていた鉄鼠たちはもちろん、突撃を開始していた妖獣の群れをも飲み込んで、毒でぐずぐずに溶かしていく玉恵。
「なっ
……?!」
クロードが思わず声を上げる。そして透乃もまたその様子に目を奪われ、誰もが一瞬止まってしまったその隙を、エリカが動く。
「レギオン。透乃さんの肩代わりを」
呼び出した【エレクトロレギオン】を透乃の元へ派遣し、彼女に群がっていた鉄鼠たちを押し留める。
「透乃さん、今です」
「……! わかった!」
玉恵とエレクトロレギオンが鉄鼠たちを相手取ってくれたおかげで、透乃の前に障害はない。それを察した透乃が一気にクロードへ向けて駆ける。
「……いえ、この程度で私の慈悲は止まりません」
一気にひっくり返った戦況に、しかしクロードは冷静を取り戻し、黒炎を纏わせた手刀を構える。
カウンター、突撃してきた透乃へ向けて必殺の一撃を放つクロード。
「……うぐっ」
一瞬躊躇う透乃。物凄い勢いで突っ込んできたのであの攻撃をかわすには体ごと捻って回避するしかない。しかし、それでは攻撃が出来ない。鋭すぎる手刀の一撃を回避しつつ、攻撃を叩き込む術がいる……いや、あった!
突撃の勢いを緩めず、自分の顔の前に【緋月】を構える透乃。斧の刃を少し斜めに構えて、むしろ速度を上げて突進!
「……!?」
自身の攻撃に突っ込んできた透乃に驚愕しつつ、しかしクロードも手に力を籠める。貫く、クロードの意志がそのまま攻撃となって透乃の【緋月】に直撃する。
「ぐっ……ああっ!」
クロードの突きをいなしきれず、【緋月】の刃が後ろに流れる。ぐるんっと【緋月】に体を持っていかれるように透乃の体が回転する。
「さぁ、慈悲を。受けなさい」
勝利を確信したクロードが黒炎の手刀を大きく上に振り上げる。だがクロードの視界に入ってきたのは、横薙ぎに自分に迫る【緋月】の刃であった。
「お返しいるよねっ! 【被刃滅墜衝】!!」
回転した勢いをそのまま攻撃に乗せて、両手に持った【緋月】を全力で叩きつける透乃。大振りながらも強烈な反撃の一撃がクロードに叩き込まれる!!
「ぐおぉぉぉぉっ!?」
体を両断されるクロード。原初の吸血鬼がこの程度で死ぬことはないが、しかしすぐさま復帰できるダメージではない。
「今じゃ!」
「畳みかけます」
距離を保った位置から玉恵が呪殺弾とした呪符を放ち、エリカもまたエレクトロレギオンたちをけしかける。
反撃と回復の隙を与えない3人の連携攻撃に、クロードが飲み込まれていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
御鏡・幸四郎
人はいつか死にます。
でもそれは、あなたが勝手に決めて良いものではない。
苦しみも悲しみも、あなたが決めることは出来ない。
湧き上がる鉄鼠は、攻撃を受け流しながら誘導し、
出来るだけクロードの方向にまとめます。
アーマードタートルが召喚されたら急接近。
UCで攻撃をいなして体勢を崩し、
敵の力を利用して鉄鼠の群れに投げつけます。
群れの中に開いた隙を突いてクロードに突撃。
召喚されたマグネクワガタの角を掴んで受け流し、
強化で得た高い攻撃力のカウンターをクロードに叩きつけます。
クロード、あなたに聞きましょう。
死が慈悲と言うのなら、
あなたの苦しみや悲しみは誰が救うというのです?
誰が慈悲を与えてくれるのですか?
●
猟兵たちの波状攻撃に、原初の吸血鬼『慈悲深きものクロード』は追い込まれていく。彼が得た真理――慈悲を世界にもたらすには力も時間も足りない。
だが、クロードは竜宮城の王。彼の意志に反応して竜宮城は彼を守るために、その内から次々と鉄鼠たちを生み出していく。
『溢れ出る』といっても過言ではない鉄鼠たちの攻撃を受け流しながら御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は原初の吸血鬼を見据える。
「人はいつか死にます」
その声はこの混戦の中においてもクロードまで遮られることなく通る。クロードが幸四郎に反応した。
「ええ。だからこそ、『いつか』ではなく、今……」
「でもそれは、あなたが勝手に決めて良いものではない」
クロードの歓喜の呟きを、しかし幸四郎は自身の言葉でばっさりと切り捨てる。
「苦しみも悲しみも、あなたが決めることは出来ない」
「では、なぜ……何故、世界には苦しみや悲しみが存在するのか……」
クロードと会話していたことで止まっていた鉄鼠たちの攻撃。その隙を逃さず、幸四郎は少しずつではあるが距離を詰めていた。そして、クロードの体内から妖獣のアーマードタートルが召喚されたのを切欠に、幸四郎は一気にクロードまで距離を詰める!
「教えていただきたい!!」
クロードの絶叫とともに、鉄鼠たちとアーマードタートルが四方八方から突進してくる。だがこの状況は想定……否、推理通り。
鉄鼠を蹴散らす勢いで突っ込んでくるアーマードタートルの攻撃にタイミングを合わせて……突き出すように構えた手がアーマードタートルに触れるか否や、肩を当てに行くような態勢でするりと身を翻し、突進の中心を外へずらす。そのまま流れるように体を回転させつつ、後ろ回し蹴り。アーマードタートルの背後を蹴り出して、鉄鼠の群れにぶつける幸四郎。
――【探偵格闘術】。押さば引け、引かば押せ』と敵の力を利用した投げや打撃等のカウンターを放つ、名探偵の必須技能である。
後顧の憂いを断ち、しかしその状況をさらに利用して。
クロードまで一直線に空いた群れの隙を突いて突撃する幸四郎。
「答えは……? ……答えなさいっ!」
幸四郎の行動に満足できないのだろう、さらなる妖獣マグネクワガタを召喚して、幸四郎にけしかけるクロード。しかし、その突撃も同じく【探偵格闘術】の餌食になる。アーマードタートルよりも掴みやすいマグネクワガタの角。これを掴みながら、幸四郎は突撃の流れをいなす。力の向かう先をコントロール……狙いはクロード。マグネクワガタの強烈な突撃の威力をそのままクロードに叩きつける!!
「ぐあっ?!」
いかに自身から生み出した妖獣とはいえ、攻撃態勢のまま跳ね返ってきたのならそれはダメージとして返ってくる。マグネクワガタの角がクロードの体を抉り貫く。
「クロード、あなたに聞きましょう」
幸四郎の会話の意志が周囲の鉄鼠たちの動きを止める。それはクロードもまた話を聞くつもりがあるということだ。
「死が慈悲と言うのなら……あなたの苦しみや悲しみは誰が救うというのです?」
「……何を?」
「誰が慈悲を与えてくれるのですか?」
「…………」
幸四郎の言葉に一瞬、その場を沈黙が支配する。それはクロードの提唱する真理が抱える矛盾。どうやっても回避できないバグだ。
だが沈黙を破ったのはクロードの哄笑であった。
「……クッ、ハハハハハ!! 何を! おろかな! 我ら原初の吸血鬼に慈悲など必要ありません! 何故なら我らこそがこの世界の支配者なのですから!」
見えざる狂気に犯された貴種ヴァンパイア――『原初の吸血鬼』。世界結界がオブリビオン化した今、見えざる狂気という現象は無くなったと言われている。しかしクロードはオブリビオンとして過去から蘇ったがゆえに、過去に抱いていた妄執ごとこの世に戻ってきたのだ。
「私よりも弱い存在にこそ、慈悲は必要。ならば私には慈悲など必要ありません」
宣言とともに体内からさらなる妖獣を呼び出すクロード。
「……そうですか」
先と同じように繰り出される突撃に対して、幸四郎もまた【探偵格闘術】を放つ。
先ほどと違うのは幸四郎が込める力。クロードの身勝手な思想を砕くように、強烈なカウンターを叩きつける幸四郎であった。
大成功
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瀬河・苺子
【過去語り】
能力者に目覚めた小学校6年の時、わたしは「フランケンシュタインの花嫁」でした
玉手箱のメガリスゴーストに襲われるわたしを助けてくれたのは、同じメガリスゴーストに家族と命を奪われてゴーストになってしまった方です
彼の復讐のため使役ゴーストとして共に戦いましたが、戦いの果て、消滅しました
そしてあの人の力になれなかった自分が許せなかった当時のわたしはゾンビハンターになったんです
わたしはメガリスが嫌いです
玉手箱が蘇るのなら、あの人は安らかに眠れません
「ましてや、あなたのような人に渡すわけにはいきません」
【戦闘】
「見切り」「武器受け」で地縛霊の弾丸を回避しながら接近
「威嚇射撃」「なぎ払い」で湧いてくるゴーストに対応
「リミッター解除」した「捨て身の一撃」「部位破壊」で首を狙います
周囲の霊もあなたの一部であるのなら、骸嗅ぎはあなたを捉えます
逃げられる等とは思わないでください
死が救いと寝言を言うのなら、まずあなたを完殺します
玉手箱、本来ならこの場で破壊したい位ですが、可能なら分析のため回収します
●
原初の吸血鬼にして竜宮城の王『慈悲深きものクロード』。彼の玉座とも言える貨物倉庫の中で猟兵たちはクロードを追い詰めていく。立ち替わり入れ替えり、入り乱れながら攻撃を仕掛ける猟兵たち。
その中でここまで鉄鼠たちの動きを牽制するために動き回っていた瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)の『嗅覚』が『攻め時』を捉える。一瞬、視線を上げれば周囲から数の減っている鉄鼠たち。そして一直線に通っているクロードへの道。
視線が合う。
ゾクりとした悪寒とともに感じるのは、身に覚えのあるチリチリとした緊張感。それが思い起こさせたのだろうか、苺子の脳裏に蘇る過去。
小学校6年の時、苺子が『能力者』に目覚めたのは『玉手箱のメガリスゴースト』に襲われたからだ。彼女をメガリスゴーストから助けてくれたのは……ゴースト。まったく同一個体のメガリスゴーストに襲われて家族と命を奪われた人であった。
その事件を経て、フランケンシュタインの花嫁に目覚めた苺子は使役ゴーストとなった彼と、彼の復讐のために共に戦い、しかし彼は戦いの果て、消滅した。
……いや、苺子は『自分の力が足りなかったから彼を破壊された』と感じたのかもしれない。彼の力になれなかった。そんな自分が許せなかった苺子はゾンビハンターとしての力を得て、その後を戦い抜いた。
戦いの中でもチリチリと、仄かに感じている縁……クロードのさらに奥へ視線を遣ればそこに『在る』と確信できるメガリス『竜宮の玉手箱』。この戦いの原因。
「わたしはメガリスが嫌いです」
苺子の口から知らずと零れ出る言葉は彼女が抱き続けている戦いの理由。
「ましてや……あなたのような人に渡すわけにはいきません」
ハンマーを握る手に力が籠もる。苺子の視線と真横に構えたハンマーの打撃面がクロードを捉える。
(玉手箱が蘇るのなら、あの人は安らかに眠れません)
その想いを力に変えて、苺子はクロードへと突撃するのであった。
●
「あなたから、慈悲を与えましょう……!」
突撃してきた苺子に対して、クロードが体内から地縛霊を呼び出す。眼前に現れた地縛霊をクロードが握り潰せばその絶叫が絶望の弾丸となって放たれる。
「……ッ!」
だが、見えている、見切っている。ダッシュの勢いを殺さないように踏み込んだ足を支えにしつつ、ハンマーは振りかぶる苺子。地縛霊の怨嗟をハンマーで叩き潰すようにカウンター。そのまま振り抜いて砕いた弾丸を周囲にまき散らし、威嚇射撃のごとく鉄鼠たちを牽制する。
「どいてくださいっ!」
その隙に進路上に割り込んできた妖獣に対して【ロケットスマッシュ】。ロケット噴射の勢いを利用して体を回転させつつ態勢を整えた苺子の一撃が妖獣を粉砕する。
「ちっ……!」
鉄鼠や妖獣たちの攻撃をものともせず、突き進んでくる苺子にクロードが慄く。ちらりとよぎった自身の死。
「まだ……私は死ぬわけには……!」
過去、銀誓館学園に吸血鬼艦隊艦上で屠られた記憶がクロードの身を退かせる。
それに応じて竜宮城がクロードの身を覆い隠そうとする。物理法則を無視して沈没船の構造が変化して、クロードを別区画へ運び込もうとする……その瞬間。
「……これ以上、あなたを逃しはしません」
静かに告げた苺子の言葉が響き渡ると同時に。クロードごと変化した竜宮城を砕く強烈なハンマーの一撃。
「がァッ
……?!」
竜宮城の守りに安心していたのだろうクロードの体が派手に弾き飛ばされ、壁に激突する。
「死人嗅ぎ改め、骸嗅ぎはあなたを捉えます。逃げられる等とは思わないでください」
苺子の【狩猟体勢】――オブリビオンを完殺するために、苺子が編み出した肉体強度を最大限に発揮できる術によって放たれた一撃は、決してクロードを逃さない。
クロードが態勢を立て直すよりも早く、懐まで踏み込む苺子。
「死が救いと寝言を言うのなら、まずあなたを完殺します」
「う、うああああっ!? 来るなっ、来るなああああっ!!」
滅殺の一撃を放ってくる苺子に対して、体内に残っているオブリビオンゴーストを一斉に解き放つクロード。だが動揺している分だけ攻撃の精度が甘い。狙い、あるいはタイミングのずれた妖獣や地縛霊、リリスの群れに対して、苺子はさらに速度を上げる!
(この一撃で……!)
全てを終わらせる。放たれる攻撃に対して防御といった手段を取らず、苺子は全ての力を攻撃にかける。オブリビオン完殺に対して無意識に外される体のリミッター。常時よりもさらに強力な力が込められた苺子のハンマーの一撃が寸分たがわず、狙い通りクロードの首へと叩きつけられる!!
そこに『在った』存在ごと肉を潰す音。それは壁を破壊する音に上書きされて倉庫に響き渡るが、苺子の耳には確かに届いていた。クロードの存在をこの世から潰し滅した音が。
「……ふぅ」
ハンマーを地面に置いて、空いている片手で襟元を緩める苺子。【狩猟体勢】解除、そこにいるのはどこにでもいる中学生だ。ただし、死と隣り合わせの、ではあるけれども。
完殺(ジェノサイド)、完了。
原初の吸血鬼にして竜宮城の王『慈悲深きものクロード』は猟兵たちの攻勢の前に、再びこの世から消え去ったのである。
●
王を失って存在が揺らぎ始める竜宮城。じきに元の沈没船に戻るだろう。そうなれば水圧で圧し潰されるかもしれない。
「……えっ、と
……!?」
撤収準備を始めていた猟兵たちの中で、苺子はどうにか『竜宮の玉手箱』まで辿り着いていた。クロードの『臭い』が残っていたのかもしれない。すんなりと辿り着いたその直後に、竜宮城が崩壊し始めたのだ。
時間がない。
出来るならこの場で破壊してしまいたいくらい、苺子にとってこのメガリスは忌々しい。しかし、今はその時間すらも惜しいし、可能ならば分析に回したい。
もっとも、手の内にある『竜宮の玉手箱』からは何の力も感じない。もはやメガリスであるかどうかすらわからず、もしかしたらただの箱と化してしまっているかもしれないが。
撤収の声がかかる。急いでいかねば崩壊に巻き込まれる。竜宮城攻略のためにこの場に集っていた猟兵たちは急いで沈没船から脱出するのであった。
竜宮城を巡る戦いはこうして終止符が打たれた。猟兵たちの活躍によって、竜宮城の阻止とクロードによる慈悲の実行は阻止されたのだ。
海上に戻った猟兵たちは、行きに乗ってきた旅客船の中で戦勝パーティーを楽しみながら、陸へと戻っていったのである。
大成功
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