●英雄(または敗残兵)は空に想う
あの空だ、あの時と同じ空だ。
――敵の攻勢が激しい!このままじゃ戦線が崩壊するぞ!
――司令部よりC大隊、貴隊はそのまま戦闘を続行せよ。繰り返す、撤退は認められない。
そう、今でも鮮明に思い出せる。味方の叫び声、司令部の冷徹な反応、無線のノイズ。
なぜだ、なぜ奴らは防衛線を――?!
「大尉、大尉?空を見上げて……どうかしました?」
ハッと我に返る。目の前には副官――正しくは『俺の副官を自称する』少女がいた。
「少し顔色が悪そうですけど……ちゃんと睡眠とってます?」
「いや、何でもない……少し酔っただけだ。キャバリアの操縦歴が長いと三半規管がやられてよくなるんだ。」
「えぇっ、本当ですか!?やだなぁ、キャバリアの操縦だってやっと大尉に追いつける位には上達してきたのに……。」
当然嘘だ。だが本当の事なんて言えるわけがない。
『俺がビビッて敵の接近を知らせられず、民間人諸共味方が全滅した戦い』を思い出していたなんて言えるわけがない。
そして、国中の抵抗軍(レジスタンス)から英雄だ、人民の希望だと祀り上げられてしまった手前なら尚更だ。
「まぁ……お前さんなら大丈夫だろ。酔うほど脳みそが詰まってそうに見えないし。ほら、いったいった。」
「ひどい!?」
軽くあしらってやると大げさな反応をする。何ともやかましく、そして元気な娘だろう。
本当であれば学校に通い、友人たちと遊び、家に帰れば家族団らんの時間を過ごしていたのだろう。
だが、俺がそれを台無しにしてしまった。彼女だけじゃない。誰かの父を、母を、子を、戦友を。
この場に集い、銃を持ち、キャバリアに乗り、政府に反旗を掲げた皆から彼らを奪い、人生を狂わせ台無しにしてしまったのだ。
あの戦場で生き残ったのは俺一人、俺以外にあの戦場の真相を知る者はいない。
だが酒に溺れようと、戦火から遠くに離れようと罪の意識は残り続け、そして俺を捕らえた。
だから、だからこれは「贖罪」なのだ。
彼らの死を無価値なものとしない為にも、彼らの残した者達に報いる為にも、俺は戦わなければならない。もう、何も失いたくない。
●DEAD OR ALIVE
「クロムキャバリア世界でオブリビオンマシンの出現を予知したわ……予め言っておくけど、今回の依頼はあまり楽しいものじゃあ無いわよ。」
イザベラ・ラブレス(デカい銃を持つ女・f30419)は集まった猟兵たちを前にそう告げるとブリーフィングを始めた。
「場所はルナジャワ民主共和国。独裁政権による民族弾圧に端を発して組織された抵抗軍が首都近郊に集結して政府軍と睨み合っているわ。数の上では周辺国からの『人道的支援』を受けた抵抗軍が優勢、そこにプラスでオブリビオンマシンが居るって状況よ。」
ルナジャワ民主共和国は国内に幾つもの民族を抱える乾燥地帯の国家であり、かつては大国の植民地であった歴史を持つ。民族自決主義に目覚め、大国の支配から脱した彼らであったが次に待っていたのは古くから続く部族間の対立、そして経済政策の失敗による貧富格差の拡大であった。
失政の責任を取り政府は解散。次の選挙では有力部族出身の政治家で構成された新政権が成立し、敵対部族を国民の「不満の捌け口」とした。
「まぁそんな事を平然とやる連中だからろくでなし具合については語るまでも無いわね。抵抗軍の怒りも当然、だけどなんの因果かオブリビオンマシンは抵抗軍側に、それも抵抗の象徴とも言えるパイロットの乗機になっているわ。」
イザベラは一人の男性の写真をモニターに表示させた。その見た目は「特徴が無いことが特徴」とも言える、何とも平凡な男性の写真であった。
「彼が抵抗軍の英雄、通称『大尉』本名エミール・リンデン。元国軍のキャバリアパイロットでここ数ヶ月で頭角を現してきたエースよ。」
聞けば正規軍を相手に劣勢に追い込まれていたところに突如『大尉』が現れたことで形勢は逆転、その話が人から人に伝わり抵抗軍からは英雄と讃えられ、政府軍からは『治安を脅かす大罪人』と罵られ莫大な懸賞金を掛けられているそうだ。
しかし、その栄光の影にはオブリビオンマシンの存在があった。オブリビオンマシンが関わる以上、『正義』が抵抗軍にあったとしても彼らが破滅の起点となる可能性は避けられないだろう。
そしてその破滅を防ぐためにも「英雄殺し」が必要なのだ。
「オブリビオンマシンの破壊が目的となる以上、抵抗軍を敵に回すことになるわ。彼らも反撃してくるからこれを無力化し、当該機体を撃破するっていうのが流れね。……それと『大尉』の処遇については皆に一任するわ。まぁでも、どう転んだところで大団円は望めないという事だけは覚悟しておいて。英雄を助けたつもりが新たな犠牲を生むかもしれないし、抵抗軍から『政府軍に利する様な行為』と見做されれば必ず誰かの恨みを買うことになるわ。繰り返しになるけどパイロットの生死は問わない。各自が最善を尽くすことを期待しているわ。」
イザベラはそう告げると、いつもの言葉を口にすることなく猟兵達を送り出した。
良き狩り(Good hunting)なぞ、望めぬ汚れ仕事であるがゆえに。
マーシャル後藤
マーシャル後藤です。ガラにもなく重ーく救いが無ぇシナリオをお送りしてまいります。
奇跡も希望もねンだわさ。つらピ。
●戦場情報
『ルナジャワ民主共和国首都近郊』
首都へと延びる幹線道路以外にほとんど人工物が無い砂漠地帯です。
首都側には政府軍が防御陣地をしいており、近づく抵抗軍を迎撃するべく待機しています。
対する抵抗軍は数の利を活かした人海戦術による政府軍の打倒を狙っており、猟兵達はそれを横合いから殴りつけにいく形(要するに奇襲)で戦闘に介入していきます。
また奇襲を仕掛ける都合上、キャバリアのレンタルは出来ませんのでご了承ください。
●第一章
抵抗軍のキャバリア部隊との集団戦になります。状況を把握できていない政府軍側の砲撃や混戦が予想されますが、政府軍を倒す必要はありません。
キャバリア部隊が撃破されるとオブリビオンマシンが出現します。
●第二章
『大尉』エミール・リンデンの駆るオブリビオンマシンとのボス戦になります。
エミールは過去の自身が犯した過ちから「失う事」がトラウマになっており、キャバリア部隊を撃破された事をきっかけにパニック状態へと陥ります。
彼との会話は可能ですが、オブリビオンマシンの影響を抜きにしても会話による説得は困難を極める事でしょう。
『エミール・リンデンの生死判定について』
第二章のプレイングでは「エミールごとトドメを刺す」「エミールを救い出す」のいずれかが分かるように記載してください。
この集計結果によってエミールの生死が確定し、第三章以降の展開に影響してきます。
●第三章
オブリビオンマシンの撃破により抵抗軍は壊滅し、この機に乗じた政府軍が攻勢に転じてきます。
猟兵達は政府軍を相手取り、抵抗軍残党が戦域から脱出する為の時間を稼いだり、逃げ遅れた彼らを護衛をしたり、何もせずにそのまま去る事ができます。
第一章プレイング募集はOP承認直後から開始となります。
また第二章以降の受け付け状況などはタグにてお知らせします。
それでは皆様のホットなプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『GC-04カルキノス』
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POW : マシンガンアタック
【RSマシンガンによる掃射と共に行う 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【遠隔兵器で装備した友軍機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : チョバム・アーマー
敵より【も丈夫な装甲のキャバリアを操縦している 】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ : ディストラクション・フェーズ
自身が操縦する【キャバリア 】の【装備を拠点攻撃用重爆撃装備に換装し、火力】と【攻撃範囲】を増強する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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クゥ・ラファール
弱者を蹂躙し、希望の芽を摘む仕事、か。
いいさ、汚れ仕事には慣れている。
Rafaleで出撃。
可能なら、一応政府軍側の機体であると分かるように識別信号を出しておく。
【推力移動】の全速力で抵抗群の側面から突撃。DualFace及びLooStarの全力掃射で以て指定UCを発動、目につく敵の全てを撃破する。
そのまま敵中へ【切り込み】、Eliminatorを振るって腕やら脚やらを【切断】し無力化して回ろう。
敵が突進を仕掛けてくるなら望む処、【カウンター】気味に斬り捨てに行ってみようか。
――さて。
これ以上好き勝手やらせるつもりかな、英雄さん?
ヴィリー・フランツ
wiz
心情:俺は吹っ切れたよ、兎に角素早く仕事を終わらせる事を第一としよう。
手段:ヘヴィタイフーンmkⅩに搭乗、コングⅡ重無反動砲の初弾に【EP-155mmクラスター焼夷弾頭】を装填、抵抗軍部隊の上空に撃ち込み半径117mの機体を一網打尽にする。
これで政府軍には敵では無い事を判ってもらえただろう、猟兵を巻き込まんようにEP-Sアウル複合索敵システムで識別は先にするがな。
後は混乱した所をRS-Sクロコダイル単装電磁速射砲と再装填した無反動砲による砲撃、乱戦の最中政府軍の砲撃に巻き込まれるなんて冗談じゃねぇ、敵集団との距離は開けさせてもらう。
まぁ、多少砲撃ならシールドと装甲で受け止めるがな。
ジェイ・ランス
【WIZ】※アドリブ、連携歓迎
■心情
英雄殺しね。みんな何かしら思うかもだけど、そういうのはオレに任せればいいのよ〜
なんも思わないAIに任せれば楽ってね!
じゃ、いきますか。
ーーーUbel:Code Löwen_Bataillon Dame.
■行動(レーヴェンツァーンTypeⅡにて登場)
"事象観測術式"にて抵抗軍の位置情報等を【情報収集/索敵】し、【ハッキング/ジャミング】します。
"慣性制御術式""重力制御術式"で機体を飛ばし、【目立たない】ように熱光学【迷彩】して敵陣に突入。
敵陣中心部でUCを発動させて混乱を招きます。
その後、"光線""機関砲"にて残敵掃討します。
●Witness Pt.1
□月○日、ルナジャワ民主共和国首都。
私はルナジャワ政府が報道機関向けに借り上げたホテルのプレスセンターでその様子を見守っていた。
目の前のモニターには現政府の悪行に対し立ち上がった「抵抗軍」。政府報道官は「1万にも満たない暴徒」と発表していたが複数の情報筋からはその倍以上の数が示されていた。
実際はどうだ、明らかに「それ以上」だ。無数のカルキノスが古き良き時代の戦列歩兵を彷彿とさせる隊列で行進してくる様がその最たるものであり、抵抗軍の旗を掲げるテクニカルや兵員輸送車の車列がそれに続く。
率直な感想を述べるのであれば『政府軍よりも正規軍らしい』の一言に尽きる。
それを目の当たりにした報道関係者達はそれを見るや否や取材道具を手に取り慌ただしくなる。カメラマン達は写真や映像を確保するべくセンターのセキュリティスタッフと押し問答を行い、ジャーナリストも手当たり次第に役人への取材を敢行していた。
それは一種のお祭り騒ぎに近く、私でさえも一国の歴史の転換点を生で拝む事ができるというこの状況に恥ずかしながら心が躍っていた。
しかしそれは、同時に何かしらの胸騒ぎにも似たものがあり、それを確信したのはそのすぐ後、あの『第三勢力の介入』が発生して間もなくであった。
――バロール・キャピタル・タイムズ記者 ヨアヒム・テンゲスタンの手記より。
●可及的速やかに
『全体、そのまま進軍だ!だが攻撃は向こうが撃ち始めてからだ、早まるんじゃあないぞ!』
『了解!』
抵抗軍の主力、量産型キャバリア「GC-04カルキノス」からなるキャバリア部隊が部隊長の指揮の下、首都に向けて進んでゆく。
多くのパイロット達は散発的な遭遇戦や襲撃戦などの経験は多く積んでいたが、真正面からぶつかり合う「まともな戦い」の経験が無く、故にその顔には緊張の色が見えていた。
『隊長、2時の方角から複数の機影が接近しています。』
『政府軍か?』
機影接近の報せにすぐさま部隊長が反応した。向こうから仕掛けてくるのであれば好都合、数では抵抗軍が有利、地の利は対等となれば戦いが始まれば自分達が有利である。
『いえ、IFF識別せず、所属不明です!』
『なんだと!?……各機散開!政府軍が雇った傭兵かもしれん、訓練通り対処しろ!』
「……弱者を蹂躙し、希望の芽を摘む仕事、か。」
抵抗軍のキャバリア部隊を目の前にしてクゥ・ラファール(Arrow Head・f36376)がふと呟く。戦争の道具である身で、しかしなまじに自由意志を持つ故か、その声は諦観の色を帯びていた。
「ん、やっぱり抵抗がある感じ?」
そんなクゥの言葉に反応したジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)が飄々とした様子で訊ねる。
「まぁ俺はAIだし?やるときゃ戦闘マシーンよろしく英雄殺しだろうがなんだってやれるしね!ラクショーよラクショー!」
余りにも道化じみた彼の反応は、しかし自らをわざわざAI――人工知能であると明かした上でのその言葉は、聞く者によってはひどく自虐に満ちた言葉に思えたであろう。
「まぁ、猟兵とは言え傭兵稼業なんざやってりゃ何時かは回って来た『お鉢』さ。そこのランスみたく一丁吹っ切れた方が精神的にも良いだろうぜ。俺はもう吹っ切れたよ。」
とヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)が二人の会話に割って入り、言葉を続けた。
「……とは言え最優先目標は『大尉』のオブリビオンマシンだ。ASAP(可及的速やか)で進めていくぞ。」
「オーケイ!」
「了解、解りやすくて良いね。」
ジェイとクゥの返事を聞いたヴィリーは乗機「ヘヴィタイフーンmkⅩ」が搭載するコングⅡ重無反動砲を散開を始めた抵抗軍キャバリア部隊の上空に向け、初弾を撃ち放った。
『不明機からの攻撃を確認!攻撃を確認!各機戦闘を開始せよ!』
『くそっ、政府の犬ども!なめやがって……うわっ!?』
猟兵の攻撃に反応したキャバリア部隊はすぐさま反撃に出ようとするが直上から思いがけない攻撃を受ける事となった。
「バラけられると政府軍の砲撃に巻き込まれかねんからな。サーメートで釘づけにさせてもらうぜ。」
無反動砲から放たれたのはクラスター焼夷弾だった。弾頭から射出された子爆弾は高熱を放ちながら抵抗軍のカルキノスへと降り注ぎ、鉄騎の装甲を焼き尽くす。
『テクニカル隊、後退!後退しろ!焼かれるぞ!』
『モニターカメラ停止!再起動まで20秒!』
『動ける者は足を止めるな!敵の良い的になるぞ!』
次々と飛び交う抵抗軍の無線通信、しかし彼らもこの内紛において鍛え上げられた強者達であり、その様子から混乱する様子は見られなかった。
『車輌隊へ、幹線道路に沿っての進軍は困難。我々が不明機を食い止めている間に別ルートで進撃されたし。』
『こちら車輌隊、了解した。貴隊の武運を祈る。』
テクニカルを始めとする抵抗軍車両部隊は交戦地帯を迂回する進路を取り始め、キャバリア部隊は猟兵を迎え撃つべく行動を開始した。
抵抗軍が立て直しに動いていたのと時を同じくして、2人の猟兵が彼らに接近していた。
「流石正義の抵抗軍だ、正規軍を相手取るだけあって立て直しが早い!」
ジェイがヒューと口笛を吹いて感心しているとクゥが口を開いた。
「恐らくあの部隊の指揮官が優秀。『大尉』が抵抗軍の精神的支柱なら、カルキノスの指揮官は部隊の頭。」
「ってーと、指揮官機を落せば一気に瓦解するって事か。」
「正解、ここで時間はかけられないしさっさと済ませてしまおう。」
あくまでオブリビオンマシンの撃破が目的、『大尉』を誘き出せればその手段はどうであろうと問題ではなかった。
次に控えている戦闘の為にも、猟兵はなるべく自らの出血が少ない戦いを選択するのであった。
『敵機接近!撃ち方始め!』
猟兵の接近に気が付いた抵抗軍キャバリア部隊は部隊長の命令に忠実に動く。彼らにとっては虎の子ともいえる拠点攻撃用重爆撃装備を惜しみなく使うは政府軍よりも猟兵を強敵であるとみての選択であり、それは幸運にも正しかった。
だが正しい選択が、常にそれにふさわしい結果を齎すとは限らない。
「お二人さん、政府軍の砲撃が開始されたみたいだ。そっちに着弾予測情報を送り続けるから当たらないように注意してくれ。」
ヴィリーの言う通り、首都側から対キャバリア迫撃砲の発射音が立て続けに鳴り始めていた。余計に時間を掛けていられない状況ではあったが、クゥとジェイの二人は決して焦らない。
『敵機、突っ込んでくる!』
『側面からもだ!撃て、撃てえええ!』
叫んだ抵抗軍のパイロットが目にしたのはクゥの駆るRafale。都市国家『C.G.L.』所属のクロムキャバリアであり、量産機であるカルキノスとの性能差は火を見るよりも明らかであった。
すぐさまサブマシンガンによる掃射を敢行する抵抗軍のカルキノス達。しかしクゥ相手には分が悪い賭けであった。
「遅い。」
舞うが如く弾幕を避け、一機のカルキノスへと斬りかかるRafale。
『ば、化け物……!うおおおお!』
明らかに格上だと認めても、しかし抵抗軍の妨げとなる以上対峙しなければいけない。一人の抵抗軍パイロットは意を決してRafaleへとサブマシンガンを構えた。
『駄目だっ!そこから逃げろ!』
『えっ?』
「Ubel:Code Löwen_Bataillon Dame.……悪ぃけど相手にしてる暇はないんだよっと。」
ジェイが駆るレーヴェンツァーンTypeⅡは抵抗軍の誰にも気づかれる事無く、その隊列の中に潜り込んでいた。
電子戦や情報戦は電脳魔術士たる彼の十八番である。砲撃の直後から走らせていたジャミング電波と、熱光学迷彩は不可視のベールとなり、レーヴェンツァーンを隠していたのだ。
そして隊列内に突如現れてしまえば抵抗軍の動揺は必至。さらに無数の小型兵器が沸き出せば効果の倍率はさらに上がる。
『うわあああ!』
ジェイが展開した自爆特攻兵器が齎した効果は絶大であった。重爆撃装備に換装していたカルキノスは盛大に吹き飛び、その周囲を巻き込んでいく。
逃れた機体もその光景を見た以上、自機に接近するそれらの兵器に対処せねばならず、部隊連携はあっという間に崩壊していった。
『畜生!まだ動けるものは後退だ!大尉が来るまで――!』
部隊員に指示を飛ばしていた部隊長であったが、その言葉は最後まで続かなかった。
「……いいさ、こういう汚れ仕事には慣れている。」
部隊長機の真後ろにはレーザーブレードを展開したRafale。
否、『レーザーブレードを使い終わった』Rafaleが佇み、ずるりと上半身が落ち爆発する部隊長のカルキノスを見ていた。
『隊長がやられた!隊長がやられた!畜生、神様!』
『政府のやつら許せねェ……!突撃……突撃だ!』
クゥの読み通り、指揮官を欠いたカルキノスの動きは精彩を欠いていた。感情任せの暴走ともいうべき突撃を敢行しようと次々と政府軍陣地へと突撃を開始する。
しかし、それは猟兵にとって都合の悪い事に変わりはなかった。
「そっちに突っ込まれるとオブリビオンマシンと戦ってる最中も砲撃が飛んできかねんからな。無理矢理にでも撤退してもらうぜ。」
ヴィリーの駆るヘヴィタイフーンが突出してきたカルキノスを次々と狙撃する。速射性に長けた電磁砲、そして破壊力に長けた無反動砲の威力は抵抗軍の戦意を瞬く間に蹂躙していった。
「去るヤツは追わず、向かってくるか邪魔するヤツは徹底して叩き潰すってね。大人しく去る事をオススメしとくぜ!」
さらにジェイがダメ押しとばかりにレーザーと機関砲による斉射でカルキノスを蹴散らしていく。
圧倒的なまでに一方的な、最早戦いなどと呼べるものでは無い状況が猟兵達によって齎されていた。
「斯くして抵抗軍の名もなき戦士達は英雄を呼び出すための生贄とされる。――さて。これ以上好き勝手やらせるつもりかな、英雄さん?」
大成功
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ノエル・カンナビス
(エイストラ搭乗中)
ま、多くは語りません。
実際に死刑確定の重犯罪者であれば、遠慮なく処断します。
先制攻撃/指定UC。
鎧無視攻撃/貫通攻撃/ライフルでコクピットを直撃します。
重犯罪者といえど、無駄に苦しませる趣味はありません。
数で押して来るようでしたら範囲攻撃/キャノン。
逃げ出す者がいれば誘導弾/ミサイルで追撃します。
いずれにしろ、バイブロジェットの大推力でNOE飛行する
エイストラから逃げられはしません。
一人たりとも生き残らせるつもりはありません、が。
「一応、投降をお勧めします。武装解除した者は討ちません」
もともと非武装の支援要員や付近住民がいるようでしたら
可能な限り巻込まないよう立ち回ります。
●Evidence
・抵抗軍を自称するテロリストとの戦闘は軍隊と首都の治安維持部隊の綿密な連携により優勢を保っている事を強調。
資料映像・Aは「都市内各所で発見された卑劣な自動車爆弾の処理を行う治安維持部隊」、資料映像・Bは「テロリストが不法占拠する施設へ突入を敢行する勇猛な特殊部隊」と紹介する事。
国外製の武器、装備が多数押収されており、既に政府は外交チャンネルでテロリスト(抵抗軍の表記に訂正の斜線が引かれている)を支援する国家への非難声明を出していると説明する事。
・首都近郊の戦闘に出現した所属不明機は「軍の新型キャバリア兵装の試験部隊」として説明。
首都防衛部隊の一部に混乱(試験部隊への砲撃)が発生したものの、「新型兵装を施したキャバリアの性能と、我が軍の優秀なテストパイロットの類稀なる技能」により戦闘に大きな影響は生じていない事を説明。
混乱を引き起こした部隊の責任者は更迭処分。
・試験部隊、新型兵装に関する記者の質問は「軍事機密」として徹底黙秘する事。
【以下、首都在住の市民向け】
・SNS上に戦闘の様子を撮影した動画や画像を確認しているが身の安全の確保を第一に不要不急の外出を控え、窓から離れて過ごす事を要請。
・許可のない外出者は市内展開中の治安維持部隊に警告なく身柄を拘束される場合がある事を説明し、外出を控えるよう再三要請。
――ルナジャワ民主共和国・内務報道局資料室『首都近郊戦闘に関する第一次報道要項』より一部抜粋。
●鎧袖一触
『本隊の救援要請って言うから来てみれば何だこのザマは……ルナジャワみてぇな小国の軍隊にエースがいるなんて聞いたことが無ぇ。』
『ヒヨっ子ども、お前さん達は大尉が出てくるまで後方待機、顧問団機のみで仕留めに行くぞ。』
抵抗軍カルキノス部隊が猟兵の襲撃を受けて間もなく、後方から増援として到着したのは「人道的支援」のスタッフ――もとい「軍事顧問」として招かれていたキャバリア乗り達の率いる部隊であった。
ルナジャワ政府の政策により生み出される難民の流入は周辺各国にとって深刻な問題であり、しかし狂犬じみたルナジャワ政府への直接的な内政干渉を避けるため各国の元首は『抵抗軍が悪政を敷く自国の政府を革命により打倒する』というシナリオを成立させるために工作員を送り込んでいたのだ。
『車両部隊が政府軍と交戦を開始したようだ。歩兵による対キャバリア戦術はミッチリ仕込んでやったつもりだが上手くやれるかな?』
『やれるかじゃねぇ。やってもらうんだよ。じゃなきゃ泣きを見るのは危険を冒して隣国の首都くんだりまでついてきた俺達だぜ。』
『それもそうか……っと、早速例の敵さんだ。』
「もう少し数を揃えてくると思いましたが……敢えて精鋭だけで挑んできますか。」
増援のカルキノスの迎撃に現れた白と黒のツートンカラーが特徴のキャバリア「エイストラ」、猟兵ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は突出してきた数機を確認すると同時に構えたプラズマライフルによる狙撃を敢行した。
「ならば圧倒的な差を見せつけるだけ。」
そう呟きノエルがトリガーを引くと、一機のカルキノスの胴を高密度のエネルギー弾が貫いた。
『チャーリー1がやられた!』
『何ともクソ腕のいいエースだ……!デルタ、ブラヴォー、三方向から仕掛ける。遅れるんじゃないぞ!』
射程外からの先制攻撃で僚機を失うが、戦場の常と覚悟しているだけあり彼らの立ち直りは早かった。散開し、正面と両翼からエイストラを囲い込む陣形で接近、マシンガンによる連射を叩き込んでくるカルキノス。
教科書の手本となるような、見事な基礎戦術機動であるそれはエイストラの肩部に搭載されたミサイルポッドによる一網打尽を警戒しての選択。
ノエルもそれに軽く舌を打ち、マシンガンの掃射を躱しながら正面のカルキノスにプラズマライフルでの再射撃を行う。
『うぉっ……!装甲が持ってかれたかっ……だが環は閉じたぜ!』
咄嗟に庇い九死に一生を得たカルキノスのパイロットは、しかし彼らの「鳥かご」にエイストラが嵌まった事で勝利を確信した。
平凡な量産型キャバリアが高性能ワンオフの代名詞とも言うべきクロムキャバリアに勝る数の利を利用した包囲戦術。それは高機動力を誇る相手である程によく嵌まり、遂に唯一の逃げ道は殲禍炎剣が睨みを利かせる空中に追い込むことを旨とする。
まともなエースパイロットであればこの状況の意味がわかる筈、エイストラの正面から接近していたカルキノスのパイロット――アルファ1は降伏勧告をしようと通信機に触れる。
「そのままとどめを刺せば良いものの……。」
『なっ、正気か!?……奴を撃てぇ!』
詰めが甘いとばかりに溜息をつくノエルはエイストラを急上昇させカルキノス達の頭上をとりプラズマキャノンを構える。それを察したアルファ1の号令で上空に向けマシンガンを構えるカルキノス。
奇しくもトリガーは互いに同じタイミングで引かれ、同じタイミングで互いの初弾が発射された。
勝敗は五分、もしくは数の利を有するカルキノスか。
しかし彼ら軍事顧問団パイロットの悲運は兵器性能の差であった。
エイストラのキャノンから発射されたプラズマエネルギーの奔流はマシンガンの徹甲弾ごととカルキノスを圧倒的熱量で襲い、次々と融解、蒸発させていった。
ここに抵抗軍軍事顧問団は壊滅し、彼らの祖国が求めたシナリオは破綻への道をたどる事となった。
大成功
🔵🔵🔵
ティー・アラベリア
敵を間引きながら目標を引きずり出せばよいのですね。承知いたしました
反認識概念生成機構を起動し姿を眩ませながら、制限高度付近まで上昇
探信儀でキャバリア、装甲車、歩兵を問わず配置を特定し、最も効果的に敵を間引ける着弾点を分析
指揮通信機構を使用し、戦場全体の知性体の脳内に念導波を飛ばし、勧告いたします
「抵抗軍の皆様におかれましては、ただちに戦域から退避することを推奨いたします。エミール・リンデン様、お早くおいでくださいませ。我々の目的は貴方の乗機の排除なのですから」
このような勧告を行えば、はじめのうちは我先にと敵は前進してくれるでしょう
そこに戦闘出力状態の92式を用い、予め設定していた着弾点に向けて前線と後方の区別なく砲撃を実施いたします
絶え間なく砲撃を実施しながら、乱れた敵前衛には95式による誘導弾を、後方には自爆妖精達を浸透させ、恐怖と混乱を煽ります
砲撃中も先の勧告を一定間隔で発信
士気崩壊して逃げるもよし、そのまま奮戦して倒れるもよし、目標の登場を早めつつ、障害を間引くことができるでしょう
●Witness Pt.2
この内戦の立役者は誰だと言われれば、皆口を揃えて『大尉』の名を出す。
『大尉』エミール・リンデンは物静かで欲が無く、しかしひとたび戦闘が始まると勇ましい、一種の聖人めいた印象を抱かせる人物であった。
そして先日の記事にも書いた通り彼の経歴には不明な部分が多い。ある日突然現れて、政府軍の人狩り部隊を次々と撃破。
国軍出身のパイロットという経歴以外が正体不明の男は、その献身によって抵抗軍の信頼を得たのだ。
(中略)
この内戦における正義の正当性は抵抗軍にあるだろう。自らを絶滅せんとする者達に対し抗うのはあらゆる人々に与えられた権利だからだ。
しかし『大尉』という個人のみに限れば――無論私の個人的見解だが、抵抗軍の掲げる正義とは異なる思惑で戦っているように思えた。
――戦場カメラマン トム・コリンズのブログより
●呼び出しのアナウンス
結論から言えば抵抗軍の攻勢は失敗に終わった。
主力キャバリア部隊は壊滅、顧問団も全滅、車輌隊も孤立。
残るは正に「数のみ」の練度もそこそこのカルキノスばかり。
『大尉、大尉はまだか!』
『誰か指示をくれ!このまま攻勢を続けていいのか!?』
烏合の衆とはよく言ったもの、頭を失い統率を欠いた彼らは一機、また一機と猟兵や政府軍の砲撃の前に倒れていく。
しかし、
『落ち着け……っ!この状況、確かに劣勢は明らかだ……!政府の奴らだって俺達が浮足立ってる事に感づいてる、間違いなくっ……!』
『だが間違いなく大尉が到着すればチャンスはある……!抵抗軍は明日に続く!だから踏ん張れ!今、ここで……!』
しかし、人は常如何なる時も成長する。名もなき一兵卒の発した演説と呼ぶには拙いそれは、しかし確かに抵抗軍中に響いたのだ。
【抵抗軍は明日に続く。】
後に、この言葉は抵抗軍の結束を強めるスローガンとなる。
「首都攻勢が失敗した日」を礎として。
「蜘蛛の子を散らす様に敗走するかと思いましたが……ですが好都合ですね。」
一人の猟兵がその様子を観察していた。
ティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)は誰もが地べたと敵同士を睨みあう戦場の中で、彼一人は空中から全てを見ていた。
猟兵の圧倒的な強さに、政府軍の統制された攻撃に次々と打ち倒される抵抗軍を。
そして彼の予想を超えて徹底抗戦の構えを取った抵抗軍を。
「では、最後に『大尉』を誘き出す役目を果たしてもらいましょう♪」
しかしティーは、抵抗軍の敢闘に感心を覚えるも「それはそれ」として機械的に、というより寧ろ喜々的に行動を――念導波による呼びかけを開始した。
《本日はルナジャワ民主共和国首都攻勢へのご参加、誠にありがとうございます。》
《当戦域内の抵抗軍の皆様にお呼び出しのお知らせを致します。》
《『大尉』エミール・リンデン様、エミール・リンデン様。》
《また抵抗軍の皆様におかれましては、ただちに戦域から退避することを推奨いたします。エミール・リンデン様、お早くおいでくださいませ。――我々の目的は貴方の乗機の排除なのですから。》
『何だこれは!どこの馬鹿がこんなふざけた真似を!』
『通信は正常、混線やジャミングではありません!』
影も形も見えず、しかし子供のものとわかる声で行われるアナウンスに抵抗軍の面々は困惑。
同時に商業施設で耳にするような迷子呼び出しめいた事務的な、そして戦場には無縁なそれは必死に足掻く彼らの心を逆なでるには十分であった。
『政府の連中だ!奴ら大尉を、俺達を馬鹿にしてやがる!』
『目に物みせてやる!動ける奴は俺に続け!』
『ばっ……馬鹿っ!ノせられるな!』
止める者は少なくなかったが、突撃を試みるものはそれ以上であった。
残存戦力の半数以上が政府軍の砲撃の中を突き進み、脱落するものが出てもその歩みは止まらなかった。
『畜生、畜生!あの馬鹿野郎どもの援護だ!陣形を崩さず前進!脱落した奴らは即時回収しろ!』
そして遂には残った戦力もその光景に耐えかねて合流。抵抗軍、この戦いにおける最初で最後の全力攻勢が始まった。
「それでは……砲撃、開始。」
ティーは「92式火力投射型魔杖」を取りだし、それを軽く振った。
すると戦域上空は瞬く間に眩い光に埋め尽くされ、そして地獄が生まれた。
『ワアアアァァ!!』
抵抗軍のカルキノスを襲ったのは魔法弾によるクラスター爆撃であった。しかもタチの悪い事に焼夷効果と衝撃波による物理的な破壊のオマケ付きである。
『脱出装置が動かない!
『うわぁ!あつい、助けてくれ!』
抵抗軍パイロット達の阿鼻叫喚にあたりは包み込まれる。多くは蒸し焼きにされ、熱暴走による自爆がそこら中で発生する。
『言わんこっちゃねぇぜクソッタレ!四肢を破壊してコックピットだけでも運び出せ!これ以上は継戦不能!退却するぞ!』
『り、了解……うわあああ!』
運良く砲撃を免れた援護部隊は生存者の救助活動を開始しようとするが、ここにもまたティーの仕掛けが施されていた。
「92式浸透自爆妖精」によるスーサイドアタック。不可視であるがゆえにそれが齎す混乱は絶大で、それに足を止めてしまった援護部隊の命運は尽き、「95式思念誘導型魔杖」による誘導弾攻撃が次々と襲い掛かった。
《繰り返します、当戦域内の抵抗軍の皆様におかれましては、ただちに戦域から退避することを推奨いたします。》
そんな光景が繰り広げられる中、ティーのアナウンスは続く。
この戦域に『大尉』が現れるまで絶え間なく。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『特空機零型・壊『デストルード』』
|
POW : BS-B『アブソリュートカノン』
【20秒の内臓縮退炉からエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大規模戦略級の重力砲】で攻撃する。
SPD : 特式機甲戦術『凶獣の牙』
自身の【カメラアイ】が輝く間、【右腕の振動クロー】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 超振動破砕撃『ブレイクダスター』
攻撃が命中した対象に【超振動】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【全身を襲う振動波】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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●
『あぁ……そんな、そんな!』
抵抗軍に花を持たせる為、攻勢を妨害する可能性のある政府軍特殊部隊の掃討に出ていた『大尉』エミール・リンデンと彼のチームがその場に駆け付けた時には全てが終わった後であった。
多種多様な壊れ方をしたカルキノス、健在の政府軍守備陣地、そして猟兵。
『そんな、俺は、俺はまた……!』
『大尉!ここは生存者を収容し撤退しましょう!私達が倒れたら本当に終わってしまいます、大尉!』
彼の副官を自称する少女が進言するもエミールはそれを聞き入れるだけの余裕が無かった。
『俺はただ、護るものを失いたくない。あんな思いは二度とご免だったんだ……なのに、何でお前達は……!』
過去の罪を償いたい。だがその罪を知る者はなく、故に裁く者もいない。
だから彼は償いの為の誓いを立て、同じ過ちを犯すまいと再びキャバリアへと乗り込み、抵抗軍達と行動を共にしていた。
そして今、彼の目の前に広がる光景は、彼の誓いという枷を脆くするに十分であった。
『……全機、下がっていろ。奴らは……俺が倒す。』
『大尉!?そんな、ダメです!貴方にもし何かあったら!』
『命令を復唱しろ副官!』
その日、少女は初めて大尉から『副官』と呼ばれた。初めて『副官』として扱われた。
『……了解しました。て、抵抗軍全部隊は撤退を開始せよ……!生存者は可能な限り収容せよ!』
――初めて認められた。だが、こんな状況で言ってほしくなかった。
少女は、抵抗軍の誰よりも彼を間近で見てきた『大尉の副官』は分かってしまった。
『大尉……ご武運を。』
大尉はここを死に場所に決めたのだ、と。
『お前達!お前達は誰一人生かして返すものかぁーっ!』
エミール・リンデンはオブリビオンマシン『デストルード』を駆りながらコックピット内で吠える。
『お前達に俺の苦しみを……奪われ、壊される事の辛さを味合わせてやるっ……!必ずっ、何をしてでも……!』
心に溜め込んでいたものを吐き出すようにエミールは絶叫する。
そしてそれを糧にしているかの如く、オブリビオンマシンは禍々しいオーラを放出するのであった。
ノエル・カンナビス
おや。
標的の逃走阻止と、標的撃破後の反乱軍の撤退強制と、
どちらの為にも死者数がまだ要るかと思いましたが。
一応、駄目押しはしておきましょう。
「抵抗軍の方々も可哀想に。貴方が戦を煽らなければ損失も少なく済みましたのに」
「徒な期待を持たせるから命を投げ出す人が増えてしまって。そんなにもお仲間がお嫌いでしたか?」
正直、自ら戦場に身を投じておいて何を言っているのかと
真剣に思わないでもありませんが、ともあれ。
ダッシュ/推力移動/見切り/操縦/軽業/武器受けで
敵のクローをブレイド二本で止め、
至近からのカウンター/鎧無視攻撃/範囲攻撃/衝撃波/指定UC。
搭乗者に関心はありませんが、HSFでは死なないでしょう。
●
「……抵抗軍の方々も可哀想に。貴方が戦を煽らなければ損失も少なく済みましたのに。」
『なにっ!?……ぐぅっ!?』
オブリビオンマシン「デストルード」の中でエミールは強い衝撃に襲われた。
ノエルのエイストラが近接戦を仕掛けたのだ。
「貴方という英雄像が抵抗軍を熱狂に追いやったのです。先陣を切って大戦果を上げる……自身が彼らにとって都合の良いお伽話(フェアリーテイル)である自覚はお有りですか?」
『うるさい、黙れ!お前に……!お前に俺の苦しみが分かるのか!?』
ビームブレイドによる斬撃と一緒に挑発めいた正論をエミールにぶつけるノエル。対するエミールも吠える。
「生憎戦闘特化のレプリカントなので。そういうのはサイキックや占い師の方にお任せします。」
『ふざけるなぁ!』
怒りに燃えるエミールに呼応するようにデストルードのカメラアイが発光し、その爪が唸りを上げてエイストラを襲う。
対してノエルは冷静だった。目的達成の為に必要な行動を粛々とこなす。一切の狂いを許さないスイス製時計の如く、必要最低限の出力と最適なタイミングで一瞬九閃の斬撃を躱し、弾き、まるで「慣れたもの」と言わんばかりに捌く。
機体性能、こと「殲滅力」「破壊力」においてはデストルードに軍配が上がる事だろう。しかしエイストラは、ノエル・カンナビス操るエイストラはパイロットの技量を含めた「総合力」で圧倒的にエミールに勝っていたのだ。
「……抵抗軍のエースと聞いていたので警戒していましたが拍子抜けですね。ただ力任せに振り回すような児戯に等しい操縦、貴方を英雄と称賛した抵抗軍の方々が気の毒です。」
『……ッ!』
「それともなにですか?そんなにお仲間が嫌いでしたか?彼らが命を投げ捨てるのは彼らが勝手に貴方という『幻想のエース』を見たから自分に非が無いと?」
それは事実であった。端的に結論付けるのであればエミールの操縦技術はエースと呼ぶに相応しくない物であった。
精々が人並みに毛が生えた程か、オブリビオンマシンの存在を知らない者達を誤魔化せても、キャバリアを駆る事に長けた猟兵達の目を誤魔化す事は叶わなかった。
『黙れ黙れ黙れ黙れェ!』
それは義に殉じた抵抗軍を侮辱された事か、それとも化けの皮を剥がされた事、「贖罪の力」を得た自身を否定された事へか。
今となってはどちらとも分からないが、エミールは再びデストルードの爪をエイストラへと向ける。
「言ったでしょう、児戯に等しいと。」
『なっ!?』
しかしその爪は届かなかった。
余りにも大振りで、単純軌道な軌道を描いたそれは再びエイストラのブレイドにからめとられた。
「H・S・F、ラディエイション――その性能を活かす事無く倒れなさい。」
文字通りの肉薄、ゼロ距離という状況を得たノエルはすかさず音声コマンドにより高硬度衝撃波「ハーデンド・ショックフロント」を起動。
音速を超える衝撃波がエイストラを中心に生じ、あらゆるものを――デストルードも例に漏れず吹き飛ばした。
『ぐぅっ……クソックソオォォッ!』
装甲を突き抜けるような衝撃を受けながらエミールは慟哭する。
それが何へと向けられているのか、自らも知らぬままに。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリー・フランツ
wiz ※エミールごとトドメを刺す
心情:お前さんには恨みはない、だがこちらも仕事なんでな、悪く思わんでくれ。
手段:引き続きへヴィタイフーンに搭乗。
奴の近接や胸のカノン砲や厄介だ、政府軍の追撃部隊もそのうち来るから時間もかけられん!
折角乱戦にならないよう立ち回りをしたんだ、最後の最後でしくじりたくねぇ。
重無反動砲に【EMP弾頭】を装填、奴の機体に撃ち込み機能不全を起こした所に肩の40mm電磁砲の集中砲火を食らわせてやる。
万が一接近を阻止出来なかったら無反動砲を捨てRXバーンマチェーテを抜刀、シールドを構えて防ぐ態勢を整える。
一撃程度なら増加装甲で受けても良いけどな、後はマチェーテによる近接で反撃
●
「抵抗軍のエース……やつが大尉か。」
ヴィリーはデストルードを注意深く観察していた。先の戦闘で徹底した後方からの砲撃戦を行っていた事からデストルードとの距離は十分に開いており、そうした余裕が十分にあった。
「主武装は腕部のクローによる近接戦、胸部砲による狙撃ってところか。……ここで下手を踏むわけにはいかねぇ。堅実に片づけるとしよう。」
そうして勝利への筋道が見えたのか、ヴィリーはコングⅡ重無反動砲の照準にデストルードを捉えるとトリガーを引いた。
『くそっ!お前も邪魔をするのか!?』
「こっちも仕事だ。個人的な恨みはないが悪く思わんでくれ。」
『そうやって無関係を気取るかよォ!』
デストルードは放たれた弾頭をクローで撃破するとヴィリーの駆るへヴィタイフーンへ向けて接近を開始する。
「もしやとは思ったが胸部砲はあくまで砲、移動制限を掛けられるからホイホイと使えねぇってか。なら、今度はコイツでどうだ!」
距離を詰めてくるデストルードを見据え、ヴィリーは無反動砲に次の弾頭をセットし再度砲撃を行った。
『無駄だァ!』
エミールは先の弾頭と同じようにクローでそれを叩き切った。
「あんがとよ、特別仕様だから外したくなかった。」
『なにっ。……う、動きが!?』
次の瞬間、小規模な爆発が生じるとともにデストルードの動きが停止した。
「特製のEMP弾頭だ。政府軍の連中がいつ追撃に出るかもわからねぇ、確実に仕留めさせてもらうぜ!」
EMP――電磁パルスの効果を確認したヴィリーはすぐさまクロコダイル電磁速射砲の発射体勢に入る。
『ぐっ…やらせるものかよおおお!』
「再起動しやがったか!?くっ……!」
しかし相手はオブリビオンマシン。通常なら電子制御を焼き切られ使い物にならなくなる所を超常的な自己修復が行われたか、へヴィタイフーンがクロコダイルの発射体勢に入ると同時に動き始めたのだ。
ヴィリーは追撃を避けるため後退しながらの射撃に入り、対するエミールはへヴィタイフーンまでの最短距離を、徹甲弾の弾幕の中を臆することなく突き進んでくる。
『俺の贖罪を邪魔するなら……ここで消えろぉおお!』
「なんてタフな野郎だ!」
デストルードは装甲がはじけ飛ぶなど徹甲弾が齎す効果が十分に発揮されながらも、しかし何ともないかの如くヘヴィタイフーンとの距離を詰めクローを振りかぶる。
エミールの狂気めいた気迫にヴィリーは舌打ちをするとコングⅡ重無反動砲を投棄しバーンマチェーテを構え、デストルードのクローをしのぐ。
とは言えオブリビオンマシンと量産型キャバリア。そのスペック差は明白であり、デストルードの振動爪がマチェーテを押し切るは時間の問題であった。
『うおおおお!』
「てめぇとの力比べはゴメン被るぜ!」
しかしヴィリーはキャバリアパイロットである前に歴戦の傭兵である。如何に相手が有利であろうと、それに対処し生き残る術を自らに叩き込んでいる。
ヒートマチェットに掛ける力とスラスター制御を利用し、CQC(近接格闘術)を彷彿とさせるような動きでデストルードを投げ飛ばすとそのまま距離を取り射撃を再開した。
「奴さんの技量不足に助けられたって所か。流石に生きた心地がしなかったな……。」
額に冷や汗を浮かべ、ヴィリーはへヴィタイフーンの腕に握られたマチェーテを見る。
勝算があったとは言え、刀身そのものに入ったヒビが、それが極めてギリギリの博打に追い込まれていた事を語っていた。
成功
🔵🔵🔴
クゥ・ラファール
悪いけど、そんなものクゥには無い。
奪われたくない、壊されたくないものなんて、何も。
引き続きRafaleに搭乗し戦闘。
相手は随分と感情的になっているっぽい。なら、機人の理を発動して戦う。
敵の武装は右腕の振動爪、それに胸部の大型砲。どちらも大振りだけど一撃が重そう。
【瞬間思考力】で攻撃動作を可能な限り早期に把握、距離を取ろうとする形で回避機動を行う。
敵の機動力も考慮に入れて、凡その敵の攻撃間合いを予測。そこから外れる距離を維持の上で、実弾モードにしたDualFaceの射撃で攻撃。
望み通り、その機体ごと、壊してあげる。
【エミールの処遇:トドメを刺す】
●
『まだだ……俺はまだ動ける、戦える!贖うんだ……俺は贖うんだ!』
オブリビオンマシン「デストルード」が健在であれば彼は恐らく立ち上がり続ける。
その不屈の精神が、例え妄執によるものであったのだとしても。
「何を贖うつもりか知らないけど、敵である以上クゥはあなたを倒す。」
『やれるものならやってみろォー!』
クゥの駆るRafaleがデストルードへの先制射撃を敢行、対するエミールはそれをクローで斬り捨てる。それを合図に両者の戦闘は始まった。
『くっ……すばしっこい!』
しかしエミールの攻撃は空を切るばかり。
確かに視界にとらえ、Rafaleの動きに喰らいついていくも攻撃の瞬間すんでの所で躱される。
(攻撃は単調、だけど掠っただけで致命傷になりかねない。)
クゥにとって激情に駆られるエミールほどにやりやすい相手は無かった。
人間にとって感情とは、心とは思いのほかに化学と密接な関係にある。脳内に分泌される物質の引き起こす反応が喜怒哀楽などの感情を齎し、時に「火事場の馬鹿力」に代表される超越的な力に見え、逆に本来の力を発揮できなくさせるのだ。
特に戦闘職にとってこの感情制御は重要で、ある種の暗殺者は麻薬の利用により感情を制御する術を取得していたほどである。
しかしクゥにとって、予め兵器運用を目的に製造された機械人形にとって戦闘における感情コントロールはさほど難しいものではなかった。
より効率的に、より理論的に。突き詰められた合理的行動を機械的に実行する以上、そこに感情というファクターが入る余地は殆ど無い。
(だからこそあの胸部のキャノンを撃つ時を狙う。)
『くそおおお!何で当たらないんだっ!?』
デストルードの最も隙が生まれるであろう瞬間は「アブソリュートカノン」の発射体勢に入る時。
クゥはそれを誘発させるために、「エミールの攻撃がすんでの所で躱される」状況を演出していたのだ。
『ハァッ…ハァッ……!抵抗軍の為にも使いたくなかったが……首都諸共お前らを吹き飛ばしてやるっ!』
そしてクゥの狙い通り、遂に禁じ手に手を出すエミール。デストルードの胸部キャノンに禍々しい光が集まる。
『これが奪われ、壊されるという事だぁぁぁ!』
その慟哭と共にエミールがトリガーを引く、その直前。
「悪いけど、そんなものクゥには無い。」
RafakeのDualFaceから放たれたレーザーがアブソリュートカノンの砲身に吸い込まれるように進入し、直結された縮退炉を直撃。
『うわあああ!』
デストルードの胸部で生じた暴発はコックピットのエミールに対しても極めて深刻なダメージを齎す事となった。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイ・ランス
【POW】※アドリブ、連携歓迎
■心情
おー、きたきた。あのパイロット、大尉の事は"事象観測術式"から【情報収集】で調べさせてもらったぜ。【世界知識】って便利。
独りよがりにご傷心のようだけど、それをオブリビオンマシンに利用されてるんだな。解放して差し上げましょ。
■行動(大尉は救います)
"事象観測術式"から【世界知識】に【ハッキング】、大尉の個人情報を【情報収集】し、大尉に通信回線で停戦を語り掛けます。
自身は"ツェアライセン"を呼び出し、"慣性制御術式"、"重力制御術式"にて【空中機動/滑空】。敵機に肉薄し、UCを発動します。
―――Ubel:Code Nibelungen Dame.
●Evidence
『ガラサドラの戦い』
・交戦勢力
ルナジャワ民主共和国 対 ■■■■部族諸連合
・戦力
国防軍第8師団 対 第■■機動戦闘団
・交戦結果
コルデア部族諸連合の勝利
・ルナジャワ側の損害
国防軍第8師団、1名の行方不明者以外戦死
民間人、死傷者多数
――Chropedia『ガラサドラの戦い』より引用。
●
「……なるほどねぇ。これが英雄『大尉』の真実ってやつか。」
オブリビオンマシンとの戦いが佳境に入る中、ジェイは一人で「調べ事」をしていた。
事象観測術式――世界の監視者であるジェイのそれはあらゆる秘匿を暴くマスターキー。
それが例え一個人の記憶であろうとも例に漏れる事は無い。
「よしっ、それじゃあ『大尉の戦争』を終わらせに行きますか!」
『ぐぁ……ま、だ……まだ、た、戦え…る。…れは、たた、か、わない……と…。』
機体諸共、文字通りの満身創痍ながらその妄執に際限無し。エミールは最早生きている事が奇跡――またはオブリビオンマシンに「生かされて」いると呼べる状況にあった。
「それはガラサドラでの過ちがあるからですか?」
『……!なんで、それをっ……!』
レーヴェンツァーンがデストルードの正面に降り立ち、そしてエミールは無機質で事務的なジェイの言葉に耳を疑った。
「それは重要ではありません。あなたの戦闘意志は抵抗軍のそれとは異なるもの。抵抗軍を巻き込んで行うべきものではありません。」
淡々と事実を突きつけるジェイ。対するエミールはそれまでから打って変わり、その言葉を黙して聞いていた。
「これ以上抵抗軍に犠牲を出さない為にも降伏することをお勧めします。」
『……ハハッ。降伏、か。』
ジェイの降伏勧告に思わず笑うエミール。
『そうだな……お前の言う通り……これは俺の贖罪、抵抗軍は……無関係だ。だがな……。』
絶え絶えながらエミールの言葉は続く。
『俺は、彼らに……贖罪を、見出し……、彼らは……俺に、もとめた……。抵抗の……英雄を……。』
それがエミールのエゴによる戦いであったとしても、しかしその主体は彼が抵抗軍の一員である以上抵抗軍にある。
『お前達に……政府の手先に降伏することは……できない。できる筈がない!』
まさに背水の陣、エミールは自ら逃げ場を断っていたのだ。過去を正せぬ以上、同じ過ちをしない為に。
それがエミールの覚悟であった。
『――俺はっ!大尉として抵抗軍に殉ずる!』
エミールはアブソリュートカノンの発射体勢に入る。先の戦いで既に砲身や縮退炉が損傷していたが、射線上のジェイや政府軍、首都の街並みを道連れに一射を放つ事は叶うであろう。
「――ならば強制的に止めるまで。ツェアライセン、起動」
エミールの降伏を拒否する言葉を受け取ったジェイも戦闘態勢に入る。レーヴェンツァーンは一振りの剣――ツェアライセンを手にし飛翔、デストルード目掛けて突っ込んでゆく。
「―――Ubel:Code Nibelungen Dame.」
そして振るわれる一閃。しかしデストルードは未だなお健在、カノンへのエネルギーチャージも継続中であった。
だが「破断」の概念武装たるツェアライセンは確かに、一切の間違いなく断ち斬った。
万物に定められた「何処から来たりて何処に向かうか」という「運命」。
ジェイは「デストルードが破滅を齎す運命」を断つことでこれを阻止せんとしたのである。
そしてそれは同時にエミールを縛る運命の鎖すらも断ち斬っていた。
『あぁ……結局、俺は――』
大成功
🔵🔵🔵
第3章 冒険
『旗印の堕ちた地で』
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POW : 圧政側の軍勢を一時の間追い払う
SPD : 急ぎその場を後にする
WIZ : レジスタンスのメンバーを護衛する
👑7
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●一つの結末の始まり
『あぁ……結局、俺は――』
その間際、彼は何に気づき何を言いかけたのか。
最早それを知る者も術もなく、ただ一機のオブリビオンマシンが猟兵に倒され、
『大尉いぃぃっ!!』
そのパイロットも運命を共にした、という結末が残るのみ。
猟兵はただ正しく、確かに仕事を成し遂げた。
『……司令部より退却命令が出された。これより抵抗軍全軍は国内外の地下拠点に撤退、ゲリラ戦術による――』
『嫌ァ!あいつらを…、大尉の仇を殺すのっ!』
『今は耐えろ!……残存の全部隊へ、作戦は失敗だ。速やかにこの戦域から離脱しろ!』
『大尉』の死に慟哭する少女をよそに抵抗軍は速やかに行動を開始する。
極めて機械的に統制されて、しかしその心の内に宿す火は決して消えず。
『大尉』という英雄の死が、彼が抵抗軍に殉じたという事実が、猟兵という圧倒的強者により悉くを叩き潰され消えかかっていた抵抗の火を燃え上がらせていたのだから。
【首都防衛隊全部隊へ、奴らをひとり残さず捕えろ。生死は問わん。手負いを逃せば後に響く……徹底的に叩き潰せ!】
時を同じくして政府軍側もその重い腰を上げ始めた。潰走する抵抗軍などと高を括るものも少なくなかったが、彼らの多くは抵抗軍に心底恐怖していた。
『大尉』という旗手のもとに集まったからとはいえ我を上回る戦力、今現在も各地でゲリラ的に攻撃を仕掛ける抜け目の無さ。
そしてこれまで犯してきた仕打ちに対する「代償」を払うことに対して只々恐怖していた。
『やらなきゃやられる、やらなきゃやられる……!』
『殺られる前に殺る……殺るしかない!』
そして極度の恐怖は狂気を齎す、既にオブリビオンマシンは消えたというのに何という皮肉か。
敵対部族への憎悪を煽り外道を正当化する現政権の教育、プロパガンダ。その成果がこれであり、だからこそ政府軍のカルキノスは一斉に動き出した。
心の安寧を得るために、「抵抗軍」なる獣に生活を脅かさせぬために。
そして猟兵。
既に任務を達成した彼らはもはや自由である。
消耗を抑えるために戦域から離脱するもよし、己が立場を誇示すべく、もしくは『彼』の成し得られなかった贖罪を肩代わりすべく戦い続けるもよし。
その選択のどれもが許され、故に謂れなき非難に晒されるであろう。
しかし、これが大団円(ハッピーエンド)で終わるはずがないことは百も承知であったはずだ。
だからこそ、猟兵は選択しなければならない。
この「結末の始まり」に相応しき終わりを迎えさせるために。
ノエル・カンナビス
(SPD)
何もしません。ある程度まで見届けてから帰ります。
もう止まりませんかね、この戦いは。
それも良いでしょう。どちらが勝っても結果は出るのです。
愚かしい、本当に愚かしい、どうしようもないほど無駄ばかりの、
そんな道でも前進は前進です。
何が正しいかなど、各々が自身で決めれば良いこと。
私の仕事は終わりました。
今後どちらかが依頼主になることも、おそらくないでしょう。
――誰かが仇討ちに来る可能性はありましたね。
憎しみの連鎖でも私は構いません。好きにされるが宜し。
もしも。
もしも能うなら、気付きがあるといいとは思います。
どちらも等しく未熟であったのだと。
もはや私には関係ありませんが。さようなら、良い夢を。
ヴィリー・フランツ
心情:任務完了だ、俺は泥沼に引き込まれる前に下がるぜ。
手段:「これからルナジャワ政府に料金を請求しに行くが、一緒に来る奴はいるか?」
機体を指定された場所に駐機して向こうの役人と商談だ。
少なくとも俺達がいたから被害は最小限で済んだ、それなりの誠意を見せてもらおうか、具体的には相場の五割増しの料金を提示、大尉の賞金に関しては…とどめは俺じゃねぇから保留だな。
箔もつけにゃならん、胸にアークライト名誉勲章を着けて、葉巻を吸えばそれなりに不敵な感じになるだろう。
【喫煙者】も発動するし一石二鳥だな。
ん?トライバルエリアの掃討をしたいからこのまま契約しないかだと?なら更に上乗せだな。
(判定はMSに任せます)
クゥ・ラファール
今度はあっちがやる気か。
なら、遠慮は要らなさそうだね。
やるからには徹底的に――やらせて貰うよ。
というわけで、政府軍の殲滅に当たる。
引き続きRafale搭乗。
【推力移動】での高速機動に、時折【空中機動】も交えて撹乱を試みつつ攻撃を加える。
単独の敵には【レーザー射撃】モードのDualFace、複数機が集まっている処にはLooSterの【誘導弾】を叩き込む。
囲まれたら鋼鉄の秩序を発動、一掃を試みる。
まだ戦える敵は距離に応じてDualFaceか、Eliminatorで処理。
――まだ戦う?
クゥは、構わないけど。
ジェイ・ランス
【WIZ】※アドリブ、連携歓迎
■心情
大尉は成仏したかなー。出来てたらいいなー。
さて、お仕事の続き。大尉を手に掛けたんだ。”後片付け”はしないとな。
あ、聞こえるー?抵抗軍諸君。あの機体以外オレ達興味ないんだ、お詫び分は働くぜ。
え、死ね?ひどいなー(HAHAHA)
ま、恨みつらみは後で聞くぜ。あとでな。
■行動
”事象観測術式”の【世界知識】によって抵抗軍と政府軍の戦力差、位置関係を【情報収集】し、適宜UCを発動して政府軍へ撃ち込みます。
同時、【情報収集】で得た情報を抵抗軍に流して援護し、自身も引き続き全武装にて継戦します。
そういう事がわからないわけじゃないけど、今は前向きなよ。
●結末
首都防衛隊司令部、その一室にヴィリー・フランツの姿があった。
革張りのソファーに足を組みながら座り、葉巻を吹かす様子は一仕事を終えた者のそれである。
オブリビオンマシンの破壊を見届けた彼は政府軍へと通信を行い、抵抗軍撃退の報酬について交渉するべく戦域から離脱していたのだ。
とは言え招かれざる客
それから間もなくして部屋のドアをノックし入ってくる者があった。
「やぁや、ミスタ・フランツ!お待たせして申し訳ございません!まさか貴方達があの猟兵だったとは!」
「……フン。」
入って来たのは二人の男、前者は張り付けたような笑みを浮かべる役人風、後者は大量の勲章を胸に並べ不満げな表情を浮かべる軍人だ。
「なに、押し売り同然に連中を蹴散らしたのはこっちの方だ。寧ろ報酬交渉を受けてくれたアンタ方には感謝しきれないくらいさ。」
とヴィリーは口にはしながらも、
(如何にもって組み合わせだな。役人の方はご機嫌取り、軍人の方は手柄を取られたからイチャモンをつけてやろう……って所か?)
内心では交渉相手の出方を窺っており、そしてまさにその通りと言った具合に交渉は進んでいった。
まず役人の男が金額を提示し、ヴィリーが足りないと指摘。それで役人が増額に修正しようとすると軍人が口を出す。
「そもそも我が軍の防衛計画をお前達が乱したのだ。」
「そうは仰いますがね閣下。少なくとも俺達がいたから被害は最小限で済んだんだ。あのエミール・リンデンが戦場に現れたのに、だ。」
「エミール・リンデンが何だ!あれは戦場の伝説に過ぎん!真っ向からの戦闘である以上、我が軍のみで対処できるはずだった!」
そうして軍人が激昂すると「まぁまぁ」と役人が宥め、ヴィリーが妥協可能なラインを探ってくるのだ。
何せ相手は歴戦の傭兵、そして猟兵。しかも世界有数の技術大国「アークライト自治領」の最高位勲章をひっさげてくる以上高給取りである事は確実だ。
ならば国家の財布を預かる役人はその紐をしっかりと締め、「仕方なく」といった具合にゴネまくるのである。
(ふむ……そろそろアレの件をブッこんでみるか。)「そう言えば俺達の介入についてはどのように発表するんだ?」
交渉が平行線に近づきつつあることを察したヴィリーは役人に対してそう訊ねる。
「それは勿論ありのまま、事実を発表するつもりですよ。」
「へぇ。じゃあそこには軍の試験部隊や新型兵装ってやつは出てこないんだな?」
役人の答えに待っていたとばかりに切り返すヴィリー。対する役人の笑みがぎこちないものとなる。
実はジェイの事象観測術式にこの戦闘に関する報道資料がヒットし、ヴィリーに共有されていたのだ。
「まぁこんなビジネスだ。誠意や敬意ってのは軒並み売り切れているか犬が喰ってるってのは少なく無ぇ。そうやってゴネるのも策としてはアリだろう。――だがそれも相手を見誤っちまうと意味が無ぇのさ。」
ところ変わって戦場では二人の猟兵――クゥとジェイが未だ奮戦していた。
『話しが違うじゃないか……!何でやつらが、猟兵が抵抗軍に加勢しているんだよォ!?』
昨日の敵は今日の友……ではないが間違いなく猟兵は抵抗軍の撤退を支援すべく政府軍追撃部隊を相手取り戦っていた。
「戦い足りないって言うならクゥが相手をするよ。」
「ついでに俺も相手だ!」
まさに一騎当千とは今この場において、この二人の為にある言葉であった。カルキノスの頭上を高速で飛び回り爆撃めいた一斉攻撃を行うRafale、そして小型自律兵器群を展開し自らも迎撃に加わるレーヴェンツァーンTypeⅡ。
全く開けた戦場で地と空から――しかもついさっきまで味方だと知らされていた猟兵に襲い掛かられる政府軍の混乱と士気低下は免れない。
唯一変わりが無いのは「猟兵達がカルキノスを蹂躙している」という構図くらいであろうか。
「――あ、抵抗軍諸君。あの機体以外オレ達興味ないんだ、お詫びと言っちゃだけど撤退の時間を稼ぐ分は働くぜ。」
『……っ!』
ジェイが念のために抵抗軍に呼びかけるが、それに対して抵抗軍からは罵詈雑言を浴びせかけられた。
『ふざけるな』『味方面をするな』など、耳を覆ってしまいたいほど酷い暴言と共に吐かれるが、しかしそれは彼らから『大尉』という存在を奪った故の結果であった。
「……あなた達も戦い足りなかったのなら相手するけれど?」
「はい、どうどう……。クールにいこうネ、ビー、クール。」
さすがのクゥも耐えかね手が出そうになるがそれをジェイが無線機越しに宥める。
「ま、恨みつらみは後で聞くぜ。あとでな。そういう事がわからないわけじゃないけど……今は前を向きなよ。」
ジェイはそう言って抵抗軍に無理矢理データリンクを行い、彼らに脱出路を示した。
猟兵達は確かに正しく任務を達成した。オブリビオンマシンを破壊し、破滅的結末を回避したのだ。
そしてジェイもまた、「エミール・リンデン」という一人の人間を救おうとした。オブリビオンマシンと『大尉』という枷から解放すべく動き、しかし結果的にエミールは命を落とした。
――『あぁ……結局、俺は――』
今わの際にエミールが呟いた言葉、その意味するところを知るのはエミールただ一人。
(大尉は成仏したかなー。出来てたらいいなー。)
それは事象観測術式を以てしても決して暴けぬ真相。オバケが苦手なジェイはただ、エミールが化けて出てこない事を祈る事しかできなかった。
「愚かしい、本当に愚かしい……。」
退却する抵抗軍、追撃する政府軍、そして政府軍の追撃を妨害する猟兵。その様子を手を出すでもなくノエルは見届けていた。
オブリビオンマシンを撃破した時点で彼女は以後一切の不干渉を決めていた。というのもこの戦い、さらに言えばこのルナジャワという国家の内戦が酷く歪であったからだった。
確かに抵抗軍には正義があるのだろう。しかし、その根底に存在する民族対立や人道支援の名目で介入を続ける諸外国の存在がその正義を曇らせていた。
恐らく『大尉』の代わりは出てくることだろう。そしてこの地域の「戦争経済」は暫く食い逸れる事はないだろう。
ルナジャワが独立国家の体を維持し続ける限りは。抵抗軍が闘争の火を絶やさない限りは。
「……もう止まりませんかね、この戦いは。」
一瞬、強い殺気を感じ、その方向に振り向く。遥か彼方で土煙を上げながら撤退する小隊規模のカルキノス、そのうちの一機のアイカメラがノエルを捉えていた。
英雄殺しの代償というべきであろうか。そして知らぬことの何と幸せな事であろうか。
猟兵は抵抗軍の敵となり、抵抗軍は新たな敵を得てその怨恨を高めるのだ。
将来、彼らは猟兵を討ちにくるであろう。より大きな脅威を、そしてそれに呼応したオブリビオンマシンを伴いながら。
その連鎖を断ち切るは容易いものでは無い事をノエルは理解していた。故にその殺意を放つカルキノスは見逃すことにした。
「――誰かが仇討ちに来る可能性はありましたね。憎しみの連鎖でも私は構いません。その末に立ちはだかるならば、打ち倒すのみ。」
ゆえに願わくば、彼らが己の未熟さを悟らん事を。
「だから今は――さようなら、良い夢を。」
「……さて、ビジネスの続きと行こうか?なに、別に骨までしゃぶり尽そうって訳じゃない。ルナジャワの誠意と敬意ってのを見せてくれればそれで構わんのさ。」
首都防衛隊司令部の一室でヴィリーは顔面蒼白で今にも倒れそうな役人の男に笑いかける。
軍人のほうはというと猟兵が追撃部隊を攻撃している報を聞いて顔を真っ赤にしながら部屋を飛び出していった。
「さっき話に上がってたとライバルエリアの掃討、それだとそうだな……これくらいの額で……ん?おい、聞こえてるか?……駄目だな、完全に気絶してやがる。」
ヴィリーは役人の顔の前で指を鳴らしたりしてみるもそれが無駄だと知り、医務官を呼ぶべく内線の受話器を取るのであった。
大成功
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