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成さねばならぬと知るならば

#アリスラビリンス #戦後


●ビターな日常
 植えた花が枯れてしまった。
 育てた小鳥が死んでしまった。
 ――あぁ、やっぱり駄目だったんだ。
 嘆くのは、蔓草を編み上げた人形のような青年。
 萎れた蕾を頭部に備えた彼は、覚束ない足取りで自分の家へと帰っていく。
 すれ違うようにして、やはり蔓草を編み上げた人形のような女性が歩いていく。
 その足取りも力がなく、零れるのは溜息ばかり。
 ――あぁ、私達にはもうどうにもできないのね……。
 悲しいも悔しいも、もうとうに忘れてしまった。
 オウガが支配するこの国では、何をしても成功しないのだと、彼らは、理解させられてしまっていたのだから。

●スイートな祭典
「チョコレートは好きかい?」
 手元のメモを捲りながら、グリモア猟兵であるエンティ・シェア(欠片・f00526)はおもむろに尋ねた。
 曰く。アリスラビリンスのとある国を、オウガの支配から解放してほしいと言う。
 その国の住民は、何かを成功させることが出来ないのだと言う。
 何かをしようとすれば、必ずオウガによって妨害され、失敗してしまう。
 例えば、美味しい料理を作る事、綺麗な花壇を作ること、部屋の模様替えから、約束の待ち合わせすら、成させてもらえない。
「それによって、住民達はすっかり諦めの感情に支配されているんだ。どうせ何も出来ないと、何をすることもしようとせず、オウガ達の支配を受け入れてしまっている状態でね」
 オウガを蹴散らしてしまえば住民達を説き伏せることも可能だろう。だが、どういうわけか住民達が憂鬱な気持ちでいると、オウガの力が増す仕組みとなっている。
 オウガに苦戦する猟兵達を見てしまえば、住民達はますます諦めが加速し、更にオウガがパワーアップしてしまうだろうとエンティは肩を竦めた。
「そこでね、まずは住民達に明るい気分になってもらおうと思ってね」
 何もかもをすっかり諦めてしまった住民達は、最早何もする気がない。
 だが逆に、それを見届けたオウガ達が今ならば油断をしているのだ。
「我々が国にこっそりと潜入し、住民達の前で、甘くて美味しいチョコレート菓子を作ってプレゼントしようというわけだ」
 お菓子作りならば、挑戦の結果が早期に形となる上、住民と一緒にやることも可能で、成功体験も重ねやすい。
 チョコレートにこだわる必要はないのだが、そこはほら、バレンタインが近いから。
「それに甘いものは気分も良くなるだろう?」
 料理が苦手な物でも気軽に挑戦してくれればいい。失敗しても何度でも挑戦するという気概を示せば、住民達を立ち直らせるには十分だから。
 それが出来るだけの材料は用意しようとエンティは微笑んだ。
「君達がお菓子を作り上げて楽しいティータイムをしようと言う頃にオウガ達が攻めてくるだろう。無粋なことだね」
 だが安心していいと続ける。無事に住民達が立ち直っていれば、国を覆っていた力は反転して、オウガ達の力は相当弱くなっているだろうから。
 適当にユーベルコードで蹴散らしてしまうといいよと告げて、ころり、首を傾げて見せた。
「折角だ、意中の子に渡すチョコレートの練習でも、いかがかな」
 それではよろしく頼むよと言い添えて、空箱を重ねたようなグリモアを展開するのであった。


里音
 里音です。バレンタインにかこつけてそれっぽいことをしたいなって思いました。

 向かう国は、植物を編み上げた人形のような姿の住民が生活しています。藁人形よりスマートな形状です。
 頭髪にあたる部分が花になっており、大きな薔薇を咲かせる者から小さなカスミソウを咲かせる者まで様々います。蔓植物でない花でも咲きます。
 現在は蕾になってしまっているその花ですが、気分が上向きになると開花します。
 特に花由来の性格とかではなく、立ち直り完了の目安です。

 住民のお家でキッチンは貸してもらえます。
 材料は言えばもらえます。チョコレート系のお菓子をお勧めしていますが、別のお菓子でも普通の料理でも大丈夫です。
 料理は苦手なので失敗すると思うけど何度でも挑戦する!
 料理は苦手なので後片付けをしっかりやります!
 なども歓迎です。

 第二章は集団戦です。
 二章開始時に断章を追加予定ですが、その前にプレイングを掛けて頂いても問題ありません。

 OP公開後、【2/1の8:31~】受付を開始します。
 皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 日常 『ハッピー・ハッピー・ホリデイ!』

POW   :    力強くお祝いをする。

SPD   :    素早くお祝いをする。

WIZ   :    繊細にお祝いをする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
乱獅子・梓
【不死蝶】
美味い菓子を作って住民を元気付ける、か
腕が鳴る仕事だな!
自前のエプロンつけて気合十分
…おい、なにちゃっかり食べる側に回ろうとしてんだ
お前も!作るんだよ!

綾に初心者向けチョコ菓子レシピを押し付け、俺も調理開始
俺が作るのはサンセバスチャンというチョコケーキ
プレーンとチョコのスポンジーケーキを作り
それらを大中小の型でくり抜いて重ねて…と作業工程はかなり多いが
断面は美しい市松模様になっており
切り分けた時の感動はきっとケーキ随一
綾の言葉を借りるなら「映え」ってやつだな

お、綾のもなかなか良く出来ているじゃないか
写真撮るのはいいが、食うのはまだ早いから!
お前の分もちゃんと用意しているから慌てるな


灰神楽・綾
【不死蝶】
スイーツ作りは梓の得意分野だもんねぇ
ねぇねぇ、なに作るの?ケーキ?クッキー?
早く食べたいな~楽しみだな~
……えー、俺もー?

梓に渡されたレシピを渋々眺めながら何を作ろうか考える
お、これなら俺でもいい感じに作れるかも
選んだお菓子は生チョコ
作り方は超ざっくり言うと
チョコと生クリームを混ぜて冷やし固めるだけ
うーんめちゃくちゃ簡単、それでいてお洒落
こんなに簡単ならアレンジも出来ちゃいそう
ホワイトチョコVerや抹茶チョコVerも作っていく
ふふ、何だか俺も料理男子になったみたい

うわぁ、梓のケーキすっごい
梓の作った映え力抜群のケーキにテンション上がりまくり
ねぇ、写真撮っていい?一口食べていい??




 自前のエプロン装備完了。乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は今日も気合十分だ。
「美味い菓子を作って住民を元気付ける、か。腕が鳴る仕事だな!」
 そう言った仕事ならお任せあれと言わんばかりの梓の隣で、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はいつも通りゆるゆると笑っている。
「スイーツ作りは梓の得意分野だもんねぇ。ねぇねぇ、なに作るの? ケーキ? クッキー? 早く食べたいな~楽しみだな~」
 いつも通りの調子な綾に、梓とて今日ばかりは厳しい眼差しを向ける。
「……おい、なにちゃっかり食べる側に回ろうとしてんだ。お前も! 作るんだよ!」
「……えー、俺もー?」
 料理なんてしたことないよ? お菓子なんて作ったことないよ?
 拗ねたような眼差しは、そんなことを訴えてきているように思う。
 しかし本日梓が作る予定のお菓子はとても手間と時間がかかるものなのだ。綾の手伝いまでしている場合ではない!
「これならお前にも出来るだろう」
 託されたのは初心者向けのチョコ菓子レシピ。
 押し付けられたようなそれを、最初は不満げに眺めていた綾だが、ふと目についたレシピが、手順も材料も道具もとても少ないではないか。
 これなら俺でもいい感じに作れるかも、と材料となるチョコを取りに向かった綾を見送って、梓は自身の作業に取り掛かる。
 用意するのは二種類のスポンジケーキ。
 ふわふわのスポンジケーキを焼くのもなかなか大変な作業である。しかしその辺は梓にとって慣れたもの。いつの間に料理スキルがここまで上がっていたのか。スイーツは門外漢だったのがはるか遠い記憶である。
 さておき、無事にチョコとプレーン、二種類二色のスポンジが焼き上がったところで、既に厨房にはよい香りが漂っていた。
 一体何をしているのかと住民達の興味をそそるには十分で、ふわっふわのスポンジケーキが二つも焼き上がっているのを見つけると、住民達の間にざわめきが起こる。
 良い感じに注目を集めているのを気配だけで悟り、梓はここからが本番とばかりにスポンジケーキを切り分けていく。
 まず手始めに使わない最上部をカットして取り除く。こちらは後でスタッフ(綾)が美味しく食べてくれるだろう。
 次に等分になるようにさらに輪切りにカット。この時点でチョコとプレーン、二種類のスポンジケーキが四枚仕上がった。
 そして大変なのはここからだ。輪切りにした四枚それぞれを、大、中、小の三つのサイズの型を用いてくりぬいていく。
 よく切れるナイフで慎重に型抜きをしていく梓の真剣な眼差しに、住民達はかたずをのんで見守った。
「よし、出来た!」
 後は綺麗にくりぬかれた輪っか状のスポンジ達を、色が交互になるように組み立てていく。
 甘く溶けたガナッシュを繋ぎに塗り込みながら、丁寧に重ねられていくスポンジケーキ。
 すごい、とか、こんなことが出来るなんて、とざわざわしている住民達のささやかな声を声援代わりに、仕上げのガナッシュをたっぷりかけてコーティング。
 後はガナッシュが冷えて固まるのを待つばかりとなったところで、綾の方は大丈夫だろうかとちらり様子を窺う梓。
 レシピの中から何を選んだのだろうとそーっと覗いてみれば。
 鼻歌交じりに、抹茶を溶かした牛乳とチョコとを混ぜ合わせているところのようだった。
 単純な工程が上手くいっているのを楽しんでいるのか、傍らには既にいくつかのチョコが仕上がっていた。
 レシピ通りのプレーンチョコを始めとして、ホワイトチョコバージョン、紅茶やコーヒーの風味を付けたものまで、何種類もだ。
「お、生チョコか。綾のもなかなか良く出来ているじゃないか」
「あれ、梓、もうできたの?」
「チョコが冷えるのを待ってるところだが……それにしても随分作ったな」
「梓のが時間かかりそうだな~って思ってたら、色々アレンジ思いついちゃって。ふふ、何だか俺も料理男子になったみたい」
 余程楽しく調理していたのだろう。アレンジも、住民達があれもこれも試してみようとわくわくしている綾へ、おずおずと提案してみたものがあるようで。
 綺麗に仕上がったチョコを見た住民の頭の蕾は、もうすぐにでも綻びそうなほどに、膨らんでいた。
 梓の作業を見守っていた住民達も同様で。もう一押し、完成品をお披露目すれば、きっと彼らは立ち直るだろう。
「よし、それじゃカットするか!」
 冷えて固まったガナッシュの上からそっとナイフを入れて切り分ける。その断面は、チョコとプレーンで見事な市松模様を形成していた。
「うわぁ、梓のケーキすっごい」
「お前の言葉を借りるなら『映え』ってやつだな」
 はしゃいでいるのは綾ばかりでもない。住民達も蔓草を編んだ手をぱちぱちと鳴らし、ふわふわ揺れる蕾を次々と開花させていく。
 一気に華やいだ空間に表情を緩める梓。その袖を引いて、端末を構えた綾がワクワクと見つめてきた。
「ねぇ、写真撮っていい? 一口食べていい??」
「写真撮るのはいいが、食うのはまだ早いから!」
 住民達も皆嬉しそうに眺めているのだ。見た目も堪能できるお菓子だからこそ、しっかり目でも味わってもらいたいのだ。
 勿論、その後は思い切り頬張ってもらうつもりではあるけれど。
「お前の分もちゃんと用意しているから慌てるな」
「ならいいや。一杯撮影しちゃお」
 ころっと機嫌を直して住民と一緒にはしゃぎだした綾。見守りながら、梓は丁度冷え固まった綾の生チョコを丁寧にカットしてやるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨倉・桜木
SPD/アドリブ、連携歓迎

実に簡単なメニューで、これならできるかも!と少しでも前向きな気持になってもらおう。チョコ菓子…まあチョコは使うか。

成そうとすること尽く妨害されるのはストレスが溜まるだろう。少し季節外れだけど、とても簡単なおやつを作ろうか。なんと湯煎すらしない。

1.ピーラーで板チョコを削る
2.器にバニラアイス(持参)を盛る
3.1とココアパウダーを盛りつけたアイスにまぶし、ミントの葉をそえる

『即席パリパリチョコアイス』

ほら、焼いたパンにジャムを塗るような手間で出来上がりさ。

少しさましたコーヒーをかけて、アフォガード風にいただくのもお洒落だろう?

暖かい室内で冷たいアイスも乙なものさ。




 オウガによる支配を受けている不思議の国。その住民達が憂鬱な表情でため息を吐く姿を見て、雨倉・桜木(花残華・f35324)はひっそりと眉を寄せる。
(成そうとすること尽く妨害されるのはストレスが溜まるだろう)
 そして、きっと彼らはその溜まったストレスを発散する事さえできなかったのだ。
 悔やんで、嘆いて、憤って――全部、無駄に終わって。そうやって過ごすことを余儀なくされてきた彼らに、少しでも前向きな気持ちになってもらいたい。
 そのために桜木が用意したのは超簡単お手軽メニューだ。
 おすすめはチョコ菓子と聞いたが、まぁ、一応チョコは使うからお勧めの枠内だろう。違ってもいいんだし。
「――というわけで、少し季節外れだけど、とても簡単なおやつを作ろうか。なんと湯煎すらしない」
 素人には意外と難しい湯煎と言う工程。
 それすらしないチョコ菓子とはいったいどのようなものだろう。
 声を掛けられるまま、ふらふらと集まってきた住民達は、桜木がどのようなことをするつもりなのか、見守るように見つめていた。
 興味津々と言う顔こそしないが、まだかろうじて聞いてみようという意思はあるようだ。
 少しばかりの安堵を胸に、桜木は用意した板チョコをピーラーで削っていく。
 チョコレートが細かくパラパラとボウルに散っていく様子を、上から下、上から下とひっきりなしに目線を動かすさまにくすりと笑んで、次に取り出したのはバニラアイス。
 ちょっとおしゃれに硝子の器に形を整えて盛り付けたら、ぱらぱらとココアパウダーをまぶし、削ったチョコを散らしていく。
 仕上げにミントの葉を添えれば、ほら、とっても簡単。
「名付けて『即席パリパリチョコアイス』の完成。ほら、焼いたパンにジャムを塗るような手間で出来上がりさ」
 とん、とテーブルの上に置かれたそれは、驚くほど簡単なのに、驚くほどお洒落なアイスだった。
「こ、これなら邪魔をされる前に出来るかもしれない……」
「わたし、ちょっと、やってみようかな……」
 互いに顔を見合わせ、そわそわとし始めた住民達に、桜木はそっとピーラーを差し出す。
 おずおずと受け取り、板チョコを削りだした住民達は、次第に夢中になって削ったチョコを量産していく。
 その間に、別の住民達がアイスを器に盛りつけて、ちょっと少ないかな、もうちょっと丸くした方がいいかなと試行錯誤をしている。
 良い傾向だと頷いて、桜木はここでもう一つ、お洒落度アップなアレンジレシピを提供する。
「こうして、少しさましたコーヒーをかけて、アフォガード風にいただくのもお洒落だろう?」
「わぁ……!」
 ひと手間加えてがらりと雰囲気を変えたアイスに住民達が歓声をあげると同時、頭の花が咲いた。
 その光景に瞳を細め、微笑んで。桜木はぱりぱりとしたチョコの食感残るアイスにスプーンを差す。
 冬のこの時期に冷たいものはなかなか手が出ないものだ。けれど、暖かい部屋でぬくぬくしながら食べるアイスは、乙なもの。
 その良さも伝わるだろうかと見やったその先では、作ることに夢中になった住民達の姿があって。
 もう少しだけ、楽しく作業をした後でもいいだろうと一足先に一口味わう桜木であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザクロ・シャハブ
ルクル(f31003)と行く

『…俺はお菓子作りはやったことがない。だから教えてくれると嬉しい…あと怖くないぞ。』
可愛いエプロンは着て来た
【元気】はある

『チョコチップクッキー…良いな。手伝う』
ルクルのやり方を見ながら作る
チョコは刀で斬る方が早い
余ったらつまみ食い

『おお……おおぉ…。』(耳ピコピコ)
クッキーができたら出来立てを一つ…ルクルも食べるか?
『うん、旨い。』(耳ピコピコ)

『幸せお裾分けの時間だ』
ダイナミックに現れて町人を褒めならがらクッキーを渡そう(起きてて偉い、品揃えが良くて偉いなど)
『ルクルも教えてくれて偉い。そして、教えてくれてありがとう。』

町人を沢山誘ってティーパーティーだ


ルクル・クルルク
ザクロくん(f28253)と一緒に

今日はルクルがお菓子作りの先生なのです
ぴぇぇ、責任重大ですが【落ち着き】ましょう
ルクルはやればできる子ですから!多分(可愛いエプロンを装備)

ルクル、あまり難しいものは作れないので
チョコチップクッキーはどうでしょうか?
ザクロくんは刀を扱うのが上手そうですから、チョコを刻むのをお願いしますね

焼き立てを一番に食べられるのは、作った人の特権ですよね
むふー、美味しいのです(耳ピコピコ)

【歌唱】で気分を盛り上げつつ、ザクロくんに続いてダイナミックに現れ、クッキーを皆さんにお裾分け
毎日頑張っている皆へのご褒美です
焼き立てのクッキーと紅茶で、幸せティータイムを始めましょう♪




 ぴん、と立ったウサギの耳をピコッと揺らし、ルクル・クルルク(時計ウサギの死霊術士・f31003)はやや緊張した面持ちでそこに居た。
 と言うのも、ザクロ・シャハブ(懐中兎計・f28253)と共に、オウガの支配を受けている不思議の国でお菓子を作りにきたのだが、なんと本日はルクルが『先生』となってお菓子作りを教えることになっているのである。
 責任重大だ。しかし、大きく深呼吸して自身を落ち着かせたルクルは、可愛いエプロンをびしっと装備。
「ルクルはやればできる子ですから!」
 多分。とか語尾に聞こえたけど気にしない。
 ルクルのそんな緊張を、自身の雰囲気が怖いせいかと首を傾げたザクロ。ほんの少しの思案の後、丁寧に教えを乞いながら、怖くないぞと安心を促しつつ、ルクルと同じように可愛らしいエプロンを装着した。
 顔を見合わせ、こくっと頷き合って。本日のお料理教室の開幕だ。
「ルクル、あまり難しいものは作れないので、チョコチップクッキーはどうでしょうか?」
「チョコチップクッキー……良いな。手伝う」
「わぁ、頼もしいです。ザクロくんは刀を扱うのが上手そうですから、チョコを刻むのをお願いしますね」
 ルクルの依頼に頷いたザクロ、見よう見まねでチョコを刻みだしたが、扱いに慣れない包丁は意外と難しい。
 ふむ、と一つ思案して、閃いた。
 刀を使えばいいのでは――と。
 すっ、と構え、集中する。そうして繰り出される剣閃は、見事にチョコを刻んでいく!
 包丁よりもずっと速い、と気をよくしたザクロはそのままカットチョコを量産していき、ちょっと斬りすぎた分はそっと口の中にお片付け。
 ルクルはその光景を特に気にせず自身の調理を続けていく。
 大事そうな刀をチョコを刻むのに使っていいのだろうかとちょっぴりはらはらする住民達の眼差しがあったりなかったりもしたけれどそれも気にしない。
 バターに粉糖、刻んでもらったチョコチップ。さらに薄力粉を加えて丁寧に混ぜ合わせ。
 完成したクッキー生地を天板に並べ、いざ、オーブンへ。
 チョコを刻んだ後はルクルの作業をじっと眺めつつ、時折必要そうな道具を手渡していたザクロは、天板の投入されたオーブンをじっと見つめていた。
「……思っていたより簡単そうだったな」
 もっと難しそうなイメージがあったと言いたげな顔に、くす、と微笑んで。ちょん、と隣に並んでオーブンを見守るルクル。
「レシピ通りに丁寧にやれば、意外と簡単なものです」
 そう、手順通り丁寧にやったのだから、後は上手く出来ていることを祈るだけ。
 後片付けをしながら待っていると、チーン! と軽快な音と共にオーブンが焼き上がりを告げてくる。
 蓋を開けばすぐに漂う、甘くて香ばしい匂い。焼き加減も完璧なクッキーの完成だ。
「おお……おおぉ……」
 ちゃんとクッキーになっている、と感動したような声を上げたザクロは、天板の端で焼かれていた小さめサイズのクッキーを一つ、摘まみ上げた。
 勿論それは己の口元に運ばれる。味見も大事な作業工程なのだから。
「ルクルも食べるか?」
「焼き立てを一番に食べられるのは、作った人の特権ですよね」
 ふふっ、と笑って、ルクルも一枚、口に含んで。
「うん、旨い」
「むふー、美味しいのです」
 揃って耳をピコピコさせる微笑ましい光景が見られたのであった。
 クッキーが無事に完成したとあれば、後はこの成功体験を意気消沈した住民達にお裾分け。
 少しでも明るい気分になるように、テンポの良い歌を口遊みながら住民達の前にダイナミックに登場する二人。
 そうしてゆっくりと顔を上げて見つめてくる住民に、クッキーを差し出して。
「幸せお裾分けの時間だ。今日もしっかり起きてきて偉いな。クッキーで一休みすると良い」
「オウガに邪魔されながらも皆で毎日頑張ってますし、ご褒美がなくちゃ駄目ですよね!」
 にこにこと微笑むルクルと、やや表情が乏しいながらも努めて優しい声音で語り掛けるザクロ。
 二人の時計ウサギからクッキーと称賛を受け取った住民達は、なんだかくすぐったいような心地に、顔を見合わせてはにかんでいた。
「あっちに温かい紅茶も用意しているぞ」
「焼き立てのクッキーと紅茶で、幸せティータイムを始めましょう♪」
 歌う二人を先頭に、蔓草人形の行列が出来るさまは、さながら行進のようで。
 その足取りが軽く弾み、ティータイムの場へとたどり着く頃には、住民達の頭部には様々な花が開いているのを、見つけることとなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
ん、何もさせてもらえないなんて、かわいそう……。早く助けてあげないと、だね。

住民さんのお家にお邪魔して、わたしもチョコレートを、作るよ。普通のチョコレートは作ったことあるから……生チョコレートに挑戦してみよう、かな。
チョコレートはしっかり同じ大きさに刻むのが、大切。沸騰する直前まで温めた生クリームを流してなめらかになるまで混ぜたら、あとは冷やしてカットすれば、完成。
住民さんたちが興味を持ってくれれば、一緒に作ってもらおう、かな。こんな時でも、みんな生きることは諦めなかった、よね。だから本当はきっと何でも、できるんだよ。せっかくだからホワイトチョコレートとか抹茶の生チョコレートを作って、みよう。




 何をするにも邪魔をされて、何もさせてもらえない。そんな住民達の姿に、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は表面上無表情に見えるまま、ほんの少しだけ眉を寄せる。
「ん、何もさせてもらえないなんて、かわいそう……。早く助けてあげないと、だね」
 気合は十分。意気消沈した住民の家でキッチンを借りたミアは、手早く材料を並べていく。
 溶かして固める、そんな普通のチョコレートは作ったことがある。ゆえに、今日は新しいタイプに挑戦を。
 とん、と材料の一つとして並べられた生クリーム。そう、生チョコレートを作るのだ。
 刻むチョコレートはしっかりと同じくらいの大きさに。これが大切なポイントである。
 チョコの用意が出来たら、生クリームを沸騰しない程度に慎重に温めて。
 二つを混ぜ合わせたら、丁寧に、滑らかになるまで混ぜていく。溶けたチョコと生クリームが綺麗に混ざったら、後は型に流し込んで、冷やすだけ。
 手順はとっても簡単。それを丁寧にこなしていくミアの手際の良さに、住民達は感心したような目で見つめてくる。
 ちら、とそんな彼らを振り返って、ことりと首を傾げて見せて。
「よかったら、一緒に、やる?」
 まだ材料はあるからと促せば、顔を見合わせた住民達はおずおずとちかづいてきてくれる。
 どうせ何もできないという諦めを抱いている彼等だけれど、些細なきっかけで、出来るかもしれないという希望もちゃんと抱いてくれるのだ。
「こんな時でも、みんな生きることは諦めなかった、よね。だから本当はきっと何でも、できるんだよ」
「なんでも……」
「そう、何でも。例えば、この生チョコを、ホワイトチョコや抹茶の生チョコにアレンジすること、だって」
 折角だからと材料を追加し、さぁ、とミアは住民達を促した。
 チョコレートは同じくらいの大きさに。
 生クリームは沸騰させないように。
 混ぜ合わせる時は、丁寧に滑らかに。
 基本的なことをしっかりと踏まえながら説明すれば、住民達も恐る恐るではあるが作業を進めていく。
 チョコが刻めた。生クリームが温められた。とても綺麗に混ぜられた。そんな一つ一つを嬉しそうに受け止める姿に、ミアの表情も、柔らかくなる。
(あ……)
 ほころんだのは、表情ばかりでもなく。住民達の頭部の蕾も、膨らんでいくのが目に入る。
 きっと、自分達で作った生チョコレートの甘さを味わえば、一気に花開くことだろう。
 その時を楽しみにしながらも、最後まで気を抜くことなく、ミアは住民達と向き合うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

そうですね、ダメだと思う事は自信と意欲を失いますからねぇ
えぇ、ルーシーちゃんのチョコレートお菓子を食べたら皆様もきっと元気になってくださります
おや?僕も?ありがとうねぇ
すみません、キッチンをお借りします
えぇ、ご一緒にやりましょう。楽しいですよ

僕ですか?そうですね、チョコレートケーキでしょうか?
ボリュームがあって皆様美味しく頂けますからね
ではチョコレートケーキを作りましょう
ふふっ、その誰かさんは幸せ者ですねぇ

では、チョコレートを溶かして
小麦を網で細かく振って
チョコレートケーキの作り方を教えながら
二人とも上手に出来ましたね
と、ルーシーちゃんとヒマワリさんをそっと撫でて
おや、とても綺麗な花ですね

えぇ、一緒に食べましょうか?
頑張ったご褒美に
ホットチョコレートを淹れますね
ほら、頑張ってやれば出来るものですよ
実は沢山カップチョコレートケーキを作ったんです
他の皆さまにもおっそわけしましょうね


ルーシー・ブルーベル
【月光】

知ってるわ
どうせダメだろうって思うとチカラが出てこないのよね
飛び切りおいしいチョコレートのお菓子を作って
元気出してもらいましょう!
まあ?ゆぇパパも一緒によ
パパが居ればお味は間違いないもの!
そちらのヒマワリさん、キッチンをお借りしていいかしら
それに、良かったら一緒にいかが?

ねね、パパはチョコのお菓子なら何が好きかな
チョコレートケーキ!ルーシーはそれ作りたいわ
バレンタインで誰かさんにあげる練習になるし!
ふふー、幸せになってくれるといいのだけど

ヒマワリさんとチョコを砕いて溶かして、
小麦を網で振る……なかなか難しい、けれど
ゆっくりやっていけばきっと大丈夫
パパから教わる通りにお手伝いしていって、完成!
出来立てのお菓子の良い香り!
頭を撫でてもらえて喜んでいた隣でヒマワリさんが花開いていく
わああ、キレイ!

えへへー、次は一緒に食べましょう
作るのもいいけれど
皆で食べるのも気持ちがワクワクするのよ
ドリンクもチョコレート!ステキね
パパったら何時の間に?
こっちもおいしそう
ええ!きっとみんな喜んでくれるわ




 不思議の国の住民達が晒されている理不尽に、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は「知ってるわ」と眉を寄せる。
「どうせダメだろうって思うとチカラが出てこないのよね」
「そうですね、ダメだと思う事は自信と意欲を失いますからねぇ」
 頷く朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は、オウガ達の思惑通りに意気消沈し、萎れた蕾を備えるばかりの住民達の姿を見渡し、小さく息を吐く。
 しかし、居た堪れないと言うような声音のルーシーを見下ろせば、気合十分と言った様子の力強い眼差しでこちらを見上げてくるのだから、きっと、何の問題もない。
「飛び切りおいしいチョコレートのお菓子を作って、元気出してもらいましょう!」
「えぇ、ルーシーちゃんのチョコレートお菓子を食べたら皆様もきっと元気になってくださります」
「まあ? ゆぇパパも一緒によ」
 にっこりと笑うルーシーに、ユェーがきょとんとしていると、だって、と少女は顔を綻ばせる。
「パパが居ればお味は間違いないもの!」
 屈託のない笑顔に、ふ、と笑みこぼし。ありがとうねぇ、と微笑みかけたユェーは、ルーシーを伴って住民達を訪ねた。
 ヒマワリが咲くだろう大きな蕾を頭に持った蔓草の住民に、キッチンを借りて。
 どうぞお好きなようにとだけ告げて踵を返そうとするその手を、ルーシーの小さな手が引き止める。
「良かったら一緒にいかが?」
「え……」
「えぇ、ご一緒にやりましょう。楽しいですよ」
 ぜひ、ぜひ、と二人の笑顔に促されて、戸惑いながらも共にキッチンに立つ住民。
 そわそわしている様子に微笑みかけたルーシーはその笑顔のまま、ユェーを見上げる。
「ねね、パパはチョコのお菓子なら何が好きかな」
「僕ですか?そうですね、チョコレートケーキでしょうか? ボリュームがあって皆様美味しく頂けますからね」
「チョコレートケーキ! ルーシーはそれ作りたいわ」
 バレンタインで誰かさんにあげる練習になるし! とふくよかに笑うルーシーに、ユェーはくすくすと笑う。
「ふふっ、その誰かさんは幸せ者ですねぇ」
「ふふー、幸せになってくれるといいのだけど」
 二人の微笑ましいやり取りに、少しばかり和んだ様子の住民。まずはルーシーと共にチョコを砕いて、溶かしていく。
 チョコが上手に溶けきったら、お次は薄力粉を振るいにかけていく。
「なかなか、難しいわ……」
「大丈夫、ゆっくりやれば出来るよ」
「わぁ、粉が綺麗になってます」
「ほんとう? 上手く出来てるならよかった!」
 メレンゲのかたさはこれくらい。
 お砂糖は半分ずつ混ぜた方がいい。
 生地はさっくりと切るようにと意識しながら。
 ユェーが指示してくれる手順通り、ゆっくりと丁寧に作業をするルーシーと、彼女を手伝いながら一緒になって真剣な表情をする住民と。
 一生懸命な二人の様子を見つめていると、微笑ましさについ、口角が上がる。
「オーブンは180度に予熱をしておきましょう。熱いですから、僕が入れますね」
 肩に流し込んだスポンジ生地をオーブンへ投入したら、ようやく人心地。
 焼き上がるまでの間にチョコクリームを作ったりと、まだまだ作業は残っているけれど、次第に香ばしく焼き上がっていく匂いが漂ってくると、わくわくした気持ちが抑えられずにちらちらと見てしまったりして。
 焼き上がりを告げる音に、パッと明るい顔で振り返る様子が、ルーシーと住民とで揃ったものだから、ユェーはたまらず、口元を隠して笑っていた。
 焼き上がったケーキに、チョコレートクリームもたっぷり塗って、デコレーションも可愛く仕上げて……ついに、完成だ。
「出来立てのお菓子の良い香り!」
「す、すごい、ケーキが出来た……!」
「二人とも上手に出来ましたね」
 はしゃぐルーシーと感動したように声を震わせた住民とを交互に見て、ユェーは二人の頭をそっと撫でる。
 その手のひらが心地よいのだと言うように嬉しそうに笑うルーシーは、驚きと照れくささで顔を覆ってしまった住民を微笑まし気に見つめて、ふと、気付く。
 その頭のヒマワリが、大輪の花を咲かせた、その瞬間に。
「わああ、キレイ!」
「おや、とても綺麗な花ですね」
 花が開けば、どこか無気力だったはじめと異なり、住民の表情も纏う雰囲気さえも明るくなっている。
 二人のおかげです、と笑顔を見せたヒマワリに、ルーシーも満面笑顔の花咲かせ。また、その手を引く。
「えへへー、次は一緒に食べましょう」
 一緒に作るのも勿論楽しいけれど、皆で食べると言うのも、気持ちがワクワクするものだ。
「頑張ったご褒美に、ホットチョコレートを淹れますね」
「ドリンクもチョコレート! ステキね」
 そうと決まれば早速準備をと、ルーシーが作業用の踏み台からちょんと飛び降りた瞬間、再びオーブンが焼き上がりを告げる。
 きょとんとした顔で見上げれば、ユェーがにっこりと微笑んで、オーブンから沢山のカップチョコケーキを取り出したではないか。
「パパったら何時の間に?」
「二人が夢中になっている間にね」
 気付かなかったのはそれだけ頑張った証拠でしょう、とウィンク一つ。
「他の皆さまにもおすそわけをしましょうね」
「ええ! きっとみんな喜んでくれるわ」
 そうしたら、また花咲く瞬間を見られるだろうか。ルーシーは一足先に咲いたヒマワリをもう一度見上げて、ふふ、と笑みこぼす。
 甘いお菓子と、色とりどり。ワクワクとワクワクの重なる心地に、足取り軽く、弾ませて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
こんにちは、愛らしいお花さん
台所をお借りしてよいかの?

許可を頂けたら御礼を伸べて、お邪魔して。
萎れた蕾から感じ取れるつらさに胸が痛むけれど
少しでも励ませればと、お喋りしながら取り掛かる

甘い日に贈り物をしたいのじゃが、料理下手ゆえ失敗続きでのう
挫けぬよう見守って頂ければ心強い
なおアドバイスは大歓迎(チラッ
マシュマロを作るのじゃよ
料理本…専門用語が並んで目が滑…こうかな
お花さんはまだ元気が無いかもだけど「それは違う」みたいな空気を読み取り軌道修正を重ね
チョコペンでパンダのペイントをして、ましゅまろぱんだ完成―…!

会心の出来、正に大成功…!お花さんのお陰じゃよ
ぜひ御礼に貰ってほしい
ぱんだは元気が出る




 零れるのは、溜息ばかり。そんな不思議の国の住民の元に、一人の男が笑みを湛えて訪れた。
「こんにちは、愛らしいお花さん。台所をお借りしてよいかの?」
 ぱち、と瞳を瞬かせて、こく、と頷いて。台所へと招き入れたのは、佐那・千之助(火輪・f00454)。
 ありがとう、と微笑んで台所に立った千之助は、言われるがまま、特に疑問も抱かなければ抵抗する気もない様子の住民の、萎れた頭部の蕾に、ほんの少しだけ眉を下げた。
 感情を枯らされたかのようなさまに、胸が痛む心地になる。
 けれど、いや、だからこそ。少しでも励ませればと、千之助は柔らかな声で、気さくに声を掛けていくのだ。
「甘い日に贈り物をしたいのじゃが、料理下手ゆえ失敗続きでのう」
「そうですか……」
「そう、だから、挫けぬよう見守って頂ければ心強い」
「……そう、ですか」
 挫けぬという言葉に、何かを刺激されたのか、少しだけ表情に変化が見られた気がして。
 チラッと視線を向けつつ、千之助は小首を傾げてみせた。
「なおアドバイスは大歓迎」
 そんなことできるわけがない、と。顔に書いてあるようにも見えたけれど。
 否定を口にしないだけ、良いことだと言うように微笑んで早速作業に取り掛かる。
 千之助が作ろうとしているのは、マシュマロだ。
 ちゃんと料理本も用意して、準備万端気合十分で臨んでいるわけだが……ぺら、と本を捲りながら作業する千之助の手は、なんというか、文字通りの手探り感がにじみ出ていた。
「こうも専門用語が並んでおると目が滑……こうかな」
 粉ゼラチンとやらをふやかした鍋を火にかけながら、砂糖はこっち……と小分けにしたボウルを手に取って。
 混ぜる道具は、と視線を彷徨わせ、砂糖は二回に分けてと教本を反芻しながらの作業の間に、鍋の温度はどんどん上がる。
 そして作業に一生懸命になっている千之助は気付いていない。沸騰させないのがポイントであるという事に。
「あっ……」
「うん?」
「いえ、ここに……」
「なになに、沸騰させないように注意……おっと、危ないところであったな。おかげで失敗せずに済んだ」
 忠告通りそっと火を弱め、混ぜながら礼を述べれば、住民はほんの少し、嬉しそうに微笑んだ。
 その後も、聞きなれない名称の道具などを代わりに取り出してもらったり、次に使う材料を取りやすい位置に置いて貰ったりと、ちょっとしたことを手伝ってもらいながら順調に調理を勧める千之助。
 最終的に、ふわふわのマシュマロにチョコペンでパンダのペイントをする段階になった頃には、仕上がっていくお菓子に二人してわくわくしたような目をするようになっていた。
「ここをこうして……ましゅまろぱんだ完成――……!」
「わぁ、とっても可愛いパンダさんです!」
「会心の出来、正に大成功……! お花さんのお陰じゃよ」
 ぱちぱちと拍手する住民の頭には、気付かぬ内に大きなチューリップが咲いていた。
 すっかり明るい表情になった住民を見ると、自然と、千之助の表情も綻んでいく。
「ぜひ御礼に貰ってほしい」
「えっ」
「なに、作り方はこれでバッチリ覚えたからの。次は一人でもうまく作ってみせるとも」
 任せてくれと言うように胸を張ってみせてから、「それにな」とやや真剣な顔をして見せて。
「ぱんだは元気が出る」
 これは真理であると言うような真面目な顔。けれどそれも一瞬だけで、すぐにへらりと笑みに緩めて、千之助は笑う。
 元気を出しておくれと願う気持ちは、もう十分に、届いたことだろうと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
たしか、医療の現場でもチョコレートを活用することがあるとか。
これでも昔は医者を志した身、住民の方が元気になるようチョコ菓子を作ります。
料理はあまり経験がないし、うまくできるか些か不安はあるが……。
ん、頑張りますね。

ホワイトチョコと水飴を湯煎にかけて、溶かし、固める。
平らにのばしたら、クルクルと巻いて形を整えて……できた。
薔薇チョコです。
……薔薇に見えるでしょうか……?
白薔薇だけだと寂しいので、ホワイトチョコに食紅を入れるなどして、別の薔薇も作ります。
「『紅く染めよ、と女王が言った』」……なんてね。

俺の薔薇はちょっと不格好かもだけど、皆さんの花が満開に咲き誇りますように……。




 オウガの妨害を受け続け、気力を根こそぎ奪われたような住民達を明るい気持ちにさせるために、チョコレートの菓子を作ってきてほしい。
 そんな依頼に、有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)はふむと思案する。
 確か、医療の現場でもチョコレートを活用することがあるとか、聞いたことがある。
 夏介とてかつては医者を志した身だ。それと名乗らぬだけであって、住民達を元気にするためにも、自らチョコ菓子を作るために立ち上がった。
 ……とは、言え。料理の経験はあまりない。住民からキッチンを借りていざ現場に出てみたが、本当にうまくできるのか。些か不安はある。
 その不安がにじみ出ているのか。影からそっと眺めている住民達もどこかはらはらした様子になってしまっている事に気が付いて、夏介は顔を上げた。
「ん、頑張りますね」
 やらない事には、始まらない。
 まずはメインのチョコレート。ホワイトチョコレートを湯煎に掛け、別の容器で同じように水飴を湯煎に掛ける。
 双方がしっかりと溶けたなら、それらを混ぜ合わせ、つやが出るまで、良く練っていく。
 そうしている内に、何かの生地のようにしっかりと纏まったチョコを平らに、まぁるく、伸ばしていって。
 一枚、また一枚と、くるくる巻きつけるようにして、重ねていった。
「なかなか難しい……けど、できた」
 ちょん、と。皿の上に置かれたのは、見事に花開かせた、薔薇のチョコ。
「……薔薇に見えるでしょうか……?」
 一人で黙々と作っていると、これが薔薇に見えるものに形成されているのか、ちょっと自信がなくなってしまう。
 だが、花開くさまは我ながら上手く出来たと指先で小突いて、夏介は再び同じ作業に取り掛かる。
 今度は食紅を取り出して、ちょっぴり赤く、色付けを。
 だって白薔薇だけでは、物寂しい。それに――。
「『紅く染めよ、と女王が言った』……なんてね」
 紅白揃った薔薇の花は、なんとなくアリスラビリンスらしい装いとなってくれることだろうから。
 そうこうしている内に、キッチンには沢山の薔薇が咲いていた。
 一人、また一人と物陰から見守る住民達の数は増え、花が出来上がっていくたびに、控えめながら歓声も聞こえてくるようで。
 材料を使い切り、沢山の花を作り終えた夏介は、そんな姿を見て、ことり、首を傾げた。
「……薔薇を作ってみたのですが……見えるでしょうか」
 問いかけられ、ハッとしたように顔を見合わせた住民達は、しきりに頷いて。
 それから、最初からずっと見守っていた一人が、おずおずと声を掛けてきた。
「とっても、綺麗な薔薇だと思います」
「それなら、良かったです」
 ちゃんと薔薇に見えている。そんな安堵もさることながら、そう告げてくれた住民の頭の蕾が、開花を待つように膨らんでいるのが、目に留まって。
「皆さんの花が満開に咲き誇りますように……」
 手元の薔薇チョコは、少しばかり不格好かもしれないけれど、彼らの花は、きっと美しく咲くことだろう。
 そう在りますようにと、願いを込めたチョコレートは、きっと、優しい甘さをしているに、違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
強大な悪意に支配され、何もかもを諦めてしまった人々……
まるで闇に支配されたわたくしの故郷のよう
力になってあげたいわ

それにバレンタインも近いんですもの
想いを込めたチョコレート作り
愛する彼だけでなく、きっと住人さんたちのことも勇気づけてくれるはず

チョコ味のクッキー生地をくまさんの形に抜いて
胸のあたりに木の実を乗せたら、両腕を内側に織り込んで焼くの
くまさんが木の実をしっかり抱きかかえるように
大切なものを、しっかり手放さないように

失敗しても大丈夫
材料はまだたくさんありますもの
何度だってやり直せるわ
不安を慰めるように歌う【不屈の歌】
諦めない人への、わたくしからのおまじない
大切な想いは、決して手放さないで




 オウガの妨害を受け続け、何もかもを諦めてしまった不思議の国の住民達。
 彼らの姿を見ていると、まるで、闇に支配された己の故郷のようだ、と。ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は眉を寄せる。
 力になってあげたい。そんな真っ直ぐな思いと共に、ヘルガの内側に浮かぶのは、甘くて優しい気持ち。
 もうすぐ、バレンタインなのだ。作るチョコレートに愛する人への想いが込められるのはごく自然なこと。
 それを今日は、愛しい彼だけでなく、住民達のことを勇気づけてくれるよう、ほんの少しだけ思いを広げて。
 ヘルガは住民達も誘い合わせ、共にキッチンへと立つ。
 今日作るのは、チョコ味のクッキー。
 レシピの手順通り、チョコを刻み、バターを溶かし、粉を振るい、丁寧に混ぜて。
 料理なんてものをすっかり諦めていた住民達は、初めこそぎこちない調子での作業だったが、誰にも邪魔をされないようだと気付き始めた頃には、何かを作る楽しさを思い出し始めたように、表情も和らいでいた。
 そうして作り上げたチョコ味のクッキー生地。
 均等に伸ばした後、ヘルガはここからが本番だと言うように、くまさん型の可愛らしいクッキー型を取り出した。
「これを、こうして……」
 きゅっ、と型抜きしていったのは、両手を広げたくまさん。その胸元に、小粒の木の実をころんと一粒。
 どうするのだろう、と見守る住民達の顔に微笑みかけて、広げた手の腕を折りたたみ、ぎゅっと抱きしめるように形を整えた。
「くまさんが木の実をしっかり抱きかかえるようにして焼くの。大切なものを、しっかり手放さないように」
 諦めない気持ち、守りたいという願い、前を向く力。
 今は奪い取られたそれらを、もう一度、取り戻してしっかりと抱きしめられるように。
 そんな願いを込めて焼くのだと語るヘルガに、住民達は顔を見合わせて。それから、頷き合って、笑い合った。
 それぞれの手で、くまさんの手に一抱えの何かを包んで。いざ、オーブンへ。
「上手く出来るかな」
「失敗しても大丈夫。材料はまだたくさんありますもの」
 少し不安げにオーブンを見守る百合の蕾の少女に微笑みかけて、その瞳を、しっかりと見つめるヘルガ。
「何度だってやり直せるわ」
 何度だって――繰り返して、繰り返して、諦めてきたけれど。今日、この真っ直ぐな目をしたこの人は、それを覆そうとしてくれているのだ。
 伝わる思いに、うん、と互いに頷き合って。焼き上がるまでのささやかな暇に不安がぶり返さないように、ヘルガは澄んだ歌声を響かせた。
「明けぬ夜はない。止まぬ雨はない。いかな試練が我らを阻むとも、大地に根差し光を望む大樹の意志はけして折れること無し」
 不屈の覚悟を決めた彼女の歌声は、敵の悪意や妨害にも負けぬ強い意志と結束力を発生させる、共鳴りの歌。
 もう一度、頑張ろう。
 もう一度、やってみよう。
 そんな心を奮い立たせる歌声が余韻と共に結ばれる頃には、辺りにチョコクッキーの甘い香りが漂って。
 チーン! 軽やかな音が響いたその頃には。真っ先に立ち上がった少女の頭には、鮮やかな百合の花が開いているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『共有する者達』

POW   :    遊ぼう!遊ぼう!
自身の【食べたアリスの悲しい記憶】を代償に、【食べたアリスの楽しい記憶にあるもの】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【その姿に見合ったもの】で戦う。
SPD   :    見て見て!そっくりでしょ?
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【食べたアリスの記憶にあるもの】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ   :    お茶会しよう!色んなお話し教えて!
【食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物】を給仕している間、戦場にいる食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
👑11
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●スパイシーな闖入者
 何をしているの?
 どうしてそんなことを?
 今更、今更、今更――!
 甘い香りが漂って、賑やかな声が響いてきて、明るい雰囲気が広がって。
 さぁ、今から楽しいお茶会を! なんて空気の只中に、不満をあらわにしたような姿がふよふよと押し寄せてくる。
 見た目は可愛らしい、くりくりとした瞳の生き物たち。
 けれど彼らは紛れもなくオウガであり、アリスの記憶を食らってきた存在である。
 アリスのいない国なんてつまらない。
 アリスのこない国なんて楽しくない。
 アリスを連れてきてもくれない住民達のやることなすこと全部邪魔をして、もっともっとつまらなくなってしまった国だったけれど。
「もしかして、アリスが来たの?」
「このお茶会は、アリスのため?」
「なぁんだ、それじゃぁ――」

 ――アリスの記憶、いただきまぁす!

 アリスを求める『共有する者達』は、住民達と異なる姿の猟兵達を狙ってくるだろう。
 けれど、なんだか力が出ない。沢山食べたアリスの事を、何故だか、思い出せない。
 まごまごしているばかりの彼らに、ただ、灸をすえてやればいいのだ。
雨倉・桜木
おやおや、悪い子のお出まし……
(ぱちくりと瞬き)

うーん、外見がこうも愛らしいと傷つけるの結構躊躇ってしまうんだけどね。やってることが悪戯では済まないから、まあ、仕方ないか。折角、咲いた綺麗な花を易々と萎れさせてしまうなんてさまにならないしね。

さて、気を取り直してお仕置きといこうか。いただきまぁす、なんてすっかり捕食者側だけど、君たちも十分に美味しそうだよ。飴玉みたいにキラキラしていて。

それじゃあ、喉かわいたし、いただこうかな(UC発動)

こういう軟体生物は血が青いんだっけ?まあ、液体であればどのみち頂けるからいいけれど……う、にがっ!おあじあんまりおいしくない(しょんぼり)




「おやおや、悪い子のお出まし……」
 住民の日常を妨害し、アリスを狙おうとするオブリビオンが現れた。
 しかし、さて仕置きの時間だと敵へと向き直った雨倉・桜木は、ぱちくりと瞳を瞬かせることとなる。
 見た目がなんとも愛くるしいではないか。
 しかも殺意増し増しで攻撃してくるわけでなく、遊ぼうとじゃれついてくるような様子で。
 本当にこれが敵なのか。一瞬、疑問を覚えるくらいだ。
「うーん、外見がこうも愛らしいと傷つけるの結構躊躇ってしまうんだけどね。やってることが悪戯では済まないから、まあ、仕方ないか」
 ちら、と。桜木は自身と共に過ごした住民達の姿を見やる。
 色とりどりに花を咲かせ、瞳に生気を取り戻した彼らは、群れを成す『共有する者達』へ挑まんとする意気込みをも持っていた。
 目の前の集団が彼らの花を奪った存在であることは、それだけで容易に判別できる。
 それならば――。
「折角、咲いた綺麗な花を易々と萎れさせてしまうなんてさまにならないしね」
 最初の予定通り、お仕置きをしてやろう。
 住民達をさりげなく制し、前に出た桜木に、共有する者達はつぶらな瞳を向ける。
「アリスだ!」
「ねぇ、ねぇ、君はどこから来たアリス?」
 口々に言いながら群がってくる言葉には、美味しそう、だとか、食べていいかな、だとかが聞こえてくる。
 あぁ、彼らは捕食者のつもりでいるのだろうとくすり、笑みこぼし。桜木は目の前に迫ってきた一匹を、指先でピンと弾いてあしらって。
「君たちも十分に美味しそうだよ。飴玉みたいにキラキラしていて」
「そう? でもアリスの方が美味しいよ?」
「食べたことが無いからわからないんだろうね。それじゃあ――喉渇いたからね、頂いてしまおうか」
 ふわ、と。どこからともなく桜の花弁が舞ったような、気がして。
 それに意識を奪われた次の瞬間、ふよふよと浮いていた共有する者達は、樹木の根に、身体を貫かれていた。
 優美に笑う桜木を中心に広がった八重紅枝垂桜の根は、攻撃が命中した彼らの血を、吸い上げる。
 ――が。
「うっ……!」
 呻く声は、血を吸われ、ぽてん、と干からびて落ちた敵ではなく、血を吸った桜木の方から。
 心配そうな顔をした住民が慌てて覗き込むと同時に、口元を抑えていた桜木からこぼれたのは。
「にがっ!」
 言葉通り苦々し気な表情の桜木いわく。
 軟体動物だから血の色が青かったりするだろうとは思ったけどこんなにおいしくないおあじだとはおもわなかった……だそう。
 しょんぼりした桜木に、今度は住民達が、お菓子を差し出す番となりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
※アドリブ歓迎

……ああ、来てしまいましたか。
残念ながら、ここにあなた方の求める「アリス」はいないんですよ。
ですので招かれざる客には、一刻も早くご退場願いましょう。
苦戦する姿を見せるわけにはいかない。速攻で方をつけます。

住民に被害が及ばぬよう、かばうよう立ち回る。
敵がこちらを狙って動き始めたら『血を欲す白薔薇の花』を発動、範囲内にふよふよと漂う敵を一斉に攻撃。
取りこぼした敵は、ユーベルコードを解除し、花びらから元の姿に戻った処刑人の剣で断つ。
「残念ですが、これでサヨナラです」




 アリスを求める声がする。群がる気配を見つけて、有栖川・夏介は小さな溜息を零す。
「……ああ、来てしまいましたか」
 オウガに支配された国を解放するために訪れたのだ。平穏無事に終わることが無いとは知っていたけれど。
 折角の明るい雰囲気を台無しにされたような心地に、夏介はオウガ――『共有する者達』の集団へと言葉を投げかけた。
「残念ながら、ここにあなた方の求める「アリス」はいないんですよ」
「? そこにいるよ?」
「ねぇ、遊ぼうよ僕らのアリス!」
 夏介をアリスと言い張る共有する者達は、聞く耳を持つ気などなく。
 つぶらで愛らしくも見える瞳は、既に獲物を見つけた捕食者の如く、爛々と輝いてる。
 招かれざる客に、このまま居座られるわけにはいかない。
 まして、そんな輩に苦戦する姿など、立ち直ったばかりの住民達には見せられようはずもない。
「――速攻で方を付けます」
 立ち向かおうという気概に溢れる住民達を、前に出すわけにもいかない。
 庇う為にもいち早く敵集団との距離を詰め、元より『アリス』に執着する彼らの視線を集めながら立ち回る夏介。
 ふよん、と揺れる体で夏介の周囲を飛び共有する者達は口々にアリスを求める。
 だが、無邪気に飛びながら自身がかつて食べたはずのアリスの記憶から『アリスの好物』を取り出して持て成そうとしているようだが、上手くいかず、右往左往。
 程よく群がってきた彼らの隙を突くのは、随分と簡単な事だった。
「紅く染めよ、と女王が言った」
 ――然らばその白はあかくならねばならぬのだ。
 白い薔薇の花弁と化した夏介の武器は、まるで自ら血であかく染まりに行くかのように共有する者達を切り裂いていく。
 白が舞えば舞う程、赤が増えて、ぽて、ぽてん、と力尽きた者から地に落ちて行く光景を見つめ、そんな中を、慌てたように逃げ惑う一匹に、夏介は視線を据えた。
 数が多いのだから取りこぼしの一匹や二匹、いるだろう。何も動じる事は無い。
 それをいち早く、見つければいいだけなのだから。
「あ、アリス……」
「ですから、ここには「アリス」はいないんですよ」
 彼らがアリスと呼んだのは、ただの、処刑人だ。
「残念ですが、これでサヨナラです」
 赤く染まった白薔薇だったものを再び武器へと戻し掲げれば、見上げるつぶらな瞳は断頭台を思い描くだろう。
 そうして、あ、と思う頃には刎ね飛ばされて。ぽてん、と儚く落ちて、朽ちるだけ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザクロ・シャハブ
ルクル(f31003)と行く

『アリスを襲う本能だけで動いてるのか?まぁ、叩けば分かるか』

UCは攻撃回数を選択
多いのならこちらも数だ。向かってくる敵を撃ち落とす

『ルクル。撃ち洩らしたらごめん。』
撃ちやすいように弾の無駄撃ちや反復横飛びで【悪目立ち】してこっちに集中させる
…騎士格好いいなと思ったらたまに剣で【なぎ払う】かもしれない

【範囲攻撃】時はルクルが怪我しないように肩車する
『被弾したら危ないからここ…』
耳掴まれて宇宙兎になりながら【制圧射撃】
攻撃は【残像】が出るレベルで素早く動いて回避だ


ルクル・クルルク
ザクロくん(f28253)と一緒に

うぅ、見た目はちょっと可愛いですが、
放っておいたら住民さん達の心がまたしおしおになってしまいますからね
ここでビシッとこらしめておきましょう!

ふむ、相手が多いのならこちらも数で勝負ですね
了解です、ルクルもUCで召喚した騎士様達に、
ザクロくんの援護をしたり、撃ちもらした相手を狙って倒すように指示を出しますよ

る、ルクルは、戦闘はおっかないので、
なるべくお邪魔にならない所にいますのでお気になさら……ぴゃあっ!?(肩車されてザクロくんのお耳にしがみ付こうと)

わ、ここは一番の安全地帯ですね
ならば守りはルクルの使い魔のニクスにお任せですよ(【オーラ防御】&【結界術】)




 アリス、アリス。口々に呼びかけてくる『共有する者達』を、ザクロ・シャハブは胡乱な目で見る。
「アリスを襲う本能だけで動いてるのか?」
 時計ウサギが二人並んでいる光景を見てなお、『アリス』を求めるだなんて。
 呆れにも興味にも似た目をするザクロの影で、ルクル・クルルクはほんの少し及び腰になりながらも、ちらと振り返った先に居る住民達を見やって、きり、と表情を引き締める。
「うぅ、見た目はちょっと可愛いですが、放っておいたら住民さん達の心がまたしおしおになってしまいますからね。ここでビシッとこらしめておきましょう!」
「可愛い……まぁ、どういう生き物なのかは、叩けば分かるか」
 顔を見合わせ、頷き合って。
 ザクロは自身に視線を集めるべく前に出て、ルクルは彼の後ろから、彼を援護するための存在を呼び寄せる。
「お願いします。わたしを、皆を、守って下さい……!」
 呼ぶ声に応じて、ずらりと並ぶ死霊騎士。
 相手が数で攻めてくるなら、こちらとて手数を増やすまで。
 その考えはザクロも同様。手にしたガトリングを構えながら、目まぐるしく動く視線で、敵の動きを見る。
「ルクル。撃ち洩らしたらごめん」
「了解です。ルクルの騎士が援護します!」
 声を背に、ザクロは目の前の存在と視線を交わす。つぶらな瞳が見上げてきて、アリス、と弾んだ声を上げるその体に、ポン菓子型の弾を浴びせていく。
「触れてみるか? 触れたら呪われるがな」
 あるいは、呪われる前に命断たれるかもしれないけれど。
 銃口をぐるりと周囲に向けつつ、自身の攻撃回数を引き上げて、目につく敵を次々と撃ち抜いていくザクロ。
 ひゃ、と驚いたような声を上げて躱す敵には軽い舌打ちを零すけれど、深追いはしない。サッと横に飛び退いたザクロと入違うように肉薄したルクルの死霊騎士達が、毒を帯びた攻撃で追撃してくれるのだから。
 見目は死霊ながら、騎士然とした戦いぶりに、ザクロはちょっぴり、心惹かれる。
(……騎士格好いいな)
 彼らが備える剣とは異なるけれど、扱いなれた刀もよく斬れる逸品。ふよふよと向かってくる敵を薙ぎ払うのだって、お手の物だ。
 ……やっぱりちょっとイメージが異なるから、次やるなら剣を貸してもらった方がいいかもしれないけれど。
 そうして奮戦するザクロや騎士達を見守りながら、ルクルは邪魔にならないところへとあちらこちら。
 そんなルクルの元に一度下がり、ザクロはポンとその肩に手を置いて。
「ルクル、被弾したら危ないから……」
「る、ルクルは、戦闘はおっかないので、なるべくお邪魔にならない所にいますのでお気になさら……」
「ここ」
 ひょい、と。軽々とルクルを持ち上げたザクロは、自身の肩にルクルを乗せた。
 肩車なら射線に入る事もないだろうと、安全を考えたザクロの行動だが、突然上がった視界と不安定な態勢に、ルクルが慌てるのも必然で。
「ぴゃあっ!?」
 短い悲鳴を上げたルクルの手は、がしっ、と目の前の何かにしがみついた。
 そう、目の前の、ピン、と立ったザクロの耳に。
「――!?」
 声にならない感覚が全身一気に突き抜けた気がするけれど、突き抜けたのだから気にしないことにした。
 気にしないことにして、構えたガトリングを乱射して場を制圧していく。
 そうして安定した姿勢になれば、ルクルの余裕も戻ってきて。しがみついていたお耳も解放されて、くるりくるり、戦況を見渡す目が動く。
「わ、ここは一番の安全地帯ですね。ならば守りはルクルの使い魔のニクスにお任せですよ」
「きゅう」
 鳴き声あげた可愛い白兎と共に、守護の結界を張り巡らせるルクル。
 これで安心安全、と再び表情を引き締めたルクルだが、攻撃を躱すためにザクロが素早く動いた瞬間、またしても悲鳴を上げることになるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
みんなで頑張ってお菓子を作って準備した、お茶会。ん、今度は邪魔させない、から。
戦う前に、住民さんたちがまた落ち込まないように声をかけて、あげよう。わたしも美味しい紅茶を用意してるから……楽しみに待ってて、ね。

わたしは本当にアリスだけど、ただ食べられるだけじゃ、ないよ。【プリンセス・ホワイト】で白鳥さんたちを呼んで、オウガたちをやっつけて、もらおう。何か物を作られても、白鳥さんたちなら空を飛べるし数も多いから平気、だよね。
チョコレートが溶けちゃうから、どんどんやっつけちゃう、よ。白鳥さんたちで囲んでばしばしやっちゃって、ね。みんなの邪魔をする悪いやつにはお仕置き、だよ。




 現れたのは、邪魔者だと知れた存在。
 『共有する者達』の群れに冷めた眼差しを向けたミア・ミュラーは、住民達が怯えたりしないよう、さりげなく彼らの前に立つ。
「みんなで頑張ってお菓子を作って準備した、お茶会。ん、今度は邪魔させない、から」
「お茶会? お茶会するの?」
「アリスとお茶会なんてずるいずるい!」
 拗ねたような声に瞳を細めて、ふいと視線を背けて。
 一度振り返ったミアは、頭に花を咲かせた住民達の姿を改めて確かめて、努めて優しい声を紡ぐ。
「わたしも美味しい紅茶を用意してるから……楽しみに待ってて、ね」
 オウガが現れたからって、気落ちする必要なんてないのだと勇気づけるように。
 その言葉に頷いてくれたのを見届けて、ミアは再びふよふよと浮き群れる者達へと向き直る。
「アリス、お茶会しよう!」
 呼びかけるその声に、ミアは自身が正しく、彼らが求める『アリス』であることを思う。
 けれど、アリスとは、決して食べられるための存在などではないのだ。
 群がってこようとする敵に、掲げる手のひらは制止の合図で。同時に、ミアが呼び寄せる頼もしい仲間への、指標となる。
「みんな、頑張って、ね?」
 願い、労う言葉に呼び寄せられて、ばさり、力強く羽根を打つ音が響き渡る。
 百を超える、無数とも言えよう白は、白鳥の群れ。その羽根には『1』の刻印が記され、ミアを守るようにして布陣した白鳥たちは、鋭い嘴を携えて、オウガ達を見据えた。
「わぁ、アリス、凄いね、凄いね」
「僕らのアリスも動物を連れていたよね?」
「あれれ、そうだったよね? そうだったかな?」
 住民達の明るい気持ちを象徴する花々が、オウガの力を弱めてくれている。
 かつて彼らが食べたアリスの記憶から何を作り出そうとも、空を自由に舞う白鳥ならば平気だろうと思っていたけれど。作る力さえなくなっているのなら、遠慮なく、仕掛けるのみだ。
「チョコレートが溶けちゃうから、どんどんやっつけちゃう、よ」
 そう、楽しいお茶会のために。皆で一生懸命作ったチョコを台無しにするわけには、行かないのだから。
 打ち鳴らされる大きな翼は、ふよふよと浮くオウガの身体を叩きつけ、取り囲みながら嘴で貫いていく。
 猛禽さえも彷彿させる白鳥達の戦いぶりを見守りながら、ミアはよれよれと縋りつくように飛んでくる一匹と、視線を合わせる。
「アリス……僕らのアリス……」
「わたしは本当にアリスだけど、ただ食べられるだけじゃ、ない、し……」
 ばさり。真白な翼がオウガとミアの間に割り込むように降り立ち、大きな翼で、行く手を阻むや、力強く打ち据える。
「みんなの邪魔をする悪いやつにはお仕置き、だよ」
 悪いことだとは欠片も思っていないだろうつぶらな瞳達に、同情も共感もしてやる必要は、無いのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
あなたたちね、住民さんに意地悪をして自信を奪っていったのは
それだけじゃない。何より過去にアリスたちを……

だけど、あなたたちの悪運もここでおしまい
住民さんたちは生きる希望を取り戻したわ
大切なものは決して手放さない
何度つまづいても決して諦めない
わたくしの、いいえ、誰の記憶も命も。決して奪わせたりなんかしない

いくら偽物を作っても無駄よ
心の籠らぬまがい物に魂は宿らない
破魔と浄化の魔力込めた「浄罪の懐剣」を手に偽物を打ち砕き
解放した天使の力でオウガ達に裁きを下す
あなたたちの犯した罪、住民さんに与えた絶望
今こそ思い知りなさい

戦いが終わったらお茶会の続きをしましょう
取り戻した希望と、新たな旅立ちの記念日に




 現れたオウガの姿に、ヘルガ・リープフラウはきゅっと眉の根をよせ、睨む眼差しをオウガへ――『共有する者達』へと向ける。
「あなたたちね、住民さんに意地悪をして自信を奪っていったのは」
 つぶらな瞳を湛え、きょとん、と小首を傾げた彼らは悪気と言うものが全くない事をうかがわせる。
 仕草や容姿だけを見れば愛らしい部類にはいるのだろう。けれど、彼らはこの国の住民達に害をなす以前から、訪れたアリス達を捕食してきた存在だ。
 それを思えば、眉間に刻まれた皺が一層深くなりそうだったけれど。ヘルガは気持ちを落ち着けて、凛とした眼差しを向ける。
「だけど、あなたたちの悪運もここでおしまい。住民さんたちは生きる希望を取り戻したわ」
 彼等の希望は、最早その場しのぎのものではない。
 大切なものは決して手放さない。何度躓いても決して諦めない。
 そんな、強さを湛えた希望を咲かせているのだ。
「わたくしの、いいえ、誰の記憶も命も。決して奪わせたりなんかしない」
 強く宣言するヘルガに、共有する者達は臆するどころか歓声を上げる。
 アリスはやっぱり強いなぁ。だから美味しいんだ。
 きゃらきゃらと笑い合う無邪気な声を遮るように、ヘルガはその手に短剣を握り、突き付けた。
「あなたたちがアリスの記憶からいくら偽物を作っても、無駄よ」
 何を作ってきたって、この破魔と浄化の魔力を込めた水晶の刃で断ち切っていくのだから。
 けれど、ころりと身体ごと傾いだオウガ達は、顔を見合わせ口々に『アリス』の話題を出すが、一向にそれが形に為る事は無い。
 不思議の国に満ちた住民達の希望が、オウガの力を奪っている。
 その現実を目の当たりにして、ヘルガの表情から、ようやく、険しさが緩む。
「――これが、わたくしたちの力」
 何度でも立ち上がる意志の力を思い知るがいい。
「審判の序曲よ、鳴り響け。今こそ強欲なる簒奪者に神罰を。神のものは神に、奪われしものは正しき主に。全てはあるべき場所に還れ」
 まごつくばかりの彼らへと、ヘルガは天使の力を解き放つ。
 公正と救世を司る天使の力が与えるのは、等しき裁き。過去に、彼らが弱者を踏みにじることで得た愉悦と悪運を奪って、相応の不幸を。
 奪った分は、ヘルガ自身の幸運に置き換えられる。
 ゆえに、攻め込む刃を躱そうにも、不幸に見舞われるオウガ達は、味方同士でぶつかったり、反射する陽光に目を眩ませられたりと、思うように動けないまま、倒されていくしかなかった。
 不躾な乱入者を排除して、静寂が戻ればまた楽しいお茶会の続きをしよう。
 その時には、住民達を目一杯の感謝も伝えねばならない。
 あなたたちが顔を上げてくれたおかげで、オウガを弱らせることが出来たのだと。
 取り戻した希望と、新たな旅立ちの記念となる楽しいお茶会を思い描き、ヘルガはふわり、柔らかに微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
はい、はーい。
やさしいこ等がまぁるく収めてくれそうなんです。
いじわるな君等は失格。
甘ぁい考えだったと苦い思いで、
骸の海へお帰りなさいな。

はてさて。
にしてもお宅ら、アリスに手出ししたことがおありで?
オウガの数、出現させたもの、その精度。
視線に体の動き…
見切る凡ゆるを回避に、攻撃に活かす。
鋼糸を木々に張り、宙を駆けるも木々に紛れるも自在。
拡げれば…こんな事も、ね。
――拾式

ああいうのが、世間的に言う、可愛い…?
あー、すみません。僕そういうのよく分からないんで。
容赦無く!
可愛げなら、住人さんの方がある様に見えますし。
それにまぁ、かわいいなんて言えるのは…
こうしてこっそり拝見に来た、唯一人だけですからね




「はい、はーい」
 ピピーッ、と。警笛でも吹きそうな調子で両手を突き出し、ふよふよぞろぞろと向かってくる『共有する者達』へ制止のサインを送る男。
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、呆れたような顔をして見せながら、突き出したその手でバツ印を作る。
「やさしいこ等がまぁるく収めてくれそうなんです。いじわるな君等は失格」
 住民達を優しい言葉と行動で励まして、ようやく元の形を取り戻したところだというのに。
 まったくもって、無粋にもほどがある。
 まして、猟兵達を『アリス』とみなし、食べてしまおうだなんて。
「甘ぁい考えだったと苦い思いで、骸の海へお帰りなさいな」
 冷めた眼差しで見渡したオウガ一行を、住民達の元までたどり着かせる義理など、ない。
 伸ばした指先から走るのは鋼の糸。一先ずは通行止めを示すように自身の背後の木と木に絡めて行き止まりを示したならば、自身の足場と罠とを同時に構築するように、周囲の木々に張り巡らせていく。
「はてさて。にしてもお宅ら、アリスに手出ししたことがおありで?」
「手を出す? アリスとは一杯遊んだよ」
「アリスは優しくて美味しいんだよ」
「ははー、それが答えだとおわかりでない」
 君も遊んでと飛びついてくる一匹からひらりと逃れ、張った糸の上にひょいと飛び乗り。
 視線がこちらへ向く前に、木の葉に紛れ、がさりと揺れる音だけ残してあちらこちらへ飛び回る。
 そんなクロトを探す眼差しを向けてくるものの、一向に、アリスの記憶とやらから生み出す偽物を作ってこない。
 不思議の国の不思議な力で、オウガの力の源となるアリスの記憶が、曖昧になっているとか、いないとか。
 いずれにせよ好都合とばかりに、クロトは樹上から降るように現れて、くん、と自身の指先の糸を、引く。
 ――断截。
 音と影を頼りにクロトを探していた眼差しの群れが、張り巡らされた鋼糸から繰り出される斬撃に刻まれて、血の中に掻き消える。
 何かを引き潰したような断末魔は耳慣れていたって快いものではなくて。
 だからこそ、いわゆる『可愛らしい』に分類されるような容姿を持つ彼らに、何の情も湧かなかった。
「可愛げなら、住人さんの方がある様に見えますし」
 困惑したような顔をしつつも隣で一生懸命助言をしている姿とか。
 ――それを、素直に受け止め悪戦苦闘しながらも励む姿とか。
(それにまぁ――)
 クロトにとってのかわいいは、そうやって真摯に向き合ってくれる、こっそり眺めた唯一人のためにこそ、紡がれるべきなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

あら、まあ
これから楽しいお茶のお時間だったのに
お姿とってもカワイイけれど……
つまらない、楽しくないなら先ずはご自身で動かなくっちゃ
……と、いってもアリスさんのご記憶を食べるのもダメだけど……

ヒマワリさん、ルーシー達の後ろにいてね
必ずお守りするから
悲しい記憶だけでなく、楽しい記憶も食べてしまうの?
記憶はそのひとの心よ
誰にもうばわれてはいけないのに
ふふ、そうね
お話し合うのはステキな共有方法かも
そんな悪いコはオオカミさんに食べられてしまうかも
【かっこいいお友だち】

オウガさん達が生み出したものを確認して
沢山居るようなら攻撃回数を、そうでないなら命中を重視するわ
さあオオカミさん、いただきますをして?
オウガさんが生んだものも食べてしまってね

ルーシーは攻撃を防ぐだけでいい
オウガさんのお相手はパパ、お任せしても?
グールさんに食べられた後は
オウガさんが食べた記憶はどこにいくのかな
アリスさんの元へ還るといいのだけど
そうね
今度はアリスやみんなと仲良くお茶してるといいな

戦いが終わったら
今度こそお茶会ね!


朧・ユェー
【月光】

おやおや、可愛らしい子達が来ましたね
アリスを?
貴方にとってアリスは大切な存在なのですねぇ
その方が居ないのは楽しくないですし寂しい気持ちはわかりますが
えぇ、食べてはいけませんね

ヒマワリさん気をつけてくださいね?大丈夫ですから
えぇ、記憶とはその人だけのモノ
共有するのは楽しく語り合うモノですよ?
こんな小さい子がわかるのにとルーシーちゃんの頭を撫でて
ダメなん子達ですね?
えぇ、きっとオオカミさんに食べられてしまうますね?

ルーシーちゃんが攻撃を防いでくれている
とても頼もしいですね
おやおや、オオカミですもまだダメですか?
それではお仕置きしないといけませんね?
屍鬼
自分の指を傷つけて、暴食グールが鬼化して喰いつく

さぁ、悪い子は記憶ごと喰べてしまいますよ

そうですね、きっとアリスさんに還りますよ
オウガさん達もアリスさんに会えて楽しくお茶会してるかもしれませんから

ヒマワリさん出ておいで
僕達も楽しいお茶会を再開しましょうね
新しく紅茶を淹れますね




「あら、まあ」
 ぱちり、と。ルーシー・ブルーベルは瞬いて、それから少しばかり眉を下げた。
「おやおや、可愛らしい子達が来ましたね」
「そう、お姿とってもカワイイけれど……これから楽しいお茶のお時間だったのに」
 朧・ユェーの緩やかな言葉に、ルーシーはむくれて見せる。
 ルーシーが住民と一生懸命作ったチョコケーキも、ユェーが沢山用意してくれたカップケーキも、まだちゃんと味わえていないのに。
「ふむ、貴方にとってアリスは大切な存在なのですねぇ。その方が居ないのは楽しくないですし寂しい気持ちはわかりますが」
「ええ、気持ちはわかるけど、つまらない、楽しくないなら先ずはご自身で動かなくっちゃ」
 今のままでは、ただの駄々っ子だ。
 ――もっとも、彼ら『共有する者達』とてオウガだ。彼らが自主的に動くという事は、アリスを求め、食べてしまうという事に他ならない。
 住民の妨害をすることと同様に、それを許すことも、出来ないのだ。
「ヒマワリさん、ルーシー達の後ろにいてね」
 必ずお守りするから、と。小さな体のルーシーが告げるのを聞いて、ヒマワリを咲かせた住民は戸惑ったようにユェーを見る。
 けれど、そのユェーもまた、安心させるように微笑んでくれる。
「ヒマワリさん気をつけてくださいね? 大丈夫ですから」
 その大丈夫には、ヒマワリのことも、ルーシーのことも、含まれているだろうから。
 こくりと一つ頷いて、小さくとも頼もしい背中に、委ねた。
 きっ、と引き締めた表情で敵を見据えたルーシーに、共有する者達はふよふよと上下左右に揺れながら、ころり、首を傾げて見せる。
「アリス、怒ってるの?」
「何を怒ってるの?」
 つぶらな瞳と無邪気な言葉。その姿と友好的な態度に惑わされたアリスはきっと多く存在したのだろう。
「悲しい記憶だけでなく、楽しい記憶も食べてしまうの?」
「そうだよ? どっちも美味しいもの!」
「そう、そう、ほら。前のアリスも……」
「前のって、いつの?」
 口々にアリスの記憶を語ろうとする彼らの姿は、無垢にさえ見えるけれど。ルーシーはふるり、頭を振る。
「記憶はそのひとの心よ。誰にもうばわれてはいけないのに」
 食べてしまって、今では、その記憶さえ朧げだなんて。
 寂しげに眉を寄せるルーシーの肩に手を置きながら、ユェーもまた、少女の言葉に続くように語る。
「えぇ、記憶とはその人だけのモノ。共有するのは楽しく語り合うモノですよ?」
 こんな小さい子がわかるのに。そう言ってルーシーの頭を撫でるユェーの掌が、ルーシーの気持ちをふわりと持ち上げてくれる。
 ふふ、と。笑みがこぼれるほどに。
「お話し合うのはステキな共有方法かも」
「ルーシーちゃんの言葉でもまだ察せないなんて、ダメな子達ですね?」
「ええ、折角、ゆぇパパが教えてくれているのに」
 そんな悪いコは――きっと、オオカミさんに食べられてしまうのだろう。
「さあオオカミさん、いただきますをして?」
 ぱっ、と解き放つのは、ぬいぐるみのオオカミ。魔法を掛けられたそのオオカミは、柔らかな四肢で地を蹴り、ふよふよと迫ってくるオウガの前に立ちはだかる。
 無防備に近づこうものなら、牙を剥いて食らいつくのだ。
 ルーシーのかっこいいお友だちが活躍するほど、オウガ達はきゃぁと悲鳴を上げて逃げ惑い、対抗しようとするけれど。
 ――アリスの記憶が思い出せない。
 不思議の国が齎す弱体化のあおりを受けた彼らは、代償とするアリスの悲しい記憶もなければ、呼び出せるアリスの楽しい記憶も、持ち合わせていないのだ。
 仕方がないから新しいアリスの記憶をちょうだいとばかりに向かってくる敵は、オオカミに蹴散らされる。
「とても頼もしいですね」
 微笑まし気に口角を上げるユェーだが、いくら蹴散らしても、オウガ達は挑んでくる。
 果敢と言うべきか無謀と言うべきか。肩を竦めたユェーだが、立ち止まらぬと言うのなら、まだ仕置きをしてやらねばなるまい。
「――良い子だね、ディナーの時間だよ」
 お腹を空かせた様子の鬼に、自身の指先から血を捧げて。
 暴食の鬼を、捕食者気取りの群れの只中に嗾けた。
「さぁ、悪い子は記憶ごと喰べてしまいますよ」
 防戦に専念していたオオカミの比ではない勢いで食らいつかれたオウガ達は、悲鳴を上げる間もなく食い尽くされていく。
 そうやって、屍鬼に食らわれたオウガ達の記憶は、どこに行くのだろう。ルーシーは傍らに戻ってきたオオカミを撫でながら、ぽつり、独り言のように零す。
 憂うような寂しげな声に、ユェーはにこり、微笑んで。
「そうですね、きっとアリスさんに還りますよ」
 アリスが帰ってくる事は無いけれど、奪われた記憶は、解き放たれて持ち主の元に戻っている事だろう。
 確証なんて何一つないけれど、そう在ればいいと願う気持ちと、そう在るようにと祈る気持ちが、俯き気味だったルーシーの顔をあげさせる。
「それに案外、オウガさん達もアリスさんに会えて楽しくお茶会してるかもしれませんから」
「……そうね。今度はアリスやみんなと仲良くお茶してるといいな」
 やっぱりゆぇパパはすてきね。そうはにかんだルーシーの頭を、柔らかに撫でる頃には。
 辺りには静寂が戻り、ひと時の間の後に、オウガをやっつけたと歓声が上がり始める。
 かたずをのんで見守っていたヒマワリも、喜びをあらわにして駆け寄って、繰り返し礼を告げてくる。
 嬉しそうな顔と、その頭に咲く色とりどりの花を見渡して、つられたように笑顔を咲かせたルーシーは、ヒマワリの手を取って、さあ、と導く。
「今度こそお茶会ね!」
「新しく紅茶を淹れますね」
 不思議の国の支配は解かれた。今日はそんな記念すべき日となるだろう。
 始めよう、新しい日常を。
 甘い甘いチョコレートのお菓子をお供にして、楽しく素敵な、パーティを!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月15日


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#戦後


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
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 苦戦🔵🔴🔴
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 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト