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殲神封神大戦⑰~悪竜回天ファヴニール

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』



「よっしゃ、来てくれてありがとさん!渾沌氏『鴻鈞道人』との戦いも始まっとる、この殲神封神大戦も大詰めに入っとんで!」
 シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)は、手にした槍の石突で地面をかぁん、と叩いて言った。
 鴻鈞道人は「骸の海」そのものであり、人々が生きるために踏みしめてきたすべての過去そのもの。それが「左目」を得て具現化した存在であるという。故にこれまでに倒したオブリビオン、或いは未だ戦場にいるオブリビオンさえも「再孵化」という能力で容易く作り出してしまうのだそうだ。
「そんで、今回お前らにやってほしいんは――“悪竜退治”や」
 悪竜退治とは? 戦いは鴻鈞道人とのものになるのではないのか? そう疑問に思った猟兵たちに、シャオロンは説明を続ける。
「“俺”をぶちのめすんやから、悪竜退治で間違うとらへんやろ?」
 ヘイ、ステイステイ落ち着けよ猟兵たち!シャオロンはもうちょっと説明して。
「あんなあ、鴻鈞道人は――俺がお前らを転移させた後、俺の体の中に入り込んで、融合してまうっちゅー話やねん。ほんで、鴻鈞道人のごっつい力で「渾沌の諸相」だかを身につけてもうた“俺”が、お前らに襲い掛かってくる。お前らの戦う相手は“俺”になんねん。そういう話や」
 戦場は未だ固まらぬ渾沌の地、すなわち何もない所。戦う者が、ここが地だと思えば大地となり、ここが空だと思えば空となる。そんな場所だ。
「戦いになったら俺に一切の説得は通じへん。こん中に俺をボコすのに日和っとる奴おるか? おらへんやろ」
 たとえシャオロンと心のつながりがある者が猟兵のうちにいようが、鴻鈞道人と融合したシャオロンには一切の手加減力加減は出来ない。説得が一切有利に運ぶことはない。全員ぶちのめすつもりで行くだろうから、お前らも全員でかかってぶちのめすつもりで来い。そうシャオロンは言う。
「手加減ができへんのはお前らも同じや。ただただ融合しとる鴻鈞道人が撤退するまで戦うしかない。戦いが終わった後で俺が生きとるかどうかもわからへんけど、俺はこんなところで死んでもなんもおもんないから死ぬ気はない!まあ、祈っといてくれや」
 そうして、シャオロンは呵呵と笑って言った。
「ほな、お前らを全員送り出したとこで俺も行く。そっからが“俺”とお前らの戦いの始まりや。まあなんや、あれや……」
 ――俺はいつも通りに暴れ散らすから、せいぜい、俺に足るを知らせてくれや?
 そう、シャオロンは猟兵たちを鼓舞するように、挑発的に笑って言った。


遊津
 遊津です。遅れましたがやりたかったんだ。
 殲神封神大戦、戦争シナリオをお届けします。
 難易度はやや難です。ボス戦一章構成となっております。
 当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在します。
 プレイングボーナス……グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。
 敵は必ず先制攻撃を行ってきます。ご留意ください。
 当シナリオでは、開始時点で既に戦場に転移されていたものとなります。

 「戦場について」
 仙界の最深奥部、未だ形定まらぬ「渾沌の地」です。
 何もなく、勿論戦闘に利用できるものも戦闘の邪魔になるものもありません。
 猟兵が上と認識した方が上となり、地面と認識した方が地面となります。
 空中戦なども可能で、それこそ無限に、十分な広さがあります。
 戦場への転送が行われて即戦闘となる為、戦闘前の準備時間などは取れません。ご留意ください。

 「敵対者・グリモア猟兵について」
 渾沌氏「鴻鈞道人」が体内に潜り込んで融合したシャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)です。
 説得は一切通じませんが、最低限の会話は可能です。一切何の有利にも働きませんが。
 膨大な力によって「渾沌の諸相」を身につけており、まさに悪竜の力を全開にして襲い掛かってきます。
 武器は二槍、竜の血を励起し力を増す「禍焔竜槍『閃龍牙』」と自ら爆炎を発し超高速。高威力の連続突きを可能とする「発破竜槍『爆龍爪』」の二振りで、竜の翼(あるいは鴻鈞道人のユーベルコードによる白き天使の翼)で空中戦を行うことも可能です。
 二槍を燃え盛る炎に包みながら多重分身させ、それを雨のように敵へと降り注がせる攻撃を主体に行います。

 当シナリオはシナリオ公開直後からプレイング受付を開始いたします。
 シナリオ公開の時間によっては上記タグ・マスターページにプレイング受付中の文字が出ていないことがありますが、その状態でもプレイングを送ってくださってかまいません。
 諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
 また、送られてきたプレイングの数によっては全員採用をお約束できない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
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エーミール・アーベントロート
【秩序】
いやぁ、シャオロンさん……まさかあなたがそうなるとはね。
でも私1度でいいから……あなたを切り開いてみたかったんですよ!
え、いやいや、メルさんもヴィオさんもコンラートさんもドン引きしないで?

3人には距離をとってもらい、私はUC【自由を求める殺人鬼】を発動。
グラスナイフを左手に、仕込み杖を右手に連続攻撃を。
シャオロンさんの動きをしっかりと見極めながら、どんどん叩き込みます。

3人の行動準備が終わり次第、メルさんと共にナイフでの突撃。
彼のヒットアンドアウェイに合わせて私もタイミングをずらしてヒットアンドアウェイ。

この4人で活動するのも、久しぶりですからねぇ。
楽しく、任務遂行しましょうか!


コンラート・ベトリューガー
【秩序】
なんや、エミさん知り合い?
……うわぁ……エミさんそれはないやろ。
いやドン引きするって。そんなん。ご兄弟譲りかもしれんけど。

エミさんに前線張ってもらうから、俺は距離取って。
出来るだけ皆の補助ができるように付かず離れずの距離。
メルさんのワイヤーが伸びたその瞬間、UC【詐欺師の言葉にご用心】。
これで皆を隠すように刀を伸ばしたらええな。

シャオさんに攻撃を当てなきゃならんから、俺自身も影の後ろに隠れつつ。
見つからないように適度に走り回って、たまにヴィオの後ろに隠れたり。

罵詈雑言は……まあ適当に浮かんだ言葉でも言っとけば反応するんかな。
色々と試してみよーっと(ヴィオの後ろに隠れながら)


ヴィオット・シュトルツァー
【秩序】
ほーん、エミさんの知り合いやったんですか。
……エミさん??? 心ある??? 大丈夫???
温厚なエミさんからそんな言葉出てくるとは思わんかった……。

初手UC【暗闇の中にご用心】を発動させて暗闇でシャオさんを覆うよ。
完全には覆いきれんやろうけど、そこはコンの影の武器軍と一緒に併用すりゃええしな。
メルさんのワイヤーが見えにくくなればええな、ぐらいの感覚。

あとはエミさん、メルさんから付かず離れずの距離を保って逃げ続けようか。
影の猫による回復は全員適度に受け取っといてや。
シャオさんの方は影の刃でどんどん切ってくで。

っていうかコン、俺の後ろ隠れんとって。
流石に俺じゃシャオさんの攻撃は防げへんって。


メルヒオール・ツァーベル
【秩序】
エミさんの知り合いかー。
……エミさんからそんな言葉出てくるとか……マジか。
いやドン引きっていうか……うん。

おっと早速。UC【絃から伸びる爆発物】でシャオロンの動きを止めるようにワイヤー攻撃するぜ!
時々エミさん諸共アサルトライフルで全身ぶち抜いたる!!
エミさんが痛いかもしれんけど、別にええな! エミさんやし!!
コンラートとヴィオットは逃げ続けろよ!!

そんでワイヤーばら撒くだけばら撒いたら、エミさんの動きに合わせて殺戮刃物(ナイフ)でヒットアンドアウェイ!
エミさんのほうが俺の動きに合わせて連発してくれるやろ!
めんどくなったらアサルトライフルぶっぱ!

ああ、ええな!
やっぱこの4人最高やわ!




 そこは仙界の最深奥部、未だ形定まらぬ渾沌の地。
ずどん、と大砲のような音が響いた。それは「渾沌の諸相」を得たグリモア猟兵・シャオロンが大地――この渾沌の地にあってそう呼んで良いものならばの話だが――を蹴った音。両の手にした二槍の鋒に燃え盛る炎を宿し、誰も彼もを薙ぎ払い串刺しにせんと飛び掛かってくる。
 一番最初に動けたのはヴィオット・シュトルツァー(猫のそばに居たい・f35909)だった。自身のユーベルコード【暗闇の中にご用心(シャッテン・クリンゲ)】を展開させる。暗闇はシャオロンの視界を奪う。呵々、と闇の中から笑い声が聞こえた。
「呵呵ッ、こら、なーんも見えんわなァ!……言うて、目え瞑っとったら槍が当たらんとは一ッ言も言うてへんけど、なァ!!」
 その声が響くや否や。闇の中からヴィオットの眼前に槍が突き出された。喉笛を狙う正確な一撃。それを止めたのは、エーミール・アーベントロート(《夕焼けに立つもう一人の殺人鬼》・f33551)の黒塗りの仕込み杖であった。
「いやあ、シャオロンさん……まさかあなたがそうなるとはね」
「おうエーミール、居ったんかいや」
「居ましたよ、私たちをここに転移させたのはあなたでしょ?」
「呵呵!せやったなぁ!」
「ほーん、エミさんの知り合いやったんですか」
「なんや、エミさん知り合い?」
 ヴィオットとコンラート・ベトリューガー(口達者な詐欺師・f35908)が問う。
「ええ、まあ!でもそれ今言うことですかね!?」
「エミさんの知り合いかー」
 メルヒオール・ツァーベル(トリック&スピードスター・f36178)はマイペースな調子で感想を述べた。
「呵々ッ、なんやエーミール、一緒に二ケツした中やんけ、なあ!!」
 次々に突き出される鋒と燃える炎を仕込み杖でいなしつつも、一撃一撃ごとにエーミールの足は後退していく。仕込み杖を抜こうにも、シャオロンの二槍の片方は全自動での高速突きが可能だ。何とか、何とか猛攻を止める切っ掛けをと頭を巡らせながら、エーミールは感じたままに口を開く。
「でも私、一度でいいから……あなたを切り開いてみたかったんですよ!」
「「「えっ」」」
 ドン引きの言葉はエーミールの後方から聞こえた。
「えっ」
「……エミさん??? 心ある??? 大丈夫???」
 とはヴィオット。
「……うわぁ……エミさんそれはないやろ」
 とはコンラート。
「……エミさんからそんな言葉出てくるとか……マジか」
 とはメルヒオール。
「え、いやいや、メルさんもヴィオさんもコンラートさんもドン引きしないで?」
「いやドン引きするって。そんなん。ご兄弟譲りかもしれんけど」
「温厚なエミさんからそんな言葉出てくるとは思わんかった……」
「いやドン引きっていうか……うん」
「そんなぁー!?」
「呵呵呵呵呵ッ、おもろい仲間連れてきたやんけ、なあエーミール!ほんでその発言には俺もドン引きやねんけどなぁ!なんやオマエどんどん兄貴に似てくるんちゃうか!!」
 轟、と暗闇の中で炎が渦巻いた。それをエーミールは知っている。既に槍は二振りではない事を理解して、叫ぶ。
「三人とも、下がってください!」
 前に出たエーミールに降り注ぐのは幾十幾百の燃え盛る槍。いつか見た竜の翼ではなく、白い天使の翼を背中にはためかせながらシャオロンはにぃっと嗤う。
「いやあ、似合いませんね!」
「俺もそう思っとってんけど、こればっかりはしゃあないわなぁ!」
 左手のグラスナイフで槍を叩き落とし、仕込み杖の鞘を口で咥えて抜いた。そのままぷつと鞘を吐き捨て、細身の刀を右手に構える。ユーベルコード【自由を求める殺人鬼(フライハイト・アーベントロート)】を発動させ、一気に理性をぶっ飛ばして両の刃で斬りかかる。
「アハハハハハッ、自由、自由です!私は今、自由!フリーダームっっっ!」
「おっと、エミさん助太刀だぜ!」
 メルヒオールの放った極細ワイヤーがマッハ5.0の速度で飛来し、シャオロンの首と四肢に絡みつく。そのままワイヤーに括りつけられた爆弾が爆発した。これぞメルヒオールのユーベルコード、【絃から伸びる爆発物(プロミネンス・ワイヤード)】!
「ぐ、あ、があああああああッ!!」
 けだもののごとき叫び声をあげるシャオロンが空中で爆風に煽られて体勢を崩す。そのままヴィオットの暗闇の中の影から放たれた刃がシャオロンを劈き、シャオロンの左腕が付け根から地に落ちた。
「ぎ、ぃ、ぃッ……アアアアアッ……はッ、呵々、呵呵呵呵呵ッ……!!ナメとんちゃうぞ、ボケどもがコラァ……!!」
 片腕を失い、左手のあった場所からだらだらと血を流しながらシャオロンは笑う、笑う、嗤う。元よりこのグリモア猟兵は激痛への耐性に長けていた。混沌の諸相を宿されたことで、それはより強化されているのだろうか。
高く飛び上がると眼下の四人に対して燃え盛る槍を降り注がせるシャオロン。同時、ずるりとシャオロンの腰から白く悍ましき触手が伸びた。それは失われた左腕の付け根をずっぽりとその蚯蚓の口のような先端で包み込む。
「はぁ……あぐっ……ぐ……!」
 僅かな呻き声と瞬きの間胡乱になる視線。そして触手が離れるとともに、シャオロンの腕がずぶりと伸びた。腕が再生したのだ。袖はさすがに再生不可能だったのだろう、白い腕が剝き出しのままである。
「はッ、随分と便利な体にしてくれたもんやなァ……!」
 反吐を吐く様にそう言うと、己の中心に渦巻く中から槍を一振り握りしめるシャオロン。
「さァ、まだまだ俺はぶっ倒れへんぞ……!」
 ――俺の槍は、どこまでも増える。この槍は、どこまででも飛ぶ!
幾千幾万の燃え盛る槍が四人へと向けて降り注ぐ。
「全員、回復適度に受け取っといてや!」
 ヴィオットの影から現れた猫がエーミールたちを癒す。反対にあらゆる影から伸びる刃が、シャオロンをズタズタに切り裂いてゆく。再びメルヒオールのワイヤーが飛んだ瞬間に、それを隠すようにコンラートがユーベルコード【詐欺師の言葉にご用心(ギフト・ベトリューガー)】を発動させる。影で作られた砲台、機関銃、あらゆる遠距離武器からの攻撃がシャオロンへ向かって放たれ、刀の刃が伸びて喉元の逆鱗を貫いた。
「ぐ……がっ、あああああッ……!?」
 影の後ろに隠れつつ、コンラートは走り回り、時にヴィオットの後ろにも隠れる。
「っていうかコン、俺の後ろ隠れんとって」
「せやけど」
「せやけどちゃうわ、流石に俺じゃシャオさんの攻撃は防げへんって」
 そう言ってヴィオットに蹴り出されたコンラートは自ら作った砲台の影に隠れ、ぶつぶつと呟く。
「えーと。罵詈雑言罵詈雑言……適当に言うたらええんかな……」
 コンラートは自らのユーベルコードの効果をあまり詳細には理解していない。というか、「なんか使えた!」程度にしか理解していない。コンラートの【詐欺師の言葉にご用心】は的に「罵詈雑言の幻聴」を与えるものだ。自分も言わなきゃいけないのかと思っている。そんなことはない。幻聴とは聞く方が勝手に聞くモノであり――そして、その内容こそが、シャオロンに対する正しく「鬼札」であったことを、コンラートは理解していないのだ。
「えーと、ばーか、あほー、脳筋ー……シャオカスー……」
「っぐ、ぅぅうぅうっ……アアアアア!!」
 シャオロンの耳に聞こえる罵詈雑言の幻聴は、彼を責めるものだ。「あの日」の彼を咎めるもの。まだ乾ききっていない心の傷をズタズタに抉るもの。肉体の痛みにはどれほど耐えられようと、剥き出しの心の傷を掻き毟られて耐えられるはずがない。
「うっさいねん……黙れ、黙れ、黙れやアアアア!!」
 故にシャオロンはその元凶を排除しようとした。すなわち、術者であるコンラートの排除を。空中から急降下し、両眼を殺意の紅に染め、コンラートに向かって二槍を振り下ろし、突きかかる。
「コンラートっ!!」
 ヴィオットの切羽詰まった呼び声をコンラートはどこか遠くで聞いていた。
あれ、何がそんなに癇に障ったんやろ、シャオカス言うたんが悪かったかな……そんな場違いな思考が頭の中を塗りつぶす。炎が眼前で弾け、舞う。鋒に喉を貫かれそうになった瞬間、コンラートは衝撃を感じて突き飛ばされる。
「……私たちを……忘れてもらっちゃ、困りますね……!」
 コンラートを突き飛ばしたエーミールの脇腹を、炎の槍が掠めていた。濃厚な血の匂いに交じって、肉が焦げる匂いがあたりに立ち込める。
「加勢するぜ、エミさん!」
 メルヒオールがエーミールの隣に立つ。シャオロンはぐらりと頭を揺らしながら口を開いた。その両目には、未だ殺意の紅が爛々と輝いている。
「どけやエーミール。そいつぶっ殺したんねんから」
「え、え、え」
「出来ませんね。私たちはあなたを“ぶちのめしに来た”んですから!」
「ああせやった、そうやったなぁ!呵呵呵呵呵ッ、ほな……全員ぶち殺さなあかんなぁ……!!」
 そうせんと、この声は止まらんのやろ……!!
 焔を纏った鋒が躍る。超高速の連続突きに、上空からは幾万の槍が燃え盛りながら降ってくる。シャオロンの腕の動きに合わせて、幾つも幾つもの槍がエーミールとメルヒオールを襲う。
その動きをしっかりと見定め、見極めながら、武器を殺戮刃物に持ち替えたメルヒオールとエーミールとは斬撃を叩き込んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
全力全開で…。
それなら、わたしもすべて出し切るから、しーっかり受け止めてねっ!

光刃剣と精霊剣の二刀流で勝負っ!
槍だからリーチは向こうにあるけど、こっちはこれで戦ってきたんだっ!
空中機動からの空中戦で動いていくよ

敵UCは、炎属性を付与した剣で焼き切って血を流さないように注意して攻撃。血の流れている場所を狙っていくね
敵攻撃は、第六感を信じて…
見切る前に瞬間思考力で第六感に従って回避・オーラ防御
回避は上記機動+残像で攪乱回避を狙うね

攻撃しつつ…
多重詠唱でUCの詠唱と共に限界突破で魔力溜め
詠唱と魔力溜めが完了したら
全力魔法のヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!

遠慮せずに、全部もってけーっ!!




 渾沌の地。そこは己が天と思えばそこが天に、地と思えばそこが地となる、未だ形定まらぬ場所。
 その渾沌の地で空と呼んでいいものならばはるか上空で、二人は対峙していた。
 彼方は鴻鈞道人に融合され、恐るべき渾沌の諸相を宿したグリモア猟兵、シャオロン・リー。此方は彼に転移されてこの地へと赴いた猟兵、シル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)。
「さあ、来いや嬢ちゃん!全力全開で来ぉへんと、ぶちのめされるのは嬢ちゃんの方やで!」
 シャオロンは竜の翼を背に生やし、くいと己の心臓を親指で示して獰猛に笑う。
「全力全開で……」
 シルは握った拳にぐっと力を籠め、まっすぐに相対する者の目を見て頷いた。
「それなら、私もすべて出し切るから、しーっかり受け止めてねっ!」
「呵々ッ、その意気や、そんくらいやないとこっちもおもんないわ!」
 シャオロンの両手に一振りずつ握られた二槍が、切っ先に炎を宿す。ぼ、ぼ、ぼ、次々と槍が分裂し、その先端に炎がともっていく。幾百となった燃える槍は一塊となって、増殖を続けながらシルの腹を突き破らんと踊りかかる。シルはギリギリまで槍を引きつけ、直前でがくんと高速で落ちるように降下して初撃を避けた。
 光刃剣と精霊剣、使い慣れた二刀流で落下してくる槍の雨をはじき返していく。
「リーチはそっちにあるけど、こっちはこれで戦ってきたんだ……っ!」
「ほう、そうかそうか!俺は二槍んなったんは割と最近やねんなァ、やったら嬢ちゃんの勝ち目も少しはあるかもしれへんなァ!!」
 そう嘯きながら、シャオロンは左右の手どちらでも遜色なく連続突きを繰り出してくる。特に片方の槍は自ら爆炎を吹き出し、槍そのものが超高速で突きかかってくるのだ。その突きを防護の壁で防ぎ、シルは精霊剣と光刃剣に炎を纏わせる。流れるような動きで薙がれた燃え盛る鋒、その動きを細かく動きながら残像を作り出して撹乱し、残像を攻撃させるように仕向ける。槍が残像を捕えた瞬間、シルはシャオロンの胸元へ入り込み、炎を纏った二振りを薙ぐ。
「ぐ……っ、ぎ、ぃいっ……!呵々ッ!よう考えたなァ……!」
 炎を二振りの剣に宿し、切った先から傷口を焼き潰して血を流させないようにする。それが血を流せば流すほど強化される鴻鈞道人のユーベルコードのシルが考えた打開策であった。
「呵、呵呵、呵呵呵呵呵ッ!!……めちゃくちゃ痛いやんけボケコラァ!!」
 笑いながら怒気をまき散らし、シャオロンは幾万の燃える槍を操ってシルを追い立てる。
「俺の槍はどこまでも増える、どこまででも飛ぶ!せいぜい耐えてみせるんやなァ!!」
 細かく軌道を変えて飛び回りながら、追尾する槍から逃れるシル。分厚く張った防護の壁に次々と燃え盛る槍がぶち当たり、そして再び追い立ててくる。そのシールドの向こうで、シルは唇を素早く動かしながら詠唱を始める。
「“闇夜を照らす炎よ、命育む水よ”――」
「呵々ッ、あかんなんや嫌な予感しかせぇへん!」
 槍の流星にシルを追わせながら、シャオロン自身も羽撃いてシルの正面から突きを食らわせようとする。突きかかられる瞬間に再び高速移動して残像を生み出して刺突を避け、紡がれるシルの詠唱は渾沌の地に輪唱の様に広がっていく。
「“悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ”――」
 体の奥底から魔力を溜める。自身の体のリミットを取り外し、どこぞの血管がぶちぶちと千切れる音を聞く。高速で動きながらでは、頭に酸素が回らない。ぼんやりと視界を曇らせながらも、防護膜のシールドで自身に降り注ぐ燃える槍を堪える。
「“六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれ”!!!」
 詠唱はここに完成した。580メートルの直線状に、地水火風と光闇の六属性が練りこまれた巨大な魔力の砲撃が放たれる。
「ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストぉぉぉぉぉっ!!」
「がっ――……!!」
 全力で撃ちだされた魔力の帯に、シャオロンは叫び声も上げられぬままに飲み込まれていく。渾沌の地を開拓するような長く広い帯のような魔力の砲撃。地が焼き尽くされ、割れ、がらがらと崩れ――
「ふっ、は……悪いなァ、嬢ちゃん。俺はまだまだ、暴れ足りんぞ」
 ボロボロになったシャオロンが、それでも渾沌の地を両の足で踏みしめる。そのまま焼けた翼を広げて空に舞い上がると、男は口角を上げて笑って言った。
「さあ、まだや!まだまだ暴れ倒そうやんけ!付き合ってもらわんと、困るで!」
 再び増殖を始めた燃え盛る槍を前に、シルは二振りの剣を握りしめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皆城・白露
(アドリブ・連携OK)

…何が悪竜だ
ぶちのめせっていうならぶちのめしてやるが

ファントムフォース(ペインキラー)を飲み干し、『赤い月』(興奮剤)を自分に注射して【ドーピング】

左右一対の黒剣を爪状に変形させ
先制攻撃は【武器受け】【受け流し】【斬撃波】で弾き
避けきれない分は【激痛耐性】で耐える
隙を見て【群狼の記録】を使用し、可能なギリギリまで自己強化
ユベコの代償とドーピングの反動で血を吐きながら【限界突破】【捨て身の一撃】

…ああ、そうだよ。お前の覚悟には応えてやるさ
こっちも覚悟を見せる
でもなんか腹が立つから、後でもう一発殴らせろ
鴻鈞道人じゃなくて、リー。お前の方を

だから、いくなよ。お前は、ちゃんと帰れ




 皆城・白露(モノクローム・f00355)はグリモア猟兵・シャオロンのことを知っている。
と言っても、よく顔を出す旅団で、あちらも偶に顔を出す程度。刃を交えたことは、ない。もしかしたらいつかあるかもしれないとは思っていたけれども、それはあくまで模擬戦闘で、こんな風に戦う日が来るなんて、思っていなかった。
「……何が悪竜だ」
 だから白露は、シャオロンが自分を倒すことを指して“悪竜退治”と言ったことに、納得がいかない。白露にとってのシャオロンは、旅団で見せている気易くて親しみやすそうな、面白いことがあれば腹を抱えて笑うような、そんな男だからだ。
「……んー、せやかて、俺が悪党で竜人(ドラゴニアン)な事は変わらへん事実やから、なァ!」
 軽い調子でそう言いながら、鋒に炎を纏った槍が、高速で突き出される。一切の前準備の暇は与えられなかった。左右一対の黒剣「LEFT /for lament」と「RIGHT /for revenge」を禍々しい爪状に変形させ、そのまま高速の突きを受け流す。灼熱の炎が白露の顔面スレスレを通り、髪の毛が数本炎に焼かれてジュゥと音を立てた。
「だからって……、――ぶちのめせっていうなら、ぶちのめしてやるが」
「呵ッ、それでええねん。余計な事考えるのは後にせぇや」
 だん、と大地を蹴ってシャオロンは空に舞い上がった。その背に広がるのは白い天使の翼。ああ似合わない、と白露は何故か思った。ドラゴニアンだと聞いているけれど、角以外はほとんど人の姿をしているシャオロンの竜の翼を白露は見たことはない。けれど、何故かそう思ったのだ。
 シャオロンの手の中で、燃え盛る槍が幾十、幾百、幾千と分裂していく。もはやどれが元々の二槍だったかもわからない。
――十秒後、あるいは一瞬の後か、槍の分裂が終わったら、ここに紅蓮の雨が降る、それを悟った白露は懐から蛍光色のペインキラー「ファントムフォース」を出して飲み干し、興奮剤である真っ赤な「赤い月」を自身に注射する。そして、ユーベルコード【群狼の記録(エクスペリメンタル・リザルツ)】を発動させた。白狼、黒狼、灰狼の三色の毛色の狼たちの幻影が現れて、白露の中に吸い込まれるように消えてゆく。
「燃えろ、貫け、ぶちかませ……!!ああ、俺はまだまだ暴れ足りへん!」
 ――万槍招来、火尖鎗ッ!
ガガガガガガガガガッ!!渾沌の地を炎で染め上げるように、槍の雨が白露へと降り注いだ。両の爪による斬撃の衝撃波で出来うる限りそれを跳ね返しながら、限界を超えて駆け抜ける。末端の血管が切れる音がする。
――それでも。幾千幾万の槍が振るなら、自分は千歩、万歩先へ。槍が届かぬ場所へと、狼の膂力を持って、走るのみ!
「……が、かふっ……!」
 喉の奥から鉄の味がこみあげてきて、吐き出したそれは血の色をしていた。ドーピングとユーベルコードの代償。
「おう、無理するやんか」
 そう言って笑うシャオロンとて万全ではない。鴻鈞道人によって宿された強力な「渾沌の諸相」によるユーベルコードの代償は受けている。白い羽の根元を真っ赤に染めるように、背中に亀裂が走っていた。
それを見て、白露は、駆け抜けた先で吠えながら飛んだ。
「おおおおおおっ……!!」
「な、……!?」
 文字通り、狼の膂力で飛んだのだ。そして、空を羽撃くシャオロンの元までたどり着き、
その顔面に思うさま拳を食らわせる。
「っだああああっ!?」
「いつまでも……自分が一番高い所にいるなんて……思うなよ……!」
 そのまま揉み合いになって落ちていく。その最中にも、白露はシャオロンを何度も殴りつけた。
「痛ッ、痛ったいっちゅーねん!俺は壊れたテレビか!殴っても治らへんぞ!!」
「テレビ……?」
「あ、すまんもしかしてオマエ、テレビ調子悪い時殴って直すとかそういうん知らへん世代……?」
「いや……その……」
 それは世代というより多分生まれ育ちのせいであろう。白露には壊れたテレビを叩いて直した経験はない。たぶんきっとメイビーない。あったらごめん。
「……呵々ッ、まぁええわ、何や、オマエも熱いことするやんけ」
 ――面白くなってきた、と言わんばかりに、シャオロンは鼻血塗れの顔で凄絶に笑う。
彼を囲むように、分裂した燃え盛る槍が放射状に広がる。
「……ああ、そうだよ。お前の覚悟には、応えてやるさ。こっちも覚悟を見せる。……でもなんか腹が立つから、後でもう一発殴らせろ」
「これ以上殴るんかい」
「鴻鈞道人じゃなくて、リー。お前の方を」
「……ふはっ、呵ッ、呵呵呵呵呵呵ッ!!ええで、帰ったら模擬戦でもなんでも受けて立ったろうやんけ!そこで思うさま殴ったらええわ、代わりに俺もたんまり暴れさしてもらうけどなァ!」
 笑顔でこの後のことを語る。「この後」が必ずあるのだと、信じて。
笑いながら振りかぶられた槍を、爪状の剣で受け止め、威力を受け流して、はじき返す。
「なぁ、リー」
「何やねん」
「いくなよ。お前は、ちゃんと帰れ」
「当ったり前や、寝ぼけた事言うとんちゃうぞ」
 二槍に二爪がぶつかりあう。渾沌の地に、しばし刃のぶつかり合う音だけが響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木々水・サライ
いやー、こんなところで、こんな時にお前との戦いが出来るとはねぇ。
いつだったかに夢見たんだけど、まーさかまさかの現実になるとは。
っつーことで、本気で行かせてもらうぜ。

先制攻撃は黒鉄刀の闇をばら撒いた後に闇に紛れる、残像、戦闘知識で回避!

UC【解放する白黒人形】発動。
この戦いに言葉なんかいらねぇ、暴力こそが全てだろうよ!!
まあ、俺はお前の視界を遮るために黒鉄刀の闇をばら撒かせてもらうけどなァ!!
傷口を抉り2回攻撃を叩き込む!!

あっはっはっは!!
テメェをボコるのに日和ってるヤツなんかいねェんだよ!!
ここにいるのはただただ暴力言語で会話するだけの人形と竜だけだ!!
あっはっはっはっはっは!!




「いやー、こんなところで、こんな時にお前との戦いが出来るとはねぇ」
 手に黒鉄の刃を持ち、そこからとめどなく闇を溢れ出させながら、木々水・サライ(《白黒殺戮人形》[モノクローム・キラードール]・f28416)はゆらりと揺れる。
「いつだったかに夢見たんだけど、まーさかまさかの現実になるとは」
「……さよか」
 サライのその様は、異様だった。いつものサライとは、明らかに何かが違っていた。
鴻鈞道人と融合し渾沌の諸相を宿しているという異常事態であるシャオロンの方が、背筋をぞわりと総毛立たせてしまうほどに、今のサライの様子はおかしかった。
「今の俺が言える義理とちゃうけどな、どないしてんオマエ、気持ち悪いわ」
「……目が覚めたんだよ。もう何も怖くない、俺を恐れさせるものは、何もねえ……!」
「あかん、殺意の波動に目覚めてしもうとるやんけ。今のオマエあのどうしようもない親父さんにそっくりやぞ。鏡見せてやりたいわ」
「親父の話はしないでください」
「アッハイ」
「っつーことで、本気で行かせてもらうぜ……!」
 今の会話の間に、既にシャオロンの槍は打ち込まれている。けれど燃え盛る槍はばらまかれた闇に切っ先を鈍らせ、高速で動き回るサライが残す残像に惑わされていた。
ばさりとシャオロンは背中に天使の白い翼を生やして空に飛びあがる。
「マージで似合わねえのなあ!」
「それなぁ、これ見た奴みんな思とると思うで、ッ!」
 上空でシャオロンの槍は分裂を始める。幾十、幾百、幾千、幾万の槍が燃え盛り、もはや最初の二槍がどれだったのかもわからない。
サライは上空に十二の刃を投げ上げた。【解放する白黒人形(リベレイション・モノクローム)】。漆黒の刃が、白銀の刃が、紅の蒼の翡翠の琥珀の黄金の透明の刃が、そして黒と蒼空の刃が、角度によって色味を変える刃が、紫色の刃がばらばらに動き、そして槍を押しのけながら背後からシャオロンを幾度も刺し貫いた。
「が……ああああ!!」
「さあ、もっと、もっとだ……!!この戦いに言葉なんかいらねえ、暴力こそが全てだろうよ!」
「ああ……暴力が最高の言語なのには同意したるわ……!」
 シャオロンの腹から白色の悍ましき触手が這い出てうねうねとくねりくねり、サライの刀に貫かれた傷口に潜り込む。
「あッ、ぐ、かはッ……」
 傷口を塞いだ触手が皮膚の代わりを務める。その体内では、失われた細胞の代替を務めているのだろう。衣服に大穴を開けながらその下の肌はつるりとした状態で、シャオロンは腕を突き出した。
「俺の槍はどこまでも増える、どこまででも飛ぶ!どこまででもや!!貫け、燃えろ、ぶちかませ――火尖鎗ッ!!」
 渾沌の地を炎で染める槍の雨がサライを襲う、その槍を飛来する刀で次々に叩き折って、サライは笑う。
「あっはっはっは!!テメェをボコるのに日和ってるヤツなんかいねェんだよ!!ここにいるのはただただ暴力言語で会話するだけの人形と竜だけだ!!」
「ほんま気っ色悪いわ。……せやけどお前がそこまで言うんなら、乗ったるのも悪ないわなぁッ!!」
「――あっはっはっはっはっは!!」
「呵々ッ、呵呵呵呵呵呵呵呵ッ!!」
 幾万の燃え盛る槍と十の刃がぶつかり合う中、サライは右手に黒鉄の刃を、左手に燐灰の刃を手にしてシャオロンと渡り合う。
 笑い声が響く中、燃える槍と刃とが渾沌の地を飛び交うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
アドリブ他◎、苦戦負傷上等

"おもんないから死ぬ気はない"
ん。その言葉、信じるよ。

耳を聳て風鳴りを拾い、▲カウンターで打ち落し
聞き落した攻撃は▲戦闘知識の直感を頼りに▲咄嗟の一撃で弾く
先制を遣り過せば「流水紫電」を最大励起、縮地で間合いを詰める

火尖鎗、一度見た技ならば意地でも抜けねばならぬ
頑鉄殿の鎗は毛ほども侮れないけれど、致命傷以外は敢えて無視
▲残像曳き幻惑めいた軌道で
瀑布が如く押し寄せる炎の鎗を掻い潜り、打ち落し
間合いに無理やり入り、死角より【抜刀術・椿】を放つ

力、技、狛、焔は精妙に似せたようだけれど
魂までは真似できない
本物のシャオロンさんじゃないと
緋迅鉄の焔の全ては引き出せないだろう、ね




「おおおおおおおおおおおおッ………ッらァああああ!」
 グリモア猟兵、シャオロンの咆哮と共に、炎を宿した槍の鋒がクロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)へと突き込まれる。
轟、と焔が大気を焼いていく音をその狐耳を聳てて拾い、刃を抜いて打ち落とす。
そのままシャオロンはくるりとクロムの背後に舞うように降り立ち、槍を返して背を貫こうとする。それをこれまでの幾多の戦いで培ってきた直感の如きもので咄嗟に弾き返すと、仙狐式抜刀術の要たる足捌きの秘奥「流水紫電」を発動させる。紫電を纏う足元に、冷たく蒼い粒子が舞い、縮地にて互いの位置を交換し、間合いを詰めて切り裂く。
「ぐ、ぅあッ……!」
「――力、技、狛、焔までもは精妙に似せたようだけれど、魂までは、真似できない」
「……んん?」
「本物のシャオロンさんじゃないと、緋迅鉄の焔の全ては引き出せないだろう、ね――」
 緋迅鉄。シャオロンの二槍に使われた妖刀地金の一種である。サムライエンパイアの片隅にある刀匠の里の秘術。里がオブリビオンに襲われたあの時のことを、クロムは思い出しながら言う。
 ――そんなクロムに、シャオロンはちょっと罰の悪い表情をしながら言った。
「……えーとな、狛やら言うんはちょっとようわからへんねんけど……」
 俺、頭の方はそこそこ正気やねん。多分魂っちゅーんも特に変わっとらんのとちゃうかなぁ……
「――え、あの、でも、鴻鈞道人と融合して、渾沌の諸相を宿してるって」
「それはしとる。なんや俺とちゃうもんが体ん中におるんはわかんねん。せやけど、それとは別に頭の方はいつものシャオさんやで」
「でも、説得も通用しないって」
「それはでけへん。せやけど俺は俺で、別に鴻鈞道人に意識乗っ取られとるわけでも意思がのうなっとるわけでもないねん。俺、自分がそないなことになるーとは、言わへんかったよな?」
「言って……ない……」
 この会話をしている間にも、シャオロンからの容赦ない炎を纏った槍による突きと薙ぎとの猛攻は続いていて、クロムはそれを打ち落とし弾き返すことに専念するばかりだ。
「まあわかってくれたらええねん、オマエと戦っとるんは正真正銘ホンモノの俺やって、な? 何ちゅーか、暴れとる最中に操られとるフリとかそんなん器用な事多分でけへんから俺」
 何ならさっき精神攻撃まで仕掛けられてしっかりかかってしまっている。鴻鈞道人だったらこうはいかないだろう。
「せやから、この槍の力かて百パー引き出せるっちゅー事、や!」
「くっ……!」
 打ち落とし損ねた槍の鋒がクロムの衣服を焼き、肌に小さな傷をつける。クロムにとってはそれは小さな掠り傷に過ぎない、けれど――知っている。その小さな傷こそが、最も避けねばならないものだと。
 シャオロンの手の中の二槍を中心にして、槍が幾十、幾百、幾千、幾万と増殖していく。
(来る……「火尖鎗」!)
 それはあの刀匠の里でシャオロンが使ってみせた技。幾万の槍を幾万の敵に、あるいはたった一人の敵に、降り注がせる炎の槍の流星雨――それを、忘れてはいない。
「呵々ッ、俺の槍はどこまでも増える、どこまででも飛ぶ!燃えろ、貫け、いざや来たれや、万槍招来!」
 二槍を鍛えなおした刀匠・永見頑鉄の技術は毛ほども侮れないとクロムは理解している。その使い手が「本物」なのならば尚更だ。それでも、クロムは逃げも隠れもしなかった。
「――火尖鎗(ミラージュスパイク)ッ!!」
 雨の如く、あるいは流星の如く、瀑布の如く押し寄せる焔の鋒の中を搔い潜る。致命傷以外はこの際無視して、どうしても避けなければならない槍だけ打ち落とす。そのまま無理矢理に押し寄せる炎の槍を潜り抜けながら、シャオロンの背後に回り――
「ぐぅっ………あ゛ああああああああ!!!」
 男の肌にクロムの切っ先が触れる前に、その絶叫はシャオロンの喉から迸り出た。
背中から、まるで口を開けたようにがぱりと開いて。白い肋骨がまるで牙の様に並ぶ。
(鴻鈞道人の、ユーベルコード……!!)
 そのまま頭からクロムをむさぼり喰らわんとした背中の口から、縮地で逃れる。その場所へ突き出される燃える鋒。再び繰り出される高速の突き。眉を潜めながら背中の肉を無理矢理捲り上げられた痛みに呻くその表情を間近で焼きつけて。クロムは言った。
「――“おもんないから死ぬ気はない”って、言ったね。その言葉、信じるよ」
「呵々、当然や……!こんなところで死んだかて、俺は何にもおもんないねん……!」
 それを聞いて、クロムは頷いた。縮地を持ってしても槍の間合いに無理矢理詰め入る。
神速剣閃、壱ノ太刀――【仙狐式抜刀術・椿】。抜き放たれた刃が、シャオロンの胸をざっくりと斬り裂いた。
「が……あっ、ア――」
 血飛沫が舞う。無数の鎗が二振りに収束し、からんからんと地面に転がる。悪竜と自ら名乗った男は、槍を求めて手を彷徨わせたのちに、自らが流した血の海にどうと倒れた。

 最早渾沌氏鴻鈞道人の気配どころか、渾沌の諸相すら失われて渾沌の地に転がる男が一人。
 彼が目覚めて最初に吐いた言葉が、
「ああ、今回も暴れ足らんかったぁ……!」
 であることを、ここに記しておく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月30日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト