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殲神封神大戦⑰〜夢現にあらず〜

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』 #『王翦大将軍』

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(死ぬ事は赦さぬ)
「ん……ふわ」
 脳裏に響いた声で意識を取り戻した王翦が起き上がると、目前には固く閉ざされた楽浪郡の門が聳え立っていた。
「ん〜? あれ、夢だったのかな? もうめちゃくちゃのボロボロに壊したはずだったんだけど」
 首を傾げた後、王翦は頭をかく。ただあれが夢なら非常に嫌な夢だった。
 楽浪郡を制圧したまでは良かった。けれどへーかの体が壊され、北京に侵攻させていた部隊もことごとく撃破され、そして本陣に乗り込んできた猟兵達によって自分自身も……。
「正夢じゃなきゃいいけどね〜。そんじゃ始めちゃおっか」
 王翦の手の動きを合図に周りに集っていたオブリビオンが一斉に動き出す。見るからに堅牢だった門は簡単に打ち壊された。

「次に向かっていただくのは楽浪郡を模したエリアです。当然、待ち受けるのは秦国最強の瑞獣将軍、戦争・殺戮・蹂躙を愛する青龍、王翦大将軍です」
 ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう言って在りし日の楽浪郡の地図をテーブルの上に広げた。
 ここでも鴻鈞道人自身は、渾沌の地と融合して「楽浪郡の異世界街」となっており手出しはしてこない……のだがどうやら王翦の手によって壊される前の街を再現しているようだ。
 どういう意図があるかは分からないが、王翦並びに配下のオブリビオン達はこれから鴻鈞道人が再現した楽浪郡の異世界街を破壊し、中にいる住民を皆殺しにしようとしている。
 そう、ここでは住民も再現されているのだ。
「ここでは現実では我々が到着する前に殺された住民も再現されているようですが……今回はその住民『すらも』オブリビオンです。王翦達に殺されるまでは哀れな一般市民を装って、普通に助けを求めてきます。……ですが庇えば後ろからブスリと刺されてしまいます。さらに死んでも復活して、王翦の支配下に置かれて襲いかかってきます」
 敵の断末魔とは違う悲痛な声を聞きながら、怪我を負った者を見過ごすか介錯して戦い続ける。毛色は違うものの、心にかなりくる戦場となることが予想される。
「ですが忘れないでください。渾沌の地は全て鴻鈞道人の掌の上だということを。ここで心を折ったらそれこそ相手の思う壺ですから」
 そう唇を結んだルウは集まった猟兵達を現地へと送り出した。


平岡祐樹
 せっかく一覧に書かれてるなら出さないと……。
 お疲れ様です、平岡祐樹です。
 このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。

 今案件にはシナリオボーナス「王翦を取り巻く集団敵を倒しつつ、敵の先制攻撃に対処する」がございます。
 これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。

 プレイング内容によっては王翦大将軍よりも、配下である封神武侠界に由来する集団敵オブリビオンとの戦いが主軸になってしまう可能性がございます。
 また、相対したい集団敵オブリビオンを指定されても王翦のユーベルコードの都合上、必ずお応えすることは保証出来ません。
 以上、ご了承の上お力をお貸しください。
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第1章 ボス戦 『『王翦大将軍』』

POW   :    王翦異界混成軍
レベル×1体の【異世界オブリビオン兵団】を召喚する。[異世界オブリビオン兵団]は【出身世界】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    王翦奇兵用兵術
いま戦っている対象に有効な【ユーベルコードを使う新たなオブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    王翦龍神変異軍
召喚したレベル×1体の【オブリビオン軍団】に【龍の角と尾、翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

四王天・燦
胸糞悪さ極まりなし
王翦目指して直進するぜ
軍勢の中に召喚主がいるのは間違いねーっしょ

縋る民草に向け斬撃波で一閃
狙うは部位破壊:頭部
即死で恐怖を覚える瞬間すらなく躯の海へと返す
惨い死骸に安寧を祈るぜ

敵軍の飛翔や上等
追加身体部位に今しがた呼ばれた軍勢が慣れる前にダッシュで将軍を目指す
フェイントをかけ、時に敵を盾にして切り込むぜ

将軍に一つ尋ねる
戦いの過去『だけ』が呼び覚まされ、現在も未来もない蘇りを繰り返すのって楽しいかい?
黄泉返りとオブリビオンの違いがようやく分かった気がするんだ
なんて可哀想なんだ

中核まで突入できりゃ上等だ
制御なしの陸式による爆熱のダウンバーストで全て吹き飛ばしてやる
将軍、介錯仕る!



 暴れ回る僵尸から家財道具も放っぽり出して住人達は逃げ惑う。
 そこに現れた四王天・燦(月夜の翼・f04448)の姿はまさに救いの光であった。
「ああ、助けだ! 助けが来たぞ!」
「お願い、あいつらを倒して!」
 安堵しながら駆け寄ってくる住民達を視界に収めた燦は親指で鍔を浮かし、もう一方の手で抜きながら居合切りの要領で斬撃波を飛ばす。
 だがその切先は僵尸ではなく、縋る民草に向けられた物だった。
 違和感や恐怖を覚える瞬間すらなく住民達の頭の上半分が飛び、慣性で走り続けていた体が血を噴水のようにあげながらその場で倒れる。
 生き残った者はおらず、この惨劇に悲鳴があげられ周囲に知らされることは無かった。
「胸糞悪さ極まりなし」
 この民草もオブリビオンであると頭では理解しているが、助けを求めている者を騙し討ちの形で引導を渡すというのはやはり気分が悪い。
 骸の海へと返る惨い見た目の死骸に安寧を祈りながらも、この不快を一刻も早く解消すべく燦は王翦目指して軍勢に向かって直進した。絶対先発主義でもない限り、あの中に召喚主たる王翦がいるのは間違いないだろう。
 燦の姿に気づいた僵尸達の背中に龍の翼や尾が飛び出す。僵尸はその衝撃に浸ることなく、まるで昔から扱っていたかのように空へ飛び立ち燦に襲いかかった。
「敵軍の飛翔や上等」
 僵尸と地面の間に生まれた隙間を走ってすり抜け、追いかけてくる僵尸の体を鋼糸で絡め取って通せんぼしてきた者にフレイルの要領でぶつける。
 将棋倒しになった僵尸達の額から札を剥ぎ取って無力化しつつ、燦はどんどん軍勢の中枢へと切り込んでいく。
「ようやっと見つけたぜ」
 そして見つけた王翦に向け、燐は大声で呼びかけた。
「なあ、戦いの過去『だけ』が呼び覚まされ、現在も未来もない蘇りを繰り返すのって楽しいかい?」
 黄泉返りとオブリビオンの違いがようやく分かった気がしている燦の問いかけに王翦はピンと来てないようで首を傾げる。
 それもそうだろう、彼女は今までの出来事を全て夢だったと思っているのだから。
 あまりの反応のなさに燦は憂いを帯びた表情になり、大きな息を吐いた。
「……なんて可哀想なんだ」
「可哀想か可哀想じゃないかを他人に一方的に決められるのって嫌な感じだな〜?」
 口を尖らせた王翦は長刀を横に振り翳し、一気に距離を詰めてから斬りかかる。それを刀で受け止めた燐は大声で叫んだ。
「『御狐・燦の狐火をもって此処に劫火の煉獄を顕現せん。舞えよ炎、天変地異を巻き起こせ!』将軍、介錯仕る!」
 制御なしの陸式による爆熱のダウンバーストが周囲の軍勢を燃やしながら建物ごと吹き飛ばす。だが王翦は余裕綽々の表情で鍔迫り合いを続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

楊・宵雪
「悪趣味ね…聞き流すようにしましょ

[空中浮遊]と[空中機動]で敵UCで強化された集団に対応するわ
[おびき寄せ]て[残像]で離脱、敵が集まっているところに[破魔]の[弾幕]をお見舞いするわ

住人は守るべき人ではないようだし
王翦に殺されて強化されるより先に倒すくらいの覚悟があったほうがいいでしょう

敵からの攻撃は基本回避か[受け流し]、次善の策で[オーラ防御]

王翦へは広範囲を攻撃できるUCで対応
避けきれないようにしっかり射程にとらえるわ



「悪趣味ね……聞き流すようにしましょ」
 龍の手と化した鋭利な爪で小さな子供を惨殺するオブリビオンの高笑いとその親の悲痛な叫び声に眉を顰めながら、楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)は空を舞う。
 オブリビオンから必死に逃げている者も、遺体を抱いて泣いている者も、空にいる猟兵に気づいて助けを求めている者も全員守るべき「人」ではないという。
 王翦に殺されて強化されるより先に倒すくらいの覚悟があったほうがいいだろう……なんてことを考えていると王翦から授けられた巨大な龍の爪をふりかざしたオブリビオン達が迫ってきた。
 同士討ちも恐れぬ勢いと雄叫びに虚を突かれて動けなくなった宵雪が無惨に裂かれる。しかしその傷から血は吹き出さず、バラバラになった体は落ちずにその場にとどまって霧散して消えた。
 仲間とぶつかり合ったことでボロボロになったオブリビオン達が困惑の面持ちで宵雪のいた場所に集っていると頭上から破魔の弾幕がお見舞いされた。
「囮のそばからは危険だって、将軍から教わらなかったのかしら?」
 弾幕を受けて気絶したオブリビオンの身体が重力に任せて墜落する。その内の一体は真下にいた住民を押し潰した。
 犠牲となった住民は血だらけの遺体を抱き抱えて泣いており、近づいていた危険に一瞬たりと気づけぬまま下敷きになってしまったのだ。
 あれが本物の人ならば宵雪は全力で降下して、オブリビオンの間に割って入って吹っ飛ばすか住民を突き飛ばすか抱き抱えて飛び去っていただろう。
 あの泣いているのが鴻鈞道人によって仕込まれた演技だと知っている今なら澄まし顔で見届ける余裕も持てるが、もし知らなかったら。
「……本当に、趣味が悪すぎるわ」
 改めてため息を吐き、不愉快な気持ちを言葉に乗せる。左目しかない上に街と一体化している鴻鈞道人には一切聞こえてないだろうが。
「あれあれ〜、みんな一気にやられちゃったんだ〜。ここはあっしが出ないと不味い感じかな?」
 そんな中、宙をうねりながら現れた王翦が長刀を不意に突き出してきた。先程と違って攻撃を誘っていなかった宵雪は腕を振るってそれを受け流すと、揺れた薄紅色の佩玉が輝き始めた。
「ふぁ……あれ、なんだか、眠く、なって……」
 その光を全身で浴び、虚な目になった王翦がうつらうつらと舟を漕ぎ始める。
「ダメ、寝ちゃったら、猟兵に……」
「さっきまで寝ていたのでしょう? 今見ているのも夢じゃないかしら。『春の陽射しは誰にでも平等に享受できる贅沢なのよ』、ゆっくりしてもいいんじゃない?」
「そうかな……そうなのかも〜」
 宵雪の微笑みに安心しきった様子の王翦は腑抜けた笑いを浮かべてそのまま睡魔のお世話になって落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仰木・弥鶴
こういうの何ていうか知ってる? 大将軍さん
茶番って言うんだよ

相手が飛翔能力を付与されるならこちらも空中浮遊で対等に
龍は嫌いじゃないけど半端な仮装みたいな姿は滑稽だね
迫る角や尾はディヴァインデバイスの機械羽根で受け流し空中体勢を維持
俄かの翼に遅れを取るほどこいつの浮遊能力はやわじゃない

助けを求める住民の声も配下として戦う雄叫びもかき消すように
『Speech is silver』で王翦を中心とした戦場全体に音声攻撃を叩き付ける

大将軍さん、聞こえてるよね?
そいつらは鴻鈞道人に再現されたオブリビオンだから
あなたのへーかの器にはなりませんよ

目的忘れてない?
まあ、思い出したところで斃させてもらうんだけどね



「龍は嫌いじゃないけど半端な仮装みたいな姿は滑稽だね」
 迫るオブリビオンの角や爪による突撃や尾による薙ぎ払いをディヴァインデバイスの機械羽根が受け流す様を眺めつつ、仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)は空中に浮かぶ椅子に足を組んで座り続けていた。
「俄かの翼に遅れを取るほどこいつの浮遊能力はやわじゃない」
 緩まる気配のない防衛線を前に疲弊するオブリビオンを観察するのに飽きた弥鶴は自分の襟元を引っ張ると、そこについていたピンマイクに声を入れた。
「大将軍さん、聞こえてるよね?」
 ディヴァインデバイスと共に浮かぶスピーカーから放たれる弥鶴の声は助けを求める住民の声も配下として戦うオブリビオンの雄叫びもかき消す。
 そのあまりの大音量に屋根の上で、寝れば寝るほど体を蝕む眠りに落ちていた王翦も叩き起こされた。
「な〜に〜! 人がスヤスヤ心地よく寝てるところにさ〜!」
 不機嫌極まりない王翦が怒鳴り返すと弥鶴は肩をすくめた。
「目的忘れてない? まあ、思い出したところで斃させてもらうんだけどね」
「目的ぃ? 起きたらやろうと思ってたんだよ! ……ってやっぱりあれは夢じゃなかったのかあの妖狐め! 騙したな!」
「……こういうの何ていうか知ってる? 大将軍さん。『茶番』って言うんだよ。あとそいつらは鴻鈞道人に再現されたオブリビオン。だからあなたのへーかの器にはなりませんよ」
 挑発するついでに気づいてなさそうな本人に衝撃になりそうな事実を告げてみたが、壊滅してない楽浪郡を前にあらゆる記憶が悪夢の物と誤解して脳内から消していた王翦は鼻で笑うだけだった。
「え〜そんなの関係ないよ、兵馬俑にしたらどうせ同じだし。その中に覇王の相を持ってる奴がいたら最高だけど〜、へーかの器はまだまだ全然あるから急ぎじゃないしね? ……それに」
 飛び出した王翦は割って入ってきたディヴァインデバイスを次々と弾き飛ばし、弥鶴と肉薄する。
「茶番かどうかはあっしを斃してから決めるんだね?」
 ここまで近づかれては大声で叫んでもスピーカーがこちらを向くのが間に合わない。
 弥鶴は息を飲みながらも頭を回転させ咄嗟にホルスターから拳銃を引き抜いたが、その引き金に指がかけられる前に長刀の刃に弾き落とされる。
 拳銃が地面に落ちる前に振るわれた素早い追撃に弥鶴はディヴァインデバイスごと最寄りの建物の瓦屋根に叩きつけられた。
「う〜ん、最後の最後で止められちゃったか〜。まあ、結構深く入ったっぽいからもう動かなくなったでしょ?」
 金属と金属の正面衝突で刃が欠けてないか心配しつつも、王翦は見下ろしながら小首を傾げて見せた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

御形・菘
悪趣味極まりないバトルフィールドに、あえて突撃するのも巨悪の嗜みというもの!
…ここで絆されて慈悲を見せる妾なんて、ナシであろう?
聞く耳は一切持たん! 殺気を全力で放ちつつ、目に付くものからすべて、左腕で、尾で殲滅する!

民衆が逃げてくる方向を辿れば、おそらく将軍は居るであろう
まあ妾の所が終着点になるのだがな!

はっはっは、配下に龍のパーツを生やすとか、実に美的センスが良いではないか!
だが、此度はそれが仇となる!
影より出でよ、空飛ぶモノを否む鎖よ!
はーっはっはっは! まとめて墜としてくれよう!

取り巻きは後回しで構わん!
将軍だけは妾が直々に、全力でブッ飛ばす! 怒りを込めた邪神の左腕の一撃でな!



 助けを求める者の声に耳を貸さず、地を這うように突き進む御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は殺気を全力で放ちつつ、目に付くものからすべて、左腕や尾で殲滅する。
 悪趣味極まりないバトルフィールドに、あえて突撃するのも巨悪の嗜みというものであった。
「ひっ、ば、化け物ー!」
 菘のいる方へ逃げてきた活発そうな見た目のキマイラの住民が悲鳴を上げて急停止する。元々爬虫類系の部位が色々混じっている上に、血を全身に浴びた今の菘の姿を見て、王翦が差し向けているオブリビオンと見分けろというのは酷な話であっただろう。
 だが逃げ惑っている者も自覚してるか否かの境界線はあるものの今回はオブリビオンである。菘はキマイラが反転する前に肉薄するとその体を左腕で叩き潰した。……ここで故郷を離れても、同じ生き方を貫き続けた同胞だからと絆されて慈悲を見せる姿など、誰も求めていないだろうから。
 菘は地面のシミとなった存在が逃げてきた先に視線を向ける。そこにいたのは道着に身を包んだ、半人半龍の男達だけであった。民衆が逃げてくる方向を辿ればおそらく将軍にたどり着くだろう、という当ては外れてしまったようだ。まあ最終的には自分がいる所を終着点にさせるつもりだが。
「はっはっは、配下に龍のパーツを生やすとか、実に美的センスが良いではないか!」
 菘の高笑いに気づいた男達は龍の翼で滑空してこちらへ詰め寄ってくる。走るよりもそちらの方が速いと判断したのだろう。
「だが、此度はそれが仇となる! 影より出でよ、空飛ぶモノを否む鎖よ!」
 太陽によって伸びた影から溢れ出した鎖が男達の体に絡みつく。
「はーっはっはっは! まとめて墜としてくれよう!」
 そこから流し込まれた電撃によってオブリビオン達は黒炭になったが、その雷鳴によって周囲にいた別の一団が駆けつけてくる。
 だが菘はそれらに一切目もくれず4枚の翼を広げ、呑気に空中で長刀の具合を確認している王翦に向けて飛び出した。
 この青い瑞獣は夢の話と忘れたようだが、自分とつながりを作る可能性があった者達を手にかけた事実は消えることのないれっきとした事実だ。
「お主だけは妾が直々に、全力でブッ飛ばす! この怒りを込めた邪神の左腕の一撃でな!」
 長刀の柄を握り直して拳を受け止めた王翦を地面から伸びた鎖が拘束し、強引に防御の構えを解かせる。
「うわ殺意マシマシじゃん!? キミと何があったって言うのさ!?」
 集まってくる取り巻きなど後回しで構わない。
 何度蘇ってこようと、その都度潰す。
 自分のやり取りを思い出し、その場に跪いてガタガタ震えながら命乞いをしようとその台詞を吐けなくなるまで、微塵に砕いて潰し尽くす。
 金色の目に怒りと殺意の炎を灯し続ける菘は電撃を流すことで王翦の口を無理矢理封じると憎たらしい顔面に強烈な一撃を叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
可哀想を撤回して欲しけりゃ這い蹲らせな

自爆覚悟でカウントダウン点火
アタシはオーラ防御張ってその場で踏ん張る
地に足ついてねえ兵団は吹き飛ばす寸法さ
飛べばいいってモンじゃない

敵軍が集うまで十秒あれば上等よ
王翦、死合しようぜー!
狂ってる?
戦争屋と戦闘狂の差異だよ

神鳴とアークウィンドの二刀流で攻める
持てる戦闘技能を駆使して死合を愉しむぜ
せいっと足元蹴って砂で目潰し

敵が集まってきたら劣勢に脳汁出ちゃうぞい
肉体の限界を凌駕する魂を発露させ回避三倍で寸避けかまして槍の間合いに飛び込み、攻撃命中三倍のアークウィンドで部位破壊:喉
掻っ捌く

南無三
他人に利用されるままに敗戦の過去を繰り返すなんざ可哀想以外にあるかよ



「へへ、見ないうちにずいぶんいい顔になってんじゃないのさ」
 歯が折れ、血が止まらない鼻を押さえて空を睨みつける王翦に笑い混じりの声がかけられる。
 視線を下に戻せば、頭から血を流しながらも獰猛な笑みを浮かべる燦の姿があった。
「ありゃりゃ、もうちょっと痛めつけときゃ良かったかな? でもあれだけやっといたならキミ達だけでも止められるでしょ」
 王翦からの期待に応えるべく四方八方から龍の部位が付け加えられたオブリビオン達が迫る。
「十秒あれば上等よ」
 しかし燐は刀も短剣も抜かずに笑うのみ。その理由は本人の宣言通り、10秒後に分かった。
 燦の服の中にあった爆発が起こし、周囲にいた建物やオブリビオンが一掃される。凄まじい風圧に王翦が怯む中、砂煙から飛び出してきた燦は上半身を露わにしながら大声で叫んだ。
「王翦、死合しようぜー! 可哀想を撤回して欲しけりゃ這い蹲らせなー!」
「自分を餌にして爆発に巻き込ませるなんて、狂ってんねぇ?」
「狂ってる? 戦争屋と戦闘狂の差異だよ」
 先程の爆発、燐自身はオーラによる防壁を張ってその場で踏ん張り、地に足ついてなかったオブリビオン達は吹き飛ばされる寸法であった。故に爆発に巻き込まれなかったオブリビオン達は体勢を立て直すと風通しのよくなった戦場を突っ切ってくる。
 先程のように鋼糸を前もって張り巡らせられる建物はもう無い。遮る物も無い進撃は燐を飲み込んで蹂躙はずだった。
「飛べばいいってモンじゃない!」
 劣勢に脳汁を分泌させた燐は肉体の限界を凌駕する魂を発露させ、振るわれた爪をすんでのところで避けると押さえつけて踏み台代わりにして宙を飛んでいたオブリビオンを斬り伏せる。
「せいっ!」
 さらに着地と同時に足元を蹴って砂を撒き散らすと、狩るために詰め寄ってきていたオブリビオンの目を潰してその隣を悠々と駆け抜けた。
「も〜! どうしてこうなっちゃうのかなぁ!」
 簡単に避けられ、倒され、すり抜けられるオブリビオン達の情けない姿に王翦は長刀を構え直して、先程と全く同じ結果を見せてあげようと気合を入れる。
 しかし戦い続ける為の強い想いを得た燐と、寝起きの頭に軽い脳震盪を起こして万全の状態を崩した王翦の間にあった実力差は埋まるどころか逆転してしまっていた。
「南無三」
 突き出された長刀に寸避けをかましてその間合いに飛び込んだ燐は短剣で王翦の喉を深く掻っ捌く。
 声にならない声を漏らしながら血が溢れる喉を押さえる王翦に一目もくれず、燐は短刀を手元で一回転させた。
「他人に利用されるままに敗戦の過去を繰り返すなんざ可哀想以外にあるかよ」
 両膝をついて倒れ伏す音が後ろから響くと同時に仮初の楽浪郡は歪んで消え、形の定まっていない不安定な地が戻った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月29日


挿絵イラスト