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狂気の胎動

#クロムキャバリア #円卓連合


●死出の旅路
『ハァ……ハァ……!』
『お姉ちゃん! アイツらが!』
 耳を劈く回転鋸の音と悲鳴が響く。立ち込める火薬と、血の臭い。ドシン、ドシンと地面が揺れて、その度に小柄な少女と少年は転びそうになる。きっとここは、地獄だ。
『お父さん、お母さん……』
 でも、逃げなきゃ。幾ら呼んでも、二人はもう居ないのだから。
 誰も助けてなどくれない。偽りの教義も、無償の愛も、ここには無いのだから。
 だからしっかり走って逃げないと、赤黒い悪魔のマシンが、私達を追って――。

『報告、敵拠点まで10㎞。進路上に残存勢力が僅かにいますが……』
 モニタ越しに強張った表情の兵士が言葉を続ける。敵拠点とは言え只の難民キャンプ。迎撃のキャバリアも継ぎ接ぎだらけの急造品。何も恐れる相手ではない。それでも、上官――道化の様な仮面を被った女は、一切の躊躇も無く無慈悲な号令をかける。
『全て殺せ』
 その言葉に感情は無い。怒りも、悲しみも、憎しみも。
 ただマシンの様に、淡々と成すべきを成す。その為の号令。
『……了解』
 敬礼と共に兵士はモニタを切る。だが不思議だ。
 奴らの悲鳴を聞く度に、自分の心が高揚している。
 誰かが、それは悪い事では無いのだと言う様に。

「そして誰も難民キャンプへ辿り着く事無く、皆殺しにされてしまった」
 グリモアベースの会議室、朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)は己が視た予知を説明し終えると、続けてスクリーンに状況を映し出した。
「無論、その後は難民キャンプもだ……事態は最悪だよ」
 スクリーン上の地図には光点が二つ。渓谷の手前と、そこへ向かっている難民の一団を示すもの。そして、それらを狙う赤い光点が一直線に並んでいた。そもそも、どうしてこんな難民を襲う事態が発生しているのかと誰かが問う。
「先の戦闘――クリスクワイア帝国が甚大な被害に見舞われたあの戦いの後、帝国は残存戦力を再編して事態の元凶を討伐する事にしたんだ」
 首都機能は壊滅し、部隊も全滅寸前まで追い込まれたと言うのに……悲し気な口調で言葉を続けるラヴィニアへ、帝国の狙いはドワーオなのかと再びの問いかけが。
「いいや、オブイエ王朝さ。その前の戦いでドワーオ研究都市国家の強制査察を受けてほとんど壊滅したあの国が、そもそも元凶を引き入れたと判断したんだ」
 そもそもドワーオの鉄竜部隊は誰も正気では無かった。故にそうなった元凶はその前におかしな事になっていたオブイエだろうと帝国は判断し、襲撃をかけたのだという。
「そのオブイエも国家としての機能を失って久しい。溢れ出た人々は唯一中立のガフの谷へ向かい、その途中で難民キャンプを建設せざるを得なかった」
 オブイエに帝国の襲撃を防ぐ余力など無く、一早く逃げ出した人々は三国の緩衝地帯たるガフの谷に助けを求めたが、谷も突然大挙として現れる難民全てを受け入れる事など出来ない。援助の約束をした上で、付近に難民キャンプを建てる事を認める他、一旦だとしてもこの状況を納める事は出来なかったのだ。しかし。
「そのキャンプにオブイエの元凶が紛れていると踏んで、帝国が討伐部隊を向かわせている。でもね、そこに元凶なんていない。キャンプへ向かう人達の中にも」
 何故ならば、今度は帝国の部隊がオブリビオンマシンに狂わされたのだ。
「……皆にはキャンプへ向かう人達を守って欲しい。転移タイミングは敵襲の寸前だ」
 そして、それを止められるのは今や猟兵達しかいないのだ。

「敵は帝国の暫定討伐部隊。装備はパラティヌス・スローター……」
 スクリーンに映されたキャバリアはパラティヌス――だが以前に帝国で見たものとは姿形が微妙に違う。優美な装甲は厳めしいディスチャージャーに覆われて、両肩と両脚部には威圧的な銃砲がそそり立つ。
「対人制圧用に特化した嫌な機体だ。彼等を全滅、あるいは無力化して欲しい」
 キャバリアでは無く対人戦を想定した機体だと言う。本来のパラティヌスが騎士ならばこの機体はさしずめ殺し屋と言った所か、暗澹たる気配を感じるマシンであった。
「その後に敵の指揮官が出てくるだろうけど、残念ながら詳細は不明だ」
 帝国の事だから恐らくは騎士の様な機体だろうが、スローター・タイプの事もある。一筋縄ではいかない可能性が高い。覚悟して欲しいと言葉を続け、グリモアが光を放つ。
「お願いだ、どうか人々を護って欲しい。こんな事で死んでいい訳が無い」
 頭を下げるラヴィニア。同時に、戦場へのゲートが開く。
 風はまだ、血の臭いを運んではいない。しかし一刻の猶予も無い。
 救える生命を一つでも多く助ける為に――全ては猟兵の手に掛かっているのだ。


ブラツ
 ブラツです。
 今回はクロムキャバリアの難民キャンプを攻める敵を、
 その襲撃前に待ち受けて殲滅する事が目的です。
 また、マスターページを更新しましたので事前にご一読いただければ幸いです。

 第1章は集団戦です。対人制圧用キャバリアを迎撃して下さい。

 第2章はボス戦です。現時点で詳細は不明です。

 第3章は日常です。難民キャンプを慰問します。

 戦場は難民キャンプ手前の荒地です。背の高い建造物はありません。
 敵はオブリビオンマシンの影響でおかしくなっているだけなので、
 無暗に殺す必要はありませんが、生存によるボーナスは特にありません。
 また、殲禍炎剣の影響により高高度高速飛行戦闘は不可能です。
 その他、詳細はオープニングに準じます。

 今回キャバリアの借用に関しては以下の機種になります。
 ■ロードランナー(ジャンク品)
 RSキャバリアライフルとRX-Aパワークローを装備した汎用キャバリアです。
 ほぼアンダーフレームの逆関節機体で、特殊な能力はありません。
 また、各武装は機体にそのまま組付けられています。
 シナリオ終了後に希望があれば譲渡可能です。
 (アイテム化は自前でお願いします)

 アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
 単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
 同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。

 プレイングは開幕と同時に募集します。
 書けるタイミングで執筆しますので、募集期間は設けません。
 その為、状況によりプレイングを流してしまう場合もあります。
 再送依頼は致しませんが、お送り頂ければ力の続く限り善処します。
 他、募集停止などの追記はタグにて行います。
 何卒、ご了承いただければ幸いです。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 集団戦 『MCK04SC-パラティヌス・スローター』

POW   :    BSフレイムガン&RS-Sグレネードランチャー
【耐熱塗装を施した機体が装備する銃火器】から【対人用の広域火炎放射】か【対装甲榴弾】を放ち、【酸欠と火傷】もしくは【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    RBXSランスライフル&Sマイン&EPジャミング
【連射ビームと共に対人殺傷用鉄片と妨害電波】を降らせる事で、戦場全体が【情報封鎖されたキャバリアによる虐殺現場】と同じ環境に変化する。[情報封鎖されたキャバリアによる虐殺現場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    RSレッグガン&RS-Fポイズンソー
自身の【脚部対人機銃を掃射、精密狙撃の精度】を代償に、【複数の対人・対キャバリア用無人ユニット】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【対装甲機械刃と自爆、戦場に散布する毒ガス】で戦う。
👑11
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月影・このは

対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号、ここに見参!
民間人への攻撃、即ちヴィラン…であればその凶行止めてみせましょう
いざ!マシーーーン!ウォーーー!


5mサイズのキャバリア、サイズでは負けていますが此方とてスーパーロボット(自称)パワーでは負けていません!
足のバトルホイールにて『ダッシュ』し、機動力を得て敵の攻撃の回避
目のレーザー照射機にて『レーザー射撃』、牽制しながら近づき
ブラストブーツの火薬の炸薬にて『ジャンプ』!

クラッシュメテオドロップッ!上空からの『重量攻撃』にてキャバリアを粉砕
まずは1機撃墜!続けて次の敵の元へ参るとしましょう



●マシン見参
『早く……逃げないと』
『もう動けない、動けないよォ!』
 愚図る少年の手を引いて少女が走る。何度も転んで擦り傷だらけの両足に血が滲み、少年はその場で座り込み抵抗を。だが、駄目だ。もうすぐ奴等が――赤と黒のキャバリアの群れが、砂埃を巻き上げてこちらへ迫る。
『頑張って! もう少しだから! もう……』
 涙を拭って叫ぶ少女。ここで止まったら駄目だ。こんな所で死にたくない……そして、その願いは間に合った。
「もう大丈夫です、ええ!」
『!?』
 すっと、泣きじゃくる少年の手を誰かが取る。見上げた先には知らない少年――月影・このは(自分をウォーマシンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)の顔が。
「だから、頑張るのです。ここはボクに任せて!」
『き、君は……?』
 まだあどけなさが残るこのはの顔を見て、少年は泣くのをやめた。何故だかわからないが、このままじゃいけないと思ったから。
「対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号――月影このは、ここに見参!」
 ロボ……レプリカントだろうか? あのキャバリアをやっつけてくれるのだろうか? 訝しむ少年の瞳を見つめ、このはは言葉を続ける。
「さあ、早く逃げるのです!」
 そう言いながら面を上げて、彼方の敵を見やるこのは。敵は間近、傷ついた少年少女を背にして両脚の『バトルホイール』が唸りを上げる。
『分かった。このは、頑張って!』
 すっと立ち上がり駆け出す少年少女。もう大丈夫だろう――後は自分が仕事をするだけ。
「民間人への攻撃、即ちヴィラン……であれば」
 ええ、頑張りますとも! 声援を受けた全身に力が込み上げてくる。
「その凶行止めてみせましょう! いざ! マシーーーン! ウォーーー!」
 そして空を切り裂く音と共に、このはは一陣の風となった。

『敵性反応、生身の子供が一人――』
『構わん、隊列を崩すな。全機フォーメーションF』
 了解。短い返事と共に単横陣のスローターが一斉に炎を吐き出す。赤い津波が地面を舐めて、灼熱で大地を焼き焦がした。しかし。
「ぐぬぬ……ですがこの程度の熱!」
 炸裂――点火した『ブラストブーツ』の反動を利用し、熱した大気の上昇気流に乗ってこのはが飛ぶ。そのまま眼下のキャバリアに照準を定め、光条が空を裂いた。
『奴が跳んだ!? アルファ、対空砲火!』
 宙を舞うこのは目掛けてスローターの胸部から火線が伸びる。甲高いモーターカノンの音とレーザーの照射音が響く死線を潜って、このはは自在に空を駆けていく。
「ここから先は! 行かせません!」
 バトルホイールの回転で重心を巧みにずらし、寸での所で回避を続けるこのは。狙いはただ一つ、弾薬を満載したスローターのバックパック。
「オーラエンジン全開放――ハンマーアーム、アクティブ!」
 敵は知らない。このはが持つ力を。たかが子供一人が取り付いた所で、キャバリアは倒せないと侮っている。
『取り付かれたか、だが……』
「必殺ッ! クラッシュメテオドロォォォップ!」
 瞬間、鋼鉄の拳に超重が重ね合わさる。その重さは生命の重さ、このはの覚悟と逃げ惑う人々の祈り――サイズで負けていようと、心のパワーは決して負けない!
「ハァァァァァッ!!!!」
『直撃、馬鹿な!?』
 超常の一撃――流星の如き拳の一打はスローターの装甲をぶち抜いて、着地と共にスローターは爆発四散。ズシリと、その重みが大地に亀裂を走らせる。
「まずは1機撃墜! さあ次の敵は!」
 ゆらりと立ち上がりスローターの一群を見上げるこのは。
 敗れる訳にはいかない、あの子達を――罪無き生命を守る為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
●アドリブ連携OKです

面白くなさそうなことしてるね、ぼくも混ぜてよ、台無しにしてあげるからさ。

【叢雲】
SR-ARX01阿穹羅、起動するよ!
叢雲ユニット展開、無人機の無力化、コントロールこっちにもらうよ!

阿穹羅の砲撃とレーザー射撃の一斉射撃で、本体もどんどん撃破していこう!

阿穹羅は遠距離型だと思う人もいると思うけど、叢雲ユニットと合わせれば、こんな風に……。
(大型のマニピュレーターを形成して)
近接戦もいけちゃうんだなこれが!
(運転、操縦、推力移動、空中機動、鈍重そうな見た目に反して、仕込まれたスラスターは重火力にまで含まれているので、意外にも素早い)

さぁ、こんなつまらない企みは潰すに限るね。


陽向・理玖


逃げてる人達なんか
全然関係ないのに
…許せねぇ
絶対止めるぞスタークドラゴン
覚悟決め

変身し衝撃波撒き散らし残像纏い
手近な敵にダッシュで間合い詰めグラップル
足回りぶっ壊すくらいの勢いで足払い
あんたら対人専用なんだってな
俺もこう見えて人の急所は弁えてんだぜ
戦闘知識と暗殺用い
無力化狙い足回りや関節武器狙い
部位破壊で徹底的に壊す

UC起動
銃火器は撃たせないように張り付き
追えないように限界突破しさらにスピード上げてヒット&アウェイ
至近距離で貰ったら逆に同士討ちも狙えるし
俺は瞬時にオーラ防御で衝撃波のオーラ張り
火の守りも貰ってるし
これ位でやられるかよ
逆に炎や爆風目晦ましにしジャンプし空から急降下
蹴りの乱れ撃ち



●燃える大地
 難民キャンプから10㎞離れた荒野、徒党を組んだスローターがスラスターを吹かして逃げ惑う人々を追う。まるで幼子が無邪気に虫を追い立てる様――その先に、凛として立つ二つの影があった。
「面白くなさそうなことしてるね、ぼくも混ぜてよ」
 台無しにしてあげるからさ――国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は愛車『百弐拾伍式・紅路夢』に跨って、頭上の悪魔を鋭く睨む。
「ああ。逃げてる人達なんか全然関係ないのに……許せねぇ」
 絶対止めるぞ、スタークドラゴン。陽向・理玖(夏疾風・f22773)は手にした『龍珠』をパチリと弾き、腰の『ドラゴンドライバー』が虹色の輝きを放つ。
 二人は猟兵、理不尽を正すべく現れた埒外の使者。マシンの鼓動が、迸る輝きが戦場に響いて――ゆらりと、二人の背後に巨大な影が現れた。
「――変身!」
「ドッキングセンサー! SR-ARX01阿穹羅、起動するよ!」
 閃光が空を白く染めた間隙に、二人はそれぞれのキャバリア『SR-ARX01 阿穹羅』『STALK DRAGON』に飛び乗った。荒ぶるキャバリアが大地を揺らし、スローター達は僅かながら、致命的に出遅れる。
『敵キャバリア出現! 繰り返す、敵キャバリア出現!』
 視界が戻った時、スローターの前には鈍色と青色の装甲が立ち塞がっていた。途端、青き鋼は虹色の輝きを放って風となる。
「あんたら対人専用なんだってな――」
 ドン! と音より早い衝撃がスローターの足元を襲う。伸びる影は残像――惑わされ闇雲にランスを振り回すも、その一撃は虚しく空を切るだけ。
『!?』
「俺もこう見えて人の急所は弁えてんだぜ」
 大物を振り回せばその分隙も大きい。爪先を潰し、駆け上がる様にスローターの顎へ膝蹴りをかますスタークドラゴン。その勢いを利用して、鋭い後ろ回し蹴りが赤黒い悪魔を大地に叩き伏せた。これで一つ。
『迂闊に近付くな、先にあっちのデカブツを……!』
 余りにも速いスタークドラゴンは分が悪いと踏んで、阿穹羅に向かいレッグガンを斉射するスローター達。しかし鈍色の分厚い装甲はちゃちな砲など寄せ付けず、阿穹羅はずしりと前に踏み込んで――。
「そうだよね、遠距離型だと思うよね。でも――」
 爆発! 否、爆発的なスラスターの加速でスローターの懐へと雪崩れ込む阿穹羅。同時に背負った巨大な砲架を展開し、巨大な砲がその形をまるで重機が如き大型マニピュレーターへと瞬時に組み替わった。
「近接戦もいけちゃうんだな、これが!」
『早いッ!?』
 ガツンッ!! 鋼がぶち当たる音と共に、万力の様な巨大な腕がギリギリとスローターを持ち上げ、無慈悲にアンダーフレームを握り潰した。これで二つ。
「アイハブコントロール! 叢雲ユニット展開!」
 これで終わりじゃないよ。制御系をマニュアルに切り替えたメカニックの天才が冴え渡る。瞬間、鈍色が薄く輝いて、無数の火線と共に銀色の破片が辺りを覆い尽くした。

『迎撃だ! ポイズンソー射出!』
 それは人間を効率的に殺す禁断の兵器。無数の刃を侍らせた円盤が毒を撒き散らし飛翔して、鋼の拳を地に突き立てた阿穹羅に殺到する。
「ぼくのレシピ(設計図)は特別製さ! そんな玩具じゃあ止められない!」
 その刃は鋼すら穿つ筈だった。刃が刺されば至近距離から毒を流す――だが、それは叶わない。
『――制御が、ポイズンソーが!?』
 装甲に刺さった回転刃が止まり、どろりと溶けて地に落ちる。霧散した毒は鈍色の輝きが無効化――侵蝕型粒子金属片が無人機の制御を奪い、破壊と浄化を同時に行う。天才の超常にスローターは余りにも無力だった。そして。
「余所見してる場合かよッ!!」
 すかさず、スタークドラゴンの追撃がスローターを横殴りに蹴倒して、そのまま四肢を高速の連打が木っ端みじんに破砕した。これで三つ。
『このッ!!』
 あっという間に無力化された分隊の仇討と言わんばかりに、残るスローターのフレイムガンが猛威を振るう。大地が焼けて、赤黒い炎が青い装甲を灼熱に包み込む――それでも。
「火の守りも貰ってる。これ位でやられるか」
 青龍は潰えず。限界を超えた青き鋼は炎と共に天へと昇る。灼熱がスローターのセンサを狂わせて、スタークドラゴンは再び風と共に消えた。
『消えた? 奴は……』
「こっちだ!」
 何処だ――僅かな時が永遠にも感じる。パイロットの頬をじわりと伝った汗が雫になると同時、スローターは頭上からの強襲に抗う暇も与えられない。
「これで四つ――次!」
「さあ、どんどん撃破していこう!」
 炎と共に銀光を放つ龍が舞う。爆発の衝撃を利用して次の獲物へ飛び掛かり、阿穹羅の援護射撃と超常がスローターの退路を塞ぐ。一転、追う者から追われる者となった一群はやがて、須らく鋼の骸と化した。
「……こんなつまらない企みは潰すに限るね」
「全くだ。徹底的に壊してやる」
 先発は完全に潰した。だが敵は――帝国は本隊がまだ控えている。
 構うものか。幾らでも出てこい。
 全て破壊してみせる……龍と鋼がここにある限り。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジン・マキハラ
如何なる理由があろうと難民達の虐殺を許す道理はない、悪いが手加減はしないぞ

サイズでは負けてはいるが伊達に永久機関を搭載している訳じゃないんでな、出力なら此方が上なんだよ!

UC:終焉炎獄式内蔵兵装を使用し、自身の背部に展開した二つのミニガンと滑空砲の弾幕で敵集団を攻撃

その後蒼炎覇気を発動して敵の攻撃を『見切り』つつ『戦闘知識』で効率的にクロックヘイズで敵キャバリアを『残撃破』で纏めて『切断』する

いくら数で勝っていようがぁぁぁぁっ!

永久機関の超出力にものを言わせたジャイアントスイングで他のキャバリアを巻き込みながら敵キャバリアを投げ飛ばす

俺達が守っている限り誰一人殺せると思うなよ!!



●逆襲の蒼炎
 先発が壊滅したスローター部隊はみだりに近付くことを由とせず、足を止めて砲撃による蹂躙を開始した。広域制圧用の対人榴弾をばら撒いて、逃げる難民の行く手を遮るスローター。炸裂音が響く度、戦場は悲鳴と怒号が支配する――正に地獄の有様だった。
『ああ、お父さん……』
『逃げ、ろ……お前……だけでも』
 崩れた地面に足を取られた老人の手を老女が必死の形相で引っ張ろうとする。だが余りにも無力――このままでは、やがて砲撃に吞まれ死にゆく他ない。
「……如何なる理由があろうと難民達の虐殺を許す道理はない、悪いが手加減はしないぞ」
 その時、不意に現れた男が軽々と片手で老人を引っ張り上げて、ゆっくりとその場に下ろした。男はそのまま面を上げて、眼前の鋼の悪魔を睨みつける。
「逃げるんだ、出来るだけ遠く。その時間は稼いでやる」
『おお……ありがとう……』
 涙を浮かべ、去っていく老夫婦を背中で見送る男。握りしめた拳がサイボーグ特有の駆動音をギチギチと鳴らして、男――ジン・マキハラ(ブレイズ・オブ・マキナ・f36251)は力強く大地を蹴り上げた。

 それは青白い炎を噴き上げてゆっくりとスローター部隊に近付いてきた。明らかに異質な存在――いや、敵だ。憎悪に侵されたマシンがパイロットに囁く。ならばあの青ごと、紅蓮に沈めてやればいい。
『新手の敵勢力が出現、各員フレイムガン点火準備――放射!』
 隊長の号令と共に赤黒い炎が大地を焼き尽くす。されど青き炎――ジンは燃え尽きない。一際輝く青き炎は無数の弾雨を――反撃のミニガンと滑腔砲を放って、棒立ちのスローターを続々と屠っていく。青き炎は赤き火の悪意を――射線上の燃焼物を予め焼き尽くし、強化された武装は誘爆せずにその猛威を振舞うのだ。
「サイズでは負けてはいるが伊達に永久機関を搭載している訳じゃないんでな」
『アレは何だ、白兵用レプリカントか? いや――』
 想像だにしない逆襲を受けて狼狽えるパイロット達。嵐の様な弾幕を辛うじて潜り抜け思考――直撃を与えねばアレは止まらない。ならば。
『それでも、たかが生身の分際で――!』
 フレイムガンを放り投げ両手で構えたランスで突撃。火中を抜けて唯一点――ジンが立つ青き炎を貫かんとスラスターが唸りを上げる。しかし。
『! スローターが押し負けている!?』
 揺らめく影はしっかりとその穂先を捕えていた。サイボーグの剛腕は超常が高めた永久機関――『終焉炎獄炎式内蔵兵装』のエネルギーをもって、がっしりと掴んだ鉄の塊を豪快に振り回す!
「――出力なら此方が上なんだよ!」
 焼き焦がされた装甲が炎を散らし、最早只の鉄塊と化したスローターを陣取った仲間の下へと投げ返せば――。
「いくら数で勝っていようがぁぁぁぁッ!」
 突如投げ返された炎の塊を避けんとスローターが続々と体勢を崩す/炎を抜けて跳躍し、空に刻まれた紫電の跡がジンの莫大なエネルギーを見せつける。卓越した演算は最初から炎の動きを見切っていた。ここを抜ければ有象無象が屯する敵の中枢。
「俺達が守っている限りぃぃぃッ、誰一人殺せると思うなよぉッ!!」
 手にした『クロックヘイズ』が狙うは憎悪の根源――炎を纏った青黒い刀身が鈍く煌いて、放たれた斬撃が装甲を両断する。
『なんだ、アレは……!!』
 終焉の青き炎は憎悪の赤すら吞み込んで、力無き人々の思いに応えるのだ。
 後はひたすら、奴らをブッタ斬るのみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

中小路・楓椛
【渡り禽】と同道。

本来私基準では非介入事案ですが非戦闘員に向けられた潤沢な対人用途殺傷装備…実に非対称。気になる流れを察知したので推参。

ばーざい全技能行使、神罰・呪詛併用にてUCにとくりす起動、黒き不定形(ショゴス)の集団を召喚。
私はショゴスによる半球状の弾性防御結界を構築。難民の集団を覆い防御に徹しまして…クロさんクロさん、嗤える程度にテンプレートな「誅滅対象」となります。無制限で装備貸与。特攻(ブッコミ)上等、死んでいなければ極上。
直撃確殺(処刑執行)は狙いませんケド、間接的な致死なら色々と諦めて下さい。

殺意で力を行使するなら同様に誰かから行使される覚悟を持つのが戦場の礼節というものです。


数宮・多喜

【渡り禽】
やれやれ、汚れ仕事が得意そうな面構えだこって。
いくら戦争だからって、対人特化の機体なんて引っ張り出すたぁね。
汚れ仕事には汚れ仕事、傭兵としてしっかり働きますかねっと!

こう見えてOveredは『ジャミング』機能搭載のサイキックキャバリアさ。
つまりは、情報封鎖された戦場での運用が想定されてるって訳でね!
こちらから通信妨害を仕掛け、そもそもの照準を低下させつつこちらの通信手段は【超感覚戦陣】のテレパスで確保し、味方との連携を重視。
Einherjarを広域展開し、『弾幕』を張って無人ユニットを迎撃するよ。
キャバリア本体へはマルチプルブラスターの『属性攻撃』で反撃してやろうじゃないのさ。


リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】【渡り禽】
【ナインス・ライン】搭乗
※アドリブ他歓迎

【ファルマコン】は難民C巡回用でもあるし
戦闘が落ち着いたら負傷者を手早く収容さ
楓椛さん、キツい人が居たら教えてね

【MD・エアロ】で『コジマ』召喚
『超感覚の広域探知』が妨害下でも情報取得
【瞬間思考力】で配置から挙動まで解析

結果は多喜さんを介して部隊と逐次共有
奴さん、ビット展開で鈍ったね…ほぼ真人間か
極力不殺で行くけど…贅沢は言わないよ

頭上を押さえた『コジマ』の【斬撃波】や
銃口前の【オウレット・アイズ】大2基で増幅、
戦場の死角へ潜む小4基にランダム転移した
【ホークス・ビーク】のEN徹甲弾でビット撃墜
難民の安全を確保したら本体も一気に潰すよ



●狂奔を越えて
「本来私基準では非介入事案ですが」
 中小路・楓椛(ダゴン焼き普及委員会会長・f29038)は漆黒のクロムキャバリア『クロさん』の肩に乗り、居並ぶスローターの大群を前に溜め息を吐く。昨日の防衛対象は今日の敵。被害者が今度は加害者になるという極めてありきたりな悍ましさ。
「非戦闘員に向けられた潤沢な対人用途殺傷装備……実に非対称」
「やれやれ、汚れ仕事が得意そうな面構えだこって――」
 ふわりと、楓椛の側に下りた赤いサイキックキャバリア『JD-Overed』の数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が続く。
「いくら戦争だからって、対人特化の機体なんて引っ張り出すたぁね」
「結局どこも同じって事かな。まあ……」
 その背後、アイドリング状態の機動医療艇ファルマコンの上――重厚な青いキャバリア『ナインス・ライン』のリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)が気だるげに言葉を吐いた。
「ファルマコンは難民キャンプ巡回用でもあるし、戦闘が落ち着いたら負傷者を手早く収容さ」
「リリーセンセ、そこは頼むよ。じゃあ汚れ仕事には汚れ仕事――傭兵としてしっかり働きますかねっと!」
 そして渡り禽が動き出す。この地獄を覆す為に。

『敵キャバリア出現、機数3、内1機はアンノウン』
『先の防衛戦で一緒だった連中か……』
 ザリ、とノイズ混じりの音声がスローター各機に届く。先の戦いで緊密に連携を取っていた強力なキャバリア傭兵だ――これほど厄介な相手は居まい。だが。
『やるしかあるまい。総員、対装甲戦闘用意』
『展開しているポイズンソーのマニューバをシフトBに』
『レッグガン、弾種切替。対装甲徹甲弾』
 号令一下、腹を括った兵の声が続々と届く。相手に不足は無い。ましてやキャバリアの部隊が相手ならば……。
『各機、配置につきました』
『了解。これで幾分……』
 あんな事をするよりは余程気が楽だ。一瞬、脳裏を過った思考を押し込んで隊長が言葉を続ける。これも戦いに変わりはない――用意は整った。
『何でも無い。全機、攻撃開始』
 それはオブリビオンマシンの誘いか、あるいは本来の役割に立ち返れた安堵か。分かる事はただ一つ……あれらを倒さねば未来は無いという事だけ。

 来たね――無数の火線がいの一番に飛び出したOveredの行く手を遮る。だが対マシン戦闘は多喜にとってお手の物。緩急をつけたマニューバで鮮やかに間隙を抜けて、赤いマシンが稲妻の様に加速する。
「Einherjar展開、さあ喰いつけ……」
 そして稲妻から新たに三つの光が迸る。浮遊防盾兼レーザー砲台たる『Einherjar』が、遅れて続いたスローターのポイズンソーをさも落雷の様に穿っていく。
『ポイズンソーの動きが鈍い。負荷チェック急げ!』
 パイロットが言う様にポイズンソーの動きは精彩を欠いていた。時折ぐらりと傾いて墜落しそうになれば、その隙をEinherjarが一撃で屠っていく。何故ならば。
「こう見えてOveredはジャミング機能搭載のサイキックキャバリアさ」
 全て多喜の思惑通りだ。一番槍を務めると同時に敵の攻撃を集中させ、同時に敵の電子的戦闘経路を寸断する。多対一で押していると見せかけて、その実徐々内側から食い破る――そして、気付いた頃にはもう遅い。
『敵の妨害電波だ。ECCMスタンバイ!』
『駄目です、モード切替に時間が……』
 カウンターECMを展開するにも対装甲戦闘に最適化されたスローターは、直ちにそれを行えない。鈍らの殺戮機械は徐々にその数を減らしていき、渡り禽の面々は遂に戦線を半分以上押し上げる事に成功する。更に。
『――認証完了。現象再現用ホロアーカイブ、リローデッド』
「悪いねコジマ。また力を借りるよ」
 ナインス・ラインのコクピットでリーゼロッテが呟く。多喜の広域ジャミングは何も敵のみに効果を与える訳では無い。それでも、リーゼロッテの『Op.L:M.DRIVE [A]』ならばその障害を易々と乗り越えられる。瞬間、美しき白翼の鴉がナインス・ラインより姿を現わし、雄々しく空へと羽ばたいた。
「これでジャミングされていても問題無しっと。さて……」
 モニタにはコジマからの視聴覚情報がリアルタイムで送られてくる。敵群は多喜さんが身一つで押さえて、楓椛さんは側方からの強襲――ならば、アタシは。

『何だあの黒いのは! 攻撃が通らん!』
「只でさえ妨害されているのです。そんな目眩撃ちなど」
 楓椛が操るクロさんは痩躯でバネの様に跳ねて、いつの間にか敵陣の側方に深々と侵入していた。多喜の強襲に手間取ったスローター部隊はジャミングも重なって、楓椛の接近に今の今まで気が付かなかった。
「ではクロさん……やっておしまいなさい」
 ここまで近づけば――ばーざい全技能行使。起動した『認知調律術式:にとくりす』がクロさんにスローターのポイズンソーとレッグガンを齎して、更には楓椛ゆかりの二振りの鉈がその手に渡された。
「特攻(ブッコミ)上等、死んでいなければ極上――」
 相手は嗤える程度にテンプレートな「誅滅対象」ならば無制限で装備貸与。ぐおぉんと咆哮するクロさんは、己の意思に従って鉄の悪魔に襲い掛かった。その姿は怒りに燃える逆襲者の如し――こうなれば止められる者など無い。
「直撃確殺(処刑執行)は狙いませんケド、間接的な致死なら色々と諦めて下さい、ね」
 では私は仕事がありますので……そう言い狐はゆらりと風に消えていった。

「多喜さん、これでフルオープンだよ。奴さん、ビット展開で鈍ったね……」
 その声は多喜の超常――『超感覚戦陣』が届けたもの。三機の連携が十全で妨害すら無効化出来た理由、思念波ならば通常のジャミングの影響は受け付けない。
「みたいだねぇ。鍛え方が足りないんじゃあないかな?」
 全周にビットを展開し迎撃と進攻を続ける渡り禽の面々はその速度を緩める事無く、着々と戦場を制圧していく。無力化したポイズンソー、当たらないレッグガン、武装の切替えはジャミングで押さえ込み、逆襲のビット群が――今やリーゼロッテの『オウレット・アイズ』も加わって、圧倒的な彼我戦力差となっていた。
「ほぼ真人間。マシンの影響さえ抜ければ……でも」
 それでも精強なスローターは前進を止めない。すかさず『ホークス・ビーク』――プラズマライフルの一撃がオーバーフレームを吹き飛ばす。ファルマコンの上で戦場を見下ろすリーゼロッテは、コジマの目と合わせて今や全てを掌握していた。
「最優先は難民の救助さね、センセ。こっちは任せて!」
 迎撃網を抜けようとするスローターに追撃の『マルチプルブラスター』――重力波攻撃がスローターの脚をその場で強引に圧し折った。ここから先へは、絶対に行かせない。

「殺意で力を行使するなら、同様に誰かから行使される覚悟を持つのが戦場の礼節というものです」
 だからこそ、難民キャンプ自体を護るべく楓椛は殿として――魔力を行使し耐性を付加した黒い不定形の防御膜を後方に展開。毒も礫も飛ばぬ様、そして悪意が紛れぬ様にと鋭く目を光らせていた。
『そうだな。そうありたいと思っていたよ、本当は』
 そして辿り着いた悪意――満身創痍のスローターから、ずるりとパイロットが身を落とす。重力攻撃で潰れた装甲服が痛々しい。だがその目は、憑き物が落ちた様に清々しい表情を見せていた。
『おかげで助かった。後は頼む』
 男が倒れる。それを見て、狐は薄く目を開く。
 男の背後――赤と黒のマシンは何も語らない。
「そう言われましても、ね」
 じろりとそれを――悪意を見上げて、楓椛は口元を歪めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

大町・詩乃
先日はクリスクワイア帝国を護ったのに、今度は敵に回るとは。
黒幕のオブリビオンは悪辣ですね!と激おこ。

焔天武后を操縦して戦いますよ。

難民の皆さんを護る事を最優先に、難民に向けられたビームや鉄片や無人ユニットを防ぐ為、結界術・高速詠唱で防御壁を展開したり、オーラ防御を纏って巨大化した天耀鏡の盾受けでかばう。

UC:自然回帰を使用。

敵機を纏めてシステム停止と電源オフに追い込みます。
乗り手を殺さない様、スナイパーでオーバーフレームや武装や無人ユニットに狙いを定めてレーザー射撃・一斉発射・貫通攻撃で機体のみ破壊。

近接戦では第六感と見切りで攻撃を躱し、雷の属性攻撃を纏った雷月の鎧無視攻撃で機体のみ破壊です。



●荒野の光
「先日はクリスクワイア帝国を護ったのに、今度は敵に回るとは……」
 大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)はスーパーロボット『焔天武后』のコクピットから逃げ惑う人々をじっと見ていた。砲火が大地を裂いて、灼熱の炎が生命を奪わんと跋扈する。こんな惨状を望んで、あの戦いに手を貸した訳では無い。
「黒幕のオブリビオンは悪辣ですね!」
 まるで先の戦いの逆……無意味な殺戮が紡がれた憎しみの連鎖ならば、それは人々を見守る神として到底容赦は出来ない。この事態を引き起こした真の黒幕に対し、詩乃は怒りを滾らせる。
「……参りましょう」
 これ以上いけない――だから。力ある祈りが焔天武后に火を灯し、罪無き人々を救済する為に、朱色のマシンが戦場に舞い降りた。

『駄目だ、砲撃でこの先は……』
 度重なる砲火が大地を抉り、行く手を遮る大穴となって難民達の行く手を遮る。
『畜生、ここまでかよ!』
 助けを呼ぼうにも電波妨害が不可視の障壁となって、立ち止まれば殺意の光が己が身を焼きかねない――正に虐殺現場と呼ぶに相応しい戦場で、人々はただ絶望の声を上げる他に取る道は無かった。
『足を止めるな! 奴らが――』
 鼻に突くイオン臭が充満し、熱を帯びた空気が全身に纏わりつく。足を止めればこの熱に焼かれる――もう駄目だ。全てを諦めたその時、空が悲鳴を上げた。
「天耀鏡! 悪しき光をここで断て!」
 否、これは怒りの咆哮。甲高い音を上げる焔天武后のスラスターが帯びた光を周囲に放ち、悪意を遮る様に光の壁をそこかしこに顕現する。
「大丈夫ですか皆さん。早くキャンプの方へ」
 その壁は巨大な鏡。無数の光条を虚空へと跳ね返し、一部の隙も無い絶対防御の陣形が荒れた大地に咲き誇る。全て、詩乃の起こした神の御業。
『あ、アンタ一人でこれを……』
 驚愕の表情で焔天武后を見上げる難民が言葉を溢す。だが一人だ……敵は多勢にして精強。不安げな表情で詩乃へ言葉を続けて。
『た、助かったけど、アンタは大丈夫なのか……?』
「ええ。こう見えても私、強いんですよ!」
 溌溂とした声音で返す詩乃。そう、私は強い――少なくとも、弱者を甚振るだけの悪に屈するなどありえない。だから安心して逃げて下さいと言葉を結び、詩乃は飛翔した焔天武后で敵陣へ殴り込んだ。

『敵キャバリア出現。機数1』
『チャフ、ECM起動。包囲して無力化だ……全機撃ち方始め!』
 パラティヌスは元々汎用機体。対人装備だろうとキャバリア相手に遅れは取らぬ――隊長の号令一下、鶏冠めいたジャミング装置を起動し、全身のディスチャージャーからチャフを放つスローター。そのまま手にしたランスライフルの光条が一斉に焔天武后目掛けて殺到する。
(そう来るでしょうね。ですが……)
 殺意の束をひらりと躱し、垂らしたマシンの紙垂から反撃のレーザーを放つ詩乃。人々を護りつつこちらに注意を引き付ければ役目は十分。後は――。
「アシカビヒメの名において命ずる。止まりなさい、そして」
 瞬間、空が揺れる。
「もう、戦う必要はありません」
 焔天武后の全身から、暖かな光が戦場を覆い尽くした。
 
『い、ECMシステムダウン!』
『ライフルがジャムった!? 馬鹿な、これはビームだぞ!!』
 突如発生した無数の障害。それは詩乃の『自然回帰』――機械のシステム停止と電源オフを呼び起こす超常の仕業。
「……あなた達ならば分かるでしょう」
 注意を引き付け、動きを止めれば、後は裁くのみ。反撃のレーザーは寸分の狂い無くスローターの武装を、四肢を、無慈悲に両断し爆ぜさせた。分かるでしょう、この光の意味。あの戦いを見ていたあなた達ならば。
「この戦いの無意味さが」
 ここに平穏を齎す為に、銃を降ろし、あるがままに成れ――神の名の元に。

成功 🔵​🔵​🔴​

叢雲・源次
【白鈴】
難民の虐殺…何処へ行っても外道のやる事は変わらんな。
サギリ、戦域および難民キャンプに届くよう通信網を繋げ。
『第三極東都市管理局戦術作戦部特務一課、これより武力介入による人道支援を開始する。』
広域通信で宣言すると同時に機体制御、戦闘機動開始
「敵機はスロータータイプ、データ照合…以前相手取った事があるな…サギリ、無人ユニットの対処は任せる。」

「やれるな、白鈴号。」
神経接続された機体に問いかけると同時に殲滅大太刀の柄に手をかけ疾駆
一気に敵の懐に飛び込み、自身が得手とする抜刀術を行使する
執行、電磁抜刀

『警告する。蛮行を即座停止し、退け。』

返答は分かり切っている…義理は立てた。ならば後は屠るのみ


サギリ・スズノネ
【白鈴】

※キャバリア:白鈴号(源次お兄さんと一緒に搭乗/サポート)

合点ですよ、お兄さん!人を守るのはサギリの本分なのです!
白鈴号で難民キャンプに通信を繋ぎます。
サギリ達がー今からあいつらぶっ飛ばすのです!
もうちょっとだけ頑張ってくださいなのですよ!と『鼓舞』するのです!

前に戦ったのと同じ機体ですねぇ
お任せくださいなのです。お兄さんが敵をぶっ飛ばすのに集中できるよう、周りのはサギリが!
『火ノ神楽』で炎の鈴を出現させせて、無人ユニットにぶつけます。
攻撃の軌道を『見切り』つつ、毒ガスもろとも燃やして『浄化』してやるのです!

当たりそうな攻撃は白鈴号ごと『火炎耐性』を込めた『オーラ防御』で防ぐのです!



●白刃、舞う
「難民の虐殺……何処へ行っても外道のやる事は変わらんな」
 立ち昇る黒煙、逃げ惑う人々、眼下の阿鼻叫喚は正しくこの世界の縮図――それらを見下ろす白き鋼『白鈴号』のコクピットで、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は刻々と移り行く戦況を眺め口を結ぶ。
「お兄さんの言う通り、このまま放っておいたら皆やられてしまいます!」
 同じく白鈴号に搭乗するサギリ・スズノネ(鈴を鳴らして願いましょう・f14676)が慌てた口調で源次の言葉に続く。白鈴号は複座式キャバリア――ある小国が開発した生体決戦兵器修羅人の実験機。人間以上の者。もしくは人ならざる者が揃わねば動かす事も儘ならぬ強力な機体故、二人は揃って作戦に参加していた。
「……サギリ、戦域および難民キャンプに届くよう通信網を繋げ」
 頃合いか。面を上げて暖気状態のコンソールを順序良く叩く源次。途端、薄暗いコクピットは生気が宿った様に色取り取りのランプが点灯する。
「合点ですよ、お兄さん! 人を守るのはサギリの本分なのです!」
 合わせてサギリが出来の良い拡声器――広域通信デバイスを起動。瞬間、ノイズ混じりの異音がコクピットに響いて、彼等の声を届ける準備が整った。
『駄目だ! 火の勢いが強すぎる!』
『遠回りだが、あの道を行くしか……』
 ぽつりぽつりと漏れる弱気な声。彼等を生かすも殺すも己次第――操縦桿を握る手に力が籠る。無論、やり遂げる為にここへ来たのだ。
「我々は第三極東都市管理局戦術作戦部特務一課――」
 不意に、凛とした声音が辺り一面に響き渡る。難民が手にする通信機へ源次の声が届いたのだ。それは紛れも無くこの地獄に垂らされた一筋の蜘蛛の糸――力無き民を救う為の、逆襲の刃。
「サギリ達が来たからにはもう大丈夫! あとちょっとだけ頑張ってくださいなのですよ! 何故ならば!」
 努めて明るく振舞うサギリの声が難民の心に染み入る。これで終わりなんかじゃない……そう思わせるだけの力が、サギリの、そして源次の声にはあった。
「サギリ達がー……今からあいつらぶっ飛ばすのです!」
 そしてその声は眼前のキャバリア――帝国軍討伐部隊にも届いていた。
『何を、辺境の自警団風情が……!』
 第三極東都市……随分と遠方の連中が喧嘩を売って来たな。僅かにそんな思考が逡巡するパイロット。だが、舐められたら勝つまでやり返す。それが帝国の伝統。恐れを知らぬサギリに向かい、声を張り上げパイロットは通信を返す。
『そんな田舎モンが、一体何の用だ、ええ?』
 聞くに堪えぬ虚勢だ。顔色一つ変えぬまま、源次は滔々と答えを返した。
「――これより武力介入による人道支援を開始する」
 響くマシンの脈動が大地と、そして源次とサギリを振わせて。
 やれるな、白鈴号――白き鋼は、風となった。

「敵機はスロータータイプ――データ照合、大公国の奴と同型か」
「前に戦ったのと同じ機体ですねぇ。流行ってるんでしょうか?」
 宣言と同時に敵陣へ切り込んだ白鈴号――その目的は敵の攻撃を集中させる事。レッグガンの牽制を鮮やかなステップで躱しつつ、一跳びする度間合いを詰めていく。舞う様にしなやかな戦闘機動はスローターの攻撃を一切寄せ付けない。
「警告する。蛮行を即座に停止し、退け」
『退けと言われて退く騎士があるか! 全軍、派手にかませ!』
 返答は分かり切っていた……そして義理は立てた。モニタ越しには無数の殺戮機械を放つスローターの姿。一度刃を交えた相手だ。手管も変わらぬのならば――。
「……サギリ、無人ユニットの対処は任せる」
「お任せくださいなのです。お兄さんが敵をぶっ飛ばすのに集中できるよう、周りのはサギリが!」
 あの様な物を振り回して何が騎士だ。源次の言葉を受けてサギリが超常を発露――途端、白鈴号の周囲に鈴の音と共に、金色の炎が姿を現わした。
「さあ、鈴を鳴らして舞いましょう」
 厳かに言葉を紡ぐサギリの『火ノ神楽』――声と共に凛と鳴った炎が、飛び交う刃を包み込んで続々と地に落としていく。更に炎は白鈴号を襲う火線を猛火で焼き尽くす。焦る事は無い。こちらを狙うならば、待ち伏せて手札を切れば良いだけの事。
『ポイズンソーごと燃やしただと。馬鹿め、あれには毒ガスが……』
 殺戮機械には第二の刃が――生ある者のみを抹殺する神経毒散布ユニットが仕込まれていた。だが悪意の猛毒は清浄なる炎に焼かれ、色も形も失って静かに燃え尽きる。
『効いてない、あれは生体型キャバリアじゃないのか!?』
 挙動からジャイアントキャバリアタイプと推測出来た。ならば神経毒の攻撃は有効な筈……跳び回る白鈴号に破れかぶれの銃撃を浴びせながら、スローターのパイロットが尋常ならざる事態に気付いた頃には、遅かった。
「随分と……」
 その声を聞き逃す程源次は緩くない。白鈴号――生体決戦兵器『修羅人』の正体に近付いた事は、流石の帝国騎士だったと言えよう。
「目は良いようだ。だが」
 張り詰めた声が目前に――スローターと白鈴号の相対位置はほぼ零距離。いつの間にか、火線を抜けた白鈴号は敵陣のど真ん中に姿を現わしたのだ。
「肝心な物が見えんようだな」
『ば……』
 金色の炎を纏った鎧武者が見えた。それがパイロットの最後の言葉となる。『電磁抜刀』――電荷を纏った殲滅大太刀『千手院長吉』の苛烈な一閃。超高速の居合斬りが音より早くスローターの上下を両断――。
「――そこは俺の間合いだ」
 故に、後は屠る――心ごと繋がった鋼は、無言でそれに応えるだけ。
 爆炎を背に、白鈴号は次の獲物を巡って地を駆ける。
 ひたすらに、ひたむきに、ただ弱き人々を生かす為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
対人制圧用、ねぇ。
いいわ、折角だしそっちの土俵で戦ってあげる。
帝国軍の練度の程、見せてもらおうかしら。

機体には搭乗せず、生身かつ無手で対峙
敵機の攻撃はどれも銃火器を向けてくる
なら、銃身が詰まるサイズ感の石を拾い、向けられた銃口へ放り込む
火炎放射なら燃料が飛ばずに銃が炎上、榴弾なら暴発して銃が爆散
どっちにしろ武器は潰せるわね

反撃は【螺旋鬼神拳・遠当】を使用
狼狽えてるであろう敵機に正拳突きの衝撃波を当て、約1.2Km先までぶっ飛ばす
これだけ飛ばして墜落すれば、中の人は兎も角機体は間違いなくお釈迦でしょうね

丸腰の女一人制圧できないなんて、帝国の人狩り部隊も情けないわね。
大人しくお家に帰りなさいな。



●鉄と拳
 血と硝煙、そして鉄の臭いを孕んだ風が大地に吹き荒ぶ。
「対人制圧用、ねぇ――」
 それは死の臭いか。戦場にセンチメンタリズムを持ち込むつもりなど無い――違う、これは虐殺だ。殺戮だ。感傷では無いおぞましい何か……それが、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)の芯に火を灯す。
「いいわ、折角だしそっちの土俵で戦ってあげる」
 それを否定する為。立ち塞がるものは、全て打ち砕く――唯一つの信条を証明する為。何よりも、戦国の世から受け継いだ一族の誇りの為に。
「帝国軍の練度の程、見せてもらおうかしら」
 つかさは己が身一つで、この地に降り立った。
『ほざくなよ小娘が。生身だろうと容赦はせん!』
 鉄の悪魔が徒党を組んで咆哮す。吹き荒れる炎、乱れ飛ぶ榴弾、その一つ一つが尋常ならば致命に至る一撃だ。しかしそれが届く事は無い。
「全く――見た目の割には行儀の良い連中だ事」
 隊列を組んで間断無く放たれる暴力の嵐。それを軽々と飛び越え、往なし、炎を背にしたつかさは着実に悪意の源へ歩を進める。怪力は荒れた大地を物ともせずに勇壮に前へ、前へ――その手に何の変哲も無い石塊を持って。
「それじゃあ出店の射的より……容易いわ」
 刹那、空を裂く音がスローターを襲う。だが機体には何も起こらない――望遠映像が捉えたその音の正体は、つかさが投げた石塊の礫。原初の投射攻撃……いや、攻撃にすらなってない。
『と、投石だと!?』
『野蛮人め、気でも触れたか!!』
 強烈な投石はされど一つとしてスローターには当たらない。否、パイロットは未だ異変に気付く事も出来なかったのだ。何故ならば。
「……気が触れてるのは」
 構わず投石を続けるつかさ。火薬でもビームでも無い、至極単純にして明快な物理攻撃が狙った物はスローターでは無い。
「そっちでしょう?」
『何を言って…………!』
 瞬間、爆音が轟く。スローターの得物――フレイムガンとグレネードランチャーへ、つかさは自慢の怪力で砲口から真っ直ぐに石塊を放り込んだのだ。
『砲身が破裂ッ!?』
 目の前で爆発炎上するスローター自慢の殺戮兵器。それらは最早見るも無残なガラクタと化した。肩口から火を漏らし、詰った火炎放射器の銃身が高熱でどろりと溶ける。たかが生身の女と侮った末路――彼の者が数多の世界を駆け抜けた歴戦の猛者であるとは知らず、律儀に正面から挑んだ故の致命的な失策。
『嘘だッ!!』
「真実よ。で、その無用の長物――」
 それでも、スローター自体は健在。最早何の役にも立たぬ得物を手に、憎悪に満ちたカメラアイの赤い光が煌々とつかさを捉えて。
「どうするつもりかしら?」
『お、オオォォォォッ!!!!』
 激高したパイロットがつかさの様にそれを投げつける――元より正気など無い。オブリビオンマシンに昂らされた感情に従って、マシンが続々と無用の長物を放り出し、健在の長槍を構えて突撃――火を噴くスラスターが戦場に赤い跡を残してつかさの下へ殺到する。だが。
『全機突げッ!?』
 それこそがつかさの狙い。近付いてしまえば如何に巨大な敵だろうと、討てる。
「足元がお留守よ」
 腰だめに正拳を突き出した美しい形は、音よりも早くスローターを僚機ごと彼方へと突き飛ばす。『螺旋鬼神拳・遠当』――その衝撃は鋼を砕き、炸裂した威力がエネルギーインゴットを爆ぜさせる。内側から強烈なエネルギーが放たれたスローターはもつれ合い、爆音と共に光球と化した。
『大破した……だと?』
 あり得ない。生身の正拳突き程度でキャバリアが……物言わぬ鉄の骸となった。
『ひ、ひぃぃぃ……』
 そして恐怖は伝染する。こうなれば統制も士気もあったものでは無い。整然とした精強なる軍隊は一転、荒ぶる鬼の一撃で崩壊した敗残兵の徒党となる。
「丸腰の女一人制圧できないなんて、帝国の人狩り部隊も情けないわね」
『お前が、人なわけ……』
 失礼な奴。ぼそりと呟き一蹴――裂帛の回し蹴りがスローターを一つ大地に沈め、その勢いで次の獲物に飛び掛かるつかさ。
「大人しくお家に帰りなさいな」
 最早、彼我の勢力は完全に逆転した。ここから先は捕まれば終わり。コンティニュー無しの恐るべき鬼ごっこが始まる。
 早く帰らないと……悪い子はお仕置きよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダビング・レコーズ
正規軍の行動としては著しく不適切ながら、オブリビオンマシンの影響下にある以上正当性の追及は無意味でしょう
状況は切迫しています
速やかに敵勢力を無力化しましょう

目標は対人戦に特化した兵装ですので、アークレイズで出撃していれば特段大きな脅威にはなり得ないでしょう
電探に依存した戦闘は行わないので妨害電波の影響も低いものと推定されます
EMフィールドで攻撃を防ぎ続ける事で注意を惹き、非戦闘員への被害を抑制します

反撃は電磁加速投射狙撃砲を主兵装として実行
アンダーフレームを狙撃する事で擱座させ後続の敵機の進攻を遅滞させます
続けてコクピットブロックを避け腕部等を狙撃
接近は敢えて許容しルナライトで対応します



●白銀の戦機
『う、うわあぁぁぁぁ!!!!』
 炎の中を子供達が走る。背後で不気味に響くスローターのECMと、火の粉と共に舞い上がるチャフの鉄片が、赤と黒に彩られた虐殺現場を地獄めいた景観に変えていく。最早、救いは無いのだろうか。
『――危ない!』
 ビュン、と風を切る音――光条が行く手を遮り、火薬とイオンが綯交ぜになった気味の悪い臭いが広がる。ああ、ここまでだ――否。
「正規軍の行動としては著しく不適切ながら、オブリビオンマシンの影響下にある以上正当性の追及は無意味でしょう」
 それは突如現れた。雪のように白い煌びやかな装甲――ダビング・レコーズ(RS01・f12341)のクロムキャバリア『アークレイズ』は、あたかも地上に舞い降りた天使の様に、その巨体を燦然と子供達へ見せつけた。
「状況は切迫しています。速やかに敵勢力を無力化しましょう」
『無力化だと、貴様……!』
 展開したENフィールドが悪意の光条を退けて、手にしたリニアライフル『ベルリオーズ』をゆっくりと持ち上げる。ジャミングによる電子的補正、光学補正は無効――歪む照星を睨みながら、それでもダビングは当然の様にトリガーを引き絞った。
『!?』
「速やかな撤退を推奨します。出来ますね?」
『う、うん……』
 眼下の子供達へ静かに告げるダビング。同時に遠くのスローターが一機、訳も無く擱座する。アンダーフレームへの直撃。紫電と共に爆光が機体を包んで、子供達が駆けだす頃には鉄の骸が出来上がった。
『敵キャバリア出現! 全機ECMブースト!』
 声と共に怪しげな紫の光がその威を増す。使い過ぎればスローター自身にも影響が出る。それ程の高出力妨害電波が戦場を包み――スローターは一つ、二つと糸が切れた人形の様に続々とその場に倒れ伏せた。
『何故、当たる!?』
 全てアークレイズの精緻な狙撃――『電磁加速投射狙撃砲』の一撃は、ベルリオーズの速射を犠牲に射程と威力を増したダビングの超常。それは只の狙撃では無い。物理的制約から解き放たれた埒外の力だ。機体のFCSが不調ならば、自らで火器管制を行えばいい――ウォーマシンならば至極当然のアンサー。
『距離を詰めろ、離れればやられる!』
 生身で機械の補助がなければ戦えない時点で趨勢は決したも同然。かつて銀河で刃を交えた機甲の軍勢に比べれば、これらを御するなど児戯にも等しい。
「誰が――」
 遠距離は危険と判断したスローターが仲間の骸を乗り越えてアークレイズに急接近。手にしたランスを構えて真っ直ぐに突撃する姿は、騎士たる姿には相応しい有様だ――だが。
「狙撃しか出来ないなどと言いましたか?」
 そのような軌道など/肩部ブースターを付加しクイックターン/正面零距離、左腕のプラズマブレード『ルナライト』が唸る/ふわりと浮いて、すれ違い様にフレームを真ん中から両断――コンマ秒の刹那の交錯、スローターは真っ二つに爆散する。
「……ミッションを継続しましょう」
 くるりと、ターンと同時に三点バースト。続けて迫るスローターの腕がランスごと吹き飛ばされる。白銀は無傷――当然だ。
 か弱き生命が逃げ延びる迄、当機が膝を突く訳にはいかないから。

成功 🔵​🔵​🔴​

秋月・信子
●SPD

様々なキャバリアを見てきましたが、対人制圧用に特化したしたキャバリアですか
『人間だけを殺す機械よりはマシよ。乗っているのがマトモな人間だったらね?』

【Esの影法師】で私の影で作った二重身、姿は双子のように瓜二つですので『姉さん』と呼んでいるドッペルゲンガーにはお借りしたロードランナーで逃げ遅れた方々の救助をお願いしたいと思います

『へぇ、アンダーフレームに増加装甲と簡易的な武装を施しただけの【鉄の棺桶】ねぇ。嫌いじゃないわ、こういうの。寧ろ乗りこなしてやろうって気にさせるじゃないの。避難民を操縦に支障が出ない程度にコクピットへ相乗りさせたりキャバリアデサントさせたら、ロードランナーをスタンディングモードからヴィークルモードに変形させて一気に難民キャンプまでトンズラするわ。しっかり援護するのよ?』

はい、殿は任せてください
ピースメーカーのビームコーティングを施したシールドで【盾受け】をしつつ、ロードランナー離脱の【時間稼ぎ】にまず徹し、戦闘区域からの離脱を確認しましたら反撃に転じます



●双貌の果断
「様々なキャバリアを見てきましたが、対人制圧用に特化したしたキャバリアですか」
 秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は自機の『ピースメーカー』から眼前の赤黒いキャバリア――スローターの一群をじっと見つめていた。
『人間だけを殺す機械よりはマシよ。乗っているのがマトモな人間だったらね?』
 足元には借り受けた『ロードランナー』の風防を開き逃げる子供達を押し詰めた『Esの影法師』――姉なる二重身がテキパキとナビとシステムの調整を続けている。
『へぇ、アンダーフレームに増加装甲と簡易的な武装を施しただけの鉄の棺桶ねぇ。嫌いじゃないわ、こういうの』
 元々作業用重機に等しいアンダーフレームの改修機。それに無理矢理武装を付けただけの違法改造機故にバランスも最悪。正しく棺桶たる機械だからこそ、姉の心に火が灯る。
『寧ろ、乗りこなしてやろうって気にさせるじゃないの』
 やってやるわ、こんな逆境――システムチェックを終了し再起動。途端、動力が入ったロードランナーが全身を小刻みに振るわせた。
『フレームは健在ね。なら――音声認証、コマンド。チェンジヴィークル』
 チカチカと明滅した[Vehicle]のランプが青く灯る。同時に逆関節の脚部が折りたたまれて、後部の大型タイヤがしっかり大地に重みを乗せた。
『タンクならぬキャバリアデザントね。良い? しっかり援護するのよ?』
「はい、姉さん。殿は任せてください」
 風防は開けっぱなし。敵はもう直ぐこちらへ来る――ピースメーカーが時間を稼いでいる間、ロードランナーで速やかにこの場を離脱する。単純だが危険なミッション――だからこそ。
『わ……!』
『こ、これで大丈夫、なの!?』
『タイヤが地面についてればちゃんと進むわ……って、変な所触らない!』
『ヤッハ』
 大丈夫かしら……暴れる子供達を制して、姉がゆっくりとアクセルを踏む。砂埃を巻き上げるマシンを背に、信子はピースメーカーを前進させた。

『敵キャバリア2機、うち1機はガラクタ同然……』
『正面の奴も旧型の普及機だ。パラティヌスの敵では……無い!』
 妨害電波を放ちながら、ランス内蔵ビームライフルが続々と火を噴いた。甲高い音と共に迫り来る光条――妨害電波がピースメーカーの照準を狂わせる。それでも。
「させませんよ。このピースメーカー……」
 あの光を通してはならない。直撃コースを目視で判定、ビームコーティングを施した大盾でそれを弾いて、信子はマシンを巧みに操り絶対の盾となる。
「ノーマルとは違う事、教えてあげます!」
 喧しいアラートを切り、全て自らの五感で判断を――マシンに頼れない現状故、判断の遅れはすかさず致命となる。だがそんな戦いはこれまで幾度となく繰り返してきた。姉が事を成す――それまでは!
「ここは絶対に通しません!」
『しぶとい奴め……妨害電波の出力を上げろ!」
 背負ったECMが怪しげな光を放ち、チャフの破片が戦場をより曇らせる。それでも、敵だって同じだ――唾を飲み込み操縦桿を握る手に緊張が走る。
『こち……D1…………離脱! ミッ……更新……!』
 刹那、姉の声が聞こえた。内容不明――でも、姉から通信があったという事は――事前の手筈通り、ペダルを強く踏み込んでピースメーカーを加速。爆音を背にスローターへ迫るピースメーカーは、手にした大盾で光条を弾いて赤黒い鋼を強引に弾き飛ばす。
『突っ込んで……!?』
 同時にライフルを放り投げ、空いた手がランスライフルを奪い取る。制御系のハッキングは間に合わない――だから!
「中々器用でしょッ!!」
 奪ったランスを深々とスローターへ突き立てて、ピースメーカーは爆炎を背後に更に加速した。撃って当たらないなら、直接かましてやればいい。
『何なんだ、あの機体は!!』
『来るぞ、各機散開……!』
 逃げなさい、散る様に。一対一なら遅れは取らない。
 この装甲が立っている限り、これ以上の虐殺は決して許さない。
 この名に懸けて――荒野に鋼が咆哮す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
…如何に取り繕うと、所詮殺しの機械
兵器の本質を嫌が応にでも実感いたしますね

同じくパラティヌスの改修機:ロシナンテⅣを操縦
背部コンテナよりUCでキャバリアサイズに巨大化した機械妖精にて機体性能を推力と近接格闘性能を強化

手首関節を高速回転させ握る剣で無人機を撃墜
背より迫る無人ユニットはサブアームライフルで迎撃
敵陣に切り込み

ランスを躱すステップ、ジャンプ
武器を絡めて落とす剣と盾捌き
瞬く間に無力化し、関節部より剣で解体

ガス、厄介なモノを!

機械妖精の鱗粉を周囲に散布し周辺一般人を治療

Oマシンの狂気ゆえの非道、咎めだてはいたしません
ですが殺戮者と騎士の境を見失った以上、少し頭を冷やして頂きましょう!



●騎士奮迅
「……如何に取り繕うと、所詮殺しの機械」
 虐殺現場は猟兵の奮戦で徐々にその火を消していった。それでも残ったスローターは即座に集結し、反撃の機会を伺っている。戦いは終わってなどいない――兵器の本質を嫌が応にでも実感する。トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は愛機『ロシナンテIV』のコクピットから燻る戦火の息吹を感じ、ゆっくりスロットルを開いた。
『敵キャバリア……あれはパラティヌス?』
 青い炎が大地を照らし、蒼銀の機体が地を駆ける。騎士の様に優美な装甲は眼前の赤黒い悪魔とは違う清浄さを見せつけていた。
『照合、一致するデータは……』
 すかさず、ランスを構えたスローターがロシナンテIVを囲む様に集結。四方からポイズンソーを放ち、レッグガンの牽制がその足を止める――螺旋を描く様に、徐々にロシナンテIVを追い詰めるスローターは手にしたランスを正面に構え、一気に加速した。
『この数だ、近づいて叩けば!』
 殺到する殺戮刃を弾く様に、片手の直剣が唸りを上げて回転する。巧みな機動でそれらを躱すも背後にはスローターが――槍を構えた虐殺騎士が、面の奥のセンサがギラリと輝き、死角からの強襲を試みる。
『馬鹿、あれは!』
 レッグガンを大盾で防ぎ、直剣が殺戮刃を叩き落とす。だがもう一つ――加速する重槍はその威を留めず、鋭い穂先をロシナンテIVへと突き立てた。その時。
『――あの時の四つ腕だ!!』
 ガクン、と展開した副腕が手にしたライフルの火を放つ。零距離でカメラごと抜かれたスローターはその場で転倒、振り向いたロシナンテの一閃が上下を見事に断ち切った。
『距離を取ってポイズンガス噴射! 奴に手を煩わさせろ!』
 あの機体はドワーオとの戦いで恐るべき力を発揮した超常の戦機。まともにやりあえば只では済まぬ――故に、搦め手で動きを制する他勝機は無い。
「ガス、厄介なモノを!」
 機械の身体たる自身はともかく、風に流され毒ガスが難民キャンプへ注げば――矢張り、一筋縄ではいかない相手だ。だからこそ。
「英知をお借りします。今だけは……」
 躊躇なくこの札を切れる。瞬間、発光したロシナンテIVの身体から、同じ体躯の機械の妖精がゆっくりと姿を現わした。
「この地獄を終わらせる為に」
 その『妖精の導き』が――振り撒かれた鱗粉が大気に満ちた毒を即座に分解して。妖精は更にロシナンテIVへ力を与える。宿した英知がマシンに鋭い爪や角を生やす。
「改めて……参りましょう!」
 それは怒れる騎士の心を現すかの様に、苛烈にて美しい姿だった。

『ハッ……地獄か』
 毒を封じられ、後は各々の力次第――対人戦闘から対装甲戦闘へとマニューバを切り替えたスローターは、列をなして連続攻撃をロシナンテIVへと叩き込む。
「オブリビオンマシンの狂気ゆえの非道、咎めだてはいたしません。ですが」
 正面三機、牽制の戦闘をライフルで往なし、奇襲を仕掛ける後続を盾で叩き落とし、直剣で四肢を両断。一瞬の交錯――スラスターを吹かして振り返りながら、背を向けたスローターを蜂の巣にするロシナンテIV。
「殺戮者と騎士の境を見失った以上、少し頭を冷やして頂きましょう!」
 続いて左右からの挟撃/副腕展開、弾幕を張って急上昇――下方の敵を蹴り飛ばし、至近距離からランスを叩き落として巨爪が首を取る。
『ああ、そうだな……!』
 ランスを構え突撃してきた一機――盾を投げて直剣を両手持ち/切先と穂先が交わった刹那、ぐるんと回した巧みな剣捌きがランスを絡め取り、足払いでスローターを転ばせ、制圧する。
『最初から、こうで、あれば……』
 介錯の一撃――首を刎ねられたスローターは力無く四肢を下ろして、その場に倒れ込んだ。これで敵の制圧は完了した。
「――あれは?」
 残る最後の一つ、荘厳な意匠で彩られた最後のスローターを前に、トリテレイアは沈思黙考する。あの機体は只のスローターでは無い。つまり。
 あれが倒すべき、最後の敵だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ワルキュリア』

POW   :    殲禍絶晶
【無限に放出できる結晶体】で触れた敵に、【動力炉暴走】による内部破壊ダメージを与える。
SPD   :    殲禍嵐流
【全身】から、戦場全体に「敵味方を識別する【結晶体】」を放ち、ダメージと【共に機体の操縦権を奪い、制御不能】の状態異常を与える。
WIZ   :    殲禍烈槍
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【殲禍炎剣と同じ】属性の【全てを破壊する極太ビーム】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
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●狂気の胎動

――駄目です! 鈴蘭騎士団、鳳仙花騎士団、共に稼働率二割を切って……
――何故ドワーオがこのタイミングで。それにあのマシン……
――人間のやる事じゃあない! こんなの虐殺だ……

 そうだ。あの様な惨劇を繰り返してはならない。
 次があれば帝国、ひいては円卓連合が崩壊してしまう。
 だからこそ、罪の芽は摘まねば……。

――報告、敵のエビルガーロボに搭乗者を狂わせる何らかの措置が……
――これは以前、ドワーオから報告のあったオブイエでの事件と酷似……
――猟兵と言う異邦人が言うには、オブリビオンマシン……

 マシン、だと。否――人が人を殺すのだ。
 なれば、最初に狂ったのは……オブイエか。
 かの国は最早形も無いも同然。だからこそ……そういう事か。

『フ、ハハ……』
 仮面の女が声を上げる。仲間は皆やられた――精強な帝国騎士団がこの有様。笑わずにいられようか。そこまでして奴らは――猟兵は立ち塞がるのだ。
『何故分からん。奴らを滅ぼさねば次は我等の番だ』
 敵は内側よりその牙を研ぎ、列強を滅するが為に暗躍する。その元凶を――オブイエの残党を皆殺しにして何が悪い。
『ここは押し通る。邪魔をするならば――覚悟は良いな』
 滅ぼさねば――仮面が囁く。それは全て我が国の、ひいては世界の為なのだから。女が続ける、破滅の足音を自らが鳴らしているとは知る由も無く。
『鈴蘭騎士団筆頭、して――』
 女は――グリンダは仮面の奥で瞳を歪め、相対する敵意に宣戦を布告した。
『クリスクワイア当代皇帝グリゴリア・リィズ・リンダーマンが命ずる』
 その名は、己が身を偽る仮面。グリンダ――皇帝リィズは祝詞の様に言葉を紡ぎ、合わせてマシンが地鳴りの様な大音を立て凄烈な光を放つ。
『偽装解除、リアクターフルアクティブ。全封印を開放――』
 薄緑の光は戦場を眩く照らし、光に当たった物言わぬ鉄の骸が続々と光の結晶に覆われて――マシンが、雄叫びの様な駆動音を響かせた。
『皇帝機、出撃』
 バリン、と赤黒い装甲が割れる。現れた黄金は邪悪そのもの。
 手にした剣は殱禍の名を持つ、世界を滅ぼしかけたという異端の一つ。
 煌びやかにして禍々しい気を放ち、恐るべき皇帝が戦場に降り立った。
『では始めようか、終わりを』
 艶めかしく邪悪な声音がリィンと結晶を響かせて。
 荒野に黄金の、災厄のオブリビオンマシンが起動する。
ジン・マキハラ
POW UC使用
無数に降り注ぐ殲禍絶晶から難民を庇い被弾 胸の終焉炎獄式永久機関が暴走を始めてしまう
暴走した永久機関のエネルギーにより激痛を味わうも執拗に難民への殺戮をせんとするワルキュリアに怒りが爆発する

貴様、そこまでして無意味な死を振り撒くつもりか!ならば良いだろう、似合の最期をくれてやる!

なおも暴走する永久機関のエネルギーを全て強引に操作し右手に収束させ、ヴァルキュリアに突貫 
右手の一撃をヴァルキュリアの胴体に叩き込む

終焉炎獄式永久機関、限界稼働!
昏き者よ、汝、虚無の果てに堕ちるべし アクティブヴォイド・ゼロドライブ!

この一撃を持って貴様を葬る!
その機体諸共虚無の果てへと堕ちるがいい!


月影・このは

皇帝機、つまりボス、悪の帝王ということですね
であれば全力を尽くして迎え撃ちます!対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号
いざ!マシーン!ウォー!

バトルホイールで『ダッシュ』し、場合によってはブラストブーツの炸薬による『ジャンプ』、敵の攻撃を回避しつつ接近を
出てきた結晶体へアイレーザー【レーザー射撃】
破壊できれば良いのですが、まぁ硬さを確認できれば…

なるほど、動力炉の暴走を引き起こす兵器…確かにスーパーロボットであるボク達には致命的とも言える兵装でしょう…(※ヤドリガミ)
ならば!内部破壊の前に暴走する出力を全て攻撃エネルギーとして吐き出します!

限界突破の!オーラブラスター!!



●バーニング・ハート
「皇帝機、つまりボス、悪の帝王ということですね」
 鉄屑がガラガラと転がる荒野――黄金のオブリビオンマシンの前に立ちはだかる月影・このは(自分をウォーマシンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)は、眼前の悪魔を指差して声高らかに宣言する。この戦いの諸悪の根源――汚染された身勝手な思想で、難民達を死に追い込んだ倒すべき敵。
『戦争に正義も悪もあるものか――小僧』
 その言葉を鼻で嗤い、皇帝は思惟をマシンに反映する。煌びやかな装飾――薄緑の結晶が途端に肥大化して、溢れる殺意をこのはへ向けた。
「否! 罪無き民に牙を向けるそのものが悪に他なりません!」
『だったらどうするよ……猟兵ッ!!』
 瞬間、破裂した結晶が無数の礫となってこのはを襲う。巨体から生み出されるそれは無尽蔵――無限の弾幕が続々と大地を抉り、砕けた欠片は一瞬で荒野を再び虐殺現場へと作り変えた。
「無論、全力を尽くして迎え撃ちます!」
 叫ぶと共に踵の『バトルホイール』が唸りを上げる。軽やかな軌道で礫を躱すこのは――だが結晶の礫が狙うのはこのはだけではない。
「ふざけるなよ、こんな事をして……」
 奥歯を噛み締め怒りを露わにするジン・マキハラ(ブレイズ・オブ・マキナ・f36251)――殺到する礫を拳で弾き、背にしたキャンプへ届かぬ様にと精一杯の抵抗を続ける。だが、殺意の礫は余りにも数が多かった。

「! させるかッ!」
 このままでは、せっかく逃げ果せた難民達が再び血の海に沈む。そんな事は許さない――一つでも礫を防ぐ! 両腕を大きく広げた巨体を盾に、敢然と立ったジンに深々と結晶の欠片が突き刺さる。
「グ……アアアアアアッ!!」
「マキハラさん!?」
 その礫は触れた敵の動力炉を、機械も生身も問わずに暴走させる皇帝機の超常。己が内で煌々と燃え盛る『終焉炎獄式永久機関』――暴走した自らの熱を全身で浴びて、激痛が強化神経を駆け巡る。だからこそ、尚更こんなものを浴びさせる訳にはいかない。滾る怒りがジンを支えて、飛び交う結晶ごと炎が飲み込んでいく。
「この! アイレェェェザァァァァッ!!」
『馬鹿め、そんな物で……』
 散弾銃の様にこのはの影を穿つ結晶を『ブラストブーツ』の炸裂で飛翔し躱す。そのまま視線の先――皇帝機目掛けて眼球同軸レーザーが空を裂いて迫った。
『このワルキュリアの嵐を防げると思うなッ!』
 皇帝が叫ぶと同時に、肥大化した結晶が盾の様に機体を守る。レーザーはその表面を舐める様に弾かれて――矢張り結構な硬度だ。歯噛みして着地と同時にたたらを踏んだこのは。瞬間、このはも自らの身体に起こった異変に胸を押さえた。
「まさか、ボクも……」
「ああ……だろうよ……」
 結晶は触れればその効果を発揮する。派手に立ち回った最中、細かく粒子状に砕かれた結晶は既に、このはの動力を蝕んでいたのだ。。
「そこまでして……無意味な死を振り撒くつもりか、貴様」
『無意味では無い。世界に仇為す罪を滅ぼす、その為だ』
 その言葉は本心か。あるいはマシンに歪められた思想か――だが、どちらでもいい。ここで奴を止めねば大勢の人が死ぬ。
「否、貴様そのものが、罪――」
 それを止める為ならば、この生命を賭けていい。迸る炎の中でジンが叫ぶ。
「良いだろう、似合の最期をくれてやる!」
 魂を込めた反撃の誓い。その心はこのはも同じ。
「ええ……対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号! いざ!」
 マシーン! ウォー! 正義の言葉が自らを奮い立たせて、二人は再び巨悪に立ちはだかった。

『爆ぜ散れ三下。止めは我自らくれてやる!』
 最早、暴走した動力に蝕まれた猟兵共は消える前の蝋燭も同然――手にした重鉄剣『火愚鎚』に結晶の刃を纏わせて、黄金の悪魔は前に進む。
「終焉炎獄式永久機関、限界稼働!」
「胸部放熱板最大稼働! オーラエンジン、限界突破!」
 悪魔を滅さんと二つの灼熱が蒼と赤の火柱を猛然と立ち上げ、その威を受けてジンが果敢に飛び出した。
『ハァァァァァッ!!』
「昏き者よ、汝、虚無の果てに堕ちるべし」
 三倍近い体高差をもって振り下ろされた重鉄剣をかざした左腕で受け止めるジン。灼熱が結晶をドロリと溶かして、超高温の雫が地面に穴を穿つ。
『防いだのか!?』
「アクティブヴォイド・ゼロドライブ!」
 咆哮――熱を帯びた全身のエネルギーがジンの右手に集束し、破裂寸前の拳がぞわりと空を歪める。
「オォォォォラッ! ブラスタァアアアアアアアア!!」
 合わせて放たれたのはこのはの超常――暴走したエネルギーを全て吐き出せば、この身が砕けようと『ココロナイト』は決して折れない!
「止まる、ものかぁぁぁぁッ!!」
『結晶ごと、ブチ抜いた……!』
 叫ぶこのはの心を乗せて、七色の閃光が巨大な結晶の盾を打ち砕く。ひび割れたマシンの身体を物ともせず、このはは超常の光を皇帝機に浴びせ続け――。
「この一撃を持って貴様を葬る!」
 光の間隙をジンが飛ぶ。スラスターの蒼い炎が一直線に伸びて、その先――皇帝騎の胸元で炎が爆ぜる!
「その機体諸共虚無の果てへと堕ちるがいい!」
 限界まで収束した蒼き炎――超常の一撃が黄金の装甲を歪め、溢れるエネルギーが内側からマシンを破裂させた。
『我が押されている、だと』
 膝を突き辛うじて立ち上がる皇帝機。
 矢張り、猟兵は危険――仮面の下で皇帝が口元を歪めた。
 何処から聞こえた声に、その心を揺らされながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ダビング・レコーズ
クリスクワイア当代皇帝ですか
真偽は兎も角、ここで殺傷に及べば後々猟兵側が政治的、あるいは社会的な苦境に立たされる懸念も見込まれるものかと
元来想定していた戦術ですが、尚のこと機体のみの破壊に留めるべきと判断します

目標の結晶をEMフィールドで遮断
防御が不十分であればスレイプニルから発射するメテオリーテ及びベルリオーズで迎撃
またはルナライトのプラズマキャノンで地表を撃ち爆風の範囲攻撃で破壊
危険性を認識した上で目標との相対距離を縮める
有効射程内に到達次第プラズマバーストを使用
放出される結晶体を破壊しながらも目標本体へ損傷を与え、衝撃波と閃光によるパイロットの意識消失を狙う


国栖ヶ谷・鈴鹿
●アドリブ連携OK

【SPD】

機能解析、操縦と動力への影響を与える結晶をいかに攻略するか。

ユーベルコヲド、超高精度近未来観測機構・甲のお陰で準備は整ってるよ。

擬態回路・反撃型!侵食プログラム、エネルギヰに対して、本体の回路から防御システムを作り出し、反射して結晶そのものを破壊する代物さ!汎ハッキング対策の超機械さ!

攻撃さえ凌げれば、あとはこっちの砲撃、射撃能力を全開にして反撃開始!

UCで得た結晶の弱点もわかれば、アタッチメント変更の武器改造で、有効打を与えていこう!
ぼくの作った超機械の試験にはもってこいの相手だね、さあ付き合ってもらうよ!


陽向・理玖


おいおい…まさかあんた
この前の帝国の…

てか
オブリビオンマシン
…マジでやべぇな

ぜってぇ止める
力貸してくれ
スタークドラゴン
覚悟決め

衝撃波フェイントに放ちつつ残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る

結晶体は周囲に衝撃波のオーラを張ると同時に
進行方向は衝撃波で壊しながら進む
その場に瞬時に出す訳じゃねぇ
無限に出されても壊した場所はその瞬間は安全だろ

とはいえ…鬱陶しいな
どこから出ているか破壊しつつ観察し出力元を見切り
掻い潜りつつ懐へ

同じようにやられてやり返すようには見えなかった
だけど
…乗ったから狂ったのか狂ったから乗ったのか
どっちにしても止めるだけだ

出力元も動力源も一気に片付けてやる
UCで部位破壊



●超音速の閃光
「おいおい……まさかあんた、この前の帝国の……」
 忘れる訳が無い。帝都の大半が焦土と化したあの戦闘を。陽向・理玖(夏疾風・f22773)はスタークドラゴンのモニタに映る金色の機体を見やり、当惑した声を上げる。何よりも、あの時危機に瀕した帝都を護るべく率先して戦った騎士の一人が、身分を偽った皇帝そのものだったとは……。
「クリスクワイア当代皇帝、ですか」
 一方、ダビング・レコーズ(RS01・f12341)はアークレイズの機内で冷静に事態を見極める。真偽は兎も角、ここで殺傷に及べば後々猟兵側が政治的、あるいは社会的な苦境に立たされる懸念も見込まれる――ならば尚の事、機体のみの破壊に留めるべきと判断せざるを得ない。厳しい戦いになるだろうと、ダビングの回路に熱いものが込み上げる。
「機能解析、操縦と動力への影響を与える結晶をいかに攻略するか――」
 そして国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は滑らかな手つきでコンソールを叩き、先の戦いから敵の能力を分析――超常の創造器たる『超高精度近未来観測機構・甲』を用いて、反撃の準備を急いていた。
「只事じゃない相手だよ、準備はいい?」
「――言うまでも無ぇ。ぜってぇ止める」
「厄介な状況ですが、何……」
『フン、活きの良いのがぞろぞろと……』
 じゃらり、と皇帝機から放たれた結晶が大地を埋め尽くす。触れれば只では済まない超常――まずはこれを突破せねば。故に。
『まとめて始末してくれる!』
「フィールド展開。少し速いデブリと思えば――!」
 ダビングが静かに言葉を吐くと同時に、アークレイズが激しく空を舞う。合わせて雲霞の如き結晶の群れが白銀の巨体へ襲い掛かった。それらはマシンを包む青白い光にぶつかって、紫電と共にバラリと崩れ落ちる。アークレイズの電磁障壁――最大出力ならば荷電粒子砲だろうと防ぎ切る防御兵装は、まるで結晶を引き付ける様に光跡を残し、縦横無尽に空を駆け抜ける。
「来た! 侵食型結晶体!」
 切り札の発動まであと僅か――殺到した結晶はアークレイズの軌道を追って、空に輝く道筋が連なる。幻想的、されど恐るべき光景。稲妻の様に自在に姿を変えていく結晶はやがて、立ち並ぶもう二体のマシンへと牙を向けた。
「力貸してくれ、スタークドラゴン!」
 青き龍が吼える。踏みしめた大地が衝撃を起こし、結晶の礫を吹き飛ばす。その場で瞬時に出される訳じゃない――起こりを合わせればこんな物、躱すまでも無い。マシンの五体を包んだ広がる闘気が細かな破片を受け流し、巨大な欠片は衝撃を纏った拳が粉々に打ち砕いた。触れなければ効果を発揮しないならば、こうして幾らでもやり様はある。
『あくまで我が結晶を通さぬか。ならば……』
 遅々として敵を止められぬ戦況に、されど皇帝はニヤリと笑みを溢す。ならば他所から戦力を起こせばいい……瞬間、戦場に打ち捨てられた無数のスローターのカメラアイが、亡者の様に点灯した。

「まさか、擱座したスローターの操縦権を奪いましたか」
「オブリビオンマシン……マジでやべぇな」
 ゆらりと立ち並ぶ鋼鉄の軍勢はランスを構え、一気呵成にスラスターの炎を噴いて攻め立てる。加速の衝撃で傷ついた四肢を脱落させながら、さながら特攻兵器の様に猟兵達へ向かう姿は地獄の軍勢。これならばバリアだけで防ぐ事は難しい。
「そう来るか……矢張り一国を率いるだけの事はあるね」
『当然だ。騎士は我が軍の装備。なれば全て我の物よ!』
 襲い来るスローターを引き撃ちで躱しながら全域を解析する鈴鹿。阿穹羅の鈍色の装甲はランスの猛追を避けつつ、最接近した機体より得た情報を全機へ伝えた。
「皆! 相手は無人機だ。つまりあの結晶に侵されればぼく達もこうなりかねない! あと少しだけ持ち堪えて!」
 幸いにしてスローターのパイロットは既に機体を捨て逃げていた。それでも、無人のキャバリアを手足の如く操る皇帝機の力は油断ならぬばかり。だが。
「生体反応は無い……でしたら」
「ああ。全部ブッ飛ばすだけだ!」
 気兼ねなく戦える相手ならば――空よりアークレイズの連弾が、地上よりスタークドラゴンの乱撃が、スローターの槍衾を次々に無力化していく。
『流石、これで足を止める様な相手ではないか』
「当然だよ」
 相手がキャバリアならば――火を噴くアークレイズのマイクロミサイルコンテナが大地ごとスローターの群れを炎に包み、単機で飛び出せばベルリオーズの斉射が直ちにその命脈を断つ。散開した機体は回り込んだスタークドラゴンの一撃――残像を纏った超音速の拳と蹴りで、瞬く間に大地に倒れ伏せた。そして。
「待たせたね! これで結晶は……無力化する!」
 鈴鹿が叫ぶ。阿穹羅の鈍色の装甲の隙間から淡く輝く光の礫――それらが飛び散った結晶を包み込み、くすんだ色味の石へと変えていく。
「名付けて、擬態回路・反撃型!」
 その威力はスローターも――コクピットを覆う薄緑の輝きが瞬時にその威を失い、元の骸の様にマシンは次々に横たわる。これで皇帝機は戦力を完全に失った。後はこちらの番だ。

「侵食プログラム、エネルギヰに対して、本体の回路から防御システムを作り出し、反射して結晶そのものを破壊する代物さ!」
「凄ぇ……何だか知らないが助かったぜ!」
 鈴鹿の超発明に感心する理玖。あの結晶さえなければ恐い物は無い。何より。
「この鬱陶しい奴さえ止まれば――!」
 進路も気にせず全開加速でブッ叩ける! 青き龍は風よりも早く皇帝機へ一直線に飛び込んで、拳を大きく振り被った。
『! させるか!』
 だが皇帝機も手にした重鉄剣がある。半歩引いて霞の構え、対装甲組打ちなどさせるものかと、眼前の疾風に殺意を滾らせる。その判断が誤りとも気付かずに。
「こちらを忘れて貰っては困りますね」
 冷静な声――空より襲い掛かるアークレイズは、手にした光剣のプラズマキャノンで皇帝機の視界を遮る。衝撃が自動で皇帝機の全身に結晶の装甲を生み出して――超常を失ったとは言え、結晶自体の物理的特性は生きたままだ。奴の装甲を全て引き剥がす。その為に。
『多勢に無勢……では無い!』
「――EMフィールド反転、リアクター出力強制開放」
 ルナライトの破壊すら防ぐならばこれしか無い――相対位置、射程圏内。超常が全身のEMフィールドを瞬時に転化/破壊の嵐がダビングと皇帝のモニタに吹き荒れる/音よりも早く衝撃が両機を襲い、閃光が全てを白く塗り潰す――!
「解析完了――武装切替! その結晶は撃ち砕く!」
 刹那、砲撃形態へ移行した阿穹羅から炸裂する砲弾――結晶を分解する特製プログラム弾。生成と同時にぶち込めれば、如何に堅牢な装甲といえど拡がる前に破壊出来る!
「ぼくの作った超機械の試験にはもってこいの相手だね……さあ、付き合ってもらうよ!」
『おの、れ……!』
 真っ白のモニタを睨み舌を打つ皇帝。ダビングの『プラズマバースト』の影響は未だ解けない――だから。
「同じようにやられてやり返すようには見えなかった。だけど」
 気付く事は無かった。爆音から微かに聞こえる理玖の声に。
「……乗ったから狂ったのか狂ったから乗ったのか、どっちにしても止めるだけだ」
 正面、零距離。振り抜いた拳は先の戦いと同じ、皇帝機の歪んだ装甲を更に深々と潰し――黄金は彼方へと吹き飛んだ。
「……大丈夫、まだ生きてる」
 鈴鹿が言う。流石の旗機――頑丈さが桁違いだ。
「大分揺さぶりました。あれならば」
 続けるダビングの声――正気さえ取り戻してくれれば、せめて。
「ああ。元は悪い人じゃ無いんだ」
 祈る様に、理玖が結ぶ――グリンダでは無い、あの悪魔が潰える事を願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】【渡り禽】
※アドリブ他歓迎、愛機搭乗継続

責任者のお出ましか…
「皇帝機はエビルガー等同様に変質」
「挑む相手が違う」
等々箴言したいからギリ不殺ね
生きてれば【ファルマコン】で治すよ
って2人共マジで無慈悲だねえ…

◆行動
アレが「殲禍炎剣の力」でも要充填・水平砲撃と差は歴然

オペ103番【カノニエ・ルヴナン】開始
背部【クリュザンテーメ】が水平に展開して
【ホークス・ビーク(HB)】用パーツも展開

更に【カイルス】《瞬間思考力》で回避強化
※射線を上へ惹き付ける為

後は変質EN徹甲弾で充填中パワーを放散・簒奪後
【オウレット・アイズ】6基をHB砲口前に配置
簒奪パワー添加の高威力EN徹甲弾を収束強化してブチ抜く


数宮・多喜
【渡り禽】
オイちょっと待て、なんで汚れ仕事にその機体を晒すんだよ。
それ位の判断も出来なくなってるってのか……?
こりゃ、民草の声ってのを聞かせないとなさそうだね!

回避機動を取りつつガソリンの詰まったサブタンクを切り離して上空に放り投げる。
反応して迎撃してくるだろうけど、あくまで『フェイント』さ。
そうしてガソリンが降り注ぐ中、ジャミングを中断し通信回線を『ハッキング』。
強制的に全チャンネルをオープンにして、
『撮影』している戦場の様子を全勢力に垂れ流すよ!
もちろんワルキュリアのコクピットにも思い切り繋げるさ。
これで少しは自分の立場ってのを思い出すだろ!
この隙に中小路さん、リリーセンセ、やっとくれ!


中小路・楓椛
【渡り禽】

クロさんに搭乗、【ゆごす】を装備しエーテル推進による空間機動。周囲のエーテルの粗密を制御して結晶を衝撃波で吹き飛ばしつつクロさんは自律回避に専念。

ばーざい全技能行使、【神罰・呪詛・封印を解く・限界突破】併用にてUC【あふぉーごもん】起動。

(【うぉーでんくりふ】を構える。皇帝様の脳に音声を直接お届け)

【言いくるめ】

それでは此処でクエスチョンです。

「貴女が産まれてから今日この時まで、貴方の権限で命令した結果、世界で何人命を落としましたか?」

知らない、或いは答えないのも自由ですが、私が納得するまで貴女の魂は強制燃焼し続けますよ?

――矛盾の無いエレガントな回答、お待ちしております。



●悪に問う
『まだ、だ……』
 仮面が宣う。この仮面は、一体。
 それにダメージを受けた肉体は何故かまだ動く。むしろ――。
『全て滅ぼす迄、帝国の敵を……!』
 より強靭に。更に怒りを滾らせて、皇帝機は三度大地に立ち上がった。
「オイちょっと待て、なんで汚れ仕事にその機体を晒すんだよ」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はOveredのモニタに映る皇帝機を見やり思案する。それ位の判断も出来なくなってるってのか……? この虐殺の指揮を帝国が執っていると喧伝する様なものじゃないか。だとしたら、何故?
「責任者のお出ましか……」
 リーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)はナインス・ラインより複雑な表情でそれを睨む。皇帝機はエビルガー等同様に変質か。そして挑む相手が違う――二つの戦いを潜り抜けたリーゼロッテだからこそ明快に分かる答え。だがそれを説いた所で、眼前の皇帝は納得しないだろう。
「色々聞きたい事もある。だからギリ不殺ね」
「手心を加えてどうにかなれば、ですが」
「こりゃ、民草の声ってのを聞かせないとなさそうだね!」
 そして、漆黒の痩身――クロさんを駆る中小路・楓椛(ダゴン焼き普及委員会会長・f29038)がぼそりと呟く。気になる流れ、先の戦いに続いて円卓連合に蠢く悪意。翻ってそれが何を求め、何を齎したのか。堰を切ったように流れるその濁流は何処へ向かうのか――。
「って2人共マジで無慈悲だねえ……」
『異邦人風情が民を語るか! 笑止!』
 呆れ口調のリーゼロッテを遮って皇帝が吼える。同時に展開した結晶を足場に――否、結晶の上に乗り滑る様なジグザグの軌道を取りながら、黄金の皇帝機は渡り禽達に向かい加速した。
「! 見た目の割に早い奴!」
 正面には多喜のOveredが牽制のビットが弾幕を張って進路を阻害する。しかし再生した結晶装甲は難なくそれを弾き、止む無く引いたOveredが増槽をパージ――ガソリンの詰まったそれを皇帝機目掛けて放り投げた。
『それで目晦ましのつもりか!』
 手にした重鉄剣が無拍子でそれを叩き割る。飛び散るガソリン――飛沫の奥では漆黒のマシンが銃を構えて皇帝機を威嚇する。
『邪魔だ黒いのッ!』
 同時に迸る閃光――結晶の渦がクロさん目掛けて殺到した。その攻撃は楓椛が巧みな制御で空間の粗密を操作して、エーテルの見えざる壁が寸での所でそれらを叩き落とす。劣勢とは言わずとも互いが決め手に欠ける攻防。しかしギリギリの所で保たれた均衡は、この後直ちに覆された。
「――チャンネルオープン! 中小路さん、リリーセンセ、やっとくれ!」
 不意に澄んだ声が通る――ジャミングを解除したOveredの超常。投下された燃料を媒介に戦場を疑心暗鬼と怒りで埋め尽くす情報の大火。
「さあ見せつけてやるよ! お前のやってきた事と今やってる事を!」
『何を……これは……』
 多喜が流した映像は先の戦い、そして今起こっている戦い。それは皇帝機のコクピットにも問答無用で流される。これが我のやった事。そうだ、我が世界の為……世界の為に、私は誰を殺そうとした?
「オペ103番【カノニエ・ルヴナン】開始――バランサー展開、射撃準備用意」
 動揺する皇帝機を置き去りに、ナインス・ラインはオペを開始する。巨重は飛行しながらゆっくりと全身にスタビライザーを展開して、背部ウイング――『クリュザンテーメ』が空中狙撃支援形態へと移行する。
『……! そうはさせるか!』
 モニタに映る狙われた自機を見て、皇帝は正気を取り戻す。そうだ、今は戦闘中――こんなプロパガンダにかまけている場合では無い! 正眼に構えた重鉄剣が音と共に巨大な砲身を展開し、途端、灼熱が大地を黒く焼き焦がす。
『……クッ、邪魔だと言っている!』
 それを止めんと纏わりつく漆黒の痩身。振り回された重鉄剣が弧を描き、道化の様にゆるりと躱す漆黒は、その内より呪詛めいた言葉を解き放つ。
「では、お暇する前に一つ」
 声の主、楓椛が宣う。天秤は常に等しくあれ――『罪業査定清算術式』たる超常の封印は今、解かれた。

『……何だ……これは!?』
 異変は皇帝機では無く、皇帝自らに襲い掛かった。何も見えぬ漆黒。あの機体の様な底知れぬ闇が、深淵から、何者かが此方を覗いている。
「それでは此処でクエスチョンです」
 漆黒が反転、空間を白が埋め尽くす。真っ白な眩い光――否、これは。
「貴女が産まれてから今日この時まで、貴方の権限で命令した結果、世界で何人命を落としましたか?」
 白き炎だ。その炎――灼熱を纏った鎖が皇帝を雁字搦めに捕縛していたのだ。
「知らない、或いは答えないのも自由ですが、私が納得するまで貴女の魂は強制燃焼し続けますよ?」
 熱い……ただ、只管に。我が殺した生命、だと。そんなもの……。
『グ、アアァァァ……!!』
 思考が掻き乱される。あの時の選択は誤りだったのだろうか。あの戦いの判断は間違っていたのだろうか。違う、違う、違う、我は、私は、ただ……。
『化生め、厄介な真似を』
「おや」
 呻き声をあげる皇帝の声音が、突如男のそれに変わる。冷たい鋼の様な声――それは皇帝の仮面から発せられていた。
『これが死なせた命など先の戦いの12名以外無いわ。貴様等のおかげでな』
「あなたの話など聞いておりませんが、これはこれで」
 まさか、皇帝自身がオブリビオンマシン以外の何かに浸食されていたとは。狐はニタリと口元を歪める。仮面は呆れ口調で、罵る様に言葉を続けた。
『大した事も出来ない。だから俺が力を貸してやったのさ。ついでに――』
『邪魔をするな! これは我の戦いだ!』
 死なせた生命を忘れた事など無い。元より百年の戦いの最中、偶々担ぎ上げられた私如きが出来る事など殆ど無い。戦争だって、円卓連合が釣り合っている間は起きなかった……なのに……だから……!
『この音を、消し去れば……ッ!』
「来るよ! 殱禍炎剣!」
「みたいなもの、ですがね」
 風が爆ぜる。膨張した大気が変性したエネルギー流と化して、結晶が機体を守る様に十重二十重に展開し巨大な防御膜を形成する。
「段取りは完璧よ。これで一気に削り取るッ!」
 瞬間、ナインス・ラインが放った幾つもの光条が皇帝機を貫く――否、それらは結晶の盾に阻まれて霧散。皇帝機が手にした重鉄剣――『殲禍烈槍』のその威は未だ止まる事を知らない。
『砕け……散れェェェェッ!!!!』
 そして、空を断つ赤黒い終末の光がナインス・ラインを飲み込んだ。

「……間に合ったかな、リリーセンセ」
「バッチリって奴ね。ちょっと焦げちゃったけど」
 ドン、と多喜が展開した三基のシールドビットが大地に突き刺さる。力を失い、最早原形も留めていないそれはナインス・ラインを守る為、直撃の瞬間に展開されて殲禍烈槍の威力を減衰したのだった。
「まあ、Einherjarは直せばいいさ……で」
 煙を噴いて悠然と飛ぶナインス・ライン。そこかしこから火花を散らして、されど眼下の皇帝機への照準は外さない。頑強な二連防盾も複合盾もEinherjarと同じくガランと地に落ちて、最大出力で稼働させた粒子防盾は発振器ごとオーバーヒート――次を喰らえば確実に葬られる。だからこそ。
「言ったでしょ。段取りは完璧だって」
 それでも、ナインス・ラインは健在だ。学習型レーダーで予測した直撃コースを避けて、最大限防御能力が生かせる位置へと移動した。これならば。
「流石にアイツのエネルギーがあそこまでとは思わなかった。けどね」
 反撃を叩き込める。先の射撃は超常の簒奪兵器――敵のエネルギーを奪い自らのものとする『カノニエ・ルヴナン』で増幅されたエネルギーが、ホークス・ビークの銃口に極大のプラズマ塊を形成させる。
「オウレット・アイズ展開! さあ喰らいな、アンタの威力をね!」
 リーゼロッテの声と共に六基のビットが銃口を囲む。途端、膨張したプラズマ塊が空を歪めて、赤黒い光球が――破滅の光が天より降り注いだ。
『馬鹿な、殲禍烈槍だと!?』
「違うね。同質かもしれないけど――」
 これは滅びを断つ光だ。轟く爆音が戦場に響き渡る。
 その光の中で皇帝は、ようやく思い知ったのだ。
 自らの相手が、真に埒外の――世界の理すら覆す連中であった事を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サギリ・スズノネ
【白鈴】
キャバリア:白鈴号搭乗(源次お兄さんと一緒)

一択です、お兄さん。あいつは人の敵なのです。
全力でー、あのクソッタレな金ぴかを、ぶっ飛ばしてやろうなのですよ!

動力炉の暴走は、サギリの破魔の力と火炎耐性、呪詛耐性、狂気耐性、そして浄化を叩き込んだオーラ防御でも包んでもたせるのですよ!
合点ですよ、お兄さん!制御はサギリにお任せなのです!

制御しながら敵について『情報収集』
行動や攻撃パターン等、随時、お兄さんに伝えます。

お兄さん、やっちまってくださいなのです!
サギリもフルパワーなのですよ!お兄さんの炎に合わせて火ノ神楽で攻撃するのです!
燃え尽きるまで継続ダメージを与え続けるのです!


叢雲・源次
【白鈴】
「サギリ、確認する。搭乗者の生存を度外視するか否か」
返答は分かりきっている
「了解した。」
人は生かす。オブリビオンマシンは破壊する。
抜刀。突撃
狙うは敵の持つ得物。一刀にて相殺せしめたならば格闘戦に持ち込む

殲禍絶晶による動力炉の暴走
神経接続回路から逆流する暴走した殺意と負荷に耐えつつ
「…ッ…サギリ!バイパス制御!余波は全て出力に転用しろ!」
読み違えたなオブリビオンマシン…こちらには優秀な制御手がいる…その意味が分かるか?

俺達が貴様を【蹂躙】する事に専念できるというわけだ…!!

コクピットを外した殴打、蹴打の連撃
トドメと言わんばかりに頭部を掴み

執行【蒼炎結界】
頭部を、四肢を、燃やし尽くす



●焱
「サギリ、確認する。搭乗者の生存を度外視するか否か」
 正面、天を焼き尽くす赤黒い炎の中、蠢く影が黄金の光を放つ。
「一択です、お兄さん。あいつは人の敵なのです」
 敵――そう認識せざるを得ない。炎を飛ばした黄金は煌びやかな結晶に覆われて、それらがまるで瘡蓋の様にボトリと落ち、中から真新しい装甲が――再生した。
「全力でー、あのクソッタレな金ぴかを、ぶっ飛ばしてやろうなのですよ!」
 そう……返答は分かりきっている。思考より早くマシンが昂る。お前も同じだろう――。白き鎧武者は何も語らない。それでも。
「――了解した」
 心を通わせた鋼――白鈴号は無言で応えた。猛き炎をその内に滾らせて。

『単機掛けとは、殊勝な心掛けだ』
 抜刀、跳躍。風を切り突き進む白鈴号――叢雲・源次(DEAD SET・f14403)とサギリ・スズノネ(鈴を鳴らして願いましょう・f14676)の前に、無数の結晶が壁となって立ち塞がる。
『行くぞ、白いの』
「第三極東都市管理局戦術作戦部特務一課、武力介入を再開する」
 瞬間、黄金の炎が結晶を包み焼き焦がす。赤と黒――礫と化した石塊を抜き身の刀で受け流し、大地を震わす強靭な踏み込みがバラリとその壁を粉々に崩して。
『中々にやるようだな、先の非礼は詫びさせてもらう』
「覚えがあるならば、直ちに停戦せよ」
 正面、一足一刀。互いに正眼と八相に構え、天に伸ばした切っ先を振るう時を見定める源次。白鈴号の蹴り足は吼える時を待っている。
(……あのマシン、どうやら飾りじゃあ無いらしい)
 だが奴の――皇帝機の圧は尋常では無い。猛将気取りは伊達ではないか……じり、と爪先を滑らせて奴の内側へ。ここから先は互いに致死の制空権。
『それは……出来んなッ!』
 機先を制したのは、刀身に結晶を纏わり付かせた重鉄剣の音より早い片手突き。ビュン、と伸びた切先が白鈴号の左頬を掠める。
「来ます、大きいの! お兄さん!?」
 バチリ、と鎬で刃筋を制し右足を前に……だが、返す刃よりも早く、削れた結晶が深々と白鈴号の装甲に突き刺さる。奴め、最初からこれが狙いか――!
「……ッ……サギリ! バイパス制御! 余波は全て出力に転用しろ!」
 身体が焼けるように熱い――白鈴号の痛みが全身を駆け巡る。ペインコントロール、サーキットフルコネクト、血液が沸騰し逆流しそうな勢いだ。それでも。
「合点ですよ、お兄さん! 制御はサギリにお任せなのです!」
 神経回路に掛かる負荷を即座に分散、暴走した動力のエネルギーをバイパスに開放し強制放熱。空が歪む程の溢れる水蒸気が白鈴号に虹を掛けて――。
『燃え散れ、彼方のサムライよ!』
 システムリブート――瞬間、視界に映った赤黒い炎の巨剣を太刀で払い、間合いを詰めて鍔迫り合い。ガツン、と衝撃が二人を揺らして、ノイズが走るモニタを睨み静かに息を吐く源次。
『これを躱すか! 見事……だが!』
 その剣は殱禍烈槍――破滅の炎を滾らせた重鉄剣はしかし、瞬時に迎撃態勢に入った白鈴号の逆襲に押し留められた。
「読み違えたなオブリビオンマシン……」
 ゆっくりと手元を上げて、一拍。刹那に刀身を絡め取り、灼熱の白鈴号が全身より炎を滾らせる。暴走か、否――。
「こちらには優秀な制御手がいる……その意味が分かるか?」
 ギリリ、と互いの刃筋が相手の首を狙う。今や力勝負ならば、出力を限界まで振り切った白鈴号が有利。
「お兄さん、こっちは安定! 金ぴかの脈動はブレてます!」
 サギリが叫ぶ。流石、抜群の調整と解析だ。つまりその挙動に合わせれば――。
「俺達が貴様を蹂躙する事に専念できるというわけだ……!!」
 手首を返して弾かれた重鉄剣が宙を舞う。同時に組み付いた皇帝機の左腕重盾が白鈴号の手にした太刀を叩き落として――これで互いに無手。そして。
「お兄さん、やっちまってくださいなのです! サギリもフルパワーなのですよ!」
 身体を開き体勢を崩した皇帝機――無理に太刀を狙った代償。対する白鈴号は健在――弾かれた右腕を振り上げて、どっしりと腰を落としたまま、弓を引く様に力強く左腕を構える姿は仁王が如し。そして炎が迸る。

 執行――『蒼炎結界』
 奉舞――『火ノ神楽』

 灼熱の白鈴号が蒼と金の炎に包まれる。それは源次の煉獄の炎、そしてサギリの浄化の炎――数多の罪を罰し清める超常の炎を纏い、風を切る拳が、大地を震わす蹴りが、黄金の皇帝機を一方的に蹂躙する。
『馬鹿、な……』
 ドシン、と荒野が揺れる。膝を突いた皇帝機と、彼方より戻った重鉄剣。二つが同時に地に付いて――その頭を白鈴号が首級をあげる様に掴み取った。
「炎上注意だ。悪く思え」
 蒼き炎が首を包む。忌まわしき悪意を滅する為に。
 これが、俺達が、この地獄を焼き尽くす焱だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※Ⅳ搭乗

皇帝自ら先陣を…ガフの谷の警備主任の仰る通りでしたか
遍歴の騎士として、立ち塞がらせて頂きます!

その砲を難民に向けさせる訳には…!

低空飛行、射線を空へと向けさせ接近

…避けても地上へと振り下ろしますか
ええ、かばわざるを得ませんとも!

人の手に依る物で、UCであるならば…

先の一射で情報収集完了
キャバリアサイズの電脳禁忌剣
敵の攻撃模倣
完全同一、『殲禍烈“剣”』にてビーム相殺

…大砲で勝負決するなら人型の意味など皆無!

肉薄し近接格闘戦へ
切り結ぶ最中、盾を目隠しに投擲
サブアームユニットパージ
挙動変化で虚を突き槍の間合いの中へ

貴人には相応の責務が伴います
陛下には気楽な敗死は許しませんとも!

剣にて勝負決め


秋月・信子
●SPD

殱禍の名を持つ、世界を滅ぼしかけたという皇帝機
それを持ち出すとなれば、オブリビオンマシンに操られているとは言え…破壊するほかないのかもしれません
ですが、パイロットだけは返させてさせていただきます

まだ逃げ遅れている避難民の方、仲間の僚機への致命的な攻撃をシールドで【盾受け】しながらハンディマシンガンで【援護射撃】を行いつつ応戦していきます
敵の殲禍嵐流で操縦権が奪われて制御不能に陥ってしまいましたら、ピースメーカーの影を触媒にしてUCを発動

行きなさい、『影の模造品』たち
【制圧射撃】で結晶体を破壊し行動可能となりましたら、敵の破損した部位を【スナイパー】の直感で狙い澄まして撃ち壊してみます



●その栄光は誰が為に
 炎が去って一時の静寂――まるで繭の様な結晶に包まれた皇帝機は、密やかに自らを修復する。幻想的な地獄の光景をモニタに映して、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)――乗機のロシナンテIVは握る剣に力を込めた。
「皇帝自ら先陣を……ガフの谷の警備主任の仰る通りでしたか」
 苛烈な戦いが続いた。満身創痍ながら己が身一つで果敢に立ち向かうマシンは、聞いた通りの猛将の姿――そして。
「殱禍の名を持つ、世界を滅ぼしかけたという皇帝機」
 大地に突き刺さった重鉄剣が唸りを上げる。赤黒い、邪気の様なエネルギーの束が纏わりついて、途端に景色がぐにゃりと歪んだ。
「それを持ち出すとなれば、オブリビオンマシンに操られているとは言え……」
 否、あれは強烈な磁気嵐――秋月・信子(魔弾の射手・f00732)はノイズまみれのメインモニタを必死で調整し、ピースメーカーの挙動を立て直す。あの嵐が世界を包む。全てを滅ぼす悪しき炎と、全てを狂わす妖しい光と共に。そんな事はさせない……だから。
「破壊するほかないのかもしれません」
 その為に我等はここに居る。オブリビオンマシンの破壊――現れた絶望を希望に塗り替える、それが使命。
「ですが、パイロットだけは返させてさせていただきます」
 瞬間、パリンと巨大な結晶が割れる。光と共に現れた黄金の騎士――歪められた皇帝の姿が、地に刺さった黒き炎を伴って。
「ええ。遍歴の騎士として、ここは立ち塞がらせて頂きます!」
 だが恐れるものか。鈍色と立ち並ぶ蒼銀の巨体に力が漲る。ここに最後の戦いの幕が上がった。

『フン、改造普及機如きでこの皇帝機を止められると……思うなッ!!』
 こちらは代々伝わる滅びの化身――剣を翳すと共に無数の結晶が乱舞する。最早相手を見てすらいない、動く物全てに反応する破壊の礫が二人のマシンを囲んで潰す様に渦を巻いた。
「範囲攻撃は任せてください。出来るだけ凌ぎますから……!」
 鉄塊の様な盾を前に、それを防ぐのはピースメーカー。後ろには難民キャンプ――ここを通せば折角繋いだ生命が塵と化す。咄嗟の制圧射撃で結晶を撃ち落としトリテレイアの援護を――今あれを止められるのは間違いなく、この騎士だけだ。
「助かります。それに」
 スラスターを吹かして結晶をおびき寄せ、その隙にロシナンテIVが飛翔――間隙を縫う様に副腕の砲火が佇む皇帝機の四方を穿つ。
「その砲を難民に向けさせる訳には……!」
 狙いはただ一つ、手にした重鉄剣――殱禍烈槍。あの恐るべき兵器をキャンプへ放たせるわけにはいかない。だが。
『飛ぶか、パラティヌスが!』
 見知った機体の思わぬ挙動に嬌声を上げる皇帝。チャージは十分――この一射で。
『ならばこうするまでよッ!』
 全て破壊する! まるで鮫の大口の様に開かれた重鉄剣の砲口から、赤黒いプラズマの束が一直線に……矢張り、避けても地上へと振り下ろしますか。ならば。
「ええ、かばわざるを得ませんとも!」
 まるで太刀を振り下ろす様に空を断つ。射線をずらした所であれが届いてしまえば意味がない……! 急制動を掛けたロシナンテが流星の様に落ちていく。青白い尾を引いた巨体は、プラズマの前へ。
『止まらないのかい……あのビームは!』
「心配しなくても大丈夫です! 多分!」
 ノイズ混じりの無線、姉の後ろで泣き叫ぶ子供の声。キャンプから終末じみた光景を何度も見せられているのだ。たまったものでは無い……だからこそ。
「どんなに強大な力でも、同じ罪深き刃であるならば……」
 希望がここにある事を知らしめなければならない。バン、と破裂音に続いてロシナンテIVの大盾が爆ぜる。人の手に依る物で、UCであるならば……溶解した装甲が勇壮な騎士の姿を焼け爛れた痩躯へと変えて、それでもロシナンテIV――トリテレイアは決して諦めない。
「その光が人の叡智そのものならば、尚更このような結末など!」
 人の世に栄光を。破滅を。矛盾した回答/論理パターン変更、電脳禁忌剣、開放。再演算開始――光がマシンを包み込み、そして。
「これ以上は……トリテレイアさん!」
 結晶の嵐が盾を突き破り、ハンディマシンガンも弾が切れた。最後の一振り――電磁短刀で追撃を辛くも躱しつつ、信子は殱禍烈槍を受け止める鋼の騎士を流し見る。駄目だ、あれを受けきる事など出来ない……その刹那の諦観が遂に、ピースメーカーを毒牙に掛ける。

<<For Whom Takes the Glory?>>

 システムダウンか……不意に乾いた電子音が聴こえた。あるいはピースメーカーの断末魔……違う、これは。
「……騎士として、誓った未来の為」
 声が続く。トリテレイアの声だ。何故彼の声が……そうか、そういう事か。口を歪めて信子はマシンの電源を落とす。排出されたインゴットが機体の足元を転がってガランと倒れた時、コクピットの闇の中に一筋の光が見えた。
『――最終安全装置解除。殱禍烈剣、抜刀』

『! 全機展開、起き上がれ我が騎士ども!』
 最初に気付いたのは皇帝だった。奴は完膚なきまでに朽ちた筈。なのに――その手にある物は一体、何だというのだ! 怒りが、恐怖が、本能的に骸と化した僕を結晶で直ちに起動して、皇帝機を守る様に三重の陣を組む。
「させません!」
 それを止めるのは力を失ったピースメーカー――否、信子自身。敵に操られるを由とせず、自らその威を捨てた。それでも、己の力まで失われたわけでは無い。
「行きなさい、『影の模造品』たち!」
 ハッチを開いて堂々と立つ信子。その傍ら、静かに無数の影が虚空より浮き上がった。それは信子自身の銃。ライフル、ハンドガン、マシンガン――300を超える殺意の牙が、一斉に宙を渡って骸の騎士へと殺到する。
「操縦系を介するならばカメラを潰して、センサを壊して、関節を砕けば動けないでしょう! それに!」
 あの骸――スローターは自ら爆薬と燃料を背負った虐殺兵器だ。威力は自身で秘めている。超常の銃器の影は一斉に、正確に、居並ぶマシンを続々と爆破して。その爆炎の狭間を抜けて痩躯の騎士が駆ける。全ての元凶を断つ為に。

「……大砲で勝負を決するなら人型の意味など皆無!」
『ならば、どうする!』
 そして、巨大な赤黒い光剣を構えたロシナンテIVが皇帝機と対峙した。同種のエネルギーを複製し開放。ナノ秒以下の攻防は互いの威力をぶつけ合い、相殺し、辛くもトリテレイアを生き長らえさせたのだ。
「貴人には相応の責務が伴います――陛下には気楽な敗死は許しませんとも!」
 スラスター全力噴射。焼け爛れたフレームにぶら下がった大盾の残骸がマシンを不規則に揺らす。迎え撃つ皇帝機は上段の構え――天を貫く殱禍の光が煌々と大地を歪に染め上げる。
『敗れ死ぬとは業腹な物言いだ! 機人め!』
 正面から果敢に迫るロシナンテIVを神速の太刀が捉え――ぶつかるプラズマが衝撃と共に、互いの得物を地に落とした。
「死なせはしません。ですが……」
 ぶら下がる残骸を放り投げ、その陰に隠れて突進/左腕の直突きで残骸をぶち破り、伸ばした腕がロシナンテIVの副腕に絡め取られる。
『ハッ! 死に体でよく言う!』
「いいえ――」
 一閃――地を這う様な直剣が縦一文字に、皇帝機の右腕を落とす。大物も搦め手も、全てこの為の布石だった。だから。
「人の世の、為ならば、その力を……」
 正しき事の為。悪しき意思を越えて……出来る筈だ。
『こ、の…………』
 駄目だ。その手を取るな。囁く仮面の声に従い、伸ばされた痩躯の腕を払って皇帝機は身を引いた。
 ありえない――この我が、私が、あんな騎士一人に、何を……。
 頭が破裂しそうだ――あの言葉に感情をぐるぐると掻き乱されて。
 ああ、今はこの静寂すら、忌まわしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
グリンダさんが皇帝ですか。

多くの民と騎士を殺され、国を破壊された怒りと悲しみを利用するとは卑劣な!
と黒幕への怒りを新たに。

「貴女の気持ちはお察しします。ですが卑劣な敵に合わせてレベルを落としてどうするのです。貴女の好敵手ハルさんが見たら嘆くでしょう。」と声掛けし、焔天武后で太極拳の型を取る(功夫)。

「貴女方の流儀に則り、タイマン張って拳で解決しましょう。私が勝てば本来の真っ当で誇り高い貴女に戻ってもらいます!」

殲禍烈槍の威力は詠唱時間に応じるので、詠唱途中で初発之回帰で開始前に戻す。
短時間で放つ威力低下版は第六感で予測し、推力移動・空中機動・空中戦・見切りで回避して接近。

格闘戦では第六感・見切りで躱すか、化勁(功夫・見切り)で受け流す。

2回攻撃の1回目で左拳に雷の属性攻撃・破魔・浄化を籠めて、殱禍の根元に功夫による貫通攻撃を撃ち込んで部位破壊&武器落とし。
2回目で右拳に光の属性攻撃・神罰を籠めて、衝撃波と共に放つ功夫による鎧無視攻撃をオーバーフレームに撃ち込み、機体と剣のみを破壊します!



●笑倣江湖
「グリンダさんが、皇帝ですか……」
 帝国を襲った恐るべき悪魔。その渦中、先陣を切って戦った鈴蘭騎士団の団長が皇帝だったとは。大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の胸中には彼女の――皇帝の心が如何程のものか、目の前の惨事と重ねて居た堪れないであろう思いが浮かび上がる。
「多くの民と騎士を殺され、国を破壊された怒りと悲しみを利用するとは卑劣な!」
 国の為、民の為にあるべき力は、今や歪められて世界の脅威と課しているのだから。故に彼女が憎むのはその悪意。皇帝を誑かした黒幕へ向けて、詩乃は毅然と言葉を放った。
「貴女の気持ちはお察しします。ですが卑劣な敵に合わせてレベルを落としてどうするのです」
『笑止、我は望んでここに居る。例え非道と罵られようと、成すべき事を果たすまでは……!」
 しかし皇帝も揺るがず。バリン、と割れた結晶より新たな腕が――最早、皇帝の歪んだ思いはオブリビオンマシンの糧に過ぎないのか。握りしめた拳を腰に当てて、吹き荒ぶ風に雄々しく立つ皇帝機。
「それでも、貴女の好敵手ハルさんが見たら嘆くでしょう」
 堂々とした佇まい――だが、虚しい。そんな心を見透かされた皇帝は、仮面の奥でギラリと目を見開いた。
『……鈴蘭最強の看板は我の物だ。アイツでは無い。それに』
 大地が揺れる。かつて世界を滅ぼしかけたマシンが吼える。唸る機関の熱が空を歪め、黄金は炎を吐いて空を駆ける。
『部外者が軽々しく、アイツの名を……語るなッ!!』
 目指すは詩乃――女神が座する赤きマシン、焔天武后。汚された誇りを払う様に、皇帝機は再生した右腕を大きく振り被り――。
「そうですか。ならば――」
 対峙した焔天武后がゆらりと拳法の形を取る。それは異界で学んだ太極の拳。
「貴女方の流儀に則り、タイマン張って拳で解決しましょう」
 緩やかな水面の如き流麗な拳が、大樹の様にどっしりと腰を落として。
『――面白え』
 黄金が迫る。戦いの時だ――びゅうと吹いた烈風が互いの間を抜けた刹那。
「私が勝てば本来の真っ当で誇り高い貴女に戻ってもらいます!」
『やってみろよ。これが見えれば……なッ!!』
 黄金の拳が音よりも早く繰り出された。真っ直ぐな拳――彼女らしい一打。それをすらりと伸ばした左腕で受け流し、最接近した皇帝機に強烈な肘打ち――。
(早い。それだけではありませんね)
 外した。風の様に側を駆けて、片脚を軸に回し蹴り。強烈な衝撃が焔天武后を襲う。だがその衝撃は身体を抜けて、爪先を視点に大地にひびを入れた。
(一つ一つが重い。とてつもなく)
 化勁の応用――衝撃を受け流し発散するつもりが、余りにも巨大な力は大地の反発力で自身を封じ込める。だが空に流せば吹き飛ばされる――衝撃を利用して跳ねた焔天武后は、浮かぶと同時に直蹴りを放ち、真っ直ぐにぶつかった力を皇帝機は両の腕で受け止める。
(だから……)
 反動で後退――いや、遅い。最早起こりすら見えぬ消えた蹴りが焔天武后の脇腹を捉え、身体を曲げて衝撃を往なしたマシンがそのまま地面に転がり落ちた。
『これで店仕舞いだ。畳んでとっとと帰っちまえ!』
 止めの猛追、左腕の盾ごと大振りの拳打が迫る――だが、これを待っていた。絶対的優位に立つと思わせたその時こそ、最大の好機!
『……受けただと!?』
 ぶつかる互いの拳が火花を散らし、亀裂の入った皇帝機の盾が真っ二つに割れ、落ちる。浄化の雷――衝撃が機体を伝わり、破損した伝達部のバックラッシュが皇帝機の主機に僅かな停止を催す。
「こぉぉ……」
 続けて焔天武后の右の拳が皇帝機の顎を捉える。神罰の衝撃――刹那の攻防が致命の一打を与えて。溢れる光は神の超常――『初発之回帰』の権能が皇帝機をあるべき姿へと戻し、静寂が場を支配した。
『まだ、動くとは……だが!』
 吹き飛ばされた皇帝機の向かう先――重鉄剣が突き刺さる墓標の様な大地へと身を翻し、その手に悪しき刃を握る。これが狙い、殱禍烈槍を放つには十分過ぎる時間が経過した!
『!? 何故だ――』
 しかし、剣はピクリとも動かない。あるべき姿――『この戦いが始まった時』に戻された皇帝機は、力を貯えたという事実すら覆されたのだ。故に。
「機体と剣のみを、破壊させて貰います!」
 赤きマシンが竜巻の如き渦を巻いて、弾丸の様に皇帝機へ迫り来る。
         ステゴロでタイマン
「言ったでしょう。素手喧嘩で張らせて貰いますと!」
 つまり、道具に頼った時点で皇帝の敗北は必然――刀身ごとブチ抜いて、焔天武后は遂に皇帝機を下す。
 帰るのはあなたです。悪しき衣を脱ぎ捨てて――今こそ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
貴女、確か先日の……知らぬうちに、狂気の芽を植え付けられてたか。
仕方ないわね、ちょっと痛いかもしれないけど大人しくなさい。
その芽、今のうちに摘んであげるから。

引き続き生身で対峙しつつ【超★筋肉黙示録】発動
自身に脳筋自己暗示かけつつ、真正面から突撃
武器もビームも結晶体も、持ち前の「怪力」で殴って打ち払っていく
動力炉とは、生身であるなら心臓のことだと思うけれど、特に問題は無い
どれほど心臓が暴走しようと、私が揺るぐ事は無い
何故ならば

心臓を動かすのは心筋、即ち筋肉だからよ!
無敵の心筋の前では心臓の暴走なんて単なるペースアップに過ぎないわ
むしろ血行が良くなって調子が上がるまであるわ

ということで敵機に取り付いてハッチを「怪力」で破壊、無理やりグリンダを機体から引っ剥がすわ
抵抗するようならかるーく絞め上げて眠っててもらうわね

さっきの連中も貴女も、キャバリアの性能や能力に頼りすぎね。
そんなんだから生身の人間に足元を掬われるのよ。
帰ったらもっと身体を鍛えなさい。



●運命を断つ拳
 風が吹く。骸と化した鋼の上に、一人の鬼が立つ。
「貴女、確か先日の……知らぬうちに、狂気の芽を植え付けられてたか」
 視線の先には、亡者の様にゆらりと立ち上がる黄金の――皇帝機の姿。
「仕方ないわね、ちょっと痛いかもしれないけど大人しくなさい」
 荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は腕を組んで、颯爽と飛び上がった。
「その芽、今のうちに摘んであげるから」
 今、全ての元凶に決着をつける為に。

 声も無く、音も無く、亡者の如き皇帝機は無数の礫を乱れ撃つ。触れれば即座に力を狂わされる結晶の超常。その結晶目掛け、皇帝機の全身から無数の光条が放たれた。結晶の群れは光の檻を伴って――さながら巨大な暴力装置と化したそれを見やり、つかさは溜め息を吐く。
「手の込んだ事。近付かせない、って訳ね……いいわ」
 じゃあ真正面から行ってあげる。眼前に迫る結晶を怪力で握り潰し、悠然と歩みを進めるつかさ。光も、嵐も、何するものぞ。己の身体にはそんな物は無力。
『……馬鹿め、如何にこちらが動けずともそんな形ではなあ』
 男の声が聞こえた。皇帝では無い……皇帝に取り付いた邪悪の声が。
「そんな玩具が無ければ戦えないお前とは、違うのよ」
 固く握った拳が光条を散らして、突き刺さる結晶を鍛えた身体で弾き返す。だが結晶は触れれば自らの動力を狂わせる。それは生身の身体とて同じ。
『フッハハ、いつまで耐えられるかな……え』
 それは嘲笑か、あるいは焦燥か。男――仮面の声に僅かな焦りが混ざる。
『何故だ! 何故止まらん!? 貴様の心臓はもう破裂寸前の筈!!』
 されどつかさの歩みは止まらない。むしろより早く、一歩一歩が大地を揺らして、間近に迫った黄金を鋭い視線で睨みつけた。
「耐える? 何か勘違いしている様ね」
 口端を歪め、鬼が立ち止まる。途端、つかさの踏み込みが殺到する結晶を須らく吹き飛ばして――まるで独演場の様な空間が広がった。

「熱い血潮を流す心。だが強き心とて正邪の前で揺れ動く――」
 祝詞の様に紡がれる言葉に迷いはない。それは黙示録の一節。
「その心を、心臓を司るもの。それは鋼の意志。その意志を貫く力――」
 腕を組み、面を上げるつかさ。視線の先には黄金の邪悪。
「人、それを筋肉という」
 その邪悪を屠るため、私はここにいる。
『一体何なんだ! 貴様は!?』
「お前に名乗る名前など、無い!」
 瞬間、跳躍――滝が遡る様に溢れた結晶を足場に、前へ!
「無敵の心筋の前では心臓の暴走なんて、単なるペースアップに過ぎない」
 結晶の連弾を踏み砕き、刺し穿ち、より高く! より遠くへ!
「むしろ血行が良くなって調子が上がるまであるわ。これならば……」
 くすんだ陽光を背に飛翔したつかさ。迷いの無い超常の権能はその怪力をより強く――炸裂した威力は、つかさを空を裂く稲妻と化した。
「荒谷流電離蹴! そして!」
 一筋の閃光が皇帝機を問答無用で蹴倒して、地に足を付けた鬼は自らの三倍近い体躯の巨人の脚を掴み、嵐のように投げ飛ばす。
「荒谷流旋風投げ! ハアッ!!」
 紫電が舞い散る。凄まじき筋力は周囲にプラズマを放出し、雷と嵐の中を鬼が踊る――投げ飛ばされた皇帝機目掛け跳び掛かるつかさ。
「まだよ。荒谷流極意、二拳一陣!」
 両腕で円を描く様な形と共に、背中の鬼が破裂する。極限まで高められた怪力はユーベルコード十三発分。更に黙示録の暗示と筋肉が、奇跡を起こした!
「風よ、炎よ、大地よ、空よ――」
 私に大自然の精霊を統べる力は無い。だが大自然を筋肉で捻じ伏せる事は出来る。風を読み、炎を起こし、大地を蹴り上げ、空を舞う――。
「我に力を! はぁぁぁぁぁッ!!!!」
 そして拳の連打が、身動きの取れぬ皇帝機に襲い掛かる! 機関砲なんて生易しいものでは無い。一発一発が戦艦すら砕く鍛錬の極み。無限に再生する結晶より早く、硬く、強く!
「鬼神拳……爆裂!」
 そして最後――大きく捻った身体が全筋肉を開放し、必滅の一撃を叩き込む!
「……成敗」
 着地と同時に背後で爆ぜた黄金の骸――全てを捻じ伏せられた邪悪は最早、立ち上がる事は無い。

「さっきの連中も貴女も、キャバリアの性能や能力に頼りすぎね」
 倒れた皇帝機のコクピットハッチを引き剥がし、つかさが手を伸ばす。全身を滅多打ちにされ動力を破壊された皇帝機はもう動けない。だからこそ再生する前に皇帝――グリンダを助けなければ。顔に掛かった仮面がずるりと落ちて……邪魔ねこれ。掴んで外へと放り投げ、気を失ったグリンダをつかさは揺らす。
『……う……ここ、は』
 覚えてないの? まあ、今はそれどころじゃないか……脱力したグリンダを引き起こし、つかさは皇帝機を後にする。
「そんなんだから生身の人間に足元を掬われるのよ。帰ったらもっと身体を鍛えなさい」
『そうだな。次はもう少しマシな依り代を選ぼうか』
 不意に声が――すかさず瓦礫を放り投げて、身構えるつかさ。
『あ痛……しかしワルキュリア一機を失った。この貸しは高くつくぞ』
「お前、潰されたいの?」
 ひきつった様な声はやがて風に消え――黄金のマシンは塵となる。
「……穏やかじゃ無いわね」
 不穏な終幕だ。しかしこれであのマシンを悪用される事は無い。それは幸いだが、彼女の身柄の事もある――この先やるべき事は山積みだ。
 今は一旦、キャンプへ帰還しよう。戦いは終わったのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『難民キャンプ慰問』

POW   :    運ばれた援助物資を配る。

SPD   :    暖かい料理をふるまう。

WIZ   :    歌や芸などを披露する。

👑5
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●インターミッション
「随分と派手にやったな」
 キャンプに現れた見慣れぬ男――否、一部の者はこの男を知っているだろう。
「彼女がそうか……ああ、分かってる。特に私はな」
 そう言い、グリンダが隔離された一角を流し見て、男――ガフの谷の警備主任は話を続けた。どうやら自国の目と鼻の先で大規模な戦闘が発生していると聞き、僅かな部下と共に難民キャンプへ偵察にやって来たらしい。
「まあ、ガフの谷の名代として調停に来た、って事にしてくれ」
 事実、他の三国と立場の違うガフの谷でなければ、ここに顔を出す事は難しい。何よりここのキャンプ自体、谷の方から今回も含めて定期的に物資が提供されていた。その縁で今、警備主任はここに居る。
「ちゃんと救援物資もある。それと――頼みがある」
 かつてオブリビオンマシンに心を操られた男は、神妙な面持ちで言葉を繋いで。
「ここに居る人らを、ちょっとばかり助けて欲しいんだ」
 あの恐怖を少しでも和らげる事が出来れば、と。男は縋る様に頭を垂れた。
ジン・マキハラ
POW
虐殺は阻止できたがまだまだ難民にはまだまだ物資が足りない。
俺も飛行艇ダーインスレイヴを使って支援物資の運搬を行おう。武装も積んでるから自衛もできるしな
それが終わったら設備の方だ。怪我人の治療する為の機器や暖を取るための道具、その他生存や生活の為に必要な設備は必然、大量の燃料を消費する。所持しているハッキングツールで動力源に接続すれば俺の永久機関で設備の為のエネルギーを全て賄えるだろう。
ここを離れても暫くは保たせる為に蓄電池やエネルギータンクにもエネルギーの補充を行なっていくとすれば万全だろうさ

こういう時の為の永久機関だ。戦いだけが使い道じゃないんだしな。これも立派な有効活用というものだ



●生命の炎
 虐殺は阻止出来たが、まだまだ難民にはまだまだ物資が足りない。ジン・マキハラ(ブレイズ・オブ・マキナ・f36251)は率先して重い荷物を運び、瓦礫を撤去し、人々と言葉を交わしてキャンプの面々と打ち解けていた。
『すげー! 船が空飛んでる!』
「ああ、あれはダーインスレイヴ――大丈夫、殱禍炎剣の高度で飛ばないから」
 あの恐い光はもう来ないよ、と優しく子供に語り掛けるジン。
 谷からの救援物資をより多く運ぶべく、ジンは『飛行艇ダーインスレイヴ』を谷とキャンプの間でピストン輸送させていた。敵がいない今の内に少しでも多くの物資をと――手配は警備主任の名前で済ませ、補給は円滑に進んでいた。
『動力が止まっちまった! 誰か直せないか?』
 不意に悲痛な叫びが届いた――声のする方、内蔵した『視覚同調型演算装置』が即座に状況を把握する。成程、劣化した歯車が欠けて停止したみたいだ。
「悪い、ちょっと行ってくる」
 子供の頭を撫でてその場を立ち去るジン。覚悟はしていたが、やる事が山ほどあるな。

「任せろ。俺の永久機関を使え」
『永きゅ……プラントみたいなものか?』
 かもしれん。そう呟き動力をハッキング――やはり難しい機械では無い。これならば。コードを解析しマシンの波長を合わせ、ジンは再稼働の準備を整えた。
「少しだけ離れてくれ。行くぞ」
 動揺する難民を制し、接続したエネルギーホースからそのまま自身の『終焉炎獄式永久機関』のエネルギーを流し込めば。
『! 動いた。これなら!』
 動力の先には蓄電池やエネルギーインゴットが。その先にはエネルギーを消費する生活用品や医療機器が沢山ある。今の内にエネルギーを十分貯えれば、ここの生活も多少は楽になるだろう。
『ありがとう……本当に助かったよ!』
「何、こういう時の為の永久機関だ」
 俺の胸の炎は、戦いだけが使い道じゃないんだしな。
「これも立派な有効活用というものだ」
 こうやって人々を生かす事も出来る。さて、次は何をすればいい?

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダビング・レコーズ
難民への人道支援ですか
元来より完全な直接戦闘用の兵器として設計されている当機にとって非常に難度の高い要請ですが、善処は致しましょう

物資の搬入作業の補助を開始します
パワーアシストギアを起動
物資を積載したコンテナが大型であればキャバリアで、そうでないならば降機した状態で運搬します

また、先の戦闘でキャバリアの残骸が散乱し歩行や交通に支障を来たしている場合はそれらの撤去を行います
中にはパラティヌス・スローターのまだ使用可能な武装も残されているかも知れません
発見した場合は確保しておきます
難民であっても自衛の為の武力は必要になるものかと
この世界に於いて無防備と無抵抗は命を守護る武器にはなり得ないのですから


荒谷・つかさ
(警備主任の姿を見て)
あら、お久しぶり。健勝そうでなによりだわ。
そっち(ガフの谷)の様子はどう?
喋る変な仮面の噂とか、出てきたりしてない?
(雑談がてら、軽く情報交換)

現地での支援は持ち前の「怪力」を活かした力仕事全般を請け負う
特に重機やキャバリアのようなものが入り込めないキャンプ内部での作業には重宝すると思うわ
(瓦礫の撤去や歪んだコンテナの開封など)
マシンの整備とかは知識がないけれど、このパワーが役立つようなら駆け付けるし
炊き出しの類も料理なら得意だから力になれると思うわ

鍛え上げた肉体は、例え戦いの場でなくとも役に立つものよ。


月影・このは
難民キャンプの慰問…ですか…
どうもそういった類は…ウォーマシン故あまり娯楽用とか生活支援系の機能が無いんですよね…

故に『怪力』、力仕事が必要な場面でのお手伝いがあればそちらを
はい、積載重量は兎も角単純な量はキャバリアに負けますが小型機故のキャバリアの入れない場所等での閉所での活動なら得意です!

ということでトランスフォーム!(両手両足を広げて寝そべるだけ)


場合によっては子どもたちとか乗せて遊べ…本来はそういう用途では無いですがね…まぁ、楽しめるなら良しとしましょう



●力の使い道
「難民への人道支援ですか」
「難民キャンプの慰問……ですか……」
 ダビング・レコーズ(RS01・f12341)と月影・このは(自分をウォーマシンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)は揃って首を捻る。
「元来より完全な直接戦闘用の兵器として設計されている当機にとって、非常に難度の高い要請ですが――」
 戦闘機械ゆえのジレンマ。壊す事と違い、元に戻すにはそれ相応の繊細さが必要な局面もある。それでもやらなければなるまい――自分達は壊す為だけにここへ来た訳では無いのだから。
「ええ。どうもそういった類は……ウォーマシン故あまり娯楽用とか生活支援系の機能が無いんですよね……」
「…………」
 ひたすら難しい顔をするこのはをダビングは訝しんだ。このサイズでそもそもウォーマシン? スキャンした画像を解析するにこの小柄な猟兵は……。
「善処は致しましょう」
「何ですか今の間はッ!?」
 思わず突っ込むこのはに背を向けてダビングはかつての戦場へ足を進める。その傍らで警備主任は、懐かしい顔と旧交を温めていた。
「あら、お久しぶり。健勝そうでなによりだわ。そっちの様子はどう?」
『おかげ様でぼちぼちやらせて貰ってるよ。今回も本当に、助かった』
 荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は壮健な主任を見上げて手を交わす。以前の戦いでも素手でキャバリアを屠った腕だが、こんな小柄な身体のどこにそんな力があるのだろうと主任は訝しんだ。そんな思いも露知らず、つかさは早速先の戦いで見たモノについて警備主任に話を伺う。
「……喋る変な仮面の噂とか、出てきたりしてない?」
 仮面――道化師の様な、先の戦いで見つけたグリンダに取り付いていたという謎の装飾は奇妙な捨て台詞を残して消えた。アレがそもそもの元凶なのだとしたら……この戦いは終わってない。それに。
『喋る、かどうかは分からんが』
 あの仮面はこの谷からそう遠くへは移動出来ない筈。つかさの言葉を聞き、主任は難しい顔をして言葉を続ける。
『そんな感じの奴は、心当たりがある』
 一つは自分自身が操られていた機体に付いていたマーク。もう一つは――。

「物資の搬入作業の補助を開始します」
 一方、ダビングは関節の補助駆動系をリセッティング。瞬発力を下げ持久力を上げる事により物資可搬用に自身を最適化した。
「パワーアシストギア、出力最大」
「それではボクも参りましょう! はいっ!」
 ヴン、とアクチュエータが小刻みに稼働する音が聞こえる。ウォーマシンならではのバンプアップで軽々と物資を運ぶダビング。このはからは特に何も――だが、小柄な身体に似合わぬ怪力は、瞬く間に支援物資の入ったコンテナを片付けていく。
『わー! すげえなお前!』
 いつの間にか自身と同じくらいの子供達がこのはを囲んでいた。何やら知らない子供がキャバリアと戦ったりここで働いていると聞いて、キャンプの子供が様子を見に来たのだ。
「お前とは一体何様ですか。ボクは対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号――」
『レプリカント? キャバリア?』
『ねーどうやってるのそれ? ねー』
 などと宣うこのはを囲む追及は一段と激しくなる。何故ならば皆、只でさえ無力な子供なのだ。だからこうして大人と共にあるこのはへの興味は尽きない。自分達にもそんな力があれば……コンテナを担ぐこのはの周りが喧騒に包まれて。
「ま、マシーンチェーンジ! ビークルモード!」
 すわ変形か? 否、寝そべって車輪らしき何かが身体から生えて来ただけだ。背にはコンテナ、腹ばいになって台車の様に荷物を運び――逃げるこのは。それを追いかける子供達。今はまあ、それでもいいか。
「わー! そのボタンを押してはいけないのです!」
 いつの間にかこのはの上に子供が乗っていた。何という器用さ……だけど、その旺盛さと元気があれば、きっと生き抜く事が出来るだろうから。

(問題は瓦礫と残骸ですね……)
 ダビングはアークレイズを駆り出してかつての戦場にいた。応急処置をしただけのこのマシンでも、非戦闘行為ならば十分対応出来る。コマンドを飛ばして薄明りを灯したアイセンサが周辺の走査を開始――ここには対人殺傷兵器がごまんと眠っている。問題はここからだ。
「アークレイズ、ノーマルモードで起動」
「あら、瓦礫の撤去なら手伝うわよ」
 ふと、傍らには巨大なキャバリアの残骸を担ぎ上げたつかさの姿が。散らかしたままでは輸送もままならない――目立つものから片っ端に、鬼は戦の跡を片付けていたのだ。
「流石ですね。その力」
「鍛え上げた肉体は、例え戦いの場でなくとも役に立つものよ」
 確かに、力は使い様だ。成すべき事を成す為、今ある物を最大限に利用する。それがかつての敵の物であろうとも。ダビングの視線の先には目当ての物――損傷が比較的浅いキャバリアの残骸が転がっていた。
「どうするの、それ?」
「難民であっても自衛の為の武力は必要になるものかと」
 流石に腕無しのキャバリア擬きだけでは心許ない。各国も表立って装備の供給は出来ないだろう。だが拾った物であれば誰も文句は言えまい――パワーアシストで強化した駆動系が唸りを上げて、倒れたパラティヌスを起こすアークレイズ。
「この世界に於いて無防備と無抵抗は、命を守護る武器にはなり得ないのですから」
「そうね……それじゃあ私は、炊き出しでも手伝おうかしら」
 使い物にならない残骸を粗方片付けたつかさは、ダビングと入れ替わる様にキャンプへ足を向けた。生きる為に必要な事――それは食事。
「今は、生き抜かなきゃ」
 そうでなければ鍛える事も、戦う事も出来はしない。私達に出来るのはその手助け――それも永遠では無い。だからこそ。
「はい。その為にも」
 二人は分かれた。その先にある未来を信じて。
 この地で二度と戦いが起こらぬ事を願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖


んー
小麦粉とバターと砂糖なんかはある?
あと鉄板

いや
まぁ腹がそこまで膨れる訳じゃないけども
甘い物は気持ちが解れるだろ?
フライパンで焼けるらしいから
鉄板でも焼けるんじゃないかなって
クッキー

外だから作業台はキャンプ用の簡易テーブルで
難民の子供達にも興味があったら手伝って貰うかな

一緒に作ろうぜ
多分きっと楽しい

型はないから
簡単な形しか出来ねぇけど
おお上手いじゃん

さて上手く焼けるか
直火に鉄板だしなぁ
注意深く眺めて
頃合いで一つ味見
熱っでも旨
手伝ってくれた子にも
な?
みんなに持ってってやってくれ

ガフの谷の警備主任さんとか
グリンダにも差し入れるかな

…あんた覚えてる?
少しでも状況が分かったら
何か打開できるかもだし


秋月・信子
●SPD

ガフの谷…この子と出会えた国が動いたのであれば任せても良いかも知れませんが…
『…何よ?』
いえ、子供嫌いかと思っていたら、意外と面倒見が良いのですね?
『あんたの影ですもの。性格は真反対でも根っこは同じなんでしょ。さ、ちゃちゃっと炊き出しでもして帰るわよ』

材料は…長期保存に適した缶詰ばかりですね
でしたら、缶詰とマカロニだけでも作れる所謂『フーバーシチュー』でも出そうと思います
『良いわね。でも、これだけだと栄養バランスが不安よね。食べざかりの子も居るんだし、豆とか肉とか欲しいわ。ちょっと警備主任に聞いてくる』

姉さんが居なくなった隙を見て、運んで貰った子達とサプライズな感謝の手紙の内緒話です



●伝えたい事
「んー……小麦粉とバターと砂糖なんかはある?」
 陽向・理玖(夏疾風・f22773)は警備主任に声を掛けて、支援物資をざっと物色していた。
『一応一通りはあるが……どうするつもりだ?」
「あと鉄板。いや、まぁ腹がそこまで膨れる訳じゃないけども」
 幸い目当ての物は揃えられた。戦闘もしばらくは起こらないだろう……だったら、と理玖は微笑する。
「クッキーを作るんだ。甘い物は気持ちが解れるだろ?」
 フライパンでも焼けるらしいから、鉄板でも焼けるんじゃないかなって。
『そうか。だったら野外キッチンがそっちにある。自由に使ってくれていい』
 警備主任が指差した方――東屋の様な建物の中に古めかしいコンロが設置してある。十分だ。火が起こせれば後は作業台を……素材を抱えて周りを見渡す理玖の足元に、ちょこんと小さな影が寄ってきた。
『ねえ、なにしてるのー?』
 子供だった。戦闘が終わって安心しているのだろうか、よく見たらそこいら中で子供達が走り回っていた。というかこんなにいたのか……だったら。
「――一緒に作ろうぜ」
 皆でクッキーを。多分、きっと、楽しいから。

「ガフの谷……この子と出会えた国が動いたのであれば任せても良いかも知れませんが……」
『……何よ?』
 一方、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は姉なる影を呼び出して、改めて状況を見分していた。
「いえ、子供嫌いかと思っていたら、意外と面倒見が良いのですね?」
 あのしかめっ面の姉の下に、何故か子供が群がっている。脱出行で一緒になった子らだろうか。
『あんたの影ですもの。性格は真反対でも根っこは同じなんでしょ。さ、ちゃちゃっと炊き出しでもして帰るわよ』
 言いながら支援物資を物色する姉。ぶっきらぼうに袋を漁り、呆れた口調で信子の方へ向き直る。
『はあ……缶詰ばっかりだけど何か作れる?』
「そうですね。それじゃあ……」
 缶詰とマカロニだけでも作れる所謂『フーバーシチュー』ならば、ここの素材だけで沢山出来るだろう。作り方も簡単だ――姉を見やり、信子は言葉を続ける。
「一気にやっちゃいましょう。姉さん、手伝ってください」
『じゃ、私は他に材料がないか、警備主任に聞いて来るわ』
 缶詰だけじゃ食べ盛りの子は足りないでしょう。もっともな言い分で姉はその場を去る。というか、サボるつもりじゃ……まあ、いいか。
 こっちもやる事がもう一つあるからね。

「型は無いから好きに作っていいぜ。ああ、余り生地を厚くするなよ」
 理玖は子供達と一緒にクッキーを作っていた。生地をこねて、それぞれが思い思いの形を作る姿を見守りながら、ちゃんと出来る様にアドバイスをして。
「おお上手いじゃん。それじゃあ焼くか」
 生焼けを防ぐ為生地はやや薄めに、その分沢山作って――動物の形や花の形、お洒落なチェッカー風の形もある。ひっくり返して型崩れしない様に注意して、一つ一つ丁寧に――徐々に甘い匂いが香り立ち、子供達は誰もが目を輝かせていた。
「さて、上手く焼けるか――」
 パチリ、と火の粉が散って――咄嗟に手を出す理玖。ここで怪我なんてしちゃ台無しだ。慎重に焼き上がったクッキーを皿の上に移して、いざ試食。
「熱っ! でも旨い」
『うん、おいしい!』
 至ってシンプルな素焼きのクッキー。それでも甘味や娯楽に飢えたこのキャンプでは極上の味わい。焼きたての熱いクッキーを頬張って、子供達も嬉しそうだ。
「な? みんなに持ってってやってくれ」
 はーい、と元気良く返事をして、沢山焼いたクッキーを配り始める子供達。これなら大丈夫そうだな……それじゃあ、俺も行こうか。

『で、雁首揃えてこれから何をしようっての?』
 キャンプの外れにある隔離区画、そこにクリスクワイアの兵士と皇帝――グリンダの身柄は拘束されていた。だが自身もオブリビオンマシンに操られた経験のある警備主任を始め、ガフの谷の面々は彼等に鎖を付けるような真似はしない。
『慌てなさんな。尋問しようとかって訳じゃない』
『とてもそうには見えないけれど、ねえ』
 警備主任に食材を聞きに来た信子と、焼きたてのクッキーを持ってきた理玖が並んでグリンダと相対する。俯いて生気の無いこの人が、あの勇ましかった騎士団長なのか……それ程までに彼女は憔悴しきっていた。
『……慰めのつもりか』
「っつーか、なあ」
 警備主任の穏やかな声に対し、自嘲的な言葉を返すグリンダ。それを見やりばつが悪そうに理玖が口を開く。
「あんただって分かってんだろ。こんな事……本当はしちゃいけなかったって」
『…………』
 かつて自分の国を守る為生命を賭した人だ。だから、思ってもやっちゃいけない事の区別はついていただろう。だから、全てオブリビオンマシンの差し金ならば……もう一度思い出して欲しいと、理玖はまだ熱のあるクッキーをグリンダへ差し出した。
「――ここの子達が作ったクッキーだ」
 不格好で薄っぺらい焼き菓子をそっと手に取り、ゆっくりと噛み締めるグリンダ。熱がじわりとグリンダの中で溶ける。頑なな彼女の心を溶かす様に。
『美味しい、わ』
「だろ?」
 破顔して言葉を続ける理玖。この分なら大丈夫だろう、多分。それにグリンダが正気を取り戻したならば聞きたい事が山ほどあった。
「なあ……あんた、覚えてるか?」
 少しでも状況が分かったら何か打開出来るかもしれない。この惨劇の根源、全ての元凶が何であるかを。
『ああ、あれは――』
 そしてグリンダは語り始めた。全てはオブイエへの視察から始まったと。

『――って、これは?』
『アッ……』
『……お手紙』
『ハッ』
 話をある程度聞いて信子の元へ戻った姉は、突然手渡された手紙に面食らう。こんな奇襲は想定外――ってか、あんたの仕業ね。
『全く、余計な事を』
「ふふ。で、どうでした?」
 幸い信子のシチューは仕上げの段階。ここで多少の食材を追加投入しても戦線は破綻しない。分けて貰った肉や野菜を放り、姉は神妙な面持ちで信子へ話を続けた。
『思ったより、面倒な事になりそうね』
 グリンダの言より、オブイエから帰国後の記憶が殆ど無いという事実。オブイエの下層で得体の知れない物を拾ったというおぼろげな記憶と、先の証言にあった謎の仮面の存在から――どうやら戦いはまだ終わっていないらしい。
『っと。こんなもんでしょ。ほら出来たわよ!』
 器を持った子供達を集め、順にシチューを装う二人。これならば十分腹を満たせるだろう。
『……こんなもん貰っちゃったんだもの』
「そう、ですね」
 つたない言葉でつづられた感謝のメッセージを読んで微笑む二人。故に。
 先の見えぬ狂気の果てへ、この子達を巻き込む訳にはいかない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
【白鈴】
生憎俺は他人に対して気遣いとなるような言葉を持ち合わせてはいない。
悪いが他を……(サギリに袖を引かれ、彼女に視線を向ける。何も言葉だけが助けとなるわけではないらしい)…是非もあるまい。

すまない、こんな事態で無理は承知ではあるのだが香辛料の類と穀類はあるだろうか。あるのか…了解した。それならばなんとかなる。
(材料の都合UDCアースで振舞っているそれとは違うものになるのだろうが料理というのは理を以て加工するもの。現地調達品であろうとその場における最大限のクオリティでカレーを作りお出しする)

これぐらいしか出来ん男だ。あとは連れに任せる。
(振舞うだけ振る舞い、後はサギリの陽光ノ神楽を見ている)


サギリ・スズノネ
【白鈴】
お腹が減っていると、悲しい気持ちになりやすいのです
というわけで、お兄さんの袖をくいくい引っ張って、ご飯を作りましょうなのです!と言います!

救援物資の内容次第ですがー、サギリ、カレーが良いんじゃないかなって思うのですよー
サギリお兄さんのカレー大好きなのです
サギリも料理、お手伝いしますからー、カレーを作ってー、皆で食べましょうなのです!
お米があればご飯を、なかったらパンとかー、代用できるものを使うのです!

ご飯を食べる時は陽光ノ神楽で、周りをちょっとだけ綺麗にするのです
あったかいご飯と、キラキラしてて光いっぱいの中にいれば、少しは気持ちが明るくなったり、落ち着けるかなって思ったのですよ!



●陽の光を浴びて
 先の戦闘などまるで無かったかの様に、難民キャンプは明るい声で包まれていた。お菓子にシチュー、炊き出しの暖かな匂いが満ちる広場を流し見て、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は一人空を眺めていた。
 争いの絶えないこの世界、明日は我が身となるかもしれない。だからこそ災厄の芽を摘み取る為に自分はここに来た……だから、これ以上の役目は無い。静かに、広場に背を向け歩き出した源次の袖が不意に掴まれる。
「悪いが他を……」
 生憎俺は他人に対して気遣いとなるような言葉を持ち合わせてはいない――戦いが終わったならばと振り返れば、やはりそこには見知った顔があった。
「お腹が減っていると、悲しい気持ちになりやすいのです」
 サギリ・スズノネ(鈴を鳴らして願いましょう・f14676)はやる気に満ちた表情で、ぐいと源次を引き寄せる。
「なので、ご飯を作りましょうなのです!」
 幾ら炊き出しがあるとは言え一種類だけでは味気ない。それにこういう場所に相応しい料理があります! とサギリは源次に詰め寄った。
「サギリ、カレーが良いんじゃないかなって思うのですよー」
 カレーを作ってー、皆で食べましょうなのです! 元気よく決意表明するサギリ。だが作るのは……俺だ。額を押さえて項垂れる源次。何故ならば。
「サギリお兄さんのカレー大好きなのです。サギリも料理、お手伝いしますからー」
 カレーとは単に素材をカレールーで煮込むだけで完成はしない。適切なスパイスの配合と絶妙な火加減、何よりそれらの仕込みをするには圧倒的に時間が足りない――それでも。
「お米があればご飯を、なかったらパンとかー、代用できるものを使うのです!」
「……是非もあるまい」
 サギリがこう言い始めたら止められる訳がない。ならば最後の大仕事だ。
「……すまない、こんな事態で無理は承知ではあるのだが……香辛料の類と穀類はあるだろうか」
『ああ。それほど多くは無いが、大体揃っている』
 警備主任に材料の所在を確認し――流石軍隊だ。粉末のホールスパイスに塩漬けした豚肉。何だかよく分からない根菜の類に豆の缶詰。そして米らしき穀類が提供された。保存が利く食材のオンパレードだが、十分な量がある。
「……了解した。それならばなんとかなる」
 どこかで見つけた黒いエプロンをかけ、戦場の店長代理は目を光らせた。

「……」
 源次のオリジナルカレーは、結論から言うと大盛況だった。生臭さを消す為にスパイスを使い過ぎれば子供が食べにくいとサギリに注意され、止むを得ず貴重な蜂蜜を贅沢にあしらった特製のカレーを子供達へ。大人達へは活力が満ちる刺激的な味わいの(本来ならば少し寝かせて旨味を引き出したかった)さらりとしたカレーを提供した所、米?を炊くサギリが悲鳴を上げる程のスピードであっという間に無くなってしまい、このペースでは数日分の備蓄食料が底を尽きかねないという事で慌ててストップが入る始末。
『先程は助かった。随分遠くからの救援の様だが』
「これぐらいしか出来ん男だ。あとは連れに任せる」
 レシピを書き置いてやっと休憩に入った源次は、キャンプの外れで警備主任と声を交わす。この男もかつてオブリビオンマシンに精神を蝕まれたという――だが、今はその様子は微塵も無い。
「……どこも変わらない。この世界は特に」
 第三極東都市だろうと、池袋だろうと、闇に紛れて蠢く悪は後を絶たない。このキャンプだって明日も今日と同じ一日を迎えられるか。クロムキャバリアは全土が戦場といっても差し支えないのだから。
(あったかいご飯と、キラキラしてて光いっぱいの中にいれば)
 それでも――視線の先で舞う少女を追って息を吐く源次。ずっとこのままじゃない。人間の意思は、オブリビオンに負け続ける程やわじゃ無い。
(少しは気持ちが明るくなったり、落ち着けるかなって思ったのですよ!)
 そうだな。俺達はその手助けをする為にここに来た。きらきらと煌めく桜吹雪は少女――サギリの超常。見る者を暖かくする心の光。
『……綺麗だな』
 警備主任がぼそりと呟く。当然だ。だがそれを当たり前と感じる心すら奪われた者が沢山いるのだ。だからこそ――。
『全部が全部、皆で飯食って解決すればなあ』
 この光が、ここの人々の希望の灯火になれば、と。
「いつか、来るさ」
 源次は空を仰いだ。陽の光が差す、暖かな青い空を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
まずは難民の方々のお役に立ちます。

UC:神使集結で人型の眷属神さん達を呼び、必要な建物を構築してもらいます。
最初に診療所、次に皆さんが寝泊りできる施設、その次に共同利用できる集会所の順で。

自身は響月で明るい曲を楽器演奏し、皆さんの心を優しく慰めます。

その後でグリンダさんを訪問。
怒りと悲しみに加えて恥辱や自責の念もありそうですから、「悲しい事に、この世界ではオブリビオンマシンに心狂わされた人が大勢います。
ですが、それを乗り越えて前に進む人もいます。

グリンダさんは被害者と加害者の両方を経験した。
だからこそ見えてくるものが沢山有って、グリンダさんだから出来る事が沢山有りますよ。」と優しく鼓舞します。


トリテレイア・ゼロナイン
ご壮健で何よりです、警備主任

少々、お手数をかけるのですが
あの浄水プラントの修理を命じて頂けますか?

どうにも専門知識が必要でして
他者の要請という“裏技”を使って私のデータロックを解除したい、という次第です

食事の配給もひと段落し、人々の緊張も解れてきておりますね

…人々を真に救うのは、剣でなく創造の力である

唯の騎士の限界…こうした状況では痛感いたします

ですが私は騎士を志す戦機
剣を執ることを止める事は無いでしょう

尤も、ズルは致しますが
あの裏技、命令完遂まで効果が丸一日有効なのです

電脳魔術で電脳禁忌剣をギター代わりに武器改造

御伽の騎士は万能ですからね
慰問コンサートを開こうかと

…リクエストは御座いますか?



●原状回復
 神の御力は戦以外にも奇跡を起こす――大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の呼び掛けに応え、大地が、空が、その神威を具現化して。
「最初に診療所、次に皆さんが寝泊りできる施設、その次に共同利用できる集会所――」
 光と共に象られた力ある言葉が空気を揺らし、その嘶きと共にキャンプの空いたスペースへ続々と建物を造り上げた。
『おお……何と……』
『良かったねえ。これで寒空に震える事も無いよ』
 まずは力の弱い老人や女子供達へ、宿泊施設はここに居る難民全てを賄える規模の物を。猟兵が帰った後も難民の健康を守る診療施設と、色んな事に使える集会所を建造する。幸い食事は間に合っているようだ……私もちょっと欲しい……などと口が裂けても今は言えない。詩乃は神様としての役割を十分に果たす迄、舞う様な仕草で『神使集結』――奇跡を起こし続ける。
「ご壮健で何よりです、警備主任」
『おお、君か。随分と活躍しているそうじゃないか』
 これが埒外の力かと感心しながらその様子を眺める警備主任に、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)がきびきびと声を掛ける。
「常に背水の陣ですよ……所で」
 トリテレイアはガフの谷からオブイエ地下施設、そして帝国首都決戦に此度の戦――全ての戦いを愛機ロシナンテIVと共に駆け抜けた。その名声は警備主任も良く知っている。そんな英雄が縮こまって、背丈が頭二つは違う警備主任と話し込む姿は何だか妙な光景であった。
『そんなかしこまらなくていい。何か入り用か?』
「少々、お手数をかけるのですが、あの浄水プラントの修理を命じて頂けますか?」
 それは意外にも、警備主任から英雄へ命令を下して欲しいというお願いだった。

『そんな事か。むしろ君達の力は私が良く知っている。好きに直して――』
「いえ、それがどうにも専門知識が必要でして」
 トリテレイアの言う浄水プラントは確かに厄介な代物だった。仕様が古い所為でしょっちゅう地盤から汚泥を吸い上げてしまい、生活用水として使う為に毎日ご機嫌を伺わなければならない。
「他者の要請という“裏技”を使って私のデータロックを解除したい、という次第です」
 だからこそ、機械の機嫌を取るならばもっとも適任な騎士がここに来た。その奇跡ならば、二度と過ちを起こさない様“分からせてやれる”から、と。
『君も難儀な生き方をしているのだな……承知した』
 苦笑しつつ警備主任は真っ当な指示書を用意する。ご丁寧に押印済みの公式文書――そう、これは難民キャンプを救うという作戦なのだ。

『アンタは……あの時の神様か』
 一通り難民の生活を助ける建物を拵えた詩乃は、キャンプの外れの一角――グリンダが収容されている施設へ足を運んでいた。大分やつれてはいるが、その目にはしっかりと生きる意志が見て取れる。それを確かめられて詩乃は安心した。
「……悲しい事に、この世界ではオブリビオンマシンに心狂わされた人が大勢います。ですが、それを乗り越えて前に進む人もいます」
 悪魔のマシン、エビルガーロボに引導を渡した詩乃の事はよく覚えていた。間近で見せられた超常の奇跡――埒外の戦いに私も加わろうとしたのだろうか。
「グリンダさんは被害者と加害者の両方を経験した。だからこそ見えてくるものが沢山有って、グリンダさんだから出来る事が沢山有りますよ」
 怒りと悲しみ……一国の主として剣を掲げ前へ出なければならなかった。しかし、余りにも無力だった自身の恥辱と自責の念に付け込まれ、あんな悪魔を我が身に宿してしまった。その結果がこれだ。だからこそ。
『ああ、そうだな。そうでなくては……』
 もう二度と過ちは犯さない。最早事態はこの首一つで納められる範疇を越えている。あの悪魔は我が国だけでは無い。ずっと前から円卓連合を潰す為に――暗躍していたのだろうから。
『話そう。何があったのか……それが今の、私の役目だ』
 詩乃の言葉に勇気を奮わせ、グリンダは語る。
 全ての発端たる、百年以上続いた憎しみの記憶を。

「……人々を真に救うのは、剣でなく創造の力である。唯の騎士の限界……こうした状況では痛感いたします」
 食事の配給も一段落し人々の緊張も解れてきた。トリテレイアの大仕事――浄水プラントの整備もつつがなく進行し、施設の拡充に続いて浄水の確保も成功した。これでこのキャンプも当面は安泰だろうと、静かに排気し言葉を紡ぐトリテレイア。
『破壊なくして創造なし、とも言うさ。要は適材適所――君が落ち込む事じゃない』
「ええ。私は騎士を志す戦機――剣を執ることを止める事は無いでしょう」
 一度壊された事のある警備主任の言葉には重みがあった。度を越した欲が禍を引き寄せる――あの時の様に。なればこそ、今もこれからも、自分がやるべき事を成せば、自ずと道は開かれるだろうと。
『それでいい。いずれ時は来る』
 目を細めガフの谷を見上げる警備主任。その姿に違和感を覚えたトリテレイアは、わざとらしく話題を切り替えた。その話を聞くのはきっと、今じゃない。
「……実はあの裏技、命令完遂まで効果が丸一日有効なのです」
『そりゃあズルだな。大したモノだ』
 浄水プラントを整備したトリテレイアの奇跡的な所業――『非常時越権機能行使』という裏技は、故障した機械が直る迄、丸一日かけて自動で勝手に中身を直してくれるという優れモノだった。古臭いプロテクトを解除して新たな制御系を強引に割り込ませ定着させる、いわば全自動ハッキングで“機能は同じだが全く別物”の仕組みを後付けし、何食わぬ顔で普通に扱えるようにするのだ。
「では作戦も完了しましたし……御伽の騎士は万能ですからね」
 そう言い、トリテレイアはスラリと佩いた剣を抜く。
『何だ。スイカ割りをするにゃあちと寒いぞ……』
 急に抜刀したトリテレイアに警備主任は面食らう。だが剣は紫電を纏い――バチリと光が爆ぜた時、美しい蒼銀のエレキギターがその中より現われた。
「いえ、折角ですから慰問コンサートを開こうかと」
「でしたら私も手伝いましょう!」
 不意に明るい乙女の声が二人に届く。グリンダとの対話を終えた詩乃が戻って来たのだ。その手に漆と金で装飾した美しい龍笛『響月』を携えて、詩乃はトリテレイアの横にちょこんと並ぶ。
『驚かさないでくれ……しかし御伽の騎士と神様のコンサートとは豪勢だな』
 ジャランと弦を鳴らすトリテレイア。妙に慣れた手付きは“ズル”のお陰か、まるでキーボードの様に滑らかなタッピングで煌めく音色を奏で上げ、それに合わせて詩乃が艶やかな笛の響きを重ね合わせる。日は傾いて夕焼けの赤い光が二人を染める。その姿はまるで黄昏を祓う神と使いの様――。
「では……リクエストは御座いますか?」
 心に沁みる音色を一早く堪能した警備主任が手を叩き、応じるトリテレイアが言葉を返す。ならば今は、争いを忘れられるような音楽を。

「グリンダさん――皇帝さんは、オブイエの地下施設の視察時に変な仮面を拾ったそうです」
 一度限りのコンサートの後、トリテレイアと詩乃は月明かりの下で互いの情報を交換する。トリテレイアからは難民キャンプはとりあえず人々が生活出来る基盤を構築出来た、と。だが詩乃からの、その元凶になったグリンダ――クリスクワイア皇帝が齎した情報は、正に信じられない事ばかりだった。
「仮面……?」
「道化師の様な、妖しいモノだったと」
 あの教主との戦いの後、現地で触れてはならぬ物を手に入れてしまった、という事か。それに道化師というキーワードは覚えがある。
「これまでの事件で遭遇したキャバリア全て、道化師の様な紋章がありましたね」
 警備主任の機体にも、教主のエヴォルグにも、帝国を襲ったエビルガーロボにも共通していた事象――道化師の紋章。それそのものと言えるような仮面はもしや、グリンダの精神を蝕み皇帝機までも……。
「みたいですね。それと皇帝機――ワルキュリアですが」
 その皇帝機、ワルキュリアと銘打たれた超常のマシンの正体は、トリテレイアを以てしても計り知れぬ機体だった。その正体を、詩乃がゆっくりと告げる。
「あの機体の建造年数は百年以上前だそうです」
「この世界の、百年の戦争よりも前から……」
 つまり後から作られたキャバリアでは無く、遥か昔から帝国の剣として戦ってきたというのだろうか? 否、あのマシンは……詩乃が言葉を濁して続ける。
「……あれは、古代魔法帝国の遺失兵器」
 そんな昔からオブリビオンマシンだったのか。あるいは成ってしまったのか。それを知る術はもう無い……だが。
(それでいい。いずれ時は来る)
 警備主任の言葉が妙に刺さる。まさか、あのマシンは一体では無いという事か。
 この夜の様に深い闇が世界を包んでいる――生き足掻く生命の灯を塗り潰す様に。どうやら剣を納めるには、まだ早いらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

中小路・楓椛
【渡り禽】


戦闘終了皆様お疲れ様でした。良い機会ですので先生にクロさんの整備をお願いしたいと思います。実費と作業料その他合わせて緋緋色金系金属の精錬インゴットをご希望の量お譲りします。

その間に牽引したいほうんでーを店舗モードに展開変形、いほうんでー経由で「倉庫」から食材を大量に供給。救援物資と合わせてダゴン焼きをはじめとした手軽に大量に作れる料理をお届け。
食べる皆さんの机と席が足りないなら先生のところの設備をお借りできると助かります。
身動きできなさそうな方の所へは……多喜さん、お手数ですが配達お願いできますか。報酬は食べ放題とエネルギーインゴットでどうでしょう?

無辜の民の食を充足したところでもう一仕事。
皇帝機を最後に無力化した瓦礫の中から仮面或いはその一部を探してUCあるはざーど起動。
アルハザードのランプの逸話はご存知で?モノの記憶に同調して過去の痕跡と思念の経路を辿ります。

可能なら「向こう側」にご挨拶といきましょう。
私、逃げ得は赦(ノガ)さない主義ですので、ええ。


数宮・多喜
●【渡り禽】
お疲れお疲れー、まずはひと段落、かねぇ。
んじゃこの隙にリリーセンセ、Overedの修理と解析頼まぁ。
見てくれは完全に量産機でござい、町工場でも修理できまさぁってツラなのによぉ、
いつも戦い終わるとさっさとどっかに帰って自分で修理しちまうシャイな奴なんでね。
今みたいに逃げられる前の現地修理で分かる部分は押さえときたいのさ。
どうせアタシのご先祖様の差し金だとは思うけど、
どんな技術が使われてるか、未開放の機能がないか診てくれないかな。
カブもそうなんだけど、まだ何かを隠してそうなんでねぇ……

さて、んでもって対価はアタシの『脚』って事でどうかな?
忙しくて持ち場を離れられなかったりで、
中小路さんが振る舞ってる料理を食いにこれなさそうなヒト達に、
カブで『運搬』して出前しようじゃないの。
こういう時は、ひとまずみんな美味いものを腹いっぱい食う事さ。
そうすりゃちっとは頭も回ってくるだろ。
な、皇帝サン?
これからの事、皆で一緒に考えようじゃないのさ。
そうすりゃ世の中、少しずつでも良くしてけるんじゃね?


リーゼロッテ・ローデンヴァルト
●【渡り禽】

(0番、イグニッション)『自動走行モードを起動します』
戦闘領域外の【ファルマコン】を【指定ユベコ】で招集
到着後キャバリア達を常設ドック車2両で自動メンテ
※愛機は4号車、他2機は7号車

『クロさん』は機械部品の強度確認&補修交換
発狂できそうな所(頭・コア・下腹部)は目視のみ
緋緋色金インゴットは幾つか有り難く頂戴するよ♪

『JD-Overed』は《瞬間思考力》で解析も…
ガワに似合わず技術的には高度な思念波対応型
未供用ブラックボックスも幾つかあるよ
思念波の波形や出力次第で起動できるかも?

さてと…リリー先生の往診タイム、はじまるよー♪
9両編成大型ホバートレーラーの2号車はクリニック
難民キャンプの巡回診療にも完全対応なのさ♡

オブイエ監査依頼時の緊急手術で活躍した
救急車の診療機構【イリーガル・メディック】も駆使
更に3号車搭載の【マゲイロス】で炊き出し&設備物資提供
人員は【マーチング・ワスプ】で…手伝い希望は喜んで♪

あ、皇帝陛下の病室も2号車下層部に確保
治療観察や憑依絡みの聴取も必要だろうしね



●戦のあと、破滅のはじまり
《Number 0, ignition》
《Activating automatic run mode.》
《Cars 4 and 7 are in position.》
 時間は遡って日中に戻る。ズタボロのナインス・ラインからファルマコン――機動医療艇の一群を遠隔管理システムで急行させるリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)は、難民キャンプ周辺の状況を精査して、傷だらけのキャバリアと人々を救う準備をしていた。幸い殺傷ガスの影響は殆ど無いとは言え、ここに至るまでの苛烈な戦闘は人々に甚大な被害を齎している。だが、それこそ自身が立ち向かうべき本来の戦場。
「さて……始めちゃおうか」
 髪を結い直してリリー先生はマシンより降り立った。本当の戦いはこれからだ。
「お疲れお疲れー、まずはひと段落、かねぇ」
「戦闘終了皆様お疲れ様でした。良い機会ですので先生にクロさんの整備をお願いしたいと思います」
 早速、同道した渡り禽の数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)と中小路・楓椛(ダゴン焼き普及委員会会長・f29038)が姿を現わす。二人の機体も激しい戦闘のあおりを受けて、どちらもボロボロの状態だった。
「お疲れちゃーん……って、いいの? 楓椛さんの機体って」
 楓椛の機体――クロさんは只のキャバリアでは無い。漆黒の痩躯はだらりと長い腕を伸ばし、膝を突いて静かにひれ伏している。
「ええ。実費と作業料その他合わせて緋緋色金系金属の精錬インゴットをご希望の量お譲りします。これで如何でしょう?」
 基本フレームがそもそも異端の戦機だ。素材の提供は有難いが、制御系は恐らく一筋縄ではいかない――だからこそ。
「了解。実はちょっと気になってたんだよ……緋緋色金インゴットは幾つか有り難く頂戴するね♪」
 マッドなサイエンティストの腕が鳴る。漆黒の巨体を見上げ口元を歪めるリーゼロッテは、そのまま傍で佇む真紅のマシンに目を移して。
「んじゃあこの際リリーセンセ、アタシのOveredの修理と解析も頼まぁ」
「って多喜さんも! 全く重労働だね……でも良いわ♪」
 多喜のOveredは見た目は一般的な重キャバリア。だが内部システムはこの世界の物かどうかも分からない代物だ。
「こんなレアなマシンをまとめて診れる機会なんて滅多にないから」
「ハハッ――それでいいさ。まあ見てくれは完全に量産機でござい、町工場でも修理できまさぁってツラなのによぉ」
 言う通り装甲の交換ぐらいはどうにかなるだろう。だが先の戦いでOveredも深刻なダメージを受けている。特に念動制御系の主経路は思念逆流防止弁の動きでメインシステムが全く言う事を聞きやしない。
「いつも戦い終わるとさっさとどっかに帰って自分で修理しちまうシャイな奴なんでね。今みたいに逃げられる前の現地修理で分かる部分は押さえときたいのさ」
「任されたよ。他には?」
 そして、勝手に帰られては困る局面がこの先もあるだろう。だからこそ今の内に、このマシンをもっと知らなければならないと多喜は考えていた。
「どうせアタシのご先祖様の差し金だとは思うけど、どんな技術が使われてるか、未開放の機能がないか診てくれないかな」
「了ー解っ! 腕が鳴るねぇ」
 リーゼロッテならOveredに隠されたシステムを知る事も出来るだろう。折角の機会だ――故に多喜はOveredを任せる事にした。
「カブもそうなんだけど、まだ何かを隠してそうなんでねぇ……」
「親心子知らず、って訳じゃあないのかな?」
 本当ならばUDCアースでごく普通の生活を営んでいる筈だった……だが、多喜の出自がそれを許さなかった。だからこそ生き足掻こうと思う。
「とりあえずはね、言う事は聞いてくれるから問題ないさ。んでもって――」
 ここの人達と同じ様に、自身も生という戦いの真っ最中なのだから。ジェットヘルを片手におどけながら多喜は続ける。
「対価はアタシの『脚』って事でどうかな? 」
 幸いカブの方はまだ無傷――キャンプ内で物資を届けるには十分な機動力がある。医療品や食料、足りてない人々は幾らでもいるだろうから。
「じゃあそれで。ファルマコンはしばらく動けないから、色々頼んじゃうよ」
 まずはキャバリアの修理に取り掛かる――仲間達の手を借りれば、きっとこの局面も突破出来るだろう。

(言う通り、ガワに似合わず技術的には高度な思念波対応型)
 リーゼロッテはOveredの修理に取り掛かっていた。真紅の装甲を外し、中身のフレームに測定器を繋いでいく。多喜の言う通り大分厄介な代物だ。
(ブラックボックスだらけじゃない。念動力増幅? いや――)
 スキャナが見通した構造は人の神経の様に張り巡らされた制御系に、感応波を増幅して反映するコンバータ状の装置。内部プログラムにはシーリングされた機能系がずらりと並んで。
(いうなればパズルみたいなモノ。上手く形に当てはめれば)
 それぞれに対応する形状の思念波で解除される代物か、つまりはそれだけ高度の精神統一が必要と言う事だろう。重厚な見た目によらず随分と繊細なシステムが積まれているとリーゼロッテは感心した。
(思念波の波形や出力次第で起動できるかも? とんでもないねえ)
 サンプルパターンを採取して保存。いずれ何かに使える時が来るだろう。さて。
(『クロさん』は機械部品の強度確認&補修交換かな。成程)
 続いて立ち並ぶ漆黒の痩身の全身をスキャン。人体を模した形状にぎゅっと機能を詰め込んだワンオフモデルか――駆動系の補器は交換対応で何とか。しかし。
(消耗品は通常の規格で対応可、と。それに――)
 制御系が分からない。Overedが機械的に人を再現しているとしたら、クロさんは人を人とは違う何かに置き換えるか、進化させているような――。
(緋緋色金か。これも念動系合金の類かな?)
 よく見知った悍ましさがリーゼロッテの背中を這う。緋緋色金の一次装甲はそれそのものが制御系に? 金属製の万能細胞か、状況に応じて構造を最適化しているとでも――だとしたら。
(制御系の基幹OSは……何これ、人の脳波に近い)
 矢張り、このマシンは生きている。いや……止しておこう。個人のプライバシーを詮索するのは医者の役目じゃない。
(これ以上いけない、って奴さね。ここまでにしておこう)
 深淵を覗く者は覚悟せよ……生憎今はそれにかまけている場合じゃない。狂おしいほどに刺激された知識欲を無理やり押し込んで、リーゼロッテは作業着を白衣に着替える。ナインス・ラインは4号車で自動整備中だし、機械はここまで。
「さてと……リリー先生の往診タイム、はじまるよー♪」
 キャットウォークを優雅に下りて、白衣の女医は自らの戦場へ立ち向かった。

「こういう時は、ひとまずみんな美味いものを腹いっぱい食う事さ」
 一方、ファルマコン機動車両群を飛び出した多喜は、自身の宇宙カブにありったけの物資を積載してキャンプを巡回していた。様々な設備が立ち上がったとはいえ、移動もままならない難民が沢山いる。そういう人達の下へ薬や食料を配給しつつ、合流した楓椛と共に一息ついている所だった。
「ええ。仕込みは重畳。足りない設備は先生の所から借りましょう」
 猟兵各位の炊き出しのお陰で広場は賑わいを見せていた。だがまだ足りない。それを満たすのが世界を渡る楓椛の使命――故に。
「所で中小路さん、それって」
「ダゴン焼きですが、何か?」
 クロさんが引っ張ってきた『移動式店舗「いほうんでー」』を展開し拡げた屋台で、香ばしい匂いを辺りに振り撒く楓椛。テーブルや食器はリーゼロッテの『マゲイロス』から必要な分を拝借して、素材はいほうんでー経由で幾らでも『倉庫』から取り寄せられる。
「……多喜さん、お手数ですが配達お願いできますか」
 焼きたてのダゴン焼きを紙で包んで手渡す楓椛。名状し難い魅力が多喜の心を掴んで。どこかから“食ってみな、飛ぶぞ”という声が聞こえた。気がした。
「ああ、任された。んで――」
 だったらあの人へ届けるか。籠にダゴン焼きを満載しエンジンを掛ける。道中で配るには十分な量だし、きっとこれを食べればあの人も“飛ぶ”だろう。
「報酬は食べ放題とエネルギーインゴットでどうでしょう?」
「お、おう……」
 柔らかな笑みを浮かべる楓椛を背に多喜は飛び出した。さて――それでは。
 無辜の民の食を充足しましょう。あるのはダゴン焼きだけでは無いですからね。

「……どうだい、調子は?」
『おかげ様で大分マシになったよ』
「とは言え……」
 多喜はリーゼロッテと共にグリンダの所にいた。リーゼロッテの『イリーガル・メディック』で用意した各種測定器に繋がれたグリンダは、穏やかな笑みを見せて訪れた猟兵達に言葉を返す。
「バイタル、脳波、共に正常だけど予断を許せる数値じゃない」
 ギリギリでは無い。だがその生死の境を彷徨っていたのだ――リーゼロッテの言葉を受けてグリンダは口元を歪める。
「無理しないで。死ぬわよ」
『そのつもりはない。今は生きなければ』
 グリンダの表情の死の影は無い――生きるというのは本心だろう。むしろ、そうでなければ困る。測定器を止めて手際良く片付けに入るリーゼロッテと入替る様に、多喜が湯気が上る紙包みをそっとグリンダへ手渡した。
「そうさね、皇帝さん。まあ食ってくれ」
『何だ、これは?』
 中身は焼きたての何か。香ばしい香りが狭い部屋に充満して――毒では無いだろうが、何だろうか、この名状し難い得体の知れぬ気分は。
「いいから」
 グイと手を伸ばし、押し付ける様にそれを渡す多喜。そっと一かじり……溢れる肉汁が食欲を刺激して、気が付けばグリンダは貪る様にそれを喰らっていた。
『美味いな。何だこれは?』
「いいから……これでちっとは頭も回って来たろ」
「毒じゃないよ。むしろ食べて回復しないと」
 飛んだろ? 若干複雑な表情を浮かべ笑い返す多喜。その様子にに微笑むリーゼロッテが言葉を続ける。このヤマの真相――一連の真実を知る為に。
「で……アンタに憑りついてたアレ、一体何な訳?」
 完食したグリンダが少し間を置いて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
『アレは……古代魔法帝国の残党』
 オブイエで憑りついたそれは、グリンダにそう答えたらしい。古代魔法帝国――クロムキャバリアで最近動きが活発な一団と何か関係があるのだろうか。
「ふーん……で、その残党が一体何の為にアンタを操ったのかしら?
『……すまない。それ以上は、分からない』
 元々オブイエへの追及や疑心はあった。だがそれを本当に武力行使で解決しようとは考えなかった。少なくとも、その仮面が取り付くまでは。何故仮面が唆したのか、仮面が何をしたかったのか……グリンダには答えようがなかった。
「じゃあそれ以上は、皆で一緒に考えようじゃないのさ」
 沈黙の中を多喜が割って入る。分からない事、犯した罪、それら全部を一人で背負う事は無い。自分達は今迄そうやってきた。そうやって、数多の世界の戦を納めて来たんだ――だから。
「そうすりゃ世の中、少しずつでも良くしてけるんじゃね?」
 この国も、クロムキャバリアもきっとそう出来るだろうと。

「――そいやっ!」
 夜半、難民キャンプから離れて数キロ地点――ワルキュリアと猟兵が最後に戦った戦場にぼうと明かりが灯る。
「アルハザードのランプの逸話はご存知で?」
 誰に語り掛けるでもなく、明かりの主――楓椛は言葉を続けた。目の前には瓦礫に残骸、先の戦いで破壊されたキャバリアだったモノの成れの果てが、まるで墓石の様にそびえ立っている。
「これは、モノの記憶に同調して過去の痕跡と思念の経路を辿ります」
 故に、積み上げられた墓標はこれまでと、これからの道標となる。取るに足らぬ小物が相手では使えないこの超常は、本来ならば自らを相応の危険に晒さなければならない。だが。
「逃げ隠れしても無駄ですよ」
 対象が逃げ隠れしているならば話は別だ。可能なら「向こう側」にご挨拶といきましょう――その程度の覚悟ならばある。
「…………ほぉ」
 これまでの戦いの裏で糸を引いていた存在――己の矜持はそれを逃す事を許さない。そして煌々と照るランプの明かりは、残骸をスクリーンに――マシンの残像が楓椛が望む真実を詳らかにした。

 映し出されたのは皇帝機――ワルキュリア。他に漆黒のキャバリアともう一つの機体が戦列を組んで闊歩する。どうやら今し方よりも更に過去の記憶を映しているらしい。
 黄金が結晶の礫を放ち、漆黒が無数のマシンと共に戦場を炎の津波で埋め尽くす。放たれた礫が立ちはだかるキャバリアの尽くを爆砕し、漆黒の振り撒いた砂の様なモノ――ナノマシンに覆われて、戦場は炎と共に虚無と化した。
 場面が変わって、漆黒のマシンが膝を突き――対峙するのは黄金。ワルキュリアの剣が漆黒の肩口をずぶりと貫いて、今際の際に放たれた漆黒のナノマシンが両機を覆い尽くす。辛うじて離れたワルキュリアは仁王立ちのまま双眸の光を消して、漆黒は彫像の様にその場で動きを止める。仲違いか――あるいは、操縦者が変わったのか。ともあれ両機の戦いを以て、その記憶は終わった。
「まず、世界を脅かしたのはあなただけでは無く、あなたでは無いと」
 再びランプが記憶を灯す。今度はキャバリアの無い風景――仮面を被った幾人かの男女が対峙して整然と立ち並んでいた。その中央、列の最奥には一際目立つ仮面を被る男の姿がある。
 その男が仮面を外すと共に、その場に崩れ落ちる。同様に立ち並ぶ男女も仮面を外し、続々と倒れ込んでいった。つまり、遥か古よりあの仮面は、人々を操って世界を弄んでいたのだろうか。だとしたら……。
「無論、引導を渡してやりますとも」
 妖狐がにたりと口を歪める。
 私、逃げ得は赦(ノガ)さない主義ですので、ええ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月02日


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#クロムキャバリア
#円卓連合


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠朱皇・ラヴィニアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト