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殲神封神大戦⑰〜銀水蒙霧のネクロパレス

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』 #始皇帝

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 息を飲む程に美しい宮殿の中を、一人の男が歩む。
 だがその瞳には生気が宿っておらず、土気色の頬は痩せこけている。
『――』
 口を開けば唸りとも叫びともつかぬ嗄れ声。だが誰も答える者は居ない。
 辺りを満たす灰色の靄は、宮殿内に踏み込んだ者に速やかな死を齎すからだ。
『――』
 もっとも、この場に生者と呼べる者は、最初から存在しない。
 史上初めて人界を統一した、秦の始皇帝。
 今の彼は、その服から絶えず染み出し宙を舞う汞に操られる、人形が如き存在なのだ。


「戦争お疲れ様にございまする。皆々様の尽力で『混沌の地』に辿り着きましたが、何と申せば良いやら」
 グリモアベースを訪れた猟兵達に予知を伝えるため、出迎えたのは四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)だ。
 仙界の最深部にある『渾沌の地』は未だ形定まらぬ場所。そこを掌握していたのは【骸の海】を自称する『鴻鈞道人』だった。
 彼の能力の一つが――『再孵化』。
 これまでに撃破した筈のオブリビオン、或いはまだ戦場にいるオブリビオンさえも、容易く再現し攻撃させるという、凄まじいものだった。
「予知できたのは『始皇帝』の再孵化。既に倒されている筈の敵にございまするが」
 すなわち、始皇帝との再戦である。
 そしてかの地自体も、作られたオブリビオンに応じて形状を変化させ、巨大な楼閣『阿房宮』と化しているそうだ。

 鴻鈞道人自身は、渾沌の地と融合して阿房宮を作り上げている。戦場と化しているため鴻鈞道人への直接攻撃が出来ない点は歯痒いが、その分、始皇帝との戦いに集中した方が良いだろう。
 阿房宮の内部は吸い込めば内臓を破壊する「猛毒の水銀蒸気」に満たされており、猟兵と言えども、対策なしで突入するのは危険だ。
「そして、一つ留意点がありまする」
 それは、始皇帝の愚かさを利用することが不可能である点だ。
 以前の彼ならば、水銀に侵されつつも会話を行える程度の知性は保っており、それ故に裏をかくことも出来た。
 だが今の始皇帝の本性は『増殖する水銀』そのもの。知性を無くした代わりに、猛然と攻撃してくるだろう。
「既に阿房宮で戦った方も、その点だけはお気を付けを」

 もちろん、水銀のユーべルコードを使う始皇帝の力自体も強大だ。
 弱点を一つ無くした彼を、何としても此処で止めるべきだろう。
「鴻鈞道人は現状、滅ぼす手段が判明しておりませぬ。しかし、この始皇帝や、他のオブリビオンを何度も倒せば、撤退に追い込むことは出来まする」
 それは謎めいた鴻鈞道人の思惑を挫くだけでなく、『張角』への道を開き、戦争への勝利に一歩近づくことにも繋がる。
「封神武侠界に平和を齎すためにも、ご武運お祈りしておりまする。にんにん」


白妙
 宜しくお願いします。
「渾沌の地」で再孵化を果たした「始皇帝」との戦いです。

●戦争シナリオ
 これは戦争シナリオです。一章で完結します。

●難易度
『やや難』となります。
 判定方法はマスタールールに準拠します。

●プレイングボーナス
『水銀蒸気に対抗する』です。

●戦場
 内部が「始皇帝の猛毒水銀蒸気」で満たされた巨大な宮殿『阿房宮』となります。
 鴻鈞道人が融合していますが、直接攻撃は行えません。
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第1章 ボス戦 『『始皇帝』』

POW   :    変幻自在水銀剣
【自在に変形する水銀の剣】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    辰砂兵馬俑親衛隊
自身の【操る水銀】を代償に、1〜12体の【自在に変形する液体金属の兵馬俑】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    万里水銀陣
戦場全体に【水銀の大渦】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【覇者の気を帯びた水銀】による攻撃力と防御力の強化を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朱鷺透・小枝子
これはもう始皇帝ではない。
だが敵である事に変わりは無い!

ディスポーザブル03を【操縦】
メガスラスターで【空中浮遊】し【オーラ防御】サイキックシールドで水銀蒸気を弾き、ミサイル【一斉発射】阿房宮・水銀蒸気・始皇帝を纏めて【吹き飛ばし】!
水銀をどう変形させようとも絶えずミサイル【誘導弾】で周囲をふっ飛ばして近付かせない。

過去は大人しく、過去のままでいろ!
今更、自分達の死に様を侮辱するなぁあああ!!

『壊物変成』発動。水銀の剣も水銀蒸気も阿房宮もただの水に変換!
【念動力】水で始皇帝を包んで動きを妨害、【エネルギー充填】していたハイペリオンツインランチャーで始皇帝を【焼却】砲撃!!



 スラスターから吐き出される推進エネルギーが、灰色の靄を足元から吹き飛ばしていく。
 切り開かれたその道を進み、阿房宮への突入を果たした一台のキャバリア。その内部に警告が響く。
『水銀濃度、危険領域。サイキックシールド、展開――』
「……」
 スーパーロボット『ディスポーザブル03』。その褐色の表面を舐めていくのは、蒸気水銀。吸い込めば内臓を侵し抜き、猟兵と言えども容易く地に伏せる猛毒だ。
 鳴り響くブザーと点滅する赤いランプはすぐさま止み、搭乗席に座る朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)に、戦うだけの時間的余裕が生まれたことを伝える。
 だが、それを覆しかねない存在が、小枝子の目の前に現れた。
「!」
 蒸気を切り裂き、長衣を振り乱して驀進して来たのは、オブリビオン『始皇帝』。
 その手には水銀の巨大剣。今にも繰り出されようとしていたのは、厚い装甲をも容易く貫く威力の刺突だ。
 だが迎撃とばかりに小枝子は、機体の全身の砲門を展開する。
『――』
 戦場の中空から次々撃ち下ろされる大量のミサイル。広範囲で発生した爆風はオブリビオンの体を後方の壁へと叩き付け、さらに周囲の水銀をぶわりと吹き飛ばす。
 クリアになった小枝子の視界。その中央で始皇帝は、人体を無視した動きで衝突のダメージを殺し、そのままゆらりと向き直る。
「……これはもう始皇帝ではない」
 思わず小枝子はそう呟きを漏らす。
 今の彼からは、地上の支配者であった頃の面影はおろか、人間らしさすら感じられない。
 骸の海を介して歪み果て、その末に理性を失ったのであれば、同情の余地はある。
「だが敵である事に変わりは無い!」
 過程はどうあれ、今の始皇帝は混沌氏の手駒。放置すれば仙界を危険に晒す、完全なる敵だ。
 迷うことは無い。その基準こそが小枝子の行動を決めて来た。
「過去は大人しく、過去のままでいろ!」
 斉射される追加のミサイル。発生する爆炎。今まさに突撃の体勢を作っていた始皇帝が、直撃の寸前で飛び退く。
 クロムキャバリアの火器、とりわけミサイルは爆発時に大きなエネルギーを生み出す。この爆風を前に、気体である水銀蒸気は無力だ。
 灰色の霞が再度吹き散らされる。同時にそれはオブリビオンの接近を阻み、攻防一体の手段と化していた。
『――』
 それでも爆炎の中を始皇帝が抜けて来る。その構えは威力を重視したものから、小回りと精度を重視したものへと変貌を遂げていた。
 機体へと肉薄し、その手の水銀剣を一閃――だが次に響いたのは、鋼鉄を断ち割る音では無かった。
 ばしゃあ、と水の飛散する音。
 幻聴ではない。その手にあった鈍色の剣は消滅し、目の前のサイキックシールドの表面を滴り落ちている。
 ――何の変哲もない、水だ。小枝子のユーベルコード『壊物変成』は、物質の組成をも無視し、別物へと変貌させる。
 そしてそれらは同時に、小枝子の掌握下にある。
『――』
 変換された蒸気が真水の霧雨となってさらさらと降り注ぎ、薄い膜と化してオブリビオンの動きを制限する。そこへさらに水銀剣の水が時間を巻き戻すかのように形を戻し――そのまま渦を形作って始皇帝を封じ込めた。
 ゆっくりと向けられる『ディスポーザブル03』の両腕。その砲口からは、既に充填を完了した、莫大なエネルギーの光が覗いていた。
 ぎぎ、と抵抗を見せるオブリビオンだが、なおも降り積もる水を前に、腕を上げる事すら叶わない。
 この戦場で小枝子を相手にした時点で、勝負は決していたのだ。
「……今更、自分達の死に様を侮辱するなぁあああ!!」
 小枝子が絶叫すると同時に放たれたのは、極太の荷電粒子ビーム砲。
 それは水の牢獄ごと始皇帝の体を包み込み――その体を大きく焼き焦がしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラム・クリッパー
アンタ、おバカは治っちゃったんすか。

防毒マスクと手袋をしっかり装着、肌の露出は極力減らし[毒耐性]を整え[落ち着き]をもって挑む、毒あり魔獣を解体する基本っすね。
水銀を吸い込むのは勘弁っす、でも、帰ったら装備捨てないとダメかも…

水銀の剣は[見切り]、フーリガンツールで[受け流し]つつ、受け止めた攻撃を[怪力]で押し返していくっす。
鴻鈞道人が楼閣になってるなら建物は壊せないと考えるべきっすよね?
なら、できるだけ張り付いて始皇帝自身への[重量攻撃]で[部位破壊]を狙いつつ、隙を見てUC発動っす。
[気合い]で始皇帝を持ち上げたら、床に壁にひたすら叩きつけまくって、最後に玉座に[投擲]してやるっすよ。


フィロメーラ・アステール
あー、ヒトではないモノになったと。
あたしはヒトの考えはよくわからない!
だから……こっちの方が楽だな!

ようするに現象を力業で鎮めるだけよ!
3つの魔力圏《がいあ》《えあろ》《あくあ》からなる【オーラ防御】によって、鉱物・気体・液体に干渉する!
水銀蒸気を寄り分けて【地形破壊】だ!
清浄な空気の層を纏い安全確保するぞ!

さらにコイツを攻撃に応用しよう!
【薄暮に踊る払暁の恒星】発動!
魔法能力を強化し、干渉能力を高め、水銀自体を操り【盗み】取る!
これで敵の水銀攻撃を奪い【武器改造】魔法を施し【破魔】の聖なる【属性攻撃】化!
この聖剣を【念動力】で操作し戦うぞ!
チャンスがあれば【全力魔法】パワーを込め必殺攻撃だ!


トゥリフィリ・スマラグダス
再孵化、ですか。こちらが苦労して倒したものをこうも簡単に再出現させられると……。(複雑そうな顔)


水銀蒸気は「偽神」の冷気を全開にすることで固体へと変え、「迷彩マント」で口と鼻を覆うことで吸い込んでしまうのをなるべく抑えましょう。

相手のUCによる水銀の剣にはこちらのUCで召喚した戦士たちを盾にし、冷気で水銀を固まらせることで水銀の流動性を失わせ、「特殊マガジン」を装填した「クードフードル」で石化【呪詛】の石針を発射し始皇帝もろとも石にして差し上げます。


もうあまり時間に余裕もない……急がなければ。



 転送と同時、視界が灰色のヴェールのようなものに覆われる。
 ぬらりと肌を舐めていくそれは、吸い込んだ瞬間に内臓をも破壊する、高純度の水銀蒸気だった。
 だが、猟兵達も対策は講じている。
「アンタ、おバカは治っちゃったんすか」
『――』
 宮殿の広間、その中央で一人天井を仰いでいたオブリビオン『始皇帝』の背中から、ラム・クリッパー(力自慢の少女解体屋・f34847)が声を掛ける。
 彼女の口元を覆うのは防毒マスク。露出の存在しない服装の上からエプロンをかけ、さらにゴーグルで目を覆う徹底ぶりだ。
 それは、毒を持つ魔獣を解体する際の、ラムの基本装備であった。
(「水銀を吸い込むのは勘弁っす」)
 とはいえ蒸気と化した水銀は全ての装備に纏わりつき、不快な感触の膜を形成している。
(「帰ったら装備捨てないとダメかも……」)
 とはいえ、入念な準備のお陰で、毒の侵入は見受けられない。それを確かめラムは、落ち着きを持ってオブリビオンと対峙する。
「再孵化、ですか」
 その隣で呟きを漏らしたトゥリフィリ・スマラグダス(つぎはぎの半端者・f33514)の口元で、びきり、と音がした。
 口と鼻を覆ったマントを、漂う水銀ごと精霊の因子「玉塵の偽神」で瞬時に凍らせ、即席のマスクとする。
「こちらが苦労して倒したものを、こうも簡単に再出現させられると……」
 一つ一つの戦場で、猟兵達は多くの時間と労力を費やした。それらを容易くひっくり返しかねない『鴻鈞道人』の力を前に、トゥリフィリは嘆息する。
「大丈夫っすか? 水銀マスクなんて」
「ええ……固形ですから」
 水銀が毒となるのは吸い込んだ瞬間である。その証拠にトゥリフィリのマントは、しっかりと防毒の役割を果たしていた。
 その時、始皇帝がゆっくりと振り向く。
 人とは思えない異様な雰囲気を纏い、一歩ずつトゥリフィリとラムに歩み寄っていく。
 だらりと下げたその手では水銀剣が黒く蠢き、突撃の前兆を示している。にもかかわらず、本人からは一切の殺気が感じられない。
 ラムとトゥリフィリが構えたのと同時、頭の中で声が響いた。
(「あー、ヒトではないモノになったと」)
 今の始皇帝の状態は、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)の表現がしっくり来るだろう。
 人界の覇者だった男と、妖精とも自然霊とも言える存在であるフィロメーラとは、元より考え方に大きな隔たりがある。
 どのような因果で今に至ったかは互いに推し量り難い存在とも言える。もっとも始皇帝は知性を失い、フィロメーラの側では目的は一貫しているのだが。
(「だから……こっちの方が楽だな!」)
 微かな星の輝きと共にフィロメーラが飛び回れば、その一帯で、蒸気水銀が層と化して割れ始めた。
 床近くに濃い二層、そして膝から上に生まれるのは清浄な空気の流れ。
 空と海、そして大地の3つの魔力圏による干渉だ。
「『現象』の力業だ! 長くは保たないよ!」
「凄い……」
「来るっす!」
 楽になる呼吸。猟兵達が喜ぶ間もなく始皇帝が距離を詰めれば、双方の距離はあっと言う間にゼロとなった。
 

 戦闘開始から数分、戦いは白兵戦の様相を呈していた。
 オブリビオン『始皇帝』は一貫して水銀剣を振るい、猛攻を続けている。
「……っ!!」
 自在に変化する水銀剣。ラムはその読み難い軌道を落ち着いて見切り、レスキュー工具で受け流す。
 後退する始皇帝。そこに滑り込むのはトゥリフィリの召喚した、氷の身体を持つ戦士達だ。
 その身を盾にする戦士が斃れる度に、オブリビオンの剣は冷気に凍り、流動性を欠いていく。
(「もうあまり時間に余裕もない……急がなければ」)
 現状猟兵達の中で、一番対策が薄いと言えるのがトゥリフィリである。未だ猛毒の効果が出ていないとはいえ、その機械の体は銀色の液体でぐっしょりと濡れていた。
 出来る限り早期の決着を。マスクに隠れた口元を引き結び、戦士たちの後ろからレールガンを斉射する。
 構築された壁の後方で体勢を立て直したラムは、ふと周囲を見渡した。
(「……壊せないと考えるべきっすよね?」)
 鴻鈞道人が融合した楼閣そのもの。解体に向いたラムの得物ではあるが、ダメージ結びつかない事は容易に想像出来る。
 ならばと前方へ駆けだすラムを支援するように、フィロメーラも動く。
「水銀は優秀な魔力の媒体! 利用させてもらうぞ!」
 薄暮に踊る払暁の恒星――高められた魔力を掌に纏わせ、フィロメーラが足元の水銀に浸す。
 ゆっくりとそこから引き抜かれたのは、始皇帝のものとは違う、聖なる輝きを纏った水銀剣だった。
「……今です!」
 一瞬で換装を果たしたトゥリフィリが撃ち出したのは、席化の効果を備えた石針。その弾幕を前に、オブリビオンの片足が石と化す。
「せいやー!」
 そこに飛来したのは、フィロメーラが念動力で操る白銀の水銀剣。
 咄嗟に自身の水銀剣を構え、防御を行う始皇帝。だがその手首を強引に掴んだのはラムだ。
『――』
 たちまち長衣ごと絡め取られる始皇帝の腕。持ち上がったその体に直撃した銀閃が、辺りに暁星が如き目映い光を撒き散らす。
 だが、終わらない。
「ぬんっ!」
 始皇帝の手首を掴んだまま、その体をラムが振り回す。
 壁に床に、手当たり次第に叩き付けまくった後――ものすごい怪力でぶん投げた。
「行くぞー! 必殺攻撃だっ!」
「……行きます」
 一段高い場所にある玉座に、力なく収まる始皇帝の体。
 そこにトゥリフィリの放った石針の呪詛が四肢を縫い付け――続いて、フィロメーラの放った白銀の突きが、きらりと輝く魔力を纏って炸裂するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
いわばこの『阿房宮』こそが鴻鈞道人そのもの
再孵化された始皇帝を倒せば、かの強大な敵の力を少しでも削る事は叶いましょう
ならば、騎士として為すべきは一つ

元より宇宙での活動が前提のウォーマシン
防具改造にて気密性高め環境耐性を高めれば水銀蒸気など脅威足り得ず

…もはや嘗ての覇者の名残すら残っていないようですね
こうなれば一刻も早く眠らせるのが情けというものでしょう

瞬間思考力にて水銀剣の変形を見切り剣と盾にて防御
怪力で振るう近接攻撃にて相手を弾き飛ばし

敵が体勢を整える前にUC使用
胴部よりコアユニットを抉り出し、電脳魔法陣にて発射口形成

蒸気も残さず…消し飛んで頂きます!

大出力のエネルギーで砲撃



 オブリビオン『始皇帝』の再孵化。そして、いまだ形定まらぬ「渾沌の地」との融合と、『阿房宮』の再現。
 それらは『鴻鈞道人』の凄まじい力の一端を覗かせるに十分なものではあった。
 だが少なくとも、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)に干渉しようとする様子は、今の所無い。
(「いわばこの『阿房宮』こそが、鴻鈞道人そのもの」)
 美しい宮殿内部の様子はトリテレイアにも見覚えがある。それはつい数日前に訪れた場所そのもの。
 敵はそこに存在し、あまつさえ力を割いてすらいる。だが攻撃を加える術は無い。
「……ならば、騎士として為すべきは一つ」
 意識と剣の先端を、眼前の敵へと向け直す。
「貴方を倒せば、かの強大な敵の力を少しでも削る事は叶いましょうか」
『――』
 始皇帝。手に持つ水銀の剣をだらりと下げたような構え。
 その瞳を満たす色は無機質な水銀そのもの。およそ生気と言うものが宿っていない。
 にもかかわらずこの始皇帝。トリテレイアが宮殿に突入してから数分間、互角の渡り合いを続けていた。
 濁流の如き攻撃を剥き出しにしたその立ち回りは、非人間的ながら、猛攻と呼ぶに相応しいものだった。
「……」
 一方のトリテレイアは、巨大な剣と盾で反撃に徹していた。
 自在に変化する剣の軌跡。それらを弾き返し、押し返す。
 それを可能としているのは、超重の機体と甲冑装甲、双方に施された改造だった。連結部を中心にした、入念な気密性の確保である。
 蒸気水銀の侵入を完全に防ぎ止め、長時間に渡るトリテレイアの戦闘を可能としているその工夫に、始皇帝が気付く様子は無い。
 否、興味を持つ事自体を忘れ果てているかのように、そんな風にもトリテレイアには思えた。
(「……もはや嘗ての覇者の名残すら残っていないようですね」)
 歪み果てた末に、知性の名残すらこの世に留めることも許されず、再度利用された。人界を制覇した男の末路である。
「こうなれば一刻も早く眠らせるのが情けというものでしょう」
 鈍い輝きを放つ水銀剣。その動きに目が慣れた頃を見計らい、トリテレイアが一歩踏み込む。
 その巨大なシールドに体を隠した状態で、剣を振り上げる。
 巨大な白い斬線が描かれるよりも一拍早く、オブリビオンが剣を舞い上げれば、ぎゅるりと変形した水銀の剣がトリテレイアの剣先を往なした。
 即座にトリテレイアはシールドバッシュへと移行。がら空きの右脇全体に向け、その凄まじい強度と質量を叩き込んだ。
 直撃。大きく後方へと弾き飛ばされる始皇帝を視界の中央に収めたまま、トリテレイアは切り札を出す。
「……!」
 左腕で甲冑を砕き、胴から抉り出したのは――動力炉。コアユニットだ。
 まさにトリテレイアの心臓にして頭脳と呼べる部位。掌中のそれを蒸気水銀から守るのは、莫大なエネルギーを伴う光だけだ。
 続いて始皇帝が背中から壁へと叩き付けられる。壁を揺らす凄まじい音がトリテレイアの膂力を物語る。
 それでも体を半ば捻転させるような常人ではありえない動きで勢いを殺し、倒れ込みを防ぐオブリビオンだったが、物理的なダメージは隠せない。
 始皇帝が前方へとよろけたのと、水銀の霧を吹き払い、膨大なエネルギーの圧力が駆け抜けたのとが、同時だった。
「……仮想砲身展開」
 トリテレイアの右手にある電脳禁忌剣アレクシアが光を輝く糸へと紡ぎ直し、それで以ってコアの周囲に発射口を思わせる電脳魔法陣を形成させる。
 そして、トリテレイアの巨体を動かす程の大出力のエネルギーが、極限まで圧縮され、砲塔の根元へと収束する。
「蒸気も残さず……消し飛んで頂きます!」
 宣言と同時、放たれたのは、大出力のエネルギー砲。
 圧倒的な威力の奔流を正面から受け、再度始皇帝の体が壁に叩き付けられ、その体勢のまま、数秒間に渡ってその身を焼き焦がす。
「……」
 やがて光が止んだ時、始皇帝は地上から消えていた。
 否、阿房宮も、水銀蒸気も、全てが嘘のように霧散している。
 この戦場における戦闘能力を失ったトリテレイアが、ようやく片膝をつく。
 戦いは、終わったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「このまま存在するのも哀れですね。引導を与える事も慈悲でしょうか。」
水銀蒸気に関しては、防毒マスクを着用し【オーラ防御】に【毒耐性】と【環境耐性】を組み合わせて可能な限り対策します。
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【巷に金色の雨の降るごとく】を【範囲攻撃】にして、『『始皇帝』』達を纏めて攻撃します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避できたら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



 時はオブリビオン『始皇帝』が倒される少し前へと遡る。
 自在に周囲の水銀を操る始皇帝は、黒い魔術師の装束に身を包んだ、一人の猟兵と対峙していた。
「このまま存在するのも哀れですね」
 帽子の鍔を軽く倒し、そう独り言つのは、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)。その口元は防毒マスクに覆われている。さらに体の周囲に金色のオーラを纏う事で、蒸気水銀が肌を伝って体内に流れ込まないよう、対策を施し終えていた。
 準備は万端と言える。そしてそれは、目の前の敵を倒す為のものだ。
『――』
 始皇帝は水銀色に濁った瞳を明の方へと向け、ゆらりゆらりと操り人形のような動きで向かって来る。その動きからは、まるで生気というものが感じられない。
「引導を与える事も慈悲でしょうか」
 今でこそオブリビオンとして存在しているが、かつては始皇帝も生きた人間として存在していた。ならば明の出来る事は、これ以上彼の生前を汚さぬよう、幕引きを手助けする事だろう。
 ずるり。
 明が詠唱を開始した直後、始皇帝の足元から水銀が這い出し、12の塊と化して明の前に並び立つ。その水銀はしばらく不気味に蠢いていたかと思えば、やがて、甲冑を纏った兵士のような形へと姿を変えた。
 対する明は詠唱を続けつつも、その黒い瞳を始皇帝の方へと注いでいた。
(「代償は……」)
 辰砂兵馬俑親衛隊。自在な変形能力と、高い戦闘力を併せ持つ兵を召喚する、強力なユーべルコード。
 だが実行には代償を伴う。況してや限界人数である12体ともなれば、始皇帝と言えど、その代償は致命的なものになる筈だ。
(「移動能力、そして、反応力……でしょうか」)
 本体である始皇帝は地面に膝をつき、虚ろな瞳で天を仰いでいる。
 今の自身の本質である水銀の多くを兵馬俑の召喚に割いた事で、一切の戦闘能力を失っていたのだ。
(「では、これで行きましょう」)
 詠唱の完了と同時に明がぐるりと杖を回せば、重苦しい銀色に包まれていた阿房宮の内部が、輝かしい金色の光に満たされる。
 そして次には、優しい雨が降り始めた。
『――』
 そんな神々しい光景を切り裂くかのように、虹色の稲妻が次々と降り注ぎ、『『始皇帝』』達を襲う。
 総じて明の魔法は防ぎ辛い。あたかも防御をすり抜けるような挙動を見せる上に、適度なフェイントも織り交ぜてくるのだ。
 頭上から迫る雷に、たちまち親衛隊達は頭や肩を打ち据えられ、浮足立つ。
 そして『本体』もまたその標的を免れない。彼を守るため1体の兵馬俑が駆け寄り、身を挺して雷を防御するも、その代償とばかりに直撃を受けて弾け飛ぶ。
 だが混乱した戦列から別の1体が抜け出し、明に向けて突進を開始した。
 距離を詰めた所で、大きく横に引かれた戟が、思い切りスイングされる。
『――』
 手応えは――ゼロ。
「残念、それは残像です」
 魔術。あるいは体術の類だろうか。いずれにせよ明の立ち回りは兵馬俑の目を完全に欺き、大きく得物を振り切った体勢を作り出した。
 その死角に当たる側面で明が掌を翳せば一際大きな雷鳴が響き渡り、水銀の体が虹色の光の残滓と共に霧散する。
「さて」
 明は呼吸を整え、周囲を窺う。
 この戦場には未だに10体もの兵が存在しているが、動けない本体を数体が守り、残りも稲妻の対処に追われている。
 ならば明は、先程のように殺到してくる兵に対処すれば良い。それに万が一傷を負っても、雨が明の傷を癒してくれる。
 油断しなければ、状況は決して悪くない。
(「それに元より私の役目は、少しでもダメージを与えて、次の方に繋げる事です」)
 代償を伴った召喚を正面から潰していく。実現可能であれば、間違いなく敵の戦力を削ぐ事が出来るだろう。
 そして、数多の猟兵の中でも屈指の実力を持つ明には、それが出来る。
 水銀と金の雨に満たされた阿房宮の只中で、明は戦闘を続行。
 数で勝る兵馬俑を相手に互角以上の戦いを見せ――そして遂には、彼等を全滅近くにまで追いやったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年01月30日


挿絵イラスト