殲神封神大戦⑩〜ジェノサイド・マシーンⅡ
●強襲、阻止限界点
建業の都を舞台に始まった、攻撃衛星『九竜神火罩』を巡る一大決戦。
長く続いたこの戦いもいよいよ最終局面に移り変わろうとしていた。
永劫とも思えるような激戦の果てに、猟兵たちは無数とも思える建業の防衛戦力『陸戦量産型哪吒』たちによる大軍勢を撃破し、壊滅させる。そして踏み込んだ建業の最深部にて、遂に猟兵たちは九竜神火罩を収めたHLV(Heavy-Launch Vehicle)ロケットの打ち上げ作業、その最終段階に入ったオリジナルの哪吒を捕捉した。
「……やはり、来たか。六番目の猟兵たちよ。
あれだけの戦力をぶつけて尚、吾が前に辿り着くとはな」
巨大な打ち上げ作業台の傍らに立つ哪吒がゆっくりと浮き上がる。機体のサイズこそ同じ5mではあったが、飛行機能をオミットされた陸戦型量産機とは違い、彼はオリジナルの哪吒であり、その身に組み込まれた機能権能の一切に、制限は存在しない。HLVの打ち上げ作業が完全に完了し、九竜神火罩がレーザー攻撃を開始するその時まで、哪吒は自らの持てる全ての力を用いて猟兵たちを排除しようとする事だろう。
「……だが、それも此処までだ。
吾が使命を果たす邪魔をするのなら、貴様たちには此処で死んでもらう」
感情らしきものが感じられない機械音声で、冷徹に言い放つ三面六臂の機械戦士。
胴の上では三面がぐるりと回転し、6つの眼が猟兵たちを油断なく見据える。その六本の腕が大きく広がり、頭上では一対の腕が左右それぞれに携える片刃の剣を交差させ、“じゃきり”と禍々しい音を鳴らす。無論これはただの双剣にあらず。
組み合わせることで巨大なハサミにも早変わりする兵器“RX金蛟剪”である。
『みんな連戦になっちゃうし、哪吒は量産型よりもずっと強力だ!
やる気満々な今の哪吒相手に先手を取ろうとするのは諦めたほうがいいかも。
それでも哪吒はたったひとりで、衛星の打ち上げ台を護らなきゃいけない』
通信機から、猟兵たちをこの戦場に送り込んだグリモア猟兵、イサナ・ノーマンズランド(ウェイストランド・ワンダラー・f01589)の音声が流れ出す。彼女に出来る事と言えば、そんな細やかな助言を送り、猟兵たちの勝利を信じて待つ事だけ。
『……哪吒の弱みに付け込むなら、やっぱりそこに限ると思う。
キツい戦いだけど頑張って。あと一息で九竜神火罩の発動も阻止できるんだ!』
イサナの声に押され、猟兵たちはそれぞれの武器を手に、哪吒に相対する。
泣いても笑ってもこれが最後。建業の都を開放するための最終決戦の幕が上がる。
「……この九竜神火罩、貴様らには指一本たりとて触れさせはせん」
毒島やすみ
皆様、お疲れさまです。
哪吒くんがまだ生きていてくれたので、量産型との戦いに続く形で
オリジナル哪吒との決戦シナリオも出させていただきます。
前作『ジェノサイド・マシーン』からそのまま続く連戦というイメージですが、
前回参加していなかった方でも気にせず集団戦にまぎれて戦っていた体で、
或いは増援として気軽にやってきてくだされば。
キャパシティがあまりない事を悟ったため、採用数は前回よりも
控えめになるかも知れませんが、どうぞ宜しくお願いいたします。
今回は難易度も「やや難」。殺る気全開の哪吒が先制攻撃してきます。
プレイングボーナスを利用して、うまく凌いで反撃していきましょう。
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プレイングボーナス:
哪吒が九竜神火罩を守護する状況を利用し、哪吒の先制攻撃に対処する。
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第1章 ボス戦
『オブリビオンマシン『哪吒』』
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POW : RX金蛟剪(きんこうせん)
【二刃一対のハサミ型刀剣兵器】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【新型オブリビオンマシン】に変身する。
SPD : EP風火輪(ふうかりん)
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【両足の火炎車輪型フロートユニット】から【火炎竜巻】を放つ。
WIZ : RXS-A乾坤圏(けんこんけん)
【腕】を向けた対象に、【空飛ぶロケットパンチ】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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ジェイ・ランス
【SPD】※アドリブ、連携歓迎
■心情
いやいやいや、ナタちゃんとかいうの過激すぎないかい?
てゆーかオブリビオンマシンなんだ?ちと、本気で殴っておかなきゃかな?
―――Operation:Penetration Lauf.
■行動
"ツェアライセン"に乗って登場。
あらゆる回避運動を試み(残像、迷彩、地形の利用、ジャミング、フェイント、空中戦、ダッシュ、滑空)、敵の先制攻撃に対処します。
相手のUCに対して【カウンター】気味にUCを発動し、九竜神火罩を攻撃するふりをしながら敵機に対して【2回攻撃】します。
……防衛の困難さはよく知っています。故に、そちらはここから離れられないでしょう?
朱酉・逢真
心情)ひ、ひ。どォも、増援のひとりさ。つっても俺自身は猫の手よか役に立たンがね…だから余所から借りてこよう。
行動)人類史ってなァ、決して人類だけのものじゃない。人類が中心として描かれた歴史ってワケだ。もちろん、この戦争も人類史の一幕だ。なら、こうも出来る…"九竜神火罩"を作って、その砲撃で打ち上げ台の九竜神火罩をぶっ壊そう。火炎竜巻はいったん〈黯(*影)〉に引っ込んで避けて。いいのかい、俺にかまけてて。お前さんの大事なモンが、同じモンに壊されようとしてるぜ。かばって撃たれてくれりゃあ御の字。駄目なら改めて撃つだけさ。もちろんこの戦いが終われば、偽物は壊れて部品一つ残らず腐食するさ。安心だな。
夜刀神・鏡介
世界を滅ぼしうる兵器か。そんなものを使えば自分達にとっても碌な事にならないだろうに
分かっているのかいないのか……ま、どうあれ止めるだけだ
神刀の封印を解いた上で、バイク『八咫烏』に騎乗
哪吒の速度に勝てないにせよ、攻撃を凌ぐには役立つさ
そのまま哪吒から放たれる別の攻撃にも留意しつつ、竜巻を引き連れたまま九竜神火罩の元へ突貫。奴自身の攻撃で破壊したくないだろうから、一旦攻撃は止まるだろう
先制攻撃を躱したならば、陸の秘剣【緋洸閃】を発動
尤も、哪吒を直接狙っても回避されるだろうから、九竜神火罩へ向けて全方位から攻撃
いかに高機動でも全てを無傷では防げまい。更に、九竜神火罩に手傷を与える事ができれば上等だ
●Into the Storm
「……ナタちゃんとかいうの、過激過ぎないかい?」
巨大なサーフボード“ツェアライセン"に跨り、ジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)は建業の空を征く。虚空という海を、風に乗って颯爽と進む彼の視界の先には、大量殺戮兵器『九竜神火罩』をその腹の内に収めた巨大な卵状のHLVが打ち上げの瞬間を静かに待ち続けている。
「ってゆーか、オブリビオンマシンなら……ちょいと、本気で殴っとかないと」
そう告げるジェイの意を読み取ったかの如く、跨るツェアライセンが真の姿へと変貌しようとしていた。サーフボード……否、巨大な刀剣の全体に走る光の文様。剣は無数の粒子へと解け、それはジェイを包み込み、その形を変えていく。
―――Operation:Penetration Lauf.
機械音声が短く響くと同時、ジェイとツェアライセンは文字通り一つとなった。漆黒のキャバリアへと変貌したツェアライセンは、ジェイの望みが侭に虚空を疾走る。鋭角的なフォルムが風を切り裂き唸りを上げて、その速度は風を越えて音へと並ぶ。
「……来るか、六番目の猟兵たちよ」
打ち上げ台の傍ら、九竜神火罩の最後の守り手たるオリジナルの哪吒が空を睨む。その脚部に装備された巨大なホイール―― 否、フロートユニット“EP風火輪”が低い唸りを上げて回転し始める。其処から勢い良く噴き上がった紅蓮の炎をその身に纏い、建業を占領した哪吒軍団、最後にして最強のオブリビオンマシン、『哪吒』は空高く舞い上がった。
「世界を滅ぼしうる兵器か。分かっているのか……?
そんなものを使えば自分達にとっても碌な事にならないだろうに」
「そう作られたもんなら、その使命を果たすのが連中の生き甲斐なんじゃねえか」
無数の瓦礫と残骸の転がる最中を、一台のバイクが疾走する。
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が駆る、『八咫烏』である。
「それじゃ何か、連中は滅びるためだけに今動いてるってのか」
「どうせすぐツラ突き合わせンだ。そんなに気になるなら奴さんに聞いてみなよ」
鏡介のその後ろに相乗りする格好の朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が伴い、八咫烏は今、空高く舞い上がった哪吒と相対する格好となる。
上空を、哪吒を翻弄するように旋回する一台のキャバリア。
ジェイの駆るツェアライセン。それに向けて油断なく身構えつつも、哪吒の三面は鏡介と逢真の存在も認識している。虚のような六つの眼の奥で輝くセンサーの光は、三者を確かに捕捉していた。
「――……見覚えのない顔だ。新手か」
「ひ、ひ。どォも、俺たちゃ増援ってことでどうぞ宜しく。
つっても、俺自身は猫の手よりも役に立たンがね」
哪吒の淡々とした呟きに、皮肉っぽく戯けながら自重して見せる逢真。
それには構わず、哪吒は身に纏う火炎の勢いを更に強めていく。
「……九竜神火罩、だったか。何故そんなものを使おうとする!」
「望まれたからだ。吾は“炎の破滅(カタストロフ)”を齎す為に存在している」
鏡介からの問いに応える言葉と同時に、哪吒は最大戦速にて飛翔する。地上では鏡介と逢真の乗る八咫烏、そして空中ではジェイのツェアライセン。三者を纏めて包囲するような哪吒の高速旋回。彼らを取り囲むように駆け抜ける哪吒が虚空に刻みつけた軌跡に生まれる巨大な焔が渦を巻き、彼らを焼き尽くそうと唸りを上げた。
「……手始めに、吾は貴様らを破滅させるとしよう。焔の渦に呑まれて消えよ」
勢いを強めながら、その内側にあるものを全て焼き焦がそうとする焔が竜巻を生み出した。強烈な熱波が押し寄せ、紅蓮に染まる大気の中を、八咫烏は猛然と駆ける。如何にバイクが機動力を誇ろうと、周囲を取り囲む焔の壁が迫る中を無事に逃げ続ける事は不可能だ。
「……猫の手より役に立たないと言っても、何か手はあるんだろ!」
「慌てなさんな。ちゃあんと手はある――」
逢真がそう言うが早いか、八咫烏が大地に沈む。その背に載せた二人の猟兵ごと、地面に突如として生まれた巨大な影に溶け込むように飲み込まれ――そんな黒い影、或いは闇の水面のすぐ上を焔の竜巻が荒々しく暴れ狂い、全てを焼き尽くしていく。その遥か上方では、焔の壁を突き破ってツェアライセンが突っ走る。
「…………避け切れない、ならこれが一番手っ取り早い」
切り裂いた焔が漆黒の装甲を焼いていくが、些末なダメージとばかりにこれを無視し、ツェアライセンは加速する。鋭角な機体が飛行の最中、更にその身を尖らせ、より疾く空を翔ける形へと変形する。《可変式対艦概念破断剣》……そんな肩書に恥じぬ速度と威力を載せ、今や一振りの剣と化したツェアライセンは哪吒のすぐ傍らを走り抜け、そのまま彼の後方の打ち上げ台を目指して突進する。
「……おのれ、やらせはせんッ
……!!」
ジェイを追うように、哪吒は空を疾走る。その拍子に、彼の生み出した焔の竜巻は端から解け、無数の火の粉と散っては消える。
「……九竜神火罩を狙う。そういう風に、思ったでしょうが」
不意に、ツェアライセンは急速方向転換。全身各所のスラスターをフル稼働し、180度の回旋から自身を追い縋る哪吒目掛けて突撃する。
「狙いはあくまであなたですよ」
「……がッ
……!!」
漆黒の巨大な剣が、交錯しながら哪吒の装甲を斬り裂いた。
深く抉られた装甲の内側より、覗く内部機械がばちばちと火花を散らす。
「……そして、こっちも忘れてもらっちゃ困る」
焼け焦げた大地に広がる黒い影。その表面が風に戦ぐ水面のように揺らぎ、
其処から飛び出してくるバイク“八咫烏”。ツェアライセンの一撃により失速し、緩やかに高度を落としていた哪吒の眼前を横切り飛び出したバイクの上では、それを駆る鏡介が既にその腰に帯びた神刀を鞘より抜き放っていた。
「厄介なアレは、破壊させてもらうぞ」
そう告げる鏡介を乗せて疾走する八咫烏。
それは明らかに九竜神火罩を目指していた。
「……さっきは役立たずって言ったがね。
何もしないワケじゃない。さっきもちゃんと働いたしな」
八咫烏が大地に映し出す影―― それが再び揺らぎ、其処から姿を表す逢真。再度八咫烏の後部に相乗りする彼の頭上にて、混沌めいた漆黒の巨大な力場が展開される。
「今度はこうだ。俺が持ってないもんは、余所から借りてくりゃあ良い。
ほれ、こんなふうに……な!」
形を変えるように蠢く漆黒の塊。それは逢真の頭上にて、ひとつの形を作り上げた。それは、哪吒にとっても良く見知ったものだ。
「……! あれは、九竜神火罩
……!?」
無数のレーザー砲を備えた攻撃衛星、九竜神火罩。今、彼が護り続けている筈のそれと全く同一の姿を持つ模造品を逢真は生み出していた。
「……人類史ってなァ、決して人類だけのものじゃない。
人類が中心に描かれた歴史ってワケだ。そして、この戦争も人類史の一幕」
疾走するバイクの頭上に浮かぶ攻撃衛星がその砲門にエネルギーを収束させる。例え模造品であろうとも、このよく出来た偽物の秘める殺傷能力は決して侮る事のできるものではあるまい。
「いいのかなァ? お前さんの大事なモンが、偽モンにぶっ壊されちまうぞォ」
「…………! やらせんッ
……!!」
逢真の問いに、哪吒は弾かれたように大地を蹴る。その脚で高速回転し続けるEP風火輪が焔の轍を虚空に刻み、哪吒は鉄の流れ星となって八咫烏を追い越した。直後降り注ぐ無数のレーザー光。それは九竜神火罩の盾となり立ちはだかった哪吒の全身を焼き、その装甲の彼方此方を無惨に焼き焦がしていく。
「……おお、張り切るねえ。えらいえらい」
「延びろッ!……火尖鎗よ!!」
その身を焼くダメージも無視して、哪吒は六臂の内の一つに携えた槍を突き出した。RXS火尖鎗。陸戦量産型も標準装備していた兵器のひとつ。その穂先に収束した焔が熱線となって伸び、逢真の頭上で紛い物の攻撃衛星を一太刀の元に両断する。二つに分かたれ、爆ぜ散る残骸はその端から腐食し、火の粉と共に散っていく。
「んなろッ、せっかく作ったのにぶっ壊しやがった」
しかし、その一挙動は八咫烏の疾走が彼我の距離を埋めるには十分な時間を稼いでいた。赤と黒の破片が舞う中、鏡介の振るう神刀の軌跡が光を帯び、虚空に次々と無数の刀身を生み出した。哪吒を包囲するように無数の刃がその切っ先を彼に向け――
「斬り穿て、千の刃。……陸の秘剣」
閃く無数の刀身が、雨霰と降り注ぎ―― 赤熱し焼け焦げた哪吒の装甲を更に切り刻み、貫いた。哪吒の三面と六臂を以ってしても、その全てを撃ち落とし切るには些か足りない。反応速度と防御の精度を僅かに上回った鏡介の繰り出す手数は、哪吒の損傷を着実に増やしていく。
「…………悪いな、三人がかりで」
「仔細無し。頭と腕の数では貴様らと釣り合っている」
擦れ違いざまに叩きつける斬撃で一際深く哪吒の装甲を斬り裂きながら告げたその言葉。ぐるりと三面がその背を追い、慇懃に告げる。そんな彼を追い打つように、滑り落ちてくる漆黒の機体が突進し、凄まじい衝突の勢いに哪吒の体躯は虚空へと打ち上げられた。
「防衛の困難さは知っています。故に、貴方は此処から離れられないでしょう?」
「……っ……!」
ジェイの冷ややかな指摘に微かに同様の様子を見せた哪吒。そんな彼を空中で方向転換するツェアライセンは引き返しながらの再度の突撃によって、逃げ場のない哪吒を容赦なく大地へと叩き落とした。大地に勢い良く叩きつけられた衝撃に大地が陥没し、抉られ吹き飛んだ土砂が空に散る。黒い粉雪となって降り注ぐ土砂の中で、槍を支えにゆっくりと立ち上がる哪吒のその姿を、八咫烏の後部座席より降り立った逢真は肩を竦めて苦笑しつつも、次の彼の一挙動を見逃さぬよう油断なく見据える。
「悪いな、弱みばっかり狙ってよ」
「仔細無し。それを承知の上、貴様ら全員を倒すつもりで吾は今此処に居るのだ」
やれやれ、とんだ負けず嫌いだ。
そう内心で独り言ちながら、逢真はその表情からほんの僅かに笑みを消す。
「あの偽物同様、てめぇも部品一つ残さずに腐食させてやる。安心して消えちまえ」
成功
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黒鋼・ひらり
◎
連戦上等…(『武器庫』確認しつつ)『残弾』もまだ十分…
それに量産型にも言ったけど私は『機械(あんたら)』の天敵
九竜神火罩? あんたが後生大事に護ってるガラクタも例外じゃないのよ…この磁力は!
『武器庫』展開、磁力開放…『武器庫』及び周囲の磁性体射出によるオールレンジ攻撃でHLVを狙う素振りを見せ牽制し磁力跳躍で突撃
乾坤圏…ご自慢の命中率も『腕を向けられれば』の話
磁力で機械の体…向けようとした腕そのものに干渉すれば狙いもぶれる
更に磁場で弾き、転送した磁性体で迎撃・防御すればそうそう当たらない
UCを凌げばこちらの番…鋼鉄板や鎖を組合せ砲身構成…荷電粒子砲(とっておき)でHLV諸共ぶっ潰したげる…!
トリテレイア・ゼロナイン
ロシナンテⅣに搭乗
大量虐殺の使命、騎士として阻ませて頂きます、哪吒
九竜神火罩に対し
Ⅳの背部コンテナから出した手榴弾を山なりに投擲
同時にサブアームのライフルの乱れ撃ちスナイパー射撃
曲線と直線
二つのアプローチで対処を要求
飛来鉄拳の攻勢緩め、盾と剣にて捌き
やはり弾いた程度では再度飛来しますか
ですが、こちらの手番です!
電脳剣のUC起動
バリアと重装甲(盾受け)
それを高速で動かす強靭な脚部とブースター
防御と速度の極北求めた追加装備をⅣに装着
妖精授けし甲冑
バーディング(馬の鎧)と名付けましょうか
さあ、騎馬突撃と参りましょう!
質量と強度で鉄拳弾き飛ばし
九竜神火罩へ一直線
止めに入った哪吒を単純な突撃で轢き潰し
●Wild Flowers
「哪吒よ。大量虐殺という貴方の使命は騎士として阻ませて頂きます」
「……それが貴様らの使命という訳か」
自身の姿を模す改造キャバリア“ロシナンテⅣ”を駆るトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)。そして、哪吒と対峙する巨大な白騎士、その肩の上には黒いスーツを身に纏う一人の少女、黒鋼・ひらり(鐵の彗星・f18062)が伴っていた。
「あんたの使命なんて知らないわよ。やる事は変わらない」
ひらりのその言葉を合図としたかの如く、状況は動き出す。
(……連戦が何だってのよ。上等じゃない、残弾もまだ十分残ってる……!)
ロシナンテの肩上より、自身の『武器庫』の中身を確認したひらり。
先の戦いを経て尚使い切ることなく残存させていた在庫を出し惜しみなく取り出していく。ロシナンテを基点に、その周囲を護衛するかの如く展開される無数の剣、斧槍、鉄球、鉄板――ひらりの異能によって、磁性体の弾丸となり恐るべき弾幕を生み出す金属塊たちが一斉展開される。
「量産型にも言ったけど私は『機械(あんたら)』の天敵よ。
九竜神火罩だっけ? あんたが後生大事に護ってるガラクタも例外じゃないの」
「……私は例外という事で宜しいのですよね」
トリテレイアからの冗句めかした問いには答えず、ひらりは展開させた磁性体の弾丸を撃ち出した。続いて、ロシナンテの巨体も駆動を開始する。その巨大な腕が、背のコンテナから射出されるキャバリアサイズのハンドグレネードを掴み取る。そして折りたたまれていたサブアームが展開される。哪吒の六臂に対抗するかの如くの四臂。新たに姿を表す一対の巨腕にはそれぞれキャバリア用の巨大なライフルを携えている。投げ付けられるグレネード、乱射されるライフル弾、そしてひらりからの磁性体の一斉射撃。それらが狙うのはいずれも哪吒ではなく、その背後―― 九竜神火罩を収めるHLVだった。
「……貴様たちの、好きにさせるものかッ!!」
風火輪を最大出力にて燃焼させ、哪吒が再び空に舞う。
その六臂が目まぐるしく動き回り、それぞれが携える得物が唸りを上げて風を裂く。ライフル弾を、磁性体を、撃ち落とす。グレネードを払い除け、巻き起こる爆風も風車の如く高速で回転させた槍の柄が盾となり、その威力を抑え込む。
「……お見事、ですが! 我々の本命はあくまで貴方だ」
「そういう事。幾ら腕がいっぱいあっても、そろそろ処理能力の限界でしょ?」
ロシナンテの肩部装甲を蹴りつけ、小柄な体躯が空に跳ぶ。
磁力の反発によって加速し、その身をそのまま弾丸と変えて突っ込むひらり。
未だ磁性体の弾丸の嵐を脅威的な速度で撃ち落とし、捌き続ける哪吒が彼女に気付いたときにはもう遅い。
「……なんの……! ムゥッ!?」
咄嗟にひらり目掛けて突き出そうとした拳が大きく逸れる。
まるで見えない何かに弾かれるかの如く。
直後、逸らされた腕が肘から切り離され、爆音と共に飛翔する。
「構わぬ…… 打ち砕け、乾坤圏よ!」
RXS-A乾坤圏。脅威的な命中精度と速度、破壊力を併せ持つ必殺兵器だ。
しかし、ひらりの操る磁力が支配するのは、これまで撃ち続けた磁性体のみに限らない。それは金属製のボディを持つ哪吒も例外ではなかった。磁力の反発によって強制的に狙いを狂わされた乾坤圏は、大きくコースを外して飛翔する。
「ちっ
……!!」
すぐ傍を掠めるように通り過ぎた鉄拳。
磁力にて狙いを狂わせねば、それはひらりの顔面をスイカの如く粉砕していた事だろう。衝撃が擦過したのみで頬が裂けるほどの風圧、流れ出る血をそれでも気にせずひらりが吼える。
「……コイツはお代わりよ!」
超至近。磁力操作の権能を最も強力に発揮できる間合いから、在庫一掃セール。
武器庫の中身を文字通り、ありったけに解き放つ。
「…………!!」
先の弾幕に、追加の砲弾が数多加わる。
四方八方全方位を取り囲んで飛来する弾丸たちが、哪吒の全身を乱打していく。
「……ぬ、ぅぅぅぅッ
……!!」
乱れ飛ぶ無数の弾丸。
残る腕が備える反射速度と技芸にて巧みに受け流しつつ、哪吒が繰り出す乾坤圏。
それはひらりを追い越し、その後方のロシナンテへと襲いかかる。
「……防御に余裕を割くぶん、攻めの調子は落ち着きましたね!」
トリテレイア自身を模した機体構成故に、携行武具も自身のそれをスケールアップさせたもの。ロシナンテへと襲いかかる鉄拳は、その何れもが大盾と長剣によって弾き、捌かれていく。払いのけられて尚、鉄拳たちは執拗に虚空を踊り、ロシナンテを狙わんとするのだが。
「……やはり弾いた程度では何度でも襲ってきますか。
ですが、攻守を変わって頂きましょう。こちらの手番です!」
ロシナンテの傍らに出現する妖精―― 否、妖精を象ったロボットだ。
ロシナンテの巨体にとっての妖精サイズという事は、だいたい普通の人間のサイズぐらい。それが彼の周囲を飛び回りながら、長閑な雰囲気とは裏腹に戦場の様相を一瞬の内に分析し、現状においての最善のカスタマイズをリアルタイムに行っていく。
「……参りますッ!!」
ロシナンテが、地響きと共にその巨体を進ませる。
その最中、白い装甲が『妖精の導き』により、その外装を変化させる。
巨体を支える下肢はより力強く、頑強に、重厚に肥大化していく。その背のコンテナが内側から押し退けられるようにパージされ、入れ替わりのように増設される大型のブースターが唸りを上げる。吐き出される竜の息吹の如きバーニアが大気を焼き、ロシナンテの巨体を弾丸のような勢いで突き進ませた。
「……貴様、その姿は
……!!」
「……妖精授けし甲冑、馬の鎧……“バーディング”とでも名付けましょうか。
さあ、騎馬突撃と参りましょう!」
尚も追いすがり、ロシナンテを殴りつけようとする鉄拳たちのいずれもが、装甲に触れる事さえ叶わず弾き返される。突進するロシナンテを防護するように張り巡らされたバリアフィールドが、生中な攻撃を通す事はない。そしてそれは、防御のみならず、攻撃においても意味を為す。
「……っ、やらせる、ものか
……!!」
ひらりからの磁性体の雨を振り切り、哪吒が全速力で走る。
九竜神火罩目掛けて真っ向より突撃するロシナンテの前に立ちふさがったその身体。しかし鎧袖一触。頑強な装甲に包まれたその質量、そしてその身に纏うバリアによって哪吒は押し潰され――
「……ぐおおおおおおッ
!!!!!」
……否。
その六臂を開いた哪吒は、真正面よりその突撃を受け止める。その全身を軋ませながら。踏ん張ったその足元、最大出力にて稼働する風火輪が爆炎を噴き上げ、哪吒はロシナンテの全速力での突撃によって生じる衝撃を軽減しようとするも、深々と大地を抉りながら数十メートルも後退した挙げ句、哪吒の全身はその背中から勢い良くHLVに激突した。
「……っぐ、ゥゥゥゥゥ
……!!」
突進の勢いを乗せられた哪吒自身を叩きつけられ、無惨に陥没するHLVの外壁。
辛うじてその中身、九竜神火罩が無事である事を三面の視野を活かして確認するなり、哪吒は吼えた。悲鳴を上げる六臂を強引に動かし、受け止めたロシナンテの巨体を投げ飛ばす。
「…………なんたる高出力、なんたる剛性
……!!」
吹き飛ばしたその巨体を追うように地を蹴り加速する哪吒が迫る。
しかしトリテレイアに焦りはなかった。
「然し、貴方と違い……我々は一人ではない!
だからこそ、孤独な貴方では私達を止められはしません」
その言葉とほぼ同時、ロシナンテの巨体に纏わり付いていた追加外装がパージされ、まるで散弾めいた勢いで哪吒目掛けて撃ち出される。それはまるで、先の戦いにおいて陸戦量産型哪吒の繰り出した装甲炸裂弾の如く。
「……ッ、……まだだッ
……!!」
自身を打ち据える追加装甲の弾丸に打たれながらも、哪吒は倒れず踏みとどまった。しかし、そんな僅か数秒の攻防の間に彼を絡め取る次の試練。磁力の反発で散らばる無数の残骸の間を縫うように跳び続け、ひらりが両者に追いついたのだ。
「……つれないわね、私のことを忘れないでほしいんだけど」
そう告げるひらりの放つ磁力が、戦場に散らばった残骸たちを浮かび上がらせる。
それはトリテレイアのパージし弾丸として放ったロシナンテの追加装甲も例外ではなく。
「トリテレイア」
浮かび上がる無数の磁性体たちが虚空で寄り集まり、一つの形を織り成した。
それは、巨大な筒。…… 否、砲身だ。
「さっきの答えだけど……あんたはともかく、こっちの方は例外じゃないわ。
悪いけどちょっと借りたわ。……ぶっぱなすわよ!」
寄り集められた無数の鋼材が作り上げた巨大砲身。
ひらりの高らかに掲げた右手の指が鳴らした音を合図に、その駆動を急速に活発化させる。その砲腔に蓄えられた濃密な磁力が帯電した金属粒子を収束させ、よりその運動を激しく励起する。間に合せの砲身が、悲鳴を上げる。一射限りの、即席荷電粒子砲が火を。……否、光を吐いた。
「……ウオオオオオオオオオオオオオオッ
!!!!!」
真正面から叩きつけられる荷電粒子の奔流。
凄まじい熱量を浴びせられた哪吒の全身が彼方此方から火花を散らし、黒煙を噴き上げる。彼を通り過ぎた粒子の輝きが、遥か後方の彼方で爆ぜて大爆発を引き起こす。放たれた光条の形に丸く抉られ、焼け焦げた大地の真ん中で、満身創痍の哪吒はそれでもまだ、辛うじて倒れる事なく立ち続けている。
「ふうん、結構根性あるじゃない。機械の癖に」
荷電粒子の洗礼を放ち終え、自壊し崩れ落ちていく砲身。
解けて散らばっていく屑鉄の雨から視線を逸らし、ひらりは緩く肩を竦める。
「……それでも、倒さねばならぬ敵です。
どれだけの使命を抱いていようとも、こうしてぶつかり合う限りには」
姿勢制御し、再び立ち上がるロシナンテが大盾と剣を身構える。
その足元で、ひらりも右の機械義手を革手袋ごとキツく、軋むほどに握り締めた。
「もちろんよ。……ぶっ潰してやるんだから」
成功
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デブラ・ヘックシュバイン
かーっ、あっつい!
『即時撤退を強く推奨』
まだまだこれからが面白い所じゃないの!
いよいよオリジナルのお出ましなんすからね!
とは言え、まともに当たって勝てる相手じゃねェ。
オンボロ戦車らしく、こすいやり方で行くっすよー?
狙うは九竜神火罩を収めたHLV!
打ち上げっつーのは、繊細なモンだって聞きましたっす。
オブリビオンのそれだから、人のよりだいぶ頑丈だろうが……
ちょっとの破片だろうと、支障はあるはず!
つまり敵への嫌がらせには最適!
榴弾装填、射程ギリギリ間接照準! っ撃ェ! 次弾装填!
撃っちゃ逃げ、逃げちゃ撃ち……チクチクチクチク、どうだオラァ!
あついぜあついぜー、あつくてイくぜェ……上着脱いじゃおっと♪
ハロ・シエラ
こちらが本物、と言う訳ですか。
一体ですが、あの大量の量産型以上の威圧感……こちらも相応の覚悟をしなければなりませんね。
ですが、敵も私の様な小さな的は狙い辛いかも知れません。
敵も遠距離から妨害してくるでしょうが、その攻撃を【スライディング】などでかいくぐりながら【ダッシュ】で九竜神火罩に向かえばそのまま無視は出来ないでしょう。
敵が直接攻撃の為に近付いて来た所であのハサミを【見切り】、【ジャンプ】で回避します。
更にハサミを足掛かりにジャンプしユーべルコードを発動。
目いっぱい大きくしたレイピアによって、例えキャバリアであろうとも【切断】して見せます!
その一撃に全てをかけたら、後はもうないですけどね。
リーオ・ヘクスマキナ
◎
さぁさ、航空戦力のご到着だよッ!
……の、前に。ちょっと小細工させてもらおうかなー、っと
周囲の物体を遮蔽に、ギリギリまで接近
気づかれようが関係なしに、ザ・デスペラードの榴弾を発射
狙うはHLVの命、スラスター部分!
撃ち落とそうが盾になろうが、初手を潰して対応を迫られるでしょ!?
対応している間に赤頭巾さんはUCで【大白鳥】に変身
超音速機を圧倒的に上回る速度で飛び回って距離を取りつつ、高空から羽毛型誘導弾や艦載砲をHLVに向けて雨霰と連射
地力の差を、敵の弱点を突き続ける事で埋める
適当なタイミング兵装を全弾発射。哪吒の対処能力を飽和させつつ全速力で接近!
嘴型艦首衝角でトドメのラムアタックだァッ!
●斜陽のとき
「かーっ、あっついあっついあっついわー!」
『即時撤退を強く推奨』
22式特殊強化装甲車『赤狼』。その狭い操縦席にて、汗だくのデブラ・ヘックシュバイン(捨てがまれず・f03111)は悶えていた。そんな彼女に対し、赤狼を制御するAIは先程から頻りにアラートを鳴らし、撤退するべきと進言し続けている。
「まだまだこれからが面白い所じゃないの。オリジナルのお出ましなんすから!」
『そんな調子の良い事を言ってもどうせすぐに泣きを見る。今こそ引き際』
「うっせえわ!」
そんな車内のやり取りを他所に、赤狼の後部には二人の猟兵が装甲の縁に掴まる形で同乗していた。重火力を誇る哪吒に生身の単独で接近するよりは、車体を盾に出来るぶんマシだろうという判断だ。
「……まだこれだけ離れているというのに、あの一機から感じるプレッシャー。
先程の大量の量産型以上です。相応の覚悟をせねば」
つい先程まで無数の陸戦量産型哪吒たちと交戦していたハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、未だ生々しい記憶を振り返りながら、少しずつ近付いていくHLV発射台の方角を睨む。
「大丈夫、航空戦力のアテはあるよ。
まあ、その前に多少小細工をさせてもらおうかなー、と思ってるんだけど」
ハロの隣で赤狼にしがみつくリーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)。その傍らには、彼を追うように並走する邪神“赤頭巾さん”を伴い、もう片手では吹き飛ばされぬように自分の帽子を押さえつけながら、荒れた路面を爆走する赤狼の揺れをなんとか堪える。
『もちろん、自分らがまともに当たって勝てる相手じゃねェ。
オンボロ戦車らしく、狡いやり方で行くっすよー?』
両者のやり取りを聞いていたか、車内からデブラが告げたその言葉。
ハロとリーオは顔を見合わせ頷いた。
「先程まではあちらの方が多人数でしたが、今度はこちらの番です」
「攻撃衛星を使わせる訳には行かないし、やれる事はやってかなくっちゃねー」
荒れ果てた建業の都を疾走する一台のくすんだ赤色の戦車。
それを三面と六眼にて見据える哪吒。既にその身には決して軽くない無数の傷が刻まれている。満身創痍。しかし、一対の双剣“RX金蛟剪”を携えるその姿は未だ力強さを保持し続けていた。
「来たか、猟兵ども」
いざ、斬りかかるべく足元の風火輪より噴き上がる焔を纏い、飛び立とうとする哪吒の眼前で、戦車の後部に掴まっていた二人の猟兵が飛び降り、それぞれ思い思いの方向へと分かれて走り出す。それを眼にした哪吒の纏う威圧感の中に僅かに混じる苛立たしげな気配。三方向に分かれた猟兵たちは、それぞれが哪吒ではなくHLVへと向かっていた。
「……ッ……! ……おのれッ!」
これがもし一対一の戦いであったならば――
一瞬、己の中に過ぎる惰弱な感慨を即座に斬り捨て、哪吒は跳ぶ。
唯一最後にして最強の、自律型オブリビオンマシンが戦場に吼える。
『……ずばり狙いはHLV!』
当然であるが、三人の猟兵たちの見解は同一であった。
哪吒はどうしても九竜神火罩を守護せねばならぬのだから。
「打ち上げっつーのは、繊細な作業だって聞きましたっす。
オブリビオンのそれは、フツーのよりだいぶ頑丈だろうが……。
攻め続ければ壊せないハズないし! たっぷり嫌がらせしてやるっすよ!」
対面していれば哪吒でも思わず加速して殴りつけに行きたくなるような表情を浮かべ、存分にイキるデブラ。そんな彼女の嫌がらせ精神をたっぷりに込めて、赤狼の主砲が立て続けに見舞う砲弾。そのいずれもが先の交戦によって損傷させられたHLVの外殻を正確に狙うもの。
「……やらせはせぬッ!!」
まさしく電光石火。
そう呼ぶべき凄まじい加速と共に、焔を纏った哪吒が射線上に割り込むように躍り出る。振るう双剣が唸りを上げ、放たれた砲弾を尽く虚空にて切り裂いた。
『…………ははははは! かかったなアホがァー!』
「……何ィッ!?」
切り裂かれた砲弾が次々と爆ぜる。デブラの使った砲弾は榴弾。火薬の炸裂と共に破片を撒き散らす砲弾が爆ぜ、次々と巻き起こる爆風。哪吒自身の纏う焔を引き裂き、その装甲を容赦なく飛び散る破片が引き裂いていく。
「……だが仔細無しッ!」
即断じて構わず赤狼を斬らんと踏み出しかけた彼の眼前を横切り、飛んでいく新たな榴弾。HLV目掛けてリーオの放ったそれを再度切り裂いた金の双剣が姿を変えた。
「……やらせんと、言っている!!」
哪吒の手を離れた金の双剣が、浮かぶ虚空でその形を変える。
先に切り裂いたデブラと、そして今斬ったリーオの榴弾。
それに対抗すべく双剣は新たな姿に進化していく。
「……が、ガトリング砲っすか!?」
「なるほど、弾幕で対処するつもりか!」
榴弾砲に対しての天敵―― それは、無尽蔵の弾丸を圧倒的な回転数にて撃ち出す二門の大型兵器であった。降り注ぐ砲弾に対し、虚空を踊る巨大なガトリング砲は轟音と共に雨霰と浴びせかける対空砲火を見舞う。一瞬にして吐き散らされる無数の空薬莢が大地に転がり、虚空の砲弾はいずれも目標に届くことなく虚空で爆ぜた。
「吾を甘く見るなよ、猟兵」
後方―― 無数の榴弾が虚空で爆ぜ、轟音と共に空を焔の色に染め上げる。
照り付ける爆炎の光にその身を染めながら、哪吒は迫る敵を見据える。その全身に搭載された兵器、あらゆる機能。最強のオブリビオンマシン『哪吒』は今このとき漸くその性能の全てを発揮しようとしていた。
「甘く見てなどいません!」
そんな叫びと共にハロが駆ける。
デブラとリーオが気を引くその間に、彼女はHLVから狙いを変えて哪吒自身を目指していたのだ。哪吒の意識と処理能力は度重なる戦闘によって多大な負荷を抱えている。遮蔽物に身を潜めつつ接近に専念し続けたならば、接近そのものは決して不可能ではない。
「……確かめてやろう!!」
ハロを迎え撃つべく、空を舞う金蛟剪。否、巨大なガトリング砲を備える二機のオブリビオンマシンがその正面に立ちはだかった。
「……くっ!」
その回転砲身が低い唸りと共に無数の弾丸を吐き出す。その一瞬の予備動作は、しかしデブラとリーオにとっては反撃をする絶好のチャンスである。
「……ふっ飛ばしてやるっす!」
「やらせないよ!」
双方から浴びせられた砲撃がガトリング砲の側面を叩き、その衝撃に大きくバランスを崩した砲台を―― その隙を突く形で踏み込んだハロが踏みつけ、それを足場に更に力強く跳躍する。
「はぁぁぁぁぁぁッ
!!!!!」
裂帛の気合と共に、空高く飛び上がったハロが大上段に振り上げるレイピアの刀身に纏わり付いた強烈なエネルギーの流れ。ありったけの魔力、生命力を練り上げて燃やした輝きそのものが、天を衝かんばかりの巨大な刀身を形成し――
「ちぇすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
!!!!」
「……むうん!!」
飛び降りながら振り下ろした渾身の一刀。
咄嗟にその身を護るべく哪吒の翳した火尖槍のその柄を容易く両断し。
それでも尚押し止められない太刀筋の凄まじさは、哪吒の三面―― その右側面を削ぎ飛ばし、切り飛ばされた破片を虚空にて焼き散らす。尚も止まらぬその勢いは、彼の肩から胴に掛けてを袈裟に斬り裂き、深く抉るような傷痕を刻むに至る。
「……ッ、くう
……!!」
柄の半ばから先を切断された槍を投げ捨てた手が、潰された一面が焼け焦げ泡立つ傷口を押さえ込む。その強烈なダメージに哪吒は堪らずに蹈鞴を踏んだ。その眼前で全ての力を使い果たして崩れ落ちるハロを、戦場を疾走する赤衣の異形―― 邪神、赤頭巾さんが掻っ攫うように抱え、素速く哪吒から距離を取る。
「……うう、ガス欠です……」
「…………だ、大丈夫! ばっちりダメージが入ったから!
よし、今のうちだ。……頼むよ赤頭巾さん!」
エネルギーを使い果たしたハロを、リーオに託して赤頭巾さんは再び地を蹴った。
その眼前では、デブラの戦車がありったけの榴弾を戦車目掛けて哪吒に目掛けて乱射して気を引いてくれている。
「……今のうちっすよ! おらおらっ! あついぜあついぜェー!!」
あの勢いで乱射を続けていれば、彼女が戦車に積み込んできた砲弾を使い果たすまで、それほどの時間はかからないだろうが、それでも彼女が稼いでくれた時間は赤頭巾さんが準備を終えるには十分な暇であった。
「…………っべー、そろそろタマがやべーんすけど」
『自決用に一発残しておくべき』
怒涛の連射を受け、あちこちの焼け焦げ融解した装甲を引きずりながらも、哪吒は倒れずに立っていた。その全身あちこちからは今も流血の如く激しく火花が散り、或いはオイルが流れ出す。人間であれば既に致命傷を通り越し、今立ち続けている事が奇跡と呼ばれるであろうほどの有様だ。そんな彼がじりじりと距離を詰め、赤狼へと襲いかかろうとしていた――――― そのときである。
「……さぁさ、待たせたね! 航空戦力のご到着だよッ!!」
リーオの声が戦場に響き渡り―― 哪吒の頭上に浮かぶ巨大な影。
白い翼を広げたそのフォルムは、さながら白鳥。
邪神、赤頭巾さん。彼女がその身を変じて生み出した、重装甲型高速戦艦。
それが哪吒を見下ろしている。
「…………新手か!!」
哪吒が身構えるよりも疾く、白鳥は動き出した。
影や音をも置き去りにする、巨体に見合わぬ機動性が哪吒の放つ乾坤圏を。
或いはその装甲から放たれる炸裂弾を軽やかに擦り抜け――
「いいのかい、そんなに手荒くしちゃって。こう見えて、俺の白鳥は凶暴だよ」
リーオの言葉を証明するように、白鳥の羽撃きと共に降り落ちる無数の白い羽根。
否、それらひとつひとつは全てが誘導ミサイルなのだ。無数に噴煙の尾を引きながら降り注ぐミサイルの雨が、着弾した大地ごと哪吒を吹き飛ばす。
「……ガァァァァァァァァァッ
!!!!」
叩きつけられた大地を抉り、転がるように倒れ込む彼に尚も執拗に浴びせかけられる艦載砲。機銃弾、榴弾砲、織り交ぜられる各種砲撃が哪吒の装甲を容赦なく抉り、千切り取っていった。
「……………っ、まだだ
……!!」
悠々と飛び去ろうとする白鳥を追うように、哪吒はクレーター状に陥没した大地より立ち上がる。白鳥が向かう先―― 其処には彼の守護するべきHLVが存在していたのだ。
「やらせん……ッ!!」
うわ言の如く繰り返しながら、風火輪を最大稼働。
限界を越えて酷使されるフローターユニットが上げる悲鳴を無視して、哪吒は地上を駆ける。飛行戦艦の速度を追い越し、その前方に回り込んだ哪吒を待ち受けていたものは、白鳥の羽撃きと共に見舞われる無数の砲撃。
「バカな……! 何故、吾が……こうまで容易く圧倒されているのだ!!」
そして――全速力で飛び込んでくる巨大白鳥の嘴。否、嘴を象る艦首衝角。中世の海戦の再現宜しく、打ち付けられるラムの衝撃が哪吒を今一度激しく打ち据えた。
「……おお、おお。すっげえなアレ。
ああ、くそあっちい。……もう上着脱いじゃうよー?」
自律運転にて哪吒より距離を取る赤狼。疲弊したハロを安全地帯へ輸送しつつ、使い切った砲弾を補充するべく一度引き返すその車体上方にて、双眼鏡片手に汗だくの上着を脱ぎ捨てて、デブラが歓声を漏らす。そのすぐ後ろで、リーオとハロも巨大白鳥によるラムアタックの光景を見遣っていた。哪吒を吹き飛ばし、そのまま旋回。相棒の元へと戻ろうと飛んでくる白鳥、否―― 赤頭巾さんを待ちながら、リーオはデブラの方を見ないようにした。……そっちの方を向いていたら赤頭巾さんが、きっと不機嫌になる。
「……だいじょうぶ、俺は赤頭巾さんしか見てない。見てないからね……」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
桜田・鳥獣戯画
アルフレッド(f03702)◎
貴様が哪吒か! 私は名もなき増援だ、つまり全力でゆくしか策がない!
全力でゆくぞ大巨神!!
先制攻撃は激痛耐性などで凌ぐつもりだが、【ラストスタンド】の使用が間に合わなければ厳しいかもしれ……かばう、だと!? アルフレッド、貴様という奴は!!
UCを使用し無敵になり衛星の方へ投擲される(←?)
哪吒本体は任せた!!
無敵状態を解除、アルフレッドの火炎瓶『モトロフ』と『蒼鱏の炎貨』を九竜神火罩目掛けて投げ込み、あとはもう殴るなどして衛星を攻撃、哪吒の気を逸らす
……無茶にも程があるぞアルフレッド!
結局貴様痛いのではないか!痛いの前提の作戦を組むな馬鹿者!!
心配するであろうが!
アルフレッド・モトロ
よし、作戦はこうだ姉御(f09037)
姉御が俺の【モトロフ】と【蒼鱏の炎貨】を持って
九竜なんとかかんとかにダッと行ってドンッてやってバーン!だ!
哪吒の方は俺に任せろ!派手に花火ブチ上げてやるよ!
UCは俺が全部【かばう】
急所に当たらないよう【盾受け】しつつ、【捨て身】でワザと食われに行くぞ
なに、俺はブレイズキャリバーだから腕の一本や二本平気だ!
痛み?【気合】で我慢する!
姉御を九竜神火罩の方へ【怪力】で【投擲】
そっちのヤバそうな衛星は頼むぜ姉御!
後は隙を見てUCで【カウンター】を決める
俺の一部を食ったのが運の尽きだ顔面三連チャン野郎!
食われた部位も姉御に渡した【モトロフ】の分も一気に【焼却】する!
●アドレナリン・ハイ
「……姉御、作戦は先に話した通りだ。準備はいいか!」
「おう! 擬音が多くてイマイチ分かりにくかったが、まあ何とかなるだろう」
「わかってんのか? まあいいや、コイツを持っときな」
アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)、そして桜田・鳥獣戯画(デスメンタル・f09037)のふたりが並び立ち、眼前の哪吒を見据える。既にその身はボロボロなれども、未だ秘めたる超兵器の数々が誇る殺傷力は決して侮れない。寧ろ、手負いの猛獣ほど恐ろしいものはないだろう。相棒より放られた琥珀色の液体で満たされた酒瓶を無造作にキャッチしつつ、鳥獣戯画は次第に近付く哪吒の姿を隻眼にて睨み、不敵に笑う。
「貴様が哪吒か! いい面構えだな! 顔が一つ欠けているが、私も片目だ!
私は逃げも隠れもせん! 堂々と正面から掛かってこい、全力勝負だ!」
「……良かろう、名も知らぬ増援どもよ。ならば行かせてもらうッ!」
哪吒に向けて人差し指を突きつけ、威勢良く吼える鳥獣戯画。
その挑戦に応えるが如く、哪吒は黄金色の双刀を振りかざして地を蹴った。
「――……来るが良いッ!!」
満身創痍の身とは思えぬ、超高速の突進。
それを真っ向より受け止めるべく、鳥獣戯画は両腕を広げて待ち構えるが。
(……いかん、思ったよりも速いぞあいつ。これでは防御が間に合わな……)
想像以上の超高速。防御のためのユーベルコードを行使しようとするよりも疾く、二本の剣が襲いかかる。然し、そんな両者の交錯の瞬間、哪吒の疾走する軌道上に突如として割り込む影。
「言ったろ姉御、哪吒の相手はこの俺に任せとけってなァ!
派手な花火を食らわしてやるぜ!!」
「……アルフレッドぉ!!」
振るわれる二本の剣の前に立ちはだかったアルフレッド。
迸る斬撃は彼の身体を容赦なく切り裂く。それでも、辛うじて即死圏内の急所を躱して見せたのはアルフレッドの技量あってのものだ。避け切れず逃げ遅れた片腕が虚空を舞い、血の帯を長く引いては転がり落ちる。
「……ぐぉぉぉぉ、超痛ぇ!! ……だが、我慢できなくはねえな!」
「まったく貴様というヤツは! 私をかばって深手を負うとは!
……だが、助かったぞ! さあ、次だ!!」
言うが速いか、鳥獣戯画は発動しそこねたユーベルコードを改めて発動し直した。
その名も“ラストスタンド”。その全身を無敵の城塞よろしく強固に変質させた今の彼女は生半な攻撃を寄せ付けはしない。ただ一つ、発動中は全く身動きを取ることが出来ないという欠点があるのだが。
「あっ、しまった! 焦って変なポーズで固まってしまったぞ!」
「言ってる場合か!! やるぞ姉御!」
アルフレッドは激痛を堪えながら、残った片腕で変なポーズの鳥獣戯画を無理矢理に持ち上げ振り回す。そのまま大きく勢いを付けた彼女の身体を、ハンマー投げ宜しく渾身の力で投げ飛ばした。
「……おらァァァァァッ
!!!!」
「うおおおおおおッ
!!!!」
アルフレッドの怪力によって投げ飛ばされ、巨大な弾丸と化した鳥獣戯画。
それは見る見る内に加速し勢いをつけ、哪吒へと真っ向から襲いかかり――
「…………ふむ」
「ありゃ」
それはそのまま、哪吒が僅かに上体を捩って逸らす一動作にて回避される。
だが、問題はない。その僅かな隙にアルフレッドは大きく距離を詰め、哪吒へと殴りかかっていた。
「腕を捨てて守った相手を攻撃に使うフリをして、逃した。そんなところか」
「読みがもうひとつ足りねえな、哪吒よ!」
大振りの拳をまたも身を逸して躱す哪吒。その拍子に、彼の二面の片割れはその後方―― 先にアルフレッドに投げ付けられ、自身が躱した鳥獣戯画が、哪吒が本来護るべきHLVに轟音と共に衝突する光景を目撃する。
「……き、貴様らァァァァァッ
!!!!!」
哪吒の装甲が爆ぜ、飛び出す炸裂弾。
無数に飛び散るその弾丸は、しかし今の鳥獣戯画にダメージを与える事はない。
ただ闇雲に撃つ攻撃は、寧ろ防衛対象たるロケットの外殻を無惨に破壊していく。
「どうした! 此方は痛くも痒くもないぞ、哪吒よ!」
「……おのれッ!!」
歯噛みする哪吒―― そんな彼が余所見をした事を咎めるように、足元に広がる鮮血が。アルフレッドの流した血液が勢い良く燃え上がる。それは哪吒を、そして相対するアルフレッドの両者を包囲するように。
「言っただろう、哪吒。お前の相手は俺がするってなァ!」
「貴様に、関わっている暇などないッ!!」
らしくもなく、慌てた様子で双剣を走らせる哪吒。
その斬撃に先んじて、アルフレッドの爪先が蹴り上げたもの。
切断された自身の片腕が虚空で回転しながら、一際激しく燃え上がる。
「……生憎だったな、顔面二連チャン野郎! 俺は燃料に困らねえんだよ!」
哪吒を包み込む爆炎―― そのすさまじい火力が彼の身体を吹き飛ばし、その遙か先―― 打ち上げ台の外壁にまで勢い良く叩きつける。衝撃と共に、半身をその鉄柱に埋め込まれた哪吒が視線を持ち上げれば、その眼前には投げ付けられた酒瓶…… 否、アルフレッド特製の燃料をたっぷりと詰め込まれた火炎瓶《モロトフカクテル》が飛び込んできた。
「……なッ
……!!」
半壊したロケットと、その傍らで爆炎に包まれる哪吒。
それを遠目に、アルフレッドの元へと駆け戻ってきた鳥獣戯画は、先の自爆技で哪吒共々吹き飛んだアルフレッドの身体を引きずり起こせば、そのまま襟首を掴んで容赦なく揺さぶり回した。
「……馬鹿者! 無茶にも程があるぞアルフレッド!!
もし貴様アレだぞ、アレだ……。死んでしまったらどうするのだ!!」
「い、いかん姉御!……寧ろこれがトドメになりそうだ……!」
全身を苛む激痛に加え、更にそれを追い打つ力強いシェイク。
堪らず呻くアルフレッドの様子に、鳥獣戯画はひとまずは安堵する。
「……結局貴様、痛いのではないか! 痛いの前提で作戦を組むな馬鹿者!」
「す、すまねえってば…… だから、揺さぶるのやめてくれ姉御」
決死の覚悟による攻撃。その代償はアルフレッドにとって決して軽くはないものだった。しかし、そんな彼にとって、其処に続く鳥獣戯画の言葉はある意味ではご褒美だったかも知れない。
「…………心配、するであろうが」
そして、言葉の後に再開される地獄の揺さぶり。
たまらずアルフレッドは再び悶絶するのだ。
「だからアルフレッドよ! 私を置いて勝手に死ぬなァァァァァァ!!」
「ぐわああああああああ
!!!!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霧島・絶奈
◎
◆心情
愉しみましょう、この『逢瀬』を
◆行動
【Evolution】に搭乗し戦闘
敵の先制攻撃対策に【罠使い】として持ち込んだ「魔法で敵を識別するサーモバリック爆薬」を利用
【衝撃波】にて『九竜神火罩』に向けて投射する事で敵のユーベルコードを防衛の為に使用させます
序に敵の接近を受けて起爆しますので多少のダメージにもなるでしょう
<真の姿を開放>し『二つの三日月』を召喚
私自身は【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
二つの三日月が召喚する「小さな二つの三日月」と併せ、【集団戦術】を駆使し敵を翻弄
例えば『哪吒』が私を狙うならば二つの三日月がロケットを、逆ならば私がロケットを攻撃します
そうする事で『哪吒』の行動を抑制
其の隙に仕留めましょう
攻撃出来るなら適度にロケットにも攻撃しておきますが、『哪吒』撃破前に破壊しない様には注意しておきます
飽く迄ロケットは『哪吒』を縛る枷であり、釣り餌に過ぎないのですから…
負傷は【各種耐性】を【限界突破】する程高めた【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
●昼の月
先の量産型哪吒との交戦から、引き続きキャバリア《Evolution》に搭乗する霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は、自身を包むようにして激しく燃え盛る焔をその内側から引き裂くようにして立ち上がるオリジナルの哪吒を上空より静かに見下ろしていた。
「それだけの傷を負って尚、戦おうとする姿勢は立派ですが……。
だからと言って容赦をする理由にはなりませんね」
Evolutionがその腕から幾つも投射するのは、先の戦闘に於いても猛威を振るったサーモバリック爆薬の雨。無数に降り注ぐ爆薬は、その何れもが哪吒の護るべき九竜神火罩を執拗に狙っている。その爆風が届けば、最早HLVという外殻をほぼ失った攻撃衛星に与える被害は甚大なものとなるだろう。
「…………さあ、守り抜けますか」
試すように、或いは嘲弄するように。声の響きだけは慇懃に柔らかく。
降り注ぐ無数の爆雷を前に、哪吒は咆哮する。それは憤怒とも憎悪とも、己を鼓舞する鬨の声《ウォークライ》ともつかぬ、獣じみた叫び。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ
!!!!!!!」
雄叫びを響かせ、壊れかけの躯体が今一度空を舞う。虚空を飛び交うのは肘より切り離された鉄拳、乾坤圏。更に金色の双剣、金蛟剪がそれに続いて降り注ぐ爆弾を次々と切り裂いていく。火を吐き出す火尖鎗は既に失われ、撃ち落としきれぬ無数の爆風が、立ちはだかる哪吒の身を焼く。哪吒の砕けた装甲が更に爆ぜ散り、その隙間より撃ち出される炸裂弾、金磚は更に迫る爆弾の多くを相殺しながら燃え尽きていった。
「……まだだ、まだだ、まだ終わらぬッ!!」
既に一面欠けては居るが、二面六臂の躯体はまさしく怪物じみた大立ち回りにて、押し寄せる怒涛の爆雷の尽くを切り払う。それはまさしく限界を越えた脅威的な性能であった。だがしかし、その哪吒の比類なき武勇は、今この時においてはそのほぼ全てが、攻撃衛星を防衛する。ただ、その為だけに浪費させられている。
「……驚嘆の業前。しかし惜しむらくは、貴方は鎖に縛られているという事。
鎖に繋がれた狂犬を恐れる理由はありません」
今このときも、無数の爆雷を迎撃し続ける哪吒をどこか憐れむように見遣り、絶奈は嘆息を零す。そして、伏せ気味の眼差しを再び持ち上げたときには、彼女の瞳の色が変わっていた。白と黒が反転した、人ならざるモノの眼が、焔の中で踊り狂う壊れかけの人形を静かに見詰めている。
「……とは言え、ただの爆弾では貴方の遊び相手には役者不足かも知れませんね。
もっと、貴方に相応しいお相手を用意しましょう」
「好きにはさせぬぞ、邪神もどきが」
爆雷の雨を全て斬り伏せた哪吒は、上空のキャバリア目掛けて猛然と襲いかかる。
しかし、それよりも尚一瞬先んじて、絶奈は
『其は宇宙開闢の理、無限の宇宙を抱擁する者。永遠の停滞にして久遠の静謐。
死の根源にして宇宙新生の福音……。顕現せよ』
“二つの三日月”
その名を絶奈が告げると同時、Evolutionの傍らに出現するのは目映い輝きで全身を包まれた一体の巨人。召喚と同時に、絶奈の肉体を強烈な過負荷が蝕むが―― 彼女はそれを表に見せぬよう、噛み殺した。喉奥を迫り上がる血の塊を、溢さぬように噛み締め押し留め、そのまま強引に嚥下する。絶奈の一瞬の苦悶はコクピットの内側に封じ込められたまま、何処にも漏れる事はない。
「…………数が増えようと、構うものか!」
纏めて斬り捨ててやる、そう言わんばかりに双剣を振りかざす哪吒の眼前で、光の巨人が緩やかに身構える。巨人の帯びる全身の輝きが更に強く勢いを増し―― 直後、彼の周囲に無数に生み出される小さな三日月。それは微細にして鋭利な刃と化し、襲いかかる哪吒の一撃を擦り抜けながらその身を容赦なく引き裂いた。
「……っ!?」
星屑の如く、哪吒の破片が幾つも散っては落ちていく。
周囲から襲いかかる三日月の刃を回避しても、そこを狙って光の巨人が振るう輝く拳が哪吒を打ち据える。咄嗟に受け止めた剣が軋み、殺し切れない衝撃が哪吒を上空より大地に激しく撃ち落とす。
「……っが、あ
…………」
叩きつけられた大地を幾度も跳ねて転がって、その末に漸く静止する哪吒は持ち上げた視界の先でEvolutionが攻撃衛星目掛けて再び爆雷を投射しようとする光景を目の当たりにする。機械の肉体の奥で、電脳が軋みを上げる。絶望と、怒りと、そして反骨の精神が一瞬の間に回路を何周も駆け巡る。
「ふざっ……ける、なァァァァァァァァッ
!!!!」
咆哮と共に、更に砕けた装甲が剥離する。
脚部のフロートユニットが、吐き出される爆炎に悲鳴を上げる。
大地を焼き焦がし、抉り吹き飛ばし、空高く弾丸の如く飛び上がった哪吒。
彼は己が守護対象目掛けて降り注ぐ無数の爆雷の前に再び立ちはだかり――
「……なんという速度」
次々と爆ぜては生まれる焔に焼かれ―― 続けて襲いかかる光の巨人、無数の小さな月たちの群れと切り結ぶ。その最中で、時折絶奈に対しても小刻みに牽制を入れて揺さぶりを掛ける。薄氷を踏むようなギリギリの攻防が一合、二合、三合、四合……激突のたびにじりじりと、哪吒の機体の各所が悲鳴を上げ、火花を散らす。回路が爆ぜて、ひとつずつ機能が死んでいく。
「……まさしく、鎖がなければ危うい相手でしたが」
それも此処まで。
絶奈のそんな無情の声が響くと同時に、哪吒の剣は光の巨人を真っ向より両断していた。だが、そのほんの一刹那の暇をついて、Evolutionの繰り出した拳が哪吒の胴へと突き刺さる。装甲を突き破り、内部の重要機関の幾つかを刳り引き裂き焼き潰す。
ごぽ―― 虚のような眼窩より、血涙めいたオイルの筋を垂らしつつ、哪吒は緩やかに失速し、地上へと落ちていく。同時、脚部のフロートユニットが黒煙を噴いた。……限界が近い。否、それはとっくに越えている。
「…………Error…… Error…… Error……」
アラートを譫言のように繰り返しながらも、辛うじて踏みとどまる哪吒の眼前で、斬られたはずの光の巨人が分かたれた肉体を接合し、再び身構える。その周囲に無数に浮かぶ微細な三日月は、まるで何処を斬るのか品定めをしているかの如く、不規則な軌跡を描いて虚空を踊る。
「……キサ、キサマ。……貴様、は。
……此方側に近しい存在に思えるのだが……な……」
既に言語機能も損傷を受けているのだろう。
機械音声にはノイズが走る。見上げた先に浮かぶ飛行キャバリア。
そのコクピットで、女が笑う。
「……それは少々、失礼ではありませんか。
何にせよ、互いに見ているものが違うのです」
相容れる事がない以上、喰らい合うしかありません。
そう、涼やかに告げながら女は嗤う。暗く、静かに、そして獰猛に。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
◎亡国の主を【操縦】
まだ、戦いは続いているか!
……やる事は変わらない!いくぞ、主よ!!
殲禍炎剣を、撃ちあげさせてなるものか!!!
ロケットパンチを竜骨爪で【武器受け】!受け止め【怪力】で押し止め、
【念動力】サーベルユニット4基を九竜神火罩へ射出。
量産型だろうとなかろうと、自分のやる事は!
朧影を付きたて【エネルギー充填】ロケットのエネルギーを吸い上げる!
壊して!壊して!!壊して!!!
壊し尽くすのみだぁああああ!!!!
【晦冥亡主】発動。亡国の主の背中から生えた漆黒の翼で機体とロケットパンチを覆い、霊物質を放出して接近してきた哪吒を寄せ付けない。
オーバーロード:亡国の主と融合。掴み、推力を失った拳に放出していた霊物質を収束、纏わせ【呪詛】塊を作り、翼を開いて九竜神火罩目掛けてその拳を【投擲】
【早業】翼で自身を【吹き飛ばし推力移動】哪吒がそれを止めに入ったら所に、竜骨爪を突き立て怪力で哪吒を【捕縛】しに掛る。
……壊れろ。
漆黒の巨大翼で哪吒を包み込み、内部に霊物質を充満させて【解体】攻撃。
●黄昏に散る
「……まだ、戦いは終わらないのだな」
「すぐに終わる。貴様ら全員、倒した後で九竜神火罩が世界を薙ぎ払うのだ」
ジャイアントキャバリア“亡国の主”。
まるで巨大な獣―― そんな強烈無比な肉体を纏う、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、先に無数の量産型哪吒を蹴散らした時の勢いそのままに、戦場を駆ける。荒々しく大地を踏みしめる巨大な脚は、その足元に転がる残骸や瓦礫を容易に蹴散らし踏み潰し、オリジナルの哪吒が待ち受ける建業の最深部へと到達した。
「ならばやる事は変わらない! 殲禍炎剣、打たせてなるものか!」
向き合うのは一瞬。
オリジナルの哪吒をその視界に捉えるなり、小枝子は亡国の主を全速力で踏み込ませる。ほぼ同時、哪吒の乾坤圏が爆音と共に風を切り裂き唸りを上げる。
「……潰れろ、猟兵よ!!」
真っ向より襲いかかる渾身の鉄拳。
それを受け止めるのは、その身を護るように交差させた巨獣の太く鋭い爪。
重ね束ねれば、それは敵を引き裂く凶器から、八重二十重と重ねた強固な盾へと変わる。轟音と共に激突するその衝撃に、さしもの巨獣も堪らずバランスを崩すが――
「なんの! お前が量産型だろうと、オリジナルだろうと関係ないッ!」
ほぼ同時、巨獣の背より射出される巨大な背鰭―― 否、サーベルユニットが四基。四振りもの巨大な刀身が風を裂き、一斉に哪吒の背後の攻撃衛星に向けて切っ先から襲いかかるのだ。
「……自分のやることは、ただ一つッ!」
「……っ
……!!」
風火輪が、再度唸る。断末魔めいた叫びと共に大地を引き裂き猛回転する巨大なホイールが土砂と共に爆炎を巻き上げ、哪吒に超速を与える。加速の最中、爆ぜて脚から脱落する片側の車輪に思わず倒れかけるも、辛うじて投げられた剣を追い越した哪吒は、その身を盾にして九竜神火罩を剣から護る。その身を貫く巨剣―― ぎりぎりでそれは衛星を撃ち抜く事なく静止……
「お前たちを壊して、壊して、壊して! 壊して壊して壊して壊して
!!!!」
……しない!
地を蹴り跳躍する亡国の主。
そのまま一息に距離を詰め、飛びかかった哪吒の肉体を強引に押し込み――
哪吒の肉体を貫く巨剣を強引に九竜神火罩目掛けて突き込んだ。
「……ばっ、バカな
……!!」
自身の肉体を通して伝わる破壊の感触。
護るべき存在が今こそ、不可逆の傷を負う。それは最早、打ち上げなど不可能なほどの。更に続けて巨獣の背から伸びた無数の触手が。否、ケーブルたちが生き物めいて蠢き、取り巻く哪吒と攻撃衛星に鋭利な先端を幾つも突き刺した。
「最後の一体まで、残さず壊し尽くすのみだああああァァァァァァァッ!!」
「……ぐおおおおッ
!!!!」
まるで吸血行為。ケーブル《朧影》は容赦なく哪吒と衛星の内部に蓄えられたエネルギーを吸い上げていく。それは、最後の意地めいた哪吒の意気をも瞬く間に奪い去っていった。元より守護対象である衛星を破壊された事で、その意地はほぼ意味を為さぬものとなっていたのだが。
吸い上げられたエネルギーが、亡国の主を活性化させる。
その機体の内側の小枝子自身をも巻き込んで。無尽蔵に吸い上げたエネルギーはやがて行き場を失い、暴走する。収束していく輝きに飲み込まれながら、小枝子は自身とジャイアントキャバリアとが一つに重なり、溶け合っていくのを感じていた。巻き起こる漆黒の暴風が周囲を薙ぎ払う。自身を捉えたケーブルより解放されて地に落ちた哪吒は吹き飛ばされそうになる―― それでも、辛うじて残った僅かな力でぎりぎりに、倒れる事を堪えた。
「……おの、れ…… おのれ、おのれ…… おのれ、猟兵ども!
吾の、使命を…… よくも! よくも奪ってくれたなァァァァァ!!」
眼前、膨れ上がる巨大な漆黒の繭目掛けて、哪吒は最大出力の鉄拳を放つ。
しかし、それは繭が解けた途端に生まれた―― 否、それまで彼女自身を包んでいた巨大な翼によって容易く弾かれてしまう。ゆっくりと立ち上がる、漆黒の翼を備えた異形。否、それは自身のキャバリアと融合を果たした小枝子自身であった。弾かれ、力を失った乾坤圏―― 否、哪吒の拳が落ちてきたのを無造作に小枝子が掴む。
「……………壊れろ」
掴んだ腕を通して、流れ込む呪詛が哪吒の腕を真っ黒に染め上げる。そのまま無造作に放ったそれを、漆黒の翼が大きく羽撃き巻き起こす風が撃ち出し、唸りを上げて獲物へと襲いかかる凶悪な弾丸へと変えた。
「……ぐぅッ
……!?」
投げ付けられた乾坤圏は、哪吒の片腕をその腕に持った金蛟剪ごと叩き折り、撃ち落とした。それでも尚止まらぬ勢いのままに、彼の背後―― エネルギーを吸い尽くされ、半壊した攻撃衛星に突き刺さっては、轟音と共に今度こそ完全に引導を渡した。無数に飛び散った破片、残骸はまるで哪吒の流す涙のようでさえあった。
「…………Mission failure(任務失敗)」
崩れ落ちる、残骸を振り返るのは一度。
今や二面五臂と成り果てた満身創痍の怪物は、再び小枝子へと向き直る。
残る五本の腕を以って身構えながらに、罅割れた音声が静かに問うた。
「……猟兵、キサマの名を聞こう。
今際の吾が、最期に殺す者の名を」
「……朱鷺透小枝子」
そう、彼女が応えるのと同時。
両者は地を蹴った。
走る最中も、哪吒の身は砕けていく。これまでの死闘で、幾人もの猟兵たちが刻みつけた傷だ。半壊した一面が、崩れ落ちる。一歩踏み出すたびに、装甲の亀裂は深く広く伸びていく。関節から腕が欠落する。一本、そしてまた一本。
風火輪の片割れが、最期の気炎を燃やす。
突進とともに巻き起こる爆炎が全てを焼き払わんと猛り狂う。
「……だが、訂正させてもらうぞ哪吒」
それを散らすのは漆黒の翼。押し寄せる焔の波を払い、千切り引き裂く。
散らされた焔が火の粉となって消え行く中を唸り飛ぶ、乾坤圏。
彼女の顔面を叩き割る寸前で、割り込んだ小枝子の腕の異形の爪が両断した。
「これは、お前を破壊する者たちの、……そのうち一人の名に過ぎんッ!!
此処で終わるのは、お前ただ一人のみ!」
切り裂かれた鉄拳を、追うように残る哪吒の双腕が唸る。
それが小枝子に到達するよりも疾く、小枝子のもう片腕が哪吒の顔面を掴む。
「……しまッ……」
「終わりだッ!!」
まるで抱擁するかのごとく漆黒の翼が彼の躯体を包み込んだ。
逃げ場のない哪吒を霊気の焔が焼いていく。崩壊寸前の身体を丹念に焼き尽くす輝き。彼は為す術なく、大海に沈み込んでいくようにその中へと飲み込まれていった。
「…………オボエテおくゾ、猟兵たチよ」
建業の地を夕焼けが染める。
焼け焦げ荒廃した大地―― 倒壊した打ち上げ台。
無数に散らばった攻撃衛星の残骸。
それらがうず高く積み上がった瓦礫の山の上で、最後に残された一面の哪吒の首が微かに呟いた。見上げた先には、漆黒の翼と白髪を夕風に靡かせながら一人の猟兵が佇んでいる。其処から更に見渡した先には、これまで戦った数多の猟兵たちも居る。
「吾ヲ、討っタ者たちノ顔、コノめもりーニ、深ク刻んデ果てるとしヨウ」
見事 ナリ
それだけを辛うじて音にしたところで、哪吒は機能を停止した。
自らを《殲禍炎剣の代行者》と名乗る自律型オブリビオンマシンの目指す攻撃衛星による大量殺戮計画はこうして未然に防がれたのである。同時に、彼らによって支配されていた建業の地も解放されたのだ。更なる敵を討ち果たすべく歩き出す彼らの背を、最早物言わぬ像となった哪吒は何時までも見詰めていた。それは怨嗟によるものか、或いは激闘の果てに自らを倒した勇者たちを称えるものか。今となってはもう、誰にも分からぬ事柄だった。
大成功
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