殲神封神大戦⑬〜伸ばした先にある物は〜
桃月桃源郷に咲き誇る、枯れることを知らぬ桃の花。その花弁には強力な魔力を祓う効能があった。
「あらゆる生物・無機物・自然現象をも虜にする魅了。それが『封神仙女』と呼ばれた『妲己』の持つ魔力です」
ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう言って手にしていたリンゴ飴を回す。
魔力を香気に変換して散布する「傾世元禳」、武林の秘宝「流星胡蝶剣」、殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」……そのいずれも妲己の離反を恐れた仙翁達によって妲己に対する危機を全て阻害するように設計され、その自死すらも阻んでしまうという。
余計な真似をしやがって、とグーで殴り飛ばしたいところだが、肝心の仙翁が消息不明なのでどうすることも出来ない……というのは一先ず置いといて。
「それらの動きを封じるのと、妲己自身が発する魔力に酔わないようにするのが現時点で分かっている彼女の望みを叶える唯一の策となります。そうすると魔力を遮断することが出来る装備があると楽になるわけで」
つまり、桃月桃源郷の桃の花は妲己の周りを取り巻くあらゆる物への突破口となり得る存在だったのだ。
しかしこれにも幾分かの問題があった。
「ただ桃月桃源郷の桃は枯れないのでみんな大木になるまで育っているんですよね。そうすると、自分とかが背伸びしても届かないところに花が咲くわけで」
そう。普通に取ろうとしても手が届かないのである。
しかも枯れないため、自然の摂理に任せて落ちてくる物を拾う……ということも出来ない。
「なので踏み台を持ち込むとか、風の魔法で吹き飛ばすとか、背がめちゃくちゃ高い方に代行を頼むのか、何らかの対策が必要となります」
そうやってかき集めた花弁はそのまま投げつけても良いが、宝貝に加工することでさらなる真価を発揮するという。
「多くの霊力を注ぎ込んだり、他の素材との組み合わせたり、魔術的な加工を施したり、宝貝の作り方や形状に決まりはありません。効果が高ければ高いほど良いので、思うがままに自分だけのオリジナル宝貝を作ってみてはいかがでしょうか?」
そう言ってルウは宴会が終わった桃月桃源郷へ猟兵達を送り出した。
平岡祐樹
重ーい幹部ラッシュの箸休めになれば幸いです。お疲れ様です、平岡祐樹です。
このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。
今案件にはシナリオボーナス「霊力に満ちた桃の花を集め、宝貝を創造する」がございます。
これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
なお、今シナリオで作られた宝貝はMSから支給することはございません、ご了承ください。
第1章 冒険
『破魔の宝貝』
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POW : 大量の花を集め、多くの霊力を得る。
SPD : 仙界の他の素材と組み合わせ、更なる力を引き出す。
WIZ : 魔術的な加工を施し、宝貝の性能を高める。
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シエナ・リーレイ
●アドリブ可
みんなで花を沢山集めるよ!とシエナは大木を指差します。
妲己さんと仲良くなる為には道具が必要と言われたシエナ、それの飛べる『お友達』や木登りの得意な『お友達』を呼び出すと桃の花を集め始めます
別の物に変えれば問題ないよね!とシエナは道具作りを始めます。
周囲の猟兵から妲己さんのばら撒くモノを対処しなければならない事を把握したシエナ
考えた末にばら撒く者を集めて別の物に変えれば良いという結論に至ります
シエナは花弁におまじないと言う名の[呪詛]を篭めながら袋に詰め込んでゆきます
そして、花弁とおまじないで満たされた袋の口を閉じれば魔力或いは香りを集めて[呪詛]に変換する素敵な道具の出来上がりです
「みんなで花を沢山集めるよ! とシエナは大木を指差します」
妲己と仲良くなる為には魔力を遮断することが出来る道具が必要だと言われたシエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は、飛んだり木登りをするのが得意な「お友達」を周りに集めると、大きな桃の木を指差す。
ぬいぐるみ、剥製、骨だけと多種多様なお友達は号令を受けると一斉に大木を取り囲むと各々の手や口を使って桃の花を採集していった。
そうして洋服を裁縫するために買った大きな布の上にこんもりと盛られた花弁を前に、シエナは頑張ってくれたお友達の頭を撫でながら口を真一文字にさせる。
ルウを始めとする猟兵達から、妲己の元に近づくためには魔力によってばら撒かれてしまった物を対処しなければならない事は教えられている。
この花弁をどのように使えば効率よくそれらを止めることが出来るだろうか。
「別の物に変えれば問題ないよね! とシエナは道具作りを始めます」
考えた末に「ばら撒かれた物を全部集めて別の物に変えれば良い」という結論にシエナは至った。
やろうとすることが決まったら後は早い。裁縫バサミで布を切り取り糸で縫い合わせ、巾着袋を作ったシエナは花弁一つ一つに想いを込めながら大事に入れていく。
「シエナは花弁におまじないを篭めながら袋に詰め込んでゆきます」
しかし忘れてはならない。シエナが元は呪術師が作り上げた、所有者を死に誘い、死後の怨念と魂を糧に動く人形だったということを。
どれだけ今の体の素となった少女に愛されようと、彼女の遺言を叶えるためにヤドリガミとなって動き出したとしても、その本質は変わらないことを。
「シエナはこれで出来ました! と宝貝を抱きしめます」
花弁と「おまじない」で満たされた袋の口を閉じれば魔力或いは香りを集めて呪詛に変換する素敵な宝貝の出来上がりだ。
宝貝を天に掲げたシエナは、大事そうにそれを胸の中に抱え込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
ロニーニャ・メテオライト
☆改変・アドリブ歓迎。
「美しいところね……今もこの世界で戦争が起こっているなんて、哀しいわ。」
さて大木から桃の花を頂きましょう。しっかりと大木に礼をしてから、この背中の翼で飛び上がるわ。
あまり飛ぶのは得意ではないけれど、【空中浮遊】でゆっくりと。
桃の花を摘んでは広げたスカートに集めていく。
もらいすぎるのはしのびないから、霊力の特に篭っていそうなものを【物見の星座盤】で見繕って集めていく。
さて、こんなものかしら。
桃の花を髪飾りに加工して、【破魔】と【浄化】の力を込めるわ。
「美しいところね……今もこの世界で戦争が起こっているなんて、哀しいわ」
華やかで静かな桃源郷の外では今も猟兵とオブリビオンは戦いあっている。
そんな事実に物悲しさを感じ、独りごちていたロニーニャ・メテオライト(不老不死の星の子ども・f35195)は白色と桃色に彩られた大木の前で立ち止まった。
「さてこの大木から桃の花を頂きましょう」
何があっても枯れないとはいえ、もらいすぎるのはしのびない。故にロニーニャは事前に霊力の特に篭っていそうな物を物見の星座盤で見繕っていた。
そして星座盤が指し示したのが、この大木だった。
「すいません。ある仙人さんを助けるために少しだけ力を貸してください」
しっかりと大木に礼をしてから、ロニーニャは背中の翼で飛び上がる。早く飛ぶのはあまり得意ではないが、ゆっくりと空中を浮遊するぐらいならば何の問題もない。
実際に間近で見極め、ロニーニャは特に魔力が詰まっていそうな桃の花を摘んでは広げたスカートの中に集めていく。摘み取られても桃の花は見た目や魔力が急激に萎れることはなく、綺麗な色を保っていた。
5、6個摘み取ったところで着陸したロニーニャは幹に寄りかかるように座ると、桃の花を掌の上に全て乗せる。そして目を閉じて破魔と浄化の力を込めた。
「さて、こんなものかしら」
どれだけの時が経っただろうか、目を開くとバラバラだった桃の花はどこからともなく発現した白銀の金具によってまとめられ、まるで小さな花束のようになっていた。
桃の花は採った時と全く同じ柔らかさを維持している。だが悪き心を持って千切ることはもう出来ないだろう。
「キレイね。……どうか、仙人さんを救う糸口になりますように」
こうして出来上がった桃の花の髪飾りを元々つけていた星の花の横に添えたロニーニャは再び大木に一礼し、後にした。
大成功
🔵🔵🔵
ルゥ・グレイス
狙撃銃で一発。
ターン、と小気味いい音とともに桃の花が降ってくる。
落ちた花弁を拾って検分してみる。
「魔力効率も良し、霊力も凄い。なにより残留する神秘性が素晴らしい。
このまま杖に封じ込めるだけでも上等なものが出来上がるだろうな」
けどせっかくならいいものを求めたいところである。
溜った霊力を水晶の塊に流し込んでいく。透明なそれが薄く桃色に染まって行くのを見て水晶に貯められるエネルギーの臨界まで来たことを確認。
桃水晶を専用のパッケージに入れれば。
【反応式桃香礼想炉心】完成です。
エネルギーライフルの炉心としても緊急の魔力リソースとしても使える汎用的礼装。
「うん。それなりにいいものができたんじゃないかな?」
ターン、と小気味いい音とともに桃の花が落ちてくる。
一息ついてスコープから目を離したルゥ・グレイス(終末図書館所属研究員・f30247)は狙撃銃をその場に残し、撃ち抜いた桃の大木の元へと足を運んだ。
何をしても枯れないとはいえ、悪戯に傷つけるのはやはり抵抗がある。故に花と枝の境目のギリギリを狙った。
その努力の結果、落ちた花弁には枝の欠片が僅かについている程度だった。
「魔力効率も良し、霊力も凄い。なにより残留する神秘性が素晴らしい。このまま杖に封じ込めるだけでも上等なものが出来上がるだろうな」
拾って検分した結果にルゥは満足気に頷く。だがせっかくならいいものを求めたいところである。
ルゥは持ち込んだ鞄から無色透明な水晶の塊を取り出し、地面に寝かす。そしてその上に桃の花を置くと中に溜まっていた霊力が水晶に流れ込み始めた。
「……思ったより色づくのが速いですね」
透明だった水晶が薄い桃色に染まって行くのを見て貯められるエネルギーの臨界点へ早々に達したことを察したルゥは桃の花を外し、水晶を専用のパッケージに入れる。そしてまじまじとその姿を掲げ眺めた。
「【反応式桃香礼想炉心】完成です。……うん。それなりにいいものができたんじゃないかな?」
このパッケージングされた水晶はエネルギーライフルの炉心としても緊急の魔力リソースとしても使える汎用的礼装である。
それに外部からの強力な魔力を祓う桃の花の力が加わわったことで、この水晶は妲己に限らず精神攻撃を得意とするオブリビオンへの対抗策となってくれるだろう。
「しかしまだまだこの花の魔力は尽きてませんね。……そうだ、せっかくですし万が一に備えて2つ3つ予備を作って置きますか」
地面に置いた桃の花を改めて検分し、その結果に目を見張ったルゥは失敗した時のスペアとして念のため持ってきていた残りの水晶も取り出す。
そして桃の花が朽ち果てるまで霊力を吸い出した頃には、持ち込んだ水晶は全て桃色に染まっていた。
大成功
🔵🔵🔵
御堂・伽藍
Wiz判定
アドリブ、即席連携歓迎
がらくた がらんどう
物の屍に創造…何という…
桃の木の傍の川面を眺める
と
ひとひらの桃の花弁が…
咄嗟にUCにて拾い上げ
これ あのときの ?
最初に触れた桃花…?
念動力優しさ手をつなぐ見切り第六感宝探し失せ物探しUC
その一枚と念を通じ、然るべき花弁を感知して引き寄せる
懐から小さな桃珊瑚(すてぜに)が一つ飛び出し
うん わかった
縒り合わせ、縫い合わせる
念動裁縫武器改造アート道術UC
念動力で珊瑚を中心に花弁を縫い合わせ花の形に
(可能なら多重詠唱。癒、毒、樹、風、地、五属性を付与)
もう がらくたじゃない
名付けて「五桃華七宝」
嬉し気に微笑み
我知らずひとひら涙
「がらくた、がらんどう。物の屍に創造……何という……」
御堂・伽藍(がらんどう・f33020)は桃の木の傍らに座り込んでいた。
経緯は違えど人に「不要とされた物」に「必要とされる物」を作れとは、何と残酷で難しいことだろうか。
近くを流れる川面をぼんやりと眺めていると、上流からひとひらの桃の花弁が流れてきた。
それを見た途端、伽藍の頭に電流のような物が走った。
「これ、あのときの? 最初に触れた桃花……?」
宴会の帰り道、桃の花を取るために猟兵が作り出していた花吹雪。あの花吹雪は弧を描き、風を作り出した猟兵の元に集っていたはずだ。
だがあれはその一片だと、本能が訴えていた。何かの弾みで風から離れてしまい、着水してしまったのだろうか。
『たぐる、たぐる、つかんではなす。万物に用途有るが故に』
弾かれるように立ち上がった伽藍は咄嗟に念動力による無数の見えない繰り糸を放ち、拾い上げる。
少し湿っているそれを掌の上に乗せていると懐から小さな桃珊瑚が一つ転がり落ちた。まるで自ら躍り出たかのように。
伽藍は桃珊瑚と桃の花弁、交互に視線を交わした末に、頷いた。
「……うん、わかった」
拾い上げた一枚と念を通じ、然るべき花弁の主が感知され、伽藍の元へ新たな花弁が引き寄せられる。
そして念動力で浮かび上がった珊瑚を中心に集まった花弁は縒り合わされ、癒・毒・樹・風・地の五属性が付与され、花の形になるように縫い合わされる。
名付けて「五桃華七宝」。風に嫌われ、水に流され、塵芥になるはずだったひとひらの桃の花弁は新たな宝貝へ生まれ変わっていた。
「もう、がらくたじゃない」
嬉し気に微笑んだ瞳からひとひらの涙が溢れる。しかし自分が涙を流しているという事実に伽藍は終ぞ気づくことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵