殲神封神大戦⑬〜花耀燦々
●花耀燦々
常春の郷は、それはそれはうつくしい世界だった。
枯れぬことなく咲き誇る桃の花は、まるで桃源郷の彩を永遠に留めているよう。
ひらりと舞った桃の花弁が、淡いひかりを帯びる。
やがて形づくられるのは、刀であり、扇であり、お守りだった。
――花弁から生まれ変わった破魔宿す宝は、必ずきみの力になる。
●桃彩凛々
「戦争、お、つかれ、さま、です」
世母都・かんろ(秋霖・f18159)がすぐさま手にしたタブレット端末を操作して、女性の声が説明を始める。
「いにしえの仙界『紫霄宫』の入口に、仙界随一の『枯れない桃花』に彩られた、極めて美しい桃源郷があります。オブリビオンである封神仙女『妲己』は、あらゆる生物・無機物・自然現象をも虜にする凶悪な魅了能力を持っています」
いくら猟兵でも、生身で妲己に挑めば正気を保つこともままならないという。かんろが画面をタップすれば、女性の声は淡々と説明を続ける。
「桃源郷の桃の花は、危険な魔力を祓う破魔の力を持っています。桃の花を摘み集め、『破魔の宝貝』を作り出してください。どんなものを作りたいか強く念じることで、桃の花はその通りの形の宝貝へと変化します」
それは香炉、布槍、靴など多種多様。誰かを守りたい、世界を救いたいなど、形のない想いだけを願うことでも宝貝は生み出される。
「妲己に対抗する為にも、宝貝は強力な守護となってくれるでしょう――以上」
吊るし飾りの美しい傘を開けば、てるてる坊主が舞う。
「皆さん、が、創る、宝貝、は。きっと、皆さん、を、守って、くれ、ます」
しゃぼん玉の瞳が揺らめく度に、桃の花弁が映った気がした。
遅咲
こんにちは、遅咲です。
オープニングをご覧頂きありがとうございます。
●注意事項
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「殲神封神大戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
プレイングボーナス……霊力に満ちた桃の花を集め、宝貝を創造する。
「桃の花を集める描写」か、「集めて宝貝を作る」描写となります。
宝貝はどのようなアイテムでも大体大丈夫です。
形が思いつかない場合、🌸を入れて頂くことでお任せも可能です。
ステータスを拝見して似合うアイテムをおつくりします。
自分のための宝貝は勿論、大切な人に贈る宝貝も。
※アイテム配布はありませんが、自由にアイテム作成して頂いて構いません。
グループ参加は「2人」まで。
戦争シナリオのため、書ききれるだけの少人数受付になります。
再送のお手間をおかけすることもあります。
皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
第1章 冒険
『破魔の宝貝』
|
POW : 大量の花を集め、多くの霊力を得る。
SPD : 仙界の他の素材と組み合わせ、更なる力を引き出す。
WIZ : 魔術的な加工を施し、宝貝の性能を高める。
|
朱酉・逢真
坊と/f22865
会話)坊は桃、好きかね? どこぞの男神は妻の追手から逃げるために桃を投げたと言うよ。こォ見えて俺自身は魔じゃないから、桃花に触れてもピリつくだけだ。が、花の方が腐っちまうでなァ…俺は触れぬまま花を集めよう。
なんだい坊、その目は。言いたいことがあるならお言い。怒りゃせンぜ。
行動)〈虫〉からハチをバァっと出して、花弁を集めてこさせよう。足りなきゃ蝶も飛ばそうか。集めた花弁は坊に任せて、ステキに加工してもらおう。その隙、近くの桃の枝を《植》で干渉して、腕輪の形にして坊にやろう。きっと似合うさ。この若き桜の未来が、自身の手を除いて閉ざされぬよう願おう。なにせ貴重な俺の信徒だからな。
雨野・雲珠
かみさまと!/f16930
大好きです!花も実も。
投げつけられたら、俺、慌てて受け止めてしまうかも
あらゆる相手を蕩かすという妲己様の魅了…
万が一にもかみさまがめろめろになって
相手側についたら大事故
責任重大、これは気合を入れて作らねば
自分の分は早々に桃色の石が連なるお数珠に決めて、
はしゃいで咲いた頭の桜花を
ハチや蝶々に振舞いつつ腕組み。
折角なら似合うものをお贈りしたい…
髪紐。耳飾り。お数珠…扇!
美しい紙がよいです
無地で…なのに時折、花と朱い羽根が舞う…
形作られた雅な扇をかみさまに。
夜で闇なれど魔に非ざるこの方をお守りください、
と扇に願をかけましょう
わ、腕輪?
お数珠と一緒につけます
…かっこいい!
「坊は桃、好きかね? どこぞの男神は妻の追手から逃げるために桃を投げたと言うよ」
桃源郷とはまさにこのこと。鮮やかな桃彩の下、神は雨野・雲珠に問う。
「大好きです! 花も実も。投げつけられたら、俺、慌てて受け止めてしまうかも」
歳の割に小柄な桜の精は、きらきらと目を輝かせて朱酉・逢真に答えをかえす。夜闇にとけるこのかみさまは魔の物ではないから、花に触れてもほんの少しぴりっと刺激が奔るだけ。
とはいえ花の方が腐ってしまっても困るからと、ぶわり溢れた蜂の群れ。せっせと花弁を集める働き蜂以外にも、ひらりはらりと優雅な蝶々が舞う。
「なんだい坊、その目は。言いたいことがあるならお言い」
怒りゃせンぜ、と笑った男。いえ別に、と物言いたげな視線はそのままに、少年も虫達と共に花弁をたっぷり集めていく。
腕の中でちいさな山になった桃の花弁を、雲珠はそうっと丸卓の上に広げる。
「これだけあれば、きっとよいものが作れるはずです」
「じゃ、俺の分もステキに加工してもらえるかい?」
せっかく雲珠が虫達と共に集めた花弁を、台無しにはできない。逢真がそう頼めば、お任せください、と少年は目の前でぐっと両の拳を握ってみせた。
あらゆる相手を蕩かすという妲己のおそろしい魅了。万が一にもかみさまがめろめろになって、相手方についてしまえば大事故確実。
「責任重大、これは気合いを入れて作らねば」
まずは手始めに自分のための宝貝を。桜空の眸を閉じて、ぎゅっとつくりたい容を念じる。ぱちりと瞼を開ければ、あわく輝きながら花弁は渦を創る。
そうして出来た、桃色の石が連なる数珠。
「わぁ、出来ました!」
思わずはしゃいだ声をあげると、心につられて冬枝に桜色が咲き綻ぶ。あまい香りに誘われた蜂や蝶々に蜜を振る舞いつつ、いよいよ本番と腕組みを。
せっかくなら、かみさまに似合うものを贈りたい。髪紐、耳飾り、お数珠……。
うんうん悩む少年の姿にくふりと笑みをこぼしつつ、逢真は近くの桃の木を見上げる。そうっと干渉させた植物によって、木の枝がひとつぐにゃりと捻じれた。ほとりと掌に落ちたそれは、まぁるく輪を創っていく。
朴訥としながらも艶あるちいさな腕輪が出来た頃、雲珠もはっと閃いて。
ぽう、とあわいひかりを放って、生まれたのは雅な扇。ほんのり色づいた無地の紙は、時折花と朱い羽根がふわりと舞う。
――夜で闇なれど、魔に非ざるこの方をお守りください。
「かみさま、出来ましたよ!」
「へぇ、洒落てるじゃないか。坊に任せた甲斐があったな」
うんと願いを込めた扇を逢真に渡すと、かみさまは満足げに笑んで。
「坊にはこれをやろう。きっと似合うさ」
「わ、腕輪?」
さっそく数珠と一緒につければ、かっこいい! 目をきらきらとはしゃぐ少年は、やっぱり雪桜を咲かせて降らす。
神は願う。この若き桜の未来が、自身の手を除いて閉ざされぬよう。
「なにせ貴重な俺の信徒だからな」
「? はい!」
よくわからないという顔をしつつ、元気に返事をした坊やに、かみさまは再び笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
🌸お任せ歓迎
作る宝貝は大切な人に……最愛の夫、ヴォルフに贈るもの
いつも騎士としてわたくしを守ってくれた
絶望に打ちひしがれた時も、優しく手を差し伸べて勇気づけてくれた
だけど騎士として、何度もわたくしを守って傷ついて……
妲己の強力な魅了の術は
人がそれまで築いてきた「愛する人との絆」を引き裂くもの
もし彼が彼女の魔の手に堕ちたら…
或いは逆に、わたくしが堕ちて彼を裏切ってしまったら…
その不安は何度となくわたくしと彼の心を苛んできた
だから、互いのことを忘れないように
どんな誘惑も跳ねのけ、心を強く持てるように
摘み集めた桃の花に願いを込めて祈り捧げる
花に宿る生命の息吹よ、清浄の力よ
どうか彼を守って、と……
清浄な気を纏う娘は、その郷によく似合っていた。ヘルガ・リープフラウは、集めた花弁を前に想う。
創る宝貝は、誰よりも大切な人へ。最愛の夫、ヴォルフの凛々しい横顔を思い浮かべる。
いつだって騎士として守ってくれた彼は、ヘルガの心の裡の一番あたたかなところに居る。絶望に打ちひしがれた時も、優しく手を差し伸べて勇気づけてくれた、大切なあなた。
けれど、騎士として何度も守ってくれるということは、何度もその身を危険に晒し、傷つくということ。
これから待ち受ける妖女、妲己の強力な魅了は、人がそれまで築いてきた“愛する人との絆”を引き裂く、おそろしい術。
もし、彼が彼女の魔の手に堕ちたなら。もし、ヘルガが堕ちて彼を裏切ってしまったら。そんな不安は幾度となく、仲睦まじい夫婦の心をじくじくと苛んでいた。
「わたくし、は、」
震えるように呟いて、眼前に広がる花弁の山を見つめる。やわらかな桃色は、まるで二人の愛の在処を示すような彩をしていた。
ふるりと首を横に振り、きゅっと唇を噛み締める。だってヘルガは、まだ姿を見てもいない敵に怖気づくような娘ではない。
――最愛の人がくれた勇気と愛情を、信じている。
しろい両の指先が組まれて、静かに祈りが捧げられる。互いのことを忘れぬように、どんな誘惑も跳ね除けて、心を強く持てるように。
「花に宿る生命の息吹よ、清浄の力よ」
どうか、彼を守って。
娘の願いを聞き届けたように、桃花の群れはひかりを帯びる。やがて形づくられていくそれは、あざやかな桃色の宝玉を散らしたちいさな鏡と成る。
鏡面に映ったのは、ヘルガ自身ではなく愛しい彼の笑顔。彼に贈った時は、きっと微笑むヘルガが映るはず。
「ああ……」
ほっと零れた言葉は安堵に満ちていて、それまであった不安は融けていく。まるで、この常春の園のように。
ありがとう、と。娘は咲き誇る樹々にそう呼びかけた。
大成功
🔵🔵🔵
征・瞬
西嘉(f32676)と
なんだ、また破魔の宝貝を作るのか?
1つでは足りないのだろうか…
まぁ、西嘉が妲己の色香に惑わされるのも癪だからな
また手伝おう
パンダのぬいぐるみ…の、形にするのか…?
いや、君がそこまでパンダ好きだとは知らなかった
確かに少し前に1人で勝手にそのような依頼に行っていたものな
いや、置いていかれた事はまったく少しも気にしていないが
…は?
私に、作っていたのか…?
だが私は妲己と戦う気は……
…作ってしまったものは仕方ない
宝貝というにはなんとも言えない形ではあるが…
戦場はわからないものだからな、貰ってやる
(ぶっきらぼうに言いつつ、大事に抱きしめて内心照れて)
張・西嘉
瞬(f32673)と
俺の宝貝は瞬と共に作ったし青龍偃月刀の強化もしてもらったからなあとは…。
妲己と戦うつもりはないとは言っていたが…やはり身を守るものは多いに越したことはない。
俺の力で上手く作れるかはわからんが思いだけは負けんつもりだしな。
(瞬への想いを込めた宝貝を作成。出来上がったのはパンダのぬいぐるみ)
…この間のパンダは可愛かったからなぁ
(出来上がったものに苦笑しつつ)
この前一人でいったのは瞬がいそがしそうだったからなんだが。…土産もわすれたしちょうどいい。
瞬、これをこんな形だが一応宝貝でな。
瞬を守ってくれるはずだ。
あと可愛い物は癒されるからな。よければ側に置いて欲しい。
征・瞬は首を傾げていた。妖妃、妲己の魅了から身を守る宝貝を創り終えたはずの張・西嘉が、いまだに桃の花弁を摘み取っている。
「なんだ、また破魔の宝貝を作るのか?」
ひとつでは足りないのだろうか、と怪訝そうな表情を見せた主に、はは、と武人は笑みを返す。
「なに、もう少しだけ付き合ってもらえると有難い」
「……まぁ、構わないが」
そう乞われて、瞬はほんの少しだけ視線をそっぽへ。西嘉が妲己の色香に惑わされるのも癪ではあるし、手伝ってやるのもやぶさかではない。
彼の心を知ってか知らずか、西嘉も考えを巡らせる。自分の宝貝は瞬と共に創ったし、青龍偃月刀の強化もしてもらった。それでもまだ足りぬのは、と、瞬へ視線を遣る。妲己と戦うつもりはないと言っていたけれど、身を守るものは多いに越したことはない。
武人とて、いつでも必ず彼を護れるとは限らないのだから。
「俺の力で上手く作れるかはわからんが……」
「私が手伝うんだ、それなりに恰好のつくものが出来るに決まっているだろう」
それもそうだ、と武人が頷くと、妖狐はまじないの支度を始める。静かに想いを籠める西嘉の隣、瞬が更に力を操って。桃彩の花弁がやわらかな渦を巻いて、ふわりとひかりが容を創っていく。
そうして生まれたのは、愛らしい桃色パンダのぬいぐるみ。暫しの無言の間があって、瞬が口を開く。
「いや、君がそこまでパンダ好きだとは知らなかった」
「……この間のパンダは、可愛かったからなぁ」
確かに少し前、一人で勝手にそのような仕事に行っていたものだし。いや置いていかれたことは、まったく少しも気にしてはいない。
西嘉も、出来上がったものに苦笑する。例の仕事は瞬が忙しそうにしていたから一人で助けに行ったのだけれど。結局土産を忘れたことを思い出し、ちょうどいい、とぬいぐるみを手に取る。
「瞬、これを」
「……は?」
「こんな形だが一応宝貝でな、瞬を守ってくれるはずだ」
再び続く無言の時間。端正な貌が呆気に取られていて、ようやく妖狐は言葉を発する。
「私に、作っていたのか……?」
「あと可愛い物は癒されるからな。よければ傍に置いてほしい」
「だが私は妲己と戦う気は……」
武人の逞しい手の中で、桃色パンダのつぶらな瞳が妖狐を見つめている。ほのかな桃の香りはうっすらと甘く、断る理由も見つからない。
「……作ってしまったものは仕方ない」
宝貝というには、なんとも言えない形ではあるけれど。
「戦場はわからないものだからな、貰ってやる」
「うん、そうしてもらえると嬉しい」
ぶっきらぼうに口をとがらせる瞬に、西嘉は朗らかな笑みを見せる。いとおしい人への想いを込めたぬいぐるみは、彼を必ず護るに違いない。
氷の仙人に大事そうに抱きしめられたパンダはふあふあの毛並みで、どことなくうれしそうな表情をしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
🌸
ひらひら舞い散る桃の花弁をそっと、大切に手に取り
どんなものを作りたい、か…
とりあえず想いを託してみようか
僕の戦う理由
この世界を守るため
奴隷として過ごしていた僕
初めて見た星空はとても美しかった
四季というものを初めて理解した
日々移ろい変わる花々の色に、香りに、心が洗われた
初めて出来た仲間は心強かった
友達と過ごす時間は楽しかった
任務であちこちの世界を回ったけれど
住人達は誰も彼もが優しくて
初対面の僕に対しても、とても良くしてくれた
心が生きる輝きに溢れていた
僕にとって大切な宝物
護りたい
僕の命に変えても…と、これ言うと怒られちゃうんだった
だからそんな力を
勇気をくれる宝具を
僕の【破魔】も上乗せして
ひらひらはらり、舞い散る桃の花弁が、栗花落・澪の掌におさまる。そうっと、大切に手に取った花弁は愛らしい彩を見せていた。
「どんなものを作りたい、か……」
ぱっとすぐには形が浮かばなかったから、とりあえず想いを託してみる。彼の戦う理由は、この世界を守るため。
それまで奴隷として生きていた少年が、初めて目にした星空はとても美しかった。紺色の絨毯に散りばめられた星屑はきらきら瞬いていて、それらを繋ぎ合わせた星座という存在を知った。
自由を手に入れ一年を過ごしていくうち、四季というものを理解した。日々移ろい、変わる花々の彩に、香りに、心が洗われた。
常春の桃源郷は何処までもうつくしいけれど、世界によって様々に景色を変えゆく季節だっていとおしい。
初めて出来た仲間は心強かった。友達と過ごす時間は楽しかった。どんな時でも、負けることなく進んでこられたのは、大切な人達のおかげ。
任務であちこちの世界をまわったけれど、住人達は誰も彼もが優しくて。初対面の澪に対しても、とても良くしてくれた。
(――誰もが、心が生きる輝きに溢れていた)
ふっと自然と笑みがこぼれてしまうのは、胸の裡のあたたかい場所に、視えない明かりがともっているから。
「僕にとって、大切な宝物」
全部、護りたい。僕の命に代えても……と、これ言うと怒られちゃうんだった。いけないいけない。姿勢を正して、口にする。
「だから、ね」
どうかそんな力を、勇気を僕にください。
澪はありったけの想いと共に、自らに秘められたきよらな力を上乗せして、願う。ほわり、あわく輝く花弁の渦はきらめいて、少年の想いを宿した容を創りだした。
瞼を開いた彼の目の前には、桃の花を模った石の咲く簪がひとつ。風に靡けばしゃなりと鳴るそれは、澪の誓いを遂げてくれるように思えた。
亜麻の髪によく似合う宝貝を、少年は大切に抱きしめる。
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
🌸
枯れない、桃花――
戦に負けない“力”は、大事。
…けど。
そんな“不変”があるのなら、見てみたいというのも結構本音で。
摘み集める桃花が成す宝貝…
ぼんやりとして、自分でもいまいち形なんか思い浮かばないけれど。
…掛ける願いは、想いは、いつだって変わらない。
『きみがしあわせであるように』
知らず触れる左手の指輪。
“不変”が、あればよかった。
世界に戦は尽きなくて。
歓びも哀しみも尽きなくて。
何もかも如何でもよかった自分に、戻りたいとは思わない。
…けれど。
君が“変わらず”幸せなら、それが僕の――
なんて言ったら呆れられるかな?
未来へ、日々を、共に。
不変じゃきっと、意味が無い。
いつしか。
想う、手の中の桃花は――
クロト・ラトキエが見渡せば、この郷に根付く桃花の樹々はどれもが美しく咲き乱れている。
戦に負けない“力”は、大事。けれど、永遠に枯れない“不変”を見てみたいという本音も、結構大きくて。
「お見事です」
花に声をかけたって、なんにも返っては来やしないのに。ふいにこぼれた褒め言葉に、おかしいな、なんて笑みを浮かべる。
ひとひらひとひら、丁寧に摘み集めた彩はあざやかでやわらかい。これらをどんな宝貝に生まれ変わらせるか。
掌に咲いた花弁達を前に考えてみたものの、曖昧でぼんやりとしてしまう。どうにも、自分でもいまいち形なんて思い浮かばなくて。
「ああ、でも」
掛ける願いはいつだって。籠める想いはいつだって変わらない。
(きみがしあわせであるように)
知らぬ内にそうっと触れていたのは、左手にひかる指輪を通して、大切なあの人の心。
この世に、“不変”があればよかった。無数の世界を巡っても戦は尽きなくて、歓びも哀しみも、生き続ける限り尽きない。
だからって、何もかもどうでもよかったあの頃の自分に、戻りたいとは思わない。けれど、君が“変わらず”幸せなら、それが僕の、
「――なんて言ったら呆れられるかな?」
くすりと笑んだクロトに浮かぶ彼の表情は、きっとやわらかなもので。それはクロト自身だけのもの。
未来へ、日々を、共に。不変じゃきっと、意味が無い。
二人並んで歩もうと誓ったのは、夜のおわりのむこう側。果てまでも、涯までも。
男の想いに寄り添うように、いつしか花弁はあわいひかりを放っていた。ちいさな風が渦を巻いて、すこしずつ容を創る。
掌に残ったのは、桃の花咲く陽光彩の組み紐飾り。自分が着けるには少し愛らしすぎるような気がしたけれど、その彩はただひとりの髪によく似ている。
ふわりと風が吹いて、桃花のあまい香りが鼻をくすぐる。この景色を、見せてあげたいと思った。
大成功
🔵🔵🔵
シビラ・レーヴェンス
🌸
露(f19223)
「ほう。桃の花弁が武器に。宝貝というのになるのか…」
宝貝製造の原理はよくわからんが興味深いな。桃源郷。
桃源の園で桃の花弁を採取しつつ少し私への武器を考えてみた。
自分の最大の長所である魔術の威力を増幅する武器か。
それとも最も苦手な物理戦闘を補佐する武器か。
なにも武器でなくてもいい。例えば…。
破魔の力で不可視の力場を発生展開できる宝貝も悪くない。
こちらに放たれた力を中和もしくは緩和できれば有利になる。
さて。どのような宝貝を創ろうか。
結局。
魅了の効果を中和もしくは緩和できるような宝貝を念じる。
露のことだ。妲己に近接戦闘をする可能性が高いだろうな。
だったら魅了させないような宝貝を創った方がいいと思う。
…?露のことを想い宝貝を創るのか?私が?
自然と露と視線が合ってしまうが目を逸らしてしまう。
露も自分用のを創るはず。何も私が創らなくてもいいだろう?
私自身のための宝貝で十分だ。一つで十分。
何故か私は二つ創ってしまっていた。むぅ…う。
「余分に創ってしまったようだ。君に渡しておく」
神坂・露
🌸
レーちゃん(f14377)
この世界ってお花で武器を創るのね。素敵だわ~♪
宝貝?…ってゆー名前もなんだかとても可愛いわよね♪
「とってもいい匂いだわ~。これが桃のお花の匂い?」
レーちゃんと一緒に桃源郷の園で花びら集めをするわ。
そーいえばレーちゃんってどんな宝貝創るのかしら?
聞いてみたかったけど考えてるみたいだからやめておく。
レーちゃんらしいモノになるんだろうな~。
…あたしはどーしよーかしら…。うーん。
魅了効果?を斬っちゃうよーな宝貝を念じてみようと思うわ。
もし難しかったら打消しちゃうよーなやつ?
……同じこと言ってるかしら?あたし。
…?レーちゃんあたしと視線合った瞬間に逸らした?え?え?
あたし何かしちゃったかしら?煩かったかしら。あたし?
完成した宝貝を受け取りながら満足してほくほく顔。わーい♪
「……え? あたしに? レーちゃん宝貝を?」
なんでかレーちゃんは二つ宝貝を創ってて。
その一つをあたしにプレゼントしてくれて…え?
何だか色々と言い訳っぽいこと言ってるけどあたしは嬉しいわ♪
「ありがとー」
美しい桃源の園に、銀の髪を流した二人の少女が迷い込む。宝貝の存在に興味をひかれたシビラ・レーヴェンスは言葉を発する。
「ほう、桃の花弁が武器に。宝貝というのになるのか……」
その製造原理はいまいちよくわからないが、この手の研究に没頭する少女には興味深いものがあった。どこかスキップでもしそうな足取りで、神坂・露もふわふわ笑みをこぼす。
「この世界ってお花で武器を創るのね。素敵だわ~♪」
宝貝という名前も、なんだかとても可愛くて。ふんわりと香る花の匂いを吸って、ゆっくり息をはく。
「とってもいい匂いだわ~。これが桃のお花の匂い? レーちゃん、いい匂いね~」
「……まぁ、悪くはないな」
それは誤魔化すための香水のようなものではなく、ほのかに漂うやさしい自然なもの。薬草ともまた違う、不思議な感覚にシビラは瞬きする。
はらりと舞い散る花弁を拾い、ちいさな背丈でも届く花弁を摘み、二人揃って少しずつ桃彩を集めていく。ちょっとした花遊びのようで楽しくなってきた露は、ふと思う。
(そーいえば、レーちゃんってどんな宝貝創るのかしら?)
聞いてみたくて親友に声をかけようとすれば、花弁を集めつつなにやら考え中。邪魔はしたくないから、やめておく。きっと彼女らしいモノになるんだろうなぁと思いながら、自分はというと。
「……あたしはどーしよーかしら……」
うーん、と露も悩み始めた頃。シビラは採取しながら、自身の能力にぴったりの宝貝を考えていた。
最大の長所である魔術の威力を増幅する武器か、それとも最も苦手な物理戦闘を補佐する武器か。なにも武器でなくてもいい。例えば、破魔の力で不可視の力場を発生展開――そんな宝貝も悪くない。こちらに放たれた魅了を中和、もしくは緩和できれば形勢は有利になる。
「さて、どのような宝貝を創ろうか」
――結局、魔女は魅了の効果を中和し緩和できるような宝貝を念じる。
(露のことだ、妲己に近接戦闘をする可能性が高いだろうな。だったら魅了させないような宝貝を創った方がいいと思う)
「……?」
露のことを想い、宝貝を創るのか? 私が?
まるでそれが当たり前のように、無茶をする友人のことを想定していた。自分でも驚いてしまって、自然と露と視線がぶつかる。ぷい、と目を逸らしてしまったのを、彼女がどう思ったかなんて今はどうでもいい。
(露も自分用のを創るはず。何も私が創らなくてもいいだろう?)
私自身のための宝貝で十分だ、一つで十分。自分にそう言い聞かせて、ざわめく心を落ち着かせながら集中する。
一方。そうだわ、と露もようやくアイデアを思いつく。魅了効果を斬ってしまうような宝貝を念じてみよう。もし難しかったら、うまく打ち消してしまうような?
「……同じこと言ってるかしら? あたし」
思わずもれた独り言と一緒に、ふとシビラと目が合って。その瞬間、そっぽを向いてしまった彼女の姿に、え、え、と困ってしまう。
(あたし何かしちゃったかしら? 煩かったかしら、あたし?)
とはいえ、騒がしいと言われるのはいつものこと。もしそうならあとで謝ればいっか、と気持ちを切り替え、いざ集中。
少女達が静かに念じた時、桃花はあわくひかりを帯びる。ちいさな山は渦を巻いて、それぞれのための宝貝が容を創っていって。
ぱちりと露が瞬きすれば、掌にはやわらかな彩の揺れる耳飾りが咲いている。彼女の尖った耳にぴったりのそれは、きらきらプリズムのように煌いた。
「わーい♪ レーちゃんは何にしたの?」
ほくほく顔の露が尋ねれば、何故かシビラは押し黙っている。彼女の掌の中に眠るのは、桃花を模した装飾の美しいペンダントがふたつ。
「むぅ……う」
気付けば同じ宝貝をふたつ創ってしまっていた、その事実が彼女を無口にさせている。シビラの掌を覗いた露が、わぁ、と歓声をあげる。
「とっても綺麗! さっすがレーちゃんね~♪」
純粋に心からの褒め言葉を告げれば、シビラはその片方をぐいっと露に押しつける。
「……え? あたしに?」
「余分に創ってしまったようだ。君に渡しておく」
きっと集中しすぎて破魔の力が余分に溢れただの、同じ能力がふたつあっても意味がないだの、魔女はごにょごにょ口ごもる。
なんだか色々と言い訳っぽいことを言っているけれど、露は親友が自分にプレゼントしてくれたことがうれしいから。
「ありがと、レーちゃん♪」
大事にするわね、と花咲く笑みの露に、シビラはほんの少しだけ視線を逸らした。
永遠に枯れない、永久に咲き続ける桃の花咲く桃源郷。
そこで手にした破魔の力は、猟兵達の想いを決して無駄にはしない。
――必ず、君達をまもってくれる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵