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殲神封神大戦⑥〜三皇五帝を超越せり

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑥ #始皇帝


 ――朕こそが、永遠不滅の『始皇帝』なり。
 朕の頭脳は冴え渡っておる。もはや朕の配下に頭脳はいらぬ。
 全員の脳をくり抜き兵馬俑としてくれよう、さすれば朕を裏切る者もいなくなるであろうからな。

 ――猟兵? 何だ其れは? そんな奴は知らぬ。
 兵馬俑共よ、貴様らは脳も無いのに、くだらぬ考察などせずとも良い。
 貴様らの頭脳は朕である。
 余計な報告などせず、ただただ、朕に従う駒であればよいのだ。

●超越せし者がこのザマだよ!
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
 殲神封神大戦において、「始皇帝」への道が開けました。
 フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は、自らの呼びかけに集まった猟兵たちに礼を述べるとそう続けた。
「始皇帝は蘇るやいなや「五胡」と呼ばれる遊牧民族のひとつ羌族(きょうぞく)を、たちまちのうちに配下の兵馬俑軍団とともに支配してしまっております。始皇帝を倒すには、大量の兵馬俑軍団を潜り抜け、始皇帝だけを狙い撃ちせねばならないのですが――予兆をご覧になられた方もいらっしゃいますでしょうか、蘇った始皇帝ですが……」
 生前「不老不死の薬」として服用していた水銀の影響か。現在の始皇帝はなぜか、あまり賢くない状態、
「まあぶっちゃけバカと言ってよろしいでしょう」
 少年はきっぱりと一刀両断した。
「オブリビオンとなったことにより生前の悲願であった「不老不死」が叶ってしまったが故か、万能感がマシマシなのです。よって配下の言葉に耳を貸す気が一切ありません。よって、猟兵の存在を認識していないというか、「誰それ? 知らん」みたいな感じなのですね。その状態で戦を続けるつもりなのです。何というか、……ええ、やはりこれはバカ」
 戦争において情報は非常に貴重なもの。不確定にして強大な戦力となっている猟兵たちの存在は、既に「知らない」では済まされない。配下からの報告があったのならば尚更。だからこそ断言できる。始皇帝の頭脳は衰えていると。
「このバカ……頭脳の衰えを利用することも、勝利に近づく一歩ではありますが。戦場についても説明せねばなりません」
 始皇帝は生前落成を見届けられなかった巨大宮殿「阿房宮」をユーベルコードで再現し、すべてが水銀で構成された「水銀楼閣」として自身の周囲に展開しながら猟兵たちを迎え撃つ。この楼閣内部は内臓を破壊されかねないほどの猛毒の水銀蒸気に満たされており、吸い込めば猟兵と言えども無事では済まないであろうと少年は語った。
「逆にいえば、阿房宮内における始皇帝の守りはこの水銀蒸気のみ。水銀蒸気に対抗することが出来れば、戦いも楽になるでしょう」
 始皇帝は水銀を自在に変形させて操り、剣として振るい、液体金属の兵馬俑として戦わせ、また戦場全体に水銀の大渦を発生させて戦う。
「優れた為政者ではありましたが、水銀で頭脳がやられてしまっていますので……戦い方次第では撃破も難しくはないでしょう。どうぞ皆さま、敵の殲滅をお願いいたします」
 ええ、ええ、厄介な戦場ではありますが、猟兵の皆様の敵ではないでしょう。
「それでは皆様、準備が出来次第、僕にお声がけくださいませ――」


遊津
 遊津です。封神武侠界、殲神封神大戦のシナリオをお届けします。
 ボス戦一章のみ、難易度はやや難となっております。
 当シナリオには下記のプレイングボーナスが発生します。
 プレイングボーナス……水銀蒸気に対抗する。/始皇帝の愚かさを利用する。

 「戦場について」
 水銀楼閣と化した阿房宮内部での戦いとなります。始皇帝が召喚するもの以外に、始皇帝以外に敵はおりません。
 広く開けていますが、屋根がある建物の為、空中戦にはあまり向きません。
 水銀蒸気の充満の為、猟兵であっても息を吸い込めば内臓に重篤なダメージを負います。
 技能、ユーベルコードなどで耐えるなどすると、プレイングボーナスが達成されます。

 「始皇帝について」
 オープニングにて説明した通りです。
 対応ユーベルコード以外にも水銀を変化させて攻撃してきます。
 水銀中毒によって賢さが低下しているので、その愚かさを利用したプレイングを行うとプレイングボーナスが達成されます。

 当シナリオはシナリオ公開直後からプレイング受付を開始いたします。
 シナリオ公開の時間によっては上記タグ・マスターページにプレイング受付中の文字が出ていないことがありますが、その状態でもプレイングを送ってくださってかまいません。
 諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『始皇帝』』

POW   :    変幻自在水銀剣
【自在に変形する水銀の剣】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    辰砂兵馬俑親衛隊
自身の【操る水銀】を代償に、1〜12体の【自在に変形する液体金属の兵馬俑】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    万里水銀陣
戦場全体に【水銀の大渦】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【覇者の気を帯びた水銀】による攻撃力と防御力の強化を与える。
👑11
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エーミール・アーベントロート
【秩序】
なるほど、コンラートさんなら確かにこういうの得意ですよね。
ではお任せします。ピヨったら言ってください。

水銀蒸気は環境耐性で耐えて、ボンバーインセイン号で走り風を巻き起こしながら始皇帝の周りをぐーるぐーる。
コンラートさんが詐欺働いてる間は私とヴィオさんで水銀蒸気に対処しましょう。

始皇帝が詐欺でぱーちくりんになった瞬間、コンラートさんとヴィオさんを一緒にバイクに乗せてUC【【執行】終わりなき殺戮】を発動。
これで2人を攻撃することはなく、始皇帝の攻撃のみを狙い撃ち出来ますからね。

ってヴィオさん!? 今何か言いませんでした!?
いーや、今絶対何か言いました!


コンラート・ベトリューガー
【秩序】
えー、めっちゃ騙されてくれそうやん。
ヴィオの言うように俺の独壇場になりそ~。
エミさんアレ俺に任せてくれん? ちょっと遊んd……げふん、言いくるめてみるわぁ。

ってことで、エミさんとヴィオが水銀蒸気をなんとかしてくれてる間に、俺はUC【楽しい時間の始まりだ!】発動。
風で飛んできたそのへんの水銀を指差して一言。
「あの水銀、風で飛んできたでしょ? アレね、風でああして飛ばすことで効能を高くしてはるんですよ」
「風で飛ばすことでぎゅっと濃縮されて、めちゃくちゃ強い水銀になるんですわ!」

まあ水銀って風で飛んだ程度では特に何も起こらんけどな。
詐欺終わらせた後はエミさんのバイクに乗って、日本刀でチクチク


ヴィオット・シュトルツァー
【秩序】
うわ、コンの独壇場やんこんなん。
面白そうやしちょっとやってきてや。
今手元にカメラ無いから録画出来ひんけど。

水銀蒸気はエミさんに任せるとして、俺は始皇帝の水銀をUC【スティール・カード】で盗めるか試してみよか。
攻撃のタイミングは電脳ゴーグルでちょっと計算して。
盗めるんやったらあとで廃棄すりゃええしな。環境破壊? 知らん!

エミさんのバイクに乗ったらあとは後ろで電脳ゴーグルの計算を2人に伝えるだけやな。
時々予告状で目潰しするぐらいか、俺に出来るのは。

あっ、時々煽っといたろ。
やーいやーい、水銀脳で思考のない始皇帝~。
悔しかったら春のないエミさんに勝ってみぃやー。
え? 俺何も言ってへんよ。




「水銀中毒で頭がいかれとる始皇帝……うっわ、コンの独壇場やん、こんなん」
 ヴィオット・シュトルツァー(猫のそばに居たい・f35909)は阿房宮の奥に立つ始皇帝の姿を見て言った。
「面白そうやし、ちょっとやってきてや。今手元にカメラないから録画できひんけど」
「なるほど。コンラートさんなら確かにこういうの得意ですよね」
 ヴィオットの提案に、エーミール・アーベントロート(《夕焼けに立つもう一人の殺人鬼》・f33551)もうんうんと頷く。そう話を振られたコンラート・ベトリューガー(口達者な詐欺師・f35908)と言えば。
「えー、めっちゃ騙されてくれそうやん!ヴィオの言うように俺の独壇場になりそ~」
 詐欺師はやる気満々であった。
「エミさんエミさん、アレ俺に任せてくれん? ちょっと遊んd……げふん、言いくるめてみるわぁ」
「ではお任せします、ピヨったら言ってください」
 水銀蒸気に耐性を持つエーミールは真っ黒な機体に真っ赤な爆発模様が描かれたオフロードバイク・ボンバーインセイン号に跨り、阿房宮を走り抜ける。どるん、どるん、どるん、エンジンの立てる音に始皇帝が頭を上げた。
「何者か!!」
 始皇帝が水銀を操り、液体金属の兵馬俑が召喚される。それらの脇をすり抜けて、エーミールは始皇帝の周囲をボンバーインセイン号でぐーるぐーると回りだす。
「な、何だ!貴様、一体何をしておるか!」
 始皇帝は面喰っていた。エーミールの行動の意図が彼には一切読めなかったからである。ヴィオットは電脳ゴーグルをかけ、コンラートの隣に立つとユーベルコード【スティール・カード】を発動させる。予告状をひらり――盗むのは、この阿房宮に立ち込める、自分たちの周囲の水銀蒸気だ。環境耐性のあるエーミールはともかくも、ヴィオットとコンラートには水銀蒸気に対する対抗策がない。故に、一か八かでの賭けであったが……水銀蒸気はヴィオットとコンラートの周囲だけ『盗まれる』。盗まれて、ヴィオットの持つどろぼう袋の中に水銀の形で収まった。
(おー、できるもんやなあ。これどないしよか。まあ後で廃棄すればええかな)
 環境破壊? 知らん。
 水銀蒸気から免れたコンラートは、液体金属の兵馬俑に対して日本刀で斬りつけながら、エーミールがバイクによって巻き起こす風で巻き上げられた水銀を指して大仰に言う。
「ああ!大変やあ!」
「なんや、どないしてん」
 大仰なセリフはまさに「台詞」だ。それを知っていて、乗ってやるヴィオット。舞台はもう始まっている。すなわち、コンラートのユーベルコード【楽しい時間の始まりだ!(ルスト・ツァイト)】は。その舞台の「サクラ役」に、自分は指名されたのだと。
(めんどくさ……)
 正直言ってヴィオットにとってそれは億劫極まりないことだが、作戦を成功させるためには仕方のないことだと割り切る。
「何が大変やねん、言うてみ」
「あの、あの水銀や!今、風で飛んできたでしょ!? アレね、風邪でああして飛ばすことで効能を高くしてはるんや!」
「ほうほう」
「風で飛ばすことでぎゅぅーっと濃縮されて、めちゃくちゃ強い水銀になりよるんですわ!」
「そりゃ大変やんな」
 勿論嘘である。大嘘である。水銀が風で飛んだところで特に何も起こらない。これは――始皇帝をいい気にさせるための「詐欺」である。
「ほう、それは良いことを聞いたわ!ではもっともっと強くしてやろう!」
 思った通り、バカになっている始皇帝はコンラートの大法螺に容易く騙され、液体金属の兵馬俑を解除して水銀を風に舞わせ始めた。
「今やでエミさん!」
「はい!わかりましたよぉ!」
 エーミール駆るボンバーインセイン号が二人の前にキィィッと音を立てて止まる。ヴィオットとコンラートはエーミールの後ろに乗り込んだ。成人男性の三ケツは流石に少々キツイところだが、文句も言っていられない――何故なら、これからエーミールの「目の前」に出ることは、ヴィオットとコンラートにとって死を意味することだと知っているからだ。
「“さあ、さあ、さあ! 私に仇なすモノは全て、丁寧に、お礼参りしてさしあげましょうか!”」
 【【執行】終わりなき殺戮(エンドレス・キリング)】――エーミールを殺人鬼に変貌させる、恐るべきユーベルコード。それは速く動くものを無差別攻撃するという厄介な点があるが……味方である二人を背後に乗せてしまえば、その時点で「早く動くもの」は彼らの敵だけになる。
 始皇帝が水銀を風に舞わせながら剣を作り上げる。その目を塞ぐようにヴィオットが予告状を投げた。
「次、来ますよ」
「はいはい了解ですぅ!」
 電脳ゴーグルでの演算――始皇帝の動きの結果をエーミールに伝えるヴィオット。その助言に従い、エーミールは始皇帝の攻撃を上手く躱しながら、グラスナイフを投げていく。後ろからコンラートが日本刀ですれ違いざまに斬りつけていった。
(俺に出来ること、あんまないなあ……せや、煽ったろ)
「やーいやーい、水銀脳で思考のない始皇帝~。悔しかったら春のないエミさんに勝ってみぃやー」
「ちょっとヴィオさん!? 今何か言いませんでした!?」
「え? 俺なんも言うてへんよ」
「いーえ!絶対なにか言いましたー!」
「ちょ、二人とも、苦しいんやけどぉ!」
 咎めるエーミールとしらを切るヴィオットに挟まれて、コンラートが悲鳴を上げる。そこを始皇帝の水銀剣が飛翔するが、「水銀を風に舞わせれば攻撃が強くなる」と騙されきっている始皇帝の攻撃にはいちいちワンアクションが挟まれる。エーミールのバイクの腕をもってすれば、避けるのは容易いことだった。
「さあ、さあ、さあっ!……ヴィオさん、さっき言ったことは無しにはなりませんからね!!」
「えーせやから俺なんも言うてへんて、あ、次そこ」
「はいっ!」
 軽口を叩く間にも差し挟まれる正確な指示に従い、グラスナイフが始皇帝へと叩き込まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
阿房宮の入り口門前で『兼元』の一刀を構えます。
水銀も水と同じく蒸気を冷やせば液体になる…はずです。
なので【蒼閃『御神渡』】の冷気で液体にしてしまいます。
可能ならば固体にしてしまえば影響はすくないと思います。
リミッターを解除し限界突破。属性攻撃を付けた突きの攻撃を。
念の為に早業と2回攻撃で【御神渡り】をもう一度行います。

すぐに蒸発はしないでしょうけどダッシュで始皇帝の元へ。
出会い頭に再び全力の【蒼閃『御神渡』】を始皇帝へ放ちます。
今度は貫通攻撃に鎧砕きと鎧防御無視をつけた突き攻撃を。
胸部を狙って突きを放ってみます。
流石に始皇帝の周囲の水銀に影響はでないでしょうけど。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)

水銀は墨ねーがなんとかしてくれるみたいだから安心かな?
僕はその間に準備をしておくとするじぇ!
パフォーマンスで身体機能の性能を上げてから限界突破。
そして多重詠唱しながら重量攻撃と威力維持に継戦能力を。
宮の中に入る準備が整ったら墨ねーと一緒にGO!

扉は全て【禁じ手】で蹴り壊して進むことにするじょ♪
まあ固まった水銀のせいで開かないんだけどねぇ。
始皇帝にもダッシュで懐に入りこんで蹴ってみる。
武器になってる水銀は見切りと野生の勘と第六感で回避。
やっぱり液体を避けながら始皇帝攻撃するの大変だねぃ。
墨ねーとの連携は必須かな。
攻撃も交互に。
僕が攻撃にまわる時は墨ねーがサポートって感じで。




「う。この先が阿房宮……こっからどうするんだじぇ、墨ねー?」
 ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は阿房宮の入り口門前で浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)を振り返る。
 門を開けば、猛毒の水銀蒸気がいっぱいに満たされている。常人ならば扉を開けた瞬間に死にかねない水銀楼閣を前に、墨は兼元の刃を抜いていた。
「……水銀……蒸気……冷やし……液体、……です」
 蚊の鳴くような小さな声で墨は言う。
 ――水銀も水と同じく、蒸気を冷やせば液体になるはずです。
「おっけー。じゃあ、墨ねーの攻撃に合わせて門を開くんだじぇ」
「…………ました」
 ――わかりました。
 小さな小さな声は、けれどロベルタに向かって発せられたもの。故にロベルタは一言たりとも聞き逃さずに笑う。
 二尺三寸三分の大刀を構えて集中する墨の隣で、ロベルタは自身の身体のパフォーマンスを完璧にするために屈伸する。身体機能の限界を上げ、特に武器となる蹴りの軸となる利き足を入念に準備しておく。
 剣を構える墨が薄く目を開く。これから先に満ちるすべての水銀蒸気を凍てつかせようというのだ。自身の限界を突破する必要がある。そして限界突破のためには、己の肉体など顧みてはいられない。すべて、凍てつかせる――それだけを考えて。
こくり、と墨が頷いた。それに合わせて、ロベルタは扉を蹴り破る。
「GO!GOGOGOGOGO!!」
「“響け”……!」
 【蒼閃『御神渡』】。墨の剣技が渦巻く水銀蒸気を凍てつかせる。
蒸気の水銀を液体に戻せればいいが、固体にしてしまえればもっといい。それが墨の目的であった。
 ――水銀は常温で液状を保つ唯一の金属である。液状の水銀を固体にするのに必要な温度は、マイナス38.83度。巫力による超低温が、突き出された刃の先から発せられる。それは魂まで凍てつかせる冷気。敵味方を識別するそれはロベルタには被害を出さない、冷気は勿論墨を害することはないが、それだけの冷気を生み出すための剣技を振るった墨の体は限界を超える。ぶちぶちと血管の切れる音がどこかでする。瞼の毛細血管が切れて、目の前が赤くなる。一瞬気が遠くなりかけた、その意識を根性で現実に引きずり戻し、もう一度超低温の突きを放つ!
 びゅう、と風が吹く。冷たく清涼なそれは毒性の一分もない澄み渡った空気だ。水銀蒸気の全てを凍てつかせたことを確認して、ロベルタと墨とは阿房宮を駆け抜けていく。
「ヘイヘイヘイ、邪魔なんだじぇ!」
 固まった水銀のせいで開かなくなった扉をロベルタが蹴り壊して進み、最後の扉を蹴破ればその先に始皇帝が立っている。ダッシュで懐に入り込み、腹を強かに蹴り上げれば、始皇帝は体をくの字に折り曲げて反吐を吐いた。
「がっ……はぁ!……おのれ貴様、朕を誰と心得て……」
「知らないんだじぇ!今から僕と墨ねーに倒されるオジサン!」
「お……のれぇぇぇ!!」
 始皇帝が操る水銀から液体金属の兵馬俑が放たれる、それを飛び越え、墨が超低温の突き――【蒼閃『御神渡』】を放つ。その刃はぞぶりと始皇帝の胸元に吸い込まれた。
(……取ったッ……!)
 ――だが。
「……朕は、「皇帝」であるぞ……!三皇を超越し五帝を凌駕した、そして今悲願たる不死さえもこの手に入れた……故にこの程度では死なぬ、死なぬ……!」
 ――それは、水銀の不老不死の力ではない。
 ――この程度で死なぬのは、オブリビオンであるからだ。
 けれどその事実は、万能感に良い知性も低下した男には理解できようはずもなかった。
(……さすがに一撃では屠れない……そして、始皇帝周囲の水銀を固めることはできませんか……!)
 けれど【蒼閃『御神渡』】は確かに命中した。ならば身体機能は若干なりとも低下しているはず。墨は兼元の刃を握りなおす。
始皇帝は液体金属兵馬俑を回収し、水銀の大渦を展開する。覇者の気を帯びた水銀は始皇帝の体を覆い、その力を強化する。そして敵たるロベルタと墨に、大渦が襲い掛かる――。
「……ロベルタ、さ……」
「大丈夫なんだじぇ……!」
 墨は大渦を切る。ロベルタはその大渦を回避し、再び始皇帝に肉薄した。放たれた蹴りは、今度は水銀によって受け止められる。
「ハハ、フハハハハハハハ!!効かぬぞ小娘ェ!!」
(う、やっぱり液体避けながら攻撃するのって大変だねぃ……!墨ねーとの連携は、必須かな……!)
「墨ねー!合わせて!」
 墨がこくりと頷いたのを目の端で認めて、ロベルタは再び始皇帝へと蹴り技を放つ、そして、防御のための水銀が蹴った場所へ集中したのを確認して後ろへぐるんと転がった。
(――今度こそ……!)
「行け、墨ねー!」
 水銀がロベルタの蹴りを防御しようと集まる、その瞬間を見定めて。
墨の刃が、始皇帝の胸へと再び突きこまれた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
愚かになったとはいえ油断できないでしょう
ユーフィ・バウム、参ります!

水銀蒸気に対しては、
自慢の【オーラ防御】を体から放出し
体の周囲に纏わせ防ぎます
また、風の【属性攻撃】で吹き散らして
吸い込むことを防ぎましょう
全て防げなくても、【毒耐性】もある体です。
【気合い】十分に凌いで見せましょうっ

始皇帝との戦闘では、
自在に変形する相手の剣を培った【戦闘知識】に
天性の【野生の勘】で【見切り】、
自然と戦闘が培った【怪力】での【功夫】の打撃を
打ち込みます

そして、正面からの攻撃しか能がないと思わせたところで
【ダッシュ】で背後に回り変化をつけて攻撃
そして――上です!【ジャンプ】からの
《トランスクラッシュ》で勝負ッ!




(愚かになったとはいえ、相手はオブリビオン。油断できないでしょう……)
「ユーフィ・バウム、参ります!」
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は拳を握って叫び、気合いを入れると阿房宮の廊下を駆けていく。
 オーラによる防御の膜を全身に覆う。密林で育ち、蛮人と名乗る彼女のオーラを操る力は一朝一夕では身に着けられないほどに高く、そのオーラは至高と呼べるほどに練りこまれている。さらに己を中心に風をふかせることで蒸気を散らし、猛毒を吸い込むことを防ぐ。防ぎきれず吸い込んでしまっても、ユーフィのの肉体は毒には耐性がある。水銀蒸気にはさほど煩わされることなく阿房宮を進み、水銀楼閣の最奥、始皇帝の待ち受ける間へと到着していた。
「フハ、フハハハハハハッ!!来たか、何とかという遊牧民族めが!平伏せぃ、朕は三皇を超越し五帝を凌駕したる始皇帝なるぞ!!」
「かつて偉大なる為政者であったその称号に敬意を表して名乗りましょう、私はユーフィ・バウム。あなたを倒しに来た猟兵であり、そして……蛮人、です!」
「フハハハハ!!やはり、やはり兵馬俑どもに脳は要らぬか!ただの蛮族如きを朕の阿房宮に入れたとはなぁ!……下がれ、小娘。朕は今機嫌がよい、悲願であった不老不死が遂に成ったのである!断りもなく朕に謁見した不届き、今であるならば許してやっても――」
「……残念ですが。あなたの不老不死は、水銀によるものじゃない」
「何だと?」
「あなたが老いも死にもしなくなったのは、水銀が不老不死の妙薬だったからなんかじゃありません。それはただの猛毒。あなたが老いも死にもしないのは、あなたが人を辞めてオブリビオン(かいぶつ)に成り果てたから。だから私はあなたを殺しに来たんです」
「戯言を……!やはり蛮族の言葉など聞く価値は無し!一刀にてその首落としてくれようぞ!」
 愚かなる皇帝は吠えると、水銀から剣を作り出して大きく薙ぎ、ユーフィの首を狩らんとする。ユーフィはこれまでの戦いで培った戦いの知識でもってそれを避け、次々と繰り出される斬撃を天性の野生の勘で見切って躱して行く。
「はぁぁッ!!」
 ユーフィの拳は、自然とそして戦いの中で培われた経験によって磨き抜かれたものだ。斬撃の合間を縫って始皇帝の胸へ向けて強大な力を乗せて拳を繰り出せば、ボゴォと肋骨を砕いて拳が胸に食い込んだ。折れた肋の中から腕を引き抜き、更に拳を叩きこむ。
「ぐぉぉっ……おのれ、おのれェぇッ!!」
「おかしいとは思いませんか? 為政者にすぎない、剣士でも武闘家でもないあなたが戦えている事そのものが!水銀に、そんな力がありましたか!?」
「黙れぇッ!!訳のわからぬ事を吠えるな――そう、其方は儒か!?ならば、疾く坑せねばならぬな、儒は坑すべし!」
(……まるで話が通じていない……ここまで愚かなんですか……!)
 水銀の剣と功夫を重ねた拳が幾度も重なる。野生に培われた勘がでもって斬撃を避け、ユーフィは幾度目かの拳を始皇帝へと叩き込んだ。
「ハハ、ハハハハハハハハ!!いい加減その単調な拳には飽いたわ、儒を語る蛮族めが!」
 水銀の剣が拳をすり抜け、ユーフィ―の胴を薙ぐ――薙がんとする、その一瞬。
「正面からの攻撃しか能が無いって、そう思いました?」
 ユーフィは体をひねり、始皇帝の背後に回り、その背へと肘を叩きこむ。
「がッアアああッ!?」
「そして――上ですっ!!」
 椎骨を叩き折られた始皇帝が体を強張らせる、その瞬間にユーフィは阿房宮の天井へと飛び上がり、その全身を使って始皇帝へと落下する!
「これで……終わりですっ!何もかも!」
 ――これぞ、【トランスクラッシュ】!!
単純にして勢いのついた重いボディアタックが始皇帝の全身の骨を粉々に砕き、水銀楼閣たる阿房宮の床をも破壊する。
「が……あ……ッ」
 阿房宮の床に横たわる男の指が、水銀となってどろりと溶けた。
水銀楼閣の中で、始皇帝は全身に回った水銀に侵され、水銀と一体化して消えてゆく――その亡骸が全て水銀に変われば、ユーベルコードで練り上げられたこの水銀楼閣、阿房宮も消え失せる。
全ては夢幻。知性と引き換えに手にした力に溺れた一人の男は、どろどろと四肢から流れ落ち、水銀となって消えてゆくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月12日


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#封神武侠界
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#殲神封神大戦
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#殲神封神大戦⑥
🔒
#始皇帝


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト