殲神封神大戦④〜逆臣討伐〜
遡ること数十分前。
「火事だー!」
建物からもうもうと立ち昇る煙に近隣の住民達は家財道具も放り出して慌てて逃げ出す。
その逃げた先ではなぜか銃火器を持った役人が平然と煙が上がる街を眺めていた。
「お役人さん、何をしてらっしゃるので! 早く火消しの者を……」
突然響いた銃声が住民の嘆願をかき消す。住民の頬を掠めた銃弾が役人の持つ銃口から放たれたのは、そこから煙が浮かんでいることが証明していた。
「すまんなぁ、俺の財を守るにはこれしか無かったんだ」
醜悪な笑みを浮かべる役人の所業に、周りにいた住民達は混乱して四方八方に逃げ出す。
腰を抜かし、這いつくばりながら逃げようとする者の足に弾丸を撃ち込んだ役人は、痛みで喘ぎ転がる住民を足蹴にして高笑いを発した。
「長沙にある香炉に阿片を混ぜ込んだ犯人が分かりました」
ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう言って集まった猟兵達が座るテーブルの中央に人の顔が描かれた紙を並べ置いた。
「下手人は全員、長沙にいた役人でした。おそらく編笠の口先八丁に乗せられて反乱軍の先鋒となったとみていいでしょう」
彼らは編笠から受け取ったと見られる銃器や義手砲といったコンキスタドールの武装で、煙から逃げてきた長沙の住民に発砲を繰り返しているという。
前に進み続けるなら蜂の巣に、後ろに逃げるなら阿片の餌食に。奸臣達が行っている清々しいほどに邪悪な挟み撃ちにルウは思わず苛立たしげに息を吐いた。
「このコンキスタドール由来の銃火器の仕組みは不明ですが、弾を補充する必要がないらしく、何の備えもなしに無傷で一気に近づいてぶん殴る……というのは難しいでしょう」
そのためこちらも遠方から銃火器を用いて、早撃ちして相手の武器を弾き飛ばしたり爆発四散させたり……というのが有効手であろう。
「こちらが打倒すれば多分すぐに掌を返して保身に走ってくるでしょうねこの輩は。自分に従わなかったら殺すと脅された……とか」
そう言ったルウは親指を立てた手を自分の首の前で横切らせた。
「ちなみに、この所業をトップの方に報告したら『やって構わん』と許可を得られました。手加減は不要ですので、思いっきりやってきてください」
平岡祐樹
裏切り者にはそれ相応の制裁を。お疲れ様です、平岡祐樹です。
このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。
今案件にはシナリオボーナス「敵の射撃や砲撃に遠距離攻撃で対抗する」がございます。
これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
第1章 集団戦
『私服を肥やす奸臣達』
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POW : 御馳走を食わせるから…み、見逃してくれぇ…!
【今までに口にしてきた豪勢な食事】を給仕している間、戦場にいる今までに口にしてきた豪勢な食事を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD : 金なら幾らでもやる!だから頼む命だけは!
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【不正により懐に蓄えてきた財産】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 協力すればどんな願いも叶える!儂の命だけでも…!
【自身を助けたくなるような魅力的な条件】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
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パティ・チャン
■WIZ
こ、これは……このような奸臣を許しおくことは、近衛騎士たるこの私、並びに家名において許すわけには参りません!
釣られる賄(まいない)などありません!
とはいっても。遠距離からの攻撃でしか有効な手を打てない、とは妖精族であることをこの時ばかりは呪いたくもなりますね。
【UC発動】
我が分身達に命じます。
急ぎ飛んで([空中機動]使用)、奸臣共を包囲しなさい!
といっても、手の内が知られてはいけません。
[迷彩]での隠密行動は怠りなく。
包囲を完成させたところで、急ぎ金打!
「恥を知りなさい!官吏の財や地位は、民あってのモノ、と心得なさい!」
(頭から湯気立てる勢いで怒りながら)
※連携・アドリブ共歓迎
「こ、これは……このような奸臣を許しおくことは、近衛騎士たるこの私、並びに家名において許すわけには参りません!」
自身の優位を疑わず、銃器を杖代わりにして高笑いする奸臣達を物陰から眺めるパティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)は頭から湯気立てる勢いで激昂していた。
アックス&ウィザーズにある小さな王国の近衛騎士を代々輩出している家の娘である彼女にとって、自らの命惜しさにに本来守るべき民を差し出す行為など蛮行以外の何物でもない。
今すぐにでも飛びかかりその首を取りたいところだがパティの体躯はフェアリーらしい、人間の掌に乗れるほど。あの弾丸が一発でも当たれば全身が四散してしまうのは目に見えている。
「この時ばかりは呪いたくもなりますね」
歯軋りしつつも、パティの視界の中央から奸臣が無くなることはない。逃す気もない。
「……我が分身達に命じます。急ぎ飛んで、奸臣共を包囲しなさい!」
自らを模した、武装した妖精達がパティの号令で隠密しつつ展開する。
相手に手の内が知られてはならない。気づかれる前に仕留めなければ、やられるのはこちらだ。
「さて、この辺にはもう来んだろう。他の場所にいくとするか」
奸臣達がそんな話を始めた頃に包囲が完了したとの一報が入る。
パティはすぐに手に持っていた剣を鞘から少し出し、勢いよく戻すことで刃と鍔を打ち合わした。
「む?」
突然響いた音に足を止めた奸臣達の元へ、空気を振るわす雷撃が落ちる。
その直下にいた者は当然のことながら即死したが、外周にいた故に腰を抜かしただけに留まった奸臣はパティの姿を認めると手を伸ばし、合わせ、神に祈るようにうずくまった。
「おい、小さき者よ! 儂に協力すればどんな願いも叶える! だからどうか、どうか儂の命だけでも……!」
奸臣の命乞いに目を見開いたパティはすぐに眉間に皺を寄せ、目前に這いつくばる情けない様を睨みつける。
「恥を知りなさい! 官吏の財や地位は、民あってのモノ、と心得なさい!」
再び金打が響き、特大の雷が落ちた。
大成功
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夕闇霧・空音
まぁ…安全な場所から狙おうとするのは楽しいでしょうね。
【アドリブOK】
もしもーし、そこの役人さん?
そうやって暴れてるうちにあんたらのだーいじな物を盗ってっちゃおうかしらー?
(自分の財が脅かされると聞けば、他の民衆は放っておいて私を狙いに来るはず。まぁ所詮は素人の射撃だから避けるのは簡単だろうけど…囲まれたときは)
悪いけど、一斉に撃ちでもしない限りは避けられちゃうかな?
(なるべく一斉に撃ってきたときにユーベルコードを発動したいわね。それで銃弾を反射し、敵を一網打尽にする。)
敵に銃口を向けるということは、自分も向けられる覚悟あってのものでしょう?
で、そろそろあんたたちのいちばん大事な「命」を貰うわ
「まぁ……安全な場所から狙おうとするのは楽しいでしょうね」
夕闇霧・空音(凶風・f00424)は頬杖をつきながら屋根の上に座っていた。
「もしもーし、そこの役人さん? そうやって暴れてるうちにあんたらのだーいじな物を盗ってっちゃおうかしらー?」
「何!?」
「自分の財が脅かされる」と聞けば他の民衆を放って自分を狙いに来る、という予想は的中し、奸臣は顔色を変えて空音に銃口を向けた。
まぁ所詮は素人の射撃だから避けるのは簡単だろう……とたかを括りながら転がると先程まで自分がいた板材が爆ぜる。
「ちっ、外したか!」
「へぇ……やるじゃない。でも当てなきゃ意味はないのよ?」
挑発に顔を真っ赤にした奸臣は何度も引き金を引くが、空音が走り去った場所にしか当たらない。
「悪いけど、その程度の腕前なら誰かと一斉に撃ちでもしない限りは避けられちゃうかな?」
「ぐっ……おい、誰か助けろ! お前達も他人事じゃないぞ!」
敵の提案に乗るのは癪だが、自分の財には変えられないと奸臣は援護を求めて空音から目を離す。
その隙を逃さず、一瞬で距離を詰めた空音は腕から生やした氷の爪で銃を弾き飛ばし、驚愕の色に染まった奸臣の首元に突き立てた。
「で、そろそろあんたたちのいちばん大事な『命』を貰うわ」
「ひっ、『金なら幾らでもやる!だから頼む命だけは!』」
その言葉を聞き、同胞に恩を売ろうと集まった別の役人達がほぼ一斉に弾を放つ。その銃声に「助かった」と時期尚早に安堵した奸臣は空音が口角を上げたことに気づけなかった。
『防御兵装展開…絶対氷壁発動!』
激しい冷気で形成された氷壁に跳ね返った銃弾は放たれた時とほぼ同じ軌道を通り、撃った奸臣達の頭や胸を貫く。
「敵に銃口を向けるということは、自分も向けられる覚悟あってのものでしょう? ……さあ、次はあなたの番よ」
声にならない悲鳴をあげて逃げ出そうとした奸臣の首から鮮血が迸る。地面に倒れた奸臣は何かを述べようとしたが、か細い呼吸音しか出てこなかった。
「『こんなはずじゃなかった』とでも言いたいのかしら。残念ながら、敵の口車に乗った時点であなたの格は決まっていたわ」
そう言い捨てた空音は血溜まりに沈む奸臣の反応を待たずに次の標的の元へ歩き出した。
大成功
🔵🔵🔵
楊・宵雪
「あらあらまあまあ。自分の欲望に正直な方なのね
遠距離戦用の装備とUCを準備するわ
[空中浮遊]で地に降りないようにして敵を近づかせない
まずは[誘惑]で投降すれば好条件で受け入れられるように口車にのせて住民への暴行を止めるわ
聞き入れられないなら[呪殺弾]の[気絶攻撃]で威嚇してもいいわね
アメとムチよ
引きずり出してUCの射程になるべく多くを入れたら、UCを発動
「欲しいだけあげるわ。縄と鞭を、ね
「あらあらまあまあ。自分の欲望に正直な方なのね」
下弦の月を連想させる双眸を細めて微笑む楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)が空を舞う姿に奸臣達は住民を詰る手を止めて見惚れる。
その視線が邪な物を抱いていることを感じつつ、それに対する嫌悪をおくびにも出さずに宵雪は奸臣達に蜘蛛の糸を垂らした。
「……今投降するなら司馬炎さんに口利きすることが出来るわ。この一件は編笠に脅され、仕方なくやっただけ。阿片も効果が低い組み合わせを、弾もわざと急所を外して」
「はっ、風前の灯となっている晋の長に口利きなど! すでに樊城には南蛮門より押し寄せたオブリビオンの大群によって蹂躙されてしまったのだろう? 洛陽が落ちるのも時間の問題よ! ……そうだお主、今なら儂の愛妾に加えてやってもよいぞ? 最期まで可愛がってやろう」
宵雪の救いの手を最後まで聞かず払い除け、下衆な笑みを浮かべた奸臣のすぐ後ろの壁に呪殺弾が炸裂する。
「長すぎたみたいだから言い直してあげるわ、今投降すれば命だけは助けてあげる」
申し出を断られた上に馬鹿にされた奸臣の顔は状況を理解するたびにどんどん赤くなった。
「儂の有情を蹴るなど恩知らずめ! 良かろう、司馬炎が来るのを冥土で先に待っているがよい!」
パラパラと砕けた壁材が地面に落ちる中、奸臣は舌打ちをして宵雪に銃口を向ける。この分だと宵雪が飴と鞭を使った交渉術を使ったことも足元から住民が逃げ出していることも全く気づいていないだろう。
「……どの口が言っているのかしら。交渉決裂ね。でも『春の陽射しは誰にでも平等に享受できる贅沢なのよ』」
宵雪がかざした薄紅色の佩玉から温かい光と花の香りが漂う。それを浴びた奸臣達は引き金を引く間も無く崩れ落ち、その場で大きないびきを立て始めた。
「欲しいだけあげるわ。縄と鞭を、ね」
ルウの言い方だと司馬炎か役人のトップは彼らを処罰してもよい、と猟兵達に権限を与えてきたらしいが、そもそも奸臣達を今の地位にさせたのは彼らとその直属の部下達であろう。
自分が蒔いた種は自分で刈りなさい、と宵雪は武器を没収し、縄で捕縛するだけに留めて衛兵達に押し付けた。
大成功
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葛城・時人
こういう奴は倒してしまうに限る
普通ならふんじばるのが妥当だろうけど逃がしたら
また同じことやらかす
だから…始末は猟兵の仕事だね
そっと物陰から機を窺う
もしもしくじったらかなり不利になるから気を付けて
見えない位置のギリギリまでは近寄ってから
UC「白燐大拡散砲」を起動
俺のククルカン(白燐蟲)たちが場を覆い尽くして
突撃するから銃は落とせる
もし無理でもすぐ「白羽蟲笛」からも出して叩く
万一撃たれても拡散砲に癒しがついてるから俺は平気
銃は全て直ぐに拾い長剣を突き付けて
「お前たちに明日はもうこないよ」
とは言っても多分ククルカンにやられてるから
介錯してやるだけだろうと思うけど
「これで終わりかな…?居たら次もだ」
衛兵に引かれ、縄で縛られた役人達が牛車の中に詰め込まれていく。
その様子を葛城・時人(光望護花・f35294)は冷めた目で見送っていた。
たしかに普通ならふんじばるのが妥当だ。しかし逃がしたら彼らはまた同じことをやらかすだろう。
「だから……始末は猟兵の仕事だね」
だが今からあの場に割って入り、介錯する気はない。もうすでに手に渡ってしまったからには彼らのやり方に従うのが筋だろうから。
背を向けた時人は未だに発砲音が聞こえる区画へと走り出した。
「はっは! 死にたくなければ我に跪け! 財を差し出せ!」
同胞が捕まっているとは知らず、ガトリング砲を担ぎながら我が物顔で歩く奸臣を発見した時人は気づかれる前に物陰に隠れる。
高速で大量の弾丸を連射できるそれの前でしくじれば不利になるのは目に見えている。慎重に事を進めるべく、時人は息を潜めた。
「おいおい、どこに隠れやがったぁ? ここの建物全部蜂の巣にしたら出てくんのかぁ?」
ただでさえ大きかった声がさらに大きくなり、重い金属の塊を下ろした音がしたところで時人は声を上げた。
『ククルカン敵を討て!そして光で皆に癒しを!』
「誰だ!」
聞こえた声に奸臣が振り返るとほぼ同時に純白の羽毛と翼を持つ蛇が大通りに流れ込んでくる。高台から見てれば天の川が地上に現出したように見えた突撃は、視線を離していた奸臣が慌ててガトリング砲に飛びつくまでにその体を押し流した。
肉を噛みちぎる音と痛みに喘ぐ声が聞こえてきたところで時人が隠れていた路地から出てくると、大量の蛇に全身を噛まれた奸臣が汗と涙と土で顔を汚しながら嘆願してきた。
「お、おい! 『金なら幾らでもやる!だから頼む命だけは!』 助けてくれぇ!」
どうせ彼らの財は弱者を弄び、騙して積み上げてきた物だろう。
「お前たちに明日はもうこないよ」
そう告げて時人は奸臣の首を剣で一突きし、とどめを刺した。放っておいても良かったが、まだ避難しきれていない者がいたら彼らに醜い断末魔の叫びを聞かせてしまうことになるからだ。
「こういう奴は倒してしまうに限る」
蛇達が脂肪分が多いごちそうに舌鼓を打つ中、時人は蛇に轢かれた銃火器を拾い上げ、砂埃を払う。
「これで終わりかな……? 居たら次もだ」
そして息を吐き、あちこちから湧き出ていた煙が止んできた長沙の街を見渡した。
大成功
🔵🔵🔵