旋律響く此の佳き夜に
●柔らかなる旋律の夜
封神武侠界の人界にて、官位を持ついわゆる高貴な身分主の別邸では、宴の準備が進められている。
この世界のために働いてくれる猟兵たちに感謝をいだく屋敷の主は、様々な料理、甘味、果物、酒などを、各地から食材を取り寄せて用意し、笛、弦などの腕の確かな奏者を集めた。
大広間には、赤いクロスの掛けられたいくつもの卓と奏者たち。いつもよりもやや着飾ることを許された侍女たちは、宴の準備に忙しそうだ。
流れてくる旋律は、明るいが耳障りの良いもので。音量の差はあれども、この別邸内のどの部屋にいても耳に届くことだろう。
広間以外にも、卓子と寝台のある個室も用意されており、希望すれば気のおけない者同士水入らずで過ごすこともできる。食べ物や飲み物を運んだあとは、呼ばない限り侍女が来ることはない。遠くから聞こえてくる演奏と歓声が、静寂を際立てる。
寝台は、天蓋のついた大きなものもあるので、お腹がくちて酔いが回ってそのままうとうとしても安心だ。
カウチのような寝台もあるため、酒を飲みながら楽な姿勢で語らうこともできよう。
卓子……一般的に想像のしやすい机と椅子の他に、長椅子の真ん中に卓のある形の椅子もあるので、料理をつまみながら同じ景色を眺め、語らうこともできよう。
室内だけでなく、庭園の東屋や燈籠に照らし出される池付近の幻想的な景色の中、過ごすのも良きもの。
この夜を、この世界で過ごしてみるのもまた、一興。
●ご案内
グリモアベースに佇む彼女は、いつもと違う衣服を纏っていた。
十二単ではなく、漢服や華服と呼ばれることもあるその服は、彼女が案内する世界を物語っていた。
「いらせられませ。封神武侠界で夜を過ごしてみませぬか?」
いつもと同じ調子で微笑む紫丿宮・馨子(仄かにくゆる姫君・f00347)の背には見慣れぬ翼があるが、それは横においておいて。
「封神武侠界の高貴な方が、猟兵達の働きに感謝をと、別邸を開放してくださいました」
大広間で食べて飲んで歌って楽しく過ごしたり、庭園の東屋や池の近くで過ごしたり、希望があれば個室で親しい者達と過ごすこともできるという。
「料理はもちろんのこと、甘味も果物も飲み物もお酒も、とても美味しゅうございますよ」
美しい調べと夜がもたらす雰囲気に、酔うなという方が無理だろう。
「――いかがでしょうか?」
柔に微笑んだ彼女の手には、グリモアが出現していた。
篁みゆ
ご無沙汰しております、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
封神武侠界の高貴な方の別邸で、素敵な夜を過ごしてみませんか。
大広間でわいわいしたり、庭園や個室でゆったりすごしたり。極上の旋律が響き渡る中、素敵な夜を。
料理や飲物は本格的晩餐っぽいものから軽食、甘味、果物まで色々対応します。
飲酒・喫煙はステシ年齢二十歳以上の方のみとさせていただきます。
古代中国良くわからないよという場合は、何となくこんな感じ、で書いていただければそれっぽくマスタリングさせていただきます。
●いろいろなことをするプレイングよりも、したいことを絞ったプレイングのほうが濃い描写ができると思います。
過ごす場所の指定がある場合は以下の記号をご利用ください。
・大広間=大
・個室=個
・庭園=庭
プレイング内容で過ごす場所が判断できる場合は、記入は不要です。
指定がない場合は具体的な描写をしないか、こちらで判断させていただきます。
●ご注意
採用は少人数/組の予定です。参加してくださったすべての方を描写できず、お返ししてしまう可能性があります。
プレイングの受け付けは、OP公開と同時に行います。締切はタグやマスターページでお知らせいたします。
提示されているP/S/Wの選択肢は気にせず。
ただし公序良俗に反したり著作権的なものに触れるようなものは採用できないことがあります。
年齢制限のかかるようなラブラブは直接的な描写はいたしませんが、らぶらぶな雰囲気をマシマシは可能です。
●同席について
お誘いがあった場合には篁の手持ちのキャラが同席させていただきます。
面識がなくても大丈夫ですが、過度な確定ロールには内容次第で対応できない場合もあります。
話し相手、一緒にお酒を飲む相手、悩みを聞いて欲しいなど、おひとりの方でも必要であればお声掛け下さい。
●お願い
単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
オーバーロードに関しては、マスターページに追記しております。
それでは、佳き夜を。
第1章 日常
『美しい調べに』
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POW : 演奏に耳を傾ける
SPD : 演奏に耳を傾ける
WIZ : 演奏に参加する
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アウレリア・ウィスタリア
馨子、お久しぶりです
ボクはボクの片割れと再会できてから特に変わってません
まだ家族は揃っていません
けど、馨子とすこし話したかった……それだけです
でも馨子の他にも話をできるともだちも増えました
馨子と話をできたから、だと思います
ありがとうございました
えと、それじゃ
ボク……私はアナタに感謝を歌で伝えたいから
響く旋律に合わせて奏でよう
私の気持ちをそのままに
こういうときの服装やお料理は私にはよくわからないから
だから、せめて歌いたい
アドリブ歓迎
大きな宴会場の端の方の卓子を選んだのはアウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)ではなく、彼女が声をかけた相手――紫丿宮・馨子(仄かにくゆる姫君・f00347)だった。
壁際の卓子はあまり目立たず、喧騒の端に存在しているようで。それでいて奏者たちの近くであるからして、旋律がふたりの耳朶を震わせる。
アウレリアにとってはこの世界はもちろんのこと、宴会形態も赤を中心とされた宴会場の雰囲気も、並んでいる料理も肌を撫でる旋律にも馴染みはない。けれども誰よりも『音楽』を魂の一部としているアウレリアにとっては、この耳慣れぬ旋律にもそれが音楽であるというだけで心地よさを感じ、なおかつ自らの知らぬそれに心惹かれる部分もあった。
そして目の前にいる友は、服装こそいつもと違うもののそれが『彼女』であることに変わりはなく。その事実がアウレリアを安心させていた。
「馨子、お久しぶりです」
「アウレリア様、お久しぶりです。お会いしたかったですよ」
ゆるりと笑みを向けられて、以前こうして話をしたことを思い出す。
「あれから……ボクはボクの片割れと再会できてから特に変わってません――まだ家族は揃っていません……」
報告するほどの近況はないとアウレリアは思う。けれども。
「けど、馨子とすこし話したかった……それだけです」
遠慮がちに呟かれたその言葉に馨子は頷き、料理を運んできた侍女に気づいて配膳を指示する。
侍女が去ったあとの卓子には、小さ目の蒸籠(せいろ)の中に小籠包や粽子(ちまき)、皿には葱油餅や油条の他にも、たくさん野菜の入った七宝羹(スープ)、薬味の入ったワンタンの元宝湯、月餅や千層酥などの餡入り甘味や新鮮な茘枝など、目だけでお腹いっぱいになってしまいそうなほどの料理が並べられていた。
「わたくしも、アウレリア様とお話したいと思っておりました」
小皿に料理を取り分けながら、何が入っていてどんな味がするのか説明を添える馨子。彼女の手から小さな椀を受け取ったアウレリアは、七宝羹の汁をすすってその暖かさに小さく息をついた。
「でも……馨子の他にも話をできるともだちも増えました」
身体に熱が巡って、これまでの日々がじわりじわりと思い出される。
何も変わっていないわけではないと。自分は立ち止まっているわけではないと。
「馨子と話をできたから、だと思います」
それは目の前の彼女のおかげだと思うから――ありがとうございました、アウレリアはその琥珀色の瞳で彼女をまっすぐ捉え、口元に小さく笑みを浮かべた。
「わたくしはただ、アウレリア様とお話をする楽しい時間をいただいただけだというのに……」
はにかむ彼女のすすめで羹の中の野菜を口へ。七種入っているという野菜の味が互いを殺し合うことも強く主張することもなく、調和されていて、温まると同時になんだか安心できる味だ。
「特に変わらないことも、悪いことではないと思うのです」
葱油餅を口に運ぶアウレリアに、馨子は微笑みながらそう告げる。
「アウレリア様と大切な片割れ様の関係が、良好なまま保たれているという証左でございましょう?」
「……、……」
なるほど、そういう考え方もあるのかと、アウレリアはこくりと頷いた。
見たことのない、石や金属、陶器を使った楽器で奏でられる旋律の中に、箏や笙、太鼓の音が混ざる。
温かい料理を、他愛ない会話をしながら、楽しくいただく時間。
しばらくして、曲が変わった。二胡のような弦楽器が主旋律となり、ゆったりとした感傷的な曲を奏でている。
「ボク……私はアナタに感謝を歌で伝えたいから」
(私の気持ちをそのままに、響く旋律に合わせて奏でよう――)
告げて立ち上がったアウレリアを、馨子は止めはしない。奏者たちの元へと歩み寄り、アウレリアはその音域広く感情豊かな歌声を紡ぐ。
感情表現が苦手な彼女は、これまでも歌でその気持ちを表してきた。歌は何よりも、彼女の感情を豊かに表現する手段なのだ。
「ほぅ……」
奏者の演奏と彼女の歌声の親和性が高まっていくのを、馨子はうっとりとしながら見つめ、耳を傾けている。
奏者たちもまた、アウレリアの類稀なる歌声に刺激されたのか、即興で彼女に合わせる。彼女もまた、即興で彼らに合わせる。
突如降臨した歌姫の紡ぐ天上の旋律に、宴会場内の者達は皆、言葉を奪われてただただ耳を傾けていた。
この世界の、こういう時の服装やお料理はわからないからと。だからせめて歌をと、彼女は考えたのだろう。
ならばこのあと、就寝までの僅かな時間だけでも、彼女にこの世界の雰囲気を深く感じてもらいたくて。馨子は持参した自身の華服を彼女に着てもらおうと考えているのだった。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
【狼兎】
個
到着早々上着を紫崎君に預け
天蓋ベッドにぽふっと飛び込み
えへへ、ふわふわだぁ
眠くなっちゃいそう…
わかってるよぅ
お料理なにが来るかな?
侍女さんは僕が笑顔でお出迎え
ありがとうございます
わーすごーい!美味しそう!
本場の中華ってやつ、かなぁ?
卓子に並べられた料理に瞳を輝かせ
しかし数秒ほどなにかを考えるように固まった後
満面の笑顔で料理を一掬い紫崎君へ
えへへ、いつものお礼
最初の一口は紫崎君がどうぞー
食べさせてあげるね
あ、バレた?
僕でも食べれそうー?
※辛いのが苦手
じゃあ僕それ食べるー!
ご飯食べてすぐは太っちゃうし…
暫くゆっくりして、日付変わる前くらいに寝たらいいかな
寝る時僕が奥だからね!(添い寝前提
紫崎・宗田
【狼兎】
個
澪の動きを眺めつつ二人のコートを片付けながら
おい、まだ寝るにゃ早ェぞ
この後飯も来るんだからな
他人と関わるのは苦手だ
だから基本スタッフの対応は全て澪に任せる
代わりに料理を卓に並べるのは俺が担当
へぇ、流石に豪勢だな
ああ、そういやお前もこの世界は初めてだったか
俺も流石に本格的なのは初めてだな
UDC辺りにも中華料理屋はあるが
ある程度味覚を合わせるようにアレンジされてるらしいからな
甘味は苦手だが中華のような味付けはそれなりに好みで
表情にも僅かに期待が浮かぶ、が
あ? 礼?
……お前、辛いのが無いか毒見させようとしてるだろ
まぁいいが
気になるならほれ、こっちなら辛くもなんともねぇよ
へーへーわかってるよ
通された部屋は、珍しさ半分馴染み半分。西洋のお城とはかなり風合いは異なっていた。
白い壁に模様のような凝った四角い窓枠。中にはまぁるい窓。窓の向こうに広がるのは、薄闇。
「わぁいっ」
コートを紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)に預けて栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が一目散に向かうのは、部屋の奥にある天蓋付きの寝台。
西洋のお城のそれとは異なり、茶色に近い黒赤のフレームをよく見れば、精緻な細工が施されている。金銀などの目立つ細工ではないが、その落ち着きと色合いが室礼とマッチしていた。
「えへへ、ふわふわだぁ」
馴染みのある炎のような赤い紗幕は降ろされてはいないが、寝台の寝心地はドイツのお城のそれに勝るとも劣らない。
「眠くなっちゃいそう……」
ふんわりと、けれどもしっかり身体を受け止めてくれる寝台に体重を預ければ、澪の意識はそのまま深いところへひっぱられてしまいそうで。
「おい、まだ寝るにゃ早いぞ」
「!!」
「この後、飯も来るんだからな」
そんな澪の意識を引き戻したのは、二人分のコートを衝立に似た衣紋掛けに掛ける宗田の声。
「わかってるよぅ……」
視線を向けていなくとも、衣擦れの音で澪が起き上がるのがわかる。
「お料理なにが来るかな?」
ふたりでまあるい卓子に添えられた椅子に腰を掛ける。自然と、向かい合ってではなく隣同士――肩の触れ合う距離ではなく、視線を向ければ顔が見える角度で――座って。
聞こえてくる楽の音は、この雰囲気に自然と馴染んでいる。緩やかに旋律を身体に取り込みながら室内を改めて見渡せば、馴染みがあるようでそれとは違う室礼が特別感をもたらし、心が沸き立っていった。
「ありがとうございます。すごーい、たくさん!」
しばらくして聞こえてきた入室の許可を求める声には、澪が応対に出た。片手よりも少し多い人数の侍女がそれぞれ盆を手に、ぞろぞろと入室してくる。
この卓子にお願いします――澪の指示を受けて素早く料理を並べていくさまは、さすがプロと言わざるを得ないほどスムーズで。食べ方に注意のある料理の説明を澪にしてから、侍女たちはすぐに部屋を出ていった。
他人と関わるのが苦手な宗田は澪が侍女たちを送り出すのを見て、ふたりの食べやすいように料理を並べ直す。もしかしたら並べ方や食べる順に決まりなどあるのかもしれないが、ふたりきりなのだ。誰に咎められることもあるまい。
「わーすごーい! 美味しそう! 本場の中華ってやつ、かなぁ」
「流石に豪勢だな。ああ、そういやお前もこの世界は初めてだったか」
ぴょこんと椅子に腰掛けて、卓上の料理に目を輝かせる澪。正直侍女に説明を受けても、その料理名が何を指しているのかわからないものもあったが。見る限りではどれも美味しそう。
「俺も流石に本格的なのは初めてだな」
宗田の鼻をくすぐる香辛料の香りは強く。
「UDCアースあたりにも中華料理屋はあるが、ある程度現地人に味覚を合わせるようにアレンジされてるらしいからな」
本格的な異国の料理の味を求める者もいれば、そのままではどうしても味覚に合わない者もいる。ある程度現地の人々の受け入れやすい味に整えるのは、必要な戦略と言えよう。
日本でも昔は調味料が乏しく味付けは単調であったというが、この世界ではどうなのだろうか。
「……、……」
つい先程まで瞳を輝かせていた澪の動きが止まる。チラチラと視線は料理の上を行き来して、そして箸を手に取り。
「えへへ、いつものお礼。最初の一口は柴崎君がどうぞー。食べさせてあげるね」
中華の味付けはそれなりに好みであり、わずかに期待の表情を浮かべている宗田の前へと澪が差し出したのは。
「あ? 礼?」
箸でつまんで差し出された料理を見て、宗田にはピンと来た。澪の考えていることなんてお見通しだ。
「……お前、辛いのが無いか毒味させようとしているだろ」
澪が選んだのは、明らかに辛そうな赤いソースのかかった肉だったものだから。
「あ、バレた?」
「まあいいが」
澪が辛いものが苦手なのを知っているからして、悪態をつきつつも宗田は澪からの『あーん』を受ける。
刻みネギなどが入ったソースは若干あとを引くピリ辛さだが、鶏肉はほろほろと口の中で溶けて。
「ん、こいつはお前には少し辛いかもな」
口の中に広がる旨味を堪能しつつ、宗田は魚と鳥のあんかけを一口。続いて澄んだ色の羹(あつもの)も一口。豆や穀物のたくさん入った椀からも一口。
「僕でも食べれそうなのどれかなー?」
「ほれ、これとこれとこっちのなら辛くもなんともねぇよ」
海老のチリソースがけや酸辣湯など宗田の知っているものは味の想像がつくが、それ以外は食べて確かめるしかない。
しかし外からの客人に合わせて用意されたのか、辛い料理ばかりではなかった。
魚と鶉(うずら)のあんかけ、雲呑が元宝という昔のお金に似ていることが名付けられた元宝湯、ハト麦や小豆、蓮の実、龍眼やオニバスの実を煮たスープ、生煎饅頭やちまきなどは辛くはない。
「じゃあ僕それ食べるー!」
明らかにデザートらしき甘そうなものは澪に任せるとして、宗田は甲斐甲斐しく小皿に料理を盛り付けて澪へ。彼がどれくらいの量を一度に食べられるかは熟知しているからして、気になったものをすべて食べるにはどのくらいずつ盛ったほうがいいのか計算しながら。
「んー! おいしー!!」
ふうふうと息を吹きかけて様々な料理を口にしては、美味しいと述べる澪。その時の幸せそうな顔を見るのもまた、良いもので。
「これ好きだなぁ。もう一個食べようかなぁ」
「ほどほどにしとけよ。食後に甘いものもあるんだからな」
「はーい」
卓子の奥には豆腐花や薩奇馬やごま団子などの他に、新鮮な茘枝なども並んでいる。ジャスミン茶で口内をすっきりとさせながら、多種多様の料理に舌鼓をうつのはなんと贅沢な時間だろうか。
「ご飯食べてすぐは太っちゃうし……しばらくゆっくりして、日付が変わる前くらいに寝たらいいかな」
油条と呼ばれる揚げパンを食べながら呟いた澪は、宗田の夜色の瞳をしっかりと見つめて。
「寝る時、僕が奥だからね!」
「へーへーわかってるよ」
添い寝前提の澪の言葉に、宗田は動じずに麻婆豆腐をもうひとすくい。
場所は変わっても、ふたりはいつもと変わることはないのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ノトス・オルガノン
【星臨】☆
クロウに誘われ初めての封神武侠界
なんとも鮮やかな世界だな
誘ってくれて有難う、クロウ
色彩、香り、美食、そして音
そのどれもが珍しく刺激的で、思わずぼーとして
音楽は…そうだな
私を私たらしめるもの、と言ってもいいと思っているよ
思い出を語るクロウの顔に穏やかな笑みを向けながら
誘われるままに庭園へ
高揚で火照った身体を冷たい風で冷まし
呼びかけられた名前にどこか含みを感じながらも差し出された物を受け取る
渡されたそれは思いもよらぬもの
しかし不思議と受け取らなくてはという想いが胸に宿る
満月の日に…? …なぜ、とは聞かないでおこう
ありがとう、クロウ
月の光に、カフに揺れる月のモチーフを重ねる
いい夜だ 本当に
杜鬼・クロウ
【星臨】☆
ハロウィン依頼で「ノトス」から託された物を渡す為に誘う
RP有
ノトスはこの世界に来るのは初めてか?
なら全部新鮮に感じそうだ
自分は酒で乾杯
美味な料理に舌鼓
音色に耳澄ませ浸る
やっぱり音楽が好きなんだなァ、お前は
篠笛なら…俺の創造主サマが上手かったな(真の姿の俺の記憶上の音色は綺麗で
庭も見てみるか
景色見つつ本題へ
「ノトス」…イヤ、お前に渡したいモンがある(イヤーカフを彼の掌に
出来たら、満月の日につけて欲しい
(本当はもう一人の彼の事や彼の唯一無二について訊いた事を話したい
けど
俺から伝えるのも可笑しな話で)
どうしたら互いがもっと歩みよれるのか
倖せになれるのか
(この儘ずっとは
淋しいだろ)
酔いは醒め
長夜に響く旋律は、聞き覚えのないものばかりだ。けれどもその旋律を紐解けば、ひとつひとつの奏でる音はノトス・オルガノン(白百合の追走歌・f03612)の知っている楽器の奏でる音に似通っているのだろう。
この世界ならではの音律がノトスに馴染みがないだけで、楽器単体の音で考えれば、『音楽』とは誰よりも彼に近しいものゆえに。
宴会場の端の席にあっても、その旋律はノトスの耳を捉えて離さない。盛り上がった人々の喧騒や熱気に当てられながらもなお、旋律のほうが彼を惹きつけるのだ。
「なんとも鮮やかな世界だな」
ぽつり、紡いで。視線は卓子の上の料理へと。色とりどりという言葉にふさわしいたくさんの料理が、所狭しと卓子に並べられていて、見ているだけでも満腹になりそうだ。
場に満ちる料理の香り、酒の香り、そして雰囲気はノトスには珍しく、そして刺激的で。酔ってしまいそうになりながらも茶碗を口元へ。白牡丹と呼ばれる茶を含めば、広がる香りが意識を引き戻してくれる気がした。
「ノトスはこの世界に来るのは初めてか? なら全部新鮮に感じそうだ」
卓子の向かいで酒盃を手にして口元を緩めるのは、ノトスをこの地に誘った杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)だ。彼にとってこの世界のもつ雰囲気は、馴染みあるものであるからして。
「誘ってくれて有難う、クロウ」
ノトスの謝辞に、クロウは手にした酒盃を差し出して。おずおずと差し出されたノトスの茶碗と乾杯。
「これは見た目によらずちょいと辛いぞ。こっちは甘い粥みたいなものだ。そっちは菓子だな」
クロウの親切な注釈に、ふむ、ふむと頷いて視線を料理の上で彷徨わせるノトス。どれから手を付けたらいいのか迷っている風なその様子に、クロウは小皿に水餃子を盛り付けて差し出した。
熱いからなと言われたノトスは、慣れぬレンゲで水餃子をすくってふぅふぅと息を吹きかけ。恐る恐る口に入れて噛めば、肉汁とスープの旨味が口内に広がる。熱が喉を通り腹へと落ちると、不思議と身体がポカポカしてくる。そしてこの美味さをなんと表現したら良いのか――彼のその輝く瞳がすべてを物語っているのだが――考えているうちにぴくり、身体が反応した。
宴会場に流れる曲が変わったのだ。思わず奏者たちへと視線を向けるノトスに、乾燒蝦仁(エビチリ)をつまみながら老酒を楽しんでいたクロウも気がついて。
「おっぱり音楽が好きなんだなァ、お前は」
「あ……食事中にすまない。音楽は……」
視線をクロウへと戻して、ノトスは彼の問いに。
「私を私たらしめるもの、と言ってもいいと思っているよ」
答えたその言葉は、それ以上でもそれ以下でもなく。それが分かっているものだから、クロウは問いを重ねない。
「篠笛なら……俺の創造主サマが上手かったな」
紡がれた言葉の向こうには、追憶の景色と音色が。その音色は決して劣化すること無く、いつまでも脳裏な響き渡る。
「……そうか」
思い出を語る彼に、ノトスは穏やかな笑みを向ける。彼にも音楽にまつわる思い出があるというのは、嬉しいことだ。
新しく茶碗に次いだ茶は、先程のものよりも花の香りが強くて。けれども口内をさっぱりとさせる。
それが茉莉花茶という花茶であることは、後で知った。
軽く食事を終えて。クロウの誘いで庭園をゆるりと歩く。
燈籠のおかげで暗闇で惑うことはなく。遠くから聞こえてくる旋律と月の光、そして火照った身体を撫でてゆく冷たい風が、酷く心地よい。
「……綺麗な庭だなァ」
蓮池の近くで足を止めてそう紡いだが、クロウの心中を占めているのは景色よりも――。
「『ノトス』……イヤ、お前に渡したいモンがある」
「……?」
なんだろう、クロウが呼んだ己の名は、真に己のことを呼んでいないような気がする。何か他に――直感がそう告げたが、ノトスに考えるいとまは与えられなかった。
クロウが差し出した拳、それに向けて無意識に掌をさしだしたノトス。
小さな音のはずなのに。シャララ、と掌へと横たえられた『それ』の奏でる音が、ノトスの耳朶に強く響く。
「これ、は……?」
「イヤーカフだ。出来たら、満月の日につけて欲しい」
まさか彼からこのようなものを渡されるとは、思いもよらなかった。
銀月に淡青と、彼は誰時の色の珠が連なるそれを見るのは初めてのはずだ。けれども。
「……?」
不思議な既視感と、受け取らなくてはという使命感のような、約束のような不思議な感情がノトスの胸中に湧き上がっていく。
「満月の日に……?」
なぜ彼はそのような指定をするのか。今のノトスにはわからない。けれども問いを重ねるのは無粋な気もするし、なにより眼の前の彼が意味もなくそんなことを言うはずはないと、積み重なった信頼から断言できるのだ。
「理由は聞かないでおこう。ありがとう、クロウ」
目を細めて笑んで告げて。ノトスはイヤーカフをつまみ上げる。
シャララと清音が響く。月の光にかざせば、月のモチーフが揺れるそれさえもなんだか神秘的に思えて。
(本当は――)
クロウには目の前の『ノトス』に話したいことがいくつもある。だがそれは、クロウが『もう一人のノトス』から聞いた話であり、目の前の『ノトス』が『もう一人のノトス』についてのことを――満月の夜やあの不思議な夜のことを覚えていない以上、自身の口から伝えるのもおかしな話だと思うのだ。
第一その中には、数奇な運命のせいですれ違い続けた彼の唯一無二――■■■・■■■■■■■――についての話もあるからして。
(やっぱり、俺の口から伝えるべきことじゃねェ)
出過ぎた真似はできないと、月の光にイヤーカフをかざすノトスを見て思う。
けれども、だけれども。ふたりの『ノトス』のからくりの一端と、『もう一人のノトス』の持つ、目の前のノトスにとって大切なものである記憶を知ってしまったクロウとしては、考えずにはいられないのだ。
どうしたら互いがもっと歩み寄れるのか。
倖せになれるのか。
(このままずっとは、淋しいだろ――)
そう思うものの、クロウにできることは少ない。望まれた通り、イヤーカフを渡すことは出来たが、これ以上は……。
「いい夜だ、本当に」
月の光に酔ったように紡がれたノトスの言葉に、クロウは言の葉を返さない。
ただただ、笑みと泣き顔のはざまのような表情で、嬉しそうな彼を見守っていることしか出来なかった。
酔いなど、とうに醒めて――……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
征・瞬
庭
西嘉(f32676)と
宴…か、大きな宴は得意ではないが
西嘉は食べるのが好きだからな
私の事は気にせず…と、西嘉?(庭園へと連れて行かれ)
食べ物を取りに行った西嘉を庭園の見える縁側に座って待つ
クリスマス…という文化は慣れ親しまないが
こういった宴のような催しは…いい思い出がないな
この時期は母の誕生日であったから
どうしても昔を思い出してしまう
戻ってきた西嘉に声をかけられてハッとし
なんでもないと装う
が、おそらくバレるだろうな…
酒を貰って口をつけると西嘉に寄りかかる
「よっぱらいの戯言だと思って聞いてくれ」
私は未だに母が好きなのか憎いのかわからない
そう感じるほど関わりがなかったのもあるんだろうが…
だから今日という日は、いつも早く終わってほしいと思っていた
と、少し話しすぎただろうか
確かに今日は私にとっていい思い出のない日だが…
君が新しい思い出を作ってくれるのだろう?
そうでなければ今日来ていない
ああ、これからは君と過ごす日だと記憶しよう
そういえば甘味を持ってきてくれたのだろう?
まずはそれを一緒に頂こうか
張・西嘉
瞬(f32673)と
他の猟兵に聞いたが今日はクリスマスと言う日らしい。そうだからと言うわけではないが宴に招いて頂いた。
賑やかな宴だが瞬の表情は曇っている。
もともと宴が好きな方ではないのは知っているが今日は様子が違うな…
「瞬殿、気分が悪いようなら庭園に行かれるか?」
そう言って庭園に出れば冷たい風が心地いい
しばし待ってくれと言って。
瞬の好きな甘味や果物を運ぶ。
あと少しだけ酒を…。
何か思い詰めているならこれで重い口を開いてくれるだろう。
酒を口にするとぽつりぽつりと話す声に耳を傾ける。
母上の話。決してよい話ではない。
それを話してくれる事に信頼を感じる。
早くこの日が終わって欲しいと。
だが、今は俺がいるだろう?
決して悪い日にはさせない。
思い出を塗り替えるくらい幸せな日にしよう。
主としてではなく恋人として。
瞬を甘やかす。
早く終わって欲しいなどと言わせないようにしなくてはな。
あぁ、まずは瞬の好きな甘味を食べよう
宴会場に満ちるのは、聞き慣れた楽器の編む旋律と料理の香り、それと人々の喧騒。
「他の猟兵に聞いたが、今日はクリスマスという日らしい」
宴会場の隅の卓子にて、張・西嘉(人間の宿星武侠・f32676)は向かいの彼へと視線を向ける。しかし彼の瞳は、賑やかな宴会にそぐわず曇り気味で。
(西嘉は食べるのが好きだからな)
掛けられた声にその主をゆるりと見つめて、征・瞬(氷麗の断罪者・f32673)は口を開く。自身は大きな宴は得意ではない。けれども――。
「西嘉、私の事は気にせず……」
「瞬殿、気分が悪いようなら庭園に行かれるか?」
「……と、西嘉?」
言葉を終えるより先に立ち上がった西嘉に促され、そのまま促されゆけば肌を撫でるのは冷たい風。けれども宴会場の熱気にさらされていた身体には、冷たい空気の愛撫が酷く心地良い。
「しばし待ってくれ」
そう告げて再び宴会場に消えた西嘉の背を見送って、瞬は優雅な仕草で縁台へと腰を下ろした。
歓声も楽の音も、遠くに感じる。庭園にて仄光る燈籠が、闇を暖かいものとしているのがわかる。
(クリスマス……という文化は慣れ親しまないが、こういった宴のような催しは……いい思い出がないな)
年末から年明けにかけて催される宴は、盛大で特別感のあるもので。瞬にも参加経験はあったが、彼にとっては別の意味で『特別』なものであった。
(この時期は――)
母親の誕生日であった。だから、燈籠の明かりの中に、過ぎ去りし日が思い浮かんでしまう。
(嗚呼――……)
吐き出したはずの息が、まるで喉に詰まっているかのように、苦しい。
* * *
(これで少しは重い口を開いてくれるだろう)
宴会場へと戻った西嘉は、甘味や果物を中心に選び。侍女へと頼んで器に盛ってもらった。どれも瞬の好きな物だ。何か思いつめている様子の彼の口と心とが、少しでも軽くなってくれることを祈る。
「瞬殿」
「……!!」
過去に意識を沈めかけていたところに掛けられた声に、瞬は現実に引き戻され、身を揺らす。
「ほら、甘味と果物と酒だ」
隣へと腰を下ろした西嘉と瞬の間、少し後方に置かれた盆の上には甘く煮た金柑や酒に漬けた山桃、洗った蜜棗、蛋撻や馬來糕など瞬の好むものばかりが並んでいて。祝いの席で供されることの多い桃包がないことに少しばかり胸を撫で下ろすのは、昔の記憶ゆえ。
「私の好きなものばかりではないか」
どうした、となんでもないふりをする瞬だが、西嘉にはバレているだろうことは自覚していて。だからこそ差し出された盃を何も言わずに受け取り、満たされた酒精を含む。
喉を通る時に僅かながら刺激を感じ、いつもより強い酒だと分かったけれど。盃の半分ほどを続けて流し込んだ。
「……、……」
その身を傾けて寄りかかるのは、大きな西嘉の身体。瞬が凭れたくらいではびくともしないそれが、今は心強い。
「よっぱらいの戯言だと思って聞いてくれ」
告げられた願いに、西嘉は沈黙で是を示す。
「私は、未だに母が好きなのか憎いのかわからない……」
瞬の視線の先、庭園に仄光る燈籠の明かり一つ一つに、記憶が投影されているよう。思い出したくなくても、思い出してしまう。
「好悪の判別をつけられるほど、関わりがなかったのもあるんだろうが……」
ぽつりぽつりと紡ぐ瞬の盃に、彼の語りを邪魔しないように西嘉は酒を注ぐ。
「だから今日という日は、いつも早く終わって欲しいと思っていた」
瞬にとって母親の話というのは、決して良い話ではないことを西嘉は知っている。だからこそ、それを話してくれることに彼からの信頼を感じずにはいられない。
「……と、少し話しすぎただろうか」
苦笑しつつ酒を煽り、瞬は細く息を吐いた。
「瞬殿は、早くこの日が終わって欲しいと」
「確かに今日は私にとっていい思い出のない日だが……」
「だが、今は俺がいるだろう?」
「君が新しい思い出を作ってくれるのだろう?」
ほぼ同時に紡いだ言葉に、ふたりは視線を絡めあって。口元に笑みを浮かべる。
「決して悪い日にはさせない。思い出を塗り替えるくらい幸せな日にしよう」
この日ばかりは主としてではなく、恋人として、瞬を甘やかすつもりだ。
「そうでなければ、今日来ていない」
瞬のその言葉に、西嘉は頷いて。
「早く終わって欲しいなどと言わせないようにしなくてはな」
軽い口調で紡がれた本気の言葉に、瞬もまた頷き返す。
「ああ、これからは君と過ごす日だと記憶しよう」
同じ酒で満たした、盃の誓い。
互いの瞳は、その誓約を胸にしまい込む。
「そういえば甘味を持ってきてくれたのだったな。まずはそれを一緒にいただこうか」
「あぁ、まずは瞬の好きな甘味を食べよう」
この日の新しい記憶として、まずはふたりで好物を――。
遠くから聞こえる旋律が、新しい記憶の下地となるに相違ない。
大成功
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