●予知・無頼漢達の赤い死花
風が吹き荒れる砂の大地。
無数の駆動音が荒野を揺らし、金管の音が星空に伸びる。
「早く来い……! 来い、来い、来い!」
そして、爆音に負けぬ程のバトルクライ。
色とりどりの雑多な改造車両が群集し、荒野に満ちる喧噪を盛り上げていく。非戦闘用と思しき車体もお構いなしにアクセルを吹かしまくる。
「さっきの酒、まだ残ってたよなあ! 一番多く敵をヤった奴が総取りってのはどうだ!?」
「ギャッハッハ! アホだコイツ、生き残る気でいやがる!」
「ヒュー! あんな馬鹿デカい竜巻見た事ねぇ! おいお前ら、オシメは着けてきたか!?」
下卑た口調、粗野な表情に漲る混じりっけの無い純粋な闘志。
彼らの思考回路に「自制」だとか「恐怖」といったものは存在しない。
あるのはただ、愛機が秘める狂おしい程のスピードと、火花を散らす衝突や脳天を揺らす銃撃がもたらす暴力的な快感だけだ。
そこへ、もう一つの爆音の塊が。
「イィヤッハァァァ!! 飛ばせ飛ばせェーッ!!」
「腰抜け共は皆殺しだあーッ!」
前方に聳える黒色の竜巻が生み出した、半機半人の異形達だ。
「遅ェーんだよ、クソが!」
「ぎゃひッ!」
起伏の激しい坂道を弾むように走り下り、その為に少なからず同胞をキャタピラの下敷きにしながら、土石流のように迫り来る。
「ィよっしゃあ! 『死に損ない』御一行様の到着だッ!!」
「ヒャッハァーー! グチャミソに轢き殺せェーーッ!!」
トップスピードで交錯した二つの狂騒は夜の闇を赤く染め、そして。
その戦火は、巨大な爆炎によって終わりを迎えた。
●グリモアベース・一室
「お忙しい所、お集まり頂き感謝します」
白いネズミを肩に乗せた赤髪の青年、ラヴェル・ペーシャ(ダンピールのビーストマスター・f17019)が猟兵達を出迎える。
今回の予知の舞台はアポカリプスヘル。滅亡の危機をひとまず脱したこの世界にも、未だ脅威は去っていない。
だが、それに対抗する人々もまた、過酷な環境の中でも逞しく活動を続けている。そして今回の予知においても、彼らの協力が必要になるだろう。
「皆さんは『ストーム・キャラバン』という集団の存在をご存じでしょうか。その名の通り、オブリビオン・ストームを追って移動を続ける奪還者達です」
ストーム・キャラバン。あらゆるものを切り裂き、破壊し、オブリビオンに作り変える竜巻を自ら追いかけ、金属やオイル等の物資を奪って生計を立てる者達だ。
家屋、貯蔵庫を始め、生活する上で必要な施設は全て装甲車両に改造し、集団で縦横無尽に放浪する姿はそれ自体が「移動する拠点」と呼べるだろう。
もちろん、その日常は危険と隣り合わせである。ラヴェルの予知が捉えたのも彼らの危機であった。
予知の結末はこうだ。
大規模なオブリビオン・ストームの発生を察知し、陣を敷いたストーム・キャラバン。彼らが対峙したのは、経験した事の無い程の大量の敵、そしてそれらを統率する「首領格」の存在であった。
彼らは全戦力を動員して迎撃を試みるが、圧倒的な物量差を前に劣勢を強いられる。
最終手段として彼らは爆弾を積載した車両に火を放ち、乗り込んで来た敵首領を巻き込んでの自爆を決行。
首領格の消滅と共に敵軍も瓦解し侵攻は停止するが、余りにも痛ましい結果だ。
件のストーム・キャラバンは既に発生予測地域に到着しており、観測機器の反応を待っている。
彼らと共闘し、予知の結末を回避して欲しい。それが今回の依頼であった。
と、ここまで話した所で、ラヴェルが妙な表情を浮かべて口ごもった。
「『パンク・ウィールス』と名乗っている当のストーム・キャラバンなのですが、少々、その……アポカリプス・ヘルの環境に馴染み過ぎているというか……」
聞けば、元々ゴロツキのような者が大半を占めていた上に、生きるか死ぬかの日々を過ごす内にややタガが外れてしまっているらしい。
彼らがオブリビオン・ストームを追うのも、理由の多くは戦いの刺激を手っ取り早く得られるから、というのが正直なところである。
ならず者と違って他の集落で暴れるような事は無いものの、移動と戦闘の時以外は酒に喧嘩にレースにと、本能に従って時間を潰しているようだ。
つまり、敵を待っている今も。
ラヴェルは困ったような苦笑いを浮かべながら続ける。
「現地に到着した彼らは現在、盛大な酒盛りを開いています。折角ですから、戦いが始まるまでの間に意思疎通を図ってはいかがでしょうか。作戦を立てるというのも悪くはありませんが、素直に従うとはとても……」
ここまで生き抜いてきたからには相当の実力はあるはずだが、奔放な彼らに緻密な作戦行動を理解させ、従わせるのは至難の業だろう。だからこそ、指揮というよりは共闘、共同戦線だと捉えて貰いたい、と説明が続く。
とは言え良くも悪くも感情的なので、気に入られさえすれば作戦に耳を傾けてくれるかも知れないが――。
何はともあれ、現地に行かなければ何も始まらない。
「くれぐれも略奪者と間違えて攻撃しないように」。念入りに繰り返されるその忠告が冗談では無い事を薄々予感しつつ、猟兵は転送の門に足を踏み入れた。
ピツ・マウカ
お久しぶりです。初のアポカリプスヘルでのシナリオですよろしくお願いします。
今回のシナリオですが、敵も味方もヒャッハーです。ただし味方の方は良いヒャッハーなのでご安心を。
第一章では、今生最後の夜とばかりに騒ぐストーム・キャラバンの面々と交流してください。戦闘に備えて動くのも良し、何も考えずに一緒になって騒ぐも良しです。
第二章では大量の集団敵との戦闘です。敵の中には強力なボスが混じっており、それを倒すと敵が弱体化します(システム的にはプレイングボーナスを想定)。もちろん普通に敵を殲滅する事も可能ですので、無理に狙う必要はありません。
突撃しまくる友軍と一緒に戦場を駆ける、彼らを利用して敵の不意を突く等、乱戦をうまく制して下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『ささやかな宴』
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POW : 料理や酒を楽しむ
SPD : 皆でゲームを楽しむ
WIZ : 歌や踊りを楽しむ
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●アポカリプスヘル・荒野の前祝い
転送直後の曖昧な意識が、突然の重低音によって叩き起こされる。
音の方向を見上げると、まだ赤みの残る夜空を背景に鈴なりのスピーカーが激しい音楽を流していた。
周囲を見回せばそこには威嚇的な装甲車がずらりとライトを輝かせ、どうやらこれで即席の広場としているらしい。
前方、広場の中には貨物自動車やキッチンカーのような風貌の車が点在し、料理や酒を求めてだろう人垣が出来ていた。
その他にも肩を組んで歌っている者、飲み比べをする者、札遊びや拳闘に興じる者。広場の外でレースをしているような音も聞こえてくる。
誰もが奇抜な髪型と服装、おまけにオブリビオンからの戦利品と思しき装飾を着けており、略奪者と間違えたとしても確かに無理はなかった。
と、その中の一組が猟兵に気付き、上機嫌で話し掛けてきた。
「なんだ、トレードか? 一足遅かったな、もうなんにも残っちゃいねえぞ。ぜぇーんぶ、ヒック、酒と食いもんに変わっちまったよ」
「へへへ、前にもここでクソ程死人が出たとかで、竜巻もその分クソデケェって話でよ。死ぬ前に楽しめってお達しで、ヘヘ、スッカラカンにしちまったのよ」
「そーいうこった、良い子は怪我しねえうちにお家へ……おぉ? 待てよ、こいつは……」
と、少しの間三人は顔を見合わせ。
やがて、こう叫びながらジョッキをぶつけ合った。
「「「アテンションプリーズ!! イカした珍客――猟兵に乾杯
!!」」」
その乾杯は喧噪の中でも高らかに響き、波が広がるように広場が沸き返っていく。
――どうやら、どんちゃん騒ぎが落ち着く様子は無さそうだ。
豊水・晶
おー、なんというか凄くヒャッハーな集団ですねぇ。これは…大丈夫なんでしょうか?
まあ、予知は信頼していますけどこれはちょっと先が思いやられますねぇ。
ヘ!?アッハイ…リョウヘイデスケド
芸ですか?いやまあ出来ますケド。
まあ今回は彼等に倣って踊りでも踊ってあげましょうか。
という訳で即興の演奏に合わせて即興のダンス!軽業もちょっと使って場に合うように色気を出していきましょう。
あっその前に、胡桃を2つほど拝借。
最高の笑顔でにこやかにバキッと。
さあ、楽しい夜にしましょうね♡
「おー、なんというか凄くヒャッハーな集団ですねぇ。これは……大丈夫なんでしょうか?」
ゲストの登場に沸き返る広場の中をぐるりと眺め、豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)が呟く。
その短い間にも、興奮のあまり一人がジョッキの中身を手近な仲間に浴びせ掛け、それが発端となって5,6人が乱闘を始めている。
予知への信頼はある。あるにはあるが、この乱痴気騒ぎを目の当たりにした今、流石に不安が膨らみつつあった。
この騒ぎの主たちと共闘し、勝利しなければならないのか、と。
「なぁ、姉ちゃん! あんたも猟兵だろ!?」
「へ!?」
そんな彼女の心配を遮るように野太い声が響く。同時に、周囲の注目が一斉に晶へと注がれた。意表を突かれ、返事もままならない内にあれよあれよと一つの輪の中心へと引っぱり込まれてしまう。
―――
四方八方からお構いなしに繰り出される質問と酒瓶、軽食の類をさばきつつ、ようやくにして会話が可能になった頃。
「……芸ですか? いやまあ出来ますケド」
「おっ、ダンスか!? ヒュー、良いぞ姉ちゃん!」
晶は流れる音楽に合わせてリズムを取り、髪を一撫でしてから軽やかに腕を広げる。
僅かな動作で艶のある雰囲気を纏ったその姿に、初めは盛んに囃し立てていた彼らも思わず息を呑み、引き込まれるように見詰める中――。
「あ、その前に」
「あ……? お、おい。そりゃハンマーじゃなきゃ……」
ふと、彼女は何か思い出したような表情を浮かべ、近くの皿の胡桃をひょいと摘まむと。
――バキッ。
「さあ、楽しい夜にしましょうね♡」
そのまま、これ以上ない笑顔で握り潰してみせた。
一瞬の静寂が訪れ、その直後。
「ス……ッゲェ! やるなぁ、姉ちゃん。いや、流石猟兵だ!」
「ギャーッハッハ! 凄ェ力だが、うっかりオレ達の頭を掴まねえでくれよ! 何しろスッカスカだからよぉ!」
より一層の熱狂をもった歓声が晶を包み込んだ。
そしてそこには、さっきまでとは比べ物にならない程鮮明に、強者への「敬意」の色が表れているのであった。
成功
🔵🔵🔴
食の楽しみが極めて乏しいこの世界では、たとえ缶詰であろうとも貴重な物資となる。ましてそれが温かい料理となれば、そうそうありつけるものでは無い。
それが、今この場所では盛大に振る舞われている。もちろん手の込んだ料理ではなくせいぜいが大衆料理だが、保存用に乾燥させられていない食材というだけで彼らにとっては御馳走に違いなかった。
「おい一流シェフさんよ! このブリトー、肉が他のより少ねぇぞ!」
「ケケケ、そりゃ悪かったなぁ。お詫びにネジでもトッピングしてやろうかぁ?」
「あぁ!? そのクサレ指ぶった切ってトルティーヤに挟んじまうぞ!」
ただし、御馳走を静かに味わうという文化は彼らには無いが。
アルマリジーア・ホープスター
「気取った奴よりかは、マシだねぇ」
きこえないようにぼそりと。
『自走式探偵事務所』に入って取り出したるは、良く冷えた『Black tulip』、これで「宴会」をさらにどんだ。
……めんどくさいねぇ。ツマミがあんなものばかりじゃ楽しくもない。
「UC:一旦休憩」使用。まずはビールを飲もう。
さて。
ちょっと材料貸すんだよ。台所仕事に良い思い出はないけど、料理は嫌いじゃない。
事務所のキッチンコーナーを利用して、「料理」。大体香辛料で臭みとってパイ生地かけてオーブンに突っ込めば……。
ほら、特製パイの完成。野菜とチーズも入れたよ。
さ、切り分けて腹いっぱい食べな。二枚目も三枚目もあるよ。全く私も人がいい……。
「気取った奴よりかは、マシだねぇ」
軽口と言うには乱暴すぎるやり取りに紛らすように、アルマリジーア・ホープスター(短剣ほど素敵な友達はいない・f36387)の呟きが漏れる。
彼女の足はそのまま、広場に置かれた一台の車に向かっていた。
棘や大砲によって飾られた車両と離れて停められているキャンピングカー、彼女の『自走式探偵事務所』の奥からよく冷えたスタウトを選び取る。
手土産を調達した彼女は踵を返し、宴会場に戻りかけようとして――足を止め、今しがた取り出した瓶の一本を開けた。
「……めんどくさいねぇ。ツマミがあんなものばかりじゃ……」
思案するように、あるいは漏れ聞こえる騒ぎに耳を傾けるように、強い燻煙の香りが立ち昇るジョッキをゆっくりと飲み干す。
「……さて」
仕事の前の一杯を済ませたアルマリジーアは、気だるげに赤髪を掻き上げながら腰を上げ、今度こそ宴会場へと向かうのだった。
―――
「……よし、香辛料はこんなもんだね」
宴会場を一巡りしたアルマリジーアは、その道中で食材を借り受け、再び事務所へと戻って来ていた。
キッチンのオーブンからはパイ生地で包んだ肉、野菜、そしてチーズが香ばしい匂いを放っている。
その周りでは、一緒に着いてきてしまったストーム・キャラバンの面々がキャンピングカーを囲んでの酒盛りを始めていた。
「……っかァー! ありがてぇ、こんなに旨ぇビールは久しぶりだ! しかもキンキンに冷えてるとくらぁ!」
「けどよー、まだ焼けねえのか? この匂い嗅いでたら……おぉ、来た来たァ!」
やがて大皿に乗せたパイが運ばれ、誰からともなく歓声が上がる。
「さ、切り分けて腹いっぱい食べな。二枚目も三枚目もあるよ」
彼女の言葉を待つまでも無く、四方八方から伸びた手は瞬く間にパイを攫っていった。
やれやれ、とキッチンにとんぼ返りする間も匂いに誘われた来訪者が続々と現れる。
「うンめぇーー!」
「おい、テメェ取り過ぎだ!」
「良いじゃねーか、まだあるってよ!」
「なあ! 猟兵の姉さん、食材持って来たぜ!」
「はぁ。全く私も人がいい……」
背後から響く騒がしい声に、自嘲するような独り言を吐く。
しかしその言葉とは裏腹にアルマリジーアの手付きは一向に衰えず、辺りにはパイの焼ける平和な香りがしばし漂い続けるのであった。
成功
🔵🔵🔴
ジョヴァンニ・カフカ
コトフ(f31008)と
酒好きの俺も耳が痛い言葉ですね…気を付けマス
トゲトゲに関しては彼等の流行りと言うのか、一種の威嚇…でしょうか
確かにコトフもアポカリ出身でしたが、まさか…?
トゲトゲヒャッハーしたコトフを想像してしまい、核の辺りが痛い…
(撫でて貰って気を取り直した)
キッチンカーで何か食べましょう
ケバブ、いいですね
炭水化物、肉、野菜が摂れますし
コトフ…貴重だと託つけて野菜を食べない算段なのでは
普段レーションで間に合わせてるのをお見通しですよ
店主、野菜的な物があれば入れて下さい遠慮無く
うわ、拗ねながら食べてる可愛い
口一杯に頬張る姿を端末のカメラで連写します
この可愛らしさでビール3杯は余裕ですね
アルヴィナ・コトフ
カフカ(f28965)と
…どうしてこの世界の大人ってこうなのかしら
飲酒で更に気は大きくなるし、声は大きいし、無駄に肩はトゲトゲしているし
飲めない私からすれば、余り良い印象では無いけれど
…私もいずれあんな風になるの?
最後のは独り言のつもりだったけど、何故だかカフカが落ち込んでる様に見えるので頭でも撫でておこう
フードトラックなんてあるのね
私、ケバブサンドが食べたい
スパイスの効いたお肉とピタパン
野菜…は無くて構わないわ。貴重なのだし
食べられない訳じゃ…あー、もう!
半ば八つ当たり気味にケバブサンドにかぶりつく
…おいしい
缶詰めとか、カロリーブロックで充分だと思っていたけど
やっぱりこういう食事っていいわね
「……どうしてこの世界の大人ってこうなのかしら」
アルヴィナ・コトフ(薄氷・f31008)がうるさそうに顔をしかめ、周りで騒ぐ人々を見やる。
「飲酒で更に気は大きくなるし、声は大きいし、無駄に肩はトゲトゲしているし……飲めない私からすれば、余り良い印象では無いけれど」
ぽつりぽつりと、しかし淀みなく挙げられていく正直な感想。そんな彼女を宥めるように、傍らにいた仮面姿の男、ジョヴァンニ・カフカ(暁闇・f28965)が口を挟む。
「あたた、酒好きとしては耳が痛い言葉ですね……気を付けマス。トゲトゲに関しては彼等の流行りと言うのか、一種の威嚇……でしょうか」
「……私もいずれあんな風になるの?」
「……!!」
ぽつりと零したアルヴィナの言葉に、ジョヴァンニの仮面に覆われた顔が凍り付いた、ように思えた。
「いや、まさか……しかし、確かにコトフもアポカリ出身でしたが……。トゲトゲヒャッハーなコトフ……う、核の辺りが……」
「……どうしたの?」
その場にうずくまりボソボソと自問自答を続けるジョヴァンニの姿を見かねてか、アルヴィナは彼の頭を撫で、話題を切り替えるように一方を指差した。
「フードトラックなんてあるのね」
その指先には、料理の白い煙が上がっていた。
―――
それは、装甲を改造されてはいるものの紛れも無くキッチンカーであった。いくつかのごく簡単なファストフードを振る舞っているらしく、周りでは椅子やバイクに跨った人々が酒を片手にめいめい食らっていた。
アルヴィナはそれらの料理を眺めながら、気を取り直したジョヴァンニと共に人垣の中心部へと辿り着く。
キッチンカーの中から店主と思しきモヒカンの男が威勢よく出迎える。
「おっ、あんたら猟兵か!? ヨォシ、歓迎するぜ! 何を食う!?」
「私、ケバブサンドが食べたい」
「ケバブ、いいですね。炭水化物、肉、野菜が摂れますし」
「野菜……は無くて構わないわ。貴重なのだし」
事実、収穫まで時間の掛かる野菜は、常にオブリビオン・ストームの危険に晒されるこの世界では珍しい食材の部類に入るだろう。
だが、ジョヴァンニは彼女をじっと見詰め、指をぴんと立てた。
「コトフ……貴重だと託つけて野菜を食べない算段なのでは? 普段レーションで間に合わせてるのをお見通しですよ」
ふいと、彼は二人の問答を面白そうに聞いていた店主へと向き直る。
「店主、野菜的な物があれば入れて下さい遠慮無く」
「何だ嬢ちゃん、野菜嫌ェなのか! オレと一緒だなぁ、ッハッハ!!」
「だから食べられない訳じゃ……あー、もう!」
反論すればするだけ馬鹿笑いを続ける店主からケバブサンドを受け取った彼女は、まるで八つ当たりでもするかのようにかぶりついた。
「……おいしい」
むくれたように一言呟き、そのまま口一杯に頬張るようにして食べ進めるアルヴィナの傍で、ジョヴァンニが端末をかざしながら忙しなくシャッターを切り続ける。時折「うわ、可愛い」等と呟きが漏れるが、アルヴィナには聞こえていない――もしくは聞こえていない振りをしているのか。
そんな二人の姿に、周りのストーム・キャラバンも身を乗り出して盛大に囃し立てる。
「ワハハ、偉ぇぞ嬢ちゃん!」
「スパルタの親を持つと大変だなぁ! ギャッハッハ!」
彼女とは対照的に、ジョヴァンニは気にも留めない様子で軽快に彼らと言葉を交わす。
「いやあ、この可愛らしさでビール3杯は余裕ですね」
「言ったな!? おい、どっか酒余ってねェか!」
こうして、彼らの食事は賑やかに過ぎていくのだった。
成功
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●夜宴を破る竜巻
荒々しい宴と彼ら流の歓迎にも随分と慣れた頃。鋭い警告音が、その雰囲気をつんざくように鳴り響いた。
それを合図に、取っ組み合っていた者も、酔い潰れて転がっていた者も、バネ仕掛けのように飛び起きては次々に外縁の車両へと飛び乗っていく。
『おらボケ共、目を覚ませ! 竜巻発生、全速前進!!』
「ヒャッハァーッ! 祭りだァーーッ!!」
BGMを流していたスピーカーからも野太い号令が轟き、それを乗せていた車両でさえもまっしぐらに走り出す。
まるで潮が引くような勢いで、全ての車両は一方へと向かい始めるのであった。
騒がしくも平穏だった時間そのものさえ、置き去りにするようにして。
第2章 集団戦
『キルドーザーズ』
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POW : キルドーザーズ鉄の掟『遅ェ奴はクソ!』
【敵に向けてチキンレースのような集団突進】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : キルドーザーズ鉄の掟『雑魚は死ね!』
自身の【モヒカン】が輝く間、【同士討ちを全く厭わぬ突進】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : キルドーザーズ鉄の掟『敵は轢き殺せ!』
【ドーザーブレードを振り回しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【雄叫びを上げながら無秩序に走り回る仲間】の協力があれば威力が倍増する。
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●デッドリー・ウィールス
目隠しのようにそり立った丘の向こうで、黒い竜巻が刻々と膨張していく。岩の小山を噛み砕き、巻き上げた破片を呑み込むその度、怪しげに光が走る。
そしてその方角から、もう一つの狂騒が迫っているのが感じられた。
「早く来い……! 来い、来い、来い!」
対するパンク・ウィールスは勢いそのままに突撃するのかと思いきや、起伏の激しい丘陵地帯との境、平野の端で待ち構えていた。
恐らくは機動性を保ち、改造車両の大砲を活かす為だろう。臨戦態勢への迅速な移行と良い、運だけで生き残ってきた訳では無さそうだ。
「よォォし、『置き土産』只今お届けに上がりました、ってなァ!」
遠く後方ではちょうど大型馬車のような格好で、複数台のトラクターに牽かれた巨大な車両がゆっくりと姿を見せる。あれが予知で見た「最終手段」に違いない。
「なあ猟兵さんよぉ、聞こえるか!? このクソみてぇなクラクション、間違いねぇぞ!」
「ああ、敵のヘッドはあのチキンブルドーザー野郎だ! 畜生、もういっぺん地獄に戻してやるぜ!」
ふと、傍でバイクに跨った二人組が憎々しげに竜巻の方を睨みつける。
確かに、近付いてくる騒音の中には一際甲高く、耳障りな音が混じっているようにも思える。
詳しく問い質すと、以前戦ったオブリビオン・ストームの首領格もこれと良く似たホーンで軍勢の指揮を執っていたらしい。
巨大な体躯とは裏腹に、安全が確保できるまで後方に控えたまま配下をけしかける姿勢を指して、彼らは「チキン」と呼んでいるようだ。
―――
無数に重なる駆動音、様々な音階をばら撒く警笛。
全ての熱狂が絶頂に達した瞬間、暗闇を裂いて何十というライトが浮かび上がる。
「「ヒャッハーーッ! 突っ込めェーーッ!!」」
その刹那、開幕の合図代わりの大砲が一斉に轟き、全ての車両はまるで解き放たれた矢のように爆走を開始するのだった。
アルマリジーア・ホープスター
大将直々にチキンレースをしてくれるかと思ったのに、退屈な奴だねえ。
ま、この際手下どもでも構わないよ。持って頂戴、ジャンピング・シェイド。
「操縦、遊撃、ダッシュ」で敵の間を縫って移動、突撃をいなしながら「敵を盾にする」で仲間同士の激突を誘うよ。
せいぜいチキンな手下どもを減らしてやろうねえ。
戦場を混乱させれば、他にいる猟兵がうまく料理してくれるだろうよ。
せいぜい踊っておくれよぉ? リーダー格を見つけたら「UC:ここで終わりだ」でスパイダー・リリーとワームウッドを一斉に放って一撃必殺。
他の奴らをビビらせてやる。この手合いにはね、ガツンと見せつけるのが一番なんだよ。
豊水・晶
チキン…ブルドーザー…ブレード付けた鶏??
と、ヒャッハーな感じの鶏を想像しながら、ヒャッハー達が突撃していった地点を観察します。
おおー!これはまた大混戦ですねぇ。
砂埃が舞っていささか見えにくいですが、どうでしょうか。
今の所はまだ大丈夫そうですが、彼らの勢いがあるうちに終らせてしまいましょう。
UC発動。
神罰を付与
集団戦術で、一緒に戦います。
さあさあ、私の力を貸したのですから、かっこいいとこ見せてくださいね。
ジョヴァンニ・カフカ
コトフ(f31008)と
珍しくやる気ですね
野菜を食べた事を褒められたの、嬉しかったんですか?
酒の場を共にした事もあり、俺も彼等は嫌いじゃないので、生き残るお手伝いをしましょうか
数の暴力、好きですよ俺も
敵の頭数を減らす様に、UC発動し此方も数の暴力です
コトフに注目が行かない様、軽業やジャンプ
敵の頭を踏みつける等して跳び移り少々大袈裟に立回りましょうか
敵を撹乱している間も索敵でボス格を確認
コトフへの合図も兼ねて、その位置へ箒を飛ばします
こんな所にいましたか、探しましたよ
ボス格と会敵後は、呪詛を込めた影からの切断攻撃
相手のUCへは、此方もUCでお相手します
後ろへは行かせられないんですよ、すみませんね
アルヴィナ・コトフ
カフカ(f28965)と
さぁ、飲み食いした分働くわよカフカ
カフカの茶化す様な言葉に溜息ひとつ
食べられるわよ…野菜くらい
あなたこそあの人達の事、気に入ったのでしょう?
存外面白い人達だった
目の前で自爆なんてさせないわ。私、生きたがりなの
カフカが蹴散らす間、彼に近付く敵を銃で狙撃
敵の目に入るのは嫌だから2、3発射ったら一箇所へ留まらずに他へ移動
潜む場所が無さそうなら、味方のバギーやバイクに乗せて貰おうかしら
大丈夫、味方の援護は任せて
私の役目は、狙って射つ
ただそれだけ
狙撃、移動を繰り返してカフカの撹乱に乗じ、首領格へ近付く
私の射程に入った所でUC発動
一発で仕留め切れないのなら、何度でも撃ち込んであげる
(チキン……ブルドーザー……ブレード付けた鶏??)
豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)の脳内で言葉が回る。
少ない情報から浮かんだイメージは、刃物で武装した奇抜で威嚇的な、ちょうど今駆けていった彼らの鶏化、とでもいった姿。
一体どんな敵なのか、と前方に目を凝らす。
そこでは至る所で爆炎が炸裂し、火炎が燃え盛り、もうもうと立ち昇る砂埃と黒煙を赤く照らし出していた。
そしてその合間を縫って、両者の激しい戦いが繰り広げられている。
「イィーーハァーッ!!」
「カモォン! スクラァーーップ!!」
獰猛に疾駆する重車両の戦列があちらから向かって行けば、蛇行を見せる半人半機のオブリビオンの群れがそちらからやって来る。横腹を狙う鋭いブレードを紙一重でかわし、機銃の弾丸がオブリビオンの「人」の部分を乱れ撃った者がいるかと思えば、その隣では車体の上部を抉り取られ激しく転倒する者がいる。
タンク車が重量任せの突貫をする陰で、バイクや身軽な車両が陽動や攪乱の為に銃火器や爆弾を撒き散らす。
「おおー!これはまた大混戦ですねぇ」
不良な視界の中、見渡す限りでは一進一退。だが、竜巻はなおも貪欲に身をくねらせオブリビオンを生み出しているようだ。
長引けば彼らの敗北は、必至。
少しだけ考えるような素振りを見せて、晶は指をそっと立てる。
「――神象世界 瑞玻璃」
指先に集った光が緩やかに戦場の中央へと浮かび上がっていくのを見届けて、晶もまた後を追うようにゆっくりと歩き始めるのだった。
―――
「大将直々にチキンレースをしてくれるかと思ったのに、退屈な奴だねえ」
アルマリジーア・ホープスター(短剣ほど素敵な友達はいない・f36387)が呟けば、その唇から白い煙が漏れる。
「ま、この際手下どもでも構わないよ。持って頂戴、ジャンピング・シェイド」
彼女の言葉に反応し、背後の鉄巨人が顔を上げる。鉄錆びたような量産型キャバリアはしかし、外見からは想像もつかない程に力強く荒野を蹴り――。
「な、なんだァ!?」
「知るかボケ! けどよー……心当たりはあンだろ!」
「だな! おい遅れるなァ、アクセル全開だ!!」
前方を駆けていた車達をあっという間に飛び越えて、敵の一群の眼前へと身を躍らせた。
「ヒャッハハハハァ! まずはテメェからだぁーッ!!」
突如現れた見慣れぬ機体にも一切躊躇せず、ブルドーザーと融合したようなオブリビオン達は砂煙を巻き上げながら猛然と迫る。
と、その時。つんざくような金管の音が響いたかと思えば、敵の軌道は突然トップスピードのまま複雑に交差し、前方、左右からと、雪崩をうつように襲い掛かって来た。
だがキャバリアは煙を吐き出し視界をくらますと、敵の合間を縫うように急激な加速を見せる。陰から現れたブレードを掴んで軌道を無理やり捻じ曲げ、道を拓くと同時に右からの突撃をせき止める。逆側からの突撃はマシンガンで牽制しつつ、更に前方へ。
「クソッ、ちょこまか動きやがって!!」
後背から迫る駆動音を察知し、寸前で回避。その瞬間フック状のアームを敵の身体に引っ掛け、前方の増援にお見舞いする。
「オイテメェ、邪魔なんだよノロマが!」
「突っ込んできたのはテメェだろマヌケッ……ぐぁッ!」
まさしく全方位を吹き荒れるブレードの嵐も、彼女のキャバリアに傷をつける事さえ叶わぬまま、却って自分達の負傷者と混乱を増やし続けていく。
「イィーーーハァー!!」
「後詰は任せろってなぁ、ヒャハハハ!」
それを立て直そうとした瞬間、一拍遅れての装甲車両の突撃が加わって、混迷は際限なく高まっていったのであった。
―――
「さぁ、飲み食いした分働くわよカフカ」
アルヴィナ・コトフ(薄氷・f31008)が銃を構え促すと、ジョヴァンニ・カフカ(暁闇・f28965)はあくまで泰然と応じる。
「珍しくやる気ですね。野菜を食べた事を褒められたの、嬉しかったんですか?」
からかうような彼の言葉に「はぁ」と溜息をつき、じろりとジョヴァンニの顔を見上げる。
「食べられるわよ……野菜くらい。あなたこそあの人達の事、気に入ったのでしょう? 存外面白い人達だった」
「ええ、そうですね。それに酒の場を共にした仲でもありますし。それじゃ、生き残るお手伝いをしましょうか」
言うが早いか、ジョヴァンニは音も無く前線へと単身駆け出した。一方のアルヴィナは慎重に辺りを見回しながら、歩を進めていく。
その拍子に『置き土産』が視界に入り、彼女の眉が僅かに歪む。
「……目の前で自爆なんてさせないわ。私、生きたがりなの」
呟いたアルヴィナの隣を一台の車が通り抜け、決意に引き締まる彼女の横顔をヘッドライトが照らし出した。
その前方では、既に激しい衝突が始まっていた。
「オラオラオラァ! 行け行け行け!!」
「ヒャーハッハ、次から次に湧いて来やがる! 最高だぁ、トゥラァラララァーッ!!」
それを担いだ装甲車両を傾かせる程の勢いで大砲が火を噴き、鉄と岩の礫が雨と降る。鈍色の牙を持つ猪のような車、全方位にスパイクを備えた針鼠のような車が、そしてただ装甲を厚くしただけのようなトラックでさえも、ブルドーザー状の下半身を持つオブリビオンの群れへと突撃していく。
「ハァーロォー、ブッチャーだよ!! ギャーハッハァ!」
敵は巨大なブレードを上下左右に振り回しながら無秩序に入り乱れ、射線を惑わすような動きと共に恐ろしい速度と物量で迎え撃つ。
「ギャアア!!」
「グぁっ、何だあ!?」
その戦線の一端で、不可思議な光が迸った。光は剣を象り、幾何学的な軌道を描きながら露わになった敵の肉体を切り裂いていく。不意の痛みに敵の突進は中断され、パンク・ウィールスの車両がその不意を突いて襲い掛かる。
一瞬の動揺を見せた敵はしかし、一際鋭い金管の音によって冷静さを取り戻す。それどころか、魔法剣の起点さえも正確に把握したようであった。
「……テメェかぁあ!!」
「はい、そうです」
続け様に魔法剣を放ち、手近なオブリビオンの車体にひらりと飛び乗る。
「クソが!」
「おっと」
太い腕をかわし、モヒカン頭を踏み台に別の敵の上へ、そして地面へ、また敵へ。翻弄するような、挑発するような動きの最中にも魔法剣は鋭く閃き、確実に敵の数を減らしていく。
「逃げンじゃあネェーーッ!」
「うらあァァァ!! 死ね死ねェーーっ!」
ホーンは二度、三度と鳴り響くが、逆上した敵の一団はそれも耳に入らぬ様子でジョヴァンニを追い回す。
そして彼らが気付かないものがもう一つ。
「次はあそこにお願い」
「アイ・アイ・サー! 任せな、超特急だ!!」
「……あまり目立たないようにお願い」
哨戒用と思われるバギーの上で、アルヴィナは何度目かの弾丸を込める。運転する男は先程の酒宴を共に囲んでいた内の一人だ。
「……っ!」
バギーを降りるや銃を構える彼女の眼に映ったのは、空中に踊るジョヴァンニの背とその間際に迫る敵のブレード。
傍らのエンジンの振動や風の流れを考えるよりも早く、細い指が引き金を引く。激しい騒音の中では囁き程度の音が戦場を駆け、かの敵の頭部に黒い穴を空けた。
冷静さを失ったオブリビオンの群れは、未だひょいひょいと跳び回るジョヴァンニを捕まえようとしている。その間も二、三発目が同胞を屠っているとも気付かずに。
「ヒュウ! 嬢ちゃん、すげぇ腕前だな! んじゃ、次は……」
「いえ、ここまでで良いわ。ありがとう」
―――
混乱が広がる戦場は、じわじわと優勢に傾きつつあった。物量も少しずつだが着実に減りつつある。しかし、強烈なホーンが遠くから響く度、混乱は薄れ敵の勢いが増す。
そして悪いタイミングが重なったその時、戦線に綻びが生じた。その隙を逃さず、またしてもホーンが鳴り響く。
「今だァ! イィーハァーー!」
だが一点突破の構えを見せる敵、それを食い止めようとする味方、それら全てを、眩い光が包み込んだ。
「……あァ!?」
「……何だ、こりゃあ!?」
誰もが目を閉じた一瞬後、その異変は起きていた。
茶褐色の荒野に、鉄と瓦礫の雨。それは尽く消え失せ、代わりにあったのはどこまでも透き通る、水晶と水の世界だったのだ。
状況を把握する間も無く、水晶に覆われた地面はキャタピラを滑らせ、降りしきる水晶は肌を貫いていく。混乱の極みに陥り、たまらず動きを止める敵の軍勢。
そこへ、思考よりも本能を優先するパンク・ウィールスの猛撃が降り注いだ。
「どーなってンだぁ!? 氷みてぇなのにぜんっぜん平気だぜ!」
「見ろよ、この牙(タスク)! 超イカしてねぇか!?」
水晶は天地、そして人の身をも覆っていた。彼らを守り、その武装を強靭かつ鋭利にする為に。
驚喜しながらも攻撃の手を緩めない彼らの横から一閃の雷が迸り、少し遅れて晶が姿を見せる。
「さあさあ、私の力を貸したのですから、かっこいいとこ見せてくださいね」
「……あぁ! 任せとけってんだ!!」
「ギャーッハッハ! 噂どーりだ、猟兵ってのはクソヤベエぜ!!」
晶の呼び掛けはまたしても熱狂の渦を作り出した。ただし、今度は彼女によって方向を定められた、怒涛のような攻勢として。
―――
ほとんど速度を緩めぬまま敵中突破を続けるアルマリジーアは丘陵の間際、竜巻の出現地のすぐ傍まで辿り着いていた。
あのホーンの音は今やひっきりなしに鳴り響き、あたかも首領の動揺を表しているかのようだ。だがその甲斐なく、妙に煌めく大地の上の夥しい敵はそこら中で罵り合い、同士討ちの醜態を晒している。
その混乱は確かに彼女が作り出したものよりも遥かに大きく、広範囲に広がっており、我知らず口角が微かに上がる。
(どうやら、料理はうまくいってるみたいだねえ)
その瞬間、丘の中腹に特別巨大なオブリビオンの姿が見える。体躯だけではない、まるでラッパを鈴なりに生やしているかのように大小さまざまな金管に囲まれ、車体にも厳めしい装飾が施されている。
「クソッ、クソ、クソがぁ!! どいつもこいつもクソ役に立たねえフヌケ野郎じゃねぇか!! こんなとこまで敵を通しやがって、畜生!!」
首領格はアルマリジーアを見下ろしながら、忙しなくホーンを鳴らし立て、周囲を固めていたオブリビオンに一斉突撃の号令を下す。
「ヒャッハーッ! グチャミソに轢き潰せェーーッ!!」
激しい蛇行、猛烈な直滑降、編隊飛行のような幾何学的軌道を織り交ぜながら、そしてその道中で同胞を轢き潰しながら、土砂崩れのように殺到する。
「ハッ……せいぜい踊っておくれよぉ?」
だがそれよりも早く、異質な形をしたビームダガーが首領のキャタピラに突き刺さる。直後、それに吸い寄せられるかのようにして、無数の暗器がキャバリアの至る所から放たれ、次々に敵の身体へ降り注ぐ。
「ク……ソ……がぁ!」
「ボ、ボスッ!」
まともな抵抗も出来ぬまま再起不能の被害を受けた首領の姿に、周囲のオブリビオンも少なからぬ動揺を見せる。
しかし、首領格は震える腕でまたしてもホーンを鳴らし、恐らくは全軍の士気を奮い立たせようと最後の号令を放とうとする。
だがそれとほぼ同時に、輝く飛翔体が、今度は敵の突撃部隊へと飛来する。丘の上で串刺しになった敵の群れを通り抜け、駆け上がるジョヴァンニから伸びた影が首領のホーンを根こそぎに両断する。
「テ……テメェ……」
「後ろへは行かせられないんですよ、すみませんね」
「――う」
「……さよなら」
それでも往生際悪く身動ぎをするその頭を、アルヴィナの銃弾が貫いて。
首領は完全に、そして永遠に沈黙した。
「や、ヤベェ! ボスが……ボスがやられちまったァ!!」
目に見える位置にいた敵は、その圧倒的な敗北に恐慌状態に陥り。
遠く離れていた敵は、果てしない混乱から救い出してくれる者を失い。
「さあ、そろそろ仕上げのようですね」
「ヒャッハァーー!! 突撃だぁーーーッ!!!」
晶によって力を得た軍勢の疾走が、それら全てを塵に帰していったのであった。
大成功
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●エピローグ・自由の轍
壮絶な一夜が明け。
強い日差しの下で、パンク・ウィールスの面々が応急手当や「戦利品」の収奪に勤しんでいた。
荒野の上に転がる無数の残骸は莫大な資材、機械部品を生み出すだろう。そうして得られた物資は、また人々の暮らす糧となるのだ。
「あっ! おいテメェ、そりゃ俺が狙ってたヤツだぜ!」
「ヘッ、ノロノロしてっからだ! 欲しけりゃ賭けで一度でも勝ってみるんだなぁ!」
それとは別に、自分の車両に取り付ける装備を探し、昨夜の戦場はまるでガレージセールのような賑わいを見せている。
「そういやこのデカブツ、結局使わねぇままだったなぁ……」
その一角。本来ならば勝ちに驕って乗り込んで来た首領格を葬るはずの巨大爆弾は、昨晩と変わらぬ位置で沈黙を守っていた。
「……いくらアホでも、これくらいは分かるぜ。アンタ達がいなきゃ、俺たちゃコイツと心中してた。だろ?」
神妙な表情を見せた荒くれ者。
だがそのモヒカン頭を引っ叩き、腕を吊った男がさも嬉しそうに横から現れた。
「マジメぶってるヒマはねーぞ、次の竜巻の予兆があったとよ! こっから500マイルちょい先のコロニーから救援依頼だ!!」
「マジかよ! どーすんだこのスクラップ、まだまだ残ってんぞ!」
「んなモン、積めるだけ積んだら後は近くのコロニーに伝えてやりゃ良いだろ! じゃ、お先に失礼!」
「バッキャロー! 弾薬スッカラカンで何しに行くつもりだ、待ちやがれコラァ!」
色めき立った彼らはやかましく喚き合いながら、ボロボロの愛機に飛び乗って行ってしまった。
にわかに慌ただしくなった周囲で、再びエンジンと金管の音がけたたましく鳴り始める。
「あばよ、恩人! いつでも歓迎してやっから、胃の中空っぽにしてまた来いよォ!」
「アンタ達の戦い、最ッ高にイカレてたぜェ! またな、イィーハァーーッ!!」
口々に別れの言葉と無意味な雄叫びを残して、彼らは次の戦いに身を投じていく。
その行路は、きっとこれからも、この残酷な世界に幾重もの轍を刻んでいくのだろう。
どこまでも自由に、騒がしく。
「「「ヒャッハァーー! 突撃だァーーッ
!!」」」
彼らの行く手には、雲一つない青空が広がっていた。