銀誓館学園。
かつてその能力で世界を守った若者たち。
既に役割を終えたはずの彼らに、再び"過去"からの脅威が迫ろうとしていた。
「例の"予兆"があってから、シルバーレイン世界でオブリビオンの活動が活発化している」
開いていた大ぶりの手帳を閉じると、泰山は苦々しい顔で言った。かつて銀誓館と死闘を繰り広げ、己以外の同胞を助命することと引き換えに討たれた土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』――彼女の、オブリビオンとしての帰還。銀誓館の能力者たちに甚大な被害が及んだ戦いは、当然のことながら土蜘蛛側にしても同じことが言える。
「今も銀誓館学園には能力者は存在するし、結社という形で当時と同じように活動中だ」
死と隣り合わせの青春。その無情たる事実すら、彼らは謳歌しているのだ。
だが――今度の相手は"ゴースト"ではない。
"オブリビオン"と相対すればその薄氷は割れ、冷たき"死"が待つことだろう。
「……嫌なものだな、予知ってのは。俺が"視た"ことについて伝える」
銀誓館学園の結社メンバーがオブリビオンに遭遇し、交戦の結果全員が命を落とすこととなる。彼らは最低限の戦闘訓練は積んでいるにせよ、猟兵ではない以上何も手を打てず惨たらしい死に方をする。"能力者"としての責務を信じ、仲間を信じ、犬死にをする。
「――俺から依頼したいことは、二つ」
一つは、結社メンバーをどうにかしてオブリビオンと接敵させないこと。今回の標的となるオブリビオンは【銀誓館学園所属の人間に対し強い敵意を持っている】。万が一彼らが察知された場合、たとえ刺し違えようとも必ず殺害するだろう。彼らに迎撃する能力がない以上、絶対に接敵させてはならない。
「可能であれば、なんだが。彼らの"能力者"としての誇りを傷つけずに上手く誘導してくれ」
思春期であり、また"能力者"としての自負もあるであろう若者たちだ。【"お前は無力だからすぐに逃げろ"といったことをいきなり言われれば間違いなく反発する】だろう。そうなれば彼らは吸い込まれるように終わりへと向かうことになる。
「最悪力づくでもまあ、いいんだが……あの子たちも一生懸命なんだ。汲んでやってくれ」
そう言うと、泰山はキミたちに深く頭を下げた。
そして、二つ目。標的オブリビオンの殲滅。
予知により出現ポイントは完全に判明している。非戦闘員を巻き込みさえしなければ十分に対処可能であるだろうと泰山は言う。
「視えたのは蜘蛛の群れと――ムカデだ」
蜘蛛の群れは単体でも強烈な殺傷能力を持つ上、一度標的を定めれば集団である利点を最大限に活かし確実に仕留めに来るだろう。【蜘蛛の群れの標的セッティングをコントロールする】ことが出来れば、戦闘を優位に行えるかもしれない。
「俺は当時を知らないので何とも言えないが……このムカデ、昔に出たらしいな」
今回のミッションにおける大物、ムカデ王。かつて腕利きの能力者たちと死闘を繰り広げたゴーストがオブリビオンとして再び現れた。土蜘蛛の女王に呼応してのことかは判然としないが、簡単な相手ではない。【もしかつての因縁がある存在と誤認した場合、危険度はハネ上がるが御しやすくなるかもしれない】が……【リスクが大きい】ということは認識すべきだろう。
「オブリビオンを狩るのは俺たち"猟兵"の仕事だ――武運を祈ってる」
泰山は指を鳴らすと、テレポートゲートを開いた。
行き先はシルバーレイン世界、鎌倉。
過去より伸びし糸。
その先にあるのは"未来"か、"死"か。
ノブ=オーカミ
今年は準備期間に充てるつもりだったんですが!?(挨拶)
オーカミです。なんかヤバい予兆きたんでとりま予知してみました。私はシルバーレインからの復帰勢ですが、過去ネタは拾いきれないと思います。ごめんなさい。
いくつかオープニングに強調されている内容があると思います。プレイングの際はご注意ください。【ボーナスと地雷どちらも埋め込んであります】ので。
断章は各章ごとに切ります。何かあればタグでお知らせしますのでご確認ください。
●第一章
銀誓館学園の結社に所属する若者と交流して、オブリビオンとの接敵を阻止する。
●第二章
オブリビオン「絡新婦」の群れを殲滅する。
●第三章
オブリビオン「ムカデ王」を討滅する。
第1章 日常
『能力者の結社活動』
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POW : 戦闘訓練に混ぜてもらう
SPD : 一緒にスポーツや文化活動を楽しむ
WIZ : お客さんとしてお店を訪れる
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臥待・夏報
猟兵……って言ってもいいのかな?
どちらにせよ、調査とか事務とか後方支援が仕事の人間なんだと名乗っておく
実際ほぼその通りだしね
今日は訓練の見学に来たんだ
わ〜!
やっぱり鍛えてる若い子は動きが違うな〜!
僕らは頼りにしてるんだよ、前線で戦う君たちのこと
お姉さんね、職員室に用事があるんだ
できたら一緒についてきてくれないかな……
慣れない場所だし、なんか物騒だし、一人で歩くの怖いんだよぉ
頼むから〜!
人助けだと思って〜!
……と言って学生たちを連れ出す『もう一人の夏報さん』の行動を
別の場所にいる『本物の夏報さん』が五感を通じて確認してるという作戦だ
これで数人は遠ざけられるかな
さて……こっちは前線に向かうとするか
●ある青春時代の風景
シルバーレイン世界、鎌倉。銀誓館学園のキャンバスへと臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は足を踏み入れた。といっても、それ自体はさして手間取ることはなく。
今回のグリモアベースとの接続の際、既に協力関係は構築されている。流石に大上段から猟兵であることを名乗りはしないものの、ある程度事情を察した学園側がすんなりと正式な立ち入り許可を出してくれた。
「それでは、学園についてご案内させていただきます!」
誰がどう見ても張り切ってる様子の中等部男子生徒。胸には学章と、明らかにハンドメイド感があるエンブレムをつけている。恐らくは――能力者の卵で先達の真似をして結社的な何かを友人と結成した、といったところだろう。
「お姉さんね、今日はキミたちの訓練を見学に来たんだ」
その言葉を聞き、目を輝かせる少年。訓練というキーワードからある程度素性を察したのか、自分たちがかつての先輩たちに倣い能力者としての訓練と周辺地域の見回りを行っているのだと語る。その様子はとてもまばゆい。
「僕らは頼りにしてるんだよ、前線で戦う君たちのことをね」
誇らしげな顔――少し、罪悪感を感じる程に。
●泥人の無意味な憂鬱とひたむきな希望
訓練場で行われていた訓練は、臥待の予想を下回るものであった。
確かに一般人よりは遥かに強い。だが――能力者としてはジュニアクラス、猟兵としての覚醒機会が訪れるより先にオブリビオンに遭遇しようものなら、まず助かることはないだろう。
「やっぱり鍛えてる若い子は動きが違うな〜!」
恐らく彼らが求めている言葉を投げかける。それに張り切ったのか、力任せになっていく訓練。案内役の少年もそれに混じり、年上のお姉さんにいいところをみせたいという気持ちだけが空回りしているのを見せられる。微かに臥待は胸の痛みを感じた。
時計を見る。予知で示された時刻が近い。
彼らも時計を気にしている。この後何かあるだろうか。
「お姉さん、この後職員室に用事があるんだ。できたら一緒についてきてくれないかな……」
臥待がこのキャンバスの構造に明るくないのは事実だ。小中高一貫のマンモス校となれば、普通に迷子にもなり得る。それを聞いた案内役の少年は、すかさず案内役を買って出た。そこに割り込むように訓練の相手をしていた同い年くらいであろう少女が口を尖らせ割り込む。
「もう、デレデレしちゃって!……あの、わたしも一緒に行きます。学園には先生がたくさんいるし、ご用事のある先生が職員室にいるともかぎりませんから」
どうやら小さい頃からの付き合いなのだろう。彼女のその言葉にああでもないこうでもないとじゃれ合いながら、彼らは来客の案内をするため汗を拭い身支度を整え、案内を始めた――臥待の"自己複製"に対して。
臥待は青春の風景に入り込んだ"複製"を通し、予知で被害に遭うとされる"結社"のメンバーを現場より遠ざけつつ、既に不穏な気配がする現場を哨戒している。少なくとも彼らは、この場所で非業の死を遂げることはないだろう。
残り、三人。
成功
🔵🔵🔴
ルーン・エルウィンド(サポート)
人狼の翔剣士 × マジックナイト、20歳の男です。
普段の口調は「丁寧(私、相手の名前、です、ます、でしょう、でしょうか?)」、敵には「無感情…のはず(私、お前、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)」です。
本人は気付きませんが、尻尾に感情がもろに反映されます。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
秋枝・昇一郎
銀誓館OBの猟兵って事で、学園側には事情を説明しつつ裏で話を通しておいた上で。
今回の当人たちには、戦闘訓練に連れ出して遠ざけられねえか?
場所はあんだろ、丁度いい場所。
学園黙示録、今でもまだやってんだろ。
プールを使わせて貰うよう、最初に話は通しておくぜ。
血気盛んな能力者なら、学園OBとの戦闘訓練って少しぐらいは興味惹かれるんじゃねーか?
「こう見えて、戦闘系結社で団長してた事もあるんだぜ」
「よっしお前ら。まとめて相手してやる。いつでもかかって来い!!」
「やるじゃねーかお前ら……」
長剣構えて武器受け、受け流しを駆使して現役生たちの攻撃を適時受け止めつ、時々少し本気出してみたりしながら戦闘訓練する。
●行き場なき熱情、玉鋼と出会う
「アンタが、あの"タマハガネ"二代目だってのは知ってる。尊敬だってしてるぜ」
苛立ちを隠しきれない表情で青年は秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)に吐き捨てた。秋枝は自身の出身校である利点を最大限に活かし、予知された惨劇の被害者のうち三人をプールに呼びつけていた。
"能力者"をプールに呼びつける。
それも"銀誓館OB"である"猟兵"が。たった一人で。
秋枝はすべて承知の上で仕掛けている。武闘派で鳴らした結社"タマハガネ"の二代目、かつての戦いを生き抜いたOB――そんな男がわざわざ名指しで”後輩”を"闘技場"に呼びつけたのだ。
少なくともかつての自分なら、それがどういうことなのかは嫌でも察する。
「で、だ。こっちは三人、アンタは一人……いくら何でもナメ過ぎじゃないっすかね、先輩?」
先程から格段に敵意を放っているのはリーダーと思しき能力者の青年。その後ろに控える二人も、彼と同じような剣呑な空気を纏っている。いずれも制服は着崩しており所謂"不良"といって差し支えない外見をしているが、ハンドメイド感溢れるエンブレムが妙に浮いた印象を受ける。
「よっしお前ら。まとめて相手してやる。いつでもかかって来い!!」
●熱風、その剣を招く
ルーン・エルウィンド(風の翔剣士・f10456)は予知にて示された惨劇の被害者を探し、シルバーレイン世界へと降り立った。銀誓館学園のプールに別の猟兵から呼び出されているとの情報を得て、支援のために急行したはいいのだが。
明らかに決闘寸前の空気が漂っている。
血気盛んな若者が三人。いずれも喧嘩慣れはしていそうだが、相対している猟兵――秋枝とは格が違うことが一目見て分かった。このままでは彼らは為す術もなく叩きのめされ、結果的に破れかぶれになり想定外の事態に向かうかもしれない。
「さて、如何したものか」
彼らの顔を立て、かつ予知で示された時間までおとなしくしてもらうにはどうすれば良いか。逡巡の後、その緊迫した空気に割り込むことにした。
「お待ち下さい。彼らの言う通り、三対一はあまりにもフェアではない」
怒りに満ちた視線が三つと、不思議そうな視線が一つ。ルーンは自らも猟兵であることを告げ、秋枝に加勢すると告げた。怒れる若者三人はそれでいい、今すぐやろうぜと最早感情は沸点を超えつつある。そんな中、秋枝はルーンに囁いた。
「エゲツねえなアンタ。どう見ても俺より"出来る"ってのに」
ルーンは苦笑いをし、肩を竦めた。
●学園黙示録・番外 ~対猟兵交流戦~
呆気ないものだった。
ルーンが召喚した銀色の雨から放たれる万色の雷により体力を削り取られ、リーダー以外の両名はダウン。勿論かなりの手加減はされているにせよ、まともに動けるようになるまでそれなりの時間を要するだろう――少なくとも、予知で示された時刻までは。
秋枝はリーダー格の青年と一対一でしのぎを削る。ルーンの雷により激しく消耗しているにも関わらず、秋枝の強靭な体幹に響く打撃を絶え間無く打ち込んでくる。だが、やはり秋枝には届かない。数度の攻防の後、彼は膝を付いた。
「どうした!まだやれるだろ!」
檄を飛ばす秋枝。今はまだ経験不足であるだけで、彼からは十分な伸びしろを感じ取っていた。この後に待つ惨劇をすぐに乗り越えることはできなくても、彼ならばいつか己の力で誰かに待つ惨劇を跳ね返せる。確信があった――もしかしたらそれは、かつての自分、かつての仲間たちを重ねていただけかもしれない。それでも。
"未来"には可能性があると、信じてみたかったからだ。
●その"月"は、未来への軌道
「オレは……やっと見つけたんだよ」
もう立てぬはずの身体を奮い立たせる青年。その表情はひたむきで、美しく。
「ずっとオレはなんで生きてんだって思ってた。そんなオレが"能力者"とかいうヤツだって分かった時――本当に嬉しかった」
青年の目に光が戻る。ルーンは雨を引かせ、秋枝と彼の対話に水を差さぬように一歩下がった。
「これで俺も、誰かのために、何か出来るんじゃねえかって。喧嘩しか能がねえ俺が、誰かの助けになれるんじゃねえかって」
秋枝は真っ向から青年を見据えている。
大人として、一人の男の本気から逃げることはできない。
「これが最後の一発だ。逃げんなよ先輩……ここまでボコボコにしておいて、スカすとか無しだぜ」
青年の最後の一撃。
その蹴りは、音速に達する速度で月の軌道を描き。
秋枝の鳩尾を捉えた。
――"月のエアライダー"の力が、青年に宿ったのだ。
●ただ真っ直ぐに前を向く者に、奈落からの糸は目に入らない
「やるじゃねーか、お前……」
渾身の一撃ではあったものの代償は大きく、青年の足は負傷した。そのまま秋枝にもたれかかる形となり、青年は呟く。
「……ありがとうございました、先輩。次はぶっ潰す」
失神した青年の頭を思い切り撫でて、ルーンと共に医務室へ担ぎ込んだ。
予知により示された悲劇。若き能力者たちの結社メンバーが見回り中に遭遇したオブリビオンによる虐殺。
それは、新たなる猟兵の覚醒と共に完全に阻止された。
残るは"過去"より放たれた糸に呼応した蜘蛛と、百足のみ。
成功
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第2章 集団戦
『絡新婦』
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POW : 鋼糸使い
【鋼糸】が命中した対象を切断する。
SPD : 蜘蛛の領域
レベルm半径内を【蜘蛛の巣】で覆い、[蜘蛛の巣]に触れた敵から【若さ】を吸収する。
WIZ : さらなる絶望
【蜘蛛の巣】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【部位を持つ蜘蛛の部分は分離し、人間】に変身する。
👑11
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●断章:四つ辻に逢魔が時来たる
冬の日は短く、午後六時を回った鎌倉郊外の十字路は街灯が辛うじて道を照らすだけの暗がりとなっていた。予知で示された惨劇は、猟兵達の活躍によって完全に阻止された。その四つ辻には五つの骸が積み上がるはずであったが、待ち受けるは"過去"を殺す者たち。
蜘蛛が、来る。
掃き出された過去から、憎悪を携えて。
怨敵を殺すために。
冴神・駿介
元より後進の指導なんてのはガラじゃねぇ。
それに、猟兵の力ってのも今はまだ掴み兼ねてるしな。まあ、こっから肩慣らしといこうか。
今回のオブリビオンは銀誓館学園所属の人間に対して強い敵意を持ってるんだろ。
それくらい強い感情を持っているなら銀誓館の特徴くらい捉えてんだろ。
イグニッションカード、こいつは元々、銀誓館学園で開発された技術だ。
で、そいつを持った人間が、起動(イグニッション)!……なんて言いながら銀誓館学園の制服を一瞬にして纏ったらどうだ?
どっからどう見ても銀誓館の能力者の出来上がりってわけだ。これで、蜘蛛の群れの標的セッティングを俺に向かうようにコントロールする。ある程度集まるまでは、2本の剣と覇気による攻撃の受け流しをしていき、惹き付けきったら、魔鎧鋼身功を使用する。
あらゆる攻撃に対してほぼ無敵になる、囮には最適だろう。能力の都合上、全く動けなくなるんで、攻撃手段を持った人間が必要になる。ま、猟兵は他にもいるんだ、現地で声かけて協力を仰ぐとするよ。
月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
オラトリオのシンフォニア×聖者の女の子です。
普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
曽我部・律(サポート)
『この力を得たことは後悔していない……』
『私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね』
『こういうのには疎いんだが……ふむ、こんな感じか?』
とある事件で妻子を失い、その復讐の為にUDC研究を続けているUDCエージェントです。ですが、UDCを強引に肉体に融合させた副作用として徐々に生来の人格は失われつつあり、妻子の記憶も彼らの写真によって辛うじて繋ぎ止めています。
多重人格者としての別人格『絶』は凶悪なオブリビオンの存在を察知すると、律に代わって表に出てきて戦います。その際、口調は『おい律……うまそうな匂いがするじゃねぇか。代われよ』みたいな凶悪な感じになります。
●その男の名は、冴神
この四つ辻に何が顕れるのか、何を憎み何を目指すのか。
全てを知った上で男はやって来た。
その男の名は冴神・駿介(ゴーストハンター・f35755)。銀誓館学園の卒業生にして、猟兵。後輩の教導なんてガラじゃあないが、荒事なら彼の守備範囲だ。逢魔が時を迎える四つ辻に、彼は無手にて現れる。
「さあ、来いよ……クソッタレ共」
予知が示した惨劇の時刻きっかりに、憎悪が形作った蜘蛛が湧き出てくる。ここに至るまで、冴神は交戦の協力を求める腹積もりだったが、いるのは能力者ばかり。念の為グリモアベースに残しておいた作戦要項と支援要請が届けば狙い通りの展開に持っていけるだろう。
懐かしさはない。むしろうんざりしている。かつて命を張った時間、青春という名の修羅場。その結果が今を生んでいるなら、こんな世界などぶち壊れてしまえばいいとまで思いもした。
だが、その男は。
冴神駿介という男は。
「――"イグニッション"ッ!」
武侠であったのだ。
●清廉たる聖者と危うき男
月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)はグリモアベースにて冴神が残していた言伝を知り、血相を変えた。あまりにも危険な賭けである。彼のユーベルコードがいかに鉄壁の防御を持つにせよ、それを永遠に維持できるとは限らない。万が一があれば、最悪死んでしまうかもしれない。面識も何もない、たまたま依頼で一緒になっただけの他人だ。――それでも、知ったからには。手を伸ばせるからには。その穏やかな雰囲気の芯にある決意が、彼女を動かした。
曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)は月詠の様子が偶然目に入り、そのまま視界から外した。すべての予知が交差するこの空間では様々な情報が行き交う。元々鉄火場なのだ、いちいち気にしていたらきりが無い。だが――己の内より、声が響く。
『おい。何だか美味そうな匂いがするな……あの女、地獄を見に行く気配がする』
曽我部の内、もう一つの人格"絶"はそれを見過ごさなかった。こうなればもう選択肢はない。転送直前の月詠に、おずおずと声をかける。
「ああ、君。現場に向かうのだろう?良ければ、私も同行させてはくれまいか」
月詠は思わぬ声に一瞬驚いた後、すぐに心からの笑顔でその提案を了承した。
「はい!ありがとうございます!」
かくして聖女と内に凶暴性を秘めた男は、逢魔が四つ辻へと。
●煉獄の四つ辻
銀誓館学園への憎しみで再構築された"それ"を前に"イグニッション"を行うということ。すなわち、総ての殺意を引き受けるということ。狂乱状態となって殺到する蜘蛛たちを前に、冴神は自分の狙いが正しかったことを悟った。
「根比べといこうじゃねえか、なあ!」
絶技・魔鎧鋼身功。己を不動とし、引き換えに鉄壁の防御を宿す。蜘蛛の初撃は呆気なく冴神の体躯に弾かれたが――まるでそれすらも認識していないような蜘蛛の様子に、冴神は肝を冷やす。
眼前の怨敵を滅ぼそうとするがあまり、蜘蛛たちは同胞を巻き添えにすることも厭わず鋼糸を浴びせかけているのだ。冴神には絶対に届くことはないが、蜘蛛たちはそうではない。自分に取り付いた蜘蛛が己を切り裂こうと、喰らおうと、殺そうとしてくる中でそれすらも巻き込んで殺到してくる群れ。さしもの冴神といえど、少なからずプレッシャーを感じる。もし鋼身功が切れたなら――そんなことが頭を過ぎったその時。
「冴神さん!」
聞き慣れない女の声。既にここには猟兵以外立ち入れないはず。その上で自らを呼ぶ声――間に合ったのだ。
「悪い、ちょっと今取り込み中でそっちの様子は見えないんだが。この通り、こいつらは俺に夢中だ。遠慮なく俺ごとやってくれ」
冴神は事も無げに言う。元よりそのつもりだったのだ。結果的に全ては思惑通りに運んでいる。その完璧さに、もはや三桁に及ぶ数の蜘蛛に取り付かれながらも顔には笑みが浮かんだ。
『なあ、女。お前が喰わないってんなら俺が先に殺るが?』
冴神の覚悟も月詠の意志も"絶"にはどうでもいいのだ。存分に破壊できる、存分に殺せる。最高の時間のど真ん中に居るのだ、もはや何に遠慮することもない。曽我部の内から"絶"が這い出ようとしたその瞬間。
『炎の精霊よ、全てを包み込み、飲み込み、跡形もなく焼き払いなさい!』
月詠は一切の躊躇なく、冴神とそれに取り付く蜘蛛を焼却にかかる。その爆炎はみるみる蜘蛛を焼き払っていき、さらに狂乱し殺到する蜘蛛たちにまで延焼した。憎悪――それは、煉獄の炎ですら焼き切ることは出来ないらしい。
『はは、成程。月詠といったか……その名前、"俺"は、覚えておいてやる』
"絶"は眼前に広がる地獄絵図にご満悦なようだ。曽我部の制御下に戻り、落ち着いた様子を見せている。
これだけ甚大な被害が及んでも蜘蛛の狂乱は収まる様子を見せない。だが、個体レベルでおかしい動きをしはじめた蜘蛛の存在を曽我部は見逃さなかった。
「ああ、引っ込んでくれたようだけど……"絶"、ここからが出番らしい。好きにしてよいよ」
ひとつの感情から生み出されたものが、微かでも自分自身に"疑問"を持ってしまうということ。それは即ち、存在そのものがほつれた事を意味する。
『わかったぜ、"律"――さあ、地獄はここからだ!』
憎悪にほつれが生まれた蜘蛛を飲み込む触手。そしてそれは他の個体にも伝播し、触手はやがて蜘蛛に対抗出来るほどの群体となる。憎悪の群れが義侠に群がり、それを煉獄の炎が焼き払う。やがてそれは自身への疑問と繋がり、憎悪を抱えきれなくなった者から順番に触手に飲まれていく。もはやこの場所は地獄そのものと化していた。
●灰は灰へ
憎悪の波が止んだ。未だ気配そのものは消えていないものの、冴神はその襲撃を耐えきった絶技を解く。
「……やれやれ。狙い通りではあったが、こんな目茶苦茶なことになるとは思わなかった」
三人の連携により、蜘蛛の形をした憎悪はかなりの数を過去に送り返すことに成功した。
だが、未だに"根源"の姿は見えない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
秋枝・昇一郎
なかなかガッツあるじゃねーか現役生……。
あの手応えなら、そう遠くない内にこっち側に来ても相応にやれんじゃねーか。ま、それは別の話か。
襲撃の方、既に始まってるみてーだな。
先客が上手い事引き付けてくれてるなら、状況は上手く使わせて貰うぜ。
〇行動
まずは『詠唱グレネード』の煙幕弾を複数投げ込んで”目潰し”してこちらの位置を捉えられなくした上で、ユーベルコード【フルアームズレイン】で『詠唱ミサイルランチャー』による”誘導弾”をありったけバラ撒き、しっかり誘導して敵にのみ命中させる。
残った敵は武装を持ち替え、長剣で切ったり防御したり、スパナっ杵の投擲等で1体1体確実に仕留めていく。
●Re:START
秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)は充実した心持ちで予知のあった現場へと急行している。もしかしたら結果的に自分が新たな修羅場へ導いてしまったのかもしれないが、それでも、可能性が広がったことには大きい意味がある。未だに残る鳩尾の痛みに苦笑いをしながら足を進める。
次は自分の番なのだ。
先輩として、猟兵としてその有り様を示す時である。
●混沌の四つ辻
緒戦により大混乱に陥っている現場。蜘蛛たちは予知で示された挙動とは異なり、完全に錯乱している。散発的に周囲の存在に攻撃を撒き散らし、何故か同胞にすら喰ってかかる個体も存在していた。
「先客は、いい感じにやってくれたみたいだな」
秋枝は彼方からやって来る錯乱した蜘蛛たちを見やり、武装の確認を行う。ミサイルランチャー、よし。グレネード、よし。予備弾倉の詠唱銀、よし。想定よりも戦況が遥かに良いにしても、単純に頭数が多い。手持ちの火力を全て出し尽くしても、仕留めきれるかは怪しい。細々と立ち回り、後詰めまで粘るのが恐らくは一番効率的であるし、己の身もそれほど危険に晒さずに済むだろう。
この場所にいるのが秋枝昇一郎でなかったならば。
●年末特価・赤字覚悟決算大セール
初撃は詠唱グレネードを投擲、煙幕を仕込んだそれで蜘蛛の視界を防ぐ算段であった。だがしかし、蜘蛛は視覚を頼りに動くことはない。着弾時の衝撃で蜘蛛たちは秋枝を察知し、怨敵来たりと秋枝に殺到する。
秋枝にとってはどちらでも良かったのだ。何故ならば、その後にやることは変わらないのだから。
「釣りは不要だ。全部残さず持ってけ……ッ!!」
全弾発射。それが秋枝の回答である。
冬の鎌倉郊外にて、蜘蛛の子相手の弾薬大放出セールが開幕した。
辺り一帯更地にするが如きミサイルの雨。もはや誘導の必要もない――圧倒的面攻撃。単純に蜘蛛たちがやって来る方向"すべて"を殲滅すればよい。単純にして傲慢、そして力強い結論。その暴力的火力は、殺到する蜘蛛たちを次々と詠唱銀に還していく。それを活用する手もないわけではなかったが、とりあえずは在庫切れになってからの話だ。
●またのお越しをお待ちしております
セールの棚が空になった頃には"お客様"も既に引けていた。これで終わりとはいかないだろうが、ひと波はしのぎ切れたのだろう。秋枝は"金艮土鬼
"に眼前に山のようにある詠唱銀を取り込み、次のひと波に向けての在庫補充を行おうとしたその時。
詠唱銀が"鬼門"の方角へと流れ込んでいることに気づいた。
すぐさま阻止しようと動くも、既に場の詠唱銀は鬼門の方角に紐付いてしまっている。恐らくは――居る。かつて滅ぼしたはずの"王"が。秋枝は愛用のスパナを手にしつつ、未だ晴れぬ瘴気の向こう側を見やった。
成功
🔵🔵🔴
臥待・夏報
専門じゃない夏報さんから見ても、あの訓練の問題点は一目瞭然
攻撃のことばかり考えて、生存を最優先にできてない
……此処に彼らが居なくてよかった、と思っておこう
『標的をコントロールする』
目立つことだけがその手段じゃない
むしろその逆、標的にされないように振る舞うよ
若さを吸い取る糸にわざと引っかかる
目立たないよう息を潜め、動かず、反撃の機会を待つ
もう仕留めたようなものだと、弱い獲物だったと、そう誤認させるんだ
『仲間外れは誰なのか』
先に戦ってくれた皆のお陰で蜘蛛の血は十分
十字路いっぱいにミステリーサークルを描き広げて……半径111m
敵の蜘蛛だけを攻撃する
呪詛の炎による焼却に……肉体の老化は関係ないからね!
レイカ・ヴァンスタイン(サポート)
フェアリーの聖者×プリンセス、9歳の女です。
戦闘は苦手で援護や救助、支援など中心です。
武器は人間大の人形(銃火器持)ですので、運搬作業も可能です。
普段は悪戯(許せる範囲)で遊ぶ※戦闘とは別です。
普段の口調は「マイペース(ウチ、相手の名前+ちゃん、なの、なの?)」
苦しい時は「愛想笑い(ウチ、相手の名前+ちゃん、なの、なの?)」です
幼いので殆どひらがなで喋ってます。
・ユーベルコードは必要に応じて、多少の怪我は厭わず積極的に行動(支援中心)します。
・他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。公序良俗に反する行動はしません。悪戯も笑って許される範囲までです。
・あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●仲間外れは誰なのか
垣間見た青春の風景。汗と笑顔、仲睦まじい二人の少年少女。
臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は銀誓館学園でのことを思い返し、ため息をついた。所詮は子供の戯れ事だから当然かもしれないが、あまりにも稚拙であった。専門家ではない自分ですらはっきりと分かるのだ、もしこの場所に彼らが居たらと思うと居た堪れない思いが過る。
しかし今や予知により示された惨劇は回避され、既に開かれた戦端はこちら側に優位な状況となっている。恐らくはこれが最後のひと押しになるだろう。詰めの一手を指すため、臥待は四つ辻へと向かった。
●鬼門の番人
四つ辻は静まり返っている。ただ瘴気だけが霧のように包み、街灯もまともに機能しているか怪しいほどだ。この場所を活かし、状況を詰めるための戦術はある――人が聞けばまず眉を顰めるし、覚悟も必要なのかもしれないが。臥待にとっては些事であった。
四つ辻、北東より気配。
キチキチ、キチキチという不快な音。
蜘蛛たちであった。だが、想定とは少し違う挙動をしている。まるで北東――"鬼門"への侵入者を拒むように、守備的に立ち回っている。この場所の痕跡を見る限り、激烈な交戦であったことが伺えるが……もし同じ挙動をしていたなら、絶対にこうはならないはずだと臥待の経験は告げた。
蜘蛛たちが網を張る。
ここより踏み込むならば絡め取る……殺す。明確な示威行為にしか見えない。
臥待は絶好の機会を得た。真っ直ぐに歩みを進め、そして。
その網へと、身を投じた。
●優しい声は誰がために
痛みはなかった。ゆっくりと自分の精気が失われていく。体温が下がり、静かに死んでいく感覚。むしろ気持ちよくすらあった。若さを吸う蜘蛛の網に身を委ねた臥待はそんなことを思っていた。苦痛なら堪えればよかったけれど、こんなにも穏やかな死と相対するということは計算には入っていない。
何処にも居場所がないような気がする日々。何事にも馴染めない自分。そんな自分ごと、この糸は優しく眠りへと導いてくれる。すべきことは忘れていない。やろうとしていたことも分かっている。だが、この感覚はあまりにも優しかった。もし、しくじったら。それはそれでよいのかもと、途絶えそうな意識を保ちつつ考えていた――その時。
「ばかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
レイカ・ヴァンスタイン(銀光精・f00419)がいきなり飛び出してくる。臥待はその声を聞いて最初に思ったのは"余計なこと"であった。糸に絡め取られ仕留めたと誤認させ、不意を打って片付ける。その算段が完全に狂ったのだ。
蜘蛛はレイカを認識したのか、牽制するかのように散発的な攻撃を仕掛ける。だが、明確な排除を意図していないようだ。あくまで"何か"を護ろうとしていると臥待は確信する。
結果的には狙い通り。
臥待は眠りかけた魂魄を奮い立たせ、機を伺う。遮二無二なレイカと蜘蛛の交戦、そこに最高のタイミングで横合いから殴りつける。幸いレイカは臥待と並ぶ強者であったため、戦況は悪くない。その時を見据える時間はある。
そして。
●呪いの炎、鬼門を灼く
四つ辻を呪いの炎が包んだ。それは臥待に絡みつく糸を焼き、蜘蛛を焼き、塵となった詠唱銀を焼き――鬼門へとつながる詠唱銀の路を焼いた。臥待は肉体が現実へと戻るような感覚と共に、何故か胸の奥にチリつく熱が残っていることに気づく。
そして立ち上がり最初に受けたのはレイカの体当たりであった。
「ばか!なんであんな事したの!ウチ、ウチ、めっちゃ心配したんだから!」
名前も顔も知らない、予知の解決ですれ違った程度の縁でしかない自分のために。
レイカは泣いていた。
「何かあったの?つらいこと?かなしいこと?お友達いないならウチが友達になる。だからもうあんなことしないの!ね!」
僕の何が、とまで口につきそうになり、止めた。
胸の熱が、それを止めた。
「……ありがとう」
どうしても、ごめんという言葉は出なかった。
胸の熱は未だ消えていない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『ムカデ王』
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POW : 百足蹂躙
【無数の脚による蹂躙突撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 廉貞模倣体
【妖狐七星将「廉貞」を模した霊的存在】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : 天空百足嵐
召喚したレベル×1体の【巨大ムカデ】に【空駆ける足】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●断章:鬼門開闢
四つ辻を包む瘴気は消え、そこから"鬼門"の方角にて凄まじい殺意が顕れた。
かつて銀誓館学園の能力者を苦しめた"それ"は、ゆっくりと彼方より姿を見せる。
その体躯は大きく、禍々しき様相をしていた。
人面など有りはしないのに、明らかに鬼の形相をしていると分かる。
幾人の強者がかの者に返り討ちにされたのだろう。
何度かの者は討たれていったのだろう。
繰り返し、繰り返し、何度も。
此度の戦いは生か死か。
この"世界線"にて己の憎悪は晴れるのか。
ムカデ王、再臨。
秋枝・昇一郎
ムカデ王か。妖狐と相対してた時以来だな。
相変わらずでけーなオイ。
オブリビオン化したっつっても、何で土蜘蛛の眷属と一緒くたになってんだか。
〇戦闘
即座の強襲を警戒して身構えておく。
敵が飛び込んで来たらユーベルコード(以下UC)で飛び上がって回避。
追って来るようなら上空からUCで急降下してそのまま一撃。
飛び込んで来ないなら、スパナっ杵を投げて誘い出しを試みる。
主武装はバス停で。
小振りの攻撃は武器受け・受け流しで対処し、大振りの一撃はUCのロケット噴射で小刻みにドヒャア!とぶっ飛んで回避。
攻撃は普通に振るう他、UCの噴射で強引に差し込み。
一撃一撃は鎧砕きで重量攻撃も添えて、外殻にダメージを与え続ける。
アハト・アリスズナンバー(サポート)
「私の手が必要ならば、お貸しします」
無表情、無感情に見える、死んでも次の自分が即座に故郷から転送される量産型フラスコチャイルドです。
一人称は「私」、口調は誰に対しても「です、ます、でしょうか」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。
基本的には手が必要なら貸す、といったスタイルでユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず突撃します。
ただ、アリスが関連してる場合は積極的に突撃し、アリスの敵を排除するように動きます。
その他の部分はマスターさんにお任せします
●対ムカデ王:その糸が手繰り寄せた悪夢
鬼門より出でし王の前に最初に立ったのは、秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)である。
かつて妖狐との戦いにて相対した眼前の大百足は、当時の記憶通り圧倒的な体躯と殺気を放っている。土蜘蛛戦争とは時系列が違うことに微かな違和感を覚えるも、すぐにそれどころではなくなった。
旋風。
その無数の足で一瞬の内に接敵したムカデ王は、まるでその魂魄ごと叩き込むかのように身体をくねらせ秋枝を打ち付けにかかる。予想していた初弾の速度とは桁違いの一撃に、なんとかユーベルコードで上空へと回避する秋枝。そのまま物理エネルギーを最大限に活かした一撃をお見舞いする。
まるで鋼鉄を殴りつけたような衝撃。
その反動でさらに吹き飛ばされる秋枝。
即座に認識を修正する。"眼前に居るのは、あの時の王ではない"と。よくよく見ればその外殻はヒビ割れ、まるで血のように黒ずんだ詠唱銀が禍々しく流れ続けている。その足は"すべてが別のムカデから毟り取ったような"歪な形状をしており、大百足どころの話ではない。
「大百足の形をした何か」であった。
汚れた詠唱銀を撒き散らしながら秋枝に突撃するムカデ王。どれだけ飛ぼうが、どれだけ身を躱そうが、執拗に体躯での一撃を見舞いにくる。そう、決して王は秋枝を逃しはしない――怨敵、銀誓館学園の系譜。それだけで、殺す理由としては充分であった。
「……これは、マズいかもな」
秋枝は歴戦の強者である。だからこそ、自身の消耗をはっきりと自覚していた。相手は憎悪を纏いしオブリビオン、消耗などという概念など、既に塗りつぶされて"掃き出されて"いることだろう。二度、三度、四度。徐々に落ちていく秋枝の飛距離。
そして五度目の猛攻を躱そうと起動したユーベルコード――武器より聞こえた異音。
それは、秋枝の命運が尽きる瞬間を告げる秒針の音。
●対ムカデ王:女神の糸車を逆に回す者
秋枝は死を覚悟した瞬間、異様な光景を目にする。まるで自分が映像作品の登場人物であるかのように静止し、同時に自身の命脈を押し潰さんとする王の体躯が突然ゆっくりと離れていった。
――巻き戻っている。
時間が、世界が、自分という物語が。
『アハトコード、発動。――未来は、わからないから楽しい』
アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)は眼前に居るムカデ王を無機質な眼で見つめている。自らがこの予知の解決に投入されることも、そして結果最悪の相手と遭遇することも、必要とされている以上何ら問題ではない。アハトは呆気に取られている秋枝に、事も無げに告げた。
「私の手が必要ならば、お貸しします」
もはや秋枝のユーベルコードは通用しない。完全な地力勝負である。アハトの身を削るユーベルコードの支援を受け、ひたすらにバス停を叩き込みながら後詰めまで粘る以外選択肢がないのだ。
最適解は逃げることだろう。今なら逃げられるし、それをしても誰も馬鹿にしたりはしない。分かっている。そんなことは分かっているのだ。
「……ありがとうございました、先輩。次はぶっ潰す」
どの面を下げて会いにいくつもりだ、秋枝昇一郎。
●対ムカデ王:死と隣り合わせの青春
バス停を握る手に力が入る。眼前には自らの一撃など意にも介さない巨大な異形、既に十二分にその戦力差は思い知っている。秋枝はこんな状況にも関わらず、どうしようもない郷愁が過ぎる。現役時代、ゴーストタウンに彷徨っていた低級ゴーストですら怖さを感じていた。ちょっとした地縛霊退治ですら冒険だった。時が経ち、青春が再び眼前に殺意を伴って現れたのだ。命がけではあるが、胸を借りにいける相手。秋枝は叫んだ。
「……やって、やらァあああああああああああああ!!」
ぶん殴る。躱す。ぶん殴る。躱す。ぶん殴る。躱しきれぬ一撃をアハトに食い止めてもらう。もう後先など考えている余裕はない。それが出来る相手でもない。自分が音を上げるか、相手が退くか、二つに一つ。アハトをそんな酔狂に巻き込むわけにはいかないとも思うが、現状彼女が居なければ三度は死んでいる状態だ。これも猟兵のさだめと割り切ってもらうことにした。
アハトは秋枝の姿を眺めつつ、要所で糸車に手を入れるだけでのんびりとしたものだった。どうやらあの巨怪は何らかの理由で秋枝にご執心らしく、流れ弾すら来ない有様である。怯えすら見せていた彼は、まるで若返っていくようにすら見受けられる。"残り時間"は確実に削れているが、もう少しその姿を見守りたい、そんなことを思った。
●対ムカデ王:分かたれた糸の行き先
秋枝とムカデ王の死闘は、遂に一度攻勢を止めたムカデ王により一応の幕を下ろした。
秋枝も状況は理解している。ろくに数えている余裕もなかったが、手にしたバス停の形が目茶苦茶になるほどの打撃を入れてなおムカデ王の甲殻を穿つまでには至らなかった。アハトの状態も無視できない。蛮勇を選ぶならその先に待つのは犬死にである。
「き、今日は。これくらいに、しておいて、やる」
秋枝とアハトは戦線を離脱した。
ムカデ王はそれを追うことはせず、ただドス黒い詠唱銀を流し身をうねらせるのみ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
冴神・駿介
残念ながら現状に不満タラタラなのはテメェだけじゃねぇんだよ。
ムカデ王に対して出会い頭にタイマンチェーンで鎖を打ち込む。
怒りを植え付けタイマンに持ち込もうとする。
タイマンチェーンの闘気での自己強化は攻撃力を重視する。
あとは鎖を引き寄せて、至近距離での殴り合いだ。
相手の攻撃は拳をぶつけて相殺してやるさ。
……さっきのも共有されてんだろ。
だったら、もう今更他に何も要らねぇじゃねぇか。泥試合だ、付き合え、化け物が。
過去の化身だ?調子に乗んな馬鹿野郎。
俺の怒りとテメェの怒り、どっちがデケェか示そうじゃねぇか。
ルク・フッシー(サポート)
こ、こんにちは。ぼ、ボクは、ルクといいます
戦いは怖いですけど…誰かの大切な物を守るために…
大丈夫です。ボク、戦います…!
できるだけ敵と中〜遠距離を保ち、相手の能力を考え、最適だと思うユーベルコードを使い戦います
塗料に属性や誘導弾などの性質を宿す事もあります
攻撃はよけるよりオーラ防御や武器で受けて軽減したり、激痛耐性で耐えたりする方が得意です
たとえ依頼達成のためでも、他の猟兵や一般人などに迷惑をかけるような事や公序良俗に反する事はしません
よ、よろしくお願いします…!(絵筆をきゅっと抱きしめる)
●対ムカデ王:その意図を塗り潰すは、憎悪
冴神・駿介(ゴーストハンター・f35755)は苛立ちを隠せずにいた。眼前の醜いソレは、どうしようもなく独り善がりで傲慢に思える。どうやっても過去はいずれ掃き出されるものだ。時計の針は戻ることはない。その終わりがどれだけ屈辱的なものであれ、無念であれ、過去は過去としてあるべき場所で眠るべきだ。
「残念ながら現状に不満タラタラなのはテメェだけじゃねぇんだよ」
手負いとはいえ王である。冴神が出会い頭に放った"決闘の鎖"を受け一対一の形を強いられ、辺りの木々がざわめくほどの怒号を放った。それと共に流れ込む"怒り"の感情。だがそれは、すぐに王が持つ、王を形作るソレへと塗り替わった。
憎悪。
身を包む憎悪。内にて燃える憎悪。眼前に居る憎悪。もはや王には、ソレ以外何もなかったのだ。
冴神は鎖越しに自らの怒りすらも塗り替える王の憎悪に、無意識ではあるが気圧される。
「泥試合だ、付き合え、化け物が」
そう、冴神の眼前に居るのは紛れもない化け物であった。憎悪のみでその身を過去から現在に顕現させたオブリビオン。その化け物と"決闘の鎖"で己の身を結んだのだ。果たしてその選択は、最悪の結果を示すこととなる。
●対ムカデ王:代償
王の初撃は冴神の意識を寸断させた。もしそのままであれば、次の瞬間に赤いシミへと変わっていただろう。
あまりにも圧倒的である。猟兵としての力を持つ冴神とはいえ、同じステージでの体躯の差はあまりにも大きかった。一撃一撃が全て確殺の意志を持つ王の蹂躙は、冴神の心よりも先に魂魄を叩き潰す勢いである。
「か、は」
逃げる事は出来ない――それが冴神自らが選んだ選択である。王は自らを侮辱した怨敵に、容赦のない報復を行う。恐らくは骨の一本や二本既に折れているだろう。だが、冴神にはそんなことは些事であった。"怒り"――それが自身の全てを塗り潰していた。
「過去の化身だ?調子に乗んな馬鹿野郎」
強がりではない。腹の底から沸き立つ怒りが、冴神にその言葉を吐かせた。
王はそれに応じるかの如く、最期の一撃を冴神へと放ち――
●対ムカデ王:怒りの化身と心優しき描き手
ルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)は決死の思いで筆を執り、王の蹂躙から冴神を護るクッションを描いた。その儚い緩衝材が冴神の命脈を保つ。
そして冴神は命の恩人であるルクに、怒りのまま叫んだ。
「見て分からねえのか!タイマン張ってるんだよこっちは!」
ルクは一瞬怯えるも、冴神の怒りに並ぶほどの声で返す。
「ぼ、ボクは!目の前でやられちゃいそうな人を放っておけません!」
そんなやり取りの間にも襲いくる質量を持った殺意。ルクは卓越した筆捌きでことごとくをクッションでカバーし、冴神に反撃の機会を作っていく。すぐに風向きが変わったことを悟った冴神は、ルクとの連携戦術に切り替えた。
「ボクにどうしても文句があるのなら後でちゃんと聞きますから!まずは鎖が切れるまで頑張ってくださいっ!」
燃え上がる怒りの内側にほんの僅かなほつれが生まれた。それは理性と呼ぶのかもしれないし、はたまた羞恥心と呼ぶのかもしれない。冴神本人もそれが何なのかは未だ理解できないだろうが――結果、それがこの戦闘の命運を分けた。
●対ムカデ王:その糸は縁となり、力を紡ぐ
怒りによる攻め一辺倒からルクとの連携による攻防バランスが取れた戦術へ。冴神自身にも余裕が生まれ、それがより研ぎ澄まされた一撃となる。練達を極めし拳がやがて甲殻を穿ち、その中にある"何か"を抉る手応えを得た。
「……"通った"!」
顕現後初めて苦悶の呻きを上げるムカデ王。甲殻の中に突き入れた拳に纏わりつく汚れた詠唱銀から、直接その憎悪が流れ込んでくる。
馴染みのある熱。昏き炎が与える熱。
しかし冴神は不思議と、その熱が自身から離れていくのを感じていた。
「ぼうっとしないで!まだ鎖はつながっています!」
王が見せる初めての苦悶から来る抵抗を難なく冴神は捌き、王は自ずから鎖を断ち切った。
「……分かってるよ」
●対ムカデ王:その糸、逃すことなかれ
直後、冴神の全身に激痛が走る。猟兵でなければ即死といってもいいほどの全身打撲。明確に折れたと認識できる骨が数本、あとは医者に診てもらわなければ実際のところは分からない。
ルクは駆け寄り、冴神を支える。
「まさか、まだやる気じゃないですよね?」
満身創痍の冴神は素直にその支えを借り、返す。
「馬鹿野郎、退くに決まってる……アンタ、名前は」
ルクは離脱しつつ、はっとした顔で答えた。
「ルク……ルク・フッシーです。お兄さんは?」
バツの悪い顔。冴神は一度ため息をつき、返す。
「冴神だ。……ありがとうな、ルク」
まるで向日葵のような笑顔のルク。
怒りから伸びた糸と優しさから伸びた糸は縁の力を紡ぎ、遂に王の甲殻を穿った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●最終断章:その糸が呼ぶもの
その百足には主が居た。百足には自我と呼べるものはない。ただ、主の糸に身を任せ、主の敵を滅ぼし続けた。それこそが全てであり、百足はそれに充足していた。
何度も戦った。何度も殺した。何度も殺された。
それでも、百足にとっては主と主の糸が全てであった。
今やその百足の糸の先にいるのは――過去より顕れし"蜘蛛"。
憎悪と妄執が糸となって、自らを衝き動かし続ける。
憎い。
憎い。
憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。
憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。
この糸はどうしてここまで自分を苛むのだろう。
この糸はどうして自分を"現在"に呼び戻したのだろう。
この糸はどうして、主のものではないのだろう。
その甲殻が穿たれ、止めどなく流れる黒ずんだ詠唱銀。それはまるで、王の涙のようにも見える。追い詰められし王は、いつしか上った"月"に届かせるが如く哭き声を放った。
それはまるで、何かを求めるようであったという。
御堂・絢瀬
やれやれ、常々逆境は燃えるとは言っているけれど、これはちょっと舞台が整い過ぎるだろう。
……ゾクゾクする。
お怒りのご様子だ。
これはご同輩が無茶な戦い方をしたかな……真っ向勝負とか。
私はしないよ?こういう手合いはまともにやり合ったら命がいくつあっても足りない。
さて、オートマチックピストルとクロノストリガーを用いて、ラピッドシューターを使おう。素早いリロードと射撃の腕には自信があるんだ。
なんかあの殻?鎧みたいな感じで隙間とか見出してくれないかな。(眼鏡を人差し指で軽く叩き
ああ、ヤバくなったらさっさと逃げるよ。逃げ足には自信がある。
それに……ケツをまくるタイミングを見極められるのも傭兵に必要な技術だ。
臥待・夏報
やれやれ……あの子もこの子も善い奴で参る
格好悪いとこばっか見せちゃった
挽回、できるかな……
夏報さんは若さなんていらないよ
本気で怒るなんてしんどいもん
でも、この銀の雨の世界で戦うのに――それが必要だっていうなら
(真の姿を解放する)
(セーラー服の陰気な少女)
『僕』の出番だ
さて
嘘吐きな大人の僕が無茶して傷付いた分、灯油溜まりは拡がっている
敵の攻撃手段は『無数の脚による蹂躙』……地面の灯油をしこたま踏むってことだ
作戦は単純明快
その攻撃の瞬間に呪詛の炎で焼却する
お前の恨みつらみも過去の戦いも全く知らん
正直巻き込まれる筋合い無いだろが、僕も、――あの生徒たちも
とっとと燃えろ
制服マニアの変態節足動物め――!
●対”慟哭の”ムカデ王:ガンスリンガー・ファイナル・ショウダウン
運命という名のスピナーがボールを投げ入れる。
その場に居合わせることが出来る者はそう多くない――待ち受けるのが幸運であれ、破滅であれ。
御堂・絢瀬(ディレッタント・f15634)はこれ以上ない場面に巡り合ってしまった。手持ちチップは弾倉と己自身のみ。ヒットすれば勝利、外せば死。ペイバックは微々たるものだ――猟兵稼業なんて、そんなもの。
だから面白いのだ。
伊達と酔狂で正面から歩いてきた修羅場の数々。分の悪い賭けをひっくり返し、満たされたのは好奇心。
金や名誉じゃ味わえないこの感覚、味わってしまえばもう戻れない。
「やれやれ、常々逆境は燃えるとは言っているけれど、これはちょっと舞台が整い過ぎだろうに」
禍々しいほどに煌々と輝く月に、乞い願うようにその身を伸ばすムカデ王。
その身は傷つき、ヘドロのような液体を撒き散らしながらもなお、威容は消えていない。
「……ゾクゾクする」
御堂は、鮫のように嗤った。
●対”慟哭の”ムカデ王:雛鳥
仲睦まじい二人の姿を想う。
自分の為に涙を流してくれた少女のことを想う。
臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は胸の内に残り続ける熱を、ひどくもどかしく思った。自分にとってあの二人が作り上げていた世界になど居場所はなかったし、今もそれは変わらない。"嘘吐き"な自分には涙を流してくれるような人間などいないと思っていたし、そんな資格すらない――そのはずだった。
「やれやれ……あの子もこの子も善い奴で参るなあ」
何故こんなに温かいのだろう。この胸に灯った火は、どうしてこんなに優しく包んでくれるのだろう。
「格好悪いとこばっか見せちゃった。挽回、できるかな……」
忌まわしき空白。生かされているという屈辱。心と体を守るための、薄い殻――”嘘”
脆いものだってことは自分でも分かっている。
「この銀の雨の世界で戦うのに――"これ"が必要だっていうなら」
小さな灯火。けれど、消えぬ火。
その温もりは、殻を破るための力となって。
「『僕』の出番だ」
その温もりは、大いなる太陽となって。
臥待という"月"を照らし、真の姿へと導く。
●対”慟哭の”ムカデ王:嗚呼、糸よ
御堂と臥待は、慟哭せし王と相対する。
御堂は臥待の姿を一見して信頼に足ると判断し、眼前の王へ視線を移す。
隙だらけだ。
その堅牢であったと思しき甲殻も、自壊を始めている。
ガンスリンガーたる御堂からすれば、子供の的あてにすら及ばないほどのイージーゲームである。勿論プロとして取りこぼしなどあり得ない。油断なく、冷静に、あるべき所に銃弾を送る。それでゲームオーバーだ。
「……ん。何だか、嫌な感じがするね」
すべてが右肩上がりの人生などあり得ないということは御堂自身の経験然り、見聞然り、十二分に心得ている。
ファーストベットで終わるゲームなどあり得ないし、そもそも面白くない。
神速の抜き撃ち。
愛銃のマガジン一本全弾を正確に王の甲殻その割れ目に叩き込む。
刹那、御堂にははっきりと見えていた。月夜より伸びる無数の青い、妖しき糸が。ここに転がる蜘蛛だったものが放つ瘴気とは決定的に違う、まさに月の光が如き青き糸。それがまるで人形師のように王を操り、機能している甲殻で的確に銃弾を受けきってみせた。
「オーケイ。そうでなくっちゃ面白くない」
そこに"主"の気配はない。蜘蛛の糸は"王"を手繰り寄せ、束縛し、憎悪で染め上げるまでが精一杯であった。
ならば――この"糸"は、何処から来たのだろう。
臥待はその様子を見やり、深くため息を吐いた。
眼前の百足も、焼き払った蜘蛛も、事情なんて知ったことではないし興味もない。勿論、同情もしない。関係のない個人的な感情に巻き込んだことについて、臥待はただ怒っていた。自分自身も、あの子たちも、あの泣き虫も、こんなくだらないことに巻き込まれる理由なんてない。
それでも、臥待は理解できた。
「……そう」
"呪"と"祝"は古来同一のものとされていた。いずれも"まじない"である。
そのまじないが寿ぐものか堕とすものかで言霊として分かたれた。
臥待はその怒りで以て眼前の王――自らの妄執を遂に形にした巨怪――を終わらせる、その腹づもりであった。
この身で、邪神宿す身で、"嘘吐き"の夏報さんが、"独りぼっち"の『僕』が、終わらせる。
いつものように、この呪われた炎で。
●終撃:糸は途絶えて、悪道輪廻
そこに"太陽"が顕れた。
臥待の身より放たれたのは、月を照らし、命を照らし、"未来"を照らすが如き炎。それは月夜の空に届かんばかりに強くなっていく。
御堂はとびっきりの奇蹟を目の当たりにし、炎を宿す臥待に釘付けとなる。どうせもうこのゲームの結末は決まったのだ――臥待より放たれた炎は、地を浸す穢れ切った詠唱銀に延焼し、眼前の化け物を焼いている。あとは、ボールの行き先を見守るのみ。
燃えていく。"主と共に居た虚無"より引きずり出され、歪に作られた己の体躯が。
"我が子の骸"で編み上げられたこの体躯が。燃えていく、消えていく、還っていく――
燃え朽ちていく王。塵芥へと還っていくその残骸に、小さな百足が一匹。御堂はそれを見逃さなかった。
「残念だったね。次は、もっとまともな形でこっちに来れたらいいかな――今度はこんなものじゃ済まさないから」
愛銃にただ一発の銃弾を込める。特別な気分の時に使う銀の弾。
最期まで月に向かって身をよじらせるその小さな百足に銃口を向け、躊躇いなく引き金を引いた。
静寂。四つ辻には最早何も残っていない。
蜘蛛の子も、その糸が招いた百足の王も、誰も。
煌々と輝いていたはずの月は隠れ、ただ、街灯だけがそこを照らしていた。
成功
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