闇の中より生まれ出でしは、絶望か、希望か
闇の中。異端の騎士が剣を振るう度、一人、また一人と、痩せて精気の失せた村人たちが地面に倒れ伏していく。
広場に集められた村人の中には、時折逃げ出そうとする者もいた。だが村人を囲む、篝火を持つ亡者達はそれを許さず、逃げ出す者達は寿命を短くしただけだ。
しかし、もう間もなく全員が殺されるのであろう。ならば、恐怖を味わう時間が短かった分だけ、まだ彼らの方が幸せだったのかもしれない。
「あ、あぁ、ああ……」
内蔵をまき散らし、地面を血に染めて次々と絶命していく隣人を見て、声も無く震える女。その横には、まだ幼い男の子と女の子が寄り添っていた。
異端の騎士が、子供達に手を伸ばす。
「あ、あああ! お許しください、どうか、この子達だけは! 私はどうなっても構いません! 供物も、いくらでも差し出しますから!」
懇願を無視し、足に縋り付く女を蹴り飛ばして、異端の騎士は剣を振り上げた。もう数瞬の後には、子供達の命は失われるだろう。
――ああ、神さま。いいえ、悪魔でも、何者でもいい。あの子達を助けて。せめて、私を先に死なせて……!
女の願いは、叶うのか否か。
果たして、願いを受け取ったのは、神でも悪魔でもなかった。
「ひゃ、ひゃじめまして! ……えとえと、わたし、ティアラです! す、スペースノイドのガジェッティア、ティアラ・パリュール! みなさん、どうか、よろしくお願いしまう!」
その少女は、緊張に固まった表情で、何度も言葉を噛みながら自己紹介を終えると、勢いよくお辞儀をする。その勢いに帽子が落ちて、中に押し込めていた長い金髪がふわりと広がった。
「わ、わわっ!」
彼女は慌てて帽子を拾いあげると胸元に抱え、えへへ、と照れ隠しに苦笑いをする。
「……ごめんなさい。わたしって、緊張しちゃうといつもこうで。……でも、がんばりますから。どうか皆さんのお力を貸してください。お願いします!」
ぴょこりと再び頭を下げ。失敗を重ねたことで思い切りがついたのか、新米グリモア猟兵の少女は、集まった猟兵たちに花が咲いたような笑顔を見せた。
「今回、皆さんに向かってほしいのは、ダークセイヴァー世界のとある村です。村に、危機が迫っています!」
真剣な表情で、ティアラは告げる。
「村はオブリビオンに支配されているんですけど、幸い、といっていいのかな? これまで大きな犠牲者は出ていなかったんです。でも……わたし、視てしまったんです。オブリビオンが村を襲って、村のみんなを殺してしまうところを。大人のひとだけじゃなく、おじいさん、おばあさんや、小さなこどもたちまで……」
ぎゅっと、帽子を握ったままの小さな手に力が入る。
「襲われるのは、とても小さな村です。村の人たちはずっとずっと、長い間オブリビオンから搾取と虐待を受けていて、反抗する体力も、気力も残っていません。でも、少し安心してもいるんです。供物を捧げて、反抗しなければ皆殺しにされることはない、って。実際に、これまでそれで生きてきたんだから、無理はないですよね」
ティアラは手にしている帽子を頭に乗せ直すと目を閉じ、悲痛な表情を浮かべるが、改めて表情を引き締めて、猟兵たちを見据える。
「でも今回、オブリビオン……異端の騎士は、面白半分に、ちょっとしたきまぐれで、村を全滅させようとしているんです。けど、それを防ぐ手立てがあります!」
今からすぐに村へ向かえば、異端の騎士の襲撃前に村に先んじて到着できます、と彼女は言う。
「でもでも、敵はとっても強い力を持っています。襲撃をただ迎え撃てば、皆さんにも、もちろん村にも、大きな被害が出てしまうかもしれません。だから皆さんは到着後、村で情報を集めて下さい。村の人たちはいつも供物をオブリビオンに届けているから、敵の居場所も、もちろん道だってよく知っています。それを知る事ができれば、色々と対策も立てられるようになりますよね? ただし、聞きだすのは簡単じゃないはずです。村の人たちは、さっきも言ったみたいに、反抗する体力も気力もなくって全てを諦めてしまってますから。それでも、村の皆さんをなんとか勇気付け、安心させて、信頼を得る事ができれば……皆さんになら、きっとできるって、わたしは信じてます!」
お話が苦手なら村の周囲を自分たちで調べる、という手もあります、と最後にティアラは付け加えた。
「……どうか、猟兵の皆さん。罪もない人々を、あの子たちの未来を、闇の中から救い出してあげてください!」
最初の緊張していた姿が嘘のように、しっかりとした口調と視線で。ティアラ・パリュールは力強く、猟兵たちに再び頭を下げるのだった。
第六封筒
TW6、第六猟兵開始おめでとうございます!
そして、はじめまして。
今回、第六猟兵にマスターとして登録させて頂いた、第六封筒と申します。
皆様と共に沢山の冒険を、物語を紡いでいくことが出来れば幸いです。
傾向としてはシリアス系が多い気がしますが、色々と勉強させて頂くつもりですので、うちの子共々、どうぞ、今後とも宜しくお願いいたします。
第1章 冒険
『支配された村』
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POW : 強さを見せて村人を信頼させる
SPD : 村周辺の探索を行う、村人達と密かに接触する
WIZ : 会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す
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佐々・夕辺
今から殺される人たちに信用されても嬉しくないけど、…フン。
死なれるのも後味悪いし、やるしかないか。
「こんにちは。わたしはユーベ、此処で宿を取りたいのだけど」
子どもがいる家を狙ってつけこむわ。子どもを持てば優しくなるしね。
宿を探す旅人を装って接触、世間話から徐々に敵の話に持っていくワケよ。
相手が怪しむのをやめなかったら、仕方ない、と肩を竦めて
「…あなた達が供物をささげている相手が襲撃を企てている――という噂を耳にしたの。あなた方はそういう話、聞いていない?」
小さな村へやってきた佐々・夕辺は、情報収集を行うため、つけいる隙のありそうな家を探していた。
今から殺される人たちに信用されても嬉しくないけど、……フン。
死なれるのも後味悪いし、やるしかないか。
そう内心一人ごちながら、目立たないように静かに村を観察する。
……あれね。
しばらくして夕辺が目を付けたのは、子連れの母親。子供を持てば優しくなるだろう、との狙いだ。
コンコン。
母子が家に入ってからしばし後、古びた扉をノックする。
「……どちらさま?」
隙間から顔を覗かせる母親は、見慣れぬ顔に訝し気な顔をする。
「こんにちは。わたしはユーベ、此処で宿を取りたいのだけど」
「小さな村ですから、そういうのは……他を当たってください」
そういって扉を閉めようとする母親だが、その後ろからは。
「わぁ、きれいなおようふく! それに、かみのけもとってもきれいね!」
「ねぇねぇ! おねえさんはどこからきたの?」
幼い娘と、それよりはやや年かさの男の子が飛び出してくる。
「こら、あなたたち!」
しかし、子供達は夕辺から離れようとしない。困惑顔の母親だったが、しかたなく、母親は大きく扉を開けた。子供達に懐かれる姿に、どことなく信用できそうな物を夕辺から感じ取ったのだろうか。
「……なにもおもてなしは出来ませんが、どうぞ中へお入りになって休んでいってください」
大喜びする子供たちにひっぱられるように中へ招かれた夕辺は、その後見事に信頼を勝ち取り、村近辺の情報入手に成功したのだった。
大成功
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辻守・六曜
戦は始まる前の下拵えで結果が変わると言うが…丁寧に準備をしなければ村にまで被害が来るとなれば否が応でもそうせざるを得ないか。少し、もどかしいものだね。
村の外れで錬成カミヤドリを用い、私の本体である半身の黒い具足を複製。闇に乗じて村の周辺で探索を行うとしよう。
もし発見された場合は村から離れるようにして逃走させ、適度に複製を消すようにしようか。少しでも村から遠ざかってくれればいざという時に有り難い。
私自身はいざという時のために村のどこかで…空き家か納屋でもあれば隠れているとしよう。
村外れでは、ヤドリガミの妖剣士、辻守・六曜が行動を開始していた。
錬成カミヤドリを用い、自らの本体である半身の黒い具足を複製し、それぞれをばらばらに操作する。
「戦は始まる前の下拵えで結果が変わると言うが……」
呟きに呼応するかのように、陽が落ちかけた薄暗闇の中に紛れ複数の黒い具足が周囲に散っていく。
「丁寧に準備をしなければ村にまで被害が来るとなれば否が応でもそうせざるを得ないか。少し、もどかしいものだね」
六曜は後ろに垂らした漆黒の総髪を揺らして村の中に戻ると、目星をつけていた小さな納屋に身を潜める。少し気怠けに、しかし不測の事態が起こればすぐさま駆け付けられるように体勢を維持したまま、自らも周囲に目を走らせて。
半身の黒い具足達は村の周囲の探索を続けるが、必ずしも順調ではなかった。十分に安全を見込んで進めていくには、敵とその眷属だけではなく、人間や動物の気配にも気を配る必要があるのだ。
堅実かつ地道な捜索は、しかし確実に、村に未来を照らす一筋の光明をもたらそうとしていた。
成功
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サクヤ・ニイヅキ
暗い世界に、暗い空、暗い人々。
こういう場所でこそ、わたしの存在価値が輝くっていうのも、皮肉なの。
「ハァ~イ、元気ぃ?」
「元気がないなら、これを見るの☆ 上手くいったら、どうかご喝采!」
辛い暮らしを送る小さな村なら、娯楽も少ないはずなの。
旅芸人に扮して芸を披露して楽しんでもらって、信用を得たいの。
演目はたいした道具がなくても真似しやすいジャグリングにするの。
道化師らしく失敗して笑いを取るのも忘れずに。
村人さんにひととおり芸を見せ終えたら、
「この村の近くにいるっていう騎士さんにも、わたしの芸を見せたいの☆」
「騎士さんもきっと喜んでくれて、優しい気持ちになるはずなの☆」
なんて言って、情報収集するの。
「ハァ~イ、元気ぃ?」
少し時間は遡り。
どんよりと暗くよどんだ空気を切り裂くように、サクヤ・ニイヅキの明るい声が響くと、付近にいた村人たちが何事かと広場を覗きにやってきた。
「元気がないなら、これを見るの☆ 上手くいったら、どうかご喝采!」
旅芸人に扮したミレナリィドールは、ボールを取り出し、大袈裟な身振りで村人の耳目を集める。
娯楽の少ないこの村で芸を披露し、楽しんでもらうことがまず第一に。そして信用を得て情報を集められれば一石二鳥。
「……おや、めずらしい。旅の芸人さんかい?」
「なぁなぁ、じいちゃん。あれはなんだい?」
このような村に旅芸人が来ることは、十年に一度有るか無しか。年かさの男性は頬を緩め、少年は興味津々、その姿を眺めている。
演目はジャグリング。見たものが、真似しやすいようにとの心配りも込めて。
最初はお手玉。ひとつ、ふたつ。次に色鮮やかなボール。みっつ、よっつ。続けてバトンを、いつつ、むっつ。最後には付近に落ちていた石を、ななつ、やっつ。
途中、ボールをこつんと頭で受けて、人々の笑いを引き出すのも忘れない。
「はい、おねーちゃん!」
転がったボールを拾い上げ、渡しにきた少女の笑顔にサクヤは笑顔を返す。
「ありがとう。あはは! 失敗しちゃったね!」
演技は続き、そして集まった人々をことごとく笑顔にしていった。
「この村の近くにいるっていう騎士さんにも、わたしの芸を見せたいの☆」
演技が終わると、サクヤは一同にそう切り出した。
「おお、そりゃあいい!」
「うちの村からって事にしてくれねぇかな? そしたら、納める供物が少なくて済むかもしれん」
「……でも、大丈夫かい? ひょっとしたら、帰してくれないなんてことが……」
反応は様々だ。しかし、サクヤの心の籠った演技は、十分に村人の心を掴んでいた。
大成功
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クオン・セルフィライト
供物を差し出していると言うことは村人への供給は滞っているはず。
ならば、狩りでもして腹を満たしてやろう。
衣食住揃いて礼節を知る、明日への活力も腹を満たしてから。
活力も満ちれば少しは奮い立ちもしようか。
「……ん。とりあえずお腹を満たそう」
そういうわけで、イノシシカレーの出番だ。
狩りも十二分に出来る事で少女ながらも相応の強さがあるのも見せつけれよう。
カレーならば食欲も刺激していい感じかもしれない。
村近郊の林の中、クオン・セルフィライトが手にした刀が、陽光を反射してギラリと輝く。
向かってくるイノシシの巨体を、小柄な身体がひょいと飛び越える。近くの木を蹴り、イノシシの側面からの剣刃一閃。
次の瞬間、イノシシは首から上を失い絶命していた。
「……ん。とりあえずお腹を満たそう。衣食住揃いて礼節を知る、ともいう」
オブリビオンに搾取され痩せた村人たちを見て、クオンは彼らの腹を満たしてやることを考えた。そこでこうして食料を調達にやってきた、というわけだ。
ずりずりと、一人で運ぶには大きすぎる獲物をひきずってクオンが村に戻ると、広場のあたりに村人が集まっているのが見えた。
目ざとくクオンの姿を見つけた村人が話しかけてくる。
「あんた、あの旅芸人さんのお仲間かい?」
旅芸人。ティアラによって、共に送り出されてきた猟兵の一人だろうと見当をつけ、クオンは頷いた。
「へぇ。それでまさか、そのでっけえイノシシはあんたが獲ってきたのか? まだわけぇのに、大したもんだ」
「……今日は、これでカレーを作る。水場はどこ?」
感心したように頷く男にぶっきらぼうに返して、クオンは調理に取り掛かった。
いくらかの好奇の視線に晒されながらも、順調に調理はすすみ、ほどなくしてカレーは完成する。
旅芸人……サクヤによって、すでに心を開かれていた村人たちは、その匂いと空腹に抗うことができる筈もなく、カレーに舌鼓をうつ。
村人からの軽くなった心と体からは、感謝の言葉と共に様々な情報が提供されるのだった。
成功
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リステル・クローズエデン
この世界ではよくあること。
ですが、希望の意思は消えていなかったのならば。
闇雲に探っても無駄足だが、
彼らからの情報と周辺探索の情報を照らし合わせば、
ある程度、あたりをつけることも可能なはず。
後は実際に探るのみ。
もしも、敵となりうる存在を発見したら、
【理から外れし存在の祝福】を使い、身を隠しつつ撤退する。
あとは、村に極力被害が出ない。
いや……村とこちら側が関係していることを悟られない場所で
戦闘を行える場所をピックアップしておくか。
アイリス・アイオライト
供物を差し出すというからにはそれなりの量が定期的に移動するということ。いつも届けているなら手で運ぶにせよ、荷車にせよ、道は踏み固められるはずだから、ある程度のアタリはつけられるかな、と思うのだけれど。あとは確証と、細かな情報、注意しなければいけないことが知りたいな。他の人たちが上手くやってくれているから、些細なことくらいなら聞き出せないかな…。大丈夫、大丈夫、貴方たちはただ妖精に盗み聞きされただけ、私はこんなに小さいんだもの、気づかなくて当然だから、うん
「な…か怪しく……か? 悪人に……が、それは……どう思う?」
「んだ。……って、オラたちをだま……下手すりゃ、あいつらが、試そ……送り込んだのかもしれねぇべ」
アイリス・アイオライトはフェアリーである。一部、主張が激しい部分もあるにせよ、身体は小さい。それに加えて、培ったシーフとしての能力を駆使すれば、盗み聞きなどたやすい事だ。
「例え悪意が無いにしても、あのお嬢ちゃんが芸を見せに行って、無事に済むと思うか? 死にに行くのを、黙って見過ごすのは……」
「まあ、それはでぇじょうぶだべ。その前に、亡者に追われて逃げ出すはめになるだけだぁ。あの城は隠されててまず辿り着けねぇべよ。なんせ……」
……隠された城。もう少しはっきり聞こえるように、近寄ろうかと思った矢先。
かさり。
「……だれだ!?」
見ると、一匹の猫が近くの草むらへと消えていくところだった。運が悪い。いや、聞き耳に集中しすぎて居なければ、その前に気が付けたはずだ。
今から姿を見せず逃げるのは難しい。姿を見せて逃げれば、村人に非常な不信感を与えてしまう事だろう。
アイリスは、一瞬迷ったものの静かにその場に自ら姿を現した。
「大丈夫、大丈夫、貴方たちはただ妖精に盗み聞きされただけ。私はこんなに小さいんだもの、気づかなくて当然だから、うん」
男たちは顔を見合わせる。
「……だから、ここには誰もいない。隠されているお城の場所なんて、誰も聞いてないよ」
賭けだった。村人たちの信用が一定以上に得られていないなら、積み上げてきたものは水の泡。
「なんせ……滝の裏にある、洞窟を抜けねぇと辿りつけないんだべ」
「そうだな。それにあそこは岩が立体的に重なってて、見ただけじゃわからない上に、夜になって水量が減らないと通れないからな」
そしらぬ顔をして、やや大きな声で話を続ける男たち。アイリスはぺこりと頭を下げると、そっとその場を離れたのだった。
「ここは、違うみたいですね」
リステルは、これまでに得られた情報をもとに、敵本拠地を探しにやってきていた。
村に繋がる三つの道の一本を西に。川に突き当たれば、渡らず川沿いの細い道を上流方向に遡る。
しかしその先に見えるのは、盛大に流れ落ちる滝。道は崖に沿って続いているが、非常に細く曲がりくねっており、供物を運んで通るのは難しそうだ。
「しかたないですね。他を……」
「ここ、ここだよ。滝の裏」
踵を返しかけたリステルに、話しかける者があった。アイリスである。
「あなたは、たしか……」
「そんなことより、聞いて。あの滝の裏に、敵の隠れ家へ通じる洞窟があるみたいなの。さっき……」
アイリスは、先ほど男たちから得た情報をリステルに話す。
「なるほどね。ですが……いや、実際に、見てみたほうが早そうです」
リステルは、同行しようとしたアイリスをその場に残し、一人で滝へと向かう。敵の監視がある可能性が高いので、人数は少ないに越したことはない。そして、リステルにはいざとなれば自らの姿を隠す手段があるのだ。
滝にだいぶ接近しても、リステルにはなにかがあるようには全く見えなかった。
しかし滝の真横にまで来て目を凝らすと、ようやく人が通れるほどの足場があるのがわかる。
リステルは慎重に歩を進め、滝の裏側を探る。しかし、やはり何かがあるようには見えない……と、水に触れそうになるギリギリまで先へ進んだその時、急に視界が変わった。
「……あっ!」
思わず声をあげそうになり、あわてて声を抑える。
あった。そこは薄い岩が膜のように何層か重なっており、入口が巧妙に隠されているのだ。
これは、確かに今は通れそうにない。無理に入ろうとすれば、下手をすれば水に押し流され、そうでなくとも盛大な音を立てびしょ濡れになってしまうだろう。しかし中をうかがうことは出来た。
「……誰か、いる? 敵?」
洞窟内は大人数人が並んで進める程度の広さがあり、ずっと奥の方にゆらゆらと揺れる光……松明かなにかの炎をいくつか見て取ることができた。
おそらくは、洞窟を抜けた先が敵本拠地で間違いないだろう。これ以上深入りしては危険と、リステルが戻ろうとしたとき、不意に、数メートル先に光が現れる。
入口だけではなく、内部にも岩の層が左右に張り出していて、それで隠れていたのだ。
しかしリステルは慌てない。
『これは、世界から外れし者への祝福。理の外からの祝福』
静かに呟くと、その姿がその場からかき消える。
理から外れし存在の祝福。対象者を透明にする、リステルのユーベルコードの力。
徐々に光は強くなり、数秒後、数メートル先に篝火を持つ亡者の姿が現れた。
内心少しだけどきどきとしながらも、リステルは速やかにその場を離れる。
敵本拠地へ繋がる確定情報を持ち戻ったリステルとアイリスを、猟兵たちは歓喜を持って出迎えた。
かくして、猟兵達の力により道は開け、ならば、ただ襲撃を待っている必要はなく。
夜半、猟兵達からの先制攻撃、敵本拠地奇襲作戦が実行されようとしていた。
成功
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第2章 集団戦
『篝火を持つ亡者』
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POW : 篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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情報収集により推定した、騎士を守る亡者の数は全部で30程度。
しかし、速やかに突破すれば、相手にするのは洞窟内部を徘徊する10程度で済むであろうと予測されている。これも、実際に供物を運んだ男たちからの情報収集の結果だった。
ぼんやりとした月明りだけが照らす薄闇の中。
猟兵達は滝周辺に展開し、水量が減るタイミング……洞窟突入の時を待っていた。
突入すれば敵を蹴散らし進むだけ。
敵首魁たる異端の騎士との対決は迫っていた。
サクヤ・ニイヅキ
洞窟と言えばダンジョンの定番。ここはシーフとしての技術を活かして先行偵察したいの。
村人も使う道ならトラップはないかもしれないけど、察知される前に敵を発見して奇襲できれば僥倖なの。
故郷のアルダワではよくやってたし、慣れたものなの。
敵を発見したら速攻撃破狙い。
シーブズ・ギャンビットで素早く接近しながら攻撃。どうせここには観客も不在、道化師衣装を脱ぎ捨てて、身軽になって行うの。
同時に「盗み攻撃」技能で敵の武器を奪って、無力化を狙うの。
佐々・夕辺
ここね。
洞窟…薄暗い連中にはお似合いの場所といったところかしら。
水量が減ったらスカイステッパーで、足音を極力減らして先行するわ。
入り口に罠がないか確認するわね。
今の私なら十と数回はジャンプできるはず。
相手の篝火の影にも触れないで済むんじゃないかしら。隙あらば蹴りを叩き込んでやるわ!
「おっ先~!」
切れるような三日月が中天にかかるころ、水量が減ってぽっかりと大きく口を開けた洞窟へと、真っ先に突入したのはサクヤだった。
ここから先は観客も不在。ならばと道化師衣装をふわり音もなく脱ぎ捨てて、身軽になった身体はさらに加速する。それでいてほとんど足音を立てないのは、シーフの面目躍如というところ。いつのまにかその手に光るのは、トランプのスペードを模した愛用の短剣だ。
二番手を進むのは夕辺だった。
スカイステッパーで宙を蹴り、こちらもすばやく、ほとんど音を立てずに進んでいくが、入り口付近は天井もさほど高くなく機動を制限されており、一歩遅れた形だ。
最後尾の者が洞窟へ入るころには、サクヤは前方に見えていた1体目の篝火を持つ亡者を射程圏に捉えていた。
緩慢に振り向こうとしている亡者の背へと、サクヤが短剣を突き出す。しかし、まず避けられない筈の間合い、速度の一撃を持った一撃は、亡者がぐにゃりと身を捻ったことにより回避されてしまう。
「まさか!?」
サクヤが驚きの表情を浮かべると、一方の亡者がフードの下でニタリと、笑みを浮かべたように見えた。
それを見ていた夕辺は、違和感を覚える。
あそこに立って居たのが夕辺だったとしても、普通に考えれば今のは躱せなかっただろう。なのに、あの亡者避けた。騎士ならともかく、たかだが下っ端がそれほどの力を持っているとは思えない。ならば、なにかからくりがあるはず。
夕辺はサクヤに追いつくと、空中を蹴った勢いをそのままに篝火を持つ亡者に蹴りを繰り出す。
「オアアアアアアアァァ~」
牽制のつもりで放ったそれは、亡者にヒットし、大きく体勢を崩させる。
やはり、なにかある。サクヤの一撃を躱した秘密が。
その秘密を暴かんと、細められた藍色の瞳が鋭い視線でじっと亡者を見据えた。そして気付く。
夕辺はあえて地を走り、相手の影を踏む。それから宙を蹴って、今度は反応できない筈の角度から再び蹴りを繰り出した。
ぐにゃり。
先ほどよりも数段難易度の高い筈の攻撃を、亡者は身体を捻って回避する。気付きは確信へと変わった。
「……影よ。揺れる炎に照らされても、そいつの影は揺れてない!」
得体のしれない亡者の能力に、手を出しあぐねていたサクヤは、それに瞬時に反応した。
正面から、しかしその影には触れぬよう、高速の一撃を繰り出す。
シーブズ・ギャンビット。身軽になればなるほど加速する、サクヤのユーベルコードが、亡者の身体を刺し貫いた!
「やってやったの☆」
どさりと亡者の身体が洞窟の地面に倒れ、動かなくなる。
亡者が手にしていたはずの篝火は、跡形もなく消え去った。
「この暗い洞窟が、あなたにはお似合いの墓標といったところかしら」
夕辺の呟きが静かに闇に響く。
そして通路の先からは、さらに幾つかの篝火がこちらへと向かっていた。
戦いは続く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイリス・アイオライト
私たちに次はあったとしても、守るべき人たちに次はない。静かに、速やかに事をなす。私たちはそれができる。行きましょう、彼らの勇者たち。
私に火力を求められてもちょっと難しいところがあるから、支援に回ろうかな。飛び回って見たり、篝火を盗み取ることは難しくても叩き落としてやったり、出来ることはあるはず。
先行したサクヤと夕辺が、続く亡者の集団と接敵する前に、後続が追いつき合流した。
後続の中から、宙を舞うアイリスがすいっと前に進み出て、猟兵達へと振り返って唄うように声を上げる。
「私たちに次はあったとしても、守るべき人たちに次はない。静かに、速やかに事をなす。私たちはそれができる。行きましょう、彼らの勇者たち」
小さな身体に似合わぬ堂々とした姿と言葉は、味方の共感を呼び、彼らの勇気を、結束をより強くする。
そして再び戦闘になった。
アイリスは小さなダガーを腰から引き抜くと、一行を鼓舞するように真っ先に亡者へと突っ込んでいく。
「篝火の影に気を付けて!」
後ろから上がる声を聞きながら、少々バランスを取るのに苦労しながらも、アイリスは亡者たちの周りを飛び回る。
自分の身体では、火力役は難しいと知っている。ならばと、徹底的に猟兵達の支援に回るつもりだった。
隙を見て亡者に接近し、小さなダガーでその手を突き刺す。当たらなくても、注意を引ければそれで充分。当たれば儲けもの。もし篝火を取り落とさせたら超らっきー。
アイリスは小さい。腕力もさほど無い。
しかしその存在は、味方にとってはとても大きなものなのだ。
成功
🔵🔵🔴
リステル・クローズエデン
なるほど、篝火の影に注意ですね。
ならここは。手裏剣で牽制してから、影に注意して刀で斬ります。
(我流闘法を攻撃回数重視で使用。
技能は視力1、見切1、暗殺1、投擲3、2回攻撃2)
「我流闘法…飛燕連刃」
相手も炎による攻撃を行ってきますか。
(技能:見切り1、残像2)。
防御手段も用意しておくべきでしたか。
しかし、この亡者……いえ、亡者は亡者です。
辻守・六曜
さて、下準備は上々。後は囲んで叩いて潰すだけ、と…甲冑らしく露払いといこうか。
そういう訳で妖剣開放を使用し、篝火の影に入らぬよう壁を蹴って出来る限り高い位置を高速移動。敵は発見次第、衝撃波の遠距離攻撃と高速移動で接近しての二重攻撃で手早く仕留めたいね。殲滅は迅速に。
アイリスと共に、先頭にいたサクヤと夕辺も三体の亡者と交戦に入っていた。
それに負けじと続いたのは、六曜とリステルだ。
「さて、と……露払いといこうか」
六曜は歩を進めつつ、ゆっくりと妖刀を鞘から引き抜く。
「なるほど、篝火の影に注意ですね」
六曜と並び走りながら、リステルは呟く。
遠目ながらも、先ほどの戦いの様子はずっと見えていた。あの影に触れた時だけ、敵は驚くべき回避力を発揮するのだ。
ならば、と牽制用に手裏剣を取り出したところで、奥からやってくる亡者の様子が変化したのが目についた。
掲げられた篝火が渦巻き膨らんで、今にも弾けそうになっている。狙いは宙を飛び回るアイリスだろう。
「させない!」
リステルは鋭く気合の声を発すると、素早く狙いをつけて手裏剣を奥の亡者の篝火に向け放つ。
カツッと固い物同士がぶつかる音。同時に放たれた篝火の炎は狙いを外し、洞窟の天井を焼くだけにとどまった。
リステルは続けて刀を抜き放つが、それよりも先、手裏剣を追いかけるようにして、すでに炎を放った亡者の元に到達しようとしている者が居る。
妖剣開放を使用した六曜が、妖刀の怨念を纏い、壁の高い位置をまさに飛ぶように影を避け、今まさに敵に刃を届かせていた。
こうしている間にも妖刀の怨念が、六曜の命を貪っているのだ。
「ならばその分、相応の代価は頂かないと、ね」
妖刀が、亡者の身体を深く切り裂いた。まだ、亡者は倒れない。
だがそこに、亡者の元に至る前に六曜が放った斬撃による衝撃波が届き、亡者のかりそめの命を刈り取った。命を削る高速移動は、自らが放った衝撃波をすら追い越していたのだ。
六曜はさらに奥からやって来ていた、次なる敵の元へと向かったが、リステルは六曜が亡者を倒したのを見届けると、狙いをアイリス達が交戦している敵の一体へと切り替えていた。
「我流闘法…飛燕連刃」
ツバメが飛ぶがごとく素早い、連続した斬撃が、闇の中を跳ねるように少しずつ亡者の腕を、足を、胴を削る。
一方の亡者は篝火を振り回すが、四人の連携の前に上手く狙いが定められずにいた。
焦れて苦し紛れに篝火の炎を放とうとやや動きが緩慢になった所に、側面から夕辺が放った蹴りと、そしてアイリスの手にしたダガーが、こちらは初めてヒットして、亡者は大きくバランスを崩す。
それだけの隙があれば、十分。
リステルの続く一撃は、篝火を持つ亡者の首を跳ね飛ばす。どうと音を立て、首を失った亡者の胴体が洞窟の地面に転がる。
しかしまだ気は抜けない、まだ目の前には二体の亡者が。
そして六曜が相手取る二体の奥からも、ゆらゆらと篝火を揺らし、さらなる敵増援がやってきているのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シオン・ユークリッド
人形を使ってそれでユーベルコードを確認
ミレナリオ・リフレクションを使い、倒すためではなく、どちらかと言えば撹乱の為(撃破目的ではない)
後衛として戦闘する
ほら、当たりにくそうじゃん。
気分、気分!
コロッサス・ロードス
「亡者の殲滅も必要だが、まずは敵首魁を確実に討つことこそが肝要か。」
予定通り洞窟の突破重視
但し後に挟撃される危険性を排除する為に接敵したら確実に屠る
洞窟内ではランタンを手に光源確保、不要ならば消す
索敵は物音や篝火などを頼りにして可能ならば奇襲
戦闘時は『武器受け』『盾受け』『オーラ防御』等の防御技能を活かす為、また仲間の被害を抑える為にも、敵に肉薄して『おびき寄せ』より多くの攻撃を自分に集める
「我、金剛不壊の穂先也。我らが猟兵の刃、必ずや首魁の首元に届けん!」
攻撃は堅牢な守りからの『見切り』で敵の動きを予測して『カウンター』気味に【終極の剣】を放ち、一太刀も疎かにせず確実にダメージを与えていく
「亡者の殲滅も必要だが、まずは敵首魁を確実に討つことこそが肝要か。それには……」
二メートル近い長身に鍛え抜かれた肉体。黒髪黒目の偉丈夫、コロッサス・ロードスは一団の殿を務めていた。
狭い洞窟の中での強襲を行うのには、もっと相応しい者がいる。そしてそれは、現在のところ成功しつつある。
「まず、この場を無事に通過することだ」
コロッサスは機を見定める。まもなく、乱戦になるだろう。その時こそ、この重装備と、鍛えた心・技・体を存分に活かすときなのだ。
後方を進むコロッサスと共に、しかしこちらは気楽そうに歩むのはミレナリィドールのシオン・ユークリッドだ。
「みんな凄いなあ♪」
弾むような、甘えたような声。それと同じく、容姿も甘い。整った顔立ちと、銀糸を束ねたようなウェーブヘアは、暗い洞窟の中であってもキラキラと輝きを放ってるかのようだった。
「そろそろ、僕も参戦しないとね!」
そう言いながらも、シオンはその場から前に出ようとはしない。しかし、確かに参戦してはいるのだ。
その両の手の指から伸びる糸をたどれば、今まさに前線に躍り出ようとする戦闘人形の姿があった。
最前線ではさらに二体の篝火を持つ亡者が倒れ、今は六曜が抑えていた二体と相対している。
ここまでは、先手を打った猟兵達が圧倒的有利に戦いを進めていた。
だがしかし。
――このまま押し切れるかもしれない。
誰かの頭を、そんな考えが過った時だった。ふらりと、先ほど屠った筈の亡者が再び起き上ったのだ。
それは頭を落とされた亡者ですらも同じだ。篝火の炎は幾分小さいものの、それでも脅威には違いあるまい。
そのまま、乱戦になる。
最前線に居た者達は前後からの挟撃を受ける形になり、特に危険な状態だった。
コロッサスは手にしたランタンのシャッターを全開にしてから腰に下げると、引き絞った弓から放たれた一本の紅い矢のごとく、起き上った亡者たちに突貫する。
「うおおおおおおおおおおおぉぉ!」
その勇壮な雄叫びに、亡者たちすらもびくりと震えたように見えた。
起き上った亡者がコロッサスに狙いを定め篝火からの炎を打ち出すが、コロッサスは盾を掲げて、そのまま真っ直ぐに突き進んだ。オーラを帯びた盾の表面で炎が弾ける。ダメージは、無かった。
そのまま、起き上った五体の亡者の真ん中に飛び込む。
「我、金剛不壊の穂先也。我らが猟兵の刃、必ずや首魁の首元に届けん!」
味方を鼓舞し敵を委縮させる咆哮が、洞窟の中に響き渡った。
そのコロッサスの側面からは、一体の復活した亡者が再び炎を放とうとしていたが、
「……僕も、いるからね!」
その炎は放たれると同時にかき消える。
ミレナリオ・リフレクション。シオンが、自らのユーベルコードで敵の力を相殺したのだった。
コロッサスが多くの敵の注意を引き、防御の技を駆使して攻撃をさばいていく。通りかけた攻撃は、シオンが妨害した。
他の猟兵達も手をこまねいてはいない。
夕辺がかく乱すれば、サクヤが穿つ。アイリスは周囲を舞い、敵の注意力を削いだ。リステルは手裏剣と刀で手数を稼ぎ、六曜の妖刀が闇を裂く。
「みんな! 生き返った亡者達には、新しい亡者は作れないみたいだよ!」
最初に気付いたのは、後方で戦っていたシオンだった。
ならば。まだ倒れていない亡者を倒していけば、いずれ打ち止めになる。
一行は勢い付き、気が付けば、見える範囲に立っている亡者はもはや居なくなっているのだ。
「1、2、3……9? 気を付けて、あと一体残ってる!」
倒れた敵を数えていた誰かが、警告の声を発すると同時。壁の影から最後の一体が出現する。
『我、心魂気魄の斬撃を以て獣心を断つ』
コロッサスが慌てず、むしろ余裕のある動きで終極の剣を放てば。
雷光の如き斬撃は襲い掛かる亡者の力をすら逆用し、その身を唐竹割りにしたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『異端の騎士』
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POW : ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
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洞窟を抜けた先には真っ黒な森が広がっていた。
その奥にあったのは、小さいながらも威風堂々とした城だ。
元々は白かったのだろうその壁は、幾重にも血を塗り重ねられ、どす黒く染まっている。
当初の予想よりも時間を要したものの、洞窟での戦いで猟兵達は篝火を持つ亡者を圧倒し、その勢いのままに敵本拠地へと乗り込んだのだった。
アイリス・アイオライト
【WIZ】全力魔法1
崩れた城壁だとか瓦礫なんかを巻き込んで竜巻を起こして叩きつける。乱戦になったら制御が難しいから挨拶代わりよ。こんなものでは終わらせないけれどね。
本格的な戦闘になったらかく乱に回るわ。少しでも行動が邪魔できればそれでいい、危険は承知よ。あなたの血の薔薇はここで枯れるべきね
コロッサス・ロードス
「この地に光と安寧を齎す為……異端の騎士、まずは貴様を討つ!」
基本的に『武器受け』『盾受け』『オーラ防御』等の防御技能を活かす為、また仲間を『かばう』事で被害を抑える為にも、敵に肉薄して『おびき寄せ』攻撃を誘う
但し闇雲に突出する愚は冒さず、他の猟兵と連携して確実な隊列維持に重点を置いた闘いに徹す
攻撃時は『鎧砕き』と『2回攻撃』で相手の防御力を奪いつつ、
【ブラッドサッカー】に対しては、武器の形態変化を素早く『見切り』、その攻撃に『カウンター』を合わせる為に相討ち『覚悟』で敵の懐に飛び込み、『捨て身の一撃』ユーベルコード【黎明の剣】を放つ
「たとえ我が身が砕けようとも、我ら猟兵の勝利は譲らぬ……!」
「よくぞここまでやって来た、人間ども……いや、貴様達、もしや人間ではないのか?」
長い時を経て風化しかけた血塗れの城の中、広い玉座の間。
玉座についたまま、禍々しい漆黒の鎧を着た異形の騎士が声を上げる。
通路は複数の白骨死体とミイラ、重ねられた血と汚泥により床すらも見えないほどだったが、玉座の間だけは清掃がなされ、床には赤い絨毯が敷かれており、人間の王が座していても不思議ではない、静謐な空気が漂う。
しかし騎士が座す玉座は磨かれた人の骨で組まれた物であり、部屋の入口の脇には、無数の頭蓋骨がうずたかく積まれていた。
整えられた室内の中にあって、その人骨の玉座としゃれこうべは、なおさらにその不気味さが際立っている。
「そうだ。俺達は、貴様の死神だ。異端の騎士よ。この地に光と安寧を齎す為……まずは貴様を討つ!」
真っ先に踏み込んだコロッサスが、敵首魁へ剣先を向け声を上げる。
「ククク。死神とは、大きく出たな。お前たち、なかなか見どころがある。どうだ、私の仲間にならないか? 私の領地の三分の一をくれてやる。酒、女、食料に財宝。すべて、望みのままだ」
「ふざけないで! 私には聞こえる。あなたに殺された人々の恨み。虐げられた人々の悲しみ。彼らの勇者たちが、今ここで、あなたを滅ぼすわ!」
異端の騎士の問いかけに、無言で積まれた頭蓋骨を眺めていたアイリスが即座に返した。
見てしまったのだ。敵が手にした髑髏の杯を満たす赤い液体の中に、人間の目が浮いているのを。
見てしまったのだ。山となった骨の中に、幼子の物であろう無数の小さな頭蓋骨を。
交渉の余地などない。吐き気を催す邪悪を、ここで討ち果たす。
「ふざけてなど無い。だが、そう言うと思ったよ、勇者達。実に残念だ。共に血の美酒を味わいたかったのだが」
異端の騎士が手にした杯を投げ捨て、絨毯に赤い染みが広がった。
いかにも重量がありそうな甲冑をものともせず立ち上がると、身の丈ほどもある長い剣を鞘から引き抜く。続けて剣は無数の血の色をした薔薇の花びらに変わり、騎士の周囲を覆った。
「ならば、殺し合おうか……そうそう、その前にひとつだけ、良い事を教えてやろう」
「貴様の言など聞く必要はない!」
コロッサスが断ずるが、騎士は気にせず続ける。
「我が配下共が、村へ向かっている。ククク、楽しい祭りの開催だ。そして苦しみからも飢えからも解放されるのだ、永久に!」
洞窟を抜けた後に敵の一体とも遭遇しておらず、この場に至っても、敵は異端の騎士のみなのだ。それが亡者たちが村へ向かているからだとすれば、確かに辻褄は合う。猟兵達は厳しい表情を浮かべた。
「どうするかね? お前たちが我が軍門に下れば、あの村はお前たちの……ムッ!?」
敵の言葉を遮って、アイリスのユーベルコード、エレメンタル・ファンタジアが炸裂する!
小さな竜巻が巻き起こると、絨毯を引き裂き、頭蓋骨、敵の産み出した薔薇の花びらの一部をも巻き込んで、敵へと殺到した。
細かい制御も、後の事も考えない全力の一撃だ。
「これは、ほんのご挨拶。あなたの血の薔薇はここで枯れるべきよ!」
存外に素早い動きで騎士は身をかわすが、その風圧と巻き込んだ異物が鎧を削っていく。
「……ならば、死ね!」
それまでの余裕を感じさせる口調から一転、異端の騎士はその本性を現した。
フォーリングローゼス。巻き込まれなかった無数の花びらが、猟兵達を包み込まんと殺到した。
一見美しくもあるその光景は、人々を傷付け、立ち向かった戦士達に死をもたらしてきた脅威に他ならない。
コロッサスは背後に味方をかばうように前に出る。回避することはできない。全てを受けきる事も不可能。
しかしこの重武装を最も生かせるのも、今なのだ。
いくらかの傷を受け、血が流れはしたがまだまだ戦闘に支障はない。その意志に、いささかの陰りもない。
『我、神魂気魄の閃撃を以て獣心を断つ』
顕現せし紅き神火と、払暁の輝きを宿す神剣により打撃を与える捨て身の大技。黎明の剣。
「たとえ我が身が砕けようとも、我ら猟兵の勝利は譲らぬ……!」
コロッサスは黎明の剣と共に自らの矜持を、異端の騎士へと叩きつけた!
成功
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シオン・ユークリッド
僕、あんまりタフじゃないんだよね。
出来そうな事は……ウィザード・ミサイルでの攻撃かな
木に隠れる等、一直線に攻撃が当たらないように留意する
「僕、あんまりタフじゃないんだよね。……わわっ、服が破けちゃうよ!」
身を縮めて薔薇の花びらをやりすごし、入口の影、装飾の甲冑の影などでちょこまかと身を隠しつつ、シオンは攻撃の機会を探る。
敵は一人で、前線にあまり人が多くても同時に攻撃するのは難しそうだ。ならば、戦闘人形も接近戦をさせるよりは防御に使うのがいいだろう。
「よーしいまだ!」
詠唱に合わせ、シオンの周囲に百本近い数の赤い輝きを帯びた矢が展開した。
前に出て、そのすべてを異端の騎士へと殺到させる。
敵は手元に戻した花びらを再び剣として、その矢を薙ぎ払い、いくつかはその全身鎧に当たるに任せた。
「効かぬわ! 雑魚がちょこまかと!」
「ひゃー、こわいこわい。それにしてもタフだなぁ」
シオンは戦闘人形に隠れるようにしながら後ろに下がり、再び攻撃の機会を待つ。
コロッサスが渾身の一撃を叩きこんだのに合わせて、ウィザード・ミサイルも何本かは直撃した。にも関わらず、敵の動きはいささかも鈍った様子はない。
長期戦になりそうだった。
成功
🔵🔵🔴
リステル・クローズエデン
(ここまで来たら、小細工無用と言いたいところですが。)
回り込むように移動しつつ『スキル:ダッシュ1』
(できることは、やらせていただきますよ。)
手裏剣投射で嫌がらせのように牽制、
他メンバーの攻撃を援護します。
『スキル:投擲4、2回攻撃2、視力1、見切り2』
注意がこちらにそれるならそれもよし。
無視されるならばこちらから行くまでです。
どちらにせよ。刀で斬……右手に持った鞘で打撃攻撃を行います
【我流闘法】命中率重視
使用武器:紫紺の刃(鞘形態)
『スキル:視力1、見切り2、鎧砕き1、
残像2、2回攻撃2、鎧無視攻撃2、生命力吸収1』
「斬鉄は、まだできなくとも、やりようはあります。」
「我流闘法……鎚衝過勢」
辻守・六曜
「さて、最後のふんばりどころ、頑張りましょうか。」「大将首あらば切り落とすが戦場の習い。最後に落とせば仕舞いなら、手段問わずはこれ当然。」【SPD】
錬成カミヤドリを使用。甲冑達を召喚し騎士に向かう者達の盾や足場、あるいは隠れる場になるように動かす。自身も甲冑を随伴して突撃。甲冑は攻撃の囮や足場として使用。攻撃と「殺気」のタイミングをずらして使用し見切り難い「呪詛」込みの攻撃を行う。他の攻撃組の動きに合わせてブラフの「殺気」も使用する。
「数に任せて、鬱陶しいわ! クソどもが!」
異端の騎士が叫んだ途端、手にした剣に変化が表れた。その刃が表面を滴っていた血液を吸収し、ドクンドクンと脈動する。無数の棘のような牙が生えて根本が太くなり、先端は開いた鳥のくちばしのように二つに分かれた。
殺戮喰血態。犠牲者を穿ち、棘による裂傷と苦痛を生じさせるのと同時に、血液を効率よく吸収可能な長剣の真の姿だった。
「ここまで来たら、小細工無用……と言いたい所ですが、あれは少々マズいですね」
刀を手に突撃しようとしていたリステルだが、それを見て足を止める。
やはり、敵は強い。亡者とは格が違った。
できる限りのことはしたほうがよさそう、と判断し、牽制主体の行動に切り替える。背後を取ろうと敵を中心に円を描くがごとくダッシュし、不規則に手裏剣を投擲した。ほとんどはなにもせずとも弾かれてしまったが、いくつかが鎧に突き刺さりダメージを残していく。
「さて、最後のふんばりどころ、頑張りましょうか」
さらに六曜も、もはや手段を選ばずと錬成カミヤドリを使用する。
攻撃の為ではない。甲冑たちを盾に、敵への目隠しに、さらには足場にせんと損耗を気にせずに歩ませる。
だが、その姿と性格に似合わず、異端の騎士の剣は実用本位なものであり、洗練されていた。隙を見せぬよう最小限の動きで素早い斬撃を繰り出したかと思えば、ここぞという場面では大振りし痛撃を与え、薙ぎ払って複数の六曜の分身たる甲冑を消滅させる。
至近距離で、異端の騎士の攻撃の多くを引き受けるコロッサスも、未だ大きな怪我は無いが徐々に疲労を貯めつつあった。
「どうしたどうした、さっきの威勢は。ぐははは! 出でよ! ブラックキャバリア!」
好機とみた騎士が、次なる一手を仕掛けてきた。
すでにアイリスの魔法で吹き飛んでいるが、骨の玉座の存在した場所に、闇が凝縮する。闇が石の床を走り漆黒の魔法陣を描き出すと、その場には騎士の鎧と同じく漆黒の、巨大な軍馬が召喚されたのだ。
長身の敵の、さらに倍はあるだろうか。巨漢のコロッサスが見上げても、頭部がはっきりとは見えない大きさだ。
異端の騎士は軽々と跳躍し闇の軍馬に跨ると、広い玉座の間を所狭しと駆け巡る。もはや、安全と言える場所は無い。
甲冑達も大半は踏みつぶされ、後衛を決め込んでいたシオンも何度もその剣の標的となり、かろうじて痛撃は免れている、という状態だった。
このままではまずいと、全員が認識していた。
軍馬が壁付近で方向転換の為に一時的に足を止めた時、軍馬を挟んでリステルと六曜の目が合う。同時に、弾かれたように二人は飛び出した。
「斬鉄はまだできなくとも、やりようはあります」
リステルは抜いた刀を左手に持ち変えると、右手でその鞘を引き抜き騎士の右足を狙う。
敵の鎧を切断するのは、今の力では至難。正確に、真っ直ぐ打撃を加え、衝撃をその中身に通す心づもりだ。
一方の六曜は妖刀に呪詛を纏わせ、騎士の左足を狙った。その呪詛と、自身の殺気、リステルの気迫……三つの気配がフェイントになるのだ。特に、自身の殺気は妖刀を繰り出すよりも一呼吸早く放つことで、一層フェイントとしての効果を強くする。
妖刀が恐るべき切れ味で、騎士の足の甲冑を削いだ。異端の騎士がそちらに振り返り、微かにバランスを崩す。
『我流闘法……鎚衝過勢』
その隙に、リステルの鞘は正確に異端の騎士の右足側面を捉え、軍馬の後ろ脚による蹴りを側宙し避けつつも、左手に持つ刀でその足にも浅く切りつけていった。
「ぐっ!」
しかし複雑なフェイントをしかけるため集中していた六曜は、軍馬の後ろ蹴りをその身に浴びてしまう。
咄嗟に自ら後方に飛び下がり威力を大幅に減じさせてはいたが、息が詰まりその場に膝をつく。一般人であれば、それだけで即死の威力なのだ。そのダメージは決して低いものでは無かった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
リト・クルル
なーんか強そうな敵だな
ゴテゴテの鎧に強そうな剣
……おれは真似したくねーけど、人の好みはそれぞれだもんな
【全力魔法】を使ってエレメンタル・ファンタジアを使うぜ
とりま相手の動ける範囲を制限するために炎の竜巻を出現させる
【2回攻撃】も同時に使って、たくさん出現させてーな
相手の動ける範囲が狭くなれば狭くなるほど、こっちが有利になるだろっつー判断だ
相手の様子を見つつ、それでも逃げるようなら【恫喝】して誘導するか
「ゴテゴテの鎧に強そうな剣。……おれは真似したくねーけど、人の好みはそれぞれだもんな」
厳しい状況にも関わらず、そんな事を呟きながら玉座にやってきたのはリト・クルルだった。挟撃を受けないよう、後方監視を行っていた一人である。
華奢な体躯に、頭部に生えたごつごつとした角。それは、羅刹と呼ばれる種族の特徴だ。
リトはのんびりした発言内容とは裏腹に、膝をつく六曜を見て機敏に反応する。
全力を込めたエレメンタル・ファンタジアが発動すると、アイリスの使ったそれと同じく竜巻が生まれる。一つ違うのは、その竜巻はその属性により炎を内包している点だった。
炎が六曜と異端の騎士を分断し、勢いが殺し切れなかった異端の騎士をその乗馬ごと包み、焦がした。
「ちっ、さすがにもうひとつは難しいか」
本来であれば挟みこむように竜巻を展開したかったが、制御の難しいエレメンタル・ファンタジアだ。それも全力を継ぎ込んだものである。一つ制御するのに手一杯で、続けての使用は暴走を招きかねない。
「グワアアアアアァァァ! きっ、キサマァ!」
これまでダメージを受けても反応を見せることのなかった騎士が、漆黒の軍馬ごとあとずさり、たまらず苦悶の声を上げた。
成功
🔵🔵🔴
佐々・夕辺
※真の姿は大きな蜂蜜色の狐
ったく、この姿あんまり好きじゃないのよ!
フォックスファイアで花びらを打ち落として、あわよくば相手に叩き付けてやるわ。
さっさと終わらせるわよ!
サクヤ・ニイヅキ
ずいぶん悪趣味なお城なの
とっとと取り壊して、サーカス小屋でも建てたほうがマシなの☆
挑発と「パフォーマンス」を交えながら短剣とボールの投擲で牽制しつつ、相手の動きや技を「学習力」技能を活かして記憶するの
そしてここぞというタイミングで騎士が技を放つ時、真の姿を解放してミレナリオ・リフレクションを使用
「メタ・オブリビオン形態に移行。迎撃します」
一瞬、姿形が目の前で戦うオブリビオンと「同じ」になり、同じ構え、同じ技で敵の攻撃を相殺しようとします
(※この間のみ笑顔から無表情に、口調は淡々としたものに変化)
騎士に隙を作り、味方の攻撃のチャンスを作るのが目的
オブリビオンを破壊する。それがわたしの存在理由なの
リトに遅れること少し。
夕辺とサクヤの両名も、玉座の間に足を踏み入れる。
「ずいぶん悪趣味なお城なの。とっとと取り壊して、サーカス小屋でも建てたほうがマシなの☆ そう思うよね?」
サクヤは隣に居たはずの仲間を見やるが、すでに夕辺の姿はそこにはない。
「……もういないの。わたしも、仕事にかかるとするの。存分に、わたしの演技を見るといいの☆」
サクヤがエースオブスペードと、ジェスターボールを取り出すと、異端の騎士もまた動きを見せる。
「許さんぞ、キサマらぁ! 俺に傷をつけた罪、血をもって贖え!」
手にした剣が、再び血の色をした薔薇の花びらへと変じていく。猟兵達の血を吸いさらに大きく、禍々しい姿になっていた長剣は、最初とは比べ物にならない量の花びらを産み出していった。
先ほども見せた技、フォーリングローゼスで、人数が増えた猟兵達をまとめて切り裂こうというのだろう。
「気をつけて、勇者たち。花びらで広範囲を切り裂くユーベルコードよ!」
アイリスがやってきたばかりの三人に警告を発する。
「……メタ・オブリビオン形態に移行。迎撃します」
先ほどまで常に笑顔だったサクヤが、真の姿を解放。仮面でも被ったかのように無表情になる。口調も固く、まるで別人のようだ。
「ったく、この姿あんまり好きじゃないのよ!」
中央付近まで進んでいた夕辺も、真の姿……大きな蜂蜜色の狐へと変じていた。
周囲に十五の狐火が浮かぶ。この炎で花びらを打ち落とすつもりだったが、それにしても花びらの数はいかにも多すぎるように見えた。
そこにフォーリングローゼスが放たれる。
刹那、反応したのはサクヤだった。その姿は一瞬だけ敵オブリビオンと同じ黒い鎧姿の騎士となり、同じように薔薇の花びらを産み出すと、敵の放った花びらにそれをぶつけていった。
展開の仕方はかなり異なるが、洞窟でシオンが敵の炎を打ち消した技、ミレナリオ・リフレクションだ。
元々強大な力を持つ上に血を吸って強化された異端の騎士の放つ技は、根本的に出力が高い。完全には打ち消す事ができなかった。
しかし、そこに隙は出来る。
「いまっ! さっさと終わらせるわよ!」
夕辺がフォックスファイアの狙いを、花びらから敵の本体に切り替える。急な目標変更と、威力に重点を置いたことからやや雑な狙いにはなったが、十五の狐火が異端の騎士と漆黒の軍馬に次々とぶつかっていく。
「ギャアアアアアアァァァァァ!」
再び、異端の騎士の絶叫が響き渡った。たまらず軍馬から転げ落ちるように地面に降りると、漆黒の軍馬は送還されその姿を消す。
騎士と軍馬は生命力を共有していた。今はそれが仇となり、巨大な的となって、攻撃の多くを受けてしまったのだ。
しかし、猟兵達も無傷ではない。全員が多かれ少なかれ傷を負い、疲労している。
玉座も間はぼろぼろに朽ち、最初の静謐さからは考えられないような惨状。
異端の騎士は言葉もなく、兜の下から爛々と輝く真っ赤な目で猟兵達に恨みを込めた視線を送るのみ。
それだけに、先ほどまでより一層不気味な存在となったようにも見えていた。
――決着の時は、間近に迫っている。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リステル・クローズエデン
(*設定上:真の姿を見失っている為、外見上は変化がないように見えます)
「切り札は、切るべき時に使うものですよね……」
【制限解除・呪腕解放】を発動。
デメリットは『呪詛耐性2、毒耐性2、激痛耐性1』で軽減。
制御用ナノマシンに働きかけ身体リミッターを解除し、
同時に右腕内部の呪骨の封印を解く。
青いカーズオーラが体と刀を包み、
心に冷たい殺意が満ちる……
「お前……調子に乗ったな……」
一気に駆け寄り、攻撃は勘でかわし、あるいは防ぎ
『ダッシュ1、残像2、第六感3、オーラ防御3』
両手持ちにした刀で、
武器や鎧、相手の意思ものとも両断しようとする。
『鎧無視攻撃3、鎧砕き2、属性攻撃3、戦闘知識2、怪力2、見切り2』
異端の騎士の戦い方が変わった。
これまでは範囲攻撃でまとめて削ったのち、手近な相手か固まっている者達を剣で狙うパターンだったが、動きが鈍っている者、隙が大きくなっている者を狙い確実にダメージを与えようとしてくる。
防御に関しても、これまでは鎧と体力に任せていたのを改め、細かく打撃を反らし、受け流して、ダメージを最小限に抑えようとしている様子が猟兵達にもはっきりと感じ取れた。
「これは厄介ね」
夕辺が再び放った狐火も、鎧の分厚い場所で受けられて、残りは剣で打ち払われてしまう。
「うん、てごわい」
クオンもヒットアンドアウェイを繰り返しているが、有効な打撃はほとんど与えられずにいる。
「しかし、我らは負けられぬのだ!」
コロッサスも格上の敵を相手に前線を支え続けて、そろそろ限界が近くなってきていた。
「もう少し……のはずなんだけど、ね。決め手が必要か」
六曜はコロッサスのフォローに回りながら、先ほどのダメージが無かったかのように戦い続けていた。しかし、その顔色は良くない。体力はすでに底をついている。精神力と魂を削りながら、攻防を続けているのだった。
「ふぅ、ふぅ……僕も、そろそろ限界だよ」
シオンも幾度となく攻撃にさらされている。上手くかわしてはきたが、やはり体力的に厳しくなってきていた。
「あきらめないでください。必ず勝機は来ます」
アイリスは敵のかく乱を続けていたが、今となっては効果のほどが怪しくなってきている。
「ごちゃごちゃいってねーで、そろそろ決めるぞ……! もうひとつ!」
リトが気合で再び炎の竜巻を発生させた。出す位置と移動ルートを精密に制御し、敵の移動範囲を上手く制限する。
「オブリビオンを破壊する。……それがわたしの存在理由なの」
それにあわせて比較的元気なサクヤが異端の騎士に接近、矢継ぎ早に攻撃を繰り出した。当たっても、それだけではほとんど効果が表れないが、もちろん狙いは他にある。それは……。
「切り札は、切るべき時に使うものですよね……」
リステルは一度深呼吸すると、その力を解放した。
『リミッター解除、青の封印解放……この身は刃……凍てつく青き刃……ただ、斬り裂くのみ……』
制限解除・呪腕解放。制御用ナノマシンに働きかけて身体リミッターを解除、同時に右腕内部の呪骨の封印を解く。
一瞬その身体がブレたように滲み、別の姿が浮かび上がりかけるが、すぐに消えて元の姿に戻る。
失敗したわけではない。青いオーラがその身と刃を包み込み、強い殺意が溢れ出た。
「どうした。その程度でオレは死なねぇぞ!」
さらに巨大になった剣を振るい、騎士はまとわりつくように攻撃をしかけていたサクヤの身体を弾き飛ばした。騎士は嘲笑する。
だが、そうして隙を作ることこそ、サクヤの狙いだ。
「お前……調子に乗ったな……」
リステルはサイドから一気に騎士へと距離を詰める。
「……奇襲のつもりか!」
横向きの姿勢から大振りされた剣を躱し、リステルは片手に下げていた刀を両手に持ち替えた。
自身の残った力、仲間たちの意志、そして村人の想いを乗せて振りかぶる。
通るかどうかはわからない。いや、通るかどうかなど考えていなかった。ただ全力で。
全てを乗せた、リステルの振りかぶった青き刃が、異端の騎士の頭頂を真っ直ぐに捉えた!
猟兵達はスローモーションのように、リステルの振り下ろした刃が騎士の頭部から身体の中心を通り、足元へと抜けていくのを見た。
轟音。
左右に分かたれた黒い鎧が、玉座の間の床を叩き、粉砕する。
「……勝った」
それは誰の言葉だったのか。轟音の後、静かな一言だけが玉座の間に響き、人であることを止めてしまっていた異端の騎士の身体は塵となって溶けていった。
しかし、ゆっくりしてはいられない。異端の騎士の配下の亡者たちが、村へ向かっているのだ。
猟兵達は急ぎ村へと、最短ルートを舞い戻る。それにも、村の近くで亡者を迎え撃つときにも、事前の情報収集が再び役立った。
すでに一度戦ったことの有る敵だ。個々の能力で勝っている猟兵達が勝利したことは、語るまでもないだろう。
かくして村は一時の平穏を得る。
しかし元よりオブリビオンに支配された世界。異端の騎士の主たるヴァンパイアも、まだ何処かに居る筈だ。
その平穏は長く続かないかも知れない。だが今は、その勝利を喜ぼう。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! 助けてくれて、ありがとう!」
彼らの守った、子供達の笑顔。
それはいまだ暗闇に覆われたこの世界の未来を照らす、小さくとも確かな希望の光なのだから。
大成功
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