銀色の雨が降り注ぐ東京の郊外。
そこには水商売界隈で有名な、とあるマンションがあった。
何で有名か、というとそのマンションの住人から指名が入ったホステスは皆、行方をくらましてしまうからだ。
一回なら偶然かもしれない。だがそれが複数人となれば話が変わってくる。そのため電話を受ける者達はその住所をあらかじめ控えておき、かかってきた時には色々理由をつけて断るようにしているのだという。
さらにこんな話もある。
向かった後に連絡が取れなくなり、家にも帰ってこないホステスの足取りを追うべく、オーナーは部下を問題のマンションに向かわせたという。
部下は控えていた番号の部屋の前にたどり着くとインターホンを押し、名前を呼びかけ、扉を拳や足で何度も叩いたが何の反応も返ってこない。
その騒音に耐えかねて、出てきた隣の居住人から語られたのは、そこがここ何ヶ月も入居者がいない空き部屋だという事実だった。
「……果たしてホステス達はどこに消え、ホステスを指名した人は誰だったのでしょうか? その行方と正体は、誰も分からないままです」
そう言ってルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は手元の蝋燭を吹き消してから……部屋の電気をつけた。
「以上が、今回皆様に行っていただく廃マンションに伝わる都市伝説です」
話の舞台となったマンションはそのような悪評がたってしまったことと築年数がかなり経ってしまったこともあり、入居者がおらず、解体費を払うことも出来ないまま打ち捨てられた状態になっている。
にもかかわらず、そのマンションから電話がかかってきた……という事例が最近あったらしい。
「これらの逸話はあちらで『地縛霊』と呼ばれる存在によって引き起こされている、と予想されております」
地縛霊は固執している土地に何者かが現れると「自動的に出現し、速やかに殺す」という特性を持っている。もしこの都市伝説が真実だとしたら、起きた理由が綺麗に繋がることとなる。
「ただ、都市伝説は時が経つにつれてどんどん変容する物。部屋番は言及されていても話によって異なることが常ですし、『部下も帰ってこなかった』というパターンもあります。しかしどの話も現場となったマンションだけは一致しています」
電話がかかっている以上、地縛霊は消滅しておらず、まだこちら側の住民を引き入れる気がある……ということだ。
「今回は相手が指定してきた時間に現地に乗り込み、物理的に除霊していただこうと思っております」
一応電話の内容は控えてくれていたようだが、地縛霊には「ゴーストタウン現象」と呼ばれる能力を持っており、呪いの場所に誰かが踏み込むと、突如時空が歪み迷宮化してしまうのだという。
これを例えばアパートの一室で起きると「どこまでも続くアパートの中に閉じ込められた」状態となる。
ただ地縛霊には「それがここに取り憑いた理由」に対して共感し説得をすることで弱体化した例も確認されている。迷宮を探索していたところ、その理由が判明した事例もあるため足早に脱出しないのも一つの手だろう。
「以上が銀誓館学園の方々から教えていただいた地縛霊の対処法となります。あ、あとマンションを壊しちゃうと色々と後始末が面倒になりますので……倒すのは地縛霊だけでよろしくお願いします」
そう言ってルウは銀色の雨が降り頻る外を見遣った。
平岡祐樹
お疲れ様です、平岡祐樹です。
シルバーレイン完全初見です。一応サルベージはしますが、全てのネタを拾い切ることが出来ないかもしれません。どうかお手柔らかによろしくお願いします。
今案件は真夜中の廃墟探索となりますが、未成年でも参加することは可能です。
マンションを巣食う地縛霊達を除霊し、幽霊物件をただの廃墟にしましょう!
第1章 集団戦
『ゾンビホステス』
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POW : 化粧は女の武器
予め【化粧をしておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : マニキュアクロー
【毒マニキュアを塗った爪】による素早い一撃を放つ。また、【動くことで肉が落ちて醜い姿になる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : ゾンビパフューム
【香水の芳香】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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日が落ち、信号機と街灯だけが照らす約束の時間になったところで猟兵達は敷地内に足を踏み入れる。
すると辺りの景色が黒から赤へと変貌した。
「イヤ……タスケテ……ッ!」
「ダシテ……ココカラ……!」
周囲を警戒して見回していると、あちこちから声を上げながらふらふらと何人もの女性が現れた。
かつて綺麗に整えられていたであろう服はどれもボロボロで、それを身に纏った女性達の体は青黒く変質し、頭部には明らかに致命傷となった傷の跡がくっきりと残されている。
「オネガイ、ダレカ、ワタシヲ……ワタシタチヲ……カイホウシテ」
その目からは濁った水が、涙のようにしたたっていた。
ローズ・ベルシュタイン
アドリブ歓迎
■心情
ホステスの行方不明ですか、
ともあれ、今はそのホステスがゾンビとなっていますから
このままだと大勢の方々が被害に遭ってしまいますわね。
それは何としてでも阻止しなければ。
■行動
夕暮れ時に薔薇は踊り咲く(UC)を使用して戦いますわね。
【ダッシュ】で一気に敵に近寄り
複数の敵を巻き込める様になったらUCを【高速詠唱】で唱えますわ。
その際も【範囲攻撃】で広範囲の敵を巻き込み
【マヒ攻撃】で動きを通じながら戦いますわね。
敵のゾンビパフュームには、兆候が見られたら即座に
敵から距離を取り、【継戦能力】で眠気を飛ばす様にしますわ。
■オーバーロード
真の姿は、左腕に薔薇の花と蔦を纏い
周囲には薔薇の花弁が舞う様な姿になりますわ。
真の姿中は、『夕の憩い』での近接攻撃と『プリンセス・ローズ』での
遠距離攻撃とを使い分けながら戦いますわね。
特に弱っている敵を優先的に狙って
確実に数を減らしていく様に戦いますわね。
「さぁ、ゾンビは早く墓へとお帰り下さいませ」
リンカーベル・ウェルスタッド
あらまあゾンビ。まるで私に祓われるために現れたかのようですね。
主よ、いと気高き万軍の王よ、この魂たちを憐れみ下さい――。
と言う訳で! アーメン、ハレルヤ、デストロイです!
…ところでホステスって何ですか?
聖水をバラ撒いてUC使用、この手の輩には効きそうな気がします! 多分!
手持ちの武器を距離に合わせて使い分け、効率的に神の御許へ送り届けて差し上げましょう。
臭そうなので余り接近戦はしたくないので、盾の縁や面で殴ったりして距離は離すように。
ゾンビパフュームを食らってしまったら、舌を噛んだりダガーを自分の手足の支障が無い場所へ突き立てたりして、可能な限り抵抗します。
他の猟兵がいれば協力・支援をします。
「ホステスの行方不明ですか」
ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)の独り言が聞こえたのか、リンカーベル・ウェルスタッド(ルーベル・アニマ・f01718)は首を傾げる。
「……ところでホステスって何ですか?」
「客を接待する専門的知識と技術を持った女性のことですわ。他の言い方だと女将さんとか、そんな感じです」
「ああ、それなら分かります。なら最初から他の言い方も言うか詳しく言って欲しかったですね!」
「……もしくは、初めから隠すつもりだったのかもしれませんね」
本来ホステスは夜のお店で客を待ち、電話でホイホイと呼べる者ではない。
本来それには別の名前があるのだが……行方不明者に変なイメージを持たせたくないがために、ダークセイヴァー出身者のあの人狼は似たような夜の職業の名称を出してしまったのかもしれない。
「ともかく、もしまだ生きてらっしゃったら保護。遺体が見つかったらオブリビオンを祓った後にしっかり供養させていただきましょう」
「そうですね。そこは私聖職者にお任せくださいませ!」
そんな相談をしながら敷地内に踏み入った2人の周囲が黒から赤に変わる。
「イヤ……タスケテ……ッ!」
刹那、互いの背中を庇いあった2人は声のした方を向いてほぼ同時に走り出す。
そして階段の手前までたどり着いた所で、2人はホステス「だった者達」と邂逅した。
「イヤ、コンナ、イヤ……」
「あらまあゾンビ。まるで私に祓われるために現れたかのようですね」
わざと驚いた素振りを見せるリンカーベルの隣でローズは鼻に甘い香りを感じると同時に瞼が重くなり始めた。
しかし直後に聞こえてきたリンカーベルのか細い声がそれを妨げた。
「いった……」
「リンカーベルさん!? いったい何を!?」
目に入ってきたのはリンカーベルが左の手の甲にダガーを自ら突き刺した姿だった。一瞬で覚醒し直したローズの困惑に、リンカーベルは強がって口角を上げた。
「大丈夫です、手足の動きに支障が無いところを選んだので……それよりあの香水はダメですね。腐った臭いは見事に隠せてますが、嗅いだら眠くなってしまいます」
香水が原因なら息を頻繁に吸ってなければ寝てしまうことはないだろう。ローズは息を止めてゾンビ達を見直した。
おそらく彼女達は地縛霊によってここに繋ぎ止められているはず。もし友好的な存在なら地縛霊の正体や弱点が———
「ワタシダケ、ヒドイメ、イヤァァァァ!」
「主よ、いと気高き万軍の王よ、この魂たちを憐れみ下さい――。と言う訳で! アーメン、ハレルヤ、デストロイです!」
悲鳴をあげながら襲いかかってきたゾンビにリンカーベルが聖水の入った瓶を直撃させる。ゾンビになっても硬いままの頭蓋骨で割れた瓶から溢れ出た聖水を頭から被ったゾンビは絶叫して後退った。
「……どうやらお話はまだ出来そうにありませんね」
もしこのままの状態で拘束が破られたら、彼女達はさっきのように道連れを望んで大勢の人々に襲いかかることだろう。それは何としてでも阻止しなければならない。
ローズは左腕を伸ばすと、ドレスを突き破るように肩の付け根から蔦が覆うように伸び、次々に赤い薔薇が咲き誇った。
そしてローズとリンカーベルを守るように、オレンジ色の花びらが周囲に舞い上がった。
『さぁ、数多に咲き誇りなさい!』
ゾンビにしては素早い脚を互いの愛銃が的確に撃ち抜き、動けなくなったところを舞い散り続ける花弁が吹き飛ばしていく。
「左手が使えなくとも、銃は撃てるんですよ!」
弾切れからの装填、という空白の時間を見逃さずに、弾幕から逃れたゾンビは襲い掛かろうとしたが夕焼け色の刀身による斬撃と盾の縁や面による打撃がそれを返り討ちにしていった。
次々に仲間達がやられていく様に尻込みし、遠巻きに見出したゾンビ達の様子にローズは一転して攻勢に出た。
「さぁ、ゾンビは早く墓へとお帰り下さいませ」
「ワタシダッテ、ハイリタイ、カエリタイワァァァ!」
濁った涙を流しながらゾンビ達は叫び、腕を振り上げる中、ローズは香水を嗅がないよう早口で詠唱を終えると息を止める。
そしてさらに勢いを増した花吹雪は隙だらけの彼女達の体を空へ舞い上がらせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御魂・神治
ほほー、事故物件かいな、しかも呪いの家の類の
入った瞬間呪われるの確定ってヤツやな
んー、先ずは【結界術】張ってと
地縛霊はキャバ嬢かぁ...ってなると、悩みは十中八九色恋沙汰か金銭問題やな
借金か何かが払えんようになったから辛て自殺して
この現場が自殺のメッカみたいになってもうたんか?
ワイかて家賃滞納しまくってても自殺する気は起きへんけどな
天将『説得力がありませんよ』
爆殺するのは可哀そうやし、銃でぶっぱするのも何やし
物件壊したらアカンから【浄化】の【除霊】紫電札で速やかに成仏してもらおか
「ほほー、事故物件かいな、しかも呪いの家の類の。入った瞬間呪われるの確定ってヤツやな」
真夜中にも関わらず、部屋の明かりが全くついてない廃マンションを見上げた御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は結界の準備をしながら、この事態の考察を始める。
「地縛霊はキャバ嬢かぁ……ってなると、悩みは十中八九色恋沙汰か金銭問題やな。借金か何かが払えんようになったから辛て自殺して、この現場が自殺のメッカみたいになってもうたんか?」
『でしたら、死体が一切あがってないというのが気になるところですが』
「そこがオブリビオンが関わってる事件……ってところやろ?」
天将の言葉に相槌を打ちつつ、最後の札を貼り付け終える。これで地縛霊が外に出ることはないだろう。
「ただワイかて家賃滞納しまくってても自殺する気は起きへんけどな」
『説得力がありませんよ』
じっと見つめてくる天将を適当にあしらいつつ、神治は塀の穴に足をかけて乗り越える。
敵は大きな戦闘が起きている正面玄関付近に集中していることだろう。ならばその裏を突いて進もうとするのは戦略として間違えてない。
しかし裏庭に着地した瞬間、神治と天将の姿は正面玄関脇の駐輪場にあった。
「ん!?」
「イタ、オトコノヒト、タスケテ……!」
これが「ゴーストタウン現象」かと理解する前に、神治に気づいたゾンビが膿が混じったマニキュアで彩られた手を振りか振る。
「うお、はやっ!?」
神治はその辺にあった自転車を咄嗟に持ち上げ、ゾンビに叩きつけた。
不意の反撃に押し潰されたゾンビに自転車を持ち上げるだけの筋力は残っていないようで、涙目で喚くことしか出来ない。
「はー、心臓に悪いわ。やけど爆殺するのは可哀そうやし、銃でぶっぱするのも何やし、物件壊したらアカンから……速やかに成仏してもらおか」
突然の襲撃に動悸が上がっているのを感じながら神治は紫電札を切り、自転車ごとゾンビを焼却した。
成功
🔵🔵🔴
神塚・深雪
ゴースト……ではなく、オブリビオン、でしたっけ。
猟兵としては初陣みたいなものですし、脚を引っ張らないようにだけは、しないとですね。
できることをやりましょう。
集団であらわれるということで、範囲で一掃したいところですけど、
的確に倒していった方が今の私だと確実そうなので、その方向で。
……出してくれ、解放してくれとは言うものの、一体彼女たちは何に囚われてしまったのでしょう。
戦闘中にあまり考え事はよくないのですけど、ちょっと気になります。
そこから解放することができてこその、私たちだと思いますし、ね。
彼女たちの声がヒントになるでしょうから、聞き洩らしたくはないところです。
「ゴースト……ではなく、オブリビオン、でしたっけ」
そう呟いて、神塚・深雪(光紡ぐ麟姫・f35268)は掌に息を吐いて擦り合わせる。
「能力者」として最前線で活動していた者達と比べると少ないが、戦場に立った経験はある。しかし、猟兵としては初陣みたいなものである。
「脚を引っ張らないようにだけは、しないとですね。できることをやりましょう」
初心忘るるべからず、深雪は頷くと敷地内に足を踏み入れた。
「オンナ? アノオトコ、マタヨンダ……?」
「ニゲテ、ハヤク、ワタシタチミタイニナル……!」
深雪の姿に気づいたゾンビ達が口々に呟きながら立ち上がる。手には口紅やスポンジパフが握られていたが、その肌はその程度では隠せないほど腐り落ちていた。
『光を纏え、剣よ……!』
翼を鋭角的に模すように、透明な水晶のような鉱物で打たれた日本刀を抜いた深雪はその刃を2本の指で挟み、撫でる。
その瞬間に辺りは銀色の光に包まれ、それを真正面から浴びたゾンビ達は痙攣しながらその場に崩れ落ちた。
「……この程度で気絶しますか」
もちろん範囲で一掃出来れば最高ではあった。子育てやら何やらで戦場から離れていた今の自分だとしかし的確に倒していった方が確実そうだと思い、銀色の光に紛れて一体ずつ片付ける気であった深雪は目を白黒させた。
「ココカラ、ワタシヲダシテ……」
「カイホウシテ、ダレカ……」
しかし後ろを向き、擦りすぎたのか骨が露出している手でひたすらにマンションの壁を削っていたゾンビ達は未だ健在であった。
しかし光によって視聴嗅覚での感知が不可能になった深雪に気付く手段はなく、すぐそばに歩み寄ってもゾンビ達は何の反応も示さずひたすらに呟き、ひっかき続けていた。
「……出してくれ、解放してくれとは言うものの、一体彼女たちは何に囚われてしまったのでしょう」
戦闘中にあまり考え事はよくないことは分かっているが、その声その内容はどうしても気になってしまう。
この哀れな犠牲者達の成れの果てと思われる地縛霊達をそこから解放することができてこその私たち「能力者」だと、深雪は耳を澄ませる。
当事者である彼女たちの声がヒントになることを信じ、その一言一句を聞き洩らさないために。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
地縛霊とか、我らと近しい存在ですよね。
ですが…手加減はなく。
あまり建物を傷つけるな、ということですから…破魔かつ霊力矢になる【四更・林】を。
どれだけ群で来ようが、この矢は分裂しますしね。
相手からの攻撃は見切り、結界で弾く。万一受けたとして、毒耐性で凌ぎましょう。
ああ、そうですね。腐ると肉は落ちるんですよね…自分のを見てましたから知ってます。
驚きはしませんが、身軽になられる分、瞬間思考能力で対処していきましょうか。
※四人で一人、になる前。自分の身体が朽ちるの見てた人たち。骨は野ざらしのまま。
走るたびに肉塊を落とし、服の隙間から肋骨や腸を見せながら突っ込んでくるゾンビ達を前にして、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は「四人」が「一人」になる前を思い返していた。
「ああ、そうですね。腐ると肉は落ちるんですよね……自分のを見てましたから知ってます」
彼「ら」は見てきた。動かなくなった自分の身体が昼と夜を何度も繰り返し、風雨に晒される度に朽ち果て、蠅がたかり、骨だけとなって地面に崩れ落ちる様を。
今、自分達の骨はどうなっているか確認はしていない。獣に持っていかれたり僧侶とかが拾って供養したりしてなければ、きっとまだあの場所で野晒しになっているはずだ。
「オトコ、ユルサナイ、ワタシタチ、コロシタ」
「ワタシハ、モット、イキタカッタ。ダカラ、アナタモ、オナジダケ……!」
「オトコシネ、シネ、シネェェェェ!」
「地縛霊とか、我らと近しい存在ですよね。ですが……手加減はなく」
目の前の存在が仇と性別が一緒、というだけで目の敵にしてしまうほど錯乱している様子のゾンビ達に義透は哀れみの気持ちを抱きながらもその動きを冷静に見極める。
肉が落ちたことで物理的に軽くなったゾンビ達の動きは素早いが、所詮は戦場に立ったことのない素人の動きである。
義透は大して驚きもせずに結界を張り、腐肉によって生じた毒が染み込んだゾンビの掌を淡々と弾いた。
「あまり建物を傷つけるな、ということですから……『我が梓奥武の力よ、ここに』」
そしてゾンビ達が恨めしそうに叩く結界の中央で白雪林の弓弦を限界まで引っ張り、離す。すると番われていた矢は天高く放たれた。
「どれだけ群で来ようが、この矢は分裂しますしね」
霊力によって編まれた矢は重力に従って落下しながら増殖して雨のように敷地内に降り注ぐが、実体がない故に建物や駐輪場の屋根をすり抜けてゾンビや地面に刺さっていった。
矢に込められていた破魔への祈りは僅かに掠っただけでもその身を焦がす。
「ナンデ、ワタシタチ、コンナ、メニアワナキャ……!」
「ワタシハ、ココカラ、デタイダケ……!」
「解放して欲しいと言いながら自分と同じ目に遭えと襲いかかる二枚舌をやっていれば、当然報いは来ますよ」
あくまで無実の犠牲者だと主張して涙を流すゾンビを断じ、義透は問題のマンションへと足を踏み入れた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『怨嗟の残響』
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POW : 大声を上げ、怨嗟の声をかき消す
SPD : 耳を塞ぎながら素早く進む
WIZ : 敢えて呪いの声に耳を傾け、理解を示す
👑7
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どれだけ進もうと、階段を上がろうと、エレベーターのボタンを押そうと、近くのドアノブに手をかけようと、次の瞬間には猟兵達はゾンビ達が怨嗟を吐きながら徘徊する正面玄関と、その周辺に戻ってしまっていた。
これこそが地縛霊の持つ特性「ゴーストタウン現象」なのだろう。
それを打破するためには、本体の元へ辿り着くための正しい移動方法か、このマンションがどのような場所なのか、何があったのかを解明しなければならない。
外部との連絡手段が遮断されているこの環境で、明確な答えを猟兵達は見出すことが出来るのだろうか?
馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
先ほどの対峙でわかったことと言えば。彼女たちは逃げ出そうにも逃げ出せず、『男』に殺されたというところでしょうか。
…何があったのかを知るためにも、しばらく内部を巡りつつ調べましょうか。
地縛鎖を刺して情報収集できるのならば、それでいいのですが。
できないようならば、霊的な記憶を覗き見るくらいしか(情報収集+ハッキング)。
それにこの現象、悪霊としては勉強になりますので。そういった意味でも、内部を巡るのは苦ではないのです。
「……おや」
4階に上がったはずの義透の視界に入ったのは、すでに通り過ぎたはずの1階の正面玄関から見える外の景色だった。
振り返ってみればただのタイル張りの床が広がっており、さっきまで上ってきたはずの階段はその奥に変わらず鎮座していた。
「なるほど、これがゴーストタウン現象ですか」
そう呟いた義透は懐から鎖を取り出すと地面に向かって垂らす。すると鎖はまるでマジックのようにタイルをすり抜けていった。
霊力と情報を吸い上げる鎖から伝わってきたのは、どうやら彼女たちが通ってきた工程を1つも間違えることなくなぞらないと、目的の場所には辿り着けなさそうだということだった。
先ほどの犠牲者達との対峙でわかったことと言えば彼女たちは逃げ出そうにも逃げ出せず、「男」に殺されたというところだろうか。
階段、エレベーター、歩数……細かすぎるこだわりは問題のオブリビオンと関係があるのかもしれない。
だが正気と狂気を行ったり来たりしている様子の彼女たちから新しい情報が出て来るとは考え難い。件の都市伝説が全て正しければ、毎回部屋番号を変えている可能性だってあり得るのだ。
「……何があったのかを知るためにも、しばらく内部を巡りつつ調べましょうか。『四悪霊の前に、隠すことなかれ』」
義透は細い目を開き、霊的な記憶を覗き見る。すると顔色も服もキレイな女性が首を傾げている姿が浮き彫りになった。
「なんでエレベーター動かないのー? 階段上らなきゃいけないとか……面倒くさ」
そう言った女性は義透が使わなかった、マンションの端にある階段へ向かって歩き出したところで姿を霧散させた。
「なるほど、全ては見せてくれないのですね」
どうやら彼女の残留思念は長い時を経て消えかかっているようだ。しかしこれだけの犠牲者がいれば、それら全ての残留思念を繋ぎ合わせることで正解のルートを無理矢理導き出すことも出来るだろう。
「……それにしてもこの現象、悪霊としては勉強になりますね」
そういった意味でも、内部を巡り続けるのは苦ではない。目の前に広がる建物全てが対象、という問題を前に義透は思わず口角を上げた。
成功
🔵🔵🔴
ローズ・ベルシュタイン
アドリブ歓迎
■心情
ゴーストタウン現象、何とも不気味ですわね。
ですが、どんな迷い道でも必ず打破する方法はあるでしょう。
■行動
呪いの声に耳を傾けてみますわね。
「ゾンビ達の声、頭が痛くなりそうですけど、何か手掛かりは無いでしょうか」
と【呪詛耐性】で呪いの声に対しても正常を保ちつつ
私も『薔薇園狂詩曲』で声に応える様にヴァイオリンを奏でてみますわ。
ヴァイオリンの音色で、ゴーストにも何か心境に響かせる事が
出来るかも知れませんからね。
後は、【情報収集】で集めた情報を自分なりに整理しつつ
マンション内を移動して行きますわ。
「ゴーストタウン現象、何とも不気味ですわね」
元の場所に戻されるのは女性でも同じだった。地縛霊の招きが無ければ、道に迷わずに行くことが出来ないかもしれない。
「ですが、どんな迷い道でも必ず打破する方法はあるでしょう」
例えば、すでに招かれてしまった者達に聞くとか。
「ゾンビ達の声、頭が痛くなりそうですけど、何か手掛かりは無いでしょうか」
「ナンデ、ワタシガ、コンナメニ……」
痛みと恨み辛みが混じった声が虚空に響き渡る。その一端を担ってしまっている事実に心が、その怨嗟に頭が痛みを覚え出す。
このまま待っていても、おそらくこちらの精神が摩耗していくだけでゾンビが助け船を出してくれることはないだろう。
眉間に皺を寄せたローズはどこからともなくヴァイオリンを取り出し、弦に弓を当てた。
『お聞きなさい、私の奏でる旋律を!』
突然のライブにゾンビ達は言葉を失い、聞き惚れる。中には昔を思い出したのか、拭うことなく涙を流し始める者の姿もいた。
一曲弾き終わり、弓を離した時にはもう怨嗟の声を発する者は近くにいない。一礼した後、まばらな拍手が送られる中でローズは大きくなくても良く通る声で話しかけた。
「私はあなた方を死に追いやらせた者を追っております。誰か、その居場所に心当たりのある方はいらっしゃいませんか?」
すると前列にいたゾンビ達からポツポツと証言が集まり出す。しかし彼女達の向かった部屋番号は全然一致していなかった。
「……つまりどこかの部屋ではなくこのマンション全体が彼のテリトリー、ということでしょうか」
これが件の都市伝説の裏側か、と納得しつつローズは集まった証言を精査する。
するとどのゾンビも事情は違えど、エレベーターを使わず、自らの足のみで移動していたことことが明らかになった。
「エレベーターに何らかのトラウマがあるか、無い時のマンションしか知らない……?」
確信を得る弱点は見出せなかったが、ゾンビ達が誘い込まれた部屋を片っ端から当たっていこうとローズは腹を決めて立ち上がった。
成功
🔵🔵🔴
御魂・神治
玄関開けたら元の場所か
無限ループって怖ないか?
そういうホラーゲームあった気ぃするけどな
無限ループ引き起こしとる原因てか、ループを終わらせるフラグ立てやな堂々巡りやな
男女関係の痴情の縺れが原因の一つか
キャバ嬢呼び付けとった輩、多分同一人物やろ
天将、【情報収集】で犯人に関係しそうな目ぼしいもん見つけてくれんか?
手記とか、日記とか、帳簿とか領収書とかでもええわ
パソコンとか記録媒体があったら、【ハッキング】でロックを強引にこじ開けて、そこにキャバ嬢とのやり取りの記録が残っとるかどうか、洗い浚い調べたれ
鍵のかかってない、無用心極まりない扉を開ける。
その先にあったのは1LDKの住居ではなく、もう何度も見てきた正面玄関口であった。
「玄関開けたら元の場所か、無限ループって怖ないか?」
そういうホラーゲームを見た覚えのある神治は眉をハの字に曲げた。
パソコンなどの記録媒体があればハッキングでロックを強引にこじ開け、キャバ嬢とのやり取りが残っているかどうか洗い浚い調べられるが、現状それらを見つけることは出来てなかった。
「こりゃ無限ループ引き起こしとる原因てか、ループを終わらせるフラグ立てやな堂々巡りやな」
十中八九、キャバ嬢を呼び付けていた輩は同一人物。そしてこのマンションがこうなったのは男女関係の痴情の縺れが原因の一つだろう。
「天将、情報収集で犯人に関係しそうな目ぼしいもん見つけてくれんか? 手記とか、日記とか、帳簿とか領収書とかでもええわ」
『かしこまりました、キャバ嬢の方々に取材してきます。持っているとは思えませんが……』
そう言って天将は柵を乗り越え、襲撃する気力を失って怨嗟を吐くだけの存在となったゾンビ達に声をかけ始めた。
「はー、こんなん根本から爆発解体出来れば楽なんやろうけどなー。変に法律があるってのはしんどいわ」
頬杖をついて愚痴をこぼしていると天将が飛び戻ってきた。
『やはり男と直接繋がる書類のような物は誰も持っていませんでした』
組織に所属しているキャバ嬢は基本、組織本部とのみ連絡を取り合う物。相手の詳しい情報を知らないのは当然の話であった。
『ただ、男の見た目は分かりました』
相手は全く厚みのないペラペラの紙のような体を持っていて「冥土の土産に一発やらせろ」と迫ってきたという。
その異様な風体にキャバ嬢達は恐れをなして逃げ出し、その後ろから刃物で頭をかち割られ……。
「現状に至る、ってか。なんやそれ、怪奇人間でもおるんか?」
『オブリビオンです。……たしかに怪奇人間でも出来る芸当ではありますが』
天将からの情報に背筋を伸ばした神治は明後日の方向を見つつ、唸り声をあげた。
成功
🔵🔵🔴
白匣・覚醒(サポート)
怪奇人間の猟奇探偵×四天王、32歳の男です。
普段の口調は「シロベヤ(私、君、呼び捨て、言い捨て)」、演技時は「KP(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
存在が密室です。白い部屋です。
KP時の口調でお願い致します。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
一面真っ白な部屋の中で、ペン先が紙を擦る音が響く。
「此度の発端はただの不注意だった」
その音の主である白匣・覚醒(密室探偵・f22856)は1人呟く。
「命綱をつけ忘れた男が鉄骨を踏み外して落ち。地面に叩きつけられた所へブレヱキが間に合わなかった重機の履帯が突っ込んだ。男の骨は粉々になり。肉は地面に伸された。まあ。それはそれは凄惨な事故であった」
そんなことが起きても、工事は変わらず進められる。この一件は注意不足による事故であって、事件ではなかったからだ。
事務所に警察の家宅捜索が入り、厳重注意が入り、現場で命綱の徹底が叫ばれ、改めてお祓いが行われれば元の木阿弥だ。
しかし男の未練はお祓い程度で浄化されるような物ではなかった。
「男は○○だったのだ。他人からくだらないと鼻で笑われるようなことでも。彼にとっては重要で重大なことであった」
卒業出来なければ成仏出来ない、その一念だけで地縛霊と化した男は投函されたチラシを頼りに女を次々と呼び出した。
しかしこの世の物ではない男の風体に、女達は恐れをなして逃げ出す。中にはプロ根性からか逃げ出さずに受け入れようとする者もいたが、一度伸された物が再起することは無く。
望みが達せられないことに怒った男はその度に斧で女の脳天をかち割った。その結果生まれたのが件の都市伝説だ。
ただでさえ下がっていた評判はさらに落ち、原因が分からない買主は改善する事を考えることなく、諦め、投げ出した。
こうして男が新たな女を呼び込む術は失われた。だがその情念は残ったままだ。
扉が開く音がすると同時に覚醒は筆を動かすのを止め、背もたれに体を預ける。そして袖の下からキセルを取り出した。
「さあ。この物語の最終章を始めよう」
紫色の煙が部屋の中に燻り始めた。
成功
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第3章 ボス戦
『折り畳み男』
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POW : 怪奇折り畳み男
肉体の一部もしくは全部を【折り畳まれた状態】に変異させ、折り畳まれた状態の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD : 隙間の折り畳み男
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【斧】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 薄型折り畳み男
自身の【肉体がさらに薄い状態】になり、【素早い行動が可能になった】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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すでに払う者もおらず、電気ガス水道が止められた暗い室内に街灯の光が入り込む。
腐った肉とこびりついた血の臭いが鼻腔をくすぐる中、奥からズルズルと重い物が引き摺られてくる音が聞こえてきた。
「なあ……冥土の土産に一発やらせてくれよお……」
声の主は紙のように平たくなった腕で床を引っ掻き、玄関に立つ猟兵達に近づいてくる。
その手には十何人もの女性の脳髄を吸った刃が鈍くきらめいていた。
「なあ……頼むよぉぉぉ。このままじゃ、死に切れねぇんだよぉぉぉ……」
地縛霊になった経緯は同情の余地はあるものの、くだらないプライドを満たそうとして行ったことは立派な加害者だ。
情けをかけてやる必要は、どこにもない。
馬県・義透
『静かなる者』のまま
なった経緯は同情しますが。後のことはくだらない。
同じ男として、くだらない、と。
まあ、この構造は勉強になりましたけれどね。
ですから、ここでその念を祓いいきましょう。
暗視で暗闇とて関係なく見通し、先制攻撃にて【四悪霊・『塊』】を。建物傷つけませんからね、これも。
そして…破魔を宿した霊力矢を間断なく。霊力矢なので、敵以外を傷つけることもないですよ。
力も覚えましたので、わりとあたりますしね?
防御は四天霊障利用の結界術にてしてますので。制御は中の三人がしてますよ。
しかし、こういうことがあるとはね…。新しい世界もいろいろあるものです。
「……くだらない」
「ああ?」
呟かれた言葉に、男の動きが止まる。
意味のない呻き声とは違う、よく聞こえなかったことに対する聞き返しの意を込めた言葉だと判断した義透は今度はよく聞こえるように、繰り返し言った。
「同じ男として、くだらない、と。なった経緯は同情しますが。後のことはくだらない」
「ああん!? 何がくだらねぇだ!? 同じ男なら分かるだろう! これがどれだけ惨めかよぉ!」
共感を得られなかったことに男は喚き散らすが、義透の見下す目に宿る冷たさは更に増した。
「まあ、この構造は勉強になりましたけれどね。ですから、ここでその念を祓いいきましょう」
その瞬間、這いつくばっていた男の体が宙に浮かんだ。何も変哲もないはずの木の床から噴き出した爆風に煽られたのだ。
しかし床に大穴は開かず、木片も散らばってはない。なぜなら爆発したのは実体の無い、義透の抱える呪詛の塊だったからだ。
『四悪霊が圧縮した呪詛…敵への贈り物』
そして間断なく撃たれる破魔を宿した矢は紙のように薄い男の体に尽く引っかかることなく、貫いていった。
「建物傷つけませんからね、これも」
霊力によって練られた矢は天井をすり抜けてそのまま消滅し、これまた建物を傷つけることはない。
「力も覚えましたので、わりとあたりますしね?」
「ぐあっ、くそっ、くそがっ」
男の魂の力を覚えたことで百発百中となった矢が突き抜ける度にその衝撃で男の恨み節が区切られる。空中でリフティングをされている格好になった男は悪態をつきながら斧を天井に刺すことで体勢を立て直そうとした。
しかし実体があり、天井の素材よりも硬いはずの斧は甲高い音を立てて跳ね返された。孝透が射抜き続けている間に他の三人が制御する、四天霊障を利用した結界がこの部屋全体に張られていたのだ。
「んなっ!?」
「壊されると色々と後始末が面倒になる、と伺いましたのでね」
驚愕しながら反動でゆっくり降下し始めた男の額をまた新たな矢が貫く。その痕は全身に残っていながらも、すでに押し潰されて大半の水分を地面に吸われた男の体から新たな血が染み出てくることはなかった。
大成功
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御魂・神治
えっらいペラッペラやの
死因は悲惨やけどその...スケベ根性で地縛霊になったんかい、あほらし
あー、がなり立ててもワイ聞いてへんで
天将、音響【ジャミング】で相手の声聞こえんようにしといてや
焼いて祓えば一発やけど隙間に入られたら建物ごと焼いてまうわ
サッサと片付けて帰るで
【クイックドロウ】の【2回攻撃】や
一発目は【浄化】の空砲で部屋中をピカらせるついでに相手を眩ませる
二発目に『蒼天』を打ち、相手の動きを止める
爆龍符を起爆モードにせず、気の圧を放つ様にして
【破魔】【属性攻撃】の衝撃波で、相手だけを【焼却】する
「えっらいペラッペラやの。死因は悲惨やけどその……スケベ根性で地縛霊になったんかい、あほらし」
「はぁ!? さっきからどいつもこいつも俺を貶しやがって……ふざけんじゃ」
「天将、音響ジャミングで相手の声聞こえんようにしといてや」
眉間に皺を寄せた神治は天将に顎をしゃくって指図する。天将が手を動かすと男の声は段々と小さくなり、口を開け閉めするのみとなった。
「あー、がなり立ててもワイ聞いてへんで。サッサと片付けて帰るで」
その言葉に男の口の動きがさらに速まるが、音が響く気配はない。心地よい静寂の中で神治は懐から角材型のハンドガンを取り出し、弾薬を確認し出す。
すると男は顔を怒りで真っ赤にしながら義透の矢の勢いに負けることなく動き出した。
「なんやあんさん飛べたんか。能ある鷹のつもりか?」
我が物顔で舞う男に向け、神治は引き金を引く。すると部屋全体に閃光が走り、男の目を眩ませた。
しかしそれ以上のことは起きない。
視界を取り戻した男は下劣な笑みを浮かべて口を動かした。驚かせやがって、とでも言っているのだろうか。対して神治は糸目を僅かに開き、小声で呟いた。
『チョロチョロすんな、大人しくしいや』
その言葉に神経を逆撫でされた男は再度斧で殴りかかろうとする。再び神治が銃口を向けてもその速度は一切緩む気配はない。きっとこの銃に装填されているのは先程と同じ見せかけの閃光弾だけだと決めつけているのだろう。
だが二発目に放たれるは【陰陽霊弾「蒼天」】。青白い軌跡を描いた弾はすぐに爆散せずに追尾し、斧で払われた瞬間に聖なる光を放って男の動きを封じた。
「本命を当てるには撒き餌とか準備とかってもんが重要なんや、覚えとき?」
そう言いながら床に力無く落ちた男の額に黒い札を叩きつける。すると札全体に水色の文字が浮かび上がり、気の圧が発され始めた。
じっくりと体を焼いていく破魔の衝撃波に男は床の上をのたうち回る。
いつもなら札を起爆させて焼いて祓って、一発で事がつけるが、そうすると床は間違いなく抜けるし、逃げるために隙間に入られれば建物にまで延焼してしまう。
性に合わない持久戦に神治は肩をすくめ、息を吐いた。
「……外に出てくれれば派手にパーっとやれたんやけどな」
大成功
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水鏡・怜悧(サポート)
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
NG:エロ・恋愛
「楽しめそうだ」「美味そうだな」「ヒャハハハハ」
行動優先順は1.NPC含む他者の救助、2.攻撃。ホントは敵を喰う方を優先してェんだけど、ロキが煩せェからな。
UDCを纏って獣人風の格好で戦うぜ。速度と勘を生かして攻撃を避けつつ、接近して爪で切り裂くか噛みついて喰うのが得意だ。UC使った遠距離攻撃もするが、銃はちょっと苦手だ。牽制に使ったりはするけどな。
技術的なヤツとか、善悪論とかは苦手だし、興味もねェ。楽しく殺して喰えれば満足だ。喜怒哀楽は激しい方だが人として生きた経験は短けェからな。価値観とか常識は知らねェよ。まァヤバイときはロキが止めるだろ。
「ああ、あつい熱いアツイ! は、はやく、はやく逃げなきゃ……」
「おい、ドコに逃げようってんだ?」
破魔の炎で燃え盛る体を引きずり、逃げ出そうとする男の腕が物凄い力で掴まれ、持ち上げられる。
「骨も肉もぐちゃぐちゃのぺったんこにされたんだって? そりゃあ食べやすそうだ、食べ応えは無さそうだがな」
「ひっ……!」
狼を思わせる黒と玉虫色の耳を動かし、舌舐めずりしながら笑う水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の姿に男は本能的な恐怖を覚えて震え出す。
男は今まで食う側の人間だった。それがガラガラと音を立ててすでに崩れていたことに、ようやく気づいたのだ。
「その前にちゃんとシメなきゃな…『…ッラアァ!』」
そう呟いて怜悧は手当たり次第に男の体を床や壁に叩きつけ始めた。
すでに住人はなく、部屋はもぬけの殻だ。人間の重さ程度の物がどれだけ振り回そうと叩きつけようとそれを耐えれるように作られた物はどれだけ放置されていようと早々壊れることはない。
全身を揺らされた男の口からもう悲鳴や怒鳴り声は聞こえず、疲れと吐き気からくる喘ぎ声しか聞こえなくなった頃、男の腕が千切れるように体から外れた。
自由を取り戻した男は死にものぐるいで窓と壁のわずかな隙間に飛び込み、逃げ出した。
「ちっ……ここで大人しくしてれば苦しまずに済んだのになぁ?」
男を逃してしまったことに舌打ちしながらも怜悧は痙攣し続ける腕を巻き、クレープのように齧り付いた。
成功
🔵🔵🔴
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
向・存(サポート)
もし手助けが必要でしたらお手伝いするのですよぉ~。
ユーベルコードの出し惜しみをするつもりはありませんけどぉ、だからと言って乱発すればいいってものでもないですよねぇ~。
使いどころに迷ったときはぁ、ご同輩に相談すればいいでしょうかぁ~?
けどぉ、非道なことをなされる方には手加減無用、全力で参らせていただきますねぇ~。
あとは最後まで油断大敵、【咄嗟の一撃】も放てるように【逃亡阻止】は意識しておきましょう~。
荒事以外のことならめいっぱい楽しんじゃいますよぉ~。折角なら美味しそうなものとかあると嬉しいですよねぇ~。
情報収集なら【道術】や【呪詛】関連ならお役に立てますよぉ~。
※アドリブ・連携歓迎
「こういうのって普通夏にやる物じゃないの……?」
そうボヤきながら音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は撮影用のドローンに見守られながらマンションの階段を降りていた。
今回の「鬱るな!鬱詐偽さん」の企画は「異世界の心霊スポット一斉捜索!」なる物。各世界のいわく付きの場所に片っ端から行く……という物。
「番組のため、とはいえこれって私が怖がってるのを見たいだけなんじゃないの……? だったらストリーミング漁ってよく分からないホラー映画っぽい何かを一緒に見た方がよっぽど安上がりよ」
そんなことをボヤキながら鬱詐偽は一階のとある部屋の扉を開ける。長年放置されてきたからだろう、中の木製の床の一部は腐り始め、汚れた壁紙は半分剥がれかけていた。
「うーん……ここにもいないみたいね」
ドローンが全体図を写せるように見回していると壁と壁紙の隙間から突然、ペラペラの男が飛び出してきた。
「きゃっ!?」
「ひっ!?」
恐怖でいっぱいになった男の頭の中には色欲の二文字は完全に消えており、鬱詐偽に襲いかかることなく反射的に逃げ出そうとする。しかしその逃げた先には冷たい足が待ち受けていた。
「はい、ここまでですよぉ〜」
自分の蹴りによって壁に叩きつけられた男を向・存(葭萌の幽鬼・f34837)は冷たい目で見下していた。
「ようやく見つけられましたよぉ〜。体が薄いからって隙間という隙間を縫って網を抜けちゃうんですからぁ〜。でももうおしまいですぅ〜」
妙に間伸びする口調で話しながら向存は肩を軽く回す。その瞬間、天井に入っていたヒビが突然大きくなり、音を立てて男の上に崩れ落ちてきた。
「ひっ、ぎゃ」
「おやおや、運が悪いですねぇ〜。偶然崩れてきた天井に押し潰されるなんてぇ〜」
どんな隙間でもすり抜けられる男だが、それは自由に動ける時の話だ。
瓦礫の下敷きとなり体を固定されてしまった男はひたすらに足掻くが、巨大なコンクリートの塊は一切動く気配はない。
「あ、私が壊したわけじゃなくて、天井が勝手に崩れてきた分には無罪ですよねぇ〜?」
マンションを壊すな、と口酸っぱく言ってきた人狼に向けて向存は防衛線を張りつつ、男の近くでしゃがみ込む。
「さて、自分の欲望のままに女性を痛ぶってきた幽霊さん? 何か言いたいことがあればわたしぃが聞いてあげますよぉ〜?」
「……なんで」
「うん」
「なんで皆俺を受け入れてくれないんだ、俺はただ卒業したいだけなのに、どいつもこいつも逃げるわ下手だわ! そんな奴ら殺したって」
向存の脚が男の顔を爆散させる。自分の欲望のことしか考えられなかった男は思いの丈を全て言い切る前に消失していった。
「死ぬ間際なのにブレないねぇ〜。あ、もう死んでるだったかぁ〜」
向存が呆れてながら立ち上がる中、ある物に気づいた鬱詐偽は窓の方を眺めていたドローンのカメラを自分の手で隠した。
ドローンを操縦していたカメラマンは後に、この撮影が生放送でなかったことに心の底から安堵した、と同僚達に語り、データは編集されることなく削除された。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
翌日、猟兵からの通報を受けた警察によって何十人分もの白骨死体が発見された。どれも、行方不明となっていた女性達であった。
いずれも頭蓋骨を陥没させるほどの力で刃物を叩きつけられたことが死因だと断定されたが、時間があまりに経ちすぎていることから犯人を特定できる証拠を見つけることが出来ず、捜査は難航することが予想される……と報道された。
ここで事の真実を伝えても鼻で笑われ、信じられず流されるのみだ。真面目に働く現場の方々には申し訳ないが、徒労に終わっていただこう。
一方で完全なる大量殺人の現場となってしまったマンションは急ぎ取り壊されることとなった。元々資産価値は0に等しく、再利用される当てがなかったとはいえこのような事件が起きてしまった以上、当然の帰結ではあるだろう。
おそらくこの一件は都市伝説ではなく、実際に起きた迷宮入りの事件として人々の話の種として残っていくこととなる。
ただ、「ここから解放されたい」という彼女達の望みは叶えることは出来たはずだ。
彼女達の魂が男の呪縛から解放されたことを祈りながら、ある猟兵は規制線が張られた入り口から踵を返し、去っていった。